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1967-05-24 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十四日(水曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 仮谷 忠男君 理事 倉成  正君    理事 高見 三郎君 理事 長谷川四郎君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 東海林 稔君 理事 玉置 一徳君       安倍晋太郎君    小澤 太郎君       大野 市郎君    熊谷 義雄君       小坂善太郎君    坂田 英一君       坂村 吉正君    田中 正巳君       野呂 恭一君    藤田 義光君       粟山  秀君    伊賀 定盛君       栗林 三郎君    佐々栄三郎君       實川 清之君    柴田 健治君       島口重次郎君    森  義視君       中村 時雄君    中野  明君  出席政府委員         農林政務次官  草野一郎平君         農林省蚕糸局長 石田  朗君  委員外出席者         農林省農林経済         局統計調査部長 松田 寿郎君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五四号)      ————◇—————
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。東海林稔君。
  3. 東海林稔

    東海林委員 日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案につきましては、先週来、各委員から相当多面にわたって政府委員との間に質疑の交換があり、さらに昨日は、四名の参考人意見を聴取し、質疑を重ねたわけでございますが、私は、なお相当多数の点についてわからない点がありますのと、なおこれまでの質疑の中で政府委員答弁に納得しかねるような点がございますので、以下、若干質問をいたしたい、このように思うわけです。  まず、戦後における政府蚕糸業に対する政策がきわめて一貫性を欠いておった、こういう点にかんがみまして、私は、今後の蚕糸業に対する政府基本的な考え方をはっきりさしていただく必要があろう、こう思うのでございます。あらためて申すまでもないのでありますが、戦争中非常に食糧増産等のために蚕糸業が荒廃したという点からしまして、戦後ではこれが復興のために、相当国あるいは関係府県におきましても積極的な増産政策を進めたわけでございますが、三十二、三年の暴落を契機として国の政策が全く一変しまして、老朽桑園整理というような名目のもとで、補助金まで出して桑園の減反を指導したわけでございます。そして三十六年の農業基本法制定の際におきましても、私は、当時の農林大臣に対して、養蚕業について政府は今後どうするのかということをただしたのに対しまして、現状維持の形、したがって、積極的な増産奨励もしないが、また減産の指導もしないのだ、こういうことでございまして、基本法の中の選択的拡大という中には、もちろん養蚕関係は入っておらなかったわけでございます。そして数年間何かはっきりしない態度で経過したのでありますが、四十年度になりまして、今度はさらに今後は養蚕の将来性が明るいので増産を奨励するのだ、またこういう政府考え方を明らかにしてまいりました。今回法案審議参考資料として出されました今後十カ年間の需給見通し等を見ましても、ずいぶんと思い切った増産を期待しておるよう数字が出ているわけでございます。いままでの質疑に対する回答としては、今後は増産を積極的にやっていくのだ、こういう趣旨の答弁があったわけでございますが、ただいま申しますような過去の経緯もございますので、私は、まず冒頭に、大臣にかわって政務次官から、今後の政府蚕糸業に対する基本的な政策、姿勢について、もう一度明確こしていただきたい、このように思うわけです。
  4. 草野一郎平

    草野政府委員 戦後の化繊の出現という事態がありましたために、非常な蚕糸関係変動を見たわけであります。そうした中において、政府指導方針一貫性がなかったと仰せられるのでありますが、むしろ、これはなかったほうがあたりまえであって、そんなときに一貫してとんでもないことをやっておったならば、あるいは取り返しのつかぬ現象が出てきたのではないかとさえ思われるわけでありますが、近年、こうした化繊の大きな伸びの中にありながらも、絹というものの特質といいますか、これは日本国民の歴史、日本人の性格といいますか、そうしたものに本質的に合致する根強い何かがその根底に潜在しておることであろうとも考えられますが、そうしたことが最近の経済の成長に伴う需要増大ともなってあらわれてきておると思うのであります。こうした情勢の中にあって、したがって、需要増大するという見通しを把握しながら、そこに確固たる政策を立てていくべき、動かすべからざる方針を立てるべき段階がきておるのではないか、さように考えておりますので、もうここらあたりでひとつしっかりした見通しを立てながら政府政策を進めていくべきだ、さように考えておるわけであります。
  5. 東海林稔

    東海林委員 ただいまの政務次官答弁の中に、これまでの政策一貫性がないのがあたりまえだ、こういうことばがございましたが、私は、これはきわめて暴言である、このように考えるわけです。指導を受ける農民立場になって考えていただきたい。一貫性がないのがあたりまえなんということで指導ができますか。取り消してください。
  6. 草野一郎平

    草野政府委員 一貫したというその政策内容が問題でありまして、ああした非常に激しい変動の中におって、政府はいかなる指導方針をとるかといえば、それに即応する以外に方法はないと思うのであります。したがって、私は、そのときにはそのときなりに即応した政策をとってきたことに対して、大きなあやまちがあったとは考えておりません。ここまできて、需要が非常に大きな伸びを示すという見通しの立ってきたとき、しかもその需要が安定的な方向をとりつつあるという考え方のできるときにあたって、政府といたしましては、そこに確たる、しかも適切なる方針を立てていくことが必要であろうと考えておるのであります。
  7. 東海林稔

    東海林委員 安定した際の政策というのは一定方向でいく、しかし、非常に流動する情勢があったから政策が変わった、こういうことのようでありますが、流動する情勢であれば、その流動する情勢に即応するやはり一貫性のある政策というものがなければならぬ。一貫性のない政策があたりまえだという考え方は、私は非常に問題だと思います。農民に対して、なかなか情勢がむずかしいのだから、養蚕についてそういう事態の変化に即応できるよう経営形態をとらなければいかぬというよう指導をやったというなら、話はわかります。しかし、当初はそういうことではなしに、積極的に増産増産ということであったわけです。確かに化繊の問題はありました。しかし、化繊の問題があって非常に前途暗かったというのは、化繊と絹の需要に対する見通しについても、政府がはっきりした見通しを持たなかったから、そういう結果になったのじゃないですか。私は、さっきの一貫性のないのがあたりまえだという、そういう政策基本的な考え方については、非常に納得できません。産業に変動があるというのなら、変動に即応し得るよう指導をし、農民もそれに対する心がまえを持って経営に当たるということが必要でありましょうし、あるいは一貫して今後一定の安定した傾向にあるというのならば、それに即応する政策というものがやはりあり、農民心がまえがあっていいのです。いずれにしても、やはり情勢に応じた政策があっていいわけですから、一貫性のないのがあたりまえだというようなことには、私は何としても納得できない。もう一度。
  8. 草野一郎平

    草野政府委員 私のことばが一本過ぎて、どうも御了解を得ないようでありますが、蚕糸政策一貫性ということは、わが国の蚕糸業立場を守りながら、しかもその将来性を見通しながら、そこに蚕糸業に対する一貫性というものは、当然必要であります。しかし、その一貫性の上に立って、そのときそのときにあらわれるところの政治のあり方というものは、ときに変動があるのがあたりまえだと私は考えております。そういった意味において、その根底一貫性のあることは当然であるけれども、そのときそのときの即応した行政のあり方があったということはやむを得ないのではないか、そういう言い方でありましたが、その点において御了解を得なかった点があるとするならば、さように御了承をいただきたいと考えております。
  9. 東海林稔

    東海林委員 押し問答しても始まりませんが、ともかく現在の自民党の農業基本法体制下における農政については、多くの農民は非常に不満を持っておる。不満というよりは、むしろ不信感を持っておる。その中において、養蚕農家が特に大きな不信感を持っておるということは、私は、いま申したよう政府政策にも、また指導態度にも大きな原因があるのじゃないか、このように思うわけです。  そこで、次に進みますが、いま参考資料として配付されました十カ年後における需給見通しというのが出ておりますが、まず第一にお伺いしますが、これは蚕糸局として一体責任を持てる見通しなのか、省議を経て農林省として責任を持てる数字なのか、さらにこれは閣議等の承認を経て政府全体として責任を持てる数字なのか、まず、その点からお伺いいたします。
  10. 石田朗

    石田政府委員 お答え申し上げます。  現在、農林省におきまして、農産物需要生産長期見通につきまして、従来のものと違って、新たなる見通しを立てるというような作業が進行中でございます。それで、現在までの案を昨年暮れに農政審議会懇談会におきまして御討議を願ったわけでございます。ここに提出いたしましたものは、農政審議会懇談会において御討議願いましたものの蚕糸関係部分でございまして、これが最終的に農林省農産物需要生産長期見通しということとして確立いたしますには、正式に農政審議会の議を経て最後決定をいたさなければならないと存じますが、私ども、従来の農政審議会懇談会の御論議からいたしまして、蚕糸局で原案をつくり、懇談会にかけました見通しは、蚕糸関係部分について計数的等に大幅な変動が起こってくることはないのではないかというふうに考えまして、現在のところ、蚕糸局でできましたものでございますが、そういう意味で、客観的にもある程度これは将来正式の農林省全体のものとして確立する見通しがあるというふうに考えて、御参考に提示したわけでございます。
  11. 東海林稔

    東海林委員 そういたしますと、この問題についての議論は、局長責任を持っておるわけで、次官はまだこれはどうも責任を持てないという数字ですか。これから質問する相手もはっきりしなければなりませんから……。
  12. 石田朗

    石田政府委員 これは農林省部内において一応の御説明はいたしてございますが、農林省として最終決定をいたしたというものではございませんので、私がいろいろ御説明を申し上げるべき筋合いのものであろうと思います。
  13. 東海林稔

    東海林委員 私は、蚕糸業の重要な輸出関係についての資料でございますし、また、これが今後の需給関係についての最も基本になるわけで、これをもととして今後の政策が論議され、その一貫としての今回の法律改正でもあろうと思うのですから、一番基礎になる問題が局長だけの責任で、省議も確定してないんだという形で出されたことについては、私は遺憾です。しかし、そういうことをいま言ってもしかたがありませんから、一応内容についての質問を進めていきたいと思います。  まず第一、内需についてでございますが、いままでの質疑の中で、いろいろと抽象的な説明がございました。局長のいままでの答弁の中での抽象的な説明については、私も大体同感でございますが、私がお聞きしたいのは、ここに具体的に十年後に五十万俵という数字が出ておるわけでございますので、その数字基礎をはっきりしてもらいたい、こう思います。
  14. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、これにつきましては、簡単には従来のお答えにも含んでおりますけれども、一応ただいまのお話によりまして、御説明を申し上げますと、内需につきましては、これは従来の種々の計数をはじいてみますと、大体所得増大と相伴いまして、生糸の需要増大いたしておるということで、国民所得年増加率を一応七%として算定いたしますと、内需で十年後に三十八万九千俵に相なる、こういうよう計数がはじき出されたわけでございます。かようにいたしまして、内需は算出いたしております。
  15. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、これは国民所得の増をそのまま持ってきて、ほかの要素は数字的には考えていない、そういうことでございますか。
  16. 石田朗

    石田政府委員 計数的には入っておりません。
  17. 東海林稔

    東海林委員 それじゃ次に、外需の点についても、やはり数字的なことを聞きたいわけですが、これは抽象的ないろんな説明はすでに承っておりますからけっこうですが、まず第一に伺いたいのは、この算定の順序です。これは全体の世界需要をまず見て、そこから日本以外の諸外国における供給可能量というものを差し引いて、日本に期待する数量というものを出したのか、それとも日本における生産伸びというものを算定して、それから内需を差し引いて輸出余力といいますか、輸出能力といいますか、そういうものから算定したのか、それとももっとほかの考え方算定してあるか、それをお伺いいたします。
  18. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたうちの、最初に言われましたものが一番当っておるかと思いますが、アメリカヨーロッパ等におきまする需要伸び算定いたしまして、他国からの供給問題等を考えまして、それで日本からなおこれだけ向こうの需要からして買い得るであろうという見通しを立てたわけであります。
  19. 東海林稔

    東海林委員 昨日、世界的な需要見通しについて、参考人の御意見としては、国際絹業協会、何と訳すのかしりませんが、そこの大体の考え方によると、年率一〇%程度増加するのではなかろうか、こういうふうにお話を承りました。しかし、五十一国会蚕糸事業団法案審議した際に、私ども政府側から伺ったのは、同じ国際絹業協会理事会討議の結論としてお話があったのでありますが、価格が安定するならば五%程度年率増加は期待できるだろう、こういう二年前の答弁でございますが、昨日の参考人の御意見と相当な食い違いがあるわけです。一〇%と五%、しかも前のほうは価格の安定があるならばという条件がついておるわけですが、そういう点につきまして、いまの段階農林省としてはどのように考えておられるか、承りたいと思います。
  20. 石田朗

    石田政府委員 これは将来の見通しでございますが、国際的にも比較的大きく見通す人、小さく見通す人、いろいろあるわけでございます。私どもも、いま先生お話がありました、価格が安定するならば年率五%程度伸びるのではないだろうかというのが、いろいろな意見がございますけれども、それらを全部ながめまして、安全性を見ましたときには、そのよう考え方が一応国際的な一般的な考え方ではないかというふうに考えております。なお、私どもがはじき出します場合にも、いたずらに過大におちいらないように、従来の傾向をながめまして、見通しを立てようといたしておるわけであります。
  21. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、先ほどお尋ねしました外需算定は、世界的な需要から日本以外の他の諸国からの供給見通しを差し引いた、こういう算定をしたのだというお話ですが、その場合の世界的需要というものを計算する場合には、年率五%で計算された、こういうことでございますか。
  22. 石田朗

    石田政府委員 全世界需要に五%の増をかけるというやり方はとりませんで、アメリカヨーロッパその他の国別に、特にわかりますものはアメリカヨーロッパでございますから、その場合の所得伸び率等を従来の傾向により推定いたしまして、おのおのはじき出しておるわけであります。
  23. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、全体的に五%ということでなしに、各需要国の過去の傾向からして、個々に算定したものを合わせたものが外需という形だ、こういうことでございますか。
  24. 石田朗

    石田政府委員 さようでございます。
  25. 東海林稔

    東海林委員 次に、生産の点についてお尋ねをいたします。  私は、私の質問理解していただくために申し上げるのですが、この需給見通しの中で、需要見通しについては、大ざっぱながら、こういうことかなという感じがしないでもないのですが、特に生産については、なかなか容易ではないんじゃないかという感じを持ちながら質問するわけですから、そこをお含みの上、私の質問を正しく受けとめていただきたいと思うわけです。  この資料として出されたいろいろな数字を見ますと、きのうもお話しありましたように、養蚕農家戸数は減っている。一農家当たり桑園面積、掃き立ての箱数はふえている。しかし、十アール当たり収繭量は、最近は必ずしも伸びていないで、やや停滞ぎみだ、こんなふうに見られるわけでございまして、これまでの統計数字からだけでは、十年後にこの七割も増産が期待できるというようなことは容易に出てこないわけでございますが、この数字が出てきたのは、一体どういうところから出てきているかということをひとつ御説明いただきたいと思います。
  26. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお答えを申しますには、二つの側面があろうかと思います。一つには、最後に言われましたように、いかにしてこの数字を導き出してきたかというお話一つであろうかと思います。かつ、いま一つは、それが実現可能性についての問題であろうかと思います。両者は当然に関連をいたしますけれども、いま先生お話しございましたように、最近、たとえばヘクタール当たり収繭量といったようなものが実は停滞しておりますことは、遺憾ながら事実でございます。しかしながら、これには、たとえば近年における冷害と申しますか、気候の冷涼その他の気象的悪条件、並びに最近新植桑園がふえてまいりまして、完成桑園率が減少いたしておるというような事情、こういうような問題が重なっておる点もまた事実でございます。これらの点をいろいろ考え合わせまして、完成桑園に換算いたしまして、被害なかりせばこれくらい取れたであろうという係数をはじき出しますと、やはり現在でも上昇傾向をたどっておるわけでございまして、その上昇傾向をさらに延長し、今後の技術改善等を考慮いたしますならば、一つ係数をはじき出すことは可能であるわけです。そのようなことを考慮いたしまして、ここに現在提示しておりますような、十年後に百キロの反収見通しておるわけでございます。しかしながら、これにつきまして、いまもお話しございましたが、私どもも、手をつかねておってこのようなことが直ちに自然に実現するということではないと思うわけでございまして、これにつきましては、関係者の非常な努力を必要とすることはもちろんであろうかと思います。ただしかしながら、現在県別に最高の反収を上げておられる山梨県は、すでにほぼ反収百キロの線に達しております。その他、従来生産性向上に非常に努力を注いでまいりましたが、これを能率向上とともに一そう反収向上のほうに力を注ぎますならば、このよう反収及び全体の収繭量実現は可能ではないか。ただ、それには十分な努力を必要とするというふうに考えております。
  27. 東海林稔

    東海林委員 私は、新しく奨励する作物というような場合は、技術的にも未熟であるというような点から、あるいは指導面の不十分であるというような点から、今後そういう条件が完備すれば、従来に比べて相当大きく反収伸びるというようなことも考えられるのですが、戦前から長い間、農林省も相当一生懸命やってきたはずです。主産県も一生懸命やってきたはずです。それがこのよう数字に出ているのです。それから、ただいま自然災害というようなことがございましたが、過去の数字を考える場合には自然災害を考えて、今後の数字を考える場合にあまり考えておらぬではないか。私の聞き方がへたなのか、私の聞き取り方がへたなのか、そういうことで簡単にできるというふうには考えられない。先日湊委員の御質問に対してあなたが言われたことは、従来は生産性向上省力栽培等につとめてきた、今後は、一言で言えば、高反収、高能率生産を期待するんだ、具体的な方策としては、技術普及員の活用、構造改善、飼育の機械化土壌調査によって生産力増強、それに一般関係者の協力、こういうようなことを言われたのですが、ここではやや新しいと考えられるのは、構造改善、具体的にはあまりよくわかりませんが、それから、従来機械化もある程度あったが、少ない、それが進んでいくということはわかるのです。したがって、能率的な経営ということはある程度わかるのですが、増産という形にそんなに直結するというには、この間の答弁では、私はいろいろ考えてみますけれども、ちょっと考えられないのです。あなたのこの前おっしゃいましたようなことが、国で具体的に予算的にどうするとか、県でどうするとかというところまで承わると、もう少し理解ができると思うんだが、ただこういうことばを聞いただけでは、私にはさっぱり理解ができない。もう少しそこをはっきりしていただきたいということと、いま過去の数字からして、一定増産係数が出ると言うが、これがどういう係数だか、それを説明していただきたい。
  28. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話しございましたが、もちろん将来の場合にも、従来からの傾向から見まして、ある程度災害があるということは予測して、増収繭量を出していることは当然でございます。ただ、従来の傾向をながめます場合に、それを一応除外して傾向をながめるということも必要ではないか、こういうことをやっておるということでございます。  それからもう一つ、施策の積み重ねの点でございますが、先日試験場長もかなりはっきり申しておりましたように、従来から桑園土壌調査につきまして仕事を進めてまいったことが、全国的に一つ段階に達している。したがいまして、これを基礎といたしまして、一つ施肥基準を全国的に確立するという段階に到達しておるわけでございます。これと相呼応いたしまして、現在全養連その他蚕糸団体が一丸となりまして生産増強推進協議会というものができておる。このよう繭増産推進協議会におきまして、いまの肥料の増投、堆厩肥等有機物増投、あるいは消毒の徹底による病害虫の防除、こういうことを推進しておられる。このような国の基礎的な方向及び団体の運動、これらが相一体になりまして、一つ土地生産という面について、私はかなり大きな期待が持てると思うのでございます。  もちろん、これらは、ただいまの能率の増進なり全体の経営の大規模化なり、こういうものと関連して進行してまいるであろうし、また、これらと関連して指導推進をはかってまいらなければならないということはもちろんであろうかと思います。
  29. 東海林稔

    東海林委員 いま御説明にあったような点は、私をして言わしめれば、主産県ではほとんどやっておったことです。したがって、もしほんとうに大きな増産が期待できるというならば、いま局長が答えられたようなことでなしに、いままでいわゆる養蚕をあまりやっていない地帯で、今後新たに非常に大きい面積桑園となり、養蚕地帯となり得る、こういうような新たな見通しをお持ちだとするならば、そういうはっきりした御説明があれば、私は納得できるのです。いままでの御答弁では納得できない。そんなことはみなやっておることです。そんなことで十年間に七割の増産というようなことは、夢物語りで考えているとしか私には考えられない。ですから、この前の五十一国会蚕糸事業団法を可決する場合に、参議院の附帯事項の中に、山村地帯における養蚕振興について大いに努力せいということが出ておるわけですが、そういうことについていままでどういう努力をしたか、また、いま私が申しましたように、新しい地帯に相当大規模に養蚕の振興が期待できるのかどうか、そういう点がはっきりすれば私もやや安心できると思うのです。そこらについて、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  30. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、確かに従来も養蚕農民養蚕技術指導者、これが非常に努力をしてまいったことは事実でございます。しかし、高反収を目ざして非常に集中的な努力をいたすというやり方自体は、最近におきまして特に格段と前進を見せておるということもまた事実でございます。それで、これらにつきましては、ただいまもお示しございましたように、先進地と後進地域あるいは振興地域というべきものでは、おのおの多少ずつ様相が違っておろうかと思います。しかしながら、先進地といわれております地域におきましても、なお技術の入り方にアンバランスがあり、地域的な技術格差もございます。したがいまして、これをできるだけ高い水準にそろえてまいる、あるいは後進地域を先進地域内まで引き上げてまいる、これはひとつ大きく必要であろうというふうに考えておるわけでございます。  かつまた、新しい桑園を開くといったようなことについて考えないか、こういうお話でございました。現に南九州あるいは表東北におきましては、そのような山村地域の桑園の前進がかなり見られるわけでございまして、ただいま山村地域における問題のお話ございましたが、この前もお答え申し上げましたとおり、開拓パイロット事業であるとか、あるいは山村振興対策事業であるとか、こういうものを活用いたしまして、養蚕をこの作目に取り上げていくという事例が次第にふえておるわけでございまして、このよう傾向は、私どもも、立地の適切を要するという点はございますから、それらに注意を払いつつ、十分なる指導をはかってまいりたいというふうに思うわけでございます。
  31. 東海林稔

    東海林委員 いまお話しの中の、たとえば南九州でありますとか、あるいは表東北地方ですか、そういう地帯において、従来あまりなかったところに養蚕が進んできておるということは、これは私も知らないわけじゃないのですが、それは農林省の計画的な指導によってふえておるというのではなしに、他作物が採算が合わなくなったので、そういう地帯に、県なんかの努力もありますけれども、入ってきておる、こういうような形だと思うのです。  私がお聞きしたいのは、参議院の決議にもありますように、政府がそういうものに対して計画的に、積極的に取り組んでおるのかどうかという点が問題だと思うのです。そうでなければ、地元のそういう他産物との関係において養蚕伸びたとしても、またいつ何どき消極的な形にならないとも限りませんし、そういうことになりますと、なかなかそういうものを生産増の計算に入れるということが容易じゃないんじゃないか。計画的に国が指導をやってこういうふうになるということであれば、それをはっきりした数字として織り込むことは可能だが、いまのような状態では、計算しようにもなかなかできないんじゃないですか。
  32. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたが、私ども養蚕の振興推進につきまして十分に努力を払ってまいりたいと思い、また従来もやってまいったつもりでおります。この場合に、しからば計画的に上から生産量なり個々の地域をどうするということを割り当てる、必ずしもそういうことだけではございませんで、養蚕農民、実際の農家の方々の自主的な意欲と政府なり県なりの指導が相一致しましたところに、この推進がはかられるものというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、こういうような新しい振興地域の推進なり前進も、これはやはりそのような形で進んでおるわけでございまして、これに対しまして、私どもも十分積極的な姿勢で推進をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  33. 東海林稔

    東海林委員 それでは次に、蚕糸の予算関係についてお伺いするのですが、国が積極的に施策をするとか熱意を持ってやるといいましても、問題は、予算にそれが出ないことには効果がない、本物でない、こう思うわけです。そこで、今年度の蚕糸局所管の予算を見ますと、全体でたしか二十八億程度でございますが、これは今回の事業団の行なう輸出生糸の買い入れ事業に対する関係で十億の出資がございますから、それをとると、わずか十八億というふうに私には考えられるわけでございますが、もちろん、そのほか、ただいまお話の出ました構造改善事業の中で、地元の盛り上がる形で主幹作物として養蚕を取り入れておるという点もあると思いますが、いずれにしても、まことに小さいですね。本年度の農林省の予算五千十三億に対して、かりに出資を入れて二十八億と計算してみましても、何と〇・五六%、こういうことですね。いかに蚕糸局長能弁をふるってここでお話しされても、実際出ている姿がこれでは、私はほんとうに熱意を持ってやっていると——蚕糸局長は熱意を持ってやっているかもしれぬが、農林省全体としてやったというふうにはとうていこれを受けとめかねるのですが、政務次官いかがでございましょうか。
  34. 草野一郎平

    草野政府委員 その部分だけをおとりいただきますと、全くそのとおりで、心細いことなんですが、構造改善とか土地基盤の問題とか、そうしたところへぶち込んでおる部分もありますので、それらの数字を合わせればそれの何倍かにはなってくるはずでございます。しかし、それでもまだ少ないじゃないかと仰せになればそのとおりでありまして、いま非常な意気込みで、ここでひとつ蚕糸業の勃興をはかろうというときでありますから、これは皆さんの御支援も得て、今後ひとつ高めていかなければならぬ、さようにも考えられます。その他の部分に含まれている数字等につきましては、局長のほうからまたお話しいたします。
  35. 東海林稔

    東海林委員 この間、予算分科会で、高田委員質問に対する局長答弁、それから官房長の答弁なんか見ますと、構造改善の中に含まれている養蚕関係その他いろいろなものを最大理屈をつけてかき集めて二%程度、こういうよう数字になっておるようですがね。農林省に局の数がそんなにたくさんあるわけでもないのですが、蚕糸局が多目に見て二%としましても、何としてもこれは問題にならぬという気がするのです。もちろん、養蚕は御承知のように、生産地帯がやや偏在しておるという点はございます。しかし、いわゆる蚕糸業全体としては、これは過去においても日本の農業というよりは、むしろ全産業の中で果たした役割りも多いようでございますし、今度の皆さんのこの提案理由説明を見ましても、ずいぶんと高く評価したような表現がされておるわけですね。今後安定的に発展することが期待される農業部門というようなふうに、相当な評価をされておるわけです。そういう中で、何ぼひいきに見ても二%にならない、こうはっきり出ておるのでは、十億入れて、さっき申しましたように〇・五六%、こういうことですから、よほどこの際がんばっていただかなければいけない。国の政策というものは、繰り返すようですが、予算を伴わずにいかにいろいろなことをおっしゃっても、そんなに効果があらわれるものではないはずですから、そのような点を特に私は指摘をいたしたいわけです。いずれにいたしましても、参考として出されました十カ年の需給見通しについては、これはぜひ政府全体の責任ある見通しをはっきりしてもらいたい。いずれにいたしましても、政策というものは、そういうはっきりした見通しに立ってやるのでなければ、先ほどいささか悪口を言ったようでありますが、どうしてもぐらつきやすい。いろいろと世界養蚕、蚕糸情勢が変わってくるということも、それは考えに入れなければならぬが、きのうの参考人の御意見等を見ても、当分この需給関係は変わらないだろう、こういうことでございますから、それならば、はっきりこれは政府責任ある見通しとして出してもらって、それに対する積極的な予算措置対策もぜひ考えてもらいたい、このように思うわけです。  次に、蚕糸業でございますから、養蚕ことばかりでなしに、製糸関係のことをちょっとお伺いしたいと思うのですが、御承知のように、従来は過剰の機械をある程度整理して、そうして近代化するということを積極的に進めてきておられるはずでありますが、現在、当初の計画に対してどの程度までそれが進んできておるかということをまずお伺いいたします。
  36. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたように、製糸業におきましては、戦後いわゆる従来の多条機から自動機への進展がございまして、いわゆる器械製糸の部門におきましては、大部分この自動機へ移っておるわけでございます。さらに現在、この自動機への転換の、いわばもう一つ先の問題といたしまして、この製糸業全体の近代化計画を立てまして、全体の工場規模その他におきましても、できる限り一つ能率ある体系に持っていきたいということで、近代化計画を推進いたしておる次第でございます。
  37. 東海林稔

    東海林委員 いま、計画を立てた当時に対してどの程度進んでおるかということをお伺いします。——いまその数字がなければあとでいいですが、そこで、それに関連して、もう一つお伺いしたいことは、今後の、先ほどから議論しました十カ年の需給見通しというものは、非常な飛躍的な拡大を期待されるわけですが、近代化計画を変更するような必要はないのかどうか、そういう考えがあるのかどうか、そういう点をもう一つ……。
  38. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございました点、あるいはちょっと私の聞き違いがあったかと思いますので、もしそうでしたら御訂正をいただきたいのですが、先ほどお話ございました自動機への転換は、器械製糸においてはほとんど大部分自動機になっておるという点は、先ほど申し上げたとおりでございます。かつ、近代化計画につきましては、現在、規模その他の点において合理化をはかるという点で推進を進めておりますが、しかもなお、現在におきましては、全体の機械設備数は過剰ではないかという問題がございます。この点につきまして、いまお話ございましたのは、全体の生産拡大の計画があれば、これについて再検討してはどうかというお話であろうかと思います。この点につきましては、私どもも今後の生産見通しを十分に考えて、近代化計画あるいは構造改善計画を立てなければならないと存じますが、現在における自動機の普及状況及び現在非常に多数に分散いたしました工場のあり方、そういう点を考えあわせますと、現在繊維工業全体について、いわば構造改善といった仕事が進んでおります。そういった意味で、やはりこの点では業界内部でいろいろ検討が加えられてしかるべきではないか。また、業界内部でもそういう検討が進められておるわけでございまして、近代化計画の改定と申しますよりは、その構造改善の計画を立ててまいります場合に、生産見通しを考慮に入れてまいらなければならない、こういうことになろうかと思います。
  39. 東海林稔

    東海林委員 最近内需が非常に旺盛で、供給が苦しいという形からして、群馬県の実情なんかを見ましても、国用製糸とか座繰り、玉糸等が非常に原料難に苦しんでおる。しかも、これらはいずれも中小業者でございますので、非常にむずかしい問題ではあるわけですが、いまの製糸業の近代化と関連して、これらの従来からの業者について、国としてはどういうふうな考え方を持ち、指導ようとされておるか、その点をひとつはっきりしてもらいたい。
  40. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたのは、玉糸ないし国用の小規模製糸の問題であろうかと思います。この点につきましては、基本的には製糸業界全体の近代化なり構造改善の一環といたしまして、それらの部門においてもやはり近代化がはかられてまいらなければならないことは当然だろうと思います。しかしながら、これを器械製糸と国用製糸とを一律な形で問題を提起することもいかがかと思いますので、そのおのおのの実情をよくながめ、各業界内部の見解もよく聞きまして、業界内部の動きと、かつ全体の指導方針なり動向というものをにらみ合わせて、指導をやってまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  41. 東海林稔

    東海林委員 私は、国用なり玉糸業者と器械製糸関係は、大体においてある面においては利害が共通しますけれども、原料獲得という点からいうと、これは競争相手なんですよ。なかなかお互いの話し合いでうまくいくというふうに簡単には、これは長い間の問題だけれども、さっぱりいっていないように思います。そういう意味で、これらについても国としても一定指導方針というようなものは明示して、そこらをあっせんするなり、何かはっきりした対策を講ずる必要があるのじゃないか。現在のように特に原料不足の場合は、もう非常に混乱を——昨年なんかも御承知のように非常な混乱だったですね。そういう点を防止する意味からしても、何か適切な指導対策というものが必要なんじゃないか、こう思うのですが……。
  42. 石田朗

    石田政府委員 同じ製糸業界の内部でございますから、内部自体で話がつけば最もけっこうだと私どもは思うのでございます。しかしながら、いま先生お話ございましたように、器械製糸と国用の二部門につきましては、なかなかお互い同士では話がつかない場合が多いこともまた事実でございますので、この点につきましては、私どもも十分その間の調整をはかることに努力をしてまいりたいと思います。かつまた、ただいまお話がございました原料繭のそれらの間における調整でございますが、これについては、特に繭主産地の小さい製糸業のほうがなかなか苦しい立場にあるというような事情もございますので、それらを含めまして、特に本年繭の取引について関係業者間の調整をはかるという点については、特に努力いたしたいということで、すでに関係各県とそれらの体制をとっておるところでございます。
  43. 東海林稔

    東海林委員 それから器械製糸同士における原料争奪の問題でございますが、一つの府県でありますと何とかうまくいく。ところが、その製糸設備と繭の生産というものが地域によってアンバランスがあるために、不足な地帯では何とかして主産県でとってこよう、こういう問題が起きるのですが、御承知のように、なかなか県同士の話し合いはうまくいかないのですね。業者でももちろんうまくいかない。そういう点については、もちろんこれは業者の責任でもあると思うのですが、やはり国としても何らかの指導をすべきだと思うのですが、いかがですか。
  44. 石田朗

    石田政府委員 ただいまのお話は、業界、それから各地方自治体及び国が一緒になって努力をすべきものと考えております。昨年におきましてそれらの点でかなり混乱がございまして、この点関係者みなが遺憾に思っておるところでございますので、農林省といたしましても、この点は腰を据えた指導をいたすという体制をとっておりますし、県及び業界においても、この点については非常な決意をもって臨んでおられますので、今後それらと連絡をとりまして、この点の混乱が起こらないように十分注意をいたしてまいりたいと思います。
  45. 東海林稔

    東海林委員 次に、生糸の価格関係についてお尋ねをいたしたいと思いますが、まずお尋ねしたいのは、四十年後半から非常に糸価が強気でずっと引き続いておるわけでありますが、その理由をまず第一にお聞かせをいただきたい。
  46. 石田朗

    石田政府委員 ただいまの点でございますが、これは一昨年の晩秋及び昨年の春繭、これについて実はかなり不作でございました。一面におきまして、全体の傾向といたしまして、先日来御説明申し上げておりますとおり、国内需要は非常に強調でございます。そのような点から、需要強調な側面にそのような不作が出てまいりましたので、この点で一昨年の暮れから上昇傾向をたどってまいったわけでありまして、昨年春繭の情勢に至りまして、これがかなり大幅な上昇になってまいったように思います。引き続き夏繭もあまりよくございませんでしたので、最後に晩秋はかなりこれを取り戻したのでございますが、なおかつ高い水準で推移をいたしておるというのが実態であろうと思います。
  47. 東海林稔

    東海林委員 いまの御説明は、大体需給関係からの御説明でありますが、今回の価格形成の中に、生糸取引所とかあるいは乾繭取引所の取引関係というようなことが影響している点があるかないか、そこもお尋ねいたします。
  48. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話しございました取引所の問題これは取引所につきましては、生産者のいわば保険的なヘッジと申しますか、こういう機能を持っておるというようなことで、全体の生糸の流通の中に役割りを大いに果たしておるのでございますが、一面におきまして、三十八年に見られました事例は、ある特定の会社が買い占め等をいたしまして、暴騰、暴落をいたしたというような事例がございます。そのような経験にもかんがみまして、取引所に対する監視、監督は、私ども十分これをはかっておるつもりでございまして、昨年の値段の値動きにつきましては、三十八年当時のような特定の仕手による撹乱というような事例は必ずしも見られぬのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。なお、監督につきましても、昨年の夏以来、実は九次にわたる取引所規制を、取引所当局の協力によってこれを行なってまいっておりまして、それらの点も取引所の過当投機防止に大いに役に立っておるというふうに考えておるわけでございます。
  49. 東海林稔

    東海林委員 この生糸取引所あるいは乾繭取引所については、御承知のよう蚕糸事業団法をつくる際にも、本院の附帯決議の三項にもそれが出ておるわけですが、一応いまの御説明では、その後あまり不都合な動きはなかった、こういうようなことでございますが、大体規制措置といいますのは、保証金の増額ということは私どもは一応聞いておるのですが、そのほかにどのようなことをおやりになったでしょうか。
  50. 石田朗

    石田政府委員 規制措置といたしましては、いろいろな方式がございます。あるいはふところ玉の公開であるとか、あるいはバイカイ、つけ出しの制限といったようなことを基本的に行なっておりますし、その他、証拠金の増徴であるとか、あるいはいろいろな建て玉に直接関連する規制もございますが、従来各取引所で行なわれております規制は、証拠金のいろいろな方式による。この証拠金についてもいろいろなものがございますが、それをその事態に応じ適切に徴収等をいたして、増徴いたしてまいるというような形式が多いようであります。
  51. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、農林省の見解としては、取引所については現在やって相当効果をあげておる、規制措置を講ずればそれで十分であって、生糸取引所や乾繭取引所の抜本的な改正というようなことについては、考える必要はないというふうな御見解でございましょうか、その点ひとつお伺いいたします。
  52. 石田朗

    石田政府委員 現在、政府全体といたしまして、商品取引所関係の法律の改正の用意を取り進めておるわけでございまして、この点につきまして、一つは委託者保護というような側面もございますが、また過当投機防止等についても措置がいままで以上講じられるようになるかと思います。基本的にはそのような用意が進んでおりますが、また生糸、乾繭関係は特殊の問題もございますので、われわれといたしましも、今後十分この問題については監視、監督を怠らないようにいたしたいというふうに思うわけでございます。
  53. 東海林稔

    東海林委員 次に、それでは四十二年度の価格規制関係についてお伺いしたいわけです。  提出された資料によりますと、四十二年度の基準糸価は五千五百円ということになっておるのでありますが、この算定基礎を明らかにしていただきたい、このように思います。
  54. 石田朗

    石田政府委員 基準糸価につきましては、これは蚕糸事業団法の規定に基づきまして、これを中心に安定せしむべきであるという事業団の買い入れ、売り渡しの価格の基準として定めるものでございまして、これにつきましては、各般の要素を加味して定めるべきものであろうかと思います。で、これについて現在の生産費、需給状況その他を勘案いたしましたが、これは昨年におきましては、結論におきまして、大体生産費の九四%程度の水準に基準糸価がきまっておったのでございます。現在の需給状況その他を勘案いたしまして、ほぼ生産費の一〇〇%の水準に結論的に当たりますところの五千五百円に基準糸価を定めることにいたしたのでございます。
  55. 東海林稔

    東海林委員 この基準糸価の算定は、昨年は生産費の九四%であったが、ことしは一〇〇%にした、こう言うのですが、生産費というのは四十二年度の生産費でなければならぬように私は考えるわけです。もちろん、四十二年度の調査というものがないから、過去の調査から労賃とか物価の上昇、そういうものでもって修正したものでなければならぬというふうに考えるし、ほかのいろいろな生産費を論ずる場合にはそういうふうになっていると思うのですが、この生糸の場合は昨年度の調査そのままをとっておるよう感じがいたしますが、どちらですか。
  56. 石田朗

    石田政府委員 ここの場合に生産費として基礎として考えましたものは、われわれの把握し得る最も新しい生産費、こういうことでございます。その把握し得る最も新しい生産費をもってこの考え方基礎生産費として組み立てをいたした、こういうことでございます。
  57. 東海林稔

    東海林委員 それは非常におかしいと思うのです。物価とか労賃が非常に安定しているときなら、私はその理屈もある程度わかると思うのです。しかし、いまのよう政府みずから労賃なり物価の値上げをやっておるし、また一般的に上がることをちゃんと認めて、ほかの政策にも計算に入れておるわけです。そういう場合に、この基準糸価の生産費だけは最も新しいものだからというので昨年のままとった、こういうのではどうも納得できないのです。かりにそういうとり方をするとすれば、先ほどお話がありましたように、基準糸価というのは、そのほか、経済事情だとか国外における糸価等を参酌するということになるわけですから、当然そういう事項が参酌されて、生産費一〇〇%プラスアルファでなければならぬ。そういう考え方を実際とっておる場合には、あるいは昨年の生産費をそのままとるということも一つ考え方かもしれませんが、そういう点を考慮していない、生産費一〇〇%、昨年より六%よけいとったということで何か満足したよう意味での答弁では、私は非常に理屈に合わないと思うし、これは不都合だと思います。どうでしょうか。
  58. 石田朗

    石田政府委員 この場合の基準糸価は、これは生産費そのものをいたすとか、こういうことのあれではございませんで、諸般の事情を考えました上で、本年はこの最も新しく把握できた生産費はカバーできる水準に基準糸価が定められた、こういうことを申し上げておるわけであります。
  59. 東海林稔

    東海林委員 それを正しいといまでも思っていますか。
  60. 石田朗

    石田政府委員 これは現在各般の情勢を考え、振興審議会の議を経ましてこのような値段がきまったわけでございますので、ここのきまりましたものにつきましては、十分根拠があるのではないか、こういうふうに考えております。
  61. 東海林稔

    東海林委員 昨日参考人意見を聞いた中でも、特に全養連の会長等は、相当政府に遠慮しながらも強い不満の意を表しておるわけなんですよ。理屈に合わないと思うのだが、理屈に合うと思いますか。まあ、国会議員が審議会に入っておれば、おそらくこんなものじゃもちろん納得しなかったと思うのだけれども、非常に皆さんに飼育された委員ばかり入っておるから、そういうことになったのかもわかりませんが、私は、審議会での承認を経たのだからそれでいいんだ、だから正しいんだ、こういう言い方は理屈にならぬと思いますよ。法律にも生産費その他と書いてあるのは、何も昨年の生産費ということじゃないのですよ。あなたはそういう理解をしますか。その年の生産費と理解しないのですか。法律の解釈としてまず聞きたいと思うのです。
  62. 石田朗

    石田政府委員 お話ございましたように、生産費がいろいろ法律なり政令なりで書いてあることは事実でございます。この場合に、何の生産費ということは書いてございません。私どもといたしましては、把握し得る最も新しい生産費、これを基礎にものごとを考えていくほかないのではないかというふうに考えております。
  63. 東海林稔

    東海林委員 生産費を基礎としてあれする場合に、いまのように一応最近把握し得る新しいものを基礎にするということはわかりますが、それでもって当該年度の生産費を修正するということは常に言っているじゃないですか。その点について統計調査部長、どういう見解を持っていますか。
  64. 松田寿郎

    ○松田説明員 御承知のとおり、私のほうでいろいろな産物について生産費を出しております。が、先生お話のとおり、それの利用のしかたについては、それぞれの産物に従って利用のしかたが違っておることは御承知のとおり。その利用のしかたのいかんというものを私のほうでかれこれ言うという立場にはございませんので、それはそれぞれの担当の局のほうでやはりお考えになる、政策を進められるというべきものかと考えます。
  65. 東海林稔

    東海林委員 私は、統計調査部長という立場で出ておるのだから非常に困ると思うのだけれども、統計について造詣の深い、いわゆる学識経験者というか、そういう立場で、生産費でもって価格をきめるという場合に、これはいろいろ過去三カ年の実績をとるとか、五カ年をとるとか、十年をとるとか、ありますよ。しかし、それを利用する場合は、必ず当該年度にこれを修正しというか、やるのが私は正しいと思うのですが、さっき局長は、法律解釈として最近のものをとればいいんだというような一これはあとで法制局に聞いてください。これはお願いしますが、統計学者としては、いま、その点どう思いますか。
  66. 松田寿郎

    ○松田説明員 先ほども説明いたしましたように、その利用のしかたは統計の立場とは別ではないかというふうに考えております。
  67. 東海林稔

    東海林委員 それじゃ聞き方を変えます。  いろいろと生産費調査を基礎として価格をきめておる例があるわけですが、あなたの知っている範囲で、どの例が多いですか。当該年度に修正してある例が多いか、修正しないが三年平均とか昨年のものをとっておるのが多いか、そのことならお答えできるでしょう。
  68. 松田寿郎

    ○松田説明員 御質問ではございますが、それは私よりも先生のほうがよく御存じじゃないかと思いますが、主要作物につきましては、お話のとおり、修正して使っておる例が多いようでございます。
  69. 東海林稔

    東海林委員 局長、だから、いまその例も私の言うほうが多いということです。法律解釈は、私はあなたが間違っていると思いますから、これは法制局によくひとつ相談してください。ここではこの問題はこれ以上聞きません。  そこで、問題は、昨年の生産費の問題でございますが、これはまず統計調査部長に伺いますが、昨年の養蚕に関する調査農家戸数は何軒であるかということと、自家労賃の評価、固定財産の償却費の評価、これはどのようにいたしておりますか、まずお伺いいたします。
  70. 松田寿郎

    ○松田説明員 昨年の生産費は、この三月二十七日にわれわれのほうから公表いたしてございますが、この調査対象農家は約千戸でございます。  お話のございました労賃の評価は、近傍におきます毎月旬別に調査いたしております農業の日雇い賃金を参考にいたしまして、評価いたしております。  それから、建物の償却費につきましては、これは現存いたします建物については前年度をそのまま据え置くのが原則でございますが、ただし、五%以上の値上がりという事実がございますと、そのときは評価がえをする、こういうやり方になっておりまして、昨年、四十一年度はその五%以上の値上がりに該当いたしましたので、評価がえをいたしております。
  71. 東海林稔

    東海林委員 いまの調査農家は千戸ということでございますが、それは最終的に集計に使ったのか、それとも調査したのか、その区別を、全体の調査は何ぼやって、それを集計に採用した農家は何ぽか、その点をまずお伺いいたします。  それから、自家労賃でございますが、大体旬別のその地帯における日雇い労賃、こういう計算方法だと言いましたが、昨日参考人の陳述によりますると、その労賃は、男一日九百十三円、女が一日七百五十三円で、全体の平均が八百二十八円というよう数字の陳述があったのでありますが、これはそのとおりでありますか、その点もお伺いいたします。  それから、償却費について、五%以上の値上がりがあったから、こういうことで再評価したということでございますが、固定資産税の評価がえとの関連において、あるいは非常に評価が従来と変わっておるわけですが、その関連は、皆さんの調査の際にはどのようにこれを処理されておりますか、その点もお伺いしたいと思います。
  72. 松田寿郎

    ○松田説明員 調査農家のお尋ねでございますが、四十一年度は調査いたしました農家が千五十五戸でございます。そして最終的に集計いたしました農家が、正確には九百八十九戸ということになっております。  それから、労賃のお尋ねでございますが、労賃はお話しのとおりでございます。  それから最後の建物の評価でございますが、われわれのほうは、固定資産税のほうの調査とは別に再調達価格について調べまして、それを基準にいたしております。
  73. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、固定資産の評価がえとは関係を考えてない、こういうことですね。——そこでお尋ねしますが、千五十五戸のうち九百八十九戸を集計に採用したというのですが、この差はどういう事由で除外されているか、お尋ねいたします。
  74. 松田寿郎

    ○松田説明員 千五十五戸で調査をいたしまして、集計が九百八十九戸でございますが、その差は、調査中に記帳が中止になりましたとか、その農家でいろいろな事情のためにわれわれとして調査が続けられないというふうな、脱落いたしました農家戸数が四十六戸ございます。それから、われわれのほうでこの調査をいたしますのは、標準生産費という方針でこの調査をやっております。といいますのは、天災その他による災害というものがこういう場合には非常に大きく出てまいりまして、それによってかえって、通年、累年して調査の結果を利用いたします場合に、たとえば生産性の向上であるとか、そういうことを調査することができなくなる、そういういろいろな目的のために、三割以上の災害を受けました農家につきましては、これを除外することにいたしております。その農家が二十戸ございます。それで、結局集計いたしましたのが九百八十九という数字でございます。
  75. 東海林稔

    東海林委員 途中で記帳等の不完全等で脱落した四十六戸については、これはしかたがないと思いますが、三割以上の被害農家二十戸というのを除外するかどうかということは、非常にこれは問題がある。確かに学問的な標準生産費を見つけるならそれでいいと思います。しかし、これは政策のもとになる生産費なんですね。それで、養蚕の天然災害といって一番多いのは、御承知のように、養蚕は山間地帯なものですから、晩霜による被害というのが一番多いはずです。こういうものは、何もその当該年度に限らず、しばしば、むしろ地域は若干変わるにしても、毎年あるのが普通と考えなければならない。養蚕ではそういう状態だと思う。したがって、そういうものを除いたもので価格の基準をきめて、それでどこまでも価格の規制をするということになりますと、そこに非常に問題があるのじゃないか、私はこういうふうに思うわけです。そういう意味で、統計調査のそれは、やり方を標準生産費を求めるということでいえば、一応わかるような気もしますけれども、それをこういう標準糸価等のもとになるのだということを考えて、それでもって価格政策をやるという場合には、私は問題があると思うのですが、その点は疑問を持ちませんか。
  76. 松田寿郎

    ○松田説明員 重ねて申すようでございますが、やはり標準生産費、われわれが生産費を利用いたします一番大きな問題は、現在繭の生産性がどういうふうに進展しておるか、あるいは米の場合には米の生産性がどういうふうに進展しておるかということが大目的でございますので、先生のおっしゃるよう価格だけの問題でもございませんので、われわれの立場としては、いろいろ議論がございますが、これが一番いい方法ではないか、こう考えております。
  77. 東海林稔

    東海林委員 局長にお尋ねします。  統計調査部長の立場では一応わかるような気がします。しかし、それを価格政策基礎に使う場合は、当然そういうことを考慮してこれは使うべきだと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  78. 石田朗

    石田政府委員 ただいまの生産費の把握及びその活用のしかたにつきまして、価格安定審議会の専門委員会におきまして、いろいろ御議論を願って、従来から一つのやり方がきめられておるわけでございます。そのやり方によりますと、やはり例外的な農家として、いまの災害農家、たとえば蚕繭共済で共済の対象によるような被害を受けた方は除いて、生産費を計算いたしたほうがよろしかろう、こういうことに相なっておるわけであります。
  79. 東海林稔

    東海林委員 私はまた増産対策に戻るようなことになるわけですけれども、農家が増産意欲を高めるという意味においては、価格というものがこれは一番直接的なものなんですね。したがって、従来こういうような計算をやっておるからというところにも一つの停滞があるのじゃないか、今後大きく増産ようというようなときに、こういう問題を当然もう一度考え直すべきだ、こう思うのです。そういう点の考慮もなしに、増産をやるのだというかけ声だけではいかない、こう思います。これは私の考え方ですから、もうこれ以上その点は言いません。  そこで、もう一度統計調査部長に伺いたいのですが、自家労賃の算定、先ほど旬別に日雇い労賃ということでございますが、昨年から、御承知のように、牛乳の保証価格算定にあたっての自家労賃の評価の問題が、審議会でも本委員会でも非常にやかましく議論されて、今回一部改善されたことを御承知ですか。
  80. 松田寿郎

    ○松田説明員 私も審議会に出席いたしておりまして、承知いたしております。
  81. 東海林稔

    東海林委員 そういたしますと、この養蚕の基準糸価のもとになる生産費、その中の自家労賃の評価と、加工原料乳の保証価格算定基礎になる生産費の中の自家労賃の評価が違っておる、こういうことなんですが、いずれもこれを正しいところに価格を安定させると同時に、増産意欲を高揚さすという立場に立っておるのですから、こういう同じような性格のもの、あれも保証価格ですから、そういうのに、こういう違う計算方法をやっておる。加工原料乳のほうでは、ことしからあれは改善したのです。いままでの考え方を直したのですよ。ところが、蚕糸局長のほうは直っておらない。こういうわけなんですが、そういう点、統計を扱う者として何かの考えがあってしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  82. 松田寿郎

    ○松田説明員 私のほうでは農業に関する調査をいたしまして、そうして生産費を出す、こういうことがやはり大目的になっております。したがって、農家の自家労力をどういうふうに評価するかということを調査の立場から考えますと、農村における農業労働がどう評価されているか。ところが、御承知のように、現在では、農業労働が普通の意味の年間を通ずる完全雇用労働で行なわれておるという例がほとんどございませんので、われわれは最も合理的な一つの方法と考えまして、農村に現在あります農業の日雇い労賃というものを調査して、これをやる以外にわれわれとしては手がない、こういう状態でございまして、いろいろと御議論もあろうかと思いますが、統計としては、戦前からずっとこの方法を採用いたしておる次第でございます。
  83. 東海林稔

    東海林委員 いま調査部長の立場でのお答えがあったのですが、蚕糸局長としては、少なくとも畜産局ではことしから改善した、あれはほんとうにまだ改善がし尽くされたというわけではありませんけれども、一部改善されておるわけです。蚕糸局長は従来からやっておったのだからいいのじゃないかという考えでは、私は非常な問題だと思うのですが、そこらがもう少し何か違った考えが出てこないのですか。蚕糸局長で答弁が困難なら政務次官から御答弁いただいてもけっこうです。
  84. 石田朗

    石田政府委員 いまお話ございましたように、従来から蚕糸の諸種の価格を決定いたします場合の基礎生産費につきまして、労賃評価は統計調査部でやりましたものをそのままとっておる、こういうことはそのとおりでございます。従来からの農産物の諸種の価格決定におきまして、米につきましては、その基本的な農業全体について持っております重要性、その他いろいろな基本的な全面的な政府買い上げになっておるというような点、こういうような点によろうかと思いますが、いまの都市の労賃をもって換算するというやり方が行なわれております。かつまた、牛乳につきまして、いまお話しのように、搾乳労働等の労働の特殊性にかんがみて、あの考え方をとっておるということも事実でございます。これに対しまして、他のいろいろな生産費を基礎にいたします農産物価格形成の場合は、おおむね労賃において統計調査部で算定いたしましたものをそのまま使っておるように思います。この点について考えますと、お考えをいただきたいのは、いまのたとえば基準糸価、基準繭価でございますが、これはどんなに価格が下落いたしてまいったときであっても、ここまでくればささえよう、こういう種類の価格でございます。これよりむしろ上に価格が動くことが常態であり、そういうことが政策目的としてあるわけでございます。したがいまして、そういう場合の価格といたしまして、ただいまのような労賃評価をもって算定基礎としておるということでございまして、これは、価格がそれよりも上昇いたしてまいる、それよりも上に価格があることが常態であり、政策目的でございますから、その場合には、それ以上の家族労働報酬が獲得できる、こういうことに相なっております。その意味にもおきまして、現在のやり方が基本的に誤っておるものであるというふうには必ずしも考えておらないわけでございます。
  85. 東海林稔

    東海林委員 米の評価は、いま話がありましたように、都市の他産業従事者との均衡労賃、酪農の場合は、いま話がありましたように、搾乳等の技術面において、当該地区における他産業従事者の賃金と同じように、こういうようなことです。養蚕は、桑園の管理については議論があると思いますが、飼育技術は、特にこれは技術を要する問題なんですよ。日雇いの労働と同じだというよう考え方には労働の質はなっていないということは、よく認識してもらわなければ困ると思う。  それから、これは最低の保証価格だからということですが、加工原料乳の保証価格も、御承知のように、加工生産費の価格から換算した基準価格との関連において不足払いするために出した保証価格です。やはりこれは保証価格として最低価格ですよ。その性格は同じですよ。若干その計算の方法は違いますけれども、その性格は同じですよ。あなたは、養蚕を振興する立場にある蚕糸局長が、養蚕農家に不利なように、何でも消極的、消極的にだけものを考えて、ちっとも前進する態度でものを考えるという考え方がないようですね。私は、それでは蚕糸局長としてはきわめて不適格だと思いますよ。そういうことでなしに、もっと——私が一番初めに前提で申し上げましたように、私はこれに非常にいろいろな疑問を持っているのです。しかし、私は、やはり疑問を持ちながら、何とか蚕糸業の発展のために、あなた方が出しておるよう見通しどおりいくような方法はないものか、無理だかどうか、あなた方の積極的な答弁の中から、何かそういうものが可能だという安心を私も持ちたいというよう意味で一生懸命言っておるのに、逃げて逃げて、しかも消極的な態度ばかりでは、ちっともこれは前進しないと思うのです。こんなことでは、この法案、簡単に賛成できませんよ。もう少しはっきりそこら辺性根を据えて御返答いただきたいと思います。
  86. 石田朗

    石田政府委員 先ほどお話し申し上げましたように、価格決定にあたりましては、諸般の事情を考えなければならないわけでございますから、それらの点におきまして、たとえば昨年度の価格と本年度の価格というものを比較して御検討いただければ、従来の点につきましても、あるいは種々御意見もあろうかと思いますが、基準糸価が昨年度は生産費の九四%にとどまっておりましたものを、これを一〇〇%水準まで引き上げる、他の安定価格帯の設定につきましても、全体といたしまして一五%程度の引き上げをいたしておるわけでございまして、これらの点におきまして、十分最近の情勢等を考えたつもりでございます。  なお、先ほども申しておりますように、今後の生産増強につきまして、根本的に各方面からその推進をはかってまいりたいという熱意においては、先生とともに私どもも変わらないつもりでおります。
  87. 東海林稔

    東海林委員 私は、先ほど申し上げましたように、農家の生産意欲を高揚するには、何としてもこの基準糸価、したがって、これは最低保証帯であるとすれば、国の最高価格のきめ方、それから事業団の安定帯の売り渡し価格のきめ方等を、蚕糸局長としては、理屈のつこう限りこれを高くきめたいという考えでもって努力すべきだと思うのですよ。あなたのは、なるたけ低くきめる、低くきめるという態度でいっているとしか私には考えられない。非常に遺憾です。  そこで、この問題について、さらに関連してお尋ねしますが、先般中野委員の御質問に対する答弁の中だったと思うのですが、蚕繭事業団以来、蚕糸事業団になっても、さらには国の特別会計でも、最近ではさっぱり実際の仕事をしておらぬじゃないか、こういう質問に対して、確かに仕事はいたしておりません、しかしこういう法律があり、事業団があることによって、価格安定の役割りは相当果たしておる、こういう話がございました。これは非常に見当違いだと思います。価格が中間安定帯の中に安定しておるなら、なるほど開店休業はおめでたいのです。それこそは確かに法律なり事業団は目的を達成しておる、こう言うことができると思います。しかし、わずか十日や一カ月のことなら私は言いませんが、四十年の後半以来、ずっとその安定帯を飛び越えるような実勢の状態になっているのに、それでもって国の特別会計なり事業団が役割りを果たしておるというような言い方は、私はこれは間違っておる、こう思うのですか、どうでしょうか。
  88. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、従来の糸価安定の特別会計、これが役割りを果たし、実際に活動をしておりましたことは、これは先生も御承知のことと思います。現在の蚕糸事業団は、この糸価安定特別会計の大きな最高最低の幅の中で、さらにできるだけ小幅の中間安定帯に糸価水準を持ってまいりたい、こういうことで、一昨年の暮れ国会を通過、昨年から出発をしているわけでございまして、蚕糸事業団の活躍につきましては、これは、今後ともこの点については種々御激励を賜わりたいと思いますが、その実績は、今後の成績に待って御批判を仰がねばならぬのではないかというふうに思うわけでございます。  蚕繭事業団につきましては、これは従来の糸価安定の繭に関するごく一部の部分を扱っておりましたので、その点については、この前中野先生お話のときに、これが発動直前に至って実効を発揮して、発動しないで済んだというような事例もお話をいたしたわけでございます。それなりの役割りを持っておったかと思います。その繭の面については、実際に発動に至らなかったのだというのが実態でございまして、これは蚕糸事業団設立の際に解散いたしまして、その仕事を蚕糸事業団に吸収して実施させる、こういうことにいたしたわけでございます。
  89. 東海林稔

    東海林委員 局長答弁の中に、当委員会の委員としては当然知っているようなことを長々と御説明されるのは、そういうのはよしてくださいよ。そうでなしに、質問に対して的確に答弁するという努力をしてください。  そこで、お尋ねしますが、四十年度後半から最高価格以下に、それと事業団ができてから売り渡し以下に、実勢価格がなったことがありますか。
  90. 石田朗

    石田政府委員 実勢価格が入っておりますのは、三十九年、四十年は大体において最高最低の中に入っております。四十一年に至りまして、最高価格をこえて騰貴をいたし、六月に最高価格以内に入ったわけでございますが、それ以後、最高価格をこえた水準で推移しておるというのが実態であります。
  91. 東海林稔

    東海林委員 事業団の売り渡し価格以内になったことがありますか。
  92. 石田朗

    石田政府委員 事業団の売り渡し価格以上をもって推移しております。
  93. 東海林稔

    東海林委員 そういう点に、いまの基準糸価、したがって売り渡し価格等について矛盾を感じませんか。一年間も全然、売り渡し価格というようなものがせっかく法律にはきめられておるが、実際の価格とは無縁だ、こういうことについて、矛盾を感じませんか。私をして言わしめるならば、皆さんの基準糸価の計算は、先ほどの生産費その他経済事情の参酌等、あるいは昨年度の生産費というものをとっておる、そういういろいろなことから、不当にこれは低くきめられておる。そういうことも、このような矛盾ができている一つの大きな原因であろう、こう私は考えるわけであります。そう考えなければこれは非常におかしいですよ。あるいは先ほど私が聞きましたように、取引所等にしても、思惑的な行為があったために、一時的に変動があった、高くなった、こう言うなら別ですけれども局長説明によると、そういうことはなかったのだ、取引所の取引も正常に行なわれて、大体時価というものは、あまり変なことでなしに、需給関係で大体きまっているんだ、こういうことでしょう。にもかかわらず、事業団の中間安定帯には全然入ってない。こういうことは、制度と実際の間に非常に矛盾がある。そういうことは一体どこからくるかということを真剣に考うべきだと私は思う。そういうことを考えていけば、さっきから私が議論しているような基準系価等についても、もっともっと疑問を持って、積極的な態度をもってこの問題に今後善処しようという考え方が出てこなければならぬ、私はそう思うのです。そういうような点がさっぱり見られないので、私は非常な不満なんですよ。
  94. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、端的に申しまして、現在の需給情勢等々によりまして、昨年の一年間におきまする価格の上昇というのが、きわめて著しかったということが言えるかと思います。それまでの数年におきましては、定められました安定帯の中に価格が動いておったわけでございますが、それ以後、われわれといたしましても、一つには生産費等々の変化をも考え、さらに他の面では需給事情等々の状況も考えまして、価格の決定につきまして適正を期してまいったつもりでございます。この点は、ただ実勢だけに追随するというわけにもまいりませんので、その点われわれとしてはできるだけの努力をして、適正なる価格形成につとめてきたつもりでございますが、実勢におきましてはかなり高目を動いておる、こういうのが実態であります。
  95. 東海林稔

    東海林委員 私は、時価に追随せいというようなことを言っているわけじゃないのですよ。蚕糸業の現状がこうなんだから、時価が上がるのは当然じゃないか、そういう立場からするならば、そういうことはこの安定帯をきめる際にも当然考慮に入っていいんじゃないかというのが私の基礎なんですけれども、あと議論はやめます。  そこで、いまの糸価というものは、これは端的に聞きます。異常な価格だという感じですか。それともこれは現在の情勢からすれば当然だ、こういうふうに考えますか。
  96. 石田朗

    石田政府委員 ごく最近、端境に向けまして、かなりの値上がりを見ております。これにつきましては、今後春繭も出てくることと思いますので、今後の趨勢としては、現在水準はやや異常である、いま少し落ちついた水準になってまいることが妥当なのではないかというふうに考えております。
  97. 東海林稔

    東海林委員 安定法の中には、御承知のように禁止価格があるのですが、それ以上な場合には、禁止価格を出すということも当然考えられるわけですが、その点についての御見解はどうですか。
  98. 石田朗

    石田政府委員 糸価安定の場合のように、糸価が市場の条件によって変動いたす、これをある場合に主として国ないし国の関係の機関による市場操作によって安定をはかってまいろうということを基本にいたしましておるわけでございますので、禁止価格等の措置は、これは市場介入の程度が、それらとはなはだ段階を異にした介入のしかたになります。これはめったなことで発動するというようなものではないのではないかというふうに考えております。
  99. 東海林稔

    東海林委員 すると、いまの段階では考えてないということですか。
  100. 石田朗

    石田政府委員 現在の段階ではさようでございます。
  101. 東海林稔

    東海林委員 次に、今回の法案の改正に関係する部分についてお尋ねをいたしたいと思います。  これまでも若干質問があったわけですけれども、現在のように非常に内需が旺盛で、むしろ生産が追いつかぬために、非常に価格も騰貴しておる。こういうような状態のときに、今度は輸出のための法律改正、こういうわけで、なかなか現時点ではぴたりとこないわけです。ただ、長期見通しで、先ほどの蚕糸局見通しが正しいとすれば、初めてこういうことが出てくる、こういう形だと思うわけです。それで、きのう参考人の御意見を伺ったのですが、私は、どうも今回の改正が附則というような形で、しかも「当分の問」というような形で出てきたところに、この改正法律自体が、そう言うと悪いですけれども、非常にへっぴり腰のよう感じがする、こういう気がいたすわけでございます。  そこで、まずお伺いしたいことは、第五十一国会の本院の附帯決議の第二項に、輸出振興については輸出機構の改善について積極的な努力をせいというような趣旨の決議がついておるわけですが、今回のこの事業団法の一部改正で、この趣旨が十分達成できるのだとお考えなのか、これは一部であって、今後さらにもつと根本的なことを考えるというような心組みなのか、まず、その点をお伺いたします。
  102. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたが、基本的に、前回の蚕糸事業団設立の際の附帯決議、その他各方面の御意向をも参酌いたしまして、私どもといたしましてできるだけ努力をいたし、現在の案の作案に至ったわけでございます。しかしながら、この輸出振興という基本的な点になりますと、現在の措置の基本が海外市場の維持確保ということでございまして、それを将来さらに大きく伸びた輸出というものを考えます場合には、生産増強、その他各般の措置等、あわせ必要なことはもちろんでございます。
  103. 東海林稔

    東海林委員 私は、これがこの間の御答弁にありましたように、需給の拡大均衡が実現するまでの間、こういうことだという説明があって、わかったような、わからないようなことなんでございますが、先ほど議論いたしました十カ年の見通しというような点との関連では、どの程度までいけば、その拡大均衡というようなことになるわけでございますか、お伺いいたします。
  104. 石田朗

    石田政府委員 すでに十年後の見通しということで出ております生産需要が、あのような形で実現いたしますれば、もちろんそれが一つの拡大均衡でございます。その前段階、五年後等にはそれなりの拡大された均衡があろうか、こういうふうに考えます。
  105. 東海林稔

    東海林委員 御承知のように、安定法の中の九条の一から四まで、輸出適格生糸の売り渡しの規定があるわけでございますが、これとの関係はどのよう理解したらいいのでしょうか。私が疑問を持ちますのは、生糸の輸出振興についての目的には、安定法にも事業団法にも生糸の輸出振興ということは書いてあるんだが、具体的な事柄についての規定は事業団法にはなくて、安定法にあった。そういたしますと、輸出振興については、一応業界の努力もさることながら、事業団と国との関係においては、従来は国が一応持っておったような法律のかっこうから見ると、やや理解ができたわけです。今度はそうではなしに、特に輸出振興ということを目的とした事業団法の附則改正ということになりますと、国と事業団の輸出振興に対する責任体制といいましょうか、この関係をどのよう理解したらいいのかという点を明らかにしていただきたいと思います。
  106. 石田朗

    石田政府委員 従来の繭糸価格安定法及び事業団法におきましても、目標は輸出の振興ということがやはり大柱の一つになっていたわけでございます。その場合は、国内価格を安定いたしますことによって、自然の形の輸出がおのずから振興されてくる、こういう形を実はねらっておったわけでございまます。その間に、なおただいまお話がございましたように、九条のあとに引き続きます幾つかの条文におきまして、特別会計から輸出振興のための売り渡しというのがございます。しかしながら、これにつきましては、やはり糸価安定特別会計の基本的な任務中における役割りでございまして、特別会計が生糸を手持ちしているというのを前提にその活用がはかられる、こういうことにもなるわけでございます。それらと違った平面における問題として、今回の事業団法の改正は提出いたしておるわけでございます。
  107. 東海林稔

    東海林委員 もし国が輸出について積極的に取り組むというなら、いまお話しのように、特別会計が手持ちを持っておる場合は従来やっておったが、持っておらない場合にはやっておらなかったわけであります。しかし、積極的にやるとすれば、手持ちを持つということが事業団で可能なんですから、国で不可能だということはないわけですね。私はそのことだけではいまの点が解明されたようには思いません。いままでは確かに持っておる手持ちがあるときにだけやるということでございました。しかし、もっと積極的に輸出増進をするという観点に立って、今度新たに事業団が買い入れをして売るという規定をつくるということになるわけですから、それは国がやれないわけはない。それを国と事業団と二本立てにしておるところは一体どういうふうに理解したらいいのか、こういうことをお尋ねしておるわけです。
  108. 石田朗

    石田政府委員 ただいまのお話でございますが、このような仕事を扱いますものとしては、いろいろな主体が抽象的には考えられる。その場合に、どれが一番適当であるかということになりますと、現在の措置は、この当分の間の特別な推進措置といたしまして、買い入れ、売り渡しを行なって輸出を推進してまいろう、こういう措置でございますので、これはそれなりの弾力的な運営等を必要とし、業界全般の協力をまって、それらと一体になって推進していくというのが一番適当であろうかと思います。業界全体の意向もまたそのようでございますので、関係業界からの出資をも受け、政府、業界が一体になって運営をいたしてまいるという蚕糸事業団にこれを取り扱わせることが適当である、こういうことに相なっております。
  109. 東海林稔

    東海林委員 価格対策として国が大きな市場変動に対しての責任を持つ、その間において適正な中間帯に安定させるという二重の関係はよくわかります。ところが、輸出振興の仕事を二つに分けたのは、私はなかなかはっきりしない。ただ、いまのお話しのように、こういう仕事は、どうしても業界の協力が必要だ、それには業界も半分参加している事業団のほうがより適当だ、こういうような御答弁ように思いますが、そういたしますと、国のいまのこの安定法の九条関係は無意味になってくるのではないか。むしろ、これはその点から見ればなくしてもいいのではないか。ただ、情勢が変わって、非常に事業団の買い入れがたくさんになって、手持ちしていなければならぬという場合の救済措置としてはやや値打ちがあるようですが、当分の間そういう状態は考えられないというこの間からのお話ですけれども、安定法の九条関係を削除したならばもっとはっきりするのですが、そこら辺はどうですか。
  110. 石田朗

    石田政府委員 先生のおっしゃることもわからないわけではございませんが、ただ、いま言われましたように、当分の間、この特別措置を動かさなければならない間は、あちらは要らないであろう、そういうことも事実上考えられなくはございませんけれども、しからば、基本的にはあの条文は要らない条文かと申しますと、全体の価格安定制度との関連等々におきまして、あの規定を削らなければならないという必然性はございませんので、あの規定はあの規定で存続し、これの活用の時期もまたあろうか、こういうふうに思うわけであります。
  111. 東海林稔

    東海林委員 以上質問したのは、安定法の九条は要らないという趣旨よりは、この事業団法の附則でやったということが、私としては不満だという意味からいろいろ申し上げたわけです。こういう点は今後よく検討していただいて、もっとすっきりした法律の規定ができるなら、そういう面についても御検討いただきたいと思います。  そこで、今度の法案内容になるのですが、事業団が事業をやる場合には、計画を立てて大臣の認可を受けるわけですが、その大臣の認可の条件として、価格安定をはかるために必要な手持ち生糸を保管しておらず、かつ、生糸輸出を確保するため特に必要あるときということばが書いてあるわけですね。この特に必要あるときというのは、具体的には一体どういう場合をさしておるだろうか、この点をもう少し明らかにしていただきたいと思います。
  112. 石田朗

    石田政府委員 ここに規定いたしました趣旨は、やはり本来のたてまえといたしましては、糸価安定制度によって国内価格の安定がはかられることによって、おのずから輸出がはかられれば一番けっこうであるという本来のたてまえであります。したがいまして、このような特別措置を行ないますのは、事業団が買い入れ発動をするようなことがあまりない、比較的高値で動いている、それからまた、特にこういう措置を講じなければできない、こういう情勢にあるときで、これはいわばそういう特別措置として実施いたします以上は、ほかの措置をもってしてもできるという情勢であるならば、これは一般のやり方をもってやるべきであるという趣旨をここにあらわしたわけであります。
  113. 東海林稔

    東海林委員 そこで、一つの疑問が起きるのですが、特に実勢価格が高くて品不足であるというようなときにこれをやるのだということになりますね。普通は、余っているときに輸出振興のために回すというやり方が普通で、国内需要が旺盛で足りないときに、そのためにわざわざまた買い集めるのは、これはきのう参考人からも一部御意見があったように、また糸価をつり上げるという作用にしかならないのではないか。そうなると、事業団の一番本来の目的である糸価を適正な価格に安定させるという意味と違った作用が、実際は買い出しをやることによって起きるのではないかという矛盾を感ずるのでありますが、その点はどうですか。
  114. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、輸出振興の方策といたしまして、ただいま言われましたように、余っている場合と需給の窮屈な場合とでおのおのいろいろな手段があろうかと思います。現在の場合は、需給の窮屈なときに海外市場を維持確保しておかなければならないという趣旨における特別措置でございますので、現在のような方式をとっている、こういうことに相なるわけであります。  それからまた、この実施によりまして国内価格がいかように相なるであろうかというお話でございますが、これについては、国内価格変動は今後のいろいろな条件によりますので、簡単には申し上げられませんが、たとえば本年度統計調査部が見通しておりますのは、去年に対して八%増産に相なる、こういうようなことにも相なっております。これが実現いたしますならば、この特別買い入れを実施いたしましても、供給量は昨年よりなお増加いたしてまいる、こういうことに相なるわけでございまして、この事業の立案につきましても、糸の消費者である織物関係の人々をも入れまして、その関係の意見を十分調整して本案を立案いたしましたもので、実際の運用にあたっても十分注意を払ってまいりたいと思いますが、これによってはなはだしい悪影響は起こるということはないものであろうというふうに思うわけでございます。
  115. 東海林稔

    東海林委員 この事業は、事業団からいえば、いまお話がありましたように、一番大事な仕事ではないか。一番大事な仕事はやはり価格の安全だ、こういうふうに思うわけです。それが値段が高くて困るというような際に、国内における普通の形では輸出が不可能だから出すのだ、何かそんなことに矛盾を感じるわけです。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕 そこで、さしあたってこれは買い上げる数量によっても非常に問題が出てくると思うのですが、今年度の数量は三万俵というふうにこの間御説明があったのですが、私はそれに関してお伺いしたいのは、まず、三万俵ということが現在の情勢で可能かどうかという点と、それから、この三万俵もさしあたって事業団がやらなければならぬか、その必要性、三万俵という数字について、それが必要なのか、また可能なのか、この両点についてお答えをいただきたい。
  116. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたが、いまお話しいたしましたように、目標は海外市場の維持確保ということでございます。したがいまして、これは最低限どの程度輸出を継続いたしますればその確保は可能なりや、これはかなりむずかしい側面がございます。これにつきまして私どもが考えておりますのは、大体生糸、絹織物全部を含めまして五万俵程度の輸出をいたしたい、自力輸出も二万俵程度はあるであろうから、三万俵程度をこの特別措置による買い入れを行なってまいりたいというのが私ども考え方でございますが、これも必ずしも硬直的にこれでなければならぬというのであるかどうかにつきましては、なお検討の要があろうかと思います。この点につきましては、輸出関係者、国内におきまする製糸、養蚕その他関係者とも十分打ち合わせて、運用にあたりましては、実情に合った運用をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  117. 東海林稔

    東海林委員 事業団の実際の業務運営についてお伺いしたいのですが、法律にはそういう点については何ら触れてないのでありますが、それはどこできめることになっていますか。
  118. 石田朗

    石田政府委員 この運用にあたりましては、先ほども申し上げましたように、事業団が政府及び民間の両方の出資をもって運用されておるという長所を生かしまして、事業団におきまして関係各方面と連絡し、立案をいたし、必要なことにつきましては農林大臣等の認可を受けて実施をいたしてまいる、こういうことになろうかと思います。
  119. 東海林稔

    東海林委員 それは事業団の業務方法書というふうにしてきめるという意味ですか。それとも買い入れを必要とするという農林大臣の認可を受ける場合に、そういうことを具体的にきめる、こういう意味ですか。
  120. 石田朗

    石田政府委員 業務方法書で大綱を定めまして、それ以外は、その中の価格問題等々重要な点だけ農林省等は必要な監督をいたしてまいる、こういうことになろうかと思います。
  121. 東海林稔

    東海林委員 なるべく簡単に質問するようにしますから、答弁もそのつもりでやってください。大体今年度はいつから開始しようとするのか。いまの状態が続けば、当分ここ数カ年は毎年実施しなければならぬじゃないかという気もするのですが、そういう点の見通しはどうか。  それから第三に、一番大事なことは、この買い入れ価格、売り渡し価格の決定はどのようにしてきめるのか、こういうことでございます。
  122. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたが、この実施につきましては、法案通過等の関連がございますので、私どもいつからということを必ずしも明言いたすわけにはまいりませんが、私どもといたしましては、春繭によってつくられました生糸からできる限り適用運営をいたしてまいりたいと考えております。大体年を二期に分けて考えることになっておりますから、七月から十二月の間の仕事をその前の準備の期間を含めて実施を始めることができれば非常に適切ではないかというふうに考えておるわけでございます。それから将来のことはわかりませんが、本年なり明年は、私どもも当然この特別措置を必要とするのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  第三点といたしまして価格の点でございますが、これにつきましては、かつて蚕糸業振興審議会から建議がございました内容をこの法律に盛っておるわけでございまして、今後の運用につきましては、価格等ではこの審議会の建議の線に沿ってやることが適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。これによりますと、その価格は生糸の製造原価を基準とし、海外における生糸の価格、その他経済事情を参酌して定める、こういうことに相なっております。大体その方針でおるわけでございます。
  123. 東海林稔

    東海林委員 いまの生糸の製造原価ということですが、そういたしますと、各製糸会社が養蚕農家から買い入れた繭の価格に加工費を加えた、こういうふうに考えていいのか、それとも、それにさらに一定のマージンをつけ加えたものを考えるのか、そこらの内訳はどういうことになりますか、原価というのは。
  124. 石田朗

    石田政府委員 これはいまの買い入れました繭に適正なる加工費を足した、こういうことでございまして、適正なる加工費ということでございますが、現在比例配分方式等の算定の際に、これらの点については、製糸、養蚕間でいろいろ話し合いがございますので、これはおのずから一つの線が出てまいろうか、こういうふうに考えております。
  125. 東海林稔

    東海林委員 加工費についてはどうでございますか。
  126. 石田朗

    石田政府委員 いま加工費のことを御説明したつもりでございましたが……。
  127. 東海林稔

    東海林委員 原料繭の価格にしましても、これは県によって相当違いがありますね。繭価協定のきまる時期によっても若干違うし、品質によって違うのはけっこうだと思いますが、製糸業者についても、百以上の製糸業者というものが非常に違うことになるわけですが、そういうような点は、原価というものを計算する場合にどのように考えるのか。  なお、私さっき聞き落としたのですが、加工業者に一定のマージンというのは認めるのか認めないのか、その点もお答え願います。
  128. 石田朗

    石田政府委員 いまお話がございましたが、元来、繭の価格の形成は、その繭の出回り期の前後の糸価を基準にいたしまして、製糸、養蚕間でいわゆる比例配分方式により協定をいたすというのが従来のやり方になっております。昨年の秋は県別の値段の格差がかなり大きかったわけでございますが、元来は、取引が混乱いたさなければそういうふうにならないのが本来の姿であろうと思いますし、本年度からはその基準にとります期間をブロック別に一定する、こういうふうなこともいたしておりますので、地域間の繭値段の格差というのは、今後は非常に少なくなってまいろうかと思います。それで、買い入れ価格を実際にきめます場合には、全体の平均されたものをもって考える以外にないかと思うのです。  それからいま一つは、マージン等はというお話でございますが、この場合の適正加工費というのは、資本利子等は考えておりますけれども、特別なマージン等は通常入れておらないというのが普通でございまして、その方向にいくのではないかと思います。
  129. 東海林稔

    東海林委員 そういたしますと、具体的な価格は、この事業団と日本製糸協会あたりの協定できまってくる、こういうことになるわけですか。
  130. 石田朗

    石田政府委員 そのよう関係者の間の話し合いは行なわれるかと思います。それで、それらを事業団が十分勘案いたしまして、適正なものを定め、農林大臣のたとえば認可なり承認なりを受ける、こういうことに相なろうかと思います。
  131. 東海林稔

    東海林委員 売り渡し価格でございますが、これは事業団が買い入れた価格に保管費等を加算して売る、こういうことになるわけですが、その価格がこの間の御答弁によりますと、全世界生産のうち六割は日本だから、日本における市況というものが全世界の生糸市場を支配する、こういう観点に立つのだという御答弁もあったのでありますが、しかし、私は、時によっては、日本における需給関係で非常に高くなっておっても、世界の市場における生糸の価格が常に並行的に高くなるかどうかには、若干疑問があるような気がするわけです。そういう前提に立ってお尋ねするわけですが、買い入れ価格に保管その他の諸費を加算して出した売り渡し価格が、世界市場の価格よりも高いというような場合に——そういうことはあり得ないのか、あった場合にはどうなるのか、そこのところをお伺いしたい。
  132. 石田朗

    石田政府委員 先ほど申し上げましたように、この買い入れ、売り渡し価格の決定にあたりましては、生糸の製造原価を基準にいたしますが、同時に、海外の生糸価格等を参酌してきめるわけでございます。これをどの程度に見定めるべきかということは非常にむずかしい問題でございまして、これは十分にそれなりの準備をいたし、この両者を勘案して値段を定めてまいらなければいけないものというふうに考える次第でございます。
  133. 東海林稔

    東海林委員 先ほどの御答弁ように、大体年二期に割って、その間は一定価格を動かさない、こういうことでございました。そういたしますと、生糸の価格というのはしょっちゅう動いているのですよ。これがまたあまり短期間に事業団の価格を動かしたのでは意味がないから、半年というのが一応考えられるわけですけれども、私はやはりいまお話しのよう世界市場の価格を見合わせてきめるといいながらも、半年先のことをなかなか容易じゃないと思うのです。そういう意味で特に私はお尋ねしておるわけです。  また、その一番問題になりますもう一つの問題は、国内における生糸の相場も相当動きますし、この事業団で輸出生糸を扱うのは全体でかりに、三万としましても、一割程度でありますから、その価格日本の国内における価格を支配するということまではいかないと思うのです。ところで、一般の糸価がそれより下がった場合には、これはまた混乱が起きるのじゃないかというような気がいたすわけでありますが、そういう場合に、この事業団以外の輸出と事業団の輸出との調整というものはどのようにしてはかられるおつもりか、お伺いします。
  134. 石田朗

    石田政府委員 この点につきましては、これは最近の趨勢といたしましては、全体の値段が強調に推移いたしておりますので、なかなか暴落等の事態は考えられないかとは思うのでございますが、しかし、これは値段の動き自体は必ずしも逆賭を許さないものがあろうということも事実であろうと思います。それで、この点につきましては、もちろん、それらの点、国際糸価等も十分見通しを立てて値段を定めなければならないかと思いますが、かつまた、輸出業者間におきましても、この売り渡しの生糸を扱いますと同時に、他の生糸を扱う、こういうことになりますと、これらの全体につきまして、輸出業者間の協調、その協調体制につきまして何らかの話し合いが必要であろうと思います。これにつきまして、輸出業者間におきましても、これに対して十分協力してやってまいる、こういう体制にあるわけであります。
  135. 東海林稔

    東海林委員 それから、輸出をする場合に、生糸で出す場合と製品で出す場合とあるわけですが、事業団が売り渡す場合も、これは輸出業者に売り渡すと同時に、輸出用の生糸織物を扱っている業者にも売るということになるのですか。その関係はどういうふうになっておりますか。
  136. 石田朗

    石田政府委員 基本的には、これは生糸を取り扱い、生糸を輸出いたすというのが、この全体の体制からして基本的であろうかと思いますが、なおまた、絹織物の形態における輸出も、これまたきわめて重要なものでございますので、輸出用織物業者にもこの事業団の生糸が渡るようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  137. 東海林稔

    東海林委員 その輸出用織物業者にも渡るようにしたいという意味は、事業団から直接売るという意味ですか、それとも生糸業者を通じて間接的に行くという意味ですか。
  138. 石田朗

    石田政府委員 売り渡しの相手方といたしましては、生糸を直接輸出します場合の輸出商社と、それから織物業者と、この二つを考えております。
  139. 東海林稔

    東海林委員 私は、そうなると、その調整が非常にむずかしいと思うのです。輸出業者だけでもあれだのに、織物業者ということまで考えたら非常にむずかしいと思うのだが、そういうふうな点は円滑にいくようにぜひひとつ検討していただきたいと思うのですが、それと同時に、その売り渡す場合には、法律によりますと輸出用に充てるということを条件として売ることになるわけですが、実際にそれが実行されておるかどうかということを確認することはどういうふうにやるのですか。また、それに違反した場合にはどういうことになりますか。
  140. 石田朗

    石田政府委員 これにつきましては、事前に輸出に関します見通しの明確さを証する書面を出させますと同時に、実際輸出しましたものについては、事後に通関証明書を出させまして、最後のチェックをし、確認をいたす、こういうことにいたしております。違反者に対しましては、違約金等の処置を考慮いたしております。
  141. 東海林稔

    東海林委員 それで、また一つお伺いしたいのですが、さっきの五十万俵になった場合に、十一万俵ばかり製品、生糸で出るわけでありますが、そのときの価格としては一体どの程度になるわけですか。十一万俵出るということになると非常に大きい数量になるわけですが、価格としてはどのくらいになりますか。
  142. 石田朗

    石田政府委員 ここ七年ぐらい前はそれよりも多くの数量が出ておりましたので、必ずしも多きに過ぎる数量ではないというふうに思うわけであります。それから価格は現在の価格をもって将来を推定しておるわけです。
  143. 東海林稔

    東海林委員 大体概算どのくらいになるかということを聞いておるのですよ。生糸だけですと簡単に計算できるが、製品があるから、私には計算できぬので聞いておるのです。
  144. 石田朗

    石田政府委員 いまちょっと推定に相なりますけれども、概算いたさせます。
  145. 東海林稔

    東海林委員 なお、今後こういう輸出数量がだんだんふえていくわけでありますが、今年は事業団としてはさしあたり三万俵、この輸出数量が全体としてふえていくよう情勢の際には、事業団の数量もまたふえていくという予定でおるわけですか。その点はどうでありましょうか。
  146. 石田朗

    石田政府委員 この点につきましても、情勢を考えに入れまして、必ずしも固定的には考えておりません。増加いたす場合も考えられます。
  147. 東海林稔

    東海林委員 この十一万俵も出ていく場合に、やはり事業団が相当扱うのでなければ事業団の機能というものはあまり意味がないような気もするのですが、多くなるということになると、いろいろ資金の面にも影響してきますし、もう容易でないと思いますので、それで伺っておるわけでありますが、十一万俵のうち、従来のように事業団が三万俵で、ほかの一般には八万俵も出ていくということでしたら、事業団が何も三万俵をやらなくてもいいという理屈も出てくると思います。そういう意味で、そういうような点ではどういう見通しを持っているのかという点を伺いたいと思います。事業団との関係においてどういう見通しを持っていますか。
  148. 石田朗

    石田政府委員 十一万俵の輸出が可能になる事態というのは、いまお話ございましたように、これは現在の法案を立案します過程におけるものの考え方といたしましては、これは特別措置を必要としなくなるのではないかというふうに考えます。
  149. 東海林稔

    東海林委員 それでは次に進みます。  今度の資金関係ですが、今回の予算措置で十億出資ということになっておるわけですけれども、これだけでは当然三万俵を買い入れるには足らないわけでございますが、その他の資金はどのようにして処理されるのか。それから、今後はさらにこの出資を政府として増額する考え方があるのか、ないのか、そういう点をお伺いいたします。
  150. 石田朗

    石田政府委員 現在考えておりますのは、三万俵程度を買い入れるといたしまして、約五十億円程度の資金は必要であろう、こういうふうに思うわけでございます。八割程度は借り入れ金でまかなうといたしまして、自己資金として、二割程度の十億を手持ちしておく必要があるというふうに考えております。
  151. 東海林稔

    東海林委員 将来は。
  152. 石田朗

    石田政府委員 現在のところは、この十億円をもって今後当分処理をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  153. 東海林稔

    東海林委員 最後に、輸入関係ですが、これは先日来もうずいぶんと議論があったところでございますが、まず、私がお伺いしたいことは、審議会の建議では、輸入のことも事業団でやるように建議の内容がなっておったのが、今度の提案された法案の中に入っていないわけですが、これは率直に聞きます。大蔵省からの異議が出たのか、通産省からの異論が出たのか。それから具体的には、どういうことでそういうことが今度の法案に入っていないのか。遠慮なくひとつはっきり言ってください。
  154. 石田朗

    石田政府委員 お話でございましたように、振興審議会の建議には輸入問題が同時に提起してございます。これにつきましても、私ども審議会の御意向を尊重いたしまして、いろいろと検討いたしたわけでございます。実は、輸出問題以上に、輸入問題につきましては、問題事項が多く、かつまた、現在の輸入されております実態自体もここ数年のことであり、非常に複雑に相なっておりますので、それらの点、この輸出問題に関しまする法案を提案いたしますまでに、輸入問題について、問題を煮詰めることができなかった、こういうことが実態でございます。
  155. 東海林稔

    東海林委員 煮詰めることができなかったというのは、農林省段階でありますか。各省の協議の段階でありますか。その点を明らかにしてください。
  156. 石田朗

    石田政府委員 もちろん、この問題は各省とも関連をいたしますので、問題を成案へと努力いたします過程においては、各省間の折衝は当然あったわけでございます。
  157. 東海林稔

    東海林委員 昨日の安田参考人の御意見にもあったのでありますが、事業団一本に考えるということは別として、ともかく輸入についてはコントロールする必要があるということは痛感しておる、こういう業界の代表的な意見があったわけですが、今後この輸入問題について政府はどういう姿勢でこれの検討に取り組もうとしておるのか、その点をできれば政務次官からお伺いしたいと思います。
  158. 草野一郎平

    草野政府委員 前回のお尋ねにもこの問題があったわけでありますが、当然考えなければならない問題でもありますので、慎重にこの問題をどう包含していくかということについての検討を進めていきたい、かように考えております。
  159. 東海林稔

    東海林委員 私は、大体このくらいで質問を終えたいと思うのでありますが、ただ、私は先ほどだいぶしつこく御質疑しましたように、積極的な繭の増産対策、またそれと関連して適正な価格の安定帯を設けるための基準糸価、こういうものについて、現在のようなこういう需給逼迫という状況を考えた場合に、もっともっと前向きな姿勢でこれに善処するという農林省の姿勢がなければ、この程度法律改正をしてもたいした意味はないのではないか、こういうことを心配するのであります。私は率直に申したいのでありますが、この前、蚕糸局の存続の問題がありました。私も主産県で、蚕糸局を存続してくれという陳情を受けましたが、私はむしろそれを疑問に思ったのです。なぜかと言いますと、第一、蚕糸局長というのは、農林省局長の中では一番何か軽く見られておるように私どもは思うわけです。課長なり審議官から蚕糸局長になる。今度の局長は少し有能だと思うと、たいてい一年足らずでどこかへいってしまう。悪口を言えば、あまり手腕、力量のない方だけがやや落ち着いておる、こういうような形なんです。こんなことで一体蚕糸行政が振興するのかどうか。さっき申し上げましたように、農林省予算の中で、局予算がわずか〇・五六%程度であるということを考えても、私は、むしろ大きい局の優秀な局長のところに蚕糸行政を預けたほうが、かえって蚕糸行政が発展するのではないかとまでそのとき考えたわけなんです。したがって、私は、ほんとうに農林省の幹部が、蚕糸行政について、この説明にありますように、今後やはり発展さすべき大事な産業だ、こういう観点に立つならば、もっともっと局長等の人事についても考える必要があるし、特に予算面について十分ひとつ考えていただかなければならない、こういうふうに思うわけですが、そういう点についての政務次官の御決意のほどを承りたいと思います。
  160. 草野一郎平

    草野政府委員 私の選挙区もかつては非常に養蚕県でありました。現在は絹織物等を相当産出いたしており、私自身もかつては養蚕をいたしました。最近有名になったと思いますが、「湖の琴」という映画、あれは私の選挙区の中心で、座繰りで楽器糸をつくっておるところであります。全国の楽器糸の相当の量をあそこで生産いたしておりますが、ああしたものを考えながら私の非常に貧しい体験を見ながら、農林省へいってずらりと一覧表を見ますと、正直申し上げて蚕糸局が一番小さいのであります。小さいということは、課の数が少ないということであります。しかし、一面から考えてみますと、これを有力な局に統合したらどうかということでございますが、小さいなりにでも局を維持しておるところに、やはり私は根底に強いものがあるかと思いますので……(東海林委員「統合しろと言ったのじゃない」と呼)特に局長が早くかわるとか、有能でないものが定着しておるとかいう、何といいますか、非常に……(東海林委員「ほんとうのことじゃないか」と呼ぶ)ほんとうというか、何か皮肉なようなおっしゃり方がございましたけれども、しかし、問題が非常に重要な段階に差しかかってきておりますので、局は局として、各局と対等といいますか、同じような局としての位置において発言できる局長を置いておくことが、今後の蚕糸業振興にとって重要な問題でもあり、さらにその内容を充実、拡大しながら、そして日本蚕糸業の将来のために、やはり有能な局長がここに大きな計画を立てて、それを実行に移していく。先ほどの、どうも局長が消極的な態度ではないかとおっしゃいましたが、これは非常に大きな考え方を頭の中に持ち、それに努力を傾注いたしておりながらも、こういうところに出てきますと、あぶなくないところでものを言うのが無難であるということで、なるべくそういうところで輪を小さくひいて話をしていることもありますが、その心の中に非常に激しく前進の気持ちを持っておることも御了解いただき、農林省として、今後蚕糸業振興のために、皆さんの御熱意を受けながら積極的な態度をとりたい、さように考えておるわけであります。
  161. 東海林稔

    東海林委員 質問の過程でだいぶ次官や局長に失礼な言い方があったかと思いますが、これも大いに農林当局を鞭撻して、蚕糸業の今後の発展を期したいという私の熱意のあらわれでありますから、失礼の段は御了承いただきまして、今後せっかくの御健闘をくださるようお願いいたしまして、私の質問を終わります。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 本名武

    本名委員長 ほかに質疑の申し出がないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  163. 本名武

    本名委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  164. 本名武

    本名委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  165. 本名武

    本名委員長 この際、ただいま可決いたしました本案に、東海林稔君外三名から、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四派共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  趣旨の説明を求めます。東海林稔君。
  166. 東海林稔

    東海林委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表いたしまして、ただいま議決されました日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付すべしとの動議を提出いたします。  まず、決議の案文を朗読いたします。    日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たって左記に留意しその実現に努めるべきである。      記  一 従来の蚕糸政策一貫性を欠き養蚕農家生産意欲を阻害した経緯にかんがみ、この際内外生糸の長期にわたる確実な需給見通しを立て、これに即した確固たる繭の増産対策を策定し、必要な予算措置を講じて強力に推進すること。特に山村地帯における養蚕業の普及に努めること。  二 外国産生糸の輸入がわが国蚕糸業の振興に及ぼす影響にかんがみ、事業団の活用等により輸入生糸の調整措置を講ずるとともに、あわせて繭糸価格安定に資する方途をすみやかに検討すること。    なお、生糸及び乾繭の取引所に対する指導を一そう強化してその投機的要因の除去に努めること。  三 基準糸価設定に当たっては、繭糸価格安定法及び日本蚕糸事業団法の規定の趣旨に沿うよう、特に生産算定の適正化について検討すること。   右決議する。  以上でございますが、本決議の趣旨につきましては、本委員会における先般来の各委員の熱心なる質疑、さらにまた昨日の参考人の御意見陳述並びにそれに対する質疑等を通じまして、すでに皆さんよく御了解のところと存じますので、詳しい説明を省略させていただきます。  何とぞ全員一致の御同意をもって御賛同くださるようお願い申し上げます。
  167. 本名武

    本名委員長 ただいまの東海林稔君外三名提出の動議のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  168. 本名武

    本名委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付するに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について、政府の所信を求めます。草野農林政務次官
  169. 草野一郎平

    草野政府委員 ただいま御決議をいただきました。本審議を通しまして、委員各位のわが国蚕糸業の振興に対する御熱意のほどを拝聴し、非常に感激し、かつ感謝いたしておるわけでありますが、御決議の趣旨を体しまして、その実現方につきましては、われわれといたしまして善処をし、御期待に沿いたいと考えておるわけであります。     —————————————
  170. 本名武

    本名委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  172. 本名武

    本名委員長 次会は、明二十五日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十一分散会