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佐藤参考人 私は、私立
高等学校につとめる者でございますが、私立
高等学校の側からお話を申し上げることも、諸先生の御参考になるかと思いまして参りました。
いま世界の各国は、自国の将来を決定する青少年の
教育に、
ほんとうに競争でくふう、努力をこらしております。言うならば、まさに世界は
教育戦争の時代であると申しても過言でないと思います。このときに当たって、わが国でも、青少年の
教育、なかんずく
後期中等教育を担当する
高等学校の
定数法の一部を改定する
法律案を提案なさったということは、私国民の一人として、また
高等学校の
教育に携わる者としてたいへんうれしく思う次第でございます。
高等学校の
教育は、十五歳から十八歳の一番人間形成上むずかしい時期の
教育でございまして、非常に重要な意味を持っております。したがって、この
法案の改定にも、慎重かつ積極的な
措置を
希望いたしたいと思うのでございます。
そこで、いただきました
法案の要綱のところでございますが、三つのことを提案されております。それは、一クラスの
生徒の数の問題、第二には、
教師の
定数を算出する
基準の問題、第三は、いま御報告のありました盲
ろう、
養護学校の
高等部の問題でございますが、これを一読させていただきまして、二、三私の
意見を申し上げてみます。
第一に、この
法律案は、三十六年に出ました
定数法の普通科と商業科と家庭科においては、一クラス五十人だったのを四十五人にする、そういうふうになっておりますが、私は、この五十人を思い切って四十人にするのが適当であると思うのでございます。それはなぜかといいますと、この実際の
教育上の経験に基づきまして、五十人から五人減らすことは、五十人から十人減らして四十人にすることとの比較において、後者のほうが非常な、二倍といわず、もっと三倍も四倍も
教育上効果があがる、すなわち、この点をお考えになって、五十人を四十人にするのが適当ではないかと思います。それから定時制の課程にあっては、現行を四十人に改めるということでございますが、これも、先ほど公立の先生がおっしゃったように、これを三十数名にするほうが適当ではないかと思います。
それから、
教師の問題でございますが、
カウンセラーを置く場合には、
カウンセラーが
ほんとうに
カウンセラーを置かれた意味を発揮するためには、
生徒五百人に一人くらいが
限度ではないか、そういうふうに思います。
それから、勤労青少年のための
教育が、わが国の盲点といいましょうか、弱いところでございまして、このためにこの
法案では通信
教育の拡充が述べられております。けっこうだと思うのですが、ここで私は、勤労青少年のための
教育の機関として、定時制あり、通信
教育の充実あり、それから青年学級という問題がありますが、これはこの
法案とどういう関係があるか、ちょっとお尋ねしたいのでございます。
それから、この
法案の実施を、特に
教師の
定数の
標準の
改善については、原則として五カ年ないし事情によっては七カ年の年次計画で行なう、こうなっておりますけれども、この五カ年ないし七カ年というのは少し長過ぎるんじゃないかと感ぜられます。すなわち、
高等学校の
進学生徒はどんどん減ってくるんですから、まず
高等学校は三年間がワンラウンドでございますから、ここのところをあまり五年とか七年とかいっておりますと、現実のほうが先にいってしまって、
法律があとから追っかけていくということになって、この立法の趣旨にそぐわないという点が出てくるのじゃないかと思うのでございます。そこでこれを、私見としては、三カ年、そして特別の場合は五カ年というふうにしたらさらにけっこうじゃないかと思うのです。
以上が、私の今度のこの
法律案に対する
意見でございますが、私は
明治学院東村山
高等学校につとめておるんですが、これは
教員定数とか、あるいはクラス数については特殊なしかたをしておりますので、少し参考になるかと思ってまいりましたのですが、その資料の「
学校要覧」を見ていただきますと――これは昨年の資料でございまして、ことしはまだ印刷中でございますので、昨年のを持ってきました。
この
明治学院東村山
高等学校は、現在
生徒数が四百四十四名でございます。それから、二年ほど前から中学を併設いたしまして、中学がいま一年、二年とございますが、中学が百十六名でございます。全体として五百六十名ほどの小さな
学校でございますが、一クラスの数を
生徒二十六名ないし二十八名に押えてございます。たとえて言うならば、高一が百六十名ございますけれども、これを二十七名四クラス、二十六名二クラスの六クラス持っております。高二は百三十五名おりますが、二十七名の五クラス。高三は百四十九名おりますが、これを三十名のクラス四クラスと、あと二十九名を一クラス持っておるというような、非常に少数クラス制をとっております。それから英語を重視しまして、英語の時間には、この少人数のクラスの
生徒をさらに二つに分けまして、十三名ないし十四名を一クラスとして、同時に英語の
教師が一人ずつついて英語を勉強するのでございます。それから第三には、ある
程度の能力別クラス編制ということもいたしております。それから、これはおそらく日本に例がないと思うのですけれども、第四には、入学をなさるときに、の結果あまり成績がすぐれない人で、しかも、ぜひこの
明治学院東村山
高等学校に学びたいという人
たちには、本人と父兄と私どもと相談しまして、
高等学校は四年かかってもよろしゅうございますかということをお話し合いをしまして、そこでよろしいとなれば、入学していただきます。これが予約四年制といいまして、あらかじめ四年かかってもやむを得ないということを約束する、しかし、このクラスに入ったからとて、必ずしも四年かかるわけではなくて、一学期の末にもう一度試験をしまして、ああ、この分ならば三年コースでいけるなと判断した場合には、予約四年制でお入りになった
生徒さんでも、そのまま三年コースへ進めるわけであります。どうしてもだめだという場合には、二学期から中学復習コースを編成しまして、中学の復習をして、力をつけて来年は高一へいくというような方法をとっております。
教師の数でございますが、
教師は専任が三十七名、それから
非常勤講師が現在十五名ですから、
教師一人について
生徒が十二名くらいというわけでございます。そして
教師の持ち時間のリミットと申しましょうか、十七時間でやっております。
以上のようで、たいへんぜいたくなやり方をしておりますので、月謝を少し高くしないとできませんので、月謝は八千円でございます。これはこういうふうなことをやっておるので、八千円必ずしも高くない。たとえば、五十人、六十人の詰も込みの私立へ行きまして、そうして家庭
教師に週二回来ていただくとしますと、その
学校へ四千円くらいの月謝で行っておりましたとして、家庭
教師の方に週二回ほど来ていただくと、現在六千円くらいかかるのじゃないかと思います。食事をつけて五千円ないし六千円、そうすると、とどのつまり一万円くらい月にかかる。私どもの
学校では、八千円をいただいて、しかも少数に分けて二十六名ないし二十八名のクラスに二人の受け持ちがつく、そういうようなこと、あるいは英語の分級
授業、そういうようなことで、八千円ではあるけれども、それだけで家庭
教師も要らぬような
教育をしたい、こういうようなことをもくろんでおるわけでございます。幾らかこういう
学校もあるということを御参考までに申し上げた次第でございます。
どうも、現在、非常に
高等学校のカリキュラムといいますか、
授業内容がむずかしゅうございまして、大体都立でも三、四〇%の
生徒がこれについていけるのであって、あと六〇%くらいは何かわからない、不消化のままに卒業していくんじゃないかといわれておるこの時代に、クラス数をうんと制限して小さくして、そうして実力をつけようというのが、この
学校を開いた武藤富男院長のアイデアなんであります。
私の
学校の報告は以上でありますが、あと一言、二言申し述べさせていただきたいのです。それは、
後期中等教育は、
東京都の場合に、公立の
高等学校、都立の
高等学校が四、私立
高等学校が六――私立が二百五十九校ありまして、三十七万人ほどこれを
教育しております。四十年五月一日。そういうようなわけで、後期中等
学校の
教育を、私立もその六割ないし半分をともにになっておるということを御認識くださいまして、私立
高等学校の社会的、
教育的役割りをひとつ御認識いただきたいと思うのでございます。そして、国立、公立、私立を含めて、
高等学校対策として重点を指向していただきたい、そう思うのでございます。
なかんずく、
生徒数はこれから四十六年に向かって毎年どんどん減ってまいります。四十二年の高校入学者数は
全国で百三十七万、来年が推定百三十一万、再来年が百二十五万、
昭和四十五年には
全国で百二十二万と、どんどん減ってまいります。こういうような時期に、この私立
学校の
教育もまた公の
教育の一環であり、
憲法二十六条の
教育権の社会的要求にこたえているということを諸先生におかれましてもお覚えくださいまして、国や地方公共団体が、私立
高等学校にもその育成助長、補助というようなことをお考えくださるようにお願いを申し上げる次第でございます。
東京都の場合に、都立
高等学校の
生徒一人に対して、これは二年ほど前の統計ですが、年間五万一千四百四十四円の補助を出しておる勘定になります。それから、私立の
高等学校の
生徒一人に対しては、年間、需用費としましてことしで三千八百円いただけるようになりました。そこにたいへんな差がございますけれども、私ども私立関係のものは、日本私立中学
高等学校連合会とか、全私学連合会などによって、何とかして国からも私立
学校の助成の法制化といいましょうか、これをお願いしていくという運動が続けられることと思うのでございます。
これを要するに、国家の将来を決定する
教育にはもっと投資しなければならぬと思います。投資ということばは不適当でございますけれども、とにかく
教育へもっと金を使わなければならぬじゃないかと思うんです。国家もまた個人も、この
教育へ出し惜しみをしてはならない、日本が将来世界の有力な国として立つために、ぜひ
教育への金を惜しまず使いたいものでございます。どうも
教育は、その結果が抽象的でございまして、具体的にじきにあらわれるものではなく、また、その成果があらわれるのに五年、十年かかりますので、どうも出し惜しみといいましょうか、費用を惜しみがちでございますけれども、
ほんとうに国家百年の計を思うときに、この
教育に大いに予算を、あるいは個人的にも
教育費を出していくべきであると私は存ずる次第でございます。
以上でございます。