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1967-07-14 第55回国会 衆議院 内閣委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十四日(金曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 關谷 勝利君    理事 伊能繁次郎君 理事 塚田  徹君    理事 八田 貞義君 理事 細田 吉藏君    理事 大出  俊君 理事 山内  広君    理事 受田 新吉君       内海 英男君    加藤 六月君       佐藤 文生君    塩谷 一夫君       高橋清一郎君    橋口  隆君       藤波 孝生君    村上信二郎君       稻村 隆一君    木原  実君       武部  文君    山本弥之助君      米内山義一郎君    伊藤惣助丸君       鈴切 康雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣 塚原 俊郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房臨時在外財産         問題調査室長  栗山 廉平君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省援護局長 実本 博次君  委員外出席者         厚生省援護局援         護課長     三浦 正夫君         専  門  員 茨木 純一君     ――――――――――――― 七月十一日  委員加藤六月君、塩谷一夫君、村上信二郎君及  び山下元利辞任につき、その補欠として中馬  辰猪君、瀬戸山三男君、辻寛一君及び田中角榮  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員瀬戸山三男君、田中角榮君、中馬辰猪君及  び辻寛一辞任につき、その補欠として塩谷一  夫君、山下元利君、加藤六月君及び村上信二郎  君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員塩谷一夫君、吉田之久君及び鈴切康雄君辞  任につき、その補欠として大石武一君、内海清  君及び中野明君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員大石武一君及び内海清辞任につき、その  補欠として塩谷一夫君及び吉田之久君が議長の  指名委員に選任された。 同月十三日  委員橋口隆君、伊藤惣助丸君及び中野明辞任  につき、その補欠として福永健司君、渡部一郎  君及び鈴切康雄君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員福永健司君辞件につき、その補欠として橋  口隆君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員佐藤文生君及び渡部一郎辞任につき、そ  の補欠として南條徳男君及び伊藤惣助丸君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員南條徳男辞任につき、その補欠として佐  藤文生君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十日  旧軍人恩給に関する請願外五件(青木正久君紹  介)(第二七四八号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第二七四九号)  同(大坪保雄紹介)(第二七五〇号)  同外一件(仮谷忠男紹介)(第二七五一号)  同(倉石忠雄紹介)(第二七五二号)  同外一件(小山長規紹介)(第二七五三号)  同(谷垣專一君紹介)(第二七五四号)  同(藤本孝雄紹介)(第二七五五号)  同外十件(三ツ林弥太郎紹介)(第二七五六  号)  同外五件(渡辺美智雄紹介)(第二七五七  号)  同(大野市郎紹介)(第二八〇九号)  同外三件(瀬戸山三男紹介)(第二八一〇  号)  同外七件(中垣國男紹介)(第二八一一号)  同外八件(中山榮一紹介)(第二八一二号)  同外一件(早川崇紹介)(第二八一三号)  同(小渕恵三紹介)(第二八四一号)  同(大竹太郎紹介)(第二八四二号)  同(吉川久衛紹介)(第二八四三号)  同(倉石忠雄紹介)(第二八四四号)  同(黒金泰美紹介)(第二八四五号)  同外七件(小宮山重四郎紹介)(第二八四六  号)  同外五十六件(砂原格紹介)(第二八四七  号)  同外四件(田村良平紹介)(第二八四八号)  同(谷垣專一君紹介)(第二八四九号)  同外三件(羽田武嗣郎紹介)(第二八五〇  号)  同外十一件(長谷川四郎紹介)(第二八五一  号)  同外十二件(八田貞義紹介)(第二八五二  号)  元満鉄職員であつた公務員等恩給等通算に関  する請願外十件(八田貞義紹介)(第二八五  三号) 同月十二日  旧軍人恩給に関する請願外一件(稻村左近四郎  君紹介)(第二九一〇号)  同外一件(宇野宗佑紹介)(第二九一一号)  同(大坪保雄紹介)(第二九一二号)  同(坂本三十次君紹介)(第二九一三号)  同外三件(砂原格紹介)(第二九一四号)  同外二件(田村良平紹介)(第二九一五号)  同(谷垣專一君紹介)(第二九一六号)  同外七件(床次徳二紹介)(第二九一七号)  同外百四件(永山忠則紹介)(第二九一八  号)  同(丹羽久章紹介)(第二九一九号)  同(丹羽喬四郎紹介)(第二九二〇号)  同外十件(丹羽兵助紹介)(第二九二一号)  同外十件(堀川恭平紹介)(第二九二二号)  同(金丸信紹介)(第二九二三号)  同外四件(古内広雄紹介)(第三〇二五号)  暫定手当制度改正に関する請願伊賀定盛君紹  介)(第三〇五三号)  同(田中武夫紹介)(第三〇五四号)  同(八木昇紹介)(第三〇五五号)  同(柳田秀一紹介)(第三〇五六号) 同月十三日  旧軍人恩給に関する請願天野光晴紹介)(  第三一一五号)  同外二十三件(池田清志紹介)(第三一一六  号)  同外三件(宇野宗佑紹介)(第三一一七号)  同外二件(内田常雄紹介)(第三一一八号)  同(大竹太郎紹介)(第三一一九号)  同(大橋武夫紹介)(第三一二〇号)  同外二十件(上林山榮吉君紹介)(第三一二一  号)  同外十件(仮谷忠男紹介)(第三一二二号)  同(北澤直吉紹介)(第三一二三号)  同(草野一郎平紹介)(第三一二四号)  同(倉石忠雄紹介)(第三一二五号)  同外五十四件(永山忠則紹介)(第三一二六  号)  同外二件(正示啓次郎紹介)(第三一二七  号)  同外一件(田川誠一紹介)(第三一二八号)  同外三件(田村良平紹介)(第三一二九号)  同(谷垣專一君紹介)(第三一三〇号)  同外五十八件(谷川和穗紹介)(第三一三一  号)  同外六件(床次徳二紹介)(第三一三二号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第三一三三号)  同外三件(細田吉藏紹介)(第三一三四号)  同外一件(三ツ林弥太郎紹介)(第三一三五  号)  同外五件(山口敏夫紹介)(第三一三六号)  同(山下元利紹介)(第三一三七号)  同外七件(山中貞則紹介)(第三一三八号)  同(渡辺肇紹介)(第三一三九号)  同(井出一太郎紹介)(第三三〇九号)  同外五件(稻葉修君紹介)(第三三一〇号)  同(白浜仁吉紹介)(第三三一一号)  同外七件(床次徳二紹介)(第三三一二号)  同外三十二件(長谷川峻紹介)(第三三一三  号)  同外十五件(橋口隆紹介)(第三三一四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月十二日  旧軍人恩給に関する陳情書外十七件  (第三三  八号)  同和対策推進に関する陳情書  (第三三九号)  青少年問題対策推進に関する陳情書  (第三四〇号)  自衛隊適格者名簿作製反対に関する陳情書  (第三四一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  引揚者等に対する特別交付金支給に関する法  律案内閣提出第一四八号)      ――――◇―――――
  2. 關谷勝利

    關谷委員長 これより会議を開きます。  引揚者等に対する特別交付金支給に関する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。塚原総務長官
  3. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 ただいま議題となりました引揚者等に対する特別交付金支給に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  過般の大戦の終結に伴い、海外にあったきわめて多数の同胞が本邦への引き掲げを余儀なくされることとなり、政府はこれらの方々に対して種々援護更生施策を講じてまいったのでありますが、これらの引き揚げ者海外において有していた財産をそのまま放置し、ほとんど無一物となって引き揚げざるを得なかったことなどから、これらいわゆる在外財産に関する処理の問題は、多年論議対象とされてきたところであります。この間政府は、昭和二十九年に設置された在外財産問題審議会意見等を考慮し、昭和三十二年に引き揚げ者給付金支給等措置を講じたのでありますが、この給付金支給等措置は、引き揚げ者がその全生活基盤を失ったという特殊事情に着目しつつ、主としてそれら引き揚げ者国内における社会復帰に資するために講ぜられた措置であるということから、世上においては在外財産そのものについての論議が、いわゆる補償要求等の形においてその後もなお続けられてきたのであります。このような実情に顧み、政府は、この問題の最終的解決をはかるため、あらためて昭和三十九年に在外財産問題審議会を設置し、同年十二月内閣総理大臣から、在外財産問題に対しなお措置すべき方策の要否及びこれを要するとすればその処理方針はいかにあるべきかについて諮問がなされたのでありますが、その後同審議会においては、きわめて慎重かつ熱心に問題の究明を行なっていたところ、昨年十一月、ようやく答申提出を見るに至ったのであります。  右の答申は、まず、在外財産に対し国に法律上の補償の義務はないとして、いわゆる補償問題に明確な結論を与える一方、引き揚げ者は、終戦に伴い、長年住みなれた社会の中で居住すること自体が許されなくなったことにより、通常の財産のほかに、それらの物の上に成り立ち、また、それらのものがそこから生まれ出る資本でもあつたところの人間関係生活利益等生活を営む上で、最も基本となるささえまでも一切失ったという点において他と異なる特異な実情にあることに顧み、このような単なる財産ではなく、特別な意味と価値とを持った財産喪失に対し、国が特別の政策的措置として引き揚げ者交付金支給し、これに報いることこそは、在外財産問題の中に残された最後の課題を解決するゆえんであるといたしているのであります。政府といたしましては、この答申趣旨にのっとり、在外財産問題の最終的解決をはかるため、引き揚げ者に対する特別の措置として交付金支給措置を講ずることが適切であると考え、その具体的内容について種々検討をいたしました結果、ここにこの法律案を提案することとした次第であります。  以下、この法律案概要について御説明いたします。  まず、第一に、特別交付金支給を受けることができる者は、引き揚げ者、死亡した引き揚げ者遺族及び引き揚げ前死亡者遺族でありますが、ここで引き揚げ者と申しますのは、外地終戦時まで一年以上引き続き生活本拠を有しており、終戦に伴うやむを得ない理由により引き揚げた者等をいい、引き揚げ前死亡者とは、右と同様の事情において引き揚げる前に外地において死亡したものをいうことといたしております。  また、特別交付金支給を受ける遺族の範囲は、死亡した引き揚げ者または引き揚げ前死亡者物心両面において最も密接な関係にあったと考えられるこれらの者の配偶者、子、父母及び孫としており、これらの者の間の順位はそれぞれこの順序によることといたしております。  第二に、特別交付金の額についてでございますが、引き揚げ者に対するものにつきましては、終戦特等における年齢区分により五十歳以上の者に十六万円、三十五歳以上五十歳末満の者に十万円、二十五歳以上三十五歳未満の者に五万円、二十歳以上二十五歳未満の者に三万円、二十歳未満の者に二万円とし、さらに、外地終戦時等まで引き続き八年以上生活本拠を有していた者については、これらの額に一万円を加算した額といたしております。また、遺族に対する特別交付金につきましては、同じく死亡した者の終戦時等における年齢区分によりそれぞれ引き揚げ者に対する特別交付金の額の七割の額とし、加算額は七千円といたしております。  第三に、特別交付金支給は、これを受けようとする者の請求に基づいて行なうこととしておりますが、この請求は、昭和四十五年三月三十一日までにしていただき、この期間請求のない場合には、特別交付金支給しないこととしております。  第四に、特別交付金は、十年の間に償還する無利子の記名国債をもって支給することとしております。  以上のほか、特別交付金を受ける権利及び国債についての譲渡等制限特別交付金に関する処分についての不服申し立て期間の特例、特別交付金及びそれに関する書類についての非課税、不正手段により特別交付金を受給した者に対する措置特別交付金支給実施機関等、所要の事項を規定いたしております。  以上が、この法律案提出いたしました理由法律案概要であります。  何とぞ慎重審議の上、すみやかに可決されますようお願いいたします。     —————————————
  4. 關谷勝利

    關谷委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細田吉藏君。
  5. 細田吉藏

    細田委員 いわゆる在外財産の問題につきまして、最終的な政府措置として本法案提出されたわけでございます。この在外財産の問題につきましては、基本的な点をいろいろ議論いたしますと、いろいろ問題があるわけでございます。私は、でき上がりました法案中心にいたしまして若干の質疑をいたしたい、かように考えております。  最初に、審議会の中でもいろいろな御議論がなされておることをよく承知いたしておりますが、引き揚げ者皆さん方の強い御意見といたしまして、当然また審議会にもこれが反映いたしておりましたわけでございますが、引き揚げ者在外財産が、あるいは平和の回復、国交の正常化等にあたって、国家のために大きく貢献しておるのではないか、貢献しておるのだ、こういう主張がなされたのでございます。この点につきまして、これは基本的な問題でございますが、政府としての御見解はどのようでございましょうか、お伺いいたしたいと思います。
  6. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 ただいまのお尋ねでありますが、答申においては、国の役に立ったとする気持ちはわかるけれども、それは具体的にきめ手のない問題であり、それだけの理由政府が特別の政策をとることはできない。というのは、他の戦争犠牲者についても、また同じことがいえるからであるといたしております。政府もその答申のとおりであろうと思います。  私は、この問題を処理するにあたりまして考えておりますことは、国民全部が戦争犠牲者であるという観点に立って処理すべきであるということは、この委員会においても申し上げたつもりでありまするが、いま細田委員のおっしゃった気持ちも、わからないわけではありません。しかし、こういう大きな戦争に遭遇して、日本国民全部が戦争犠牲者であるという基本的な考えのもとに、こういった問題の処理に当たりたいという気持ちも、つけ加えて申し上げておきます。
  7. 細田吉藏

    細田委員 この点については、深く議論をいたすことを避けたいと思います。他にもいろいろあるということでございますが、しかし、少なくとも引き揚げ者在外財産国家のために大きく貢献したということは、私は、率直に認めなければならない、かように思うわけでございます。この点については、政府としては認めるのだが、なかなかだからどうするというようなきめ手がない、こういうようなことでございますので、特に議論はいたしません。  そこで、具体的な問題に入りたいと思いますが、答申の中に、「措置処理方針」といたしまして、第二番目に、「財産の形成が主として世帯単位としてなされている実情等から考えると、当時生計を一にしていた世帯支給額算定単位とすることが合理的であると考えられるので、この点についても、できるだけ配慮すべきである。」こういう答申があるわけでございます。世帯単位考えるというところまでは言っておらないのですが、とにかくできるだけの配慮をすべきである、こういう答申が出ておるのでございますが、今回の法案には、この答申趣旨はどこに盛られておるのでありましょうか。
  8. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 世帯単位で申しますと、推定ではありまするけれども、九十五万四千世帯という数字が出ておることは、細田委員御承知のとおりだろうと思います。しかし、この数字も、総理府の統計局中心といたしまして厚生省その他関係省庁と連絡をとり、引き揚げ当時の状況あるいはまた外地におけるいろいろな状況等を勘案した数字でございまして、これはあくまでも推定であります。そこで、答申にあるように、世帯単位支給するということが完全にとられるならば、これはきわめてやりよかったのでありまするが、ざっくばらんに申して、しからばこの九十五万四千世帯が、細田家がどうであり、あるいは山内家がどうでありという最終的な——これは例を引いて失礼でありまするけれども、そういったものを最後まで完全に把握するということは困難な実情にあることは、委員諸君おわかりいただけると思うのであります。そこで、答申の線に沿って、世帯単位という構想、そこに年齢制限の問題も出てくると思うのでありますけれども、世帯を構成する若い人までも含めた、これはあとになって質問が出てくるのじゃなかろうかと思うのでありますけれども、そういった面では世帯を一つの単位とした構想のもとにこの法案を作成したようなわけでございまして、ほかにもありますが、端的に申して、そのことが答申の線に沿ったといえると思うのであります。
  9. 細田吉藏

    細田委員 答申は、同じく「措置処理方針」の中で、年齢制限をうたっておるのでございます。私は、片一方年齢制限をうたい、片一方世帯支給額算定単位とする、こういうようになっておりますところに、若干答申に、そういうことを言っては失礼ですけれども、矛盾といいましょうか、ああも考えこうも考えというところが出ておるやに思うのでございまして、そういった意味で、私は、政府がこの法案提出にあたっていろいろ苦慮されて、年齢制限につきましての条項にはかなり答申の線をはずれておるようであるけれども、やはり具体的にはこれが妥当な行き方ではないか、実はかように思うわけでございます。そういった意味で、私は、第二項の世帯支給額算定単位とするということは織り込まれておる、かように実は了解をしておるようなわけでございます。この点は、御答弁は、ただいまの御答弁で別につけ加えていただくことはございません。  そこで、若干具体的な問題につきまして、この法案ができますまでの経緯等もございますので、お伺いをいたしたいと思います。まず、小さい問題になりますから、事務当局からお答えいただいてもけっこうでございます。  在外年数を一年以上ということになっておりますが、前回給付金については、たしか六カ月以上であったのではないかと思います。前回と今回と特に差別を設けられましたことにつきまして、お伺いをいたしたいと思います。
  10. 栗山廉平

    栗山政府委員 お答え申し上げます。今回の措置を講ずるにあたりましては、その性格上、引き揚げ者海外における生活ささえていた財産とかあるいは人間関係生活利益等状況を考慮すべきであって、その中には、その土地にあって、家庭人として社会とともに安らぎ、あるいは会社人としての誇りといったような精神的面も含まれておるというように、答申は解釈されるのでございます。そういうような意味での生活ささえは、一定期間引き続いて安住した生活を営むことによって初めて得られるものでありまして、答申がやはり在外居住一定年数未満の者を対象から除外すべきであるというのも、まさにこの趣旨であろうかと存じます。しかし、あまりその年数を長くすることは問題がございますので、最小限の一年という数にさしていただいたというわけでございます。  前回引き揚げ者給付金におきまして居住年数要件を六カ月といたしておりますのは、前回措置は、今回の措置と違いまして、財産喪失に着目したものではなく、外地における生活基盤を失って新たに内地に引き揚げてこられまして、生活再建をはからなければならなかった、その点に援護的な措置をしようという着目に出てきたものでございまして、今回と趣旨が違うという点を御了解願いたいと存じます。
  11. 細田吉藏

    細田委員 先ほどの質問に関連いたしますが、外地出生児であります一年未満の者でも、前回給付金につきましては、あと法律を改正いたしまして適用をいたしたのでございます。いわゆる世帯単位というような点を考えますと、外地出生児については、一年未満の者でも本法案を適用することが妥当ではないか、かように考えるわけでございますが、この点について御説明をいただきたいと思います。
  12. 栗山廉平

    栗山政府委員 ただいま申し上げましたように、前回措置は、引き揚げ者国内での生活再建に非常に苦労なさる、そのために、立ち上がり資金として給付金を給付するということによってこれを援護しようというのが、趣旨であったわけでございます。したがいまして、外地で生まれた六カ月未満の子につきましても、それらの子供をかかえた引き揚げ者には、それだけの苦労が多く、またその子もそれだけ困難な環境の中に育つわけでございますから、前回措置立法趣旨から見ましても、これらの子をあとから対象に加えられたということは、理由のあるところであったと考えられます。しかし、今回の措置は、引き揚げ後の生活が問題なのではなくて、引き揚げ者が、終戦によって、外地におけるそれまでの生活ささえていたところの財産あるいは人間関係生活利益等を一切喪失したという持別性格に着目しまして講ずるところの特別な措置でございますので、そのような特別な措置意味をもって財産の継承をするのに最小限度必要と考えられておりますところの一年の在外居住要件、これを満たせないような幼児にまでその対象を広げるということは、今回の趣旨にちょっと反するのではないかというふうに考えるわけでございます。
  13. 細田吉藏

    細田委員 議論したいことはいろいろございますが、時間の関係もございますので、一応承りまして、次へ進ませていただきたいと思います。  日華事変以前の居住者に、一万円加算するということになっております。これは八年ですか、そこらに線が引かれておると思いますが、これは何かやはり合理的な理由があるわけでございましょうか。腰だめでこの辺というようなことでございましょうか。答申においては、在外居住年数を配慮するということは当然出ておるわけですが、特に日華事変前というところで切られたというようなことについて、特に理由がございますれば承りたいと思います。
  14. 栗山廉平

    栗山政府委員 昭和十二年の日華事変基準にしたのは何か特に理由があるかというような御質問でございますけれども、これは特別にこれでなければというなかなかきめ手のない問題でございますが、一応やはり日華事変の始まる前からおいでになった方のほうが、平和の時代においでになられまして、長くおられたという実感が伴うのではないかという理由でございます。ただ、これをもっと追加いたしますということにつきましては、そうなりますと、大部分が該当するということになります、特に長い方を優遇するというわけにはまいらなかったものでございますので、この辺の区切りをもって一応の加算基準にさせていただいたわけでございます。
  15. 細田吉藏

    細田委員 次に、非常にたいせつな問題で、今後にもいろいろな影響を持っておるのでございます。先ほど理事会でもいろいろ議論が出ました基金等の問題にも関連をいたすことでございますが、交付公債に利息をつけるべきであるという議論が、非常に強かったわけでございます。今回は無利息となっておりますので、無利息でありますために、せっかく交付公債を受けましても、これをたとえば換金するとかいろいろいたしたいと思いましても、これは十年でございますから、なかなか簡単にできない。たとえば十万円いただいても、十万円の価値が半減するというようなことにも相なるわけでございます。この点につきまして、政府として無利息とされました理由について、具体的にお答えを願います。
  16. 栗山廉平

    栗山政府委員 交付国債の利子の問題でございますが、この点につきましては、最近におきます戦没者等の妻に対する特別給付金、あるいはその他の援護的な各種の給付金国債をはじめといたしまして、あるいはまた過般の農地被買収者国債等、いずれも無利子になっておりますので、これらの例によったものでございます。
  17. 細田吉藏

    細田委員 これもいろいろ議論があったことでございますが、次に進みたいと思います。  遺族交付金でございます。特に七割となさった理由についてお伺いいたします。一〇〇%でもいいじゃないかというような議論もだいぶ出ておったと思うのでありますが、これはどういうことでございましょうか。
  18. 栗山廉平

    栗山政府委員 何回も申し上げますが、今回の措置は、引き揚げ者がその海外における生活ささえていたところの財産人間関係等を一切失ったという特別な性格に着目して設けるものであることは、御承知のとおりでございます。そこで、その一切のものを失ったという喪失によってこうむった打撃というものは、厳密な意味ではあるいは一身専属的なものかもしれませんけれども、また他面、その人だけの問題であるとは言い切れない点があるわけでございます。引き揚げ者が死亡した場合には、その遺族に対してもやはり交付金支給するということが適当であるということは、いま申し上げましたように、引き揚げ者個人の問題では必ずしも解決できないという点から、遺族支給するのが適当であろうというふうに考えられたわけでございます。しかし、その遺族のこうむった打撃の影響といいますものは、引き揚げ者本人の打撃そのものというわけにはいかす、何らかの程度において本人よりも少ないというふうに考えられますので、交付金の額の決定につきましては、せめてその七割ということで、七割を法案に盛らせていただいたわけでございます。
  19. 細田吉藏

    細田委員 次に、償還期限の問題でございますが、一律にこれは十年になっているわけでございます。ところが、答申の中にも、高齢者の問題がございます。戦後すでに二十年を経過し、現に相当の高齢化している引き揚げ者が少なくない実情等に顧みて、できるだけ早急に行なうことが必要であるということが書いてございます。このことは、この措置を決定することを早急にやれということでもございませんけれども、しかし、反面高齢者に対して十年というのも、これはいかがか、こう思うわけでございます。そこで、高齢者に対しては償還期限をもっと短かくするということをぜひ考えていただきたい、かように思うわけでございます。これにはあるいは法律修正等が要るかもしれませんが、七十歳以上の方については三年ぐらいというような、年齢によりまして短縮をする、こういうようなことを考えることが実際に合うのではないか、かように思うのでございますが、この点についてのお考え方を、これは長官からひとつお願いいたします。
  20. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 こういうことを言うのはどうかと思いますが、答申そのものが、何回読んでも具体的なものが案外少のうございます。きわめて抽象的な答申だと私個人は考えているわけですが、その中から政策的措置としてこういうものを考え出したのであり、また立法措置を付して御審議を願っているわけであります。いまの細田委員御指摘の問題については、皆さん方のお話もいろいろ承り、われわれもずいぶん検討いたしたのでありまするが、答申の線に沿って高齢者、特に中年以上の者に対して優遇の措置をとったことは、お金の配分のところでおわかりいただけると思うのでありますが、そういった面で中年以上の方、高齢者に対するこれを優遇せよという答申の線に沿い得たと考えております。そこで、従来の政府の行なっておりますいろいろな方式等も考え合わせまして、細田委員御指摘のような面も、幾らかでも一歩前進の形で取り上げたいと思いましたけれども、中年以上高齢者を優遇するという措置、それからまた従来の財政当局のやり方等も考えまして、この提案しました法案のようにいたしたようなわけでございまして、その点御了承をいただきたいと思うのであります。
  21. 細田吉藏

    細田委員 この点は私は適当な機会にどうしても直していただかなければならないのではないか、かように実は思っております。  最後に一点お願いを兼ねて申し上げておきたいのでありますが、さきごろ締め切りになりました農地報償の問題等につきましても、当初予定の人数に達しない、金額に達しない。これはいろいろの理由があると思いますけれども、そのPRが不足しておる、あるいは手続が必ずしも簡素化されておらない、繁雑である、少々の金のためにこんなうるさいことはできないといったようないろいろな点もあったのではないか、かように思うわけでございます。今回のせっかくのこうした国の施策でございますので、これの実施にあたりましては、ひとつ十分親切に、そして簡素、簡略に手続ができますように、そしてそういった面における引き揚げ者の皆さんからの不平不満がないように、ひとつぜひ十分御配慮をいただきたい、かように思うわけでございます。  なお、橋口君から、二、三関連質問いたしますので、よろしくお願いいたします。
  22. 橋口隆

    橋口委員 ただいま細田委員からいろいろ御質問があったようでございますが、それに関連をいたしまして、ちょっとお伺いしたいと思います。  この在外資産の補償問題は、国民にも十分理解ができるようPRする必要があると思うのでございますが、この引き揚げ者連盟その他の団体を十分活用する必要があるかと存じます。そのうちで請求事務の一部をこの団体に委託するとか、あるいはその他の活用の方法については、どういうふうにお考えになっておられますか。
  23. 栗山廉平

    栗山政府委員 お答え申し上げます。今回の措置対象者は、いろいろの、この前の措置で落ちた方、あるいは新しく入った方、所得制限等のそれがございますが、対象者の大部分につきましては、前回の引揚者給付金支給対象者と同じような方であるわけでございます。そこで、事務委任を予定いたしておりますのは、この前のそういうお世話を願いましたところの都道府県というわけでございまするが、前回の経験を活用しまして、十分に能率をあげてもらいたい、あるいはあげ得るものではないかというふうに期待をいたしておるわけでございます。  そこで、ただいまのお話でございまするが、法律の執行事務というものは、やはり行政機関の責任において行なうべきものであろうというふうに考えておりますので団体の方が、自分のところに属する方のためにいろいろお世話を願ったり、あるいは相互扶助をなさる、これは大いにやっていただかなければならぬわけでございますけれども役所の事務を御委託するというわけには、なかなかまいらぬというふうに考えております。
  24. 橋口隆

    橋口委員 それでは、ただいまの御趣旨に沿いまして、この団体を十分御活用下さいますよう、特にお願いを申し上げます。  なお、いまの質問に関連いたしまして、もう少し聞きたいと思いますが、生活困窮者には公債の現金化措置、あるいは超高齢者に三年償還の措置を講じられるような御用意がありますかどうか。これは特に生活の困窮者あるいは超高齢者に対しては、特別にそういうような同情ある措置が必要だと思うのでございますが、これに対してはどういうふうにお考えになっておりますか。
  25. 栗山廉平

    栗山政府委員 生活困窮者に対しまして国が買い上げをするということを認めるべきではないかという御趣旨だと、第一点は存じておりますが、これはこの前の先例があることでございますので、今回につきましても、従前の例と同様な条件で生活困窮者に対しての国家の買い上げ償還を認めるという方向で、ただいま検討さしてもらっております。それから、お年寄りの方に国債を三年でという、いまお話だったと思いますが、これはただいま塚原大臣からお答えしたとおりでございます。
  26. 橋口隆

    橋口委員 なお、生活保護適用者に、本法案特別交付金を収入として認定しないように、特別措置を講ずることがきわめて必要だろうと思われます。たとえば戦争未亡人の国債については免除されておるわけでございますが、そういう点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  27. 栗山廉平

    栗山政府委員 生活保護という問題は、あるいは厚生省のほうからお答えすることかとも存じますが、厚生省と連絡した結果をちょっと申し上げます。  この生活保護法の運用にあたりましては、前回の引揚者給付金あるいは農地報償の場合等におきまして、その国債の買い上げ措置の、お話しの買い上げ償還金が、現実にその世帯の生業費——生業資金でありますが、生業費として使用される限り、収入の認定にはしないという措置が講じられておるのでございます。したがいまして、今回におきましても、低所得者層の、あるいは生活保護の関係の助長のために、同じような趣旨厚生省と協議をしてまいりたいというふうに存じております。
  28. 橋口隆

    橋口委員 次に、もう一つお伺いしたいのでございますが、昭和三十七年五月十日厚生省援発第八十三号によって、右通達のとおり年齢制限撤廃について御承知を願いたいと思うのでございますが、これは特に高年齢者の問題もからんでおりますが、いかがお考えになっておりますか。
  29. 栗山廉平

    栗山政府委員 ただいまの御質問趣旨は、一歳未満年齢の者でも、外地で生まれた子供にこれを将来適用していくあれがあるかという御趣旨でございますか——この点につきましては、先ほども一回お答え申し上げたかと存じまするが、前回措置は、内地に引き揚げてきたときからの立ち上がりのための援護措置であったというので、そういう子供さんの赤ん坊の方にも適用がなされたわけでありますが、今回の措置は、引き揚げ後の生活が問題なのではなく、引き揚げ者終戦によって海外におけるそれまでの一切の財産人間関係等を失ったという、特別な性格に着目して講ずる特別な措置であるということでございますので、前回と同じようなふうにはちょっと考えるわけにはいかないということで、やはり在外居住年数一年ということで、同じ状態を幼児まで考えざるを得ないこういうことでございますので、御承知おきを願いたいと思います。
  30. 橋口隆

    橋口委員 それでは最後に、この在外資産の補償の問題についての一番の問題点を念のためにお聞きしておきたいと思います。これは在外資産というのは、平和条約との関連において連合軍においていわば没収をされたわけでありますが、それは賠償としての性格を持つものでございますか。
  31. 栗山廉平

    栗山政府委員 お答え申します。その問題は法律上の補償義務があるかどうかという問題の一環をなす非常にむずかしい問題でございまして、この問題が十年前のこの前の審議会におきましては解決がついておりませんので、それを探究するために今回の、すぐこの間の第三次審議会が設けられたというふうにも考えられるほどの重大問題でございます。この点につきましては、今度の審議会におきまして、一年半の長きにわたりまして非常に徹底的な検討をいたしました結果、どうしてもサンフランシスコの平和条約からは賠償につながるというふうには考えられないという答申政府に出しておるのでございます。政府におきましても、前から賠償に充てられたとは考えないという国会答弁で一貫いたしております。御承知を願います。
  32. 橋口隆

    橋口委員 すると、これは補償ではないということを、今度ははっきりしておるわけでありますか。
  33. 栗山廉平

    栗山政府委員 今度のこの措置におきましては、在外財産そのもの補償措置ではないということは、仰せのとおり、政府はそういう考えでございます。
  34. 橋口隆

    橋口委員 三十二年に制定されました引揚者給付金支給法によりますというと、給付金支給しようということになっておるわけでありますが、これとの関連はどうでございますか。
  35. 栗山廉平

    栗山政府委員 昭和三十二年の引揚者給付金の制定の趣旨は、先ほどからも申し上げましたように、引き揚げ者生活の根拠を失いまして内地に引き揚げてまいりまして、生活再建に非常な苦労をする、その立ち上がり資金として援護的な給付措置を行なう、その一環の措置として行なわれたものであります。今度の場合は、過去においてそういう一切のものを失うという打撃を受けたという、その打撃に対する政策的な措置として法案がつくられたものでございます。
  36. 橋口隆

    橋口委員 四十年の一月三十日の東京高等裁判所の判決によりますと、こういうような判決が下っております。今次大戦において「国民が蒙った犠牲と苦痛との関係において損害負担の公平を考慮すべきことは、国民感情の上からも当然であるから、この意味社会政策的経済的配慮をも加え、納税者たる国民が真に納得し得る範囲において合理的に補償の程度、方法、手続等を決定すべきであって、それは正に法律の規定をまつべきものと考える。然るところ、現在このような補償に関する法律は、制定されていないのであるから、具体的な補償請求は未だこれをなし得ないものといわざるを得ない。」という、こういう判決が下っております。そして本件は目下最高裁判所に上告中であって、現在審理中であることは、御承知のとおりだと思います。それならば、この高裁判決との関連、もしまた最高裁において補償義務があると認めた場合には、どういう処置を政府はおとりになるつもりでございますか。
  37. 栗山廉平

    栗山政府委員 ただいまの問題は、いわゆるカナダ裁判と称せられているものでありますが、カナダで働いて、預金をしておられた夫婦の方が引き揚げ交換船で帰ってこられまして、平和条約で失ったからということで、国に対して補償請求を出しておられるわけでございます。わが国のいわゆる引き揚げ者在外財産問題というもの全般をながめてみますと、そういうサンフランシスコの平和条約あるいはそのほかの平和条約で財産が法的にどちらかに片づけられるといいますか、処理されるという立場にあります財産の量は、大体五%程度といわれております。サンフランシスコの平和条約関係でございます。そのほかの一番あったと思われるところの満州あるいはシナ大陸、北朝鮮、樺太、台湾といったようなところはまだ未解決でございまして、したがいまして、今回の裁判の及ぶ範囲と申しますのは、大体その約五%の範囲に影響すればあるわけでございます。したがいまして、今後の最高裁の決定に従いましてどういうふうになりますか、これは将来の問題でございますのでわかりませんですが、しかし、たとえこれがどういうふうになるといたしましても、その及び範囲は五%でございまして、あとの九五%は依然として影響を受けないというような状態に事実ありますことを、御承知おき願いたいと思います。
  38. 橋口隆

    橋口委員 最後に、総務長官にお伺いしたいと思います。この在外資産の補償措置によって戦後処理は終わった、こういうふうに一般新聞に報ぜられておるのでございますが、今後これに関連しまして、戦争国民が非常に犠牲をこうむったわけでございますが、一般戦災者等への問題はどういうふうにお考えになりますか。
  39. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 国民全部が戦争犠牲者であるという考えは、先ほどから私がたびたび申し上げておるところでございます。戦後二十二年たった今日、いつまでもこういう問題が論議されるということは、これはまことに敗戦という一つの現実のしからしめるところでありますが、私は、この問題をもって戦後の処理は終わりたいという考えを持っておる。しからば残された問題が多々あるではないかという問題を提起されております。そういった問題は、社会保障制度の拡充と、それぞれの所管省の所掌事務として手厚い処置、あたたかい処置をとっていくべきだ、私はこのように考えております。
  40. 橋口隆

    橋口委員 それでは政府におかれましては、そういう問題につきまして万全の処置を講じていただきますようにお願い申し上げます。また、在外資産の補償問題につきましては、どうかひとつ万全の対策を講じていただきますようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  41. 關谷勝利

    關谷委員長 大出俊君。
  42. 大出俊

    ○大出委員 ただいまここに提案をされております引揚者等に対する特別交付金支給に関する法律案と申しますのは、その性格という面で一体何か、どういう性格なんだ。たとえば戦後処理なのか、そこのところをひとつお答えいただきたい。
  43. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 戦後処理の一環であると考えております。
  44. 大出俊

    ○大出委員 戦後処理というものは一体何ですか。
  45. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 読んで字のごとく、戦争によって受けたあとの問題を処理する問題でありますが、さきの大戦、あのいまわしい大戦で動員され、消耗された物的、人的資源はきわめてばく大であったことは、これは言うまでもないことであります。また、敗戦ということによって、領土は縮小され、連合国の管理下にあるという悲惨な状態にありまして、社会改革も行なわれ、財政経済再建措置等、いろいろな問題がありまして、国民の各層にわたって受けた打撃は、きわめて大きいものがあったと私は考えております。こういった問題についてあと始末をする、つまりそれが戦後処理である、私はこのように考えております。
  46. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、この戦争によって受けたあとのと、こういういまのお話ですが、敗戦によってという意味だと思うのです、いまの長官のお話は。となりますと、それは戦争犠牲と、こういう意味ですか。
  47. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 戦争ということば、これは負けたのですから、敗戦であります。したがって、すべてか犠牲者であるというたびたびの私の申し上げておる点に御了承いただけると思うのですが、やはり戦争犠牲に対する国家のとるべき処置である、このように考えております。
  48. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、戦争犠牲というものは、国際法的にあるいは国内法的に分けてみまして、どのくらいありますか、例示していただきたいのです。
  49. 栗山廉平

    栗山政府委員 網羅できるかちょっとあれでございますが、従来特に戦争処理の問題としてあげられておる問題といたしましては、戦没者、戦傷病者、戦災者、原爆被爆者、未帰還者、占領軍による被害者、引き揚げ者等の問題であったと存じております。
  50. 大出俊

    ○大出委員 戦没者、戦傷病者、それから戦災、それから原爆、未帰還、占領軍被害、引き揚げ者、こういういまお話ですが、そうなりますと、あと承りたいのですが、学徒動員なんというのはどういうことになりますか。
  51. 栗山廉平

    栗山政府委員 それは所管外でよく存じませんが、学徒動員もたしか援護法の対象になっておるかと記憶いたしております。
  52. 大出俊

    ○大出委員 いまのところちょっとはっきりしてください。
  53. 栗山廉平

    栗山政府委員 援護局長、来ておられたのですが、ちょっと席をはずしておられますので、ちょっと聞きました点を……。学徒動員の場合には、死にました場合には戦没者と同じ扱いをされまして、それから傷ついた場合には戦傷病者と同じ扱いをしておるそうでございます。
  54. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、いまの答弁と食い違っておるのですが、どっちがほんとうですか。食い違いがあるが、どっちがほんとうですか、前の答弁といまの答弁と。援護法の適用の範囲に入っておる、こういうことなんですが……。
  55. 栗山廉平

    栗山政府委員 前のが間違いでございました。
  56. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、生きておって、学徒動員を受けて学業を続けられなかった人も、人生方向を変えられた人もいるというのは、これは学徒動員被害補償という意味では残っている、こうなると思うのです、その大小は別として、それから法的にどうするかは別として。それからもう一つ、徴用被害補償というべきものはどうですか、何に入るのですか。徴用を受けた人は一ぱいいるのです。職業をやめたのだから……。
  57. 三浦正夫

    ○三浦説明員 御説明申し上げます。戦傷病者戦没者遺族等援護法の中におきまして、先生いま申されましたような、いわゆる徴用工につきましては、準軍属として扱っておりまして、なくなられた場合には遺族給与金という年金を、それから障害の場合にも障害年金あるいは一時金というようなものを支給する制度になっております。
  58. 大出俊

    ○大出委員 いや、そう言っているのじゃない。私が申し上げているのは、死んだ人ばかりじゃないのですから、たくさん徴用になって、自分の家業をほうり出して、長年やってきた職業をやめたのですから、やめてつぶれて、それ以来再興できないような人がたくさんいるわけです。いま生きている。そういった損害はどうなっているのか。
  59. 三浦正夫

    ○三浦説明員 これは私どものほうの遺族援護法でございますと、死亡と負傷、疾病というのを所管いたしておりますので、所管外でございます。
  60. 大出俊

    ○大出委員 つまり死亡云々以外は入っていないわけですね。それから接収家屋の損害補償というのは、どういうことになりますか。
  61. 栗山廉平

    栗山政府委員 進駐軍によって接収された家屋の損害の補償でございますか。
  62. 大出俊

    ○大出委員 それもございますし、軍にいわゆる徴用、徴発という形で戦時中に接収されたのもあります。それから、強制疎開なんというのがございますね。それらはどういうところへ入りますか。戦後処理の中に入りますか。
  63. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 これは、たとえば強制疎開をしたときに、当時の金で幾らでありまするか、ちょっと金額は存じませんが、法律の名前は忘れましたけれども、それで支給いたしているということを、私承知いたしております。ですから、これが戦後処理になるとは私は考えておりません。
  64. 大出俊

    ○大出委員 全部支給されておりますか。調査したことがございますか。
  65. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 私自身はそういう立場にあって、私は軍籍にあって日本におりませんでしたから、うちで聞いてみたら、そういうことは知らなかった。そういう国民が多かったのじゃなかろうかと私は思っております。
  66. 大出俊

    ○大出委員 私も軍籍にございまして、士官学校の先生、教官をやっておりましたので、強制疎開その他ほとんどもらっていない。国民の側からそんなことを言えた義理じゃなかった時代でありますから、がんばりましょう勝つまではということだったのですから。したがって、ほとんどが補償をされていないのですよ。したがって、私はこれだって戦後処理、こう考えておるわけです。それから郵便貯金なんかは、一応いろいろな形で、第一回の在外財産審議会その他の中でも、つまりもう取り上げられた問題ですけれども、これとても、沖繩なんかになりますと、満足な形で終わっていない。これは私自身が郵政の出身ですから御答弁いただきませんが、それから生命、火災保険損害補償というようなものはどうですか。
  67. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 私の所管であるのかないのかは別といたしまして、聞いておりません。
  68. 大出俊

    ○大出委員 長官が、私としては戦後処理はこれで終わりにしたいのだということをいまおっしゃったから、終わりにされちゃ私のほうは迷惑なので、だから終わっていますかと聞いているわけです。あなたは終わりにしたいというから、何が戦災、戦争犠牲なのか、明らかにならないで、いま私が質問してお答えにならぬのが幾つもあるけれども、そのままで簡単に戦後処理は終わりにしたいなんと言われては困る。だから聞いている。
  69. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 私は、国民全部が戦争犠牲者であるという基本的な考えは、常に持っているわけです。そこで、いろいろケースがあるでしょう。私も寡聞にして存じ上げないものもありまするけれども、それは先ほども申しましたように、それぞれの所管省において、所掌事務を扱うところにおいて、あるいは社会保障制度の拡充、そういったものによってめんどうを見る、あたたかい手を差し伸べるべきである、私はこういうふうにお答えいたしておるのであります。
  70. 大出俊

    ○大出委員 何が一体戦争損害なのかということが明らかになりませんと、社会保障として見るべき性格のものであるかないかさえ明らかにならない。わからぬで社会保障だと言ってみたってしょうがない。したがって聞いているのです。続けます。預金封鎖損害補償とでもいうべきものは、一体どうなっていますか。財産補償というのはどうなっていますか。戦災被害補償というのがございましょう、焼けたのだから。これは法的にいうと、無作為損失損害補償というのもあるのです。これは説明すれば切りがありませんがね。つまり私が申し上げたいのは、はたして戦後処理というものは終わったのかということを申し上げたい。  また、ここで承っておきたいのは、一体何と何と何を戦後処理として今日までおやりになったか、あげていただきたい。
  71. 栗山廉平

    栗山政府委員 おも立ったものだけになるかと存じますが、直接戦争関係のあるところの軍人、軍属等に対しましては、恩給法等によりまして、それからまた、一般戦災者につきましては、戦時災害保護法等によりまして、また、未帰還者に対しましては未帰還者留守家族等援護法によりまして、それからまた、占領軍による被害者に対しましては、連合国占領軍等の行為等による被害者等に対する給付金支給に関する法律によりまして、引き揚げ者に対しましては、先ほどから申し上げておりまするところの引揚者給付金支給法でございます。また、従来の措置としましては、応急援護措置、そういうふうな事項がおもだった事項であると存じております。なお、趣旨はあるいは違うかもしれませんが、農地報償等も加えられている向きもございます。
  72. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、この中の、一、二、三、四、五、六、六つおあげになりました、農地報償を入れて。しかもこの中の占領軍による被害に基づく法律は、政府がお出しになったのじゃない。駐留軍による被害、私の申し上げているのは、サンフランシスコ条約以前のものについてですよ。それについては放任されていた。したがって、駐留軍による被害については、先般内閣委員会で議員立法の形で、私ども苦心惨たんをして、受田さんが提案をする、私が質問をするという形で、大蔵折衝を重ねて、伊能さん、八田さんはじめ与党の皆さんの御尽力も賜わって最終的にこの委員会を通したわけですからね。そうすると、政府がおやりになったというのは、いま二、四、六つあげましたが、一つ抜けるわけだ、われわれがやったのだから。そうすると、これはいまおあげになった中で五つしかない。農地報償というのは、はたして戦後処理かという問題も、確かにあります。そうすると、この形のままで戦後処理はこれで終わりにしたいなんて、まだあなた、この引き揚げ者の皆さんのやつは、いまこの委員会で通らなければ成り立たないのですから、見舞い金的なものを差し上げてあるだけだ。そうでしょう。そうすると、引き揚げ者の皆さんのやつは、いま法律はここでまだかかっているのだから、まず農地報償を入れて一、二、三、四、それで戦後処理は終わりですなどと言われたのでは、これはおこりますよ。私は、社会党のこの引き揚げ者の皆さんの側の特別委員会の事務局長を四年もやっていますから、私も一生懸命通そうとする一人だけれども、しかし、戦争犠牲一般というものの処理というものは、直ちに前提に置いて考える、それこそ国力、国情というものに合わせて考えていかなければならぬ筋合いのものである。それから調査をしなければならないたくさんの未解決の問題もある。そういう中なんで、そう簡単に戦後処理は終わったんだ、何か戦争犠牲ということの論議もしないで終わっては、私も迷惑です。そこのところをもう一ぺん答えていただきたい。
  73. 栗山廉平

    栗山政府委員 先ほどは、たとえば軍人、軍属等に対しては恩給法等によるというような、少し大きな——大きなといいますか、荒っぽい言い方を申し上げましたが、恩給法等の等と申しますのは、御承知のような援護法がございます。戦傷病者戦没者遺族等援護法、それから戦没者等の妻に対する特別給付金支給法、あるいは戦傷病者特別援護法、戦没者等遺族に対する特別弔慰金支給法、それから戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法、こういうようなものが含まれているということを申し上げておきたいと思います。それからさらに、御承知のような戦災者等という中には、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律も含まれておることは、御承知のとおりでございます。補足をさしていただきます。
  74. 大出俊

    ○大出委員 しかし、いずれにしても、私はいま幾つかあげたわけですが、まだたくさんあります。申し上げただけではわかりませんが、あなたのほうが農地報償をあげる向きもあるとおっしゃるなら、これはうしろ向きで私は賛成でないけれども、しかし、ある総合誌に書かれておるように、財閥解体被害補償という論文さえあるのです。戦後財閥が解体をさせられた。これはたいへん巨額な損害だ、政府はそれを何とかしろ、こういう意見だってある。だから、戦後処理といわれるからには、何と何と何が一体戦後処理なのかということを明確にして、その上で、今日まで曲がりなりにも処理をしてきたのはこれとこれであった、これこれが残っているが、これは社会保障なら社会保障の方針でやり得る。だから、この辺で戦後処理というものは終わらしていただきたいというならば、筋が通る。それが社会保障のワクの中に入るものやら、特別立法が必要であるものやら、何が一体対象なのやら、それも明らかにしないままに、皆さんの頭の中に今日ないままで戦後処理は終わりですというたわごとを言われたって、私は迷惑です。そこのところをはっきりさせていただきたい。そうしないと、あとにいろいろ問題がある。だから、戦後処理というものをあなた方のほうで、いま明確に何と何と何であって、済んでいるものはこれとこれとこれだ、これこれのものは残っている。残っているが、それはこれこれの方法でやるのだというところまでもし御答弁をいただけぬとするならば、私は、戦後処理は終わりだなどということはお取り消しを願いたいと思う。いかがですか。
  75. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 われわれが初めて味わった敗戦という現実ですから、いろいろといまのような御議論のあることは、これは当然でしょう。じゃ、しからば幾つと幾つ、これとこれがこうであるというはっきりしたお答えもできませんでいろいろおしかりを受けたわけでありますが、私もこの仕事をあずかるようになりましてから、きょう初耳の問題もありますが、いろいろな問題も承っております。私が戦後処理を終わりたいと言っておるのは、この種のいわゆる財政的な処置——もちろんすべて財政的なものは伴うでしょうが、この種の問題というものの戦後処理は終わりたい。それからいろいろとまたこれから出てくる問題は、それぞれの所掌事務を扱う所管庁において、社会保障にあるいは該当しないものがあるかどうか、それはまた検討してみなければわかりませんが、私は、社会保障制度の拡充、そういったものによって援護措置の強化で問題の解決をはかりたい、このように申しておるわけであります。
  76. 大出俊

    ○大出委員 いま長官が社会保障にあてはまるかどうかわからぬものも出てくるかもしれないがとおっしゃっているが、あげ足をとるのじゃないけれども、何が戦後処理かという、つまり明確な何と何だということが、皆さんの見解の中に明らかになっていない。だとすれば、何が出てくるかわからないのはあたりまえだ。社会保障といったって、社会保障でやりようのないものはたくさんあるでしょう。たとえば私がいまあげなかった中で、防空法という法律どうですか、御存じですか。
  77. 栗山廉平

    栗山政府委員 名前は聞いております。
  78. 大出俊

    ○大出委員 たよりないことをおっしゃるが、あなたも軍籍にあったのじゃないですか。火たたき、バケツで一生懸命やったやつですよ。この防空法の下には、防空従事者扶助令というのがある。それで、防空従事者が爆弾を食って死んじゃったというような場合に、五百円から千五百円までの補償をすることになっておった。ところが、終戦の半年前まではやっているが、もらっていない人もありますよ。ありますが、やったことになっている。しかし、そこからは払われていない。そうすると、当時あった法律であるから、戦時中に済んでいるということにはならない。この面から考えても、これは一体社会保障でやりようがありますか。ないでしょう。こんないとも明確な戦後処理がされていない。そうでしょう。だからこそ、参議院では今回附帯決議がついているんですよ。ここに持ってきましたから読みますよ。二項にわたっている二つ目のほうですが、「政府は原爆被爆者以外の各種の戦争犠牲者の援護についても、未だ適当な処遇がなされていない者に対しては、公平な処遇があまねく行なわれるよう努めること。」これが参議院の附帯決議です。院を通っている。そうでしょう。この中には、いま言ったような防空法関係者、防空従事者関係が入っている。これは社会保障でやりようがないですよ。この一点だけとらえたって、戦後処理がこれでおしまいですなんて——これは予算か要りますよ。戦後処理が終わりだとは言えない。私は、こういう問題を総理や幹事長はじめ皆さんが、軽々しく戦後処理はおしまいですなどということを言うべきではない、こう思っている。おわかりでしょう、いまの防空法の規定は。
  79. 栗山廉平

    栗山政府委員 いまお聞かせいただきましたが、詳しく研究しておりませんので、承らしていただきます。
  80. 大出俊

    ○大出委員 私は、防衛二法じゃないですから、ここでむだなことはやめますよ。やめますけれども、私は、これは引き揚げ者の各種団体の皆さんがお気の毒だ。圧力団体で押しまくってふんだくったなんて言われたんじゃ、寝ざめが悪過ぎますよ。だから、皆さんのほうでこれだけのものを提案されるならば、準備をされて、戦後処理というものを分けてみて、これとこれとこれは済ませてきた、これとこれとこれは後刻社会保障でやる、長官のおっしゃるように国民はあまねく戦争の被害をこうむったんだから、そこでこれとこれとこれは手がついていない、こういうふうに分けて、しかし引き揚げ者の皆さんが長期にわたってずいぶん御苦労をされてここまで持ち込んだことだから、国民の皆さんの了解を得て、国力、国情というものを考えて、今回かくのごとき処理をする、こういうふうに国民を説得してくれなければ、一生懸命やった方々の努力の実りぐあいがうまくいきませんよ。そうでしょう。せっかくこれだけのことをおやりになるなら、私はそうすべきである、こういう見解を持っている。だから、簡単に戦後処理は終わりだなどと言わないでほしい。そう言うと、国民の皆さんは、それじゃおれの家が焼けちゃったのはどうしてくれる、おれの家が取りこわされて一銭ももらってないのはどうしてくれる、おれのせがれは学徒出陣で行った、それからぐれちゃってまともな人間でなくなっちゃった、どうしてくれる。一ばいあるんだ、そうでしょう。だから、そこは明確にすべきである。だから、正直に言うと、戦争犠牲調査会のような形のものでもつくって、各種の戦争犠牲が国際法的に、国内法的にどれだけあるかということを明らかにして、その上で、今回の処理についてはこういう見解なんだ、こうすべき筋合いのものだと私は思う。それでなければ、国民の皆さんは、皆さんの金なんだから、予算なんだから、納得をしない、こう私は思っているのですよ。だから、あなたのほうが、私の防空法の例等についていま承って、詳しくはわかりませんというなら、それでいいです。いいですけれども、やはり私はそういうふうに筋道を立てる筋合いのものだと思います。  そこで、諸外国の例を承りたいのですが、きのうから申し上げておきましたから御用意されておると思うのですけれども、諸外国でどういうふうな戦争犠牲の処理をやっておられるかという点を、要点でけっこうですから、お出しいただきたい。
  81. 栗山廉平

    栗山政府委員 われわれのところで調べました範囲におきまして、お答え申し上げます。外国の例といたしましては、イタリアの場合とドイツの場合を調べたのであります。イタリアの場合は、戦災による財産損害というものにつきまして、国内財産それから在外財産、戦災を受けましたものは、その戦災の被害に応ずる富の均衡をもたらそうということで、その立法が一つございます。そのほかに、戦災を受けなかった在外財産、これにつきましては、それがイタリアの平和条約で賠償に充てられることになったものにつきましてだけ、つまり在外財産の残ったものでも、賠償に充てられるものと充てられなかったものがあるわけでございますが、充てられたものにつきましては、その損害を補償するという法律ができておるわけでございます。  それからまたドイツにおきましては、負担調整法という法律ができまして、あらゆる戦争損害、物的損害を地ならしするという意味におきまして、財産の残った方から特別税を取り立てて、それで損害を受けた方に三十年にわたって支払いをするという負担調整法というのがございます。在外財産もその精神でやられておるのでございます。ただし両国とも、これは国が国民に対して法的義務があるからやるのであるということにはいたしておりませんで、国民の負担の均衡をはかるために、社会的な意味において行なうのであるというようなことがはっきりいたしております。  それからなおイタリアの場合には、法人も個人も含めておりますが、ドイツの場合には法人は一切除外しております。自然人だけに限っております。こういう点が違う点でございます。
  82. 大出俊

    ○大出委員 そこで問題は、ドイツのほうをもう少し承わりたいのですが、どのくらいの基金をつくってどのくらいのことをやっておりますか。
  83. 栗山廉平

    栗山政府委員 すみません。いま調べまして……。
  84. 大出俊

    ○大出委員 こうなっているわけですね。私の手元で調べている中身からいきますと、東ドイツの分割という特殊な政治事情がございます。そこで追放された方々が八百八十万あるんですね。そして逃亡者が二百四十万ある。合わせて一千百二十万にのぼる難民が無一物で帰ってきた、こういう事情。これは日本の皆さんが外地から引き揚げてこられたと、この意味では同じです。そういう方々に対する対策をどうするかということが、非常に大きな問題になっていたわけですね。この困難を国民の総意によって乗り越えなければいかぬ。だから、ほんとうに国民諸君は外地から引き揚げてこられた方々のことを真剣に考えろ。考えたそういう国民的、ある意味ではコンセンサスですね、合意の上に三つの立法ができている。これは一九五〇年六月十九日実施の引き揚げ者法、それから戦争捕虜損害補償法、三番目が先ほどあなたがおっしゃっていた調整法、俗に戦災平等負損法、こう言っているんですね。一九五〇年法と言っていますね。つまりこの三つの法律が土台になっておりまして、第一の戦争犠牲者救済法の対象というのは、戦場あるいは後方を問わず、戦争による身体障害者及び遺族、これは非常にこまかい法律ですよ、ドイツの方々らしい。夫を失った妻、妻を失った夫、子供を失った両親、孤児、全部分かれている。身体障害者は、障害の程度に応じて毎月十五マルク。一マルク約九十円でしょう。いまちょっと換算率が変わっているかもしれませんが、それが最高百八マルク、そういった救援金、救済金を受ける。他に収入のある場合には、それとの調整がはかられる。非常にこまかく書いてあります。それから、めくら、頭脳障害、こういうことで職業につけない人が最高百七十五マルク、遺族のうち子供のない四十一歳以下の未亡人二十マルク、その他の未亡人四十マルク、こういうふうに全部分けられています。父を失った子供が十マルク、両親を失った弧児が五十マルク、これは成人に達するまで支給するということです。子供を失った両親が、必要な場合に限って支給を受ける。子供を失った両親まで受けるのです。この制度で救済を受けている人数が、身体障害者が百五十万人、未亡人が百二十万人、父親のない子供が百三十万人、両親のない弧児が五万人、子供を失った両親三十万人、合計四百三十五万人になっていますね。たいへんな数です。それから第二の、引き揚げ者法といっておりますもの、それから戦争捕虜損害補償法、これもいま私が例にあげましたように、非常にこまかく規定をされておりまして、二百マルクから三百マルクの一時金というようなものも出ております。同じく最後戦争損害と申しますものの平等化法、つまり戦災の平等負担法といわれておる法律は、通貨改革の結果財産を失った者の救済まで入っている。つまり日本でいうならば、封鎖預金、この種のものもみんな入っているわけですね。そうすると、さっき私は封鎖預金損害補償というべきものと言ったのだけれども、これだって、明確に外国の例から見れば戦争損害の戦後処理補償なんですけれども、残っている。明らかになっているわけです。それから、土地所有者から、つまり戦争被害を受けなかったもの、受けたもの、そういった焼け残った財産等々に対して、全く一ぺんだけの税金をとっているのですね。課税対象というものは、第一に一九四八年の通貨改革の日に居住した人、あるいは法人の五千マルク以上の財産、これに対して一律五〇%の一度限りの税金を取る、こうなっているわけです。ただしその納税は、一九七九年までに毎年四回ずつ払う、こういうことで、この税収が毎年十二億マルクあるのです。第二に、不動産担保の利益及び通貨改革による債務者利益に課税をして、この税収が毎年五億マルク。第三に、連邦政府、各州政府の寄付金が七億マルク。その他を合わせて約二十五億マルクが平等化基金として積み立てられている、こういうわけです。まだこのあといろいろあります。難民の、つまり引き揚げられた方々の生活再建への処置、この二十五億マルクのうちで、一九五三年には、戦災救済資金に九億五千万、住宅資金に六億五千万、通貨改革損害補償に四億二千万、事業施設建設資金に四億六千万マルク、こういうかっこうで、引き揚げてきた方々に工場をつくって、住宅をつくって、そこにお入りくださいといって入れて、二十年間でその損害は取り戻してみせるということで、ドイツの場合はやっているわけですね。だから、国民的総意の上に乗って、引き揚げ者の方々が国の政策の上に乗せてもらっているわけでありますから、その意味で非常な意欲をもって政策に協力をした。だから、その意味では、引き揚げてきた方々のドイツ経済に対する協力の度合いというものは、すばらしいものがあったということを政府が報告をしておりますよ。そういうかっこうで、戦後西ドイツの経済復興というものは、意外に早く成り立った。その大きな力になっているという報告が出ております。だから、私は、在外財産問題の処理にあたって、本来ならば早くから国民世論というものを説得をし、その総意の上に、お帰りになった方々の救済をはかるという、そういう措置が、住宅にしても、あるいは就職にしても、工場にしてもとられる、そういう政策政府によってとらるべきであったと私は思っている。そうしないと、何か知らぬが、この法律が出てきた、各党が賛成だなんというと、新聞が片っ端から悪口を書くということになってしまう。私は、これは政策のまずさだと思うのですね。だから、私はそういう指摘を申し上げると同時に、戦後処理が終わったんだということをそう軽々しく口にしてほしくない。それこそある意味ではナショナル・コンセンサスかもしれませんが、国民的合意という意味で戦後処理というものをはかれるものは、国力、国情に応じてはかっていくという姿勢が正しい。そうでなければ納得できない人は納得しないんだから、そうすべきである。そういう姿勢の上でこの法案を十二分に審議をして通ったんだということでなければ、引き揚げ者の方々のどなただって、国民のまん中にあって理解をされてこの種のものができた、こういうふうに進んでいかないと私は思う。そこのところを私は言いたい。こういうことを申し上げるのですがね。どうしても私は、戦後処理というものは終わったんだというような言いっぱなしのことについては納得できない。やればできるのですから、かくのごとくやろうとするかどうかという問題なんですから、しかも国民的な基盤というものを求めての政策立案だってできるのですから。だから、私はそういうようにお考え直し願いたい。いかがですか。
  85. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 大出委員の諸外国の例、ことに西ドイツを例にされた非常にためになるお話をお聞きいたしましたことを感謝いたします。また、ナショナル・コンセンサスの問題も、この問題に限らず、私は、政治の上においては、すべての問題にこれは考えなければならない問題だと考えております。それから悲惨なこの敗戦ということによって戦後二十二年、こういう問題を論議しなければならないということも、これはまことに残念なことではありますが、現実の問題として、やはりこれは大きな政治問題として取り上げなければならない。したがって、この種の問題についての戦後処理ということは、私は先ほどから申し上げておると思うのでありますが、今後いろいろな問題が出てくるでしょう。しかし、そういうものは、繰り返すようでありますが、やはりそれぞれの省庁において何らかの措置をとる。援護の措置になりますか、その他の措置になりますか、そういった考えを私はやはり持っておるわけでございます。
  86. 大出俊

    ○大出委員 くどいようで、長官まことに恐縮なんですが、ひとつあとからまた幾つか例を申し上げますけれども、せっかく参議院の附帯決議もあって、補償法で取り上げて処理しなければならない問題がある。しかし、一ぺん言ってしまったことは言ってしまったことでいいですけれども、これから皆さんのほうでお気づきになって、処理をしていかなければならぬものだというお考えのものは処理していく、この姿勢をはっきりしていただきたい。いかがですか。
  87. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 院の決議を尊重しなければならないことは、言うまでもないのであります。これはプライベートでありますけれども、この問題についてはいろいろな方々からも私は承っておりますが、先ほどことばが足りませんでしたが、院の決議を十分尊重しながら、それぞれの所管事務を扱う省庁において援護の措置等を強化すべきであるというふうに私は考えております。
  88. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、ここで念のために一つ申し上げておきたいのですが、前後して恐縮なんですが、いま院の決議というお話でございましたけれども、参議院の附帯決議の第一項というのは「原爆被爆者援護については、すでに昭和三十九年衆・参両院において「原爆被爆者援護強化に関する決議」がなされていることにかんがみ、政府はすみやかに原爆被爆者援護に関する法的措置を促進するため、関係者を含む特別の審議会を設置して、両院決議の実現をはかること」こういっておる。これは尊重なさいますね。
  89. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 この問題につきましては、厚生大臣とたびたび相談いたしております。厚生大臣の言うことは、いま実態調査中であるので、その結論を待ちたいということでありますが、この問題は、やはり私が先ほどから申し上げておる所掌事務を扱うものは厚生省でありますから、よく厚生省と御相談していきたいと考えております。
  90. 大出俊

    ○大出委員 そこで、私はこれは理事会その他で御相談をいただきたいということなんですが、私がこれから申し上げることは、このせっかくの参議院の決議が行なわれましたが、十月までということで調査をしておられる、こういっているのです。これはあとから申し上げますが、ところが各所で、たとえば各省あるいは総理あるいは厚生大臣というような方々がいろいろなことを言っておられるものだから、非常にこの該当者の方々は心配をしている。したがって、せっかくこの在外財産問題を審議するということになれば、いまこれから始めているわけですけれども、やはり国民的合意とさっき私申し上げましたが、そういうものの考え方もあるわけでございますので、いきなり出てくることばは何かといえば、在外財産のことを大出さん、あなたは一生懸命やっているようだけれども、原爆にやられた人間をどうしてくれるのだ、という話がすぐ出てくる。たくさん町の中にある。これは特徴的に出てくる。だから、やはり私は、この種の問題については、もう少し審議を進める、たとえばいつできるというようなことをひとつ目標として立てるというようなことを含めて、処理をしていただきたい。しかし、これはいまここで言って即答いただける筋合いではありませんから、そういう点を理事会等で相談をする、こういうようなお運び方をぜひしていただいて、すみやかに政府の側は御協力願いたい、こう思っているわけです。これだけ申し上げておきます。  次にもう一つ、調査室長さんでけっこうでございますが、承っておきたいのは、先ほどちょっとお話が出た問題なのですけれども、いまの審議会答申でこれは尊重しておいきになることはわかるのだけれども、そうではなくて、在外財産といわれているものの国際的に見て分布の状況を、できるだけ正確に明らかにしていただきたい。この答申を見ましても、なかなかこの辺が明確でございません。各種の条約締結の形もございまして、単にサンフランシスコ平和条約十四条(a)項にいわれるだけでございませんので、そういう点でいまカナダ裁判に関しまして五%というお話でございましたが、それならば五%の位置づけ、つまり全体のお話であるかどうかわかりませんが、そういう意味でおあげをいただきたい。
  91. 栗山廉平

    栗山政府委員 先ほど申し上げましたのは、非常に詳しい調査の結果ではございませんで、おおむねのあれでございますが、条約関係の適用がございます地域につきましては、これは答申の中にも申し述べてございますように、一番大きな条約はサンフランシスコ平和条約でございますけれども、そのほかに二国間の平和条約というものがございまして、ビルマあるいはインドネシアとの関係は、やはり二国間の平和条約に相なっております。なお、台湾との関係は、平和条約はございますけれども、請求権問題を二国間の合意で片づけるということになっておりますので、法的にはまだ在外財産処理されておらないということに相なっておりますので、それらのところは法的から除外されているかっこうでございます。
  92. 大出俊

    ○大出委員 それじゃ具体的に聞きましょう。サンフランシスコ平和条約当事国所在の在外財産というものは、正確に言うとどのくらいありますか。何%ぐらいございますか。
  93. 栗山廉平

    栗山政府委員 正確にはまだわかっておりません。
  94. 大出俊

    ○大出委員 ビルマ及びインドネシア関係、これはサンフランシスコ平和条約第十四条(a)と同趣旨の規定ですね。この場合、ビルマはどのくらいあって、インドネシアはどのくらいありますか。
  95. 栗山廉平

    栗山政府委員 財産の価額につきましては、いずれもはっきりした点がわかっておりません。
  96. 大出俊

    ○大出委員 あなた、先ほどサンフランシスコ平和条約関係、これは大きな問題ですよ。カナダ裁判というのは、これは一つ間違ったら、この基礎は全部ひっくり返っちゃうと思っております。引き揚げ団体の皆さんだって、法的に補償義務が政府にある、この立論に立っているはずなんですよ。そこで、この審議会の中身というものはどうなっているかというと、最終的には裁判所がきめることなんだということを明らかにした上で、それにしても当面何とかしなければならないので論議はしましょうといって審議をしているのですよ。そうすると、在外財産請求権、憲法二十九条三項というのは、これはあくまでも裁判所が最終結論を出すべきものなんですね。そこで問題になるのは、世界人権宣言もある。そういう立場からすると、敵性管理の形で持っていかれる財産について、外交保護権との関係その他を踏まえて、すなわち何のだれ兵衛という人がその国の裁判所に行って提訴することだってできる。できないのもある。だから、そういう点を分けていくと、いずれも国際的、国内的に裁判所が最終結論を出すべきものです。だから、ここであなた方がさっきいろいろな答弁をまことに無責任にされておるけれども、裁判所に訴えて、カナダ判決が出て、政府補償義務がある——高裁では、補償義務はあるけれども、手続法がないからと言っているのです。そうでしょう。手続法の制定が待たれると言っているのですよ。そうだとすると、最高裁でこの判決が出てごらんなさい。そんなこと言ったら、みんな提訴しますよ、最高裁判例ができるわけですから。そうでしょう。そうなると、いまあなたいろいろな理屈をつけておられるけれども、根本的にそれがひっくり返ってしまう。そうなるでしょう。だから、私は、あなたがいま簡単に五%とおっしゃるが、そう簡単なことではない。五%とおっしゃる限りは、全体が一〇〇であるはずだ。五%というのは百分の五なんだ。残る九五というのはどうなっているんだ。それがはっきりしなければ、百分の五かどうかわからぬ。五%しか影響がないというけれども、あなた簡単なことを言うが、そうではない。だから、私は、そういうことになるとすればソ連関係、これは日ソ共同宣言第六項ですよ。そうでしょう、違いますか。そうすると、日ソ共同宣言第六項に関するものはどれだけあるのか。
  97. 栗山廉平

    栗山政府委員 先ほどから申し上げておりますように、正確な調査は実はございませんので、御了承願います。
  98. 大出俊

    ○大出委員 あげるだけあげておきます。ポーランド及びチェコスロバキア関係、これは日ソ共同宣言方式、六項方式。行っていた者はあるのですから、これだってあるのですよ。インド関係、これも平和条約第四条の規定ですね。これだって大きな問題がある。あげていけばたくさんあるのですね。それからあと中国及び旧枢軸国所在の財産、それからいまお話の台湾、これだって、今日まで中華民国は事実上台湾しか所有していない。そうなると、台湾政府との関係はどうなっているかという問題が、大きな問題である。これは外交折衝で口上書その他が交換されておりますよ。そこで、これがどうなっているかという問題がある。中国から出ていった日本人の財産はみんな売っちゃった。そのとき証明書は持たして帰している。台湾の場合は、あんたの財産は幾ら幾らといって、台湾政府が証明書を出したのだから、これは明確にあるのですよ。それから満州国というのは、国かどうかという問題がある。汪精衛政権というのは、法律的に国かどうかという問題がある。どうお考えになりますか。承認した国もあるのですよ。——むずかしいとおっしゃるが、それが明確にならなければ、財産論議はできないのです。私は、さっきから防衛二法の審議をしているんじゃないと言っているんだから、かまわず答えてください。——それでは、お答えいただけなければいただけないでやむを得ませんいい、ですよ。いいですが、私の言っている意味はおわかりになるでしょう。問題は、満州国なりあるいは汪精衛政権というものは、一体国かどうか。少なくとも枢軸国は承認をしたわけですね。そうなると、そういうものについてはけじめが必要なんですよ。ぴしっとつけていかなければならない。それは、よく皆さんが言われるように、一旗上げようといって行った人もいるでしょう。だけれども、やはり外地に行って苦心惨たんしてこられたわけですから、そうだとすると、おれのあのときの財産はこのくらいあったという郷愁を、年配の方は常に持っている。そうだとすると、それは汗の結晶なんだから、かくかくしかじかこうなったという決着、けじめがつかなければ困る。そうだとすれば、まず、満州国というのは、国際法上一体国なのかどうかというところまでいかなければならぬことになる、銀行関係がありますから。そうでしょう。将来裁判でどうなるかわからないのですから、やはりそういうふうな点を明らかにするものはして、この法律は出すべきだ、私はこう思っておるのですよ。どうも論議がまことにいたしにくいわけでございますけれども、そこで、先ほどきわめて簡単にお片づけになりましたが、念のためにもう一ぺん承りたいのです。つまりカナダ判決、カナダ裁判といわれるもの。秋山さん御夫妻が所有している四百三十二万余の財産、これはカナダ政府の敵産管理の措置を受けたわけですね。その後平和条約の第十四条(a)項2(1)により、カナダ国が処分権を取得することになった。そこで、憲法第二十九条第三項の規定により、国は控訴人に対し、補償すべしと請求しているが、平和条約により賠償に充当されたことは、国が戦争損害の賠償義務履行という公共の目的のためにみずからこれを処分したのと結果において何ら異なるところなく、国は平和条約に補償条項がなくとも、国内的には憲法第二十九条第三項の定めにより、正当な補償をなすべき責務を有するといわなければならない。東京高裁の昭和三十八年のネの第五百二十八号の判例は、こうなっているわけです。しかし、この問題は社会政策的、経済政策的配慮を加え、納税者たる国民が真に納得し得る範囲において合法的に補償の程度、方法、手続などを決定すべきで、まさにそれは法律の規定をまつべきである。こうなっているわけです。現在は法律がないから、具体的な補償請求はこれをなし得ないので棄却する、こういうのです。これは高裁判決だから、最高裁判決じゃない。だから、その意味で有権解釈になるかどうかわからぬけれども、この判例の趣旨からいえば、ほんとうならばいま暫定措置をして、最終的な処理というものは残すべき性格、そう私は思っておる。これが最高裁にいって、手続法がないのだからつくれということになって、判決の趣旨はこれと変わらないということになれば、日本政府に明確に補償義務が法的にあることになる。判定が下る、こうなる。そうなたば、三権分立のたてまえなんだから、政府は手続法の制定をしなければならないことになる。そうでしょう。だから、そこのところまで触れてあなたはお話しいただかぬと、簡単なことじゃ困りますよ。もう一ぺん御答弁いただきたい。
  99. 栗山廉平

    栗山政府委員 ただいま大出先生のおっしゃいましたこと、最高裁判所の結果によりましては、そういうことになると存じます。
  100. 大出俊

    ○大出委員 これは古い判例じゃない。昭和四十年十月十一日最高裁に控訴している。だから、まだ最近のことですよ。ことしの十月で二年たつのだから、まだ二年になっていない。係争事実が残っているのですから、これは最高裁が最終的に結論を出すということになれば、そのときに初めて一つの有権解釈、最高裁判例が出て、国に補償義務がないのだという判例になれば、とりあえずはそこで一つのピリオドになる、この法律はこう解釈すべき筋合いだ、そう私は思う。だから、在外財産審議会だって、最終的には裁判所がきめるものだということを前提にして論議をしている。違いますか。そこのところを答えてください。
  101. 栗山廉平

    栗山政府委員 審議会の審議の過程におきまして、その問題が出たことは確かでございます。ただし裁判所の見解がまだ出ていないのだから、この問題について行政府で結着をつけろのはおかしいではないかというような意見に対しましては、行政府は行政府として自分の意見を持つことは差しつかえない。裁判の結果が出たら、それはまたそのときの問題であるから、それとは関係なしに行政府としての意見を出すことは差しつかえないであろうということで、こういう答申がなされたわけでございます。
  102. 大出俊

    ○大出委員 これは仮定で論議をしたのではない。答申に載っている。あなたは所管なんだから、お読みになっているはずですよ。それを言ってくれなくちゃ困るじゃないですか。「司法機関において確定されるべきものであるにせよ」——であるのだ。しかし、本審議会の審議が、もしも在外財産問題に対して何らかの措置を必要とするという方向に進んだ場合、こういう条件を答申の中でつけているのですよ。そうでしょう。そうすると、この答申だって、裁判が一番最後の確定、こういうことになるのだという前提は置いていることになる。この文言からいけばそうでしょう。答申ですから、答申を尊重される限りは、そういうものの考え方というものが背景になければならぬ、こう私は思っております。だから、そこのところをさっきああいうふうに簡単に長官とお二人でお答えになるけれども、そこのところは踏まえておいていただかぬと、答申の中身なんです。三ページの「法律上の補償義務についての検討」というところに明らかにしているのですから、そこはお忘れいただきたくない、こう思っておるわけです。  それからアメリカの西ドイツの財産を、アデナウアー氏がたいへんにがんばって、返せということで大騒ぎをやりましたね。その時代に、日本の財産というものについてもいろいろ問題があった。だから、ほんとう言うと、確かに平和条約でああいう取りきめが行なわれているけれども、この平和条約の取りきめというものについての解釈、この面は二様にとれるのですよ、政府補償義務ありとも、補償義務なしとも条約は言っていない。だから、政府政策的にやろうとすれば、政府の責任という立場を明らかにしてやろうとすれば、できる。やってはいけないとなっていない。だから、私はこの審議会の中の論議はさておいて、皆さん政府なんですからね、いまあなたは、裁判所は裁判所、行政府は行政府の見解を持つことはかってだと言う。そうでしょう。そうだとすれば、行政府の見解として承りたいわけです。サンフランシスコ条約の十四条(a)項についての解釈——行政府としては、賠償という問題、賠償は明らかになっているのですから、十四条(a)項で。そうすると、日本に資源がないと書いてあるのだけれども、行政府としてそこのところは、法的な補償措置という問題とからんで、いずれに解釈されておるのですか。
  103. 栗山廉平

    栗山政府委員 仰せのサンフランシスコ平和条約十四条の(a)項でございますが、これにつきましては、政府審議会と同じ意見でございまして、賠償に充てられたという直接因果関係は認められない。したがって、仰せのような法的な補償義務は出てこない、こういう観点に立っておるものでございます。
  104. 大出俊

    ○大出委員 念のために言うておかぬといかぬですが、審議ですからね、この十四条(a)項というのは「日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うべきことが承認される。しかし、また、存立可能な経済を維持すべきものとすれば、日本国の資源は、日本国がすべての前記の損害及び苦痛に対して完全な賠償を行い且つ同時に他の債務を履行するためには現在充分でないことが承認される。」こうなっておるわけですね。だから、賠償請求権を放棄した国も出てきているわけですね、これとからんで。そうだとすれば、せめて日本人の財産というものについては、戦争中の損害あるいは苦痛に対して自国民に支払うというたてまえで、敵産管理の形で可能だということでその国が処理したということになるのですね。そう理解しなければいかぬ、筋道は。だから、審議会というものは多少政治的なものを含む、こう考えなければなりません、今日、百もある審議会というものは、みんな何がしかの政治的背景を持ってやっているのだから。そうすると、一生懸命法的補償義務はないということにしたいということで苦労していたあとが見れる。これは調査室長、苦笑いされるけれども、事実です。だから、この十四条(a)項の解釈は、解釈のしようで賠償に充てられたものだという解釈が成り立たないことはない。だから、言いわけめいてここに一ぱい書いてある。法的補償措置とすべきであるという側の見解はというようなことで、一ぱい書いてある。法的に補償すべきでないと、わずかに書いてある。そういう内容の答申ですよ。そうでしょう。そうすると、財産評価ができないということが理由になっているのだが、そこで承りたいのけれども、台湾から引き揚げてこられた方々の財産は、どのくらいございますか。
  105. 栗山廉平

    栗山政府委員 先ほどから何回も申し上げましたように、正確な調査はございません。
  106. 大出俊

    ○大出委員 しからば、外交手続上いまどうなっておりますか。
  107. 栗山廉平

    栗山政府委員 私の外務省から聞いておりますところでは、再三台湾政府に対して特別取りきめをしたいということを従来申し出たところが、向こうのほうでなかなか応じてこないというのが実情であるというふうに聞いております。
  108. 大出俊

    ○大出委員 これは旧満州国あるいは汪精衛政府財産、これは二十六億あるのですね。この財産を台湾が引き継ぐということを台湾政府が言ったんだ、外交文書上は。日本政府はこれに応じなかった。そこからもめだしているわけですね。だから、私のさっきの旧満州国や汪精衛政権というのはどういう位置づけをしたのだという質問は、そこにある。これは、旧満州国や汪精衛政権のところにある日本人財産は、おおむね二十六億あるんだ、これを台湾政府は引く継ぐのだ、こう言っているわけですよ、台湾政府の側が。そうでしょう。その引き継ぎに対しては、事実上占領していないのだからというので、日本政府は断わった。こういう経緯、御存じですか。
  109. 栗山廉平

    栗山政府委員 どうも聞いておりません。
  110. 大出俊

    ○大出委員 まことに論議しにくいわけなんですけれども、台湾は、そこで引き揚げるときに、あなたの財産はこれこれだという証明書を、立ち会いのもとにこちらへ書類を渡していますね。これは御存じでしょうな。
  111. 栗山廉平

    栗山政府委員 その点につきましては、清冊という名前で現物のサンプルを見せていただいたことはございます。
  112. 大出俊

    ○大出委員 だから、これは政府が努力しようと思えばわからないことはない、自分の財産なんですから、みな、個人にすれば。だから、先ほどのお話等もあり、かつまた、答申にもありますけれども、わからないところもある、しかしわかるところもある、こういうふうに明らかにしていただきたいのですがね。何もかもわからぬじゃ困る。
  113. 栗山廉平

    栗山政府委員 ただいまの清冊の問題でございまするが、どの程度まで皆さんがお持ちになっておられまするか、あるいはその内容につきまして評価等がどういうふうになっておりまするかという点につきましては、どうもまだはっきり聞いてはおりませんですが、相当多くの方々がこの清冊を持ってこられておるという台湾の事実は、よく聞かしてもらっております。
  114. 大出俊

    ○大出委員 そこで、この留置した日本の財産は、台湾政府は財政上の理由、これに基づいて台湾人、中国人に売却しちゃったのですね。政府の手を離れて個人のところにある。この金はどうなったかというと、一般会計に入っちゃって消費しちゃった、台湾政府としては。そこで日本との外交的な関係は、特別取りきめが未締結になっておる、こういう関係なんですね。そうすると、これは日本政府の責任だということになる。それは台湾が二十六億の汪精衛政権やあるいは満州国の財産を引き継ぐと言ったからという理由は成り立つにしても、外交的なやりとりが行なわれておる限りは、私は日本政府の責任だということになると思っておるのですが、どうですか。
  115. 栗山廉平

    栗山政府委員 ある国が自分の国の中にある外国人の財産につきましていろいろな処分をなさるという場合には、処分をした国の責任が問われるわけでありまして、それに対しまして処分された国民の側の国としましては、外交的にいろいろの異議を申し立てるという立場になるわけでございます。今度の場合の、仰せのような台湾の問題につきましては、先ほどから仰せのごとく、平和条約にあります特別取りきめという問題がまだ残っておりますので、その際に、日本の政府としては権利をそれまで保留しておきまして、その際に請求権としてはっきり出すというぐあいに相なるのじゃないかというように私は存じております。
  116. 大出俊

    ○大出委員 台湾というのは、これは日本の法律で保障されていたのです。したがって、分離地域にされたということになるわけです。したがって、両国間の特別取りきめの方向にある、こういうわけです。その意味では、保護権というものは日本政府にある。にもかかわらず、売っちゃったということですからね。そうすると、これは手きびしくものを言えば、外交保護権を政府か怠っていたということを言いたい。ここのところ、どうお考えになりますか。
  117. 栗山廉平

    栗山政府委員 どうも外交の専門問題でございまするので、あるいは明確に私から答えられない点があるかとも存じますが、審議会の段階等で私が聞いておりました範囲におきましては、一国がその国にあるよその国の人間の財産についていろいろ処分をしたり国有化したりするという場合に、その処分を受けた国の側の国民を保護すべき国としましては、仰せのような外交保護権を発動するわけでございますけれども、発動を幾らしても相手が強引で効果がなかったという場合に、それでは外交保護権を発動した国の側に、直ちに国民に対して補償すべきだという義務が出るかどうかという問題につきましていろいろ問題が論議されたわけでございますけれども、この場合には直ちには出てこないのではなかろうかというような議論だったと私は記憶しております。
  118. 大出俊

    ○大出委員 これはあなたを相手にここで論議しても、しかたがないと私は思います。しかし、実はここまでの法律を出されるとすれば、これはこまかく論議をしなければならぬ責任がこの委員会にありますから、そうすると、所管が総理府だということになっていて、一つの省にだけ限られているならば何々省になるんだけれども、幾つかの省にわたるとなれば、これは総理府だ、そういうことになっているはずでありますから、そうだとすれば、関係各省との間の問題も、外務省を呼んでこいとか厚生省を呼んでこいとかいうのではなくて、ほんとうならばあなた方が答えてしかるべき筋合いだ、私はそう思っている。そうでなければ意味がない。それなら、関係各省、いつだって全部呼ばなければならない。総理府は要らない。だから、そういう意味では、ある程度はお答えをいただかないと困る、こう思います。そこのところはいいですか。そこは所管が違うんだというならば、全部呼んであらためて質問し直しますよ。
  119. 栗山廉平

    栗山政府委員 連絡をしました範囲でできるだけお答えさしていただきますけれども、ほんとうの詳しいことになりますと、あるいはどうも至らない点がありますことを御承知おき願いたいと思います。
  120. 大出俊

    ○大出委員 ほんとうの詳しいことと言ったって、私だって外務省の役人じゃないですから、それはそこのところはあなたの責任で答えてもらわぬと、それならあさってでもまたあらためてみんな来てもらってやり直す。そういうことで、うっかりこの法律案でも通らぬことには、私は袋だたきになってしまう。ことに、私は事の性格上、そこまで親切に論議しておくべきだ、将来裁判の問題さえ残っておるわけですから、こう思っているのです。  そこで、しかたがありません、簡単なお答えをいただければそれでいいんですが、やはり順序として聞かないわけにいかないので質問いたしますが、この中国の汪精衛政権等の時代、これは治外法権という形がとられていたのかどうかという点てす。お答えをいただきたい。——これは日本の法律による財産を持っていた、こうなった場合と、日本の法律によらないという場合とは、政府責任が違うのです。そうでしょう。治外法権で日本の法律に基づいて財産を持っていたことになる。だとすれば、それなりの政府の責任と、そうでなくて相手国の法律による場合の政府の責任と違う。だから、そういう意味で御質問を申し上げているわけなんですよ。中国の場合は、中国からお引き揚げになった方々はおわかりなんでしょうが、治外法権になっていたんですよ。そうだとすれば、その意味における政府の責任というものがなければならぬ、こう考えているわけです。だから、あなたは審議会の事務局なんですから、審議会の中の論議でもけっこうですから、お答えをいただきたい。
  121. 栗山廉平

    栗山政府委員 審議会論議におきましては、いま大出先生のおっしゃいましたような点につきまして、実は議論はなかったように思っております。
  122. 大出俊

    ○大出委員 そんなことはありません。私のほうは、ちゃんとこの論議をして、代表者が審議会に出席をしておったのですから、内閣委員会におられた村山さんが出ておられたのですから、ちゃんと論議をしていって御発言をしていただいておりますので、それは言っているはずです。しかし、私はどういう論議の結論になったか承っておりませんので、この際承りたいと申し上げておるのです。
  123. 栗山廉平

    栗山政府委員 確かに村山先生からお話が出たことは記憶いたしておりまするが、その論議はたしかなかったように思います。お話が出たことは事実でございます。
  124. 大出俊

    ○大出委員 たとえば横浜正金銀行だとかあるいはこれに類する銀行が、中国にも満州にもあった。ここに預金をしている人、あるいは財産委託をしておる人、いろいろあった。この財産を処分して売っているのですね。そうすると、満州国が治外法権があったんだということになるとすれば、そういう例から見たって、これは明確に日本政府に責任がある、こういうことになる。だから、その点について、これは将来の裁判との関係もありまして、そういう点にこの委員会は触れていなかったということになると、将来物的証拠だ、資料だなどというときに困りますからね。だから私は表に出しているのです。あとで気がついたらお答えください、そういうことになっておったわけですから。  それから朝鮮、韓国、朝鮮民主主義人民共和国、これは例の椎名さんが、考慮したかしないかで、頭のこの辺に考えていたんだというわけですね。考えていたけれども言わなかったんだ、こういう珍妙な答弁をされておりますね。この関係わかっている範囲で、ひとつどういうふうな法的な事情になっているのか、お答えいただきたい。
  125. 栗山廉平

    栗山政府委員 朝鮮半島の関係でございますが、南鮮におきましては、御承知のように、請求権の処理の問題というものは、特別取りきめの主題として平和条約の中に書かれておりますけれども、例の御承知のような軍令第三十三号というもので、そこに進駐した米軍の司令官の命令によりまして、日本人の財産をそこにできた新しい政権に移すという措置がとられておりまして、結果におきましては、双方の請求権の話し合いということにはならなくて、御承知のとおり、片方だけの請求権の協定になったわけでございまするが、その際に有償、無償の例の協定を結ぶに際しては、そのことを念頭において結んだということを外務大臣は申されておるのだと思います。それから北朝鮮の関係につきましては、まだ特別の取りきめがなされておりませんので、法的地位はそのままで、確定しておらないというのが現状でございます。
  126. 大出俊

    ○大出委員 日韓のときの特別委員会の中身を蒸し返す気はないですけれども、先ほどの行政府としての見解ということを何回かお話になりましたから、そこで聞きますけれども、念頭において韓国との間で取りきめたんだという日韓条約のときの筋道からいきますと、この点は行政府としては、責任の所在をどういうふうにお考えになっておりますか。
  127. 栗山廉平

    栗山政府委員 この点につきましては、先ほどの平和条約第四条の(b)項によりまして、ただいま申しましたような占領軍の政府によって行なわれた財産処理の効力を承認するという条文でなっておるわけでございまするが、この承認するという意味は、外交保護権を放棄する、つまり外交的に日本国政府として異議をさしはさまないという意味政府は解釈をいたしておるのでございまして、その点に対しましては、つまりサンフラスシスコ平和条約の先ほどからの十四条等におきまするその処分の権利を有することを認めるというのと同じ意味の、外交保護権の放棄であるという解釈で一貫しておるわけでございます。
  128. 大出俊

    ○大出委員 いま私が未解決国との関係その他を含めて質問をいたしているわけでありますけれども、満州、中国、朝鮮、台湾、ここから引き揚げてきた方々のパーセンテージは、大体全体のどのくらいあるかということはおわかりでしょう。
  129. 実本博次

    ○実本政府委員 四十二年一月一日現在の数字で概数で申し上げますが、ソ連からの引き揚げ者につきましては四十七万二千九百、満州が百四万五千五百人、あと大連でございますが、二十二万五千九百人でございます。
  130. 大出俊

    ○大出委員 関東州という意味ですな。
  131. 実本博次

    ○実本政府委員 さようでございます。それから北鮮が三十二万二千五百でございます。それからこれには中華民国となっておりますから当時の中国だろうと思いますが、これが百五十三万四千七百。ただし、この中に軍人、軍属の数字を含んでおりますので、それ以外の一般邦人だけの分をもう一度地域別に申し上げますと、ソ連が一万九千百人、満州が百万三千六百人、大連が二十一万五千人でございます。それから北鮮が二十九万七千百、中華民国が四十九万三百でございます。
  132. 大出俊

    ○大出委員 それから枢軸国、あるいは小笠原、南洋群島、こっちはどうなりますか。
  133. 実本博次

    ○実本政府委員 いまこの手持ちの資料では、ちょっと枢軸国系統から来ました者の集計がしてありませんので、あとからお答え申し上げたいと思います。  それから本土隣接諸島と琉球、これは邦人だけ申し上げますと、本土隣接諸島というので二千三百八十二人、琉球で一万二千五十二人、こういうふうな数字になっております。
  134. 大出俊

    ○大出委員 どうですか。引揚援護局もあったわけですから、記録がないはずはないのでありまして、先ほどのわかりませんというお話のままではまことに困りますので、次の機会までに内訳等の資料をいただけませんか。
  135. 実本博次

    ○実本政府委員 お求めの資料は、いま申し上げましたほかに、私がここで手持ちがないと申し上げました枢軸国の分だけでございます。それはあとで差し上げます。
  136. 大出俊

    ○大出委員 ここでひとつ調査室長さんに御確認いただきたいのですが、先ほど橋口さんの質問に対してお答えになったカナダ裁判の及ぶ影響というものをサンフランシスコ平和条約十四条関係でいくと、全体の五%くらいなんだ、こういうお話がございましたが、こまかく言えば、十四条(a)項型の二国間条約もあるわけでありますから、それだけ見ても、私は少し御答弁が当たっていないという気がするわけでありますが、さらにこれだけ分布がたくさん広がっておりますけれども、いずれにしても全体に影響がある、裁判の判決いかんによってはこういうことになると私は思っておりますけれども、そこのところをもう一ぺん、これは記録に残りますから、お答えをいただきたい。
  137. 栗山廉平

    栗山政府委員 仰せのごとく、平和条約、つまりサンフランシスコの多国間平和条約、それと同様のビルマ、インドネシアの二国間平和条約が当然入るわけであります。  なお、インドの場合は、先生御承知のように、インドは返還するということになってございますので、これは平和条約がございましても除かれるということでございまして、私の申し上げましたのは、そういう二国間あるいは多数国間の平和条約の関係等で法的な地位の固まっておる財産に影響があるということを申し上げたわけでございます。
  138. 大出俊

    ○大出委員 いまのインドでございますが、この答申の六ページの(ホ)というところに、インド関係というのがございますね。ここで「日本国とインドとの間の平和条約第四条の規定により、もとの権利者に返還されることになっており、」こうなっていますね。これは現在はどうなっていますか。
  139. 栗山廉平

    栗山政府委員 インド政府のほうでは全部返す準備をいたしておるのでございますけれども、所有等のまだはっきりしていないような財産があるそうでございまして、そういうものにつきましてはまだ現実の返還はなされておらない。そういうものでまだ向こうの手に残っておるというのが、多少あるそうでございます。
  140. 大出俊

    ○大出委員 私、さっき台湾の例をあげましたが、この種のことは、やはり責任を持って進めていただかないと困ると思うのです。私、口が悪いほうだから、怠慢だとつい言いましたが、そこらのところをどういうふうに進めるおつもりですか。だって、これはずいぶん期間がたっているわけでありますから……。
  141. 栗山廉平

    栗山政府委員 先ほどのおことばを返すようなかっこうになるかもしれませんので恐縮でございますが、現実には外務省及び大蔵省のほうの財産管理のところが所管でございまして、そこが具体的にずっとやっておられましたので、われわれのほうとしては荒っぽい点だけをお聞きしまして、ほんとうの具体的な点はまだお聞きしておらないような状況でございます。
  142. 大出俊

    ○大出委員 大体満州、中国、朝鮮、台湾というところで八〇%から八五%ぐらいあるんですね。大体そのぐらいになるんじゃないかと思いますがね。そういうことでしょうな。——いま数字はお答えをいただきましたが、わかってないところがあるもんだから見当がはっきりしませんので、けじめをつけておきたいと思うのです。——それじゃよろしゅうございますから、あとで整理をされるときに、先ほどおっしゃった枢軸国の関係もございますから、そのときにその見当を載せていただいて、そういう書類にしていただきたいと思います。  そこで、またけじめなんですけれども、くどいようですけれども、戦争犠牲というものについてこれからいろいろ検討をされる、あるいはいろいろな場面で指摘が行なわれ、なるほどというような問題が出てくる。そういうものについてはそれなりの御検討をいただくということに先ほどなったように思うのでありますけれども、そこで一つ承っておきたいと思いますが、原爆被災者の援護という問題に関しまして、いま各方面でいろいろ問題が出ているのでありますけれども、厚生省の方もお見えになっているはずでなんでありますが、十月までに調査をするということになっておる。この調査はどんなふうなぐあいになっておりますか。調査対象並びに調査方法、それからいつごろまでというのをもう一ぺんひとつ言っていただきたいのですが……。
  143. 実本博次

    ○実本政府委員 原爆被爆者の実態調査につきましては、公衆衛生局のほうから詳しくお答え申し上げますが、原爆の調査結果をまとめまして最終的にまとめ上がってきますのが、ことしの秋十月ごろというふうにきめておるわけでございます。
  144. 大出俊

    ○大出委員 その前に本年の三月と六月に、この関係の日本被団協の方の請願に際しまして、佐藤総理以下政府の方々が実態調査の結果を待って施策を検討すること、それからもう一つ、戦後処理在外財産補償をもって打ち切り、被爆者の生活の問題は社会保障のワクで考える、こう答えているというのでありますが、この点について、現在のお考えを念のために聞いておきたい。
  145. 実本博次

    ○実本政府委員 原爆被爆者の援護対策につきましては、先生御承知のように、昭和三十二年に現在の被爆者の医療を中心といたしました原爆被爆者医療法というのができております。すでに十年近くその面からの援護をやっておるわけでございますが、その他の生活上の不便というものについての援護をやったらどうかという話が大きく持ち上がっておるわけでございまして、これにつきましては、先ほど申し上げましたような実態調査というものを行ないまして、その調査の結果出てまいりました被爆者特有のニードをよく分析いたしまして、その上でもってそれに対する施策をきめていったらどうか、こういうふうなかまえ方をいたしておるわけでございます。
  146. 大出俊

    ○大出委員 そこでちょっと承りたいのですけれども、これは前置きでございますが、六月二十七日に在外財産補償大綱の決定が行なわれましたときに、与党の福田幹事長さんのほうでは、戦後処理は終わった、なお今後問題があれば社会保障のワクで考える、こう言っておるわけです。それからそこにお見えになる塚原長官が、原爆被爆者の補償要求には応じない、こういうふうにおっしゃっておるわけでございます。これが実は今日だいぶ物議をかもしておりまして、坊厚生大臣は、そんなことを言った覚えはないなんということを社労でお答えになったり、いろんなことになっております。いずれにしても、必要なものは必要な手当てをしていただきたい。こういうたてまえで、いま実態調査とおっしゃったこと、これは三千八百万の予算を持っておるわけですけれども、基本調査、健康調査、生活調査、こういうことになっておるわけです。昭和四十年十一月に実施したのですけれども、それは結果的には一体どういうことになりましたか。
  147. 実本博次

    ○実本政府委員 本件主管の公衆衛生局長をいま呼んでおりますので、私から簡単にお答え申し上げますと、実体調査を始めましたのは四十年でございますが、ことしの四十二年の二月四日にこの中間報告を一応行なっております。この中間報告につきましては、すでに新聞紙上その他で発表いたしておるわけでございますが、その中間報告によりますと、被爆者手帳を持っております人たち二十五万三千人について、いろいろ各方面からの調査をいたしておるわけでございまして、その中身につきましては、たとえば被爆者の地域的な分布とか、あるいは性別、年齢別の構造とか、それから就業状況、それから職場におきますいろいろな所遇上の問題、それから配偶者関係あるいは結婚についての差別といったような項目で中間報告は行なわれておるわけであります。
  148. 大出俊

    ○大出委員 それについて承りたいのですが、三十九年の広島市の調査がございますね。これによりますと、市内失対労務者中の被爆者が四二%、その四二%のうち女性が五二%を占めていますね。それから四十年の発表によりますと、被爆者四五%となっていますね。その年齢構成は、五十五歳から五十九歳が一番多い。そのうち、ひとり暮らしのものが五二・八%、こういうことになっているのです。大体そういうことじゃないですか。——私がいま承りたいのは、十月まで十月までとおっしゃらぬでも、いまおっしゃる中間報告あるいは広島市の調査等々あわせて見ると、現状は大体どうなっているかということは、おわかりではないかと思っているわけです。最近では、各種のガンだの、肝臓疾患だの、循環器の疾患だの、いろいろなことになっておったり、これは無力症候群というのですか、いわゆる原爆ぶらぶら病といっておりますもの、あるいは悪性遺伝、いろいろあるわけであります。それから生活実態というのは、いま申し上げたようなこと。だとすると、十月、十月としきりに言っていらっしゃるが、基本的なものの考え方というものはもう出てきていいのじゃないか、こう私は実は思っておる。大体そこのところを担当の局長さんのほうで、現状をどういうふうにお考えになっているかという点を聞きたい、これが私の質問している中心です。
  149. 実本博次

    ○実本政府委員 いま主管の公衆衛生局長を呼んでおりますので、ちょっとお待ちいただきたいと思います。
  150. 大出俊

    ○大出委員 これはたいへん恐縮ですが、私は原爆援護法との関係があるというので申し上げておりますので、私の責任ではないので、ひとつ御了解をいただきたいのです。あなたに聞いてはちょっと恐縮だけれども、私はここで、さっき冒頭に申しましたように、引き揚げ者の皆さんの在外財産に関する法律を通すならば、当面いろいろな問題になってきているこの種のことについても、あわせて一つのけじめがほしい、こう思っておる。  そこで、被爆者の生活状況の平均値を非被爆者、つまり被爆をされなかった方の平均値と比べてみてなどというようなことをおやりになる、これはこそくだと思う。だから、もうここまでくればおわかりなんだから——参議院で一つの決議も行なわれております。さっき読み上げましたが、そうだとすれば、このあたりでもうちょっと前向きに、皆さんのほうでこうしたい、ああしたいということが出てきてもしかるべきではないか、せっかくこの種の法律を本委員会が通そうというについては、せめてそれくらいの手当てが必要だ、こう思いますので、それを聞きたいわけです。
  151. 実本博次

    ○実本政府委員 これは、私、主管でございませんのではっきり申し上げかねるところでございますが、先生のお話のように、原爆被爆者に対します対策といたしましては、医療が何と申しましてもその中心でございますが、それ以外に、やはり先ほど読み上げましたような実態調査の中間報告の中に散見いたしますように、就業しておられる方でも、職場でノイローゼが出てきたり、あるいは非常な神経性の欠陥、日常生活に神経的な疾患があったり、それから配偶者関係で非常にうまくいかないというようなお困りの面が出てきておるわけでございます。ですから、そういうものをよく掘り下げてみまして、そういう人たちに一体何をして差し上げたらいいかということは、ただ単に金銭給付とかなんとかいう問題ではなくて、やはり現物給付の場合もあるでしょうし、そういったようなものを、何を求めておられるかというこの現状を深く掘り下げまして、それにマッチした施策をやっていくべきじゃないか、こういうふうに考えておりますので、何といいましてもその実態調査の結果を待ちまして、それを十分分析いたしまして施策を考えていくべきじゃないか、こういうふうに、所管外ではございますが考えておるわけでございます。
  152. 大出俊

    ○大出委員 いまの御答弁は、多少前向きな受け取り方ができるように私思うのであります。つまり社会労働委員会で六月に論議されている議事録等を私読んでみましたが、被爆者に困っている人が多いというのなら、生活保護の適用を受ければいいじゃないかという意味の御答弁。これではまるっきりほうり出してしまうようなものですから、それでは困る。やはり特殊な立場に立たされて、特殊な被害を受けられたことに間違いない。在外財産補償を要求される方の立場もよくわかりますが、質的には問題にならぬほど、実はこの原爆被爆者の方々というのは——これは日本だけのことですから、たいへんな状態に置かれているわけでありますから、医療二法というものが出ているのは、百も承知です。承知ですが、それでは足りない。医療二法はあたりまえのことです。あれはもうおそい。だから、そうだとすれば、国家補償の責任というようなものは、もっと質的に強いものがあっていい、こういうふうに私は考えるわけです。だから、そういう意味でひとつこれは特に前向きに御検討をいただいて、そしてしかも一日も早くこれをやる必要がどうしてもある、こういうふうに私は思っているわけです。だから、一番大きな、だれが考えても被害を受けた方々なんですから、これは本人が原爆の被災を受けただけではない、財産から何からみんななくなってしまったわけですから——私も兵隊の時代でしたから、あの直後すぐ広島に行ってみましたけれども、たいへんなんです。だから、そういう点に関してものを言えば、世間一般の方々が、こういう法律が相当な予算をかけて通っていく。だとすれば、この原爆被爆者の方々はどうするのだという世論が、一面構成されることも無理からぬところです。だとすれば、これは政府が受けて立つべきである。こういう観点で前向きにお進めをいただきたい。取り扱い等は、おそらく附帯決議だ云々だという問題がございましょうが、これは政治的な場所で相談をさせていただくことにいたしますけれども、ぜひひとつそういうことにしていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、実は私どもの党で、この問題については、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律案の形で議員提案の形で出ているわけでありまして、この中で原子爆弾被爆者医療審議会の名称を変えて、援護措置をやるのだというふうに変えて、そして権限というふうなものも改めて、委員構成も考えて、ここで、いまおっしゃっている一体何をしてあげればいいのかというところ等々についても、御検討をいただきたいという主張を私どもとしてきているわけです。だから、その点を、この法律を通す通さぬの問題ではなくて、厚生省が憲法に定められた行政機関としての責任上どうするか、この趣旨をお受け取りになるかどうかという点だけは聞いておきたいのです。
  153. 実本博次

    ○実本政府委員 私から答弁すべきかどうかわかりませんが、とにかく厚生省といたしまして、いまの原爆被爆者に対します対策の取り組み方というものは、先ほどから申し上げておりますように、この秋にでき上がります原爆被爆者の実態調査の結果を待ちまして、それから先ほど私が自分の考え方としてちょっと申し上げましたような方法なり、その他何がそういった人たちのニードであるかということをよく分析いたしました上で、そういうニードに即応する施策を考えていかなければならない。これにつきましては、よくもう二十年もたっていまごろ何をしているんだというようなおしかりもございますけれども、ここまできまして半年、一年ということで拙速の施策を考えるよりは、じっくりとそのニードを分析した上での施策がいいのではないかというふうな考え方で進んでいくべきじゃないかというふうに、私個人的に考えておる次第でございます。なお、大臣も参議院の社会労働委員会なり予算委員会におきましても、そういうふうな実態調査の結果を待って被爆者対策の問題についてはじっくりと検討する、こういうふうに申されておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  154. 大出俊

    ○大出委員 ぜひひとつ前向きにお考えをいただきたい。まさにいまごろ何しているのだということになるわけでありますから、お願いをしたいと思うわけであります。  それから、これは一体どちらの所管になりますか、先ほど私が冒頭にあげた防空法、それに従っての防空従事者で、それに従っての防空従事者扶助令、こういうものがございまして、たしか五百円から千五百円ぐらいの金でありました、これが終戦の半年ぐらい前から払われていない。こういう問題等がある。私は、参議院の附帯決議の第二項のほうに、このことが含まれているように思う。したがって、これについてもあわせてどうお考えなのかを伺いたい。所管が違えばまた御質問いたしますが……。
  155. 実本博次

    ○実本政府委員 五十一回通常国会におきます防空従事者こ関します附帯決議のうち、原爆被曝地におきまして死亡いたしました長崎医科大学の学生の問題につきましては、これは四十二年度におきまして、文部省から行政措置としてその遺族に特別給付金支給するというふうな措置がすでに行なわれておりますが、原爆被爆地以外の一般の防空従事者一般の問題といたしましていま先生がお尋ねなのだろうと思いますが、この件につきましては、先生いまお示しのように、この防空法の所管そのものが、内務省が解体いたしました現在、どこが所管しているかということがはっきりいたしませんで、総理府等においてその所管の問題について調査いたしてもらっておりますが、なお私のほうだけでいままでこの問題についていろいろ調べてみましたところ、防空法に基づきまして防空法従事者命令により防空業務でなくなったり、けがした防空監視隊員とか、あるいは警防団員とか、そういった人々に対しましては、当時の防空法の関係政令によりまして防空従事者扶助令という政令が出ておりまして、その扶助令の中では一時金の支給がそういう犠牲者に対して行なわれるようになっておりまして、これが二十一年の半ばごろまで施行されたわけでございますが、その後は所管官庁もわからずにそのままになってしまっている。したがいまして、防空法の従事者の命令によりまして犠牲を受けられた方々の中では、かなり早い終戦前、三、四年の間にそういう犠牲になられた方につきましては、防空従事者扶助令によって、当時一時金といたしましてたしか千五百円から五百円の間に、いろいろ傷害程度あるいはそれ以外の生活状態とかいうようなものを勘案いたしまして支給されておるわけでございますが、ただ終戦まぎわになくなられた方々については、もう請求するもしないも、役所自身が焼けておりますし、何にもできなくなっておりますから、そういう意味でそのままになっているというふうなことで推移しておりまして、これはどこでやるかは別問題といたしまして、そういった人たちに対しまして処遇は何とかしたらいいじゃないかというふうな御要望が、非常に強いのでございます。
  156. 大出俊

    ○大出委員 これなどは、明確に社会保償ではなくて、戦後処理ができていないことだと私は思う。これはそういうことで終わったと言わず進めていただきたいと私は思う。  そこで、私はどうも審議会の法的補償義務はないというのが何としても納得できないので、これを少し行政府皆さん方とやりたいところなんですが、時間がございませんから、先ほど裁判所が最終的にきめるんだということを申されておりますので、そのほうに譲っておきます。  そこで、この中身について幾つか承りたいのでありますけれども、まず一つはこの答申との関係で、財産形成力がない年齢の方々について、どういう理論根拠をお持ちの上で支給対象にされたかという点を詳細に明らかにしていただきたいのです。この答申を読み上げますが、この中で「一定年齢に達していなかった者および在外居住一定年数に達していなかった者は除外するとともに、」こうなっているわけですね。そうすると、これは年齢が一つ問題になるわけですね。旧来からの論拠の中にございますのは、たとえば満豪開拓義勇団なんというのは、十三歳という線がございますね。だから、そういうところからいけば、十三歳というのが一つの線の引きどころになると思うのです。にもかかわらず、一歳だの〇・五歳だの、そういう年があるかどうかわかりませんが、いろいろな話が出てくる。あるいは零歳でもいいのじゃないかということなのでありますが、そこらのところの根拠、これは世間一般の皆さん方の受け取り方もございますから、私は答申趣旨に沿わないものというのは、皆さんの先ほど来の私に対するお答えからすれば、とるべき手段でない。なぜならば、何か私が質問すると、すべてあなたのほうは答申の解釈でございますというふうに答えておるわけです。どうもとんでもないところだけ答申の解釈でないという、これは特例でもおつくりになるのなら別ですけれども、どうせそこまでいくのなら、答申どおりやったらどうなんですか。なぜだといえば、答申に書いてある、こう言えばいい。ここだけ特例をおつくりになったような気がするのだけれども、どうですか。
  157. 栗山廉平

    栗山政府委員 ただいま御指摘の答申は、一番最後のところでございますが、いまお読み上げになられましたもうちょっと前から読みますが、「それらの者の国外における財産形成や生活利益の状況を考慮すべきことは当然であり、そのための実際上の基準としては、引揚者の当時の年齢および在外居住年数に配慮」していたせ、そうしていまおっしゃったような一定年齢に達していなかった者、それから一定在外年数に達していなかった者は除外するということを言っておるわけであります。これが措置処理方針の(1)のところであります。それから(2)のところで「財産の形成が主として世帯単位としてなされている実情等から考えると、当時生計を一にしていた世帯支給額算定単位とすることが合理的であると考えられるので、この点についても、できるだけ配慮すべきである。」このようなことが書いてあるわけでございます。そこで、財産形成や生活利益の状況等を考慮すべしというわけでございまして、財産形成のほうが先になっておりまするが、この財産形成という点を非常に強く見ますと、何歳からというのがいいのか、これは非常に認定のむずかしい問題で、一定年齢というのは何歳ということで考えたらいいのかという非常にむずかしい議論もございまするけれども、何らかの年数で切るというこの答申のような考え方が出てくるのだろうと思います。しかし、さらに生活利益というような点を、これも相当強く考えまするというと、また多少違った点が出てくるのではないか。それになお加えまして、世帯単位としてというような点も考慮いたしますると、年少者のほうには少なくとも何らかのことをしてやったほうがいいのではないかという考え方に相なりまして、答申の大まかな線には沿いまして、さらにそれにいま言ったような点をつけ加えたというふうに、事務的には解釈いたしておりますわけでございます。
  158. 大出俊

    ○大出委員 何歳からになっておるのですか。何歳から支給するのですか。
  159. 栗山廉平

    栗山政府委員 この法律の案におきましては、ゼロ歳からでございます。ただし、在外居住年数が一年ということになってございますから、実質におきましては一歳未満は落ちる、こういうことになります。
  160. 大出俊

    ○大出委員 どういうわけでつけ加えたのですか、もう一ぺんはっきりしてください。
  161. 栗山廉平

    栗山政府委員 答申の中に書いてあります財産形成や生活利益の状況という点のうちの生活利益というのを相当重く見るということと、もう一つは、世帯単位としてなされておる実情から、なるべくその世帯単位として考えることが合理的だという、その次の(2)の点を考慮いたしましてつけ加えさせていただいた、こういうことでございます。
  162. 大出俊

    ○大出委員 どうもとんでもないことだけつけ加えてしまっているのですが、その生活利益というのは、具体的にいうと何ですか。
  163. 栗山廉平

    栗山政府委員 ここでは簡単に生活利益ということばを使ってございますが、先生お読みになられましたように、前からいろいろ詳しいことが書いてありますけれども、要するに、ただ単に物的な財産を失ったという、そういうものを持っておったというだけではなくて、そこにいわば、ことばがあれでございますが、根をはやして生活をしておられたということに伴って、いろいろの、たとえばその社会に通用する信用、人間としての信用が非常にできてきた、あるいはそこに非常に安住できるという、長年住んでおりますと、そういうような関係が出てくるとか、あるいはまた、その社会的な地位がその社会において出てきておるとか、さらにまたそういう親の子供さんであるとか、そういう住むことによっていろいろ出てくる有形無形のプラスといいますか、こういうようなものと理解いたしております。
  164. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、おぎゃあと生まれたゼロ歳の方が根をはやしてしまったり、信用を得てしまったり、その人の子供というのは生活利益にどういう関係があるかわかりませんが、そういうことになるのですか。
  165. 栗山廉平

    栗山政府委員 そういういわば根をはやすといいますか、そういうような生活の根拠をだんだんかまえられるというのを、一年というような年数考えたわけでございます。
  166. 大出俊

    ○大出委員 根のはえかかりくらいのところで、はえちゃいないのですよ。一年というのは、西も東もわからない。だから、理屈はないんだと言えばいいじゃないですか。理屈があるなら、国民の前に明確にしておかなければいかぬ。なければないでいいのです。
  167. 栗山廉平

    栗山政府委員 やはり生活権的なものがあったというふうに考えさせていただいております。
  168. 大出俊

    ○大出委員 だいぶどうも苦しいところになってきましたね。それは、だからもともと法的な補償義務があるということにして、世帯単位なら世帯単位でいい、やはり筋道を通して。これは私は絶対額の問題とからんでおると思うのです。その中身というのは、一つ一つ聞いていったって切りがないでしょう。それなら、何となくそういうことになってしまったというにすぎない。だから、そうだとすれば、そのような持っていき方しかないのです。そうなれば、わかっておりながら質問しているということになるんだ。答申が出るに至った論拠があるわけですから、私のほうから出ている委員の方々に承ってみたら、つまり財産形成の限界というのは年齢的にどうなんだといったら、満蒙開拓義勇団の方々の十三歳というのがあって、これは一つの根拠になるだろうというような論議がされておる。すると、答申は何歳というふうにお書きになっていないが、論議の過程では一つの線が出ていたということなんですね。だとすると、答申に忠実にというふうにずっとお答えになっている立場からすれば、その論議の過程を尊重すべきことになる。そうでなくて出されたとすれば、これは理由はないといわなければならぬ。にもかかわらず、根がはえている、こう言うんだけれども、だからこれは筋が通らなくなってきている。しかし、そう言うてみたところで、あなたの責任でもないと思いますから、あなたに無理言うてもしかたがないという気がしますけれども……。  そこでこの金額でございますけれども、この提案理由説明の中の第二ですね。五十歳以上の者に十六万円とか、三十五歳以上五十歳未満の方に十万円とか、二十五歳以上三十五歳未満の方に五万円、二十歳以上二十五歳未満の方に三万円、二十歳未満の方に二万円、この額のよってきたる根拠は何ですか。
  169. 栗山廉平

    栗山政府委員 お答え申し上げます。この総額につきましては千九百二十五億でございますが、これはいろいろのほかの措置との均衡、それから世帯当たりの単位の問題等を考えましてこういう額が出てきたわけでございまするけれども、この答申の中に特に中年以上を重んずるようにということが書いてあるわけでございます。総理府のほうといたしましては、中年というのは一体何歳かという問題につきましていろいろ検討いたしました結果、四十歳という説もございましたけれども、まあ終戦当時三十五歳というところぐらいからが中年と考えていいのではなかろうか。そこで三十五歳以上のほうになるべく重点を置く。なお、その中でさらに高齢者、つまり五十歳以上と考えたわけでございまするが、これに特にさらにまた重きを置いていくというような考えから、大体平均いたしますと一人五万ちょっとぐらいなかっこうになるのでございますが、二十五歳から三十五歳、ちょうど中心をなすようなところにその平均を持ってまいりまして、それから三十五歳以上を十万、それからさらにいま申しましたような趣旨で特に高齢者に重きを置きまして、そこを十六万、それから二十歳以下の方にはそれぞれ減じておって、つまり上のほうに高く持っていった、こういうような結果、この案にありますような額に落ちついたわけであります。御了承願います。
  170. 大出俊

    ○大出委員 中年三十五歳、三十五歳の方はここにはいないかもしれませんが、みんなそれ以上でしょうけれども、どうも三十五歳が中年かどうかという、何かよりどころでもあるのですか。それから五十歳以上が高年齢者というのですけれども、世の中の製造業の九九%は五十五歳が定年ですから、そうすると、五十歳というのがはたして高齢者かどうかということ、それからまん中を二十五歳にしたのだという、その上、下、いかなる比率で配分したかということ、全く腰だめで根拠がないというのじゃ困るので、何かそこに一定率か何か排けるとか、何かあったのじゃないですか。何もないのですか。
  171. 栗山廉平

    栗山政府委員 三十五歳以上というようなことの根拠でございますが、これはいま例の中高年齢層のいろいろ就職問題がございます。あれは大体三十五歳からというふうに労働省のほうでなっておるようでございまして、それを右へならえさしていただきました。それから五十歳以上というのは、確かに仰せのごとく若いように思えるのでございますが、とにかく終戦後二十年以上経過しておるという現実も考えていかなければいけないということでございまして、当時五十歳の方はもう七十をこえておられるわけでございます。というような点から、五十歳ということにさしていただいたわけでございます。なお、その下のランクのほうは、やはり成年、未成年というようなことから切るべきではなかろうかということで、こういうような多少腰だめも仰せのごとく入てっおりますが、大体そういうような考え方から出た結果でございます。
  172. 大出俊

    ○大出委員 終戦時まで引き続き八年、これは八年という基準答申にございましたか。
  173. 栗山廉平

    栗山政府委員 御承知のように、答申には一定年数とか一定年齢とかいうような抽象的なことしか出ておりませんので、八年というような数字はございませんが、この見方は、答申の一番最後のページでございますが、(1)のところに「引揚者の当時の年齢および在外居住年数に配慮する」、つまり在外居住年数に配慮するということは、短い居住年数の方は除外する。それは出ております。長い方にはやはり重きを置いていくということが裏にあるというふうな解釈をいたしたわけでございます。
  174. 大出俊

    ○大出委員 ただやはり何か説明がないと、国民一般の皆さんのお金ですから、そういう意味で困ると思って聞いているのです。やむを得ず腰だめになるところがあっても、性格上これはしかたがないのじゃないかと思いますけれども、八年という根拠が何かなければならないという気がするのですが、何かございませんか。
  175. 栗山廉平

    栗山政府委員 昭和十二年の支那事変が勃発したところを境に考えておるわけでございます。
  176. 大出俊

    ○大出委員 これらの額に一万円を加算した額というのは、どういうわけですか、一万円の根拠。
  177. 栗山廉平

    栗山政府委員 在外居住年数に配慮することとして、先ほど申しましたような答申がございます。それを受けまして、いま申し上げましたように、八年以上の方に、つまり長くおられた方に何らかの特別な措置をいたそうということで、八年以上の方に一万円をプラスしていこうということでございます。本来ならば、あるいは在外居住年数の長さにいろいろ応じまして、八年とか十年とか二十年とかいう長さに応じていろいろそれに差をつけるというのがあるいはほんとうかも存じませんけれども、これは事務上なかなかむずかしいのではないかという点を考えまして、一律にさしていただいたようなわけでございます。
  178. 大出俊

    ○大出委員 これも実は理屈を申し上げれば、長くいた方が最重点的に考えられるというのが私は筋だと思うのですがね。ただ、一万円をまさか五千円に切ったのじゃかっこうがつかぬということ、二万円にするには金が足らぬということが、いろいろあるだろうと思うのですがね、ここまでくるについては。ただ、あまりにも腰だめみたいな感じがするので気になるのです。それからさきほど細田さんから出たような気がするのですけれども、七割というものは、他の法律に右へならえされたようなところがあるのですか。
  179. 栗山廉平

    栗山政府委員 われわれの見ましたところでは、七割というような前例は見当りません。御承知のように、援護的な恩給とか援護金とか年金でございますが、そういうものにつきましては、だんなさんがなくなられた場合には、遺族には五割ということがございます。そこで、大体の荒筋の考え方といたしましては、これは先ほど申し上げましたように、答申にも書いてございますように、この前の昭和三十二年の給付金と違って、これは立ち上がり資金あるいは援護的な資金ではない。やはり在外財産あるいはそこに住んでおられた生活利益というようなものを根こそぎ失ったということを念頭に置いた特別な措置である、こういうことになっております。ただし、先ほどからのお話のごとく、義義的な財産補償という実証拠を持ってしてやるという、そういうきちっとしたものではない。もしも在外の財産そのものをということであれば、あるいは一〇〇%かもしれませんが、ちょうどさっきの援護的なものとの中間くらいのところに考えられるのではなかろうかというふうに思われまするが、大体そんなような考えで七割というふうにいたしたわけでございます。
  180. 大出俊

    ○大出委員 どうも御答弁を聞いておりますと、深く突っ込んでみてもどうも意味がないような気がするわけでございまして、まあ千九百二十五億。二千億円というちょっと大きいから、感じとしては二千億をちょっと切っておいたほうが何か少し感じがいいという、そんな感じの頭がきまって、それを割り振ってみたらこんなことになったというような気がするのです。どうも答申趣旨その他からいって、財産形成の年齢その他どうもなかなか納得できない点もございますが、かといって、どうもここまできてしまったものをやむを得ぬといえばやむを得ぬことになるわけですが、しかし、私は考え方としてどうしてもやはり財産なのですから、しかも国が、世界人権宣言なんかで明らかになっている財産権あるいは憲法二十九条、こういうものを踏まえたときに、どうもその焦点からはずそうはずそうという——世界人権宣言十七条、「何人も、その財産を専断的に奪われることはない。」こうなっておるわけですからね。したがって、そういう点からすると、カナダ判決じゃございませんけれども、私どもは、何としても国に補償責任、補償義務が法的にある、こういうふうにいまでも実は考えているわけです。だから、法的に補償義務があるから、わからぬものはしかたがないにしても、できる限り努力をして、当時の財産評価その他をやって、どんなに骨が折れようともやって、そして国力、国情に応じたという中から見ると、当面これこれしか支出できそうもないということになるとすれば、西ドイツがやっておりますように、長期にわたっていいのでありまして、やはりそういうふうな責任を負い、かつ国民戦争犠牲の平等化というものを前提にしてひとつやってもらうために——ドイツの方々というのは、法律をつくることが好きだからつくったということになるかもしれぬけれども、やはりあそこまできめこまかくいかなければ、国民全体が被害を受けているわけですから、納得し切れない、こういうようなことで、そういうたてまえを私はとるべきだと思う。そうでなくて、何か知らないけれども、法的根拠はないが、しかし何とかしなければならぬという政策できめるということ、こういうことの結果としてこういうことになっているというふうにいまだに思うわけなんです。しかし、とはいいながらも、時間も限られておりますし、本会議もございますから、質問を申し上げれば切りがございませんけれども、念を押しておきたいのは、それだけに、戦争犠牲というものについて、先ほど来申し上げておりますように、戦後処理は終わったなんていうことでなくて、原爆の被災者にいたしましても、あるいは防空法関係にいたしましても、あるいは冒頭に私が幾つかあげた問題にいたしましても、それらの問題を検討する、ひとつこういう方向でお進みいただいて、国民の皆さんの納得のいく形の上で施策が行なわれていくということに考え方を持っていっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  時間の関係等もありますので、以上で終わります。
  181. 關谷勝利

    關谷委員長 次会は、来たる十七日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十二分散会