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1967-06-30 第55回国会 衆議院 地方行政委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月三十日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 亀山 孝一君    理事 大石 八治君 理事 久保田円次君    理事 和爾俊二郎君 理事 細谷 治嘉君    理事 山口 鶴男君 理事 門司  亮君       木野 晴夫君    久保田藤磨君       塩川正十郎君    辻  寛一君       登坂重次郎君    永山 忠則君       古屋  亨君    山田 久就君       井上  泉君    太田 一夫君       依田 圭五君    折小野良一君       大野  潔君    小濱 新次君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁長官   新井  裕君         警察庁交通局長 鈴木 光一君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     今野源八郎君         参  考  人         (学習院大学教         授)      山内 一夫君         参  考  人         (全国市長会理         事川口市長)  大野 元美君         参  考  人         (日本自動車連         盟副会長)   中村 俊夫君         参  考  人         (全日本交通運         輸労働組合協議         会事務局次長) 甲斐国三郎君         参  考  人         (全国交通運輸         労働組合総連合         副中央執行委員         長)      大井 秀雄君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 六月二十九日  市町村営有線放送電話施設助成等に関する請願  (大石八治君紹介)(第二一二五号)  同(小坂善太郎紹介)(第二一二六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二七号)      ————◇—————
  2. 亀山孝一

    亀山委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  固定資産税等に関する小委員会において、固定資産税等に関する件を調査するため参考人出席を求めて意見を聴取いたしたいとの小委員長の申し出があります。つきましては、同小委員会参考人出席を求めて意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 亀山孝一

    亀山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、期日、参考人人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 亀山孝一

    亀山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  5. 亀山孝一

    亀山委員長 内閣提出にかかる道路交通法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案について参考人として今野源八郎君、山内一夫君、大野元美君、中村俊夫君、甲斐国三郎君及び大井秀雄君の御出席を求め、それぞれ御意見を聴取することにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には御多用中のところ当委員会法律案審査のため御出席をいただき、まことにありがとうございます。本委員会における審査中の本案につきまして、何とぞそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べ願えれば幸いに存じます。  なお、議事の整理上、初めに御意見をそれぞれ約十分程度に取りまとめてお述べ願い、次に、委員諸君からの質疑に対しお答えをお願いいたしたいと存じます。  それから順序は、今野参考人の御都合もございますので、山内参考人今野参考人大野参考人中村参考人甲斐参考人及び大井参考人順序お願いをいたします。  それでは山内考参人
  6. 山内一夫

    山内参考人 ただいま当委員会において御審議中の道路交通法の一部を改正する法律案につき意見を述べよとのお招きでございますが、私の職業からいたしまして、法律上の意見を述べよとの御趣旨と心得まして、そのつもりで意見を申し述べます。  改正法案は、一条の部分と二条の部分とからなっておりまするが、反則金通告制度の新設を目的とする二条につきましては、憲法三十一条、三十二条、七十六条との関係をいかに理解すべきかという憲法問題がありまするから、これを中心にいたしまして意見を申し上げたいと存じます。  結論から先に申しますると、私は、この制度合憲と存じておるものであります。問題は、その合憲性をどう説明するかにあると存じます。いま申しました憲法の諸条項との関係の説明に入りまする前に、あらかじめ明らかにしておかなければならないのはこの反則金法律的性質でありますが、これは簡単に申しますれば、国家権力による制裁として科せられますところの金銭罰であるというふうに存ずるわけであります。  第一に、反則金金銭罰であります。ある者が違法行為をした場合に、その者に加えられる害悪一般に罰といわれておりまするが、反則金は、反則行為という違法行為をした者に加えられる害悪でありますから罰であります。罰は、害悪内容金銭的損失であるかどうかにより、金銭罰とそれ以外の罰とに区分されまするが、反則金金銭罰であることはあえて申し上げるまでもないと存じます。  第二に、反則金制裁として科せられる罰であります。違法行為をした者に科せられる罰といたしましては、その目的から申しまして、制裁として科せられる制裁罰と、違法行為をした者が、その法律上の義務を将来に向かって履行するように強制するために科せられますところの執行罰とに区分されますが、反則金制裁罰であって執行罰でないことは、これまた申すまでもありません。  第三に、反則金権力によって科せられる制裁罰であります。制裁罰には、それを科する法律上の根拠が国家権力にある権力的制裁罰と、相手方との事前の合意にある非権力的制裁罰とがありますが、正式の刑罰権力的制裁罰の代表的なものであり公務員の懲戒処分などは非権力的制裁罰に該当するわけであります。権力的制裁罰と非権力的制裁罰とを区分する実益は、それを科する手続に対する憲法上の制約が異なる点にありますが、反則金は、後に述べるように、それを科する通告処分そのものに従うかどうかは相手方任意ではありますが、相手方反則行為をした以上、反則金かあるいは正式の刑罰かの二者択一を迫られることになりますから、権力的制裁罰であるということは明白であると存じます。  ところで、制裁罰たる金銭罰には、正式の刑罰たる金銭罰とそれ以外の金銭罰とがございます。正式の刑罰である金銭罰と申せば、刑法刑名の定めのある金銭罰をさすのでありまして、罰金及び科料がそれに該当するわけでありますが、反則金刑法にはその刑名を掲げられないことになっておりますから、正式の刑罰たる金銭罰ではないわけであります。  正式の刑罰でない金銭罰のうち、代表的なものは御案内のとおり過料であります。過料はその目的から申しまして、制裁罰である過料執行罰である過料とに区分されますが、執行罰である過料は別といたしまして、制裁罰である過料は、刑罰以外の金銭罰である点におきまして反則金共通性を持っております。しかし、両者の法律的性質が全く同じかと申しますれば、そうであるとは言えないと存じます。制裁罰たる過料は、裁判所が非訟事件手続法により科するものと、地方公共団体の長が行政処分形式で科するものものとに区分されますが、そのいずれにありましても、それを科する旨の裁判または行政処分強制執行によって実現されるのに対し、反則金を科する旨の警察機関通告処分は、強制執行によって実現されることはなく、それに従うかどうかは、法律上は完全に相手方任意だからでございます。  それならば、反則金と同じ法律的性質を有する金銭罰現行法上存在しないかといえば、存在いたします。国税犯則取締法関税法地方税法等に基づき税務署長など徴税機関犯則事件について科するところの罰金または科料に相当する金額なるものがそれであります。これをかりに納付金と申しますれば、納付金制裁罰たる金銭罰であること、刑罰以外の金銭罰であること、それを科する旨の徴税機関通告処分強制執行によって実現されるものでないことにおきまして、反則金と同じ法律的性質を持っているのであります。したがいまして、反則金に関する憲法問題は、納付金に関する憲法問題とほぼ同様と存ぜられるのでありますが、それはともかくといたしまして、反則金につきましてはいかなる憲法問題があり、それをいかに考えるべきでありましょうか。  憲法三十一条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定いたしております。まず検討を要する問題は、刑罰意義いかんでありますが、これは、さきに申しました権力的制裁罰を広くさすのであって、非権力的制裁罰は除外されますが、正式の刑罰たる制裁罰のみならず、過科などそれ以外の制裁罰をも含むと解すべきであろうと存じます。なぜならば、ある制裁罰を正式の刑罰とするか、それ以外のものとするかは立法政策の問題でありますから、このように理解いたさなければ、ある制裁罰を正式の刑罰にしないことによって、三十一条の保障を容易に回避することができることになるからであります。  次に検討を要する問題は、三十一条にいう「法律の定める手続」とは何を意味するかであります。それは、通常適法手続といわれておりまするが、法律で定められ、かつ、その内容が妥当な手続意味するものと解されております。法律とは、むろん形式的意味法律、すなわち国会が制定する法律をさしますから、「法律の定める手続」であるといい得るためには、形式的意味法律で定められたものでなければならないことは申すまでもありません。しかし、それだけでは十分ではありません。「法律の定める手続」ということばからいえば、それだけで十分であるようにも思われますが、そうではなく、その内容が妥当な手続であることを要するのであります。その内容が妥当な手続であるといい得るためには、当該の手続刑事手続に関する憲法の諸規定に適合していなければならないのはもちろんのこと、刑罰を科せられることとなる者に言い分を述べる機会を十分に保障するものでなければならないものと解すべきでありまして、近代国家一般的に見られる刑事訴訟手続またはそれに類似する手続がそれに当たると申すべきであります。  次に、憲法三十二条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定いたしております。この規定は、民事事件行政事件につきまして裁判を受ける権利保障する趣旨を有するとともに、何人裁判所裁判によるのでなければ刑罰を科せられなという趣旨をも含むものと解されております。その趣旨は、さきの三十一条と同じでありますが、そういたしますと、憲法は、この二つの規定によりまして、裁判所適法手続により科するのでなければ何人刑罰を科せられないとの保障を設けたことになるわけであります。  憲法三十一条、三十二条の趣旨がこのようなものであるといたしますると、反則金通告処分につきましては、両条との関係で問題が生ずるのは一応やむを得ないものと思われます。反則金は、すでに申しましたとおり、権力的制裁罰であるにもかかわらず、警察機関通告処分により即決的に科するものであって、裁判所適法手続により科するものではないからであります。  この違憲の疑いに対してどう弁明すべきでありましょうか。まず私どもの頭に浮かぶのは、通告処分強制執行によって実現されるものでなく、相手方がそれを拒否する自由を有し、反則行為をしたかどうか、したとして、いかなる刑罰を科せられるかについては、裁判所裁判を受ける権利を奪われるわけではないことをもって合憲性理由とする弁明であります。この弁明は、一応はもっともであるように見受けられます。現にこの反則金と同じ法律的性質を持っておりますところの国税犯則取締法などによる納付金につきましても、このような弁明によってその合憲性を肯定する人々がいるのであります。  しかしながら、反則金合憲性理由をいま申しました点に求めるだけで十分であるかどうかは疑わしいと存じます。なぜならば、反則金通告処分法律上の強制力は有しませんが、事実上の強制力はあるものと見なければならないからであります。通告処分を受けた者がそれを拒否する場合には、反則金の額が道交法の定める罰金または科料最高額よりも低く定められることになっておりますから、反則金よりも多い罰金または科料を科せられるおそれがあること、刑事事件は落着に至るまで相当の時間がかかり、その間に検察機関、さらには裁判所の召喚を受けて、生業に充てる時間の空費を余儀なくされること、有罪の判決を受けることにより前科の履歴を持つことになることなどの不利益が予想されますので、通告処分を受けた者は事実上、心ならずもそれに従うことになる可能性があるのであります。その意味におきまして、反則金通告処分が事実上人権を不当に侵害する危険性を包蔵していることは、否定するわけにまいりません。  したがって、反則金合憲性を立証するためには、この危険性があるにもかかわらず、なおかつ反則金通告処分を必要としてやまない公益上の理由があることを指摘しなければならないと思われますが、私はその公益上の理由はあると存じます。すなわち、最近の道路交通自動車激増によって混雑の一途をたどり、反則行為もまた激増しつつあります。このような事情のもとにおきまして、反則行為に対する制裁をもっぱら裁判所の任務とし、これを刑事訴訟法により科するという本来の原則に固執するならば、裁判所は、その処理に忙殺され、ひとり反則行為だけでなく他の訴訟事件処理もまた著しく渋滞し、ひいては道路交通法による抑制力が失われて、人の生命を失わせ、あるいは身体または財産に重大な損害をもたらす交通事故の防止が著しく困難になるとともに、法一般実効性に対する国民の信頼が失われることになるのは必定であります。この事態は、裁判所の増設によって防止することができるのではないかという意見があるかもしれませんが、訴訟処理は事柄の性質上相当な時日を要すること、有能な裁判官の大増員は容易にできるものではないことを考慮いたしますれば、その意見は多分に現実的基礎を欠いております。  反則金は、まさにこのような事態を防止するために考案された制度でありますが、現在の道路交通事情を見ては、何人もそれを必要としてやまない公益上の理由があることを否定することはできないでありましょう。もちろん反則金通告処分を必要とする公益上の理由があるにしても、他方、人権を不当に侵害する可能性が大でありますれば、その合憲性を主張するわけにはまいりますまいが、その可能性は、すでに申しましたとおり、全くないとは言えないにしても、通告処分法律上の強制力が全然ないこと、反則行為は現認が容易な形式犯であり、かつ、制裁罰内容を画一化し得るものであることを考慮すれば、人権不当侵犯可能性は、反則金違憲としなければならないほどに大きいとは言いがたいものと思われます。しかも、反則行為に対する制裁通告処分によって迅速に処理されることは、反則行為をした者自身にも利益をもたらす側面を有するという事実も無視できないと存じます。  以上の理由により、私は、反則金は三十一条、三十二条に違反しないと考えているのであります。  最後に、憲法七十六条一項は「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と規定しておりますが、司法権とは民事事件刑事事件行政事件裁判作用をいうと説明されております。刑事事件裁判作用なるものが正式の刑罰を科する国家作用のみをさすのか、またはそれ以外の制裁罰を科する国家作用をも包含するのかは一つの問題でありますが、この点は包含すると解すべきでありましょう。そうだとすると、警察機関反則金を科するのは、七十六条一項に違反するのではないかという疑問が一応出てまいりますが、この点は、「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」と規定する二項がありますので、さして気にする必要はありますまい。と申しますのは、二項の裏を返せば、行政機関は、終審としてでなければ裁判をしても差しつかえないということになるからであります。  時間が若干超過いたしまして失礼いたしました。
  7. 亀山孝一

    亀山委員長 ありがとうございました。  それでは次に、川口市長大野参考人お願いをいたします。  多少時間は超過してもかまいません。十分はめどですから、そのつもりでお願いいたします。
  8. 大野元美

    大野参考人 ただいま御紹介をいただきました埼玉県の川口市長大野元美であります。  都市における行財政の諸問題につきましては、本委員会の諸先生方には、常に特別な御尽力を賜わっていることは、関係者といたしまして、まことに感激にたえない次第でございまして、冒頭にあたりまして、厚く感謝を申し上げる次第でございます。  本日は、私、不肖でございますが、地方団体を代表いたしまして、交通安全対策の問題を中心に若干の意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、本委員会で御審議をわずらわしております道路交通法改正案におきましては各種の改正点があるのでありまして、いずれも最近における交通事故発生状況にかんがみまして、人命尊重趣旨に沿い、また、一方におきましては反社会性の比較的少ない交通違反を犯した者に対しては、手続、時間等の面で利便が与えられるものでありまして、趣旨といたしましては賛意を表するものでございます。  なかんずく、私ども地方行政に直接関与いたしておるものといたしましては、改正点の中でも交通反則金制度について最も強い関心を持つわけでございます。特に今回の改正案では、交通安全施設整備のための財源といたしまして、平年度におきまして約百四十億円程度交通安全対策特別交付金を都道府県及び市町村に対しまして交付されることとなっておりますことは、交通安全施設整備に追われております地方公共団体にとってまことに時宜を得た処置でございまして、深く敬意を表する次第でございます。  現在道路を取り巻きますところの環境は、自動車保有台数が急速に増加いたしまして、また自動車輸送分野の拡大と長距離化により、主要道路上における交通量増加混雑の激化を招いているのであります。なかんずく、都市内交通実情は著しく悪化いたしまして、これに伴い、交通事故激増ははなはだしいものとなっております。  これが総体的な実情につきましては、諸先生方にはすでに御認識のことでございますので、本日はせっかくの機会でございますので、私ども川口市の実態を申し上げ、交通安全対策参考に供したいと存じます。  御承知のように、川口市は首都東京に隣接をいたしまして、自動車交通の発達とともに産業経済は目ざましい発展を遂げているのでありますが、その繁栄の陰に交通事故の痛ましい犠牲者が続出していることは、まことに寒心にたえないところであります。  ここで、参考埼玉県下の昭和四十一年中における交通事故道路別に見ますと、全体で、事件発生数が二万三千百八十七件でございます。そのうち国道が九千四百十三件、県道が八千百十五件、市町村道が五千六百五十九件になっております。それによっての事故でございますが、死んだ方が、国道が二百八十九人、県道が二百六人、市町村道が百三十九人、合計いたしまして六百三十四人でございます。負傷者の数に至りましては、国道が六千五百九十五人でございます。県道におきましては六千二百十五人、また市町村道においては四千二百四十人でございまして、一万七千五十人という数が数えられております。これを前年度に対比いたしますと、国道が四%の増、県道が二一・七%の増、市町村道が一八・三%の増、このように見られるわけでございます。国道における交通事故は、昭和四十年よりわずか四%の増加をただいまお示しいたしたのでございますが、県道及び市町村道交通事故件数はそれぞれ二一・七%、一八・三%というような急激な増加を示しております。  ここで、川口市の交通事故発生状況は、かつては通過交通量が七〇%以上である主要国県道に沿って線型の発生を見る、いわゆる地方型でありました。最近の急激な自動車増加は、主要国県道通過許容量をこえてまいりまして、市街地のあらゆる市道に流れてまいり、平面的な発生を見る都市型に移ってきているのであります。  次に、昭和四十一年中における川口市内発生いたしました交通事故は、二千二十七件に達しております。昭和四十年中の事故件数より七十一件の増加を示し、犠牲者においても四十二名のとうとい人命が失われ、前年に比べまして八名の増加を示しているのであります。  さらに本年に入りまして相次ぐ死傷事故発生いたしまして、この六月二十三日現在ですでに千二百十二件と昨年同期におきます九百九十一件よりも二百二十一件、パーセントにいたしまして二二%の増加を示し、ますます多発化する傾向にあり、平和な市民生活にも交通事故という災害が常に紙一重の差で身辺に隣合っているのが現状でございまして、まことに私どもとして憂慮にたえないところであります。  そしてこれが対策の一環といたしまして、川口市では交通事故多発地点事故原因を調査、分析いたしまして、それぞれの地点に適切なる対策を推し進めているのであります。  すなわち、市内にある二十二の小学校には通学路百二路線を設定し、将来の社会をになう児童のとうとい生命交通事故から守るために、交通安全施設整備をはかる一方、大型車通行禁止等交通規制についても、強力に推進していくべく努力をいたしております。  ここで、さらに川口市の交通安全施設の現況について御説明申し上げますと、まず信号機につきましては、すでに五十五基が設置されております。ところが五十五基のうち、これはみな県道についておるものでございますが、三十二基は川口市が金を出し設置いたしたものでありまして、確かに信号機を設置すると、その地点事故は半減するといわれておりますが、県に予算がないからということで、苦しい私ども一般会計から支出を続けてまいりましたものでございます。しかも、川口市内には、まだ五十六カ所に信号機を早急に設置する必要があるのであります。  横断歩道橋につきましては、県道を主として七カ所設置されておりますが、通学路の設定に伴いまして、子供の交通安全施設等検討をいたしました結果、さらに十五カ所に歩道橋を早急に設置する必要がございます。  横断歩道橋につきましても、信号機と同じように、県道ではありますが、急ぐ必要から、二カ所については市費で施工しており、七カ所のうち三カ所は県で施工されたものでございます。しかも、現在施設といたしまして必要な横断歩道橋歩道整備道路照明、防護さく、標識等、こうした交通安全施設に対しまして総事業費は、概算四億円を私どもとしては必要といたしておるのでございます。  また、昭和四十一年度より始められた交通安全施設等整備緊急三カ年計画による国庫補助事業については、現在、歩道整備中心にいたしまして事業を進めておりますが、川口市が申請いたしました事業費は五千二百万円でございますが、昭和四十一年度に決定された事業費は、歩道整備ほか総額三百九十七万円と、約十二分の一という、スズメの涙ほどのものであるというのがその実態でございます。  確かに、交通事故を防止いたしまして安全を確保するには、各種の施設整備いたしますとともに、これと並行いたしまして、車両の運転者及び歩行者に対して正しい交通ルールを守らせるよう広報につとめ、また実際にそのような指導をする必要がございます。さらに、不幸にして交通事故の被害者になった人に対しましては、損害の賠償を受ける際に、いわゆる泣き寝入りに終わることのないよう、公的な機関において相談活動を活発にすることも必要であろうと私は存ずるのでございます。  川口市におきましては、交通安全市民総ぐるみ大会を開催いたしまして、また交通安全母の会を結成いたしまして、あわせて各種のパンフレット、リーフレット、ポスター等を作成し、広く市民に交通安全思想を徹底普及しております。市の常勤職員といたしまして、これは市費でございますが、交通指導員を設けまして、市民に対する実践的な交通の安全指導に当たらせ、また市に交通相談所を設けまして、事故被害者に対する相談事務を行なわせております。また全国の市町村に先がけまして、川口市交通災害共済制度を設けまして、二十七万市民全員加入を目標にしているのでありますが、現在七万八千七百八十四人、金額にいたしまして二千八百七十五万六千百六十円という数字が示しておりますように、市民の非常な関心を呼んでおるのであります。  しかしこのようにいたしまして、あらゆる手段を尽くして交通事故絶滅に努力はいたしておるのでございますが、今後開発されるところの東北圏と東京都との接点ともなる川口市内への通過交通は、ますます交通事故激増を招くことは必至と考えているのでございます。これを防ぐ最も効果的なものは交通安全施設でございまして、前にも先生方にお述べ申しましたとおり、この整備には巨額の費用を要し、現在当市がかかえている人口集中地帯としての都市整備事業に関する経費が増大の一途をたどっております上からも、この際、新規の財源の道を講ぜられますよう格段の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。  以上、本市における実態について申し上げました。  交通安全の問題は人の生命に関することであり、一日もゆるがせにできない緊急を要する問題といたしまして、国、都道府県、市町村が一体になって交通安全対策の推進をはかるべきであると信じます。  しかしながら市民の立場から申しますと、その行政が国に関するもの、あるいは都道府県に関する行政であっても、比較的市民に身近な行政を行なっている市町村に特に強く要請されてくるわけでございます。このことは交通安全対策だけでなく、すべての問題について市町村に限られた財政の範囲内で住民の要請にこたえなければならないわけでありまして、交通安全施設にいたしましても、その必要に迫られながら、財政負担の面でその対策に万全を期し得ないのが実情であります。  このような実情にかんがみまして、昨日行なわれました全国市長会の総会におきましても、皆さまのお手元にお配りいたしました「交通安全対策の促進に関する決議」を行なった次第でございます。  幸い、今回交通反則金地方団体に措置されることになりましたが、これが実施に際しましては、都市における交通安全対策実態を御理解いただき、配分方法についても、その使途が交通安全施設整備に限られることなく、先ほども申し上げましたとおり、現に交通事故を少なくするための交通安全思想の普及徹底とか、市民に対する実際の交通指導あるいは交通事故被害者に対する相談業務という面にも使途を広げられるならば、より現実に即し、かつ効果的なものになるのではないか、かように考えますので、都市実情に即した方向で慎重に御検討を加えられたいと存じます。  また交付金の交付の方法につきましては、都市に対しては事業の迅速な実施と経費の効率化をはかるため、都道府県を経由せずに直接交付する方法を考えていただきたいと存じます。  なお、今回措置されることになりました交通安全対策特別交付金は、現行の交通安全施設整備三カ年計画とは別個の財源といたしまして地方団体に交付されるものでありますので、この趣旨を生かしまして、反則金については三カ年計画と混同せず、あくまでも地方の単独事業に充てる財源として配慮されるとともに、現行の三カ年計画はその実態から見ましてはなはだ貧弱なものでありますので、同計画の増大につきましても、この際十分御考慮をお願いいたす次第でございます。  以上、交通安全対策に対する意見を申し上げましたが、問題を明確にしておくため一言つけ加えさせていただきますならば、都市道路目的税源の確保のことでございます。  現在、市道の整備の著しい立ちおくれが交通事故発生の要因をなすものであり、市道の整備促進は交通安全対策の面からも緊急を要するものでございます。この問題につきましては、本委員会の諸先生方には特に深い御理解をいただいておりますが、交通安全対策交付金は、交通安全施設に対する交付金であります。市道の整備につきましては、本年度新たに二十五億円の第二種交付金が措置されましたが、これはあくまでも臨時的措置でありますので、われわれが従来強く主張しておりますように、恒久的な道路財源といたしまして、揮発油税を市町村に移譲するよう真剣に御検討願いたいと存じます。  以上、まことにつたない意見を申し上げましたが、都市行財政の正しい運営につきまして、委員の先生方各位の御協力をお題いいたしますとともに、この機会を得られましたことを心から感謝申し上げる次第でございます。  ありがとうございました。
  9. 亀山孝一

    亀山委員長 ありがとうございました。  それでは、次は日本自動車連盟副会長中村俊夫参考人お願いいたします。
  10. 中村俊夫

    中村参考人 社団法人、日本自動車連盟副会長の中村でございます。日本自動車連盟JAFと略称しておりますが、これは日本のオーナードライバーを団体としてまとめまして、公益活動をしようという組織であります。これは国際的に各国ともございまして、各国が集まりまして国際組織をつくっておりまして、これは国連の下部機構になっております。そういったような自動車のオーナードライバーの立場から、道路交通法というのは日夜お世話になっている法律でございますので、今度の改正につきまして意見を申し上げる機会を得ましたことを幸いに存じます。  で、結論を申し上げますと、交回の道路交通法の一部改正法律案につきましては、基本的には賛成なんであります。  法律案の第一条には、第一ないし第三の改正の点があげてございますが、いずれも適当と思います。ただ、交通事情は御承知のように急速に変化しつつあります。まあ私どもいろいろな法律にお世話になりますが、きわめて身近なものの一つであります。事情が刻々変わってまいりますので、法律が先行しては困るのでありますが、おくれることがないように、特にいま国家的な問題になっております交通安全という立場からも、今後も適時改正をお願いしたいのであります。こういうことにつきましては、私どもの団体あるいはそのほか自動車に関する各種の団体が常に研究をいたしておりますが、そういう声もぜひくんでいただきまして、適時改正をお願いしたい、今後もお願いしたいということでございます。  次に、第二段の交通反則の通告制度の新設でございます。最近の事情にかんがみまして非常にけっこうなことでありますが、むしろこの実施はおそきに失したのではないか。なぜもっと早くできなかったのだろうということを申し上げたいのであります。一部には、交通違反をしましても金を払えばいいじゃないかという意見も私ども仲間にあります。けれども、これを検討してみますと、そうじゃないのでありまして、取り締まられるドライバー側は、まあ私たちでありますが、現在やっております制度でもほとんど同じことなんでありまして、特に大部分のドライバーは、違反を決していいとは考えていないのであります。今回の反則金という法律用語は、私どもしろうとから見れば、どういうことかということを別にしまして、ドライバーから見れば罰金と同じ感覚であります。金を払えばいいのだと考える者は、あるいはあってもきわめて一部の人でありましょうし、そういう考えの人たちがいまでも確かにおると思います。たとえば錦糸町の交通裁判所は、毎日朝から晩までたいへん混雑しておるのであります。私たちの仲間でも大ぜいの人がここでお世話になっておりますが、一部のごねる人がいてたいへんむだな時間をかけている実情から見ましても、国家的に見ても、あるいは官民両方の側から見ましても、こういうむだは早く排除していただくべきなんでありまして、反則金制度には非常な賛成をしたいのであります。  ただこの反則金の金が、いま市長さんからお話がありましたように、地方自治体に交付されるようになっておりますが、これもけっこうなんでありましょうが、ただ収入を上げるために一生懸命に取り締まりをやられるようなことになりますと、払うほうの私どもとしてかなり大きな問題となってまいります。現在でも、あまり地方のことはよく存じませんが、東京、神奈川県では毎月の交通違反でつかまる件数というのは大体平均しておりますけれども、春と秋に全国的な交通安全運動をやりますというと、そのときには違反の件数がぱっと上がるのでございます。したがって、この反則金をたくさん取ってやろうということで馬力をかけられると、確かに上がると思うのですけれども、そういうことがありますと、これも賛成とはいうものの、別の問題が起こってくるということをぜひ御留意願いたいと思うのであります。  それからもう一つ、この案によりますと、二十歳未満のいわゆる未成年者を除くんだということになっておりますが、これはどうしてそういうのを除くんだということを疑問に思います。現在、未成年者の交通違反は家庭裁判所で扱っておりまして、どこの家庭裁判所でも、特に東京あたり非常な熱意を入れて一生懸命やっておられますが、少年だからといって、こういうものをどうして別に扱うのだろうか、一緒に扱ってもいいのではなかろうか、この点を疑問に思っておるわけでございます。  それからもう一つ、現在は道路交通法に基づきまして、私どもドライバーが違反しますと、警察官が現場で免許証を預かっていってしまいます。今度の反則金制度になった場合に、これがどうなるのだろうか、ちょっと明らかでないのでありますが、地方で、おまわりさんが自動車に乗っている人の顔を全部知っておるようなところでは別でありますが、大きな都会でありますと、顔もわからない、どこへ行くかもわからない、善良な人たちに迷惑をかけるというよりも、そういうトラブルが多いと思いますので、この制度を実施されましても、免許証はやはり警官が保管されたほうがいいのじゃないか、あとで困ることが起きるのじゃないかということを心配しております。  それから、現在交通違反の最も多いのは速度超過なんでありますけれども、最近、第三京浜とか横浜バイパスとか、いわゆる高速道路ができてまいりました。ここで、速度制限を十キロや二十キロ超過するからつかまるのであって、たとえば百二十キロとか百五十キロでぶっ飛ばせば絶対つかまらないということを最近聞きましたので、実は調べたのでありますが、ある程度事実なのであります。これはなぜそういうことになるかという交通警察の持っておられる自動車のほうがおそいので、百五十キロでぶっ飛ばすとつかまらない、罰金を食うことはないというおかしなことがどうもあるようであります。今後、高速道路の発展に伴いまして、こうした危険な行為は、私どもの立場からいっても、ぜひ取り締まりをしていただきたいのでありますけれども、警察の取り締まり用の自動車というようなものの装備を、もう少し高速時代にマッチするように改善していただかないと、非常に危険なことが起こるし、あるいは起こっていると申し上げてもいいのかと思います。  なお、取り締まりに当たられますところの警察官の教養訓練というものにはいろいろ力を入れてやっておられますが、今後の高速時代に処して、一そうの御努力をお願いしたいと思うのであります。  なお、外国でもそういう傾向があるのでありますけれども、こうした反則金というような事務的な処理をいたしますときに、せっかく訓練した警察官を使っているのはむだだという声が外国でも起こっておりますので、なるべくりっぱな警察官をつくっていただくと同時に、事務的な仕事は、事務員というか事務官というか、そういう専任の方を使っていただいて、能率的な仕事をしていただくようにお願いいたしたいものだと思うわけでございます。  以上で終わります。ありがとうございました。
  11. 亀山孝一

    亀山委員長 どうもありがとうございました。  それでは、次は全日本交通運輸労働組合協議会事務局次長甲斐国三郎参考人お願いいたします。
  12. 甲斐国三郎

    甲斐参考人 私は、実際に運転免許証を持ちまして、常に道交法なり、その他交通の諸法令に基づきまして働いておる立場の交通労働者約百万で組織しております全交運の労働者を代表いたしまして、今回の道交法改正案に対しまして反対の立場で意見を申し上げます。  総体的に最初に、現行道交法に反対するその理由を申し上げますならば、一つは、今日の道路状況の中で、道交法規定と運用が運転者のみにきびしく取り締まり、あるいは検挙第一主義で行なっておりまして、歩行者への指導や取り締まりが非常に薄弱でありまして、片手落ちの運用になっておるからであります。間違った歩行者優先の思想で、横断歩道でないところを横断している場合の事故が非常に多発しておりますが、これに対する指導、標識自体が非常に少ないし、またその指導も欠けておりまして、一方的に運転する側のみに一〇〇%の責任を帰して運用していることが第一であります。  第二点は、交通の秩序の確立の上に立ちまして、交通の安全と円滑のために、信号機や歩車道の区分や標識等については、当然道路管理者が義務を持って行なわなければならないにもかかわらず、道交法上では義務化されておりません。一般的なガードレールや歩道橋や、安全設備の不備も手伝いまして、これまた一方的な形で運用されております。このことは、信号機等の設置の有無が即事故の増減に影響していることは、最近の事故統計が明確に証明しているところであります。  第三点は、雇用主等の安全運転のための義務規定が非常に弱くて、また罰則も低くて、いわゆる下命、容認等の事故原因の要因をなしている事案が非常に多いのであります。これまた運転者だけに責めを及ぼして、今日の労使関係の現状の中でいたずらに事故要因を助長しておるばかりであります。  第四は、道交法がきわめて難解なのであります。そのために、交通の大衆性から当然の必須要件である交通の秩序なりルールなりが歩行者、運転者全体に徹底し得ないでおり、モータリゼーションといわれる今日の時代に合致しない法律と言わねばなりません。  第五は、交通警察は取り締まりの強化と、たいへん失礼な言い分でありますが、点取り主義からくる検挙第一の行政でありまして、たとえば一方交通違反等の軽い違反、あやまちは運転手側にあると思いますが、その場合においてすら、目の色を変えて物陰に隠れて検挙してみたりというような実態を見ますると、またその違反したものに罰則強化の適用をしている今日の現状からすれば、著しく国民感情を刺激しまして、事故防止に役立っていないのであります。  第六には、現行道交法は、信号機の設置権限、横断歩道の設置権限あるいはスピード制限の設定権限など、数えてみますと約十九項目が公安委員会に委任されております。公安委員会の現状の機能や制度からいいますならば、それは即警察が行なうのが実態でありまして、道交法の民主的な運用を制度上、法的にも阻害しているというふうに言わねばなりません。すなわち、運用にあたって、取り締まり側だけの一方的な運用でありまして、国民の意思反映が全然なされておらないということであります。  第七番目は、つけたりの形ではありますけれども、いわゆるデモ等の憲法保障されました示威行為等についてまで拡大適用されて、きわめて反動性を持った運用を指摘しなければならないと思います。  以上が一般的な道交法に対する私どもの見方でございますが、次に、今度の改正案の問題点を指摘してみたいと思います。  一つは、改正案にあります横断歩行者の徹底した保護規定を強化していることでありますが、趣旨にはたいへん賛成であります。ただし、先ほども言いましたように、横断歩道のためにとまっておるのかどうかわからないというのが今日の道路現状であります。それは横断歩道等の標識や指示標識その他が不明確でありますから、何でとまっておるかわからないという事態もしばしばだと思います。その際に、いたずらに今度の改正のように罰則だけ強化しましても、実効が伴わないのではないか。むしろ横断歩道であるという標識等の明示等がたいへん必要ではないかと思います。  二番目は、積載オーバーの罰則強化の改正でありますが、この罰則強化の今度の改正で道交法のすべての精神が象徴されるように私どもは受け取っておりますが、それは全く積載オーバーの責任を実行行為をする運転者だけに——今度は懲役三カ月をつけた改正案でありますが、いわゆる罪を重くする。これを積ませた人については、若干前進して、罰金三万円をつけたということはわかるけれども、これは本末転倒でありまして、運転者こそ軽い罰則にしておいて、積ませる側の荷主や雇用主に対して懲役刑を付するのが当然でありまして、たいへん片手落ちどころか、とにかく悪いのは運転手だという思想が象徴されておることについて、たいへん残念でなりません。これ以上運転者をいじめなければならないかということを考えますと、交通労働者の立場からすればたいへん憤りを感じます。  次はタコメーター、いわゆる運行記録計の設置に対する車両保安基準を受けての改正でありますが、これは現状のこれを監査する機関なり人なり、すなわち基準監督官でしょうか、あるいは自動車関係の許認可上におきましては陸運局その他の監査機関が非常に脆弱である今日からいきましては、ただつけておるというだけでありまして、これが事前に事故防止のために管理監査することがない限り意味がない。単に事故があったときに立証の役に立つだけだというふうに考えております。  その次は免許証の仮停止処分の問題であります。これは一項、二項、三項に分けておりますが、一項と二項、すなわち酔っぱらって人を死傷せしめた場合、あるいはひき逃げをした場合は、感情論としては私も理解できます。しかし、ここにもあらわれておりますように、いままでの聴聞制度の実質的廃止であり、あるいは警察官の権限がこれによって非常に拡大されることによりまして、歩行者側の過失があっても無条件に仮停止になるということになれば救う道がないということもあわせまして、きわめて問題だと思います。そういう意味で一項、二項については私もあまり申し上げたくはありませんが、特に三項については、この中にあります無免許、いわゆる百十八条の一項一号と、あるいは五号ですか、いわゆる無免許運転、無資格運転等については立証が明らかでありますから、仮停止処分について理解もできますが、そのほかの過労運転、スピード違反、信号違反等たくさんありますけれども、これらの違反を犯して死亡せしめた場合には二十日間の仮停止ということになりますと、これは立証が非常にむずかしいことを考えますと、これまたたいへんな問題だと思います。私たちは免許証一枚で生活をしておる立場からすれば、あとでかりに運転手に過失がなくて歩行者こそ酔っぱらって飛び込んできたような場合でなくなられても、一方的に二十日間の免許証の停止ということになれば一カ月生活ができないという、その救済の道は何ら規定もないし、一般的に国家賠償法に基づく手続しかないとするならば、たいへんな問題だと指摘しなければならぬと思います。  それから公安委員会に対する事務の委任でありますが、これは実際の実態論からすればわかりますけれども、このようにどんどん警察権限を強化することでいいかどうか、たいへん疑問に思います。今日の交通状況からいいますならば、当然第三者機関的な何かの機関を設けてこれらの処理等をすべきじゃなかろうかと考えます。  最後に、問題であります反則金でありますが、これは専門家でない立場で違憲論を申し述べることを差し控えたいのでありますけれども、私の聞いている範囲では、少なくともきのう警察学校を卒業された現場警察の方が、捜査権、起訴権、判決権を一人で駆使するということになれば、昔のような違警罪即決例の復活を思わせる心配をしておるところであります。  その第一点は、すなわち、オイコラ警官の復活を一そう助長しはしないか。三十五年の大改正以来、非常に権力と懲罰主義が強化されました。また最近にも例がありますように、大阪でしたか、道交法違反者に対する射殺事件もありました。そういう権限の乱用、強化が行なわれるということを心配いたします。  二つ目は、正式裁判の道が残されているとはいうものの、一そうこの裁判を形骸化するものだと思います。  その次は、収奪の本質を持つものだということを言わねばならないと思います。これは反則金に対しまして、その次は点数制が改正されてつけられますから、自動的無権利的に免許証の取り消し等が行なわれまして、また額にもよりますが、反則金を払えば済むのではないかということで、ますます罰の意識について、収奪方向の形で運営が行なわれはしないかということをたいへん心配いたします。  最後は、いま川口の市長さんもおっしゃいましたけれども、どだい交通安全のためにこの反則金地方自治体が得ようというところに、今日の政治の貧困をなまいきにも追及したいのでありますけれども、年間約百六十億でしょうか予定してありますこの反則金地方自治体に還元されるということになりますならば、ますます地方自治体と警察権力が癒着しまして、警察の発言権が強化拡大いたしまして、国家警察への道を進める手段ではなかろうか。たいへんよけいな心配かもしれませんが、しております。  以上、今度の改正案に対して問題点を申し上げましたけれども、私も反対のための反対の意見では建設的ではありませんし、また本委員会における審議の状況につきまして、いずれ可決の方向だということを考えますならば、むしろこういった点をぜひ取り上げていただきたいことを二、三点申し上げて、意見にかえたいと思います。  一つは、現行道交法の不備は先ほど来申し上げましたけれども事業主に対する罰則の強化をもっともっとしてほしいわけであります。特に積載オーバー、整備不良車両運転の問題、過労運転、スピード運転、ノルマの強要等のいわゆる雇用主義務の罰則の強化が第一点であります。  第二点は、道路管理者の義務の法定化をぜひしていただきたいのであります。  三番目は、運転者の保護規定を強化してもらいたいということ。  四番目は、先ほども言いましたように、本法の運営にあたりまして、現行の公安委員会の単位に交通審議会あるいは委員会等を設けまして、今日の交通状況に対処する道交法の運用にあたって民間有識者も入れました審議会あるいは委員会等を設けまして、この法律の運用にあたって民間人を参加させることによって、法の意識の徹底やら警察が意図していることの徹底等を民主的に運用する機関をつくっていただきたい、こう思います。  以上の点を申し上げましたけれども、本委員会ではなく法務委員会ではありますが、刑法二百十一条の改正にも見られますごとく、とにかく運転者いじめの罰則強化のみをお考えにならないで、ぜひとも交通の取り締まりが先行しないので、もっともっと三E政策で言われております安全設備なり教育の問題なり等を総合的に取り上げていただきますように、心からお願いしまして、私の意見といたします。
  13. 亀山孝一

    亀山委員長 ありがとうございました。  それでは、次は全国交通運輸労働組合総連合副中央執行委員長、大井秀雄参考人お願いいたします。
  14. 大井秀雄

    大井参考人 御紹介いただきました交通労連の大井秀雄であります。  このたび、激増する交通事故の防止と大量に発生する道交法違反事件を迅速に処理することを目的として、道路交通法の一部を改正する法律案が提出されました。私は自動車の運転を職業とするトラック、タクシー、バスの運転労働者のみをもって組織する同盟、交通労連の代表として、職業ドライバーの立場から日常最も重大なる影響と関心を持つ者として、本改正案の御提案に対し若干の意見を申し述べたいと思います。  その前に私は、昭和三十五年に現行道路交通法が制定されるにあたりまして、当時参議院地方行政委員会におきまして公聴会の公述人として意見を申し述べました記憶を持っております。その意見が七年後の今日、この改正法案の中に若干取り入れられているという点において、その前進の姿に対しまして賛意を表するものであります。  しかしながら、今回のこの改正案の最も重点とするところのものは、交通反則通告制度の新設であろうと存じます。まさにこれは交通取り締まり行政の一大改革であろうと思います。この点につきましては最後に意見を申し述べることといたしますが、まず第一に、歩行者の保護の改正規定でありますが、この改正条文には異議を申しませんが、横断歩道がすぐ近くにありながら、歩行者がそこを横断せずして気ままに道路を横断して、交通の停滞の要因をなすがごとき行為や、横断歩道上を歩行者優先の精神を悪用して故意にゆっくりとわがもの顔で横断をしようとする歩行者などに対する交通道徳の徹底を強く要望するものであります。また、横断歩道の標識が不鮮明であったり、雨天の日や夜間における横断歩道の明瞭なる標示を要求したいものであります。  第二の改正点であります大型自動車に対する規定整備でありますが、今日すでに運行記録計を自主的に取りつけて事故防止に役立てている大型車両は相当数ありますけれども、そのほとんどは道路運送法に基づく営業用車両であります。その点におきましては、今回の改正案で車両法に基づく全大型車両に適用せしめることは当を得たものと解釈いたしますが、車両の所有者に対する違反の罰則が軽きに失する感を持っておるのであります。  さらに、この項第二点の積載制限違反による危険防止の改正案におきまして、私は、道交法制定の当時に、運転者と雇用主の両罰規定が採用せられた中に、この積載制限違反をも含めるべきであるという主張をいたしましたが、七年後の今日、ようやくにしてそれが取り入れられたのであります。しかしながら、運転者の処罰よりも運行管理者の処罰のほうがはるかに軽いというのは、まさに理解に苦しむのであります。同時に、トラックの積載超過につきましては、雇用主側の処罰に対してもっと強くという要望をいたしたいと思いますけれども、同時に、荷主側の無理解さというものを痛切に感じております。荷主から積み荷を強要される傾向がきわめて強いのであります。この点を見のがすことができないと考えますが、まさにこの問題につきましては、荷主、雇用主、運転者の三罰規定すらお考え願いたいと思うのであります。  しかも、この積み荷の取り締まりについて、道路管理者にも一言申し上げたいと思います。その一例は、国道一号線と名神高速道路との関連におきましても、一号線には京都・大津の間の逢坂山にトラックスケールを置いております。東海道を名神間の荷物を運ぶ場合に、積載違反に対する取り締まりが、この逢坂山の関門で受けることができるのであります。しかし積載オーバーをさして、無理に積み荷をさした車をそこを通過さそうと思えば、その検問にかかるがために、名神高速道路に乗ってそのまま名古屋に回るという考え方があるのであります。しかも、名神高速道路には、いずれのインターチェンジにもトラックスケールは存在いたしません。そのために高速道路を走りながらしかも積載オーバーをした危険な車が高速をもって走るというこの状態を想像する場合には、私たちは非常に危険を感じます。この点につきましては、名神高速道路開通の事前に私たちの組織をもって試走さしていただきましたが、その試走のときにそういうことを痛切に感じて、建設大臣にあてて、この点の改善方の要望書を提出いたしておりますが、いまだに実現を見ることができません。  さらに本論に戻りますけれども、この項の第三点の、大型自動車の運転資格要件の引き上げでありますが、これも私は、昭和三十五年に主張した一部のものであります。当時、自動車運転免許資格要件を十八歳と二十歳の二段階にすべきであるということを強く主張いたしましたが、現行のごとく十六歳と十八歳に引き下げられたのであります。私は、むしろ大型自動車に限らず、免許年齢を全般的に引き上げるべきであると思います。スピードにスリルを感じて暴走する少年の姿を放置すべきではないと思うのであります。  法改正の第三は、行政処分の運転免許仮停止制度の新設でありますが、これは悪質重大事故を起こした者に限って取り扱うかのごとき表現を提案理由の説明になされておりますけれども法律運用の面において、拡大解釈のないようお取り計らいを願いたいと存じます。  さらに、交通反則通告制度に関する点でありますが、まさにこれこそ運用面においてきわめて慎重な取り扱いが要求されるものであろうと思います。いまや全国民五人に一人の割合で自動車運転免許証を保持しておる段階におきまして、警察の事務合理化のために、警察官の権限拡大を思わせるような運用は厳に慎んでいただく心がまえとその訓練がなされなければならないと思うのであります。特にこの条文中におきまして、反則行為者に対する通告をする権限を各府県警の本部長に委譲せしめられておりますけれども、そのために、数多くの府県警本部長の文面が見受けられます。私は、せっかく民主国家の機構の中で各府県に公安委員会が設置されておるわけでありますから、この公安委員会の権限を有効に活用せしめるような表現の方法を文面にあらわしておかれることのほうが、民主国家の法律条文の文面としてはふさわしいものではないかと思うのであります。ただ、私たちは、その内容の具体的な面におきまして、運転労働者として軽微な違反を刑事罰を受けず、裁判のために休んで賃金を失うことなく、異議があれば現行どおりの刑事手続が行なえるという点において、決してこれに反対をするものではありません。しかしながら、多くの自動車運転者に交通違反に対する罪の意識を失わしめるようなことのないように、この制度新設に対する趣旨を全国民に徹底してはかっていただきたいということをお願いをするものであります。  以上の諸点におきまして、私の意見の開陳にかえさせていただく次第であります。ありがとうございました。
  15. 亀山孝一

    亀山委員長 ありがとうございました。  では最後に、東京大学名誉教授今野源八郎参考人お願いいたします。
  16. 今野源八郎

    今野参考人 今野でございます。  今回の道交法の一部改正に関する私の意見を申し述べさせていただきます。私は、希望と条件をつけて賛成するものであります。  先ほどからお話を伺っておりますと、大体御賛成の方もあり、反対の方もございますが、ある点では私、日本のいま当面しております非常に重大な交通難を解決するための努力という点では、同じ目的を持っているものだと思います。  法律の改正の第一条の点でございますけれども、横断歩道の前で一時停止しなければならない、しかも側方から通過してその前方に出てはならないという規定でございます。私これは当然だとは思いますが、こまかく申しますと、先ほどからもお話がございましたように、横断歩道の位置が必ずしもはっきりわかってない場合が非常に多いのでございます。特に地方都市になりますとそういうこともございますし、東京の町が、ショーウインドーはきわめて明るいのでございますが、ということは、道路が暗いということになりまして、横断歩道がどこにあるのか、なぜ前の車がとまっているのかを注意するということのために、私どもたいへん当惑することがございます。それは車を持っている者の当然の義務だといえばそれまででございますけれども自動車時代に、自動車が十分な能率を発揮して走ることが、私どもの経済生活あるいは日本の経済成長、能率的な生活上必要なことでございますので、私は希望といたしましては横断歩道に明るい燭光の電気をつけてほしいということと、横断歩道のマークが白いものが消えてしまっている、雨に打たれて消えているという例がかなりございますので、そういう点で施設を十分にしていただきたいと思います。実は私戦前、昭和十年代に警視庁で運転免許をとった一人でございまして、それ以来、戦争中以外は運転しておりましたものでございますけれども、昔の法律はきわめて簡単で、戦前の法律は、車馬はみだりに追い越してはならないという規定がございました。そういう試験問題を出されて、みだりにとは何かということで答案を書いたことを思い出しますけれども、それで戦前はわかっていたわけでございます。こういうこまかい規定をすることによって罰則を厳重にすることはけっこうでございますけれども、やはり私どもドライバー、一億総ドライバーになるような時代になってきておりますので、あとで希望を述べますけれども、日本人が自動車の運転者として同時にモラルを守るということの教育をひとつしていただきたいということを希望として申し上げたいのでございます。  運転記録計、タコグラフをつけるということでございますけれども、つけないよりは、私つけたほうがいいかと思います。しかしこれも、現に私どもも車を運転して国道などを走っておりますと、タコグラフをつけた車が私どもを相当のスピードで抜いていってしまいます。大きな会社の場合には運行管理者がおって、それを読むと思いますけれども、読み方が問題だということ、機械にもまた間違い——正確に一体何メートル走ったらそのスピードオーバーが出るのかどうかというようなことにつきましては、私は機械の改善ということも今後とも必要であろうと思いますし、自分がタコグラフを自分で読むということもございますので、現在もタコグラフをつけながら交通違反をしている車が相当目立つ。これをどう解釈するかという問題をひとつ研究していただいて、機械はりっぱだけれども、つけたけれども事故で減らないというようなことにならないように、これは国民全体の責任だと思いますけれども、やはり人間の面の教育もしていただきたいと思います。  積載オーバーということでございますが、これはいわば日本独特のやり方でございますし、非常に長い間の伝統がございまして、四トン積みに二割−五割増しというようなことは荷主の要求でもあり、あるいは運送会社がサービスということで売る場合もございましょう。これは長い間の伝統でございますから、これを法律によって押えるということは容易なことではございません。規定を設けることは私は大賛成でございますけれども、これも実施面がかなりむずかしい。貧乏なるがゆえに車に満載させるということが、勉強するという姿で、いわばあの店は勉強するといって喜ばれた時代が長く続いておった。それが道路を破損し、あるいは四トン以上のトラックは通ってならぬところを平気で通るというふうな習慣が出てきておりますが、そういうことで、道路管理者の側から見ますと、積載オーバーを禁止するということは当然のことでございますし、けっこうな規定だと思います。問題は、どうしてそれを管理するかということだと思います。  それと関連しまして、運転の管理者の責任を問うているということでございますが、これも非常にけっこうなことでございます。先ほどもお話がございましたように、やはり管理者というものに対してもう少し責任を持たせる、あるいは罰則を強化することも私はやむを得ないんじゃなかろうかと思います。運転免許の適格年齢の引き上げ、経験年数を引き上げるということもやむを得ないかと思います。  反則行為の処置に関しましては、これも外国でも例がございますし、能率をはかるために必要かと思います。しかし若い警察官が、自分が運転の経験がないために非常に非常識な場合もございますので、なるべく私は交通の取り締まりに当たる警察官全部が、やはり御自分で、あの世界一むずかしい日本の運転免許証をおとりになってごらんになって、もう少し交通常識を持って取り締まっていただきたいということをいつも考えるものでございます。泳ぎを教える者はやはり泳ぎの方法を知ってなければとんちんかんなことを教えるということをよく経験するのでございます。  関連したこととしまして、これだけの法律を強化しあるいは改善されることに賛成はいたしますけれども、私は、何と申しても日本の道路事情が非常に悪いということでございますので、道路予算の使い方を見ておりますと、非常に全国に分散して使い過ぎておりますので、これを数年の間交通安全のために超重点に道路予算を使っていただければ、道路そのものの能率、能力がよくなることによって、交通事故防止が道路施設面からできるのではなかろうかと思います。そういうことを私いつも感じ、先生方お願いしたいのでございます。  もう一つは、信号その他の施設がきわめて不完全であるばかりでなくて、不親切だということでございます。特に四つかどあるいは三つまたの信号になりますと、どっちを向いているのかさっぱりわからない。とまっているとうしろからどなられたりぶっつけられたりすることもございますし、風の吹いた次の日などは信号がゆがんでしまって、自分が行っていいのか隣から来るのがほんとうか、どっちが優先なのかわからないことがしばしばございます。こういう点は警察官の数が足りなくて間に合わないということもあると思うのですけれども、ある程度請負制度でもいいと思うのですが、これから九月になりまして大あらしその他災害の多いときになりますと、ますます交通が混雑するのはそういうこともあると思うのです。  それから日本の場合に、踏切にしても四つかどにしても何にしても、予告というものが非常に不完全でございまして、踏切でも、外国の場合でしたら百メートル前に第一号予告があり、五十メートル前に第二予告があり、十メートル前に横木がありますが、日本の場合には踏切のレールの一メートル前に横木がある。これでは車がぶつかるのはあたりまえでありまして、もう少し予告をしていただきたい。予告をする金がないというお話でございますけれども、そういう予算は地方自治体の場合でもどこでもひとつ出していただいて、予告というものを十分していただきたいと思います。  もう一つお願いいたしたいのは、やはり運転する者の国民に対する責任でございまして、私はやはりいまの自動車の運転免許証を与えるための教習所の制度というものに対して疑問を持つものでございます。御存じのように、私立学校的なやり方でございまして、業者にまかしておられますが、監督はしておられますけれども、あれに対して地方自治体が適当な補助をして指導をすることによって、あの教習所の教員をもう少しりっぱな教員にするということと、枝葉末節のことを教えずにむしろ本質的なことを教えるような制度にしていただきたい。あわせて免許を与える場合の試験というようなことになりますと、マル・バツだけでございまして、もう少し昔のように、車馬はなぜみだりに追い越してならないかという規定が、例をあげましたけれども、なぜ追い越しは注意深くしなければならないかとか、国民のつくった道路を運転する、いわばドライバーの責任というような問題についてもう少し教育していただきたいと思います。外国の例は、職業運転手はやはり道路の秩序の維持者であるということで、しろうとを教えたり助けたりいたします。また自家用の運転者は、紳士淑女の最も模範的な者だという意識が強いのでございますけれども、どうもわれわれ車を運転しますと、何か雲助根性になってしまうというのは、全体の環境がそういうふうになっているのではなかろうかと思いまして、これは国民全体の教育の問題になりますので、やはり外国のように、先進国のように小学校、中学校、高等学校あるいは大学の課外教育、あるいは正課の教育としてもう少し道路の秩序あるいは道路交通法の精神とか、そういうことを教えていただけないだろうかということでございます。  もう一つは、関連することでございますけれども、外国にはよく交通の秩序を維持する会というものがございまして、あるいは交通災害を救助する救助隊のような組織がございまして、青年男女が入っております。各層の人が入っておりますが、そういう国民的な組織も必要でなかろうかと思います。法律の改正、そのことは私は一歩前進だと思いますけれども、やはりいろいろな環境の整備、そして日本人全体の自動車時代に対する教育の問題、その問題を同時に先生方におかれましても御研究いただきたいと思います。そういう希望を述べまして、この案に賛成いたします。
  17. 亀山孝一

    亀山委員長 ありがとうございました。  以上で、参考人の方々からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  18. 亀山孝一

    亀山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  念のために希望を申し上げておきますが、午後一時までに散会いたしたいと思いますので、どうか御協力を賜わりまするようにお願いを申し上げます。  古屋享君。
  19. 古屋亨

    ○古屋委員 私は、ただいま諸参考人のほうから非常に有益な御意見をお伺いしたのでございますが、ひとつ御教示を願いたい点を一点だけお願いしたいと思います。それは、今度の改正法に見られます反則通告制度につきまして、少年関係は除かれておるのでございますが、これにつきまして憲法並びに行政法の権威者でございます山内参考人から、通告制度というものについて、少年との関係についてどういうふうに考えておるか、御教示を願えれば幸いでございます。
  20. 山内一夫

    山内参考人 この改正法案は少年を落としておられるようにお見受けいたしますのですが、私も、これはできれば少年も通告処分の対象にしたほうがいいのじゃないかというふうに実は思っておるわけでございます。何と申しましても自動車を運転するということになりますると、未成年者でありましてもそれだけの責任を持ってやってもらわなければならないし、その限りにおきましては、成年者と同じ責任を持つ者として扱うことが不合理だとは実は私は思っておらないわけでございます。ただ現在の少年法の保護処分の考え方が、具体的な事情を考えて少年を教育していくのだ、保護処分だという考え方で制度ができておりまして、一方、そういう原則的な考えがあるのに対しまして、通告処分を成年と同じように少年にかけていきますと、少年法の原則に対する考え方が多少修正されることになる。そこで、少年というものを刑事事件についてどう扱っていくかということが、一貫した考え方としてもう一回政府部内で検討をしたいというようなお考えがあるように私は承っておりまして、少年の刑事事件を今後どういうふうに扱っていくかという根本的な考え方を踏まえました上で、通告処分をどういうふうにしていくかということを今後考えていきたいというようなお考えは、政府部内におありになるように私漏れ承っておりまするが、それも一つの考え方であろうかと存じます。ですから、そこのところの根本的な考え方をきめて将来の立法をなさることはよろしいのでございまするが、できれば早くそこのところをよく考え切られまして、結果的には少年にもやはり通告処分をやっていけるようにすべきじゃないかと思います。何と申しましても通告処分というのは応報的に、違反行為をすればこうだというふうにできておる。片っ方は保護処分で教育刑的にやっていく。その考え方からいきますと、二つの制度は考え方が違いますから、根本的な問題として少年法のことを考えていった上で解決するというお考えもやむを得ないかと思いますので、この際はしかたがないんじゃないかというふうに思っておるのでございます。
  21. 亀山孝一

    亀山委員長 古屋君、実は質疑の御希望の方が四人おられますので、まとめて各参考人に御質疑を願います。  次は依田圭五君。
  22. 依田圭五

    ○依田委員 中村先生と山内先生に簡単に御質問を申し上げたいと思います。  先ほど中村先生はオーナードライバーの立場から、この制度がなぜもっと早く行なわれなかったかというような御意見、また罰金を取るほうへ力が入って、相当そういう面の弊害はないかというような御指摘もございましたが、われわれもその点をいろいろ疑問に思っておるわけであります。ただオーナードライバーと雇用運転手、あるいはその他の自分で車を持っておらないで賃金で生活をするという——オーナーの方はわりあいゆとりがあるんじゃないかと私は思うのですが、結局払えばいいのだ。手続が簡単になったから、チケットをもらって郵便局か何かで処理する。そう何度もそれを目的に取られてはたまらぬという点、しかしその他のほんとうに運転だけで生活をしておる運転手は、一回の罰金だけでも、反則金ですか、たちまち夕食の飯を節しなければならぬという生活の状態に追い込まれるわけでありますから、その辺を含めて、私もう一ぺん御意見をいただきたいと思います。  それから山内先生に、先ほど、この反則金が強制的な意味を持っておるから、司法審査手続を経ないで、強制的な内容を持っておるから、そこには違憲の疑いがある。しかし、これをオーバーする公共の福祉の面からの要請が現時点においてあるから、その面でこれは救済されて、私は合憲意見を支持したい、こういうお話でございましたが、私たちは実はこういうように思っておるのです。諸外国にも例はたくさんありますが、ただアメリカの例をとっても、ワシントンの五〇%に近い道路率なんかは別としましても、たいがい二、三〇%は持っておるわけです。日本ではもうほんとうに一〇%以下、多くてもせいぜい一五、六%ぐらいの道路率しかない。こういう貧困な状態の中で、地方へいけばほとんど舗装道路はない。しかも東京都内の例をとると、主要な交差点では、午前中などは、私、ここへ来るときにタクシーを使いますが、本郷三丁目あたりは、私の自宅の近所ですが、全然通れない。一時間以上かかる。こういう状態の中で、一日三百六十キロ以内で十六時間働いて、そうして何人かの家族を養え、こういうノルマを負わされておるわけであります。この際、特別若い運転手の少し行き過ぎた、無謀な運転をする者は、私はあまり——それも取り締まらなければなりませんけれども、これは警察官のほうにも、高等学校を出て、警察学校を出て、すぐに交番に配属されて勤務につかれて、すぐにそういう交通警察に入っていく人もおると思いまして、行き過ぎというものはどんなところにも例外はあるので、これも取り締まりのもちろん重要な対象ではありますけれども、大かたのドライバーなるものは、これはオーナーであろうと、あるいは雇用されている運転手であろうとも、やはり司法審査手続を十分に受けて、納得ずくで、たとえ千円でも五千円でも罰金を払う、こういう制度を私はいまの時点において日本ではとっていったほうがいいんじゃないか。非常に道路率が悪い。また、道路管理者の責任に帰する点がたくさんある。あるいは道路設備の不十分な点もある。また、企業の要求もある。荷主その他が無理なノルマを与える。こういうような諸条件に囲まれておる中で、道路法あるいは道路運送車両法、その他事業関係を何ら手をつけないで、積載オーバーの点にしましても、罰則だけを運転手に与えていく。しかも公安委員会は三名ないし五名ぐらいの公安委員の方、あるいはこれは、実際は病気の方もおるし、欠勤される人もおるとなれば、激増する、何十万件という交通関係の許認可から始まって、あらゆる取り締まり——公安委員会そのものが、民主的な制度とはいいながら、実は形骸化しておる。その中で、今回の道路交通法の改正の中では、非常にたくさんの警察署長に対する権限委譲があるわけですね。それから、罰則の運転手に対する強化がある。とうとうとして、警察権力を取り締まり面において強化するという形で、最後にわずかに刑事裁判の道が開かれておる。しかし、これは膨大な時間と費用を予測しなければ、普通の場合これには取り組めない。かけられる反則金の数十倍、数百倍の時間と費用を考えなければ、この救済の方法は求められないとなれば、実は不可能に近い。よほどの事故のときの損害賠償か何かを裏づけとする問題のみにしか使えない。しかし実際は、いま簡単な左折禁止や右折禁止、駐車違反程度でも、どんどん正規の裁判を要求しているという状態です。これらは結局警官とドライバーの間に意思の疎通がない、極端にいうと、お互いに憎み合っておる、お互いに排除し合っておる、その間に指導とか交流とか、こういった愛情の疎通のようなことは全然ない。しかもその原因が、運転手にあるけれども道路管理者、道路設備にもある。こういう時点において、しばらく、東京でいえば墨田のような手続をもう少し簡素化してもいいから、検察官、裁判官という形で何回か司法審査手続を経て、やはり丁寧に、納得の上で、わずかな金額であっても反則金をかけていくような方法をとらないと、非常に大きな不満を持っているけれども、まあしようがないから納める。その不満というものは、結局警察行政対にして不信を持っていく。だから、納めればいいのだ、ともかくつかまらなければいいのだ、こんなものは死法だ、道交法など一々守っておったら家族を養っていけない、こういう形に拍車をかけるような傾向は、私は、いまアメリカやその他は別として、道路条件が備わっていないいまの時点では無理ではないか、日本ではもう少し金をかけても司法審査手続に似たようなことをやって、納得ずくの政治をやったほうがいいのじゃないかと考えるのですが、先生の御意見をひとつ……。
  23. 中村俊夫

    中村参考人 私どもといいますか、オーナードライバーと、運輸事業に携わっておられますところのいわゆる職業運転者の方との間に、立場なりものの考え方の差があるということは事実でございます。しかし、私どもの仲間にも、いわゆる近ごろあちらこちらで新聞に書かれます、暴走していく若い連中がたくさんいることも事実でありますし、また私もそういう仕事もしておりましたが、運輸事業に携わる職業運転者の方々も、りっぱな会社、しっかりした会社、あるいは組合のしっかりしたところ、きちんとやっておられて、へたなオーナードライバーの変な連中よりよっぽどいいのがおるのも事実でございましょう。ただ、いずれにしましても、現在のやり方、たとえば錦糸町へ行きまして大部分、ということは九〇%ぐらいは、罰金ですか、お金を納めてかんべんしてもらうわけですけれども、たいへんな時間がかかっていることも事実でありますし、ああいうところに行ってやられるのは決して愉快じゃありません。これはオーナードライバーであろうと職業運転者であろうと同じであって、警察も裁判所もえらい手間をかけておりますし、あそこに行くと半日、ことによると一日つぶれることも事実であります。だから、悪いことをしたから改心しようという気になかなかならないのでありますが、そういう点、今度の反則金制度のほうがよっぽどすっきりしておると思いまして、こういう点、オーナードライバーにしろ職業運転者の方にしろ、非常な例外の方を除けば、今度の制度のほうがよっぽどいいのだということを考えております。  そこで、先ほどお示しもありましたように、では今後どうするかというと、結局私どもも及ばずながらそういう運動をやっておるのでありますが、自動車を運転する人、これはオーナードライバーに限らず、職業運転者といわず、交通道徳といいますか、しつけといいますか、そういうことに皆さん、簡単にいえば警察もあるいはそのほかの関係のお役所も私どもも一緒になって、そういう運動といいますか、進めていかなければ、これは根本的には解決しない問題だ、こういうふうに考えております。
  24. 山内一夫

    山内参考人 私、反則金通告制度を設けるにあたりましてやはり一番気になるのは、いま先生のおっしゃいました職業運転者の方なんだと思うのです。それで、これをやれば確かにぴしぴしいく、それの負担がずっと職業運転者にかかっていくということは、ほんとうに身を切られるような感じがするのでございます。そこで、何としてもそっちのほうのことを考えて、この通告制度をやめるべきじゃないかという一応の考え方を私も考えたわけなんですが、しかし、何と申しましても、いまの道路交通事情からいきまして、自動車が交通規則を守らないということは、すぐ生命に危険を及ぼす非常に重要な行為でございますから、これを何とかしてやはり防止しなければならない。そうしますと、やはり反則金というか制裁はぴしぴしかけていかなければならない。むろん道路交通施設整備いたしまして、反則行為というか、違法行為というのは少なくなるようにしなければならないのは当然のことでございまして、そうすればこういう反則金通告制度というのをやらないで済むわけでございますけれども、日本のいまの産業と申しますか、急激に発達しまして、道路は御指摘のように非常に整備されてない、この現実を切り抜けるのを制裁の形でやるというのは実に好ましくないのですけれども、現時点においてはどうもやむを得ないのじゃないかというふうに私は思うのでございます。職業運転者の保護のほうはもっと、いまのタクシー事業者とそれから運転者、あるいは全体の道路運送事業者と雇用者との関係、給与条件というようなものをもっと改正する、あるいは年金制度をつくって安心して職業に従事できるというふうな一方の政策は、私、別途ぜひ考究していただきたいと思うのです。その制度を立てなければ、この通告制度はいけぬかと言われますと、そうも言えないんで、そっちのほうはそっちのほうでぜひ早くおやりいただきたいと思うのですが、何といっても自動車というものは人の生命に影響を及ぼす。その現実から考えますと、決して好ましいことではありませんけれども、やはり制裁を厳重にかけていくというよりいまのところしようがないんじゃないかと思うのです。一方におきまして、それは確かにちゃんとした司法審査をやるということが憲法のたてまえでございまするから、そうやれとおっしゃることは、憲法の原則を御主張になっている意味で私もよくわかるのでございますけれども、これが先ほど申し上げましたように裁判ということになりますと、事件が非常に多いわけでございます。墨田の場合でも、これは結局においてかなり機械的にやっておるんじゃないかと思います。ですから、通告処分はそれなりの法律上の強制力はありませんですから、やはり市民意識に徹していただきまして、かけるべからざる反則金通告処分にかかるとなりますれば、それははねのけるだけの権利意識というものをもってはねていただくということにし、自分が反則をしたと思えばやはりお金を納めるということで、この際は切り抜ける以外にちょっと方法がないんじゃないか。そういう意味で、決して大いにやれやれというわけで私言っているわけではないのですが、現在の時点ではこれ以外にちょっと方法がないというような感じがいたしておるのでございます。あるいはその考えは間違っているかもしれませんが、私どもそう思っているわけでございます。
  25. 亀山孝一

    亀山委員長 次は細谷治嘉君。
  26. 細谷治嘉

    ○細谷委員 簡単にお尋ねしたいと思いますが、第一点は山内先生と川口の市長さんにお尋ねしたいのでございます。反則金、いろいろ違憲合憲かという議論がありましたが、一体この反則金というのは国に帰属すべきものか地方団体に帰属すべきものかといういろいろな議論があるのであります。これについてどうお思いなのか、ひとつそのお考えを御両人にお聞きしたいと思うのであります。  それから第二点は、先ほどもちょっと質問にあったんでありますけれども、いまの交通事故というのを見ますと、少年法の適用になります十八歳、十九歳ぐらいの運転者が事故を起こすのが四十一年では一一%程度になっているわけです。したがって、この道路交通法との関係というのはたいへんむずかしい。しかもいまの自動車事故というのは、一億国民がすべて危機にさらされておる。いつ殺されるかわからないんだ、こういう事態におるわけでありますから、なかなかむずかしい問題でありますが、この道交法と少年法との関係について、山内先生とそれから大井さん、先ほど年齢を上ぐべきだ、こういう御議論をされておりましたから、これについてのお考えをお聞きいたしたいと思います。  それから第三点は甲斐さんにお尋ねしたいのでありますが、今度国会に刑法の二百十一条を改正しよう、そしていまの禁錮刑というのを懲役刑、しかも五年ということにしようということがあります。ところが一般的な傾向というのは、交通事故違反によります二百十一条を適用されるという例はどんどんふえていっておるのが、一般のほうは減る傾向にあるわけですね。これはすでに二回国会で流れておるわけでありますけれども、この点について、当初の発足というのは交通事故を対象にして刑法二百十一条を改正しよう、こういうことから始まったのでありますけれども、最近は法務省あたりは、いや交通事故だけではないんだ、過失致死傷という形でかなり広範囲に問題をとらえようという、こういうような形で刑法改正が今度の国会に提案されております。これと道交法との関係についてひとつ御意見を承りたいと思うのであります。  最後は川口大野市長さんにお尋ねしたいのでありますが、たいへん努力されまして、なけなしの財源を注ぎ込んで信号機は自分でやった、五十五つくったうち三十三は純市費でやったんだ、残りの二十二についても、国道関係でありますけれども、おそらく市の負担というのは三分の一程度とられたのではないか。かなりそういう犠牲を受けながら信号機もやったし横断歩道橋もおつくりになった。しかしまだ必要だ。お話によりますと、これから四億円程度必要なようでありますし、三カ年計画というのがスズメの涙にすぎないようなお話のようでございます。こういう状況でありますから、しかも、これは一日もゆるがせにできない緊急の課題でありますから、いますぐどういう具体的な財源措置というものをお望みになっているのか、熱心にこの問題に取り組んでおります川口の市長さんに、ひとつ具体的にお聞きいたしたいと思うのでございます。以上。
  27. 山内一夫

    山内参考人 この納付金の帰属というのは、簡単に結論からいえば、立法施策でどっちにでもきまることではないかと思うのです。国に帰属させても地方公共団体に帰属させてもいいんじゃないかと思いますが、ただ、いま国に帰属させて地方公共団体に配付するという規定が入っております。この規定がかりになければ、どこへ入るかということは、非常に法律的に言えば、私は国に返るものだというふうに実は思っておるわけでございます。というのは、専門用語で言えば、一種の国の機関委任事務ということになると思います。国の機関委任事務につきましては、その費用を当該地方公共団体が負担するとともに、その収入は地方公共団体に帰属するということになっておりますから、そういう意味では反則金は、規定がなければ、そのまま国の機関委任事務としてやれば地方公共団体に入るようにちょっと思いますけれども、そうじゃなくて、この機関委任事務になっておる、機関委任されている部分は、国のためにお金をとるというその事務を委任されているから、その本体たる反則金は、規定がなければ国に帰属することになるんだろうというふうに、これは法律論としてそうなるのではないかと思う。ただ、しかし、それは現行法をそのままにしておけばそういうことになるというだけでございまして、これは国会のお考えによって地方公共団体に帰属させるということもできますし、また国に一旦帰属させてそれから地方公共団体に配付するということも立法施策としてできることではないかと思います。ですから法律を離れてどっちに帰属するべきだということはなかなか言えないことじゃないか、政策的な問題になるように私は思うのでございます。  それから少年法の問題、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私、オーナードライバーはどうか知りませんけれども、やはり未成年者でも、いろいろな家庭の事情も加わりまして、職業運転者として立たなければならない方もあると思うのです。そういう意味から、年齢引き上げをしたほうがいいというお説もあるようですが、しかし同時に、未成年としての職業を奪うということにもなるような気もいたします。そこで、少年もドライバーとしてやれるんだというたてまえをとりますれば、これは私の個人的な考え方から言えば、やはり通告処分の対象にしていいんじゃないかと思いますけれども、何と申しましても通告処分は、違反行為をすればすぐそれに対して反則金だという、刑の応報性がわりとむき出しになった制度でございますし、他方少年法のほうはもっと個別的な、その人の事情を考えまして教育的にやる保護処分の考え方でございますから、それをいま少年に適用するということになれば、何といっても少年法の原則がかなり修正されるというようなことになって、そこに少年の刑事処分というものをどう考えるかという根本問題があるように伺っておりまして、その議論が干された上で右にするか左にするかという決定を国会なり政府なりでお考えになるということであれば、それまではちょっと待って、さしあたりはずしておくのでもやむを得ないかなというふうに思っておるわけでございます。
  28. 大野元美

    大野参考人 反則金の帰属でございますが、私どもは現場の人間といたしまして現実の姿を見てまいりますと、従来から国道に対する交通安全施設というものは整備されてまいったわけでございます。さような考え方のもとに、先ほども数字をあげて御説明いたしましたが、非常に減ってきておるわけであります。しかし県道並びに市道等につきましては、そこにおける交通安全施設の不備というような面から非常に交通事故が多発しているというような状況からいたしまして、法律論からいたしますことは別といたしまして、私ども交通安全施設をよりよくしたいというもとからいたしまして、この財源的な帰属の問題について、われわれは地方団体に帰属していくことによって交通安全が守れるというような考え方でございますので、帰属がどこかというと、法律論は別にいたしまして、現時点の段階においてはわれわれは地方団体に帰属すべきだ、かように私なりに考えるわけであります。  次に、交通安全に対する私どもの将来の現時点においての見通しで、四億円というものを踏んでおるわけであります。これにはいろいろ照明灯またその他の問題がございまして、それじゃいまどこのところをどうやったら——一どきに四億というものを渡す、また出すということもできないから、どこの点が重要路かということになりますれば、先生方がいま御研究になっております通学路、踏切の施設の問題が一番だ、私はかように考えるわけでございます。しかしながら、私どもといたしまして、特に私のほうの市におきまして、一本、完全に交通安全施設を、多発地区でございますが、やったところがございます。そこは跨線橋も安全灯その他の設備も、短距離のものでございますが、やっております。しかしそこにおいてはもう事故皆無といっていいほどの交通安全が保たれている現状からいたしますと、私はどれがいい、あれがいいということは申されないのでございますが、何といたしましてもいま私どもとして、先生の仰せられるように、どこからやるのだということになれば、信号灯を第一にして跨線橋とともにやっていくという考え方にあるわけでございます。  以上お答え申し上げます。
  29. 甲斐国三郎

    甲斐参考人 私には刑法二百十一条との関係でございましたが、これは刑法だけに限って反対する理由を申し上げるならば、先ほどから言いましたように、今日の交通事故の原因というものは、いわゆる思想的、イデオロギー的に違う立場じゃなくて、どの党の方も一致していると思いますが、膨大な自動車の普及によりまして大衆が、いわゆる国民、学童が歩く道路が旧態依然たる形、いま川口市長さんのお話がありました安全設備の欠除という点と、交通企業が営利第一で安全設備に対する投資を行なわない、踏切等を改善しないという点、それから依田先生御指摘の交通労働者のきわめて悪い労働条件、三つ、しぼればそういう原因が事故の原因となっていると思います。  今日の交通状況の中で、そういう悪い条件だからこそ運転者側が注意に注意を重ねてやらなければならぬじゃないかという理論も一方にはあると思いますが、私は実際に運転する立場からすれば、その注意力を求めることは限度だと思います。禁錮三年だから無謀運転をしていいんだ、あるいは懲役五年になったからよけい気をつけようなんて思って、いまの事故を起こしている人たちが事故を起こしているということは絶対にあり得ないと思う。そのことの証明は、御存じのように法務省みずからが認めております。交通事犯で禁錮刑で服役させた人たちが、刑期の途中で社会復帰をする仮出獄をもってしておることもそのあらわれだと思うのです。ですから、ことばは変ですけれども、禁錮三年でぶち込んでも、懲役の五年で違反者をぶち込んでも、結果は同じだということであります。  しかしそれはそれとしまして、もう一つは私たち交通労働者からすれば、一番酔っぱらい運転や無謀運転の人たちを憎むといいますか、たいへん迷惑この上なしということを私たちは一番感じているわけです。そういう意味からすれば、現行の道交法なり刑法で酔っぱらい運転とひき逃げ犯の刑量が頭打ちだそうですから、事故対策という意味でやむを得ず罰則強化をするというならば、刑法のように業務上過失致死傷罪という広範な適用範囲の条文でなく、犯罪構成要件を明確にしました道交法の百十八条、百十九条で書いてありますような、これこれした場合はこれだけの罰だというふうな明記をした条文の刑量を上げて処理すれば合理的じゃないか、こういうふうに考えますので、私ども一般的に罰則強化を、だから刑法反対で、道交法でやりなさいというつもりじゃございませんが、そういう意味からは合理性のある道交法でやってもやれるじゃないかということを主張している次第です。  以上です。
  30. 大井秀雄

    大井参考人 年齢の引き上げの問題の点でございますが、私たち職業運転者の場合は、年齢はむしろ労働基準法なりその他において制約もあり、そういうことから少年の組合員というのは非常に少ないわけであります。ただ職業運転者という立場で、私たちの場合には全ドライバーの模範的な運転をしなければならない社会的な立場に立たされておる、このように考えましたので、この点を申し上げたわけであります。これは現道交法が制定をされましたときに、年齢を引き上げるべきである、こういう意見が非常に強く出ておりました。しかし結果的にはそれが十六歳と十八歳に処理されたわけであります。これは現在の段階を見ましても、通学にモーターバイクやら単車を利用して通学をしておるという生徒が数多く出てまいっております。こういう子供たちは、学校の登校時間を急ぐあまり、これが事故に結びついておるというような、そういう非常に危険な経験を間々見るわけであります。それから、先ほどいろいろと御意見もございましたが、逆に警察官に運転免許証を与える、そうして運転技術というものを知って、街頭の運転者に対する指導、取り締まりをさすべきである、こういう意見もあるわけでありますが、その場合に、非常に年齢のいった方々が運転をしておって、未成年者の警察官が運転免許証を持っておって、まるで親子の関係の中から、警察官と年のいった運転者との間のトラブルの原因にもなるのではなかろうか、こういうことを考えます。また、特にいま自動車の製造メーカーに対して私たちがとやかく言う筋合いのものではないと思いますけれども自動車の製造メーカーが自動車を売るために各所に自動車教習所なり、あるいは自動車学校を創設をいたしております。そうして多くの生徒をかかえて、その人たちに一枚でも多く運転免許証を与えることは、自動車を販売していくという政策からいって、私は販売面で当を得ておるとは考えますけれども、そのことがそういう未成年者のスリルを好む、こういう暴走の危険を助長するようなことになりはしないか、こういうことからこの年齢の引き上げを主張したわけであります。特に今回は大型の自動車に対して年齢を二十歳に引き上げられたことに対しては、そういう面では非常に敬意を表するわけでありますけれども、できればこの際、普通車の免許もそこまで引き上げていただきたいということを申し上げておるわけであります。
  31. 亀山孝一

    亀山委員長 次は折小野良一君。  ちょっとあとの質問につきまして、大野参考人はお急ぎのようでございますので、どうかひとつお含み置きを願います。
  32. 折小野良一

    ○折小野委員 簡単に御質問申し上げます。お急ぎのようでございますから大野市長さんに一言お伺いいたします。  全国市長会議交通安全対策の促進に関する決議の中に、「都市が行なう交通災害救済制度社会福祉行政の一環として育成すること。」という項目が一つございます。あるいはこれは共済制度等のことかと思いますが、大野さん御存じの社会福祉行政の一環としての具体的な内容を、御承知でございましたらお伺いをいたしたいと思っております。  それから次に山内先生にお伺いをいたしたいと思いますが、特に反則金制度でございますが、画期的な制度でございますし、わが国の自動車交通の現状からいたしまして、このような制度をとることもあるいはやむを得ない。また先生のお話の中にも、おそらく違憲のおそれはまずあるまいというようないろいろな御説明もございました。それからまた、現在の情勢からいたしまして道路整備、特に交通安全施設整備が必要である、このことも、これは当然なことであろうと思っております。ただ今回のこの制度におきまして、この両者を結びつけて反則金を取って、それで交通安全施設整備をするんだ、こういうふうな、何と申しますか、いわば目的税的な結びつけ方、発想のしかた、こういう点にいろいろ問題があるように考えられます。そういうようなところから、具体的には警察官に対する不信を助長するとか、あるいは一般の免れて恥なしというような気持ちを助長するとか、いろいろな問題があろうと思うのでございますが、こういうふうに反則金通告処分制度というものと、その財源をもって直ちに交通安全施設をするということ、こういう発想の、刑事政策上あるいは立法政策上の御意見がございましたらお伺いをいたしたいと考えております。
  33. 大野元美

    大野参考人 交通災害共済制度が、社会福祉の一環としてどういうふうに考えられているかという御質問かと思うのでございますが、さようでよろしゅうございますか。——実は私のほうの川口市が、この共済制度を一番早く取り上げた都市でございます。私のほうで実施いたしておる問題といたしまして、生活保護者、ボーダーライン層においては市費でこれをまかなっているという形でございます。また学童は全員これに参加をさせておりまして、三百六十五円、一日一円制度でございますが、そのうち六十五円は市がこれを持ち、三百円を、一年間を三期に分けて納入をさせ、全体をこれに入れているというようなことで、市長会におきましても従来生活保護者の方、学童が災害を起こしましたときに、いろいろと事故を起こした当座の金に困るわけでございます。それらを考えまして、福祉制度の一環としてわれわれ市長会としてはこの制度を考えていこう。ただ川口でやっております制度そのものがいいか、いま三つの方式が考えられておりますので、それらをどういうふうにして持っていくかということでございますが、根本的には福祉制度の一環として考えていこう、かような考え方でございますので、御了承を願いたいと存じます。
  34. 山内一夫

    山内参考人 制裁金が、こういうふうにある特定の費用に使われるというふうに定めたのは、現行制度としても例がないんじゃないかと私思うのでございます。一種の目的税的だ、だから道路交通安全施設をせっせとつくるために、大いに反則金を取り立ててやろうというので取り締まりが行なわれる可能性が私は確かになきにしもあらずだという意味で、ある意味において正直に言って危険を感ずるわけでございます。ただ、しかし好意的に理解しますと、ともかく道路交通安全施設整備されれば反則金というのはだんだん取らないで済むんだ、それで通告処分なんていう異例の制度はだんだんなくして、普通の、憲法の原則どおりの制度になっていくんだという意味で、過渡的になるべく道路交通安全施設をつくっていかなければならないという、その願いを込めた意味で、正しい意味において取ったお金はできるだけそっちへ使うんだというふうな、立案した人の気持ちも一方において私全然わからないわけでもないと思うのです。ですからこういう制度をつくりますと、警察のほうの取り締まりに対する態度というのは重大な責任があるわけでございまして、安全施設をつくるために反則金を取るというようなことは、よもやなさらぬと思いますけれども、そういうことは厳に戒めていただかなければならない。ですからこの制度がほんとうにいい意味に使われるかどうかは、今後の実施の方向できまってくるように思います。ある種の危険は確かにあるんじゃないかというふうに思いますが、こういう考え方も全然ないかと言われると、はなはだ煮え切らない御答弁で恐縮でございますけれども、まあないともいえない、その辺の感想しか申し述べられないので、恐縮でございます。
  35. 亀山孝一

    亀山委員長 小濱新次君。
  36. 小濱新次

    ○小濱委員 私は、山内先生と、大野川口市長さんと、お二人にお伺いしたいのでありますが、先に、お急ぎのようでありますから、大野川口市長さんに一点だけ伺っておきたいと思います。  先ほど、貴重な、御意見をお伺いしたわけでございますが、その中に、川口市内を通っておりまするその車の台数の中で、七〇%までが通過車になっている。そこでいろいろ事故が多かったのでしょう、国道における対策を練られたようでありますが、先ほどの話ですと四%増、このようにお話を聞いたように思います。そして県道と市道においては二〇何%かの、それ以上の数字になっているというお話のようでございました。そういう激増になっている。ふえたその事故の種類と原因について、これは私ども非常に心を痛めているところでありますので、もう一度、今後の参考のためにお伺いしたい、このように思いますので、よろしくお願いいたします。
  37. 亀山孝一

    亀山委員長 他の参考人も御一緒にどうぞ。
  38. 小濱新次

    ○小濱委員 それでは、あとは山内先生でございます。法制局の第一部長当時のことを私どもは聞いておりましたが、初めてきょうお目にかかるわけでありますが、先生に二点だけお伺いしておきたいと思います。  運転手が積載量をオーバーした場合には罰則が三月以下の徴役とか三万円以下の罰金、こういうふうになっておりますが、それを命じた雇用主は三万円以下の罰金と、この両者が非常にアンバランスのように思います。その内容によってもこれはまた問題があろうかとは思いますけれども、ひとつ先生の御意見を聞かしていただきたい。  それからもう一点は、だいぶ時間が過ぎましたので、私いろいろとお伺いしたいと思っていたのですが、この一点だけでやめます。  反則金罰金にかわる内容を持った制裁であり、行政罰としての過料との中間的性質を持つものと、このように私どもは聞いておるわけでありますが、このことについて最後に先生の御意見を聞かしていただきたい。  以上でございます。
  39. 大野元美

    大野参考人 お答えを申し上げます。  国道県道、市道における交通事故増加の差というものをどういうふうに考えるかという御質問かと思うのでございますが、私は一言に申しまして、国道における交通安全施設というものはかなり整備をしてまいっておる。しかるに県道、市道等においては、われわれとしてもう十分そのほうを伸ばしておるのでございますが、それに追いつかないということが原因だと思うのでございます。また一方におきましては、運転手の皆さんが国道を通過するよりも狭い市道を通ったほうが距離的にまた時間的に早いというような現象が、今日では国道を通りますにあたりましていろいろと感ぜられてくるわけでございます。さような形のものが、市道のほうに自動車が多く流入されてくるというようなことからいたしまして、従来ありました施設国道並みにしていかなければ追いつかなくなっているということの原因があると、かように私は考えます。  もう一面において私どもとして考えなくてはならぬのは、市民の交通災害に対する考え方の高揚につとめていくことだと、かように考えます。運転手の皆さんが大いに考えていただくことはもちろんでございますが、反面においては市民におけるそういう問題を取り上げて、今日の地方行政の中においていろいろ教育の場を持っていくということによって災害が減っていく、私はかように考え、二つの点を御指摘いたす次第でございます。  以上でございます。
  40. 亀山孝一

    亀山委員長 大野参考人、ありがとうございました。御用があればどうぞ……。  それでは、次に山内参考人お願いいたします。
  41. 山内一夫

    山内参考人 お答え申し上げる順序は逆になりますが、反則金はいま過料罰金との中間的な存在であるというふうに仰せられましたね。非常に大ざっぱに言えば、そういうことかと存じますが、過料のほうは先ほど申し上げましたように、かければそのまま執行力が出てきまして、取り上げることができるような制度になっております。反則金のほうは、これに従わなければ、おっしゃるように次に刑罰に転化する。ですから反則金のほうが、中間といいましても、どっちかというと罰金に近いものだというふうに私は思っております。過料罰金というものを非常に区別なさる学者もおられるのですけれども、私としましては、過料というのはただ前科者にならない、刑法刑名がないというだけで、実は執行罰である部分は別ですけれども、やはり一種の制裁なんでございまして、やはり憲法でいってくるところの刑罰に当たるのではないかというふうに私思いまして、憲法規定していますところの刑事手続に関する規定はやはり過料にも大体適用があるというふうに私は考えておるわけでございます。ですから、過料ということと罰金ということと、非常に両極端な制度と考えまして、その間に反則金があるというより、三つともそうたいした差のないものだというふうに理解いたしております。  それから最初のほうの、積載オーバーの罰則、あれは三月でございますね。それから、それを下命し、あるいは容認した人は三万円。ですから、アンバランスであるが、というふうに仰せられますのは、積載オーバーを命令した人にもっと重科すべきであるというふうな含みでお話しいただきましたのでございましょうか。
  42. 小濱新次

    ○小濱委員 運転手が雇用主に命じられて不本意ながら積載オーバーをした場合、そういう場合にその罰則の内容がアンバランスだが、と思われるが、先生のお考えはどうでしょうか、こういうふうにお伺いしたつもりでございますが……。
  43. 山内一夫

    山内参考人 私、はなはだ思いつきの意見を申し上げてもちょっと何でございますし、私、あまりそこのところを考えたことがございませんので、意見を差し控えさせていただきたいと思います。
  44. 小濱新次

    ○小濱委員 申しわけございません。  それでは私は最後でありますので、もう一つお伺いしたいのでありますが……。
  45. 亀山孝一

    亀山委員長 小濱君、あとから追加の質疑がございまして、井上君やられますので……。
  46. 小濱新次

    ○小濱委員 それでは残念でありますが、これで終わります。
  47. 亀山孝一

    亀山委員長 それでは井上泉君。
  48. 井上泉

    ○井上(泉)委員 甲斐さんと大井さんとお二人にお伺いしたいと思いますが、今日の悪い道路事情の中で運転をされておられる方の御苦労というものはたいへんなものだと思います。そういう中でいろいろ交通違反に問われて罰金とかあるいはまた停止処分を受けられる方、これはずいぶん多いわけですが、こういう場合に雇用主がどういうふうな処置をしておるのか、つまり罰金は会社が払ってくれておるのか、あるいはその運転停止中にはしかるべき給与条件が付加されておるのかどうか、そういう点をそれぞれの二つの組合の代表者の方でございますから、それぞれの組合でそういう交通違反を犯した運転手に対する労働条件というか、そういうふうな契約の概要をお聞かせ願いたいと思います。
  49. 亀山孝一

    亀山委員長 甲斐参考人お願いいたします。
  50. 甲斐国三郎

    甲斐参考人 大きな問題としましては、先ほどの業務上過失致死傷罪等で実刑が加わったような場合は解雇ということです。そこで、これは特に公労協関係の労働者が多いのですけれども、民間の場合は多少救済の道は開けておりますけれども、概して、いわゆる交通違反あるいは死亡事故等を起こして禁錮刑等の実刑が下された場合は即時解雇ということのように、たいへんきびしいのであります。ですからこれは私は破廉恥罪で禁錮刑にしても懲役にしても、実刑を受けた場合に解雇だということは理解できるとしましても、今日の交通状況の中で、先ほど申し上げたような形での違反なり事故の原因がある中での事案でありますから、たいへん酷な形で、統一的に解雇は不当だということで戦いますけれども、実際にはそういう形です。  それから軽いものといいましょうか、罰金等の会社負担という問題は、これは数年来、今日の交通事情の中では好んで運転手は違反をして働いておるわけじゃないわけなんですから、当然賃金が、やればやるほど、いわゆるやらなければ賃金が得られないというノルマ給でございますから、そういう中では当然この罰金は会社が負担しなさいということで、二、三、会社負担でとっておる会社もございます。しかし、厳密にいきますと、やはり罰金は本人、実行行為者にしないという議論もあることは承知しておりますけれども、今日の私たちの労働条件からすれば、たとえば約五万円程度の収入を得られる労働者を、トラックの場合にしてもタクシーの場合にしても、例をとってみましても、その五〇%から六〇%は、全国平均しますと歩合給、すなわちノルマ給なんです。ですから必然、たとえば東京都内三百六十キロ走らなければいけないというキロでの、総合キロからくる要求と、それから一万円以上かせがなければ賃金をやらぬぞという仕組み、あるいはまた、一日病気で休む、事情で休んだ場合、一日休んだら五、六千円から大きいもので一万円ほど給料を引かれてしまうといういろんな悪条件がございますから、そういう中での罰金に対する考え方は、そういう意味で会社負担の要求を実は要求して戦っておるところです。ですから、このことが法の運用からいって適正かどうかについては疑問がございますが、しかしせっかく御質問がありましたので、もう少し労働条件を申し上げるならば、今日の条件は、労働省が通達も出しましたように非常に長時間労働、それから先ほど川口市長さんに対して、名前はちょっとわかりませんが、先ほどの先生の御質問もありましたように、なぜ国道を通らないで県道市道に入っておるかという御質問がありましたから、これも例にとって御説明したいのでありますが、これはそういう罰金等を考えまして、国道には警察官の取り締まりがきびしいわけなんで、県道や市道へ、近道といわれておりますけれども、そちらへ入れば警察官のところに会わないで済む。そういう意味で、特に私たち組織労働者ではありませんけれども、砂利トラやダンプトラックといわれる人たちは、いつの時点どこで取り締まりをやっているかということは全部わかっておりますから、裏を逃げていくという意味で、たいへんそういう意味では市街地周辺の方には御迷惑をかけていると思いますが、そういうのが実態であります。  もう一つは、たいへんりっぱな名神高速道路ができましたけれども、通行料金が高いために中小の路線トラックの運送事業者はそこを通させないで、旧来の旧道を通らして走らせるというために、少しも交通量は減らないし、事故も減らないというのが名神高速道路ができた後の今日の状況だということも、あわせて、よけいな説明だったかもしれませんが、そういう形でございます。
  51. 亀山孝一

    亀山委員長 大井参考人お願いいたします。
  52. 大井秀雄

    大井参考人 お答えいたします。  私のほうの組織の場合には、官公庁の関係は一切ございません。全部純民間の交通運輸関係事業場ばかりでございます。しかもその半数がトラック運輸の事業場であります。このトラック運輸の事業場の場合は、いま全国で二万一千数百という運送会社の数が存在いたします。それに従事する労働者が約八十万といわれております。ところが、その中で労働組合をつくっておるような事業場というものは非常に少なくて、大部分が未組織の事業場でございます。こういう未組織の事業場の場合には、こういう処罰に対しては全く運転者に一切を負担さしている、こういうような事業場が非常に数多いのであります。私たちの組織の場合には、雇用主が罰金の負担だけは罰金共済制度というものをこしらえて、その共済資金を運転者と会社側と両方から一人幾らということで積み立てをしまして、そしてその積み立て金の中で操作をさしていくというようなことを考えております。ただし、就業停止を受けた場合には、就停の期間中の労働者の待遇は、いま甲斐さんが指摘されましたように、ノルマ制の賃金体系という中から、当然下車勤務を命ぜられるわけでありますが、その場合には賃金は約半減をいたします。ただし、私たちの場合には、重大な事故を引き起こして裁判にかかったという場合でも、解雇をするというようなことは一切さしておりません。ただし、その場合に、その人の職種転換という形で処理をしておる場合もありますけれども、一切解雇はいたしておりません。  それから、先ほど小濱先生の御指摘にございました積載違反のときに、運転者がむしろ運行管理者よりもきつい処罰を受けておるということでございますが、これは全く逆で、むしろ運転者は積み荷を拒んだ場合解雇されるのではなかろうかということを心配をして、そしてむしろいやいやながらそれを運ばなければならぬ、こういうのが特に労働組合のないトラック事業場の労働者の心理的な実態でなかろうか、このように思います。にもかかわらず、運転者のほうに禁錮刑を科して、そして運行管理者のほうには罰金だけで処理をするということについては、全くこれは逆の処罰の方法ではないか、このように思いますが、その場合でもこれは運転者に負担をさすというようなことをするかどうか、こういう点につきましては、運行管理者あるいは雇用主に運転者が、会社は罰金を払ってやるのだから積んでいけ、こういうようなことでむしろ強制をされているという実態も、特に労働組合のないトラック事業場には数多くあるということを申し添えておきたいと思います。
  53. 亀山孝一

    亀山委員長 太田一夫君。
  54. 太田一夫

    ○太田委員 今野先生と山内先生にお答えできましたらお願いしたいと思うのですが、公安委員会のことでございます。今度公安委員会のほうが少し仕事が軽くなると言っちゃ何ですが改正案によりまして、いままで免停三カ月までは大体警視総監ないしは県本部長の専決で免停が行なわれている。今度は三カ月以上のものも公安委員会は県本部長ないし警視総監に処分を移譲することができるということになったわけです。したがって、その権限を移譲いたしますと、三カ月以上の場合、聴聞も行なうわけでありますけれども、公安委員会はお仕事が楽になる。非常勤でございますから、どうしても事案が多いとそういうことになると思うのですが、公安委員会の本来の任務から、免許取り消しは自分のところが持っておりますけれども、免停の場合、すべて警察当局、行政官に一任をしてしまうということは、ちょっとどうかという気がするのですがね。公安委員会というのは、もののあり方から考えて、そういうのは妥当でしょうかどうか。御感想がありましたらひとつお伺いさしていただきたいと思います。  以上です。
  55. 山内一夫

    山内参考人 公安委員会がこれを委任することがいいか悪いかでございますけれども、これは考え方はいろいろあると思いますが、警視総監も本部長も、公安委員会の指揮命令を結局には受けるわけでございますから、処分の名前が警視総監なり本部長になっておりましても、名前がそうなるだけのことでありまして、公安委員会がしっかりしていただければ、これは実質にはそう響いてこないのではないかというふうに私は思います。ですから公安委員会があくまでやるのだという考え方は、むろん一つの考えでございますけれども、こうやったら本部長なり警視総監なりの独裁的な権限が、ここから当然に生まれてくるというわけでもないように私は心得ております。
  56. 今野源八郎

    今野参考人 私も感想程度で申しわけございませんけれども、戦後日本に公安委員会制度というものが導入されたのでございますけれども、どうも国民の一人として考えますと、組織がもう少し強くなければならないのか、あるいは専門官が少ないのかどうか。もう少し強いといいますか、包括的な組織と専門的な知識を持って、公安委員の機能といいますか、与えられた権限内での仕事をしていただきたいということを考えると同時に、実際問題として、やはりこういう問題を処理するのに警察の力を使うということは、現状ではやむを得ないのでなかろうかというような感じを持っております。逆に申しますと、非常に長い公安委員会の伝統を持っておるアメリカのようなところと違いますので、何かまだ若過ぎて、非常に大きな権限を一方ではお持ちになりながら、何か私ども人民が望むところまで、十分やっていただけないようなところで、交通問題についてはたいへん不満を持っておりまして、これはどうしたらよいのか、先生方にお考えいただきたいのですが、要するにもう少し手足を持つといいますか、人員なり専門の人を導入して、公安委員会がおやりになるならおやりになるし、その過程では今日のような改正もやむを得ないのでなかろうかという現実的な考えを持つのでございます。
  57. 亀山孝一

    亀山委員長 参考人の方々には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五分散会