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1967-06-23 第55回国会 衆議院 文教委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十三日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 久保田藤麿君 理事 中村庸一郎君    理事 西岡 武夫君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       稻葉  修君    菊池 義郎君       久野 忠治君    河野 洋平君       竹下  登君    中村 寅太君      三ツ林弥太郎君    渡辺  肇君       唐橋  東君    川村 継義君       小松  幹君    斉藤 正男君       平等 文成君    三木 喜夫君       山崎 始男君    有島 重武君       山田 太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 剱木 亨弘君  出席政府委員         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         文部省大学学術         局長      天城  勲君  委員外出席者         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 六月十六日  委員河野洋平君、竹下登君、葉梨信行君、広川  シズエ君及び三ツ林弥太郎辞任につき、その  補欠として田中角榮君、瀬戸山三男君、森清君、  中村梅吉君及び馬場元治君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員瀬戸山三野君、田中角榮君、中村梅吉君、  馬場元治君及び森清辞任につき、その補欠と  して竹下登君、河野洋平君、広川シズエ君、三  ツ林弥太郎君及び葉梨信行君が議長指名で委  員に選任された。 同月二十日  委員河野洋平君、竹下登君及び山田太郎辞任  につき、その補欠として佐藤文生君、塩谷一夫  君及び鈴切康雄君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員佐藤文生君及び塩谷一夫辞任につき、そ  の補欠として河野洋平君及び竹下登君が議長の  指名委員に選任された。 同月二十二日  委員鈴切康雄辞任につき、その補欠として山  田太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月十九日  日本育英会法の一部を改正する法律案秋山長  造君外一名提出参法第四号)(予)  日本育英会昭和二十五年四月一日以後の貸与  契約により貸与した貸与金返還免除に関する  法律案秋山長造君外一名提出参法第五号)  (予)  女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の  確保に関する法律の一部を改正する法律案(小  野明君外一名提出参法第六号)(予) 同月二十日  高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一  部を改正する法律案秋山長造君外一名提出、  参法第七号)(予)  産業教育手当法案小林武君外一名提出参法  第八号)(予)  へき地教育振興法の一部を改正する法律案(鈴  木力君外一名提出参法第九号)(予)  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案小林武君外一名提出参法第一〇号)  (予) 同月二十二日  産炭地域における公立の小学校及び中学校の学  級編制及び教職員設置に関する特別措置等に関  する法律案小野明君外一名提出参法第一一  号)(予) 同月十五日  義務教育における毛筆習字必修に関する請願(  愛知揆一君紹介)(第一二八七号)  同(河本敏夫紹介)(第一二八八号)  同(古屋亨紹介)(第一二八九号)  同(山田久就君紹介)(第一二九〇号)  同(荒木萬壽夫紹介)(第一二九七号)  同(加藤六月紹介)(第一二九八号)  同(小峯柳多君紹介)(第一二九九号)  同(森下國雄紹介)(第一三〇〇号)  同(森山欽司紹介)(第一三〇一号)  同(藤尾正行紹介)(第一三二〇号)  同(船田中紹介)(第一三二一号)  同(古井喜實紹介)(第一三二二号)  同(天野光晴紹介)(第一三六一号)  同(鴨田宗一紹介)(第一三六二号)  同(木村武雄紹介)(第一三六三号)  同(草野一郎平紹介)(第一三六四号)  同(宇野宗佑紹介)(第一三七二号)  同(小渕恵三紹介)(第一三七三号)  同(鴨田宗一紹介)(第一三七四号)  同(久保田円次紹介)(第一三七五号)  同(田中榮一紹介)(第一三七六号)  同(高橋清一郎紹介)(第一三七七号)  同(竹下登紹介)(第一三七八号)  同(赤城宗徳紹介)(第一四一一号)  同(長谷川四郎紹介)(第一四一二号)  同(金子岩三紹介)(第一四六二号)  同(藏内修治紹介)(第一四六三号)  同(砂原格紹介)(第一四六四号)  同(華山親義紹介)(第一四六五号)  心臓病子供の病、虚弱児学校学級増設に関  する請願外一件(山口敏夫紹介)(第一二九  一号)  学校教育法改悪反対に関する請願石野久男君  紹介)(第一三七九号)  戦傷病者子女育英資金等に関する請願(伊  能繁次郎紹介)(第一四一七号)  同(砂田重民紹介)(第一四三〇号)  各種学校制度確立に関する請願外八件(吉田泰  造君紹介)(第一四六六号)  女子学校事務職員産休補助職員確保に関する  請願小林信一紹介)(第一四八九号) 同月二十二日  女子学校事務職員産休補助職員確保に関する  請願山崎始男紹介)(第一四九三号)  公立高等学校事務長職制確立及び処遇改善に  関する請願山崎始男紹介)(第一四九四  号)  同(床次徳二紹介)(第一五一二号)  同(山口喜久一郎紹介)(第一六一五号)  公立高等学校事務職員等定時制通信教育手  当支給に関する請願山崎始男紹介)(第一  四九五号)  同(山口喜久一郎紹介)(第一六一六号)  義務教育における毛筆習字必修に関する請願(  赤城宗徳紹介)(第一五一三号)  同(砂田重民紹介)(第一五一四号)  同(長谷川四郎紹介)(第一五一五号)  同(亀山孝一紹介)(第一五七〇号)  同(加藤六月紹介)(第一五七一号)  同(粟山ひで紹介)(第一五七二号)  同外一件(岡崎英城紹介)(第一六〇九号)  同(奧野誠亮紹介)(第一六一〇号)  同外一件(篠田弘作紹介)(第一六一一号)  同(高見三郎紹介)(第一六一二号)  同(灘尾弘吉紹介)(第一六一三号)  同(山口喜久一郎紹介)(第一六一四号)  同(江崎真澄紹介)(第一六七八号)  同(遠藤三郎紹介)(第一六七九号)  同(小沢佐重喜紹介)(第一六八〇号)  同(大坪保雄紹介)(第一六八一号)  同(床次徳二紹介)(第一六八二号)  同(藤山愛一郎紹介)(第一六八三号)  同(松田竹千代紹介)(第一六八四号)  同(森田重次郎紹介)(第一六八五号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第一六八六号)  戦傷病者子女育英資金等に関する請願(田  村元君紹介)(第一五四九号)  同(中野四郎紹介)(第一五五〇号)  同(藤井勝志紹介)(第一五五一号)  ローマ字つづり方の統一に関する請願賀屋興  宣君紹介)(第一六一七号)  公立特殊教育学校の非義務学年学級編制及  び教職員定数に関する法律制定に関する請願(  川村継義紹介)(第一六一八号)  公立高等学校設置適正配置び教職員定数  の標準等に関する法律の一部改正に関する請願  (川村継義紹介)(第一六一九号)  心臓病子供の病、虚弱児学校学級増設に関  する請願本島百合子紹介)(第一六五〇  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本学術振興会法案内閣提出第九〇号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本学術振興会法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。西岡武夫君。
  3. 西岡武夫

    西岡委員 日本学術振興会法案につきまして御質問をいたします。  初めに、大臣お尋ねいたしますが、日本学術振興会、これは昭和七年に財団法人として創立されて、ことしで三十五年の歴史を持っているわけでありますが、特にこれを特殊法人に今日しなければならない理由について、まずお尋ねをいたします。
  4. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 お答えいたします。  最近、科学研究が非常に盛んになりまして、その範囲は非常に複雑多岐になってまいったわけでございます。この学術研究奨励ということにつきましては、もちろん政府なり官庁自身がこれを計画し、予算化してまいるのでございますけれども、この学術振興なり奨励という面から申しますと、純粋な学術的な判断を必要とするという問題が非常に多うございまして、こういう問題につきましては、官庁みずからいたしますということは非常に不適当であるという部面がございますので、従来民間団体にこれを委託してやるという状況でございました。そういう意味財団法人日本学術振興会がこの事業を代行してまいったわけでございます。しかし、その事業内容は、事実におきましては国が行なう奨励施策でございますので、その遂行にあたりましては国自身が相当配慮しなければならぬ密接な関係がございます。したがいまして、純粋な財団民間団体でなしに、これを政府の密接な関係において特殊法人にいたす必要があるということが一つ理由でございます。  そのほかにおいてもう一つの問題は、国際学術交流ということをいたしておるのでございまして、たとえば日米学術協力あるいは研究協力、あるいはアフリカでございますとか西アジア地方にまで、この学術研究、いわゆる共同研究外国とやっておるわけでございますが、こういう場合におきまして、純粋な民間団体でございますと、国際的な信用力と申しますか、こういう面においてしばしば不都合な問題も起こったのでございますので、ここでやはり、国際信用という面から申しましてもこれを特殊法人にする必要がある。  なおまた、学術振興から申しますと、相当優秀な学術的な教養のある者、あるいはまた語学等のすぐれた方、こういう方をやはり必要といたします。そういうためには、どうしてもこの財団法人ではそういう優秀な方をお願いするわけにいかない。やはりその待遇におきまして、国家公務員と大体差のないような、いわゆる特殊法人にする必要がある。  以上のような理由特殊法人にすることが必要でございますので、お願いをしておるわけでございます。
  5. 西岡武夫

    西岡委員 昭和三十三年でございましたか、当時やはり特殊法人化というものが計画をされたかに聞き及びますけれども、それが当時実現を見なかった特に理由があったら、その点についてちょっと御説明をいただきたいと思います。
  6. 天城勲

    天城政府委員 財団法人日本学術振興会を強化していきたいという話は前々からございまして、お話のように、そのころたしか大きな基金を持った財団をつくったらどうかという話がございまして、この特殊法人化の問題もそのころ起きたことは事実でございます。しかし、特に何か支障があったわけではございませんが、まだ機が熟さないままそのときには実現しなかった、こういうふうに理解いたしております。
  7. 西岡武夫

    西岡委員 ここで、これまで学術振興会と密接な関係にありました日本学術会議、この日本学術会議というものの性格、使命というものについて御説明をいただきたいと思います。
  8. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 御承知のように、終戦直後におきまして学術体制の問題が起こりまして、わが国学術体制を新しく組織がえをするという問題が起こりました。その当時に、帝国学士院、それから学術研究会議及び財団法人日本学術振興会、これらのものをあわせ論議するため、御承知のように学術体制刷新委員会というのができまして、この学術体制の問題が論議されました。そして学術研究会議はこれを廃止いたしまして、これを日本学術会議にかえるということで、学者の選挙によりますところの学術会議が新設されまして、それから帝国学士院学術会議管轄下に置かれたわけでございますが、これは後にだんだん変遷いたしまして、現在のように文部省の所管に変わってまいったのでございます。そこで、この財団法人学術振興会はやはり民間奨励機関として存置する、しかし、実際は、手術会議学者意見をまとめまして、日本学術はいかにあるべきかということの決議機関でございまして、この決議政府建議をいたしまして、その建議に基づいて政府が実際上の学術行政を行なっていくということでございますので、学術会議自体事業を行なう性質を持っておりませんので、この日本学術振興会をその傘下の、実際に学術会議決議をいたしましたものを学術振興会実施をさせるという意味におきまして、実施機関として学術会議関係下部団体のような形で置かれたのでございます。
  9. 西岡武夫

    西岡委員 そうしますと、学術会議の、いまおっしゃたのは下部団体学術会議決定に基づいて事業を行なうという意味でございますか。
  10. 天城勲

    天城政府委員 いま大臣が申し上げたようないきさつで戦後の新学術体制ができたわけでございますが、御存じのと触り、学術会議会議体でございますから、必要は施策につきましては政府勧告するなり答申するなりいたしまして、関係の部局を通じて実施するという結びつきが本来の姿でございます。ただ、学術会議は直接実施するという機関ではありませんので、学術会議で考えたことの中で民同機関をして実施させるのが適当なものについては、学術振興会というしにせの団体がありますから、これを残しておいて、こういう機関でやらせたらいいのではないかという考え方で、財団法人として現在の学術振興会が存在しておるわけであります。したがって、行政上のルールから申しますと、学術会議政府機関でございますし、建議意見がある場合には政府に答申し、勧告し、政府機関を通じて実施する、ただ、実際にやる仕事民間機関でやるほうがベターなものがその中にあるから、そのことを考えると財団法人で残したほうがいいのではないか、こういう形で残っております。その意味で、実質的に学術会議とかなり深い関係があるというふうに一般に理解されておると思うのでございます。
  11. 西岡武夫

    西岡委員 現在の学術振興会について、昭和二十六年でございましたか、日本学術会議日本学術振興会あり方を審議するために第三十二委員会というものを設けて、そこでいろいろ考え方をまとめて、それに基づいて日本学術振興会性格づけがなされたということが記録にあるわけでありますが、そういうことに基づいて日本学術振興会性格づけがなされたと理解してよろしゅうございますか。
  12. 天城勲

    天城政府委員 時期といたしましてはちょっといま私、記憶がはっきりいたしませんが、学術会議におきまして、会長の提案として、学術会議と学振の仕事を緊密にやっていこうという意味の話があったことは、私も記憶いたしております。
  13. 西岡武夫

    西岡委員 大臣お尋ねをいたしますが、財団法人日本学術振興会の今回の特殊法人化について、日本学術会議から申し入れがあったということを聞いておりますが、その申し入れ内容について、どういうものであったか御説明いただきたい。
  14. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 お尋ねのとおり、日本学術会議から申し入れがございました。その申し入れの全文を一応ここで読ませていただきます。「今国会に提案された日本学術振興会法案に、日本学術会議との関係について何等の規定をみないことは、まことに遺憾である。わが国学術振興発展をはかることを任務とする本会議は、従来の経過と新しく設立されようとする振興会の目的、性格にかんがみ、同会と密接な関連をもつことは当然であると考える。政府はこの点についての措置に遺憾のないよう取り計らわれることを第四十八回総会の議に基づき、強く要望する。」というもので、本年四月に政府提出されたものでございます。
  15. 西岡武夫

    西岡委員 その申し入れに対する大臣の御見解というものを承りたいと思います。
  16. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 学術会議申し入れのとおり、日本学術振興会は、その歴史的な過程から申しまして、学術会議と密接な関係を保ってまいっておるのでございます。ただ、今回法案としてこの問題を表面に条文上取り入れいたしませんでしたのは、これは特殊法人になりますといままでの財団法人とは異なりまして、存在が、国のいわゆる代行機関となるわけでございます。そこで、その学術会議との関連におきましては特殊法人たる日本学術振興会に何かいろんな表立った正規の方法といたしましては、仕事をやることを勧告いたします場合には、学術会議といたしましてこれは政府勧告になるわけでございます。その政府勧告になりましたものを受けまして、この特殊法人学術会議勧告を尊重しましてやらせるということが、事実この法的な関係によりましては正しいことだと存じますので、学術会議との関係を直接にいたしませんでした。しかし、実質的には、言われるとおり学術会議と密接な関係を持つべきものでございまして、この申し入れを受けまして、私、学術会議会長、副会長等ともよくお話し合いをいたしまして、この日本学術振興会特殊法人として成立いたしました際におきましては、十分学術会議との意思の疎通なり連絡をいたしますように、両者において常に意見をまとめてそういう方法を具体的に考えていく、こういうことで完全に会長、副会長とも私ども意見が一致しておるわけでございまして、今後特殊法人になりました場合におきましては、実際上そういうことについて何らの不都合のないように、新しい法人あり方について十分連絡をとり、調整をしてまいりたい、こういうように考えております。
  17. 西岡武夫

    西岡委員 そうしますと、その具体的な関係の持ち方というものについて、もう少し具体的にお考えがございましたらお尋ねをいたしたい。
  18. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 実はいろいろこの中にも、何か法的な規定がないのは遺憾であると書いておられます。学術会議の中におきまして、この決定を見る前におきまして相当内部的に論議がございまして、あるいはこの法案修正その他についても申し入れをすべきだという意見もあったようでございます。しかし、結論といたしましては、学術会議の全体の意思としてはこの法案修正には及ばなかったのであります。で、一番問題になりますのは、評議員会でございますか、これに対して学術会議から何名というようなことを規定したらどうかということが問題点ではないかと思いますが、実際問題として評議員の任命につきまして、そのある一部だけこのきめ方をあらかじめ決定しておくのは法律上どうか、こう考えられます。しかし、実質上は、この学術会議から相当の評議員が出ていただくということはできると思いますし、なおまた、事務的な平素の問題におきましても、学術会議との間に連絡会議と申しますか、こういうものを具体的につくりまして、そういう点については万遺漏のないように今後つとめてまいるというつもりでございます。
  19. 西岡武夫

    西岡委員 今回、この学術振興会財団から特殊法人に変わることになるわけですが、諸外国における学術振興推進機関というものはどういう形態運営されているか、簡単でけっこうでございますから、御説明をいただきたい。
  20. 天城勲

    天城政府委員 外国におきまして学術振興に関する事業をどういう機関が行なっているかという御質問でございますが、国によりましてかなり形態が違うと思います。  二、三の例を申し上げますと、いま一番研究費をたくさん使っておりますアメリカの例で申しますと、これは国立科学財団、ナショナル・サイエンス・ファウンデーションという機関がございます。これは一九五〇年、政府科学を基礎から振興して科学技術者研究を強化するために設置されたものでございまして、全額政府資金運営されております。これはたいへんな人員を擁しておりまして、専門の科学者六百人ぐらいを擁して、人員からいきますと千人くらいの規模の大きな機関でございます。活動といたしましては、研究費の助成ですとか、あるいは研究施設建設費補助、貸し付け、あるいは各種フェローシップの供与、それからアメリカの行なっております南極観測事業実施もここが行なっております。日米科学協力などの国際協力事業も、この機関が担当いたしておるわけでございます。  それからイギリスでございますが、これも研究関係機関がいろいろございますけれども、最近の実態教育科学担当国務大臣ができておりますので、その所轄する研究会議と言っていいと思いますが、研究会議という機関がございまして、ここを中心に、研究費の割り当てを中心学術振興仕事をいたしている。この研究会議議員——まあ議員ということになると思いますが、各分野の研究者あるいは研究団体のメンバーのうちから、いま申した教育科学担当国務大臣が任命いたしておるわけでございまして、その仕事は、この会議が幾つかの研究機関を維持しておりますので、その運営をいたしております。それからその他の研究機関への補助あるいは大学、カレッジへの研究費補助、また大学院学生奨学金とかフェローシップ、特に国際関係仕事を分担いたしております。御存じ欧州原子核研究機構、スイスにございますCERN、あるいは欧州宇宙空間研究機構ESRO、これらの国際機関との関係をこの機関が分担いたしておる、こういうわけでございます。  それから、フランスが有名な国立科学研究センターというものを持っておりまして、このセンター教育大臣管轄に置かれております。これは公法人日本で言っていい性格を持っておると思います。このセンターは、大きく分けて二つの任務を持っておりまして、一つ科学研究振興、それからセンター自体研究機関を持っておりますものですから、その研究機関運営をいたしております。  各国とも実態は必ずしも同一ではございませんけれども、最近科学研究振興に関しまして新しい機構を設け、かなり国費を投入いたしてやっておるというのが実情でございます。
  21. 西岡武夫

    西岡委員 次に、条文に従って若干御質問をいたしますが、それに先立ちまして第四条に、「振興会基本金は、附則第九条第三項の規定により」云々とございますが、この現在の日本学術振興会基本財産、これが基本金になるわけであります。ところが、附則第九条の一項に、「振興会においてその一切の権利及び義務を承継すべき旨を申し出ることができる。」というふうに条文はなっているわけでございます。そうしますと、「申し出ることができる。」ということは、申し出なくてもいいということにもなるわけでして、この点こういう規定でいいのかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  22. 天城勲

    天城政府委員 御指摘のように、この財団法人を母体にいたしまして特殊法人設置される場合の方法に関する問題だと思うのでございますが、第九条で「昭和七年十二月二十八日に設立された財団法人日本学術振興会は、寄附行為に定めるところにより、設立委員に対して、振興会においてその一切の権利及び義務を承継すべき旨を申し出ることができる。」と、この「申し出ることができる。」という点の御質問だと思います。これにつきましては、この九条が引き継ぎの規定でございますが、最後の四項におきまして、四条の規定によりまして特殊法人が成立したときに、この財団の解散の登記等を職権でできる規定がここにございますので、九条第一項の規定は、財団法人が一切の権利義務を承継すべき旨を申し出るかいなかが財団の任意にゆだねられているという意味ではございませんで、民法の財団とかあるいは普通の財団の寄付行為によって認められておりませんこういう行為を行なう権能を特に法律上付与した。「申し出ることができる。」というのは、そういう権能を付与した、こういうふうにわれわれは理解いたしているわけでございます。したがいまして、この九条の一連の規定によりまして一切の権利義務が引き継がれますと、これを受けて御指摘の第四条の規定が生きてくる、こういうふうに理解しているわけでございます。  これは、財団法人を母体にいたしまして特殊法人設置する場合の一つ法律上の形式でございまして、これと似たような同趣旨の規定を設けておりますものとしては、アジア経済研究所法あるいは海外技術協力事業団法、これはみな前に財団がございましたので、それを母体にして特殊法人をつくってまいりました。あるいは海外移住事業団法等がこういう方法をとっておりますので、われわれもその方式、最近の立法例に従って、法制局との審議におきましてもこの方法でいこうということになったので、このように規定したわけでございます。
  23. 西岡武夫

    西岡委員 わかりました。  大田にお尋ねをいたしますが、第十条に、役員の任命権は文部大臣にあるとありますが、その役員の構成、選任の基準というものがございますかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  24. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 役員の構成は、常勤の役員といたしまして理事長一名と理事一名及び監事一名を予定しております。非常勤の役員としまして、会長一名、理事二名及び監事一名を予定いたしておるのでございます。もちろんその役員の選考は、この振興会設立の趣旨にかんがみまして、高い識見を有しまするとともに、振興会を国の内外を通じて代表するものでございますから、手腕、力量なり人物から申しましても、十分各界から御支持を受けるような適任者を選任してまいるというつもりでございます。これは、もちろん文部大臣がこれを任命するのでございますけれども、あるいは各界の意見も十分聴取しまして、そしてこれにふさわしい方を任命したいと考えております。
  25. 西岡武夫

    西岡委員 次に、十八条の評議員会を設けた理由についてお尋ねをいたします。
  26. 天城勲

    天城政府委員 特殊法人に評議農会を置くか置かないか、これは必ずしも一様ではございませんが、この学術振興会には評議員会制度をとったわけでございます。これは、この振興会仕事内容から見ますと、学術振興に関する学界の専門的な意見、あるいは産学協同研究事業がこの仕事としてかなり期待されていますので、産業界の意見あるいは関係行政機関の国の学術振興施策に関する意見、これらのいろいろな意見がここに集約されるわけでございますので、これらの関係者の意見を十分新しい機関に反映させ、運営面にこれを吸収していくことが必要である、こう考えまして評議員会制度を設けたわけでございます。
  27. 西岡武夫

    西岡委員 大臣お尋ねしますが、評議員の選考の方針というものは特にございましょうか。
  28. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これはやはり、いま局長がお答えいたしましたように、学術振興会事業につきまして各界各方面の意見を聞かなければなりません。あるいは産学協同とかそういったような意味から申しましても、いま密接な関係がございます産業界の意見も剛かなければなりませんし、各官庁意見も反映しなければなりません。また、実際学問の分町におきます各学者関係意見も聞かなければなりませんので、これはやはりその目的、性格に沿いまして、各方面のこれに対します相当の権威者をこの評議員にお願いをするというつもりでございます。
  29. 西岡武夫

    西岡委員 そうしますと、各界代表という形で評議員を選ばれるわけでしょうか。
  30. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 実質的には各界を代表するような方でございますが、形式的に各界の代表者とかそういう形はとりにくいと思います。
  31. 西岡武夫

    西岡委員 十六条に規定をしております。会長が任命する職員の定員、構成というものはどの程度のものでしょうか。
  32. 天城勲

    天城政府委員 特殊法人の職制、内部機構の問題でございますが、現在四十二年度の予算において大体準備いたしております内容を申しますと、二部制で総務部と事業部に分かれております。総務部のほうは庶務、会計というような普通の機関運営でございますが、事業部におきまして二つの課を設けて、共同研究事業、それからもう一方の課でもって国際事業関係を処理するという考え方でおります。  職員といたしましては小規模でございまして、ただいま申し上げました二部制を考えておりますので、二部長以下用務員まで含めまして、予算的な準備といたしましては三十六名でございます。
  33. 西岡武夫

    西岡委員 次に、業務についてお尋ねをいたしますが、第二十条に規定する振興会の業務について御説明をいただきたいと思います。
  34. 天城勲

    天城政府委員 振興会の業務といたしまして、法案の二十条に一号から六号まで列挙いたしております。この各号につきまして御説明申し上げるわけでございますが、たいへん長くなりますので、ごく特徴的な事業を申し上げてみたいと思っております。  第一の「共同して行なわれる学術研究に関し、研究者研究活動を行なうために必要な資金を支給すること。」これは従来からも学術振興会の行なっている仕事でございますが、通称流動研究員制度という形で行なっております。これは学問の境界、領域ですとか、あるいは諸外国に比べてまだ立ちおくれている分野というような研究を集中的に振興させるために、学者がそれぞれの勤務機関あるいは勤務地を離れまして、特定の研究機関に一年なら一年集まって共同研究ができるようなシステムでございます。その場合には、この振興会から特に共同研究に参加する場合の旅費、滞在費、研究費を応援するということで、四十二年度の財団のベースで考えております段階でも、ことしは三十六人ほどの流動研究員制度の実施を予定しているわけでございます。この辺が一つの特徴のある仕事だと思っております。  それから第二は、いわゆる産学協同でございますが、産学協同ということばがときどきいろいろな意味にとられるのでございますが、ここで考えておりますのは、学術の応用に関します共同研究に参加する研究者に対しまして研究費を支給し、あるいは共同研究を促進するために両者のあっせんを行なうというようなことを中心に考えているわけでありまして、実は学振の従来からの仕事に最も特色あるものがこれでございます。昭和八年以来、学界と産業界の研究者をもって組織する各種研究委員会をあっせんしてつくてまいってきておりますが、現在でも研究委員会は三十ございますし、委員は千五、六百人、学振のあっせんによって共同研究をいたしておるわけであります。新しい振興会は、この仕事を引き続いて積極的に行なってまいりたいと考えております。  第三号の学術の国際協力の面でございますが、これは最近非常に国際協力事業が多くなってまいりまして、国が直接いたしますと、相手方のいろいろな機関性格とかあるいは事業運営等について弾力的にいかない場合がございますので、最近も新しい国際協力事業を学振の委託事業として行なってきております。大きなものとしては、三十七年から行なっております日米科学協力研究事業でございますが、これはこの共同研究に参加する日本研究者研究費研究旅費等はすべて学振を通じて支出したわけでございますし、また、その他の国際事業を現在行なっている例を申し上げますと、宇宙線の研究、これはインド、ボリビア宇宙線の研究で非常に適当な研究の場所でございまして、関係の国の研究者と宇宙線の研究をいたしております。そのための経費をここから出しております。また海洋生物研究、これはイタリアのナポリの臨海実験場が世界的に有名な機関でありますが、ここにおきます海洋生物研究について、日本学者の参加について応援をいたしております。また地域研究で、現在は中近東からアフリカのほうまで及んでおりまして、現在テヘランとナイロビに断定的な基地を設けて地域研究が行なわれておりますが、これらの経費も学振から補助をいたしております。  そのほか、人の交流が国際協力で非常に大きな問題になっておりまして、外国人の研究者日本に呼ぶ、これは非常に高度の研究者が短期間来る場合と、それから中堅の学者が長期間滞在するという場合がございます。われわれは、外国人流動研究員制度を、先ほど申した内地の流動研究員制度と同じように、外国人に対しても流動研究員制度を現在行なっておりますし、また外国人の研究者に対するフェローシップ外国奨学金制度を行なっておりますが、これは国内に対吊るのと同じような考え方で、国際協力の一環として行なっておるわけでございます。  それから第四号は、「優秀な学術研究者の育成に関し、研究者研究奨励するための資金を支給する」、これは単なる育英会で行なっておる奨学資金とは違いまして、主として大学院の博士課程を修了して非常に将来性のある、現時点におきましても活動的な若い研究者たち、この研究者がなおその研究を続けていけるようにという意味での研究費と、それからある意味では給与に該当します研究奨励金、現在二万五千円の研究奨励金でありますが、それを支給するというやり方をいたしております。大体毎年官名くらいこの奨励研究員制度で採用しておりますが、これが第四号で考えております事業のおもなものでございます。  それから五番目の学術情報の調査あるいは提供、研究制度の普及。学術情報ということが学術振興において非常に大きな仕事になってきておりまして、国際的にも国内的にも、いろいろな分野から日本学術情報の円滑な運営ということが期待されております。御存じのとおり、科学技術の情報の問題に関しましては科学技術庁の所管に情報センターがございますが、ここで考えておりますことは、むしろいろいろな分野で行なわれております学術実態を、学術情報資料の案内所と申しますか、あるいは交通整理と申しますか、ここへ来るとどこにどういう情報資料があるということがわかるような機能を果たしていきたい。最近ユネスコあるいは日米会議等からも、日本の文献の国際交流センターをつくってほしいとか、あるいは日本の文献翻訳、クリアリングハウスの設置というような要望も出ておりますので、それらを受けまして学振の新しい仕事に盛っていきたいと考えております。現在は、まだこういう仕事は活発に行なっておるわけではございません。そのほか学術普及講座ですとか、専門学術講演会、あるいは学術図書、雑誌の刊行等、これらのことが、この結果を利用に供するとか、あるいは研究成果を普及するという仕事に入ってくると思います。現在「学術月報」というのを財団で発行しておりまして、これは二十三年から続けておりますが、毎月千八百部の学術情報の内容を盛った雑誌を刊行いたしております。これらの仕事を今後も拡大して続けていく、このように考えておるわけでございます。
  35. 西岡武夫

    西岡委員 二十条で特に二項を立てて規定しておりますが、これは特に何か付属の研究所みたいなものを持つとか、そういうふうなことが予想されるわけでしょうか。
  36. 天城勲

    天城政府委員 一応法律的にはいま申し上げたようなことを予想しておりますが、なお学術振興に関しましては、今後いろいろなことが考えられますので、一応本会の目的に即する限りは新しい仕事ができる道を残している。一方、現在特に新しい研究所を設置するとか、特別な機関を持つというような具体的な考え方は持っておりません。
  37. 西岡武夫

    西岡委員 先ほど局長の御説明、二十条の二のいわゆる産学協同の問題ですが、現在財団法人学術振興会が、維持会というものを組織しておると申しますか、持っておるわけでありますが、その仕事は今後どういう形で引き継がれるか、御説明をいただきたいと思います。
  38. 天城勲

    天城政府委員 現在の財団に、維持会というものが御指摘のとおりございます。「維持会員は、本会の目的趣旨に賛同し、維持会を組織して本会に協力援助するものとする。」という規定が、現在財団法人の寄付行為にございます。現在の状況をちょっと申し上げますと、維持会員は特別会員と普通会員に分かれておりまして、約千八百人ほどの会員が数えられるわけでございまして、特に振興会事業のうち、産学協同事業に対する資金援助を主として行なっているのが維持会でございます。今後は、特殊法人でございますので、いまのような形で維持会を内部の組織として置くことは適当でございませんか、この維持会の持ってまいりました意味と、それからこれを通じて産学協同事業を推進してきたというこの趣旨はぜひ生かしてまいりたいと考えておりまして、新しい特殊法人があっせんいたしまして、この維持会の実質的機能が行なわれるような措置を続けていきたい、かように現在考えておるわけでございます。
  39. 西岡武夫

    西岡委員 この振興会が行なう援助の対象、これに選定の基準というようなものが特にございますかどうか。
  40. 天城勲

    天城政府委員 援助の場合の選定の基準という御質問でございますが、たとえばフェローシップの採用でございますとか、あるいは国際共同事業の経費の支出のしかた等の、例で申し上げますと奨励研究員でございますと、奨励研究員の採用のために専門の機関を内部に設けまして一定の選考基準を設けまして、一般の応募を受けてその中から奨励研究員を選考するというようなやり方をいたしております。こまかいことは省略いたしますけれども、その選考基準を定めておりまして、それによって選考いたしておるのが実情でございます。  また、たとえば日米科学協力事業の例を申し上げますと、これは日米両国側に学者で構成された委員会が設けられますので、その学者委員会の、両者の会議で一致したテーマに対して振興会が必要な研究費なり旅費なりを支給するというやり方をいたしております。したがって、両者からいろいろな議題が出てまいりますので、その議題をその両方にあらかじめ設けられております学者委員会で十分検討して一致したもの——と申しますのは、日米科学のような場合には、両方に研究能力があり、対等でやれるものという前提に立っております。そこできまったものについて日本側の経費は学振が負担するという、こういうような考え方をしておりまして、それぞれのやり方について従来とも一定のルールをもって実施をいたしておるわけでございます。
  41. 西岡武夫

    西岡委員 二十一条に規定しております業務内容についての文部大臣の認可の権限は、どの程度まで具体的に及ぶのか、局長からでけっこうでございますから、御説明ください。
  42. 天城勲

    天城政府委員 振興会の行なう業務範囲につきましては、ただいま御説明申し上げましたように、二十条の規定によって大体範囲が示されておりますが業務執行の方法につきましては、特別の規定がなくて一応振興会の判断にまかせられているわけでございます。しかし、振興会自身としては、いま申し上げたようないろいろなルールを定めて、あるいは基準を定めて仕事をいたしております。ただ、国といたしまして、これが現在のところ全額国の補助金で行なわれておりますので、業務執行方法あるいは業務を適確に執行して目的を達成するために必要な条件となるものでございますので、業務執行の基本的事項には業務方法書というものをつくりまして、これを文部大臣の認可にかかわらしめる、こういう考え方をとっておるわけでございます。これは一般に他の特殊法人につきましても業務方法書というものはみなつくりますし、主務大臣の認可にかかわらしめているわけでございます。したがいしまして、業務方法書の認可という形で法人の業務執行の適正を担保していきたい、こう考えておるわけでございます。その内容につきましては、先ほど申しました二十条のいろいろな事業がこれから出てまいります。その中で、いま申しました流動研究員ですとかあるいは国際協力事業、それぞれこの振興会で、先ほど申しましたような一応の基準ですか、あるいは研究員の採択の方針等をきめてまいりますので、そういう事項につきまして認可にかかわらしめていくという考え方でおります。
  43. 西岡武夫

    西岡委員 日本学術振興会の、附則第九条第三項によって引き継ぐ一切の権利義務というものはどういうものがあるか。簡単でけっこうでございます。
  44. 天城勲

    天城政府委員 現在の振興会事業から大体予定されておりますものとして、権利関係といたしましては、基本財産を持っております。それから銀行預金、定期預金を持っております。それから「学術月報」その他図書の出版権を持っております。これは二十条の二項にも該当することになると思いますが、現在ユネスコクーポンの販売権というものを持っておりまして、ユネスコの学術図書、器材の販売をいたします。学者学術図書あるいは器材を国際的に買う場合に、通貨にかわってユネスコクーポンというものを発行してその便宜をはかっておるのでございますが、それの取り扱い機関として、日本では現在まで財団がただ一つ指定されております。したがって、ユネスコクーポンの販売権というものをこの機関が持っております。これが権利として考えられます。その他庁用の備品一切、不動産関係、あるいは商社関係の未収金がございますれば、こういうものもみな権利に入ってくるかと思います。  義務といたしましては、この法人が解散されるまでに実施した事業に関して発生した義務がいろいろ出るかと思います。たとえば研究生に対する研究費とか滞在費とか奨励金の支給義務、採用したということになれば支給義務が残っておると思います。それから、法人と職員の雇用契約関係義務、これらの問題がこの中に包含されると思います。
  45. 西岡武夫

    西岡委員 わが国の現在の学術奨励財団の数がもしおわかりでしたら、わからなければけっこうでございますが、どれくらいあるか。資産総額などもわかりますれば……。わからなければけっこうであります。
  46. 天城勲

    天城政府委員 学術奨励財団が大体二百くらいございますが、ちょっといま手元にこまかい資科がございませんので、後ほど詳細に調べまして御報告いたします。
  47. 西岡武夫

    西岡委員 アメリカの場合、大体財団が一万五千ばかりあって、そのやっている仕事政府が特に力を入れている分野とのいわゆる調整、協調関係というものが非常に密接に行なわれているということを聞いているわけでございますが、今後日本学術振興会が、この学術奨励財団との間にそういった意味での協調をはかる、そういう中心的な存在になるというお考えはあられるかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  48. 天城勲

    天城政府委員 いま個々の財団の行なっております事業をすべて了知しておりませんけれども、大体の傾向といたしまして、学術研究費の補助あるいはフェローシップの供与というのが日本の他の団体仕事でございます。ここで、学振で考えております先ほど申し上げた仕事というのは、現在のところほかの財団がやっていることと正面から重複したり、ぶつかったりするようなものではないと私考えておるのでございますが、たとえば奨励研究生にいたしましても、学振のやっておりますのは、大学大学院を修了して本来の自分の専門を生かすべき目的を持っているのですけれども、たまたま大学とか研究機関にポストが得られないために、志を曲げてほかのほうに行ってはたいへんだという人になお研究を続けさせるために、ポストが見つかるまで援助するというような、非常に目的がはっきりいたしております。したがって、一般の奨励金とはかなり目的が違うのではないかと思います。  それから、先ほど全貌というお話がございましたけれども、たとえば日本で一般に援助団体として非常に大きなものとしては、軽金属奨学会というのがございます。また、東洋レーヨンの科学振興会というのがございます。これは必ずしも基礎的な研究ではなくて、広い意味科学技術振興のための財団でございます。また、作行会あるいは松永記念科学振興財団、あるいは武田科学振興財団等、いろいろ財団がございますけれども、学振がねらっておりますような、主として基礎的な研究あるいは研究者の援助、国際的な学術協力というような仕事に全面的に乗り出しておられる財団というのは、日本ではただいまないと思っております。
  49. 西岡武夫

    西岡委員 これまでも指摘をされてきたところでありますが、いわゆる頭脳流出の問題についてでありますが、これが非常に、わが国のこれから資本の自由化を迎えて、ますます技術開発その他に関連しまして重大な問題の一つであろうと考えるわけでありますが、いわゆる頭脳流出の現状というものがどういうふうになっておるか、またこれについての対策、それについてはこの学術振興会なども直接、間接に相当の役割りを果たさなければいけないと考えるわけでありますが、その点についてお考えを承りたいと思います。
  50. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 頭脳の流出の問題が、ただいま非常にやかましい問題になっております。科学技術庁と文部省と共同いたしまして、過去五年間のを調査いたしましたところによりますと、短期もしくは長期にわたりまして研究者が海外に参りましたのが、大体六千人くらいに達しております。しかし、その中で短期て——六カ月以上について調べたのでございますが、大体一年とか二年、三年くらい滞在して帰ってきておる。向こうに永住と申しますか、向こうに雇われて定職についておる者につきましては、その調査では百四十四人でございますか、全体の二・六%くらいな程度でございます。必ずしもその数としても多くはございませんけれども、そういう人の研究成果とか研究力というのは、非常に高く評価されておる方が多いのでございます。そこで、やはり日本といたしましては、そういう高度の研究者をできるだけ日本にとどめるということが必要であるかと思います。それにはどうしても、基本的には日本におきまする科学研究者の待遇を改善いたしますとか、あるいはまた画期的にひとつ、今回問題になっております科学研究費、学術研究に対しまする経費について相当思い切った国の援助をいたしまして、内地におりましても学者が十分満足して研究できるような処置をとることが必要ではないか。特にまた、いま御指摘もございましたけれども、一面においてそういうことを防ぐ意味から申しましても、今後学術振興会におきまして、十分海外との学者の交流を盛んにし、日本から海外に行く学者ばかりでなく、外国からも日本に交流の意味におきまして学者を呼びまして、そうして海外との交流関係を緊密にしていく、そういうことによりまして、むしろ逆に日本から流出することを防いでいくというのが、今後私どものとるべき手段ではないかと思っておる次第でございます。
  51. 西岡武夫

    西岡委員 最後に、要望とあわせて大臣のお考えを承りたいのでありますが、今回のこの法案一つ問題点と申しますのは、やはりこれまで財団法人であった日本学術振興会特殊法人になることによって、自由な学術研究振興がいわゆる官僚的なワクをはめられるのではないかというところにあると思われるわけでありますが、でき得る限りこれが自主的に運営されるように望まれるわけであります。それについての大臣のお考えを最後に承りたいと思います。
  52. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これは、特殊法人にいたしました理由は、一面において今度の特殊法人たる学術振興会が行ないます事業が、やはり国の行ないます事業をかわって行なうという意味がございますので、学術振興会の行ないます事業につきましては、先ほども局長からお答えいたしましたように、業務方法書とかあるいは事業計画とか、こういったような外ワクにつきましては一応国が認可をしてまいりたい。しかし、その実際の実施面につきましては、あくまで学者なり、その専門的な判断力を利用するためにこういう特殊法人にしたのでありますから、その面におきましては振興会が自主的に行なっていく、なおまた、そういう際におきまして、これは文部省なりそういう役所的な考え方でなしに、先ほども申しましたように日本学術会議というような、一つ政府機関でございますけれども、学者、権威者の集まりでございますので、そういったような方面からの意見も、十分この振興会学者的な意味におきまして自主的に取り入れていく、こういう形をとって運営してまいりたい、そう考えております。
  53. 西岡武夫

    西岡委員 以上で終わります。
  54. 床次徳二

    床次委員長 ただいまの西岡君の質疑に関連して、長谷川正三君から発言を求められております。これを許します。
  55. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 本日から日本学術振興会法案の審議に入ったわけでありますが、この機会に文部当局に資料の提出を要求したいと思います。  ただいま西岡委員からもいろいろ御質問がありましたが、この法案は、今後の日本学術研究上にきわめて重大な影響のある法案であることが、ただいまの質問からも大いにうかがわれるわけでありまして、この法案がただ簡単に成立すればいいというようなものであってはならないと思います。非常にそういう重大な意味がありますので、本委員会においては、十分今後の日本学術振興の上に誤りのない、しかも非常な将来の発展を望み得る審議をしなければならないと思いますので、そういう意味では、ただいままでに提出されました資料はこの法案の提案理由なり、本文なりあるいは附則等の関係についての関係条文等をあげた程度でありますが、いまの御質問にもるるありましたように、これはいろいろな経過もあり、問題点もたくさん伏在しておりますから、それに関係する資料はできるだけ整備してひとつ全委員に御提出を願い、ほんとうに慎重な審議ができるように御配慮願いたいと思います。  そういう意味におきまして、従来の財団法人日本学術振興会の会則と申しますか、そういうもの、財産、役員その他事業の今日までの概要、そういったものをまずひとつ出していただきたい。それから、これとたいへん関係の深い日本学術会議あるいは日本学士院等に関する資料も、できるだけ整備して御提出を願いたい。それから、西岡委員から最後のほうで御質問がありました、日本における学術振興に関する民間団体なり、それの事業の概略あるいはそれに使われております経費、こういったものの概算がわかりますならば、これはやはりあわせて本法案の審議の重要な資料となろうかと思いますので、ぜひこの点も、これはなかなか切りがないことと思いますが、早急に調査し得る範囲でけっこうでございますから、御提出をお願いしたいと思います。  以上です。
  56. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 長谷川委員が申されますとおりに、この特殊法人たる学術振興会は、今後日本学術振興につきまして重大な役割りを占めるものと思います。したがいまして、この国会におきまして十分なる御審議をいただき、今後のあり方につきましてもまた十分御考慮を願いたいと思います。ただ、この法案は、長年特殊法人として成立するということについて念願をしてまいったのでございますし、なお、この特殊法人の成立は政府部内におきましても非常に限定されまして、政府内部におきまして認められることも非常に困難でございましたが、これだけは特殊のものといたしまして政府も決意をしたわけでございますので、ぜひひとつ十分なる御審議をいただきますことをひとえにお願いいたしますと同時に、ただいま申されましたような資料を提出いたしますについては、私のほうでできるだけの努力をいたしまして、御配付を申し上げるように努力をいたす考えでございます。      ————◇—————
  57. 床次徳二

    床次委員長 次に、文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。小林信一君。
  58. 小林信一

    小林委員 実は、私は前から行政全般についての御質問を申し上げようとお願いをしておったんですが、いろな都合でその機会が得られず今日になったわけですが、その一つが、特にいま政府が提案をしてまいりましたこの学術振興会法にも関係を持っておりますので、その問題からいろいろお聞きをしていきたいと思っております。したがって、継続したような形でもって御答弁を願いたいと思うのです。  第一番に、この法案の提案理由説明を拝見いたしますと——いま大臣は、非常に重大な問題であってこの経緯については非常に努力もした、したがってその点も理解し、慎重に検討してもらいたいというふうなお話があったのですが、しかし、ここに書かれてあります提案理由を拝見いたしますと、何かいまの日本の置かれておる現状というふうなものを忘れておって、こういうことをしなければならぬからというその仕事のほうに主目的を置いて、そして提案理由に掲げてありますように、今日の現状はかくかくであるというものは何かっけ足しのような気がするのです。もしそういうふうな御精神で、文部行政というものが現在の学術振興あるいは科学技術振興というようなものに当たっておるとするならば、これは非常に残念なことだと思うのです。第一番の、「現代世界の著しい特色であり、」云々ということで、「今や国に課せられた重要な責務であると考えます。」というような条項は、十年前に科学技術の振興を非常に強く叫んだころのことばと何ら変わりはない。それ以来日本の経済あるいは科学技術は進展をし、それが世界情勢の中でいまどういう立場に置かれておるかというふうな点を、私は何か忘れておるような気がするのですが、特にこういうことをお述べになっておる点はどこにその根拠を置かれるのか、まず第一点としてお聞きをしたいと思うのです。
  59. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 もちろん学術振興は、提案理由に書いてありますように現下の非常に重要な問題でございますが、これは十年前にやはり日本が申したのと内容的には変わらないではないかというお尋ねであろうかと思います。しかし、最近におきまする日本の特に科学技術は、世界に伍して相当進歩してまいりましたけれども、その過程におきましては、主として導入技術と申しますか、外国の技術を日本が導入いたしまして、世界のレベルに達するという努力が払われてまいりました。しかし、今日におきまして特に資本の自由化が行なわれてまいりますと、これは技術導入というようなことに日本がたよっておるわけにはまいらない。日本自体の力で、この日本の産業が外国の資本を導入しないで、これと競争していくという力を持っていかなければならぬ。それには、どうしても基本になりますのは、日本におきまする科学技術の独自の力でこれを開発していくという能力を養成することが、現下の非常に重要な段階になっておると思います。そういう意味から由、しましても、私どもとしましては、同じことばで表現をしてありますけれども、科学技術の振興を必要としますその内容は非常に異なったものがある、非常に高度のものが要請されておると思うのでございます。
  60. 小林信一

    小林委員 だから、こういう大きな目的を述べられるときには、私はやはり、その真意というものをつけるほど、いまの事態というものはこの点に大きな期待があるのじゃないかと思うのです。法案内容を見れば、大臣の権限が至るところに非常に強くにじみ出ておるし、そしていろいろ資料をお伺いしますといままでの経過というものが書いてあるのですが、その経過等を見ますと、日本のほんとうの学術振興というふうなものと必ずしも一致しておらないいろいろな問題点があるわけなんですが、そういう内容、経過というようなものを考えますときに、もっと明確にいまのような観念的な現状に対してきびしい反省もし、それから今後の希望も盛り込むような、そういう強いもので、私はこの学術振興というものについては当たっていかなければならぬと考えるわけなんです。そういう点で、いま大臣は簡単に技術を導入した、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、それは意図的に技術の導入をしたのか、日本科学振興というものがそれに間に合わなかったのか、あるいは政府施策、経済の高度成長政策というものの中に不足しておったというような考え方を私はこの際お聞きしなければならぬと思うのです。簡単に、それはもう意図的に技術の導入をやったりだというのか、いろいろな点から間に合わなかったというのか、こういう点も強く、きびしく反省をした中で、今後の学術振興あるいは技術振興というものを考えていかなければならないような事態だと思うのです。それは最近のいろいろな企業家の意見を聞きましても、この資本の自由化の問題に対しましては相当な動揺があります。その動揺の中で、いままではこうだったが今後はこうしなければならぬというふうな、そういう決意が強く盛り上げられておるし、それから学者等から、この資本自由化にどういうふうに今後の日本の経済なりあるいは学術というものが沿っていかなければならぬかということで、いろいろな意見が出ておるわけなんです。したがって私は、これから政府として、またその政府施策の中で、文部大臣に課せられておる任務というものは特にまた大きいと思うのです。そういうものをどういうふうに考えられておるかという点をこれからお聞きしていこうと思うのです。  その前に、いま大臣から、これから自主的な面での学術研究をしていかなければならぬというお話があったのですが、そのあとのほうにこういうことが書いてあります。「一方、最近の学術研究の急速な進展に伴い、共同研究を通じての研究の組織化、」一体この共同研究というのは、もちろんあとのほうに国際化ということが書いてありますから、ここの共同研究というのは、これは国内の共同研究だと思うのですが、この共同研究をどういうような形でやっていくのか、いままではこの共同研究が、どういう点で欠陥があったかというふうな点をお聞きしたいと思うのです。  それから続きまして、いまの大臣の自主的な学術研究というふうなことばとはまた違った意味で、「国際化の傾向が強まるとともに、また研究の規模も拡大の一途を辿っております。」これは国際化をさらに強調していくのか、自主的な面を強く持っていくと同時に国際化をはかるというのか、ここら辺の御意図を明確にしていただきたいと思います。
  61. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 終戦蔵後におきまして、諸外国日本との科学技術の進歩というものに相当の格差がございましたことは認めざるを得ないと思います。そういう意味から申しまして、早急に日本科学技術を振興するためにある程度技術導入をいたしましたことは、これはやむを得なかったと思うのでございますが、今日の状態におきましては、やはり外国のすでに研究いたしたものを取り入れるというだけではどうしてもなりませんので、これはどうしても日本が自力でこの研究を大いに、外国に負けないように、新しい日本の進歩した技術開発ということが非常に必要だと思います。そこで、学術振興会事業でございますが、これはアメリカの国の機関としてあります財団に比べますと、全く内容的には雲泥の差といっていいと思います。まだわずかに振興会事業として緒についただけでございますが、しかし、これが特殊法人として成立いたしました今後におきましては、私はやはり、この振興会事業を思い切って拡充していって、そして外国に負けないような研究の助成ということをやってまいらなければならぬと思います。  共同研究の問題でお尋ねがございましたが、もちろん、ただいま文部省でやっております科学研究費におきましても、できるだけ共同研究ということを奨励しておるわけでございますが、これは基礎的な研究において、各大学の教授等におきまして共同研究というのをやっておるわけでございます。しかし、学術振興会がねらいます共同研究は、やはり産業界におきまするいろいろな問題とかあるいは新しい技術の研究開発というような問題につきまして、できるだけ共同研究を進めてまいりたい。いままた、特に科学の面におきましては、国際的にもいろいろな問題が共同研究ということで取り上げられております。たとえば、太平洋の全体の問題でございますとか、あるいは生物学の問題でございますとか、あるいはまた地球物理の問題でございますとか、これらの問題につきまして、国際的に学者共同研究というのが強く主張されておるのでございまして、これは一面におきまして国内におきまする共同研究を助長してまいるばかりでなく、一面、また国際的な共同研究も大いに盛んにしてまいりたい、これが学術振興会一つの大きな使命であろうかと思います。
  62. 小林信一

    小林委員 大田のおっしゃる中にいろいろ問題があるのですが、それがそういう細部な問題までお聞きして、そしてこの際日本学術振興、技術振興を考えていかなければならぬというぐらいに、おそらく国全体がこの問題には最も神経をとがらしていると思うのです。そこで、いま大臣は、この学術振興会を思いきって国も助成をして、そしてこれを基礎にして日本学術研究をはかる、こういうようにおっしゃったのです。この法案には別にそういうところはないのですが、今後思い切ってこれに何か金をつぎ込むというお考えですか。
  63. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これは、いままで財団法人をしてやらせました事業内容というのは非常にその限界があったわけでございます。特殊法人にいたしましたのも、やはりほんとうに財団法人では十分な成果があげ得ないのでございますから、特殊法人にした以上は、これはやはり日本学術振興のために、相当これに対しまして政府が力を入れてこの事業の拡充をはかってまいりたい、そういう念願でございます。
  64. 小林信一

    小林委員 大体そうおっしゃるなら、さしあたってどれくらい国から金をつぎ込む予定であるか、いまそれが予想できるならばおっしゃっていた、たきたいと思うのですが、思い切ったものをひとつ……。
  65. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これはだんだん検討してまいりまして、四十三年の予算から相当なことを考えてまいりたいと思います。
  66. 小林信一

    小林委員 それだから、文部大臣の権限というものは一段と強化してあると考えていいわけですか。
  67. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これは、財団法人の時代からでもそうでございますが、その事業内容につきましては、ほとんどが全額国の援助でやってまいるわけでございます。したがいまして、その予算的措置というのは、もちろん振興会から事業内容についてのあらかじめの話はございますけれども、結論といたしましては政府が全部予算でこれを処置するという関係になりますので、事業計画の大体につきましては、文部省がこれを政府として決定するという形になるわけでございます。しかし、その実施にあたりましては、予算のワク内において実施することになる。これは業務方法書なり事業計画になると存じますが、その実施にあたりましては、なぜ政府がみずからやらぬで特殊法人にしたかといえば、やはり学者としての一つの判断力ということがこの法人の非常に重要な役割りでございますので、この自主性を尊重してまいる、こういう形になると存じます。
  68. 小林信一

    小林委員 非常にそれが重大な問題であって、学者の自由な研究というものを伸ばすことができる財団法人になるのか、あるいは宮様統制的なものになって、いま学界にも非常に問題があるのですが、そういう学界の中に一つ文部省の意向というものを通していくというふうなものになりはしないかというのが、ぼくらの非常におそれている点でありまして、そういう点はまた、各条文条項によりまして一々検討する中で私は詳しくしてまいりたいと思うのですが、そこで、いま大臣が、いまの学術振興会もすべて国の財政でまかなっておると言っておりますが、ことしの予算三億三千万円ですか、そのうち国のほうから一億一千万、そうして二億が日米協力の組織から出ておるのですが、この日米協力というのは日本の金とアメリカの金と合わさったものであるか、その内容を聞きたいことと、そしてもう一つは、そういうものから金をもらっておれば、先ごろ問題になりました日本学者が盛んに米軍から援助を受けました。それに対しては必ずその研究の報告をしてあるのですが、この日本学術振興会はそういうふうなものはないのかどうか、そういう点を詳しくひとつ御説明願いたいと思います。
  69. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 この七月に入りまして、近く外務省で日米科学協力会議が開催されるわけでございます。これは両方から対等の同数の人間を出しまして、そして協力をいたします議題及び研究内容、範囲その他実際の実施面を協議して決定するわけでございますが、その協議して決定いたしました研究については全く日米対等にこれを行ないまして、日本側で研究いたしますものは全部日本側が出す。その金が実は予算に計上してあります二億でございます。アメリカ側で使います研究費アメリカが出す。そして、その学問研究におきまして、あくまで対等の力なり関係におきまして協力をするということでございまして、このごろ国会でいろいろ問題になるようなのとは全然趣旨が違うのでございます。いま振興会に出しております一億幾らと、この二億は日米協力関係で出しておりますけれども、日本側の研究なりに使うところの経費でございます。
  70. 小林信一

    小林委員 日本側の研究に使う、したがってその金は日米共同でもって出しているけれども、そこのところをもう少し明確にしてもらいたい。私の聞きたいのは、研究したものを日本のものにそのままするのか、アメリカにもやはりこれを報告するのか。ということは、大臣が全然違う、こうおっしゃったけれども、米軍から援助をもらったものは、必ず報告はアメリカにしてありますよ。そういうような任務というものはないのかどうか。
  71. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 振興会で計上しております二億は日本だけで使うのでございます。それからアメリカで使うのはアメリカで計上してあります。この合同会議というものに合一されまして、それが一つになって支出されるというものではございません。全然別々に支出をいたしておるのでございます。なおまた、その研究成果の報告書は、もちろん両国の政府に対してなされるということでございます。
  72. 天城勲

    天城政府委員 ただいま大臣の申しましたことを補足さしていただきますけれども、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、両国の学者委員会を構成しまして、その学者の間で一致したテーマにつきまして研究テーマをきめる。しかも両方に実力のある研究課題を取り上げるというやり方をいたしております。したがいましてテーマがきまりますと日本側の研究者研究費日本政府が見る。これが学振を通じて二億計上されております。アメリカ側の研究者の費用は、先ほど申しました国立科学財団、NSFが分担いたしておりまして、その結果は両国の学会に報告する。学会誌ないし学会で発表いたしております。こういうのが日米科学の仕組みでございます。
  73. 小林信一

    小林委員 学問に国境があってはならない、こういうような高い見地でもって学問をやることは必要だと思うのですよ。またそうでなければならぬと思うのです。しかし、剱木文部大臣のようにまじめ過ぎると、一体それが、はたして世界各国がそれと同じような態度で臨んでおるかどうかということは非常に問題でありまして、こういう点に国民は疑惑を持っておるわけなのです。  これはまたあとで間遜にしたいと思うのですが、米軍からもらった援助問題について、きのうもテレビに出ておりましたが、横浜の市立大学ですが、これは学者の間で検討して、やっぱりもらうことはいけないのだ、もらわないようにしぶうじゃないかというような決議をしたその経緯から見ましても、必ずしもわれわれが考えているように良心的な、学問には国境がないというふうな、そんな考えではないと思うのです。そこで、私は、先ほどの共同研究の問題と国際間の問題について私の考えを申し上げて、ひとつ大臣のお考えを聞きたいと思うのですが、共同研究の問題です。簡単に共同研究共同研究と言うけれども、いまこの共同研究ということばはさまざまな内容を持って使われているのですよ。だから私はそれをお開きしたのですが、いま大臣大学学者と産業界、こういうふうなものの共同研究ということを言っておりますが、学者と、学校と言ってもいいと思うのですが、研究所と、——いろいろな研究所があります。それと産業界、こういうものの一体の研究共同研究もある。そして、いま盛んに事業家の人たちが言っております共同研究というのは、大きな企業は、これは独自で研究所がつくれる、研究機関がつくれる。しかし、小さい会社というものはとても自分一人ではつくれないから、小さな会社が集まって共同研究しようではないかという共同研究もある。そして、いま大臣のおっしゃるように、学者と産業界だけの共同研究というふうなものもあるというくらいに、この共同研究の問題についても、いま日本のいわゆる資本の自由化、貿易の自由化、こういう問題に対して非常に神経をとがらしておるのがこの共同研究ですよ。こういうものに、文教行政を預かる当局としては、一貫をした一つのものを持っていかなければならぬと思う。そうして、可能な範囲でそういうものの指導をしていかなければならぬとき、だと私は思うのですよ。  それから国際化の問題ですが、この国際化の問題について、きのう、これは大臣もごらんになったかもしれませんか、朝日新聞の夕刊に——もうあらゆる新聞が取り扱っておるわけなんですが、ゆうべ見ました中に、OECDが日本科学政策について調査をしている。だから外国でも日本学術研究あるいは技術研究、こういうふうなものについては調査をしているわけなんですよ。外国日本を調査しておるわけなんです。したがって、そういう点では、それ以上の調査、研究というふうなものを大臣は持たなければならぬと思うのですが、そこで、昨秋の科学政策委員会で系統的な批判としてこういうことを述べておる。日本が技術導入にたよらざるを得なかったために、日本研究開発が導入技術に適応するような型に限られてしまった、こういうふうに外国では日本の異常な経済成長というものを見て、一体どういうわけだとか、今後はどうなるとかいうところまで彼らは研究する。そういうふうに研究をしていかなければ、この経済競争というものに、あるいはこういう科学伸展というものにそれぞれの国がおくれてしまうというわけでしょう。日本をこういうふうに批判をしておるわけです。それを、きわめて良心的に国際化をはかっていくというふうな——もちろん、それも私は否定はいたしません。しかし、そういう美辞麗句だけで、もしそれが本心であるとするならば、これは非常に危険なものでもある。アメリカ日本学者を動員するというふうなことも、アメリカ学者には問い賃金を払わなければならぬ。しかし、日本学者なら安い賃金でもって研究させることができる。そうしてその研究したものを集めて、それが単にアメリカの産業だけでなく、ベトナムの戦争にもこれが相当に使われておるというようなところに、私どもは非常に心配をしておるわけなんですが、国際化というこの問題について、私はそういう一つの心配もしておるわけです。  もう一つ、これは、アメリカの経常学者のアベグレンという人ですが、これはおそらく学術研究という問題でなく、それから次に発展した問題でしょうが、日本に対しては、独自性がなく、最新でもない技術を与えるのが得策である。技術提携は日本が競争相手になるような危険のないものを選べ。これはもちろん商売人ですから、あくまでも自分がもうけるということを主体にしておるかもしれません。しかし、とにかく科学技術、学術研究を基礎にしたものは、いま世界的にはそういうふうな競争をしておるわけです。大臣がさっき太平洋という問題をおっしゃったのですが、太平洋の上に飛んでおりますあのテレビ中継をする人工衛星、一体これなんかは、あれは年は忘れましたが、これから何年かたつとこれをどこの権利にするか、おそらくアメリカがあれを独占するというふうな形になって、どこの国でも簡単に飛ばせることができないような、宇宙に対する権利まで彼らはこの学術研究の中にもうすでに意図を持っておるわけです。私は決して否定はしないけれども、ただこの条文どおりに受け取るわけにいかない、こう思うのですが、大臣の子術振興あるいは科学技術振興に対する、いまの情勢の中で持っておるお考えをお述べ願いたいと思うのです。
  74. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 もちろん、技術提携とか技術導入というのは産業界が外国に追いつくために取り入れたことでございますが、しかし、学術振興会がねらっておりますのは、そういう産業界の応用研究という面ではないので、本質的に基礎研究に属するものでございます。この基礎研究の面から申しますと、必ずしもそう外画からの批判を受けるような状態でなしに、私は、やはり日本が相当世界的に高く評価される研究者なり研究能力を持っておると考えておるのでございます。もちろん、外国から申しますと、日本科学研究を調査するということは、いま申されましたが、日本もまたこの外国学術研究の情報を狩るということは非常に大事なことでございまして、学問研究におきまして時報の必要なことは申すまでもありません。科学情報センターがああいうように活動しておるばかりではなく、この学術振興会も今後情報を集めまして日本学者に提供し、そして、より高く日本の基礎研究が成り立ちますようにまいっていけば、決して私は、世界からさげすまれるような形にはないと確信をいたしておるものでございます。
  75. 小林信一

    小林委員 確かに応用面の、したがってその基礎の学術研究、それをもってどうこうするというわけにはいかぬかもしらぬけれども、やはり常識とすれば、その国の科学技術がいまどういうふうな状態にあるかというならば、その国の学術研究がどうであるかということ、私はそれから類推して判断してもいいと思うのですよ。私は、そういう意味で今後の経済競争というふうなものの中に、いかに日本学術振興をさせるかという点についてお聞きしたわけです。  そこで、私の最もお聞きしようと思う点へ返りますが、先ほど当初に申しましたように、この資本の自由化という問題に対して政府はどういう対策を講じようとしておるのか。それに対して文部大臣に課せられております任務というものはどういうものであるか、これをお聞きしたいと思うのです。
  76. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 資本の自由化によりまして主としてその影響を受けますのは日本の産業界でございますし、大資本の産業もございますが、特に大きな影響を及ぼすと考えますのは、あるいは農業関係でございますとか中小企業関係とか、こういうものが資本の自由化によって大きな影響を受けると思います。そういう意味におきまして、資本の自由化におきましても、政府といたしましても一つの段階を設けまして、できるだけ急速にわが国の産業界が混乱をしないという対策を講じていく。それには、やはりいま申しましたように、日本の産業自体が非常に強力になってまいるということが一番必要なことだと思います。そこで文部省として、その資本の自由化に対しましてになうべき任務と申しますか、責任は、やはりあくまでこの科学技術の振興と申しますか、独力で外国に負けないだけの能力を開発し、そして新しい科学技術の分野をみずからの力で開拓していくという力をつけることが一番必要であり、これが文部省の分担いたします部面だと考えております。
  77. 小林信一

    小林委員 結局、さっき大臣がおっしゃったように、自主的な技術開発ということが一番大事な問題だと思います。それについてすると言うだけでなくて、一体文部大臣は、ことしの予算を編成する中で、あるいは文部行政を行なう中で、具体的にはどういう面でそういうふうなものをお持ちになっておいでになるかどうか。残念ながら、私どもは、さっきもこの振興会の問題でお話があったのですが、振興会へ金をたくさんつぎ込むということと同時に、もっと大学研究室あたりに金をつぎ込んだらどうだ。米軍の疑わしいような援助を受けて学者諸君が勉強しておる、そういう問題をまっ先にこれを排除する、そうして、この学術研究というものももちろん力を入れなければならぬかもしらぬけれども、そうした一般的なものに力を入れるというふうなものはなくて、そうして盛んに大臣はこの学術振興会へ力を入れるというふうなことで、われわれには非常に何か不満、心配があるわけなんです。したがって、この自主的な技術開発をやるとは言うけれども、一体どこにどういうふうに力を入れていくのか、それを私はお聞きしたいと思うのです。
  78. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 実は、来年のことを言うと申しますけれども、私、文部省の来年度の予算編成につきましての科学研究費の増額ということは、最重点政策として考えてまいりたいと考えておるのでございます。この国会で問題になりました米国陸軍から受け入れました科学研究費の援助は、総額で十年間で約三億八千万円でございます。わずかに三億八千万円で、これまで日本学者がそういう外国から金をもらわなければならぬという実際の実情に置きましたのは、一面におきまして、私はやはり文部省の責任であったと思います。そういう意味から申しまして、科学研究につきまして学者研究する場合において、そういうような必要のないように十分この際画期的な、学術研究費に対しましての施策政府は行なうべきだということを考えておるのでございまして、そういう意味におきまして、私は四十三年度の予算編成にあたりましては、これが最重点政策の一つだと覚悟していかなければならぬと考えておる次第でございます。
  79. 小林信一

    小林委員 文部省の責任である、したがって来年度は最重点政策としてこの問題に取り組む、三億八千万くらいのもので学者外国から金をもらった、それがどうなったというふうなことを言われるのは、これは全く国民としても嘆かわしい次第で、文部大臣がそういう決意を持ってもらうことは非常にうれしいのですが、しかし、あまりにそれは時期を失しておるんじゃないかと思うのです。大体大臣がどういうふうにお考えになっておるか知りませんが、経済成長政策の中で、先ほど技術を導入して経済成長をやった、これはやむを得なかった、しかし、それで日本の経済が伸展をしたという、その陰には一つの防波堤があったと思うのです。それは外国為替法とかあるいは外国資本に関する法律とかいうようなものが一つの防波堤になって、完全製品を日本に輸入させない、そういう一方に措置をしておきながら、外国の技術を導入して日本の高度成長をはかったと思うのです。そういうふうにやりくりをした日本の経済成長であったわけです。しかし、その中には、もうすでに新しく安保条約を締結する際に、経済協力というふうなものの中でこういうものがアメリカと交換をされて、そして経済協力という非常にありがたいものをもらいながら、だんだん貿易の自由化が促進され、何回かの会談を行なう中に、日本の貿易の自由化というものは九十何%まで運び込むような形にされてしまった。当然、もうあとは資本の自由化ということがくるわけですよ。したがって、一応技術導入で経済成長をやっておる、そのときに、文部大臣がおっしゃるように、文部省に経済伸展のかぎがあるのだという考えを持っておるならば、それまでに一番の基礎である学術研究振興をはかったり、あるいは自主的な技術開発をはかる政策がなければならなかったと思うのですよ。しかもいま資本の自由化は四十六年をめどにして完成しようとしておる。来年やりますということは、非常に意気込みは尊敬いたしますけれども、何かおそいような気がするわけです。なお私は具体的なものもお聞きしたいと思うのですが、私のおそ過ぎるという点について、実はこういうふうな事情があったのだというならばお伺いしたいと思うのです。
  80. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 お尋ねの面ではございませんけれども、日本が貿易の自由化をやって、今度また資本の自由化をやってまいるわけですが、貿易の自由化をやりますときに、やはり日本としては非常な決意が要ったわけであります。しかし、今度の資本の自由化につきましても、たいへんな決意が要るわけでございますが、これはしかし、日本の真の経済なり日本の力を養っていくためには一つの試練であり、これを乗り越えていかなければ、国際場裏に日本の一人立ちということはできないのではないか。私は、その意味におきまして、これに対して国民的な努力をいたしまして、この資本の自由化に対処してまいるということは、日本の負わされた大きな使命であると思うのでございます。そういう意味で私どもはその試練を受けておりますので、これに対処していかなければならぬと思います。いま、そういう意味におきましておそ過ぎるじゃないかという御質疑につきましては、全く私も、これはそうではないと申し上げるあれは持ちません。ただ、科学研究費の増額なりについては、文部省文部省なりにある程度の率をもちまして年々増加をいたしてまいりまして、たとえば教官研究費のごときは、戦後非常に少なかったのでございますが、戦前の域にまでは大体回復をいたしてまりました。しかし、いよいよ資本の自由化に対処して、そして科学技術の画期的な振興をいたしますためには、確かに施策としておそかったと思います。しかし、だからといって、いまからでもこれはやらなければならぬ問題だと私は思いますし、また事実やっていく決意をいたしておるわけでございます。
  81. 小林信一

    小林委員 長くなりますから、またこの問題は何か時間をいただいてやりたいと思うのですが、いま国民的な責任を感ずる、大臣としてのこれは使命であるというような強い決意を承ったのですが、私はその基本に、根本に、もっと文部省というものが、あるいは教育というものが日本の経済伸展の基礎なんだ、土台なんだ、これは当然であって、だれもこれに文句を言う人はないのですが、それを行政の中に確立をしていくということが、私は第一に望ましいと思うのですよ。しかし、いままでの経済成長政策というものをながめたときに、先ほど申しましたような便宜的な手段というものがとられておったわけなんです。しかし、そのときに、すでに貿易の自由化とかあるいは資本の自由化という問題は、当然くるということは予想されたわけです。決して外国からしいられたもの、あるいは外国の圧力で資本の自由化がなされるわけじゃないと思うのです。それもあるかもしらぬけれども、安保条約の締結の中で経済協力というものが結ばれたときには、すでに、やがては資本の自由化をはかっていかなければならぬというものがあったのですから、その根本に教育行政というものが日本科学技術を進展さして、そして日本の経済の向上の基礎にならなければならぬというものがある以上は、そういうものの判断の中で、今日あるを予想して準備をしなければならなかったと思うのですよ。いまからだっておそくはない。当然のことで、やらなければならぬと思うのですが、そういう過去の反省というふうなものをしっかり持って、もっと一般行政の中に、文部大臣の発言というものをそういう意味で強く持っていただいて、そうして、これから日本の市場の中で外国資本と日本の資本か競争するわけなんです。しかもその背景には技術というものがある。その技術というものは、いままでのように簡単に日本に渡さない、利用させない、そういうものがあることは、私が申し上げるまでもないところであります。ことに、先ほど頭脳の流出の問題をおっしゃったのですが、とにかくこれは学術の面ですよ。科学技術とは違った面があるかもしれませんが、こういうことをやっておるから、いわゆる科学技術の格差というものも出てくると思うのです。いま大臣は、外国に比べれば少ない、長期にわたっては百四十四人だ、アメリカへ行く六千人の二・六%だ、こういうようにおっしゃっておりますが、日本科学者というものは大体少ないからなんですが、アメリカへイギリスから流出したものが千人あるといっております。西独からアメリカへ五百人行っておるといっております。そういうふうに、単に文部大臣は国際化というふうなことを言っておりますけれども、アメリカあたりはこういうふうに頭脳をまず自分が独占をする。そうして今度は、おそらく、私はこの点も大臣にお聞きしたいと思うのですが、資本の自由化の行なわれるときには日本へ持ってくる技術なんというものは、私は応用面だと思うのですよ。いわゆる大臣のおっしゃる応用面。そうして、研究面というものは、学術研究という面でこれは本国へ置く。だから、世界的な学術研究のマーケットというもの、センターというものはアメリカ本国へ置いて、そうして資本の自由化、貿易の自由化という大勢の中で応用面だけを各国に配分するというのが、私はアメリカの意図じゃないかと思うのです。そういうものの中に、いまからこの学術振興会を充実してやるんだとか、しかも、それも内容はともあれ、表面的には国際化を云々というふうな形でもって対処したら、そして科学技術の面がことしはだめだから来年から一年懸命やりますというふうなことで、ほんとうに日本の経済政策というものが十分であるかどうか、これが不完全な状態で、怠った状態でもって進むから、今度は、たくさんの政府の金をいわゆる設備投資というふうな形でもってどんどん出していかなければならぬような状態になるわけです。もっとそういう金を集め、学問研究、教育費に使うようなことをやることが、私は日本の大事な点ではないかと考えておるわけなんですが、この問題については時間がありませんから終わりまして、私は一般質問として、一体政府はどういう資本の自由化に対する対策を講じ、その中から文部行政にはどういうものをいま要望し、大臣はどういう決意でこれに対処しておるか、いろいろな面を見ればそれらしい形勢というものは見られないというところから、心配のあまり申し上げたわけであります。  そこで、いままで大臣文教行政という面で、私は予算の審議の中でも実はお伺いをしたいと思っておったのですが、その機会が得られずに今日になって、何か時期はずれのような気がいたしますが、先ほども申し上げておりますように、文部大臣のなさることは非常に重大であるという点から、少し大臣の所信をお伺いするのです。  まず、この「文部広報」というものを私はしょっちゅう拝見しておるのですが、これはどこを、だれを対象にして出しておるのか、まずそれからお伺いしたいと思うのです。
  82. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 「文部広報」の配付先でございますが、これはいまのところ学校、それから市町村の教育委員会、都道府県の教育委員会、そういうところが対象になっております。
  83. 小林信一

    小林委員 そうすると、対象は国民全体と考えても差しつかえないわけですか。
  84. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 私どもといたしましては、教育関係者全般を対象とするというふうな考え方で臨みたいと思っております。
  85. 小林信一

    小林委員 教育者全般ということでなくて、国民全体にこれは見てもらうということでも差しつかえないと私は判断をするわけですが、そうすれば、この広報の持っておる使命というものは、非常に文教行政に対する国民の信頼というものを考えての広報でなければならぬと私は思うんですよ。しかし、この広報を、特に昭和四十二年六月三日に出した広報を見るというと、何か文部省の狭い、何かにとらわれた気持ちというふうなものがあって、教育はこれは教師と教えられる者との間の心の接触である、お互いの人格を尊重するという中に教育というものは成果をあげていくという仕事をする省としては、何か狭い根性を持ったようなものに受け取れるのです。それがいろいろな文部行政とからんで、私には多少遺憾なものがあるんです。私のほうが偏見かもしれません。しかし、国民がそういう感情を持つとしたら、すなおにひとつ受け取っていただいて、そして大臣が、それはこうだというふうに理解をさしていただくような御答弁を私は願いたいと思うのです。大臣も、自民党には属しておっても、しかし、教育行政を行なう場合に決して自民党的な意識は持たずに、あくまでも政治的な中立を堅持されてなさっておられると思う。したがって、たとえ一教職員であろうとも、人格者としてその人の人格というものは尊重する、そういう気持ちは私は持たなければならぬと思うのですが、全部を申し上げている時間がありませんから、その二、三を拾い上げてみますが、これは大臣が、全国の教育委員長、教育長を集めての会議を開かれたときに所信を表明されたものであります。第一審に私はお尋ねしますが、こういう会議を持ったのは三十一年以来十一年、ぶりである、ここに私はちょっと遺憾なところがあるのですが、ほんとうに三十一年以来十一年ぶりであるか。その間は、こういうような全体的な会議を持って、いわゆる地方の意向を聞くような機会を持たなかったかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  86. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 新しい教育委員会が発足後、年に一回教育委員長と教育長の会議を開くということで招集をしたことがございます。その後、教育委員長連絡協議会、それから教育長の連絡協議会というものが合同で年に数M開いておりまして、その際に大臣はじめ文部省関係者が行ってお話をするという機会があったわけでございますが、その後、委員長会議と教育長会議の中におきまして、委員長が話を伺うことと教育長が話をする、あるいは討議をするというのが 緒では、どうも問題の取り上げ方等について、あるいは開くべき事項につきましても差があるので、これを別個にしたほうがいいじゃないかということが過去一年問題になっておりまして、それでは年に一回だけは文部省として、委員長会議と教育長会議を、予算が通ったようなときに文部省の予算説明とあわせ年度の課題を申し上げましょう、その他数回協議会自体の会合をお開きになる、その際には、もちろん求められれば関係者が行ってそのときどきの問題を御説明いたします。そういう形で、今回久しぶりにこの会合を年に一団は開くということで始めたわけでございます。
  87. 小林信一

    小林委員 わかりました。しかし、予算をとりにくるときに、予算を分けながら文部省の意向を伝えるというふうな文教政策のあり方でなくて、常に大ぜいの人の意見を聞くという、ことに学校の先生の意見は附く機会がないのが現状でありますので、私は特にこういう会議は主催してもらいたい、しかし陰に、裏に権力をひらめかして会議を開くような、そういう会議でないことをお願いしたいと思うのです。  そういう希望の中から、第一番に、勤務の適正化という問題を大臣が述べておられる。私たちは、こうやって国会で文部行政全般を知ろうとするのですが、こういう一つ法案だけに終始しまして、なかなか全般的なものを伺う機会がないので残念です。したがって、私はこういうものをたんねんに拝見をして、いま文部省は何をしているのかというふうな点を伺っておるわけなんですが、この適正化のお話の中に、まず第一番に、「ILO第八十七号条約の発効とこれに伴う改正国内法の施行によって新しい労使の関係が確立されたが、」こういうふうに述べられておるが、ほんとうに新しい労使の関係というものが確立しておるのか。それがどこでされておるのか。こう言う以上は、大臣は確信を持っておいでになると思うのですが、その点をお聞かせ願いたいと思うのです。
  88. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 教職員の組合に関しまして、ILO八十七号条約に伴う改正国内法によって幾つかのことがあらためて出てまいりました。はっきりしてまいりました。たとえば管理運営事項に関する事項がいわゆる職員団体との交渉事項でないこと、あるいはその交渉手続等について明定されたこと、また、当局のほうも職員団体の交渉に応ずべき地位が切らかにされたこと、そういうようなこと、かはっきりしてきたわけであります。したがいまして、従来職員団体と当局者との間に交渉をめぐりまして混乱があり、あるいは職員団体にいたしましても、交渉事項でないことにつきましての行動等のことによって混乱があったというのが、この国内法の改正に伴いまして、新たな出発点にきたという認識がわれわれはございます。そこで、そのことは管理者であります教育委員長会議等でもはっきりいたしまして、こういう新しい国内法の精神に基づいて、労使の関係を正しいものにしていくということを特に注意する必要があったからでございます。
  89. 小林信一

    小林委員 これは確立ということばを使ってありますが、一方的な判断ではないかというのが私の考え方であって、もっと労働組合の育成というようなことは、大臣のやっぱり使命だとも思うのですよ。  そういう点でこの問題は差しおきますが、その次、「昨年十月二十一日、各位の再三の警告にもかかわらず、日本教職員組合の指令に基づき、」ここでは日本教職員組合というのを認めておるのかどうか、そういう名前があるから使ってあるのかどうか、そこら辺も実はお聞きしたいのですが、「日本教職員組合の指令に基づき、二十九都道府県でいっせい休暇闘争が強行され、約十五万人に及ぶ教職員がこれに参加したことは、まことに遺憾なことである。」警告にもかかわらずこういうことをしたことは遺憾なことである。「このことでは、各教育委員会が厳正かつ適正な措置をとられたことに対して心から敬意を表するしだいである」、ここら辺に私は少し自分の気にさわるものがあるのですよ。ということは、教育委員に対しましては心から敬意を表する。一方においては、二十九都道府県の教員は一斉にかかる不届きな行為をしたというような印象になるのですが、そこで、一体この警告をする教育委員会の側にしましても、ほんとうに大臣が考えておるような気持ちでもって警告をしておったかどうか。教育委員の大方の人が、この物価高の中でもって、一般の労働者は高い賃金をもらうことができるけれども、人事院勧告がなされてもそれが政府では毎年毎年実施されずに、五月にさかのぼることができない。こういう点で先生方が何とか人事院勧告実施してもらいたい。もちろん大臣は、おそらくそれは表面であって、もっと政治的な闘争があったと言うかもしれません。しかし、あのときの問題点は、やっぱり何といっても人事院勧告を完全に実施しろという問題だったと思うのです。そういう点では教育委員会の人たちは同情していますよ。しかし、授業放棄されては困る。したがって、大臣が考えておるように、大臣のような気持ちでもって警告を発するのではなくて、うまくやってほしいというようなことが大方のところの教育委員考え方だと思う。それは私は問題にしません。問題にしないけれども、一面、片っ方に敬意を表する、一方は警告をしなければならないような不届きなことをした、こういうふうな言い方をするのですがこういう場合に、文教行政をやる大臣という立場からするならば、彼らがこういう行為をしなければならぬような点もわかる、わかるけれどもそれは違法である、こういうような一片の同情をする、何か理解をする、そういう一つの人格的な扱い方をするというものがこういう広報全体に欠けておって、何かしょっちゅう教員は敵であるかのような、そして教育委員会あるいは教育長というものは自分たちのほうの味方に引き入れて、そうして対立をする。少しこれはえげつないかもしれませんけれども、そういうような印象がここに出てくるわけです。いま申しましたような教育委員、地方の教育委員会、私はそういう事実をたくさんに見ているわけです。同情しているのです。もし大臣がこれに対して、そういう気持ちがするのだとおっしゃるなら私は聞きたいけれども、おそらく最近のうちに人事院勧告が出るでしょう。またこれに対して政府は同じような措置をとるということが予想されるわけなんです。大臣がもしそういう事実というものを考えるならば、ことしは絶対に、一人になっても人事院勧告があった以上は人事院勧告実施させる、実施しなければ私は閣僚を抜けるというくらいの決意があるかどうか。そういうふうなお気持ちがあってこういうような話をされるなら私は納骨できるけれども、ここに表面に貫かれたようなものであれば、六十万だが七十万の先生というものは、あなたとますます対立していくような形になる。そういう心配があるのですが、大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  90. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 教育委員会が日教組に対しまして同情を持っておったということでございますが、この人事院勧告の完全実施に対しまして、それをいたすべき筋であり、同情と申しますか、勧告を完全実施すべきであるということにつきましては、教育委員会のみらず、私自身が強くその希望を持っておるものでございます。でございますから、同情しておるということと違法の行為をできるだけしないように勧告したということとは別だと思います。ただいまお尋ねのように、ことしもまた人事院勧告が近く出るでございましょう。人事院勧告の時期につきまして、これは実際上の問題といたしまして、五月に調査して九月ころ勧告をして、それがまたさかのぼって実施するという関係には、いまの予算制度からいえば非常に矛盾とか困難な問題を含んでおります。しかし、私どもといたしましては、先般も、これは春闘の関係によりまする三公社五現業に対しまする政府の態度についても話し合いをしたのでございますが、やはり近く出る人事院勧告につきましても、その予算的措置はいかが困難であろうとも、私は、その際におきましても、政府は人事院勧告をできるだけ完全実施することが労使関係を正常な労使関係に持っていくゆえんではないかと思います。これは小林委員から申されるまでもなく、私としては、閣内においても今後強く主張してまいりたいという決意をしておるわけでございます。
  91. 小林信一

    小林委員 その決意をもし全国の先生方が知るなら、非常に感銘すると思うのです。しかし、残念ながら私には信頼できない。くやしかったら、ここでもってもう一ぺんやりますと言ってもらいたいと思うのですが、おそらく大臣だって、そうは言いますが、努力するということであって、去年くらいのことは絶対させないということは言えないと私は思うのです。やはり大臣が何らかそこに踏み切れないものを——踏み切る決意かあってこそ、私は日本の教育をよくするもとがあると思うのです。これからいろいろな問題を私は申し上げて、教育の基本というものがいま失われつつある、妙な問題から日教組と大臣が会わないというふうな問題から、だんだん教育の本質が失われていく。そうして、こういう一つの事象の問題についても、そういう思いやり、心がけが両方にあれば、私は日本の教育というものはもっと、いま問題になりましたような科学技術振興の問題にも、大きな成果をあげていくことができると思うのです。残念ながらそこのところに常にみぞがある。すぐ対立感情というものがうかがえるというふうに思われるのですが、大臣どうですか。
  92. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 先ほどちょっと申し上げましたが、ことしの三公社五現業の賃上げ闘争の問題で、仲裁裁定まで入ったわけでございますが、そのときにもやはり閣僚間で十分話し合いまして、この際労使関係を正常にするためには、当事者能力云々の問題もございますが、政府は誠意を持ってその問題解決に当たるべきだ、これは閣内におきまして全閣僚一致した意見でございました。その際に、やはり人事院の公務員に対しまする勧告につきましても、政府としては誠意を持ってこれはやるべきだというはっきりした空気が、今日閣内にあると私は確信をいたしております。でございますから、そういう方向に向かって私どもは十分努力するということを申し上げ、もちろん予算その他の関係がございまして、私がこれを確実にそうすると——私は閣僚の一人でありますけれども、内閣全体としてこれを決意するかどうかは今日明言をいたしませんけれども、私は全力を注いで、ことしはひとつ、いままでの途中で勧告をはしょってやるという考え方をやめていくべきときがきておるのじゃなかろうか、それに対して全力を注いでやる、こういう気持ちでございます。
  93. 小林信一

    小林委員 大臣、やはり私が念を押すように、できるだけ努力、私は一閣僚であるというようなことに終わってしまうのですが、もっとそれ以上のものをこの際大臣が出していただくことが、私は、文部省学校の先生たちとの間のみぞを除くもとになるのじゃないかと思うのです。たとえいま先生が聞いておらなくても、こういうふうな何か一方的な印象を受けるような言動というものは、私はそういう中から抜いていけるのじゃないかと思うのですが、それともう一つ大事なことは、大臣は、一般の労働賃金がどうなるから、当然ことしは中途はんぱなことをせずに、人事院勧告を完全実施するようにしていくことができるだろう、あるいはいかなければいけないというふうなお考えですが、そこに問題があると思うのですよ。これは制度ですよ。ああいう人たちからはスト権を奪っておる。その代償として人事院勧告、人事院制度というものがあるわけです。それが完全に実施されないということは、制度を完全に生かしておらないということで、これは政治の大きな責任ではないですか。そういう意味からも、私はことしは生かすのだ。これは去年の十月二十一日の新聞です。私ははからずもとっておいたのですが、十月二十一日の各新聞の社説では、ストをやることについてはみんな反対です。どの新聞もみな反対です。しかし、人事院勧告実施しない政府に対しては、きびしく批判しておることは事実ですよ。そういうものを父兄が聞き、あるいは教育委員会が聞き、そうして文部省のほうからその一〇・二一の闘争は不届きである、厳重に皆さんがこれを監督しなさいというようなことを言ったって、やはり下のほうは、大臣の言うような気持ちを持って先生たちと接しておりませんよ。そういう実情というものを——私は、ただ人事院勧告がこれから出るからということでなくて、教育行政の基本的な腹がまえの中に、私は持っていただかなければならないのじゃないかと思うのです。時間がきましたから、また私は時間をいただこうと思うのですが、ついでに大臣にお聞きしておきますが、大臣の所信表明の中で、教職員の資質の向上、処遇の問題で努力をするというようなことがどこかに書かれてありました。口先だけでは私はだめだと思うのです。やはりやってもらわなければだめだと思うのですが、資質の向上の問題で私は先日こういうことを聞きました。実験学校というもの、これは一つ政府の方針というのか、これがあってなされるわけですね。これは非常に大事なことでしょう。資質の向上で一番大事な点だと思うのです。ところが、これが一つの県に十四校指定された。これは文部省が直接じゃないでしょうが、文部省の意図に従った県の計画でしょう、ところが、その一つ学校に実験校としての補助金が二万円です。そうして一年じゅう、先生たちはその発表のために準備をし、研究を積んで、そして公開をやるわけです。そして先生方が県下から集まる。各種の問題について研究されますから、集まるのです。先生方がそこへ行くための旅費なんというものも、何か多分に文部省はくれておると思いますが、そんなところへ行く旅費なんというものはないのが実情です。もしあるというならば、言っていただきたいと思うのです。その二万円は実際かかる費用のどれくらいのものに当たるか。大体二、三十万円はかかっているらしいのです。資質の向上をするというけれども、文部省が金を出して、責任を持ってやる資質向上というようなものがないじゃないか。それから処遇をよくする、こういうふうなお話がありますが、いま全国的に宿日直の問題でもって先生方が問題を起こしております。大体どこの県でも、そういう要求を、県段階あるいは地教委の段階でもってやっていると思うのですが、実際大臣は御承知ですか。普通の学校の先生が、宿直は一週間のうちに何日ぐらいあるか、知っていますか。こういう問題、これをお答え願いたいと思います。こういう週過勤務の問題というふうなことを、努力はしておると言うかもしれません。財政が伴う問題だから、不如意だから十分できないとは言うかもしれぬけれども、実際資質の向上をはかり、処遇の改善をやるというようなことは私はそんなにりっぱなことばで言えないはずだと思うのですよ。この点についてひとつ御答弁願います。
  94. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 当然、資質の向上をはかり、待遇改善をはかるのは、これは私どもの大きな責任だと思います。でございますから、もちろん不十分であろうかと思いますが、その努力目標はあくまで私どもは強く堅持してまいりたい。それで、それに対します努力は続けてまいっておるつもりでございます。いま申されました宿日直の問題、超過勤務の問題につきましては、文部省として昨年一カ年この勤務の状況の態様の調査をいたしました。これに基づきまして、私どもは責任を持ってこれを解決いたしたいといろいろ考えておるのでございまして、その結果どういう形でどういうふうにこれをいたすかということは、目下検討中でございますから、結論については申し上げることはできませんけれども、これは、必ず私は自分で解決をしたいと決意をいたしておるわけでございます。
  95. 小林信一

    小林委員 大体どれくらい宿直をやるか……。
  96. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 その点も、正確に全国どういう分布になっておるかという点は、いま、ただいま大臣が申されました調査の集計中でございます。ただ、小規模学校にまいりますと非常にひんぱんであるという実態がございますから、その点だけは何とか早く、それぞれの市町村の段階でくふうがあればやってもらいたいということは、これはいつか当委員会での御質問がありましたので、その点についての部分的な指導はいたしておりますけれども、全国で何回行なわれて、そしてまた、先生が宿直をしない場合にどういう形で行なわれている態様があるか等、正確なことは、調査によってこれを現在分析を始めておるところでございますので、その結果が出ましたら、全国の態様がはっきりいたすと思います。
  97. 小林信一

    小林委員 これの実態調査中であるから、その結果を待って結論を得たい。さっきの大臣のような必ず何とかしますと言うなら、局長の答弁は、これは各局長がそうですが、ほかの各省の局長の答弁と同じようなものでいいというふうにお考えになっておったらだめですよ。やっぱり私は、真剣に、感動させるようなそういうものを持たなければ——ほんとうにあなた方、学校の先生にそういうことを要求しているのだ。だから、倫理綱領の問題もそういう中からあなた方が理論を出すわけですが、もっと誠意を持ってやらなければいかぬと思うのです。私がいま知っている小規模学校は、大体八人の先生たちの学校が多いのですが、そういう学校の先生の中には、男の先生が三人ぐらいですね、校長、教頭というものを大体抜くわけですから。あるところは二人ぐらいで、しかたがないから校長さんも教頭さんも宿直をやるわけです。そうすると、大体一年のうち三分の一は学校に泊まるわけですよ。それも学校に泊って、安眠していればいいのですが、責任を持っているわけなんです。子供たちと離れ、奥さんとも離れて宿直をやっている。そういう人たちの、これは長い間の問題ですよ。調査中である、調査が完了したら今度こそ必ずやります。そんなことを何ぼ言っておってもだめなんです。そういうところに何か感動させるような具体的なもの、しっかりとした仕事を私はしてもらいたいと思う。そういうことを、こういうものに書くなら幾らでも書けますわ、しゃべれますわ。しかし、そこからは教育は生まれてこないわけですよ。大臣という、あるいは次官という一つ仕事を完了することはできるかもしれませんけれども、私は、この一片の紙は人を動かす紙でなければならぬと思うのです。  旅費の問題をお答え願えぬのですが、旅費の問題をひとつ……。
  98. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 各県の旅費の配分問題は、たとえば一般的な普通旅費、それから研修旅費、赴任旅費、それぞれのワクに分けまして、そうして積算をしているのが実態でございます。文部省といたしましては、これは実績負担でございますから、旅費の半額の負担をするというたてまえを、現在義務教育についてはとっておるわけであります。しかし、文部省が予算を計上いたします場合に、いかなる単価でやるかということが、実際は府県の予算の旅費の組み方に影響いたしますので、年々一人当たりの単価の増額ということは努力をいたしております。ことしも実は一般のものにつきましては単価の是正をしなかったのでございますけれども、ことしは教員についてはとにかく上げてくれということで、若干単価増をはかりました。しかし、これももちろん十分ではございませんので、逐年その増額に努力してまいりたい、かように考えております。
  99. 小林信一

    小林委員 こういう点を先生たちの代表というものと——私は日教組と言わぬから、何かもっと先生たちの代表と会って、そういう人たちの声を聞くということが私は大事だと思う。教育長や教育委員ではこれで通る。そして、処遇やあるいは資質の向上をはかると言えば済むのですが、これが先生と直接大臣が会えば、こういう問題が出てきて、もっと切実なものをあなたたちは感じて、そのうちに、そのうちになんということなく、どんどんと仕事を進めていかなければならぬと思うのです。  いまの旅費の問題、九千円が九千五百円にことしはなっていますね。これは各府県ともそれに従ってやっていますわ、そうでしょう。その半額を各府県が出すわけでしょう。私がその内容を聞いたら、まず第一番に研修旅費を引いてしまう。そして今度は僻地へ行く人たちの旅費をそれから差し引く。大体研修旅費というのは膨大なものらしいのですね。それらを引くと、あとへ残るのはせいぜい二千円かそこらだそうです。その二千円を、今度は多く出張する人があるというようなことから配分されるというと、ほんとうにその使い道というものは実費がないのだそうですね。もちろん、一般官吏がもらうような正当旅費なんというものはもらえない。その日の弁当はもちろんですが、金を出して食べなければならぬ。そういう事情に置かれているのが旅費なんですよ。それは即時何とかするというふうな御答弁なんですが、もっと旅費の問題等も、せめて旅費ぐらいは正当なものが支給されるような御配慮があったらどうかと思うのです。そういうものは、私は、先生たちとの直接の話し合いの中からでなければ出てこないと思うのです。  次に、こういう問題があります。「特に付言して」と文部大臣の話の中にあるのですが、やはりこれも教育の正常化の問題ですが、「わたくしどもの任務として現場の先生方の意見・要望」というものを、私どもは一生懸命聞こうとしておるというふうにここに書いてある。できるなら、どんな意見を掌握しておるか、どんな要望を掌握しておるか、お聞きしたいのですよ。しかし、時間がありませんし、おそらく、だれかを通した要望であって、なまなましい要望なんというものは聞いてないはずです。  そこで、私は申し上げたいのですが、この意見という問題、先ほど教育委員会の問題が出ました。あなた方が敬意を表する教育委員会、よく警告をしてくれた、十月二十一日よくやったといってほめた教育委員会、この教育委員会については、大臣、問題を持っておりませんか。学校の先生方が最も尊敬する教育委員会もあるかしれませんよ。しかし、大体において、最近の地方教育委員会というふうなものはどういう状況にあるか、この点くらいは、大臣も先生たちの感じておるものをお感じになっておると思うのです。教育委員会に対する批判というものがあったら、大臣もひとつ述べていただきたいと思うのです。——なければいいです。敬意を表しているのだから、ないかもしらぬ。しかし、敬意を表したからといって、全部が全部いいという御判断じゃないと思うのです。中には問題があると思うのですが、共通してあるものは、教育委員会法が改正されるときに何と言ったか、文部省の人たちは言ったはずです。任命制になって、これは政治的な色彩というものが濃くなるのだ。私どもはそういう点を非常に強く主張したのです。あるいは、いわゆる市町村長あるいは知事、そういうものの勢力に教育行政というものが握られるおそれがあるということで、私どもは任命制に反対したわけですけれども、しかし、文部省は、そういうことは絶対にありません、はっきりこう言ったのですが、最近どうです。そういう傾向は依然として文部省の言うとおりに保たれておりますか。
  100. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 教育委員会が任命制に切りかわるときに、従来の選挙によって地位につくよりは、より政治的中立を確保するというのが改正法の精神でございました。競走といたしましても、積極的な政治活動を禁ずるか、あるい政党その他の政治団体の役員の地位にないとか、あるいは同一政党に所属する限界を設けるとかいうようなことをいたしておりますから、私は、政治的な中立というのがより教育委員会として前進をしている、かように考えておるわけでございます。
  101. 小林信一

    小林委員 それは、あなたは本心で言っているのですか。そんな型どおりのことを言っているからだめなんだ。私の山梨県ては教育委員長が何をしたか知っていますか。
  102. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 山梨県の教育委員長であった成沢弘次氏が、ことしの一月十九日に起きた県知事選にかかる公職選挙法違反事件——成沢氏は十一月二十二日に退職されたのでありますが、その公職選挙法違反事件の関係の買収容疑で送検されているという事実は知っています。
  103. 小林信一

    小林委員 その次の委員長はどうですか。
  104. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 その次の委員長のことは存じません。
  105. 小林信一

    小林委員 知っていてもあなた方は言われないのです。あなた方の方向は、どっちを向いているかということがそれでわかる。だから敬意を表してしまうのですが、その次の委員長も、この知事が選挙に立つ以上私は知事を応援しなければ申しわけないといって、教育委員長をまたやめた。最初の委員長委員長をやめて選挙に出て、知事の選挙の応援をして、そして選挙が済むというとまた教育委員長になる。そしてまた今度やめて、いまのような選挙違反を犯したわけです。しかし、不起訴になりましたがね。次の委員長が、私も知事がかわいそうだから応援をするといって抜ける。そういう事実があるということをあなた方も知っているはずだ。そういうような結果になっているのが今日の教育委員会ですよ。さもなくても大体市町村長の言うなりになる教育委員会、あるいは、さもなければそれと対立する教育委員会というような状況になっているわけです。ところが、おっしゃるようなそういううそをぬけぬけとこの席で言って、そんなことでは局長だといわれないと私は思うのだ。もっとまじめに、日本全体の教育委員あり方というものを検討して、改正するならば改正をしなければ——この人たちは、いま教育行政をつかさどっているのでしょう。あなた方が幾らむずかしいことを青ったからといったって、この人たちが法律どおりの、制度のとおりの人間が選ばれていなければ何にもならない。だから、そう言っては先生方に失礼ですが、最近先生方が、その人たちのごきげんを伺っておらなければ自分の身が安全ではない。地教委でいま持っている権限、やっている仕事などというものは人事権だけですよ。あとは、教育行政文部省から指令で出て、一〇・二一闘争に参画するような人間はマークしろとか、そんなようなことしかしていない。しかし、文部省の言うことを聞くから、りっぱな教育委員がそろっているとあなたはおっしゃるかもしれないが、そんなものではないと私は思うのです。(「そろそろ時間だよ」と呼ぶ者あり)もし時間がなければ、次にやりますから……。
  106. 床次徳二

    床次委員長 一時三十分には大臣が退席を予定しておりますから、御協力ください。
  107. 小林信一

    小林委員 そういう点で、申しわけないですが、大臣に次にお聞きしようと思うのです。  いまのような問題を、私はまだいろいろ事実をあげて申し上げたいのです。教科書の問題、採択権を全然先生たちに関係させない、その教科書がどんな形でできてくるか、先生たちは非常に不満を持っておりますよ。このままほうっておいたらたいへんなことだ。そういうことについて、先生たちの要望あるいは意見というものを聞くような形になってきているという。そのあとのほうに日教組の問題が出してある。大臣はこうおっしゃっている。「日教組も昔日のようなことはないと思う。」昔のようなことはないと思うというのです。「いろいろな点で改善が行なわれている。もう一歩の努力によって教育の正常化ができるのではないかと思う。」こういうふうに書いてある。私は、この全部を大臣と話をする時間がありませんから申しませんが、一つだけお答え願いたいと思う。「もう一歩の努力」というのは、だれが努力するのですか。日教組ですか、先生ですか、文部省ですか。
  108. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 私がそこで申しておりますのは、私としましては日教組に対する態度——私は、現在日教組の幹部とまだ話し合いを始めておりません。しかし、私は、できるだけ早く日教組と会えるような状態になることを念願いたしておるということを、しばしば申し上げておるのでございます。それに対しましては、私としまして、日教なり全教師の方々のために、誠意を持って文部大臣としての責任を果たすように努力してまいるのでございますから、日教組としてもひとつ誠意を持ってそのあり方につきまして努力してほしい、こういう希望を申し上げているわけでございます。私は両者の考え方が一致しないとは考えておりません。私は、もう近く両者が、必ずお互いに信頼感を取り返してくるということを確信いたしておるのでございます。
  109. 小林信一

    小林委員 先ごろ大臣は、本会議で答弁しましたね、私は云々ということで。何か最初のほうは、文部省というのは関係ないんだ、県単位で教員組合とは折衝するものであって、全国組織というものは、会々というようなことを言いながら、今度は、前の大臣が云々でまことに不明瞭な態度をとられたのですが、大臣のその気持ちは私もわかります。大臣がそういう熱意を持っておることはわかるけれども、もう一歩の努力というのはやはり大臣自身がすることであって、私は、それには大臣が命をかけていいと思うのですよ。そうして、年じゅう遠くから倫理綱領云々だなんということを言っておらずに、ほんとうにあの人たちを説得するような、そういう努力こそ、予算をたくさんつくるよりも、いろいろな法律案を出すよりも、文教行政ではそれができれば、私は一番りっぱな教育行教をやったと言ってもいいと思うのです。そういう中から先生方全体と常に話し合い、意見を固く、あるいはその人たちの要望を聞く、そういう中で具体的な政策を立てていくということができるのじゃないかと思うのです。大臣、非常にお忙しいところをまことに申しわけございませんから、これでもって終わらしていただきます。大臣は札幌へおいでになるそうですから、どうぞ行ってください。  委員長、どうしましょうか。私はまだ文部行政についての一般質問がたくさんあるのですけれども……。
  110. 床次徳二

    床次委員長 きょうはその程度にしていただいて、また適当な時期にしてください。
  111. 小林信一

    小林委員 それではそのようにお取り計らい願うこととして、きょうはこの程度にいたしておきます。
  112. 床次徳二

    床次委員長 次回は、来たる二十八日、水曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十二分散会