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1967-06-29 第55回国会 衆議院 地方行政委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十九日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 亀山 孝一君    理事 大石 八治君 理事 奧野 誠亮君    理事 久保田円次君 理事 細谷 治嘉君    理事 山口 鶴男君 理事 門司  亮君       木野 晴夫君    久保田藤麿君       佐々木秀世君    塩川正十郎君       中馬 辰猪君    登坂重次郎君       永山 忠則君    古屋  亨君       山田 久就君    井上  泉君       太田 一夫君    島上善五郎君       華山 親義君    依田 圭五君       大野  潔君    小濱 新次君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁長官   新井  裕君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君  委員外出席者         警察庁交通局交         通指導課長   綾田 文義君         大蔵省主計局法         規課長     小田村四郎君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         専  門  員 越村安太郎君      ————◇————— 六月二十九日  委員太田一夫辞任につき、その補欠として下  平正一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員下平正一辞任につき、その補欠として太  田一夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二七号)  都道府県合併特例法案内閣提出第二三号)      ————◇—————
  2. 久保田円次

    久保田(円)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、委員長指名により暫時私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出にかかる道路交通法の一部を改正する法律案議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。依田委員
  3. 依田圭五

    依田委員 道交法について、数点にわたり御質問をいたしたいと思います。  まず第一点は、道交法改正のときに衆議院におきまして、約数点の附帯決議がつけられております。それについて、事故が非常に激増し、またこの道交法違反事件が、非常に数が多くなっておりますので、この附帯決議に対する当局の努力、この実績についてここで御報告を願いたいと思います。
  4. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 道交法附帯決議は、改正のたびにございますけれども、現在の道交法ができました三十五年の国会のときの附帯決議、そのうち衆議院地方行政委員会でつきました附帯決議についてお答え申し上げたいと思います。  附帯決議の中で、衆議院附帯決議が数項目ございますが、一々お答えすることにしたいと思います。  第一番目の「警察庁運輸省、建設省、文部省、労働省、通商産業省等交通関係のある行政機関相互間の連絡調整徹底して、総合的な道路交通行政の実現を期するとともに、これら関連行政調整のために内閣に強力な機関設置すること。」ということにつきましては、この三十五年の国会が済みまして、三十五年の十二月に総理府交通対策本部設置いたしまして、三十六年の十二月に交通関係閣僚懇談会というものが、御承知のとおり設置されたわけでございます。そこで、この交通対策本部中心にいたしまして、関係各省間の連絡を密接にいたしまして、総合的な行政を推進してまいったわけでございますが、その後四十年の五月になりまして、総理府陸上交通安全調査室というものが設置されまして、その後は、これがこの交通対策本部並びに交通関係閣僚懇談会事務局のような形になりまして、この安全調査室中心になりまして、総合的な行政を行なってきたということになっていると思います。  それから、その次の問題は、「交通道徳の確立と交通法令普及を図るため、とくに次の方策を講じてその徹底を期すること。」「1 遵法精神を高揚するための国民運動を展開すること。とくに車両の運転者道路使用者等本法関係の深い者に対しては、法の趣旨及び内容周知徹底につとめること。2 学校教育を通じ、学童に対して交通知識普及を図ること。」このことに関しましては、それぞれ私ども警察庁といたしましては、いろいろな形で交通道徳の高揚をはかるための措置を講じてまいったわけでございますが、それの一つのあらわれといたしまして、「みんなが守る交通法規」というものをつくりまして、「このみんなが守る交通法規」につきましては、法規だけではなくて運転者のマナーも含めまして、そういうものを大量に印刷いたしまして、これを広く国民に配布しておる。その他いろいろなパンフレット等をつくったりいたしまして、いろいろな形での安全教育というものをやっております。あらゆる機会をとらえて、警察といたしましては安全教育を実施しておる次第でございますが、まだまだこの安全教育の問題というものは、非常に精神的な問題でございまして、むずかしい面がございますけれども、なお一そうこれは、あらゆる機会を通じてやることを心がけたいと思っております。  それから学童につきましては、御承知のように文部省におきまして学校教育の中に交通安全教育を取り入れたいということで、わが警察庁もそれに協力いたしまして「交通安全指導の手引き」というものを作成いたしまして、それを文部省学校教育の中に正課として取り入れようかという方向で、児童、学童に対する安全教育の充実をはかっております。
  5. 依田圭五

    依田委員 わかりました。それで、そういうように御説明いただくと、ちょっと私のほうの時間がなくなりますので、質問を提起いたしましてたいへん恐縮ですが、要点を御質問するから、それに関連して、またあと質問事項の中で随時附帯決議の問題に関連してお聞きしたい、こう思っております。  まず審議会設置をしなさいというような決議になっておりますが、これについて何かつくりましたか。強力な審議機関をつくれという内容がございます。これについてそういう経過があったかどうか。
  6. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように総理府交通対策本部、それから交通関係閣僚懇談会、それの事務局としての陸上交通安全調査室というものができ、一応この陸上安全調査室を通じて、これらの安全対策本部並びに閣僚懇談会審議議関ということになっておると思います。さらに強力なものという御質問でございますが、一応現在の段階では、政府といたしましてはそういう実情にあろうかと思います。
  7. 依田圭五

    依田委員 交通安全国民会議というのは、国民に対する一つキャンペーン機関であり、また閣僚連絡調整機関であって、強力な民間も入れた審議機関、そういう意味に当たるかどうか。またどのくらい運営しておりますか。私の聞いたところでは、わずかに三回か四回、それも二、三時間程度、こういうような実情の中で、膨大な数にのぼっている道路交通の問題に対処するに十分な、附帯決議の要求する審議機関であると御判断になりますかどうか、御答弁願いたい。
  8. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 私の御説明の中で、国民安全会議のことは申し上げませんでしたが、安全会議につきましては、御指摘のように四十一年に二回、ことしに入りまして一回、三回開催しております。これは御指摘のように広く民間からも有識者を集め、総理が主宰されまして、各般の交通問題について協議をするということでございまして、私の記憶では二時間というようなことでなくて、二日くらいにわたってやっておることもございまして、ことしに入りましては分科会等も設けまして、相当いろいろな角度から慎重な審議をいたしまして、その分科会の状況をさらに本会議で報告して、総理がみずからそれに対していろいろな対策を打ち出していくというようなかっこうになっておりますので、そういう意味では一つ審議機関ということになろうかと思います。
  9. 依田圭五

    依田委員 国民会議が、局長の言うように、おざなりの機関でなくして強力な内容を持った機関であると仮定すれば、それならば反問しますが、今回も、私あとのほうで触れたいと思う通告制度、これは議事録を読ましていただきましたが、一行もないのです。どこで審議しましたか。審議機関という性格を持った交通安全会議で、いつこの通告制度の創設について提案をし、審議をいたしましたか。
  10. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 御指摘のような審議機関にははかっておりませんけれども、今度道交法改正につきましては、警察庁中心になりまして、関係各省といたしましては法務省、最高裁も入っておりますが、もちろん法制局とも打ち合わしてやっておるわけです。それ以外に、この問題につきましては、いろいろ民間有識者学者意見も十分聞いた上で、それらの意見も取り入れて慎重に立案しようということで、民間有識者並びに学者構成員といたします、法律的な審議会ではございませんけれども懇談会形式で、数回にわたりましていろいろな意見を聴取しながら立案をしたという経過になっております。
  11. 依田圭五

    依田委員 衆議院道交法についての附帯決議の第一項に出ておるこういう重大な審議機関設置、これは参議院でも同じように決議をやっております。そういう重大な問題について交通安全会議が参与していない。しかも、私はキャンペーン機関に過ぎないと思っているのです、議事録内容からいって。総理が来てちょっとあいさつしてすぐ帰る。あとで一応簡単な会議をやって終わりとする。三、四回しか開かれておらない、こういう、今回通告制度のような重大な新しい制度を取り入れるという、憲法の問題にも触れるのではないか、三十一条、三十二条、七十六条ですか、こういう違憲問題をも学者が議論をいたしておる、こういう問題について、こういう正式のあなたがおっしゃる機関にはかる必要がなかったのですか。そういう判断をしたのですか。その辺をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  12. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 おことばを返すようでございますけれども、この附帯決議内容につきましては、警察関係行政連絡調整を強化して、総合的な施策策定ということになっておりまして、私どもといたしましては、道交法改正につきましては、その総合的な施策策定と書いてありますような趣旨とは若干離れているのではないか。警察庁道交法主管官庁といたしまして道交法改正をやるわけですが、もちろんその際にいろいろな有識者学者意見を聴取した上で慎重にやるということは必要であると思います。しかし、ここに書いてありますような意味審議機関、したがって現在の段階では、交通対策本部、あるいは交通関係閣僚懇談会というような形になろうかと思いますし、また御指摘のように国民会議ということもその中に入るといたしますれば、それらには必ずしもはかるべき問題ではないというふうに考えたわけでございます。もちろん政府のいたします交通対策本部あるいは交通関係閣僚懇談会には当然、政府提案という形になりますので、はかった形になろうかと思います。
  13. 依田圭五

    依田委員 はかった形になろうかというような不確定な御答弁では実は困るので、いつどういう形で——学者に聞きましたというようなお話では実は納得ができないのです。どのような正式の機関で、どのような権限に基づいて交通反則金制度の問題について審議をなされたか。一番権威のある機関と思われるものは、実情運営は、会議録を読むと決してそんなものではない、先ほど私が批判したような運営でございますが、交通安全国民会議なるものに、あなたがこれをかける必要がない、そういうように判断なさったならば、そういうようにお答えを願いたい。どうもその辺がはっきりしないので、われわれはこの交通安全国民会議というものをこれからずっとお聞きしたり、また考えていかなければならぬものですから、今回出てまいりました非常に重要な通告制度をここで議題に供する必要がないのかどうか。その必要を認めなかったなら認めないとはっきりお答えを願いたいと思います。
  14. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 交通安全国民会議は御承知のように常設の機関でもございませんし、またこの附帯決議にあるような審議機関というふうに私どもは解釈しておりません。総理が主宰して国民の総意をいろいろ聞くという会議でございますので、私どもはそれにはかることは必要ないというように考えた次第でございます。
  15. 依田圭五

    依田委員 それじゃ非公式な、学者についてお聞きしたという記録以外に、正式の何か機関に対してはかった記録があれば、それを資料として要求いたしておきます。私たちは、この交通安全国民会議にすらこの通告制度をただの一ぺんも議題に供しなかったという扱いのしかたに重大な疑問を持っておるのです。これは同僚議員あとから補足的に追及してもらいますから、大臣がおいでですから、これに関連してお聞きいたします。  昭和三十五年道交法の改定当時に、たいへん交通事情が窮迫してまいりまして、たくさんのけが人ができる、こういうわけで、片や政府の中に安全会議を持とうではないかということがきめられ、もう一方では刑法の二百十一条をこの機会改正しようではないかという動きが出てまいりました。これに関連してお聞きするのですが、全刑法犯の中で、一体道交法に関する違反が、二百十一条に関連して出てまいりましたデータの上でどのくらいのパーセンテージを占めるか、これを三十八年以降の統計について——三十八年まで私のほうで握っております。八一%くらいの数字が出ておりますが、これをひとつ教えていただきたいと思います。
  16. 綾田文義

    綾田説明員 お答えいたします。  警察庁犯罪統計によりますと、業務上等過失致死傷罪、これが昭和三十九年が、認知件数が二十二万四千三百八十三件、それから、それに対して検挙件数が二十二万二千二百六、四十年が二十五万八千八百五、検挙件数が二十五万六千六百二十一、四十一年が認知件数は二十九万八千五百九十、検挙件数が二十九万七千百四十六でございます。そのうち、この資料では四十一年だけでございますが、四十一年ではそのうち交通関係のものが、認知件数が二十九万六千八百四、検挙件数は二十九万五千三百七十八、すなわち業務過失致死傷罪検挙件数が二十九万七千件近くということでございます。そのうち交通関係が二十九万五千件ということになっております。
  17. 依田圭五

    依田委員 全刑法犯の中で、二百十一条に関連して、道交法に関する比率はどのぐらいになっておりますか。
  18. 新井裕

    新井政府委員 全刑法犯、ただいまちょっと四十一年の数字を持っておりませんが、大体常識的にいいまして百五十万件でございますから、そのうちの一割が十五万になりますから、一割五分ほどになりますか……。そういう数字はちょっと持ち合わせておりませんが、見当はその程度でございます。
  19. 依田圭五

    依田委員 四十年現在で大体六十六万人ぐらいじゃないですか。
  20. 新井裕

    新井政府委員 六十六万という数字がよくわからないのですが、おっしゃったのはおそらく検挙人員だろうと思います。検挙人員は、百五十万の発生に対して七十万人ぐらい毎年検挙しております。七十万人ぐらいの検挙のうち、業務過失検挙したものは何ほどかということになるならば、三分の一ぐらいということになるかと思います。
  21. 依田圭五

    依田委員 大臣にお聞きしたいのは、大体三分の一ぐらい道交法で占めておるわけですね。これはもっと多いのです。統計のとり方によりますが、最低三分の一——いや三分の二、こういう数の中で、一体この刑法改正はもう三年前からこの問題を取り上げておるわけですが、   〔久保田(円)委員長代理退席委員長着席閣議とかその他の関係の中で、ことし事故を除いておりますね。しかし、通告制度はそれ以外に、たいへんなところで過重になっておる。こういうような新しい道交法の第四次抜本改正提案することを目の前において、刑法のような基本法律をどうして改正しなければならなかったか、公安委員長あるいは自治大臣として、閣議においてどのような立場でこれについて御意見を言われたかを、この際お聞きしたいと思います。
  22. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私からお答えするのがいいかどうかは別問題でございますが、私のとらえ方といたしましは、業務過失致死傷罪というものは、刑法の本来の系統のものと把握をいたしまして、その中で特に道交法違反のものについて刑の差別をつけるということはいかがなものであろうか。むしろやはり本来刑法体系のものであるから、そういうものについて、自動車事故についてだけ取り出して刑の重さを違えるということは体系的にいかがなものであろうかということを考えて、刑法おまかせしておるわけでございます。
  23. 依田圭五

    依田委員 その二百十一条の過失致死傷、これに関連する重過失の事案というものは、道交法関係が非常に多いということはもうはっきりいたしておるわけです。他の部分については、それぞれの所管法律で何とか処理できる。また、いろいろ未必の問題あるいは悪意の遺棄、そういったものは、これはそれぞれの固有犯でも処理ができる。また殺人だとかあるいは傷害致死傷、こういった刑の系列の上からいって、少し二百十一条だけを上限を切り上げたりあるいは懲役を課したり、過失に対しては従来禁錮だけだったのをこういう扱いをすることは、その関係内容がほんとど道交法関係で八割ぐらいを占められておる、三十八年の指数で八一%、こういう状態のときに、しかも通告制度——これは事故相当するものは排除いたしますが、結局そういうことでもって警察官の手のほうはあいてくるわけです。裁判官もあいてくる。もっと親切な措置がとれるわけですね。そのほかに警察署長に対して仮停止の処分の権限を与えてみたり、いろいろのことをやっておるわけです。あるいは罰金のところを体刑に変えてみたりしておるわけです。こういうような第四次道交法の大改正を目の前において、自動車関係が圧倒的な量を占めておりますから、そういう事実を踏んまえて、これは公安委員長なり自治大臣立場から閣議において相当強く御意見なり、あるいはわれわれの立場から言えばチェックしてもらって、これに対する抵抗をしていただきたかった、こう思うのですが、これについて御答弁をお願いしたい。大臣立場は当然内閣のあれですから、一体性の原則からして、あるいは内閣法規定からいっても、大臣閣議においていつでも所管以外の問題についても発言できる。これについては、ことしこの通告制度を出すんだ、それによって膨大な警察官の手が省けるんだ、しかもその他いろいろ道交法関係規定については強化するんだ、こういうことを目の前において、私はなぜ二百十一条をことしもまた昨年、一昨年と同じようにこれを提案せしめたか、これに対するあなたの積極的な姿勢をお持ちなのか、消極的な姿勢をお持ちなのか、所管が違うから関係がないのか、あるいは積極的にこれに対して抵抗したけれども、これはやむを得なかったという御判断なのか、これを具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  24. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 われわれも、今回の道交法相当大きな改正にあたりまして、従来この道交法違反による過失致死傷の刑が軽過ぎるではないかというような御意見もありました。そういう点からいたしまして、道交法改正の中でそういうことをとらえたらどうとかいうことは、十分研究をいたしました。しかし、先ほど申し上げましたように、業務過失致死傷罪というものは、元来刑法体系に入るべきもの、そうしてその中で特に悪質な者についての現在の刑の上限が軽過ぎるというようなことで、もしこの上限をさらに上げようとするならば、それはやはり刑法体系のほうでやっていただくということが体系上妥当なのではないかという考え方を持ったわけでございまして、単に道路交通法違反の者だけが悪質で、その他のものには業務過失致死傷罪についてより悪質な者がないかというと、そうばかりは言えないのではないか、そういう点もありまして、ただ道交法違反ばかりを取り上げて、その刑の上限を上げることはいかがなものであろうというような理解のもとに刑法おまかせしたわけでございます。
  25. 依田圭五

    依田委員 刑法をいじくるというか手を加えるということは、これはもうたいへんな問題でございまして、その大多数が道交法関係である。もちろん、はみ出たものもある。しかし、それはそれぞれの所管法律でこれを処理するなりすれば間に合うのであって、圧倒的なボリュームを占めておる道交法関係をいま提案をしながら、しかも憲法問題の基本に触れる、三十二条の裁判を受ける、あるいは三十一条の罪刑法定主義にも触れるこういった重大な疑義を持つ行政通告制度を、交通安全国民会議に正式に議題としてこれを上程して審議することすらもしておらない。こういう形の中で、刑法ストレートでこれに向かっていく。所管大臣としてこれに対して、ただ刑法系列だ、そうおっしゃるならば、こういうふうにこの二百十一条だけをいじくって上限を上げたり、禁錮懲役にしたりすれば、それじゃ殺人とかあるいは傷害とか傷害致死傷との刑のバランスは、刑法の中でどういうふうになっていくのですか。非常に大きな問題が出てまいります。そういう点についてもう少し具体的にお答えを願いたいと思います。
  26. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この刑法改正につきましては、これは法務省系統でございますが、十分その辺の点を考慮されて、そうして他の殺人罪とか傷害罪等との刑の量刑の問題も考慮されて、法務省において慎重に検討されたということでございますので、先ほど来のお話のような意味において刑法おまかせしたわけでございます。
  27. 依田圭五

    依田委員 法務省窓口になり、法務省所管だから法務省おまかせをした、こういうことが私は実は納得できないのです。これは非常に大きな問題で、おそらく健康保険と並べて最重要法案になっておるのです。しかも窓口は、提案原局法務省なんです。法務委員会関係なんですが、私は事実上この問題は、道交法の占めるウエートからいって、この過失致死傷なり何なりにおける事件発生の点から、これはやはり藤枝大臣が一番強い発言権を持っておると私は思っております。これについて閣議の席においてあるいはその他において、どのように大臣立場からこれに対して発言をされたか、御意見を持たれたかを私具体的にお聞きしたいのです。
  28. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど申しましたように、確かに業務上過致死傷罪相当部分といいますか、大部分道交法違反に基因するものであることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、これについて、この道交法自身にそういうものを入れて刑を重くするということも、実は考えもいたし、また法務大臣とも御相談をいたしました。しかし先ほど来申し上げましたように、やはり業務過失致傷死罪というそのものは刑法体系に入るべきであるという法務大臣の御意見もありまして、それも私は傾聴するに値する問題であるというふうに考えましたので、道交法規定するよりも、その本来の体系にある刑法によって規定するほうがよろしいのだという判断をいたしたわけでございます。
  29. 依田圭五

    依田委員 非常に大事な点ですから、実は通告制度のほうへ入りたいのですが、この点もう一回だけお聞きします。  どうも納得がいかないのは、法務大臣が、刑法のほうの範疇に入る案件だからまかしてくれ、それでそういうふうにおまかせをいたしました、こういう答弁で、内容はそれしかないと私は思うのです。それが唯一絶対のものであるならともかく、それなら、これを持っていけば、先ほど私がしばしば言いましたように、刑法の中における刑の体系がくずれてくるわけです。はっきりこれはアンバランスになってくるのです。もう学者が何人も指摘しておるように、殺人やその他に比較しまして、過失懲役を科すなんということはたいへんな問題なんです。せいぜい禁錮まで。それも判定が非常にむずかしいですから、能力以上の責任を負わせることになるのです。そういう点でこれが問題になっておるのです。しかも今回のこの通告制度を出して、御承知のようにこれは警察のほうでは七〇%が助かっちゃうんです。全部警察のほうでは簡単になる。ですから交通警官がいま何人おるか、これは私ちょっと知りませんけれども、これはまた資料でお聞きしたいところなんですが、警官の手が省け、簡裁が省けるんですね。その全力というものは全部取り締まりのほうに回るのです。従来交通事故というものは、交通工学でよく三E政策ということを言っております。設備と教育と行政、処罰だ。この処罰の面だけを警察庁中心になっておやりになる。これは調べていく過程の中でよく話が出るのですが、じゃ、車両法をやっておる運輸省のほうはこれと一体どういう関係にあるか、これは全然連絡がないのです。これはあとでもって、五百キロ以上の問題について触れたいと思うのですが、こちらのほうでは重量計を要求しているのだが、運輸省のほうは、そんなものは時期が尚早だ、そんなことをやったら事業主が困るからつけません、こういうことになっているのですね。取り締まりの面だけがいま独走しているのです。ですから、事業主との間の刑のアンバランスが出てきておる。今度の道交法では体刑が入ってきております。刑が非常に重くなってきている。しかも労働者だけがその中にはさまってしまって、ノルマの過激な中でもって一家をささえて働いておるのです。これはどこにあるかというと、これは付帯決議の中ではっきりいわれているように、警官に対する指導、これは第七項でいっております。これは局長にまたどのような措置をしたかということを聞きたいのですが、いろいろ御答弁があると思いますが、この附帯決議に出ておるのは、信号あるいは道路施設その他の横断歩橋等の、地方公共団体その他に対する、道路管理者に対する義務化の規定を法定しろ、これはどこにも出ておりませんよ。そういうことについて綿密な指導をいたし、設備をいたし、一体として設備もやります、教育もやります、そして処罰のほうもやります、こういう三者一体の形で交通問題を取り上げなければ、歩行者の保護にもならなければ運転者の保護にもならないし、また産業を通しての国に対する利益にもならない、こういうわけです。そういう面に対して、この通告制度は、膨大な人件費と予算が省けるわけです。また通告制度以外の処罰事項にしてもどんどん重くなっておる。こういうような抜本改正を目の前にしながら、なぜ去年、おととしと同じように、ことしもまた二百十一条を政府から提案してまいったか。これに対する自治省は去年とは違うのです。おととしとは違うのです。ことしはこれは様相を一変しておるわけです。道交法の第四次改定、第一次が大きな改定であって、第二次、第三次は形式的な改定なんです。今度は抜本改定なんです。これはしかも新しい制度の創設なんです。七割の負担が軽くなるのです。それだけに教育面あるいは設備の面にも、投資もできれば時間もさける。こういうことを目の前に置きながら、なぜまた大臣として——あなたが法務大臣意見を聞かなければならぬ立場にないわけですから、随時自分の所管について総理提案をして、閣議であなたが発言をとって閣議決定事項にできるわけです、内閣法の所定するところなんですから。それをどうしてやっていただけなかったか。私は地方行政委員道交法審議する一人として、今回道交法の占める割合があまりにも大きいのです。刑法のような基本法をいじくるということは、これに手を加えるということは、よほどのことがなければならぬわけなんです。間に合う間は間に合わしていく、これがわれわれの趣旨なんですが、それを法務大臣所管だから、刑法所管だからといってこれをおまかせになりましたその辺のいきさつ、御判断について、もっと具体的に、ひとつ国民納得のいくように御説明願いたいと思います。
  30. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 どうも同じことをお答えするようで恐縮なんですが、業務致死傷罪、なるほど道交法違反に基因するものが、交通事故によるものが七割、八割を占めることは事実でございます。したがいまして、これだけをやればいいではないかという御議論、決して無理な御議論だとは私は考えておりません。ただ業務致死傷罪というこの犯罪の体系というもの、それを考えまするときに、単に、悪質な業務致死傷罪というものは交通事故によるものばかりではないと思う。一般的にあると思うのでございます。したがいまして、それの中の特に道路交通法違反の者ばかりを刑を重くするということは、はたしていいのであろうか。いろいろそういうことを綿密に検討をいたしまして、現在のような処置をとったわけでございます。もちろん今回の道路交通法の一部改正というものは、相当大きな改正であり、またいま御指摘になったようないろいろな問題が起こってくるわけでございまして、また交通事故防止のためには、いまおあげになりましたように、単に取り締まりだけではなくて、設備の問題、教育の問題、その他総合的にやらなければならないことは当然でございますが、この業務致死傷罪の問題につきましては、繰り返してお答え申し上げましたような観点から、私は道交法に入れるのが適当でないという判断に立ったわけでございます。
  31. 依田圭五

    依田委員 これ以上私が同じ角度から御質問いたしましても、同じような答弁しか出ないと思います。私は、今回の刑法の二百十一条の問題に関連して、過去二年間のいきさつとは特別違う、客観条件が全く違うと思うのです。しかも、所管大臣藤枝国務大臣であるということを考えますときに、私はこの問題は相当大きな内容を含んでおると思う。これは、関連して、私自身もまた質問をいたしたいし、また先輩にもお願いしたいと思います。  次に、道交法にはたくさん問題がありますが、与えられた時間ではとても全部できませんので百十九条の積載オーバーの罰則の強化——通告制度に入る前に、この積載オーバーの問題について、これは長官からお聞きしたいのですが、非常に積載をこえてやったものは従来は三万円以下の罰金であった。今度は懲役が三カ月ですか、懲役がこれにかかる。もちろん罰金もかかる。こういうようにして、しかも使用者側に対しては罰金だけで——七十四条、七十五条、雇用者の問題ですね、これを軽減いたしておる。これについて、どういう形でこういうように不公平な扱いをいたしたか、お聞きしたいと思います。
  32. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 積載重量の制限違反につきましては、御承知のように、その程度が非常に著しい場合にはハンドルの操作とかブレーキの性能とかいうものに非常に影響を与えるということで、そのために危険回避の措置が非常に困難になるということで、是近におきますダンプカーを含めて、積載制限、重量制限違反実情を見ますと、非常に制限超過の程度の著しいものが非常に多いわけでございまして、たまたま立案当時の、昨年の八月一カ月間の状況を見ますと、約一割のものが十割以上も超過して積んでおるという状況もありまして、そういうものについて、それを繰り返してやるという事態もございまして、そういうものにつきましては、やはり罰則を上げる、一般予防という観点からも罰則を上げるべきではないか。それからなおこれは他の罰則対象との権衡の問題等もありまして、百二十条から百十九条に引き上げたわけでございますが、御指摘のように雇用者等の容認、下命行為につきましては確かに百二十条にいたしまして罰金だけにしてございます。この問題につきまして、雇用者に弱いのではないかという御意見でございますけれども、容認、下命の問題につきましては、このほかに雇用者等の刑法の総則の適用のあります教唆幇助というものがございます。教唆幇助を適用いたしますれば同罪だと思います。場合によっては、たとえば運転者がいやがるものを無理に積んだという場合には、あるいは科刑の際にかえって運転者よりも重くなるということも考えられないことはないと思います。そういうことからいって、共犯でやれるということが残っております。その共犯でやれない問題が下命、容認ということで規定されておる形になっておるわけです。たとえば下命したけれども運転者が実行行為をしなかったというような場合には、この条文を適用してやる。あるいは幇助とまではなかなか立証の認定がむずかしい。見て見ぬふりをしておったというような容認立証上の問題で、立証の段階で容認までいけるというような点につきましては、この条文でやるというような形になっておりますので、決して運転者だけにつらく当たっておるということにはならないというふうに私どもは考えております。
  33. 依田圭五

    依田委員 その下命、容認と先ほどの一点、使用主のほうに車両法か何かの規定改正して、重量計ですね、五トンなら五トン、これについて運輸省のほうと何か連絡をとり、これをやったことがございますか。
  34. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 私どもも重量計、自重計、と申しますか、そういうものをトラック等につけることには賛成でございまして、運輸省にもたびたびそういうわれわれの意向を伝えております。ただ運輸省のほうでは、まだ信頼度のある自重計が開発されていないということを言っておられるのでありますけれども、それが開発された暁には自重計をつける、今度の道交法の中でタコメーターをつけることになっておりますが、それと同じような観点から、自重計をつけるということには私どもは賛成でございます。
  35. 依田圭五

    依田委員 運輸省のほうでは、自重計はまだ精度が確実な信頼できるようなものではないから、これはだめだ。ですから、車両法の改正は考えていない。しかし、道交法のほうの警察庁のほうでは、これはやりましょう。少し私はタイミングが合わないと思うのですね。警察官のほうが車をつかまえて、そうしてその車がなるほど五トン以上積んでおるということを確認するときには、これは起訴するのですから、はっきりしたはかりを持っていって調べる。しかし肝心の運転者が東京から北海道なり、あるいは向こうからこちらに出かけるときには、途中で荷物をおろしたり積んだり、これはわからないですよ。どこからどこまでが五トンなのかわからないですよ。この一梱枹を積めば五トンをオーバーするのか、あるいはこれを減らせば制限内でこれはいいのか、はかりがないですからわからない。これを雇用主には義務化しておらない。わずか二万円か三万円だそうですね。運転者だけ処罰対象にしておる。運転者はどうかというと、軽いほどいいのです。楽なんですね。五トンの車に六トンも十トンも積んだらたいへんなんです、スタートすれば自分の責任なんですから。一方運輸省のほうでは、その機械が十分正確な機械ではないからまだ法改正——車のほうの制限は車両法でやっておりますから、これはそっちのほうの法改正は今度しない、こっちのほうだけは直す、運転手の取り締まりだけはやりましょう。ちょっとおかしいと思いますけれども、あなたどう思いますか。
  36. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 確かに御指摘のように、自重計をつけることにつきましては、私ども先ほど申し上げましたように賛成しておるわけでございますが、これは今度のタコメーターと同じように、車両法の保安基準に基づきまして運輸省のほうで設置義務を課す。設置義務を課しましたら、あるいは私のほうで措置するという観点から規制するようになろうかと思いますけれども、それがついた上でやればベターだと思いますけれども、現在のダンプカー等の一人一車といったようなことで、必ずしも雇用運転者に限らない積載制限違反の事案もございますし、それこれいろいろ考えまして、二の機会にやはり一般予防的な観点から罰則を引き上げるということについて踏み切った次第でございます。
  37. 依田圭五

    依田委員 踏み切るのはけっこうですがね、一人一車といって、その統計ありますか。あれば答弁の中で示してもらいたい。確かに一人一車の統計が圧倒的に具体的な数字として多いならばですね。私はいろいろあると思うのですよ。それから雇用運転手の場合は一体どうなるか。全部これは事業のほうの要請なんです。使用主側の要請なんです。これはノルマなんです。一定の量を運んで初めて生活が立つように仕組まれておるわけです。それを重量計を与えずに、運転免許証を交付するときに持ってこいというならば、これは運転者が何も負担すべき性質のものではないが、一つのやり方でしょうが、決して私はそんなことを言っておるのじゃない。雇用主に、二万か三万ですから、車につけなさいといえば、それで事は済むのです。機械がまだできておらぬといったって、目ではかって積み上げたりおろしたりするよりは、もっと正確じゃないかと思うのですがね。そんなに一グラムも違わないような機械なんかは、理屈をいえば、警察のほうで使っている重量計だって間違いがありますよ。誤差がありますよ。ただ踏み切ったというようなお話じゃ納得がつかないのです。これは全運転手に対して、たいへんな過酷な条件を課することになるのです。しかも、先ほど言ったように、いままでは罰金だった、今度は体刑になるのです。
  38. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 先ほど私から例にあげましたダンプカーの一人一車の問題でございますが、これはまだ正確な数字ではございませんけれども、ダンプカーが全国で約十三万台ございます。そのうち運送事業として運輸省の許可を受けておるものは一割足らず、八%ぐらいだったと思います。そのほかはいわゆる自家用自動車ということになっております。その自家用自動車の約八〇%ぐらいは、いわゆる代車業と称しているダンプカーでございます。その代車業にはいろいろな形がございますけれども、二台、三台持ってやっておるのもございますし、また御承知のように農村から出た青年が月賦でダンプカーを買って、その一台をもって砂の輸送をしているというような事例が非常に多いのであります。一人一車という形が非常に多いのでございます。もちろんダンプカーの積載の問題については、いろいろな社会的な背景があろうかと思いますけれども、しかし、たとえばダンプカーの問題にいたしますれば、法定の積載重量というものはきまっておって、経験的に、どの程度積めば積載をオーバーするというのは、もうわかっておるわけです。土砂などは目きり一ぱい積めば、たとえば砂がしめっておれば重量オーバーというのは、経験的にわかっておるわけであります。そういう意味で、私どものほうも、重量制限につきましては、かた苦しい取り締まりはやってないわけですが、明らかに十割も超過したような形で積んでいるというものにつきましては、やはり罰則を強化して適用していくという形にいたしませんと、最近の交通事故の実態を見ると、やはり積載オーバーのためのブレーキの操作、ハンドルの操作といったようなことに基因する事故が非常に多いのでございまして、そういう観点から、先ほど申したように、罰則の強化とあわせて、運転者だけを罰するのは酷な場合も多いということで、従来酒飲みあるいは過労、無免許というような雇用者等の下命、容認行為がありましたけれども、積載についてもこれを置かなければならぬというので、雇用者等の責任もあわせて追及するという形で、今回の提案になった次第でございます。
  39. 依田圭五

    依田委員 大臣にお聞きしたいのですが、運転手が積載重量をオーバーした場合、従来は罰金だった。今回は体刑になりました。そのことについて、雇用主のほうはまだ相変わらず罰金なんです。これは七十五条ですか……。それは下命、容認の関係がある。しかしそのときには刑法の発動でもって、教唆、幇助が出てくれば本犯と同じだ。しかし刑法を発動するにはまだ構成要件が不十分である、それに至らざる、教唆、幇助に至らざる下命、容認、この該当事項ですね、道交法だけを発動する事項について、どうしても荷物を積んでいけ、それによって賃金を払い、それにノルマを課しておる使用者側に対して、なぜ罰金だけでこれを処理したか、その一点をお聞きをしたいと思います。
  40. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 依田さんのおっしゃることは私もわかるのです。特に、いわば弱い立場にある運転者が、雇用者の強制等によりまして積載制限違反をやった、にもかかわらずその強制したほうが、少なくともこの法律の形においては軽くて、運転者事故行為をやった者が重いということは、現在の経済状態、特に自動車関係の経済状態からいって酷ではないかという御議論、私わからないことはないのです。まさにそういうことだと思うのでございますが、しかし、やはり道交法における罰則というものは、行為者がまず第一の責任を負うべきものだというふうに考えるわけでございまして、積載制限違反というものが最近の交通事故においていろいろと重大な事故を起こしているという観点からいたしまして、これを、従来罰金刑だけであったものを体刑まで含めるというようにいたしたわけでございます。  そこで、それじゃ下命、容認をした雇用者のほうが不均衡ではないかという御議論になろうと思います。ただ、現在におきまして、たとえば酔っぱらい運転、無免許運転等については、行為者は重く処罰され、法律の形の上では、それを下命、容認した者についてはそれよりは軽いという従来の道交法の形の上からいけば、やはりこのような形になるのじゃないか。しかし、先ほど交通局長も申し上げましたように、現実の問題として、ほんとうに雇用者の強制の問題があるというようなこと、あるいは現実に起こった事件についての裁判の科刑の問題等については、おのずからまたそこに雇用者と、弱い、雇われておる運転手との関係等も十分考慮されるものだと私は考えております。
  41. 依田圭五

    依田委員 重ねて大臣にお聞きしたいのですが、まあ依田君の意見はよくわかる、そういうように使われている運転手の弱い立場はわかる、しかし運転をする、それがあれだからこの際罰則の規定を強化したのだ、体刑を新設したのだ、こういうお話なんですね。それならば、一体、二万円ぐらいで間に合う重量計をなぜ法定化しないのですか。いま局長お話だと、大体目分量で、砂だったらこのぐらいであったら大体五トン以下だ、また少しぐらい多くてもかんべんしてやるのだ、しかし積載重量制限をこえて倍も積んだ場合には処罰するのだ、一体どこに基準があるのですか。その前に、前提になる一人一企業のもの、自分一人でもってやっているのは、統計上はっきりしておりません。私の調べたのではいろいろあるのですよ。この規定に該当する運転手というものはたくさんあるんです。これははっきり警察庁に調べてもらいたいと思います。  そこで、なぜ車両法か何かを改定して、雇用主なり何なりに、あるいは地方公共団体でも何でもいい、あるいは公安委員会の予算でもいい、重量計を、これから先は五トンをこえるんだ、こういう体刑をつけるんですから、懲役にするんですから、これだけ重大な規定を、たくさんの運転手に対して、ノルマを与える者に対して、二万か三万で事が済み、たいした改定でもない、これをどうして自治省がイニシアチブをとって、運輸省に働きかけてやっていただかなかったかということをお聞きしたいと思います。
  42. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私も自重計につきましてはいろいろ聞いてもおりますし、見てもおります。少なくとも特定の車については自重計をつけることが望ましいと私も考えます。そういう意味では、運輸大臣とも常に連絡をいたしております。ただ運輸省の考え方として、はたして現在の自重計で機構的に十分なのかどうか。あるいは、ここまで申し上げてはどうかと思いますが、その製造業者が単に一つであるというような場合に、いろいろの問題もあるというようなことも考慮されて、いろいろ研究されておるようでございますが、しかし私の聞き及んだところでは、製造業者もふえてまいります。価格もだんだん安くなってくるようでございます。そういう意味からいたしまして、おそらく運輸省におきましても、相当積極的にこの点は検討していただくものと思いますし、今後私も運輸大臣にその点は十分お願いをするつもりでございます。
  43. 依田圭五

    依田委員 それでしたらこの体刑、これは若干修正したらどうですか。機械がまだ十分開発されていない、精度が低いからといって重量計を与えずに——精度が低いといっても、一割や二割の誤差はあっても、まるっきり警察官の目分量でもってはかるよりは正確ですよ。そういうことの開発を待ってからこの改正をなさったって十分じゃありませんか。まして通告制度もあるんだから、この通告制度が出れば、先ほどしばしば申し上げましたように、たくさんの人件費もまた人間も、指導面においても取り締まり面におきましても回すことができる。もっと親切に指導し、教育し、また設備にも金を投じて、こういう体刑なんという規定を軽々しく出さなくて——目分量ではかるというんですから、それはどうしてもおかしいと思うのですよ。これでもって規制される運転手というのはたいへんな数になるのです。私がここで簡単に質問しているような案件ではないんです。これは私は重大な疑問を持っておりますが、大臣、まだ同じようなお答えであるか。それとももう少し前進をしたお答えを……。運輸省の方がおいでになっているが、どういうわけで車両法の改正提案しないのですか。それは連絡をしたのですか。
  44. 堀山健

    ○堀山説明員 自重計の問題でございますが、ただいまの段階では技術的に相当研究する問題が残っておりますので、慎重に検討しておるところでございます。
  45. 依田圭五

    依田委員 運輸省が慎重にやっておるのに、何で自治省が独走するんですか。はかりも与えずに罰則だけは懲役にするという規定は、これは全交運労働者、トラックの運転手に対する重大な侮辱だと私は思うのですが、大臣の所見を聞きたいと思います。
  46. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 元来雇用者あるいは運転者は、自分の車に積載したものが積載制限以内であることを保つ義務は私はあると思うのです。そうしてそのための、自動車ごとはかる重量計とか、自重計でなく、そういうものもあるので、そういうものを備えて、会社なりあるいは運転者なりが常に制限をこさないような注意をしていく義務があると思うのでございます。制限を超過した場合、それではどうかというと、現在の道路交通の現状からいたしまして、積載制限オーバーの事故が非常に重大な事故をしばしば起こしておるというような点を考えますと、そうした運転者として当然なさなければならない注意の義務というものについて、こういう刑罰をあげることは、これは全体の予防措置としてやむを得ないのではないかという考え方を持ったわけでございます。
  47. 依田圭五

    依田委員 時間がありませんが、その問題は重大な問題で、いま大臣お答えでは納得が全然できません。運転手がみんな自重計を買って携帯しろということをあなたのほうはおっしゃるのですか。そういう意味だと思うのですが、当然運転する場合には、積載した重量に対して運転者は責任を持つんだという御答弁ですから……。違えばひとつ御答弁願いたい。
  48. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 運転者が一々自重計を買ってつけろとか、そういうことでなくて、道交法のたてまえといたしまして、積載制限をオーバーしないように注意する義務がある。それはあるいは雇用者が自重計をつけさせるとか、あるいは例の道における重量計のようなもの利用するとか、少なくともできる手段を尽くして、制限違反にならないようにする注意義務はあるのではないかということだけ申し上げたわけです。
  49. 依田圭五

    依田委員 免許証をもらうときに、二万円の重量計を買ってこいというならまだ話もわかる。生活一ぱいの人にそんなことさせる根拠はどこにあるか。それはまた別の問題ですが、ただ大臣の言ように、道路ぎわのどこかにあるであろう重量計でちょっとはかってみたり、そういうことをする注意義務がある、これは当然あると思います。何も規定になくたって、運転する者は運転する人の立場のプライドからいって。運転手をだれも助けてくれる者はない。自分の責任において、自分の危険負担において、東京から青森までも運転するわけですから、山の中で夜おそく、だれも助ける者はいない。運転手が一番気をつけております。しかしいまの企業経済の実情からいって、そういうことが許されておらない。どんどん荷主のほうは荷を積んで行け、一梱包でももうかるから荷を積め、もうこれでいいだろう。極端にいえば、五トンを一グラムオーバーしても、警察はこの法律に従って発動することができるのです。この一梱包積んだら五トンオーバーするんだ。弱い運転手、生活をあずけておる運転手が、資本の側の要求に従って働かなければならぬノルマを持っている運転手が、どうしてそれをチェックしたり、抵抗することができますか。ともかく東京を出かけて、熊谷かどこかの、あの辺の道路ぎわの重量計か何かさがしてはかってみろというのですが、そんなばかな話はありませんよ。大体そういう考え方から道交法の面が理解され、改正されておるから、先ほど申し上げたように、刑法二百十一条との関連において重大な問題である。運輸省ははっきり言っておるのです。自重計はまだ開発されておらない、まだわからない。ですからこれはだめなんだと言っておる。警察庁のほうは、いやいやそんなことを言っては間に合わないから懲役にするといって規定を変えておる。その説明は、注意義務があるとしております。注意は運転手が一番します。警察官よりもっとします。それでもなお事故発生するのです。体刑にしたって事故は減りませんよ。その辺をひとつ重ねて答弁願います。
  50. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん、先ほどお答えしましたように、雇用主と申しますか、企業のほうが運転者にいろいろ無理を言って、そしてそれに従わざるを得ないような立場に置かれておるという現状は、私もちろん認識をいたすものでございます。したがって私は先ほども、ただ単に運転者ばかりでなく、雇用者と申しますか、企業の面においても積載オーバーをしないような注意を払う義務があり、またそれに違反すれば、今回の改正によって容認、下命の犯罪になるわけでございます。そういう点をあわせて今回の改正をいたしたのでございます。もちろん特定の、特にトラック、ダンプカー等については自重計がつけられることが私は望ましいと思いますけれども、それがないから罰則を強化してはならぬのだという形、道路交通の事情は現在ではそうではないのじゃないかというふうに考えるわけです。
  51. 依田圭五

    依田委員 その御答弁では決して納得できないのですが、次に、死亡事故のときには今度は運転手の仮停止を署長ができますね。この規定に関連して百三条の二の第一項、交通事故を起こして人を死傷させる、引き逃げの場合あるいは酔っぱらい、これはやむを得ないと私も考えるのですが、三号の——たくさんあります。百十九条一項から始まってその一号、二号、三号、ずいぶんありますが、そのうち相当判定にむずかしいケースが多いわけですね。これは非常に重大な規定なんです。これに対して、やみくもに、ともかく署長の権限で、従来は公安委員会が三人ないし四人ぐらい、非常に形骸化しておるという意見はありますけれども、それはともかくとして、公安委員会が委任をいたしまして警察署長に二十日間——二十日間というのはまあ一カ月ということですね。これは一カ月間生活をするな、めしを食うなということに匹敵するわけです。こういう重大な制裁を、証拠を十分にあげることができないようなケースにおいてこれを第三号において取り上げました点について、われわれは非常な反対があるのですが、御説明を願いたいと思います。
  52. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 この仮停止処分の規定をつくるにあたりまして、ずいぶん御指摘の点につきましては検討したわけでございますけれども、ここにあげております違反類型につきましては、悪質、重大な違反類型ということで、しかもそれは警察官警察署長段階において明白にとらえ得るという観点から規定したわけでございまして、その際に、そういう違反をして死亡事故を起こしたという明白な事態がある、その死亡事故を起こした原因の違反類型というものは、この程度のものは悪質な違反であるという観点からとらえたわけでございます。
  53. 依田圭五

    依田委員 たとえば百十八条の一項二号、過労運転ですが、これはどうなんですか。過労というようなことが客観的にわかりますか。どういうふうにこれは判定するのですか。
  54. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 過労の立証につきましては、なかなかむずかしい面がございます。居眠り運転という形が過労運転の形でとられることが多かろうと思います。運転者を調べて居眠りをしておったという場合に、その原因が何であったかということでいろいろ調べるわけでございますけれども、そういう形で出てくるのが多かろうと思います。
  55. 依田圭五

    依田委員 除行、一時停止あるいは踏切の前後の違反ですね、こういうものは実際に理屈をいえば、現場の警察官を信頼してくれといえば事は済むのですが、これについて歩行者側に過失があって運転手を全く責めることができないようなケースにおいても、とにかくいまの改正された規定でいくと、とりあえず二十日間とめるのです。一カ月間生活をするなということですね。生活の資を絶つわけです。少しオーバーな規定じゃないか。私は、前二号ぐらいで十分にこの道交法趣旨は充足されるんじゃないか。三号をこういう広範に、百十九条からのべつまくなしに、ほとんど全部ですね、追い越し、横断、通行区分、徐行、踏切あるいは駐車、積載オーバーまで入っていますね。積載オーバーはさっきも問題に取り上げました。たった一グラムでも問題になります、理屈からいえば。こういう問題を総花式に全部、一カ月間干上がっても、運転手の一家族は生活するな、めしを食うなというように、経済的な制裁を内容とするこのことを署長限りに与えるというのは、相当思い切った改正だと思うのですが、どうも納得できないと思います。
  56. 新井裕

    新井政府委員 これはお読みいただくとわかりますように、一号、二号は死亡事故のみならず、傷害事故が入っておりますが、三号はいまお尋ねのような趣旨がありますので、死亡事故を起こしたときだけに限定をいたしております。  それから、一カ月というお話でありますが、二十日をこえない、絶対に二十日をこえさせないということでございます。これはいろいろと実例がございまして、そのときの一般の声としては、もっと広範にすべきであるというような声も上がっておったようでありますけれども、お尋ねのように、やはり結果が非常に重大であるというところに、限定をしないと問題であるということで、私どもとしては、むしろ限定したということでございます。
  57. 依田圭五

    依田委員 だんだん時間が迫ってきましたから、これもまた同僚議員にお願いいたすことにして、最後に——公安委員会の事務の委任があまりにも大き過ぎるということについて重大な反対があるのですが、これは他の議員にお譲りいたします。  きょうは時間の制限がありますから、反則金の問題についてごく短時間、一部だけをお聞きします。  この反則金に対しては、たくさんの学者から問題が投げかけられております。従来、非常に形骸化しておるとはいうものの、三権分立、司法審査の形をとってまいりました交通違反事件について、今回は警察官に一切あげてまかせてやっていこうというこれは制度なんです。これに対して、罪刑法定主義の憲法の三十一条あるいは裁判を受ける権利の三十二条、あるいは七十六条、こういう問題について、司法審査を省略したところでは重大な疑義がある。また、それを裏づけるような論説もあるわけです。特に重大なことは、最高裁の神垣判事補あたりから、これはむしろ政府の部内のほうから、総理が任命をいたす最高裁の機関の中からこれに対して、取り締まりのまた最高機関の中から、この問題に対して問題提起をされておる。これについて、これは大臣お答えを願いたいと思います。
  58. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この反則金制度を設けるにあたりましては、関係の各方面と十分長い間論議をいたし、検討をいたしまして、結局こういう点についてこの反則金制度を設けることが、あるいは憲法の問題あるいは三権分立の問題等について十分説明ができるということで提案申し上げたような次第でございまして、もちろんただいまおあげになりましたようないろいろのこの制度自体についての憲法論あるいはその他の問題からいたしまして、御批判のあることは私も承知をいたしておりますが、しかしこの制度はそうした憲法三十一条の問題やあるいは三権分立の問題等について、十分私は説明のできるものという確信のもとに提案をいたした次第でございます。
  59. 依田圭五

    依田委員 ちょっと資料をお聞きしますが、ごく最近の、現行制度の中で正式裁判を要求したパーセンテージ並びにその実数についてお答えを願います。
  60. 綾田文義

    綾田説明員 正式裁判は、御承知のように刑訴の略式命令の決定に対して十四日以内に不服ある場合に正式裁判を要求するということになっております。件数といたしましては、昭和三十九年では二千二百四十四件でございます。全体の約〇・〇六%でございます。四十年以降は、まだ最高裁の統計課のほうでその内訳はわかっておりませんが、大体推測できますことは、先ほど申し上げた二千二百四十四件というのは、特別法犯全部で六千七百七十八件のうち二千件ばかりでございます。四十年は、この六千七百に対して、四千七百六十件が特別法犯全部の正式裁判の要求の件数でございます。三十九年から比較いたしますと、大体この三分の一が道交法に当たるのではないかと思っております。四十一年は三千三百四十三件が特別法犯の全部でございまして、各年正式裁判の要求は減少しておるというふうな状況でございます。
  61. 依田圭五

    依田委員 三十九年の二千二百四十四ですか、その中で事故あるいは事故に至らざるもの、その類別の統計、あったら示してください。
  62. 綾田文義

    綾田説明員 この統計は実は最高裁でも調べたのでございますけれども、いま、はっきりした統計はございません。ただ二千二百四十四件というのは道交法の全部でございまして、私が推測するところでは、むしろただいまお話しの反則行為以外の悪質な事犯あるいは反則行為でも事故を起こした場合、すなわち今度の制度に乗らない場合のほうが多いのではないかというふうに一応推測はいたしております。
  63. 依田圭五

    依田委員 課長さんはそういう推測をなさっておるわけですね。私もその推則を、心配ですからタクシーに乗るたびに運転手に聞いておるわけです。これはだいぶ話が違うのですね。もう、いろいろな人が提訴しております。仲間がしたとか、よく聞くのですが、ともかくいまの道交法なんてものはとんでもない法律だ、こういう意見を持つのですね。隠れておってスピードは調べるし、何でもかんでも取っつかまえるし、非常に何といいますか、憂慮すべき感情というのですか、警察とドライバーとの間における意思の疎通、愛情の疎通なんということは、これは右折禁止、左折禁止、また簡単な駐車違反、これでさえ提訴しているですね。正式裁判を要求しているのです。課長のおっしゃるように、これは事故だけじゃないのです。私が心配するのは、年間三百数十万件のうちで、二千二百ですから二千件ちょっとですね。これはもう、たいへんな費用を予想してこれに対して正式裁判を要求しておるのです。なぜかというと、いまの現場の警察官の認定に対して不服があるからやっておるわけです。今度通告制度になりますと、これは全部、オール現場警察官おまかせをするわけです。従来であれば、たとえわずかでも、検察官の場合で二十五分、裁判官の前では三十分、ともかく一日時間をつぶして、そして東京の場合は墨田まで呼ばれて、おこられて、罰金を何千円かかけられて帰ってくるわけです。それでも、何だかんだ言いましても、いまの制度の中で司法権の独立、司法審査の形をとって、そしてみんな自分の立場に立つ相手じゃないのだ。今回は、この制度というのは、判決権、公訴権、捜査権、全部現場の警察が行使して、それで仮納付させて本部長がやらせるという制度ですから、全部警察おまかせするという制度なんですね。私は、二千件もあるこの数に至らざる相当な不満が、おそらく十倍か百倍、十倍なら二万人、百倍なら二十万人、こういう膨大な数が不満を持っておる。警察官の指導、決定に対して不満を持っておる。これは御承知のように紙に駐車禁止違反と書いてあるだけなんですから。あるいは一時停止違反とかなんとか書いてあるだけなんですから、何もないのです。こういう形だうっせきしていくわけですね。こういうことは、教育について、警察官の資質の向上についても衆議院附帯決議がはっきり要求いたしておりますが、ともかくドライバーに対しましても、これをオーナードライバーその他分けまして、十分に教育してやってもらいたい、歩行者も保護するし、ドライバーも保護してもらいたい、こういうときに、今回——いまの裁判ならばまあこれは納得するのです。一日つぶした、しかし、検察官の前にも行った、裁判官の前にも行った、まあこの方法しかなかろう、いかにその制度が形骸化しておりましても、まだ納得して夕方には帰ってくるのです。大体半日で済むそうです。しょうがなければ一日ぐらいはつぶすそうですが、帰ってくる。今度はそうじゃない、全部警察官がやっちゃうのですから。これに対して、いまの制度でも二千二百件ぐらいの反対、本裁判を要求します。これは五年かかるか十年かかるか、五十万、百万、弁護士の着手料だけでも五万や三万で済みません。それだけの抵抗を排して三千円か五千円程度のものをやる。事故があった場合には損害賠償の問題もありますから、それが全部じゃない。私もこれを調べたのですが、いろんな人が入っている。左折禁止なんという人もたくさん入っている。これは警察に対する不信、いまの制度に対する不信です。これを助長する方向へ通告制度というものが作用するのではないかという点を、一人の国民といいますか市民として非常に心配するのですが、その点どうですか。大臣答弁でけっこうです。
  64. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 従来も交通取り締まりについていろいろ御批判をいただいておることは承知をいたしております。そうして、そういうことにつきましては常に指導が先立つべきものであるということについて、警察官の教養その他に意を用いておりますが、なおまだ不十分な点がありますことは私も率直に認めます。今後さらに努力をしていかなければならないと思います。  今回の反則金制度になりますと、この制度が目的どおりうまくいくかどうかということは、まさに現場の取り締まり警察官の態度いかんにかかわることだと思います。したがいまして、従来にも増してそういう警察官の取り締まりの態度と申しますか、ドライバーに対する考え方、そういうものについて十分な教養を積まして、そしてこの反則金制度が正しい意味において成功するように今後も最善の努力をしてまいりたいと思います。
  65. 依田圭五

    依田委員 交通警察官というものが別にいまないわけでして、これもまた衆議院附帯決議あるいは参議院においても同じような決議をしておりますが、これも要求しております。私は大臣の御答弁に重ねて、三百数十万件の中でわずか二千二百足らずでありますが、これは全部事故ではない。たくさんの簡単な違反について意地づくでもってやっているものがたくさんあるわけです。それが何日もの日にちと膨大な費用を予測しましてあえてやっておるわけですね。こういう状態がいまの制度でもあるのです。これがさらに通告制度になれば司法審査の救済は全然ないわけです。これに対して、長官があえてこれを提案し、これを執行するについての御意見を聞たきいと思います。
  66. 新井裕

    新井政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、一部の状態におきましては、先ほどお話がありましたように、隠れておってわざわざ違反を助長してつかまえるというような印象を与えておる部面がありますので、これを提案すると同時に、全国で、私のほうから監察官を派遣してやるほか、管区警察局あるいは府県自体で監察をいたさせております。それで私どもといたしましては今後、こういうような重大な責任を負う問題でありますから、先ほどからお話がありましたように、私のほうの手が省けるというお話がありましたけれども、実際は私のほうに全部荷物がくる、いままでよりも仕事が多くなるということであります。われわれとしても、これをそんな安易な気持ではとても出せるものではありませんので、われわれ部内でも十分に慎重に検討をいたしまして、いまの状態ではこれしかないということでやりましたけれども、御指摘のありましたように、これで間違いを起こすということは、いまの制度で間違いを起こすよりも反発が非常に強いと思いますので、今後取り締まりのしかたにつきましても、これを機に、少し大げさなことばで言えば、いままでにないやり方をしたいというふうに思っております。いま、御承知のように大体警察で取り締まっております違反は年間一千万件ございます。そのうち五百万件は現場の説諭で済ましておりまして、五百万件を立件をしておる状況でありますけれども、この数字一つの目安にいたしまして、こういうことでなく、もう少し取り締まりの件数が少なくとも皆さんに納得されるような、先ほどのおことばにありましたように、警察官運転者というものが敵対関係にあるようないまのような一部の状況は、私どもはたいへん遺憾でありますので、そうでなく、運転者警察官は協力をして事故をなくしていくという観点からやりたいと思っております。私は、反則金というものの性質はいろいろありますけれども、たいへん素朴に考えますと、運転免許をとった者の一つの共同体というものを想定いたしまして、お互いにつまらない違反はしないということを誓って、それに違反した場合には違約金を出すというようなことのほうがむしろ今度の反則金のほんとうの真真髄に近いんじゃないかという感じを素朴に持っておるわけです。これは理論でも何でもございませんけれども、そういうつもりで、今後、いまいろいろ御指摘のありましたことは十分に胆に銘じて、これは通りますと来年執行することになりますけれども、それまでの一年間をフルに動かして御期待に、あるいは御注文にそむかないようにいたすつもりでございます。
  67. 依田圭五

    依田委員 まだ本論の入り口だけでありますが、大臣の御都合もあるようですから、これをもって私のきょうの質問を、あとに保留させていただきまして、一応終わりたいと思います。      ————◇—————
  68. 亀山孝一

    ○亀山委員長 次に、内閣提出にかかる都道府県合併特例法案議題とし、政府から提案理由の説明を聴取いたします。藤枝国務大臣。     —————————————  都道府県合併特例法案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  69. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいま議題となりました都道府県合併特例法案について、その提案理由と要旨を御説明申し上げます。  最近における社会、経済の発展に伴って、都道府県の区域を越える広域にわたる行政の合理的かつ効果的な処理と広域の地方公共団体としての都道府県の能力の充実強化の必要性は、ますます増大しつつあります。政府は、このような情勢に対処するため、さきに地方制度調査会に対し府県の合併に関し諮問し、その答申を得たのであります。この法案は、この答申の趣旨に従い、都道府県の自主的な合併が容易に行なわれ得るようにするため、所要の特例措置を定めようとするものであります。  次に、この法律案の要旨について御説明申し上げます。  第一に、この法律は、都道府県の自主的な対等合併を期待することを基本立場とし、都道府県の合併は、自然的、社会的及び経済的に一体性のある区域または将来一体性のある区域として発展する可能性の強い区域であって、広域にわたる行政を合理的かつ効果的に処理することのできる区域について行なわれ、かつ、合併関係都道府県間の格差の是正に寄与することができるように配慮されなければならないものとしております。  第二に、都道府県の合併の手続について、地方自治法第六条第一項による現行方式のほかに、関係都道府県の発意に基づく方式として、関係都道府県議会の議決による申請に基づき、内閣総理大臣国会の議決を経て処分する方法を規定しております。  なお、この場合、関係都道府県の議会の議決が、半数をこえ、三分の二に満たないときは、当該都道府県の住民の投票に付さなければならないことといたしております。  第三に、都道府県の合併の実施を円滑ならしめるため、国会議員の選挙区、合併都道府県の議会の議員の任期及び定数、職員の身分取り扱い、地方交付税及び地方道路譲与税の額の算定、義務教育費国庫負担法、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法等に基づく国の財政措置について、特例を設けることといたしております。  第四に、合併都道府県の建設を促進するため、補助金の交付及び地方債についての配慮、公共企業体等の協力について所要の規定を設けるとともに、合併に伴う関連措置として、国の地方行政機関所管区域、公共的団体の統合整備等についても所要の規定を設けることといたしております。  なお、この法律は、特例法たる性格にかんがみ、十年間の限時法とすることといたしております。  以上が都道府県合併特例法案提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  70. 亀山孝一

    ○亀山委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次会は明三十日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会し、道路交通法の一部を改正する法律案について、参考人として東京大学名誉教授今野源八郎君、学習院大学教授山内一夫君、全国市長会理事川口市長大野元美君、日本自動車連盟副会長中村俊夫君、全日本交通運輸労働組合協議会事務局次長甲斐国三郎君及び全国交通運輸労働組合総連合副中央執行委員長大井秀雄君の出席を求め、意見を聴取することといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時二十七分散会      ————◇—————