運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-05-17 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十七日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 仮谷 忠男君 理事 倉成  正君    理事 高見 三郎君 理事 森田重次郎君    理事 石田 宥全君 理事 東海林 稔君    理事 玉置 一徳君       安倍晋太郎君    小澤佐重喜君       大野 市郎君    鹿野 彦吉君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       小山 長規君    坂村 吉正君       田中 正巳君    丹羽 兵助君       野呂 恭一君    藤田 義光君       湊  徹郎君    粟山  秀君       金丸 徳重君    兒玉 末男君       佐々栄三郎君    柴田 健治君       島口重次郎君    芳賀  貢君       美濃 政市君    森  義視君       神田 大作君    中野  明君  出席政府委員         農林政務次官  草野一郎平君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省蚕糸局長 石田  朗君  委員外出席者         農林省蚕糸試験         場長      大村清之助君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五四号)  農林水産業振興に関する件(降ひょうによる  農作物被害状況)      ————◇—————
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件につき調査を進めます。  先般の降ひょうによる農作物被害状況について、政府から報告を聴取いたします。桧垣官房長
  3. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 去る五月十四日の北関東等における降ひょう被害状況について、現在まで判明している範囲内で御報告を申し上げます。  農林省統計調査部の五月十四日の降ひょうによる農作物被害概況という報告によりますと、五月十四日午後、東北地方の一部から関東地方にかけて雷雨及び降ひょうを見たのでございますが、このため、栃木はじめ各地に果樹、麦、桑など農作物被害が発生した。なお、降ひょうの時間が短く、降雨を伴っていたから、一部を除き、被害は比較的少ない見込みであるという報告がされております。  被害額につきましては、五月十六日現在で、県から報告がありましたものを集計いたしてみますと、降ひょう関係をいたしました面積は十一万七千町歩余ということに相なっておりまして、被害総額は、先ほど申し上げましたような農作物種類別被害を合計いたしまして、六億二千三百万円余ということに相なっております。
  4. 本名武

    本名委員長 質疑申し出がありますので、これを許します。神田大作君。
  5. 神田大作

    神田(大)委員 ただいまひょう害に対する当局からの被害状況報告がありましたが、これに対しまして、まだ確実な被害総額とはいえないだろうと思いますが、ひょう害の場合にいたしましても、その他の災害等にいたしましても、漸次被害の額というものは大きくなってくるわけでありますから、私は、ただいま報告になったような被害額を上回るのではなかろうか、こういうように考えます。これらに対しまして、当局としてはいかなる対策を講じようとしておるのか、その点についてお伺いいたします。
  6. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 被害金額につきましては、ただいま申し上げましたのは、昨日までに各県から概況報告として参りましたものを集計いたしたのでございまして、今後農林省といたしましては、統計調査事務所におきまして、統計的な方法による被害の確実な調査を進めるわけでございます。その結果、被害額というものが確定をしてまいるということに相なりますが、若干の時日を要するわけでございます。  被害額がきまりますれば、それに応じて必要な措置をとってまいるわけでございますが、一般的に申し上げますと、麦類につきましては、これは農業災害補償法に基づきます被害額に応じた共済金支払いが行なわれるわけでございまして、広範囲被害ということになりますれば、当該地域農業の再生産に遺憾のないように措置するという意味で、共済金概算払い早期支払いというようなことをやるわけでございます。  被害額一定金額以上に相なりますれば、御案内のとおり、天災融資法に基づきます経営資金融資ということについて、それぞれ所要の手続を経た上で措置をいたすわけでございます。  そのほか、個々の農家についての被害が非常に激甚であるというような場合につきましては、系統資金ないし制度金融につきましての既借入金についての償還延期等措置について、農林省としては措置をしてまいる。  また、あと作のための特殊な作物についての種子対策を要しますような場合には、予備費等の支出を考えまして、種子対策を行なうというようなことを考えておるわけでございます。  ただ、今回の降ひょう被害は、少なくとも県報告並びに統計調査部報告によりましても、たとえば昨年でございましたか、北関東中心被害が発生しました態様に比べますと、だいぶ被害規模は小さいのではないかということでございますが、これは調査の結果を見なければわからない点でございます。このような点につきましては、被害態様確定をいたしました上で、検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  7. 神田大作

    神田(大)委員 ひょう害被害は毎年起こることでございまして、災害性質から申しますと、小範囲に徹底的に被害を受けるという性質のものでございますから、私は、当局に対しまして、降ひょうによる被害に対しましては、融資の問題あるいは制度金融の問題、共済金支払い問題等より一歩進んで、一つの小さな地域が徹底的に全滅するというような、そういう被害に対する特別な対策を講ずる必要があるのではなかろうか。これは毎年起こっておる。また、大体毎年降ひょう地域というものはきまっておるわけでございまして、この点に対しまして、どのようなお考えを持っておりますか、お尋ねを申し上げます。
  8. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御指摘のように、降ひょう被害は、地域的にはあまり広範囲にわたらないのが例でございますが、ただ、年によりましては、相当範囲被害が起こる、あるいは降ひょうという現象を生ずる気象の一般的な悪条件ということで、同時に他の被害も伴って災害が起こるという場合もあるわけでございまして、このような場合には、相当被害になるわけでございます。  ただ、北関東から茨城、福島にかけましてのひょう害は、経験的に申しますと、若干、俗に申しますひょう道とでも申しますか、降ひょう被害発生の常襲地帯的な性格を持っておるというふうに思うわけでございます。こういう地帯につきましては、一つは——私もしろうとでございまして、そういうことが可能かどうか、問題はあろうと思いますけれども降ひょうの時期がおおむね晩春ないし初夏にかけての時期でございますので、作付についての若干の危険分散のことを考える必要があるのではなかろうか。たとえば蔬菜等にいたしましても、収穫期に来て若干の時期的なずれを考えてやるということも、被害個別農家あるいは一地域に集中的に起こるということを避けるという意味では意味があるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  なお、小範囲の集中的な災害に対処する特別の考え方ということにつきましては、実は大きな災害につきましては、国の責任と申しますか、国の救援の手によって措置をする、小規模のものについては、地域的な問題として、地方公共団体等によって措置されるということが、具体的には私は最も現実的な方法であろうというふうに思われ、また従来もそういうことで進めてまいったのでございますが、御指摘になりました北関東のいわゆるひょう道に当たる地域についてどういうような措置考えていくかというようなことは、今後地方庁とも連絡をとって検討を進めるべき事柄であろうというふうに思っております。
  9. 神田大作

    神田(大)委員 大体今度の被害作物別で見ますと、果樹と大麻、それからイチゴ等蔬菜類が大部分のようでございますが、これらに対しまして、融資問題、共済金支払いだけではなしに、防除対策としての薬剤補助とか、あるいは肥料補助とか、そのようなことについては当局ではお考えになっておりませんか。   〔委員長退席高見委員長代理着席
  10. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 一般的に、自然災害が生じましたあとで、病害虫発生等が予想される場合があるわけでありまして、耕種措置としては、当然必要な防除事業をやるべきものと考えるのでございます。その場合に、助成をするということは、一般原則としては、いままであまり例がない。かつては、昭和三十二、三年以前には、防除費補助ということも一般的に行なわれておったのでございますが、普通の営農活動範囲に属するものについては、特に助成ということは考えにくいということで、最近においては、防除についての薬剤費補助ということは例が少ないのでございます。ただ、放置をいたしますと、他の被害地域の周辺にまで病害虫被害が及ぶというような特殊の事情が考えられます場合には、これは私どもとして検討をいたしたいというふうに思うのでございます。  肥料助成につきましては、これはどう見ましても、通常の営農上の資材投与ということに考えられますので、最近相当大きな被害につきましても、肥料についての助成ということはいたしてないのでございます。でございますので、御質問の御趣旨には沿わないことになると思いますけれども、今回の災害につきましても、肥料補助ということについてはちょっと考えにくいというふうに思われます。
  11. 神田大作

    神田(大)委員 私もまた実態を見ておりませんから、あと機会に、実情を見てから、当委員会等において関係当局の方に質問したいと思いますが、その農林関係以外にも、税金の問題等がやはり大きな問題になってくる。それから、先ほど私が申したとおり、ひょう害は特殊な災害でございますから、これらに対し、やはり抜本的な対策立てる必要がある。毎年毎年このような災害に対しまして、ただおざなりな対策立てておったのでは、これは農民の生産意欲を阻害することになりますからして、生産意欲を高揚するためにも、私はもっと抜本的なひょう害に対する対策立てるべきであるということを申し上げまして、あと機会質問をしたいと思います。      ————◇—————
  12. 高見三郎

    高見委員長代理 次に、日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。湊徹郎君。
  13. 湊徹郎

    湊委員 私は、今回提案されております日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案に関連をして、その前提になっております繭の生産見通し、あるいは生糸需給見通し、さらに事業団等を通ずる需給の安定、価格の安定、それに対する対策、こういう点について、若干御質問申し上げたいというふうに考えております。  最初に、繭の生産見通しでありますが、農林省のほうで、去年の十一月に農産物需要生産長期見通し、これを中間発表されておるのでありますが、そのうち、桑園関係につきましては、大体私ども拝見しましても、おおむね妥当な見通しであろう。昭和三十年ごろは十九万に近い桑園面積を持っておったのでありますが、特に、三十二年、三十三年を境にして、農林省としても、ほかの作物への転換等かなり積極的に奨励をしたというようなことで、その後、大体十六万ヘクタール台をずっとたどってきているし、今回の目標も十六万九千ヘクタールということで、これは主として新改植が主になるだろうと思うのでありますが、この点については、大体私どももわかるのであります。問題は、十アール当たりのいわゆる反当収繭量、これは率直のところ、かなり相当前提条件というか、政策努力が伴わないと、なかなか困難じゃなかろうか、こういうふうに思っておるのでありますが、その点について、若干まず最初お尋ねをしてみたいと思うわけであります。  これは、昭和三十年には大体六十一キロ程度で、三十六年の七十キロを大体ピークにして、その後また下がってきた。それには災害も大きな原因になっているでしょうし、それから未成桑園があって、なかなか戦力化しないというような点もあるのだろうと思いますが、昭和五十一年にはこれを百キロにしたい、つまり、大体五割増ぐらいに持っていきたい、その結果、繭の生産量、さらには生糸生産量、これも飛躍的に伸ばしたい、こういうふうな見通しのようであります。それで、そういうことをやるために、農林省として、具体的にその裏づけになるような対策をどういうふうに考えていらっしゃるのか、まず最初にお伺いいたしたいと思います。
  14. 石田朗

    石田政府委員 お答え申し上げます。  いまお話がございましたように、現在農林省農産物全体の需給見通し立てておりますが、その検討中の資料でございますが、蚕糸関係のものにつきまして、大体十年後に需要が五十万俵程度に相なり、生産は四十九万俵程度は可能ではなかろうかという見通し農政審議会懇談会で御検討願っておったわけでございます。これを達成しますにつきましては、ただいま御意見がございましたように、手をつかねておってこれが実現するものとは私どもも思っておりません。これには相当努力を必要といたすものと考えておるわけでございます。これに対しましては、根本的な方向といたしましては、従来から、養蚕につきましては、生産性向上省力技術普及ということに力を注いでまいっておりまして、これにはかなりの成功をおさめておりますけれども、今後は、反収をあげ、能率をあげる、高反収、高能率養蚕への推進ということをはかってまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。  このための対策といたしましては、現在、農林省といたしましては、まず一つは、養蚕の独自の普及組織がございますので、この普及組織を大いに活用いたしまして、この高反収、高能率養蚕推進をいたすというのが第一点、第二点といたしまして、構造改善事業あるいは改良資金近代化資金等を活用いたしまして、養蚕経営近代化をはかっておりますけれども、これをさらに推進してまいりたい。さらに、特別な技術中心にいたしました奨励補助等も従来からやっておるわけでございますが、これにつきましては、従来を一歩進めまして、近代的養蚕経営のために、飼育機械化というような点まで進んでまいりたいと考えておるということ、及び土壌調査等を行ないまして、土地生産力向上に資したいということを考えております。さらに、政府施策だけでございませんで、養蚕団体その他蚕糸団体全体におきまして、生産増強に関する対策を樹立して、民間の運動としてもこれを推進されておりますので、政府といたしましても、これをバックアップいたしまして大いに推進してまいりたいと考えます。  大体、このような考え方で従来とも推進をいたし、今後一そうこの拡充をはかってまいりたいと考えております。
  15. 湊徹郎

    湊委員 ただいま概括的なお話があったわけでありますが、さらに、ただいまの見通し前提になっておりますいろいろなファクターを見てみますと、いま局長から話があったように、一方においては省力化を徹底さしていく、同時に、一方においては農家経営規模拡大をはかっていく、こういうことで、過去、昭和三十年から四十一年までの間、養蚕に従事した労働時間の総数は大体一定である、その一定労働時間数が今後もおそらく同じ傾向推移するであろう、こういう前提で立っておるわけですね。その場合に、なるほど二戸当たり桑園面積は、二十三アール程度のものが三十三アールに、十アール程度過去十一年の間に伸びてきている。それに伴って掃き立て箱数も御同様、約五箱近い平均から七箱をこえる状態になっている。収繭量も同じように百四十一キロであったやつが二百二十キロになっている。こういう過去の推移から、規模拡大かなり進んできたことは確かでしょう。同時に今度は、労働時間のほうも、十アール当たりにしてみると、五百七十四時間であったやつが四百六時間に減っている。それから一キロ当たりにしても御同様で、大体四・三時間くらい、まあ半分に近いところまできている、こういうことなのでありますが、ただ、過去の、いま申しました推移を見てみますと、省力化の場合は、飼育段階省力化が非常に進んだ。特に稚蚕の共同飼育あるいは屋外条桑育というようなことで、飼育段階省力化というのは、確かに私ども現地におっても進んできております。また、規模拡大、これも外延的に集団桑園やなんかでかなり伸びている。特に最近その伸びかなりのスピードで進んでいる。これは確かだろうと思うのです。ただ問題は、その一番ネックになっているのは、耕地分散、特に私ども地方丘陵地帯やなんかが多いせいもあって特に目立つかもしれませんが、たんぼなんかの場合でいいましても、大体一農家経営というと、五ヵ所ないし六ヵ所くらいたんぼ分散しておる。ところが、養蚕の場合は、それがかなり極端に狭い耕地でもってあちらこちらでつくられている、こういうことでありまして、ある村について一応調べてみましたら、大体平均が三十三アールというのでありますが、その地帯は二十六アールくらいの平均になっております。その耕地分散している状況平均して十六ヵ所、つまり、一畝歩くらいの桑園があっちこっちにある。こういうことで、極端なものは三十ヵ所くらいのものもある。そういう状態に手をつけないと、飼育段階省力化というのは、ある意味では何か限界にきたような感じさえするわけであります。思い切って集団化を進めるためには、そこら辺からもう掘り起こして基本的に考えないと、さっき申したような傾向でもって今後も推移するのだというふうな状態考えられないわけなんですが、むしろ、一つ限界に近いところまでいままでの進み方というものはきておるので、思い切って集団化や何かをやるとするならば、従来とはちょっと次元の違った、もう一回り大きな対策が必要ではなかろうか、こう思うのですが、農林省のほうではどういうふうにお考えになっておりますか。
  16. 石田朗

    石田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま、従来経営規模拡大生産力増進等があったが、これが限界にきておりはしないか、こういうお話がございました。お示しのように、この十年間で繭のキログラム当たり労働投下量は四割減少しております。これは相当生産性向上であったと考えて差しつかえないと思います。かつまた、経営規模におきましても、六箱未満という小さい農家のほうが減少しております。六箱から十箱くらいの階層は戸数として横ばい、十箱以上のほうは増加傾向にある、こういうようなことでございまして、全体として大規模化傾向にあるということが言えると思います。その場合に、いまお話がございました集団化の問題、耕地分散の問題が出てこないか、これは日本農業全体の問題でございまして、確かに非常に大きな問題であろうかと思います。  ただいま養蚕につきまして、桑園分散状況全国的な計数として見ますと、実は水田その他に比べて、分散度はそれほど高くはない、こういう形に出ております。全国の数字で見ますと、団地数は一農家当たり二・五ヵ所、こういうことに相なっておりまして、かつ、その中でも、四団地以上の農家というのは大体二〇%そこそこで、八〇%が三団地以下、こういうことであります。ただ、この点は山地、傾斜地等の場合その他ございますので、先生がお示しのような地点もないことはないと思いますが、十団地以上というようなものは〇・三%、こういうようなことに相なっておるようでございます。いずれにいたしましても、多少の差はあれ、このような耕地分散、これが農業経営合理化近代化を進めます場合に支障になることは事実でございますので、この点の対策はさらにこれを十分に講じていかなければならないと存ずるわけでございます。ただ、この点につきましては、単に養蚕対策ということではなしに、これが各農家にかかわり合い、かつ各作目にかかわり合いますので、全体的な耕地集団化の問題として取り上げてまいることが必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。かつまた、このような樹園地でございますので、集団化を行ないます場合の経過的ないろいろな問題もございますので、この点にも配慮をいたさなければなりません。いずれにいたしましても、全体的な農地集団化の一環といたしまして、桑園につきましても、規模拡大と同時に、集団化の問題を、これは農林省全体の問題として推進をはかってまいらなければならぬというふうに思うわけでございます。
  17. 湊徹郎

    湊委員 ただいまの問題は、お話を開きますと、きわめて特殊的な形のようでありますが、ただ、全体として集団化をはかっていく場合でも、現地集団桑園造成に対する希望というのは、ここ数年非常に強くなっておるわけです。一例をある地帯で申しますと、四十二年、つまりことしの予算を前提にして、計画が、いわゆる対象ワクの割り当てが二ヘクタール単位でもって十五ヵ所ある。これは県全体でありますが、十五ヵ所のワクである。ところが、希望は実際百ヵ所近く出ているという現況でありますし、それから、稚蚕共同桑園等につきましても同様の傾向である。そういうようなことで、土地なら土地政策の焦点を思い切って向けて、いままでとはペースを変えてやっていくことが、やはりさっき申しましたような長期見通しの繭の数量確保のために必要だろう、こういうふうに思うのですが、それについて、従来のものを単に量的に伸ばすというのか、そのほか、いまの土地の問題にケリをつけるために何か特別なお考えを現在お持ちであるかどうかをお聞きしたいと思います。
  18. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたように、土地の問題かつ集団桑園造成というような点にかなり重点を置くべきだというお話でございまして、私どもも、このような桑園集団化あるいは生産力の高い桑園をつくってまいるということに非常に配慮いたすべきであろうというふうに思っております。この点については、従来から配慮を加えておりますけれども、このためには、さらに農地局その他関係の部局とも十分連絡をとりまして、これの推進には努力してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  さらに、先ほどこの推進施策について御説明をいたしましたときに、いま一つつけ加えておくべきであったと思いますのは、現在蚕糸業振興審議会におきまして、現在の生産増強施策をできるだけ推進せよということとあわせて、さらに突っ込んだ根本的な生産増強対策につきまして検討を願うことになっております。この場合におきましては、いまお示しがありましたような農業構造の問題あるいは土地基盤の問題、それらも含めまして根本的な御検討が願えるものというふうに思っておりますので、そのような検討の結果が出てまいりましたならば、さらにそれらをも十分私ども考えまして、今後の施策推進いたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  19. 湊徹郎

    湊委員 その次は、今度は全国の主要な養蚕地帯地域ごとに見た場合に、反当収繭量でもそうですし、繭全体の生産を飛躍的にあげるためにはどういう地帯が今後生産を伸ばし得る地帯考えておるのか、それから、地帯によって対策や何かもこれはかなりきめこまかく別立て考えていく必要があるんじゃないか、こういうふうに思うのですが、端的に申しますと、山梨県は現在でも一番多い。統計で見ても、大体百キロぐらい、計算のしようによっては百二十キロぐらいいっているのじゃないか。ところが、長野、それから福島、この辺になると大体六十キロぐらい、こういうふうな現状でありまして、特に最近四国や南九州伸びが非常に強いというふうな話も聞くのですが、そういうふうに全国的に見た場合に、どの地帯に今後期待できるのか。そういう地帯に対してはこういう特殊的な対策考えているのだというふうなことがありましたら、ひとつお示しいただきたい。
  20. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございました養蚕の主産地及び今後のその動向ということでございますが、全体から申しますと、現在の養蚕の立地と申しますか、これは農業中核地帯のうちの畑作地帯かなり広範に分布をいたしておるわけでございます。非常に大観いたしまして、かえって部分が抜けてくるかとも思いますけれども、大観いたしますと、北関東から東山にかけますかなり古くからのいわゆる主産地、これが一つと、それから最近大いに伸びておりますものは表東北及び南九州でございます。さらに山形から新潟にかけましての裏日本、これも旧来からのかなり大きな産地に相なっております。全体といたしまして、そういうふうに大きく申しますと、かなり重要なところも抜けてしまいますが、これらをつないでまいります畑作地帯一連が養蚕の主産地に相なろうかと思います。それで、現在伸びつつあるところと申しますと、いま申し上げました表東北及び南九州伸び率からすれば現在最も高い。かつ、旧来の主産地であります関東・東山地域も、これは生産力及び生産量が今後伸びる可能性はさらにあろうかと考えております。  これの対策につきまして、地域的な特性を考えていくべきだ、これも確かにそのとおりであると存じまして、私ども地域に適応した生産対策を講じていかなければならないと存じます。これにつきましては、一つには国自体の大きな観点からの地域施策がございますし、いま一つは、各県においてかなり独自性を持った対策立て、実施をしておられます。これらも国、県が十分連絡をとりながら推進をはかってまいらなければならないと存じます。  現在の問題点といたしましては、先ほど生産性が著しく向上したというふうには申しましたが、その場合の技術の入り方にまだ地域別にかなりのアンバランスがございます。かつ、一県内におきましても、各地域によってかなりのアンバランスが見られるようでございますので、これらを高い水準にそろえて推進をはかってまいるということが一つには必要であろうかと考えます。これは米等に比べましても、実は県別反収差というような簡単なものを見ましても、実は養蚕のほうが差が大きいようでございまして、この点はまだ十分に技術が浸透しておらない面があるということを示しますと同時に、これが今後の生産伸びる可能性をも示すのではないかというふうに考えております。お話のありましたように、地域的な特性をも十分加味して推進をはかってまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  21. 湊徹郎

    湊委員 時間の関係上、あと生産の問題に関連して一、二お尋ねしたいと思うのですが、一つ地帯によって、たとえば水田地帯あるいはたばこ作の関係等で、時期的に労働の配分というのがなかなかむずかしい地帯かなりあると思うのですよ。そういうものが飛躍的に伸ばす場合のネックになりはしないかというような感じがする。その点が一つ。  それからもう一つは、労働力の質の問題で、これは大体昔から御婦人がむしろ主たる労働力になっておった地帯が——ぼくらのところはいまでもそうでありますが、さっきのようにかなり機械化して、省力栽培が普及してきている段階になりますと、どうしても基幹労働力というか、そういうものが若い人あるいは男の人、そういうふうに当然変わりつつあります。そこら辺がこれからの増産対策のネックにならぬかというふうな気がするのですが、その辺についての見解はどうですか。
  22. 石田朗

    石田政府委員 まず最初あとのほうからお答えを申し上げますと、現在、大まかに申しまして、たとえば生産調査等から見てみますと、約六割が女性、四割が男性労働に相なっております。女性の労働かなり大幅に投下されておることは事実でございますけれども、やはり基幹的には現在でも男性労働かなり入っております。かつまた、これが経営規模が大きくなりますのにつれまして、このような傾向はますます強くなってこようかと思います。したがいまして、一つには、そのような生産性向上のための技術進歩を考えますと同時に、女性の面におきましては、ただいま養蚕の婦人学級等の指導をやっております。このような面でなお一そう推進をはかってまいりたいというふうに考えるわけでございます。  それから、最初お話しございました、他の作物との競合関係の問題でございますが、これにつきましては、一面におきましては、先ほど申し上げましたような、養蚕面における労働省力化をはかってまいるという面における解決が一つございます。この点につきましては、従来から努力をいたしておりましたし、今後さらに推進をはかってまいりたいと思います。いま一つは、組み合わせにおいてこれを軽減してまいりますのは、先ほども言われましたように、地域性等をも考えて具体的にこれを推進してまいらなければならないかと思います。これは一例でございますが、たとえば埼玉県等におきましては、ちょうど現在の農業労働体系では七月に若干手があきます。したがいまして、ここに夏蚕と称しておりますが、従来の蚕期のほかに七月蚕というようなものを導入いたしまして、ここで生産増強をはかっていくようなくふうをし、推進をはかっている地域がございます。このようなことは、もちろん地域性等も考えなければなりませんが、このようなくふうは具体的に続けられており、推進をはかられておりますので、今後ともこのような努力を続けてまいりたいと思います。
  23. 湊徹郎

    湊委員 時間の関係上、次に、生糸需給見通しについて、若干お尋ねをしたいと思います。  最初に内需でありますが、これはきわめて旺盛、特に去年のごときは三十万俵に近いところまできてしまって、内需に押されて、輸出のほうは逆にほとんど生糸一万俵を割るというふうな状態に急激になってきたわけなんですが、その裏づけになっているのは、これはやはり和服の需要だろう、こう思います。農林省としては、内需の和服の需要というものが、現在どういう種類のものがどの程度になって、将来どう伸びていくかというふうな見通し立てておられるか。  それともう一つは、それにはいろいろ冠婚葬祭だ、あるいは成人式だ、各種の会合だと、社交のチャンスも非常にふえて、そしてどんどん女性の執念に近い着物に対する需要というものが実際ありそうにも思えるし、見方によっては定着化してきているのじゃないかというふうにも考えられるのですが、その辺についてどういうお考えを持っておられますか。
  24. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話しありました内需の見通しでございますが、この国内需要が最近著しく増加しておりますことはお話しのとおりでございます。これの主体をなしますものは、やはり言われましたように、和服需要伸びの大きなものであることは事実でございます。この衣料消費の実態というのを計数的に把握いたしますことは、実はかなりむずかしい側面はございますが、全体の数量の増加につきましては、これはおおむね所得の増大と一定の函数関係を持って伸びていると考えても、大きな見通しとしては差しつかえなかろうというふうに考えておるわけでございます。具体的な消費内容について、計数的なお話はなかなかむずかしいわけでございますが、いわれておりますのは、全体として和服並びに絹和服、これが中高年齢層から若年層に需要が移っておる。あるいは大都市から中小都市ないし農村のほうに次第に移りつつあるというようなことがいわれております。したがいまして、現在の需要は、従来からのいわば和装ないし絹織物の多数所有者と申しますか、そういう方がさらに需要を増加したということであるよりも、むしろ一枚でも二枚でも持ちたいというような、需要者の層が厚くなってきたという形の増加であるように思います。したがいまして、この需要増につきましては、基本といたしましてはかなり根強いものがあるというふうに考えてよろしいかと思います。しかし、これは年次別にもかなり増加の変動もございますので、大きく見ます場合に、ここ数年の非常に大きなところだけをとって見通し立てることは適切ではないと思いますが、しかし、かなり根強い需要増であるということは、私ども考えておるわけでございます。
  25. 湊徹郎

    湊委員 いまのお話ですと、大体内需の場合は、値段の点よりも、むしろ所得との相関が非常に強いというふうなお話だったんですが、大体昔から衣食住といっておりますとおり、金ができますと、まず最初に飛びつくのは衣、同時にふところがさびしくなったとき、一番先に手放すのもやはり衣。外国の場合とはかなり事情が違うと思うのです。そういう点で、一応内需についてはなかなか予測困難な要素もあるだろうと思いますけれども、しかし、大体何か感じとしては、定着してきているような感じがするのです。今度の見通しにあたって、そこら辺はどういうふうな判断で見通されたか、もう一度お伺いしたい。
  26. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、終戦後一時化繊、合繊等の他繊維と絹との競合関係が非常に問題にされたことがございました。このことは、またその段階においては事実であり、問題とすべきであったわけでございます。これは現在におきましては、実は化繊、合繊との関係については、一応ある段階に到達したというふうに私ども考えております。おおむね昭和三十五年ごろからであろうかと思いますけれども、絹自体の独自の需要というものが大体確立し、展開してきたというふうに考えてよろしいかと思います。したがいまして、先ほど申しましたように、現在の需要見通しにおきましては、今後の国民所得の伸びを基礎に置きまして、それに対して従来の所得と絹需要との相関関係をもって今後の見通し立てる、そのようにしてはじき出しましたものが今後の需要、こういうことに相なっておるわけでございます。
  27. 湊徹郎

    湊委員 次に、生糸の輸入の問題でありますが、さっき申しましたように、四十年から特に四十一年になって、輸出国であったのが逆に輸入国に変わるというくらい急激な変貌を遂げたわけであります。その結果、おそらくいままで輸出業者のほうは、むしろもうけの多いといいますか、輸入のほうに転換をして、血道を上げているような業者の人もかなりふえているように聞いておるわけであります。ところが、輸入の問題について、一応一万八千九百七十俵というふうに農林省統計では発表されておるのでありますが、農林統計に載ってこない生糸あるいは絹、そういう輸入がかなりあるのじゃないかというふうに思われるわけです。と申しますのは、通産省の統計のほうで、大体業種別に織物等をつくる場合に、玉糸を含めて生糸をどの程度投入されているというふうな投入高を見ると、三十三万六千俵くらいの数字が出ている。そうしますと、かなり農林統計を上回っていろいろな形で入っているものがあるのじゃないか。それだけそれを全部内需が吸収してしまうようなかっこうになっておるのでありますから、内需の旺盛さを証明することになるかと思いますが、そこら辺で、今後国外との価格の関係などから、逆にやはり輸入がどんどんふえてきやせぬかというふうな懸念も持たれるのですが、その辺に対する見通しはどうですか。
  28. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたように、最近内需が強調でございまして、かつ値段も高くなっておるということから、輸入が増加しておりますことは事実でございます。この点はまことに残念なことでございまして、今後生産増強によって内需をまかない、十分に輸出もできる、こういう形に持ってまいらなければならないかと思うわけでございますが、ただいま最初お話ございました統計の計数は、通産の生糸消費統計と農林の統計とは、これはとり方が違いますので、若干の差がございますけれども、実はこれはほとんど差がございません。おそらく私どものほうは純内需という形で出しておりますので、それと輸出織物の用に使った生糸も含めた通産の統計というものが違っておるという形になっておるのではないかと思います。したがいまして、その点は、なお統計をさらに整備いたしますといたしましても、輸入量自体は、いま私どもが掲記いたしておりますものをもって御検討いただくことで差しつかえないと思いますが、それにいたしましても、この問題は、われわれとして十分検討を要する問題だろうと思います。ただ、日本が生産面におきましても需要面におきましても、世界の半ば以上を占めておりますので、日本の国内需要の増は、すなわちまた世界の需要の非常に大きな増でございます。それらと国際的にも需要増の傾向が大きいということから、世界的にも生糸不足といったような状況があるわけでございまして、今後いまの国内の価格状況その他からいたしますと、輸入を希望する人々もまた多いかとは思いますけれども、国際的な供給面等々と考えあわせまして、今後については関係業者等の情報を入れてみましても、増加するという人もございますし、むしろ減少要因もあるということを言う人もおりまして、必ずしも単純に増加傾向一方をたどるというふうにも考えられない面もあるというのが実態でございます。
  29. 湊徹郎

    湊委員 次に、輸出の点で若干お聞きをしたいと思うのでありますが、とにかくなだれ現象的にここ一、二年ぐらいの間に姿が変わって、ほとんど生糸の輸出はなきにひとしい状態に落ち込んだわけでありますが、長期の見通しによりますと、大体過去十年ぐらいの十一万俵、これを五十一年までには回復しようというふうな形に一応なっているわけであります。  そこで、ひとつお聞きをしたいのは、ヨーロッパのほうの市場はほとんど中共系のほうに食われてしまって、伸びを期待するとすれば、当然アメリカ市場が主にならざるを得ないと思うのでありますが、ことしのように日本の糸がほとんど行かなくなった場合に、アメリカの機屋さんや何かが、ここ一、二年の間そういう日本からの生糸の輸出減に対応してどういうふうな形をとっているか。たとえば韓国糸のほうに切りかえてしまったというふうなものが多いのか、それともほかの人絹であるとかそういう方向に転換したのが多いのか、それともまた廃業してしまった人もかなりあるのか、こういうことも、伸びていった場合の日本の今後の輸出の見通しについて非常に関係があると思うのですが、そこら辺はどういうふうに判断なすっておられますか。
  30. 石田朗

    石田政府委員 お答え申し上げますが、従来から生糸の輸出というのは非常に大きな日本経済の柱になっておったわけでございますが、この点におきまして、最近これがきわめて減退しておりますことは、まことに残念でございまして、ヨーロッパなりアメリカの要求自体は必ずしも減っているわけではございませんで、これも所得の増大とともに要望自体は多いわけでございますので、これに対応して輸出の振興をはかってまいるということがどうしても必要であろうというふうに考えて、法案を具して御審議をお願いをしておるわけでございますが、この場合に、いま御質問ございましたアメリカの需要なり消費なりでございますが、日本からの輸出が減少してまいりまして、これが一部には韓国生糸及びイタリア生糸の増という形によってカバーされております。しかしながら、それらを加えましても、なおアメリカにおきまする生糸消費自体は、韓国生糸、イタリア生糸をもっても日本生糸の減をカバーできませんで、消費が若干減っておるというのがここ一、二年の状態でございます。これにつきましては、日本でもさようでございますが、アメリカの場合でもそういう機屋さんは主として絹及び人繊等両方を扱っておるのが通常でございますので、その分は他の織物になっておる、こういう実態であろうかと思います。したがいまして、現在はなお存在しておるところのアメリカの潜在需要というものを、これに応じないでおりますと、これは絹に対する魅力自体が失われるということであっては大きな問題でございますので、このような海外市場を維持、確保するという措置をぜひとも講じたいというのが、今回の法案の趣旨でございまして、そのような意味で御検討をお願いいたしたいと思うわけでございます。
  31. 湊徹郎

    湊委員 次に、価格の見通しの問題でありますが、御承知のように、現在は七千四百円にもなるような高値を呼んでおるわけでありますが、この現在の高値をどういうふうに御判断なすっておるか、こういうことであります。  一つには、これは実需を伴わない仮需要であるとか、あるいは思惑投機、そういうやつも入った一時的なもので、ことしの春蚕のほうは幸い凍霜害もなかったし、やがて好況に推移して、農業観測等によれば、八%ぐらい伸びるんじゃないかというふうな見方もされておるので、そういう状態が今後六月以降しばらく推移すれば、これは落ちつくところに落ちつくんだというふうにごらんになっておるのか、その点が一つ。  それから、中共の広州で見本市が最近開かれたわけでありますが、いろんなうわさが乱れ飛んでおる。中共さんは輸出余力がない、だから、その品不足、そういうものが今度のいまの価格にはねがえっておると考えておるのかいないのか、こういう点が二つ。  それから三つ目には、蚕糸事業団法の今回の改正が当然行なわれる、そうすれば三万俵程度を一応予定しているというので、それの先を読んで、いまの高値の原因の一部にもう折り込み済みなんだというふうなことをおっしゃる人もあるのですが、その点についてはどういうふうに考えておるか。  以上三点について……。
  32. 石田朗

    石田政府委員 現在生糸の市場相場がかなり高値になっておりますことは事実でございます。これにつきましては、いまもいろいろな風聞がある、こういうことでございますが、全体として需要が強調であるということは事実でございますが、他面におきましては、いまお話ございましたように、本年の春繭の生産は、凍霜害も受けませんでしたし、大体当初農林省が予想いたしましたような生産、これは農林省の全体の予想は年間で八%の増産ということでございますけれども、このような生産が可能ではないかというふうに考えております。で、現在の値動きのもとは何かと申しますと、いまの輸入見通しなり生産見通しという点がやはり一つの風聞として、それらの個々の商品取引所に参加いたします人々の心理に反映しておることもあろうかと思いますので、そういうような点は、生産が順当に進み、かつ、いろいろな面での情勢が明らかになってまいれば、おのずから落ちつくべきところに落ちついてまいろうかと思うわけでございます。そういう意味で、いろいろな条件を考えてのいろいろな人の考え方が錯綜して値が上がっておりますが、特別な人間が何かここで操作をしておるという事態は、いまのところないように思われます。なお、われわれといたしましても、この点は、過当投機等の実態によって動くことがないように、十分今後とも監視をし、注目をいたしてまいりたい、それで適正な水準に落ちついてもらいたいというふうに考えて、指導をいたしておるわけでございます。
  33. 湊徹郎

    湊委員 ただいまの話で大体わかりましたが、その次は、その落ちつき先なんでありますが、大体現在落ち込んでおるこの輸出を確保するために、今度の法案も当然出されるわけなんですが、生糸の輸出を実際に確保するために必要な値段、これは一体どのくらいと踏んでおられるかということなんであります。特に一つは海外——アメリカ市場が中心になりましょうが、向こうの需要筋から見た場合に、この程度ならばという一定のめどが当然あるだろうと思うのです。六千二百円ぐらいがそうなのか、六千五百円ぐらいがそうなのか、これはわかりませんが、そういう点についてどういうふうに御判断なすっているかということが一点。もう一つは、安いばかりが能じゃないので、やはり安定することのほうが比重からすれば大事なんだというふうな意見が強いわけなんですが、安定さえすれば、かなり七千円に近い価格であっても、それで輸出が確保できるとお考えになっておるのかどうか、こういう点が第二点。それからもう一つは、中共あるいは韓国の基準糸価建て値を、これはかなり年間を通じてピシャッと一定した形で出していますね。それとの関係をどういうふうに考えているか、その三つ。
  34. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、どの程度の値段にきめるか、あるいはどの程度外国が希望するか、こういうことでございます。これは非常にむずかしい問題であろうかと思います。と申しますのは、国内的に申しましても、現在繭値の協定等に入ろうとしておる状況です。これがどのようにきまるかは、いろいろ比例配分方式等の方式がございますけれども、やはり具体的には養蚕、製糸間の話し合いによってきまってまいります。これがどの程度にきまるかという問題もございます。また、外国の場合も若干私どものほうにも情報がございますが、それらを考え合わせまして、実は振興審議会の建議にもあるわけでございますが、国内においてどのような生産条件にあるかということを考えまして、それに国際糸価その他を参酌いたして、いまの輸出用の扱いの値段をきめることになっております。したがいまして、これは外国の商社の引き取りの考え方等を十分測定いたし、かつまた、いまの国内の今後の動きを考えてきめなければいけませんので、具体的にただいま数字を掲げてお話しいたすこともいかがか、こういうふうに思うわけでございます。ただ、その場合に、従来のいわば動いております価格におきます場合よりも、この一本価格にいたしました場合には、より高い水準でも向こうが買いついてくるというのは、これは従来からの関係者の意見を種々総合いたしまして、十分申せるところであろうというふうに思うわけでございます。  それから韓国及び中共のいわば建て値でございますが、これはおのおの韓国及び中共について若干違いまして、韓国につきましては基準価格のようなものを設けておりますが、価格自体は市場においてきまるわけでございまして、その基準価格以上になった場合には、その半分を積み立てるといったような種類の制度がある。こういうようなことで一つの基準価格がきめられております。この基準価格は年間一本であるようでございます。それから中国におきましては、これはいわば国家貿易でございますので、値段はその国家貿易の主体がきめてまいるわけでございます。しかし、国際的な糸価もかなり変動いたしておりますので、ここしばらくの状況からいたしますと、私どもも確実な意味での情報をはっきりと持っておるわけではございませんので、いろいろな情報の総合でございますが、昨年秋あるいは本年の一月から、また最近等では値段は違っておるようでございますので、国家貿易の価格決定にあたっても、最近のような国際糸価の動いておるときに、いろんな条件を考えて改定を行なっておるというのが実情であるように考えられます。
  35. 湊徹郎

    湊委員 次に、蚕糸事業団を中心にいたしまして、価格の安定あるいはさらに需給の安定、それの対策について、若干お尋ねをしてみたいと思います。  第一番目には、先ほどからいろいろ話があったように、内需が非常に旺盛であるし、しかもかなり安定してきている。化繊、合繊との守備範囲も大体きまってきて、安定してきている。生活の中にも大体定着してきている。こういうことになりますと、輸出にはそれほど力なんか入れなくてもいいんじゃないかというふうな説をなす人が、これは当然あります。将来の安定のためには一定割合の輸出がどうしても必要だ、そういう前提からこの法案が出されているはずでありますけれども、そこら辺、先ほど申したような考え方に対してどういう御所見をお持ちですか。
  36. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がありました点でございますが、全体といたしまして、生糸は輸出産業であるということが従来いわれてまいっており、またそうであろうと思いますが、その場合、戦前におきましては、むしろ輸出のほうが大きかったわけでございます。これは日本のいろいろな産業に見られるところでございまして、それが戦後は内需を中心にしながら、かつまた輸出を大いに行なっていくというのが日本の産業全体の姿になっておろうか、こういうふうに思うわけでございます。  生糸につきましても、現在かなり強調な内需、こういうものを基礎にいたしまして、さらに輸出を行なってまいる、こういうことを考えていくべきであろうと思います。内需があるならば、輸出は要らないのではないかというような種類の御意見も一部にあるかと聞き及んでおりますけれども、これにつきましては、蚕糸業という産業が今後安定的に発展いたしてまいりますには、国内市場と海外市場、この二つの市場を失うことなく、確保しておき、それを産業発展のために最も有効に活用してまいるということこそが、この産業の発展の基礎であろうかと思います。したがいまして、今後とも内需、輸出両方を大いに進めてまいらなければならない。その際、現在におきまして海外市場を失うということが非常に問題でございますので、海外市場の喪失を防止するという意味において、特別な措置を講じてでも輸出に対する対策推進してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  37. 湊徹郎

    湊委員 次に、現在の価格安定のための制度として、繭糸価格安定法による従来の安定帯価格ですね、これと蚕糸事業団法による中間安定価格、こういう二重構造的な制度を現在やってきた。実績が短うございますから、結論的なことを言うには、ちょっと実験の期間が足らないかと思うのでありますが、それについて、いっそ事業団一本にしぼって——現在糸価安定のために特別会計でかなりの資金、百七十五億の予算でもってやっている。その資金も事業団のほうに集中してしまって、もう少し安定のために効率的な運用をはかったらどうだ、こういうような意見も当然ありますし、そうはいっても、一挙にはできまいから、安定帯価格の幅をもう少し狭めて、実質的には基準糸価あるいは基準繭価の権威というか、信頼度というのか、それを高めるようにしたらどうかというふうな考えもあるし、また将来、天井のほうについてはいまも実質上コントロールするような機能がないわけなんだけれども、底の保証という意味では、とにかく非常に貢献してきたし、確かにそのとおりなんだから、現行制度でそのまましばらく推移を見ていこうじゃないかというふうな考えもあろうと思うのですが、農林省としてはどういうふうなお考えをお持ちになっていますか。
  38. 石田朗

    石田政府委員 ただいまの蚕糸事業団法が一昨年の暮れ国会でおきめいただきまして、蚕糸事業団が昨年の春発足したわけでございます。そこで、できました制度は、いわゆる事業団が中間安定帯においてできるだけ一つの安定した小幅の変動の中で実勢をおさめてまいりたいということと、異常変動につきましては、特別会計において国がこれを防止する、こういういわゆる二段がまえの制度をとっておりますことはお話しのとおりでございます。生糸のごときは、従来からいろいろ操作を講じましても、かなり変動幅が大きいものでございます。全体の動きとしては、できるだけ小幅におさめたいし、しかもなお、それで押え切れないものを大きくささえるということも必要であるという見地に立って、このような制度になっておるわけでございます。これも従来のいろいろな経緯により成立し、ここまで育ってきた制度でございますので、これを基礎にいたしまして、私どもこれを最も有効に活用して、価格安定を推進してまいりたいと思います。  なお、お話のように、これの一番大きな役割りというのは、結局、一つのいわば基準繭価と申しますか、そういう点において、農民にとって、変動の場合には、ここならばささえてくれるという点がはっきりしており、これによって安定感があるという点に一番大きな意味があるかと思います。そういう意味で、私どもは現制度を最も有効に活用して、今後とも仕事を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  39. 湊徹郎

    湊委員 次に、この事業団について、御承知のように、例の臨時行政調査会のほうで、これは当時蚕繭事業団でありますけれども、公社、公団等の改革に関する意見、こういうことで、十八の対象の中に入れられた。行政調査会の意見によると、本来の業務である仕事は全くやっていない。そこで、蚕繭事業保護のために恒久的な価格調整機構を設置すべき積極的な理由もないんだから、なるべく早目に解散したほうがよかろうというふうな意見のようであります。その後、蚕糸事業団に移行した。その後も生糸の価格の状態から、実際上その実力を発揮するチャンスに恵まれないままに今日に至っておるわけでありますが、このせっかくの事業団に価格調整機能を実質的に持たせるようにするためには、考えなければならぬ点がたくさんあるのではないかと思うのであります。  その場合に、一つは、さっきちょっと申しましたように、現在の制度あるいは資金、今回の十億出資も当然その一環となるわけでありますが、価格の調整機能というものをもっと事業団に傾斜をかけて持たせるようなくふう、これについて農林省は何か考えているかどうかということが一点。  第二番目には、何と言っても、価格に対して影響力を持ったコントロール機能を持たすためには、やはり現物を持たなければなかなかいかぬわけでありますが、現在ほとんど手持ちがない。こういうことでありますが、そういう手持ちをたとえば二万俵なり三万俵なり持って、現物操作によって価格や何かに実際の安定効果を持たしていくというふうなことについて、具体的にこの程度ならばいいだろうというふうなお考えがあるかどうか、それが二点。  それから三つ目には、当然輸出だけ扱うという今回の改正でありますが、当然輸入生糸の取り扱いということが問題になるだろうと思う。輸出だけだと、長期的に見れば、どうしても片肺飛行になるような問題も取り扱うということが当然であろうし、審議会なんかの答申の中にも——その経緯や何かはあとでお聞きいたしますが、そういう輸入生糸の取り扱い、その点についてどういうふうに考えているか。  もう一つは、絹業協会が中心になって、海外に対するいろいろな宣伝活動、調査活動をやっておるわけです。そういうふうな事業を事業団に将来与えていくというふうなお考えがあるかどうか。  以上四点。
  40. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、前に臨時行政調査会から御意見がございましたのは、日本蚕繭事業団でございまして、現在の蚕糸事業団とは違うわけでございます。蚕繭事業団の場合にも、実はその存在自体が繭価の安定に寄与したことは、非常に私どもこれを認めなければならないのではないかというふうに思っております。現在の蚕糸事業団につきましては、これは先ほど申し上げましたような糸価の中間安定の役割り、あわせて、もとの蚕繭事業団でやっておりました業務をも行ない得るということ、かつまた、各種の助成事業等も行なっておるわけでございまして、これはまだ発足いたしまして一年何がしかの期間しかたっておりませんので、今後私どももこの活用、推進をはかってまいりたいと思いますし、この存在及び役割りにつきましては、このような事業団の設置が、養蚕、製糸を問わず、全体の強い要望として実現しました経緯にかんがみましても、私どももこれを十分活用、推進してまいらなければならないというふうに考えるわけでございます。その間、いまいろいろお示しお話が二、三あったわけでございますが、この点につきましては、まず基本的に現在の繭糸価格安定に関する機能と輸出振興の機能、今度法案を御決定いただけますれば、その大きな二つの柱で推進をいたしてまいるわけでございますが、   〔高見委員長代理退席、委員長着席〕 その場合に、現在のたてまえなり成立の経過からいたしますると、やはりそのような事業を中心にこの事業団を運営していくことがよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  その場合に、いまものを手持ちするというお話がございましたが、それもいまの事業団法に定められました手段、方法によって手持ちするのでないと、手持ちできないわけでございまして、やはりそのワク内にとどまっていくだろうというふうに思います。  かつ、輸入の扱いにつきましては、これは振興審議会の御意見にもあったわけでございますが、これは現在輸入は自由化いたしておりますが、そのような形でかなり入ってきておりますけれども、かつなお、生糸は高値であるというようなことでございまして、このような輸入によって生産者に現在直ちにもって非常に悪い影響を与えておる、こういうことではないわけでございます。しかしながら、輸入問題はきわめて重要であり、そういうような御意見もあることも事実でございますので、これにつきましては、今後さらに検討を続けてまいりたい、こういうふうに思うわけでございます。  それから、いま一つ、海外輸出宣伝でございますが、これは現在日本絹業協会というものが海外輸出宣伝の任務を分担しておるわけでございまして、これにつきまして、蚕糸事業団でこれを扱ったらどうかというただいまの御意見でございますが、蚕糸事業団はその運営の主体が、いまの、ものを扱いまして、価格安定、輸出振興をやっていくという趣旨の仕事でございますので、現在の絹業協会の輸出宣伝活動が、これはこれなりに十分なる効果をあげておると考えますので、さらにこれを強化拡充し、改善をはかってまいりますといたしましても、現在直ちにもって事業団にこの業務を移さねばならないという必然性は、必ずしもないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  41. 本名武

    本名委員長 坂村吉正君より関連質疑申し出がありますので、これを許します。坂村吉正君。
  42. 坂村吉正

    ○坂村委員 ただいま湊委員質問に対しまして、輸入の問題について答弁がありました。その中で、先ほど来のいろいろの答弁を聞いておりますと、三十万俵ちょっとの内地の生産のととろへ一万八千俵あまりで、去年は輸入が非常にふえている。今後といえどもこれはふえないとは限らぬと私は思う。そういう状況で、いま輸入の問題に事業団が直接関係をしなくても、これは値段の関係からいって、農民にそんなに不安を与えるような、そういう値段ではないのだ、こういう答弁でございますけれども、私は、それは少し甘いんじゃないかという感じがするのです。輸入の相手国は、大宗は大体中共でしょう。中共というのは、御承知のように国家貿易でやっているのですから、こっちの出方を見ながらどういうふうにでも値段のつけ方はできるわけです。そういう姿を見れば、せっかく事業団をつくって、生糸需給の安定、価格の安定、輸出の増進ということをねらう以上は、やはり事業団が輸入生糸も一括して取り扱うというような制度にしなければ、この事業団にいろいろこういう機能を与えるのが生きてこないのじゃないか、死んでしまうのじゃないかという感じがするわけです。また、養蚕農民としては、どんどん生糸の輸入がふえてきているそうだというようなことがしょっちゅう圧迫になっております。そういう点をほんとうに安心感を与えてやってあげるためには、事業団が輸入生糸については全部一括して買い取るのだ、あるいは輸入は事業団がやるのだということをどうして政府としては——立案の過程で、われわれ与党でございますから、一応政府を援助する意味で賛成してきているわけでございますけれども、実際の姿を考えてみると、非常に不安があると私は思う。心配があると思う。その点はどういうぐあいに考えているのか、いまの姿だけではなく、もう少し率直に答弁をいただきたいと思う。
  43. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、輸入の現状等々については、先ほど来御説明申し上げましたとおりでございます。輸入が増加しておりますので、この点についての制度をいかに組むべきかということは、一つの大きな研究問題であろうというふうに考えるわけであります。したがいまして、それに関する御意見もまた出てきている。とれまた当然であろうと存ずるわけであります。結局、この問題につきましては、基本的にわが国内の繭及び生糸生産増強をはかりまして、そしてこれを内需及び輸出の両面において十分に活用し得る体制を確立してまいるということがやはり基本であろうと思います。かつまた、ただいま申し上げましたように、生糸の輸入は現在始まって三年ばかりでございまして、その状況等も各年次でかなり変化がございます。かつ、将来の見通しにつきましても、なお見解が必ずしも一つになっておらない点もございます。したがいまして、この点については、十分検討を要する問題であろうと存じますけれども、それらをにらみ合わせまして、行政当局といたしましても、この点を今後いかにするかということを引き続き検討すべきであろうというふうに考えております。
  44. 坂村吉正

    ○坂村委員 法案をつくる過程におきましても、政府の部内にいろいろ議論があったと思うのです。生糸はもちろん自由化されております。自由化されているものをそういう国家貿易みたいな形に一本で事業団に入れてしまうというようなことは、これはなかなか問題があるというようなことも一つの議論の焦点じゃなかったかと私は思うのでございますが、砂糖なんかも、御承知のように砂糖の事業団をつくって、そしてこれは全部事業団で一応扱えるような、そういう姿に持っていっているというようなこともございますし、そういうことをぼくはいろいろ考えてみますと、生糸の将来のことをほんとうに考えれば、私は、この際、せっかく事業団にこういう機能を与えるなら、輸入生糸についてもはっきりした態度を政府としてはとっておくべきだ、こういう感じがするのですけれども、いままでのどういうところが問題になってこういう法案にせざるを得ないのか、そこら辺も少しはっきりと答弁しておいてもらいたいと思います。
  45. 石田朗

    石田政府委員 この点につきましては、ただいまお話がございましたように、自由化品目を今後一つのコントロールの中へ入れていくという場合のいろいろな問題もございます。かつまた、これの輸入の国内に与えます影響の深度いかんによって、いろいろ考え方もあるであろうと思います。これらの点を総合的に考えまして、私どもといたしましては、これはなお今後引き続き検討すべき問題として残してあるわけでございまして、私どもといたしましては、何よりも現在要請されておりますことは、海外市場が場合によっては失われるかもしれないということに対する緊急の対策ということが、これは何よりも必要であるわけでございまして、各方面の御意見もこれに集中しておるというのが実態であろうかと思います。したがいまして、まず、この点につきまして、事業団の体制及び輸出の体制、これによる輸出の推進をはかってまいることが、私どもは第一であろうかというふうに考えておるわけでございまして、輸入問題につきましては、さらに今後のいろいろな状況推移をにらみ合わせて検討を続けるべきであろうというふうに考えております。
  46. 坂村吉正

    ○坂村委員 検討を続けるということでございますから、一応了承はいたしますけれども、その検討が国会答弁の検討ではなくて、本気にこの実態を蚕糸局長もよく知って、そうして至急にこの問題は検討して、そういう養蚕農民に対して不安を与えることのないようにする。それから、事業団も輸出、輸入両方をやはり一本にして、ここでとにかく日本の国内生糸の輸出問題も輸入問題も大体安心なんだという姿に持っていくことを頭にしっかりと入れて、そうして至急に検討に取りかかる、こういうことがはっきりと言明できますか。   〔委員長退席、仮谷委員長代理着席〕
  47. 草野一郎平

    ○草野政府委員 輸入の問題をこの際同時に検討すべきじゃないかというお話、一応私たちその趣旨は了解いたすわけであります。ところが、ただいまも局長が答弁いたしておりましたように、この際、海外需要というものをある程度確保しておくということが今日の緊急の問題であるという観点から、この法案の御審議をお願いしておるのでありますが、その前提といいますか、それに先んじて考えなければならぬ問題は、国内における生産増強生産性向上、そういったものでありますから、その問題を高めていくことによって、そうした問題もあわせて考えられる時期がくるのじゃないかということをあわせ考えて、したがって、二回りも三回りも大きな論を描いたときに、その問題があわせて考えられてくるのである。したがって、今日の場合においては、国内の生産を高めていくことにひとつ大きな努力点を向けていくのだという考え方において、今後の検討点であるということなんであります。
  48. 坂村吉正

    ○坂村委員 いまの政務次官の答弁ではどうもはっきりしませんで、国内の生産を高めていくというようなことを大体重点にして、もちろん重点ですけれども、これと将来の生産状況を見合わすというようなことでありますと、まず蚕糸局のいろいろな生産計画を見ても、五年後、十年後に何万俵になるといういろいろな計画があります。ですけれども、そういう長い問題じゃないと私は思うのです。中共の状況、現状がどうかということは詳細には私は知りませんけれども、値段によってはどんどん入ってくるかもしれません。そういうものをほうっておいたのでは、これは生産農民が安心できないじゃないか。だから、せっかくこういう機構をつくったら、その輸入の問題も手がつくように至急にこれは検討しなければ、せっかくこの法律をつくった意味がないじゃないか、こういうことを言っているのでございますから、五年後、十年後どうするかというような、そういう検討であったら、私は、検討という意味が、先ほど言ったように、現実この場から検討するかというお答えにならないと思うのですが……。
  49. 草野一郎平

    ○草野政府委員 そうなんです。そうなんですが、問題は、非常に旺盛な国内需要及び海外需要というものの中における今回の蚕糸業の振興方策が問題になってくるのでありますから、そこで、こうした海外に対するところの輸出の激減した状態のときに、ここで輸出というものがどん底に落ち切ったままとだえてしまったのでは一大事である。これを取り返すためにはたいへんな努力を今後してもなお追っつかないのではないかというようなときになってあわててみても、これはまたおそ過ぎるというわけでありますから、とりあえず、いまのところ輸出を確保しておくというために、この法案というものを提出いたしておるのでありますが、先ほども申しましたように、国内の需給の安定を考える、価格の安定を考える、そうした問題を同時に考えていくのでありますが、しかし、ただいまおっしゃったとおり、きわめて重要な問題であります。したがって、これは真剣に検討しておるということは、先ほど申し上げたとおりでありまして、これはほんとうに検討すべき問題であり、したがって、長い問題であるから、五年後であるから五年後に考えたらいいじゃないかというような問題ではないと思うのであります。そういう意味において真剣なる検討を、これは国会答弁の検討という使いならされた検討でなく、真剣な実態に伴った検討をいたしておるわけであります。
  50. 坂村吉正

    ○坂村委員 真剣な検討をするという大政務次官の御答弁がありましたから、私はこれで関連質問を終わりますけれども、私のところは養蚕王国です。私の選挙区は群馬県で、全国一の養蚕県ですが、この群馬県でも、もう日本では生糸は入れているのですかと、こういうことを非常に心配しているわけです。でございますから、私は、一万俵でも二万俵でも入ったものを、事業団でもってこれを輸出に向けてやったらいいじゃないか、そういうことをやはり考えてやるのが、ほんとうに一方では輸出振興に役立ち、また一方では養蚕農民を安心させる、そういうことになるのじゃないかと思うので、実は私は与党でございますが、あえて非常にきつい御質問を申し上げたわけでございますので、一応政務次官の真剣に検討するというお答えをいただきましたので、できるだけすみやかにひとつ結論を出して、そうしてまた再びこの問題を国会で議論ができますように期待を申し上げまして、私の関連質問を終わります。
  51. 湊徹郎

    湊委員 ただいま坂村委員から輸入問題についていろいろ話がありましたので、その点ははしょりまして、直接今度の法改正に関連し、事業団の運営等について一、二お尋ねをしたいと思います。  一番最初は、十四条の二の今度の改正の第一項に「当分の間」ということばがありますが、提案理由の説明によりますと、将来需給拡大均衡が実現するまでの間なんだというふうな御説明があったわけです。それで、この「当分の間」というのはそういう意味なのかということを……。
  52. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話しございましたが、提案理由の説明にございますとおりでございまして、私どもといたしましては、できるだけすみやかに生産増強を実現して、需給拡大均衡がはかられるようにいたしたいと思います。そのような時期に至りまするまでは、これは特別措置を講じてでもこのような輸出体制をはかって、海外市場確保をやっていかなければならないという趣旨でございますので、「当分の間」というのは、そういうふうに御了解いただいてけっこうであると思います。
  53. 湊徹郎

    湊委員 そこで、いまのやつをもう少し具体的に言えば、さっきからの長期の見通し立てば、いわゆる需給拡大均衡が実現されるというめどを昭和五十一年に一応置いているように見えるわけです。大体昭和五十一年までに生産のほうもどんどん伸ばす、同時に、内需と並行して輸出の確保もはかっていく、五十一年になれば五十万俵前後の線で大体均衡はとれる、こういうふうな見通しに立っているようであります。そうすると、「当分の間」というのは、具体的には昭和五十一年くらいをめどにして今後やっていくというふうに考えているのか。それとも見通しとは無関係に、いま局長が言われたように、そういう事態をなるべく早目にやっていきたいというふうに考えているのか。それと、観点を変えて申しますと、ある意味では恒久的に必要じゃないかとさえ私は思うのであります。輸入の問題と関連して、輸出やなんかも、将来長期的に繭や生糸の価格安定をはかろうとすれば、これはもう文字どおり暫定的措置ではなくて、ある時点ではむしろ恒久法に移行する、そういう事態の可能性のほうが強いのじゃないか、こういうふうに私は思うのでありますが、そういうことは、提案の過程で不謹慎だから、もちろん言えないかもしれませんが、そういう恒久法に移行するためのテスト的な措置として、「当分の間」と、とりあえずこういっておこうというのか、そこら辺、どうですか。
  54. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、いまの需給見通しによりますと、四十六年は四十六年なりに均衡し、五十一年にはそれがさらに拡大された形で均衡する、こういう形になっております。もちろん、これは見通しでございますし、これをわれわれの努力によって実現いたさなければならぬわけでございますので、実際の法律の運用等々につきましては、実際に実現されたところをもっていかに処理するかということで考えざるを得ないかと思うわけでございます。できるだけ早く需給拡大均衡が実現されることは、それ自体としては望ましいというふうに考えるわけでございます。  かつ、これが恒久法的な性格を持つ点はどうか、こういうお話でございますが、これは現在の考えております一つのものの考え方と申しますものは、いまの繭糸価格安定法と事業団法によりまして、できるだけ事業団法によります小幅安定を実現してまいる、それによっておのずから輸出も伸びていくというような事態であれば、これはそれ自身非常にけっこうなことと存ずるわけでありますが、それが現在のような需給の非常に逼迫した状況におきましては、そのことはなかなか容易でない。かつ、海外市場確保の非常に強い要請があるということから、この特別措置を当分の間講ずることにいたしておるというのが現在の体系でございます。  今後、これが拡大均衡が実現いたしました場合に、さらにいかなる輸出体制をとるかというような点につきましては、これはそれまでに全体の情勢も国際的な生糸市場もいろいろ変化があろうかと存じますので、それらも考え合わせて、その時期において検討いたすべき、ことと思いますが、そういう場合には、おそらく糸価安定制度全体の一つの組み立て方というものと関連して議論がされることになるのではないかという感じがいたすわけでございます。
  55. 湊徹郎

    湊委員 時間の関係上、簡単にお聞きをいたしますが、この事業団の業務として「生糸の買入れ、保管及び売渡しの業務並びにこれに附帯する業務を行なうことができる。」とありますが、この附帯業務というのは、どの程度あるいはどの範囲のことを具体的に予定しておられるのか。
  56. 石田朗

    石田政府委員 これについて、特にこういう事項を予定して附帯業務というものを設けたというのではございませんが、しかしながら、このような主体的な業務を行ないます場合には、たとえばその一部について整理売却を必要とするとか、そのようないろいろな附帯業務が出てくるわけでございますが、そういうことは法制上行ない得ないということでは、これはかえって運用をあやまるもとにもなりますので、この条項を設けたわけでございまして、特別にここで大きな仕事をやるということは、全く考えておらないわけでございます。
  57. 湊徹郎

    湊委員 その次に、第二項に農林大臣の認可の条件が書いてあるわけでございますが、それによりますと、二つの条件があって、繭と生糸の価格の適正な水準における安定をはかるために必要な数量の生糸を保管していないということが一つ。それから、輸出を確保するため特に必要があると認められる場合、こういうことなんですが、適正な水準というのは、大体どういうようなことか。必要な数量というのは、たとえば三万俵というようなことをいわれておりますが、現在の条件のもとでもしやるとした場合に、その水準や数量について何か具体的な腹案をお持ちなのかどうか。それから第二項の「特に必要がある」という点についても同様ですが、その点……。
  58. 石田朗

    石田政府委員 いま御質問のございました点は、認可の場合の考え方をはっきりしておかないといけないであろうということで、ことに掲げてあるわけでございます。この前半は、もっと砕いて申しますと、下限価格が出現することがしばしばありまして、相当事業団の買い入れが行なわれるというような事態でないということ、逆に申しますと、価格が比較的高位水準に動いておりまして、このような事業団の通常の安定帯の中における価格の動きというものではなかなか輸出ができないという時期である、こういうことになろうかと思います。  また、「生糸の輸出を確保するため特に必要がある」というのは、これは、ただいまの制度の基本が、中間安定幅の中で経済的に実現する価格において輸出がされるというのが通常の状態である、こういうことを想定しておりますので、この措置をやらなければ輸出ができない——平生のままでも十分な輸出が行なわれておるということであれば、これは必要がないわけでございますので、そのために特に措置を必要とする場合ということでございまして、端的に申しますと、現在のような情勢であれば、この両条件を満たしてこの認可が必要であるという事態がここ当分続くのではないかというふうに思うわけでございます。
  59. 湊徹郎

    湊委員 いまのお話だと、この二条件を満たすような状態がここ当分続くであろう、こういうことなんですが、そうなりますと、輸出のために事業団が買い入れをする、あるいは輸出業者に売り渡しをする場合の価格というのは、四十二年度の上期で事業団がきめております買い入れ価格、標準糸値、それから売り渡し価格、それぞれ五千三百、五千五百、六千三百という価格をきめているのでありますが、実態から見て、現在これとはかなり乖離した状態であるわけです。そういうことで、事業団が輸出のために買い入れをし、あるいは売り渡しをするということになりますと、そのたてまえは、原価主義でいくのですか、あるいは時価主義でいくのですか。そしてまた、買ったときの値段でもって当然輸出や何かもさばいていく、だから、赤字や何かの問題は出ないという前提でお始めになるだろうと思うのです。ところが、実際問題とすれば、生糸というものは、従来からほかの商品に比べてかなり価格変動の多い、非常に敏感な動きをしているものであるだけに、そういう硬直した価格を前提にして実際に操作をしていくということは、事実問題としてむずかしいのじゃないか。場合によっては赤字が出る、そして事実上二重価格制をとらざるを得ないような羽目になる、こういうふうな危険性もあるだろうと思うのでありますが、そこら辺はどう考えていますか。
  60. 石田朗

    石田政府委員 輸出のための買い入れ、売り渡しの価格決定、これはいろいろな条件を考慮いたさなければならないわけで、このこと自体が非常に検討を要する問題であることは事実であろうと思います。ただいまの考え方といたしましては、蚕糸業振興審議会で建議のありましたように、生糸生産条件というものをもとに考えまして、国際糸価をしんしゃくいたしましてこれを定めていく、こういうことになろうかと思います。かつまた、生糸は価格変動が大きいので、これによって赤字を生ずることはないかというお話しでございますけれども、これにつきましては、私どもは少なくとも半年は輸出については価格を動かさないという考え方に立って、この制度の基本を組んでおるわけでございまして、これにつきましては、一面において輸出業者間でこのような問題に関する輸出協調体制をとらせる、こういうことで、これについてはそのような価格で実現ができるのではないか。日本がある量を持って輸出に乗り出します場合には、国際的にも影響力をある程度持っておりますので、価格が変化するということによって赤字が起こってくる、こういうことはまずないのではないかというふうに考えております。
  61. 湊徹郎

    湊委員 私がお聞きしているのは、むしろ逆で、赤字が起きる心配もないような運用をしておったのでは役に立たないのではないか、こういうふうにお尋ねをしておるわけですが、もう一ぺん。
  62. 石田朗

    石田政府委員 これは現実の運用の問題でございまして、結局はいまの輸出に関する価格のきめ方、それとその場合の国際市況の動き方、こういうことになろうと思います。先ほど来申しておりますように、一定期間価格を動かさない、強度の安定性を持たせますことによって、従来よりも高い水準で買い付かせることができるのではないかという基本的な考え方の上に立っておりますので、価格の決定について種々の条件を配慮いたさなければならないことは当然でございますが、これが十分に運用できるような実際の今後の取り扱い及び業界全体の協調と協力ということが必要となってまいろうかというふうに思うわけでございます。
  63. 湊徹郎

    湊委員 ちょっとはっきりしませんが、時間の関係もありますし、あとに控えておりますから……。いま上期、下期に分けて、その間は動かさぬ、こういう話なんですが、さっきも話があったように、韓国は年間通しでもって基準糸価みたいなものをきめておる。実際に肝心の輸出先であるアメリカあたりの取引慣習というのか、商慣習等から見ましても、半年ごとの建て値というのでは、逆に十分な安定性を確保できないのではないかというふうな気もするわけなんです。最初商品の生産計画か何かをつくる、それから見本や何かでもってPRをして、それから注文をとって、それから生産をして製品にして売る、こういうことになれば、十ヵ月から一年ぐらいの期間が事実問題として必要だろうと思うのです。そうしてその問に、二期に分けたものが値段が上がれば、その上がった分の赤字負担というのはこれは当然出てくるし、逆に下がったら下がったで、今度は値引きの問題なんかが出てくる、こういうことで、ほんとうに価格を安定してやるためには、上期、下期という二期に分けることそのことが問題じゃなかろうか、こう思うのですが、その点はどうですか。
  64. 石田朗

    石田政府委員 この点は、価格の安定度という点からいたしますと、一定価格を据え置く期間が長ければ長いほどよろしいかと思います。私どもの現在考えておりますのは、最低六ヵ月は一定にしておきたいという基準を確立しておるわけでございまして、これをさらにどうするか、この点についてはなお十分検討をいたしたいと思います。いろいろな条件がございますから、国内条件もありまして、非常に長くするということができない条件もございますけれども、これは消費者面の条件を考えれば、長いほどいいということも事実でございますので、この点を考えあわせて、少なくとも半年はおそくという基本のもとに考えてまいりたいというふうに思います。
  65. 湊徹郎

    湊委員 時間の関係上、以上で終わります。
  66. 仮谷忠男

    ○仮谷委員長代理 午後は一時三十分より開会することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後一時五十九分開議
  67. 本名武

    本名委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。金丸徳重君。
  68. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 私は、主として生産農家養蚕家の立場から、ただいま議題となっておりまする日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、二、三当局の御見解をお尋ね申したいと思います。  あらためて申し上げるまでもなく、いままでにも随所において論議の対象になっておったようでありますが、わが国の養蚕業、私は養蚕の立場から言うのでありますが、養蚕業が初めて迎えたような重大な事態、かつては輸出の大宗として愛国的産業とまで表現されましたわが国の養蚕及び製糸業が、輸出の大宗どころか、逆に輸入しなければならないような事態をかもし出してきたということが一つ。またもう一つには、三十二、三年ごろのあのどん底時代を経験した養蚕家からしますと、思いもかけないほどの——ということは、たいへんありがたいことで、ありがたいことではありますけれども、ほんとうにちょっと想像しがたいような高い糸価の時代を迎えたということでありまして、いささかならず戸惑っておる。その戸惑いの裏には、また過去の苦い経験にかんがみて、非常な不安感を持っておるのであります。そしてこの不安感が、このような高糸価時代あるいは高繭価を迎えたのにもかかわらず、生産意欲にともすればブレーキをかける、燃え立たせないような原因をなしておるのじゃないか、こう思うのですね。そうしたことを土台にして見てみますと、今度御提案になったこの一部改正法律案のねらいが、糸価の安定を土台として輸出貿易の将来に備えようということについては、よく養蚕家も理解でき、そうでなければならないと思います。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕 同時に、こうした法案をお出しになる前のその前提として、生産意欲を高揚し、生産実績をあげしめるための対策というものが打ち立てられておって、それを土台として生産農家の活動意欲というものをそそっていきませんと、実績はあげられないのではないか。せっかくこの法をつくりましても、さっきお話がありましたように、買うものがなかった、輸出するものがなかった、逆に輸入しなければならないための機関のようになる心配さえも、いまの段階では持たなければならないような事態であるのであります。したがって、問題は、私は、生産農家のための対策というものが本法の裏づけとして、むしろそれに先行すべきはずではないか、こう思うので、そこで、私は、あまり前提を長くすると時間がかかりますから、その生産意欲を高揚せしむるための、不安感を除去する対策として、安心感を持たせるための方法として、当局としてはどういう方法で農民、養蚕家に向かってなだめていくというか、宣伝しておられるか。言ってみますならば、こういう事態において養蚕家に向かってどのような呼びかけをなさっておられますか。ごく要点でいいのでありますから、お教え願いたい。
  69. 石田朗

    石田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生のお話のございましたように、今回提案いたしました法律案は、非常に緊要かつ重大なものだと思いますが、これが全体の蚕糸政策、蚕糸行政の中に適切に位置づけられて、初めて最も有効に働くという御趣旨のお話だろうと思いますが、これはまさにそのとおりであろうかと思います。かつまた、先ほど来申し上げておりますように、国内需要はきわめて強調でございまして、この需要に即応した生産を行なっていかなければならないというような事態でございますので、これについて生産増強のために対策立てていく、また、これについて農民自体も安心して生産を行なっていただけるようにするという点は、きわめて重要な点であろうかというふうに思うわけでございます。  この点につきましては、一つには、需要生産見通しというものを農民に示しますこと自体が大きな一つ施策になろうかと思います。ただ、実は、農産物全体の需要生産見通しが現在農政審議会等で御議論をいただいております段階でございますので、これを全体として公式に発表するという段階にはまだ立ち至っておりません。したがいまして、これにつきましては、蚕糸関係の部門におきましては、これは今後いろいろ御検討願いましても、方向としてこれが基本的に変わってくることはあまりないのではないかというふうに考えますので、この点につきましては、県庁等を通じまして、これらの需給の実勢及びこれに伴う生産というものについて連絡を十分とっておるつもりでございます。かつまた、現在、養蚕農業者の団体並びにその他の蚕糸関係の諸団体におきまして、そういった全体の見通し生産増強対策ということにつきまして、各方面と十分連絡をとりつつ、生産増強の運動を推進しておられますので、私どももこの運動につきまして表裏一体となって、この推進をお願いいたすように連絡を十分にとっておる次第でございます。  かつ、農業関係の実際の生産推進の問題につきましては、普及事業の重要性が非常に考えられなければなりませんので、養蚕につきましては、独自の普及組織を持っておりますので、これを通じまして生産増強推進について十分な連絡と指導を行なっておるつもりでおります。  また、全体の問題といたしまして、先ほどお話がございましたように、糸の値段及び繭の値段というものが非常に大きな問題になろうかと思いますので、この点につきましては、四十二年度の基準繭価を、これを生産費を十分にまかなえるような基準繭価を設けまして、かつていろいろ問題が起こりましたような価格の暴落というような時代は、現在の需要強調の時代においてはそれほど多くは考えられないと思いますけれども、しかしながら、そのような場合においても、このような生産費をまかなう基準繭価において保証をいたす、こういうことで四十二年度の価格を定めておりますので、それらを総合いたしまして、農業者の関係の方々にも安心して生産をしていただきたいということで、連絡をとって指導を行ない、盛り上がる意欲も各方面で十分私どもは認めることができようかと感じておる次第でございます。
  70. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 需給のはっきりした見通しの上に立ってやることが一番理想と思います。思いますが、過去の経験に見てみますと、糸価の流動というものは、需給とかあるいは一般の景気以外に——それが主たる動因であったかもしれませんけれども、それ以外に、何かこう別の原因で動いておるのじゃないかというようなものもあるように思われる。と申しますのは、投機の対象としてずいぶんこれが大きな役割りを果たしてきたようでありますが、現段階においては、そういうことはもう昔ほどにはない。ほとんどないと言ってもいいように受け取れるのであるが、今後においてもそういうことであるのかどうか、また、そういうことが幾らかでもなお残っておるとしますならば、そういうことをまず除去するための、これは一番簡単なことですから、その方策というものがとられておるのかどうか、今後どういう見通しなのか、承っておきたい。
  71. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたように、生糸価格の変動というのは、大きな目で見ますと、需給の変動及び生産の諸条件ということできまってまいるかと思うのでございます。これにつきまして、投機による大きな変動なり、それによる弊害というものが出てまいらないかという話でございますが、確かに、三十八年等におきます価格の大幅な変動は、このような問題を内包しておったかと思うのであります。やはり御指摘になりましたように、最近ではこの点につきましては著しく改善されておるかと考えるわけでございます。行政当局といたしましても、生糸取引所等のそれなりの流通の中で果たします役割りというものは、十分考えてまいらなければならないと存じますけれども、しかしながら、これが過当投機にわたりまして、これによって生産者等に悪影響を及ぼすということは避けなければならないわけでございますので、これに対しましては、生糸市場の取引につきまして、あるいはいろいろな意味での取引所の規制措置を講じまして、たとえば昨年におきましても、七次にわたる規制措置を、これは取引所の関係者とも協力の上実施してもらっております。したがいまして、昨年の値段の動きは、いろいろな条件はございますけれども、ある人の過当投機並びに仕手の介入というようなことによる大幅な変動なり問題ということは、まあ見られないのではないか。今後とも取引所に対する規制措置その他につきましては、そのような過当投機防止等の見地から、十分に監督し、指導を行なってまいりたいというふうに考える次第でございます。
  72. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 この問題は、過去の経験にかんがみますと、なかなか容易でないと思います。思いますけれども、これをまず押えてかかりませんと、養蚕家のほうへはもちろん、製糸家のほうもそうだと思いますけれども、安心しろと言っても安心できないような状況なのです。  もう一つお尋ねするのですが、わが国における生糸の取引その他が、投機的に非常な変動を来たしたこともたびたびあったように私は思うのでありますが、これはアメリカ方面の生糸の主たる需要地、わが国の生糸輸出の需要地であったアメリカ地内においては、そういう心配がないのでありましょうか。今後そこがわが国におけるそういう必要なと言いいますか——心配はないようにするともおっしゃった。私はそれを信じますが、アメリカあたりにおける、その他欧州地におけるそういうような心配というものはあるのかないのか。またありとしまするならば、それに対して何らかの手が打てるのかどうか、そういうことも養蚕家としては非常に危惧いたしておりますものですから、お伺いをいたしておきます。
  73. 石田朗

    石田政府委員 実は戦前等におきましては、輸出のほうが内需を上回っておりましたので、アメリカにおける景気変動なり価格が直ちに農村に影響を及ぼすというような形に相なっておるという情勢であったかと思います。これに対しまして現在は、輸出市場を大いに確保し、これを伸ばしてまいりますが、やはり内需のほうが多いという状態は変わらないであろうかというふうに考えております。したがいまして、全体の養蚕家の立場からいたします繭の価格形成というものにつきましては、内需中心一つの大きな価格の動きが出てまいるのではないかというふうに考えておるわけでございます。アメリカ、その他需要地の価格変動でございますが、これは何せ他国のことでございますので、容易に窺知しかねる点もございますが、こういうような各生糸需要国の原料に対する需要、これは化繊その他も同時に入れておりますので、彼ら自体も非常に価格安定を欲しております。かつまた、各国とも次第にその方向に向かっておると思いますし、かつ全体といたしましても、先ほど申しましたように、需要強調でございまして、どちらかといえば売り手市場であるという情勢でございますので、ここ当分これについて非常な激動というようなことは必ずしも考えられないのではないかというように考える次第でございます。
  74. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 まあ、むずかしい問題ですから、取引各国の業者の善意とでも申しますか、そういうものに信頼する以外にないのであります。しかし、あらゆる機会を通じて、そういうことによっての価格変動などのために生産農民の生産意欲を阻害してはならない、これが基本の考え方でなければならないと思います。これは日本だけではありませんで、一般的にそうあってほしい、こう思うので、御努力を今後にお願いするのであります。  そこで、さっきの問題の需給見通しなのでございますが、なるほど、日本の農業生産物全体の需給見通しというものさえも、現段階においてはそうはっきりしておらぬ。そうあってはならないのですけれども、現実ではそうであると認めざるを得ません。ただしかし、生糸養蚕業というものについては、これは他の農業とは違って、特殊な扱いを受けておったやに思われる。助成策も特に講じられてまいりました。それだけの伝統があった。国策に寄与する点も大きかったものですから、そういうような点についてはずいぶん調査なり資料なりもそろっておると思います。お出しになっている統計を見ましても、生産量から、国内需要状況から、輸出の総額から、ずっとあらわれてきておるのです。ですから、国内における生産見通し、足取りというもの、条件がある安定度といいますか、固定されているとしますならば、およそ判断できるように思われる。しかし、その条件が浮動的なんだから、そうはいっても見通しは困難だろうと思いますが、しかし、その意欲というものは、他の農産物と比較して相当強く持ってもいいと思いますし、それだけの資料、実績というものはあり得ると思います。  それからもう一つは、外国における需要の足取りというものも、全然わからないはずとは思いません。といいますのは、生糸業界、これは政府の金も相当つぎ込んで、四億何がしですか、これは表向きは輸出振興のため、販路開拓のためであったはずなんですけれども、最近は販路開拓という必要もなくなるほどでありますから、むしろそうしたことは、外国における需要状況というものをこさいに調べるような方向に向いているのではなかったかと私は思う。そういうものを集積してきますと、ここに他の農産物などとは違った正確度において出てきやせぬかと思うのですが、これはいかがですか。
  75. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたように、蚕糸業は、何と申しましても非常に伝統を持った産業でございますし、それだけに資料の集積もかなりあることも事実でございます。したがいまして、将来の予測ということは、いずれの産業でも、またいずれの農産物でも、非常にむずかしいものでございますけれども、相対的に申しますならば、最も材料を持って予測を立て得る部門の一つであるということは申し得るのではないかというふうに考えております。
  76. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 どうも私がお伺いするのは、ちょっとめんどうなことだったからですか、もう少し進めてみます。  国内需要が最近急激に伸びてまいりました。これはどういう原因と当局においては把握されておりますか。たとえば、先ほどは所得がよくなったから、こういうことであります。しかし、所得が増加してきたのは一両年の傾向ではない。高度成長政策、所得倍増政策の実施以来であります。まあ、そういわれているところであります。だから、一両年所得がよくなったから、この昨年以来の需要の増とのみは考えられないんですね。しからば何か。日本の国内における嗜好が、特に女性の嗜好が変わってきたか、これも私にはそう思えない。しからば生糸と対抗するところの他の繊維、合化繊などについて、生糸需要が増さなければならないような条件があったのか、これも私にはそういうものは思い当たらないのであります。にもかかわらず、急激に伸びてまいりました。しかも高糸価、高い値段の中においてこう伸びてまいった。まことにどうも私にはふしぎな現象のように思われるのであります。これはどういうふうに判断されておられますか。これも養蚕家としてはうれしい戸惑いなんであります。これをひとつ解明をしておいていただきたい。
  77. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございましたが、これにつきましては、先ほども申し述べましたけれども生糸需要増大の原因というのは、一つには所得の増大であろうかと思います。それからいま一つには、これは他繊維との競合関係が三十五年ごろ以来一つ段階に到達して、生糸の独自の需要が出てまいった、こういうことであろうかと思います。所得の増大につきましても、所得がある水準まで達しますと、こういうような高級衣料品というものにかなり需要が向かってくるということが言えると思います。その内容といたしましては、これはむしろ需要者の層が次第に厚くなってきておるというような形における展開ではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。ただ、いまもお話ございましたように、こういった高級衣料品というような性質のものでございますので、ここ数年、三十八年以降非常に急激な増大をいたしておりますが、その傾向をもって直ちに将来に延長してそのように考えるかにつきましては、やはり一つの問題があろうかと思います。もう少しやはり長い増加傾向をとりつつ、将来への見通し立てるということが必要ではないかというふうに考えております。したがいまして、現在の需要自体は、独自のものとしてかなり根強いものがございますが、ある一年だけ、あるいは一年か二年だけの変動をとって将来に延ばすことは問題であって、これをもう少し慎重に、かなり長くながめまして将来の見通し立ててまいるという考え方需要の測定をいたしているわけでございます。
  78. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 確かに仰せのように、ここ一両年の、特に国内需要の端倪すべからざるほどの足どりをもって長い将来を推すわけにはいかない、私もそう思います。しかし、堅調に伸びていくということは、私はこれは信じていいんじゃないかと思うのですが、わが国内における状況はかりにそうだといたしましても、これを世界的視野において考えてみたらどんな数字になってまいるのでございましょうか。たとえば、生糸需要国として従来あげられておったところのアメリカにおきまして、あまり伸びなかった。その伸びなかったのは、輸出国たる日本から出ていかなかった、つまり、供給が足りなかったから、やむを得ず頭打ちになっておったというふうな理解もできそうであります。しかし、中共その他欧州におきましては、かなり需要伸びておるように思われる。それらの足取りをどう考えられるか。同時に、先進国はそうである、生糸というものになじんでおる先進国の需要の足取りはそうであったが、それじゃ後進国の足取りというものはどうでありましょう。といいますのは、今後の見通しをする上につきまして、やはりある所得が限度にといいますか、水準に達しますと、それから生糸というようなものに向かって需要が急激に増してくる、こういう御解釈であるとするならば、アメリカにおきましてはどうか知りませんけれども、欧州において、さらに後進諸国におきましては、そういう事態が来年くるか五年後にくるか知らぬけれども、くるのではないか。所得がある限度に達したときに急激に生糸というものに対して目を向けてくる、そしてそのよさに目ざめてくる、需要がうんと増してくるということがあるのではないかというふうな気がするのでありますが、この点はいかがでございますか。
  79. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話ございました世界の需要でございますが、これにつきましても、やはり所得の増大等々に関連いたしまして増大の傾向が見られると思います。これを正確に測定しますには、かなり国別等にこまかく分析をいたさなければいけないかと思いますが、全体といたしまして、よく世界の国際絹業協会等で言われておりますのは、価格が安定いたしますならば、五%ないし六%程度の年率の増加があるのではないかということがよく言われておるわけであります。かつまた、アメリカ等におきましても、所得等によって計算上割り出しました需要と実際の需要とを比較いたしてみますと、三十八年ころまではかなりよくそれが一致いたしております。それ以降は実は開いてまいっておりますが、これは先ほど申し上げましたように、日本からの輸入が少なくなっておるというようなととが影響しておるのではないかという感じをいたしております。  そのような先進国の動きに対しまして、後進国はどうであるか、この点につきましては、ますます基礎材料が乏しいわけでございますので、いろいろなこまかい分析をいたすことは困難でございますけれども考え方といたしましては、いま言われましたように、ある所得水準に達すれば増加の可能性があるであろう、したがって、将来の問題としては、それらの点を考慮いたさねばならないのではないかということが考えられるわけでございますが、現実には、現在生糸及び絹織物の量として多数にこれを需要しておりますのは、やはりアメリカ及びヨーロッパの諸国でございまして、ただ、絹織物の点につきまして、それ以外の国の伸びが最近少しずつ見られておりますけれども、これも量的に申せば必ずしも大きなものではないというのが現在の実態であろうかというふうに思うのでございます。
  80. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 実はそこまできて、あらためて私は問題にしたいのでありますが、生糸というものを繊維全般の中でどういうふうに農林省蚕糸局としてはつかんでおられるのか、こういうことなんであります。生糸を端的に言いますと、これはぜいたく品と見るのかどうかということになるのであります。従来は確かにぜいたく品であったかもしれない。おかいこぐるみなどといって、ぜいたくの一つのシンボルのような表現をされたこともあった。しかし、こう消費水準が進んでまいりますと、生糸必ずしもぜいたく品ではないのではないか、おかいこぐるみ決してむだではないのじゃないかという気がする。もちろん、生活必需品という表現もいかがか。しかし、個人生活の必需品ではないかもしれませんけれども、私は一つのそういう言い方がいいか悪いかは別として、社会生活の必需品程度にはだんだん上がってきておるのではないか。日本における最近の需要の激増傾向というものは、まさにそういうふうな時代を迎えてきて、そしてこれはぜいたく品ではなくて、多くの繊維、ことに衣料のもととしての繊維の中で、バラエティに富む一つの対象として、生糸というものはわりあいに大きく取り上げられておる。そしてどこの家にも絹の製品の着物の一枚や二枚はあってもいい、訪問着も、他の繊維の訪問着があると同時に、純絹の訪問着があってもいいというような時代を迎えてきている。そういう方向に世界全体として進んでいくのじゃないか。生糸国日本が先にそういう時代を迎えたのですが、繊維というものに対する人情、需要観といいますか、そういうものは、そういう方向に行くのではないか、こう思うのですよ。蚕糸局長はこれをどういうふうに基底としてつかんでおられて、日本の蚕糸業というものを指導していかれるおつもりなのか、承りたいのであります。
  81. 石田朗

    石田政府委員 最近、ある新聞で絹需要の増大傾向を叙述いたしまして、その中で、いま絹は女性の高級必需品となりつつあるということが書いてあったように記憶いたします。との絹需要というものは、とにかく絹の衣料が高級衣料であるということは事実でございますけれども、一そろいか二そろいの絹の着物は持ちたいということで、大衆的な需要が現在伸びつつあるというふうに考えられますので、いまの新聞の表現はそれらの点をかなり適切に言いあらわしたものかと考えております。したがって、私どもも、ある所得に達しました全体の一般庶民のそういうような大衆的需要にささえられたものとして理解し、かつ今後の絹需要考えてまいりたいというふうに考える次第であります。
  82. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 そういうふうな、まあ、高級必需品という表現があるいは当たるかもしれませんけれども、そういう方向に行くものと一応は考える、意見が一致している。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、私がお伺いしたいのは、最近の繊維の需要傾向といいますか、木綿にしても、羊毛にしても、化繊にいたしましても、非常な高率をもって伸びているだろうと思います。そういうものの伸びておる率と比較いたしまして、生糸伸びというものははたしてどうであるか、これが一つ。  それからもう一つ、全繊維の中で、生糸というものはどの程度のパーセンテージを占めておるのか。私は、きわめてわずかな面のように思われるのであります。きわめてわずかのものが非常な——もっとも木綿などはふえていないかもしれませんが、ほかのものと比較して伸び率は変わらない、あるいは少ないということであるならば、私が次にお伺いする需要のこれからは、相当大きなものがあると期待したい、したがって、生産を大いに伸ばしていかねばならぬのじゃないかという話に持ってくる前提として、こういうことをお伺いしておる。この点はどうでございましょうか。
  83. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話しございました、全体の繊維の需要と絹需要との関係でございますが、お話しございましたように、絹が全体の繊維の中で占める比率は、これはきわめて小さなものでございます。ただ、需要伸びという点から考えますると、実は繊維全体の需要の変化、これはかなり景気変動等を敏感に反映しておるようでございますが、それと絹の変動とは必ずしも一致しておらないわけでございます。したがいまして、絹需要につきましては、これはただいまの高級衣料品としての独自の需要ということに展開しておるのではないか。したがいまして、われわれの需要見通しにつきましても、絹は絹単独の一つ見通し立てておるというのは、そういう点からくるわけでございます。したがって、全体の繊維の中で占める比率は小さいけれども、独自の需要のあり方としてきわめて増進をいたしておるというのが現在の実態であろうというふうに考えるわけでございます。
  84. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 その独自の需要面を持っておる、私もそう思いたい。したがって、私は、独自のものを持っておるだけに、絹というものは、他の繊維にあまり影響を受けないのではないかという気がするのであります。さっき話の中に出てまいりました、他の繊維事情をも考慮しなければならないということは、それは考えなければならないわけですけれども、価格の面については、それほど影響を受けずに、独自の場を持ちながら、独自の足取りで、言ってみますならば、孤高を保って大いに闊歩してもいいのではないかというような気がするのです。現に日本の繊維界においては、生糸の値段が確かにそういうことをもって、一時的であるといわれればそれまでですけれども、しかし、そういう面が、かりに一時的であるとしても、そういう現象として出てきておる。それを全体的に及ぼした考え方の基礎にしてもいいのではないか、こう思うのですが、値段についてはどんなでございますか。
  85. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話しになりました点は、いまの競合関係等が一つ段階に達しました現在においては、その点では独自性がかなり強く出ておると思います。ただ、こういう問題を考えます場合に、常に他の関連製品等の関連及び価格についても、全体物価なりそれらの点をやはり十分考慮に入れて考えなければならない点は当然だと思いますけれども、総体的に申しますと、独自性がかなり強くなっておるという点では、先生のお話のようなことであろうかと思います。
  86. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 まあ、需要のことにつきましては大体そういうようなことで、あとでまた値段その他のことについては触れさしていただくことといたしまして、私は、生糸というものの将来は、相当需要を大きく見ておいて対策を練っておいてもいいのではないか、いいどころか、その必要がある、こう思うので、それを前提としていままでいろいろ御意向を承ったのであります。  次に、では生産についてはどういうような見通しを持っておられますか。お配りいただいた資料によっておよそのことはつかめるのであります。ことに国内の生産状況につきましては、ここ数年来こさいな数字が上がっておりますからいいのでありますが、私は、この蚕糸事業団法の一部が輸出をねらっておりますだけに、外国の事情、特に生産事情などをやはり究明してはっきりさしておく必要があろうじゃないか、こう思うものですからお伺いをいたすのであります。中国における生産事情、ソ連における生産事情、韓国あるいはインドにおきましても最近は出だしたということを何かによって見たのでありますが、その他イタリア、フランスという方面における生産状況というものは、どういうような足取りで来、これからどんなふうな足取りでいくかの見通しを持っておられましょうか、お示しをいただきたいのであります。
  87. 石田朗

    石田政府委員 ただいまの生産見通し、特に関連諸外国の生産見通しというお話でございますが、現在の世界の繭及び生糸生産、これは繭のままの移動は非常に少のうございますので、生糸生産で一応考えてみますと、全体の約六割程度が日本で生産されておると思います。あと中共等は計数が必ずしも十分に把握できるとは言えないわけでございますが、これが約二三%程度に当たるわけでございます。あと大きなところはソ連、インド、韓国、イタリア等でございますが、大体ソ連が八・六%、インドが四・九%、韓国が二・六%、イタリアが一・七%程度になろうかと思います。したがいまして、大きな供給国といたしましては、圧倒的にわが日本と中共でございます。それからソ連及びインドはほとんど外国に糸を出しておりません。したがって、国家競争場裏に出てまいりますものとしては、中共と、数量は少のうございますが、輸出比率の非常に高い韓国、こういうことになるわけであろうかというふうに思います。中共につきましては、実は計数把握が非常に困難でございますが、生産増強につきましては相当努力を払っておるということは、諸種の資料に見えるところであります。今後の見通しにつきましては、必ずしも明らかでございませんし、特に食糧生産とこのような生糸生産とをどういうふうな比重でやっていくかという点につきまして、どういうふうな考え方を今後とるであろうかという点が一つのかなめになろうかと思います。それらの点は、今後なおかなり流動的な面がないとも申せませんので、この点今後の把握にまたなければならないかと存じます。韓国につきましては、全体といたしますと生産量は一万数千俵でございまして、日本に比べますと比率的には非常に小そうございます。約八割方を輸出に向けておりますので、これはそういう意味で重要であり、かつ、この国においては繭及び生糸生産増強に非常に力を注いでおります。ただ現実には、計画どおりには増産はいたしておらないようでございますけれども、今後なお生産増強される可能性は大きいのではないか。ただ、全体のウエートとすれば、今後ともやはりそれほど大きなものにはなってこない、こういうふうに考えるわけでございます。
  88. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 生産農家が心配いたしますのは、先ほどお答えをいただきました需要見通しと同時に、よその国でどの程度世界の市場に生糸を持ち出すかということであろうかと思います。それがひいては自分たちのつくった繭の値段に影響する、そういうことだろうと思います。それを非常に心配いたしておるのでありまして、いまお話しのように、ソ連や韓国はきわめて小さいし、ことにソ連は外国に出さないというお考えのようでありますが、中共は現に欧州のほうへも出しておる。そしてそれがかなり日本の生糸の値段などにも影響しておるかのように心配されるのです。これはわからぬと言えばそれまででありますが、現にいまお示しになっておりますものによっても、数字はわかっております。私は、こういう過去の実績も去ることながら、こうした各国が将来に向かってどういう増産体制をとっておるのか、繭というものに対して、養蚕というものに対して、どの程度の積極的なる政策推進しておるかということなんであります。それが五年後、十年後にかなり日本のほうに影響してきはせぬか、こういうことなんであります。これらのことにつきまして、養蚕家が安心できるような解明ができますものならば承っておきたいのであります。
  89. 石田朗

    石田政府委員 先ほどお話がございました関係資料に出してありますところの将来の需要見通し、これの中に約十一万俵の輸出が十年後に入っております。このような輸出の見通しを行ないますにあたりましては、これは各国の所得等々の関連からいたしまする大きな需要見通し立てまして、かつ、中共及び韓国等の主要輸出国の供給の見通しを、従来のいわばその増加の傾向からいたしまして一応立てて、それとの関連において日本からどの程度輸出ができるであろうかという算定をいたしましたものが、あの計数となってあらわれておるわけでございます。したがいまして、私どもが現在持っております資料といたしましても、やはり十年後、中共、韓国の生産増強がありましても、あの程度の輸出は可能であろうというふうに考えて差しつかえないのではないかと考えております。
  90. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 実は私は、昨年の秋の蚕糸業振興審議会の席でも蚕糸局長お尋ねをして、これは懸案になっておったことなんであります。各国の増産対策についてわかったならばお示しをいただこう、こういうことであります。現段階におきましては、まだそこまでの検討は進められておらないように受け取れるのでありますが、いかがなものでありましょうか。急によその国で増産対策が実施されるというような見通しは、今後当分ないと見てよろしいのでありましょうか。少なくとも、かりにあったとしても、日本の養蚕業に大きくなだれ込むようなものではない、こうはっきり理解してよろしいものかどうか、この点をお伺いして、次のお尋ねに移りたいと思うのであります。
  91. 石田朗

    石田政府委員 たしか審議会の席でも金丸先生からそういうお話があったかと思います。それに対して若干の準備をいたしまして、簡単な資料にしてあのときもお配りしたかと思うのであります。これは、共産圏等は必ずしも原資料がそのままとれるということがございませんので、いろいろ問題がございますけれども、一応こういうような増産計画があったとかなんとかいうことはわからないではございません。たとえば韓国はかなり具体的なものがわかりますが、韓国におきましても、昭和三十七年から四十一年までの五ヵ年間に第一次増産計画というのが立てられておりまして、四十一年の面積は十一万町歩、こういうふうに伸ばそうというようなことを言っておったようでございます。これは三十九年までに六万三千町歩程度の線までいっておりますが、まだ計画に対してはかなり低いということになっております。最近は四十二年から四十六年までの生産計画を立てておりまして、昭和四十六年の生産目標を六万五千俵としたいということを考えておるようでございます。これを中心にいろいろな指導奨励措置考えておるようでございますが、韓国としてはこれが一つの大きな目標であろうかと思いますが、従来の実績をずっとながめてみますと、これの実現には非常な努力も要るであろうし、どの程度いくかは、これは従来の実績ともにらみ合わしてわれわれ測定していかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  92. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 それではこの問題について結論的に、これは農家の素朴な言い方になるのでありますが、やはり従来どおり世界の六割は生産するんだ、むしろそれ以上の生産面を受け持つんだというふうに考えて、そのような張り合いの中で生産に進んでもよろしい、こういうことで間違いないのだということでよろしゅうございますか。
  93. 石田朗

    石田政府委員 先ほど申しましたように、現在日本は世界の圧倒的な生産部分を占めております。このような事態は変わらないと思いますし、今後世界的な需要の増大に対しまして生産増強いたしていくにいたしましても、これはやはり大きな、かつ広いすそ野を持ったわが日本の生産増強が一番貢献していく可能性もまた大きいということは一声えると思いますので、今後とも日本はやはり世界の生産の非常な部分を占めつつ、発展していくべきものというふうに考えておる次第でございます。
  94. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 そういう方向で進むといたしますと、問題は、もっぱら生産をどう確保し、増進するかということにいきそうであります。これについて冒頭局長のほうから、いろいろな施策をやっておられる、するんだということの表明がございました。しかし、私は、たとえば本年度の予算の実態を見てみましても、このような重大時期を迎えたわが国の養蚕業に対する対策としては、何かもの足らぬ、何かどころか、たいへんもの足らぬ感じがしてならないのであります。しかし、金の問題じゃない、問題は生産農家生産意欲が出てくればいいんだからと言われればそれまでであります。それまででありますけれども、この重大段階において、しかも急場に間に合わせなければならないいまのような状況からしますと、いかに事業団ががんばりましても、物を持って世界の需要にこたえながら将来の世界の輸出の場を確保することは困難であろう。私は、この問題はきわめて焦眉の急でなければならないと思うのですが、それだけに非常なもの足りなさを感じます。しかし、それはそれとして、別途予算委員会その他において検討されたようでありますから、来年度、四十三年度予算あたりにおいて、それに見合うだけのというよりも、ことしの分までもよけいに対策を練っておいていただく必要があろうじゃないかということを申し上げて、具体的なお尋ねに入るのであります。  この資料によりますと、農林省のほうの目標によりますと、作付反別をかなりふやすという見通しのようであります。はたしてふえるものかどうか。九州や四国、中国あたりにおきましてはふえる面もあるようでありますが、私は山梨県ですが、山梨県におきましては、作付反別はむしろ減る傾向があるんですよ。果樹、蔬菜その他のほうに転換する。いまのような値段においてすらもそうなんです。将来の見通しが堅調であり、上がるということであれば、これはあるいはとも思いますけれども、しかし、なかなかいまの段階において作付反別をそうふやすというわけにはまいらぬ。これについては具体的に何かお持ちになっておられるのでありますか。また見通しを持っておられますか。
  95. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、実は十年後の桑園面積見通しというのが、必ずしも過大なことは考えておらないと実は私ども考えております。十年後に三十九年をべースにいたしまして三%の増、こういうことでございます。これにいたしましても、片方でつぶれ地等もございますから、やはり新値等を相当推進いたさなければならないかとも思いますけれども、この面積の目標というのは、私どもは決して過大ではないのじゃないかというふうに考えております。現に山梨県等の主産地におきましても、私は必ずしも生産地において減っておるとは考えておりません。かつまた、南九州、表東北等のいわば新興産地におきましてかなりふえておる側面もございます。片方で都市近郷等でつぶれる面があることを考えに入れまして、このような目標、見通し立てておるわけでございます。
  96. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 反別をふやすことが、それ自体生産量を増すということだけでもあるまい。むしろ日本の養蚕業としては、さらに技術を改良するとか、品種を改良するとかして、反当収繭量といいますか、そういうものを上げていく、あるいはまた生産意欲を増すための省力栽培、飼育などを考え出して、純所得を上げていくということもその一つ方法だろうと思う。  そこで、その手近の方法としての技術の改良でありますが、端的にお伺いいたすのでありますが、たとえば桑園の収穫量を上げるための桑の品種の改良であるとか、あるいは肥料の研究であるとかいうようなものについては、どのように力を入れておられるのか。これはあるいは局長お疲れでありましたらお休みになってもよろしいから、しばらく、試験場長にも来ていただいておりますから、そのほうからお答えいただいてもよろしゅうございます。こまかい話になりますので……。
  97. 石田朗

    石田政府委員 それでは私から簡単に申し上げまして、あと試験場長技術的な点を補足してもらいます。  桑の品種改良につきましては、これは国及び県の試験場を通じまして、これの優良品種の作出につとめておりまして、最近にも幾つかの新品種を出して普及に入った、こういうようなことでございます。こまかい点は後ほど試験場長からお話申し上げます。  それから、いまの肥料の点でございますけれども、これにつきましても、桑園の土壌調査を行ないまして、これによって施肥の基準を打ち立てるというような仕事をずっと続けてまいりました。これに対しまして、一応既存の桑園につきましてはそのようなものができつつありますので、これに基づきまして、従来よりもさらにレベルの高い形での収穫を上げていくという目標のもとに、養蚕団体等も施肥をそういうような新しい基準のもとに増加していく、こういう運動を展開されております。したがいまして、それらの面は今後著しく改善されてまいるかと思いますが、なお、こまかい技術的な点につきましては、試験場長から……。
  98. 大村清之助

    ○大村説明員 ただいまの桑の増収のことについて、桑の種品の問題といろいろな栽培技術の問題でございますが、桑の品種につきましては、昭和三十一年から新しい品種育成の組織をつくりまして、蚕糸試験場が中心になりまして、府県の試験場とチームをつくりまして、指定試験ということにしまして、ある段階の選抜を経たものをその府県のほうで少し多量に、二畝とか三畝とか集団的に栽培してもらいまして、第一次の検定をしまして、それにパスしたものをもう少し、一反歩くらいまた県内で栽培してもらいまして、蚕の飼育まで持っていく、そういう組織をつくりまして、昨年結論を得まして、五つの新しい品種が決定したわけでございます。その二つは暖地向きでございまして、一つは寒冷地向きの品種でございまして、残りの二つが雪国向きの品種でございます。それで、ことしの春、初めてその品種の穂木を配布いたしまして増殖に入ったわけでございますが、蚕糸試験場としては、十三万本だけしか穂木の用意はなかったわけでございますが、申し込みは三十六万本ありまして、やむなく配給みたいなふうにして、少し内輪に配布したというようなことでございます。その代表的な品種は、たとえばアツバミドリという品種がございますが、いま一の瀬が一番優秀な品種とされておりますが、これは山梨県においては非常にりっぱな品種でございまして、何も欠点はございませんが、ほかの地方に行きますと、どういうわけか、生長のときに少し風が吹きますと枝がたれるとか、激しい夕立にあいますと枝が乱れていくとかいうことで、管理に非常に困っておりますが、この品種は、その点枝がわりあいにかたい、あるいは葉が厚うございまして、しおれにくいということで、場所を選べば一の瀬よりもよろしいんじゃなかろうかということで、注目を浴びておるわけでございます。  それから、土壌調査は、これも十年近くかかりまして、主要な府県の試験場にお願いしまして、桑園土壌の調査といたしまして、それからそれぞれのタイプの土壌について桑の栽培試験、肥料試験をしまして、その結論が出ましたので、私のほうでまとめまして、ちょうどだだいま校正も印刷も終わりまして、製本中でございまして、今月中には配布できることになっておりますが、これができますと、大体その土地土地に応じました施肥の新しい基準ができます。それも従来よりは肥料を多くした、多収穫を主体とした、根拠のある施肥基準ができるだろうというふうに考えております。  そのほか、いろいろな栽培のことにつきまして、従来ややもいたしますと、全国一様なようなやり方をしておりましたのを、それぞれの土地に合うように、地域別につくり方あるいは収穫方法をやるように、これは各県と手分けして研究中でございます。
  99. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 私は、実はいまお話に出ました一の瀬桑の発祥地山梨県の、しかも一の瀬桑を出した一の瀬さんの隣に生をうけた者です。桑といえば一の瀬桑、一の瀬桑の発見によって日本の養蚕業は大きな飛躍をした、こう考えております。まさに山梨県に関する限りはそうであった。ただ、私は旅行してよその桑園を見てみまして、一の瀬桑のないことをふしぎに思っておったのですが、いまわかりました。よそでは必ずしも一の瀬桑が向かないということであるようであります。今度また新しい四品種か五品種が発見されて、普及される段取りになったそうであります。たいへんけっこうなことでありますけれども、実は一の瀬桑が発見されて以来半世紀以上になるんじゃないですか。半世紀以上たっても桑の改良ができなかったということは、これだけ力を入れるべき日本の養蚕業の土台をなす桑の研究としては、少し手ぬるかったんじゃないかというような気がしてならないのであります。いわんや、よその県に適するところの桑の品種というものが、一の瀬桑を発見する以前のものであったなどということは、私はどうしても考えられない。事実とすれば残念なんです。そこで、しかし過去のことはやむを得ないといたしまして、いい品種が発見されて、その試作の結果、よしということであるならば、早急にこれを普及して、当面の間に合わせに役立たしてもらわなければならぬと思うのでありますが、との桑園の改植、適当なる品種を選んで改植するためには、ただこれがいいからさあお植えなさいよというだけでは、少し足りないように思うのですね。何かそこには政策的な裏づけというものをほしいように思うのでありますが、これは試験場長でなくて、あるいは蚕糸局長の分野であるかもしれませんが、いかなる方策をお持ちになっておられますか。
  100. 大村清之助

    ○大村説明員 桑の品種につきましては、政策的な問題より、技術的な問題が非常に重要でございますので、私お答え申し上げますが、一の瀬は、お話のとおり、発見されてもう半世紀以上たっていると思います。しかし、これが山梨県で非常に貢献をしたことを世間がほんとうに認識いたしましたのは戦後でございまして、戦後山梨県の反収は非常に高いということをみんなが知りまして、その理由は何かということで、一つは一の瀬であろうということで、戦後非常に一の瀬がふえまして、いま実は全国で半分くらいは一の瀬になっているのです。ですが、それはやはり自然に一の瀬がよいということがわかってふえていったのでありまして、新しい品種がここにできましても、この普及については、やはり農家が次第に認識していかないと、永年作物でございますので、無理なことはできないというように考えております。  それから、桑の品種の研究につきましては、最近いろいろと昔と違った方法がとられておりまして、一つは、薬品を使ってつくった倍数体の桑を育成しております。種なしスイカのような式でございますが、これがだんだん従来と違ったものができつつございまして、そのうちに結論が出ると思います。  それから、いま一つは、放射線を使いまして、農林省でガンマ線の育種場がございますが、そこに桑を持っていきまして私のほうで品種改良をやっております。その中で、たとえば一の瀬で、ガンマ線を当てて、まるい葉の一の瀬の変わりものが出ておりまして、葉が厚うございます。多分昨年これを県のほうに移してございますから、あと三年ぐらいたてばその成績がわかるのではないかと思います。  それから、改良ネズミガエシという、厚い葉で、まるいのができまして、これは三十九年に県の試験場にテストを頼んでおりますので、これは明年ごろその成績がわかりまして、従来の改良ネズミガエシもすぐれているかどうかわかってくるのではないかと思います。そういう新しい研究方法は着々ととられておるわけでございます。
  101. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 場長についでに桑のことについてお伺いいたすのでありますが、いろいろ研究なさっておられまして、まことにこれは養蚕家にとってはありがたいことだと思います。そこで、私は、もしできますならば、山地の日照度の少ないところでも育ち、かつ蚕が喜んで食べてくれるような桑というものができないものかどうか。特にそういうようなテーマを持って研究されておられるかどうか。また、いままでそういうことをなされなかったとすれば、これからなさっていただく御意図があるかどうか。といいますのは、わが国は国土自体も山におおわれておる。日照時間の多い南面傾斜の土地におきましては、これは従来としては養蚕業にいそしむことができたわけです。しかし、北面傾斜においてははたしてどうであろうか。特にそういう方面の桑が研究せられ、発見せられるとしますならば、比較的他の作物などができないところでも、養蚕業についてはできるのじゃないか、こんなふうに思うものですから、そういう方面の研究をされておられるか、またされる可能性といいますか、価値があるかどうか、承っておきたいのであります。
  102. 大村清之助

    ○大村説明員 仰せのとおり、桑は全国的にいろいろな場所で栽培されますので、地味の豊かな平たん地だけに適する品種をつくっておったのでは片手落ちであろうということで、三十一年度にさっきの新しい育成の組織をつくりましたときに、それぞれの県に手分けしてお願いしまして、平たん地の肥沃地とかあるいは傾斜地であるとか、山地に畑を県が農家から借りまして、そこで育成途中の品種を持ってまいりまして、はたしてこれが平たん地に適するか、傾斜地に適するか、あるいは高冷地に適するかというようなことをテストするような仕組みになっております。それで、たとえて申しますと、岐阜の高山とか、長野県の軽井沢の近くとか、福島の会津のほうとか、それから岩手県等にございますので、そういうところに適する品種がまいりますれば、大体高冷地に適することになるのではないか、そういうことで一応そういう網は張ってございます。
  103. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 まだ定着はしないのですか。
  104. 大村清之助

    ○大村説明員 まだそれに適する品種は出ておりませんが、先ほど申しました寒冷地に適する一つの品種がことし出ました。これはカンマサリといっておりますが、これは寒いところに植えましても、冬の間に枝の先が枯れない。先枯れが非常に多いのですけれども、この品種は枯れないということで、これもそういうところから要望が出ておりまして、ありったけの穂木が出て、足りなかったということでございます。
  105. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 もう一つだけ。副産物の利用が養蚕家の生産意欲を増すための一助になるのじゃないかなどと私は考えておりますが、いまの桑の木のほうですね。皮だけはパルプ材料に使ったというような話を聞きますけれども、全体として特に研究を進められておられるかどうか。それから蚕ぷん蚕沙の利用の方法ですね。聞くところによりますと、薬を取り出しているのだとかなんとかいうことを聞きました。しかし、そういうことばかりでなくて、これはあとで私は蚕糸局長にもお伺いしたいのでありますが、これを何か処理してまぜるとか、何か処理して豚とか鶏とかいう方面に使う、これは私は循環農作業の一つの輪に使いたいと思うものですから、そういう研究も進めておられると思うのでありますが、どんな状況でございますか。それからサナギの利用の方法というようなことにつきまして、試験場のほうにおきましてはずいぶん長い間かかって検討を進めておられる。これらについての成果、今後においての見通しなどをお示しになっていただきますと、農家のほうでもそこに非常な張り合いを持つ、希望を持つこともできるのではないか、こう思うのであります。いかがでありますか。
  106. 大村清之助

    ○大村説明員 副産物の利用でございますが、これは蚕糸試験場が戦争中に非常に力を入れまして、蚕ぷん蚕沙が畜産の飼料に非常に適しておるというようなことで、この利用法——サイロに詰めるとか、あるいは乾燥して鳥のえさにまぜるというようなことをやったり、サナギの利用法も、油をとるほか、ビタミンB2の原料にするとか、いろいろ研究は進んでおりますが、戦後事情が若干変わりまして、特に最近は畜産が非常に規模が大きくなりましたせいもありまして、農家の副産物程度では間に合わなくなったというようなことで、現在はほとんど蚕ぷん蚕沙は自家用で、少数の一、二頭の肉牛を飼う程度のところは使っておりますが、ほかはほとんど桑園肥料として戻しておる。桑の枝につきましては、昔は燃料として使ったのですが、これもほとんど燃料として使わなくなりまして、いまでは大体やはり肥料として桑園に返しておる。サナギは、これはもういまは油をとりませんで、大体コイの養魚のえさとしてほとんど使われ、これは非常に貴重に扱われておるようでございます。そういう状態でございまして、いまあまり副産物の利用は活発でございません。十年くらい前に、蚕ぷんから葉緑素がとれるということで、だいぶもてはやされましたけれども、いまはごく一部の限られた量にとどまっておるようでございます。
  107. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 いろいろ研究なさっておられるようですが、この研究費などについてはいかがですか。潤沢であり、研究者にとって満足すべきものであるかどうか。といいますのは、戦後におきましては、とかく研究費その他というものが削られがちなんですね。ことに蚕糸試験場あたりは、一時養蚕業の斜陽傾向論などがあったものですから、よけいそういうような心配を持つのですが、いかがでしょうか。  この重大な時期において、あらゆる角度からおらゆるものについて研究を進めていただいて、農家の方の生産意欲を高進する一助にしてもらわなければならないように思うから、お尋ねをいたすのでありますが、それについて、またたびたび立っていただくのはたいへんですから、一新聞で知ったのですが、桑のかわりに何か合成飼料を蚕にやって育てようというようなことの研究を進めておる人があるように聞きますが、その見通しなど、なかなかたいへんだろうと思うのですが、そういうことの今後のなにはいかがですか。  と同時に、そういうことがもし可能であるとしますならば、もう一つやってもらいたいと思いますことは、蚕からいきなり糸を人間が引き出してしまう、つまり、繭という過程を省略するというような方法考えられるのじゃないかと思うのです。何かの処理によって、蚕によって繭をつくり、繭から糸を紡ぐということでなく、いきなり虫から糸を引っぱり出すというような研究がありますれば、やれ解舒がどうであるとか、糸質が不均一であるとかいう心配がなくいけそうな気もするのでありますが、このようなことについてはいかがなものでありますか。研究費が足りなくて、そこまでいかないということであればやむを得ないのですけれども、そういうようないろんな角度から、養蚕振興のためにお力を入れていただかなければならないと思うものですから、お伺いをいたすのであります。
  108. 大村清之助

    ○大村説明員 研究費のことでございますが、これは、農林省におきましては農林水産技術会議が世話をしてもらいますし、全体の水準につきましては科学技術庁が骨折ってくれておりまして、年々物価の上昇を相当上回る程度の増加が続いておりまして、これは欲を言えばきりはございませんが、まず、いろいろな点から見まして、研究費はそう不満を言うほど切迫はしておらない。生かして使えば相当有効に使える程度の研究費をいただいております。特に蚕糸関係が斜陽的であるから予算がつけにくいというようなことはございませんで、大体の研究費の算定が、研究員一人当たりことしは五十万でございますが、そういうことになっておりまして、試験場に対する日当たりのよし悪しということは、現在はございません。その点は非常に都合よくなってまいっております。そのほか、研究に要するいろいろな高価な機械、五十万円以上を要するような機械についても、別に技術会議から回答がございまして、かなり高い、四百万円、五百万円するような精密機械も、年に二台、三台と買えるぐらいになってまいっております。  それから、その次の、蚕を桑でない人工のえさで飼う研究でございますが、これは蚕糸試験場で十数年前から手がけておりまして、やっといまから五、六年前に、卵から飼い上げまして、繭になり、ガになり、卵を産むというまでになりました。いまでは実験的に少数飼います場合は、桑の葉で飼った場合と同じ程度の繭はできるようになっております。それで、これが公開されまして、方々で研究が進められておりまして、一部の会社などでもかなりこれに研究費をつぎ込んでいるところがございますが、実用化までにはまだ相当問題がございまして、大量に安く飼うということになりますと、まだまだ解明しなければならない問題がたくさんございますので、現在のところはまだ基礎研究の段階だというふうに御承知願いたいと思います。  それから、蚕から直接糸を紡ぐという研究は、三十年ぐらい前やった方がございましたが、やはりやってみますと、いろいろな点でむずかしゅうございまして、糸はやはり蚕に吐かして、蚕に糸にしてもらって繭をつくらして、それを人間が横取りして生糸にしたほうが、安上がりといいますか、経済的のようでございまして、その後蚕から直接糸をとる研究は、いま行なっておらない、そういう状態でございます。
  109. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 だいぶ時間をこのようなこまかい問題で費してしまって、恐縮でございました。私は、そのような一種の荒唐無稽的なお尋ねをいたしましたのは、実はあらゆる方面に手を伸ばしておいていただいて、わが国の養蚕業が世界的主導権を持つという過去の実績を将来に向かっても失いたくない。養蚕家の念願するところもそうであろうと思うのです。ですから、ああもしたらどうであろう、こうもしたらどうであろうという研究だけは、いま承りますと経費はふんだんにあるそうでありますから、そうであればなおさらでございます。もし足りないような場合におきましては、私どもをもひとつお使いを願って、よけいに取っていただいて、養蚕国日本、生糸王国日本という地位を将来に向かって確保できるような体制準備だけは、ぐんぐんとお進めおきを願わなければいけないと思うのです。おそらく、きょう問題になっておりますところのこの蚕糸事業団法の一部改正のねらいも、そういうところにあろうと思うからであります。  そこで、場長さんにはこれで私がお尋ねいたすことは終わりましたが、政務次官もお見えになりませんから、蚕糸局長どうもお疲れのところ恐縮ですけれども、もう十分ばかりひとつおつき合いを願いたい。  いま研究をされておる蚕自体の品種の改良につきましては、比較的早急に普及されておるようであります。ところが、そのもとの桑につきましては、いまのように品種は改良されたけれども、半世紀間近くほっておかれた。たとえば、一の瀬桑はいいということがわかったのは半世紀も前のこと。それが戦争後においてようやくよそにおいて使われ出した、こういうことであります。これは決して蚕糸局がなまけておったとか、あるいはせっかく研究した試験場のほうがほっておいたからということではあるまい。大いに宣伝もしたのでしょう。けれども、桑の植えかえということは、保守的な農民にとってはなかなか大事業なんです。何かのきっかけ、何かの呼び水がないと、それはできないのではないか。そこで、こういういい苗ができました、さあお使いくださいと言ったんじゃなかなか間に合わぬのじゃないか。何かの方策をもって、たとえば改植助成方法をとるとかいうような方策をとらぬと間に合わぬのじゃないか。それからまた、寒冷地に対するいい苗ができました、暖地に適するところのいい桑ができましたと言っても、三十年くらいたってようやくぼつぼつ地方にいったんじゃ、現段階においてこの法案を出さなければならぬようないまの事態には間に合わぬのじゃないか、こう思うのです。そうしているうちに、よその国のほうからの手当てが進んでしまって、圧倒されるというようなことがあってはならぬと思うものですから、緊急を要するという意味において、これに対する対策いかん。  同時に、私は、そういう方面の出先の一番苦労をしておるところの指導員に対する対策というものが、はたして完全であるやいなやということを心配するのであります。私が地方において耳にいたすところでは、肝心な指導員の人たちの待遇というのは悪いのですね。非常に機動力もないというようなことであります。国のほうからも若干、三分の一か出ておるようでありまするけれども、少ない。したがって、これに対する活動の十全を期待するわけにはいかぬのじゃないか。そういうようなことが、結局いい品種が発見されても普及ができなかったということの一つにもなろうか、こう思うのです。と同時に、こういう人たちは常に新しい技術の発見のために研究もしていかなければなりますまい。また、あたりの同僚との連絡方法も講じておく必要があろうかなどと思いまして聞いてみますと、研修費、研修方法というようなものも十分ではないようであります。横の連絡対策というものも十分でないようであります。こういうことであっては残念と思うのであります。蚕糸局長、いかがでありますか。せっかく試験場長のほうで確信を持っていい品種を発見してくれた。これをほっておいてはいけないと思います。急速にこれを普及し役立たせるような方法をとるための予算的措置なりをやっていただかなければならぬと思うのですが、いかがでありますか。
  110. 石田朗

    石田政府委員 ただいまもお話ございましたがが、桑品種につきまして、ただいま試験場長も述べましたように、国の試験場その他におきましても非常に努力をいたしておりますが、何せこういう永年作物でございますので、これの改植ということはなかなかむずかしい面がございます。しかしながら、これにつきましては、新品種の採用、あるいは老朽桑園の改植、あるいは集団桑園造成、こういうようなことを推進してまいらなければなりませんので、一つには、最近におきまして、構造改善事業あるいは新しい土地におきます開拓パイロット事業等々において、この桑の新植が取り上げられ、集団桑園が取り上げられるという例がかなり出てまいっております。それから近代化資金の中に、この桑の植栽につきましての資金を組み込みまして、この活用をもお願いしているわけでございまして、現地の指導とも相まち、かつ、全体の養蚕見通しとも相まちまして、本年におきましては、実は桑の苗がむしろかなり不足ぎみであるという程度に新植、改植の意欲は盛んに相なっておると考えておりますが、なお今後とも、このような優良品種の普及等には私どもとしても十分力を注いでまいりたいというふうに考えております。  また、これらに関連いたしまして、普及員なりこういう職員の問題がございました。私どもも、現地で指導に当たります普及関係職員にどういうふうに十分に活動してもらいますかということが、非常な生産推進のかなめであろうというふうに思っておりますので、従来ともこれらの職員の待遇についての問題であるとか、あるいはこれに対する機動力の問題、及び資質の向上のための研修の問題等々をできるだけ配慮をいたしたつもりでございます。たとえば研修等につきましては、昨年以来、従来よりかなり充実した形において実施するという体制を整えておるわけでございまして、これらにつきましても、今後とも十分これらの人が力を出して働けるように私どももできるだけ努力をいたしてまいりたいというふうに思うわけでございます。
  111. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 こまかいことでありますけれども、非常に大事なことでありますから、真剣にひとつ御検討を願って、当面の役に立たせてもらいたいと思います。  そこで、時間がだいぶ過ぎましたから、結論めいたものに入るのですが、それに入る前に、一つ残しておきましたが、増反策。作付反別をふやさなければならない。年に三%くらいずつふえるめどを持っている、こういうお答えでありますが、私は三%でもなかなか容易でないと思う。ただ、一つ私は方法があるように思うのです。それは山地の利用です。現在までの状況におきましても、養蚕業は平地においてはもちろん発達いたしました。けれども、山地においてもなおこれがやれたのですね。それは果樹なり野菜なりその他の作物のように、毎日出荷するというような必要がない。したがって、山の奥でも蚕を飼い、繭にして、年に春、夏、晩秋、三度出荷すればよいということで、交通にわりあいに不便な、あるいは製糸屋に遠いところでも、これは可能であったのですね。ただ、一つ気になりますことは、そういうところはとかく日照時間が少ない。南面傾斜のところはよろしいのですけれども、北面傾斜もしくは山合いというところになりますと、日照時間が少ないものですから、桑の栽培もえらい、反収も少ないというハンディキャップもあったということで、平地の養蚕業とは所得の面において格差を生じておった、これは事実のように思います。そこで、さっきも場長にお伺いしたのでありますが、そういうところに適するような桑の品種の発見といいますか、造成というものをしてもらえないかということでありますが、それができたということであります。そういたしますと、ここで蚕糸局のほうなり農林省のほうで活動していただく面が新しくつかめたように思うのです。いまこういう席でもって、こんなことに触れて言ってもいけないのでありますけれども、それはわが国の山地——私は山梨県におりまして、昨年二十六号台風というものを経験いたしました。世間全体に非常な御心配をかけたのでありますが、集中的な雨量としてはたいしたことはなかったのでありますけれども、ああいう豪雨によってたいへんな災害を来たした。あの災害の原因というものは、山地がほうっておかれた。山地の人口が減ってしまいました。山地を捨てて、みな都会へ出てしまった。そうしてほうっておかれたから、そこに非常な災害の原因をつくり出した。そこへ雨が降ったということであろうと思います。しかも建設省及び農林省林野局の共同調査によりますと、ずいぶん手当てをしなければならない山はだを持っている土地というものが全国にもうたいへんな数なんです。にもかかわらず、人口が山から逃げてしまった。まさに国土は非常に心配な状況になっている。そこで、これを救う道というものは、山の間にも働ける産業を見つけてやらなければいけない。ところが、なかなかない。いままでは炭焼きやまき拾いで問に合った。それがない。そこで、何かないかというときに思いつくのが養蚕業ではないかと思う。その山地における養蚕業の唯一のハンディキャップは、適当した桑が栽培できなかったことであろうと思うが、幸いにしてそういうことができるとするならば、そこに目をつけて、一つには山地保全の一助ともし、そうして山に人口をとどめる方策にも役立つようにという意味において、かの地における養蚕業の発達といいますか、振興をはかってみることも大切ではないか。ここに増反の余地ありと私は言いたいのであります。ただ、その場合におきましても、ただこういう品種ができたからそれでいいと言っておったのではいけませんので、そういう場合におきましては、いろいろな意味も含めまして、山地保全、国土保全のためにも役立つという意味における助成金といいますか、そういうものを考えておく必要があるのではないか。そういうことを土台としてこの蚕糸対策、山地の養蚕対策というものをお進めくださるということが大切なようにも思いますが、いかがでありましょうか。
  112. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、確かに、山間地においてほかに適切物がない場合に、養蚕が非常な重要性を持ってくる場合がかなりある上ということは、そういうことであろうというふうに私ども考えております。そのようなことにも基づくものであろうかと存じますが、最近、先ほど申し上げました開拓パイロット事業、あるいはただいま山村の振興のことをお述べになりましたが、最近着手されております山村振興の特別対策事業、これらにおきまして、養蚕をその中に取り入れる事例が多くなってまいっております。したがいまして、それらにつきましては、養蚕振興の面からもまことに好ましいことでございますので、これらを十分取り上げ、かつまた、それらの適地の選定なりあるいは適品種の選定なり、これらについての指導を十分誤りないようにいたしまして、山村振興の立場及び養蚕振興の立場から推進をはかってまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  113. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 いまのお考えには敬意を表するのでありますが、いままでの構造改善事業といいますか、構造改善対策などの実例を見ますと、どうもああそうですか、たいへん期待いたしておりますということを言いかねるほどなんですね。  それから、山村振興法、これができてからもう二年ですか、三年ですか、きわめて予算も少なくて、急傾斜に道をつくる程度のようであります。これでは私は間に合わぬのじゃないか、こう思うのです。ですから、これは山村振興という大きな網の中で考えられないで、それから構造改善事業というたいへん名目のいいものだけで考えられないで、もう急所をつくような形における養蚕振興、繭増産、急場に間に合わせるための対策としてこれを取り出しておく必要があるのではないか。実は私もう時間もまいりましたので、お尋ねのことは終局いたすつもりでありますけれども、いままでこの席で承ったところによりましても、生糸は世界的にいって相当需要は増してくる。ますます増すであろうということと同時に、そうした需要の増の見通しにもかかわらず、世界各国における増産対策というものはそう目ざましいものはない。まあ、中国はわからぬとおっしゃいましたけれども、中国もそうであろうと思うのですが、たいしたことはない。したがって、わが国の養蚕業というものは、世界全体の養蚕業の王座を占めながら、その世界全体の増すべき需要に対して対応すべき責任を持っているのではないか、これからますますその責任は大きくなるのではないか、こう思います。そしてそういう責任感を持った上での今回の本改正法案だと思います。そして、それを見てみますと、私はこれでもうわがこと足れりとは決して思わないのであります。先ほど輸出入全体を見なければというお話がございました。私はそういうところまで行こうと思います。わが国の養蚕業の課題は、そこまで考え対策を練っておくべき立場でもあり、責任もあると思うのです。だから、そういう責任の将来の見通しの中で、体制の中で、この法案というものでちらり将来の見通しをのぞき見たような気がいたすのであります。のぞき見る程度であって、ほんとうの問題の解決は、私は、これではなくて、むしろ生産増強養蚕業の振興ということにそれこそ真剣に取っ組んでいかなければいけないのではないか、こう思うものですから、いままでくだくだしく、またこまかいととろにまでわたってお尋ねをいたしました。  で、私は、養蚕業につきましては、小さいながらも全国一の成績をあげておる山梨県の生まれであるだけに言っておるわけではありませんけれども、私は、養蚕業というものは、いままでの実績もさることながら、いろいろな条件を考えてみまして、わが国の食糧というものを別にいたしますと、農業の中の大きな部面をしょわしていいのではないかと思うのです。といいますのは、さっきも場長が言われましたけれども、桑というのはどこでも育つのです。荒れ地でもいい。沃地ならなおいい。山の急傾地でもいい。平地でもいい。南面の土地ならなおいいが、北面だって育つんです。寒冷地でもいい。暖地ならなおいいという、まことに好都合な作物なんです。そして栽培はわりに楽なんです。そしてこれに対して品種をさらに研究していただく、栽培方法を研究していただく、適切なる肥料を発見していただき、安く潤沢に回していただくとしますれば、かりに反別がいろいろな関係上ふやし得なくとも、相当生産量が供給できるのではないか。また、いろいろな角度から省力飼育というような方法検討していただき、さらに進んでは、養蚕業を主体として、これに労力をうまく配分し、かみ合わせるような養鶏なり養豚なりその他の産業をかみ合わして、しかも一部落なり集団的、共同的な経営方策をとるようなことも検討していただくことによって、経営面における巧妙さを発揮していただく、そうして、そういう中から各個人の所得の増が期待できるとしますならば、これは私はいままで以上にもわが国は養蚕王国といいますか、生糸天国として世界に君臨し得るのではないか、こう思うのですね。  そう期待いたすものですから、結論といたしましては、本年度の予算につきましては、私は中を見まして、これがこういうような法律を出さなければならないほどに緊迫したわが国の蚕糸対策養蚕対策の予算かと、実は残念に思った。がっかりしたくらいのものであります。しかし、その額は小さいけれども、巧妙に使って大いに役立たせるという御意図であれば、それも現段階ではやはりやむを得ません。やむを得ませんけれども、四十三年度予算におきましては、いままで私がお願いいたしましたようなことも加味いたしまして、相当額の力を予算面においても計上しながら策を練っておいていただきたいと思うのです。私は、生糸がもう神代の時代から大きな伝統を持っているというようなセンチメンタルで言っているわけでもございません。ございませんが、しかし、いろいろな角度からいきまして、非常な大切なことです。ことに、婦人が大体蚕を飼育しております。共同飼育場なりへ行ってみますると、あの御婦人が蚕を見ることわが子のごとく、愛情をささげて蚕を世話しておる。あれを見てみますると、日本の婦人が世界の婦人に比較にならないほどのりっぱな根性、りっぱな情操を持っておる、そのもとには、あの蚕にささげるといいますか、蚕に注ぐ愛情というものが、ずいぶん役立っているのではないか、こう思うのです。日本の女性が、やさしくて、強くてと、こういわれるのには、私は蚕の功績が大いにあると思うのです。それだけに、ただ所得面というだけでなくて、国民の情操面からいたしましても大切な仕事のように思う。そこで、ひとつ生産農家が、よしきた、政府がこれだけ力をこの段階において入れてくれるならば、われらもまた将来に向かって大きな張り合いと希望を持って生産努力して、政府の御努力にこたえようという気持ちを起こすのではないか、こう思うのです。来年度予算においてその実績をお示しくださるように私はお願いをいたしまして、私のお尋ねを終わることといたします。  実はきょう、私は、大臣がお出になっておりますれば、蚕糸王国長野県出身として、なおこの点は強く言いたかった。どうか蚕糸局長その点をひとつ大臣にもお伝え願いたいのであります。  以上申し上げまして、終わります。(拍手)
  114. 本名武

    本名委員長 中野明君。
  115. 中野明

    ○中野(明)委員 時間もたいへんおそくなっておりますので、はしょって二、三お尋ねしたいと思います。  三十四年に蚕繭事業団が設立されたのでありますけれども、当時の状況と、そして設立の目的について、最初お尋ねしたいと思います。
  116. 石田朗

    石田政府委員 お答え申し上げます。  前にございました蚕繭事業団についての御質問でございますが、当時、生糸の価格安定につきましては、特別会計による価格安定措置をもって対処をいたしておったのでございます。これに対しまして、当時の繭及び生糸需給事情からいたしまして、繭価の安定に資しますために、繭価がある一定水準から低落しますような場合におきまして、繭価を維持するということのために、蚕繭事業団を設立いたしまして、これを繭価維持のための事業団として、政府全額出資で設立をいたしたわけでございます。
  117. 中野明

    ○中野(明)委員 そして、それが昨年蚕糸事業団法によって事業団の設立を見たわけになっておりますが、この前身の蚕繭事業団と、現在できております蚕糸事業団との相違点、どこがどう違うのか、それをお尋ねしたい。
  118. 石田朗

    石田政府委員 現在の蚕糸事業団とかつてございました蚕繭事業団は、その性格、内容をかなり異にいたしております。前の蚕繭事業団は、いまも申し上げましたように、全体の糸価安定の中−で、繭を処理いたします部分について設立をいたしたわけでございますが、今回の蚕糸事業団は昨年——法律が通りましたのは一昨年の末でございますが、御審議をいただきましたので御理解をいただいておるかと存じますけれども、国が価格の異常変動防止のために最高、最低価格を定めまして、特別会計をもってその異常変動を防ごうということをやっております。その中におきましてできるだけ価格の安定をはかって、一つの中間安定帯の中の小幅な変動にとどめる、こういうことが蚕糸業全体の事業推進のために非常に有効であるという見地から、そのような任務を分担いたしますものとして、中間安定のための生糸の買い入れ、売り渡し、こういうことを中心の業務といたしまして、日本蚕糸事業団を設立いたしたわけでございます。なお、その際に、従来蚕繭事業団がやっておりました繭価維持のための操作の仕事もあわせてこの蚕糸事業団にやらせる、こういうことにいたしまして、それらを全部含めた事業団として蚕糸事業団が設立された、こういうことでございます。
  119. 中野明

    ○中野(明)委員 そういたしますと、一応繭価維持をし、また価格安定をするために蚕糸事業団がある。これはわかるわけなんですが、蚕繭事業団から通算してみますと、約八年たっておるわけであります。この八年間に、事業団の目的である作業というか、仕事というか、どういうようなことが行なわれてきたか、具体的に教えていただきたい。
  120. 石田朗

    石田政府委員 ただいま申し上げましたように、蚕繭事業団は繭価を一定水準以下には低落させないようにするということのために設立をされたわけでございますが、設立以後、実はそのような価格まで繭価が反落するような事態がございませんでしたので、そのような事業団の業務は実は行なわれておらないわけであります。しかしながら、この事業団の存在自体が繭価の安定には非常に寄与をしてまいったというふうに私ども考えておるわけでございまして、実は三十九年の春繭につきましては、定めました繭価を下回る可能性が生じてきたわけでございまして、事業団といたしましても、まさに業務の発動をいたそう、こういうことで準備を整えたわけでございます。そのような事業団の業務発動の体制が整えられたことを前提といたしまして、業界自体において製糸業者がそのような繭価を保証するというような措置をとられましたので、現実にはこれが動き出さないでも繭価が維持された、こういうような事例もあるわけでございます。そういうことで、いわば伝家の宝刀を抜くまでに至らなかったけれども、それの存在価値は大いにあったというのが実態であろうかというふうに考えておるわけでございます。  いま一つ、蚕繭事業団といたしましては、その中の仕事の一部といたしまして、養蚕経営の安定に資するための補助金を支出いたしております。これにつきましては、稚蚕共同桑園の設置であるとか、桑園整備用の機械の導入であるとか、乾繭施設の整備等に補助金を出しておりまして、これができましてから四十年までに約一億三千九百万円の補助金を出しておる。こういう仕事をやってまいっておるわけであります。
  121. 中野明

    ○中野(明)委員 政府が絶えず出資しております事業団とか公団、そういう方面は所管の大臣が厳重にこれを監督することになっております。そういう点について、なるほどいま局長が言われたように、事実そういう事態は起こらなかった。そのために、何ら事業団としては活動ができなかった。しかしながら、事業団があること自体に存在の意味はあったのだ、そういうお話でございますが、いま盛んに外部からも、公団、事業団というものについてはとかくの批判を受けておるわけでありまして、臨調からも廃止の意向が出る、そういうふうなところまできたわけでありますが、年数で言えば約八年ですから、非常に長いわけであります。その間に、事業団のことについてこういうふうな廃止の批判まで出てくるに至っておるわけでありますから、農林省として、いままでそのことについてどのように対策考えてきたか。そういうふうなことが相当表面でいわれるようになりますと、やはりそれを弁明し、説明するだけでもたいへんじゃないか。それまでに何とか手が打たれなかったのかというような気がするわけでありますが、その点いかがでしょうか、ちょっとお尋ねいたします。
  122. 石田朗

    石田政府委員 ただいま申し上げましたように、私どもといたしましては、蚕繭事業団の存在価値というものは十分に大きくあったのではないかというふうに考えており、かつ、三十九年の例に明らかなように、これをいつでも発動する、こういう準備をいたしておったわけでございます。これに対しましていまの臨時行政調査会の御意見等もございましたが、これらはできるだけ簡素なる体制をもっていろいろな仕事を進めるべきであるという御趣旨であろうと思います。これらにつきましては、蚕糸事業団を新たに中間安定構想の一環として設立いたします際に、従来の蚕繭事業団は解散いたし、その蚕繭事業団で分担しておりました任務は新しい蚕糸事業団にあわせ実施させる、こういうことをもって足りるのではないかということで、そういう体制で業務の推進をはかってまいる、こういうことにいたしたわけでございます。
  123. 中野明

    ○中野(明)委員 それで、現在の事業団の陣容はどのようになっておるのでしょうか。
  124. 石田朗

    石田政府委員 ただいまの事業団の陣容といたしましては、できるだけ少数精鋭主義をもって事業を実施してまいろうというふうに考えまして、職員数は現在二十五名でございます。常勤の役員といたしましては、理事長及び理事三名、監事一名、こういう陣容でございます。
  125. 中野明

    ○中野(明)委員 それで、現在まで本来の仕事がほとんどなかったと言っていいわけなんですが、今後この事業団が本来の仕事をどんどんやるようになってまいりましたときに、この陣容でいいのでしょうか、どうでしょうか、その点お伺いしたいと思います。
  126. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、蚕糸事業団は昨年来新たなる任務を持って設立せられたものでございまして、この任務の遂行は今後大いに御期待をいただかなければならないかと存じます。かつまた、今回事業団法の改正案を提出いたしまして御審議をお願いいたしておるわけでございまして、これを御可決いただければ、その分の仕事はさらに追加されるわけでございます。これにつきましては、今後の輸出業務等の進みぐあいにもよりまして、今後の体制は考えてまいらなければならないかと存じますが、初めから膨大なものをかかえてまいるということもいかがかと思いますので、現在の陣容をもとといたしまして、今後の仕事の状況をにらみ合わせて、必要最小限度の陣容整備で進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  127. 中野明

    ○中野(明)委員 じゃ現在の二十五名の陣容というのは、本来の仕事が行なわれてないわけですから、幾らか余裕がある、こういうことも言えるわけですね。
  128. 石田朗

    石田政府委員 繰り返すようでございますが、事業団は発足早々でございまして、これにさらに新たな仕事を追加いたすわけでございます。したがいまして、現在の陣容を基礎にして、今後の仕事の状況に応じていまの体制を整備いたすことが最も適当ではないかというふうに思うわけでございます。現在のが多過ぎるとは少しも思っておらないわけでございます。
  129. 中野明

    ○中野(明)委員 それで朝日新聞に、御承知だと思いますが、いま「マナイタの上の公社・公団」というのが盛んに出ておりますが、あの中にやはりこの蚕糸事業団がやり玉に上がっているわけであります。局長もお読みになったことだと思いますが、そういうふうになりますと、いまの世上として、国民全体もそういう点に非常に関心を持ってきておるわけであります。今日、ひとり蚕糸事業団のみではございませんが、きょうは事業団の審議になっていますので、この存続について農林省内で検討されたのかどうか、その点お尋ねしたいのですが……。
  130. 石田朗

    石田政府委員 先生がいまお話になりました新聞の論調におきましても、お読みいただけばおわかりかと思いますが、蚕糸事業団の成立が関係業界の一致した要望によってでき上がったということは、あの中にもはっきり書いてあったかと存じます。蚕糸事業の現状からいたしまして、養蚕、製糸その他蚕糸業関係の各界の非常に強い一致した要望によって、蚕糸事業団の現在の体制というものができておるわけでございまして、私どもといたしましては、そのような蚕糸業に携わる方々の要望にこたえるべく、これを最も適切に運用いたしていくというのが私どもの責務であろうかというふうに存ずるわけでございます。
  131. 中野明

    ○中野(明)委員 それで、一応そういうふうなことで、いま時にあたって新聞にそのようにいわれているわけですから、今後事業団の活動、そしてまた、この法案が通って輸出業務についての風当たりは特に強いのじゃないか、私そういうような気がするわけでありまして、今後の積極的な指導と活動を期待するわけであります。事業団が設立するときからすでに、今回提案になっている輸出並びに輸入の業務について論議がされて、そうした附帯決議やなんかもついておったわけでありますが、わずか一年しかたたないのにこういう問題が出てきているわけであります。非常に見通しが甘かったのではないか、なぜ事業団をつくったときにそういうふうにできなかったのか、このように私たちは思うわけであります。その点いかがでしょう。
  132. 石田朗

    石田政府委員 ただいま御意見にございましたように、蚕糸事業団が設立されますときに、輸出問題の御議論もいろいろ出ておるわけであります。しかしながら、その場合の輸出対策考え方と現在とでは若干違っておるかと思います。ただ、全体の輸出問題について何らかの措置を必要とするという点では、これが法的な措置であるか、あるいは運用上の措置であるかは別といたしまして、何らかの措置が必要であるということは、これは関係者のほうからみな言われておったことであろうかと思います。当初におきましては、事業団におきまして一つの中間安定を実現いたし、片方で価格面の措置、かつ、他面の輸出の問題につきましては、必ずしも法的措置でなくとも一つの実際上の運用措置において実施可能な側面があるということで、業界内部においても種々検討が進められ、その一部の措置は実施にも移されておるわけでございます。しかしながら、それ以後、ここ数年におきます蚕糸事業の変化というものは非常に著しいものがありますことと、それらの変化の中におきまして、輸出対策につきましては、そういうような運用措置だけでは不十分であって、事業団を活用した形における今回のような措置が必要であるということが明らかになってまいったわけでございます。この点につきましては、もちろんそれを先に見通し得る人もあるいはあったかとも思いますが、私どもといたしましては、行政部局内部における検討と、かつまた、業界各部門におきまする検討、これらが表裏一体となりまして、前の事業団設立の際もそうでございましたが、今回もそのような業界の一致した意見として、このような案に到達いたしたということでございまして、現在これらのすみやかなる実現を希望いたしておる次第でございます。
  133. 中野明

    ○中野(明)委員 基本的な線に戻りますが、糸価を安定させるというこの目的は、どこまでも生産者の擁護、これは当然なことだと思うのですが、それとともに、消費者に対する価格対策のことも含められて考えられていると私は思うわけであります。その点はどうでございましょうか。
  134. 石田朗

    石田政府委員 現在の価格安定の法律及び事業団法におきましては、蚕糸業の経営安定と輸出の振興といったようなことが掲げてございますが、当然に国民経済全体の中におけるそれらであると思われますので、ただいま言われましたように、生産、消費、それらの面をも考え合わせた大きな価格安定ということになろうかと思います。しかしながら、この問題提起の、法案の立案その他に至ったところのものは、生産者面からの発言が強かったというふうに了承いたしておるわけでございます。
  135. 中野明

    ○中野(明)委員 いま私の言いたいのは、糸価安定の目的は、いまもおっしゃったとおり、それはよく私も理解しておるわけですが、これは消費者のことも含まれて価格対策になっておるということは、一般論として当然だと思うのです。そういうように考えていきますと、先年の建議にも出ていますとおりに、どうしてここで輸入の業務を入れられなかったか。下値はなるほど押えられるということは考えられます。しかし、現状からいって、上値を押える方法はないじゃないか。そこで、輸入業務をここでどうしてはずされたのだろうか。暴騰に備えてどうしても放出糸を手持ちしてなければ手が打てない。そういう点について、生産者擁護は当然のことでございますが、価格安定策の上から、輸入をどうしてもつけ加えるべきじゃないか、このように思うわけでありますが、先ほどからこの問題についてはたびたび質疑が出ておると思いますけれども、もう一度局長からお伺いしたいと思います。
  136. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話がございましたが、いまの消費者のことも考え、価格を安定し、適正な水準に落ちつけるということのために最も必要なものは、端的に申せば生産増強ではないか。そうして全体の拡大した均衡状態をもたらす、これが一番基本であろう、できるだけすみやかにそこに到達することを努力すべきであるというふうに思います。  次に、現在輸入がふえてきておりますことは、まことに残念なことではございますけれども、しかしながら、これが現実には、価格につきましても、若干その上昇をやわらげるという実質上の経済的な効果を、影響を持ってきておるということも事実であろうかと思います。実は、いま輸入は自由に入ってきておるわけでございますけれども、にもかかわらず、価格が現在の水準にあるというのは、現在のいろいろな需給の情勢その他に基づく点がかなりあろうか。なお、この水準についてもいろいろな議論もございますけれども、それらに基づくところも多いかというふうに思うわけでございます。その場合に、さらに事業団で輸入ものを扱うかどうかという点は、実はこれらの点は、現在の輸入ものが経済的に動いておりますファンクションと申しますか、そういうものと、それが事業団で扱いました場合の意義、こういうことを考え合わせなければならないと思いますし、かつ、輸入の今後の見通しあるいはその価格の見通し等、これらをもあわせ考えなければならないわけでございまして、これらの点かなり検討すべき事項が多くございますので、これは引き続き検討をいたそう、こういうことに相なっておるわけでございます。
  137. 中野明

    ○中野(明)委員 そうしますと、長い目で見て蚕糸業の発展を願わなければなりませんので、そういう点から考えますと、現状のままでいくと、価格を安定させる、上値を押えるという方法を、どのようにして上値を押えるようにしようと考えておられますか。その方法についてお尋ねしたいのです。
  138. 石田朗

    石田政府委員 ただいま申し上げましたように、基本は、生産増強により需給均衡を回復することでございますが、なお、価格につきましては、先ほど来御指摘もあったわけでございますけれども、たとえば市場におきます価格変動の投機的な要因によってこれが暴騰するというようなことは極力押えなければならないわけでございます。私どもといたしましても、これらの取引所に対します規制措置その他によりまして、過当投機を防止し、これらの取引所操作による価格変動というものは極力押え、あわせて全体を妥当にして穏健な水準に落ちつかせますように、一切の行政指導及びこれらの点につきましては、できるだけ配慮をいたしておるわけでございます。
  139. 中野明

    ○中野(明)委員 局長の言われるのは、これは確かに理想であり、そのとおりだと思うのですが、現実の問題といたしまして、いまここで内需が非常に強くなってきていることは、もう数字の経緯から見ても当然ですし、この改正で輸出の糸が確保できる、そうなってまいりますと、ますます糸は品不足になって、原料の状態から推測しますと、急速に糸価が下落するという材料は非常に薄い、そういうふうに考えられるわけであります。そうすると、事業団そのものが輸出の業務をやることはやったけれども、本来の糸価安定についての事業団の業務は当分開店休業ではないか、そういうふうな見通しが立つわけであります。そこで、いま局長がおっしゃっているように、繭の増産は、これはもう後ほどお話を申し上げたいと思っておりますが、これは当然のことでございますけれども、いまのいまというわけにまいりません。何ぼか時間がかかるものであります。そういうことを考えますと、たちまち、非常にこだわるようですが、輸入の問題は非常に必要じゃないかというように私は考えるわけです。そうして、糸価が下落する材料がきょう現在において非常に薄い。そうしますと、事業団そのものが輸出の糸を扱った、それは確かに一歩前進かもしれませんが、本来の価格安定という目的達成のためには、何らなすすべを持たず、開店休業で、再びまた廃止論とかなんとかいって騒がれるようになったときには非常に立場が悪い、そのようにも心配するわけであります。そういう点、ここでもう八年越し、おそらくこの作業に従事している人も心苦しいのではないかと考えます。何とかここで価格安定に対して事業団が仕事ができるような方向に持っていくべきじゃないか。そして本来の設立の趣旨を全うして、長い目で見て蚕糸業の安定と発展を願うべきじゃないか、このように私考えるわけです。その点……。
  140. 石田朗

    石田政府委員 いま言われましたように、蚕糸業の長期の安定と発展ということを最も考えなければならないと存じます。そのためには、海外市場の維持確保ということはどうしても必要になるわけであります。そうして、全体の今後の長期における拡大した需給の価格的な安定と均衡とを実現するために、これはつとめてまいらなければならないというのが今回の立案の趣旨でございます。かつまた、これが輸出を実施してまいりました場合には、国内の価格安定にはどうか、こういうお話でございますが、確かにこの事業団によります小幅安定によって輸出がかなり出ていくという状態であれば、このような特別措置を必ずしも立案いたさないでもよろしかったわけであります。したがって、このような特別措置法を実施して、海外市場の確保をしてまいらなければならないという事態におきましては、これは国内の価格安定だけでは輸出がなかなかむずかしい、こういうことが逆にいえばあるわけであることは事実であります。しかしながら、この事業団の買い入れ措置等につきましても、国内事情を考え、かつ、その買い入れ等につきましても、一つの計画的な安定的な買い入れを考えておりますので、国内価格の変動に対しましてもむしろ安定化の要因になり得る、小幅変動に対しましては安定化の要因になり得る側面もあろうかと考えております。かつまた、現在農林省統計調査部の予測では、本年度の繭につきましては、昨年より約八%の増産であるという見通しになっております。現在のような気象条件でございますれば、このような見通しはほぼ当たってまいるのではないかと思いますけれども、今後このような特別措置によって輸出を従来よりも若干ふやしてまいりましても、なおかつ、このようになってまいりますれば、国内供給も若干増加していく、こういうふうな数字に相なります。これと需要との関係において今後の経済の動きをながめなければならないわけでございます。そのような情勢でございますので、長期の見通しで安定的な発展を考えるという基本線に徹しつつ、かつ安定を配慮してできるだけやってまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  141. 中野明

    ○中野(明)委員 事業団の性格が公共的な性格を帯びておりますが、それはある程度どももその点については理解するわけですけれども、とうてい民間では考えられないことです。こういう長年にわたってですね。そういう点を絶えず頭に持っていただいて——どうしても一般の国民感情としては、そういうことを案外抜きにしてがたがた言うものですから、そういう点は絶えず、公の一つ施策の中で惰眠をむさぼると言えば語弊があるかもしれませんが、そのようにとられるようなことになったのでは相なりませんので、ここで私は輸入のことを強く主張しているわけであります。そういう点をほんとうに農林省のほうでも真剣に考えていただいて、いまの時代におきましては、世論の批判というのは相当強い時代になっております。ですから、そういう点について、ますます今後風当たりも強くなってくるような状態ですし、えんえん八年間といいますと、ただそのことを聞いただけではあ然とするわけであります。そういう点、ほんとうに事業団本来の活動を私たちは祈っております。  それで、輸出を振興するということにつきまして、事業団以外の方法をお考えになったことがおありかどうか、その点ちょっとお尋ねしたい。
  142. 石田朗

    石田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、現在の輸出不振を打開いたしまして、輸出の振興をはかるということにつきましては、実は各種の案について検討をいたしました。それらのいろいろな案は推移があり、その間、業界全体の一致が得られなかったものもございますし、いろいろな段階に応じた検討がなされておりますが、現段階においては、事業団を利用いたしまして、これによって安定した価格による輸出をはかる、一本価格によって輸出の確保をはかっていくという方法が一番よろしいのであるという結論に到達いたしましたので、今回の案を提出しておるわけでございます。
  143. 中野明

    ○中野(明)委員 きょうは焦点をしぼって、質問はそれだけで打ち切りたいと思いますが、今回の出資額の十億という金は、一部うわさされておりますように、三十二、三年ごろにかけて養蚕関係者に非常に損失を与えた、そういうことに対する見返り措置としてなされたのだ、このように考えてよろしいものでしょうか、それをお尋ねしたい。
  144. 石田朗

    石田政府委員 かつて蚕繭事業団が設立せられましたところ、さらに十億の資金を追加出資等を考えるべきであるという御意見がございました。これらの御意見は、その後も引き続きいろいろな形で出ておりまして、昨年蚕糸事業団設立の際におきましても、いろいろな面から、あるいはいろいろな方々から、そのような御意見があったことは事実でございます。ただ、これは実際に行政を推進いたしますものといたしましては、これは必要な金を必要な機関に投入いたす、こういうのが筋でございまして、そのような意味で、輸出振興のために今回事業団の機能を拡充いたしますのに新たな資金を必要といたしますので、十億円の追加出資をいたす、こういうような予算上の措置を講じたわけでございます。
  145. 中野明

    ○中野(明)委員 たまたま、金額が十億円で一致した、そういうふうにおっしゃるわけですか。やはり一応その点は含んで考えていいわけですか。
  146. 石田朗

    石田政府委員 出資につきましては、やはり一つの算定の基礎をもちまして出資をきめたわけでございます。
  147. 中野明

    ○中野(明)委員 もう一点だけ申し上げますが、先ほど局長が言われたように、価格を安定するには繭の増産は必至だ、これは当然のことでありまして、今回の予算が一応計画書を見せていただきましたが、十年計画はりっぱにできておりますが、この十年計画を実施するにあたって、本年度の予算は大体幾らくらいつぎ込んでいらっしゃるでしょうか。
  148. 石田朗

    石田政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお話しございましたが、現在立てておりますのは、一つ需給見通しでございます。それで、これを目標にして生産推進してまいらなければならないかと存じます。と申しますのは、需要なきところ生産をすることは意味がございませんし、需要に即応した生産をなすべきであるからでございます。したがいまして、国で需給の全体の見通し示し農家の方々自体の盛り上がる力によって、これが実際の増産意欲となり、実施されていくわけでございます。これに対してどの程度の予算を投入しておるか、こういうことでございます。これにつきましては、実は蚕糸関係におきまして、構造改善事業とかそういうふうな各種の施設を活用いたしております。これらを総合して考えまして、本年度予算で約八十億近くの金が大体投下できるんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。ただ、これにつきましては、いま一つお断わりいたさねばなりませんのは、本年度の予算、これにおきましてこういうような生産増強への一つの着手をいたしておるわけでございますが、先ほども御説明いたしましたように、現在蚕糸業振興審議会においても、生産対策のさらに掘り下げた御検討をもお願いしておるわけでございますので、それらの結果も待って、さらに私どもも今後これらを推進し、拡充していくということを考えてまいらなければならぬのではないか、こういうふうに考えております。
  149. 中野明

    ○中野(明)委員 先ほどからちょっと話に出ておりますが、過去に繭を減産するために奨励をしたというようなことが昭和三十二、三年ごろにあったようでありますが、そういうようなことからわずかの間に今度の増産に切りかえていかなければならないというわけですから、非常に一貫性がない、このように言われてもいたし方ないような結果になっているわけです。今後そういう点については、そういうことのないように計画的な増産をやっていってもらわないとならぬわけでして、また減らさなければいかぬのだということになりますと、これは農家としてもたいへんな騒ぎでありまして、その点は特に計画性を持たれて、この計画を着実に実行していかれることを希望いたします。  それで、四十年十二月二十八日の参議院農林水産委員会の附帯決議の中を読んでおりましたら、山村における養蚕業の振興についてもっと力を入れろ、そういうふうな附帯決議がなされておりますが、今日山村地帯において農家の生活の苦しいこと、これは論を待たない問題でありまして、先ほど金丸委員質問の中にも出ておりましたが、桑の作付ですか、植えつけにあたりましても、そういう辺をよくPRしていただいて、そして、その附帯決議に対するその後の具体的な農林省としての施策は、山村振興に対して何か行なわれたでしょうかどうかと思いまして、その点ちょっとお尋ねいたします。
  150. 石田朗

    石田政府委員 ただいまお話しございました点、先ほど金丸先生からの御質問にもお答えした中でも、若干申し上げたかと思います。現在山村振興対策特別事業を実施いたしております。地元からの希望も、養蚕関係かなり出てきてまいっておる。これらにつきまして、私どもとしましても十分適切なる指導を怠らず、これによって推進をはかってまいりたいというふうに考えております。かつまた、かねてから実施いたしております開拓パイロット事業というようなものもございますが、これにつきましても、最近養蚕業が取り上げられることは非常に多くなってきております。これらにつきましても、あわせ指導を行ないまして、これらによって山村対策のできるだけ適切なる実施をはかってまいりたいというように考えておる次第でございます。
  151. 中野明

    ○中野(明)委員 では最後に、きょうは事業団のことについて大体焦点をしぼってみたのですが、先ほどから申し上げておりますように、事業団のことについては、公団、事業団、いま非常に問題になっておる最中でございますから、特にそういう点を勘案されまして、この蚕糸事業団の運営、そしてまた活躍、こういう点については局長は鋭意努力なさいまして、ほんとうにつまらないことで批判されるような、何かしら不明朗な感じを持たれることのないように、この改正を契機にして、あの事業団は非常にりっぱな事業団だ、ほかは廃止してもこれだけは残してほしい、そのように言われるような事業団にしていただきたい、このように希望条件を述べまして、きょうの私の質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  152. 本名武

    本名委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本委員会において審査いたしております日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案について、その審査に資するため、参考人の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次に、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次会は、明十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散