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1967-06-15 第55回国会 衆議院 地方行政委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十五日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 亀山 孝一君    理事 大石 八治君 理事 岡崎 英城君    理事 奧野 誠亮君 理事 久保田円次君    理事 和爾俊二郎君 理事 細谷 治嘉君    理事 山口 鶴男君 理事 門司  亮君       久保田藤麿君    佐々木秀世君       塩川正十郎君    登坂重次郎君       永山 忠則君    古屋  亨君       山田 久就君    太田 一夫君       河上 民雄君    島上善五郎君       華山 親義君    依田 圭五君       折小野良一君    大野  潔君       小濱 新次君    林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁長官   新井  裕君         警察庁警備局長 川島 広守君  委員外出席者         警察庁警備局警 三井  脩君         備課長         法務省刑事局参 村上 尚文君         事官         法務省訟務局次 上田 明信君         長         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 六月十四日  委員渡海元三郎君、古屋亨君及び小濱新次君辞  任につき、その補欠として南條徳男君、武藤嘉  文君及び樋上新一君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員南條徳男君及び武藤嘉文辞任につき、そ  の補欠として渡海元三郎君及び古屋亨君が議長  の指名委員に選任された。 同月十五日  委員樋上新一辞任につき、その補欠として小  濱新次君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月十三日  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  警察に関する件(公安条例に関する問題)      ————◇—————
  2. 亀山孝一

    亀山委員長 これより会議を開きます。  警察に関する件について調査を進めます。  公安条例に関する問題について、質疑の申し出がありますので、これを許します。依田圭五君。
  3. 依田圭五

    依田委員 私は、六月十日の総理大臣行政事件訴訟法二十七条に関連する異議申し立てについて、数点にわたり御質問申し上げたいと思います。  まず第一に、護憲連合から申請のありました集団示威行進許可申請に対して、一体公安委員会はどのような条件をこれに付して、これを処置されたかをお聞きしたいと思います。
  4. 三井脩

    三井説明員 お答え申し上げます。  六月十日の護憲連合主催集団示威運動につきまして、東南コースでございますが、条件は十ございます。これは東京公安条例の第三条第一項ただし書きによります六つ条件のうち、第一は、秩序保持に関する事項、第二は危害防止に関する事項、これは二件ございます。第三は交通秩序維持に関する事項、これが六項目ございます。第四に進路変更に関する事項が一項目、合計、こまかな点も含めまして十項目条件をつけております。
  5. 依田圭五

    依田委員 その十項目条件内容について、簡単に列記してください。
  6. 三井脩

    三井説明員 第一番は秩序保持に関する事項でございまして、主催者及び現場責任者集団示威運動秩序保持について指揮統制を徹底すること、というのが一つございます。  第二の危害防止に関する事項に関連いたしましては、二項目ございますが、一つは鉄棒、こん棒、石、その他危険な物件は一切携行しないこと、というのでございます。その二は、旗ざおプラカード等の柄に危険なものを用い、あるいは危険な装置を施さないことということでございます。  第三の交通秩序維持に関する事項に関連いたしましては、これは六つ条件をつけております。第一は、梯団人員並びに梯団間の距離はおおむね一梯団の長さとするということでございます。第二は蛇行進渦巻き行進、ことさらなかけ足行進、おそ足行進停滞、すわり込み、またはいわゆるフランスデモ等交通秩序を乱す行為をしないことというのが第二の条件でございます。その次は宣伝用自動車以外の車両を行進参加させないこと、第四は旗、プラカードの大きさの制限であります。第五は、旗ざお等を利用して隊伍を組まないこと、第六は行進中、整理のために行なう警察官指示に従がうということでございます。  大きな四つ目は、進路変更に関する事項でございまして、これには公共秩序保持するために、申請にかかる集団運動進路のうち赤坂見付交差点から特許庁の角の間を次のように変更するといたしまして、赤坂見付交差点から山王下、さらに溜池交差点を経て特許庁前、この間の進路条件によって変更するという事項をつけております。  以上十項目でございます。
  7. 依田圭五

    依田委員 長官にお聞きしますが、十項目の中で、最初の秩序保持に関連して指揮関係条件を付しております。これをもう一ぺん詳しくお話し願いたいのが一点、その次は梯団人員あるいは距離がどうであるかというのが第二点、さらに、ことさらなかけ足行進、これは御承知のように日韓条約のいわゆる五月十日の寺尾判決の中で、はっきり違憲の判断をその裁判官から言われております。私も同意見でありますが、このかけ足行進憲法に抵触するかどうかについて長官の御意見を承りたいと思います。また、プラカードについても制限をしたそうでありますが、どの程度制限をしたか、具体的に数字をあげてお示しを願いたいと思います。
  8. 三井脩

    三井説明員 第一番の秩序保持に関する事項につきましては、先ほど申し上げましたように、その行事の主催者、それから現場責任者は、集団示威運動秩序保持について指揮統制を徹底することといっております。第二番目の梯団人員、間隔につきましては、行進隊形は五列縦隊、一梯団人員はおおむね二百五十名とし、各梯団間の距離はおおむね一梯団の長さとするということでございます。  第三番目の蛇行進等関係といたしましては、正確に申し上げますと、蛇行進渦巻き行進、ことさらなかけ足行進、おそ足行進停滞、すわり込み及び先行梯団との併進、追い越しまたはいわゆるフランスデモ等法秩序を乱す行為をしないことということでございます。このうち、いまお尋ねのことさらなかけ足行進という点につきましては、五月十日の寺尾判決におきましては、この条件は適当でないと言っておりますが、五月三十日の別の亀岡裁判長判決におきましては、これは適法な条件であるというように言っております。  プラカードにつきましては、旗、プラカードの大きさは一人で自由に持ち歩きできる程度のものとすることということであります。具体的に大きさ長さ等をセンチメートルその他数字では規定いたしておりません。
  9. 依田圭五

    依田委員 長官にお聞きしたいのですが、大体十項目で、いま詳細にお話がありましたような内容デモに対する規制をいたして、なおかつこの行進に対して警備上の自信が持てなかった、これについて、当日どのような警備体制にあったか、機動隊は一体出動したのかしないのか、所轄の署の人員はどういうぐあいにこれに配置をしたかを含めて御答弁を願いたいと思います。
  10. 新井裕

    新井政府委員 先ほどお尋ねのございました寺尾判決につきましては、いま説明員から申し上げましたとおりで、私もあの判決には承服しがたい。また検察庁も控訴しておるところでございます。  ただいまのお尋ねのこまかい点につきましては、また説明員から御説明いたさせますけれども、あれだけ条件をつけておりながらなぜ警備自信がなかったかというようなお尋ねでございますけれども、できるだけ集団示威運動というものが秩序ある平穏な形で行なわれることが望ましいのでいろいろ条件をつけますけれども集団そのものには、三十五年の最高裁の判決にございますように、いろいろと思わざる危険もあるので、それを予防するために警備実施をいたすというたてまえでございます。
  11. 依田圭五

    依田委員 いま長宮の引用された三十五年の大法廷判決は、一応全体として合憲の説をとっておりますが、中の付帯条件の中にはっきり、権利の乱用の場合には非常に心配がある、くれぐれも注意をして、この基準が不明確であるから——これは立法技術上の問題もあるでありましょうけれども、非常に不明確であるから、それについては十分心配をしてもらいたいということを言っております。その間のことを申し上げますと、昭和三十五年でありますが、もっとも本条例といえども、その運用のいかんによっては憲法二十一条の保障する表現の自由の保障を侵す非常な危険を包蔵いたしておる。条例運用に当たる公安委員会が権限を乱用し、公共の安寧の保持を口実にして、平穏で秩序ある集団行動まで抑圧することのないよう極力戒心をしなさいということを言っております。ですから、私がお聞きするのは、長官お答えになりました大法廷の結論でなくして、その中で大法廷心配をしておる運用上の問題について私はきょうここで御質問申し上げておるわけです。公共の福祉というのは、明白な合理的な基準のもとで発動されなければ絶対に表現の自由というような基本的人権を侵すことができないということは憲法二十一条の明記するところであって、この問題に触れる問題であるから、私は当日の総理大臣異議申し立ての内客をなすところのいろいろの条件について、私のほうにも資料がございますが、警察庁自体の、公安委員会自体のデータをここで求めておるわけです。その点で所轄署機動隊あるいは警備関係体制の問題についてお答え願いたいと思います。
  12. 三井脩

    三井説明員 当日集団行進につきましては、現実に出ました警察官の数は、杉並コース全体を通じまして約七百名でございます。各署の区域にまたがっておりますので、それぞれ区域を分担いたしまして所轄警察署が担当する。特に赤坂見付ではいろいろな問題が予想されましたので、そのほかに機動隊二個中隊を現場付近で待機させました。合わせまして約七百名でございます。
  13. 依田圭五

    依田委員 それでは結局七百名の警備体制の中でこの集団示威行進警備したということになるわけですね。大体お聞きしたいのは、公安条例第三条に基づく六号にわたる中において十項目も詳細な、やれプラカードはこうしてはならぬとか、梯団は何名にしなければならぬとか、その距離はどうだとか、あるいはその指揮はどうだとか、行進指揮命令は全部現場警察官指示に従わなければならぬとか——申請は千人でしょう。マキシマムチ人なんです。こういうような中で七百名も警官をそこに配置して、なお治安関係において自信が持てなかったのですか。その理由についてお答え願いたいと思います。
  14. 新井裕

    新井政府委員 人数についていろいろバランスがとれないという御意見かと思いますけれども、長いコースを終始一人の警察官あるいは一定警察官がついて歩くというのでありませんで、区間ごとに区切っておりますので、そういうことで人数の上では七百名ということになります。これはまた十分依田委員も御承知のとおり、いまの交通状況等から考えますと、交通規制の要因を含めておるわけでありますから、決して多いとは私ども思っておりません。
  15. 依田圭五

    依田委員 次にお聞きしたいのは、これらの問題はお互いに相関的な関係の中にありますから、最後にどのような立場で総理が、言いかえれば公安委員会警察庁異議申し立て内容考えたかということになるわけでありますが、当日一体、名称は何で、どのような理解のもとに申請団体申請を受理したか。いろいろあります。これは護憲連合ということになっておりますが、従来横須賀の原潜のデモ、あるいはアメリカ大使館のデモ日韓デモ、いろいろたくさんございますが、護憲連合集団行進に対しても、一体どういう判断団体に対して持ったか、またそれに対して許可を発動する場合の心がまえを、一体どういうような予見を持ったかをここではっきりさしていただきたいと思います。
  16. 三井脩

    三井説明員 申請には東京護憲とだけ書いてございます。申請者東京護憲代表委員である星野安三郎ということで、参加人員は約千名、参加予定団体東京護憲構成団体と同じである、こういうふうに申請書には記載されております。参加予定人員、この申請書には約千名と書いてございますが、実際には三千名について動員がされております。それから東京護憲というものは、構成団体は、ここでは単にこの構成団体参加するとだけ書いてございますが、東京護憲は御存じのように中央護憲と略称されております憲法擁護国民連合、これの東京都の地域における地域護憲団体でありまして、東京護憲連合と言っておるものであります。中央中央護憲におきましては、各労組その他の大衆団体中央団体約四十が加盟しておりまして、東京地域におきましては、この東京護憲にそれぞれのそのような中央団体東京レベルにおける団体、たとえば民青同東京地本といったような形のものが加盟しておるわけでございます。この点につきましては、かつて東京護憲あるいは中央護憲主催のこの種大衆行動におきまして、ジグザグ蛇行進等が行なわれたことがありますし、ことに構成団体であります社青同等につきましては、しばしば国会周辺におきましても、すわり込み、蛇行進等を繰り返しておるわけでありまして、いわゆるこのデモでの違法行為を繰り返すという点につきましては、その件数は、簡単に言いますと無数にあるというような団体であります。なお、この交渉に参りました、届け出に参りました——星野安三郎代表委員代理である田中殖という方が見えたわけでありますが、この方、その他一緒に参った方に尋ねてみますと、この社青同参加をするということを数回にわたって言っております。そういうような状況でありますので、われわれといたしましては、これが申請どおりコースを歩きますときには、特に国会周辺の一・六キロのコースでありますが、このあたりにおきましては、かなりの問題が起こるというように考えたわけであります。
  17. 依田圭五

    依田委員 長官に聞きたいのですが、長官もなかなかそういうこまかなことについては御答弁があれでしょうから、課長でけっこうですが、長官お答えできる範囲内は積極的といいますか、お願いしたいと思います。  当日、この示威運動申請に対して、これがどういう性格集団行進であるかを前もって知っておりましたかどうか、それをお聞かせ願いたいと思います。どういう性格憲法二十周年がありまして、あなたはどういうようなお考えでもってこの団体をお考えになったか。
  18. 三井脩

    三井説明員 これは先ほど申し上げました中央護憲、これが憲法二十周年を記念いたしまして、ことしの五月三日から全国的に東京へ向けて、東京日比谷公園に向けてデモコース集団行進計画を立て、六月十日に東京日比谷公園に集合する、こういう計画であります。東京都内に入りましては、それぞれ四つコースを通って日比谷公園に集まるわけでありますが、このうち杉並コースが、ただいま申し上げましたような国会周辺を通る。他の三つのコースはそれぞれのコースを通っていく。この趣旨は、憲法を擁護する、憲法二十周年を記念してやる集会であるということでございますが、同時に、東京護憲運動方針、今度の記念行進計画の中には、もちろんベトナム反戦エンタープライズ寄港阻止また公安条例撤廃、こういうようなものを集約してここで表現するのである、名称憲法二十周年記念行進だということの表現でございます。
  19. 依田圭五

    依田委員 ここからは長官に聞きたいのですがね。この団体は、申請名称ではっきりしているように、東京護憲申請なんです。これは社会党中心団体なんです。この団体がどうだから、こうだから、この集団デモ行進憲法二十一条、表現の自由に保障されました基本的な人権の問題に関係があるということを私は言っておるわけじゃない。こういう団体だから、だから取り締まってよろしいとか、こういう団体だからこれは取り締まらなくてもよろしいという問題じゃない。大体、集団行進民主主義政治基本原理であって、これを守ることがいまの民主主義を守る最大の手段なんで、その理念なんですから、これはほんとうにごく特別な場合を除いてははっきりしております。大法廷では、明白な基準があるとき、あるいは一定の場所において合理的な基準のもとに厳密に最小限に抑制したときだけこれは合憲であるということをいっておるわけです。東京護憲連合申請をして、そしてしかも憲法二十周年記念、これは社会党中心でありますから、これはベトナム反戦も全部入ります。おそらく政党が中で行動する問題なら、これが入らないことはない。ただ比重関係が違う。比重関係が違わないならば、二十周年記念なんてタイトルをうたう必要はないのです。また課長答弁によりますと、東京では星野さんの代理とか称する人が来て、口頭で何回か社青同の諸店が、学生の諸君が入るらしいというような報告を聞いた、これを基礎にデモコース変更条件を付した、こう言っておるわけです。デモコース条件は、これは三条に規定された、これは一年以下の懲役になる罰則の発動をするわけだ、しかも公安委員会が直截する事項なんです。これは一体だれがこれを許可したのですか、そのときに公安委員会は開催されましたか、それについてお答え願いたいと思います。
  20. 三井脩

    三井説明員 普通東京公安委員会は週に一回金曜日に開くわけでございますが、本件が提起されまして、条件づきで許可をする、この内容国会ともからみ、重要な問題であるということで、警視庁当局で、臨時の公安委員会を開いていただきまして、これにはかる必要があるということで、本件につきましては二回公安委員会を開いて審議を願いました。その結果でございます。
  21. 依田圭五

    依田委員 一つお聞きしたいのは、この集団デモ行進というのは、一体定義として何名から集団と規定をしておりますか、またその業種については無制限にこれを考えておりますか、公安条例解釈の問題ですが、これについて長官の御意見、五人でも十人でもいいのか、一定基準から上でなければならぬのか、定義についてはっきりお答え願いたい。
  22. 新井裕

    新井政府委員 条例の上では、東京都は何名から上が集団行動であるというようなことは規定いたしておりません。  なお、先ほどお尋ねがありまして、お答えしていない部分でありますけれども、三十五年の判決を見たって、集団示威運動というのは、原則として許可しなければいけないのだというような御意見でありました。まさにそのとおりでありまして、寺尾判決の中にも一引用されておりますように、四十年中には千百七十件という集団示威行進が行なわれておるということを引用されておりますように、私は相当そういうデモというものが許可され、実際に行なわれ、効果を発揮しておるというふうに考えております。
  23. 依田圭五

    依田委員 それでは課長に聞きましょう。あなたは実際に事務処理関係に立って、一体どのくらいから集団行進なり、あるいはデモとしてこれを処理しておりますか。もし公安委員会の内規あるいは通達があれば、それを示してもらいたい。二人以上なのかどうなのか、複数なのか、単数ではないと思うのだが、はっきりしてください。
  24. 三井脩

    三井説明員 人数は具体的にきめておりませんが、現在まで扱いました例によりますと、最低限は約四十名でございます。本日行なわれます六・一五記念の東大の国史研集会並びにデモにつきましては、これは集団行進でございますが、約四十名であります。いままで扱いました中では、大体その程度が最下限かと思います。
  25. 依田圭五

    依田委員 この数の問題は、私は非常に重大な問題を含んでいると思います。というのは、あとで触れますが、総理大臣異議申し立て理由書の中に、非常に包括的な推測というか情勢判断が出ておるわけです。今回申請された護憲連合というのは、決して学生さんやなんかじゃなく、社会党中心になる団体で、千名足らずです。三千名というのは、あなたのほうに対してどういう筋から入ったか知らぬが、護憲連合責任を持っておる数は千名なんです。これはマキシマムなんです。それから上へこえることはない。上へこえたときに警察庁のほうはその責任者に対して異議を言えばいいのであって、そういうような状態の中で行なわれているということが——私はこれからだんだんに触れていきたいと思いますが、その前に、当日は土曜日だったのです。猪俣議員が触れられましたように、一切の本会議委員会もない、あるいは週末でありますから各代議士は大かた帰省されておった、そういうような情勢の中において、どうしてもこの問題が公共秩序に対して心配である、あるいは明白にして現存する危険がある、どうしても司法権に対して総理大臣異議申し立てという非常手段を使わなければならぬという判断を、何で土曜日の午後に対してあなたがお持ちになったか、ここではっきりお答え願いたいと思います。
  26. 新井裕

    新井政府委員 私からお答え申し上げます。先ほど護憲連合の性質といいますか構成員についてお答えをいたしましたが、ただいまお尋ねがありまして、たとえば愛知県の条例では五十人以上だというようなことをはっきり書いておるのもございますが、課長お答えいたしましたように、四、五十名というところが一つのめどであると思います。また現実にそれ以下のものがございませんので、理論的にはいろいろ問題がありましても、実際はそれで片づいておると思います。  それから国会周辺の問題につきましては、そういうことももちろんございますけれども、私どもはいままでの経験から考えて、国会周辺は静ひつを保つべき区域である。したがいまして、土曜日であるとか日曜日であるとかあるいは委員会があるとかないとかいうことは、われわれが知り得ることにも限度がございますし、二十四時間前に許可をしなければなりませんので、そこいらは一般的に理解をいたしまして、そこを御遠慮願うということでいままでやっております。公安委員会許可もそういうような変更をいたしまして許可をいたしておりますので、ぜひそういうことで皆さんも守っていただきたいという気持ちで申し上げておった次第でございます。
  27. 依田圭五

    依田委員 土曜日ですから人通りはないわけであります。会議もない、会期中ではありましても事実上閉店、休業の状態になっているわけです。そういうものに対してもなお包括的な、国会周辺であるからというので禁止をする、許可をしない、こういう姿勢というものはこれからも長官おとりになるのですか。
  28. 新井裕

    新井政府委員 ただいまのお尋ねのように、原則としてそのような方針でまいるのがしかるべきものだと思っております。
  29. 依田圭五

    依田委員 ではちょっと聞きますが、従来国会は最高の機関であるといわれて、聖域だというような意見があります。確かにそれに近い重要性を持っておるわけなんですが、長官国会聖域だというようにお考えですか。
  30. 新井裕

    新井政府委員 私は聖域ということばを使ったことがございませんので、聖域というのがどういう意味を持っているのかわかりませんけれども、おそらくあのことばは翻訳したことばではないかと思います。そうだとしますと、キリスト教の中にそういう観念がございますけれども、私どもはそういうような宗教的な意味を付した聖域であるかというお尋ねであれば、そうではないと思っております。初め「セイイキ」ということばを聞きましたときには、私は静かなる地域静域、クワイエット・ゾーンということばがございますから、あるいはそういう意味で言っているのかと理解いたしておりましたけれども、そういう符牒は私どもは別に考えておりません。要するに国会審議というものは、公正に冷静な雰囲気の中で行なわれるのがいいのだ、たとえば国会に対して国民意思表示するのは請願という手段を許されておりまして、その中にも、請願は静穏に行なうのがいいのだということを法律としてきめておりますから、それが私は国会への意思表示ではないかというふうに考えて、そういう解釈をとってまいったわけであります。
  31. 依田圭五

    依田委員 聖域というような抽象的な、概念の不確定なことばをここへ持ち出していろいろ討論してもしかたがないのですが、決して静かな域というのじゃなくて神聖といったようなところだろう、こういうような理解長官がお持ちになって、その上で静ひつを保つ、けっこうであります。ただ昭和三十七年にですか、当時国会周辺デモ規制法案が衆議院を通ったけれども、参議院で流産いたしました。あのときに流産の理由が二つあったわけなんです。一つは、国会議員の通行の妨害になる、これに対しては、別の法律をもって守ることができる、一応そういう意味だったのですね。もう一つは、あまり国会を神聖視して、それはけっこうですが、そのあまりに国民との間にたいへんな壁をつくる、国民との間の距離があまりにも遠くなり過ぎるということを非常に心配いたしまして、参議院ではとうとうあれが廃案になって流れておるわけです。いま国会は、下は地下道がある。あるいは梯団でもって組んでおる、その梯団の長さでもって一応事前にこれを規制しておる。こういうような情勢で、数は千人足らず、マキシマム千人だ。これに対する警備の出動は七百人からの警官がやっておる。しかも社会党中心になる憲法二十周年のお祭りの記念行事の行進である。憲法二十一条、表現の自由を保障されたこれらの納税者の基本的人権をあなたはどういうふうに守りながら、またどうして国会の立場も考えるかというのが今回のおそらく総理に対する補佐の処置であろうと思うのですが、私はどうも聖域に対する考え方が、少し国民のほうを不在にしはせぬかということを心配するのです。その点についての長官の御意見をお聞かせ願いたい。
  32. 新井裕

    新井政府委員 先ほど申し上げましたように、杉並コース十何キロのうち、国会周辺は一キロちょっとのところでございますから、私は全体を見通せば十分に表現の自由を発揮し得たと思います。ただ依田委員からもお話がありましたように、この団体はいい、この団体は悪いというデイスクリミネートをするのもどうかという御意見でございますが、私どももそういう意味では、一定条件のもとにおいては国会は御遠慮願う、それで十分に表現のしかたが考えられるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、今度のことにつきましても特に別のことを考えたわけではありませんで、そういう観点からであります。
  33. 依田圭五

    依田委員 おかしいじゃないですか長官、大体四十人ぐらいでもって、一応慣例としては許可しておる。三十人があれば三十人、二十人があれば二十人、要するに集団行進条例の範囲内において、政治、経済、労働、世界観を訴えるという行進であれば許す、これはきまっておるわけです。かりに御婦人の団体がわずか五人か十人で申請をしてきたら、一体長官はこれに対してどうなさいますか。許可するのですかしないのですか。デモコース変更させるのですか。静ひつ保持の点からどうなんですか。これに憲法の問題ですからはっきりお答えを願いたいと思います。
  34. 新井裕

    新井政府委員 ただいまの御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、そういう事例がございませんので、たいへん抽象的にしか考えられませんが、たとえばそれ一つだけとれば依田委員の御指摘のとおりでありましても、それに関連するものが連続前後にあるということがもしあるとすれば、そう簡単に判断はできない。そういうことも全然ない。それからまた、およそ構成員についても全部知られておるということでありますれば、私はおそらく、その場合に臨まなければはっきりしたお答えはいたしかねますけれども、相当平穏かつ秩序あるというあの表現どおりのものと認定できるんじゃないか、こう思います。
  35. 依田圭五

    依田委員長官 少しおかしいと思いますね。公安条例の問題に関連してあとで聞きますが、この公安条例の許認可は、条件をつけるのは、ほとんどあなたの部下の、これは集会警備関係の担当官が実際にやっておるのです。事前抑制やあるいは手続もやっておる。いま警察庁長官のお立場にあるあなたは、形は公安委員会の決定をする事項でありましても、従来の無数の事例に照らして、婦人方のごく少数のデモに対して、ここでそれは許可できるんだ、できるものならできるというような積極的な御答弁を私は当然期待しておるのですが、それをもなおいまのあなたの立場ではっきり申し上げられないということになれば、私は非常に不満に思います。もう一ぺん重ねて御質問申し上げます。
  36. 新井裕

    新井政府委員 要件がすべてそろっておりますれば、はっきりした理論的な答弁もできると思いますれども、もしかりに依田委員のおっしゃるように、先ほど私はそういうつもりでお答えを申し上げたつもりでございますけれども、単純にそれだけ切り離して考えられる性質のものであるというものでありますれば、おそらくそういう許可すべきものの事例になると思うのでありますけれども、ただそういうことはいろいろな要件のうち、その人数が少ない、婦人であるというだけを取り出してきて、はたしてそういうことで、現実にそういう場合が生じて危険がないというふうに判断できるものかどうか。これはほかの条件もある場合がありますから、そういう場合も含めて一〇〇%全部いいということは私はちょっと言いにくい。しかし先ほど申し上げましたよううに、切り離して、そういうほかの要件が全然考えられないということであれば、許可すべきものだと思います。
  37. 依田圭五

    依田委員 どうも長官ことばは形式的に非常に慎重——はいいのですが、私はその答弁の裏に、公安条例に対する警察官のあり方がどうもほの見えてならないのですね。確かに他の要件がよければ、その時点については了解をしたいという。これはデモなんですよ。これは集団行進なんです。政治、経済あるいは労働、世界観に関する世論に訴える行動なんです。これは憲法にさかのぼる基本的な人権の行使なんです。女の方なんです。少数の人間なんです。あるいはパーマネントや美容師やいろいろあるのです。そのほかに一体どういう心配があるのです。公安条例では六カ条のあれを付しておりますが、あなたがそれほど慎重に条件条件——これはけっこうであります。しかしどうもそういう言い方の中に、何でも集団行進に対しては条件をつけるんだ、公共の福祉はもっと重要なんだ、こういう形なんですね。公共の福祉は、これが基本的な人権をお互いに調整する権利というのを発動されるときには条件があるのです。明白にしてはっきりした合理的な基準に従わなければならない。どうもそちらのほうばかり力を入れて、国民の正当な権利、集団行進、示威行進に対する権利を抑圧するような姿勢を私はこの答弁の中から見るのですが、もっと国民中心に、納税者を中心に、個人的な人権の擁護の側に警察が立つという角度から、この問題についてもう一ぺん御答弁願いたいと思います。
  38. 新井裕

    新井政府委員 先ほど申し上げたことで大体おわかり願ったと思うのですけれども、ただそれだけ一つ切り離しておることであれば私は許可すべきものだ、こう申し上げたのであります。ただ、おまえは少し神経衰弱だとおっしゃれば、そうかもしれませんが、千人でやるところを十人ずつ区切って許可を持ってくる。おまえはこの間依田委員に十人はいいと言ったじゃないかというようなことにされると、条件というものがもしそういうことであるならば、それは全体として考えなければいけない、こういうことを申し上げておるだけでありまして、先ほどから御設例の場合に、それ以外の条件が何もなければ許可すべきもの、こう思っております。
  39. 依田圭五

    依田委員 水かけ論をやってもしようがありませんから、その辺で次に進みたいと思います。  総理大臣異議申し立てについての理由なんですが、これはおそらくは総理大臣が自分でお書きになったわけではなくて、警察庁公安委員会のほうでやったんだと思っておるわけなんですが、形式的に——総理御自身の起草だということになれば何をか言わんやであります。総理大臣の出席を求めざるを得ないのであります。この総理大臣異議申し立てなんですが、これは行政事件訴訟法二十七条の三項並びに六項において厳密な制約を受けております。公共の福祉またやむを得ざる場合でなければ異議申し立てはしてならない、またそれに理由をつけなければならない。この理由書なんですが、私はこの理由書を紙で約二枚、四百字詰め原稿用紙で一枚半くらいです、読んでみた。ほとんど全部が昭和三十五年の大法廷判決の引用なんですね。一般的な情勢判断をする大法廷が、全国をながめ回して一般的な情勢判断をするときの推測の情勢判断です。ちょっと読んでみますと、「この場合は平穏な集団であっても時には興奮激昂の渦中に巻きこまれ甚しい場合には一瞬にして暴徒と化し勢の赴くところ実力によって法秩序をじゅうりんし、集団行動指揮者はもちろん、警察力をもってしても如何ともし得ないような事態に発展するような危険が存在することは群衆心理の法則と現実の経験に徴して明らかである。」右理由によりと、こうなっているのです。前段は非常に簡単です。一枚ない。ほとんどの中心がこれである。その前に「およそ本件の如き」云々と一行ありまして、「多数人の集合体自体の力つまり潜在する一種の物理的力によって支持されていることを特徴とする。しかもかかる潜在的な力はあるいは予定された計画に従い、」これは全部最高裁の文章と同じなんです。「あるいは突発的に内外からの刺激、せん動等によって極めて容易に動員されうる性質のものである。」最高裁の長い判決の中のあらゆるケースでもって起こり得べき最高の情勢をここでもって判決文の中でうたっておる。それをそのまま公安委員会が六月九日に使われた。またそれを、そっくり同じ文章を、総理大臣が鎌倉におられて電話か何かで打ち合わせをなさったのでしょう。これをそのまま地裁へ持っていった。これはこの前の三十五、六年ですか、特例法が改正になりました行政事件訴訟法審議過程において、前後六年間、また小委員会においてもさんざん討議をして、あらゆる問題が、二十七条の問題については、これは司法権に対する行政権の干渉になるから、これは厳重にも厳重にこれをやるべきである、こういうように付帯意見をつけ、そして法制審議会では六年間も討論し、国会でも討論をした。これについて、この事情を知る唯一の材料はこの理由書なんです。これは書きっぱなしなんです。これは制度上、裁判官がこれに対して裁判する余地がないから、一方交通なんです。これは言いっぱなしなんです。これを三十五年のときの一般的な情勢の文書を写し、しかも、それが特定の護憲連合会の千名足らずに対して七百人からの動員をして、十項目にわたる規制をいたした。こういう二十一条に基づく個人の基本人権の発動による集団行進に対してこれを理由にするということは、一体どういうことなんですか。これについて答弁願いたい。
  40. 新井裕

    新井政府委員 先ほどお答えいたしましたように、今度の条件をつけまして国会周辺を通らないようにしてもらいました理由は、要するに原則論でございます。原則論を特に緩和し、くつがえすだけの理由がないということでやったわけでありますから、したがいまして、異議申し立て原則論を申し立てたわけでございます。
  41. 依田圭五

    依田委員 それじゃちょっと申し上げますが、たとえば十人か二十人の、それも御婦人でもいいです。そういう集団行進に対して、これを不許可にしたときに、やっぱりこの理由を使うのですか。原則論を使うのですか。われわれは、そこにある、そこに与えられた条件に対して詳細な研究をし、事情を聴取して、そうして第三者に客観的に納得させるその特定のケースについての異議申し立てが、ほんとうの行政事件訴訟法の二十七条三項、六項が要求している公共秩序のために憲法の二十一条をチェックしてもよろしいという論拠になると思うのですが、それについてどうなんですか。
  42. 新井裕

    新井政府委員 何回も同じことを申し上げまして恐縮でございますが、異議申し立て書そのものは、いま御引用になりましたように、たいへん抽象的、一般的なことでございます。それは先ほど申し上げましたように、根底には、原則論として、国会の開会中は国会周辺は遠慮していただこうということでお願いをしたのですから、それを執行停止をすることはやめてほしい、こういうことをその異議申し立て書の中で申し上げております。
  43. 依田圭五

    依田委員 長官、あなたの御答弁には矛盾がありますよ。先ほど極端な例として、婦人団体の三、四十名のことに対しては、他の要件が納得がいけば許可する、許可したいという気持ちを私は持っておると言われたでしょう。そのときにもやはりこれと同じように、一般論、原則論を理由にしてやるのですか。おかしいじゃありませんか。この護憲連合の六月十日のデモ行進に対してコース変更をした。公安条例第三条を発動した。これについては、相手方の人員警察警備能力、そのときの情勢国会審議状況——ばく然と、年がら年じゅう国会のまわりは何でも制限してよろしいなんといったら、国民不在の政治になってしまいますよ。われわれは迷惑しますよ。むしろわれわれは、静ひつなデモ行進がわれわれの近くにあって、それを十分に参考にして審議できることを期待しておるのですよ。そうでなければ民主主義社会はでき上がらないのです。長官のおっしゃるように、何でも一般原則——これはどこへでも、また来年でも再来年でも、この一通を増し刷りしておけば、総理大臣指揮権発動については間に合うじゃありませんか。異議申し立て理由書については、ところと場所だけを変えれば、全部間に合うじゃありませんか。こんなものが理由になりますか。
  44. 新井裕

    新井政府委員 先ほど、三十名の婦人のデモに対してどうするというようなお尋ねでございますけれども、私は、それについて不許可にするとかあるいは異議申し立てをするということを申し上げなかったわけであります。ですから、将来同じようなことがあったときには同じようなものをやるのか、こういうふうにお尋ねでございますが、あるいはそういう同じような事情であればそういうふうにするかもしれませんし、あるいはもう少し趣旨をはっきり、そのときに即したものに言ったほうがいい場合はそういうふうに言うことになると思いますけれども、先ほどから申し上げましたように、国会周辺国会の開会中に通らない、デモの形では通らないようにしていただこうという方針でございますので、もしそういうような形であれば、あるいは将来も同じような形で異議申し立てるということもあるかもしれません。
  45. 依田圭五

    依田委員 長官は、どうも全体の御答弁の姿勢といいますか傾向みたいなものが、われわれに納得できないのですよ。まず第一に、国会周辺は何が何でも許可しないのだ、あるいはしたくないのだ。これはどこの方針かだれの方針か知りませんが、そういうことを言うわけです。その先入主がある。予見があって、そして条件判断する。ですから私は心配しているのです。ですから、それじゃもっと全く極端な例を申し上げましょう。たとえば四十名は実際の申請があったから、これは一応実例だ。じゃ四人だったら、これはどうなんですか。パーマネントの四人の支部長が、女の方が申請をして出てきたら、これは一体扱いは現実にはどうするのですか。これに対して実際どうするのですか。
  46. 新井裕

    新井政府委員 先ほどお尋ねのうちお答えが漏れている点がございましたから、補足いたしますと、国会と民衆を隔離するのかという御意見でございますけれども、私どもはそういうことは毛頭考えておりません。
  47. 依田圭五

    依田委員 質問に答えてください。
  48. 新井裕

    新井政府委員 先ほどのお尋ねをちょっと補足いたします。  したがいまして、そういう見地からものごとを考えておるわけでありませんのは、たとえば請願のための集団行進というものは現に認めるつもりでやっております。  御設例のことは先ほど申し上げたことで尽きておるのでありまして……。
  49. 依田圭五

    依田委員 いや、請願じゃないですよ。私は示威運動について聞いているのですよ。
  50. 新井裕

    新井政府委員 ほかの条件が全部なくて、単なる四、五人の集団でやるということであれば、許可すべきものだということをお答えしたつもりでございますので、それで御了承願いたいと思います。
  51. 依田圭五

    依田委員 その問題はもっとやるべきでありますが、時間がだんだんなくなりました。どうもおかしいですね。実際、長官のあれは全然了解できないです。非常に……(「やむを得ないとは言えない」と呼ぶ者あり)言えないです。一般的な原則を掲げて、しかも三十五年に通用した紙をさらにことしも、九日も十日もこれを使って、これでもって理由が十分だ、こういうようなことは重大な問題だと思いますよ。公安条例については全国で約八件の高裁ないし地裁の違憲判決が出ておるですね。ごく最近も、五月十日に、二年間の時間をかけて、日韓デモに対して違憲判決が、一カ月足らず前に出ているのです。それがすべて長官のいまお答えになったようなことに関連して、公安条例第三条の条件をつけるかどうかに関連して、これが乱用であってはならない。限界を越えてはならない。越えたら直ちにこれは二十一条の違反なんだ。警察のほうは、これを越えたら直ちに逮捕するわけですね。それですぐに懲役にかけるのだ。納税者を懲役にかけるわけだ。事は重大だから、これを慎重に扱ってもらいたい。この報告書、理由ですね。これに対して裁判で救済がないから、一方交通ですよ。これはだれかがプリントして届けて、地裁に持っていって終わりなんだ。倉庫へほうり込まれて終わりなんだ。二十七条三項、六項の理由書は出しました。だれも追及する余地はない。裁判所もできない。法治国家において、三権分立の国家において方法がない。ないからこそ、われわれはこの扱いについては慎重の上にも、慎重を期してもらいたいということを言っているわけです。  私個人がこの委員会でいろいろ質問してもまたあれですから、関連いたしまして、この問題について世論がどう考えているかということについて、若干長官の御意見をお聞きしたいと思います。  大体世論を判断する方法としては選挙その他ありますが、当面そういうことはありませんので、やはり大新聞の論調——世論調査、抽出あたりによればけっこうですが、それも時間がないので、大新聞の世論を若干御披露いたしますが、十一日の朝日はこういうことを言っておるのです。「しかし、司法の決定したものを内閣がみだりに取消すようでは、司法の権威を引きずりおとし、」こういうことを言っておるわけです。また読売は、同じ日に、朝刊ですが、「それほど緊急な事態でもないのに伝家の宝刀をぬいたものである。また、「公安条例運用に関して、行政庁と裁判所の間に、これだけ判断の差がある限り、問題はつぎつぎ起こりかねない。」こういうことを言っておる。それから毎日では、「政府もまた、行政事件訴訟法による法律上の権利を軽々に発動することによって、司法権を圧迫し、表現の自由の権利を侵害する恐れのあることを少しでも一反省したであろうか。むしろ、このような法律的権利を発動させねばならぬようなことが、なぜ起こるのかという点についてまず政治的な責任考えるべきであろう。」これは毎日ですね。それから同じく十一日の読売新聞は、「敵は本能寺で、きたるべき安保論議をめぐるデモ騒ぎを考えてのことかも知れないが、すくなくとも影におびえて宝刀を抜いたという印象はぬぐい切れない。」また次のサンケイにこういうことを言っているのですね。「率直な印象としては、いわゆるニワトリをさくのに牛刀をもちいた感じがないでもない。」と言っております。また朝日は、これは夕刊でありますが、評論家の臼井吉見さんにインタビューをしたところが、お答えの中に「朝、新聞を見てちょっと異様だ。こわいという感じがした」こう言っております。これが今回公安委員会委員長あるいは警察庁がその責任の窓口といいますか、担当の事務局になりまして一応鎌倉においでになる総理大臣に連絡をしてとった、地裁判決、杉本判決の処置に対する反響なんです。これらの大新聞に出ました反響に対して、長官はどのような姿勢といいますか考え方をお持ちですか、これは少し明瞭に聞かしてもらいたいと思います。
  52. 新井裕

    新井政府委員 いま依田委員の読み上げました論説その他私も拝見いたしました。そういうことも書いてありますし、たいへんむずかしいというような意味のことが前提になっておるようでありまして、ことにこわいような感じをしたというのは、私は非常にこの制度に対する誤解がある。といいますのは、何か判決がありまして、それを行政がくつがえしたというような感じを持たれたのではないかと思います。これは一種の仮処分でありまして、純行政的な性質の処分というものに対して異議申し立てをした、したがいまして判決に対する異議申し立てということではない、そういう点についての誤解があるのじゃないか。といいますのは、先ほど申し上げましたように年間東京だけでも千二百件くらいのデモが行なわれて、現実にあるわけでありますから、これが全部頭からできなくなったような、あるいはできなくなるような感じをしたのじゃないかというふうに考えております。われわれももちろんそういう世論というもの、あるいは一般国民の気持ちというものにすべて無縁であるつもりは毛頭ございませんけれども、そういう意味では事情を十分知らない意見もあるのじゃないかという感じをいたしました。
  53. 依田圭五

    依田委員 事情を知らない意見がある。私は個人の意見や何かを言っているのじゃないのです。大新聞の意見、論説を申し上げておるわけなんで、私個人が、あるいは二、三の人が言っておるわけではないのです。こういうものに対して、長官がやはり謙虚にお考えになるという姿勢があれば、われわれも非常に安心をするのですよ。そうじゃないのだ。地裁の処分というのは、あれいうは判決じゃないのだ、だからかまわないのだとようないまの御答弁内容では、これからますます——しかも前段において私が御質問を申し上げましたように、古い理由書、包括的な原則的な理由書でもって、すべての問題を理由づけして、総理大臣異議申し立て権を行使する、これは非常に心配があります。これについて将来どういうようなお考えを持っておるか、これからも再々こういうような事態が出たときには、相も変わらず同じような原則的な理由でもってやるのかどうか、この一点を御答弁願います。
  54. 新井裕

    新井政府委員 参議院の本会議で国家公安委員長からもお答え申し上げておりますように、ケースごとに具体的に判断をしてやろうということを申し上げております。私どももその方針を受けてやってまいりたいと思います。
  55. 依田圭五

    依田委員 また元の質問に戻りますが、ケースごとに判断をするのでしたら、なぜ総理大臣の取り消しの理由書に載っけなかったのですか。何でいつでも間に合うような包括的な問題だけでもって、一片の報告でもって終わらしたのですか。
  56. 新井裕

    新井政府委員 この間の件につきましては、先ほどから申し上げましたように、一般的な原則をもって、これはぜひ変更条件のままでやらしてほしいということを申し上げたわけでございます。
  57. 依田圭五

    依田委員 それじゃまたあえて聞きますが、次回からは、個々のケース・バイ・ケースというお答えがありましたから、それには詳細な理由を付して、総理大臣異議申し立て理由書といたしますか。それについてお答えを願います。
  58. 新井裕

    新井政府委員 異議申し立て書はそれほど詳細に書くべき性質のものではない。先方の仮処分の決定に対して、相応した形でやるべきものだと思います。したがいまして将来どういうふうにやるかということは、私はここで何とも言明いたしかねるのでありますけれども、少なくとも依田委員がさっき御指摘になりましたように、不動文字を刷って日にちだけ入れればいいという考えでは毛頭ございません。
  59. 依田圭五

    依田委員 少しおかしいじゃないですか。それじゃ国民は納得しませんよ。かってに権限の行使をしておいて、しかも積極的な行使をしておいて、その理由についてはそんなに量は要らないのだ。どこからそんな規定あるいは慣例あるいはそういう理論が出てくるのですか。
  60. 新井裕

    新井政府委員 別に法律にそう書いてあるわけではございませんが、私どもはそれで十分ではないかと考えております。
  61. 依田圭五

    依田委員 この問題は総理が次期常会にこれを報告して、国会に了承を求める案件なんです。もう終わったら、その時点において救済の余地がないのです。その時点において裁判の対象にも何にもならない。一方交通の理由を、あなたは先ほどケース・バイ・ケースだと言う。その判断を示さずして、こういう理由書をまた次も次も発行するというようなことはどういうことなんですか。
  62. 新井裕

    新井政府委員 先ほどからお答え申し上げておるところを繰り返すだけでございますけれども、もちろん御指摘の国会に対する報告もまた、これをそのまま出すというつもりは毛頭ございません。それにつきましては、もう少し詳細いろいろな実情その他を御報告すべきものだと思いますけれども、とっさの間の、ああいう夜九時ごろになりまして決定がありまして、それに対して異議申し立てをするということでありますと、そう詳細なものをとっさの間につくるということもなかなかできかねる。それがまたその仮処分及び異議申し立ての性質だと思いますので、これはおのずから性質的に制約があって、簡単なものにならざるを得ないと思っております。
  63. 依田圭五

    依田委員 それはまたあとの同僚議員に補足してそれをやっていただくことにしまして、公安条例について一言お聞きしますが、公安条例運用の中で事前調整、行政指導的な性格を持ってだいぶやっておられる。本来公安委員会がそれは決定しなければならない。それに対して窓口でもって一応条件をつけておる。これは寺尾判決の中では違憲だというような断定をいたしておるようでありますが、これについての考え方並びにごく最近、ことしはなんでしょうが、去年あたりの検挙者数、特に身柄送検と書類送検、それから微罪で釈放したケース、それから全体の申請件数、これだけの条件を付した件数、これはきのうのお願いしておいたからわかっておると思いますので、ひとつ報告願いたい。
  64. 川島広守

    ○川島(広)政府委員 お答えいたします。  お尋ねのいわゆる事前折衝でございますが、お話にもございましたように、事前折衝と申しますのは一種の行政相談でございます。現実に御案内の現都内の交通事情あるいはまた複雑化しました社会生活等から考えますれば、やはり主催者の側で集団行動を行ないます場合に、その進路はもちろんのこと、その周辺の一切の事情について知悉しておられるわけではございません。そういうこともございますので、事前に主催者のほうから希望なりあるいはまた要求なりいろいろなものがたくさんございます。そういうようなものを警察といたしましては事前にいろいろと話し合いまして、そこで御希望のような集団行動が事故なくかつ円滑に行なわれますように、場合によりましては勧告といいますか示唆といいますか、申し上げることもたくさんございます。おおむねの場合において、寺尾判決ではいまお尋ねのようなこともございましたけれども、また同様東京地裁の数多くの判決を見ましても、そのようなものがいわゆる強制威迫にわたってはいけない、その限度を越えない、あるいはまた別な表現で申しますならば、事前折衝がなければ一切許可を受け付けないというようなことでないならば、たとえば平易なことばで申しますれば、申請する自由が担保されており、さらにはまた受理する保障があるというようなことでありますれば、繰り返しますが、それが強制威迫にわたらない限度であれば、それは認めてしかるべきであるということは他の判例が認めておるところでもございます。したがいまして、実際の運用といたしましては、いま申しましたような寺尾判決とは違いまして、実際にはそのほうが主催者の側にとられましてもたいへん便宜を受けることが多いというのが今日まで運用してまいりました実績でございます。  それから、お尋ねの件数でございますが、東京都内の四十一年の分だけを申しますと、まず集団示威運動、これは千百五十件でございます。不許可は一件もございません。ついで集団行進でございますが、これは四十一年度中百二十件でございます。集会が三千三百九十三件、全部合計いたしまして四千六百六十三件という数字に相なっております。それから、検挙者の問題でございますが、同四十一年度中でございますけれども東京におきましては検挙件数といたしまして二十八件、人員にいたしまして九十四名に相なっております。さらにお尋ねの起訴件数あるいは身柄拘束、時間別などについては追跡して調査しておりませんので、手持ちがないわけでございます。
  65. 依田圭五

    依田委員 事前折衝で条件を付した件数はどのくらいですか。
  66. 川島広守

    ○川島(広)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、事前折衝の段階において条件を付したものはございません。
  67. 依田圭五

    依田委員 これは条件を付したというよりは、条件を自主的にのんだというか申し出たというか、そういう形をとっておるわけです。公安条例で不許可にすると、都議会に報告をして警視庁は説明をしなければならない。いま警備局長のお話だと、不許可件数は千百五十件のうち一件もなかったというけれども、これは全部事前折衝の段階で条件をつけられる。東京都の公安条例の場合は三条ですね、三条に六項目ある。これについて警察の窓口のほうで、こうしなさい、ああしなさいと言うわけです。実例は、先ほど私が最初に聞きましたように、この護憲連合の千名足らずの二十年の記念デモ行進に対しても十項目もつけている。歩くことについて、梯団の数について、梯団の間について、旗ざおの問題について、プラカードの問題について、こういうように条件をつけておるわけです。最高裁で予想いたしました最高の騒乱状態のときの、マキシマムのときの情勢に応ずるようにこれはやっておるわけですね。非常に神経過敏はけっこうでありますが、少し無理があるんじゃないか。全部事前折衝で窓口で処理をしておる。申し出たものは公安委員会に行くべきものが、全部書類としては警備局長、警備部長のところに行って、それがまた集会のほうの係のところに行って、そこで全部やっておる。地元の警察署の窓口で全部条件をのまされておる。七十二時間しかありませんから、動員をかける場合にはあっちこっちに連絡し、電話をかけて集めたりしなければならない。時間的にどうしようもないから主催者のほうはがまんをして、全部これを聞いておるわけです。ですからちっとも表に出てこない。このデモをするあるいは集団行動をする権利というのは基本的な権利なんです。常に極端な場合の一、二を事例に引き出して、パーマネント屋さん、理髪屋さん、魚屋さん、八百屋さん、御婦人、こういった示威行進まで同じように窓口で全部やって、交通の問題だ、あるいは交通事情なんだというようなことを大義名分に、全部条件を付しておるのですね。ですから埋没して表に出てこない。ですから、千百何十件のうち不許可はないなんていうことになっている。これは不自然じゃありませんか。千百何十件のうち不許可一つもない、おかしいですよ。ケース・バイ・ケースで真剣に長官はやると言っておる。善良な市民が申し出るケースの中でも、これは全部事前の折衝をして、事前抑制をしておるのです。寺尾判決は、この事前抑制は違憲だと言っておる。これは基本的人権に対する制約だと言っておりますね。しかもこれはだれがやっておるか、窓口でやっておる。これをどういうふうに反論いたしますか、お聞きいたしたいと思います。
  68. 川島広守

    ○川島(広)政府委員 条件の問題でございますが、いまお尋ねございました今回の東京護憲の場合は、お話のとおりに路線変更条件を認めまして、十項目あがっております。依田委員はせっかく御案内でございますから、詳しく申し上げる必要はないかと存じますけれども、いまあげました十項目条件というものは、いずれも最高時の最も危険とされるような急迫した事態におけるそのままだとおっしゃいましたけれども、そういうようなことはございません。試みに、いま御指摘の条件をつける場合のたとえば三項の交通秩序維持に関する事項、こういう問題に限って例を申しますならば、現在の都内の交通事情は御案内のとおりでございます。現在百四十万台の車があり、月間一万ずつふえておる。しかも随所において交通渋滞が起こりがちな都内の事情におきましては、どうしてもこの交通秩序維持に関する事項等につきましては、量において多いのみならず内容においてきびしいものがつけられることは、デモ参加される方自身の安全のためにも必要だろうと思うのです。それからまた、最初にあがっております秩序保持に関する事項として、指揮統制を徹底していただきたいというような問題につきましても、これは先生がせっかく御案内でございますように、やはり何千名に及ぶ多数の人たちが集団行動を行なうわけでございますから、そこはおのずと主催者側において自主統制をおやりになると、われわれはそれに期待をしておるわけでございますが、そのようなことが行なわれないならば、まことに個々ばらばらな、いわゆる烏合の衆と化して、おもむくところ一般公衆に対して多大の迷惑を及ぼすということは火を見るよりも明らかだろうと思うのでございます。そういう意味でございますから、つけました条件も、われわれの側で長い間の行政経験の中で必要最小限度合理的なものにしぼってつけておる次第でございます。御了解いただきたいと思います。
  69. 依田圭五

    依田委員 よく公安条例については交通事情が援用されるのですが、これは日韓条約デモの違憲判決の中でもはっきり出ているように、交通事情に藉口して並列規制あるいはサンドイッチ規制ですね、こういうようなもの、中へ押し込んで、四列、五列の縦隊に対してまわりから機動隊が二列、三列でもって包むようなやり方ですね、これは交通事情を悪化させこそすれ決して解決にはならない。あるいは一方へぐっと押しつける、こういったやり方、この問題について、公務執行そのものが不存在だといって、みんな軽くなっておる、全然刑になっておらないが、これをどんどん現場警察官が発動しておるわけです。機動隊あるいは警視庁の所管の現場におる交通の関係者がどんどんこれをやって、三条から四条と実力を行使して介入して、五条ではこれに対して犯罪の構成要件はこれでオーケーだからというので、すぐにこれを処罰しておるのです。その検挙者が百名になる。おそらく微罪釈放まで入れるとたいへんな数であります。しかもそれに対してはどういうことになるか。事前折衝を全部やっておる、窓口の折衝で納税者の権利を全部押えつけておる、これが実情であります。都の公安条例ばかりではない、静岡県、あるいはいろいろあると思います。六十もあるわけですが、この中で警察官が随時出動できるというのが半分、三十もあります。届け出なんというものは非常に少ない。こういう状態の中で都の公安条例の場合が今回問題になるわけでありますが、非常に規制対象が不明確だ、規制範囲が不明確だ、こういう点ですね。あるいは公安委員会の処置に対する救済方法、これがないという点、あるいは非常に許可基準が不明確だという点、これがいま学者の間では非常に問題になっておる。我妻さんあたりが、これはもう話にならぬということを討論の中で言っておられる。たとえば一例をあげると、許可の場合には通知が来るけれども、不許可のときには通知が来ない、これは一体どうしますか。この制度に対してどのような御指導を警察庁はなさいますか。
  70. 川島広守

    ○川島(広)政府委員 お尋ねの二十四時間前に通知がない場合にどうするかというお話でございますが、お尋ねのとおりに公安条例の条文そのものの本体の中にはそのことは書いてございません。下級審の判決の中にもたくさんあるのでございますけれども、三十五年一月八日の公安委員会の決定というのがございまして、その他通達、いろいろなものがございますが、そういうものが条例本体と一体となって有機的に運用されておるわけでございます。その中の、いま申しました一月八日の公安委員会決定の中には、通知がなかった場合には自然に許可あったものとしてこれを取り扱う、また現に運用でもそうなっておるのでございます。
  71. 依田圭五

    依田委員 現在、許可しない場合には全部通知を出しておりますか。
  72. 川島広守

    ○川島(広)政府委員 先ほど申し上げましたように、許可しなかったという事例がないものでございますから……。
  73. 依田圭五

    依田委員 どうもおかしいですね。過去において許可しなかった事例はない、だから許可しない場合、将来にわたってそういう規定がないことはかまわぬというこの説明のしかたは、私納得できないのですが、局長はおかしいとは思いませんか。
  74. 三井脩

    三井説明員 ただいまの点、たいへん事務的なことでございますので私からお答え申し上げますが、警視庁で内部の規定がございまして、これにはそれぞれ許可書の様式をきめております。その中には不許可の場合にはどういう様式で出すというような場合もきめてございます。したがいまして、不許可の場合にはその様式を用いまして理由を書いて相手方に送達をする、こういうことになっております。
  75. 依田圭五

    依田委員 許可も不許可もしないまま時間が切れた場合はどうなるのですか。
  76. 三井脩

    三井説明員 ただいま申しましたように、条例には二十四時間前までに許可しなければならないというように明文の規定がございます。この規定を取り上げまして、不許可の場合に二十四時間前までに通知をしなければならないということに解釈できないから、この点は違憲である、つまり救済規定がない、こういう説がございます。これに対しまして東京地裁の判決は、許可の場合でさえも二十四時間前に通知をするというのであるから、この重要な憲法第二十一条に関する権限の行使としてやられる、いわゆる集団行動につきましては、不許可の場合には当然二十四時間、少なくとも三十四時間前までに通知しなければならないと解釈すべきである、こういうふうに言っております。また先ほども局長から申し上げました三十五年一月八日の東京公安委員会決定によりましても、その第六項に、相手方の責めに帰すべき事由がなくて二十四時間前までに通知が行かない、決定が行かないというときには、たとえそれが不許可の決定であっても、相手方は許可されたものとしてやっていい、こういう決定になっております。
  77. 依田圭五

    依田委員 公安条例の議論の中で私がいま申し上げたようなものは、私個人の意見というよりも、むしろ学界ですでに問題になっておることなのですね。それについて従来不許可がなかったというのですが、まあ不許可のような場合には、それはこうする、ああするという内規があるのだ、通達があるのだ、取り扱い規則できめておるのだというお話なんだが、しかし一般の学界というか学者は、そういうような理解をしておらぬですね。公安条例の中には非常に問題点が多い。だから、たとえば規制対象あるいは規制の範囲、これはどうなのですか。集団示威運動というものが何らかの政治的な、あるいは世界観の発表をする行動であるとすれば、公安条例の第一条の一、二の、学生の遠足、体育あるいは通常の冠婚葬祭、これらはわれわれが言う集団行動には全然入らぬわけだ。こういうもの以外は一切取り締まりができるのだということ、こういうような条例のあり方に対して警察庁は一体どう思っておりますか。これは全国の公案条例関係に対してどういうような指導を持っておるのですか、お聞かせをいただきます。
  78. 川島広守

    ○川島(広)政府委員 お答えいたします。  現在公安条例というものが全国に、六十、御指摘のようにございます。規定内容につきまして全部が全く同一ではございませんけれども、事柄が御指摘のとおりに基本的人権にかかわる問題でもございますので、常々その運用については慎重を期するよう戒心をいたしておるのでございます。そこで実際の運用でございますが、いまお話のございましたように、多数の人が集団行動を行なわれるわけでございますから、当然、その集団行動自体が持っております一種の物理的な力と申しますか、そういうものが内包しておるわけでございます。ですからきわめて軽度な一般公衆に対する迷惑というようなものは、当然その属性として認められるべき問題でございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりまするように、それに付し得べき条件というものは、おのずからそこに制約があるというように考えておりまするし、また現にそのようなたてまえで条例を実は慎重に検討さしておるのでございます。さらにまた実際に集団行動が行なわれました場合に、それぞれ先ほど来申し上げておりまするように、現在の都内の事情等にかんがみますれば、一般の公衆が有形無形にさまざまな迷惑を受忍しておる、これは認めなければならないと思います。なお、先ほど申しましたように、軽度のものであるならば、属性として認められるものであるならば、何ら規制の対象になりません。また、さらに実際の問題といたしましては、かけ足、渦巻きあるいはフランスデモ、すわり込みデモなどが起こることによって引き起されるさまざまな事態というもの、そういうものに対しましては、まず最初に、何と申しましても、適切な警告をしばしば発しておりますが、警告を受け入れられない、どうしても警告をのむことができない、そういう場合には制止という手段が次にこようかと思うのでございます。さらにまたその制止をもってしてもなかなかできない、そういう場合には、先ほど設例がございましたように並進規制もその一種であるわけでございます。そういうようなあげく、どうしてもいま申しましたような一連の手段をもってしても結果の回復がなかなかできない、さらにまた実害が非常に大きい、あるいは主催者である指導者の側において、故意にそのようなことを容認をする、あるいは放置をする、そういうような状態になりましたときに、初めて、いわゆる検挙措置が行なわれておるのでございまして、あくまでも御指摘のとおりに、事柄が事柄でございまするので、きわめて慎重な運用をはかるよう、常々中央からも各都道府県に対しまして指示をし、いろいろな事例等がございますれば、その都度必要な教訓なりそういうものを発して運用してまいっておる次第でございます。
  79. 依田圭五

    依田委員 自治大臣がおいでになりましたので、公安条例についてはまた並列規制あるいは圧縮規制、サンドイッチ規制などといういろいろなことばがあります、これらについて御質問したかったのですが、時間がありませんから、大臣に御質問したいのは、今回、この総理大臣異議申し立てによって、一応今回のあれが終わりました。しかし申請者側から言わせると、訴えの利益がないので救済の方法がないわけなんですね。これは非常に困ったことで、この行政事件訴訟法司法権と行政権との間の接点にあって、これはもう先ほど大新聞の論調をしばしば私は引用いたしましたように、非常に関心の深い、特別な、六年間も法制審議会で審議して、さらにそのあと国会でこの一点だけにこの審議が費やされたというわくつきの問題なんです。これについて、申請者側のほうは、あれは六月十日でありますから、十日がたってしまうとどうにも救済の方法がないわけです。これからやりましても、これは宮城前の広場のデモの最高裁の判決があるように、却下されるに間違いない、先例がですね。こういうような利益のない場合に救済方法がないということは、これは一体、大臣は法律上の不備だと思っておられるのか、それともそうでないというようなお考えを持っておるか。単に、総理大臣は行政権の長であるから、最高の判断をここに仰ぐ、これについては、たとえば救済の方法のない場合においても、その判断は神聖不可侵の正しいものなんだ、裁判上の救済がなくてもかまわないのだ、今回の場合ですよ。他にまだ方法が継続して、最終的に保護される場合は別なんです。今回はないのです。期限ですから、十日がたっちゃったらどうにもならぬ。これは法律上の不備なんですか、その点を大臣にお聞きしたいと思います。
  80. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 行政事件訴訟法の法案の審議の過程において、非常ないろいろ御論議があったことは私も承知をいたしております。結果的に、現在の法律、すなわちその中の二十七条の総理大臣異議申し立てというものが、制限は受けておりますが、規定をされておるということでございますので、現在におきましては、そういうものが法の不備とまでは言えないのじゃないか、あれはあれなりの体系を持っておるものではないかというふうに私は考えております。
  81. 依田圭五

    依田委員 私は、今回の処置が法律の不備だということを公安委員長としてお考えになっておられるということになれば、法律の改正なり法律の手直しなりをお願いしたいと思ったのですが、そうでなくて、大臣のお考えでは、これは一貫したものである、あれはあれなりでもって、別に欠陥を持っておらない、一つのケースなんだというお考えでありますから、そこでものごとは非常に重大になってくると私は思うのですが、総理大臣異議申し立てという非常処置というものは、政治的な責任が非常に重いわけですね。大臣がおいでになる前に、私はいろいろ資料を申し上げたり意見を申し上げたのですが、かいつまんで申し上げますと、今回護憲連合申請をいたしました性格集団示威行進というものは千名足らず、実際には二百名ぐらいですね。それから警官のほうは七百人もこれに対して動員をしておる。なお十項目にわたる詳細な条件を付しておる。行進のしかた、プラカードの種類あるいは持ち方、大きさ、あるいは秩序維持に関するいろいろな問題、一々、行進について現場警察官指示を受けなければならぬ。私は、表現の自由に保障されました納税者、国民一般の世界観あるいは政治、経済または労働に関する意見の表明というものは、その自然発生としての集団行動というものは、憲法上非常に重大な保護、最高の保護を与えられておると思うのですね。これに対して制約をするものは、公共秩序だ、福祉だ。しかしそれには現在する危険に対して、明白にして、しかも合理的な基準でなければ、この制約はできないということになっておるのですね。私さっき長官にしばしば質問したのですが、たとえば、かりに御婦人方のようなデモであって、美容師さんあたりのデモであって、税法改正かなんかに関連して、しかも数も一十人か二十人、現在警察庁のあれでは四十名が最低だというから、四十名か三十名でけっこうでありましょう。何らそこに、内閣総理大臣理由書の中に書いてあるように「一瞬にして暴徒と化し勢の赴くところ実力によって法秩序をじゅうりんし、集団行動指揮者はもちろん、警察力をもってしても如何ともし得ない」どうのこうの、こういう形ですね。こういうようなケース、一体公安委員長としてこれはどういうようにお考えになりますか。一点は、そういう御婦人方のごく静ひつな集団デモに対しては許可をされるかどうか。それからもう一つは、条件を付して今回やった社会党中心護憲連合の、これに同数の警察官を派遣して、なお国会に対するこの処置が、土曜日の午後不安であったという点についての御意見判断の基礎をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  82. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 集団示威運動性格については、すでに警察当局からお答えいたしたと思います、要すそに、集団示威運動というものの性格、それは三十五年の最高裁の判決にもありますように、そういう心理的な法則を持ち、過去の経験もそういうものがあるということであります。したがいまして、表現の自由はどこまでも守られなければなりませんけれども、出版、言論による表現の自由の確保のしかたと、こうした一つの多数のエネルギーにささえられてやる表現の自由の確保のしかたとには、そこにおのずから違いがあってよろしいのではないか。それから、したがって、たとえばそういうものを、ある公共性の非常に高い地域には、そこを通らせないというようなことは、これは最小限度のものであるならば許されるのではないかという考え方に立っておるわけでございます。したがって、一方において国会というものが、それは本会議委員会があるかないかというのではなくて、国会という性格からして、それは常に平穏に保たれておるべきである。一方において集団示威運動というものの本質的に持っておる幾多の性格、これとあわせて、国会周辺にはそうした示威運動を近づけないという考え方を持ったわけでございます。したがいまして、例におあげになりました御婦人の少数の集団示威運動という名前でありましても、その構成員がはっきりし、しかもそうしたおそれのない場合というようなものについては、これを禁止することを必要としないのではないかと考えます。
  83. 依田圭五

    依田委員 私はこう思うのです。私の個人的な意見は、この前、国会周辺デモ規制法が参議院で流産をしたときの理由一つは、国会議員の通行が妨害される、これは別な法律でもって処置できるのではないか。もう一つは、国民国会の間に大きな壁をつくるから、そういう壁をつくらないようにするためには、こういう法律をつくってはならないというのが、その主たる理由だったですね。私は、この集団行動については現在ほとんど最高に拡大解釈をして、これを許してやるべきものだという意見を持っておりますが、ただ、きょうは六月十日の時点における総理大臣異議申し立てについての質疑でありますから、そういうようなことを避けて、いま具体的なことをお聞きしているのです。あの申し立て理由書を、先ほど警察庁長官にも聞きましたが、先ほどちょっと読みましたように、一瞬にして暴徒と化し云々ですね、いま大臣のお答えになった、出版あるいは言論以外の特別な極端な場合も想定されるような物理的な力関係も含んでいるんだというお話ですね。これがこの十日の二十七条の三項に基づく総理大臣理由づけとして地裁に送達されて、ここでもってあれが一応いわゆる指揮権の発動というようなことをいわれるような状態になったのですね。これは偶然ですが、三十五年の最高裁判決を読んでおりましたら同じ文章なんです。一言一句違わないのです。最初にまくらことばがあって、三枚くらいの紙なんです。途中から全部同じなんです。それからうしろが、右に述べたとおりというところが、こちらの紙は違っておった。右に述べたとおりの危険が現存するために云々ということで、三枚の紙になっておるのですね。うしろはあと始末ですから、日にちと名前が違うのはあたりまえです。要するに、本文が同じだということですね。これは最高裁の大法廷において、時間的に空間的に無制限デモというものの持っているマキシマムな状態における一般的な情勢を予想して、これに対して書いておるわけです。それを公安委員会が都の公安委員会に対して、警察庁なり警視庁が地裁に対する疎明の資料として提出をしておるのですね。同じ文章をまた今度は一日違って、総理大臣異議というのでまた地裁に持ち出しておるのですね。これはどういうことですか。先ほどしばしばケース・バイ・ケースに従って判断をする、こういうお話があったのですが、一方では、これは裁判の対象にならないから救済の方法がないのです。一方交通で、書きっぱなしなんです。あとは役所のお蔵にほうり込むだけなんです。しかも、納税者は、今回の指揮権の発動なり異議申し立て権の行使についてその理由を聞くことはできないのです。次の常会といっても一年先ですから、もう期限かなくなってしまうのです。こういうことに対して、次からはどういうような理由書をつくるのか、今回の理由書はあれでいいのか、あれで十分なのか、あれでケース・バイ・ケースということについての十分な、納税者に対する親切な、憲法上の国民表現の自由を守るということに適応した理由書とお考えになっておるかどうかを少し具体的にお述べを願いたいと思います。
  84. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 集団示威運動というものはどういうものであるかということは、これは客観的にきまるわけでございまして、したがいまして、集団示威運動というものはこういうものであるということは、あるいは三十五年の最高裁の判決、それでああいうことがいわれておるのでございますから、そういう性格のものであるという表現においては、今回の異議申し立て理由書においても十分であると私は考えます。ただ、平穏を守らるべき国会とその集団示威運動というものをどう結びつけてやっていくかということについては、いろいろその具体的な事例があろうかと思います。いずれにいたしましても、こうした理由書というものは、十分国民の皆さん方に納得していただくような理由でなければならないわけですから、今後もこのようなことがないことを私は希望いたしますが、もしある場合におきまして、あるいは国会において、国会の常会に報告をする場合において、それをさらに詳細にいたすということは今後も気をつけてまいりたいと思います。
  85. 依田圭五

    依田委員 先ほどの答弁で、法律上の欠陥はない、そういうことになって、理由書は、今回は、一般的な六月九日の護憲連合側の情勢についての判断あるいは御自分のほうのこれに対する警備状態あるいは周囲の客観的な事情の分析、こういうものは一切なくて、三十五年当時の最高裁の判決の一部を引用した、それがほとんど全文に近い、こういうような状態です。この内容のない理由書がこういうような形で出されたが、来年の常会は一年も先でありまして、これは報告事項であって議案ではありませんから、言いっぱなし聞きっぱなしで、どうにもならないのです。こういうような情勢の中で、今回とられた総理大臣異議申し立てば非常に責任が重い。六大新聞を全部読み上げましたが、鶏をさくのに牛力をもってするとか、たいへんな判断を大新聞はしております。これに対する法律上の欠陥はないのだというならば、さらに申し上げますが、政治上の責任は一体どうおとりになるのですか。また、失われた訴えの利益のないこの救済に対しては、一体どういうようにこれを保障するのですか。
  86. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 政治上の責任と申しますれば、総理が本会議でもお答え申し上げましたように、今回異議申し立てをいたしたということがこの事態に対処する総理大臣としての政治上の責任を果たしたものだというふうに考えております。
  87. 依田圭五

    依田委員 大臣の答弁内容がないのです。そんなことは六法全書に書いてある。私は、先ほどから警備課長警備局長、警察庁長官にずっとお聞きした。大臣はいまおいでになったらその点はともかくといたしまして、今回の護憲連合申請いたしましたこのケースについて、具体的に総理大臣の措置についてわれわれの判断を申し上げておるのです。こういうようなケースに対して、極端に言うと、御婦人方の十人、二十人のデモにも同じように、しかも、税金の問題か何かに対するマッサージや何かの皆さん方のごくおとなしい、それこそ音一つ立てないような集団示威運動のような、憲法二十一条の基本的人権に基づく申請に対しても、同じように機動隊を出して、同じように簡単な理由書指揮権発動をするのではないか、論理的にそういう結論が出るから、それについては心配だということを私は国民の一人としてここで申し上げて質問しておるわけですよ。大臣のように、あれは二十七条に基づく行使をしたのであって、それは総理大臣責任事項であって答弁の限りではないというような内容お答えであれば、何も私はここでぎょうぎょうしく時間をかけてお聞きする必要はないのです。もっと納税者に対して親身になって、この事件に対してケース・バイ・ケース——これに対しておとりになった措置なんですが、それは公安委員長が補佐をしたわけですから、これに対してもっと親切な、国民の納得する御答弁をもらいたいと私は思います。
  88. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 繰り返すようですが、集団示威運動というものの性格は、前々申し上げたような性格を持っておる。一方国会というものは常に平穏に保たれておらなければならないという要請がある。それらを見比べてあの異議申し立てをやったわけです。なお、国会に対して国民が訴える権利といたしましては、平穏に請願をすることが憲法上保障されております。それで十分に国会に対する訴えはできるものと私は考えておる次第でございます。
  89. 依田圭五

    依田委員 請願の問題と集団示威運動の問題とは関係ないのです。請願請願権の行使ですから、何も混同する必要はない。私は、集団示威運動あるいは集団行進という範疇の中において、いままでいろいろな条件をここで申し上げて、警察側、政府側の考えをお聞きして、それに対する質問をしておるわけです。  まだいろいろありますが、この辺で打ち切りにいたしまして、あとは同僚議員に譲ります。
  90. 亀山孝一

    亀山委員長 細谷治嘉君。
  91. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣は時間がないようでありますから、順を追って質問したいのでありますけれども、そうもいきませんので、まず最初にお尋ねをいたしたいことは、九日の九時ごろ、地裁の杉本判事の決定が下されたわけでありますけれども、それから十一時五十分くらいに異議申し立てをいたしておるようであります。この間どういう動きがあったのか、九時から十一時五十五分までの間の経過を大臣からひとつ具体的に説明していただきたい。
  92. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 九時過ぎに東京地裁民事第二部の決定がありましたことを私は担当の者から承知をいたし、それに対しまして行政事件訴訟法の二十七条による異議申し立てるべきかどうかということについて検討を命じました。一方、これは総理大臣のおやりになることでございますから、静養中の総理にも秘書官を通じまして御意見を伺いました。そうしてわれわれの検討の結果と総理の御意見とが一致しまして、この二十七条の異議申し立てをすべきであるという方向がきまりましたので、それらに対していろいろな理由書の作成あるいは国家公安委員さん方に対するそうした措置をするについての連絡等をやりまして、十一時四十五分ごろ地裁に異議申し立てをしたわけでございます。
  93. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最初私は新聞で読んだときは、地裁の決定に対して総理大臣が国家公安委員長である藤枝国務大臣を呼んで、あるいは田中法務大臣を呼んで、いわゆる指揮権を発動する決意を伝えたように新聞には書いてあったようでありますけれども、一昨日の本会議総理答弁によりますと、いま大臣が言ったように、藤枝国家公安委員長がイニシアをとって静養先の総理大臣意見を伺った、こういうことが事実のようでございますが、大臣は何時ごろ地裁の決定をどういう経路を経て知ったのですか。
  94. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 分数はちょっとわかりませんが、九時過ぎでございます。警備局長よりそういう地裁の決定があったことを電話で報告を受けました。
  95. 細谷治嘉

    ○細谷委員 警備局長から電話で、いずれにしても九時過ぎでしょう、受けて、直ちに検討方を指示なさったのですか。
  96. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 さようでございます。
  97. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そして自治大臣、国家公安委員長としての結論を出して、静養先の総理大臣に相談して、十一時五十五分くらいに行政事件訴訟法二十七条を発動した、こういう経過になっておるわけですね。
  98. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 検討を命ずると同時に総理の内意も伺っておったわけでございますが、われわれの検討も異議申し立てをすべきであるという結論になりましたし、総理もさような意向を伝えられましたので、その後は成規の手続をとり、一方法務省とも連絡をいたし、法務大臣と国家公安委員長総理府の長たる総理大臣にお願いをし、そうして総理府の長たる総理大臣と法務大臣とが内閣の長たる内閣総理大臣に助言をいたしたということでございます。
  99. 細谷治嘉

    ○細谷委員 少しわからなくなった。具体的な問題でありますが、自治大臣としては警備局長から決定を聞いて、直ちに検討するということの公安委員長としての意向を伝えた。検討中に、同時に並行的に鎌倉におる総理大臣の意向を伺った。そうすると総理大臣は、まだあなたのほうの結論が出ないうちに総理大臣としての意向を国家公安委員長に伝えられたということですか、どうなんですか。
  100. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 要するに私どもの検討の結果、異議申し立てをするという結論になれば、それを支持するという意味での御意向が伝えられたわけでございます。
  101. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうしますと、国家公安委員長の結論を総理大臣としては支持する、こういう意向であって、独自に国家公安委員長としての結論を出した、それに基づいて総理は十一時五十五分に行政事件訴訟法二十七条の発動を行なったということなんですね。
  102. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 さようでございます。
  103. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうなりますと、この問題の焦点というのはむろん総理でありますけれども、その中心的な役割りを演じたのは藤枝国家公安委員長だ、こういうことになるわけですね。
  104. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 総理に助言を行ないました責任者は私でございます。
  105. 細谷治嘉

    ○細谷委員 助言を行なった責任者というよりも、総理は国家公安委員長の結論を、どういう結論であろうと支持する、こういう意向が伝えられたそうでありますから、そこでお尋ねいたしたいのでありますが、先ほど質問がありましたように、きわめて抽象的な理由でいわゆる二十七条を発動いたしておるわけですね。大臣、二十七条の抜くべからざる伝家の宝刀を、九時過ぎに聞いて十一時五十五分に発動したわけですから、一体どういう具体的な判断の上に立って結論を下したのか、当時のことをひとつ述べていただきたい。
  106. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 先ほどからお答えいたしておりますように、集団示威運動というものの性格については、要するに多数の一種のエネルギーにささえられて訴えるという形、そしてそのものはときによっては相当混乱も起こりかねないという性格を心理法則の上からもまた従来の幾多の経験からも持っておる。そういうものが一方常に平穏を保たれていなければならない国会周辺に来ることは、高い公共の福祉の問題にかかわるものだという判断をいたしたわけでございます。
  107. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いまのおことばはきわめて抽象的なんですよ。地裁の決定というのは、大体二つの理由から決定をいたしておるわけですね。その地裁の決定の内容をちょっと簡単に読んでみますと、一つは、「「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」または「公共秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合」であったことを認めるべき資料はみあたらない。それゆえ、本件許可につき、進路変更に関し申立人主張のような条件を付したことは、被申立人において前記規定の運用を誤まったもので違法といわざるをえない。」これが地裁の杉本決定の一つ理由ですよ。第二の理由は、「国政審議権の公正なる行使が阻害されるおそれがあり、」というのに対し、結論的に言いますと、「主催団体およびその参加予定者数が前示のとおりであること、」こういうことからいって「前記被申立人の変更にかかる当初の進路国会周辺すべての道路ではなく永田町小学校から国会裏側を経て特許庁に至る道路であるにすぎないこと等にかんがみれば、本件集団示威行進が被申立人主張のように国政審議権の公正な行使を阻害する等のものとは断ずることができない。」この二点をあげておるわけですよ。これについて具体的な判断がなければ、結論が出ないはずです。先ほど依田委員が朗読したような三十五年ごろの古い証文、最高裁の同じ文書を持ち出してきて——こういう決定なんですから、これを反駁する具体的な根拠がなければ結論が出ないはずです。いまのおことばではこれに触れてないでしょう。
  108. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 東京地裁の決定につきまして、まず第一に私ども異議申し立てをしなければならないという考えを持ちましたのは、集団示威運動についてその性格というものを十分把握されていないということでございます。それから第二には、国会周辺の全部ではなくて一部ではないかというけれども、その一部にすら、やはり国会の平穏を保つというところでは、一部であろうと全部であろうと、それは同じではないかという判断にわれわれは立ったわけでございます。また、その決定の中に、いろいろな条件をつけているからいいではないかということをいわれておりますが、そういう条件をつけましても、過去の経験におきまして、集団示威運動というものが相当な紛争を、混乱を起こした事例がありますので、単にそれだけの条件を付しただけで十分だとは考えなかったわけでございます。
  109. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いまの大臣の答弁は、地裁決定について国家公安委員長としての結論を出すに至った具体的な根拠がなければならぬのでありますけれども、きわめて抽象的で、私は納得できない。しかし、ちょうど十二時半を過ぎましたので、内閣委員会との約束がありますから、この質問はきょうは留保いたしまして、あす引き続いてやらしていただきたいと思います。
  110. 亀山孝一

    亀山委員長 了承しました。  次会は、明十六日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時三十四分散会