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1967-07-13 第55回国会 衆議院 地方行政委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十三日(木曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 亀山 孝一君    理事 大石 八治君 理事 岡崎 英城君    理事 奧野 誠亮君 理事 久保田円次君    理事 和爾俊二郎君 理事 細谷 治嘉君    理事 山口 鶴男君       久保田藤麿君    塩川正十郎君       辻  寛一君    渡海元三郎君       登坂重次郎君    永山 忠則君       古屋  亨君    山田 久就君       井上  泉君    太田 一夫君       唐橋  東君    河上 民雄君       島上善五郎君    依田 圭五君       折小野良一君    小濱 新次君       林  百郎君  出席国務大臣         自 治 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         自治政務次官  伊東 隆治君         自治省行政局長 長野 士郎君         消防庁長官   佐久間 彊君         消防庁次長   川合  武君  委員外出席者         人事院職員局厚         生課長     佐分利輝彦君         大蔵省主計局主         計官      秋吉 良雄君         労働省労働基準         局労災防止対策         部長      鈴木 健二君         労働省労働基準         局労災補償部長 中村  博君         自治省行政局給         与課長     内山 鉄男君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 七月十二日  委員華山親義君及び依田圭五君辞任につき、そ  の補欠として千葉佳男君及び野間千代三君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員千葉佳男君及び野間千代三君辞任につき、  その補欠として華山親義君及び依田圭五君が議  長の指名委員に選任された。 同月十三日  委員島上善五郎辞任につき、その補欠として  唐橋東君が議長指名委員に選任された。 同日  委員唐橋東辞任につき、その補欠として島上  善五郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月十二日  指定自動車教習所助成に関する請願愛知揆  一君紹介)(第二九七二号)  同(遠藤三郎紹介)(第二九七三号)  同(倉成正紹介)(第二九七四号)  同(小坂善太郎紹介)(第二九七五号)  同(佐々木義武紹介)(第二九七六号)  同(關谷勝利紹介)(第二九七七号)  同(内藤隆紹介)(第二九七八号)  同(丹羽喬四郎紹介)(第二九七九号)  同(福永健司紹介)(第二九八〇号)  同(保利茂紹介)(第二九八一号)  同(益谷秀次紹介)(第二九八二号)  同(山口喜久一郎紹介)(第二九八三号)  市町村営有線放送電話施設助成等に関する請願  (周東英雄紹介)(第三〇五七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  消防法及び消防組織法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二六号)(参議院送付)  地方公務員災害補償法案内閣提出第一一一  号)(参議院送付)  地方自治に関する件(地方公共団体議会に関  する問題)      ————◇—————
  2. 亀山孝一

    亀山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる消防法及び消防組織法の一部を改正する法律案議題とし、政府から提案理由説明を聴取いたします。藤枝自治大臣
  3. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいま議題となりました消防法及び消防組織法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要説明申し上げます。  政府におきましては、一定規模以上の市に救急業務実施を義務づける等救急業務拡充につとめてまいりましたが、最近における交通事故の激増に対処し、人命救護の一そうの徹底を期するためには、現在救急業務を行なっていない市町村区域にかかる道路区間で、交通事故が多発するところにつきまして、救急業務実施体制整備する必要があるのであります。  その他最近における社会経済状況にかんがみ、災害予防消防教養充実等に資するため、若干の規定整備を行なう必要があるのであります。これがこの法律案提案する理由であります。  次に、この法律案内容概要につきまして説明申し上げます。  第一は、救急業務実施体制整備に関するものであります。  救急業務を行なっていない市町村区域のうち交通事故の多発する道路区間にかかる救急業務実施を、現に救急業務を行なっている他の市町村都道府県知事が要請することができるようにし、さらに救急業務を行なっていない市町村区域で特に交通事故が多発している高速自動車国道及び一般国道政令で定める区間については都道府県救急業務を行なうものとしようとするものであります。  第二は、液化石油ガス等届け出に関するものであります。  最近における液化石油ガス等による事故状況にかんがみ、液化石油ガスその他の火災予防または消防活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質政令で定めるものを貯蔵し、また取り扱う者は、消防長または消防署長届け出なければならないことにしようとするものであります。  第三は、その他の事項であります。その一は、消防に関する教育訓練質的向上をはかるため、消防学校都道府県消防学校等に対し、教育内容及び方法について技術的援助を行なう事務を加えようとするものであります。その二は、事務簡素化をはかるため、消防庁の所掌する都市等級に関する事務の一部を都道府県に委譲しようとするものであります。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 亀山孝一

    亀山委員長 この際、本案の補足説明のため、佐久間消防庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。佐久間消防庁長官
  5. 佐久間彊

    佐久間政府委員 提案理由に対しまして、補足的に御説明申し上げます。  お手元にお配りしてございます消防法及び消防組織法の一部を改正する法律案要綱をごらんいただきたいと存じます。  第一は、消防法改正でございます。その一つは、圧縮アセチレンガス等届け出に関する事項でございます。御承知のように最近圧縮アセチレンガス液化石油ガス等事故が頻発しておるのでございます。消防は、事故が発生いたしました際には現場に出動いたしまして、火災防止及び人命救助に活動いたしておるのでございますが、これらの事故防止の万全を期するためには、事前にこれらの物質の実態を把握いたしまして、これに対する対策消防といたしまして検討し、さらに予防査察を励行いたしまして、これらの事故防止に資する必要があるわけでございます。かような理由から今回の改正法案におきましては、これらの物質を貯蔵し、または取り扱う者は、消防長または消防署長届け出なければならないことにいたそうとするものでございます。  なお、圧縮アセチレンガス液化石油ガス等につきましては、別に高圧ガス取締法等規定によりまして、一定量以上のものはそれぞれの機関届け出または許可を要することになっておるのでございますが、それらのものにつきましては重複を避けまして、それらの届け出または許可を受けました機関消防長または消防署長に通報することにいたそう、かように考えておるわけでございます。  そのほか、この消防法改正に関連をいたしまして、圧縮アセチレンガス液化石油ガス等事故防止に必要な規定を、今回通産省所管で御提案いたしておりまする液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律案等の中にも所要規定を設けることにいたしておるわけでございます。  その二は、救急業務拡充に関する事項でございます。救急業務拡充することは、政府といたしまして努力をいたしてまいったのでございます。そこで従来、人口十万以上の市に義務づけられておりましたのを、本年九月から、人口五万以上の市にまで範囲を拡張することにいたしておるのでございますが、そのような措置をとりましても、なおかつ救急業務を行なっていない市町村区域で、しかも交通事故等のために救急業務を行なう必要のある区域があるわけでございます。そこで人命救助徹底を期しまするために、そのような地域に対しましても所要措置を講じようというものでございます。  その一つは、このような区域につきましては、都道府県知事が現に救急業務を行なっている他の市町村道路上の救急業務を行なうように要請することができる道を開こうとするものでございます。  次に、高速自動車国道または一般国道のうちで、特に交通事故が頻発いたしまして救急業務の必要な区間で、沿道に救急業務実施する市町村が相当長距離の間ないような場合につきましては、それらの区間政令で指定いたしまして、都道府県市町村にかわって補完的に救急業務を行なうことにいたそうとするものでございます。  第二は、消防組織法改正でございます。  その一つは、消防教養内容の改善をはかりまするために、消防学校都道府県消防学校及び市町村訓練機関に対しまして、その教育訓練内容及び方法につきまして必要な技術的援助を行なう任務を持たせようとするものでございます。  その二は、現在消防庁で行なっておりまする消防に関する市街地の等級化に関する事務の一部を都道府県に移譲して事務簡素化をはかろうとするものでございます。  以上でございます。      ————◇—————
  6. 亀山孝一

    亀山委員長 地方自治に関する件について調査を進めます。  地方公共団体議会に関する問題について質疑の申し出がありますので、これを許します。唐橋東君。  唐橋東君に申し上げます。御承知のように法案審議中でございます。したがって、御質疑の時間は十分程度にひとつお願いを申し上げます。
  7. 唐橋東

    唐橋委員 私に質疑の時間を与えていただいて、ありがとうございます。  かいつまんで質問申し上げたいのでございますが、地方政治が近ごろ政党化されてまいりました。これは政党政治が日本の政治の中で落ちついた一つの現象として非常によいことであると、こう考えてもおるのでございますが、この地方自治体の政治の中で、政党化のために非常に問題ができてきておるという点もまた、いなめない事実だろうと思います。したがって、それの中から第一点は、地方自治はあくまでも地方分権政治というものを確立しなければその基礎が成り立っていかない、こう思うのでございますが、それらに対して、常に中央直結政治がいまの政治の中においては非常に優位なんだ、こういうような考え方が公然と論ぜられ、過日行なわれました都知事選挙の例をあげるまでもなく、何か中央直結政治ということが大きく取り上げられてきた中で、地方自治が優先という一番大切な民主政治の根底が非常に軽視されておるということは、いろいろ具体的例をあげるまでもなしに大臣もおわかりだと思うのでございますが、民主政治の基盤である地方自治の確立という立場に立って、この中央直結政治に対してどのように思うのかということを、まず第一点、お伺いしたいわけでございます。
  8. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 当委員会でもお答え申し上げたことがあると記憶をいたしておりますが、あくまで地方自治というものはその地方自治本旨にのっとって、いわゆる地方分権と申しますか、そういう意味で行なわれていくべきものであります。もちろん現在の政党政治の中におきまして、地方政治の中に政党化が入っていくこと、そのものを否定することはできないと思いますが、しかしながら、それはあくまでやはり地方住民福祉向上というものを中心にして論議さるべきものでありまして、中央政治のように一種のイデオロギーと申しますか、そういう政策論争を戦わすものではないことが本旨であろうと思います。  そこで、よく中央直結ということがいわれるわけでございますが、これは私はあくまで地方自治地方自体のものであって、もちろん中央政治と呼吸を合わせてやっていただかなければならぬようなものはたくさんありますけれども、しかし常にそれがいわゆる中央集権のような意味における中央との直結ということは、決して好ましいことでないというふうに私は常々思っておるわけでございます。
  9. 唐橋東

    唐橋委員 そのような趣旨は了解いたします。ただ、いろいろな場合におきまして、選挙のときにはもちろん、平時においてもでございますが、何か与党議員でなければ、あるいは与党でなければ補助金が減額されてくるんだ、極端にいえば、もう交付金も非常に少なくなってくるんだ、あるいは選挙の場合などは、おれは与党だから、出さえすればこういう点を開発事業をやるというような、多少利益誘導的に考えられることさえも公然と行なわれておるということもまたいなめない事実だと考えます。いまの行政の中において、地方自治を育成指導する立場に立つ自治省としては、いろいろな事業を持っていらっしゃると思いますが、これらに対してはどのような見解を持たれるのか。
  10. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいまもお答えいたしましたように、地方自治というものはあくまでその地域住民福祉向上というものを中心にして考えていただかなければならぬことだと思います。往々にして選挙等において、ただいま御指摘になりましたような発言等が行なわれておりますることは私も承知をいたしておりますが、そのようなことは決して好ましい姿ではないのでございます。あくまで地域住民福祉向上にいかにして役立つか、そういうことを中心にした政策論争をしていただきたいものと私も考えております。
  11. 唐橋東

    唐橋委員 第三の弊として考えられますのは、地方政治政党化地方議会の中で、まあ市町村の場合よりもむしろ都道府県の場合に出やすいのでございますし、あるいは市町村の場合はイデオロギー的な、政党的なというよりも、むしろ派閥的なものが多いのでございますけれども、往々にして多数党の横暴的な行動を起こしがちであり、それが平然と行なわれるという傾向が見受けられてきておると思うのは私だけでないと思うのでございます。だとするならば、地方自治を破壊するやはりもとになってくると私は考えざるを得ないのでございまして、その最も典型的なものは、言論の府である議会内の発言に対して、ちょっとしたことばをとらえ、品位の保持に名をかりて懲罰権乱用が起こる場合があるのでございまして、これらに対しては、地方自治を指導する立場において、懲罰権乱用を防ぐ、いわば懲罰の限界はどうあるべきだというような点に対して、明確な見解と、それに対するいままでの御指導等がありますれば、お伺いしたいわけでございます。
  12. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 議員言論に対する懲罰の問題は、議員身分に関する非常に重大な問題でございまして、これが乱用されてはならないことは申すまでもございません。ただ、一方において、懲罰の問題は、その議会一種自律作用と申しますか、みずからを守り、律していく作用の発動でございます。そういう意味で、議会において、それが独自な立場できめられるべきものだと思いますが、いま申しましたように、といって、そのわずかな言論に籍口して、懲罰権乱用されるというようなことがあってはならないわけでございます。
  13. 唐橋東

    唐橋委員 具体的な例を持っておるわけでございますが、時間の関係上、その内容については申し上げないで、流布されておりますところのうわさとか、あるいはニックネームを取り上げました場合でも懲罰にしていくというような事例が出ておるのでございまして、このような点は、政党化されたいまの地方政治の中で、全国的な傾向として私は出ておると思うのでございます。いまの事例的なものがもしおありとするならばお示し願いますし、また急でございましたので、後日、資料等で出していただくとするならば、その点でもけっこうでございますが、これに関してのお答えを願いたい。
  14. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 最近の事例承知いたしておりますのは、青森市議会において、これは四十一年九月二十五日でございますが、議員発言市議会議員品位を傷つけ、他人の私生活に触れ、市議会品位を傷つけたということで、除名されました。この除名された議員知事に対して、審決の申請をすると同時に、裁判所に対しまして、執行停止申請をいたしました。ところが、これらの決定前に、市長が再議に付しまして、市議会のさきの議決を取り消すということで解決しているという例が最近——最近と申しましても、もう一年近くになりますが、最近の例としてはございます。
  15. 唐橋東

    唐橋委員 これらの点については、あと資料を出していただきたいと思います。  ただ、懲罰の中におきましては、御承知のように、戒告陳謝出席停止除名、こういうふうにございます。戒告陳謝議会内における一つ状態として解決つくと思いましても、出席停止除名でございます。除名の場合は、あとでもお伺いしたいのでございますが、これは重大な身分剥奪になりますので問題がありますが、往々にして出席停止を行なう。ちょっとしたことばじりをとらえ、無礼な言辞だというようなことで行なわれておるわけでございます。この出席停止というような点は、一定期間における議員発言権停止、いわば基本的な身分に関するものでございますので、これらも含めまして、資料等も出していただきたいと思います。  その場合に、少数派であって、いまのように出席停止を受けるという問題、さらに除名を受けるという場合でございますが、除名の場合は、身分の保全の問題でございますから、地方裁判に対する法自体が明確になっておるわけでございますが、その他は議会内部の規律問題であるということで、いま申し上げました出席停止等に対しては、法律上の争訟の対象になっていないという判例が出ておりますが、自治省としても、この判例のとおりの見解をお持ちでございますか。
  16. 長野士郎

    長野政府委員 昭和三十五年の十月十九日に、御指摘のような最高裁判所判決がございまして、議員除名処分以外の懲罰訴訟対象にならないということで、解釈が一応確立したような形になっております。  元来自治省は、従来から議会懲罰という問題は、原則として、それは議会秩序維持の問題あるいは議会品位の問題、いろいろ理由はございますが、そういう意味で、たてまえとして議会自律作用ということが考えられるのであるから、争いの対象にすること自体が非常に疑問であるという考え方を持っておったのでございます。しかし、最高裁判所では、除名については、少なくとも議会議員身分剥奪するという行為になるから、それは訴訟対象だという判決がされたわけでございます。自治省といたしましても、その解釈は維持さるべきものだというふうに考えております。
  17. 唐橋東

    唐橋委員 そうだとしますと、ここに二つの問題が出てくるわけでございます。いま申し上げましたように、戒告陳謝は一応論外といたしまして、出席停止処分は、いま申し上げたように、議員固有権利である発言一定期間停止でございます。多数党が出席停止をしてしまう。だとするならば、三日なり四日なり、その期間権利剥奪があるわけでございます。ですから、これがそのまま多数の力の前でやられっぱなしになっておるという事実が出てくるのでございます。これが多数横暴ということの大きな原因をつくるのでございますが、これらに対してのいわば救済措置とでも申しましょうか、そういう場合にどのような手だてをもってこれに対抗すべきであるかというような点も、ひとつお伺いしたいと思います。
  18. 長野士郎

    長野政府委員 議員懲罰につきましては、先ほど申し上げましたように、たてまえとして、これは議会自律作用にまつべきものだということでございますが、地方自治法百三十五条におきましては、懲罰種類といたしまして、戒告陳謝出席停止除名というような、一つの段階と申しますか、要するに、懲罰に値する行為程度に応じまして、量刑と言っては変でございますが、それぞれ行為に対するところの懲罰種類が書いてあるのでございます。その規定をしております意味は、やはりその懲罰に該当する行為というものと懲罰種類というものとが適合すべきだということを法が予想していることは間違いのないところでございます。そういう意味で、客観的に妥当性を欠くような懲罰種類の選択が行なわれるということは許されないといいますか、不適当といいますか、むしろ地方裁判所におきましては、その点では条理に違反するという意味で、違法性を持つんだという判決を下しているところもございます。そういうように、どういう種類懲罰を選択するかということは、議会自体の全くの自由だというわけで申しておるのでは決してございません。やはり懲罰程度というものは、懲罰事犯に該当する行為についてそれぞれ位置づけらるべきものだと思うわけでございます。  ただ、それにいたしましても、それぞれの議会一つ慣例といいますか、扱い方というものもまた一方にあるわけでございます。したがいましてAの地方議会においては、ある者については戒告とか陳謝で済むものが、Bの議会ではある点きびしくて、出席停止というものがなされるというようなことは間々あるわけでございます。ではそういうことになって非常に妥当性を欠く場合に、どういう救済措置があるかということになるわけでございますが、これは先ほど申しましたように、やはり議会の運営というもの、議会が自主的にきめる一つ原則から考えますというと、これはやはり議会の中におけるところの取り扱い論議というものを通じて妥当な懲罰種類を選択する、そういうことで考えざるを得ないというふうに思うわけで、法的にこれを救済するということがほかの方法であるかといえば、やはり自律作用であるだけに、それは議会の中で救済するといいますか、妥当な先例をつくるということがたてまえだろうと思います。
  19. 唐橋東

    唐橋委員 時間がないので簡単にお答え願いたいのですが、私も簡単に質問します。  いまのお答えの中で、議会の内の問題であることは私もわかります。しかしそれは私がいま申しましたように、多数党が長く続いた場合に、やはり多少常識的なものから逸脱しておる。こういうような点もやはり多数の横暴という、あなたが申されますような客観的な、社会通念的な、公平な状態を逸脱することが間々出てきているという事実の上に立って私は申し上げているのでありますが、それが議会の中において行なわれるのはしかたがないのだとか、自由ではないか、やはりそれは議会の良識に待つ、慣例なんだ、こういうような答弁だけでは、やはりここに一つの大きな問題が生じておるということを私は申し上げざるを得ないのでございます。それについてもう一つ明白にしたいのは、たとえば国会状態を見てみますと、現在まで五十五回でございますが、単にことばだけで懲罰事犯になったというのはないようでございます。行動が伴って、一緒に懲罰事犯に出されたことがあるのでございますが、国会はやはり言論の府であり、同じ精神が地方自治地方議会になければならないと思います。それを単に、あなたは道路知事でございます、あなたは国際級の大ものでございます、ニックネームは悪代官ということばがあるというような点をあげただけで、もう懲罰だ、こういうような点は私はやはり行き過ぎているということを指摘せざるを得ないわけでございますが、要は、そういう出席停止に対する救済措置というのは、現在の場合ないのですか。ここをひとつ明白にお答え願います。もう一ぺんひとつ……。
  20. 長野士郎

    長野政府委員 出席停止に対する救済措置は、私どもとしては現在のところないというふうにお答えせざるを得ないと思います。
  21. 唐橋東

    唐橋委員 それだけ重要な問題なんです。やはり出席停止を、基本的な権利剥奪されるというものを地方議会がいま申し上げたように軽々しく行なうとするならば、これは自治省の指導としてほんとうに十分にやっていかなければならないと思うのでございますが、大臣も非常にお忙しいそうでございますので、大臣に一言だけ……。いま申しましたように、議員の一定の身分剥奪するということが軽々しく行なわれておる、こういう実態をひとつ認識していただいて、今後それだけの問題が起こらないように、十分なる御指導をお願いしたいと思うのでございますが、これに対して御答弁願いたいと思います。
  22. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど行政局長からもお答えいたしましたように、懲罰種類が四種類もある。それに対して、そのどれに該当させるべきかということは、単なる議会の主観でなくて、相当客観的な基準でやらなければならぬものでございます。そういう意味におきまして、こうした案件が慎重に、しかも客観的な理由をとらえながら行なわれるように、そういう意味の指導はいたしたいと考えております。
  23. 唐橋東

    唐橋委員 最後に局長のほうに。全国的にこの種の事案が出やすい、こういうようなことが現実また起こってきてもおりますので、今後、いま大臣の御発言の趣旨にのっとって——どうしても救済措置が明確でないもの、戒告やあるいは先ほど申し上げました陳謝は、これはそう問題ないと思いますし、さらにまた除名という大きな問題になってくれば、これはほんとうの身分剥奪でございますから、これは争点ともなりますが、一番問題の中心となりやすいのは出席停止だと思うのです。裁判手続をとっても、もう終わってしまっておる。こういうような状態があり、多数がやろうとするならば、発言停止させようとするならば、三日なり四日なり、ちょっとしたことばじりをとらえて出席停止をさせる。こういうことが行なわれておる。こういうことはいまの大臣の趣旨の上に立って、今後十分なる御指導をすべきである、こういうふうに考えて、いま大臣の申されました点について、局長はそれを受け継ぎながら、今後十分なる具体的な御指導を願えるかどうか。それだけをひとつお答え願いたいと思います。
  24. 長野士郎

    長野政府委員 先ほど申し上げましたのは、法的な救済措置というお尋ねでございましたので、ないと申し上げたのでございますけれども、大臣のおっしゃいましたように、私どもも、従来からもそういう意味で、いろいろ御照会があれば、意見としてはいろいろ申し上げておったわけでございますけれども、今後もそういう懲罰事案その他につきましても、十分な大臣の申されましたような指導なり助言なりは続けてまいりたい、こう考えております。
  25. 唐橋東

    唐橋委員 終わります。      ————◇—————
  26. 亀山孝一

    亀山委員長 内閣提出にかかる地方公務員災害補償法案議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。依田君。
  27. 依田圭五

    依田委員 それでは災害補償法案について御質問を申し上げます。大臣がおりませんから、局長から御答弁をいただきたいと思います。  まず第一点は、この法案を出すということについて、大内さんを会長とします社会保障制度審議会では、答申の中で重大な疑問を投げかけておる。支払い能力に不安がないじゃないか、あったとしても、その危険の度合いは非常に少ない。また保険料率の面でも非常に問題点がある。それから事務がはたしてスピードアップされるか、むしろダウンせぬか。それから六大都市を中心とする、条例のすでにある十六団体等においては、仕事が二重になりはしないか、こういう点で、この法律案の策定に対して、非常に重大な答申をいたしております。いわばつくらぬほうがいいという意味合いをこめた、否定的な答申をいたしておるにもかかわらず、今回これを御提案になりました点につきまして、まず第一点御質問申し上げます。
  28. 長野士郎

    長野政府委員 社会保障制度審議会の意見の中に、先生御指摘のようなところに触れられておるものも確かにございますが、また審議会そのものは一応いろいろな懸念と申しますか、問題というものについて触れられておるわけでございますけれども、全体として社会保障制度審議会が、これは絶対にいけないんだというような気持ちで申されておるのではないのでございまして、私どもとしては、今後の運用におきまして、そういう懸念と申しますか、そういうものを、社会保障制度審議会の御意見を大いに尊重いたしまして解消することに努力をいたしてまいりたいというふうに考えておるのでございます。公務災害補償につきましては、第一に迅速で、そうしてまた統一的な専門機関を設けまして処理をしていくということが、現在のように個々の地方団体で行なわれておる場合よりもむしろ統一的な給付を与えるということで、公務員の福祉の充実というものをより期し得るではないかという点が一つと、それから、現在適用されておりますところの災害補償の関係の法令が非常に区々でございまして、やはりその意味では公務の特殊性ということから考えましても、国家公務員にもそういう統一的なものがございますから、地方公務員にもそういうものを整備いたしまして、そして補償の実があがるようにしてまいりたい。確かに財政的に地方団体がこの補償に耐え得ないというわけではございませんけれども、ただ、最近の公務災害のあらわれ方は、非常に局部的に大きな事故があらわれることも、交通問題等とも関連いたしまして出てくるわけでございます。そういう場合に、規模の小さい地方団体でございますと、その点でも多少の影響は出てくることは予想されるわけでございますので、そういうことが全然ないとも申されないという点もございます。やはり専門機関を設けまして、統一的に迅速に実施をして、職員が安心して公務に従事できるようにすることをぜひ進めていくべきだ、こう考えておるわけでございます。
  29. 依田圭五

    依田委員 この答申は、地方公務員は労働基準法の適用があるだけに疑問は倍加すると、こう正面切って後半に書いておるわけですね。それから、先ほど私が申し上げました四点の理由をあげて、政府があえてこの際これを制定しようとするならば慎重に対処すべきものである。まあ、つくるなら政府提案権があるからかってにおつくりなさい、しかし、審議会としては非常に疑問に思っております、おすすめはしませんという内容の答申をいたしておる。諮問して、それを受けた答申として、私はネガティブな結論というものは、実際局長が、はいそれじゃやりますという積極的な取り組みの原因にはならない、私はこういうように思うのです。さらにこの中ではっきり言っておるように、一片の通達で間に合うじゃないか、何もレベルアップを、国家公務員と同じようにダウンしているところだけを救済するためにするというならば、行政局長の通達か何かをちょっと書けば、そのくらいのことはいまの中央官庁の権力をもってすれば朝めし前ではないか、こういうようなことを言っておるわけですね。これに対してどうお考えになりますか。
  30. 長野士郎

    長野政府委員 この社会保障制度審議会のお考えは私どもよくわかるわけでございますけれども、現実におきまして、公務災害補償が地方団体において十分に行なわれているという現状でないことも、これは明らかなところでございます。それと同時に、やはり、たとえば現業の職員は労働者災害補償保険の適用を受ける。非現業の職員は労働基準法の適用がありまして、そうしてそれぞれの認定機関が、片一方は労働基準監督署、片一方は任命権者というようなことになっておりまして、それ以外に、たとえば特別職その他につきましては、そういう制度上の保障もないという現状でございます。したがいまして、そういう取り扱いが区々になっておるというのが法制度下の現状であるわけでございます。社会保障制度審議会のお考えの基礎にありますものを推測することもいかがかと思いますけれども、やはりせっかく労災関係なり労働基準法というような関係でできておる以上は、むしろそのほうへ統一すべきじゃないか。これは社会保障制度審議会のすでにおっしゃっておるお考えであります。で、私ども考えますのに、そういう考え方一つ出てくるわけでございますが、やはり公務災害補償というものの地位をだんだん確立をしていく必要があるのではないか。国家公務員についてもそういうことがすでに行なわれておるわけであります。そうしてそういう制度がだんだんと内容の進歩を遂げてまいるわけでございますので、そういう意味でも、やはり地方公務員についても災害補償制度を確立をしていくということが、一種福祉の充実という意味でもそれを統一的に行ないまして、個々の地方公務員がたまたま同じケースにおいても扱われ方が違うというようなことのないようにすることも必要であろうと考えまして、こういった統一的な立法を考えておるわけでございます。一片の通達でできるではないかというお話でございますけれども、いま申し上げましたような、法令の適用関係が異なっておりますとか、そういうふうな内容になりますと、とうていそういうものが救済できるものではございません。そういうこともございますし、やはり統一的なものをつくりまして、地方公務員の公務災害補償というものの場所を確立していくということは、国家公務員の場合に準じて考える意味でも必要ではないか、適当ではないかというふうに考えたわけでございます。
  31. 依田圭五

    依田委員 社会保障制度審議会は四点ばかり重大な疑問を投げかけておりますが、われわれは党の立場から、このせっかくの補償の審査会等の運営というものが非常に一方的である。第三者機関的な性格をさらに持っておらないという点で、実は何点も質問点を持っておるわけでありますが、この法案の提出の経過からしても、その点を非常に残念に思います。一つは、労働省のほうでこれについて提案するならば、労災保険があるわけですから、また労災保険から引き上げるような結果になるわけですから、これについて労働省との経過について、ひとつ労働省のほうから御答弁を願いたいと思います。
  32. 中村博

    ○中村説明員 ただいまの御質問でございますが、いま局長からお答えがございましたように、労災保険といたしましてこれに統一するということは、先生おっしゃるとおり、これは一つのお考えかと存じます。しかし、現在の状況を見ますと、労災保険におきましての大部分を占めます地方公務員の方々の非現業部門の方々には適用がないわけでございます。したがいまして、そのような方々も含めまして、労働者災害補償保険と同じようなレベルで公務災害補償が行なわれるということは、地方公務員の特殊的な立場、それから国家公務員にございます特別な国家公務員の公務災害補償法の規定、これらを考え合わせまして、このようなかっこうができ上がることにつきましては、私どもとしましては地方公務員の救済に欠くるところがないというような考え方から御賛同申し上げた次第でございます。
  33. 依田圭五

    依田委員 その点はこれからいろいろ質問したいと思います。  次に、団体交渉権、これについて局長の考え方を承りたい。この法案は団体交渉権を侵害することがないかどうか。
  34. 長野士郎

    長野政府委員 今回の補償法におきましては、結局二つありまして、一つは公務災害補償の内容というものをできるだけレベルアップをいたしまして、そしてそれを統一的に補償するということを法的に保障したいというととが一つでございます。それからもう一つは、基金を設けまして、この法律で保障しております内容の公務災害補償を地方団体にかわって基金が行なうということにしておるわけでございます。したがいましてその関係のことでございまして、この災害補償そのものについて、たとえば地方公営企業労働関係法におきまして団体交渉権を保障しておることになっておりますが、そういうものについて今回の補償法は何ら手を加えておるわけではございません。したがいまして、そういう意味では団体交渉権というものは否定をされていないのでございます。
  35. 依田圭五

    依田委員 災害補償は大体従来の団交権の内容になっている。それで本法の中で、まあ明文をもって保障をしておらないという経過についてはいま局長がおっしゃったとおりですが、弱い組合、弱い団体において、言いかえれば職員組合が弱いところに、すでにできておるじゃないか、そのことはもう基金ができたじゃないかということで、団交の中でこの問題を討議するケースが不当に抑圧されるということを心配しておるわけですが、その点について重ねて局長の所信を聞きたいと思います。
  36. 長野士郎

    長野政府委員 この公務災害補償につきまして、いまお話のございましたような労使間の力関係の強弱によって違ってくるかこないかという点でございますが、概して言いますと、そういうところにおきましては、いままで十分な災害補償というものができておったかどうかということもあると思いますが、そういう点では今度は法律で補償いたしますので、その点までの整備は遂げられるわけでございます。問題は、その上の問題をどういうふうに考えていくかということに相なるのだろうと思います。その点につきましては、先ほど申し上げましたように、この法律が団体交渉権でありますとかあるいは地方公務員法におきますいわゆる当局との交渉というふうな問題を否定しようとか、何とか変えようということを考えておるわけではございませんので、その点は従来と少しも異ならないと申しますか、変更はないわけでございます。したがいまして、問題として、この公務災害補償の上にさらに重ねるような何らかの災害補償、広い意味災害補償をどうするかという問題になりますと、その点では、この法律ができました前後における状況が変わるかといえば、私どもはあまり変わらないというふうに申し上げてよかろうと思うのであります。
  37. 依田圭五

    依田委員 次に、地方団体は条例を制定いたします本来的な権能があるわけですが、この補償法ができることによって、基金ができることによって、災害補償関係の条例をつくるような機運がなくなる、むしろ抑圧する。これは自治省が、自治の本旨に従って各地方団体に対して条例制定を促進する方向へ指導すべき本来の立場にありながら、むしろ逆の作用をするのではないか。地方団体の条例制定の権能を抑圧するような結果に終わらないかという点を非常に心配しているのですが、これについて局長の所信を聞きたい。
  38. 長野士郎

    長野政府委員 基金をつくりまして災害補償を行ないますこと、それからこの災害補償を、法律上これを最低限と申しますか、最高限と申しますかという点についてはいろいろあると思いますけれども、少なくとも現在この関係の災害補償としては、一応国内では一番高い水準のものを法律で補償する。したがって、その点で、そこまでに達するもののいわゆる条例制定と申しますか、その必要がなくなってくるというような意味では、条例を定める範囲が多少なくなるということにもなるかと思いますけれども、災害補償はやはり勤務条件の一つでありますと同時に、いままででも労災保険なりあるいは労働基準法なりの適用を受けておりますように、ある面、社会保障制度の一環たる性質も持っておるわけでございます。したがいまして、そういう意味では、また全国的な見地から統一的な補償を与えるという必要もあるわけでございます。したがって単純にいま申しましたように、それまでのレベルのものは地方団体が条例をつくる必要がなくなったという意味では、確かに条例制定の余地が狭まったということになると思いますが、また同時に、災害補償の内容を保障するという、職員の福祉の充実といいますか、職員が安心して公務に従事できるという体制をすみずみまで整備するという面のプラスといいますか、そういうものも考えますと、一がいに形式的に、条例制定権の範囲が縮小されたという面だけで論ずべきものではないのじゃないだろうかというふうに考えるわけでございます。
  39. 依田圭五

    依田委員 本来、地方自治体に条例をどんどんつくらせて自治の活動をさせる方向で指導すべき立場にある自治省が、結果的ではありましてもそういうようなことを抑圧するような法案、先ほど、社会保障制度審議会の答申の中からも少し無理な策定ではないかと、私は批判をいたしたのですが、自治権の侵害になることを私は非常に心配いたしておるわけであります。なおそれに関連する問題として、幾つかの団体の中にはすでに条例ができ上がっております。十六団体といわれておるのですが、その中には、給付の内容において本法よりも若干オーバーした規定をしておるところもある。そういう点については、たとえば休業補償の場合においても百分の百という補償をやっておるところもあるのです。こういうような点について自治法の十四条には、法令に違反せざる範囲内において有効であるという規定がありますが、この条例と法律、新法ですね、新法との関係において、条例の効力の存続の問題について局長はどのような御意見をお持ちになっておりますか。
  40. 長野士郎

    長野政府委員 現在災害補償の条例を制定しております県が十一県ございます。それから六大都市の中では、四都市におきまして条例を制定しております。市におきましては二百二十一市が制定しておるというようなことになっております。町村では百四十三ございまして、内容から見ますと、労働基準法と同一水準あるいは労災法と同一水準というようなところが多いわけでございます。  そこで、地方団体が地方公務員法、地方自治法によりまして、職員の勤務条件その他の問題につきまして条例制定権を持つことは、これはもう御指摘のとおりでございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、この災害補償に関しまして、今回のこの補償法で規定しております内容のものの水準のところまでは条例をつくりませんでも実現をするという形になるわけでございますが、それ以上のものについての条例制定ということになりますと、これまた今回の補償法は何らそこに触れておるわけではございません。したがいまして、当然に制定権というものは存在する、こういうことになるわけでございまして、その点は先ほど申し上げたとおりでございます。
  41. 依田圭五

    依田委員 自治省のほうではできるだけ一元化したい、しかも均衡を保つようにいたしたいということは、この本法の中でも原則論として出ておるわけですね。こういう均衡を保つ必要があるというのが、これは法律一般の原則なんですが、こういう一元化の要素と、いま話しになっておる負担の超過したる場合、既得権、逆にいうと、超過しない場合には本法に違反するから無効だ、百分の六十以下は無効だということになっておるわけです。ですから非常勤職員なんかで、そういうような財政事情なんかでもってそういうように百分の六十以下にしか押えられないような地方団体があったとしても、それはできるだけ引き上げるように指導せざるを得ないと私は思うのですが、オーバーたる場合においては、超過したる場合においては、それはかまわないのだということについて私は矛盾があると思うのです。しかも一方は地方団体の自主的な条例制定権能に基づく本来的な活動として、そういうように条例をすでにつくっておるわけなんです。この間において、確かに本法の中にはそういうことを否定する条文はない。しかし自治法の十四条には、法令との矛盾については、これははっきり問題にいたしておるわけです。ですから、既得権の問題について、いまの局長の答弁のようなお話しのしかたでは、とうてい二百数十万の職員は安心ができないのです。重ねてその点をお聞きしたいと思います。
  42. 長野士郎

    長野政府委員 今回のこの災害補償法につきましては、お話しのとおり社会保険的見地と申しますか社会保障、そういうもので基金をつくり、また大体同一の勤務条件であります者について、法律でその災害補償の内容の実現を保証するということが、現在の適用法令が区々にわたりまして、認定も区々に行なわれ、給付の内容も区々に行なわれている現状をより合理的に改善をすることができるものと考えておるわけでございますが、問題となりますのは、現在すでにこの災害補償法が予定をしておりますものよりも上回った、水準の高い補償を行なっているところがあるわけでございます。その点のそういう関係はどのようになるのか。それが法令に違背するという考え方になるのかならないのかということを、一つの問題点としておあげになっておると思うのでございます。私ども考えますと、やはり地方団体は、職員の勤務条件につきましては条例制定権を持っておるわけでございます。したがいまして、この法律規定するところの災害補償以上の災害補償を行なうことが、直ちに法令違反になるというふうに考えるかということになりますと、私どももそのようには考えられないというふうに思うわけでございます。そういう法定以上の給付を行なうということを絶対に禁止するということにはならないというふうに思うのでございます。ただ、私どもの気持ちといたしまして、これ以上のものを大いにおやりなさいということをすすめるということになりますと、やはりこの法律規定されておりますところの公務災害補償の内容は、現在わが国で実行されておりますところの災害補償の中では、望み得る最も高いものの一つだというふうに考えておるわけでございますので、その点でさらにこれに付加し、追加するような給付を大いにすすめるかといえば、これはちょっとすすめるわけにはまいらぬと思います。思いますけれども、現在すでに高いものがある、たとえば御指摘のようなものが休業補償等にあるというふうに考えられますが、そういうものを一がいに否定し得るかと言えば、そういうものを制定する能力が地方団体にあります限り、その点について、それが法令違反であるというふうに断ずるわけにはまいりませんし、またそれはそういう意味では存続するんだというふうに考えております。
  43. 依田圭五

    依田委員 これは既存の条例に対して、関係の規定、あるいはその廃止あるいはもっと助長するような規定、既存条例との関係については、何ら条文上ありませんが、これはこれでいいのですか。これは法制局の態度はどうですか。既存条例の廃止関係、あるいはもっと拡大する関係についての法律上の見解
  44. 長野士郎

    長野政府委員 既存の条例につきましては、これは法制局には法制局の御見解があると思いますけれども、私どもは、この法令に矛盾しない限りの部分は、もちろん有効に働くというふうに考えております。
  45. 依田圭五

    依田委員 運営審議会について、十一条について御質問申し上げます。  これは自治大臣が任命をするということになっておりますが、十二人の委員のうち、第三項にある選出母体の明確なもの以外の学識経験者は、一体どのようにしてこれを任命いたしますか。
  46. 長野士郎

    長野政府委員 この基金の運営審議会でございますが、この基金は、先ほど申し上げますように、この法律では地方団体にかわって行なうということを申しましたが、基金は、そういう意味で、実質の性格からいいますと、ある意味で地方団体の一部事務組合的なものだと私どもは考えております。災害補償につきましては、これはいわゆる使用者の側の無過失損害賠償責任と申しますか、そういうものであるということが理論的に言われておりますが、そういう意味で当然に使用者と申しますか、地方公共団体として実施しなければならないものを、共同してかわってやるということにいたしておるにすぎないのでございます。したがいまして、その基金に運営審議会を置きます意味は、運営審議会というものも、使用者としての責任を果たし得る状態におきまして基金が運営されることを保証いたしますために運営審議会を置くわけでございます。ただそういう意味で、たてまえといたしましては使用者の代表といいますか地方公共団体の代表、要するに無過失損害賠償責任の責めを果たすものを中心にして運営審議会をつくるということは、そういう点から出てきておるわけでございますが、ただ、基金の運営の中には、やはりこの災害補償に関連をいたしますところの技術的な問題、補償の内容なり認定なりという問題、あるいはまた、基金の運営は一種の保険的な要素を持ちますので、保険計算なり保険数理なんというものも考えて基金の運営をいたさなければならないわけでございます。そういうような点がございますので、医学的、医療的な見地、あるいはまた保険数理的な経営見地、そういうものの学識経験の方を加えまして、地方団体にかわって行ないますところの基金の運営が十分に行なわれますことを保証する意味で学識経験者を加えたい、こういうふうに考えておるわけであり  ます。
  47. 依田圭五

    依田委員 その学識経験者に対して、要望というか質問を兼ねて私申し上げたいのですが、確かに一部事務組合的な性格を基金が持って、しかもその使用者側の無過失責任の理論の上にこれを運営していきたい、こういうことはよくわかるのです。わかるのですが、基金という独立の法人格を持った一つ機関をおつくりになって、しかも公務上の災害、非常に機械化され、複雑多岐になり、危険の度合が深刻になってまいりましたこの公務員の職務遂行上におけるいろいろな災害、これについて、これを認定して、これに対して給付していくわけですから、その運営の予算、決算を扱うのは基金が、独立の機関がきめるわけです。それをやる執行機関が運営審議会なんですから、これは当然私は、極論ではありませんが、十二名の半分は職員側から、要するにその給付を受ける側から出してやってもよろしい、こういう考え方すら持ちたくなる立場考え方があると思うのです。局長のように、一部事務組合の延長なんだ。ですから、使用者の無過失損害賠償論の上に立っている、だから要るんだということじゃ私はないと思うのです。また、それですから、委員のうち、一体その統計に明るい者、あるいは医者とかその他、そういった障害についての判断のできる専門的な知識を持つ者、よくわかりますが、職員組合に対する発言権を一体どのようにしてここでお考えになっていますか。その点を重ねて聞きます。
  48. 長野士郎

    長野政府委員 先ほどから申し上げますように、運営審議会はそういう意味で、当然に公務災害に該当いたしました者につきまして、該当した者の療養なり災害の補償を必要な期間、必要なだけの補償を行なう責任を持っておるわけでございます。したがって、そういう意味でこの法律の実行が完全に行なわれませんことには、いつでも救済の措置は保障されておるわけでございます。いわゆる訴訟でございますとか不服の審査でございますとか、いろいろなところで公務員の側の権利保障というものが行ない得るわけでございますので、基金として考えておりますのは、そういういろいろな条件の上に立って基金が完全な運営が行なわれることを保証せざるを得ないという立場におるわけでございますので、基金としてのこの学識経験者の中には、そういう意味で基金運営のために必要な学識経験を有する人を、使用者のみならず、必要な面を補充いたしまして、その能力を強化する意味で学識経験者を加えるということにいたしておるわけでございます。職員の代表者を入れるのがあたりまえじゃないかという御議論もあるかと思います。しかし、職員の代表をここに入れなければ公務災害補償の実現に欠くるところがある、こういうふうには私どもは基本的には考えないのでございます。それは当然保障されるというふうに考えておるわけでございます。
  49. 依田圭五

    依田委員 不服審査あるいはそういった認定のことについては、これは審査会のほうの所管であって、何も運営審議会というのはそういうことをするわけじゃないのですね、局長のおっしゃるとおり。この審査会のほうには、われわれの立場からは最大の疑問点を持っておるわけです。ただ、第一の質問で申し上げましたように、この法律が決して喜ばれるような立場でもってつくられているものではない。自治省のほうでは、格差を統一し、一元化し、そしていろいろのあれをし、ダウンをしておるものは救済をしというように言っております。   〔委員長退席、和爾委員長代理着席〕 しかし、これは一片の通達でも間に合えば、あるいは労働省の所管事項でもあり、労災なんかにもかかっておるし、現在でも行なわれておるわけです。われわれはむしろこれはないほうがよいと思っているくらいです。ですから、そういう——それは私の意見じゃない。これはあなたのほうで、大臣が公正な機関をつくって、公平な意見が出るであろうと想定いたしておる社会保障制度審議会の公文によるところの答申なんです。そういう前提の上にこの災害補償法案がいま提案されておる。ですから、運営審議会は一体どうかということになれば、第一、基金の金がなくなったら一体どうしますか。どういうようにこれをやっていきますか。当然締めつけが始まり、認定の基準がきびしくなるのです。それを大臣が任命した委員、しかもそのうちの四、五人は各都道府県、これは一応機構としては当然でありますが、そのほかは全部それぞれの専門家だ、こう言う。これは言いかえれば、給付を受ける側にとれば、一方的な発言しかない。それなら独立の機関をつくる必要はないのです、基金なんという。これは独立の機関ですから、独立の意思を持ち、独立の運営をされる有機体です。決して一部事務組合のように、そんな簡単なものじゃないのです。これは何億という金を扱うのです。そうして、これはその財政の運用によってはどうにでも締めつけもできれば、また自治省ですから、言うことを聞かぬ地方団体には交付税上の制裁だって——そんなことは夢にも考えないでしょうが、幾らだって手段はある。ですから、私はほんとうに弱い地方団体の側に立って、さらにその立場の弱い組合の従業員の側に立って考えるときには、これは決して審査会やなんかと違う。もちろんそれについても第三者的な性格がないことについて、われわれ党のほうでは最大の疑問を持っております。これは社会保障制度審議会が出しました四点の疑問以外に持っておる。もっと強い疑問を持っておる。しかし、それとの関係において、運営審議会の中にやはり給付を受ける側からの利益代表的な性格を持った者を明瞭に送り込んでもらいたい。そうして公正な独立機関としての基金の運用に当たらしてもらいたい。財政の策定でも、決算でも予算でも、業務計画でも、全部そういう上に立ってやって、保険料率なんかもそういう形の中できめてもらいたい、こういうことを言っておるわけです。
  50. 長野士郎

    長野政府委員 どうも御質問の趣旨にさからうような話でちょっと恐縮なんでございますが、むしろ運営審議会というのは基金の役員であってもいいというような性格を持っておると私どもは思うのでございます。ただ、執行機関にしてしまいますと、いかにも執行機関が多くなり過ぎますし、やはりかたがたある意味での議決機関にしまして運営のコントロールをしていく、それによって補償を確実にするというようなことにするほうが基金運営上も能率的ではないかということから運営審議会というものを考えた。それを考えるにあたって、それであるならば、やはり基金の運営に専門的技術的な経験者というものを入れて、基金そのものの運営というものをより確実にすることが適当じゃないかというふうにだんだんと発展をいたしまして、運営審議会というものをつくり上げるという結論に達したのでございます。そこでさらに、その中の学識経験者というものの中に職員を代表する者を入れることがより運営が確実になるのではないかというようなお話にいま発展をしてきておるようにも伺えるわけでございます。私ども、学識経験という者の中に、医学的な学識経験あるいは保険数理的な学識経験というものを中心にして考えておりますけれども、また一面、公務に従事しておるという意味での特殊な問題も中に出てくるわけでございますから、そういう意味で、私どももこの職員の中にそれにふさわしい学識経験者がいないということを断定的に考えておるわけではございません。むしろ職員の中にも、ここに表示をされているにふさわしい学識経験者があれば、そういう人も委員として加えることは差しつかえないと考えておるのでございます。そういう意味で、この法律に予定されておる基金の運営を十分ならしめるための学識経験者というものの要件にかなう者については、職員を加えることについて否定をするつもりはないのでございます。
  51. 依田圭五

    依田委員 職員代表を否定するつもりはないという局長の御答弁ですから、この点だけにあまり時間をつぶすわけにいきませんが、大体お医者さんにしろ何にしろ、別にそれは理事長のブレーンにつくればいいのであって、むしろ主たる仕事は、第三号、「毎事業年度の事業計画及び予算並びに決算」の策定、これが運営審議会の中で非常に重要な内容になっていると思うのです。その次に、第五項ですね。理事長の諮問に応じて重要事項について調査審議をすることができる。ここに医者でも何でも入れればいいので、たとえばこの条項を、極端に言って、審議して議決しなかったときには一体どういうことになるのですか。議決しなかったときのその効力。理事長の専断になるのですか。諮問事項だからほっておいてもいいというようなお考えですか。その点をお聞きします。
  52. 長野士郎

    長野政府委員 この第五項の諮問につきまして、あるいは建議する、あるいは諮問を調査審議する、そういう意味では運営審議会を大いに活用いたしまして、重要問題を常に運営審議会の検討事項の中に加えていきたいということで考えておるわけでございます。法律的には、運営審議会の建議あるいは諮問についての調査審議が行なわれなかったということがありましても、基金の運営はその点で、運営審議会の意見を聞かれないということが起こるわけでございますが、基金の執行はそれによって停止されるということはないと考えております。
  53. 依田圭五

    依田委員 十三条に関連しまして、基金の業務なのですが、これに入る人の身分関係なのです。これは一たん退職でもさせてやるのか、どういうようにいたしますか。量、人数、それから失効するのかどうか、そのときの恩給関係、休職関係なんかの処置はどうなるのかを明確にしてもらいたいと思います。
  54. 長野士郎

    長野政府委員 基金の職員は基金固有の職員でございますから、たてまえとして基金の本部、支部に基金固有職員を置きます場合は、これはいわゆる地方公務員からはずれるわけでございます。ただ、この十三条に書いておりますところの地方団体に使用される者をして業務に従事させるというのがございますが、これは、たとえば基金の支部は都道府県あるいは六大市に置くという予定にしておりますが、そういう場合にこの業務に従事するという場合には、地方公務員の身分のまま業務に従ってもらう、こういうことを考えておりますから、そういう場合には身分の変更はございません。
  55. 依田圭五

    依田委員 第二十三条に関連しまして「基金の会計及び資産の運用その他財務に関し必要な事項は、自治省令で定める。」これについて御説明を願いたいと思います。
  56. 長野士郎

    長野政府委員 この自治省令におきましては、会計の措置でございますとか、経理の原則、複式簿記等の簿記の原則あるいは余裕金の運用の手続あるいは事業計画とか取引金融機関の指定でありますとか、支払い方法でありますとか、一時借り入れ金とかの方法等につきましての財務規程を中心にいたしましたものを自治省令で規定をすることに予定をしております。
  57. 依田圭五

    依田委員 自治省令の内容については参考資料の六〇ページだそうでありますが、このうちの余裕資金の運用についてどのような方針をお持ちか、それから取引金融機関の指定、これは一体どの機関がどういう原則にのっとってどういうような指定をするか、これを明確にしてもらいたいと思います。
  58. 長野士郎

    長野政府委員 基金の余裕資金の運用につきましては、現在一応予定と申しますか、案としていろいろ検討しておるところでございますが、運用の方法といたしましては、銀行への預金あるいは郵便貯金あるいはまた信託銀行等への金銭信託、それから地方債とか国債とかの債券の取得でございますとか、非常に安全確実な有価証券の取得あるいは公共性の非常に高いものの取得というようなものを考えておるわけであります。取引金融機関につきましての指定は、それは理事長が自治大臣の承認を得て取引金融機関をきめるというふうにいたしたいと考えております。
  59. 依田圭五

    依田委員 これは自治大臣の承認を得て——自治大臣がきめるのですか、それとも各都道府県指名権をまかすのですか。
  60. 長野士郎

    長野政府委員 基金がきめるわけでございます。それから支部につきましては支部長がきめる、こういうことにいたしたいと思っております。
  61. 依田圭五

    依田委員 四十九条に関連して、この負担金の問題なんですが、これは、たとえば四十二年度、ことしの試算か何かあれば、それをもとにして御説明を願いたいと思います。ことしがなければ去年でもけっこうですが、最新の資料に基づいて、負担金の問題が具体的に一体どうなるか。「事務に要する費用その他の事情を考慮して政令で定める割合」云々と書いてあります。これの説明を願います。
  62. 長野士郎

    長野政府委員 地方団体の負担金は、四十二年度では、四十二年度全体で推計をいたしておりますが、それでは大体十七億円くらいになるというような見込みでおります。それは公務災害補償に要する経費と、それから福祉施設に要する経費、それから事務処理に要する経費、そういうものを加えていま推算をいたしておるところでございまして、負担金の負担のしかたといたしましては、地方公共団体の職員の中を、大まかでございますが、あるいは教育職員、あるいは警察、消防職員、それから公営企業の関係の職員、あるいはその他の職員というように類別をいたしまして、そして職種ごとに、大体地方団体では同様な勤務条件にあるものというふうに考えて、そういう種類別にいたしまして、従来からの経験によりましても、それによって災害にかかります度合いというものがそれぞれ違うわけでございますので、大体そういうことで考えていけばどうだろう。これは、所要経費といたしまして、給与総額のパーセンテージで割り直しますと、たとえば教育職員については大体千分の〇・三くらいでいけるのではないだろうか、あるいは警察、消防職員は、職務上の関係からいたしまして危険度が非常に高いのでございまして、千分の三・〇くらい、公営企業とかそういうところになりますと、一・四ないし一・七くらいというようなことで、いままでの実績等を勘案いたしますと、大体そういうことで考えていけるのではないだろうか、そういうことで、所要額総額といたしましては十六億程度のものを用意するということに考えておるのでございます。もちろんその間に、たとえば給与総額を基礎にして補償が行なわれますから、ベース改定その他ございますと、その点で所要総額も変わってくるわけでございますが、一応はそういうことで考えております。
  63. 依田圭五

    依田委員 この中で一体基金の事務費関係、人件費、そういったものはどのくらい、たとえば負担金率が千分の〇・八七、そういった数字がいま出ておるようでありますが、この中で一体何%くらいを、あるいは十七億なら十七億の総金額の中で一体どのくらいを、経費関係として、パーセンテージなり金額でもって中へ含ましておるか、これを明確にしてもらいたいと思います。
  64. 長野士郎

    長野政府委員 大体事務費関係は総額の中で七%くらい、額にいたしまして約一億円くらいを予定をいたしております。
  65. 依田圭五

    依田委員 基金本部の人員が二十数人、基金の本部といいますか、会社でいえば本社みたいなもの、それから各都道府県は全部兼務、あるいはそういう形で、建物については別の条項でこれをやらせておる、一緒に共用すべし、一緒に使ってやれ、都道府県は協力せいというような内容があって一億という数字なんですが、これをもう少し明細に発表してもらいたいと思います。
  66. 長野士郎

    長野政府委員 お話しのようなことでありますが、いま、まだ正確に推計をしておりませんので、はっきりしたことをお答えできないのでございますが、いま申し上げましたように、総額の約七%程度、約一億円くらいになるであろう、そして本部と支部とは大体半々くらいの割合になるのではないだろうかというふうに考えております。支部につきましても、基金の職員を置くことは当然できるわけでございますが、従来から公務災害の関係等に熟達しておる者等を、直ちに支部の専門の職員として置くというようなことは、人事関係やいろいろございますので、そこまでいければまた支部の経費の算定も変わってくると思いますが、発足におきましては大体半々くらいで発足していくというふうに考えております。
  67. 依田圭五

    依田委員 これはメリット方式は労災のようにとるのですか、とらないのですか。
  68. 長野士郎

    長野政府委員 メリット方式はとらない予定でございます。地方団体は企業者と違いまして、本来職員の安全とか衛生についての責任を負っておりまして、そこで事故が少なければ掛け金を減らしてやるなんということでものを考えていくことはむしろいたさないで、職員ごとの負担金率というものではじく。事故によりまして、たとえば災害等がございましたときに、ある地域については特に公務災害が多いということもございますけれども、あるいは特に少ないという場合もあると思いますけれども、地方団体は、そうメリット方式によって何か事故率の低減をはからなければならないという性格のものではないのではないかというふうに考えまして、とらないわけでございます。
  69. 依田圭五

    依田委員 警察職員とか消防職員なんかもパーセンテージが非常に高い、千分の三というような数字を持っておりまして、あとは低いところが多い。教育職員はその一割というような状態で、それから一億に近い事務費の予算、決算、これはそれらの関係で負担金の率の決定を運営審議会でなさるわけですね。
  70. 長野士郎

    長野政府委員 費用の負担につきましては、法案の四十九条の二項に、前項の負担金の額は、政令で定める職種による職員の区分に応じて政令で定める割合ということにいたしておりまして、その割合は政令で定める予定でございます。
  71. 依田圭五

    依田委員 こういう政令で定めまして、定めたものを一応機械的に乗じた数字を扱うということになって、それが総額で十七億、ベアを含めるとそのくらいの数字になるというのですが、これは膨大な金額なんですね。もちろん四万件近い給付もやるわけですから、災害もあるわけですから、たいへんな金額なんですが、これらを含めて実際の運営に当たる運営審議会、これについて、先ほどの質問に戻りますが、学識経験者という形で、この法で給付を受ける側からの利益代表を、やはり私は最後までお願いをしていきたいと思っております。これはメリット方式に切りかえる時点、あるいはその必要が永久にないというお考えかどうか、その辺のことをもう一ペんお聞きしたいと思います。
  72. 長野士郎

    長野政府委員 メリット方式は、先ほど申し上げましたように、地方公共団体という性格からいたしましても、そういうことが必ずしも適当じゃないのじゃないかというふうに考えておりますので、採用する方針は将来ともとらないつもりでございます。
  73. 依田圭五

    依田委員 いま労災は大体二千万人、一応支払い負担金は、義務的なものを入れれば七百億近く赤字——形は赤字という形で報告されております、ことしの決算で。一割という数字が当てはまるかどうか知らぬが、二百数十万の地方公務員の世帯でありますから、これで十七億近いお金を持っていくということで、これをメリット方式によらずして運営していく。しかも、運営審議会の中で一切の予算、決算をきめていく。こういうことになると、まだ法律が通らない段階ですが、これを成案に持ってまいりました過程の中におけるいろいろのデータの上から、将来五年なり十年なりを展望して、一体この掛け金はどういうぐあいにふくれていくのですか、この点ひとつ……。年金あるいはその他の支払いはまだ先になるでしょうが、それの試算があればここではっきりしてもらいたいと思います。
  74. 長野士郎

    長野政府委員 過去からの地方公務員のデータを私ども調査できる限り調査いたしておりますが、三十八年から四十年くらいまでは、大体二割くらいずつ補償額が上がってまいっておるようでございます。それから、今後もそういう趨勢で上がっていくかどうかということになりますと、片一方では、これはあまり予想してはいけないことかもしれませんが、ベースアップその他もあるわけでございますから、負担金の率を直ちにどんどん累増させていかなければならないというふうには必ずしも考えておりません。それからまたメリット方式との関連ということにあるいはならないかもしれませんけれども、その後の状況によりまして、職種の分類を改めますとか、あるいはまた職員の種類ごとの分類の中で負担金率を多少変更しなければならないというようなことは今後起こるかもしれませんが、全体として逐年負担金率を上げていかなければならないというふうには考えていないのでございます。
  75. 依田圭五

    依田委員 負担金率を上げない、逐年上げない方針だ。毎年上げられては実は困るわけです。また、これはでき上がった法人はこれは永久に命があるわけですから、あまりそういうところまで私も御質問申し上げないし、また質問をいたしました担保といいますか、保証が一体どこまであるかという点を疑問に思うわけなんですが、たとえば昭和三十八年度に七億七千万であった。昭和三十九年度に十億四千万であった。昭和四十年度、これは決算がきまった数字らしいのですが、十一億八千万であった。四十一年度はまだ資料がない。四十二年度の積算は、ベアを含まずして十五億六千万である、こういう資料自治省側で持っておるわけですね。それから、これは総平均では千分の〇・八七、それを公務員別で警察職員がどう、教育職員がどうという形で出して、これを機械的に人数にかける、こういうことになっておるわけですね。しかしこれは一体どういう確率といいますか、正確な資料の上でこの料率はきめられるのですか。あるいは千分のほんの下のほうの数字を一つ二つ動かしても、億という金が動くのです。そういう中で、労災はすでに三百数十億円の金がいま余っておるのです。支払い負担金が、義務的なものを入れればマイナスのところへいっておりますが、それを有価証券に投資してみたりあるいは基金の運営審議会がきめる指定金融機関、大銀行に入れてみたり、こういうことをやるわけです。これには職員代表が一人もおらない。十二人もおりながらおらない。しかも政令のほうは、下のほうの数字を一つ二つ動かせば億の金が動く。しかもその積算の基礎になるデータなるものは、これは一昨年決算のときの数字ですから、しかも将来のベアその他の情勢については全然わからない。それは政府政令できめるのだ。言いかえれば自治省がきめるのだ。いわば自治省の所管がきめるわけなんだ。その執行は、職員代表は全然抜きで運営審議会がきめているけれども、この点について、負担料率、運営審議会の運営、これはまたあとで触れますが、一番重点である審査会の運営、その審査会の認定の問題、どうも局長、私は十分納得できないのですが、重ねて御質問申し上げます。
  76. 長野士郎

    長野政府委員 各職種ごとの負担金率の算定でございますが、これはどういう方式でやったかということになりますと、ほとんどもっぱら過去の実績から考えまして、ある平均的な数字となるということになるわけでございますけれども、各職員の区分ごとに割合を出しまして、これを積み上げて計算をした、こういうふうにいま申し上げるほかないのでございますが、なお補足いたしまして担当のほうから御説明をいたします。   〔和爾委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 内山鉄男

    ○内山説明員 この算定の方式につきましては、実は政令段階で各省とも相談しながらきめていきたいとも思っておりますので、具体的にこういたしますという確定的な考え方が固まっておるわけではございませんけれども、大体の率がどのくらいになるかという見通しを立てますために、実績の数値を使いまして、職種別に大体先ほど申しましたようなことでいけるのじゃないかというふうに思っております。なおこれを算定いたします場合には、そのほかに、今後災害補償の件数なりあるいは金額なりの伸びがどういうことになるかという見通しを立てる必要があるわけでございますけれども、この点につきましては、地方公務員関係だけの数字ではきわめて不十分でございますので、あわせて国家公務員の最近における災害補償の件数なり金額の伸び方がどうであるか、あるいは労災関係の伸び方がどうであるかというようなことも参考にしながら検討していきたいというふうに思っておりますが、現在までの数字で申しますと、過去三カ年における実績で割り出した数字、これで大体いけるのではないか。と申しますのは、過去三カ年間に毎年ベースアップがございましたので、率をかけますもとになる給与総額のほうも伸びておるわけでございます。この給与総額の伸びと補償の金額の伸びと見合ったような傾向も出ておりますので、したがって、過去三カ年間の実績から出しました先ほどの数字で大体いけそうだというふうに思っておりますが、なおこの点については政令を作成する段階で検討を重ねていきたいと思っております。
  78. 依田圭五

    依田委員 保険料率の負担金の率ですね。これは私は非常に重大だと思うのです。これを政令できめる。その基礎になるデータなるものは、一両年過去の数字を、しかも将来の不確定な条件を展望しながらきめるわけでございます。ちょっときめただけでもたいへんな金額が動く。ですから私は、自治省災害補償の法律をお考えになる気持ち、基金というようなものか何かつくりたいという気持ちもわからぬではないのですが、非常に動いておる条件の上に、しかも膨大な金がきめられていく。形は政令その他一応整ってはおるものの、実際の運用については、実際に給付を受ける側からする発言の機会が何らないという点を私は重ねて申し上げておきます。  あまり時間がありませんので、先を急ぎまして、質問を二、三留保しておきます。  次に非常勤職員、これの自治省側が握っております現在の数字は、全国的に一体どのくらいおありか、概算の数字でけっこうでありますから、持っておればお話し願いたいと思います。
  79. 長野士郎

    長野政府委員 非常勤職員の中に特別職、一般職があるわけでございまして、正確な数字がつかめますところと、なかなかつかめないところと両方あるわけでございますが、一般職の中で、臨時職員とか日雇い職員とかいうものの数字は残念ながら十分つかめておりません。船員についても十分な資料がございません。一般職につきましては、失対事業の労務者その他で四十一年の十二月には二十三万八千、それから消防団員、水防団員という関係では百三十八万六千、それから学校医、歯科医、薬剤師等で十四万一千五百四十八、それから議員におきまして八万二百二十二、行政委員会委員十二万一千八百九十五、これは三十八年七月一日でございます。それから付属機関委員が十三万一千九百八十六、統計調査員と指定統計の調査員が二十六万人、民生委員等もございまして、これは十二万九千七百九十三、母子相談員、婦人相談員千三百三十六というようなことで、合計いたしますと、不明のものがだいぶ中に入っておりまして恐縮でございますが、二百五十五万以上に相なる、こういうことでございます。
  80. 依田圭五

    依田委員 そうすると、第六十九条の非常勤の地方公務員に対する補償の制度を定める義務規定ですね。これは、いま局長がおっしゃいました二百五十万の消防団員あるいは統計調査員あるいはその他の方々に対して義務化しているものと理解してよろしいですか。
  81. 長野士郎

    長野政府委員 その中で、たとえば消防団員とか水防団員等は、現在消防団員等公務災害補償等共済基金法によって行なわれておるわけでございます。それから、学校医とかそういうものは、公立学校学校医等の災害補償法という特別な法律がございまして、それによって現在救われております。船員は船員保険法のほうでいくことに相なります。失対関係は労災保険法でいくことになりまして、この六十九条の適用がありますのは一般職の臨時職員、それから非常勤の臨時職員、それから議員行政委員会委員、付属機関委員、統計調査員、民生委員、母子相談員その他というので、大体人数にいたしまして七十八万五千以上の人がこの条例によって適用される、こういうことに相なります。
  82. 亀山孝一

    亀山委員長 依田君に申し上げます。自治大臣、特にいま十分間こちらに出席することになりましたから、ひとつ大臣にお願いいたします。
  83. 依田圭五

    依田委員 それでは、いまの質問は途中ですが打ち切りまして、大臣お忙しいところを来てくれましたので、さっそく一番重要な質問点について、ごく簡単に御質問申し上げて、大臣がお帰りになりましたあと、関連して局長にもお聞きしたいと思います。  それは五十二条、審査会に関連して、五十六条までに関連いたす質問でありますが、大体この審査会は本部が五人、支部が三人をもって構成をする、それで、出席委員の過半数をもってきめる。これについて、本部の五人あるいは支部の三人はどのような選出母体あるいは選考基準をもってこれを行ないますか。その点からお聞きしたいと思います。
  84. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これは法文にもありますように、学識経験を有する者のうちから委嘱するわけでございまして、この審査というようなものにつきましては相当技術的な面、あるいは医学的な面等があるわけでございますので、そういう真にその審査をするに適するような学識経験を有する者から委嘱をいたしたいと考えておる次第でございます。
  85. 依田圭五

    依田委員 これですが、支部の審査会は三人だ。この中に学識経験者というとどんな人を入れ、また二人の場合に、一人休んじゃったときには一体どういうふうにしてきめるのですか。
  86. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 いま申し上げましたように、たとえば三人の支部の場合におきましては、医療関係あるいは法律専門家あるいは行政事務、特に人事関係等の行政事務経験者というような者を一応予定をいたしておるわけでございます。  それから、審査会の議事は過半数の出席ということでございますから、三人の場合は二人ならば開けるということになるわけでございます。
  87. 依田圭五

    依田委員 私、勉強しないのでよくわからないのですけれども、労災は一体どういうようにしてその審査会の委員を選んでおりますか、お答えを願いたいと思います。並びに共済も関連をいたしまして……。
  88. 中村博

    ○中村説明員 労災関係につきましては二つございまして、まず労災保険審査会というのが各都道府県基準局に置かれておるわけでございます。これは職員でございます。それから中央におきまする第二審の労働保険審査会におきましては、これは六人の委員をもって構成されておりまして、「人格が高潔であって、労働問題に関する識見を有し、かつ、法律又は労働保険に関する学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」かように相なっております。
  89. 依田圭五

    依田委員 大臣にお聞きしますのは、この支部審査会について。いま労災のほうのお答えがありましたけれども、内閣総理大臣が任命をする。その条件としては、両院の承認を経て総理大臣がきめる、こういうような第三者的な、第三者機関的な性格をこの支部審査会が持っておらない、あるいは本部も同じようであります。いわゆる五十三条の審査会も持っておらない。これを私は非常に不満に思いまして、この点を実はこれからもひとつしつこく御質問申し上げたい、こう思っておるわけなんですが、起草の段階において、どういうわけでこれを第三者的な機関にしなかったのですか。
  90. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほどもお答え申しましたように、この委員は学識経験を有する者のうちから理事長が委嘱する。その学識経験と申しますのは、いま申しましたように相当専門的な問題でございますので、医療関係とか法律関係とか、あるいは人事行政を担当している者を充てるわけで、そういう意味におきましては、基金の理事長が、いわゆるおことばにあるような第三者機関ではございませんけれども、相当中立的なと申しますか、公平な審査ができるような構成にいたしておるのでありまして、労災におけるような方法をとらなかったわけでございます。
  91. 依田圭五

    依田委員 この基金は独立採算なんですね。そして運営審議会は、先ほど局長に御質問いたしましたが、これは全然給付を受ける側、認定をされる側、公務災害を受ける者の側からの代表はこの運営の中に入っておらない。それに関連をして、負担率というものは非常に不確定な数字の上に、また政令でいきますから、将来を見越して何%とかいう不確定な数字を機械的にかける。しかも十七億円なんという膨大なお金は、これは将来は何十億にもなるのです。労災がすでに持っているように、三百数十億円の余裕金を持つに至るときも私はそう遠くはないと思います。こういうような中においてこの審査をされる、公務災害の認定をされるその機関が、不服審査の救済の機関が、学識経験者だから、医者なんだからこれは客観的な判断ができるのだ、こういう考え方だけでは私はとても納得ができないのです。もうすでにこんなものは類型化しておるのです。一年間に四万件ございます。類型化しておるのです。ただ争うところはどこかというと、それはかけるほうから、要するに使用者側からは、これは公務災害じゃないんだ、公務中じゃないんだ、こんな災害はこれは入らないのだ、かけられるほうは、公務執行中でございました、これが論点になるのです。何も医者の判断とか弁護士の出身でなければならぬ委員を必要とするような判断とか、そういうものじゃない。非常に類型化されておるのです。こういう中で一番重要なことは、その判断をする者の立場が一体どういう側からの利益代表、というと言い過ぎでありますが、そういった選出母体になっておるか、こういうことを心配するのです。それは使用者側——自治大臣から運営審議会理事長、それから委嘱して支部、それから支部が今度はまた委嘱する、こういうことになって、決して白紙の第三者機関的性格を持っておらない、これを私たちは心配するのですが、重ねてその点について御答弁を願います。
  92. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに理事長が委嘱をする。したがって、まあ俗なことばで言えば理事長側に有利なと申しますか、加担する者ばかり選出するのではないか、第三者的な機関にならないではないかという御意見でございますが、私はこういう基金の性格からいたしまして、こういう学識経験者から審査委員を選ぶということによりまして、客観的な判断——結局争いになるのは、いまおあげになりましたような問題が多いとは思いますが、そういう意味におきましても、人事行政の実務担当者と申しますか経験のある者、そういう者を選ぶことによりまして、客観的な判断は、この形におきましてもつき得るものと私は考えておるわけでございます。
  93. 依田圭五

    依田委員 それは大臣は、つき得るものとお考えになって、この法案を御提出になったわけですから、それはけっこうであります。ただわれわれは、そういうことはつかない、お釈迦さまでもできない、こう思っております。なぜ労災のように、総理大臣中央審査会——都道府県の審査会のほうは、これは審査委員を労働大臣が任命する、これは上級の機関に救済機関がありますからけっこうであります。しかし中央審査会、一番大事な最終の終審をなす審査会は、これは総理大臣の任命でありますが、両院の議決を前提としておるわけです。あるいは共済は、これは折半の負担ですから当然とはいうものの、はっきりこれは被使用者側の代表を機構内に送り込んでおるのです。これだけです。国家公務員のあれはどうか知りませんが、地方公務員の災害補償について、この審査会がこういうように一方交通で、自治大臣それから運営の中心理事長、それからこういう形で一方交通で、使用者側の代表者だけをやってきて、そこで予算、決算をきめる。料率をとって、できるだけ独立採算だから締めつけて、経費をできるだけ余らすように指導する。これは独立採算ですから、無制限に出すわけにいかないのですから当然であります。ということになれば、災害の認定は辛く辛く持っていけ、これは四万件でありますからたいへんな数なんです。そういうことが逆にこれは一方には出てくるんじゃないかという心配もありますから、その面からする財政の問題ももちろん別個に出てまいりまするけれども、この点についてどうしても納得ができない。われわれのほうでは、これを最大の問題として、同僚と一緒に相談をいたしておりますが、なぜこの審査会を第三者機関にで毒なかったのか、労災と同じような性格を盛ることができなかったのか、重ねてお聞きいたします。これは最重点ですから、大臣からおことばをいただきたいと思います。
  94. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 一応経過を御説明いたさせます。
  95. 長野士郎

    長野政府委員 それでは御説明を申し上げさせていただきたいのでございますが、この審査会は、基金の一つ機関であるという点でいろいろ御議論があるわけでございますが、中央審査会は第二審であるだけに、取り扱いとして第三者機関のほうがすぐれておりはしないかという御意見、まあそういう御意見も確かにあるわけでございます。ただ、この審査会にいたしましても基金の運営にいたしましても、申し上げておりますように、これは使用者の損害賠償責任というものを十分に実現をいたしませんことには、この処分とか認定そのものが一種行政処分でございますので、必ず行政不服審査の対象になるわけでございます。したがいまして、そういう意味でも、責任のある機関として審査会というものは構成いたしませんというと、一方的な考え方だけで認定なり給付というものの審査を決定するというわけにはまいらないのでございます。そういう意味でも、最終的に行政処分として行政不服審査の対象になるということの性質を持っておるこの災害補償の不服の申し立てを審査するわけでございますので、おのずから理事長が選任をするにいたしましても、審査会としての公平な、専門的な機能が発揮できるような人選は当然にせざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。私ども伺いますと、国のほうは人事院の職員が行なっておるそうでございます。それから労働者災害補償のほうは、先ほど労働省のほうから御説明があったとおりでございます。国家公務員のほうは人事院の内部組織の中で行なっておる。労働者災害補償のほうは、いまお話しのような機関が設けられておる。ちょうど地方公務員についてはその相中のところで審査会を構成する、こういうことにいたしておるのであります。
  96. 依田圭五

    依田委員 大臣が予算委員会御出席のためということで、これは社会党要求の予算委員会でありますから、けっこうであります。ただ、この審査会の問題、それから先ほど触れた運営審議会の問題、これはたいへん重要な問題で、私のような一年生はほんのとば口をやっておればいいので、あと同僚、先輩からあらためてこの問題をひとつ大臣質問をお願いしたいと思います。  それでは局長にあらためて、その問題はその辺でおきまして、先ほどの非常勤の職員に戻りますが、これは非常に単価が安い職員がおるわけですね。たとえば高等学校あたりの時間講師などは、いま時間給で三百円ぐらいだったものを二十五円程度上げたのですが、三百二十五円ぐらいに東京都の場合上げて、時間的にせいぜい二、三校しかかけ持ちできない、こういうような非常に単価の安い非常勤の講師、職員に対して、地方条例に義務化する。二つの点を心配をするのです。一つは、財源がないために百分の六十までの予算をきめることができない。百分の五十なり、百分の四十なりで、百分の六十というこの本法が要求をいたしておりますだけの財源がないというときには一体どうしますか。  さらにもう一点は、そういう安過ぎる額に対する、それの百分の六十なんという補償ではほとんど朝めしぐらいしか食えないというような状態のときに、一体これは救済方法がありますか。
  97. 長野士郎

    長野政府委員 非常勤職員につきましては、統一的な制度としてこの法律の中に載せることができませんでしたのは、先ほど御説明を申し上げましたように勤務の状態なり種類なりが非常にまちまちでごいざまして、したがって統一的にこれを考えることが技術的にも非常に困難だというところもあるわけでございます。したがいまして、これは地方団体が条例できめるということで、本来の形にことは返っておる。むしろ地方団体の自主性にまかせるという点では、先ほどの御指摘からいえば非常にいいわけでございますけれども、ただ、それだけでは御指摘のような難点がございますので、私どもこれから最低保障ということの意味合いというものも多少含めまして、条例、準則等によりまして地方団体に適切な条例制定ができますようにぜひとも指導してまいりたいというふうに考えております。  それから財政的な問題につきましては、そういう意味で非常勤職員の公務災害補償法についての補償が実現し得るような財源措置というものは当然これは考えられなければならないというふうに思っております。
  98. 依田圭五

    依田委員 十二時半までということでございまして、時間をこえましたので、あとスライド制あるいは給付内容についてはまた後日に譲りまして、私の質問はこれで終わります。
  99. 亀山孝一

    亀山委員長 暫時休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ————◇—————    午後三時二十六分開議
  100. 亀山孝一

    亀山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  地方公務員災害補償法案に対する質疑を続行いたします。山口鶴男君。
  101. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 まずお伺いをいたしますが、地方公務員災害補償法案でありますが、従来まではこの法律がございませんので、地方公務員の災害補償につきましては労働基準法、労働者災害補償保険法、この二つの法律、さらには地方公務員法、地方公営企業法に基づきますところの交渉なり、あるいは条例なり、こういうもので解決をしてきたと、かように存ずるわけであります。そのような従来の経過からまいりますと、この地方公務員災害補償法は、当然労働基準法並びに労働者災害補償保険法の趣旨にのっとって規定されるべきもの、かように考えるわけでありますが、この点はいかがでございましょうか。行政局長にお尋ねいたします。
  102. 長野士郎

    長野政府委員 公務災害補償の内容につきまして、補償の内容、方式につきましては、お話のございますように労働基準法なり労働者災害補償保険法と、公務災害という特殊な問題としての問題もございますけれども、基本的には大体同じような内容を考えて規定をされておりますし、またそうあるべきものだと思っております。
  103. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 局長がいまお答えになりましたように、従来の経過が労働基準法それから労働者災害補償保険法、これで処理をいたしてきたということもございますから、私はこの地方公務員災害補償法の運営審議会の構成なりあるいは審査会の構成というものも当然労働基準法並びに労働者災害補償保険法の趣旨にのっとって運営されることが望ましいのじゃないかと思いますが、労働省の御見解はどうでしょうか。
  104. 中村博

    ○中村説明員 労働省といたしましては、やはり自治省で地方公務員の方々の公務災害につきましての法案を提出なさっておられるわけでございます。したがいまして、この地方公務員の方々の特殊性にかんがみまして、自治省でお考えになっておられますこの考え方、これは私は正しいと思います。
  105. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうも労働省は遠慮しているのではないですか。労働者災害補償保険法に基づきます運営審議会の構成、それから審査会の構成というものと、今回のこの地方公務員災害補償法の運営審議会の構成、審査会の構成というものはまるきり違うじゃないですか。そういう違うということだけはお認めになるでしょう。どうですか、労働省。
  106. 中村博

    ○中村説明員 仰せのとおり、違うということはございます。
  107. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 労働省は当然労働者の福利厚生なり労働者の災害防止するなり、そういった面について努力をせられなければならぬ官庁ではないですか。とすれば、今日まで地方公務員が労働基準法並びに労働者災害補償保険法の中で、この労働災害に対してとられておりますような措置がなくなるということについて、けっこうだということはおかしいじゃないですか。どうですか。
  108. 中村博

    ○中村説明員 ただいままで地方公務員の方々で大部分を占められます事務職の方々には、労災法は適用がなかったわけでございます。したがいまして、そういった関係から、今回地方公務員の方々を統一して労災補償の内容と同じようなものを提案されるという点につきましては、私どもはその点につきまして特に異議はないという考えでおったわけでございます。
  109. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私の聞いておりますのは、地方公営企業に働く人たちは確かにおたくのほうの関係の労災法の適用でもって処理をしてきましたね。それから一般職員につきましては条例その他で処理をしてきたわけで、その給付の内容がどうこうと言っているわけじゃない。問題はこの地方公務員災害補償法によりましてこの基金ができます。その基金の運営審議会の構成というものと、それから労働者災害補償保険法に基づきまして、第四条で労働者災害補償保険審議会というのができておりますね。この四条によりますと、この審議会委員は「労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者について、労働大臣が、各々同数を委嘱する。」こういうことになっていますね。今回の地方公務員災害補償法はそうなっていないことはよくおわかりだと思いますね。そうでしょう。そういう点の違いがどうかと聞いているわけです。そういう点について、いままで公営企業の労働者の場合は、運営審議会についてはそういった労、使、公益の代表で審議会も構成されておる。また審査会についても、これもあとからお尋ねしたいと思いますが、審査会についても今回のこの法律とは違った形になっていることは労働省も御案内のとおりですね。違っている面がありますね。そういう点について、この労働者の意見というものが反映されないような形の法律について、いままでおたくのほうの所管でもあった面があるわけですから、そういう点について一体どうお考えかということを聞いているわけです。別に自治省に遠慮なくお答えになってけっこうだと思いますから、どうぞ。
  110. 中村博

    ○中村説明員 これは午前中、行政局長からお答えになりましたように、やはり学識経験者の中でいろいろ考えるという御発言がございましたので、私どもはその線につきまして、いま先生のお尋ねの点は解消されたものと存じます。
  111. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 学識経験者の代表を出す、こう言われるのですが、よくこの法律を見ていただきたいと思うわけであります。運営審議会委員、十二名で構成をする委員都道府県知事、市長、町村長、都道府県教育委員会都道府県公安委員会及び地方公営企業の管理者、これは労働者災害補償法の関係からすれば使用者の代表じゃないですか。そうでしょう。さらにその次にありますような規定によって学識経験者をやはり六名出すことになっておりますが、そうしますと使用者の代表が六人、これはもうすぱっときまっている。あとは学識経験者、その中から労働者の代表を考えるといっても、こちらの労働者災害補償保険法では四条で、労、使、公益みんな同数なんですからね。そうなればこの十二人のうち、とにかく雇用者の代表がもう先に六人入っているんですから、この労使対等の原則というものを貫けば、この法律はおかしいと思うのが当然ですよ。そうじゃないですか。学識経験者の中から何人か入るぐらいでよろしいということならば、これは労働者災害補償保険法四条の規定とは行って帰るほど違ってくる。そういうことをすなおにひとつ感想をお述べいただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  112. 中村博

    ○中村説明員 確かに先生のおっしゃいますように、いろいろな方が入っていらっしゃるわけであります。   〔委員長退席、久保田(円)委員長代理着席〕 しかし私どもは、自治省とされましてこの運営の適正を円滑にはかり、労働者の方々の保護に欠けることのないように運営なさるものと信じております。
  113. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 違うということは認める。しかし労働者災害補償保険法ではこういう規定なんだから、自治省のほうもこの労働者の意思というものを無視することのないように運営していただきたい、そういうお答えでありますから、それではこの点はこれでやめておきましょう。  次は審査会の問題であります。審査会の問題では、労働保険審査官及び労働保険審査会法、このような法律がございまして、そこでこの地方公務員災害補償法に規定しております審査会と性格の同じ審査会の規定がここに書かれておるようでございます。これを見ますと、中央のこの審査会に相当するものはいわば二審ですね。これは第二章に規定する労働保険審査会、これが性格としては同様なものだ、こういう理解でよろしゅうございますね。
  114. 中村博

    ○中村説明員 さようでございます。第二審でございます。
  115. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうして審査会の委員の任命は、先ほど依田委員の質問にお答えになったとおり、「人格が高潔であって、労働問題に関する識見を有し、かつ法律又は労働保険に関する学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」こういう規定だというわけですね。しかるにいま審議されておりまする法律の関係では審査会の委員は五人、支部審査会は三人、それぞれ学識経験を有する者のうちから基金の理事長または従たる事務所の長が委嘱する。したがって二審に相当する中央の審査会は、片や総理大臣が人格、識見ともにりっぱな方の中から両議院の同意を得て任命をするという、この任命についてはきわめて重い条件をつけておるのに、片や理事長が任命する。これではどうも同じ二審である審査会の委員の任命のしかたとしては、行って帰るほどこれまた違っていると思うのですが、この点について、これまた労働省の御感想を承りたいと思います。
  116. 中村博

    ○中村説明員 この点は先生御指摘のごとく、確かに審査会法の二十七条に書いてあるわけでございます。今回のこの地方公務員災害補償法案の五十三条の審査会の構成につきましてこのような手続がなされることは、文面におきましても、もうはっきりいたしておるわけであります。ただ問題は、私はあくまで運営にあると思います。この審査会の取り扱う業務は非常に専門的な業務が多いわけであります。専門的かつ適正に行なわれること、これが担保されればけっこうではないかというように考えておりますので、その点、この違いにつきまして、特にその運用並びに人選が問題でございまして、それがうまくまいりますれば所期の目的は十分に達し得るのではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  117. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 要は運営がりっぱにされればいいのではないか、こういう御感想のようですが、しかし審査委員の任命に関する規定に著しい隔たりがあることは、これはお認めになるわけですね。  そこで次官にお尋ねをしたいと思うのです。ただいまのやりとりでおわかりいただいたと思うのですが、一般の労働者の方の災害補償に対して、この審査をいたします上級審であります二審の審査会委員の任命にあたっては、片や総理大臣が衆参両院の同意を得て任命をするというような、任命においても、非常に重要な手続の上で任命されるようにしているわけです。片方はどうかと申しますと、この法律ができましたあとできるでありましょうところの理事長が、どこの同意も得ることなく一方的に五人の委員を任命をしてしまう。それからまた先ほどお尋ねをいたしましたように、この基金ができますと、基金の運営をいたします運営審議会委員の任命については、労使の片寄り方というものは非常にはなはだしいわけですね。片や労災法第四条の規定によります労災補償の運営を預かります運営審議会委員は、労使、公益それぞれが同数の代表を出すというような形で、労働者の意向というものが十分反映される形で構成をされている。こういう違いがあるわけです。たいへんはなはだしい違いだと思うのでありますが、こういうはなはだしい違いを、なぜあえてこの地方公務員災害補償法には規定をしたのか。片方は労働者の立場というものが十分尊重され、しかも労災の審査に当たってのこの審査委員の任命はきわめて重要な手続でやっておるのに、片方の地方公務員の労働災害にあたっては、その審査に当たる方はきわめて簡単な手続で任命される。何か地方公務員の労働災害というものは非常に軽く扱えばいいんだ、こういう感じを次官としても十分お持ちになったと思うのです。どうもその点にこの法律の根本的な欠陥があると私は考えるわけでありますが、次官、どうかこの点を——これほどはなはだしい違いがあるわけですから、この違いをなぜこのような形で法律案として提案をせられたのか、地方公務員の労働災害というものは軽く扱ってもいいというお考えなのか、この点だけをお答えいただきたいと思うのであります。局長のほうでお答えがあって、また次官のほうからお答えがあってもけっこうであります。
  118. 長野士郎

    長野政府委員 御指摘にございますように、確かにこの運営審議会について労働省のほうは三者構成になっておる、こちらのほうはなっていないというような点はございます。この点についてはいろいろな言われ方ができるわけでございまして、先生の御指摘のようなことが当然出てくると私は思いますが、問題の考え方といたしまして、午前中にも申し上げましたが、この基金は使用者が無過失責任を負う、要するに地方公共団体が責任者である、それを地方公共団体にかわって基金が行なうということでございますので、その運営の大綱につきまして、地方団体を代表するといいますけれども、この場合任命権者を代表する者が運営審議会の主要なメンバーになるということは、これは当然のことでございます。   〔久保田(円)委員長代理退席、委員長着席〕 その場合に三者構成をとらないのはなぜかということでございますが、これはやはり私どもといたしましては、ちょうど国と労働省の労災との中間にあるということをこの前申し上げましたが、やはり国や公共団体というものは本来公共的な任務を持っておるものでございます。それは使用者が企業の利益を追求することの必要から、災害補償その他についてともすれば敬遠をするとか、何とか責任を免れたいというあらわれ方をしがちだというような観点、そういうことを言ったらしかられるかもわかりませんが、そういう感覚とは違うので、やはり国とか公共団体というものは逃げも隠れもしない、そして公共性を追求するためにも、また公務員という公務の特殊性から考えまして、また公務員の職務をりっぱに果たさせるためにも、やはりその点では十分に責任を負うという基本的な体制が、その点では企業と違った立場を私は持っておると思いますので、その意味で、運営審議会が必ず三者構成でなければ公務員の利益が代表されないという、それだけでのみものを考えるのもどうであろうかということも一面あるわけであります。そういう意味で学識経験者というものは、専門的な方ももちろん必要でございますので入れたい。また職員の中にもそういう学識経験のある人がございますれば、これも入れる。こういうことで、運営審議会の運営に当たりまして、地方公務員の公務災害補償が完全に実施できるということについては、私どもそういう運営で支障がないというふうに考えておるわけでございます。  それから審査会につきましては、これは先ほどもお話がございましたが、審査会自身につきましては、これは労災といえども、この審査会のメンバーの中には、そういうお話しのような職員団体を代表するとか労働組合を代表する者は入っていないわけであります。ただ任命のやり方というものは、もちろんお話しのとおり手続が非常に違います。違いますが、その点ではいま申し上げましたような公共性を追求することに責任を負う国や地方団体、この場合地方団体でありますけれども、そういうものが、地方団体にかわって行なう基金が責任をもって運営をする、基金が責任をもって審査業務をつかさどる。これは、ここで十分な認定とか給付を行ないませんことには、これはやはり一種行政処分と考えられますから、当然訴訟対象にもなってくるわけです。したがいまして、そういう意味で、言ってみれば逃げも隠れもできない、運営を公平にやらざるを得ない立場でございますので、その点で手続の重さ軽さというお話は、確かにそういう意味では御指摘のようなことはあると思いますけれども、それだから基金自身の責任ある運営によって、公務災害補償が十分に実施するに不安があるというようなことにはならないというふうに私どもは思っておるのでございます。
  119. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 次官のほうはまたお尋ねすることにいたしまして、いまお答えがございましたけれども、とにかく審査会の委員の任命の手続が全く違う。片方はきわめて簡単過ぎる。それからまた基金の運営に当たります運営審議会委員の構成、片方の労働者災害補償審議会の構成、これが違うことについては次官も十分おわかりいただいたと思うのですが、なぜ地方公務員の災害についてはかように労働者の立場を軽視し、それからまた審査に当たる、公平な扱いをせられるべき方の任命について手続が、とにかく両院の同意を得て総理大臣が任命する、理事長が、はい、あなた頼みますと言うこととは、これは幾らなんでも違い過ぎるのではないですか。この点いかにお考えですか。
  120. 伊東隆治

    ○伊東政府委員 確かにこの三者構成に比較しまして、手続その他に関しまして軽いきらいがございます。それでございますが、この運営に当たりまして、審査に当たりまして、できる限り公平にやっていくということについては、最大限この審議会といえども勉強する一わけでございますから、その点はひとつわかっていただきたいと思うのでありますが、確かにその点は軽い。御指摘のとおり、これは労災法に比べて非常に軽いきらいが大いにあると思います。
  121. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 次官のお答えのありましたとおり、確かにたいへん違っているわけです。といたしますと、せめて運営審議会委員の、学識経験者の委員の任命に当たっては、その労災法にいう労使対等の立場に近づけるくらいの配慮をもって任命をすることが至当ではないかと思うのですが、この点については労災法第四条の規定に近づける任命を行なう。また片方は六人はきまってしまっているのですから、労使対等というわけにはいかないのですから、少なくとも対等の水準に近づける、こういうことについてはいかがでしょう。
  122. 伊東隆治

    ○伊東政府委員 おっしゃるとおりの軽重がございますので、この委員任命に当たりましては、学識経験者を任命するに当たりまして、十分そのほうの経験のある方を選んで委員に任命するように努力しなければ、この法の欠点を補い得ないと思うのでございます。
  123. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうもよく聞こえなかったのですが、欠点を補うようにするということは、私がお尋ねしましたように、第四条の労使対等の線に近づける形で学識経験者の任命をする、こう聞いてよろしいわけですね。
  124. 伊東隆治

    ○伊東政府委員 そういうふうに解釈されてけっこうだと思います。
  125. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 次に審査会の問題でありますが、任命の手続が非常に違うということをまず申し上げました。次にお尋ねしたいのは、労災法の場合は、確かに審査会の中には直接労働者代表というものは入れていない。しかし中央の審査会に見合いますものとしましては、労働保険審査官及び労働保険審査会法第三十六条に「関係労働者及び関係事業主を代表する者の指名」という規定がございまして、中央の場合におきましては、関係労働者及び事業主を代表するもの各四人を各関係団体の推薦によって指名している。そして指名された指名委員の方は、この審査にあたって意見を述べる権利もあるし、また政令等を拝見しますと、政令の二十九条によって、審査会に立ち会いもできる、そうして意見も述べる、こういう形で労働者の意見というものを十分反映させる機構があるように思うわけです。また第一審でありますこの法律にいう支部審査会、労災法の関係からいえば、先ほど申し上げた審査会法の第五条、ここにやはり各二名の労使の代表を指名委員として任命をする。そして、これらの方も当然審査会における立ち会い、意見を述べる権利、しかもまたその意見については尊重しなければならぬという規定、こういうものがあるわけですね。ところがいま申し上げたように、地方公務員災害補償法関係については、かかる指名委員というものはどこにもない。この点について労働省の御感想はどうでしょうか。
  126. 中村博

    ○中村説明員 労働保険審査関係につきましては、二十年の歳月を経ておりまして、諸般の事例がございますし、それからまた労使代表の方々の御意見をお聞きするというたてまえになっておるわけでございまして、今度の地公災法におきましては、このようにはっきりは書いてないのでございますが、しかしやはりあくまでそういった実績は十分尊重さるべきでございましょうし、かつまたその委員会の運営におきまして適正な運営が確保されるということは当然私ども期待いたしておるところでございますので、その点につきましては違いはございましても、実質的には労働者の方々の不利になるような事態は生じないではないかというように存じております。
  127. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 労災法の場合は、いま私が申し上げたような指名委員の制度がある。そういう実績を自治省においても十分尊重せられたい、こういうお答えでございました。たいへんけっこうであります。  そこで行政局長にお尋ねするのでありますが、この地方公務員の中には、地方公営企業の労働者で、当然、ただいま労働省がお答えになったような指名委員の制度があって、そして審査にあたっては労働者側の意見が十分反映する——十分と言っていいかどうかわかりませんが、とにかくその指名委員が審査会に立ち会いもし、意見も述べられる、その意見は審査委員の人たちは尊重しなければならぬ、こういう制度があった。その制度は実績として保障されるべきだということに対して、今回の自治省提案された法律案には、せっかくそのような実績があるにかかわらず、なぜそういった指名委員というような制度を全く抜きにしてしまったのか、あるいは運用の中でそういう趣旨のものを生かすおつもりがあるのか、まずこの点をお尋ねをしたいと思います。
  128. 長野士郎

    長野政府委員 審査会の審査にあたりまして、審査が非常に公正に行なわれなければならないということは当然でございます。また審査をするにあたりまして、その事故の発生しました状況あるいはそれを取り巻く環境、いろいろなものを審査の判定の基礎にいたしますために資料として取り寄せましたり、関係者に状況を聞きましたり、あるいはまた関係の者の意見を聞きましたり、これはできます限り周到に行ないまして、そして審査の公正を期するということは、これは適当なことであろうと思うわけであります。私どもは審査会か審査をするにあたって、何らそういうものを聞く必要はないというふうには考えておるわけではございません。ただそれを、審査会法のような、特別に別個の法律の上でそういう意見を聞くというような、いま御指摘のございました指名制度というようなものをここではとっていないということでございますが、そのとっていませんのは、何もそういう意見を聞く必要がないからということではなくて、やはりこれは先ほどから申し上げておりますように、国や公共団体というものの本質から考えまして、またこれをかわって公務を行なっていく審査会のあり方、姿勢といたしまして、それをそこまでここで法律規定しないでも、審査会の運営として自由な立場で行ない得るものではないだろうかというふうに考えておるわけでございまして、そういう意味からいいまして、必ずこの指名制度というものをとらなければならぬというふうにも考えてはいないわけであります。もっと広く意見を聞くことは幾ら聞いてもかまわないわけでございます。私どもはそういう意味で、この審査会の審査をいたします審査委員の判定の材料を取り寄せる方法として、いろいろなやり方があると思いますけれども、それをここに法律指名制度という形でとることだけをしていないということでございますが、そういう運用の行なわれますことまで否定しようと考えておるわけではございません。
  129. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうも局長の御答弁、先ほども聞いておりますと、公共団体は、利益団体、利潤を追求する企業とは違って逃げも隠れもせぬし、また公益的な立場もあるのだということのみを非常に強調せられておるようであります。そこにこの労災の各種の規定と今回の法律規定の違いのいわば根拠といいますか、うしろだてにそれをしばしば引用されるようでありますが、しかし最近の地方公営企業の実態はどうでしょうか。きょうは財政局長さんがおりませんので、細郷財政局長さんに聞くわけにもいきませんが、どうも公営企業の運営については独立採算を非常に強調して、いわば利潤を追求する会社と同一だとは私は言いませんけれども、運営にあたってはそういった面が非常に強くあらわれているし、また財政当局が財政の面からそういう点をきわめて強く指導しているのが実態ではないですか。決していまの公営企業が局長さんの強調されるような公益の面のみ考えて運営しているとは言い切れぬ点もあるじゃないですか。それからまた、過般ILOのドライヤー委員会が参りまして、日本の、特に日本政府が雇用しておるかっこうになっております公務員組合、公営企業関係の組合、そこに非常に紛争が多い、そこはやはり総理大臣みずからが責任をもって改善するようにしなければいけないのじゃないかという趣旨の答申もしておることは、局長もよく御案内のとおり。現に公務員組合の中に労使の対立といいますか、そういう面が非常に強く出ていることは趨勢ではないですか。これも、行政局長さんが公務員部などをつくって弾圧を指導されるような気が、私はないだろうと思いますけれども、ややもすればそういうふうな形で受け取られる傾向もないではない。ですから、この地方団体がすべて公益のみで——労使という意味では公益的な立場に立っているということは言えぬ場合が非常に多いわけです。ですから、そういう局長さんの理屈だけでは、これは納得をしないと思うのですね。とするならば、この審査会についても当然、運用では局長さん、考えるようなことを言っておりますが、法律の上で労災が規定しているような指名委員の制度、こういうものをつくっておくことによって、労働災害についても労働者の意見が十分反映をされる、労働基準法がとっております労使対等という立場にせめて近づけさせる、このことぐらいはやってもよかったのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  130. 長野士郎

    長野政府委員 公営企業その他いろいろ御指摘がございましたが、これはこれなりにまたそれぞれの企業の実態、あり方等についても非常に問題があるわけです。先生の御指摘の点だけでない、いろいろな問題の集約がいまの公営企業の運営の実態に反映をされておるのではないだろうかという気もいたすわけであります。公営企業につきましては、もちろん公共性といわゆる企業性と申しますか、そういうものの調和をどこではかるかという問題もありますし、一がいに言うわけにもなかなかまいらぬわけでございます。しかし、そうかといいまして、あるいはまた地方団体の中での労使関係が非常に相互不信の上に立っておるような傾向があり過ぎるような御指摘もございましたけれども、しかし現実はそれでは行政は動いていないわけで、むしろそうではなくて、そういうケースもないとは申しませんけれども、本来地方団体におけるところの大多数の労使関係というものはまずまず正常な形で行なわれる、その上に立って地方自治体の運営というものが行なわれる、私どもはこのように考えておりますし、現にそうだと信じているわけでございます。そこで、国や地方団体はそういう意味で今度は審査の問題につきましても、公共性とか、そういうことを盛んに強調して、やらぬじゃないかという御指摘、これもごもっともと思いますけれども、やはり地方公務員というものの制度を考えます場合に、やはり片一方に国家公務員の制度があり、片一方に労働者災害補償制度、午前中にも申し上げましたが、ちょうどその相中をとっていく。と申しますのは、従来、御指摘のように、また現在もそうでございますけれども、現業関係については労災関係の適用を受けておった職員もおるわけでございますから、そういう意味で、公務員という制度では国の制度というものとの関係も大いに取り入れなければなりませんが、運営の実態ということから考えますと、やはり従来からの災害補償の経緯もございますから、運営の実態では、実質はそこなわれないように考えなければならない。またそう考える基礎といたしまして、たびたび援用するようで恐縮でございますが、地方公共団体というものは、やはりそれ自身が住民の福祉というものを本来の使命にしておる団体である。またそういう面で職員の福祉、公務員の福祉というものについても、みずから使用者——世の中にいろいろな使用関係が多いわけでございますけれども、そういう意味での労使関係の模範たり得るような運営というものも、当然その責任の中に入っていると言っていいのではないか。それらを考え合わせますと、この法律に特に指名制度というような規定をしないでも運営の公正というものは期待できるのではないか、こう考えて、法律にあえて入れなかったのでございます。
  131. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 運用で十分考慮する。運用のしかたがどうあるかというようなことはいろいろありましょうが、しかし本来は、片や労災法が法律規定しているのですから、当然この審査会も法律規定すべきであったという意見は強く申し上げておきたいと思います。  時間も、本会議後でありますからあまりかけては恐縮だと思いますし、大臣もおりませんから不十分でありますので、との問題はこれで一応おきたいと思います。  ただ一つつけ加えてお聞きしておきたいと思うのですが、この審査会委員中央の五名、支部の三名、先ほどの依田委員の質問に対するお答えですと、お医者さん、それから法律に明るい方というから弁護士ですか、弁護士さんとも限らぬでしょうが、法律に明るい方、あと一人はどういう方だったですか。
  132. 長野士郎

    長野政府委員 支部で申しますと、いまお話のございましたようにお医者さんといいますか医師の関係、それから弁護士といいますか、法律問題、適用問題等もございますので、そういう法律の専門家、それからもう一人は行政の実務経験というものを多年持っておったような人、これはそういう適任者を求めたいと考えておりますが、もしそういうことのかわりといたしまして考えました場合には、たとえば府県の人事委員会等の、人事管理というものに常にタッチしておりますところの人事委員会委員長なり委員なりの中の適任者というようなものを考えていったらどうだろうかというふうに考えておる次第であります。
  133. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 第三者の場合は、そうすると一般職の地方公務員なんですか。人事委員会委員長といえば、これは一般職の職員ではない。他の職を持っておる方がなるということなんですが、いずれになるのか。
  134. 長野士郎

    長野政府委員 この行政実務を多年経験した者と申しますのは、現在は現役というわけではございませんで、もうそれを卒業してしまったどこかにおる先輩という者、あるいはそういう方が得られないときには人事委員会委員長等で、いわゆる第三者でありますので、そういう方に加わっていただくことが適当ではないか、こう考えております。
  135. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いわばOBの方ですね。職員ではない。公平な機関というのは、いろいろ考え方はあると思うのですが、私はいわば突き詰めて公平ということになれば、これは労働者代表、使用者代表それから公益というのが、いわば奇数の場合は一番公平、プラス、マイナス、ゼロということになるので、無色の人といいましても、これはやはりウエートがありまして、〇・三なり、一というかどうか知らぬが、〇・九、〇・九九というような場合もあるでしょうし、やはり一番プラス・マイナス・ゼロの形というのは三者機関ではないかと思うのです。そういう議論を蒸し返してもしかたがありませんから、私はこれ以上言いませんが、とすれば、せめてこの審査会の委員の任命にあたっては、使用者側の意見ばかりではなしに、理事長ないしは従たる事務所の長というわけですから、従たる事務所の長ということになると、これは都道府県の場合は知事政令市の場合は市長というようなことになるのですが、とすると、その人が任命するということになると、これもさっきの意見の蒸し返しになりますが、これは局長の言う公益のみとは言えぬ場合がある、やはり運用上という面もあるのですからね。その意見ばかりではやはりまずい。当然被用者の意見なり、法律に書かなくとも運用の中でそういった意見も聞いて、できる限り公平な委員の任命をしていくという配慮はいかがでしょうか。
  136. 長野士郎

    長野政府委員 委員の任命にあたりましては、もちろんお話のございますように公正な第三者をそれぞれの分野において委嘱をするということが最も望ましいことでございますし、最も必要なことでございます。そういう意味で、委員の委嘱にあたりましての公正な考え方というものは、実際問題としてぜひ実現をするようにはいたしたいと思います。しかし、知事や市長が任命をするから必ずそれは何か不公正だというふうなことになるというふうにはむしろ考えないのでございまして、私どもはやはりそういう意味で公務災害補償というものの責任を負う、全責任を負うといってもいい責任者の一人として学識経験者を選ぶわけでございますから、その点では公正な人選をぜひ実現させたい、こう思っております。
  137. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 地方公営企業法によりますと、地公労法でもいいわけですが、労働災害については当然これは給与、勤務条件の問題になるわけですね。ですから当然、従来この法律がない場合におきましては職員団体と当局との間で交渉をする、文書協定をする場合も当然あり得るわけですね。地公労法の場合は当然これは団体交渉の適用事項ですね。そこで話のまとまったものをいわば条例にして運営してきたところも相当あるということです。としますと、そういった労働災害は明らかに職員団体と当局との交渉事項、その労働災害を実際に審査し運営するということになれば、それは私は局長の言うこともわかるわけですが、とすれば、当然使用者と職員団体とが災害のいろいろな事柄については話し合いをしてきたわけですから、そういう趣旨も私は審査会の委員の任命にあたっては生かされてもいいんじゃないか、何も法律に書けとかいうことは言っておりません。いわば運用としてそういう趣旨は当然生かされていいのじゃないかという感じがするのですが、どうでしょう。
  138. 長野士郎

    長野政府委員 お話しのとおり、従来団体交渉事項として、あるいは交渉事項として、公務災害補償法につきましてそれぞれの地方団体におきまして話し合いなり慣行なりというもので運営をしておった面はあるだろうと思います。そこで、私どもそういうものにつきまして、そういうよい慣行なり何なりのありますものを全部否定をしようというようにはわれわれは毛頭思っておりません。そういうものにつきまして、そのいいものはますます育てていくほうがいいわけであります。ただ、審査会の委員の任命ということがそういう場合にどの程度にその問題と関連させられるかということに相なりますと、これはやはり事実上の扱いがどうなるかということはそれぞれ団体にまかせるわけでございますので、そうすることが必ずそうあるべきだということまでは、なかなか私どもはそういうふうにも考えませんのでございます。公正な委嘱ということは、目的を達するためにいろいろな相談や意見を聞くということは、それはあるかもしれません。それまでも否定しようとはごうも思っておりませんが、しかし委嘱そのものの最終的な責任は支部長なり基金の理事長というものが負うという形で公正な人事が実現すればいいと考えております。
  139. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 もう時間がありませんから、どうせまたこれらの問題はあと委員の方もいろいろ御質疑があると思いますから、十分そういう意向はくみ取る努力はするという前向きの姿勢であることを確認できましたので、一応おいておきたいと思います。  次に、この各都道府県市町村等で、すでに条例でこの種の規定を設けておりますところの問題ですが、たとえば休業補償等については百分の百という実績を条例できめているところがあるわけですね。参議院の議事録等を拝見いたしますと、自治権はあくまで尊重するんだ、こういう御答弁のようです。それで十分わかるわけでありますが、その自治権を尊重するということは、決してこの百分の百というものを否定するものではない。そういう百分の百という実績を持っているところ、自治権を尊重するという立場からすれば、こういうものは何も法律にしわ寄せして、この条例にある規定をだめにする必要はないんだ。百分の百なら百分の百でそのまま通しても差しつかえないんだ、こういう趣旨だと存じますが、その点はいかがでしょうか。
  140. 長野士郎

    長野政府委員 この災害補償法は統一的な災害補償の内容規定いたしますと同時に、基金によりまして地方団体がかわって行なう。この法律規定されております限度におきましては、地方団体がこの災害補償をしたのと同様な効果を生じまして、その限りにおいて責任を免れる、こういうことを規定しておるだけでございます。それ以外のことを考えておるわけではございません。したがいましてこの災害補償に、ほかといいますか、それに重なるといいますか、というようなものがありました場合に、それが直ちに法律意味をなさなくなるというふうにも考えておりません。それはそのまま効力あるものと考えております。ただ、私どもとして、そういうことが非常によろしい方法だということまではどうも言えないわけです。私どもとしては、今回のこの公務災害補償制度というものは、繰り返し申し上げておりますように、まずまず現在の法制度として望み得るものとしてはこの程度のものだと考えておりますので、それを積極的に推奨するというようなところまでは言い切れないわけでございます。
  141. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 よいといって推奨はしないが、悪いとは言わないということですね。
  142. 長野士郎

    長野政府委員 なるべくこれでやってもらいたいと考えております。
  143. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただし、自治権は否定しないということですね。
  144. 長野士郎

    長野政府委員 法律的には、まさにそのとおりでございます。
  145. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 悪いとは言わぬというぐらいのことは言ったほうがいいのではないですか。——その点はさらにまた他の委員のお尋ねもあるでしょうからおきます。  それから共済組合との関係ですが、共済組合の休業給付は百分の八十ですね。しかるにこの災害補償では休業補償は百分の六十です。公務による障害でないいわば休業給付が百分の八十で、障害による休業補償が百分の六十というのでは、私は反対じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。  人事院の方、来ておりますか——国家公務員についてはどう扱っているのか、これについては付加給付ですから、いわば使用者側の出します費用のものですね。その付加給付でもって二〇%は補償しておるというふうに聞いているのですが、そのとおりですか。
  146. 佐分利輝彦

    ○佐分利説明員 国家公務員の場合は、昨年の七月一日から休業補償につきましては二十二条の福祉施設によりまして、事故の起こりましたときに常勤職員であった者は二〇%、それから常勤的非常勤職員であった者が一〇%上積みをするということにいたしております。
  147. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この点、地方公務員の災害補償関係、共済組合関係についてはどう措置をするつもりですか。
  148. 長野士郎

    長野政府委員 いま人事院が申されましたが、基金といたしましても、休業援護金というような制度を設けまして、同じように二〇%上積みをいたしたいと考えております。
  149. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすればこれは基金の中から見るわけですね。だとするならば、法律にはっきりと百分の八十と書いたらどうなのですか。とにかく公務障害でないほうが百分の八十で、公務障害のほうが百分の六十、こんなばかなことはないはずですよ。これが逆ならまだわかりますがね。どうしてこういう非常識な規定をするのですか。ばっさりこれを修正して八十と書いたらどうですか。
  150. 長野士郎

    長野政府委員 この公務災害補償につきましても、地方公務員の災害補償としての問題にとどまりませんで、国家公務員の公務災害補償とかいろいろな関連がございまして、いわゆるそういう手当てにつきましても災害補償として百分の八十まで踏み切るということになりますと、労働者災害補償とかいろいろな関係があるというようなことから、どうもだいぶ長い沿革なり相互の均衡なり関連性というものがあるようでございます。したがいまして、私どもといたしましてもいまのところは、御指摘のような点は確かにございますけれども、百分の六十ということで出発をいたしまして、そして付加給付ということになるかもしれませんが、休業援護金というような形で実質の百分の八十をやはり補償をしたい。これはいろいろ沿革なり関係なりがございまして、どうもそこまでのところしか出てこないわけでございます。
  151. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 近い将来——ここですっぱり修正していただくのがいいと思いますけれども、いまのお答えならばほんとうに八十と書いていいわけですよ。これはまたあとで他の委員の方がこの点をお詰めになると思いますから、問題提起だけをしておきますが、当然いまのお答えのようならば百分の八十とすべきである、こういった意見だけを申し上げておきたいと思います。  それから、スライド制なんですが、労災法のほうでは一二〇%、いわば二割の変動があった場合はスライドするという規定がありますね。これにはありませんが、どうも労災法から見ると後退している面が多くて困ると思うのですが、なぜこのような規定は置かなかったのですか。
  152. 長野士郎

    長野政府委員 労災法は御指摘のようなスライド規定が入っておるわけでございますが、公務員関係のこの種の問題につきましては、ただ公務災害補償の年金だけの問題ではございませんので、いわゆる共済の年金、あるいは厚生年金、国家公務員の関係、この縦を見たり横を見たりということになって恐縮でございますけれども、やっぱりその横を見ないというとなかなかものがまとまりませんので、この五十七条にはそういう意味で、むしろ地方公務員共済の年金についてのスライドの考え方規定と同じような規定を入れるにとどまっておる現状でございまして、私どもはこれで満足しているわけではございませんが、現在の段階ではやむを得ないというふうに考えております。
  153. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 均衡論がよく出るんですが、どうも均衡論というのは、都合のいい均衡だけを持ち出すというくせがあるんじゃないですか、自治省は。均衡論で言うのならば、先ほど私が問題にした運営審議会、審査会のこの指名委員を均衡をとったらいいんですよ。そっちは均衡をとらぬ。どうも都合のいいほうは主張する、都合の悪いのはおいとく。スライドも、どうもこれは金がかかって都合が悪いからおいとく。そのかわり、この都合のいい均衡は大いに主張せられる。少しアンバランスだと思いませんか。
  154. 長野士郎

    長野政府委員 運営審議会は均衡をとらないじゃないかと言われるようでございますが、運営審議会も国家公務員と労災との両方をにらみ合わせて、私どもは大いに努力をしておるつもりでございます。この辺がなかなかむずかしいところでございますが、その点ではこの五十七条は、国家公務員とかそういう年金関係のほうにばかり均衡し過ぎているじゃないかという御指摘の点は、確かにあると思います。あると思いますが、先ほど申し上げましたように、これで満足しておるわけではございませんけれども、現状はまずこの辺から出発せざるを得ないということでございます。
  155. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いま一つお尋ねして終わります。労働省にお尋ねしたいのですが、この今回の法律が、これは廃案になるか、継続になるか、あるいは通過するか、その辺はまだわかりませんが、かりに施行になりました場合は、いままで地方公営企業関係の職員は労災の適用で、おたくのほうの適用だったわけですね。それが今度はこの法律でもって処理をされていくということになるわけです。特にこの地方公営企業ないしは清掃関係の労働者、相当災害が多かったんじゃないかと思いますが、その関係もありまして、本年の二月ですか、労働省におきまして安全衛生要綱をおつくりになりまして、そして清掃労働者関係の安全基準といいますか要綱をつくって、労働基準法はこれらの職員に適用になるのですから、そういう立場からこれらの職員の人たちの労働基準を守る、こういう努力をせられたと聞いておるわけであります。ところが、今回この法律が施行になるということになりますと——労働災害は労働基準局関係であったから、災害状況もわかった、だからこの労働安全基準についても要綱をつくっていろいろ指導をされた。今回この法律が通れば、今度は災害関係はこの基金がやることになるわけですね。そうしますと、そうでなくても労働基準局は、労働省は、地方公営企業あるいは地方団体等の労働基準についてあまり立ち入らないという悪習がありましたですね。いま問題になっている各種学校の警備員等の問題についても、労働省のほうは一週間に一ぺんという基準をきめておるわけです。それ以上はいかぬ。ところが小さな学校に行くと、一週間に二回も三回も宿直をやっている。労働省の出したところの基準からはずれているというのは、労働省は目をつぶってきたという経過があると思いますね。そうでなくても、いま言ったような傾向がある。そうしますと、せっかく労働省が清掃関係の労働者に対して安全衛生要綱をつくって、労働基準について要綱をつくり、いろいろ干渉するといいますか、監督するといいますか、当局に対してこの指導をやった。今度この災害の部分がなくなってしまったから、もうあまりこの関係はないというようなことで、この安全衛生要綱をつくったけれども、たなざらしになるというようなことがあってはならぬと私は思う。だから、労働災害の仕事は基金のほうにかりに行っても、労働基準を守らせる、安全基準を守らせる、こういう努力は労働省としてやっていくおつもりがありますか。この点、念を押しておきたいのが一つ。  それから自治省のほうにお尋ねをしたいと思うのですが、そうなれば、今度は労働災害関係のデータを労働基準局のほうにもどんどん渡して、そうして労働者の労働基準が十分守られるようなそういう努力も、自治省としてやる必要があるんじゃないか、このように思うのですが、この点に対する自治省の御見解はどうでしょう。
  156. 中村博

    ○中村説明員 山口先生の御質問でございますが、第一の安全衛生関係につきましては、労働基準局といたしまして現在までも最重点施策、あるいは労働省の最重点施策としてやってまいったわけでございます。今回この地方公営企業関係が分離されるということになりましても、この安全衛生関係はさらに積極的に進めてまいるということで、現在御審議中でございますが、安全衛生局というものの新設もはかっているわけでございます。したがいまして、この点につきましては、この分離のために労働者の方々の災害防止という点につきまして後退するということは絶対ございません。むしろ積極的にさらにこの問題を進めていくという態勢にあるということを申し上げたいと思います。
  157. 長野士郎

    長野政府委員 御指摘のような問題につきましては、労働基準法に基づきますところの労働安全規則がそういう職員について適用されておる状況というものは、この災害補償法ができたからといって変わるものではございません。したがいまして、自治省といたしましても、また災害補償そのものが、いわゆる災害補償についての長い伝統を持っておりますところの労働省の知識とか技術というものも十分借りなければならない状況でございます。私ども今後とも十分連絡をいたしまして、この点の遺漏のないようにやってまいる所存でございます。
  158. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 したがって、基金のほうで、どの職場にどういう労働災害が起こったということはわかるわけですね。その状況を労働省のほうにもお知らせする。そうして労働省のほうは、いまお答えになったような要綱を完全実施するための努力をやっていただいて、そうして清掃労働者等の労働基準については十分守られるような体制をつくる、こう理解してよろしいですね。
  159. 長野士郎

    長野政府委員 そのとおりに御理解いただいてけっこうでございます。
  160. 亀山孝一

    亀山委員長 小濱新次君。
  161. 小濱新次

    ○小濱委員 この問題につきましては、会議録を拝見いたしますと、ほとんど長野局長の御答弁のようであります。本委員会でもいろいろと質疑がございました。もう尽くしたような感じもございますが、いままでの質疑を通して、私、ちょっと理解に苦しむ点がありました。そういう点でこれから長野局長及び伊東政務次官に若干のお尋ねをしてみたい、このように思います。  私の疑問点の質問に入るまえに、まずこれは長野局長さんの御答弁を一ついただかなきやならないわけでありますが、いろいろといままでの経過を通してよく理解はできてまいりましたけれども、なお一つ、あらためてもう一度局長からお答えいただきたい、こう思います。  それは、今度のこの法案でありますが、特につくらなくても、現行の地方公務員法四十五条その他ありますが、これに基づいて、そして条例で規定するように指導すればよい、このように思うわけでありますが、どういうねらいでこのような法案ができてきたのか。幾つか問題点がございました。その点はよく理解しておりますが、もう一度局長からお答えいただきたい、こう思います。
  162. 長野士郎

    長野政府委員 先ほど来申し上げておりますように、現在適用法規を非常に区々にしておる。それから認定をする機関が同じ地方団体の職員につきまして、片や任命権者、片や労働基準局というふうに異なっておる。さらに、十分適用されていない、おおい尽くされていない職員もいるというようなことでございますが、同時に公務災害種類なり内容なりというものは、だんだん多くもなってまいりましたし、また補償の内容も、他の法制におきましても非常に高度の内容のものを取り入れるようになってまいりました。そこで、認定とか給付とかいうものにつきましても、非常に専門的、技術的な問題がふえてまいりました。そういうようなこともございまして、個々の市町村の処理を助ける、そして合理的に行なうという意味からも、統一的に最低のものの補償をするということの必要があり、またそのほうが効率的ではないかというようにも考えるわけでございます。  さらに、その次には、最近では相当大きな災害が一時に起きるというようなおそれもできてきておりますので、そういう場合にはこれを保険するような意味において、基金を設けて給付を行なうということが一そう有効でございます。  また繰り返しになりますが、年金制度の導入というようなことが始まりまして、他の年金関係との給付の調整なり何なりという問題もさらに加わってまいりまして、そういう点で非常に専門的、技術的になってまいりました。そういう意味ではまた専門的機関実施するという必要が、年々痛感されてくるようになってまいっておるのであります。さらに、申すまでもありませんが、職員の生活保障というような見地で考えますと、かれこれ含めまして法律的な保障をするということも、結局職員の福祉、あるいは安んじて公務に従事するという態勢を整える意味でも、適当ではないかというようなこと、いろいろ勘案いたしまして、今回公務災害補償法及び補償の内容実施いたしますための、地方団体にかわって行ないますところの基金設置ということを考えた次第でございます。  御指摘のように、条例でもって個々の地方団体が行なって行なえないことはないじゃないかという点は確かにございますが、結局公務災害補償というものの実態というものから考えましても、やはり最低のものは専門的機関によって専門的に処理をしていくということが合理的でもあり、また経費を節約することにもなり、また可能な道を開くことにもなる、こういうふうに考えたのであります。
  163. 小濱新次

    ○小濱委員 いまお話がありましたように、非常に問題が多くなってきているために、専門的にこの問題を処理していきたい。またそのほかにも理由はあるようであります。会議録を読みますと長野局長は、専門的な機関によってそれを統一的に補償を実施する、またさらにそういうことによりまして公務員の生活保障といいますか、福祉というものの増進に役立たしめる、そうしてその生活の安定に資する、こういうように御答弁をなさっているわけであります。そしてこの会議録による御答弁から、私は先ほど山口委員の御質問にありましたように、その運営審議会あるいはまた審査会の委員の中に労働者代表を入れるべきである、このような意見が出ておりました。このことについていろいろ御答弁はございましたけれども、いまのような局長の御答弁の趣旨に沿わせる、そういう目的の上に立った考えならば、なぜ労働者代表を入れないのであろうか、われわれはふしぎに思えてならないわけであります。また、入れては悪いのかどうか、こういう点も疑問が起こってくるわけであります。その入れられないわけ、あるいは入れては悪い理由、そういうものについてお答えいただきたい、こう思います。
  164. 長野士郎

    長野政府委員 運営審議会につきましては、基金の重要な業務の運営について審議をするということでございますが、基金そのものが地方団体にかわって行ないますための共同設置するような機関でございます。それは地方団体にかわって行なうといいますけれども、そういう意味で任命権者が公務災害補償について、補償の実施の責任を持っているわけでございますので、そういう地方団体を代表するということと同時に、任命権者を代表する、こういう者を基金の業務に参画させまして、そして基金のコントロールに資する。そして基金の役員とか執行機関だけのかっこうでない正しい運営に導いていって、地方団体の機関として責任を十分果たし得るという運営の保証を遂げたいわけでございます。その点では、繰り返して申し上げて恐縮でございますが、公務災害補償については、使用者のいわゆる無過失損害賠償責任の全責任を負うて補償の実施をするというのがたてまえです。そういう意味でも、この運営に遺憾なことがないようにと私どもは考えるわけでございます。なぜ入れてはいけないかという御質問でございますが、入れないでも、ここで労使対等というようなかっこうでものを考えないでも十分やっていけるというふうに私どもはものを考えておるわけでございます。多少議論をいたしまして申しわけないわけでございますけれども、力が強ければ、ある対立した考え方によってものが適用されたり適用されなかったりというような性質をここに加えるというような考え方をとっていないのでございます。出発といたしましては、地方団体の全責任というものを十分に実現するために基金を置く、そういう意味で、基金の執行機関がきめるということだけでは任命権者の責任が遂行し得ない場合をおそれるという立場から、運営審議会というものを設けるということにむしろ重点を置いておるわけでございます。そういう点におきましては、災害補償の実施というものが不十分なことのないようにというつもりで置いておる意味でございますので、そこへ労働者を代表する者を入れるという考え方はもちろんあると思います。入れるほうがいいというお考えもあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、そういう運営審議会でございますので、これで公務災害補償の実は十分あげられると考えておるのであります。
  165. 小濱新次

    ○小濱委員 先ほども申し上げましたけれども、公務員の生活保障といいますか、福祉というものの増進に役立たしめる、そして生活の安定に資するのだ、こういう内容を持っているのだ、こういうことでありました。で、先ほど局長さんの御答弁の中に何回か出てきたことばがあるのですが、本質ということば、運営審議会の本質、あるいはまた審査会の使命、この本質とか使命ということばがよく出てきたわけでありますが、私は局長さんの答弁のこの趣旨に沿った本質、使命がこの審議会、審査会の目的でなければならない、こういうふうに思うわけですが、その本質と使命についてお答えいただきたいと思います。
  166. 長野士郎

    長野政府委員 公務災害補償は使用者の全責任において実行する、したがって、その実行が保証される体制が整うということで考えていくというのが最小限度必要なことでございます。したがって、本質と使命というお尋ねと合うかどうかわかりませんが、私どもとしては、それが十分実現されればお話のところと合うのじゃないか、そういう意味でこの法律を立案したつもりでございます。
  167. 小濱新次

    ○小濱委員 形式的な観念的なそういう本質、使命では困るのです。あくまでもその趣旨に沿った、実現のための本質、使命でなければならぬと思います。学識経験者の話がよく出ておりました。この中に、ことばは悪いのですが、労働者代表を入れることの考えはございませんか。私はあまり労働問題は知りません。また役人をやったこともありませんので、こまかく知らないのでお尋ねするわけであります。お考えをひとつお答え願いたいと思います。
  168. 長野士郎

    長野政府委員 運営審議会の運営にふさわしい学識経験を有する方が職員の中におりますと思いますので、そういう人を学識経験の委員として任命することは差しつかえないと考えております。
  169. 小濱新次

    ○小濱委員 それならば私は、その本旨に沿っても、当然はっきりと明記すべきであると思うのですが、もう一度お願いいたします。
  170. 長野士郎

    長野政府委員 元来この基金の運営審議会の学識経験者は、公務災害補償については非常に専門的、技術的な問題も多いわけでございますので、そういう趣旨で、使用者代表だけ入れればいいのでございますけれども、一そうその運営を確実ならしめるためにそういう専門家を迎えてということで出発をしておるわけです。そこで学識経験者ということにして、それで十分だと考えておるわけでございますが、そういうような意味での学識経験を備えておる方が職員の中にも必ずおるわけでございまして、そういう適任者については、学識経験委員として加えることは差しつかえないと考えております。
  171. 小濱新次

    ○小濱委員 大きな目的を局長さんは二つあげられて、それがための今度のこの法案である、このようにおっしゃっておるのでありますから、どうか名実ともに本質、使命の実をあげられますことをわれわれは特に希望するわけであります。  先ほども基金の問題についていろいろと事務費等の説明がございましたが、この中に福祉施設に要する費用はどのくらいになっていますか。あるいはまたこれが計画等がわかっておりましたならばお答えいただきたいと思います。
  172. 長野士郎

    長野政府委員 福祉施設につきましては、休業援護金等を加えますと三千数百万になると思いますが、その中で休業援護金が三千万ばかりございまして、それ以外の福祉施設につきましては現在のところ二百万程度のものを一応予定をしております。
  173. 小濱新次

    ○小濱委員 この法律が通りますと、地方公務員は交渉相手がなくなってしまう、既得権の喪失ということになるのではないか、幾らその相手方と話し合っても、聞きおくだけで何にもならない、こういうような意見が出てくるわけでありますが、このことについてはどのようにお考えになっておられますか。
  174. 長野士郎

    長野政府委員 今回の公務災害補償法の中で、法律的に補償の内容を内定をいたしましたものにつきましては、その部分についてはもう法律で補償してしまうわけでございますので、その点での完全な実施が実現されるわけでございますから、その内容についての団体交渉とか、あるいは当局との交渉というものはする必要がないと申しますか、交渉するまでもなく実現されてしまった、こういうことになるわけでございます。したがいましてその意味では、形式的には団体交渉の余地が狭くなったじゃないかという議論になりますが、実質的には交渉してかちとるという内容がすでに実現されてしまっておる、こう考えることもできるわけでございますので、団体交渉によりますところの職員の福祉の充実という面で後退するとかなんとかいうことにはならない、むしろそれは法律ですでに交渉の有無にかかわらず補償されてしまうということで、実質は非常に前進する、こう考えておるのであります。
  175. 小濱新次

    ○小濱委員 最後に伊東政務次官にお尋ねいたします。  本法律案は、地方公務員の公務災害補償の水準を国家公務員と同一の水準まで統一的に引き上げるというものでありますので、その点の趣旨については一応よいことである、このように考えております。その技術的構成において、基金を設け、この基金に補償の実施を行なわせるということは、特にこの基金に対する自治大臣の監督権の強さ等を考えた場合に、結局地方自治団体の固有事務を一部剥奪するという、こういうことになりゃしないかということが一つと、地方自治の擁護という点から考えざるを得ないのではないか、このように考えているわけでありますが、ひとつお答えいただきたいと思います。
  176. 伊東隆治

    ○伊東政府委員 確かにそういう問題もございまするので、この基金設置の問題につきましては大いに考慮を要したのでございますけれども、この基金を設置したことがそういうことにならぬように大いに意を用いるつもりでおります。
  177. 小濱新次

    ○小濱委員 どうかその本旨を失わないように一そう努力していただきたいことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  178. 亀山孝一

    亀山委員長 井上泉君。
  179. 井上泉

    ○井上(泉)委員 たいへんおそくなって、聞く人に恐縮ですが、地方公務員を国家公務員の災害補償法と同じような形で法的に制定されるのですが、やはりこういう場合には、国家公務員の災害補償法による適用関係がどういう状態になっておるかというようなことは、委員会の討議の参考資料として事前に配付していただくとかいうことになっておりますれば、その点だけでも質問を省くことができるわけなのですけれども、これから委員会質疑の際には、できるだけそういう関係をしたものの資料は整えて出していただくように、委員長のほうでお取り計らいいただきたいと思います。  そういう点でひとつ、国家公務員災害補償法による国家公務員の災害補償の状態はどういうふうになっておるのか。これはなかなか口で言われても、すぐそれを——概略説明をしていただいて、あとで参考資料として回していただきたいと思います。概略説明を願います。
  180. 佐分利輝彦

    ○佐分利説明員 国家公務員の場合には、給付を基金から支給しないということ以外は全く今回の法案と同じでございまして、二十六年から実施いたしておるわけでございますが、四十年度の実績で申し上げますと、総費用が約六億九千万円ということになっております。このうち療養補償、医療費でございますが、これが三億三千万円、それから休業補償、これが八千万円、ただし、常勤公務員の場合には初めの三年は一般職の給与に関する法律に基づいて給与の百分の百を支給されますので、四年目から国家公務員災害補償法の休業補償が適用されるわけでございます。非常勤の場合には初めから休業補償が適用されるわけでございます。それから障害補償、病気が鎮静、固定いたしましたあとに心身の障害を残しました場合の補償でございますが、これが約一億円でございます。それから遺族補償が千七百万円、それから葬祭補償でございますが、これが一千万円というふうな形になっております。そうして全体として見ますと、給付の金額は、年々医療費の増高等がございまして、また給与のベースアップ等がございまして、若干ずつ増加しておりますけれども、件数で見ますと、ここ数年は少しずつ減少していくような傾向にございます。  なお、以上申し上げましたものは正規の給付でございますけれども、法二十二条に基づきます福祉施設といたしましては、これは四十年度の実績で申し上げますと、約六百万円支出いたしております。四十一年度から、先ほど申し上げました休業補償の一割ないし二割の上積みが約二百五十万円行なわれておりますので、四十一年度には約八百万円から九百万円の福祉施設の事業が行なわれておるというふうに考えております。  以上、簡単でございますが、概略の御説明といたします。   〔委員長退席、和爾委員長代理着席〕
  181. 井上泉

    ○井上(泉)委員 対象人員は幾らですか。
  182. 佐分利輝彦

    ○佐分利説明員 対象人員は、常勤職員が約八十万、非常勤職員が二十万というふうに考えております。
  183. 井上泉

    ○井上(泉)委員 百万なわけですね。
  184. 佐分利輝彦

    ○佐分利説明員 はい。
  185. 井上泉

    ○井上(泉)委員 百万で六億九千万円が補償費として、約七億ですが、地方公務員の場合には約二百五十三万人、それで調査すると十二億、こういうことで、大体似通った金額になっておるのです。それで今度の基金を十七億予定しておる。けさの依田委員の質問で、十七億ということが予定をされたのですが、この十七億の内容について、大ざっぱに十七億という基金を積算してくる中身といいますか、これを事務費にどれくらい、何にこれくらい、こういうことで十七億の基金が必要になったという積算の基礎があるでしょう。それをけさ質問をされて、説明をされておるとするならば、あと会議録で承知するのですからあえて答弁の必要はないのですが、けさ、そのことが明らかになってなければ、その積算の基礎をお示し願いたい。
  186. 長野士郎

    長野政府委員 十七億円と申しますのは、今年度における実績といいますより、過去からの実績に基づきますところの推計でございますが、この十七億の中には事務に要する経費大体約一億、それから福祉施設関係が約三千万というようなものも入っております。それ以外を補償の経費として考えておるわけでございまして、その補償は、補償の種類、療養補償とか休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭補償、それは過去からの推算でございます。
  187. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、十七億の基金といったら、ずいぶん多くなりはせぬでしょうか。十七億の基金ということになると、それは多い。一年間約十二億、それでいままでの労災の適用外のものが、補償件数全部入ったとしても、十七億という金額は相当高いように思うのですけれども、そういうふうにはお感じにならないですか。
  188. 長野士郎

    長野政府委員 十二億という先ほどのお話は、三十九年度の実績で考えておる数字が十二億でございまして、三十八年、三十九年、四十年というのを見てまいりますと、大体二割程度ずつ補償額がふえております。そういう関係も考えまして推計をいたしますと、やはり十七億程度のものが必要であろう、こう考えておりまして、従来からの伸びでございますから、決して実績というわけにはまいりませんが、大体そういう額になるのじゃないかと考えております。
  189. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、その十七億の基金は全額地方団体の負担でやるということですか。
  190. 長野士郎

    長野政府委員 基金は、地方団体がやりますものをかわってここで一括してやるということでございますので、全額地方団体の負担でございます。
  191. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういうことになりますと、地方団体の負担が非常に増加をしてくるわけです。それについての地方団体に対する財政措置は、従来の交付税法による経費の措置ではまかない切れないと思いますが、これについてはどういうふうに配慮されておりますか。
  192. 長野士郎

    長野政府委員 従来、地方交付税法におきましても、基準財政需要額に従来からの公務災害需要についての経費を算入しております。昭和四十二年度につきましては、この法案が成立いたしました場合には、十二月一日から施行するという予定にいたしておりますので、一応従前のままで財源措置をしておりますけれども、現在のところ、その中で一応まかない得るというふうに考えております。
  193. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それではいま交付税法で措置してある金額としてはどれくらい……。これで十七億になるのですか。
  194. 長野士郎

    長野政府委員 交付税法におきましては、公営企業関係は含まれておりません。したがいまして、いまの十七億と申しましたのは、公営企業関係の職員の公務災害にかかるものも含めまして申したわけでございます。四十二年度の交付税の積算に入っておりますのは、十三億程度の金が入っております。
  195. 井上泉

    ○井上(泉)委員 労災関係の方こられておるでしょう。労災関係で、地方公務員の労災適用者の関係の労災保険はいわば黒字になっておるわけです。八億五千万円の保険料に対して受け取り補償金額は四億三千万、約半分が掛け捨てになっておるわけですが、そうなりますと、これは労災保険全体の経理勘定から見ますと、これだけこの黒字になる分が減るという勘定になるのですが、これは別に四億円くらいこの分から減っても、労災保険の料率を上げるとか他の業種にしわを寄せるということをしなくても、何ら痛痒は感じないわけですか。
  196. 中村博

    ○中村説明員 先生のおことばのように、現在のところでは、料率を直ちに変更しなければならぬというような事態は生じないと考えております。
  197. 井上泉

    ○井上(泉)委員 労災保険のほうは、現在四十一年度の収支は一体どのくらい黒字になっておるのですか。
  198. 中村博

    ○中村説明員 四十一年度につきましては、剰余金が一億、それから積み立て剰余金が三百六十二億になっております。
  199. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これは大蔵省の方に伺いたいのですが、三百六十二億もの黒字を出しておる労災保険というもの、これは大蔵省どうお考えになりますか。
  200. 中村博

    ○中村説明員 先ほど剰余金と申しましたのは、労災は保険料率をきめます場合に、過去三年間の災害率を見まして、その他いろいろな事情を考慮してきめるわけでございます。したがいまして、この三百六十何億という金は、いままで災害にかかられた方々に対します給付を含んでおるものでございます。したがいまして、四十一年度の決算におきましてそれだけの経理が出ましても、依然として療養を続けていらっしゃる方があるわけでございます。そのような将来の見通しも含めて料率が決定されておるわけでございます。こういった形に相なっておるわけでありまして、決して余分に取り過ぎておるとかというものではございません。
  201. 井上泉

    ○井上(泉)委員 余分でないけれども、黒字で余っておることは事実ですね、三百六十二億余っておることは。
  202. 中村博

    ○中村説明員 これは現在療養しておられる方があるわけでありますから、年度年度で申しておるわけであります。
  203. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その年度では余っておるということでしょう。これほど要らない、三百六十億も。
  204. 中村博

    ○中村説明員 四十年度の改正から年金制度が入りましてございますので、その年金は逐年増加してまいりますので、これに対応する部分も準備しておかなければいけないということに相なるわけでございます。したがって、決して余り過ぎておるということではございません。   〔和爾委員長代理退席、委員長着席〕
  205. 井上泉

    ○井上(泉)委員 ちょっと大蔵省の方に、いまの労働省の言われた内容が何かわからないですから、説明してもらいたいのです。
  206. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 私は労働省担当の主計官ではございませんから、責任ある御答弁はできませんが、ただいま伺った範囲で答弁をさせていただきますと、多少推測が入るかもしれませんが、およそ保険料率の計算につきましてはいろいろ方式があると思います。一つは完全積み立て方式のやり方、あるいは平準保険料方式のやり方、あるいは賦課方式のやり方と、そういったいろいろなやり方があるように私は承知しております。それぞれ違いますが、共済組合の場合の積み立て方式は、これはたしか完全積み立て方式でやっております。したがいまして、資金ベースから申しますと、共済資金にもそういった運用の余裕金はございます。そういう意味合いで、おそらく労働省の労災の場合の三百六十億という数字も、やはりそういった将来を見込んだ場合の保険料、年金等も含めまして、そういった考え方で、そういう余裕金が出ておるのではないかと私は推測をしておりますが、そのように考えております。
  207. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、四十一年度に三百六十二億ですね。そうすると、こういうふうな余裕金というか準備金に類する金というものは、労災では現在どのくらいたまっておるのですか。
  208. 中村博

    ○中村説明員 累積が三百六十二億でございます。
  209. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そうなりますと、地方団体としては、交付税で十三億予定をしておる。そうすると、いままでの労災の掛け金が八億要っておったわけですから、その八億が四億でいいということになりますから、地方団体としては財政負担が軽くなるわけですか、長野さん。
  210. 長野士郎

    長野政府委員 地方団体としましては、先ほどの労働省の積み立て剰余金の中で、なお給付をされておるものも残るわけでございます。法律の施行後のものは、この公務災害補償のほうで考えていくということになります。法律の適用は、法律が施行になりまして以後のものはこちらの基金でまかなっていくということになりますが、従来のものは、労災関係のものは労働省でめんどうを見ていただく、従来から引き続きますものはそういうかっこうになります。
  211. 井上泉

    ○井上(泉)委員 損得はどうなる。
  212. 長野士郎

    長野政府委員 その点で、損得ということも、将来の問題として見通しますと、なかなか申されませんけれども、従来労災に保険料として支払いましたもの以上の負担になることはない、むしろ下がることはありましても、以上の負担になることはないように考えております。
  213. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そうでしょう。それはもちろん八億もかけておったし、交付税で十三億見る、基金は十七億で十分だというから、そうすると、四億から五億くらい得になる、負担が軽くなるでしょう。ところが現在、普通労災保険は精算をするわけでしょう。そうすると、やはりかけた分については払い戻しをされるのですか。
  214. 中村博

    ○中村説明員 労災会計年度が四月から始まるわけでございますが、年度途中でたとえば事業が廃止されたような場合、その場合には精算をいたすわけであります。
  215. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そうすると、精算をするということ、いままで労働省はずいぶんもうけておったわけですから、これはすみやかに精算をして——この法律が通った場合ですよ、通った場合には精算をしてお返しをしていただかなければなりませんが、私はこの負担の……。
  216. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ちょっといまのに関連して。  いまの労災の三百六十億の基金と、従来まで、昭和三十九年度の場合ですと支払いの保険料が八億五千万、受け取り補償金額が四億三千万、ほぼ半額ですね。いまの局長の御答弁ですと、この基金制度ができた以後において、それ以前の発生した理由で当然引き続いて支給をされなければならぬ部面については労災が引き続いて補償をやっていくのだ、こういうお話でありますが、恩給等の場合でいけば、共済組合ができた、その前の恩給法の場合があった、そうしますと、前の恩給部分についても共済が支払いをやって、そして恩給部分については追加費用として国が共済組合の会計のほうに入れるという形になっておるわけですね。とすれば、従来まで地方公務員の公営企業関係で積んできたものとそれから受け取った分と、その差額くらいは、当然、何といいますか、今度基金ができました場合は、ちょうど恩給の場合に追加費用として共済組合に入れておるのと同じような趣旨で、労災基金のほうからこちらの基金のほうに入れていく、そのかわり法律施行以前の問題についても基金が責任を持って支払っていく、こういう制度をとったほうが合理的でなかったかという感じがするのですが、その点はどうなんですか。
  217. 長野士郎

    長野政府委員 この基金の発足に伴いまして、従来の労災関係とどういうふうに調節をしていくか、いろいろやり方があると思います。しかし、従来労災の補償を受けて、まだ補償の必要な期間なお継続しておるというようなものもあるわけでございます。そこの切り方の問題、いろいろございますが、今回ここで考えておりますのは、いま先生がおっしゃったような方式ではなくて、いままでの労災関係の適用を受けて災害補償が続いておりますものはそのまま続けていく、それから基金が施行になって以後の公務災害補償は基金が全部責任を負う、こういうことで受け継ぎをいたしていくことにいたします。その場合に、受け取りがあったとか、荷物をかついでくるとかいう議論もずいぶんいたしました。しかし、将来ともに、労災のごやっかいになっておる地方公務員というものはあり得るわけでありますので、そこは考え方としていろいろあると思いますけれども、基金は基金として発足をし、労災のほうのごやっかいになっておるものはそのまま労災にお願いをしていく、こういう分け方をしたわけであります。
  218. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いままで積んでおったものを持ってきて基金にやったほうがよかったのではないですか。そういうことは労働省との間で交渉をやったのですか。どのような労働省関係とのやりとりがあって、われわれが考えれば基金のほうが損するようなかっこうで落ちついたのですか。持ってきたほうが得ではないですか。持ってきて通してやったほうがいいですよ。
  219. 長野士郎

    長野政府委員 労働省との間では少しもいざこざはございませんで、円満に問題は処理されたわけでございます。元来でございますと、労働省の立場からいたしますと、労災保険から抜けていくというような考え方については、なかなか御理解をいただけないのではないかというふうに私どもは心配をいたしたのでございますが、非常に理解のある態度を示されまして、円満に離反ができることになりました。したがいまして、それと関係があるということではございませんけれども、基金の発足に、労災のそのまま引き継ぐものというものはそこで切り離しておくということで発足したほうが、技術的、事務的にも——非常に繁雑な計算をすればお話しのようなこともプラス、マイナスあるかとも思いますけれども、これはやはり経理のしかたその他で、そういうものも分別できない保険の会計の処理というものになっておりますので、そういうことはいたさなかったわけでございます。
  220. 井上泉

    ○井上(泉)委員 学働省は、労災関係は対象人員が約六十万人くらい減る。減ることによって四億余り金は損をする、これは間違いないわけですね。金は損する。金が減ることは、現在労災関係を担当しておる監督官というか、一線ではいろいろな形でたいへん苦労をされておるし、たとえば事業場での災害でも、できるだけ労災の事故発生件数を減らす、そういう意味で、少々のことは健康保険でやってくれ、健康保険でやれ、こういうようなことで健康保険の赤字に非常にしわ寄せがきておる、こういうことはお認めになっておるのでしょうか、それともお認めになっていないのでしょうか。
  221. 中村博

    ○中村説明員 釈迦に説法でまことに恐縮でございますが、労災法はあくまで業務上の負傷、疾病を負われた方々に対する給付でございます。したがいまして、この業務上・外の認定につきましては、私どもとしましては、フィフティ・フィフティの場合にはできるだけ有利なように解釈をするという精神で進めるというように指導いたしておるわけでございます。
  222. 井上泉

    ○井上(泉)委員 実際、現場の監督署あたりでは、どこそこの事業所は無事故、どこそこはどうということで、監督署が事業所同士を競争させるだけでなしに、監督署同士が競争をするわけです。そういうことから、そういう労災で当然やらなければいけないものを、基準局が非常にうるさいから、うるさくてしようことなしに健康保険に移らざるを得ないというような事例がたくさんあるのです。その内容についてはまた次の機会に質問をいたしたいと思いますけれども、要するにあなたのほうは金が減るんだから、これは決して長野さんの言われるように快くお渡ししたものじゃないと思うのです。しかし、金が減って、対象人員が減ったのだから、それだけ一線の労働者を保護するための役目を積極的に果たしていただきたいと思うのです。  たいへん時間がおそくなって聞き役に恐縮ですから、そろそろ終わりますが、十七億の基金というものが全部地方負担になるわけですが、これの徴収のしかたは、もう質問されて明らかになったのでございましょうか、明らかになっていなければ、十七億の基金を交付税で見ておる十三億と、それからいままで交付税の対象外であった地方公共団体の負担分、これをどういうようにして集めるのか、十七億の基金のつくり方をお聞きしたい。
  223. 長野士郎

    長野政府委員 基金に対する負担金の納付のしかたにつきましては、現在検討しておりますが、原則としては年度当初の予算に計上をして、各地方団体が納付をするということのたてまえでまいりたいと考えておりますが、事情があります地方団体につきましては、一部分割なり延納なりという制度も併用しなければならない場合もあるかと思います。その辺のところは、そういう例外的な措置というものもあわせて考えなければならぬと考えております。
  224. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、その十七億を積算するのに、あなたはどういうふうにして徴収するか検討されておるというけれども、やはり十七億を徴収する場合にはこういう方法で、高知県のはどういうわけで出す、何はどういうふうに出す、こういうことを、これは政令できめることになっておるけれども、政令で示す前に委員会に案を出してきて、御審議を願うという形に出てくるのが常任委員会の仕事じゃないかと思うのですけれども、委員長、その点どうですか。従来も政令にまかせっきりで、国会では政令内容についてはやらなかったですか。
  225. 亀山孝一

    亀山委員長 私は、あまり詳細に知りませんけれども、両方あるようです。
  226. 井上泉

    ○井上(泉)委員 やはり政令で出すからといって、これこれは政令にゆだねるといっても、やはり政令についての要綱ぐらいは示さないと、どうも民主的な行政とは言えないと思うのですが、これは長野さんは自治法の権威者ですから、その点はどうでしょう。
  227. 長野士郎

    長野政府委員 非常に不十分ではございましたけれども、お手元にお配りいたしました参考資料の中に、いわゆる政令なり省令なりで規定いたします事項というものをあげておりまして、この中で費用の負担関係につきましては、これは職員の種類を一応一般の職員、教育職員、警察、消防職員、そういうような職員の種類ごとに分けまして、そうして従来の実績を勘案しまして、負担金率というものを定める、こういうことにしておりまして、負担金率につきましては、たとえば教育職員につきましては千分の〇・三ぐらいの負担率でいくことができるのではないかというふうなこともお答え申し上げたわけでございます。たとえば高知県の場合ということで具体の県の場合になりますと、該当する職員の数とその給与総額、その負担金の割合、こういうものをかければ自動的に額が出てくる、こういうことになります。
  228. 井上泉

    ○井上(泉)委員 十七億という、これは道路交付金でさえ二十五億ですからね。日本の市町村道に対する道路交付金でも、政府の出すのは二十五億しかないでしょう。十七億の金を集めるのですから、これはやはりその集める方法についての負担の基準くらいは、こうして案を出すからには示していただかないと、これは自治体としても、これが議会なんかで質問されたときにどうなるのですか。あなたが書かれておる本の精神とだいぶ違うのですね。そのまとまった要綱というようなものはいつごろできるのですか。政令を出す以前に国会が終わると、私ども政令の要綱を検討する時間的なものがないわけで、ほんとうにあなたたちの良心によって民主的な地方行政を進めていただく以外に道はないわけですが、一体要綱をいつごろまでにおつくりになるおつもりですか。
  229. 長野士郎

    長野政府委員 政令案につきましては、これは国会の御審議との関係もあるわけでございまして、現在実は鋭意検討いたしておりますが、政令ということによりまして、基金が自主的にきめることも考えられるわけでございます。政令ということになりましたのも、これは地方団体の負担割合というものが、公務災害補償として完全に補償されるという見通しをつけるという意味と、それからこれらの関係職員の中にも、それぞれ国費で支弁されるものも入っておるわけでございまして、関係の各省ともそういう意味で、それが負担の一つに入るわけでございますので、いろいろと負担率についての検討をそれぞれ協議しながら、現在検討を重ねておるわけでございます。そういう意味で、負担率だけの問題でございますが、現在のところここにありますように、平均いたしまして私どもの予算としては、全体平均いたしますと千分の〇・八七ぐらいになるだろうと予想しております。
  230. 井上泉

    ○井上(泉)委員 大体法案を出す場合に、国会審議されて、これがどうなるかわからぬ、こういうことをあなた方は予想されるのでしょう。そういうことを予想されて出されるから、委員会審議も何となしに真剣味がないわけです。ということは、この法案はどうしてもこの国会で通してもらいたいという気持ちがあるなら、それくらいの要綱はもう準備をしておくのが当然だと思うのです。あなたは投げやりな気持ちで法律案をつくって委員会に出すから、ちっとも委員会審議がはかどらない。これはあなた方の重大な責任だと思うのです。  政務次官に伺いたいが、法案を出す場合によく政令云々ということがあるのですが、政令の要綱ぐらいは法案と同時に示していただくということのお約束を願いたいと思うのですが、どうですか。
  231. 伊東隆治

    ○伊東政府委員 御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  232. 井上泉

    ○井上(泉)委員 一億円で基金の事務局の機構を運営するということになると思うのですが、やはりこれも、一体基金で一億の事務局をどういうふうにされる予定であるのか、この点もやはり説明をお願いしたいと思うのです。
  233. 長野士郎

    長野政府委員 基金の組織につきましては、大体本部におきましては、総括的ないわゆる総務関係と申しますか、そういうもの、補償、審査、こういう三つの機能を果たしますための組織をつくりたいと考えております。  それから、都道府県支部あるいは指定市の支部につきましても、基金職員の——地方団体の職員が当初は基金の事務に従事するものとして、地方団体に協力を仰ぎたいと考えておりますが、これらの活動につきましても事務費は必要なわけでございます。そういう意味で、大体一億ということを計算いたしましたのは、ちょうど現在自治省の関係で消防団員の基金の事務費というようなものも参考にいたしまして、その場合には基金の事務費が大体四千万円程度になっておるようでございますので、一応そういうものを参考にいたしまして一億ということを考えたわけでございます。
  234. 井上泉

    ○井上(泉)委員 地方の議会なんかでかりに一千万なら一千万でいろいろなこういう仕事をする場合でも、それはだれに、これをどういうふうな事務局の機構でどうやるのか、一応の予算の計画書のようなものをどこも提示してくるのですけれども、国会というところはえらいルーズなところで、五兆円のお金がここを中心に札びらが舞うておる関係か知らぬが、十七億や一億の金は金のうちに入っておらないという感じがしてならぬのですが、やはり十七億という金を使うのなら、十七億という金はどこからどういう方法で持ってくる、そうしてこの金はこういうほうに使う予定だ、こういうことはやはり立案者としては概算的な要項くらいは示していただきたいと思うのですけれども、そういう点についてもう少し配慮してもらいたいと思うのです。これはこれに限らず何でもそうですが、すべてがそういうふうに、出されてくる法案はそういうふうに説明不十分な内容で、そうしてしまいには自民党でだっと賛成してくれる、こういうことでは、あなたたちも仕事に不誠意じゃないかと思うのですが、その点についてのお気持ちを聞かしていただいて私の質問を終わります。
  235. 長野士郎

    長野政府委員 これは私どもの事務的な処理がまだそこまでいっていないということの御指摘でございますので、この点につきましては、今後とも十分注意いたしたいと思います。基金につきまして、いまのこの災害補償法の関係につきましては、何さま初めての仕事というようなことになりますので、いろいろな要項なり、試算なり、方式というものを考えておりますが、現在いろいろな形式の資料を整えて用意はしておる段階でございますけれども、まだ結論を得てきめておるというところまで至っておりませんので、組織なり予算についても、十分確定したものをお示しすることができないことは恐縮に存じておりますが、概算固まり次第お示しするようにぜひともいたしたいと考えております。
  236. 亀山孝一

    亀山委員長 次会は、明十四日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十五分散会