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1967-06-02 第55回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二日(金曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 神近 市子君       瀬戸山三男君    馬場 元治君       村上  勇君    加藤 勘十君       中谷 鉄也君    三宅 正一君       横山 利秋君    小沢 貞孝君       沖本 泰幸君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君  委員外出席者         法務省矯正局医         療分類課長   樋口 幸吉君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 六月二日  委員下平正一君及び西宮弘辞任につき、その  補欠として中谷鉄也君及び稻村隆一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員稻村隆一君及び中谷鉄也辞任につき、そ  の補欠として西宮弘君及び下平正一君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件、並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 国政調査の中で人権擁護の問題として、いわゆる病理集団の中でいわれている顔役であるとか、あるいは顔を立てろなどというふうな問題についても機会をお与えいただきまして、質疑をいたしたいと思いますけれども、きょうはそのものずばりで、いわゆる美容整形といわれている問題と、人権擁護と申しますか、人権侵害との関係について問題があろうかと思われますので、お尋ねをいたしたいと思います。  ことしの一月の末から二月の初めにかけて、次のような新聞報道がございました。特に名前を申しませんけれども、福島からわざわざ上京をして、そうして、美容整形ということの専門家だ、こういうふうにいわれているお医者さんのところで手術を受けた。その手術を受けられたところの、家庭主婦の方のようですが、その方が、結局死亡したという、きわめてふしあわせな、そして大ぜいの女の方にとっては、非常にショックの多かったできごとがございました。この問題について、現在、手術せられたところの医師に対して、検察庁はどういうふうなお取り調べ、あるいは御捜査ということが行なわれているか、この点について、最初法務省お尋ねをいたしたいと思います。
  4. 川井英良

    川井政府委員 ただいま御指摘になった事件だと思いますが、四十二年の五月十一日に、警視庁から、業務上過失致死ということで事件の送致がございまして、目下東京地検において捜査中という報告を受けております。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで問題は、形成外科あるいは整形外科などということばを最近非常に、われわれしろうとでも聞くようになりました。また整形外科医などといわれているお医者さんが、非常にまじめに研究をしている。また、そのような医学の面が非常な進歩をしなければならない、こういうようなことも、——ことに交通事故激増等に伴うそういう状態の中で、そういう医学分野が発達をしなければならないということは、私よく理解ができます。ただ問題は、そういうことと、美容整形ということがどういう関係になるのか。ことに、このなくなられた家庭主婦——私、あえて委員会において、すでにもう新聞等にも報道せられたことでありますので、名前を出したいと思いますが、米倉紀子さん、こういう女の方でありますけれども、この手術の中で問題になっておる点は、その手術の際に、何かシリコン系統物質、そういうふうなものを詰める。たとえばそれが一般的に隆鼻術であるとか、あるいは豊乳と申しますか、あるいは豊頬、そういうようなことでそういうものを詰めるのだ、そういうものを注射するのだ、そういうふうなやり方が行なわれているということですけれども、厚生省としてそういうシリコン系物質を注入するというふうなことが、安全なんだ、危険がないんだ、こういうふうにお考えになっているのかどうか。これもお医者さんのやっておられることだけれども、私は、必ずしもすべてのお医者さんが、医学についてのいろいろな分野——ことに整形外科あるいは美容整形などというのは、いろいろな分野にかかわってくる問題だと思いますけれども、そういうふうな中で、シリコン系物質というものを注入するというのは、安全度は一体どういうことなのか、こういう点について、厚生省のほうからお答えをいただきたいと思います。じゃ、いまの質問は、医務局長がおいでになってからお答えいただくことにいたしまして、そういうふうな中で、——だから問題が飛ぶわけですけれども、実はこういうふうな美容整形というようなことで、家庭主婦がなくなった。ところが、そのときからすでにもう指摘をされていることでありますけれども、女性向け週刊誌などには、美容整形広告がとにかく花盛りなんだ、一ぱいそういうふうなものの広告が出ているのだということなんです。そこで、そういうことについてはしかるべき御措置があっただろうと私考えます。昨日実は、たくさん週刊誌を私買ってまいりました。こういうふうに買ってまいった。そうすると、相変わらず、これは一々大臣の直接の御答弁を私お願いするわけでございませんが、切り抜いてみますと、手に持てないくらいたくさんそのような広告が出ている。これは刑事局長さんにお答えをいただきたいと思いますけれども、こういう広告の中で、美容整形というふうなことばを使っている広告、こういうふうなものもかなりあるようです。これはまずお取り調べをいただくかどうかは別として、法に触れるだろうと思いますが、一体この点はいかがでございましょうか、局長さんの御答弁をお願いいたします。
  6. 川井英良

    川井政府委員 正確に調べた上でないと正しい答弁ができないかと思いますけれども、この間、ほかのことで問題になりましたように、いろいろ宣伝広告というようなものも、条理上おのずから限界があるものではなかろうか、こういうふうに思いますので、たとえば薬事法でありますとか、この間問題になりましたその他のもの、飲料に供する物というようなものの宣伝広告というふうなものにつきましては、それぞれの法規に、これを規制するところの法規がございますので、いま問題になりましたような薬事ないしは医療というふうなものにつきましても、それぞれその誇大な広告、あるいは虚偽の宣伝というふうなものを、規制するような法規があるようでございますので、御指摘のような事態がそのような法規の内容に合うものである、あるいは構成要件に該当するということになりますれば、それらの法規によって規制しなければならないものではなかろうか、かように考えております。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 私のほうから、この点はきわめて、法律の御専門家局長さんにこういうお答えをいただくことは、恐縮なんですけれども、医療法の六十九条、同時に同じく医療法の七十条によりますと、医療法の七十条は広告をすることができる診療科目ということに相なっておりますですね。したがいまして、私が手で持ち切れないくらいの広告の中に、いわゆる整形美容というふうなことが麗々しく診療科目名として書かれているということに相なってまいりますと、六十九条、七十条の構成要件を満足をする。これはどんぴしゃりと六十九条、七十条の違反になるのだというふうに私思うわけです。この点についてはいかがでございましょうか。現物をお見せせずに、こういうものがあるのです。あるかないかは、だから局長さんにお見せしてないわけですけれども、これだけあるのです。この中には、そういうふうなことであれば該当すると思いますがというお尋ねなんです。お答えをいただきたいと思います。
  8. 川井英良

    川井政府委員 責任のない、と申し上げてはたいへん申しわけないのでありますけれども、罰則解釈につきまして、抽象的にいろいろ議論はもちろん可能でありますけれども、私専門としております刑罰論をやや離れて、多分に専門的な行政取り締まり法規の中に設けられた取り締まり罰則解釈でございますので、これは、これを担当しておるそれぞれのこの法規をおつくりになった省庁があるわけでございまして、その専門家がこの立法趣旨についてまた特別な御意見あるいは解釈を持っておられることと思いますので、まずそちらの方面に一応お確かめいただいて、さらにそのまた解釈につきまして刑罰法令解釈として、そういうふうな解釈が妥当かどうかというふうな面から、あらためてまた私の意見を求めていただくというふうなかっこうにしていただいたほうが適当かと思いますので、よろしくお願いいたします。
  9. 中谷鉄也

    中谷委員 医務局長出席がおくれられたので、私の質問が若干そこでむだになりました。それで医務局長お答えいただきたいと思います。  先ほど私は、こういうことをお尋ねをしたわけです。要するに、美容整形というふうなことで、きわめて安心して、安易な気持ちで、福島からとにかくわざわざといいますか、ふらっとと言ってもいいくらい、上京してきた女の人が、死亡した。手術が危険なのだということに対する認識とか、いろいろな問題について、美容整形というものについては問題があると思うのです。  そこで、まず問題の一つであろうと思われるいわゆるシリコン系物質、こういうふうなものを注射をして注入をする。豊頬隆鼻等の施術の際にそういうものが使われているらしいですが、そういうシリコン系物質というようなものが、厚生省のお立場から見て、はたして安心できるものなのかどうか。ことに最近では、何かシリコン系物質については、固まってしまうのだというふうなことで、アメリカのほうではそういうものを使わないというふうなことも聞いておるのです。そういうものがかなり現在使われていると思いますが、一体この点について、厚生省はどういうようにお考えになっているかをお答えいただきたいと思います。
  10. 若松栄一

    若松政府委員 原則的に申しまして、医師診療を行ないます場合に、いかなる薬、あるいはいかなる薬品、いかなる器具を使うかということに関しては、何らの制約もございません。また、どのような技術を用いて、あるいはどのような手技を駆使するかということについても、何らの制約もございません。したがって、これは医師としての学問に基づく良識によって判断をするということがたてまえでございます。それは原則論でございますが、シリコンの場合、シリコン現実に危険なものとして規制さるべきものであるかどうかという問題も、この原則に基づいて判断すべきものでございまして、シリコンがすべて悪いとか、すべていいとかという判断は、なかなかむずかしいわけでございまして、それがどういうふうに使われ、どういうふうな結果をもたらしたかということが、それが妥当であったかなかったかという判断につながるわけでございます。シリコンといいましても、きわめて多種多様ございます。常温液状のものもありますれば、常温では固形であって熱を加えると液状になるものもありますし、シリコンといいましても、樹脂に何百種類もありますように、きわめて多様性がございます。したがって、どういう樹脂がどういうふうに使われたかということが問題でございますが、原則的には、シリコンはいけないあるいはよろしいというような総合的な判断は、医療の場合においては下しがたいのが実情でございます。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをいたします。  お医者さんが医療行為をやられるのは、お医者さんの良識に基づいてやるのだ。患者というのは、そもそも医者に対しては無抵抗ですね。絶対の信頼をしている。そこに医療行為が成り立つというのがたてまえになっている。現実とたてまえは、私の議論はまた別にいたしますよ。しかし、そういうたてまえになっている。  そうすると、もう一度お尋ねいたしますけれども、厚生省のいまの御答弁で私はっきりしないというのは、シリコン系物質というのは、いいとも言えないし、悪いとも言えない。これでは、逆に言うと、危険かもしれませんよ、危険でないかもしれませんよ。そういう物質というものは、人権擁護立場からいいましたら、一〇〇%だいじょうぶなんだ、少なくとも、そのやり方使い方の問題は別として、シリコン系のその物質というのは隆鼻術にしろ、おっぱいを大きくするにしろ、ほっぺたを大きくするにしろ、一〇〇%だいじょうぶなんだということが、厚生省医務局長の御答弁がない限りは、それが安心できるものだというふうな前提で使われているとすれば、私非常に問題だと思うのです。個々のお医者さんのとにかく良識にまかすとおっしゃっても、そもそも美容整形なんという問題は、眼科耳鼻科皮膚科、ひ尿器科外科、いろんな各科の総合的なものでなければこれはいかぬはずなんです。端的に申しますと、私は、とにかく弁護士ですけれども、民事もできる、商事もできる、刑事もできるなんという弁護士は、なかなかおりませんよ。まして、お医者さんのほうがともかく分業化しているのに、眼科も知っている、耳鼻科も知っている、それから皮膚科も知っている、ひ尿器科も知っている、外科も知っている、——無医村に近いところではそんな看板を掲げている医者はいますね。そういうふうなことをとにかく考えてみますと、お医者さんに何もかもまかしてあるんだ、医者というものにまかしたというたてまえなんだという原則論を聞いたって、私のほうは納得できません。だから、これは安心できるものなのか、安全なものなのか、これは厚生省として明確な御答弁をいただきたい。ことに最近はスネーク・オイル、何だと思ったらヘビの油それからマッコウクジラの油、こういうものが媚薬だということで——そういうふうな美容整形のために使われている。そうしてものの本によると、はたしてそんなものがきくのかどうかと厚生省の技官の方も首をかしげるようなものが出回っている。お医者さんが使っている。しかし、それは医療行為によって、それが何ら規制されないのか。お医者さんだから間違いないという前提に立っている。しかし、個々のお医者さんの場合をとってみますと、やはり厚生省か何かで、それは絶対だいじょうぶなんだよ、ヘビの油でもいいですよ、マッコウクジラの油でもいいですよということをやはり御答弁いただかないことには、これは何千万という女の人は心配でしょうがない。またそういうことにうかうか乗っていけないと思う。この点はいかがですか。
  12. 若松栄一

    若松政府委員 医療の実際ということを、現実の具体的な例でいろいろ御検討いただきますと、私がただいま申しましたきわめて原則論的なものが、やむを得ない原則であるということをおわかりいただけると思うのですが、ここできわめて広範な事例をあげるわけにもまいりませんが、シリコンそのものも、適当に使われる場合において、害にならないものであるということも確かであろうと思います。しかし、往々害を起こすことがあることもまた確かであります。また、使用方法が間違えば明らかに害を起こすことは、これはもう明らかなことでございます。したがって、これもシリコンそのものがいい悪いということでなしに、使い方によって、またその技術によって害にもなり、非常に効果的にもなる性質のものであろうと思います。
  13. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、これはもう一度お尋ねいたしますけれども、薬の場合には、もうずいぶんいろんな実験等を経た上で薬については許可されますね。医療行為の場合については、シリコンというのは、使い方によっては危険でもあるし、危険でないかもしれない。ここまで御答弁をいただきました。そうすると、これも私全くしろうとだから週刊誌知識なんです。アメリカでは、コーネル大学から、シリコンが固まるという報告があったときから、アメリカ全部で二人の医師しかシリコンを扱わないようになった、こういうふうな報道が出ているわけです。厚生省としては少なくとも、これは今後何年か後に影響が出てきたら、たいへんなことになると思いますよ。いろいろそういう御答弁をいただいて、いろいろな手術をされて、何年か後に影響が出てきたとき、私はたいへんな問題になると思いますけれども、厚生省としては、責任をもって、シリコンというそのもの自体は、危険がないんだ。使い方によって危険のある可能性が生ずるんで、シリコンそのものには、危険がないんだというふうなことを、根拠に基づいて、調査実験に基づいて御答弁になっておられるのですか。そうすると、アメリカのいわゆるコーネル大学報告なんというものは、これはよその国の話であって、別に心配しなくてもいいことをかってにアメリカ人は心配しているのだということになるのか、こういうのを使ってたいへんなことになってしまうと、人権問題が生じますからね。
  14. 若松栄一

    若松政府委員 アメリカでも、シリコンをいろいろ使ったという経験を聞いております。現にいまニューヨークの大学と、ロサンゼルスの大学で、専門的に実験をしているということも聞いております。また、日本でも、幾つかの大学では、現にシリコン系樹脂を使って、いろいろな実験をしておられるところもあります。要するに、ある意味では、ある程度人体に施用してみないと、それがいいのか悪いのかわからないところもあるわけであります。施用したことがなしに、これは絶対に人体に害があるという判定がつかない。ある程度使ってみて、そして結果として、どうしてもこれは使うべきでないという結論に達することが常道でございまして、現在はむしろそういう過程にあるというふうに考えていいかと思います。  これは直接的な例ではございませんが、たとえば十年ほど前までは、結核手術をする場合に、空洞がある、空洞があった場合に半年なり一年の間にほとんど死亡してしまう。この空洞をつぶさなければならないというので、御承知のようにプラスチックのたま等を胸部に入れて、空洞をつぶすというような手術が十年ぐらいにわたってずいぶん流行したことがございます。現在はこれはだれ一人顧みる者もなくなった。それでは昔そのことをやった者は、全部不法であり、違法であったかというと、そうではない。その当時は、それが一番いいという学問的な経験が積み上げられてそうなった。現在では、むしろそれよりはるかにいい治療方法ができて、肺切除とかいうようなことでやったほうがいいということで、ほとんどそれに変わってしまった。現に昔入れたたまのためにずいぶん苦労をされ、あとまで悪い影響を残した人も多々ございます。  そういう意味で、いろんな新しい知識技術、あるいは物質というものが、医療として役に立つか立たないかということは、もちろん基礎的な研究動物実験による段階、さらに少数の人間に対して試みる段階、あるいはさらに計画的に、やや多数の人間に対して施用してみるといういろいろな段階がある。そういう意味で、現在のシリコン系樹脂それ自体は、きわめて危険な物質ということではございませんが、相当多数用いられて、事実上豊頬手術に成功をおさめている例もあります。またそれが実際には一個のかたまりとして入れたものが、分散してしまって、かえって非常に醜形を残しているという方もあります。したがって、これらのものは、初めは豊頬手術に成功したと思っていたが、それが数年たったら、ばらばらにシリコンが分れてしまって、かえって醜形を残す、したがって、そういうような経験を積むことによって、シリコンは一時的な豊頬にはなるけれども、永久的なものには必ずしも適当でないということが出てまいります。また、鼻にシリコンを入れて、隆鼻術をやるということが一時行なわれました。長年見ていくと、かえって障害を起こして鼻の変形が起こる場合もあるということから、現在は流動的なシリコンを入れるという形は避けられておりまして、鼻の形を直すのに適当な形をつくって、固形物質を挿入して形を保っていくというようなことにだんだん変わってきております。そういう意味で、初めからこのものがいいか悪いかという判断はなかなかつきかねるものでございまして、初めから危険があるものは用いることはできませんが、初めに危険が予想されてなくて、そしてやってみたらあとでどうもぐあいが悪いというものが出てくるということもまた事実でございます。
  15. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをいたしたいと思いますが、あとで関連をしてお尋ねをいたしますけれども、要するに医療法の七十条の中には、少なくとも美容整形というふうな診療科名はございませんですね。そこで私は人権問題として考えてみますと、例の引き方としては、はたして先ほどの例の引き方が適切かどうか、非常に疑問だと思うのです。要するに結核患者、それから非常に不健康、病気状態、お医者さんがこういう人をどうして救おうかということで、それが危険を伴うかもしれない、しかし、医学進歩という立場から、先ほどおっしゃったような手術をされる。これは私は、国民の一人といいますか、患者になる立場人間として納得もできるし、肯定もできるわけなのです。ただ、美容整形という場合は、病気病人じゃないわけでしょう。その病気病人じゃないものについて、同じような論理で、何年か後には醜状を呈するかもしれませんよ、シリコンが散ってしまってうまくいかないかもしれませんよ、しかし、それは繰り返しそういうことの積み重ねの中で証明できることなんだというようなことは、医療法のたてまえからは納得できても、手術を受ける国民、ことに女の人の気持ちの上からは、とにかく説得力を私は持たないと思うのです。あす死ぬかもしれないという結核患者、その人に危険だけれどもこういう手術をしてみよう、じゃ、その手術を受けてみましょう、これは私は理解できます。ただし、健康である女の人に対して、美容整形という診療科目にもないようなものについて、将来危険を生ずるかもしれない、うまく行くかどうかはっきりしないものについて、厚生省等が、それはお医者さんにまかしておくのだ、十分その点については調査もしていないのだというふうにお聞きしていいのかどうか。その点についてはもう一度お尋ねしますけれども、シリコン、あるいはヘビの油、マッコウクジラの油というふうなものについては、全部お医者さんにまかしてあるのだ、厚生省としてはタッチしないのだ、危険であるか危険でないかというようなことは、結果が出てきたときに、医療法違反としてあとを追跡するのであって、あらかじめ厚生省としては——そのようなものは危険であるか危険でないのか、人権擁護という立場において私はやはりお願いしたいと思いますけれども、あらかじめそういうものについて、調査実験、分析するというおつもりはないのか、この点はいかがですか。
  16. 若松栄一

    若松政府委員 現実医療という範囲と、それから何といいますか、医療のワクを離れました保健衛生的な分野と両方ございまして、たとえばただいま話の出ました媚薬であるとか、あるいは保健剤であるとかいうようなことで、マムシの頭を飲もうが、あるいはヘビの油であろうが、これを国民個々の方々が自分の判断でお用いになるということについては、これは何ら規制するところがないわけでございまして、これが何らかの危険が明らかに想定されるというようなものでございますれば、これは行政的にも排除する必要があろうと思います。ヘビの油が危険がないというものであるとすれば、個人がある程度それを好んで用いるという場合に、これまで排除するということは、行政としては通常やらないのがたてまえでございます。また、そういう民間に用いられているものを、全部厚生省が一々検討して判定してやれということでございますが、これは御趣旨としてはごもっともでございましても、現実としてはなかなか無理でございまして、現実には医薬品として販売されるものについては、その製造許可あるいは販売許可というものが行なわれ、医薬品としてでなく、全く個人がかってに用いる物質についてまでの規制、あるいは検査、検証等を厚生省が行なうということは、これは事実上困難であろうと思っております。
  17. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをします。  どうも法務委員会で、法務省の政府委員の方にお尋ねしたときと歯がかみ合わないのです、厚生省の方とお話をしていると。私が質問したことは、こういうことなのですよ。個人がかってにヘビの油を使ったり、マッコウクジラの油を使ったりということじゃないのです。医療法の中で、医療行為としてお医者さんがそういうものをお使いになっているのだそうです。しかし、それは医療行為として許されているのです。お医者さんは何を使ってもいいのだ。しかし、問題の美容整形というものは、非常に複雑な、そして高度の技術を要する分野だということを私は聞いている。そして、日本には十万人お医者さんがおられますね。全部のお医者さんが、日夜とにかくあらゆる文献を調べ、あらゆる学問に精進をしているというふうには私は思わない。端的にいって、思いません。そういう中で、個人が使うということについて——個人は大体注射なんかできないでしょう。できるのですか。——しかし、手術というか、そういうようなことは技術的に困難だと思いますね。お医者さんがそういうものを使うということについて、医者患者との関係においては、患者医者に対しては無抵抗なんだから。こんなものについて、厚生省は野放しにしておくのですか。お医者さんまかせにしておいて、それでいいのですか。あと、そういう問題が起きてきたときに、結局それは医療行為として間違いがあったのだ、医療法違反で、いわゆるそれについては処分をするというだけで人権が守られるのですかと、こう聞いているのですよ。そんなものについては、医者がやっておられることについて、調査する必要はないのだということなのかどうか。美容整形医者というのは、ずいぶんふえてまいりましたし、美容整形患者さんもふえてまいりました。非常に多い。これは一つの社会現象として急増していると思うのです、そういう患者といいますか、そういう施術を受ける人が。その中で、厚生省がそういうことを野放しにして、医者まかせだ、自分のほうは、それにノータッチだというようなことでいいのかどうか、この点を人権擁護立場からお尋ねするのです。
  18. 若松栄一

    若松政府委員 ただいま私が、個人が用いる薬といいます場合に、厚生省が製造販売を許可した、いわゆる医薬品以外の薬品のことでございますが、それを個人が用いると言いましたけれども、それは医者が用いる場合ももちろん同じでございまして、医者が個人との診療契約でございますので、その間に医師がどういうような薬を用いるというようなことも、これはいわゆる厚生省が製造販売を許可している医薬品以外は用いてはならないということではございません。漢法でおやりになっていられる方もございますし、その他ある程度、自分でくふうした薬をお使いになっていられる方もございます。そういうものを全部取り締まるというようなことは、現在の法制上は遺憾ながらできないわけでございます。どこまでもこれは、医師が学問的な良心に従ってやるということでございまして、それが著しく逸脱し、あるいは社会的な常識に反するという場合には、これは行政的な発動があってしかるべきだと思いますけれども、原則的にそういう社会通念から見て著しい障害がない、また、危害が明瞭に認識されていないというようなものについては、医師自体が使うことも、あるいは医師患者が、契約によって、そういういろいろの施用によって用いることも、あるいは個人が自由に使うことも、これはある程度やむを得ないと思います。そういう意味でただいまの注射の例も、自分自身が薬をくふうして注射しても、これはやむを得ないということでございまして、ただ医療を業としてやるのには、それぞれの資格、免許を持たなければなりませんが、それ自体が違法であるということではないと思います。
  19. 中谷鉄也

    中谷委員 こういうふうな美容整形広告については、医療法違反なのだ、大っぴらに、公社の電話帳にもそういうのがずらりと並んでおるというふうなことが、新聞報道されています。そういうふうな事実について、まずお尋ねしますけれども、法に書いてあるからということではなしに、美容整形というふうな、そういうかっこうの診療科名広告は許されない、そのわけ、医療法何条にそれが診療科名として載っていないからだというのではなしに、そういうことが許されないわけ、これは一体どういうことなのでしょうか。
  20. 若松栄一

    若松政府委員 美容整形という広告が許されないのは、現在では法律上、医療法七十条に載っていないから許されないということでございまして、それ以外の理由はないわけでございます。ただ、おそらくお尋ねのおことばの裏に、先ほどありましたように、病気人間が治療するために、ある程度危険を予想される行為を受けるのも、ある程度やむを得ないけれども、健康な人間が、わざわざおっぱいを大きくしたいというようなことで、医師医療行為を受けるというようなことが、妥当であるかないかというような御趣旨もあるのかと思いますが、これについては、私どもも美容術ということが、はたして医療として妥当であるかないかということについて、専門家等の御意見も聞いていろいろ議論しております。原則的には、そういうような単純な美容というふうなことは、好ましくないということでございますが、現実には、たとえばおっぱいが小さいために夫婦仲が悪くなって、どうにもならないんだというような、きわめて現実的な問題が多々出ております。そういうことで、まあおっぱいが大きくならなければ私は死んでしまいたい、——事実何度か自殺を試みたという例も具体的にございます。そういうようなことで、これは美容整形の対象になるような方々の心理状態、あるいは生活環境というものが、かなり異常な面がございます。そういう意味で、きわめて常識的な判断からだけでは律することができない。したがって、どうしてもある程度やってやることが、人道的であり、道義的であるという場合さえあり得る。しかし、できることならば、そういうものはやらさないほうがいいということで、実は数名の形成医学専門家にお集まりいただきまして、いろいろ御意見をお伺いしたときも、たとえば豊頬手術を依頼に来た場合に、私は何とかして説得してあきらめさせるというお考えの方が大部分でございました。しかし、一部には、やむを得ずやってやらなければならぬ場合もあるだろうというような御意見もございまして、こういういわゆる美容整形というものの社会的な判断医学的な判断というものは、きわめてデリケートなものであるということを考えております。
  21. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをいたします。  要するに、こういう美容整形というふうな問題は、お医者さんのモラル、そういうようなことで、人が来たときに、それはあきらめなさいと言ってやめさせるというのは、いわゆるまじめな形成外科の先生たちの多くだろうと思うのです。そういう立場というのが一つある。それが正しいあり方だと思います。患者の自覚という問題もございますけれども、そういう立場は正しい。そこで、局長のお話では、法七十条に規定があり、六十九条に規定があって、それに該当しないんだから広告はいかぬのだと言う、——これはまさに法文を見ればわかることなんです。しかし、その点についてはそういうお答えしがなかったんだけれども、問題は、最近そういう大っぴらな美容整形広告などということについては、厚生省のほうでは、そういう広告を野放しにしておくのかどうか、それともお取り締まりをすることについて、最近何か処置されたかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  22. 若松栄一

    若松政府委員 御承知のように、医療法の六十九条、七十条というような規定は、きわめて常識的に言いましても非常に厳格な規定でございます。医療機関については、その七十条で掲げられた診療科名以外は実際広告をしてはならない。また、医師診療技術等について、あるいは経歴その他についても一切広告をすることができないたてまえになっております。そういう意味で、医師法、医療法のたてまえとしては、広告をきわめて厳格に取り締まりまして、そして一般大衆が、広告によって惑わされるようなことがないようにということで、極端に神経を使っているあらわれであろうと思います。そういう意味で、私どもも広告の制限、取り締まりということについては、私どもの医療行政の中の医療監視というものの中で大きな重点になっております。そういう意味で、都道府県あるいは保健所の職員が常時そういうものに気がつけばこれを忠告し、撤回させるというたてまえをとっております。現実に、東京都の場合を申しましても、三十八年の一月から六月までの間におきまして、重点的に医療機関の広告取り締まりをやっております。そして二回に分けまして、百件程度の広告を厳重に規制いたしました。また、第二回目には、三十九年の十一月から四十年の七月にかけましても、同じように広告規制を厳重にやるような指導をいたしまして、この場合にも関係医師会、病院協会というようなもののほかに、各種の報道機関、あるいは雑誌社、広告社等にも協力を求めまして、広告の規制、取り締まりをやったわけでございます。そういう意味で、最近におきましては、都内の病院に対しても、広告規制の一覧表、正しい広告のしかたというようなものを配付いたしまして、現実に指導をいたしております。広告規制についてはそのような方向でやっております。
  23. 中谷鉄也

    中谷委員 先ほどからの政府委員の御答弁をお聞きしておりますと、要するに、美容整形というものについては、何かそこへ行けばすぐきれいになるのだ、手術あるいは施術というものに伴う危険性についての認識というものについては、だれも教えてくれる人がいないようなんです。とにかくまじめなお医者さんは、そこへ行けばあぶないですよということを教えてくれるけれども、なかなか広告を出しておるようなお医者さんは、そういうことを言うはずもないと思うのです。ところが、そういう手術には常に危険を伴う。健康な人間が行って、冒頭に引用した家庭主婦のように、死亡した例があるが、これはどういう点に原因があったかは別として、そういうことがあってはたいへんなことですから、厚生省としては、手術、施術というようなものについては、反面常に危険を伴うのだ、あるいは失敗することも十分あり得るのだということについて、周知徹底させる義務があるのではないかと思う。いま一つは、広告の面で、何か小判に粉がふくという話がありますけれども、ほんとうにそこへ行けばとにかく美しくなってしまうのだというふうな誇大な広告は、ほんとうに手につかみ切れないくらい私持ってきましたけれども、そんなことは医者のモラルの問題として、同時に、これは世の中を惑わすもはなはだしいものだと思う。そういうものについて、その点に主眼を置いて規制をされるのかどうか、いま一つ、その点についてお答えをいただきたいのであります。
  24. 若松栄一

    若松政府委員 形成外科という話が出ましたけれども、形成外科という分野は、日本ではまだきわめて未熟でございます。英語ではりコンストラクティブサージャリー、つまり再建外科と申しますが、そういうものが戦後急速に発達いたしまして、ことに第二次大戦のあとの戦傷者の顔面、四肢その他がいろいろな傷害を受けて醜形、奇形となったものを、何とかしてできるだけかっこうよく、あるいは機能を回復させようということで、そういう再建外科というものが急速に伸びてまいりました。それがさらに、単にやけどやあるいは部分的な損傷を修復するということだけにとどまらず、さらに形をよくしていこうということからコスメティックサージャリーという分野に入ってまいりまして、現在ではそれを総称して成形外科、つまりプラスチックサージャリーということばを用いるようになっております。日本でもそういう形成外科という講座はまだできておりませんけれども、数カ所の大学では事実上その方面の仕事をやり、また日本でもそういう技術がかなり伸びております。したがって、そういう技術が必要であり、そういう医学が将来相当需要され、発展していくことは確かでございまして、現在その動きが見えておるのでございますが、学問的なそういう専門家は、お話しのように非常に良心的に、こういう場合はこうなんだからという指導をしてくれる。ところが、そういう指導を受けても、どうしてもやりたいのだ、あの先生のところへ行ったら追い返されてしまった、やむを得ず二流、三流のところへ流れていくという心理がございまして、そこをどういうふうに規制していくかということは、なかなか問題でございますが、やはりお話しのように、これは現在の段階における形成外科技術というものでは、こういうものはこの範囲しかできないというようなこと、あるいはこうした場合にこういう障害が将来残ったというふうなことを、啓蒙的に教えていくということが必要であろうと思います。こういうことは形成外科学会、あるいはそういう医療機関の側、あるいは医師自身のモラルに関連して、医師会というようなものと共同してやっていかなければならぬ問題だと思っております。
  25. 中谷鉄也

    中谷委員 人権擁護局長さんにお答えをいただきたいと思います。  先ほどから、いわゆる美容整形という問題について、医務局長さんからいろいろな御答弁をいただいて、私の聞こうとしている点については、大体おわかりいただいたと思うのですけれども、これは単に厚生省の問題だけではないと思うのです。やはり非常に健康な人に対する手術というようなことで、人権侵害ということにはならないにしても、非常なふしあわせな目にあうことがあってはたいへんいけないことだと私思うのです。先ほど医務局長からお話のあった、美容整形手術をしたことによって、かえって醜状を呈して泣き寝入りをしている女の人も、かなりいるということを聞いております。そんなことがあっては私はいけないと思います。こういうような問題について、それぞれ申告あるいは職権等をもって御調査いただくというようなことについて、私お願いいたしたいと思いますが、簡単でけっこうですから、人権擁護局として、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  26. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 お尋ね美容整形手術につきましては、生命や身体を害されるものでありますれば、人権の立場からまことに遺憾であります。先ほどの具体的な事件につきましては、刑事上の、業務上過失の問題として取り上げられておりますので、私どものほうでは、これを具体的には取り上げてはおりませんのですが、一般的に、美容整形を目的とする手術は、治療を目的としたものと違いまして、被術者のほうが自発的に申し入れをしまして、それによってなされると思いますので、その点が少し違ってくると思います。これは美容整形に関する宣伝などに多分に影響されているものだと考えますので、危険が伴うというようなものでありますならば、その危険をどうして予防するかにつきまして、関係医師に対する医療行政上の指導、また私どもとしまして、国民一般に対して生命、身体の安全と尊重ということにつきまして啓発をしていきたい、このように考えます。
  27. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣にひとつ御答弁をいただきたいと思います。  先ほどから、いろいろなことを各政府委員お尋ねをしたわけですけれども、具体的な事件としては、現在東京地方検察庁で、問題の手術でなくなった女の人と、手術された医師事件というのが御捜査の対象になっている。そこで、私は、その手術をされたお医者さんに、業務上過失の疑いがあるかどうかというふうなことについて、全然資料の持ち合わせはございません。ただ一つ、この美容整形という問題は、ずいぶん社会的ないろいろな背景を含んだ問題だと思うのです。この事件捜査にあたりましては、お医者さんに刑責があるのかどうか、過失があるのかどうかという点について、慎重に御捜査になると同時に、この機会に、法務省のお立場としても、美容整形の実態、あるいはその問題点等についても、捜査の中でお調べいただくということが私は人権擁護という立場から必要なことだと思いますので、御捜査にあたりまして、ただ単に医師に過失があるのかどうかという一点——捜査である以上当然その点にしぼられるべきではありますけれども、それを取り巻く社会的な問題についても御捜査いただきたい、こういうように私考えますので、この点についてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  28. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 美容整形術に関する問題でありますが、いまお話しの地検において取り調べ中の案件につきましては、犯罪捜査のたてまえ上、当該の案件自体としてこれを捜査する以外に道はなかろう。そういう類似のものが、はたして全国にどういう姿であらわれておるかというような事柄までは、捜査当局としては無理であろう。むしろこれを逆に、いまお話しのような美容整形を本人が希望して、医師との合意が成立をして手術を受けるということは、何ら人権問題はなかろうと思う。これはお説のとおりでございます。しかるところ、整形手術のじょうずへた、用いる薬の影響その他の関係上、結果において遺憾な結果が出てきておるということが事実であるといたしますならば、これは結果において人権侵害ということが起こり得るわけでございます。したがって、現在取り調べております医師についての資料を、人権擁護局の立場においてこれを一つの資料とし、それ以外のものは捜査当局でなくて、人権擁護立場からひとつこの問題を調べてみたい。はたしてお説のごとく、相当な被害が出ておるものか、日がたつにつれて、思わざる結果になっておるのかということになりますれば、場合によっては法律をつくりましてでも人権擁護の道は考えなければならぬということになるわけでございますから、慎重に美容整形手術をいたしました人々の結果について、どういうものが実態としてつかめるかを調べ上げてみることに努力をしてみたいと思います。
  29. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣にこの点を私は申し上げておきたいと思います。美容整形の場合、その美容整形施術、あるいはその治療、手術を受ける患者医師との間に合意がある、法律的に言えばそのとおりなんですが、私いろいろな女の人に、きのうも聞いて回ったのです。そうしたら、とにかく国会につとめておる女の人は、私はそんなことしませんよ、こう言います。そういうことを頼みにいく人はどうかしているのじゃないですか、こういう話なんです。どうかしているとはどういうことかというと、問題は、行けばすぐきれいになるのだというふうな広告に幻惑されて飛び込んでいってしまう。そうすると先ほど医務局長のほうから御答弁があったように、まじめな外科医であるとか、整形外科医などという方は、やめなさいと言ってとめる。ところが、広告を出しているようなところには、待ち合い室に何十人と人が並んでいる。八千万円の脱税で摘発されたお医者さんもございます。そういうようなところの合意というのは、私はきわめておかしなものだと思うのです。お互いに慎重に検討し合っての合意でも何でもない。ある意味においては商売だと思うのです。そういうふうなことが私は問題だと思うので、これはひとつ大臣に——こういうふうな問題は、私は続発してくると思うのです。いわゆる手術をしてもらって、かえって見るもむざんな顔になったというような問題が、続発してくると思う。少なくとも、特に悪質ないわゆる医療法違反広告、六十九条、七十条違反、特に悪質なものについては、当然厚生省行政指導、あるいは措置というものが前提になると思いますけれども、場合によっては、法務省としてもひとつ伝家の宝刀をお抜きいただく、そういう点からもひとつ規制をしていただきたい。この点が一つ。御調査をいただきたいのは、一体どのような動機、どのような理由で、そういういわゆる合意手術を受けることになったかという、そのあかしを、人権擁護立場からも御調査いただきたい。この点をお願いいたしたいと思います。  大臣のほうから、そういう点について、けっこうだという趣旨のお話があったわけですが、次にに、薬務局長さんおいでいただいているので、この点をぜひともひとつ問題点を指摘しておきたいと思いますけれども、いわゆる同じ週刊誌の中に、今度は医薬品であるとか、化粧品だとか、医療器具だとか、医療用具というようなものの、いわゆる医薬品等の違反広告なんというものがずいぶん出ていると思うのです。こんなものによっても、国民が惑わされて、そしてひどい目にあっているというようなことも、私ずいぶんあると思うのですが、この点についてひとつ簡単に、これについての御方針を御答弁いただきたいと思います。
  30. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 私のほうで所管をいたしております医薬品、化粧品、医療用具、こういうものについての広告取り締まりの問題でございますが、確かに医薬品なり、化粧品にしましても、国民の生命なり、健康に、重大な関係を持っております商品でございますので、広告というような手段によりまして、一般の国民の方、あるいは消費者等の方に疑惑を与えたり、あるいは不安感なり、不快感を与えたりするようなことがあってはならぬわけでございます。したがいまして、そういうような立場から薬事法という法律によりまして、医薬品等の虚偽、誇大の広告の禁止をいたしているわけであります。ただ、こういうような広告というものは、最近におきまして、非常に広告技術というものが進歩いたしておりますので、私のほうでいろいろ日常広告監視をやっておりますが、なかなか私どものほうの陣営も手薄なために、全国的にいろいろなテレビ、新聞、雑誌等の広告媒体で、旧常日につく広告についての監視などが、必ずしも十分に成果をあげていないわけでございますが、一昨年くらいから、非常にこの問題についての世論の高まりが見受けられますので、私どものほうの重大項目の一つとしまして、この広告監視を現在続けているわけでございます。医薬品等につきましては、そういう意味で若干広告違反件数も減ってまいっております。特に新聞等につきましての広告のあり方が、最近一ころと違いまして、若干改善をされておりますが、問題は、御指摘のような雑誌等についての広告というものが、依然として改善を見ていないという点がございますので、今後私どもは、このような雑誌関係等については、広告取り締まりをさらに一段と強化していきたい、かように思っているわけでございます。
  31. 中谷鉄也

    中谷委員 あと、この種の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、あと二人質問者がおられるようですので、一言ずつ、大臣に全然別のことになりますがお尋ねをしておきたいと思います。新薬実験等の問題については、後日に譲りたいと思います。  いわゆる百日裁判の問題について大臣の所信をお伺いいたします。と申しますのは、去る五月の二十二日に、最高裁判所において刑事裁判官会同がございまして、そこで長官のほうから、特に非常に厳格なと申しますか、御訓示があったようでございます。その点については、特に最高検、法務省のほうからも、オブザーバーとして御出席しておられるということを聞いております。したがいまして、特にその会議の中で、検察側に対する要望としては、総括主宰者などはできるだけ他の被告人と分離して起訴するという要望が一つ。いま一つは、訴因も重要なものに限るなど、こういうふうな要望がなされたようでございます。大阪地方検察庁管内においては、すでにそのような趣旨に従いまして迅速かっこの趣旨に従う起訴がなされたということも、新聞等に大きく報ぜられておりますけれども、全体的に、まず百日裁判についての法務省の御見解と、こういう裁判所の、ことに長官の要望に対して、検察庁はどのようにこたえていくかという点などについて大臣のほうからひとつ御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。
  32. 川井英良

    川井政府委員 事務的なことをお答えいたします。  先般最高裁判所で刑事裁判官会同がありまして、それについて私どものほうから刑事課長を出席させまして、この問題について全面的に協力をさせたわけでございます。御承知のとおり昭和三十年の三月だったと思いますが、同様の会同が開かれた際に、この問題につきまして検察官、弁護士等の当事者につきましても、全面的に協力をしてほしいということで、申し合わせがなされまして、裁判所のほうにおきまして、こういうふうな具体的な方向でやっていきたいということで資料が示されまして、法務省といたしましてもこれに全面的に賛成でございまして、法務省の見解を添えて全国検察庁にその趣旨を徹底させまして、裁判所に協力をするということでいままで努力いたしてまいったのでございますけれども、必ずしも成果があがらないということで、本年また同じような会同が開かれまして、また裁判所のほうからも申し合わせに基づいて、私どものほうにこういうふうな点について、検察官の抜本的な立場からの強力な体制でもってひとつ協力してほしいということの申し込みが、ごく最近来ております。目下、その内容を検討中でございますけれども、検討が事務当局で終われば、また大臣のほうにあげまして、その指示を受けて、同様の措置をとって、全国の検察庁に流して、全面的にこれに協力させるという体制を整えたい、かように考えております。
  33. 中谷鉄也

    中谷委員 一点だけお尋ねします。  現在検察庁でいわゆる百日裁判に該当する事案というのは、どの程度お持ちなんでしょうか。この点をお答えいただいて、ひとつ大臣のほうから百日裁判についての所信の御表明をいただきたいと思います。要するに百日裁判の促進、百日裁判の厳守ということを言っておりますけれども、大体どの程度百日裁判に該当する事件があるのか、またどの程度起訴される見込みなのか、起訴されるといいますか、現在どの程度すでに裁判所に御起訴されているかというようなことについては、必ずしも資料は明確ではないと思うのです。この点について局長さんいかがですか。
  34. 川井英良

    川井政府委員 きょう具体的な数字まで用意してまいっておりませんけれども、重要な点でありますので、さっそくまた調べまして、後刻適当な機会にお答えをいたしたいと思います。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 ではひとつ大臣、お願いいたします。
  36. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 百日裁判の件でございますが、これは法律の命ずるところでもある。そこで最高裁の長官が、会同において指示をせられた御意見というものは、心より全面的な協力をしたい、当然のことでございます。ただ、裁判官だけの努力ではこれはなかなかまいりませんので、どうしても訴訟関係当局としての検察官の御協力も大事である。また弁護人の立場における弁護士会の御協力もなければとうていやれない。そこで、裁判所と検察当局と弁護士会というものが、腹から法律の命ずるところに従いまして、重要な選挙違反については、百日以内にこの裁判を完結するという、その精神を十分に徹底いたしまして、これに全面的な協力を惜しまない覚悟でございます。
  37. 中谷鉄也

    中谷委員 最後に、今度はまた別のことになって恐縮ですが、これもごく簡単にお尋ねをいたします。  実は、最近警察官の交通事故というのが、非常に頻発しているわけです。この点について、個々具体的な事案をあげてどうこうということは、私お尋ねするわけじゃないのですけれども、国民の警察官に対する信頼感の非常な喪失というようなものが、こういうことから出てくると思うのです。そこで、次のような点について、私は警察官の交通事故違反についてはひとつ大臣のほうで措置をしていただくことが適当ではないかと思うのです。  一つは、その事故を起こした警察官について、たとえば一般の国民の場合であれば、無免許運転をしておってもかなり逮捕あるいは勾留される場合だってよくあるのです。ところが、とにかくいろんな場合に、人を勾留することがいいかどうかは別といたしまして、警察官の場合については、酔っぱらいで引き逃げというふうな以外は、大体不拘束で取り調べを受けていると思います。もちろん、警察官という身分の尊重であるとかいうふうな点が、いろいろあることがあるのでしょうけれども、このことは、必ずしも私は国民の一般的な支持を受けていないと思うのです。何か軽過ぎるじゃないかというふうな点について、−何も、だから私は、この機会に警察官の事故については逮捕、勾留しろということを言っておるわけじゃないのですけれども、いわゆる国民が警察官の事故について非常な不信感を持っている。同時に、警察官だから、取り調べについても何かどこかで手を抜いてもらっているんだろうというふうな、そういう疑いを少しでも国民が持つということは、これはたいへんなことなんです。そういう点では、逮捕すべきものは当然逮捕するというふうな措置というのは、私は検察庁において、特に具体的な事件についての指示等において、私は御措置いただきたいという点が一点です。  もう一つは、大体警察官の事故について、警察が長いこと警察官を調べているというのは、私はある意味ではおかしいと思うのです。ことに、県警本部等の監察の方が調べているというふうなやり方があるようですけれど、いずれにしてもおかしいと思うのです。それで、もう現行犯の場合については、いわゆる当初ある程度警察が調べても、こういう事件についてはすみやかに検察庁のほうへ送致をして警察官の事故については調べる。国民はとにかく警察官が警察官を調べているというと、いかにも仲間うちの者が調べているような感じを抱きがちです。そういうふうな点で、これはひとつ検察庁のほうで、きわめて事件がふくそういたしておりますけれども、警察官のそういう事件については、警察で相当長いこと事件を持っていて、その後検察庁に送るということではなしに、すみやかにこういう事件については、検察庁に事件を送致をさして、そして調べるということをおやりいただきたいと思うのです。そうでなければ、国民の警察官に対する不信感というものは、非常に大きいと思う。ことに、最近私の経験した例では無免許の警察官が運転をしておりまして、それがばれた。そうすると、交通取り締まりをしたときに、その無免許の警察官の勤務しておった警察署管内の市民たちは、免許証の提示を求めた警察官に、まず警察官から免許証を見せなさい、そうでなければ警察官の無免許が幾らいるかわからないでしょう、それから私のほうの免許証を見せましょう、そういうふうなことになっている。そういう点で、公務員の犯罪については、本件警察官の交通事故は、公務員の犯罪のその類型には入りませんけれども、特に厳正な立場をおとりになっている大臣の、そういうふうな警察官の交通事故についての御措置、あるいは全体としての御所信の表明を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。御答弁をいただきたいと思います。
  38. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 御趣旨に沿いまして善処をしていきたいと思います。これは送致をしてまいりませんと調べができません。送致を早くするかゆっくりするかということは、警察当局のやることでございます。そういうことでございますから、私と警察担当大臣との間にこの重要な事項についてはよく情を尽くして話をして、そして御期待に沿うようにやってまいりたい。  ただ、おことばの中に、警察官であるゆえに逮捕もしない、警察官であるゆえに適当な処理をするのではなかろうかという意味のおことばが聞えたのでありますが、それは国民にそういうふうに見られることのないように、警察官といえども、またどういう地位の人であろうとも、警察の行なうことは厳正公平にこれをやるのだという方針を徹底してまいりたいと思います。
  39. 中谷鉄也

    中谷委員 私の質問を終わります。
  40. 大坪保雄

    大坪委員長 松本善明君。
  41. 松本善明

    ○松本(善)委員 三鷹事件の竹内景助氏が本年の一月十八日の午前八時に獄中で死亡されました。この問題につきまして、すでに四月二十日の衆議院予算委員会で一度問題になっております。再審の申し立てをしながら、無実を訴えている人が獄中で十分な治療を受けることがなくて死亡したということは、単に個人の問題ではなくて、人権擁護という観点から見ましても、拘置所の処遇という点から見ましても、非常に重大な問題だと思います。きょうは遺族の方も傍聴に見えております。法務大臣から厳粛にしかも慎重に答弁をしていただきたいと思います。  竹内さんの死体検案書によりますと、脳腫瘍でなくなられたということでありますが、この腫瘍は鶏卵大のもので、約二、三カ月で発育したものということを竹内さんの行政解剖に立ち会った医師が申しております。それは法務省のほうでは確認をしておられますか。
  42. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 御遺族も見えておるということでございますので、大事な御質問でございますから、正確を期する意味で事務当局からお答え申し上げます。
  43. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 いま松本委員の仰せられたように私も承知いたしておりますが、私も実は医学的な専門知識が皆無でございますので、お許しを得まして私のほうの医療分類課長の樋口博士が来ておりますので、樋口博士から正確なことをお答えさせていただきたいと思います。
  44. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 御指名によりましてお答え申し上げます。  竹内景助君の死体検案書につきましては、監察医務院からの正式の報告を受けております。また、死体の解剖には矯正局医療分類課の由比技官が立ち会っておりますので確認しております。
  45. 松本善明

    ○松本(善)委員 脳腫瘍が鶏卵大のもので、二、三カ月で発育したものだということがほんとうか、こういうことを確認しているかということを聞いているのです。
  46. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 鶏卵大であるということは確認をしておりますが、二、三カ月に発育したかどうかということは確認しておりません。
  47. 松本善明

    ○松本(善)委員 どのくらいで発育をしたものでしたか。
  48. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 その点については、監察医務院から報告を受けておりません。
  49. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうようなことも、これだけ問題になって、私は一週間ぐらい前から、法務省にこの問題について質問をするからということを、前々から言ってある。それを医療課長がそういうような態度で、一体どのくらい前からこれは病気になったのだろう、それを発見することがどうしてできなかったのかということについて、真剣に考えなければならないはずです。そういうような態度で、国会で一時しのぎの答弁をすればという態度で出てきたら、とんでもないことだと思います。これは私のほうの調査では、二、三カ月前から発育したものだということを、専門医者が解剖に立ち会ってやっておるのでありますが、それに基づくと、大体二、三カ月前から発病したということになっていると思うのですけれども、法務大臣が予算委員会答弁されたことによりますと、十二月の三日ごろからからだの異常を、頭痛を訴えていたということを答弁をされております。発病を法務省で知った時期、それから脳腫瘍であるということを知った時期についてお答えいただきたいと思います。
  50. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 先ほど脳腫瘍の発育の時期ということをおっしゃられましたが、それについては私どもは確認をしておりません。発病の時期については、ある程度推定することはできると思いますが、何しろ脳の内部のことでありますので、それを死体になってからその発育状況を確認するということは、医学的には困難なことではないかと思います。ただし、発病につきましては、東京拘置所からの報告によりますと、少なくとも自覚的な訴えとなってあらわれたのは、十二月の三日ごろの頭痛の訴えからと私どもは承知いたしております。
  51. 松本善明

    ○松本(善)委員 脳腫瘍だということがわかったのはいつですか。
  52. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 脳腫瘍ということを私どもが確認いたしましたのは——これは医学的に確認ということは非常にむずかしいことであります。脳腫瘍ではないかという疑いを持ちましたのは、十二月の二十七日ごろからでございます。それについて、脳外科専門である東京大学の佐野教授の診断を受けましたが、そのときも脳腫瘍の疑いということでございました。で、死体の検案書によりまして脳腫瘍であるということを確認いたしたわけでございます。
  53. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、脳腫瘍の疑いを十二月二十七日ごろに持ったということであり、脳外科の佐野教授の診断を受けたのは、倒れてからの一月の十四日過ぎでしょう。どうしてそんなに長く、脳腫瘍の疑いを持っていながら診断を受けさせなかったのですか。
  54. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 私どもは昭和四十一年十二月二十七日に東京医科歯科大学中田教授の診断のときに、脳腫瘍の疑いがあるから、その点については精密に検査をするようにということを、私から電話で中田教授に連絡いたしました。東京拘置所の報告によりますと、その日は精密検査を竹内君が拒否した。とにかく、できるだけ説得して検査をするようにというふうに申しましたら、眼底検査はいたしましたけれども、脳波あるいは脳の血管撮影とか、あるいは最も重要な検査である脳脊髄液の検査は、本人の拒否にあってできなかったということであります。
  55. 松本善明

    ○松本(善)委員 その点もうちょっと聞きますが、医科歯科大学の中田教授ですか、中田教授の診断は、どういう診断だったのですか。簡単でいいです。病名だけでいいです。
  56. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 病名は、拘禁反応という病名でございます。
  57. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう診断だったわけですね。
  58. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 はい。この診断書を私どもが受け取ったのが……
  59. 松本善明

    ○松本(善)委員 あとから聞きますから……。  法務大臣、伺いますが、法務大臣予算委員会答弁されましたのでは、東京医科歯科大学の中田博士の診断の結果、拘禁反応の疑いもあるが、精密検査をしなければならないということを言われたわけですが、拘禁反応であるので、どういう精密検査が必要であって、どういう精密検査を竹内君が拒否をした、どういうふうに報告を受けておられますか。どういう点が調べなくちゃいけない、それをどこが竹内君が拒否をしたのだというふうに報告を受けておられますか。
  60. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 私の受けておりますのは、十二月の三日に頭痛を訴えておった。そこで、だんだんやりました結果、これはどうも原因がむずかしそうだから、ぜひ精密検査を受けるようにということを本人に申し聞かしたが、何と言ってもうんと言わなんだ。そういう結果、それではということで医療刑務所に移したものであるという報告を聞いておるのでありまして、精密検査の方向、中身ということは私はまだ報告を受けておりません。必要なら事務当局から答えをさせます。
  61. 松本善明

    ○松本(善)委員 また、法務大臣は医療刑務所に移したということを言われましたけれども、予算委員会でもそう言われておりますが、そういうことはないのであります。医療刑務所に移したという事実は全くありません。それはだれがどのように報告したのでありますか。
  62. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 訂正をいたします。身柄を病棟舎に移した、医療刑務所でなく、病棟舎に移した。医療刑務所に移したということは、私の何か勘違いであろうかと思います。病棟に移した。
  63. 松本善明

    ○松本(善)委員 法務大臣勘違いと言われますけれども、これはたいへん重大な問題です。法務大臣の答弁の趣旨は、予算委員会におきましても、それからこの委員会におきましても、竹内君が精密検査を拒否をしたのだ、それで検査ができなかった。それでいろいろ説得をして医療刑務所に移したのだ。それでいろいろやったけれども、どうにも治療ができなくて、それでなくなったのだ、こういう趣旨の答弁です。その中では法務大臣は医療刑務所に移したということも非常に大きな問題として考え、そこまでやったのだということで答弁をしておられるわけです。これはあなたが勘違いというようなことで簡単に済まない大きな問題だと思うのです。一人の人の生命が失われた問題です。単なる国会の答弁として済ましていくというような問題では絶対ないと思うのです。この勘違いだという答弁関係をして、これはもう一度徹底的に調べてもらわなければならないと思うのでございます。  さらに伺っておきますけれども、いまも出てきましたけれども、拘禁反応の疑いがあるという診断である。どういう精密検査が必要であったのですか。それを医療分類課長にお聞きしたいと思います。
  64. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 先ほども申し上げましたように、中田教授の診断書は、病名拘禁反応現象として、拘禁反応と診断するための詳しい記載がございますが、御質問があればお読みしてもよろしいと思います。ただ、脳の器質的疾患の有無を診断するためには、さらに脳脊髄液の検査、各種レントゲン検査、眼底検査などを施行する必要があるというふうな診断書になっております。
  65. 松本善明

    ○松本(善)委員 精密検査が必要なのは、脳腫瘍と判断する場合に必要なんでしょう。拘禁反応という場合に、どういう精密検査が要るのかということは、普通の医療常識から言っても考えられない。だから聞いておるわけです。そういう責任をはぐらかすような答弁をしておっては困ります。人の命の問題です。私は法務大臣のいる前で経過についてお話ししたいと思いますけれども、この精密検査を拒否したというようなことは、国会の答弁で初めて出てきているのです。それまで関係者が何度話をしましても、精密検査を拒否しているから竹内さんの診断ができないというようなことを三百も言われていないのです。樋口課長も言っておらないとたんに竹内さんがなくなられて、国会で問題になって、初めて精密検査を拒否しているという問題が出てきているのです。しかも、その経過はむしろ逆であります。国民救援会や医師の人たちが、脳腫瘍の疑いがあるんだということを前からたびたび指摘している。それを無視して、樋口課長にしてもそうですか、拘置所側、矯正局は、拘禁反応だということで一貫しておったのです。倒れるまで一貫しておったのです。倒れてから初めて脳腫瘍の疑いということを言い出したのです。その経過をお話ししますと、十二月二十三日には、国民救援会の飯沼勝男東京本部事務局長が、東京拘置所の有田総務部長に、脳腫瘍の疑いがあるということを言っておりますし、二十六日には、住田医学博士を含む代表団が、矯正局の鈴木総務課長、須田保安課長、由比医療分類課員に面会をして、脳腫瘍の疑いがあることを話しております。これはたびたび指摘されておるのです。  ところが一方では、今度は拘置所側はどう言っておるか。十二月二十七日には、いま申しました飯沼さんに、拘置所の有田総務部長が電話で拘禁反応だということを答えておる。それから一月四日には、三鷹事件対策協議会の事務局次長森山四郎氏が、当時の岡本東京拘置所長と面会をしたときにも、所長は拘禁反応の疑いだと言われておるのです。一月九日に、布施健矯正局長と矯正局の樋口課長の二人が、国民救援会の事務局長斉藤喜作ほか四名の代表団と面会をしたときにも、樋口課長は、二十七日に、中田教授が診断をしたが、拘禁反応ということだったということで、あなた方の話は、拘禁反応の症状どおりで、そうなるものだ、こううそぶいておったのです。倒れるまで拘禁反応だということで立場を一貫しておった。これを認められるかどうか、これを答えてもらいたいと思います。
  66. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 私は、先ほども申し上げましたように、十二月二十七日に、東京拘置所で診断を行なった中田教授に、あなたは拘禁反応とおっしゃるけれども、脳腫瘍の疑いで十分調べてくれというふうに申し上げたのであります。私は脳腫瘍の疑いがあるということはある程度予想をして、とにかく見落としのないようにということを、たびたび東京拘置所の職員には伝えております。ただ、一月の五日に受け取りました中田教授の診断には、拘禁反応としてありましたので、救援会の方々の御質問に対して、私はそのときには、中田教授という名前はあげなかったが、救援会の方々は中田教授という名前を御存じだった。そこで、中田教授の診断によると拘禁反応である、拘禁反応ということであれば、皆さんの御心配のようなことはないだろうというふうに申し上げております。
  67. 松本善明

    ○松本(善)委員 法務大臣、あなたの部下がどういう無責任なことをやっておるか、よくお聞きいただきたいと思います。  あなたは、そういうことを言われるけれども、竹内さんが倒れられて、一月十四日になって、岡本東京拘置所長は、国民救援会の難波英夫副会長、稲垣元博さんを含む代表団に対して、結果的に万全を期していなかったことをおわびする、早く手を打たなかった責任については、判断が甘かったということを皆さんの前におわびすると言っておる。いままで救援会のほうでは、医師団も含めて、脳腫瘍ではないかということで一貫しておったが、あなたのほうは一言もそういうことを認めないで、拘禁反応だということで一貫しておった。倒れられて初めて頭を下げたわけです。あなたはいまごろになって、私は脳腫瘍の心配を持っていましたと言われるが、なぜ処置をしなかったのですか。そういうばかげたことが通りますか。法務大臣、そういう経過があったわけであります。医師団のほうは、救援会を含めて脳腫瘍ということを十二月の初めからずっと言っておったのです。それが倒れられるまで拘置所は認めないという経過だったのです。このいまの経過をお聞きになって、法務大臣はどうお考えになりますか、また、あなたの聞いておられる報告と一致するかどうか、そういうことでそのまま見過ごしていいと思われるかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  68. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 たいへん重要な御質問でありますが、何ぶん拘置所内のできごとで、大臣といたしましても、部下より報告を受けて国会の答弁に当たるよりほかに道がないわけであります。ただ、すでに竹内さんがなくなられておる。この霊に対してはまことに御同情にたえない。御遺族の方々に対しましても御同情にたえない。あるいは拘禁反応だと考えておった脳腫瘍の疑いを、いま少し早く発見することができておれば、またそれに応ずる道もあったではなかろうかと考えますが、私のところに部下から報告のきておりますところによれば、やりました事柄に非常に大きな手落ちがあったと私も判断するところはございません。こういう結果になったことは、病気病気である、この程度でやむを得なかったのではなかろうか、こういうふうに私は判断しております。
  69. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう少し私が聞いておきますから、よくその経過を聞いておってください。最後に法務大臣に聞きますからね。  医師を含めて関係者から脳腫瘍ということを指摘されていながら、これを脳外科あるいは内科の医師に見せないで、精神病の中田教授に見せたということは、初めから脳腫瘍という訴えに全く耳をかしていなかったのではないかと考えられるわけですが、医療分類課長はどう考えられますか。
  70. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 中田教授は精神鑑定では、日本の中で十指を屈する人の中に入りますが、精神神経学会の会員でもあり、評議員でもありますので、たとえ精神科でも、脳腫瘍のある程度の診断はできるはずでございます。
  71. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなたは、ここまで来て責任のがれをやっておるけれども、実際に脳腫瘍だったのですよ。中田教授の判断は、拘禁反応の疑いだった。あなたはそれを何の責任も感じようとしないで、そうして国会へ来て、あれは権威のある人に頼んだからそれでいいんだ。それで一体監獄にいる人の命を守ることができますか。そういう無責任な態度でいいのですか。人間の命の問題だ。  もう一つ聞きましょう。住田医学博士を含む代表団が、十二月二十六日に矯正局の総務、保安両課長と面会をいたしましたときに、矯正局の由比医療課員は、きょう拘置所から電話があったから、竹内は最近どうかとたまたま聞いたところ、別に変わったことはない、健康状態はよいという返事だったというふうに答えている。これは頭が痛いということを訴え始めからもうすでに二十三日たっている、そういう時期でございます。そうして、脳腫瘍だということを盛んに関係者が訴えていた時期であります。そのときに、こういうことを矯正局では言っておるのです。そこで、とんでもない、これはもう一度よく聞いてみなさいと言われて、初めて東京拘置所に電話をして、そうして後藤医務官から、竹内氏の状況がおかしいということを矯正局では初めて知った。こういうふうに、脳腫瘍の疑いで人が死ぬかもしれないという問題が、二十三日もほったらかしにされている。これは脳腫瘍だという訴えに全然耳をかしてなかったという証拠じゃないか。医療分類課長、どう思いますか。あなたの考えで。簡単に答えてください、聞いていることに。
  72. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 二十六日に東京拘置所に問い合わせた結果、さっそく法務省では由比技官を東京拘置所へ派遣をいたしております。こういうことは、どちらかというと異例のことでございます。
  73. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の聞いているのは、なぜ、脳腫瘍だという疑いが関係者から訴えられているのに、本省にはそんなに報告がおくれるのかということを聞いているのです。それは軽視をしていたということの最大の証拠じゃないか。あなたは真正面に答弁することができないから、問題をそらして答弁をしておる。国会の何分かの間を通過をすればそれでいいというようなものでは決してないのですよ。そういう態度だと、よほど反省しなければならないですよ。  さらに聞きますが、眼底検査の結果、うっ血乳頭が十二月二十八日に発見をされたということでありますが、なぜすぐに脳外科に見せなかったのか、このことを聞きたいと思うのです。
  74. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 東京拘置所には後藤技官がおりますし、やはり精密検査をやってみろということでございまして、直ちに脳外科専門——先ほども申し上げましたように、とにかくできるだけデータをとるようにいたしたわけでございますが、何ぶんにも外部の医者を招聘するということは、現在でもいたしておりますけれども、早急に間に合わないような場合もございます。そういうようなことで、まず、内部でできるだけ本人を説得をする、それができなければ八王子医療刑務所の専門医師によって、そこで調べよう、そういうような考えであったのであります。
  75. 松本善明

    ○松本(善)委員 何を言っておるのですか。私が聞いておるのはうっ血乳頭という脳腫瘍の疑いがはっきり出たときに、だれが考えたって、すぐその専門医に見せるのは、あたりまえですよ。それをあなたは自分の責任と感じないで、ここのところで何とかごまかして逃げようとしておる。いまの拘置所の体制では脳外科を呼んでくることはできませんか。じょうだん言っちゃいけないですよ。この脳腫瘍が、うっ血乳頭というのが発見された場合には、これは拘禁反応ではないということは、あなた方のお医者さん、みんな認めています。拘置所の多田隈医務部長、それから佐瀬第一医療課長、第二医療課長も、みんなこのうっ血乳頭というのが発見できた場合には、これは拘禁反応というものじゃないのだ、これはお医者さんだれが見たってわかっておるのですよ。あなたは、ここにしろうとばかりいると思って、ごまかせると思ったら大間違いです。そのほか頭痛だとか、吐きけだとか、目まいだとか、記憶障害だとか、典型的な脳腫瘍の症状が竹内さんに出ておる。あなたはこれを認めますか。
  76. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 頭痛、吐きけの症状だけでは、必ずしも典型的な脳腫瘍の症状であるとは申せないのじゃないかと思います。確かに脳腫瘍は、十二月三日にはすでに発生していたのではないかと考えられます。しかしながら、脳腫瘍のほかに、拘禁反応を起こすような条件もありましたし、そのほか、記載されております症状には、拘禁反応の症状もございます。したがって、脳腫瘍の症状と拘禁反応の症状を共有していたのじゃないかと思います。
  77. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと話を別にして聞きましょう。本人が拒否をしたというけれども、いつ脳腫瘍のことを竹内さんに話したのか。それからまた脳腫瘍で、いまこれは精密検査をしないといけないのだということを話をしたのか、それを一体理解したのか、このことを聞きたいと思います。
  78. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 実際の矯正施設におきます診療行為というのは、その施設に一任されております。したがって、どういう治療をしろとか、どういう措置をとれということを、本省から本来指示すべきかどうか、これは問題があろうかとも思います。ただ考えてみますと、一般的にいって、本人がきわめて危険な、あるいは生命にも及ぶような、たとえばガンのような病気のときに、医者が、あなたはガンであるから精密検査を受けろというようなことは、常識的には、言っていないのじゃないかと思います。むしろそういうことを言って、本人を不安におとしいれるということは、医者としてはすべからざることじゃないかと思います。
  79. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、本人には言わなかったというわけですね。そういうことを話さなかったということですね。
  80. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 本人に、脳腫瘍の疑いがあるかどうか、本人に伝えたかどうかということについては、私として報告を受け取っておりません。
  81. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなた、国会に来ているのですよ、こういうことについて答弁するつもりで。  それでは、なぜ関係者にこのことを言わなかったのか。精密検査を拒否しているということを言わなかったのか、それを聞きたいと思います。
  82. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 東京拘置所からの報告によりますと、救援会の方々には本人が精密検査を拒否しているから、なるべく受けるように説得してくれというふうに申し上げたというような報告を受け取っております。
  83. 松本善明

    ○松本(善)委員 それはだれからですか。それはきわめて重大な発言だから、だれが、いつ、だれに言っているかということを、はっきり聞いておきましよう。
  84. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 資料を確かめますので、しばらく時間をいただきたいと思います。
  85. 松本善明

    ○松本(善)委員 別の質問をしましょう、  私が、松沢病院の江添さんという院長に調べてもらったところによりますと、精神病者の場合には、本人が治療してくれと言うようなことは少ない、ほとんど医者が必要を認めて処置するということであります。本人の信頼するお医者さんと一緒に話をする、あるいは麻酔をやるとかいうことで処置をする方法はなかったのか、このことを聞きたいと思うのです。
  86. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 一般の病人の場合と、身柄を拘禁されている者の場合とでは、おのずから医療にも限界がございまして、患者のほうが拒否する場合に、これをあえて強力にするということには、かえって後ほど問題を起こすことがございます。  それからこれはあとで、竹内景助さんが倒れられてからでございますが、私が東京大学の台教授に、そういう御本人の拒否を押して、強制的に脳脊髄液の検査をした場合に、どうであったろうかということをお聞きした。そうすると、あの病気の場合には、むしろ、そういうことをしたら、かえって死を早めるようなことになったかもしれないということでありまして、これは結果論でありますけれども、病気の性質からいってこれを強制的にするということは、脳脊髄液検査にしても、あるいは脳血管の撮影にしても、非常に困難なことでございます。
  87. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなたは、聞いているのがしろうとだと思って言っているのかもしれぬが、脳の血管撮影だとか、あるいは脊髄液をとるというようなことは、いよいよ最後のときだということのようですよ。  脳波の検査について私お聞きしますが、脳波の検査の機械は、東京拘置所になくて、八王子の医療刑務所にあるわけでしょう。そこへ移してくれということを、何べんも何べんも関係者が要求したのに、なぜやらなかったのですか。あなたは、検査を拒否したとかなんとか言っているけれども、関係者は、八王子で脳波を調べることができるから、八王子に移せということを要求している。なぜやらなかったか、早い時期になぜやらなかったか、それを答えてもらいたい。
  88. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 八王子に移送してくれというような要請を受けましたのは、竹内さんが意識昏酔におちいる三日前あたりではなかったかと思います。その翌日に、私は東京拘置所の所長と、八王子に移送することについて協議をいたしました。その次の日に、不幸にして昏酔状態が起こったわけでございます。
  89. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなたは、精密検査を拒否している、拒否していると言っているでしょう。これは十二月二十七日の段階からでしょう。脳波の検査をするとかなんとかいうことなら、当然に八王子に移すということがあなたのほうから問題にならなければならぬはずですよ。いいかげんなことをここで答弁してもらいたくないのです。  もう一つ聞きますが、竹内さんの死体解剖をした根拠は何ですか。
  90. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 竹内景助氏の死因については、私どもは一応普通の場合ですと病死ということになるのでありますけれども、すでに十二月の下句ごろから、救援会の方々がこの問題についてタッチされていますし、また竹内景助さんが倒れられてからも、救援会の方々がその病床に立ち会っておられますので、そこでいささかでも東京拘置所の処置について不審の念を抱かれては困る、そういうことから、すべて公のルートを通してその死因を明らかにしたいという考えでございました。
  91. 松本善明

    ○松本(善)委員 私が聞いておるのでは一あなたはなかなか率直に言わないので言いますが、死体解剖保存法第八条で、死因が不明のときに当たるということで解剖したということであります。しかも、死ぬ前、十四日ごろから、医務院に電話で死体の検案を頼んでいる。なくなったのは十八日ですので、倒れられたときから死体の検案のほうは一生懸命頼んでいる、そういうばかなことがあるか。しかも、死因が不明だということです。あなたは、死因が不明で一体脳腫瘍の治療ができるのですか。死因が不明だということで解剖したのかどうか。また、その医務員に、電話で検案を頼んでいる事実があるかどうか。古村医務院長は、新聞に脳腫瘍ということが出ているので、検案の必要はないのだといって断わっている。どうしても検案してくれというので、それでは検案をすることになったということです。あなた、こういう事実を認めますか。
  92. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 私どもは、竹内景助さんの死因については、脳腫瘍の疑いという診断で一致しております。これは東京大学の佐野教授の診断も受けて、それで大体私どもは脳腫瘍の疑いの診断ということでございます。しかしながら、この早い時期に監察医務院に連絡することは、おそらく東京拘置所側でなさったことだろうと思います。ただ、倒れられた十四日に、佐野教授が診断されたときには、この診断は午後の二時半ごろだったかと記憶いたしておりますが、おそらく今晩は持たないのじゃないかということでございました。そのことを東京拘置所の職員が聞いていて、おそらく手配したのではないかと思います。
  93. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなたの答弁を、遺族が聞いておるのですよ。よく胸に手を当てて考えてごらんなさい。  最後に聞きますが、竹内さんのカルテを出してもらいたいと思うのですけれども、法務省のほうでは、出せないということの返事がありましたけれども、これはどういうわけでしょうか。
  94. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 松本委員も御承知のように、刑法の秘密漏泄罪あるいは刑事訴訟法の証言拒否の規定等におきまして、医師あるいは弁護士というような職業というものは、当該相手側との間の信頼関係に立ちまして、あるいはだれにも言えないことでも、医師やあるいは弁護士には話すという信頼関係に立つような業務の性質でございます。したがいまして、本件の場合、東京拘置所の医師は、医師であるという立場において見ました場合、その診断したカルテを本人以外に公表するということは、個人の秘密、これは竹内氏のみという問題ではなしに、一般的に外部に出すべきものではないという考え方を持っておるものでございます。
  95. 松本善明

    ○松本(善)委員 遺族が要求したら出しますか。
  96. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 これも具体的にはいろいろな場合もあろうかと思いますが、一般的なこの種の扱いといたしましては、私どもとしてはお断わりいたしたいと存じます。
  97. 松本善明

    ○松本(善)委員 法務大臣、お聞きしますけれども、遺族も竹内さんが死んだときのカルテを見ることができない。法務省だけがそれを隠しておる。それを人権擁護の、個人の秘密の擁護という名でやっているのです。これは世の中には通用しないと思います。遺族が、うちのお父ちゃんどうやって死んだのかということを知りたいと思っているのですよ。それを見せないで、それでよろしいですか。法務大臣に伺いたい。
  98. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 従来の取り扱いが私にわからぬので、いま矯正局長からかわってお答えいたします。
  99. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 いま言った人権擁護立場もございます。さらに、刑務所における医療行政の運営という問題にも関連いたしまして、一度特例を開いた場合に、それが先例になるということになった場合に、医療行政全般の運営にどのような影響が出るかという立場からも、私のほうは拒否したいと考えておるわけでございます。ただし、いま松本委員の言われましたように、死因等についてのカルテの内容について知りたいということでありますならば、カルテそのものを出すことは、私のほうはお断わりいたしたいと思いますが、必要に応じまして御説明することは私はやぶさかでないつもりでございます。
  100. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまずっと竹内さんの死亡された経過について、私のほうの調査した範囲のことを申し上げながら質問したわけですけれども、法務大臣が言われたのとはかなり違います。いまのここでの質問の結果を聞かれまして、法務大臣は、この事態について厳重に調査をしてもらいたい。一体これは手落ちがなかったのかどうか、これは単に個人の問題ではなくて、監獄にいる人の医療の問題であります。また人権擁護の問題です。人権擁護局も法務省の管内にある。その中で、人権が侵害されているという問題でもありますので、そういう問題として、厳重に調査してもらいたいと思いますが、法務大臣、どう考えられますか。
  101. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 いま、松本君が発言された内容を、ずっと承っておって考えることは、調査をしてみましょう、そういう事実があるかどうか調査をしないと、いたずらに何か刑務所のほうで手落ちがあった、拘置所のほうで手落ちがあった、その手落ちがなければ死なないでよかったのではないか、こういうふうにあなたの発言によって御遺族にお考えをいただくということも残念なことである。仰せになったようなことは、ひとつ速記録もよく拝見して、よく調べました上で、そういう事実があったかどうかについて、私どもなりに調査してみたいと思います。
  102. 松本善明

    ○松本(善)委員 それを虚心たんかいにやっていただきたいと思います。  それから、人権擁護局長はどう考えられますか。刑務所の中で、私が言いましたようなことがあった場合に、人権擁護局長としてはどう考えられますか。
  103. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 刑務所の中で、受刑者に対する、あるいは在監者に対する処遇に欠けるところがありますれば、人権上問題があるということで、私どもは特別公務員による人権侵害として扱ってまいります。ですから、そういう取り扱いに欠けるところがあるという前提がありますれば、人権の問題として取り扱いますが、ただいまこの事件調査につきましては、大臣からお答えをされたとおりであります。
  104. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  105. 大坪保雄

    大坪委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十六分散会