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1967-07-21 第55回国会 衆議院 文教委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月二十一日(金曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 久保田藤麿君 理事 西岡 武夫君    理事 八木 徹雄君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       菊池 義郎君    久野 忠治君       葉梨 信行君    広川シズエ君       唐橋  東君    川崎 寛治君       川村 継義君    小松  幹君       斉藤 正男君    平等 文成君       山崎 始男君    吉田 賢一君       有島 重武君    山田 太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 剱木 亨弘君  出席政府委員         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         文部省大学学術         局長      天城  勲君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         文部省管理局長 宮地  茂君  委員外出席者         文部大臣官房審         議官      西田亀久夫君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 七月二十一日  委員河野洋平君、葉梨信行君、三ツ林弥太郎君  及び小松幹辞任につき、その補欠として井村  重雄君、福永一臣君、小沢佐重喜君及び川崎寛  治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小沢佐重喜君及び川崎寛治辞任につき、  その補欠として三ツ林弥太郎君及び小松幹君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出  第一五〇号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  内閣提出学校教育法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由説明を聴取いたします。剱木文部大臣
  3. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 今回政府から提出いたしました学校教育法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  本法案は、各種学校制度改善整備をその内容といたしております。  各種学校は、主として職業、家政その他実際生活必要知識技術を習得させる実用的、専門的な教育機関として大きな役割りを果たしており、また、中学校または高等学校卒業後の青年のための教育機関として重要な地位を占めているものであります。このように各種学校はわが国民のための教育機関として社会の要請にこたえる重要な任務を持っているものでありますが、現行各種学校制度は、その対象内容規模等においてきわめて多様なものを、学校教育に類する教育を行なうものというとこで一括して簡略に取り扱っており、制度上きわめて不備であります。そのため各種学校制度的な意義が不明確であるばかりでなく、各種学校振興をはかるための適切な措置を講ずる上で障害になっているというのが現状であります。また、さきに臨時行政調査会から提出された行政改革に関する意見においても各種学校制度改善必要性指摘されており、さらに昨年十月に行なわれた中央教育審議会後期中等教育拡充整備についての答申においても各種学校教育改善充実が望まれておりますところから、この際各種学校制度改善整備を行なおうとするものであります。  このような趣旨により本法案で行なおうとする各種学校制度改善整備概要は、次のとおりであり戻す。  第一に、現行制度においては、各種学校は「学校教育に類する教育を行なうもの」とのみ定められておりますために、学校制度としての積極的な意義が不明確であるばかりでなく、その目的範囲も明確さを欠いております。よって、各種学校目的を「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ること」と明示するとともに、修業年限授業時数及び生徒数の三点を基準にしてその範囲明確化をはかることといたしました。  第二に、各種学校の中には、中学校卒業または高等学校卒業後の青年に対しまして、後期中等教育または高等教育として有意義教育を行なっているものが相当数ありますので、これらの教育を行なう課程をそれぞれ高等課程専門課程として位置づけ、特にその内容充実向上をはかることといたしました。  第三に、各種学校設置者の要件、設置基準教科基準教員資格等につきましてその特色に即した整備を行ない、各種学校の水準の維持向上をはかることといたしました。  なお、もっぱら外国人対象として教育を行なう外国人学校については、従来、そのための制度がないので便宜的に各種学校として取り扱われてきたものがあります。しかし、今回各秘学校目的明確化基準整備等改正が行なわれますと、各種学校制度外国人学校にも及ぼすことは不適当となります。したがいまして、外国人学校につきましては、本法案による各種学校改善整備とは別に、外国人学校制度として将来において整備をはかることとしたのであります。  最後に、この法律施行日につきましては公布の日といたしておりますが、この法律施行の日に存しております改正前の規定に基づく旧各種学校につきましては、外国人学校をも含めて必要な経過措置を講ずるほか、関連する規定整備を行ないました。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  4. 床次徳二

    床次委員長 以上で提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  5. 床次徳二

    床次委員長 文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。長谷川正三君。
  6. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私は、現在文部省指導されております学習指導要領並びにこれに基づく具体的な教育実施につきまして、質問を申し上げたいと思います。まず、時間がありませんので項目的質問いたしますので、答弁も簡明にお願いしたいと思います。  現在実施されている学習指導要領が、今日まで何回ぐらい、どういう時期に改定を行なってきたか、その個々の改定内容——これを説明せよと申しましてもこれは非常に膨大なことになりますので、その途中で性格的に大きな変化があったとすれば、それはいつの時期で、どういうふうに変えたのか、こういう点について御質問を申し上げます。
  7. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 性格的に大改定が行なわれましたのは、小学校については昭和三十三年の改定でございます。それ以前、終戦後二回改定がございました。三十三年の改定は、当時の学力向上でありますとか、科学技術教育振興でありますとか、あるいはその観点から理数系の小、中学校の配分を変えたとかいうようなこと、あるいはできるだけ体系的に、系統的に指導内容整備したという点に特色があろうかと存じます。
  8. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 性格的な大きい変化は三十三年だとおっしゃいました。その内容は、学力向上、ことに科学技術進歩に即応する理数科の強化というようなお答えでありましたが、性格的な大きな変化というのは、それ以外にもっと重大なものがあるんじゃないですか。
  9. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 従来問題になっておりました道徳教育を徹底すること、それから、いま申しました基礎学力充実する、科学技術教育向上、地理、歴史教育を完全に充実すること、情操の陶冶、身体の健康、安全の指導充実すること、というような諸点が改定の方針でございました。そして、国民としての正しい自覚を持って、個性豊かな文化の創造と民主的な国家及び社会の発展につとめることそれから国際社会において真に信頼され、尊敬されるような日本人の育成を目ざすことを目標にした、と書いてございます。
  10. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 内容上のことは、いま御答弁があったようなところに重点があったと思いますが、私が性格的にと申し上げましたのは、それ以前は、指導要領というものが、教師が実際に学習指導をする場合の一つ参考資料と申しますか、そういう意味で、あとは実情に即し、生徒の環境なり能力なりに即し、地域の特殊性に即して、教師が自由に教科書を駆使して教育をするというたてまえであったと思いますが、それが国家基準制と申しますか、これによらなければならないという一種強制力を持つようになったのが、この三十三年ということではなかったんですか。
  11. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 終戦後、当時までの傾向が、教科時数確保というような点について実体上非常な不備がございました。そこで内容上、ただいま申しましたようなことを期するとともに、一種最低基準としての時間数の確保あるいは指導内容確保ということを三十三年以来いたしておりますが、先生のおっしゃるように、基準制というものが強まったというふうに言えると存じます。
  12. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私がこれから申し上げることは、その基準制ということについてやはり少し考えなければならないという問題を提供していいんじゃないかとも思われますので、これから具体的に申し上げますが、現在の中学校技術家庭科学習指導要領が、現在施行されておるものが定められたのはいつで、その完全実施を行なったのはいつからですか。
  13. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 改定が行なわれましたのが三十三年でございまして、三十七年から完全実施になりましたが、その間移行措置等を講じたのであります。
  14. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 なお、この中学校技術家庭科学習指導要領実施に伴って、さらにその指導法等について文部省責任ある書冊を出していますか。
  15. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 中学校技術家庭科運営手引きという書物が昭和三十五年五月二十日の刊行で出ておりますし、また、中学校技術家庭指導書昭和三十四年十一月に刊行されております。
  16. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そうしますと、現在中学校技術家庭科教育を律しているものは、学習指導要領と、さらにこの手引き指導書、こういうものが中心となって行なわれておると解釈してよろしゅうございますか。
  17. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 学習指導要領は国の基準としての意味であり、それからこの手引きとか指導書は、文部省設置法に基づきまして教育関係者指導助言をするためのものでございますので、律するという意味が違いまして、片方は法令的な律し方、片方指導助言というものと、かように存じております。
  18. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 指導助言上の責任はありますね。
  19. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 ございます。
  20. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そこで、この学習指導要領は三十七年から完全実施にされたといういまの御答弁でございましたが、この三十七年以後今日までの、特に技術家庭科男子向き学習中に起こりました廃疾災害の数といいますか、統計の概略をお示しいただきたいと思います。
  21. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 昭和三十八年度は四十一件でございまして、うち指損傷が三十九件、三十九年度は三十七件でございまして、うち指損傷が三十四件、四十年度が三十三件でございまして、うち指損傷が三十件でございます。
  22. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 四十年までしかいまわかっておらないのですね。
  23. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 四十一年度はまだ正確に締めておりませんけれども、現在まで二十五件ということだけ判明いたしております。
  24. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その数字は何を根拠資料としてお調べになりましたか。
  25. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 これは学校安全会給付金支払い請求件数をもとにいたしたものでございます。
  26. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私が技術教育災害についていろいろ述べられた民間の図書の統計をもって調べてみますと、ただいま文部省の言われた統計の数よりもだいぶ多くなっているようなんですが、これはどういうわけかと申しますと、厳密に授業時間中ということに限って——二時間連続して授業があって、間に休み時間が入っている、その休み時間に、こういう工作のような仕事でありますから、長い休み時間でないので連続して作業している、そういうときに起こった事故は厳密にそれからはずしている。あるいは放課後引き続いてあるいは教師がついて、あるいはクラブ活動のような形でやったときに起こった事故、そういったものが全部除かれて、厳密な授業中の事故がいまの数のようでございますけれども、そうでございますか。
  27. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 そのように存じております。
  28. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そうしますと、実際の数はこれよりももっと多いというふうに私は推定できると思いますし、しかもこれは、完全に指が半分落ちてしまったとか四本の指が全部とれてしまったとか、いわゆる廃疾であって、治療してなおる程度けがに至りましては非常に多いということを聞いております。そういうふうに把握して間違いないですか。
  29. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 ただいま申しました件数は、安全会に対する給付金請求に相当する程度のものでございますから、小さいけが等は入っておらない。したがいまして、かすり傷とかいろいろなものがありますれば、私の申しました件数に入ってない、かように御承知になっていいと思います。
  30. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それじゃもう一つだけお伺いしますが、中学校の各教科別授業中に起こりました廃疾件数というものはわかっておりますか。
  31. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 総数が、三十七年度で百八十三件、三十八年度で百八十二件、三十九年度で百八十八件、四十年の十一月までで九十二件という状況でございます。
  32. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その中で最も高い部分を占めているのは何ですか。
  33. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 技術家庭科に関連するものが多うございます。
  34. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 学校正規授業中に廃疾というようなことは重大なことでございます。お互いに子供を持っておりますが、自分子供が正常に生まれていながら指を四本なくしてしまう、ひどいのは右手も左手も指を落としている、こういったような事故正規授業でこんな数起こっている、しかも年々起こっているということはきわめて重大なことだと思うのです。この理由は何かというと、私少し調べてみたわけでありますが、これは学習指導要領の中に教えなければならないものとしてあがっている工作機械使用法を教えるというものの中に、こういう事故を起こす可能性の強い、いわゆるその世界ではもうだれでも知っているような、そういう問題を平気で載せておるということ。さらに、これを教える手引きとして出ております先ほどの手引き書等に、率直に申すなら、誤りであるとも言える代用品の使い方の指示がしてある。こういうことが、こういう事故の続出する非常に大きい原因になっているように考えるのであります。その点について当局は御存じですか、何の機械が私がいま申し上げたものなのか。
  35. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 この技術家庭科男子向け技術の中で何の機械によるものが多いかという点でございますが、丸のこ盤のものと手押しかんな盤のもの、これが数として多うございます。
  36. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま丸のこ盤手押しかんな盤というお答えでございましたが、これは明らかに、学習指導要領工作機械使用法としてあげている中に、のこ盤かんな盤、糸のこ盤などという項がありますね。そうして、のこ盤とは丸のこ盤、帯のこ盤をさすものであるということは明らかでありますし、かんな盤というのは、手押しかんな盤をさすものであることが明らかである。しかも、さっき申し上げた手引きの中には、この手押しかんな盤については電気かんなをもってかえることができるという指示がしてある。また、丸のこ盤のかわりには、電気丸のこを使って充ててもよろしいと書いてありますね。そして代用のものは、いま申した指導要領に示しておりますこの丸のこ盤なり手押しかんな盤よりも値段の安い簡易なものでありますから、地方の貧弱な市町村学校分校等ではどうしても大きなものが据えられないために、代用品としての電気丸のこあるいは電気かんなというものを使う。その場合に、それはかっこうが違いますから裏返しにして使うということになる。それは非常に不安定で危険である。もちろん、いま統計で見ますように、本物のといいますか、学習指導要領で示しているところの丸のこ盤とか手押しかんなというものが一番多いのですが、同時に、代用品による廃疾災害というものもこれを追って多い、こういう実情であると思うのであります。しかもこの件につきましては、長崎事件であるとかあるいは広島布野村の事件であるとか、この完全実施の三十七年の直後に起こっており、特に広島県の布野村の有田さんというお子さんの事件については、親御さんが国家賠償法による訴訟を起こして非常に物議をかもしておる。ここに私写真を持っておりますけれども、こういう悲惨なかっこうに最愛の愛児がなったとすれば、親御さんが、わが子を愛すると同時に、こういう災害正規学校授業の中で起こるということは非常にたいへんなことであるということで、おそらく、単に自分子供賠償請求という意味もありましょうけれども、警鐘を乱打してこういうことを改めさせるという意味が私は大きいと思うのです。私はいま裁判の問題をここで論じようとは思いませんけれども、こういう事態が三十七年以来起こっておりますが、これについて文部省は認識を持たれておったのか、これについて何らかの指導助言あるいは訂正、そういったものを行なってきたのか、今年は四十二年であります。ですからもう五年もたっておるわけでありますけれども、この間一体どういう処置をとられてきたのか、ひとつ責任のある御答弁をお願いいたします。
  37. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 実は私、現在初中局へ参りましてからいま御指摘事例等が耳に入りまして、第一点は、技術家庭科でございますからあぶなくないほうがいいけれども、しかし、使いようによっては全然安全なものというばかりではいけない面もあると思うのです。技術を練摩する、それと教育との限界の問題になってくるだろうと思うのです。そこで第一には、災害状況等件数、それが何によって起こっておるかという件数を具体的に示して、また損傷の発生の具体的な場所等を加えまして、そうして都道府県教育委員会に、職業課長のほうから文書をもって指導上の注意というものを与えた点がございます。それからもう一つは、機械整備にあたりまして、文部省といたしましては工作用品基準ということを示して、器具の性能、そういう点を明らかにしていく。そして何と申しましても技術家庭科技術部面教育課程の非常に新しい要素でございますので、実は指導者の養成についても不十分な点もあり、また市町村における器材の整備も十分でないということで、一面においては財政援助技術家庭科については特別にやっていきたいというようなことを考えておるわけでございます。しかし、先生指摘のように、いままで幾つかの事例がございますから、やはり技術家庭科教育課程改定という場合には、こういうような事例というものをよく分析いたしまして、通常の学校教育の中で安全であり、しかも技術を習得する、そうしてその使用法をできるだけ的確にするということを念頭に置きながら、改定の際に十分検討いたすつもりで現在進行中でございます。
  38. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 現在、次の改定期に臨んでこの点は再検討して善処をする、こういうような御答弁であります。それはもちろんけっこうなことだろうと思いますし、ぜひやらなければならないことだと存じますが、私はいま責任ある御答弁を要求したのは、三十七年にこれが完全実施の段階から四十二年の今日まで、具体的に文部省はどういう通達なり指示なりあるいは訂正なり、そういうことをしたか、こういうことを聞いておるのであります。
  39. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 四十一年の一月でございましたか、技術家庭科における安全教育について、各都道府県に対しまして、先ほど申しました具体的な件数とか事例を示して、そうしてこの工作機械等についての安全教育を一そう徹底するようにという指導を、正式の文書によって出したものがございます。
  40. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そこで、私は非常に疑問に思うのですけれども、それは三十三年にきめられて、三十四年ごろからぼつぼつ実施に移り、三十七年には完全実施になり、そうしてさっそくもう長崎事件あるいは広島布野村の事件、こういう悲惨な事例が起こり、以後これが続出して、先ほどの統計のように、相当数の、中学校全体の廃疾事件の中でも最高を占めるというようなことが年々続いておるにかかわらず、これに対して通牒を出したというのは、私ここに持っております望月哲太郎さんという職業教育課長の名前で出したものじゃないかと思いますが、これが出ている程度だということは、はなはだ怠慢のそしりを免れないと思いますが、その点、大臣いかがですか。
  41. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 学習指導の途中におきましてこういったような問題が起こってまいりましたのは、はなはだ遺憾だと思います。もちろん器具機械取り扱い方についての、教育上の取り扱いその他についての手抜かり、また指導手抜かり等もあったと存じますが、これに対しまして、文部省が四十一年一月に初めて出しました。その後そのままにいたしておりますことは申しわけないのでございますが、その後、やはり十分これらの取り扱いについていろいろな研究を進めてまいっておると存じますが、なお今後そういったような問題に対処する意味合いにおきまして、早急に私としまして検討しまして、これに対処する措置をとりたいと考えておる次第でございます。
  42. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 大臣が率直に非を認められたと申しますか、手抜かりを認められたような御答弁で、今後早急に対処したいというおことばでありますから、それは了といたしますが、しかし、これはいいかげんにお茶を濁してはいけない問題でありますから、もう少し質問を続けさしていただきたいと存じます。  第一は、科学技術進歩に伴って、これに即応する教育をするということで、中学校子供にも技術家庭科を設けて、いろいろとこういうものを使いこなすような子供をつくりたいという気持ちからでありましょうけれども、この学習指導要領工作機械使用法として明記され、のこ盤かんな盤、糸のこ盤とあげてある。この機械自体が、労働基準法に基づく規則女子年少者労働基準規則というものがございます。この中で、第八条の十四号で、いわいる学習指導要領として、のこ盤と称しております丸のこ盤、帯のこ盤について、これは女子年少労働者に使わしてはならないということが明記されておる。また、かんな盤というものは、これは手押しかんな盤をさすわけでありますが、これも基準法の表現では、二十一号に木工用かんな機となっておりますが、これが手押しかんな盤をさしておることは定説であります。こういうふうに、いわゆる女子年少労働者には労働基準法禁止をしておる。そういうものを直接中学校の教材に持ってきて入れるというようなことは、どう考えましても——これは工場で工員を養成するときに、その準備教育期間に慎重に扱ったということならば、これは多少理解もできますけれども、そういうものをぬけぬけと入れて、しかも全国の中学校状況を見ますと、地方あるいは山村の分校等では専門先生などはいない。聞くところによると、この学習指道要領ができましてから、十二日講習というような講習を各地で開いて、即席の、全くあぶなっかしい指導法伝達講習のようなものをやりまして、それで教育に当たらしておる。その中に、こういう労働基準法でもその規則で明確に禁止をされておるようなものを入れておるということは、私はこの指導要領をつくったのはだれか存じませんが、そういう知識がなかったか、うっかりしたのかどうかわかりませんけれども、どう考えても適当ではないと思いますが、いかがですか。
  43. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 労働基準法年少労働者就業制限のものは、全部はずすべきだということには私はならないと思います。年少労働者が業務のために就業するということと、教育指導者がおってそれに安全な手当てをするということは、これは必ずしも一方にあるから全部排他的に考えなければならないというものではなくて、たとえば引火物のようなものも、理科の実験では先生指導のもとだからやる。しかし、年少労働者が一本立ちでそういうような危険な業務に従事することはいかぬ。これは両方の観点から考えらるべきでございますけれども、しかしまた、そういうふうに就業上も危険だというようなものを取り込むにあたっては、教育上どういうふうな安全防護措置を講ずるか、あるいは指導上どういう注意があるべきか、その限界をやはり真剣に考究すべきだと思いますので、ここに列挙してあるものはすべて教材教具としてはずすというふうには、簡単にいかないのではないかと思っておるわけでございます。
  44. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 あなたがそういうふうに開き直っておっしゃるなら、私はこれは絶対許せない。それは、すべて労働基準法のものは何でも教育に取り入れてはいけないとは申しません。あるいは高等学校等の程度で、専門の工業中心のような学校のところで、これは十八歳未満であっても、十分な専門家のいるようなところでやるということはあり得るでしょう。私が申しているのはそういう一般論じゃないのです。いま申し上げたような山村の今日の中学の水準というものがどういう状態にあるか、皆さん御存じでしょう。どれだけ専門教師が配置される可能性があるかということも、いまのあの窮屈な定員ではどうにもならない。資格も何もない者が、臨時の免許状でやっているというような状況があるでしょう。体育の先生がこの危険な機械をいじる、技術家庭科教師を兼ねているというような学校もたくさんあるわけです。そういう中で労働基準法にも明記されているような、私が言ったのは具体的に言ったのですが、まるのこ盤とか手押しかんな盤とかいうものを、あるいはその代用として使ってよろしいなどと言っている電気かんなを裏返しに使うとか、電気糸のこを裏返しに使うとか、そういうようなことをやらせているということは、これは必ずしもいけないとは言えないというような一般論であなたは律するつもりですか。これはやはりやらなければよかったと思っていないのですか。この写真のような姿になっている子供がたくさんいるのですよ。
  45. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 いかなる工作機械等を使用することが——これは中学校でございますから、別にすぐ労働をするということじゃなくて、将来の男子のために必要があるということで、専門家が検討されて。ピックアップされたものでございます。しかし、一面、教育環境が先生指摘のように不十分である。専門家が見て完全な形で行なわれることを想定して書いておっても、現実にいろいろな障害が起こるということがあるわけでございますから、その点は今後の改定の際に十分考究してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  46. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 つまり今後の改定の際に十分考究をしてまいりたいと言ってしまえば、それはそれでいいと思いますが、いままでこういうことをやってきたということに対して何らの反省がないのですか。
  47. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 文部省といたしましては、実は三十七年以来、この教科実施されてからずっとこの機械器具取り扱いにつきましては現職教育ということを都道府県ごとにいたしまして、特に安全性を必要とするような機械取り扱いにつきましては、指導者講習という形で実施してまいったのであります。しかし、現実に相当の被害の発生があることでございますから、そのことと現職の指導者の資質等もにらみ合わせながら、改定の際には十分考究してまいりたい、かように思うわけでございます。
  48. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 お役人の答弁というのは、責任をかぶることを避けるというような癖があると思うのですが、私はいま、まじめに日本の教育の問題を腹突き合わせてここで考え合っていこうという立場で申し上げているのですから、端的に伺いますが、この教材は、日本の実際の現状の中で、また労働基準法に基づくこの規則等の関連もありまして、そういういろいろな関連から見てやはり適当でないと判断をされるのが私は当然だと思いますが、これについて、ひとつお役人的でない、誠意のある御答弁をお願いします。
  49. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 この技術家庭科につきましても、十分専門家が用具等について検討して出したものでございますから、私がここでこの材料は抜くべきだとか、これは不備だとかいうようなことは、いまそれだけの判断を持ち得ないのであります。でございますから、むしろ今後の改定の際に、専門家にもこの問題についてどういうふうに考えるのかということを千分に考えてもらいますとともに、たとえば、いまのこのかんなを裏返しに使うということの使い方は、防護装置を用いて、これは私もしろうとでございますけれども、当て木をやってやるというのが通常の形だそうでございますが、そういうものをうっかり欠いてやったような場合に、不慮の災害が相当起こるというようなことはあるわけでございますから、現実の問題としては、指導者に対する注意と、それからできるだけ安全防護の措置をとるということを指導要領課程でやっていく、他面、この問題を専門家の間の十分な討議にゆだねたい、かように存ずるわけでございます。
  50. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私は専門家でないから、ここで何とも言えないというような御答弁ですが、あなたは初中局長でしょう。しかもこの事件は、さっきから申しておるように、きのうきょう起こったんじゃないのです。完全実施する前に、すでにこれができたときからこの問題を識者は指摘をしておる。皆さんのきらいな日教組の第九回全国教研集会で、これが出たその翌年でしたか、三十四年の千葉の集会において桐原葆見先生が、今度出たこの機械についてはよほど気をつけないといけないということを指摘されております。それ以後年々、技術家庭科の問題として民間ではいつも問題になっている。おそらく全国の指導主事などをお集めになったときには、問題になったようなことがあったのじゃないかと思います。まして三十七年に完全に実施しなければならなくなりましてから、さっき申し上げたとおりいろいろな事件が続出して、年々こういう事件があとを断っていない。にもかかわらず、きょうこの場になって、専用家でありませんから私はここでどうこうは言えませんというような、のんきなことを言っている姿勢が私は納得できないのです。まあしかし、そう申してもあなたのほうで責任を感じないというのでは、あとは道徳の問題ですから、私はこれ以上この点については申し上げませんけれども、私は、なまじこういうものを国家基準制などといっておおように取り上げるために、あやまちがあってもそれを直すにすみやかでない。何だかんだ補強をやって生き延ばさせようとする、そして改定の時期にそっとそれを抜いてしまって過去の責任は何も感じていないというような、そういう取り運び方をするとすればこれは重大だ。もっともっとこういう教育課程改定問題については、現場の教師や民間の学者の広い意見等も胸を開いて聞く態度、そういうものの中でまた新しい英知とかあるいは誤りとか、創造的なくふうとかが出れば、それを敏感にこの学習指導要領なり、あるいは教科書をつくるような場合に取り入れられるような道を広く開くという姿勢が私は必要だと思う。  最近伺いますと、いままた小学校学習指導要領が近く改定されるということで、教育課程審議会等で中間答申がなされるというようなことも聞いておりますけれども、きわめて極秘裏にこれが行なわれている。前には、かなり中間でも、こういう方向に行っているということが、それとなく、別に公表しなくても民間に自由にわかって、いろいろな意見が活発に出る、そういう情勢だったのが、最近こういう問題について非常に秘密主義が横行しておる。しかも聞くところによると、これはうわさでございますから私はそういう事実がないことを願いますけれども、教科書会社等にはこっそりそれが漏れている、こういうような、黒い霧も起こりかねないようなうわさも聞くのです。ですから、そういう問題について私はまたあらためて資料を整えて質問をしたいと思いますので、本日はそこまで私は話を発展させませんが、少なくとも、いま申したような技術家庭科学習指導要領の中の具体的な問題を私はいま提示したわけでありますから、これについては、もし不適当なことがあって学習指導要領改定の際に考慮するというならば、私は、そういう言い方だけでなしに、いま現にこの手引きによってやっていけば相変わらず出るおそれがあるのですから、至急これを差しとめるとか訂正するとか、そういう臨機の処置をとるべきだと思いますが、そういうことについてひとつ大臣の御所見を伺います。
  51. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 いま率直に申しまして、実はこの指導要領の内部のこまかい点につきまして、私も勉強が非常に不十分でございます。ただいまの長谷川委員技術家庭科に対しまする御指摘は、私どもとして非常に示唆に富んだ御指摘であったと思います。いま申されましたように、局長としましては、指導要領自分でいま変革するというようなことを御答弁できないのは私も当然だと存じますが、しかし、現実に先生指導能力とかいろいろな問題を考えますと、非常な危険を伴うこれらの問題につきましては、やはりこの改定を待って措置をするということでなしに、これらに対処する措置をとらなければならぬと思うのでございます。四十一年に通牒を出したばかりでございますし、これに対して適当な措置をいたしたいと考えますのは、それらの措置を含めまして私も早急に検討いたしたいと思います。
  52. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私の持時間がきましたので、私は学習指導要領につきまして、なおもう一つ具体的な例として国語教育、特にかな文字教育の問題についても取り上げてお尋ねをしたかったのでありますが、これは次の機会にまた譲ることにいたしまして、本日は技術家庭科の具体的な問題にとどめますが、先ほどちょっと申し上げたとおり、ぜひひとつ教育課程改定学習指導要領を改めるというような時期には、多くの意見を十分に聞いて、明るいオープンな姿の中で、しかも全国の教育に当たっている方々や学者、専門家の英知と経験というものが生かされるような、そういうやり方を考えていただくように強く要望し、ただいまの大臣の御答弁はたいへん誠意にあふれたものと解釈いたしまして、早急な御善処を重ねてお願いして私の質問を終わります。
  53. 床次徳二

  54. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 たいへん時間が制約されておるようでありますから、要領よくお尋ねしますので、明確にお答え願いたいと思います。  中央教育審議会に今般、今後の教育の非常に長期的な、そして根本的な問題について御諮問になられたわけであります。大臣にお尋ねいたしますが、今回新しく衣がえをいたしました中教審に諮問をされました、その諮問の内容というのは、この説明要旨にございますように「基本的な制度の改革を提案するものもあり、また学校教育の根本問題についての指摘もあるように思われます。」そのあとに、「学校教育制度全体のことを考え、その根底にある国家社会の実態を念頭において多角的にくわしく検討し、総合的な対策を明らかにする必要があると思います。」こういうことで、日本は戦後二十年を経てまいりまして、戦後は、戦前と変わった新しい憲法のもと、教育基本法のもとにおける教育制度というものが進められてまいったわけでありますけれども、それがここで、さらに今後の相当、数十年間にわたります長期の問題ということを検討願う、こういうことで諮問をされたと理解してよろしいですか。
  55. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 全くお説のとおりでござい摂して、戦後におきまする六・三制新学制は、日本の民主教育、日本を平和国家として建設する意味におきまして、相当有意義な学制改革であったということは認めますけれども、しかし、日本の伸展とともに、長期な観点におきまして将来日本の教育制度はいかにあるべきかということは、もはや基本的な態度におきまして、いまやそういう調査なり研究を開始すべきときがきておると存じまして、この機会に中教審に諮問をいたしたわけでございます。
  56. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日本の教育という非常に大きな問題の方向をこれから定めていただこう、御検討いただこう、こういうことであるわけでありますが、それならば、この重要な中央教育審議会委員をお選びになられたその基準というものを御説明いただきたいと思います。
  57. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 中央教育審議会委員の選定にあたりましては、できるだけ各界各方面におきまする専門的な、また一般的な御意見をお持ちのお方を、できるだけ優秀なお方を選ぶという態度で選んでまいったわけでございます。
  58. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 昭和二十六年の十一月八日、教育刷新審議会が、中教審の任命について建議をいたしております。その建議の中において、「中央教育審議会委員の選任は左の方法による。」ということで、「文部省の内外に設置されている法定の審議会等から、」あるいはその他各団体からということで、非常に、いま大臣お答えになられたように、国民各層の御意見を反映できるような委員を選べ、こういうことでいわれておるわけであります。そしてその第三項で、「文部大臣は、委員候補者のうち、教育・学術・文化の分野から十名または九名、政治・社会・産業・経済の分野から五名または六名を基準として委員を任命する。」こういうふうに刷新審議会は第三十五回の建議でいたしておるわけであります。今回、七月三日任命されました各委員が、ただいま教育刷新審議会から示されておりますこの各界、政治、社会、産業、経済、教育学術分野、こういう面でどのようにこの人たちが選定をされておるか、お答えいただきたいと思います。
  59. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 大体いまお示しのことのようなつもりでお願いをしたわけでございます。
  60. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、教育刷新審議会の建議の、委員選任にあたっての基準というものは守られておるのでありますか。
  61. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 守ってまいっておるつもりでございます。
  62. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それではお尋ねいたします。政治の分野はどなたでありますか。
  63. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これに書いてありますのは、政治、社会、産業、経済の分野から五名または六名とございまして、これらをひっくるめた意味においてどなたが政治の分野、こういって政治家という判定をしておるわけではございませんが、この項に入る方を五名、こういうことで考えておるわけでございます。
  64. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 具体的にどなたでありますか。
  65. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 この政治、社会、産業、経済という分野から考えまして選んだのが、古賀国際電信電話株左会社参与、それから平林たい子作家、藤井丙午八幡製鉄副社長、細川隆元評論家、諸井貫一秩父セメント社長、こういうことになっております。
  66. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 たいへん不明確のようでありますが、一応形式としてはその建議が残っておるように、いまお答えになられました。しかし、大臣答弁は決して明確ではございません。しかし、このことを一つ一つ追及いたしておりますとたいへん時間がかかりますので、そこの点は了解をしないままでありますけれども、先に進めてまいりたいと思います。つまり、さてだれかと言われてみると、いろいろ頭を突き合わせて検討してみなければ答えられないように、決してそうした基準にはのっとっていないわけであります。そのことをまず指摘いたしておきたいと思います。  では、次に、文部省の法的な地位というものについてお尋ねをいたしたいと思います。文部省の権限というものは、これは明らかに、機構面でいきますならば国家行政組織法、それから教育面でいきますならば教育基本法に基づく、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  67. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 そのとおりだと存じます。
  68. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、文部省設置法第五条にあります文部省の権限というものからいいまして、大きく言って文部省の権限は何でありますか。
  69. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 文部省の権限と第五条にございますが、この条文に従った権限でやっておると思います。これを一々申し上げるのでございましょうか。
  70. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは少し議論を進めます。  文部省の大きな法的な権限というものは、まず、教育基本法の第十条において、「教育は、不当な支配に服することなく「国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」次に、「教育行政は、この自覚のもとに、教育目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」このことが教育基本法上からいった教育面における文部省の権限だと思いますが、そのことが一つ、もう一つは、文部省設置法の五条、先ほど文部大臣も言われました、そこの第一項の十九、都道府県または市町村教育委員会、教員に対する指導助言、この二つだ、大きく言いますならば、そういうふうになりますが、いかがですか。
  71. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 大きく分ければ、そういうふうになると存じます。
  72. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 確認をいたしました。つまり物的条件の整備、それから指導助言、これが文部省の法的な権限であります。このことをいま大臣から私は確認をとったわけでありますがはよろしいですね。  次に、憲法二十六条で、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」こうなっております。そこで、問題は、親の権利でありますが、教育に関する親の権利というのは、民法の第八百二十条、「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」 こういうふうになっておりますが、そのとおりでよろしいですね。
  73. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 法律規定のとおりだと思います。
  74. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 次に、学校教育法の二十二条、ここに保護者としてのことを定めております。つまり、前のほうに云々あって、「小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部に就学させる義務を負う。」こういうぐあいにして、親としての義務を二十二条において課しております。さらには、教育基本法の四条、「国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」このように親の義務というものを明確に定めております。よろしいですね。次に、世界人権宣言の二十六条——たいへん話があちこち飛びまして恐縮でありますが、大事な問題ですから、ひとつよく聞いていただきたいと思います。二十六条に、「何人も、教育を受ける権利を有する。」こういうふうにして教育についての内容を定め、さらにその第3項において、「親は、その子に与えられる教育の種類を選択する優先的権利を有する。」よろしいですね。親の教育については民法の八百二十条、学校教育法の二十二条、教育基本法の四条、そして広く世界的に言いますならば世界人権宣言の二十六条、このように親の権利、義務を定めております。このことは、明治憲法下における問題とのたいへんな違いでございます。明治憲法のもとにおいては、義務教育を受けさせなければならないという臣民の義務があったわけであります。このことはこのように確認をしてよろしいですね。
  75. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これは、ある条文におきましては権利といい、ある条文におきましては義務と書いておるわけでございます。明治憲法の場合は義務だけという意味合いにおいて、明治憲法と違うんじゃないかとおっしゃるのでございますが、その点においては、確かに親として子女を教育する権利を有するという面におきまして相違があると存じます。
  76. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、明治憲法との違いということをいま大臣がお認めになられた。つまり、今日の日本の教育というものが戦前と変わっておりますのは、明治憲法のもとにおける教育勅語に基づいた義務教育というものと、戦後の義務教育というのは内容が違うわけであります。憲法二十六条は明らかに、すべて国民は、法律に基づき、能力に応じて教育を受ける権利を有すると、このようにたいへんに変わってきておるわけであります。ですから、この憲法二十六条をどのように具体的に実施をしていくかということが、今日の日本の教育の最大の問題点であるわけであります。そうした明治憲法下との違いについては、先ほど大臣がお認めになられたとおりでありますから、そこで、そういうこれまでの私が申し上げました点——明治憲法下における教育というものと、新しい日本国憲法のもとにおける教育というものとの違いを大臣がお認めになられたその上に立って、中央教育審議会の性格についてお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  中央教育審議会は、他の審議会と比較をいたしまして、非常に権限的にも違う面があるわけであります。この憲法二十六条を受けてこれを具体的に実施をしていこう、教育内容をきめていこうというのが、文部省の中にあります審議会の中でも、なかんずく中央教育審議会が重要な位置を占めておるわけでありますが、文部省設置法に定められております各種の審議会の中で、大臣といたしましては、この中央教育審議会の位置づけをどのようにお考えになっておられますか、お尋ねをいたします。
  77. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 文部省にいろいろな審議会等がございますが、中央教育審議会は、文部省の重要な業務でございます教育、学術または文化に関することにつきまして、その基本的な重要政策について調査審議をいただくというので、文部省としては重要な審議会として位置づけをいたしておるわけでございます。
  78. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 各種の審議会の中で第一義的な位置を占めておりますかどうですか。
  79. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 その事柄によりまして一義とか上下とかいう区別はできないと思いますが、基本的な文部省審議会というふうに文部省は考えておるわけでございます。
  80. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、私が先ほど戦前の明治憲法下における教育と戦後の新しい日本国憲法下における義務教育との違いというものについて、大臣にお尋ねをし、確認をとったわけでありますが、そのような教育基本法なり学校教育法なり民法なり世界人権宣言なり、そういうもので規定をいたしております条文というものを、今日の中央教育審議会が受けとめておるとお考えになりますかどうですか。
  81. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 もちろん、この中央教育審議会が今後の教育の基本問題につきまして調査審議はいたしますが、これを文部省が実際に教育の面におきまして実施いたします場合においては、その答申を受けましてやはりその必要な事項については国会に提案し、法制化いたしまして、そして国家意思として決定をいたしましたものを文部省実施する、こういう関係になると存じます。
  82. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私のお尋ねにそのままお答えにはなっていないのであります。つまり、最初に委員の任命の基準についてお尋ねをいたしました。そして今日の親の権利なり義務なりということについても、いろいろ確認をとりました。そういうものがこの審議会の中で、いわゆる戦後国家行政組織法に基づいて設置をされております審議会というものの中で、この中央教育審議会が、私が先ほど指摘をした点を十分に受けとめておる審議会になっておりますかどうですか、お尋ねをしておるわけであります。
  83. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 もちろん、審議会の性格はその線に沿いまして答申をする機関だと存じております。
  84. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは憲法二十六条、これは「すべて国民は、」と、こういう形で受けております。国民の権利を憲法上定められております。国民の権利というのは「すべて国民は、」と受けております。国民の権利というのは二十五条、二十六条、二十七条、第三章全体に「すべて国民は、」というのが——もう一つ十三条、十四条がございますけれども、なかんずく基本的人権として、戦後、日本国憲法が大きく変わりまして、基本的人権の尊重という点で考えますならば、憲法二十五条、二十六条、二十七条が十分に検討されなければならぬわけであります。憲法二十五条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」この二十五条を受けとめております一番大きな審議会は、社会保障制度審議会であることは申すまでもありません。その点はお認めになりますか。
  85. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 さように存じます。
  86. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 社会保障制度審議会は、御承知のように社会保障制度審議会設置法というのがございます。そして任務及び権限、勧告権、そうしたものについては第二条で止めておりますし、委員の任命については第五条で定めており、国会承認人事にもなっておるわけであります。ところが、中央教育審議会は文部大臣の一方的な任命に終わっておるわけであります。それから二十七条の「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」この二十七条を受けております審議会はたくさんございます。雇用審議会もそうであります。あるいは職業安定審議会もそうであります。こうした各種中央審議会がございますが、しかし、これら二十五条を受けておる審議会、二十七条を受けております審議会、そして二十六条を受けております中央教育審議会というのは、比較をいたしてみますとたいへん違うのです。このことを私はこれからもう少し詰めていきたいと思います。  中央教育審議会は、二十五条を受けた社会保障制度審議会や二十七条を受けた雇用審議会なり中央職業安定審議会なりと比較いたしますと、たいへんに低い地位にあるわけであります。このことは、審議会の機能、性格、それらの上からお認めになりますか。
  87. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 国会の承認人事の中には入っておりませんけれども、中央教育審議会の任命につきましては、これは閣議了解の人事になっておりまして、文部省としては最高の地位を持っておると考えておるのでございます。
  88. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは主観的な感じであって、制度的なものではないわけです。そこで、まず具体的にお尋ねをいたしますが、中央教育審議会の答申は、国家意思を決定する際必ず通らなければならない機関でありますかどうですか。
  89. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 私どもは、基本問題について審議会に格間をいたしまして、諮問をいたしたものを国の施策としてあらわします場合に国会に提案するのでございまして、文部省のやっておりますことを全部中央教育審議会を通さなければならぬとは考えておりません。
  90. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私はそう言っておるのではないのです。立法過程におきましてこの中央教育審議会——私はここに行政管理庁の「審議会等調べ」という四十二年三月二十日現在の資料を持ってきております。ここには、政府の中に置かれております。内閣なりあるいは総理府なり各省なりに置かれております審議会全部がございます。これを私は比較検討いたしまして、その中で、中央教育審議会は、これは主管大臣国家意思を決定する際に付議する必要があるかないかということが明確に定められておるわけであります。中央教育審議会は必要的付議ということにはなっていないのであります。御存じですか。
  91. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 先ほど答えたとおり、全部中央教育審議会に付議しなければならぬとは、私は考えておりません。
  92. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、この中央教育審議会に諮問されたものが法律として立法されます際に、国の教育の基本的な問題については必ず中央教育審議会に付議いたしますか。
  93. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 基本的な問題につきまして諮問をいたしました点について答申をいただくということであって、何が基本的であるかどうかということは、その場合に判断しなければならぬわけでございますが、全面的に中央教育審議会に付議しなければならぬというふうには考えておりません。
  94. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そのことは、日本の教育制度について、たいへん重要な問題について文部省中央教育審議会に付議をしていない具体的な例を後ほど取り上げます。しかし、審議会の役割りというものについては大臣も御存じだろうと思います。  臨時行政調査会が三十九年の九月、中央省庁に対する改革意見を出しておりますが、この中で審議会というものについての任務なりあるいは性格なり、そういうものを明確に整理をしておるわけです。でありますから、中央教育審議会もそれにもとってはならない、こう思うわけであります。戦後審議会を設けてきたゆえんというものは、「行政運営上、各種専門知識の導入、公正の確保、利害の調整、各種行政の総合調整等の目的をもって設置される。」こういうのです。「戦前においては、多く勅令をもって設置され、普通「委員会」と称し、委員の構成には比較的政府職員が多かった。戦後においてこの制度は、行政の民主化」——いいですか、これからが大事なんです。「行政の民主化または官僚行政の打破という観点から、行政委員制度の採用と並んで重視されるようになったが、」こういうふうに書かれておるわけであります。行政の民主化、官僚行政の打破という点にたいへん重点を置かれ、この審議会というものを置いてきておるわけであります。ところが、今日、行政責任の不明確、つまり責任官庁が隠れみの的に利用することがあるが、それはならぬ。行政責任の不明確という点も、この中では指摘をされておるわけであります。今日中央教育審議会委員の任命は、社会保障制度審議会や雇用審議会、あるいは臨時行政調査会、そうしたものと比べますと、文部大臣の一方的な、主観的な基準の判断によって選ばれますので、ともしますと、中央教育審議会文部省の隠れみのだ、こういうふうに指摘をされておるわけであります。この点については文部大臣も十分に御承知になっておる。  そこで、審議会の役割りというものが、このように行政の民主化あるいはは官僚行政の打破、そういう点から非常に重要なものとして指摘されておるわけでありますが この臨時行政調査会の勧告においても、中央教育審議会については明確な勧告をいたしております。御存じであろうと思うのです。教育行政の内容は、党派的利害、特に政党政治からの中立性を保ちつつ、長期にわたって一貫した展望と安定継続した方針に基づいて、公正に決定実施されるべきものである。この見地から、現行中央教育審議会および社会教育審議会を改組統合するとともにその権限を強化して、学校教育行政のほか、社会教育行政、大学学術行政および宗教その他一般文化行政に関し、その制度および運営の総合的・基本的施策その他重要事項について審議するものとするとともに、」、次が大事です。「委員は広く国民を公正に代表する者をもつて構成し、文部大臣はその決定を尊重しなければならないものとする。」こうあるわけであります。  しかし、私が刷新審議会の委員基準等にも触れましたように、今日の中央教育審議会というのは決して各界を代表しておる人ではありません。公の権利、義務というものが定められておりますけれども、そうした点についても十分ではないし、また、教師集団の代表というものが入っていない。中央教育審議会の前の教育刷新審議会には、教師集団の代表として、日教組の代表もこの教育刷新審議会には入っておったわけであります。社会保障制度審議会等については、政治家あるいは労働計代表、雇用審議会においても、労働者代表、中立として学者、そういうものが選ばれて、社会保障制度審議会の委員の選び方、あるいは憲法二十七条を受けました雇用審議会、中央職業安定審議会等の労使あるいは専門的な中立、そういうものの選び方等からいたしますと、今日の中央教育審議会は、臨調が指摘をいたしております欠陥というものを、残念ながら持っておるわけであります。でありますから、私はその点を特に強く申し上げたい。そして都合が悪ければ、中央教育審議会に付議をしないという具体的な例を申し上げたいと思います。  昭和三十一年四月七日、衆議院文教委員会におきまする公聴会において、これは例のたいへんもめました教育二法改正の際の公聴会でございますが、中央教育審議会を建議いたしました、教育刷新審議会の会長であります。元の東京大学の学長である南原先生が、この点について、なぜ教育二法改正について文部省中央教育審議会に諮問しなかったのか、こうたいへん強く言っておられるわけであります。つまり、中央教育審議会委員に南原先生がおられる、ぐあいが悪い、だから中教審に諮問していない、こういうことが明確に出ておるわけであります。そこでこの際、この教育二法改正に際しましては、文部省はこう言っておる。教育二法の改正というものは、日本の教育の根本的な問題ではないんだ、だから根本的な問題を検討願うときには臨時審議会において諮問をいたします。こういうことを教育三法改正に際しては言っておるわけであります。最初に私が、今回の中教審に対する諮問が、日本の教育制度の根本にかかわる長期のものかと言ったことに対しましては、そのとおりだと御答弁になっておるのでありますけれども、この教育二法改正の際に、今後の教育の基本問題については臨時審議会において諮問をする、こういうふうに答弁をしていた当時の文部省の態度からいたしますと、この中央教育審議会というものが、教育刷新審議会から変わって、文部省の一方的な、直属的な、そして文部大臣の都合のいいような委員の任命によって行なわれる中央教育審議会になってまいりましたので、安心をして今回は答申をしておる、こういうことになっておるわけであります。でありますから、そういう基本的な問題、根本的な問題については臨時審議会において諮問をするんだということを言っておりました。その点はいかがでありますか。
  95. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 臨時審議会というものはちょっと私にはわからないのでございますが、中央教育審議会は、これにはっきりありますように、「学術又は文化に関する基本的な重要施策について調査審議」するとございまして、一々法律案を国会に出す場合に、その法律案について中央教育審議会に諮問しなければならぬということは、最初から申し上げておりますように、私ども考えておりません。ただ、基本的に調査審構いたしまして答申をいただきました場合、その中において立法化を必要とする面がございましたならば、これを立法化いたしまして国会に法律として提案するというのが順序でございまして、法律提案する場合に、必ず中央教育審議会に諮問しなければならぬ、こうは考えていないのでございます。
  96. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、憲法二十五、二十六、二十七条において、上下の区別はないと思うのです。憲法二十五条が基本的人権というもので、一番基本にあって、そしてそれに二十六条、二十七条、こういうふうに基本的人権が定められてまいっておるわけであります。二十五条を受けておる社会保障制度審議会あるいは二十七条を受けております審議会というものからいたしまして、二十六条が文部大臣の一方的な任命によって運営をされます中央教育審議会審議をされるというそのこと自体が、憲法の上からいきますと私は制度的に違反だと思うのですが、どうですか。
  97. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 私は違反だと解釈いたしておりません。
  98. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 二十六条は、すべて国民は、ひとしく教育を受ける権利を有する、こうなっておるのですよ。そのすべて国民にかかわってまいります教育の長期の基本的な問題を審議する中央教育審議会が、委員の選任にあたって申し上げましたように親の代表もいない、教師集団の代表もいない、また今日、日本の人口の中で多数を占めております労働者代表もいない、こういう文部大臣の一方的な、文部大臣の気に合った都合のいい、一人一人のりっぱな委員の人々に対してはたいへん失礼な青い分かもしれませんけれども、そういうふうに主観的にいわれざるを得ないような選び方、しかも私が教育刷新審議会の建議でその基準指摘いたしましたように、必ずしも各界を代表していない。こういう教育刷新審議会と中央教育審議会との委員の構成の違い、そしてまた、先ほど臨調の改革意見を取り上げて申し上げましたように、たいへんにもとっておる今日の中央教育審議会が、日本の今後の長期の教育問題を審議する機関としては決して妥当ではないと思うのです。でありますから、文部大臣は、今日の文部省設置法やその他の中から答弁するのが精一ぱいだと思います。しかし、今日の中央教育審議会委員の今後の——実際にもうレールが敷かれ、走り出しておるわけでありますけれども、委員の皆さん方に、私が申し上げましたような憲法や教育基本法というものにのっとりました今日の日本の教育の根本問題というものを審議していく上における重要性を指摘しておかざるを得ないわけであります。これは文部大臣と討論をいたしましても平行線をたどる以外にないと思います。しかし、「すべて国民は、」という形で打ち出されおります憲法二十六条を受ける今日の中央教育審議会は、憲法二十五条や二十七条を受けております各種審議会のあり方というものから出てまいります立法過程を見ますとき、憲法二十六条は不当に低く非民主的に扱われておる、むしろ中央教育審議会というものは今日では憲法違反だ、そこで教育の基本問題をやることは憲法違反だ、こう私は指摘せざるを得ない。  以上をもって終わります。
  99. 床次徳二

    床次委員長 山崎始男君。
  100. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 私は、教育大学の移転問題に関して少しばかりお尋ねをしたいと思います。  たしか五月二十四日だったという記憶でございますが、国立学校設置法の問題に関連いたしまして、この問題を私ちょっとお尋ねした記憶がございます。その後二月余りの間に、あるいは東京新聞、最近ではまた毎日新聞が七月十五日に大きくこの問題を取り上げておるのであります。と申しますことは、文部省は当然御承知かと思いますが、六月十九日の新聞面を見ますと、大学の学長が文部大臣と会われて話をされた。翌日の二十日から一部学生が無期限ストをやっている。たまたま七月の中旬から休暇になりましたから、いまのところ自然的にそれは中止されておる形だろうと思いますが、無期限ストを解いたということをやっておらぬ以上、これまた新学期が始まりますと当然このストは続いていくものじゃないかと考えるのであります。学長は学長で身の危険を感じたかどうか、病気だと称して学校へは数カ月間一日も出てこないというようなことも起こっておるのでございますが、新聞の伝えるところを見ましても賛成派と反対派がある。反対派の理由の中には、表面的には博物館や美術館あるいは資料収集その他で、東京を離れるとそれは学問的な立場から見て非常に不利になり、研究ができないのだというような理由、あるいは通勤の遠い近いというような問題、こういうふうなものが、反対の理由として伝えられておるようでありますが、私はこの表面にあらわれた現出ばかりでなくて、反対をしておる基本的な気持ちの中に二つの点があるのじゃないかと思うのであります。  まず第一点は、これは大学の自治と申しますか、そういう立場から、筑波へ総合大学として移っていった場合に、従来の教育大学の長い伝統がどちらかといえば無視されて、いわば人文系の学問というものが無視されて理工科系偏重の方向をたどっていくのじゃないか、いわばそこに文部省の行政介入というものが起こるのじゃないかという一つの不安が隠されておるのじゃないかという気がしてならぬのであります。  ここで一言私お断わりしておきますが、私自身も私らの党も、学園都市構想というものには賛成であります。私は反対の立場でこれをお尋ねしておるのじゃございませんが、とにかくこういうふうに、もめ続けておる筑波学園都市なんという見出しで大きく報道され、いまも言いましたようなストをやり、教授会などもずいぶんもめておるようであります。こういう事態はまことに不幸なことなのでありまして、一日も早くこういう事態は円満な解決の方向に持っていかなければならない。それには、どういうところにこの原因があるかということをはっきり究明することが大切じゃないか、そういう立場で私はお尋ねをしておるのであります。  いまも申しましたが、総合大学という名前において、その伝統なりあるいはそのすべてのものがゆがめられるのじゃないかという一つの不安、これは大学の自治の問題とも関係すると思うのであります。そういうものが、この騒ぎの根本的な隠されおる原因ではないかという気がするのでありますが、一体文部当局はこの原因をどういうふうに把握されておられるか、この点をお尋ね申し上げたいと思います。
  101. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 終戦後新制大学を私どもつくってまいったのでございますが、新制大学は予算的制約もございますし、終戦直後の問題でございまして、国立大学の編成につきましては、率直に言って無理がございますし、いろいろな面において批判を受けたことは事実でございます。その後、戦後二十年間、私どもとしましては大学の内容なり設備なり、大学にふさわしい大学にできるだけ建設をいたしてまいりたい。しかし、その建設をいたします場合においては、文部省の立場といたしましては、あくまで大学自体の御意思に基づきまして、大学が一致した御希望に基づいて、その御希望を実現するという面で実際やってまいりました。具体的に申しまして、たとえば私の郷里の福岡におきまして、教育大学を統合いたしましてりっぱな大学を建設いたしました。いま愛知教育大学においても、同じく一つに統合した建設が行なわれておるのでございます。  この教育大学の具体的例でございますが、教育大学におきましては、当初から五学部と研究所を一つ、これで発足したわけでございますが、現に大塚の地域は非常に狭隘でございまして、だんだん大学を拡充していくについては非常に不便である。また、他の学部もばらばらにありますので、大学といたしましてこれを一つの場所に統合して、一つのりっぱな総合大学に持っていきたいという大学御当局の非常な希望がありまして、大学自体でいろいろ敷地をおさがしになっておったのでございますが、たまたま筑波の研究都市の建設ということから、ここにもしお見えになるならば、文部省としては相当の地積の、将来りっぱな大学になり得るだけの土地を確保いたしまして、また、その移転についてはできるだけの御協力を申し上げましょう。これは大学の御希望に従いまして、私どもとしてはその土地を提示いたしておるわけでございます。もちろん、あらゆる場合におきまして学内の意思統一ということが先決問題でございまして、その学内は、全学あげて移転してりっぱな大学にしようという御希望になって、それを私どもは実現するように努力して差し上げる、これが私どもの態度でございます。  この東京教育大学につきまして、一応私どもとしては、評議会で筑波移転が決定したということを正式に承っております。もちろん、それにはいろいろの条件がございました。しかし、大学が、いろいろな条件がございまして、そういう条件を成就する場合においては移転してもいいとおきめになった以上は、その条件の整備につきましては、私どもは誠意を持ってその条件の成就をいたしましょう、そしてお移りになるならば、私どもも全力を注いで御協力申し上げよう、こういうことにいたしていくつもりでございますが、学内におきましていろいろな異論がございます。そしていろいろなトラブルが起こっておることは事実でございます。私どもとしましては、できるだけそういう反対の意見につきまして大学自体が反対者を十分納得させるような形において、学内を統一して移転ができるようになりますことを念願いたしておるわけでございまして、大学当局においてはその努力を払っていただきますようにお願いをいたしておるわけでございます。  くれぐれも申し上げますけれども、もともとこれは、文部省が行政的な意図をもちまして、新たにできます大学について理工系偏重だとか、文科系統を無視するとか、そういう気持ちは毛頭ございません。やはり総合大学としましては、人文系、自然系、社会系のすべての学部が、調和のある大学としてりっぱな大学に育てていきたい。この念願で一ぱいでございまして、その一部を重要視するとか、そういうようなつもりは毛頭ございません。
  102. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 東京新聞の夕刊でしたか、文部大臣が閣議でもって、大塚地区に付属の小、中学校と研究機関は残すのだという報告をされました記事が載っておりますが、これはいま大臣がおっしゃった六月十九日に、学長のほうから土地を求めてもらいたいという正式の申し入れがあった。そのときにいろいろな条件がありましたそうですが、いま私、時間がありませんから条件を一々聞くわけにはいきませんが、付属の学校と研究機関を残すということは、やはり学校当局のほうから出たことばでありますか、どうなんでしょうか。
  103. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 付属は、もちろんこれは学校当局からいまの現地に残してほしいという御希望、それから筑波のほうにまいりますと、全教授の方が東京に出て研究なり、いろいろなさいます場合において、拠点を必要とするということで、現校舎の地区に研究所を残してほしいという御希望がございました。これは私どもとしまして、その条件はできるだけ成就しますようにお聞きをしようということでございます。  なお、お尋ねの中にございませんけれども、たとえば教授なり学生が筑波のほうに移ってまいりますと、そういう学生なり教授の生活条件なり通学条件については、向こうに移りましても支障のないように、私どもとしては最大の考慮を払いましょうということもお約束しておるわけでございます。
  104. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そういたしますと、やはりこの問題は学校当局のほうの希望が出ているということなんですが、そうした場合に、本体は筑波へ移っていった、ところがその付属の学校けが東京へ残るということは実に妙な形だと思うのですが、本体が行ったら筑波にも付属の学校をつくるのでしょうか、どうなんでしょうか。
  105. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 福岡でも愛知でも、統合して新しい大学を新しい場所につくりますけれども、付属の移転ということはいまいろいろな問題がございまして、なおまた、生徒児童を付属に集めます関係から現位置を去りがたいという点は、十分考えなければならぬと思います。でございますから、もちろんこの付属はそのまま残していくという方針でおりますが、しかし、今度新しい研究都市ができますと、この研究都市において、相当将来になるかと存じますが、研究者の子弟の教育問題などが起こってまいると思います。そのときに、もちろん公立の小学校中学校をつくっていくということは当然でございますが、また必要が生ずれば現地において付属をつくりましても、何も付属は一つでなければならぬというわけではございませんので、これは将来その状況に応じて考慮してまいりたいと思っております。
  106. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 筑波学園都市というのが完成するのは十年も先になるということなんですが、さしあたって考えられることは、これもちょっと私お聞きしたことがあると思うのですが、学芸大学とそれから教育大学、いまの学芸大学が当然早晩教育大学に名称変更されるだろうという予想をしておるのですが、この点に対する見通しと、いま一つは、東京へ付属の学校を残した場合には、何年か先にはその学芸大学が教育大学になって、それの付属として育成をしていくことはありませんか。当然予想できることですけれども、どうでしょう。
  107. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 いまの学芸大学が教育大学に名称を変更するということは、現に東京教育大学がございますものですから、この名称変更は非常に困難でございまして、やむを得ず東京学芸大学でずっと続けておるわけでございます。  また、付属の移行の問題でございますが、学芸大学としては、必要なる付属を現に実験学校として持っておるわけでございます。でございますから、現在の時点におきましては、それを学芸大学に移行するということは考えていないわけでございます。ただ、非常に将来になって、付属のほうでこちらのほうの学芸大学の付属になりたいんだというような希望が起こるというような場合は、それをむげに断わるということもいたしかねるかと存じますが、現段階におきましては学芸大学の付属に移行するということは考えておりません。
  108. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 文部省の方針とすれば、学園都市へ全学部が全部すっきりした形で行くということが、おそらく私は好ましい姿だと思うのでありますが、現在こういうふうにかなりトラブルが起こっております。一番反対しているのが新聞面でも文学部、これは移転反対という立場をとっておるように書いてあります。教育学部は、移転するかしないかの決定は延期するというような態度をとっておる。あとの学部は賛成だというふうに理解しておるのでありますが、こういう場合に、大学の自治という立場からどうしても反対して、いやでもおうでも反対なんだという立場をとった場合には、その反対をしておる学部は残ってもまあしかたがないという態度なのでしょうか、それとも時間をかけても十分理解をしてもらって、全面的に行ってもらいたいという立場なのでしょうか。この点どうですか。
  109. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 私はいま、文学部とかあるいは教育学部で反対意見があると思いますけれども、しかしこれは、永久に変わらざる意見では私はあり得ないと思います。向こうの学園都市に行きまして、いま何らまだばく然といたしまして、あの野っ原のようなところにこつ然として行くという場合と、あの学園都市がりっぱに研究都市としてどんどん建設が進みまして、そしてりっぱな環境であり、りっぱな教育施設が建設されつつあるという状況になってまいりますれば、また特に東京との間におきます交通機関でございますか、これらが完備され、諸施設が完備してまいりますれば、私は必ず、いま反対されておる方々もきっと賛成されるようになるし、またなるように学校御当局も御努力を願いたい。そしてできるだけ全学が何らの反対なしに、自然な形で移転ができますように願っているわけでございまして、一学部を押さえつけて、おまえのほうが反対するのはけしからぬと言ってするというつもりは持っておりません。できるだけ各学部とも快く移転するという状態を念願しておるわけでございます。
  110. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そうすると、いまのところでは、この問題を早期に解決するという立場から、反対するならやむを得ぬ、もう残ったってしかたがないんだというまでのお気持ちではないようにいまの御答弁でも理解できるのですが、やはりそうなんですか。
  111. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 実は新研究都市を建設いたします場合において、土地の買収計画からあとの配置計画、それらの今後のマスタープランと申しますか、そういうものを作成しなければなりません。そこで、先般閣議でも話がございまして、大体各省において確定的な移転の予定を八月末日までに一応締め切ろうじゃないかという話になっております。そこで、私どもとしましては、やはり教育大学も基本的には移転を御希望になると考えまして、一応予定としては申し入れをしておくつもりでございます。しかし、実際の移転につきましては、前に申しましたように、全学がひとつこぞって移転していただきたいと思いますが、一応申し込みをいたしておりませんと、どうしても大学として環境のいい場所で相当広い地域を確保するということは、申し込み順の関係もございますので、一応八月末には申し込みだけはいたしておこう、こう考えております。
  112. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 八月の末までに大体の予定をきめるというのは、私は結局予算上の問題がからんでおる関係だろうと思うのでありますが、いま一番反対しておる先ほど言いました文学部と、それから移転決定は延期するという態度をとっておる教育学部、こういう二つの学部に対して、当然これは調査費というものが考えられるのですが、きょう現在の文部省のお考え方として、各部に分けた調査費の要求をされるのですか、それとも一括した要求なんでしょうか。
  113. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 私ども調査費を考える場合は、学部ごとということを考えておりませんので、やはり大学に一括して調査費というのをあげていきたいと思っております。
  114. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 研究学園都市に移った場合に、大学の位置づけといいますか、性格といいますか、それに対する構想があれば、一ぺんお尋ねしたかもしれませんが、あらためてお聞かせ願いたいと思うのです。私は最初申し上げましたように、移転反対反対と言っておる表面のことばの裏に、非常な不安感を気持ちの上で持っておるんじゃないかという気がしてならないのですね。そういうことがこういう騒ぎを起こしておる原因だとすると、やはり当局とされましても、このもめ続けておる原因が那辺にあるか、それを究明して、みんなに安心させるようにせなければいけないんじゃないかと私は思うのです。そういう立場からあらためて私はお尋ねするのですけれども、総合大学になった場合の位置づけといいますか、その構想といいますか……。
  115. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 今度の研究都市におきまして、各省各様のあらゆる研究機関があそこに集まってまいります。そうなりますと、その各研究機関の中心的存在に大学がなるのじゃなかろうか。そうしますと、各研究機関がいろんな問題を持ち寄りまして研究の中心的な場にそれをいたします意味においては、国立大学として恥ずかしくないりっぱな大学をあそこに建設しなければ、この研究機関の中心としてその機能を発揮することができないのじゃないか。そういう意味におきまして、私ども、いま反対がございますのは、われわれが大学の御希望に沿ってあらゆる条件ができるだけ完遂するように全力をもって努力をいたし、そして最高の大学をあそこに建設する一つの私どもとしては大きな野心策と申しますか、そういう意図を持っておるのでございまして、そのつくるについては、あくまで大学の御意思に従い、御希望に従ってこれを完成していこう、そうしてりっぱな大学をつくろうという意図があるということがだんだん現実に皆さんにおわかりいただければ、私は現在の御不安は相当解消する面があるのじゃなかろうか。いまわれわれは、文部省はあんなに言っているけれども、どんな大学ができるかわからぬじゃないか、いなかの大学になってしまいやしないか、この御不安があると思います。そういうことのないように、りっぱな大学をあの研究都市の中につくりたい。これは私どもの非常に大きな意欲でございます。
  116. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 最後にお尋ね申し上げますが、文部省はやはり、学校当局からは条件が出ておるというふうなおことばが先ほどあったのですが、これは文部省とすれば金の要ることですから、相手は大蔵省側ということで、文部省からはおそらく、いまの段階ではみんなを納得させるだけの積極的な条件、こうしてあげましょう、このようにしてあげましょうというふうなことがないのじゃないか。ところが、片方は、変わっていく立場とすると、通勤にも不安がある、住宅にも不安がある、いろんな学校としての条件が出ておるやにに聞いておりますが、そういたしますと、反対をする側の人としても、どういうふうな条件をやってくれるだろうか。片方片方文部省の態度を見ていると言いながらも、文部省とすれば、大蔵省という要するに金との関連があるものですから、積極的にそれの意思表示ができないという面が私は多分にありやせぬかと思うのですが、どうしてもこれは円満に解決をするという方針ならば、反対をしておる連中のそういうあらゆる面における納得のいくような、積極的な意思表示をしてやらなければ私はいけないんじゃないか。あんまり口を出しよると、大学の自治の侵害だと言われるかもしれぬ。たとえば金の問題だから、先へ先へ行ったんじゃまずいと言われるようなお気持ちも私は多分にありやせぬか。反面、これを解決するという立場からすれば、もっと積極的に、そういう条件に対してはこうやってあげましょう、ああやってあげましょうというだけの心がまえが私は必要じゃないかと思われるんですが、これがまず一点。  それからいま一点、大学の最高責任者の人が数カ月間も、どういう理由か知りませんが、学校へ出てこないという、こういう態度は、えてしてこういうトラブルのときには、まあこれはあらゆるいままでのわれわれの体験からも言えるのですが、実際言いますと必要以上に刺激するものなんですね。こういう点は、私は改めたほうがいいのじゃないか。何もなぐりも、殺すわけでもないのですから、堂々と私は学校へ出ていくべきだ、こういうふうに考えますが、これが第二点。  この二点に対して、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  117. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 今度のこの研究都市の建設ということは、たまたま東京の過密化に対処する国策といたしまして、国といたしましても相当な資金的措置をいたすことは、これは当然に覚悟いたしておると存じます。この点は、大蔵大臣も閣議においてはっきりと申しておるのでございます。したがいまして、その国策の線に沿いまして、われわれはこの教育大学を移転いたしますということについては、十分学校御当局の御希望に沿うことをお約束をしていくことははっきりできると思います。特に最近におきましては、国立大学におきましてはおかげさまでだんだんよくなってまいりました。特にそういう統合をいたしまして、新たな土地に移りました大学が現実に建設されておる姿を皆さん見ていただけば、これは必ずりっぱな大学になり得るということは御推量いただけると思います。  それから学長問題でございますが、この大学に学長が御出席できない、これは一カ月間ばかり入院をされておりましたが、その後もできないで、校務は校外においてとっておられるというような状況は、私どもはなはだ残念に存じます。しかし、先般実は国立大学の会議をいたしまして、学長が御出席になっておりましたが、その会議の場まで学生が押しかけてくるというような状況、それから学芸大学であの高坂学長が学生にやはり取り巻かれてお倒れになった。大体学長というのは相当な年齢の方が多いのでございますから、御健康上の問題もございまするし、やはり最近におきまする学生運動というのが、きのうの都庁において起こりましたようなああいう矯激な姿をとるということは、私はきわめて残念に存じます。暴力でなしに、平穏裏に話し合いをするというのが学生のあり方であってほしい、これは私ども心から念願をいたしておるのでありまして、学長が堂々と学生の前に出て、そして学生を説得するというような状況に学内の問題はあるべきではなかろうか。これは、私どもは心から念願をいたしておるわけでございます。
  118. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 以上で打ち切ります。
  119. 床次徳二

    床次委員長 有島重武君。
  120. 有島重武

    ○有島委員 今期国会におきまして文教委員会でもって取り上らげれた諸問題の中で、その進渉状況につきまして二、三質問いたしたいと思います。  初めに基本理念につきまして、教育基本法の第一条の見解、また期待される人間像の中の「生命の根源」という一句につきまして、これは教育のあらゆる施策の出発点でもありますし、その一つの目標となるわけであります。これが非常に主観的な見解の交え得る問題でございますので、これについて広く文部当局、また学識経験者、教職員、また父兄、それから学生、生徒、児童、各層のアンケートをおつくりになるというふうなお話がございました。これは来年度になさるというお話でございましたけれども、その時期、規模、方法などについて——アンケートのとり方の方法というのは非常に問題もあろうと思います。それで来年度の予算のことももうすぐに問題になることと思いますけれども、この問題の進捗状況につきましてお尋ねいたします。
  121. 木田宏

    ○木田政府委員 いまお尋ねの意味が、社会局の立場から事務的に考えまして、ちょっと思い当たる点にかみ合わないので、たいへん恐縮だと思っております。ただ、いま青少年の意識問題について、来年度何か予算を準備するというようなことは考えておりません。何かお心当たりの点、もう少し具体的にお尋ねいただければと思います。  いま、一つ関連して思いつきます点は、実は総理府で毎年いたしております世論調査、これは二十本程度総理府の管轄の部局で世論調査をいたしますが、その世論調査の項目といたしまして、各省からの意見を求めてまいりますので、私どもといたしましては、これは前年度中だったと思いますが、四十二年度の世論調査の項目として、青少年の意識調査ということを考えてほしいという希望を出しておきました。その実施につきとしては、いま事務当局の間でだんだんとこの調査内容、やり方等について相談を進めておる段階でございまして、まだ具体的なものには至っておりません。
  122. 有島重武

    ○有島委員 この問題につきましては、今国会の予算委員会の第二分科会でもって一度文部大臣よりお約束をいただき、重ねまして当委員会におきまして、五月十九日の質疑において確認いたした問題でございます。これが心当たりがないと言われますとちょいと心外でございますが、もしよかったらこれを読んでもよろしいですけれども、きょうは非常に時間が足りないというお話ですので……。
  123. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 いま社会局長が心当たりがないというふうに申し上げましたが、いま局長がちょっと触れましたように、総理府において世論調査をいたすわけです。その中に、私どもとしましては青少年の意識調査実施してほしいということで、希望を申し述べまして、いま具体的な項目について、またそのやり方について相談をいたしておるのでございまして、文部省といたしましては、できるだけ青少年の理想像とかあるいは職業観、家庭観、交友観、つまり青少年の価値観を明らかにするような意識調査実施したい、こう考えまして、その方法等につきましていま打ち合わせをやっておる段階でございまして、本年これを実施したいと思っております。
  124. 有島重武

    ○有島委員 そういうような多少の行き違いがおありじゃないかと思いましたので、あえて御質問したわけでございます。それで、この問題を提出いたしましたときに、実は今年度青少年に対してアンケートをとるというようなお話でございました。それはそれといたしまして、いま教育基本理念の問題の中でもって、人間の価値を高めるというような問題につきましてはどういうことを教師側で思っているのか、また、父兄たちが、自分のうちのむすこたちをどういう目的でもって教育してもらっているのか。子供たちに学校は何をするところかと尋ねますと、試験勉強をするところだ、試験準備をするところだ。それから、父兄方は、学校の点数がよくなることを望んでいる。ごく通俗的なことでございますけれども、そこにいま文部当局としても、政府全体としても、日本の教育について非常な大きな関心を払い、そしていろいろな施策をしているわけでございますけれども、その出発点においてすでに当局と教職員と父兄と青少年と、この四者の間に見解の相違がはなはだしい。また出発点と同時に、教育の究極の目的ということについても非常にまちまちである。方法論だけが空転している。万が一ある片寄った思想、行き方のもとにこの機構を使えばどんなにでも使えるような、そういうようなおそれを、なまの表現をしてしまえば、政府側でも日教組に対して心配をしておるし、日教組側でも文教関係の施策を強固にしていきたいということを願っていながら、強固にし過ぎるとこれはどういうふうに運用されるのかというような疑念もあるわけでありますし、これは何もそうした点については意見を統一してしまえという主張ではなしにおのおの各層の人たちがどのような考えを抱いて努力をしているのかという点を少しでもはっきりすることができれば、いま民主主義の世の中でありますから、お互いの立場をほんとうに尊重して、そこにさらに有効な運営をしていくことができるのじゃないか。そういった点から、いま申しました教育をめぐる各層からのアンケートをおとりになるようにしたらどうか、そういう主張をしたわけだったのです。ですから、ただいま大臣お答えの、ことし総理府のほうからこうした企画があるというお話がございましたので、その際に、それでは来年度にそのことを実施なさったらいかがでしょようか、そう申し上げましたところ、大臣からは、来年度にはそのアンケートをとります。そういうお答えがございました。これは操作としても非常にむずかしいことになりますし、それからその方法について、これはまだ具体的なものはないようでありますけれども、ここでは、どういうところに付託されてそれを行なわれるのか、その方向だけでも聞かせていただきたいと思います。
  125. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘のように、青少年教育のいろいろな施策を進めてまいります場合に、基本的にいまの青少年がどういう考え方で生活をし、取り組んでおるかということをできるだけ的確に理解いたしますことは、私どもはもとよりでございますが、末端で青少年の指導に当たってまいります社会教育関係者あるいは教職員にとりましても、非常に参考になるところ多かろうと思っております。従来ともこの青少年のそうした意味での動向につきましては、私ども関心を払っておったのでありますが、総理府の関係部局におきまして昭和三十五、六年のころから青少年に関する世論調査を幾つか重ねてまいっております。総理府の世論調査を担当しますところで、そういう青少年に関する世論調査として、青少年がどういう事柄に関心を持っているか、どういうグループを形成しているか、あるいは農業についてどういうふうに農家青少年が考えておるか、あるいは年少労働者生活意識に関する調査というような世論調査も行ないました。また、私どもも、たとえば一番直近のものでは、中野区が東京教育大学の社会教育関係者の教官に委嘱をいたしまして、青少年の意識と行動というようなことを調査いたしたりしております。それから、文部省の系列でも、昭和三十四年でございますけれども、教育研究所連盟というところが中心になりまして、十五歳−十七歳の青年のものの考え方について調べたことがございます。しかし、総理府のほうでいたします世論調査は、総理府がそのときどきに適当と思う委託先に委嘱をいたしまして調査をさせておるようでございまして、私ども今回相談をしております青少年の意識調査につきまして、総理府当局がどこに実施上の委託をするかについてはまだしかと聞いておらぬのでございまますけれども、しかし、青少年がどういう理想像を持ち、倫理観を持ち、職業観を持ち、社会観を持つかというような点につきまして、あるいは交友関係あるいは学習あるいは余暇の取り扱い等についてどういうふうな考え方でおるかという点を、ひとつ適当な世論調査の上実施機関に委嘱をして行なってもらいたいというふうに考えて、相談を進めておるところでございます。
  126. 有島重武

    ○有島委員 せっかくの御答弁でございますけれども……。
  127. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 たぶんお尋ねになっておりますのが、いまのとだいぶん違うのじゃなかろうかと思います。教育に対しまして各層、各立場によって世界観なりいろいろな立場が違うこの状態を、現代の日本のこの現社会においてどういうふうになっておるかをアンケートを出して調査したらどうかというお尋ねでなかったかと思うのでございますが、実は調査の方法その他につきましては非常に困難があるかと存じますけれども、十分その年段、方法等につきましては研究してみたいと思います。私の具体的な考え方としましては、やはりそういうふうに総理府にございます世論調査の機構を利用してやるよりほかにないと思いますが、その具体的な方法につきましては十分検討してみたいと思いますし、また、御趣旨のような動向調査でございますかは必要でございますので、ぜひ実施いたしたいと思っております。
  128. 有島重武

    ○有島委員 ただいまの大臣の御答弁をいただきまして、たいへん幸いに思います。蛇足になるようでありますけれども、いまの教育の問題は、日本の教育制度については、これは先進諸国に比べましても確かに優秀であるが、教育の運営については非常に危惧の念が持たれた。その一つは、青少年自身の問題よりも、むしろおとなの問題が多いのではないかと考えられるわけであります。一つには、家庭のしつけとか、あるいは教育を非常に通俗に申せば立身出世の手段として、また形式的にとらえておる、そういうような問題がいまかなり重要な問題であると思います。この問題は、かなり年月をかけても根本的にみなで追及していかなければならない問題じゃないかと思いますので、十分練っていただいて、来年度には必ず実施していただきたい、そういう要望いたします。  それからもう一つ、これは幼稚園の義務化につきましてお尋ねいたしましたときに、これは学制全般を再検討した上でもって、上に延ばすか下に延ばすか義務化については考えるというようなお話がございまして、その上にこれも父兄に対して、どのくらい幼稚園の義務化を欲しているかという点についても世論調査をするというようなお話がございました。この点はことしじゅうに繰り入れていただけるでしょうか。
  129. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 実はこの幼稚園の義務化の問題でございますが、先般中教審に対しまして、日本の教育制度の全般につきまして長期的に、また基本的に検討していただくように諮問をいたしました。その際に一つの問題点といたしまして、現在の日本の義務教育は九年、これでいいかどうかそうして義務教育の考え方において就学年齢を下げていくのがいいのか、あるいは高等学校制度に取り入れて義務教育にいたすべきか、これらの問題が日本の将来の問題としてあると存じまして、これを諮問いたしました理由の中に申し上げたわけでございます。それで、実は直ちに中教審のほうにおきましては、いろいろ検討する方法その他をいまきめまして、早期にこれの検討にかかるわけでございます。そこでいろいろな調査が要ると存じます。それでその調査の一部分としまして、いま申されましたように、幼稚園の義務化に対して父兄がいかにこれを希望するかどうかというようなことも、この答申の一部分の調査といたしまして、私のほうはその調査をいたすだけの事務的な準備はいたしておりますから、中教審とも十分相談をいたしまして、そういったような世論調査もいたしてみたいと思います。
  130. 有島重武

    ○有島委員 その点は了解いたしました。  それから、これはアンケートとちょっとはずれるわけでありますが、期待される人間像の中の一句につきまして、これは世論調査というよりも、古今東西の哲学者だとか科学者だとか、そういう人たちの代表的な見解を列挙して、私たち客観的にこれを判断していく上の資料にしていただきたいとお願いいたしました。これは文献の上からもできることでありますから、速急にやっていただくように要求しておりまして、これも御返事いただいたわけでございますけれども、これはいつごろに出していただけるでしょうか。
  131. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 実は私どもの手元のほうに資料がまいったのでございますけれども、私、中身を見まして、お答えするのには不十分であると思いましたので、もう一度事務当局のほうに戻して検討させております。たいへん恐縮でございますが、もう少しお待ちを願いたいと思います。
  132. 有島重武

    ○有島委員 では、その点につきましては、なるべく秋ごろまでにお願いしたいと思います。  その次は、大学の問題でございますが、国立大学の二部制を考えてみるというようなお話がありました。この点についての具体的な何かお考えが進みましたらば、お考えを伺いたいと思います。
  133. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 国立大学の二部制を考えてみると申し上げたでしょうか。実は、もちろん検討はいたしてみたいと存じますけれども、現段階におきまして国立大学に二部制をもししくとしますと、現在ございますのは、工学部等におきまして夜間の付属の工業短大を付設いたしておるのはございます。だが、大学自体に、工学部の四年制の学部を理工系につきまして付設するのは非常に困難だと思います。もしこの二部制を実施して可能でございますのはむしろ人文系だと存じますが、人文系につきましては、東京の私立大学におきまして相当二部制をやっておるのでございますが、これらにおきましても、二部制の夜間におられます学生が非常に減少しつつございます。たとえば早稲田等は二部制をやめたように聞いております。でございますので、これは私学との関係がございまして、国立の場合に二部制を設けると、一面におきまして私学に大きな影響を及ぼすというような問題もございまして、にわかに国立大学のほうで二部を置くということには、なかなかこれを説得するのに困難でございます。そういったような両々まちまして早急にこの二部制を国立大学において実施いたしますことは、私非常に困難だと存じます。この前のときにどういうように申し上げたかちょっと記憶がございませんけれども、大学におきまする二部制の実施は、現段階においては非常に困難だと申し上げるよりしかたがないと思います。
  134. 有島重武

    ○有島委員 この前もそのような御答弁をいただきました。それから幾つか論議がございまして、それで私たち実際に勤労青少年と接触しておりまして、そういうような要求はかなり多いわけなのです。それで早稲田がやめてしまったというような話は、これはほかの条件があったのではないか、そういうようなこともございました。これはいまのお話だとまだ全く検討されておらないような状態らしゅうございますけれども、私どもの知っている限り、特に国立大学の文科系統の夜間は推進してもらいたいというような声があるわけであります。それから、天城局長のお話ではちょっとあいまいなのですが、「いろいろ申し上げましたが、いま基本的には、そういう考えのもとにやれるものはやるように考えていきたい、こう思っております。」そういうような御答弁でございましたので……。
  135. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 もちろん、勤労青年のための夜間の三部制ということは必要だと存じますが、第一の問題は、私どもとして、国立大学に夜間部を置いてくれということを積極的にこちらから申しましても、なかなか大学のほうで聞かれないというのが現状でございます。だけれども、大学のほうでこれを設置することの希望がございます場合は、これは私どもは積極的に進んで置くようにいたしたいと思っております。
  136. 有島重武

    ○有島委員 大学の都合で文部省が動くというのは、ちょっと逆じゃないかと思います。これは青少年の要求がある。そのことを申し上げたいのです。そうした要求に従って大学のほうを操作していただくというのが筋道じゃないかと思いましたので、重ねて申し上げたわけでございます。
  137. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 私は、実はかつてこの問題について大学当局と相当交渉したことがございますが、これに対しては大学はきわめて消極的でございまして、強制するわけにまいらぬものですから、現在必ずそういうふうに置きますということは断言できません。なお、御希望なりございまして、今後とも十分努力はしてまいるつもりでございます。
  138. 有島重武

    ○有島委員 次に、学術研究費の問題でございます。先日もこれは大幅に増額するというお話でございましたけれども、これは期日がだんだん、もう来年度予算に近くなってきたわけでございます。それで、大学を含めましての学術研究費、これは今年度の要求もにらみ合わせて、大体来年度の見通しということはわかるのじゃないかと思いますけれども、その点について少し詳しく教えていただきたい。
  139. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 来年度の予算編成の時期が迫ってまいりました。私は、この四十三年の予算におきましては、思い切った学術研究費の予算要求をいたすという覚悟をいたしておりますけれども、現在、学術研究費として計上いたしておりますのは大体四十一億くらいでございますが、これも相当の増額ということをいま考えておりますけれども、いま、まだ計数的にこれだけを要求するということをはっきり申し上げるわけにはまいりません。ただ、思い切った額をぜひ要求したいと思っております。  なお、これに加えましてまだ学術研究費、科学研究費の面におきまして、私学のほうに対しましても、私学調査会で研究費の助成ということが取り上げられておりますので、この点につきましても十分考えてまいりたいと思っております。
  140. 有島重武

    ○有島委員 思い切った増額という話はたびたび伺ったわけでございます。それで、いま申しましたように、もうすでに昨年度及び今年度の要求ということもございますから、大体の可能性、これを伺いたいわけなのです。文部大臣は思い切るとどんなようになるか、そのようなことじゃなしに、大体これは妥当な線があるだろうと思いますけれども、それを伺いたいのです。
  141. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これは国会が終了しますと予算編成に取りかかるわけでございますが、御承知のように、毎年実は各省におきまする概算要求の限度額というのが大体きまるわけでございます。まだ閣内で話し合ったわけじゃありませんが、新聞等によりますと二五%というようなことが称されております。文部省で二五%といいますと一定の限界の金額が出るわけでございますが、しかし、科学研究費だけではございませんで、文部省として具体的に申しますと、私ども四項目か五項目、思い切った増額をしなければならぬ項目を持っております。これらと一般の経費の増、これらを合わせまして、そうして総合的な見地から研究してまいりませんと、ある一つの項目だけを取り上げまして、このくらい要求したいということもなかなか言いづらいのでございます。ただ、その中におきまして科学研究費は、私としては一番と言っていいくらい大きな増額の項目にぜひ持っていきたい、こういうふうに考えておるわけです。
  142. 有島重武

    ○有島委員 ただいま四項目か五項目かと仰せになりましたが、その項目についてお教えをいただけるでしょうか。
  143. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 大体の見通しでございますから、はっきりは申し上げられませんし、これまた、私どもも政党でございますから、党の御意見も伺わなければなりません。しかし、一応私どもの心組みといたしましては、いま申し上げましたように研究費の増額、それから私学に対しまする助成が一つの大きな項目として考えられると思います。それから、これは金額的には私どもまだ計算をいたす段階ではございませんけれども、たとえばこの国会で私ずっと申し上げましたように、宿日直でございますとか超過勤務の問題とか、あるいは教員の待遇の問題、これを私どもは相当大幅に考えていきたい、かように思っております。それに加えまして、オリンピックの関係がございまして、札幌の冬季オリンピックの関係が、新たな項目として相当のものが予定されると思います。いまちょっと頭に浮かんだのはそういう点でございますが、もう一つあるかと思いますが、大体その四項目でございます。私は、大きな項目としてそういうような点を考えておるわけでございます。
  144. 有島重武

    ○有島委員 わかりました。それについては、後にまた時間を得ましていろいろ御質問したいと思います。  それから、青少年の問題でございますけれども、生徒、児童が教師に対して暴力をふるったような事件がございましたときに、道徳問題なんかのことで論議がかわされたことがございました。これに対しては十二分に対処する、そういうようなお話でございました。それからまた、青少年のいわゆる原宿族の問題でも、これは対処するというようなお話がございました。そのことについての進捗状態と申しますか、その後の手の打ち方、それを承りたいと思います。
  145. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 第一点の体罰の問題でございますが、先般も判決がありましたような、著しい傷害事件が起こっておるというようなことが一件新聞に報ぜられております。私ども直近の時期に指導部課長会議を招集しておりますが、これは教育界として当然排除すべきことでありますけれども、かかる時弊にかんがみまして、近々のうちに招集いたしますので、その際に、私としてもう一度十分に注意を喚起したいと考えております。
  146. 木田宏

    ○木田政府委員 いわゆる原宿族ということについて御指摘がございました際に、関係御当局のほうからも、警察治安当局その他総理府の青少年対策のほうからもそれぞれ取り締まりの強化という面についての話、もう一つは、青少年に健全なスポーツの場であるとか、あるいは健全な教養の場を提供するようにつとめるという方向をお答え申し上げたと思います。私どものほうも、ああした問題につきましては、青少年の余暇時間を少しでも意義のある方向へ指導していくための処置を社会教育の面で整えていきたい、このような御答弁を申し上げたと記憶いたしておりますが、青少年に対しまするそのような意味での社会教育の施設というものを拡大いたしますとともに、青少年にいいグループ活動、団体活動というものを勧奨して進めていく、それをまた助長していく、そのような二つの方向で今後の施策を充実していきたい、このように考えておるところでございます。
  147. 床次徳二

    床次委員長 関連質問を許します。山田太郎君。
  148. 山田太郎

    ○山田(太)委員 局長にお伺いいたしますが、先日のいわゆる原宿族の問題ですね。まず第一番に、その後の取り締まり状況といいますか、ああいう人たちのその後の状況を把握していらっしゃるかどうか。私は承知しておりますが、局長はどの程度把握していらっしゃるか。  それから、もう一つついでにお伺いしておきますが、いま施設を設けて、その人たちがそのほうに向くようにしていこうという御答弁が含まれておったと思いますが、それを具体的にどうやっていくか。いつかは爆発する状況に、いま現在なっております。それも御存じでしょうか、あわせて御答弁願いたいと思います。
  149. 木田宏

    ○木田政府委員 その後の取り締まりの関係のことにつきましては、私ども実は新聞その他を通じて承知しておることでございまして、具体的に何回どのような注意をいたしたか、あるいは補導をしたかということは、ただいま私、まだ具体的には承知をいたしておりません。ただ、私も、あの御指摘の前後にかけまして、一、二度現場の様子を見に参りました。私は、特にそのことを半ば意識しながら状況を見に行ったのでございましたけれども、時間の関係がそう深夜にわたるほどでございませんでしたものですから、私も、いろいろな若い男女、あの国立競技場の、代々木の体育館の回り、それから喫茶店の中での零囲気などをちょっとのぞいてきた程度でございまして、あのときに御指摘のありました部屋の中のすみっこの状況までのぞいたわけではございませんでした。しかし、見てまいりまして、私自身、思っておったこととはかなり違ったいろいろな認識を得たのでございましたけれども、今後の方向として、先般の際にもお答え申し上げましたように、あのすぐそばにあります国立競技場は、年間延べ三百万人のスポーツを楽しむ青年に利用されており、その国立競技場のすぐそばの広場では、まるっきり違った、ふうてんといいますか、そういう習性の男女があるいは自動車の中で、あるいは街路上で、あるいはその近くの喫茶店でという状況でございまするので、これは私ども、教育の場から見まして、その違った種類の青年たちをいきなり引っぱってきて泳がすとか、引っぱってきて競技場で走らすというような措置は現在のところなかなかとりにくいことでございますが、私どもが社会教育の場でこれから心がけなければなりませんことは、やはり強制によって何がしかをやるということが文教の課題ではございませんものですから、むしろそういう青年たちが、自分の持っているエネルギーをいろいろな意味で発散できるような場をもう少しふやしていくということを一面につとめると同時に、取り締まりの面につきましては、その取り締まり当局という観点からの協力を願うほかはなかろうではないかということを、私自身、御指摘のありましたあと、二度ほど現地を回りまして感じた次第でございます。
  150. 山田太郎

    ○山田(太)委員 社会教育局長さんの不勉強が——あとのことばは言いませんが、全国的な問題ですから、これは指導通達だけでなしに、ひとつ指導とこれからの状況の把握と、血の通ったいい意味においての善導をやっていただきたい、これを要望しておきます。またこれは機会を改めてお伺いいたします。以上です。
  151. 有島重武

    ○有島委員 では、そのようにさらに認識を深められまして、特にいま原宿だけではございませんで、江ノ島、葉山のほうにも移っているわけであります。これはほんとうに緊急の問題でございます。  それから、ただいまのお答えの中で、余暇の時間の用い方についていろいろ考慮していく、場所についても、また、よいグループ活動、団体活動というようなことを申されました。それについてはどういった団体が現存するのか、それについての調査はいかがでしょうか。
  152. 木田宏

    ○木田政府委員 現在青年の団体と少年の団体、二つに分けて私ども団体の問題は考えておるわけでございますが、少年の団体は、数の上だけから申し上げますと、概算というとおかしいのですが、少年の団体としてその団体活動に参加してまいります者は約七百万前後と私どもつかんでおるわけでございます。少年の団体のほうで最も堅実なものから申しますと、ボーイスカウトとかガールスカウトとか、あるいはスポーツ少年団とか、そういうタイプの少年の団体があるわけでございます。青年の団体にも、同じように各地域の青年団を中心にいたしました地域青年団のグループ、これが約百万くらいと私ども承知をいたしております。そのほか目的ごとに、社会奉仕をするための団体であるとか、あるいは特定の自己の修養研さんを目的とした団体であるとか、いろいろとその団体の目的を掲げたものがございまして、そうした団体に対しまして私どもも定期的に連絡もとり、また、その事業活動の意義の深いものに対しましては保護奨励もいたしております。そのほか、社会教育の関係以外におきましても、宗教関係の団体がそれぞれ青年部、少年部等について御活動をなさっておるということも承知をいたしておるわけでございます。いま特に行政の施策の面でこれらの団体に対しまして気を配っておりますのは、こうした団体が少しでも世の中のためになるような、社会奉仕的な活動を推進してもらえないだろうかということを団体の間にも呼びかけておりまして、そういう奉仕活動に対しまして積極的に予算上も補助をしていく、こういう姿勢で団体へ呼びかけなどをいたしておるところでございます。
  153. 有島重武

    ○有島委員 それでは、ただいまお話しになりましたよいグループ活動、団体活動につきまして、そうした団体の活動の規模であるとか実績であるとか、それについての資料を今度いただきたいと思います。  以上をもって私の質問を終わります。
  154. 床次徳二

    床次委員長 関連質問がありますので、これを許します。川崎寛治君。
  155. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 たいへん予定の時間を過ごしているので恐縮でございますけれども、先ほどの有島委員の、国立大学について夜間の五年制の大学を設置する問題でありますけれども、先ほど私伺っておりますと、ただいまの剱木文部大臣の御方針は、いままで本委員会で検討いたしてまいりました各大臣の御答弁と比べますと、非常に大きく方向が変わっておる、こう私は受け取ったわけであります。私は本委員会で数回にわたりまして、灘尾文部大臣、愛知文部大臣、中村文部大臣に対しまして、勤労青少年のための国立の五年制の夜間大学をという問題は繰り返しいたしてまいりました。これまでの各大臣は、教育の機会均等という立場から、勤労青少年のために五年制の夜間大学を設置することにも積極的にやりたい、それは地域の要望、さらには各大学の自主性、当然でありますけれども、積極的に推進をしていくというのがこれまでの大臣の、つまり文部省の方針であったわけでありますけれども、それが剱木文部大臣になりましてから、どこで消極的に変わったのか。その点は私たいへん大きな変化であるというふうに受け取りましたので、関連をいたして質問さしていただきたいと思います。
  156. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 機会均等の上から、国立大学に夜間部を置くべきじゃないかという考え方は、私、文部省の事務当局におりましたときから、実は積極的に考えておった問題でございます。歴代の各大臣が、積極的に五年制の夜間大学学部を置くというふうに強く主張されてまいりましたことと存じますけれども、しかし、その後いままで、各大臣一つの大学におきましても夜間部を設けたという例がないのでございます。積極的にやります。こう申し上げるのはやさしいことでございますけれども、実施のできないことを、いま私は口だけで申し上げるわけにはまいらないと存じます。私も実は現実に各大学に交渉をいたし、何とかして夜間部を置いてもらえないかということを幾度も交渉してまいったのでございますが、これが文部省として強制できない立場にございますので、今日まで非常に困難をいたしておるわけでございます。有島委員にもお答えいたしましたように、私としましては、最大の努力はいたしますということは申し上げますけれども、必ず置けるということについては、現段階におきましてはお許しを願いたい。いま文部省の立場といたしまして、あらゆる面におきまして大学に相談をいたしまして、大学のほうで積極的な意欲、意図を持って協力していただけなければ、何か文部省が命令できない現状でございますので、いままでの大臣答弁のしかたが多少違ったかもしれませんけれども、事実におきましては、各大臣が御答弁しながらも、夜間部をまだ全然置くことができないでおるわけでございます。その点をひとつ御了承願います。最大の努力はしてまいりたいと存じております。
  157. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 各大学に御相談になられておる、しかし、なかなかできない。そういうことでございましたが、それは実際に設置をしようといたしましても、教官配置の組織の問題等で、昼間の教授諸君にたいへん重い負担をかけるということが設置にあたってあるわけであります。だから、そこらの点を昼間の教授諸君に、研究その他について重い負担をかけないということを文部省が明確に基準を定め、その配置を行なっていきますならば、私は、各地域における大学の夜間学部の設置についても、もっと進むと思う。その点が不十分であるために、なかなか思うように教官自体がこれに乗ってこないという事実があるわけであります。でありますから、もし大学のほうがという御意思であるならば、それらの夜間学部についての教官配置と基準等について、十分に配慮をされるかどうか。その点をお尋ねいたし、そして積極的に進めていただきたいと思うのです。
  158. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 実は私事にわたり申しわけございませんが、私もある私立大学に関係いたしておりまして、その私学の場合でございますと、各教官に御協力願い、夜間部の設置ということがわりあい話ができるのでございます。国立の場合は、むしろ昼間の先生方にあまり御協力願えないで、夜間部だけの教授陣容をつくるくらいな気持ちでお願いをしましても、自分のほうの大学においては夜間部を置くことはどうしても承知しないというのが、いままでの例でございました。しかし、なお御説のごとく一定の基準をつくりまして、今後またあらためて大学当局とも話し合いを進めてまいるつもりでございますが、現段階において——私、自分で体験してまいったものですから、なかなか困難な問題だということを考えておりますので、消極的な御返事をして申しわけないのでございますが、なお十分に努力してまいりたいと思っております。
  159. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 終わります。
  160. 床次徳二

    床次委員長 唐橋東君。
  161. 唐橋東

    ○唐橋委員 時間もたいへんおそくなりましたので端的にお伺いしたいと思うわけでございますが、それは、去る六月二十三日に、文部大臣あてに社会教育審議会から答申が出ております。その答申を中心にしてお伺いしたいと思うわけでございます。  この答申は三項目にわたりまして、その第一項目が父母と教師の会のあり方について、こういう答申でございます。二、三のほうは触れないで、この一項目について触れてみたいのでございますが、この答申を得られまして、この答申の精神を今後どのような形で具体的にお進めになられるのかということを、まず第一点としてお伺いしたいわけでございます。
  162. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘ございましたように、社会教育審議会から文部大臣あてに、父母と先生の会のあり方についてという報告をいただきました。これを今後各県の教育委員会、さらには市町村教育委員会という行政のルートを一面では通じまして、末端のいわゆるPTAの関係者に伝えていくという措置をいたしますとともに、一方では、この答申の作成過程からPTAの関係者の協力を得ておったわけでございますが、PTAの全国組織を通じまして、各県の団体、また市町村の団体というふうにおろしてまいりたいと思っております。
  163. 唐橋東

    ○唐橋委員 そのような方針で進められる場合、ただこの報告書そのままを下部に流し、御協力を得るという形では不満足だと思います。したがって、文部省としては、これに相当いろいろな具体的な事項をつけながらいまのような方法をおとりになると思うのでございますが、それらに対する考え方はどうなんでございましょうか。
  164. 木田宏

    ○木田政府委員 PTAの実際のあり方につきましては、一番問題になっておりますPTAの経費で、どの程度まで学校の運営に協力をするかということの取り扱い一つあろうかと思います。それらの点は、実は一律に全国的にものを申しますというよりも、個々の学校行政当局の行政施策との関連のあることでございますので、そうしたPTAというものの基本的な使命が、父母と教師を中心にして子供教育問題を考えていくことであるという基本姿勢を今回明らかにし、それをどのようにして各府県、各市町村の段階でこの趣旨に近いものに沿っていかせるかにつきましては、各地域ごとの学校管理上の指導体制をあわせて考えてもらわなければならないと思っておるわけでございます。したがいまして、一律に一つのパターンをつくりまして、これでという言い方のことは事実適合いたしませんので、各県の関係者の会議あるいはPTAのそれぞれの会議社会教育関係、さらには学校管理関係者の間の課題として、具体的に末端で処理をしてもらう、このような方向で指導と普及を考えておるところでございます。
  165. 唐橋東

    ○唐橋委員 まあその点は、私も一番中心的な議論をいたしたかったわけでございますけれども、それはもう少しあとにしまして、この報告を見てみますと、目的、性格というところが明白に出されていて、その内容等については了承できる点があるのでございますが、その中でいままでのPTAの功績なり、そしてまた現在持っておるいろいろな弊害的な面、それを直していこうという一つ目的も、その姿勢もわかるわけでございますが、その中で一番やはり中心になるのは、ことばは悪いのでございますが、第三者によるボス的な支配を排除していこう、これが一番の目的であり、性格の中の中心に見られるわけでございますが、これに対してはどのようにお考えになっておりますか。
  166. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘がありましたように、この構成につきまして、「父母と先生の会は、学校に在籍する児童生徒の親および教師によって学校ごとに組織される。」こういう構成を明確にする。それによって、従来は、理解のある部外者を加えることも差しつかえないという表現を表に出しておりましたのですが、これがPTAの本来のねらいからいたしまして、必ずしも適当でないと思われるような部外者が団体の世話役としてだけ入ってくるという事例が、御指摘のように数々出ておったわけでございますので、今度こうした指導の理念、指導方針を明示するにあたりまして、少なくとも単位PTAにつきましては親と教師によって学校ごとに組織する、こういう原則で指導を徹底していきたい、このようにしたわけでございます。
  167. 唐橋東

    ○唐橋委員 いままで一番性格上問題になったのはそこだと思うわけでございますし、先ほどお話しいただいたように、それとうらはらになっておる財政的な問題、率直に申しますと相当学校後授会に経済的な力を出す、それが背景になって役員についておる、こういう点がやはり性格を狂わせた一番中心でないか。こう思うときに、この第三者によるボス的な一つの存在ということになった原因はそこにあると思う。その点は、ひとつ明確に御指導を願いたいと思うのでございますが、再度それらについてのお答えを願いたいと思います。
  168. 木田宏

    ○木田政府委員 この趣旨の徹底につきましては、実は八月の下旬から九月の初めにかけまして社会教育の担当課長会議を開きまして、PTAの運営指導ということを中心にして、相当時間をさいてこの問題の具体的な進め方を相談してみたいと、実はいまもくろんでおるところでございます。ただ、一面には、このことは社会教育関係者から、PTAのあり方につきまして、たてまえ論として指導いたしますだけでは足らない面がございまして、学校運営の処理の問題とあわせて末端のPTAの指導として行なわれなければならない点があろうかと思います。これらの点につきましては、御案内のように、従来から初中局を中心にして学校の管理運営の適正化、公費負担の改善の問題について努力が行なわれておるわけでございますから、両局相まちまして私どもも心がけてまいりたいと思っております。
  169. 唐橋東

    ○唐橋委員 第二の性格上の問題として、父母と教師が対等の立場、同等の立場でこの会は組織し、運営していかなければならない、こう考えておるわけでございますが、それが一つの弊害として、形はそうなっていても、いわゆる役員になっておるTはいいが、その他一般の教師が重大な相談にあずからないときがしばしばあったわけでございます。具体的な例をあげますと、教職員組合が一つのストライキをする、こういうかまえで——その教職員組合は現場の教師でございます。その現場の教師である組合員の意向というものを十分聞かないままに、PTAの名によって、それはもう悪いんだ、そういうことはすべきでない、こういうことがしばしば各地に起こってきていたということも十分御承知であろうと思うのでございますが、今後もそれらの運営について、やはり同等の立場、対等の立場で常に親密に話し合うという性格を確立していく方針をもって、具体的な御指導をどのようにしていかれるかということをお伺いしたいのです。
  170. 木田宏

    ○木田政府委員 実際のPTAの運営は、結局それを構成いたします会員の具体的な行動によって処理されるものでございますから、外部からいろいろとものを申しましたことによって、すぐ右から左と動きが変わるものとは思っておりません。しかし、PTAの本来のあり方がかくあるべきものという理想を掲げまして、それを訴えていく努力はいたしたい。そして従来、PTAというのが名前のようにPとT、教師と父母とが一緒になってつくった会である、こうなっていながら、その運営の実態につきましては、実は父母と教師の会の中で、教師のグループと父母のグループとが別別に二つ存在するような運営の実態あるいは処理のしかた等が目につくのでございまして、これらはむしろ、いま御意見にもありましたように、ほんとうに父母と教師が同じ子供教育という問題を中心にした一つの組織である、こういうふうにして健全な組織の運営を心がけてもらいたいということを強く訴えたいと思っておるわけでございます。
  171. 唐橋東

    ○唐橋委員 さらにそれを具体的に申しますと、何か私たちは、文部省の意図あるものの通達の場合に、PTAに対してというような意図がくると、いわゆる親のほうのPの役員と、それから先生のTの役員というのはほとんど管理職、その人たちがすべてPTAの名によってきめて、それであたかも全部の意思であるというような表現のしかたや、あるいは各地の県段階以上の場合の大会の議決というようなことも、そのような形で行なわれてきた事実を私たちは常に見ておるわけでございますが、今後そのようなことのないように十分なる御指導をお願いしたいと思うのでございます。この点について、もう少し具体的な御答弁をお願いいたします。
  172. 木田宏

    ○木田政府委員 いまの点は、今回私どものもらいました報告の中にも、親と教師が会員として同等の立場で運営されなければならない、したがって、会の運営や会務の処理等を一部の役員や学校の関係者のみにゆだねることは適切でないということに、明確に御意見をいただいております。この趣旨は、先ほど申し上げましたような方法を通じまして徹底をはかってまいりたいと思います。ただ、私どもがこのPTAに接しますにつきましても、これは行政当局を通じて学校の教員にものを言うという立場とは、立場が異なっておるだろうというふうなことを考えております。やはりこれは自主的な団体でございますから、私どもが呼びかけましたことによって、自主的に個々のPTAがそれぞれ自覚をして運営の改善をはかってもらう、こういう基本的な姿勢で、趣旨の意のあるところだけは十分徹底をはかりたいと思っております。
  173. 唐橋東

    ○唐橋委員 もう一つ、自動的な加入か自主的な加入かということに対し、この答申は自動的ではなくて自主的なものを原則とするというように受け取られるわけですが、これに対してはどのようにお考えになりますか。
  174. 木田宏

    ○木田政府委員 やはり私のほうとして、この報告にありましたように、親と教師が一緒になって子供教育のことを考えるという自主的な組織でございますから、その基本的な姿勢としては、自動的に会員になるということはなくて、むしろ積極的に子供教育を中心にして一緒に考えていこうという意欲のある人たちの会、それが団体を育てていく、団体に積極的に参画をしてもらうという姿勢を高めるゆえんだと思っております。ただ一面、このことにつきましては学校の運営上の問題、学校の立場での父母との連絡とか、いろいろなものが反面にからみ合ってくる課題だと思いますので、個々のPTAにつきましてそれをどのように処理するか、これは具体的には一つ一つその学校の運営指導上とのからみもありまして問題になることかとも思うのでございますが、私としては、一応PTAの本来の趣旨はやはり自主的な団体としてそこに結成されるという意味で、学校教師と父母が、みずから意欲のある人たちが参加をして組織していくという基本姿勢だけはやはり示してまいりたい、かように考えております。
  175. 唐橋東

    ○唐橋委員 いまのような基本姿勢でいって、たとえ自主的であっても結果的にはPTAの性格がこの示されたような性格を正しく持つとするならば、結果的には自動的と同じ形が出てくるだろうということを私は期待しておるわけでございますが、これはあとの経費の問題等でも触れますが、いま自動的と自主的の大きな違いの理由として出してみたいと思うのでございます。  それは、高等学校等におけるPTAの入学金の問題でございます。この問題については、前の文教委員会においてもいろいろ論議しましたので、詳しくは触れる必要もないのでございますが、形としてこうなっておることは御承知だろうと思います。入学をする、その入学の窓口で、これこれのPTAのきめた入学金をいただきます。その大部分は施設、建築、そういうものに対する寄付であり、学校のいわば施設充実費という名前を使いながら、入学金をいただいておるのがもう通例になってきておるわけでございます。これは、基本的な考え方は、PTAは自動的であるという考え方であるからこそ行なわれておると思うのであります。それが原則的に自主的であるとするならば、入学後第一回の総会において、このような会費はどうなんだということがきめられないうちは、いまのような形というものは完全にとり得ないと思うわけでございますが、これは性格からも必ず大きく出てくる変化だと思うのでございます。いまのように会員の一つの構成が自主的であるという原則を立てた場合まず出てくる一つ事例として、このような問題に対してはっきりと指示していかなければ大きな混乱が生ずるのではないかと思うので、これらに対する具体的な指導、考え方をお伺いしたいわけでございます。
  176. 木田宏

    ○木田政府委員 ただいま御指摘の点につきまして、私はこう考えるわけでございます。学校の入学の際にどの程度寄付を求めるかということは、学校自体のことで考えますならば、私は当局側で判断をさるべき事柄であると思います。PTAは、ただいま御案内のように、大多数の父兄がそこに加盟をしておるということから、その当局側がどの程度の寄付を求めるかということの判断をいたします場合に、その多くの父兄の加盟しておりますPTAの意見を聞くことによりまして、ある一つの判断を当局側が得ることになる。また了解を得るための一つの場としてそれが使われていくというような感じがいたします。PTAの問題を考えます場合に、結局入学の前、あとでありましても、どの程度校費に対して資金を協力していくかということにつきましては、これはPTAの本来の性格から考えまして決してその本来の目的ではないけれども、それじゃ付随的に父母と教師の会が、そういうことについて全然関与しない別の団体であると言い切っていいかどうかが、実際問題として現在の学校並びにそれを取り巻く父兄の場で考えますと、地域ごとにいろいろなニュアンスの違いが出てまいりますものですから、そこを振り切ってしまいますならば、PTAとは別に後援団体をつくるということで、PTAだけはすっきりした運営ができ得る点もあります。しかし、それは問題の本質的な解決にはならないと思いますものですから、むしろPTAだけ純粋にいたしましても、別に後援団体が同じように二枚看板でできるということであっては、PTAの実質的な改善ということには役立たないであろう。したがって、むしろその辺のところは、学校の管理運営の学校行政上の問題等をからめて指導をしていくほかない。そういう意味では、初中局のほうを中心といたしました学校に対する必要な財政上の措置、それからそれに対します父兄のとるべき判断というものを、自主的な団体として判断できるような方向に指導していきたい、このように考えるわけでございます。
  177. 唐橋東

    ○唐橋委員 くどくなく御返答願いたいのですが、私は端的にもう一度お伺いします。といいますのは、今度は自主加入ですから、入学された子供の父兄に入会を勧誘すると思います。そうして会員としての手続をとっていただくと思います。それが終わらないうちは、いまの入学金というような形のものは取り得ないという考え方を持つが、いまのような考え方は自主加入とするならば当然だと思うのです。だとするならば、入学金はやはり取り得ないものかどうか。取り得るのか取り得ないのか。あたりの状況なんという、こういう社会的環境なんということはありませんから、入学金は取れますか取ることができないものか、ひとつ明確にお答え願います。
  178. 木田宏

    ○木田政府委員 PTAに自主的に加盟する、そしてPTAの会費をどうするかという問題と、それからいま御指摘の入学金という形、入学の際の寄付金という形で、当局側がどれだけのものを父兄から取るかということとは一応論理的には別のことだ、私はこのように考えます。
  179. 唐橋東

    ○唐橋委員 さらにお伺いします。後援会というのがございますね。いまのお答えの中に出てきましたが、うらはらになっております。それじゃPTAが取り得ないとすると、PTA自体がすぐに後援会という二枚看板をかけていまのようなことをします。そういうのは、やはりいまのPTAのあり方から見まして、この辺がPTAを指導する一番の中心だと思うのです。いかにPTAをこうしなさいといっても、今度は看板を変えて後援会でございますと言ったならば、これは何ら指導にならなくて、むしろ複雑になり、そしてさらに弊害を生みます。今度は後援会でございますと言って、逆に後援会がPTAを支配するという形が生まれてくることを私は非常に心配しておるのでございますが、後援会とPTAの関係ではどんなように指導しますか。
  180. 木田宏

    ○木田政府委員 私どもも、御指摘のとおりに心配をいたすわけでございます。しかし、これは自主的につくられる団体でございますから、府県によりましては、いま御指摘がありましたように、いろいろPTAと後援会を別建てでやっておるところもございます。私どもは、PTAをいま一回純粋性だけを強調することによりまして、実際の運営がPTAと後援会に二分してしまうということは、必ずしも好むところではございません。したがいまして、できるだけ父母と教師とが一緒になったPTAという組織で、いまのいろいろな不都合を是正していく、こういう方向で指導してまいりたいと思います。
  181. 唐橋東

    ○唐橋委員 指導をしますということなんですが、この辺をあやふやにしておいたのでは、私は一番心配になってくるわけでございます。ですから、府県の自主性だとか、またその学校の経済的な状況というものも、もちろんございます。と同時に、あまり文部省がこれらに対して権力的な指導をするということは、私たちはまた排除しております。あくまでもこれは自主的なものでなければなりません。ですが、やはり文部省はき然とした指導方針で、PTAと後援会はうらはらになってはいけませんよ、看板を塗り変えただけのものであってはいけませんよと言うようなことを、正しく指導していくということこそが中心だと思うのでございまして、これは性格論の一番中心になると思うのです。大臣ひとつ、どんなふうにお考えになっていますか。
  182. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 PTAのあり方につきましては、いままでいろいろ御質問また応答があったのでございますが、やはり自由加入であるべきであるというこの原則を打ち立てますためには、またPTAの性格を今後正しくあらせるためには、どうてしも一律に入学金とか寄付金というものを強制するという形はとるべきでないと思います。でございますから、この点は社会教育の面からPTAのあり方の指導という面も必要でございますけれども、一面、学校の運営面から申しまして、私ども、できるだけPTAに義務教育の段階において寄付を要請するということのないように、校費は全部公費をもってまかなうという原則を打ち立てまして、これに向かいまして最善の努力をしてまいりたい。そのことが、PTAの性格を正しい性格に返すゆえんであると思います。ただ、ただいまの段階において全部のものができませんのは残念でございますけれども、私どもは、その方向に向かいまして最善の努力をしてまいりたいと思っております。
  183. 唐橋東

    ○唐橋委員 東京都の四十二年三月十三日の通牒、それは東京都の総務局長の坂田正一、東京都教育長小尾乕雄、両氏の名によって関係の方々に、それは学校長もあれば、PTA会長もあれば、あるいは市町村教育委員会教育長、各区の教育委員会教育長、あるいはまた市町村長に、義務教育における私費負担の解消についてということと、さらに公費で負担すべき経費の私費負担の解消についてということ、さらにもう一つは、これからのPTAということで性格が明確に出され、そしてこれに基づいていままでの寄付をはっきりと打ち切り、新聞の報ずるところによると、いままで積み立てておった図書館の二千万——ちょっと記憶が間違ているかもしれませんが、それをもって図書館を建ててくれというのを、これは公費で建てなければならない性質のものだということで、そういう全く自主的なものも打ち切ったということが報道されて、関心を持つ父兄の大きな一つの期待事項にもなってきておるわけであるけれども、このような東京都の態度というもの、そしてここに流れているこの考え方というものは、文部省としては相当重視し、この方向に持っていくべきだ、こう考えておるわけでございますが、これについてはどうでございますか。
  184. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 御説のとおりだと思います。私どもといたしましては、各府県ごとでございますから、財政調整金の配分にあたって、府県単位における運営費の標準を定めるということをもってかなり具体的な通知をやっております。  私どもといたしましては、先般先生の御質問にもありましたように、本年度は比較的運営費について、不十分ではございますけれども、地方財政の中で措置することができました。その通牒を近近——そういう事実を知らせることをいたします際にも、特は従来何回も言っておりますけれども、引き続き公費負担を私費の負担に転嫁しないように、またPTAの会費の値上げをしないようにというようなことをつけ加えて近々出すつもりでおりますし、また教材費の基準等につきましても近々でき上がりますから、そのこともまたそれを促進するものになりますので、その際にも再び注意を喚起したい、そして指導をしてまいりたいと思います。
  185. 唐橋東

    ○唐橋委員 私がいまのような問題を前の委員会で取り上げ、また再度この問題を取り上げた最大の理由一つは、この答申を見たときに非常に私は不満だったのです。といいますのは、一番中心になっておる公費負担に触れていない。触れない気持ちもわかるし、現状もわかります。しかし、やはり今後のあり方としたときに、この触れていない部面を、いま局長が言われたような形でまた触れないで流していったら、当然、先ほど例に出しましたが、入学金の性格が変わってくる、あるいは後援会とPTAという、こういう二枚看板が、強く今度指導すると逆に後援会がPTAに代がわりして、すべて学校の運営に口を出す、こういうことは一切この答申の中で公費負担に触れなかった理由から出てくる問題であって、これにもう少し触れていかなかったならば、この通牒は単なる一片の指導方針にしかならないのではないかという危惧があったので、私はきょうその点を確かめたいために取り上げたわけでございますが、この公費の負担に触れなかったという理由、先ほど理解できました。しかし、同時に市町村の、地方自治体の財政は非常に困難なので、いま申しましたような東京都の財政とは違いますと、こんな形でいったならば、またまたせっかくここまでやってきたものが、その目的があやふやになって、むしろ逆にいま申しましたような弊害が出てくる。こんなように考えますので、この答申で触れなかった点について、具体的に指導の場面ではやはりここに触れない指導というものはあり得ないと思いますので、答申の文にはなくとも、いまの議論の中の精神をもう少し具体的な指導に含めることが必要だと考えますが、これに対する指導の具体的内容はどうですか。
  186. 木田宏

    ○木田政府委員 答申の中で公費負担の問題に触れておりませんことは、いま唐橋委員指摘のとおりでございまして、私も先ほど答えたとおりでございます。実態は、ただPTAの趣旨論だけで押していった場合にほんとうに解決できるかということを気にいたしますものですから、この中に触れないで、個々の現実の課題としてこれを是正してもらうという指導をとりたいと考えたからでございます。具体的なその処理につきましては、むしろ一面学校財改上の課題として、行政当局のほうから、学校の管理当局のほうから必要な学校教育費としての手を打っていく、それにあわせてPTAの予算の組み方その他の指導をしていくということをいたさなければなりません。従来その学校の管理運営上の指導につきましては、初中局長からも答弁がありましたように、学校が財政上の改善問題として長く努力をしてまいってきております。私どもPTAの関係者からの話を聞きましても、もうこの段階におきましてはPTAの本来の趣旨を強く打ち出してもらうことによって、現実の現場における個々のPTAの実際の関係者の方が、PTAの会費の取り方もだいじょうぶいけるところまできつつあるということも言ってくれておりますので、この末端の指導につきましては、財政上の当局側の指導と相まちまちして、PTAの個別の指導というところまで手を差し伸べていけるように骨を折りたいと思っておるところでございます。
  187. 唐橋東

    ○唐橋委員 その場合の指導に、やはり東京都が示したようなPTAとしての正しい予算の形というものは付随させますか。
  188. 木田宏

    ○木田政府委員 東京都と他の府県の場合とは多少様子が違うかと思います。東京都は、主として二十三区大部分が直接都の立場で小、中学校の財政上の処置をとり得る段階にございますが、他の道府県は、道府県自体としては道府県立の学校に対しての処置のとり方はあろうかと思いますけれども、結局小、中学校に関しましては、市町村の財政当局の問題とからめて処理を考えるほかはなかろうかと思います。したがって、他の道府県に東京都と同じような姿勢で指導させることが可能かどうかについては多少問題があろうかと思いますけれども、いま御指摘のありましたPTAの具体的な事業としての経費あるいは会費、そういうもののあり方につきましては、市町村当局の学校に対します財政指導とからめながら本来の方向へ持っていくという末端での指導都道府県に求めたい、このように思っております。
  189. 唐橋東

    ○唐橋委員 私の質問、ちょっとことばが足りなかったので、受け取り方がなんですね。私は、東京都のような形のものを、これは文部省案でございますというような形で、これはなかなか一律にいかないと思います。しかし、東京都の一つの例はこうだ、文部省一つの理想案としてはこうなんだ、これをやはり参考にすべきではないのか——これに従えではなくて、参考にすべきではないのかという点は当然つけていただかなければ、私はこの問題の前進にはならないのじゃないかと思うので、そういう意味でいま御質問申し上げたのでございます。
  190. 木田宏

    ○木田政府委員 実態的にはいま御意見のありましたとおりに、同じ考えを私ども持っておるわけでございます。
  191. 唐橋東

    ○唐橋委員 その場合、生徒会費と学級会費の性格というものがまた当然付随してくると思います。答申にはそれが出ていない。生徒会費、学級会費というものについては、東京都のものにはずいぶん出ているのですが、答申にはあまり出ていないですね。だから、そういう点は指導の中心になるものと考えますが、PTA会費、それから生徒会費、学級会費というものは、こういう性格のものだという指導は十分にしていただきたいと思うのでございますが、これに対してはどうですか。
  192. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 御指摘の点は、東京都の措置といたしまして、東京都の現実の財政調整金の配分に伴いまして、個人負担の範囲を限定して、それ以外は公費負担だ、それはこういう金の計算でこうなるのだ、従来の財政投資がどうだというふうな仕組みになっております。その際に、個人負担の範囲の中にクラブ活動費というものをどの程度の規模で想定をするかということを指導しているわけでございます。八十三円とかいうような指導をしております。この問題は、実はそういうものがPTA会費という名前で取るのがいいのか、そうではなくてこれは個人負担で、教材費と同じように直接徴収するという形をとるのがいいのかというような問題になってくるのだろうと思います。こういうものをPTA会費として入れると、何もかもPTA——いま社会教育局長の言われました、PTAの固有の任務のほかの経費を、手をかりて取るということの機縁になって、何もかもわからなくなるという危険性もありますけれども、現実にはまた東京都の場合でも、個人負担というものを徴収する方法として、PTA会費の中の一環としての形で徴収するということもあり得る。この辺はやはり私ども、一つの研究の課題だろうと思います。  それからもう一つ、個々の府県で、東京都と同じように運営費の標準を定めることによって、父兄負担を解消する方向で努力をする。それについて文部省はどういう態度をとるかということが一つの問題でございますが、先生が御指摘になりましたように、一律指導というような段階ではございませんで、私どもは、学校管理を担当する者の研究会で文部省もだんだんそういうものをつくっていくという研究をしていくべきだ、かように考えておるわけでございます。
  193. 唐橋東

    ○唐橋委員 私がいまお伺いしたのは、PTA会費と生徒会費と学級会費の性格と、その性格による使い道の基本的なもののとらえ方と、これをひとつ区別して御指導願いたいということであって、それをしないと、いまお答え願ったように逆に今度は混線された中にとれるからと、こういう趣旨であったわけなんです。ですから、そういう点は十分な御指導を願いたいと思います。  それからもう一つは、PTA等で私費で頼んでおる職員があるわけでございます。これはこの前も議論いたしましたが、今度当然、このPTAの答申の上において徹底させる場合に、これまた現実の問題としてどのように解決していくかということが大きな問題になろうと思うのでございます。これらの実態の中に立ちながら漸次解消していくという方針はわかりますが、そういう漸次というようなことでなくて、もっと積極的なるかまえこそがこの問題に対しては必要だと思うのでございますが、これに対してはどうですか。
  194. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 先般もお答えいたしましたように、なお職種によりましてこの私費負担、いわゆるPTA負担という形の職員が存在しております。それが、あるときは学校図書館の従事者であったり、あるいはあるときは養護の教員であったり、あるいは給食の従事員であったりということでございますから、私どもは機会を見て、この定数改善の際にそういう実情を勘案しながら施策を進めていっておるわけでございます。先般の定数法改正の際に、新しく図書館の問題を入れましたのもそういう趣旨が頭にあったわけでございまして、今後の定数改善の際にはこういう問題をよく見ながら考えていくとともに、また一面では、多少無理してでも私費負担の職員を雇うことを抑制するということを、指導としては出していかなければならない、かように存じます。
  195. 唐橋東

    ○唐橋委員 だいぶ時間もおくれましたのでここでやめたいと思いますが、最後に、いままで議論しましたような会計の問題は、やはり今後最大の努力の中で解決していかなければならないと考えておりますが、ただ会計の中でできることは、私はやはりあると思います。これは金の取り扱いのルートだと思う。これだけはひとつ明白に指導していけば、この性格は、いまの金の一つの問題があったとしても、これだけは、取る取らないは別として、はっきり指導できると思いますが、これに対してはどうなんですか。
  196. 木田宏

    ○木田政府委員 御指摘の点は私どももそのように考えておりまして、PTAで扱う金の取り扱いの適正化という点は十分指導してまいりたいと思います。
  197. 唐橋東

    ○唐橋委員 その場合、東京都の一つの例を申しますと、父母会員が徴収して会計担当にいくというようなことで、できるだけ子供が通学の途上に金を持って歩かなかったり、あるいは担任の教師がその事務に非常にわずらわされなかったり、あるいは間違いを起こさなかったりする点で、この集金の方法だけは、いままでの問題よりは非常にすっきり指導できるものだと思いますが、もう少し、指導しますということでなしに、どういう考え方が一番いいか、これは御検討していますか。
  198. 木田宏

    ○木田政府委員 これも御意見でございますが、PTA関係者の重要な問題点として、関係者にこの問題の改善についての研究をしてもらうということを考えたいと思うのでございます。
  199. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 関連。答申に出ている基本線あるいは先ほどの討論等々から、私は、過日も申し上げましたけれども、持論としてPTAというものは社会教育団体ではない、学校教育団体だという考え方をますます強くしたのです。学校教育団体というとちょっとおかしいのですけれども、やはり学校教育の外郭団体だというように思うのですが、その点相変わらず、PTAというのはやはり社会教育団体だ、したがって社会教育局が扱うのだという考え方については、これっぱちも微動だもしないですか。多少お考えになっている点はないですか。これは社会教育局長に聞けば返事はわかっているので、初等中等局長に一言……。
  200. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 いままでのPTAをめぐるいろいろな時弊というものを順次解消していくためには、私は、社会局がいまとっている態度を推し進めるほうがいいと思っております。結局、この前先生にもお答えいたしましたように、実態はいろいろな側面を持っているということは事実ですが、その側面をそのまま放置いたしますことは、いままでいろいろ御質問を受けた点の改善に役立たない方向にいきやすいのであって、その点は、私は社会局のとっておる態度を推し進める、これが一朝一日にはならないにしても、そのほうを推し進めることがやはり弊害をなくしていく方法であろう、私もそのように考えるわけであります。
  201. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 今日PTAがこうなってきたのは、文部省責任が非常に大きいですよ。たとえば、子供がとっくに卒業してしまっていない、あるいは孫が行っているようなおじいちゃんが代々PTAの会長なんて、そんなばかなことがあり得なかったのをいままで黙認してきた。今度も、ああいう答申が出なかったら、それさえも指導できなかったと思うのです。こういう答申に名をかりてそれが出てきたから、おまえこうせいと言うのだろうと思うけれども、要するに、これは学校教育に密着したのですよ。これを社会教育団体だというふうに規制して、いろいろなことを学校教育に関係のないところまでやらせるものだから、けっこうこんなふうになっちゃったという傾向も私はあると思うのですよ。これは文部省の長い間の持論のようですから、いまここでどうこうと言いませんけれども、しかし、やはり特に教師が入らなければならぬ、親だけではだめなんだということになってきますと、これはいろいろまたそこから、社会教育団体であるか学校教育に近い団体であるかということになってくると、また問題が浮き彫りにされてくると思いますけれども、いいです。わかりました。
  202. 床次徳二

    床次委員長 本日は本会期の最後の委員会であります。委員並びに関係各位には、長期間にわたり熱心に本委員会の審査に御協力くださいましたことを、厚くお礼申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時四十三分散会