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1967-06-09 第55回国会 衆議院 内閣委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月九日(金曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 關谷 勝利君    理事 伊能繁次郎君 理事 塚田  徹君    理事 八田 貞義君 理事 細田 吉藏君    理事 大出  俊君 理事 山内  広君    理事 受田 新吉君       荒舩清十郎君    内海 英男君       佐藤 文生君    塩谷 一夫君       菅波  茂君    高橋清一郎君       橋口  隆君    広川シズエ君       藤波 孝生君   三ツ林弥太郎君       武部  文君    浜田 光人君       山本弥之助君   米内山義一郎君       吉田 之久君    伊藤惣助丸君       鈴切 康雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省入国管理         局長      中川  進君         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵大臣官房長 亀徳 正之君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君  委員外出席者         大蔵大臣官房財         務調査官    細見  卓君         大蔵大臣官房財         務調査官    志場喜徳郎君         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 六月九日  委員赤城宗徳君、井村重雄君、稻葉修君及び吉  田之久君辞任につき、その補欠として菅波茂  君、三ツ林弥太郎君、広川シズエ君及び塚本三  郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員菅波茂君、広川シズエ君、三ツ林弥太郎君  及び塚本三郎辞任につき、その補欠として赤  城宗徳君、稻葉修君、井村重雄君及び吉田之久  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一四号)  大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五一号)      ————◇—————
  2. 關谷勝利

    關谷委員長 これより会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 法務省はきょう緊急上程をするというお話で、おまけに本会議までに大蔵省はあげる、こういうことだそうでございます。あげないように質問することは簡単なんですが、したがって、できるだけ簡単に御質問申し上げたいと思うわけでございます。  まず最初に、帰国協定の問題が、だいぶいまいろいろなことで陳情が私どものところへも年じゅうお見えになっております。そもそも、これができたいきさつもございますしするので、その真意のほどを少し伺いたいのです。  中川入管局長が中心におなりになって、とにかく外務省と打ち合わせをされて、協定打ち切り後に北朝鮮配船を認めるという趣旨新聞発表等が出ているのですけれども、どうもわからない点だらけなんです。どういう趣旨なのか、新聞発表だけでなくて、少し詳しく御説明をいただきたい。
  4. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいま新聞によりまして、私が北鮮から万一配船があった場合にはこれを認めるということを述べたというふうに御質問でございますが、これは何らかの誤りだろうと存じます。御承知のように、北鮮帰還協定は本年の十一月十二日をもって一応打ち切られるわけでございますが、その後どういう事態が生じるかということは、まだいわば仮定の段階でございまして、その時分に、たとえば十一月十二日現在におきまして、北鮮帰還を実際希望する人々が何人おられるか、そのときにおける日本北鮮間配船状況はどうであるか、あるいはその船に具体的に何人くらい乗れるであろうかというような、種々の状況を勘案しました上で、その場合に善処すればよい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  5. 大出俊

    大出委員 最近、よく新聞が違っておる、こういうお話が出るのですが、ここに明確に書いてあるのです。讀賣新聞なんですが、そう間違ってないと思うのです。六月六日火曜日の讀賣の二面ですが、「北朝鮮配船認める」「帰還協定打ち切り後」「政府方針」と、こういう見出しです。中を読んでみると、もちろんこれは十一月十二日の協定打ち切り、これは政府方針としては明らかになっておるわけですが、このあとに、「北朝鮮側帰国希望者のため船を出すなら、入港を認める」これが一つ。それから二番目の「協定による申請期限の八月十二日までに帰国を申請した分で、帰国できない者はとくに明年三月末まで協定暫定延長帰国させる、」こうなんです。こういう書き方だと、わからぬのですね。つまり十一月の十二日に打ち切る。したがって、その三カ月前、八月十二日までに申し出があったもの、これは翌年の三月になっても責任を持って協定の継続ができる処理をする。ところで、打ち切り後の場合に、配船があれば入港を認めるというのですから、そうするとこれは、それからいくと、別個なケースに受け取れるわけですね。このあたりがどうもさっぱりわからないわけなんで、そこのところをもう一ぺん言ってください。
  6. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいま申し上げましたごとく、私どもといたしましては、北朝鮮帰国を希望される方は、極力この十一月十二日までに帰っていただきたい、そういう趣旨で、とにかく十一月十二日をもちまして一応この協定を打ち切ることになっているわけでございます。しかしながら、十一月十二日を過ぎて、実際まだ北朝鮮帰りたいという人が出てきた場合、ましてや、ただいま御質問のごとく、その場合に北朝鮮のほうから日本へ船を持ってくるというお話が万一起こりました場合に、どうするかということに関しましては、まだ何ら私ども決定という段階には達しておらないのでございます。
  7. 大出俊

    大出委員 これによりますと、くどいようだけれども、ということは、ここに出たものだから、世の中方々はこれを読んでいるわけでしょう。そうすると、どうもいままでもめてきているし、まだもめるわけだが、これが頭に半分入っているわけだ。そうすると、話してみても話がかみ合わない。したがって、もう一ぺん念を押すんですが、この記事によりますと、「八月十二日までに帰国を申請した分で、帰国できない者はとくに明年三月末まで協定暫定延長帰国させる、という方針を固めた。この方針は五日、木村官房長官中川法務省入管局長が打ち合わせ内定したもので、さらに政府部内の意見を調整し、閣議で正式決定する。」こうなっているのですね。そうしますと、内定をしているわけです、新聞によればですよ。あなたはそこまできめてない、こう言うんだけれども木村長官とあなたの間で相談をして、外務省も入っているかもしれませんけれども内定をした。内定した中の一つがいま申し上げた件なんです。配船があれば認めて帰そうということです。それから、二番目が、暫定延長を含む三月末までのやつですね。そうするとこれは、いまの御答弁でいくと、事務的に残っているのは政府部内の意見調整閣議決定、これが残っているわけです。そうすると、こういうことがあるからいまはそこまでしかお答えにならねのか、それとも、本来何もきめてないのか、そこのところはどうなんですか。
  8. 中川進

    中川(進)政府委員 新聞記事の出所でございますが、これはどこからどういう情報に基づいて書かれたものか、私ども推測もできませんが、真相に関します限りは、ただいま御質問の一番最後の点、すなわち、政府、少なくとも私ども事務レベルにおきましては、十一月十二日後に万一北朝鮮からの配船という事態に遭遇しました場合に、どういう処置をとるかということに関しましては、何ら決定を見ていないというのが真相と了解しております。
  9. 大出俊

    大出委員 もう一つ承りたいのだが、しからば木村長官とあなたは話をしたのですか。
  10. 中川進

    中川(進)政府委員 この日、実は木村長官がNETのテレビインタビューに出られるというので、御質問がございましたから、北朝鮮帰還協定の現状についてお答え申し上げた経緯はございます。
  11. 大出俊

    大出委員 大臣に承りたいのですが、そうすると、いまの件では全く相談もしてないし、もちろんきまってもいない、こう受け取っていいのですか。
  12. 田中伊三次

    田中国務大臣 政府態度でございますが、これは十一月十二日の最終から三カ月前の八月十二日までに、帰りたいと思う人々は全部申し出をしていただく。申し出をしていただきました人々については、全力を尽くして三カ月間の十一月十二日までに帰還さすのだ。残らず帰還をさす、さしてみせるというたてまえでございます。たてまえでございますが、実際は相当の数にのぼるものと考えられますので、お互いのやることでありますから、三月の間に全部を帰し切れないで、幾ら残るものかわかりませんが、あるいは残らぬものかわかりませんが、幾らかの人が残ることがあり得る。残りましたものをどうするかということは、ありのままに申しますと、考えねばならぬことだと思います。しかし、そのことはただいまは考えてない。これは三月の間に帰してみせる、帰し切るように努力をするというたてまえが政府のたてまえでございますから、残ったときはどうしようかということは、ただいまの段階において考えてない、これが真相でございます。  それから、私のところの中川君がどんな返事をしたとか、副長官がどういうことを言ったとかいうことは、これは副長官、それから私のところの局長級のところでもののきまる筋のものではございません。これは閣議で腹をきめまして、こういう方針にいたしたいからこうしろということを下におろす筋のものであろうと思います。その肝心の閣議において、そういうところまで現在一つも言及しておらぬわけでございますから、この話は何らかの行き違いではないか、こう考えます。私も新聞を読んで、妙なことが書いてあるなと思ったくらいでございます。そういうことは政府方針としてきめておるわけではございません。
  13. 大出俊

    大出委員 ということになると、どうも政府の腹の中がわかるような気がするのですが、八月の十二日までに申し出なさい、十一月十二日で切れますよ、責任持って帰しますよと言うているたてまえのところに、入管局長と副長官の間で、何か知らぬけれども、どうもそこから先の話が出てくると、このたてまえがこわれるので、これはたいへんだということになる筋合いですね。だから、よしんば話があったにしても、ちょっと政府の立場としてはそういうわけにいかない。このあたりに問題の焦点があるように私は思うのです。ニュースソースがどこからかなどという失礼なことは、私は記者諸君に聞いていない。いないけれども、電話で話があったかどうか知りませんが、話をしたことがあると局長はおっしゃる。テレビインタビューで出るのだから、テレビでは何か言ったのでしょう。入管局長がこうこう言ったのだということを言ったのでしょう。そうすると、新聞だってこれを書くわけです。そうだとすれば、これは私は非常に不用意な取り扱いだというふうに思うわけです。  そこで、政府真意を聞きたいのですが、いままでに八万七千何人お帰りになったのだと私は思うのでありますが、さて帰国協定ができ上がったのは何年何月ですか。
  14. 中川進

    中川(進)政府委員 三十四年の十一月十三日でございます。
  15. 大出俊

    大出委員 これは藤山さんが外務大臣のときなんですがね。ところが、これがどういうわけでここまでいったかという経緯について、御存じだったら……。
  16. 中川進

    中川(進)政府委員 経緯と申されますと、要するに北朝鮮に向かって帰りたいという、戦前から日本におられた朝鮮出身方々がたくさんおられまして、そして御承知のように、日本北朝鮮との間には国交もございませんから、具体的にどうやってこれを帰すかということに関しまして、なかなか名案が浮かばなかったのでありますが、おそらく先生のほうがよく御承知と思いますけれども、結局日本北朝鮮の両赤十字がインドのカルカッタで会いまして、この協定ができ上がった次第でございます。
  17. 大出俊

    大出委員 これは川崎におられた朝鮮籍の方が、どうしても帰りたいということで、名前を申し上げてもしかたがありませんけれども北朝鮮金日成首相に手紙を出したわけです。その回答に、喜んで受け入れたい、お帰りください、必要ならば船でも何でも回します、こういう実は非常に中身のある回答が来たわけです。そこで朝鮮諸君が一丸となって大きな運動を起こしたわけです。その大きな運動が、日本赤十字社を通じまして朝鮮民主主義人民共和国赤十字社に対してやりとりが行なわれるようになって、いまおっしゃった会議になったのです。ところが、これはそのあと国際赤十字委員会が仲立ちをしたわけです。したがって、国際赤十字委員会が立ち会いのもとに北朝鮮民主主義人民共和国赤十字社日本赤十字社の間で調印をするという運びになったわけです。ところが、この間に政府態度が明らかにならなければこの協定が事実上成り立たない。そこで、時の外務大臣藤山さんが閣議にはかって、これは当時相当苦労されているわけです。そして了解を求めた結果として成り立ったわけです。だから、この調印には政府出席をしていないのです。いいですか。そうすると、確かに時の外務大臣がそういう御努力はされたけれども、事の発端は政府意思でこうなったのじゃないのです。国際赤十字委員会ですね。そうすると、そういった長い経緯があり、朝鮮公民諸君の非常に大きな努力があり、あわせて日本人各方面の方々のこれまた大きな努力があり、でき上がった協定なんですから、それをどういう理由で——ここが私は聞きたいと思うのだが、ぽかっと政府のほうで打ち切りますよということをおきめになったのか、ここがわからない。そこのところを法務大臣、どうお考えですか。
  18. 田中伊三次

    田中国務大臣 これは、御承知のとおり、八年間この帰還協定の実施をいたしましたわけで、八年間の間に、最初は一年間というのを、延ばし延ばして七回延長するに至りました。いま先生仰せのごとき事情があるものですから、その事情にかんがみて延ばし延ばし、延ばすこと七回、そうして昨年の最後閣議決定の際は、もう延ばさないのだ、これっきりだということを閣議できめまして、きめましたことを天下に公表して、もう延ばしませんよということをかたく、くどく声明をいたしまして、七回目の延長をいたしましたのがことしの十一月十二日ということになっております。そういう事情でございますから、長年の間朝鮮諸君日本との浅からぬ因縁もあり、また、いま先生仰せのごとき両赤十字社協定委員会の御努力もあり、各般の御苦心によってきたことでありますから、一年の約束のものがついに八年間延びておる、その間八万数千の人々帰還することができた。しかし、いつまでもこのままに置いておくことはできないから、もう一年限りですぞということをくどく声明をいたしまして、そうして今年に及んでおるわけで、突然というおことばでございますが、突然じゃないのです。八年間かかって、帰る意思のある人は、以前からその心のある人は大体において帰っておる。最近において帰る意思の生じてきた人々についても放任しておくことはできませんので、この八月十二日までにお申し出を許可したい。だから、帰る意思のある人はとやかく言わないで、とにかく日本政府の言いますように、八月十二日までにどんどん申し込みをしていただく。驚くべき数にのぼるものかと思いますが、どのような数にのぼりましても、これを十一月十二日までに必ず帰してみせる。しかし配船都合——こちらが配船をするわけではございませんから、帰してみせるといいましても、あとに積み残るということがないとはいえない。あるかないかはわからない。想像はしておりませんが、しかし幾らか残ることがないとはいえない。そのときには、残りました積み残りのものについては、何とか考えなければなるまいというととは——これは考えませんと情は尽くせぬわけです。しかし、そのことはただいま言及できない、こういう事情でございます。
  19. 大出俊

    大出委員 私が突然にと申し上げたのは、赤十字関係の方に聞いてみても——声明はしました、確かに。しかし、かくかくしかじかだということについて、とくと立ち入った話し合いをしたわけでもないわけですね。だとすれば、これは国際赤十字委員会に対しても同様なことだと私は思う。声明はいまに始まったことではなくて、もう取り扱いませんぞということは、何べんもいままでやってきた。だから、ほんとうにこれは、ここでどうしても打ち切るという意思ならば、その意味の意を尽くした関係の向きへの相当入念な話し合いが、一片の声明でなくて、行なわれてあってしかるべきだ、こう思うのですね。そこで私はまあ突然にと申し上げた。  ところで、私も事情は相当詳しく知っているのです。第六次帰国船新潟から清浄に帰るにあたりまして、帰った方々は一体どんなことになっているんだろうかという疑問が私どもにわいた。そこで私、当時、今日の総評本部の副議長の時代ですが、私は代表団長朝鮮に参りまして、清津の港で第六次帰国船が帰ってくるのを、これは日本人は初めてですが、迎えてみた。それまでに半月かかりまして、帰った方々がどうなっているか、それから、受け入れのやり方を調査した。それから、朝鮮のしかるべき方々に会っていろいろ話を聞いた。桜の木を五十本持っていって記念に植えるということまでやってきたのです。非常に至れり尽くせりで、清浄の港にりっぱなうちをつくって、これは火をつけて燃すかまどですけれども、まきを全部入れて、火をつければすぐでき上がるようにして、中に米まで入れて用意して、そして待っている。たくさんの方々が歓迎の踊りをやる準備を全部整えて、降りた方をまず収容するところ、そこで分けて入れる宿舎、さて食べるもの、こういうようになっている。そこで、さて今度は、職業は何をやるかということについての相談ということで、行く場所がきまっている。そちらに同じような受け入れ体制が全部ある。これはたいへんなことなんですね。そんなに少なくもない人間を一ぺんに帰しますといって、三カ月かそこらでがしゃんと帰したら、これだけの準備をするのだから、受け入れようがない。やっぱり年々帰っていく方々をそのように受け入れているわけですからね。そんなに大きな国じゃないですから……。だから、そうだとすれば、何年もかかってしまうということはやむを得ないという気がするのですよ、現実の問題として。そこで、今日まだ六十万の方々が残っておられるだろうと思うのですけれども、してみると、結論はあとにいたしますが、政府としては一体どのくらいの想定を立ててこう言っておるわけですか。私は気持ちはわかりますよ。足かけ八年にもなるんだから、切りがない、だからここでもって打ち切る——どうしても打ち切ると言ったら、どのくらい帰りますという人が出てくるか、あるいはそこら考えておられるのかもしらぬ。ところで、あなた方のほうも、国内の事情考え想定がなければならぬと思うのですね。そうすると、どのくらいのことをあなた方は予想されているのですか。
  20. 中川進

    中川(進)政府委員 御承知のように、この協定ができまして、初めの二カ年間に七万四千七百七十九人、ほぼ七万五千人の人が帰りましたわけでございます。それからあとの五年間に一万三千人ばかりの方がお帰りになったわけでございます。年間二千人余りの方になっております。したがいまして、私どもといたしましては、非常に大きな世の中の変動というものがあればともかく、ありません限りは、せいぜい年間二千人まででないかという大体の見積もりを立てております。
  21. 大出俊

    大出委員 それからもう一つ事情をいろいろ聞いてみると、お帰りになるか、なりたいという方はうんとある。あるが、しかしそれぞれ日本に長くいた方だから、生活の基盤がみんなあるわけですね。そうすると、子供が幾つになったらばとか、あるいはいまの仕事がどこまでいけば目鼻がつくからとか、みんなそういう見込みを持ってやっている。私、横浜ですが、聞いてみると、横浜の周辺にもたくさんある。ずばり聞いてみるとそういうことです。それで、いつごろになったら帰りたいという言い分ですね。こっちにも生活があるわけですからね。何月と言われたからといって、何もかもほうり出して、じゃあ行きましょうというわけにいかない。そうすると、年間二千人と言われますけれどもそれなりに整理をしながら帰りましょうということになる。とすると、帰るという者はまとめてみな帰ってしまえ、こういうことがはたして妥当かどうか。だから、そうだとすればそれなりに、いみじくも新聞がこういう発表をしているのだが、これは皆さんの意思かどうかわからぬけれども、何かそこにもう一つなければならぬ。なければ、あまりに無理をしいることになりやせぬかという気が私はするわけです。したがって、足かけ八年にもなるのだから、このあたりで一括帰りたい者はみな帰ってしまえ、こういうわけには私はいかぬと思う。そこらのところはどうお考えですか。
  22. 中川進

    中川(進)政府委員 これは先ほど大臣の御答弁もございまして、私が蛇足をつけ加えることもございませんが、先生承知のごとく、戦後処理一つ処置でございまして、もうすでに戦後二十年以上たちます。ここらでそろそろ一応終止符を打とうということも一つ考慮の原因かと思いますが、しかし終止符を打つと申しますと、いかにも十一月十二日以降北鮮へ帰る人は帰さないというふうな印象を与えないでもないのでございますが、決してそういうことはないのでございまして、十一月十二日以降でも、北鮮へお帰りになりたいという人は帰られて何ら差しつかえないのでございます。ただ、政府が十一月十二日以降と以前と若干取り扱いを異にいたしますのは、先生のほうがよく御承知のごとく、新潟へ集まってもらいまして帰る、その新潟までの、たとえば北海道なり九州なり現住地からの旅費と荷物送り賃、それから新潟で船待ちする間の宿泊料滞在料と申しますか、これをいままで政府が持っておるのでございますが、それを持たなくなるということが大きな差別になるわけでございます。ただし、これは法務委員会におきまして厚生省の当局から御説明がございましたが、十一月十二日以降におきましても、帰国を希望する人で、しかも生活保護を受けているとかなんとかいうふうな非常な極貧の人、新潟まで行く汽車賃もない、荷物を送るお金もない、新潟へ行って宿につくお金もない、そういう人に関しましては、何らかの特別の考慮政府として払うことになるであろうということを、厚生省の係官がここで御説明になりましたが、そういう考慮も払われるわけでございますから、決して十一月十二日以降北鮮帰国を希望せられる方が帰国できないというわけではないのでございます。
  23. 大出俊

    大出委員 これはほかのほうからあまり長くなるからというふうなことでの問題が起こったということでなくて、全く日本政府意思だけだと理解していいわけですか。大臣、どうですか。
  24. 中川進

    中川(進)政府委員 かわってお答えいたしますが、全く日本政府の独自の発意による処置でございます。
  25. 大出俊

    大出委員 そうすると、この取り扱いは全く日本政府の独自の発議で、どうするかということは変更もできれば取りきめもできる、こういうことになりますな。
  26. 中川進

    中川(進)政府委員 日本側に関する限りはそのとおりでございます。
  27. 大出俊

    大出委員 八月十二日まで、かつ十一月十二日まで、こういうわけで、まだ時間のあることですから、いまここでこれ以上のことを申し上げることは少し性急に過ぎるような気がいたします。いたしますが、事情は自分で調べておりますから、百も承知しておるわけなんで、そう簡単に言っても、何か両方に事情、都合があるのでそういかない。したがって、今日取り扱っている扱いを変えるということになれば、協定にこだわる云々でなしに変えるということになるとすれば、それ相当の措置が必要になる。これだけはいかなる場合であっても間遊いない事実だと私は思っている。したがって、なおひとつこれは慎重に御検討いただきたいと思っているわけであります。  ところで、いま在日朝鮮公民といった表現が正しいのかどうかわかりませんが、どのくらいおいでになりますか。正確なところがおわかりになれば、知らしていただきたいと思います。
  28. 中川進

    中川(進)政府委員 正確なところは残念ながら不明でございます。というのは、朝鮮半島から日本に来ております方で、そして現在日本におられる方は五十八万四千名というふうになっておりますが、しかし、いま先生の御質問の御趣旨は、北朝鮮共和国国民でございますか、ちょっと忘れましたが、それの民は幾らかということでございましたが、これはちょっと不明でございます。
  29. 大出俊

    大出委員 韓国籍の方はどのくらいあって、その他の方々はどのくらいありますか。
  30. 中川進

    中川(進)政府委員 韓国籍の何でございますか。
  31. 大出俊

    大出委員 韓国籍の方がどのくらいあって、その他の方はどのくらいですか。
  32. 中川進

    中川(進)政府委員 韓国籍の方は、私どもこれも今日現在の詳細な数字は存じませんが、二十五万五千ぐらいかと存じます。したがいまして、これを引きましたのがその他ということになると思います。
  33. 大出俊

    大出委員 そこで、この際ひとつ大臣に承りたいことがあるのですが、かつて私は、賀屋さんが法務大臣のときに、三時間ぐらいの時間をかけまして帰国の問題から、いわゆる当時いわれていた自由往来の問題から論議をこの席でしたことがある。これは「朝鮮新話」などという書物に、日本が一九一〇年の例の合併以来やってきたこと等の中身が書いてあります。このコーヘンという、当時GHQにおられた方で「戦時戦後の日本経済」という書物をお書きになった方のこれを見ましても、非常に詳しく書いてあるのですね。これらの点について、日本の責任という意味で、どれだけこれから朝鮮方々に対して親切にわれわれが骨を折ってあげなければならぬかという意味のことを、長い時間やりとりしたことがあります。これは朝鮮人の方の財産権の問題ともからむ問題がありますので、やったわけであります。  それと関連して、その中の一つでもあるのですけれども、いわゆる密入国といわれる方々が間々あるわけですね。戦後の混乱期に日本に入ってきた。この方々の中には、日本に親戚縁者があるという方もたくさんある。あるいは子供さんが密入国してくるなどという場合も出てくる。近いものですからね。そういう方々に対する取り扱いが、大臣の専決事項のような形になっておりますが、なかなかめんどうな場面が出てまいります。特にその中で、人道的に考えてみて何とかしてあげなければならぬと思われるものは、そういった長い経緯があるのですから、私は、できるだけ本人たちの意に沿うようにすべきであるという原則に立ちたいと思うのですね。  そこで、まず協定永住権を持っている女性と、それから密入国とはいいながらも、十八年とかあるいはそれ以上古い方々があるわけでありまして、生活基盤も国内に確立をしている、したがってそういう意味で結婚の届け出が出ている。ところが、この方が韓国籍をいやがる。こういう場合に、外国人の登録の面からいけば、なかなかその面が直らない。そうすると、区役所にあてて結婚届が出ていても、正規の取り扱いの面からすればそこに問題が残るわけですね。しかし、やはり協定永住権を持っている方と一緒になっているということになっておる場合は、私は、普通のものの考え方からいけば、日本に居住することを認めるべきだ、実はこういう考え方なんです。そこらの点について何か基準めいたことをあなた方のほうでお考えになっておりますか。
  34. 中川進

    中川(進)政府委員 不法入国をしてまいりました外国人、特にこの場合は朝鮮からの出身者が多いわけでございますが、そういう人に対してどの程度まで、あるいはいかなる条件のもとに特在を認めるか、特別在留許可を与えるかということは、もちろん法務大臣の御権限でございまして、私どもとしましては、そのたびに起案をして大臣意見具申を申し上げるわけでありますが、ただいま御指摘の不法入国の配偶者が協定永住を取っておるという場合でございますが、これはもちろん不法入国者がいつ入ってきたかというその不法入国の時期が非常に大きな条件でございまして、今日ただいま入ってきた者を許すかと言われましても、これはなかなかむずかしい。ただし、不法入国の時期が相当古い。その次の問題は、入ったあと日本でどういうことをしておったか。強盗、強姦等々破廉恥なことをしておるということでは置いておくわけにはまいりません。その次の問題、その人のビヘービアの問題、そういうことを勘案いたしまして、時期も相当たっておる、その間善良な市民としてビヘービアもいい、あるいは税金もちゃんと納めるものは納めておるというようなことがありますと、しかもその配偶者が協定永住を取っておるという場合には、私どもといたしましてはまず原則としてこれを許可しております。
  35. 大出俊

    大出委員 これは、私は八木さんが前に——中川さん、あなたの前は八木さんでございましたか。
  36. 中川進

    中川(進)政府委員 八木でございます。
  37. 大出俊

    大出委員 近藤さんなんかも古くやっておったわけだけれども、とにかく何代かの入管局長さんにわたりまして、私は実は国会に議席を持つ前からですから、出てきてからも四年になりますが、この四年間でもずいぶんいろいろな問題があった。何しろ横浜という町で非常にそういうケースが多いところでございますから、ある場合には早稲田大学なら早稲田大学に入学をして一年延ばしに延ばしてきておる人があってみたり、密入国して学校に籍を置いて、それがあとでわかって、不法入国だからといって帰されるなどということで、ずいぶん問題がありました。最初のころは入管の局長さん——中川さんを前に置いて恐縮だけれども、なかなかかたい話が出てくるわけですね、ところが、ときたま、法務大臣の専決事項ということになっておるから、大臣が認めるかっこうになって在留許可が出てしまう。だから、入管の段階でいろいろもめてまとまらぬ場合に、大臣との段階で非常に人道的な立場にお立ちになってそれをお認めになる。こういうケースがしばしばあらわれてまいりましてね。その後どうも入管の中における審判課その他におきましても、警備課なんかにおきましても、だいぶものの考え方が変わってきておるように受け取れるので、私は決してこれは悪いことじゃないと思っておるわけです。そういう意味で、私はもう少し詰めさしていただきたいと思うのです。  そこで、前提としてひとつ申し上げておきたいのは、関係のあるほかのほうから、しばしば最近はものを言う場面があるわけですね。そういうふうに申し上げたらおわかりになると思うのですが、ただ、これはあくまでも日本の国内問題なんですね。その人の籍が韓国籍でなくても、これは国内問題です。だから、そうだとすると、やはりそういう意味では、国内問題として、他の干渉云々でなしに処理してもらわぬと困ると思う。そこで、いまお話しのように相当古い、相当とはいつごろかということ、このあたりについて別に基準がきまっておるわけじゃないでしょう。
  38. 中川進

    中川(進)政府委員 この点は、はなはだデリケートな問題でございますから、国会の場で、当然記録には出るわけでございますから、ひとつ発言は……。もしなんでございましたら、御来訪くださいましたらいつでもまた……。
  39. 大出俊

    大出委員 いまのお話からすれば、御答弁けっこうです。いただきません。いただきませんが、一方的に申し上げますが、あなたのほうのある程度の裁量がそこに入ることになる、こう思うわけですね。そこで私は、冒頭申し上げたように、できるだけそこのところは人間関係の問題ですから、したがって御本人たちの意に沿うように努力をしてあげていただきたい。ということは、裁量権があるわけでありますから、かつまた大臣の専決事項的に御判断をいただける筋合いのものでもありますから、したがって、そこのところが、まあまあどういう筋を通せばどうなるかという話が人ってくることになるところでもありまして、それに末端の機関のほうでいろいろなことがからんでくると、ますますもってめんどうであります。また政治的な、そういう面がからんできてもめんどうです。ですから、できるだけそこのところは、いま私が申し上げたように処理をしていただく、こういうふうに考えていただきたい、こう思っているわけです。これも御答弁いただきにくいところだと思いますが、大臣の権限事項でございますから、そういう意味で、原則的なことについては、これは大臣からお答えをいただきたいのですが、いかがですか、大臣
  40. 田中伊三次

    田中国務大臣 何か基準を設けて、その基準に従って、密入国をしてきた者は特在を許すというようなことを私がここで申し上げますことはいかがかと実は考えておるわけです。そこで、しかし韓国にしましても、北鮮にいたしましても、いやしくも国が独立しておるわけでございますから、独立しております以上は、日本から申しますというと、妙なことばになりますが、外国人である。その外国人が、他国である日本に入り込んでくるという場合においては、密入国の態度などというものは許すべきものではない、さようなものは断じて受け取らぬという態度をとる以外に、表面のお話といたしましては道はございません。しかし、外に聞こえることもいかがかと存じますが、なみなみならぬ永年にわたる歴史的事情というものもありまして、日本にあこがれを持って、ことに日本の国には妻子眷族がおるゆえに、日本にあこがれて日本に入ってくる。しかも密入国という命を的にしたような方法で、名もない小さな舟に乗ってこぎつけてやってくるというような事情考え及びますというと、情においては忍びざるものがあります。したがって、私たちの態度——私の態度でありますが、日本に入ってまいりまして、これという悪事も働かず、まじめに過ごしておったという実績がその人に認められますならば、そういう事情があります限りは、極力情愛を持って処遇するようにしていくのだ、とは申し上げないのでありますが、個々の事例におきましてはそういう気持ちを持ってこれに善処をしていくことが、いわゆる人道問題に沿う結果にもなるものだ、私は就任以来そういう気持ちを持って努力をしておるのであります。
  41. 大出俊

    大出委員 たいへんどうも恐縮な質問になったようでございますが、あえて質問を申し上げたのは、前段に申し上げましたように、賀屋さんの時代に実はこの種のことが、私自身の居住地周辺で幾つも起こりまして、これは私のところのみならず至るところにこういうことがあるんだろう、実はこういうことで取り上げた経緯があるのです。したがって、そのことを実は前もって申し上げて、それから今日までのいろいろな変わり方もありますので、また、最近そういう事情で幾つか目にいたしておりますから、できればひとつはっきりさしておく必要がありはせぬかと私は思っておりますが、しかし、いま大臣がおっしゃるように、おのおの国を形づくっておるところの国民でございましょうから、それが日本に入ってくる、それも不法にということになると、それ以上の答弁を求めることに無理があります。したがって、いまのお話のように、ひとつできるだけ特殊な事情——他の国を対象にして申し上げておるんじゃないんです。たいへんな長い歴史がある、特殊な事情があるというところをひとつお考えをいただいて善処を願いたい、こう思うのです。  それから、もう一つだけ承っておきたいのは、これはやはり私の関係の地域に笹下というところがございまして、ここに刑務所がございます。私もときたま所長さんにお目にかかっていろいろ事情を承ったりしているのでありますが、どうも少しこれは、監獄法と申しますか、法的に考え方を改めていかなければいけないのではないかということが、ちょっと目につくわけです。何もそんなに拘禁、拘束を厳重にしなければならぬと考えないで済む筋合いのものでありましても、いろいろお話をしてみると、今日の法律関係からいきますと、そうせざるを得ない。つまり法改正あるいは法改正によらずにできる面があろうと思いますけれども、問題は刑法との関係もございましょう。そこでまず承りたいのは、あなたの諮問機関で、刑法の全面改正ということでの討議が進んでおるようでありますが、どの辺までいっておりますか。簡単でけっこうです。
  42. 田中伊三次

    田中国務大臣 現段階では法制審議会の中に五つの部会を設けまして、それぞれ担当をきめまして、その部会が熱心に、数十回にわたって会議を開いて努力をしていただいておりまして、まだ確たる見通しは立ちませんが、大体あと二年内外において答申の見通しが立つようにしていきたい、こう考えております。
  43. 大出俊

    大出委員 まあ法制審議会の大体の審議が終わるのが二年ということですね。これ実は高橋法務大臣の時代に、私同じこの席でこの問題について御質問申し上げたことがあるわけです。ところで、この監獄法も全面改正をすべきではないか、こういう意見が実はしばしばあ亙りまして、かつまたこれは明治四十一年にできた法律で、何回か手直しをされてきております。しかし、これは応報刑論というものに基づく教育刑論でない時代の法律でございますから、そういう色彩がいまあげてみましても随所に残っておる。そうすると、もうこのあたりで新しい感覚に基づいた改正が必要な時期ではないかという気がするわけです。現場に行って承ってみても、そういう気がする。たまたま新聞にこの種のことが載ったことがございますけれどもそこらのところをどのようにお考えになっておるか。また刑法の改正をめぐっての法制審議会での扱い等との関連もありましょう。したがって、重点的に考え方をお答えいただきたい、こう思うのです。
  44. 田中伊三次

    田中国務大臣 大体の筋は、刑法の全面改正の立案ができまして、続いて監獄法の全面改正の立案ということがものの筋になるという一つ考え方もあるわけであります。しかしながら、刑法の改正の方向というものは、具体的な方面はまだ二年かかるといたしましても、あるいは二年半かかるといたしましても、大体の方向は目安がついておる事情でございます。そういう事情でありますから、刑法改正の準備を待たなくとも、これと並行して、この古くさい——古くさいといえば日本一古くさい法律なんでありますが、監獄というような名前から申しましても古くさい、こういう法律はすみやかに改正に着手をする必要があると考えましたので、私は就任をいたしますと間もなく、このことに考えをいろいろとめぐらしまして、最近矯正局内に監獄法改正準備会を結成せしめまして——これは内部の役人のみの手でやっておることでございますが、現在の刑法改正と並行をして改正の準備をやれ、そうして、場合によっては刑法改正の答申を待たずして、改正の準備が整えば法制審議会に諮問をする道も考えていい、こういう考えで、非常に速度を出して取り急ぎこの改正の準備に着手をしておる次第でございます。そういう事情でございますので、いま先生仰せのような新しい近代感覚をこれに入れまして、いかにも近代国家になければならないと考えられる刑政の方向に向かって大改正を加える必要がある、こういうふうに考えまして、その大まかな準備に着手をさせておるところでございます。
  45. 大出俊

    大出委員 最近でも、罰金なんかの場合に、もしお払いにならなければ一日二百円の割合でおいでいただきます、そういうことを言ってくる場合がありますね。私は、これは諸外国の例からいきますと、確かにハーフウエイハウスの制度あるいは部外通勤の制度——これは中間的な一つの制度だと思いますけれども、だとか、あるいは特に報酬の賃金制などというものはほうぼうで検討されていたりしますね。ですから、そういう意味では、刑法の改正を待たないでも、何としてもこれは改正の方向に持っていくべきだろう、こう思うわけです。  そこで、私の近くの、さっき申し上げたところなどは、行くというと、くつだとか、あるいはそこで作業をしているいろんな品物のできたものが並んでおる。非常にこれは安い、安過ぎる。しかも半額以下ですね、私の経験では。ところが、所長さんいわく、何とか、先生、印刷でもすることがあったらひとつ持ってきてくれぬですか、とこう言う。まさか、どうも刑務所の所長が注文を取って歩くわけにもいかぬというわけですね。私の関係の議員の方々が、そういうことで何人か、何とか報告などというものを頼んだりしております。たいへんこれまたりっぱにできるし安い。だから私は、これはそんなに安く売らなければならぬ筋合いかという疑問を持つわけですね。これは具体的な例ですけれども、あれだけりっぱにでき上がっているものを、私自身が考えてみて、こんなに安くしなくたって、事情が明らかであればだれでも買う人は買うんじゃないか、してみれば、そこらのところまで皆さんのほうできめこまかく考えていただければ、まさに報酬の賃金制などということだって考えられなくはない、こう私は思うわけです。それから、やはり職業訓練という意味での、つまり社会復帰へのための力の入れ方がもう少しあろうという気がしてならぬわけです。それから、その犯罪なら犯罪の性格にはいろいろあります。そうすると、どこから考えても、その人がそれほどの拘束をしなくても、まかり間違ってどうなるということはあり得ないと考えられる方々もたくさんある。ところが、一律に、まさに同じように、現在きめられている手続に従って処置がとられていく。ずいぶんこれは不合理な面を感ずるわけですね。そういう意味で申し上げればたくさんありますが、時間がかかりますので簡単に申し上げているのですけれども、実はそういう点をひとつ早急に改善の方向に持っていくべきではないか。まあ学者その他の方々が取り上げている問題もたくさんあります。ありますが、時間がありませんから申し上げませんけれども、ずいぶんいろんな例があがっております、外国の例等が。そういう方向で御努力をいただきたい。
  46. 關谷勝利

    關谷委員長 浜田光人君。
  47. 浜田光人

    ○浜田委員 ただいま上程されております法務省設置法の一部改正する中に、特に入国管理事務所の出張所の増設が出ておりますが、それに関連いたしまして——関連よりかずばりその問題ですが、例のLSTに乗っておる船員が——私は、本来法務省が仕事をもらわなくてもいいのにたくさん仕事をもらうことになると思う。と申し上げますのは、本来船員法の適用を受けて船員手帳を持っておれば、おたくの仕事でなくてもいいはずなんだけれども、どうも出入国管理令に基づいておたくが扱われておるのではなかろうかと思うのですが、そういう点はどのようになっておるか、御説明をいただきたい。
  48. 中川進

    中川(進)政府委員 LSTに乗って外国へ出る場合、ことに御質問は、先般来問題になっております、たとえば東南アジア地域への乗っている人の場合であろうかと存じますが、これは従来は、御指摘のとおり、船員手帳によってやっておったのでございます。しかし、ちょっと正確な日時は忘れましたが、しばらく前からそのいまおっしゃいますように、正規の旅券を持っていくことに変わりました。
  49. 浜田光人

    ○浜田委員 そうすると、法手続はやはり旅券であのLSTの船員は外国に行かしておる、こういうことに間違いないわけですか。
  50. 中川進

    中川(進)政府委員 さようでございます。
  51. 浜田光人

    ○浜田委員 そういたしますと、安保条約六条に基づいた地位協定十二条五項によって、やはりアメリカの船舶に船員を乗せておるわけですね。そして同じような場所に同じ任務を持って出ておる船員がおるのですが、これはどういう法手続によって外へ出ておるわけですか。
  52. 中川進

    中川(進)政府委員 ちょっと先生、いまの御質問わかりかねたのでございますが……。
  53. 浜田光人

    ○浜田委員 安保条約六条に基づいた地位協定十二条五項に基づいて、船員をアメリカの船舶に乗せて外地に出しておるのがありますでしょう。まずあるかどうか、それを答えてください。
  54. 中川進

    中川(進)政府委員 ちょっと、この安保条約に基づきます地位協定の問題は、外務省の所管になっておりますので、私存じませんが……。
  55. 浜田光人

    ○浜田委員 それは、たとえ外務省であろうがどこであろうが、そういうのは知らぬというわけにもいかぬだろうし、十二条の五項に基づいてやはり同じように米軍の船舶に乗せて海外へ出しておるのがおるんですよ。
  56. 中川進

    中川(進)政府委員 ちょっと先生、条文がややこしいんですがね。
  57. 浜田光人

    ○浜田委員 それじゃあと調べておいてください、それは絶対間違いありませんから……。それはよその省だから、こう言われるんでしょうが、法務省がそれであってはいかぬのです。  そこで、私が問題にするのは、本来日本の国民は、法の適用を受けて、法の保護を受けなきゃいかぬと思うんですね。それが旅券というのは、ただいかに日本の船員を合法的に日本から出すかということだけのために、私はあえて出入国管理令に基づいた旅券を交付しておると思うんだね。ところが、ほんとうは船員法の適用を受けて、船員を保護してやる立場から出さなきゃならぬと思う。ところが、そういういろいろな出し方もあり、しかも本来旅券で船員を船に乗せるということは間違いだろうと思うんですが、これは法務大臣どう解釈されますか。
  58. 田中伊三次

    田中国務大臣 船員手帳を持っております者は、船員法に基づいて旅券なしに外へ出ていくことができる。ところが、ただいま先生お話しのLSTに乗り組む者のうちで船員手帳を持たない者がいる、これに対しては旅券を渡さねばならぬという筋になっておるわけですね。そういうことで旅券を外務省が出しておるという事情でございます。
  59. 浜田光人

    ○浜田委員 それが逆なようですね。持たないというけれども、本来日本の法律では、船舶に乗って業務に従事するのには、船員手帳を持たなければ乗れないようになっておるのですよ。それにアメリカの船舶へ乗せるのだから、当然船舶で業務に従事するのだから、船員手帳を持って乗せなければならぬはずであります。そうして船員として保護してやるのですね。これが日本の国の立場である。政府としては、法の保護を与えてやる、こういう立場になければならぬと思うのです。ところが、あえて船員法の適用を受けさせない。船員手帳を持たせない。そうして管理令に基づいて旅券を出して乗せる。これは船に乗ってベトナムに行って、ベトナムで仕事をするならいいのですよ。この人は船に乗ってそうして航海に従事するのが仕事なんですから、それで旅券で船に乗せるのは間違いでしょう。どう思われますか。
  60. 中川進

    中川(進)政府委員 御質問の点は運輸省所管の問題を多分に含んでおるわけでございますが、私ともの了解する限り——あるいは間違いがあると恐縮でございますが、私の了解する限りは、船員手帳を出すのは、日本の船舶に乗り組んで仕事をする場合でございまして、ただいま御指摘の点は、アメリカの軍に個人として雇われていくという形でございますから、やはりこれを個人の出国というふうに扱うことになっておるのだと承知いたしております。
  61. 浜田光人

    ○浜田委員 ですから、最初質問いたしましたように、アメリカの船舶であっても、さっき言った安保条約六条に基づく地位協定の十二条五項は、アメリカの船舶ですよ。これに乗っておるのは船員法の適用を受けさせておるでしょうが。受けておるのですよ。だから、あなたたちの説明がちぐはぐだと言うのだ。そう受け取りますよ。調べてください。調べるまで次の問題を保留するから。そうせぬと質問は発展せぬよ。
  62. 中川進

    中川(進)政府委員 確かに後半の雇用条件云々は「日本国の法令で定めるところによらなければならない。」という点を御指摘になっておるものと存じますが、この解釈その他は、先ほどから申し上げますように、私どものほうの所管でございませんので、外務省の担当官に御質問していただければありがたいと思います。
  63. 浜田光人

    ○浜田委員 だから私は、法務省として、少なくとも船員としては、さっきあなたのほうの所が、無理にじゃなくて、いやかどうか知りませんが、もらったのだが、当然船員法の適用を受けさせる法律があるのだから、こういうものを受けさすべきじゃないかと思うのですよ。さっき言ったように、それは日本船舶に乗り込まなければ船員法の適用を受けられぬのだ、こう言うと、実際は地位協定に基づいて、しかもアメリカの船舶、軍用船だから、特にこの地位協定を適用するというのはあたりまえですよ。それをこっちは一般の日本の旅券法を適用するという、かってなことをやっているのですよ。ですから、あなたのところの法務省は、これはうちの所管じゃないんだ。船員法のほうは運輸省で保護すべきで、雇用関係は防衛庁、調達庁でやれ、こう言って筋の通る問題だとぼくは思うのです。それがほんとうの日本政府としてのやり方だ。日本の国民である船員を保護する、こういうたてまえでやらなければならぬと思うのです。そうしないからまちまちな取り扱いを受けておるのですね。  そこで、あなたたちが管理令に基づいて旅券でやっておる。そうすると、これは外国の軍用船でしょう。ですから日本に帰ってきましても、この軍用船はどこに入るかわからぬと思うのですね。また、船長がアメリカ人の場合は、日本の高等船員の言うことも聞かないし、かってなことをやります。ベトナム等の戦線で非常に気が荒ら立っておる。これはもう日本の法規なんかも考えずして、どこの港へでも入る。そうしたときに、あなたのところのこの管理令に基づいて適切な措置が講じられると思われます。
  64. 中川進

    中川(進)政府委員 確かに御指摘のような取り締まり上の難点はあるわけではございますが、私どもとしましては、極力出入国の管理を厳正に行なっております。
  65. 浜田光人

    ○浜田委員 将来大臣は、特にこういう旅券によって扱って、そして取り締まりをやられる。さっきからしばしば申し上げておりますように、本来の船員としての任務保護、こういう点から、こういう扱いというものは根本的に私は間違っておると思うのです。そこで、日本政府として、関係各省がこれらを協議なさる御意思があるかどうか、まず聞きたい。
  66. 田中伊三次

    田中国務大臣 問題は、先生の御発言の中で、船員手帳を持たざる者に旅券を交付する場合が一番問題の余地があろうかと思います。この問題は、アメリカと日本人との間に労務契約ができまして、その契約によりまして外国に出て行くといいます場合においては、現在の日本の法制の立場からは、船員でない限りこれに旅券を与えるという行き方以外にはちょっと方法がただいまのところは考えられません。考えられませんが、ただいまの御発言を総合して私が考えるのでありますが、何にしましても、日本人がLSTなどというものに乗り込みまして、いろいろな被害を受けるというようなことを考えてみるときに、これらの人々の人権を守るという立場から、旅券の交付のやり方に何らかの配慮を加えてよいものではなかろうか、こういうふうに実はただいまお話を承っておりまして思うのであります。これが配慮に関しましては、ひとつ将来検討をしてみたいと考えます。
  67. 浜田光人

    ○浜田委員 いま大臣が前段で触れられました労務契約を結んだ点でありますが、なぜ日本政府が同じアメリカの船舶へ乗せるのに、直接雇用、間接雇用、それによって雇用形式が変わってくるのですね。そうでしょう。さっき前段で申し述べられた点は、間接雇用方式なんですね。日本政府が入っている。こういう方式なら、全部法務省がタッチしなくても、船員法の適用で、法の保護を受けておるかどうかというのは運輸省がやるだろうし、その雇用契約がうまくいっているかというのは防衛施設庁がやるわけですね。こうやることが、私は、労務管理もスムーズにいくし、それから真の法の保護、人権、こういう点もうまく守られると思うのです。そこらが、なぜ日本政府考え方はそういうことにいかずして、二つの方式でやっておられるのだろうか、そういう点がわかれば知らせていただきたいのです。
  68. 中川進

    中川(進)政府委員 残念ながら、どうしてこの間接方式が直接方式に切りかえられるようになったか、経緯は存じません。  それから、旅券の発給は、これはむしろ外務省の問題でございますので、外務省のほうにひとつお聞き願います。
  69. 浜田光人

    ○浜田委員 外務省に聞いたときには、これは管理令に基づいて旅券でやるのだ、こう言われるのですよ。そして、それは本人の職業の選択の自由だ、こういうことを言われるのです。ところが、今度は逆に、北洋漁業のほうは、日本の水産庁は、外国の船に乗ったり、外国の漁区のほうへ出て漁労をやっちゃいかぬというて省令で禁止しておるのですね。ところが、アメリカの船に乗るのはそれは自由だ。しかも戦線のベトナムに行ってもしかたないのだ、こう言うのですよ。われわれは、日本政府のやっていることが、どっちがどうなんだろうか、どうしたらいいのだろうか、国民に聞かれても、どうわれわれ政治家が回答していいのか、実際わからないのですよ。こういう点、法務大臣、法の元締めの大臣として、どのように理解されますか。
  70. 中川進

    中川(進)政府委員 日本の国民が外国に出まして、どの方面に出て、どのような活躍をしていいか、あるいはしていけないか、したほうがよいか、しないほうがよいかというような問題は、これはやはりケース・バイ・ケースに考えざるを得ないと思います。したがいまして、いま御指摘の問題は北洋漁業の問題でございますが、これは、先生、例の韓国のことでございますか。具体的にはどこの国の船に乗っちゃいかぬということでございますか。(浜田委員「それは韓国ともどことも指定してはいない。北洋だから、あるいはソ連もあるかもわからぬ」と呼ぶ)私が承知をいたします限りでは、これは農林省ないし外務省の問題で、私どもの問題ではございませんが、まあ結局それはケース・バイ・ケースによって……(浜田委員「そういうことを言うとまた文句を言いたくなる」と呼ぶ)
  71. 關谷勝利

    關谷委員長 あまり浜田君私語しないで下さい。
  72. 浜田光人

    ○浜田委員 まあこれはいいですが、大臣、いずれにせよ、さっき将来の問題として検討すると言われましたが、ひとつイニシアをとって各省ともこういう問題を話し合いをして、日本国民をどうして保護してやるか、ただ人命を、重大な問題だというだけでなくして、具体的に保護する方法を、ひとつ統一したそういうものを出していただくことを強く要求、要望して、私の質問を終わります。
  73. 關谷勝利

    關谷委員長 受田新吉君。
  74. 受田新吉

    ○受田委員 法務大臣、この法案に関係して基本的な問題でまずお尋ねしたいことがあるのです。  戦前の法律の条文は、極端に困難なる文章を用い、文語体で、かたかなが使ってある。新憲法下の現在の法律には、その法律制定の目的がまず初めに書いてありまして、しかも平易な、国民に理解しやすい法律の文章になっている。あなたは法学博士でもありますし、法律の番人でもあられる方で、戦前の法律の条文を、それぞれ目的を付し、国民に理解しやすいような法律の文章に書きかえるということについて、いかがお考えになっておられるか、御答弁願います。
  75. 田中伊三次

    田中国務大臣 まことにごもっともな御意見であろうと存じます。ただ、この問題も、現存しております古い形式の法律をにわかに全面的に書きかえるということが、技術的に右から左に行なえるものとは考えませんが、いま先生仰せのような方向に、漸を追って法律の改正を行なっていくことが理想である。そういう方向に向かって努力をしてみたいと存じます。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 直ちに全面的にということは困難である、その方向にというお説でございました。ところが、現実に一向大臣の御所信の実現がはかられるような方途が講じられていない。あなたの具体的な今後のスケジュールというものをひとつ、直ちに着手できる問題はないですか。
  77. 田中伊三次

    田中国務大臣 私の所管からまず申し上げますと、たとえて申しますと、わが国刑罰法規の基本法ともいうべき刑法、また刑法の施行に際して重要な、執行に当たります場合の監獄法というような二つの法律は、少なくとも時代おくれのはなはだしいものでございます。こういうものにつきましては、できるだけすみやかに、私就任以来早く急いで手をつけようといたしまして、いろいろ苦心を重ねておる次第でございます。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 具体的な例示をされたわけですが、私もいまそれに意見を付して大臣に要望しようと思ったことがある。明治四十一年に監獄法という法律ができた。その監獄ということばそのものは、これは地獄みたいなことばです。それから、逮捕——けだものをつかまえる。国務大臣でも、犯罪を犯せばすぐ逮捕、つかまる。けだものをつかまえる、捕えるという字を書くわけですね。そういう用語がある。これは人権の侵害といってはなんですが、犯罪人ですから、そのくらい手きびしくやるほうが、こたえることはこたえるでしょうが、これはいろいろと用語の上に問題がある。そして、警察犯處罰令というのがありまして、袒裼裸ていということばがありましたが、いまは軽犯罪法に変わっていっている。こういう形に切りかえていくという形で処理をしていかないといかぬ。また、あなたの御所管に入国管理令というのがある。この入国管理令、正式には出入国管理令。この出入国管理令という、法律と同じ効力を持つ、これはポツダム政令です。これも占領下の落とし子としては悲惨なるわれわれには思い出のポ政令が残っておる。残念なポ政令が。その代表的なものをあなたはいま生かしておられる。あなたの御所管の中に出入国管理令。なぜこれを法律として改正できないか。かつて私この問題に触れたときに、それはまことにごもっともだいう当時の局長の御答弁もあり、大臣のこれに対する裏づけもあったわけですが、こういう占領下の落とし子の残念なる名称がそのまま今日あなたの御所管の法律として生きておる。いかがお考えですか。
  79. 田中伊三次

    田中国務大臣 お説のとおりの名称でございます。これはできるだけ早い機会に出入国管理法に改めていきたいと存じます。なお、これは名称だけでなしに、中身について申しましても、最近は出入国いたします者の数が激増してまいりました。その激増してまいります者の大半は短期の旅行者でございます。こういう者に対しましては、もっと簡便な、簡単な手続による出入国の許可がおりるように取り運んでいく必要があろうかと存じますので、内容の上からもこれに対しては、その名称変更の機会に改正を加えていきたい、こう考えております。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 この出入国管理令が施行されてすでに十六年になるわけです。つまり、占領下の落とし子で占領中に出た政令である。これは政令などで扱うべき問題でなくて、出入国に関する基本法でありますから、明らかに法律制定の最たるものであると思うのです。それがなぜいつまでも、今日までこうしてじんぜん月日をけみしているかということについて、法務省の内部に何か古典的な、いわゆる郷愁を感じ過ぎるような、占領時代をなつかしむ気風が残っておるのじゃないかと思う。いかがでしょうか。
  81. 中川進

    中川(進)政府委員 先生もそうであろうかと思うのですが、私なども戦争に関しましてはずいぶんにがい経験を持っておりますので、ポツダム宣言に郷愁を抱いておるということはあり得ないと思うものでございます。ただ、出入国管理令は、御指摘のごとく、また大臣がただいま御答弁になられましたごとく、私どもといたしましても、一日も早くこれが出入国管理法として再出発することを願うものでございまして、寄り寄り検討準備をしておるのでございます。ただ、いかんせん、この出入国管理は関係するところが多うございまして、たとえば相談せんならぬ役所にいたしましてもほとんど各省にまたがります。それから、諸外国の例はどうであろうかということの検討、あるいはまた、いま大臣も御指摘になりましたごとく、交通事情、その他世界の出入国の事情がどんどん変わっていくという趨勢、そういういろいろな勘案すべき事項がたくさんございまして、私どもの現在のスタッフをもってしましてはなかなか自信のある成案ができ切らない。もちろん素案の程度でございましても二案、三案、四案とたくさんつくっていろいろ検討しているのでございますが、どうもこれならもう絶対やれるというような確信のいく案がまだどうしても脱稿し切れませんもので、若干遷延しておるわけでございますが、確かに御指摘のごとく、いつまでもポ勅のままでこの出入国というような国家の大事を律することは適当でございませんので、できるだけ早く法律に出直してみたい、こう考えておる次第でございます。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、あなたは比較的熟慮断行のタイプの政治家として光っていると思うのです。こういうことは、あなたの大臣御在任中にすかっとやられないと、歴代の大臣は初めから手がける意思もない。事務当局も、いまのようないろいろな問題があるから、できるだけいいものを入れようというような気持ちでもさもさしている。私は、いまの局長のお説のように、もう占領ということばは全くいやですからね。占領政令というものは聞くだに身ぶるいがする、戦慄を覚えるのです。それが、しかも法の番人の法務省の中にこういう政令が生きておる。あなたは、御在任中にこの出入国管理令を新型のより洗練された法律としてお出しになる御決意があるかどうか。熟慮断行のほうでひとつやってもらいたい。
  83. 田中伊三次

    田中国務大臣 手がけてもおらぬということではないのです。いま局長が申しますように、素案でございますが、二つ、三つの素案はすでにできておる、こういうことでございます。なかなか困難な部面はたくさんございますけれども、困難な場合には次善のものを採用することにいたしまして、とにかく名称を改めて中身を近代的に変える、こういう方向でりっぱな法律に仕立てていくために、早速法務省内において具体的な改正の内部機関を設けまして出発することにいたします。努力をいたします。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 さっそく、直ちに着手していただきます。  今回の法改正の案の中に、この出入国管理に関する事務所がたくさん出ている。これでひとつ伺いたいことがあるわけですが、まず厳然たる規律のもとに出入国管理をしながら、密入国をしている人間がどのくらいおると法務省は判断されておるか。的確な数字がわからなくても、概数だけわかれば……。
  85. 中川進

    中川(進)政府委員 御指摘のごとく的確な数字は不明であります。何となれば、必ずしもあがらない人があるわけであります。ただし、私どもが存じておりますごく概数は、昭和三十九年くらいまでは年間約千五百人くらいでございますが、四十年は五十一件、五百五十一人、四十一年は二十二件、百十人、こうなっております。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 密出国はどのくらいあるか、ひとつ……。
  87. 中川進

    中川(進)政府委員 これは残念ながら調査しておりませんので、不明でございます。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 出入国の管理の法の網、組織の網をくぐってなおかつ密入国をしている数が、いま説明されたように数百名ずつおるというこの現実は、法務省入国管理局として、出入国の管理業務を扱うお役所といたしましても、面目ない次第です。どこから入ってきて、どういうふうに国内にひそむかというケースは、十分御研究になっておられると思います。いままでにも密入国者の事件が幾たびか発生して、世間に大きな疑惑を投げかけた事実があるわけでございますが、その密入国の中で最も数を多く占めているのはいずれの国籍を有する人であるか。
  89. 中川進

    中川(進)政府委員 これはやはり統計で見ますと、韓国が一番多うございます。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 第二順位にあるものはどこであるか、第三順位ぐらいまでちょっとお聞きしておきたい。
  91. 中川進

    中川(進)政府委員 第二順位、第三順位といわれますと、これはほとんど絶無に近いのでございまして、ちょっと私の手元にございませんが、後刻調べました上で御報告申し上げます。ただしきわめて少数でございます。——ただいま韓国と申しましたが、北鮮から来る人ももちろん絶無ではございませんが、しかし、これもきわめてわずかでございます。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 数字があるようですから、ちょっと言ってください。
  93. 中川進

    中川(進)政府委員 ここに数字が出てきましたので御説明いたしますが、朝鮮となっておりまして、これはいま申し上げましたように、韓国が非常に多いのでございますが、朝鮮半島から来る人が、四十年を例にいたしますと、千四百五十六件に対して中国二十一件、その他八件、こうなっております。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、顔形、皮膚の色が大体日本人によく似通って、まぎらわしい人間が入ってくるわけですね。色の違った者は、目立つからむずかしいんだという答えが出ておるわけです。そしてその密入国をする場所の最たるものがどこで、二、三位がどこであるか、つまり密入国の場所、これもわかっておれば、御説明願いたい。
  95. 中川進

    中川(進)政府委員 これももちろん統計を調べれば出てくるわけでございますが、今日手元にはどこから何件という場所の統計を持ってまいりません。ただ、常識的には、何と申しましても西日本、ことに瀬戸内海沿岸地方などが多いように承知しておりますが、ただいま申しましたように、もしなんでございましたら、場所の統計等も出してもよろしゅうございますが、ただいま私ここに持っておりませんので、承知いたしません。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 私の郷里は山口県なんです。その密入国者の最も多い地区に入っているはずです。その密入国者にもお目にかかる光栄をになった男でもあります。  今度入国管理事務所の出張所をそれぞれ置かれるわけでございますが、その置かれる場所と密入国をしやすいところとの関係、それは全然考慮されなかったかどうか、伺いたい。
  97. 中川進

    中川(進)政府委員 全く考慮しなかったかといわれますと、必ずしもそうではございませんが、私どもとしましては、もちろんこの入国管理事務は、御承知のように、そういう不成規な、法をくぐって入るものを取り締まるという面がございますとともに、むしろ成規の面、すなわち合法的な手続を経て合法的な方法で日本に入りあるいは日本から出ていくといった人を処理するということがむしろ主でございまして、数から見ましても、合法的な人の出入国は、外人が約六十七万人、日本人が約六十六万人、合わせて百三、四十万人、それに船の臨時の人が百何万ございますから、二百三、四十万人という人に対しまして、ただいま申し上げましたように非合法で入ってくる人というのは千人前後でございますから、何と申しましてもやはり新しい事務所を設けます理由のおもなるものは、この成規の業務の分量ということが標準になった次第でございます。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 この出入国管理業務のほかに、入国管理業務だけを扱う出張所を設ける提案もされているわけですね。入国管理事務だけの出張所、これは「出」ということばは全然関係がない、入国管理事務ということばそのものに入るわけですが、「出」ということばは全然抜きにして事務をなさるわけですね。
  99. 中川進

    中川(進)政府委員 先ほど悪例としておあげになりました出入国管理令、大体出入国と申すのが正規の名前でございます。ただし、どういうものか、日本人は略称を好みまして、長い名前はなるたけ短くしようとする。スタメンなどと申しますが、これはちょっと何のことかわからぬのですが、スタートメンバーのことだそうでございます。そういうように「出」という字が省かれている。どうしたわけで落としたのか知りませんが、私が管理局に参りましたときに、すでに本省の法務省は出入国管理局とは申しませんで、入国管理局と申しまして、「出」には関係ないような名前になっておりますが、実際は出入国両方やっておるわけでございます。したがいまして、今度御審議を願っております新しい六事務所も、これは入国管理事務所とは申しながら、実際は出入国管理を扱うところでございまして、決して入国のみをやるわけではございません。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 そこに問題があるのです。名は体をあらわすということをしばしば私は指摘しておるのでありますが、これは実態を把握したかっこうで役所の名前をつけなければいけない。入国業務だけしか行なわないように見えるのです。出入国管理業務をやっておりながら、入国業務だけを行なうように名称はなっておる。大臣、これをいま局長が指摘されたように、入国管理局というのがある。法務省にある役所の名前そのものは入国だけを扱うようになっておる。出と入との扱いはいま大体同数ですね。そのこととあわせて、その扱い件数もひとつ御答弁願います。
  101. 中川進

    中川(進)政府委員 先ほどちょっと申し上げましたように、外国への日本人の出入りあるいは外人の出入りの数を申し上げますと、四十一年におきまして外国人で日本に来た者が三十三万八千五百八十四、外国人で日本から出て行きました者が三十三万六千九百二十八となっておりまして、出入り大体同じくらいでございます。邦人につきましても、大体同数でございます。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 大体同数なんですね。その同数にかかわらず「入」だけがついて「出」がついていない、大臣、これはあなたも不可解なことが行なわれているとお考えになりませんか。——きょう初めてお悟りになったと思いますが、局長自身は先ほど述懐されたのですから、大臣から答えてください。
  103. 田中伊三次

    田中国務大臣 なるほどと思います。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 大臣はいま初めて態度決定されたわけです。これは法務省の古いしきたりのどこかに、制度上のといいますか、慣習上のといいますか、何か抜けたところがあるのですね。法の番人の役所ですから、これは出入国管理事務所とすかっとしたほうがいいですよ。だれが見ても、この名だけ見ると、入国管理だけしかやらないかと思いますよ。看板はそれで、実際は同量の出も扱っておるとなれば、出入国管理事務所というすかっとした名称に変えられたほうがいいんじゃないですか。大臣、そう考えないですか。
  105. 中川進

    中川(進)政府委員 私も、なぜこの「出」という字が落ちたのか、それがいつから落ちたのか、その経緯等はなはだ不勉強でよく承知いたしませんので、確かに先生の御指摘の点もございますから、よく研究いたしまして善処したいと思います。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 自民党の理事さん、委員長と、この機会に政府と御相談をなさって、この法律改正の機会に国民が納得するように、「出」の字を入れるだけなら、そう法律の文章をむずかしく考える必要はない。出たり入ったりの出るを入れるのですからね。一字を挿入すればいいんです。挿入作業というのは、そうむずかしいものではないだろうと思うのです。いま出も入と同量のものがあるとなれば、これは出入の「出」を入れていいと首脳部がそこまで割り切っておられる。大臣、こういうときにはあやまちを改むるにはばかることなかれということばがあるわけです。故人が教えている。これは一つの過誤だと私は思うのです。ミスだと思う。ミスはこの法審査の機会にすかっとそのまま——基本法が出入国管理令になっている。
  107. 中川進

    中川(進)政府委員 確かに私も、先ほど申し上げましたように、出国した人、入国した人、あるいは船に関しましても、出国する船、入国する船、数は同じでございます。ただし、仕事の事務の分量から申しますと、これはたいへんな相違でございまして、私どものほうにいろいろかぶさってきます書類とか仕事の中身を見ますと、入国した人の処理がほとんど大部分でございまして、あるいはその仕事の内容をおもに考えて、形式的には出入国管理庁でありますにかかわらず、入国管理庁となったような気もいたしますが、これは私もいま申しましたように、なぜそうなったか、その経緯を存じませんから、よく研究したいと思います。
  108. 田中伊三次

    田中国務大臣 ごもっともな御意見でございますから、法改正に際して十分検討いたします。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 次に、この法改正案の二つの骨子の一つである少年院のことにちょっと触れてみたいのです。  提案理由の説明で、少年院の設備が非常に悪いところが出ている。逐次これを改善されていこうという御努力は、十分わかります。たとえ矯正の目的をもってそこへ収容しておる子供といえども、前途ある少年には間違いないわけです。恵まれざる環境によってそういった立場になった少年もおるし、あるいはふとした良心の麻痺でそうなってきた子供もあるわけです。必ず美しい環境で、美しい指導者によって、その青少年は救われるわけです。その意味においては、法務省は少年院を、もっとりっぱな場所で、りっぱな設備で、しかもそこに美しい指導をしてくれる人たちをもって、その誤れる行為をした少年に、非行を正して本然の姿の青少年に立ち返らせるような大きな力を与えなければならない。それは法務省のお仕事だ。したがって、この喜連川の少年院の新設その地について、法務省は、少年院の設備の強化と指導陣の刷新強化ということにどれだけ力を入れても、われわれは御協力するにやぶさかではない。私はなお懸念することは、並び掲げられてある全国の少年院あるいは矯正目的の施設、それらで、なお当面非常に悪条件のもとにある役所、建物はないか、指導者にその人よろしきを得る道に欠けてはいないか、定員不足ではないか、教育という別の方面の力に不足はないか、そういう懸念をしておるわけですが、残された少年院あるいは矯正の施設で、そうした私が懸念する問題なしと判断されるかどうか、お答え願いたいのです。
  110. 田中伊三次

    田中国務大臣 少年の扱いには環境と人を得よとのおことば、よくわかりました。なお改善を要する少年院もございますので、今後十分に検討をいたしまして、最善を尽くします。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 最後に、法律に関係のないことではありますけれども、私かつて元法務大臣にお尋ねしたことがあります。刑罰をもって人の生命を断つ死刑——個人の見解として、死刑制度というものは存置すべきものか、廃止すべきものか。そしてあなたの個人の御見解は、できるだけ教育刑をもって、人間のほんとうの精神をよみがえらせていきたいという勧善懲悪主義の扱い方の中に教育刑主義をお考えになっておると私は承っておるわけでございますが、それについての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  112. 田中伊三次

    田中国務大臣 私の考えを一口に申しますと、応報刑主義よりは教育刑主義によってやっていきたい。同時に、教育刑に加うるに目的刑主義、人道主義の要素をこれに十分加えまして、近代国家として恥ずかしくない刑政の大方針をとっていきたい、こういう心持ちでございます。  それからもう一つ、死刑でありますが、死刑は、全面的廃止に実は反対でございます。現在死刑になる場合の条項は多数にのぼっておりますが、このうちで、人の命を残虐な方法で奪ったという場合に限り、死刑を存置すべきものである、こういう信念でございます。そしてその死刑の執行の方法は、憲法の精神にありますように、残虐でない刑の方法によってこれは執行すべきものである。現在の絞首刑制度がはたしてこれに当たるかどうか、より以上理想の方法としては、電気殺——電気で殺すという意味でありますが、電気殺の方法が最善ではなかろうかという考えに及んでおりますので、最近適当な時期に、たいへんいやな視察でありますが、死刑を執行いたします現場を私みずからが視察をしてみたい、こう考えております。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 厳にして寛なる大臣の信念を伺いました。しかも死刑執行の場を見に行きたい。これは死刑囚の中に、私がかつてよく知っておった青年がおるわけです。それは、私は広島の拘置所に、ちょいちょい帰りしなに、彼に刑の執行前にと思って差し入れに行っておるのです。その大悟徹底した青年の気持ちに触れておるのですが、この青年が何日かたったならば刑の執行を受けるであろうと思うと、そこにれんびんの情を禁じ得ないものがあるのですけれども、その死刑囚の両親にまたちょいちょい会って、会見の様子を知らせると、両親も非常に喜んでくれております。その青年が、再審要求をしたのが却下された事件です。よく見ると、はたしてそれがほんとうに殺したかどうかという疑義さえもまだあるような事件なんでございますが、死刑の執行命今を大臣がサインされてやられるわけです。あなたが御視察されるときには、サインをして行かれるわけなんです。みずからサインをし、殺す現場を見に行くという、このきびしい、大臣としての職務忠実の中に、死刑囚の死刑執行の時期というものは、やはりある期間を——犯罪の性格が、いまお説のような残虐な行為によって生命を簡単に断つような、そういうものは別として、ほかの死刑囚については、少なくともある期間の猶予をもって大臣はサインをさるべきである。承るところによると、歴代の法務大臣は死刑執行の書類にサインをされるのをしばしばちゅうちょをされておると承っております。それは自分のサインをしたことによって、五日後には生命が断たれるというときには、手がふるえる大臣もあるということです。これは私はほんとうのあれだと思うのです。しかし、行政長官としての法務大臣が神の声によってサインをされることについては、私は、かれこれ申し上げません。それは職務に忠実な一面があることを必要としますが、いま大臣が指摘されたような以外の死刑囚は、できるだけ死刑執行を延ばして、本人にまた精神的な苦痛もなくして、大悟徹底していけるような準備期間を与えなければならない、そういう扱い方について、大臣の死刑執行命令をされる心づかいというものを承っておきたいのです。
  114. 田中伊三次

    田中国務大臣 私が就任して法務省につとめるようになりましてから、幾つかの死刑の執行にサインをしたのであります。そのサインをいたします態度は、書類を取り寄せて——私は幾らかその書類を見ることには専門家に近い経験を持っておりますので、みずから書類を手に取りまして、精細にその書類を拝見をいたしまして、はたして本件は再審の理由等、確定判決をくつがえすに足る事情がどこかにないであろうか、本人が希望するとせないと、再審の申し立て、そういうことをするとしないとにかかわらず、どこかにその理由がなかろうかということを詳細に検討いたしまして、いかにもそれがないという見通しが立ちましたときに、本人の最近の謹慎の情状等についても詳細に部下から報告を手に取るように受け取りまして、その上でこれに対しましてサインをすることをもって私の態度といたしております。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 終わり。
  116. 關谷勝利

    關谷委員長 伊藤惣助丸君。
  117. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 法務省設置法の一部を改正する法律案の中に、再度山学院を廃止するというふうにございますが、その後の処理について伺いたいと思います。
  118. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 再度山学院の廃止後、収容の少年院につきましては、昨年来逐次分散をいたしておりまして、一部は昨年新営がなりました播磨の少年院、一部は大阪近辺の少年院にそれぞれ分類いたしまして、それにふさわしい施設に一応収容いたしております。  なお、再度山が廃止されることに伴いまして、それに見合う新しい少年院を栃木の喜連川に新営をいたしまして、この建物もすでに完成をいたしまして、いつでも発足できる状態になっております、というのが、再度山の廃止に関連する現在における処置状況でございます。
  119. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その処置でありますが、いわゆるそこは不適当であるとか、またはその後の処分ですね、どのようになっておりますか。
  120. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 再度山は、私も直接見てまいりましたが、有馬のほうへ通ずる六甲山の途中、道路から約二キロぐらいの山の中に入りました谷間にある少年院でございます。したがいまして、水の便はまず徹底的にだめである。再度山が運営している当時、水がなくなりまして、少年の入浴のためにわざわざその谷間の道を通って町へ出なくちゃならぬというような状況にあった建物でございます。建物もまた、いわゆる戦後の粗悪材を使いました木造の建物でございます。土地につきましては、これは発足当時神戸市から借り受けていたものでございます。したがいまして、今回閉院の措置を進めるにあたりまして、神戸市のほうから返還をしていただきたい、その使途は何かということを確かあましたところ、兵庫県の青少年の練成道場でございます。これは主として技術系統の練成をする学校にいたしたいということで、したがいまして、これは廃止後神戸の財務部に引き継ぎまして、財務部のほうから適当な評価をいたしまして神戸市に引き継ぐことに話ができております。
  121. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 実際に見ておりませんのでよくわかりませんが、いずれにしても青少年のための練成道場にするということを承ったわけでありますが、そういう処理にあたっても、新しく少年院を新設する、または土地を求めるのに非常に困難な時代であります。どうかその点もよく政府のほうで考えて、厳正な措置をしていただきたい、こう思います。  喜連川少年院の新設にあたって、ここにもありますように、非常に収容者が増加する傾向にありますので、非常に問題であると思います。その点について、大臣は青少年の現況をどのように把握しているか、その点お伺いいたします。
  122. 田中伊三次

    田中国務大臣 少年犯罪の最近の激増に伴いまして、これを慎重審査をいたしました結果は、勢い少年院に送ります少年の数もふえる傾向になっておりますことは、まことに残念なできごとでございます。しかし、その少年は、扱いようによりまして、犯罪人として刑罰によってこれを扱うというよりは、現行のわが国の法制のごとくに、保護処分によってこれを更生せしめるということに力を入れてこれほど力の入れがいのある事業はないものと考えておる。また、そういう実情にございますので、先ほどの御質問にもありましたごとく、環境をできるだけよくいたしますことと、第二にはこれを指導いたします人間に人を得るということ、そういう努力を十分に払いまして、今後成績をあげることに最善の力を尽くしていきたい、こう考えております。
  123. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 四十一年度の犯罪白書その他の青少年白書を見ていきますと、非常に青少年の犯罪が激増しておるわけです。これは大臣よく知っておるとおりでありますが、特に三十一年度に比べまして四十一年度等においては、約二倍くらいになっております。この点については、いろいろその原因なり責任の所在は問題がありますけれども、特に青少年の犯罪に対する原因がどの辺にあり、またどのような対策がいいか、いままで聞いてまいりましたが、より深くその点を承りたいと思います。
  124. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 御指摘のように、少年の非行ないし犯罪というのは、増加の傾向にございます。その増加の内容につきましては、一つはいわゆる道路交通法違反と申しますか、いわゆる交通犯罪、これが圧倒的に増加いたしております。いま一つは、いわゆる一般の刑法犯でございますが、これは数的には交通犯罪ほどの増加ではございませんが、内容的に非常に凶悪化しておるということが言えるのではないかと思います。したがいまして、私のほうの対策といたしましては、交通犯罪を犯した少年、これをどのように処遇をして、二度と交通犯罪を犯さないように持っていくか、さらに凶悪な犯罪を犯した少年につきましては、私のほうの処遇をする際に、従来以上にきめのこまかい法律的な処遇方法を考えなければならぬのではないかというのが基本的に考えておるところでございます。ただ、私のほうの所管しております少年院に入ってくる子供を見ておりますと、ごく大ざっぱに申し上げまして、約四〇%くらいの再入と申しますか、少年院に入った者がもう一度また入ってくるという状況にございます。そこで、なぜこのような再入者というものが大きな数字にのぼっているのかということを考えます際に、最初の非行ないし犯罪を犯したときに、いまよりももっときめのこまかい処遇方法というものを考えて、必要な法的な手当てをするものがあるならば法当な手当てをして、最初の非行ないし犯罪のときにもつと適切な手を打っていくということが必要ではないかというように、少年院の少年を見ていてそういう感じもいたしております。
  125. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまもありましたように、最近の犯罪の傾向は、年々青少年の中においても、いわゆる年少犯罪を起こす人間は、年の低い人が凶悪な犯罪を犯している。これは犯罪白書にもあるとおりです。そこで、現在の青少年問題に対して、またそれらの犯罪に対する対策はあるけれども、有名無実ではないか、このように思うわけです。そしてまた、その青少年行政が多元化されている。法務省、総理府または各省との連携はどのようになっておるのか。また現在のいわゆる対策、いままでにあるそれらの政策というものをそのままやって、青少年問題というものを政府は今後もやっていくのかどうか、その点お伺いしたいと思います。
  126. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 御指摘があったかと思いますが、現在非行ないし犯罪を犯す者、いわゆる刑事事件にならないものを含めますと、大体年間二百万人くらいあるのではないかと、私推測いたしております。その二百万人の非行ないし犯罪者のうち、最終的に少年院ないし少年刑務所に入ってくる者は、二万人足らずでございます。そういたしますと、残りの百九十八万人というものが、途中でどういうふるい分けがされ、どういう処遇がそれぞれ関係機関の間において行なわれているだろうか、また関係機関において行なわれている対策が後手に回っていることがないか、あるいは適切でないものがなかったかというような点が、当然問題にされる点ではないかと私思うのでございます。そういたしますと、結局関係機関の一貫した総合的な対策が円滑に行なわれていくということが、根本的に大切であると思うのでございます。そういう意味において、総合的な対策も一貫して円滑に行なわれるように、機構の整備あるいは緊密な連絡ということについて、なお一そうの努力が必要ではないか、このように私は考えております。
  127. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまございましたが、各省との連携ですね。たとえば今後は緊密にやらなければいけない、こういう具体的方策がありましたら、ひとつお伺いいたします。
  128. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 御承知のように、総理府に青少年局というのが新設されたわけでございますが、この総理府に青少年局が設けられた趣旨一つは、各省間の調整を円滑にやらしむるというのがその目的であろうかと思います。したがいまして、現在各省間にまたがる青少年関係の問題を協議していく際には、総理府の青少年局が中心になって、会議を開きながら調整をとっているのが現状でございます。
  129. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 どうもはっきりわからないのですけれども、私も地方議会におきまして、青少年問題については、いろいろと各方面に働きかけまして問題と取り組んだことがございます。しかしながら、お互いの関係において、うちの限界はここまでだ、青少年問題協議会はこうだ、お金がない、社会教育課ではここまでしかできない、こういうようなことから、最後的には、国において青少年行政というものについてはもっともっと力を入れてやるべきである、また予算措置等についても、さらにまたもっともっと増加させる方向に熱を入れて強力な施策が必要である。このように思ったことがございます。  そこで、大臣にお伺いしたいのですが、青少年行政の一元化がはかれないものかどうか。また、大臣の青少年行政に対する考えを伺いたい。
  130. 田中伊三次

    田中国務大臣 この行政の一元化でございますが、文部省も重要な行政を担当しておる。それから私のほうにも、これは主として非行少年でございますが、非行少年の処遇に関して深い関係を持っておる。それから積極的な面では、総理府に青少年局が設けられて、ここを中心に、あわせて各省との連携もここでとっておるという事情でございます。これを一元化いたしますことがはたしてよいものかどうか、私はありのままに申し上げますと、幾らか迷うところがございます。迷うところがございますが、総理府の青少年局を中心として、これをひとつ拡充強化をいたしまして、一元化いたしますとすれば、各省の持っております——各省といいましても特に文部省でありますが、ここに持っております権限をこれにできるだけ近づけていくというような方向でこれを改善していくことがよいのではなかろうか。直ちに一元化ということはいかがなものであろうかと考えておる次第でございます。
  131. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣、青少年のそれらの施設を視察されたことがございますか。
  132. 田中伊三次

    田中国務大臣 親しく視察をしてまいりました。この国会が終了いたしましたならば、全国的に少年院を親しく視察をしたい、こう考えております。
  133. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その点は、ぜひ視察していただきたいと思います。私も埼玉にあります少年矯正監察院に伺いました。私が驚いたことは、建物はあるけれども、ガラスがない、あれは何だと聞いたらば、講堂だ。それじゃバスケットボールか何かする施設があるのか、何もない。ここで何をやるのだ、ここで思い切りあばれるのだ、そうして破目板を破り、穴をあけ、そして満足するんだ、これが体育場だ。そして、いままで国会議員はどうだ、来たことがない。そしてきわめてそれらの施設が不備なわけなんです。まあよく古来より、その国の発展はその国の青少年の姿を見ればわかる、一国の興亡は青少年の姿によってきまるとまでいわれております。そしてまた、特に国の行政は、青少年に対する行政を真剣に取り上げる国が繁栄する、このようにもいわれております。そういう面からの、どうか法務大臣の前向きな、またそれらに対するあたたかい今後の対策を望みたいと思うのです。  さらに私は、それらの問題につきましていろいろ聞いてまいりましたけれども、特に現在においては、警察がその中心となって非行少年、不良少年たちを補導しておるようであります。しかしながら、非行少年の当事者から見れば、非常に警官というのは抵抗を感ずるわけなんです。そこで常に反逆をする、反抗をする、こうも彼らは言うわけです。そこで、民間によるこれらの保護司、こういうものについてどうなのか調べてまいりますと、それぞれの有力者がやってはおりますが、非常に待遇が悪い。また、それがために専門的にやれない。またはその保護司は大体一人で百六十二名くらいの人を保護観察しなければならない、こういうことがあるわけなんです。そういう点について、もっと予算措置なり保護司をふやす、こういうことが必要ではないかと思うのです。その点についてお伺いいたします。
  134. 田中伊三次

    田中国務大臣 現在定員といたしましては保護司は五万をこえておりますが、実際の実人員は五万を割っておる現状であろうと存じます。しかしながら、これらの保護司の諸君は、非常に犠牲的な心持ちを発揮せられて、これという手当も不十分であるにかかわらず、熱心に少年その他の補導にあたってくれておるという現状で、法務省といたしましては大いにこれに感謝をしておるという事情でございますが、いま先生御説のごとくに、この保護司の活用をしていくということ以外に、いまのところよい道はないと存じます。保護司をますますその処遇を政府の責任において力を入れてまいりますとともに、保護観察官の訓練をしっかりいたしまして、保護観察官の手によって保護司の指導も十分にいたしまして、横の連絡も十分にとりまして、少年保護の責任を果たしていくように努力をしていきたいと存じます。
  135. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣から伺いまして、そのことをぜひ実行していただきたいと思うのです。  なお、先ほどもお話ありましたが、最近の傾向として、非常に再犯の人が多いこういうことであります。なぜ再び罪を犯すか、非常に問題があります。私もある一人の少年の保証人になりまして、いろいろめんどうを見たことがございます。そのときに感じましてことは、まず社会に復帰しようとしても、その学校側で拒否するわけです。それからそれらの少年の補導所、そういうところについては、この人を責任を持って保証する、または学校において許可がなければ、出すわけにいかない。こうも言うわけなんです。さらにまたもう一つの問題は、これは先生から聞いたわけでありますが、少年院に入ると悪くなる、だから早く出してもらいたい、こういう面があるわけなんです。二つの矛盾があるわけなんです。そういう点御存じであると思いますが、しかしまた、知っているならば、その問題は非常に重大な問題でありますので、どういう対策があるか、また伺いたい。
  136. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 少年院の再犯の問題でございますが、私は根本的には、少年院に入らない、まだ根の浅いうちに適切な手が打たれていたならば、少年院に入らないで済んだ子供もあったのではなかろうか。したがいまして、現在の少年院に入ってくる少年を詳しく調べてみますと、少年院は初めてではあるが、非行は三回も四回も行なっているという、いわゆる非行の度合いが相当深くなった者が少年院に入っておるのが実情のように思うのでございます。そこで、まず非行が一回、二回のうちに適切な手を打っていくということが、前提として必要ではなかろうか。それから第二段階としましては、それはそれとして、現在入ってきております少年に対する教育のしかたの問題でございますが、それには現在の少年院の施設とか建物とか、そういったものは、はたして少年院の教官と収容少年との間にあたたかい人間的なコミュニケーションがつくられるような環境にない、欠けているところがあるのではなかろうか。まず、その辺の環境の整備をやって、教官と収容少年との間にあたたかい人間関係ができて、その上に必要な知識あるいは技能を教え込むと、ほんとうにこれは少年の血となり肉となっていく。そうすれば、これは少年院を出た際に、従来以上にこの少年がりっぱに社会を動いていくことができるのではないかと思います。そういう点のまず手当てが必要であろう。  それからさらに、少年院は現在どういうことをやっているのだ、どういう実情にあるかということについて、いまより以上に社会一般の人たちの御理解と認識を得るための方途を、私のほうとしてはもっと活発に行ないまして、そして少年院の出身というものについて理解のある態度をとり得るような対策を私のほうとしても講じていきたい、基本的にはそのように考えております。
  137. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 理屈ではそうなんですが、考えていく。これはいままでの委員会の記録を見ましても、そのように答弁なさっております。具体的には、地方の自治体または国において、たとえ一元化ができないといたしましても、よく連携をとって、とにかくそれがこのようにやってこうなったという一つのものが積極的に出るようにやっていただきたいと思うのです。そしてまた私が思いますのは、社会へ復帰する場合に、どうしてもそのままいくというのは、ほんとうに本人もまた受ける側も抵抗を感ずると思う。そこで、もう一歩社会復帰をさせる前の少年院といいますか、または職業の訓練所といいますか、いろいろな技術面の教育といいますか、いわゆる社会復帰少年院ですか、これは名前は不適当でありますけれども、そのようなものをつくったらいいのではないか、こういうような考えも専門家にあると思うのです。この点についての大臣の御所見を伺っておきます。
  138. 田中伊三次

    田中国務大臣 貴重な御意見と拝察をいたします。社会復帰の準備をする機関を必要とするのではないかという御所見と存じます。この点については、十分積極的にひとつ検討をしてみたいと思います。
  139. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 特に青少年の問題につきましては、犯罪を犯す者を取り締まるより、それ以前の問題、いわゆる現在の社会の環境、これが非常に大事であるといわれております。それがなかなか整備されないわけでありますが、そういう点についても、犯罪の温床になるような、またはそういう一つの環境を整備する何かを、ここで国のほうから打たなければいけないのではないかと思うのです。その点の具体的な構想を伺っておきたいと思うのです。
  140. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 御指摘のとおりでございまして、かりに私のほうの少年院だけが幾ら力を入れても、この問題は解決しない問題でございまして、結局非行青少年対策というのは、いうなれば国民運動といった層の広い一貫したものでなければ効果はあがらないと思うのでございます。私のささやかなる経験でございますが、外国の非行青少年対策で効果をあげております国の実情を見てまいりますと、単にいわゆる取り締まり機関だけではなくて、赤十字あるいは母の会、いろんな社会一般地域の団体が協力してやっているのが実情のように思いますので、わが国においてもそのような心がまえが必要であろうかと思っております。
  141. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最後大臣に。いずれにいたしましても、先ほどからたびたび申しますように、青少年の問題については熱を入れて、しかもまた、日本の国の繁栄には、次の時代をになう青少年が非常に大事なのでありますから、国のあたたかい愛情のある施策を強力に推進して、そして今後こういう犯罪や、また非行青少年がたくさん多くてしようがない、このような状況になってはいけないと思うのです。その点の大臣の積極的な姿勢を最後に承りたいと思うのです。
  142. 田中伊三次

    田中国務大臣 十分心して、最善を尽くしてまいります。
  143. 關谷勝利

    關谷委員長 山内広君。
  144. 山内広

    ○山内委員 先ほど来各委員質問をお聞きしておりましたが、共通して言える点は、守れる法をつくれ、こういうことに尽きるような印象を受けたわけであります。法の番人である法務省方々に、法を曲げろとか、そういうことは私はもちろん申し上げない。けれども、法を守るにあまりに厳格過ぎて、どんどん日進月歩する世の中に沿わないような措置というものは、これは改めなければならない。その点については大臣からまともな御答弁が出ましたので、私、感心して聞いておりました。やはり法を守る人と、行政長官大臣の立場は違うのですから、大いにその点お願いしたい。特に先ほど大出委員が申されました、終戦後のああいう混乱の中で、いろいろな事情があったにしても、密入国された、それから結婚して、子供があって、りっぱな日本の国民として仕事もやり、税金も納めているにもかかわらず、密入国の事実がわかって、それが収容所に何年もおさまったままでおる、これははなはだ私は心外なケースだと思うのです。先ほども大臣最後に言われたとおり、死刑に値する極悪犯人であっても、十五年もたてば、それが何ら悪いことをしないで善良な国民であれば、もうその罪は問わない。それが、ああいう密入国が、ああいった社会の秩序の守れない時代に行なわれたことに対して、いまもって拘束を受けておるという事実は、これはもう見逃せないと思います、これは御答弁要りませんから、ひとつまともに御解決をいただきたい、こういうように思います。  時間もありませんので、簡潔にお尋ねいたします。ただいまの再度山少年院の廃止と、今度栃木にできる一つの少年院、これは、法案を読みまして、どうもこれだけでは受け取れないんです。というのは、こういう施設がどんどん増強を必要とするときに、これはたしか三十七年に法務省でおつくりになって、まだ五年春たっておらない。そして、山の中腹であり、水が不足だという理由は申し述べられておりますけれども、もうそのときにわかっていなければならぬ。しかも、神戸から栃木に今度は新設するんですから、距離的に見ても、これは二つの因果関係というものは考えられない。その点で、どういうお考えでこういうことになったのか。この最初の三十七年にこれを選ばれたときに欠けるところがなかったのか、その点をちょっとお伺いしたい。
  145. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 神戸の再度山の少年院を新設いたしましたとき、当時大阪の管内の非行少年がふえておりましたので、やむを得ずつくったのでございますが、ただいまのような状況で、施設の運営が困難になりましたので、そこでそのかわりの施設を、全国的にバランスをとって見合う施設をつくる必要があるということで、栃木にその候補地を物色して入手することができたわけであります。
  146. 山内広

    ○山内委員 それだけでは了解できないと言っているんですよ。栃木と神戸と距離があって、因果関係はないでしょう。しかも廃止されようとする再度山の少年院は、今度は学校に使うというんですから、少年院として全然使いものにならぬものを学校に使うということになれば、とても得心がいきません。もう少し詳しい説明をひとつ。
  147. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 少年院には別に地域的な管轄といったものはございませんので、全国的に収容を配分しております。  それから、学校にあとを使うという詳細につきましては、神戸市のほうの計画によりますと一種の練成道場でございまして、結局、少年院のように三百六十五日少年を絶えず収容して教育をしていくというのとは少しく違った運営の学校のように承知いたしております。
  148. 山内広

    ○山内委員 この議論は議論倒れになりますからやめますけれども大臣、なぜこういうことを心配しているかというと、実は前に、川崎のあの収容所をつくるときの行政財産の処分について、この委員会で問題になりました。この財産の扱いというものが、失礼ですが、非常にお粗末な扱いをしておられる、軽視しておられる、そういう印象を私は深くしておるわけです。そういう意味で、この少年院も、三十七年に新設して、そしてまた、予算が幾らかかったかわかりませんが、栃木に求める。しかし、神戸地方だって決して少年犯罪が少なくなっていることはないと思う。統計上要らなくなったという自信があるならば示していただいてもいいのですが、おそらく常識判断で、このかいわいが、ふえこそすれ減っていないと思う。また再び、今度はその近所に新設が要請される。そうしますと、せっかく前に財産をつくったやつをまたつくらなければならぬ。そういうことのためにちょっと確認しておくわけです。
  149. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 再度山の学園の敷地は神戸市の所有でございまして、それを借料を払って借りていたものでございます。  それからなお、大阪地方の少年院でございますが、東京に比較いたしますと、やはり少年犯罪の数は少のうございます。特に最近は、中等少年院に入れるべき年齢層の犯罪少年が増加いたしているということで、少年の年齢層その他において全国的にバランスをとって木連川に少年院を求めることにしたのであります。
  150. 山内広

    ○山内委員 そのことはそれくらいにして、聞きとどめておきましょう。  今度、入国管理事務所の出張所が六カ所新設することになりますが、この出張所の職員の配置はどういうふうに計画されておりますか。
  151. 中川進

    中川(進)政府委員 私ども、新しい事務所でございますから、できればそれだけ新しい人をもらいたいと思って要求いたしましたが、予算で増員が認められませんでしたので、やむを得ず大村から人を持ってきて埋めるつもりでおります。
  152. 山内広

    ○山内委員 その努力はわかりますけれども、できた場合、一体職員を何名ずつ置くつもりなんですか。あるいはまた、ほかにもたくさん、六十カ所も出張所があるわけですけれども、それとの見合いでどれくらいの配置になりますか。
  153. 中川進

    中川(進)政府委員 各港二名ずつ配るつもりでございます。
  154. 山内広

    ○山内委員 そういう御回答があると、はたしてこの入管の事務所の仕事を出張所という肩書きを持って——これは国民が出入りするところなんで、二人で足りるとお考えですか。どういう勤務をするか知りませんが、二人では休暇もとれなければ、休みもとれない。そういう意味で、無理にこういう出張所をつくっても、人員配置が適当でないと、これは開店休業になりますよ。そういう点はどうですか。
  155. 中川進

    中川(進)政府委員 御指摘の点は、確かにおっしゃるとおりでございますが、いかんせん、国家財政の現状から考えまして、二人でやっておるところは現在もかなりございまして、とにかく大過なくやっておるわけでございます。
  156. 山内広

    ○山内委員 法務省の人員については、ここでも地方法務局の人の問題なんかがいろいろ出ておるわけです。大村収容所から回すといっても、六カ所といえば、二人ずつで十二名ですね。現在何名おってそれだけの過剰員を持っておるのか、過剰員というと悪いかもしれませんが。
  157. 中川進

    中川(進)政府委員 現在、大村には百二十名います。
  158. 山内広

    ○山内委員 そうしますと、一割の人員をこっちにやる。これは必要なものは人員ももっと置かなければいかぬ。こういう施設をしても何にも機能の発揮できないようなことは、私おかしいと思うんですよ。大臣、どうですか。
  159. 田中伊三次

    田中国務大臣 これは私の責任でございますが、人員の増加がなかなかうまくまいりません。そこで、やむを得ず他庁から出張を命じて仕事をさせる。ところによりましては、一人でやっておるところもございます。こういう事情でございますから、不十分ではありますが、二名配置をいたしまして、万全を尽くしてやっていきたい。将来の人員の配置を顧慮いたしまして増員を求めまして、これに充足してまいりたいと思います。
  160. 山内広

    ○山内委員 そういう御答弁よりいまの段階では出ないだろうと思いますけれども、そういう点では、必要ならばやはり置かなければいかぬと思います。  はしょってお伺いしますが、私どもも内閣委員会にいろいろかけられます設置法の提案のしかたで、いろいろ考えておる点があるわけです。村が町になった場合に、これも一々内閣の承認を得ておるわけです。事務の簡素化というか、能率をあげるために、自治省がすでに告示をされて、村を町にした場合には、自動的にこういう法令も改まるような簡単な方法が講じられないものですか。これは行管の仕事かもしれませんけれども、ちょっとお尋ねします。
  161. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 村が町になった、あるいは名称が変わったというような簡単な事柄のために一々法律を改正しなければならないということは、仰せのとおり非常に煩瑣なことでございます。したがいまして、これを何か一括して、当然に変えられるという方法がございますれば、一番都合がよいわけでございますが、いろいろな法律がございまして、それにいろいろな町名が関連してまいりますので、いままですべて各別に改正をするという方式をとっておりますので、今回もその例にならったわけでございます。
  162. 山内広

    ○山内委員 これは私のほうでも行管とも相談して、何か便法がないと——たとえば、いまお出しになっておる法案の中で、熊本県の錦村というのを錦町に改めた。この告示は四十年の三月三十一日に出ている。いま四十二年ですから、前の国会のその前の国会で法案を、それほど神経を使ってお考えになるならば、出さなければならなかった。これは二年間もそのままにして、何ら支障なしに実際は行なわれているのでしょう。どうしてこれはおくれたんですか。
  163. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 実は昨年の国会は、実質的に改正していただくような点がございませんでしたので、単なる整理だけはその次の機会にでもよかろうということで、見送ったのでございます。
  164. 山内広

    ○山内委員 時間がないので終わります。
  165. 關谷勝利

    關谷委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  166. 關谷勝利

    關谷委員長 ただいま委員長の手元に、細田吉藏君外三名より本案に対する修正案が提出されております。
  167. 關谷勝利

    關谷委員長 提出者より趣旨説明を求めます。細田吉藏君。
  168. 細田吉藏

    ○細田委員 ただいま議題となりました法務省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  案文は、お手元に配付してありますので、朗読は省略し、その要旨を申し上げますと、原案中「昭和四十二年六月一日」としている施行期日については、すでにその日を経過しておりますので、これを「公布の日」に改めようとするものであります。  よろしく御賛成くださるようお願いいたします。     —————————————
  169. 關谷勝利

    關谷委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の通告もありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、細田吉藏君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  170. 關谷勝利

    關谷委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  171. 關谷勝利

    關谷委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては原案のとおり可決いたしました。  これにて法務省設置法の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  172. 關谷勝利

    關谷委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 關谷勝利

    關谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  174. 關谷勝利

    關谷委員長 大蔵省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、これを許します。受田新吉君。
  175. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっと大臣質問いたします。  あなたのお役所の改正案を拝見しますると、今度業務の担当を各局間で相当融通しておられるわけですね。所管が移動しておるわけです。この所管の移動によって理財局の所掌事務が国際金融局に移ったり、その他金に関する事務をこの国際金融局に統一をしたりということによって、役所間の事務量のバランスの点に支障はないわけですか。
  176. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 お答え申し上げます。  現在、この事務の移管によりまして、むしろ事務がある程度、かつて所掌いたしました事項が非常に縮小したということで、整理するというだけでございまして、そのために局間で事務の支障があるとか大きな人の移動があるということは、さしてございません。
  177. 受田新吉

    ○受田委員 一例として、賠償事務を国際金融局に移管することで理財局の仕事はそれだけ減りますね。
  178. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 従来賠償関係の仕事を理財局の外債課というところが所掌いたしておりましたのですが、相当賠償業務が終わりましたので、すでにその事務は総務課に移してございまして、なお、その事務をほとんど終了したということで、無償経済協力その他を主として所掌しております国際金融局とあわせて事務を処理してもらったほうが好都合かということで統合いたすわけでございまして、ほとんど事務の支障はございません。
  179. 受田新吉

    ○受田委員 そこに配置された職員はどういうかっこうになりますか。
  180. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 この関係で理財局から国際金融局へ移す人間はございません。
  181. 受田新吉

    ○受田委員 人的な移動はない。そうすると、いまの賠償業務というのは、担当する職員はどれくらいおったわけですか。
  182. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 先ほど申し上げましたように、すでに外債課を整備いたしまして総務課のほうに形式的に移しておりましただけで、すでに賠償業務の事務が実質的には終了いたしておりますので、特に専担しておる者はないという形になっております。  なお、ちょうど国際金融局長も参りましたので……。
  183. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 賠償の事務は御案内のように大体済んでおりますフィリピン等大きい協定は三つございますが、だいぶ前に済みまして、現在賠償の経理の事務は外務省にありまして、事務の量といたしましては非常に減っております。  それから賠償以外の渉外負債といいますか、このほうの仕事も残ってはおりますが、ごくわずかでありまして、年に数件を処理さしておる状況でございます。
  184. 受田新吉

    ○受田委員 フィリピンの後半の処理の分が残っておりますよね、それも簡単に片づく。これは外務省に移管したのですか。
  185. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 協定というか、賠償の内容を打ち合わせる問題が残っております。  それから賠償を実施いたします経理上の問題もございますが、経理のほうの問題は外務省に委任さしております。  それから賠償の中身をきめてまいります問題につきましては、各省間で常時協議を進めておりますが、これにつきましては、事務の量といたしましてはさほどの量ではございません。
  186. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、実質的には大蔵省の賠償業務というものは消滅した。実質的には任務は完了したようなかっこうになるわけですか。
  187. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 実質的というか、仕事の量からいたしますと、ほとんど終わったようなものでございます。
  188. 受田新吉

    ○受田委員 今度の改正案の中で、ここに一応理財局の業務というものから賠償業務というものをはずして、国際金融局へ移動しておる、こういうかっこうが取られておる。しかし、それはもう全く形式的なものであるということですね。
  189. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 形式的と申しますか、責任の所在という意味から申しますと、やはり賠償の実施につきましての責任はございますから、それにつきましては、やはり分掌規程上の改正が必要かと存じます。
  190. 受田新吉

    ○受田委員 残務整理のようなかっこうで規定を設けた、こう了解していいですね。
  191. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 残務の処理をする責任を書いたということでございます。
  192. 受田新吉

    ○受田委員 いかにも大げさな書きぶりがしてある。改正のポイントの一つに入れて、さも大事な仕事の所管がえをするような印象を与えておるものですから……。わかりました。  そこで私、きょうは質問のポイントを押え、金融局の業務の中に金に関する件を一元化しようというねらいがあるようでございますから、それについてお尋ねをしたいと思うのです。いま日本は、金はどれだけ保有しているわけですか。
  193. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 金額にいたしますと約三億三千万ドルになります。
  194. 受田新吉

    ○受田委員 トン数にしてどのくらいあるのですか。
  195. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 約三百トン強であります。
  196. 受田新吉

    ○受田委員 金は三億ドル、三百トン程度で、日本大蔵省が外国との間における信用を維持することが可能であるかどうか。金の準備率というものを国際的にどこへ水準を置いて、日本は現在のところで適当であるという基準を持っておられるか。現在のもので適当であるという一応の政府自身の自信がある保有であるかどうか。この二つの点についてお答え願います。
  197. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 この問題は、あるいは大臣からお答えすべき問題かもしれませんが、私どもとしましては、二十億ドルの外貨準備のうちで金が約三億三千万ドルでありまして、これは西欧各国に比べますと少ないことは事実でありますが、日本の外貨準備の現状、日本の外貨の運用状況から申しまして、これで適当であるという判断をいたしております。金の保有が少ない問題につきましては、かねがね政府考え方といたしまして、外貨準備がふえるに従って金の保有をふやしてまいりたい。三億三千という数字は外貨準備の現状におきまして適当であるという判断であります。
  198. 受田新吉

    ○受田委員 金には、政府自身の保有の対策の中にも、いろいろと医学的な必要性その他の金の準備というものが要るわけですが、金は日本の現時点における使用量から見て、外国からどのくらい毎年買い込んでおるのか、今後買い込もうとしておるのか、お答え願いたいのです。
  199. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 いま金に対する需要でありますが、これは従来外国から全然輸入しておりませんで、国内産金のうち、政府買い上げ分以外の分を全部産業用の金に充てておりますが、その数量は十四、五トンかと存じます。ところが、金に対する需要がかなり多いということを勘案いたしまして、四十二年度予算におきましては、十トン程度を政府の予算において輸入してこれを産業用金に回すということを決定いたしまして、先般御審議いただきました四十二年度予算におきまして貴金属特別会計に十トンの金を輸入する予算を計上いたしております。したがいまして、今般予算の成立に伴いまして、金を外国からすみやかに輸入して国内の産業用金の需要に対応いたしたい、さように考えております。
  200. 受田新吉

    ○受田委員 どれだけのものを買おうとしておるわけですか。
  201. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 本年度十トンであります。
  202. 受田新吉

    ○受田委員 さらに年次計画的なものを示してもらいたい。
  203. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 産業用金の需要に見合って、国内産金の状況とにらみ合わせて、必要なものを外国から輸入していきたいと考えておりますので、別に年次計画を設けて輸入するという考えでございませんで、むしろ年々の必要なものを予算に計上して輸入していきたい、さように考えております。
  204. 受田新吉

    ○受田委員 この金の対外決済準備としての重要性にかんがみて、ここに金の事務を国際金融局に一元化させるという一つのねらいがこの改正要旨を見るとありますね。そうすると、対外決済準備として十トン程度で間に合うわけですか。
  205. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 ただいま御説明いたしましたように、産業用というか、通貨準備用の金ではなくて産業用の金、つまり金製品、入れ歯とかそういうふうな需要に対応するための金として十トン輸入するというわけでございます。それから通貨準備の金をふやすという問題は一応別でございまして、その問題につきましては、先ほど申し上げましたように、二十億の外貨準備が今後ふえる場合に、そのふえた外貨準備のうちの幾ばくを金に回すかということについては、あらためて検討いたしたいと思っております。
  206. 受田新吉

    ○受田委員 この外貨準備で金をどれだけ用意すればよいか、大臣、あなたのほうでは、いまの国際間のバランスの上あるいは対外決済準備という立場から、現時点における産業用の金とか医学用の金とかいうものと別の意味の外貨の対外決済の準備のための金というものを、あなた御自身は何か考えところがあるのではないでしょうか。いまの二十億の中にどれだけ占めるかということについてもひとつ……。
  207. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 外国における保有外貨の中に占める金の比率というものは、各国とも日本より相当多いのですが、実際問題としましては、金を決済手段として使用するということは現実にはほとんどない、その必要がないということでございますので、これがどれだけなければならぬかということは簡単には基準がございません。日本の場合は、保有外貨がふえるにつれて金の割合をふやしていくということはやりたいということで、少しずつ金をふやしてはおります。しかし、実際におきましては、これは金の形でなくて運用するほうが、現に日本の信用の上におきましても、また外貨を、これは金利のつく運営のしかたをすればそれだけ外貨が入ってくるわけでございますので、金にしなくて、ほかの運営のしかたのほうが実益があったというような点から、金をふやすということをきょうまでやってきませんでしたが、それで現実に別に支障があったわけではございません。
  208. 受田新吉

    ○受田委員 産業用の、あるいは医学用の金を密輸入をしている傾向があるわけなんです。これは大蔵省としては一体どのくらいの量に見積もっておられるか、延べ棒としてかかえてくるやつです。
  209. 細見卓

    ○細見説明員 正確な数字がわからないところが密輸の密輸たるゆえんでございますが、つかまりますのがおよそ五トン程度でございます。
  210. 受田新吉

    ○受田委員 これは相当のもんです。いま十トンを輸入するというお話が出たのですが、その半分は密輸入じゃないですか、いかがですか。
  211. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 密輸はもちろん好ましくないことでありまして、そういう密輸の多いという事情を勘案いたしまして、今般政府として、政府が金を輸入する方針を立てて実行しようというわけなんでございます。十トンの金で間に合うかどうかという点につきましては、もしそれで需要を十分まかない切れない場合には、さらに金の輸入をふやしてもよろしいかと存じます。
  212. 受田新吉

    ○受田委員 いま政府が計画しておられる輸入量十トンの半分は密輸入ということなんです。それを計算に……。   〔田中国務大臣「それ以外に……」と呼ぶ〕
  213. 關谷勝利

    關谷委員長 私語をしないで速記がとれるように一問一答してください。
  214. 受田新吉

    ○受田委員 それでは私ここで明らかにしておきたいのですが、密輸入を見越していままで外国からの産業用、医学用の金というものの輸入を差し控えておったということにもなるわけです。そうですね。それを明らかにしていただきたい。
  215. 柏木雄介

    ○柏木政府委員 密輸があることも事実でございまして、また密輸がふえてきておるということも、税関のほうの数字からも出てまいりまして、そういうことを勘案いたしまして、昨年の暮れに政府として金を輸入する方針を打ち立てたわけでございます。したがいまして、これから成規のルートで——成規の配給ルートと申しますか、そういうルートに乗る金がふえてまいりますれば、それだけ密輸の需要の減るのではないか、さように考えております。
  216. 受田新吉

    ○受田委員 外国の金の価格と国内の金の価格とに相違があるからこちらへ流れてくるわけです。密輸が成り立つわけです。密輸した金は日本政府が没収しておるのかどうか伺いたい。
  217. 細見卓

    ○細見説明員 見つかりましたものは全部没収いたしております。で、これを引き継ぎまして、成規のルートに回しておるわけでございます。
  218. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると密輸は日本の金政策に非常に貢献しているということになりますね。いかがですか。
  219. 細見卓

    ○細見説明員 およそ法律を破るものが国益に貢献しているというわけにはまいらぬと思いますが、そういうものが実際上の需要をある程度満たしておった面もあると思います。いま申し上げましたのは、つかまえましたものでございますので、それが密輸として貢献しておったということではないと思います。
  220. 受田新吉

    ○受田委員 密輸し、つかまった者から没収した金の量はどれだけあるかお示しを願いたい。
  221. 細見卓

    ○細見説明員 それが先ほど申し上げました五トン程度というわけでございます。
  222. 受田新吉

    ○受田委員 その五トンというのは相当な貢献度ですよ。それだから決して貢献度が薄いなどという解釈は成り立たぬわけです。要するに、密輸して没収した金は日本の産業用金として貢献をしている。むしろことばをかえて言うならば、それを放置して、そうして没収して、金の需要を満たしてきた。そこに大蔵省の金政策はあったと思うのです。これはずるい考え方ですね。それで、ここで金に対する事務を国際金融局に一元化してやろうということになってきたわけでございますが、私はこの密輸を当て込んだ部門が大蔵省の金政策の中にあったような印象を受けることは、はなはだ残念に思う。今後堂々と正規のルートでその必要量を日本へ持って来て、金の価格も、密輸で流される価格で高いものを国民はつかまされておるわけでありますが、それを正常な価格で需要者の要求を満たしていくという形のものにして、この機会に思い切ってあなた方のほうで密輸撲滅の対策を考えてもらいたい。大臣、よろしゅうございますね。  そこで次に、この法案に直接関係をしない問題でありますけれども、私非常にいま懸念している問題があるのです。それは銀行局の所管事項です。相互銀行法という法律が昭和二十六年にできて、国是大衆のための金融として貢献をしてわけです。ところが、この相互銀行は、頼母子、無尽から始まって、相互銀行という、普通銀行に対応する銀行ができたわけでございますが、この相互銀行の預金は掛け金を対象とする例の頼母子掛けの変形したものと、普通預金、積み立て預金というものでできておるわけですけれども、大衆から扱い上げた庶民の金を大企業に大量に融資しているという現実があるかないか。相互銀行法の適用を受ける銀行がやっている融資の対象、大企業に大量に流れていないか、その数字があったらお示し願いたい。
  223. 澄田智

    ○澄田政府委員 いま御質問の、相互銀行の融資のうちで大企業に回っているものがどのくらいあるかというお尋ねでございますが、大企業と申しますとその範囲が問題になるわけでございまして、御承知のとおり相互銀行は主たる業務として中小企業金融を営む、こういうことで運営され、また指導もしてきているところでございます。そこで、相互銀行の取引先のうちで中小企業以外のものという数字で把握いたしております。そういたしますと、これは結局中小企業基本法の中小企業ということになりまして、鉱工業とか運送業とか、一般のそういった場合につきましては資本金五千万円以下あるいは従業員三百人以下ということになります。ただ商業やサービス業の場合は、それぞれ一千万円以下と五十人以下ということになっておりますが、そういう中小企業の割合でどのくらいかということで数字を把握いたしております。中小企業も経済の成長に伴って同じ企業がだんだん規模が大きくなってくる、中小企業を卒業していわゆる中堅企業に入ってくるというようなこともありまして、そういう場合には従前の取引関係が続いている、こういうふうなことにもなります。中小企業以外のものがどのくらいかという点につきますと、昭和四十二年三月末の比率で申し上げますと、総貸し出し量の一九%程度が先ほど御説明申し上げました中小企業でないもの——大企業というわけにはいかないと存じますが、中小企業でないものに融資されている、こういう状況でございます。
  224. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは全国の全部を総括した意味でいま御答弁になっていると思うのですが、特定の相互銀行の中に、相互銀行法第一条の、「国民大衆のために金融の円滑を図り、」という目的を逸脱して、国民大衆でなくして、特定の大企業に融資しているという具体的な事例はないか。そのくらいは監督官庁である大蔵省は御存じであると思うのです。特定の最も大企業に融資ワクが大幅に回っている具体例があれば、監督して御存じだと思いますので、御説明願いたい。
  225. 澄田智

    ○澄田政府委員 繰り返して申し上げますが、大企業ということでなしに、中小企業基本法にいう中小企業の定義外のものにどのくらい行っているか、その比率の高い相互銀行はないか、こういうお尋ねとしてお答え申し上げますと、先ほど私が申し上げましたのは全体の数字でございますので、若干の相互銀行におきまして比率の高いものはございます。
  226. 受田新吉

    ○受田委員 具体的に示していただきたい。
  227. 澄田智

    ○澄田政府委員 ある高い数字をちょっと申し上げますと、特定の相互銀行で、私が先ほど一九%と申し上げました数字が三九%という程度の相互銀行がございます。
  228. 受田新吉

    ○受田委員 それは何という相互銀行ですか。公表するにはばからないと思います。
  229. 澄田智

    ○澄田政府委員 ただこれは特定銀行の例でございまして、三九%という数字を申し上げましたが、そのほかにも若干これに近いようなものもございます。その行名は一応差し控えさせていただきたいと存じます。
  230. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、相互銀行法の第一条にあるように、国民大衆のために金融の円滑をはかるためにこの相互銀行ができたのです。頼母子講がかっこうをつけたわけなんです。庶民の金融機関なんです。庶民から零細な資金を獲得して、それを四〇%も目的の中小企業以外のものに融資しておるというようなことになったのでは、相互銀行法第一条の目的を逸脱すると私は思う。大臣どうでしょう。
  231. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いわゆる中小企業の金融機関の実情を見ますと、当初はそういう目的で出発しましても、資金量が非常に多くなったということ、それからまたいま銀行局長が言いましたように、当初は対象が中小企業であったものが成長して中堅企業になっておる。それと引き続き取引しておるという形になりますと、中小企業以外への貸し出し比率が多くなるというような問題もいろいろ最近の経済の変化に応じて出てまいりましたので、これらの問題を今後どういうふうに調整するかというようなことを一括して、いま金融制度調査会にこの問題をかけてあります。特に中小企業の金融機関を中心として今後どういう金融行政をやるべきかという制度の問題まで含めていま諮問しているところでございまして、この結論が一応ことしの秋ごろにつくという予定になっております。
  232. 受田新吉

    ○受田委員 相互銀行法をつくって、それを管理監督する地位にある役所である大蔵省——相互銀行が普通銀行並みになってきている、外国為替業務だけやっておらぬ程度で、あとは同じものをやっている。これでは何のために相互銀行という庶民金融機関をつくったか意味がなくなってくると思うのです。もう普通銀行並み、少なくとも地方銀行並みにはみななって、全国に支店などを設けている相互銀行がいまあると思うのですが、これは都市銀行に近いところまで規模を高めてきている。これは相互銀行本来の目的を私は逸脱していると思う。それを今日、特別の審議会にかけてどう調整するかを御相談されるとか、しかもそれは秋ごろ結論を得てというようなお考えでは、これは歴代の大蔵行政というものに非常に大きな欠陥がある。庶民の金をかき集めて、利用するほうは特定の大企業がこれを使っておる。膏血をしぼった庶民の血涙の金を、庶民にこれを利用させるという本来の任務を逸脱している。大蔵省はもっと大衆の頭金の活用面を、大衆に還元するという基本的な考え方を持たないと、病膏肓に入ってから審議会に持っていって、それでいま御相談しておるということは、大臣としては職務怠慢だと思うのです。
  233. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はそう思いません。そういう変化が金融機関の中に出てきておるのが実態だとしますと、本来の目的を逸脱したと見るべきか。本来の目的を貫くためには、さらに金融制度の、金融機関のあり方がこういう方向に向かわなければならぬ、そういうものができれば、もとわれわれが予期したような本来の目的を達成することができるんだということにもなると思いますので、そこらの問題をこれから解決していくのがこの次からの問題だ、私はそういうふうに考えております。  ですから、もう普通銀行と同じになったものに特に中小企業金融というような特別の任務を負わせるのか。そういうものではなくて、次のにない手をほんとうに合理的につくっていくのがいいのか。そうでなければ、一般銀行においても大企業にも金が貸せるようになっていますし、中小企業へも一定の比率で金融をやっているというふうに、普通銀行においても中小企業への金融は円滑にやっている方法もございます。そうしますと、信用金庫とか信用組合とか相互銀行とか、一般銀行の、特に中小企業の金融を見るものとか、政府関係の三機関、こういうようなもののあり方をここで総合的に研究して、本来の中小企業に対する金融をどう合理的に円滑に果たさせるかということが、私は私どもに課せられたこれからの課題だというふうに考えております。
  234. 澄田智

    ○澄田政府委員 ちょっと補足して御説明申し上げます。  ただいま大臣から相互銀行の行なっている金融の実態が変わってきたということでございますが、一つの例で御説明申し上げますと、先ほど御質問にありましたように、元来無尽会社から相互銀行という制度に変わりました。そのときの資金の吸収の方法としては、無尽の掛け金、相互掛け金という形で資金を吸収しておりました。おっしゃるとおり、それは零細の資金を集める形として、日本古来の金融の形として行なわれておった。その資金の割合が、相互銀行を発足いたしました二十七年の三月には、相互銀行の全体の集める資金のうちで七〇%をこしておりました。七一%というような割合でございます。それが四十一年の三月には八・一%に落ちておるわけでございます。相互銀行が貸し出し面で御指摘のようなことがあるのは事実でございますが、それとは別に、資金吸収の面で取引の実態が変わってまいりまして、相互掛け金というふうなものが非常にウエートが減ってきているということでございます。こういう傾向は、言ってみれば、経済の自然の勢いというようなものでございまして、大臣から申しましたように、これからの金融としてどういうふうにあるのがいいのか、相互銀行はどういうふうな地位をこれからの金融で占めるべきか、中小金融はどうあるべきかというようなことを、現状を前提として発展的に考えていこう、こういうことであろうかと存ずるわけでございます。
  235. 受田新吉

    ○受田委員 相互掛け金制度というのが主軸であったことは間違いない。一般の預金というものがふえて、相互掛け金の預金のほうが減ってきた。しかし一般掛け金も庶民の金です。これは間違いない。国民大衆の資金です。したがって、相互銀行発足の目的、相互銀行法第一条の目的にかなうように——普通銀行は銀行法という法律で規制されておる。相互銀行という独特の庶民金融機関をつくった以上は、庶民金融機関らしい立場にはっきり赴いておかなければいかぬ。一人前の普通の従来の銀行と同じようなかっこうをとらせるのは、相互銀行法の法の精神じゃないということを大臣は十分この機会に頭に入れていただいて、庶民の金融機関としてせっかく十五年間の歴史を持ったこの相互銀行を本来の姿に復元させる努力をしてほしい、これを一言申し上げます。  いま一つだけで私の質問を終わります。いま生命保険会社という相互組織が、その保険料で徴収した金の三分の一程度を株式投資に回している。したがって、機関投資家としてはこれはなかなか力のあるものになるわけだ。いまごろ特定の企業は、安定株主工作というようなものをやって、安定した株主をつくって、企業を安定させたいという気持ちがあるようだけれども、生命保険会社が株式を保有するということはあまり歓迎すべきことじゃないと思うのです。それをある時期になると大量に放出して、株式市場を操作する力を持ってくると思う。それからもう一つ、これに伴うて、共同証券や保有組合というのが、株価の安定をはかるために、保有している株式をこれにまた放出する。生命保険のような機関投資家が放出する、保有組合、共同証券みたいなものが放出するということになれば、株価操作をこれらの機関がりっぱにやってのけるということになってくる。正常な株価安定工作はどうなるか。一つの大きな力がここに働く。大蔵省はこれをこのまま認めて今後進めていくか。特に今度、証券の信用取引制度を改正して、六カ月の長期的な取引を乗りかえ料なしに継続せしめるような制度を考えておられるそうですが、それが実際にやられるのかどうか、あわせて、株式市場というものの株価安定工作に対する、いま私が指摘した問題にどうぞ明快な御答弁を与えていただきたい。
  236. 澄田智

    ○澄田政府委員 私のほうから、生命保険会社の株式の保有の状況についてまず御説明申し上げます。  御承知のとおり、生命保険会社は契約者から預託されました長期の資金を、安全、確実かつ有利、そういう目的で運用するのが第一の目的でございます。お示しのような機関投資家として安定株主の役割りを果たすということは、いわば副次的な作用でございます。最近、そういう作用に着目してのいろいろの議論もあるわけでございますが、生命保険会社としては、運用対象としてどういうふうに運用するかということをあくまで第一の目的といたしております。四十一年は、金融情勢から申しまして、一般に資金需要は低調でありました。そういうこともありまして、一般の貸し出しがそう伸びなかった。その反面、資金運用としては株式投資がふえたことは事実でございます。四十一年度の売買の実績で申し上げますと、生命保険会社の新規の株式の取得額というものは二千百六十億円、こういうような数字になっております。ただ、これが大量に放出して株価工作に用いられるというような点につきましては、これだけ生命保険会社の株式の新規取得がふえたのでございますが、これに比べますと売却額は非常に少ない。四十一年全部で百六十億、こういうようなことでございまして、株式取得額は四十一年は非常にふえましたが、売却の状況等から見まして、この保有株式を操作して市場工作を行なうというようなことは全然ない、こういうふうに存じております。
  237. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 株式取引につきましては、できるだけ多数の需給が、しかもある程度モダレートな数量におきまして統合いたしまして、そこで円滑にして公正な価格形成と流通が行なわれるということが一番望ましいわけでございます。さようなわけで、近時、いわゆる機関投資家のシェアというものが大きくなってまいりますということは、さような点から申しまするとはたしていかなるように評価すべきかどうか、問題だろうと思いますけれども、しかしながら、ただいま銀行局長からお話しのように、需要がある限りにおきまして、しかも大量の資金を株式投資に有利と考えて投資される場合におきまして、それを拒むわけにはまいりません。目下のところ、市場要因から申しますと、投資信託をはじめ売り要因があるところに対して、機関投資家が生命保険を中心とする大量の買い付けがあるということは、現在の株価水準の維持という点から申しますと、安定的に働いている面があろうと思います。  なお、将来におきましても、株主安定化工作との関連、ないしは根幹たる機関投資家が大量に放出いたしまして、株価不安定あるいは乱高下を来たすといったようなおそれも、それぞれ個人の収益なり利回りに関係することでございますから、あまり心配するには及ばないと思いますけれども、いずれにいたしましても、証券局といたしましては、できるだけ堅実な投資マインドに基づく個人株主というものが育成されまして、大きくモダレートな数量による需給が市場を中心に動かされるということが望ましいと考えております。  なお、お尋ねの信用取引の改善の問題でございますが、これは取引所におきまして目下検討中でございまして、中間的な態度決定いたしましたが、これは実は昨年の秋に行なわれました証券取引審議会の答申に基づく仮需給の制度の合理化という方針に沿ったものでございまして、現在の三カ月期限あるいは一カ月ごとの継続手数料の徴収ということは、非常に短期のいわば値動きを一つの投機要因とするところの投機的な取引の色彩を非常に強めるおそれがあるから、なるべくそれを長期的な安定的な投資仮需給にあらしめたいということで、継続手数料の廃止その他の合理化の線が打ち出されておりまして、その方向に沿った改善案を検討中であるわけであります。私どものほうといたしましては、認可申請がありますれば認可するつもりでありますけれども、いま中間的にきめられておりますような、三カ月を六カ月に延長するないしは一カ月ごとの継続料を取ることをやめるということにつきましては、証取審議会の答申の趣旨に沿うものといたしまして、賛成いたしておるところであります。
  238. 受田新吉

    ○受田委員 終わります。
  239. 關谷勝利

    關谷委員長 次会は、来たる十三日午前十時から理事会、十時十分から委員会を開会することといたします。  なお、午前十時十分ごろから、常任委員長室において委員懇談会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十四分散会