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1967-07-06 第55回国会 衆議院 地方行政委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月六日(木曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 亀山 孝一君    理事 大石 八治君 理事 岡崎 英城君    理事 奧野 誠亮君 理事 久保田円次君    理事 細谷 治嘉君 理事 山口 鶴男君    理事 門司  亮君       木野 晴夫君    塩川正十郎君       久保田藤麿君    中馬 辰猪君       渡海元三郎君    登坂重次郎君       永山 忠則君    古屋  亨君       山田 久就君    井上  泉君       太田 一夫君    河上 民雄君       華山 親義君    依田 圭五君       折小野良一君    大野  潔君       小濱 新次君    林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁長官   新井  裕君         警察庁長官官房         長       浅沼清太郎君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         自治政務次官  伊東 隆治君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君  委員外出席者         議     員 太田 一夫君         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         運輸省自動車局         参事官     上原  啓君         運輸省自動車局         業務部長    蜂須賀国雄君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         労働省労働基準         局監督課長   藤繩 正勝君         労働省職業安定         局失業対策部企         画課長     塩田  晋君         建設省計画局参         事官      大津留 温君         建設省住宅局建         築指導課長   前川 喜寛君         自治大臣官房参         事官      鎌田 要人君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         最高裁判所事務         総局家庭局長  細江 秀雄君         専  門  員 越村安太郎君     ――――――――――――― 七月五日  地方自治法等の一部を改正する法律案太田一  夫君外十九名提出衆法第三七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月五日  町村財政確立強化に関する陳情書  (第二〇九号)  市町村職員共済組合長期給付掛金率に関する  陳情書  (第二一〇号)  本籍地番と街区番号の一本化に関する陳情書  (第二一一号)  行政書士既得権存続に関する陳情書  (第二四一号)  上水道改良事業に対する起債わく拡大に関する  陳情書  (第二九五号)  住民税軽減に関する陳情書  (第二九六号)  消防施設に対する国庫補助基準額改正等に関す  る陳情書  (第二九八号)  地方税制改正に伴う減収補てんに関する陳情書  (第二九九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  地方自治法等の一部を改正する法律案太田一  夫君外十九名提出衆法第三七号)  住居表示に関する法律の一部を改正する法律案  起章の件  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二七号)      ――――◇―――――
  2. 亀山孝一

    亀山委員長 これより会議を開きます。  太田一夫君外十九名提出にかかる地方自治法等の一部を改正する法律案議題とし、提出者より趣旨説明を聴取いたします。太田一夫君。
  3. 太田一夫

    太田議員 ただいま議題となりました地方自治法等の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案趣旨及び内容概要を御説明申し上げます。  地方自治法附則第八条は、昭和二十二年に同法が制定された当時の暫定規定として、都道府県職員のうち政令で定めるものは当分の間これを官吏とする、と規定しております。このため、都道府県職員のうち、職業安定、社会保険国民年金業務に従事する職員、いわゆる国費職員は、同法の規定を受け、国家公務員たる身分のまま今日に至っております。したがいまして、現在、都道府県職員として勤務するものの中には、国家公務員たる身分のものが混在しているわけでありますが、こうした事情は、都道府県知事指揮監督権にもかかわる重要問題を提起しております。すなわち、地方自治法附則第八条の政令事務に携わる職員は、彼らが実質的には都道府県職員であるにもかかわらず、身分上は国家公務員であるため都道府県知事指揮監督を受け、人事と給与については、国の指揮監督を受けるという、複雑な立場に置かれているのが現実であります。たとえば、公共職業安定所は現在職業安定法により国の機関として全国各地に設置されており、そこに勤務する職員はすべて国家公務員としての身分を持つものでありますが、これに対する指揮監督は同法によりやはり都道府県知事にゆだねられております。もともと公共職業安定所事務は、その地方の実情をより強く反映したものであることが望ましいのでありまして、この際同法を改正してこれを都道府県機関とするとともに、その職員都道府県職員とすることにより、身分指揮系統を一本化する必要があるのであります。こうした身分関係の混在、指揮監督系統のあいまいさは、行政上望ましくない事態発生原因となっているのでありまして、早急に是正されねばならぬことは当然であります。  以上のことは単に行政上の理由にとどまらず、わが国の民主主義の支柱の一つである地方自治の充実という見地から見ましても、この是正が必要と思われるのであります。また、このことは、すでに昭和三十九年の臨時行政調査会答申をはじめ、四十年には地方制度調査会、四十一年には行政監理委員会答申によっても、それぞれ強く指摘されているところであります。  以上が、本法律案提案理由であります。  次に法律案内容を簡単に御説明申し上げます。  第一に、地方自治法附則第八条に基づく政令事務範囲を、道路運送法道路運送車両法等施行に関する事務に限定いたしました。  第二に、現在の公共職業安定所都道府県機関とすることといたしました。  第三に、この法律施行に際して、新たに都道府県職員として受ける俸給が、従来の国家公務員としての給与を下回る場合には、都道府県は、調整のための手当を支給すべきものといたしました。  第四に、社会保険審査官及び失業保険審査官につきましては、審査事務が各都道府県で異なることは望ましくありませんので、従来どおり国家公務員とすることにいたしました。  なお、本法律案は、昭和四十三年四月一日より施行することにいたしております。  以上、この法律案提案趣旨及び内容の概略を申し述べました。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決いたしますことをお願いする次第であります。
  4. 亀山孝一

    亀山委員長 本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 亀山孝一

    亀山委員長 住居表示に関する法律の一部を改正する法律案起草の件につきまして議事を進めます。  本件につきましては、かねて各党間で、また理事会等において協議が続けられ、検討されたのでありますが、その結果に基づき、岡崎英城君から、お手元に配付いたしてありますとおり、住居表示に関する法律の一部を改正する法律案を本委員会提出法律案として決定すべしとの提案が出されております。この際、その趣旨について説明を求めます。岡崎英城君。
  6. 岡崎英城

    岡崎委員 お手元にお配りしてあります案文は、先般来各党間及び理事会等においてそれぞれ検討を続けておりましたところ、このほど意見一致を見るに至ったものであります。  本案は、各党の合意による成案でありますので、国会法第五十条の二の規定により、本委員会提出法律案とし、その成立を希望いたす次第であります。  その立案趣旨及び内容概要につきまして、便宜私から御説明いたします。  まず、法律案の全文でありますが、これはお手元に配付してあります印刷物によることとし、朗読を省略させていただきます。  次に、法律案立案した理由を申し上げます。御承知のように、住居表示に関する法律は、昭和三十七年五月六日、第四十国会で成立し、同年五月十日公布、即日施行されて今日に至っております。  この法律は、町名地番の混乱に基づく各種の障害を解消するとともに、市街地における住居表示の合理的な制度を定めることを目的とするものでありまして、現在、市町村においては、市街地である区域について住居表示実施が進められており、当初完了の目標とされておりました本年三月三十一日までにその実施計画のほぼ四〇%が完了を見ている次第であります。ところが、これまでの実施状況を見ますと、往々にして町の区域の全面的な変更のなされるきらいがあるのみならず、町の名称につきましても、従来の町の名称と縁もゆかりもない画一的な名称をつけられることが間々あり、このため各地区で住民感情を傷つけ、また、由緒ある町名の消滅を招くため、関係住民はもとより、世の識者からも批判を受ける事例が少なくないのであります。  そこで、このような事態を改善するため、住居表示実施のための町または字の区域変更にあたっては、できるだけ従来の区域及び名称を尊重するものとするとともに、住民意思を尊重しつつ慎重に行なうよう手続きを整備しようとするものであります。  次に、本案内容について御説明いたします。  以上のような趣旨に基づきまして、第一に、住居表示実施に伴う町または字の区域合理化につきましては、街区方式により住居表示実施することが不合理なものに限って行なうものであることを明らかにするとともに、新たに町または字の名称を定めるときは、ただ単に読みやすく簡明なものにするというだけでなく、できるだけ従来の名称に準拠すべきこととしております。  第二に、市区町村長が、住居表示実施のため、町もしくは字の区域またはその名称変更について議会議決を経ようとするときは、あらかじめその案を公示することとし、これに対し、異議のある者は、公示の日から三十日以内にその処分にかかる町または字の区域内に住所を有する者の五十人以上の連署をもってその案に対する変更請求をすることができるものとしております。そして、この変更請求があった場合において、市区町村長は町または字の区域または名称変更に関する議案を議会提出するときはその請求書を添えなければならないものとし、その場合には、市区町村議会は、公聴会を開いて関係住民から意見を聞かなければならないものとしております。  第三は、改正法施行前に行なわれた町もしくは字の区域または、その名称変更にあたりましても、改正法施行の日から六カ月以内に限り、都道府県知事改正後の法律趣旨に適合していないものがあると認めるときは、市区町村長に対し、当該処分是正のため必要な措置を講ずべきことを求めることができることとしております。  また、この請求に基づく町または字の区域変更等処分に関する議会議決にあたりましては、当該処分にかかる区域住民から意見を聞くため公聴会を開くこととしております。  このほか、住民表示実施状況にかんがみ、その円滑な推進をはかるため、所要の規定を整備することとしております。  以上がこの法律案立案趣旨及びその内容概要であります。  何とぞ全会一致御賛同あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  7. 亀山孝一

    亀山委員長 本件につきましては別に御発言もないようでありますので、おはかりいたします。  住居表示に関する法律の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付の案を委員会成案と決定し、これを本委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  8. 亀山孝一

    亀山委員長 起立総員。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  9. 亀山孝一

    亀山委員長 次に、内閣提出にかかる道路交通法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  この際、おはかりいたします。最高裁判所長官の指定した代理者最高裁判所事務総局刑事局長佐藤千速君、同じく家庭局長細江秀雄君から、本案について、本日出席説明の要求があります。これを承認するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 亀山孝一

    亀山委員長 御異議なしと認めます。よって、承認することに決しました。  なお、最高裁判所から出席の両局長からの説明は、委員質疑に対する答弁という形で聴取いたします。  これより質疑を行ないます。質疑の申し出がありますので、これを許します。古屋亨君。
  11. 古屋亨

    古屋委員 私は、提案道交法におきまする反則通告制度につきまして二、三お伺いしたいのでありますが、第一は、通告制度の非適用対象少年の問題についてお伺いいたしたいと思います。  交通反則制度適用対象運転免許保有者に限っておりますのは、私はそれはそれなりに意味があると思うのでありますが、免許を持っております者全部について適用しないで、免許は持っていても、少年については適用しないこととしておるのでございますが、これはどういう理由によるものでございますか。まず、その点をお伺いいたしますが、それに関連いたしまして、警察庁のほうから、少年違反件数、全体との数字関係について、まず数字の点を御説明願いたいと思います。
  12. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 少年にかかる車両等道路交通法違反件数について、私から御説明申し上げたいと思いますが、昭和四十一年の件数を申し上げますと、少年を含めた全件数は四百六十一万九千六百四十四件でございます。そのうち少年道交法違反として送致した件数は七十六万六千二百八十二件でございます。
  13. 古屋亨

    古屋委員 もう一つ数字をお伺いいたしますが、いまの四十一年度に少年送致件数というのは四百六十一万のうち七十六万ということでございますが、この七十六万のうちには、今回の反則行為、いわゆる定型化されたこの数字はどのくらい入っておりましょうか。成人の場合には七割と言われておるのでありますが、概略的にどの程度あるとお考えになりますか。警察庁からその点を伺っておきたいと思います。
  14. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 少年の場合には無免許違反が非常に多うございますので、七〇%よりは若干下回ると思います。
  15. 古屋亨

    古屋委員 わかりました。それでは、先ほど申し上げましたように、免許を有する者全部について適用しないで、免許を持っていても少年については反則通告制度適用しないということでございます。その理由について御説明願いたいと思います。
  16. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 御承知のように、少年違反事件につきましても、今回の交通反則通告制度適用することについて、私ども検討したわけであります。いろいろ検討したわけでございます。けれども少年法改正の問題を別途法務省を中心に検討されておりますし、それから現在の少年法のもとで、この制度を直ちに少年適用するということになりますと、いろいろ問題もございましたので、今回は少年につきましてはこの制度適用しないということにいたしまして、今後関係各省十分協議を遂げた上で、少年についても将来適用してまいりたいという考え方で、今回は制度から除外した次第であります。
  17. 古屋亨

    古屋委員 関係機関協議をして次の機会から実施するということでございますが、私ども聞いておりますと、昨年五月警察庁から試案の発表があり、昨年九月警察庁において要綱案というものができておりますが、その発表されたものを見ましても、適用少年範囲ということにつきましては、やはり少年全部、あるいは少年免許所有者には適用するということになっておりまして、その間、関係機関と、発表されて一年近くでありますので、十分協議する時間はあったと思いますが、少年のことについてどういうふうな検討をされましたか、また今後検討しなければならないというのはどういう点でありますか、警察庁最高裁判所のほうへお伺いしたいと思います。
  18. 新井裕

    新井政府委員 ただいま交通局長からお答え申し上げたような趣旨でございますが、お尋ねのように、最初は少年にも適用したほうがよくはないかということで、試案をつくって各方面の御意見を伺ったのであります。その際、少年適用したほうがいいという考え方と、すべきでないという考え方と、両方ございましたが、いろいろわれわれのほうも検討いたしました結果、少年法の問題が法務省あるいは最高裁で問題になりまして、それを改正しようという方向が打ち出されておりまして、それがまだ決着がついていないということが一つの事実であり、もう一つは、それが決着をいたしませんと、ただいま申し上げましたように、交通違反として取り締まりをした者の半分くらいが反則行為になり、半分近くがそれ以外の行為になる。そういたしますと、それ以外の行為のほうが、いまの少年の取り扱いの実態からいうと、むしろ不処分、不開始というものになって、反則行為のほうがきちっと処断されるということでは、たいへん不均衡を来たすのじゃないかというようなことを考えまして、この際はそういう少年法改正議題にのぼっておる際でもあるので、その行くえを見てからやるほうがしかるべしであるということで結論をつけた次第でございます。
  19. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 反則金通告制度少年からはずした理由につきましては、ただいま警察庁長官からお話があったわけでございます。私どももいろいろこの問題について検討してみたわけでございますが、大体この反則金制度立法趣旨と申しますか、根本精神と申しますか、これはやはり大量事件の手続を迅速にするという点、それから第二番目には刑罰効果維持する。いわゆる大量の交通違反者に対して罰金を科するということになれば、その刑罰効果はそれだけ減ずるわけでありますから、一億総前科を招くことを防ぐという意味合いもあるというふうに承っております。しかし、少年に対してはたしてそれを適用していいかどうかという問題でございますが、実は、一体少年道路交通違反少年法適用から除外したらいいのだという議論も数年前あったやに聞いております。しかし、少年道路交通違反事件をいろいろ実態調査いたしてみますと、少年交通違反を犯したという原因なんかも、いろいろ複雑な原因がございます。したがって少年に対するそういうふうな原因を取り除かなければ、やはり将来の交通秩序維持、いわゆる交通安全確保という点、並びに少年再犯防止という点にはあまり効果がないんじゃないか。したがって、少年に対しては教育的な処遇を講じたほうがむしろ交通安全維持のためにいいのでないのかというふうな考えを私ども持っておるわけであります。  まず、私どもが基本的に少年を含めることについて疑問に思っています点は、少年の、先ほど申しました違反原因は種々さまざまでございますが、そういうふうな違反原因を問わず一律に定額の反則金を納付させるということは、ほんとうの意味違反原因の解消にはならない。それのみならず、少年交通違反再犯防止ということと道路交通秩序維持という目的にも沿わないのでないかというふうにまず考えておるわけでございます。さらに問題点といたしましては、反則金を納めるかあるいは家庭裁判所処分を受けるかを少年自由意思に選択させるということは、法律的にもまた刑事政策的にも疑問があるのじゃないかというふうに考えておるわけであります。  まず、法律上の疑問点といたしましては、この反則金の性格というものについては、私ども実はまだはっきりとつまびらかにしておらないわけでございます。しかし、この反則金を納めるかどうかということの法律的効果を本人の意思に選択させるということになりますと、二十歳未満の少年は、現在民法のたてまえから申しますと親権に服しておるわけです。したがって、完全な法律行為能力を有しておらないわけでございます。こういうふうな行為能力を欠くところの少年に対して、反則金を納めるかあるいは家庭裁判所処分を受けるかということを選択さすということは、はたして法律的にいいのであるかどうかという、いわゆる法律上の疑問点があるわけでございます。  また、刑事政策上から見ましても一つの弊害が出てまいるわけでございます。それは、ただいま警察庁長官からお話がございましたように、本制度適用を受けることによって、たとえば非行前歴もあり、家庭裁判所におけるところの教育処遇が必要であるという累犯少年、そういうものが反則金を納めて家庭裁判所における教育処遇を回避し、そうしてむしろ初犯者というふうな軽いものが反則金を納めないで家庭裁判所に送られてくるということを来たしますことになれば、これはやはり道路交通の安全を確保するという意味においてはマイナスではないかというふうな考えを持っております。  また、そのほか先ほど来お話しございましたように、少年法との関連におきましても幾多の疑問が出てまいるわけであります。特にこの反則金制度というものは、軽微な違反行為対象としておるということでございます。軽微な違反行為は、道路交道法上は主として罰金刑が科せられておるわけでございます。ところが少年に対しては、罰金刑を科せられた事件については検察官送致が許されておらないわけでございます。検察官送致が許されない、いわゆる罰金が取れないという少年に対して反則金を取るというようなことはいかがなものであろうかというふうな疑問点、そのほか、少年法と関連しましてかなり疑問点があるわけでございます。これらの疑問点は、将来少年法改正の際に検討していくべき問題点でないかというふうに現在のところ私ども考えております。
  20. 古屋亨

    古屋委員 ただいまの御説明につきまして、私の意見等はいずれ申し上げますが、この際家庭裁判所処分状況につきまして、数学的にひとつお知らせを願いたいと思います。
  21. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 いまお尋ねの点を申し上げる前に、大体家庭裁判所道路交通違反事件に対して、どういうふうな基本的な態度で処遇しておるかということを申し上げたいと思います。申すまでもなく、家庭裁判所における交通違反少年処遇は、事故防止、いわゆる交通安全確保ということ、並びに少年再犯防止という観点から、最も効果的な処遇を行なっておるわけでございます。  少年は、御承知のとおり非常に教育可能性に富んだ人々でございます。したがって、そういうふうな教育可能性に富んだ少年に対しては、教育処遇を施すことが再犯防止に最も適当であると考え処分しておるわけであります。  その処分の概況につきましては、まず四十年度の分について申しますと、実は私どものほうで既済になりました件数は八十一万六千件余りでございます。そのうち不開始処分にいたしましたものが四十七万件余りであります。パーセンテージにいたしますと五七・七%。それから不処分にいたしました件数は十五万七千件余り、これがパーセンテージにいたしますと一九・三%というふうになっております。それから保護処分にいたしました件数が六千四百件余りパーセンテージにいたしまして〇・七%、検察官送致にいたしました事件が十二万四千件余りでございます。パーセンテージにいたしまして一五・二%、こういうふうな結果になっております。
  22. 古屋亨

    古屋委員 いまの数字、お知らせ願いましたが、これは少年交通関係だけでございますか、全部の数字でございますか。
  23. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げました数字は、少年道路交通違反事件に限っての数字でございます。したがって、道路交通に伴うところの事故、いわゆる業務過失致死傷事件は含んでおらないわけでございます。
  24. 古屋亨

    古屋委員 四十年度の道路交通関係家庭裁判所処分状況八十一万件ということをお伺いしたのでありますが、年齢別には大体どういう傾向になっておるでしょうか。
  25. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 実は、私いま手元に年齢別の数を持っておらないわけでございます。これは調査をすればわかるわけでございますが、まだその点の調査をしておりませんので、恐縮でございますが申し上げかねるわけでございます。ただ少年交通違反の一番多いのは、いわゆる原動機つき自転車と申しますか、いわゆるモーターバイク、これの違反が一番多いわけでございます。その免許取得は十六歳でございます。したがって、十六歳から十九歳までの少年違反が一番多いわけでございます。
  26. 古屋亨

    古屋委員 いまのお話で、少年教育処遇ということで累犯というお話がございましたが、大体前の家裁の処分の結果累犯というような者はどの程度あるか、それに対して再犯以上の者、それからどういう措置をされておりますか、それについてお伺いしたいと思います。
  27. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 家庭裁判所処分は、先ほど申しましたように不開始処分件数が非常に多いということでございます。したがって、そういうふうな不開始処分が多いということは、一体少年交通違反に対して家庭裁判所は野放しの処分をしているのではないかという御批判を世間でよく受けるわけでございます。ところが私どものほうでは、そういうふうな少年に対してどういう処遇をしておるかと申しますと、いわゆる保護的措置という方法で、事実上の教育的な処遇をやっておるわけでございます。なぜこういうふうな事実上の教育処遇をいたしますかと申しますと、ちょうど少年法ができました当時、昭和二十四年七月一日から少年法実施されたわけでございますが、その当時の少年道路交通違反事件と申しますと、総数で約五千七百件から五千八百件程度のものでございました。したがって少年法制定当時は、その少年道路交通違反にふさわしいところの保護処分というものを考えておらなかった。ところが今日の八十万件をこすというふうな交通違反少年が出てくるということになりますと、現在の少年法の定められたところの保護処分の種類ではまかない切れないという実情が出てまいっておるわけでございます。  なお、もう一つお断わり申し上げておきたいのは、先ほど来申しましたように、この少年道路交通違反につきましては、法定刑が罰金刑以下の事件につきましては検察官に送致できない、いわゆる刑罰を科することができないというたてまえになっております。そういう事件がどれくらいあるかと申しますと、これは警察官から直送される事件でございますが、昭和四十年の統計を見ますと、警察から直送されますところの事件が二八・五%ある。それから検察官から送ってきますところの事件のうちで、十六歳未満の少年罰金刑のみしか規定されていない道路交通違反事件が一〇%ほどあるわけでございます。また検察官から送られてくる事件のうちで、検察官自身が刑事処分は相当でないという意見を付しておられる事件が五二%あるというわけでございます。そういたしますと、法律上も処罰はできない、また検察官自身も罰金刑を科する必要はないといわれる事件が、合計いたしますと六五・七%という数に上っております。そういたしますと、家庭裁判所が行なっておりますところの不開始あるいは不処分、これらが七七%という数字は、それほど高い数字ではないというふうに考えられるわけであります。そしてそういうふうな七七%の不開始にした少年あるいは不処分にした少年、これらに対しては先ほど来申しましたいわゆる少年に対する教育処遇を講じておる。  それではどういう教育処遇を講じておるかと申しますと、交通安全に関するところの講習を加える、あるいは試験観察に付しまして、試験観察の段階において講習をする、あるいは学生生徒の道路交通違反事件でございますと、学校長あるいは学校に連絡してその補導を依頼する、あるいは保護者、雇い主に問題点がある場合には、保護者、雇い主を呼び出しまして、それに対して指示を与え、または警告をするという方法、あるいは少年に対し厳重な訓戒を加え、あるいは誓約書を徴収するというような方法を講じております。  また、家庭裁判所で、調査の段階におきまして資質調査というものをいたしております。その資質調査の段階におきまして、少年が運転適格者でないというふうな結論、結果が出た場合には、その診断書を添えまして公安委員会にいわゆる免許証の取り消し、停止の申請をするというふうな方法を講じてまいってきておるわけでございます。
  28. 古屋亨

    古屋委員 いまの教育処遇の問題につきまして、たとえば講習というようなことを家裁でおやりになっておるというふうに承りましたが、そういう講習というのはどんな形で、どういうふうに行なわれているものでしょうか。私ども警察関係でいろいろ講習をされることは聞いておりますが、家裁として、講習とか、そういう試験観察の一環でありますか、どういうような内容で、どういうふうに地域的には行なわれているか、お伺いしたいと思います。
  29. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 まず講習を実施しておる庁がどのくらいあるかと申しますと、全国で自分の庁、いわゆる自庁で講習をしておりますのが四十八庁、関係機関に講習を委託しておりますのが十八庁あるわけであります。対象者はどういう者を選んでおるかと申しますと、交通事故を犯した少年対象にしておる庁あるいは交通違反を犯した少年対象にしておる庁、あるいは両方を対象にしておる庁、こういうふうないろいろ各庁によって分かれております。  そして、講習の内容は、主として交通関係の法規を教える、あるいは運転の知識あるいは運転の技術というものを教える、あるいは運転態度を教えるというふうな内容でございます。  また方法といたしましては、掛け図を用いて教える、あるいは図表を利用するとかあるいは交通指導板を利用してやる、あるいはテキストを配付いたしまして、そのテキストによってする、あるいはその結果をテストいたしまして、テストの成績を見るというふうな方法をやりますし、たまにスライドあるいは映画というものによって、その交通事故のおそろしさというものを少年に教え込んでおるというわけでございます。  自庁でやっております講習は、これは家庭裁判所の裁判官あるいは調査官がおもに講師としてやっております。他庁でお願いしておりますのは、主として交通安全協会それから自動車教習所、警察署、そういうところにお願いしてやっております。  もう少し講習の内容を申し上げますと、東京家裁でやっておりますのがまあ一番おわかり願えるのではないかと思いますけれども、東京家裁でいまやっておりますのは大体五種類の講習をやっておるようでございます。これは試験観察の段階でやっておるわけでございます。この自庁講習というものを第一種講習と第二種講習と、三つに分けてやっておるようでございます。第一種講習のほうは、毎週水曜日の午前、午後、二回実施しております。毎回五十名あて講習をする。これは交通事故原因とかその現状とか、あるいは交通法規とかあるいは順法精神を喚起させるとか、あるいは免許取得に関する指導、助言というふうな方法を行なっております。第二種講習といたしましては、これは再犯者以上の者あるいは業務過失致死傷事件を犯したようないわゆる成績のあまりよくないという少年でございます。これに対しては毎週木曜日に一回五十名あてやっております。  それから交通安全協会に委託して講習する場合がございます。これはいわゆる危険度の高い違反者を対象としております。これは毎週一回火曜日に、一回二百五十名を対象にしまして、いわゆる社会生活と交通道徳に関する講習あるいは交通法規に関する知識を授ける、あるいは法令の試験をするとかあるいはスライドによって交通事故の現場を知らしめるというような方法をやっております。  それからまた自動車の教習所に委託して講習をやっております。東京は現在三つの教習所に委託してやっておるわけでございます。これは再犯者とかあるいは業務上過失致死傷で、運転技術の未熟な者を対象としてやっておるわけでございます。これは毎月一回やっておりまして、一回当たり八十名ぐらい、三つの教習所で合計二百四十名を対象にしております。これもやはり同じような交通の基礎知識あるいは法規あるいは自動車の構造とか性能とか、あるいはそういうふうな性能、構造に対する試験をするとかいうようなことで教育処遇を加えておるわけでございます。  そのほかに、交通訓練所に、宿泊訓練を実施しております。これは業務上過失を犯した者とかあるいは累犯率の高い違反者を対象にいたしまして、二泊三日間埼玉県の青少年補導協会に少年を預けまして、そこでやはり先ほど申しましたようないろいろの講習を施しておるわけでございます。  それらの結果を、実はどういうふうな試験観察した結果効果があったかということを追跡調査をしたのが、やはり東京家裁から報告されております。その報告によりますと、ちょうど三十九年の四月から六カ月間の再犯調査といたしました結果、いわゆる検察官送致罰金を取った者の再犯率は七四%、それから家庭裁判所でやっております第二種講習の再犯者は三一%、それから安全協会の委託講習は三九%、家庭裁判所の第一種講習では四三%、保護観察に付した少年の再犯率は四九%、交通訓練所に送ったところの少年は一五%という非常に低い再犯率が出ておるわけでございます。
  30. 古屋亨

    古屋委員 いろいろの個別的な教育実施されているように伺いましたが、少年法の二十五条によりますと、こういうような試験観察あるいは教育、講習というようなものは保護処分を決定するために必要があると認める、つまり決定する資料であるというのが本来の使命であると考えておるわけでございますが、家裁のほうが非常に多くの事件を持っておられまして、こういうような講習ということは、個別的な教育としてはもちろん意義があることでございますけれども、やはりそのエキスパートである警察とかそういうところで講習をやるほうが——まあ委託されてやる場合もありますが、自分がみずから実施する場合も、保護処分を決定するための必要資料をとらえる。ですから、非常に多忙な家裁の現状として、現在そういうことをやっておられますけれども、こういうものをますます強化する必要があると思うが、むしろそういう点は警察その他に講習をやらせる、そしてその結果を保護処分を決定されるという資料とされることが適当ではないかと思うのですけれども意見をその点お伺いしたいと思います。
  31. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 ただいま古屋委員のお説、私も全く同感でございます。なるべくならばそういうふうな社会資源を活用してやるべきではないか。むしろ将来は少年法改正して、外国の少年法なんかにございますようないわゆる受講命令とかあるいは交通補導所、そういうものをつくってそこでやっていただくというのが一番いいのではないかというふうに考えております。最初実は、道路交通違反少年は保護観察になじまないのだというふうな考え方もあったようでございます。したがって、保護観察に付される少年の数が非常に少なかったわけでございますが、昭和四十年の四月の、日は忘れましたが、十五日だったと思いますが、法務省の保護局長から道路交通違反少年の保護観察についてという通達が出されまして、保護観察所のほうも、道路交通違反少年の保護観察に対して非常な力をそそいでいただいておるわけでございます。その内容なんかを拝見いたしますと、やはり保護観察所のほうで講習もやっておられるようでございます。だから、そういうふうな外部機関で講習ができるということになれば、それにこしたことはないというふうに私ども考えております。
  32. 古屋亨

    古屋委員 私、いろいろの資料その他についてお伺いしたのでありますが、少年法は、刑事処分保護処分などの司法処分を行なうにあたっての法律でございます。行政処分には理論的には直接の関係はない。この制度におきまして反則金の納付を通告して、反則者がこれに応じて反則金を納付するというようなことは、あくまでも行政措置であって、司法処分ではない。つまり通告は行政目的のために行なう行政上の措置であると私は考えるからでありますが、そもそも少年に対しまして一定の有資格者として運転免許を与えている以上は、その免許に当然随伴して考えられる行政上の措置を、少年なるがゆえに及ぼさないということは不合理ではないか。ことばをかえていいますと、一つ考え方は、運転免許の付与につきましては、年齢制限以外に特段のおとなと子供と区別がないわけでありますから、免許を付与された少年は、その範囲においては成人と同様の社会的責任がある。同時に、ただいまお伺いしましたように、免許保有少年違反事件というものはますます非常にふえておる、非常に大量である。一方道路交通事情の観点からいたしまして、効果的な行政措置が必要であろうと私は考えておるのでありまして、そういう意味におきまして、道交事件というものは一般の保護事件とは異質であるのではないか。違反少年といいますか、この少年の取り扱いにつきましては、したがって一般の保護事件と変わってもいいのじゃないかという私は意見でありまして、結局通告制度行政上の措置でございまして、いま申し上げましたように、刑事手続とは別個の行政的な行政処分であると考えております。行政処分という表現がいいか悪いかわからないのでありますが、結局少年に対しまして運転免許証を与えている以上、その免許に随伴すると考えられますような行政上の措置は、少年であるがゆえにこれを及ぼさないというのは不合理ではないかという考え方があるのであります。私もそういうような意見をよく聞くのでありますが、もう一度その点に対して御意見をお伺いしたいと思います。
  33. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 ただいまの御意見は私どももよく耳にするわけでございます。いわゆる少年に対して免許証を与えた以上、おとなと同じように取り扱うのが本来ではないかという御意見でございまして、私どももまことにごもっともな御意見であるというふうに考えるわけでございます。しかし少年に対して免許証を与えたのは、少年をおとなと見て免許証を与えたわけではないわけでございます。したがって、その免許証を与えた少年違反行為あるいは事故を起こした場合には、それに対して免許を取り消すというのが本来の筋じゃないかと思います。それをおとなと同じように刑罰を科するということは、むしろ私としては筋が違うのでないかというふうに考えておるわけでございます。たとえば外国なんかでは、少年運転免許証というものがあるやに聞いております。そういうふうな場合と同じように、日本も少年に対する運転免許を与えるのはおとなと見て与えたわけじゃなくて、まず身体あるいは知能の成熟度から見て、これならば運転はさしてもいいだろうというところから運転免許をお与えになるのではないかと思うわけでございます。したがって運転免許を与えた条件に反するという場合には、それを取り消すということが最も適当な方法じゃないか。たとえば外国の立法例なんかを見ますと、現在日本では運転免許の取り消し変更は公安委員会の権限になっておりますが、しかしフランスにいたしましても西ドイツにいたしましてもあるいはイギリスにいたしましても、運転免許の取り消し変更というものをやはり裁判の審判段階でやっておるところがあるわけでございます。したがってその制裁としては、運転免許の取り消し変更が一番有効なものじゃないかというふうに考えております。
  34. 古屋亨

    古屋委員 ただいまの御意見、外国の立法例等も聞いたのでありますが、現実にそういうような少年交通違反というものが非常にふえておる。しかも家裁のほうも非常に忙しいという場合に、何とかこれを行政的措置をとるべきであると私は考えているのですが、お伺いしたいのは、この制度と類似しておりまする国税犯則を取り締まるための取り締まり法上の通告処分、これが少年にも適用があるわけでありますが、これとの不均衡とか、そういう点についていかにお考えになりますか、その点をお伺いしたいと思います。
  35. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございまして、国税犯則の通告制度と今度の交通反則金制度というものは、やや類似した制度でございます。国税の犯則の問題に少年適用があるというふうな御意見でありましたが、実は私どものほうにそういう事件がまだまいっておらないわけでございます。
  36. 古屋亨

    古屋委員 この問題につきましては、結局件数的に多いからこそ何らかの簡易手続を設けようとしておるのが反則金通告制だと思いますが、件数が非常に多いということは、むしろこの制度少年にも適用すべき現実ではないかと私は考えまして、反則金制度から少年を除外するという、いろいろの教育理由はあるにいたしましても、現実の状況から見ていろいろ検討をこれから要するといわれておりますが、検討するのに、一年では検討ができなかったわけでありますが、私は講習とかそういう問題は別途考えるべき、これに関連した問題でありまして、反則金通告制度から少年を除外するという現状は、いまの交通違反状況交通状況等からいたしましては、何らか再検討すべきではないかという考えを持っておりますので、最後に、この点につきまして最高裁並びに警察庁から御意見を承りたいと思います。
  37. 細江秀雄

    細江最高裁判所長官代理者 その点につきましては、ごもっともだと思うわけでございますが、私どもが昨年の十月、少年法改正に関する意見書というものを発表しております。その中で、当面の課題というところで、いわゆる年少非行者の対策、それからもう一つ、道路交通違反少年の対策というものを打ち出しておるわけであります。それで、この中にいろいろな保護処分の多様化の問題を提起してまいっております。私どもも、少年の大量な交通違反事件を迅速に、しかも適切に処理するという必要性は十分感じておるわけでございまして、この問題は、やはり先ほど警察庁長官からお話がございましたとおり、少年法改正と関連して、十分検討していただくべき問題であろうかと考えております。
  38. 新井裕

    新井政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、われわれも、一度は反則行為対象に乗せるべきものだというふうに考えたのでありますけれども、いろいろ先ほど申し上げたような理由がありまして、この際は断念をいたしまして、将来の問題としては、十分考慮すべき問題だと考えております。
  39. 古屋亨

    古屋委員 これは私の意見でございますが、将来何年間で解決するか、いろいろ御検討に時間がかかると思いますが、現在の交通の実態からいたしまして、早急に措置をとらなければならない問題であると、意見を申しまして、この問題に対する質問を終わりますが、一、二お許しを得まして、御質問いたしたいと思います。  まず、警察庁に御質問いたしますが、たびたび出ておる取り締まり警察官の問題についての教養の問題、訓練の問題等につきまして、告知をするのは第一線警察官がやると思うのでありまして、警察官の第一線の判断による。したがいまして、その判断をするにあたりましては、教養、あるいは非常な親切を持って、件数主義におちいらない、あるいは権力主義にならない、行き過ぎにならないように努力すべきことは当然であると思いますが、現在、現場指導、警告で済ますものがありますね、これと反則通告の対象行為との関係、今度は全部通告制にするか、軽微なものは、どこを境として、いままでどおり説諭といいますか、そういうことでやらせるか、そのボーダーラインについての考え方をお伺いしたいと思います。
  40. 新井裕

    新井政府委員 この間もちょっとそういうお尋ねがありまして、触れたつもりでございますが、違反は、大体大ざっぱに申しますと、警察官が取り締まっておるのは一千万件でございます。そのうち五百万件は、お尋ねのような現場の説諭で済ましておりますので、五百万件足らずを立件送致しておるという現状でございます。お尋ねのように、いままで現場説諭で済ましておるものも告知してしまうというつもりは毛頭ございません。いままでと同様、むしろそれよりきびしく立件送致の範囲を限るべきものだというふうにすら考えております。  それでは、現場で警察官の恣意的な判断でやっておるかと申しますと、各府県に一応統一的な基準を示しまして、各府県の本部長が自分の管内の違反状況を勘案いたしまして、相当具体的な基準をきめてやっております。それも今後さらに十分検討いたしまして、実状に即するようにいたしまして、御心配いただくような、今度できたらば、何でもかんでも反則行為に乗せて告知してしまうというようなことは毛頭ないようにいたしたいと思いますし、また告知行為そのものも、法律的な行為としては新しいのでありますけれども、現在、いわゆる切符制度と称せられるものを実施しておりまして、現在取り締まりをしておるものも非常に簡単な送致手続に乗せてやっておる。それが今度は、告知の書類というものに変わるという程度でありまして、いままでと、手続的にも実質的にもほとんど変わりなくやれると思いますし、やるつもりでございます。
  41. 古屋亨

    古屋委員 その点につきまして、警察庁の御意見はよくわかりましたが、これは若干事務的になるかもしれませんが、反則行為をやりましたときには、免許証には何もそのことを記載しないのでございますか。それをお伺いしたい。というのは、非常に理屈的になるかもしらぬが、反則行為ばかり、軽いものばかり五回繰り返した、あるところでやり、あるところでやる、こういう場合、これは全然知るべくもないということで、金さえ納めればそれでいいわけでございますか。そういう反則行為というようなものを数回繰り返すというようなことに対しては何も考えられていないわけでございますか。
  42. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 免許証に記載いたしますのは、行政処分歴を記載いたすことになっております。反則行為につきましては、免許証に記載いたすことはいたしておりません。したがって、反則行為が積み重なったりして、行政処分が下されれば、行政処分のときに免許証に書かれるということになると思います。
  43. 古屋亨

    古屋委員 それに関連して、たとえば違反行為地と本人の居住地の関係が、他県である場合が相当あるわけですね。こういう場合は、居住地の警察官等は何も知らない場合が実際問題としてあるわけですね。そういうような場合、つまり、住所地の警察官は何もそのことは知るべくもない。それから、所定の金融機関等に納めるというのですが、たとえば、金を納めるために、居住地から非常に遠い金融機関、あるいは相手の、行為地の金融機関まで行かねばならぬ。こうして、たとえば通告の場合、出頭する場合には、県が違う場合には、普通どこへ出頭するか。何かそういう便宜的な方策というものはお考えになっているのでしょうか。
  44. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 告知並びに通告は、原則といたしまして、もちろん行為地の警察官が告知し、それから通告するのは、行為地の通告した警察官の所属警察本部長でございます。反則金を納付する段階になりますと、仮納付制度と本納付と二つございますが、仮納付の場合には、全国いずれの金融機関でもこれを取り扱うということになります。それから、通告のために出頭してきた場合、その通告に従って反則金を納めるという場合には、おそらくもよりのところで納付するということになろうかと思いますが、いかなる場所で納めてもけっこうだと思います。
  45. 古屋亨

    古屋委員 いろいろお伺いしましたが、最後に、時間がございませんので、財政当局に、自治省にお伺いしたいと思います。  交通安全対策の特別交付金の問題でございますが、これは地方自治体が単独事業として行なう交通安全施設の設置費用に充てることになっておるのでありますが、ややもすると、国の補助事業費の不足というために、これに充てる、こういうようなことがあると、この法律趣旨に反すると思うのでありますが、そこで私がお伺いしたいのは、大体どのくらいの金額を予想されておりますか。そして、それは都道府県及び市町村へ交付するといっておりますが、都道府県市町村の割合はどの程度であるかという点が第二点。  それから第三点は、政令で定める一定の基準により交付するのでありますが、たとえばどのようなものを予想しておるか。たとえば、いま、消防自動車といいますか、救急業務というようなことがございますが、こういう面には予想されているかどうか。  それから第四点は、交通安全施設の単独事業として、設置計画を地方で策定する上には、適当な機会においてこれを内示する必要があると思いますが、それは大体いつごろ府県、市町村に内示されることになっておるか、大体そういう点についてお伺いをいたしたいと思います。
  46. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 まず、反則金をもってこの交通安全対策特別交付金ということで交付するわけでございますが、この総額の推定でございますけれども、おおむね、昭和四十年度あるいは四十一年度あたりの実績からいたしまして、平年度百三十六億円程度に相なるのではないかと見込んでおります。それから第二点でございますが、道府県と市町村との割り振りは、大体道府県二、市町村一という割合を現在考えておるわけでございます。と申しますのは、対象事業の中で、御案内のとおり道路管理者が行ないますものと、それから公安委員会が行なうものとあるわけでございますが、この公安委員会の行ないますものが大体全体の七%程度であろう。その残りの九三%に相当するものをどういう基準で分けるかという問題も、今後政令できめるわけでございますけれども、最も相関度が高くて客観的に取れると思われます事故発生件数を道路種別で見ますと、おおむね三分の一程度は市町村長の管理する道路の上で発生をしておる。残りの三分の二が道府県知事の管理する道路の上で発生をしておる。こういうことを勘案いたしまして大体二対一、こういう割合を考えておるわけでございます。  それから対象でございますが、対象道路交通安全施設ということに相なっておるわけでございまして、現在最も緊急に整備を要するものから考えてまいりますと、たとえば横断歩道橋でございますとか、あるいは信号機でございますとか、あいるは道路標識、ガードレール、こういったような事故を未然に防ぐ施設、こういう施設が一番最重点でやるべきではないだろうか。御指摘になりました救急業務の点につきましては、施設という関係からいたしまして、救急車というものはこれに含めてまいりたい。なお詳細は関係各省とも相談をいたしたいと考えておる次第でございます。  それから第四点でございますが、結局補助事業を直轄事業に充てられないわけでございますので、どういうもうがこの対象として取り上げられるかという点につきましては、この法律の成立と相まちましてすみやかに政令を制定いたしまして、地方団体に示してやりたい。それによっておのずからまた各団体の計画を立てて、それの報告というものもとってみたらいいではないかというふうに考えておる次第でございます。
  47. 亀山孝一

    亀山委員長 門司君。
  48. 門司亮

    ○門司委員 最初に、私は、この法の内容に入る前に少し聞きたいのですが、大臣いつごろまでおいでですか。
  49. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 十二時半ごろまではおります。
  50. 門司亮

    ○門司委員 それでは大臣の御都合があるようですから、大臣に先に二、三の法案に関係する部分についてお聞きをしておきたいと思います。  この中で、改正によって非常に大きく変わってこようと考えられるのが、現在、運転手の免許の取り消しあるいは長期間の停止等に対しては、公安委員会でこれを処置することになっているのでありますが、これを警察本部長に移管する、こういうことに内容が書いてありますが、このことがいいか悪いかということであります。一体どうした理由でこれを本部長に移さなければならないか。いわゆるきわめて民主的な制度としてこしらえた公安委員会、しかも運転手の身分というものは運転免許というのが生命線である。これを取られたら家族の者でもだれでも代理することはできない。商店その他と全然違うのだから、本人自身でなければやれない仕事である。この種の業態はお医者さんと弁護士さんがございますが、これにしても代理でやればやれないわけではない。お医者さん等は、病院の院長になれば、何もお医者さんでなくてもいいんだから、経営はできるはずである。ところが、最も弱い立場にある運転手の職業をある意味においては奪うという、このことが公安委員会の手から警察本部長に移るということは、私は民主主義の今日の行政に対する逆行だと思う。これが単に警察庁説明のように、事件が非常に多いからこうして簡単にやるのだということになりますと、運転手の持っておる生活権というものが簡単に奪われるということ、ただ事件が多いからこうするのだという理屈だけで、これを本部長に譲るべきではないと私は考えておるんだが、この点に対する大臣の見解をひとつ聞いておきたい。
  51. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 確かに運転免許の取り消しあるいは停止ということは、その運転者のいわば生活にかかる問題でございまして、非常に重要なことだと思います。ただ今回改正をいたしましたのは、しばしば説明を申し上げたと思いますが、非常に大量にこうしたことが起こり、そのために非常勤である公安委員会ではなかなかさばき切れないということでございますので、警察本部長にこれを委任をいたしたわけでございますが、運転者の十分な疎明と申しますか、弁解の余地を十分与えまして、しかも、都道府県の警察の最高責任者である本部長みずからこれをやるというようなことにおきまして、一方において運転者の生活権の擁護というものも十分はかりながら、しかも多量に発生しておるこの種の問題についての処理を敏速にするということでやったわけでございまして、確かに一面において、門司さんが指摘されるような運転者の生活の問題でございますので、いろいろ問題もあろうかと思いますが、これの処理にあたりましては、ただいま私が申し上げましたようなことを十分考慮して善処するように警察本部長には徹底をいたしたいと考えております。
  52. 門司亮

    ○門司委員 今度刑法の一部改正が行なわれて、そうしてこれが運転者に関しまする犯罪——犯罪というか、違法行為がある程度刑事罰という形で法の体系が変わることに大体なろうかと思います。そう考えてまいりますと、この中で、運転者にとって運転免許を取り消されるというような事故が起こりました場合には、これは大体刑法に直ちにひっかかる事件が、これに該当する事件だと私は考えられる。そういたしますと、私は現在の運転者の免許証を取り上げるということについては、これは交通裁判所というのが新たにこしらえられて、そうしていま自動車の数は非常に多いのでありまするから、運転免許を持った対象者というのはたくさんあるのでありまするから、普通の事件とは違ってこれらのものを、多くの対象者があり、しかも生活の最も根拠である免許証を取り上げるということについては、国はやはり交通裁判所というようなものを設けて、そうして疎明の時間を十分に与える。さらに弁護士その他のやはり法に定められた保護をしてあげるということが私は当然だと考える。ところが、逆に交通裁判所というようなところでこれが裁判をされない。憲法の三十一条に、日本の国民はすべて法の手続によらなければ刑罰を受けないということが書いてあるのである。しかし、こういう法ができたから、これも法だから、悪法であっても法だから、こういう法律をこしらえたから、この法の手続でいいんだといえばそれはそれまでかもしれない。しかし、憲法の三十一条が規定いたしておりますることは、日本の国民の基本的権利と同時に——やはり基本的権利ということは、それは直接生活につながるものである。この運転者の一番大事な免許証が安易に取り消しあるいは長期の停止ができるようなこの法改正というものについて、私はどう考えても納得がいかない。これは新たに交通裁判所なりその他をこしらえて、そうしてそこで十分の審議をするというなら、これはわかる。さっき申し上げましたお医者さんにいたしましても弁護士さんにいたしましても、こういうごく簡単なことで免許証を取り上げているわけじゃないでしょう。少なくとも国民の生活を奪うということばは行き過ぎかもしれませんが、一時停止させる問題でございますので、これはぜひここで——いまお話しのように事件が非常に多過ぎる。なるほど事件件数を数えてみますると、これはとても警視庁なり一つの公安委員会が毎日やっておっても間に合わないということがあるかもしれない。だとするならば、私は新しい交通関係に対する裁判所なり何なりを設けて、そうしてやはり国民の生活権というものは十分に守られるという処置が当然とらるべきであるというように考えるのでありますが、交通事故をなくするということだけに頭がいってしまって、そしてただ取り締まりさえきびしくすれば、それで交通事故がなくなると考えたら非常に大きな間違いである。やはり運転者自身が自覚し、自身が反則をしないということにならなければ、いつまでたっても厳罰主義だけでは私は交通事故はなくならないと考える。したがってこの法の改正は、言いかえれば、血も涙もないというと少し言い過ぎになるかもしれませんが、もう少し法のよってきたるこの問題について考慮を払っていただきたいと思います。  そこで、最高裁からおいでになっております。これは刑事局長さんの所管ではないと思いますが、しかし幸い、幸いというと悪いんだが、刑法の改正によってもこういう問題が取り扱われるようになろうかと思いますので、お尋ねをいたしておきます。  いま申し上げましたように、この法の改正がその面を非常に安易に取り扱うようになっておることについての最高裁としての御意見を伺わしていただくことができれば非常に幸いに思います。私はいま申し上げましたように、新たに交通裁判所等を設置して、そうしてこの種の問題には当たるというようなことが必要ではないかと考えております。
  53. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問の点は、免許証の停止、取り消しの関係でございましょうか。それだけですか。
  54. 門司亮

    ○門司委員 それだけです。
  55. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 道路交通法の百四条を見ますると、取り消し及び停止の処分につきまして聴聞の機会が与えられる、そういう法の手当てができておると考えるのでございますが、裁判所との関係におきまして、この処分に対して行政訴訟によるところの処分の取り消しの請求ができるのではなかろうかと思うのでございます。その点につきまして事例等を調べておりませんので、そうなりますると行政のほうの所管でもございますし、資料等も手元に持っておりませんので、一応この程度お答えさせていただきたいと思います。
  56. 門司亮

    ○門司委員 やはりこの改正法を見ましても、たとえば反則金に不服があれば行政裁判を起こすこともできましょうし、私は行政訴訟もやれると思います。しかし運転者というものは非常に弱いのですから、資力も持っておりませんし、同時に、長い間訴訟にかかるというようなこともなかなか耐えられない処分であります。したがって私は最初から民主的にできておる公安委員会でこれが処置できないのなら、当然ひとつ裁判所でこれの取り消しをするということにしないと、他のさっき申し上げました自由業をやっておる諸君の免許の取り消しとの間に非常に大きな相違が出てきはしないかと思う。運転手というものをいかにも軽く考えておいでになるようですけれども、自分たちの運転免許証というものは生命と家族を養っていく唯一の財産であり、唯一の自分の持っている仕事上の一つの社会的の地位というと当てはまるかどうかわかりませんが、いわゆる社会的の一つの地位であることに間違いがないのであります。これを取り上げることを、こういうきわめて安易にされることについては、私は非常に遺憾であって、いまの最高裁の刑事局長お話も、これはもう少し私ははっきりしたことを聞きたかったのでありますが、それぐらいしか言えないということになりますと、運転手の身分というものはこれはどうなりますか。この点は何もこちらでやれない、数が多いからやれないというならば、ほかの方法を講じて、十分疎明の機会も与え、また弁護の機会も与えることが、私は当然なければならないと思う。さっき私は答弁を聞いておりますと、外国のほうにも、フランスにもどこにもあるというお話をしておりましたが、私も外国で事実上交通裁判を見せてもらったというと悪いのでございますが、立ち会って、どういうことをやっておるかということを知らないわけではございません。外国の例を見ましても、ちゃんと運転手がほんとうに自分の立場というものを明瞭に話しをして、そうして公正な判断を仰いでおる。私はこの機会はぜひ、やはり警察本部長に渡すというようなことではなくて、他の方法を講じてもらいたい。さしあたりどうにもならないというならば、どうにもならないかもしれない。しかしその点は私も時間がございませんので、これ以上お聞きをいたしません。  その次の問題として、私どもがこの法自身についての問題点として考えなければなりませんことは、この法の附則に書いてある、先ほどのお話反則金処分の問題であります。このことを一体法律に、附則でありましてもこれが一体書けるかどうかということに私は疑問があるのであります。反則金であるから罰金ではない。これも三十一条との関係は実はございます。これも刑罰であるとするならば、三十一条が当然出てくる。そうして、それには法の手続に従わなければ、こう書いてある。これもさっき申し上げましたように、法だから法の手続に従うのだといえば、あるいはそう言えるかもしれない。しかし憲法の三十一条が示しておりまする法の手続というのは、私はこういう簡略なものではないと考えております。当然やはり裁判その他による公正な手続だというように考えなければならぬと考えておる。ところが、その問題は、しかし反則金であろうと何であろうと、取られるほうから見れば罰金であることに間違いがないのであって、一たん国に納めるが、それに相当するものを都道府県に割り戻しをするということを法律に書いてよろしいかどうかということである。私がこのことを心配いたしますのは、法の体系だけではなくして、現地のといいまするか現場におる警察官に対しましては、ある程度のノルマになりはしないか。これは百四十億といわれ百六十億といわれておりますが、かりにこれが百六十億ということになりますと、地方の自治体はこの百六十億の金を当てにしないわけにはなかなかまいりませんよ。予算の一つの項目になろうと思いますよ。反則金からくる金が幾らあるということが予算書に載ってくるようになったらどうなります。地方の自治体が、この金は大体ことしはこれぐらいくるだろう、おれのところの都道府県でやった罰金はこれぐらい納めたから、これぐらいの割り戻しがあるだろうということで、地方自治体の予算書にこれが書かれてくるということになってまいりますと、これは私は非常に大きな問題になろうかと思います。  それよりも大事なことは、一線の警察官が、反則金制度によって、きめられた一万五千円とか二万円とか三万円とかということを現地で言い渡す、そういう場合に、払うほうから見ますると、そのときはすなおに払うかもしれないが、警察官とそれらの諸君との間、あるいは世間一般の通念との間の中には、必ず私はその事件というものが、悪く言えば、まだノルマがかせげないから必要以上に罰金をかけているんじゃないかというようなことがもしあるとするならば、警察行政と民間との間に非常に大きなそごを来たす。第一線の警察官というものは非常に迷惑をすると思う。第一線の警察官というものに、そういう面罵をする者はないかもしれませんが、あるいはあるかもしれない。私は、このことは警察本来のたてまえからいって非常に大きなマイナスになるのではないかと考えておる。罰金を国がとって、一応大蔵省に納められて、そうして大蔵省が大蔵省としてのたてまえから、これを道路交通の整備にどのくらい出し、これをたとえば交付税の中に織り込んでくるとかというようなことなら、まだ幾らかカバーができるかもしれない。しかし、この法律の中に、これは都道府県に割り戻すんだということを書いてくると、これはまるっきり警察の請負みたいになるんではないか。そうすると、第一線の警察官というのは非常にやりにくい。あるいは住民とも感情的に対立することになりはしませんか。私は、警察が権力だけで治安の確保ができると考えたら大間違いだと思うのですよ。この点は一体どうお考えになっておりますか。この点をひとつ…。そういうことはない、警察官は必ずかわいがられるようになるとお考えになりますか。私は絶対にそういうふうにならないと考えております。
  57. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 第一に、この反則金の総額に相当する金額を特別交付金で出す。その配分の方法は、先ほど鎌田君からもお答えいたしましたように、客観的な基準によって配分をいたすのでございまして、その都道府県がどれだけの反則金を徴収したからというような、いわゆる割り戻し的な意味は全然考えておらないわけでございます。したがいまして、その県で二億あろうと、その県にはたして二億行くかどうかということは全然関係のない、そのほかの交通事故件数でありますとか、人口集中度でありますとか、そうした客観的な基準によってやるのでございまして、徴収した反則金の額と、その都道府県等に配付される額とは、全然関係がないわけでございます。実は御承知のようにこの制度を採用するに際しまして、その途中におきましては、これを直ちに都道府県の収入にしたらいいではないかという意見もあったわけでございますが、あえてそれをしなかったのは、いま門司さんが御心配になるようなことになってはならぬ、警察官の士気に関係するというようなこともありまして、特に国へ帰属させ、そしてそれに相当する額を別の基準によって配付をする、交付をするということにいたした次第でございます。もちろん、いま御指摘のように、とにかく警察官は一切金銭の授受には関係をいたさせませんけれども、告知をいたしまして、一種の広い意味における制裁金的なものを課するのでございますから、そこに運転者と警察官との間のいろいろな問題が起こりかねないことは、私どもも十分考えておりまして、そうしたことのないように、警察官の態度等につきまして、十分運転者の納得のいくような親切な態度をとるようにしてまいりたい。また、そうでなければ、この反則金制度の成果がなくなるのではないかという気持ちを持ちまして、これからも十分なそうした指導、教養に当たってまいりたいと思います。もちろん門司さん御指摘のとおり、交通事故対策というものは単に取り締まりを強化したり、罰金を科することだけで、できるわけではございません。むしろ警察官を含めまして、事前の指導と申しますか、運転者に対する自覚を求める、そうした指導教養ということが先行しなければならぬことは当然だと考えております。
  58. 門司亮

    ○門司委員 ことばでは、それはどんなにきれいなことばも使えますよ。しかし、実際はそういうふうにならないのですね。これは少なくとも法律に書いた以上は、これが地方にそのとおりに割り戻されるかどうかは別というようなことを言われますけれども、受け取るほうは、割り戻しのあることば事実ですから、ここに配分すると書いてあるのだから、客観的情勢がどうであろうとこうであろうと、払い戻しすることはわかっておる。そうなってまいりますと、先ほどから申し上げておりますように、いまの地方の自治体の予算を見てごらんなさい。罰金なんていうのはどこかございますか。これによって、反則金でどのくらいお金がくるだろうというようなことは予算項目の中に書かないかもしれない。これを交付税でやってしまえばわかりませんから、交付税が幾らかふえるぐらいにしかならないかもしれません。しかし、客観的な情勢で配分するということになれば、結局交付税でやれぬことはないでしょうけれども、非常に技術を要する問題だと私は考える。ところが、いまのようなことでは、国の予算を見てみますと、これは国の予算は、全体から上がってくる罰金でありまするから、いろいろな形で予算に書かれるかもしれない。しかし、地方の自治体がかりにもこの反則金をあてにして仕事をしなければならないということが最初から予算書の中にあらわれてくるというようなことは、私はどうかと思うのです。地方の自治体の過料であるとか手数料であるとかいうようなものとは、これは全然違うんですから、自治体が条例できめたものでないのでございますから、国の法律に基づくもの、そうしてそのお金が地方の自治体に入ってくるということが法律の明文に書かれることは、これはほんとうに行き過ぎだと考えておる。これは書かなければ悪いのですか。書いておかなければ配分ができないというほど大蔵省がやかましいことを言うのですか。私は、これはあなたのほうの意見じゃないんじゃないか、大蔵省がやかましくてこう書かざるを得なかったというふうになっていやしないかと思う。ですから、自治省としての意見をひとつ、書かなければ悪かったという理由をここではつまり聞かしておいていただきたいと思います。
  59. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 書かないで、事実行為でやったらいいじゃないかという御意見も、それは確かにあろうと思います。しかし、性質が性質のものであるし、また現在交通安全施設というものは、もちろん国も多額の金を出してやらなければなりません。しかし、また地方公共団体も、みずからの単独事業として交通安全施設を相当にやっていかなければならない。そういう情勢のもとにおきましては、交通安全施設が交通事故対策として十分なほど整備されぬ間は、やはりこうした金をそういうものにつぎ込むことは現下の情勢として必要ではないかというふうに考えたわけでございます。
  60. 門司亮

    ○門司委員 私は、現下の情勢なんということは実際はわからないと思うのですよ。あまりくどいことを申し上げる必要もないかと思いますが、ことしの予算を組みます前に、知事会あるいは市長会等の意見は、地方の道路整備のためにガソリン税の譲与を一千億ばかり分けてもらいたいということを強く要求したはずであります。それを一千億は出さないで、二十五億ばかりのお金を出して、これを交付税の中に入れたというのが現実でしょう。政府にほんとうの誠意があるならば、百五十億か百六十億くらいのお金ですから、これとは全然別個の形で、きれいな形で地方に出せるはずなんです。出さなければならぬはずなんです。しかしそれができないということになりますと、これは自治大臣ばかり責めても始まらぬと思いますが、一体自民党の政府というものは本気で道路整備あるいは交通安全に取り組んでいるかどうか疑わしい。運転者の過失によって、運転者の罰金によって道路整備をしていこうなんという考え方自身、私は誤りだと思う。だれの責任なんですか。国民の生命財産を守るということは国の責任なんです。これは全く今日の交通行政といいますか、交通のこの多くの災害を防止するための財源を反則金に求めるなんということは、私は言語道断と考えておる。一体政府はどうしてこれをやらないのですか。私は第一線の警察官に対する住民の信頼度といいますか、そういうものは薄くなって、何だ、警察官は悪いことをする、おれたち弱い者をいじめるという感じを持たせることは、交通行政の上からいって必ずしも得にはならないと思う。かてて加えて、当然国が責任をもってやらなければならないこの交通災害の防止に対して、運転者の反則金を充てるというようなことが法律に書かれるということになっては、これはこのままでいいんですか。これ以上大臣を責めてもどうにもならぬかもしれませんけれども、私は、佐藤さんは人間尊重だということを盛んに言われるけれども、どうも佐藤さんの真意は疑わしいですね、こうなってくると。だから、どうしてもこの法律にこれを入れなければならなかった理由は、いまの大臣の答弁で満足するわけにまいりませんから……。私の与えられておる時間もあまり長くありません。これは委員長がやかましく言っておりますから。だから、問題はきわめて遺憾であります。これらの問題が法律の中に書かれて、しかもさっき申し上げましたような現象が当然起こってくる。したがって、いま大臣としてはこれを削除する意思はございませんか。私はこれは削ってもいいと考えている。これは削るべきだと考えている。そして政府の責任は当然明らかにすべきだと考えます。政府の交通災害に対する責任が明らかでないでしょう。罰金をこちらに充てるというのですからね。財源は反則金に求めるというのですから、これほど人を愚弄したというと、ことばは行き過ぎかもしれませんが、これほどごまかしたことはないと思うのですよ。このお金が幸いにして多ければ、たくさんできるかもしれない。しかし、もし少なかったらどうするのです。やはり新設さえできないということになりはしませんか。そういうものでなくして、必要なものはやはり国が出すというたてまえを私はとるべきだと思うのです。だからこれに対してもう一度、私がいま申し上げましたように、こういうことは削れるかどうか、おやめになるかどうかということについての御意見をひとつこの機会に伺っておきたいと思うのです。
  61. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 もちろん交通安全施設を整備することは一面において国の責任でございまして、その点は緊急措置によりまして三カ年計画も立てておるわけであります。これだけでは十分ではないということで、さらにこれを充実しようとしているわけでございます。しかしそれと同時に、また府県や市町村の単独事業としてやらなければならない仕事も相当多いわけでございます。したがいまして、それらの府県あるいは市町村のやる交通安全施設についての単独事業について、その財源をある程度見ていくということは国の責任であろうと考えるわけでございまして、そういう意味において、この府県や市町村のする単独事業である交通安全施設の問題につきまして財源を付与するという意味一つとしてこれを考えたわけでございますので、もちろん他の方法があるのではないかという御意見は十分わかるわけでございまするけれども、私としましては、やはりこの程度のことは国の財源付与の一手段としてやってもよろしいのではないかと考えておるわけでございます。
  62. 門司亮

    ○門司委員 この程度のことはやってもいいのではないかというようなことですけれども地方の自治体は、当然、居住している者の生命及び財産を守らなければならないということは、自治法の二条にはっきり書いてあります。これは地方の自治体が行なう事業であることに間違いないし、また国も責任を持たなければならないことは当然であります。それらの施設が、もう繰り返して申し上げませんが、こういう形でその財源を得なければならないということは、これは先進国としてこんなところがどこかにございますか。あるいはあるかもしれない。あるかもしれないが、それにはいままでの長い間の経緯があったと思う。ずっと従来そういうことをやってきておったところで、多少の問題が私はこの外国の例でも全然ないと言うわけではございません。反則金制度もありましょう。しかしそれには私はいろいろな経緯があると思う。日本の場合はそういう経緯も何もないのですね。実際はいままでそんなことをしたこともありませんし、そういうことを考えたこともございません。突如としてこういう一番弱い立場にある運転者に対する反則金で整備をするというようなことで、一体国の責任が果たせるかどうかということなのです。さっきから申し上げておりますように、国の責任はやはり国の責任でやってもらいたい。反則金反則金として、国の罰則あるいは罰金ということからやむを得ぬことでございますから、これを私はやめろとは言わない。しかしこれの取り扱いについては私はこういう形であってはならないということを強く申し上げておきますが、これに大臣はいまのような御答弁で、一向何が何だかわからぬ。こういうことは警察行政に対して非常によくない結果をもたらすものであるということ、第一線の警察官のことを少し考えてもらいたい。第一線の警察官はあなた方がお考えになっているようなわけにいかない、多くの大衆を相手にしているのであります。そうして多くの国民の前にみずから仕事をしておる。それらの諸君が、こういうことばを使えば、これはあまりいいことばじゃありませんが、かりに反則金罰金幾らだということを法律に従って言う、そうすると陰で、まだノルマが終わりませんかというようなことを言われております。ある一種のノルマですからね、これは予定されている金額があるのですよ。こういうことで警察行政はどう考えても満足に行なえぬと私は考える。そこで、第一線の警察官のそうした苦労に対する警察庁長官の御答弁をひとつ願っておきたいと思います。
  63. 新井裕

    新井政府委員 門司委員からるるお尋ねもあり、委員長からお答え申し上げましたので、簡単に申し上げますが、私どもとしては、この反則金法律に書かなければ当然国庫に帰属するものという理解をいたしておりまして、こういうことになりました際に、先ほど委員長からお答え申し上げましたように、直接府県費に入るということは私どもは最後まで反対いたしたわけであります。結局こういうことになりまして、当分の間こういうふうに使う、しかも使うのが交通安全施設という限定がありますので、やむを得ないというふうに考えました。御承知のように十年ほど前でありましたか、ベースアップの財源が、罰金額の相当額が財源になっているようなことがありまして、私どもはそういう記憶がありますので、人件費等にこういうものが充当されるということは最も困る問題でありますから、これは私どもとしても反対しております。当分の間安全施設に回すということであればやむを得ないだろうと思います。当然国の収入のどこかには入る金でございますから、ただいまの状況からしてそういうふうに向けられるということはやむを得ないし、結果としてはこれだけが安全施設になるわけではございませんので、国費でも相当の金額が別途に出てまいります。国のやる事業はこれには全然関係ございませんし、補助事業にも関係ないことでありますので、そういう意味でわれわれはやむを得ないと思っております。
  64. 門司亮

    ○門司委員 やむを得ないというお考えでございますが、私はごく善意に解すれば、違反をした人が、違反をしたこのこと自身が交通の安全に一つの脅威を与えた、その罪滅ぼしに幾らかの金を罰金として取られて、それで交通安全ができればという、これは仏さまのほうからいえばそういうことが言えるかもしれない。まあ一つには罪滅ぼしという観念に立てばそういうこともけっこうかと思いますが、私は人間というものはなかなかそういうことにはならぬと思います。少なくとも反則金規定に触れる者といたしましてもそれぞれの理屈があるわけでございまして、一方的にしゃくし定木に、おまえはこうだからこうだというようなことになることは、第一線の警察官にこれの罰金までまかせるということは、実際は非常に問題がありはしないかと思うのです。これはどうですか、いままでの経験でもよく見ますから聞いておる。聞き知っている範囲によりましても、こういうことがよくあるのであります。おまわりさんのほうから見れば一時停止をしなかったというのだが、本人は一時停止をしておる。おまわりさんの立っておった位置と車との間にほかの障害物があって、とまったということはおまわりさんにはわからない。しかしその瞬間が非常に短いのであって、青になったからばっと出たか、あるいは出ようとするときに、来たからとまった。しかしその間にもう一つの車が入っておって、おまわりさんの位置からは見えなかった。ところが赤くなったときにおまえさんは出てきたからといって、ごたごたした事件も私は知っております。もしそのときにとめておれば、横から来た車に完全にぶつかっておったことになります。これをおまわりさんから見れば、赤いときに走ったからおまえは一時停止をしなかったということに大体なろうかと思います。運転者の側から言えば、まん中から出ておったときに横から車が来たからそれをすり抜けたんだ、だから事故が起こらなかった、まん中にわしの車がとまったら必ずぶつかっておったはずだ、私はこういういう問題がないとは限らないと思うのです。そういう場合にはやはり運転者の言い分というものを十分に聞く機会を与え、運転者が納得した上でなければ、非常に安易なものの考え方で第一線の警察官がやっておるということ自身について、私はこの反則金規定がいいとか悪いとかいうこととは別に、私は警察官自身に対して、問題を警察庁としても公安委員長としても考えてもらいたい。そうしなければ、警察行政というものはなかなか円満にいかないのじゃないか。第一線に出てそういうことをすることをいやがる警察官ができやしないか。そうなってまいりますと、せっかくの規定が非常に悪いことになってしまう、実際に守られないことになってしまう、何といっても警察官は民衆と接触しておりますから。あなた方は民衆と会わないから、机の上でやれるからそれでいいかもしれぬ。こういうところにも十分にこの問題の配慮が払われておるかどうかということ。ただ単に表だけを見て、この法律反則金を取って、そうしてその反則金地方に回されることは、いまの御答弁だけでよろしいかどうかということでございます。  大臣は何か連絡会議においでになるようでございますから、きょうは、自治大臣はこの程度にしておきます。  したがって、そういうことをずっと連想してまいりまして、あとお聞きをいたしたいと思いますことは、運輸省と建設省と労働省でありますが、順序として先に建設省のほうから聞いておきたいと思います。  建設省にお聞きをいたしたいと思いますことは、きょうはどちらの人かわかりませんが、交通災害に対しまする建設省のものの考え方がどういうことになっておるか、私はこの事実をひとつ聞いておきたいと思います。  そのことは、御承知のようにいま最も大きな対象になっておりまするものは、すべてダンプカーあるいは重量の荷物を運ぶものになっております。ところがこれについて建築行政の中からこういう事件が起こります。問題を一つ拾って見ますと、それは具体的に申し上げなければわからぬと思いますが、たとえば建築の許可を与えます場合に、許可条件に入っていないことは私ども知っておりますが、一つの工期の問題がある。これも大体のあらましの工期は書いてある。ところが最近の大きな建築は、官庁の建築が非常に多いのでありまするが、これらの建築に対しましても、一番先に手をつけるのは穴を掘るということであります。したがって、この穴を掘ります場合にどういう結果が出ておるかといえば、かりに一万立米の土が出るということがあれば、それにはダンプカーが一体何台あればよろしいかということになってくる。ところがその工期は非常に短い。いやおうなしにここには、後ほど運輸省に聞いておきたいと思うのと関連をいたしておりますけれども、非常に無理をして土運びをしなければならぬ。残業もしなければならない。運輸省の運輸免許を持ったものだけでなく、ここに白ナンバーも当然連れてこなければならないという、今日のこのダンプカーその他の災害の一つ原因は、掘り下げていけば私はここにあると考えております。無理がある。これに対して建設省は一体どういうお考えでありますか。
  65. 大津留温

    ○大津留説明員 建設業の施工に関連いたしまして、捨て土の運搬とかあるいは骨材の輸送等のためにダンプ等の大型トラックを使用するケースが非常に多いことはそのとおりでございまして、したがって、交通事故を起こすケースが建設業に関連して非常に多いということは御指摘のとおりでございます。そこで建設省といたしましては、御指摘のように、工期に非常に無理がないように、また請負金額が不当に安くなりますと業者が無理をするということでございますから、その請負金額また施工の方法等につきましても、交通安全を十分念頭に置いて工事を行なうように業界に指導いたしております。また、発注者としての立場の建設省をはじめ主要な官庁に対しましては、同じように発注にあたりましては工期に無理がないように、また金額が不当に安く、そのしわが下請ないし輸送業者にいかないようにという注意を喚起いたしております。  その具体的な措置といたしまして、もしかりに交通事故を起こしたような業者がありました場合には、建設省の発注する公共工事にはそういうものは、責任の度合いによって違いますけれども、指名を停止するという措置をとりまして、各都道府県その他の公共発注機関に対しても同様の措置をとられるように勧奨しておる実情でございます。
  66. 門司亮

    ○門司委員 いまのお話ですが、私の聞いておりますのは、そういうことではなくて、そこに非常に無理がある、反則をした者はこれから仕事をさせないと当然のように言われておりますけれども、実際土を運んでおる者はだれかということですね。これは運輸免許を持って土を運んでおる者はきわめてわずかです。あとでこれは私は運輸省に聞かなければなりませんけれども、ほとんど全部といっていいほど取り締まりの対象にならない白ナンバーである、そういう者に対して、いまのような御答弁で、反則事故をたくさんやった者にはこれからやらせませんと言ったところで、そんなことで工事ができますか。私の聞いておりますのは、その無理が工期にあるかないかということです。これを一体どうするか。しかも、建築の実態はあなたのほうがよく御存じでしょうけれども、最近の建築は穴を掘るということが一番先です。その工事がスムーズに、できるだけ早く、短い期間に終われば建築費が非常にもうかる、その工事がおくれればおくれるほど始末が悪い、したがって、そのしわ寄せは全部ここにくる。それがいま申し上げたように、期限内には当然運べない、どう考えても無理だと考えられるようなことが工期の中で縮められてくれば、いやおうなしに、下請業者は発注者に対して仕事をしないわけにいきませんから、発注者があって、その間に建設業の請負者があって、土を運んでおる者はその下ですから、これらの諸君はいやがおうでも運ばないわけにいかない。もし運ばないと、その工期ではできませんよといえば仕事がとれない。いやおうなしにそれを運ぼうとすれば、徹夜でもしなければならないし、白ナンバーでも頼んでこなければならないということになってきて、どうしてもそこに無理がきて、そしてそれからくる事故がかなりたくさんありはしないか。そして事故が起ったら、そういう者にはやらせないからと言ったところで、もとが無理をしておいて、そして事故が起こったからそういう者にはやらせないということになると、これは一体どうなりますか。私の聞いておるのは、もとがそういう無理がないようにしてもらいたいということです。もとのほうは一向かまわずにおいて、やったやつだけ処罰をするというのは、官僚の一番悪いものの考え方で、悪いことをするのは国民であって、そしてその規則をおれたちが守らせるのだ。犯罪を犯そう、交通事故をやろうといってやっておる者は一つもない。だから工期が十分あって、でき上がる期間までに十分運び得るだけのことになっておれば、無理をしなければ、私は事故が少なくなると思う。絶対になくなるとは申し上げません。でありますから、いま申し上げておることは、それらの点について建設省がどういう具体的の指示をされておるかということです。いま申し上げておりますように、これにはいろいろ問題があります。たとえば一万立米の泥を運ぶにはどれだけの車が要って、しかも土を運ぶ場所はどれだけの距離があるかということ等、二往復できるのと三往復できるのとでは五割の差ができてくるわけであります。そうすると、それだけの車を集めなければならぬ、もし車が集まらなければ徹夜をしなければならぬ、運転者の勤務時間も長くしなければならぬ、どうしてもそこに無理がくる。だから今日のダンプカーその他の——ことにダンプカーがその焦点になっておりますが、やっておる仕事というものは建築に非常に大きな関連を持って、そこから無理がきておるということが私は考えられる。労働省が最近、この勤務時間に無理のないようにという通達を出しておりますが、こういうものについて、もう少し建設省は考えたらどうですか。工期その他でこの面をもう少し改めて、そして十分にそういうことのないように建設省はやるのだということでなければ、ただ交通事故を起こした者は頼まないからなんという無責任なことで過ごされますか。その点をもう少し明確に答弁をしてもらいたい。
  67. 大津留温

    ○大津留説明員 先生御指摘のとおり、作業の工期、工程また作業時間等が適当でない、また著しく低い価格で工事を請け負うというような場合に、無理をいたしまして事故を起こすという原因になるおそれが多分にございます。したがいまして、そういう無理な工期あるいは不当に低い請負代金で受注しないようにというふうに、業者に対しましてはそういう指導をいたしております。また、発注者としての建設省といたしましては、その設計上適当な工期あるいは作業工程、また適正な価格で発注するように、みずからもいたしておりますし、公共団体にもそういうことを指導をいたしておるわけでございます。もしそれを違反したような場合は、先ほど申し上げたようなことで、その実行を担保する、そういうことでやっておる次第でございます。
  68. 門司亮

    ○門司委員 実行と言われておりますが、そういう場合に、その処罰の対象になるのはだれなんですか。事故を起こした、さっき申し上げました建築主から、それからさらに——あなたのほうの対象は建築主なんですね。建築をする人が対象になるのでしょう。そういう条件をつけるのでしょう。その下におるのが建設業者でしょう。その下におるのが土を運ぶダンプ業者でしょう。ですから、だれに罰則を当てはめるのですか。一番下のダンプ業者に加えるのですか。それとも、文部省の仕事であれば文部省にそういうきつい罰則を当てはめられるのか。一体どこに当てはめられるのですか。
  69. 大津留温

    ○大津留説明員 罰則といいますか、業者の指名停止でございます。これの対象になるのは建設業者でございます。
  70. 門司亮

    ○門司委員 建設業者ということになると、いままでどこか建設業者を取り消したというような例がございますか。
  71. 大津留温

    ○大津留説明員 建設業法によりまして、工事の施行に粗漏があるということのために公衆に危害を与えたというような場合には営業の停止、あるいは極端な場合には登録の取り消し、またはそれに至らない場合は指示ということで、厳重な注意を喚起するということをやっておるわけでございます。その実際の例は、ちょっと手持ち資料を持っておりませんけれども……。それから、先ほど申し上げました指名の停止と申しますのは、発注者の立場から、そういうような事故を起こした業者はもう使わないということ、これは昨年末以来ダンプの事故が非常に問題になりましたので、建設大臣から特に御指示がありまして、建設省がみずから発注する場合には、そういうような業者は指名から排除するということで、この三月にそういう通牒を実は出したわけでございまして、その結果は実はまだ集計がまいっておりません。
  72. 門司亮

    ○門司委員 どうも少しピントがはずれておりまして、さっきからお話ししておりますように、また言われましたように、この問題は、交通災害に対してどう対処するかということですね。その原因が、工期に非常に無理があったり、あるいは不当に単価が安いか高いかということは、これから運輸省に聞きますが、そういう問題から来る交通災害であるとするならば、交通災害がどんなにあるからといって、こういう道交法改正して厳罰に処してみても、刑法を改正してみても、もとが直らない限り直らない。そして、取り締まりを受けるのは一番下の運転手なんですね。それでなければ、やっとその上のどろ運びの運輸業者で、建設業者というのは私はなかなか対象にならないと思う。こういうところに問題があるので、建設省としては、この工期やその他については十分注意をしてもらいたい。そうして実際は、そういう無理があれば、だれの責任かということを明らかにしてもらいたい。非常に無理な工期で押しつけて仕事をやらせる。そこから事故が起こってきて、事故が起これば、事故を起こしたやつが悪いのだということで処分されたのではかなわぬ。だから、そういうことと、それからもう一つの問題は、最近砂利トラの問題で、あとで華山さんからも質問があろうかと思いますが、一応建設省の見解をこの機会に聞いておきたいと思うのです。それは砂利が非常になくなってまいりまして、御承知のように東京近在の砂利というものは相模川から運べなくなってきて、まごまごしておったら静岡の富士川から持ってこなければならない。こちらのほうは大体栃木の山の中までいかなければならぬ、あるいは人工の砂利にするか、あるいははなはだしいのはナホトカから輸入するとか、あるいは北海道から船で持ってくるとか、いろいろな処方はあろうと思う。しかし、いずれにしても今日の建設業者の使っております砂利の数というものは非常に多いのだから、それの供給地がだんだん遠ざかっている。遠ざかっていけばいくほど単価が上がってくる。しかし建築との関係で単価が上げられないということになると、どうしても無理がくるのは運ばせられる者、運ばせられる運転者が一番最後にきて一番ひどい目にあう。これが私はいまの現状だと思う。砂利トラがけしからぬ、けしからぬと言うが、砂利トラはそういう社会の現象の中で仕事をさせられておるので、したがって、そういう大もとのほうを解決しなければなかなか解決しないと思う。そういうものに対する建設省の意見というものをひとつこの機会に聞いておきたいと思いますことと、もう一つは、都市の再開発の問題等にもこれは非常に関連しております。何でもかんでも東京に大きな建築をやって、どんどんそういうものが東京に集まってきて、いまでさえ車で困っておるのに、むやみやたらに車の集まることしか考えておらない。それらのことについて、建設省の意見をこの機会に聞かせておいていただきたいと思います。
  73. 大津留温

    ○大津留説明員 砂利の価格の問題でございますが、昨年の暮れからの交通取り締まりの強化に伴いまして、砂利の価格がだんだん上がってまいりました。それを建設業者が持つか、あるいは発注者が持つか、そうでなければ砂利業者がなかなか立ち行きませんけれども、そういう三者の間でいろいろ折衝があったわけでございますけれども、この三月までの間にトン当たり二百五十円から四百円程度値上げが行なわれたように聞いております。それから四月以降はこれにさらに百五十円値上げが行なわれたように聞いておりますが、建設省の発注者側といたしましては、そういう資材費はやはり時価によって積算すべきであるという原則をとっております。したがいまして、そういう正常な需給関係で値上げされました骨材価格というのは、そのときの時価によって積算をしておる。したがって、そこに無理な価格であるために末端において輸送に無理があるというようなことのないように考えておるわけでございます。  それから再開発に対する建設省の考え方、たいへん基本的な問題で、建設大臣からお答えするのが適当かと思いますけれども、私どもは、おっしゃるように、これ以上大都市に産業なり人口が集まってくるのは好ましくないと思うわけでございます。しかし、これを抑止するまた有効な手段というのもなかなか実際上ないのじゃないか。したがって、地方の開発等を行ないまして、大都市に集まる集中圧力というのを弱めるということは当然やらなければなりませんけれども、しかし、経済の原則に従って人口が集まってくるというこの現実の現象はある程度認めざるを得ないのじゃないか、そういう事象に対処するような都市施設の整備というのが大事なことである、こういうふうに考えております。
  74. 門司亮

    ○門司委員 建設省のいまのような答弁で交通災害がなくなろうとは私は考えられません。需要供給の関係から、経費の関係は、自由経済の社会で、当然いまのようなことになろうかと思います。しかしこれは放任しておいていいか悪いかということですね。そのしわ寄せはここにくるということなんです。監督官庁であるあなた方のほうは、砂利の問題等についてもお考えをされているかどうかという、無理をしなくても砂利が手に入るようなことができているかどうかということなんです。そういうことを建設省がちっとも考えないで、自然にまかしておいて、そうしていろいろそれからくる現象が起こって、最後に交通災害がきて、そうして罹災者は非常に困りますし、また運転者が非常に罰せられるというようなこと、これで一体よろしいかどうかということであります。私はその点を聞いているのでありますが、いまのような建設省の答弁ではどうにもならないと思うのです。華山議員からこの問題についてお尋ねがあるそうですから、委員長、ひとつ関連して……。私はこれからあとで運輸省に少し聞きたいと思いますから。
  75. 華山親義

    ○華山委員 関連してちょっと伺いますけれども反則金につきまして行政訴訟ができるのかできないかということについて、私は相当疑問を持っていた。話を聞きますと、行政訴訟ができないというふうなお話だということでございますが、前例ができますと、今後反則金に類するようないろいろな法律ができないとも限らない。その際に政府は、この種のものは行政訴訟ができないということになりますと、国民の権利に関する問題でもある重要な問題だと私は思いますのでお聞きいたすのでございますが、反則金はこれは行政訴訟ができないというふうに、法制局等とも御相談になって、政府の方針としておきめになったのでございますか。
  76. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 通告によりまして反則金を納めるか納めないかということは、通告された者の任意でございますので、私どものほうといたしましては、したがって相手方に義務を課すものではないわけでございます。したがって、行政事件訴訟法にいうところの処分には当たらないという解釈で、行政処分ではないということで、行政事件訴訟法の対象にはなり得ないというふうに考えておるわけでございます。なお、御承知のようにこれと類似の制度で国税犯則取締法がございますが、これによる通告処分行政事件訴訟法の対象となり得ないというのが通説になっておるようでございますので、私どももそういう解釈で臨むような次第でございます。
  77. 華山親義

    ○華山委員 この点につきまして、たまたま最高裁からおいでになりまして、最高裁の御意見として申されたのじゃないと思いますけれども行政訴訟はできると思うとおっしゃっている。私はそれは当然だと思う。処分ではない、強制力はない、こういうことだから、それだったら何でもいいんだということになったならば、おかしくなる。朝日訴訟だって、強制力も何もないでしょう。それでも行政訴訟ができてる。行政訴訟は広範囲なものでなければいけないと思うのです。行政処分に対する司法の救済を求める、それが根本なんですから、それを制限するということは私は大きな問題だと思うのです。この問題について、実益はないかもしれませんよ。しかし根本には非常に大きな問題が私はあると思う。強制力のないものは行政処分じゃない、そういうことでございますか。そうしますと、強制力を持たないところのいかなるものについても行政訴訟はできない、こういうふうな政府の考え方だとすれば、私は大問題だと思う。その点につきまして、これは法制局あたりと御相談になっておきめになった政府の統一した見解でございますか。
  78. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 法律的にはそういうふうに解釈しようということで、法務省とも意見一致しておる次第でございます。
  79. 華山親義

    ○華山委員 おそらく、先ほど最高裁のおっしゃったように、これは問題のある、学説のあるところだと私は思う。こんなことをやってまいりますと、いろんなところで、今度これに準じて、国民の行政訴訟を阻止するような意味でいろんなものができないとも限らない。そのときに、この間総理大臣のやったような異議申し立てなんかやられたのじゃ混乱するだけだ。私はこの点につきましてここにさらに反省を促し、研究していただきたい。これは国民の基本権利に関する行政についてのいろいろな問題、とにかく強制があろうともなかろうとも、個人についての利害関係があるのですから、それについて司法権の救済を求めるということは当然だと思う。それがない、強制力がないからない、こういうことじゃないと思うのです。強制力のないものはないといったら、朝日訴訟だって何だってできないでしょう。司法権に対して行政の矯正を求めるという権利は広範囲に国民に与えておかなければいけないものであると私は思う。この点につきましてなお私たちは疑問を持っておりますし、もっと有権的なそういうことがなぜできないのか。税法ではそういうことがあるといったって、それだからこわいのですよ。税法にこういうことがあるからこういうことができるのだ、今度はこれがあるからこれができるのだ、そういうふうなことは一定の限度でやめてもらわなければいけない。私はそう思いますね。その強制力がないからできないのだ、ただそれだけの理由ですか。
  80. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 行政訴訟といたしましては、先ほど私が申し上げたような解釈で、一応行政事件訴訟法の対象になり得ないと解釈しておりますが、この制度は、御承知のように、通告いたしまして反則金を納めるか納めないかは任意でございまして、もし争いがある場合には納めないで刑事事件で争うという制度になっておりますので、御心配のような救済の措置はその方向に開かれておるというふうに思っております。
  81. 華山親義

    ○華山委員 私は、この問題の具体的なことよりも、根本的にそういうものでいいものかどうかということを心配しているのです。行政権の発動がその人の利害関係を伴う場合には、これは当然司法によって救済さるべき道が開けている。それが行政訴訟法なんだ。戦前の行政訴訟法は法律規定のあった場合にだけできた。今度は無制限に認めたのでしょう。それだったならば、いろんな理由からこれを制限していくということは、将来の国民の基本的な権利として私は問題があると思います。御再考をひとつお願いしたいと思うのです。これは重大な問題だと思います。  それから建設省に伺いますが、一体いま砂利の値段というものはどこできまるのですか。
  82. 大津留温

    ○大津留説明員 砂利の価格は、特に行政的な措置できめるとかいうようなことはございません。需給でおのずから相場ができるわけでございます。
  83. 華山親義

    ○華山委員 需給で動く。しかし、需給で動くといいましても、砂利を供給するところの業者と、いまの建設大企業との力というものはまるで違うじゃないですか。実際問題はそういうことがあるかどうかわかりませんけれども、大企業の協定等によって砂利業者に押しつけられたならば、砂利業者は当然それに従わなければいけない、いやだと言うならば仕事ができない、そういう実態であるかどうか伺いたい。
  84. 大津留温

    ○大津留説明員 建設業者と砂利業者の力関係ということよりも、むしろ砂利業者が非常に零細な企業が多いという関係で、いわゆる過当競争の状態にあると思います。したがって、骨材の納入をめぐって、値段の面でも非常に不当に競争するということのために買いたたかれるような結果になっておると思います。
  85. 華山親義

    ○華山委員 伺いますけれども、そういうふうな弊害があるためにダンプカーの事故が起きる、そうだったならば建設省はこれを矯正するところの方途がなければいけない。何かおありでございますか。
  86. 大津留温

    ○大津留説明員 建設省をはじめ大口の発注者が、その発注価格に無理がありますと、それが当然建設業者から下請、さらに骨材業者というふうに波及いたします。したがって、私どもといたしましては、一番もとになる発注者がやはり適正な価格でこれを積算し発注することが肝心だと思いますので、先ほど申しましたように、建設省がみずから発注する場合にはそういう考え方をとっておりますし、また他の公共工事の発注者にも同じような考えでやっていただくようにお願いしておるわけであります。
  87. 華山親義

    ○華山委員 国営の事業で建設省が主管されるところのいろいろな建築なり、それらのものが入札をされる場合には、入札価格というものをおきめになる。その入札価格をおきめになるときに、砂利代は何を基準にしてなさいますか。先ほどは相場だとおっしゃった。
  88. 大津留温

    ○大津留説明員 原則としてそのときの時価によるというふうなたてまえでございます。したがいまして、設計を組みまして積算をして、発注価格をきめるわけでございますが、その積算の段階におきましては、そのときの相場の価格をとって積算いたします。
  89. 華山親義

    ○華山委員 それじゃ直りようがないじゃないですか。先ほどおっしゃったとおり、いまは砂利業者が弱いから非常に不当にたたかれているのだ。その不当にたたかれているところの相場でもって入札価格をきめたのでは、そのことがずっと押し寄せていくだけであって、直りようがないじゃないですか。そういうような姿勢で建設省はいいのですか。正当な値段というものを入札価格で計算をしてきめて、そして建設の請負をさせるときの契約には、必ずこの価格で砂利は買えというふうなことを約款にでも入れておかなければ——それはあなた方のほうでは、そんな注文はできないとか、無理だとか言うかもしれないが、現在のようにダンプカーが子供を殺し、住宅に入ってくる。その原因は、先ほどあなたが自認されたように砂利が安いためだ。それが労働のほうにしわ寄せされる。その結果であるならば、砂利の価格というものを適正に計算して——その砂利価格というものは、これは大企業者の建設業者に注意なんかしたってできるものじゃない、必ずそれでもって支払うことを約款等で義務づける、こういうことでなければ、私は建設業界が、あるいは建設省が今日のこのひどい交通禍に対して貢献したのじゃないと思う。どうですか。そういうことはできませんか。
  90. 大津留温

    ○大津留説明員 たいへんむずかしいことじゃないかと思いますけれども、せっかくの御意見でございますから、検討させていただきます。
  91. 華山親義

    ○華山委員 あなた方はいつでもそうなんです。出かせぎの問題だってそうなんです。たいへんむずかしいことでございますと言っている。おそらく、私は考えるのだけれども、あなた方が勇気を持つならば、先ほど門司先生が言われたような、土を運ぶ仕事とか砂利を運ぶ仕事とか、こういうような公共に密接な関係のある仕事は、下請させてはなりません。請負業者が自分でやる、そこまでいかなければ私はいけないと思う。下請が下請、下請と、三番目、四番目の下請になる。それじゃしわが全部労働者に寄って、その労働者がああいう状態になる。いつか新聞に出ていたじゃありませんか。ダンプカーで交通事故を起こして子供を殺したという運転手の奥さんが、もう少し賃金を多くしてくれれば主人はこれほどの事故を起こさなかったであろうということを泣きながら言っている。原因はそこにある。私は建設省に提言いたしますけれども交通関係のあるような、ものを運ぶ仕事、ダンプカーで仕事をするような仕事は、もう一切業者そのものがやる、よそに頼んではいけない、このくらいの勇気がなければだめだと思う。ひとつこれを大臣に申し上げて、そこまで踏み切っていただきたい。どうですか、大臣に言ってくれますか。——じゃ、これで終わります。
  92. 亀山孝一

    亀山委員長 本会議散会後再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ————◇—————    午後三時三十二分開議
  93. 亀山孝一

    亀山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  道路交通法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。門司亮君。
  94. 門司亮

    ○門司委員 運輸省見えておりますな。——それでは運輸省について少し御質問を申し上げたいと思うのであります。  もう話す必要もないと思いますが、いまの交通災害のよってきたる原因というのは、警察関係でどんなに取り締まりを厳重にしても、あるいは反則金制度というようなことをやっても、決してなくなるものではないと私は思う。交通災害をなくそうとするなら、それの原因になっておるものをやはり除去する必要がある。そこで私が運輸省に聞きたいのは、今日運輸省が許可をいたしておりますいわゆる免許業者といっている者が、いま日本にあるダンプカーその他の車の数から考えると、免許を持って仕事をしている者が八%ぐらいしかないはずだ。一〇%にはならないはずだ。そうすると、残りの九二%というものは運輸省の監督を十分に受けない、らち外にあるのである。これを運輸省はどうお考えになっておるのか、このままでいいとお考えになっておるのかどうなのか、その点を最初にお伺いしておきたい。
  95. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 ただいま先生のお話がございましたように、確かにダンプにつきましては営業用が一割ちょっとでございまして、大部分自家用でございます。ただいまお話がございましたように、事故原因につきましては、現象的な面は別としまして、さらに奥が深いわけでございます。そういう点を考えますと、現在のままで事故防止は十分ではないと思っております。したがいまして、現在総理府に交対本部が設けられておりまして、ダンプ専門部会をつくられまして、そこが中心になりまして、各省がいろいろと意見を持ち寄って協議いたしまして、抜本的な、総合的な対策を練るようになっております。ただ運輸省の現在の権限におきましては、自家用につきましては届け出でございまして、労務管理とかあるいは運行管理とか、そういうような面につきまして何ら監督しておりません。したがいまして、現在の段階で十分だとは思っておりません。
  96. 門司亮

    ○門司委員 十分とは思っていないというような政府の態度で、そしてよってきたる災害に対して——災害にあった人も非常に迷惑であって、また災害を起こした者は車を運転している諸君である。運輸省が監督の立場にありながら、監督のできないような状態に追い込んでおるという今日のこの事実。もう一つ、私は時間を長く申し上げるわけにはいきませんから、はしょってついでに話をいたしておきますが、現在そういう状態になっております関係から、あなたのほうで認可した運賃の四〇%ぐらいしか運賃が払われていないでしょう。こういうことで一体どうして満足な運行ができますか。どうしてもそこには無理がくるにきまっているのである。私は交通災害をなくそうとして、ことにダンプ、大型の貨物車の災害が最近は非常に多いわけでありますが、これをなくすには運輸省がほんとうに腹をきめてかからぬ限りは、警察庁がどんなに力んでみても、どんなに警察庁でおまわりさんが努力をしても事故はなくならないと思う。一体運輸省は、あなたのほうの許可した料金の四〇%ぐらいしか実際に払われていないという現状をそのままお認めになるのですか。もしこれが五〇%なり六〇%なり、あるいは八〇%なり払われておれば、もう少し運転者のほうも給与がいいはずである。無理をしなくても済むはずである。それが現実に行なわれないでしょう。先ほど華山議員からでありましたか、ダンプカーの運転手が事故を起こして、細君のことばの中に、もう少し給料がよかったらこういう無理なことをしなくてもよかったのだろうと考えるという話があったということを聞きました。そのとおりだと思う。その災害の原因は運輸省にあると思う。一体運輸省がいまのようなことで、これから先、検討いたしますくらいの程度でこれが過ごされるとお思いですか。
  97. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 ただいまお話がございましたのは営業用のことだと思いますけれども、現在ダンプトラックにつきましては、営業用は一割四分くらいと思いますが、これにつきましては運賃は認可制にしておりまして、認可運賃を守るように指導監督しております。もちろん健全企業につきましては、事故防止という面から見ましても、現在の認可運賃は幅がございますけれども、この程度の運賃は守らなければ健全な運営ができないものと考えております。ただ現在の実態におきましては、自家用のダンプにつきましては、これは運賃はございませんので、あるいは運送部門の経費の不当に安いとか、あるいはやみダンプの問題があるかと思いますけれども、これにつきましては、運賃協定も総合的な面で抜本的に考えないとむずかしいと思っております。
  98. 門司亮

    ○門司委員 いまのようなことでいいのですか。さっき言いましたように、あなたのほうの監督を受けるのはわずかに八%か一〇%にすぎないのである。残りはやみで、これが値をくずしていくのは当然でしょう。今日の交通災害の最大の原因は私はここにあると思うのですよ。これに対して運輸省がいまのような答弁で、これから検討するだの、そう考えていますくらいのことで、一体過ごされるものとあなた方はお思いですか。もう少しはっきりした態度を運輸省自身がとってもらわないことには、仕事にならないのじゃないか。
  99. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 ただいま申し上げましたように、これは運送の業務のみならず、先生からお話がございましたように、建設事業の仕組みといいますか、下請、下請になっておりまして、最後のしわ寄せが運送部門に来ているという面がございますし、なお現在の実態から見ますと、正常なトラック事業におきまして正常な運賃を払ったのでは、現在の砂利業者等におきまして経営がむずかしいとか、あるいは自分で本来の自家用を持ちまして安全管理あるいは労務管理等を健全にやった場合に、そういう自家用を持ってやることは現在の経営実態の仕組みの上からむずかしいという面もあろうかと思いまして、これにつきましては、建設業とかあるいは砂利採取業とか、それを監督しております建設省あるいは通産省、さらには労働関係を担当しております労働省等とも連絡をとりまして、総理府が中心になりまして現在抜本策につきまして検討中でございます。
  100. 門司亮

    ○門司委員 抜本策について、検討中と言っているうちにも事故は起こりますから。ただあなたのほうは検討中で済むかもしれぬけれども、現地ではきょうも何人かの人が死んでいるはずです。それに対して運転者は処罰を受けているはずです。運転者自身も、先ほどから話をいたしましたけれども免許証を取り上げられれば、実際その一家というものが生活に困るのは当然であります。なくなった人は無論どうにもならない。事故を起こしたほうも生活の道を絶たれるというような社会悲劇が、御承知のように、どれだけ起こっておりますか。そうして、その原因一つがそうした運輸行政の中にあるということになりますと、ただ抜本的に検討しているということだけで一体済まされるという運輸省の考え方について、私は非常に大きな不満を持っておる。なるほど総理府で何か総合対策によってやっておいでになるようでありますけれども、それではどうにもならぬのです。私はほんとうに運輸省がこの問題を解決しようとするなら、少なくとも建設省との間にも十分——これは建設省のほうにも私は聞かなければならぬと思っておったけれども、ここであわせて話しておまきすが、ダンピングにならないような措置は一体講じられないものかということである。そうしてダンピングして四〇%程度まで落としておいて、下請業者が非常に苦しんでおる。政治献金を見てごらんなさい。大建設企業は、何千万円というお金をちゃんと自民党さんに献金しているでしょう。大企業の建設業者は、非常にたくさんのもうけをして、そうして数千万というような金の政治献金が行なわれて、その一番下の、ほんとうに建設に従事している諸君が今日のような悲惨な状態でよろしいのかということである。この責任は一体だれの責任であるか。総理府に一つの、まだ局とも言っておらないほどの連合体みたいなものがあって、宮崎さんが中心でやっておるようでございます。そして運輸省のほうでは、何か知らぬ、抜本的に検討中だという。いつまで一体検討するつもりなんです。さっき言いましたように、毎日毎日人が死んでおる。毎日毎日事故が起こっている。いまも起こっているでしょう。私は、政府は少し責任を感じてもらいたい。監督の権限を振り回すというだけが役人じゃないでしょう。憲法に何と書いてある。憲法は明らかに、国民への奉仕だと書いてあるんだ。これが逆に国民に対しては、いまのような状態を十分解決する策もなくて、そうして抜本的に検討中だというようなことが国会のこの場所で答弁されるという、私は政府の心臓の強さというか無感覚さというものにたいへん大きな不満を持つ。一体どうするつもりなんです、こういう問題に対して。これらの問題は行政的に処置ができるはずである。ところが、現状には、こればかりでなくて、こういう問題の起こるもう一つ原因があるでしょう。それはどこにあるのか。それはいわゆる免許業者に対する地域の問題でございましょう。神奈川県の業者は、神奈川県でなければ仕事ができないようになっておる。地域がちゃんと規制してある。それ以外になかなか建設業者は出られない。しかし、やみ屋でも仕事はできる。いま北海道からも、あるいは鹿児島からも出てきて仕事をやっているでしょう。現実にやっているでしょう。ところが、大事な運輸省が許可をしておる免許業者は、神奈川県の諸君が東京でやってもらっちゃ厳密には困るということでしょう。これらの問題を一体総合的にどうお考えなんです。しかも発注する仕事は至るところに起こっておるでしょう。これを請け負う建設業界は、地域の制限はないんです。したがって、今日のように、何々組というように下請までずっと系列化しておりまする場合には、親会社が北海道へ行けば、その子会社が北海道へ行って仕事をするということにならなければならぬ。まごまごしておれば外国にまで行くかもしれない。今日外国でたくさんの建設事業をやっておるようでありますから。ところが、そういう形で免許を持っておる諸君には、地域割りが厳重に、厳密に言えば施行されなければならない。一方はこれは野放しだ。そうして運賃はダウンされていく。一体建設省は何をしているか。運輸省は何をしているか。私はこういう抜本的な問題を、この災害問題を解決しようとするには政府が真剣に考えなければ、ここでどんなに警察庁長官におこごとを言ってみたところで、国家公安委員長におこごとを言ってみたって、それはおさまらない。直らない。このことについて、当面の責任者であります運輸省のもう少し誠意のある御答弁を願いたいと思います。  同時に、私はいまおいでになっております業務部長さんですか、もちろん、職掌柄運輸省としてはかなりの地位におありだと思いますけれども、この場合、やはり運輸大臣なりどなたかに来ていただいて、そうして責任のある答弁を聞かなければ、これらの法案を通すわけにいかない。ただ単に運転者に対するこの刑罰、ことにこの法案の中にもう一つ刑罰の問題があるのは、運転者と同時に運行管理者に対する処罰を規定されております。どんなに運行管理者と運転者を処罰いたしてまいりましても、積載オーバーの防止はできません。なぜできないか。荷主が上におる。荷主がこれだけ積んでいってもらいたい、こうしてもらいたいということに対して、下請の運輸業者がそれを拒否してごらんなさい。おまえさんのところに頼まないから、ほかに頼むからということになる。それらの諸君が受けてくれば、運転手がそれを拒否してごらんなさい。あしたからほかの運転手を雇うからということになる。一番弱いところに全部しわ寄せか来て、そうして一番弱いところが全部しょわなければならぬ。これが今日の現状でしょう。したがって、この積載オーバーの問題等につきましても、建築資材その他の運搬の問題でこれが往々にして行なわれておりますが、大体の問題が建築資材だと思います。こうした問題に対してもう少しはっきりした答弁を、部長さんでできないということになれば、私は委員長に頼んで、大臣なり責任のある人に来ていただいて、もう少しこの問題をこの機会に明らかにしておきたい。  私は何も白ナンバーを全部なくしてしまって、そうしてこれをどうしようとは言わない。これもある程度必要でしょう。しかし、問題の焦点は、それらの問題が十分取り締まりのできる処置をしておいていただかぬと——これから私は労働省に質問いたします。労働省も、これでどんなに指令を出しましたところで、白ナンバーの一台か二台、あるいは三台ぐらいしか持っていない諸君にやかましく言ってみたところで、なかなか追っつくものではない。そうすると、今日これだけの災害が起こっておって、そうしてその災害の車の大部分というものが、取り締まりが野放しだ。ごくわずかの諸君だけが取り締まられて、それに運輸省も文句を言えば、労働省も文句を言う。寄ってたかってそこに文句を言う。一番おしまいはどこに行くか。だんだん下請に行き、事故を起こした運転手にすべてがしわ寄せされる。今日のこの運輸行政に対する政府の態度に対しては、一つずつそういう問題を解決していきたい。そのためにひとつ、それ以上運輸省で御答弁ができないというなら——私はきょうは実は自動車局長さんに来ていただきたかったのでありますが、自動車局長は見えていないようであります。縄張りの関係と許可の区域関係等は、大体自動車局長の主管だと思います。私はこういう問題を答弁を要求するのでありますが、もし部長さんで答弁できなければしようがない。委員長、この次の会議にはぜひ大臣に出てもらいたい。そうして大臣の所信をはっきり聞かなければ、むやみに通すわけにいかぬ。——むやみには失言です。言い過ぎですから、これは訂正をいたしておきます。軽々しく通すわけにはいかないと私は思います。ひとつ委員長にお願いをしておきます。  その次は、いま申し上げました労働省にちょっと……。
  101. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 ただいまお話しございました営業ダンプの事業区域の問題でございますが、これに対しましては、確かにおっしゃるような点がありますので、できるだけ現実に合うような方向で事業区域をきめていきたいと思っております。  なお、工事が臨時的に移る場合には、現在営業車につきましては、臨時免許の申請が出るわけでございまして、これに対して臨時免許を与えてこれができるようにいたしております。よって、実際問題としまして、営業以外の自家用につきましてはどこでも行けるわけでありますけれども、先ほどお話しのような御不便がございましたならば、今後運用について十分注意いたしまして、不便のないようにしたいと思っております。
  102. 門司亮

    ○門司委員 せっかくの答弁ですけれども、運賃の問題等についても、あなたのところだけではなかなか責任のある答弁ができないと思います。現実に認可料金の半分以下で末端がやっているなんということは考えられないことなんです、どこの業界を見ても。だからそれは建築の関係からいえば、それだけの車が必要なんだろうから、私は、その車を減らせとか、なくせよとか、建築に支障のあるようなことをしろとは言いません。しかしこれは何らかの措置が当然とられなければならぬ。運賃のダウンなんというものは押えてもらわぬと、さつき申しましたように、もしこれは六〇%あと継ぎ足してごらんなさい。かりに末端の運転手に倍の給料が払えるということになれば、何も無理なことは決してしやしません。そしてやたらに飛ばして歩いたり、必要以上のものを積んで危険をおかしてやりゃしませんよ。だからその点は、いまのような答弁でなくて、私はぜひ責任のあるものに解決をしてもらわなければならない問題だと思いますので、時間もありませんからこれ以上私は運輸省に質問いたしませんが、その点をとひつ十分考えておいてもらいたいと思います。  それから、あと労働省に少し聞きたいのでありますが、労働省はことしの春、これらの問題に対して指令を出されております。百三十何号というのですか、号数は私忘れましたが、労働基準局からの、要するに改善基準というような題名で出されておりますが、その内容を見ますと、オーバータイムに対します厳重な処置であります。そしてオーバータイムに対して、もし守らないようなことがあるならば、業者に対しては送検する。送検という意味はどういうわけだかわかりませんが、送検するというのだから検事局へ送るのだと思いますが、基準局のこの通達だけで一体検事局へ送るというようなことができるかできないかということは、私は問題だと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういう厳重な取り締まりの方向が出ておる。このことは、一面、今日の運転手の非常に過労になっておりますことを押えてまいりますには、私は別段悪い処置とは考えない。しかしそれをやられるなら、さっき申し上げましたような問題のあるということを知っているかどうかということであります。同じ政府部内だから私は聞くのであります。佐藤内閣のもとに両方の省があるのでありますから、片一方のほうではそういうものを野放しにしておいて、四〇%で一向かまわない、片一方のほうではそれからくる労働過重というようなものに対して、これを厳重に取り締まっていくということになると、締められるほうはかなわぬ、両方からいじめられる。これが同じ佐藤内閣の中だということになると、内閣もはなはだあやしいものであって、どうもこれは私どもには納得がいかない。だから、この点について、新しい改善基準ですか、というような名前で出されておるあなたのほうから出された改善基準についてのあなたのほうの見解、これは講習会における会議録でありますから、大体あなたのほうで言われたことをちゃんとここに書いてある。これをずっと読ましてもらいますと、なかなかもっともらしいことがずっと言われておるが、その中には、いま申し上げましたように実態に沿わない、これはこれなりの意義はあるかもしれない、しかし実際にはなかなか当てはまりにくいというような感じがするのでありますが、これに対して一体基準局はどうお考えになっておるのか。
  103. 藤繩正勝

    藤繩説明員 お答えをいたします。  自動車運転者の労働条件が他の産業に比べまして非常に悪いということにつきましては、かねがね私どもは労働行政のたてまえからも非常に問題があると感じてまいりましたが、特に昨今のような事情でございますので、昨年来、従来に増して監督を厳重に加えてまいっております。ただいま御指摘のありましたような改善基準といいますものも、二月九日に発して、これは私どもが単独に頭の中で考えたのではございませんで、日本トラック協会あるいは全国乗用自動車連合会、それから労働組合の関係、同盟、総評の方々とも十分意見交換を尽くしまして、現在の時点で守り得る一つの改善基準ということでお出しをしたわけでございます。神風タクシー以来、労働省も何回か通達を発しましてやってまいっておりますけれども、実態はなかなか改善が進みませんので、やはり私どもといたしましては、悪質な労働基準法違反にかかるような問題につきましては、やはり厳格な措置で臨んでいかなければならぬというふうに考えて、監督を強めておるような次第でございます。  ただ、ただいま先生御指摘の、この改善基準は一応いいけれども、しかし業界の実態はなかなかそれどころではないのじゃないかというようなお話でございますが、私どもも実は、たとえば昨年の暮れに愛知県で起こりました事故を契機に、ダンプカーの一斉臨検監督を、六千の事業場についてやりましたが、そのときにも、先生御指摘のような問題は痛感いたしております。一例を申し上げますと、事故の起こりました愛知県につきましては、八百のダンプの事業場を臨検をいたしましたが、そのうち実に二百が一人一車でございまして、労働基準法入るべからずということでございまして、私どもは問題を指摘して総理府の会合等でも申し上げておりますが、私どもの手の及ばないところであるというようなことでございました。また、あの事故を起こしました事業場も、わずか二、三人の運転手を雇用するにすぎない零細な事業場でございまして、私どもが労働基準法だけですべてやりおおせるとは思っておらないのであります。  そこで、先ほど申し上げましたような大方の御意見を伺いながら改善基準というものを打ち出し、そして業界に対しましてもPRをすると同時に、全国に約四百人の自動車労務改善推進員という方をお願いをいたしまして、そうして業界自身が労務管理の改善に向かって進もうという機運を醸成いたしていただくようなことも、昨年末以来やっております。今度の改善基準につきましては、かなり真剣に労使とも受け取っていただいているというふうに私ども考えておりますので、なお関係各省とも十分連絡の上でできる限りの措置をとってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  104. 門司亮

    ○門司委員 自動車労務改善推進員の名簿がここにあります。その四百人が書いてありますので、私もよく存じ上げております。あなたのいま言われたこともここに書いてあります。しかし、そういう実態、これはあなたのほうとしてはこういうことが一つの仕事であります。しかし、いまお話を聞いておりますと、大事な運輸省に相談がされておらない、建設省にも相談がされておらない。政府部内でなぜ相談をしないのですか。わかっているでしょう、こういうことは。業界に聞くよりも、原因はどこからきておるかということについて、政府部内で話し合ってごらんなさい。そうむずかしい仕事ではない。政府部内ではちっとも話し合わないで、そのよって来たる原因は取り除かないで、末梢の取り線まりだけを強くしていこうとするところに無理がありゃしないか。  それから、さっき申し上げましたように、ダンプが悪いといったところで、ほんとうの取り締まりを受けるのは事実上一割かそこらしかいないのですからね。あなたのほうの通達が出たところで、大体そのくらいのものしか行き渡らないわけだから。あと一人一車でやっているところとか、親子でやっている、二台でやっている、三台でやっているというところまで、なかなかいきやしません。運行管理者なんかいないのだから、基準法の適用なんかといっても、本人がやっていることで、そう簡単なわけにはいかない。こういうところにこの業界の穴があるのであります。たくさんの欠陥があるのであります。その欠陥のすべては政府の責任であると私は思っておる。その政府の責任である欠陥を直すことのために業界あるいは運転手の処罰を厳重にするとか、業界に対して処罰をされるということは、私は一つの仕事ではあろうかと思うけれども、抜本策にはならない。政府内部でこういうことはひとつ話し合ってもらいたい。私は労働省もそのぐらいのことはやってもいいと思う。運輸省に聞いてもすぐわかる、いまのお話のように。非常に無理がある。無理があるのだから、結局そのしわ寄せが下のほうにくるにきまっている。建設省の関係は建設省関係でかってに——かってにと言っては悪いかもしれないが、建築の許可だけはするが、あとはどうなっておるか一向にわからぬということである。現実にこれらの問題を取り締まろうとするならば、そういうものをするには、親切な政府の態度がまず完成されて、なおかつ悪い人があるならば、それは厳重に取り締まるべきである。しかし、政府のやることをやらずにおいて、運転手だけが悪いのだ、あるいは運送屋がけしからぬといっても、言うことは幾らでも言えても、取り締まることは取り締まることができても、結局は直せませんよ。どろを運ぶにいたしましても、そうでしょう。さっき建設省の諸君に言いましたが、一万立米の土を運んでいくのにどれだけ働かなければならないかということ、なお具体的に詳しく説明するなら、さっきの砂利のときにも申し上げましたけれども、そのどろを持っていく距離によっても非常に違うのであります。一日に三往復できるところと二往復できるところでは、車の使用量が違ってこなければならぬ。どろを運ぶ量は同じだが、車の使用量はそれだけふやさなければならぬ。距離が遠くなれば遠くなるほど、そういう問題がずっと出てくるのであります。にもかかわらず、先ほどから申し上げておりますように、建設省はきわめて不親切な、何が何だかわからないような答弁しかできない。運輸省に聞いてみれば、これから抜本的に考えてみますというようなことで、そうして労働省は労働省で、おれのほうの管轄だけでこれは出したというようなことを言う、しかもそれは業者と話し合ったと言う。業者と話し合われるのはけっこうだけれども、しかし、業者は絶対にそんなものは受け入れられませんというようなことは言えません。そこで、私は労働省に頼みたいのは、こういう問題の起こる原因は政府内部にあるということを知っておいてもらいたい。そうして政府内部の各省の連絡を十分にして、こういう問題を真剣にひとつ掘り下げてもらいたい。そうしなければ、どんなにこれは警察庁がやかましいことを言ったって、第一線の警察官だけがかわいそうだと思う。また、そういうことを宣伝する人もあるかもしらぬ。そうすると、せっかくできた法律も結局第一線の警察官だけが非常に苦労をして、そして人から悪く言われて、そして事故は減らないという結果になる。いじめられるのは警察だけであって、そうしてほかの官庁は責任がありながら、これから抜本的に検討をいたしますなんという答弁しかここでできないということになると、私はほんとうにこれ以上質問をし、やかましく言う勇気は実際はないのであります。だから、もう一言労働省に聞いておきますが、いまの通達が業者との話し合い、あるいは推進員という問題で解決するというようなことは私には考えられないのだが、労働省はこれで解決するものとお考えになっておりますか。むろん解決するとは言い切れますまいが、幾らか改善されるというふうにお考えですか。
  105. 藤繩正勝

    藤繩説明員 先ほどお答えいたしましたように、私どもの施策だけですべてが解決するとはもとより思っておりませんが、しかし従来に比べまして関係労使ともに非常に真剣に受けとめていただいておるという実情から、前進はするものと私どもは確信いたしております。  先ほど、政府部内の連絡が悪いじゃないかというおしかりでございますけれども、私どもはこの通達を出しました際にも、運輸省の係官あるいは警察庁の係官とも打ち合わせ会を開いておりますし、特に総理府を中心に関係各省の連絡会議がしょっちゅうあるわけでございますが、ダンプの問題をめぐりまして、警察庁は特に取り締まりの面を担当するわけですが、警察庁からも、取り締まりだけではもうそろそろ限界にきている、息が切れるから、ひとつ政府全体として抜本的対策を立てようじゃないかという提案をいたしております。私どももぜひそうしなければならないということで、総理府等にも強く申し上げておる次第でございます。
  106. 門司亮

    ○門司委員 もうこれ以上私は聞きませんが、聞く元気がなくなってしまった、ちっとも満足な答弁を得られないのでありますから。連絡をとられたといったところで、一体運輸省、私がいま言ったようなことが話の中に出ましたか。自分たちの監督の至らないところを、自分たちの至らないところをみんなたな上げして、現地の地元だけで相談されたのでしょう。労働省は、私がさっき運輸省に聞きましたことを知っていますか。運賃は運輸省のきめたわずか四〇%しか支払われていないということをあなた方は御存じですか。これがあれば、基準局として運輸省にも少し文句が言えるはずでしょう。運賃はきめられた運賃の四〇%くらいしか払わないような状況に置いておいて、そうして運転手に満足な給与を払いなさいと言ったて大体無理でしょう。私は何も業者の肩を持つわけでもなければ、どこをどうするわけでもございませんが、しかしこの問題に関する限りは、政府はそうしたいろいろな各省の満足な連絡もとれないで、そうしてばらばらになっておって、ただ政府は自分たちの権力だけを施行してきている。あと起こった問題はすべて国民が悪いのだというようなものの考え方の上に立っておるのであるかどうか。なるほど建築許可基準を見てみれば、別に一つの許可をとるのに、何日間でやらなければならないという工期の問題が必ずしも基準になっておりません。届け出はしますが、それが実際の許可基準になっていない。しかし現実はそういう問題があるのである。そういう問題を一々掘り下げてまいりますと、労働省の立場でそういうものを勘案されて、政府部内でそういうものを除去され、労働省としての立場を堅持していただかないと、せっかくこういうふうにここに書いてありますように、四百何十名という推進員だけでは交通事故はなくなりません。一万人にしたところで交通事故はなくなりません、もとがあるのですから。だから、これは単にダンプカーや大型トラックだけの問題ではございませんで、すべての問題に私はこういうことが当てはまるのじゃないかと思う。道路は一向広くなっておらぬ、こういうところに自動車はふえる。道の幅は広くならないが自動車の型はだんだん大きくなる。これは通産省の問題だとあなたは言われるでしょう。通産省の問題であるかもしれない。だれかの話を聞けば、交通問題などはあまりやかましく言わぬでよいという人がある。五年もすれば、いまの調子でいけば車がふえて道路一ぱいで歩けなくなってしまう。そうなれば真剣にやらぬでいいという。私はきょう通産省の人においでを願っておりません。そこまで話をしようと思いませんでしたから、通産省の人に来ていただいておりません。しかし、何といっても経済が住常に伸びて運輸行政が非常にやかましくなっているときに、運輸省が居眠りしているというとおこられますが、目を開かないでおられるところにこの種の問題の最大の原因がある。そしてその全部のしわ寄せが一番弱い業界に対しては下請の諸君、また運転をする諸君にすべてが課せられて、いかにも運転をする者が悪者であるという考え方のものとに法律がつくられるとすれば、これはあまりいい法律ではないということを私は言わなければならない。  きょうはこれ以上質問はいたしませんが、委員長にお願いをいたしておきますが、先ほど申し上げましたように、ひとつ運輸省からは責任のある人にぜひ来ていただきたい。そうして、やむを得ざる現在の状態としての白ナンバーを全部なくせいとか追い出してしまえということは私は申しません。少なくともこれにある程度の統制が加えられて、そうして運賃がダンピングにならないようにやるということは当然運輸省の責任だと私は思います。そういう意味で、この次の会議に大臣にぜひ来ていただきたいというふうにお願いをしておきまして、きょうの質問を終わります。
  107. 亀山孝一

    亀山委員長 門司君に申し上げます。御要求の運輸省のほう、いま手配をしております。自動車局長は間に合えば来ると言っておりますが、大臣のほうはいま手配しておりますから、もし見えましたら、それを保留しておきますから……。
  108. 門司亮

    ○門司委員 見えましたら私はいつでもやります。
  109. 亀山孝一

    亀山委員長 次に、小濱新次君。
  110. 小濱新次

    ○小濱委員 私は御審議中の道路交通法の一部を改正する法律案について若干質問をいたしたいと思いますが、最初に鈴木交通局長さんと少し一対一で質疑をしたい、こう思いますから、お答えいただきたいと思います。  先ほど長官が言われました事故件数千万件ですか、そういう話も聞いたわけでありますが、その点について、いま全国で免許証を持っておる人の数字と、それから新規あるいは書きかえ等の数字と、それから精神異常者と目される数字と、その三つについてお答えいただきたいと思います。
  111. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 お答えいたします。  先ほど長官がおっしゃられましたのは、違反件数が四十一年の間に一千万件ということでございます。  それから、お尋ね免許証を保持している者の数でございますが、これは約二千三百万人ということになっております。  それから、お尋ねの中で精神病者等の数があったと思いますが、免許保有者の中に精神病者が何名おるかというのはわかりまひんけれども、厚生省で調査した調査結果によりますと、精神病も含め、精薄者も入れて、全国民の中に約一%の精神異常者がおるという数字が出ておりますので、二千三百万人の免許人口にもしかりに当てはめることができるとすれば、二十三万程度はおるという数になるわけです。しかし運転免許をとる者が必ずしもその数字に当てはまるとは思いません。思いませんけれども、いままでの事故の実態の中から分析してみますと、精神病等の身体的な欠格事由によって事故を起こしているという事例が相当数ございますので、免許を保有している者の中で、身体的な欠格事由に該当する者がおそらくまだまだあるのではないかというふうに私ども考えております。
  112. 小濱新次

    ○小濱委員 この間、朝日に出ておりましたこの調べによりますと、警視庁からの発表は、所持者が二千二百万人、それから申請あるいは書きかえの人が八百万人、精神病者はそのうち二十万人、このように警視庁から発表があった、こういうふうに書いてあります。これは朝日の六月二十四日付です。  私はこれからその自動車の免許の申請時に添付する精神鑑定についてお尋ねするわけであります。この二十万人に近い精神病者がいる。これはただごとではないと思うのですね。その中にはいろんな種類の人があると思いますけれども、どちらにしてもこの事例がたくさんあちこちに起こっております。大事故を起こした、たとえば横浜の西口で、えらい混雑の中にてんかん持ちの運転手が突っ込んで、えらい事故を起こしたこともありますし、関西方面の例も出ております。そういうことがちまたに起こっているわけでありますが、この二十万人の精神病者に対して、どのような対策をお考えになっているか、お答えいただきたいと思います。
  113. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 免許保有者の中に精神病等の身体的欠格者が相当数含まれておるのではないかということで、あらゆる機会にそれを発見すれば排除していってまいりたいと思っております。従来警察官がこの疑いのある者を発見いたしまして、その発見した者につきまして、さらに専門医等の診断を受けて、精神病等の欠格事由があるということを発見して免許を取り消すという事例が、これも相当数ございます。そこで去る四月一日から、免許申請時に診断書を添付する制度を設けたわけでございますが、これは従来警察官がいろいろの機会に疑いのある者を発見しておりましたので、さらにこれを申請時に医師の診断書を添付することによって、疑いのある者の発見を容易にしたいという考え方から、この制度を設けたわけでございまして、これによって広く浅くではございますけれども、身体的欠格事由者を免許申請時に事前に排除していくという制度をとったわけでございます。これはいろいろ御批判があろうかと思います。専門医の診断書にしたらどうかという御意見もございますけれども、専門医は、御承知のように全国で非常に数が少ない、三千数百名の専門医しかおらないということでございますので、私もできれば専門医の診断書がほしいのでございますけれども、二千何百万人が三年に一度更新するわけです。それから新規の免許申請者を含めて、毎年九百万人程度のものが免許申請をすることになりますと、この数ではとうてい専門医の診断を受けるということはできませんので、やはりそういう方面の知識を持っておられる一般医師の御協力も仰いでやろうというのがこの制度のねらいでございます。そのほかに、事故を起こしたりなんかした場合に、臨時適性検査という制度がございまして、それによって専門医の診断を受けて、事後の措置ではありますが、事後に排除するという措置もあわせてやっておる次第でございます。
  114. 小濱新次

    ○小濱委員 なるほど、三カ月前に新しく施行規則が出ました。それによりますと、今度からは精神病、アル中、てんかん、精神薄弱、麻薬などの中毒者でないという医師の診断書が必要になる、こういうふうに書いてございます。しかし精神鑑定の資格のある医師は、獣医と歯科医、これ以外はだれでも書けるのだ、こういうふうに書いておるわけであります。この点間違いございませんか。
  115. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 いまの医療制度から申しますと、国家試験に合格した者は医師になっておりまして、その国家試験には精神病等の者も含めた試験を行なっておるということでございまして、当然精神病等その他法律規定しております一般的な欠格事由につきましても知識は持っておられる、一般の医師といえども持っておられるという前提に立っての処置でございます。
  116. 小濱新次

    ○小濱委員 きょうも何百カ所の試験会場で何万人の人かが試験を受けておるわけであります。その人たちは、その医者から精神鑑定のついた診断書をもらって試験会場に行くわけです。先ほども話がありましたように、とにかく一千万からのいろいろな事故が起こる、そしてその責任を感じなくてはならない私どもが、こうやって一つの法案について質疑を行なっておるわけでありますが、どうしたならばこんな事故が未然に防げるであろうか、こういうことでいろいろと努力をした結果、今度の新しい法案が出た、事故防止のための法案である、このように私どもは理解をして協力をしておるつもりであります。その事故内容を掘り下げて探求してみますると、いろいろな問題がありますが、その一つにこの精神鑑定の問題があったわけであります。そこで、その医者はどういう内容あるいは基準の上に立って精神鑑定を行なっているのであろうか、こういう心配も出てくるわけでありますが、非常に経験の深い、内容の詳しい交通局長でありますから私はお尋ねするわけでありますが、その点について知っているところをお答えいただきたいと思います。
  117. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 免許申請時に診断書を添付する制度につきましては、一般医師でそういうことができるかという御批判が従来からもあるわけでございますが、先ほども申し上げましたような理由でこういう制度をつくったわけでございます。お話しのあったように、事故原因になっておるものをできるだけ事前に排除したいという配慮からこの制度をとった次第でございますが、現在まで実施しておりますが、その間に若干、一般医師といえどもこの欠格事由を発見をいたしまして、確かにそういう診断をしてきている事例も出てきております。こういうことでございますので、私どもが期待いたしました広く浅くという効果が漸次出ているものというふうに考えておる次第であります。
  118. 小濱新次

    ○小濱委員 試験場の近くにある医者が、一枚五百円ぐらいで乱発しているという事実があるのです。それから診療所等では何か五十円ぐらいでこの診断書を書いてくれる。町によってはまた二百五十円ぐらいのところもあるようであります。こうした乱発している事実を局長さんは知っているかどうか。
  119. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 保健所等でこの診断書の料金が一般医師に比べて安いということは確かにあろうかと思います。したがって、大体日本医師会のほうでこの診断書を発行する料金につきましては一応の指導をされておりまして、標準の診断書料金があるわけでございますが、やはり若干価格の高低はあるようでございます。そこで、乱発しているという事例につきましては、私どもはあくまでこの制度は医師の良心を期待しておるわけでございまして、そういう期待のもとに実施しておりますので、かりにそういう事例があるといたしますれば、まことに遺憾だというふうに考える次第でございます。
  120. 小濱新次

    ○小濱委員 設備もないのにそんなに簡単に鑑定が下されるということは、まことに危険だと思うのです。また、でたらめともこれは言えると思うのです。いろいろと調べてみますると、精神鑑定なんというものはそんな簡単なものじゃない。あとでもまたその事例をあげたいと思いますが、二カ月も三カ月もかけて、しかも一万円以上の診察料をかけて初めて精神鑑定はできると医学会が発表されております。反論してきております。そういうことがあるにもかかわらず、いまお話しいたしましたような内容で発行されているとするならば、これは乱発といわざるを得ないと思うのです。そういう事実を局長は知っているかどうか、こういうふうにお尋ねしたわけであります。その診断書を取りに来た、医者がそこで設備もないのに簡単にいわゆる乱発方式で診断書をつくって本人に手渡す、そういう簡単なものであるというふうに聞いているわけですが、この点も御存じでしょうか。
  121. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 この制度は、御指摘のように専門医が十分時間をかけて診断をするということが理想だと思いますけれども、私どもがこの制度で期待しておりますのは、一般医師による問診ということを期待しておるのでございまして、これは御承知のように理容師法とか調理士法とか医師法にもありますが、その他これらを含めまして十九種類ばかりの法律で、これと同じような制度をとっておるわけでございまして、その際に、やはり問診ということを前提にしてすべてできておるわけでございます。その程度のいわゆる問診ということで広く浅く疑いのある者を発見していく、いろいろの専門的な知識によって疑いのある者を発見していくということで、疑いが出ればそれを専門医師のほうに回して精密な検査をするということだと思うのでございまして、そういう非常に厳格な専門的な診断を期待しているわけではございませんので、そういうことでありますので、ほかの十九種類に及ぶ法律規定したのと同様な考え方でございます。ただ、運転免許者の数が非常に多いものですから、その数との関連においていろいろ問題点が浮き彫りにされたと思うのでございますけれども考え方としては同じだと思うのでございます。
  122. 小濱新次

    ○小濱委員 麻薬中毒患者をどうやって見分けられるか、それからてんかん持ち、精神薄弱者、精神病患者、非常に健康体に見えるときもありますが発作を起こす、(「心筋梗塞」と呼ぶ者あり)そういうこともあります。とにかく、もう私どもが押えることができないような力を出してあばれ回るというような場面にも直面したことがありますが、こういう人たちがいま二十万人、局長のことばですと約二十三万人おられるということでしょう。そこでその人たちは、はたして免許証をとってからそういう病気にかかった人であるか、あるいはまた簡単な乱発主義でお医者さんが発行された診断書によって、それ以前からそういう病気を持った人がその後免許証をとった、こういう人もいるかもしれぬ、そういう点でこれからの対策を考えていかなければならないかと思って質問をしているわけであります。たとえばお医者さんが、この人は精神異常者だな、こう見きわめたときにおいても、その自動車免許証取得に来た人、その人に、不適格者であるという診断書を渡せるかどうかですね。これを渡すこと自体は非常識であると思いますけれども、医者とすれば人情で、あるいはまたいろいろな関係でやむにやまれず渡すかもしれませんが、そういう点、私どもは非常に疑問を持つわけであります。こういう掘り下げた問題もよく御存じであろうと思うので、そういう事実があるかどうか、御存じかどうか、この点に対する考えを聞かせていただきたいと思います。
  123. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 この制度につきましてはいろいろな御意見があろうかと思います。そこで、私どものほうといたしましては、これで一応、先ほど来申し上げておりますように、これなりの効果があがるということを考えておったのでございますが、なおより効果的な方法があれば、それに移行することにやぶさかでないわけでございまして、現在、日本精神神経学会と警察庁との間に両者から委員を出しまして、道路交通と精神異常に関する対策協議会というものを設けまして、事前にこういう身体的欠格者を排除するためにさらによりよい方法があるであろうか、それから事後にはどうしたらいいだろうかというようなこともあわせて検討をしておりますので、現在のこの制度よりもより効果的なものがあるといたしますれば、それに移行することについてはやぶさかでないわけでございまして、いろいろ御意見をお聞きしまして参考にしてまいりたいと思っております。
  124. 小濱新次

    ○小濱委員 このことはまことに違法性をはらんでおる、このように思うわけであります。精神鑑定が十分や二十分で見分けられない、これはもう当然であります。そのことが、できないことが当然であることが行なわれているということは、これは先ほども門司委員が話をしておられ。ましたが、その懸念される責任はやはりその衝に当たるもの、これは政府の責任である、このように言っておられましたが、やはりこの問題の衝に当たっている警察の責任も追及されなければならない、こう思うわけです。そうした問題が起こっているというこの事実、これは医師法に医者自体が違反してはいないかどうか、この点についてもう一度お答えいただきたいと思います。
  125. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 この制度によって医師が診断書を書くことにつきまして、医師法に違反しているとは思っておりません。
  126. 小濱新次

    ○小濱委員 先ほどから申しているように、二十万人の人たちが精神異常者であるわけですね。これはもう免許証をとる前からの人も中にはいるだろうと思うわけです。そういう人たちにも乱発されているという、その事例がいろいろ載っておりますが、そういうことを通して、私はいま医師法に違反してはいないか、こういうふうにお尋ねをしたわけですよ。まあそれは局長の立場でありますから、いまのような御答弁以外にはないと思いますが、中にはお医者さんでも非常に間違った心がけの人もおるようです。にせの診断書での拘置執行停止になって釈放された。にせ診断書が出されていって釈放されたり、これも新聞に出ておりますが、こうしたこと、あるいは一時釈放中の暴力団が偽りの診断書で延期、診断書を発行した医師は罪に問われている事件、こういう事件があるわけです。これは内容は違っていても、違法性の可能性については免れない事実である、こう思うわけですね。そういう点で鈴木局長さん、もう一度お答えいただきたいと思います。
  127. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 お話のような事例につきましては、やはり問題だと思います。当該医師が故意または過失によって偽りの診断書を書くということになりますれば問題だと思いますけれども、私は、一般論として、診断書を書くことが医師法に直ちに違反するということではないというふうに申し上げたわけでございます。  なお、先ほど来からいろいろ御意見の中に出てまいります二十数万人という数でございますけれども、これは厚生省の全人口に対する割合から一応推定をして、あるいはその数をそのまま当てはめればそのぐらいな数がおるかもしれないということでございまして、私はやはり免許をとろうとしている者が明らかに精神病者であれば、家族も知っておりますし、そういうことで、その数はよほど少なくなっておるというふうに考えております。それを医師の診断によりまして、さらに疑いのあるものを発見していくための制度であるということでございます。
  128. 小濱新次

    ○小濱委員 また蒸し返すようになりますが、あなたは先ほど二千三百万人免許を持っている人がいる。新聞には二千二百万人と出ております。それから精神異常者はあなたは約一割、二十三万人、新聞には二十万人と出ておる。それから先ほどお話があったように、一千万件、そのうち五百万件は注意を与えて、そして許している、こういう話がありました。これはもう数字がでかいし、推定、確証のない数字であるということはわかります。でも、みんな近いですね。二千二百万人と二千三百万人、二十三万人と二十万人、こちらは警視庁発表と、こう書いてある。  こういうことですが、私どもはもう事故をなくしていかなくちゃいけない、人間尊重、人命尊重という総理のあの方針どおり、あるいは一億国民総ぐるみの運動を起こしていかなくちゃならない、こういう精神に立っても、私どもは何とか一つ一つ、もうシラミつぶしのように問題を処理していかなくちゃならない、こういうふうに思っているわけなんです。局長さんも、一番詳しくその衝に当たっておられる方なんで、ひとつもう少し真剣にこのことをお考えいただき、また答弁をしていただきたい、こういうように思うのです。で、いまのような局長の答弁であるならば、これは精神鑑定、診断の制度自体、医師に対して警察が法律を犯すようにさせていることになるんじゃないか、私はこういうふうに考えられるわけです。問題が問題であります。慎重にひとつ考えていかなくちゃならない、こういうきびしい質問をしなくちゃなりませんが、この点についてお答えいただきたいと思います。
  129. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 免許保持者の中に相当数の身体的な欠格者がおることを前提にいたしましての制度でございまして、精神病等につきましては、できれば私どもは専門医の厳密な診断を受けて、申請書にその診断書を添付させたいわけでございます。しかし、そういうような制度をとりますことにつきましては、非常に多くの免許保有者の方方に非常な経済的負担もかけるということになりますしいたしますので、先ほどから申し上げておりますような問診という一つの方法で、広く浅くという考え方で、他の法律にならってこの制度をとったわけでございまして、できれば私どもは厳格な、厳密な診断をした上でそういう身体的な欠格者を排除したいということを考えておるわけでございます。
  130. 小濱新次

    ○小濱委員 順法精神に最も忠実であるべき警察が、このような違法性を含む制度を出しているということは許せないと思うのです。そういう点で、いま局長のお答えをいただいたわけでありますが、まだお答えの中に、私はほんとうに実情を知っていないのだなあ、また衝に当たる者として、私のほうの感じでありますが、まだまだ真剣さが足りないのじゃないか、こういうふうにことばの中、態度の中から感じられるわけであります。  もう一つあります。これは大阪の北野病院の神経科の部長さんの発表であります。これによりますと、精神鑑定は、まず第一に、本人のほかに必ず家族の来談を求めなければならない。あるいはまた、原則として前歴を知っている子供のときからのかかりつけの医師に書いてもらうべきである。書きかえの場合は三年間の事故歴が記入されている現在所持の免許証を提示させる。無事故ならまず安心。疑わしいものは徹底的に調べる。脳波、心理学的検査、経歴調査、職場の長、同僚、親族の証言などを参考にする、ここまでやらなければ精神鑑定はできない。あるいはまた、二カ月あるいは三カ月の通院と一万円以上の診断料を受けなければ精神鑑定は絶対できない、こういうふうに反論しているわけです。これがほんとうの精神鑑定書の書き方だということです。ところがいまはそうじゃない。獣医と歯医者以外はだれでも書ける。設備もないところでどんどん乱発をされて、全国できょうも何万人という人がその診断書を持って試験場に行っている。こういうことが、今後また交通戦争が非常に激しくなるであろうそういう前途に暗影をもたらすわけであります。そういう点でいまから策を立てていかなくちゃならない、こう思って質問を申し上げたわけであります。長官、こういうわけです。そこで長官としては、いまお聞きになったような内容でありますが、どのように総体的にお考えになっておられるか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  131. 新井裕

    新井政府委員 御指摘のように、この精神鑑定あるいはその他の欠格事由の診断書を添付させるという問題が、あまり完全な制度でないことは私どもも十分承知いたしております。前から、こういう危険な、スピードのある自動車を運転する者が精神病者であったり、てんかん持ちであっては困るということで、各方面から強い御要望もあり、国会からも強く指摘されておりまして、不完全であっても、しかし一歩前進ではないかということで採用いたしましたので、ただいま御指摘のような欠陥があることは承知しております。また医学界からもこれについて、このまま放置することはできないという強い要望がございまして、私どもも、お医者さん自身がそうやって熱心になっていただくことはもちろん望ましいことでございますので、先ほど申し上げましたように、精神医学の専門家とわれわれとが少なくともことし一ぱいかかりまして、いま私のほうの科学警察研究所で開発しております診断の方法などをも含めまして、より確実な方法を生み出すように努力をしてまいるつもりでございます。  それから、先ほど交通局長からお答えがありましたうち、いまお尋ね趣旨とまさにそのとおり、不用意な答弁をいたしましたので、私から訂正をいたしておきますけれども、お医者さんが故意で気違いと知りながら診断書を書くということは、これは犯罪でございますけれども、過失によってやるということは、私はこれは問擬すべきではないと思っております。これはただいま申し上げましたように、たいへん不完全なことで、要するに相手方の申告をもとにいたしまして書くということを前提としておりますから、一般に非常に非常識だと思われるものでない限りは、問診、あるいはいま御指摘にありましたように、新聞等に投書がございましたけれども、自分は精神病の専門医ではないけれども、自分にかかりつけの患者ならば間違いなく診断をしてみせるというお医者さんの言明もございますし、そういうことを前提として考えておりますので、大部分の場合はこれで間違いないんじゃないかと思っております。お医者さんに言わせると、一%ぐらいしか欠格者はいないんだ、だから九%当たるのはあたりまえだ、こういう御意見もありまして、ごもっともだと思うのでございますけれども、国民が全部そういうことで心配をしておる際に何にも手を打たないということでは申しわけないし、警察官がやるよりはお医者さんがやるほうがずっと信頼性があるだろうということでやっておりますけれども、御指摘のように、決して完全ではありませんで、医師会側の積極的な協力がございますので、この一年ほどの間にはきっと数歩前進したいい制度がとられるんじゃないかと思います。  それと同時に、私は、御指摘のような精密な鑑定というものはすべての免許の申請者に全部課するというのは不均衡だと思います。やはりある程度の事故を起こした者をつかまえまして、それを契機に精密に鑑定をするというのがやはり均衡のとれたやり方ではないかというふうに思っております。申請者の経済的な負担もございますので、ここいらも考えてやりたいと思いますけれども、お医者さんにしいて責任を全部負わせるなどという料見は毛頭ございません。許可をするのは公安委員会でございますから、われわれが許可については原則として責任を負うべきものだと思っております。
  132. 小濱新次

    ○小濱委員 最後に国家公安委員長お尋ねいたします。  いまお聞きのとおりでございます。したがって、このような形式的な制度は無意味であろう、そのように私ども考えるわけであります。それは健康体の人に対してはやはり簡単な診断書を書くということは、これは望ましいことです。しかし、これからどういう人がどこまで、その問題の人が発展していくかわかりません。そういう前途を考えるならば、これはこのままこの制度を続けていいのであろうか、続けるべきかどうか、非常に疑問を持ってくるわけでありますが、ひとつ公安委員長のお答えをいただきたい。
  133. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 まず第一に、先ほど来お話しになっております運転免許者の中に二十万程度の精神病者等がいるのじゃないか、これはあくまで推定のことでございますから、おそらくもっと少ないと思います。実はそれの大部分というものは、従来こういう診断書もつけてないで運転免許を受けた者が大部分なわけでございます。したがいまして、この診断書添付の制度をとりましてから、しかも診断書には正常なものでありながら、精神病がいたというようなことにつきましては、これはまだ四月に始まったばかりでございまして、的確に把握はできないのではないかと思います。いずれにいたしましてもこういう精神病者等は免許を与える前に排除することが妥当なわけでございますので、そういう意味においては、やはり警察官等ほんとうに医学に何らの知識を持たない者よりも、少なくとも精神病についても、専門家ではなくても基本的な基礎的な教育を受けておられる医師の診断書というものが、警察官がそれを勘でさがすよりももっと的確ではないかということで、この制度をとったわけでございます。少なくとも一%の精神病者をさがすために九九%の申請者の方々に非常に重い負担をかけるということは、これはいかがかということでございます。したがいまして私は、この方法は一歩前進という意味においてお認めをいただきたいと思うわけでございます。  既存の免許者につきまして、それの中におる精神病者の発見その他につきましては、あるいは交通取り締まりその他におきましてできるだけそれを発見して、そうした危険なドライバーを排除するという方法はとっていかなければならぬと思います。で、四十四年から始めますポイントシステムのことができますならば、その運転者の事故歴というものが一目でわかるようになりますから、その中の特殊な者についてはそれは正確な専門家による精神鑑定もやるというようなことで排除をしてまいりたいと思う次第でございまして、いずれにしましても、できるだけ精神病者を事前に排除するという意味におきまして、一歩前進としてのこの制度であることを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  134. 小濱新次

    ○小濱委員 長官にお尋ねいたします。  この間参考人の方がおいでになったとき、川口の市長が申しておりました。国道における事故が四%増加した。それに比べて県道、市道は二七%——たしかそうであったと思いますが、その激増に対して理由を参考のためにお聞かせいただきたい、こういうように申し上げましたならば、きょうは国道はどこそこで何時から何時まで検問を設けているということがわかったので今度はこっちへ回ってくるので、こういう事故が起こるのです。そういうことで大きな差ができているわけですね。この場合、国道でやっている場合には県道と市道にはどういう手を打たれるのか。非常に事故発生件数が多いので、この点に対する対策も必要であると思うわけでありますが、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  135. 新井裕

    新井政府委員 どこの道でも大体は大通りを自動車がいままで通っておりましたけれども、いま御指摘の取り締まりだけでございませんで、右折禁止、左折禁止という規制がございます。そういうものをやりますと小さい裏道に自動車が入るというのが、いまのちょっとした都市及びその近辺ではだんだん共通の現象になりまして、したがいまして、私どもとして一番やらなければなりませんことは、川口の市長さんの設例でいえば国道の規制あるいは取り締まりと同時に、裏道である県道、市町村道の規制なり取り締まりも並行して行なわれなければならないということでございます。市長さんはわかりやすく取り締まりのことだけをおっしゃったようでありますけれども、実は規制とも関係がございまして、たいへんむずかしい問題であります。  一番被害を受けているのは実は埼玉県でございまして、ほかの県も大なり小なりそういう事情はありますけれども、埼玉県が東京の近郊であるためにそういう点では一番しわ寄せを食っておる。したがって、警察官が足りないために裏道まで十分な取り締まりの手が及んでないという実情でございますので、われわれとしても、お認めをいただきました増員の配分につきましては埼玉県に重点的に配置して、そういう裏道までも手を回せるようにしたいというふうに思っております。それと同時に、先ほど来いろいろ問題になっております安全施設なり、われわれのほうでいえば信号機等の整備をこの際そういう道にも及んでやっていかなければならないというふうに考えております。
  136. 小濱新次

    ○小濱委員 その点についてはこれで終わります。  一つ国家公安委員長お尋ねしたいと思いますが、激増する交通量によって起こる交通麻痺、交通事故の多発は交通戦争ということばを生み、その安全対策は、人種、国境を越え、人間の大きな悲願となっている。しかるに交通事故は増加の一方であり、先ほども話が出ましたけれども、非常に責任のある立場に置かれているわけでありますが、当然公安委員長としては交通事故防止対策をもっと真剣に考えなければならない、こういうふうに思います。一生懸命やられてきたことはわかりますが、より以上いろいろときびしい批判の声にこたえて戦っていかなければならないわけでありますが、この際公安委員長の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  137. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 交通事故防止につきましては、これはもう各方面が一致してやらなければならない問題でございままして、まず第一に道路の整備をしなければならぬ、あるいは歩行者の安全施設をさらにさらに充実していかなければならないという問題もあろうと思います。あるいはまた、運転者並びに歩行者の交通に関する教育の問題もあろうと思います。また私ども警察としては取り締まりと指導ということだと思うのでございますが、そういうものがすべて整って、均衡のあるやり方をしなければ、どうしても交通事故は防止できないと思います。そういう意味におきまして、政府といたしましては、これら関係各省が一体となりまして、そうした問題の解決に当たっておるわけでございます。  まだまだ、道路の整備にいたしましても、歩行者の安全施設にいたしましても、不十分な点もございます。これらは至急にさらに検討を重ねて、十分に充実していかなければならないものと思います。また、私ども警察といたしましては特に指導に重点を置きまして、事前に交通事故を防止するための努力をさらに重ねていかなければならないと考えております。
  138. 小濱新次

    ○小濱委員 御意見はよくわかりましたが、いろいろとちまたでも真剣にこの問題を考えているようでありますし、この辺でやはり長期的な構想を示していかなければならない一つの時期を迎えていると思います。そういう点でこの前もビジョンとか抱負とかいうことばもございましたけれども、何か抱負、意見、そういうお考えがあったならばこの際お聞かせいただきたいと思います。
  139. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいま申しましたように、各般の施設あるいはさらにいえば、たとえば自動車の構造等についてのいわゆる通産省の指導等も、安全施設についての問題もあろうと思いますが、いずれにいたしましても、道路につきましては、御承知のように新道路五カ年計画、六兆六千億の計画をつくりましたし、歩行者安全施設については三カ年計画をつくりましたが、この三カ年計画ではまだまだ不十分だと思います。反則金をこういうのに充てるについての門司さんのいろいろな御批判はありましたが、市町村あるいは都道府県の単独事業としての歩行者安全施設というようなものもさらに充実していかなければならないわけでございまして、要は、根本は道路でございますが、道路そのものの整備といいましても、六兆六千億ではたして激増する自動車に対応できるかどうかということについては、さらに検討していかなければならない問題があろうと思います。そういうことを施設の面におきまして充実すると同時に、やはり運転者あるいは歩行者の交通安全に関する教育も充実し、また取り締まり面におきましても、先ほど申し上げましたように、未然に事故を防止するという態度でもって、そうして国をあげて取り組んでおりまする交通事故対策の中で、政府としてやらなければならない問題を早急に解決していくことが最も必要であると考えております。
  140. 小濱新次

    ○小濱委員 反則金の問題でいろいろと伺ってまいりまして、質問も相当出ましたので、理解を持っておりますが、今度逆に被害者の救済対策も考えていかなくてはならないと思うわけです。  私は車は運転したことはありませんが、自動車損害賠償責任保険の制度があるそうです。これが加入は義務化されながらも、まだ二〇%あるいは三〇%の未加入者があるという話を聞いておりますが、この点はどうでしょうか。長官、お答えいただきたいと思います。
  141. 亀山孝一

    亀山委員長 小濱君、これは運輸省の問題ですが、政府委員がおりませんから……。
  142. 小濱新次

    ○小濱委員 そうですか。失礼いたしました。  私ども交通事故だという知らせを受けます。まず第一に相手を聞きますが、どうだ、保険はあるか、こういうふうに聞くわけですね。そうすると、保険がないとなると、これはまたあとえらい問題が起こるわけです。そういう点で、ひき逃げされて何ら救済されない、そういう人たちに対する政府補償ということも考えていかなくてはならないわけですが、この点については、公安委員長、どういうふうにお考えになっておられるでしょうか。
  143. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 自動車損害賠償責任保険に関連してのお尋ねでございますが、あれは保険をかけましてそれを国家が再保険をやっておるわけでございまして、そういう意味におきましては、やはり国家が関与しております。いまの限度額の問題は、いろいろあります。今回は百五十万を三百万に引き上げようという企画でございます。もし三百万に引き上げられましても、それでは現在の人間の価値からいいまして十分とはいえないと思うわけでございます。  いまの、二割以上保険に入ってないのがあるという御指摘でございましたが、私の記憶ではそんなにはないように思っております。ただ、新しく昨年からつけ加えられましたバイクの小型のやつにつきましては、これはまだまだ十分に把握されていないように私も承っております。  いずれにいたしましても、こういう保険制度は加入者の負担も考えなければなりませんけれども、こういう保険制度を拡充いたしてまいりまして、そして、できるだけ被害者の保護になるようにつとめていかなければならないものと考えております。
  144. 小濱新次

    ○小濱委員 御答弁いただきまして感謝いたしますが、あと、ひき逃げされて何ら救済されないそういう者に対しての政府補償の充実ということで、公安委員長にもう一ぺん伺いたいと思います。
  145. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 私の記憶に誤りなければ、ひき逃げされた方についても自賠法の適用があって、保険が受け取れるような道が開かれておると記憶いたしております。
  146. 小濱新次

    ○小濱委員 とにかく加害者、被害者、この問題が起こって、よく相談を受ますが、現実的には泣き寝入りになっているような事件も相当あるわけです。そして、しかたがないといって、あきらめ切って、生活保護なんか受けている人がおりまして、これは問題だ、こういうようにわれわれは感じておるわけであります。いま委員長の言われたようなそういう確信のある内容であるなら、これからは心配ないであろう、こう思いますけれども、やはり反則金の問題とあわせて、この被害者に対する救済対策も一応は考えていかなくちゃならないのではないか、こういうふうに考ておるわけです。  最後に、もう一つだけお聞きしたいのでございますが、この前、本会議でうちのほうの松本議員が御質問いたしました。そのときに、総合的に交通安全を研究するための交通安全研究センターですか、こういうものを設置する考えはないかどうか。このことに対して総理大臣は、「研究センターという御提案がございました。私は、確かに、この事故防止研究センター、これは一つ検討すべき御提案だ、かように思っておりますので、十分ひとつ御意見も伺いながら、さらに掘り下げてみたいと思います。」と答えていただいたわけでございますが、この点については公安委員長はどのようにお考えになっておられるか。最近、町中でもいろいろとその問題が起こっております。交通科学研究センターの構想、あるいはまたこれに類似するような内容、組織体系と予算等、全部詳しく書いたそういうもののパンフレットが出ておりまして、私どももそれを読むたびに、これは時だな、一日も早くやはり政府でこういう問題は取り上げて対策を練っていかなくちゃならないが、幸い今度総理大臣からあのような御答弁をいただきましたので、本委員会でもひとつ取り上げ、国家公安委員長の御意見も伺いながらこれから大いに進捗を見ていきたい、こういうように思いますので、最後に、お答えいただきたいと思います。
  147. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 現在の交通事故関係の研究をいたしておりますのは、警察庁の科学警察研究所あるいは建設省の土木研究所、それから運輸省の船舶技術研究所、通産省の工業技術院の機械試験所、労働省の産業安全研究所などがございまして、これらの点につきましては非常に密接に、たとえば交通安全という問題については、これら研究所が密接な連絡をとりながら研究を総合的にいたしております。しかしながら、そうしたものをさらに総合して交通科学研究所というようなものをつくったらどうだという御意見が、相当詳しい内容によっていろいろ論議をされておることはただいま御指摘のとおりでございます。はたしてそういうことがいいかどうかという問題につきましては、交通行政の一元化というような問題もありまして、いろいろ検討を重ねなければならぬとは思いまするけれども、今後科学技術庁等と十分連絡をとりまして、そうしたものがはたして効果的なセンターになり得るかどうかということを研究してまいりたいと思います。  それから、よけいなことをつけ加えて申しわけないのですが、先ほどの保険の問題に関連いたしまして、御承知のように、自賠法には自家保険という、相当台数を持っておる営業車には自家保険を許しております。この点がいつもよく問題になる。いわゆる会社の事故係と被害者の方のいろいろな力関係や何かです。でありますので、こういう点では今回やりました交通相談所というようなものを拡充いたしまして、こういう被害者の保護にさらに万全を期したい、かように考えております。
  148. 小濱新次

    ○小濱委員 以上で終わります。
  149. 亀山孝一

    亀山委員長 次に、林百郎君。
  150. 林百郎

    ○林委員 大臣にお聞きしますが、反則金制度ですね。これは交通事故を防止するためにやるのですか、それとも、提案理由にあるように、大量に発生する自動車の交通違反事件を迅速かつ合理的に処理するために設けるのですか。どっちですか。
  151. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 交通事故防止目的をもって大量に発生する道交法違反事件を「迅速かつ合理的に処理するため、」ということでございまして、あくまで最後の目的交通事故防止ということでございます。
  152. 林百郎

    ○林委員 どうして反則金制度交通事故防止になるのですか。罰金を早くとるからって、交通事故防止にならぬでしょう。罰金だか何だかそれは取る金の性格は問題はあります。私は罰金と言いますけれども、要するに反則金を「迅速かつ合理的に」取ると、どのようにして事故が防止されるのですか。
  153. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 要するにこれは現在の道交法違反のうちのこうした反則行為という範疇に入るものについてこういう制度を設けたわけでございまして、要するに道交法自体が道路交通の円滑をはかって事故を防止するという目的でございます。ですから道路交通法全体が交通事故防止のための法規でありまして、その中における反則行為というある範疇を設けて、これについてはできるだけ迅速に、また運転者にたくさんの日時をかけるようなことのないようにしていくということでございまして、道交法自体がいわゆる交通事故防止目的としているものでございます。
  154. 林百郎

    ○林委員 言うまでもなく、道交法の中にはそういう交通の安全を確保するための条文と、それからそれに違反した者の処罰に関する規定とあるわけですよ。そういう道交法違反した者の処置に関する法規、それに関する部分を敏速にやるからといって、どうして事故が防げることになるのか。それは理屈にならぬと思うのですよ。要するに交通事故の全責任が、いかにも交通労働者、労務者にあるようにして、それを取り締まれば交通事故が防げるような、そういう一般の人の関心をそっちへそらす意図があるんじゃないかというように私には思われるわけです。  そこで問題は、今度の改正案に非常にいろいろ問題がありますので聞いておきたいわけなんですけれども、これが行政的な行政罰になるかあるいは司法刑罰であるか、いろいろ論議はありますけれども実際の取り扱いとして、これが一定期間内に納められないと、そのときに刑事手続に移る、こういうことになっているわけですね。そうするとこれが一定の期日に反則金を納められなければ、そこで初めて検察官が起訴手続をするのですか。
  155. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 通告いたしましてから一定の期間に納付されないときには、警察官が検察庁に事件を送致いたします。
  156. 林百郎

    ○林委員 だから事件を送付すれば必ず検察官は起訴しなければいかぬですか。御承知のとおり、検事には起訴の便宜主義があって、事情によっては起訴しないこともできるわけでしょう。ところが反則金に関する限りは、期日に納めないからといって警察官から送付されれば、検事は必ず起訴しなければいかぬですか。
  157. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 当然そういうことになろうかと思います。
  158. 林百郎

    ○林委員 それじゃ刑事訴訟法で規定されている検事の便宜主義を、警察官が左右することになるのじゃないですか。
  159. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 私は質問の要旨を間違えましたが、警察官が検察庁へ送致いたします。そういたしますれば、検察庁は当然これを起訴するということになろうかと思います。
  160. 林百郎

    ○林委員 あなたは何を言っているのだ。いいですか。検事は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」とあるのですよ。これは刑事訴訟法の第二百四十八条です。反則金が、検察官に書類が送付されたときに、これが適用になるかどうかというのですよ。
  161. 新井裕

    新井政府委員 おっしゃるとおり、起訴便宜主義を否定するものではございません。
  162. 林百郎

    ○林委員 それじゃ一方では納めた者のほうが損をすることになるのじゃないですか。場合によって、納めなければ便宜主義によって不起訴になるものを、納めた者は必ず罰金というか、そのときには反則金ですけれども反則金を取られることになる。反則金を納める者のほうが法律的な保護を受けないことになってしまうのじゃないですか。そんなことができるのですか。
  163. 新井裕

    新井政府委員 この制度そのものがそういう点の可能性を包蔵しておりますので、そういう制度になります。したがいまして、その反面、納めないために、より高い罰金を受けるという可能性もあるわけであります。
  164. 林百郎

    ○林委員 そんなことを私は言っているのじゃないですよ。便宜主義によって不起訴になるという法の保護が刑事訴訟法にはちゃんと与えられているのに、その刑事訴訟法のその文句を必ずしもとることがない場合が、これでいくとあり得るのじゃないか。納めてしまうと納めっぱなしになってしまうでしょう。それをもし納めなくて検事の手に移れば、不起訴になる場合もあるわけでしょう。そうすればなるべく納めないで、検事の手に移れということを奨励したほうがいいのじゃないですか。ところが警察官は自分で通告処分をすれば、人情として納めろよということになるわけでしょう。もし納めなくて刑事裁判の手続になれば、必ずその通告処分をした警察官は証人に出てきますよ。これはもうあなた方知っている。自分が通告したものを納めなくて、そして裁判をやった。それじゃひとつ情状を、自分の胸の晴れるようなことをやろう、これは警察官だって人間ですから、そうするとあなたの言うように、反則金よりは重い刑罰がそういう場合には起きますよ。警察官の個人的な感情でそういうことがあり得るわけです。本来この訴訟手続というものは、検事が起訴して裁判所が判断する、こういう手続は何人も奪われないということは憲法で保障されているのですよ。それがこんなあいまいな、納めれば反則金だ。裁判所なら罰金だ。それは国税犯則取締法にも何かあるとかなんとかいいますけれども、しかし、あるからといってこれが許されるということではない。そういうことは、憲法に保障されているそれぞれの人たちが法律の手続によって裁判を受けるということを制限することにならないか、こういうふうに思うわけなんです。それでは、その点、あなたと最高裁の刑事局の方もお見えになっていると思うのですけれども、こういうあいまいな、行政罰なのか罰金なのか、裁判の判決の結果ならば罰金にもなり得るという、こういう制度を許していいのかどうか。しかも、警察関係者ですら、これは正直な気持ちを言ったと思うのです。これは検事に送れば、検事は必ず起訴します、これがほんとの気持ちですよ。反則金を期日内に納めないから、警察官が書類を送れば、検事がこれを不起訴にしますということは、警察のほうの側としては考えていないと思うのです。そうすると、結局実質的には起訴権を警察官に与えたことになるんじゃないですか。略式の公訴権を警察官に与えたようなものになるんじゃないですか。こういう制度を一警察官に与えるということが、憲法やそのほかの法律によって民主的な権利が守られているたてまえからいって、許されるものかどうか。もう一度、警察側と最高裁の側に聞きたいと思うわけです。
  165. 新井裕

    新井政府委員 最初から警察官は感情的に何でもやるんだという前提のお話でございますけれども、私どもはそうは考えておりません。いまでも現場の手続は切符制度でやられていることは御承知のとおりでございまして、その者が検察庁及び裁判所によってどういうふうに取り扱われるかということはいまと全然変わりがないと私は思います。したがいまして、この制度に対するいろいろな御意見でございますけれども、私どもはいまよりそんなに被告側の権利を侵害するということにはならないと思います。ただ、当初、御指摘のように、任意とはいいながら、ある程度の事実上の強制力を持ったと思われる反則金を通告して納付させる制度が、憲法上の条項に触れるか触れないかということについては、われわれもいろいろ研究いたしましたし、この間参考人からも御意見がありましたように、私はいまの法律の手続に従ってやる限りにおいて、憲法の条項には違反しないというふうに考えております。
  166. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の点でございますが、私どもは、昨年五月の下旬に、警察庁でこの要項を発表になりました後、検討してまいったのでございまするが、反則金の性格及び通告というものの性質はいかに考えたらいいかということで、かなりそこのところの検討に実は時間を要してしまったのでございまするが、やはり先ほど来お話が出ておりますように、反則金の納付というものが形式上は任意であるということでございましても、任意という意味が、反則金を払ってもよし、払わなくてもよしという任意というふうに必ずしも言えないという面があるように思うわけであります。むしろ反則金を支払うか、それをやめて刑罰を甘受するかどうか、その二者の選択の問題が起きはしないか。そうなりますと、はたしてそれが純然たる任意ということが言えるかどうかということから考えてきたわけでございます。裁判段階になりますと、もはや反則金を支払う機会はないわけであります。そういうようなことを考えますると、やはり全体的にながめて見ますると、通告というものが、その処分性と申しますか、行政処分と見得る余地がかなり出てくるのではなかろうか。内閣の御説明のとおりにいろいろな説明のしかたも可能かとも思いますが、これはやはり一つ行政処分というふうに考える余地もかなりあるのではなかろうか、かように考えたわけでございます。そこで、もし行政処分と見て行政訴訟が提起されるということになりますると、かたがた刑事手続とそれから行政訴訟とが併存していくということになります。しかもその対象は同じ違反であるということで、両者の間に手続の混乱を来たすという心配をいたしておるわけであります。そこで、この制度の中に司法的な審査の方法というものを規定したらどうかということを一つ提案として申し上げてまいっておるような次第でございます。
  167. 林百郎

    ○林委員 何だかわかったようなわからないような答弁ですが、非常に微妙な立場にあると思いますので……。  それじゃもう一つ聞きますけれども、検事の量刑は、もちろん警察が通告した反則金の額には左右されないで、検事の自由な量刑がなし得る刑事手続になっておる、そう聞いていいですか。
  168. 新井裕

    新井政府委員 検事の処分について、先ほどから申し上げておりまするように、何らわれわれの今度の制度で規制を加えるものではございません。
  169. 林百郎

    ○林委員 それから期日に納めない場合には刑事手続に移行する。かりに期日に納めるというのですが、国税犯則のほうに手続があるように思うのです。たとえば、納めたくても納められない人、あるいは一部ならそのときに納められるが、あとの金額は延ばしてもらいたいという人、あるいは一部の金でなくて、全部の金をある程度まで延ばしたいという人、これは反則金という制度を是認した上での現実的な処置を聞いておるのですが、われわれはこの反則金制度については反対ですが、その場合には納めないということで刑事手続に移行されるのかどうか、そこの弾力性というものがあるのかどうか。
  170. 新井裕

    新井政府委員 そういうことを前提として考えておりません。
  171. 林百郎

    ○林委員 そうするとあなた方は反則金制度によって敏速かつ合理的に処理して、それによって便益をはかってやるのだと言っておりますけれども、これによって違反者の便益をはかってやるといっても、金がなくて反則金を納めることのできない人は、この便益は享受されない、結局貧乏人は享受されない、おまえは裁判になるのだ、こう聞いていいですね。
  172. 新井裕

    新井政府委員 私どもはそういう論理は考えておりませんで、運転免許証を持って運転をしておる以上、歩行者その他に相当の害を与える可能性があるので、その程度の準備は当然した上で運転すべきだという前提で考えておるわけでございます。
  173. 林百郎

    ○林委員 反則金は一万五千円から一万七、八千円になるのですから、交通労働者がいつでも反則金の一万五千円もふところに入れておる人がありますか。もし会社から預かっておる金を納めたら、また会社から処罰される。適当な注意があるわけですよ。あなた、警察がそういう考え方を持っているから、警察は公正だなんてわれわれ言えないんですよ。その場で納めることができないと言ったって、たとえば期日が十日ということがあるでしょう。十日間で納めろという。一方五千円納めるのに、一万円できたけれども、あとの五千円がどうしてもできないということがあるでしょう。それを認めないということになれば、裁判に行けということがあるでしょう。(発言する者あり)それはあなた方は勤労者のことを知らないから、自民党の諸君は一万五千円がたいした金でないと思っているかもしれない。しかし、勤労者にとって一万五千円というのは大金ですよ。時によっては一カ月の賃金に該当する場合がある。もっとまじめに考えてください。  次の問題ですが、免許の百四条の一項四号ですね。公安委員会公聴会を開かなくて、要するに聴聞を開かなくて、公安委員会は、そのあらかじめ指定した医師の診断に基づいて免許を取り消すことができる、こういう条項を新たに設けましたね。これと百十四条の公安委員会事務委任がありますね。結局警察は、聴聞会を開かなくても、あらかじめ指定した医師の診断に基づいて免許停止をすることができる。免許停止じゃない、取り消しですね。こういう権限を警察が持つことになるんですか。
  174. 新井裕

    新井政府委員 委任は、取り消しについてはやっておりませんで、停止だけでございますから、いまの御質問の場合で言えば、取り消しにつきましては、従来と同じように公安委員会がやります。ただ、こういう診断の欠格事由でございますから、聴聞に及ばない。責任あるお医者さんの診断であれば、それを根拠にいたします、こういうことでございます。
  175. 林百郎

    ○林委員 それは、形式的には、警察へ公安委員会が委任するとかしないとか、法律規定しないと、実際の実務は、公安委員会は警察のやったことの報告を受けている程度ですから、それはそれでいいでしょう。そこで、この新しく百四条の一項四号を設けた趣旨ですけれども、この第八十八条の一項、二項、三項、四項というのを見ますと、要するに免許取り消しされる理由、てんかんだとか口が聞けない者、あるいは政令で決める身体の障害のある者とあるんですけれども、このてんかんなんというのだって、いろいろな種類があるわけですね。月に一回ぐらい、場合によっててんかんが起こる、あとは正常な場合もある。口が聞けないといったって、口の非常によくしゃべれる人と、あるいはどもる人がある。そういう認定を、公聴会を開かなくて、お医者さんの判断だけできめるということになると、これはまた免許取り消しですから、それで生活している者はその生活権が奪われてしまうわけなんですから。これはどうしてこういう制度を設けたんですか。
  176. 新井裕

    新井政府委員 これは、いずれもお医者さんの診断に待つべきものであり、お医者さんの診断のほうが合理的であり、科学的であるということについては、本人をわざわざ呼び出してみなくても取り消しができる、またそれが実態ではないか。たとえば引例されました、口をきけないような者について、これがほんとうに口がきけるのに、口がきけないというお医者さんの診断があるということを前提にされれば別ですけれども、お医者さんの診断を信頼する限り、そういう必要はない。それから、また、てんかんについて引例されたことがございますが、いまの道交法では、一時的なてんかんとそうでないてんかんというふうに、必ずしも区別しておりません。先ほど小濱委員からお尋ねのありました精神神経学会とわれわれとの研究でも、実はそれを問題にしよう、ある程度お医者さんの判断で、薬をこういうふうに飲んでいる限りはだいじょうぶであるという証明ができれば、そういう者も運転させたらどうか、そういう外国にも事例があるから研究したらどうかというお医者さん側の提案もございます。われわれはそういうことを将来の問題としては考えておりますけれども、ただいまのところでは、そういう身体的な欠陥の者は、そのお医者さんの診断そのものずばりで判断していいんじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  177. 林百郎

    ○林委員 御承知のとおり、憲法には職業選択の自由があり、これは何人も奪うことのできない権利だ、こうことになっているわけですね。そういう権利を、いままでは公安委員会で聴聞をしてやったという、そういう慎重な手続があったのに、何でそれをはずす必要があるのですか。永久的にその人の免許を取り消してしまうんでしょう。医者の診断そのものずばりと言ったって、医者の診断というのは社会的判断をする一つの材料ですよ。お医者さんがそんなにオールマイティーじゃないわけでしょう。こうやって警察の権限を——これは実際は察察がやるんですから、公安委員とかなんとかいったって。こういう制度をどうしても設けなければならない理由がどこにあるのですか。  それから、この条文の中にある「あらかじめ指定した医師の診断」というのは、どういうことなんですか。このあらかじめ指定した医師というのは、それぞれの専門医なんですね。さっきも小濱さんの質問にあったのですけれども、それはそれぞれの専門医を指定するのかどうか。これがいつどういう機会にその診断を出すのですか。お医者さんが、これはどうもてんかんだといって持っていけば、ああそうかで、聴聞会も開かないで、おまえは取り消すと、こういうことになるんですか。
  178. 新井裕

    新井政府委員 あらかじめ指定したお医者さんが専門家かどうかという御質問に対しましては、まさにそのとおり、考えております。
  179. 林百郎

    ○林委員 それから、どういう機会に医者がそういうものを出すのですか。出せば、あなたのほうは取り消すのですか。
  180. 新井裕

    新井政府委員 私のほうで、そういう事故なり何なりの機会にわかった場合に、そういう疑いがあれば、指定したお医者さんに見てもらいまして、まさにそのとおりであるという答申があれば、それに基づいて免許を取り消すということでございます。
  181. 林百郎

    ○林委員 それでは、あなたのほうは医者と相談するだけで、本人の意見も聞かぬのですか。そのために聴聞会というものがあったのでしょう。本人の意見は全然無視して、いつの間にか自動車の免許を取り消されることになってしまうじゃないですか。どうして聴問会をやってはいけないのですか。
  182. 新井裕

    新井政府委員 どうも、どうしてそういうふうにおっしゃるのか、私よくわからないのですけれども、お医者さんは患者を見ないで診断などをするわけはございませんので、患者の身体にもさわりましょうし、問診もいたしましょうし、疑いがあれば器械にもかけましょう。そういうことで認定をされるわけでございまして、初めからお医者さんなんか当てにならないということであれば別でございますけれども、しろうとの者が聞くよりは、お医者さんが聞いたほうが、そのほうの診断は適確である。それを重ねて屋上屋をやることはないであろう、こういう趣旨でございます。
  183. 林百郎

    ○林委員 あなた、そう言いますけれども、たとえば、耳が聞こえないとか、目が見えないとか、口がきけないといったって、絶対的に目の見えないという医者の診断なのか、あるいは夕方になれば目の視力が衰えるというのか、口は絶対にきけないのか、非常に興奮した場合は口がきけなくなるのかどうか、弾力性のある診断書が出てくるんでしょう。ここには、目が見えない、口がきけない、耳が聞こえない度合いなんて書いてないんですよ。医者だって弾力性のある診断書を出すのですよ。それは憲法やそのほかの法律や社会的ないろいろな条件から、この人から免許を取り消していいかどうかということは、社会的な判断になるんじゃないですか。そのためにいままで公聴会というものがあり、聴問会でしていたんです。今度は、その場合にどうするんですか。あなたみたいな反動的な警察庁長官がいて、何でもかんでも、たとえば労働組合運動をやっている組合員の運転手、あれはちょっとなまやるから、警察医にみさして口がきけないようにしようじゃないかということで、その診断書を取って、免許を取り消す。これは全自交の活動家だから、こうやる。私は、この次にこの材料をもとにしてやります。そんな公正、公正と公正づらするなら言いますよ。いまの警察が公正でない事由がいろいろあるからこそ、念には念を入れた制度をなぜ存置しないかということですよ。ここにただ、てんかんだとか精神薄弱とかいう点もあるでしょう。薄弱だって、度合いがありますよ。だれだって資本主義がこんなに発達してきまして、夜もろくに眠れない、労働も強化されてきて、運転者の睡眠時間は二時間か三時間という人があります。何だか電柱が自分のほうへ寄ってくる、追突した自動車がバックしてくるという幻想を持つまで疲れ切っておる。そんな場合に、医者に見せれば、精神薄弱だ、そんな診断をしないとも限らないのです。そういう手落ちがないように、常識のある人たちから、診断を一つの材料にして、冷静に見て、職業を奪う、免許を取り消していいかどうかということで、聴聞会があるわけです。それをなぜはずすか、あなたの言うことのほうが私はわからぬ。あなたは運転してかせいだことがないから、国から高給をはんでいるから、何でもないかもしれません。運転して、一家の生活を双肩になっている者が、医者と警察の相談だけで、ちょっと耳が聞こえないから、目が見えないから、お前は免許取り消すというなら、どこへ行って生活したらいいか。警察で生活の保障をしてくれますか。なぜ聴聞会をやってはいかぬのですか。もう一度答弁してください。
  184. 新井裕

    新井政府委員 どうも頭から信用されないようでございますけれども、私は、お医者さんが、そういうことで、運転をするに不適当な身体的条件であるということを専門的に観察をして結論を出せば、聴聞は必要ないということでございまして、これが最終決定にならないことは御案内のとおりです。もし御不服があれば、不服審査法もありますけれども、たとえそういうことになりませんでも、どうしても聞いてくれということをここで否定するつもりは毛頭ございませんけれども、手続は必ず経なければならないというのは、たいへん形式的ではないだろうかということで、このような専門のお医者の診断があれば、それを信頼するほうが適当であるということでやったつもりでございます。
  185. 林百郎

    ○林委員 幾度か申しますけれども、お医者さんの診断というのは一つの材料で、運転手の職業が保持できるかどうかということは、おのずから他の要因も入ってくるわけです。お医者さんは自動車の運転の経験がある人ばかりじゃないでしょう。この程度の視力ならまだ運転ができるかどうか、この程度の発言障害ならまだ運転できる、ことに口がきけなくたって、自動車の運転は口とは関係ないんですから、医者の診断を材料にして、それが運転者という職業に適当であるかどうかということは、また客観的な他の材料も加えて、総合的に判断しなければいけないことでしょう。それを運転の経験もないお医者さんの診断書だけで、警察が実質的な免許の取り消しまでするということは、形式的な手続は踏まなんでいいということは、それを形式的だと考えているその考え方自体が非常に危険なんだ。  では、たとえば、そんなに警察が公正だというならあなたは御存じかどうか知りませんけれども昭和三十七年六月二十日、例の全自交の三光労働組合の組合長の丸山君という人が、春闘の済んで次の日、子供を相手にしているところを呼び出しを受けて、ゆかたがけで出ていった。そうしたら、ある暴漢に太ももを刺され、さらに胸を二回短刀で刺され、その短刀には乳首まで着いていた、組合のほうでは、これは明らかに暴力団だ、具体的に名前まで出しております。ところが、警察はいまもって逮捕しておらない。逮捕しないどころか、この組合を弾圧するために、四十年の十月三日ですか、五百名の機動隊と百五十名の暴力団が襲ってきた。明らかに機動隊と暴力団が一致して来ているのであります。さらに昭和四十年の八月には、全員首切られております。ところが、このとき竹田という重役が三十名の暴力団を引き連れてきて、そうして中の組合事務所を襲撃して、五人ほどの組合員が二階から突き落とされて、いろいろ傷害をした。それを警察へ告訴した。ところが、警察は何にもこれを取り合わない。竹田という重役には警察から呼び出しも来ていない。ところが、このとき組合員のほうは七名が暴力をふるったということで、起訴、公判にかけられているんです。これは一例です。あと幾らでも例はありますよ。明らかに会社と暴力団と警察とが一体となって、そうして労働組合の弾圧に一役買っておるんです。そうしていかに労働組合が警察へ言っても、労働組合の言う言い分は何ら反能がない。人の目の前で一人殺されておるんです。十分あとにジープが来ているんです。それなのに、労働組合の委員長をあのような残虐な殺し方、ももを刺して、出血多量で動けなくなっておるのを、さらに胸から裏まで二度突き通している。これは護国団のこういう人だという名前まで出して、警察に告訴しているのに、取り調べをしない。こういう警察官に勤労者である運転手の取り締まりをまかしておけるかどうか。  この全自交の三光労働組合の丸山良夫君を殺害した犯人は、なぜいまもってあがらないんですか。どうなっておるんですか。具体的な名前まで出して告訴告発されておるはずです。それはどうなっておるんですか。警察庁長官、言ってください。
  186. 新井裕

    新井政府委員 私は直接取り扱っておりませんので、詳しいことは覚えておりませんが、御指摘のように、名前を出して申告がありまして、それに基づいて捜査をいたしましたけれども、結局、証明ができませんで、そのままになっておると聞いております。
  187. 林百郎

    ○林委員 そうすると、それは捜査をした。その記録はちゃんとあるわけですね。あるなら、この委員会に出せるものを出してください。いつ何日、どこへ呼んで、どういう取り調べをしたか。それでいいんですよ。内容は、捜査中なら、われわれはそこまで入りませんけれども、その男をいつ、どこの警察へ呼んで、どういう取り調べをしたかということだけでいいんです。この次の機会に警察庁から資料を出してください。  それから、もう二、三の問題がありますが、ついでにお聞きしておきたい。これもあらかじめあなたのほうに通告してこういうことを聞くから、ひとつ実情を調査してくれと、私のほうから言ってある事案なんです。  これは交通労働者ではないですけれども、警察官が公正だとはとうてい考えられない。ことに労働組合という民主的な団体に対する今日の警察官の態度は、民主的だとは考えられないんです。もちろん、われわれは、わが党としても、下級警察官に団結権を与えて、生活権を十分確保してやるということは党大会で決定しております。しかし、今日の制度としての警察の制度、ことに今日の警察の首脳部の持っておる考え方、こういうものからいえば、われわれは、あなたの言うように、警察は絶対に公正なものであるから、反則金制度を設けても、決して感情的にこれが利用されたり、いろいろされることはないということは、信用するわけにはいかないんです。そこで聞いておるわけです。  もう一つの問題は、これは北九州の八幡区の職業安定所に起きた問題ですけれども、五月二十五日から六月五日までの間に、六回延べ二千人の警察官が失業して何とか職を紹介してくれないかと職業紹介所へ行って、その交渉中に、二千人の警察官が——導入されておる。六月十日には全日自労の八幡分会の分会委員長が傷害で検挙されておる。六月十三日には支援の労働組合の委員長の全日自労の委員長や全日自労の組合員四人が不法に逮捕されている。翌六月十四日、現場で全日自労八幡分会の副委員長と執行委員の二名が逮捕されている。さらにもう少し詳しく申しますと、五月二十五日から六月五日までの間に六回、先ほど言ったように警察官が約二千名動員されている。六月十日に話し合いをしようとして現場からかけつけた全日自労の八幡分会の分会委員長を有無を言わさず両腕をねじり上げて、傷害だということで検挙している。六月十三日に約三百人の機動隊と私服を動員して、失業者の要求を支持して支援した全日自労の委員長や、あるいはそのほかの民主的な人たちを現場で逮捕している。それから、五月十九日から六月二十五日の間には、職安の表裏に常時パトカーが一台、またはジープが見張りし、私服が失業者に変装して安定所内に潜入している。職安の裏にある桃園の現場にはパトカー、私服が常時数人で監視している。職安付近の民家に警察の連絡所を設けて、常時職安と連絡をとっている。こういう事態があるわけです。どうしてこういうことが起きたのですか。これは、私のほうであらかじめ調査しておいてくれとあなたのほうに要請しておいたのですから、事情を説明してください。事は普通の状態じゃないのですよ。これはことに中高年層の労働者ですよ。職を失った人たちが何とか職業を紹介してくれという、その中高年者の職業紹介について非常に冷淡に扱っている。だから自由労働組合の人たちが応援に行って、親切にもっとこれを紹介すべきだという交渉をしているときに、警察官が一日に三百人、延べにして二千人も動員されている。こういうことはどう考えても、警察官が、ほんとうに働く者の立場に立ち、そういう民主的な運動に対する理解があるとはわれわれは考えられないわけです。この実情はどういうことなんですか。
  188. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの問題につきましてお答えいたします。  北九州市の八幡におきまして、全日自労の八幡分会で、八幡職安に対しまして、五月十九日以降今日に至りますまでほとんど連日、組合員約二百名から七百名を動員いたしまして集団交渉を要求しておるわけでございます。八幡の職安におきましては、交渉に当たる代表の数をしぼるというような問題がありまして、交渉に至らない、交渉に入らないという状況でございます。こういう中で、事案が今日まで八件起こっております。たとえば五月の二十五日におきましては、約五百名の自労の人たちが八幡職安に集団交渉を要求して、所内の一階から三階までの廊下にすわり込むというような事態が発生いたしまして、その際、退去要求の要求書を文書で提示をいたしました職安の職員に対して暴行を加える、洗たくデモをかけるということがありまして、七日間の傷害を与えておりますし、また、同じ日、同じ時刻に、同じ事務所の中の別の事務室におきましては、やはり退去要求を提示しております職員に対しまして、これを取り囲んで、土足で机の上に上がるというようなことで、机上にありました花びんをけ飛ばしてこわす、またいすにすわっておりました約六人の職員のいすを足でけ飛ばすというようなことで暴行を加えたわけであります。その他それぞれ事案がございまして、全部で八件起こっておりますが、今日までそのうち四件を検挙いたしまして、七名の人たちは通常逮捕、一名は現行犯ということで処理をいたしておるわけでございます。  警察官を出動させましたのは、そういう状況でございますので、職業安定所長から事前にもまた事案発生のそのときにおきましても警察官の出動要求がございまして、警察官を現場に派遣しておるわけであります。
  189. 林百郎

    ○林委員 現象的なことだけそう言って、なぜそういう事態が起きたのだ、そういうことに対してあなた方がどのような理解を持っているかということが問題だと思うのです。だれも好んでそんなに職業安定所へ多数の人が行くはずはない。しかも、労働組合のほうも行ったけれども、あなたのほうだって一日に三百人、延べ二千人もの動員をしている。常時私服がそこにいる。そこに行っている人たちは本来社会の最も底辺である失業者、特に妻子をかかえた中高年齢層の真剣で切実な求職の問題で話し合いをしようとして行っているわけでしょう。労働省の昭和三十八年の七月の中高年齢者就職促進の措置の決定によると、就職の申し込みをしたら無条件で申請の用紙を受理しなければならない、そうしてそういう就職促進の措置の申請を受けた場合は真剣に就職のあっせんをしてやらなければならないというのに、その措置申請をする前に、そんな就職促進の措置の申し込みをする前に積極的にまず求職運動をやれ、活動をやれというようなことで、それを受け入れてくれない。例を言えば、九州の人に北海道に行けとか、北海道の人に、遠いところにこういう口があるがどうかというようなことで、就職不可能なことを紹介する。あるいは婦人に、恥ずかしくてとうていそういうところへ行って働けないようなところへ行けと言う。それではわれわれはそういうところへ就職するわけにはいかない、やむを得ず失業者としての登録をしてもらいたい、こういう申請をすれば、おまえはまじめに就職する意思がない、あるいは全日自労の人たちがバックアップしてくるものはこれは偽装就職運動だというようなことで、ほんとうに北九州あたりで炭鉱で失業して困っている人たちが、まじめな家庭の婦人として、あるいは中高年齢層の人たちのまじめな仕事を求めるという気持ちが無視されているということからこの問題が起こっているわけです。ところが警察官がそれに一役買っているということなのです。私あとで、これは職安と警察がどういう秘密の連絡をお互いに陰でしているかということを申し上げます。そんなきれいごとじゃ済まぬですよ。こういうように中高年齢者の就職問題、それを全日自労に入れない、あるいは全日自労という組合を分裂させるために職安は警察とどういう連絡をして、警察にどういうことをしてもらえということまでちゃんと秘密連絡事項があるわけです。そういうことに警察が一役買っているということなのですね。  労働省の人がおいでになりますれば、この中高年齢者の就職促進の措置、これを申し込みをしたら無条件で申請の用紙をまず受け取って、そうしてその人が就職するかどうかという職業の選択の自由は保障してやって、その人が紹介した仕事がどうしても自分の家庭の事情からいって適当でないという場合は失業者としての登録が許される、そういう取り扱いをしているかどうか、まず労働省のほうにお聞きしたいと思います。
  190. 塩田晋

    ○塩田説明員 公共職業安定所は、一般の求職者に対しましては懇切丁寧に取り扱いをしておりまして、一日も早く適切な職業につけるように指導しております。八幡の職安に限らず、各安定所とも、理由なくして求職受付をしないというようなことはいたしておりません。誠実かつ熱心に求職活動を行なわれる方に対しましては懇切丁寧に紹介を申し上げておるところでございます。  八幡の事件でございますが、これは先ほど御説明ございましたように、五月十九日から連日にわたりまして——ほとんど連日でございますが、数百名の人々が集団でもって安定所に押しかけられまして、そこで長時間すわり込みをするとか、あるいは高唱をする、あるいは一部職員に対する暴行等がございましたので、同所の正常な業務が著しく阻害されているという事態に立ち至りましたので、一般求職者、求人、事業所の方々の迷惑を考えまして、五月二十五日に、庁内の秩序の維持を確保するためにやむを得ず警官の出動を要請したのでございます。
  191. 林百郎

    ○林委員 そうすると、あなたは、こういうことは認めるのですか、どうですか。昭和三十八年七月の中高年齢者の就職促進の措置の決定ですね。申し込みをしたら、その申し込みは必ず受け取って、そうして、それに対しては、就職の誠意ある措置をする。しかし、それを求める人の側のほうが、これは私には適さないといって断ったら——これは職業選択の自由はあるのですから。たとえば、女の人に料理屋の仲居をしろとかなんとかいったって、あなたのほうは親切にやるとかなんとか言ったって、そんなことはできない場合があるのですよ。そういう場合には、ちゃんと失業者としての登録をするか、要するに、職業選択の自由を、失業しているそういう人たちに認めるかどうか、ここをあなたにお聞きするのです。
  192. 塩田晋

    ○塩田説明員 先ほど申し上げましたように、一般の誠実かつ熱心なる求職者に対しましては、懇切迅速に取り扱いをするということで、求職受付を拒むようなことはいたしておりません。ただ、この問題は、求職者ということは、職を求める方でございまして、その方と安定所の担当職員が御相談申し上げることでございまして、多数の人々が押しかけてきて、これに関与するとか、あるいは集団で圧力をかけるといったような性質のものではないものと考えております。そういったところから問題が生じているというふうに考えております。
  193. 林百郎

    ○林委員 そうすれば、あなたのほうだって、実態調査——一九六六年の労働省と厚生省の「中高年対策指導要領」を見ますと、まず実態の調査をする場合に、要するに、就職の可否を認定する場合に、どういうことをするか。「詳細な実態の調査を行うことが必要である。」「方法は、戸別の訪問により実施することが望ましいが、妨害、隠蔽が予想されるときは、巡査駐在所、市町村役場、社会福祉事務所の協力を得て調査する。」なんて、何で、人の就職を調査するのに、巡査駐在所の協力を求めるなんていうことを通達として出す必要があるか。初めから失業する者は、あなた方の調査を妨害隠蔽すると予想されると通達に書いてあるじゃありませんか。こういう挑発をあなたのほうがかければ、防衛上やむを得ず、みんなが行って抗議をするなり、守るよりしようがないでしょう。  それから、もう一つ警察の問題がありますよ。いまの資料の「通常組合費関係」というところで、「調査の結果の全ぼうから事務所としての見解、措置方針を定め、県本庁、場合によっては警察当局と協議を行う。」何で労働組合の費用関係を調査して警察と相談する必要があるのですか。あなた方はきれいごとを言っているけれども、全部警察をてこにして、そうして中高年齢層の就職に際して、自由労働組合に入ることをなるべく阻止させようとする。自由労働組合の組織を分裂させようとする。秘密の指令で、こういう場合は警察と相談しろ、こういう場合は駐在所に頼め、こう言っているじゃないですか。こういう通達を出していませんか。そういうことを陰でしておいて、労働者が来るから警察をやむを得ず呼んだと言うが、その前にあなた方は、警察に協力を求めろという通達を出しているじゃありませんか。
  194. 塩田晋

    ○塩田説明員 そういう場合もときには起こるかと思いますが、なるべくそういうことがないように、そういう事態がないように指導いたしております。
  195. 林百郎

    ○林委員 時間がありませんから、やむを得ず、要領だけもう二、三、警察庁長官に聞きますが、私も、あなたのほうで調べておいてくれと言いましたが、新潟県の新井市の警察署の建設の問題ですが、新井市に新しく庁舎を建てるから、ひとつ市で土地を寄付してくれないかといって、新潟県の警察本部長が、新井市の市長を呼んで、約一千坪、五百万円の寄付の話をしている。さらに、庁舎を建てるからということで、各市町村に割り当てをして、それで、新井市にも四分の一の費用を寄付しろと言っている。一体、市町村が警察の庁舎の建設に費用を分担しなければならないという法律的な規定がどこにありますか。警察庁長官にお聞きしたいのです。
  196. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 ただいまの新潟県の新井警察署の改築問題を御説明いたしますと、これは現在あります署のところの近くに新たに土地を求めまして、そこに建てる、こういう計画になっているようでございます。そういたしまして、現在、署の敷地が三百十四坪ございますが、これが時価でおよそ九百万から一千万というふうに評価されているのでございますが、これが県有地でありまして、これを市当局に無償で払い下げをする、こういう予定になっているようでございます。それで、ただいまお話のございましたように、市議会といたしましては、敷地約千坪のために五百万円を議決いたしまして、計上している、こういうふうに聞いております。
  197. 林百郎

    ○林委員 それは警察本部長が新井市の市長を呼んで話をしているのですよ。任意にやっているのではない。警察本部長からそういう話があったから、市は、共産党や社会党の皆さんが反対しているのに議決しているし、一千人以上の請願があったけれども、これは流してしまっている。警察本部長がそんな話をしなければ、市は何も五百万の予算を組む必要はないですよ。いま、庁舎の寄付を、板倉、中郷、妙高、妙高々原、新井、これに、約一千二百万ぐらいのものですけれども、この負担をまた要請しているということですが、これはどうですか。
  198. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 ただいまの建設資金の地元負担の問題でございますけれども、従来、新潟県の慣例といたしまして、工事総額から国庫支出金を差し引きをいたしまして、その差額の七割を県が負担をいたしまして、三割を地元の市町村にお願いをするということで、その三割に当たりまする約九百六十万、これを一市二町二村で負担をしていただきまして、それを正式に県が寄付採用いたしまして、そしてこの工事をいたす、こういう計画のように聞いておるのであります。
  199. 林百郎

    ○林委員 ことばは、寄付していただいて、県に寄付採用していただいて、そして御援助願っていますと言いますけれども、これは警察側がちゃんと内々の話をするからですよ。市町村財政が乏しいときに、本来国と国が負担すべきものを、そういう市町村へ財政的な負担をさせるということは、先ほど言ったように、少なくとも警察は絶対公正だ、法の守り手だなんて言ったって信用できないじゃないですか。しかも、今度の反則金で、これが市町村の単独事業として市町村へ還元されるということになると、それと結びついて、おまえのところは寄付を断わったから、おまえのところは反則金なんか取ってやらないぞ、もっと協力したところはどんどん反則金を取ってやるよ、運転手にとっては迷惑しごくだけれども、そういうことをやらないとも限らないわけでしょう。だから、そういう点については、あなた方が口で言っているように、もし警察官が公正で厳正に法律を守るというならば、そんなように警察本部長が市町村長などを呼んで、これは新潟県のいままでの慣例でありますなんて言って寄付させることは、今後一切やめたらどうですか。自治大臣、どうですか、そういう行政指導はできますか。あなたは、さっきから、人のことだと思って聞いているけれども……。
  200. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 元来、お話しのような問題は、その支出をすべき主体、すなわち警察署の庁舎ならば国と県が支出すべきが本来の姿であろうと思います。そういうことにつきましては、従来ややもすれば地元の寄付というようなことをやっておる事例があります。こういうものはできるだけ早く解消するように財政的な措置をしてまいりたいと考えております。
  201. 林百郎

    ○林委員 交通局長見えていますね。神風タクシーがあったときに、これは昭和三十三年ですね、走行キロ一日三百六十五キロメートルで押えろ、これ以下にしろ、こういう通達を出しましたね。これは覚えておりますか。昭和三十三年です。
  202. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 これは私どものほうでそういう通達は出しておりません。運輸省でございます。
  203. 林百郎

    ○林委員 運輸省で出したことは知っていますか。それは知っているでしょうね。——そのときは東京の自動車の台数は何台だったのですか。
  204. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 東京の当時の自動車台数の数字手元にございません。
  205. 林百郎

    ○林委員 わからなければけっこうです。  それでは、少なくとも昭和三十三年から今日までの自動車台数は、東京ではどのくらいふえていると見たらいいでしょうか。あなた方は取り締まりの責任者ですからね。たとえば昭和三十三年にほぼ何十万台だったものが、今日ではこのくらいだ、約何倍になっている、それはわかりますか。
  206. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 手元に全国の自動車台数の数字がございまして、それによりますと、大体三十三年当時から見ますと四倍でございます。
  207. 林百郎

    ○林委員 四倍ですね。そちらで数字を持っていなければ、私のほうで念のために数字を出します。私のほうの調査によりますと、運輸省から一日三百六十五キロ以下にしろ——神風タクシーのあったときですね、そのときは東京都で道交法適用を受けます自動車が三十五万台、今日はその四倍の百三十余万台、自動車の生産台数からいいますと、昭和三十五年に三百四十五万台が、今日では九百六十三万台、東京では約四倍、そこで、四倍に今日自動車がふえている東京で、一日に今度は何キロ走ったらいいですか。あなた方はどう考えているのですか。
  208. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 私どものほうでそういう計算をしておりませんので、いま明確な答弁はできませんが……。
  209. 林百郎

    ○林委員 そんなことであなた、どうして取り締まりができるのですか。いまの自動車の運転手がいまの制度で生活をするためには一体何キロくらい走らなければ生活ができないか、そういう調査をしないで、やたらに交通違反だ、合い図違反だと取り締まることばかり強化しても、こういう人たちの生活はどうするか。念のために申し上げますけれども、東京都で昭和三十三年から四倍にも自動車がふえておるのに、タクシーの運転手の諸君は、依然として三百六十五キロから場合によっては四百キロ、これは三百六十五キロ以上走ってはならないという運輸省の通達を、会社側では三百六十五キロは走れ、それだけの水揚げができないようだったらおまえは運転手の資格がないというので、これをノルマにしておるわけてす。自動車が四倍にもふえておるのに、走行キロ数は、会社によっては、依然として四分の一のときの走行キロ数を会社が強制していたら、このほうの取り締まりを警察はどうするのか。たとえば会社の人が乗って調べたところが約二百四十八キロ、これは会社の人が乗って、そして正常に走ってどのくらい走れるか調べたら二百四十八キロ、水揚げが六千六百八十円、これで給料を計算してみますと約二万八千円から三万円です。家族持ちで、正常な走り方の二百四十八キロ走って賃金二万八千円では生活できないというのです。会社の人が乗ってもこれしか走れない。しかし、生きるためには、どうしても生活費五万前後取るためには、水揚げを一日に一万円以上どうしてもかせがなければならぬ。一万円以上かせぐためにはどうしても三百キロ以上走らなければならぬ。しかも会社側は三百六十五キロですか、昭和三十三年に出した運輸省の通達をノルマとしてやれやれと言っておる。ここの面を取り締まらないでおいて、そして生きるために気違いのようになって走っているこの運転手だけを取り締まれということで公正な取り締まりになるのですか、それをどうお考えになりますか。運転手はどうやって生活していったらいいのですか。
  210. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 実は過日も組合の方々が来ましてそれと同じようなお話をされておりました。運輸省できめられますその走行キロの問題につきましては、最近の交通事情等ともにらみ合わせて、やはり検討すべきものは検討しなければならぬと思います。ただ、私どものほうでは、当時より車がふえたこと、それから道路の整備されたこと、いろいろな事情を勘案してこの走行キロの問題は計算されておると思います。したがって、そういう問題があるといたしますならば、運輸省ともよく話し合ってみたいと思っております。
  211. 林百郎

    ○林委員 あなたは、いま東京都のメーンストリートで自動車が一番多いときには一キロメートルに何台の自動車がおるか、調査したことがありますか。
  212. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 手元に資料がございませんけれども、当然そういう調査はあると思います。
  213. 林百郎

    ○林委員 あなたは知らないのですか。私のほうの調査ですと、一キロメートルに七十四台の交通量があるわけですよ。そうすると、かりに最小限度六メートル間隔とすると五百メートルでは一ぱいになってしまう。だから、万一のときにいつでもストップできるような一かりにこういうところにおいては、四十キロで走っていては間隔はとれないというのです。それをもし追突でもすれば、注意違反だということで取り締まられる。こういうことも勘案しなければならぬ。ただ事故の責任を運転手だけに転嫁していくという偏見を警察庁は持ってはならないと思いますので、そこで念のために聞きますが、それでは渋谷から池袋までに交通標識は何本あると思いますか。また、それを調査したことがありますか、駐車禁止、右折禁止あるいは一時停車、こういうのが一ぱいあるでしょう。あれは何本あると思いますか。
  214. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 調査してみたいと思います。
  215. 林百郎

    ○林委員 あなた、労働者を取り締まるならまじめにやってほしい。交通標識は四千本以上ある。それは労働者にとって、とても池袋から渋谷まで四千本の標識を全部認識して、そのとおり走るということは不可能だというのです。そういう声が運転手の側にもあるわけです。しかし、運転手の諸君の一人当たりの一日当たりの事故数は、むしろ自動車数がふえておるにもかかわらず減っているという数字が出ておる。一日あたりの平均の死亡者数ですね。これは三十九年と四十年です。だから、非常にもう命をすり減らして最大の注意をしているという理解をしてやることが必要ではないかというように思うわけです。それからハイヤーの運転手を見ますと、これは裁判所の供述調書にあるわけですが、勤務時間は四十八時間勤務ですね。四十八時間勤務して、そうして次の日の二日目の朝九時にうちへ帰ることができるのだけれども、しかし自動車を洗ったりいろいろしていれば昼ごろ帰る。そして昼ごろ帰って次の日の午前九時にはもう出なければならない。ハイヤーですから、四十八時間の勤務中に寝るのはせいぜい三時間から四時間だというのですね。夜何かお客の注文が来る、そして、また朝早く来てくれというような注文が来るというようなことで、しかも一台当たりの人数は会社側は減らしているというのです。こういうことも考えて、御承知のとおり、こういう面の疲労して運転をしている者についての取り締まりが道交法の中にありますけれども、しかし疲労させているもの、そんな夜三時間から四時間しか眠れないような労働条件に置いているもの、このほうの取り締まり、ここをしなかったならば、反則金は運転手が納めているけれども、会社側はまるまるもうけている。いまもうける仕事をしたかったら、ハイヤー会社かタクシー会社をやったら必ずもうかる、こういうようなことだったら、これは公正じゃないじゃないですか。またトラックのほうを見れば、これは遠距離のトラック運転をやっている。そして一月にうちに帰れるのが、私のほうの調査で見ますと、月の半分、十五日くらいはトラックの中のベッドで寝る。大阪まで一往復してくれば、ベッドの中で二晩寝るような労働条件になる。うちへ帰れるのは、トラックの運転手もハイヤーの運転手も大体同じですけれども、月のうちに数日間だという状態ですね。したがって、むしろもううちが妾宅にもひとしいほどで、むしろ会社のほうが自分のうちだというような労働条件がしいられている。こういう面も自動車事故をなくす——自動車事故をなくすことに共産党は人後に落ちませんけれども、しかし、こういう面の取り締まりですね。三百六十五キロをノルマにして、それ以上走れ、一日八時間、手間を一時間入れて九時間だというのに、残業を月に三百時間もとらしている。あるいはハイヤーの運転手は四十八時間勤務で、次の日、昼ごろ帰ってきて、朝九時まで休める。その四十八時間のうちに、寝るのは三時間からせいぜい四時間だというのですね。こういう労働者の実情を調べて、そういう道交法でも取り締まれる対象になっている運転手が疲労して運転するというその根本的な原因、そういう条件は、だれがそういう条件にさしているかということを調べて取り締まりをする、こういうことについて警察庁はどう考えておりますか。あるいは大臣どうお考えになりますか。えらい真剣に聞いているようですが。
  216. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 たぶん昨年の暮れだと思いましたが、東京陸運局でハイタクの会社全体についての調査をいたしたと思います。そのときに、非常に労働条件が悪い、全般的に見て特に悪いということでございました。それについては、運輸当局も注意を喚起し、労働条件の向上についていろいろ指示をいたしたことを記憶をいたしております。いまおあげになりましたように、確かにそういう点がございます。したがいまして、警察といたしましては、警察取り締まりの結果そういう問題がありますれば、そのつど労働省なり運輸省に問題を提起いたしまして、監督官庁としての職務を十分に果たすようにお願いをいたしておるわけでございまして、今後もそういう点については十分注意をしていただくように私からも要請をいたします。
  217. 林百郎

    ○林委員 それでは最後にもう一つ。要因は、自動車の生産が非常に無政府的に、昭和三十五年に三百万台であったのにことしの三月には九百万台、ついに一千万台になるだろう、自動車保有数が。こういうように、道路行政と相けたなくて、自動車の独占資本は無政府的にどんどんつくっていく。しかもそれが、自動車のスピードはますます出るようにしていくというのですね。一方今度は、その自動車の使う石油の輸入量を見ますと、昭和三十五年に三千万キロリットルだったのが、いまは八千万キロリットル、二倍以上に昭和四十年にはなっておる。自動車はどんどん無政府的にふえていくわ、その自動車の機能はますますスピードを出すようにするわ、石油はどんどん入ってきて、石油会社はもうかるようにするわ、道路行政はそれに沿うようになっていかない。そうして毎日起こる交通事故の責任は運転手だけに集中されておる。そうして反則金制度ということをやっておる。ほんとうの政府の交通行政に対する責任、たとえば自動車の台数を日本の国の道路の実情から幾らに規則するか、あるいは石油の輸入についても燃料政策をどうするか、そうして運転手をそういうふうに無制限に労働強化をさしておる使用者に対してどういう規制をしていくか、こういうことを総合的にやらなければ、そのほうは非常に何らの制限もなく許していて、そうして運転手だけの責任であるかのごとく交通事故の責任をこれにしわ寄せさしていく、そうしてこの取り締まりだけを強化していくということについては、われわれはとうてい同意できないわけですけれども、この無政府的な自動車の生産台数の増大、それに伴う石油の輸入量の増大、石油資本の膨大な利益、それに対してしわ寄せされている運転者のものすごい労働強化、そうして道路行政自体はなかなか進んでいかない、こういう中で、一番犠牲を受け、生きるために命をすり減らして働いている交通労働者の諸君の立場をどのように理解し、どのように考えていくか、最後に大臣に聞いて私の質問を終わらしたいと思います。
  218. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、交通事故対策につきましては、非常に広範にわたっていろいろな施策が並行して行なわれなければならないことは御指摘のとおりだと思います。その点が必ずしもいままで十分であったとは申しません。率直に認めるわけでございますが、今後考えますのは、まず第一に道路の整備であろうと思います。ただ、いまお示しの、道路の面積に比例した自動車に制限しろと申しましても、どういう地点でとらえていいか、また全国の全面積に比例した台数にいたしましても、自動車は動くものでございますから、やはり人口集中の激しいところではそういうことが起るわけでございますから、必ずしも自動車を制限するということがはたしていいかどうかという問題はあろうと思います。しかし、いずれにしましても、そういう総合された、あるいは先ほど申しましたように使用者側の労務管理の問題、その他も合わせましてやらなければならないと思います。交通対策本部を総理府につくりまして総合的な企画をやっておりますのもその一つのあらわれでありまして、こういう面を今後とも充実していくように努力をいたしたいと考えます。
  219. 亀山孝一

  220. 山田久就

    ○山田(久)委員 だいぶ時間も経過したようでありまするから、道交法の一部改正に関連いたしまして、いろいろ今日まで取り上げられた問題以外のことで、主として運転手の立場というか、私が海外等の経験からして感じておった二、三の点、これをひとつ質問して、方針なり所見を承りたいと思うわけです。この反則金制度は、結局事故件数が非常に増加したことに伴って事務を簡素化しようということですが、この事故の増加ということの中にはそれ相応のいろいろな客観的条件があると思います。しかしながら他面よく調べてみると、やはり交通規則自身を、平たくいえば、もう少し親切な交通規則にもっていくならば、事件がむしろそれほどまでにならないのじゃないかというようなケースもなきにしもあらずという点も思われるので、そういう点についてはそういう角度からやはり改善をはかっていくということが道交法改正の本来の趣旨にも合致するんじゃないか、こう思うわけです。この件数、先ほど一千万件というようなお話がございました。まずその中でおもな事故の種類、多い順から五つばかりひとつここであげていただきたいと思うのですが、どういうのが一番多い事案になっておるか。
  221. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 事故のことについてのお尋ねでございますが、どういう事故が多いかということでございますが、事故のとらえ方がいろいろございまして、状態別でとらえてみますと、四十一年の死者は一万三千九百四名でございましが、そのうち歩行者の事故が一番多うございまして、三四%程度が歩行者である。それから自動車に乗っている……。
  222. 山田久就

    ○山田(久)委員 スピードだとか……。
  223. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 原因別でございますね。違反でございますね。——違反は、検挙いたしました件数が四十一年約五百万件になっております。そのうち一番多うございますのは最高速度の違反でございまして、二六%程度がスピード違反です。その次は駐車違反一二%……。
  224. 山田久就

    ○山田(久)委員 けっこうです。このスピード違反というのが多いのじゃないかと思うのです。そこでスピード違反原因をいろいろ考えてみると、むろんそれぞれ事情があるわけだけれども、たとえばわれわれの海外の経験等から比較してみると、これ以上出せば危険だというよなところに標準を置くということよりも、どうも見ると、この辺にしておけばあまり無理なことは出すまいというような角度できめてあると思われるような点も、私は少なくないと思う。事実皆さんも経験するだろうと思うけれども、高速道路は大体五十キロというようなことでやってますけれども、五十キロで走っているようなものはほとんど一台もない。したがって、つかまったのは、ほんとうの意味において罪悪感というものがない。おまえはちょっと不運だったと、こういうことではどうもぐあいが悪いので、やはり守られる規則、現状に合うような規則というものを考えていかなければならないと思う。先ほど私、ちょっと不親切と申しましたけれども、たとえば右折というような問題は、夜間と昼間というものを分けてあるようでありますけれども、しかし海外等でやられておるのは、夜間と昼間の速度の別がきめられておるとか、一時ストップの問題なんかについてもそういう点が差別が設けられている。そういうことがないためにひっかっかっているというようなこともなきにしもあらずで、ぜひこういう点を改善していただきたい。これを、守られる交通規則という見地からぜひひとつ改善していこうということが、今後の道交法改正の基本的な精神にも通ずるものだと考えているわけであります。この点について、長官、ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  225. 新井裕

    新井政府委員 御指摘のように、私どももいまの最高速度の制限のやり方というものは、たいへん腰だめでありまして、取り締まりのほうも、一割とか二割はよろしいということで取り締まっておるようでありますけれども、ほんとうはおっしゃるように、普通に出しているスピードを最高速度として、その中でも危険な状態のときはそれだけ出しなさるなという規定を置けばむしろいいと思われますので、ただいまの御意見がありましたことを機会に——一般の人たちもなるべくおそいほうがいいという感じがどうも強いようでありまして、せっかく六十キロにすると、いつの間にか五十キロになっているという道路もときどきございます。事故があると、あれはスピードの出し過ぎだ、では減らそうというような、たいへん簡単な考え方のようでございまして、これはもう少しきめをこまかくし、しかも実態に即するように研究していかなければならないと思っております。
  226. 山田久就

    ○山田(久)委員 反則金制度実施の機会に、ぜひそういう点をお考えいただいて、守られる、そして実情に沿うような交通規則の改善を御研究いただきたいと思います。  なおこれに関連して、これは今後についての希望ですけれども、現在交通事故を防ぐという見地で、歩行者にもっと規則を守らせるという意味で、これもまた海外では、歩行者自身に、誤ったことをやるとこれについてある種の取り締まり、制裁があるというよになっていると思いますが、わが国では、そういう点、あまりないように思われるのだが、この点についてどんな方針を持っておられるか、ちょっとお聞きしたい。
  227. 新井裕

    新井政府委員 統計をごらんになってもわかりますように、歩行者の違反の取り締まりの件数はたいへん少ないのが現状でございます。たびたびそういうことについて意見があるのでありますけれども、一般的に申しますと、教育し得る人と、それから教育しがたい人とございます。というのは、頭がかたいとかなんとかいうのではなくて、そういうチャンスに恵まれていない、年をとって比較的うちの中に引っ込んでいる人、あるいは親の介護がなければ安全な通行ができないというのがございますので、限度がございますけれども、私は、いまのような道路状況で歩車道の区別がないのが大部分である以上は、歩行者に対して外国でやっているような厳重な取り締まりをするというのはまだ早い、やっぱり教育を主としてやるべきだというふうに考えます。
  228. 山田久就

    ○山田(久)委員 そういう点、私も同感です。基本的には、歩道のない道が道と考えられているわが国の状況、これはひとつ抜本的に、ああいうものは道と呼ばないというふうにやっていくように、ぜひ考えていただきたいと思っております。  また違反者について、今日、違反件数もなかなか多いわけですけれども、しかしながら、本来からいえば、共同社会はみんなが一緒になって防衛していかなければならぬのである。こういうことで初めて安全が守られていくのだけれども、おまわりが見ていなければ何をやってもいい、見てないからこれはしようがないのだ、こういう点があるのは、まだわれわれが民主社会の底力という点で非常に欠けた点があるのじゃないかと思う。こういう意味で、たとえ警察官じゃなくても、何人かの証人というものがこれを現認して通報すれば、これによってある種の制裁を科する可能性を与える。これは海外ではある制度ですけれども、これには良心的に証言をするというような、われわれの道徳的なレベルというものと非常に関係してくるので、一がいには言えませんけれども、ただ、こういう問題について研究したことがあるかどうか、その点についてひとつ伺いたいと思います。
  229. 新井裕

    新井政府委員 研究しておるばかりではございませんで、現に各府県で大なり小なりそういう制度をとっております。ことに警視庁は交通一一〇番という俗称で呼ぶような形で、一般的な証言でもある種の違反は取り締まるということで、そういう申告によって現に捜査をし、立件をして送致したものがございます。
  230. 山田久就

    ○山田(久)委員 なお、この自動車強制保険の問題について伺いたいわけですけれども、御承知のように日本では自動車は保険をつけておるが個人は無関係、こういうことになっております。最近のように非常に運転免許証をとる数が、多くなってまいりますると、一部海外で実行されておるように、運転するのには単に運転免許証ばかりでなくて、同時に対第三者保険、少なくとも人身及び物的保険、対第三者に関しての保険というものはこれを強制化して、それを同時に持っていなければ運転できない。したがってそれだけ個人の責任というものも自覚されてくる。この民主社会の一つのあり方にも合致するわけでありまするが、同時に、もし事故が多くなれば保険が非常に高くなってきて自分でも困ってしまう。そういう意味で自分でも慎重になるようになってくる。しかも人数が非常に多いという関係で保険金が非常に安い。まだわが国ではいろいろな発展段階がございますので、それは一がいには言えませんけれども、しかしだんだん一千万人という人間が運転免許証をもらうということになってきますると、被害者を保護するという意味からも、あるいは逃げ出しというようなことを防止するというような意味からも、ぜひ今後の制度としては考えていただく。現に海外では実行されておる問題でもありますし、これはいろいろな意味においてこの交通安全と保護という見地から重要だと思っておりまするので、ひとつ研究課題として御研究願えないものかどうか、この点について委員長のお考えを伺いたいと思います。
  231. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 確かに御指摘のように、運転者自身の第三者保険というようなものをもうわが国においても考えていかなければならない時期ではないかと思います。その点についても各関係方面と十分相談をいたしまして、研究をさせたいと思います。
  232. 山田久就

    ○山田(久)委員 時間の関係で、以上をもちまして私の質問を終わります。
  233. 亀山孝一

    亀山委員長 次会は明七日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十四分散会