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1967-06-20 第55回国会 衆議院 地方行政委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 亀山 孝一君    理事 大石 八治君 理事 岡崎 英城君    理事 奥野 誠亮君 理事 久保田円次君    理事 細谷 治嘉君 理事 門司  亮君       木野 晴夫君    久保田藤麿君       塩川正十郎君    辻  寛一君       登坂重次郎君    永山 忠則君       古屋  亨君    山田 久就君       井上  泉君    太田 一夫君       河上 民雄君    島上善五郎君       依田 圭五君    大野  潔君       小濱 新次君    林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁長官   新井  裕君         警察庁刑事局長 内海  倫君         警察庁保安局長 今竹 義一君         警察庁警備局長 川島 広守君         法務省訟務局長 青木 義人君  委員外出席者         法務省刑事局参         事官      村上 尚文君         通商産業省化学         工業局保安課長 矢野俊比古君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 六月十六日  住民基本台帳法案内閣提出第一〇九号)(参  議院送付) 同月十五日  戦傷病者に対する地方税減税に関する請願(伊  能繁次郎紹介)(第一四一六号)  同(砂田重民紹介)(第一四二九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  警察に関する件(公安条例に関する問題及び山  陽電鉄爆破事件に関する問題)      ————◇—————
  2. 亀山孝一

    亀山委員長 これより会議を開きます。  警察に関する件について調査を進めます。  公安条例に関する問題について質疑の申し出がありますので、これを許します。細谷君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 まだ国家公安委員長、見えておらないようでありますが、前回、私、質問におきまして、杉本判決についての問題点は、規定運用を誤っておるから違法だということと、国会の公正な審議権を阻害するものとは断ずることができない、こういうことについてどう思うか、こういう質問をいたしたのでありますけれども、これについて警察庁長官はどう当時判断されたのか、お尋ねします。
  4. 新井裕

    新井政府委員 この決定が出ましたときにどう判断したかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、いままでのいきさつ、経験からかんがみまして、国会開会中に国会周辺において集団示威運動を許すことは国会の公正な審議を阻害する、そういう解釈をもちましてこの決定に対して異議申し立てた次第でございます。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 いままでの経験にかんがみて国会審議を阻害するというけれども、その日は土曜日でありまして、審議が阻害されるものが存在していなかった、国会審議は行なわれていなかったわけです。そういたしますと、国会審議が阻害される心配が十分あったというが、相手が存在しないのでありますから、ほかの根拠から判断した以外にないでしょう。いまの御答弁では答弁にならないですよ。
  6. 新井裕

    新井政府委員 お尋ねのように、結果といたしましては、当日は公式の本会議等はなかったわけでありますけれども国会開会中はいつでもそういうものが開き得る状態でありますし、また正式にそういう委員会なりその他が開かれておりませんでも、国会の場所において下準備のお打ち合わせもございましょうし、国会運営に必要ないろいろの会議その他がございますので、それらを含めまして国会開会中は支障があるというふうに判断をいたしたわけでございます。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 国会が翌日どういうあれがあるかということは、前日出る公報で大体はっきりしているわけです。しかも国会開会中でも、土曜日の状態というのはもう十分御承知のことだと思うのですよ。ですから阻害されるような国会動きというのは存在しなかったわけですから、どうもやはり警察庁長官なり国家公安委員長判断のポイントがほかにあったんじゃないか、こう考える以外にないわけですが、いまの答弁ではとても納得できないです。もう一度お答えを願いたい。
  8. 新井裕

    新井政府委員 別にただいま申し上げました以外につけ加えることはございません。いまお尋ねのありましたように、国会には国会としてのいろいろ日程がございますけれども、これを知り得る時間的な限度ももちろんございます。そういうことを抜きにいたしましても、国会開会中ということで、ある程度線を引くべきであるというふうに私ども考えております。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、長官は、そういうことでお答えしておるようでありますが、せんだっての依田委員質問を通じて、あるいは法務委員会における法務大臣答弁国原公安委員長答弁、あるいは報道されております十三日の閣議決定とかあるいは申し合わせ、こういうものをにらみ合わせてきますと、長官のいまの御答弁というのは、単に表面を飾ったにすぎない、ほかにもっと根本的な問題があると、こういうふうに考えざるを得ないのでありますが、ないですか。
  10. 新井裕

    新井政府委員 別にいままで申し上げましたものにつけ加えるものはございません。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員 法務大臣は、十六日の衆議院法務委員会において、国会周辺のいわゆるデモというものについては、何度でも行政事件訴訟法二十七条を発動する、こう言っておるのですよ。閣議決定も、昨日のある新聞には政府動き等が出ておりますが、そういうことになりますと、国会周辺については、もう集団示威行進というものはやらせない、こういう考え方がはっきりと確認されておるのじゃないですか。裁判判決あるいは決定というものは貴重なものですよ。こういうものを理屈なしに否定しておるわけですから、言ってみますと、三権分立の精神というものは吹っ飛んでおる。そういう形で行なわれておるわけでありますから、私は、いま申し上げたように、国会周辺デモ開会中といわず休会中といわず、阻害されるような対象が存在しようとしないにかかわらず、もう一切やらせないのだ、こういう態度だと申し上げる以外にないのでありますけれども、そうじゃないですか。
  12. 新井裕

    新井政府委員 この間、依田委員お尋ねに対しましてお答え申しましたとおり、国会開会中は、原則としては、集団示威運動国会周辺では遠慮をしていただくという方針でお願いを申し上げておるということを申し上げました。
  13. 細谷治嘉

    細谷委員 原則としてはでありますが、依田委員質問に対して、数人の婦人団体等のことについては、ケース・バイ・ケース許可すると、こう言っておる。ところが法務委員会においては、婦人、少人数であっても遠慮してもらう方針だ、許可しない方針だということであります。ですから、あなたのおことば内容は違うのじゃないですか。どうしても私はわからない。警察庁長官なり国家公安委員長がどういうふうに考えておるのかわからない。憲法に違反する心配があるからということではおっしゃらないかもしれないのですけれども、どうしてもわからないですよ。法務委員会においては、ここで答弁をした内容と違うことが法務大臣によって答えられておるでしょう。そうじゃないですか。私は法務委員会に出席しておりませんから——長官、出席しましたか。
  14. 新井裕

    新井政府委員 法務委員会には私は出席いたしておりませんけれどもあとから出席した者から話は伺いました。この間依田委員お尋ねに対しましてもお答え申し上げましたように、いろいろ留保条件つきでなければお答えできない、ほかの条件が全部危険的な要素がないんだ、四、五人で、構成要員もわかっておるというようなことであれば、おそらくそれを許可することになるでありましょうということを申し上げましたけれども、女だから許可するというふうには私は申し上げませんでしたし、私がそういうお答えをしたあとで、依田委員から、さっきおまえは三十人の女のデモは許すと言ったではないかというふうなお尋ねもございましたけれども、私はそういう意味では申し上げなかったつもりでございまして、もし私のことばが足りませんでそういう誤解を与えたといたしますと申しわけないわけでありますけれども……。したがいまして、一般的にいって小人数だからあるいは女だけだからということでいい悪いということを私は申し上げたわけではございません。おそらく法務大臣お答えになりましたのは、そういう構成員の性別によっては区別できないのだというお答えではなかったかと理解いたしております。
  15. 細谷治嘉

    細谷委員 少し私はどうも混乱しておるのじゃないかと思う。ちょうど国家公安委員長が来たのでありますが、国家公安委員長は話がずいぶんわかる人だと私は思っておったのですが、この件に関する限りは異常なかたくなな態度に終始しておるようであります。国家公安委員長、十三日の閣議でこの問題についての方針を確認したそうでありますが、どういうことを話し合ったのか、どういうことが確認されたのか、この席でお答えできますか。
  16. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 閣議内容を一々申し上げるわけにもまいりませんが、要するに、一方において国会というものは常に平穏に保たれるべきだという高い公共の要求がある。そうして集団示威運動というものはいろいろ前々から申し上げたような性格を持っておる。したがって、これに対して東京公安委員会が従来とっておる方針については、これを支持するという意味のものでございます。
  17. 細谷治嘉

    細谷委員 閣議内容については大臣おっしゃらないのでありますけれども、ある新聞の記事を拝見いたしますと、大体六月十三日の閣議内容というのは、国会周辺における集団示威運動は認めないという基本方針を確認している、内閣法制局中心対策を検討することを申し合わせた、そういうことでありますけれども、こういう事実はないですか。
  18. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 認めるとか認めないというのではなくて、従来東京公安委員会がとってきた方針というものを支持すると申しますか認めると申しますか、そういう意味でございます。
  19. 細谷治嘉

    細谷委員 これはいまのお答えですと、新聞に書かれたこととずいぶん違うわけです。大臣はおっしゃっておらないのでありますが、新聞等を見ますと、内閣法制局中心にして対策を検討するということは、デモ規制法を大体つくる、こういう方針を含んでおるやに思うのでありますけれども、これはいかがですか。
  20. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そういうことも検討の余地のある問題であるということは話題にのぼっております。ただ、だれがどう言ったということは申し上げられませんけれども新聞に出ているのとはややニュアンスが違って、むしろ消極的な形、消極的な意見というものがあったことは申し上げられます。
  21. 細谷治嘉

    細谷委員 これは本会議質問で、大体デモ規制法をつくる意思があるのかということについては、いまのところないというのが総理答弁であったと私は思うのです。ところが十三日に行なわれた閣議では、そういうものも含めた——消極的であるか積極的であるかは別ですよ、そういうものも含めた対策を検討したということは、これは本会議あるいは委員会におけるこの問題に対する政府態度が分裂しているのじゃないか。あるいは食言かもしれませんよ。問題があることですよ。たいへん重要な憲法にも関連する問題について、適当にごまかしておけばいいのだ、そういう態度は許されないと思うのです。もう一度お答えを願いたい。
  22. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そういうものも検討すべきではないかという意見もありましたけれども、消極的な意見であった、こういうことでございます。
  23. 細谷治嘉

    細谷委員 国家公安委員長、せんだっての依田委員質問に対して、いまも警察庁長官にこの件をただしたのでありますけれども、大体国会には請願というのがあるじゃないか、だからもう集団示威行進、こういうものは一切許可しないのだ、法務大臣ことばをかりて言えば、そういうものについては何度でも二十七条を発動するのだ、こういう答弁をなさっておるのですよ。このことは、もう国会周辺は一切のデモというのはやらせないのだ、こういうことになるわけでありますから、もう裁判官がどういう理由をあげようと、そんなものは一切無視だ、こういう態度に尽きると思うのであります。警察庁長官答弁もあいまいです。大臣、この点ひとつ明確な態度お答え願いたいと思う。
  24. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 たびたびお答え申し上げますように、一方において国会周辺というものは常に平穏に保たるべきだ、それから集団示威運動というものの性格は、たびたび申し上げたような性格を内在しておる。したがって国会周辺にそうした集団示威運動が行なわれるということは避けらるべき問題であるという見解を私は持っております。しかして、東京都の公安委員会におきましても従来そういう方針で処理してまいられたと思うわけでございます。しかしそのことと、その異議申し立てるかどうかという問題は、そのときの御決定がどういう理由であられるかということを見なければわからないわけでございます。ただ私は、いま申しましたように、国会周辺に対しましては集団示威運動のようなものは行なわれないことが好ましいという考え方を持っております。
  25. 細谷治嘉

    細谷委員 好ましくないということと、何度でも二十七条を発動するのだ、一切やらせないのだという態度、これは違うのですよ。ニュアンスじゃなくて、厳然とこれは違うでしょう。好ましくないけれども、これはやはり憲法で保障された基本的な権利であるから、必要とあらばやらせよう、阻害するような問題あるいは重大な事態になるというようなそういうあれがなければ、これは好ましくないけれどもやらせるということです。しかし何度でも発動するのだという態度は、これは許可せぬ、やらせないのだ、こういうことに通ずるわけですよ。  そこで私は、法務省の方、三人見えておりますからお聞きしたいと存じますが、この行政事件訴訟法二十七条を発動したことは三権分立原則を犯す心配がある。この規定が必要だとしても、異議申し立てが乱用されないように発動条件なり基準を明確にすべきだという有力な意見法務省内にあると仄聞するのでありますが、そういう意見がございますか。
  26. 青木義人

    青木政府委員 この二十七条につきましては、三十七年の国会でこの現行法が制定される際、いろいろと御論議があったわけであります。いわば司法権行政権とのそれぞれ交錯する場面の問題でありますから、したがいまして、この二十七条につきましては十分慎重に検討されるべきことであろうと思います。ただ、私ども法務省といたしまして、別に具体的な基準というようなものは持ち合わせておりません。この問題につきましては、内閣総理大臣が広い立場で御判断なさることであります。われわれ事務当局のほうで基準というものを持っておるわけではありません。
  27. 細谷治嘉

    細谷委員 新聞に書いてありますが、総理異議申し立ては、「めったに使ってはいけないものだが、そのつど何度でも発動する。」めったに使っちゃいかぬのだけれども、何度でも発動するというのですから、これはずいぶんいいかげんな考え方ですよね。めったに使っちゃいかぬ、しかし何度でも国会周辺デモということについては発動するというのですから、これはやはり何らの基準もない。ですから、法務省の有力な意見と承っておるのでありますけれども、二十七条が存在する限りは、やはり今後こういう問題を起こさないように、法務省の公式なものじゃありませんけれども、有力な意見が存在するということはやはりあり得ることでありますから、私は妥当な意見だと思うのです。こういうことについて法務省としては、法務大臣自体が矛盾のあることばを言っているのですから、しょうがないということでありますけれども、どうなんでしょうか。これについて、やはり必要な基準なりあるいは発動条件というものを明確にする考えをお持ちでないですか。
  28. 青木義人

    青木政府委員 この二十七条の内閣総理大臣権限につきましては、同条の六項にも規定されておりますように、「やむをえない場合」にのみ発動すべき権限であろうと思っているわけです。ただこれは、公共福祉に重大な影響を及ぼすという場合には発動されてしかるべきことであります。ただ事柄が、いろいろな行政事件について、いろいろなケースで、いろいろな問題が出てくるわけでありますから、こういう場合には内閣総理大臣異議は出してしかるべきだ、こういう場合には出してはいかぬのだ、こういうようなことはあらかじめ基準というものを持つということはほとんど不可能じゃないかと思うわけです。ただ事柄は、公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるかどうかということの判断の問題であろうかと思うわけです。
  29. 細谷治嘉

    細谷委員 はっきりしない答弁でありますが、国家公安委員長なり警察庁長官お尋ねしたいのでありますが、この杉本裁判長決定というのは、四十二年の五月十日に出されました寺尾裁判長の四十年十一月の日韓デモについての判決と、大体その内容は一致したものであると私は思うのであります。これについて、国家公安委員長なり警察庁長官あるいは法務省は一体どう考えているのか。控訴しておるのでありますから、法務省はこれには服することはできないという考えを持っているかもしれませんが、ひとつ三者にこれについての決定なり判決についての考えをちょっと承っておきたいと思います。
  30. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 寺尾判決につきましては検察当局が上訴をされたわけでございまして、それはそれなりに、私どもも上訴されたということについてはそれを支持しておるわけでございます。
  31. 村上尚文

    村上説明員 寺尾判決につきましては、六月の十九日控訴しておりまして、現在東京高等裁判所に係属しておりますので、私のほうで裁判内容につきましてこまかい点を申し上げることは差し控えたいと存じます。検察当局におきましては、少なくとも寺尾判決に対しては承服しがたいと考えておると思います。
  32. 細谷治嘉

    細谷委員 承服しがたい。だから控訴を支持しておる。国家公安委員長法務省意見は一致しているのです。  お尋ねしますが、今日まで、この公安条例ができてからずいぶん古いのでありますけれども地方裁判所段階における判決というのは、ずいぶん違憲だという判決が多いですね。公安条例そのものについては違憲じゃないけれども、その許可条件等についてはこれは違憲だ、こういうものも含めまして、違憲だという判決はずいぶん多いですよ。今日まで幾つありますか。
  33. 川島広守

    川島(広)政府委員 お答えいたします。  現在まで違憲であるという判決が出ましたのは、第一審におきまして九つでございます。第二審におきまして一つ、計十でございます。
  34. 細谷治嘉

    細谷委員 今日まで大体第一審というか地方裁判所段階において九つ違憲だという判決があるわけですね。もっと多いのじゃないですか。高裁で一つでしょう。私が調べたのではもっと多いようですがね。三十七年くらいまでですでに九つあったのじゃないですか。それに先ほど申し上げました寺尾判決を加えますともっと多いのじゃないですか。それは何日までのやつですか。
  35. 川島広守

    川島(広)政府委員 ただいま申しました数字は六日一日現在でございます。  ちなみに、合憲判決を申し上げますと、第一審におきまして、五十、第二審におきまして三十四、上告審におきまして十一、計九十五の合憲判決が出ております。
  36. 細谷治嘉

    細谷委員 六月一日現在の違憲の数は九つと、第二審で一つだ、これは間違いないですね。  そこで警察庁長官お尋ねしたいのでありますが、条件については、これは裁判でもずいぶん判決の中でも取り入れられておるのでありますが、条件がだんだん変わってきておるようでありますね。これはどういうことですか。ものすごいたくさんの条件をつけて許可したり何かしているのですが、これは情勢次第で条件は変えるのですか。
  37. 新井裕

    新井政府委員 私も、条件がどういうふうに変わっておるか、つまびらかにいたしませんので、こまかいことはまたお尋ねがあれば、政府委員からお答えすべきかと思いますけれども、そのときそのときによって、定型的なものと、その場に応じて変わったものとあるように見受けております。
  38. 細谷治嘉

    細谷委員 時間がありませんから、ひとつお尋ねしたいのでありますが、控訴したのだから、そっちを支持するというのですから、そうしますと、寺尾裁判とか杉本決定というのは無視しているということですか。それはそれなりに尊重しているという態度ですか、どちらですか。
  39. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 その判断について、それを全然無視しているというわけではございませんけれども、今度の東京地裁執行停止決定については、その判断についてわれわれは意見を異にいたしまして、ああいう執行停止をされたのでは公共福祉影響があるということで、異議申し立てをしたわけでございます。
  40. 細谷治嘉

    細谷委員 私が質問した範囲においては、異議申し立てしたというのは、とにかく杉本決定内容よりも、もっとやはりそこに伏在するものがあるということが大体明確になったのです。たいへん残念なことでありますけれども、これは三権分立立場からいけば、判決の結果はどうあろうと、判決内容そのものについては尊重しなければいかぬのでありますが、私がお尋ねしたいのは、東京都の公安条例というのは、寺尾裁判長判決文を読めばはっきり書いてあるのです。末尾のほうに書いてあるのです。やはり許可条件については、違憲になるのだから、やはり運用についてはむろんでありますけれども公安条例そのものを改むべきだ。そうして例といたしまして三十七年にできておる静岡県の条例、これはやはり大法廷の三十五年の判決に基づいて過去にあったものを廃止して新しい公安条例をつくったという例があるのでありますが、そういうのを一つの模範として、東京都の公安条例は改むべきだということを寺尾裁判長は明言しているのであります。これはどうお考えですか。やはりそういうことで警察庁長官として、あるいは国家公安委員長として、東京都に対してこういうことについて指導をするとかなんとかいうことをやったのか、やらなかったのか、これをお尋ねします。
  41. 新井裕

    新井政府委員 ただいお尋ねのありました寺尾判決の中の引用でございますが、もともと公安条例は各地方ごとにつくられましたので、少しずつ違っておることは御承知のとおりでございまして、それぞれに特色があり、静岡だけがよくて東京は悪いというふうにも一がいにきめがたいというふうに考えております。したがいまして、このことについて東京都に対して格別の指示はいたしておりません。
  42. 細谷治嘉

    細谷委員 寺尾判決では、結論としてかなり明確にこのことが示されておるわけです。ですから、これはずいぶん問題になっている公安条例であります。そしてその公安条例運用の問題、これもやはりたいへん問題になって、違憲だという裁判もすでにあるわけでありますから、やはりあなた方はもう一つ国会周辺についてはもう一切がっさいデモをやらせないんだという、そういう考え方態度ではなくて、やはりこういう判決も十分尊重していくことが必要であろうと私は思うのであります。こういう点について、大臣としてのひとつ今後の方針なり態度を明確に示していただきたいと思います。
  43. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん、第一審判決といえども、われわれ耳を傾けるものは傾けなければならないと思います。ただ、今回の裁判所執行停止決定につきましては、われわれが所見を異にして異議申し立てをいたしたわけでございますが、今後といえども、あらゆる方面からの御意見につきましては、裁判所に限らず、国会の御論議その他、あらゆる問題に耳を傾けつつ、改善すべきものは改善するという態度をとってまいりたいと思いますが、ただ先ほど申し上げましたように、今回の事件については、従来お答えしたような理由によりまして異議申し立てをいたしたわけでございます。
  44. 細谷治嘉

    細谷委員 時間がないので、やめます。
  45. 亀山孝一

    亀山委員長 それでは門司君。
  46. 門司亮

    門司委員 私、きわめて簡単に、すでにこの問題については法務委員会、それから当委員会においてかなり論議がされたことでありますので、この機会に率直に聞いておきます。  最初は資料について聞いておきますが、この種の条例があります都道府県や市町村は、全国で大体どのくらいありますか。もしおわかりだったら、この際はっきりしておいてもらいたいと思います。
  47. 川島広守

    川島(広)政府委員 お答え申し上げます。  いま全国にございます条例数は、総数で六十条例でございます。内訳を申し上げますと、都道府県条例でございますのがそのうち二十五でございます。市条例として成立いたしておりますものが三十五条例でございます。
  48. 門司亮

    門司委員 いま都道府県で二十五、市で三十五でありますか、これはいずれも内容を異にしておることはわれわれもある程度承知をしておるわけです。しかし、その内容を異にしておることはありますが、ただ問題になりますのは、この種の条例内容について、いままでの御答弁その他を聞いておりますと、公安委員会として検討されたことがございますか。これは一部においては、条例でありますから自治省限りである程度見られておると私は思うが、その場合、公安委員長として大臣は全部ごらんになったことがございますか。これは許可しないわけにはまいりません。憲法、法律に違反しない限りは地方の自治体の固有の権利であるということが憲法に書いてありますので、これはチェックするわけにはいかない。しかし内容については、いま申し上げましたような違憲論争の起こりやすい内容を持ったものが私はあろうかと思うのです。その場合について、自治省は、事前にこういうものについて検討されたことがございますか。自治省としてあるのか、あるいは警察関係としてあるのか、どちらにしても大臣は一人でありますから、検討されたことがあるかどうか。これをお伺いしておきたいと思います。
  49. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 少なくとも私が自治大臣あるいは国家公安委員長になりましてからは、検討したことはございません。従来それが検討されたかどうかということについては、私、ちょっと記憶がないわけでございます。
  50. 門司亮

    門司委員 地方の公共団体のもとより自主的の権利ではありますが、しかしやはり条件がついておるのであって、憲法、法律に違反しない範囲だということであって、もしこれに違反の疑いがあれば、自治省としてはある程度の内容その他についての意見を地方公共団体に通達しても差しつかえないものじゃないかと私は考える。この点についての取り扱いはどうなっておりますか。いままで何もやらずにおいて、そうして地方の自治体ではそれをそのまま受けておって、そしてそれがいよいよ実施の段階になってこういう問題を引き起こしている。その間の取り扱いが不明確ということが、こういう問題を来たしておるような気が私はするのですが、この点についてどういうふうにお考えになっているか。
  51. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現在までの条例、六十条例につきまして、自治省として何らかの指示をいたさなかったということは、自治省としては憲法違反にあらずという観点に立って認めておったと思います。ただ警察としましては、その成立した条例運用にあたって、いやしくも国民の表現の自由を阻害するようなことのないように十分慎重に取り扱えということは、しばしば指示をいたしておるところでございます。
  52. 門司亮

    門司委員 条例自身が違憲でないということで、ただ取り扱いの面において違憲になる危険があるということが往々にして問題の焦点になっておるのでありますが、その場合に、警察がこれを地方の自治体に勧告することができるかどうかということであります。私は、この問題は非常にややこしい問題が内部的に伏在しておると思う。条例で定めることはできるが、しかしこれの実施にあたっての問題は、自治省の手を離れて、公安委員会という独立した一つの行政機構でこれの運営あるいは取り締まりが行なわれることになっておる。しかもその下にありますものは、御承知のように今日は都道府県警察というようなものがたてまえになっておる。したがって、今日の警察制度の中で公安委員会警察行政における一つの大きな責任を持っておりますが、しかし組織の内容としては、一応たてまえは都道府県警察であって、これは独立した一つの機関と見ることができる。警察法自身に、そういうところに非常に大きないろいろな問題が私はあろうかと思う。昔の、二十九年以後の自治警察と国家警察と画然と分けた中で、こういう問題については公安委員会の意思に従ってというような明確な線が、いま警察法改正以来あまりはっきりしておらない。そこで問題になってまいりますのは、地方の都道府県や市町村が条例をこしらえる、この条例には別に政府から何も異議はない、したがってこれはもちろん合憲であるということで取り扱いがされておる。しかし個々の内容にわたって、その時限においてあるいは今度のような処置をとらなければならないということは、具体的に起ころうとする問題に対する、ほんとうの意味における末梢的な一つの現象に対する取り扱いであって、この法律あるいはこの条例自身の問題と離れているような気が私はするのです。条例違憲でないというならば、条例のとおりにデモを許されてちっとも差しつかえない。ところがその中でデモは許されない。この問題は、ただ単に今度の問題だけでありませんで、デモ規制自身についてもう少し掘り下げて考える必要がありはしないかと私は思う。公共福祉だといわれておりますが、公共福祉のものさしは一体どこにあるかという問題。そうしていま聞いてみますると、二十五の府県と三十五の市といいますから、全体では四十六都道府県で、そうすると、まだ府県の中でも残りが二十一になりますか、二十一はこういう条例を必要としないという判断をしておる。それから市に至りましては五百六、七十ありましょうから、その中の三十幾つということになりますと、ごく低い率しかこれを必要としておらない。したがってこの問題は、社会の構成の中で全体の問題として論議する問題であるかどうかということにすら、私は疑いを持っておる、したがって、こういう条例が必要であるかないか、デモ規制というものが必要であるかどうかということである。その点について大臣はどうお考えになりますか。私はこの点は掘り下げて検討する必要があると実は考えているのでありますが、同じ自治体であって、必要としないという自治体がある。それが、何でもかでもやらなければならないという自治体がある。さらに進んで、政府行政権発動して、司法権との間に問題をかもすようなことまでして押えなければならないという、三つの段階に今日あるかということについては、私はいささか疑問を持つのです。一体どうだろうかということで、これについて大臣はどうお考えになりますか。単に公共福祉公共福祉というけれども公共福祉のあるところとないところとあるというのは、私は実際はおかしいと思うのですがね。  したがって、このデモ規制——私はきょう次の会議がありますので、長くおられませんから、はしょって一緒に申し上げておきますが、この種の問題のあります場所というのは、多く過去においていろいろな問題があった場所であるということが私は一つあろうかと思います。どうもデモをかってにやられちゃ困るから、違憲でないというのなら、この辺でひとつ規制をしておこうかという、きわめて身がってなものの考え方、国民の持っておる基本的な自由である、固有の権利である表現の自由というようなことが非常に大きく阻害されるというような形をとってきた。こういう問題が普遍的に行なわれないで、ばらばらに行なわれておるところに私は問題があるのじゃないかと思う。したがって、これについて自治大臣はどういうようにお考えになるか。私は大体このデモ規制なんという法律は要らないのじゃないか、この条例自身がおかしいのじゃないかと思う。お互いが信頼し合い、お互いが納得のいくような行動をお互いにしていくということが望ましい態度であって、最初から、お前たちはあばれる、だからだめだということになりますると、不穏なということばを使うほうがよろしいか、あばれるということばを使ったほうがよろしいかどうかと思いますが、あるいはそういう警察側の考えておるような行為をしようと考えていなくても、君たちはそういうことをやるのだと定義づけられるところに私は問題がありはしないかと考える。この辺はこの規制法の問題についての大きな一つ問題点になろうかと思います。  こういう議論をいたしておりますと非常に長くなりますので、もとに戻りますが、あるところとないところとあるということについて、自治省側あるいは警察側はどういうようにお考えになっておるか、必然的に生まれたものとお考えになっておるのか、あるいはなくてもよろしいものとお考えになっておるのか、その辺をひとつこの際明確にしておいていただきたいと思います。
  53. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 地方公共団体は、自治法に命ずるところで、地方公共福祉を保持しなければならない責任を持っておるわけでございます。その地方公共福祉を維持するというやり方につきましてはいろいろあろうと思います。そして全国の都道府県の中で、条例をつくっているところとつくってないところがある。これはやはりその地方地方のいろいろな過去の実情からいたしまして、条例がなくても地方公共福祉を維持できるという観点からつくらないところもありましょうし、あるいはどうしてもこの種の最小限度の条例をつくらないと地方公共福祉が維持できないという判断に立ってこの種の条例をつくったところがあるので、それはやはり地方の実情、それから過去のいろいろな実績、そういうものの上に立ってつくられたものと考えるわけでございます。もちろんこうした集団示威運動などというものが、外国の例にもありまするように、非常に平穏にと申しますか、行なわれるような習慣がつき、お互いに納得づくでやれるという事態がまいりますことが好ましい事態だとは思いますけれども、しかし現状のわが国の状態におきましてはそこまでいってないところもありますので、地方の実情によってこの種の条例がつくられることはやむを得ないところではないか、しかしその運用にあたっては、どこまでも、十分に国民の自由が守られるように最小限度の規制にとどむべきものであると考えます。
  54. 門司亮

    門司委員 これは条例でありますから、大臣のお話のように、地方の自治体が自由な判断に基づいてこしらえてよろしいことは間違いございません。そのための条例権限を与えている。しかし、問題になりますのは、さっき私が申し上げましたように、こうした行動は全国的にどこでも行なわれている。府県では半数以上になりまするが、市の場合においては半数にもなりません。二十分の一くらいになるのじゃないですか、約六百近いものがあろうかと思いますが、そうすると、問題はそれらの大多数の公共団体では、これを必要としておらない。ところが政府のほうでは、これがある程度必要だというお考えである。しかし、こしらえるのは地方の自治体の自由な権限であって、条例をこしらえろということを中央から指示するわけにはまいりますまい。同時に、違憲でない限りは、これを阻止するわけにはまいらないと私は思う。そういうことで、地方の自治体の考え方でできたものについて、画一的なものの考え方に立たれる危険性があるということであります。これはどういうことかといいますと、安易なものの考え方をし、それから安易なものの取り扱いをするということになりますと、警察当局としては、こういう条例があったほうがよろしい、そうすれば、自分たちが取り締まりいい。私は、このことは警察行政に関して一つの大きな問題だと実は思っているのです。自由にやれる基本的な権限であるこの種の行事に対して、取り締まりをしようとすれば、その根拠になるものがどこかになければ、やはり仕事がしにくい。単に刑法上の犯罪を構成するまでというか、それまでの間じっと見ているというわけにもなかなかいかない。同時に、条例があれば、取り締まることのためには、それが一つの根拠になって、そして事前にある程度の取り締まりもできるし、またごくささいなことからもやれるという、あるいは警察当局とすれば、そうしたことのほうが、われわれとしては治安を確保するためにやりいいんだ、公共福祉を守ることのために、それのほうがやりいいんだということを警察行政としては容易に考えられることだと私は思います。だからといって、これが行き過ぎてごらんなさい。やはり不必要に取り締まるということにならざるを得ない。そこの問題を警察当局は一体どういうふうにお考えになっているのか。この種の条例があったほうが、公共福祉を守ることのために必要だと警察当局はお考えになっているのか、あるいは言い過ぎかもしれませんが、警察は機械的に、あるからやるんだ、なければやらないんだとお考えになっているのか。その辺のところを警察当局からひとつお聞きしておきたいと思います。
  55. 新井裕

    新井政府委員 お尋ねのうちの一つでありますこういうものは、私どもは最小限度必要だというふうに考えております。
  56. 門司亮

    門司委員 そうすると、その最小限度という問題の中に、ことばだけでは最小限度ということばを使われますけれども、問題は行為でありまするから、あなた方が御心配になっておるようなことがあるかないかということは、実際はそのときのほんとうの状況によってのみ、これが判断される。同時にまた、無秩序な、全く無計画な、無方針なものについては、そのつど何もこういう条例がなくたって、行き過ぎがあれば、刑法にかかるようなことがあれば、その法自体で十分に取り締まりができるだろうと思う。問題になりますのは、この種の条例がだんだん伸びてまいりますと、かつての日本の警察行政のようなことになりはしないかということである。国会で、たとえば政府与党に非常に都合のいい、というと語弊があるかもしれませんが、都合のいいような一つの法案が出てくる。野党はこれに積極的に反対をしてくる。その場合には、こういう条例があれば、これを幅広く警察行政をして使うということが与党にとっては最も必要である。しかし、それは公正が期せられるかというと、私は必ずしも期せられないと思う。だから、この種の条例の大きな弊害は、私はある政治力にこれが利用されるということが最も私どもの憂える一つの大きな危険性であります。この点について公安委員長として、そういう心配は絶対ない。これを党利党略に使うようなことはございませんという御証言ができるなら、この際はっきりしておいていただきたいと思います。
  57. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 集団の行動すなわち集会あるいは集団行進、集団示威運動は、元来自由にやるべきものだと思います。したがいまして、たとえば東京都の公安条例の取り扱いなども東京都の公安委員会決定いたしますについても、いろいろな場合を想定して、一定の方針を確立しております。その意味で、大体は、あの東京都の公安条例の第三条にもありますように、非常に危険な場合以外には許可しなければならないという規定になっておるわけでございます。そういうものでございますから、普通の集団示威運動は通常許可されるわけでございます。されない場合は、非常に危険度の高いときだけでございます。ただ、そういうものは、常に平穏に保たれなければならない国会周辺には望ましくないというだけのことでございます。  また、お尋ねの、公安条例運用などというものを、一定の政治勢力のために利用するというようなことは絶対にあり得ないことでございます。はっきり申し上げたいと思います。
  58. 門司亮

    門司委員 いま大臣は、政治目的のようなために利用することは絶対にあり得ないということと、もう一つ、いままで私のお聞きした中ではっきりわかったことは、あるところとないところがある、こういう点ですね。したがって、県庁によってはそういうことを必要としない、あるいは市役所によってはそれを必要とするということは、その自主判断であって、ここに地方の公共団体の自主性というものが保たれておるわけでありますから、何もこれをいけないということを言うわけにはまいりますまい。私はそれでよろしいと考えておる。だがしかし、問題になりますのは、これが違憲である、あるいは違憲でないというようなことをここでいろいろ議論をいたしましても、私どもは、政府のとっております処置は違憲にひとしい、本来許すべきもの、本来行動を許可すべきものというよりも、自由に行なわるべきものと思う。これを従来届け出制、許可制にしているところに実は問題があろう、こう思いますが、もし警察がほんとうに大衆のためにある種の集団行動その他の情勢を知りたい、それは何も弾圧するわけでも何でもない。しかし、警察行政の中の一つとしてそういうことを知っておかなければならぬ。そしてまた、もし間違いが起こったときに、あばれるとか何とかということではございませんで、大きな事故でもあったようなときに、警察が何も知らないというわけにはいかないというようなことで、これを届け出制にしておくというようなことについては、ある程度の理解が実はできないわけではない。しかし、問題になってまいりますのは、これを全面的に禁止するということは、どこまでも主観的にこれを想定した人の判断であります。この団体はこういうことをするであろうということは、その判断をする人の主観にまかせてある。決してこれが客観情勢で行なわれておるわけではないと私は考える。いわゆる許可するとかしないとかということが出てくるということになりますと、そういう示威運動をやってはいけないとか、やってよろしいということになってくるということであります。そういうことになってまいりますと、さっき申し上げましたように、これを利用するということが私は容易に考えられるような気がしてならないのであります。それでなければ、全国的におそらく、公安を維持するために、あるいは社会公共福祉のためにということになりますならば、全国の都道府県や市町村がこういう条例を必要とすると考えなければならぬ。それは考えないところに、私は何か割り切れないものがどうしても出てくる。そうしてそれに対して警察態度というものがどういう指示をされているかといえば、さっきちょっとお話を聞きましたような指示がされておる。私は今日の日本の警察制度の中で、いまお聞きをいたしましたことについて、実は非常に考えさせられることがあるのであります。国家警察でない、都道府県自治警察といいながら、これのすべての指揮命令は警察庁から出てくるということ、ことに組織の中では、御承知のように、警視正までは国家公務員であって、そうして任免権は政府が持っておる。名ばかりの今日の警察制度の中で、地方自治警察の中で、こういう問題が起こるということは、少し言い過ぎかもしれませんが、かつての刑事警察あるいは特高警察といいまするか、そういう警察の型がまたぼつぼつ芽を出してきやしないかというような感じが私はするわけであります。この点について、警察行政の中で、集団行動をする者についての内偵あるいは集団行動についてのいろいろな捜査というようなことは絶対にされませんか。私がこのことを聞くのは、この団体は許してはならないということは一つの主観的の想定でありますから、したがって、これを知り得るにはある程度のそこにそうした秘密的捜査というようなものが、行なってはならないことが行なわれなければ、私はその団体の性格あるいはその団体がどういうことをするかということを——いままで始終あばれております全学連のようなものはわかるが、しかし、今回のこの問題は、従来そうしたことのあった団体でもございませんし、憲法を守っていこうとする一つの集団行為であったことに間違いはない。しかし、その中にどうしてもこれをやめさせなければならないような分子がおったとするならば、そういう問題について警察がどういう角度からそれを知り得たかということもまず考えなければならぬ。私はこの問題は単に行政権司法権との争いだけでなくて、実はその点を非常に心配するわけであります。だから、そういう心配は絶対にないという公安委員長のお考えができるかどうか。同時に今回の問題について、想定された理由をもう少しはっきりさしてもらいたい。この団体にはこういう理由でぐあいが悪かったという……。
  59. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 その団体の性格を内偵したり、かつての戦前の特高警察のようなことは、これはもうあってはならないことで、絶対にそのようなことはいたしません。要するに、門司さんも御指摘になりましたように、そういう集団の行動がどこかで行なわれるのでありますから、これをあらかじめ警察が知ることが必要だという観点からでございます。東京都の公安条例の第三条にも、すでに御承知のように、「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外は、」と書いてあります。このようなものはまずおそらく出てくることはないと思いますので、その許可をしなかったということはおそらくないのではないか。ただ、許可するについて、許可はしたが、条件をつけるということが従来行なわれたわけでございます。いま例にお引きになりました三派系の全学連のこの間の集団示威行進につきましても、これは許可をいたして路線の変更の条件をつけたというようなことでございますので、御心配のようなことは絶対に、いままでもございませんし、今後もやらせるつもりはございません。
  60. 門司亮

    門司委員 私の聞いておりますのは、そのことと違って、先ほどから幾度か申し上げておりますように、今回のこの事件について政府のとられた態度というものについてもう少し根拠をはっきりしていただきたいということであります。ただ単に公安、公共福祉が云々ということでなくて、それにはそれ相当の理由があったと思います。その内容も少しこの機会に明らかにしてもらいたい、こういうことであります。
  61. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 たびたび申し上げるようでありますが、国会というものは常に平穏に保たれて、そして外部からの威力あるいは圧迫などを受けられないように保つということが要求されておる、そして一方において、たびたび御説明申し上げたような、集団示威運動というのはそういう性格を持っておる、したがって、これは他の場所——もちろん非常に雑踏する場所などはいけませんけれども、他の場所で集団示威運動をやられることは自由であるが、国会周辺には近寄らないようにという意味におきまして、東京都の公安委員会が路線変更の条件をつけた、それを支持するという態度でございます。
  62. 門司亮

    門司委員 ここまでの議論は少し行き過ぎになろうかと思いますが、だから、いま現実に行なわれているものについて、請願行進は別に差しつかえございませんね、国会に対する請願でございますから。そうすると、デモはいけないが、請願はよろしい、こういうことになるのでありますが、これは取り扱いだけですよ。これはほんとうの形だけですよ。請願ということを書かないで、いわないで、ただ集団の行動をやることはいけない。しかし、国会に対する請願が、かりにその行為あるいはその形態が集団のような行為になってもこれはやむを得ないのだ、こういうことの解釈ですか、政府のほんとうの解釈は。
  63. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 東京都の公安条例の中にも分けて書いてありますように、集団行進と集団示威運動と分けております。集団行進というのは、集団が地域を移動することによって、ただそれによって自分たちの意思を国民に訴える、あるいは請願につきましては、国会請願に来られ、それが集団で来られる、それも常に請願という目的で集団が地域の移動をするというだけであります。集団示威運動になりますと、示威という多数のエネルギーにささえられたと申しますか、気勢を張る行為を加えて、そして国民に自分らの意思を訴えるというところに、私は、集団行進と集団示威運動との違いがあるのである、そういう気勢を上げ、威力を示す行為が国会に行なわれるのは避けるべきではないか、こういう考え方でございます。
  64. 門司亮

    門司委員 これはいつまで議論してもわからぬのですが、結局問題は、しかし、それは示威をするとかしないとかいうことは字句の解釈だけでしょう。ただ当面の問題は、やるかやらないかということは、そのときの時限でなければわからないので、実際は請願運動であっても、これがどんなことになるかもしれない。あるいは示威運動と書いてあっても、これが平穏に行なわれるかもわからぬ。その辺の政府の解釈というものがきわめてあいまいであるところに、ある団体に対しては規制し、ある団体に対しはこれを規制しないというようなことがあったり、あるいはそれをたてにして一切の問題——いまあなたは移動だということばを使われておりますけれども、みんな移動ですよ、人間が歩けば移動にきまっている。これを示威運動といわない、移動しておるといえば移動で済む。集会しようと思ってやろうとすれば別にむずかしい仕事ではない。人間が自然と集まってくるのですから、これまたどうにもならない。私どもは、そういうことを好むものではない。したがって、この問題がほんとうに明るい社会を建設していこうとするには、やはり明るい取り扱い、明るい気持ちでやらないと、いまのお話のように、移動してくるものはしかたがない、これは歩いてくるのだから、これを阻止するわけにはいかない、しかし、示威運動というのは示威をするのだからけしからぬという、字句だけにとらわれてものを判断するということは、およそ行政の取り扱いとしてはまずいのではないかと思う。そういうところにまだいまだに何か官僚臭が残っておって、そうして民衆自身は、全体といっていいかわかりませんが、かなり平穏に行なおうとするような行動に対しても、取り締まりのほうから主観的に見て、そうしてかってに理由をくっつけるというと悪いのでありますけれども、示威運動は他に威力を示す行為だから、国会のまわりに来て、国会に対して威力を示されたのでは審議の妨害になるとか、あるいはそのことのために議員の行為が萎縮してはならない、これは公共福祉に沿わないからいけないのだ。一方においては、請願、陳情については、何人集まってきても、これは移動だから差しつかえないんだ。私は、その解釈については実は非常に疑問を持っておるのでありまして、したがって、私の時間もございませんから、私はもう少し掘り下げて条例自身についての疑問も聞きたいと思うのでありますが、最後に聞いておきたいと思いますことは、地方の自治体が出しておりまする公安条例あるいはその他の条例について、政府がこれを監督し、これをチェックする権限が一体どこまであるかということであります。いま私は内容について——公安条例の問題については、議論になった公安条例自身については、これはやむを得ぬから認める。しかし、内容については、いろいろのものをやってこれを制限していく、行為については制限をしていくということになっておるようでありますが、地方の自治体の持っておりまするこの条例の制定権と、これについての政府の取り扱いについての見解を私はもう少し聞きたいと思いますけれども、きょうは時間がございませんので、これ以上は聞きませんが、これはこれだけではございませんで、地方の条例にはいろいろのものがたくさんできてきておる。そうしてその条例について、政府が今日までいろいろな形で臨んできたものの中に、私の知っておる範囲でも、条例自身について許可をしないというわけにはいかないものを——これは別にどうということはない、しかし、下から上がってきたものを自治省がいつまでも返事をしないで、これはしばらく預かっておくということが往々にないとは限らぬと私は思うのですが、自治大臣にこの際、はっきり聞いておきたいと思いますことは、憲法、法律に違反しない限りの条例については、自治省はそういうあっためるようなことはしないということにしておいていただきたいと思うのですが、これは一体どうなんですか。
  65. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 つとめてさようなことにいたしたいと思います。
  66. 門司亮

    門司委員 それはそれでよろしいと私は思います。しかし、公安条例のようにどう考えても憲法に違反しておるんじゃないかというようなものは、ないほうがいいんじゃないかというようなものについての考え方等については、今度のような処置が地方の自治体で起こり得ないとは限らない。その場合における政府態度というものはどういうことかということ。  それから今回の問題は非常に唐突に行なわれておるのでありますが、法務省と、自治省と、この公安委員会と一体どのくらいの話し合いをされて、そうしてこれがきめられたのか、参考だけにひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  67. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 第一の問題は、これはもう明らかに憲法、法律に違反をしておるものは別といたしまして、それ以外には認めざるを得ないと思います。  今回の問題につきましては、九時少し過ぎに執行停止決定のありましたことを知りまして、直ちに法務省と協議をいたしまして異議申し立てをいたしましたのは十一時四十五分でございます。その間約三時間近くを協議に費やしたわけでございます。
  68. 門司亮

    門司委員 これで終わります。
  69. 亀山孝一

    亀山委員長 林百郎君。
  70. 林百郎

    ○林委員 主として藤枝国家公安委員長にお聞きしますが、この問題についてのあなたの答弁をずっと聞いておるわけですが、そうすると、国会周辺の示威運動というのは、これは許されないのですか。それとも許されるとすれば、どういう場合が許されるのですか。これから国会周辺の示威運動というのは許さないという方針なんですか。それともそうではなくて、本件の場合は許さなかったが、今後は次のような条件が満たされるならば許すということなんですか、その辺をまずお聞きしたいと思います。
  71. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現在は、法律によって集団示威運動を規制している法律はございません。したがいまして、政府が許すとか許さないとかということを言うべき筋ではないのでありまして、今回の場合、と申しますか、今後も起こりましょうが、東京公安委員会が、国会周辺には集団示威運動が近づくことは好ましくないとして従来やっておりましたような路線の変更について、これを支持する、こういうことでございます。
  72. 林百郎

    ○林委員 何のことだかよくわからぬのですが、あなたは国家公安委員長として、国家の治安維持に関する最高の責任ある地位にあるわけですから、あなたの見解を聞いておるわけです。これからは国会周辺の示威行動というのは許すのですか、許さないのですか、あなたの考えを聞いているのです。かりに、あなたが当該の裁決権を持っているとすれば、許す場合はどういう場合なんですか。本件はケース・バイ・ケースの特殊なケースとして許さなかったんですか。
  73. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 集団示威運動について、政府は何らの権限を持っておりません、法律がないのですから。したがいまして、許すとか、許さないとか、こちらから積極的に言うことはできないわけで、ただ従来東京都の公安委員会がとってきたこの処置というものを支持いたしますということでございます。
  74. 林百郎

    ○林委員 そうしますと、かりに東京都の公安委員会が、こういう場合の示威運動は許されるというような事態があった場合に、その場合はもちろんあなたは許されるのですか。国家公安委員長として、国会周辺の示威運動についてはどういう見解を持っておられるのか。あるいは国家の治安維持の最高の責任に任ずる政府として、あるいは当該責任の国務大臣として、どう考えるのですか。
  75. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私の見解をお尋ねならば、私は国会というものは平穏に維持さるべきもので、その周辺には集団示威運動は好ましくないという考え方でございます。
  76. 林百郎

    ○林委員 そうすると、続いてあなたの見解を求めますが、あなたの見解としては、原則として国会周辺には示威運動というものは好ましくない、好ましくないということは、そういうことは許したくない、これはあなたの見解としてはっきりお聞きしますけれども、そう聞いていいのですか。好ましくないなんて、変な、妙なことばを使わなくて、許さないというのが私の見解だ、こう聞いていいんですか。
  77. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私に権限があるといたしますならば、許さないという見解でございます。
  78. 林百郎

    ○林委員 そうすると、あなたがそういう見解を持っていたとして、あなたはそれを単なるあなたの見解だけにとどめるのですか。少なくとも国務大臣がそういう見解を持っているなら、国務大臣としての責任上、それを立法化すとか何とかいうことが、当然考えられることでしょう。おれは見解ではそう思っているけれども、法律にはしない。——別に私は立法化すということをあなたに要望しているわけじゃないけれども、それでとどまってあなたの責任を果たすつもりなんですか。それとも将来は国会周辺の示威運動は禁止するということを、あなたが自分の見解として持っておられる以上、将来は立法化するということを考えておられるのですか。
  79. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現状におきましては、立法化する所存はございません。
  80. 林百郎

    ○林委員 現状においては立法化するつもりはないが、将来についてはどうなんですか、念のために聞いておきます。
  81. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現状に非常な変化があるというようなことを想定すれば、検討しなければならないときもこようかと思います。
  82. 林百郎

    ○林委員 そこでお尋ねしますが、どうして国会周辺には、特にそういう静ひつさが要るのですか、それをお聞きしたいのです。あなたは何か国会周辺は静かであることが当然であるようなことを言っていますけれども、静かであることが必要なのはどこだってあたりまえでしょう。特に国会が必要だという理由を聞かしてください。
  83. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国会審議というものは自由にさるべきもので、それが外部からの威力、圧力等を受けないような姿に保つということは必要だと思います。
  84. 林百郎

    ○林委員 そうすると、国会以外の各官庁の仕事は静かでなくてもいいのですか。特に国会がそういうことを必要とする理由がわからない。どこだってみんなそうでしょう。騒がしいよりは静かのほうがいいにきまっています。どうして国会だけは、いろいろの制限があるにもかかわらず、特別に国会周辺だけは、あなた個人の見解とすれば、示威運動は好ましくないという理由を聞きたいのですよ。
  85. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 各官庁、あるいは裁判所等も静ひつであるべきだと思います。しかし、特に国会は国権の最高機関として、あらゆる法律等を審議をいたし、国民の生活に非常に重大な影響を持つものでございますから、その審議というものは常に自由に行なわれ、他からの威圧、圧力等が行なわれないように保つということ、そういう姿にしておくことが必要だと考えておるわけでございます。
  86. 林百郎

    ○林委員 それではお聞きしますが、あなたが異議申し立てられた当該事案について——六月十日ですか、デモの行なわれた日、そのときは、この示威運動が行なわれれば国会審議が支障を来たすという事態は、どういう事態があったのですか。あなたの異議申し立てを見ますと「本会議委員会、その他の審議、折衝、連絡、打合せ」とありますね。このうちのどれに該当するとあなたはお考えになったのですか。
  87. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現実には、当日本会議委員会は行なわれておらないわけでございますが、その他の打ち合わせ、または、国会周辺には議員会館その他があって、いろいろと国会審議の準備が行なわれ得るわけでございます。そういうことを総称したわけであります。
  88. 林百郎

    ○林委員 そうすると、当日、本会議委員会もその他の審議もなかった。それでは「折衝、連絡、打合せ」は具体的にはどういうものがあったわけですか。あるいは、なかったけれども、あり得るということだったのですか。あり得るという可能性だけで、それでとめられたのですか。
  89. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 あり得るということでございます。現に、これは時間は別でございますが、社会党さんは国会対策委員会をお開きになっておるというようなこともあります。いずれにしても、そういう国会審議の準備をされるためのいろいろな打ち合わせその他があり得るということでございます。
  90. 林百郎

    ○林委員 あなたが法益を守ってやろうという社会党自体が、とんでもない話だ、示威運動をやらしてもらっていいと言っているじゃないですか。自分の法益をそんなことで守ってもらわなくてもいいという人に、無理に守ってやるために、どうして憲法に違反するような疑いのある示威運動差しとめをするのですか。その社会党の国対というもの、あとになって調べてわかったのでしょう。それとも、あなたが午後の十一時か何か、これを書かれたときにちゃんと知っていたのですか。法益というものは、国家の処置によって法益を守ってもらいたいという要望があるときに守ってやることはわかるけれども、むしろ社会党としては——私が社会党の皆さんの質問を聞いていれば、社会党の国対のことを考えてくださるよりは、憲法で保障されている示威運動の権限を保障してもらったほうがいいと言っているのに、何であなた、そんな親切の押し売りみたいなことをやるのですか。
  91. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 その集団示威運動によって影響を受けられるかどうか、そういうことを考えておるのじゃないのでございまして、そういう打ち合わせその他が行なわれておるという、その国会並びに周辺にある議員会館とか、そういうものをひっくるめて、それが静ひつに保たれるようにということをわれわれは念願したわけでございます。
  92. 林百郎

    ○林委員 そうしますと、あなたは、だんだんそういうように問い詰められていくと、そう言ってきますけれども、具体的に侵される事態がなくても、そういうことが予想されるならいつでも異議申し立てをするということになれば、具体的に侵害される被害がないのに、政府の一方的な、あるいは政治的な考えで、憲法で保障されておる示威運動を自由にとめることができることになるのじゃないですか。それじゃ、あなたの言う、議員会館に議員がいたのは、何人いたのですか。大体、あなたも国会議員だから知っておるでしょう、土曜、日曜、月曜というのは、各議員は選挙区へ帰ることになっておる。だからこそ何の国会としての機能も原則としてやらないということが、これはもう不文律になっておるでしょう。それじゃ、かりに日曜に国会周辺で示威運動をやるとすれば、あなたはそれをやはりとめるのですか。
  93. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国会開会中の国会周辺というものは、常に平穏に保たるべきという私ども考え方でございます。
  94. 林百郎

    ○林委員 行政事件訴訟法によりますと——まあ私が言うまでもなく、あなたはもう十分御検討のしだと思いますが、行政事件訴訟法の第二十七条によりますと、「処分の効力を存続し、処分を執行し、又は手続を続行しなければ、公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示す」でしょう。原則として土曜、日曜、月曜は国会議員は選挙区へ帰って、その間は基本的な国会機能はやらない。現にあなたは社会党の国対の例だけを言いましたけれどもあと何が行なわれたかも知らないわけです。ましてや本会議委員会国会審議はなかったわけです。そういうときに、わずか——しかもそれも夜でしょう、この行進の時間というものは。これはあとであなたに詳しく聞きますけれども、そのときどうしてもその示威運動をとめなければ公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情ということがはたして言えますか。藤枝さん、どうですか。しかも憲法の二十一条に規定されておる「集會、結社及び言論、出版その他一切の表限の自由は、これを保障する。」その保障は、「この憲法が國民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び將來の國民に與へられる。」こういう非常な尊厳のものとして宣言されておるときに、国会で何があったか知らぬけれども国会の静ひつを維持するために、私は憲法二十一条で保障されておる示威運動に異議申し立てることによって停止させましたということで、あなた、それで憲法を守っていると——少なくとも憲法の十一条にある侵すことのできない永久の権利ですよ。それを守ったとお考えになれますか。  それからもう一つの問題は、私たちは、公安条例には、もちろんこれは憲法違反として廃止すべきものだという主張をとっておりますけれども、しかしその公安条例の——これは各委員の質問にも出ておりますけれども、その公安条例の——これもあなたは方々で質問を受けて、もう十分お知りだと思いますが、なお私の質問を裏づける資料として出したいのですけれども、都の公安条例の第三条には、「公共の安寧を保持するため緊急の必要があると明らかに認められるに至ったときは、その許可を取り消し又は条件を変更することができる。」だから具体的緊急な事態がなければいかぬわけでしょう。一般的に国会の周囲は静かなことが必要だ、六月十日には何があったか知らぬけれども国会というときには国会議員さんがおいでになるから、だから私はとめましたということで、そんなことで許されるのですか。その辺をお聞きしたいのです。
  95. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今回の場合、東京都の公安委員会は、東京都のいわゆる公安条例の第三条によりまして許可をいたし、そして、しかし「公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合の進路、場所又は日時の変更」ということでこの進路の変更の条件をつけたわけであります。したがいまして、三条の本文にあるように「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外は、これを許可しなければならない。」要するに現在明白な危険がなければ許可しなければならない。現存明白な危険はないと認めて許可はいたした。しかし、公共の秩序のために進路の変更の条件をつけた、こういうのでございます。
  96. 林百郎

    ○林委員 条件の変更も、安寧を保持するため緊急の必要があると明らかに認める場合、これは条件の変更もそういう事態に該当する場合じゃないですか。それじゃ、条件の変更というのはどういう場合にできるのですか。かってにできるのですか。
  97. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 条件の変更をする場合は、この規定のとおりだと思います。今回は条件の変更をいたしておるわけではございません。
  98. 林百郎

    ○林委員 コースを変更しているじゃないですか。それはむしろ考えようによっては、条件よりももっと重要な内容の変更じゃないですか。それじゃ、かってにできるのですか。
  99. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 三条の六号にありますように、「公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合」こう認めて進路の変更を条件といたしたわけであります。条件の変更をいたしたわけじゃございません。
  100. 林百郎

    ○林委員 そうすると、コースの変更をしているわけですね。これは言うまでもないわけですね。コースの変更は、どういう条件でどういう事態があったから変更したのですか。結局、あなたの言うには、国会の静ひつさを損う、こういうことですね。
  101. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 東京公安委員会は、公共の秩序を維持するためやむを得ないものと認めて進路の変更を条件といたしたわけでございます。
  102. 林百郎

    ○林委員 ですから、それに対して裁判所決定があり、その決定に対して異議申し立てをした。それじゃ、公安条例から離れて、基本的な行政事件訴訟法でいきましょう。少なくとも当日の国会条件を見ますと、本会議委員会審議がない。それから打ち合わせ、連絡、そういうことも具体的にはあなたはつかんでおられなかった。そのような事態のもとでとの異議申し立て行政事件訴訟法の二十七条の「公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある」ということがどうして考えられるのですか。
  103. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 たびたびお答えいたしますように、国会開会中の国会は常に静穏な姿に置かなければならない。そうして集団示威運動というものは、しばしばお答えしたような性格を持っている。それは国会周辺に近づけるのは好ましくない。そのことが、国会が国権の最高機関として常に静ひつであるべしという高い公共の要求からいたしまして、公共のためにやむを得ない、そういう判断をいたしたわけでございます。
  104. 林百郎

    ○林委員 それじゃ、基本的な問題であなたと見解をかわしてみたいと思いますけれども、あなたは国会は国権の最高機関だということをにしきの御旗だとして言いますね。国会は国権の最高機関だということは、国会憲法の保障があってこそ初めて最高の機関なんです。国会は国権の最高機関だということが規定されている憲法自体を国会が軽んずるようなことがあれば、国権の最高機関としての国会なんというのはから念仏じゃないでしょうか。ところが、いまあなたが異議申し立てをされた、示威運動を国会周辺に禁止されたということ、これは憲法二十一条の表現の自由、この国民に与えられた表現の自由の憲法二十一条の規定をじゅうりんするということを疑うに足る十分の事由が私はあると思うのです。だから、憲法を守ってこそ、国会の最南機関としての権威が守れるのに、その国会の最高機関を理由にして憲法をじゅうりんするようなことを自由にするということは、これは本末転倒じゃないですか。国会周辺であるからこそ、憲法の守り手である最高の機関である国会であるからこそ、少なくとも国会に対しては最大限の憲法の保障されている国民の自由を認めてやるということが国権の最高機関としての国会を守る道じゃないでしょうか。ただあなたは、国会は国権の最高機関だ、最高機関だと言うけれども国会が国権の最高機関としての権威を認められるということは、そこで初めて人民の権利が最大限に保障されるからこそその権威が裏づけられるわけです。ところが、国会は国権の最高機関だという非常に抽象的なことばを持ってきて、そして憲法規定をじゅうりんすることを自由に許せば、あなたのそういうやり方こそが、国権の最高機関としての国会の権威を傷つけることになるのじゃないでしょうか。私はそのことを心配するからこそ、あなたに申し上げているわけです。なぜ国民は国会の周囲に示威運動をしてはいかぬのでしょうか。国会の周囲にこそ示威運動をして、そして国権の最高機関でそれぞれの責任を果たしておる国会議員の皆さんに人民の政治的な意欲を十分理解してもらいたいというのが国民の心からの願いじゃないですか。そのことを十分に許してやってこそ初めて国会議員としての権威が高まる、国会としての権威が高まるのじゃないですか。もし国会がわずかの示威運動におそれをなして、そんなことを一々警察が来て取り締まらなければ国会議員がびくしゃく、びくしゃくして、審議もできないということになれば、そのことのほうが国会の権威を傷つけることになるのじゃないでしょうか。(「いい迷惑だ」と呼ぶ者あり)自由民主党の諸君がいい迷惑だ。反人民的なことをやっているから、心にやましいことがあるから、こわくてしょうがない。われわれみたいに憲法立場に立って正しく政治活動をやっていれば、むしろ来てもらいたいです。それは別に自民党の諸君全部というわけじゃない。いまやじを飛ばしたような人はそうだというのです。それはどうですか。そこがかなめですよ。
  105. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 憲法二十一条で表現の自由が保障されておる。しかし、もちろん林さんは法律の専門家でいらっしゃるから先刻御承知なんで、憲法十三条によって、公共福祉のためには制限を受けることは、これはもうお認めいただけるだろうと思います。要するに、表現の自由というものの保障はされなければならないけれども、しかし集団示威運動というものの性格からして、これは三十五年の最高裁の判決にもありますように、ああいう性格があるから、地方公共福祉の保持のために最小限度の制限はされてもしかるべしというあの判決のような、そういう性格のものでございますので、したがって、そういうものは国会周辺には来ないほうがいい。要するに、その示威運動によって個々の国会議員の方々がびくしゃくするかどうかという問題ではなくて、国会というものはそういう威圧や威力を受けないように静ひつを保つことがほんとうの意味において国会審議権を尊重するゆえんではないか、そういうふうに私ども考えておるわけであります。
  106. 林百郎

    ○林委員 憲法二十一条で示威運動が認められているというときに、デモンストレーションをどうして威圧として、不当なものとして受けとめるのですか。政治的な影響力を相手方に与えるために示威運動というものは許されているわけですよ。それを、示威運動は威圧を与えるものだ、国会周辺にやらせるべきものではないということは、どういうことですか。ことに政治的な示威運動であればあるほど、それを政治的に敏感に受け取ってもらえる人たちのところへ行なうのがあたりまえでしょう。だから、どうして国会周辺に示威運動をしてはならないのか。どうして国会に政治的なデモンストレーションをしてはならないんですか。国会にこそそういう政治的なデモンストレーションをさせるべきじゃないんですか。そうして人民の憲法二十一条で保障されている政治的な意思表示を国会は謙虚に受けとめるべきじゃないんですか。
  107. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 示威運動というものが、多数の力によりまして、威力をあらわし、あるいは気勢を張る、それを何も私は悪と考えているわけじゃございません。そういう性格のものが国会周辺にあって、そして気勢を上げ、あるいはいろいろな行動に移るおそれがあるということは、国会の静ひつを害するものだというふうに考えているわけでございます。
  108. 林百郎

    ○林委員 示威運動というのは、本来そういうものなんですよ。それは憲法で保障されているんですよ。そういう政治的な非常に明確な意思表示をする、集会やあるいは集団行動と違ったもっと積極的な政治的な意思表示をするというのが示威運動でしょう。それは許されていることなんですから、憲法二十一条で。それをどうして国会周辺でやってはならないのか。結局国会周辺というのは憲法で保障されているそういう権利を制限し、じゅうりんしてもいいという、そういう特権が国会の周囲にあるはずはないじゃないですか。  そこで、あなたがそういう思想を持っているから、あなたの異議申し立てを検討してみると、何を言ってるのかわからないですよ。このあなたのやられた異議申し立てを見ますと、示威運動というのは、第一が「潜在する一種の物理的力によって支持されていることを特徴とする。」どういうことなんです、一体。「潜在する一種の物理的力」、こんな日本語はあまり従来使っておらないですよ。それから第二は、「しかもかかる潜在的な力はあるいは予定された計画に従い、」第三、「あるいは突発的に内外からの刺激、せん動等によって極めて容易に動員されうる性質のものである。」四、「この場合は平穏な集団であっても時には興奮激昂の渦中に巻きこまれ甚しい場合には一瞬にして暴徒と化」すと。この「潜在する一種の物理的力によって支持されている」ということは、これはどういうことなんですか。あまり聞きなれない日本語ですけれども、あなたからこれは説明してもらいたい。
  109. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 その前にあります「現在する多数人の集合体自体の力」、要するに多数の人が集まって、その多数のエネルギーというものの発散が表現をするわけです。そういう性格のものだ、こういうことでございます。
  110. 林百郎

    ○林委員 だから、そういう多数の者が集まって、そして政治的な意思表示をする、それが示威運動である。その示威運動は、憲法二十一条の「一切の表現の自由」ですね、一切の表現の自由は、これを保障されてるんです。そうでしょう。本来そういう性格を持った示威運動なんですよ。これを国会周辺だからやってはいけない。本来示威運動というのは、そういうものなんですから。どうして国会周辺だけ憲法で保障されている一切の表現の自由が許されないのか。国権の最高機関というならば、国会こそが憲法のほんとうに守り手にならなければならない。そうすれば、国会にこそそういうものを許されていいんじゃないですか。  ということと同時に、この「甚しい場合には一瞬にして暴徒と化し勢の赴くところ実力によって法秩序をじゅうりん」する、こういうことが、あなたが異議申し立てた当該示威運動にどういう証徴が具体的にあったんですか。示威運動というものは、本来そういう可能性を持っているということになれば、これは将来、何も国会周辺だけでなくて、どこだってこういう理由でもって変更させることができるんじゃないですか。少なくとも、かりに異議申し立てをするとすれば、六月十日に計画された当該示威運動がこういう具体的な、だれが見ても明瞭な証徴があったんだ、だから国家公安委員長としてはこういう処置をとったということにならなければ、本来示威運動はそういう可能性を持っている、だからとめたということになれば、国会周辺でなくても、どこだって、勢いのおもむくところ暴徒と化し、法秩序をじゅうりんする——というのは、とうして国会周辺だけとめるということになるのですか。こういう論理をあなたが使うということになれば。
  111. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今度の具体的な事例は、国会周辺を一部通るということについて、一方において国会が静ひつであるべき、そうして一方において集団示威運動性格からして、それを近づけないとした東京公安委員会の処置について、これを支持するということでございます。一瞬にして暴徒と化するようなおそれが前からわかっておるものであったならば、おそらく東京都の公安委員会は、第三条の本文によって、いわゆる現存明白な危険が存するとして不許可処分にしたと思うのでございます。しかし、それをしなかったというものは、そういう現存明白な危険が存在するとは東京公安委員会は認めないでこれを許可した、ただ公共の秩序のために国会周辺の進路だけの変更を条件とした、こういうことだと思います。
  112. 林百郎

    ○林委員 そうしますと、あなたが異議申し立ての中に言われる示威運動というものは「潜在する一種の物理的力によって支持されていることを特徴とする。しかもかかる潜在的な力はあるいは予定された計画に従い、あるいは突発的に内外からの刺激、せん動等によって極めて容易に動員されうる性質のものである。この場合は平穏な集団であっても時には興奮激昂の渦中に巻きこまれ甚しい場合には一瞬にして暴徒と化」す云々と、こう書いてあるわけですね。そうすると、何もこれは国会周辺ばかりじゃなくて、どこを通る場合も、示威運動というものは本来一瞬にして暴徒と化すそういう条件を持っているものだということになれば、将来、国会周辺ばかりでなくて、どこでもこれを変更させ、禁止させる条件を持っているのじゃないですか。示威運動というものは憲法二十一条で許されている。しかし、この憲法二十一条で許されているものをどうしても変更し、禁止しなければならないということは、明らかに、もしこれを許すならば国家公安委員長として国の秩序を保持するこの責任が負えないという明瞭な証徴があったからとめたということにならなければ、本来示威運動というものはこういう可能性があるのだということになれば、今日は国会周辺だけでいいけれども、しかし静ひつを必要とすることは何も国会周辺ばかりじゃないのですから、どこだってそういうことはあり得るのですから、じゃ、これはどこでも、示威運動である限りこういう特徴を持っているから、万一の場合をおそれて、暴徒と化して法秩序を維持しがたい条件を持っているからといってとめる可能性が出てくるのじゃないですか。少なくともあなたが裁判所でよろしいと言ったことまでを異議申し立てまでして、しかも行政事件訴訟法によって、安寧を維持するために重大な支障があるという条件のもとに、しかもそれは国会に報告されて国会でそれが吟味されなければならないという条件までついているこういう重大な異議申し立てをあなたがなさる場合には、その示威運動が具体的にあなたが国家公安委員長として責任が負い切れない明瞭な証徴があるのだということがなければ、それはとめるわけにいかないのじゃないですか。乱用されたら——乱用といっても現にこれは乱用ですけれども、将来これが拡大されたら、示威運動である限りどこで毛思う存分とめることができる。あるいはこういう行政の主観的な考え方で、どこでもこの前例に従って示威運動が禁止されるということになるのじゃないですか。
  113. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 進路の変更の条件をつけるのは、東京公安条例の第三条の六号による「公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合」ということでありますから、したがって、いま林さんがおっしゃるように、どこでもとめる、これはもう三十五年の最高裁の判決にもいうように、絶対に乱用してはならないものであるということを言っておるのでございまして、どこでもとめられるというような性格のものじゃない。それは憲法二十一条で保障される。ただしばしばお答えするように、国会というものは常に平穏に保たれておらなければならないという高い要請からやったわけでございます。
  114. 林百郎

    ○林委員 しかし、この示威運動というものを、国民の切実な政治的な意思表示が行なわれているのだ、そういう憲法二十一条に保障されている表現の一切の自由を国民が行使しているのだ、そういう受けとめ方をあなたがしなくて、示威運動というのは、いつでも一瞬にして暴徒に化し得るのだ。要するに憲法で保障されている国民の権利を厳粛に行使しているのだという受けとめ方をしなくて、これはいつでも暴徒に化し得るのだ、法秩序を乱す条件を持っているのだという受けとめ方をあなたがするとするならば、示威運動というものはそういう本来可能性を持っているのだという受けとめ方をするならば、この理由をもってすれば、国会ばかりではなくて、どこだってやれるのではないですか。一瞬にして暴徒に化し得る条件を持っている、法秩序を破壊する、そういう場合には、警察をもってしてもそれを停止することができない可能性を持ってい戸ということになれば、今度は国会周辺であなたはやったけれども、どこだってそういう可能性があるということがやれるのじゃないですか。そうお考えになれませんか。具体的に、もう事前にそういうことが明瞭に察知されたというなら話は別です。どういう場合をそうするか知らないけれども、しかし、本来示威運動というものは、こういう性格のものだということでとめていけば、これはどこへでも適用されるのではないですか。
  115. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 表現の自由は、最大限度に尊重されなければならないわけでございますし、示威運動は、私どもも林さんと同様に、国民の切実な願いを示威運動という形で国民に訴えるという性格のものであることは、そういう受けとめ方をしております。ただ、国会という性格からして、今回の東京公安委員会が進路の条件変更をいたしたことを支持しておるわけでございます。あくまでそういう規制というようなものは、必要の最小限度にとどめらるべきものと考えております。
  116. 林百郎

    ○林委員 あなたはそういうきれいなことをおっしゃっておりますけれども、あなたはそれじゃ国会の閉会中に——閉会中でも国会は国権の最高機関であることは間違いない。閉会中でも、あなたの論理で言えば、国会議員は議員会館にいる、閉会中でも政治行動は行なわれる、そうすると、閉会中でも国会周辺の示威運動は取り締まったほうがいいじゃないかということを、あなたはどこかで言われたことはありませんか。ようく考えてください。
  117. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現在までは、私は閉会中ということは申し上げたつもりはございません。
  118. 林百郎

    ○林委員 それじゃ何中ならということを言われたのですか。
  119. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 開会中の国会と申し上げております。
  120. 林百郎

    ○林委員 これは十九日の新聞ですけれども、あなたは、十三日の閣議にこの問題が取り上げられて、「こうした国会周辺デモの規制は国会開会中に限らず、常任委の会議が行なわれるかもしれない閉会中にも適用すべきだ」と藤枝国家公安委員長が言った、こういう記事が出ている。さらにそれを受けて立って、「そのためには立法化が必要ではないか」と三木外務大臣が言った。これは新聞の記事ですけれども、どうもあなたの言いそうなことだ。あなたはこういうことを言った覚えはありませんか。そして立法化したほうがいいというような意見が閣僚の中で出たことはありませんか。
  121. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私は言っておりません。はっきり申し上げます。
  122. 林百郎

    ○林委員 そうすると、この新聞記事はうそが書いてある。あなたは絶対に、常任委員会が開かれることもあるから、閉会中でも国会周辺の示威運動は規制すべきだということは、絶対言ったことはないのですね。この新聞はうそが書いてあると言っていいのですか。
  123. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 その新聞、何新聞か存じませんが、ほかの新聞には違った記事が載っておったと思います。私は申しておりません。
  124. 林百郎

    ○林委員 時間の関係であと一、二問にしますけれども、御承知のとおり、実はこの問題については、立法化の措置もずっとあったわけです。それはあなたも御承知のとおりです。二十七年五月十日に、第十三回国会に提案された集団示威運動等の秩序保持に関する法律案というのがありまして、これは審議未了になったのです。続いて三十四年十二月二十一日、第三十三国会国会審議権の確保のための秩序保持に関する法律案、これは衆議院の自民党の諸君の議員立法として出された。今度あなたがなされた異議申し立ての措置、これはわれわれの考えるところによると、一九七〇年の安保改定のときを期して、政府、自民党としてはやりたい意欲があるのではないかと推察をわれわれとしてはしているわけですけれども、一九七〇年の安保改定を目ざして政府提案あるいは自民党の議員諸君の議員立法という形で、再びこれをするという意向なりそういう考えがありませんか。
  125. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政府といたしましては、現在そういう立法化の処置を考えておりません。自民党のことについては、私がお答えする限りでないと思います。
  126. 林百郎

    ○林委員 時間がまいりましたので、これで打ち切らしてもらいたいと思いますが、とにかく基本的には、藤枝大臣考え方は、憲法二十一条の国民の表現の自由、これは何人も侵すことのできない永久の権利として与えられておる、これに対するあなたの受けとめ方は、全く憲法違反の受けとめ方をしていると私は言って間違いないと思うわけです。ことに国会周辺であればあるほど、国民の政治的な意思表示は自由に許してやり、国会議員としてはそれを謙虚に受けとめるべきだと思います。そういうことについて、藤枝国家公安委員長としての考え方ははなはだ憲法に違反している、こういうことが、将来、これを第一歩として、こういう考え方、こういう措置が、明らかに乱用される可能性もあるし、政府、自民党が立法化のことを心ひそかに考えているとわれわれは推察せざるを得ないわけです。今後われわれはこの問題については、徹底的に憲法を守る意味で戦っていくことを表明いたしまして、私の質問を終わります。
  127. 亀山孝一

    亀山委員長 奥野誠亮君。
  128. 奥野誠亮

    ○奥野委員 先ほど来の質疑応答を伺っておりますと、東京公安条例運用については国会周辺に限る、集団行進はこれを許可していくけれども集団示威運動原則として許可しない、こういうたてまえをとってこられたように拝聴したわけでございます。  ところが昨年の日韓条約審議のさ中におきまして、毎日数万の人たちが国会周辺を「日韓条約粉砕」と怒号しながらデモって歩いておったやに私は記憶しているわけでございます。これは明らかに集団示威運動であります。どうしてこれが許可されておったのか疑問を感ずるわけでございます。なぜこのようなことをお尋ねするかといいますと、私は、だれが悪いとか、どこに責任があるかというようなことを少しも言おうとは考えておりません。ただ、あの当時に、いまも申し上げましたように、国会周辺を何万という人たちが「日韓条約粉砕」と怒号しながらデモって歩いている。国会の中の廊下には私たちの見知らない若い人たちがたくさんたむろしておりまして、不穏な空気がみなぎっておりました。また本会議場におきましては、壇上が一部の人たちに占拠されておりました。私は自分の議席にすわって、何か革命前夜のような気持ちに襲われておりました。これでは話し合いの民主政治は育っていかないのではないか、国民から不信を買うのではないだろうかという感じを持ったわけでございますので、あえてこの当時のデモ行進がどういう理由許可されておったのかということをまず伺いたいのであります。
  129. 川島広守

    川島(広)政府委員 お答えいたします。  ただいまのお話は日韓デモについてでございますけれども、あの際はすべて請願権の行使としての集団行進という形で許可をいたしたわけでございます。したがいまして、集団行進でございますから、いずれの場合にも示威にわたらないようなきびしい条件を付して許可をいたしたわけでございますけれども、結果におきましては、いまお話しのとおりに、その条件が十分に守られませんで、あのような結果を招いたわけでございます。したがいまして、必要な警告なり、制止なり、最後には検挙というような事態も生んだのは、そのような意味合いでございます。
  130. 奥野誠亮

    ○奥野委員 そうすると、集団行進として許可したのだが、実態は集団示威運動になってしまったんだということでございますね。  そこでもう一つ伺いたいのでございますが、昭和三十五年の日米安全保障条約の際に、多数の人たちが国会に押しかけて、樺美智子さんの不幸なできごともございましたし、多数の負傷者も出たわけでございます。これは一体集団示威運動として許可されたのか、集団行進として許可されたのか、伺っておきたいと思います。
  131. 川島広守

    川島(広)政府委員 三十五年の場合には、いずれも許可を受けない、いわば無届け、無許可の集団行動でございました。
  132. 奥野誠亮

    ○奥野委員 全く驚き入った次第でございまして、おそらく警察当局としても、許可を受けない運動でございますから、事前にそれを制止しようとしても制止し切れなかったということだろうと判断をするわけであります。これらはいずれも極端な例かもしれません。今度の事案にとりましては極端な事例かもしれませんけれども、群衆心理のおもむくところ、時と場合によっては非常におそろしいものがあるということを示している、私はかように考えるわけでございます。今度の東京地裁判決を読んでまいりますと、「本件許可申請がなんらの条件も付されることなく許可されたのであればともかく、前示のような諸条件が付され、」許可されているんだから、よろしいじゃないかという内容が盛られております。私はこのことはあまりにも形式的な皮相的な見方、判断だ、かように心配をするものでございます。戦後の憲法におきましては、行政運営についての争いの判断司法権にゆだねるようになりました。旧憲法下においては、このようなことがあるから行政裁判所が設けられておったわけであります。行政裁判所にゆだねられて、行政の経験のある者に判断させておったのが、新憲法で行政上の問題についてまで、こういう場合には司法権にゆだねることになったわけでありますから、司法機関に、もっと行政運営の実態についての経験者なりあるいは知識なりを持った人を充ててもらわなければ、困るのではなかろうかという心配を私は持つのであります。少なくとも行政運用の実態について司法機関が研究してくれなきゃ因るじゃないかという心配を持つわけでございますが、このような点について、法務省はどのような考え方を持っておられるかということを、この際にお伺いしておきたいと思うのであります。
  133. 青木義人

    青木政府委員 裁判所の構成につきましては、私からこの際申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思います。ただ、行政事件の審理に当たられる裁判官として、やはり行政の実態にも通暁されることが望ましい、こう思っておるわけでございます。
  134. 奥野誠亮

    ○奥野委員 往年の警察権の乱用、これが再び起こることのないように、私たちは注意をしていかなければならないと思いますけれども、同時に司法機関につきましても、行政運用の実態について深い検討を続けていくように、私はお願いをしておきたいと考えるものでございます。  なお、裁判所判断を見てまいりますと、公共の秩序を保持するため、やむを得ない場合であったことを認めるべき資料は見当たらない、こう述べております。私は今度の集団示威運動、それは一般大衆に特定の政権をアピールしていく、そういうことであるならば、むしろ国会周辺には一般大衆はいないわけでありますから、このような進路を選ぶはずはないわけであります。国会周辺の進路を選んだということは、国政に参画している国会議員に特定の政権を強く訴えていきたい、そのためにこの進路を選んだ、かように判断をするものでございます。国政の審議が、他から物理的な威圧が加えられることなく、平穏な環境の中で行なわれなければならない、これは明らかに公共の秩序だと考えるものでございます。最も重要な公共の秩序だと考えるのでございます。お祭りで人出が多いから、そこにデモ行進の進路がとられたのでは交通が混乱する、おそらくこういうことはよく裁判官の判断でもわかるのだろうと思うのでございます、なぜそれよりは、国会審議が物理的な威圧を加えられてひん曲げられてもかまわない、それは公共の秩序に反しないという見解が出るのだろうか、ふしぎでならないのであります。特定の政治的な見解を国会議員に押し売りされる、これは私は少なくとも国会開会中は慎んでもらわなければならないことだと考えるのでございます。この公共の秩序についての考え方、これについて私の述べましたことについての所見を伺っておきたいと思うのでございます。この点については自治大臣にお願いをしたいと思います。  同時に先ほど来、質問を伺っておりますと、国会の側から土曜日は審議が行なわれないのが一般的だから、少なくとも土曜日は差しつかえないじゃないかというお話がございました。国会が土曜日に開かれるか、あるいは日曜日に審議が行なわれるか、他から適当な推測をして、そして土曜日なら差しつかえないのだ、日曜日なら国会審議が行なわれないのだ、とのような判断が堂々と加えられていくことは、危険きわまりないと私は思うのであります。国会の運営はいつどのような事態があるかもしれませんし、また事実土曜日にも委員会その他のことが行なわれている例がたくさんあるわけでございます。したがいまして、少なくとも国会の会期中においては、国政の審議が行なわれているという前提のもとにおいて他の部門は判断をしていただかなければならない、かように考えるものでございます。この点についての所見も伺っておきたいと思います。
  135. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど来お答え申し上げたように、国会国会議員の方々の自由な論議によりまして正当な正確な結論を得ることが必要なのでございまして、他から威圧その他を受けるようなことなく、常に平穏に保たれておるということは、私は非常に高い公共の要求であろうと思います。今回の東京公安委員会の措置を支持いたしたのもそういう意味であります。また、先ほど来お答えいたしましたように、国会開会牛はこれは単に本会議委員会が行なわれたとか、行なわれないという問題ではなくて、常にそういう静ひつが保たれていなければならない、そういう意味におきまして、今回の事件を私、見ておるわけであります。
  136. 奥野誠亮

    ○奥野委員 今度の地裁の判決は、許可に付された条件のうち、進路変更に関する「部分の効力を停止する。」となっておるわけであります。進路変更に関する部分については許可が与えられていないわけですから、効力を停止されると、デモ行進が途中でとまってしまう結果になる判決でございます。また中を読んでまいりますと、結論で、「(したがって、行進の進路は本件許可申請書記載のとおりとなるものと解すべきである。)」こういうような注釈がついております。いささか判決としては行き過ぎた判決ではないかという疑問を持つわけであります。裁判官独自の考え方がいろいろあるのだろうと思います。これから類推できないことはありません。できないことはありませんが、一体こういう判決があっていいのだろうかという疑問を私はぬぐい切れないわけでございまして、効力停止決定についてそういう疑問を持っております。法務省の訟務局長から、この点について疑問がないのか、伺っておきたいと思います。
  137. 青木義人

    青木政府委員 本件の執行停止決定につきまして、いま御指摘の法律問題があるわけでございます。今回のこの停止決定におきましては、結論の最後に申請どおりの進路を許される、かようなカッコ書きが記載してあります。このカッコ書きの当否につきましては非常に法律上問題であろうと思うのであります。私どもはこの見解に対しては承服しがたい。この点につきましては、まあ決定もこの結論について法律上の理由を何ら記載してありませんので、軽々に批判するわけにまいりません。この点につきましては相当むずかしい法律問題だと思っております。
  138. 奥野誠亮

    ○奥野委員 私は行政事件訴訟法の抗告訴訟の中身を見まして非常に疑問を感じたわけでございます。しかしいま法律論争をやっている時間はございませんので避けておきたいと思います。  次に、私は今日日米相互保障条約十年目を向かえ、一九七〇年を目途にしまして、計画的に集団示威運動が行なわれたり、あるいは多くの学校紛争が行なわれていると見ておるものでございます。今日、世界感の相違する政党がお互いに論争を繰り返しておるわけでございます。したがって、少なくとも民族の将来を左右する大きな政治判断を加えなければならない時期に立ち至っておるわけでございます。国会あるいは政治家がきわめて重要な任務を帯びている時期だと考えます。私はどちらの道を選ばなければならないという結論をここで申し上げるつもりはいささかもございません。しかしながら、民族の将来を左右する重要な政治的な時期に来ていることだけは、これは事実だと考えるのでございます。それだけに、少なくとも国会開会中は物理的な圧力も政治的な威圧も他から加えられることのないようにしてもらいたいと念願するものでございます。そのことは憲法にいっております表現の自由と憲法にいうております公共福祉、これをどこで調整していくかという問題になってまいるわけでございます。私は立法府にある者といたしまして、右するか左するかの決断をしなければならない立法府にある者といたしまして、国会審議が平穏な環境の中において行なわれるようにぜひ守ってもらいたいものだと念願をするものでございます。また、このような意図があって、内閣総理大臣行政事件訴訟法に基づいて異議申し立てが行なわれた、かように考えておるものでございますが、念のために自治大臣に伺っておきたいと思います。
  139. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この異議申し立ての中にも申しておりまするように、国会審議権の公正なる行使が阻害されるおそれがあるとして異議申し立てをいたしたわけでございます。しばしばお答えいたしておりまするように、国会というものが常に平穏で他からのいろいろな影響がなく、そうして自由な審議が行なわれて、適当な結論が出るという形を保っておくということは、これは非常に高い公共の要求であると私は考えておる次第でございます。
  140. 奥野誠亮

    ○奥野委員 政府はさしあたって特定のこの関係の立法をする意図は持っていないということを再三言明されております。ただ立法府にある者として、今後こういう場合にどう対処していかなければならないかということは、常に研究し、考えていかなければならないところだ、かように思うわけでございます。  私の承知している範囲におきましては、先進の民主国家におきましては、イギリスであれフランスであれアメリカであれ西ドイツであれ、みんな国会周辺につきましては、少なくとも集団示威運動は全部許していない、こう理解しているわけであります。そういう点についての実態を教えていただきたい。同時に、共産国のような全体主義国家では、政府のとっている政策を誹謗する、反対する、こういうような行動は許されない、私はこう思うのであります。ソビエトの刑法ではこういう規定があるように私は理解しているのであります。ソビエト政権の破壊または弱体化などを目的として行なわれる扇動または宣伝、あるいはまた、国家及び社会体制を誹謗する虚構事実の伝播あるいは同上の目的をもってする同上の内容の文献、資料の頒布、作成または保管は罪に問われる規定があったことを私覚えているわけであります。これらの点についてどのようになっているかということを伺いたい。政府に私がこういうことをあえて伺いますのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、日本国憲法の中にうたっております表現の自由と公共福祉をどこで調和させたらいいかということについて、われわれは今後深く考えていかなければならない。深く考えるにあたっては、諸国のいろいろな立法例等を参考にする必要が多分にある、かように考えるからでございます。これらの事情についてお教えをいただきたいと考えます。
  141. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 イギリスにおきましては、議事堂、裁判所周辺一マイル以内においては開会中または開廷中は、集会、行進は禁止されております。アメリカにおきましては合衆国議事堂区域、連邦最高裁の敷地内、ワシントン特別市内の外国公館の周辺五百フィート以内の集会、行進は禁止されております。フランスにおきましては国会請願書を持参すること及び国会請願書を持参することを目的とする公道上の集会で演説、文書等により扇動する行為は処罰されます。西ドイツにおきましては連邦、州の立法機関、裁判所周辺は禁制区域法により禁制区域が定められまして、集会、行進は禁止、違反者は刑法で処罰されることになっております。これら諸外国の例がございます。私どもも重大なる検討事項であろうと思いますが、先般来お答え申し上げておりますように、目下直ちにこれを立法化するという準備はいたしておりません。
  142. 川島広守

    川島(広)政府委員 お尋ねのございましたソ連の関係でございますが、刑法七十条にいまお話しのような規定がございまして、罰則といたしまして三年から十年までの自由剥奪をもって処される、こういう規定がございます。
  143. 奥野誠亮

    ○奥野委員 政治家個々には、お互いに夢見ている未来の社会については違いがございます。私はその違いはいろいろあっていいと思うのであります。しかし、あくまでもお互いの話し合いの政治、これを通じてお互いの理想とする社会を実現していきたい、このような希望を強く持っておりますので、あえてこのようなお尋ねをしたわけであります。  いまお話しになりましたような諸国の例あるいはソビエト刑法の条文、そういうものを資料としてお出しいただきますようにお願いをしておきます。
  144. 亀山孝一

    亀山委員長 わかりました。     —————————————
  145. 亀山孝一

    亀山委員長 次に、山陽電鉄の爆破事件に関する問題について、質疑の申し出がありますので、これを許します。河上民雄君。
  146. 河上民雄

    ○河上委員 先般、神戸市垂水区内におきまして、山陽電鉄の電車が塩屋駅に停車寸前に、時限爆弾による爆発事件が起こりましたことは御承知のとおりでございますが、問題が問題でありますだけに、緊急にこれに関する政府考え方お尋ねしたいと思います。  この爆破事件は特定の個人に対する恨みではなくて、その及ぶところは不特定多数に向けられており、しかもほとんど予測できないあらゆる時間、あらゆる場所に起こり得る可能性を持っておるわけでございまして、その意味におきましてはきわめて社会的に凶悪な事件であると考えなければならないと思います。しかもこれまでこれに類似した事件は何度か新聞をにぎわしたわけでございますが、今回初の犠牲者の方が二人も出たわけでございまして、非常に重大な問題でございますので、政府としても早急に的確な処置をとっていただきたいと考えるものであります。これまで幾つかの事件が起こりましたが、そのほとんどは未解決であるというふうに伺っておるわけですが、こうした凶悪な事件がほとんど手がかりがないという事実こそ、こうした事件を次々と起こさせる大きな原因であろうと思いますので、今後こういう事件の再発を防ぐ最大の道は、まず犯人を検挙することにあると思うのであります。この点につきまして、政府におきましてはある程度の見通しがすでについたのかどうか。また本日伺うところによりますと、犯人は溶接工らしいというような見解が閣議で報告せられているやに伺うのでありますけれども、そのような事実があるのでありましょうか。また捜査の見通しなどについて初めにお伺いしたいと思います。
  147. 内海倫

    ○内海政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御質問がございましたように、まことに遺憾な事件でございまして、私どもも、兵庫県警察に対しまして、全力をあげてこれが捜査を行ない、できるだけ早く犯人の検挙に至るように、あらゆる方策をとるようにというふうな勧告をいたしております。またそういう意味でこれを手助けするために、私どもの課員及び科学捜査研究所の専門家を派遣いたしまして、協力して目下捜査に当たっておるところであります。  さて、事件の見通しでございますけれども、現在捜査中でございますので、その内容の詳細について申し上げることをはばかることは、はなはだ申しわけないのでございますが、いろいろデリケートな点が捜査上の重要な問題になりますので、その辺はお許しを得たいと思います。  いま私ども考えられることは、犯人がどういうふうな者であるか、これは捕えてみるまでは全くわからない、一説に精神異常者ではなかろうかとか、あるいは爆発マニアでなかろうかとか、いろいろ伝えられます。いずれもそういうことが考えられるとは思いますが、はたしてそれがどういう者であるかということは、いま怪々に推定をいたすことは適当でない、かように考えます。  それから捜査の段階でございますが、現場にかなりたくさんの遺留品が残っております。たとえば爆発に使いました直径八センチ、高さ十二センチ余の鉄の筒、あるいは時限装置と考えられる時計の文字板、その他の部品、あるいは電池、相当多数のものが遺留されております。これらをいろいろな角度で分析し、あるいは推定を加えて捜査を行なっております。その過程におきまして、ただいま御質問のございました溶接工ではなかろうかという点でございますが、これはもとより推定でございまして、決して断定できるものではございません。ただ鉄の筒の上下を鉄板で溶接しておるというふうな技術が、ごく一般的な意味で、しろうとではなかなか困難ではないか、要するに溶接というふうな経験を有し、あるいはそれに必要な設備または機材を持っておるということが考えられ得る。こういうふうな意味でそういう推定をいたしておるところでございます。またこれに使用しておりますいわゆる爆薬でございますが、これは専門的に私よくわかりませんが、分析した者の報告では、塩素酸カリと硫黄を主体とした混合火薬であると推定するというふうに申しております。このものは非常に入手しやすいもののようでございます。たとえば、町に市販されておる花火等にもこういうものが使われておるそうでございますけれども、あるいはマッチの製造過程にもこういうふうなものがあるようでございます。現在は、そういうことで、遺留された物、及びそこに乗り合わせておりました約八十名の乗客に、あるいは兵庫の駅その他でこれを見かけた人はないかということで、かなり多数の人々に対する聞き込み、特に犯人を見た者はいないかというふうなことで、聞き込みを行なっております。いずれもいまだそういうことに対して非常に有利な聞き込みは出ておりません。  以上が本件の捜査のごく簡単な概要でございますが、何ぶんにも非常に困難な事件でございます。東京駅の構内爆破事件、あるいはひかり号の爆破未遂事件というふうに、いずれも非常に困難で、いまだ犯人に到達いたしておりません。本件の場合も、そういう意味で非常にむずかしい事件であると思いますが、ただ地域がある程度局限し得ることと、いま申しましたような遺留品がかなり捜査上重要な役目を果たし得る、こういうふうな点で、私どもは前途にかなり明るい希望を持って全力をあげて捜査をしておるところでございます。
  148. 河上民雄

    ○河上委員 何ぶんにもこのような非常に大きな事件が未解決に終わるというようなことでは社会不安というものは非常に大きくなるわけでございまして、そうした社会不安を解消するというのが警察の当面与えられた大きな任務であると思いますので、せっかく御努力願うように希望いたしたいのでございます。私はそのような立場から二、三、次の諸点について御質問したいと思います。  いまお話がございましたところでもある程度うかがえるわけでありますが、火薬というものはどこにでもあるというものではなくて、製造から貯蔵、販売、消費に至るまで一定の取り締まりのもとにあるはずでございます。火薬類取締法がそれにあたるのではないかと思いますが、もしこれが厳重に取り締まられておるといたしますならば、こうしたいわゆる不心得者によって本来の目的とは違った用途に、つまり犯罪に利用されるということはある程度防止できるのではないか、こういうふうに思います。火薬類取締法でははなはだ不十分であるというのか、それとも取締法の管理の実態というものが非常にルーズなのではないかということをおそれるわけでございます。通産省がこの任に当たっていると思いますけれども、その点について政府の御説明をいただきたいと思います。
  149. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 ただいま先生の御指摘のように、火薬類につきましては、火薬類取締法によりまして私ども通産省が一応主管をしておりますが、その個別形態につきましての処分ということにつきましては、すべて警察の御協力を得て処置してございます。  御承知のとおり、製造、販売、貯蔵それから譲渡、譲受、消費、配置といったことにつきましてはすべて許可を受けることになっておるわけでございます。それから譲渡、譲受、消費といった個別案件につきましては、そのたびに都道府県知事が許可をいたします際に府県の公安委員会に御意見を聞いて処置するという体制でございます。  先ほど御指摘がありましたように、こういう制度自身としては完備しているけれども、その制度自身の実行についての監督が非常に不行き届きではないかというおしかりでございます。私どもも先般羽田の事故以後、ひかり号といろいろ続いてまいりまして、四月六日には特に立ち入り検査の励行ということを公安委員会と御相談をしてするような通達を都道府県知事に出しました。それの実行にあわせまして、その後警察にも御協力をいただきまして、警察のほうと私どものほうと共同いたしまして、立ち入り検査、行政処分の強化、そういったものにつきましてのこまかな点につきましてもお話をいたしまして、この六月十三日に全国に次官名、あるいはそれに基づきます細目につきましては局長名によります知事に対する指示も通達いたしました。この間、警察でもいろいろ立ち入り検査を強化されまして、そういった結果、いささか残念ながら、特にダイナマイト現場におけるダイナマイトの管理につきましては、御指摘のような点もございます。これにつきましては、全面的な立ち入り検査を警察の御協力を得まして処置するというような体制でこういったことのないように処置をしてございます。  なお、今回の事件につきましては、先ほど警察の御当局のほうからも御説明がございました塩素酸カリと硫黄というものとの製造でございます。この点は許可がございませんので、いわゆる密造ということで、われわれの法律のほうの違反でもございますけれども、この火薬というものにつきましては、いま申し上げた今回の種は非常に原料が、いわば何と申しますか、きわめてプリミティブな形でございまして、そういう点についての今後のそういう体制というものにつきましては、われわれとしても今後もっといろいろと研究をしたい、こういうふうに考えております。
  150. 河上民雄

    ○河上委員 いまいろいろお述べになりましたが、それで十分だとお考えになっておられますか。
  151. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 私ども現在の法規体制といたしまして、制度といたしましては、まず欠けることのない体制に処理がされていると考えておるわけでございます。問題は、それをどういうふうに監督を実行していくかということでございまして、その点はやはり何と申しましても消費現場とか、いろいろ火薬の所在についての管理体制というものについては、いわば立ち入り検査の強化あるいは保安検査の励行ということで処置をするということで解決をはかりたい、こういうふうに考えております。
  152. 河上民雄

    ○河上委員 過般東京駅で起こりました爆発事件の直後、新聞の報道するところによりますると、いま私が持っておりますのは朝日新聞でございますが、それによりますると、警視庁の調べでは最近の建設ブームを反映いたしまして、爆薬の年間消費量というものは十万トンにものぼっておる。そうして爆薬を使ったり保管している現場というものは三万カ所ぐらいにのぼるというようなことでございまして、しかも三万カ所のうち管理の目が届いておるのは大体三分の二ぐらいにしかならないのじゃないかというようなことが書いてございます。実態はそのとおりと理解してよろしいのでございましょうか。
  153. 今竹義一

    ○今竹政府委員 火薬、爆薬の消費状況の問題でございますが、まず消費で申しますと、資料としまして生産の数量を持っておりますので申し上げますと、戦前の昭和十年におきましては、生産から輸出を差し引きました量が一万五千二百七十四トン、それが昭和四十一年には五万一千九百十五トンということで約三倍強の消費がある、こういうふうな推測が成り立つわけでございます。  これの消費場所が現在全国で一万七千五百七十カ所、火薬庫が五千九百七十一カ所、販売所が千百二十八カ所、製造所が二百七十七カ所、その他の火薬類の取り扱い所が千六十八カ所、合わせて二万六千十四カ所となっておりますが、これらの製造所を初めとしまして、販売所それから末端の消費場所、すべてについて私ども定期の立ち入り検査及び臨時の立ち入り検査をいたしまして、すべて取り締まりの徹底をはかっておるところでございます。  いま通産省のほうからもお話がございましたように、通産当局の行政と私どもの取り締まりと相まって、火薬の取り扱いについての秩序の確立ということにつとめております。ただ御質問の点で、たとえばダイナマイトのごとくでき上がりました爆薬、これは火薬類の一種でございますが、こういうものにつきましては、それの不正流出、譲渡、譲受というようなことを取り締まれば十分に効果を発揮し得るわけでございますが、今度の事案のような塩素酸カリという、これそのものでは火薬類ではない薬品を買ってきまして、それを硫黄等と調合しまして火薬にするという過程の取り締まりは、これは法律的に申しますと無許可の製造ということになるわけですが、無許可の製造というのは、事柄の性質からいってこっそり行なわれるものですから、行政的な取り締まりとしては非常に困難な対象である、こういうことをつけ添えて御説明といたしたいと思います。
  154. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、その辺に何か二つの盲点があるように思います。今度の事件はダイナマイトでやったおけではございませんので、今度のような場合には、いわばお手あげというようなことでございますか。
  155. 今竹義一

    ○今竹政府委員 こういう点につきまして問題があるということで、いま私どもその点について鋭意研究をしておるというところでございまして、決して私ども、お手あげというようには考えておりません。
  156. 河上民雄

    ○河上委員 今度の新聞によりますと、電気雷管を使用したということが出ておるわけでございますが、これについてはかなり厳重な、入手あるいは譲渡その他について制約があるやに聞いておるのでございますけれども、一体どうしてこういうことが起こったのか、ふしぎな気がするのであります。そうした入手ルートについてまだ十分に調べが進んでおらないのか、一体こういうことが可能なのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  157. 今竹義一

    ○今竹政府委員 私が現在までに承知いたしておりますところでは、電気雷管を使ったということは聞いておりません。それで、実は私どものほうの専門家に、どういう方法で起爆させたのであろうかということは聞いておりますが、何か通常の電流が通る、その熱だけでも起爆するような不安定な製品であるというふうに現在のところ聞いておりますが、必ずしも電気雷管というようにはまだ聞いておりません。
  158. 河上民雄

    ○河上委員 というようなお話であるということでありますけれども、私がいまここに持っております神戸新聞によりますると、かなり詳しくいろいろ出ておるわけでございまして、新聞がこれだけ書く以上は、当然根拠のないことを書くわけはない。ことにあの地域においては、この事件の成り行きに非常な関心を持っておるわけでございまして、それに対して報道者としても当然責任と自信を持って書いているはずでございます。にもかかわらず、いまそういうようなお話であるというのは、取り締まり体制といいますか、こういう問題に対する警察側の態度が非常にあいまいというか、むしろプリミティブである。薬がプリミティブであるよりも、捜査体制のほうがプリミティブなのではないかという感じがいたすのであります。ことに新聞によりますと、通産省は二人の技官を派遣して調査しているということでございますが、一体そういう点はどうなっておるのでしょうか。
  159. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 私ども事故を聞きました日曜日の夜に火薬の専門官を派遣いたしまして、県警あるいは県当局とも合同の捜査を実施をしております。ただ私どものほうは、現在のところさらに警察が詰めて捜査をしておられますので、捜査担当者が帰ってきてございます。ですから、これは断定的に申し上げるわけにはいきませんが、私どもの火薬の専門官の見方といたしまして、かりに電気雷管が入っておったとすれば、もっと爆燃が強く出たのではないか、少なくとも電気雷管がありますと、それが包蔵しております火薬の中の粒子がパイプその他にも付着をされているんじゃないか、そこいらのところの検出がまだできていないようでございまして、そういうところから、どうも電気雷管ということにつきましては、われわれとしてそれを使ったという断定は、むしろいまのところ非常にない形ではないかという推察をしております。ただこれはあくまでも推察でございまして、現在、警察のほうの御当局——きょうも残って現地のほうでさらに鑑識を進めておられますので、その結果を待たなければならないと思います。
  160. 内海倫

    ○内海政府委員 電気雷管の問題につきましては、ただいま通産省の御答弁のありましたように、いまだそれらについての断定を下す段階に至っておりません。警察といたしましては、徹底した捜査をいたしております。これがいかなるものであるか、あるいはどういうふうな形で使われたものであるかということの捜査の徹底を期しておるところであります。
  161. 河上民雄

    ○河上委員 まあ、われわれの常識から考えてみますと、そういう非常にプリミティブな薬を使って、しかも電気雷管を使わずにそういうことがはたして可能であったのかどうか、非常に疑わしいのでございます。こういう問題が起こりましたときに、すでにもうかなりの時間がたっておるわけでございまして、いまだにその原因さえはっきりつかめないというような状態では、この事件の起こりました地域の人々の不安、またひいてはこれが日本全国どこででも起こるわけでございまして、われわれ新幹線に乗りますと、必ずアナウンスがありますのは、持ち主のない荷物を見たらすぐ車掌に知らせるようにというようなことでございまして、まことにどうもたよりない状態であります。そういうことを考えますと、こういう問題は、単に警察官を大ぜいどかっと派遣したから解決するというものではなく、科学警察というものの体制が確立していなければ解決しない問題であろうと思うのであります。そういう意味から言いますと、いまの私の質問に対する御答弁からうかがわれる印象は、非常に科学警察の無力ということを感ぜざるを得ないのであります。いままでの事件が、例の羽田空港の事件を除きまして、ほとんど未解決であるというような事実は、科学警察の無力というものをわれわれに遺憾ながら教えておるように思うのであります。本日、先ほどから公安条例の問題につきまして、国会周辺デモ規制の問題につきましていろいろ論議があったわけでございますが、そうしたいわゆる治安警察という点には、警察では非常に力を入れておられるようでございます。またこのたび東京の吉祥寺で起こりましたビラまき——わずか十七歳か八歳ぐらいの少年が二人か三人で行なったビラまきに対して機動隊百名が動員せられる、こういうようなことが一方でございます。それに対しまして、こうした物理的な力ではなくて、いわば化学的な、頭を使った犯罪に対しては、いわばお手あげに近いという事態は、はなはだわれわれとしては不安に感ずるのであります。今後この科学警察というものを確立するために、予算の点でも、人材の点でも、またその制度の点でも格段の御努力をいただきたいと思うのでありますが、警察庁長官のお考えを承りたい。
  162. 新井裕

    新井政府委員 ただいま山陽電鉄の事件に関連してお尋ねがございましたけれども、爆発のメカニズムにつきましては、別に五里霧中でやっておるわけではなさそうでありますけれども、たいへん特殊な方法を用いておるという疑いがあるので、その点について断定的なことはまだ言い得ないということであります。いままでは、火薬について、刑事局長も申しましたとおり、起爆の装置は、ただいま通産省もお話がありましたように、電気雷管以外の方法でやられたという見当はついております。問題は、科学警察という問題について、おまえのほうは少しおくれておるじゃないかというお尋ねだったと思いますけれども、日本の一般的な体制からいえば、世界じゅうで最も進んだ水準にあることは断言できます。と申しますのは、東京にございます科学警察研究所の所長は文化勲章を受章されました古畑博士が主宰しておられますけれども、そのほかに四十六都道府県に相当規模の科学検査の人員と機構を持っておりまして、この人員、機構、それから研究の成果というものを見ますると、それほど低いものとは思っておりません。しかし、ただいまお話がありましたように、これで十分かと申しますと、たとえば例にあげられましたように、研究費その他については必ずしも十分とは申せません。またたいへん特殊な研究でございますから、人間をよけい集めればそれで進むというものでもございません。そこいらの進歩について、ややおそいのじゃないかというおしかりもあるかもしれませんけれども、二十年の歴史を経まして、相当の水準にあることだけは御認識を願いたいと思います。さらに今後とも一そうこれを推進するようにいたしたい。したがいまして、今後の捜査は、問題は現場にありましたそういう爆発物及び装置というものがいかなるものであるかということを究明しただけでは犯人には到達できませんので、結局しんぼう強く聞き込みをやりまして——新聞にも出ておりますように、たいへん短時間で爆発をする装置でありますから、相当遠くから持ってきたなんということはとうてい考えられません。したがいまして、あの周辺の聞き込み——当時乗っていた人あるいは駅を降りた人、そういう点について広範な聞き込みをしまして、できるだけこの事件と結びつく人間を追求しなければ捜査が完ぺきになりませんので、科学捜査の点については決して御心配をかけるようなことはないと私は思いますけれども、問題はそれと犯人とをどう結びつけるかという捜査が一番問題だと思います。この二、三週間というのは最も大切な時期でありますから、力を集中して主として聞き込みその他に当たりたいと思っております。
  163. 河上民雄

    ○河上委員 何ぶんにも困難な事件であることはわかるのでありますが、とれが与える社会的不安というものは非常に大きいのであります。いま事件がまだ解決しないうちに科学警察の威容について御説明があったのでありますが、やはりこれは長官も御説明になりましたように、犯人に結びつかないと意味がないのでございまして、ひとつまず検挙こそが予防である、防止であるということで、今度初めてこのような痛ましい犠牲者を生んだのでありますから、ぜひとも、これまでと同じようなただ未解決ということでないようにしていただきたいと思うのであります。  もう時間もまいりましたので私の質問を終わりたいと思いますが、ただ最後に一つだけ、ちょっと気になりますのでお伺いいたしますが、こういう被害者が発生した場合に、そうした補償についてはどういうところが責任を負うことになっておるのか、そのことだけ一つお伺いをしたいのであります。山陽電鉄におきましては、とりあえず犠牲になった方に三万円ずつ出すというようなことが新聞に出ておりましたけれども、一体これは法律的にはどこがどういう責任を負うのか、そういうことについて一言だけ御説明を願いたいと思います。
  164. 新井裕

    新井政府委員 結論を先に申し上げますと、すべて個人の負担になるかと思います。ただ、山陽電鉄は全面的に負担するというふうに宣明しておるということを新聞で拝見いたしまして、ただいま例示されました金はおそらくその一部ではないか、おそらく自分の施設の中でけがをされた、あるいはなくなられたということで、相当、全面的にやられると思いますけれども、法律的にはすべて個人の負担でございます。御承知かもしれませんが、横浜でこの間自分のむすこさんを殺された御両親が、こういうことではむすこが浮かばれないというので、被害者の会合を持ちまして団体をつくったということを聞き及んでおりますけれども、結論は個人負担でございます。
  165. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、私の質問をこれで終わりたいと思います。
  166. 亀山孝一

    亀山委員長 次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十四分散会