運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-07-04 第55回国会 衆議院 地方行政委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月四日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 亀山 孝一君    理事 大石 八治君 理事 岡崎 英城君    理事 久保田円次君 理事 細谷 治嘉君    理事 山口 鶴男君 理事 門司  亮君       内海 英男君    木野 晴夫君       久保田藤麿君    塩川正十郎君       塩谷 一夫君    辻  寛一君       渡海元三郎君    登坂重次郎君       中尾 栄一君    永山 忠則君       古屋  亨君    箕輪  登君       山田 久就君    井上  泉君       太田 一夫君    河上 民雄君       島上善五郎君    華山 親義君       依田 圭五君    折小野良一君       小濱 新次君    林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁長官   新井  裕君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         法務省刑事局長 川井 英良君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君  委員外出席者         大蔵省主計局法         規課長     小田村四郎君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         自治大臣官房参         事官      志村 静男君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 七月四日  委員久保田藤麿君、佐々木秀世君、辻寛一君及  び渡海元三郎辞任につき、その補欠として塩  谷一夫君、内海英男君、箕輪登君及び中尾栄一  君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員内海英男君、塩谷一夫君、中尾栄一君及び  箕輪登辞任につき、その補欠として佐々木秀  世君、久保田藤麿君、渡海元三郎君及び辻寛一  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月三日  市町村営有線放送電話施設助成等に関する請願  (中澤茂一君紹介)(第二二四〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度における地方公務員等共済組合  法の規定による年金の額の改定等に関する法律  案(内閣提出第一一〇号)  地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律  案(太田一夫君外七名提出衆法第三五号)  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二七号)      ————◇—————
  2. 亀山孝一

    亀山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法規定による年金の額の改定等に関する法律案、及び太田一夫君外七名提出にかかる地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質議を行ないます。  質疑申し出がありますので、これを許します。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 地方公務員等共済組合法に関係する法案の質疑も大詰めにまいりましたので、私は以下数点について御質問をいたしたいと思いますので、藤枝自治大臣にひとつ誠意ある、しかも積極的な前向きの姿勢での御答弁をお願いいたしたいと思います。  第一点は、掛け金の標準となる給料最高限度額についてでございます。現在、地方公務員等共済組合法百十四条の第三項におきまして、掛け金給料月額十一万円で頭打ちとなっておるのであります。国家公務員共済におきましても、法第百条の第三項におきまして十一万円の頭打ちとなっております。これは昭和三十四年の十月に制定されたものでありますから、それ以来ずっと十一万円の頭打ち、こういうことになっておるわけでございます。したがって今日の実情からいきますと、年々のようにベースが改定されてまいっておりますし、たとえば交付税計算におきましても、県知事に対する給料月額というのが大体二十一万円程度交付税で見積もられておるわけでありますから、そういう点からいきましても、きわめて不合理だと思うのであります。こういう不合理があるから最近いわゆる公社、公団等高級官僚が横すべりをいたしまして、居すわり型、流浪型、こういうものの大きな原因になっておるのではないかと思うのであります。そういうことでありますから、ひとつこれは後ほど附帯決議等でも取り上げられると思うのでありますけれども、ぜひこれは具体的に早急に現実に即したような、しかも均衡がとれた形においての改定が必要だと思うのでありますが、いかがでございましょう。
  4. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに現状におきまして知事の給与の実際、あるいはこれが本法制定以来据え置かれておるというような点から考えますと、十一万円の頭打ちというのは実情に必ずしも即してないと思われるのでございまして、そういう意味では、これはほかの国家公務員共済組合制度その他の社会保険制度等とも関連はありますが、それらとあわせて再検討をいたしまして、ぜひ善処してまいりたいと考えております。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 ぜひ善処するということでありますが、まだ足らぬですよ。誠心誠意を込めて、ぜひすみやかに善処するというくらいに言っていただかなければ——すみやかというのも、どうも私は信用できないのでございますけれども、この際、特にそのくらいのことを言っていただかぬといかぬと思います。いかがですか。
  6. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私の申し上げましたのは、そういう意味ではすみやかに再検討をいたしまして善処をいたしたい、こういうことでございます。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣のお気持ちを了といたしまして、次に入ります。  第二点は、長期給付に関係する公的負担割合の引き上げについてでございます。これも附帯決議に取り入れられる予定になっておるのでありますが、現在、地方公務員等共済組合法関連するものといたしましては、長期給付に対して大体一割五分、百分の十五というものが交付税の中において基準財政需要額として見積もられてまいっております。しかし、現実には百分の十五でありますけれども決算額と比べますと大体九割程度でありますから、大体百分の十三・五くらいにしか決算額に対しては当たっておらないのではないかと思うのであります。私は、そういう不合理も直していただかなければなりませんけれども、同時に、やはり厚生年金等と同様に百分の二十に引き上げるべきだと考えるのであります。これは私の意見ばかりでなく、地方公共団体からも意見書なり陳情等が出ておりますし、また、共済組合あるいは職員団体からも強く要望されておるところであります。この問題について、大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
  8. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 長期給付についての公的負担の率の問題でございますが、しばしば当委員会でも御議論のあったところでございまして、そのつどお答えをいたしておるわけでございますが、私どもといたしましては、こうした社会保障制度の一環である地方公務員共済制度の充実ということが必要でございます。したがいまして、そういう意味において公的負担を増加するということについては、ぜひともそういう方向で進みたいと考えておるわけでございます。もちろん、他に国家公務員共済制度その他もございますから、これらと引き離して地方共済だけが独走するというわけにはいかぬと思いますが、これらの制度をあわせまして、ぜひとも改善方向考えてまいりたいと考えておる次第であります。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 ぜひ早急にやはり厚生年金等と同様に百分の二十、こういうことになるように御尽力を願いたいと思うのであります。  これに関連いたしまして、当面の問題といたしましては、再計算に基づきまして今年の十二月一日に掛け金が自動的に上がるかのごとく仄聞いたします。そうなってまいりますと、組合員負担というのもいよいよ増高の一途をたどることになるわけでございますから、この長期給付に関する経理全体の景色をながめつつ、組合員負担がこれ以上増高しないように特段配慮努力をしていただきたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  10. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 再計算の結果、組合員負担が若干上回ることがあり得ると考えるわけでございます。再計算そのものは適法といいますか、適当にやられたものと私は考えておるのでございますが、その組合員負担を上回る分については、共済制度運営の上において十分考慮しながら、一方公的負担問題等とも含めまして善処してまいりたいと考えます。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員 御承知のように、この問題は、交付税計算の中で再計算に基づく分として四カ月間織り込まれておるわけであります。そういうことでありますから、先ほど申し上げましたように、一応不十分でありますけれども折半負担原則に立って、使用者側のほうについては一応の財源裏づけがなされたといってもよろしいわけでありますけれども組合員に対しては、そういう何らの裏づけがない、こういうことになりますから、オール負担増高ということになるわけでありますから、ひとつ重ねて特段努力をお願いいたしたいと思うのであります。  第三点は、短期給付に対する国庫負担制度というものをつくるべきであると考えるのであります。現在、健康保険法臨時特例等が国会で審議されておるのでありますが、政管健保については、やはり定率ではありませんけれども定額の国庫負担というものが行なわれております。しかも、これについては、現在、組合員負担というのは千分の百十というようなところもあるのでありまして、たいへんな負担増高をもたらしておるわけであります。それゆえに、昨年自治省当局でも、負担が非常に高いところに対しては、臨時措置として調整金制度というようなものも考えられておったのでありますけれども、残念ながら、昭和四十一年度に実現を見ませんでしたし、昭和四十二年度になりますと影がうせてしまったのであります。まことに残念、遺憾と申さなければならないのでありますが、私は、この短期給付に対しては百分の二十の国庫負担制度をぜひ設けるべきだということで、別途私どもとして法律案提案いたしておるわけでありますが、これについて、ひとつ大臣の決意のほどを承りたいと思うのであります。
  12. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 短期給付については、申し上げるまでもなく、本来の形としては労使折半という原則がとられておるわけでございまして、それに公的負担を加えるのがいいかどうか、いろいろ議論はあろうと思います。しかし、一面において、社会保障関係の各種の調査会あるいは審議会等で、短期給付についても公的負担をすべきであるというような御意見もいろいろございます。こういう御意見もございますので、他の類似の制度ともあわせ考えながら、この問題についても、ぜひともその方向検討させていただきたいと思います。
  13. 細谷治嘉

    細谷委員 調整金制度についてはお答えがなかったようでありますが、これについてはどうですか。
  14. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 調整金制度を設けようとして一応考えたわけでございますが、四十一年度以来、全般的にいえば共済制度のゆとりができたと申しますか、やや楽になったという感じもございますので、四十二年度においては見送ったわけでございますが、先ほどおあげになりましたように、市町村共済の一部については相当負担の重いところもございます。したがいまして、こういう調整金制度をも含めて、こうした非常に負担の重いところについての軽減の方法については今後も考えてまいりたいと思っております。
  15. 細谷治嘉

    細谷委員 少しくどいようでありますけれども、どうもこの問題は医療費に関する抜本対策というのが立たなければだめなんだ、こういうことで従来も今日もたな上げされてまいったわけであります。ところが抜本策というのも、言うはやすくて行なうにはなかなか困難があるということは大臣承知のとおりであります。したがいまして、抜本策抜本策とし、それに到達するまでの期間に何らかの具体的措置をやらなければ、これ自体も完全にこれまた行き詰まる、こういう事態にあると思うのでありますから、ひとつ大臣抜本策をやるからそれまでは見送るのだ、拱手傍観するのだ、こういうことではならないと思うのであります。この点、特に大臣において善処していただくようにお願いいたしたいと思います。  第四点は、給付を受ける遺族範囲の拡大についてでございます。これは昭和三十三年の改正によりまして、それ以後、遺族年金と一時金の範囲が全く同様になったわけでございます。わかりやすく申し上げますと、母親むすこがおって、親子二人の生活をしておった。むすこさんは学校の先生だった。ところがむすこさんが交通事故でなくなった。母親に何か知りませんけれども若干の収入がありましたので、法律的にいわゆる遺族に対する主たる生計担当者という形じゃなかった、そういうことで遺族一時金も何にももらえない。こういうことが現実に起こっております。これは一例であります。これは政令といたしまして、大体十万八千円程度収入がありますと、むすこ一人なくなって母親一人残されても遺族一時金ももらえない、こういう現実不合理があるのであります。したがって、遺族範囲を拡大していただきたいと私は思うのでありますけれども、とりあえずは、かなり現実から離れております十万八千円というのが主たる生計担当者であるかないかという判断の基礎になっておるわけで、ここに一つ不合理があると思うのであります。したがって、これはもっと現実的な線に是正すべきではないか、こう私は思うのでありますが、ひとつこれも附帯決議に入っておるところでありますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思うのであります。
  16. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 まず第一に十万八千円の限度の問題でございます。これは算出の基礎は、何か十八歳の独身者国家公務員の東京都における初任給の半分というようなことが根拠のようでございますが、これ自体、御指摘のように現実には必ずしも合ってない金額だと思いますので、この点についてはやはり国家公務員共済とあわせまして考慮したいと考えております。  なお、被扶養者のない組合員が死亡された場合に、掛け金が掛け捨てになってしまう、これについて被扶養者範囲を拡大する、あるいは被扶養者でない者に一時金を出した昔の制度がございますが、そういうものを採用するのがいいか、この辺もひとつ検討をしてみたいと考えております。
  17. 細谷治嘉

    細谷委員 私が御質問申し上げたよりももっと広い範囲大臣検討するんだ、いまこういう答弁をいただきましたので、心強く考えております。心強く考えさせた以上は、ひとつそういうことでぜひやっていただきたいと思います。  もう一つ、こまかいことでございますけれども、夫婦共かせぎの場合に、被扶養者というのが全然この共済の恩恵を受けない、こういう実例があるのであります。たとえば御主人が公共企業体に勤めておる、奥さんが地方公務員であったといった場合に、共かせぎでありますが、その子供さんたちがどこの共済組合からもお世話になることができない、シャットアウトされておる、こういう実例があるのでありまして、これはどうもなわ張り争いなのか負担を避けようとするのかわかりませんけれども、これではたいへんなことだと思うのです。そういう実例がありますから、これはひとつ横の連絡をとりつつ、そんなことがかりそめにも起こらないように、特段配慮をいただかなければならぬと思うのでありますが、いかがでございましょう。
  18. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御指摘にありましたような実例があって、地方公務員共済と他の共済制度との間で取り扱いが区々であるというようなことを承っておるわけでございまして、これは組合間でよく連絡をとりまして、ただいま御指摘になったことのないように、今後運営の上で考えてまいりたいと思います。
  19. 細谷治嘉

    細谷委員 第六点は、退職後大体二年か三年目ぐらいにかなりの病気をやっておる、こういうのが多くのケースとしてあらわれておることは統計上御承知のことだと思うのであります。継続療養に対しましては退職後も一定期間療養給付が行なわれるのでありますけれども、やめてしまった翌日発病いたしましても、これは救済されないのであります。ところが、現実には一年目、二年目、三年目ぐらいに集中して発病の傾向があるということでありまして、二十年とか三十年とかつとめて、そしてやめていくということは、一生を地方公務員として心身ともにささげたということであろうと思うのであります。そういう人が統計上二、三年後に病気になるということは、私はあり得ることだと思うのであります。でありますから、退職後も一定期間医療給付についてはやはり給付を行なえるような措置を講じてやるのが当然なことだと私は思うのであります。これも附帯決議の中に出てまいると思うのでありますが、ひとつ大臣のこれについての態度をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  20. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 たてまえから申しますと、国民保険でございまして、地方公務員退職された方が全然ほかに就職されないという場合には、国保に入るというようなことになるのだろうと思います。しかし給付内容あるいは負担割合など、必ずしも地方共済におった場合とは違うわけでございまして、その辺のことを頭に置かれての御質問ではないかと思うわけでございます。原則としては、そういう国保に移っていただくということだろうと思いますけれども、それからまた本人だけの医療給付というようなことになりましても、一体掛け金の額をどうするのであろうか、あるいは負担がどうであろうかというような、いろいろむずかしい問題があろうと思います。しかしいま申されたように、やはり一生を地方公務員地方の公職にささげて、そしてやめられた方が病気になられたというようなことでございますし、この辺は国民保険だからいいんだということで割り切るのには少し、いろいろ問題があろうと思いますので、この点は他のそうした保険制度その他とも関連はございますけれども、そういうものを含めまして検討をさせていただきたいと思います。
  21. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、私は、退職後すべての人に無条件で医療給付一定期間やってやりなさい、そういうふうに申しているわけじゃなくて、少なくとも年金受給者には——これは年金受給者といったらみな二十年以上つとめているのですから、一年か二年、五年くらいの人じゃないわけですから、年金受給者に対してはこれはやはり掛け金のことも、年金があるわけですから、あまり徴収上に手間がかかるわけじゃありませんから、少なくとも年金受給者については、たとえばやめてから五年なら五年というものは医療給付だけは続けさしていく、これは私はきわめて当然のことだと思うのであります。もう一度これについて、私はきわめて制限した年金受給者だけでも早くやってやれぬか、こういうことを申し上げているのですが、いかがでしょうか。
  22. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 おあげになりました実例でございますから、元来、形式ばってお答えすれば、それは国保で救ってもらうのですと言わざるを得ないようなことなんですが、しかし二十年以上もつとめて年金を受給されて、いわば一生を地方公務員として公共の福祉のためにささげられ、そうして一定の年齢がこられてやめたというような、そういう方につきましては、やはりそこにいままで入っていた地方共済との関連をつけてあげたいというお気持ちについては、私も十分共感を持つ者でございますので、そういう点を考えまして、ひとつ検討させていただきたいと思います。
  23. 細谷治嘉

    細谷委員 最後に、厚生費について大臣のお考えを承りたいと思うのであります。  この厚生費につきましては、大体四十年度はどうなっているかといいますと、一人千円なんです。民間のほうを調べてみますと、同年度に四万五千三百二十四円と、こういう厚生費が出ているのであります。この千円の内訳というのを見ますと、健康診断に三百円、レクリエーションに六百五十円、表彰式典に五十円、計千円だというのであります。お聞きいたしますと、自治省は、好意のほんのかけらと言ってもよろしいと思うのでありますが、四十二年度におきましては千五百円の厚生費、五百円の増額要求をなさったようでありますけれども、これが削減されて、従来どおり千円という事態になっております。民間との格差は文字どおりこれはもう四十五分の一以下、こういう状態であります。でありますから、これは急激に民間格差がないようにするということは不可能と思いますけれども、年々この厚生費増額していくことが当然な措置だと思うのでありますが、ひとつ大臣の御所信のほどを承っておきたいと思うのであります。
  24. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この額は、御承知のように国家公務員福利厚生費につきましても千円ということで、先般御決議をいただいた予算に載っているわけですが、確かに御指摘のとおり、現在の社会情勢におきまして千円という額は少額に過ぎると思います。これもひとつ増額について、ぜひその方向考えてまいりたいと思います。
  25. 細谷治嘉

    細谷委員 終わります。
  26. 亀山孝一

    亀山委員長 内閣提出にかかる昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法規定による年金の額の改定等に関する法律案について、質疑はございませんか。——なければ、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  27. 亀山孝一

    亀山委員長 この際、内閣提出にかかる昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法規定による年金の額の改定等に関する法律案に対し、大石八治君、門司亮君及び小濱新次君から、三派共同をもって修正案提出されております。
  28. 亀山孝一

    亀山委員長 提出者から趣旨説明を聴取いたします。大石八治君。
  29. 大石八治

    大石(八)委員 ただいま議題となりました昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法規定による年金の額の改定等に関する法律案に対する修正案につきまして、私は自由民主党、民主社会党、公明党の三派を代表して、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。  この法律案につきましては、今日まで当委員会におきまして慎重かつ熱心に審査を重ねてまいりました結果、退職一時金に関する男女組合員の間の均衡の問題、増加退隠料等受給者生活保障及び地方団体関係団体職員共済組合特例年金受給資格について改善をはかる必要があると認め、ここに必要最小限修正を行ない、地方公務員及び地方団体関係団体職員並びにこれらの家族等の要望にこたえようとするものであります。  次に、修正内容について申し上げます。  修正の第一点は、男子である組合員退職一時金の額から通算退職年金の原資を控除しないことの選択ができる期限は、現在昭和四十一年十月三十一日までとなっておりますが、女子である組合員取り扱いにつきましては昭和四十六年五月三十一日までとなっていることにかんがみ、これとの均衡を考慮して昭和四十四年十月三十一日まで延長することとしたのであります。  第二点は、政府原案では、増加退隠料等を受ける権利放棄した組合員については、その廃疾程度に応じ公務による廃疾年金を支給することとし、現に増加退隠料等を受ける権利を有している組合員受給権放棄申し出改正法交付の日から六十日以内となっておりますが、これら受給者在職中の生活を考慮し、その放棄申し出退職の日から六十日以内に行なうことができるようにしようとするものであります。  第三点は、公務員としての在職期間資格期間に加えることにより支給する団体共済組合特例年金は、恩給、退隠料または共済年金受給権を有している者には認められていないのでありますが、低額の恩給受給者等の実態を考慮し、普通恩給等受給者に対しても、その制限を一部緩和することとしたものであります。  以上が、修正案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ全会一致、御賛同あらんことをお願いをいたします。
  30. 亀山孝一

    亀山委員長 以上で、趣旨説明は終わりました。     —————————————
  31. 亀山孝一

    亀山委員長 これより内閣提出にかかる昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法規定による年金の額の改定等に関する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。林百郎君。
  32. 林百郎

    ○林委員 各党の態度が微妙なものですから、一応わが党の態度を表明させていただきたいと思います。  このたびの政府案は、もともと恩給法の一部改正に伴う当然の措置として、地方公務員共済退職年金の額の一部増額措置を中心とした部分的改善措置であります。そして、この措置のために、このたびは別に組合員負担増額するというわけではありません。したがって、この措置に関する限り、わが党としては反対する理由はないと考えております。ただいま提案されましたこの政府案に対する修正案並びに後に提出される附帯決議案についても、同じ趣旨のものと考えて賛成をいたします。  なお、地方公務員共済制度の根本的な問題として、社会党のほうから国家財政の負担の問題についての修正した議案が出されております。これは継続審議になるということでございますけれども、したがって、この抜本的な政策というようなことになるならば、わが党としては、年金制度社会保障制度としての立場を貫くものであり、したがって、全額国と資本家、使用者側負担すべきものという抜本的な政策を持っております。この立場で私たちはこの政府案について質問も試みているわけでございます。したがって、社会党案については、抜本的な立場ということについて検討するならば、部分的な改善はありますけれども、これについては、わが党としては独自の意見を持っておるわけでございます。しかし、このたびの政府案は、そういう抜本的な問題については手をつけずに、部分的な、ことに他の法案の改正に伴う自動的な措置としてされるものでありますので、わが党としては政府案に賛成する態度をとるものであります。
  33. 亀山孝一

    亀山委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法規定による年金の額の改定等に関する法律案及びこれに対する修正案を採決に付します。  まず、本案に対する大石八治君外二名提出修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  34. 亀山孝一

    亀山委員長 起立総員。よって、大石八治君外二名提出修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  35. 亀山孝一

    亀山委員長 起立多数。よって、内閣提出にかかる昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法規定による年金の額の改定等に関する法律案は、大石八治君外二名提出修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  36. 亀山孝一

    亀山委員長 この際、久保田円次君、山口鶴男君、門司亮君及び小濱新次君より、四派共同提出をもちまして、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、本動議を議題とし、提出者から趣旨説明を求めます。久保田円次君。
  37. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 ただいま議題となりました昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法規定による年金の額の改定等に関する法律案に対する附帯決議につきまして、私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党の四派を代表して、その趣旨を御説明したいと思います。  案文は、お手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。  次に、提案趣旨を御説明いたします。  まず第一点でありますが、御承知のように、現在地方公務員共済組合長期給付に要する費用につきましては、その百分の十五を地方公共団体負担し、残りの百分の八十五を使用者としての地方公共団体と被用者としての組合員とが折半で負担しております。この点、厚生年金保険におきましては、百分の二十を国庫が負担し、私学共済及び農林共済におきましても、百分の十六を国庫が負担し、それぞれその残額を労使で折半負担している現状であります。  そこで、地方公務員共済組合長期給付に要する費用の公的負担割合につきまして、他の社会保険制度との均衡を考慮してその引き上げをはかるとともに、短期給付に要する費用につきましても、近時医療費の増加に伴い、地方公務員共済組合の財政が著しく悪化し、組合員負担増加を来たしている現状にかんがみ、国庫負担を導入すべきものとしております。  次に、第二点につきましては、掛け金及び給付の額の算定の基礎となる給料最高限度額は、昭和三十七年十二月以来十一万円となっており、その間における公務員給与の相次ぐベース改定にもかかわらず据え置かれたままでありまして、公務員給与の実態にかんがみましても低きに過ぎ、すみやかに再検討すべきものと考えられるのであります。  第三点の年金のスライド制につきましては、第五十一国会において法律改正が行なわれ、生活水準の向上、物価の上昇並びに現職の公務員の給与に即応して共済年金の額を改定するいわゆるスライド制の採用が行なわれたわけでありますが、そのスライドの基準またスライドに伴う費用負担等、スライド制実施の具体的方策は明らかにされていないのであります。そこで、スライド制を早急に実施に移すため、すみやかに統一的な責任機関を定め、関係機関との調整をはかりつつ、実効ある具体的措置を講ずるようつとめるべきものとしたのであります。  第四点の、遺族給付を受ける遺族範囲につきましては、現行法によれば、主として死亡した組合員収入により主計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母に限定されており、たとえ親、配偶者がおりましても、それらの者が組合員収入によって生計を維持していなかった場合には給付の対象とならず、また、これらの者が組合員収入によって生計を維持していたものとしても、一定の金額以上の収入があれば遺族とされない不合理があるのであります。そこで、遺族範囲につきましては、実情に即した運用が行なわれるよう検討すべきものとしております。  次に、第五点につきましては、現行法では、退職者の疾病については継続療養のみ最高五カ年間認められておりますが、退職後の新たな疾病につきましては、組合員の資格を喪失しているため共済組合短期給付は認められていないのであります。ところが、退職者につきましては退職後一、二年の間に発病する者が多い実情から、組合員退職一定期間内に発病した場合にも新たに退職者の療養給付制度を設けて、その救済をはかろうとするものであります。  以上が本決議案の趣旨であります。  何とぞ各位の御賛同をお願いいたします。     —————————————    昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法規定による年金の額の改定等に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたり、特に左の諸点に検討を加え、すみやかに適切な措置を講ずべきである。  一、共済組合給付に要する費用の公的負担割合の引上げ等については、他の社会保険制度との均衡を考慮してその改善に努めること。  二、掛金および給付額の算定の基礎となる給料最高限度額は、長期にわたり据えおかれているので、公務員の給与の実態を考慮し、すみやかに再検討すること。  三、年金のスライド制の実施については、すみやかに統一的な責任機関を定め、関係機関との調整をはかりつつ、実効ある具体的措置を講ずるよう努めること。  四、遺族給付を受ける遺族範囲は、主として組合員収入により生計を維持していた者に限定されているが、その取扱いにつき、実情に即した運用が行なわれるよう検討すること。  五、組合員退職一定期間内に発病した場合にも療養給付を受けることができるよう検討すること。   右決議する。     —————————————
  38. 亀山孝一

    亀山委員長 本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  39. 亀山孝一

    亀山委員長 起立総員。よって、久保田円次君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、藤枝自治大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤枝自治大臣
  40. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を体しまして善処いたしたいと存じます。
  41. 亀山孝一

    亀山委員長 この際、太田一夫君より発言を求められておりますので、これを許します。太田一夫君。
  42. 太田一夫

    太田委員 ただいま大臣の御意見発表がありましたが、それに関連しまして私、一言だけ申し上げておきたいと思うのです。  それは今回、地方公務員等共済組合法改正に関して長い審議を費やした。その長い審議を費やす間に、大臣はあまりこの席においでにならなかった。そうして次官はよく、われわれの意見を尊重するという、こういうお話はありましたけれども、主として長野局長以下の御答弁でありました。したがって、いまわれわれの同僚からそれぞれ言われました質疑ないしは意見あるいはまた修正を含む附帯決議等趣旨については、いま明白にされたのでありまして、附帯決議を尊重するとおっしゃった大臣の決意も明らかでありますが、これはいつもきまり切った文句であって、はたして内容を真に御理解いただいておるかどうか、私はちょっと疑問を持つわけです。しかし、もうこれは大臣の他の委員会における明確なる御答弁を拝見いたしますると、おそらく間違って解釈されておることはないと思う。ただ公務員部が今度できることになるのでありましょう。自治省設置法の一部改正が実現できますれば公務員部というものができる。公務員課が昇格いたしまして公務員部ができれば、福利対策というものあるいは労務対策というものは非常に進んでくると思う。その際に、公務員部ができてこの地方公務員の福利というのが向上するという実証、証明がなければ、私はせっかくつくった公務員部は、何のためにつくったかわからなくなると思う。特にこの膨大な法律を完全にそしゃくして、そうしてたとえば一つの運用金利の問題についても、私は頭を使うところがあろうかと思う。そういう点をうんと頭を使っていただいて、この共済組合法の第一条にありますとおりに、地方公務員並びにその遺族生活の安定と福祉の向上に寄与する、あるいはまたその費用については、国または地方公共団体がその健全な運営に資するために必要な配慮をしなければならないというように、公的負担の問題についてもこの理念が明らかになっておるわけです。このことをひとつ思い出していただいて、今後この共済組合法において、恩給法が変わったからこれを受動的に変えるんだというようななまやさしい消極的な態度でなく、ひとつ積極的に本来の目的実現のために突き進んでいただく決意をもってお取りはからいをいただきたいと思うのです。そういう意味であなたの御意見を拝聴いたしたいと思いますので、お願いしたいと思います。
  43. 亀山孝一

    亀山委員長 藤枝自治大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤枝自治大臣
  44. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいま太田さんのおっしゃったことを十分体しまして、今後に処してまいりたいと考えます。
  45. 亀山孝一

    亀山委員長 おはかりいたします。ただいま修正議決されました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 亀山孝一

    亀山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  47. 亀山孝一

    亀山委員長 次に、内閣提出にかかる道路交通法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。井上泉君。
  48. 井上泉

    ○井上(泉)委員 およそいろいろな法律がつくられるわけですけれども、何か法律がつくられるたびに、そのもとになる法律ができた当初からは後退をして、人民の権利が奪われたり、あるいは負担が重なったり重くなったりするようなことで、ほんとうに民主政治というものがだんだんに狭められていくような感じがするわけですが、特に今度の道路交通法の一部を改正する法律案については、これはなるほど道路交通の安全を期するためにというこの意図によって改正をされたとは言いながらも、非常に問題点が多いわけです。第一に、警察官に非常な権限が委譲されるということ。昔、子供が悪いことをすれば駐在へ言うていくとか、あるいは巡査に言うよと言って、巡査というものを大きな恐怖の対象にした。それと同じような傾向というものが、そういうふうな姿に再び復活をするような傾向が、この交通法の改正の中でも考えられるわけです。特に最近巡査の素質の低下——私は交通安全については、ほんとうに炎天の中で、あるいは寒風の中で非常に健闘されておる交通巡査の御苦労、交通担当官の御苦労を思うと、これはほんとうに感謝する気持ちが起こるわけですが、しかし、やはり全体として見た場合に、警察官というものが大きな国家権力を背景にしておる、そしてまた一つの権力を持っておるということによって、警察官の非行といいますか、警察官の素質というものが低下をしておることは、これはいなみがたい事実だと思うのです。多くの例をあげて申し上げる時間もないのですけれども、やはり道路交通法の一部を改正する法律案の中で警察官の権限というものが非常に増大されるので、私はこの機会に、最近非常に相次いで起こっております警察官が人を殺したり、あるいは警察官が人に殺されたり、こういったような事件が起こることについて公安委員長はどう考えておられるのか、その辺についての御心境をまず承っておきたいと思います。
  49. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 最近起こりました警察官が犯人逮捕の際に発砲してこれを殺してしまったというようなことでございます。その一つ一つにつきましては、これは正当防衛であったり、あるいは緊急避難的なものであったりということはあります。しかしそういうことは別にいたしまして、警察官がいろいろ問題を起こすということについて、やむを得なかった場合も相当多いのでございますが、また注意の足りなかった、あるいは未熟であったというようなことも考えられるわけでございまして、そういう意味で、あくまで警察官の教養の問題、特に御指摘になりましたように、たとえば今回の道路交通法改正によりまして警察官が相当の権限を持つというような問題もございますので、十分今後とも教養の面につきまして意を用いてまいりたい。また具体的に拳銃の使用方法その他に、あるいは犯人の逮捕の場合におけるやり方等について、そうした技術の面と申しますか、単に精神的な面ばかりでなく、技術の面につきましても十分な切磋をさせまして、そうしてああした事件を未然に防げるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  50. 井上泉

    ○井上(泉)委員 本年に入って、警察官が五人も殺されておる。私は非常に、こういうふうな警察官の被害ということにつきましては、深甚の哀悼の意を表すると同時に、家族の方あるいはその他の方たちの悲しみもいかばかりかと察するわけですけれども、警察官が逆に人を殺すということ、これは最近起こりました交通違反をして、そして検問しておるところで逃げたからといって、それに五発も拳銃を撃ってから殺したという事件、それから土佐清水市の、警察官がたくさんおる警察署の署内で、一人の精神病者——新聞にはこう載っておりましたけれども、その酔漢が、酔ってあばれてきて、ジャックナイフを持っておるからといって、上司が殺されると思うからといって、机の中から保管してあるピストルを取り出してきて、それで射殺をしておる、こういうことは全く言語道断な行為だと思わざるを得ないのですが、この二つの事件についての新井長官のこれに対する処し方、そしてまた、これは警察官の拳銃に対する取り扱いがいかにルーズであるか、こういうことを証明するものだと思うのですが、これらについて見解を承りたい。
  51. 新井裕

    ○新井政府委員 大阪の事件と高知の事件についてお尋ねがございましたが、新しいほうから申し上げますと、高知の事件は井上委員のよく御承知の県のことでございますが、状況としては、うしろから刃物をとろうとして、すべってころんでしまって殺されそうになったということをはたで見て発砲したということであります。ほかに手段があったかなかったかということになりますと、まあ一般的、常識的に言えばやむを得なかったのじゃないかというふうに思っております。大阪の事件は、目下係争中のようでございますが、発端はなるほど交通違反のことでございますが、職務を執行した者に対して暴行をいたしましたので、やむを得ず発砲したというふうに見ております。  一般的に申しまして、日本の警察官が常時拳銃を携帯するようになりましてから約二十年たっておりまして、その間にわれわれもずいぶんいろいろと苦心をいたしまして、最初のころと比べますと非常に事故は少なくなっております。今後もできるだけ事故を少なくするような訓練、それからまた心がまえというものについて、反復教養をしてまいらなければならない、こう考えております。
  52. 井上泉

    ○井上(泉)委員 大阪の、交通の検問中に——これは遺族が警官を告訴した、これなんかも、そこで押えてやっているのですから、別に逃亡するにも逃亡のしようがないでしょう。それにもってきて、五発も撃ってからそれを射殺するということは、ほんとうに全く言語道断と言わざるを得ないわけです。高知の場合にいたしましても、警察であばれて、警察官がたくさんおるわけです。それで、どうもあばれてきたといって、部長は逃げたとか、ある課長はどうこうしたということが地元の新聞にずいぶん出ておるわけですが、それで事件は警察官のことだから検察庁に移して、正当防衛じゃなかろうか、こういうふうなことを言っておるわけですけれども、少なくとも警察の——警察官がやったのですから、あなたたちは警察官をかばうのは、これは普通だと思うのです。普通だと思うのですけれども、そういう事件を起こしたのが、たまたまピストルを使ったのがちょうど二十そこそこの新米の巡査、それでこういう巡査に大きな権力を与えて、ピストルを持たすことによって、これから私はこういう事件というものがひんぱんに起こると思います。そういうことから考えて、拳銃の取り扱いについての規律というものがあまりにもずさんでないかと思うわけです。この点で思い出すわけですが、鳥取県か島根県かで、警察本部長が何か射撃場の落成式に拳銃を隣の一般人に対して、民間人に対して、あれで撃ってみよ、こう言ってやらしたという事件が新聞に載っておったのですが、あれは公安委員会としてはどういう処置をされたのですか。
  53. 新井裕

    ○新井政府委員 お尋ねの件は島根県のことでございまして、お尋ねのような事件がございまして、私ども事情をよく調べたところが、警察官をそばに介添えさせて撃たしたから間違いはないと思ったという弁明でございますけれども、おっしゃるように、たいへん筋違いのことでありますので、厳重に本部長にも注意いたしまして、全国にもそういうようなことの間違いを再び繰り返さないように処置をいたしております。
  54. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私はその事件があってから二、三日たって、何か警察庁の人事異動が載っておりましたので、これはこういうふうなことをしたから警察官のいわゆる服務規律の厳正をはかる意味において、こういう事件が起こったから、だから警察庁は時を移さず異動したものだ、こう思って中身を見たけれども、全然そういうふうななにがなかったわけです。こういうふうなことが、そばに警察官がおったから安全が確保されたと言うけれども、そういうことだと、警察官がおったら、だれでもピストルを貸してもかまわない仕組みになっておるのですか、これはひとつ長官に御返事願いたいのです。
  55. 新井裕

    ○新井政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、そういうことは部内の規則で許されておりませんので、厳重に注意をいたしたわけであります。
  56. 井上泉

    ○井上(泉)委員 部内で、規律で許されていないことを、そういうことをして注意で済ますということ、ここは私はやっぱり警察がほんとうに綱紀粛正というか、官紀の粛正というか、そういうものについての姿勢がないために、巡査のそういう拳銃による射殺事件を相次いで引き起こす姿があると思うのです。これは交通違反で幼稚園児に対してずいぶん迷惑を与えた警察官もあったわけですが、これはやはりそういうふうな、少なくとも警察本部長たる者がそれだけのことをして進退伺いも出さない、それで厳重に注意をしたとかいうようなことで済まされる問題であるのかどうか、この点について私は長官の御見解をもう一度承っておきたいと思います。あわせて、この大阪の場合にいたしましても、当然犯人を射殺する必要は全然ないわけです。それから高知の場合にいたしましても、これは警察官全体が、ほんとうにそういう凶器を持った者が警察署へ入ってきた場合には、何も拳銃で撃たなくても、警察の署内には警察官は十人や二十人はいつでもおるのですから、それで拳銃を撃たなければならないというような警察の仕組みになっておるのかどうか、それほど軽く拳銃というものを警察庁は扱っておるのかどうか、何か巡査に大きな権力を持たし、そうしてまた民衆に対して威圧感を与え、恐怖感を与えて、昔のさむらいの寄らば切るぞ式で、平然とピストルを発射するということについて、この際、いわゆる拳銃の取り扱いについて私はそれほど粗雑になっておるものとは思わなかったわけです。少なくともこういう拳銃を扱った本部長については、厳重に注意をしたとかいいましても、どういう処分をしたのか。それはおまえそういうことをしてはいけないとか——本部長の新聞談話で見ると、全くずうずうしい談話のしかたであったわけです。私は、そういうふうに、何らそこに一かけらの反省もない本部長の談話を新聞で見たわけですが、一体厳重な注意をしたというが、どういうことをしたのか。拳銃の取り扱いについての規律を怠った者に対して、それくらいのことで警察官として済まされてよいのかどうか、ましてや管理者の場合。この二つの点をお伺いしたいと思います。
  57. 新井裕

    ○新井政府委員 島根県の問題につきましては、私どももたいへん遺憾なことであり、そう軽々しく済まされる問題であると思っておりません。ただ厳重注意処分というのは一つの処分でございますが、その程度にとどめたのは何かというお尋ねですが、本部長はふだんたいへん熱心にやっております。たとえば問題になっております交通取り締まりについての一般市民との接遇につきましても、たいへんよくやっているということで、ほかの県から島根県へ行くと非常に空気が違うというようなことも言われております。そういうふだんの努力をしんしゃくしてそのようにいたしたのでありまして、全然でれっとして反省しないというわけではございませんで、私あてにもその始末書を提出しております。
  58. 井上泉

    ○井上(泉)委員 厳重注意というのは、処分のどういう内容になるのですか。口頭で、あんなことをやってはいけませんよということですか。
  59. 新井裕

    ○新井政府委員 そうでございます。そういう処分の一段階がその中にあるわけでございます。  それから土佐の問題でございますけれども、これは井上委員は、初めから刃物を振りかざして入ってきたようにおっしゃいましたけれども現実は刃物を隠し持ってまいっておりまして、ものを尋ねるような形で入ってきて、突然ナイフを振るったということで、対応のしかたが非常に——大ぜいといっても、そんなに大きな署でありません。わずかな人数でありますけれども、対応について、必ずしもみんな達人でもございませんので、あわてた者もおったようでございます。そういう処置をしたものと私どもは見ております。  それから挙銃一般についてのことでありますが、挙銃を貸与されましてから、しばしば実例がございますので、実例を教訓にいたしまして、慎重にこれを取り扱うようにということは部内の規則でもあるいは通達でも繰り返し繰り返し注意をいたしておるところであります。ときどき事件が起こりますけれども、全体の数とすれば減りつつある状況でありますし、今後もそういうことで希望を持って指導していけば、あやまちをゼロにするということは人間でありますからあるいはできないかもしれませんが、うまくいくのではないかというふうに思っております。
  60. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それじゃ駐在の警察官が、そばにおる者にピストルを貸して、そこを撃ってみよ、どうなるか、こういうふうに貸した場合でも厳重処分で済むのですか。これはあなたたち同僚——下僚といっては失礼ですが、部内の方がいろいろ気に入らぬ、あるいは手の足らないことについて、おまえはああいうことをしてはいかぬじゃないか、たとえば鈴木交通局長に、おまえあんな交通の取り締まりをしてだめじゃないか、こう言うことは一つの厳重な注意でしょう。そういうことは絶えず署内なりあるいは部内でやっておることであって、島根県の警察本部長に対する処分というのは、これは処分じゃないじゃないですか。上がそういうことをするから、下はますますトラの威をかるキツネというような、たいへんなことをするわけです。この清水署の問題につきましては、これは私は警察官として常識で考えられぬことだと思うのです。ジャックナイフを隠して持ってきた、こういうことは地元の新聞でも書いておるのですが、「シャツの中から刃渡り十四センチのインディアンナイフを取り出して突きかかろうとした。同巡査はその場から逃げたが、こんどは署内にいた林田美智磨次長らに襲いかかり、逃げる同次長」——次長は玄関先まで逃げている。こんな警察官がありますか。逃げて、この騒ぎで二階にいた松本刑事課長が降りてきて、玄関先でその男を説得した。すきを見て一人の署員が棒で凶器をたたき落とそうとした。ところがそれができなかったからといって逃げた。こういう状態の中で、一人の若い巡査がピストルを保管庫から持ち出してきて射殺するということは、これは全く非人間的な——警察官が殺されるということも、殺された警察官の家族や本人、これは人間の命は一つしかないのですから、こういう大阪の警察官の射殺にいたしましても高知県の射殺にいたしましても、私はやはり島根県の警察本部長が拳銃の取り扱いについて規則に違反をしてやる、やったことに対して何らのとががない、これは口で言ったものですから、とがじゃない、何でもないです。あなたが東京に呼び寄せて、おまえあんなことをされちゃ困るじゃないか、こう言われる、それはあたりまえのことです。それで問題を解決しようとするから、結局警察官がこういうことを平気でやるわけなんです。私はそういう点で、これほど道路交通法を守るために努力をされておる全体の警察官に対しまして、こういう本部長や、あるいはこういう警察官のピストルの取り扱い方というものは、大きなどろを塗ったことになるわけだと思うのです。それは警察は正当防衛であるとか、あるいは緊急避難のためにやむを得ずとった措置だとか、いろいろ理屈は言われておるのでしょうけれども、おそらく清水の場合にいたしましても、家族なりあるいは周囲の人たちは告訴をするでしょう。そして検察庁が乗り出しておるから白黒はつくと思うのですが、警察官に拳銃を持たすということを、ある程度年齢的に制限したらどうですか。相次いで起こった、二つとも若い巡査ですが、交通巡査に拳銃を持たしておるかどうか知りませんけれども、全部の警察官に拳銃を持たしておるということは、何か拳銃を持たす場合には規制をして、ふだんいつでも巡査がピストルをさげるということはやめたらどうかと思うのですが、その点についてのお考えをお聞かせいただきたい。
  61. 新井裕

    ○新井政府委員 先ほどの島根のことについて重ねてお尋ねがありましたが、これは射撃場でありまして、ほかに危険を及ぼすおそれがないという認定があったのと、先ほど申しましたように、ただ呼んで、おまえ悪いぞ、気をつけろと言ったのとは違いまして、部内では口頭処分も処分の一つとして考えられておりまして、そういう意味では処分をしたという扱いをしておりますので、御了承を願いたいと思います。  それから拳銃の携帯についてのお尋ねでございますが、いまお尋ねのように、交通の取り締まりに専従しております警察官は拳銃を携帯いたしておりません。常時携帯しておりますのは、そのほかの制服の警察官でございます。ただいまの状態としては、私は年齢によって差をつける必要はない。警察学校で一年間訓練をいたしておりますので、そういう点については十分の教養を尽くしたというふうに見られると思っておりますので、ただいまそういう計画は持ち合わせておりませんし、大体いまの程度の常時携帯でいいんじゃないかというふうに考えております。
  62. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それはあなたたちがきめてやることですから、これは人民の声はなかなか届かぬわけです。私は、そういう若い者にやたらに拳銃を取り扱わさすようなことのないように、もっと現在の警察官の拳銃の取り扱いについては規制をする必要がありはしないか、こういうように思っておるわけですけれども、こういう一連の事件について、藤枝公安委員長の御所見を承って、私はこの問題については終わりたいと思います。
  63. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 具体の事件についてあとから考えると、ほかに手段があったのではないかということも考えられると思います。ただ、とっさの場合におきましての今回の事件については、やむを得なかった処置であると認めざるを得ないわけでございます。つきましては、拳銃をいかなる場合にどのように使わなければならぬかというようなことは、これについては常に訓練を積み重ねておるわけでございますが、今後さらに、もちろん教養の面、精神面でもそうでございますが、拳銃の使い方の技術の問題その他につきましては、第一線警察官を常に訓練をいたしまして、そして正当な使い方をいたしますように一そうの注意をいたしたいと考えておる次第でございます。
  64. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私はどうせ清水の問題も、それから大阪の問題も、これはやはり法廷で争われる結果になろうと思いますので、その結果によってまたこの問題の実相というのが明らかになると思うのですけれども、よしんば正当防衛の行為でありましても、私は自分のところの高知の警察署の恥をさらすようでほんとうに恥ずかしい思いをするわけですけれども、警察官がそういう始末、警察署内で、しかもジャックナイフだから、それがたくさんの者がおってそれを射殺をせねば取り押えることができなかった。よしんばそれが正当防衛であっても、そこに警察官の仕事に対する意欲というものが何か欠けておるのじゃないか、私はこんな気がしてならぬわけでありますが、その点も十分御調査の上、警察がほんとうに地域の住民から信頼が置かれるような御指導を願いたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、そういうふうな警察官全体の、いわゆる警察官が取り締まらなければならない関連をする法律というものを、何か権力的な立場においてこれを行なうということは、こういう拳銃事件のようなものを引き起こすおそれというものは多分にあるわけであります。その点をもあわせて御注意を願いたいということと、それから道路交通法の一部を改正する法律案でも、政府が提案をしておるのだから、全面的に原案が修正をされるようなことがあっては困る、あるいは自民党の方たちは、政府が出された法律案は、これは政府、自民党は一体ですから、修正なんかする道理はないと思うのです。ほとんどこれはフリーパスで通るわけですけれども、やはり委員会審議の中で問題点が出た場合については、それを改めるなりあるいはその運用の面で考慮するとかいうことにはやぶさかでない気持ちを持ってやってもらわぬと、質問するものとしても非常にしんどいきわみですが、その点についての長官の御意見をひとつ承りたい。
  65. 新井裕

    ○新井政府委員 包括的御質問でございますので、どういうことかわかりませんけれども、もちろんここで附帯決議をつけられたような問題につきましても十分いままでやったつもりでございまして、今度の改正案につきましてここでお尋ねがあり、御注文がありましたことにつきましては、御趣旨のようにできるだけその点に沿うように努力をいたして運営をしていくつもりでございます。
  66. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、道路交通法の一部を改正する法律案の中の、横断歩道における歩行者の優先のほうからまず御質問申し上げます。  車が直前で停止をしなければならないという直前、横断歩道の直前とはどの程度をさしておるのか、それをひとつ交通局長さんからお答え願いたいのです。
  67. 鈴木光一

    ○鈴木(光)政府委員 横断歩道は歩行者が歩いておりますので、自動車が停止した場合に、歩行者に危害を及ぼさないという範囲を、抽象的に申しますればそういうことになるわけでありますが、私どものほうで規制の基準をきめておりまして、横断歩道の直前に停止線を引いてございますが、あれは私どもの基準では大体二メートルないし三メートルというところに線を引いて、そこを停止線にしなさいというふうに内部で基準をきめております。
  68. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いろいろな人の事故は、横断歩道中の事故が非常に多いわけですが、横断歩道直前といいましても、たいてい——私きのう大阪のほうであちこちの横断歩道でぶつかった例ですけれども、車が横断歩道の停止線よりうしろでとまっておる状態というものは一カ所もなかった。そして横断歩道の線で何台かの車が必ず出ているわけです。そうすると、横断歩道のあるところでは手前でスピードを出されないわけですから、かりに時速三十キロのスピードで走ってきておっても、横断歩道の直前ということになりますと、直前でとめるという場合に、三十メートルの場合にはすぐブレーキがかかる、二十五メートルか三十メートルくらいだったらブレーキがかかりますけれども、時速三十キロにしても〇・一秒で八メートルか十メートルくらい行くのですから、そうなるとその直前、停止線を二メートルくらい前に引いておるということは、これは横断歩行者の安全を確保するために適正な停止線だとは私は考えられないのですが、その点についてはどうでしょう。
  69. 鈴木光一

    ○鈴木(光)政府委員 横断歩道にはいろいろございまして、信号機のあるところと信号機のないところの横断歩道もございますから、したがってその場合に、停止線を設けて明確にして一時停止をするように指導しているわけでございますが、なお、いまのお話のように急にとまれないという問題もございますので、現在横断歩道の前三十メートル以内では追い越してはいけないという規定がございまして、その三十メートル以内の部分につきまして黄色い線で追い越し禁止の標示をしておるわけでございますが、これがかねて横断歩道の予告の線ということにいたしまして、黄色い線の引いてあるところに入りますれば、いつでもとまれるような状態で徐行するという仕組みにしておる次第でございますが、なおいろいろ御指摘のように、横断歩道の停止線あるいは横断歩道の上まで行ってとまっているというような事態も、われわれ間々見受けておるわけでございます。それは十分指導をいたしましてやってまいりたいと考えます。
  70. 井上泉

    ○井上(泉)委員 この横断歩道の直前で停止をしなくてはならないということ、手前であっても横であっても、法律の中ではそういうことはきめられてないでしょう。だから横断歩道で横断者、歩行者の安全を確保するためには、全部その停止線を十メートルも二十メートルも引くとかということになると、これは交通の渋滞を来たすという危険性も感ぜられるわけですから、そう一がいにはいかないと思いますけれども、少なくともこういうふうな横断歩道の直前で停止しなくてはならない。この法律の条文のきめ方でやりますというと、直前でとまっておれば何でもかまわない。ところが直前ということにしておるから、絶えずその横断歩道に出るわけでありますが、出るから横断歩道者に人身傷害事故というものが圧倒的に多いわけです。そこらのところを何か法文の中で、直前とかいうことではなしに、何らかのあれができないものか。それともこれが施行になるとやはり法律どおりでいくのか。何かこれを規制をする、この直前ということを裏づけするような規則なり、何かそのようなものはつくれないものですか。
  71. 新井裕

    ○新井政府委員 いま御指摘になりましたように、横断歩道の中に突っ込んでおるのは明らかに違反でございます。したがいまして、この直前というものをどういうふうに解釈するかというお尋ねでありますけれども、あそこには直前が中を含むなどということはとうてい考えられませんので、あの手前でとまらなければいけないわけであります。これを今後取り締まりといいますか指導というものに非常に力を入れなければならない。日本独特の風景だと思いますが、御案内のように、歩道を横断する人たちも、赤信号のときにわざわざ片足だけ車道に落としておるような人がたくさんおります。やはり日本人のせっかちな気持ちのあらわれじゃないかと思うのです。こういうことで、これは非常に、お尋ねのようにわれわれも頭痛の種でございます。これを一々厳罰にするようなことを言ってみたところで、急に非常な混乱を来たすだけでございます。今後ああいう問題については、きちっととまれるような習慣をつけるように指導していかなければならない。これは自動車でも歩行者についても同断であるというふうに感じております。
  72. 井上泉

    ○井上(泉)委員 長官の言われるようなお気持ちであれば、別に法律をいろいろ改正せぬでも、この法律をきちんと守ってくれたら、最初つくった道路交通法、その前の道路交通取締法、これだけでもちゃんと——必要がないわけでしょう。普通追い越しなんか、昔の法律では、みだりに車を追い越してはならないというような簡単な条文でやっておったのを、これがますます複雑になっていくに従って、この法律そのものも複雑化し、細分化されてくるのは、これはあたりまえでしょうけれども、やはりこういう場合にも、直前でとまればよいから、それより前へ出るのはこれは間違いだ。間違った車は違反車だから、これはどうこう言うてもしょうがないじゃないかという長官のお考えのようですが、やはり交通安全を確保する、道路交通法による交通安全を守っていくためには、この横断歩道の手前に必ず停止線というものを設けて、そしてそこから予備線とかいうことでなしに、一定の線を引いてやっていただきたいと思うわけですけれども、なかなか自説を固持されるようですから、私もこの法案によって十分な成果があがるように期待をしておきたいと思います。思いますけれども現実には横断歩道の中における事故というものがこういうことでずいぶん起こっておるんですから、その点はひとつお忘れのないようにお願いしたいと思います。  それで、今度の道交法の改正で一番の根本になるのは、やはり反則金の制度というものを採用した点だと思いますが、この間参考人の方のいろいろ説明を聞いた中では、またこれは説明書にも書いてあるのですが、罰金でもない、過料でもないという、何というかそういうふうななにを説明されたのですが、ところが罰金でもない、過料でもないものであるとして、反則金として納付を求めた。納付を求めたけれども、それを支払う能力がないために、それを払わなかった。払わなかった場合には、これがまた刑事事件として警察庁なり裁判所で取り扱われるということになる。そこで、最初これで反則金一万五千円ときめてあるのを、これをよう払わなかった。そのために、今度裁判所でこれが二万円になったということになりますと、この反則金と裁判所の判決というものとは、何ら関係のないものになるわけですが、法律的に、一人の人間に異なった——立場が変われば、反則金の制度では一万五千円、これをよう払わなかったために裁判になったら二、三万円になった、こういうことになりますと、法というものが平等でないことになる。私は、反則金というものが、何かいわば簡単に取り上げる仕組みになっておるように考えるわけです。これはひとつ、法律的にどうなるのか、法務省の方がおいでのようですから、伺いたい。こういうふうな反則金で一万五千円かかっておった。今度裁判になったところが三万円かかった、こういう場合の違いは法律的にはどう理解したらいいのだろうか。
  73. 川井英良

    ○川井政府委員 この制度は、罰金の条文をそのまま残しておきまして、その上に反則金制度というものを設ける仕組みにしてございますので、ただいま御指摘のような場面が出てくるのは当然のことかと思うわけでございますが、反則金の額は罰金の範囲内におきまして、いろいろな角度から考量いたしましてまず相当のところと思われる額をきめておりますので、具体的な実際問題といたしましては、反則金は一万五千円を納めれば済むんだけれども、納めないために刑事手続にのっけられて、罰金を納める場合にはそれが三万円になるというようなことは、その罰金の額と定められた反則金の額との間で、そのような激しい開きは実はないことになろうかと思うわけでございまして、おそらく反則金の制度が設けられた暁におきましては、裁判の運営も、その違反行為につきましては、おそらく反則金の額が一つの基準となりまして、それに近い額が罰金におきましても量定されることになる、これはいまの裁判制度の実態から申しましてもそういうことになろうかと思うわけでございます。
  74. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は、警察官が裁判所としての一つ権利も持つような制度の大改正でありますので、この反則金の問題についてはよほど慎重に論議せねばならない、かように思うわけでございます。  そこでひとつお尋ねしておきたいのですが、これは警察庁からいただいた「反則金通告制度について」という資料ですが、「反則金は、任意に納付されるものであるから、刑罰である罰金または科料とは異なり、また、納付強制力を有する過料などの行政上の秩序罰とも異なる。」というのです。私はこれは一種の秩序罰であろうか、こんなふうに思っておったのですけれども、これは秩序罰とも異なる、罰と書いてあるから、秩序罰とも異なる、罰金でないから秩序罰とも異なる。これと、「反則金は、国税犯則取締法等に基づいて税務署長等から税法違反者に対してその納付を通告される金額に類似の性質をもつものであると考えられる。」類似の性質を持つものであると考えられるということになるというと、国税犯則取締法に基づくいわゆる税法違反による金額の取り扱いに準じてくるのか。この警察庁からいただいた資料によればそうならざるを得ないと思うのですけれども、そうでもないようですが、この辺をひとつ説明してもらいたいのです。
  75. 新井裕

    ○新井政府委員 この間山内教授は、法学者の立場でいろいろ説明をされまして、罰の一種であることには間違いないというふうに断言をされております。私どもそこに書きましたのは、そこにある過料とは違うのだ、あるいは罰金とも違うのだというようなものであるけれども、私どもも行政上の一種の制裁金であると考えております。学者によりましては、これはいままでにない一つの独特の性質のものだというふうに評する学者もおります。こういう学問上の問題は、私どももそれ以上深入りするほどの知恵がないのでありますけれども、任意に納められる点では確かに過料と違う、それからまた罰金ともそういう意味では違うということをそこに書いてある次第でございます。
  76. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私、法律内容については全く知恵が回らぬので、非常にくどいような質問になるわけですけれども、これは任意というけれども、全然任意じゃないです。あなた任意と言われるけれども、どこで任意であるのか。やはりこれは任意と解釈していいのですか。その点ちょっと……。
  77. 新井裕

    ○新井政府委員 たとえば罰金と違うという意味は、罰金を納めなければ強制徴収される、過料も納めなければ強制徴収される手続がある。そういうものと違って、反則金は、納めなければ強制徴収をされるという手続は何も出ていない。そういう意味において任意でありますけれども、お尋ねのように、これは山内教授も、事実上の強制力はあるのだというふうに指摘されておりますが、私どもおそらくそこいらが真実に近いものだと思いますが、法律上は少なくとも強制徴収の手続がないということを御説明をした資料だと思います。
  78. 井上泉

    ○井上(泉)委員 ずっと条文を追っていろいろと御質問したいのですけれども、これはたいへんな時間になりますので、省略して、反則金の取り扱いですが、これを大臣がおられるときに……。  反則金の相当額は、国が当分の間、交通安全対策の一環として、これを対策特別交付金として都道府県及び市町村交付するものとする、こういうことになっておるのですが、これはそこの反則金の上がり高とは関係ないですか。この点ひとつ……。
  79. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 要するに、法案にありまするように、反則金の相当額を特別交付金で出す、そうしてそれは将来精算をするということですから、反則金が幾ら一年に上がったか、それがそのまま、それに相当する額が特別交付金として都道府県並びに市町村に行くわけでございます。
  80. 井上泉

    ○井上(泉)委員 反則金の配分は非常にむずかしいのですが、これの要綱というのはいつごろできるのですか。つくるつもりですか。どちらでやられるのかひとつ……。
  81. 細郷道一

    細郷政府委員 この法案が通過いたしますれば、来年七月から反則金制度が通告になるわけで、したがいまして、反則金をもとにした交付金の制度は四十三年度からの問題になるわけでございます。したがいまして、それに間に合うように政令等で配分の基準等をきめればいい、かように考えております。ただ、私どもいま考えておりますことは、御指摘のように反則金収入額とその交付額が結びつけられることによるいろいろな誤解もあろうかと思いますし、また執行上の問題もあろうかと思いますので、反則金によります交付金の配分にあたっては、交通事故の発生件数であるとか、あるいは人口の集中度合いであるとか、そういったような客観的な資料に基づく配分基準を定めてまいりたい、かように考えております。
  82. 井上泉

    ○井上(泉)委員 たとえば高知県なら高知県にこの反則金が五千万上がった、それでは五千万高知県は上がったからそれを重要な配分の基準にする、こういうようなことになると、これはたいへんなことになると思うのです。それはいわゆる警察と自治体との行政というものが一体となって、地方の自治体というものに対して警察の力というものが非常に強くなってくるわけです。こういうことになりますと、自治大臣の言われる地方自治権というものは守れなくなって、逆に地方自治は警察権のためにたいへんな侵害をされると思うのです。少なくともそこの地域によって、交通事故の発生件数の多いところはそれだけ反則金が多くなっておると思いますが、この反則金の多寡に応じて配分をするというようなことはぜひとも考えないでほしい、こう思うわけですが、ひとつ自治大臣の御答弁をお願いしたいと思うのです。
  83. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど財政局長が客観的な基準の一つとして交通事故をあげましたが、それは、いわゆる反則金がそこからどれだけ上がったというようなことは全然基準に考えないつもりでございまして、交通事故、いわゆる事故を起こした場合、その事故の数とかあるいは人口の集中度とか、さらにもっと交通安全対策をやる上において基準になるものがあればさらに知恵を出したいと思いますが、要するにいま井上さんがおっしゃったような、どの県から反則金がどれだけ上がったからそれに対応したような配分をするということは絶対にしないつもりでございます。
  84. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それではぜひそういうことにしてもらわぬと、警察官が反則金の取り合い競争をやっては、住民にたいへんな圧迫感を与えるだけではなしに、警察官が自治権に対して不当に干渉するようになりますので、よろしくその点は自治大臣答弁の線でひとつ反則金の配分をお願いしたいと思います。しかし、これはいま財政局長さんが言われました要綱をつくられるわけですけれども、この要綱をつくることになると国会審議の段階から離れるわけなので、この点私非常に問題に考えざるを得ないわけですが、これはあくまでも自治省の中で要綱をつくられる、何か規則とか、いろいろなものをつくるというあれはないのですか。
  85. 細郷道一

    細郷政府委員 配分の基準については政令で定めることになっておりますので、私のほうで原案をつくって、関係各省の同意を得て政令として定めたい、かように思います。
  86. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それじゃ、道路交通法内容につきましてはまた次の機会に質問をさしていただくことにして、きょうはこの程度で終わらしていただくわけですけれども、要は、この法案に賛成かどうかということにつきましては、なお慎重に審議をした中において態度をきめたいと思うのですけれども、こういう法律をつくることによって、不当な警察権の乱用にならないような規定が、やはり明らかにされねばならないと思うし、それから同時に、この法の持っております内容からいって、前にも依田議員からも質問がありましたように、事業者に対する罰則とか、あるいは事業者の事業の管理責任というものが非常に不明確なわけです。道路運送車両法にいたしましても、いろいろ事業の面は守っておるけれども、その道路運送に従事をしておる労働者に対する保護という内容というものが欠けておるので、やはり道路交通法というものを立案する中においては、私は道路交通の安全を期するためには、車を動かしておるのは人であるし、労働者であるから、やはり労働者の労働条件を守るということ、これはやはり道路交通法が警察庁の所管で、警察庁でつくられたといいましても、やはり道路交通を確保していくためには、運転者の身分というもの、あるいは労働条件というものが絶対的な要素を占めるので、そういう点についての配慮がこの法案の中にないことを非常に遺憾に思うわけです。  たいへん時間をとりましたけれども、これで終わります。
  87. 亀山孝一

    亀山委員長 河上民雄君。
  88. 河上民雄

    ○河上委員 道路交通法につきましては、ただいま井上委員から御質問がございましたし、またその前に依田委員からも詳細な質疑がございましたので、それとなるべく重複しないように、時間も限られておりますので、ごく簡単に御質問したいと思います。  最初にお伺いしたいのは、ただいま井上委員から言及された反則金の問題でございますが、もう一度重ねて反則金の法的な性格についてお伺いしたいと思います。
  89. 鈴木光一

    ○鈴木(光)政府委員 反則金の法律的な性格につきましては、いろいろな規定のしかたがあると思いますけれども、一口に申し上げますと、反則金とは、警察本部長の通告に基づきまして反則者が納付する行政上の一種の制裁金でありまして、これを納付しなくとも強制徴収されないけれども、納付すれば公訴を提起されなくなるという性質のものであります。したがって、広い意味では一種の行政罰に近いものだと言えると思いますが、先ほどもお話がありましたように、強制徴収されないという点で、行政罰である過料とは違ったものであるというふうに、一応規定しておる次第でございます。
  90. 河上民雄

    ○河上委員 ただいま御説明がありましたけれども、非常に微妙で、わかりにくい点もあると思うのです。ひとつ、法務省では、こういう問題は、ほかの法体系との中でどういうふうにお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。
  91. 川井英良

    ○川井政府委員 一般に制裁金と言われておるものについては、大きく分けまして三種類あるのじゃないかと思っております。第一種類と申しますものは、罰金とか科料とか言われておるものでありまして、これは刑法で定められておる司法上の刑罰という法的性格を持っているものでございまして、納めなければ労役場留置ということで、体刑にかえても納めなければならないという強い強制力を持っているものは、この一種類だと思います。  それから二番目の種類といたしましては、御承知のとおり行政上の過料と称せられているものがございます。これは先ほど申しました刑罰ほどに強いものではございませんけれども、これを納入しない場合には滞納手続として強制執行に乗せられますので、それを科せられたものとしましては強制的にもその金銭的負担を取り立てられるという意味におきまして、通常行政罰と称せられておるものでございます。  それから三番目の種類といたしましては、先ほどもお話が出ましたように国税犯則取締法でありますとか、関税法でありまするとか、特殊の法律の中に一種の行政上の制裁金とも申すべき範疇のものが認められております。刑罰に値する行為ではありますけれども、刑罰に処する前に通告いたしまして、違反者がそれに応じて納入をすればあえて刑罰にしないという、こういう制度のものでございまして、すでに日本におきましては既存の制度として何十年か運営されてまいったものがあるわけでございます。これが三番目の種類の制裁金ということができると思います。  本件の反則金通告制度は、この三種類のうちのどれに属するのだ、こういうふうな趣旨でございますれば、三番目の種類の制裁金の一種である、こういうふうに申し上げることができると思います。
  92. 河上民雄

    ○河上委員 それでは三番目のものに近いというふうに考えられるのか、それとも全く同じと考えられるのか。
  93. 川井英良

    ○川井政府委員 第一種類の罰金と科料との間にも、こまかく論じますと性格の相違がありますように、三番目の範疇でございますその一種の制裁金の中にも、国税犯則法でいうところのいわゆる通告制度に基づく金銭的負担と、この新しい制度考えられました道交法におけるところの反則金との間には、こまかく論ずれば幾らかの相違が出てくるのじゃないか、かように考えておりますが、大まかに制裁金の種類を分類いたしまして、第三番目の範疇に属することは間違いないと思います。
  94. 河上民雄

    ○河上委員 いまの問題について大臣からお答えをいただきたいと思っておりますが、これはいままでの御説明でも、非常に政府のほうでは答弁に苦しんでおられるようでございまして、そこに従来ありましたいろいろな法的な概念あるいは法的なパターンとは少し違うものだということが理解できるように思うのであります。つまりこれは道路交通という非常に特殊の事情の中で登場した新しい一つのパターンであるというふうに理解してよいものかどうか、それを重ねてお伺いしたいと思います。
  95. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この制度は新しい制度かとおっしゃられると、確かに新しい制度だと思います。ただ、それに類似をしているものがあるかないかということでは、いま法務省からお答えしたように、国税犯則取締法による通告と申しますか、あれと類似をしておるということでありますが、道路交通という面からとらえて考えますならば、道路交通の特殊性から来た一つの新しい制度と理解してもよろしいのではないかと考えております。
  96. 河上民雄

    ○河上委員 いまの大臣の御答弁でも明らかなように、道路交通という問題が新しい局面を迎えたというのは、やはり自動車の車両の非常な増大ということが背景にあると思う。新聞報道によりますると、いまや一千万台の時代に入ろうとしている。そういうところから、従来の取り締まり規則あるいは管理のいろいろな規制では不十分であるというところから、いろいろな新しい考案がなされつつあるのではないかと理解いたします。ところが自動車の運転を誤ったために人を死傷させたというような場合に、それに適用せられる法律として刑法の業務上過失致死傷、二百十一条が適用せられておるのでありますけれども、この業務上過失致死傷というのは一体どういう場合に適用せられておるのか、お伺いしたいと思います。
  97. 川井英良

    ○川井政府委員 刑法は私のほうの所管でございますので、私からお答えをさせていただきます。  御存じのとおり、特に人身に影響のある業務に従事しておる者が、業務上当然に法律上要求されておる注意義務を怠りまして他人を死傷いたした、こういうふうな場合に二百十一条が働くわけでございますので、その業務と申しますのは必ずしも交通関係の業務だけではございませんで、すべて人の生命身体に影響のあるような業務全部にこの二百十一条はかぶるものでございます。
  98. 河上民雄

    ○河上委員 去る三日、警察庁が発表いたしました一月から六月までの上半期の全国の交通事故の実態というのがございますが、それによりますると、死者が減り、けがが増加した、しかし交通事故件数はふえておるというようなことが出ておるのでございますが、ただその事故を起こす原因者のほうを見てまいりますると、いわゆるマイカー族と申しますか、オーナードライバーの引き起こす事故の増加が目立っているというようなことが出ておるのでございます。日本語の通常の感覚から申しますると、業務上という場合に、どうも自家用車をその中に含めるということには非常に無理があるのじゃないか、こういうように思うのであります。しかしながら、昭和三十年代に入りましてからの最高裁あるいは東京高裁の判例などを見ますると、こうしたいわゆる自家用車が引き起こした事件についても、この二百十一条を適用しているようでございますけれども、こういうことがはたして妥当であるかどうか、非常に疑念を持つのでございます。その点について大臣の御答弁をいただきます。
  99. 川井英良

    ○川井政府委員 大臣の前に私から少しお答えさせていただきます。  業務という概念はたいへんむずかしい概念だと思いますけれども、明治四十一年にいまの刑法ができましてからすでに六十年の運用の実績を持っておるわけでございますが、その六十年の間に何千、何万の判例が積み重ねられまして、ただいま御指摘のように、交通関係、特に自動車の関係におきましては、オーナードライバーも営業として運転しているものではございませんけれども、日常車を使って何らかの業務を執行しておるというふうな場合には、その運転ということが人の生命身体に危険を及ぼす社会生活上の業態であるということに着眼をいたしまして、オーナードライバーのような場合におきましても、二百十一条の適用におきましてはこれを業務と解するのだという考え方が日本におきましては確立をしているところでございますので、いろいろ常識的な観点からお考えをいただきまして、いささかおかしいのじゃないかというふうな御疑念が出ることはまことにごもっともかと存じますけれども、この法律の運用の実態におきましては、すでにそのようなものもこの業務に含まれるのだ。事は、人の生命身体に影響を及ぼすような業態であるかどうかという点にこの業務の解釈の重点が置かれておるということをひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  100. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 法律の専門家ではございませんので、法律に非常に弱いほうなんであれですが、いま法務省からお話がありましたように、要するにそういう事態といいますか、それが生命身体に影響を及ぼすというようなことで、いわゆるオーナードライバーが人を殺傷した場合にも業務上の過失致死傷罪に該当するということだと思います。まあこれは長い間の歴史がそういうことで一応固定した観念になっておるんじゃないかと私は考えるわけでございます。
  101. 河上民雄

    ○河上委員 業務上ということばは、やはりこれは営業用の車両が起こした事故に適用されるのが当然であって、オーナードライバーの場合、しかもふだんはほとんど使わない、ただ日曜日だけ家族を乗せてピクニックなり何なりに行く。その際に起こした事故というものも業務上の過失致死傷というこの二百十一条を適用することは、どうも非常に無理があると言わざるを得ないのであります。判例などによりますと、娯楽でも反復継続した場合はというようなことを書いてはあるのですけれども、オーナードライバーは大体反復継続してない場合が多いのでございまして、日曜ドライバーである場合が非常に多いわけでございます。そういう点から見ましても、これは要するに刑法のこれでこの問題を取り締まる、取り扱うこと自体が無理であるということを示すにほかならないのだと思います。  先ほど私が反則金の性格についてお尋ねいたしましたところ、どうも皆さまの御答弁では的確な性格を捕捉しがたいということがわかるのでありますが、要するにこの道路交通の中に発生した新しい問題を解決するために、他の法体系にはない新しい一つのパターンをつくって対処しよう、こういうようなことを考えられておることがはっきりとしているわけであります。だといたしまするならば、刑法の一部改正をはかってこの問題を解決すべきではなくて、道路交通法の中にそういう事態に対処する一つの項目を設けるのが至当ではないかというふうに私は考えるのでございます。その点、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  102. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに河上さんおっしゃるように、われわれも常識としてはオーナードライバーの事故を業務上過失致死傷罪でやるのは何かそぐわないような感じもいたしますけれども、判例等では固定をいたしておるわけでございます。道路交通という観点から、そういう人をたとえば殺したり傷つけたりした場合の罰則を設けたらいいではないかというのは、一つの御意見だと思います。ただ、私、これは法務省のほうからお答えしたほうがいいと思うのでございますが、たとえば営業用の自動車等については、それの致死傷については、業務上の致死傷罪を適用することについて御異論が河上さんにあるわけではないのだと思うわけでございます。したがって業務上致死傷罪というものは、単に自動車あるいは電車、汽車というばかりでなくて、もっと広い面がある。そうしてその中の態様としては相当悪質なものがあって、現在の刑の限度ではむしろ低過ぎるというような御意見からこの刑法改正を出されたのだと私は思うわけでございまして、そういう意味では、やはり業務上過失致死傷罪というものが元来刑法の体系の中にあるべきものであるとするならば、それの改正をされるということについては、これはそうであってしかるべきだと思います。ただ、いまお話しの、オーナードライバーが殺したり傷つけたりした場合に、一体それまで刑法の業務上過失致死傷罪にするのはどうかというところは、私も法律のしろうととしては、何といいますか、常識的にちょっとそぐわないような気がしますけれども、これは長い間の判例が固定いたしておるので、やむを得ないじゃないかというふうに考えております。
  103. 河上民雄

    ○河上委員 どうもいまの御答弁でも、ちょっと無理があるように思うのでございますけれども、いまの判例は、要するにそうした新しい事態に即応する、適用すべき法がないために、臨時的な措置としてそういうものが出てきて、今日に至ったのじゃないかと思うのでございます。したがって、常に法体系というものを維持するという考え方を持っておられるようでございますけれども、そうだとすれば、むしろ道路交通法という形でこの問題を処理する、だんだん整備していくという考え方に立つのが当然である。業務上過失致死傷罪を適用する問題につきまして、これでは量刑が軽過ぎるというような世論というものは実はまだあまり聞いておらないのでございます。道路交通の問題について特にそれが大きく問題になっているように思うのであります。他の職種につきましてはそれぞれ厳重な管理規定があって、したがってそこに当然の義務があると思うのでありまして、そういう点から見ますると、むしろ野放しになっているところの道路交通の場合に新しい一つのパターンをつくって対処するというのがむしろあるべき姿ではないか、私はこう思うのであります。ひとつその点を十分にお考えいただきたいと思います。これはなかなか重要な点でございますので、今後なお審議の過程でもう少しはっきりとさせていきたいと思います。  もう時間もほとんどございませんので、このことは私、あるいは他の方々から御質問していただきたいと考えるわけでありますが、なおこれは今度の道路交通法改正に伴っていろいろきびしい罰則というものが加えられておるわけでありますが、ただそれに対する安全施設その他そういう点がまだまだ十分でない。したがって運転者だけを責めるのは無理だという面がかなりあると思うのであります。その点については他の方々からすでに言及されておりますが、私はただ一言歩行者の点につきまして、いつもちょっと疑問に思っておりますのは、対面交通の問題であります。道路交通法によりますと、歩道と車道の区別のないときには右側を歩行者は通るようになっておるわけでありますが、国鉄の中を見ますと、非常に左側の場合が多い。改札口で出入りいたします場合に十中八、九左側になっておるわけであります。われわれ日本人は、行く所、場所によって常に左側であるか右側であるか、頭を切りかえなければならぬというわけでありまして、私は、こういう問題はもうかなり子供のころからついた本能みたいなものである、そういう意味で、何か交通安全の非常に基本的な問題が実はあいまいにされている、いいかげんにされておった、その上にいろいろなきびしい罰則が積み重ねられているという感を深くするわけであります。その点について政府のお考えを承りたいと思います。
  104. 新井裕

    ○新井政府委員 歩行者の対面交通、結果としては右側交通になりますが、これにつきましては、御承知のように戦争に負けまして後に取り入れられましたので、まだ二十年の歴史しかございません。しばしばこれについて問題がございまして、もとの左側通行に戻ったほうがいいということで、われわれも数回にわたって検討いたしたのでありますけれども、大部分の人たちというのはいまの教育を受けた人たちでありますので、われわれおとなは左側がいいように思うのですけれども、子供はもう右側通行が本能のようにしみ込んでおりまして、われわれが子供と一緒に歩いていると必ず注意されるというような実情でございます。やはりいまのように歩車道の区別のない道が多い日本においては、結果として右側交通のほうがいいというふうに私も思いますので、当分これを変えるということは考えておりませんし、おそらくわれわれが死んでいけば、いまの若い人たちがおとなになれば、こういう問題は起こらないのじゃないかというふうに思います。ただ御指摘のように、駅はがんとして左側を厳守しておりまして、われわれとしても非常に困っておるのですけれども、もともと左側通行のときにできた駅だからしようがないんだということでありますので、われわれも半分さじを投げたようなことを言っておるのでありますけれども、ただいまも非常に強い御指摘もありましたので、これを機にもう一ぺん、あの混乱がなくて済むような推進をいたしたいと思っております。
  105. 河上民雄

    ○河上委員 いま、さじを投げたというようなお話であるのですが、ある年とった法律学者がアメリカに行きまして、歩道でたまたまアメリカの婦人とぶつかった。そのときに、本能的にその先生はばっと左に避けたら、アメリカの婦人もやはり右側通行ですから右へ行ってまたぶつかった。そして非常に口ぎたなくアメリカの婦人にののしられて不愉快な思いをしたということがあるのですけれども、右側か左側かというのは瞬間的に、もう本能的に身についたところにいってしまうわけです。ところがだんだん一千万カー時代に入ってまいりますと、私は運転にあまり縁がないほうですけれども、これからだんだん歩行者であり同時に運転者である、歩行者と運転者が別の人種であるという時代は終わって、同じ人間が所と時によって変わってくるという時代に入ってきたと思うのであります。そういたしますと、私は運転の経験がないのでよくわからないのでありますけれども、瞬間的に、じゃ右に行くのか左へ行くのかというところが、そこで問題になってくると思うのでございます。そういうこともございますので、ひとつ今後御検討いただきたいと思います。  時間がちょうど一時でございますので、私はこれで終わりたいと思います。
  106. 亀山孝一

    亀山委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時散会