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1967-06-14 第55回国会 衆議院 文教委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十四日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 久保田藤麿君 理事 坂田 道太君    理事 中村庸一郎君 理事 西岡 武夫君    理事 八木 徹雄君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       青木 正久君    菊池 義郎君       久野 忠治君    河野 洋平君       菅波  茂君    竹下  登君       渡海元三郎君    葉梨 信行君       広川シズエ君   三ツ林弥太郎君       渡辺  肇君    大原  亨君       唐橋  東君    川村 継義君       小松  幹君    兒玉 末男君       斉藤 正男君    平等 文成君       三木 喜夫君    山崎 始男君       吉田 賢一君    有島 重武君       山田 太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 剱木 亨弘君  出席政府委員         文部政務次官  谷川 和穗君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         文部省大学学術         局長      天城  勲君         文部省管理局長 宮地  茂君  委員外出席者         外務省北米局北         米課長     枝村 純郎君         外務省国際連合         局軍縮室長   沢井 昭之君         文部省初等中等         教育局財務課長 岩田 俊一君         文部省大学学術         局審議官    岡野  澄君         厚生省公衆衛生         局企画課長   宮田 千秋君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 六月十四日  委員稻葉修君、中村寅太君、南條徳男君、小松  幹君及び山崎始男辞任につき、その補欠とし  て青木正久君、菅波茂君、渡海元三郎君、大原  亨君及び兒玉末男君が議長指名委員選任  された。 同日  委員青木正久君、菅波茂君、渡海元三郎君、大  原亨君及び兒玉末男辞任につき、その補欠と  して稻葉修君、中村寅太君、南條徳男君、小松  幹君及び山崎始男君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 六月九日  国立及び公立学校の教員に対する研修手当の  支給に関する法律案鈴木力君外一名提出、参  法第三号)(予) 同月十四日  札幌オリンピック冬季大会準備等のために必  要な特別措置に関する法律案内閣提出第一二  四号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数  の標準等に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第八九号) 文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 私は、本日は、これは文部省では主として大学学術局関係したことですが、昭和二十年広島長崎原爆が投下されました直後に撮影をされました、いわゆる世上まぼろしの原爆記録映画、こういうふうにいわれておりますが、この問題に関係をいたしまして、これから逐次御質問をいたしたいと思うのであります。  大臣の時間の都合もございますが、このまぼろしの原爆記録映画返還問題は、今日までも非常に国民的な関心でありました。あらゆるところで議論をされ、あるいは返還についての要求があったのでございますが、最近に至りまして、五月の中旬にAP電報によりまして、この原爆フィルムアメリカの国務省に保管をされておる、こういうことが伝わってまいりました。そしていろいろな点を総合いたしますと、返還についての意思もある、こういうことであります。これがなぜ大きな国民的な関心事であるかといいますと、これは第一には、この十九巻プラスアルファ映画記録は、日本の当時の広島長崎のなまなましい被爆の実相をフィルムにおさめたものでありまして、日本は唯一の原爆被爆国である、こういうことからも当然に、平和や軍縮やあるいは被爆者の援護、そういう問題について強い熱意を持つ者がすべて関心を持つ問題であります。  あるいは第二の問題としては、原爆が落ちた当時は、七十年も草もはえぬだろう、こういうふうにいわれておりましたにもかかわらず、後に申し上げるように、百人以上の学者を動員いたしまして、当時文部省文部省予算をも使い、当時の戦争中の学術団体も動員いたしまして調査をし、それと並行して映画撮影したということです。  第三には、この記録映画は、いろいろ調査をしてみますと、日本人の手によって着手され、しかもいろいろGHQとの関係があって没収その他がありますが、ともかくも日本人の手によってでき上がった映画であるということ。  それから第四には、申し上げたようにフィルム所在が最近はっきりしたということ、あるいはアメリカ返還意思があるということを中心といたしまして関心が高まってきた。特に、これらの問題と関係をいたしまして、返還されました際にこのフィルムがどのように管理運営されるであろうか、こういう問題につきましては強い関心があるわけであります。したがって、私は、国民のだれもが納得できるような、そういう理解措置をとってもらいたいという気持ちがございますから、これにつきましては逐次、当時関係の深い岡野審議官等もおられますが、岡野さんはこのことに関しては歴史的な人物でありまして、あとお話しいただきたいのですが、おそらく学術調査団の事務的な責任者等もやっておられたのでありまして、その間の事情に詳しいのですから、私はこれが国民の納得のいく姿において解決をしてもらいたいという気持ちできようは第一段階の質問をいたしたい、こういうふうに思います。  そこで、国務大臣としてあるいは文部大臣といたしまして、私は時間の関係等もありますからまず文部大臣お尋ねしたいのです。あと外務省その他にも逐次お聞きをいたしますけれども、国会におきましても、しばしば原爆白書の問題、実態調査の問題に関係いたしまして、社会労働委員会予算委員会分科会議論されたことがございます。しかし、言うなればこれは、英文タイトルにありますように学術的な一つの産物でありますから、したがって、これは、以上私が三、四点にわたりまして申し上げたような観点からも重大な関心があるという、そういう角度から、文部大臣は、外務省もお見えになっておりますが、外務大臣その他とも十分連絡をとっていただいて、このような歴史的な遺産である原爆フィルム、言うなれば国民的な遺産でもあるわけですが、人類の平和と幸福のために役立てるような、そういう意味において非常に重要なそういうものであるフィルムについて、アメリカに対しまして、私は外務省を通じて正式に返還方についてひとつ意思表示をしてもらいたい。あとでまたこまかな点は質疑応答いたしたいと思うのですが、そういう点について、ひとつ大臣としての御所見を明らかにしていただきたい。
  4. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 本映画は、いまるるお述べになりましたように、長崎被爆直後におきまして仁科博士等の御主張によりまして、学者を総動員しまして原爆学術的な調査をいたしました。これに対しまして文部省といたしましては、その調査研究に対しまして科学研究上の支持をずっと三年間にわたって行なってまいりました。その研究の過程におきましてフィルム撮影をした。このフィルムは、私ども日本人としては、その当時の人以外はまだ知らないわけでございますが、きわめて学術上貴重な資料であると考えておるのでございます。いま米国政府におきましても返還意思ありということを伝えられておるのでございますが、私どもは、やはりお尋ねにございましたように、早急にその返還外務省を通じまして要求をいたす考えでございます。
  5. 大原亨

    大原委員 逐次質問をいたしてまいりますが、私が四点にわたりまして国民的な関心事であるということについて申し上げたわけでありますが、特にこれが返ってまいりましてからどのように管理され、運営されるか、こういう問題はきわめて関心のある問題であります。したがって、こまかな問題はともかくといたしまして、概括的に当時の模様と、それから今後これが影響があるであろうと思われる点について質問いたしたいのですが、当時、文部省が、原爆の直後予算を出しまして日本学術振興会調査を委嘱し、あるいは理研仁科博士その他各界の専門家を動員されてやられたと思うわけです。その調査報告が「原子爆弾災害調査報告集」ということでここに二つ、これは国会図書館にありましたが、あるわけです。これを見ますと、最近厚生省が三千数百万円かけていろいろと統計上調査をやっておりますが、それとは比較にならない特異な、なまなましい事実をこれは集約をしております。全部じゃございませんけれども。当時、原爆直後、当時の文部省が、そういう虚脱状況敗戦のとき——敗戦のときじゃありませんが、六日、九日に原爆を受けまして十五日の敗戦ですから、その原爆を受けました直後からこういう調査をしたということは非常に記録されるべきことだと思うのです。この調査をする学術振興会その他学者文化人調査団の派遣につきましてどのような体制で当時やられたのか、あるいはそれと並行して、いわゆる原爆記録映画をとるという企画をされたのか、当時の模様につきましてひとつ御承知でございましたならば、その点を明らかにしていただきたい。これはやはり、原爆フィルム国民的遺産としての私ども考え方の前提となる問題であると思うからお尋ねをするわけであります。
  6. 岡野澄

    岡野説明員 ただいま大原先生からお話があったような事情でございますが、もう少し詳しく申し上げますと、広島長崎原爆が投ぜられて、当時の関係者はまず救護に全力をあげたわけでございますが、同時に災害調査も行なわれたのでございます。ところが、その災害が規模、内容ともにはなはだ甚大であることが刻々わかりましたので、この経験は日本だけしかない、これを学問的に観察調査し、記録しておくことが日本科学者の任務であるというふうな機運が一面に出てまいりました。そういう学界の動きにこたえまして、文部省では文部省所管学術研究会議——これは先生学術振興会とおっしゃいましたが、学術研究会議でございます。学術研究会議科学研究費を交付いたしましてこの調査研究に当たらせることにいたしました。そのために、昭和二十年九月十四日に学術研究会議、これはいまの学術会議の前身に当たるものとお思いいただければおわかりと思いますが、官立の団体でございます。官制をもって組織された団体でございますが、その学術研究会議原子爆弾災害調査特別委員会という特別委員会が設けられまして、当時の学術研究会議の会長である東京大学名誉教授林春雄博士みずからがその委員長になりまして、九つ分科会——第一は物理学、化学、地学、第二は生物学、第三が機械金属、第四が電力、通信、第五が土木、建築、第六が医学、第七が農学、水産、第八が林学、第九が獣医学畜産学、こういうふうな九つ分科会を設けて、それに内務省あるいは陸海軍厚生省等関係各省の援助も受けまして、それぞれ現地におもむきまして専門領域における調査研究に従事するとともに、それが総合的に研究成果を得るようにつとめたわけでございます。なお、二十年九月には米軍原子爆弾災害調査団も来日しておりまして、わが国と共同調査を行ないたいというような希望もございまして、一面においては、医学方面では日本独自の研究とともに、米国との共同研究も行なわれたのでございます。  この学術研究会議調査研究は三年間継続いたしまして、そのため文部省が支出した研究費は、二十年度が五十五万八千円、二十一年度が二十五万円、二十二年度が七十万円、合計百五十万八千円でございました。この学術研究会議原子爆弾災害調査特別委員会調査報告は、ただいまお持ちのように、昭和二十六年、原子爆弾災害調査報告書総括編というのが出ました。二十八年に、原子爆弾災害調査報告書第一分冊及び第二分冊というのが、これは財団法人日本学術振興会から刊行されたという経過でございます。  なお、映画のことでございますが、この調査において、研究者指導のもとに、研究資料にするために学術映画撮影現地において行なわれたのでございます。これはおそらく——私その辺詳しくつまびらかではございませんが、おそらく当時の仁科博士の着想と申しますか、そういうものによってこういう企画が生まれたように推察いたすわけでございます。その後の経過は、ただいまお話がございましたように、二十一年の五月米軍によって米国に持ち去られたという事情でございます。
  7. 大原亨

    大原委員 きょうは、総合的な学術調査団百名以上の一流のスタッフを派遣されたその事情についてお聞きしたのですが、それといわゆる原爆記録映画撮影との関係について、もうちょっと私はお聞きしたい点がある。というのは、そのことに関連して質問するのですが、一つ質問は、当時岡野審議官は何でこの問題に関係しておられたか、そういうことが一つと、それからここに、当時のプロデューサーをしておった加納竜一という人と水野肇という人が「ヒロシマ二十年」というのを書いている。それにあるのですが、「この映画は、理化学研究所仁科芳雄博士監修をうけ、物理編仁科博士生物編中山弘美博士医学編都築正男博士が解説を校閲した。タイトル」云々、こういうふうに書いてございます。学術調査団との関係、特に医学の面においては専門的なこと、初めての放射能等関係もあって、こういう点も特に取り上げられておるのですが、監修というふうにまで書いてございます。調査団は、原爆フィルムの作製については相当積極的に協力をされておるというふうに、いろいろな点で私は理解をするわけですが、この二点についてひとつお答えをいただきたい。
  8. 岡野澄

    岡野説明員 私、当時文部省事務官であると同時に、学術研究会議文部省所管の機関でございまして、学術研究会議併任事務官というようなことを仰せつかっておりました関係で、このお世話をしたわけでございます。ただし、私は、主として学者研究者方々現地において、御承知のように当時非常に災害が多く、水害が多いというような状態のもとでございましたので、私は一番の先発隊として実は広見、長崎に参りまして、そういう研究者の方に御不自由をかけないためのあっせん役お世話役というようなことでございました。したがいまして、映画調査団との関係について明確な記憶は、現地におりましたので、それはむしろ中央においてそういうことが行なわれたというふうに考えられるので、私は明快な御答弁ができかねるのでございます。また仁科博士あるいは都築博士もすでに御他界になっておるというような事情でございまして、できるだけこの機会に当時の関係者に当たりましてつまびらかにいたしたいと考えておりますが、その原爆調査報告書分冊の中に、生物学編担当者中山さんが書いておりますが、たとえばこういうことがあります。「筆者には日本映画社の奥山氏一行の撮影班が同行し、調査の一部を映画として記録した。」というようなことがございますので、映画調査とは決して無関係に行なわれたことではないというふうに承知しております。
  9. 大原亨

    大原委員 いろいろと関係者お話を聞きますと、昭和二十年の十月二十四日に、広島を一応終わりまして長崎撮影中にMP中止を命じた。それから昭和二十年の十二月二十三日、中止を命じた後に話し合いをしながらフィルムの供給を受けたりいたしましたが、SBS、当時のアメリカ戦略爆撃機調査団でしょうが、その委託で撮影中、一応の撮影をしたのでこれは没収された。これが十二月十七日。それから二十一年の三月から五月にかけて、英文フィルム編集を完了した、それでアメリカに送った。若干人によって違う点がございますが、大体そういう経過をたどっておるようでございます。したがって、いろいろお調べいただいたのですが、調べられないところもあると思うのです。当時の撮影に当たった会社団体社団法人から株式会社へと、こういうふうに組織変更になっておりますが、日本映画社、そういうところのスタッフがやったのですが、しかし、フィルムをどこから出したか、あるいは金がどこから出ているか、こういうこともいろいろ議論になっておるわけです。私もいろいろな考えを聞いておるわけですけれども、今日これでわかっていることがあればひとつお聞かせいただきたい。長崎MP中止を命令するまでは、文部省が軍その他を通じまして、残っているフィルムを動員して撮影をし、日本映画社がやった、あるいはその後はアメリカSBS——戦略爆撃調査団話し合いをつけてそのフィルムを借りた、あるいはその金は調達庁から出ている、占領費から出ている、そういうふうな事情も私は聞くわけです。しかし、これについてはいろいろ議論があるわけです。ですから、フィルム返還されましてからその帰属や運営の問題で議論する際に、こういうことを事前に私はひとつ確めておくことも必要ではないか、こう思って念のために質問いたすわけですが、その点について文部省のほうで把握をしておられる点があれば、ひとつお話しいただきたい。
  10. 岡野澄

    岡野説明員 ただいまお答えするほどの調査は十分完了しておりませんので、その点をお許しいただきたいと思いますが、たとえばフィルムの長さにいたしましてもまちまちの表現でございます。五月十八日のニューヨーク・タイムズによれば、三万フィートで、一万一千フィートは日本によってつくられ、一万九千フィートは米軍の指示によってつくられたというような表現もございますし、当時のスターズ・アンド・ストライプス紙記事によれば、三万五千フィートのフィルムを一万四千九百フィートに縮めてあるというふうな表現もございますし、いろいろな内容記事が多いわけでございます。その辺、もう少し時間をかしていただきたいと思います。
  11. 大原亨

    大原委員 この映画撮影に当たったスタッフ日本映画社、最初は社団法人であった、国策会社であった、それが株式会社に改組した、こういうことは間違いないと思います。スタッフはそうである。しかし、フィルムとか金銭の出どころ、財政負担者についてはなお問題があるけれどもMPが押えてからは、日本側スタッフ撮影を依然として続けたけれどもフィルム金銭の出所はそういうことである。特に押えてから後は占領費から出ている、特別調達庁から出ているということを関係者は言っているわけです。それは結局は国民の税金ですが、その点で私が理解しているのは、最初申し上げたように理研仁科博士都築博士その他が指導監修をされ、非常に協力をされている。それから日本映画社スタッフを提供して献身的にやっている。あるいは文部省も、軍も、フィルムをその終戦前後の被爆直後には出している。あるいはその後には、アメリカのもとのフィルムも来ている。しかし、財政日本政府も一部を負担し、映画社負担をし、あるいはMPが押えて後はこの占領費からも出ている。アメリカも出したかもしれない。そういう問題もあるが、ともかくもこのフィルム——長さ、編集のしかた、あるいはプラスアルファの残余のそういうフィルム等は別にいたしまして、ともかくもこの問題は、そういう日本人の手によって、当時困難な事情をおかしてできたものである。こういうふうに、私どもは総合的に事実に基づいて理解をしてよろしい、こう思うわけです。これについて御所見があれば、ひとつ伺わしていただきたいが、なければよろしい。
  12. 谷川和穗

    谷川(和)政府委員 日本政府といたしましては、特に文部省といたしましては、これはまことに貴重な、学術的な資料である、こういう基本的な態度に立ちまして、強く返還要請をいたしたいと考えておるところでございます。  そこで問題は、返還をされた後の問題でございまするが、何ぶんにもああいう混乱の時期のことでもございましたし、関係者もそれぞれ数多くありましたし、ただいま御指摘のありましたようないきさつの面でも、非常に複雑なものでもございました。したがいまして、その所有権の問題とかいうことが議論されますと、いろいろ複雑な問題もあるかと思いまするが、いずれにしましても学術的な資料でありますので、文部省でこれを責任を持って保管をさしていただきたい。そして今後の利用につきましては、さらに関係をなさった方々、特に学者方々なんかともひとつよく協議をさしていただきまして、細目について今後決定をさしていただきたい、こう考えておるのであります。  いずれにしましても、まずひとつ、非常に貴重な学術的な資料でございますので、強く米国政府に対して返還要請いたしたいという考えでおるわけでございます。
  13. 大原亨

    大原委員 それで、いまお話がありましたように、APでも政府を通じてという話が入っておるようですが、つまり文部省としても外務省を通じて強く返還を求める。第二点は、返還されたならば、これは文部省所管として、あるいは関係者意見を聞きながら運営をしていきたい、この二つの点についてお答えがありました。私は、この点は大筋においては理解をするわけですが、あとでまた若干の、この点につきましての意見を付して質問をいたしたいと思うわけです。  そこで、まだ返っておるわけではないのですから、とらぬタヌキの皮算用でもないが、これは所在がわかり、そうして返還意思があるということがはっきりされておる。一昨日、前広島市長の浜井さんその他が加わって関係者座談会を開いたときも、関係テレビ会社アメリカジョンソン大使にも意向を伺っている情報もある。やはり返還については協力をするという意思表示である。したがって、私は念のためにお伺いするわけですが、外務省はこの問題について、いままで各方面意見があったわけですけれども、大体アメリカ政府に対する返還要求の交渉をしたことがあるのか、あるいは最近の模様についてひとつお答えをいただきたい。
  14. 枝村純郎

    枝村説明員 お答え申し上げます。  この問題につきましては、従来から、種々の民間団体からアメリカ政府に対して返還要求、あるいはそのコピーを日本側に渡してほしい、こういう要請が直接アメリカ側になされていたようでございますが、そういう問題が政府に持ち込まれて、政府を通じてアメリカ側に交渉してくれ、こういうことは、私ども実は承知いたしておりません。ところが、この五月十七日の、先ほどからお話に出ておりますAP電が出まして、これがアメリカのワシントン・ポストとかニューヨーク・タイムズというような新聞にもキャリーされておる、こういうことで、在米の日本大使館からこの件について報告が参りました。その後、内々私ども文部省側とも話し合いをしてきたのでございますが、同時に、いまの所有権の問題その他必ずしも判然としない、釈然としない面があるということも承知したわけでございます。しかし、とにもかくにもこういう非常に貴重な学術的な研究の材料でございますし、日本国民にとっては歴史的な意義のあるものでございます。そういう問題は別として、なるべく早く日本側に返してもらいたい。それで、先ほど政務次官からもお話がありましたように、そういった所有権の問題、管理の方法というふうなものは日本政府責任において処理する、大体こういう線で、実はワシントン及び東京で内々の話はしてきたわけでございます。それで、私どもの現在持っております感触では、ただいま先生の御指摘のございましたように、アメリカ側も、日本政府がそういうつもりで、返してほしいと申しますか、あるいは管理を解除してほしいと申しますか、そういうことを希望しているんだという意味は十分理解をしておるようでございまして、その点については、私ども率直に申し上げて楽観しているわけでございます。ただ、最終的な決定には至っていない、こういう段階でございます。同時に、先ほどから申し上げております所有権、著作権その他判然としない点について、アメリカ側資料があれば、その点の解明に役立つようなものはぜひ日本側にも提示してほしい、こういうふうにあわせて要望しております。
  15. 大原亨

    大原委員 これも念のためにお聞きするのですが、占領政策、たとえば最高司令官の命令によって没収したということになれば、これは占領政策としては、占領政策上ということに名実ともにはっきりしていると思います。しかし、MPが押えて任意に出させたということになって、事実上アメリカへ持って帰った。そういうことになりますと、事情は若干複雑になってくると思う。そういう占領政策と所有権、著作権の関係について議論されたり、あるいは条約や法律の解釈について御意見を、外務省なりあるいは文部省の事務当局はお持ちですか。持っておられるならば、ひとつこの際念のために聞かしていただきたい。
  16. 枝村純郎

    枝村説明員 その点は、実は先ほど申し上げましたように、どういう経緯でフィルムが二十一年の五月にアメリカ側に持っていかれるようになったか、そういう点について解明する資料があれば出してくれということを、検討を依頼しているわけでございまして、私どももはっきりした資料は持っておりません。推測でございますが、おそらく、どちらかといえば、占領軍の命令ということでフィルム撮影が続行され、その結果を向こうに持っていったものだ、このように思います。  ただ、アメリカとの関係で申しますと、私どもはむしろ、アメリカ政府との間にそういう法律論で対立しながらこういうものを返してもらうというよりも、こういうものを、先ほどからお話がありますように、日本政府管理することの意義ということに理解を持ってもらって、そういう法律論をアメリカとの間で云々することなしに、ひとつ友好的に返してもらえば一番いいんじゃないか、このように思っております。
  17. 大原亨

    大原委員 私が質問したのは、ちょっと趣旨が違います。つまり日本へ返ってくることを予想するわけです。返ってきましてから、占領政策と著作権、所有権との関係の問題が、利害関係者との間において出てくるのではないか、そういう点について、私は事実に基づいてはっきりしておくほうが、これはすみやかに返還要求する条件にもなるし、あるいは返還された後に、国民が納得できる姿でこれが運営されるということにも通ずるのではないか、こう思うわけです。返ってきてからの国内の法律関係について研究されたことがありますか、こういうことであります。
  18. 枝村純郎

    枝村説明員 その点は文部省のほうでも御研究いただいているわけでございますが、まだ必ずしもはっきりした結論が出ていないということは、岡野審議官から御答弁があったとおりでございます。したがいまして、私どものほうも、アメリカ側に対しまして、そういう関係を解明する資料なり記録なりがあればあわせて出してほしい、こういうふうに要望しているわけでございます。まだ私どもとしてもはっきりした結論は出ていない、こういうことでございます。
  19. 大原亨

    大原委員 次に、外務省の国連局の沢井軍縮室長に、これは昭和四十一年、昨年の十二月五日に国連の第二十一回総会で採択されました決議、御承知の決議があるわけですが、その決議の前文には、「国連の主要目的の一つは人類を戦争による絶滅から救うことにあると考え、軍備拡張競争、なかんずく、核軍備競争は、平和に対する脅威を構成すると確信し、」そして、その次が重要なんですが、「世界のすべての国民はこの脅威について十分に知悉されるべきであると信じ、各国政府並びに」云々と、こういうところがある。これは前文ですが、そして主文の中に、二、事務総長に対し、核兵器の使用がもたらす影響とこれら兵器の取得と開発が各国の安全保障及び経済に及ぼす影響」、つまり核兵器の使用がもたらす影響、こういう問題について報告書をつくれということ。それから、「右報告は、入手可能な資料を基礎」として事務総長のところで集約しろということが一つある。それから、その報告は、この秋の第二十二回総会で各国の検討に間に合うようにせよ、こういうことがある。私はこれに関連して前から考えておったのですが、一つの問題は、すみやかに原爆フィルム返還を求める。原爆の影響の実際の報告といえば、広島長崎を経験しておる日本、あるいは海上や砂漠で原爆実験をやっておる各国の人的、物的損害があると思う。その事実を人類が知ることによって軍縮に役立てよう、こういうことだと私はこの国連の決議を読むわけです。そうすると、これは後の運営の問題にもなりますが、こういう貴重な資料を一個人や一営利会社が持つということや、あるいは文部省だけが倉庫の中にしまっておくということでなしに、そういう重要な資料としても、日本政府が国連の場を通じて国連の加盟各国や全世界に、このことについて日本は唯一の被爆国ですから言うのですが、そういう国連外交の大きな観点からいたしましても、この問題を提出をすべきではないだろうか。検討する材料、資料として出していく、こういうことが考えられ得ると思うのですが、そういう国連決議の問題と、これに対するいま現在外務省考えておる報告内容、こういう問題につきましてひとつお答えをいただきたい。
  20. 沢井昭之

    ○沢井説明員 お答えいたします。  いま御指摘になりました昨年の総会で採決されました決議案でございますが、この核兵器の影響調査に関する報告書の作成につきましては、実はその後事務総長が各国の専門家協力を得てこれを作成するということになっております。そこで、各地域の代表といたしまして、北米からカナダ、中南米からメキシコ、東欧からポーランド、西欧からノルウェー、アジアから日本、アフリカからナイジェリア、この六カ国、及び核保有国でありますところの英米仏ソ四カ国、それに原子力平和利用が進んでおりますインド、スウェーデン、この十二カ国から専門家を呼びまして、そしてこの報告書の作成をいま行ないつつある、こういう段階でございます。その第一回の会合が、三月初め顔合わせが行なわれまして、六月二十六日から七月六日まで二週間でございますが、ジュネーブで第二回会合が行なわれる。各専門家は各国を代表するのでなくして、個人の資格で事務総長と協力していろいろと報告書の作成に協力する、こういうたてまえになっております。そこで、政府といたしましては、直接この委員会報告書の作成には関与していないわけでありますが、いろいろな意味で資料の提供とか援助、協力、いろいろと相談をいたしております。そしてわが国からは向坊東大教授が専門家として、十二カ国のうちの一つのメーバーとして参加しておる、こういうことであります。  そこで、いま御指摘になりましたフィルム等の点を含めまして、これは現在、いまお話にありましたとおり、米国に対して返還要請中ということでございますので、返還されました暁には、その内容等も検討した上、国連等においてどういうふうに取り上げるか、どういうふうに各国で活用するかというような点につきまして検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  21. 大原亨

    大原委員 日本は唯一の被爆体験国であるということ、だから、このフィルムアメリカが公開するよりも、日本のイニシアチブで公開することがよろしいのではないか。それから、これは日本人スタッフ日本人の手によってできた映画である、こういうことからも、事実を記録した記録映画といたしまして、やはり原爆の脅威ということは何といっても平和の基礎であり、したがって、私は重ねてその点についてはそういう意見が通るように、ひとつ返還についても、あるいはそのあとの処理についても、外務省としても十分留意していただいて処置をしていただきたい、このことについてもう一回お答えを伺いたい。
  22. 枝村純郎

    枝村説明員 ただいまの先生のお説、全くそのとおりでございまして、私どももなるべく早い機会に返還が実現いたしますように、また返還されました暁には、先生のおっしゃいましたような趣旨で、国民のため、あるいは全世界の平和のためにこの貴重な資料を利用するように留意したい、このように考えております。
  23. 大原亨

    大原委員 これは文部省に対する最後の質問になりますが、この原爆フィルムが返されてまいりました際には、たとえばいろんな意見があるわけであります。それは次官のほうからも御答弁がありました。そこで、私は、各方面の御意見を十分聞いてもらいたいのですが、たとえば今日残っております日本映画社の所有である、あるいは仁科博士等が非常に心血を注いで調査をされ、あるいはフィルム協力され、指導されたのであるから、その理研の承継団体である仁科財団が保管をして民主的に運営をしてはどうかという話もある、あるいは当然政府を通じてやるんだし、当時としては私はりっぱな仕事だったと思うのですが、政府がイニシアチブをとって、学術研究会議スタッフその他を動員し、予算を出してやった、こういうのだからこれは私すべきではなくて、政府の所有に帰すべきであって、政府が民主的に運営すればよろしいのではないかという意見もあります。しかし、それと一緒に、関係団体で公益法人か何かをつくって、たとえば仁科財団ではいま理事長は朝永振一郎博士だと思うのですが、あるいはこういう原爆の被害白書の運動等については、茅博士等もいろいろ大所高所から運動されている、あるいは実際に当時スタッフとして心血を注いできた人もある、そういう人々が協力して納得できるような運営方法をやったらどうか、こういう独自の団体あるいは公益法人等をつくってやったらどうだ、あるいは収益等がもし出てきた場合には、被爆者の援護、特に老人ホームその他が非常に大きな問題になっておるから、そういう建設等に充てるべきではないか、こういういろいろな提案が今日あるわけであります。もちろん、これは国連外交に役立てるということでございます。私は、一つの営利会社の私物にしてはいけない、これはいままでの経過から見て当然だと思います。これが前提だと思います。それから、文部省の倉庫の中に入れておいて、利用されるといろいろ弊害があるからということでもいけない。ですから、やはり国民が納得できる形において、いままでの経過を踏まえながら、民主的な運営考えることが必要ではないだろうか。外務省文部省の窓口を通って返ってくるということについては、わかるわけです。ですから、その後の処置について、そういう点を踏まえながら、特に一営利会社の占有に帰する、切り売りをする、こういうことではなしに、あるいは文部省の倉庫の中にしまい込んでおくということではなしに、やはりこの点は各種の意見を十分聴取されて、そうして納得できる形において運営してもらいたい、そういう点を私は意見として申し上げるわけですが、これに対しまして文部省、特に次官の御所見を、ひとつこの際、一問一答できたわけですから、お聞かせいただきたいと思います。
  24. 谷川和穗

    谷川(和)政府委員 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、まことにこの時点におきまして貴重な学術的な資料であるという点から、まず米国政府に対して強く返還要請いたしたい、こういうことでございますが、返還を得ました暁には、ただいま大原委員の御指摘のありましたような、すでに幾つかの利用についての御意見とか、あるいは保管についての御意見などいただいておるわけでございます。すでにもう出かかっておるわけでございます。したがいまして、今後返還をされました暁には、関係されました学者方々その他大ぜいの方々も、現在なお御生存の方もおいでになられますし、そういう方々とも十分協議もいたしたいし、それから基本的には、何と申しましてもこの貴重なフィルムは、ただ単に学術的に貴重であるばかりでなく、これまた大原委員の御指摘のありましたような、大きな意味では世界平和というようなものにとりましても、ある意味で非常に貴重な資料でもあるというふうにも考えております。したがって、今後この利用その他につきましても、十分心いたしていきたいと考えております。しかしながら、文部省は、別に当初そうであったからこういうことを申し上げるわけでございませんが、現在の文部省としての役目柄から申しましても、フィルム保管に対しましては、責任を持って文部省でこれを保管をいたしたい、そのように現在のところ考えておるような次第でございます。
  25. 大原亨

    大原委員 その点については私ども事情はわかるわけですが、しかし、この運営については、国連の問題等も議論いたしましたが、やはりみんなが納得できるような、そういう積極的な運営について十分留意をしていただきたい、そういうことであります。いかがですか。
  26. 谷川和穗

    谷川(和)政府委員 御指摘のようなことで、十分心いたして今後やっていきたいと思っております。
  27. 大原亨

    大原委員 厚生省は、三千数百万円かけて原爆実態調査をしておられるわけです。しかしこれは、二十年たちまして統計的な調査だけでなしに、たとえばこういう学術調査も、当時の学者がやったのがあるわけですが、こういうフィルム等も出てきておるわけであります。いままでこれを議論する中で、アメリカにそういう貴重な遺産があるから、返還要求をするように議論をしたことがございます。それは別にいたしまして、厚生省においても、当時の学術調査団フィルム等についても十分活用しながら、ひとつ原爆被爆の白書をつくってもらいたい、私はこういうふうに思うわけです。厚生省、簡単に答えてください。
  28. 宮田千秋

    ○宮田説明員 厚生省といたしましては、実態調査を実施いたしまして、いまこれの整理を急いでおること御指摘のとおりでございます。実態調査以外の学問的な映画、文献等につきましては、映画をはじめ文部省のほうで御検討の末、御方針が出ますれば、それに協力をするという形で努力をしてまいりたとい存じます。
  29. 大原亨

    大原委員 剱木文部大臣谷川次官、あるいは外務省、それぞれ原爆フィルム所在がはっきりした以上、返還意思があるということが明確になった以上は、ひとつ正式にアメリカ政府に対して、すみやかに返還をしてもらうように要請したい、こういう話、そして返還されましたら、これが民主的に運営されるように十分配慮してやりたい、こういうことでございますので、その点につきましてはひとつ十分万遺漏のないようにしていただきたい、こういうことを重ねて御要望いたすわけであります。その点につきまして、ひとつくどいようですが、最後に御答弁いただきまして、私の質問を終わります。
  30. 谷川和穗

    谷川(和)政府委員 御指摘の線に沿いまして最大の努力をさしていただきたいと思います。
  31. 床次徳二

    床次委員長 次の質疑の通告があります。兒玉末男君。
  32. 兒玉末男

    兒玉委員 文部省当局にお伺いしたいのでございますが、実は南九州大学が本年発足をいたしましたが、設立後一カ月足らずで六百万円も不渡りを出し、その結果、内容的に財政面において十億をこえる赤字のために、この再建策が非常に危ぶまれ、また、同一人が経営する南九州学園の高校なり短大等も、非常に学校の経営に対しまして父兄の不信がわいておるようでございます。この問題について文部省としてはどういうふうに報告をされ、現在どのような措置をとろうとされておるのか、この辺の事情について、まずお聞かせをいただきたいと存じます。
  33. 宮地茂

    ○宮地政府委員 お答えいたします。  いま御指摘の南九州大学でございますが、実はこの大学の設置者は学校法人南九州学園でございます。これは昭和三十七年に高等学校を初めて設立した法人でございますが、三十七年に高等学校をつくって、それから三年後の四十年に短期大学をつくった、それから二年たったことしから南九州大学という大学をつくった、こういう学校でございまして、昭和三十七年から今日までわずか五年の間に、高等学校をつくり、短大をつくり、大学をつくるというような、非常に短期間に急激に事業を拡大していった。今回私ども承知いたしましたのは四月に入ってからでございますが、御指摘のように四月二十四日でございますか、宮崎の手形交換所から銀行取引停止処分を受けた。それは三千万円の決済すべき手形のうち六百万円について手当てができない、こういうことで取引停止処分を受けたようでございます。このことにつきまして、私どもといたしましては、まず四十二年度にできました学校が、開校したとたんにこのような不渡り手形を出す。会社等で申しますれば、倒産をするといったような形になりましたことをまことに遺憾にも思いますし、また大学の設置を認可いたしました直後にこういう事態が起きましたことにつきましても非常に反省もし、また、ただ遺憾というだけではなくて、私どもとしても相済まないというふうに考えております。ただ、これからは多少弁解がましくなりますのでお聞き苦しいかとも思いますが、先ほど申しましたように、わずか五年の間に高等学校をつくり、短大をつくり、大学をつくるというふうに、会社等で申しますれば短期間に過剰投資をしていった、建物をどんどん建てていった。それで、ことしの大学を認可いたします場合に、大学新設につきましての経費は約五億ということになっております。そのうちの二億近くが寄付金でまかなわれるというようなことになっておりまして、私ども、はたして確実に二億近くの寄付が集まるかということで、できるだけの調査をいたしました。ところが、二億近くの銀行預金がちゃんとございまして、これは預金通帳も見ました。それから、そのうち一億六千万ばかりが出されておるわけでございます。これはすでに寄付申し込みがあって、一億八千万、二億近くですが、そのうちの一億六千万は支払いに充てたのだ、これが寄付でございますといったようなこともございますし、また、寄付者に照会いたしましたところ、寄付をいたしましたという本人からの確認書も出てまいりますし、また、本人の資産状況を調べてみましたところ、山林等の所有者でございます。で、寄付したのは、山林の立木を売って現金にして寄付したというようなことで、一応警察でもない私どものほうといたしましては、できる限りの調査はいたしましたが、そのように設置者も、また寄付したと称する、これは金貸し屋なのですけれども、そういう人が結託をして詐欺的な行為と思います。まことに遺憾なんですが、そういったような形で来ますと、今日までのところ、それ以上の設置認可についての調査ができない状況でございます。もちろん学校事業でございますから、これは企業のように利潤のあがる仕事でもございませんし、大多数の人々が、学校経営をやられる場合に、この人が民間企業のように何か利潤を追求し、書類もうそで固めた書類を持ってくるというふうにもあまり考えてもおりませんので、以上のような調査で設立を認可した。ところが、これは全部借金であったということで、大体小口債務が三億近くあるわけですが、百四十人ばかりの人から借金をしておった。これは理事長が手をあげた後に、ついせんだって来て、いままで出した書類は全部うそでございました、実はこのとおりでございますということで、ほんとうのまじめな書類を持ってきて驚いたような次第でございます。  以上が経緯でございますが、この問題につきまして、私どもといたしましては、まず、学校法人の設置者そのものの行為が云々ということよりも、高等学校、短大、大学の学生、生徒がいるわけでございますが、これらの学生、生徒が、こういう事態によって教育に混乱を来たさないように、とにかく再建のめどを立てるのと並行いたしまして教育に支障を来たさないように、従来どおりの教育が続けていかれるようにということを、まず当面の最も強い関心事として、この点については県、それから理事長はもちろんですが、指導をいたしておる次第でございます。  学校では、現在一般の場合のような債権者集会といったようなものは開かれませんで、学校側と、それから大学は宮崎ではございませんで、高鍋町にあるのですが、高鍋町、それから債権者の大口の方々学校関係者、父兄、こういうような人々で再建のことについての運営委員会というものをつくっておられますが、そこでまず再建案を検討しておられるようです。一両日前に聞きましたところ、とりあえず三億近くのいわゆる民間金融業者から借りております。百数十名の債権ですが、こうした小口債権をまず処理したい。聞きますと、何かそのうちの相当部分を打ち切ってもよいというような話に進んでおるような報告を受けましたが、ともかく理事長に対しましてはまことに不届きとは思いますが、ともかく現在の理事長も入りまして、そういう再建案を立てておるようでございます。したがいまして、私どもとしましては、県とも、また学校とも連絡をとりながら進んでおりますが、今後十分その経過を見まして必要な指導も行ないたいし、また、何らかのめどが立ちますならば、必要な援助をいたしてもよいのではないかというふうに考えております。
  34. 兒玉末男

    兒玉委員 何といいましても、文部省当局として、これを認可する際の書類の審査等については、私、非常に内容の分析等がずさんであった、こういうことを指摘せざるを得ないわけであります。しかも十三億近くの資金計画を、ほとんど自己資金でなくて、私学振興会なり住宅金融公庫あるいは民間の会社というところから、ほとんど一〇〇%近くの、自己資金なしで計画したところにも、もう少し文部省としては徹底した分析と調査が必要でなかったのか。これからまた四十三年度の新設立大学等も相当申請が出ておるやに聞いておりますし、先般福岡の電波学園の問題も起きておりますし、おそらく今後この問題は、まだ調査をしますならば、これに類似する学校は相当あるのではないか。私は、やはり今後の対策として、特にこの宮崎の場合は、この計画的な全くインチキな計画でもって文部省がだまされたというふうな感を深くするわけです。  そこで、まずお聞きしたいのは、現在高校に千五百二十名、短大三百五十名、大学は三つの学部が申請されて、園芸学部だけが現在認可をされておるわけでございますが、少なくとも今後の学校経営を存続するためには、このばく大な借金をかかえておる学校経営というものが、どういうふうなことをしたら可能なのか、ここに大きな問題があろうかと思うのですが、文部省としてはこの際、この今後の再建策といいますか、こういうことについてどういうふうな指導をしていこうとお考えになっておるのか。この点、認可をした者として、当然責任ある指導をとるべきだと私は思うのですが、その辺について御見解を承りたいと思います。
  35. 宮地茂

    ○宮地政府委員 ただいまおっしゃいましたように、実は本年度園芸学部の一学部だけが認可になっておったわけですが、申請をされましたものは、法学部と商学部とそれから認可になった園芸学部でございます。ところが、大学設置にあたりましては、法人の経営的な面と同時に、学校としての最も必要な教員組織ということを十分審査するわけでございますが、この学校は法学部、商学部につきましては教員組織がそろいませんで、申請したままであれば不認可にせざるを得ない。したがって、園芸学部だけでは経営もむずかしいから、できればこれも遠慮して見送らそうというふうにも考えて当事者と相談しましたが、法学部、商学部を、不認可という汚名をもらうよりは取り下げたいということで、実は商学部と法学部を取り下げました。それから、園芸学部だけは、教員組織もいいのであれば、ぜひこれだけでも認可してもらいたいといったような当事者の話もございますし、また、私のほうで大学設置審議会と私立大学審議会、これらに十分はかりましたが、学部だけの認可なら可であるという答申もいただきましたので認可いたしました。学校当事者が申しますのには、法学部、商学部、これはそれぞれ入学定員百名でございます。したがって、二学部二百名の学生が入学すると予定をしたのにこれが入学できなかった。そこに今度の不渡り手形を出すようになった直接のきっかけがあるのだといったようなことを言っておられますが、ただこれは、大体学生一人から十五万円取りましても二百名では三千万円なんです。ところが、御指摘のように同等学校、短大をつくるときに相当無理をしまして、現在十三億ばかりの負債で、そのうち振興会の融資は、短大、高等学校についていたしました融資ですが、これが一億くらいでございます。それから住宅金融公庫の負債は六千万ばかりでございます。したがいまして、私学振興会とか住宅金融公庫、これは合わせましても二億に足りません。むしろそれではなくて、十三億の負債の大きいのは、五億ばかりの建築資金とそれから小口の債権、先ほど申しました三億ばかり百数十名、こういったようなものが大部分でございます。これらの利子をどのように払っていくかということが問題ですが、この学校の経常収入は学生の納付金以外にないわけです。そういたしますと、現在一億二千万円くらいの収入しかない。かりに法学部、商学部の設置が認可されておったとしても、プラス三千万円、一億五千万円しかない。支出のほうが、教員の給料だけでも八千万円ばかり年間かかるわけであります。雑費を入れますと、経常支出のほうが一億近くになる。そうすると、差額の五千万円で今後その利子を適正に払っていけるか。これはなかなかむずかしいんじゃないか。非常にざっとした計算ですが、振興会とか住宅金融公庫とかいったものは比較的低利でございますが、したがって十三億のうち七、八億が高利としましても、これが七分の利子としても、それだけで五、六千万円の利子になるわけです。したがって、収入支出のバランスから申しますと、かりに法学部、商学部を許されても、利子を払っていくのがやっととんとんである、したがって、元金というものは永久に償還されていかないという計算にしかならないと思います。これは、学校運営上非常に重大な問題を、いまのように簡単に申し上げては恐縮ですが、ざっとした計算からいきましてもそういうことになります。したがって、私ども、法学部、商学部のほうが来年設置認可を申請された場合に、このように多額の負債を持っておる学校法人が、その多額の負債の利子を払うのに多少役に立つといったような面から学部増設を認めていくということは、これは筋ではございません。筋ではないが、まあ経営が楽になるからという面だけについて見ましても、利子を払うのがやっとというようなことになりまして、学校は、まあつくります場合、やはり地元のいろいろな要望なりということで、適正配置ということから考えますと、宮崎県には私立大学はこの学校しかございませんので、ぜひ一校ぐらいは大学の適正配置という面から見てもつくってあげたいという、つくるべきであろうというふうには考えますが、遺憾ながら、現在の経営者が現状のままにおいて学部新設を申請されても、以上申しましたような観点から経営面でどうであろうか、非常に消極的な考えに立たざるを得ないというふうに考えます。ただいま行なわれております再建計画がりっぱになり、経営者につきましてもいろいろ適正な人事が行なわれるとか、いろいろ措置された暁にはまた別でございますが、現状におきましては、経営面だけからとってみましても無理ではないかというふうに考えます。
  36. 兒玉末男

    兒玉委員 大体学校経営においても、先般いろいろと県からも事情を聞いたのですけれども、とにかく学園の理事会というのがほとんど無能だ、有名無実だとまで酷評されているわけです。しかも今回再建策の前提として、先般父兄を集めて、当面校債として大学のほうが二万円、それから高校のほうが一万と寄付金五千円、総額で大体千四百万ぐらいの要請をきめておるわけです。私は、宮崎県の場合は県民所得も非常に低いし、こういうふうに普通の授業料以外に臨時の支出があり、それにまた、来年の三月まで一応毎月そのほかに千二百円の授業料を出していく、非常に父兄の負担が大きくなっているわけです。それだけの寄付行為をいたしましても、いま局長が説明されましたとおり、ほとんど利子の弁済が精一ぱいだ、こういう極悪の状態に置かれているわけです。ですから、今後父兄にしましても非常に不安が伴うし、さらに、こういうふうな状況であれば、来年から新しく入学する筒校生なり短大生もほとんど減少の一途をたどるのではないかという、教育行政上もゆゆしき問題であろうと思うのですが、一体このような状況になってから、文部省としては、責任者を呼ばれて、積極的な今後の解決策について話し合いをされたことがあるのかどうか、この点はいかがでございますか。
  37. 宮地茂

    ○宮地政府委員 これにつきましては、私のほうは理事長の永井氏にも上京してもらいましたし、宮崎県の担当部局の総務部長、あるいはこの関係の課長等からも事情を聴取いたしました。それで先ほど来申し上げておりますように、まず経営者の能力とかあるいは放漫なやり方とかいうことはもちろんあるけれども、そこに入っておる学生、生徒に迷惑がかからないように、教育がともかく正常に行なわれていくように最大の配慮をしてもらいたい、また、この再建の問題について再建計画を十分立てて、至急相談にも来てもらいたい、それによって文部省としても、必要があればできる限りの手を貸したいということは申し上げております。  ただ、現在私立学校振興方策につきまして、文部大臣の諮問機関として臨時私立学校振興方策調査会というのがございまして、そこでいろいろ検討をしていただいております。そこの中におきましても、まだ答申は出ておりませんが、こういった経営に破綻を来たした学校、特に御指摘のように、高校急増を過ぎて漸減期に入っておる、大学はまだ急増のピークくらいなところですが、ここ数年後には漸減していく、こういう時期を控えて、経営に破綻を来たし、あるいは経営困難になった大学に対して、政府としてはいかなる措置を講ずべきかという御検討もしていただいております。近く御答申も出る予定でございますが、そういうような調査会の御趣旨も勘案いたしまして、今後強力に指導もし、再建できるものはぜひしていきたいというふうに思います。  ただ、その調査会でも議せられておりますが、私立学校は私立学校なるがゆえに、私立学校でありさえすれば、国はこれを振興しなければならないという責任がはたしてあるのかどうか。やはり私立学校というものが従来から果たしてきた役割り、また今後果たすべき役割り、こういうようなことを十分勘案し、またそれにふさわしい経営者がふさわしい経営をしておるかどうか、こういったようなことも十分あわせて勘案する必要があるのだ。左前になって経営が破綻を来たしそうになれば、すべて何でもかんでも国が助成をしていくという姿勢がよいかどうか、その点は十分検討するようにというような御趣旨でもございます。したがいまして、私どもとしましては、再建のためには十分協力し、必要であればできる限りの援助もしたいと思います。ただ、現在の経営者がやってきたその措置が、はたしてそのままでこの学校を再建していけるかどうか、これは人事の問題その他いろいろな問題が関連すると思いますので、十分早急に検討したいというふうに考えます。
  38. 兒玉末男

    兒玉委員 この点、父兄に膨大な負担がしわ寄せされる。これも文部省は、私立のことだから財政の援助もそうかってにはできないというふうな御答弁でありますけれども、問題は、やはりそういったような要素を含む学校建設申請にあたって、慎重な調査と配慮が欠けたために私はこういう結果を招いたと思う。私は、教育というものは一企業のためにあるのではなくて、これは教育基本法にも明らかに示されておるわけでありまして、そういう点から、これは一私学の問題として放置されていい問題ではなかろうと思うのです。でありますので、もちろんこの十三億の膨大な借金が、国が認めたんだから全部国の責任だというのではなくして、少なくとも父兄に対する一千四百万というこの膨大な寄付行為等は、今後この南九州学園の高校なり短大への入学者がますます減少する結果を招来するのではないか。これについては、文部省はもう少し思いやりのある措置指導すべきではないかと思うのです。この点、局長並びに谷川次官にもこの際ぜひひとつお聞きしたいと思うのです。
  39. 谷川和穗

    谷川(和)政府委員 具体的な再建案につきましては、とにかく借金が膨大な借金でございますし、したがって長期計画が必要であろうと思うのでありまするが、まだ長期計画の具体的な成案を得ていない段階でございます。  ただ、一点御指摘を申し上げたい点は、文部省といたしましては、四月の二十四日にこの南九州学園が不渡り手形を出した、その時点で初めてこういったずさんな経営といいますか、内容を知ったような次第でございまして、その意味ではまことにどうも申しわけなかったわけでございまするが、先ほど局長から答弁をさしていただきましたように、私立学校を設置いたしますときには、二つの審議会の議を経ないと設置ができないわけでございます。したがいまして、その二つの審議会並びに文部省当局の判断を誤らせるような行為が学園側にあったということに対しましては、まことに遺憾に存じております。しかしながら、これは教育の問題でございます。したがって、そういう行為があったから、それじゃ取りつぶしてしまえばすべてものごとが簡単にケリがつくというわけにはいかないと私は思いますので、先ほど兒玉委員の御指摘のございましたように、生徒には何ら問題はなかったわけでございます。したがって、その学生、生徒が今後落ちついて勉学ができるようなあらゆる可能な努力を続けまして、一日も早く再建の長期計画が成り立つように文部省といたしましても指導をいたしていきたい、かように考えております。
  40. 兒玉末男

    兒玉委員 問題はきわめて深刻な問題でありますし、また学校の生徒数から考えましても、これは非常に冒険な計画をやったものだというふうに考えるわけでありますが、いま次官も答弁されましたとおりに、今後私たちは、学校をつぶしてしまえということは少しも考えていないわけであって、むしろ現在のこのずさんな経営について経営責任者の一つ責任問題、同時にまた、県並びに関係地元の町当局、また文部省当局、この三者がこの際緊密な連携をとって、責任所在が云々ということよりも、ここに現在教育を受けている生徒並びにその父兄の立場ということを十分御検討いただいて、教育本来のその任務が十分達成されるために格段の御配慮と御努力を特に要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  41. 床次徳二

    床次委員長 この際、午後四時まで休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ————◇—————    午後五時四十分開議
  42. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数標準等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。唐橋東君。
  43. 唐橋東

    ○唐橋委員 二、三点簡単にお伺いいたしますが、それは先日の委員会でいただきました資料について、どうしてももう少し御説明願いたいという点でございます。  第一点は、「盲学校高等部における標準授業時数と所要教員定数」の配当標準を出していただいたわけでございますが、その第一に、「盲学校(理療科)六学級六十人」、こうなっておりますが、盲学校は普通こうでないのですか、一学年一学級としてみますと、本科が大体三学年三学級ですね。それから専攻科が二、別科が二となっております。別科のないところは、本科が三に専攻科が二、合わせて五、これが普通だと思うのですが、そうしますと、別科があるところは七になります。六という学級ということがどうしても出てこない、こう思うのです。したがって、五学級かあるいは七学級というのが、こういうモデルにする場合の基準になると思うのでございますが、なぜ六という学級数を出されたのか。どうしても現場に合わないような気がしますので、お伺いするわけです。
  44. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 この資料は、当面問題になっております高等部の本科についての配分を模式で示せということでございますから、別科それから専攻科の関係は、これに準じて教職員定数をはじくわけでございますから、これが別科、本科の人数を合わせたものではございません。その点はこの前もちょっと申し上げましたけれども、これはいわゆる高等部の本科についての所要の人数をはじき出したものであります。
  45. 唐橋東

    ○唐橋委員 本科、別科については、一応それは考えないで、高等部だけにおける基準というふうに理解していいわけですね。
  46. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 今回提案いたしました定数法で定めておりますものは、高等部の本科について所要の定数の計算をするわけです。じゃ、別科や専攻科がどうなるかというと、これに準じて交付税でプラスになるわけでございますから、この計算に準じまして……。ですから、ここで示したのは、法案に盛っております高等部の本科についてのみ模式を示したものです。
  47. 唐橋東

    ○唐橋委員 第二点でございますが、ろう学校のほうも、やはりそういう考えでいいのかどうか。その次の資料で、「ろう学校(工芸科)六学級六十人」、こういうことになるわけでございますが、普通ろう学校は、盲学校とちょっと形態が違いまして、御承知のように、専攻科というのは全部に設置されません。本科の場合には、ここには工芸科とありますが、工芸だけでなしに、印刷、木工、被服、理容、美術、歯科技工というように、こういう科目の中から、おそらくどの学校も三科ないし五科をとっていると思うわけでございます。その場合に、ここで工芸科だけの配当ということについては、何か私、どうしても先ほどと同じ趣旨で理解できないのです。
  48. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 これにつきましても、盲学校で御説明いたしましたように、高等部の木科のみにつきまして工芸科六学級六十人の規模の模式を示したのでございますから、専攻科等がありますれば、これは別に計算されるわけでございます。  それからもう一つは、こういう工芸科六十人という規模がいろいろ実在いたしますから、例としてお示しをしたのでございます。それから今度は学科がいろいろ多様に出てまいります。たとえば最近は高等部について促進しておりますから、そういうものは、先般御説明申しましたように、学科に対する加算というものが加わるわけでございまして、これは単一の工芸科の場合だけを示したものでございます。
  49. 唐橋東

    ○唐橋委員 次の資料に入りまして、ずっと実際の学校の現在の実員の数と、それから今度の法案による基準とを出された資料の中で見ていきますと、坂戸ろう学校が二人減、それから千葉桜ケ丘養護学校も二人減、文京盲学校七人減という数字が出ておりますが、これはやはりいままで説明いただいたように、財政的な措置だけの基準だという点の上に立った場合に、このように実際減になった場合の先生方は、やはりそのまま現状を認めていけるかどうか、この点をひとつはっきり伺いたい。
  50. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 資料をお出しする際に、私どもは、この法律の趣旨が資料の冒頭に掲げた府県あるいは市町村の設置者ごとの総数を定めるものであって、個々のものを規制するものでないという趣旨で冒頭にこれを掲げて、そうして全体の趨勢をごらんになっていただく参考にしたわけでございます。ただ、先生のお申し出が、かりに個個の満等学校をやってみたらどういうことになるか、そのほうがわかりいいというお話ですから、ここに注記をいたしまして、かりに機械的にこれにこの考えを当てはめてみたらということでお示しいたしました。  それから、御質問の中心の、それではこういうふうに機械的に当てはめた場合のはみ出しというものはどういうことになるのかということでございますが、これは現在の交付税の措置で都道府県に定数を与えられておりましても、府県内で特殊学校のようにまだいろいろな面で生成の過程にあるようなものについては、どこにどういう特色をもって中心的にやるかということは、これは府県の行政判断の問題でございますから、旧交付税のときも同様でございますけれども、新法になったからといって、その機械的にかりに当てはめたものをもってこの定員の減をするという措置は毛頭しないと思いますし、また、そういうふうにこの法案の趣旨が誤解されるようでありますれば、われわれは十分な指導をいたしたい、かように考えております。
  51. 唐橋東

    ○唐橋委員 最後の十分な指導をするということで了承できるのでございますが、私も地方自治体にいた経験で、こういうような法律ができますと、どうしてもそれにいまのような考え方が徹底しないために、この法律があるのでこれはもうその基準でやらなければならないんだというようなことが、しばしば現在まで行なわれてきた経験があるわけでございます。したがいまして、いま御説明にあったように、そのような点がないようにひとつこれは十分、いまの御答弁で趣旨はわかりますが、その趣旨を徹底する方法をとっていただきたいということを、これは要望として申し上げておきます。  それから、もう一つ資料の中でどうしても理解できない点があるのですが、いまの資料の二枚目に、最も増加する例として県立盲学校で栃木県の例が出ておりますが、その一番下のほうで、非義務制で本科三十人三学科、専攻科九人二学科、別科二十六人二十六学科、こういうことなんですが、これはどういうわけですか。
  52. 岩田俊一

    ○岩田説明員 いまお示しになった点は、はなはだ申しわけないのですが、実はミスプリントでございまして、ただいま申し上げます。  非義務制のところで、本科三十人の次に三学科となっておったのでございますが、これは実態は一学科でございます。専攻科九人の次に二学科となっておりますが、これは一学科でございます。それから別科二十六人が一学科でございます。しかし、定数のほうの計算は誤りはございません。
  53. 唐橋東

    ○唐橋委員 それからもう一つ、石神井ろう学校ですが、これは有名な学校なものですから、私のほうにも資料を現場からもらったのですが、やはりそこの非義務制のところで百十八人五学科、それから専攻科十七人五学科ですが、現場の資料を見ますと専攻科関係が専門職四、普通一で、この資料の五というのと数字が合わなくなっているのですが、それは普通、専門合わせてやったのですか。そこはどんなような計算をしておりますか。
  54. 岩田俊一

    ○岩田説明員 これは昨年、四十一年五月一日の指定統計の数に基づくものでございます。まだ四十二年度の指定統計が出ておりませんので四十一年五月一日を用いたわけでございますが、それによりますと、非義務制のところで百十八人の五学科、専攻科が十七人の同じく五学科、別科はございません。そういうことになっております。
  55. 唐橋東

    ○唐橋委員 五学科としていっても、標準法定数のD、のところの四十八人というのを計算してみますと、私のほうのはその数字にならないと思うのですが、これはどうですか。
  56. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 この指定統計をわれわれはいろいろな資料を出す場合の根拠にいたしますから、この人数、学科等は四十一年度指定統計でとる。その計算方法については、私のほうの専門職で長年定数を扱っておる者が正確に計算をしておりますから、これについては間違いはないというふうに思います。
  57. 唐橋東

    ○唐橋委員 四十八が四十二か四十四になるようですね。その他のほうは合うのですが、ここだけは合わないのです。もしあれだったらあとで計算して……。  では、以上です。
  58. 床次徳二

    床次委員長 次に、斉藤正男君。
  59. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 いわゆる公立高校定数法の審議の最終段階を迎えて、過日の齊藤初等中等局長の説明並びに答弁、ことに私の質問に関連して、附則の第三項の解釈をめぐってなお私、若干疑問がありますので、解明をいたしたいと思うのですが、きわめて簡単であります。  と申しますのは、政令の内容は、たとえば昭和四十二年度を例にとってみますと、新法による定数と旧法による定数の差の五分の一を充足する、いわゆる五分の一方式をとっていくという説明であったわけです。これはそのとおり解釈して間違いないものかどうか。そのお答えいかんによって次の質問が出てくるわけです。この点、はっきりしていただきたいと思うのです。
  60. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 正確に申し上げます。  教員の定数標準につきましては、その間の政令の定める内容は、四十二年度に新法定数として一挙にやらないで、五年間で、四十二年五月一日現在における生徒数を基礎として、新法により算定した定数と旧法により算定した定数の差の割合を毎年度五分の一ずつ埋めていく、そして本則に近づけていく、これが正確な表現でございます。
  61. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そうしますと、その場合、たとえば昭和四十一年度の定数が四十二年度の暫定定数、暫定ですよ、これよりも上回っている場合は、上回った分を一体どう処置しようとされるのか。逆に各県の実情によって下回る場合もあり得ると思うのです。よろしろですか。四十一年度の定数が四十二年度の暫定定数よりも上回っている場合の上回っている分は、どういうように措置されるのか。逆に下回っている場合もあり得ると思うのですけれども、その場合はどういうように処置されるのか。言いかえるならば、上回っている場合はそのまま認めていくのか、それから下回った場合には、いわゆる整理の対象にするというようなお考えなのか、その点をはっきりしていただきたい。
  62. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 最後の整理の問題は、全然別個の財源措置の問題でありますから、御承知おき願いたいと思います。  それで、上回るときは学級編制だけは認めていくわけでございます。ですから、学級編制分は加わっていく。それから下回るときは、学級分とそれから先ほど申した五分の一分の両方を認める、こういうことで政令を予定しているわけでございます。
  63. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 わかりました。  そこで、交付税の単位費用の積算基礎にちょっと触れてみたいと思うのですけれども、いま申されたような形でいきますと、たとえば四十八名学級あるいは四十九名学級、それぞれの学級が実情に応じてあり得ると思うのです。その場合、それぞれ四十九名学級は四十九名学級で、四十八名学級は四十八名学級で措置するというように解釈していいのかどうか。
  64. 岩田俊一

    ○岩田説明員 単位費用の算定におきまして、まず標準法の改正に基づいた計算をして単位費用を出し、それに乗ずるところの教員数は、標準法でそれぞれの県の定数が定まります。標準法に基づいて四十八人のところは四十八人の学級編制数で得た数で出す、四十九人となったところは四十九人の学級数に基づく教員数を乗ずるということに相なります。
  65. 床次徳二

    床次委員長 川村継義君。
  66. 川村継義

    ○川村委員 簡単です。私のはぜひ考えてもらいたいというような意味を込めての質問になるわけです。  まず、大臣からお聞きしますが、国立の高等学校公立の高等学校の教育水準というもの、言うなれば職員の配置であるとかあるいは事務職員の配置、こういうものが大きく影響すると思うのです。この差があってもかまわない——高等学校、後期中等教育の重要性というのは、私は同じだと思うのです。ところが、国立の高等学校公立の高等学校にそういう意味で大きな差があるということは、一体それはどう考えたらいいか、あるいはなるだけそういうことにならないようにお考え願わねばならぬ問題なのかどうなのか、大臣のまずお考えをちょっとお聞きしておきます。
  67. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 高等学校の性質から見て、基本的には同じであるべきである。ただ、国立の中には非常に特殊なものがございます。今度は電波高校だけが残る、そういうものの組織、それからもう一つは、残っておりますのは付属学校が実験学校としてある任務を負う。その任務の限度において教職員組織を特別にどう考えるかという問題はなお残ると思いますけれども、基礎的な考えとしては、公立、国立も同様な趣旨で教育の実質からは考えるべきだというふうに思います。
  68. 川村継義

    ○川村委員 よくわかります。  そこで、国立学校の電波高校、それから大学に置かれておるような高等学校については、おそらく国立学校設置法の九条、文部省設置法の三十一条、これらを受けて政令で規定がある。そこで、実はそういう意味で国立の場合と公立の場合の定員をこまかに比較したい。しかし、きょうはもう時間がありませんから……。たとえば電波高校は全国で三つありますね。高等学校は、国立の高等学校はたしか全国で十二高校あるわけです。これらを一々、教員配置、事務職員配置等々がどうなっているかということを、実はほんとうは列記すべきですよ。でないと法律をよく比較できません。しかし、こういう時間でありますからそれらを一々私はお尋ねいたしませんが、たとえば電波高校三つあるうちで、各学校によって少しは違うようです。しかし、電波高校の場合に、どれぐらいの生徒数で、どれぐらいの職員配置で、どれぐらいの事務職員配置がなされておるか、それだけはおわかりと思います。ちょっと答えていただきます。
  69. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 一例を仙台の電波高校で申し上げますと、生徒数四百二十九人、それから教諭数が二十四、この二十四というのは今回の定数法と比べますと、定数法の標準ではじきますと二十五でございますから、まず過不足ない状況になっております。助教諭等はおりません。それから事務職員が十四おりますが、これは電波高校の性質といたしまして、技術関係とか実習助手とかをこの中に包含しておりますので、十四という数字になっております。その他の職は、これは若干非常勤講師がおりますけれども、ございません。
  70. 川村継義

    ○川村委員 いま仙台の電波高校の例が出ましたが、電波高校について言うと大体大同小異だと思います。そこで、いま私が知っておるのを申し上げますと、熊木の電波高校は生徒数が三百、別科が六十ぐらいおるはずです。教員数が二十人だったと思う。事務職員が十七名配置されている。この事務職員の中に助手を含めてというお答えがありましたが、ちょっとその点は何か解せない問題がありますが、とにかく十七名、こういうことですね。事務職員の中に助手を含めておるということは、ちょっと何か奇異な感じがしますけれども、まあそれはそれとして、事務職員十七名、そういうことになっておる。そこで先を申し上げます。公立の場合を考えると、一つのAという工業高校を例にとります。生徒数が千五百四十五人という学校がある。その場合に事務職員が五名。普通高校の場合には、大体千五百人程度の学校規模において事務職員が四名。同じように三百四、五十から四百程度の公立高校を見ると、普通高校の場合には事務職員が二名、工業高校が三名。大体四、五百から六百、七百の生徒数に対して、工業高校の場合、これは非常に電波高校に教育内容が似ていると私は思う。もちろん同じではございませんけれども。そういう場合、六百から七百に至る工業高校でも、事務職員は定数として三名配置されておる。これが、私が一番初めに大臣にお聞きしたように、国立高等学校、電波高校を例に申し上げておりますけれども公立高校とは大きな差が——電波高校には特殊な教育内容、教育課程があったとしても、あまりにもそこの開きが大きいのじゃないか。ということは、そういう事務職員の配置が少ないので、一般の高等学校先生方がそういう事務関係の仕事に、自分の勤務時間あるいは労務を相当さかれておるということをわれわれは知らねばなりません。もしも公立高校にいま少しく事務職員の配置を考えてもらったならば、一般の高等学校先生は、そういう雑務であるとかあるいは事実関係の仕事から解放されて、自分の専任の学科あるいは生徒指導に専念できるという状態が生まれてくるのではないか、こう考えられるわけです。そこで私は、一番初めにお尋ねしましたように、この点公立高校については、文部省としては少し配慮が薄いのではないか。大臣いかがでございますか、いまの実例に対するあなたのお考えは。
  71. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 先ほど電波同校につきまして、十四のうちに、事務職員ということで技術職員、実習助手を含めて措置しておりますから、定員上その点は中に入っておることはございます。ただ、それを除きましても、先生指摘のように事務職員の国公立の権衡という点は、確かに一つの問題点であろうかと思いますし、将来、高等学校のみならず、先先方の事務に対するロードというものをどういうふうに考えていくかということは、私どもは真剣に考えなければならない一つの課題だ。それは二点から申したいと思います。一つは、教員組織というものを将来どういうふうに考えていくかという問題と、もう一つは、学校管理の形態として、行政機関でやってもらってその利便を受ければいいようなものは、できるだけ学校固有のものからはずしていく、その両面から学校の近代化をはかっていって、先生が教育に専念することができるような環境をできるだけつくっていきたいと思って、努力してまいりたいと思います。
  72. 川村継義

    ○川村委員 いま局長からお話しいただきましたように、やはりこの点はぜひ、もうきょうこの法案が通るときに、修正なんてそんなことは間に合いませんが、少なくとも来年度はそういう点を含めて、ほんとうに文部省としても真剣にお考え願いたい。でなければ、大事な後期中等教育、筒等学校の教育を高めていく、りっぱにしていくということについて、阻害される要因がそういうところにも非常にあるということをぜひ知っていただいて、御努力願いたい。これが私の強い希望なんです。どうぞひとつ、その点は強くこの際お頼みしておきます。
  73. 床次徳二

    床次委員長 本案についての質疑はこれにて終了いたしました。
  74. 床次徳二

    床次委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。長谷川正三君。
  75. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております政府提案の公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数標準等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場から討論をいたしたいと存じます。  今日、科学の進歩、文化の進展に伴いまして、後期中等教育の重要性というものは、非常に世界各国ともこれを重要視しておることは御承知のとおりであります。わが国におきましても、今日、国民の高等学校に対する要求というものは日増しに高まりまして、すでにその進学率も八〇%をこえようとし、遠からず準義務制あるいは義務制にしてもしかるべき段階が来ておると思います。しかしながら、また顧みますと、本法が昭和三十六年に制定されまして以降、御承知のベビーブームの波がちょうど高校期に差しかかりまして、そのために一教室に五十五名あるいは実際には六十名以上も詰め込む、あるいはパイプ教室を急造して、まことに劣悪な条件の中でこうした要求にこたえて急場をしのぎ、子供たちも苦労をし、また、特にこの教育に当たる教職員は、乏しい施設と定員の中で非常に苦労をしてこの時期を乗り切ってきたのであります。今日高校生徒の減る時期を迎えまして、この長い間の苦労を解消し、冒頭申し上げた後期中等教育の重要性の認識に立ちまして、飛躍的に高等学校の整備拡充、普及をはかるということが大きく期待されておったと思うのであります。国民も、また直接教育に当たる教職員も、この機会に抜本的な改正が行なわれるものとして多くの期待を寄せておったところであります。政府もまたこの観点に立って、今回この法案を出してまいりまして、そこに若干の改善のあとの見られることにつきましては敬意を表するのでありますけれども、しかしながら、その内容をしさいに検討いたしますと、本委員会においても各同僚委員から質疑を通じて明らかにされましたとおり、後期中等教育の飛躍的な拡充という面から見ますと、まことにお粗末と言わざるを得ません。おそらくこれは、文部当局の真意と申すよりも、国全体が後期中等教育の重要性に対する政策においてなお欠くるところあり、財政上の制約、そうしたものからこの程度にとどまらざるを得なかったというのが実情ではないかと察するのであります。その意味では文部当局の苦労に対しまして、私どももいたずらにこれを非難するつもりはございませんけれども、残念ながら、今後五年なり七年を期して高等学校教育を充実させていくという立場から見ますと、このままでこれを承認するということはできない。日本の文化あるいは経済の発展、そうした面から考えましても、この際われわれは大事な曲がり角に立って十分な施策をどうしても行なう必要がある、こういう観点に立ちまして、日本社会党といたしましては、本法案の廃止を前提としての、かわる二つの法案を提案いたしてまいったところであります。しかし、今日この討論を終結しなければならぬ段階に立ちまして、私どもは、右二法案を提案した精神に立ちまして、次の諸点を指摘して反対せざるを得ないのであります。  第一に、改正案の学級編制基準は、一学級の生徒数は四十人以下とすると指定している高等学校設置基準にも達していないこと。さらに、教員定数の算定基準について、規模別補正によって教頭、主事、生徒指導担当教員等の配置をはかっていますが、一学級当たりの教員数は現行法とほとんど変わらず、教職員の労働条件、教育効果の向上という面からは、ほとんど改善されていない点であります。いたずらに管理体制を強化いたしまして、ほんとうに教職員が十分研究時間を持ち、また生徒一人一人の個性を見詰め、行き届いた教育をしていくには、あまりにもお粗末な内容であるということを指摘せざるを得ないのであります。  第二に、養護教諭、実習助手、事務職員の配当については幾ぶんか改善されたとはいえ、これも高等学校設置基準には遠く及ばず、さらに技術職員、用務員など、現業関係職員の定数の標準は規定されておらず、教育関係者の切実な要望が無視されておるのであります。これが反対の第二の理由であります。  第三に、高等学校の教育多様化のための教職員定数加算の措置を政令に委任していますけれども、現在、後期中等教育のあり方をめぐりまして教育界には大きく議論が巻き起こっておる現段階で、また多様化の内容も、先般来の質疑を通しましてもきわめて不明確でありますのに、一切を政令に委任するということにはきわめて重大な問題があると考えるのであります。今日、安易な局校の多様化ということがほんとうの高校教育の本旨からはずれ、安上がりな職人養成のようなあさはかな施策にもし流れるとすれば、文化の進展に伴って、でき上がったときには、役に立たない部分品をつくったようなかっこうになることをおそれるのであります。今日、日本の産業が非常な発展を遂げた陰に、高等学校の教育あるいは大学における基礎的な修練というものがどれほど役に立っておるかということは、少しくこの問題に洞察を持つ方の一致した意見であります。そういう意味からも、この多様化の内容が明らかにされぬうちに政令に委任されるということに、危惧を感ずるのであります。具体的な方針が立ったときに、そのときどきに明確に年次を追って御提案いただけばいいことであると思うのでありまして、この点も反対の理由であります。  さらにまた、この法律の施行にあたって、五年ないし七年という長期にわたる移行期間でもって、しかも毎年度政令をもって経過措置を規定するという方法は、依然として劣悪な教育条件を残存させ、教育効果、教育水準の向上を抑制、するものと言わざるを得ません。政府文部省の御説明によりますと、これによっても交付税の対象等については増額をされる。だから、決してそういう心配はないといわれるのでありますけれども、従来の苦い経験にかんがみて、一たびこうした法律が施行されますと、逆に今日の苦しい地方財政の現状の中で切り下げられるという場合すら憂慮されるのであります。ことに特殊教育の問題につきましては、東京はじめ先進的な都道府県でいろいろとくふう、創意をもちましてその充実向上をはかっておりますが、本法の施行によって逆にこれが切り下げられることが、現場教師の大きな憂慮の種となっておるのであります。この点についてかなり詳細な質疑が繰り返されましたけれども、依然としてその心配が払拭できないのであります。  以上申し上げたような理由におきまして政府提案の本法に反対し、政府がすみやかにこれを撤回されるか、本委員会において否決し、社会党提案の二法を可決されるよう強く要望をいたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  76. 床次徳二

    床次委員長 鈴木一君。
  77. 鈴木一

    鈴木(一)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっております政府提案の公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数標準等に関する法律の一部を改正する法律案に反対の意思を表明いたします。  本改正案は、現状と比べまして確かに一歩前進であり、その点当局の努力、苦心のあとがうかがわれるのでありますけれども、おそらく国家財政、特に地方財政の実情の苦しい現状を考慮し過ぎたのか、われわれの理想とするものに対しましては、いま一歩の踏み込みが足りないと思うのであります。  このような立場から、私は反対の意思を表明いたします。(拍手)
  78. 床次徳二

    床次委員長 山田太郎君。
  79. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私は、公明党を代表いたしまして、このたび議題になっております公立同等学校の設置、適正配置及び教職員定数標準等に関する法律の一部を改正する法律案に反対の意思を表明いたします。  この法案は、教育の目的よりも財政措置を優先して、生徒の定員数を出すという考えに基づいておるように思われます。文部大臣も御承知のように、後期中等教育は、個人にとっても、また国家にとっても非常に重要な問題でございます。あわせて設置基準にもはるかに遠いこのたびの改正案は、教育の基本的目的からしてなお減少させるべきが妥当であると考えられます。また、改正案の教職員定数も、同じ目的から見るときに、授業時間数もほとんど現状と変わらない状況になり、依然として教職員のオーバーワークになる点が見受けられます。よって、教育の立場に立っての公立高校の定員数及び教職員定数適正配置でないと考えられます。ことに定時制夜間高校はもとより、ことさら申し上げたいことは、特殊教育については現状を無視した法案である点が多々あります。鳥取県あるいは岡山県等の例を徴してみても、それは歴然たるものがあります。しかし、旧法より改正案は、一歩前進をしていることは認めるにやぶさかではありません。  これらを総合して考えてみますと、わが党はあくまでも教育の基本的立場並びに目的感に立ち、公立高校の定員数並びに教職員定数適正配置を、より一そう政府は設置基準にもっと近寄せるべきであると思います。  これをもってこの法案に対し、反対の意見を表明するものであります。(拍手)
  80. 床次徳二

    床次委員長 以上をもって討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  81. 床次徳二

    床次委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  83. 床次徳二

    床次委員長 次回は、明後十六日、金曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十六分散会