運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-04-18 第55回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月十八日(火曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君    理事 濱野 清吾君 理事 岡沢 完治君       馬場 元治君    橋口  隆君       山下 元利君    加藤 勘十君       下平 正一君    三宅 正一君       山口シヅエ君    横山 利秋君       沖本 泰幸君    松本 善明君       松野 幸泰君  委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 四月六日  委員荒木萬壽夫君辞任につき、その補欠として  山下元利君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四四号)      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 まず最初に、一般的なことをちょっとお伺いしたいのでありますが、裁判官増員について、昭和三十九年八月に出ました臨時司法制度調査会意見書を見ますと、ちょっと読んでみますと、「一般に裁判官の絶対数の不足が訴訟遅延の主要な原因とされ、裁判官増員は、これを解決するための最も直接的な手段である。しかし、裁判官増員については、わが国の法曹人口が少ないところから、その給源には限界があるのみならず、裁判官の質をできる限り高いものとすることを理想とする以上は、無条件に増員を推進しようとすることには問題がある。したがって、訴訟遅延原因となっているといわれる裁判官負担過重の解消のためには、直ちに裁判官増員という方策にたよることなく、まず他の適切な施策を講じた上、必要な裁判官増員を考慮するのが望ましいと考えられる。この点に関し、当調査会は、裁判官補助機構の拡充、裁判所配置適正化裁判手続合理化特殊事件集約的処理地方裁判所簡易裁判所との間の裁判権分配の再検討裁判所事務処理態勢合理化等の措置を検討し、それぞれについて積極的な提案を行なった。」云々、こういうのがございます。  それで、この答申昭和三十九年に出たのでありますが、その後続いて、ことしもそうでありますけれども、少数ずつの裁判官及び裁判官以外の職員増員を行なってきております。またこの中に指摘されております地方裁判所調査官というようなものも前年から新設されており、ことしも若干増員になっておる。これをにらみ合わしてみますと、やはりその間には裁判所側として基本的なものの考え方、また将来の計画というようなものがなければならぬと思うのでありますが、それについてまずひとつお伺いしたい。
  4. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま大竹委員から御指摘のございました臨時司法制度調査会意見書でございますが、これはただいま大竹委員からもお話しのございましたように、昭和三十九年の八月に、内閣に設けられましたこの調査会から、内閣にあてて答申が出たわけでございます。  御承知のとおり、この調査会の構成は、私ども裁判官、検察官あるいは弁護士さんの、いわゆる法曹ばかりではなしに、学識経験者、さらには衆参両院法務委員方々も多数御参加になりまして、しかも大部分の条項については、満場一致の御議決をされたわけでございます。そして内閣答申がございまして、最高裁判所に対しましても、この趣旨を尊重して施策をするようにという御意見が出たわけでございます。当時私どもといたしましては、かような権威のある調査会意見でございますので、これを最大限に尊重いたしまして、この線に沿って施策をやってまいるという考え方から予算案も準備し、また法案についても法務省といろいろお話を進めたわけでございます。  ただ、これまた御承知のとおり、意見書の出ました直後におきましては、弁護士会においても、この方向について、むろん個々的にはいろいろ御反対がございましても、大筋において御協力をいただいたわけでございますが、そのうちに、次第に弁護士さん全体の声として、総会等の御決議によりまして、個々の問題としてでなしに、むしろ全体として、この意見に必ずしも同調しがたいというような御意向が強くなってまいったように伺っておるわけでございます。私どもといたしましては、その中にはある程度誤解に基づくものではないかというふうに考えられる問題もございますし、また中にはそういうふうなお話の出ますのも、ごもっともな面もあるというふうに存ずるような事項もあるわけでございまして、その間いろいろ問題があるわけでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、かような重要な事項は、これは最終的にはこの国会の御議決によっておきめいただくことではございますけれども、その法案を準備しますにつきましても、当然法曹三者ができる限り足並みをそろえて、多少の異論はあるにいたしましても、大筋において意見の一致を見た事項に基づいて進めてまいるということが、事柄を円滑に進める道であり、また司法が円滑に運営されるゆえんであることを考えるわけでございます。  さような意味において、一応法務省ともお話し合いをし、また日弁連とも数次にわたりお話し合いを進めてまいっておるわけでございますが、いまだ全面的な、この意見書の点についてのどういうふうにやってまいるかということについて、一致した結論が得られるところまでは至っていないわけでございます。  そこで、本来この意見書事項は、全体的に体系的にでき上がっておるものではございますけれども、しかし、必ずしも全部一緒でなければできないというものでもございませんので、先ほど御指摘のございました補助機構の面で、地方裁判所調査官の問題、それからさらには裁判官の給与の問題あるいは退職金の問題、またいわゆる宅調廃止と申しておりますが、研究庁費というものを予算で計上していただきまして、裁判官執務環境整備改善というような問題、かような問題につきましては、各方面におおむね異議を見ないところでございますので、さような事項を逐次予算に計上し、また法案について法務委員会の御審議をいただき、御決定いただいたような次第でございます。直接いま問題になっております裁判官増員等関係でございますが、その点につきましては、この調査会意見書では、先ほど大竹委員がお読みいただきました、たとえば裁判所配置適正化であるとか、あるいは地方裁判所簡易裁判所との間の裁判権分配の再検討であるとか、かような事項がきわめて密接に関連する事項でございます。しかしながら、裁判所配置適正化というものは、いわゆる整理統合の問題でございまして、これは非常に影響の大きな問題でございます。また、裁判権分配の問題は、きわめて単純な面としては、たとえば物価によるスライドというようなことになるわけでございますが、これをさらに進めまして、地方裁判所簡易裁判所権限の調整ということになりますれば、またいろいろ議論のあるところでございます。さような意味におきまして、かような問題については私どもとしては引き続き検討いたしておりますし、日弁連ともいろいろお話し合いをしておる、かような状況でございます。ただ、いずれにいたしましても、調査会当時、裁判官等について相当大幅な増員が必要であるというふうに指摘されました。その大幅か中幅か小幅かということは別といたしまして、とにもかくにも裁判官増員が必要であるということは、これは調査会でもお認めになったところでございますので、昨年度裁判官二十七人について増員していただきました。さらに今年もまた、ただいま御審議いただいておりますような人数について予算に計上していただいておる、かような経過になっておるわけでございます。
  5. 大竹太郎

    大竹委員 それではいまのことで具体的に一、二お聞きしたいのでありますが、裁判所配置適正化の問題でございますが、たしかこの前に問題になりましたのは高等裁判所支部廃止ということが問題になりました。それからまた簡易裁判所では、戦後のどさくさで、置くことになっていたけれども結局未開庁になったものについては、法律改正するというような議論も出ておったのでありますが、これらについては、今後も期間内になるべく処理されるものが具体的にありますか。
  6. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま大竹委員の御指摘ございましたうち、まず高等裁判所支部関係は私どものほうの所管でございますし、簡易裁判所の問題は、法務省とのいわば共管のような問題でございますが、便宜私からまず説明さしていただきたいと思います。  高等裁判所支部につきましては、先ほどの臨司の意見書にも指摘されておるわけでございます。そのときに出ましたいろいろの議論の中の一番有力と申しますか考え方中心は、最近、高等裁判所支部についてもかなり交通の便利になったところがあるので、必ずしも支部を存置する必要がないのではないか。特に高等裁判所支部の中の非常に小さなものにつきましては、実際上定員を三人くらいしか配置できないわけでございます。そうなりますと自然民事事件刑事事件双方を担当されるということになるわけでございます。しかしながら、これは私ども裁判官としての経験から申しましても、簡易裁判所とかまた地方裁判所程度ならばともかくも、高等裁判所において民、刑双方を担当するということは、裁判官としても非常に負担が重く、また自信の持てない面があるわけでございますし、また国民なり当事者の側からも、専門的な裁判官裁判を受けるという面で、いわゆる権利の保護という面からも、必ずしも近くにあるということが便利であるというばかりではないのではないかというような議論であったわけでございます。そういう関係で、いろいろ実態調査もし、またこれを廃止した場合の影響等検討いたしたのでございますが、これを廃止しますということも非常に大きな問題でございますし、私どものほうには、規則については規則諮問委員会というものもございますので、さような委員会にはかりまして慎重な手続で進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。しかしながら、その諮問委員会に付するにつきましても、まずもって日弁連と十分にお話し合いをした上でというふうに考えておりまして、現在までのところ、まだ日弁連のほうでは、やはりかなり問題ではないかというような御意向が強いようでございますので、もう少しいろいろお話し合いをし、また現地の御納得が得られるような手順と申しますか、時期を見ました上でというふうに考えておる次第でございます。  それから、次の簡易裁判所の問題は、これはやや高裁支部の問題とは面の違う問題かと存じまして、いま大竹委員からもお話しございました現在五百七十庁ということになっておりますのが、多少多きに過ぎるのではないかというような意味合いのことでございます。もっとも簡易裁判所と申しますのは、御承知のとおりたとえば調停事件等も扱い、また令状関係等事務も扱っておるわけでございますので、一がいに多過ぎるということが言えるかどうかということについてはやはり問題があろうかと思います。現地の具体的な事情に即しまして、その適正な配置考えなければならないということで、過去二、三年にわたりまして法務省と協力いたしまして実態調査を進めてまいったわけでございます。いわゆる事務的にはほぼ最終の結論が出るに近づいておるわけでございますが、ただ、これは単なる事務的な問題ではございませんし、現地方々との関係もございます。そういうところで、いまいろいろその進め方について法務省ともお打ち合わせをしておる状況でございまして、いま御指摘のございましたこの国会中にそういうものを提案いたしますような運びになりますかどうか、現在のところはまだ未定と申し上げざるを得ないような状況でございます。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 次に、地方裁判所簡易裁判所との間の裁判権分配の問題でございますが、これも一時かなり具体的に論議されたことがあると思うのでありますが、これもこの会期中に具体的に提案になるということはどうですか。
  8. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは法案関係でございますが、便宜裁判所考えを説明させていただきたいと思います。  この問題につきましては、私どもも当初いろいろな簡易裁判所権限拡張の幅を考えたわけでございますが、その後いろいろ日弁連の御意見等も伺いまして、それについてはまた考え方を修正した面もあるわけでございます。ただ、いずれにいたしましても、この点につきましては、おそらくこの国会中に結論を得て提案する運びには至らないであろう、むずかしいであろうと考えております。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 次に、先ほど御答弁の中にあった宅調廃止の問題でありますが、これはたしか前通常国会のときから予算がついてある程度実施され、今後も継続されていく問題でありますが、これが裁判の実務の面でどういうような効果を、現在、いままで実施した上からあげてきているかというようなことを御説明願いたいと思います。
  10. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いま大竹委員お話のございましたいわゆる宅調廃止の問題でございますが、これは従来から私どもも、宅調廃止と申しますと非常にわかりやすうございますので、そういう表現で申しておりますが、正確に申し上げますと、いわゆる研究庁費という予算の問題でございます。宅調というものをやっておりますのは、大都会だけでございますので、地方のほうでは、いわゆる宅調というものはいたしておりませんから、そういう意味では宅調廃止ということではないわけでございますが、これを一律に宅調廃止と申しております。つまり研究庁費という形で予算を入れていただきまして、主として図書、それからそれに付随する書架であるとかあるいは戸だな、机というようなものを購入していただくということでございます。昭和四十年度以降毎年一億八千万ずつ計上していただいておるわけでございます。これは大体第一次的には、五ヵ年計画で五年後には、高裁及び地裁本庁と、重要な甲号支部等につきましては、全部この予算が行き渡るという手はずになっておるわけでございます。昭和四十年度におきましては高裁二庁、地裁十四庁、家裁三庁、甲号支部十二庁、合計三十一支部について実施いたしました。それから昭和四十一年度におきましては高裁一庁、高裁支部三庁、地裁十四庁、家裁六庁、甲号支部三十三庁、合計五十七庁について実施いたしました。さらに昭和四十二年度予算にもこれを計上していただいておりまして、おおむね四十庁ばかりについて実施する予定でございます。  なお、二年ばかりしまして四十四年ごろになりますれば、少なくとも地裁本庁以上については完全に行き渡るはずでございます。これは結局裁判官の個室というものを準備する、それに図書を十分に備えつける、そういうことによりまして、従来自宅で、あるいは官舎で、すなわちうちへ帰りまして執務をしておりましたのを、できる限り裁判所でも十分仕事ができるような体制にし、また裁判官はみずから図書を購入しなくても、役所の図書で利用できる、そして裁判に不自由をしない、かようなねらいでございまして、この予算の入りました庁におきましては、相当な成果があがって  いるというふうに承知いたしておるわけでございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 次に、こまかい問題を二、三お尋ねしたいのでありますが、資料によりますと、下級裁判所裁判官欠員は、本年の二月一日に九十名となっておるわけでありまして、これに今度の七名増員するということになっておるのですが、まずいつも問題になっておりますその給源について御説明願いたいと思います。
  12. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 裁判官増員の場合に、いつも給源が問題になります。ただいま大竹委員からお話のございましたように、この点について法務委員会にいつも御配慮を願っておるわけでございますが、本年の場合におきましても、この給源につきましては、実は必ずしも非常にいい状態ではなかったわけでございます。実は昭和四十一年度におきましては、かなり給源について有利な見通しでございまして、そのことがまた昨年裁判官二十七人という、私どもとしてはやや満足すべき増員が得られた一つ原因でもあったわけでございます。しかしながら、今年度の場合には、いろいろ努力はいたしましたけれども、結局その給源について、必ずしも十分な数字になってまいっていないわけでございます。そうして、この七名程度にとどまらざるを得なかったということは、一つ給源に足を引っぱられたというような面があるわけでございます。しかしながら、現在の——先ほど御指摘になりましたこのお手元資料の二表にございます判事五十三名、判事補二十九名、簡裁判事八名の欠員と、それから今度増員していただきます。人の欠員、それにつきましては十分な給源があるわけでございます。  まず、判事につきましては、これは実はもうすでに埋まっておるわけでございますが、お手元資料が三月一日現在という一番欠員の多い時期の資料でございまして、その後御承知のとおり、四月には判事補等から判事に任官いたす者が約七十名ございまして、これは全部埋まったわけでございます。それから、一方判事補につきましては、判事になりましたためにまたそこで欠員がふえますから、これまた本年度修習生から七十名あまり裁判官を志望いたしましたので、これでほぼ埋まったわけでございます。あと若干簡裁判事欠員がございますが、これは今後いわゆる定年退官判事でございますとか、あるいは特別選考判事で埋めてまいるという予定でございます。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 いつも問題になるのですが、いまの特別任用ですかの簡易裁判所裁判官ですが、これはことしはどういうお見込みですか。
  14. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 特別任用簡裁判事につきましては、これは大体春ごろに試験をする予定になっておりますので、まだどのくらいの数ということは確定的には申し上げられませんが、やはり四、五十名程度採用できる欠員になる予定でございます。  ただ一言、いわゆる特任簡裁判事について弁明さしていただきたいわけでございますが、これは終戦直後に簡裁機構が非常に広がりまして、一気に多数の特任簡裁判事を任命いたしましたために、その素質についていろいろな御批判を伺いましたし、また私ども自身としても、その点を十分に自覚いたしておるわけでございます。しかしながら、その後少なくともここ数年におきましては、その選考試験相当むずかしいものになってまいりました。ほんの一例を申しますれば、特任選考に失敗した人が司法試験に合格したというような例が実際にあったわけでございます。これはきわめて異例なことで、これをもってすべてを推しはかるわけにはまいりませんけれども、そういう例もあったくらいでございまするし、なお研修につきましても相当に力を入れておりまして、最近のいわゆる特任簡裁判事については相当素質、能力が上がってまいっておるというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、この点についてはさらに今後とも努力を重ねたい、かように考えております。
  15. 大竹太郎

    大竹委員 次に、増員の理由として借地法等の一部改正法律による事件処理ということがあげられておるわけでありまして、そのときお伺いいたしましたところによると、これは部といいますか、東京、大阪その他では、新たに部を設けて、専門に当たらせるというお考えを聞いておるわけでありますが、しかし、ことしの六月からですか実施になるわけですが、第一に事件の件数とでも申しますか、そういうものを予定してつくらなければならぬのですが、そういうことについてのお見込みはどうですか。
  16. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 この関係資料では、お手元法務省から参考資料として出していただいておりますものの一四ページでございますが、この一四ページに「昭和三十九年における借地上の建物増改築数及び譲渡数推計)」といたしております私どものほうで資料を作成いたしまして、法務省のほうで出していただきました関係で、私のほうから説明さしていただきたいと思いますが、実はこの数字そのものが、もうすでにここに書いてございますとおり推定でございます。このもう一つもとになりますはっきりした数字があるわけでございます。それはつまり増改築総数あるいは建物譲渡総数というものは、これは建設省等資料で客観的にはっきりした数字があるわけでございます。ただ、その中の、これは建物増改築あるいは建物譲渡の数でございまして、その中で今度問題になりますのは、いわゆる借地の上に乗っている建物に限られるわけでございます。自分の土地の上に乗っている建物については問題にならないわけですが、建設省等資料では、それも含まれておるわけでございます。  そこで、まずそれを差し引きました借地上の建物だけに限定して幾らになるかと申しますと、これはもうすでに客観的な数字ではございませんで、推計になるわけでございます。その推計のしかたといたしましては、一応これまた建設省のほうで借地率というものがあるわけでございます。これは大体六大都市を中心にしてつくった数字でございますので、この数字がはたして全国的に使えるかどうか。おそらくは、この数字相当借地率を高く見ていることになろう、全国的に見ればもう少し低いものであろうと考えられるわけでございますが、全国的なデータがございませんので、一応その借地率に基づきまして、これが大体二七%ということで、その全体の増改築数あるいは譲渡数に二七%をかけましたのがお手元資料にあります、たとえば増改築数三万六千七百七十五、譲渡数五万三千三十二という数字はそういう操作をした数字でございます。そこまでは、それにいたしましてもある程度推計でまいれるわけでございますが、その中から、さらにどのくらいのものが事件として出てまいるかということになりますと、さらにこれに推定が加わるのでございます。その推定のつかみ方によって、多くもなれば少なくもなるわけでございますし、ことにその間には初年度であって、いわば私どもとして、あるいは法務省としても大いにPR等はやっておられます。私どももやっておりますけれども、その徹底の度合いというようなこともつかみにくいわけでございます。それからまた、いずれこれはおそらくは本人訴訟では無理で、大体は弁護士さんを頼んで起こす事件になろうと思うわけでございますので、そうなりますと、ますますその出訴率と申しますか、調停も含めましての裁判へ出てまいる比率というものはつかみにくいわけでございます。多くて二割、少なければ五、六%ではなかろうか。かなり幅がございますが、そういうような幅で一応見たわけでございますが、これも実は格別の根拠はないわけでございます。非常にやかましく申しますれば、この数全部が出てまいるものとしてたとえば増員その他も考えなければならぬということになるわけでございますが、いろいろそういうことで比率考えまして、そうして予算を要求して、最後の妥結の段階には充員等関係考えまして、ただいまの七人というところに落ちついたわけでございます。これは六月から施行になりますので、明年度予算要求の場合になりますと、大体半年の実績が出るわけでございますから、その段階においてはかなり正確な見通しを持って予算要求もできるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  17. 大竹太郎

    大竹委員 これは、まずお聞きしたいのは、この改正によって借地借家の、いわゆる裁判所にごやっかいになる絶対数がふえるというお見込みなんですか、どうですかということ。  それから、これはもちろんいままででも問題になれば調停とかそういう訴訟になっていたんでしょうから、絶対数がふえないという前提に立てば、今度はそのほうの手が省けるということになるのですか、その点はどうなんですか。
  18. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 確かに大竹委員の御指摘のとおりでございまして、その辺、先ほど御説明を少し省略いたしましたために御指摘を受けたわけでございますが、これはその点を非常にまた厳密と申しますか、私どものほうに、件数の面から見て不利に、少ない目に見ようとみますれば、これは従来いわゆる無断転貸借あるいは無断増改築で問題になったような事件だけで、いわばもめる事件であるから、そういう事件だけが出てまいるであろう。そうすると、それは従来無断転貸借あるいは無断増改築裁判所が扱っていた事件でございますから、多少時間的なズレはあるにしても、トータルの数においては変わらないというような見方も確かに立つわけでございます。そういうことになりますれば、増員はほとんど必要ないということにもなるわけでございます。しかしながら、これはおそらく従来はその増改築なり、譲渡の場合にも、権利金を取ったりするというようなことが、実際問題としてできなかったために、非常にこの点についてものわかりのいい地主さんかなんかの場合にだけうまくいっておった。ところが、今度はこういう法律ができれば、これを利用してひとつ地主の承諾を得、承諾が得られなければ裁判所へ持ち込んででもというような関係になってまいろうと思うわけでございまして、先ほど申しましたのは、一応そういう無断増改築なり無断転貸借で事件が減りますという要素は、これはおそらくこの四十二年度には影響は出てまいるまいということで、一応無視して、ふえるほうの件数だけで申したわけでございます。おそらくこれは四十三、四十四年度になってまいりますれば、無断増改築、無断譲渡というような事件が減ってまいるわけでございまして、しかもこれらの事件はかなりむずかしい事件が多いわけでございますから、事務量の点ではいわばかなり有利になってまいるという点があろう、かように考えております。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 この法案には直接関係はないのですが、いま借地法の一部を改正する法律が問題になっておりますので、ついでにお伺いしたいのですが、たしかこの法律によると、鑑定人の責任というものが非常に重要になってきておるわけでありますが、これは新たに選任されなければならぬのですが、それらについては準備はできておりますかどうですか。
  20. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 手元に詳細な資料を持ってまいりませんでしたので、なんでしたら次回に説明させていただきますが、ごく最近に鑑定委員規則という最高裁判所規則を制定いたしまして、この規則に基づきまして各地方裁判所で目下鋭意人選中でございます。六月一日までには間に合うように選任を進めておるわけでございます。大体において弁護士さんであるとか、あるいは土地の鑑定等について深い経験をお持ちの方を選ぶという予定で進めておるわけでございます。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 次に、この地方裁判所調査官でありますが、これはたしか前には六人で、今度は四人ということになっておるのですが、たしかこのときも、これはやはり必要だから相当今後増員をすることが必要だという意見が多かったのですが、この前六人、今度は四人と減っていること、それから、そんなわずかじゃ、なかなか配分その他できないのじゃないかという問題もあったのですが、いままでの実績とそれからこの四人の配分その他についてお伺いしたい。
  22. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 この点につきましては、昨年裁判所法の改正を御決定いただきまして、なお予算の面で六人の調査官を見ていただいたわけでございます。法務委員会におきましても、いろいろ運用について慎重にやるようにという御意見がございまして、私どもももとよりそのつもりでやるように心がけてまいっておるわけでございますが、また特に租税関係調査官につきましては、弁護士会等で、その運用を慎重にやるべきであるというような御意向もあるように伺っております。何と申しましても裁判官の補助的な機関でございますが、あまりにその補助的な機関にたよるようなことになりますことは、裁判の権威なり、威信にも影響し、また内容にも影響を持ってはたいへんなことでございますので、そういう点でできる限り慎重に運用し、またその運用の実績を見ながらこの制度の確立につとめてまいりたい、そのような考えを持っておるわけでございます。で、いまたった四人ではというお話でございましたが、実はその四人の中の二人は工業所有権関係のものを予定いたしておるわけでございます。工業所有権関係については、私ども承知いたしております限りでは、各方面さほど御議論もないように伺っておるわけでございまして、昨年の三名はいずれも特許庁の職員から任命いたしまして、東京地方裁判所配置いたしました。これは当時も御説明申し上げましたとおり、特許の、工業所有権関係調査官と申しますのは、いわば三人が一組でございます。化学、機械と電気と、それぞれの専門家が寄りましてはじめて仕事が一人前というような関係でございますので、三人東京に配置したわけでございます。本年はこれを二人大阪に配置する予定でございます。本年三人のほうが望ましいわけでございますが、一応機械と電気は兼ねてできるであろうというような意向もございましたので、二人、化学関係と、機械等の関係と、一人ずつ大阪に配置する。特許、工業所有権関係は、圧倒的に東京、大阪が事件が多うございますから、まず、第一段階としては、これで一応の配置になっておるのではないか、かように考えるわけでございます。  一方、租税の関係につきましては、昨年入れていただきました分は、いずれも大蔵省の職員から任命いたしまして、東京に二名、大阪に一名を配置いたしたわけでございますが、本年はさらに二名を一名ずつ東京及び大阪に配置する予定でございます。この関係は、将来の運用の実績等を慎重に見守りながら、その実績によりましては名古屋、横浜等にも拡充してまいりたいと考えておりますが、現在は、何と申しましてもまだ昨年十一月ごろでございましたかに任命いたしましてから半年近い経験しかないわけでございますから、その実績を十分に見守っておるという実情でございます。
  23. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、今後は実績を見た上で増員するということだろうと思うのですが、ただ、そのときに問題になったのは、工業所有権あるいは税関係だけでは——何といいますか、もっとほかの分野においても必要じゃないか。たとえば医学であるとか、そのほかの、最近はなかなかめんどうなものがたくさんあるのだがという話が出たと思うのですが、こういう別な方面にこれを拡張される御意思はあるかどうか。
  24. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは、当時裁判所法の改正をやっていただきます際にいろいろ議論がございまして、それで、私どもとしては、もう少し広い方面に広げていただくということも、少なくとも検討の余地はあると考えておったわけでございますが、いろいろな話し合いの結果、結局、地方裁判所関係ではこの種のものに限るというようなことになりまして、条文でその点が明記されたような次第でございます。そういう関係もございますので、今後これを広げます場合には法律改正という問題になるわけでございまして、さらに十分検討し、よく法務省とも御相談して進めてまいりたいと考えております。
  25. 大竹太郎

    大竹委員 次に、一般の事務官の問題ですが、これは主としてこの前の執行官法の施行に伴った増員だと思うのですが、これで見まずと二十六人ふやしているということになるのですが、このうち、いわゆる執行官法の改正に伴う増員、二十六名ともそのほうに回るのですかどうですか。
  26. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 事務官のうち六人は、借地法の改正に伴いますものでございますので、執行官の関係は二十名でございます。
  27. 大竹太郎

    大竹委員 そうすると、この二十名ということは、二十庁だけが、いわゆる執行官法の改正に伴う執行吏の金銭保管を廃止するということになるのですかどうですか。
  28. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは法務委員会で先般執行官法の御審議をいただきました際にもいろいろ議論が出た点でございますが、私どもとしては、でき得べくんば早急に全国の裁判所についてかような措置をとりたいわけでございますが、いろいろな関係からそういうわけにもまいらないというところで、執行官法の附則でもって当分の間はむしろ従来のやり方をしていく。そうして逐次この増員等の措置ができるに伴って裁判所処理するようにする、かような結論になっておるわけでございます。法律にさようにうたわれておるわけでございます。そこで、本年はとりあえず二十名増員していただいたわけでございますが、これまた実はどの程度事務量になるかということについて、正確な把握がやや困難な面があるわけでございます。つまり執行官が取り扱いますもののうち、金銭の保管を伴いますものの件数というのは一応客観的につかめるわけでございます。それがお手元参考資料の一五ページの件数でございます。これは四十年度における客観的な数字でございます。しかしながら、この一つ事件について金の出し入れが何回あったかということになると、推計になるわけでございます。これは出し入れだから二回であるとも言えますけれども、場合によったら途中で出したりもするということで、むしろ三回アルファくらいの感じを持つわけでございます。また、それに伴います必要な時間、つまり何分かかるかという点も、従来のいろいろな作業で大体推定できるわけでございますが、正確に何分かかるかということもつかみにくい点がございます。一応のところの推計を大体一人年間四千件というところに押えまして作業を進めておるわけでございます。しかし、また一面から申しまして、非常に事件の少ない、たとえば年間千件にも足りないようなところでは、これはたとえば支部でございますが、支部のようなところの定員の配置関係では、現在の余力でできることもあり得るわけでございます。ぎりぎり一ぱいの定員しかいってないところもございますが、多少定員にゆとりのあるようなところは、たとえば千件以下のような場合には、現在の定員でも不可能ではないと思うわけでございます。そういうようないろいろな面を考えまして、なおまた今年二十名入れていただきました。たとえば名古屋等も実施していきたいと考えておるわけでございます。名古屋等になりますと、やはりこれは四人くらいは配置しなければならぬのじゃないか。一人ではとても無理だという面もございます。そういう点で二十名程度で九庁ないし十庁になるのではないかということでございます。それ以外に小さな支部で数庁できるのではないか、そういうふうな数字になっておるわけでございます。
  29. 大竹太郎

    大竹委員 次に、執行官法の話が出ましたからついでにお聞きしておくのですが、これは当時非常に問題になったのですが、執行官法の施行に伴い、従前の執行吏から切りかえでなった者が大部分だと思うのですが、新たに執行官に採用された者はどのくらいあるのですか。
  30. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いま大竹委員の御指摘の点も、当時だいぶ御心配をかけた問題でございますが、執行官法の施行の前日と申しますと、昨年の十二月三十日でございます。十二月三十一日から施行されましたので、十二月三十日現在におきまして三百三十七名の執行吏がおりまして、これは法律上当然執行官に任用されたわけでございます。それからその後試験等を経まして全く新たに任命されました者、大部分書記官等からでございますが、これが大体十九名ほどございます。それと、ほかに執行吏代理のほうから修習等を経ましてなりました者が十七名ほどございます。そういうことで、大体四十名近い者が執行官法施行後新たに執行官になった、こういうことでございます。
  31. 大竹太郎

    大竹委員 これはいままでの資料がないからわからないのですが、執行官法を新たにつくるときの御説明によると、非常に待遇もよくし、いわゆる地位もよくして、若い人がどんどん執行官になるような待遇をするということが大きなねらいだったのですが、いまの数字は、ちょっとこれは対照する数字がないからわかりませんが、一体そういう方向へ行っておるのですか、行っていないのですか。これは非常に大事なことだと思いますから……。
  32. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いまのお尋ねにお答えいたします前に、先ほどちょっと私十九名の者について、口をすべらしまして試験を経てと申し上げましたが、これは必ずしも試験を経ていない者も法律上あり得るわけで、その点は訂正させていただきたいと思います。  いずれにしても、新たに任用されたということでございます。そういうことでございますが、この新法施行後二十人近い者が全然新たに書記官等から任用されたということは、まだ施行後四ヵ月足らずの期間でございますから、そういう点では非常に成果があがっておると申し上げていいのではないかと考えるわけでございます。ただ、これは当初であるから、わりあい採用されたということの面もあるかと思われますので、手放しで楽観をしておるわけでもございませんけれども、しかし、従来の実績から見れば、四ヵ月くらいの間にこの種の人が二十人程度、それからまた執行吏代理から二十人程度ふえ、合計四十人程度増員が実現したわけでございます。そういう意味で、執行官法について、いろいろ待遇その他御配慮をいただきましたものが効果があがっていると考えるわけでございます。  なお、先ほどお尋ねのございました事務官等を任命いたしますれば、つまり裁判所事務官二十人が増員になりますれば、これが金の受付等をやるわけでございまして、その関係では執行宮の経済的な負担も軽減されるわけでございます。人件費がかからなくなるわけでございます。一種の待遇改善にもなるわけでございます。  そういうことをあわせて進めてまいりますれば、今後はある程度明るい見通しを持てるのではないかというふうに一応楽観するわけでございます。
  33. 大竹太郎

    大竹委員 最後に、家裁調査官ですが、これは五人ふやしておる。この家裁調査官はいままでいろいろ問題になっておるのでありますが、いままでの人員では相当負担が過重である、一人、一人についての観察とか調査とかいうものはなかなかむずかしい、こう言われてきたわけでありますが、この家裁調査官の取り扱い件数、ことに一人の負担件数その他について資料がありましたら御説明を願いたい。
  34. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 家裁調査官関係につきましては、御承知のとおり少年の関係と家事の関係とに分かれておるわけでございます。そうして少年の関係は、さらに一般の保護事件関係と、それから道路交通事件との関係で、やや取り扱い件数その他が異なっておるわけでございます。  一般の少年の保護事件関係は、大体一人の調査官が年間三百件弱、二百八、九十件のものを処理いたしておるわけでございます。一月にいたしますと二十数件ということになります。またさらに日割りにいたしますれば一日一件程度になると思います。それから道路交通の関係は、これは調査等も比較的簡易に行なわれるという関係から、大体一人当たり三千数百件ということで、一月にしまして三百件程度処理をいたしておるわけでございます。  それから家事の関係は、これはいろいろ甲類審判、乙類審判、調停等がございますが、そういうものを突きまぜましての件数で申し上げますと、これも年間大体二百五、六十件程度というようなことでございます。
  35. 大竹太郎

    大竹委員 大体これで終わります。
  36. 大坪保雄

    大坪委員長 松本善明君。
  37. 松本善明

    ○松本(善)委員 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、質問のために必要な材料としてお聞きしたいというようなつもりできよう聞きたいのですけれども、あとでまた本格的に聞きたいと思います。  裁判所のほうで要求した人員ですね。四十年度から四十一年度、四十二年度ぐらいにかけまして、裁判所のほうとして本来の司法権の独立を守って、裁判所の仕事をほんとうに適正に、憲法を守るという任務を遂行していくのに必要な人員として、どういう程度のものを要求されたのかということをお聞きしたいのです。
  38. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま松本委員からお話のございました点は、裁判所が当初に大蔵省に要求した数という御趣旨であろうと考えるわけでございます。実は、前にも横山委員からその点ずいぶん追及を受けた問題でございます。結局におきましては、私どもの要求数が本日御審議をいただいております数ということに落ちついて妥結したという結論になるわけでございますが、その点は一応別といたしまして、当初一応内閣のほうに提出いたしました要求数が何名かという御趣旨に伺いまして申し上げますれば、四十二年度におきましては総数六百九十二名でございます。裁判官は七十四名、その他の職員合わせまして、合計六百九十二名でございます。  なお、過年度のお尋ねがございましたが、昭和四十年度におきましては総数千百二十六名の当初要求をいたしております。それから昭和四十一年度におきましてはトータル七百四十一名の要求をいたしたわけであります。  そういうことになっております。
  39. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、当初要求したものは、全体としてはほとんど認められてない、こういうことになるわけですね。
  40. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは、あとのいいろなお尋ねに対しまして逐次御説明申し上げたいと思いますが、結論的には非常に少ない数で妥結せざるを得なかった、かようになるわけでございます。
  41. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはもちろん横山さんが前にも国会でやっている問題ではありますけれども裁判所の根本的なあり方と、それから国会との関係という重要な問題にもなると思いますので聞いておきたいと思うのです。  財政法第十九条の規定がありますけれども裁判所のほうで、裁判所としての人員、憲法を守り、人権を守る、そういう裁判所の本来の任務を果たすために、このぐらいの人数と予算が必要なんだということを国会に直接提起をして、内閣が押えているのが、政府が押えているのが一体正しいのかどうかということについて、国会の審議にまかせるというような考え方は全くないのですか。
  42. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいまの松本委員のお尋ねにお答えいたします前に、先ほどの数字にちょっと読み違いがあったようでございますので訂正させていただきたいわけでございますが、昭和四十年度は千二百七十五ということになっております。千百二十六と申し上げましたが、読み違いで恐縮でございます。  そこで、いま松本委員からお尋ねのございました点は、きわめて重要な問題でございますし、私ども予算の折衝をいたします際に、常にその点を深刻に頭に置いてやっているつもりではあるわけでございます。毎回この点についてはいろいろお尋ねを受け、また説明してまいっておるわけでございますけれども、いわゆる二重予算というものをどういう項目について、どういう時期に出すべきかということについては、これはほとんど毎年の予算要求の際に真剣に最後の段階では検討するわけでございます。実際に出す直前の手続までとったことも、過去においては二、三回あったように承知いたしております。ただ今年の場合は、そこまでの手続をいたしませんでした点はまことに——そういう関係になってしまうわけでございますが、いろいろな情勢その他を勘案いたしまして、結局二重予算の方法をとらなかった。特に増員関係について申し上げますと、これはたとえば裁判官につきましては、給源についてはっきりした見通しが立ちません場合に、二重予算で要求いたしましても、これは結局どういうものを埋めるのか。これが特任判事のようなものになるとあるいは埋まるかもしれませんが、こういうもので埋めてまいるのでは理解が得られないであろう。そういたしますと判事補から上がってくるか、弁護士さんかうなっていただくか、あるいは検事からきていただくか、そういう給源について、はっきりした見通しが立ちませんと、たとえば判事の場合につきましては、二重予算ということも困難ではないかというふうに考えたことが一つ原因でございます。
  43. 松本善明

    ○松本(善)委員 判事のほうは幾らかでも認められているようですけれども、下級職員の場合には、全然認められていないようですね。裁判の公正をはかるために、たとえば速記を入れなくちゃいけないとか等々の、ほんとうに公正な裁判をするために必要な経費というものがあるはずだと思うのです。そういうことについては、なくてもかまわぬという考えなんですか。
  44. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいまの松本委員お話の中の、いわゆる下級職員といろことばが妥当かどうか疑問でございますが、書記官、調査官その他ということであろうと思います。これも一つ一つ、それぞれに別々の理由があるわけでございますが、たとえば書記官につきましては、従来から裁判官と並行して入るということになり、裁判官の仕事がふえるに伴ってというような扱いになっておりますところが一つのネックになるわけでございます。それから家裁調査官はまた別の理由でございますが、これはまたお尋ねによって申し上げたいと思いますが、その他全然入っておらない職員というようなものもあるわけでございます。しかしこれまた、裁判部の職員につきましては、私どもできる限り独自性を主張してまいるというたてまえをとっておりますけれども、たとえば一般の事務系統の職員につきましては、これは松本委員つとに御承知のとおり、現存内閣全体として定員の抑制措置というのが相当きびしくとられておりまして、欠員さえ不補充という原則になっておるわけでございますが、私どもは、その点につきましては、これは一応独立でやるということで、裁判部は完全に自由である。それから裁判部以外のところも、できる限りその趣旨に——尊重はするけれども拘束はされないというような考え方をとっておるわけでございますが、そういうような情勢のもとでございますので、裁判所だけが一般の、ほかの庁と——特殊件のないような職種について独自性を主張することができるであろうかどうかということにやはり疑問を持ったような点があるわけでございます。
  45. 松本善明

    ○松本(善)委員 そこで、たいへん大きな問題たんですけれども裁判所というものは、ほかの省と同じように考えていていいのかどうか。裁判所自身がそういう考え方で、一体司法の独立とか、人権の擁護というようなことができるのかどうか。それを本来国会で審議すべきではないかと私は思うわけです。あなたは、妥結というようなことばを言われたけれども、そういうようなことが正しいのかどうか。ほんとうに日本の国の司法の独立を守る、あるいは人権を守るという仕事をするに適正なのかどうかということを、国会が審議をすべきことではないか。その審議を、裁判所としては、自分たちとしてはこういうふうに考えるんだということで出すべきではないか、こう思っている。そこの根本問題、こまかい調査官がどうかとか、それから家庭裁判所がどうかということはまたあらためて——これも必要な場合があると思いますけれども、その根本の裁判所のほうの考え方を一応聞いておきたい、こう思うのです。
  46. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いまのお話、まことにごもっともなところでございまして、私どもも常に、その点についてどういうふうな方法をとることが、最も裁判所の主張を認めてもらい、また裁判所の必要とする施設なり人員を充実させていく道であろうかということについて、苦慮いたしておるわけでございます。確かにお話しのとおり、これはもう要求したものが入らなければ、常に二重予算によって国会でおきめいただくということも、一つの方法であるということは間違いないわけでございますが、しかしながら、またいろいろな全体の態勢から考えまして、この程度にいけば、これで一応ある程度裁判所として仕事をやってまいれるのじゃないか。これは逐次、年次計画でもございますので、そういう意味で歴年的に進めていくということでいいのではないかというような考えが、最終的になって、本年の場合にそういう措置をとらなかったということでございます。しかしながら、お話しの点は重々もっともで、今後ともさようなことを十分に念頭に置いて進めてまいりたいとは考えておるわけでございます。
  47. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、とれるものはとりたいけれども、とても折衝しても裁判所はとれそうにないので引込めた。非常に俗なことばでありますけれども、そういう、私から見れば非常に卑屈だというふうに思うわけです。そういうことで一体裁判所はいいのかどうかということについて、たいへん疑問を感ずるわけですけれども、そういうような態度であったということですか。
  48. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まあそういうふうにおしかりをいただきますと、全くそういうふうになる点もやむを得ないかと思いますが、私どもといたしましては、まあまあということではございませんので、この程度予算が入れば、これによって裁判所としてやってまいれるという一応の結論になりまして、それでここで妥結するということになったわけでございます。
  49. 松本善明

    ○松本(善)委員 裁判所の要求が七、八割方通っていて、一、二割減ったというようなことならそういうことも考えられます。そうでなくて、ほとんどいれられていない。そうすると、裁判所の初めの要求が水増しで、できるだけ予算をとってやろうという考えでやったのか、それとも、きわめて卑屈になっておるのか、どちらかでしかないと思うのです。そこで私は聞いておるわけですが、その点はどう考えられますか。
  50. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 この点は、ひとり増員問題に限りませず、予算全般の問題としていつも考えておるわけでございますが、予算全般の当初要求に対して、どの程度に認められれば、これで一応裁判所として、本年度における裁判事務をやっていくのに支障がないかどうかということの判断というものは、おそらく非常にむずかしい問題であろうと思うわけでございます。ただ予算全体の問題を離れまして、増員の問題になりますと、これは水増しといっておしかりを受ければ、そういうことにもなる面もあるかもしれませんが、先ほど大竹委員のお尋ねに対してもるる申し上げましたけれども推定ということについては、どうしても幅ができざるを得ない。ことにまた新しい制度の場合におきまして、初年度の場合におきましては、これは一つの大体の推定した数字で出さざるを得ない。これは実績が出てまいりますと、その実績に基づく主張がやや強くなるわけでございますが、新しい制度の初年度というものについては、やはりそういう問題がいろいろありますことが、当初予算よりおりた形になった原因であるわけでございます。まあそれは外から見れば、最初のものが水増しか、あとのが卑屈かとおっしゃられれば、ある程度そういう面は否定できないかもしれませんが、私どもはこれはそういうつもりではないわけでございます。
  51. 松本善明

    ○松本(善)委員 国会では、防衛関係予算あるいは裁判所予算、全体の中で予算が一体これでいいのかどうかということを判断するわけです。内閣のほうではどういうふうに考えようとも、国会として独自に、裁判所の問題はどうだろうかということが当然裁判の対象になるわけですけれども、そういう十九条を十分に生かせないということが、国会を場合によっては軽視をする考え方に通ずるし、司法の独立を害することにもなりはせぬだろうかと思いますが、どうですか。
  52. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いまの松本委員お話しの点も、非常に私どもとして謹聴をいたしておるわけでございますが、ただ私どもの立場を少し説明さしていただきますれば、毎回法務委員会におきましても、あるいは予算委員会、決算委員会等におきましても、常に裁判所予算については激励をいただいておるわけでございます。これは与野党を問わずそういう御意向が強くて、私どもいつも感謝しておるわけでありますが、そういうふうにいろいろ言っていただきますことをバックにして大蔵省とやりますことが、非常に大蔵省に対して私どもの主張をある程度まで聞かせる理由にもなっておる。そういう点において、戦前より私どもが大蔵省からある程度予算について計上を得る非常に有力な根拠になっておるわけでございまして、決して国会軽視とかそういう意味ではございませんで、国会の御意向を尊重して折衝をいたしておるわけでございます。
  53. 松本善明

    ○松本(善)委員 大蔵省に認めてもらうという筋ではないのですよ。そうじゃないですか。裁判所予算を大蔵省に認めてもらうという考えだからそういう卑屈なことになる。裁判の独立を守り、憲法を守るというためにこれだけ金が要るんだ、それを国会、減らすなら減らしてみろ、ということになるのじゃないですか。そういう態度が必要なんじゃないかということを聞いているのです。
  54. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 お話しの点は、そのとおりだと思います。私どもとしても、それは司法権を代表して内閣にその要求を貫徹するというつもりでやっておるわけでございます。
  55. 松本善明

    ○松本(善)委員 きょうはこの程度にして、また後にいたします。
  56. 大坪保雄

    大坪委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は、来たる二十一日、委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午前十一時四十二分散会