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天城政府委員 振興会の業務といたしまして、
法案の二十条に一号から六号まで列挙いたしております。この各号につきまして御
説明申し上げるわけでございますが、たいへん長くなりますので、ごく特徴的な
事業を申し上げてみたいと思っております。
第一の「共同して行なわれる
学術の
研究に関し、
研究者に
研究活動を行なうために必要な資金を支給すること。」これは従来からも
学術振興会の行なっている
仕事でございますが、通称流動
研究員制度という形で行なっております。これは学問の境界、領域ですとか、あるいは諸
外国に比べてまだ立ちおくれている分野というような
研究を集中的に
振興させるために、
学者がそれぞれの勤務
機関あるいは勤務地を離れまして、特定の
研究機関に一年なら一年集まって
共同研究ができるようなシステムでございます。その場合には、この
振興会から特に
共同研究に参加する場合の旅費、滞在費、
研究費を応援するということで、四十二年度の
財団のベースで考えております段階でも、ことしは三十六人ほどの流動
研究員制度の
実施を予定しているわけでございます。この辺が
一つの特徴のある
仕事だと思っております。
それから第二は、いわゆる産学協同でございますが、産学協同ということばがときどきいろいろな
意味にとられるのでございますが、ここで考えておりますのは、
学術の応用に関します
共同研究に参加する
研究者に対しまして
研究費を支給し、あるいは
共同研究を促進するために両者のあっせんを行なうというようなことを
中心に考えているわけでありまして、実は学振の従来からの
仕事に最も特色あるものがこれでございます。
昭和八年以来、学界と産業界の
研究者をもって組織する
各種の
研究委員会をあっせんしてつくてまいってきておりますが、現在でも
研究委員会は三十ございますし、
委員は千五、六百人、学振のあっせんによって
共同研究をいたしておるわけであります。新しい
振興会は、この
仕事を引き続いて積極的に行なってまいりたいと考えております。
第三号の
学術の国際
協力の面でございますが、これは最近非常に
国際協力事業が多くなってまいりまして、国が直接いたしますと、相手方のいろいろな
機関の
性格とかあるいは
事業の
運営等について弾力的にいかない場合がございますので、最近も新しい
国際協力事業を学振の委託
事業として行なってきております。大きなものとしては、三十七年から行なっております
日米科学協力研究事業でございますが、これはこの
共同研究に参加する
日本人
研究者の
研究費、
研究旅費等はすべて学振を通じて支出したわけでございますし、また、その他の国際
事業を現在行なっている例を申し上げますと、宇宙線の
研究、これはインド、ボリビア宇宙線の
研究で非常に適当な
研究の場所でございまして、
関係の国の
研究者と宇宙線の
研究をいたしております。そのための経費をここから出しております。また海洋生物
研究、これはイタリアのナポリの臨海実験場が世界的に有名な
機関でありますが、ここにおきます海洋生物
研究について、
日本の
学者の参加について応援をいたしております。また地域
研究で、現在は中近東からアフリカのほうまで及んでおりまして、現在テヘランとナイロビに断定的な基地を設けて地域
研究が行なわれておりますが、これらの経費も学振から
補助をいたしております。
そのほか、人の交流が国際
協力で非常に大きな問題になっておりまして、
外国人の
研究者を
日本に呼ぶ、これは非常に高度の
研究者が短期間来る場合と、それから中堅の
学者が長期間滞在するという場合がございます。われわれは、
外国人流動
研究員制度を、先ほど申した内地の流動
研究員制度と同じように、
外国人に対しても流動
研究員制度を現在行なっておりますし、また
外国人の
研究者に対する
フェローシップ、
外国人
奨学金制度を行なっておりますが、これは国内に対吊るのと同じような
考え方で、国際
協力の一環として行なっておるわけでございます。
それから第四号は、「優秀な
学術の
研究者の育成に関し、
研究者に
研究を
奨励するための資金を支給する」、これは単なる育英会で行なっておる奨学資金とは違いまして、主として
大学院の博士課程を修了して非常に将来性のある、現時点におきましても活動的な若い
研究者たち、この
研究者がなおその
研究を続けていけるようにという
意味での
研究費と、それからある
意味では給与に該当します
研究奨励金、現在二万五千円の
研究奨励金でありますが、それを支給するというやり方をいたしております。大体毎年官名くらいこの
奨励研究員制度で採用しておりますが、これが第四号で考えております
事業のおもなものでございます。
それから五番目の
学術情報の調査あるいは提供、
研究制度の普及。
学術情報ということが
学術振興において非常に大きな
仕事になってきておりまして、国際的にも国内的にも、いろいろな分野から
日本の
学術情報の円滑な
運営ということが期待されております。
御存じのとおり、
科学技術の情報の問題に関しましては
科学技術庁の所管に情報
センターがございますが、ここで考えておりますことは、むしろいろいろな分野で行なわれております
学術の
実態を、
学術情報資料の案内所と申しますか、あるいは交通整理と申しますか、ここへ来るとどこにどういう情報資料があるということがわかるような機能を果たしていきたい。最近ユネスコあるいは日米
会議等からも、
日本の文献の国際交流
センターをつくってほしいとか、あるいは
日本の文献翻訳、クリアリングハウスの
設置というような要望も出ておりますので、それらを受けまして学振の新しい
仕事に盛っていきたいと考えております。現在は、まだこういう
仕事は活発に行なっておるわけではございません。そのほか
学術普及講座ですとか、専門
学術講演会、あるいは
学術図書、雑誌の刊行等、これらのことが、この結果を利用に供するとか、あるいは
研究成果を普及するという
仕事に入ってくると思います。現在「
学術月報」というのを
財団で発行しておりまして、これは二十三年から続けておりますが、毎月千八百部の
学術情報の
内容を盛った雑誌を刊行いたしております。これらの
仕事を今後も拡大して続けていく、このように考えておるわけでございます。