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1967-07-06 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月六日(木曜日)    午前十一時十分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 仮谷 忠男君 理事 倉成  正君    理事 高見 三郎君 理事 森田重次郎君    理事 石田 宥全君 理事 東海林 稔君    理事 中村 時雄君       安倍晋太郎君    小澤 太郎君       大野 市郎君    鹿野 彦吉君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       坂田 英一君    坂村 吉正君       田中 正巳君    野呂 恭一君       藤田 義光君    湊  徹郎君       粟山  秀君    赤路 友藏君       伊賀 定盛君    唐橋  東君       栗林 三郎君    兒玉 末男君       佐々栄三郎君    柴田 健治君       島口重次郎君    芳賀  貢君       美濃 政市君    森  義視君       神田 大作君    斎藤  実君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  草野一郎平君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         食糧庁長官   大口 駿一君  委員外出席者         農林省農林経済         局統計調査部長 松田 寿郎君         農林省農政局拓         植開発課長   藤本 静香君         農林省農地局参         事官      佐々木四郎君         通商産業省公益         事業局公益事業         調査課長    石井 泰安君        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 七月六日  委員栗林三郎君及び實川清之辞任につき、そ  の補欠として唐橋東君及び芳賀貢君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員唐橋東君及び芳賀貢辞任につき、その補  欠として栗林三郎君及び實川清之君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 七月五日  農林資源育成等に関する陳情書  (第二二三号)  国有林の公社、公団化に関する陳情書  (第二二五号)  農業者老齢年金制度早期実現に関する陳情書  (第二四八号)  同  (第二七七号)  同  (第三一三号)  農林業振興対策に関する陳情書  (第二四九号)  国有林野事業に従事する労働者労働条件改善  に関する陳情書外十二件  (第二五〇号)  同外二百九十二件  (第二  七六号)  農業協同組合法の一部改正に関する陳情書  (  第二五一号)  同(第三  一一号)  国有林野の活用に関する陳情書  (  第二七八号)  土地改良事業促進に関する陳情書  (第二七九号)  豚価安定対策強化等に関する陳情書  (第二八〇号)  畜産振興に関する陳情書  (第三一〇号)  ニューカッスル病防疫体制確立に関する陳情  書  (第三一二号)  昭和四十二年産生産者米価に関する陳情書外七  件(第三  一四号)  消費者米価値上げ反対に関する陳情書外一件  (第三  一五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農業用水問題、  へき地農山漁村電気導入問題及び米価問題)      ――――◇―――――
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。唐橋東君。
  3. 唐橋東

    唐橋委員 減電補償につきまして農林省見解を求め、今後の対策をお聞きするわけでございますが、御承知のように、減電補償とは、発電県に一般問題として起きておる問題でございまして、既設発電水系より一部揚水してかんがい用水等に使用する場合に、揚水した分だけ下流発電所発電量が減少するから、この減電した分キロワットアワー何円という電気料金単価で計算しまして、その分だけ農民側から発電会社補償金を取るわけでございます。そして、この契約をしない限り揚水契約はしない、こういうことがいま行なわれておるわけでございまして、この問題は考えてみますと、第一に、農民と水という基本的な問題であること、第二に、発電地帯土地造成により開田をする場合必ず起こる一般的な問題であります。第三点として考えてみますと、今後の問題として、工業用水等と関連して、農民と水という基本的な問題も含んでおると思われます。これらに対して現在まで建設省の見解並びに通産省の見解ただしてきましたが、根本的な解決は、農民立場あるいは農政立場に立つ農林省が、明白に、かつ確固たる方針を持ってこれら関係各省と協議して解決しなければ、根本的な解決ができないということが明らかになったわけでございます。しかも、このような農民水利の保持に対して、現在まで農林省の指導というものは非常に不十分であった。私から言わしむれば、ほとんどなかったと言っても過言でないと思う節が多々あるわけでございまして、このような点に立ちながら、理解をいただくために、ひとつ実例をあげてみたいと思うのでございます。  御承知のように、福島県の場合は阿賀野川水系只見川水系、その支流日橋川水系等もあるわけでございますが、あの只見川水系だけを見ましても、上流から下流まで連続してダム式で十四の発電所ができておるわけでございます。支流日橋川猪苗代湖水系のところは五カ所ございますが、ともかく既設発電所に埋もれているわけでございますが、いま、この地帯は、御承知のように、大型機械の普及のため、各地において土地造成が行なわれ、開田事業が着々と行なわれておるわけでございます。したがって、計画としては大規模国営、あるいは県営、あるいは各所に団体営があるわけでございますが、その中で、この問題の典型的な例として、山都町の舟岡という土地改良区でいま直接に電力会社といまの減電補償交渉に入っている内容を申し上げてみたいのであります。  山都町の舟岡地区使用水量揚水量でございますが、〇・一二秒トンでございます。開田面積は、端数を略しまして二十六ヘクタール、そのうち十二余ヘクタールが既設でございます。新規開田は十三余ヘクタールでありまして、合わせて二十六・八一ヘクタールということになっておるわけでございます。この減電算定方式を見てみますと、河川流れの量から水利使用料算定が出ておるわけでございますが、そのかんがい期というものを過去十年間の統計で計算するということで、百二十三日揚水を一応する、その場合、七十二日だけ減電をします。揚水量のうち、約四〇%は川へ還元をします。したがって、六〇%が減少と見ます。キロワットアワー補償単価は五・〇一二円にします。こういう計算で、下流発電所に新郷、山都、上野尻、豊実、鹿瀬、揚川という発電所がございますが、この発電所耐用年数を六十五年と見ました。したがって、残存の年数を各発電所ごとに計算いたしまして、いまの算定方式を当てはめてみますと、四百七十一万五千九百三十三円の減電補償料を一括いただきたい。もし一括いただかなければ、利子年利といたしまして八%の積み立て方式考えております。これが現在の舟岡地区における問題なのでございまして、これも御承知のように、この金額事業費に含まれていない。それで、この契約ができなければ揚水契約しないということなので、これだけの金は農民側からいえば払うことができないわけでございます。したがって、開田計画に着手はしてもこの契約のためにストップしておるというのが実情でございまして、その地帯にはこのような問題が起こると予想されるもの、現在起こっておるもの、既設のもので契約をしていま納めておるものもございますが、二、三おも立ったものをあげてみますと、同じ水系でございますが、小布瀬原というのが同じ山都町にございますが、〇・一四八トンでございますし、いまの舟岡あるいはまた喜多方市に小田高原がございますが、この開田面積は五十五・四九ヘクタール、高郷村の大田賀、これは六十三・五四ヘクタール。小田高原がいまのトン数では〇・二一九トン大田賀が〇・五〇五トンでございます。これはいま交渉に入ろうとしておる例でございます。  今後予想される問題といたしまして非常に大きなのは、一万四千町歩にわたる国営計画がございます。あるいはまた開拓パイロットといたしまして二百六十八ヘクタールの雄国山ろく地区というのがございますが、これもやはり同じ水系から揚水しなければならない計画になっておるわけでございまして、このような率でいまのように契約時にこの減電補償契約をしなければならないという点が最大の問題になってきておるわけでございます。  したがって、質問の第一といたしましてお答え願いたいのは、基本的に考えまして、農民がこのように高い水を買わなければならないということに対しましてどうお考えになっておるのか、これをまず第一にお伺いしたいのでございます。
  4. 佐々木四郎

    佐々木説明員 お答えいたします。  農業に新しく水を使う場合には、一般的に言いまして、新しい水源を新設いたしまして、たとえばダムとかポンプとかいうものを設置いたしまして、新規水源水量を確保した上で新しい農業水利事業を興すというのが本来のたてまえでございます。そこで、ただいま御指摘の問題は、そういう新しい水源水量をやらなくて、あるいはそれだけでは不足いたしまして、既存水利権を持っておる発電等が使っておる水の一部を開田に持っていく、あるいは農業上の利用に使う、そういうケースが確かにございました。そういう場合に、既存の水を使う側の人たちにもし損害を与えるならば、その損害に対して適当なる補償をするということは一般原則であろうと思います。ただ、この場合に問題になりますのは、相手が川の水の流れの問題でございますので、土地の買収とか施設の補償とかいうことのようにその問題の本質がはっきりいたしませんので、その水量の減じたことによって起こってくる補償額算定ということに非常に問題が多くございまして、両者間の交渉なり折衝がなかなかまとまらない、こういう事例が非常に多いのでございます。そこで、いままでやっておりますのは、個々のケースにつきましていろいろ事情が異なります。いま御指摘になった例のごときは、おそらく開田をいたします場合に、その開田された水が一部はもとの川に返って、四割くらいは発電のほうにさらに利用されるから、六割くらいでいいだろうとか、そういうことも一つの特殊なケースだろうと思います。開田事業農業側事業というものは、御承知のように、国や公共団体補助金がございますけれども、その残額につきましては農民負担がかかるために、そういう減電補償の額が非常に高くなって、その開田事業ができないということも確かにあるのは事実だと思いますが、一方電気の側というのは、すでにそこに発電所を持っておって、そこで一定の電力を使い起こし、それをやっておる以上は、これを減電する事実がわかっておるにもかかわらず、ただにしろとかなんとかいうところまではとうてい言えないだろうと思うのであります。そういう場合に私どもの考えとしましては、県なりあるいはそこの町村なりそういうようなところが、農民側負担をなるべく軽減するような措置、そういうことをその事情事情に応じてやっていただくことが一番いいのじゃないか。確かに既設発電所が各河川には非常に多うございまして、その川に関連いたしまして新しい開発が起こってくる場合、これは河川の水を使う場合でございますから、新しい水利権を設定しなければならない。設定しないで水を使うわけにいきません。そうしますと、下流のそういう発電だけじゃございませんが、下流水利権に対する補償というものは全国すべて起こっておるものでございます。そういう場合に、いま申し上げたようなことでございますから、先生がいまお話しになった減電補償額に対して国が補助しないとかなんとかいうことはございませんで、補償額というものは事業費の中に算定されますので、これは補助対象になる。ただ、ここで申し上げたいのは、あまり事業費が高くなりますと、農業開発計画といいますか、開田計画といいますか、そのもの経済性経済効率というものが別な観点から算定、判断されますので、あまり高くなりますと、その開田事業は成り立たない、こういうケースはあると思います。しかし、原則的にはそういう補償額に対して補助をしないというたてまえではございません。
  5. 唐橋東

    唐橋委員 非常に御丁寧にお答えただいたのですが、実は内容が大まかなために非常に理解できない点があるわけです。私が第一にお聞きしたいことは、そういう一つ権利関係の中において農民に水を与えるという場合、やはりいろいろ工業用水なり発電水系の中から揚水すれば、いまのような問題が起こる。そういう場合、やはり農民には水を与えるんだ、こういう基本的な考え方がまずないのかということをお聞きするわけです。その基本的な考え方があれば、そのことがいろいろいま御説明になったような問題に対処する姿勢として出てくるわけでございます。いまのお答えでは、高い水であってもそれはしかたがないのだ、農民は使わなければならないのだ、高くて事業費に合わなければそれはもう計画として成り立たないのだ、こういうお答えのようでございますが、農民と水というこの基本的な問題を農林省立場では——いまのような近代化されていく場合において、このようなケースが出てくるわけでございます。そういうケースが出た場合にも、農民にはただの水を与えてやらなければならないのだという考え方が基本としてないのかどうかということをお聞きしておるわけなんです、一つずつ簡単時間もないようでございますのでお聞きしていきますから……。
  6. 佐々木四郎

    佐々木説明員 原則的には、水を開発する場合、その水を数量的にトン当たり幾らというようないわゆる売水制というふうな考え方はまだ日本ではとられておらないわけでございまして、その開発をやる場合お金がかかります。建設費がかかります。その建設費に対する負担という形で水の開発は行なわれておる。これは農業だけではございません。すべての場合そうでございます。水の利用に対しまして、農業上に利用する場合には、その建設費相当部分につきましては国あるいは県、そういうところの補助金が入りますので、その補助残に対して農民負担しておる。それで、規模の小さい団体事業等につきましては、その地域の関係農家負担能力というものを常に念頭に置きまして、負担可能の限度内であるならばその事業はやれる、こういう考え方でやっております。御指摘のように、だんだん開発の地点が窮屈となりまして、開発計画もむずかしくなるということで、建設事業費がかさんでくるというようなことがだんだん多くなってまいりますので、これらに対しましては、農民負担分について融資の方法をとるなり、あるいはその利率を下げてやるなり、有利な条件にして、なるべく農民負担をかけないように、安くなるような方途はいままでも講じておりますし、今後もそういう方向で行きたい。ただ、これを全部ただでやるというようなことはなかなかむずかしいのではないか。何となれば、やはり農家の私経済的な利潤ということも考えられますので、その負担ができる妥当な範囲内では、ある程度のものはやむを得ないのではないか、こう考えておりまして、一般論で抽象的なお答えしか申し上げられませんけれども、なるべく農民負担を軽減する方向でわれわれはやってきておるということだけは申し上げておきたいと思います。
  7. 唐橋東

    唐橋委員 一般論でございますので、もう少し分析しながらいまの点を明らかにしていきたいのでございますが、やはり建設費やその他は当然だと思うのです。しかし、毎回使う水そのものが、金のかかる水を農民に使わせるということについて、農林省は、やはりほんとうに田の水はあげなければならぬだろう、ただ、今後ケースバイケースの中においていろいろな問題は出てくるとしても、基本的には農民には水を与えるのだという、この考え方が私はお聞きしたかったわけでございます。   〔委員長退席仮谷委員長代理着席〕 もう少し分析しながら、なおその点についてお伺いしたいのでございますが、一つは、特殊ケースだとおっしゃったのですけれども、その考えは是正していただきたいのです。これは福島県だけの問題はでなくて、発電県全部の問題だと思うわけです。あるいは今度いろいろな工業用水が使われた場合に、その上流で問題が出てくるというように、私は全体の問題としてとらえておるのでございまして、先ほどのお答えの中に、これは特殊な問題なんです、こういうようなお答えがあるわけでございますが、これは特殊な問題でないということを、私はやはり認識を改めていただかなければならないと思うのですが、その点はどうですか。
  8. 佐々木四郎

    佐々木説明員 特殊な問題と申し上げましたのは、そのときあわせてお答えしたいと思いますが、結局、水の開発なるものは、新規水利をやっていく場合には、新しい水源をつくる、既存の水を利用している側の人たちに、その側の部門に迷惑なりマイナスをかけないで新しい水をつくる、そういう原則でやってきておるわけでございます。しかし、どうしてもそれだけでは水が足らない、あるいは場所によってはそういう方法がとれない、しかもその新しい水の利用はやっていかなければならぬ、そういう場合には、既存水利用の側に若干の影響を与えてもそれをやることがいいというふうに判断される場合は、やっていくということでございます。  そこで、逆に、農業水利がすでにありまして、あとから発電が出てくる、そういう場合には、逆に農業水利側発電から補償を取る、こういうことも起こっておりますし、事実そういう例もございます。これは、発電側農業水利側というのは、相互に水の利用をやっていく、川の上流下流関係で常に方々の川で起こっておるものでございます。農業が新しい開田等で水を使うことが発電影響すると同じような関係で、逆に発電農業既存水利権影響を与える、こういう場合も非常に多い。特殊ケースと言いましたのは、事例が少ないという意味じゃございませんが、水の開発からすれば、既存水利影響を与えるようなやり方というのは、やはり本来的な態度ではない、こういうふうに申し上げるのであります。
  9. 唐橋東

    唐橋委員 御承知のように、福島県の場合は発電県です。先ほど申しましたように、ほとんど全部の水系既設発電されてしまったわけです。これから新規水源というのはございません。それは一反歩や一畝くらいを山の中で開田する場合は別ですが、いまの農業規模開田をする場合に、これはもうどこから揚げても全部下流発電所が幾つもあるのに影響するから、全部出てくるという、ここだけはひとつ認めていただきたいと思うのでございます。  それで、先ほどのお話で、事業費算定されています、こういうお答えですが、国営の場合と県営の場合は事業費算定されておるようです。この例は農林省のほうからもいただきましたのですが、それは県と電力会社国営の場合には国と電力会社が入っていますので、しかもその場合に大きな金額になりますから、事業費というものに含まれているのでございますけれども、団体営の場合事業費に含まれていますか、それをお聞きします。
  10. 佐々木四郎

    佐々木説明員 国営県営団体営という区別をしておりますのは、事業規模の大きさ、あるいは技術的な問題がむずかしいとか、そういうようなことで事業主体を国、県、団体というふうにきめておるわけでございまして、その事業主体が変わることによって、いまお話補償費団体には組まないとか、国、県営には額が大きいから組むとか、そういう方針はとっておりませんので、団体営といえども補償費事業費の中に算入するのがたてまえでございます。
  11. 唐橋東

    唐橋委員 たてまえということはわかりますが、いままで相当個所数団体営土地改良区があると思います。私も、それに対して農林省でつかんでいますかという質問通告の場合に、資料等をいただきたいというわけですが、急速にはなかなかできない、しかもまだつかんでいない、こういうことなので、たぶんお調べになって、あとからこのような関係を持つ土地改良区というものの数なり何なりは資料としていただけると思いますけれども、そういう資料がまだ農林省の中にもまとまっていない。この事実は、やはりいままでの団体営の中で、現場では事業費という中に実際含まれておらないのですよ。この点、農林省では含ませていますか。必ずあとから、今度減電補償料がこれだけだ、こう出てきますので、そうしてそれは起債なら起債対象外に取り扱われているということが現実出ているのですが、どうですかその点。これは非常に大きな問題として私は明確にしていただきたい。
  12. 佐々木四郎

    佐々木説明員 先ほど一つの例をおあげになったときにも、そのお話ございましたけれども、団体営事業だからといって補償費事業費の中に入れてないということはあり得ないと私は思っておるのでございます。もしそういう例があるならば、これは先ほど一つの例をお話しになりましたが、考えられますことは、これは想像して申し上げるので恐縮でございますけれども、おそらく、そういう場合には、非常に補償額が高くなって、そういうものを取り込むと、補助事業としての先ほど申し上げる経済効果なりそういうものが別途算定されて、そういう経済性を見通した上で、見きわめた上で、事業の採択をやっておりますので、あまりそういうものが多いと、そのものが、たとえば補償費の頭を上げた部分はカットされて削られるということはあり得ることではないか。先生の御指摘の場合はあるいはそういうケースかもしれません。補償費が、団体営事業だからといって事業費の中に算定されないということはない、こういうふうに思います。
  13. 唐橋東

    唐橋委員 私、先ほど、減電補償を要求されている地区概要として、大きな団体パイロット地区だけの名前をあげましたけれども、このほか、団体営というのは現在ものすごく数あるのです。それは全部いまのところ事業費に入っていません。これは事実そうでございますので、あとで御調査の上、資料を出していただきたいと思います。  何かこの問題については理屈としては当然事業費に繰り入れていくべき性質だというお考えだけであって、現実には事業費に入っていません。また、いま申されましたように、この個所が高くなるからということなんですが、私は、いま申しましたように、福島県の会津なら会津開田は一切減電補償に該当するのです。ですから、もし減電補償料が高いために事業費——これは経済効果が少ないのですよ。経済効果が少ないから開田はし得ないのだという考え方ならば、会津地帯は一切の開田ができません。先ほど申しましたように、四百七十一万円に対して新規開田がたった十三ヘクタールでしょう。そうしますと、一ヘクタール当たり三十六万円以上になるわけですよ。一ヘクタール三十六万だけが普通の事業費外減電補償費なんです。しかも山都地区というのは、下流に六つの発電所があるだけです。もっと上流にいけば七つ、八つとみなふえてくるわけです。発電所一つふえるごとに補償費がふえるのです。いまお答えをいただきましたけれども、農林省はこの問題にいままでほんとうに取り組んでいなかったのじゃないですか。こういう減電補償という問題に対して基本的には農民負担をかけないというかまえの中で取り組んでいなかったということを私はやはり言わざるを得ないわけなんです。農林省はこのような事実を調査して明白にしていただきたい。
  14. 佐々木四郎

    佐々木説明員 農業に水を利用する場合の発電側との折衝につきましては、かなり古くから多くの河川でいろいろな問題が起こっておりますので、農林省は問題ごとに相当真剣に取っ組んできておることは事実でございますが、いま御指摘団体営等の事業につきましては、非常に数が多いということ、それから事業主体が直接国ではございませんで国の補助事業という関係もございまして、その当該県なり当該の村なりと直接交渉をやっておるのがいままでのやり方でございます。ただ、そういう減電補償を起こす場合とか、あるいは逆に農業が被害を受ける場合とかいうようなことに対して、一つの一貫したルールとか基準とかいうものはまだ確かにできておりませんで、大体こういうものはその場その場で起こった問題ごとに解決していく、処理していくというのが従来の例であります。御指摘のように、減電、つまり、電気が使っておる水の一部をさいて農業に使うというようなケースが非常に多くなる、そういうことで、開田事業農業に水を使うことを進めなければならないという場合がもし全国的に多くなるならば、これは一つの大きな行政として指導していかなければならない。  〔仮谷委員長代理退席、倉成委員長代理着席〕 一番初めに申し上げましたように、なるべく既存水利には影響させないで——先ほど会津の地域においては新しい水をつくるケースはもうないというお話でございましたが、私実際に現地をよく存じませんけれども、たとえばため池をつくるということは、豊水期に川の水を一時ためて、渇水期にこれを利用するということでございますから、そういう計画は他の地域でもどんどん進められておりますし、もしそういうことが可能ならば、電気側に影響を与えないで農業開発を進めていくことができる。その場合、私どもとしては、先ほど来申し上げるように、なるべく農民負担を軽減するような方向補助及び補助残融資という方式をとりまして進めていく、こういうことでございます。
  15. 唐橋東

    唐橋委員 お答えが非常に遠回りしているような気がしてしかたがないのですが、全国的に多くなるならばと申されますが、全国的に多くなっていると私は考えざるを得ないのですよ。農林省資料を見ても、九州電力の問題なども出ておりますし、それから関西電力の問題も出てきておるわけですね。しかも、九州電力は、これはかん排事業の場合ですけれども、そのときの補償方式というのは、十年契約の中で一括払いで補償金額が千三百二万五千円ということで実施されている、こういうことですが、その場合の九州電力キロワットアワーの単価は幾らかということになると一円六十銭なんです。東北電力の場合は、先ほど申し上げましたように五円以上なんです。この問題を通産省に持ち込みまして、こういう電力算定があるのかということになりましたら、今度は東北電力の場合は二円八十二銭で再計算をします、このように通産省自体もこの問題の単価に対する取り組みというのが九電力でまちまちでございます。ですから、それをいま通産省のほうでは少し再検討いたしましょうということになっているわけですが、いまのように九電力ある場合に、農林省は先ほど申しましたような農民立場に立って真剣にこの問題に取り組んでいただかなければいけないということを私は申し上げたいのでございます。何か偶発的な問題でないということを私は申し上げながら、積算単価の問題も申し上げたいのです。  それから、もう一つは、補償の問題できわめて大きな問題があるわけでございます。これは何かと申しますと、一括補償を取るわけですね。最初に申し上げましたように、六十五年の耐用年数の残存年数発電所で取るわけですが、減電補償というのは、私の考えでは実害補償だと思うのです。実害補償というたてまえに立つならば、そのように何年分も一括取らせておいていいのかどうかということを農林省は検討したことがございますか。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕
  16. 佐々木四郎

    佐々木説明員 確かに、御指摘のように、この補償の問題の解決方式はまちまちでございまして、一貫した一つのルールがないことは事実でございますが、これは、河川の水の流れ方なり、発電側電力計画なり、それに対応しますところの農業のほうの計画なりというものを全国的にどういうルールでやったらいいかというようなところまではっきり、各ケースケースで違うために、線を引くことがなかなかむずかしい。で、お話の一括補償するのかどうかということは、この減電の場合は確かに実質的な補償、実害的な補償でございまして、そういう損害が起こるから補償するのだ、毎年毎年起こりました損害に対して、それに対応する毎年の補償額をというのは理論的には正しいのでございますけれども、これは実際の取り扱いとして非常にめんどうなことが多いということで、残存耐用年数分を一括して幾らというこで両者が合意いたしまして、そういうこととで話がつくという場合が非常に多い。そういうことから、こういうことがやられてきておる。御承知のように、河川の水の流れ方によって、流れは年によって非常に違いますので、発電がどういう原因で減電したかというようなことになりますと、毎年毎年非常に計算がむずかしくなる。そこで、一定の基準で両者が妥当な線で合意すれば、その線でひとつ手を打とうというようなことで、この補償解決されておるというのが従来の例であります。補償でございますので、何としてもこれはその当事者間の話し合いということが一番大きな役割りを果たすわけでございますから、当事者間で話し合いがつけばそれは解決する。ただ、その場合に私どもは、農民側というのは、えてしてこういう場合に立場が弱いものですから、農民側の不利にならないように、そう言っては何でございますけれども、水の計算なりあるいは発電する側の発電事情なりというものについては事情にうといということは一般的に言えると思いますが、そういう場合にわれわれのほうは、農民側が不利にならないように、事実をはっきり把握して、そして正当なる補償を要求するなり、あるいは向こう側、こちら側からお互いに出す場合、受ける場合、そういうことをやっていきたい、こういうことでございます。
  17. 唐橋東

    唐橋委員 計算が非常にむずかしいということは、これはむずかしくないと思うのです。揚げた水の量が何トンときまっておるのですから。それから、現実に各発電所ごとには毎日毎日の発電量というのが自動的に記録になっているのです。ただ、その中の六割が揚水の中で減ったのだという機械的な方程式で算定される減電補償なんですから、これに限って——他の原因によって減電した場合や増電した場合の計算はむずかしいでしょう。揚水した分に対するものだけは全体の中のこれだけだということで、これはもう簡単に出るのですよ。そういう点について、私は、何かまだ農林省がこの問題にほんとうに取り組んでおられないのではないかということをもう一つ疑問が出たわけです。  それから、もう一つは、当事者間の話し合いということですが、いまお答えただきましたように、農民側資料がないのです。持てないんです。だから、今度は電力側だけの資料で要求されてくる。だとすれば、やはりここに、いまお答えただいて大体了解はつくわけなんですが、行政指導の中で、やはりほんとうに実害的なものであるか、あるいは今度この補償方式はどうするのだ、こういう基本的な検討をひとつ私は農林省としてやっていただかなければならないということをはっきり申し上げたいのでございますが、これに対してはどういうふうにお考えですか。
  18. 佐々木四郎

    佐々木説明員 まず第一点の、計算がむずかしいと申し上げましたのは、発電の場合の一つ水利権というものを河川法で与えられておりますが、川の流れが非常に豊水である場合は、水利権で与えられている水量以上の場合は、かりに農業で水を上流から取っても水に十分余裕がございますので、そういう場合にはもちろん補償する必要はないわけであります。水利権で与えられている水量を割り込んでこっちが水を取るというような必要が起こった場合には、これは向こうに減電を起こすわけですから補償しなければならない。そういうことは、川の流れと申しますのが年によって違い、月によって違うために……(唐橋委員減電に限って答えてください、一般論はいいです」と呼ぶ)これが一つでございます。  それから、もう一つは、いま申し上げましたように、確かに事例がまちまちなためになかなかむずかしい問題でございますけれども、そういうケースが多くなる場合を予想いたしまして一補償の方式というものを検討しなければならないと考えております。
  19. 唐橋東

    唐橋委員 もっといろいろ具体的な点も聞きたいのでございますが、時間がきたようでございますので、一、二点簡単に結論的にお聞きしたいのでございます。  もう一つ問題を御検討いただきたいのは、水利権の許可は三十年なんです。三十年ごとに更新するわけです。東北電力の場合は、一括補償は六十五年と見ているのです。その中で各発電所ごとの過ぎ去った年数だけ引くわけです。だから、先ほど申し上げましたように、新郷発電所は今後三十七年間耐用年数があります。それから、揚川は一番最後にできた発電所ですから、今後六十一年ございます。六十五年の単位で見ていきますと。それを一括補償するわけです。片方の水利権は三十年ごとでしょう。法的に言っても三十年以上は取れないと思うのですよ、たとえ事務的に契約は継続できるとしても。こういう場合の指導というものは、農林省としてはいままで手をつけていなかったのです。だから、この点も加えて根本的に検討していただきたいのでございます。  その他、具体的ないまのような問題をあげますといろいろ出てまいりますが、時間がまいりましたので、結論的にお伺いいたしますのは、通産省や建設省は、やはり先ほど申し上げましたような考え方、いままでとってきたような考え方でこの問題に処しておるようでございます。しかし、ほんとう農民を守っていく立場農林省がそれに加わって、そうして九電力全体の全くばらばらであるこの契約条項、しかも、ばらばらな内容は、県営国営団体営がばらばらであり、九電力個々がばらばらであり、このような放置された状態を農林省立場からはっきりと全部調査をして、そうして正しく指導していくというか、今後のこの問題に対処する方針を明らかにしていただきたいわけです。
  20. 佐々木四郎

    佐々木説明員 第一点の水利権耐用年数関係は、確かに御指摘のような矛盾がございます。ただ水利権は一応三十年ということで与えられますけれども、いままでの例から言いまして、多くの場合、これは三十年たちますとまた継続してその水利権を与えるというのが従来のやり方でございますので、おそらくそれを見越して福島県の場合も耐用年数一ぱいというところで計算するのだろうと思いますが、御指摘のように、これを厳密に言うならば、まず三十年分だけやって、三十年たったあとでまたその次のことをやっていくというのが本来的には正しいことではないかと思います。  それから、第二点の問題は、確かに御指摘のような問題があることも私どもは十分承知しておるつもりでございますから、発電側、それから通産側、それから河川管理の建設省側とも十分相談いたしまして、これをどういうふうに持っていったら一番いいのか、そういうことを相談して進めていきたいと思っております。
  21. 唐橋東

    唐橋委員 進めていきたいということで了解いたしますが、先ほど申し上げましたように、これは会津地方あたりにとっては、各地のいま直接当面している短期間に解決しなければならない問題なんです。解決していただかなければ、電力会社のほうは契約をなかなかしない。それに、水利使用料を取っている県自体もいま大きく検討に入っております。その内容等は時間の関係で省略いたしますが、その発電県等とも連絡をしながら、速急にこの問題の解決——やはり通産省なり農林省側が一番中心になると思うのですが、河川関係だと建設省も入りますが、水利使用料に限定すれば、いまのような関係各省の中でやっていただきたいのでございますが、ともかく目の前に迫っておる各地の事例なんです。ですから、今後検するというお役所式でなくて、この問題が解決ないと来年の開田計画が現実としてできないのす。やっても、開田したばかりで、水が揚がらないのです。ですから、いつまでという確言はできないと思うのですが、そのような差し迫った問題でもございますので、はっきりと努力していくめど等までお示し願いたいのです。これは県当局あたりでも非常に困っておる問題でございます。何もめんどうな問題でないと思うのですよ。相手が九電力会社であり、九電力会社に対して、こちらは通産省であり、あなたたちの省なんですから、そういう点をもう一度明白にひとつお願いしたいと思います。
  22. 草野一郎平

    ○草野政府委員 水利権の基本的な問題は、これはまた基本的な態度で根本的に解決していかねばなりませんし、さしあたっての問題は、いつまでということでなくして、最も近い機会に解決できるように、今明年の問題は今明年として差し迫った問題でありますから、差し迫った問題として解決していきたい、かように考えております。
  23. 唐橋東

    唐橋委員 最後に、ひとつ政務次官に要望をつけ加えておきたいのですが、先ほどからいろいろ議論してまいりましたけれども、基本的な問題としていまの水の問題がございます。したがって、速急にやっていただきたいことと、この問題が解決しない場合は、いま行なわれようとしている各種事業は非常に支障を来たすということなんです。ケース・バイ・ケースということはできます。確かに、いまの中で、先ほど申し上げました一万四千町歩の国営の場合などは、あれは住民には関係なしに解決できると思うのですが、各地に行なわれている二十ヘクタール、三十ヘクタールの団体営が実は困っている。ですから、これについては、いま申しましたように、電力会社関係のほうと、特に福島県の場合などはその問題でいま非常に取り組んでおりますので、速急に出先あるいは本庁各省関係を通じて解決していただくように特に要望いたしまして、質問を終わります。
  24. 本名武

    本名委員長 美濃政市君。
  25. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、本年から進めようとして予算はすでにきまっております。いわゆる受電自家用を電気事業者に切りかえる政策の進め方についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初にお尋ねいたしたいことは、この計画は六年と聞いておりますが、これは電力会社別でもよろしゅうございますが、この制度によって受電施設を電気事業者に切りかえる計画の全体はどうなっておるか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  26. 森本修

    ○森本政府委員 全体の計画は、概要を申し上げますと、地区数にいたしますと五百十七地区、それから、対象農家数が約三万七千戸、事業費補助対象事業費として約三十七億、大体そういうことになっております。
  27. 美濃政市

    ○美濃委員 これは電力会社別を尋ねたわけですが、それはどうなっておりましょうか。
  28. 森本修

    ○森本政府委員 現在の計画では北海道電力だけでございます。
  29. 美濃政市

    ○美濃委員 そういたしますと、この制度の進め方は北海道に限られておる、こう解釈できるわけですが、そこで、ことしの計画に対して現在申請されてきた申請量と予算との対比はどうなっておるか。
  30. 藤本静香

    ○藤本説明員 現在地区ごとの契約を検討いたしております。北海道庁から出てまいりました数字は、おおむね本年の事業費と同額でございます。
  31. 美濃政市

    ○美濃委員 これは予算限度でありますから、道から大体予算限度に調整して農林省へ上げてきたものである。道段階における申請内容はどのようになっておるか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  32. 藤本静香

    ○藤本説明員 正確な数字は現在記憶しておりませんが、おおむね地元からの要望は本年度の事業規模の倍程度と聞いております。
  33. 美濃政市

    ○美濃委員 概要はわかりましたが、そこで、この対策を進める基準を次にお伺いいたしたいと思いますが、現在の北海道地域における受電は全部この計画に基づく移設該当となるものであるかどうか。それから、第二点は、その進める工事方式、これは北海道地域でございますから、北海道電力会社とのこの施設に対する工事の基準その他の打ち合わせばどうなっておりますか。これをお伺いしたいと思います。
  34. 石井泰安

    ○石井説明員 切りかえの基準のことでございますが、切りかえの基準につきましては、北海道庁と、それから札幌の通産局と、それから北海道電力と、この三者で委員会を開きまして妥当な基準をつくるということで、その基準に基づいて切りかえ前の改修をやっていただくということで進めております。
  35. 美濃政市

    ○美濃委員 現在のこの設備の設置基準は、通産局がこの設備を電気工作物として認可するいわゆる安全基準と、それから一方、電気事業者がいわゆる採算的に設備基準とロスの軽減とを勘案してつくっております電気事業者の工作物との間にかなりの差があるわけです。この差がどうなっておるかということを聞いておる。
  36. 石井泰安

    ○石井説明員 いま電気事業法に基づきまして技術基準というものをきめております。その技術基準のことだと思いますが、この電気事業法に基づきます技術基準というのは、全国にわたります電気設備の主として保安上の最低線をきめているわけでございます。したがって、実際の配電線をつくりますときには、この保安上の最低線だけでは不十分な場合が多いわけで、特に北海道のような雪の多いところで、少々雪が降っても停電を起こすようなことがないためにというようなことを考えますと、全国一律の基準だけで十分だとは申せません。先ほど申し上げました三者で協議しました基準というのは、この技術基準は最低限度でございますから、これはもちろん満足いたしますけれども、それに若干プラスしたと申しますか、強い設備にした基準になっております。ただ電力会社としましては、自分の設備をつくるときに技術基準以上の基準を持っております。これは自分の会社の工事をやるときの基準は持っておりますが、その基準のままをアプライしたのでは、この切りかえをやるのに農民のほうにも負担がかかり過ぎるのではないかということで、電力会社としては、自分の設備になるのですから、自分の会社で持っている基準のとおりやりたいという希望はありますけれども、いまの三者の協議によりまして、それよりは若干緩和して、しかも安全基準どおりではないですが、最低限電気がしょっちゅう停電を起こしたりあるいは非常な電圧低下を起こしたりということがないということをあわせた基準ということで、三者協議してきめているわけでございます。
  37. 美濃政市

    ○美濃委員 これはここでこれ以上明確にきちっと答弁を得るということは困難だということが答弁で承知されるわけですが、概要どれくらいですか。御説明の技術最低基準、それから北電の配電線路の基準との差があるわけですが、その差を概要折半なのか、中間くらいで話し合いがついておるのか、それとも北電基準に近づける基準が三〇%で、七〇%は現有施設で引き取るという話し合いなのか、そこらの大まかなめどですね。きちっとしたことは無理だと思いますが……。
  38. 石井泰安

    ○石井説明員 ちょっとパーセントで申し上げるわけにはいかないと思うのですが、一例で申しますと、三千ボルトから六千ボルトの高圧線でございますが、これは規定では市街地以外は四ミリでいいということになっておりますけれども、北海道で雪の特に多い地方ではこれは五ミリ——北海道電力の基準では全部五ミリでございます。しかしながら、今度切りかえにあたっては、雪の多いところではこれは五ミリにしておかないと切れるだろう、雪の少ないところは必ずしも全部北海道基準の五ミリにする必要もなかろう、これはケース・バイ・ケースにやって通産局なり北海道庁あたりで検討してきめようということになっております。
  39. 美濃政市

    ○美濃委員 答弁漏れがあるわけですが、北海道の受電自家用は、希望があれば全部が対象になっておるかどうかということをお尋ねしたい。
  40. 藤本静香

    ○藤本説明員 現在六カ年計画で予定しております切りかえは、北海道の自家発全部を切りかえる計画で着工いたしております。
  41. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、先ほどの質問の基準についてはこれ以上ここで明らかに答弁を願うということは無理だと考えますので、この程度にしておきますが、そういたしまして、今年から予算がつきまして実施に入るわけでありますが、聞くところによると、現在、受電自家用を設置しておる受電組合なりあるいは農協なり、これが改修工事をして引き継ぐということを考え、また、これも具体的に私は調べておりませんが、改修工事費というものが、私どもが考えております額よりもかなり高くかかるという情報なのでありますが、この点が非常にこれを進めていく上で問題になると思います。たとえば、計画いたしたものは三十七億、こう言っておりますが、この設備全体は、大体電柱本数にして二十五万本くらいになるわけでありまして、先ほどお話しの技術基準の最低規格として、これは設備してから何年もたっておりますからそれは別として、現在新設で計算いたしますと大体八十億くらいの金額になろうかと思います。そこで、三十七億を一応改修費として見込まれておるようでありますが、私どもが予定で考えておりましたよりも、かなり高い改修費がかかるような情報が入ってまいりますから、この進め方はどのようにして進めることに計画がされておるか、その御説明をいただきたいと思います。
  42. 藤本静香

    ○藤本説明員 従来も、僻地電気の改修につきましては、いわゆる電力会社に切りかえのできないものにつきましては、従来の規格による改修を行なう、それに対して国が助成するという方式をとっております。それから、改修に際しまして電力会社と話し合いがつきまして、施設を改修することによって電力会社のほうに引き渡しのできるものは、電力会社の基準に従う工事を施工させまして、これに対する助成をして引き渡しを行なうという方式を従来とってまいったわけでございます。今回も、北海道のほうからの御要望は先ほど通産省のほうからもお答えがございましたように、従来と方式は同じでございますが、ただ、引き渡します場合の条件が、従来の北電基準に改修して引き渡すのではなくして、若干電力会社のほうで引き渡しにつきましてがまんしていただける程度のものはがまんいたしますと申しますか、いわゆる改修基準を若干引き下げた形において全面的に引き渡すということで、原則といたしましては、従来の引き渡しと同じ方式、すなわち、受益者側のほうで改修をいたしまして電力会社に引き渡すという計画で北海道庁のほうからの要請がございましたので、そういう方法で取り進めるつもりにいたしております。
  43. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、いまの御説明に問題があると思うわけです。これは、設備が行なわれますと、これから先の供給は北海道電力会社となります。従来、農村の未電化解消を進める過程におきまして、これは二様に行なわれてきておるわけであります。一面は、いわゆる総額と言ってよろしいと思うのでありますが、時間の関係でこまかい説明はしなくても、皆さま方すでに御存じのように、規定がありまして、いわゆる一定基準の採算限度をもちまして、その採算基準内にある工事と、それから、その基準を出まして設備費の一二%の料金契約に伴う工事、この工事費は若干会社が負担いたしますけれども、九十何%負担金制度でございまして、一口に言えば総額設備です。会社が設計し、会社がその契約に基づいて工事をし、その工事料に対して総額負担をしておる。それと、この買電制度、いわゆる受電自家用、こういうふうに大別がなっておるわけでありますが、今回のこの切りかえにあたりまして、やはり今後この配電線路を会社に切りかえて北海道電力会社が供給責任を負うのでありますから、設備改修工事は、先ほど申し上げましたような新設ではございませんけれども、北海道電力会社の設計で、先ほど示されました基準によって設計をして、現在の施設を時価で評価をする評価方式をとりまして、もちろん時価は、現在の資材価額、工事価額で算定をいたしまして、耐用年数を引くということでありますが、時価で算定をして、その差額を負担金として納める。そうして、従来もこの未電化解消の中ではこの負担金を対象に助成あるいは融資が行なわれておるわけでありますから、今回の切りかえもそういう措置がきわめて合理的でなかろうか。と申し上げますことは、そういうふうにしたほうが、全体的に工事費の上から言って、あるいは不要になるものの活用ということが積極的に行なわれるんでなかろうか、こう思うわけですが、その点のお考えを承りたいと思います。
  44. 森本修

    ○森本政府委員 御趣旨は、いままでのやり方でいきますと、それぞれ自家発電を持っております組合等が新しい施設をして、それに対して国道が補助をして、それを電力会社のほうに引き渡すというふうなたてまえのものを、工事は電力会社がやることにして、その負担金を組合が持つ、それに対して助成をするといったような方式のほうが実情に合うのではないか、そういうお話だと思いますが、私どものほうとしましては、実は、かような問題は、北海道庁と通産局なり電力会社のほうで、こういうやり方をすることにほぼ話がついたから、それに対して国のほうでも援助をしてもらいたい、こういうことで発足をしてきておるわけであります。したがいまして、いま言ったような方式が現地としても適当である、とり得るということであれば、そういった御相談をお進めになって、実現が可能性ありということであれば、私どもとしても助成についてそれに対応したやり方を考えてもいいのではないか、そういう感じがいたしております。
  45. 美濃政市

    ○美濃委員 この設備には、五百十七地区あれば五百十七の責任分解点というものがあって、いわゆる会社から電力を買って地域内供給でありますから、責任分解点の設備というものがあるわけです。これらの設備が、いまやっておるいわゆる受電組合の自営で改修をして施設するということになった場合、ほとんど廃物になります。この設備は、大小によって多少違いますけれども、一カ所平均して約二百万。これには自動安全装置として五十万ぐらいの機械がついております。それから、その当該受電地域が会社と契約した契約料に基づく積算電力計、トランス等がついております。これらは不要になるわけです。それはもう会社の供給になりますから撤去ということになります。受電組合が設備改修をして、そういう不要になったものを活用するといったって、もうあと受電組合はなくなるわけです、農民団体ですから。あるいは受電専門の組合だったら、これを契機に解散をするでしょうし、あるいは事業主体農業協同組合であったとしても、これを活用することはできぬわけですから、それらの施設を時価額評価をして、そうして電力会社に現有施設を委譲し、そして相談がまとまったその基準で一応新設する設計をいたしまして、現有価額との差額を負担金として支払う、金銭決済をして、そしてあとの工事は電気事業者である北電が担当するということがきわめて合理的にいくと思います。そのあとに残ったものの活用は、電気事業者ですからできます。これから小規模の工場ができる。工場の場合は、百キロ以上の電力を使うときにはいずれも受電自家用で供給をしておりますから、そういう設備に充当していけるわけです。それらの設備にはいずれも積算電力計とか、ただいま申し上げた設備が要るわけであります。それらに十分活用できるわけです。したがいまして、私がいま情報として聞いております状態では、このままで進めていった場合、三十七億と計算されたこれをオーバーするのでないかという懸念もあるわけで、それはそういう実情に合わない方式で進めようとするところに無理があるのではないかと思いますので、この点、現地がまとまればそれでよろしいという答弁でございますし、従来も負担金を対象に助成策を進めてきたわけでありますから、それで支障ないということであれば、私ども道庁に話をいたしますが、そちらからもこの点ひとつ道庁の意思を確かめられて、そういういわゆるロスができるだけ少なく、そうして要らなくなる資材が十分時価額で活用できる方法で、この工事を進めるということについて検討していただきたいと思うわけですが、この点、ただいま私が申し上げたような考えでよろしいかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  46. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げましたような経緯でものごとが起こってまいりましたので、まず第一には、地元でそういうふうな話し合いが行なわれ、またそれが実現の可能性ありということにならないと、私のほうで対応ができないわけでございます。したがって、地元とひとつ話を進めていただいた結果を私のほうで承知をしたいと思っております。ただ先生は、あるいは私のほうからもそういった話し合いを進めるように口をきいたらどうかというお話であろうかと思いますが、そういう点についてはまた地元にもよく意向を確かめてみたいと思います。
  47. 美濃政市

    ○美濃委員 最後にお伺いしておきたいのは、そういうふうにきまった場合、負担金を対象としてこの助成あるいは融資対策を進める、これは支障ない、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  48. 森本修

    ○森本政府委員 まず話し合いをしていただきまして、そういった方式が可能であるということであれば、私のほうで所要の検討をしたいと思います。
  49. 美濃政市

    ○美濃委員 以上で終わります。
  50. 本名武

    本名委員長 本会議散会後再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後三時二十七分開議
  51. 本名武

    本名委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田義光君。
  52. 藤田義光

    ○藤田委員 六年ぶりに農政に対する質問をいたしますので、多々未熟の点があることは御了承いただきたいと思います。私は、政治的立場が御案内のとおりでありますから、おのずから質問にも限界があることを御了承いただきたいと思います。  毎年非常に大きな問題になっております米価決定時期に際会いたしております。米価審議会がまだ論議を開始する前でありますから、政府の当面の責任者たる倉石農相の答弁を引き出すのに多少無理な点はございますが、農政審議の本舞台である本委員会でありますので、私も簡単率直に質問いたしますから、大臣も政治的立場を離れて、率直に真相を述べていただきたい。  結論から申し上げますと、今回の米価決定にあたりましては、算定方式の中で、大臣の見解としては、二年続きました指数化方式でいくのか、あるいは昭和三十九年という基準年度に対するいろいろな不平不満、矛盾が露呈されておりますので、今回は農業団体をはじめ相当多数の人が希望しておる積み上げ方式を考えておられるのか、まず、この点をお尋ねしたい。
  53. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 算定方式につきましては、藤田さんよく御存じのように、どうも私はよく理解ができないのですが、指数化方式と申しましても、やはり指数を積み上げていくものでありますし、いわゆる積み上げ方式といいましても、やはり各要素を積み上げていく。しかし、いわゆる指数化方式といわれておりますようなものにつきましては、私どもの考え方としては、そういうものに拘泥するということは必要ないのではないか。しかし、過去の米価算定には、いわゆる指数化方式なるものは非常に重要な要素を占めておりましたが、私どもといたしましては、まだ諮問をいたす段階ではございませんので、各方面と相談をいたしまして、多くの方々に御納得のいくような方法考えてやってまいりたい、こう思っております。
  54. 藤田義光

    ○藤田委員 御答弁がございませんが、基準年度の昭和三十九年というものに非常な批判が出ております。この点に対して検討を加えるお気持ちがあるかどうか、お尋ねしたい。
  55. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いわゆる指数化方式の算定基礎は、いまお話しのように、三十九年度を基礎にした指数を基礎にいたします。したがって、いわゆる指数化の方式というものだけ全部それで貫くということですと、いまの三十九年基礎の指数が問題になるかと思いますが、各方面と相談もいたしまして、そういうことには必ずしも拘泥せずにやってまいりたい、こう思っております。
  56. 藤田義光

    ○藤田委員 農家収入の正確には四〇%近くを占める米価でありますので、農民経済にとりましてきわめて重大な米価問題であります。昭和三十六年に制定されました農業基本法は、農業政策といものを経済問題に転換させた一つの大きな転機であった。ところが、両三年以来米収の減少を契機といたしまして、農業問題は食糧問題である、農業政策すなわち食糧政策に転換すべきである、慶応大学の加藤博士等はそういう論を展開しておる。私も一片の真理がこの見解にはあると思います。ただ、累年国内食糧の自給度は低下いたしております。全体の感覚からすれば、きわめて危険なる情勢でありますが、経済の自由化を前提といたしまして視野を国際経済に向けた場合においては、必ずしも悲観すべき状態ではないともいわれる。私は、農政の当面の最高責任者として、米価決定にあたり、食糧の自給度は明定すべきである、あるいは流動的であってよろしいのかどうか、この際大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  57. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のように、農業全体を考えてみますときに、単なる経済的な見地にのみ立って農業を見るべきか、その他多くの要素を加えた一般の政治問題として見るか、非常に大事な問題だと思います。しかし、政府は、農業基本法に定めております農政の基本の方針はどこまでも守ってまいるというたてまえでございますから、国民の主食である米につきましては、その自給度をどこまでも高めなければならない、こういう見地に立って諸般の施策を進めてまいるわけでございますから、やはり価格政策や生産政策にいたしましても、そういう見地に立って進めてまいるつもりであります。
  58. 藤田義光

    ○藤田委員 経済同友会の調査結果によれば、食糧の自給度は、国際経済の視野からすれば、八〇%前後に固定させるということは、必ずしも国民経済の将来に絶対条件ではない、浮動してくるのだ、こういう権威のある結果も出ておりますが、農林大臣としては自給度を高めるという方向をいま打ち出されたようでございます。私たちは、この食糧の自給度を論議するにあたりましては、どうしても米価を中心とした今回の結論に重大な関心を抱かざるを得ない。しかし、最近、年々一〇%以上の米価引き上げを続けておりますが、私は、あくまで農業という原始産業は保護政策を前提とするという論者であります。これを前置きにしてお尋ねしたいのですが、一〇%前後の米価引き上げを今後十年間続けていきますと、食管の赤字は二兆円になります。五十キロ当たり五万円という数字が出てくるわけでございます。この問題に関しまして、一橋大学の坂本二郎氏のごときは、徹底した反対論を展開いたしておるようでございますが、しかし、現実において食糧自給度を高めるとすれば、農家収入の大宗をなす米価というものの相当思い切った引き上げをやらざるを得ない。この矛盾をどういうふうに解消するか、大臣のお気持ちをお伺いしておきたいと思います。
  59. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 たいへん基本的な重大問題でありますが、米価のみならず、農作物全体の生産のコストを見ますと、いろいろな要素が上昇してきておりますことは御存じのとおりであります。したがって、米をつくっておられる農家の方々の率直なるお話を承りましても、あの人たちは何も米を高く買ってくれということだけを言っているのではないようであります。つまり、大事な食糧を生産していくのに、翌日への生産意欲を減退させるような価格政策ではだめだ、これは生産者も考えておりますし、私どももそのように考えているわけであります。したがって、政府はいま物価安定推進会議というようなものをつくりまして、物価の安定に非常な力を入れておりますけれども、物価が逐次上昇いたしてまいるそのファクターの中には、やはり関連性を持ちました上昇の要素がございます。たとえば米価算定にあたりましても、農村の人々の労働に対する対価の計算がすぐに論じられるわけでありますが、そういうものを見ましても、やはり他産業に従事する労働者の労働賃金というものを比較採用するということになれば、当然その採用する結果は労賃にはね返ってくることは自明の理でありますからして、やはり政府は、すべての物価について確固たる施策を講ずることが前段において必要でありますが、同時にまた、農林省が従来もつとめてまいりましたように、土地基盤の造成をいたしたり、その他あらゆる方策を講じて生産を増強して、その生産性を高めることによって、コストの上がる要素が逐次排除されてまいりますならば、冒頭申し上げましたように、必ずしもそれによって農作物の価格を引き上げるということを生産者が希望するはずはないのでありますから、私どもは、根本の問題として、そういうことに対して真剣に取り組まなければならないと思います。しかし、もう数日中に米審を開いていろいろ御審議を願う段階にきておりますので、当面の対策としては、われわれは基本的に考えております明日への生産意欲をつくっていただくための米に対する価格政策、もう一つは、引き続いて長期の土地改良その他の農業政策を完全に推進することによって、米が安定的価格で生産が持続されるようにつとめていく、こういう二つのことが重大ではないか、こう思うわけであります。
  60. 藤田義光

    ○藤田委員 御答弁の趣旨に関しましては全く同感でありますが、現実は、大臣の意思に反した統計的な事実が出ております。土地基盤の整備等の問題に関しましても、農地の転用等の諸現象からして、農林省の意図する結果は全然出ておりません。特にごく最近の通産省の統計によれば、輸入農産物に支払いますドルのパーセントは、ついに国全体の三〇%を超過いたしております。農業基本法制定前後には十億ドル前後でありました外貨、農産物代金は、今日三十億ドルを突破いたしておるのです。つまり、年間一兆円という数字が出るような情勢であります。しかるに、農政の全予算はその半額たる五千億円前後である。そのまた三〇%は食管の赤字である。こういう概念的な数字をあげましても、どうも日本の農政は狂い始めておる。外国農民に支払うドルが一兆円、農政全般の予算総額が五千億円である。この矛盾を、政治家たる農林大臣としては、どうしても——特に従来農政に関しては多少縁の薄かった倉石さんが大臣であればこそ、従来の惰性を一てきいたしまして、従来の予算の款項目に拘泥せず、ここで農林予算の思い切った刷新をやれぬかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  61. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のように、農業関係の輸入は逐年増加いたしておりますが、それを分析してみますと、いわゆる主食につきましてはあまり大きな問題はございませんが、漁業関係、飼料、そういうものがなかんずく大きな部分を占めております。最近の一般の日本国民、ことに地方の人々まで食糧が都会化したと申しましょうか、肉類及び野菜、くだもの、そういうものに対する需要が非常にふえて、そうしてくだもの、野菜等については、御承知のように、大体横ばいで需要を満たす傾向でありますが、酪農及び畜産については、今日なお需要には及ばないわけであります。したがって、その需要を満たすためには、やはり飼料が必要である。この飼料の輸入量は御承知のとおりであります。そこで、私どもは、こういうことについて全力をあげあるいは濃厚飼料等の国内生産もつとめなければなりませんし、同時に、草地改良等をいたすことが必要ではありますけれども、さらに私は、漁業関係についてもっとがんばらなければいかぬと思っております。  そこで、ただいまお話のございました農政全般について、全体の日本の経済、ことに貿易のワク内における農業の輸入面からのみ考えてみましても、私どもはここで飛躍的な努力をしなければならぬだろう、ただいまそういうことを目標にいたしまして、農林省には昨年の暮れから構造政策推進会議という名前でありますが、鋭意いま私が申し上げましたようなことをどのように充足していき得るかということについて検討を続けているわけでありますが、来年度予算においては、こういうものを皆さん方に御了解を願って、ひとつ画期的な予算の要求をいたし、日本の農政について、政治面の中に占めている農業という部門が、じみではあるが、国民経済の中でいかに重要なものであるかということを、皆さんのお力によって国民全体に理解せしめるような手だてを講じてまいりたいと役所をあげて努力している最中であります。
  62. 藤田義光

    ○藤田委員 主食の輸入量は全食糧の五%程度であるから、たいした問題ではないという一部の見解もございます。しかし、ただいま御指摘の飼料に関しましては、特に濃厚飼料は激増する一方である。粗飼料に関しましても、農政局を中心とした農林省の施策はきわめて貧弱である。これは率直に申し上げます。先年、北海道と阿蘇地区で大規模草地改良という計画を始めましたが、これはきわめて少ない予算で、しかもまた累次これを他地区に拡張しようという計画でございますが、最初に取り上げられた地区も中途はんぱである、こういう状態でありますので、貴重なドルを輸入農産物に充てる度合いというものはなかなか減少しない。ぜひひとつ、最近の大臣で最も行動力のある倉石さんの在職中に、いま御答弁のとおり、何かここで新味を出してもらいたい。これがやがて食糧自給度の問題すべてに波及してくるわけでありますから、真剣に考えていただきたいと思います。  米価問題決定にあたりまして、二十俵以上売っている農家は全農民のわずか一三%ではないか、百俵以上売っている農家は全農家のわずか五%ではないか、したがって、大部分農家には恩典のない米価に血道を上げるのはいかがであるかというような乱暴な意見も、産業界の一部に出ておりますが、私は、大臣の意見どおり、食糧自給度は上げるべきである、その観点からして、米価にはきわめて真剣に、相当思い切った手を打つべきであるという意見に同感でありますが、ただ、毎年米価決定にあたり一つ大きな矛盾は、経済の大原則からして、需要と供給の関係で価格は決定すべきである、これはまあ原始的な経済理論、経済の第一歩でありますが、その観点からすれば、従来の米価決定方式はこの経済の大原則にそぐわない。今回の米審を機会に、消費者価格と生産者価格を関連して討議するという一部の報道もございますが、そういう新味を出される予定があるかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  63. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 同時決定論というのも、しばしば拝聴いたしますが、政府はただいまそういうことをやる意思はございません。それからまた、いろいろいまお話しのように、財界では単なるコマーシャルベースだけの計算で主食を輸入すべきであるという御意見もありますが、いろいろそろばん勘定から申しますと、そういう意見も成り立つかもしれませんけれども、政府といたしましては、やはり世界はいついかなる事態が起こってくるやも明日のことははかり知れないことでありますから、そういう事態に際して国民に食いものにまごつかせないというだけの保障は政府の責任だと思います。したがって、一部の論者の言っておりますような、いわゆるコマーシャルベースだけでものを考えてまいりますような政策をとって、後々後悔いたした歴史は諸外国にもあります。英国のごときは学ぶべき典型的なものではないかと思います。政府は、そういうあらゆる意味において、単なる計算だけではなくて、主食はどこまでも自給度を保持してまいりたい、そのほかの農産物もあとう限り自給度を高めてまいりたいというのが、農政に対する基本的な立場であります。
  64. 藤田義光

    ○藤田委員 消費者価格と生産者価格は同時決定しない、論議の対象にはするという趣旨に承知いたしております。ただ、私は、日本のこの少ない地上、地下資源の中で、今後政治家として国民生活を引き上げる——国民の総所得は全世界て五番以内に入っておる。一人当たりの所得は二十一番目である。なかんずく原始産業たる農業と一部の小企業の所得が低いために、このような惨たんたる統計が出ておることは御案内のとおりでありますが、貿易の振興ということが戦後国民生活を引き上げた最大の功績である。この一点からしますると、当然今後も国民生活をさらに引き上げるという政治目標を追求するためには、どうしても貿易の振興以外にはない。その観点からしますと、現在日本の米価が国際価格の二倍である、こういう点は、将来貿易政策、ひいては国民生活を引き上げるという悲願を達成するために大きな障害になる危険をはらんでおると私は率直に考えます。こういう貿易の振興というにしきの御旗のもとにおける米価の国際価格の二倍という現実を将来どういうふうに調整していかれるか、お伺いしておきたいと思います。
  65. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農作物全体について、ただいまお話のありましたような貿易の自由化という世界の風潮に日本も歩調を合わせていくわけでありますが、そういう中に立って、農作物につきましては国際競争力の弱いものがきわめて多いのであります。こういうものについて単に自由化をしないで、保護政策をとっておる国は世界じゅうにたくさんございます。わが国も御承知のように主食につきましては自由化を許しておらないわけでありまして、こういうことについてどこもふしぎだとは申しておりません。このたてまえは保っていくのでありますが、しかし、一面において、いまお話のありましたように、国民経済全体の中で考えてみますと、外国から買えば一般の消費者に安いものが食わせられるではないか、つまり、消費者の負担において生産者の少数の人をかばっているんだという議論につきましては、私どもはやはりそれに対処することを考えなければなりません。なるほど、農作物は国際競争力が弱いという立場でできるだけこれを保護しなければなりませんけれども、その温床の上にあぐらをかいて、何でもやはり消費者の負担においてそういう政策が続けられるかどうかということについては十分考えなければならぬと思いますので、その消費者という立場考えてみますと、そこで、私が先ほどちょっと申しましたように、農林省は従来もたいへんな努力を続けてはまいりましたけれども、来年度予算をはじめ皆さんに御協力を得て、農政全体の基盤を確保するために画期的な土地改良も継続しなければなりませんし、また、三十六年から十年間で終わるといわれております構造改善事業なども、一、二批判をされる方もありますけれども、あれも継続してくれという要望が全国的にいまうつぼつたる勢いで出てきておる。そういうような実際に農業を経営いたしておられる人々の経験を生かして、そして国策としての農業基盤を確保するということに政府をあげて全力を尽くすべきではないか、そのようにすることによって、品物を何も十文字の風の吹きさらすところで競争にさらすという意味ではありませんけれども、消費者にも納得していただけるようにコストダウンをして、日本農業のいわゆる国際競争力を強めるということが必要なことではないかと、こういう考え方でおるわけであります。
  66. 藤田義光

    ○藤田委員 同感でございます。ただいま隣席から不規則発言がありましたとおり、一ドル三百六十円という為替レートは固定しておる、労賃その他の物価は急上昇しておる、こういう現実からしますると、ただいまの大臣の答弁の方式で私たちも協力してまいりたいと考えております。  そこで、累年の食管赤字を一般財政問題として処理してまいっております。私は先ほどもちょっと言及いたしましたが、米価引き上げ、財政負担、国民大衆の税負担、こういう循環が今後続いていくことは、いずれは暗礁に乗り上げる必至の情勢である。消費者米価との関連もございますが、たとえば食管に携わる人件費が二百九十億円である。こういうものをこの際、倉石大臣の在任中に予算編成の大綱もきまりますので、一般会計に回すことによって、必要以上に食管会計の赤字に対する他産業からの反撃を相当弱くすることができるんじゃないか、これは純然たる一般会計で計上すべき二百九十億円である、かように私は考えますが、新しいくふうがございますかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  67. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 食管制度はいろいろな批判もありますけれども、私どもは、現在の段階において、やはり食管というもののあの制度の根幹はかたく守りながら、その運営をうまく合理的にやっていきたい、こう思っております。したがって、ただいまのお話のような問題につきましても慎重に検討してまいりたいと思います。
  68. 藤田義光

    ○藤田委員 時間が来たようでありますから、この辺で私の質問を終わりたいと思いますが、ぜひともひとつ、今回の米価決定にあたり、従来の惰性でやった点で大胆に改革できる点は、大臣の激しい行動力によって少しでも是正していただきたい、これを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。
  69. 本名武

    本名委員長 石田宥全君。
  70. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大臣が暫時退席をされたようでありますので、事務的なことについて、食糧庁長官並びに統計調査部長にお伺いをしたいと思うのであります。  ただいま藤田委員から食管会計の赤字についてのお話があったわけでありますが、食管会計の赤字の内容についてお伺いをしたいと思います。すなわち、内地米の取り扱い赤字、それから政府経費が幾らであるか、それから売買損が幾らになるのか、政府経費の中で集荷費が幾らか、運賃はどうか、保管料が幾らか、事務人件費は幾らなのか、金利は幾らになるか、こういう事務的な問題を、どなたでもけっこうですが、お伺いをしたいと思います。
  71. 大口駿一

    ○大口政府委員 食管特別会計の国内米管理勘定におきましての経費並びに売買損益の内訳の数字を申し上げますと、昭和四十二年度の予算をもとにして申し上げますが、国内米管理勘定の損失全体が千百四十八億、そのうち経費が九百五十六億、売買損益が百九十二億ということでございます。   〔委員長退席、森田委員長代理着席〕 それから、ただいま申されました集荷経費その他の資料をいま取り急ぎさがしますが、私、手持ちに単位当たりの経費がございますので、とりあえずそれだけ申し上げたいと思います。これは玄米石当たり、百五キロ当たりに全部割り算をしてございますが、集荷経費が二百七十四円、運賃二百三十七円、保管料三百四十七円、事務費四百七十二円、金利六百四円、合計千九百三十四円、こういうことになっております。
  72. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 単位当たりの数字は明らかになりました。——そのまとめた額をいまおわかりなら発表していただきたいと思います。
  73. 大口駿一

    ○大口政府委員 国内米管理勘定の損失の全額は、先ほど申し上げたとおり千百四十八億、売買損益百九十二億。  以下申し上げるのが経費でございます。集荷経費百三十六億、運賃百十七億、保管料百七十一億、事務費二百三十三億、金利二百九十九億。  以上であります。
  74. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これで大体食管会計の赤字なるものの本質が明らかになったようでありますから、これは後ほど大臣が見えられたときに、この問題に対する取り扱いについては御質問を申し上げたいと思うのでありますが、四十一年度の生産費関係の項目を項目ごとにお尋ねをしたいと思うのでありますが、これは一括して申し上げます。  種苗費は幾らか。肥料費は幾らか。薬剤防除費、諸材料費、小農具費、大農具費、建物費、土地改良設備費、役畜費、さらに租税公課諸負担、それから利子、その利子率、地代、以上の額を明らかにお示しを願いたいと思います。
  75. 松田寿郎

    ○松田説明員 お答えいたします。  四十一年度の水稲の生産費につきましては、われわれ鋭意現在それの資料を整えておりまして、明日の午後には公表いたすことができますように現在準備中でございますので、それまでひとつお待ちを願いたいと思います。
  76. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 ただいまの統計調査部長の答弁では、全く誠意のない答弁でございまして、それでは米価そのものについての審議を進めるわけにはまいりません。中にはあるいは調査をし、作業中のものもあるかとは思うのでありますけれども、私がいま申し上げた大部分のものがまだ作業中であるということはとうてい考えられません。いまの段階で作業中であるというようなことでありますれば、四十二年産米価を審議を進めるわけにはまいりませんので、事務当局に対する私の質問はいたしません。一般的にいつもやっておる審議とは違いまして、昭和四十二年度産米価の審議を進めようとしておるのでありますから、暫時私は休憩をいたしたいと思います。
  77. 森田重次郎

    ○森田委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 森田重次郎

    ○森田委員長代理 速記を始めて。石田宥全君。
  79. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大臣退席されたあと事務的なことを伺ったのですが、きわめて重要な問題がまだ作業中であるということでございまして、質問を保留しておったわけです。  そこで、これは長官でもあるいは統計調査部長でもよろしゅうございますが、明日の午後にはでき上がるということでありますが、明日の午後何時にこれが提出されますか。それによってまた明日の委員会の運営について協議をしなければならないと思いますので、お答えを願いたい。
  80. 松田寿郎

    ○松田説明員 明日の午後三時前後にはでき上がるかと思いますが……。
  81. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは、この資料の中で、四ページでありますが、平均生産費、八〇%バルクライン生産費等の資料が出ておりますが、昭和三十九年まで農林省が計算をされる場合にとっておられました標準偏差を用いて計算をされたならばどういう数字になるか、この点をあわせて資料として明日午後三時までに御提出を願いたいと思います。できますね。——ちょっと誤解していましたから、それはいいです。  それでは大臣にお伺いをしたいと思いますが、先ほど藤田委員から、いわゆる食管赤字の中で、政府経費は当然行政費として一般会計に繰り入れるべきではないかという主張があったのでありますが、この前に大臣に私が質問をいたしました際にも、その主張をいたしておったのでありますが、当時その数字は明らかにされておらなかったわけであります。本日ここでその数字が明らかになりました。内地米管理経費が千百四十八億、政府経費九百五十六億、売買損百九十二億、こういう数字が明らかになったのでありますが、この点は多年の私どもの主張でございまして、いわゆる食管赤字が無限に膨張するかのごとき感を一般国民に与えてまいっておりますので、かつて福田大蔵大臣の時代に、そういう取り扱いをする方法もあるという答弁までいただいたのでありますけれども、自来依然としてそのままになってきておるわけです。私も、藤田委員同様、倉石農林大臣でこそこれはやり得ることではないか。大蔵大臣さえもそういう取り扱いを考えてもよろしいということをかつて言明しておることでありまするし、一般の国民に誤解を与えてはいけないと思いますので、これは来年度予算からはいわゆる政府経費なるものは当然一般行政費の中に繰り入れるべきものである、こう考えておるのでありますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  82. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 食管会計の中の管理部門に属する経費は、御承知のように、もちろん一般会計から出しておるわけでございますが、その食管会計の管理費として全体を含めて赤字という言い方をするか、それは除去してその残余の分、つまり売買差額等だけをその会計に記載するかということの違いであると思うのでありますが、この会計のやり方につきましては、私はやはり研究の余地はあると思いますが、その管理費全体はいまでも一般会計負担であることは間違いないわけであります。ただ、それを置きかえることによって、いわゆる食管の赤字という一般に与える観念が差を生じてくる、こういうことでありまして、その扱いにつきましては、もちろん財政当局とも相談をいたしまして検討いたしたいと思います。
  83. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 先ほどから申し上げておりますように、また藤田委員も強調されましたように、きわめてこれは重要な問題の一つでございますので、ぜひ財政当局と御協議の上に実現されるように、ひとつ実力大臣の実力を発揮していただきたいと思います。  次に、本論に入りたいと思いますが、米価というものの国民生活に対する位置づけと申しましょうか、これは大臣はどのようにお考えになっておられましょうか。最近の新聞論調などにもあらわれておりますように、また消費者の団体などでも大きく取り上げており、一方生産者は生産者で、全国的に農民が低米価に対する抗議やらあるいは要求をいたしておるわけでありますが、それほど国民生活に重要な位置づけがなされなければならないところの米価が、従来は米価審議会が非公開でございまして、あの委員会の中でなぜもっと生産者米価を上げなければならないのかということについての基礎的な理由がどこにあるかということも明らかにならなければ、あるいはまた消費者米価を上げなければならないという理由はどこにあるのかというようなことが、全然国民はつんぼさじきに置かれておるわけです。ことしは幸いにして国会開会中でありますから、不十分ながら国会で取り上げることができる。農民の代表やら新聞記者もそれを聞くことができるわけです。けれども、そうでない場合には、国民は、どういう理由で上げるというのか、どういう理由で消費者米価を上げてはならないというのか、全然知らされておらない。こういう状態では、これはこのままではいけないと思いますので、米価審議会というものを公開したほうが、むしろ米価審議会の取りまとめのために政府もやりやすいのではないか、こう考えるのでありますが、米審の内容が新聞記者さえも入れないというような秘密主義をとられるところに、米審もまとまりにくいという問題もあり、国民もまた不平不満が大きくなってくる、こういうふうに考えますので、米価審議会を公開すべきであろうと思うのでありますが、御所見はいかがですか。
  84. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米審の会長は、常に米審が終わりますと、その日その日の経過を新聞通信関係の人にレクチュアをやっておるようでありますから、決して秘密主義でも何でもありません。私は、米価審議会のように朝から晩までじみちにそれぞれの学識経験者がそのうんちくを傾けてお話をなさるような席は、いまのように非公開で十分やっていただくことのほうがいいのではないか、こう思っております。
  85. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大臣、米審の中身を御存じないですね。なるほど、米審で議長が発表しますよ。それはどういう意見とどういう意見とどういう意見があったというようなことで、その根拠であるとか、その理論的な構成であるとかいうようなことについては、これは全然発表されておらないのです。そういうことでありますから、大臣、今度米審にお臨みになるとよくおわかりになるわけですけれども、中身は全然わかっておらないのです。中身は発表されておりません。中身が発表されないということが、国民をして不信の念を高める最大の理由なんです。ですから、ことしこそは米審を公開にして、国民の前に赤裸々にどんな主張もこれが明らかにされるということが本来のたてまえであって、そうすべきであろうと思うのでありますが、重ねてお伺いをいたします。
  86. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府がいろいろな諮問機関を持っておりますのは、そういう学識経験者に諮問をいたしました事項について十分に検討をしていただいて、そのお考えを政府に示していただいて、政府はそれを資料にいたしまして政府の態度を決定するというのが審議会設置のたてまえでありますから、私は、やはり慎重にいまのようなやり方で審議をされて答申を願って、政府は米価を決定する判断の資料にいたしたい、こう思っております。
  87. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 いまのような非公開の原則で、新聞記者も入れないというような状態では、それ何といっても秘密主義であることは否定し得べくもない事実なんでありまして、そこに米審の意見がまとまらなかったりする一つの理由もあるし、原因もあるしいたしますので、これは大臣の権限で、河野一郎さんが農林大臣のときに非公開にすることになったわけですけれども、ひとつ倉石農林大臣思い切って公開して、新聞記者も傍聴も入れて、大いにひとつ米審の真価を発揮させるように努力をさるべきであると思うのでありますが、この問題にいつまでもこだわっておってもしようがない話ですが、米審が公開しないということに対しては納得がいきません。これは場合によったら国会で議決でもして公開させるように努力しなければならない問題だと思うのでありますが、一面ことしは幸いにして国会の会期中でありますから、先刻申し上げますように、不十分ながらここで審議ができるわけです。しかしながら、会期中でございませんと、国会では全然触れることができない。これが多年の実態です。この前にも一度申し上げたはずでありますが、閉会中の審査の議長の許可のもとに米価についての農林水産委員会の審議を決定しまして、公報に載せます。そして野党の委員が出てまいりましても、与党の委員委員長も姿を見せない。これが実態なんです。そういうふうに国会で国民生活にこれくらい重大な影響を持つところの米価を審議するのに全然口をつけることができない、全然その審議の対象外に置かれておるなどということが、一体正常なものであるかどうか、大臣はどうお考えになりますか。
  88. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は国会議員ではありますが、ただいまは政府におりますので、国会の運営についてはとかくの批評をいたすことは遠慮いたします。
  89. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 議員であり、かつ行政庁の主管大臣をやっておる。しかし、議会というものについて——倉石さんは特に議会運営については専門家でいらっしゃるわけなんでありますが、議会運営という立場から見て、国民生活にこれくらい重要な影響のある米の価格を決定するのに、国会では全然手も足も出ないような状態というものが正常であるとはお考えにはならないと思うのですが、どうです。
  90. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは私の意見ではありませんが、ただいまわが国の国会で予算委員会というのがたいへん長く運営されているにもかかわらず、そういう大事な経済政策、予算に関するようなことがあまり行なわれないで、ほかのことばかりやっておるというような批評も世間にはございますので、われわれ国会議員としては、そういう批判にも慎んで耳を傾けるべきではないか、こういうふうに理解をしております。
  91. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 まあ、わかったような、わからないような答弁ですが、問題はやはり国会運営の問題でありますから、ここでこれ以上追及しようとは思いませんけれども、やはり国会運営の中における農林水産委員会の運営なり、あるいは国会全体の運営の中で、この問題は今後取り上げなければならない問題であろうと考えております。  次に、食管法についてお伺いをいたしますが、先般大野市郎君の質問に対して、大臣は、食管法は守っていく、しかし、運営についてはいろいろと弾力性のある運営をはかっていきたいという答弁がなされたのです。そこで、農林大臣に伺いますが、食管法の第三条と第四条との関係をどのように理解されておるか、伺いたいと思います。
  92. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 しばしば私が申し上げておりますように、政府はただいま食管のたてまえは堅持してまいる、この原則はございます。そこで、いまの買い入れ価格と売り渡し価格、こういうことにつきましては、もちろんそのときに応じてやはり米審の御意見を承りながら決定すべきでありますが、ただいまそのことについてこれを非常に大きな変化をさせようというふうな考え方は持っておりませんです。
  93. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 第三条と第四条に関しましては、これは全然関係のないことは法文の明示するところであります。そこで、いま基本的には変えるお考えはないということでありますけれども、かつて予算委員会で問題になったことがあるのでありますが、政府はことしは十月一日から一四・四%の消費者米価値上げを決定されておる。これはいわゆる新聞等が論評いたしておりますようなスライド制をとるものではないか。スライド制をとるということになってまいりますと、三条と四条の混合になって、食管法の基本的な性格を変えていくことになると思うのです。この点については、やはり食管法を堅持するというたてまえから見て、きわめて重要でございますので、ひとつはっきりさしていただきたいと思います。   〔森田委員長代理退席、委員長着席〕
  94. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 消費者米価につきまして、いわゆるスライド制をとる意思はありません。
  95. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 スライド制そのものをとるということではございますまいけれども、少なくとも生産者米価を上げれば、消費者米価も上げる。ことし上げられれば三年連続になりますね。昭和三十二年からは五年間消費者米価は据え置きであった。その後三年間は消費者米価は据え置きであった。今度はことし上げれば三年連続米価の値上げになるわけです。そこで、一番最初に大臣に伺いましたところのいわゆる食管赤字というものは、いずれにしても一般会計から繰り入れるという点で変わりはないというお話でございましたが、いわゆるこの食管赤字といわれるものの額が大きくなるに従って、国民の中から、中身がよくわからないで、そうして一般会計から食管赤字を埋めるというようなことをやれば、結局国民は税金で負担することになるから、食管赤字をなくすべきだという意見が出てきて、その意見につられて生産者米価を上げれば消費者米価も上げる、消費者米価を上げれば生産者米価も上げる、こういう悪循環になる。この悪循環というものはすなわちスライド制への一過程である、その段階である、こう判断せざるを得ないのです。そういう意味で、私は、このスライド制をとるということは、結果においては食管制度を放棄するその過程で、相許すべからざるものであると実は考えておるのでありますが、大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  96. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御存じのように、生産者米価と消費者米価が全く無関係であるという考え方は、私は少し間違っておるのではないかと思うのです。そこで、いま十月から一四・四%、これは予算米価でありますから、やはりそのときになって米審とも御相談をして決定いたさなければなりませんが、去年は一月上がりました。ことしは十月ですから、その間一年余りあります。そういうことで、御承知のように、消費者米価は消費者の家計の安定を旨としてという法律の指示もございますので、私どもといたしましては、そういうたてまえをとりつつ、消費者米価の値上げに踏み切ったわけでありますが、もちろん、このことによって一般にどういう影響を持ってくるかというようなことは、政治的には大きな関心事でございますが、私どもといたしましては、食管というものがただいまのような逆ざやでいつまでもあっていいものであるとは存じません。食管会計という特別な会計を持っておるたてまえから申しましたならば、そういう意味で、やはり現在のように、そのときに応じて一般会計からその補てんをいたして整理していくべきものだ、このような理解を持っておるわけであります。
  97. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 どうもわかったような、わからないような答弁ですが、これは消費者米価値上げの際にまたひとつ議論をするといたしまして、先ほど藤田委員は、いわゆる食管赤字なるものの算術的な計算で、この分で赤字が大きくなっていくとたいへんなことになるということを坂本教授の所論をあげて指摘されておったようでありますが、一面から言うと、ある学者は、一兆円予算のときに百五十キロ米価一万であったから、五兆円になれば米価は五万円になってもいいではないかという議論もある。ものは考えようでありまして、ただ算術計算で、この分で一〇%ずつ上がっていけば十年たてば一〇〇%上がるというような単純な問題ではないと私は思う。この点については、実は大臣の答弁、私同感なんです。いつかも指摘いたしましたように、私どもは米が高くなりさえすればいいというのではないのでありますけれども、肥料価格安定法という法律があって、生産がうんと増大すればコストが下がる、コストが下がれば、販売価格も下げなければならないという法律があった。ところが、最近中国だけでも二百万トンも輸出をするようになったから、生産はうんと上がって、そのコストはうんと下がっておるのに、自民党の諸君はついに肥料価格安定法を廃案にいたしまして、それがために肥料を下げることができないというような政治をやっておる。あるいはまた、固定資産の評価がえなどをいたしまして、農民の税の負担を過重ならしめておる。こういうような問題はこれは数うるにいとまがないわけで、農薬についてもしかり。ことに機械において、いわゆる機械貧乏といわれるほど機械の負担が大きいわけです。私は先ほど大農県費がどれくらいかかっているかということを質問したのでありますが、まだ作業中だということで答弁がございませんけれども、そういう面と、それから一面土地改良費基盤整備費、これは農民のものであるけれども、いわゆる国土ですから、国の領土の一部なんだから、そういう点に立って、基盤整備費というものは、かつては自民党も、終戦直後食糧難の時代には、土地改良費の全額国庫負担をよくスローガンにあげられましたが、いつの間にやらこれはおろしてしまわれましたけれども、土地改良費を全額国庫負担にする。また、土地改良区の施設費なり事務人件費というものを国が負担をするというような形に持っていくことができるとすれば、必ずしもわれわれは生産者米価を無限に上げることを主張するものではないのです。そこで、さっきの大臣の答弁もそういう趣旨の御答弁であったようでありますが、いま大臣は具体的に一体どういう構想をお持ちになっておるか。もうそろそろ来年度予算の編成に取りかかられる時期でありますが、来年度からは農民負担を軽くして、生産者米価をそれほど上げなくともいいような措置というものは、どんなふうに具体的にお考えになっているか、お考えを承りたいと思います。
  98. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 一時的にその場しのぎのことをお互いに言っておってもこれは無意味でありますし、私どもの性格がそれを許しませんが、率直に申しまして、ただいまお話しのような問題はたいへんむずかしい問題でございます。ことに農業基本法制定以来今日までの経過を見ましても、やはり反面においては、他産業のほうの成長率は世界の人が驚くほどのものでございました。そういうことの結果、そのあおりもありまして、たとえば労働力が流出してまいる、それからまた、諸物価が若干高騰いたして、そういう、客観的な大きな影響農業生産にひしひしと迫ってきておるわけでありますから、農林省が代々非常に努力をいたしまして、構造政策あるいは長期の土地改良等に取り組んでおりましても、なかなか所期の成績を十分にあげ得なかったということは、みんな認めておるところであります。しかし、先ほど来お話の米の問題につきましては、当面第一には短期的には価格の問題でございますが、長期的にはやはりどうしても自給度を高めてまいりますためには、農業基本法が差し示しております方針にのっとって、政府がやってまいりました長期の土地改良構造政策、その他水の管理、きょうはお時間もないでありましょうから、専門家に向かってあまり申し上げませんけれども、そういう方針を皆さんの御協力を得まして、来年度の予算にはできるだけ農業予算を獲得して、そして所期の計画を着々増進してまいりましたならば、いまの米作農家の方方の考えておられるような、消費者に安定した価格で供給のできるように一歩一歩近づいていくことができるのではないか、そういう方向を実現いたしたいというのが努力目標でありまして、どうぞ御援助のほどをお願いいたします。
  99. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 まあ、抽象的な答弁としてはそれで上等なんですけれども、私はそういう抽象的なことを聞いているのじゃないのです。一つでもいいし、二つでもいいから、具体的に何から手をつけるということがいいのか、これを具体的に聞いておるので、そんな抽象的なりっぱな答弁を聞こうとは考えておらないのです。もっとまずい答弁でもいいから、中身のある答弁をほしいのです。そこで、いろいろ私のほうから指摘をしたわけですから、そのうちのどれとどれくらいはできるならば、できそうだ、また努力をしましようということなら話はわかるけれども、いまのような抽象論では一向いただけません。答弁としてはそれはりっぱかもしれないけれども、中身がさっぱり何もない。中身をひとつ伺いたいのです。
  100. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私が申し上げておりますのは、たとえば一軒の家の設計みたいなものでありまして、それを全部専門家である皆さんに申し上げれば御理解がいくかもしれませんが、その中の一本の柱だけかりに取り出して、そして、たとえばさっきお話のような土地改良は全部国庫負担でやるとか、こういうような一つの問題についてまいりますと、遺憾ながら私は石田さんと意見が一致しない面がございます。なるほどおっしゃるように、農地といえどもこれは大きくいえば国土でございますが、その国土の所有権、使用権というのは個人が占有できるわけでございまして、受益者はその個人でございます。したがって、そういうことから考えますと、農業一つのりっぱな企業であると思う。私どもこう見ておるわけでありますから、その企業がペイするようにできるだけめんどうを見て、成果があがるようにしていくのが政府の責任ではないかと思う。したがって、そういうことに要する農林金融公庫等の対象の利率を引き下げるというようなことについては、四十一年に比べ四十二年度予算には非常に努力をいたしたことは御存じのとおり。そういうことについて私どもはやはり計画的に努力目標としてやってまいる、こういうわけであります。
  101. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 まあ、いろいろ問題がございましょうが、本来もっと具体的な腹案などがもうすでにおありではないかと考えておったわけですが、いまの御答弁によりますと、いわゆる農業というものを企業として発展させたいという御答弁のようですが、はたして農業が企業として立っていくかどうかということについては、これは非常に議論のあるところであろうと思うので、現在の一般的な日本の農業というものは、私は、資本主義経済、合理主義の企業的な農業としては育たない性格のものであるということを大臣もよく考えていただかなければ、これは議論をしてもあるいはここでなかなか尽きる問題ではないと思うのですけれども、一例をあげますと、たとえば最近機械化しておりますが、百万円の機械施設をやる、しかし、農業用機械というものは、春の機械にしても、あるいは脱穀調製の機械にいたしましても、それはせいぜい十日か十五日しか稼働いたしません。あとは全然これは使用できない。ほかの産業はどうか。三百六十五日——といっても日曜祭日もありましょうけれども、とにかく年じゅう稼働ができる。農業機械というものは、一年のうちに十五日から、よく働いて二十日しか使わないで、あとはちゃんと倉庫の中で眠らしておく。これを一体どうバランスさせるか。一体大臣は、そういう点についてよく御理解になっているのかどうか、どうも疑わしいと思うのですが、やはりそれは経済合理主義で農業を企業の方向に持っていこうという御方針なんですか。
  102. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 企業というのは、自己の資本と責任とくふうにおいて、生産と処分を自由にできるものが企業だと私どもは理解しております。もし企業でないとすれば、農業というものは一体どういうものであるかということについては、むずかしくなるのじゃないかと思いますが、ただいまお話のようなことを、実際私どもも郷里に帰りましても、しばしば農家の人からもお話を受けます。そこで、政府は、経営規模を拡大するために非常な努力をいたしました。世界のいずれの国においても、御存じのように経営規模を広げて、反当たりに働いておる農業従事者の数は減りながらも、生産は横ばいあるいは増産いたしております。この経過を見ますと、やはり農林省がいままで考えてやってまいりました、また農業基本法でも差し示しておりますような経営規模を広げ、そしていまお話しのように、小さな単位の畑だけを考えれば、機械の能率というものは非常に限られますけれども、これを協業をやるなり経営規模を広げることによって、大いにその機械は活用できるわけでありまして、私ども今日の日本経済全体から見て、必然的に農村の労働力が他産業に走っていく傾向を見ますときに、労働力は足りなくなっても生産を落とさないためには、やはり経営規模を広げることと同時に、農業の近代化と機械化に努力をしなければならないだろう。能率が上がるようにするためには、やはりいままで政府が努力いたしてまいりましたような規模拡大構造政策というものが必要であると思いますので、そういう方向でやってまいりたいと思っております。
  103. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大臣は農基法の問題をしばしば持ち出されますが、農基法の基本的な構想の中には、農業と他産業との所得の均衡、所得格差の是正というものが大きな一本の柱となっている。今日私どもは、米価だけで他産業と所得を均衡させるなどと極端に考えるものではございませんけれども、やはり他産業との所得格差の是正というこの基本的な方針は変わりはないですか、どうですか。
  104. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういう方針で、均衡のとれた農家経営が行なわれるように、それを目標にしてやっていきたい、こう思っております。
  105. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういたしますと、まだ資料が出てまいりませんから、ここで具体的な論議をするわけにはまいりませんけれども、たとえば種苗費、種や苗、あるいは肥料費、薬剤防除費、諸材料費、小農県費、大農県費、建物費、土地改良設備費、役畜費の大部分はすでに投下済み。あと動かすことのできない租税公課諸負担、利子、地代、こういうものも動かすことのできない投下資本ですね。そうすると、この動かすことのできない投下資本に一体何をプラスするかというと、これは労賃で、自家労賃の評価がえで見ていく以外にはない、こういうことなんですね。これは名前も申し上げる必要もないと思いますけれども、最近二十代の農村の青年がどういう職場を選ぶかというときに、自分の賃金が幾らに当たるかということを標準にして職場を選ぶ、こういうアンケートなども出ているわけで、これは当然であろうと思うわけでありますが、米価の算定にあたって、いま申し上げたようなものは動かすべからざる支出であって、大部分はすでに投下済みであります。自家労賃というものを他産業の労賃並みに評価することが、すなわち、この所得格差是正の精神につながるものであって、農民は他の労働者よりも高い賃金を要求するなどという要求をしているのではございません。せめてほかの労働者、いわゆる都市のある程度の労働者並みの賃金を補償してもらいたいというのがわれわれ農民の要求なんです。そういう点では、大臣は労働問題の専門家でいらっしゃいますから、私から指摘するまでもなくおわかりのはずでございますが、賃金で均衡をさせる、こういう趣旨で米価は算定すべきであろうと思いますが、大臣はどうお考えですか。
  106. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 生産費を補う、つまり、補償するというたてまえで米価は考えていかなければならぬと思います。そういう角度でただいまいろいろ基礎資料農林省において検討中でございますので、その上でまたいろいろ申し上げたいと思います。
  107. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大臣、そうとぼけちゃいけませんよ。生産費を中心にして米価をきめるなんといったら、日本の農業は滅びてしまいますよ。生産費プラス自家労賃、その労賃が特別に低い賃金ではみな逃げてしまいますから、日本の農業はつぶれます。その賃金というものを都市の製造工場労働者の相当規模の人とバランスさせるというのが農民の主張なんです。だから、生産費を中心にした米価ではないので、生産費及び所得補償方式というのは、そういう趣旨で行なわれてきているので、あなたはとぼけておられるようだけれども、ひとつとぼけないでしっかり答弁してください。
  108. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 食管法に言っております法の精神でありますから、私はさっき、いまあなたが言われたように答えたと思ったのでありますが、生産者米価は、生産費はもちろん、所得を補償するという意味で計算の基礎をつくっているわけでありますから、別にとぼけているわけではないのでありまして、ただ、その基礎がまだできておりませんから、いまそのことを申し上げられない、こう申し上げた。ただ、これはもうよけいなことかもしれませんが、毎年いままで米価算定のときにやってまいりました農家の労賃計算というものは、都市均衡の労働賃金を基準に採用いたしていることは御承知のとおりでございます。
  109. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 生産費及び所得補償方式で、問題は、自家労賃を都市の労働者とバランスさせるかさせないかというところに問題がある。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕 同時に、都市のどういう階層の賃金とバランスさせるかというのが大きな問題なんで、そういう点は、大臣、労働問題の専門家がおわかりにならないはずはないので、私はやはり都市の相当の規模の製造工場労働者とバランスさせるようにきめなければならない、こう考えているのです。その点がちょっとあいまいなようですから、いま作業中であれば、その作業の数字が幾らになるかということは別ですけれども、考え方としては、やはりその点がもっとはっきりしていいのではないですか。数字は別です。私も数字は言っておりません。私どもの主張はありますけれども、その数字はあげませんが、考え方としては、都市の相当な規模労働者とバランスのとれるような賃金が補償されなければならないのではないかということを申し上げておるのです。
  110. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 だんだん上手に質問されるものですから、引っぱり込まれてよけいなことをしゃべってまた間違えるといけませんが、これは御存じのように、もう五人以上の規模の都市均衡の労働賃金を計算の基礎にしておるわけでありますから、これはことしもその原則は変わらないのではないかと思っております。
  111. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 問題は、五人規模などという産業、製造工場というものは、これはもう製造工場などという概念の中には入りませんよ。あなたは専門家だからおわかりでしょうけれども、人事院はどれくらい指摘しておりますか。三公社五現業はちゃんと人事院の勧告に従って製造工場の百人規模以上の賃金を標準にして、それと均衡させようということで、昭和三十九年以来今日まで政府もそれに従っておるではないですか。農民をなぜ五人規模以上というような零細な、ほとんど製造工場などと言うことのできないような零細なものと均衡させるのか。これはもうしろうとだってわかり切った話なのに、専門家がそんな考えで一体農業をつぶすつもりなんですか。米作農業というものをつぶす気でなければ、そんなところと均衡させるという考えは出てくるはずがない。農民があの重労働で、もう大臣も御承知だろうと思うのだけれども、長野県あたりもずいぶん農夫病というものが激しくなっておるし、せんだって岩手県では、農村の婦人の血液が薄くて輸血用にできないということが問題になっておる。それほどの重労働をしておって、なお都市においては製造工場などと言い得ないような五人ぐらいの規模のものとバランスさせようなどという考えならば、これは日本の米作農業というものを滅ぼそうとする考え以外には考えられない。どうですか、そうお考えになりませんか。
  112. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 石田さんに何か誤解があるのではないかと思うのですが、私が言っているのは、五人以上のすべての規模でございますから、千人二千人、五千人、一万人の規模まで入れた平均をとっているのであります。私はそういうことについてただいま政府におりますから個人的批判は避けますけれども、賃金というものをとるときに、いまお話しのように百人以上、五百人以上というふうなとり方というものは、これは私は賃金体系としてはおかしいと思うのです。一番公平なのは、全部の職場のものをとるのがあたりまえだと思いますけれども、ただいまは政府にそういう五人未満の調査がございませんから、したがって、政府にあります五人以上、全体の都市均衡の労働賃金を算定の基礎に計算をいたしておるわけであります。五人の規模というわけではありませんので、それはもうおわかりだと思いますけれども……。
  113. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 どうもたいへん学のあるところをお示しになったわけですけれども、実は政府は五人以下の統計はなかったにもかかわらず、かつては一人以上の規模をとったんです。そういう修正をしてわざわざそれをつくったんです。それをわれわれは不合理だと言って追及したので、やっと労働統計にあるところの五人規模以上というところまでは上がってきた。  さて、統計調査部長に伺いますが、五人規模以上のすべての賃金と百人規模以上の賃金との比較対象を、ひとつ数字をあげてお聞かせを願いたい。
  114. 松田寿郎

    ○松田説明員 もちろん、百人以上の工場の平均賃金のほうが高いと思いますが、ただいま手元にその資料を持っておりませんので……。
  115. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そんなものは常識的にわかっておる話でありまして、いま調べておるようだから、それじゃひとつ調べて明らかにしてもらいましょう。大臣よく理解されておらないようだから……。
  116. 大口駿一

    ○大口政府委員 私がいま見つけ出しました資料は、まことに申しわけありませんが、ちょうど石田先生のお尋ねの数字ぴたりを持っておりませんで恐縮でございますが、五人以上の規模が幾らというのと、五人から二十九人規模のものが幾らというのと、三十人以上の規模が幾らというのだけを見つけましたので、とりあえずそれだけを申し上げさせていただきます。  四十二年四月の調査でございますが、五人以上規模では一月当たり三万三千七百七十七円、これは五人から上全部でございます。五人から二十九人規模は二万七千九百七十三円、これも一月当たりでございます。三十人以上、これは上まででありまして、三万五千三百八十七円、いまちょっと手元にそれだけしか持っておりませんので、御了承願いたいと思います。
  117. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 この問題は、米価審議の中心的な問題です。だから、私はさっき申し上げたので、三十人規模以下などというものは問題にならない数字なんで、そういうふうに問題にならないものを問題に取り入れようとするところに米審が難航する理由がある。そうして無理がある。そういう無理をなくして、三公社五現業に対する人事院の勧告と、政府が実施しておるその標準で農民の自家労賃を評価することができないという理由はないと思うのです。何か理由はありますか。
  118. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米審も近く開かれることでありますし、まだその諮問案もできておらないような次第でありますから、そういうことについて、あまり私がわからない問題についてここで申し上げることは御遠慮いたしたほうがいいかと思うのでありますが、私は、原則としてやはり、ただいままで昨年の米価決定にもやってまいりましたような都市均衡の平均労働賃金というのは、まあまあ適当なところではないかと見ておりますが、ことし米審でまたどういう御答申が出るかによっては、政府も考えなければならないと思っております。
  119. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういたしますと、大臣、伺いますが、ことしの米価の算定はそういうふうないろいろな要素に基づいて算定をされるおつもりですか。
  120. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは先ほど統計調査部長が明日の夕方間に合うと申し上げたようでありますが、ああいう基礎数字によって、どういうような諮問をするかということをあらためて相談をいたしまして、それから諮問をいたすわけでありますから、まあそれまでは私どもとしてここで明快にお答えをするということはまだできない段階であります。
  121. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういう重要な点が答弁ができないということでは、国会で審議をする意味がないのです。そういう問題について、ここで爼上に乗せて議論をして、初めて国会における審議というものの意義があるのです。  それから、私はその数字を言っているのじゃない。数字じゃなくて、いま大臣の先ほど来の答弁をずっと聞いておると、明らかにこれは生産費及び所得補償方式の考え方のように受け取れる。だから私は念を押したのです。ことしの資料に基づいて生産費及び所得補償方式でおやりになるのですかということを聞いておる。三十九年の価格を中心にして指数化方式をおやりになるかならないかという重要な点を私は聞いておるのです。数字を聞いておるのではありませんよ。指数化方式によるのか、あるいは生産費及び所得補償方式で四十一年度の生産費を中心として作業をお進めになるのかという、きわめて重要なポイントを聞いておるのです。数字ではなくて、考え方ですから……。
  122. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ことしは米価がきまりましたあとで、私は、いわゆる指数化方式というものでやればこういうことになるといったようなことを国民全体に知ってもらうことが必要だと思っておるわけであります。それは先のことですけれども……。私ども今度諮問いたしますについては、何もこの方式でなければならないというような、そういう拘泥した考えを持たないでやってまいりたい。しかし、計算の基礎というのはあるのでありますから、そういうものをとることはもちろん当然なことでありますが、いわゆる指数化方式にいつまでもくぎづけされていて、わけのわからないものを出すという意思はないのであります。
  123. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 その点わかりました。大臣のほうから次々と問題を提起されるので、私、もう一つ質問をしなければなりませんが、米審に対する諮問のしかたが問題なんですね。わけのわからない諮問をされるから、まとまらないのですよ。私も長い間、四年間米価審議会におりましたが、私が出ておったその四年間というものは、今年産の米価はこういう算定方式に基づいて幾らになるという額を示して諮問したものです。そうすれば、議論はいろいろあっても、最後はその額でいいか悪いかという議論に落ちついてきて——そこで、私ども四年間は米審でいろいろ議論をしたあとで、大臣の出席を求めて、そこでその年の米価をきめたものです。小委員をあげて、小委員会と大臣の交渉によって、その場で米価をきめたものです。そういう諮問のしかたをすれば、問題がまとまるもまとまらないもないのです。ところが、わけのわからない、四十二年産の米価の算定は一体どういう方式がいいですかなんという諮問をしたのでは、これは答申のしようがないのですよ。だから答申が出ない。出ないのが幸いなのかもしれませんけれども……。問題はそういうところにあるので、諮問のしかたにある。大臣がいまおっしゃるように、指数化方式などというわけのわからないものでなくて諮問をしたいとおっしゃるのだが、ひとつ思い切って割り切った諮問のしかたをなさってはどうですか。
  124. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 諮問をいたします米審がもう近く開かれるわけでありますから、それまでにはちゃんとした政府の考え方をきめて、諮問をいたしたいと思っております。
  125. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 あすごろに成案を得て、あさっての米審にお出しになるという話ですが、私はこれは重要だと考えておる。案ができてしまってからでは間に合わないのです。そこで、案をつくる前の大臣の心がまえを明らかにしてもらって、またわれわれの意見も参考にしてもらおうというところに、本日のこの農林水産委員会における米価問題の取り組みの意義がある。そういう点でいろいろと御質問を申し上げたわけでありますが、明日の午後三時過ぎには数字の資料がお渡し願えるそうでありますから、最後にひとつこの点も確認したいと思いますが、それによって今後本委員会における米価問題に対する審議のしかた、これについてもまた協議もしなければならないと思いますので、それも確認をし、同時に、大臣が先ほどおっしゃったように、あまり方式論にはこだわらないで諮問をしたいというお考え、それはそれなりで、私は具体的なものが出なければわかりませんけれども、少なくとも一都市の相当規模労働者の賃金とバランスのとれるように農家の自家労賃を補償することが生産費及び所得補償方式の根幹であって、これは小倉武一君が長官の際にこれをやったんで、労働賃金が上がれば上げる、労賃が下がれば下げる、こういうことであの方式を用いたのでありますから、大臣もその趣旨に従って諮問案をひとつおつくりを願いたい。どうでしょう。最後にひとつ意見を承りたい。それと資料の確認を……。
  126. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私が腹をきめるというのは、米審に諮問をする案がきまった瞬間が私の腹がきまるときでありますから、それまでの間は各方面の御意見を十分に承って腹をきめてまいりたい、こう思っております。
  127. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 明日の資料どうですか、部長、あすの何時ごろまでに出せますか。もうできておるかもしれないのだけれども。
  128. 松田寿郎

    ○松田説明員 三時半には用意ができますので、すぐにお届けできると思います。
  129. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私の質問を終わります。
  130. 倉成正

    ○倉成委員長代理 芳賀貢君。
  131. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、昨日の当委員会において、米審の開催については七月八日に招集して、米価の決定は十五日までに行なうということが明確に大臣から述べられたわけであります。ところが、その後聞きますと、農林大臣が米価審議会に諮問を行なうのは七月十日であるというふうに伝えられておるわけでありますが、その点はそのとおりかどうか。
  132. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 八日に集まっていただいて、その運営のやり方については委員の皆さん方が御相談をなさっておまとめになるのだと思いますが、なるべく早く諮問案を作成して諮問をいたしたい、こう思っております。
  133. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは米価審議会は八日に招集をして、十日に農林大臣から諮問を発する、そういうことになるわけですか。
  134. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 八日に間に合うかどうか、間に合えばなるべく早く間に合わせたい、こう思っております。
  135. 芳賀貢

    芳賀委員 準備が全く整わぬと見通しがつかぬ状態で、どうして八日に開くわけですか。
  136. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 会長の川野教授とも相談をいたしましたところが、十日からが都合がいい、こういうことで、当初十日にすることに一応会長にも了解を与えたわけでございますが、正式にまだ決定をいたさない間にいろいろ各方面から御要望もありましたので、できるだけ早いがいいということで、八日に繰り上げてもらったわけでありまして、委員の中にはいろいろな方もおいでになりますので、それらの人々とも御相談をして、なるべく早く進行してもらうようにいたしたい、こう思っております。
  137. 芳賀貢

    芳賀委員 八日が土曜日、九日が日曜ですから、われわれの常識をもってすれば、八日に審議会を招集して、そこで農林大臣から諮問を行なう、内容については食糧庁長官から説明をして、九日が日曜ですから、それに基づいて審議会委員の諸君の検討の時間をとって、そして正味十日から十二日あるいは十三日にかけて真剣な議論を行なって、そして国民の期待に沿った答申を出す、そういうことが順序だと思いますが、初めの八日、九日は全くおざなりにして、しかも八日の十一時半に招集して、昼飯だけをごちそうして帰ってもらう、こういうようなやり方は前例はないのです。結局審議会の正味の審議の時間をできるだけ圧縮して、十分な答申が得られないようなことを意図しておるのでないかというふうにわれわれは判断するわけでありますが、そういう態度はいけないと思うのです。いかがですか。
  138. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま申し上げましたように、初めは十日ということで会長と話ができたものですから、事務当局のほうにおいても十日に始めるという予定でいろいろな準備をやっておったわけであります。しかし、各方面からいろいろ御意見が出まして、急遽八日にいたしたわけでありますから、準備が整うかどうか、それからまた、会長が運営についてそういうことができるかどうか、この点はやはり私どもにまかしておいていただきたいと思います。
  139. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、ただいま同僚の石田委員質問に対しまして、政府としては特に固定した考えの上に立っての諮問は行なわないということを農林大臣は言われたわけでありますが、ただ、昨年、一昨年は、諮問の形は非常に簡単でありまして、今年度の産米価格決定については生産費所得補償方式で決定したいと思うが、留意すべき事項はどうでしょうか、こういう内容の諮問ですが、しかし、内容的になると、一昨年以来指数化方式で政府としては算定したいということが強調されておるわけであります。そこで、従来の方式を見ますと、最初は一貫して積み上げ方式でやってきたわけでありますが、一昨年から指数化方式に切りかえた。しかし、昨年も一昨年も指数化方式なるものに対しては、全部の審議会委員の諸君が完全に同調するというところにはいってないわけです。非難されたり、あるいは欠点を指摘されて、昨年のごときは答申不能、こういう状態になったわけでありますからして、政府もこの際算定方式については指数化方式をあきらめて、ほんとうにこだわらない立場でやるとするならば、無理な指数化の方式等については、たとえ参考資料であってもそういうものを積極的に持ち出さないで審議を求めるということが当然であると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  140. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういういろいろな参考になる御意見を十分拝聴いたしまして、諮問案を作成するのは私の責任においていたします。
  141. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、その諮問をする場合の政府の態度、方針ですね。昨年、一昨年は指数化方式できめたいという態度をきめて臨んだわけでありますが、そうなると、ことし一般の判断は、はたして政府は指数化方式に期待を持って米審に臨むのか、あるいは混合方式でやるのか、従来どおりの積み上げ方式でやるのか、算定方式ということになれば、生産費・所得補償のワク内に考えられることはこれしかないわけです。この点はことしの米価決定を左右する大きな基本をなすわけでありますからして、繰り返すようでありますが、この際、政府としては特に固定した考えの上に立って臨むのでないということであれば、もう一度明らかにしてもらいたい。
  142. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 生産費・所得補償が行なわれる方式をやらなければなりませんので、そういうたてまえで、米審の委員の方に集まっていただくまでには私どもの腹を決定して提出したい、こう思っております。
  143. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、ことしの米価審議会委員の国会議員六名を除いた残りの十九名の選考基準をこの際参考までに知らしてもらいたいわけです。何を基準として最も信頼できる委員を選んだかという、その基準について大要述べてもらいたい。
  144. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 二十五名の方は御経験等もあり、いわゆる学識経験者としてりっぱな方だ、こう思ってお願いしたわけであります。
  145. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、お願いするまでの適格者選考の基準というものが何かあると思うのですが、ものさしですね。われわれもこの十九名の委員の諸君の経歴とか内容というものは一応調査しておるわけでありますが、特にこの際事例をあげてお尋ねしたい点は、従来は農林中金の歴代の理事長が委員になっておったわけでありますが、ことしは特に副理事長を委員にしたという理由ですね。それから、業界の代表者といいますか、名古屋精糖の副社長あるいは東洋電機の社長等が学識経験者として出ておるようでありますが、名古屋精糖とか東洋電機というのが、わが国の重大な米価決定について、たとえ社長であっても副社長であっても、いかなる役割りを果たすということに期待を持ち、選考されたか、この三者の選考の基礎をこの際明らかにしてもらいたいと思う。
  146. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま申し上げましたように、私どもとしては、それぞれ学識経験者であるということで、そういう基準でお願いをしたわけであります。
  147. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、その基準、いま農林中金の理事長は片柳真吉君ですね。これは共和製糖事件で前の楠見君が引退して、そうして片柳君が理事長になっておるわけでしょう。この人は農林官僚であることは経歴によって間違いがないわけですね。しかし、従来は理事長であったのが、どうして副理事長の大月高君になったかという点です。それから、どういうわけで名古屋精糖という精糖会社の副社長とか東洋電機の社長に委員になってもらわなければいかぬか、われわれとしては真意がわからぬわけです。ですから、何らかの選考基準に基づいてやられたと思うのでありますが、これは大臣みずから選んだわけでありますから、率直にここで示してもらいたい。
  148. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林中金は、前に楠見君が出ておりましたから、ああいう性格の団体と申しますか、金融機関であるから、やはり同じところからお願いするのがよかろうということでお願いをいたしたところが、理事長は都合が悪いから副理事長を出さしてくれ、こういうお話でありました。太田剛君は前回に引き続いて委員であります。これは経済同友会というところに推薦を願って、太田君が前に続いて出てまいった。村上君は、これは大蔵の関係の人も一枚加えておくほうが審議会等でいろいろやってもらうには都合がよかろう、こういうことで、大蔵関係の前の人は変わってしまいましたから、そういうことで人選を依頼しましたところが、出身者であり、政府のいろいろな審議会で活動しておる村上君がいいだろうということで、なるほどりっぱな学識経験者だ、こういうことでやったわけでございます。
  149. 芳賀貢

    芳賀委員 そうであれば、最初から言ってくれればいいんですよ。どうしても審議会委員の中に相当影響力のある旧農林官僚とか元の大蔵官僚が必要であるということで、それが選考基準であったということであるならば、率直に言ってもらえばわかるわけです。しかし、われわれは、従来も審議会委員の構成の中に、あまりにも現在の政府につながりのある大蔵官僚、農林官僚の古手を入れるということについては、できるだけこれは避くべきであるということを常に指摘しておるわけであります。今回農林省のほうは小倉武一君一人でありますから、その程度はいいと思いますが、いま私の列挙した三名は、中金の副理事長の大月君は元大蔵省の銀行局長でしょう。それから村上君は大蔵省のやはり局長の経験がある。それから太田君にしても日銀出身ということになるわけです。そうすると、あくまでも大蔵官僚に基礎を置いた学識経験者の選考ということになれば、それは政府の意図を体する、あるいは大蔵省、農林省の代弁的な委員というものを重点的に選んで、これが中立委員と学識経験者であるというそういう構成では、審議会における的確な公正な意見というものは十分反映できないと思うわけです。何もそういう古手に依存しなくても、現役の農林省あるいは大蔵省の大臣以下事務当局はそろっておるわけですからして、そういう選考のやり方というものは、やはりこの際避くべきであったというふうに考えるわけでありますけれども、その点について農林大臣としていささか誤ったという考えがあれば、この際述べてもらいたい。
  150. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 個人的な名前のことでとやこう申し上げるのは失礼だと思いましたので、回りくどいことを言っておったわけでありますが、選考の事情は、ざっくばらんに申せばそういうことでありますが、私はまことにいい配合じゃないか、こういうふうに思っております。  それからまた、ちょっと芳賀さんと私どもは感じが違うかもしれませんけれども、昔役人をしておった者がいつまでたっても元いた役所のお出先だというふうな解釈は、私どもはあまりとりたくないわけであります。学識経験のあるりっぱな方が、役所をやめて国会議員になられた、そういう人をいつまでも役人だ役人だといっておるのはおかしいのでありまして、何万票かの選挙の洗礼を受けて出てこられた。そういう意味で、私は、大蔵省出身であろうと農林省出身であろうと、やはり学識経験者として御依頼を申し上げれば、そういう立場で神さまになったようなつもりで判断してもらえるのじゃないか、こういうわけでございまして、別に他意あって役所の出身ということを重んじてやったわけではございません。
  151. 芳賀貢

    芳賀委員 私も長い間各種委員を経験しているわけですが、それらの委員諸君は、個人的にはりっぱな人材であるかもしれないが、諮問された問題に関しては例外なしに政府案支持。もしその例外があったら、あとでひとつ事例をあげてもらいたいと思います。この委員はあのときにこういうふうに政府と異説を唱えたとか、生産者の側に立って行動したという一つでも例外的な事例があれば、これはあとで調べて出してもらってもいいですから、事例をあげてもらいたいと思います。これらのポストというものは、例外なしに天下り人事でそういうふうになっているのでしょう。本家の方針は、天下り的に、君は中金の副理事長をやれとか理事長になれ、民間の名古屋精糖に一人向けるとか、これはもう本家の方針で、天下り人事でそういうポストにすわっているわけですから、やはりその関係というものを判断すれば、政府の方針にき然として異なった意見も述べるというような条件ではないわけです。しかし、これは指摘にとどめておきます。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕  それから、次にお尋ねしたい点は、ことしの予算の総括質問のときにも大蔵大臣に尋ねたわけでありますが、本年の食管特別会計の場合には、国内米勘定の中で十月一日から消費者米価については一四・四%上げるということで歳入の見積もりが正式にできているわけです。ですが、これは従来と異なったことでありますので、抽象的な予算米価であるということにはならぬと思うわけです。もちろん形式的にはこれを決定する前には米審にはかる必要はあるが、このような予算措置というものは、明らかに実行米価である。十月一日からは消費者米価は一四・四%上げた価格で実施するという実行米価としての内容を備えたものであるというふうに私は考えているわけであります。これに対して生産者米価の場合には、前年度主義を踏襲しているわけですから、この関係を農林大臣としてはいかように考えているわけですか。
  152. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 生産者米価を考えます場合に、先ほど石田さんのお話にもありましたように、生産費のよってきたる基礎を計算して、そうしてそこに出てきたいろいろなファクターを加え、たとえば明日お手元に差し上げることになっております生産費計算、そういうものが重なって米価になるわけでありますから、私は、必ずしもそれが生産者米価のほうが古くて、消費者米価のほうが新しいデータに基づくものだとは思っておりません。
  153. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、問題は、消費者米価については明らかに一四・四%上がっている。これはどうですか、大臣、四十一年産米に対しての消費者米価であるのか、あるいはことし取れる四十二年産米に対してこの消費者米価というものを十月から適用するのか、その点はいかがですか。
  154. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米に区別はないわけでありますから、とにかく十月一日からはどんな米でも一四・四%、こういうわけだと思います。
  155. 芳賀貢

    芳賀委員 これはそういうことはないですよ。昭和何十年度産米ということになるわけですからね。たとえば生産者米価がきまっても、昭和四十一年の古米について本年度産米価格を適用するということには当然ならぬわけですよ。そうじゃないですか。きまればもう古い米も新しい米も同じというようなことは、これはいままではやっていないのですよ。しかし、ことしからそうするというのならまた別ですからね。そのけじめを明らかにしてください。
  156. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、四十二年度産米価格と、こういうことでございますから、今度きめられる生産者米価はもちろん四十二年度産米の価格でございます。消費者米価は十月一日から上げられるのは、そのときに売却する米はすべて一四・四%上がる、こういうことでございます。
  157. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなると、ことしの生産者米価はどれだけ上がるのかまだよくわからぬとしても、少なくてもこの消費者米価に対抗した場合、最低限一四・四%を下回ることはないというふうに判断していいわけですか。
  158. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 直ちにそういうふうに結びつくとは考えられないのじゃないかと思います。
  159. 芳賀貢

    芳賀委員 いや、そうじゃないですか。先ほども農林大臣は、石田君の質問に答えて、生産者米価と消費者米価を切り離せというのは無理である、そういう意見は間違いであるということは、繰り返して強調しておるわけですね。ところが、先にきめるべき生産者米価は食管会計の中では前年度価格をとっておる。あとできめるべき消費者米価というものについては、国民生活の動向も何にも考えないで、ただ食管に対する一般会計の繰り入れがおそろしいということだけで、一挙に一四四%上げるということをもうあえて強行しておるようなものでしょう。そうなれば、農林大臣の論法からいえば、少なくても、生産者米価については最悪の場合においても一四・四%は下回るべきでない、こういうふうに判断されるわけですね。そうでないということになれば、石田君の言ったように、生産者米価と消費者米価というものは、これは関連さすべきでないということになるわけでして、これは重大な分かれ道ですからして、はっきり示してもらいたいと思います。
  160. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 消費者米価は、さっきもお話が出ましたように、去年の一月上げて、今度はことしの十月。したがって、いま申し上げましたように、古米、新米にかかわらず、十月から販売するものは一四・四%上げ。私が先ほど、生産者米価と消費者米価が全然関係がないものであるとか、結びつくべきものであるとかいうことについては一がいに言えないと申し上げておりますのは、この食管会計の中で生産者米価と消費者米価の取り扱いをいまのようにいたしておるのでありますから、生産者米価が上がって消費者米価が据え置かれるという結果は、逆ざやで赤字が累積してまいるだけでありますから、そういう関係においては必ずしも関係がないとは言えないんじゃないか、こういうことを申し上げたのでありまして、ことしの生産者米価は、秋に消費者米価を一四・四%上げるんだから、それと結びつけろというのとは少し違った角度で申し上げておるわけであります。
  161. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことになれば、これは食管法に基づかない米価のきめ方をすることになるのですよ。理由は、財政的な理由だけであなたは米価をきめる必要があるということになるでしょう。食管法のたてまえからいえば、第三条の生産者米価、第四条の消費者米価というのは、それぞれ法律の定めるところに従って、その精神に基づいてきめるということになるわけだが、大臣の発言からいうと、これは財政上の理由で生産者米価はなるたけ上げたくない、消費者米価はできるだけ上げる、こういうことになってくるわけですね。そうじゃないですか。だから、財政的な理由でこれからの米価をきめようとするのか、食管法の精神に基づいて生産者米価をきめようとするのか、その点も明確にしておいてもらいたい。
  162. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 食管法に申しておりますように、生産者米価をきめますときには、生産者の、何と申しますか、ちょっと文句は忘れましたけれども、明日への生産意欲ができるように、うまい文句が使ってありますが、そういう精神で法律は定めております。そのたてまえで私どもは生産者米価をきめなくちゃならない。消費者米価につきましても、同じく食管法では消費者の家計の安定を旨として云々といっておるのでありまして、そういうたてまえを尊重しながら消費者米価の妥当なる線を政府案として出し、米審の御相談を得た後にきめる、こういうたてまえでありますから、その法律の示しておるとおりの考え方で両方ともやっておる、こういうことであります。
  163. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣は、第四条のほうは大体頭に入れておるようですが、肝心の生産者米価の第三条については全然法律の文言さえもわかっておらぬ。ということになれば、この食管法の柱ですね、真髄をわきまえない一国の農林大臣が、生産者米価をきめるという責任ある資格は相当欠除していると私は断定するわけです。  次にお尋ねしたい点は、先ほども石田君から、生産者米価算定上重要な基礎をなす生産費の問題等について触れられたわけでありますが、ここで私は、この多年懸案事項とされておった地代の問題ですね、農地法に基づく小作料の問題というものが、昭和三十年に統制小作料というものを設定して、それが十二年間据え置きになっておるわけです。これはたとえば昨年政府が提案された農地管理事業団法案の審議の際にも、今後の日本の農地制度を再検討する時期にきておるが、その農地法上の問題の数々の中で、いわゆる地代、小作料というものをどう扱うかということについて、私からも、あるいは当時与党の坂村さんからも発言があったわけであります。このときの農地局長の大和田君の答弁内容というものは、明らかに委員会記録にも残っておるわけでありますが、昨年の政府の、あるいは坂田農林大臣のこれに対する答弁、本年の予算委員会あるいは分科会における倉石農林大臣の御答弁によりましても、小作料問題についてはすみやかに検討を下して結論を出しますということが、昨年、本年にかけて言われておるわけであります。ただ、いままでの政府の態度は、小作料問題というものは直ちに政府がきめる生産者米価に大きな影響を与えるので、それで軽軽ときめるわけにはいかぬ、妥当に改正することはできないということが、ただ一つ統制小作料を放置しておる理由になっておるわけです。しかし、米価を適正にすることを妨げるために小作料問題を放置しておくということは、これは絶対許されないと思うわけです。ですから、この際、米価の検討の前に、小作料問題等については、政府の農地政策上のたてまえから見ても、どうするかということをこの際明確にしてもらいたいと思います。
  164. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 小作料の問題につきましては、これは御存じのように農地の基本に触れる問題でありますから、私どもといたしましては、これを慎重にひとつ検討して、どのようにするかということを政府としては態度をきめなければいけないと思っておりますが、当面米価の算定の基礎であります地代につきましては、現に小作地であるところは実納小作料を基礎にいたします。それから自作地につきましては近郊の実納小作料、これを基礎にして計算をいたしてまいりたいと思っています。
  165. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことを聞いておるんじゃないですよ。十二年間も全く放置された農地法の中における小作料の取り扱いというものに対して、明確に方針を出して決定するべきだと思うわけです。いまから十二年前ですから、政府のきめた統制小作料は、中庸の田、中田で十アール、反当にして千百円ということになっておるわけです。いいですか、千百円ですよ。ところが、最近の水田の地価、売買価格等から見ると、中田の場合でも最低十アール当たり二十万、あるいは三十万、四十万ということになっておるわけです。ですから、そういう実態をとらえた場合に、一体十アール千百円の統制小作料というものは、これは昨年の政府の答弁によっても世界一安い小作料で、実態に沿わないということを政府も自白しておるわけですからして、この際、農地局長も来ておるわけですからして——これは笑いごとでないですよ。小作料を改定すれば生産者米価が上がるということだけをおそれて、適正な生産者米価の決定を阻害するような態度で農地問題を扱うのは、これは重大な誤りだと思うわけです。ですから、予告なしに私は発言しておるわけじゃないのですからして、この際、政府としての基本的な方針というものを明らかにしてもらいたいと思います。
  166. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農地法、それからいまお話しの統制小作料、こういうものについて、長い間問題になっておることは事実でありますから、私どもとしては真剣にこれに取り組んでいかなければなりません。構造政策を推し進めてまいりますためにも、こういう基本的な問題が大きな障害になると思うのでありまして、したがって、そういうことについては検討を続けてまいりたいと思っておりますが、目の前に控えております米審に提案すべき諮問にはまだ間に合いません。地代については、先ほど申し上げましたような方向でやってまいる、こういうことであります。
  167. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、おおよそいつごろをめどにしてこの問題の解決をするか。すみやか、すみやかといったって、問題を取り上げたときにだけすみやかを繰り返すだけですから、目標を定めて、おおよそいつころまでに——この農地制度の全面的な検討は迫られておるわけですからして、その中で特に小作料問題については結論を出すという目標、期限というものを、この際、これは農地局長からでもいいですから示してもらいたいと思います。こういうことは大臣じゃわからぬですよ。あなたは十一月改造になれば農林大臣に残るかどうかわからぬでしょう。しかし、食糧庁長官にしても農地局長にしても、その人物はかわるかもしらぬが、ポストは将来残るわけですからして、この点は特に農地局長から発言してもらいたい。
  168. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 局長は全部私の統轄下にあるのでありまして、政府の方針は私がきめるのでありますから、私がここで言明をいたしますことは、どのように農林大臣がかわりましても、政府の方針でありますから……。  そこで、私どもは、先般来申し上げておりますように、農政の基本にかかる大事な問題である構造政策につきましては、鋭意検討中であることは御存じのとおりでございますが、そういうことを進めてまいりますためには、農地問題は大きな問題でございますので、当然そういうときには農地法について研究をし、また態度をきめる必要があるのであります。したがって、農林省がいまやっております構造政策の方向を決定するときには、当然農地法の問題もそこで浮かび上がってくる。先ほど来のお話を承っておりますと、農地法の改正については、芳賀さんも非常に積極的に御賛同のようでございますし、私どもはこういうことについて各方面と協力をして、構造政策をしっかりしたものをつくってまいりたい、これが政府の方針であります。
  169. 芳賀貢

    芳賀委員 方針はわかりましたが、その中の小作料問題の解決は、おおよそ時期的にはいつを目途にして結論を出すかですね。こういう大方針はもちろん大臣でなければわからぬですが、その目標を示してもらいたい。
  170. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これはもう専門家のあなたがよくおわかりのとおりで、当然農地法を手がけるというときには出てくる問題だと思います。したがって、規模を拡大して構造政策をどのように進めていくかということを考えるときには、農地法が前にはだかつておりますから、こういうものを当然検討しなければならない重要な対象でありますからして、同時並行的に検討されるべきものだと思っております。
  171. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、結論をいつに求めるかというその時点ですね。
  172. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 でき得べくんば来年度予算に間に合うように農林省方針を決定したいと思って、いま一生懸命に努力しております。
  173. 芳賀貢

    芳賀委員 初めからそう明快に言ってもらえば時間をとらぬわけです。  次に、重要な点を二、三お尋ねして、きょうはとどめておきますが、先ほども石田委員からも発言がありましたが、政府が一昨年から企図しましたいわゆる指数化方式にわれわれは絶対否定の態度に立っておるわけですが、毎年論議される点は、農業の部面における生産性の向上ですね。農業労働の生産性あるいは土地生産性の上昇の実績というものが、全部これは価格算定上から見れば引き下げですね、マイナス要素に使われておるわけです。たとえば十アール当たりの自家労働の投下時間にしても、毎年毎年これは投下労働時間が減少したということを理由にして、指数化方式の場合には変化率の中にそれをあらわしておるわけであります。それからまた、反収の問題にしても、これは微小ではありますけれども、やや増収の傾向をたどっておるわけです。これも変化率から見るとマイナス要素ということになるわけです。そうなれば、生産者である農業者がもう営々として努力してあげた労働の生産性の成果あるいは土地生産力の上昇という努力に対して、何ら米価算定上は報いられていないわけですね。むしろマイナス要素としてこれは用いられておる。努力というものは犠牲にされておるということになっておるわけでありますから、これらの点は、ことしの諮問の場合においても、最終的に農林大臣が決定する米価の算定の場合においても、十分、この矛盾のあるマイナス要素というものは、やはり除去するような努力というものはどうしても配慮される必要があると思いますが、この点は、たとえば食糧庁長官としてはどう考えておられますか。
  174. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は、このいわゆる指数化方式というものをそのまま持っていっても、あなたのおっしゃるようにはなるとは思っておりませんけれども、いわゆる指数化方式というような、そういうことにこだわる考えはないのであります。したがって、政府といたしましても、その与党であります自由民主党の政務調査会もございますし、それぞれのところの御意向もありますので、そういう点については、先ほど石田さんにお答えいたしましたように、きわめて合理的な方法で算出ができるように努力をいたしたい、こう思っております。
  175. 芳賀貢

    芳賀委員 これは非常に大事な点なわけです。たとえば十アール当たり百五十時間を自家労働として投下した場合、それは今年の場合には百四十時間になった。生産が落ちないで労働時間が短縮されたということは、明らかに労働生産性がそれだけ高まったということになるわけですね。時間が短縮されて収量が同じように減ったということになれば別でありますが、収量に変化がなくて労働時間がある程度圧縮されたということになれば、そればいわゆる生産者である農家自身の労働の生産性、価値が上昇しておることになるわけですから、当然その報酬というものは配慮されなければならぬわけです。ところが、それが行なわれていない。時間短縮は全部マイナス要素として計算されておるわけです。あるいはまた生産者の努力によって単位生産量が若干ふえたという場合においても、これは計算上マイナスということになる。これでは一生懸命働けば働くほど、算定上からいえば自分の努力で米価を引き下げるということにしかならぬわけです。これがいままでの算定方式の中においては配慮されていないわけですから、特に農家の労働の生産性向上の成果というものに対しては、米価の中で評価するようにしてもらいたいと思いますが、この点は特にこの委員会で明確にしてもらいたいと思います。
  176. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 明確にするわけにはいきませんけれども、芳賀さんのおっしゃることは私どもよくわかります。そういう皆さん方の貴重な御意見を十分参考にいたしまして、適当な決定をいたしたいと思っております。
  177. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題があるために、特に他産業の均衡労賃の場合、過去においては全規模の都市労働賃金と見合う自家労賃、最近は五人規模以上の均衡労賃ということをいっておる。ですから、まだほかに的確な方法があればそれでいいわけでありますが、いままでのような算定方法ということでどうしても自家労働の価値を生産性向上に見合わすということになれば、規模の大きな製造業の均衡労賃ということにしなければこれをカバーすることはできないわけです。ですから、その場合、五人規模以上よりは三十人規模のほうが賃金が高い、あるいは百人規模のほうがそれよりもさらに賃金水準は高い、こういうことで、生産性の向上に対して労賃報酬を補完するということで、やはり規模についても考えるということを毎回われわれは指摘しておるわけであります。この点は、いま大臣からも積極的な答弁があったわけですから、十分結果の中でそれを実証してもらいたいと思いますが、どうですか。
  178. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米は日本人の主食でありますから、米をつくっておる人ばかりでなく、米を買って食べている大衆もいるわけであります。したがって、説明のつかないような不合理な決定をすることは、一般の人々に農業政策及び農村民に対してよくない印象を与えると思いますので、そういうことは国民全体の平和の上にも思わしくないことであります。しかし、主食の自給率をぜひ高めてまいりたい、農業を守らなければならぬ、米作農業従事者に明日への生産意欲をかき立ててやってもらいたい、こういうたてまえで、それ相当に財政当局とも交渉して米価を決定するわけでありますから、政府におきましては、十分にそういうことを考慮に入れまして、適当な価格で決定いたしたいと思っております。
  179. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、政府のいままでの計算方式でいきますと、たとえば生産費をとる場合においても、平均生産費ということでやっておるわけです。でありますから、過去三カ年間の平均生産費というやり方も、これは一つ方法です。おそらく明日統計調査部から出される資料もそういうことが中心になっておると思いますが、この平均生産費方式でいった場合、一体全国の米生産農家の全体の何割までがこの平均生産費方式で包容できるかという点と、それから、われわれは従来から、少なくとも八〇%を限界としたバルクライン方式で行なうべきであるということを続けて主張しておるわけでありますが、その場合は、おおむね米生産者の八〇%程度はこの生産費の中に包容することができるということになるわけです。したがって、これは従来未解決の問題ありましたけれども、ことし農林大臣が熱意を持って米価の決定に取り組むとすれば あくまでも従来どおりの、平均生産費方式でやるか、この際一歩前進してバルクライン方式を採用するかということも重要な点でありますので、お考えを聞かしてもらいたいわけです。
  180. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  181. 大口駿一

    ○大口政府委員 平均生産費というおことばがございましたが、現在米価の考え方は、生産費調査の平均生産費でいろいろな費目のコストを計算いたしまして、面積当たりの生産費を出す場合に、労賃だけは評価がえをいたしております。ところが、これを石当たり生産費に直します際に、平均の反収よりも標準偏差一シグマ低い限界反収で割って出しておるわけでございます。この方法はどういう意味かと申しますと、米の現在の管理体系というものを頭に置きまして、限界農家の生産費がカバーできるという思想があるものと考えております。したがいまして、単なる平均生産費だけで米価を決定いたしておるのではないということでございます。
  182. 芳賀貢

    芳賀委員 それは長官詭弁ですよ。統計調査部の場合は、調査農家対象にした生産費を出しておるわけですから、それを直ちに全国の生産農家の生産費に対して対応させることができるということにはならぬと思うのですよ。それは政府から資料として出されておるわけでありますが、いま長官が特に強調した一シグマ引いた生産費との格差、そういうものをわざわざわれわれは尊重する必要はないですから、平均生産費で計算した場合と八〇%バルクラインで計算した場合の、百五十キロ当たりあるいは六十キロ当たりの生産費の価格差がどのくらいになるか、これを明確にしておいてもらいたい。
  183. 大口駿一

    ○大口政府委員 先ほど私がお答えをいたしましたのは、八〇%バルクライン方式で米価をはじく方法と現在の米価をはじく方法との比校論を御質問になったと思ってお答えをいたしましたので、その点、若干私の思い違いがあったことをおわび申し上げます。  今回の、農林水産委員会の御要求でお配りをいたしました資料によりますれば、昭和四十年の生産費調査によって見ますと、平均生産費が百五十キログラム当たり九千八百四十七円、それから八〇%バルクライン生産費というものをかりに計算をいたしますと一万二千四百九十六円、こういうふうに出ております。
  184. 芳賀貢

    芳賀委員 いま食糧庁長官が発言したとおり、全国平均生産費とバルクライン生産費を比較した場合に、昭和三十九年はバルクライン生産費でいけば百五十キロ当たり一万一千三百二十四円、全国平均生産費の場合には九千百十二円ですからして、百五十キロ当たり二千二百十二円差額があるわけですね。これを六十キロ一俵にすると、一俵当たり九百円、計算方式の違いによって差額が出るということになるわけです。四十年の場合には、バルクライン生産費では百五十キロ一万二千三百二十四円、全国平均生産費では九千八百四十七円ですからして、百五十キロで二千四百七十七円、六十キロで一俵約千円の差が出るわけです。ですから、政府の決定というものは、絶えず最低、最悪の条件だけを拾い出して、いかにもこれが生産費・所得補償方式であるというような、そういう欺瞞に満ちた算定をいままでやって、安い米価をきめておるわけです。それでも、まだこれが政治米価であるとかけしからぬというような無理解な一部の国民の非難もあるわけでありますからして、これらの点は、やはり八日から開かれる米価審議会においては、堂々と、いままで政府のきめた米価はこのように安い要素だけを集めてきめたのだから、ことしからは農林大臣が先頭になって、もう少し前向きな米価決定をしたいと思うので、ぜひ米審の委員諸君は協力してもらいたい、このくらいのあいさつをしないと、ことしもまた政治米価だとか、あるいは一万九千円に押えるということになりかねぬわけですからして、この際——この生産費の計算というものは一つではないですね。方法によっては多様にあるわけですから、それをどのような方式を選ぶことによって生産者の納得できるような、日本の農業が自給率の向上を目ざして躍進できるようなことになるかという積極的な算定というものが、米審の中の議論あるいは最終的に農林省がきめる算定の結果というものに対して、われわれははたして期待を持っていいか悪いか、この点を農林大臣から明らかにしてもらいたいと思います。
  185. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府がいままでやりました計算のやり方が、最低のところをとって米を安くきめることばかりやっておったというお話でありましたが、そのおことばはちょっといただけないんで、お返しをいたさなければなりません。政府が非常に努力して今日までやってまいりましたことは、生産者がよく承知いたしておるわけであります。今年はもちろん私どもは生産費・所得補償方式で、合理的で、だれもが消費者もあわせてなるほどわかったというような妥当な線を出したいと思いますので、御協力をお願いいたします。
  186. 芳賀貢

    芳賀委員 きょうはこれでとどめておきますが、ぜひ米審における農林大臣のあいさつの中でも、毎年のように農林省や大蔵省の旧官僚の諸君とか、あるいは御用的な——御用学者と断定するのも差しつかえがあるかもしれませんが、御用的な学者とか、論説委員であるとか、あるいは米なるものに対して全く理解のないような主婦連の代表とか、そういう諸君の力だけを借りて、いかにも米審全体の空気が政府の消極性を支持したというようなことにならぬように、いまの大臣の当委員会で言われたような発言全体を通じて、米価審議会というものが農林大臣の諮問機関としての有機的な機能を発揮できるように、これは農林大臣の最初のあいさつから大いに促進してもらいたいと思います。その点はどうですか。
  187. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府の意のあるところを正々堂堂と述べまして、生産者も消費者も納得のいかれるような米価を決定いたすために最善の努力をいたしたいと思っております。
  188. 本名武

    本名委員長 神田大作君。
  189. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣にお伺いしますが、農林省の試案ができたということが各新聞に報道されておりますが、農林省はこの米審に諮問する案ができておるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  190. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 新聞でいろいろ書いてあるよでありますけれども、新聞をおつくりになる方非常によく勉強しておりまして、そうして自分たちが知っておる計数に数字を当てはめていくと、まずこんなことを言うのじゃないかというようなことを——私どもにも新聞社の人が御説明になりまして、どこでどうやって勉強しておられるのか感心するわけでありますが、しかし、政府はまだ何も出しておりません。
  191. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣はなかなかうまいことを言っておりますが、少なくとも八日に諮問をするというものが、いまいろいろの試算が行なわれておって、それらの有力なものがやはり新聞社でもってすっぱ抜いて出しておるのだろうと私は思うのです。これは八日に諮問に付するものがいまできてないというようなことでは仕事にならぬわけでありますから、私は、そういう意味合いにおいて、正直に、実はこういう方式でもって諮問をするつもりであるというのを、少なくとも国権の最高機関である国会に話しても何ら差しつかえないのじゃないかと思うのですが、その点いかがでございますか。
  192. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のとおりでありまして、国権の最南機関たる国会に何もお隠しすることはないのでありますけれども、さっきもちょっと申しましたが、十日に始めようということで米審の会長と話しておったのが、急遽二日繰り上げられたということで、私も最終的な判断はまだいたしておらないわけであります。したがって、その最終判断をしますには、神田さんのほうでもそうでありましょうが、それぞれの所属政党の人たちと御相談をして、これでよかろうということになって初めて政府としての方向がきまるわけでありますから、何も隠しているわけでありませんで、まだ私が十分に説明を聞いておらない、これからまだやるわけでありますから……。
  193. 神田大作

    ○神田(大)委員 それではお尋ねしますが、いま生産者の皆さんが強く要望をしておりまするところの、いわゆる所得均衡方式による、特に労働賃金の算定については、都会の労働者と匹敵する労働賃金による所得均衡方式を要望しておるのでありますが、これに対しまして大臣はどうお考えになるか、お尋ねします。
  194. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は、さっきも申し上げましたが、農林大臣という立場を離れて、あの賃金論を批判せよというお話であるならば、おのずからここで明快にやるかもしれませんけれども、いまは農林省を代表して申し上げておるわけでありますから、なるほど農業団体からお説のような御意見がございました。これにつきましては、実は十数回農業団体と食糧庁の担当官とがいろいろ打ち合わせをいたしまして、意見の一致しない点もありますが、要するに、取り上げられることは、去年もそうでありましたけれども、五人以上の全規模の労働賃金、これを参考にしてやるということにいままでなっておるようでありますから、その方式は取り入れても差しつかえがないんじゃないか、私どもはそういうふうに理解しています。
  195. 神田大作

    ○神田(大)委員 これはさっき芳賀委員のほうからも話があったようですが、この五人以上の規模労働者の賃金ということになると、農民の労働賃金というものが正当に評価されないと思うのです。  それでは率直に申し上げますが、五人以上規模労働者の賃金の中に、退職金あるいはまた法定福利費、健康保険料であるとか、その他当然経営者も支払わなければならぬ、労働者も半分支払っておる、これらの法定福利費などは、そこに含まれておるかどうか、お尋ねします。
  196. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういうことについて、いま部内でいろいろ検討しておるわけでありますから、まだ明確に申し上げることはできませんが、また時間のあるときに一ぺん賃金のことについて話し合いを願うことは大事なことだと思いますが、御承知のように、賃金という中で、福利施設とか退職金というものを賃金の中に組み入れておる賃金体系を持っている国家がどこかにありますか。私はそういうようなことから論じてまいりますと、いわゆる五人以上規模の全体の労働者の賃金というものを取り上げてきたと言いますけれども、なかなか問題は多いと思うのであります。そこで、私どもは農業従業者のお立場を考慮いたしまして、できるだけな賃金をひとつ取り入れたい、こう思っています。
  197. 神田大作

    ○神田(大)委員 いま一つ矛盾を申し上げますが、農業者の場合の労働というものは、実働労働ではこれは律し切れない。いろいろ施肥のことや、あるいはまた作業に対する話し合いとか、あるいは集荷調整に対する話し合い、あるいはまたこれらに対する計画というように、実際労働する時間と、米を生産するために必要な労働時間というものがあるわけですが、そういうものをいままでの指数化方式の中においては計算に入れていないのです。このことに対しまして大臣はどうお考えになりますか。
  198. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 神田さんのお話のようなこともよく承って勘案いたしたいと思います。
  199. 神田大作

    ○神田(大)委員 労働賃金等農民の賃金の問題については、時間もありませんからあとでまたお尋ねすることとしまして、政府は一体この米の予約買い入れをいつ公示して、そうして開始するつもりであるか、お尋ねします。
  200. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米価を決定するときにはきめなければいけないと思っております。
  201. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、米価を決定する前にはこれは告示しないつもりでございますか。
  202. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 本来なら前にきめるべきものだと思いますけれども、例年の例を見ますと、ほとんど前の日か同じ日あるいは翌日のようなことであります。
  203. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、やはり前にきめるべきじゃない。幾らに買うかわからないで、おまえら米を売れというようなことは不合理でありまして、価格が幾らになります、それでひとつ政府へ売り渡してください、その売り渡したものに対しましては予約前渡し金をやるというような、そういうことなら話がわかるが、前にきめることは不合理だと私は思うのです。だから、大臣が価格決定のときにきめるということに対しまして私は了解したいと思います。  いま一つ、新聞に出ました問題でありますが、一万九千円台できめるというようなことを言っておりますし、また、指数化方式によってこれを諮問するということを新聞報道では報じておるのでありますが、こうなりますと、ことしの米価審議会も、また国会のわれわれといたしましても、これは納得できない問題であります。先ほどから各委員質問に対しまして大臣は答えましたが、先ほど私も質問いたしましたとおり、農業の労働賃金等においてもすでに矛盾を来たしておりますし、指数化方式の場合は三十九年度を基準としておりますけれども、一体三十九年度の米価がそれでははたして適正であるかどうかということになりますと、これも問題になっておるのであります。こういうようにたくさんの問題を含んでおるものを、本年度も相変らず指数化方式によってこれを決定するということに対しましては、農民団体といたしましても、農民といたしましても、またわれわれといたしましても、これは納得しがたいものでございます。それにつきまして、大臣はあくまでもこれで押し通すつもりでおるのかどうか、お伺いをいたします。
  204. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもは、一般の国民にものごとを知らしてあげる立場の新聞、通信社の人々にはなるべく早くほんとうのことをお話して、国民に知ってもらうことが必要だと思うのでありますが、ただいま米価のことにつきまして申し上げておりますように、まだ諮問案さえ決定しないわけでありますから、何にも新聞関係お話できないで申しわけないと思っているのでありますが、けれども、やはり時期が時期ですから、さっき申しましたように、非常によく勉強している諸君が基礎数字を置いて計算したのが一万九千円というようなことが出たらしいのでありまして、私どもは全然そういう数字には責任もありませんし、関係もありませんが、これはよく勉強してああいうものをつくったものだと、ただ感心しているだけであります。
  205. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、この一万九千円台の問題は大臣は関知しないし、指数化方式でもって諮問するというようなことに対しましても決定はしていないということでございますか。
  206. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そのとおりでございます。
  207. 神田大作

    ○神田(大)委員 この米価につきましては、われわれは常に主張しておるとおり、農家の労働賃金を正当に評価して、そうして米の再生産も極力進めてもらいたいという観点に立って、大臣のいまの答弁はわれわれの意向も十分聞いて諮問されるものと私は考えまして、この点は時間もありませんからこの程度にしておきたいと思います。その点、農林大臣もだいぶ話がわかるようでございますから、よろしくひとつお願いしたいと思います。  次に、私は、時期別格差について大臣の考えをお尋ねいたします。
  208. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 時期別格差という問題も、北陸四県から超党派でその御要望がございまして、承っておるわけでありますが、これも何とか片づけなくちゃいけないと思っております。
  209. 神田大作

    ○神田(大)委員 どういうふうにこれを片づけるのか、そこが一番問題だと思うのですが、大臣は一体どういうふうにそれを片づけるつもりでおるのですか、お尋ねします。
  210. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 まだ態度を申し上げるときにきておりませんけれども、およそ政府としても常識的なところで片づけたいと思っております。
  211. 神田大作

    ○神田(大)委員 これはもう長い間の、農民としては一つの既得権のようなものでありますので、これを廃止するというような声も聞いておるので、それに対しましてわれわれも非常に憂慮しておるわけでありますから、この問題はやはりいままでどおり時期別格差をつけて、そして生産意欲を高めてもらいたい、このように考える次第であります。  次に、食管の赤字の問題で先ほど説明がありましたが、食管は生産者米価が高いために赤字が出るということを誇大に宣伝しているようでありますが、先ほどの答弁等によりますと、これは大部分が事務費であり、あるいはまた諸経費であります。実際のこの赤字というのは百九十二億円程度であるように私は記憶しておるのでありますが、実際のこの事務費あるいは諸経費その他を差し引いて、純然たる赤字というものは一体幾らであるか、御答弁願います。
  212. 大口駿一

    ○大口政府委員 どれを純然たる赤字というかという議論を避ける意味で、売買損益と経費に分けてお答えいたします。  国内米管理勘定の損失、四十二会計年度予算に基づきますと、千百四十八億の中で、売買価格の価格差だけの部分は百九十二億でございます。
  213. 神田大作

    ○神田(大)委員 たった百九十二億の赤字を千五百億あるとか六百億あるとかというような宣伝をわれわれは聞いておりますが、政府はこのように食管赤字の本質を誤らせるようなことを宣伝して、そうして生産者の米価は高いのだというふうに世論を喚起しているように思われますが、これははなはだけしからぬ話だと私は考えるわけです。こういうことであれば、この純然たる食管の赤字を事務費あるいは諸経費等を分けて当然経理すべきであるということは、われわれは前々から主張しているにかかわらず、それをごちゃごちゃにしていいあんばいに発表して、そうして消費者の皆さんの消費者価格を値上げする一つの材料にもこれはなっておるのだろうと思います。こういうことだと、私は、今度十月に一四・四%消費者米価を上げるということになると、政府はもうかってしょうがないのじゃないかと思うのだが、それはいかがですか。
  214. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は、会計というのはいわゆる会計でありますから、その特別会計を運営していく一般管理費というものは、会計として負担するのがあたりまえだと思っておりますけれども、いま売買の差額だけで申せば、食糧庁長官お答えいたしましたのが実際でございましょう。しかし、政府は赤字だ、赤字だ、そのために消費者米価を上げなければいかぬなんという宣伝はちっともしてないのであります。政府はそういうことを一般に宣伝してないのです。ただ新聞等にはございますが……。  そこで、私どもといたしまして、ただ考えておりますのは、いまのような逆ざやのままであっていいかどうか、そういう会計制度のたてまえから、心配いたしておることはいたしておりますけれども、これがために非常に赤字が多いというようなことを故意に宣伝して、そうして消費者に恐怖感を持たせるようなことをちっともやってないのであります。
  215. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣は大臣の立場でそう言うでしょう。しかし、事実においては、新聞、世論その他学者等においては、千五百億も赤字になっている、政府がそんな高い財政負担をしたのではたまらぬというようなことは、これは皆さん言っているわけです。それの内容をよく発表しておらないから、そういう誤解を生んでいると私は思うのであります。それで、私、この食管の諸経費並びに人件費等については、あとでこまかく御報告をお願いして、その内容資料をお願いします。そうしてこれについてあと質問をいたしますから、その質問をきょうは保留しておきます。ここには不当な経費あるいは非常に節約をしなくちゃならぬ経費が私は入っていると思うのです。こういうことに対しまして努力をしないで、できるだけ生産者米価を下げよう、そうして時期を見ては消費者の米価を上げて、政府がうまく財政負担をのがれようとするような、こういう考え方は、まことにもってけしからぬ話でありますし、同時に、少なくとも日本の国民の食糧を保障するという意味合いにおいて、一千億や二千億の管理費は当然出すべきである、それを理由にして世論を惑わしておるということは、私はまことにまずい話であると思いますから、この点について大臣も率直に——これらの世論を誤らしたところの責任は政府にあると思うのでありますから、その点について大臣の答弁を願いたいと思います。
  216. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府は、国民を誤らせるために特に宣伝をいたした覚えはありません。  それから、もう一つお間違いではないかと思いますのは、政府はいろいろな口実を設けて生産者米価を安くしょうとやっている、そういうことはとんでもないぬれぎぬでありまして、政府及び自由民主党というのは、元来が先ほど来申し上げておりますように、生産者の所得を補償するというたてまえで、できるだけ米作農民のためを思うことをやっているわけであります。しかし、一方において消費者の関係もありますので、バランスのとれた、調和のとれた経済が営めるように生産者米価、消費者米価をきめてまいりたい、こういうたてまえでありますから、どうぞ政府の立場を御了解願いたいと思います。
  217. 神田大作

    ○神田(大)委員 いま大臣が答弁されましたが、私は数字を言う時間がありませんから申しませんが、率直に言って、百俵の米を売り渡すためには、諸経費を除くと大体五十六万円、これは種苗費やいろいろな経費、資本利子、地代等を引きますよ。労働者の所得が月給三万五千円、賞与等を入れて十六カ月に勘定しますと、これが五十六万円。三万五千円の給料をとる労働者と百俵の米をつくる農民とが同じだ。これは常識的に考えても、いかに農民が自分の労働に対しまして低い報酬しか得られないかということが私はわかると思う。これでも自由民主党並びに政府の皆さんは農民の米価を上げるために努力をしておるのでございますか、お尋ね申し上げます。
  218. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 どこの国でもそうでありますが、大体他産業と比べて、農業者の所得というものが平均して低位にあるということはいなめない事実であります。しかし、片方の職場で働く人々は、空気の悪い工場の中で、そして限られた時間拘束を受けて非常な御無理をしていらっしゃる。片方はだれにも拘束を受けないで、いい空気を吸って、天然を相手にして自己の責任においてりっぱな経営をしておいでになるわけであります。そういうところにおいては、私は生活環境において格段の相違があると思いますが、しかしながら、なおその労働たるや相当なものでありますから、あるいは農民年金の制度を設けたり、あるいは後継者育成資金というような無利子の融資をやって、農家あと取りがどんどん喜んで土に親しんでいただくように、そして都会地の若い娘さんが農家あと取りに嫁に来てもらえるような環境をつくり上げるということで、その間の格差をだんだん縮めていこうではないか、こういうことでありますから、政府としては財政にゆとりはありませんけれども、そういう方向で全力をあげて農村のために働いてまいりたい、こういう政府のたてまえであります。
  219. 神田大作

    ○神田(大)委員 どうも大臣の答弁はまことに名答弁をしておるようでございまして、私がこれに反駁するのもちょっとおかしくなるようなことでございますけれども、空気がよいところで働くから安くてもいいという、そういう理屈は立たぬと私は思うのです。大臣は、農産物というものは安い、特に米価というものに対して安いというようなことをおっしゃいましたが、その点はそういう御認識があれば、そういう意味合いにおいて、今度の米価決定に対しましては、全力を尽くしてこれら農民の生活を守り——都市と農村との所得の均衡をとるということは、農業基本法においてはっきりうたっておる。都市と農村との所得の均衡がないところに、農村に嫁も来なくなる、働く若者もいなくなるということでございますから、その点を十分認識されまして、そして今度の米価の決定は、農民の要求する所得補償方式によってぜひやってもらいたい。  同時に、先ほど私が申したように、食管赤字の問題等につきましても、これは決して赤字にならぬ方法があると私は思うのです。食管のいわゆる管理の方法をもっと検討し、近代化することは、それこそ農林省自分でやることですから、もっと能率的にやっていきますれば、こういう問題は解決するものがたくさんあると思う。そういう意味合いにおいて、ひとつがんばって、大臣は米価を十分生産者の要望にこたえるようにおきめ願いたいことを要望いたしまして、この次にまた大臣に質問することを保留いたしまして、私の質問を終わります。
  220. 本名武

    本名委員長 次会は、来たる十一日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十六分散会