○吉田賢一君 私は、民主社会党を代表して、ただいま
説明のありました
昭和四十
年度決算等に関し、以下数項目について
政府の所信を伺います。
第一、
臨時行政調査会の
答申について。
行政改革の声は久しい。しかし、戦後五たびの
行政改革を目ざす
審議会の
答申も、失敗の歴史でありました。なぜか。
わが国は、
政治行政の腐敗のあとを絶たず、現状維持とエゴイズムと権限の拡大は
官僚の本能で、これが改革をはばんだ要因であった。
政治姿勢を正し、均衡ある社会
建設のため、
行政改革実現の要請は急であります。
臨時行政調査会は、この
国民的要請にこたえた。
行政改革の主眼点は、次の六つの柱であります。
一は、内閣及び各省間の
行政の総合調整の必要と、その機能の
強化であります。すなわち、内閣の
指導性の確立、
行政の総合企画力、運営の統一性の確保、中央のトップマネージメント体制の整備などです。
二は、
行政の民主化であります。すなわち、
行政は、
国民に便利な、身近に
国民の批判も受けつつ、
国民のため実情に合った
行政、できるだけ
国民負担を軽くし、
官僚主義を排除して、広く
国民とともに行く
行政であらねばなりません。
三は、
行政の過度の膨張の抑制と、中央集権の排除であります。現状は、逆に、機構は膨張の一途をたどり、権限は中央に集中し、陳情
政治の弊害目をおおうものがあります。この実態を改めて、中央は企画、管理、統制の機能を実現し、事務は極力地方にまかすべきであります。
四は、
行政運営の合理化、能率化です。
行政は、民間
企業に比して非能率、低生産の標木のごとく、特に原価意識に乏しく、画一的、
形式主義で、
責任体制は不明確であります。
行政の具体的目標が欠如しております。これら
行政運営の抜本的改革が急務でなければなりません。
五は、新しい
行政需要の対策であります。特に
科学技術、青少年、消費者
行政、公害並びに
交通対策などの新需要の
行政には、特段の対策を必要といたします。
六は、公務員
制度の改革です。すなわち、
行政運営は結局人です。公務員によります。公務員は、政策の実行者でもあり、かつまた社会的価値開発の公共管理者でもあります。かかる見地から、公務員に、その任務と使命について自覚と情熱を求め、名実ともに魅力ある地位と処遇を確保し、不当な
政治介入を排除し、
政治中立、合理的人事管理等への改革であります。
以上六項目が
行政改革の骨子、大要であります。これらに対し、
佐藤総理の具体的、明確な御所信を伺いたい。(
拍手)
池田首相は、生前、情熱を傾けてその実現方を約し、また、
佐藤総理も、しばしば施政演説で、
答申の尊重を約されたが、現実は、
答申後すでに二年八カ月、行革の
実績はあがらず、見るべきものなく、わずかに定員膨張の抑制等、消極的成果にすぎません。積極的な、内閣機構以下十六項目にわたる広範な
行政改革には、
政府内部に熱意がありません。佐藤内閣とその
政治責任を一にする与党にも、積極性が乏しい。
臨時行政調査会会長だった佐藤喜一郎氏は、この
行政改革を実現するならば一兆円の節約になると、昨年二月
国会で
発言しました。ちまたには、切実な
財政需要が無限に存在する今日、この佐藤
発言こそ、
国民には大きな魅力でなければなりません。歴史的なこの
臨調の
行政改革への勧告は、内閣の首班がそのリーダーシップを発揮して、勇断をもって全面的実現に邁進する以外に道はありません。
佐藤総理の基本方針を伺いまして、また松平長官より具体的な実現のプログラムを伺ってみたいのであります。
第二は、
事業別予算制度についてです。
膨大な国の
予算はすべて
国民の
血税である。この
血税は百円たりとも有効、有益に使われねばなりません。年々繰り返される膨大な
予算の浪費、不正、
財政汚職の根絶のため、また、
経済と社会開発の均衡のとれた国づくり実現のためにも、いまや現行の
予算制度を根本的に再
検討すべき段階まできております。
現行
予算制度の内包する基本的欠陥は、
予算編成に客観性を欠き、
予算会計の総計
予算主義、単
年度制度などの原則が画一的であります。
予算の
執行と
決算が軽視せられ、
財政の統一性が著しくそこなわれ、また、会計事務は複雑化しております。この欠陥を根本的に
改善して、
予算の獲得には血道を上げて、
決算にはほおかぶりして通るというこの陋習を一掃し、
予算本位から
決算本位、業績と
効率重視の
予算制度に移行せしむるため、
臨調もこれを勧告し、また、先年アメリカのフーバー
委員会の勧告以来、アメリカ、フィリピン、国連等におきまして
実施せられておりますいわゆる
事業別予算制度の積極的導入をしてはどうです。申すまでもなく、この
制度は、
予算はだれが使うのかというのが主ではありません。何の
目的に使うのかというのが、この
予算制度の中心であります。
現行
制度は、所管、組織を区分して、
経費と
行政権限の結びを示しております。
議決事項の項で
目的別を示し、目を
行政科目としておる。
予算の事業計画、予定業績、前
年度の
実績などは、現在は一覧してわかるものがありません。
歳入歳出予算書、
予算参照書、各省所管
予算説明書、
予算各日明細書、
決算書などをかれこれ総合せねば理解ができません。
事業計画を基本に
予算を編成して、
行政目的の達成を
予算の主眼とする。この機能は、
予算内容を
国民に知らしめて、
国会審議のためにも
予算の計画する情報を提供し、
実績の
検討によって
国会の
予算統制、
行政管理をする。この機能は、
予算の編成、
国会審議、
執行統制、検査、
決算の段階において発揮せられましょう。そして現在の
予算制度に対して、特に
経済的合理性と能率性を強調します。
予算の早期化、弾力化を求めるものであります。特に
予算編成の段階における猛烈な陳情合戦の弊害と、
執行段階におきましては
大臣の任期が戦後平均九カ月、うち五カ月は
国会に局長らと締めつけになり、事務官は
予算通過前に
執行準備ができず、八月の次
年度の
予算要求準備等に忙殺されておる現状は、また
国会にも
反省の要はありますまいか。
事業別予算制度は、業績を数量的に把握可能なもの、困難なもの、またこの
制度を一部取り入れたものなどを区別いたしまして、
予算制度全般にわたってすみやかに
検討を加え、可能なものより逐次
実施に移してはどうでしょう。なお、この
制度につきましては、
財政制度審議会にすみやかに諮問せられてはいかん。
以上、
事業別予算制度導入に関して、基本
施策については
佐藤総理の
所見を、具体的な導入問題については
水田大蔵大臣の所信を伺います。
第三は、補助金について。
補助金、負担金、交付金等国の
地方公共団体または公社
公団等に対する財源、
資金の交付は逐年
増加しています。
一般会計、
特別会計、
政府関係機関の補助金の総計は、
昭和四十
年度におきまして二兆三千六十九億円、四十一
年度には二兆六千五百七十一億円、四十二
年度におきましては二兆九千八百八十九億円にのぼり、国の
一般会計の約六〇%に相当します。その目数も、四十
年度には一千七十四月、四十一
年度には一千百十七日、四十二
年度には千百四十九日にのぼり、地方
財政に占める比率は、その総収入の約三〇%に相当します。
補助金等合理化
審議会は、
昭和三十八年十二月、
総理大臣に対して、国と地方行
財政全般の見地から、
改善、合理化の方策につき、問題の所在と合理化対策を
答申しました。そしてその実態の
指摘と対策は、いまもなお適切であり、生きています。
この補助金の膨張は、
行政需要に必要な財源の確保であっても、地方団体にも深刻な種々の弊害が生じてきました。新しい
行政事務につき、国と地方の
行政責任の分担
関係の混乱、あるいは補助金の複雑多様化と細分化を生み、
行政は非
効率化していき、結局、地方
財政の自主性を失い、いみじくも全国知事会は、昨年十二月、その実態を明らかにして、補助金等合理化につき
政府に要望しました。それは、さきの合理化
審議会の
答申と符節を合わしたものでありました。
すなわち、
政府はこの際、国と地方団体間の
行政事務の再配分を明確にすること、国と地方団体間に
租税等、根本的に財源の再配分につきまして積極的に
検討を加え、また、客観的基準もなく漫然と増大していく多種多様な補助金
制度をすみやかに根本的に合理化し、
財政の
効率的秩序を回復してはどうでしょう。全国の地方団体、公社、
公団等は、補助金を得んがために、年がら年じゅう
予算編成期には中央に向かって陳情に殺到する、この、憂うべき、人と財貨の膨大な浪費、これをめぐって不当な
政治勢力の介入が
政治、行
財政の腐敗の
原因となる、これはまことに重大であります。
佐藤総理は、右補助金合理化の
重要性と根本対策につき、いかに考えられましょう。
水田大蔵大臣は、その
具体的実施方針について所信を明らかにせられたいのであります。
最後に、公社、
公団等について。
わが国に、現在、公社、公団、公庫、事業団等特殊法人は百八つあります。これら法人は、明確な定義も、設立の統一的基準も見当たりませんが、
政府の
実施事務をより能率的に行なうために設立せられ、
行政の補完的性格を持ち、また、自活能力が設立の
前提になっております。その能力を与える限り、自主性を尊重し、不要の統制の排除を要請するとともに、経営結果の
責任を負うていますが、他面、過度の
監督、統制、または天下り人事、親方日の丸意識による
予算の浪費、便乗的乱設、こういった弊害が表面化してきました。ことに四十二
年度、公社、公団への国庫補助金は八億にのぼっています。
政府は、この段階におきまして、公社、公団の本質につき根本的に
検討する用意はありませんか。また、これら法人は、すべて
国会を通じ、その
行政責任を明確にされなければならぬと思うが、いかん、松平長官の
所見を伺います。
臨調は、公社、公団の整理統廃合につき全面的に
検討し、その改革の
実施を早期に実現することを強く勧告していますが、その基準として、一、設立の
目的機能を果したものは廃止、二、同種業務のあるものは統合、三、財務的に自営能力のないものは本省の附属
機関に改組、または
地方公共団体に委譲、四、その他の特殊事情、と分類しましたが、該当する公社、公団は、次に例示したところの十八公社、公団のほかにあるのかどうか、松平長官に伺います。
かくて、改組、再編成すべきものとして十八公社、公団を例示しました。すなわち、愛知用水公団、鉄道
建設公団、水資源開発
公団等十八法人について、
理由を付して勧告しました。解散、業務の再
検討、他の特殊法人への吸収、
行政機構を
強化再編成、統合して新研究
機関へ改組すること、民法法人化、管理機構の
強化、
政府出資増による財源
強化、あるいは他の事業団へ開放の
検討等、多岐に分かれています。この勧告の後、改組、再編成の作業はどうです。
また、最近、内閣の不統一、特に主管
大臣のうちには、勧告の趣旨に反対し、もしくは批判的な
国会発言があったと聞きますが、これはどうです。また、伝えられる去る三月七日の
行政組織簡素化の閣議の申し合わせ、その趣旨はどうです。
公社、公団の
あり方、その整理統合の基本方針につきまして、
佐藤総理の所信を伺い、閣内不統一の事実のあるなしをあわせて伺いたい。
具体的な改組、再編成への
推進につきましては、松平長官の懇切な所信を伺います。
以上、これをもって
質問を終了いたします。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕