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1967-07-05 第55回国会 衆議院 文教委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月五日(水曜日)委員会において、 次の通り小委員及び小委員長選任した。  文化財保護に関する小委員       久保田藤麿君    河野 洋平君       竹下  登君    中村庸一郎君      三ツ林弥太郎君    八木 徹雄君       小林 信一君    斉藤 正男君       長谷川正三君    鈴木  一君       山田 太郎君  文化財保護に関する小委員長 中村庸一郎君 ――――――――――――――――――――― 昭和四十二年七月五日(水曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 久保田藤麿君 理事 坂田 道太君    理事 中村庸一郎君 理事 西岡 武夫君    理事 八木 徹雄君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       稻葉  修君    菊池 義郎君       久野 忠治君    河野 洋平君       葉梨 信行君    広川シズエ君      三ツ林弥太郎君    唐橋  東君       斉藤 正男君    三木 喜夫君       山崎 始男君    吉田 賢一君       有島 重武君    山田 太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 剱木 亨弘君  出席政府委員         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      天城  勲君  委員外出席者         参  考  人         (東京教育大学         教授)     朝永振一郎君         参  考  人         (東京大学教         授)      江上不二夫君         参  考  人         (早稲田大学教         授)      野村 平爾君         専  門  員 田中  彰君     ――――――――――――― 七月四日  委員河野洋平君、竹下登君及び吉田賢一君辞任  につき、その補欠として大石武一君、佐藤文生  君及び吉田泰造君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員大石武一君、佐藤文生君及び吉田泰造君辞  任につき、その補欠として河野洋平君、竹下登  君及び吉田賢一君が議長指名委員選任さ  れた。     ――――――――――――― 七月四日  公立学校学校医学校歯科医及び学校薬剤師  の公務災害補償に関する法律等の一部を改正す  る法律案内閣提出第一四九号)(予) 同月三日  各種学校制度確立に関する請願池田清志君紹  介)(第二二四二号)  義務教育における毛筆習字必修に関する請願(  池田清志紹介)(第二二四三号)  同(金子岩三紹介)(第二二四四号)  同外二十三件(登坂重次郎紹介)(第二二四  五号)  同(三池信紹介)(第二三二七号)  同(石田博英紹介)(第二三八四号)  スポーツ施設の整備及び開放に関する請願(福  永健司紹介)(第二二七五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任の  件  連合審査会開会に関する件  日本学術振興会法案内閣提出第九〇号)      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本学術振興会法案を議題とし、審査を進めます。  本日は、参考人として東京教育大学教授日本学術会議会長朝永振一郎君、東京大学教授日本学術会議会長江上不二夫君、早稲田大学教授日本学術会議第二部長野村平爾君、以上三名の方方に御出席を願っております。  この際、委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。何とぞ本案について忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、議事の都合上、まず御意見をお一人約十五分程度で順次お述べをいただき、その後、委員からの質疑にお答えをお願いいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、順次御意見をお述べいただきます。  まず、朝永参考人にお願いいたします。
  3. 朝永振一郎

    朝永参考人 私、ただいま委員長から御紹介をいただきました朝永でございます。  きょうは、この学術振興会法案についての御審議に、参考人として忌憚のない意見を述べてほしいという委員長お話でございます。実は御承知かと思いますが、学術会議は先般政府に対して申し入れをいたしまして、この特殊法人学術振興会に関して学術会議として要望を述べたのでございます。そういうことはもうすでに皆さん承知かと思いますが、おそらくきょうは、それの説明を聞くという趣旨で私どもをお呼びいただいたのだと思っております。  学術会議は、政府にいろいろ勧告をしたり、申し入れをしたり、要望したりいたす権限を持っておりますけれども国会に対してはそういう権限は持っておりません。しかし、この重要な問題についてここで忌憚のない意見を述べる機会を設けていただきましたことは、私どもにとってたいへんありがたいことでございます。その点、委員長はじめ皆さん方にお礼を申し上げたいと存じます。  きょう、ここに三人参りましたけれども、私がまず一般的な、ある意味で歴史的なサーべーをいたしたいと思うのでございます。と申しますのは、先般政府に要望いたしましたことの背後にはいろいろと歴史的な背景がございますので、それを御説明申し上げて参考に供したいと思います。それから江上参考人からは、学術会議が、学術振興会にやってほしい事業、あるいはやるときに注意してほしい事柄をまとめてかつて文部省に要望したことがございます。それの内容等説明してもらうことにいたしました。それから法案審議でございますので、勢い法律的な観点からいろいろものを考えていく必要がございますので、そういう点につきましては野村参考人からお話しいただく、そういうやり方で運ばせていただきたいと思います。  それから、時間を節約するために、皆さま方資料をお配りすることを委員長にお願いいたしました。御了承を得たようでございまして、すでに皆さま方の手元に資料が配付されておると存じます。「日本学術会議関係資料」という表題のものでございます。この資料説明も兼ねながら私のお話を進めたいと思います。  まず、先般政府申し入れましたのはどういうことか、これはすでに御承知かと思うのでありますが、この資料の一四ページにございます。「佐藤榮作殿、日本学術会議会長朝永振一郎」という申し入れをいたしました。それをちょっと読んでみますと、「今国会に提案された日本学術振興会法案に、日本学術会議との関係について何等の規定をみないことは、まことに遺憾である。わが国学術振興発展をはかることを任務とする本会議は、従来の経過と新しく設立されようとする振興会目的性格にかんがみ、同会と密接な関連をもつことは当然であると考える。政府はこの点についての措置に遺憾のないよう取り計らわれることを第四十八回総会の議に基づき、強く要望する。」こういう趣旨のものでございます。  この申し入れの御説明は後にまた戻るといたしまして、ここで振興会と密接な関係を持つことは当然であると考えるという点でございます。これは、この特殊法人日本学術振興会の前身と申しますか、いまあるものは財団法人日本学術振興会でございますが、これと学術会議との関係をこの特殊法人がそのまま引き継いで、事業を行なっていかれるということを私どもは期待しているわけでございますので、いまの財団法人日本学術振興会日本学術会談との関係がどういうことであったかということから御説明いたしたいと思います。  この日本学術振興会というのは戦前からあった組織でございますが、戦後の日本学術振興会学術会議とは非常に密接な関係を発足のときから持っていたのでございます。それで、昭和二十三年に学術体制刷新委員会というのがございまして、そこで新しい学術体制の立案について文部大臣報告しております。それが資料の二ページにございます刷新委員会委員長兼重寛九郎先生から文部大臣森戸辰男氏にあてての報告でございますが、二ページの下のほうにございますが、戦前に、日本学士院学術研究会議日本学術振興会、この三つのものが、日本学術体制の上で非常に重要な機関として存在しておりました。これが終戦後、いろいろ体制を刷新するということで、刷新委員会というところでこれをどうするかということを検討いたしまして、その結果、研究会議日本学士院というものを多少形態を変えまして、日本学術会議と戦後の日本学士院にする。そして学士院学術会議の中に含ませるという結論を出したのでありますが、学術振興会につきましては、やはり私的な性格を持つ学術奨励団体として残しておく。そして、日本学術会議がその任務を遂行するにあたって、私的団体において行なわせることを適当とする事業は、振興会に担当させるというふうな考え方をしているわけでございます。それから、振興会機構役員等は、そういう目的に合うよう改組すること。この報告を受けまして、学術研究会議が廃止されまして、日本学術会議にその機能の一部、それから学士院の持っておりました戦前機能の一部、これを学術会議が引き継ぐ、そして学術会議外郭団体のような意味学術振興会を存置する、そういうことになったわけでございます。  それで学術会議がいよいよでき上がりましたわけでございますが、戦前振興会はたくさんの委員会を持っておりまして、総合研究あるいは共同研究というようなものを、そこで政府の予算をもらいまして実施していたというようなわけでございますが、これらの委員会学術会議において継承してほしいというふうな希望振興会が表明してまいりました。それが資料の二〇ページにございます。それからまた、この資料の二一ページに、やはりそういうことを兼重学術体制刷新委員会委員長学術会議総会に来て述べておられるわけでございます。そういうわけで学術会議の中に、それではどういう仕事学術振興会にやらせるか、外郭団体としてやってもらうかということを検討する委員会ができたわけでございます。そういうわけで、この財団法人学術振興会は、設立の当初から学術会議と非常に密接な関係を持ちつつ生まれてきたわけでございます。  その後、学術会議委員会におきましていろいろ検討いたしました。そして、ある程度の結論がだんだんに煮詰まってまいりましたのがこの資料の五ページにありまして、これが昭和二十六年でございますが、学術会議から吉田茂総理にあてて、振興会にこういう仕事をやらせるという報告をしているわけでございます。そこに幾つか書いてございます。これはお読みいただければよろしいのでございますが、財政的に政府学術振興会を――やはり当時民間の研究機関が財政的に非常に困難を感じておりましたので、政府がこれを財政的に補助するということがございまして、学術会議が、どういう研究機関に補助するのがいいかというようなことを審査する役をしておりましたが、学術振興会についても、これ自身研究機関ではないかもしれないけれども研究を援助する機関であるという意味で多少拡張解釈いたしまして、やはりその補助金政府が出すようにというようなことを政府申し入れているわけでございます。それで、当時非常に財政困難で、いろいろ学術振興会がやっていた仕事学術会議で引き取ってくれないかということさえ言ってきたわけでございますが、こういう方針で、やはり学術会議自身研究を行なうということはできないにしても、科学研究費を学振のいろいろ総合研究委員会のようなものが得られるように、それから学振自身政府の財政的な援助を得られるように、そういうふうなことを学術会議としてやった、そういうことがございます。  それから学術振興会事業といたしまして、ユネスコクーポンという制度を学振にやってもらうというようなことを申し入れたことがございます。これは八ページにございます。このクーポンからの収入が幾らかあるというので、少しでも学術振興会に財政的な余裕を与えるというねらいもあったわけでございます。  それからさらに、流動研究員あるいは奨励研究生という制度学術振興会昭和三十四年からやっておりますが、これも学術会議政府勧告をした事業の一つがここで取り上げられた。この資料の九ページに第一、第二、第三、第四と幾つか並べてございますが、その中で第三のところに、「流動研究員制度を導入すべきである。」というのがございますが、これが学振の重要な事業として三十四年から行なわれることになりました。  それから昭和三十七、八年ごろになりまして、文部省のほうで学術振興会をさらに整備拡充するという考え方が出てまいりました。そのときに、特殊法人というような考え文部省は出しております。それを受けまして、資料の一二ページにございますが、そういう場合には学術振興会において、ここに六つのことが書いてございますが、こういう条件を満たすように拡充をしてほしいということを言っておるわけでございます。この内容につきましては、先ほど申し上げましたように、あと江上参考人から説明をしてもらうことにいたします。  それで、こういうふうにして今日に至ったわけでございますが、寄付行為等におきましても、先ほど申しましたように、こういうふうな関係にふさわしいような寄付行為をつくれというようなことが、刷新委員会のほうから出ているわけでございます。つまり資料の三ページにございます「機構役員等は、右の目的に適合するように改組すること。」となっておりますが、それで、その結果、戦後の寄付行為が――この資料の二三ページをごらんいただきたいと思いますが、「本会に左の役員を置く」、「理事二十一名以内」、「理事は、日本学術会議会員」というふうになっておりまして、学術会議会員が二十一名の理事のうちに七名入るというふうな役員構成になったわけでございます。その後、昭和二十七年にこの寄付行為が改正されましたが、その寄付行為によりますと、日本学術振興会会長というものを置きまして、その会長日本学術会議会長が兼ねるという形をとっております。それから、「理事日本学術会議において推薦したもの八名以上十名以内」というふうになっております。これは二四ページにございます。こういう帯付行為に変わりましたが、その後、またさらに二六ページにございますような寄付行為に改正されまして、これが、ごらんいただきますとわかりますように、理事は、学術会議会長が入るということになっております。  それから評議員は、「日本学術会議会長および同会議から推薦された者九人以内」というふうになっております。  この得付行為で現在に至っているわけでございますが、こういうふうに、その構成等においても、寄付行為において学術会議と特殊の関係にあるということがはっきりと規定されているわけでございます。こういう性格を、私どもは、新しくできます特殊法人学術振興会においても引き継いでいただきたいというふうに希望していたわけでございます。  そこで、この資料の一四ページにございます申し入れに戻ってまいるわけでございますが、私ども、この振興会特殊法人になるという考え文部省が持っておられるということを聞きまして、一昨年の夏ごろから、いろいろ学術会議としてこういうふうなものにしてほしいということを文部省側に、これは事務レベルでございますけれども、注文をしていたわけでございます。ところがこの法案を拝見しますと、立法技術の問題、いろいろあるかと思いますのですが、学術会議とのこういう特殊な関係というものがどこにも出ていないということを知りまして、これはたいへん遺憾に思ったのでございます。そこで「まことに遺憾である。」というふうに言っているわけでございます。それで、いま申しましたように、歴史的な経過をたどりましても、またこの法人のつくられます趣旨からいいましても、密接な関係を持つ必要があるというふうに学術会議考えているわけでございます。この点についての措置に遺憾のないよう取り計らってほしいと言っているわけでございます。この措置ということでございますが、学術会議といたしましては、この措置の中に法律的な措置、つまり法律の中に学術会議と特殊な関係を持つということが何らかの形であらわれるような、そういう法律的な措置も含めまして政府に要望したわけでございます。  だいぶ時間をとりましたので、一応次の参考人にこの辺でバトンを渡しまして、もしあとでまた御質問等があればお答えいたしたいと思います。要するに、政府申し入れましたこのわれわれの気持ちと、それからそういう申し入れに至りましたいろいろな歴史的な背景を御参考までに申し上げましたので、どうかわれわれの意のあるところをくんでこれからの審議を進めていただきたいと思うわけでございます。
  4. 床次徳二

    床次委員長 次に、江上参考人にお願いいたします。
  5. 江上不二夫

    江上参考人 私、東京大学江上でございます。先ほども朝永さんからお話がございましたように、私は科学者の一人といたしまして、おもに学術振興会事業、ことに日本学術会議政府勧告いたしまして現在の日本学術振興会が取り上げておられる事業内容、それを学術会議立場から、学者立場から、どういう意味があると考えているか、あるいはまた、その運営あるいはそれの今後の発展についてどういう希望を持っているのかという点について、簡単に申し上げたいと思います。  私どもは、日本科学が健全に発達するために、従来日本学術振興会が、日本学術会議政府への勧告などに基づきまして実施してこられましたこと、それがその趣旨に沿って拡充されることを望んでおります。また、日本学術振興会のその他の事業につきましても、それが科学者自主性を尊重して行なわれ、文化の向上、国民の福祉に寄与するものとして発展するものであるならば、それが拡充されることをやはり望んでおります。学術会議から勧告したものを主とし、その他の重要なものを含めて二、三の例をあげながら、私ども考え方をお伝えしたいと存じます。  まず、国際共同研究国際交流ということが、学術振興会でやっております事業の重要なものでございます。国際共同研究国際交流がますます必要であることは、いまさら申すまでもありません。国際共同研究といたしましては、日米科学協力事業国際共同研究事業などがございます。科学に関するものとしてはこの二つがございます。いまそれについての希望を述べます前に、日本学術会議国際共同研究あるいは国際交流あり方につきまして、かねがね五つの原則というものを発表しております。私どもは、日本学術振興会がされるそういうものが、そういう原則に沿っているようにいままでも努力してまいりましたし、またこれからもそうでなければならないと存じております。それは、第一は、科学国際協力は平和への貢献を目的とすること。それから第二に、科学国際協力は全世界的であるべきこと、特定の国とだけ交流することによって全世界との交流が妨げられるようなことになってはならないということでございます。それから、科学国際協力に際しては自主性を重んずべきこと。それから第四番目に、科学国際協力科学者の間で対等に行なわれるべきこと。第五番目に、科学国際協力の成果は公開されるべきこと。これが学術会議科学国際協力科学国際交流などの実施にあたっての前提としての姿勢と申しますか、考え方でございます。私どもは、学術振興会国際共同研究国際交流がこの原則によって行なわれ、発展することを期待しております。この趣旨に沿っての日米共同研究はもとより必要でありますが、現在の日米科学協力事業あり方は改めらるべきことが多々あると存じますので、今後こういう線に沿ってもし日本学術振興会が承認になるという機会がありましたならば、さらにその機会にこの線に沿って改めらるべきものであると考えます。  国際協力国際共同研究に私ども感じますことは、特に米国以外の諸国との共同研究が、日米のそれに比してあまりにも微々たるものであるということであります。この点を学術会議はかねがね感じまして、日米以外との国際協力を促進するということを提唱してまいりまして、それで現在、幾らか学術振興会でそれが実施されるというふうな形になっております。御承知のように、日本学術会議日本科学者代表機関でありまして、したがって、それぞれの専門日本の多くの各学会と密接に連絡しております。学術会議の中には、それぞれの専門に対応する物理学研究連絡会とか、化学の研究連絡会とか、それぞれの研究連絡会がありまして、それがおもな日本学会と密接に連絡しております。そういうような組織になっておりますので、たとえば国際共同研究にどういうものをすべきであるかというようなことにつきましては、日本学者希望されることが、そういう連絡の道を通して学術会議に反映いたすわけでございます。それを学術会議で集めまして、そうして、こういう国際共同研究をするのが適当であろうというふうなリストを出すことができます。そうしてその学術会議考えますところでは、そういうリストに基きまして――実際財政的その他いろいろな事情で、全部を実施するということはもちろんむずかしいことでございましょうから、そこに学者の総意を反映して、たとえば学術会議から推薦したような委員というものによって構成された委員会で、どういう国際共同研究を取り上ぐべきであるかということを学術振興会でやれるようになることが望ましいと思います。現在まで必ずしも十分にそういうことが行なわれておりませんし、また、ことに日米協力はそういう形になっておりませんので、従来の事情もあって直ちにそういうふうに持っていくということもいろいろ困難ではございましょうが、理想といたしましては、日米協力を特別扱いしないで、世界のあらゆる国との交流ということを考え、しかもその国際協力事業の選考ということには、学術会議から推薦した委員というようなものから構成されている委員会というようなものをつくって、そこでどのような国際共同研究をすべきであるかというようなことを、十分討議をしてやっていくというふうに持っていくのが望ましいのではないかと考えております。  次に、科学者国際交流でありますが、実情交流でなくて直流だというようなことを、私ども日本におきましても、また、海外に私ども参りましたときにも、日本はどうして外国学者を呼んでくれないのかということをしばしば言われるわけであります。その直流も、日本から科学者日本費用で派遣するというのはきわめて微々たるものでありまして、大部分は外国費用日本学者が呼ばれておるというふうなのが圧倒的に多い、直流というのが実情であると言っても過言でないと私は思います。世界的に科学者交流がますます盛んになりつつあるときに、学術振興会外国人流動研究員外国学者日本学術振興会費用で呼ばれて日本研究をし、あるいは共同研究をし、あるいは講義などもするといったような、学術振興会外国人流動研究日本の学問の進歩に大きく寄与してはおるのでおりますけれども、それはきわめて少人数でありまして、昭和三十八年以来ほとんど伸びておりません。外国人流動研究員制奨励研究員制性格にかんがみまして、格段にそれが拡充されなければならないと思います。こういう外国人流動研究員制拡充ということにおきましても、やはりそれは世界のあらゆる国との交流であり、また、その人選などについても十分学術会議連絡して、適当な組織によって人選されるという形にならなければならないと存じております。  日本学術会議勧告で取り上げました重要なものに、流動研究員、奨励研究員の制度がありますが、これは日本科学研究に大きな役割りを果たしております。奨励研究生と申しますのは、日本の大学院の博士課程におきましてりっぱな成果をあげた人たちが、さらに残って研究をする。そういうことで、残ってその課程を研究する、あるいはさらにそれと関連ある適当な研究機関で勉強する。それは、本人が、さらに将来の日本科学発展に大きな寄与をするようなりっぱな研究者になるということのためであるとともに、また、その重要な研究自身がその奨励研究生機関において完成される、そういう非常に重要な意義を持つものであります。また、流動研究員のほうは、すでに研究者として活動しておられる方々が、あるいは専門の違った者が協力することによって大きな成果をあげられる、あるいは地方の、必ずしも十分な設備のないところの研究機関あるいは大学の研究機関におられる研究者が、大きな研究機関に行って、自分の日ごろ考えていることをその大きな研究機関研究者と協力をして完成することができる。そういうことは、すでに研究者として活動しておられる方々の、いわゆる研究者としての能力をさらに格段に発展させるとともに、大きな学問的な成果をあげるものであります。そういうものが日本の学問に非常に大きな意義を持っておるのでありますが、これももともと日本学術会議勧告に基づいてつくられたものでありますけれども、最近はほとんど――むしろ昭和三十六年以来と言っていいほど、その費用も増加しておりません。その希望が非常に大きく、日本の学界の要望が多いにもかかわらず、増加しておりません。そういうのは二、三の例にすぎませんけれども、私どもは、学術振興会のこれらの事業が、日本の学界の進展に対処して大きく拡充することを望んでおります。  それにつきましても、これらの事業日本学術会議と事項ごとによく連絡して、その実施の方法を考究し、科学者自主性を尊重することを望まないではおられません。日本学術振興会が発足するにあたりまして、その点が明確にされることを希望するわけでありますが、現に説明されております法案でありますと、その点が非常に明確でない。私どもが非常に期待しておるこれらの事業が、ほんとうに私どもが安心してできるような体制において取り上げられるのか、それに疑問を感ずるので、私どもが安心してこういう学問の発展のりっぱな意味を持っている仕事ができるような法律、あるいは運営が行なわれることを希望しているわけです。
  6. 床次徳二

    床次委員長 次に、野村参考人にお願いいたします。
  7. 野村平爾

    野村参考人 学術会議第二部長の野村です。  今度の法案につきまして、多少私ども意見を申し上げておきたいと思うのですが、先ほど朝永学術会議会長おの話の中にありましたように、第一点としましては、学術振興会学術会議との関係というものが、非常に沿革的にも歴史的にも、密接な関連があるということの御説明があったわけです。そのとおりでございます。現在、そういうような形で財団法人である学術振興会の中には、理事として、実は私ども三人のほかにもまだ理事が入っておりますし、評議員としても、現在会長を交えて十名の評議員がおるわけでございます。  今度の法案を見ますと、一体学術会議と新しくできます特殊法人との間にどういうような連関をつくれるのかということについて、法律上の基礎になる規定が欠けておるわけでございます。その点を、先ほどから会長も、また江上会長も御心配になって、そうしてその点が遺憾である、こういうふうに申し上げたわけであります。ただ、この点についてもう少し会長の御説明をふえんしておきたいと思うのでありますが、学術会議総会のおりに、この政府に対して学術振興会法に関する申し入れを行ないました過程で論議されたことでございますが、ここには措置を要求するという、そういうことばを使っておるわけでございます。会長が申し上げましたように、この措置というのは立法的措置をも含むんだ、こういうようなことになっておるわけであります。ところが、当日の総会のときには、この点におきまして法律家である人たちは、やはり法案の中に立法的な基礎を持つほうがよろしいんだ、こういう考え方を持ちましてこの修正案を出したわけでございます。その修正案は、法案の中に学術会議と密接な連携を保つという趣旨の規定を入れてもらう、こういう形でもって提案をすべきだという考え方であった。ところが、法律家以外の人たちは、措置といえば非常に幅が広くなるんだ、だからそのほうがいいんではないかという、そういう考え方をお持ちになったようでございます。そこで措置という一般的な用語を使ったわけでございます。ところが、そのときに、その措置というものが、単に行政的措置というふうに考えられては困るのではないかという考え方がありました。そこで、当日の会議におきまして質問が出まして、その措置というものの中には立法的措置、行政的措置、ともに含むのかという、こういう発言があったと思います。それに対して答えは、立法的措置は当然含むのだ、こういうふうなお答えがあったわけでございます。そこで学術会議としては、一番望んだことは、この法案の中に学術会議と密接な連絡がとれるような条項を加えてほしいというのが、率直に言った意見であったわけであります。その法的な基礎のもとに行政的な措置が講ぜられることが、この学術振興会日本学術会議との関係を将来ともに密接にしていって、そのやるところの事業そのものに対して、私どもやめましても、次々と出てまいります第一線の学者たちの総意というものを代表する考え方が反映浸透することが望ましい、こういうような考え方を持っておったわけです。もちろん、そういうことにつきまして、法律措置としては特殊法人にはそういう例がないんだというようなことを岡野審議官が学術会議などで申しておりました。しかし、これは全く例のないことではございません。私は行政法学者ではありませんので、あまりこまかいことは存じませんけれども、たとえば私が気がついたものを一つあげておきますと、日本科学技術情報センター法という昭和三十二年四月三十日法八十四号で出ている法律がございます。これに基づいて科学技術情報センターができたわけでございますが、これの第二十四条を見ますと、「情報センターは、その業務を行うに際しては、できる限り、国立国会図苫館その他の関係機関の文献及び資料の利用を図るほか、関係機関と緊密に協力しなければならない。」こういうような法条が二十四条にございます。その関係機関という意味がどういう意味であるかということは必ずしも明確ではありませんけれども、さまざまな行政機関も含んだそういうものであろうかと私は考えます。そうすると、日本学術会議とそれから新しくできようとしている特殊法人学術振興会法との中にこの種の規定を挿入することは、必ずしも前例がないわけではないんだということをひとつ考えていただきたいと存じます。その理由と申しましては、一つは、特に会長の述べられましたような沿革上、歴史上の事由に照らしてそういうことが言えるのではないか、必要なのではないか、こういうことがあります。それから、学術会議そのものは、実は学術会議法の規定にもありますように、その前文の規定には「日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。」と書いてありますし、第二条には「日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。」こういうような規定がございます。また、三条には「日本学術会談は、独立して左の職務を行う。」として、「科学に関する重要事項を、審議し、その実現を図ること。」第二として「科学に関する研究連絡を図り、その能率を向上させること。」こういうような趣旨の規定がございます。もちろん第四条、第五条にはもう少し具体的な、そういうものに対する政府の諮問に応ずるとか、あるいはこちらから政府勧告をするとか、そういうような事柄が規定してありますけれども、本来の趣旨はただいま申しましたようなところにあるわけでございます。ですから、その趣旨から考えても、日本学術会議と、それから新しくできようとしている振興会とは、内容的にも緊密な連絡がなければとうてい目的は達せられないのではないか、こういうような考え方を実は持っているわけでございます。  先ほど科学技術情報センターのことを申し上げましたが、なぜこういう法案の中にいまのような規定が入ったかというと、ほかの特殊法人とは幾らかこれは趣を異にしておりまして、科学技術の情報センターというようなものは、やはりそういうようなことを取り扱っているいろいろな学術機関と緊密な連絡をとっていかなければ目的は達せられない、こういうところにあるかと思います。私も従来の経緯にかんがみまして、学術会議と、それからこの学術振興会とは、もちろん細部にわたっての具体的研究はともかくとして、その方針というようなものを実現する手がかりとしては、やはりある程度の密接な、緊密な関係を持つ必要がある、そういうことをしなければ、学術振興会というものがもしかりに将来重要な地位を占めてきた場合に、一体学術会議はどういうような地位に置かれるのかということを実は心配しているわけでございます。  法律的に申しますと、ただ憲法八十九条に、この公の金とか、そういうようなものはやたらと出してはならないという規定があるわけでございまして、そういうような規定に基づいて制約が憲法の上で加わっているわけでございます。一般的な特殊法人に関する一般法というようなものは別にないわけでございますから、各目的に応じてその特殊法人をつくる場合の法律というものは、それ独特におつくりになってかまわないのではないかと私は考えるのでございます。法律に禁止規定のない以上、それが一番効率的に能力を発揮し得るような、そういう組織というものをひとつおつくりになるということであれば私は非常にけっこうであろう、こういうふうに考えております。  こまかなこともまだございます。ただ、先ほどのことについて若干追加しておきたいのは、修正案が否決されたということは、普通の人の考え方としては一般的に措置と言ったほうが非常に幅が広いんだ、こういう考え方であるわけです。ただ、法律家のほうから専門的に見ますと、やはりそういうものには法的基礎というものが必要なんだ。ところが、どうも法的基礎が必要がなく、そういうことをどうも御理解いただけなかったのか、つまり立法的措置、行政的措置と言うから広くなるので、そのほうがいいのではないか、そういう受け取り方があったわけでございます。ですから、政府申し入れをいたしました措置ということの中には、学術会議会員の意向としては非常に幅の広い措置、それを御要求申し上げておったのだ、こういうことをこの際申し上げておきたいと存じます。
  8. 床次徳二

    床次委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 床次徳二

    床次委員長 次に、参考人に対する質疑の通告がありますので、これを許します。長谷川正三君。
  10. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 日本学術振興会法案審議にあたりまして、本法案が今後の日本の学術振興上きわめて重要な影響を持つ法案でありますときに、学界の最高の権威であられます朝永先生、江上先生、野村先生御三方の貴重な、しかも率直な御意見を聞かせていただきまして、私は、心から感銘をいたし、また非常に有益であったと思って感謝いたしておるのでありますが、なお二、三の点につきまして御質問を申し上げたいと存じます。  まず第一に、御三方からもそれぞれあったと思いますが、本法案の生まれてくる過程につきまして伺っておりますと、何としても日本の学術振興に関する財政しの困難というものを解決するために、少しでも国費が多く学術振興に使われるためにということの中で、特殊法人になればなお予算がたくさんとれるのではないかというようなことが伏線にあったと思いますが、しかし同時に、そのことが第一線の学術研究者の総意、意向というものを端的にいつも反映して運営されなければならないという点については常に強い御関心をお持ちになっておった、こういうふうに伺ったわけでありますが、本法案の立案過程につきまして、いまのお話を聞いておりますと、なお本法案が実際できてみますと、学術会議はこれでけっこうなんだというふうに全面的に御了解をなさっておるというふうには受け取れない、むしろ非常な心配と強い要望をなおお持ちになっておる、こういうふうに承ったのでありますが、そういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。どなたからでもけっこうでございますが、会長さんから……。
  11. 朝永振一郎

    朝永参考人 これは、私ども申し入れをごらんいただければ、学術会議の気持ちはこれでおわかりだと思います。つまり遺憾であるということを申しております。  それから、措置という中には、立法措置も行政措置も両方含まれておる、立法措置のほうもあきらめておるわけではないという気持ちが、この申し入れにわれわれとしてはあらわれておるつもりでおります。
  12. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 わかりました。明確にいま朝永先生の御答弁がございまして、ありがとうございました。  そこで、日本学術会議というのは、日本における学術研究に関する一番権威のある、かつ、民主的な組織であると思うのでございますが、この学術会議法を拝見いたしますと、先ほど野村参考人が条文をあげていろいろ御説明をくださっておりましたが、その中の第四条に、「政府は、左の事項について、日本学術会議に諮問することができる。」ということで、四項ほどのものがあがっておりますが、私は、本法案につきましては、学術振興上非常に重要な問題でありますから、当然正式にこの諮問があってしかるべきではなかったかと思いますが、政府のほうから正式にこの法案に関しまして諮問がございましたかどうか、お尋ねいたします。
  13. 朝永振一郎

    朝永参考人 事実を申し上げますが、諮問はございませんでした。
  14. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 正式の諮問ということでなしに、何となくいろいろな機会文部省から、こういうような法律をつくるのだというようなお話があったという程度ですか。
  15. 朝永振一郎

    朝永参考人 さようでございます。
  16. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 その点もよくわかりました。  次に、現在文部省科学研究費という予算が組まれておりまして、総額で今年度四十一億かと思いますが、これの具体的な配分は、当然役人が独断的な頭で押しつけるのではなくて、学術会議の御意向というものを十分反映できる措置をとってその分配等をいたしておると思いますが、それは実際にはどういうふうに行なわれておられるのか、どなたからでもけっこうですから、ひとつわかりやすく御説明をいただきたいと思います。
  17. 江上不二夫

    江上参考人 十分お答えできるかどうかわかりませんが、学術会議の中に研究委員会というのがございまして、文部省から、非公式でございますが、研究費のあり方について問い合わせがまいりますので、その研究委員会で検討いたしまして、研究費の基本的なあり方について審議し、学術会議の議を経て文部省に返答いたします。  それから、実際に配分は、学術会議そのものではいたしません。学術会議はその配分の基本方針というものを、いま申し上げましたような形でまとめまして文部省へ通達するということでありまして、実際に配分をやっておりますのは文部省の中の委員会でございますが、その配分をやる委員の推薦を日本学術会議がいたしております。日本学術会議はそれぞれの専門学会意見を聞きまして、それに基づきましてそれぞれの専門についての配分委員学術会議から文部省へ推薦いたします。その場合に、学術会議としては定員一ぱいを推薦いたしませんで、原則としては順位をつけて定員の倍を推薦いたしまして、文部省としてはその順位を尊重して、もしたとえば旅費が不十分だからあまり地方の方が多いと困るというようなことがあると学術会議に相談いたしまして、第二順位の方にお願いするということも学術会議の了承のもとに行なわれることがありますが、原則としては、学術会議の推薦する第一順位の方を配分委員文部省から発令してお願いするという形で行なわれております。
  18. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしますと、学術会議から推薦され、順位をつけた大体倍数の推薦者の中から、おおむねその順位によって尊重して文部省が任命をし、それによって配分をきめていく、ただし、地域的に偏在するとか、何かその他そういうような理由のある場合に、その順位を多少変更する場合には学術会議と御相談の上でこれを行なっている、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  19. 江上不二夫

    江上参考人 そういうふうに慣行としては行なわれております。必ずしも十分それが行なわれなかった例もございますが、現在再びその慣行がまた尊重されるようになっていると私どもは了解しております。  なお、先ほど、私、公式でないというふうに申したかもしれませんが、その非公式というのは、文部大臣からの諮問ではないという意味で私、非公式と申しましたので、文部省から公文書でくるという意味では公式でございます。
  20. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 その委員の選考が、文部省側の何か強い意向で、特に特定の人が排除されたというような例は過去にございましたか。
  21. 江上不二夫

    江上参考人 順位が、いま申しましたたとえば旅費が足りないというような、北海道の人と九州の人ばかり多くては困るといったようなことで、文部省から了解を求められて変更したというようなことでなく、変更された例が一回あるように私、記憶いたしております。その具体的な理由は、私、詳しくは存じません。そのことがありましたので、学術会議といたしましても、こういうことがないようにという申し入れ文部省のほうへ伝えまして、それから少なくとも現在までその趣旨は守られており、これからもそれは守られるというふうに、私ども期待しております。
  22. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ただいまのは文部省科学研究費の配分について御質問申し上げましたので、今回の法案と直接の問題ではないわけでありますが、いままでありました財団法人学術振興会ですね、これの役員の任命等について、学術会議とはどういう関係にあり、どういう仕組みと申しますか、運営と申しますか、となっておりましたか、その点をちょっと、お話にあったかもしれません、もし重なれば恐縮ですが、もう一ぺん明確にお願いをいたします。
  23. 野村平爾

    野村参考人 古いところでは別でございますが、現在行なわれております番付行為書によりますと、学術会議評議員を、当然会長一名を出すほか九名以内の評議員を出す、そういうことになっております。ですから、現在、会長、副会長、それから七部ありますから、一部から七部までの部長ないしは副部長がこれに当たっておりますので、総計して十名、学術会議から評議員が出ております。その評議員からなる評議員会の互選によって理事を選出しておりますが、この理事の中には、会長、副会長二名と、それから人文社会科学の方一名、それから自然科学の人一名、こういうような割合で理事の中に入っております。これは、先ほど朝永会長がお示しになりましたその寄付行為書に基づいて、いまのような選出をいたしております。
  24. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしますと、現在までのこの振興会には、学術会議から会長はもう自動的に入る、そのほかに九名以内で出すということで、十名は学術会議から必ず評議員が出る、そういうことでございますね。そうして、その中から互選で理事が選ばれる。それは、いまのお話ですと四名理事になって入るわけでございますか。
  25. 野村平爾

    野村参考人 正確なところを必ずしも記憶しておりませんが、たしか会長、副会長二名、それからあと一名ずつ、こういう形になっております。ですから、総計五名ではないかと思います。
  26. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 わかりました。すると、理事に五名学術会議から入っておられる、こういうことですね。  今度の法案によりますと、確かにお話があり、お心配なさっているように、評議員選任についても、あるいは役員会長理事長、理事、監事等の選任についても、これは学術会議から自動的あるいは機関の推薦というものを通じてなり、実際に人がこの中に選任されるという道は、法文的には全然ないように私どもも受け取りまして非常に憂慮いたしておるところでありますが、学術会議としてもその点を御心配なさっておりますか。
  27. 朝永振一郎

    朝永参考人 学術会議といたしましては、やはり現在の役員のように、評議員の中に学術会議の推薦する者が何人か入るということを強く希望しているわけでございます。ですから、法案にそういうことが書かれれば、立法措置という点でそういうことができれば一番いいと思っておりますけれども、しかし、それにいろいろ困難があるとすれば、学術会議としては法案をみずからつくる権限もございませんし、そういうことは国会審議におまかせする、そういうたてまえでいるわけでございますけれども、少なくともやはり評議員に何名か学術会議の推薦する者が入るということは、どうしても必要なことだと考えております。
  28. 野村平爾

    野村参考人 若干補足させていただきます。  実は、現在の学術振興会は、財団法人関係もございますので、その意思決定は評議員会でやっておるわけです。ところが、新しくできます特殊法人における評議員というのは、これは単純な諮問機関にしかすぎません。会長の諮問に応ずるだけでありますので、そういう点では評議員というものは、従来の関係と比較をすれば、法人性格が非常に違いますので必ずしも同じだとは思いませんけれども、非常に弱くなっている、こういうことだけは御指摘できるかと思います。  それから、従来ですと理事会の合議でもって運営をしていったわけですが、今回の法案によりますと、会長がこれは権限を持ち、理事会というものは構成されないようになっておりますから、各理事は担当事務を処理する、こういうような形になっております。その点が従来と非常に大きな違いを示している、こういうように考えるわけでございます。ですから、評議員会から理事を推薦するわけではなくて、これは文部大臣のほうの任命という形になってくるわけでございます。
  29. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 たいへん明快なお話をいただきまして、やはり本法案について、私ども、役職についた方の恣意にこれが運営されるようなことになって、学問の世界の第一線で活動している方々の、もう一日が昔の何百年に当たるようなスピードで進歩しておる学問の世界の要求に応じた学術の振興が、はたしてこれで行なわれるかどうかということについて、ますます私は危惧を深めるわけでございますけれども、これは後にまた法案審議の中で十分議論をしたいと思いますけれども、たいへん明確にわかりまして、ありがとうございました。  最後に、ちょっと小さいことを伺って恐縮なんですが、今回の振興会法に伴う予算を見ますと、まあ第一年度という意味かもしれませんが、非常に人件費だけがふえているというかっこうになっているのですが、これもちょっと問題でありますし、今後は同時に事業費をうんとふやすのだということになると、そもそも膨大になっていく事業費がどういう形で配分されるのかという点で、また別の疑問、心配が出てくるわけでありますが、まあこの人件費関係につきまして、現在の振興会の職員の方はもちろん当然ある一定の給与を受けられるのでしょうが、役員はどの程度の報酬、手当というものを受けておられるのか、もしおわかりでしたら御説明いただきたいと思います。どなたからでもけっこうであります。
  30. 朝永振一郎

    朝永参考人 職員のことは私どもわかりませんですが、われわれ役員でございますが、これは報酬というものはございません。ただ盆暮れにいただいた記憶がございます。それから手帳をいただきました。
  31. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしますと、一日出れば日当が幾ら、旅費が幾らということでなくて、年間つかみで若干慰労金だか手当だか、どういう名目だか知りませんが、その程度のものが出た程度で、ほとんど手弁当でお仕事をなすってきた、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  32. 野村平爾

    野村参考人 どうも、私もまだ何年も役員をやっておりませんし、理事はたしか二回目であろうかと存じますのでわかりませんが、理事というのは毎月一回出ますのと、評議員会に出ますのと、臨時の何か会合があると出ますのと、そういう関係になっております。これは日当のような意味で計算するのか、そういうことは全然わかりませんけれども、まず私の記憶ではほとんどもらった覚えがないような程度でございますから、旅費、日当というような、そういう計算で出されているものではないというふうに記憶しておりますが、正確には学術振興会のほうにお問い合わせを願いたいと存じます。
  33. 朝永振一郎

    朝永参考人 ただいま役員のことを御質問でございましたけれども、そのほかにたとえば流動研究員あるいは奨励研究生の選考委員会というのがございまして、これも学術会議から委員を推薦する形をとっておりますが、そういう方には旅費、手当等が出ていると記憶しております。しかし、これも正確なことは、学術振興会則にお聞きいただいたほうがよろしいかと思います。
  34. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ありがとうございました。  私の質問は終わります。
  35. 床次徳二

    床次委員長 唐橋東君。
  36. 唐橋東

    ○唐橋委員 三先生方、ほんとうに御苦労さまでございます。  私たちも、学術振興会法案は、今後の日本研究組織の中心になるのではないかと直視して考えながら、先生方の御意見を率直にお伺いするわけでございます。  それで、第一番にお伺いしたいことは、日本の学術研究体制というものは、一つは科学技術庁関係科学技術会議ですか、それからあと文部省関係になっております。いま問題になっておりますところの学術奨励審議会と学術振興会、およそこの科学技術庁と文部省との二本立てになって進められている、こういうように私たち考えているわけでございますが、これら全体の科学研究組織に対して、学術会議等でこうあるべきだというような検討、あるいは小委員会的なそういうようなとをなされたことがおありでしょうかということを、ひとつお伺いしたいわけなんです。全体の科学研究組織がこうあるべきじゃないかというような点を、学術会議等においてはどんなふうに処してきたのかということをお聞きしたい。
  37. 朝永振一郎

    朝永参考人 ただいま科学技術会議お話が出ましたが、これは科学技術庁ではございません。事務を科学技術庁と文部省と両方でやる。この科学技術会議は、科学技術庁の守備範囲の外のこともやっております。そういうわけで、科学技術庁の守備範囲の中の会議ではございません。もう少し広い会議でございます。これは総理大臣の諮問機関でございまして、日本科学及び技術を行政的にこなしていくときに、文部省科学技術庁あるいは通産省その他いろいろございますが、そういうものの間の連絡調整をやる必要があると総理が考えられたときに諮問をする、そういう性格のものでございます。きょうこちらで科学技術会議の御質問が出ることを予期しておりませんでしたから、資料等を取り寄せておりませんので多少不正確かもしれませんけれども、これは大臣級の、総理が議長でございまして、あと文部大臣科学技術庁長官、大蔵大臣、経済企画庁長官、日本学術会議会長、そのほかに学識経験者、そういう構成でございます。ですから、学術会議学者審議機関というものであるのに対して、科学技術会議はそういう閣僚級の方々と少数の学識経験者ということですから、性格がかなり違っている。  それから、先ほどのそういう学術体制全体について学術会議で検討しているか、したことがあるかという御質問でございますが、こういう問題も、最近学術会議の中に学術体制委員会というものがございまして、そこが中心になっていろいろ検討しております。そしてこれは、とにかくいろいろ関係する分野が非常に広いことでございますので、この体制の中には大学をどうするかというようなことも含まれておりますし、いまのような行政的な機関としてどういうものがあるべきかというようなこともここで検討しておりまして、かなり日本の学術全般にわたって結論を得たいといま努力している最中でございます。
  38. 唐橋東

    ○唐橋委員 いまのように科学技術庁関係、それから行政の面というようなことも私は理解しているわけでございますけれども、やはりこの学振法、学術振興会法の条文の中にもありますように、今後の学術研究体制というものを中心的に強化するというのがねらいの法案でございます。そういう法案を私たちが審議する場合に、国全体としてどのようにこれに取り組んでいくべきものだろうかということが、やはり中心の考え方がなければならないというように私たちも考えながら法案審議に当たるわけでございまして、そういう場合に、ほんとうに先生方が研究体制の中におられて、行政的な立場でなしに、学者としての立場から日本科学研究というものはこうあるべきだ、そして、いま朝永先生から申されましたように、行政的な部面もあれば、大学の研究組織もあれば、その他いろいろなものがある。各いままでの歴史的過程の中に現実に存在すると思うわけでありますが、そういうものを整理統合する場合に、こういうような点はやはり留意すべきである、こういうようにしたいものだということが先生方から率直に出ていただくならば、私たちはたいへんにしあわせなんです。ですから、いま朝永先生おっしゃいましたような、いままでの国全体の研究組織に対する委員会的なものが学術会議の中にありまして、そしてたとえそれが結論は出なくとも、こういう点が議論されたというような点が資料としてでも出していただけるならば、私たち非常に幸いだと思うわけでございますが、この点に対してはいただけるでしょうか。
  39. 江上不二夫

    江上参考人 ただいまの御質問でございますが、先ほど朝永会長から申し上げましたように、まず第一に、日本学術会議の中には学術体制委員会がありますが、学術体制という委員会はいろいろなことをやっておりますけれども、その一つとして日本学術体制あり方というものを長年取り上げておりますが、しかし、その日本学術体制あり方というものは、学術体制委員会だけではあまり大きな問題なので、学術体制委員会としてはまた緊急に結論に到達しなければならぬ問題を控えておりますので、二つの理由でほかの委員会と提携してやっております。一つは、長期研究計画委員会、つまり日本の学術研究の長期計画のあり方を立てる委員会がございますが、その委員会、それから日本の学術のあり方の姿勢といいますか、そういうものについて考え科学研究基本特別委員会というものがございます。これは日本の学術の基本的なあり方はこういうあり方であってほしいというのを検討いたしまして、それで科学研究基本法という、そういう考え方を集約いたしました科学研究基本法というものの一応の要綱の案をつくりまして、そういうものをつくってほしいということを申し出たことがございますが、それはもちろんまだ法律になっておりませんけれども、その基本的な考え方というものは、長年日本学術体制はかくあらねばならないという基盤となるところの基本的な考え方で、その基本的な考え方に基づきまして日本学術体制はこのようになければならないのではないかということは、個々の問題についてはそれにはめて議論がむしろできるわけでございまして、たとえばビッグサイエンスはどのようにあるべきかというようなことにつきましても、あるいは共同研究利用はどのようにあるべきかというような大きな問題もたくさんございますが、それも基本的理念に基づきまして検討するということで進めております。それとともに、先ほど申しましたように、日本学術体制全体のあり方審議するのにその三つの委員会が中心になりまして、またその連絡の形の委員会ができまして検討いたしております。そういうことは、しかし何しろ日本学術会議日本科学者の代表二百十人から成り立つもので、最終的な決定は年二回の総会でするということになりますし、いろいろ意見も多いので、最終的な決定にはまだ至っておりません。しかしながら、たとえばここに学術会議で検討いたしました日本学術体制についての資料、これは外の資料も一部入っておりますけれども、それは討論の必要上入っておりますので、この大部分というものは、日本学術会議で検討いたしました日本学術体制についての資料を集めたものなんでございます。こういうものは決して新しいものではなくて、これ以後のものも、これ以前のものもたくさん検討した材料もあるわけでございますが、これ以後はまだ資料としてまとめてございませんけれども学術体制あり方について、日本学術会議が長年検討いたしました資料は、これは二年か三年前だったと記憶いたしますが、それまでのものはまとめてございますし、それ以後のものも検討をいただいておりますが、まだ結論に到達しておりません。ただ、私たちとしては基本的な考え方というものは確立しておりますので、その基本的な理念に基づいて基本的なあり方を議論していくというところにはまいっております。ところが、いろいろ具体的となりますと、ビッグサイエンス一つをとりましても、共同利用研究所一つをとりましても、非常に実際上の大きな問題がありますのでなかなか結論には到達しないが、真剣に討論しているという現状でございます。
  40. 唐橋東

    ○唐橋委員 だいぶ現状の御苦労はわかりますが、そのような議論を、私どもから言うと非常にわがままなんですが、一応問題点のあり方、こういう点が問題だというものをほんとうに要約していただいて、委員会で全員に御配付願うような手配はできないでしょうか。要点、だけでいいのです。私たちはどうしても現場にいないし、先生方のような第一線の人たちの議論なりねらいというものを的確にやはり知りたいと思うのです。ですから、そういう趣旨で、こまかいいろいろの議論は別としましても、こういうねらいのところ、こういう問題点があるんだというようなのを、テキスト的な形で出していただいて、委員会のほうに出していただければ、これだけの問題でなしに、文教委員会として今後いろいろの審議の場合に、基礎的な体制なものですから非常に参考になると思うので、お手数でも出していただけるならばという希望を添えてお願いしておきます。
  41. 朝永振一郎

    朝永参考人 ただいまの御希望、できるだけ沿うように努力してみたいと思っています。  それからもう一つ、先ほど研究基本法という話がございましたけれども日本学術体制関係することで、ある程度のまとめをいたしまして政府勧告したことがございます。これは基本法のほうのことでございますが、もう一つは長期計画、いわゆる五カ年ぐらいの計画を立ててみたことがございます。具体的な計画というのはなかなか立たないのでございますけれども、そこで予算、つまり研究費の体系という観点から問題を少しほぐしてみたことがございます。つまり大体五カ年後にはどれぐらいの研究費を国は出すべきであるというような観点でございます。それは金額だけでなくて、研究費のうちにいろいろな性格のものがございまして、そういう研究費のパターンを分析して、そうしてそれにふさわしい行政的な措置をとる、政府考えられるときにその学術会議のパターンを十分考えて、パターンがうまく動くように立ててほしい。たとえば、研究というものはあらかじめ予定できないような事態が起こりますので、研究費のある部分は非常に弾力的に使えるように、あるファンドのような形で、どんぶり勘定でなしに、国全体の研究投資のどれぐらいの割合はファンドのようにとっておいて、そうして必要に応じてそれを学者に支出できるように――これは、学問か非常に日進月歩でございまして、予測できない発見があったり、あるいは思いがけないほうに進んでいくというような場合に、いまの予算の立て方ですと非常に不自由です。それが国全体の研究投資のどれぐらいのパーセントであるのか至当であるかというような研究をして、勧告をしたことがございます。ですから、そういう資料もある程度ダイジェストしてほしいという御希望のようでございますが、ダイジェストという仕事はなかなかむずかしいことですけれども、ひとつ研究さしていただきたいと思います。
  42. 唐橋東

    ○唐橋委員 時間が非常にないようでございますので、私の質問はこれだけにしますが、要点だけをひとつ……。  先ほどお話がありました、措置するということに対して修正案が出ておったのだ、その修正案が否決されたので出ないというような御説明があったのですが、修正案というのはどういうものであったか、あとででもいいですからお示し願いたいということが一つと、それからもう一つ、これは非常に申し上げにくい質問でもあるかと思うのですが、この前、国会の中で非常に大きな議論になりましたアメリカの軍事費から出たという大学の研究費の問題なんですが、それは学術会議のほうも関係なく、知らなかったし、あるいは学術振興会のほうもわからなくて、ストレートでずっといっておったのですか、その間の事情を簡単にお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、朝永先生、いま問題になっております頭脳の海外輸出――輸出といいますか、そのことばがいいかどうかはあれですが、それらについてもちょっとお伺いしたいと思います。時間がないようですから、お考えだけを簡単にお伺いしたいと思います。その三点だけをお伺いいたします。
  43. 朝永振一郎

    朝永参考人 ただいまの外国の軍から金をもらったという点につきまして、まず学術会議として一番直接な関係がございますのは、学術分譲は国際会議を主催するという仕事をやっておるわけでございます。主催のほかに、主催者がほかにあるのを後援するという形をとることもございます。この学術会議が後援して行なわれた国際会議、これは半導体の会議というものでございます。ここにアメリカの軍からの金が出たということ、これはいろいろ調査いたしました結果、幸いにして学術会議主催の会議でそういう外国の軍の金をもらったというケースはないということがわかりましたのですが、後援といいますと、大体いままで学術会議が、主催団体が十分しっかりしたものであり、かつその会議内容が学閥的に価値のあるものであれば、後援という名前を使ってもよろしいという程度に、わりあい楽に考えまして、そういう会議の運営等については主催者を信用しましてまかせるというやり方をしてきたのでございます。これは責任のがれというわけじゃございませんですが、しかし、後援であるにしましても、学術会議後援という場合には、やはりもう少し主催団体にまかせ切りにしないほうがいいのではないかという考え方になっております。それから、これはこの間、予算委員会でいまの御質問がございましてお答えしたことでございますが、学術会議としてはそういうことは好ましいことではないというので、今後は、学術会議主催のものはもちろん、後援のものにつきましても、そういうことのないようにしたいというふうに考えております。  それから、研究費のほうの問題は、これは学術会議が、先ほど申しましたように文部省研究費の委員の推薦をするという仕事はしておりますけれども、個々の大学の先生方がどういうところから研究費をもらっておられるかということに目を光らせるということは、学術会議としてはできないことであるし、そういうことに目を光らせることはどうであろうか、場合によっては大学の自治を侵すということになるかもしれませんし、そういうことは考えていないわけでございます。しかし、そういう問題について日本科学者全体に訴える、そうしてそれぞれの方の良識を喚起すると申しますか、そういうことはやったほうがいいのではないかという考え方になっておりまして、いまいろいろそれの検討をしている最中でございます。
  44. 野村平爾

    野村参考人 先ほどの修正案の件でございますが、今国会に提出が準備されている日本学術振興会法案に、日本学術会議との関係について何等の規定を見ないことはまことに遺憾であると考えるので、同法案に次の趣旨の条項が挿入されることを希望する。そうしてその条項として、日本学術振興会はその業務の執行にあたり、日本学術会議と常に密接な連携を保つものとする。この点、あとで議事録を見ないとはっきりしませんが、なお、本会議においては同会との関係に関する具体的方策を引き続き検討の上、すみやかに申し入れる予定であるといったような、そういう文章であったかと思うのです。この案に対して、それよりも幅が広いほうがいいという考え方が八十八、いまの立法的基礎を明確にしろというのが七十三という、こういうような数字であったわけですが、この反対の意見の中にも、先ほど申しましたように、これはやはり幅広く措置と言ったほうがいろいろなことができるのではないかという考え方があって、そうして結果的にはこういう数字になったということでございます。ですから、重ねて質問があって、その措置というのは立法的措置も含むのかという質問が出ましたときに、立法的措置を含むということで了解を得た、こういうことでございます。
  45. 床次徳二

    床次委員長 西岡武夫君。
  46. 西岡武夫

    ○西岡委員 朝永先生にお尋ねをいたします。  先ほどからの先生方のお話で、日本学術会議が今回の日本学術振興会法案について申し入れを行なわれた経過というものはよくわかったのでありますが、この御議論の経過の中で、日本学術振興会特殊法人化そのものについて、特に反対であるという御議論はなかったわけですか。また、会長自身も、特殊法人化そのものは問題はないと考えるというふうなお考えであると理解してよろしいでございましょうか。
  47. 朝永振一郎

    朝永参考人 これはこの政府への申し入れをお読みいただければ、学術会議考え方は、これ以上でもこれ以下でもないということでございます。ですから、こういう申し入れをいたしましたのは、頭から反対であるということではないということは当然です。ただ、やはり先ほどもちょっと御質問がありましたのですが、江上参考人がさっき説明されました、学術会議として学術振興会にいろいろ注文が資料の一二ページにございますのですが、やはりこういうことを期待しているから特殊法人としてこういう事業を強力にやっていく、拡充してやっていくということがわれわれの希望にあるわけでございます。そういうことで、われわれの気持ちを端的に申し上げますと、特殊法人ができるということに対して学術会議は期待と不安と両方を持っている、そういうふうに言えるかと思います。
  48. 西岡武夫

    ○西岡委員 先ほど野村先生から、修正案が否決されて措置ということに変わった経過の御説明があったわけでありますが、この幅広くということで措置ということにしたほうがいいだろうというふうにきまったということは、事実上日本学術会議特殊法人化された日本学術振興会とが密接な関係を持てれば、いかなる方法でもよいというふうなお考えと理解してよろしゅうございましょうか。
  49. 朝永振一郎

    朝永参考人 これは私どもとしては、やはり実質的な緊密な連絡、それはもちろん必要でございますが、それを裏づける法律的な基礎があることが望ましいという気持ちはいまだに捨てておりません。と申しますのは、結局そういうことがどこか表に出ておりませんと、密接な連絡というのが、ただ政府の善意と良識という基礎の上にだけ立つことになる。私どもは、政府が学術振興をしなければならないという気持ちを持っておられることは十分そう思うのでございますけれども、やはり時移りだんだん初心を忘れるというようなことが起こってはまずいのではないかというので、そのためには、先ほど野村先生がおっしゃいましたような法律の中に連絡を密にする基礎づけがあるということが一番望ましいというふうに、そういう考えはいまだに捨てておりません。ただ、先ほど申しましたように、学術会議法案の原案をみずからつくる権限もございませんし、それから法律をよりよいものにするという作業は国会仕事でございますので、私どもがきょう申し上げたような気持ちでいるということを国会のほうでくんでいただきたい、そういう希望を申し述べるわけでございます。
  50. 床次徳二

    床次委員長 ありがとうございました。  なお、関連質問が三人ありますので、ひとつ簡潔にお願いいたしたいと思います。斉藤正男君。
  51. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 先ほどからお三方の説明並びに質問者に対する答弁を伺っておるわけでありますけれども、一点だけ伺いたいと思うわけであります。  ちょうだいいたしました学術会議関係資料をいろいろ拝見いたしたわけでありますけれども特殊法人日本学術振興会の法制化にあたって、一番問題になっております先ほどの申し入れ書であります。いろいろ資料がついておりますので、ずっと一読しましたけれども、事こういうような事態で日本学術会議政府申し入れをしたというのは、一二ページの要望事項とともに二つあるように思います。したがって、日本学術会議といたしましては、かなり強い総会の総意でもってこの申し入れをした。説明の中で、措置ということばをめぐっての内容的なものも十分わかったわけでありますけれども、同時に、ただいまの朝永先生の答弁によりましてなおその感を強くしたわけであります。この申し入れに対する学術会議の決意といったものは、軽いとか重いとかいう表現でなくて、きわめて重要な申し入れだというように考えるわけでありますが、蛇足のようでまことに恐縮でありまして、いま西岡委員の質問にお答えになった朝永先生の答弁で足りるわけでありますけれども、この四月の時点でこういう申し入れをされたということが、日本学術会議のいままでの経過からいって、かなり重要なものだというように把握をしたわけでありますけれども、そのとおりに解釈してよろしいのか、もう一ぺんひとつ伺いたいと思います。
  52. 朝永振一郎

    朝永参考人 学術会議が重要でないと思うものを政府申し入れたりすることはございません。  それから、ついででございますが、これが賛成七十三、反対八十八ということで修正案は過半数をとることができなかったのでございますが、そのあとで、この案で採決いたしました。これは挙手でいたしまして、私、会長の席から見ておりました感じでは、圧倒的多数、ほとんど満場一致――二、三あげられなかった方がおられたかもしれませんけれども、ほとんど満場一致でこれが総会で可決されました。それをついでに申し上げておきます。
  53. 床次徳二

  54. 小林信一

    小林委員 時間がございませんので率直に御質問を申し上げますが、いま提案されておりますこの学術振興会法の目的と、それから日本学術会議法の目的というものと比べますと、多少表現のしかたは違っておりますが、内容においては同じような性格を持っておる、こう私は考えるわけです。そういうものがいまここに出てまいりますということは、もちろんいまの時代の要求というようなものも、相当に政府考えて出したとも考えられます。しかし、日本学術会議というものが同じ性格であるにもかかわらずこれを出すということは、そうした時代の要求が切火であるということかもしれませんが、一面日本学術会議を無視する――無視すると言っては失礼かもしれませんが、何か軽視する、日本学術会議ではもの足りないというようなものがあるのではないかというふうに私どもは想像するわけですが、そうすると、日本学術会議の今日までのあり方というものを私ども考えなければならぬことになってくるわけです。というのは、資本自由化というふうな問題が出てまいりまして、だいぶ財界はあわてております。おそらくこれから資本の自由化というものが行なわれれば、日本の市場の中で外国の技術と日本の技術とが競争しなければならない。ところが、いままでの経済成長政策の過程では、特許に支払うだけでも五百億以上の金を支払ってきたというような事実が新聞等に見えております。あるいは外国日本の産業界というものを批判して、日本の技術というものは外国の基礎に立って、それを応用するにすぎない技術である、したがって、今後の日本の技術進展というものは、そんなに心配要らないというような見方までしております。そういうようなものを政府なりあるいは財界なりが判断をして、日本学術会議にこういう面を担当させておくことはもの足りないというようなことにも考えられるわけなんです。そうすると、日本学術会議あり方というものは、私ども非常に申しわけないのですが、政府にさほど信頼されておらないというような形にもなるわけなんです。これはきわめて暴言であるかもしれませんが、そんなふうにもとれるわけなんです。  ただし、私がここで申し上げたいのは、そういう点から考えれば、この学術振興会法の目的として第一条に掲げておりますものを読んでまいりまして、そうして日本学術会議法の第四条の一、二、三、四と列挙してあります項目を読んでまいりますと、日本学術会議のほうのこの諮問ではございますが、科学に関する研究試験等の助成、その他科学の振興をはかるために政府の支出する交付金、補助金等の予算及びその配分、こういう項目を見ると同じようなものであります。しかし、日本学術会議法の第三条には、「日本学術会議は、独立して左の職務を行う。」こう書いてあるわけです。そこに性格の違いがあるので、私の意見を申し上げて先生方の率直な御意見を承りたいのですが、この学術振興会法の目的そのものを見れば、これはあくまでも行政機関である。金を配分する機関にすぎない。しかし、学術会議が行なう場合にも、たとえ諮問を受けてそれに回答するだけでありましても、その根拠には学問の独立というものが基礎になっておる。そこに私は大きな違いがあると思うのです。いま、いかに日本のいろいろな産業事情から学術振興というものが要請されておりましても、あくまでも基礎というものは学問の基礎を確立するという点が大事であるし、そして学問の自由というものが確保された中で、学術振興というものはなされていかなければならぬと思うのですよ。こういうふうに私は考えまして、先ほど失礼な言い分を言いましたけれども、何か日本学術会議に対しては政府が一つの不信というのか、たより切れないものを持っておるというふうなものがあるのではないか。そうでなければ、この学術振興会仕事というものは、その時代の要求に応じて必要な技術を振興するために、この名前を変えて助成する、あるいは援助するというふうなことをするわけで、ほんとうにその学問の振興にはならない、こういうような疑問を私は持つわけなんですが、ここに私どもの一つの迷い、疑問があるわけでございまして、この点も先生方に、一言ずつでもよろしゅうございますが、率直な御意見を承りたいと思うのです。
  55. 野村平爾

    野村参考人 いまの御質問に答えられることになるかどうかわかりませんが、日本学術会議のほうの仕事というのは、どちらかというと基本的な方針というものを取り扱っていく、それから学術振興会のほうは、どちらかというとそれを実施していくという、そういう位置づけになるべきだ、ところが、必ずしもそういうようなことにならないおそれがあるからということをかつて考えまして、そうして日本学術会議は、科学研究の基本法というものの案を要綱としてつくりまして、そして三十七年に政府に、これは池田総理大臣でありますか、提出をしたことがございます。その精神は現在もなお捨てておらないわけです。それは人文社会科学とそれから自然科学とは車の両輪のようにして、そしてこれを健全に発達させていくということが必要であるし、そのためにはやはり学術の行政機関というものに対しても、この学術会議と密接な連絡は保つようにというような、いわばそうした趣旨のことをずっと――あとでこれは資料として提出してもよろしいものだと思いますけれども、つくったわけなんです。ところが、これはどこがそれを受け取るかということでもって、現在まで停滞のままになっているのですが、学術会議のほうは基本的なものの考え方としましては、いま言ったような考え方をとっているわけです。そこで、この学術振興会法、かできたときに、これが学術会議勧告だの、考え方だのというものとあまり離れられては、実は日本の学術のほんとうの意味の振興にならないだろうということをおそれておることについて、先ほどから申し上げているわけでございます。よろしゅうございましょうか。
  56. 小林信一

    小林委員 わかります。わかりますが、私どもは、いろいろ法律のその裏も考えたりして審議をしなければならないという立場で、まことに申しわけないことを言うわけですが、その点はひとつ御了解願いたいと思うのです。  いま先生もおっしゃったように、日本学術会議は基礎的なものをつくるんだ、そして学術振興会はその事業的な面を担当するんだというふうにおっしゃるのですが、その基礎的なものをお考えになる日本学術会議の中にも幾つかの条文で、その事業の面も、これを多少変更することによってできないとも限らないと私は思うのです。そういう点からすれば、特にこの労術振興会というものを特設せずともよろしいではないか、こう考えるわけであります。と申しますのは、日本学術会議構成する先生方の中には、ときには政府の好ましくないことを研究される方もあるし、勉強される人たちもある。こういう人たちの集まっておるものに、この法案が持っておりますような目的というものを持っていくことは多少不安がある。不安があるということよりも心配である。あくまでも日本学術会議は象牙の塔にしておいて、そしてもっと政府あるいは時の財界が意図するような研究体制をつくらせるためには、大臣等の意向が強く浸透するような機構をつくったほうがよいではないかというようなことにも疑われるわけなんです。そうすれば、これから生まれてくる日本の学術振興というものは方向づけられる。思想的な方向ということよりも、そのときの財界あるいは産業が要求するようなものがしいられて、ほんとうに学問の基礎的な研究というものがおろそかになるということも考えられるわけでありまして、この日本学術会議あり方と、そしていまの学術振興会法との関係というものは、私どもはきわめて疑惑の中に問題を見ておるわけなんですが、いまのように基礎的な、基本的なものを日本学術会議が持ち、その日本学術会議の意向を常に聴取し、取り入れることによって、日本学術振興会任務を全うするというふうな形が、日本学術会議から要求をされておるのですが、それだけでもっていいのかどうか、私はこの点、皆さんよりももっと深刻に考えておるわけなんです。しかし、いまそういう御回答をいただきましたので、それで私は了承いたしますが、私はそういう疑問を持っておるわけなんです。何かこれについて御指導賜わるようなことがございましたならば、お聞かせ願いたいと思います。
  57. 野村平爾

    野村参考人 どうも御指導申し上げるようなことを申し上げることはできないと思うのですが、何ぶん日本学術会議というものの予算は非常に少ないわけでございます。運営審議会を毎月一回開く、それから常置委員会というものがありましても、年に三回分くらいしか開かれない。それからほとんど手弁当に近い形で皆さんが会談をやっている、こういったような状態でございますので、学術会議そのものが非常に有効に活動していくということは、これは実は会議会員たちの自発的努力によって現在保たれているというような、こういう状態になっておるわけなんです。これは全部の予算の上から見ての配慮でありましょうけれども、十分な活動ができないという、そういう坑状になっておるわけです。したがいまして、学術会議が非常に有効な仕事をするというようなことは、なかなか短時日の間に、この法律に書いてありますような趣旨の活動ができるということは、実は総会にしましても臨時総会費用がございませんから、年二回の会議を待たなければ結論を出すことができないといったような、かりに何かの諮問がありましても、時期に間に合うかどうかというようなことは非常にむずかしいような、そういう状態に実情はあるわけでございます。そういうようなときに、学術振興会というものが実施段階におきまして、大きな予算を持ちましてどんどん実施をしていくというようなことになりますと、学術会議学術振興会のほうに緊密な連絡がとれるような組織になっているということであれば、これは軌道に乗った動き方をしていただけるのではないか、こういうふうに考えておりますけれども、そうでないと、学術会議としては、あとでこれは適当でないというようなかえって批判的なことしか言えないというような、そういう事態になってきては困る、これを心配している次第でございます。
  58. 小林信一

    小林委員 ありがとうございました。
  59. 床次徳二

    床次委員長 鈴木一君。
  60. 鈴木一

    鈴木(一)委員 先ほど唐橋委員から御質問があったのですが、朝永さんからお答えがなかったのですが、よく海外に日本の優秀な頭脳が流出するということがいわれておるわけです。これは報道がオーバーなのか、各国みなこの程度のことはあるので、別にそれほど問題として取り上げる必要がないのか、あるいは事実そのとおりなので、これは何らかの対策を講じなければならぬのか、また先ほど江上先生でしたか、交流じゃなくて直流でどんどん出かけられるというようなお話もあったわけですが、その動機が、それぞれ人によっていろいろ事情もあろうと思いますが、何か日本研究体制が不備である、そういうことのために海外に出られる共通性があるものかどうか。先ほどお答えにならなかったのは、あるいはわざとお答えにならなかったのかと思うのですが、お答えにくければお答えいただかなくてもけっこうですが、いかがですか。
  61. 朝永振一郎

    朝永参考人 先ほどお答えしませんでしたのは、別にお答えを拒否したのじゃございません。私、頭が悪うございまして、三つも四つも一度に質問されると、どうも一つや二つは忘れてしまいますので、たいへん失礼いたしました。  海外に頭脳が流出するというのは、これは御承知のように日本だけの現象ではございません。海外というのは主としてアメリカでございますけれども日本だけではございません。各国、ヨーロッパの国々にもやはりそれが悩みの一つだと思うのですけれども、どうしてこういうことが起こるかと申しますと、これはやはり研究の環境と申しますか、たとえばアメリカへ行きますと非常に研究費が多いというようなこと、そういうわけで一流の学者がアメリカに集まっているということが、またさらに学者の流出を招くわけでございます。研究費の多いということもございますけれども科学者にとっては、できるだけ世界じゅうの学者と接触を持つということが研究の上で非常にプラスになる。そういう場合に、ですから集まるところへますます集まるという傾向がおのずからあるわけでございまして、アメリカのほうへ流出していくという原因はそこにあると私は思うのでございますが、ただこれは非常にシリアスな問題であるかどうかということになりますと、専門の分野によって流出があまりないところもございますし、相当激しいところもございまして、よく例に出ますのが数学でございます。日本のすぐれた数学者が海外に行っている。数の比例は数学が一番高い。非常にすぐれた数学者を百人とってきますと、その二十人くらいが海外にいるというような事情がございます。ただ、日本の場合には、幸か不幸かことばの障害がヨーロッパの国々よりも多いので、実際流出しているのを見ますと、あんまりことばを使わないでいいような――数学が一番そのいい例で、数学の記号というのは世界共通で、あれぐらい国際的なことばはないと思うのですけれども、普通のことばはあんまり必要でないというような点もございまして、ことばの必要のないのはその次が理論物理かもしれません。しかし、だんだんにことばの需要度にほぼ反比例したような数で流出が行なわれておりまして、日本の場合には、ですからそれほどシリアスなことでないと言えるかもしれません。しかし、すぐれた学者が流出するということは、研究はどこでやったっていいわけですけれども、後進の育成が十分行なわれないということで、長い目で見ますとその影響が強く出てくるおそれはあるのではないか、そういうふうに思っております。
  62. 床次徳二

    床次委員長 参考人の方々には、たいへんお忙しいところを長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとう存じました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)  午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十八分開議
  63. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本学術振興会法案について質疑の通告がありますので、これを許します。吉田賢一君。
  64. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 日本字術振興会法案につきまして、基本的な問題点と具体的な運営面と、画面にわたって若干伺ってみたいと思うのであります。  第一点は、まず政府におかれましては、現下の学術振興問題の重要性にかんがみまして、根本的な学術振興に関する基本施策をひとつお述べ願いたい。
  65. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 学術振興につきましては、従来も文部省といたしましては研究体制の整備について努力してまいったのでございますが、特に近年におきましては、科学技術の振興ということは世界的な一つの課題でございまして、特にまた、最近資本の自由化というような問題を控えてまいりますと、国内産業の意味から申しましても、わが国独特の研究体制を上昇いたしましてこれに対処していかなければならぬということで、学術振興の要請はきわめて重かつ大になってまいったと思います。従来も努力してまいりましたが、第一点といたしましては、何と申しましても国内の研究体制を整備するという問題であろうかと思います。研究体制といたしましては、もちろん文部省で重点を置きますのは大学及び研究所の研究体制の整備でございまして、これに対して科学研究費の思い切った増額をいたしますと同時に、また民間研究団体に対しましても、これに相当の援助を増してまいりまして、民間における研究を助長していくということが必要だと思います。  なお、この研究の推進のためには、どうしても今日におきましては、世界科学、学術の進歩と競争と言ったら語弊がございますが、一面において提携し、一面において世界の水準に負けないような形をとってまいらなければなりませんので、国際的な科学研究交流と申しますか、こういったことをやってまいらなければならぬと思います。そのほかにおきまして、もちろん研究者の養成でございますかと、こういうことはますます必要になってまいるわけでございますが、今回お願いいたしておりますこの特殊法人としての学術振興会も、この線に沿いまして、非常に重要になりました学術研究の振興の上に、ぜひこういう特殊法人を必要としますということでお願いをいたしておるわけでございます。
  66. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 第二点は、すでにしばしばお述べにもなり、また冒頭に本案提出の理由として大臣から御説明もあったのでございますけれども、やはり数年間、少し何か紆余曲折の経過をたどったようなあとが見えるのであります。たとえば財団法人日本学術振興会の概要という書物の報告について見ましても、三十三年以来四十一年にわたりまして、いずれも予算要求の八月を期しまして、あるいは特殊法人日本学術振興財団設置計画案、あるいは特殊法人日本学術振興会設置計画案等、四回にわたりまして同種の案を立てて大蔵省に予算要求をなさっております。こういう経緯にかんがみまするときに、本法案を提出せられるに至りました経緯、事情について、最も重点とせられるところ、ただいまお述べになりました趣旨も概括的な意味においてわかりますけれども、このような経過をたどっておることにかんがみまして、何がこの特殊法人を必要としたのかということを、もっと適切に重点を指摘してひとつお述べ願いたい。
  67. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 お尋ねの中にございましたとおり、実は財団法人学術振興会は、三十三年以来ずっと引き続いて特殊法人にいたしますことを要望いたしまして今日までまいったわけでございます。これはなぜそういう要望をいたしてまいりましたかと申しますと、財団法人であれば完全にやっぱり民間の団体でございます。しかし、この財団法人学術振興会のやってまいります事業そのものは、実は国のやるべき事業でございますが、そのやり方が、国自体が直接にいたしますよりも、流動的に、または学者としての判断をいたします上から申しましても、政府以外の機関においてやることが適当であるというので、財団法人になりましてこれがだんだんその事業拡充してまいりますと、どうしてもこれは財団法人という私法人では限界がございまして、やはり国の事業をかわってやります事業でございますので、どうしてもこれは公の性格を持たせなければいけないという面が出てまいったのでございます。こういう意味におきまして、三十三年以来これを特殊法人にいたしますことを要求してまいりましたけれども、たまたま公社、公団その他特殊法人はなるべくこれをつくらないという一つの方針の中にありまして、非常にこの設立が困難になってまいっておったのでございます。しかし、特に近年におきまして、本日も実は開かれたのでございますが、日米科学委員会といったような国際的な協力会議、これが米国だけでなしに、やはり東南アジアその他ともだんだん国際協力の形を、財団法人学術振興会でやってまいらなければならぬという状況になりますと、対応する国のそういう機関が公的機関である場合が多いのでございまして、そういう対抗上またその信用上、こちらも特殊法人たる、いわゆる公の性格を持たせる必要があるというのが最近とみに希求されてまいりました。こういう事情にありまして、今回政府部内において相談をした結果、特殊法人といたすことが適当であろうということで、この法案を提出いたした次第でございます。
  68. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 臨時行政調査会の答申は、三十九年の九月に答申されたのであります。特殊法人につきましての統廃合等の問題がが然世上にのぼりましたのは、それ以後のことでございます。そこで、数次にわたりまして特殊法人の計画をなさってなおできなかったことについては、かなりどこかに大きな批判、抵抗あるいは同意を得られないということがあったのではないだろうか、あるいは閣内においても不一致な情勢でもあったのではないか、こういうようなことを憶測するわけでございます。でありまするので、約十年にわたりましてこれは努力のあとが見られるということですが、この種の問題は、十年間ももんでおかねばならぬ問題じゃございません。大臣御説明のような情勢に対応するための新しい衣がえ、こういったようなことならば、もっと適切に、私は早く特殊法人が設置されてしかるべきであったのではないか、こういうふうにさえ実は考えるのでありますが、何かその辺、どうも相当大きな反対理由でもあったのじゃないだろうか、その辺憶測なんですけれども、あればそこらにつきまして意見をお述べ願いたい。
  69. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 これは私も当時から折衝の任に当たったわけではございませんけれども、今日から振り返ってみますると、財団法人でございますために、その法人に対しまする政府の補助と申しますか、それの伸びがきわめておそくて、現在におきましても三億数千万という程度でございます。まずこういう程度の少額の補助でございましたならば、わざわざこれを特殊法人にする理由というものを政府部内で認めていただくことに非常に困難をいたしたわけでございます。それが主として、私はその法人の規模の問題から申しまして難航したのが、一つの大きな理由であったと思います。特殊法人にするのには、やはり国家の代行機関として、もう少し規模の大きい形が要求されたのではないか。しかし、最近に至りまして、この特殊法人にいたしますのは、相当予算も伸びてまいりましたし、また将来伸びる可能性というのが非常に大きくなってまいりましたので、この際特殊法人に切りかえるということに踏み切られたと思うのでございます。
  70. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 きょうの午前、日本学術会議会長である朝永振一郎博士から、同会議の佐藤内閣総理大臣への要望についての説明をされておりました。これはごく最近の要望であったように聞きましたのですが、この法案日本学術会議との関係が明らかにされていない、全然これについての法律の規定がない、これはまことに遺憾だ、こういうような表現をして、従来の密接な関係法律趣旨等に盛り込むべく要望したような説明に私は受け取ったのですが、あのけさの説明なり、ないしは佐藤総理への同会議からの要望事項についてはどのような受け取り方をせられたのであろうか、また、これにつきましてどう対処なさろうとしているか、要点だけをひとつ御説明願いたい。
  71. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 終戦後におきます学術新体制の際におきまして日本学術会議ができまして、この財団法人学術振興会は、学術会議は決議機関でございますので、実施機関として学術会議の傘下に置かれて今日まできたのでございます。したがいまして、学術会議学術振興会とは非常に密接な関係を持って今日までまいったのでございますから、この法案学術会議の事実上の何らの規定がないということに対して、学術会議のほうで非常に論議をされまして、これに不満であるというようなことが申し入れをされたことは、私はやはり決して理由なきことではないと思っておるのでございます。ただ、そのために学術会議でも相当論議されまして、たとえばそういう条文の中にそういう条項を入れるべきだという意見も内部にあったようでございますが、学術会議全体としては、そういう問題については修正案については論議をされませんで、希望条項として申してまいったのでございます。  その一番大きな理由は、学術会議学術振興会、これからできる特殊法人とは、事実上非常に密接なつながりがあるという問題でございまして、法規上の問題としては、この委員会でもしばしば申し上げましたけれども学術会議政府機関でございまして、政府のその機関たる学術会議学術振興会に対しまして、この特殊法人に対していかなることをやるべきだという一つの決議がなされましたといたしましたならば、これは政府に対して行なわれるのでございます。でございますから、政府はそれを受けまして、政府の一つとして文部省がそれを受けて、学術振興会事業としてそれを公的には今後実施に移してまいる、これが公の、公的な意味における筋でございます。しかし、実質上の問題といたしましては、学術振興会とは密接な、いわゆるいままで親子関係と申しますか、こういう関係がございましたので、この学術振興会の中に具体的に学術会議との間におきまして連絡機関と申しますか、このやり方につきましては、振興会ができますと学術会議振興会との間に十分な話し合いをいたしまして、具体的に常時細部にわたりましていろいろな問題について、事業について連絡を申し上げ、そしてその間において両者の食い違いがないように事実上いたしてまいるということで、これは学術会議会長、副会長と私どもが十分話し合いまして、了解点に達して今日にまいっているのでございます。
  72. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 国際的ないまの時点において、この種学術会議ないしは振興会の諸般の事業の重要性はよくわかります。結局特殊法人にしたというほんとうのねらいは、内部的に国費あるいは財政の支弁等につきまして国家に依存し得るということですね。これがたとえば過去における補助金の少ないこと、あるいは民間に依存するというだけではやりにくいこと等々の弊をなくする、つまり財政的な裏づけということが内の、内容的に言うならば一番のねらいとなったということがほんとうじゃないだろうか、こういうふうに思うのですが、それはどうなりましょうね。
  73. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 もちろん、その点も大きな理由の一つでございます。今後やはり国が行なうべきもののうちで、学術振興会で行なってもらいます部面については非常に大きくなってまいると思います。そういう場合におきまして、国の助成いたします金額は相当多額にのぼってくる傾向にございますので、そういたしますためには、財団法人としてその経理関係について、現在財団法人に対する監督権というのはきわめて政府としては薄いのでございますが、やはりこれは一般国恥の血税でございますので、これを正当に使ってもらいますためにはこれを特殊法人にいたしますし、またその監督官庁であります文部大臣が、その支出について責任を持つ体制に置く必要があるというところに、この特殊法人にいたしました一つの大きな理由がございます。
  74. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 いまは世界的視野で世界的な活動をするあらゆる団体かございまするが、いまごろに日本特殊法人にするということで、世界的な信用を高めるということはちょっとナンセンスじゃないだろうか、こう逆説的に考えるのです。むしろ百八つもあるいまの特殊法人でありまするが、これにつきましてもだんだんと整理をしようという声が非常に強いのでございます。こういうときでありますので、その点はどう、だろうかというふうに、これは一つの疑問を持つわけなんです。しかし、もっと端的に言うならば、これを特殊法人にすることによっての短所、つまり財団法人であることをやめて、もっぱら政府の行政の補完的な任務を持ったような機関に置きかえる、こういうことによりまして、たとえば学術振興会寄付行為にうたっておるような、第四条には本会の目的達成のための事業がそれぞれうたってありますが、たとえば第四条の第二号、「学術研究と産業化との」、これは界の間違いではないかと思うのですが、「緊密化を図る」、こういうような面につきましても、従来の財団法人振興会の業績を見てみますと、産業界における学術研究が、これでは国内的ですが、この委嘱というものが相当多量を占めています。こういう点から見ましても、かえってこれは緊密化を失うのじゃないだろうか。つまり学術研究と産業界というものの緊密化というものは失われるのではないだろうか、こういう点についてはどうだろうか。こういう点が一点あるのですね。これは、これを特殊法人にすることによりまして生ずる短所としての私の疑問であります。  それからもう一つは、財団法人でなくなりましたばかりに、このような広範な帯付行為というものがなくなっていきまするので、したがいまして、弾力的な運営が非常に阻害されるのではなかろうか、こういうことも実は感じました。  第三に、これは少し思い過ぎ、心配し過ぎですけれども、首脳部人事につきまして――あなたにはそういうことはございませんけれども、適当でないような、いわゆる天下り人事というようなものができまして、そういうことの結果、ほんとうは成果があがらずして牛を殺すというようなことになって、やがてまた何年か後には、統廃合の対象にされるようなことになるのではないだろうかと実は心配します。これが伸び伸びとした弾力的な運営をしまして、世界的に雄飛するような、世界情勢に対応するような活動ができるようになりましたら、そのほうがよほど大きな将来性があるかなというふうにさえ思う。これは私の一つの考え方にすぎませんけれども、こういう面が、法人にすることによって、かえってその短所を抱き込むということになりやしないだろうか、こういうことを心配するのですが、これは大臣、どうお考えになりますか。
  75. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 財団法人の場合におきまして、維持会員として各産業界から拠出金を募りまして、そしてその会員のところと学者との間にタイアップいたしまして、産業界のいわゆる研究開発を学術振興会がいままでお手伝いといいますか、仲人と申しますか、仲介の労をとってまいったのでございます。今後学術振興会特殊法人になりましても、この点は学術振興会の非常に重要な仕事の一つになると思います。でございますから、そういうような仕組は、やはり今後も、特殊法人になりましても続けていく必要があると思います。ただ、形式におきまして、維持会員というのをどういう形に持っていくかということは、今後検討してまいるつもりでございますが、特にこの点につきましては、いままで学術振興会とタイアップしておりました産業界が、あげてこの特殊法人にいたしますことを要望してまいったのでございまして、私は、むしろこれができることによってその機能をますます伸張してまいることができると考えておるのでございます。特に最後に申されました人事の問題でございますが、これにつきましては、私ども学術振興会会長たる人は、学問的に申しましても、また国際的に申しましても万人の納得する方をぜひお願いをしなければならぬと思いまして、今後できました際においては十分各方面とも御相談申し上げまして、一流の方をぜひお願いしたいと思っておる次第でございます。
  76. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 第三点は、この特殊法人というものの性格ですが、最近特殊法人が前段申しましたように百以上ございまして、一体この本質は何だろうということが、いま国会におきましても論議されて、まだ定説はございません。そこで、これは、たとえば行政学的に見た場合、法律学的に見た場合、一体この特殊法人は何と規定すればいいんだろうか。この点につきまして、これは事務当局でもよろしゅうございますから、どういうふうにお考えになりますか。
  77. 天城勲

    ○天城政府委員 現在御審議を願っております法案を前提にして考えますと、日本学術振興会法という特別の法律に基づいて設立される公法人考えているわけでございます。特殊法人性格そのものにつきまして、御質問のように法律上いろいろな問題点はございますけれども、いろいろ申し上げますとたいへん長くなるのでございますが、一言で申し上げれば、特別法に基づいて設立される公法人考えているわけでございます。
  78. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一体特殊法人性格をはっきりさすということが、これはいまの段階におきましてはどうしても必要なことでございますが、それならばこの法人につきまして定款をつくるとか――たとえば一般の法人は、あらゆる法人が定款並びにその他の内部規定をつくっておりますのですが、これを持っておらぬのは一体どういうわけであるか。前の財団法人帯付行為をもって内部的な定款、規定を明らかにしておりましたのですが、これにはそういうものは全然用意されないらしいのですが、この点は将来も定款をつくらないのか。定款をつくらないで、この法律と、若干最終には文部省の省令に委任する事項があるようですが、それで内部のあらゆる役員以下の職員の業務上の規律、あるいはまた事業、あるいは財政、会計等につきまして一切をそれに準拠せしめる。この法律だけでということなのか、あるいは定款をつくらないなら、なぜつくらないのか、この点をひとつ明白にしてもらいたい。
  79. 天城勲

    ○天城政府委員 御指摘のとおり、この法律では特殊法人としての定款はつくらないことになっております。ただ、定款の内容とされておりますものは、その法人目的、名称、事務所の所在地とか、あるいは財務とか会計に関する一項などでございまして、これはすべてこの法律に規定されていることとほとんど同じでございます。したがいまして、最近の政府の立法のやり方でございますけれども、最近新設されます特殊法人は、もう法律事項と同じことを定款で繰り返すことになりますので、そういうことで定款を特につくらない。法律に書いてあるのが基本的な問題であって、あとは業務方法書ないしは財務、会計に関する規定等を制定していけばいいではないかという考え方で、最近の特殊法人についてこういう例がだんだん出てきておるわけでございます。別に他意はございませんで、最近のそういう政府の立法の例にならったままでございます。
  80. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それなら進んで伺いますが、この特殊法人目的は第一条に尽きるのでございますか。
  81. 天城勲

    ○天城政府委員 この法律目的と書いてあるところがまさに基本的な目的でございますし、その目的をふえんいたしました一業として二十条に列挙してございますので、この両方で明らかだと考えております。
  82. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 第一条には目的の規定がございますが、目的の前段には学術研究の助成、次は研究者に対する援助、次は学術に関する国際協力の実施の促進、その他学術振興に関する事業、こういうことになっております。この助成あるいは援助ということは、これは内容的には何をもってしようするのか。たとえば資金的なものであるのか、資金以外のものであるのか。資金以外のものがありとするならばそれは一体何か。この点はいかがでしょう。
  83. 天城勲

    ○天城政府委員 ただいま御指摘の第一条の目的の具体的な内容でございますけれども、これは法律の二十条の第一項にいろいろ掲げております具体的な内容として御理解いただければ幸いかと思いますが、たとえば二十条の第一号の仕事でございます。これはわれわれとしても流動研究員という制度をとっておりますが、学術の共同研究のために研究者が移動して共同研究ができるように、旅費ですとか滞在費あるいは研究費を援助する、こういうのが一つの例でございます。それからその他の援助の例といたしましては、ただいままでやっております例から申しますと、奨励研究員の制度、あるいはこれは国際交流とも関係がございますが、外国学者研究者に対するフェローシップを出すというような財政援助、あるいは国際共同事業に関しまして財政的な負担をする、援助をする、こういうような財政面を通じての援助の事業がこの二十条に含まれておるわけでございます。
  84. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この援助なり助成なりの対象は、地域的にあるいは人間等、地域並びに対象の範囲、これは具体的にはどういうことになるわけですか。
  85. 天城勲

    ○天城政府委員 地域、対象ということでございますが、いまも申し上げましたように、対象といたしましては、研究者を対象とする場合には国内の研究者はもちろん、外国研究者を対象としてフェローシップを出す場合もございます。  それから地域といたしましては、研究を中心に掲げます国際共同研究でございますので、極端に言えば世界じゅうどこの制限もございませんで、それだけの共同研究をする能力のあるところ、共同研究をするに値する場所ないしは研究者のいるところでしたら、どことでもやる考え方でおります。
  86. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 やはり定款がもしつくられずにいくということであるならば、かなり精細な、落ちのない規定が補完的につくられていかなければ、この程度の規定をもちましては、極端なことを言いましたならば、文部当局の恣意によって方向づけられ、限定されるおそれがあるのではないかとさえ実は思うのでございます。例をあげて申しますならば、たとえば第四章二十条以下の業務でありますか、業務につきましても、最近の佐藤内閣も、開発途上国に対する経済援助政策あるいはその他学術探求、科学的なあらゆる調査等が相当各方面で努力されております。こういうような方面につきましても、過去の財団法人学術振興会の実績によってみましても、事実上は、これは国際的と申しても対アメリカの関係のみで、ほかは含まれておらぬ、こういうことにもなる。もっと高い観点から、広い視野にわたりまして国際協力をするという業務が想定されなければならぬ。資金とても、単に分担しますというのでなしに、経済力に非常に乏しい後進諸国に対しましては、進んで経済的支援をしながら学術研究をともにするというような方法は幾多もあるわけでございますから、人間的にも、研究調査におきましても、その他あらゆる角度から、ことに地下資源の開発とかいうような問題に取っ組んでいくような場合は一そう重要性を増すだろう、こう思うのですが、その辺が、この程度の規定では具体的に出てこないですね。ですから、もしこれが、企業ではありませんけれども、そのあとで書いてあるような事業の計画であるとか、あるいは仕様書であるとかいうような、企業的な内容を持つような事項が出てくる限りは、もう少し精細なものがなければいくまいじゃないか。定款をつくらないなら、同じような補完的な何かの規定が、法律あるいは政令、省令などで規制せられなければならぬではないか、こういう用意がなければ、やはりこれは将来問題が起こるに違いないと思うのですが、どうです。
  87. 天城勲

    ○天城政府委員 御指摘のとおり、仕事が何をやるか、あるいは非常に片守っては困るという御心配でございますが、これは法律の二十一条に業務方法書を定めることになっております。この特殊法人といたしましては、業務方法書で大事な事項を定めるのでございますが、業務方法書の記載事項が文部省令で定めることになっておりまして、いま御指摘のような基本的な問題は、全部この業務方法書に記載される予定でございます。特に振興会の業務の執行の基本方針というのをこの業務方法書で明らかにしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  88. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはやはり、あなたはこの法律案が完全なものだという前提で御答弁になったら私と少し食い違ってくるのでありまして、こういうようないろいろな問題が指摘されるのでありますから、たとえば対韓国との関係にいたしてみましても、やはり外交政策上いろいろな意見が分かれておるのでございます。南方諸地域に対しても同様でございます。あれこれ考えてみますると、特にアジア地域におきましては問題が多いのです。北米だけならば従来の軌道に乗ってずっといくということになりましょうが、それではこの法律趣旨世界の大勢に応じられません。こういうことを思いまするので、やはりこういう点につきましては、一そう補充するというような制度をつくる必要があろう、こういう観点からお尋ねするのであります。業務方法書に何か盛り込んでいけば、文部大臣がそれを認可するのだというのでは、これはやはり――問答じゃないのであります。何をつくってもいいのか。これはあかぬ、これは方針が違う、こういうものではないということを一々言われても、法律にはよりどころがない、何も書いてないのですから、ということになりますので、私はその基準となるべきものが制度の上で明らかになっておってしかるべきではないか、こういうふうなお尋ねをしたのであります。
  89. 天城勲

    ○天城政府委員 これはたいへん抽象的なことを申し上げて恐縮でございますけれども、この法律目的、それから事業から御判断いただきますように、研究の助成あるいは国際共同事業の促進、産学協同事業の推進というようなことにつきして、それについてどういう条件を付したり、あるいはどういうところとやってはいけないとか、あるいはどういう学問分野の人には援助をしていいとか悪いとかいうことは、そもそも考えないのがこの学術――特にこれは基礎的な研究が中心でございますので、そういうことを考えないのがむしろ本旨じゃないかと思っておるわけでございます。現在も日米関係は予算的に非常に目立っておるようでございますけれども、金額的には別でございますが、現に宇宙線研究ではインド、ボリビアの共同研究もやっておりますし、あるいはテヘランとかナイロビにおける地域研究にもこの機関から調査研究費を出すというような仕事もやっておりまして、あるいはイタリアのナポリにおきます海洋生物学研究につきましても仕事をいたしております。そういうような関係でございますので、別にどこをどうという規制をいたさないことによって、かえって伸び伸びと、この学術振興会を中心にしていろいろな事業発展ができるのじゃないか、このようにも考えておるわけでございまして、御趣旨の点は私もよくわかりますので、積極的な意味で特定の規制がないと困るのじゃないかという御趣旨は、私はこの会の趣旨から関係者も十分理解してやっていただけるのじゃないか、こう思っております。
  90. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっと大臣に、その点の締めくくりとして伺っておきます。  この財団法人日本学術振興会寄付行為のいわゆる事業趣旨目的、これが第一号から第十一号まで書かれておるようでございますが、大体目的事業につきましては、前者の財団法人のこの規定が踏襲されていくものというふうに理解していいでしょうか。法案の字句を文理的に読み、解釈いたしましても、あまり変わりのないように思いますが、そういうふうに理解していいでしょうか。
  91. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 大体において、いままでやってまいりました財団法人事業を、この新しい特殊法人が包括しまして継承してまいるということをとったのでございますが、しかし、特殊法人になりましたならば、いままで財団法人が行なっておりました事業以外におきましても、必要が生ずればこの法人でやれるように考えております。
  92. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 前の財団法人当時の学振の寄付行為には、たとえば委託を受けましての学術並びに応用に関する調査研究を行なうこと、調査研究というような事項までございました。あるいはまた、フェローシップを供与して研究者を養成する、こういうこともございました。この点は第四号にあるようですが、前者のほうの直接研究するということば一切しない、これがいまの新しい学振の性格でございますね。その点どうです。
  93. 天城勲

    ○天城政府委員 いまのお話の、基本的には現在の学術振興会のお仕事の幅は、もちろん新しい法人のほうもその範囲になると思います。具体的に御指摘になりました表現が、たとえばフェローを供与しというような言い方は今度は使っておりませんけれども、先ほど申したように、研究者の援助をするという中で当然この仕事をやっていく考えでおります。  それから、学術振興会寄付行為の十号でございますか、委託による学術、それから応用に関する調査研究を行なうこと、これは表現が実態と少し離れておるようでございますが、これがいわば産学協同のあっせんをしておる仕事でございまして、ここは研究機関でございませんので、こういう御要望があれば研究者と学者との間の委員会をあっせんするとか、そういうものを構成するとかいう仕事を今後やってまいりますので、基本的には、現在の学振の仕事は引き続いてやれると考えております。
  94. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 第五に、財政の構成について伺いたいのでありまするが、事業活動の資金規定が明白になっておらぬようでございます。第五章は財務及び会計の規定でございますが、この財政の構成につきまして、事業活動の資金関係の規定が明白でありませんが、一体何を主にして原資にしよう、引き当てようというのでしょうか。その点いかがですか。
  95. 天城勲

    ○天城政府委員 この法人の財政でございますけれども振興会の資金、これは現在もそうでございますし、将来も国庫補助というものが非常に大きなウエートを占めてまいります。もちろん民間からの寄付金あるいは事業に伴う手数料の収入がございますが、主として国庫補助金でまかなっていく考え方でございますので、それに基づいて資金計画というものが、毎年作成されるように制度上なっておるようでございます。ここで従来の財団法人とかなり今後の行き方が違うじゃないかとすれば、資金の関係で得付金が非常に多いということと、それから管理経費等は、全額国の経費でまかなえるような点が非常に違ってくるかと思っております。
  96. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで、お説によりますと、一般会計の国庫補助を最大の原資にするらしいのですが、それならば、たとえば補助金を取るとなれば、御承知のとおり補助金適正化に関する法律がございます。これによって規制は受けます。国の予算の許す範囲内において予算を組むとか、その補山金が交付せられるとか、何かもっと具体的な財政規定、財務規定をどうして置かなかったのでしょうか。これを想像し得る規定は、三十四条に「国の配慮」という規定がございます。これには、国は第一条の目的達成のために振興会について必要な配慮をすること、近ごろは立法技術としまして妙な字句を使うことになりまして、国が配慮なんて、そんな字句は昔はなかったものでございますけれども、最近はちらほらと見るのでございまして、これは全く奇妙なもうろうたる印象を受ける字句でございます。配慮というものは、要するに、私は法律的な字句とは思われませんのですが、一体その辺はどうして――補助金を最大の原資にする、それならそれでわかりますけれども、国の予算の許す範囲内において補助金をもって支弁するとか、あるいはまた財団法人日本学術振興会の基金をもってこれに引き当てるといったところが、わずかなことしかありませんので、こういうものはどうにも動きがとれません。だから問題にならぬ。結局、失礼ですけれども、語るに落ちてしまって、補助金が最大のものでないかのような感じさえ受けるのです。この辺について、これはどうも明瞭を欠くのですが、もっと補助金なら補助金というものを当てにすることを財政規定、財務規定に明白にすべきでなかったであろうか、こういうふうに思うのですが、その点は大臣、こういう傾向ですと、国会はごまかされてしまうおそれがあるのです。どうなんです。
  97. 天城勲

    ○天城政府委員 吉田先生の御指摘、みなごもっともでございまして、いまの規定は、従来の同種の規定から見るとちょっとばく然としているじゃないかという御指摘、ごもっともだと思うのでございますが、この三十四条の規定が国の財政援助の基礎という考え方をとっております。従来のこの種の規定でございますと、予算の範囲内で補助することができるというような規定が多いのでございますけれども、大体そういう規定自身が、あの意味ではかなりナンセンスと言っては変でございますけれども、予算の範囲内で補助することができるということにいたすと、これは非常に抽象的過ぎてしまって、負担をするとか何分の一国が負担するとかいうがっちりした規定ならよろしいのでありますけれども、そうでない場合に、補助することができるということは、しかも予算の範囲内でということが上にかぶさっている以上は、財政的な配慮に全面的にゆだねたという形になるなら、法律的にそういう規定はあまり積極的な意味がないんじゃないかという考え方政府部内でございまして、最近御指摘のように必要な配慮という表現で、もう少し広く、財政上以外のこともあり得るだろうから、税制上の問題も非常にあるだろうということでこういう立法例になったわけでございます。御趣旨はもうよくわかりますし、それからわれわれも申し上げたように、国庫補助というものを大きな財源としております点も御理解いただけたと思いますが、何回も申しますように、規定上最近の立法例でこういう整理をしたもので、御了承願いたいと思います。
  98. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この法人は資本金はあるのですか。
  99. 天城勲

    ○天城政府委員 ございません。
  100. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうすると、もっと端的に申しますと、これを実施する際の――公布されたら直ちに出発しなくちゃいけませんが、資金源はいまの補助金と、それから前の財団法人からの引き継ぎ資産、さしあたってはそれを当てにするのです。それなら四十二年度におきましては、補助金財団法人のほうについておるのでしょうか。おるとするならば、それを引き継ぐことになるだろうか、それを引き継ぐという規定が、この法律にできておるのだろうかどうだろうか。国会補助金をつけておるとするならば、補助金はこれはひもつきの補助金でありますので、名前をきめた補助金ですから、それを違った法人格のものに流用することは、これはまた規定が必要でないかと思うのですが、その点いかがですか。
  101. 天城勲

    ○天城政府委員 本年度日本学術振興会、これは予算の決定当時は財団法人でございますが、これに対する国庫補助金三億三千万というのが計上されまして、御承認いただいておるわけでございます。したがいまして、国の予算としては、財団法人学術振興会に三億三千万いくという形になっておりますし、その前提ですべてが考えられております。それが特殊法人になりました場合の権利、義務の受け継ぎのことでございますが、本法の附則の九条に、この財団法人学術振興会からの権利、義務の引き継ぎの規定がございまして、特に第三項に、設立認可があった場合に、財団法人振興会の一切の権利、義務は、この特殊法人の成立のときにおいて特殊法人に承継されるという規定がございまして、いまの補助金関係特殊法人に引き継がれる、こう理解しております。
  102. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 国会では、財団法人日本学術振興会に三億三千万円の補助金を出すべき一般会計が議決されたのでございます。そこで、補助金は、ここまでくるとこれは行政科目になっておるかと思うのですが、これは附則九条の単に権利、義務ということで、合法的に引き継ぎは、財政法的措置は遺漏ないのでしょうか。ちょっと私はその点はよく研究をしておりませんけれども、なければないでいいのですか……。
  103. 天城勲

    ○天城政府委員 先生御案内だと思うので、よけいなことを申すのは恐縮ですが、補助金を出す場合にやはり交付決定をいたしますから、そこで、財団法人はもうこの四月から本年度の事業を始めておりますので、交付決定をいたしますと、それによって財団法人振興会のほうとしては、補助金を受ける権利と申しますか、それが入るわけでございます。それを引き継いでいく、こういう考え方でございます。
  104. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一応は、国会は予算を議決したときには、この特殊法人はまだ全く予想いたしておらなかったことでありますので、この点はひとつ将来の問題といたしまして私も研究させてもらいたい、こう思います。  それから、従来財界等から寄付があったようでございます。もっともその後の実績は、寄付がなくなったようでございます。四十二年の財団法人日本学術振興会の予算書を見てみましても、民間人からの寄付が歳入予算書には出ておらぬようであります。ことに維持会からはきておらぬようであります。今後産学ともに研究していくという、産業開発のために研究する、そういった方面から、産業界からの番付なんかが想定されておるのだろうかどうか、寄付を採納するということであるならば、どの規定によってこれが可能なのであろうか、その二点はどうですか。
  105. 天城勲

    ○天城政府委員 御指摘のとおり、従来特に産学協同の研究事業につきまして民間企業の寄付金がございました。今後も、事業を継続していくという前提では、この寄付金は期待いたしております。法律上そういうことに関する手当ては、という御質問でございますが、これは一般にこういう機関でございますので、寄付金を特に禁止してない限りはもう受けられるという前提でおりますので、この特殊法人になりましてからも、主として産学協同事業を中心といたしまして民間からの寄付金は仰ぐ予定でございます。
  106. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 時間がなくなってまいりましたので、急ぎます。  第六点といたしまして、四十二年度における事業計画はあらかじめ持っておるのだろうかどうか、これに対する予算計画は、要するに、この財団法人の四十二年度の事業収支の予算書というものに基づいていくつもりなのであるか、あるいは新しくさらに計画を立てるのか、これはどちらでしょう。
  107. 天城勲

    ○天城政府委員 一応現在の財団法人の段階での予算の考え方がきまってございますが、特殊法人になりましてからまたどうなるか、いろいろのことがあろうと思いますけれども、少なくとも予算的には、財源的には国庫補助が事業の経費として中心でございますので、現在のところ四十二年度、特に大きく新しいものはまだできない状況でございます。特殊法人としての基礎固めに、この四十二年度はむしろ中心を貫くという考え方であります。
  108. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、やはり少なくとも国会審議、さらに参議院においても議論がなされると思いますが、いろいろと指摘された問題点、それから財政の計画、あるいは事業そのもの、そして具体的に目的達成の目標とかあるいはその対象とかいうふうなものが幾多指摘されておりますので、少なくともこういった国会論議のなかった段階におけるこの財団法人の学振会の収支予算書というものは、相当改変されてしかるべきではないか、こういうふうに思います。したがいまして、事業計画、これに伴う収支の予算計画、そういうものは国会論議を相当参照いたしまして、そして新たに検討するという用意があるかないか、この点ひとつ大国にはっきりしておきたいと思います。
  109. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 四十二年度におきましては、大体四十二年度の予算が確定いたしておりますので、いままでの財団法人の援助をいたしますような予算の範囲内におきまして一応実施せざるを得ぬかと思います。しかし、この後におきまして必要やむを得ざる必要が生じますればまた別の問題でございますが、一応四十二年度はこの予算で踏襲してまいるということになると思います。ただ、四十三年度の予算につきましては相当画期的なくふうをいたしまして、やはり事業の相当思い切った飛躍をぜひ考えたい、こう考えております。
  110. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし、三億四千万円の予算で三億三千万円を国庫補助にたよっておる。こういうような、まことにこれは言うなら不自然です。財団法人であるものが、そして産学協同研究とかいうものを振りかざしていくものが、そして財政的な維持会というものをつくって財界の一流のメンバーが役員になっておるようなそれが、理由のいかんにかかわらず財政支援なしに予算が組まれておるということは、何らかの不審、何らかの事情がなくてはならぬ。こういったことから、やはり予算そのものを抜本的に再検討する必要があると私は思うのです。なしに、漫然といくということであるならば、この特殊法人をつくるという趣旨はもう斬新な感じは何も見えません。ただ古いものを踏襲して、十年余り何かと事情があって、今日やっと日の目を見るようになったというような、そういうきわめて消極的な印象しか受けませんし、大きな期待はかけられぬと思うのです。さらに、具体的な事業面そのものを見ましても、いま指摘いたしました。われわれはアジアの先進国であります。平和につきまして大きな使命を持っております。したがって、開発途上国に対しましては武器を出すことはできないが、それ以外の文化的な一切の協力態勢は積極的になされなければならぬ。その先端をいくべきなのが、この日本学術振興会に課せられている一つの使命でないかとさえ私は感じるのです。ところが、この事業計画を見てみますと、そのあとはありません。少し、それは言い過ぎかもわかりませんけれども、いろいろといま若干御指摘になっておりましたけれども、そんなわずかな、虫めがねで見なければわからぬような小さなことならば、大げさに特殊法人をつくる必要はございませんです。でありますので、これは事業面におきまして、したがって事業費、その計画におきましてこれまた根本的に再検討する必要がある。名実ともに、ほんとうに特殊法人で出発するゆえんをこの計画の中に盛り込んでいくということにならなければ、国会を愚弄したことになります。これは国会に提案される前の案です。つまり旧法人の案なんです。その旧法人の案をそのまま踏襲していきますというのでは、これはやはり国会に対するほんとうの責任のある政府文部省の行政方針でないと思われます。したがいまして、この学術振興会が新たに出発する以上は、以上述べましたような数個の点だけでも、これは抜本的に再検討して出発せられてしかるべきではないか。四十二年はきまっているのだからこれでやります。四十三年はがんばってさらに斬新な新機軸を出しますというようなこと、そんなような間の抜けたことではいけませんよ。大臣、四十三年というとまだ一年あります。ことしは、まだこれから何らかの方法でまた種々方針変え、計画変えはできるはずであります。できないことはないと私は思います。業務方法書を変えていくならば、それは大臣のほうで、たとえばこれは認可することは可能なのですか。そういうことを思うのですが、この点をどういうふうにお考えになりますか。大臣、ひとつ御答弁を。
  111. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 もちろん、この四十二年度の予算要求をいたしますときには、私どもといたしましては、同時に学術振興会特殊法人にしたいという計画のもとに予算要求をいたしました。でございますので、予算の内容につきまして、事業面におきましてはそう画期的な、新しい法人になったという特色はあらわれていないのでございますけれども、しかし、財団法人でありました場合においては、その管理機構と申しますか、そういったような点に非常に欠陥がございましたので、まず初年度におきましては管理機構を確立して、そして四十三年度以降の大きな飛躍に備えていこう、こういう考え方でこの予算請求をやってまいりました。そういう関係でございまして、ただ、はたしてこの財団法人が、いまの政府の一般方針として特殊法人に認められるかどうかという問題につきましては、相当最後まで難航してまいりましたので、そういう関係で四十二年度の予算といたしましては、これはできましてから画期的な飛躍ということを見るに至っておりません。ただ、業務方法書で寄付金その他の関係で業務拡張はもちろんできるのでございますが、国の予算といたしましては、四十二年度は既定方針によってやるよりしかたがない。四十三年度において飛躍的な伸びを見てまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  112. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、それを文句をつけるようで悪いですけれども、たとえばあなたはあらゆる方面のりっぱな方を選考して、そして会長理事長に任命したい、こういう御希望のようであります。しかし、そのりっぱな方が、以前財団法人日本学術振興会当時に作成した事業計画、予算書、それをそのまま踏襲していかねばならぬ。一体これは何でそんな実質的な義務がありましょうか。やはり、一たんこの国民の大きな希望をになって新しい出発をする以上は、そこに新しい創意くふうを、独自の立場で再検討を織り込むという余地を与えてしかるべきだと思うのだ。そうしないで、前者がきめたやつを、おまえそれを実行せいと言うなら、残務処理ですよ。ことしは残務処理で、来年からは新規まき直しで新しいものを計画しなさいと言うのでは、それは事業をばかにしたことになります。やはり名実ともに新しくなる以上は、仕事も予算も一切が新しい装いで出発せねばなりません。たとえば財界こぞって、産学協同研究のためにこの財団法人特殊法人にしてもらいたいという希望があるとおっしゃるならば、財界として、いまの日本の産業開発のために、学術研究のためにこのような必要があるのでこういった経済的支援をする、こういう研究も焦眉の急だ、これが重要だ、こういうような積極的な何かがなければならぬ。だから、そうならばそれで、その方面についても新しい予算がなければならぬけれども、しかし、それは三文も出ていない。予算書にもそういう財源、原資は書かれておりません。こういうことを思いますと、何か知らぬけれども、もう一つぴんとこぬのでございますね。大臣、よほどこれは腰を据えておやりにならなければいけませんよ。かりに非常にりっぱな方が会長理事長になられたといたしまして、これを見まして、これじゃ困りますよとかりに言ったらどうなさいますか。大臣が、おまえのほうの変えてくる計画はおれは認めないぞと振り切って、こっちのきめたものに従っていけというようなことでは、一流の人材を会長理事長に持ってくることはできませんよ。私は、こんなものはつぶしてしまいなさいという意味でこの議論をするのじゃないのです。しかし、ほんとうにここは筋を通して、国民が納得するように、将来に大きな期待にこたえ得るような体制を名実ともにつくらねばならぬ、その非常に大事な時期ですから、このことを切言申し上げるのです。ですから、やはりここは、障子が破れておってもおまえは一カ月ここでしんぼうしなさい、来月からは適当におまえのほうで案を立てなさいと言うのでは、これは新任の代表者を無視することに結果的にはなります。こういうことを私はおそれるのです。そんなことになりましたならば、文部大臣の強力な監督下にただあごであしらわれる、そんなものにおちいってしまう危険があります。そういうようなことではりっぱな人材は得られませんよ。そういうことをほんとうに思いますから、ここはよほど腹をおきめにならぬといけませんが、どうですか。
  113. 天城勲

    ○天城政府委員 古田先生の御指摘、われわれもよくわかります。ただ、直ちにつくる機関でございませんで、旧来の財団法人を母体にしておるということで、財団法人の権利、役務を承継する一つの、ある意味では制約と、それから従来の財団法人の継続的な仕事の担保もあるわけでございます。したがいまして、本年度もすでに事業が進んでおりまして、年間のいろいろな事業計画が進んでおります以上は、それに伴います権利、義務は引き継がなければならぬ。たとえばフェローをきめておりますれば、年間その経費は払わなければならぬという義務を負っておるわけであります。それらのことを考えますと、ことしの予算措置といたしまして、特に政府補助金を中心といたしました予算措置といたしましては、現在まで進んでおります財団法人仕事というものはにわかに変えるわけにはいかないんじゃないかという点を申し上げておるわけでございまして、今後特殊法人になりまして、国の財政援助というものは、予算がきまっておりますからこれ以上出ませんけれども特殊法人として財界の関係その他から新しい事業を起こすということは、それは十分考えられるわけでございますけれども、少なくともいままでやってきた仕事をここで一切御破算にしてしまうというわけにまいらぬという点を申し上げておるわけでございまして、私たちといたしましても、年度の中間でできる法人で、いろいろな制約がございまして、気持ちとしては先生の仰せのとおりの気持ちを持っておるのでございますけれども経過的にはどうしてもそういう措置をとらなければならぬということ。それから学振に対するいろいろな期待があるのでございますけれども、何ぶん――現状を批判してはいかがかと思いますけれども、現在の事務能力その他からいって新しい事業をこなし切れないという状況も、特殊法人にしなければならぬ一つの理由になっております。本年度はぜひそういう基礎固めをいたしまして、国の補助金もいろいろ御指摘もございましたけれども、事務体制のほうもきっちり整えるという基礎を先決にいたしたい、その上でいろいろ御指摘のございました将来の事業発展を期したい、こう考えておるわけでございますので、御了承願いたいと思います。
  114. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこが大事なことでございますので、そういうことが非常に重要な切りかえですから、その切りかえのときには経過規定、経過措置といったものがきわめて重大でございます。したがいまして、これは人的に、あるいは財政的に、制度的にそれぞれ経過遺憾なきを期さなければならぬ、こう申し上げるのでございます。でございまするので、事情変更いたしましたならばそれに対応するような予算措置事業計画、したがって人がかわればそれぞれ意見があろう、こういうことについて、寛容な態度を持っていくのでなければ、これは官僚支配の、弾力性を失った、硬直し切ったところの機関になり切ってしまいます。これがいまの公社、公団全体を通じました一つの弊害なんです。あまり干渉し過ぎるので、伸び伸びとした自由な創意くふうが用いられないという点が、一つ批判があるわけなんです。そういうことにおちいってはならぬので、私はここで御注意申し上げるのです。ですから、いまが大事なんです。いまが大事だから、一たんきめてあるものを古い衣でことしはやれというような考え方を踏襲しないで、ともかく新しくなるときには、これはその時点におきまして新しい人あるいはその情勢に応じて、財政も事業も、あらゆる面から再検討するという余地を残して経過をする。この経過が大事なんです。こういう経過についての配慮がちょっと足りないと思いますので、やはりこの点は政令なりあるいは省令で適当に補完するということになりましょう、ここに若干の委任事項もあるようでありまするから。大臣、根本的にお考えになりませんと、来年はそんなことをなさっておりましたら、よしんばこれが通ってもいろいろな非難がきっと集中しますよ。私はそう思う。そういうことを思いますので、この点、重ねまして私はやはりはっきりした覚悟、方針を承って、そしてぜひともそういうような線に沿ってこの際は経過するように、特段の処置をされることを希望申し上げたいと思うのですが、これについて御意見を伺って、これで終わります。
  115. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 御趣旨の点は十分尊重いたしますし、また、新たに会長がきまりました際に、その新発足いたしました際に、現在の予算措置で非常に不都合な点があるというお考えでございますれば、私ども御相談するのにやぶさかではございません。ただ、再三繰り返して申すようでございますけれども、もうすでに事業が開始されまして、いろいろ研究者に対しまする研究費の配分とか、研究生の選択とか、そういう事業がずっと進んでおるものでございますから、その財団法人のときに決定いたしましたことを、全然御破算にしてしまうということも非常に困難ではないか。ただし、特殊法人にいたしました場合におきましては、この将来計画につきましては、十分新しい特殊法人の御判断とか計画とかいうものを尊重いたしまして、この事業の伸展を私どもとしては大いに期してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  116. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、全部御破算になさいと申し上げるのではないのであります。場合によりましたら補完なさい、場合によりましたら根本的に再検討して、そしてあるものは御破算しなさい、ここまでの含みを持っておるのであります。この事業の内訳に盛られておるものを見ましても、たとえば流動研究員制度の実施というようなことで相当お使いになっておる。国際的協力といっても日米科学協力研究、これが二億円、一番大きなものです。その他国際共同研究事業、宇宙線の研究などありますけれども、たいしたものじゃありませんよ。こんなものはたいしたものじゃありませんので、御破算にしなければいかぬとか、するおそれがあるとか、そんなようなそれほど思い詰めた気持ちでなしに、もっと伸び伸びとなさらぬと、この程度のことに日本文部省ともあろうものがあまりこだわってしまわずに、この際新発足して世界の要請に応ずるなら、それらしい品位もかまえも持っていかれなければならぬ、こう思っておるのです。それで伺っておるのです。
  117. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 もちろん私ども、一応この予算が決定いたしておりますものですから、予算の範囲内ということでこだわっておったわけでありますが、新しく特殊法人として発足しまして、事業内容においてぜひ必要だというものが生じました場合におきましては、やはりこれは補正予算その他の関係になりますので、これはその場になりましてからあらためてお願いをいたすことでありますので、いまからそういうことをお願いすることを予測しましてお答えするというわけにはいかなかったのでございます。その点は、十分御趣旨を尊重して今後まいりたいと存じます。
  118. 床次徳二

    床次委員長 有島重武君。
  119. 有島重武

    ○有島委員 わが国の学術振興の強化ということにつきましては、これは緊急のことでもあり、また非常に国家の必要事である。このたびの特殊法人にいたしますことが、ほんとうにこれが学術の振興強化にそのままつながるものであれば、私どもはここに賛意を惜しまぬものでございます。いままで数々の質問がございまして、ほぼ問題点が尽くされておるようでありますけれども、多少重複すると思いますけれども、ここで少しく質問させていただきます。  いままで問題になりました点、一つにはこれが官僚統制にそのままつながっていくのじゃないか、そういうような疑いが幾つかございまして、いま文部大臣は責任体制を強化するのだと申されましたけれども、これは年限がたつにつれまして、その責任体制というものがある場合には逆用されまして、いままで数々質問がございましたように、目先の財界の要請なりあるいは産業界の要請なり、あるいは権力抗争の上の動きにつながるというような可能性が、このたびの措置の中に含まれるのじゃないか、そういった心配があるのじゃないかといままでみな心配していたわけでありますけれども、その点についての大臣の御見解を伺いたいのです。
  120. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 これは、学術振興会が行ないます事業の大部分は、やはり国が学術振興のために行なうべき事業といたしまして国の予算を計上しまして、これを学術振興会に実施してもらうという関係になるわけでございます。したがいまして、この学術振興会に国費を出します金は、これは国民の血税でありますので、学術振興会がその金の使い方について間違いがあってはならないと思います。そういう意味において、業務のやり方につきましては、やはり国として責任を持って監視しなければならぬと思います。しかし、実際上の業務そのものといたしましても、私どもはワクをきめまして、それから予算を計上いたしますけれども、たとえば特に政府以外の特殊法人にいたしました一番大きな理由は、学問の自由と申しますか、研究の自由と申しますか、また学問の軽重の判断と申しますか、こういったものは専門学者なりにおまかせして、そうしてこれは行政的にタッチすべきものでないと思いますので、その点、やはり選択なり業務の実施につきましては、あくまでこの法人の自主的な運営にまかしてまいる、これが私は運営の今後のあるべき姿ではないかと思います。その点は、私ども文部省におきまして、たとえば文部省自体がいたします科学研究費の配分にいたしましても、その科学研究費の配分は科学研究費の分科会をつくってやっておりますが、分科会のメンバーは学術会議から推薦を受けまして、そうしてその学問的判断は、文部省は全くそれにノータッチで、そのメンバーによって構成する分科会におまかせをいたしておるわけでございます。そこに私はこの法人の運営の妙と申しますか、いいところがあるのではないか。ですから、特殊法人にいたしました。その経理につきましては、これはやはり文部大臣が責任を負わなければなりません。しかし、業務の実施については、あくまでこの法人の自主的な判断によって行なっていただく、こういう形に持ってまいりたいと思っております。
  121. 有島重武

    ○有島委員 ただいまの大臣の御答弁の内容は、いままでの財団法人については、いままで仰せられたような行き方できたわけでございましょう。今度の特殊法人になりましたときに、そうした学術会議などの影響力が非常に排除されていく。それは、法案の上ではこの前の財団法人の運営の場合と格段の差でございます。そうして責任体制が強化されると同時に、役員の系統がきわめて単純化され、独裁的な運営をしようとすればできるような仕組みに今度は変わっておるように見られるわけであります。これが逆用されるおそれが全くないのか、あるいはそういった可能性は少しはあるのか、その点について、現在の大胆の御心情については伺う余地はないと思いますけれども、将来にわたって逆用されるおそれは全くないかどうか、その点についての御見解を伺いたいのです。
  122. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 いままでの学術振興会学術会議との関係は、私、親子の関係だと申しておりましたが、しかし、学術会議は実は政府機関でございます。それから財団法人学術振興会はあくまでも私法人でございます。したがいまして、学術会議と親子の関係があると申しましても、その組織の中に学術会議が、実際上入っていくということは、定款なり寄付行為によって規定されていなければ確保できないという面があったわけでございます。しかし、学術会議政府機関でございまして、文部省は、たとえば大学に研究所をつくりますとか、研究機関をつくりますとか、いろいろな研究費の配分をどういう方針でやるとかいうことは、全部学術会議勧告に基づいて政府内部の機関がやっておるのでございまして、これは法律上何も書いておりませんけれども、事実は政府部内の機関同士の関係でございまして、非常に密接な関係を持って文部行政、特に学術行政につきましては学術会議の意思を尊重して行なわれております。今度特殊法人になりますと、特殊法人ではございますけれども文部省は責任を持ちまして、学術会議の意思を反映してあらゆる事業を行なってまいりますので、これはいままで、完全なる私法人のときはそれを支配する方法はございませんけれども特殊法人政府機関の一部である限りにおきましては、学術会議の意思がそのままの姿でこれに映っていくということは全く保証できる問題でございますし、もしそうでなければ、学術会議のほうで黙っておられるはずはございません。なお、その意味において、文部省におきましてこういう実際上のいろいろな研究費の配分でございますとか、そういう場合においてのメンバーは、学術会議に依頼して選出してもらっておるわけであります。ですから、学術会議と今度できます特殊法人たる学術振興会と、常時に、私どもは一つの常置機関としまして連絡機関を持っていこう。これは学術会議とお約束申し上げております。そして配分するとか判断する学者の選定につきましては、常に学術会議と密接な関係でこれを行なってまいりたい。こういう意味合いにおきまして、私は、いままでよりも一そうその点は確保できると確信を持っております。
  123. 有島重武

    ○有島委員 いまのはいわば不文律的な関係を申されたと思います。この法文の上から見ますと、いままでの財団法人の場合には、評議員の中にも十名ほどの学術会議の代表の方が入っておられる。そしてその中から互選された理事の中に五名の方々が入っておる。そうしたほぼ直接的なつながりがあったわけであります。今度は、これが政府の諮問機関としての学術会議、そしてその意思を反映さしていく。文部大臣から任命された会長理事長、そういうふうに、形の上から申しますとこれは以前よりは間接的になっておる、そのように理解できるのじゃないかと思うのですが、その一点はいかがですか。
  124. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 表面から見ればそのとおりになっておると思いますが、実質的面でいけば、私はもっと密接な関係になってきておる、こう考えております。
  125. 有島重武

    ○有島委員 ただいま実質的な面――これは剱木文部大臣がいらっしゃるときはいいかもしれませんよ。それが二年たち、三年たち、状態が変わった場合には、この法案が逆用されるようなおそれが全然ないか、そのことをいま伺っておるわけです。
  126. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 この点はひとつぜひ御了解願いたいと思いますが、学術会議日本学術体制といたしまして戦後にできまして、わが国の学術研究の面におきまする最高学術機関としての政府機関でございます。でございますから、学術会議勧告によりまして政府は、学術に関する限りは学術会議の意思によって行なわれてまいるのでございます。でございますから、文部省学術会議勧告に基づいて各種の研究所を設けましたり、あるいは科学研究費の配分を行ないましたり、あるいはいろいろな問題を勧告に基づいてやっておるわけでございます。でございますから、いままでの財団法人でございました私法人の場合とは異なりまして、学術会議が直接的に勧告をいたすわけでございますから、その勧告を聞かないでやはり疎遠になっていくということは、その機構上許されない問題であると思います。その点は、ぜひひとつ御了解をいただきたいと思います。これは特殊法人にいたしまして――これがたとえば財団法人でございましたらいわゆる私法人、私の会社、まあ存在的には自主性を持った一つの法人格を持っております。でございますけれども特殊法人となればこれは政府所管の公法人でございますから、そこに学術会議との間におきましては直接的な関係を生じるのでございまして、もし疎遠になるというようなことがございましたら学術会議におきまして勧告して、そうしてその特殊法人のやることは間違っておるということを勧告いたしますれば、政府はこれを聞いていかなければならぬ責務を持っておるのでございますから、その点はひとつ御心配いただくことはないと私は――私個人とかどうとかいう問題ではございません。制度からいって、そういう密接な関係になってまいるということを申し上げたわけでございます。
  127. 有島重武

    ○有島委員 いまの御答弁でございますけれども、平たく申しますと、政府のほうには学術会議がついておるから心配がない、そういうようなことになると思いますけれども、その学術会議の代表の方々が、このたびの特殊法人化するという措置については一つの希望も持つけれども、危惧も抱く、不安を持っておる、そう言われているのです。それもやはり学術会議の発言でございますよ。それがやはりストレートにこのたびの法案の上に反映しているかというと、そうでないように見受けられるわけです。また、法案の上にはっきり学術会議との関係をうたっていないという点について不満を持っておられるわけです。不満を持っておられるというのは学術会議ですよ。そういった学術会議の意思を反映していないという証拠が、現在時点においてすでに出ているわけなんですよ。ですから、大臣の御答弁を伺っておりますと、何か循環論法でごまかされているような感じがするわけです。申しわけないけれども。  もう一ぺん伺いますけれども、この法案が将来にわたって逆用される可能性を持っていないかあるいはいるか、全然この法案には逆用されるおそれはないという御断言があればまた話が別になるわけですけれども、私たちとしては、ここは常識的に見てそういったおそれがある、学術会議としてもそういうおそれがある、そう言っているわけであります。学術会議がついているからだいじょうぶだと言われるその大臣は、この学術会議の御意見とも、またわれわれの感じているところとも多少違うわけなんですよ。
  128. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 学術会議あり方の問題でございますが、学術会議が真にその使命に基づきまして、今後政府機関の内部にあって日本の学術の振興について責任がある決議をどんどんなさっていただく限りにおいては、私はそういう心配はないと思う。学術会議がもしその学術会議本来のあり方を逸脱しまして、そしてその決議が正しい方向を示すような決議をしない状態になる場合は別です。しかし、そんなことは私はあり得ないと思います。したがいまして、学術会議が正しく日本の学術を振興させる意味におきまして、正しく決議機関として存在する限りにおきましては、これは当然に学術会議の使命でございますから、しかも学術振興会特殊法人にいたしましたのは、政府としてこの勧告を受けて、まともにこれを実施していこうというために特殊法人でなければいかぬ。財団法人であれば、これは政府の意思から離れていく場合もとめることができません。でございますから、これを特殊法人にいたしたのでございまして、理論的には私の言うことは絶対に正しいと確信を持っております。しかし、学術会議の中でそういう御不満があるということでございましたので、私は会長、副会長ともとくと御相談いたしまして、そういう御不満がございますならば、事実上学術会議振興会とが、振興会の中に常置機関といたしましてはっきりと両方からメンバーを出しまして、あらゆるこの業務の内容につきまして常時に連絡をしてまいる方法を考えましょうということをお約束を申し上げました。もしそういうことが実現するならばそれでけっこうだということで、学術会議と私とは、完全にその点について意見が一致しておるのでございます。この学術振興会が発足するまでは、そういう問題でいまこういうふうにすると言うわけにはいきませんが、新しいメンバーができましたら、必ず私は文部大臣として責任を持って、この特殊法人たる振興会学術会議との間に常時連絡をいたしまして、そういうそごのないようにやることを学術会帳と約束しておるのでございますし、必ず実施する覚悟でございます。
  129. 有島重武

    ○有島委員 ただいまのお話でございますが、これは確かにその限りにおいては間違いのないりっぱなことであると思いますけれども、きびしく言えばこれは一種の口約束でございます。四、五年たちますと、かつて剱木さんと朝永さんがそういう話をしたそうな、で片づけられる可能性もあるわけでしょう。この学術会議のほうでの決議につきましては、一番最初の質問のときに大臣がみずからお読みになりました。この中で、「同会と密接な関連をもつことは当然であると考える。政府はこの点についての措置に遺憾のないよう取り計らわれることを第四十八回総会の議に基づき、強く要望する。」このように述べられておりましたが、この密接な関係とは一つの法的措置を与えることを学術会議側では想定した、そういう話を聞いておりますけれども、大臣、この点についてはいかがですか。単に口約束でもいいという線までお話内容でいったんでしょうけれども、本来の含意が法的措置を定めるということにあったわけであります。その点について……。
  130. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 この学術会議政府機関であり、政府部内におきまする学術の最高の決議機関であるという問題につきまして、それが政府部内で学術会議の言うことが聞かれないんだ。たとえば文部省におきましても、文部省設置法の中からいって、学術会議のあれを尊重しなければならぬという理屈は、なかなか法的な考え方からいうと私ども考えにくい、規定しにくい問題でございます。実は、私は率直に申しまして、この学術振興会は、文部省からいいますと、もう十年以来の特殊法人にする問題でございまして、しかも私が大臣になりましてから、あらゆる学者からこの学術振興会特殊法人にしてほしいという希望を申し伝えられてまいりました。それで、学術会議から正式にはそういう希望は聞きませんでしたけれども、私は十年以来ずっと予定しておることでございますし、それから来られる学者の方々は、たくさん学術会議会員の方が私のところに参って、ぜひこの機会特殊法人にしてほしいという希望を述べられてまいりました。それで、これがいよいよ法案を出しましてからあとになりまして学術会議でたいへん問題になっておるということを聞きまして、実は非常に驚いたのです。それで朝永先生が来られましたから、私は学術会議が、むしろ学者がこれを特殊法人にしてもらいたいという非常に御要望があるものと考えまして、これをすることに対して学術会議に御異論があるとは私は夢にも思いませんでした。それで、これは私は間違いであったかもしれませんけれども学者全部の一つの御要望と思いまして、この点については、特殊法人にすることには行政管理庁との交渉は非常に難航しました。しかし、私は松平行政管理庁長官にほんとうに真剣に説きまして、これをしてもらうことに持っていったわけなんです。しかし、私は、これは全学者の総意であると実は思い込んでおったのです。ところが、学術会議のほうでそれが問題になりまして論議されたことに、実は非常に驚きました。それで、もしそういうふうな学術会議に疑念を起こさせましたことはまことに申しわけないと思いますが、これは実際上、この学術振興会というのは学術会議のいわゆる実施機関なんです。ですから、当然に、不安なようなことがあれば、政府機関でございますから、これはけしからぬ、最高の機関でどんどん文部省に対しておとがめになればいいことでございまして、私ども文部省としまして、この科学研究費やら研究所の実施やら一切学術会議連絡をとり、その決議、勧告に基づいてこの学術行政をやっておるのでございますから、その点については学術会議も十分御信頼をいただけるものと私は確信をいたしております。今後とも文部省としましては、そういう性格であくまで学問の自由を尊重しつつ、しかも日本の学術を振興させていくという使命を持っていくべきものでございますから、学者の意思、学術会議の意思に反してこれをやろうという意思は、私どもは毛頭ございません。その点だけはひとつ御信頼をいただきたいと思います。
  131. 有島重武

    ○有島委員 話が少し堂々めぐりしているようでうっとうしいのでございますけれども、いまここで特殊法人化するということについて、これが学術振興の上の強化になるなら私どもは全面的に賛成するわけであります。それで、学者の方々もそれを期待しておられるわけであります。ただ、その法文化について、この法文上に不備な点があるのではないか。この不備な点を学術会議も心配されておられる。われわれも心配しておる。その心配が、現在はそうした口約束、このようにやっていくのだということでもって当座は円滑にいくでしょうけれども、長く将来にわたってこれが逆用されるおそれが全くないものかどうか、その点を伺いたいのですよ。私は初めからそれを伺っているわけなんです。この法文についてです。この法文にそうした不備な点がまだあるのではないか、私たち、やはり責任を持ってこうして審議を続けているわけでありますから。
  132. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私どもは、もちろん法文を策定いたします場合には、いろいろな特殊法人のいろいろな条文例を参照いたしましてつくりました。でございますから、一応私どもとしては、実はこれで完全に法文としてできておると確信を持って出しておるわけでございます。  また、学術会議との関係につきましては、私は前から申しますように、私が将来かわるとかそういうことは関係なしに、これはいままでの長い歴史から申しましても、今後御心配になるようなことは絶対にないと確信しております。しかし、もし私が申しますことが間違いであるというような場合が起こりましたら、これこそ国会におきましても御注意をいただき、文部省におきましてもそういうことのないような処置は、将来といえどもとれる問題だと思います。私は、現段階において、この法文によってこれをいらわなければならぬというようなことはない、こう確信しております。
  133. 有島重武

    ○有島委員 ただいま大臣の申されましたように、これは以前の同種類の法律に照らして完全なものであると確信を持って発表されたわけであります。しかるに、意外にも当の学術会議のうちから異論が起きたわけであります。そのことについて、この運営についてはこういったような約束でやっていきましょう、それだけの処置でありますけれども学術会議の心配されている点は、これは法文上不備な点があるのではないかという点にあったわけですよ。それをそのまま反映なさるほうがよろしいのではないか。われわれのいままでの質問、どの質問もすべてその点にかかっているわけです。将来にわたって、もしそのような事態が起こったときにはそれはつけ加えたらよかろうとおっしゃいますけれども、現在の段階において、学者側も、また私たち委員側もすべてその点を憂えておるわけです。心配しておるわけであります。先ほどは、絶対ないと仰せられたようですが、いま、将来もしそのようなことがあればというようなお答えに変わってまいりました。大臣としても、先ほど申し上げましたように、これが逆用されるというおそれが、少なくとも可能性はこの法文の中にはある、それを認めざるを得ないのじゃないかと思うのですけれども、それをはっきり、ひとつ簡単に言ってください。
  134. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私は、将来改正しなければならぬというふうには思っていないのですけれども、もし現実にそういう問題が起こったとすれば、それは法律の改正はいつでもできる問題だと思います。  それから、学術会議で非常に不安になったと申されまして条文の改正問題を論議されましたが、学術会議においてすら条文の改正ということについては、これは不満ではあるけれども、改正すべしという決議にはなりませんでした。これをもし条文を改正せよという決議になったら、たいへんな問題があると私は思うのでございます。なぜならば、これは私ども十分御説明しておわかりいただいたと思うのですけれども学術会議は事実上政府機関であり、われわれも政府機関でございますが、この法人政府機関であります。同じ政府機関同士の中で、学術上の問題について学術会議が決議をして勧告をして政府をしてやらしめる、その最高決議機関であるというのを、同じ政府機関の中で何か条文に書かなければ不満だということであれば、これは一つの政府機関とは考えられないのではございますまいか。当然に政府機関同士の中であって、それが信用ができないというようなことを条文上あらわすというわけには――私はおかしな問題だと思います。これはもし信用のできない同士のあれでございましたら、私ども学術会議勧告の一番密接なのは文部省でございます。文部省の学術行政というのは、全部学術会議と直結しておるのであります。それが学術会議と何らの関係なしに、私ども文部省がそれを行なっておりましたらそういうことは言えると存じますけれども、それは学術会議でも十分その点は――私ども学術会議の決議に基づいて、勧告に基づいてこの学術行政をやってまいっておるのでございますから、その学術行政の一部分でございます振興会仕事でございます。ですから、これは私どもといたしまして、学術会議が御不満になるということ自体が私は了解できないのでございますが、事実上の御不満がございますならば、これで連絡会議を開いてまいりましょうということで話が合意に達しておるのでございます。その点はひとつ御了承を願いたいと思います。
  135. 有島重武

    ○有島委員 同じ政府機関であるから意見が違うわけはないというお話でございますけれども、これは理想的に言えばそうでありましょうけれども、そうでないのですね。私はほかの委員会にも出ておりますけれども、これはそうはいきませんよ。私は物価の委員会に出ておりますけれども、同じ農林省の中でも違うわけなんですよ。平たく言っちゃえば勢力争いみたいになっちゃうわけですよ。外部とのつながりもあるわけです。それで、ちょっと話が広がりますけれども政府そのものは、学術に関してはすべて全面的に学術会議の決定どおりにやるか、そうはいかないでしょう。やはり財界の力もある、産業界の力もある、学術振興の決定の要素は学術会議ばかりじゃなしに、産業界の要請も非常に大きいシェアを占めるのじゃないかと思いますけれども、その点はいかがなんでしょうか。
  136. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私は最初に申し上げましたけれども、やはり私ども政府で、学術の振興なり学術行政につきましては、学術会議勧告に基づいてやるというのは、そのために学術会議というのが存在しておると思います。でございますから、学術会議自体かその使命に基づきまして――実施もできないようなことを学術会議が決定して押しつけたって、これは無理だと思います。政府機関として正しい勧告をやられる限りにおきましては、政府部内において意見の相違があるべきはずがないと私は思います。それを、やはり学術会議もその使命に基づいてその勧告をずっと正しい勧告にしていただく限りにおきまして、私は政府機関の内部に異論があるべきはずはないと思います。
  137. 有島重武

    ○有島委員 いま伺っておりますのは、学術会議以外に学術振興に関してのそういうような決定要素があるんじゃないか。産業界の要請とか財界の要請、そういうことがかなり大きい比重で起こり得るのではないか。現実にも起こっているのではないか。そう申し上げるわけです。それはいかがですか。
  138. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 もちろん、この学術会議勧告をいたしますのは、ある特定の問題について勧告をいたしまして、たとえば文部省の中で大学にいかなる研究所を置くかということ、一々までは学術会議勧告をしておりません。おりませんことでも、やはり大学のほうで必要がございますればそういう研究所を設けることはございますけれども、しかし、これは学術会議と非常に意思が反した、学術会議希望しないような研究所をもし設けようとすれば、もちろん反対に学術会議から、そういう研究所は設けてはいかぬという意思があるはずでございます。そうでない限りは、一応学術会議勧告の中にございませんでも、やはり文部省の行政の中ではどんどんやっていくものもございます。学術振興会におきましても、もちろん学術会議からいろいろなやり方につきましての勧告があると思います。今後もある。それはいまやっておりますのは、学術会議勧告の線に沿っているのが相当ございます。しかし、他の財界でございますとか、必要に応じまして学術会議勧告以外の業務でも勧告があっただけしかに限定される、それ以上はやってはならないということではないのでございまして、積極的に学術会議の、学問研究のためにこういうことは必要である、こういうことをやりなさいというほどの勧告が常に行なわれるのが通常でございます。そういうものはみな私どもは忠実に振興会仕事に取り入れていく、こういうことでございまして、学術会議の意思に反して勧告したにもかかわらずこれはやりませんというような場合には、学術会議からいろいろな御非難をいただいてもいいのでございますけれども、その勧告の線に沿って十分尊重して実際上振興会事業をやっていくということはございますから、それに対してそんなに御不満になるということは私はあり得ないと実は思っているわけでございます。
  139. 有島重武

    ○有島委員 学術振興の政策についてのあり方をきめるのは、学術会議だけでなしに、他の要素がかなり強いのではないか、率直にそのことを答えていただきたい。
  140. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 いま申しましたように、学術会議がすみからすみまで勧告するわけではございませんから、重要な事項については勧告いたします。その勧告いたしました分は慎重に私どもはそのことを実施に移してまいりますけれども学術会議勧告以外のことでございましても、やはり行政上必要なことはどんどんやってまいっていいのだと思っております。
  141. 有島重武

    ○有島委員 ですから、ほかの要素もあるわけですね。学術会議が同じ政府機関であるにもかかわらず、剱木文部大臣がかえってそんなことを言われるのはおかしいと言われましたけれども、こちらはおかしいと思っても、学術会議のほうでは、希望も持てるけれども心配も持つのだといわれているゆえんは、その辺にあるのではないかと思われるわけです。ですから、この法文についてやはり不備な点があるのではないか、そのことを言っいるわけですよ。学術会議でも言っているわけです。そうじゃないとがんばっているのは文部省側だけであるというような印象ですよ。それで学術会議のほうも、お話ですと、われわれにはそれを法的措置をとるだけの権限もない、またそういう場所でもないからこれ以上は言わないのだけれども、心としては法的措置をすっかりとってもらいたいのだ、もしそれが学術会議の心であるとすれば、それをすなおに受けて、そしてここでもって何らかの将来に対しての危惧に対する歯どめを挿入したほうがよろしいのではないか、そう思うわけであります。それについて先ほど大臣医は、将来そうした事態が起こったらそうしようと仰せられますけれども、すでにいまそうした事態が将来についてはこれでは起こり得るという危惧が十分あるわけなのですから、そのために法律はできるわけです。政府機関だから、何から何まで全部統一がとれているなら、何もこんな法律を一々つくることはないわけですよ。法文化してつくる限りは、やはり現時点において考え得る最悪の条件までを考え、そして設定していくべきじゃないでしょうか。
  142. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私は、きょうの学術会議参考人の御意見につきまして承っておりませんから、どういう御質問があったか存じません。しかし、私にとりましては、学術会議が不満に思う具体的な問題は何であろうか。学術会議仕事は、日本の学術振興、学術研究に対する重要なことについて政府勧告をするということになっております。重要なことについて勧告する中におきまして学術振興会がやるべき仕事が含まれておりましたならば、文部大臣が責任を持ってそれをやってまいるように、これは特殊法人ですから、予算的措置も何も一切やっていく責任を持っているわけでございます。そういうものを学術会議において決議したにかかわらず、何ら考慮されないで振興会は何にもやらぬのだ、こう御不満をお持ちでございましょうか。それとも、学術振興会の平素の業務について、何か学術会議からお指図を受けるようなことがあり得るでございましょうか。その点は、学術会議の本質的なあり方としては、あくまでも政府に対する勧告という面によって学術会議機能が発揮されるべきものであって、その平常の業務に対して学術会議が何か支配力を及ぼすとかいうことは、法文上も何も考えられるべき問題ではございません。しかし、実施上学術会議勧告のとおりの線に沿ってやっておるかどうか、事実上これに御不満があるならば、連絡会議を開いて学術会議とも常に連絡を申し上げましょう、こう申し上げておるのでございまして、学術会議が何か上級監督官庁とか、そういう問題ではなしに、あくまでも勧告機関なんだ、勧告に沿って政府がやっていなければ、それはけしからぬじゃないかといって、学術会議の決議をもって私どもが非難をされてもやむを得ないと思います。しかし、そのとおりにやっておれば、何にも御不満はないはずなんです。そこのところは学術会議の先生方に――どういう御答弁があったか知りませんが、私は十分その点はお話し合いをいたしまして、納得していただいておると確信しておるのです。ですから、学術会議機能以外に、学術会議が何かほかの逸脱したものをお考えになれば別です。勧告して政府をしてやらしめる。しかも、こういうことは学術振興会がやるべき仕事であるという勧告学術会議からあれば、その勧告を実施しているかしてないか、勧告してもやらないという御不満があれば、これは文部大臣の責任でございますから、そのときは学術会議文部大臣に対して御不満を言えば、私は責任を持ってその勧告を尊重して、学術振興会の今後の事業に対して、学術会議勧告の線に沿ってできるだけ、そういう覚悟をしておるわけですから、たとえば学術会議というのは重要事項についてでございますから、小さな日常の茶飯事につきまして一々決議でどうという問題ではございません。この問題はあくまでも文部大臣が責任を持ち、学術振興会自体が責任を持ってやるべき問題だと思うのでございます。ですから、その点について、学術会議との密接な関係を持っていこうということを私ども十分学術会議に申し上げておるのでございますから、その点に対する御不満という点が具体的に何であろうかということについては、私ども実は想像がつかない問題でございます。私は、現在のこの法律ができましたならば、この点は、学術会議自身におきましても十分御満足いただけると確信をいたしております。
  143. 床次徳二

    床次委員長 有島君に申し上げますが、先ほどから御質疑を承っておりまするが、すでに御意見の分に入っておるような気がするのでありまして、この際は、質疑をお進めいただくことがいいのではないかと思います。
  144. 有島重武

    ○有島委員 それでは、いま学術会議のほうの真意がよくわからない、そういうようなお話でございました。これはすでにわかっておるつもりであったが、詳しく話をしてみたら実はこういうようなことであったということがあれば、それは早いうちに解決すべきだと存じますので、これはぜひ近いうちに、こうした委員会の場でもけっこうでありますし、もう一ぺん慎重に話し合いをしたほうがよろしいのではないかと存じますが、その点はいかがですか。
  145. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 その点は、国会でどういう御答弁があったか存じませんが、私と学術会議会長、副会長との間にきちっとした話し合いがございまして、了解点に達しておるのでございます。その後了解が変わったとの何らの申し入れもございません。その了解点のとおりに、いまもなお私どもの間においては、何らの意思の疎通を欠くような点はないと確信いたしております。
  146. 有島重武

    ○有島委員 その点につきましては保留いたします。  それから、先ほど財団法人には一つの限界がある。話は少し戻りますけれども、対外的に、財団法人であるというので不都合を感じたことがあるというようなお話でございましたが、その具体例を教えていただきたいと思います。
  147. 天城勲

    ○天城政府委員 特に不都合があるというようなことは申し上げたことはないと思うのでございまして、ただ、国際的に、最近の大きな共同事業につきましては、責任のある機関がみな対応してできてきておるということで、日本でも単なる局間企業ではなく、法人機関のほうがベターだということを申し上げたわけでございます。
  148. 有島重武

    ○有島委員 具体的な例は全くないでしょうか。
  149. 天城勲

    ○天城政府委員 不都合な事態があるということは申し上げたこともございませんし、具体的なケースで不都合だったということはございません。
  150. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、特殊法人にしなければならないという理由の一つとしてあげられました、先ほど対外的問題もありますし、と言われたんでしょう。それは根拠があまりはっきりしておらない。そのように理解してもよろしいでしょうか。
  151. 天城勲

    ○天城政府委員 最近どこの国でも学術行政が非常に大きなウエートを持っておりまして、政府機関を設置いたしまして資金の面でも、機構の面でも充実をはかってきておりまして、私どもとしては、具体的に不都合な面があるということは申し上げたことはございませんけれども、全体としていままでの民間の財団法人のままではその大勢に応じ切れない、こう考え特殊法人にお願いしたわけでございます。
  152. 有島重武

    ○有島委員 こちらで伺っておるのは、それほど根拠の強くない話であったというわけですね。
  153. 天城勲

    ○天城政府委員 根拠は、私どもは大きな根拠と思ってそれを申し上げておるわけでございますが、具体的に不都合なケースはないかとおっしゃるから、そういうようなことはございませんということを申し上げておるわけでございます。
  154. 有島重武

    ○有島委員 そこで、役員の任命権についての論議が幾つか出ておりましたけれども、いままでの事例を見ましても、あまりいいことじゃありませんけれども、天下りだとか横すべりだとか、幾つかのことがいわれており、論議されております。そういったような心配のないようにというようなことは先ほど大臣が言明されましたけれども、任命につきましては、任命の前に推薦ということが当然あると思います。どういうところから推薦を受けて、どこで審議して、そうして文部大臣が任命される、そういう段階を当然踏まれるものと思いますけれども、そういうことも伺うことはできますでしょうか。
  155. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 法律上は推薦ということばはございませんし、それから実際上ある団体から推薦してくるということはないと思います。ただ、むしろ私ども長年文教行政をやっておりますと、やはりどういう方がいいかということについて相談をいたします対象というのは、相当狭められておると思うのです。りっぱな学者であり、かつ国際的にも信頼の置ける、そうして万人の納得するような方というのはそうたくさんおるわけじゃございませんから、そういうような方につきまして各方面ともいろいろ御相談申し上げまして、最適任者を選んでいくという過程をとってまいりたいと思っております。
  156. 有島重武

    ○有島委員 ちょっと話がはずれますが、いまの任命の人物の点でございますけれども、東大のロケット実験のことにつきまして、最近の新聞に、いままでもしばしば誤報があった、そのことについて責任者である高木さんが、これはうそをついたんじゃなくて間違って発表したんだ、そういうようなことを言われた。私たち非常に驚いたわけです。これが中小企業か何かの人たちが言うならば、うそを言ったつもりじゃないんだけれども、間違ってそのまま言った、それでもいい。これが科学者のことでございますから、非常に失望したわけであります。これは最近の報道でございますけれども、事実こういうようなことがあったんですか。
  157. 天城勲

    ○天城政府委員 私も新聞紙上で見たのでございまして、大学研究所からその間のことを詳しく報告を受けたり、この点について問い合わせておりませんものですから、いま確実なことは申し上げかねるわけでございます。
  158. 有島重武

    ○有島委員 これはこの前の委員会のときに伺ったことですけれども、「問題は、いろいろな制度、それからそうした規則をつくられますけれども、それを運営していく人にやはり問題があるのじゃないかと思います。まず学問の自由を妨げることがなく、しかも世界史的な大きい視野に立って学術上の深い理解を持って、しかも財政的及び経営の才のあるような、そういう人材をどうしても見出していかなければならない、そういうような時に来ていると思いますが、これと思うような人物がおりますか。」これに対しての剱木文部大臣のお答えは、「私の接触いたしました限りにおきましては、ただいまの研究所長の高木先生は非常にりっぱな方だと思いますし、研究的に申しましても、またこの研究所の運営にあたりましても、」云々、「私は高木所長に非常に大きな期待をただいまかけておる次第でございます。」それに対して、「もしこの点において誤りますと、やはり非常に大事な時期であると思います。百年の悔いを歴史の上に残すようなことにならないように、慎重に御配慮願いたいと思うわけであります。」このような話があったわけでございますけれども、いま文部大臣が、万人が納得のいくようなりっぱな人物をと申されましたけれども、もしこうした報道が――これは朝日新聞でございますから、おそらくこのままのことがあったと思うのですけれども、こういうことは非常に困ると思うのです。今度の特殊法人会長理事長になられる方についても、これはよほど慎重に人選していただきたい。これはそれこそ釈迦に説法になるかもしれませんけれども、同氏として非常に期待しておるところだと思います。いまの高木さんの問題については、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  159. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 実は私、けさ朝刊も見るひまがなくて、ずっといままで走りまっておりましたので……。その記事の問題を聞いたのでございますが、これは詳しく調べないと確定的なことは申し上げかねます。ただ、高木さんが、故意に誤った報道をしたのでは私はなかろうと考えます。報道の実際の追跡の技術の中の問題じゃなかろうかと私は想像しておるのでございますが、なおこの問題については十分調査いたしまして、私ども報告を申し上げたいと思います。ただ、そういうことがありましても、高木教授はあくまでりっぱなお方だと私は確信を持っております。
  160. 有島重武

    ○有島委員 それでは、高木先生の問題はまたあとの問題にいたしまして、先日もこれは問題になりましたけれども、寄付の問題でございます。国庫の補助以外の寄付は、今後も増大する傾向になるでしょうか。この点について。
  161. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 これはいままで財団法人で、維持会員というような形で参画してもらっていましたが、特殊法人になりますので、この会員あり方につきましては特別に検討しなければならぬと思います。しかし、実際は財界方面でも特殊法人にしてもらうことを非常に熱望したのでございますから、私は、財界からの、いわゆる法人以外からの寄付というものは、相当今後ともより以上にたくさん期待できるのではないか、また期待をいたしておるわけでございます。
  162. 有島重武

    ○有島委員 そうすると、増額されるということが予想されるわけですね。
  163. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 はい。
  164. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、先日も問題になりました寄付についての規定が何もないということは、これは寄付を禁じないことであるというようなお答えが大学局長からあったように思うのですけれども、あれをもう一ぺんお聞きしたい。これは寄付についての規定がこの法文には何もないわけでありますから、その理由をもう一ぺんお願いしたい。
  165. 天城勲

    ○天城政府委員 この前申し上げましたとおり、特に寄付を受けてはいけないという禁止規定がない限り、寄付を受けることはできるわけでございまして、その前提のもとに、法文上、寄付を受けることの可否についての条文を入れなかったわけであります。ただ、寄付を受けることについての振興会自身としての財務規定とか、あるいは資金計画とか、予算の管理、これはもちろん明確に財源として処置しなければなりませんけれども、法文自体としては特にそういう規定は必要ない、こう考えておるわけであります。
  166. 有島重武

    ○有島委員 いままで財団法人だったときには、その寄付の収支につきましては、これが会計の中に明確に記載されていたのでしょうか。
  167. 天城勲

    ○天城政府委員 財団法人時代には、維持会からの収入として規定された予算の中に含めておりましたし、会計上は一般会計とは別に、いわば特別会計的な処置をして運営しておりました。
  168. 有島重武

    ○有島委員 私たちとしては、寄付についてこれがかなり大きい額に今後もなるとすれば、やはり法文上の規定をすべきではないかというふうに考えますけれども、これについては今後も全く法文の上には不必要である、そういうようにお考えですか。
  169. 天城勲

    ○天城政府委員 法文上とおっしゃいますけれども、要するに財務の問題でございますから、予算、決算というものをつくらなければなりませんし、資金計画もつくらなければなりません。資金計画の上で、財源は国庫補助とか手数料収入とか寄付金とか、いろいろな種類がございますので、それは明瞭に入ってまいります。その根拠は法律にございますから、いまおっしゃるように寄付金がうやむやに入って、うやむやに出てしまうという御心配はないわけでございまして、根拠も法律にあるわけでございます。ただ、寄付を受けていいか悪いかということは、書かなくても当然受け得るのだということを申し上げたわけでございます。
  170. 有島重武

    ○有島委員 次に、科学研究費につきまして、これはいまの問題よりも大きくなりますけれども、先日閣議のあとでもって首相が、科学研究費については来年度は増額しようと言われたというようなことが出ておりました。そのときに、剱木文部大臣は百億円というようなお話を発表されたように聞いておりますけれども、この点について来年度はどのくらいの予算を予想されておるのか、お伺いいたしたい。
  171. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 実は私、百億円と申しましたのは、現在科学研究費が、文部省のほうは約四十二億でございます。クラブで話しましたときに、これで画期的な増額とすれば、少なくとも百億円をこさなければ画期的とは言えないだろうということを話したのでございますが、予算要求といたしましてはなお研究中でございますけれども、実は百億の線も突破したいと思っておるのです。  余談でございますけれども、これは総理からも特別に、この科学研究費の増額ということを言われましたし、なお先ほど科学技術の特別委員会に大蔵大臣参っておりまして、大蔵大臣もまた同じような答弁をされておりました。来年度の予算については、自分としては、思い切った科学研究費の増額計上をするように努力するにやぶさかでないと申しておりました。これは一つは、資本自由化に基づきます日本自体の研究の強化ということが非常に重大な課題であろうと思いますが、ただ、私どもは、この自由化という問題を離れまして、日本の学術自体の問題としてこの際画期的な科学研究費の増額かはかりたい、こう考えておるわけでございます。
  172. 有島重武

    ○有島委員 参考までに伺っておきますけれども、諸外国における学術振興費というものは大体どのくらいなものでしょうか。アメリカとイギリスとフランスと西ドイツぐらいを伺いたいと思います。できればソ連も……。
  173. 天城勲

    ○天城政府委員 資料関係で同一年次がなかなかうまくそろわないのでございまして、若干年次のズレがあると思います。  研究費のとり方でございますけれども、人文、自然、社会を全部含めたのはございませんので、自然科学の部門についての比較の資料について申し上げたいと思います。  日本は、六五年の数字で申しますと、自然科学部門の研究費が四十二百五十八億でございます。国民所得との比率で申し上げたほうがあるいははっきりするかもしれませんが、一・七%でございます。アメリカは、六三年の数字でございますが、一兆二千四百六十億でございまして、国民所得に対する比率が三・七%。ソ連は、六四年で二兆一千五百六十億でございます。比率は、二・九%。イギリスが、六四年で、七千六百二十七億、比率は二・九%。ドイツ連邦共和国が、六四年で、七千七十六億でございますので、二・五%。フランスが、六三年の資料で、五千五億、比率で二・三%という数字が、対国民所得比率において出ております。  ちょっと補足いたしますが、国民所得との比率で申し上げましたので、この研究費と申しますのは国民経済における研究費でございますから、公の研究費も民間からの研究費も全部含めた金額でございます。
  174. 有島重武

    ○有島委員 研究費の話が出ましたけれども、来年度以降、大体どのくらいまではどうしてもしなければならないという下限の線があると思います。その点についてのお考えはどうでしょうか。
  175. 天城勲

    ○天城政府委員 これは昨年、科学技術会議が総理大臣に答申した科学技術の将来計画の案がございますが、これでは、いま申し上げました自然科学部門の研究費は、五カ年間で国民所得の二・五%という数字を言っておるわけでございます。もちろん、これは最終的に政府部内で決定した数字ではございませんが、一般的に、目標として二・五%ということがいわれております。
  176. 有島重武

    ○有島委員 私たちとしては、こうした予算については全面的に支持してまいりたいと思っております。それにつけましても、先ほどの学術振興会の問題でございますけれども、こうした運営上の問題、もちろん法的措置について、どんなロードにもたえるような、どんな事態にもたえ得るような完ぺきなものにして、その上でもって予算をこなしていかれるようにしたい、そう願うものであります。質問を終わります。      ――――◇―――――
  177. 床次徳二

    床次委員長 この際、小委員会設置に関する件についておはかりいたします。  理事各位と協議の結果、文化財保護に関する調査のため、小委員十一名よりなる文化財保護に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長選任につきましては、先例によりまして委員長より指名いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認め、小委員に     久保田藤麿君  河野洋平君     竹下 登君   中村庸一郎君     三ツ林弥太郎君 八木徹雄君     小林信一君   斉藤正男君     長谷川正三君  鈴木 一君     山田太郎君  以上十名の方々を指名いたします。  なお、小委員長には中村庸一郎君を指名いたします。  次に、小委員及び小委員長の辞任の許可、小委員に欠員を生じた際の補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ――――◇―――――
  181. 床次徳二

    床次委員長 この際、連合審査会開会の件についておはかりいたします。  ただいま本委員会において審査中の日本学術振興会法案につきまして、本日、科学技術振興対策特別委員会より連合審査会開会申し入れがありました。この申し入れを受諾し、連合審査会を開会することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、開会の日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次回は、明後七日、金曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十二分散会