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1967-07-11 第55回国会 衆議院 地方行政委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十一日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 亀山 孝一君    理事 大石 八治君 理事 岡崎 英城君    理事 奧野 誠亮君 理事 久保田円次君    理事 和爾俊二郎君 理事 細谷 治嘉君    理事 山口 鶴男君       仮谷 忠雄君    木野 晴夫君       久保田藤麿君    佐々木秀世君       塩川正十郎君    中馬 辰猪君       辻  寛一君    渡海元三郎君       登坂重次郎君    永山 忠則君       濱野 清吾君    古屋  亨君      三ツ林弥太郎君    山田 久就君       井上  泉君    太田 一夫君       川村 継義君    島上善五郎君       華山 親義君    依田 圭五君       折小野良一君    大野  潔君       小濱 新次君    林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁長官   新井  裕君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         法務省刑事局長 川井 英良君         運輸省自動車局         長       原山 亮三君         自治省財政局長 細郷 道一君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   片岡  誠君         警察庁交通局交         通指導課長   綾田 文義君         運輸省自動車局         業務部長    蜂須賀国雄君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         最高裁判所事務         総局家庭局長  細江 秀雄君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 七月十一日  委員中馬辰猪君、辻寛一君、山田久就君及び河  上民雄辞任につき、その補欠として三ツ林弥  太郎君、濱野清吾君、仮谷忠男君及び川村継義  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員仮谷忠雄君、濱野清吾君、三ツ林弥太郎君  及び川村継義辞任につき、その補欠として山  田久就君辻寛一君、中馬辰猪君及び河上民雄  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月十日  消防法及び消防組織法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二六号)(参議院送付) 同月六日  東北管区警察学校移転促進に関する請願(愛  知揆一君紹介)(第二五二三号)  特別区の区長公選及び自治権拡充に関する請願  (本島百合子紹介)(第二六五九号)  戦傷病者に対する地方税減免に関する請願(關  谷勝利紹介)(第二六九八号) 同月十日  市町村営有線放送電話施設助成等に関する請願  (登坂重次郎紹介)(第二七六〇号)  地方税法等の一部改正に伴う財源措置に関する  請願池田清志紹介)(第二七八一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二七号)      ————◇—————
  2. 亀山孝一

    亀山委員長 これより会議を開きます。  今次の災害につきまして、国家公安委員長より、報告を申し上げたいということで発言を求められております。藤枝国家公安委員長
  3. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 台風第七号くずれの低気圧の影響によりまして、七月八日から九日にかけ西日本の各地に局地的に集中豪雨が降り、そのため広島、長崎、佐賀兵庫の各県をはじめ西日本の二十四府県にわたり被災し、その被害のおもなものは死者二百八十三名、行くえ不明八十四名、負傷者四百六十二名、建物全半壊、流失千八百四十四むね等であり、各府県被害発生状況は、これはあと資料にして差し上げたいと思います。  おもなものを申し上げますと、兵庫県下では、兵庫県下の神戸市のうしろの山の高台にある市ケ原部落四十八世帯百五十三名に深夜土砂くずれが起こり、逃げおくれた五世帯二十名が住家もろとも生き埋めになったというような実例がございます。  また、佐賀県下におきましては、有田町付近で二時間の短時間に約二百十ミリをこす集中的な大雨が降りましたため、がけくずれが起こりまして住家むねが埋没し、逃げおくれた七名が住家とともに生き埋めになって死亡されましたというようなことで、今回の集中豪雨による被害というものは、局地的でございますが相当深刻な被害を出し、ことに死傷者が非常に多いということが特徴でございまして、内閣といたしましては直ちに非常災害対策本部を設けまして、各省協力いたしまして災害の復旧あるいは被害者救助等に当たっておる現状でございます。      ————◇—————
  4. 亀山孝一

    亀山委員長 この際、連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。  法務委員会において審査中の刑法の一部を改正する法律案について、連合審査会開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 亀山孝一

    亀山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、開会日時等につきましては、法務委員長協議の上、公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  6. 亀山孝一

    亀山委員長 内閣提出にかかる道路交通法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  この際、おはかりいたします。  最高裁判所長官の指定した代理者最高裁判所事務総局刑事局長佐藤千速君、同家庭局長細江秀雄君から、本案について本日出席説明要求があります。これを承認するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 亀山孝一

    亀山委員長 御異議なしと認めます。よって、承認するに決しました。  なお、最高裁から出席の両局長からの説明は、委員質疑に対する答弁という形で聴取いたします。  これより質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山口鶴男君。
  8. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 すでに道公法につきましては、同僚の各委員の方々から各面にわたりまして質疑が行なわれたわけでございまして、私は重複を避けまして数点につきましてお尋ねをいたしたいと存じます。  昭和三十五年道交法が制定をせられました際の当委員会附帯決議を拝見いたしたわけでありますが、総合的な道路交通行政の実現を期するために、関連する行政の調整のため内閣に強力な機関設置することがうたわれておるわけであります。それによりまして政府は、昭和三十年に交通事故防止対策本部設置いたしておりましたが、この附帯決議を受けまして交通対策本部昭和三十五年の十二月に設置をいたしまして、さらにその後臨時交通関係閣僚懇談会、さらには交通関係閣僚協議会、こういうものを設置をいたしますと同時に、国民各層意見を徴してこの交通対策に対処するために交通安全国民会議設置をいたしまして、今日まで取り組んでこられたようであります。  そこで私は、この総理府設置をされました交通対策本部がおまとめになった資料だと思いますが、「陸上における交通事故−その現状対策−」これを拝見をいたしました。といたしますと、ここに盛られております事柄は、昭和三十五年の附帯決議、それにのっとってできました交通対策本部、さらに関係閣僚会議なり交通安全国民会議なり、設置をされました各機関がいわば衆知を集めましてまとめたのがこのパンフレットではないかというふうに思うわけであります。そこで、私はそういうつもりでこれをずっと通読をさせていただきました。そこで感じたのでありますが、このパンフレットの中に特に「交通秩序確立」「交通取締り体制強化」、こういう項がございます。そうしますと、警察庁としてはこのパンフレットの中における「交通秩序確立」「交通取締り体制強化」、この考え方にのっとって今回の道交法改正なりというものを立案をされたというふうに了解してよろしいかどうか、その点をまずお伺いをいたします。
  9. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 そのお手元にある資料は、おそらく総理府陸上交通安全調査室が取りまとめたものだと思いますが、それを取りまとめる際にわれわれの意見も聞いた上でございますので、その中に書いてあります取り締まり等に関する方針につきましては、おおむねわがほうの意見を反映しておるというふうに考えております。
  10. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この交通対策本部には自治事務次官、それから警察庁長官委員として参加をしておられるわけですね。そうしますと、結局ここに掲げております事項警察庁意向が反映して、特にその中でも警察庁の所管でございます交通取り締まり交通秩序確立、この項については警察庁意向が十分に盛られておるというふうに了解していいわけですね。
  11. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 さようでございます。
  12. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 わかりました。  それではお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、この中身を拝見いたしますと、いろいろな数字をあげまして現在の交通取り締まり状況等が詳細に記載をいたしておるわけでありますが、「交通事犯に対する処分適正化」という項におきまして、反則金制度についても検討するということが書かれております。過般当委員会で、この反則金を採用するに至った理由が一体何かということが議論になったわけでありますが、その際にお答えになりましたことと、ここに書いてあります事柄とは若干相違するように思うわけであります。というのは、この二〇五ページには、「通常の裁判手続を経ないで交通違反事件を簡易迅速に処理する」ことを目的としてこの反則金制度を採用するんだ、こう書いてあります。前の当委員会の御答弁では、いや、その簡易迅速に処理するばかりではなくて、他に目的もあるようなことを言われておられたのですが、この項でははっきり、この反則金というのは、要するに交通違反事件を簡易迅速に処理する、それが目的だと、きわめて明快に書かれておるわけでありますが、その点はいかがなものでしょうね。
  13. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 そのお手元にある資料につきましては、手元にございませんけれども、いま仰せのようなことでありますれば、やはり今度の反則金制度一つ特徴点を大きくとらえて記述したということでございまして、そのほかにもこの制度を設ける理由はございます。ただ非常に大きな特徴点であります簡易迅速という点をとらえて、簡単に記述したものだというふうに思っております。
  14. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 だから私は冒頭お尋ねをしたんですが、この本に書かれております考え方は、警察庁のお考えが明確に反映しているのかいないのかということを前段お伺いをしたわけです。交通対策本部が作成いたしました資料で、警察庁長官も参加しておられるやつでしょう。だからというのでお尋ねをしたわけです。ところが、さきにこの委員会では、反則金制度を設けた理由は何かといいますと、いや、簡易迅速に処理するためばかりではありません。ほかの理由をたくさんおあげになっておられた。しかし、ほんとうはここに書いてあるように、要するにこの簡易迅速に処理するのがほんとう目的じゃないんですか。委員会で質問があったから、そのほかの目的をいろいろ言われたのであって、もっとそのところを私ははっきりお答えをいただきたいと思うのですよ。
  15. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 この制度を立案する過程において、いろいろ内容的にも変わってまいりましたわけでございますが、おそらくこの資料をつくった当時は、簡易迅速ということに力点が置かれて案が練られておった時代だと思います。その後内容的にもいろいろ検討をいたしまして、いろいろな面からの検討を加えた結果、簡易迅速処理ということだけではなくなったわけでございまして、おそらくその資料は、当時簡易迅速処理というのが強調された時代考え方をとりあえず収録したものだというふうに思っております。
  16. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 その辺は押し問答になりますから、これでやめておきましょう。  次に、これを見ますと「罰則強化」というのがあります。道路交通法改正考えなければならぬというわけですね。そして「交通事故による人の死傷があった場合において、車両等運転者負傷者救護等を怠った場合の罰則」として、「酒酔い運転禁止違反に対する罰則、不正な手段等により運転免許証の交付を受けた者に対する罰則道路左側部分通行義務違反、横断、転回等禁止違反、追越し規制違反等に対する罰則」、これをそれぞれ強化をしてきた。「しかしながら、酒酔い運転等の悪質な違反については、最近の交通事故の実態から見てさらに厳しく処罰する必要があるのではないかという見地から、目下その罰則の引上げについて検討中である。」こう書かれております。ここに書いてありますように、酒酔い運転等の悪質な違反についてさらに検討せられることは、私はけっこうだと思います。そういう趣旨で今回の道交法改正もできたんではないかと思いますが、そこでお尋ねしたいのは、当委員会でこの道交法改正で問題になっております一つ焦点反則金であり、いま一つ焦点は、過般門司委員からもいろいろ御指摘があったわけでありますが、運転免許行政処分制度改正が、やはり今回の道交法改正一つ焦点だろうと思います。ところが、この文章にはそういう意味では、運転者行政処分制度改正する、特に公安委員会が従来まで持っておりました権限等について検討を加える、こういうような問題については一言も触れておりませんですね。といたしますと、この今回の道交法改正は、昭和三十五年の当委員会附帯決議であります総合的な交通対策機関設置すべきだ、その上にのっとってできた交通対策本部、その意向というものを無視してと申しますか、その交通対策本部検討せられたことからはみ出して道交法改正を今回提案をされたということになるんではありませか。私はこの点はきわめて遺憾だと思うのですが、この点は一体どうお考えなんでしょうか。
  17. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 今回の道交法改正内容につきましては、昨年の十一月ないし十二月ごろだったと思いますけれども交通対策本部決定事項の線に沿って実施したわけでございまして、お手元にあります資料は、おそらくその決定は盛られてないんではないかというふうに考えております。
  18. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 これは十二月に出しておりますよ、この本は。
  19. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、十二月に出ておるかもしれませんけれども交通対策本部決定したことは間違いございませんので、ここに盛られてないということでありますれば、何か印刷の都合かなんかであるいは入らなかったのではなかろかというふうに考えております。
  20. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 おかしいですね。総理府で出しましたのを見て私、質問しているんですが、もしこれが削除されて、交通対策本部として道路交通取り締まりについて違う方針をきめているというんなら、その資料を即刻出してください。そうでなければ質問できませんよ。
  21. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 手元にございますが、昭和四十一年の十一月二十一日に、交通対策本部決定の中にその点に関することが書いてあります。この内容がその中に盛られておるかどうか、この資料をつき合わしてみないとわかりませんけれども、十一月二十一日に、その線に沿った決定がなされておることは間違いございません。
  22. 片岡誠

    片岡説明員 私から……。  昭和四十一年の十一月二十一日の交通対策本部決定で、「交通安全施策強化に関する当面の方針」というので、交通安全施設等整備安全運転確保、さらに交通秩序確立被害者救済対策強化、その他という相当網羅的な決定がございます。その中の交通秩序確立の欄の中の(2)に「酒酔い運転、無免許運転等道路交通法違反する悪質な運転を行ない交通事故を起こして人を死傷させた者について、すみやかにその運転免許効力停止することを目的とする運転免許効力の仮停止制度を設けるとともに、仮停止後の行政処分迅速処理を図る」というのがございます。先生のお持ちになっているその資料は、おそらく昨年の夏ごろの時点をとらえて、その後印刷に回した資料ではないか、そのように私ども理解いたしております。
  23. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 交通安全対策特別委員会のほうへ出まして、政府交通安全対策に対する資料をまとめたものはないかと言ったら、とにかくこれを見てくれと言うから私は見たのであって、そういう資料があるなら、とにかく即刻印刷して配ってくださいよ。  そういうものをきめたらきめたでけっこうでありますが、道路交通取り締まりに対して行なうべき施策というのはたくさんあるわけですね。お話のございましたような総論的な部分におきましても、道路交通環境整備に関する予算を早期執行することとか、あるいは交通安全思想普及徹底とか、安全運転確保とか、被害者救済対策強化であるとか、自動車安全性の向上であるとか、交通暴力の排除であるとか、こういったことを重点的に行なっていくということで、交通安全思想普及をはかる、交通秩序確立をはかる、安全運転確保違反運転者に対する安全教育運転管理の改善、車両安全性確保それから被害者救済対策推進というようなことがうたわれています。当委員会でも車両安全性確保の問題について、自重計の問題などについては、現在の技術水準からいえば当然解決をされるべきではないかという点も指摘をされたわけですが、そういった、十一月二十一日の決定かどうか知らぬが、それ以前にすべきものがたくさんあるわけですね。そういうものはさっぱり手をつけずに置いておいて、そのあと急遽また安全対策本部会議をしたところで、ちょこっとつけた免許の仮停止等行政処分の問題だけはいち早く取り上げて法律改正に持ってくるというような、いわば取り締まりだけを強化すればいいというような現在の交通安全対策に対する警察庁の姿勢というものについて、私は疑惑を感ぜざるを得ないわけです。長官、前にすべきものがたくさんあるじゃないですか。去年の十一月二十一日か何か知らぬが、その以降においてあわてて決定したことだけ、なぜ先にこの法律改正として国会に提案するのですか、順序が逆じゃありませんか。その点に対するお考えはどうでしょう。
  24. 新井裕

    新井政府委員 お尋ねのように、いまお読みになりました対策資料は、警察だけがやるべきことじゃなく政府全体としてやることをまとめたものでございまして、私ども取り締まりだけが先行していてはもう事故がなくならぬ段階に来ておるということを痛感しておりますので、たとえば交通安全施設緊急整備三カ年計画というものは、私どもがむしろ推進をしてお願いをして関係当局に手を打っていただいたというようなことでございます。そのほかのことにつきましても、われわれとしては取り締まりだけでなくて、道路環境整備というものはいま一番大きな問題であると思っておりますので、これを大いに推進してもらいたいということを関係当局にもお願いしておるわけです。例示にあげられました仮停止の問題は、御承知のように、西宮でタンクローリがひつくり返りましてたいへんな火事を起こして、近所のうちを焼いたり人死傷させたというときに、その運転手が、その何日か前に静岡県で事故を起こしておる。そういうようなことであれば、なぜそれが予防できなかったかというような意見がありまして、あとから緊急に差し加えられたような、そういうことで取り上げられたことでございます。私どもといたしましても、いままで交通安全対策として取り上げられていることが、そういう事故事件が起こるたびごとにいろいろな世論が巻き起こって、それに対して手を打っていくというようなやり方が少し多かったように反省をいたしております。そうでなくて、もっと総合的な対策をとる必要がいまの時点では最も必要だと私どもも痛感いたしております。
  25. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いま御説明ございましたような事故がありまして、急遽この問題を検討して提案をされたというお話でありますが、しかし、確かにお話のございましたような事故人命尊重という立場に立ちますと、そういう事故をなくするための対策というものは私はきわめて必要だと思います。しかし問題は、法律改正いたしまして、そうして従来運転免許停止については公安委員会権限であって、聴聞制度もあって、そうして免許等停止をしておった、それを今度の法律改正のように所轄警察署長聴聞を行なわないで仮停止を行なうことができる。そうしてその後の停止については今度は公安委員会警察本部長、あるいは東京の場合は警視総監に権限を委任いたしまして、本部長なりが、その場合は聴聞を聞く機会はあるようでありますが、免許停止をしていく。いままでとは法律の体系が非常に違うわけですね。そういった全般的に影響のありますこの法律改正というものを、一つ事例がさったからといって、しかも早々の間にこの問題を取り上げて提案してくるということについては、これはどうも軽率だという感を私は免れないと思うのです。  それならばお尋ねをいたしますが、いままで公安委員会聴聞をして運転免許停止をやった。今度は仮停止の場合は文句なしに聴聞を行なわないで所轄警察署長がやる、こういうわけでしょう。そうして、しかも、その後の仮停止ではない免許停止については本部長が行なうのでありますけれども、その場合、第三者なりの聴聞を行なうなり、そういうことについては十分な配慮をしてこの法律というものを組み立てられるのが筋ではないでしょうか。そういう点について、一つ事例があったからあわててその他に非常な影響を及ぼすような改正をぱっと出していく。しかもお話がありましたように、交通対策本部においていろいろ検討された対策があった。しかしその後において特にこの問題だけを、対策本部がつけ加えて決定したものをすぐさま法律改正に持ってきたというような経緯から見ても、どうもこの問題に関する限りきわめて軽率だという感じを私は持つのですが、その点いかがでしょうか。
  26. 新井裕

    新井政府委員 二つ問題がございますので、分けて御説明いたします。  公安委員会のいままでやっておりました聴聞を、ある部分については警察本部長にまかせてもいいということにしようということでございますが、この点は、実は私どももかねて苦情は承知いたしておったのでありますけれども、現在、行政処分をするまでにたいへんな日数がかかるような状態にあります。そういうような行政処分件数がふえてまいりましたので、平均すると三カ月かかるというような事態、長いものは半年もかかるというような事態で、元来行政処分というものは危険性を街頭から排除するというのが目的であるにもかかわらず、こういうことは本来の目的に沿わないし、相手方にも非常に長い間不安定な状態に置いて不安を与えて、著しく不利を与えるのじゃないかということで、取り消しにつきましては、そういう意味で非常に件数の多い県は本部長にまかせる。もちろん件数がそれほどない県はまかせる必要は毛頭ございませんけれども。それで、なるべく早く処理をするということ、これは裁判の遅延と同じように重大な要求でございますので、そういうことで実は委任ということを考えたわけでございます。したがいまして、仮停止が、あわてて、あまりよく考えないでやったような印象を与えておるとすれば申しわけないのでありますが、そうではなくて、それ以来ずっと研究をいたしておりまして、やはりいまお尋ねのありましたように、仮停止というものは相当重要な処分である、したがいまして、明白に危険がある、明白に危険な事態を生じたという場合でなければやるべきではないのじゃないかというので、死亡事故に原則としてしぼる、酒酔いとか、あるいは、ひき逃げだけは重傷な事故も入れたらどうかということで実はやったわけであります。したがいまして、仮停止をしたような事案というものは、今度の法律がもしお認めいただければ、ほかの事件に先だって早く行政処分決定をするようにしたい、そうして不満があれば公安委員会にすぐ上訴できるような形で、公安委員会で十分に審理していただく、そのほうが事態に即するというふうに実は考えたわけでございまして、何でも早ければいいというような安易な気持ちでやっておるわけではございません。
  27. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣がお見えになりましたのでお尋ねしたいのですが、昭和三十五年の閣議決定交通対策本部ができ、さらに昭和四十年からは交通関係閣僚協議会というものを設置をされまして、総合的な交通安全対策というものに取り組んでおられる。そこで交通対策本部が作成いたしました資料を拝見いたしたわけです。そういたしますと、今回道交法改正提案になっております部分について、もちろん酒酔い運転等罰則強化する、歩行者保護の趣旨について検討するというようなことは書かれておるわけでありますが、運転免許行政処分に対する制度改正については、この資料の中には盛られておらない。お尋ねをいたしましたところが、この資料ができましたあとの十二月二十一日の交通対策本部でそういう要綱はきわめておる、こういうお話でございました。いま長官からのお答えもあったわけでありますが、ここに盛られているような他の施策というものはたくさんあるわけであります。そういうものについてはまだ遅々として進んでおらない。そこへもってきまして、公安委員会権限、しかも公安委員会というものは、現在の日本の警察制度ができました場合の根本の機関だと思うのです。戦前の警察の行き過ぎといいますか、そういうものを是正いたしまして、警察というものはあくまで政治的に中立でなければいかぬという立場に沿って公安委員会制度というものはできたと思います。その公安委員会が本来持っております権限というものを警察本部長に与える、しかも、いままでは公安委員会聴聞をして免許停止については行なっておった、それが今度は所轄警察署長権限で仮停止もできる、制度的にいえばこれは大改正ですね。そういったものは、私が拝見しました資料の中にはまだ出ていない。きわめて基本的な改正の問題であるにかかわらず、この早々の間に方針がきまって法律改正となって出てきた。そこに私は何か割り切れぬ感じを持つわけです。もっとやるべきことはほかにあるのではないか。しかも日本の警察制度の中心である公安委員会制度に変革を加えるような形でこの問題だけを急激に取り上げたということに対しては、私は非常な無理もあるのではないかという感じがするのであります。しかも、いま長官お答えになりましたが、かりに迅速にこの問題を処理する必要があったといたしますならば、迅速にそういう問題について結論を下すような、第三者でもって構成した機関というものを当然つくればつくれるはずです。そういうものが考えられないで、何か県警本部長あるいは警察署長、しかも場合によっては聴聞も行なわれないで決定も出されるというようなことをやったことは、どうも私どもふしぎに思うわけでございまして、そういう点を何とか改善をする方法というものについて公安委員長としてお考え方はないか。さらにまた、いまお尋ねをしたような問題だけが先行して今回法律改正として提案されたことに対するお考え方は一体どういうことなのか、委員長からひとつお答えをいただきたい。
  28. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん交通対策の万全を期するためには、しばしばお答えいたしましたように、各般の施策が調和をとれて進まなければならないことは申し上げるまでもございません。その意味においてやってはおるわけでございまして、私どもはただ警察取り締まりが先行すればいいのだというような感じは持たないわけでございます。  免許に関する行政処分問題でございますが、これは従来ともなかなかその決定に時間がかかるというようなことで、国民感情のほうからも、いろいろございますが、また事故を起こした運転者自体も、はたして自分の免許をどうされるのであろうかというような不安定な形でもいるというようなことも考えあわせまして、今回の改正をいたしたわけでございますが、たとえば警察本部長に委任をされた場合におきましても、それに不服な者は公安委員会審査要求することができるわけでございまして、戦後の民主警察の柱であります公安委員会制度というものを全然無視しているわけではない、最終的には公安委員会の判断にゆだねられるようにしておるわけでございます。それよりはむしろ、もしそういうことをするなら第三者機関をつくったらどうであろうか、まあ一つ考え方と思います。ただ、いずれにしてもそういう第三者機関をつくりましても、これは常設されて常に毎日活動するような機関でなければ、そうした要請に応ぜられないわけでございまして、そういうものをはたして重複してつくるのがいいか、あるいは最終的には日本の警察制度の中心である民主的な公安委員会というものの判断にゆだねるほうがいいのか、それらの点もあわせ考えまして、たとえ本部長に委任をした問題につきましても、不服があれば公安委員会に持ってこられるというような形におきまして、民主的な取り扱いというものを確保するのが妥当ではなかろうかということで、このような改正をいたしたわけでございます。
  29. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 現在、公安委員会に対して不服の申し出等の道も開かれているからいいではないかというお答えでありますが、しかし、とにかく二十日以内仮停止されるということでありますが、その間運転者にとりましては、いわば生活の手だてであります免許証というものが取り上げられる、きわめて重大な事柄でありますので、その最初の停止所轄警察署長によって聴聞もなしに行なわれる、このことについてはやはりもっと救済の道というものを、当然私は講ぜられなければならぬのではないかという感じがするのです。その点はどうでしょうか。
  30. 新井裕

    新井政府委員 まとめてちょっとお答え申し上げたいと思うのですけれども、取り消しは依然として公安委員会に残り、停止だけが警察本部長に委任できるということになりましても、聴聞はやらなければならないということになっておりまして、一般の取り消しについてもそういうふうに聴聞は残ります。それから、仮停止につきましては、第二項に弁明の機会を与えろということで、聴聞という字は書いてございませんけれども、相手の方の言い分を聞くということの手だてを法律にはっきりきめておりますので、不十分ではありますけれども、ある程度、そういう先方の言い分を聞く、それによってまた判断を変える場合があり得るということを保障をいたしておるつもりでございます。この、お手元に差し上げました案の四一ページに百三条の二というのがございます。その二項に書いてございます。
  31. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし、現実には人をひき殺した。しかしその場合無免許とかそういうことではなしに、いわばこの運転者の責めにだけ帰すべき事案でないこともあるわけでありまして、しかし人が死んだという際でありまして、その当事者に対して警察署長が五日以内に弁明の機会を与えたといたしましても、これはなかなかその弁明たるや、きわめて弱い立場に置かれた弁明でありますし、聴聞とは違って、いわば弁解をする機会を与えるという程度のことだろうと思いますので、これはなかなか言うべくして行なわれがたいことは、これは常識的に私ども推察できるわけであります。したがって、仮停止——免許の取り消しのほうは公安委員会処分でありますが、免許の仮停止ではない停止、これは聴聞があって県警本部長、こういうたてまえでありますが、公安委員会制度に関する改正の問題でありますだけに、もっと当事者の、やはり権利というものを保障していく、そういった面に対する運用に力を入れていく、こういうことについては、きわめて必要ではないかという感じがいたします。  時間もありませんから、次に移りたいと思いますが、積載オーバーの問題であります。運輸省の自動車局長さんがお見えでありますが、現在の科学技術の段階が、自重計の開発がむずかしいというようなことは、どう考えても理解しがたいのでありますが、自重計の開発については、いまどの程度まで進んでおるのですか。
  32. 原山亮三

    ○原山政府委員 最近のダンプカーの積載が非常に問題になりまして、われわれとしましては、とりあえずこの前の交通対策本部決定の線に沿いまして、さしワクの禁止というものを、特に業者指導を強力にやっております。最近におきましてはそういう面では、ことに過積載という面では少なくなってきたということでありますが、それの防除のために自動車自重計をつけてはどうかというふうな問題が起こってまいりまして、この点については現在一、二のメーカーでつくっておりますけれども、精度の面におきまして、まだ完全なものではないということでございますので、任意にそれをつけることについてはけっこうだと思いますけれども、それを法的に義務づけるという問題につきましては、もうしばらく検討したいと考えております。
  33. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 精度の問題があるということなんですか。そうしますと、目見当でやるということよりは、かりに精度が若干、たとえば一〇〇%完全ではない、九九%くらいだ、一%くらいの誤差がある、あるいは二%の誤差があるとかりにしましても、とにかく目分量でやるとか、感覚でやるということよりは、はるかに正確であることは間違いないと思うわけです。その精度が問題だと言いますが、誤差率は、どのくらいなんですか。
  34. 原山亮三

    ○原山政府委員 荷物の積み方によって変わってくると思いますけれども、いま聞いておりますところでは、最高二〇%程度の誤差率があるということであります。
  35. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 現実に積載オーバーを取り締まります場合は、どの程度のオーバー率、どのくらいで取り締まりをやっているのですか。
  36. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 取り締まりをする場合に、私どものほうは四角四面には必ずしも取り締まっておりませんので、一応内部の指導といたしましては、二、三割程度は現場の警告指導にとどめておくということで運用しております。
  37. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 二、三割程度は取り締まりの対象になっていないということですね。そうすれば、誤差率二割ならりっぱに通用するのじゃないですか、どうですか。
  38. 原山亮三

    ○原山政府委員 私どものほうは、貨物自動車にそういうものを任意につけられることについては、別に否定しておるわけではございませんけれども法律にそれをはっきり義務づける限りにおきましては、二割の誤差というものについては相当考えなければならぬ、こういうふうに考えております。
  39. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 二割の誤差といいますけれども取り締まりの現実の幅が二割ないし三割、その程度ならば、そう無理な——結局二割ということになれば、五トン車に六トン積んでいる、こういうことなんでしょうけれども、しかし誤差率といっても、最大の誤差が出た場合二割ということで、いつでも二割だけ違ってくる、こういうことではないでしょうからね。積載オーバーの問題を罰則強化されるならば、もっと科学的に積載オーバーの点が明確に出るような手だてが、すでに現に自動車局長の御答弁でも明らかになったわけでありますから、この点については積載オーバーをしていくという観点から、タコメーターと同じように、自重計についても法律でうたっていくということは、当然妥当な段階に来ているのではないかと私は思いますが、公安委員長のお考えはどうでしょう。
  40. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに自重計を備えつけることは望ましいことだと思います。ただ、私自身はそういう機械に弱いほうですから、どの程度の開発が進んでおりますか、よく存じません。おそらく運輸省としては二割程度、最大二割の誤差というのはなかなか踏み切りにくいことだと思いますけれども、おそらくこうした開発というものは急速に進むものでございますから、さらにもっと精度の高いものがもう最近に開発されてくるものと私どもは想像をしておるわけでございます。技術的にと申しますか、許容できる程度の精度のものができましたら、なるべく早くこうしたものをつけるようにいたしたい、そういう方向で考えたいと思います。
  41. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いま御答弁がありましたが、現在の科学技術の進歩をもってすれば、二割といいましても、いつも二割違って出るということではなしに、二割誤差の出る場合もまだあり得るということだと思います。とすれば、近いうちに精度ももっとよくなることはこれは明らかでありますので、いま委員長の御答弁もありましたが、これは十分早期に検討いただきたいと思います。  次に反則金の問題でありますが、この反則金制度につきまして、もうすでに当委員会で十分と言えるかどうかわかりませんが、繰り返し議論をせられた問題でありますので、その点は省略をいたしたいと思います。ただ私がここでお尋ねしたいのは反則金の額の問題についてであります。最高一万五千円から一万円、七千円、あるいは五千円、三千円、二千円に至るまで区分が出ておりますが、いただきましたこの資料による諸外国の制度を見ますと、著しく日本の反則金は高いのじゃないかという感じをいたすのであります。たとえば、いただきました資料によりますと、イギリスでは反則金につきましては現行二ポンドだというのでございます。二ポンドでございますから二千円です。しかもイギリスと日本の国民一人当たりの所得というものを考えれば、イギリスのほうが日本の二倍ぐらい国民所得は高いわけです。前回の当委会員でこの反則金の問題に触れまして、何か金持ちは反則金で済むけれども、お金のない人にとっては反則金は納められぬ、そうなった場合は送検をされて、そして刑事処分も覚悟しなければいかぬという点について、非常に不合理があるじゃないかという指摘もあったわけであります。日本よりも国民所得の非常に高いイギリスにおいて二千円、それからドイツにおきましては五マルクというのでありますから、一マルク九十円ですから反則金は四百五十円、そういった各国の例を見ますと、これからつくろうとする日本の反則金制度反則金は著しく高いと言わざるを得ないと思うのですが、なぜ外国の制度に比べて著しく高い反則金制度を採用されようとしておるのか、この点ひとつお答えをいただきたいと思います。
  42. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 反則金の額をきめるにあたりまして、私どもいろいろ検討したのでございますけれども、やはりこの額につきましては事故抑制力という観点からと、もう一つは、この制度の円滑な移行を考えまして、原則といたしましては、科刑実績の平均額をとらえてきめようとしているわけでございます。法律案に示されております限度額は、各罰条中の最も危険性の高い違反種別の科刑実績の額でございまして、実際に納付する政令で定める額は、反則行為の種別ごとに定めることにしておりまして、軽微な違反種別につきましては、この額は限度額より相当低くなる予定でございます。仰せのように、諸外国の反則金と比べますと、いろいろ御意見があろうかと思いますけれども、アメリカ、イタリア等をごらんになっていただきますと、日本の反則金の額よりアメリカの場合なんかは高いし、イタリアの場合なんかは大体似ておるというところもございます。との制度をつくるにあたりましては、やはり諸外国の制度を参考にして、わが国の実情に合ったものをつくろうということでやったわけでございまして、対象の範囲が国によっていろいろ違っております。わが国の場合には、わが国の実情に応じた対象範囲をきめておりまして、したがって、それに対する科刑実績との関連においてきめた反則金の額というものも、諸外国とは若干違ってくるのはやむを得ないというふうに考えております。
  43. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 アメリカは高いと言われますが、アメリカの国民一人当たりの所得は日本の何倍ですか、これは四、五倍なんですからね。そういうものを比較して、アメリカとあまり違わぬからいいじゃないかという議論は、これは私は実情を無視するものじゃないかと思います。イタリアだって同じだと言いますが、日本の国民所得から見て倍ぐらい高いわけですからね。フランスだって、これを見ますと、第一類は三フランから二十フラン、第二類は二十フランから四十フラン。ですから最高は二千八百円で最低は二百十円ですからね。この場合最高限度を定めたのであって、実際に適用するものは政令できめて、もっと低いというのだそうですけれども、それはあれですか、それぞれの段階があると思いますが、いま政令案として考えております額はおよそどのくらいなんですか。
  44. 綾田文義

    ○綾田説明員 現在政令案につきましては、違反の大体おもなものについて考えております。百十九条の違反は大体二種類ございまして、四段階に分れるのですが、大型が六千円、普通が四千円、五千円、それから二輪が四千円、三千円。それからもう一種類は、大型が五千円、普通が四千円、三千円、二千円というふうになっております。それから駐車違反などの百二十条の関係は、大体大型が四千円、普通が三千円、それから二千円、百二十一条の一番軽微な違反は大型が三千円、普通が二千円、それから原付等が千円というふうに大体考えております。
  45. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それにしてもイギリスの二ポンドに比べて高いじゃないですか。もっとイギリス並みぐらいに下げられないものですか。
  46. 綾田文義

    ○綾田説明員 先ほど私のほうの局長からも御説明申し上げましたように、科刑実績、それからそのもとになります法定刑そのものが日本とは根本的に体系が違っておるようでございます。たとえば、先ほどフランスの例が出ましたけれども、フランスにおきましては法定刑が二十フランから四十フランまでのものは、十分注意を払わない駐車違反、それから積載方法の違反でございます。ところが日本の法定刑は御承知のように三万円でございます。それから歩行者、これはフランスでも対象にいたしておりますが、歩行者は一フランから十フランでございまして、このチケット制度は、フランスは三フランということになっておりますが、日本の法定刑は御承知のように歩行者の違反は一万円でございまして、科刑の実績も大体千円というふうに聞いております。ドイツなどにつきましても、たとえば免許証不携帯、これは交通違警罪でございますが、百五十マルク以下、最近そこに書いてありますように五百マルクに変わったようでございますが、法定刑が従来は一万三千五百円であったのです。そして現実に科せられるのは一マルクないし二マルクでございますが、日本では免許証の不携帯は一万円、それからその他の違反も、たとえば方向指示器の違反というようなものも、ドイツでは現実には三マルクでございますが、日本は法定刑が三万円、現実に科されておる実情は三千円というふうに、法定刑そのもの、それから科刑実績そのものも変わっておりますので、やはり日本の実情に沿った制度の移行ということを考えますと、この案が適しておるのじゃないかと考えます。
  47. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 昔から、家貧しくして孝子いずという語がありますが、日本は国貧しくして罰金高し。道路の施設も悪い、安全施設も悪い、国民の生活水準も低い、罰金だけ高いということになるんじゃないですか。委員長、どうでしょうか、高い立場から考えまして、こういうことは少し不合理だとは思いませんか。交通安全施設はなっていない、道路整備もなっていない、罰金だけ高くして、そうして交通安全をはかろうという思想が日本にあるのじゃないかという気がするのですが、こういった思想は誤りですか。
  48. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 刑罰をどの程度にするかということは、これは単に道路交通法違反の問題ばかりでなく、他のいろいろな刑罰との関連も持つわけでございます。もちろんいまおあげになりましたように、日本の刑罰全体がはたして重いのか軽いのか、こういう点はなかなか比較はむずかしいと思います。したがいまして道交法違反の刑罰をいかにするかということは、今後も考えていかなければならないと思いますが、日本のいろいろな刑罰体系の中におきまして、この程度が妥当ということで従来からやられておるわけでございます。これに対するいろいろな御批判もあろうかと思います。ただ、反則金につきましては、やはり道交法違反の刑罰との関連あるいは科刑実績というようなものを考慮に入れてやりませんと、一方においてなるほど任意の納付金でございますが、それが一種の行政的な制裁的効果をあらわすというときには、やはり科刑実績等も考慮に入れなければ、その実効があがらないのじゃないのかというふうに思います。ただ道交法違反の刑罰そのものが重いか軽いかという御批判については、なお十分検討しなければならないものがあることは確かだと思います。
  49. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この点はひとついま私が申し上げましたように、日本は道路もよくない、安全施設も不十分だ、そういう中で罰金のみ高くして道路の安全をはかっていく、そういうことはやはり本末転倒ではないかという感じがいたしますし、委員長からお答えがあったわけでありますが、ひとつ政令でこれをきめます場合におきましては、諸外国の国民所得と反則金の額と日本の実情とを比べまして、あまりにひどい隔たりがあるのではまずいと思いますので、この点十分考慮いたしまして政令をおつくりいただくように、これは強く要望をいたしておきたいと思います。  それから次に、交通安全対策特別交付金の問題でありますが、この配分についても、客観的なものさしでもって配分をする。決して当該府県の点数かせぎなど起こらぬようにするというお答えがあったわけでありますが、政令はおよそいつごろ——実施は明年の七月一日でありますから、当然次の通常国会あたりには、このような形で配分をする政令案については、当然国会にお示しをいただけると思いますが、この点は、財政局長、政令の考え方並びにわれわれに政令案をお示しいただきます時期等についてはどのようにお考えですか。
  50. 細郷道一

    細郷政府委員 施行が来年七月でございますから、それまでに出せばよいわけでございますが、明年度の予算を執行するにあたって、地方団体におきましてもなるべく早い時期に見込み額を知ることが便利かと存じますので、この法案ができましたら、政府部内でもなおよき知恵があるかどうか、よく相談をいたしまして、なるべく早い機会に政令をつくるように努力をいたしたい、かように考えております。
  51. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、明年の地方財政計画等を審議いたします機会には、考え方についてはお示しをいただける、かように了解してよろしいですね。
  52. 細郷道一

    細郷政府委員 そういうようにつとめたいと思っています。
  53. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 最後にお尋ねをいたしたい点は、警察官の資質の問題についてであります。昭和三十五年の道交法制定の際にも、この問題に対する附帯決議がつけられたようでありますが、最近の新聞の社説等を拝見いたしましても、警察の体質を改善すべきではないか、もっと人材の吸収について警察はつとめるべきではないかという社説も読んだことがございます。さらに同じくこの委員会で問題になったと思いますが、信号無視に対して、ピストルを五発も発射して違反者をして死に至らしめたというような事件もございました。信号無視ぐらいでピストルを撃たれてはとてもかなわぬわけでございまして、そういったことについても、警察官の資質の向上ということについては警察当局も御努力をしておいででありましょうけれども、さらにこの点については御努力をいただく必要があるのじゃないかと思います。  そこで現在の警察は、大学卒業者、中退者を含めて七千人で、警察官全体のうちの五%だそうです。警察官を採用いたします場合に、大学卒業者をもっと警察に迎え入れる、また大学卒業者も喜んで警察に入る、このような形をお考えになる必要があるのじゃないでしょうか。そのためには、現在の階級制度というものに対して検討を加えるということも一つの方法だと思います。警察にもっと人材を集め、そういう中で当委員会指摘されたような警察官の行き過ぎなり、さらには道交法の施行にあたって実際に現場でこれを取り扱います警察官がもっと国民から理解されるような体制をつくることが何よりも必要ではないかと思うのでありますが、この点に対する委員長考えはいかがでしょうか。
  54. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに、特に交通取り締まりあるいは指導に当たる第一線の警察官の資質を向上することが道交法等、交通対策の中心になるわけでございます。また反則金制度というようなものも行なわれるようになりますならば、さらにその重要性が増してくるわけでございまして、警察官の教養指導にあたりましては十分その辺を考慮してまいりたいと思います。最近、警察官に断層ができまして、相当年輩の者と非常に若い者とが多くなりまして、この若い警察官の指導についてはさらに努力をしてまいりたいと思います。そのゆえにおきまして、たとえば大学卒業生等が喜んで警察官を志望するような体制をつくるためには、やはり従来もつとめてまいりましたが、いろいろ待遇の問題その他につきましても今後さらに努力をいたしまして、そして十分教養を積んだ者が警察官を志望してくる、そういう体制もつくり、また警察界へ入りました者に対しまして、これらの教養を十分積みまして、ほんとうに国民と一緒になって警察の仕事がやっていけるというような警察官の養成に今後さらに努力をしてまいりたいと考えます。
  55. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまの警察は軍隊のようないわば階級制度になっていると思いますが、一番上が警視監ですか、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査というようなことになっているようですが、そういった軍隊的な階級というのはもう古いんじゃないでしょうか。そうではなしに、もっと専門職というものを尊重する、何といいますか、そういう階級とは別に、たとえば交通取り締まりなら交通取り締まりにあたってきわめて公平な立場で、しかも専門的な知識で運転者の人たちの不満の起きないような、きわめて的確な処置をする、そういった専門職の方がもっと尊重される、また吉展ちゃん事件等いろいろありましたが、第一線で活躍しております刑事の方々、階級とは別に、そういった捜査にあたって非常な深い経験と専門的な知識を持っておる方がやはり尊重される、こういうようなことが必要ではないかという感じがいたすのであります。それが単に現在の試験制度による階級制というものでは、そういった専門職としてやはり専門家が尊重されるというような制度とはなじまないのじゃないかという感じがいたすのでありますが、そういった点の改正等についてお考えはございませんでしょうか。
  56. 新井裕

    新井政府委員 階級そのものの数は、ほかの国、たとえばロンドンとかニューヨークとかあるいはパリとかいうようなところの階級と比べて、特に多いことはございません。ただ御指摘のように、専門職を尊重するという点については、私自身も率直にいって欠けるところが非常にあると思っております。したがいまして、実は一年前から部内に私自身の私案を示して研究をさせておるのでありますけれども、次の年ぐらいまでには何とかそういうほうに目鼻をつけまして、少なくとも制服と私服とは階級の名前が違う国はどこでも相当ございますから、そういう点だけでもひとつ前進をさせたほうが専門家の養成ということでいいのじゃないかというふうに考えております。問題は、一つ俸給制度との関係でございまして、いまのような俸給制度で、巡査より巡査部長のほうが俸給表がいい、巡査部長より警部補のほうがいいというような形、しかもそれが一つの職務と必ずしも結ばないで、ただ階級と職務が別々に並行で進んでいくというようないまのたてまえは、確かにおっしゃるように、昔はそれでよかったのかもしれませんが、いまのように人事制度が精密になりますと、精密になり過ぎたために弊害を生じておるところがあると思います。私どもとしても率直に検討して、みんな働いておる人たちの納得を得なければどんないい制度をしいてもだめなので、できるだけひとつ時間をかけてやりたいと思っております。
  57. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 これは一つの感想でありますが、非常に人が雑踏いたしますときに、警察官の方がマイクを通じて交通指導している場合が間々ありますね。ところがこれが若い警察官の方がきわめてぶっきらぼうな口調で、しかもきわめて大きな声でやっている。聞いていますと、かえって気がいら立つような感じを持つこともあるようであります。せっかく婦人警察官という制度もあるわけでありますから、ああいった交通雑踏の際の交通指導等については、もっと人の気持ちを落ちつかせるような形の指導というものをもっと考えてもいいのじゃないかというような気がいたします。デモ等に対する指導の場合でも同じですが、これなんかもきわめて人の気をいら立たせるようなことをむしろ警察はおやりになっておるのじゃないかという感じを持つことが私しばしばございます。同じような意味で、交通警察のほうも何か第一線の、位の低い若い方ばかりが反則金の取り扱いに当たっているということではなしに、もっと年齢も多い、非常に落ちついた、熟練した方がこの問題に対して誤りのない的確な対処をする、こういうようになっていくことが私は必要じゃないかと思うのです。どうも交通指導なんかの状況を聞いておりますと、かえって人の気がいら立つような、あれでは交通安全の指導ではなくて、気持ちをいら立たせるためにやっているような感じもいたすのでありまして、今回の道交法改正の運用にあたりましては、ただいま私が指摘いたしましたような点については十分配慮して、ひとつ対策をとっていただきたいことを最後にお願いをいたしたいと思います。  質問を終わるにあたりまして、交通対策本部が出しました資料等を通じましてお尋ねをいたしたのでありますが、どうも今回の道交法改正提案されましたことについては、確かに世論からいって、このような点が出た経過というものも、御説明をいただけばなるほどと思う点もないわけではありませんけれども、しかし今日までせっかく交通対策本部設置をされて、もろもろの施策考えてきた、こういった問題が置き去りにされて、この法律による交通取り締まりのみが先行するという感じを否定することはできません。この点については、先ほど罰則の問題でも触れましたけれども、交通の安全施設なり道路というものを抜きにして、罰金だけが世界各国に比べて著しく高いというようなところにもそれがあらわれているのではないかという感じがいたします。  どうかここに盛られておりますような他の万般の施策を十分考え、そして同時に道交法についてもこの改正考えていく、こういう姿勢を堅持されることを特にお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  58. 亀山孝一

    亀山委員長 細谷君。
  59. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いろいろ問題点がございますけれども、重複を避けまして、一、二点御質問をしたいと思います。  一つは、今度の道交法改正で、少年は反則金制度から除かれておるわけでございます。私は率直に申し上げまして、今度の道交法というものを見ますと、交通事故を防ごうという意欲が急なあまり、法律全体といたしましてはバランスを欠く点があるのではないか。言ってみますと、交通事故を防ごうということで常識なりあるいは法律の筋というのがいささか埋没しておるのではないのかという感じがあるのでありますけれども、しかし何といっても、今日交通事故を防がなければいかぬ、おぼれる者わらというような感じで、少しでも効果が期待されるものには取り取んでみよう、こういう意欲のあらわれだろうと思うのであります。ところがいまの少年の問題は、少年法に規定されておりますものは満十九歳まで、二十歳以上が成人でありますから、満十九歳までが少年であります。ところが警察庁の統計を見ますと、成人と少年の違反状況には構造的に違っておる点があるわけです。たとえば成人の違反の一番大きいものは速度違反であり、少年の場合には無免許運転が一番多いわけです。その次に多いのはやはり速度違反、こういうことになっておるわけでございますけれども、全体の件数はやはり速度違反が多いわけですね。こういう状況を見、さらに自動車等が第一当事者となった場合の事故運転者の年齢別を見てみますと、十八歳で六%くらい、十九歳で六%くらいの事故を起こしているわけです。やはり事故率が一番高いわけですね。そういうことになってまいりますと、今日の自動車事故というものは、場合によってはたいへんな人命に関係する場合があるわけなんで、この辺に、いろいろな問題点がありましょうけれども、現実には交通事故を何とか防止しようという道交法一つの穴となってあらわれはせぬか、こういう点を心配いたすのであります。この点について、国家公安委員長としての自治大臣、当事者である警察庁長官、それから、経過を聞きますと、どうもこの問題につきましては最高裁なりあるいは法務省等で、少年の保護というもの、いわゆる少年法というのは少年の刑事事件に対する特別措置なんだ、こういう観点から、かなりきびしい反対があったと伺っております。言ってみますと、どうも反則金制度の妥協の産物としてこの百二十六条という問題が生まれたかのような印象を受けるのでありますが、この点についての、最高裁、法務省も含めたいまの関係者のお考えを承っておきたいと思います。
  60. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに、御指摘のように道交法違反の中で少年の占める量というものは非常に多いわけでございます。したがいまして、今回の反則金制度などにつきましても、少年にもこれを適用したらどうだという意見はありました。ただ、今回それを除きましたのは、一つには法務省等において少年法の根本的な改正についていろいろ御検討になっている際であるということ、もう一つは、過去の実績におきまして、少年の道交法違反についてはいわば不問に付されるといいますか、そういうことが多いわけでございまして、そうすると、任意ではございますが反則金を納めた者と刑事手続が済んだ者との不均衡というようなものも考えられますので、一つ検討事項として今回は除いたのでございますが、さらに将来関係各方面とも十分連絡をとりつつ、この問題は検討をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  61. 新井裕

    新井政府委員 ただいま委員長からお答え申し上げたような経緯で、つけ加えることはあまりございませんが、あるいは御承知かもしれませんが、試案のときには、実は少年法といいますか少年にも適用したらどうかということで一つ案をつくりまして、各方面の御意見を聞きました。ところが、これまた賛否両論でございました。私ども、いま委員長から申し上げましたように、いま少年法の改正がこうやって問題になっているときに、その帰趨を見定めないうちに軽々しくちょっと手をつけがたいという感じでやめたわけでございまして、それ以外の理由はございません。
  62. 川井英良

    ○川井政府委員 今日少年は、あらゆる犯罪につきまして、少年法の規定に基づいて家庭裁判所の審判に付すことに相なっておることは御存じのとおりでございます。そこで、この少年の道交法違反事件につきましても、少年法のたてまえからいくならば、家庭裁判所の所管になるということは当然のことでございます。ただいま御指摘がありましたように、少年の交通違反の犯罪の実態につきましてはいろいろ問題がございますので、私どもこの法案をつくるときに警察庁から協議を受けまして、いろいろ私どもの立場から検討をいたしてみたわけでございます。なるほど少年は、少年法の規定に基づいて保護処分を原則としておることではございますけれども、この道交法違反内容につきましては、やや他の犯罪と罪質なりないしはその犯罪の実態、類型、あるいは少年に対する刑罰によるところの、あるいは刑罰に類する反則金制度というふうなものによる教化というふうな面にかんがみまして、ほかのものと違うのではないかというふうなことも考えてみまして、この種の事件につきましては少年をこれに乗っけて差しつかえないではないか、こういうふうな考え方も法務省の内部には非常に強いものがあったわけでございますが、先ほども大臣、長官からお話が出ましたように、少年につきましては昨年五月に私どもの法務省から、少年年齢の引き下げというふうなことを基本にした少年法改正の構想を発表いたしまして、約一年間にわたりまして各方面から非常にたくさんの意見をいただいたわけでございます。今日その意見を集約いたしまして、ほんとうに少年法の改正としてどういう姿が適当かということについて鋭意作業を続行中という段階に相なっているわけでございます。  そこで、いま申し上げましたこの制度に少年を乗っけるかどうかということにつきまして、また、少年につきましては、道交法違反の犯罪でありましてもやはり保護主義を原則として貫くべきだ、こういうふうな強い意見も一部にございますので、それやこれやの関係を考えてみまして、そうして今回の道交法反則金制度は、何と申しましても新しい制度でございますので、その新しい制度の適用というふうな面も考えまして、この際は少年に関するこの制度の問題はしばらく見送って、あらためてまた近い機会に、いわゆる前向きの姿勢でもって考えてみたらどうだろうかというふうなことで一応関係方面の意見を調整いたしまして、今回はそういう事情でもって少年はこの制度から除外するというふうなことになったのが大体のいきさつでございます。
  63. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 この反則金通告制度そのものを成人に適用する場合につきましても、私どもはある程度問題点があるのじゃないかというふうに考えておるわけであります。特に少年の場合につきましてはなお一そう問題点があるというふうに考えておるわけでございます。と申しますのは、いま細谷委員から御指摘のように、交通違反あるいは事故少年については免許証を与えたのだからおとなと同じじゃないかというふうな御指摘があったわけでございます。しかし少年の交通違反の実態あるいはその他の点を考慮いたしますと、成人と少年とはよほど違っておるということを申し上げられるわけであります。と申しますのは、少年がまず使うところの車はどういう車かと申しますと、原動機つき自転車と申しますか、それが実態調査の結果は大体五三%余りであります。それから二輪自動車、いわゆるオートバイ、それから軽自動車、それらが十三、四%くらい、非常に小さい形の車を使っておるというのが少年の交通違反の実態でございます。また、ではどういう少年がそういう交通違反を犯しておるかと申しますと、交通違反少年及び事故少年を含めまして大体七〇%から八〇%までは有職少年でございます。いわゆる中小企業に働くところの少年でございます。以前でありますれば、そういう少年は自転車を使って配達なんかをしておったという少年でございます。それが最近は原動機つき自転車あるいは二輪自動車を使って職業に従事しておるというところから犯罪を犯しておるというのが実情でございます。また違反する原因はどういうところにあるかと申しますと、やはり肉体的な問題あるいは精神的な問題もございます。また運転技術の未熟と申しますか、おとなの場合でありますと、いわゆる普通乗用車の自動車学校と申しますか、自動車訓練所といいますか、そこへ通いまして免許証をとるわけでございます。ところが少年の場合に使っておるところの原動機つき自転車あるいは二輪自動車運転を教えるところの場所はないわけであります。教習所はないわけであります。そういう少年が無免許運転、あるいは道路運転をして無免許運転にひっかかるということもございましょうし、またそういうふうな正規の訓練所で訓練を受けていない少年でございまするから、運転技術も未熟であり、また車両知識も足らない、あるいは法規についても知識が足らないという実情にあるわけでございます。こういう少年に対して、じゃ再犯を防止して道路交通の安全を確保するためにはどうしたらいいかということになると、やはりそういう少年に対しては反則金あるいは刑罰というものを科するよりも、むしろその少年が非行化した原因を取り除く必要があるのじゃないか。いわゆる原因を究明して、その原因を取り除いて、少年を教育するということのほうがまず大切じゃないか。特に少年はおとなと違って教育の可能性が非常に強いわけであります。したがって、そういう少年の事故をなくする、あるいは交通違反をなくするためには、金を取るということよりも、むしろ教育を施す必要があるというふうに考えるわけであります。そのほうが道路交通の秩序の維持あるいは交通の安全確保、または再犯防止というのに役立つのではないかというふうに考えるわけであります。それで私どもとしては、まずこの反則金制度を設ける、少年に適用するということについては、根本的な疑問を持っておるわけでございます。それからまた現実に法律的に申しましても、また事実上につきましても問題点があるというふうに、ただいまのところ考えております。
  64. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いろいろ議論したいのでありますけれども、時間がありませんから申し上げませんが、警察庁にお伺いしたいのでありますが、三十八年の一月から実施されました交通切符制度、これは成人、少年含めておやりになったのでしょう。そういうことからいきますと、どうも警察庁に一貫性がないのじゃないか。ですから、私は反則金制度の合憲性という問題にからんで、いろいろな雑誌等を見ますと、最高裁あたりは、最初はどうも憲法上問題点があると、こういうことをおっしゃっておったわけですね。違憲だとは言いませんけれども、問題点があるということは、もう最高裁長官自体が、新聞に伝えるところによりますと、疑問を投げかけておったことは事実なんですね。そういう警察庁の一貫性のないというのは、やはり最高裁のそういう主張から、一つの妥協の産物として出てきたのではないか、現に最高裁のほうは、とにかく違憲の疑いがある、こういうことでやった結果、少年は除くことになったというような意味のことを言っているわけだから、どうもやはり妥協くさい、こう私は思っているわけだ、警察庁が一貫性を失っているから。その辺ひとつ答えていただきたい。
  65. 新井裕

    新井政府委員 切符制は御指摘のように三十八年から実行しておりますが、その際も、まず成人に適用し、逐次少年に及ぼした、そういういきさつもございます。今度の問題につきましても、先ほど申し上げましたとおり、一応私の試案としては、少年にも適用するということで御検討を各方面に願いましたところが、必ずしも全面的な賛成でないし、また私ども、法務省と最高裁が主として議論をしておられました少年法の改正が大体は結論を得られるという見通しでありましたところが、結論が先に延ばされるという状況になりましたので、それらを勘案いたしまして将来の問題として残した、こういうことでございまして、別に特に、妥協したということばがそれに当たるのかどうか知りませんが、先に延ばしたというつもりでございます。
  66. 細谷治嘉

    ○細谷委員 三十八年の一月に交通切符制度が実施された、それから四十一年の十月一日に少年も含めて全面的に実施されたわけですね。いまあなたのことばをお聞きしますと、二、三年後にはやはり少年も含むということですか。いまは話し合いで結論が出ないから妥協しておるのだけれども、交通切符制からいきますと、三十八年一月にやったけれども、それから二年十カ月後ですか、四十一年十月一日には全面的に少年も含めて切符制度を実施したでしょう。そういうことからいきますと、いや、そうしたら二年ばかりしたらやるか、そういうことであればあなたのほうは一貫しておるわけだ。現在は妥協状態です。こういうことでしょう。
  67. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 ただいまの交通切符の問題でございますが、少年に対する交通切符が全面的に実施されましたのは御指摘のとおりでございます。しかし交通切符の実施状況は、成人と少年とは全く違っておるわけでございます。少年の場合は単に送致するという手続だけでございます。家庭裁判所に参りましてからは、普通の少年と同じように取り扱っておるわけであります。したがって、少年に実施したということは、いわゆる警察捜査段階における手続の面において実施したというにすぎないわけでございます。
  68. 細谷治嘉

    ○細谷委員 手続のことは少年法に書いてあって、この間、秋田市で手続が誤っているからそれは無効だという結論まで最高裁で出たことは、私は承知してお伺いをしておるわけだ。そういう点で私は、警察庁が、冒頭申し上げたように、この際理屈抜きだ、とにかく交通事故を何とかしてなくさなければいかぬ、こういう意欲でやったにしては、どうも問題点があるのじゃないか。きょうのこれからの委員会の採決にあたって、附帯決議にこの問題がつけられるようでありますから、私は、一つの問題点として、またこの間に話されたと思われるものが、どうも一貫性がないような気がいたしましたので指摘をいたしたわけでありまして、いろいろ申し上げたいのでありますけれども、これ以上は申し上げません。  もう一点お尋ねしたいのでありますが、大臣、この反則金の問題についての性格、大蔵大臣は国に帰属するのだと言っております。それから自治省は、いまは結論が出たからものを申さぬでしょうけれども、いやこれは機関委任事務を受けたものなんだから、いまの警察府県警察なんだから、これは地方に所属すべきものだ、こういう主張をしたわけですね。当事者である警察庁はどういうことかというと、コウモリだ。どっちにも片寄らない。中立でございます。大蔵省の主張でも自治省の主張でもない。私のほうは中立でございます。その理由は何かといいますと、それをやると、反則金を取るに急でどうも問題があるという、自分の部下まで信用しないという状態になっちゃったように思うのですよ。そこでこの間、参考人の話では、一体反則金——いろいろ問題がありますけれども反則金の性格というのは、大蔵大臣ははっきり議事録で、これは国に帰属すべきものだ、こう言っておるわけですよ。そういうことになっておるのですよ。自治大臣の公式のことばは一つも聞いてないのだ。いやこれは機関委任事務だから地方公共団体に帰属すべきものだ、こういうように自治省言ってない。この間、参考人は、この問題は国会の場においてきちんときめるべきだ、こういうことをおっしゃっておりました。自治大臣、この性格はどうお考えなんですか、大蔵大臣と同じですか。
  69. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これはいろいろ議論のあるところでございまして、大蔵大臣と申しますか、国の財政当局は、罰金にかわるものだから、罰金が国に帰属するのだから当然国だという議論もあります。一方、いま御指摘のように、国の委任事務をやる都道府県警察であるから、したがってその自治体に当然帰属されるのだという議論もありました。しかし、いろいろ検討いたすと、これは結局どこへ帰属させるかということを法律で書かなければ、当然にどこへいくということではないというふうな結論になりまして、そうしてこの道交法改正におきましてはその旨をはっきり書いたわけでございます。結局いまおっしゃったように、法律を、立法権を持つ国会において決定をされるべきで、どちらに帰属させたほうがよいかという判断の問題で、当然国に帰属する、あるいは当然都道府県に帰属するという性質のものじゃないんじゃないかというふうに考えております。
  70. 細谷治嘉

    ○細谷委員 じゃ、どこに帰属するんですか。大蔵大臣は、当然国に帰属するんだと言っているのですよ。自治大臣は、当然国に帰属すべきものと言えないし、当然地方に帰属すべきものとは言えない、どこへ帰属するかわからぬけれども、あなたの部下は、これはやっぱり機関委任事務だ、いま府県警察なんだ、ですから、これは機関委任事務である以上はやはり地方団体に帰属すべきものだ、こういうことをおっしゃっておったわけですよ。ですから、大臣と部下との見解の相違がありそうなんですが、何かこれに一言ありますか。
  71. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど申し上げましたように、結局そういう機関委任の事務で、府県警察だから都道府県法律的に当然帰属するという意見もあります。また、罰金の変形なんだから当然国に帰属すべきだという意見もあったわけでございますが、いろいろこの性格を突き詰めていきますると、当然法律的にどちらに帰属するかという性質のものではなくて、どちらに帰属させたほうがよろしいかという判断に立つものだという性格のものであるという結論に達しまして、そうしてこの性格としては国に帰属させたほうがよろしいというわけで原案を御審議願っておる、こういうことでございます。
  72. 細谷治嘉

    ○細谷委員 罰金の変形なんということを言いますと、これは憲法違反ですよ。罰金の変形ということは、本質は罰金だということですよ。そうすると、やっぱり憲法違反ですよ、大臣。そういう大臣のことばではいかぬと思うのですよ。罰金の変形という、第三種の罰だ、こういっているのですよ。やがてまた第四種なんてできるかもしれませんけれどもね。罰金の変形ということでありますと、大臣、これはやはり憲法違反ですよ、はっきり言って。それを言いのがれようとしていろいろここで議論されてきたのですけれども、これはやはりはっきりしておくべき筋合いのものじゃないか、私はこう思いましたので、時間がありませんけれども、大臣の見解を尋ねたのでありますが、いまわの際になって大臣らしくないあやふやな答弁で、私はたいへん不満です。
  73. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 罰金の変形だから当然国に法律的に帰属すべきものであるという主張がありました。しかし、そうではないので、罰金の変形ではないので、したがって、当然国に法律的に帰属するという性質のものではないという結論になりました、そういうことを申し上げているわけです。
  74. 細谷治嘉

    ○細谷委員 どこがもとでどこが先なのか一つもわからないのですが、これは大臣、この法律の非常に重要な点なんですよ。ですから私はほんとうに問いただしたいわけですけれども、大臣も依然として明確なお答えをしていただかないからたいへん残念に思います。あとでまた質問もありますから、私はこれ以上触れません。  最後に一つ法務委員会で刑法の二百十一条を改正しようとしているわけです。これも言ってみますと、刑法改正草案というのがちゃんとできておるのです。大臣御承知のように、三十六年にできておるのですよ。その刑法改正草案の中のほんのちょっぴり一点、懲役五年というやつを取り出した。刑法草案のほうは罰金のほうだって相当額に引き上げておるのですよ。その辺はそのままにしておいて、千円です。そうして特別法で五万円ということになっておるだけにすぎないのであって、刑法は千円としか書いていない。本来こういうものは過失なんですから、これはやはり禁錮だけでいくべきものを懲役刑を加えて、しかも五年ということにしたわけです。これはほんとうになりもふりもかまわぬで、何とかして交通事故をやったやつはひとつ五年の懲役にたたき込んでやれというような形の、これも理不尽な、明治四十一年以来ずっとやってまいりました刑法のバランス、それをくずしてまでも五年にしようという法律が出ておるわけです。私はたいへん遺憾に思うのですよ。明治四十一年以来今日まで六十年間やってまいったものが、今日交通事故——なるほど交通事故は三年禁錮では頭打ちが起こっておる、こういうことで、その辺だけ取り出しておる。これも全く私は理不尽なことだと思うのです。この間法務大臣の見解を聞きました。私の、法務大臣の考えを受け取ったことは、理屈抜きだ、何とかして事故をなくしたいのだ、そうして猿投町のような事故をやったやつは、三年では足りないから五年の徴役にたたき込むのだ、こういうことに尽きるのでありますが、こういうことでよろしいと国家公安委員長はお思いであるかどうか、一言聞かしていただきたい。
  75. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 業務上過失致死傷罪というものは、これ自体は、おそらく刑法の体系に入るものだと思います。なるほどこの罪の最高が必ずしも高くないというか、低過ぎるということの起こりは、それは交通事故等がその起こりであったと思います。しかし、いろいろ世の中が進展してきまして、ことに業務上過失致死傷というようなものがいろいろな点において起こる可能性が多くなって、それらについて刑の最高を上げる必要があるのではないかという判断のもとに、法務省で刑法改正案を提出されたのだと思います。そういう意味におきまして、私は、それなりに受け取っておるわけでございまして、なるほど明治四十一年からの体系をくずしたではないかという、そういう点はありましょうけれども、今後世の中に起こり得る業務上過失致死傷ということにつきしては、いろいろな今後の科学の発展その他からいたしまして起こり得ることでございまして、この程度はやむを得ないのではないというふうに考えておる次第でございます。
  76. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ちょっと一言……。この程度はやむを得ないということでありますが、大臣、悪質な酔っぱらい運転とか、そういうもので事故を起こした、あるいは居眠り運転事故を起こした、そういうことで、たまたま猿投町のように保育園の児童がたくさんなくなった、これは憎んでも余りあるような事故なんですよ。しかし、ほんとうにちょっとしたあれなんです。本人は気がついたらどうも居眠りをしたらしいということのようですね。その程度です。その居眠りというものは、朝早くから、あるいは眠るような状態も十分ないような生活の中から過労とか、いろいろな形で出てきておるわけですね。今日そういう二百十一条を適用されておるというのは、端的に言いますと、法務省があげた例でありますと、二十四件中六件しか頭打ちしてないのです。ところがごく最近、自動車交通以外で業務上過失で三年禁錮を受けたなんというのは、たいへんな事故の国鉄三河島事件だけなんですよ。そうなってまいりますと、この問題はそういう受けとめ方をする必要があるとするならば、道路行政から起こった問題、そういうことでありますから、道交法で始末すべきじゃないか、こう私は思うのですよ。自治省がいろいろな法律について地方自治権を守るということでけなげに戦っておるということは、私は評価するのです。ところが、この道交法についてはどうも法務省との間に並行線、自分のワク内においては中央集権化を進めているという、そういう欠点が私は二つあげられると思うのですよ。よそのほうについては自治権を守るといって、自分のところではどんどん中央集権化を進めている、これが今日の自治省の姿じゃないかと思うのです。なぜ道路交通法でやるべきだということを自分のなわ張りを守るためにがんばらなかったか、こう私は申し上げたいのでありますが、言うことはありますか。——では、これで終わります。
  77. 亀山孝一

    亀山委員長 太田君。
  78. 太田一夫

    ○太田委員 たいへん質疑は多角形的に行なわれましたから、大体答弁も固まってきておるように思いますけれども、ひとつ私は固まらない答弁と言っちゃ何ですが、そういうような傾向のある内容につきまして、二、三点について念のためにお尋ねしておきたいと思うのです。  一番最初に、これはそれに入る前のことですが、運輸省の自動車局長さんおいでいただいておりますのでお答えをいただけばよろしいのですが、先ほど山口委員から質問のありました例の積載重量計、私はこれはタコメーターと同じように車両構造令ですか、それに必置を義務づけるべきだと思うのです。もしそれをやりませんと、現在のダンプカーの取り締まりなんということはできませんし、過積二割やそこらはとかいうようなお話がありましたけれども、それは目の子算用じゃなかなかわかるもんじゃありませんから、重量計をみずからの車に大型車はつけておくのは当然のことじゃないか。開発が急がれておらないというけれども、日通さんのトラックでございますか、これを取りつけて相当成果をあげておるという話がある。運輸省、これについてはどうなんです。
  79. 原山亮三

    ○原山政府委員 営業用のトラック会社の車の中にはそういう重量計をつけてやっておるものもございますけれども、先ほど来申し上げましたように、現在精度の点で問題がございまするが、研究開発がされていきまして、非常に精度の高いものができてまいりましたら、法的な措置を講じたいと考えております。
  80. 太田一夫

    ○太田委員 原山さん、精度の高いものができたら取りつけるとおっしゃったことは時間の問題と理解してもいいと思うのですけれども、巷間うわさによれば、業者のほうが圧力を加えて、なるべく自動車の価格を上げないためにメーターをつけることに反対をしておるんだ、こういう説が流れておるわけだ。もしそんなことがあっちゃたいへんだから、人間の命を尊重するという立場から、あるいは運転手が無過失の積載オーバーに対して警察からぎゅうとやられないためにも、一日もすみやかに私は設置を義務づけるべきだと思う。そういうことはいいですね。
  81. 原山亮三

    ○原山政府委員 メーカーのほうが反対しているとか、そういうことはございませんので、精度の高いものができましたら、今後できるだけ早く法的な整備考えてまいりたいと思います。
  82. 太田一夫

    ○太田委員 この業者というのは、自動車の販売並びに使用するほうだろうと思うのですが、特に使用するほうから何か反対があるということがうわさとして流れておる。しかしそれは困る。重量というものはわからないんですね。砂利とか砂などを積載したダンプが一体幾らあるというときに、水の目方も入れなければならぬし砂の目方も入れなければならぬし、だんだん走っておるうちに軽くなるということもありますけれども、何ではかるかわからないです。だからそういう非科学的なやり方で取り締まるということじゃいかぬと思うのです。できるだけ科学的にやらなければいかぬと思うのです。これは一日も急がなければならぬ。ダンプを取り締まるにはそれしかない。ダンプが最近暴走して、川の砂利がなくなってくるので山のほうへどんどん入っておる。それで山のほうは一日に何百台という自動車が、歩道のない道を砂ぼこりをあげて往来をする。いままで何もなかった農家では、子供がちょっと遊びに出てもダンプにはねられるということ、あるいは自転車で買いものに行く主婦も、野らに働きにいくお百姓さんもダンプによる危機にさらされているというところが幾らもあるでしょう。だから、それはあなたたち早く開発をやらなければいかぬですよ。  そこでもう一つお尋ねしたいのですが、原山さん、こういうことでしょう。自動車というものはあんまりたくさん積み過ぎたり無理なことをして使えば、寿命が短くなって最終的なそろばんに合わぬということは御承知でしょうね。警察の目をのがれれば、その業者なりその自動車の所有者は積んだだけもうかるというものじゃないのですよ。その点お気づきですか。
  83. 原山亮三

    ○原山政府委員 先生のおっしゃるとおりだと思います。
  84. 太田一夫

    ○太田委員 そういうことですから、私もぜひすみやかに開発をはかってもらいたい。モデルがある以上、もう一歩精度の高いものをお願いしたいと思うのです。  それから、これは実は法務省にお尋ねしたいと思ったのですが、これも今回の改正に関係することですけれども免許証というものを取り上げる場合は別として、免許証の停止というのが百二十日、いわば四カ月ぐらいのものが非常にたくさん出てきた。それでその間、運転手さんで食っていけない人が出てくるわけだ。そこでそういう場合に、その行政処分に不服だとすれば行政不服審査法によって救済を申し出ることができる。そういうことはいままで例があるんでしょうか、ないんでしょうか。運転手さんはみんなあきらめておるのか、それともそういうことに対して相当広く道が開かれて利用されておるのか、大ざっぱでよろしいから、わかりましたら法務省から答えてもらったほうがいいが、お答えできなければ警察庁でもけっこうです。
  85. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 公安委員会の行なった行政処分につきましては、不服審査法に基づきまして不服の申し立てを公安委員会に対してなすことができることになっておりまして、処分書を渡すときに、その処分書の中に、不服のある者はどうぞそういう手続をとってくださいということを書いて処分書を渡しております。それによりまして異議の申し立てをやっている事例は全国的にございます。  それから、これは今度本部長に委任することができることになりました、本部長がその処分をやった場合には、今度は公安委員会に対して審査の請求ができる。これも不服審査法に基づいて審査の請求ができることになっておりますので、その方向で救済措置がなされるというふうに思っております。
  86. 太田一夫

    ○太田委員 鈴木さん、そうすると公安委員会処分にも不服があったらどうします。
  87. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 それは行政訴訟の道が開かれております。
  88. 太田一夫

    ○太田委員 行政訴訟まで持ち込まれた件数は過去にありますか。
  89. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 手元資料がございませんので、明確な数字は把握しておりません。
  90. 太田一夫

    ○太田委員 私は、その点をもっと明らかにしなければいかぬと思うのですね。ほんとうを言うと、道交法は読みにくいですよ。日本の国の法律制度は、これはまたがんじがらめで、たとえば東京の地下鉄の銀座の駅に行ったくらいよりももう少し複雑だ。自分の行く道はどちらに行ったら一番正しい道かわからない。日本の国の法律制度は、急いで通れる道じゃない。だからいまのあなたのおっしゃるように、警察本部長に今度委任する、それが不服なんだ。公安委員会審査請求した。そこで不服があった。行政訴訟をかける。それは簡単にできるように、みんなに明らかにしておかなければいかぬ。権利を守っておらなければいかぬ。守ってやることを明らかにしておかなければいかぬですよ。百二十日というのは四カ月でしょう。四カ月も飲まず食わずなんて、何をやるのですか。失業保険で必ずそれを確保しますということがわかったらいいが、失業保険でそんなわけにいかぬでしょう。その点を今後明らかに十分周知徹底してもらわなければ権利は守れない。  それはそれで打ち切りまして、もう一つ、これは警察庁新井長官、今度は合い図違反について非常にきびしくなりましたね。なぜ合い図違反をそんなにきびしくするのですか。過失犯まで罰するのはどういう発想から出ておるのですか。
  91. 新井裕

    新井政府委員 合い図違反の故意はいまでも処罰されるのでありますが、故意か過失かの立証が非常に困難である場合で、しかも事故を起こすような事例が多いものですから、それで合い図違反というものを重く見まして、できるだけ的確な合い図をしてもらわないと、ことに右折の場合に事故を起こす場合が多いものですから、その点を明らかにしたわけです。
  92. 太田一夫

    ○太田委員 原山自動車局長、合い図をする場合に、それは合い図する機械で、いまでは手じゃないのですね。機械でやるのですよ。自動車の構造が間違っていませんか。やっておるつもりでも、うしろから行ったってわからないのが幾らでもあるでしょう。非常にわかりにくいのがある、いまのは。そんなにふえるのなら、あれをもうちょっと、その型をこういう構造にすべきだという、さらに近代的なものをつくらなければいかぬと思うのですが、その点どうですか。何か御研究なさった点ありますか。
  93. 原山亮三

    ○原山政府委員 いまのところそういう点についての研究はいたしておりません。
  94. 太田一夫

    ○太田委員 自動車メーカーの開発にすべてまかせて、自動車メーカーはブリキのような自動車をつくって、ぶつかったら中に乗っておる人間も死ぬが、外にぶつかった人間も死ぬようにつくっておいて、そうしておいて、さあ処理についてはあなたの注意が悪いの、やり方が悪いの云々なんというのは、私は非常に本末転倒だと思う。特に右曲がりのときにわからぬというけれども、合い図というのは、うしろの車が連続しておる場合などにわからぬ場合が非常に多いわけだ。何とか物理学的にわかる方法を考えなければ、隠れておって取り締まりをやることと一緒だ。だから過失なんということはいかぬですよ。あまりやるべきじゃない。特にいままで、あまり早くからかちかちやっておるとおまわりがおこるでしょう。早過ぎるぞ。おそくなれば過失だ、どうですか、その点。常識妥当な判断の方法がありますか。
  95. 綾田文義

    ○綾田説明員 合い図の違反につきましては、先ほど長官から申し上げましたように右折の場合が多い。特に、最近におきまして高速道路ができまして、車線に入る場合に合い図なしで事故を起こすという事例が非常に多かったわけです。しかも合い図につきましては、従来、判例におきましても、故意、過失について絶えず問題になっておりまして、私のほうでもやはりこういう事故状況から見て、合い図違反はつけるべきであるという意見が安全の上から非常に多く、これに踏み切ったわけでございます。先ほど先生のおっしゃいました合い図が早過ぎるぞというのは、一線では間間あろうかと思いますが、私どもはそのように指導いたしておりません。特に非常に込んでおる大阪あるいは東京の停滞しておるところでは、右折にいたしましても、事前から右折するという判断はなかなかむずかしい場合もあります。
  96. 太田一夫

    ○太田委員 公安委員長、原山自動車局長のほう、いわば運輸省のほうは、構造の問題についてはあまり研究なさっておらないようですけれども、むずかしいことだと思いますが、交通安全対策の閣僚会議等あることでございますから、公安委員長のほうから大いに言っていただきたいことは、うしろから見ると、下のほうでぱっぱっとやるのではなくて、上のほうでもやるところの何か安全な方式、機械、メカニズムがあるじゃありませんか。そういうものを開発するように、何かひとつ早急に結論を出していただいて——いま合い図違反の過失までやるということはわからないことはない。そういうことによって大きな事故を起こしておることはわからないことはないけれども、これは運転者にとってみれば、必ず不満足きわまる処分になることが多いと思うから、運用に手心を加える必要もあると同時に、自動車の構造そのものに対しても特段の配慮をされるべきだと思いますが、所見はいかがですか。
  97. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 実は自動車メーカー自体が、交通安全について十分率先していろいろくふうをしてもらいたいと私は考えるのでございます。あとからタコメーターをつける、自重計をつけるというばかりでなくて、自動車の構造あるいはいま御指摘の合い図等につきましても、メーカー自体が交通安全対策の立場からいろいろくふうしてもらいたいということでございまして、実は先般も通商産業大臣を通じて、そういうこともひとつ通産省として御指導いただけぬかというようなことを申し入れた事実もあるわけでございまして、今後もひとつそういう産業行政面からも、構造その他についてメーカー自体がくふうしていただくように指導していただきたいと考えております。
  98. 太田一夫

    ○太田委員 メーカーという路線もあるでしょうけれども、メーカーはやはりいかに安く、いかに売れる車をつくるかという点に重点があるわけですから、監督官庁におきましては、運輸省が構造令の所管省であるなら運輸省、それに伴って交通安全の立場からいえば国家公安委員長、ともどもそういうことについて配慮あるべきだと思います。指導してください。  そこで、念のためにいままでの質疑の中でお尋ねしたいことがあるのですが、第一に安全施設の問題です。私ども罰則の引き上げによって、運転者に対する取り締まり強化するということだけで、交通事故を減らすというのはとてもできないことであろうと思うのです。そこで道路整備、特に交通安全施設整備を強力にはかるべきじゃないか、こういう意見が大多数であった。特に今回の改正で、横断歩道を明確にするという義務が生まれておりますし、反則金というような通告制度というものができますと、警察官は告知をするのに標識が不備だとか、信号が見にくかったとか、そんなことがあったときは、通告する警察官も二の足を踏むことが出てくると思うし、通告をされるほうはばからしくてしようがないでしょうから、信号機や標識を絶対に整備する、完全に整備するということが一番大事だと私は思うのです。この点について公安委員長としてはどうお考えになりますか。
  99. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 しばしばお答え申し上げたように、この交通対策事故対策はいろいろな施策を調和をとってやっていかなければ実効が上がらないとは申すまでもございません。たとえば根本的には道路整備、さらにそれについての安全施設というようなことが大切でありますし、あるいはまた労務管理というような問題もございます。警察におきましても指導に重点を置いてやっていかなければならないということでございます。そういうことのために、緊急整備三カ年計画も立てたわけでございますが、これでは十分でないということで、国会におきましても、通学、通園道あるいは踏切道についての特別措置法の御制定を考えておられるわけでございまして、そういう点もあわせまして今後やっていかなければならぬと思います。ことに標識が見にくいというようないろいろな御批判は十分承っておるわけでございまして、単にたとえば横断歩道をゼブラ型のものをはっきりさせるばかりでなく、そこに横断歩道があるということの標識というようなものを考えなければなりませんし、さらにそういう標識をできるだけ上に掲げる。横に置くのではなくて、上に掲げる方式等をとりまして、そして交通標識その他がはっきりいたしますように今後さらにつとめてまいりたいと思います。
  100. 太田一夫

    ○太田委員 大阪へ行ったら、信号機のすぐそばにある横断のゼブラ模様が予算が五十万円ないからやれない、それからよごれていて見にくい標識を塗りかえる予算がない、そういうみみっちいことを絶対言わぬように頼みます。  それからその次、取り締まり方針、指導方針と申しますか、そういうことですが、現場の特に交通警官の態度の問題ですが、実際運転する者の不満というのは、警察官の取り締まりの方法、それからその取り締まりのことば、それからその態度、この三つにあるのですよ。取り締まりの方法としては、電柱の陰にかくれていたり、どこかの陰にかくれていて取り締まりをする、そういうこともありますし、また一方通行をやっておれば、入り口におってここは一方通行だぞということを言わないで、出口のほうにいて、そして、おまえ違反じゃないか、一丁あがりというような、こんな態度というものはけしからぬ。ことばについても、これまた日本語であることには間違いないと思うが、実際に警察官用語というものがあるのです。ことばというのも、民主警察という実態に即応するようなことばにしてほしいと思いますし、態度そのものも、いかめしい態度というのはいいのですが、なるべく早く、なるべく相手によく理解ができるように、気持ちよく理解できるような親切な態度にしてほしい。ましてや十九歳、二十歳ぐらいの若い巡査というのは、とかく警察学校出たてで権力的、威圧的な取り締まりをしたがりまして、いわば検挙のための検挙、取り締まりのための取り締まりをする、こういうようなことがある。交通反則制度が今度できますから、これによるというと、みんな小さなものまですくい上げられることのないように、いままで行なわれた以上に、軽微な違反については現場で注意するということをやっていましたから、そういうことをさらに拡大すると同時に、指導主義というものを確立していただきまして、件数主義的な取り締まりにならぬようにしてもらいたいと思うのですが、御意見はどうですか。
  101. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 実は警察官が立っているところでは違反しないで、見てないところで違反をするというようなものもあるものですから、ときにはかくれて取り締まりをするというようなことも起こってくるわけでございますが、まあそれは異常な場合でございまして、これもしばしばお答えいたしましたように、確かに警察官の言動等につきましては十分注意をいたしまして、そして運転者と一緒になって交通事故をなくするというような気持ちになりますように、従来もやっておりましたが、今後ともそうした教養につとめてまいりたいと思います。先ほども申し上げましたように、若い警察官がふえておる現在でございます。さらにその辺については十分注意をしてまいりたいと考えております。
  102. 太田一夫

    ○太田委員 あたたかい指導というのが道交法の本来の姿だと私は思いますから、道路交通取締法にならないように、その辺のところは十分の指導をしていただきたいと思うのです。  その次に、三つ目にお尋ねしたいことは、積載オーバーの責任の問題でありますが、これは運転者だけを三カ月の懲役だとかというようなことに持っていくということがどんなに反発を受けておるかわからない。だから、荷主、雇用者、運行管理者、この三者の責任というものに対して厳重な追及がなされなければならない。刑法総則六十一条によりますと、「人ヲ教唆シテ犯罪ヲ実行セシメタル者ハ正犯ニ準ス」とありまして、いままでもこの刑法総則六十一条というのが適用されておると思うのですが、今後運転者だけを罰するなんというばかなことではなくて、それを教唆した、その下命した荷主あるいは雇用者、運行管理者、ここに目標を置いてもらいたい、こう思うのです。これはどうです。
  103. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 従来も刑法総則をできるだけ適用してそういうことをやってまいったわけでございまして、今後も特にその原因になりました教唆、幇助等につきまして十分な取り締まりをいたしてまいりたいと思います。今回の改正によりまして、下命、容認の罰則ができます。そうなりますと、たとえば雇用者が下命をしたが実行行為をしなかったというような場合におきましても雇用者は処罰をされるわけでございまして、そういう点も考慮いたしまして、御指摘のような点は十分注意してまいりたいと思います。
  104. 太田一夫

    ○太田委員 その次に免許効力停止制度についてちょっとお尋ねしますが、免許の仮停止ですね。これは警察署長が行なうことができるようになっておりますが、そのいわゆる第一号のひき逃げと第二号の酔っぱらいによって人を死傷せしめた、これはわからぬことはないと思いますが、第三号はたとえば免許条件の違反とか過労運転等の不明確な違反事項があるわけですね。したがって第三号関係の違反については、運転者に過失がない場合でも仮停止をされるという心配が非常に多い。だから違反の立証のむずかしいものについてはわれわれは削除をしたらどうかということを考えて、議論がいままで何回か押し問答をされております。そこで、安全運転の義務、いわゆるわき見をしておったじゃないかということで、それによっておまえは人を殺したのだろうとして、向こうが飛び出てきたにかかわらず、その運転者は即時免許停止というようなことになるおそれもあります。そういう免許停止の第三号の立証のむずかしい問題については、実際どうなさるつもりですか。これは長官でも公安委員長でもいいですがあまり議論のあるようなものに適用してはいかぬと思うのですが、その点どうですか。
  105. 新井裕

    新井政府委員 御指摘の安全義務違反はこれを適用しないことになっております。こういう事故は相当多くて全体の四割ぐらいを占めておるわけでございますけれどもお尋ねがありましたように非常に議論のあるところでありますので、これは現場で明確に確認するに不便なものでありますから除いております。
  106. 太田一夫

    ○太田委員 三号の中でそのほかのものは……。
  107. 新井裕

    新井政府委員 一号、二号はお尋ねのとおりでございまして、三号につきましてはこの間以来いろいろ御意見がございまして、過失のないものまで仮停止をするかというお尋ねでございますけれども、そういうものがはっきりいたす場合には仮停止をするつもりは毛頭ございません。
  108. 太田一夫

    ○太田委員 いまのお答えを私はこう理解しておきたい。第三号関係の中にはしばしば非常に立証のむずかしい問題がありますから、必ず現場に出ていた警察署長なら警察署長が十分事情を精査して、運転手さんの言い分を聞いて、人が死んだからおまえが悪いだろうという、運転手だけを責めるような態度でなくして、十分運転手側の立場に立ってやってもらわないと、いまの交通道徳高揚とか安全運転の徹底とかというのは言うべくして行ないがたいことでございます。そのために、人というものに対しては無過失になる、歩行者無過失論でありまして、運転手のみに無過失責任をも課しておるようなふうに思われる。ですからその辺のことのないように、今後この運用にあたっては十分誤りなきを期してもらいたいと思います。そういうふうに理解してよろしいですね。
  109. 新井裕

    新井政府委員 もちろんお尋ねの趣旨のとおりでございまして、これは一号、二号につきましてももちろんございますが、ことに三号につきましてお尋ねのようなことの起こりやすいことを十分銘記いたしまして、いま太田委員からお尋ねがありました以外にもしばしばお尋ねがありましたことをわれわれ十分銘記いたしまして、もしこれが実施されるということになりました場合には、第一線にも趣旨を徹底させたいと思っております。
  110. 太田一夫

    ○太田委員 その次は、免許の保留及びその効力停止に関する公安委員会の事務を警察本部長に委任するという例の改正でございますが、実際公安委員会行政処分に関する事務を警察本部長に委任するということは、公安委員会が多忙だということでありましたけれども公安委員会が多忙なら、公安委員会がもう少し民間の有識者を入れた交通委員会とか交通事件審判所というようなものをつくって、そして聴聞行政処分をやればよいじゃないかという意見が非常に強かった。何回も出されております。念のため本件についてのお考えを伺っておきたい。
  111. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 交通に対する特別の機関を、特に免許の問題、行政処分についてやったらいいではないかという御議論、一つの御議論として承るわけでございますが、ただ、先ほど来お答え申し上げましたように、たとえば警察本部長に委任をされたときでも、それに不服のある者は公安委員会審査請求ができる、そしてその公安委員会というものは、現在の警察制度の中の中心でありまして、いわゆる民主的な警察の運営ということについての使命を持っている公安委員会でございますから、この公安委員会審査請求ができるということによって、こうした問題を民主的に処理するということができると考えまして、こういう制度をとったわけでございますが、一種の交通裁判所的なものを設けたらどうだというようなことにつきましては、これは十分検討をしていかなければならないと考えております。
  112. 太田一夫

    ○太田委員 最後に、道交法の本質と運用について、これは特に警察庁長官お答えをいただきたいと思いますが、最近道交法の適用について、吉祥寺の駅前でありました、小さな少年が喫茶店のビラをまいたというのを、非常にひどい扱いをして、しかも道交法違反というような形で逮捕したとかいうようなことが報ぜられております。それからデモというものにつきましても、すぐにデモは道交法違反でございます、道交法違反でございますといって、道交法というのはデモ弾圧法、取り締まり法のように思っている労働者が多いのですね。そんなことは警察庁長官の本旨じゃないでしょう。あくまでも道路交通の秩序を維持し、安全をはかり、円滑化をはかるということにあるわけでございますから、自動車対人の関係に重点を置いて行なうことであり、歩道上で二人や三人少年がビラまいたのを、気に入らぬからといって、何か人相学的に気に入らなかったかどうか知りませんが、そういう応待をする。道交法違反、ぎょうぎょうし過ぎますね。デモを道交法で規制するというのも、確かにそういう場合も、交通の円滑と安全という立場から言いますならば、なきにしもあらず。しかし、時の政府が、デモに対して、どうもおそろしくてしようがないから、米のデモだけはいいが、ほかのデモはいかぬといって全部弾圧するということは、私は行き過ぎだと思うのです。そして、本来の道交法の精神に立脚して、近代交通の実態に応じて道交法の運用をはかるべきだ、こういうふうに思うのです。これは警察庁長官お答え願いたい。
  113. 新井裕

    新井政府委員 お尋ねのように、道交法は、道路の安全と円滑をはかることを目的として運用さるべきものであります。ただ、御指摘のありましたような事態で、道路の安全と円滑をはかるために、自動車対歩行者、自動車自動車以外の問題についても規定がございますので、運用をいたすわけでございますけれども、この運用については、今後とも十分慎重に行なってまいりたいと思っております。
  114. 太田一夫

    ○太田委員 公安委員長の所見……。
  115. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 いま警察庁長官お答えしたとおりでございまして、ただ、ビラまきあるいはデモでも、非常に交通渋滞を起こすような問題につきましては、これは取り締まらなければいけませんけれども、それが乱に流れるようなことは絶対にいたさぬつもりであります。
  116. 亀山孝一

    亀山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  117. 亀山孝一

    亀山委員長 これより道路交通法の一部を改正する法律案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに本案の採決を行ないます。  道路交通法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  118. 亀山孝一

    亀山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  119. 亀山孝一

    亀山委員長 この際、古屋亨君、細谷治嘉君、折小野良一君及び小濱新次君より、四派共同提出をもちまして、本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  本動議を議題とし、提出者から趣旨の説明を求めます。古屋亨君。
  120. 古屋亨

    ○古屋委員 ただいま議題となりました道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきまして、私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党の四派を代表してその趣旨を御説明いたしたいと思います。  案文は、お手元に配布してありますので、朗読を省略させていただきます。  次に、提案の趣旨を御説明いたします。  まず第一点につきましては、日ごとに困難性を増しつつある現下の交通の実態に対処して、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑をはかるためには、交通警察の活動をさらに強化する必要があると存じますが、その交通の指導取り締まりは、申すまでもなくあくまでも適正に行なわれなければならないのであります。とりわけ、画期的な交通反則通告制度も遠からず発足することであり、警察官の資質の向上、指導取り締まりの姿勢、態度等について、その教育の徹底につとめ、いやしくも取り締まりのための取り締まりにならないよう周到な配慮と責任ある指導を行なうべきものとするのであります。  第二点につきましては、積載制限違反について運転者のみを責めるのはその雇用の実態からして酷であります。したがいまして、積載制限違反取り締まりにあたっては、単に運転者の責任を追及するばかりでなく、雇用者、運行管理の地位にある者及び荷主等の責任をも重く追及することが妥当と存ずるのであります。  なお、積載制限違反防止の実効を確保するためには、車両に計量器を備えつけることがさしあたり最も有効な手段と思われますので、自重計の備えつけを義務化するよう早急に検討すべきものとしております。  第三点につきましては、交通事故の場合、運転者に責任がなく、被害者のみに責任がある場合もありますことにかんがみ、違反とか過失のない場合、あやまって仮停止をし、かりそめにも運転者の生活権を侵害することがないよう、運転免許の仮停止にあたっては、違反及び過失の有無を慎重に検討し、誤りなきを期するよう十分に指導すべきものとしております。  第四点につきましては、交通の安全と円滑を確保し、危険を防止するための要件は多々ありますが、その基本をなすものは、歩行者、運転者はもちろん雇用者に至るまで、交通法令その他交通安全のための心得を十分にわきまえ、真に交通道徳を身につけるとともに、交通安全教育をさらに強力に推進すべきものと存ずるのであります。  第五点につきましては、あらためて申し上げるまでもなく、交通の安全と円滑をはかるためには、単に罰則の引き上げや運転者に対する取り締まり強化するのみで交通事故の減少をはかることは不可能であり、その際、当然の前提として考えるべきことは、道路及び交通安全施設等整備強化であります。  道路整備、特に交通安全施設緊急整備につきましては、現在、交通安全施設等緊急整備三カ年計画が実施されておりますが、交通事故の現況にかんがみ、今回の法改正に伴う交通安全対策特別交付金の交付にとどまらず、さらに国は、道路整備費や交通安全施設に要する経費について、府県や市町村に対し十分な財源措置を講じ、その万全を期すべきものと存ずるのであります。  なお、地方団体に対しても、交通安全対策に必要な地方財源については、今回の交通安全対策特別交付金のような応急的かつ不安定な措置でなく、恒久的かつ安定した財源措置をとるべきものとしております。  第六点につきましては、本改正案では、交通反則通告制度を成人にのみ適用し、少年には適用しないこととしておりますが、交通事犯のうち少年によるものが大量にのぼっておりますことは周知の事実であり、その法的措置をどうするかは緊急の問題と存ずるのであります。そこで、この問題の重大性とその影響とを考え運転免許を受けた少年による道路交通法違反についても、成人と同様の手続をとることができるよう早急に検討すべきものとしております。  第七点につきましては、交通事故に伴う刑事裁判、民事裁判の遅延が今日大きな問題になっておりますし、また、一つ事故について、刑事裁判所、民事裁判所、公安委員会の真相についての判断がそれぞれ別個に行なわれますのも、運転者等関係者の権利の保障の面において問題があるのではないかと思います。  したがいまして、交通事故の当事者の権利の保障を全うしつつ、交通事故の真相を明らかにし、交通事故防止に寄与することのできる交通審判所のごときものの設置検討すべきものとしております。  以上が本決議案の趣旨であります。何とぞ各位の御賛同をお願いいたします。     —————————————    道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、国民生活の一大脅威となっている現下の交通事故激増の深刻な事態に対処し、人命を尊重し、交通事故防止の徹底を期するため、特に左の諸点について、すみやかに強力かつ抜本的な措置を講じ、その対策に遺憾なきを期すべきである。  一、道路交通法に基づく交通の指導取締り、とくに交通反則通告制度の運営の適正を期するため、警察官の資質の向上、指導取締りの姿勢、態度等についての教育の徹底につとめ、いやしくも取締りのための取締りとならないよう周到な配慮と責任ある指導を行なうこと。  二、積載制限違反の取締りにあたつては、運転者のみならず、雇用者、運行管理の地位にある者および荷主等の責任をも追及するよう配意すること。なお、積載制限違反の防止のため、自重計の備付けを義務化するよう早急に検討すること。  三、運転免許の仮停止にあたつては、違反および過失の有無を慎重に検討し、いやしくも過誤なきを期するよう十分に指導すること。  四、交通の安全を確保するため、交通安全教育をさらに強力に推進するとともに、遵法精神を昂揚し、交通道徳の確立をはかること。  五、交通安全施設等(歩道、信号機、ガード・レール、街路照明灯、横断歩道橋、道路標識、踏切道の改良等)の整備をさらに促進するため、国において十分な財源措置を講ずるとともに、特に、地方財政の現況にかんがみ、道路交通安全対策に必要な地方財源措置についても万全を期すること。なお、交通安全対策特別交付金にかえて、すみやかに別途十分な財源措置を講ずるよう検討すること。  六、交通事故の現況にかんがみ、少年による道路交通法違反についても、成人と同様の手続きをとることができるよう早急に検討すること。  七、交通事故にともなう事案の適切かつ迅速な処理をはかるため、交通審判所(仮称)の設置について検討すること。   右決議する。     —————————————
  121. 亀山孝一

    亀山委員長 本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  122. 亀山孝一

    亀山委員長 起立総員。よって、古屋亨君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、藤枝国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤枝国務大臣
  123. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、善処してまいりたいと思います。     —————————————
  124. 亀山孝一

    亀山委員長 おはかりいたします。ただいま議決されました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 亀山孝一

    亀山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  126. 亀山孝一

    亀山委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時十二分散会