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1967-06-02 第55回国会 衆議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 久保田藤麿君    理事 中村庸一郎君 理事 西岡 武夫君    理事 八木 徹雄君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       稻葉  修君    久野 忠治君       河野 洋平君    中村 寅太君       葉梨 信行君    広川シズエ君      三ツ林弥太郎君    渡辺  肇君       唐橋  東君    川村 継義君       小松  幹君    斉藤 正男君       三木 喜夫君    山崎 始男君       麻生 良方君    有島 重武君       山田 太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 剱木 亨弘君  出席政府委員         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         文部省文化局長 蒲生 芳郎君  委員外出席者         参議院議員   楠  正俊君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 六月一日  委員稻葉修君、木村武雄君及び竹下登辞任に  つき、その補欠として赤城宗徳君、中村梅吉君  及び田中角榮君が議長指名委員選任され  た。 同日  委員赤城宗徳君、田中角榮君及び中村梅吉君辞  任につき、その補欠として稻葉修君、竹下登君  及び木村武雄君が議長指名委員選任され  た。 同月二日  委員木村武雄君及び吉田賢一辞任につき、そ  の補欠として西岡武夫君及び麻生良方君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員麻生良方辞任につき、その補欠として吉  田賢一君が議長指名委員選任された。 同日  理事菊池義郎君同日理事辞任につき、その補欠  として西岡武夫君が理事に当選した。     ————————————— 六月二日  オリンピック記念青少年総合センター法の一部  を改正する法律案内閣提出第七一号)(参議  院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第  二六号)(参議院送付)  公立高等学校設置適正配置及び教職員定数  の標準等に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第八九号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  内閣提出著作権法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。剱木文部大臣
  3. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 今回政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  昭和三十七年以来、文部省は、著作権制度の全面的な改正作業を進めてまいりましたが、この間、改正作業中に著作権保護期間が終了する著作権者を救済するため、二回にわたり保護期間暫定延長が行なわれ、現在著作権の原則的な保護期間著作者の生存間及びその死後三十五年とされていることは、御承知のとおりであります。  著作権制度改正に関する著作権制度審議会答申は、四年間にわたる慎重な審議を経て、昭和四十一年四月に提出されました。  文部省におきましては、この答申基礎として鋭意法文化につとめ、昭和四十一年十月には、試案として著作権及び隣接権に関する法律草案を取りまとめ、それを公表して関係者その他の意見を聴取するとともに、政府案の作成に努力をいたしているのでありますが、著作権制度全面的改正ということの性質上、なお成案決定には日時を要する事情にあるのであります。  また、国際的には、来たる六月から一カ月間ストックホルムにおいて、わが国が現に加盟し、現行法がその基礎といたしております文学的及び美術的著作物保護に関するベルヌ条約改正会議が二十年ぶりに開催されることとなっており、この改正会議動向いかんによっては、国内法をさらに検討する必要が生ずることも考えられます。  これらの事情から、いましばらくの日時をかり、さらに慎重な検討を重ね、適切妥当な成案を得て、著作権制度全面的改正についての国会の御審議をいただくことが適当であると考えるに至りました。  よって、この際、従来二度にわたる暫定措置趣旨にかんがみ、著作権制度全面的改正の実施されますまでの期間考えまして、さらに保護期間を暫定的に延長することといたしたいと考えます。  本案内容は、以上の理由により、現行著作権法第五十二条により五年間暫定的に著作権保護期間が延長されている著作物に関し、従来の措置趣旨に沿ってその著作権保護期間をさらに二年間再延長し、当分の間三十七年とするものであります。  以上が、この法律法を提出いたしました理由及びその内容概要であります。  何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  4. 床次徳二

    床次委員長 なお、本案参議院修正を経た議案でありますので、その修正趣旨について説明を求めます。参議院議員楠正俊君。
  5. 楠正俊

    楠参議院議員 ただいま議題となりました著作権法の一部を改正する法律案に対する参議院修正につきまして、御説明申し上げます。  本修正は、各党各派共同提案にかかるものであります。  最初に、修正点について申し上げます。   著作権法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第五十二条の改正規定を次のように改める。   第五十二条中「三十五年」を「三十七年」に改め、同条に次の二項を加える。   第六条中三十年トアルハ演奏歌唱著作権及第二十二条ノ七二規定スル著作権除ク外当分ノ間三十二年トス   第二十三条第一項中十年トアルハ当分ノ問十二年トス  次に修正理由を申し上げます。  御承知のとおり、団体名義著作物及び写真著作権保護期間につきましては、すでに著作権制度審議会答申文部省文化局試案、いずれも公表後五十年という大幅延長の線を出しておりますが、現行法のままであれば、保護期間三十年または十年を経過すればこれら著作権は永久に消滅してしまうのであります。本修正は、右の事情を勘案して、法の全面改正までのつなぎの措置として、これら著作権保護期間について、一般著作権と同様に二年暫定延長せしめ、その間に消滅すべき権利の救済をはかろうとするものであります。  以上であります。
  6. 床次徳二

    床次委員長 以上で修正趣旨説明を終わりました。      ————◇—————
  7. 床次徳二

    床次委員長 次に、文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。麻生良方君。
  8. 麻生良方

    麻生委員 私の質問をお取り上げいただきまして、委員長ほか各位に厚く御礼申し上げます。  本日は、あまり時間がございませんので、要点を二つにしぼりまして、文部大臣及び関係政府委員の方に御質問したいと思います。  その前に、ちょっと申し添えさせていただきますが、きょうの私の質問は、党派の決定というよりかも、国会における芸術関係議員懇談会の中で討議をされました問題を、超党派的にまとめた各議員関係の意向を代表して御質問を申し上げさせていただきますので、御答弁も、ひとつその趣旨を御了解の上御答弁をちょうだいしたい、こういうふうに思います。  きょう御質問二つの点とは、一つ芸術院制度に関する問題と、もう一つ美術行政一般の中で、特に博物館法美術館の関係についてお尋ねを申し上げたいと思いますので、あらかじめひとつ大臣政府委員の方の御了解を求めて御質問をさせていただきます。  まず第一に、芸術院制度の問題でありますが、本政令ができましたいきさつにつきまして、初めに大臣からひとつ簡単に御答弁をちょうだいしたいと思います。
  9. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 大臣に御質問でございますが、経緯について私からお答えいたしたいと思います。  日本芸術院の沿革については、先生すでに御承知と思いますけれども、これは当初は明治四十年に美術審査委員会官制というものができまして、この美術審査委員会は、文部省美術展覧会、いわゆる文展の開設に伴いまして、その出品作品を審査するというものであったわけでありますが、大正八年に至りましてこれが廃止になりまして、新たに帝国美術院が置かれたわけであります。これは文部大臣の管理のもとに美術の発達に寄与する目的をもちまして、文部大臣諮問に応じて美術に関する意見を開陳し、その他美術に関する重要事項を建議する機関ということになっておりまして、その会員の身分は当時勅任官待遇であったわけでございます。その後、昭和十二年に至りまして新たに帝国芸術院官制が制定いたされまして、従来の美術部門だけのほかに文学及び音楽部門が追加されまして、会員定員も従来の五十人から八十人に改正されております。さらに、戦後昭和二十二年になりまして、政令をもちまして帝国芸術院が新たに日本芸術院と改称されまして、定員もさらに八十人から百人以内に改定されておりますが、さらに昭和二十四年に至りまして、政令第二百八十一号をもちまして現行日本芸術院令が制定されまして、それまでの諮問機関というものから栄誉機関という性格に変わったのでございます。さらに、昭和三十六年に政令の一部が改正されましたが、これで定員百人以内とありますのをさらに二十人増加いたしまして百二十人以内に改めた、かような次第でございます。
  10. 麻生良方

    麻生委員 この政令の制定のいきさつは、大体いま言われたとおりであろうと私も思います。ただ、本政令が施行されてから、いろいろな論議が国会の各級の係関係機関でかわされておりますが、特にいままでこの芸術院制度の問題について、国会の各級機関で取りかわされたことがありましたならば、それを御説明いただきたい。
  11. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 これまで国会あるいはその他関係方面現行芸術院制度についていろいろ言われておりまするその一つといたしましては、現在芸術院会員会員が選ぶというたてまえになっております。その点……。
  12. 麻生良方

    麻生委員 ちょっと質問の要旨が誤解されておるようです。私の申し上げておるのは、国会関係委員会の中でこの問題に関する質疑が行なわれたことがあるか、あるとすればそれはいつどの委員によって行なわれたか、こういうことをお聞きしているのです。
  13. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 今国会においてはまだございませんけれども、昭和三十八年に衆議院の予算委員会におきまして、これは二月の四日でございますが、加藤清二代議士から日本芸術院会員選挙方法並びに待遇、それから選挙運動のことに対しまして質問がございました。さらに、昭和三十八年の二月二十日に、同じく加藤代議士から重ねて同じようなことについて質問がございました。
  14. 麻生良方

    麻生委員 終戦後の国会においてという意味で今国会までという御質問を申し上げたのですが、まだありますね。お調べになっているのはたいへんでしょうから私のほうから申し上げますと、昭和三十二年七月九日、十日両日にわたりまして、社会党高津正道委員からこの問題について相当突っ込んだ質問が行なわれております。それは社会的にも相当の問題を提起している質問になっております。それから同じく三十五年三月九日、文教委員会で、これまた社会党小牧次生委員から芸術院制度の問題についてかなり突っ込んだ質疑が行なわれております。この二つと相まちまして、いま御説明された三十八年二月二十日、予算委員会分科会で同じく社会党加藤清二委員からこの問題が出ております。そういうように、いままで前後三回にわたりましていろいろな角度から、この芸術院制度に関する質問及びそれと日展との関係について質疑が行なわれております。  私は、きょうはそういう質疑内容をここで繰り返すつもりはございません。ただ、そのときの質疑内容において特に問題点になった幾つかの課題があると存じますので、その問題になった点をひとつ政府委員のほうから御答弁を願いたい、こう思います。
  15. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 問題になった点もいろいろございますが、先ほど申しました会員会員自体が選ぶというのは客観性を欠くのじゃないか、であるから別に選考委員を設けて会員を選んだらどうか、こういう点が一点でございます。それから、現行制度では院長は必ずしも会員から選ばなくてもいいということになっているが、そういう点はどうか、なぜそういうことになっておるのかということ。さらに、現在、芸術院政令によりまして三部から成っております。一部が美術関係、二部が文芸関係、三部が音楽、演劇、舞踊という芸能関係、この三部に分かれております。一体それだけですべての芸術分野が網羅されておるかどうか、さらに、たとえばいわれておりますのは、写真でありますとかあるいは華道でありますとか、そういう分野も取り入れてはどうか、こういう点が問題になっておるように承知しております。
  16. 麻生良方

    麻生委員 政令上の問題点としては、いまおっしゃられるとおりだろうと思います。よく御承知でいらっしゃる。政令上の問題点に関連して、いままでの三つの問題の中で常に問題になるのは、芸術院会員選考の中に、いろいろな黒いうわさが流布されているということについて、特に参議院では具体的な事実をあげて質問されております。こういう点についてもお忘れのないように御記憶を願いたい、こういうふうに思います。  そこで、私はきょうは、そういうようなかつての先輩議員方々が御質問された点を繰り返し御質問するつもりはありませんが、いま政府委員がおっしゃられたように、問題点はすでにもう出ておるわけですね。そういう問題点について、いま文部省内において具体的にそれを検討した機会ないしは機関設置、あるいは検討した事実、それがおありかどうか、それをお答え願いたい。
  17. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 選挙をめぐりまして疑惑が持たれておるというような質問国会でありまして、当時の芸術院院長に並びに芸術院会員方々に、国会でございました質問あるいはその他につきまして十分お伝えいたしまして、芸術最高機関であります芸術院として恥ずかしくないように、良識に基づいて公正妥当な選挙その他の運営をされたいということを申し伝えまして、そして自粛を喚起し、芸術院自体におきましても、公正に運営が行なわれるように決議をされておるというふうに聞いております。
  18. 麻生良方

    麻生委員 いまのあなたの御答弁は、要するに黒いうわさその他について、以後そういうことがないように芸術院運営をうまくやれということを御注意なさったようである。しかし、あなたが初めに御答弁された政令そのものの中にある問題点に、文部省の中で、それを改正する、ないしは検討するための具体的な方策を講じたことはあるかという御質問であります。
  19. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 昨年文化局ができましてから、芸術院あり方運営しかた等につきましては、内部におきまして、いままでいろいろ指摘されました点について研究はいたしております。
  20. 麻生良方

    麻生委員 研究はされているけれども、さっぱりその成果があがっておらないというのが実情だろうと思うのです。私は、きょうは、もう局長もすでに御存じですから、一歩前進させる方向で御質問申し上げたいと思うのです。やはり黒いうわさとか黒い関係が生まれるのは、その黒い霧を起こした当人の責任よりか、その制度そのものに何らかの矛盾と欠陥があるからそういうような現象が起こってくると考えるのが、あなた方の立場としては当然だろうが、考えてもらわないといけない。そこで、もう一度若干蒸し返しになるかもしれませんけれども、政令によりまして御質問申し上げますので、御答弁願いたい。  まず、先ほど政府委員答弁されたように、選任方法についていろいろ問題点があるということでありました。あなた自身問題点があるとお考えになるか、全くないとお考えになるか。
  21. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 すでに御承知のように、芸術院会員選挙方法につきましては、古く芸術院官制時代から、会員自主性を尊重いたしまして、会員会員候補者をみずから推薦して、そして投票によって選挙するという方法がとられて今日まで至っているわけでございます。したがって、別な機関を設けたらどうかという御意見に対しましても、そういう考え方もあるいは一方で成り立つかとも思いますけれども、しかしながら、いま申しましたように古くから現在の方式をとって今日までまいっておりまして、長い伝統を尊重いたしまして、会員選挙芸術院にゆだねておるという状況でございます。これは学士院についても全く同様でございます。この会員選考芸術院の行なっております事業の重要な一つでございまして、いまこれを直ちに改めるということは、芸術院あり方に重大な影響を及ぼすということになりますので、仰せのような意見も勘案いたしまして、今後慎重に検討を続けていきたい、こういうふうに考えております。
  22. 麻生良方

    麻生委員 あなたが言われた、いまの選び方は長い伝統に基づくものだと言われる、そこに問題、があるのです。大体この法律をつくりましたのは、芸術院官制からこれに移行した大きな根拠は、かつて芸術院官制、戦争以前は官僚とある種の芸術家が結んで、そこに一つの権限を得る機関をつくっていった。だから、官制時代においては相当の権力を持っておったわけです。そういうものをなくしていくために、先ほど御答弁にありましたような諮問機関的な性格から純然たる栄誉機関性格に移して、これを民主化していこうというのがねらいでこの政令ができておる、私はそう解釈しておる。それはあなたが先ほど御答弁なさったとおりです。としますと、古い伝統だからそれを守らなければならないということは成り立たない。むしろ古いからこそそれを変えていかなければならない、こういうふうに、お考え角度をちょっと変えていただかなければならないと私は思うのです。  そこでお尋ねしますけれども、栄誉機関ということになれば、芸術家栄誉というものはだれが認めるのですか。自分自身が認めるのですか、第三者が認めるのですか。
  23. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 それは国家が認めるというふうに考えております。
  24. 麻生良方

    麻生委員 これはたいへんな御答弁です。国家が認めるという御答弁は聞き流しておきます。そのことばじりをとらえません。私が言うのは、常識論として、私が自分芸術する場合、自分のかいた作品価値の評価というものは、第三者が行なうものか自分自分栄誉をきめるべきものか。栄誉というものはどういう性格かということを申し上げておるのです。
  25. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 それは、私、国家ということばを用いましたけれども、用いましたことは、会員を任命しますとか、あるいは年金を支給しますとかいうのは国家でございますので、そういう意味国家ということばを使ったのでございますけれども、いま御質問のような趣旨からいえば、それはみずからが認めるのではなくて、第三者が認めるということだろうと思います。
  26. 麻生良方

    麻生委員 それは常識なんですよ。自分価値自分で認めるというのは、芸術家個人としては、どんな芸術家でも、自分作品が世界のだれのよりもすぐれておるものだ、こういう自負を持たなければ芸術活動なんてできるものではない。それはしかし、芸術家の主観である。その作品を判断するのは第三者が判断し、その芸術家の功績、栄誉、これは第三者が判断する、これは当然であります。それがあなた当然だとおっしゃるなら、この政令の中に会員選考する方法が出ておりますね。「会員は、部会が推薦し、総会の承認を経た候補者につき、院長申出により、文部大臣が任命する。」こうなっておる。これは、部会というのは会員によって構成されるわけですね。それから総会というのも会員によって構成されておる。だから、言いかえれば、これは会員自分たち自分たちの仲間を推薦して、形式的に文部大臣が任命する、こういうことになるのですよ。だから、この芸術院制度政令の一番の矛盾点は、栄誉を受けた者が、自分たち後継者たる者をきめるのに、自分たちの手で行なうというきわめて矛盾した政令になっておるのです。この矛盾がなぜ生まれてきたかといえば、私の考えでは、あなたが答弁したように、官制からこれを切りかえるときにいろいろいきさつがあって、以前からずっと官制時代会員をそのまま存続させなければならないという、そういう状態があったから、やむを得ずこういう形になって残ってきておると思う。しかし、もうそれから相当の年月がたっておるから、私は、この選任方向については、やはり常識的な線に沿って、栄誉を受ける者は第三者が推薦するというたてまえに立って御検討すべき時期に来ておると思う。私はすぐやれと申し上げておるのではありません。そういう時期に来ておるから、あなたもひとつ積極的に御検討を始めていただきたい、こういうことをお願いしているのですが、そのことについての御見解をお伺いしたい。
  27. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 先ほどから申し上げますように、非常に長い伝統、歴史を持っている芸術院でございます。しかし、いま仰せのように、時代の推移とともに時代に即応したような体制がとられなければならないということも十分わかります。しかしながら、その歴史的な立場、それから新しい時代に即応する立場というものを、両方考え合わせまして今後もさらに十分検討を続けていきたい、かように考えております。
  28. 麻生良方

    麻生委員 その先はあとで大臣にも御所見をお伺いしますので、もう少し関係政府委員に御答弁を願いたいと思います。  いまのような選考制度のもとに、先ほど申し上げたようにいろいろな黒いうわさが出ております。その結果として、相当著名な芸術家が、本会員から脱会ないしは退会ないしは辞退をされておりますが、その実例を一、二あげていただきたい。
  29. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 昭和十六年に川端龍子先生、それから二十一年に徳富蘇峰先生同じく二十一年に富本憲吉先生、二十二年に菊池寛先生、二十五年に横山大観先生、三十年に藤田嗣司先生、三十二年に梅原龍三郎先生、三十三年に小杉放庵先生、こうなっております。
  30. 麻生良方

    麻生委員 いまあげられた方は、大半は世界的に通用する芸術家ですよ。私は、いま残っておられる芸術院会員と比較するつもりはありません、これはたいへん失礼なことでありますから。ただ、あなたがいま名前をあげられた方々は、いずれも貴重な、日本の生んだ誇るべき芸術家です。これらの芸術家が、芸術院会員を何らかの理由脱会ないし退会されるということは、このことだけでも、芸術院制度の問題について相当御反省をしなければならぬ理由になる。しかし、私はいま、それらの方々退会された理由はそれぞれ当時の新聞その他に談話として、あるいは雑誌に出ておりますので、それを申し上げるつもりはございません。ただ、あなたの念頭に置いていただきたい。こういう方々退会脱会をされなければならぬような不明朗な選考方式ということですね。つまり、会員自分の補充をするのに会員によって補充するということは、ある意味における世襲制度であります。そこには、自分のふだんかわいがっている弟子を何とかもり立ててやりたいという気持ちが起こるのは、人情として当然です。そういう点から、この会員による会員選考方式にはきわめて矛盾があるということにもつながってくるわけでありますから、十分ひとつ御検討の材料にしていただきたい、こういうふうに思います。  次に、構成についてあなたは先ほど問題点があると、こう言われましたね。この構成及び定員の割り振りについてちょっとお尋ね申し上げます。  この政令は、現在は百二十名の定員になっておりますね。欠員があるようでありますが、どのくらい欠員がありますか。
  31. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 定員百二十名に対しまして現在欠員が十二名でございまして、その内訳は、第一部、美術部門が二名、第二部、文学部門で三名、第三部の音楽、演劇、舞踊部門で七名、計十二名になっております。
  32. 麻生良方

    麻生委員 欠員の問題の補充方についてもいろいろ問題がありますが、きょうは時間がありませんから、それは省略をいたします。  そこで、お伺いしたいのは、これは各部門定員の割り振りができておりますね。その割り振りは、時間がございませんから私のほうから申し上げますが、第一部門美術、五十六名、それから第二部門の文芸が三十七名、第三部門音楽、演劇、舞踊等を含めて二十七名。この割り振りの根拠はどういうところにあるのですか。
  33. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 これは実は歴史的に見まして御説明申し上げますと、大正八年に、先ほど申し上げましたように帝国美術院ができまして、当時は定数五十人以内でございましたが、これは美術部門だけでございます。さらに、昭和十二年に文学部門音楽部門が新たにできまして、帝国芸術院ができたわけでありますが、その際は、定数が、美術は五十人以内、変わりません、それから文学が二十人、音楽が十人ということで八十人になったわけであります。それから昭和二十二年にまた二十名増員になりまして、このときも美術部門、第一部は五十人以内で変わっておりません。ただ、文芸と芸能がそれぞれ十人増員になった。さらに三十六年に二十人増員の際には、美術部門が六人と文芸関係が七人増、芸能関係同じく七人増で現在のような割り振りになったわけでございますが、こういういきさつからいたしましても、各部の定員はあくまで総会の話し合いで円満に成立したものでございまして、特に理論的な根拠とかいうものはないように思います。
  34. 麻生良方

    麻生委員 要するにこの官制時代、つまりずっと以前に、大体これは美術家中心としてできておったものがこういうふうに改正されてきたから、美術部門が多いということの御説明でしょう、それは私は了解できます。しかし、今日の芸術院の任務とその性格というものは、そうではなくなってきておる。特に幅の広い芸術関係全般に、公平に及んでいかなければならない要請が生まれてきております。そういうような点からこの人数の割り振りを見ますと、これははなはだ矛盾した結果になります。つまり古い話をすればなるほどとうなずけるが、現在の時点においてこの割り振りの根拠を考えると、一体なぜ、美術をやる者が圧倒的に多くて文芸をやる者が少ないのか、音楽や演芸をやる者が少ないのか、そういう矛盾が当然生まれてくる。したがって、私はこの割り振りを追及するつもりはありません。いままでのいきさつはよくわかりました。しかし、今後は、やはり幅広く門戸を開放する意味において、もう一度この割り振りは再検討する必要があるように私は思うのであります。あなたの御所見を承りたい。
  35. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、最近は、たとえば写真でございますとか、あるいは華道でございますとか、あるいは茶道でございますとか、こういうやはり芸術分野に属する部門が非常に盛んになってきておりまして、そうしてりっぱな芸術家も続々と出てきておるような状況でございます。したがいまして、こうした新しい分野をこの芸術院の中に取り入れていくことは、やはり時代の要請に即応するものではないか、私かように脅えております。したがいまして、そういう面につきましても、あわせまして今後芸術院とともに研究してまいりたい、かように考えております。
  36. 麻生良方

    麻生委員 たいへん私もその御答弁には満足であります。ただ、もう少しあなたの御見解をお伺いしておきますが、この部門の中の割り振りの人数の矛盾はいま御指摘したとおりですが、割り振りそのものにも、いまあなたが御指摘になったような矛盾が生まれてきておりますね。たとえば書道というものが入っております。それから華道とか茶道というものが入っていない。これは一体、書道が芸術で、華道、茶道が芸術でないと認定されておるかという反問に対して、この政令は答えられないのですね。あなたお答えになれますか。
  37. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 これは、当時政令がつくられましたときに、この芸術院部門に入っていないです。どう考えておったかは別といたしまして、先ほどから申しますように、新しいそうした分野がどんどん進歩してまいります現状におきましては、やはり考えなければならない問題だろう、かように考えております。
  38. 麻生良方

    麻生委員 もう一つの問題は、この美術の中に建築が入っている。建築は美術の一部門であるかということになるのですが、これはあなたの御見解ではいかがですか。
  39. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 私は、建築も美術部門に入るものと考えております。
  40. 麻生良方

    麻生委員 それは主観の問題でありますが、もしその点についてなおあなたの認識を改める必要があれば、全建築家の代表をお集めになって、建築が一美術部門として今日世界的に通用するかどうか、これはひとつ、あなたのおつむの中をもう一度切りかえていただかなければならない。もはや建築は、新しい芸術様式として世界的に独立した様式であります。これは常識であります。こういう点についても、もう一度御検討を願いたいと思います。  それからもう一つ、最近の新しい芸術部門でデザインという部門ですね。このデザインというものは、特に芸術の大衆化というものをねらいとしてあらゆる面に進展しておりますが、このデザインというものをあなたは芸術とお考えになるかどうか。
  41. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 デザインにつきましては、洋画部門考える向きもございますし、また、商業美術という考え方をされる向きもございますが、いずれにいたしましても、最近このデザインの進歩に伴いましてやはり美術の中に入るもの、こういうように考えます。
  42. 麻生良方

    麻生委員 とすれば、やはりデザインの問題も、これから新しい部門として当然検討していかなければなりませんね。そういうことになる。  そういうようなことで、特にまた日本画と洋画というものを区別しておりますが、私は自分でもいささか絵をかきますが、最近は、特に日本画と洋画という区別がきわめてしにくくなっておるんですよ。あらゆる画材、その他テーマあるいは対象、そういうものにおきまして区別がしにくくなっている。ただ、絵の具の質が違うことによって日本画と洋画の区別をしております。だから、こういう区別のしかたもこれから検討していただきたい。これは一つの御注文であります。これもひとつ頭にとめておいてください。  次の問題に入りますが、先ほど御答弁の中で、院長の任命についても問題点が出ておった、こういう御答弁ですね。この政令を見ますと、院長だけは全然会員外から選任されることになっている。これはきわめて常識外であります。どの会であろうと、その会を代表する者は、会員互選なりあるいは会員の中から文部大臣がお願いをしてなっていただくなら話はわかるが、特に院長だけを会員外から選ばなければならない根拠がおありかどうか、ちょっとお答えいただきたい。
  43. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 先ほど来申し上げますように、芸術院の中に美術部門、文芸部門あるいは音楽・舞踊部門、こういうふうに現在でもきわめて分野が広範であります上に、同じ芸術と申しましても、それぞれまた異質な芸術分野が集まっておるわけでございます。そこで、常識的に考えました場合に、特定の分野から院長を選出して、そしていま申しましたように一部、二部、三部を通じてその院を統轄し、円満な運営を期するということが困難な場合が考えられる。したがって、そうした院の各部を調整しまして、円滑な運営をするというためには、芸術に理解のある幅の広い文化人を、会員の外から院長に選出したほうがよい場合も考えられるわけでございます。その間の事情を物語るものといたしまして、過去におきます歴代の院長は、黒田清輝先生会員から院長にかつて選ばれた以外は、今日まで六人の院長がすべて会員外から選ばれておるという実情になっております。しかし、なお現行の規定でも、会員から院長を選ぶことは一向に差しつかえがない。したがいまして、あくまでも会員候補者を推薦して会員選挙で選ぶわけでございまして、芸術院自体の意向で時の院長が選ばれる、かようなことになっております。
  44. 麻生良方

    麻生委員 あなたの御説明のようなこともないでもないでしょう。とにかく日本画とか洋画とか、こまかく部門別に分けて、それぞれ定員制をつくって、あまりきちんと割り振りをきめ過ぎておるために、どの部門から出ても異議が出るというようなこともございましょう。しかし、少なくとも、ここに選ばれてくる人は、栄誉を受けられるほどの常識があり、かつ最高の考え方を持っている人たちでありますから、でき得べくんば会員の中から、お互いの互選によって代表が選ばれていくという方向に、文部省としては御指導いただくほうが私は妥当だろうと思うのです。しかし、これは意見だけにとどめさしていただきます。  次に、この芸術院会員には何がしかの年金が出ておると思いますが、どのくらい出ておりますか。
  45. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 本年度から十万円増額いたしまして、一般会員が六十万、部長が七十万というようなことになっております。
  46. 麻生良方

    麻生委員 年金という点から考えれば、あまりにもこれは微少過ぎる。少な過ぎる。五十万円を一年間でありますから、一カ月に割り振ってみれば、全くこれはたいへん失礼な金額であります。  もう一つ。私はこの年金制度の問題について根本的な問題を投げかけたいのですが、この栄誉を受けられる、つまり栄誉として選ばれた人が年金を受けるということと矛盾しやしないかということです。栄誉には当然一つの報償というものはつくと思います。だから私の考え方では、年金のあり方というものは廃止をして、会員になられたときに、その栄誉を保障する意味において一時的な報償金制度に切りかえたらどうかという意見を持っております。しかし、これは私の意見でございますから、あなたも念頭にとどめておいていただいて、この年金制度の問題はお考えをいただきたい。私は、特に芸術院会員の中のある種の人々が、これだけの年金をもらってとやかく言われるのは不本意であるという意見を一、二聞いております。かえってなまじっかないほうが、自分たちとしてはもっと純粋に受られる。何か年金ほしさに受けたと思われるのはなはだ心外だという人もかなり多い。私が見ましたところ、この芸術院会員の生活は、いずれも堂々たる御生活でありまして、年金をもって生涯を保障しなければならないような方は、私のお見受けするところないように思われます。したがって、もしそれだけの予算がおありになるのなら、むしろ芸術院として、これから伸びてくる、金もない、苦労している若い芸術家の人たちに、何らかの形でこれを還元していくという方法をおとりになったほうが、芸術院会員の御意向にも沿うのではないか、そういう考えがありますので、これをひとつ御検討いただき、後ほど大臣の御答弁をちょうだいしたい、このように思います。  それから、時間があまりありませんから最後に入りますが、いままでの三人の先輩の質問の中で、いつでもからんでくるのは、この現美術部門会員の中で、日展との関係がいつでもからんでくると思うのですね。日展系と思われる会員は何人おりますか。——時間がありませんから、それは事務上お調べになっておらなかったと思いますから、私のほうで調べた結果を申し上げますと、美術部門の全会員のうちで日展系にあらざる会員と思われる方は、二科展の東郷青児さんと二紀会の宮本三郎さん、たったお二人であります。あとはほとんど日展系に属する会員であります。これは事実として、日展系の人たちだけが栄誉を受けるに値すると判断されたというなら別でありますが、しかし、今日世界的に通用している画家は、実は日展系よりかも、在野ないしはどの団体にも所属しない芸術家の方が多いんですよ。そういうことを考えますと、この選考にとかく日展系との関連がうわさをされてくるということは、やむを得ないことだと思うんですね。どうお考えですか。
  47. 蒲生芳郎

    蒲生政府委員 いまお説のように、日展系が非常に会員には多いということは事実でございます。しかし、日展とそれから会員との関係につきましては、やはり日展系の人に従来はすぐれていた方が多かったということを証明するものであろう、かように私は考えております。
  48. 麻生良方

    麻生委員 それはこの政令ができたときのあなたの御説明のように、官制時代からのある意味における会員構成伝統を引き継いでおるから、こういう結果になっておるにすぎないのです。ざっくばらんに申し上げれば。そう申し上げては会員に選ばれている人には失礼でありますが、私はここで会員になっておる方の資格を言っておるのではない。ただ、そういう過去のいきさつがあるから、必然的に、選ばれている会員は、自分に所属をする、あるいは自分の会派に所属する者を引き上げていこうという気持ちになるのは当然なんですが、その結果がこういう事実になってあらわれておると思うんですよ。いずれにしてもこれは弁解の余地がないんだ、こういうことでは。私は名前をあげろとおっしゃれば、芸術院会員以外に、世界的に市価が高く評価されておる芸術家の名前をたくさんあげることができますよ。私は外国にも行って、外国でむしろその市場価値が高く評価されておる作家は、芸術院会員にあらざる作家のほうが多いんです。これは、はなはだ私は外国に行ったときに残念に思いました。日本芸術院会員であるという作家の価値評価よりかも、芸術院会員にあらざる作家の価値評価のほうが外国で高いという事実は、私どもは相当考え直さなければならない。これからの芸術の評価というものは、世界的でなければいかぬですよ。いいですか。日本という小さな国の中で、井戸の中だけで評価されたものをもって、芸術家として日本に貢献をなしたと考え時代はもう過ぎた。世界的にその芸術家日本の文化発展のために貢献をしたかどうかということが、栄誉を与えるかどうかの重大な価値基準になってきつつあるんですね。そういう観点から考えますと、やはりこれはもう一度初めの選考方式に戻らざるを得ない、こういう結果から見まして。ですから、このことを大臣もよくお心にお含みいただいて、やはり、こういう矛盾も出てきておるわけでありますから、選考の問題についても再検討を加える必要があると私は思います。  そこで、私は、最後にひとつ大臣にお伺いしたいのですが、大臣は御専門じゃないでしょうから、あまりこういうことについて詳しく御研究されておることはないと思います。しかし、いま私と政府委員との間のやりとり、さらにまた、お時間がありましたら、かつての先輩委員たちが、この文教なり予算委員会で取りかわされた質疑内容等を大体御検討いただき、いまの私と政府委員との一問一答をお聞きになると、いずれにしても、この現行政令は、私廃止せよと言うておるのじゃないのです。この政令趣旨は、ほんとうなら純然たる栄誉機関としての芸術院にしたい。ところが、いまは、芸術院というものは栄誉機関であると同時に、戦争中と戦前における権力がそのまま残って、ミックスされている状態になっているところに問題がある。芸術家というのは、本来権力を求めめるべきじゃないんです。芸術こそ権力を否定するものなんですね。それであるにもかかわらず、この制度のために、芸術家がややもすれば権力に結びついているかのごとき印象が与えられているということになる。そこで、私は本来のこの政令趣旨から考えて、今日、もう時間が相当経過しておりますから、いままでの論議の過程の中で、とにかくこれを再検討する必要があると私は思うのですが、再検討する必要があるかどうかについての大臣の御所見を承りたい。
  49. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 ずっといままでの先生政府委員とのやりとりを承っておりまして、私、ここで取りまとめて私の考え方を一応申し上げたいと思います。  第一に、国会内部で芸術関係に非常に御関心のございます議員の方々が、超党派でいろいろこういう芸術の問題につきましてお話をいただき、また、この芸術院あり方等につきましてもいろいろ御論議をいただいておることを承知いたしておりますが、私はまことにありがたいことだと存じております。  結論から先に申し上げますと、私は、先生がおっしゃいましたように、日本芸術家の中で最高の権威があり、日本芸術、世界の芸術に非常な貢献をした方々に対しまして、国といたしまして最高の栄誉を、形は問いません、とにかく栄誉を差し上げるということは、やはり今後続いてまいります芸術家に対しまして大きな刺激にもなりますし、芸術の発展という意味から申しましても非常に意義あることではないかと思います。  それでは、はたしてこの最高の栄誉を与えるような仕組みに、いまの日本芸術院がなっておるかどうかということについて、いろいろな点からの御意見なり御研究された面がございまして、日本芸術院はやはり発展の過程におきまして——一番最初にできましたのは、その当時の文展を審査する審査員をきめるということから発足いたしまして、いろいろ変遷をいたしまして、まあこれは文展あるいは日展との関係だと思いますが、これは、当時文部省がいわゆる官製の展覧会を、日本芸術を振興するという意味でやりましたが、文展そのものの存在につきましても、官製的な展覧会の主催に対して、当時からいろいろな議論がございました。まあ文展に参加する者としからざる者と分かれてまいったわけでございます。そうして文部省が直接に展覧会をやるのに対しての批判もございまして、場合によって芸術院が主催者になるというような形をとってまいりました。終戦後におきましては、そういう官製の展覧会はいけないという一つの批判が起こりまして、三十三年でございますか、完全に文部省の手を離れまして、また芸術院の手を離れて、独自の立場で展覧会が行なわれて今日に至っております。ところが、その日展と非常に密接な関係におきましてずっとやってまいった芸術院性格でございますので、いま申されますように、その会員の中には日展系の人が大部分を占めておるとか、こういう伝統的な一つのあれが残っておりますし、これが日本の全部の最高の芸術家をはたして代表する仕組みであるかどうかということにつきましては、やはり議員連盟で御論議になったとおりだと私も考えるのでございます。でございますから、いわゆる最高の権威者に対して国が栄誉を差し上げるこの制度はぜひひとつ存続をしたいと思いますが、それにはいかにすべきかという問題が、今後の検討の問題として残っておると思います。ただ、私どもといたしましては、最高の権威者を選ぶのについて、第三者選考委員会というのを設けて選ぶという方法自体につきましても、それが直ちに、どういう方法によるかということについて私は非常に問題があると思いますし、もう一つは、いやしくも現に一応、最高の方が抜けておられるという実情でございましても、一応芸術院会員として私どもは最高の栄誉を差し上げておるわけでございますから、これらの方々の御意見、御意思を無視して、そしてここに新たに全然別のものをつくるという段階は、やはり現在の芸術院会員に対しましてそういうことはできるだけ避けたい。やはり現在の芸術院におきましても、ひとつ自発的にそういったようなものにつきましてお考えをいただき、われわれもこれを研究し、国会におきましてもいろいろ御検討いただきまして、そして、やはりほんとうに、真に芸術家栄誉を与えるような制度というものに考え直すときがここに来ている、かように考えます。そういうことにおきまして、今後とも委員方々の御協力を願いますし、私どもも、日展、芸術院ともに十分話を進めてまいりまして、芸術院のお気持ちをそう侵害しないで、そこにスムーズに何とかいく問題を考えてみたいと現在考えておる次第でございます。
  50. 麻生良方

    麻生委員 たいへんけっこうなお考えで、私も大いに敬意を表します。私は何も、いまのものをつぶしてしまえ、また、いままでのものを否定しろと言っているのではない。いままでの方はそれなりに会員としておいでをいただき、いま出ているような矛盾を解決するための前向きの御検討を願いたい、こう申し上げておるのですから、その趣旨に沿って、いまの御答弁たいへんけっこうだと思います。  そこで、私はさらに具体的に——これは芸術課長さんもたいへん心配されまして、芸術院長の高橋さんのほうからも、近く議員連盟の方と懇談をしたい、こういう意向がもたらされております。そういう機会もわれわれはつくってまいりたいと思いますし、さらにまた、第三者日本芸術文化全般にわたって最高の知識を有すると思われる人たちからの意見も聴取する懇談会も、私どもは私どもになりに主宰をして持ってまいりたい。その際は、文部当局ともお打ち合わせをしながら持たしていただく。そういう会合に大臣も、それから文化局長さんも関係各位も御出席をいただくことができますね。あらためて御確認をしたい。
  51. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 公務と申しますか、国会その他の関係がない限りは、進んで私ども出席をさせていただきたいと思います。
  52. 麻生良方

    麻生委員 どうもたいへんありがとうございます。  大体芸術院制度に関する質問は、まだ取り残されておる点もありますが、これで終了させていただきたいと思います。  最後に、二、三分だけ時間をちょうだいして問題点だけを提起しておきますので、社会教育局長さんと文化局長さん、両方から御答弁を願いたい。  今度文化局があらためて設置をされましたことは、われわれにとりましても日本の文化にとってもたいへん——これは多少おそきに失しましたけれども、文部省が文化行政に力を入れ始めたということで、同慶の至りであります。しかし、せっかく文化局ができながら、どうやらまだ形だけで魂が入っていないように思われる。たとえば文化行政の中で特に重要な美術行政、この点を取り上げましても、いま美術行政の第一線に立つべき機関、これは当然美術館であります。ところが、この美術館が博物館法に統合されて、その扱いが社会教育局扱いになっておる。しかし、出先のめんどう、世話は文化局で見ろ、こういうことになっておりますね。この点について社会教育局長さんのほうの御見解、将来の御方針を承りたい。
  53. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これは両局にまたがっておる問題でございますから、私から御答弁申し上げたほうがいいかと思います。  御指摘のとおり、博物館法の中に——博物館法は非常にたくさんのものを包含するような規定になっておるわけでありますが、特に美術館につきましては、文化行政を今度文部省として力を入れてやるということで発足したわけでございまして、美術に関することは文化局の所管でございます。でございますから、また博物館法そのものもだんだん細分化されたりいろいろしておりますので、この問題は、御趣旨の点を体しまして私ぜひひとつ検討させていただき、できますならば美術館法を、別に文化局関係考えてまいりたい。これは御趣旨に沿うような意味合いにおいて検討してまいりたいと考えております。
  54. 麻生良方

    麻生委員 大臣からきわめて率直な御見解がありましたから、ひとつ社会教育局長さん、セクトもあるでしょうが、そういうことは抜きにして御協力をいただいて、大臣趣旨に沿って、やはり美術館と水族館が一緒に扱われているのではいささか恥ずかしい限りでありますから、ひとつ御検討をお願いしたいと思います。  なお、御質問する向き、特に文化局ができて、芸術行政についてこれからだと思います。私は別にいままでのことを追及するつもりはございません。ただ、いままでのいろいろな矛盾点は率直にお受け取りになって、ほんとうに中身のある文化国家をつくるための文化芸術行政、これに大臣はじめ関係各位のお力を入れていただくようにお願い申し上まして、私の質疑は終わります。  ありがとうございました。      ————◇—————
  55. 床次徳二

    床次委員長 内閣提出公立高等学校設置適正配置及び教職員定数標準等に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。斉藤正男君。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  56. 床次徳二

    床次委員長 速記を始めて。  この際、暫時休憩いたしまして、本会議終了後再開いたします。    午前十一時四十三分休憩      ————◇—————    午後四時十六分開議
  57. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公立高等学校設置適正配置及び教職員定数標準等に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。斉藤正男君。
  58. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 いわゆる高校定数法の審議にあたって、過日教壇外職員の問題についていろいろ伺ったわけでありますけれども、特にそのうちで農、工、水に多くあります実習助手の定数について、これまた触れたところでありますけれども、局長答弁を伺った中で、現場の実態とそぐわないというふうに思われる点が具体的にありますので、少し触れてこの問題を究明してみたいというように思うわけであります。  静岡県に沼津工業高校という学校がありますけれども、この学校は実は七学科あるわけであります。現行法によりますと、この実習助手の定員は十五名であります。また、改正法によりましても同じ十五名であります。この学校には定時制が三学科ありますけれども、これまた現行法でも七名、改正後も七名ということでありまして、現在の実際の姿というのは、実は七学科のこの高校は、実習助手を二十一名も使っているというのが実情であります。こういうことから考えてまいりますと、この前もちょっと触れていましたが、多少の改正はされるけれども、しかし、きわめて不十分であるということは明らかでありますし、特にいま申し上げましたような全日制七学科、定時制三学科というような学校におきましては、きわめて不十分だというように思うわけであります。現状が配当し過ぎているのだというならこれはまた別でありますけれども、しかし、現行法におきましても改正法におきましても何ら変わるところがないというような一ある程度規模の大きい工業高校でありますが、実態から考えまして、この実習助手の配当等については前進を見ていないというように考えるわけでありますけれども、局長どのようにお考えになっているのか。
  59. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 いま具体的な例で七学科、定時制と全日制の工業高校について、現行定数と改正後と増減なしという御指摘がございましたから、その点は私ちょっと計算さしてみたいと思います。どのくらいの人員の規模の学校でございますか、承れば計算さしていただきます。
  60. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 後ほどまたそれは事務的に伺います。  次に伺いたい点は、問題になっております高校多様化と政令の問題であります。まず第一に、「教職員定数の算定に関する特例」として、第十三条二号におきまして、高校多様化のための教職員定数政令で一方的に配置し得ることをきめておるわけであります。これは、中央教育審議答申の後期中等教育のあり方をめぐって教育界に大きな論議を呼び起こしている現段階では、たいへん問題のあるところだと考えるわけであります。要綱によりますと、「今後の後期中等教育の拡充に伴う高等学校の学科の多様化等の事態に対処するため、政令で定める特定の学科については、」云々ということばがあるわけでありますが、文部省は、この「特定の学科」とはどのようなものを予定しておられるのか、あるいは現在のところどのような学科を考えられているのか、多様化の問題と関連をして伺っておきたい。
  61. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 現在、この政令で定めることを予定しておりますのは、先般補足説明でも申し上げましたように衛生看護科がございます。衛生看護科は、従来の職業に関する農、商、工、水産課程というものとは別個の領域として最近急速に発展してきたものでありますが、従来の規定でございますと、そのいずれの分野にも入らないので教員加算の方法はないということでございます。先生の地域でございますれば、沼津でありますとか清水西高校のようなところに一学科設けられておる。私も現実に行なってみますと、定数上ふぐあいがあるということで、これを工業並みの加配ができるようにする、そして班別指導も行なわれるようにするというようなことで、専門教科担当三名及び実習助手二名を加配する措置をこれに基づく政令でとりたいということであります。  そこで、これを政令にゆだねました理由は、現在高等学校の学科につきまして検討されておりまして、これはかなり多様なものが今後出てまいることは予想されます。たとえば同じ商業というグループでありましても、原則としての商業に関する規定では不十分なような商学科が出てくることも予定されます。それから逆に、工業でありましても、ものによりましては、たとえば経営的な工業の分野でありますと、逆に商業的な学科も小部分でありましょうとも設置が必要になってくるということも考えられます。そういう場合に対応いたしますために、毎年度予算をとると同じように、必要によって教員の加算をし、あるいは教員組織の配当を実態に即して変えていく。そういう必要が今後起こってまいりまして、現時点ではそのすべてを予想することは困難でございますので、将来に対処いたすためにこういう規定を置いたほうがいいという考え方でございます。
  62. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そうすると、現実的には衛生看護科がある、なお将来、工業学校あるいは商業学校等においても特殊な学科が予想される、その予想される学科に対する対策として政令をもって臨む、こういうことですか。私は問題があると思いますけれども、その点はそれで理解をいたします。次に、特殊学校の高等部について伺っておきたい。  まず第一は、公立の盲ろう、養護学校高等部の学級編制、さらに定数標準が新しく設けられたわけでありますけれども、幼稚部、小、中、高を一貫した特殊学校定数法の制定については、文部省としては検討されたのかされなかったのか、特殊学校幼稚部の定数法についてはどのようにお考えになっているのか、これも基本的な問題でございますので、伺っておきたい。
  63. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 幼稚部は、現在の段階では高等部と違いまして、ろう学校についてはやや普及しておりますけれども、盲学校は公立では全国で三校、病弱虚弱では一校、精薄では二校というように、まだこれから設置を促進すべき問題でございます。高等部のほうは普及もしてまいりましたし、また、そこで扱います教育内容というものも、この四、五年間実験的に重ねてまいりましたものを多方面にわたって実施に移すということで、学科の構成自体も領域がだんだん固まってまいりましたので、この際、従来交付税の配分の基礎であったものを、公立の高等学校と同様に上げたほうがよかろうという考え方でございます。幼稚部の問題につきましては、現在交付税について財源措置を行なっておりますから、これは将来幼稚部の問題というものに方向が普遍化するように努力をした後に、むしろ公立に上げるほうがいいという判断でございまして、現在の段階で高等部と幼稚部を同一に扱わないで、むしろこれは今後の推移を見たほうがよろしいということであります。  なお、もう一つ申し上げますのは、特殊教育全般の問題につきまして、今年度から基本的な問題を検討することとなっております。その中に、やはり幼児教育という面から幼稚部のような段階のものをどう展開するかということも一つの課題になっておりますので、そういう面の施策の見通しを得た上で対処するのが適当であるという意味で、幼稚部ははずしてございます。
  64. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 いまの答弁によりますと、特殊学校の特に幼稚部の問題については、全面的に検討した段階で措置をしたい。したがって、幼稚部の現状は、併置をしている学校が全国的に見てもきわめて少ない、こういう関係から、将来十分検討の上で幼稚部設置方向へ努力をすべきだと思うのですが、非常に困難ないろいろな障害はあるわけであります。しかし、これは何といいましても、わが国教育の陥没地帯だと言っても過言でないというように思うわけでありますけれども、その際やはり幼稚部増設あるいは設置という角度検討をされるのか、あるいはこれは時の動きなり時代の要請にまつという消極的なものなのか、その辺も少し伺っておきたい。
  65. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 幼児教育の中では、心身障害があって普通の家庭で扱えない、こういう分野がまず第一に考えらるべき問題だと思います。そこで、文部省といたしましては、幼稚部の設置を促進するという方向へ施策を進めてまいりたい。しかもその場合に、幼稚部の問題は、単に従来の併設でいいのか、あるいは幼児なるがゆえに特殊な展開のしかたでさらにくふうを加える必要があるのか、この辺のところは、これから調査会をつくって実は検討する課題の一つになっておりますので、方向としては、設置をしてある程度標準化しましたならば、高等部と同様に、あるいは現在の交付税の配分基礎にゆだねないで法律の段階にするということがいいと思います。現在は普遍化しておりませんので、高等部だけについて措置をとったということであります。
  66. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 改正案の第六章並びに第七章に規定されております特殊学校高等部の学級編制基準について伺いたいと思うわけでありますけれども、教職員定数基準は現状にそぐわない点が多いのではないかというように実は思うわけであります。現実に機能訓練教員、それから養護教員、寮母、さらに事務職員等の配置がこの標準を上回って配当されているところがあるように思うわけであります。したがって、改正されたというよりも、本法は定員削減案となる可能性もあるのではないかというように考えられるわけですけれども、このような事態に対してどういうように対処されようとしているのか、文部省の態度を伺いたい。
  67. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 実は特殊学校につきまして、私どもも、法案をつくりましてから、現実に減るのじゃないかとか、あるいは学級編制だけ一挙にやって、定員充足が計画的だから、現実に労働強化になるのじゃないかということをしばしば聞いて、これは算定上誤っておられるというふうに思うのであります。と申しますのは、私どもも大体主要な府県について、個々の学校につきまして全部検討してまいりました。ですから、全体としても、また全国の定数にいたしましても、決して現状より悪くなるどころか、むしろふえるわけでございます。これは個々の学校を見ましても同様でございます。たとえば例を静岡の盲学校なら盲学校というものにとりましても、従来は高等部があるところで小中学校と兼ねた実態をやっておりますものを別個に措置いたしましたから、教員が四名増になりますし、また実習助手もプラス五になりますし、それから事務職員もプラス二というようになるわけでございまして、これはあるいは計算方式におきましておわかりにくい点が一般にあったのじゃないか。私どもは、特殊教育全体といたしましては相当の増になる、改善になる、こういうふうに考えておるわけであります。
  68. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 私の心配が当たらなければたいへんけっこうなことでありますが、仮定の問題ですから答弁しにくいかと思いますけれども、もし現状よりも減るようなことであった場合、これはゆゆしき問題だと思うわけでありますので、その場合には特にひとつ配慮をしてほしい。いまの答弁からいたしますれば、さようなことは絶対ないと考えて差しつかえないというように思いますが、それでよろしいですね。——わかりました。  次に、非常勤講師に関係して伺いたいと思うわけであります。  改正案の第二条、教職員の定義にも明らかにされておりますように、講師は常勤の者のみが定数に入るということに規定されておるわけであります。にもかかわりませず、二十二条におきまして非常勤の講師を定数算定に繰り入れているわけであります。もし私の解釈が間違っていればお教えをいただきたいと思うわけでありますけれども、これは第二条の教職員の定義との関連において矛盾ではないか、こういうように思うわけです。特に近年若干の県におきましては、新規学卒者を非常勤講師として採用し、その者に週十八時間ないし二十時間の授業を担当させ、実態は常勤と何ら変わらない勤務をさせています。こういうことは少し矛盾であるし、問題だ、このように思うわけでございます。特に新規卒業者に全く普通の教員のような勤務をさせていながら、一年ごとに更新をいたしまして非常勤講師という扱いをしている。したがって、私が伺いたいのは、この改正案の第二条と第二十二条との矛盾はないのかという点と、全国において非常勤講師を、前段申し上げましたような形で使っているけれども、これは非常勤講師でない、実態はそうでないというように考えるわけですけれども、その実態を承知されておるのか、承知しておるとするならば、それをどうしようとされるのか、伺いたい。
  69. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 国の財源措置といたしましては、この法の定める定数を、専任の職員の分を全部都道府県に分けるわけでございます。地方でその財源措置の中で非常勤職員として活用しても、それは財源措置からはずさないのだという規定の必要があるために、こういう規定を置いたのでありまして、この措置をとらないと、非常勤職員を雇うことはもう府県の自己財源だけだという形に相なるわけであります。非常勤職員を雇っても、十八時間で割っておそらく非常勤の二・五人くらいが専任の一人というような形で、非常勤の講師の手当につきましても国としては財源措置をする、そういう必要があるためにこの規定は必要なんでございまして、もしこの規定がありませんと、逆に非常勤職員は独自に雇わなければならぬというようなおそれが出てくる。実態といたしましては、全国で一万三千九百人余の非常勤講師が現在予定されております。これをこの方式で換算いたしますと、大体五千八百人程度の財源措置になるわけであります。ですから、教員について現在の総定数が十四万七千人ほどでございますから、大体四%に相当するものが、全国でこの非常勤職員の給与として活用されておるというふうに見るべきだと思います。  それから、後段に述べられました任用上の問題は、財源措置関係なく、これはどの程度のものを非常勤でまかなうか、あるいは非常勤職員の処遇をどうすべきかという任用問題でございますので、この規定とは私は関係ない事柄だと思います。
  70. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 第二条の後段の、「講師」と書いて、「常時勤務の者に限る。」という、その「「教職員」とは、」という規定と、特に二十二条に「非常勤講師に関する特例」というのをここに起こしまして、「これらの規定により算定した教諭等の数から当該学校又は当該高等部に係る教諭等の数を減ずることができる。」ということが書いてありますので、第二条の精神と、運用面からくる二十二条のこの精神は矛盾をしないか、背反しているものではないかという私の第一点の質問なんですが、後段はわかりましたけれども、その点をもう少しわかりやすく……。
  71. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 第二条の定義に従いまして、以下各条でその率を定めて、財源措置はそれを全部する。その財源措置を使う場合といいますか、府県が運用する場合に、それぞれの府県の実情によりまして、非常勤職員を活用したようないいものがあるわけでございます。そういうものを一定の比率で換算して、この財源になり得るというためにはこの規定が必要だ、こういうことであります。
  72. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 少し私の不勉強かもしれぬけれども、わからない点がありますが、また同僚からも後ほど質問があると思いますので、時間の関係で進みます。  次に、経過措置について伺いたいと思うわけでありますが、まず、附則の二項ないし五項におきまして、学級編制及び教職員定数の算定は五カ年ないし七カ年の経過措置をもって標準的なる数に近づける、こういうことが経過措置として附則に盛られておるわけであります。当局は、経過措置が終了した時点で、教職員の増減は、昭和四十一年度の実数と比較して、どの程度が見込まれるとそろばん計算で考えられておるのか。過日、葉梨委員質問に答えて、増減につきましては答弁をいただいておりますけれども、実際、昭和四十一年度の実数とこれが完了した年度における実数との差はどのようになっていくのか、おわかりだったら伺いたい。
  73. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 経過措置を設けましたのは、実はもし改正案の本則どおりに一挙に現在の時点で実施いたしますならば、約一万八千人か九千人の増になる。そこで経過措置は、先ほど申しましたように、全体の今後の推移を見て、公立高等学校の減というものを一これはかなり進学率というものをよく見てもなおかつそういう程度であるから、それはむしろ経過的に実施するほうが人事行政上適当であろうという配慮もございます。また財政上も、もしこれを一挙にやりますれば、学級数に対しまして五千二百七十学級も一挙に増加をする。このことはきわめて無理なことでありまして、特に生徒進学率がなお上がっているような府県では、ほとんど実施不可能なことであります。それを無理に実施いたしますならば、これは一挙に教室等の改築も行なうか、あるいは逆に生徒の募集定員を減にするかというような問題も起こしかねないのであります。それからまた、こういう一挙にやって順次減っていくということになりますれば、今度は、人事行政という面から円滑を欠くということは過去の経験でわかっておりますから、そこで、そういう推移を見て、むしろ経過的に措置することによって地方の実施が容易になり、かつ人事行政が円滑にいくという義務教育定数法の経験に即しまして、このような経過措置をとったのであります。
  74. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 次に、学級編制につきましては、昭和四十六年度までに、第六条の規定する四一十五名ないし四十名にするものと理解しているわけでありますけれども、その経過措置につきましては、生徒の数の減少及び学校施設の整備の状況等を考慮して毎年度政令で定める、こういうことになっておるわけであります。この場合問題になるのは、生徒急減県、生徒が急激に減少する県については五カ年を待たずして、二年後とか三年後に本則どおりの学級編制にすることを許すといいますか、認めるといいますか、考えると言っていいかどうか知りませんけれども、そういうことをお考えになっているのかどうか。また、学級編制に関する経過措置の基準、すなわち政令の骨子でありますけれども、いま申し上げたようなやや具体的な想定との関連について明らかにしてほしい。
  75. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 経過措置の、この法案が通りました場合の本年度出します政令につきましては骨子は、財政当局とは了解を得ておりますが、その経験も、これまた昨年急減緩和のための臨時措置をやりました経験がございますから、要するに一定の方式を立てまして、そうして急減の著しいところは四十八、四十六、それから四十五というようなペースでいく、その他の県は五カ年内でいくというような考え方、それから定時制は、五十から四十までの十人の開きがありますから、これは四十八、四十六、四十四、四十二、四十というような順序でいくということを考えております。この予定すべき政令の骨子につきましては、これは算式が算術みたいなものでございますので、その中心をお目にかけることはできますので、後ほど提出いたしたいと思います。
  76. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そうしますと、各県の実情をある期限を限って聴取をし、そうしてその県に適合した政令を適用していくというように、弾力性のあるものだと考えてよろしいでしょうか。
  77. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 方式をきめますから、方式に合って生徒数が出てきますから——生徒数というよりも、教員定数をはじくべき根拠としての補正した生徒数というものを前年度と比較することによって急減の限度がわかりますので、それによりまして、各府県がそれに従った財源措置を受けるということに相なるわけであります。
  78. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 その点はわかりましたけれども、次に、学級編制度の経過措置につきましては、一番おそいのでも五年ということで規定がされておるわけでありますけれども、教員定数の算定の経過措置のほうは、カッコ書きで「特別の事情がある都道府県又は市町村」は七カ年ということにされておりまして、ここに二年のズレがあるわけであります。この「特別の事情がある」という「特別の事情」とは、どんなことを予想されて特にうたわれているのか、伺いたい。
  79. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 これは、実は義務教育の定数法にも同じような考え方がありますけれども、一応全国的な大半の傾向としては、減が大体おさまって、そこで締めてしまうほうがいいというところと、部分的に引き続き生徒数の増が起こっておるというようなところ、それはむしろこういう規定を例外的に置くことによって教職員人事がやりやすいというようなこと、たとえば東北の中のある県というものは、今後急速に伸びていくつもりで進学率がいきますけれども、はたしてこれに予定したようなときまでに達するかどうかということは若干問題の点がある。なお伸びていく場合に措置のできるようなふうにしてあるわけであります。
  80. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そうしますと、この編制基準に対する定数算定の経過措置の五年対七年というのは、前向きに善意に解釈してよろしいわけですね。このことが、実は教員の首切りその他に影響してくるという心配もないではない。したがって、もしいま局長答弁にありましたような、前向きの姿勢で弾力を持たせたんだというように解釈して——というよりも、そういう解釈が妥当だというように見てよろしいのですね。
  81. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 これは義務教育定数のときの経験でおわかりのように、むしろそれが、一種の過剰教員を生じたり何かで人事行政上トラブルが起こらないようなために必要で加えたということでございますから、私どもは、そういういろいろ起こり得る場合の含みとしての積極的な規定だというふうに考えておるわけであります。
  82. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 前向きに解釈してよろしいということで理解をいたします。  次に、教職員定数の経過措置は、附則第二項と関連をいたしまして、政令にかかわる生徒数は、つまり四十九名の学級から四十六名学級までの生徒数ということになるわけでありますけれども、現行法の附則第六項方式でもって補正した生徒数を基礎教職員定数を算定すると予想されるわけであります。この方式は、いわゆるピンはね条項として、高校の先生方全体がたいへん不安であると同時に、不満を持っているというように聞いているわけでありますけれども、今次の経過措置においても、いわゆるそういう現場の先生方が危惧しているようなピンはね方式だという心配はないのかどうなのか。私の言い方がちょっと悪かったかもしれませんけれども、現場ではそういう声があるわけであります。また、政令が教職員総数を頭打ちにし、抑制をするものではないかというような懸念もあるわけであります。先ほどの関連から推測をいたしますと、そのようなものではないということがうかがわれたわけでありますけれども、その点につきましても、もう一度ひとつ明確な答弁を伺いたい。
  83. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 それぞれの年度における政令の規定によりまして、現実の都道府県内の定員というものをはじきます場合には、従来の法改正の分もそれの影響を受けるわけでございますから、急減の著しい地域は、すでに第二学年につきましてもその適用を受けておる、そういうことを考えますと、この経過措置の定め方というものは補正をすることによってむしろ実態に合う、そしてそれが現在考えております五分の一ずつの歩み方をするということは、これはもう現実の人員の配置ということを考えましても、十分に人事行政上対処し得るものであると思います。  それから、政令で定めることについて、自由自在にできるのではないかということもいわれておりますけれども、これは法律に書いてございますように、最終年度はもうきまっておる、そうして漸次そういうことに近づけていくという趣旨政令を書くわけでございます。それからもう一つは、そういうことがかりに書いてなくても、義務教育の定数のときの経験を考えますれば、それで一々混乱が起こることではなくて、義務教育定数法が変わりましてからのこの四カ年間の歩みというものにつきましては、当初計画したとおりの速度で財政当局も全部認めておるわけでございますから、今回も、今後の政令内容の骨子につきましては了解を得ておりますから、その点は信用していただいていいことだと思います。
  84. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 次に、特殊学校高等部に関する経過措置について伺いたいわけでありますけれども、昭和四十六年三月三十一日までの間、生徒の数の減少及び教職員の総数を考慮し、毎年度政令で定める、こういうようになっておるわけでありますが、特殊学校高等部は、今後の特殊教育振興によりまして、むしろ生徒増が予想されると思うわけであります。現在わが国の心身障害者の教育がまだまだ十分でないというこの立ちおくれの現状からすれば、特殊教育振興充実、生徒収容増こそ必要な課題であり、また、特殊教育の高等部につきましては、私は一般高校とは違った趨勢にあるというように考えるわけであります。したがって、特殊教育の諸学校にかかわる経過措置の附則第五項は不必要なものではないか、削除しても何ら関係のないものだというように考えるわけでありますけれども、それは君、立場が違うといえばそれまでですが、この点は少し考慮すべきじゃないかというように思いますけれども、全国的な趨勢等から見てどうなんですか。
  85. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 実はこの特殊学校のほうは、いままで御説明してまいりました教員増は、現在の規模の学校数なり何なりを置いた場合にも、どの程度増員になるかということをいっておるわけでございます。たとえば法改正によって完成時に八百九十一人増だ、そして毎年度百七十八人ふえるのだ、これは二五%の増になるわけでございますが、それは現在の学校がふえなくても、現在規模によってもこれだけふえるのだという規定でございますから、これが特殊教育がもっと拡充してまいりますれば、自然に教員数はもっとふえてくるということに相なるわけでございます。でございますから、各県の状況を全部見てみましても、財政措置としてはかなりの増員になっておるわけでございまして、私どもの心配は、これを各都道府県ごとにどういうふうに計画を立てて、現実に予算化するかということの指導がむしろ積極的になさるべきものだ、財源措置としては十分に余裕のあるものだというふうに考えておるわけでございます。
  86. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 あとわずかでございますが、最後の二つの問題については大臣から答弁をいただきたいと思うわけでありますけれども、一つは私立高校との関連であります。生徒急増期におきましては、公立高校で収容し切れない部門を私立の高校の増設等によってしのいできたことは、大臣承知のとおりであります。しかし、生徒急減期に入って最も問題になっているのがこの私学であります。特に私立高校が占める割合の大きい都市部ないし都府県にありましては、今後生徒急減の趨勢の中で、私立高校の生徒数の激減は私立高校の興廃に関係をしてくる重要な問題だと思うわけであります。私は、私学教員の今後の職場での不安あるいは経営者のあせりといったようなものを考えましたときに、これは当然、私学であるからといって放任できない重要な文教政策上の問題だと思うわけであります。したがって、私学に対する助成とともに、公立高校の定数法を私立の高校にも適用させることは、喫緊の課題であるというようにも考えるわけであります。しかし、私学にはなお多くの問題がある今日、非常に大きな問題であろうと思うわけでありますけれども、一体大臣は、この定数法の改正に伴い、私学との関連をどのようにお考えになっているのか、所見を伺いたい。
  87. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 御承知のように、急増期におきまして、公立高校だけに収容し切れませんで、私学のほうにも相当な増を要望しまして急増期に備えたわけでございますが、これから生徒の減少期に入ってまいりますと、まず私学のほうに減少が早く来やしないかということで、私学のほうで非常に心配をいたしておったということは事実でございます。ただ、今度の定数法で、公立のほうと私立のほうと、減り方につきましては、両方やはり同じような速度で一応減るようなことを大体私のほうとしては予想しておるのでございますが、なお公立高校におきまして、この定数表で学級定員を減してまいりますことは、一面それだけ私学の減少をささえるということにも効果があるかと思います。ただ、そういうことで定数法を実施することによって私学の経営が非常に困難になり、先生方が非常に不安になるという問題がございますので、ただいま臨時私学振興方策調査会におきましてこの点を考慮いたして、私立の高等学校の経営について、これをいかに援助するかという問題もいま早急に結論を出してもらうように急いでおるわけでございまして、六月末にはこれが答申を得る予定でございます。この点も十分考慮した上で調査会の答申をいただいて、それで私学のほうの不安をできるだけ早く解消したいと考えておる次第でございます。
  88. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 公立の中で収容し切れない急場を、無理にということばが適当であるかどうかわかりませんけれども、私学にお願いをしておいて、いざ生徒が減ってきて私学も首をかしげざるを得ないという現状でこの法改正が行なわれるわけでございまして、私はやはり、お願いした手前もこれあり、私学振興という基本的な文教政策の点からも、私学に対する配慮は相当慎重に考慮しなければならぬというように思うわけでございますので、いま大臣答弁をいただいたわけでありますけれども、本腰を入れて対策を確立していただきたい。  最後に、抜本改正について大臣の所見を伺いたいわけであります。過日から本日までいろいろな質問をしてきたわけでありますけれども、今次の改正案は、現行法に比べまして確かに若干の前進、改善は見られるものだと思います。しかしながら、国民的な教育の要求、新しい社会の進展、後期中等教育の拡充整備、あるいは高校教育水準の向上というような観点から広く高くこれをながめましたときに、まだまだ十分なものではないというように考えるわけでございます。したがって、この改正をもって、とても抜本的な改善などとは言えないというように思うわけであります。すでに新しい高校制度が発足して二十年になるわけでありますけれども、いまや、当時制定された高校設置基準そのものすら再検討の時期が来ていると言っても過言でないと思う現状から考えまして、今次改正案は、多くの点で設置基準と比較をして不十分だとも思うわけであります。したがって、文部省において引き続き抜本的な改正が当然考えられなければならないというように私は考えるわけでありますけれども、この若干の前進、若干の改正でいいと思っておられるのか、いや、さらに抜本的な改正を望んでおられるのか、ここら辺、ひとつ大臣の確固たる所信を伺いたい。
  89. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 後期中等教育の拡充という意味から申しまして、今回の定数の改定は、現時点におきましては、私どもとしては、私どもの力の及ぶ限りの努力をいたしまして、この一応の結論を得たのでございます。しかし、やはり中教審の答申にもございますように、後期中等教育は青年の成長期にございまして、将来の職業に適応する教育はまだもっと充実して行なわれなければならぬという段階にございますので、私どもはこれで満足することはなしに、十分将来の教育の向上のために、なおできるだけの改善に努力してまいりたい。ただしかし、一応この五年間の計画は計画として実施いたしまして、その間におきまして将来の問題を十分検討して将来に対処してまいりたい、こう考えておる次第であります。      ————◇—————
  90. 床次徳二

    床次委員長 この際、おはかりいたします。  理事菊池義郎君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、辞任を許可することに決しました。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、西岡武夫君を理事指名いたします。  次回は、来たる七日、水曜日、午前十時より理事会、午前十時十五分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時七分散会