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1967-04-05 第55回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月五日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 戸叶 里子君    理事 小笠 公韶君 理事 小峯 柳多君    理事 砂田 重民君 理事 武部  文君    理事 平岡忠次郎君       大野 市郎君    岡本  茂君       木野 晴夫君    坂村 吉正君       山村新治郎君    武藤 山治君       折小野良一君    有島 重武君  出席国務大臣         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    竹中喜満太君         経済企画庁国民         生活局長    中西 一郎君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君  委員外出席者         参  考  人         (全国酪農業協         同組合連合会会         長)      大坪 藤市君         参  考  人         (森永乳業株式         会社社長)   大野  勇君         参  考  人         (全国牛乳商業         組合連合会会         長)      田部  清君         参  考  人         (主婦連合会副         会長)     春野 鶴子君         参  考  人         (消費科学連合         会会長)    三巻 秋子君         参  考  人         (全国乳価対策         協議会事務局         長)      山口  巖君     ————————————— 四月五日  委員河村勝辞任につき、その補欠として折小  野良一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員折小野良一辞任につき、その補欠として  河村勝君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件(乳価問題)      ————◇—————
  2. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  本日は、当面の乳価問題について、全国酪農業協同組合連合会会長大坪藤市君、森永乳業株式会社社長大野勇君、全国牛乳商業組合連合会会長田部清君、主婦連合会会長春野鶴子君、消費科学連合会会長三巻秋子君及び全国乳価対策協議会事務局長山口巖君の各参考人から意見を聴取することといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の皆さまには、御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  本日は、当面の乳価問題につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、本委員会調査参考に供したいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  なお、御意見の開陳は、委員長指名順お願いすることとし、時間は、おおむね十分程度におまとめいただくようお願いいたします。  それでは大坪参考人お願いいたします。
  3. 大坪藤市

    大坪参考人 私、ただいま委員長より御指名を賜わりました全国酪農業協同組合連合会会長大坪藤市でございます。本日はたいへん貴重なお時間をさいていだだきまして、酪農立場において意見を開陳せよというありがたいおことばでございまして、全国酪農民にかわりまして厚く御礼を申し上げたいと思うのでございます。せっかくの機会でございまするので、ただいま委員長より御指示がございましたように、酪農民立場を代表いたしまして一言、その酪農現状とそれから酪農民の考えておりますることを申し述べまして、御参考に供したいと思うのでございます。  私が申し上げるまでもございませんが、わが国酪農は、わが国がきわめて国土が狭小である、また酪農が歴史が浅い、また酪農にとりまして必須の要件でありまする草資源についての蓄積が少ない、そういうようないろんな悪条件にもかかわりませず、終戦以来わが国酪農は、酪農家意欲の高揚とそれから政府の施策と相まちまして、おおむね一〇%ないし一五%の年率をもって順調に発展をしてまいったのでございます。その間政府農業に対しまする長期展望におきましては、酪農成長部門として取り上げられた。ことに昭和三十六年制定されました農業基本法におきましては、農業選択的拡大の最も代表的な分野として酪農が取り上げられた。このことによりまして、酪農民意欲はますます高揚してまいったのでございます。その結果、御案内のように酪農家戸数も漸次増加してまいり、また一戸当たり飼養頭数も漸次増加してまいりました。酪農はその底辺の広さを増し、また同時に、総頭数におきましても順調に伸びてまいったような次第でございます。その結果、よく酪農製品につきましての国民需要増加にこたえ得ますると同時に、具体的に申し上げますると、やや過剰ぎみ状態をもって推移したと申し上げても差しつかえなかろうかと思うのでございます。  ところが、こういう順調な伸び、つまり酪農の上げ潮というものも、昭和三十八年を境といたしまして様相を実は異にしてまいったのでございます。その最も端的なあらわれは、酪農飼養農家の総戸数が減少の傾向転落してまいった。順調に酪農戸数も総頭数伸びておったのでございまするが、ちょうど昭和三十八年が境であった、これは、一、二頭くらいのいわゆる零細酪農家中心といたしまして、酪農をやめて他産業に転向する者、あるいは農業をやっておりましても酪農部門というものを切り離す者、こういうような者が続出をしてまいるというような傾向になってまいったのでございます。  この現象は何かと申し上げますると、御案内のように農村から農業労働力が他産業へ流出する、その結果農業労賃が高騰してまいる、あるいは漸次飼料濃厚飼料が高騰してまいる、乳価安現象が持続してまいっておる、乳価安飼料高といういや気、それで一方には、当時各方面から強く叫ばれておりましたところの貿易自由化に対するおびえ、こういうようなものがいろいろ相重なりまして、酪農についての不安のムードが漂ってまいった。そこで各方面から酪農振興というものが真剣に叫ばれるようになりまして、政府におきましても昭和三十年から抜本的対策を立てるということになり、昭和四十年の六月には御案内のように酪農三法というのが制定されたのでございます。  この法律は、御案内のように酪農についての振興方策としての酪農近代化計画を樹立するということ、それからもう一つは、酪農につきまして最も不利な条件にございまする加工乳地帯に対しまして政府が直接助成をする、そのために加工原乳については政府保証価格を設定いたしましてその価格を保証する。もう一つは、外国乳製品国内流入を遮断いたしまして、貿易自由化に対しましてのはっきりした国としての方針を確立するという意味で、乳製品輸入というものを事業団に一元化する。こういうことをおもなる内容といたしておるのでございまするが、その酪農法制定のために酪農家はやや愁眉を開いたと申し上げても、これは過言でなかろうかと思うのでございます。ところが、昭和四十一年の四月に至りましてこの酪農三法が施行されるという段階になったのでございまするが、四月に制定されました昨年度のいわゆる政府保証価格、これはキログラム当たり三十七円三銭ということに決定された。この価格につきましては、酪農民が期待しておりました価格とほど遠いものがあったということは、これは申し上げるまでもないのでございます。  と同時に、国内生乳の大部分を占めまする市乳原料につきましては、生産者団体が長期間にわたりまする再三の乳業メーカーとの折衝にもかかわりませず、乳業メーカーにおきましては卸売り価格改定が困難であるという理由のもとに、再三にわたりまする折衝も結局においては生産者の満足するような価格をかちとることができなかった。こういうような事情でありまして、酪農家が最も酪農経営の基礎として考えておりまする生乳価格については、きわめて不満な状態において酪農を継続せざるを得なかったという事情昭和四十年において惹起いたしたのでございます。  一方、御承知のように牛肉価格は、牛肉国内需要の増大に伴いまして日に日に高騰を続けてまいりましたので、酪農家酪農を継続して搾乳を行なうよりも、乳牛肉資源として手放すほうが経営上有利であるというような、きわめて奇妙な現象というものが酪農界に横溢をしてまいったのでございます。このために、酪農家不安ムードから一転しまして酪農危機ムード酪農危機という感じを酪農家はきわめて深くいたしたのでございます。そのために昨年の秋から、何とかしてこの酪農危機を打開せねばならないということで、今年の四月、これが乳価改定の時期でございまするが、加工原乳については大幅な政府保証価格の引き上げを要望する。それから市乳原料につきましては、メーカーに対しまして酪農危機を突破し得るに足るような大幅な値上げというものを要求する、こういう強い運動になったのは、これは私が申し上げますまでもなく当然の帰結でございます。  御承知のように、牛乳乳製品に対しまする国内需要は、現在におきましてもきわめて旺盛でございます。政府長期見通しによりまするというと、昭和五十一年度におきましてはいまの総需要量の約二倍半、これは生乳換算でございますが、一千万トンの需要というものが想定されております。ところが、こういう需要伸びにもかかわりませず、生乳生産伸びたというよりも全く横ばいないしは転落、こういうような情勢に昨年の暮れから追い込まれましたので、事業団乳製品輸入は日に日に増大いたしまして、今日、膨大な数量になっておるのでございます。いまの様相をたどります場合に、わが国牛乳乳製品に対する輸入国転落をするということもあるいは間近じゃないかということをおそれるのでございます。御承知のように酪農三法におきましては、農業基本法の精神を受けまして、少なくとも牛乳乳製品については国内自給というものを原則とするということを、この酪農三法ははっきりその法律の第一条に明示をいたしております。ところが、今日全く停滞の気味にございまするので、五十一年になりましていまの二倍半の生産をするということはとうてい困難な現状にあると申し上げても、これは言い過ぎではなかろうと思うのでございます。  これはもう私が申し上げるまでもございませんが、酪農というのは御案内のように養豚やあるいは養鶏と違いまして、生理的にも、技術的にもこの復興というのは短時間にはできません。長年月を必要とするものであることはもう御案内のとおりでございます。そこで先ほども申し上げましたように、酪農家の強い要望となって、国会の諸先生方にも機会あるごとにいろいろお願いを申し上げたのでございまするが、幸いこの四月一日に加工原乳につきましては、昨年の価格キログラム当たり三円三十六銭値上げをするということに政府において御決定を願ったのでございます。この加工乳値上げの幅、これは酪農民の現在の期待からいたしますればほど速いものではありまするけれども、少なくとも政府において酪農現状を御理解いただき値上げをお認め願ったのでございまして、この点まことに感謝にたえない次第でございます。  なお生乳の大部分を占めます市乳原料乳につきましては、目下酪農団体におきまして、各メーカーさんと個別的に折衝中でございます。四月が乳価改定の時期でございますので、目下各県の団体におきまして折術中でございまして、近く決定に相なることと思うのでございますが、いずれにいたしましてもメーカー側におきましても、各メーカーとも本年は酪農危機的様相を十分に御理解願っております。そのために、従来のような考え方でなしに、酪農にカンフル的な注射をするために、相当思い切った値上げをするということについては、メーカー側もおおむねその態度につきまして御理解を賜わっているように私ども承知をいたしております。もちろん、このことは今後の具体的な折衝に待たなくてはなりませんけれども、おおむねそういうような線で御了解を賜わっておるというようなふうに了承をいたしておるのでございます。  時間が経過いたしますので、最後にお願いを申し上げておきたいと思いますのは、酪農の今日の発展は、一にかかって国内消費増加需要増加に支えられてまいっております。今後もわが国特殊事情乳製品の輸出というものが困難であるわが国事情のもとにおきましては、今後の酪農発展も、国民消費増加に待たざるを得ません。そのためには酪農家といたしましても、何とかして酪農を近代化し、経営合理化し、そして新鮮にして安い牛乳を供給してまいるということが酪農家使命でございます。このことは、酪農家といえども決して一日も忘れておるわけではございません。このためには、何としても飼料高濃厚飼料につきましてその価格引き下げということにつきまして、政府国会の今後の格段の御努力お願いいたしますと同時に、少なくとも生産者乳価については、再生産を確保し得るような妥当な価格が形成されまするように、これは加工乳につきましてもあるいは市乳につきましても、そういうような価格が形成されまするように、今後格段の御指導と御鞭撻を賜わりますように特にお願いを申し上げまして、私の説明を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 次に大野参考人お願いいたします。
  5. 大野勇

    大野参考人 私は森永乳業大野でございます。処理業者の一人といたしまして、代表でありませんが一人といたしまして、いささか事情を諸先生の前に御説明申し上げます。  牛乳の値段、なかんずく流通過程につきましては、各方面からの御批判、また消費者団体要望など、私ども乳業メーカーとして心から伺っておるわけであります。今日一般大衆から愛用されております商品でありますために、価格に対する要望もきわめてきびしいものであると考えまして、われわれは日々その合理化に対して腐心をしておるわけでありますが、いかんせん、処理工程合理化が進みましても、人件費、水、電気ガソリンなどこの事業に不可欠の関連諸材料の年々の値上がりは、合理化によって得るささやかな結実を吸い上げてしまうのが実情であります。すなわち、酪農家各位乳価値上がりに一息つきますと、飼料代乳牛代が上がるように、また、主婦皆さんが御主人の給与の値上がりにほっとされますと、国鉄の運賃、水道代が上がって困られると同じように、私どものようなきわめて加工度の低い第二次加工産業におきましては、諸材料値上がりがすぐに響いてくるのが実情であります。  私ども乳業者のささやかな努力がいずこに吸収されているか、これを御説明さしていただきたいと思います。  お手元に表が配ってありますからごらんを願います。第二表で明らかなように、昭和三十年のわが国におきます一人当たり平均給料は一万六千七百十七円でありますが、これが四十一年には四万五百十円となっております。人件費は実にこの十年間に二・四倍となりまして、企業にとっては大きな支出増となっております。次に、普通牛乳処理には、処理量の十倍に当たります水を必要といたしております。水道代金は同じく十年間に六割五分の値上がりであります。電気は八割二分、ガソリンは三十七円二十三銭から五十円に相なっておりまして、牛乳処理に必要な人件費、水、電気遠距離輸送に対するガソリン、これらが年々の値上がりとなっておるのであります。  これら諸経費値上がり分製品値上げによってではなく、企業合理化によってカバーせよという御批判があるのは当然と考えます。この点につきましては、原料乳価格乳業者処理費小売り店販売費、第六表をごらん願えればはっきりいたします。卸価格が私どもメーカー価格でありまして、この価格から原料乳価格を差し引くと処理費が出てまいります。原料乳価格は、昭和三十年五円六十八銭、四十一年に八円四十六銭、四割九分の値上がりとなっております。これに対しまして卸価格は、八円八十銭から十一円五十銭、三割一分の値上がり、すなわち、昭和三十年に三円十二銭の処理費が三円四銭に低下しておる、こういうのが実情であります。小売り価格の中に占めます酪農家乳業者小売り店割合をごらん願います。昭和三十年の酪農家の手取りは五円六十八銭で四五%、乳業者は三円十二銭で二五%、小売り店は三円七十銭で三〇%であったのでありますが、四十一年では酪農家は八円四十六銭で四七%、乳業者は三円四銭で一七%、小売り店は六円五十銭で三六%あります。  この数字を見ますと、消費者皆さんは、一見今回の値上がり小売り店に配分する必要がないとかいうことを御指摘になるかもわかりませんが、世の中の非常に著しい変化というものを御理解願いたい。現代におきまして、毎朝四時から何キロかの道を走って一円五十銭なり二円で牛乳配達する仕事では、この仕事に従事する青年はきわめて得にくいのであります。小売り店人集めに非常な苦労をしております。アメリカにおきます調査では、シカゴにおきましては、年収百八十万円以下の市民は全部店頭売りの牛乳を飲むのであります。配達は、御承知のとおり人件費の非常に高いアメリカです。それでは貧しい日本も全部店頭売りにしたらどうだ、配達費といわれる一円五十銭なり二円なりを割り引くようにという御意見もありますが、アメリカ及びヨーロッパにおきましては、牛乳わが国の米と同じ地位にあるのでありまして、販売単位は一クォート、五合が最低であります。全部の家庭に冷蔵庫が普及し、三日分まとめて買うということも可能なのであります。わが国におきましては、厚生省令によりまして、牛乳には曜日を明記して毎日配達するということがたてまえになっております。したがって、その日のものはその日に売るということが正常な方法になっておるのでありまして、また家庭消費単位が一、二合であります。これをせめて二日に一度五合ビンというようなことになりますれば、販売員は同じ道をバイクで走っても、販売単位が多くなるということはあるかもわかりません。しかしながら、農村においても人手不足酪農家が苦心しておると同じように、中小企業である小売り店も大企業に若者を吸収されまして、人手不足で困っておるのが実情であります。ヨーロッパの大陸では店頭売りが大部分を占め、イギリスでは逆に配達づきの牛乳が大部分であります。わが国家族構成からいたしましても、まだ牛乳を主食という人はほとんどないのでありまして、おもに子供や病人に重点を買いた栄養食というようなのが実情でありまして、牛乳消費現状から考えますと、いま配達販売をやめるということはほとんど不可能でありましょう。必死の努力をいたしまして小売り店側が人を集め得る間は、消費者のおそらく八五%は現在の配達制度というものを支持しておると思われるのであります。ただ、これから五年なり十年なりたちまして、わが国人口構成が変わりまして、いよいよ人がなくなったというときにはどういうような形ができるか、これは社会の変化とともにおいおい変わっていくことである、こういうぐあいに考えられます。そういう時代がまいりますと、国民皆さんの御要望にこたえて、われわれといたしましても、牛乳公共的使命を痛感いたしまして、諸経費値上がりをカバーするような、吸収するような非常な努力をしたい、かように思っております。  今日、このような各方面からの価格論議を拝見いたしまして、私どもといたしましては、日ごろこの産業実態に対する真相を一般国民皆さんにPRすることが、いかに不足であったかということを感じまして、責任を痛感いたしております。アメリカでは年間三億三千万石、わが国の十倍以上の牛乳が年産、販売されておりますが、やはりアメリカにおきましても、牛乳に対する世論は相当激しいのであります。つまり、牛乳酪農家の庭先で乳房から搾乳されたときも、御家庭配達されたときも同じ白い液体であるのであります。しかして、その価値が見失われがちであるということが特徴であります。しかし、目に見えないごみをとり、脂肪をこまかく均等化し、二重のフードをつけるまでに数千人の労働力を必要としておるのであります。しかして、皆さんがまだ深い眠りのうちにある早朝に配達して去っていくところのこの配達人努力は、形にはあらわれなくても、明らかに消費者の御要望に基づいて行なわれておるのが実態であります。  第七表をごらん願いますと、最近のアメリカにおきまする統計が農林省の資料により明らかになっております。すなわち一・八リットル、約一升当たり牛乳小売り価格が百七十二円四十銭、このうち牛乳生産者の受け取り分は七十二円〇銭、小売り価格中に占める割合は四二%で、わが国酪農家が得ております小売り価格中の四七%よりも低い数字を示しております。第六表と比較してもおわかりのごとく、日本酪農家のほうがアメリカ酪農家よりも、実際額におきまして一・八リットル当たり約十円多く得ておるというのが実情であります。  なお別表説明をいたしますと、三と四に明らかなとおり、ほかの物価との比較におきましても、私は牛乳は高いとはいえないのでないか、安いとは申しませんが、決して高いというものでないと、これらの数字が証明しております。  なお次に、われわれ乳業会社が高い利益を得ておる、高配当だ、こういうことがいま指摘されておりますが、これは別表の五をごらんいただきたいのであります。地域独占公益企業といえども、われわれより数倍するところの利益を確保しておるのでありまして、乳業会社自由企業で激烈なる競争にさらされておる、こういうのが実態であります。  なお、おまえらのふところの中でもってこれを負担しろ、こういう御議論もありますが、第一表は、昨年来不足払い制度実施後におきます乳業者側支払い増数字であります。この制度は、加工向け乳製品原料にのみ補給金を支払っておるということになっておりますが、乳製品原料はおもに北海道、東北を中心といたしております。そこで、加工乳の中でも九十五万トンのバター、チーズ、練粉乳原料価格を保証し、二十五万トンにのぼりますアイスクリームその他のものは補給金が給付されておりません。これらに対して保証価格まで乳価を上げたわけであります。その支出増割合を明らかにしておるわけでありまして、また今般決定を見ました昭和四十二年度の加工乳基準価格値上げ保証価格値上がりによりまして、この対象外の第二加工乳がもし同程度値上げをいたしました場合は、キロ当たり三円三十六銭の値上がりとなり、われわれ乳業会社一社にとりましても三億円以上の値上がりとなり、さらに一升かりに十二円といたしますと、それだけでもって二百四十億の金が必要でありまして、これはとうてい現在のいかなる乳業会社といえども酪農の必要とする乳価を完全に自分の企業内で吸収するということは、いうべくして行ない得ない価格であります。  以上のような状況で、この十年間ほとんど加工処理費というものの値上がりを見ておりません。今回の牛乳価格値上げ酪農の衰退を防止するために必要やむを得ざる措置でありまして、これらに対しましてわれわれもほとんど十年間実質上の値上がりを見ておりませんので、どうしてももう会社の経理が許しません。幾分処理費値上げを認めていただかなければ自滅する、こういうような窮地に追い込まれまして値上げお願いしておる、こういうのがわれわれ処理業者実態であります。  以上をもってとりあえず説明を終わる次第であります。
  6. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 次に田部参考人お願いいたします。
  7. 田部清

    田部参考人 私は全国牛乳販売業者を代表いたしまして、今回値上げ問題を通じて世間でもろもろな意見が戦わされておるのでありますが、その時点に立って申し上げまするならば、今回、農林省においても、生産者値上げはやむを得ないのじゃないかという発言がございます。生産者値上げをいたしますると、ただいま大野参考人が申されましたとおりに、乳業メーカーにおいて合理化によってその値上げを吸収することはできないとおっしゃっておるのであります。しからばそのはね返りはどこへ来るか、すべてこれ販売業者にしわ寄せをされるのでございます。  私どもは零細な商人でございます。朝早くから夜おそくまで大多数の業者は、家族をも含めて一致団結をいたしまして今日の販売業を営んでおるのでございます。したがいまして、乳業メーカー値上げを要請したときには、われわれは半自動的に値上げをするというのは、いわゆる生産処理・販売の力関係がそれをさすのでございます。したがいまして私どもは、去る四月一日までに私ども値上げをしてくださいという申し出がございます。そこで私どもは、そのような値上げをされるときにはやむえ得ず消費者に対して値上げお願いしなければならぬ。その配分率等についてはいまだ決定をいたしておりませんが、生産者に支払う額が、聞き及びますると一円二十銭と申されております。あるいはその前後かと思いますが、それだけを考えてみましても、私ども配達経費をどうして削減するのだ、そういうことはとうてい不可能でございます。だれが何と言っても、乳業メーカー値上げ要請を受けたときには、必ず上げるということをはっきり申し上げるのであります。  私どもは、委員会に御出席先生方に対して非常に不遜ではございますが、どうにもできないというのが現状でございます。皆さんはいろいろな介入をされる。婦人団体牛乳代を値切れと言う。あたかもわれわれが悪いことをしているかのごとき一方的なマスコミの宣伝あるいは主婦連の活躍、そういうものがあるとしたら、私らがそれに負けて上げなければ、私どもはあしたから自滅するということだけは間違いないわけです。だから今度もし値上げがなっても、私らが三十九年に値上げをしたとき以降たった四十銭か五十銭取るだけだ。これが何が悪い。だてや酔狂で運動されるのと違って私らは生活をかけている。勘違いをしてもらっては困る。四十銭や五十銭、三年ごしにもらうのが何が悪いか。なぜ販売店がいじめられなければならぬのか。かって過ぎるじゃないか。それならかってにやりなさい。私らはみごと上げてみせてあげよう。  私どもは、統制だとか支持価格をやめなさいという話があったときに、これをはずしたら値が上がりますよと言っている。われわれはあほうだから、政府が支持価格だとか指導価格というと、絶対にそれ以上には上げられぬものだとして、その下で競争を苛烈にやってきた。今度ははずしてくれる、はずしたら上がりますよというのだ。どこかの役所は、はずしたら下がるだろう、下げてみせると言う大臣があるが、そんなら下げてみせろ。私は絶対に下げない。下げることによって、全国におる三十万の牛乳労働者の生活がどうにもできなくなる。これだけは知っておいてもらわなければならない。  上げるというと、公取はどう言うておる。一斉値上げをしたら公取が調査をする。ばかにするな。政府のほうが生産者値上がりはやむを得ないと言ったじゃありませんか。それを乳業メーカーがまた上げて販売店に位上げをしてくれと言うたら、私らはどうしたらいいのか。何でもいいから小売り屋をたたいておけば上げないだろうというような考え方で運動をされてみたり、それのけつをたたくような人間は、私らは認めない。私らはそのときにはやめますよ。生活をかけているんです。それだけを覚えておいてください。会や役所の発表ですべてのことができるのであるなら——この前倉石大臣に会ったときにぼくは言うておる。学者の言うことが何でもいいんなら政治家は要らないじゃないか。東大の総長が総理大臣になったら一番うまいこといきますな。あんたらも要らぬようになりますな。そうとは違うじゃないか。いま指導価格をはずしたら、私の考えでは上がると思うから、そのままにしたほうがいいのと違うかとぼくは言うておる。それを中西さんのほうからはずせはずせ、はずしたら乳は下がるんだと言う。政府も協力して下げてみせるというのなら、ぼくは上げてみせてやる。命をかけているんですよ。皆さんは、婦人団体は、失敗したらやめたらそれでしまい。私らは皆さんによって撹乱されて、生活は日に日に追い込められる、そんなことは絶対に許しません。どんなことがあっても許しませんよ。  公取は何ということを言うんだ。一斉に上げたら公取が手入れをすると言う。私はそれで教えてもらいに行った。こういう事情で上げなければならぬようになったときにはどうしたらよろしいかとおれは聞きに行っておる。いま言えませんと言う。やってみなければわからぬというような話をするから、私は、日本人として業者に法を犯すようなことはさせたくないんだ、せめて私だけの責任で済むのならやりましょう。しかし全国には商業組合があって、その理事長の責任においてやらなければならぬときにはどうしたらいいんですか。私をつかまえるのか。罰金を取るのか、どうするんだということを聞いても返事をしない。こんな役所がどこにあるかというんです。警察行って、どろぼうをしたらつかまえられるのですか、どれだけ罪になるのですかと聞きにいったら、したらあかぬという教え方をするのが警察じゃないか。いまの役所は何だ。一方では生産費の値上がりやむを得ないと言って、できもせぬやつに押しつけて値上がりを押えてみせるというのははなはだ思い過ぎだ。大臣、そんなにえらいのか。ぼくはそう言っておる。私は全国の三十万の牛乳関係者の利益を守るために、あした投獄されてもいいから一番いい方法を教えてくれと頼んでいる。教えないじゃありませんか。それで婦人団体が行ったら、皆さん監視しなさい。ぼくたちは何を言っているんだというんだ。ばかにするな。こんなことで政治がやられているとはぼくはよもや知らなんだ。政治というのは、えらい人が寄って、われわれのために心配をしてくれている集団があるんだと思っていた。私はここへ来たのは生まれて初めてです。皆さんりっぱな人がやってくれていると思うから安心しておるのです。ところが今度の場合は、企画庁の宮澤さんという人が何と言ったか。押えてみせると言う。押えてやろというんだ。そんなことができるか。食っていかなければならぬやつを、ただ単に大臣が押えてみせると言って押えられるか。  だから私は言っておるんだ。牛乳屋も入れて、あしたからできるような改革案をつくるのには協力したい。しかし皆さんが大学の先生を集めて、これでいいと発表して、あたかもあしたからできるような発表をすることは、私はあまりに越権ではないかと思う。十人や二十人の人力車夫が言っているのと違いますよ。何十万かの牛乳屋に働いておる人間が生活をかけて頼んでいるじゃないか。それを婦人団体のけつをたたいて値上げ反対しなさい、反対しなさい。婦人団体なんて、それが失敗したらそれで涼しい顔をしておれるじゃないか。私らはまぜ返されてそれだけ生活が苦しくなる。だからいやだと私は言っている。それなら農林省はなぜ生産者メーカーが払う価格を保証してやらぬか。  私らは三年ごしに値上げ一つもしてないんだ。その間に——牛乳の販売店の経費のほとんど七割までが人件費なんです。上げていますよ、総評が旗を立てるたびごとに私らも。大将いつ上がりまんのやと言われて三年暮らしておる。今度また上がりますよ。どうしたら私らは払えるようになりますか、だれも何にも考えてくれない。私らの意見を一回も聞いてくれなくて、かってにきめてかってに押えてみせるというんならどうぞ押えなさい。私はからだを張って押えさせない。三円、五円上がってもおれは知らぬ。あたりまえじゃないか。ほかのものと考えてみなさい。  ぼくは新聞屋さんにかなりひどいことを言われるけれども、新聞は何倍になっているんだ、牛乳は何倍になったか、新聞屋さん、あんた知っているやろ、こう言って聞いたら、新聞屋さんはおれは記者で営業はわからぬと言う。うまいことを言えるようになっている。私らは小さいから、親方であり、掃除番であり、配達を兼ねているんだ。私の店については何でもわかっておるんだ。新聞屋さんは大きいからうまいこと逃げるじゃないか。こんなことが世の中に通るかというんだ。酒屋は上がったじゃないか。なぜ酒屋が上がったんだ。酒屋は何ぼ小売り屋がとったかということを皆さん説明したかというんだ。してないでしょう。酒屋は大きい、金持ちだから皆さんは何にも言わぬ。牛乳だけ貧乏人が働いておるから、こいつをいじめたらよう上げぬだろうというような軽い考えでやられたら、私は承知しない。絶対に上げる。公取が何と言うても、生きていくためにはわしは遠慮は要らぬと言うのだ。食わしてくれる政府があるのならいいが、朝の二時半、三時から働いて、家族をひっくるめてどんなに苦労をしているかということは皆さんちっとも知らない。一部団地で競争しているやないか。ひどい男はこういうふうに言う。牛乳屋の五軒や十軒つぶれてもいいんだ。安い乳が買えたらわしらはよろしいのやと言うている。こういうことが一方通行で世間に発表をされて、私らの実情がちっとも発表されないということを私は非常に残念に思う。  ここで、私は腹が立つから言うてみたい。どこでも新聞社が来たら、てまえのいいような消費者向きの価格を発表したり、理由を発表してくれる。私らが心を込めて、こういう事情ですと三十九年以来——今度の値上げがかりに二円としたら、四十銭か五十銭だ。これぐらいしかとうてい常識としてもらえぬのだ。千本配って一万二千円の値上がりですよ。千本配るのに二人の従業員が要るとしたら、ことしのベースアップでこれはパーだ。従業員が待っているんですよ。従業員は、いつ親方何ぼか上がるでしょうと言って待っておる。ほかのものが全部上がらぬという保証がどこにある。米の値上がり認めたじゃないか。米はどうして上がるのだ。私は牛乳は買うてもらっているけれども、ほかのものはみんな消費者だ。米も、酒もみなそうですよ。私は消費者だ。公共料金でも私らは被害者だ、ほんとう言って。これを皆さんはどんどんどんどんお認めになって、牛乳だけいかぬとはどういうことだ。もっと真剣に考えてもらわなくちゃいかぬ。  同時に、私が先ほど申し上げたように、農林大臣に私が言っておるのは、牛乳屋も入れてできることを相談をしようじゃないか。今度の値上げには間に合わぬと言う。あたりまえですよ、あなた、この間でしょうが、生産者がむしろ旗を立ててわいわい言うたら、皆さんはにしきの御旗にしているじゃないか。何も言うたことないじゃないか。もっとどうにかならぬのかということを一言もよう言わぬじゃないか。そうでしょうが。私はここにおいでになる山口さんに、去年の暮れに会ったときに、生産者が今度値上げを要求している、非常にお困りになっておるのはわかるけれども飼料の問題についてどういうふうにしてあるのか、いま食べる牛が少ないから、乳牛がそこにいくようになっているのにどういう手を打つようになっておるんだ。これが何にもできなければ、来年また値上げをせなければいかぬようになるじゃないか。政府に対してそれをはっきりさしてもらわなければ、われわれは来年また困るのはいやだということを山口さんに申し出ておる。私らは皆さんの前で、生きていけぬから上げるんだ、決してそれだけじゃない。もう少し徹底した総合的に判断をして——私らしろうとの考えでいうと、非常に役人がかわり過ぎるんだ。去年の値上げが起こったときに、私らは農林省にどうなるんですか、生産者が上げたら私らも上げなければならぬようになりますが、生産者に対しては、農林省は一応押えてくれぬかということをお願いをしてある。今度は生産者はやむを得ぬだろう、こう言っている。そうでしょう。だからにしきの御旗だ、これは。衆議院の皆さんに相談したら、これはしようがない、日本で牛がないようになったらあかぬがなというので、皆さんはお認めになったと思うのです。そのときにお米のように、お米を上げなければいかぬときには政府が補償するならまだいいんですよ。何もしないで、それを自由企業乳業メーカー、零細な牛乳販売業者に押しつけて、その末端の消費者に接触するところで、主婦連等を使ってできもせぬことをふれて回らすというのはおかしいというんだ、ぼくは。そんなことをするな。私も日本人ですよ。私も細々ながら税金を払って生きているんだ。私はばくちを宣伝しているんじゃないですよ。私は正常な牛乳配達という仕事をして、税金も払っているんだ。おれのほうも向いてちっとは考えて話をしてくれということを申し入れしておるわけであります。したがいまして、私どもは何でも合理化に反対をしたりはしておりません。私らをも入れて、できることからやっていこうじゃないか。いまの値上げにどこに間に合うんだ。いまの値上げを阻止するんなら、初めからもとへ戻してこいというのが私の考え方であります。  ところが、もう皆さんはそれで得心をされている。もう上がるようになっているんですよ。乳業メーカーは私らに値上げを言うておる。そうすると、その場合に生産者が一円二十銭で、乳業メーカーが何ぼか取って、私らが何ぼかもらうようになっている。そんなもの知れたものですよ。よう覚えておいてくださいよ。四十銭か五十銭しかもらえぬようになっている話を、私らが明らかに罪人扱いをされるのはいやだ。交通戦争でトラックの運転手かダンプカーの運転手並みに、悪いことを私らがしているような考え方だけはやめてほしい、これだけをお願いをしたいと思うのであります。(拍手)
  8. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 次に春野参考人お願いいたします。
  9. 春野鶴子

    春野参考人 主婦連合会の副会長をいたしております春野でございます。  牛乳のお値段につきましては、私ども消費者団体はずいぶん以前から取り組んでまいっておりまして、あるときは毎年、あるときは一、二年おきに悩まされ続けてまいりました。概していえば、いまは多少事情は違うといたしましても、牛乳の値段は生産者泣かせの消費者泣かせ、こういうことばが長く流布されたことでございます。今回の乳価については、従来とちょっと違う特徴がございます。それは三十九年でしたか、当時行なわれました農林省の消費乳価に対する支持価格、このやり方を農林省が、たいへん突然でございますがおやめになりました。それは、いまも御意見が出ておりましたけれども国民生活審議会の消費者保護部会、そこなどで支持価格制は、むしろ値上げをささえる要素になっているようだから、やめられたほうがいいのではないか、つまり、自由価格でございますね。それは資本の自由化、あるいは貿易の自由化、そういうことにも関連があるのかとも思うのですけれども、しかし、いずれにいたしましてもその勧告をされたわけです。しかし、その勧告をされるについては生産対策、生産拡大の対策、それから生産増加いたしましたその牛乳普通牛乳が、流通の面でも合理化されて、そういう手立てを十分やりつつ、なるべく消費乳価の支持価格ということは、あってもなくても、つまり従来もあったわけですけれども、それがなくても、その基本的な手当てを急いで、それができるから、たぶん支持価格がなくても消費乳価は上がらないで済むであろう。生産増加、それから流通の合理化、そして消費者が安くて豊富な牛乳を従来よりも多く飲むことができる。そういう三者の総合された状態に早くいかなければいけない。そういう対策を当局は急ぐべきである。そうなって初めて、いわゆる支持、価格というものがあってもなくてもやたらな値上がりはしない、こういう深い構想からあの勧告がなされているわけです。私どももそのことには実は賛成いたしたのです。  ところが、いろいろな議論はございましょうけれども、突然、前段の基本的な対策はなされずに、そこの支持価格のところがすぽっととにかく撤廃された。私どもから見れば、ははあ、農林省さんはやっかいしごくな乳価について逃げ出した、責任を回避された、体をかわした、まあことばが悪いのですけれども、そういうふうに率直に思いました。しかし、ともあれそれが撤廃されましたとなると、消費者側から見れば、生産者団体メーカー側の話し合いによって生産者乳価が上がった。これは団体交渉でございますから、そこら辺へ私どもが干渉をする必要もございませんし、生産者のお立場が非常に苦しくなっていらっしゃる、それはまあ推測いたしております。なおまた、メーカーあるいは小売り店もぬくぬくともうけていらっしゃるとはだれも思いません。とは思いませんけれども、お互いに何かくふう努力し合って、この何でもかでも物価が上がり続けるおりから——ことしはまた年頭早々に物価安定推進会議、これには佐藤総理が先頭に立つという意見込みもお示しになった。昨年また物価懇談会等であらゆる知恵を集めて、物価を安定させようがための総合的な討議をなされて、十一もの提案が出されたくらいなんです。それに次いでことしまたそういう意気込みをお見せになっております。しかし、それはまだ看板だけでございまして、発足したばかりでございまして、実際には足元から、まず生活に非常に関係が深く、米に次いで重要な食糧になっております牛乳がが然台頭してきた。それで、消費者を除く三者の事情を承れば、それぞれ全体的な物価値上がりあるいは人件費の高騰その他いまるるお述べになったようなことで大きく波をかぶっているということは、理解していないわけではございません。同様に消費生活のほうも、何もかもそれらのすべてが最後には家庭生活の中にまいりまして、大なり小なり——小なりじゃない、大なり大なりの物価高の圧力を、苦痛を全面的に受けているわけでございますから、だてや酔狂で婦人団体がいいかげんな叫び声を上げる、そういうものではないのです。全国民が消費生活をしているわけでございますから、われわれ、この乳価につきましても、ただ部分的なところで、小売り店がけしからぬとか、あるいは明治、森永がけしからぬ、ただそれのみを論じて事が済むものでないことをよく承知しております。でありますから、問題を提起して、日本全国で、政治家もあるいは農家もわれわれも、みんなでどこに一番深い欠点があるかということをさがし出して、協力し合い、理解し合って、その一番悩みの深いところを解決していくべきだ、こういうふうに総合的に考えて諸般の運動を進めているのが事実でございます。  けさも私は——私は年をとりました姉と二人暮らしでございます。主婦連の集団牛乳を仲間の婦人会がやってくれておりますので、私もその一員として一日に一本だけ飲んでおります。姉と一本ずつ飲みたいけれども、飲んでおりません。それは十六円でございまして、配達をしてもらって四百十六円、五回お休みがあったりしまして、二十六本で四百十六円払う。私のすぐ近くに三十歳の父親、二十六歳の若いお母さん、子供が十一カ月と二歳でございます。その二人を育てておりますのに、ようやく集団牛乳を回しまして、非常に助かるというのでいま飲んでもらっている。で、毎月幾ら払っていますかと聞きましたら、二人が絶対に要る牛乳でございますから、毎日九本飲んでいる。九本飲んで四千百五十円払っております。若いその主婦に、じゃあなたの下にパパから幾ら家計費を預かりますか、四万円預かります。もう四苦八苦しているわけでございます。おばあちゃまも合わせて大人が三人でございますが、米代は、月に二十キロ、十キロ十キロ二回取って、上米でございますから二千四百円ちょっとでございます。で、育ち盛りの赤ん坊二人、おっぱいが要る盛りのをかかえ込んで、大人が食べる米代より——もっとも大人はパンを食べておりますけれども、そういうふうに牛乳の家計費に占めるウエートはどんどんふえている。子供にとっては絶対の主食なんです。  それから、先ほど森永の御説明の中で、るる御意見の開陳がありましたけれども、消費の伸び、これを明快にお述べになっていないのはたいへん残念だと思います。各国と日本比の表は出ておりますが、日本人の牛乳を飲む量はたいへん少ない、これぐらいしか飲んでおりませんという、これはもう毎年出る、承知している表でございます。しかし、少ないけれども数年前、たとえば五年、十年前をとれば、少ない中でも牛乳を飲む日本人はぐっとふえているはずなんです。そこら辺の数字、いわゆる需要伸びもあわせて、したがいまして、メーカーあるいは配達者の事業の拡大ですね、そういうような計算がぜひほしかったと思ったわけでございます。いずれにしろ世界各国に比べて一人の飲む量はまだ少のうございますけれども、以前に比べて牛乳を飲む消費量というものは相当に拡大してきているということは言えます。  で、それをもこれをも、五年間以上に及ぶ物価高によって吸収できないというところに、今日の大きな問題があるわけでございますが、消費者団体といたしまして私どもは、劈頭に申し上げましたように、いままでの乳価騒ぎにはなかった、いわゆる消費価格は自由価格になった。それで小売り店も、一軒で九千本もお配りになっているお店もあれば、六千、五千、二千、最低は五百本あればというお店すらあるわけですけれども、やはり規模の大小がございます。それじゃ、いよいよその自由価格に入ったのであれば、まず私ども牛乳を飲む消費者仲間に、四月一日からは自由価格なんだから、従来の例のような一斉に二円位上げというふうなことはもはや過去のことであって、お店次第によりまして、九千本をお出しになっているようなお店は一円の値上げで済むかもしれない、あるいはあるお店では、いえ、もう二円五十銭上げないととてもじゃないけれどもやりきれない、いろいろあろうかと思います。そのいろいろな姿がこれから出てくるわけなんですね。それをいま見守っているわけなんです。それが従来の商慣習とでもいいましょうか、あるいは支持価格があったせいでございましょうか、とにかく画一にかっちんかっちんと消費者不在のままお値段がきまり、マージンがきまる。そうして消費者のほうには確実に二円、しかもそれが四月一日からであるというようなうわさなりニュースが広がりますと、さっき申し上げました子供をかかえている家庭なんか、しかもこれは主婦連の十六円牛乳を飲んでいてこれなんですから、十八円あるいは——いまもう十八円の普通の白い牛乳というのは持ってきてくれないところがふえております。たいてい、二十円あるいは二十二円のデラックスはいかがでございましょう、二十円以下の白牛乳普通牛乳はとてももう配達はできません、あるいは売り切れました、品不足ですというふうなことで、なるべく高いほうを家庭に飲ませようという作戦があるわけです。まあ私ども、微々たる量ではございますが、一日に二万本ほど各所の団体ががんばりまして、そうして現在十五円五十銭あるいは十六円、しかもこれは配達者にも一円五十銭、ないし一円七十銭、そういう料金をあげて、まあまあとにかく一生懸命こうやって共同購入をやれば、集団飲用をやれば、お互いが納得いくことができる、各家庭に幾らかでも消費拡大のつらさを、この牛乳一つの例で少しでも救うことができるという実例を、十年間続けてきているわけなんです。だから、どこに無理があり、どこにどうかということは、相当私ども承知しております。そういう私どものせつない一生懸命な実際行動が、いろんな意味合いで社会に反映いたしましたか、まあ価が動くにつきましても、あるいは農林省がどうこう、厚生省がどうこうというふうな場合でも、われわれのやっている実態、その体験をよく聞かれて、業界の独走をある程度防いでいるということは言えると思います。  それから、悪いことには、いまは普通十八円でございますけれども、その安い普通牛乳の量がどんどん減るのです。さっき申しましたように、配達を頼んでもそういうものは持ってこない。駅頭に行きまして牛乳のケースを先生方ごらんくださればわかると思いますけれども、色のついたものばっかり出ているんですね。たとえば、コーヒー牛乳なんかは体育館だとかあるいは遊園地、そんなところで飲みますともう五十円です。それには一体牛乳が八割入ってコーヒーが二割入っているのか、コーヒーが八割で牛乳が二割なのかさっぱりわからない。猛烈に高いのです。そういう色づきのものはどんどん量がふえまして、それでほんとうに国民が、もうコンスタントな、普通牛乳の規格はきまっておりますから、その普通の牛乳を豊富にほしいと思っても、それがメーカーさんの御都合によって自由に支配されて、そうして利潤の多い、マージンの多いそちらのほうにどんどん逃げ込んでいる。こういうことも私は農林省、厚生省、いわゆる政府の姿勢として、国民にもっと安い牛乳を豊富に——加工乳は、これはもう自由でございます。それは関知の限りじゃない。ところが、われわれが最も、求めるのは、子供や老人、病人にはなくてならないその牛乳、しかもこれを安く豊富に国民に飲ましてやりたいというその基本的な姿勢から、まずここら辺を機会に生産のほうにぐっと力を入れてもらう、あるいは流通の合理化をする、それから消費者のほうにも無理ないものを、いままで一本飲んでいた人が二本、三本、五本飲める、こういうふうなあるべき姿を願ってやまない。なかなかその方向に近づきませんで、わいわいとお互いがけんかするみたいな牛乳戦争というものが毎年起こることは、きわめて不幸なことです。その部分はおくといたしまして、基本的に、まだ真剣な腰入れがないということを残念に思う次第でございます。  時間がまいったようでございますから、一わたりここらで、あと御質問があればお答えいたしたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  10. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 次に三巻参考人お願いいたします。
  11. 三巻秋子

    ○三巻参考人 私は消費科学と申しますか、自分の会の名前にその消費科学をうたいましたほど、ものごとを科学的に見ようじゃないかということをモットーにいたしまして、消費科学センターのほうは消費者教育を、消費科学連合会は消費者運動、商品テストという面で働く、そして消費科学生活協同組合というものが、実際的に共同購入する場合にはそこがタッチするという、この三つの柱を立てまして、その三つの会を運営しております三巻でございます。  きょう伺いました前提といたしまして、私はあくまでもこの物価高のおりから、政府あげて物価対策をしなければならないというときには、ほんとうに国民のための食糧に近い牛乳という問題については、あくまでも据え置いてほしいという願いでございます。そういたしますと、生産者のほうの乳価がきまりましたとたんに、今日の現状というものが納得ができないという理由で、生産者のほうももう少しほかに手があるんじゃないかということを申し上げてみたいと思います。  本日、当委員会牛乳問題をお取り上げくださいましたということは、私はおそきに失したんじゃないかしらんと思いますが、たいへん敬意を表する次第でございます。安い牛乳をたくさん飲みたいということは、私もう十三年前からこういう運動を始めまして、いろいろ言い続けてまいりましたわけでありますが、先年欧州へ参りましたときにずっと牛乳を見てまいりましたところ、所得がわが国に比べまして三倍、五倍と多いところで、最低値段十二円から高くて十五円だ、百八十ccに換算いたしまして。そういうふうなことを見ましたときに、やはり牛乳はまだ商い、これには何か国の政策なり手の施しようがあるんじゃないかということを常に考えております。今度の値上げのワクを見ますと、二円といたしまして、その生産量から見たならば、約百億円の消費者の犠牲においてこれがなされるということを計算するものでございます。  今度の問題は、例年になく値上げの根拠がたいへん複雑でありまして、それは酪農行政の不備と、生乳の取引価格決定いたします方法が、中央交渉と県一本という団体交渉に変わって、力関係により乳価がきまって、それがために乳価水準をますます高くしているということに大きな原因があると思います。  ここ十年の酪農行政を振り返ってみますと、農林省昭和三十年から三十四年までを酪農の普及期に当たるといっておりますし、三十五年から三十七年までを経営的転換期である、三十八年から四十年は規模拡大の時期であるということをいわれております。そうして四十一年の六月からは、加工原料乳についての不足払い制度が実施されまして、地域的に加工乳地帯の保護政策がなされたわけでございます。  ところが、かえってそれにもかかわらず生産量が停滞した。十年間の生産量を見ましても、むしろ停滞しているということは、私たちとしてはたいへん問題なのでございます。昨年の不足払い制度によります加工原料乳の国の補助は、一・八七五キログラム、一升に換算いたしますと九円七十九銭でございますが、その恩典を飲用乳にまでほしいということで、飲用乳と加工乳との格差の不合理を理由に、乳価闘争にたいへんに拍車がかかったということは事実だろうと思います。しかも、米価決定の際の所得補償方式に魅力を感じ、米の一日の労賃と比較して、合わぬ酪農というムードをつくり上げました。そして酪農を放棄したり、肉牛に比較して屠殺したりすることは、生産性の合理化による努力意欲を私はなくしているんじゃないかと思います。  このような考え方である以上、たとえことし一・八七五キログラム当たり十二円の値上げを認めたといたしましても、来年の生産量の増加というものがどれだけ私たちに保証してもらえるのかということは、たいへん疑問でございます。何年目かには、米と同じく年中行事のように、乳価闘争によるしわ寄せが消費者のほうにかぶさってくるということはもう現実でございまして、この悪循環をどこかで砕かなければならない。それには、現在、消費者の自覚によって組織を固め、争うことしかなくなってきたというのが現実でございます。  その上にだれもが言いますことは、生産費のコストを切り下げるようにしたらいいじゃないかと簡単に申しますが、生産費の中の五〇%以上を占めております飼料とても、ことしは容赦なく国の扱い分の値上げをきめてしまいました。飼料の流通段階でも相当問題があるといたしますと、なぜもっと価格政策だけではなくて、生産性を高める方策が考えられなかったのかということがまことに残念でございます。  酪農行政の貧弱さは、私がちょうど昭和二十九年に十円牛乳運動を始めましたその当時と全く条件は同じでございまして、いまもって多くの問題点をかかえております。そして最後にはいつも消費者の犠牲において値上げされ、その値上げ分を酪農メーカー、小売りと三者で分配しているのが常でございます。ところが、物価対策として各所で流通問題の改善策がいろいろと考え出されてまいりましたときで、流通のパイプを太く、短く、効率的にするためにどうやって改善したらいいかということを寄り寄り考え中であるそのときに、生産意欲を持たせるにはとにかく乳価を上げなければ、このほかの方法はないのだというような価格押し上げをしてしまったということも、私は納得ができません。その上に小売り価格の指導価格が廃止になりまして、これまた何らの対策もないままに組織の弱い消費者には、野放しを宣言されたのも同じでございます。まことに不利な条件で一方的に価上げへ押しやられているというのが、いまの現実ではございませんでしょうか。消費者価格の二円の値上げを、もはや印象的に一般的に大きく植えつけてしまったのでございます。指導価格をはずすことが自由競争を意味し、消費者自身の行動力が必要である販売形態へ変わったということを、もっとPRを早くしてほしかったということが、いかにも片手落ちで残念でなりません。  農林省価格の抑制を、流通改善モデル事業費五百万円予算に計上いたしましたことで逃げていますが、これとても九十三億という農林省酪農予算に比較いたしましたならば、パーセントにも当たらない微々たるものでございます。これとても消費者努力がなくしてはできないはずでございまして、九十三億円をどう使うのかいろいろ分け前はございますが、増産効果の期待は私は望めません。要するに酪農振興対策を単に農家保護だけに終わることなくして、最終消費者価格の安定と消費拡大とに結びつけていかなる方法を講ずるかということを、私は早くしてほしかったのであります。当物価委員会におきましては大いにこの点を御批判いただきまして、要所要所におきましてこれを十分にお取り上げ願いたいと思います。  次に、牛乳の品質規格について申し上げてみます。  牛乳には加工牛乳普通牛乳、乳飲料とありまして、普通牛乳だけに厚生省の成分規格がございますことは御承知のとおりでございます。昔を思い出してみますと、この加工牛乳ができたいきさつは、たしか原料乳の供給過剰を乗り切るために特定の客に脂肪分を〇・何%かわずかずつでも入れて高く売ろうという、品質とマージン改定を考えた商魂だと聞きました。余ってしかたのないときには安くして多く普通牛乳のまま飲ませてほしいというのは当時私たちが主張したところでございますが、現在のように不足してまいりましたときこそ、脂肪分をもとへ戻した普通牛乳一本にしてはどうかと思います。  次に、昨年私は流通視察のために欧州へ行ってまいりましたが、各国で日本のような色のついたものを売っているところはどこもございません。フランスではビタミンの添加すら、医者が子供にビタミンを飲ませる基準が立てられないと言って、ビタミン添加を禁止しております。思い切ったことのできない日本の役所は、今度技術革新のもとに無菌牛乳をつくりましたが、それすら理屈をつけて加工牛乳としていることでもよくおわかりと思います。事ごとに担当局と厚生省の立場の違うことをたびたび見受けますが、厚生省は一体国民のために行政をするのか、業者のほうを向いているのか、理解に苦しむ点が多いのでございます。  もう一つの問題は、食品衛生法で普通牛乳の成分規格を脂肪分三%という基準にいたしましたのが昭和二十五年でございますが、これがためにいまの消費者は、水っぽい牛乳という汚名を着せております。この基準をもう少し実際的に合わせて、加工乳分のその分をこちらに合わせて三・二ぐらいにその基準を上げていただくならば、もっと実質的な価格引き下げになるということでございます。  このほか農林規格の生乳取引規格が、一等乳で脂肪率二・八から三・二という取引の基準がございますが、これとても幅がたいへん多うございますし、農林省の基準と厚生省の基準が、目的は違いますが、品質の向上を妨げているという点がたいへんに見受けられます。現在三%すれすれの普通牛乳が市販されておりますことは、私が三十九年から四十一年まで三年問続けて、夏場に三回末端の販売牛乳を買ってまいりまして、東京都の衛生研究所へ持ってまいりまして分析いたしました結果、五十五点中二・九%が一点、三%が二十七点、三・一%が十七点、三・二%が十点、いかに厚生省規格すれすれの線でつくられているかということがおわかりでございましょう。  公取では値上げの方法につきましていろいろ調査しているそうでございますが、期待するにはいかにもおぼつかない感じでございます。私はいま方々の聞き込みをしていますが、監視の必要もわからないではありませんが、証拠がつかめないのが実情ではないかと思いますので、何らか打つ手はないものかということをお考え願いたいと思います。  最後に、先ほど小売り屋さんは生活権云々について力強くおっしゃいましたが、私も長くやっております経験上わからぬわけではございませんが、電話帳を見ましても、十軒も次々と支店を持っているような大きい乳業者もいますし、最近牛乳屋さんの前を見ますと、あきびんが山ほど積んであるのを見まして、これだけ消費者が飲んでいるから牛乳屋さん保てるのだと私も思いますが、かねてから牛乳を完全栄養食としていろいろと取り上げてまいりました関係上、牛乳におきましては栄養と価格と安全という三つの角度から牛乳の供給の実情をつかまなければなりません。牛乳を実際に配達しております住宅公団の団地の人たち三十六団体の方を集めまして、せんだって値上げに関して牛乳会議を開いたのでございますが、法律で統制のできないいま、いろいろとビラをつくりまして、お手元にお配りした袋の中にございますが、何も知らない消費者に、「牛乳値上がりをくいとめよう」、「牛乳店に値下げ交渉をしましょう」、「店まで取りにいけば配達賃だけ安いのは当然」、「加工乳は損 普通牛乳に切りかえよう」、「集団購入で安くさせましょう」というように、いろいろと知恵を働かせまして消費者の啓蒙宣伝をしておりますが、これとても宣伝が行き渡るとも思えません。  おまけ作戦ということで、自由競争になったんだから力強く発言してほしいということを申しますが、何ぶんこれがどのぐらい効果があるかその辺はわかりませんが、私の最後のお願いとして、小売り業者の方にどうしても聞いてほしいことは、店まで取りに行った牛乳配達された牛乳よりも値段が高いという不合理は、どうしてもこの際直していただきたいと思います。配達賃が人件費の暴騰によりまして高いのは当然でございまして、これから先、家にじいっとしているものの値段と店に買いに行きますものの値段の差ははっきりとつけなければならない時代になりましたのに、それが現状では、むしろ店に買いに行ったほうが高いのでございます。この際店頭に張り紙をいたしまして、店頭に買いに来た方には現状、いやそれ以下に据え置きますというようなことをはっきり書いていただけませんでしょうかということを、乳業メーカーの社長さんにお会いしたときに申してまいったのでございますが、ある社では、それを引き受けましたとおっしゃる方もあるし、ある社では、八割ぐらいまでは引き受けましょうと、メーカーの宣伝費をもとにしてそれをするようなことも承りましたが、どちらにしても、消費者にもっともっとPRしなければならないことでございます。  それと、私たちが牛乳会議をしておりましても、大口で取りながら、その町の小売り店を経由するあまりに、たとえば十一円五十銭でもらっていた牛乳が十三円で入っていたというような例が多うございます。要するに、小売り業者が町でそれぞれ組織しておりますだけに、メーカーにとっては、小売り業者を抜きにして直接その大口のところに持っていくということがなされていないのが多うございます。こういう際には、少しでもパイプを短くするために、直接メーカーが持っていって安く提供することがなされなければ、ほんとうの合理化ではないと思います。いろいろと配給改善を控えまして努力していただかなければなりませんが、小売り店は過剰なサービスを要求されるあまりコスト引き下げができないのか。先ほどいろいろとおっしゃいましたけれども、あるお客さんは、晩に朝に好きなときに持ってこいというような、ずいぶん過剰サービスを要求するお客もございます。しかし、それを一々引き受けての過剰サービスをした基準コストで経営をしようとなさるのか、店頭販売等までする、配達は自分の足でいたしますというような積極的な消費者を主にしての経営コストを基準にきめられるのか、この際すべての物価の高騰のおりから、そういう点を大いにお考え願いたいと思うのでございます。  いろいろと申し上げましたが、物価対策の実際的な効果があがるということは国民の刮目しているところでございまして、政治不在の汚名をこの牛乳で負わないように、この委員会におきましてもどうぞ国民立場に立って、先頭に立ってPRするところはPRする、つくべきところはつく、合理化すべきものは合理化する、国の予算を取らなければならないときには早く取って、そしてほんとうに価格ばかりを上げて、また来年もこういう結果がくるというようなことのないように、大いに合理化する面についての解決策を急いでいただきたいと思います。(拍手)
  12. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 ありがとうございました。  次に山口参考人お願いいたします。
  13. 山口巖

    山口参考人 私は、昨年不足払い制度が実施されまして、それを契機に発足いたしました各県の指定牛乳生産者団体で構成いたしております全国乳価対策協議会の事務局におるものでございます。  私どもは、昨年の十二月十五日に指定団体会長会議を持ちまして、生産者乳価キロ当たり十円以上引き上げるという要求決議をいたしまして、その後乳業者との交渉に入ったわけでございますが、それを契機にいたしまして、今回の乳価問題が大きく世論を呼び起こしておるわけでございまして、そういう意味におきまして、私どもの考え方、なぜキロ十円以上の要求をしなければならなかったかという点につきまして、この機会に御報告いたしたいと思います。  第一点は、私ども生乳の自給の問題から引き上げを主張しているわけでございます。  御承知のように、牛乳はいまや準国民食糧でございまして、国民食糧としての性格上、当然国内で自給自足体制をとるということが理想でございますが、現在の生乳生産状況を見ますと、まことに嘆かわしい次第でございまして、昭和三十年から三十九年までは大体前年に比較いたしました伸び率は、平均一一二・六%というような伸び率で推移をいたしてきたわけでございますが、三十八年から急激に停滞いたしまして、四十年から生産が目に見えて停滞をいたしまして、四十一年九月以降の生乳生産量は前年対比二%程度伸びにとどまっております。ところが、一方消費のほうは、ただいま各委員の方からも御報告がございましたように、非常な速度で伸びておりまして、大体去年も九月以降生産が鈍化いたしました際にも一一六・二%というような伸び率でございまして、その結果当然国内では生乳需給が逼迫をいたしまして、輸入乳製品によりまして需給の緩和をはかるというような事態が現出したわけでございます。それで乳製品輸入量は驚くべき増加を遂げておりまして、バターにおいては大体前年の九倍、脱粉が四倍というような輸入量でございます。これはほとんどが、先ほどから消費者委員の方がお述べになりましたように、還元乳の材料に回されまして、いわゆる白い牛乳として出回っておるわけでございます。こういう状態をそのままに置いておきますと、国内のせっかく伸びました飲用牛乳市場が大部分外国乳製品に乗っ取られるという危機感を私どもは痛感するわけでございます。せっかく政府酪農振興を唱えまして、酪農の振興をはかりまして消費が非常に拡大いたしましたが、拡大した消費市場をそっくり外国に持っていかれる、こういう危機感を覚えておるわけでございます。脱粉が四倍も輸入量がふえる、バターが九倍もふえるということは容易な事態ではございません。脱粉におきましては、国内生産量が二万六千トンでございますので、一万二千トン入っておりますから、すでに国内生産の半分が輸入にかわっております。こういう状態で、さらに先ほど農林省は四十二年度の輸入計画を一部発表いたしております。四月、五月の間に脱粉を一万五千トン緊急に輸入するという計画をすでに発表いたしております。おそらく四十二年度は三万トン以上の脱粉輸入がはかられる。そうしますと、国内生産量よりも輸入量のほうが多いという事態が現出するわけでございます。で、私ども酪農民としては、国内のせっかく伸びました飲用牛乳市場を自分たちの手で守り、自給自足体制を確立するというために、今回の値上げを強く訴えておるわけでございます。これが第一点でございます。  第二点といたしましては、生産者の所得の向上の問題でございます。  御承知のように、現在の乳価におきましては、政府の統計資料——これは労賃が日雇い労務者の労賃で計算いたしておりますが、百キロ当たり三千五百七十円というのが四十一年度の推定生産費でございますが、三頭以下の牛を飼っている農家、これは全部日雇い労務者の労賃で換算した生産費を下回っております。赤字でございます。こういう実態でございます。また、他の農産物の作物との労賃の比較を見ましても、牛乳はきわめて低い。一日当たりの労賃を比較いたしてみますと、ミカンの五分の一、米の三分の一、こういう低さでございまして、農産物の中ではおそらく一番低い所得でございます。これでは、酪農をやれと申しましても、酪農をやる意欲は農家にはわかないわけでございます。昭和三十八年に四十二万戸ありました酪農家が現在は三十六万戸に減っております。六万戸の農家がここ数年の間に減少いたしたわけでございます。先生方も御承知のように、酪農というのは特殊な技術を要する作業でございまして、あしたから酪農をやるというようなわけにはまいりません。牛というのは非常にデリケートな動物でございますので、これを扱う技術を習得するのには三年近くの日時を要します。そうすると、六万戸の酪農家が脱落したということは、一軒のうちに三人程度の技術者——おやじとかあちゃんとむすこと大体三人くらいおりますから、三、六、十八万人の技術者がこの三、四年の間に、乳価が引き合わないから失業してしまったわけでございまして、こういうことが続く限り、国内酪農を振興するということは、まさに絵にかいたぼたもちでございます。このために、私どもとしては、この際酪農家の所得を向上するために当面乳価の大幅引き上げをはかっていただきたいということをお願いいたしておるわけでございます。  第三点は、乳牛資源の問題でございます。  現在、牛がどんどん減っております。牛というのは三年たちませんと乳が出ませんが、三歳から六歳、ちょうどしぼりごろの牛は、昨年よりも頭数が二千頭近く減っております。こういうことは、やはりいま申し上げましたように、酪農が引き合わないからでございますが、他の一面は、肉価格との関係があるわけでございます。乳牛というのは肉のかたまりでございますので、肉価格が高騰いたしますれば、これに引っぱられて肉にされてしまうわけでございます。そこで、やはり肉価格との価格バランスというものをとるような乳価を実現しなければならぬわけです。私ども酪農家の間では、この肉価格価格バランスを計算する方法があるわけです。これは、大体芝浦の牛肉のすそものの価格の一割というのが従来からの常識でございます。現在、芝浦の牛肉価格は五百五十円くらいいたしておりますから、少なくともキロ当たり五十五円の乳価をいただきませんと、これは牛が肉になってしまうわけでございます。ところが、現在の乳価は幾らかと申しますと、大体、奨励金その他を含めましても、四十五円程度でございまして、キロ当たり十円程度乳価が低いわけでございます。この十円程度乳価を引き上げませんと、せっかく生まれました牛が、どんどん肉用に消費されてしまうということに相なるわけでございまして、この乳牛資源を確保するために、やはり大幅乳価引き上げを実現いたしたいというのが私どもの願いでございます。  大体、集約いたしますと、以上の三点の理由によりまして私どもは今回の乳価値上げ問題を提起いたしておるわけでございまして、目下乳業のほうと、各社別に、全国乳価対策協議会で団体交渉を実施いたしておりますが、本来、乳業のほうといたしましても、大幅値上げをせざるを得ない、大幅価上げをしないと国内牛乳がなくなるという点については、御理解をいただいておるようでございますが、まだ末端の乳価の詰めにつきましては、完全に終っていないというのが実態でございます。  どうか先生方におかれましても、この現在の問題が、いわゆる酪農家という人の問題、乳牛という牛の問題、人と牛が非常な危機におちいっているという危機感をひとつ御認識いただきまして、何とか生産者立場に対して御理解と御協力をお願いいたしたい、かように存ずるわけでございます。  簡単でございますが、私どもの主張に対しまする説明を終わります。
  14. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 各参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。  質疑のある方は、どうぞその相手の方を御指名の上、質問をしていただきたいと思います。  まず、小峯柳多君。
  16. 小峯柳多

    ○小峯委員 どうも酪農家のほうから問題が出てきているように思いますので、いまのお話で大体の見当がついたのですが、一キロ当たり十円と言いましたね。
  17. 山口巖

    山口参考人 私どもの要求でございます。
  18. 小峯柳多

    ○小峯委員 百八十ccに換算するとどうなりますか。
  19. 山口巖

    山口参考人 百八十ccは一円八十七銭五厘です。
  20. 小峯柳多

    ○小峯委員 そうしますと、あなた方のお立場からは、牛乳販売価格が一円八十七銭上げられて、それが全部酪農家に帰属すれば、いまあなた方の御主張はかなうわけですな。
  21. 山口巖

    山口参考人 そうでございます。
  22. 小峯柳多

    ○小峯委員 大坪さん、やっぱりそういうふうに承知してよろしゅうございますか。ほかにどこにもいかないで全部帰属をするとすれば、一円八十七銭ですかが全部あなたのほうに入れば、いまあなたのおっしゃったように、外国の輸入品とも太刀打ちができて、日本酪農というものが正常に発展するというふうに解釈していいんですな。  もっとも、だんだんお話の中にありましたように、たとえば所得の問題なんかというものは、あるいは肉の価格なんかという問題はほかの要因でも変化すると思いますので、総合的に政治の手を打ちますと変わってくるのではないかという感じもございますけれども、大体一円八十七銭上がれば、そしてそれが全部あなたのほうに帰属すれば酪農の前途は安泰だ、こう考えてよろしゅうございますか。
  23. 山口巖

    山口参考人 前途と申しますと長期的なことになりますので、いまの金額は絶対金額でございますので、前途ということは私たちとしては申しかねますが、当面現況におきまして、牛をつぶさないで生産意欲がわくというふうに確信いたしております。
  24. 小峯柳多

    ○小峯委員 大野さんにひとつ伺ってみたいのでございますが、大野さんのところの、現在の時点において処理をなさるその原価計算は、先ほど数字を見せていただきましたが、いまのままならこれはちっとも不足はないというふうに承知してよろしゅうございますか。
  25. 大野勇

    大野参考人 いまのままというのは、どういう意味ですか。
  26. 小峯柳多

    ○小峯委員 言いかえますと、卸売り価格を上げないで、いまの卸売り価格であなた方がこなしていくとすれば、特に値段を上げなくてもいいのかということです。
  27. 大野勇

    大野参考人 それは牛乳の買い入れ値段も上げなくてという意味ですか。
  28. 小峯柳多

    ○小峯委員 そうです。
  29. 大野勇

    大野参考人 それはことしの不足払いの金額が、これは酪農政策になるのですが、年々上がっていくわけです。そうすると、それだけで支出増が七億幾らになるのです。牛乳ばかりやっているわけではありませんから、総合経営ですから、七億の金と賃金ベースアップ、こういうものを吸収することはとても不可能でしょう。ですから、原料乳は上げなくても、あるいは上げなくてはならないかもわかりません。
  30. 小峯柳多

    ○小峯委員 原料乳が上がりませんでも、いまでは困るということですか。
  31. 大野勇

    大野参考人 困ることになりますね。
  32. 小峯柳多

    ○小峯委員 現在困るのですか。
  33. 大野勇

    大野参考人 四月一日からは困る。
  34. 小峯柳多

    ○小峯委員 四月一日からというのはどういうことですか。私は、卸売り価格が上がらないということが前提なんですよ。
  35. 大野勇

    大野参考人 卸売り価格が上がらなくても、買い入れ乳価が上がるのです。
  36. 小峯柳多

    ○小峯委員 買い入れ乳価が上がらなければどうですか。
  37. 大野勇

    大野参考人 買い入れ乳価が上がらなければ、あるいはやむを得ずがまんするかもわかりません。
  38. 小峯柳多

    ○小峯委員 経営者の常識としてがまんのできる程度ですか。
  39. 大野勇

    大野参考人 それは境目ですな。
  40. 小峯柳多

    ○小峯委員 それから小売りの関係、田部さんのぎりぎりのお話を開いて、実はたいへん啓蒙していただいたのですが、いまのままで値段を上げずに、それからメーカーから仕切られる値段も現状のままだとすれば、いまの時点で、いまの状態で——これはあなたのほうの経営の規模だとか経営の中身だとか非常に違うだろうと思うのです。がいにはなかなか言いかねるものだと思いますけれども、まあ、あなたの勘というふうなもので、なまじっか値上げなんて言わずにこのままでやっていけばやれていくとお考えになっておりますか。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 御発言の際は、そのつど委員長の許可を得ていただきたいと思います。  田部参考人
  42. 田部清

    田部参考人 私のほうも二年越し一銭も上がっていないわけです。だから、許されるならば、せめて四、五十銭は私らの自主的な力で上げさせていただきたい、こう思っております。すべてが上げないでいこうというのなら、しばらく——これからいつまでもというようなことは、これはだれでも言えぬと思いますけれども、しばらくの間はがまんしてでもいてはどうかというような考え方を持っております。
  43. 小峯柳多

    ○小峯委員 それでは重ねて伺いたいのですが、かなりメーカーのほうで特殊な販売政策をとっているように聞き及んでいるのです。たとえば、メーカーのほうも非常に競争が激しくて、懸賞をつけて販路を広めたりあるいは直売のような形をとったり、実は組合自体の平和な経営というものがメーカー意欲的な販売政策でかなり乱されているという点をときどき聞かされるのですが、その実情はどうですか。
  44. 田部清

    田部参考人 そういうことは事実でございまして、御承知のとおりに、生産者のほうは政治的な圧力を持っておりますので、皆さんのほうにもいろいろな意見がすなおに通るのでございます。また、メーカーといたしましては非常に膨大な資本を持っておりますので、私どもはある程度メーカーのおっしゃるとおりの商売をいたしてきておるわけでございます。昨今貿易の自由化等いろいろな問題をお話しになりまして、市乳重点主義に会社が移行するのだからということで、店舗の拡張、シェアの競争というのはものすごく激しいものがあります。そのために、部分的には過当競争をしいられるというような結果になったことも事実でございます。われわれが過当競争をしたのは、それだけもうかっているんだから、下げたらどうだという御意見が非常にあちらこちらで出たのでございます。これはわれわれがもうかっているから過当競争にまで踏み切っていけるのでなしに、そういうようにしいられてきているというのが現実でございます。いろいろな点において、この三つの団体のうちの最も零細な、最も力の弱いほうにいろいろな悪条件が重なってくるということは、御想像におまかせいたしたいと思います。
  45. 小峯柳多

    ○小峯委員 田部さんにもう一つ伺いたいのですが、いま前段のお答えで、がまんをすればやれないことはない、こういうお話。そこでいまメーカーのほうでやっている寡占支配によるシェアの拡大といいますか、かなりきついやり方をやっているようでございますが、そういうものがなくて正常な経営ができれば、そしてまた、この値上げの問題が出なければ、しばらく努力をしていこうというふうなお考えだったのでしょうか。
  46. 田部清

    田部参考人 そのとおりでございます。その過当競争を排除するということに私らの組合は重点を置いておったのでございます。したがいまして、私ども合理化をするという委員会があれば出席をして、消費者皆さんともお会いをして、できることならやりたいのだという考えを常に表明いたしております。ただ残念なことに、今度の値上げが非常に強力に、すみやかに推進されてきたということのために、何もできないままに値上げに踏み切らざるを得ないというのが現実であったということでございますので、そういう要因の取り払いができまするならば、私どもはいましばらくがまんをして、過当競争なりあるいはそういうような事態の解決に重点を置いて合理化を進めていきたい、かように考えております。
  47. 小峯柳多

    ○小峯委員 田部さん、その過当競争を排除するというのは、あなた方小売り業者のお力だけでできますか。
  48. 田部清

    田部参考人 非常にむずかしゅうございます。でも、私ども政府にあまりたよらぬ方針でございまして、私らの力でやってみせてやろうという気持ちが私の考えでございます。もちろんメーカーさんも、これ以上の過当競争をさせたら販売店が乳代をくれぬだろうということで、いまちょっと一服の状態にあるというのが現実でございます。
  49. 小峯柳多

    ○小峯委員 大野さんにひとついまの問題で伺いたいのですが、シェアを拡大することでメーカー同士の競争がかなりひどいように聞き及んでいるんですし、いまお話にもありましたように、皆さま方のやり方で小売り商の経営をかなり乱しているような点があるように思うのですが、実情をどうごらんになっていらっしゃいますか。
  50. 大野勇

    大野参考人 さっき田部参考人が言ったのが実情で、海外競争に強い企業を持たなければいかぬ。これは脱脂粉乳が山ほど入ってくるということでわかっておる。  それからもう一つは、いまの皆さんの御議論なり御疑問が、あんまり名前にとらわれて、牛乳が主食だ主食だということなんで、牛乳はまだ主食じゃないのですよ。主食にしなければならぬと思っているけれども、主食じゃない。三年間に牛乳代だけでも六、七十銭上がっているでしょう、すでにこの値上げの前に。そういうものを吸収できるというのは、生産の量をふやすことによってコストをダウンしている。ですから、じっとしていて売れるだけ売ればいいということになれば、原価が安くなるか高くなるかというのは、またこれ経済問題としては別な問題なんですけれども、こういうお米屋さん相手の議論のような考え方と経済問題とのなにがまだ割り切れていないところに牛乳問題の複雑性があるのですね。
  51. 小峯柳多

    ○小峯委員 いや、問題のお答えがどうも少しはぐらかされたような感じがするのでありますが、私はそうじゃなしに、かなり競争が激しい。そうしてあなたのほうが、メーカーが販路を広げるために、新しい小売り店を応援しながら開いたり、場合によっては販路を拡張するために安い値段で売っているような店もあると実は聞き及んでいます。私はどうもこういう仕事をしておりまして、実情を知っているわけではありませんから伺うのですが、そういう過当競争という実態がおありになるとお考えになっておりますか。あなたは社長さんとしてどうそれをごらんになっていらっしゃいますか。それをお伺いしたいのでございます。
  52. 大野勇

    大野参考人 競争は、いかなる業界においてもこれはやむを得ないことです。それで、非常に販売量をふやすには、牛乳の場合は配給ルートを持たなければいかぬ、だから店はどうしても開かなければならぬ、そこまではわれわれの関係ですが、開いた店が、自分の店を早く一人前にするということのために、あるいは多少競争するということはあるかもわかりません。だけれども、これはどうもどういう商売でもやむを得ないんじゃないか、こう思っております。
  53. 小峯柳多

    ○小峯委員 私も自由主義経済論者ですから、お説まことにごもっともでございますが、ただあなたのほうは、長年あなたのほうのお仕事にサービスといいますか、奉仕をしてきた、つながってきた小売り店というものの安定経営を考えないと、これはお一人だけでいい思いをということの感じが私どもに多少するのでございます。中には直売をなさるというようなことも聞いておりますが、そういう点もございますか。
  54. 大野勇

    大野参考人 自分の店の安定を考えないで会社の繁栄というのはあるわけがないです。だから自分の店の安定は第一に考えています。ただし、いま自由企業ですから、いろいろなブランドの会社があります。そういうのがあるいは比較的不当な競争をする——不当でもなく当然の競争かもわかりませんが、その会社としては当然販路を広げなければならぬから、そういうことから生じる競争というのは、これはどうも自分の力では免れないです。  それから直売というのはどういうのですか、直売はほとんどしておりません。学校給食ぐらいでしょう。これはやむを得ずやっております。
  55. 小峯柳多

    ○小峯委員 おたくのような大手のメーカーになると、たいへんすっきりした営業をなさっているようですが、ほかにやはりこういうメーカーの中で、新興勢力で、小売り屋に不安を持たせるような経営をしているものがあるようにお見受けでございましょうか。
  56. 大野勇

    大野参考人 それはどうしても新店になりますと、自分のルートをよけい開かなければならぬというので、多少あるかもわかりませんが、これは同業者のことですから、私から何とも申し上げられません。
  57. 小峯柳多

    ○小峯委員 少し結末をつけたいと思うのですが、先ほど山口さんのお話で一円八十七銭あればいい、それが二円という数字が出ました理由、いきさつはどんなところにあるのでございましょうか。
  58. 山口巖

    山口参考人 私どもの要求は、キロ十円、一合にいたしますると一円八十七銭五厘ということから、おそらく新聞がそれを類推いたしまして、末端は、端数がありますから二円程度の引き上げになるのではないかという記事をお流しになった、それが一般化されたというふうに私ども理解いたしております。
  59. 小峯柳多

    ○小峯委員 だんだんお話を承って、何か輪郭がわかったような気がするのですが、結局小売り商のほうでも、いまのままでもやりようによってはやれるんだ。メーカーさんのほうでも、いまの段階でがまんのしどころだということになりますと、酪農家の手取りが一円八十七銭ふえれば、あなたのおっしゃったような意味で一応満足いただけるわけだと考えるのですが、そのとおりに、皆さん団体の方がいらっしゃいますが、そういうふうに承知してよろしゅうございましょうか。
  60. 山口巖

    山口参考人 私どもの要求金額が満額実現いたしまするならば、別に異存はございません。ただ、そういうことを理由にいたしまして、今回の値上げがすりかえられるということに対しましては、私どもは非常に警戒をいたしております。
  61. 小峯柳多

    ○小峯委員 先ほど来皆さんからのお話がありましたように、自然増加のピッチがかなり高いのです。その自然増加、要するに売るほうじゃ薄利多売、生産するほうじゃ単位のコストが下がるはずなんですが、その急ピッチな伸びというものを実は御考慮なさっても、それだけの値上がりというものは必要でございましょうか。また途中の段階では、それが伸びますと、かえって単位のコストは下がるということになるわけですから、そういう点も考慮してのことでございましょうか。
  62. 山口巖

    山口参考人 生産過程におきまする生産性の向上というのは、御承知のように、酪農生産過程は機械化が非常にできがたい状態でございます。機械化の余地は、草地造成等におきましては機械化ができますが、現在の土地制度のもとにおきましては、草地造成の実現は言うはやすくして実は困難だ。むしろ私どもとしては、社会資本を港湾や道路と同様に生産基盤に対して投入していただく要求を前から続けておるわけでございますが、現況におきましては、現制度のもとにおきましては、生産性の向上というのは私どもは多く期待できません。そういう点におきまして、私ども生産費というのは、長期的にも軽減はしないのではないか、むしろ諸物価、必要経費、労賃等の値上がりによりまして漸増するという傾向に置かれているように考えております。
  63. 小峯柳多

    ○小峯委員 農林省のだれか見えておりますか。
  64. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 畜産局長が見えております。
  65. 小峯柳多

    ○小峯委員 それじゃひとつ畜産局長に締めくくりとして伺いたいのです。  先ほど三巻さんが、今度小売りの指導価格制というのをはずしておるのは、何か準備なしに思いつきみたいな軽い意味ではずしたような感じがするという意味のようなことをおっしゃったと私記憶するのですが、私もどうもそんな感じが実はするのです。もっと自由競争で価格が下がるというためには、よほど前提がそろわなければいかぬと思うのです。ことに御承知のとおり、物価が上がる傾向にある中でおっ放すということは、上げることを承認するような結果になりはしないかと実は思うのであります。手を放して下がるんだという自信をあなた方はお持ちになってこの措置をとられたかどうか、ひとつ伺いたいと思います。
  66. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 御承知のように、牛乳につきましては、法律価格を規制するという根拠はございません。全く指導という形で行なわれておったわけでございます。三十九年に価格指導をいたしたわけでございますが、これは小売り価格が異常に暴騰するというふうなこともございまして、それをある程度抑制するということで指導いたしたところが、小売り業界におきましても、それに同調されたということになっておるわけでございます。したがいまして、三十九年にいたしました指導は、三十九年の小売り価格の抑制ということであったわけであります。先ほど申し上げましたように、本来的に自由な需給に基づきまして地域的に形成される価格というものについて、法律的根拠もなく立ち入って指導するということはいかがかというふうに実はわれわれは考えておるわけでございます。たまたま国民生活審議会におきましても、指導的な価格を行なうということは適当でないではないかというふうな御意見もあったわけであります。そういう情勢のもとにおきまして、農林省といたしまして、自由な価格形成というものが行なわれてしかるべきではないかというふうに考えたわけでございますけれども、一方におきまして、われわれといたしましては、新鮮な牛乳が豊富に低廉に供給されるというふうなことは望ましいというふうに考えておるわけでございます。  そこで生産者段階につきましては、何といたしましても、先ほど参考人からお話がございましたように、世界的に見ますと、非常におくれて出発した酪農でございまして、これは合理化をいたしますと同時に、豊富に生産が行なわれるような措置を講じていかなければいかぬということで、格段努力をいたしておるわけでございます。特に牛乳乳製品につきましては、世界の需給事情を見てみますと、将来のことを想定いたしますと、そう簡単に輸入が自由に行なわれるという情勢でもないように判断しておるわけであります。できる限り国内で自給をするという体制に持っていく必要があるということで、生産段階も努力しておるということでございます。小売り段階につきましても、いろいろ議論があるところでございます。従来からいろいろ提案がなされておりますけれども、現実になかなか合理化ということも急速には進行しないという状態にあるわけでございます。これは一方においては消費者が協力するという体制も必要だというふうに私は考えております。そこで、四十二年度におきましては、地域的に小売り業者なり消費者が集まりまして、また学識経験者が集まりまして、流通過程をいかにして合理化するかというふうなことについても検討いたしまして、必要な施策を講ずるということで予算措置を講じておりまして、できるだけ合理化に進んでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  67. 小峯柳多

    ○小峯委員 たいへん懇切な御答弁をいただきましたが、私の伺いたいのは、指導制度をやめたら下がるとお考えになったか、上がるとお考えになったか。そしてまた、あなたは豊富な牛乳とおっしゃったけれども価格が上がれば需要供給の原則から生産がふえてくるのだと考えたのか、その点をひとつ結論的にお答えいただきたいと思います。
  68. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 生産者価格につきましては、われわれとしても当然さらに多くの支払いをなさるべきだというふうなことを考えておるわけでございます。その結果、流通段階においてどのような価格形成がされるかということになるわけでございますけれども、この点は、メーカーにつきましても、小売り段階につきましても、われわれが理解しております範囲においては、かなり苦しい経営にあるというふうに判断いたしておるわけでございます。したがいまして、メーカーによりましてもまたそれぞれ違った考え方があり得るかとも思いますけれども一般的に見ましてそういうふうな情勢にありますので、生産者段階で上げました価格が必ずしも全部吸収されるというふうには、実は考えておらないわけでございます。
  69. 小峯柳多

    ○小峯委員 もう一つ伺います。  先ほどから皆さんのお話を承りますと、一円八十七銭五厘酪農家の手取りがふえれば、いまの時点で安定した酪農ができるのだというお話です。そこでラウンドナンバーにして二円だということがいわれるのだそうですが、いまあなたのおっしゃる合理化で、あるいはいろいろな手を打ちながら、そのうちどれくらいが吸収できるとお読みになっていますか。
  70. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいまのお話は、流通段階でどの程度吸収できるかということでございますが、これはそれをやりまして、直ちにどのような合理化がどのような程度にまでできるかということにつきましては、検討いたしませんと、現存の段階でどのようであるかということを申すことは、ちょっとむずかしいと思っております。
  71. 小峯柳多

    ○小峯委員 わかりました。私はあなたの答弁を聞いておって、きょうは企画庁長官も見えておりますが、質問はいたしませんが聞いておいていただきたいことは、打たなければならぬ手が将来にわたっている。そして酪農家の手取りをふやさなければいかぬといっている。簡単に吸収はできないということになると、結論的には値上がりはしかたがない。いまの段階で手を放せばそういうことをお認めになったことになる。私は、先ほど三巻さんですかおっしゃったとおり、やるなら準備を整えて、もう少し安定するような条件を整えておいて、何とか審議会のお話があったからなどということでは少し用意に欠けているのではないかと思います。この点は質問じゃありません。大臣もお見えになっていますが、そういうことが政府のやり方に多過ぎると私は思う。役所の責任というのは、そうなるはずだ、そうなっていくだろう、そうじゃない。民間というのは結果責任で毎日生活しているのですからね。その点のけじめはきちっとしないと、私は今度のような問題が起こると思う。私はきょうは非常にいい勉強をさせていただきましたが、どうも結論的には、少し政治の姿勢に抜かりがあるような感じがいたします。私はまあ政府側の立場でありますので、あまり申し上げるのはどうかと思いますけれども、どうもそんな気がします。  私の質問はこれで終わります。
  72. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 武部文君。
  73. 武部文

    ○武部委員 最初にお尋ねいたしますが、四月一日以降、新聞の報道するところによると、最高四円の値上げをしておる小売り業者がある、こういう報道がされておりますが、現実に四月一日以降全国の小売り業者で大体どの程度の値が上がったのか、こういう点について政府のほうで調査があれば、まず最初にお伺いをしておきたい。
  74. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 四月一日から生産者乳価改定をするということで、生産者団体乳業者との話し合いが進行しておるわけでございますが、小売り業者として幾ら上げたかということにつきましては、まだ正式の申し出を受けておりません。
  75. 武部文

    ○武部委員 私ども承知するところでは、最高四円というようなことは、実は消費者の代表としてもおそらくたいへんな不満だろうと思うのです。  この際政府にさらにお尋ねをいたしますが、新聞の報ずるところによると、三月の二十三日に、この小売りの指導価格を撤廃する方針を明らかにしたと発表されておるわけです。そうなると、そういう通達は現実に各都道府県の知事にすでにお出になっておるかどうか、これをお聞きしたい。
  76. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 特に通達は出しておりません。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、三十九年の指導の通達は、三十九年の当時の小売り価格値上げを抑制するということをたてまえといたしておったわけでございます。農林省としましては、自由な地域的な需給関係で形成さるべきものにつきまして、立ち入った指導はいたさないということにいたしておるわけでございます。
  77. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、農林省が指導価格を撤廃するという方針を明らかにしたということは、だれに明らかにしたのか。
  78. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 内部的にそういう意思を固めまして、新聞発表をいたしたわけでございます。
  79. 武部文

    ○武部委員 私はそういう点はおかしいと思うのです。そういう点について新聞にただ報道すると、それだけでこれだけの事実があらわれておるわけですね。こういう点について農林省の態度は非常におかしいと私は思う。一貫性がないと思う。  さらにお尋ねいたしますが、少なくともそういう態度を明らかにした背景としては、国民生活審議会消費者保護部会の勧告したあの精神にのっとってやるのだ、こういうことがいわれておるわけです。そうすると、先ほど消費者の代表の方からおっしゃったように、後段だけをとってしまって、前段は全然無視して食い逃げだということをおっしゃったようだが、まさにそのとおりだと思う。そうなってくると、農林省は一体どういう目的で、これが値上がりするということを確実に考えながらそういう態度を明らかにされたのか。小峯君の質問と同じようなことになりますが、その点をもう一回はっきりと御答弁願いたい。
  80. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 先ほどからお話し申し上げましたように、生産者は、生産者に支払われる乳価についてさらにふやすべきだという要求をいたしておるわけでございます。そこで、われわれといたしまして自由に形成さるべき価格につきまして、立ち入った指導をするというふうなことでございますと、この点につきましてはなかなか自由な価格形成ができないという点もございまして、われわれといたしましては、その点は具体的な中身に立ち入って価格の指導をするという考えでないということを明らかにいたしたわけでございます。
  81. 武部文

    ○武部委員 そうなってきますと、私はこの際政府にひとつ質問をいたしますが、先ほど販売者の代表の方もこのようなやり方はまずいと非常に強い反論がありました。消費者の代表の方もそうです。したがって、この際指導価格制度を取り消しにされたためにこれだけの混乱が起きておる。ならば、いまの段階でその取り消したことをもう一回取り消しする意思があるかどうか、これをお聞きしたい。
  82. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 そういう考えはございません。
  83. 武部文

    ○武部委員 それならば、次は公正取引委員会に質問いたします。  私は、先日物価安定推進会議の中山座長に質問をいたしましたが、その際に、自由価格にすることによってこれは値下がりができるだろう、同時に独占禁止法によって取り締まることができるだろう、こういう答弁がありました。また、先般の消費者の代表の陳情、抗議に対して公正取引委員会は、独禁法違反の疑いがある、こういうことで厳重に監視、調査をしておる、こういうことを明らかにされております。現実に、では公正取引委員会としてはこの独禁法についてどのような考え方を持っておるのか、こういう点について答弁をいただきたいと思います。
  84. 竹中喜満太

    ○竹中政府委員 御承知のように独占禁止法は、事業者が話し合いで価格決定することを禁止しております。したがいまして、今回の値上げ事業者の話し合いによって行なわれれば、当然独占禁止法に基づいて処理するわけでございます。したがいまして、前々申しておりますように、今回の値上げにつきまして新聞報道のごとき事実があれば、これは法律に違反する疑いが多分にあるということで、現在監視をいたしておるところでございます。
  85. 武部文

    ○武部委員 監視をするのはいいけれども、監視をしておるうちにどんどん上がってしまうようなことでは、これは何にもならぬと思うのですよ、はっきり言えば。おそらく消費者皆さんもそういう答弁を聞いておっても、現実に買いにいったら四円上がっておった、そういうような現実の姿がどんどん出てくる、こういうことでは公正取引委員会に対する信頼は薄れてくると私は思うのです。もっとてきぱきとした公正取引委員会の態度を明らかに国民としては望んでおると私は思うのですが、その点についてもう一回答弁をいただきたい。
  86. 竹中喜満太

    ○竹中政府委員 事は違反事件に関することでございますので、私なかなか申し上げにくいのでございますが、現在すでに値上げをしました数府県につきまして調査をいたしております。
  87. 武部文

    ○武部委員 調査をされておるようですが、調査の結果はいまここで発表できませんか。
  88. 竹中喜満太

    ○竹中政府委員 まだ結果は出ておりません。
  89. 武部文

    ○武部委員 それでは角度を変えてひとつ……。
  90. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 関連質問の申し出がありますからこれを許します。平岡忠次郎君。
  91. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 公取の方にお伺いします。小売りの販売価格がさみだれ的にか、あるいはあうんの呼吸でか行なわれておる気配であります。したがって、その限りにおいては公取の取り締まりの対象にもなり得るというお答えですが、その前の段階の三月二十八日の新聞に出ておることですから、おそらく前日か前々日にとりきめられたことと思うのですけれども全国乳価対策協議会と大手メーカーの森永、明治、協同、それから雪印、この両者で折衝の結果、キログラム当たり飲用向け原料乳価六円四十銭、一升で換算いたしまして十二円の値上げをきめて四月一日からこれを実施する。これは明らかに協議をしたわけですね。そうすると、小売り段階は今後の問題としても、この事実自身は公取の取り締まり対象になりませんか。
  92. 竹中喜満太

    ○竹中政府委員 大手乳業メーカーが事実そういう話し合いをして価格決定したということであれば、法律上問題になる可能性はございます。
  93. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私の判断では、違反容疑がきわめて深いと思いますから、さっそくこれは取り締まってほしい。あとから小売りの段階における販売価格を追っかけてもしようがない。現実にこのことが新聞等に堂々と出ておるわけですから、これを突っ込んで、早急にあなたのほうの態度をとっていただきたい、このことを強く要望します。いつ、そのことをやり、いつの時点でこの委員会に報告するか、その予定をお知らせ願いたい。
  94. 竹中喜満太

    ○竹中政府委員 独占禁止法違反の問題は、何も最終の販売業者だけの問題でございませんので、私、一々申し上げませんけれども、すべて話し合いによる価格協定には関心を持っております。したがいまして、いまのお話しの件につきましても、できるだけ早く調査いたしまして結論を御報告できるようにいたしたいと思います。
  95. 武部文

    ○武部委員 行政管理庁は去年の十一月に農林省に対して、販売段階における合理化、これを勧告しておりますが、これについて農林省はどういう考えを持っておるか、お伺いしたい。
  96. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 販売段階の合理化につきましては、いろいろな点から提案がなされておるわけでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、提案がありましても、小売り業者をわれわれが指導したからといって、直ちにできる性質のものはなかなかないわけです。問題は消費者の段階におきまして、協力する消費者もあるし、必ずしもそうでない消費者もあるということで、消費者がまとまって協力するという体制は必ずしも十分ではないと思います。そこで、消費者と小売り業者その他の流通段階がやはり一致した意見でやりませんと、なかなかその合理化は進展をしないというふうに私は考えておるわけでございます。小売り業者の間の競争がございます。したがって、消費者のサービス要求に対して応ずるというふうな体制になりますと、どうしてもなかなかまとまらない。したがいまして、地域地域でその点は合理化をするということを考えていくのが一番いんではなかろうかというふうなことを考えまして、四十二年度におきましては、地域地域の問題として具体的にいかに合理化、改善していくかということを検討いたしたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、全般的な小売り段階の合理化ということにつきましても、これはわれわれとして十分検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  97. 武部文

    ○武部委員 この際厚生省にお聞きいたします。  現在の段階で、いわゆる小売り段階の合理化ということを考えれば、相当改善の余地があるということがいわれておりますが、先ほど消費者の代表の方も言われたように、ビンの大型化あるいは隔日配達、こういうようなこともいわれておりますが、そうなってくると、いわゆる衛生上の問題で、保存期間等もあると思うのです。たとえば、デンマークのように三日分を一ぺんに配達するようなところもあるわけですが、現在加工乳に適用されておるところの高温蒸気殺菌方法を市乳に適用する意思があるか、ないならば、なぜそれができないか、こういう点について厚生省の見解をひとつお伺いしたい。
  98. 舘林宣夫

    舘林政府委員 市乳はできるだけしぼりたてのままで、これを母乳にもかわるべき国民の基礎的な飲みものの形に保存するという方針で従来からまいっております。最近出てまいりましたユーペリゼーションは、いまから十年も前に外国で開発された消毒方法でありまして、すでに世界の多くの国が採用いたしております。先般加工乳に御指摘のようにこの採用を許可いたしたわけでございます。この方法は相当多量の水分を乳に加えまして、あとでこれを取るという、乳の内容に変化を与えるおそれのある加工工程を経るわけでございますので、ただいま申しましたような乳のしぼりたての形を保存するという点から多少懸念されるということで、まずとりあえず加工乳にこれを許可いたしまして、その経緯を見まして一般牛乳にも許可いたしたい、かような方針でおります。
  99. 武部文

    ○武部委員 わかりましたが、現在の殺菌方法でありましても、温度調節さえ可能ならば二十日間ぐらいもつではないかということさえいわれておりますが、厚生省としてはそういうふうにお考えになっておりますか。
  100. 舘林宣夫

    舘林政府委員 文献によりますれば、乳は百三十度以上の加熱の処理をいたしまして、それを衛生的なパッキングをいたして容器に入れれば、一カ月以上、数カ月も保存できるというのが原則的な研究の結果でございます。ただ問題は、その詰める過程、容器等に問題がございまして、また乳を受け取った家庭が相当低温に保存できる、すなわち電気冷蔵庫のようなもので、しかも冷蔵庫の温度の保持が十分であるというような状態がこれに伴いませんと、やや懸念されます。ことにテトラパックのような、内容が見えないような容器で、その一部を切ってそのまま飲むということはかなり危険でございまして、これを透明なコップ等にとって、中に変化がないということを確かめて飲むというふうな風習に漸次国民が習熟してくるというような国民生活との関連もございますが、学問的には相当長期保存ができるものでございます。
  101. 武部文

    ○武部委員 最後に、隔日配達のことで、これは世論でも相当盛り上がりつつありますが、現在総理府の統計によっても、電気冷蔵庫の置かれておる数は大体国民の六、七割程度までいっておる、こういうことが発表されておりますが、こういう段階で隔日配達に踏み切っても、いまの御説明ですと、殺菌の状態から見て必ずしもそれが非衛生だとかどうだとかいうことにはならないというふうに理解してもよろしゅうございますか。
  102. 舘林宣夫

    舘林政府委員 今日のわが国の衛生状態でございますれば、隔月配達でも一般的には差しつかえがない、かように思います。
  103. 武部文

    ○武部委員 終わります。
  104. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 武藤山治君。
  105. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 まず最初に、メーカー側の森永の社長さんにお尋ねをいたしますが、森永の例で考えた場合、現在、一年間の売り上げの本数は何本ぐらいございますか。
  106. 大野勇

    大野参考人 大体二百万石ですから、二億本ですか。
  107. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 新聞では森永が二十八億九千七百万本、これだけの販売がある。今回の値上げ分でかりに一本三十銭森永が取るとした場合、従来もかなり利益が出ておるわけでありますが、これは大体どのくらい業績に寄与いたしますか。三十銭の値上げというのは、社長としての判断はどうですか。
  108. 大野勇

    大野参考人 三十銭というのはまだきまっているわけでもありませんから数字上のなにはわかりませんが、全部吸収されて、ほとんどとんとんくらいの感じがいたします。
  109. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 社長、その計算はおかしいのじゃないですか。従来一銭も上がらない場合でも、あなたのほうはこれからも工場を申請する、投資をすると新聞に出ておるのですね。そういう業績の内容であるなら、今回引き上げされれば、引き上げられた分が一銭も寄与しないなんというばかな話はないでしょう。それは何ぼかは寄与するはずでしょう。新聞によると、雪印さんの場合は、大体今回かりにメーカーが一本について三十銭取るとしても六億六千万円、明治乳業は九億円、だから森永はどのくらい寄与するかという質問をしているわけです。森永だけ新聞に出てないのですよ。大体社長だったら見当がつくのではないですか。ちょっと教えてください。
  110. 大野勇

    大野参考人 一般経費なり給料が上がらなければ三十銭にかけただけ寄与する勘定ですが、経費の増大で全部吸収されて、おそらく赤字になるでしょうな。三十銭では赤字になります。
  111. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは、森永は従来の決算は赤字ですか。利益が出ているのですか。いかがでしょう。
  112. 大野勇

    大野参考人 黒字です。
  113. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 黒字であり、しかも配当は何割していますか。
  114. 大野勇

    大野参考人 配当は一割二分です。
  115. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それで、今回もし——配分はどういう比率になるかわからぬけれども、配分を何ぼか取ろうとしていますね。そうなれば、当然それは業績に寄与するのではないでしょうか。さっきあなたは、とんとんか、給料が上がると赤字になる。赤字になりますか、あなたの会社は。
  116. 大野勇

    大野参考人 部門別にいって赤字かとんとんというのです。いろいろな仕事をやっておりますから、会社全部が赤字になるか、黒字になるかということは別です。
  117. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 したがって、国内の農民から買った牛乳だけを独立に取り出して、独立採算の計算をすれば赤字になるという意味でしょう。会社全体としては、ほかでその分は当然埋め合わせがついて、総合経営であるから何とかやっていける。だから、自由化もある程度農林省政府が骨を折って、かなり日本の農民保護の立場からチェックしているわけですね。ですから、間接的には国から保護を受けているわけですよ、酪農製品については。したがって、国が物価を上げまいという基本方針をとっている際には、メーカーは何とかやっていける段階の場合には、できるだけがまんをして、どうしてもこれだけの人件費がかかって何とも経営がやれぬという小売り店だけに多くの配分を回してやって、やっていけるメーカーは遠慮すべきだと思うのです。しかも、あなたのほうも、今度は大阪のほうへ新工場をつくるのじゃないですか。その投資金額はどのくらいの計画ですか、ひとつ教えてください。
  118. 大野勇

    大野参考人 御趣旨のとおりの趣旨に従ってやっているつもりであります。したがって、この三年間、いかに物価が上がろうとも値上げをしないで今日まで過ごしてきた、こういうわけであります。  それから、大阪の工場の問題でありますが、一年にかりに一割ずつ需要伸びるとすると、これは牛乳を受け取って処理するために、損得にかかわらず投資をしなければならない、こういうことです。まだ敷地を買っただけで、今日の段階では幾らの工場をつくるかということはきめておりません。
  119. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 雪印が厚木につくり、明治が二カ所増設をし、森永が大阪につくるという予定であることが新聞で報ぜられておる。これはやはりそれだけの需要伸びなり、利益なり、返済計画なりというものがなければ経営者はやりませんよ。皆さんはもうけるために商売をやっているのですからね、資本主義社会においては。ですから、消費者を助けてやろう、学童にひとつ牛乳をうんと飲まして骨を太くして、りっぱな体躯にしてやろうということで明治や森永が商売をしているわけじゃないですから、それはわかりますよ。そこで、もうけというものがある程度計算されているからこそ設備投資が行なわれるのですからね。したがって、いまの段階は、経済企画庁長官が一生懸命物価を上げないよう、四・五%で押えますよと国民に約束している、この段階で、政府に協力すべきですよ、メーカーは。私の考えは間違いでしょうか。どうでしょう、社長。
  120. 大野勇

    大野参考人 間違いでありません。お説のとおりです。われわれもまたそのつもりでやっておるつもりですが、ただ、牛乳仕事は、損得一本でもって、どうも損するから工場をつくらない、牛乳を受け取らないというわけにはいかない。ですから、それは商売上新聞雑誌に発表するときと実際のなにとは、やはり調和をとってやっております。
  121. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きょうは参考人ですから丁寧な質問をいたしておりますが、二円の値上げ分は、大体いまの折衝の過程では、趨勢としてはどんな配分になりそうですが。生産者小売り店メーカー三者で、どういう大体の配分金額になりそうですが。
  122. 大野勇

    大野参考人 原乳生産事情からいって、少なくとも一升十二円以上は生産者のほうにいくということは考えております。ですが、まだこれはきまっておりません。  それからもう一つは、われわれの取り分といいますか、われわれの加算部分を幾らにするかということもまだはっきりしておりませんから申し上げられません。ただ、先ほども議論になったとおり、昔と違って末端価格がないのですから、われわれは自分の負担できる最小限度の加算をして、それから先は小売り商の人の自粛した販売政策にまかせる、こういうよりほかに、もとと違いますからできないのです。
  123. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 企画庁長官にお尋ねいたしますが、資本主義の経済は自由競争の経済だ、だから小売りは小売りで幾ら政府が、大臣が何と言おうと、わしらはわしらで上げてみせますよ、こういう発言が先ほど小売りの代表からあったわけです。そこで、政府としては自由競争だから自由に上げられるものはかってに上げて、それぞれ価格を戦前と比較して同じような平均のところへ上がるまでは資本主義経済はしようがないのだ、そういうお考えでよろしいかどうか、企画庁長官、ちょっとお尋ねいたします。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま武藤委員は非常に興味のある御質問をされたと思います。私の前になさった御質問でございますが、つまり、生産者の手取りのあと、それがどういうふうに配分されることになっておるのか、これはおそらく武藤委員のことでございますから、すっかり御存じの上で御質問になったのだと思うのです。というのは、実はこの答えに答えられればたいへんおかしいのです。それにもかかわらず御質問なさったことに実は意義があったと思うのです。自由主義経済でございますから、生産者の状況が非常に悪いということは、たいへん多くの人が認めておりますし、私もそうだと思うのです。それに関する限り、金額は別として、あまり異存はないのでございますが、じゃ、それがそのまま小売り価格に転嫁されるのか、全然されないのか、一部吸収されるのか、その辺のところは、ほんとうに自由主義経済で私はやっていくべきものだ。それがここに幾ら帰属され、ここには幾ら帰属するというようなことは、あるべきことでないというふうに考えるのでございます。したがって、それを貫くならば、生産者の手取りがかりに何がしか上がった、したがって消費者価格が自然に上がるであろうと考えなければならない理由は必ずしもないのだ。これは処理業者の段階においても、小売り業者の段階においても、私は同じようなことが言えるというふうに考えます。
  125. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 なかなか興味ある、おだてたり、ほめたりしてほこ先をにぶらせる頭のいいところを企画庁長官はちらつかせるのですが、あなた、三月十七日に毎日新聞の対談に出ましたね。これは覚えていますね。大きい写真で、にこにこ顔で出ておる。三月十七日に対談をやったことは記憶ございますか。
  126. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは対談をいたしまして、その日の新聞に使われたか、その前の日であったか、少し前であったかは別でございますが、ございました。
  127. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その新聞記者との対談の中で、きょうの審議に非常に関係がある重要なことを発言しておる。「牛乳値上げについても、私はいまだに防げると考えている。」じゃ、いまここで値上げをするという御意見が出ておるところで、値上げは防げると思うという大臣の確信のほどを具体的にお聞かせ願いたい。どうやって防ぐかということを……。
  128. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 かりに生産者の手取りが何がしか増加いたしましたときに、消費者側の非常に組織的な抵抗があって、消費者価格は一向に変わらなかったということだって、これは十分私はあり得ると思います。
  129. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 現在の段階で、消費者側は、生産者価格が上がればメーカーのほうから何ぼかいきますぞ、四十銭か五十銭おそらく上がることになる、こういう話を先ほど当事者の参考人がここでやったわけです。したがって、いまの情勢は、もうすでに現実に値上げが目の前の問題になっているわけです。この段階でも、あなたはまだずっと先の話のような答弁をしておりますが、いますぐ防げるという具体的な方策というのは一体何があるか。たとえば、政府が思い切って補正予算でも組む覚悟で、小売り店には全部配達をする冷凍車を政府が貸しましょう、あるいは税金の面で小売り商店には冷蔵庫の特別償却をがくっと認めましょう、あるいはその従業員に対して、何か家内労働法みたいな別の立法でそれらの人たちを保護しましょう、だから、小売りの段階で政府はこういう施策をしますから、これは吸収します、そういう何か名案というのはあるのですか。ただ主観的に小売り人の良識で防げると思うという無責任な発言ですか、どうですか。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど仰せられましたように、私は自由主義経済を信じておりますので、その小売り人の良識にたよってというようなことは、あまりこの問題のきめ手ではないと思うのでございます。それは大いに良識を期待いたしますけれども、それがきめ手ではないので、非常に極端なことを申しまして、消費者がよく組織されておって、そうして値上げをボイコットするということがもしかりに行なわれたら、おそらくこれは値上げは実現しない、品物の性質上私は実現しないだろうと思う。その結果はどうなるかといえば、たとえば小売り店の間の整理なり合理化が行なわれるとか、あるいは処理業者のほうでいままでとっておったところの中間的なコストを切り下げていくとか、何かそういうことが起こるはずなんで、もっとも政府の側にも、先刻から御質問がいろいろありましたように、隔日配達にするとか、あるいは容器の問題だとか、どっちも衛生的見地から問題はないというのでございますが、それについての指導が足りない、従来十分でないという御指摘は、これはあろうと思いますけれども、基本的には生産者の手取りが幾らか上がったということが、もう即消費者価格の上がりでなければならぬという理屈は、私はないんだ。要するに、消費者立場はそれほど現実には強くないから、各個撃破をされるであろうかというようなところが問題なのであって、ここにしっかりした抵抗があれば、どこかで合理化がされ得るはずのものである、こう思います。
  131. 田部清

    田部参考人 ただいままでのお話をお聞きいたしまして、武藤さんの前に質問されましたお話の中で、忘れると困りますので一応私のほうで申し上げておきますが、先ほど厚生省のおえらいお方からのお話で、隔日配達をしてもだいじょうぶだというお話でございました。私は、配達をしている現状から見て、決してだいじょうぶではございません。冬はだいじょうぶです。夏はだいじょうぶでございません。かりに、アパートに住んでいる夫婦者が働きにいったあとで持っていったら、現実には一日門に置いてあるのですよ。それが二日分置かれたら、それがもつという自信がある会社はそうありません。特定の会社だけですよ。日本全国にはずいぶんあるのです。大阪でいうて五十軒あるのです。そのうちで自信を持って私のほうはだいじょうぶだというのは何軒あるか。そうありません。役人は一般的にはそうだというけれども、私は一般的には不安定な状態じゃないかということを申し上げることができるのであります。これが一つ。  もう一つは、いま大臣がおっしゃった早朝配達という問題がございましたが、これも、早朝配達するから配達の本数がたくさん配れる。いまのような交通戦争の時分に、八時か九時に出勤をしてきて役人のような時間の配達をしたらどれぐらい配達ができると思っているか。こういうことを知らぬと、皆さんは私らをほうっておいて何をきめたんだ。ほんとうはそうなんです。  で、私は言いたい。生産者値上げは、いま長官は、いいだろうと言っておる。しかたがないと言う。ほかのほうでどうにかできるのじゃないかというような発言があるけれども、酒はどうしたのだ。酒は、米が上がったから上がったのでしようがない、上手に値上げしたから公取は何にも言ってないじゃないか。牛乳屋かてそうですよ。生産者に一円二十銭をメーカーが払う。メーカーも何ぼか取り分がほしい。その残りが先ほど申し上げたような金額であって、そういう自動的に突き上げられてきたときに、私らが一挙に上げたら公取はつかまえるぞというて新聞でおどかすわけです。そうすると私らは、組合としては干渉はいたしません、どうぞ皆さんの責任で御自由に上げてください、自由価格なんですよといって、ぼくはそういう決定をしているのです。組合で決定をしたらつかまえるぞというから、組合はこれはもうノータッチだ、自由価格だと新聞にもいうてくれるから、突き上げてきた分くらいは上げて何の差しつかえがあるのだろうかと思うけれども、そういうことを決定することがいかぬから、私はそういう決定をしないという決定をしてきているのだ。わかりますか。だから、長官もそんな無責任なことを言うて、押えられるというようなことを言うたら、これは政治家で選挙に向けて言うなら言うてください。私らは生活をかけているのだ。あんまりそんな無責任な発言をしてもらっちゃ困る。
  132. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 企画庁長官、政府は本年の景気の動向から見ても過熱ぎみを警戒し、安定成長をもたらすためには、どうしても物価の問題は最優先の重要事項として目を向けなければならぬ、こういう基本方針で、おりあるごとに大蔵大臣も企画庁長官もそれをしゃべっておる。ところが最近の消費者物価の動向を見ても、いまちょっと企画庁の統計数字を見ただけでも、十一月とこの二月の消費者物価指数を比較して、食料の総合の欄で六・八%上がっている。また十二月と二月を比較しても、五・三%食料の分は上がっておる。こういう情勢のときに、牛乳がいま一本で幾ら上がるかわからぬが、二円ぐらい上がるかもわからぬ、こうなりますと、約一割、一〇%上がる。消費者立場から見たらこれは重大問題で、主婦連の皆さんが真剣になって、国会陳情や大臣に陳情する気持ちも、この数字が如実に物語っていますよ。したがって、自由経済だからまあどこかで吸収するだろうなんという無責任なことで政府立場はいいのですか。それが企画庁長官としての答弁ですか。いけませんよ、そんな答弁。私はもっと真剣に、この牛乳値上げは、よし、政府もできるだけそこへひとつ、干渉じゃないけれども、話し合いに入っていって、政府でお手伝いができて価格を上げない方法があるならば検討してみたい、そのくらいな前向きの答弁をするのが、私は企画庁長官の今日置かれておる位置じゃなかろうかと思うのですが、私の見解は間違いでしょうか、大臣。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 腹背に敵を受けておる感じなんで、私は先ほど御指摘になりました参考人の方に申し上げておくのですが、皆さま方の御努力が決してわかっていないわけではないので、その点はどうぞ御了承をお願いいたします。  いまの御質問でございますが、忌憚なく申して、私は従来の六円五十銭、三円二十五銭という、そこへ寄っかかって、それを前提にしていろんなことがなされてきたというところが、もう一つ自由経済ではなかったと思うのでございます。そこでいろいろ御議論はあり、また準備が不足であったという御批判はあっても、やはり通達を廃止するという基本的な態度は正しい。これで寄っかかるものをなくして、さて小売り機構が簡素化、合理化されるか、あるいは処理業者合理化がさらに行なわれるかといったようなことは、この寄っかかりをはずしたほうがいい、基本的にはこういう考えであります。もちろん政府としても、しなければならぬことがたくさんあります。が、それが急に、この際それで幾らというようなことはなかなかできないことでありましょうから、片方でそういう施策はやりながら、他方でそういう寄っかかるものは取り払ってしまう。自由経済の機能が多少無慈悲であっても、十分に働くようにしたい、こういう考えでございます。
  134. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 春野さん、いまの大臣の答弁をお聞きになって、結局資本主義の経済というのは、価格は自由に、需要供給できめられるのだ。値上げが気に食わなかったら、消費者はボイコットすればいいじゃないかと言わんばかりの大臣の答弁ですね。いまそれをお聞きになっていて御感想はどうですか。
  135. 春野鶴子

    春野参考人 資本主義か自由主義か、そういうむずかしい論議は、先生方におまかせしますけれども、とにかく私どもは目の前にあらわれてきている、いまの現実の問題、そのことが相当深い要素を含んで、その集約された結果が具体的なものになってあらわれてきているぐらいはわかります。それを各方面が大切にしてほしい、大切に見詰めてほしいという哲学でございます。そこで、とりあえず今度のような牛乳の問題の場合ですね。私はもし願えることならば、生産者乳価値上げが、なるほど生産者側のおっしゃるとおり、実に逼迫してたいへんだ、当然値上げせざるを得ないであろうという要素がたくさん重なって出てきたとしますね。そうしたら、一農林省だけでなくて、国の政治の姿勢として、まず生産者の方々が値上げしないでも、あるいは値上げを最小限に押えて、それに必要な生産拡大に、まず抜く手も見せずこうしよう、これでどうだろうという手を出してほしかったと思うのです。  それから、生産者の方々も、しぼったのはなまですから、一度契約すると、いつもいつも泣きの涙で、いわゆる純然たる生産、ほっとけば翌日は腐るなま乳をいやでもおうでも処理メーカーに渡すわけです。そういう域から脱皮して、そして自分たちも、わりあい簡潔にできる高温殺菌ですか、明治、森永ほどの大きな工場でなくても、いま農協なんかにはだいぶお金がだぶついているように聞いていますので、積極的に乗り出して、自分たち自身の手で処理工場にも乗り出す。それから近辺の消費者のほうにも、太く短いパイプで供給したいというような、そういう生産者の積極的な意欲も引っぱり出しつつ、とりあえず一番基本になるところに手を打つ、これを経企庁も農林省も厚生省も、それから議員先生方全員も、国民に安い牛乳を豊富に供給する、一番基本はここにある。そこから火の手が上がったなら、そこのところにまず努力を集中する、そういう手がほしかったと思うのです。それがずっと波紋が広がって、農林省はどうだ、経企庁はどうだ云々と、こうなってきますと、それはいずれも消費者としてはどこに一体腰をすえて消費生活を守ってくださろうとするのか、もう歯がゆいようなことばかりでございます。
  136. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう割り当ての時間がなくなりますから、こまかい質問ができないのでありますが、畜産局長にちょっとお尋ねしますが、農家所得は一年間にどのくらい成長していますか。他の産業と比較したら、非常に低いのでありますが、農産物の成長率は大体三・一%ぐらいと農業白書は書いていますね。そうしますと、ほかの成長と比較しても農家の収入が非常に低いということだけは、これは明らかですね。農家の一日の平均賃金が、換算した場合に、企画庁の統計数字を見ても、四十年の平均が八百五十四円、四十一年の十二月で九百十九円というまことに低い賃金水準、したがって、いま企画庁長官の意見どおりに日本経済が動いていくとなると、農産物というものはどんどん上げないことには、戦前の価格を今日までインフレートして大体標準に全部勢ぞろいさせたら、農産物の騰貴率というものは、べらぼうに高くしなければ追っつかない、そういう計算になる。それは自由経済だからどんどんストライキでも何でもぶって、農民が団結して押しかけてかちとったらいいではないか、さっきの企画庁長官の御意見は、消費者はいやなら買わなければいい、ボイコットしろというのです、そういう議論ですね。そうなったら自由主義経済で、弱肉強食のそういう体制で価格がきまる、需要供給の原則で価格がきまるのだという、そういう自由主義経済の感覚で企画庁長官がおるとなると、それはたいへんな問題になると思うのです。農産物については特にそういう点は問題になると思う。  そこで畜産局長にお尋ねしますが、いまの牛乳生産する生産調査というものは、一体どんなぐあいになっていますか。今度値上げすれば、それがどういう形でカバーされていって農家所得の増大になるか、ここらをちょっと明らかにしてください。
  137. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょっとその前に一言申し上げておきますが、私は農産物については、自由主義経済の思想を実はあまりとっておりません。政府もとってまいりませんでした。それにはいろいろな理由がありますが、ともかく農業の就労の人口が二三%もあるという一事だけでも、そのとおりでございます。ですから米をはじめ、この牛乳については、加工乳には不足払いというようなものがございますし、また農産物の自由化についても、酪農製品をはじめわざわざ自由化をしていないものがたくさんございますので、これについては、私はその他の産業におけるような自由主義経済的な考え方はできないし、いたすべきでもないと考えております。
  138. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうだとしたら、牛乳生産者だけは資本主義経済、自由経済の原理が働かないで、それが流通していく過程のものについては、自由にひとつ価格形成をしてくれという、この議論は矛盾じゃありませんか。根っこがいまのような自由経済でなくて農産物はきめるのだということになったら、その根っこから幹が生えていって枝になるところまで、ずっとめんどうを見るのがあたりまえじゃないですか。そんな無責任な施策ってありますか。
  139. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ですからこの際でも、私は生産者の手取りがふえていくことはやむを得ない。むしろ当然であろうという考え方をしておるので、ただそれ以外の機構は農業の機構ではございません。生産性の向上ができ得る機構でありますから、そこには合理化なり生産性向上の努力があってしかるべきだ、こう思っておるだけであります。
  140. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは乳業メーカー小売り店のほうに大臣が注文をつけている意見だと思いますので、お二人は十分ひとつそれを頭の中に入れて、これから値上げをしないでどう吸収できるかという検討をして、できればひとつ、はなはだ恐縮ですが、次回の二十日の委員会に、資料でもつくってもらって提出してもらうとありがたいと思います。  時間がありませんから、次の長期酪農の問題に入ろうと思って、いま質問したわけですが、ちょっとさっきの生産費どうですか。
  141. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 まず乳牛の場合におきます労働報酬は、四十年の牛乳生産調査を見ますと、全国平均しまして六百二十円です。他の農産物に比べてもかなり低いということで、低収益性であるということが言えるわけでございます。  それから生産費でございますが、四十一年度の百キログラム当たりで考えてみますと、これは地域によりまして非常に生産費がばらついております。したがいまして一律に申し上げるのはいかがかと思うわけでございますが、百キログラム当たり生産者乳価とそれから推定平均生産費を比べますと、地域によりまして、高いところは百キログラム当たり七百五円くらいの赤字になっております。
  142. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 すると局長、今度の予想される値上げでいくと、これは百キログラム当たり幾らになりますか。
  143. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 現在まだ生産者に対する支払いの乳価が、先ほど参考人からもお話がありましたが、最終的にどうなるかということが決定いたしておりませんので、それとの比較がちょっといたしかねるわけでございます。
  144. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 現在の価格生産費を割っていますか。
  145. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在の推定平均生産費というものと生産者が受け取っている乳価を比較しますと、高いところでは百キログラム当たり七百五円くらいの赤字が出るということになるわけでございます。これは地域的な平均でございますから、もっと安いところもありますし、高いところもあるということになるわけでございます。
  146. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これで終わりますが、私はやはり長期の酪農振興政策というものを農林省が怠ってきた。今日こういうしわ寄せが出てきたのは、根本は私はやはり政府の姿勢に問題があったと思うのです。これは農林省の怠慢ですよ。たとえば今日、日本全国の農地のうち、裏作を全然廃耕しちゃった、裏作をつくらぬところが相当ある。敗戦直後あるいは戦争前は食糧増産で、裏作は何でもつくろう、なたねでも小麦でも大麦でも何でもいいからつくろう、農民はそういう非常な増産意欲を持っておった。今日どうですか。裏作の種をまかない率というのはどんなぐあいに推移していますか。資料はありますか。
  147. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいまお話しのような資料を持ち合わしておりませんが、御承知のように酪農というものは牛でございますから、草食性動物でございますから、どうしても草を食わさなければならぬということになるわけでございます。豚、鶏等は濃厚飼料で十分やっていけるわけでございますが、どうしても粗飼料に相当部分を依存しなければならぬということになるわけであります。そこで、一方で草地改良というものを長期計画をつくって推進をいたしておるわけでございますが、水田裏作等につきましても、現在のようなままで放置していくのは適当でないわけでございますから、できるだけ自給飼料作物を増産するということで、この飼料政策としましては相当力を入れている、また相当の予算的措置を講じて推進をいたしております。何といたしましても飼料が最大の重要性を持つわけでございますから、これに対しましては最大限の努力をいたそうというふうに実は考えておるわけでございます。
  148. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 相当の努力を傾けているなんというのはうそですよ。全然やっておらぬです。草地改良といっても、山のほうの山ろく地帯の酪農にはそういう問題が適切に作用するけれども、平地における酪農などの場合、私はもっと農林省が前向きに、たとえば隣のうちは乳牛をやっておらぬ、隣のうちもやっていない、その人は裏作が遊んでいる、その裏作に牛の食べる草をつくらしてくれ、裏作だけを借りる契約をする、農地法上これは直すことができるのですから、法律国会に出せば幾らでも直せるのですから、そういう暫定的な、酪農飼料をつくるために裏作の契約が簡単にできる、そういう改正だって前向きにやったらいいじゃありませんか。そういうところに種をまいて、もっと輸入飼料というものを減らす。今日あなた、輸入飼料がどのくらいあると思いますか。ちょっと数量と金額で言ってみてください。
  149. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 輸入飼料は大体六百万トンから七百万トン、輸入金額につきましては五億ドル程度でございます。
  150. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その五億ドルが、本年の予算を見ると、企画庁長官、この間大蔵委員会で堀さんが指摘したように、小麦が一挙に五十万トンふえているんです、四十二年度の輸入計画の中に。これは結局えさが足りないために、そのふすまを利用したいために買うのだという農林省の答弁。したがって私は乳価の問題も、問題はやはり飼料だと思うのです。いまのアメリカのマイロやトウモロコシやコウリャンをどんどん買って、濃厚資料でなければ育たぬ、土地がない、こういう酪農では幾ら選択的拡大をやれ、酪農振興をやれといっても、日本酪農が大きな壁に突き当たっているわけです。これは政府全体がもっと真剣な検討をして、もっと裏作などの検討などは幾らでも余地があると思うのです。こういう問題について真剣にひとつ検討してもらいたい。早急にいかがでございますか。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう必要が確かにあると思います。
  152. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは割り当ての時間がまいりましたからやめますけれども、きょうの委員会のわれわれの質問というものは、結局小売りの価格にまでこれが波及しないようにして、消費者経済というものが日本ではさっぱり確立されていないのであるから、消費者立場というものも十分ひとつ考えた政策を政府も監督指導し、助言をしなければならぬ、こういう立場からの質問でありますから、十分政府におかれては検討し、早急にひとつ結論を出して、業界に対しても前向きの形の指導をしていただきたいということを強く私は要望してやめたいと思います。よろしゅうございますね、企画庁長官。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 はい。
  154. 戸叶里子

  155. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 企画庁長官にお尋ねします。  先ほど参考人の方々のお話の中に、乳価の問題は、生産者泣かせの問題であり、反面において消費者泣かせの問題でもあるということを言われました。これは乳価ということを米価にかえても同じことであろうと思うのです。長官が腹背から敵を受けているようだと言いましたが、性格自身が非常にむずかしいと思うのであります。それから、ただいま武藤委員との質疑応答の中におきまして、自由主義経済をたてまえとしている自民党の閣僚であるあなたは、農産物の問題につきまして、牛乳を含む農産業の問題については、その点に対して割り切ることができないというハムレット的なおことばもあったわけであります。  ハムレットといえば、コロンボルグ・カースルのあるデンマークの話になりますが、私はデンマークに参りまして、非常に意外でもあり、とてつもない印象を受けた事実があります。  世界に名だたるデンマークの農業国としての実態は、実は人口的には農業人口は二五%程度で、日本と同様であります。しかして大部市であるところのコペンハーゲンに、四再万の人口のうちの四分の一の百万人が集中している。これも世界的な例から見ると非常に例外的なものであります。御承知のとおり、日本の一億の人口のうち東京の占める割合は、十分の一で一千万。多かれ少なかれ大体似たような首部の構成人口というものは、十分の一程度が世界的な通例であります。したがいまして、デンマークというのは、漁業とか造船業とかその他の産業が比率的に非常に大であって、農業それ自体は人口的に少ないということにまず第一に気がつきました。  それからもう一つの点は、デンマークの農業が栄えていることは、資本主義として絶対にやっていけるという三つほどの要件を持っておるわけであります。その一つは、いま申し上げました農業人口の比較的少ないということ。ということは、一人の持つ耕地面積が広いということであります。第二点は、消費市場としてロンドン市場を完全に自分の手に入れておるということです。世界大戦の最中あるいは戦後におきまして、当然食糧不足が世界的な問題として前面にあらわれてきたことは事実であります。わが国におきましても、消費者の方はたんすの底をはたいて貴重な着物を物々交換で米とかえる、こういうことが行なわれました。そういう時期におきましてデンマークの国民のとった賢明な処理は、大陸のほうからとてつもない高い引き合いがあったにかかわらず一切これを拒否して、ロンドン市場に比較的安い価格で売りつないだということであります。食糧は、不足しますれば命を奪われることですから、貴重な価値でありますが、でき過ぎた場合におきましては、食いだめができませんから、非常に価格的にも暴落し、資本主義市場におきまして非常に弱い性格があるわけです。そこで、ロンドンという大きな市場に対して、恩を売るときに徹底的に売っておったというその卓見が、デンマークの農業の非常に力強い基盤の一つになっているということ。もう一つの点は、農業国といっても、日本のように穀物をとってそれでわれわれのエネルギーを補っているということではなしに、すべて動物の腹を通し——要するに酪農作物ですね、ライ麦とか、そういうものを徹底的につくるわけです。それで実際に、直接に米とか麦を食うのではなしに、すべて動物の腹を通して、動物たん白としてこれを市場に売るという、そういうたてまえをとっております。そのときには、やはり日本における農業協同組合的なものがございますけれども、これは単位の大中小はございますが、農家それ自身は資本主義的にも絶対にペイができるのだというたてまえをとっている。そこで、連帯的な共同作業それ自体はどういうことになるかといいますと、それはたとえば鶏卵を大きさによって選別したり、そういうふうな手間をかけないように鶏自身を統一化する。それから牛にいたしましても、これは乳牛にも使い、なおかつ肉牛としてもこれは最優秀な部に属するというデーニッシュ・レッド、デンマーク赤という牛に全部統一してしまっているのです。したがって、肉の選別とか、そういうふうなことが要らぬわけですね。そこで、同じ鶏からできた同じ規格の卵を飛行機に積んでロンドンの市場に持っていく、そういうことをやっているわけです。したがいまして、デンマークの農業というものの実態は、結局、酪農に徹しておるということと、それから酪農とか、要するに、穀物それ自身を熱エネルギーとして使うのではなくて、動物の腹を通しての肉たん白として処理をするということに徹しておる、ロンドン市場という不動の市場を押えておるということ、人口的に比較的少数の農民でやっているということ、この点がデンマークをして世界に名だたる農業国としている理由であることを私は知りました。  しかし、デンマークですからそれがやれたので、実は通常の場合においては農業というものは非常にむずかしいと思っています。この間の委員会に中山伊知郎先生をお呼びしたときに、私はその点に触れたわけでありますけれども、結局、資本主義における優勝劣敗の優者は、資本の回転の早いものが一番勝ちなんです。資本の回転の悪いのは負けなんです。二割、三割を掛けておるところの小売り屋に決して蔵が建たないが、一%とか五厘とかいう薄利でやっておる問屋に蔵が建つ理由もそこにあります。それからまた、農業というものをとってみれば典型的にそのことがわかるわけです。農業は、一種類の作物につきまして大体一年に一回ですから、資本の回転率は一回なんです。だから、資本主義市場に農業それ自体を同列な形で競争させるというたてまえはとり得ないわけです。しかも、戦争を予定しているわけではありませんけれども、総じて、バルクだけはアウタルキーでいこうというのが、各国民の潜在的な願望であるわけです。したがいまして、その資本主義市場において初めから論理的に弱者である農業それ自体あるいは関連の酪農とか、そういうものは国原の保護をするということは、これはもう国家としての当然の義務だと思います。だから、その点が、国家の恩恵だと思っている、そういう認識があると間違っている、私はそれを書いたいのであります。  ここに当面いたしておりますところのこの乳価の問題は、いまや消費者の段階等において現実な形において把握され、論議されていますが、先ほど武藤委員が指摘したとおり、それは農林省の所管であるところの農業政策それ自体というものがいままで正鵠を得ていなかったということ、これに徹底的反省をしていただきたいと思うのであります。武藤委員は非常に示唆的なことを申しました。日本の山野を切り開いてこれを牧草化しろとか、そういう点はなかなかやりにくいのですが、裏作の問題を義務づけるというようなことはできると思うのですね。それで、しかし自由主義経済のもとでそれを押しつけることはできぬという、そういう原則的な自民党のたてまえがあったとしても、いままで私が申し上げた理由で自由主義経済それ自身の中に農業が入っていけないのだという論理があるということ、これを的確に腹に置いていただきますれば、例外的な処理として、積極的に農業並びに関連の酪農等に対しまして政府は大手を振っててこ入れができるはずであります。私は、そういう点に対しまして、まず政府の今後のかまえ——今後と言おうか、いまからのかまえを、企画庁長官が政府を代弁して明確にその決意を述べていただきたいのであります。
  156. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 農業に対して私どもがやっておりますことが恩恵的だと考えておるのではないかということ、これは非常に大事な問題だと思いますが、私は必ずしもそう思っていないのでございます。といいますのは、先ほど申しましたように、就業人口で申しますと二割三分でございます。農業人口そのものは三千万人でございますから、三割でございます。この階層が購買力を十分持っておるかおらないかということは、その人たちの生活自身の問題でもありますけれども、実は日本経済自身の非常に大きな問題だと思うのでございます。国民の三割が相当な可処分所得を持っておるかおらないかということは、これは日本経済全体の消長にかかわると思います。それは、このごろはございませんけれども、かつて飢饉があったときには経済全体に響いたということから見ても容易に想像のつくことなんでありまして、農家が購買力を持っておるから国民全体の購買力が大きく、したがってコストが下がって輸出もふえた、そういう過去の動きというものは私どもは無視できないと思います。したがって、私どもはただ農家のための恩恵で農業政策をやっておるのではない、その点は、私はその程度までは自分では考えておるつもりでございます。  それから、いわゆる純粋な自由主義経済の考え方が農業に入れないということは、先ほども申し上げたとおりでありますが、それならば、農業というものから完全に自由主義経済、市場経済という考え方を離していいかというと、私はそれはまた行き過ぎだというふうに思います。と申しますのは、たとえば、ただいまの裏作なんかの場合でも、少なくとも裏作をさせるほうはペイするだけのものを取らなければならぬでありましょうし、また、経済的にはわかっておっても、隣同士というものの一種独特な感情があったりもいたしますので、それで、そういう契約そのものはやはり経済的な条件でできるのがほんとうだと思いますが、御指摘のように現行制度がそれを妨げておるということがあれば、これはまたそういう妨げになるものを除いていく、こういうことはしなければならぬことだろうと思います。
  157. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私が冒頭にこの問題に触れましたのは、農業それ自体が資本主義の自由市場の中において例外たるべき論理を持っておるということ、これをまず腹に置いていただきたいということです。それはある一面においてわが日本社会党の主張する立場でもあるからであります。しかし、私は、農業者それ自身にすべて米価の問題等において迎合的であってはならないという考えを持っておる一人であります。したがいまして、私がいま大前提として申し上げたことは、その点についての皆さんの誤解のないようにということなんですが、その大前提を踏まえた上で、やはり自由化的な要素を入れなければならぬというふうに思います。いま私が最初に申し上げたことは、長期的な点でやはり酪農づくりといいましょうか、農家づくりといいましょうか、その路線というものに対しては目標をたがわないで確固たる歩みを歩んでくれということを申し上げましたが、その大前提を踏まえた上におきましては、私は、農業といえどもかなり広域的な市場操作をする必要があると思っております。現在、御承知のとおり、インドあたりに新聞で報道されるような飢饉はありますけれども、何千何万人の人が死ぬということがなくなったということは、これは当然マーケットが広くなったということで、経済地域の広域化で飢饉はなくなってきたことは事実であります。  さて、物価の問題でありますが、これと同様であると思うのです。私は、他の先進諸国とか、おしなべての多くの国々の物価の上昇率が二%か三%でとどまっておるときに、日本消費者物価の水準が、これは目標としては四・五ですけれども、実質的には五、六%という大幅な増加傾向にあるということそれ自体は、やはり、いまの飢饉の例ではないですけれども、広域的に交流しなければならぬ時期にきている、そういうふうに考えます。  実は三十八年でしたか、当時同僚の大蔵委員の春日一幸君とニュージーランドと豪州に行きました際に、われわれのビザの請求がいったことを知っておりまして、一回、大使館ですか領事館ですか、そこに来てくれというので参りましたところ、ニュージーランドの大使館で言うには、日本のバターは大体半ポンド百八十円——というと、ポンドで三百六十円とか三百八十円している。ニュージーランドのものは、そのCIF、ジャパンポートでこれは百円だから、買ってくれぬかということを言うのです。われわれは何のために招かれたか知りませんけれども行きましたら、いきなりそのことを吹っかけられました。しかし日本特殊事情がありますから、そう簡単にはまいりませんよということで体をかわしてそのときは帰りました。  ところで、ニュージーランドでもしかり、豪州のごときは、人口が一千万足らずでございますが、これは羊の二億頭は別にしましても……。
  158. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 平岡委員に申し上げます。質疑は簡単にお願いいたします。
  159. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 牛は五千万頭ほどおります。そういうことで、市場をある程度広くするということによって、日本消費者物価それ自身の抑圧にいい影響を与えなければならぬ時期がきておる。しかし、その点は、日本の苦難する農業とか酪農とかとのかね合いがありますから、非常にじょうずな操作をしてもらわなければならぬわけであります。そのことは私がここで言い出したことではなしに、すでに中山伊知郎さんを、首班ですか、親方とする物懇におきまして、昨年の暮れに、乳価の問題を取り上げてある中に、「国際価格の動向を考慮に入れない過度の保護政策は消費者利益保護の観点から見て適当でない。この観点から畜産振興事業団の指定乳製品等の一元輸入制度国内生産立場消費者立場との両者を勘案しつつ弾力的に運用される必要がある。」ということを指摘しております。私は、政府自身が昨年までは個別的に大体物価問題を取り上げてきたと思うのですが、それは、正確に言えば、価格問題であって、物価問題ではなかったと思うのです。この四十二年度からは文字どおり物価問題に取り組んでいただきたい。私は、個々の現象的な価格問題の背後に政府のいままでの施策のサボタージュがあったということを言わざるを得ません。野党ですからそういうことを言うのだということでこれは無視されればそれまでですけれども、そういう点で経済企画庁長官の任務はたいへん重いと思います。  きょうはきわめて具体的な問題での論議でありまして、私のこの質疑応答に対しましては、参考人の方々には要らざる談義のように思えるかもしれませんけれども、非常にむずかしい問題でありますが、長期的には、酪農とか日本農業というものを、バルク的には自給度を高めるということ、この路線と、それから短期的には、いま言うた広域的に貿易その他によってマーケットを広げるということによって、当面の物価対策というものを考える段階にきてはせぬかということ、この点を、むしろ、質問といわんよりは、企画庁長官に特に要望いたしまして、私のきょうの質問にかえさせていただきたいと思います。御意見を伺いまして、私の質問を終わります。
  160. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもの持っております問題の本質をたいへんによく御理解いただいておって、私はありがたいと思うのでございます。確かにそういう問題がございまして、これはバターにしてもチーズにしても、あるいは肉についてもそうでございます。それから、でん粉類についてもそうでございます。また、極端にいえば、米ですらも同じような問題が実はあるわけでございます。しかし、現在の農家、そこに住む人口、それから、いろいろ生産性の上昇の困難だということを考えますと、片や消費者利益、片や農業——というよりは、国民の人口の三割に近い人々の生き方、その人たちにどうやって繁栄をしてもらうかということを考えていきますと、その間のバランスをどうやってとっていくかということが、一番私どもにとってむずかしい問題でございます。それをたいへんによく御理解をしていただいておると思いますので、ちょうどハムレットに始まりまして、まさに、長らえるか長らえぬか、それが疑問だというようなことが私どもの悩みなんでございます。
  161. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 有島重武君。
  162. 有島重武

    ○有島委員 ただいま小峯、武藤両委員ほかの委員から、私の伺いたかったところを大部分聞いていただきましたので、当面のことをひとつ伺います。  牛乳需要がふえているというお話でございます。一方、まだまだこれからPRもしなければいけない、サービスもしていかなければならない、そういう面もあるようでございます。ここでかりに店頭売りを主体にいたしまして、家庭用には大型びんを主体とする、こういうような方向に向かいました場合に、業者、小売り、需要家、それぞれ立場がどうなっていくか、この御意見を聞かしていただきたい。田部さん、大野さん、それから春野さん、三巻さん、四人の方から伺いたいと思います。
  163. 大野勇

    大野参考人 店頭売りというのは、日本独特——独特でもないのですが、半ば日本独特のものです。諸外国におきましては、牛乳需要伸びないので、嗜好飲料としての牛乳需要をふやさなければならぬということで、いま日本のまねをしておるのです。したがって、ときたま飲んでくれる人が牛乳の味を覚えるということを少しも反対する理由はないと思います。しかも一般の清涼飲料が非常に高値で売られているさなかに、牛乳が比較的栄養のある、安心のできるものを供給できるということは、私は大いに奨励したほうがいいかと思っております。  大型びんの問題は、現在でも大型びんは安いのです。一生懸命で大型びんを売ろうと思っているのですが、なかなか売り上げがふえない。結局、さっきもどなたかから話がありましたが、われわれの頭で考えていることと、消費者の希望するものとが必ずしも一致しないのです。それですから、これが統制か命令か法律でできるなら別ですが、大型びんにしろ、隔日配達にしろ、消費者の希望がなければ、こういう競争のある時代に実現しない、消費者がほんとうに希望して、みんながそういうふうになればそういう形になるのですが、いままでのわれわれの貧弱な努力では、この三年くらい、大いに大型化して能率化したい、こう思っておりましたが、たいした成功を見ることができない、こういうのが今日の実情であります。
  164. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 たいへん恐縮ですが、長い時間かかっておりますので、簡単に御答弁をお願いしたいと思います。  では、田部参考人
  165. 田部清

    田部参考人 おっしゃいますことについて、いま大野さんがおっしゃったようなことで、実際問題として、私らが大型にしてくれと言ったって消費者は聞きません。大型というのはどの程度をいうのかという問題になるわけです。大型でありますと、長く置いておかなければいかぬですね。そうすると、電気冷蔵庫がなければいかぬわけです。先ほどどなたかの説明によりますと——私らは知恵がないので新聞だけを見ておりますが、新聞では、五八%しか家庭用の電気冷蔵庫が普及しておりませんよ。それを私らの力だけで、大型化で冷蔵庫もついでに買いなさい、こいつはいきません。ある程度の条例とかいうようなものができて、こうしなければいかぬというときにはできますけれども。この前のいろんな行政官庁ですか、あるいは企画庁の話でも、すべてみな規則がある程度あるわけですね。それが全部解決されてきて初めて私らができるのだ。だから、それをやってくださいと私のほうは頼んでいる。そうして小売り商が——皆さんにもついでに言うておきますよ。ここで牛乳屋の得意を交換したらどうだ、そうしたら配達の能率が上がるやないかと言うけれども、何十軒もあるメーカーが、一丁目はあんたのところだ、二丁目はあんたのところだというて、だれがきめるのだ。そうでしょう。私のほうは後発メーカーだからもっと売らなければいかぬ、そんな統制に入りませんと言ったら、だれが押えてくれるのだ。だれもいまの状態で押える人はありませんよ。だから、そういうようなことが、すべて規則として、あるいは政府の強力な指導によってできるのなら、これはできるかもしれません。新聞でもそうです。朝日新聞を読んでいる人に、読売にこうきまったから読売をとれとだれが言えるか。そんなことできやしません、ほんとういうて。何にもしないで、こうはどうや、ああはどうや、こうしたら安うなるんやないか、こんなふうに主婦連さん宣伝してくださるというのは、ひきょうだ。全部やってから言うてくれ。値はもう上げるというて、ビラも配って出しているところがあるんですよ。いまから皆さんにいろいろ協議をしてもらうけれども、もう値上げを頼んで、消費者が得心してくれているところがずいぶんあるのです。これを頭に置いてもらわなんだら——これから何カ月やてもらうのは、次の値上がりとか、来年はこうならぬようにするという話なら、これは別ですよ。いまですよ。そいつはうまくいってますのや。もうとにかく頼んである、消費者も待ってくれてますわ。牛乳屋さん、気の毒でんなあ、あんたとこ何ぼもうかりまんねん。うちはせいぜいもろうても三、四十銭や。それは気の毒だす。これがみんなの意見です。反対しているのは主婦連と企画庁だけです。いいかげんにしてもらわないか。もう上げてますのや。引き戻しますのか。それは議論としては通りませんわ。それだけ言うておきます。
  166. 春野鶴子

    春野参考人 画一に店頭売りになった場合ということでございますね。
  167. 有島重武

    ○有島委員 配達ということは特別で、店頭売りが主体だ、そういうふうな方向に向かっていった場合には……。
  168. 春野鶴子

    春野参考人 私は急にはあれだろうかと思いますが、消費者立場からいえば、自由選択があっていいと思います。おそらく、画一ということは不可能ではないかと思います。消費者側からいえば、自由選択がきく、ただしその場合、業界のほうの出方が、店頭に行って飲めば、たとえば十六円なら十六円、そうすると、ある消費者はそれがはっきりするわけです。お店によって十五円五十銭があるかもしれない。それから配達を契約した場合、それは、うちに冷蔵庫がある、それからどうしても毎朝とりには行けない、赤ん坊がいる、そういう家庭事情に応じて配達をしてくださいという場合には、配達はこういうわけで一びんについて一円高うございます、それでもよろしいからどうぞ、家庭事情やむを得ない、そのほうでよろしいという方は、その契約をすればよろしい。店頭に行けばなるほど一円か二円はっきり安いのだというならば、家庭事情の許す方は、喜んでおなべを持って二本なら二本、三本なら三本入れていくかもしれない。こういうふうにきまったらこれだといういままでの習慣を、むしろ業界のほうが、こうしてもらえばこうでございます、こうしてもらえばこういうわけでこうです、さあ皆様方はどちらをお選びになりますか、そんなふうな出方になっていけば、消費者も、家庭事情のあり方に応じて選択すると思います。  いま、大型がよかろう、ごうごうと論議されるのですけれども、どういうふうになってみても値段のあれがはっきりしないのです。私どもの例に、合理化して大型をとるということでとっているのがあります。そうしたら、いかにもサービスしますよというようなことで、よくはかってみたらちっともサービスになっていない。そういう、ごまかされるという印象が強いものですから、これが悲しいと思うのです。われわれとしては選択が自由にできる、画然とその差が理由づけがはっきりする、納得の上でわれわれはそれを選ぶ、こういうことです。
  169. 三巻秋子

    ○三巻参考人 私は現に配達づきのものと店頭に買いに行ったものとには二円の差をつけて、店頭に買いに来た人には十四円、配達は十六円という制度をとっておりますが、赤ちゃんを連れたうば車を引いた奥さんが、三軒分、一週間のうちの二日間ですか、分け合ってお互いにとりに来るというようなことを完全にやっておりますね。それから、近くでありますと、それだけ開いておりますと必ずとりに見えます。ですけれども、ただ、遠いとか、そういうことでできないということと、それから、現実にいままで店に買いに行ったのだけれども、不特定多数の人には安くできませんということをはっきり言って断わられております。その際に、購入いたしますときに、先付、先々付という三つのキャップの制度がありまして、当日だけのを買っているわけではございません。ことに牛乳なんかは、お天気次第でどんなにでも消費が減ったり多くなったりするという商品だけに、あしたに持ち越すなと思うときには、先付のキャップでメーカーのほうから購入しているのが販売店でございます。それだけに、一人二人の不特定多数の人が買いに行っても、事実上はないということを言わせますが、不特定多数の人には安くできませんということを言われたときに、それだけの返事をする人が消費者の中にいままでなかったということが大きな原因だろうと思います。ですから、先ほど申しましたように、ラジオで、店に買いに来た人にはこれだけ安くしますということをはっきりとPRし、店のガラス戸にそういう紙を張っていただくということをお願いしたいのはそこなんでございます。もう値段が上がって苦しくなれば当然街頭に出てくるのはあたりまえだと思いますね。また、だんだんそういうような方向に追い込んでいくのが今後の施策のあり方だろうと思うのであります。
  170. 有島重武

    ○有島委員 大体お四方とも、その方向については反対ではない——いろいろな条件は多少違いはあるが、このように理解してよろしゅうございますね。  それから最後に、安い牛乳をたくさん飲んで体位が向上して、家事も簡略にされる、これが私たちの一致した要請であると思いますけれども、いまこの場を切り抜けるという問題だけを論議されているように思います。それで、将来の話でございますけれども、先ほど酪農三法の話が出まして、国内自給にするということが基本方針だ、そういうようなお話もございましたけれども、事実は五〇%が輸入になってしまっている、そういうようなこともございました。それで、貿易については、大体先進国から輸入されているものが多い。それで、ここで低開発地域に働きかけて、さっき広域という話もございましたけれども、将来はこういう方向に進んで国民の要請を満たしていく、そういうような一つのお考えがありますでしょうか。これは山口さんと、それから宮澤企画庁長官にお伺いしたいと思います。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先ほどの平岡委員の御質問とかなり密接に関係した問題だと思います。いわゆる一次産業の産品全部についてそういう問題があるのでございますが、たまたまただいま低開発国というようなことを申しますと、私どもそういうつもりをもっておりませんでも、受けますほうは、自分の国を言っておるのではないかという連想が非常に起こりやすいものでございますから、この程度の御答弁にいたしておきたいと思うのでございますが、農産品全体についてそういう問題があると思います。
  172. 山口巖

    山口参考人 私どもといたしましては、酪農国内の自給率を七、八〇%は確保できる条件があるという確信をいたしております。今後、多頭飼育、それから、まだ酪農をやっておりません地域に対して酪農を導入いたしまして、自給体制を確立するために努力いたしたい、かように考えております。
  173. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 大野市郎君。
  174. 大野市郎

    大野(市)委員 たいへんおそくなりましたので、簡単に二、三御質問いたしたいと思います。  本日は、とにかく牛乳の値段の問題で参考人の方に来ていただいておりますので、それだけにしぼってお聞きしたいことを聞きたいと思います。  最初に責任論が出まして、手続が足らなかったのじゃなかろうかという質問がたくさん出ました。私ども、与党野党を問いません。そんなことじゃなくて、今回この問題をこの委員会で取り上げた、すでにその点が、農林省でございましょうか、政府機関が十二分の手だてを尽くしていないんだという事柄を私どもは申し上げるにはばからぬと思います。これが、まずお聞きする前に私どもの考え方でございます。  しかし、いろいろ参考人の方々のお話を承りますと、生産者団体の代表であります大坪さん、それから最後の山口さん、また、畜産局長の御答弁を承っても、乳価が採算割れであるという事柄はどうも立証されておるようであります。そういう事態できょうの会合でございますので、ずっと参考人の方々の御意見を承っておりますと、そういうわけで値上げをしなければならないんだ、生産者のほうは値上げをしなければならないというところまで大体御異議がなかったように先ほど承りました。  そこで、その問題のうちで、まず大坪さんと山口さんに承りたいのですが、原料乳と飲用乳は農家の売り値が違います。その場合に、いわゆる原料乳地帯から飲用乳地帯に——日本の国は海岸線が大きいといいますけれども、それは方法がある。たとえば冷凍船によって移動するというような生産者団体の自衛手段、そういうものをお考えになったことはございませんか。
  175. 大坪藤市

    大坪参考人 飲用乳と加工乳が今度の新制度によりまして価格に差異があるということは、御指摘のとおりでございます。もともと、国内生乳の飲用牛乳化というものは、これは国策の線でもございまするし、当然また価格段階の差もございまするので、できるだけ飲用牛乳化するように、生産者団体といたしましても、そういう方向でタンクローリーの整備その他をやっている次第でございます。
  176. 山口巖

    山口参考人 現在、北海道を除きました内地の府県の輸送にタンクローリーを用いますれば、大体消費地域まで搬送が可能である。ただ問題は、北海道の北部の牛乳をどうするか。これは現在輸送コストが非常に高くつきますので、経済的に向こうの牛乳をこちらへ持ってくるということはできがたい条件があるわけでございます。このために、私どもとしては、輸送費の補助その他の施策を国で講じてもらいたいという要求を前々から申し上げておるわけでございます。
  177. 大野市郎

    大野(市)委員 そういう輸送の方法についての御検討をなさっておられるというので、飲用乳普及という形で、ぜひ生産者団体の自衛手段としてもお進めをいただきたい。政府に対する要求事項は、また別の機会にだんだん詰めていきたいと思います。  そこで、今度は原料乳、飲用乳両方をメーカーとしてお取り扱いになっておる大野さんにお伺いしたいのですが、その移動があって、飲用乳化の方向に酪農全体の方向づけを生産者は考えておりますが、この点に対し、乳業会社メーカーのお立場で御歓迎をなさいますかどうですか。
  178. 大野勇

    大野参考人 歓迎をするしないにかかわらず、もう十年もやっているわけです。ですから、飲用牛乳に売る牛乳のほうが高いという場合に、それを加工品に使うから安い値段のものしか買わないということはしていないのです。高く払ったほうが農家のためにもなる、こういうことでやっております。
  179. 大野市郎

    大野(市)委員 輸送によって足らないところに移動していただきたいので、この質問をいたしました。  それから、参考人の方々の御意見を承ると、消費者の代表の方々は、こういう方法があるのにどうしてくれないのだろうかという、具体的な幾つかの御提案を承りました。そこで、これは結局流通過程における経費の節減が可能かどうか、あるいは売り上げの総金額の増減の問題で経営が困難になるのでちゅうちょせられるのか、こういう疑問が流通過程の方々の中にも浮かんでおりますので、その点に対して、先ほどは、店頭売りの値引きの問題について委員から御質疑がございました。そのときのお答えに関連して、商業組合の田部さんに御質問をいたしたいのでありますが、先ほどお聞きしたうちでは、いや、そうやったって消費者が来ないんだから、未知数なんだという御答弁を承ったのです。そうでなくて、たとえば何合びんが大型だといったら、どんな大きさか、その大きさによってそれで売ってあげるからといっても、消費者がついてこなければどうしようもないのだというお話がございましたが、その努力をするしないは消費者の側にございますので、それはまた別にしまして、流通過程の最終の段階を受け持つあなたのほうの段階の経営の内容といたしまして、配達人が手に入らないで、まあ早期配達でもありますので、給料のベースアップもしなければならぬ、さまざまの保障をしてあげなければならぬ、こういう状況であります。これがあり余っておるのでなくして、ないものだから、一生懸命にさがし求めておられるというお話であります。そうしますと、これが店頭売りあるいは大口売りに変化がきましたときには、そういう得がたい人件費が削減できるわけになりますが、これは足らない人間をとってくる努力と、それによって値引きといいましょうか、値上げをしないといいましょうか、表現の方法はどうでもようございますが、そういうような形でいかれた場合には、いわゆる合理化でございますので、御協力ができましょうか。
  180. 田部清

    田部参考人 先ほどお話がございました店頭にとりにくる場合には、不特定多数のものだから、まかりませんというて追い返しているということが、あたかも不徳義なことをしているような主婦連側の発言がございました。私ども配達販売を専業にいたしております。私どもは店頭で売るのが専業ではございません。したがいまして、不特定多数の人が牛乳をそのときどきに買いにお見えになりましたときにでも、渡すのには人手が要るわけです。かってにとっていけるようにはなっておりません。したがって、ある程度のそれに対する人件費をみなければなりませんので、一日に渡せるのは百本であって、その女の子を雇うのにいかほどの賃金でやればどれだけかかるかということをお考えいただきましたならば、とりに行ってやったから安くするのはあたりまえじゃないか、そういうことをせぬやつは不徳義なやつじゃないかというような考え方でものを見てこられると、私らとは話し合う場が非常に少なくなる。こういうようにやってくれぬかということだけの話があればいい。ただ、おまえらのほうは、いままでやらないのは、不徳義でやってないんじゃないか。そんな考え方は私のほうはさらにありません、本来が配達販売なんです。その途中でとりに来ていただいても、店に売り子を使う場合には、百本しか売れなければ、かりに三円なら三百円、月に一万円で女中が待ってくれるか。待ちません、いまでは。皆さん承知のとおりです。人間一月一万円で雇えますか。そうでしょう。そうなると、そこで渡したのを引いていたのではどうにもならぬようになるということで、なるべくは配達をさしていただくという形になっておるわけです。これが一つです。  そうすると今度は、消費者が協力をして大型びんをとるといっているから、そういうような場合にはおまえは協力できるのかできぬのか、そうした場合に、おまえの、売り上げでなしに、もうけはどうなるかということでちゅうちょしたりしなかったりするんだろうという御質問ですが、まことにそのとおりであります。私どもは販売業者として生きておるのであります。そういう形でメーカーから直接とられたら、私ら全然食い上げですわ。そうでしょう。私らを通じて買うから高くなるというたてまえがあるなら、私らは私らの生活を守るために、私らを通じて買ってほしいというお願いをするのは、また私の立場としては当然であろうかと思うのであります。
  181. 大野市郎

    大野(市)委員 これが流通合理化の問題には一番根本でございまして、ただいまの田部さんの代表のお立場ではよくわかるのですよ。私なども、そういう現状というものの改善の方向をお互いが理解し合ってそして飲用乳を普及させたいということで、十数年前、学校給食の普及のときのあれを踏み切らしたのは私どもなんです。あのときは余りまして、そうしてやった経緯もあるのです。  そこで、私のいま御質問するのは、決して強圧をしてこうやるんだぞというふうな気持ちは毛頭ございません。参考人においでいただいたのは、どうやったらきょうの時点で消費者の安心するものが獲得できるかということでおいでいただいたのですから、御相談をするわけなんですが、ここでまとめようということもできないですが、いま配達つき経営であるという御宣言ですね。
  182. 田部清

    田部参考人 いまはそうなんです。いまはです。これから先は——私は頭が悪いから、あとで長いこと聞いていると忘れたら非常に失礼だから——いまはそうなんです。しかし、これから主婦連の皆さんとも役所ともみんなで相談してこういうふうにしようじゃないかという結論ができたら、皆さんに私らのほうで協力するようにいたしますけれども、今日の時点では、先ほどから私が言うように、非常に私は腹を立てております、正直に申し上げて。肝心の私らを全然無視して、婦人団体とか役所とかがかってに集まって、ああせい、こうせいだけでできるものならやってみろという気持ちのほうが強い。ところが、皆さんのように事を分けて事われると、そういうふうにしようとする協議会をつくるから……。
  183. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 時間がないですから……。
  184. 田部清

    田部参考人 ちょっと待ってください。わかりました。  そういうことですから私らもそれに協力するという、そういうふうにやってください。
  185. 大野市郎

    大野(市)委員 ただいま田部参考人から、現時点においてはいきさつがあるので、そういうエキサイトした気持ちで発言が続くけれども、相談の機会をこれからつくれるものであろうから、そのときには流通合理化の方向で一諸に相談しようと思っておるのだという、こういうふうにただいま御答弁を承りましたが、それでよろしゅうございますか。
  186. 田部清

    田部参考人 はい。
  187. 大野市郎

    大野(市)委員 そういう形で流通の合理化はどうしてもその方向がだんだん研究されていくのではないかと思います。参考人のお話の中で、メーカーから直取りしたらいいじゃないかというお話の誤解がございましたが、私、質問の内容にはいまそれは入っておりません。流通の安全の保全、メーカーの取り扱いの方法、直売という問題には、まだちょっと研究しなければならぬ問題があると思います。これは流通自体の理論でなくて、やはり分業があります。それの配置のいろいろな現状がありますから、私どもとしてきょうはそこまでは申しませんで、店頭に行った場合を問題にしたわけであります。  それから、冷蔵庫のないうちがあるから、むずかしかろうという御心配をいただいたのですが、牛乳を飲む習慣がつきました家庭というのは、案外これは文化的な家庭が多いように経験上見られまして、いなかに行きますと、まだ牛乳を飲まない。大体牛乳の飲用のたくさんあるところというのは都会地です。そういう形でいまの冷蔵庫の配置状況というものを勘案いたしますと、相当の家庭が密度高く冷蔵庫を持っておるように聞いております。そんなような判断で見ますと、ひとつこれはメーカーの代表としての大野さんとお取り扱いの田部さんにお答えをいただきたいのでありますが、昔ちょうど余ったころに、大びんでどうだろうという話の出た歴史がございます。その当時、びんの転換をするためにたいへんな費用がメーカーはかかるのである、このびんの転換の費用の金融措置なり、何か国の助成がないかという要請、論争などがあったことを私は覚えておりますが、この大びんに変えることに対しては——もちろん、大びんならば安いという前提です。その安さも、幾ら引けるのだという価格の差もきまったものと前提しまして、メーカーとして、そういうことに対して、大会社でございますから、そんな心配はない、やろうということで、売れるというならそういうものをつくるぞと言うていただけますか、あるいは、そういうものができたら売ってやるぞと言うていただけますか。
  188. 大野勇

    大野参考人 非常に誤解が皆さんにございます。いま大びんを売っているのです。ですから、困る困らぬの問題じゃないのです。一生懸命に大びんを買うようにすすめていますが、消費者が買わないというのです。もと大びんに直すといったのは、一割値下げをするかわりに百八十ccを二百ccに直す、こういうのです。いまのは五百ccなり九百ccのびんで、これは現に製造しているんだから、幾らでも御需要があれば売ります。  ただ、配達とか冷蔵庫の問題がありますが、これが過渡期でくしの歯の抜けたように、あっちで一軒、こっちで一軒、私のところだけ隔日配達だ、こう言われても、回るルートと時間は変わりがないのです。ですから、こういう実情をよくなにして、そういうことがいいようなら、その区域の消費者全部がそういうことを希望するということでないと、あまりぽつんぽつんではなお困るのです。忘れちゃったり間違ったりして……。
  189. 田部清

    田部参考人 大体大野さんがいまおっしゃったようなことで、私どもそうなるのならそれでけっこうなんだけれども配達するという立場からいいますと、ここは五百cc、ここは九百cc、ここは百八十ccというようないろいろな段階がありますと、ほんとうは、合理化どころか、手数が逆にかかっているということでございますので、そういうことはけっこうでございますが、その前提として、それをみなやらなければいかぬのだという観念に切りかえられたときには非常にスムーズにいくのじゃないか、こういう考え方を持っております。
  190. 大野市郎

    大野(市)委員 結局、集団購入ということを申されておられると思いますが、これは消費者の代表の方からも集団購入を奨励したいというお気持ちを先ほど承りましたし、消費者の飲むほうも、すわっていて安いものが手に入るということはお互いに慎まねばならぬことでございますので、そうすると、その意味合いにおきます、大びんを購入する、あるいは配達をやめて隣組が順番で取りにいくというような案もお聞きしておるので、そういうようなお話し合いが進んで集団購入に踏み切った場合には、牛乳の値段も当然安く手に入る、こういう事柄はお約束ができるわけですね。この点は、最終段階のほうの合理化でございますので、田部さんにお願いします。
  191. 田部清

    田部参考人 そういう場合には、観念的には一応できる、こう申し上げることができると思うのです。
  192. 大野市郎

    大野(市)委員 そこでもう一点お聞きしたいのですが、ポリエチレンの袋で、びんの回収の要らない詰め方も聞いておるのでありますが、この点の可否、普及度、そういうものの利害得失ですね、こういうことを、メーカー大野さんと、それから厚生省のほうでおいでの方にお聞きしたい。
  193. 大野勇

    大野参考人 いまのポリの袋と、それからさっきお話がありましたユーペリゼーシヨンというのは、学問上の話と経済の話とをみな混同されておるのです。だから、できるできないということと、——そのことは科学の進歩ですから大いにけっこうかもわかりませんが、いまのびんより高くなるようなものを、これができるといったって、それは学者の議論なんです。それでわれわれも採用していない。それからもう一つは、ふにゃふにゃのコンニャクのお化けみたいなものは消費者が喜ばない。うっかりすると漏れてしまうし、子供がちょっと飲もうと思って端を切るとこぼすというようなことで、世界的に、さっきのユーペリゼーションもありますけれども、ほんとに見本的にやっているということで、実際の経済上の話には世界いかなる国といえども一つもなっていません。
  194. 舘林宣夫

    舘林政府委員 ポリエチレンの容器の御賛同がございましたが、今日でもポリエチレンの容器は許しておるわけでございますが、これは強度のしっかりしたものはかえってびんより高価になります。強度の弱いものは運搬上かえって不便になる。さらに、非常に薄い被膜のような、風船玉のような薄いものは、今日牛乳が非常にばい菌が繁殖しやすい、こういう薄いものは空気を通しやすいということから、まだ採用されておりませんし、業者の側からも申請が出ていない状況でございます、
  195. 大野市郎

    大野(市)委員 容器の問題を承ったのでありますが、しかし、いつまでもガラスのびんばかりにたよるわけじゃない時代が参ろうと思いますので、この点は、いま承りまして、値段が高いのではきょうの話になりませんので、これは理解いたしましたが、方向といたしまして、流通合理化の中でおとうふがポリエチレンの袋に入る時代が来たので、デパートで買って帰れるようになったわけです。そういうぐあいで、牛乳も販路の場所の問題で議論が残りますけれども、運搬も手軽にできるというふうな流通の場所の範囲も広がることでございますので、御研究願いたいと思います。  最後に、やはりもとへ戻って農林省の政策になるわけでありますが、生産者団体大坪さんは、当面の価格の問題であったから、価格を上げてくれという御要求に重点を置かれたのだろうと思いますが、濃厚飼料輸入品が値が上がるといって宣言されて、生産者団体は、さようでございますかと、よもやおっしゃらないと思いますが、これに対して生産者団体としてはどのような働きかけを政府にいたされましたでしょうか。
  196. 大坪藤市

    大坪参考人 ただいま御指摘のございましたように、えさの問題につきましては、政府管理飼料、これについて六月から値上がりが見込まれておる、つまり四十二年度の予算の基礎にそういうことが見込まれております。このことにつきましては、生産者団体といたしましては、値上げになるような措置をしていただかないように非常に強い要望をいたしたのでございますが、政府当局におきましては、外国からの輸入価格が上がっておる、それから生産者要望にこたえて払い下げ数量を相当引き上げなくてはならない、こういうようなことで何としても値上げせざるを得ないという事情説明がございました。しかし、私どもといたしましては、そのことにつきまして必ずしも了承いたしておるわけではございません。しかし、政府事情もよくわかることはわかるわけでございます。なお、政府管理飼料以外の飼料も、外国の穀物価格値上がり傾向にございますので、これも一般的には値上がり傾向がございますが、流通飼料のうち主力を占めまする配分飼料につきましては、われわれ全購連をはじめといたしまして生産者団体は、できるだけ自己の中の犠牲において一般的な値上げを阻止するということで、全購連におきましても、過般、七月までは値上げしない、こういうような措置をとっておるようでございます。私のほうでも現に配合飼料をやっておりますが、当分値上げはしない、こういうような考え方を実は持っております。
  197. 大野市郎

    大野(市)委員 生産者団体から、濃厚飼料が一番輸入が多いものですから、それの値上がりは困るということで抗議をせられたという参考人の御答弁であります。これは政府としてこの値上がりムードを押えたいというほんとうの気持ちがおありであるなら、手持ちのものでこれらを格安に酪農団体に払い下げる、それによっていまの値上げのいわゆる足らない部分、採算のとれない部分を幾ぶんでもカバーして、そうして消費者に迷惑のかからないようにするということが考えられますが、これはひとつ宮澤長官に国務大臣としてお考えを承りたい。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 所管でございませんのでつまびらかにいたしませんが、よく調査いたします。
  199. 大野市郎

    大野(市)委員 それでは、私御質問しましたことを要約しますると、生産者団体のいわゆる採算割れ、それから流通段階でそれの上積みが要るということで問題になっておりますが、消費者団体参考人の御意見としては、こういう方法があるじゃないかというような何点かのお話を承ったので、要するに、集団購入ということができれば値上げも幅が低い、だんだん値上げをしないで済むかもしれぬというようなふうに私は印象づけられましたので、きょうのこの委員会で、別に値が上がったり下がったりするというわけにいかぬのでございましょうから、参考人に対します質問はこれで終わります。
  200. 戸叶里子

    ○戸叶委員長 以上で参考人に対する質疑は終わります。  この際、参考人の皆さまに一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、まことに長時間にわたり熱心に貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。    午後二時五十一分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕