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1967-05-18 第55回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十八日(木曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 三池  信君 理事 毛利 松平君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 武藤 山治君 理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    菅  太郎君       鯨岡 兵輔君    小峯 柳多君      小宮山重四郎君    河野 洋平君       笹山茂太郎君    砂田 重民君       永田 亮一君    西岡 武夫君       村上信二郎君    村山 達雄君       山下 元利君    渡辺美智雄君       阿部 助哉君    只松 祐治君       広沢 賢一君    堀  昌雄君       柳田 秀一君    山田 耻目君       横山 利秋君    永末 英一君       田中 昭二君    広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵省主計局次         長       岩尾  一君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         国税庁長官   泉 美之松君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策特別会計法案内閣提出第四五号)  登録免許税法案内閣提出第七四号)  登録免許税法施行に伴う関係法令整備等に  関する法律案内閣提出第九二号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二一号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二二号)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案について、学識経験者等から参考人として意見を聴取することとし、その日時、人選、手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、参考人招致を決しました。      ————◇—————
  4. 内田常雄

  5. 内田常雄

    内田委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。小沢大蔵政務次官
  6. 小沢辰男

    小沢政府委員 ただいま議題となりました登録免許税法案外一法律案について、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  初めに、登録免許税法案について申し上げます。  政府は、今次の税制改正の一環として、登録税税負担が最近における所得及び物価水準に適合するものとなるよう定額税率について所要調整を行ない、あわせて課税範囲整備合理化等制度全般にわたっての合理化をはかるため、登録税法の全文を改正し、その名称登録免許税法に改めることとして、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容についてその大要を申し上げます。  第一は、税負担調整をはかることであります。すなわち、現行登録税税率は、昭和二十三年以降据え置かれておりますが、その後の所得及び物価水準の推移を考慮して、これに適合するものとなるよう定額税率調整することとしております。なお、最低税額は、登記等に要する費用及び納税者負担を配慮しまして五百円としております。また、不動産等の取得にかかる仮登記につきましては、その利用の現状と仮登記の持つ機能に顧み、現行定額税率から千分の一の定率税率とする一方、本登記の際はこれを控除することに改めることとしております。  第二は、課税範囲整備であります。すなわち、現在課税されております登記登録とのバランスを考慮しまして、個人の資格または事業開始等の場合の登録、特許、免許等のうち現行課税対象に匹敵すると認められるものを新たに課税対象に加えることとし、その税率現行のものとの権衡をとって定めることとしております。他面、現在課税しております建物の床面積増加による表示の変更登記、船籍の登録、弁護士の登録がえ等につきましては、その登記等の性格に顧みて、課税対象から除くこととしております。  第三は、課税標準及び税額計算簡素合理化であります。すなわち、抵当権等担保物権設定登記の場合の課税標準は、現行法では担保される債権金額不動産の価額のうちいずれか低い金額によることとされておりますが、これを担保される債権金額に統一し、その税率現行の千分の六・五から千分の四に引き下げる等の措置を講じ、課税標準簡素合理化をはかっております。また、借地権等用益物権設定登記等につきましては、現行法ではその設定更新等登記のつどその権利の存続期間に応じ異なる税率によることとしておりますが、これを最初設定登記の際には単一の定率税率を適用することに改める一方、その更新登記の際の登録免許税不動産等一個につき五百円の定額税率に改める等、税額計算簡素合理化をはかることとしております。  第四は、納付方法簡素合理化であります。すなわち、現行印紙納付方式に加えて、国税収納機関に金銭を納付し、その領収証書登記等申請書に添付する現金納付方式を併用することとしております。このほか、還付の手続納税地その他所要規定整備をはかることとしております。  以上のほか、現行法はかたかなの文語体でありますが、これを口語体に改め、また、課税範囲及び税率等を別表に掲記する等、納税者の理解を容易にするよう留意いたしております。  なお、この法律案は、公布の日から二月以内で政令で定める日から施行し、八月一日以後に受ける登記等について適用することとしております。  次に、登録免許税法施行に伴う関係法令整備等に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、ただいま御説明申し上げました登録免許税法案に関連して、国税通則法租税特別措置法その他国税に関する法律並びに登録免許税法に関連する他の法律について、その整備をはかるため、所要規定改正をしようとするものであります。  以下、この法律案内容についてその大要を申し上げます。  第一に、新たに登録免許税を課すこととした登録免許についての手数料は、調査、選考等に相当の実費を要するものを除いて廃止することとしております。  第二に、登録税法登録免許税法への名称変更その他全面改正に伴い、他の法律で引用している登録税等名称整備その他関係法律について所要整備を行なうこととしております。  以上が、登録免許税法案外一法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  7. 内田常雄

    内田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。両案に対する質疑は、後日に譲ります。      ————◇—————
  8. 内田常雄

    内田委員長 所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案並び相続税法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。只松祐治君。
  9. 只松祐治

    只松委員 まず最初に、所得税について若干お伺いいたします。  本年度所得税税収総額、その中における本年度金額伸び人員伸び、そういうものをひとつ簡単にお示し願いたい。
  10. 塩崎潤

    塩崎政府委員 所得税税額は、改正後で一兆一千七百八十三億九千百万円でございます。前年度、四十一年度の補正後の予算額では一兆五百二十億一千二百万円でございます。したがいまして、千二百六十億円ばかりの税額が、減税後にもかかわらずふえておるわけでございます。  納税人員は、昨年は二千百五十八万人と見積もられておりますが、本年度改正後で二千七十五万人、改正により約二百六十万人の減少、こういうふうに見積もっております。
  11. 只松祐治

    只松委員 現状では、人員が若干減っておりますが、税額は御指摘のとおり、今年度伸びます。さらに、これがいま春闘で四千円前後の賃上げが一斉に行なわれつつありますが、四千円として、手当てその他を入れて十六カ月と概算し、六万四千円、まあ六、七万円平均給与が上がっていく、こういうことになりますと、さらに税収総額伸びあるいは人員増大、こういうものが予見されると思いますが、およそどういう推定をなさっておりますか。給与所得中心に……。
  12. 塩崎潤

    塩崎政府委員 給与所得につきましては、私どもはこういうふうに見ております。一人当たりの平均給与は一一%増、人員は四%増、したがいまして、給与所得総額は一五%増、こういうふうに見ております。
  13. 只松祐治

    只松委員 これはもう本年度伸びることを予定されているわけですか、四月から。たとえば春闘でいま言う四、五千円アップというものを、すでにこの一五%というものの中に見込んであるわけですか。
  14. 塩崎潤

    塩崎政府委員 大体過去の経験値から見まして、まあその程度のことはあるであろうということを予定しておるつもりでございます。
  15. 只松祐治

    只松委員 内輪に見積もるというのは確実な方法でございますが、いつも当初の予定よりも年度末になりますと、過去のあなたたちことばで言えば自然増収ということばでありますが、収入も  それから人員もふえてきていますね。いま一応推定はしてあるということですが、本年度どの程度——給与所得事業所得農業所得ずっと、あまりこまかくは要りませんが、特に伸びるのは給与所得一般事業所得だと思いますけれども、どういう推計をなさっておりますか。
  16. 塩崎潤

    塩崎政府委員 給与所得は先ほど申し上げたとおりでございます。雇用におきまして四%、賃金一一%、総体で一五%でございますが、営業所得につきましては一三%、農業所得は三%、その他の事業所得は一五%、それからその他不動産所得資産所得関係を一〇%増、こういうふうに見まして、申告所得税平均一一%の増と見込んでおります。
  17. 只松祐治

    只松委員 いま所得税中心伸びお話をいたしましたが、これは帰するところ、減税減税と毎年おっしゃいますけれども、いまみたいな税収あるいは納税人員伸び、こういうものを見ますと、あなたたちがおっしゃるように、はたしてこれが減税というものであるかどうか。私たちはいつも言うように、税の調整だ、こう言うわけですけれども、こういうものをずっとごらんになりまして、減税を行なってきておる、こういうふうにお思いになりますか。
  18. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、私が税制一課長をしておりました昭和三十年当時も所得税は重いといわれておりましたが、納税人員はそのとき千万人ちょっとでございました。現在、先ほども申し上げましたように、二千万人になっておりますし、所得税税額も三倍ぐらいふえておるわけでございます。そんなところから、毎年毎年減税と言われながら実は減税になっていないのではないかという御疑問を持たれるのは、私ももっともなことだと思うわけであります。しかし、そのことはもう言うまでもなく、私どもが口をすっぱくして申し上げますように、所得水準増加があったということに尽きると思いますが、そのために所得税がこんなような結果になったということと御理解願いたいと思います。  なお、これをもう少しふえんして申し上げますと、先ほど只松委員の御指摘のように、納税人員増加の九割は給与所得者である、千万人から二千万人に伸びたその千万人のうちの九割は給与所得者であって、残りの百万人が不動産所得資産所得、その他の合算される所得申告所得者増加でございます。  これはなぜかという点を私どもが分析してみますと、まず第一に、これは雇用者が毎年百万人、年率四%程度増加があったということが第一の理由でございます。第二は、もう只松先生案内のように、初任給増加若年労働不足関係でふえてまいったために、私ども課税最低限を毎年毎年上げてきておりますが、これは平均賃金程度しか上げてこなかった、ところが、初任給増加というものは平均賃金増加よりも多い、そんなような関係で、初任給を受ける独身サラリーマン納税者に入ってきたということが第二の大きな理由でございます。そこで、先生方いつも、高校卒、中卒ですぐ、あるいは一年たつと税金を納めるのはどういうものであろうかと言われることは、私はこれが大きな原因だと思うのでございます。第三は、もう一つ独身サラリーマン納税者としてふえてまいりました大きな原因は、課税最低限引き上げの形といたしまして、最近は配偶者控除とかあるいは扶養控除のほうに重点が置かれまして、基礎控除だけの課税最低限引き上げがややおくれてきた、こういった傾向でやはり独身者納税者がふえてきた。現在二千万人のうちの九百六十万人ばかりは、税法上の独身者と申しますか、単身者でございます。しかし、この中には、御案内のように、学校を出たばかりのサラリーマンではなくて、例の昭和三十三年から扶養親族所得五万円という扶養親族控除適用要件をいまだに据え置いておりますので、扶養親族でありながら、あるいは中には配偶者でありながら独立の納税者になる、こういった者が相当ふえてきておる、この結果だろうと思うわけでございます。  こんなような関係納税者はふえ、さらにまた課税最低限引き上げはありましても、課税最低限を上回る所得者につきましてはそれほど減税は影響いたしません。したがいまして、税率をあんまり直さなかった関係もありまして、税額は先ほど申し上げましたように三倍になってきた、これはもう所得水準増加ということに尽きるんだろうと思います。  以上の二つの観点から、私ども減税はしておりますけれども所得税におきまして納税人員は倍になり税額は三倍になった、こんなような傾向が見られる、こういうふうに考えております。
  19. 只松祐治

    只松委員 これはちょっと古い統計になりますが、昭和三十年から三十八年程度の、これは給与所得だけじゃありませんが、国民所得税収伸びデータがあります。この七年間に名目所得伸びが一一八・七%、実質所得が九三・八%、これに税収伸びがやはり同じく一一八・七%、これを年平均にいたしますと、名目成長率が一三・二%、実質所得増大が一〇・四%、それに対して、税の伸びというのがやはり一二・二%、こういうふうになっている。この三十八年から二年ぐらいですか、非常に自然増収が続いていますね。去年から落ちている。こういうものを見ますと、まだこれは上がりやしないかと思いますが、いわゆる実質所得を上回って税の伸びというものがここで出てきていますね。  さらに、この税収伸びというのは、いまお話があるように、私が論議しておりますように、もちろん法人税も大きく伸びてきておりますが、所得税伸びというのは非常に大きい、こういうことが見られるわけです。したがって、所得税、わけても給与所得者にとっては確かに名目所得伸びてきておりますけれども物価の上昇その他実質所得から見るならば、この給与所得者実質上の税負担というものは、私は減税ではなくて増税になっているんではないかということが、こういうほかのデータを見ましてもそういう傾向が出てきておりますね。このデータから見てもそう思うのですが、あなたたちはどういうデータをお持ちか知りませんが、こういう経済の成長実質国民所得増大、それに対する税収伸び、こういうものをどういうふうにお考えになりますか。
  20. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、只松先生のおっしゃいましたように、自然増収名目で生じますので、それと実質と対比いたした場合にこんなような関係になることは間違いございません。しかし、このことは増税ということではない、先ほど申しましたように、やはり所得水準増加に応じまして税金がふえた、このことのあらわれだと思います。さらにまた、課税最低限につきましても消費者物価を上回る課税最低限引き上げをいたしておりますので、課税最低限増加を見ましても、私は実質的な減税があった、こういうふうに考えております。たとえば、昭和二十六年から四十二年までの賃金伸び率消費者物価伸び率をずっと比較してまいりますと、また、それと課税最低限伸び率を比較いたしました数字を私ども持っておりますけれども、それと比較いたしまして実質的な減税は行なわれた、こういうふうに考えております。
  21. 只松祐治

    只松委員 これはデータの取り方というのはなかなかむずかしいし、私たちはそういう完全なデータをなかなか取り得ない立場にあります。皆さん方が完全とは私は思わないけれども、私たちに比べて、よりごまかしがきくと言っては失礼になりますが、より広範な統計数値を持っておられるわけですから、論争したってなかなかかなわないわけです。しかし、こういう一般の、皆さん方が取っておられるデータをもとにし、あるいは民間で使っておるデータ、あるいは、これはもっと当てにならないわけですが、実質上の給与所得者税負担感というもの——皆さん方もそういう意味では給与所得者の一員であるわけですから、軽くなっているか重くなっているかということは、たとえば、そういうものの象徴的なものとして新聞がよく税制改正期になれば、あるいは税調が答申すればそれにいろいろ論評を加えますが、今年なんかも集中的に、昨年もそうだったですが、給与所得者税金が重過ぎるのではないかということを、これはどの新聞ごらんになりましても、私たちが通常言ういわゆる商業新聞が一斉にかつ執拗に、給与所得者税金が重い、これは不公平である、こういうことを繰り返し述べてきておりますね。私たちは、現在の新聞が必ずしも勤労者に味方しておる、給与所得者に味方しておる、革新的である、こういうふうにはほとんど思いません。思いませんけれども、その思わない新聞がすべて繰り返し集中的に、この負担感の重さ、しかも不公平というものについて——私もここには持ってきておりませんが、きのう、昨年から本年にかけての税関係のスクラップを読み返してみたのですが、ほとんどの新聞が、その負担感の重さと不公平というものについて、解説としてもあるいは新聞論説としてもきびしく取り上げておりますね。にかかわらず皆さん方が、いま手元にお持ちのそういうデータによって、実質上は軽くなってきているのだ、こういうことをのうのうと、と言っちゃなんですが、言うことができると思いますが、私はいまデータとしては論争いたしませんけれども、そういう皆さん方自身がお持ちになっている負担感なりあるいはそういう国民の声というものを一しかも、私はいま商業新聞の一例を引きましたけれども商業新聞でない労働組合の、あるいは革新的な新聞では一斉にそういうことを攻撃しておるわけですね。こういう点について、そうではない、こういうデータに基づけば実質上軽くなってきているのだ、こういうふうにやっぱり言われますかどうか。
  22. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、確かにいまの先生のおっしゃったように、サラリーマンは、減税をされたけれども減税されたという実感が乏しいと言っておることも、また事実だと思います。私もその原因をいろいろ分析してみたわけでございます。  おっしゃいました不公平感というのも大きな理由であることは事実でございますが、そのほかにも理由が多々あるようでございます。  一つは、住民税の問題です。所得税減税されたけれども住民税減税されてない、しかも、昭和三十七年には所得税の一部が住民税のほうに回っていったではないか、こういうことが一つ理由でございます。それからもう一つは、よく見てみますと、社会保険の掛け金、これがやはり所得水準に応じて増加し、ときにはこれが上昇していく、これを第二の理由として私はあげるわけでございます。それから第三には、これはもう先生方いつも言われておりますように、所得水準は上がっていったけれども、三十六年からここ消費者物価の上がりが非常に大きくて、家計に及ぼす影響が大きい、こんなようなことが私は原因になっておるかと思います。それに加えまして、不公平という問題をどうもぬぐい切れないというところから、サラリーマン減税は、減税減税といいながら実は減税になっていないじゃないかという実感を持たれるかと思うのでございます。  私は、昭和三十五年の所得税住民税社会保険負担金、それが昭和四十一年にどの程度になっておるかということを調べてみたわけでございますが、賃金水準は七五%ばかり上昇してきております。所得税は四、五割しかふえてないのでございますが、住民税は倍くらいになっておる、社会保険負担金は、やはり賃金水準伸びと同じく七、八割くらいふえておる、こんなような関係で、それを全体を通算いたしましても、負担率は三十五年と四十一年と同じくらいでございます。しかし、所得水準は七割五分伸びておりますので、実は実質的な減税は行なわれておるのでございますが、そこに消費者物価の問題が消費者の切実な実感としてあって減税実感が乏しいというようなことが原因ではないか、かように考えております。
  23. 只松祐治

    只松委員 確かに、総体的な面から見れば、たとえば国民税負担率から見れば、三十五年ころも二〇%前後ですね。近ごろは税調国民所得の二〇%以内にしろということを繰り返し言うものですから、これをうまく、手品ではないが、国民の総所得データを変えまして、したがって税負担率というものが変わってきました。たとえば、昨年度は昔ながらの——昔ながらと言ってはなんですが、前の計算方式によれば二一・二%の税負担率になっていますね。ところが、新しい方式によりますと一八二二%の国民税負担率、こういう形になっておりまして、したがって、一般的に発表されるという形においては一八・三%ですから、これは二〇%を割っておるということで、一般国民にも、何か税金が下がったのだ、こういうデータとしてはそういうことがいわれるし、また国民にもそういう感覚を与える。しかし、これを一昨年、前の計算方式によれば、二一・二%ということで、近来においてはわりに高い数値になってきておりますね。その高いといっても大体二〇%前後ですから、あなたがおっしゃるように、国民所得に対比すれば、全体の所得増大しておるのに負担率そのものは二〇%前後ですからそう変わっておらない、したがって総体的には下がっておるはずだ、こういうことが論理的には一応は言えますね。特に、いま言うように、新しい計算方式では二〇%を割っておるわけですからね。しかし、にもかかわらずこれだけ給与所得者税金が重い、こういうことが繰り返しいわれるのは、やはり私は一つは不公平だと思いますね。これは不公平論議が始まりますと、ほかの税全般租税特別措置法まで及ばないとこれは論議が尽きませんので、それはおいおい多少やりますけれども給与所得者だけのこういう税収伸び、それから人員増大というものに対して何か配慮する方法が必要ではないか、こういうふうに考えます。  これもあとでほかのときにでもお伺いしますけれども税制簡素化の問題についても、私は秘密問題を取り上げてちょっと言いましたけれども、いまの税制あり方について、ただいままでのあり方ではなくで、シャウプ税制勧告によって推進されてきた所得税中心減税というのが、いろいろ租税特別措置その他がとられましてシャウプ税制体制がくずれてきておるのではないか、そういう中において日本のいまの税務行政あり方税制あり方というものを根本から検討する時期にきているのじゃないか、こういう気がします。私はいま給与所得者所得税の問題をやっておるわけでありますけれども、そういうものがデータから見れば確かにそんなに重くなっておらない、むしろ下がっておる、こういうことがいえるけれども、こういう感じを国民に抱かしめる。さっきから言うように、商業新聞でさえも一斉にそのことを言う。これは来年になったっておそらくまた言いますよ。安くなったとか、そういうことは、まず商業新聞一つも言わないと思いますね。にもかかわらずあなたたちが安くなったと言うのは、どこか税制の根本的な問題点というものが出てきているのではないか、こういうふうに思います。あと大臣がお見えになったら、私は、大臣は間接税がいいということを言ったそうですから、この問題について少し論議しようと思っておるのですけれども、大臣が来ませんから、まず、所得税の問題についてどういうふうにお考えになっていますか。
  24. 塩崎潤

    塩崎政府委員 長期税制構想と申しますか、昨年の税制調査会で出しました長期税制構想の中でもこの所得税の問題は大きく取り上げられておりまして、たとえば給与所得控除を大幅に引き上げる、現在の一〇%、二〇%というような区分はやめて一律二〇%にしたらどうか、こういう案さえ出ておるわけでございまして、おっしゃるように、給与所得者についての税額あるいは人員増加に対処するにはやはり給与所得控除を何とか大幅に引き上げるということによって対処すべきだろう、こういうことだと思うわけでございます。それからまた、その給与所得だけを見ても、税制を根本的に比較検討すべきではないかという只松先生の御指摘、全く私も同感でございまして、現在私はシャウプ税制が基本にあると言いながら、実はシャウプ税制は全く影をひそめまして、いわばつぎはぎだらけのシャゥプ税制、それで残っておりますのは青色申告と配当控除、益金算入というものがその基礎になっている程度ではないかとよく言われておるわけでございます。シャウプ勧告では、給与所得者につきましては、アメリカ流にそんなに不公平がないと考えたんでございましょう。給与所得控除はわずか一〇%程度給与所得控除でいいというような勧告でございましたが、それは決してわが国の税の実際に即したものであるかどうか、それはもうその後の引き上げで、そのことは少しアメリカ的な考え方であったということが立証されたと思うのでございます。シャウプ税制についての批判、これは所得税だけではございません。法人税につきましても、いつもここで御議論になりますように、配当だけの所得者ならば二百二十六万五千円まで非課税ということがいつも言われておることから見まして、これはやはり根本的な検討の時期かと思うのであります。
  25. 只松祐治

    只松委員 小沢さん、どうですか。これは局長段階ではなくて、ほんとうは大臣が来て、大体来る時間になっておるわけですが来ないのですが、単に給与所得者配偶者控除をしたとか何をしたとか、ちょこちょこっと引き上げたというこういう形ではなくて、税務当局から言えば、これだけ人員が膨大になったのは、徴税上からも下げるべきであるという意見が内部にあるわけです。しかし、公債も出しているというような現状で、税収という面からだけ、しかも、私たちがたびたび言いますように、租税特別措置はあまり手を触れないで、しかも自然に伸びてきておるこの給与所得者一般所得者の税についてはあまり改正しない。それで、むしろほかの部面では租税特別措置その他を行なって、相当抜本的な改正と同じような方向をたどっていっている、こういう形態が出てきておるのですね、一般ではなくて法人税に。これは法人擬制説も含めてですが、もうちょっと、この税制が明るくなるし、国民に納得ができるし、親しみを持たれるし、勤労者においてもなるほどという感じを持つようなことをやったらどうかと思うが、ただ、官僚的と言っちゃ怒られるけれども、わずかな基礎控除を上げた、配偶者控除を上げた、下げたというような論議を毎年ぼくらもやってきておるわけです。ところが、そういう論議だけではなくて、これだけの大きな所得税納税人員というものになってきており、しかも、それがどんどん毎年減税という名の徴税が行なわれてふえてきておるということについて、政府でも考える必要があるのじゃないか。あまりにもイージーゴーイング的にこういういままでのしきたりから取れるものだけから取っていくという、こういう段階は限界にきつつあるのじゃないですか。たとえば中山さんが、おやめになったからフランクに書けるのだと思うのですが、これからの税制という面で一連のずっとシリーズを書いて、最後に、公平の原則に帰れ、こう言って、ある面では私たち社会党以上にりっぱなことというのですか、税調の時代とは違うことをおっしゃっていますね。やはりこれは根本的に検討の段階にきているのじゃないか。シャウプ税制は行き詰まっておると思いますが、そういう点でどう思いますか。
  26. 小沢辰男

    小沢政府委員 たいへん基本的な問題の議論でございますので、先生のような専門家に私がお答えするのはどうかと思いますけれども、私、所得税の先ほどの議論を聞いておりましても、確かに理論的にいろいろ数値をもって説明をいたしますと、たとえば、御承知のように過去の物価調整のための必要な減税所要額というものと実際に減税をされましたものとを昭和三十七年からずっと見てみますと、実質的にむしろ増税になった年は三十八年の年だけで、あとは相当の実質減税になっているわけでございます。あるいはまた、給与の伸びという議論もございましたのですが、給与の伸びそのものを、最近の五年間、昭和三十六年から四十年をとってみますと、大体平均しまして平均賃金は約一割の伸びを示しておる。しかし四十二年の私どもが考えております課税最低限伸びというものは、総体平均をしても相当のものになっているわけでございまして、はるかにこれを上回っているわけでございます。  そういう点から見ますと、私どもは、今度の減税また毎年の減税が、減税の名のもとにおける増税だとは考えておりません。明らかに毎年実質的に減税が行なわれているというふうに思いますけれども、先ほど局長も言いましたように、住民税の動かない点、あるいはまた税外負担がいろいろ社会保険、社会保障の観点で変動がある、あるいはまた物価の身近ないろいろ上昇の圧迫がある、こういうような点から見まして、それと、所得税は完全に把握されているが、他の法人税等についていかにも政府が臨時措置等で法人税についてのいろいろな減税をはかっていく、そういうような点から、実感としてなかなか減税というものの実感がないのだということは私も理解できるわけでございます。  そういたしますと、私どもは、その中で税についていまおっしゃいましたような根本的な再検討をして、ほんとうに毎年相当の負担軽減になるような、減税というものがはっきり受け取られるような形の面でどういうふうに一体考えたらいいのかという点をいろいろ御意見を承りますと、その点についてももちろん検討して、長期構想の税調の見解も表明されておりますので、いろいろと考え直していかなければいかぬ点があると思いますけれども、しかし、いまおっしゃっておられます。とにかく減税というものが偽りであるかどうかという点から見ますと、私どもは、やはりいろいろな点の要素を考えてみますと実質的には毎年減税になっているのだということで、なお、税全体の税収入の伸び等を考えながら、そのうちで一定の割合を毎年、特に所得税減税に力を置きまして国民税負担を軽減する方向にできるだけ努力をしていかなければいかぬじゃないか。あとのことにつきましてはいろいろ御不満だと思いますが、また大臣がおいでになりましてからいろいろ御議論をいただきたいと思います。
  27. 只松祐治

    只松委員 どうも、大臣に聞くのを政務次官に聞いたり事務当局から聞いたりしてぴんとこない面があるのですが、あとで大臣がお見えになったらまた聞きますが、いまおっしゃったように、いろいろ、言えば理屈はあると思いますけれども、たとえば、いまの給与形態にいたしましても、独身者初任給が非常に上がってきておりますね。上がらなければ人が集まらないということになっていますね。むしろ中高年層が平均余命が延びまして、こういうものには中高年層の再雇用対策をしなければならない、こういうことですね。五十五歳以上の再雇用された人の賃金は非常に安くなる、こういう形です。皆さん方みたいに特殊の立場にある人はすぐどこかの公団の副総裁や理事になっていかれるから、三十万円、五十万円すぐもらわれるけれども一般勤労者は、五万円もらった人が三万円、三万円もらった人が二万円になって、定年後安くなる、こういう給与生活者、国民生活の実態というものを見ていき、生活のあり方というものを見ていけば、当然にそれに対応する税制についてもやはり私は変えていく必要があると思います。  こういう一般的な政策の問題、社会現象に伴う問題を話し始めますと非常に長くなります。私は税小があればそういう問題についてもいろいろ話し合いたいと思っているのですけれども、昨年からほとんど税小は開かれません。そこで、今日までこういうことや何かを論議する機会というものがほとんどないわけです。あっても、私たちの質問がたいてい三十分か一時間でちょこちょこっと終わる、こういうので、こういう社会の形態の、いろいろ都市化現象といわれたり、あるいは社会構造の変革といわれて、いろいろな社会体制に変革を来たしております。にもかかわらず、税制というものは、シャウプ税制勧告以来、基礎控除なり何なりちょこっといじくられただけで抜本的な改正がない。私が税制改正ということを言っておるのは、社会形態も相当変わってきておるのではないか、こういうことを前提にして言っておるわけです。しかし、そういう社会学的な面まで持ち出しますと、たいへん抽象的な話にもなりますし、ほんとうはそういうことは税小か何かで言うべきだろうと思う。しかし、なかなかそういう機会がないからあれですが、そういう国家社会の形態の変化が起こってきているわけですから、それに伴って当然税制あり方というものも変わってこなければならぬと思うのです。  たとえば一例をあげれば、小学校や中学校出は非常に少なくなってきておる。高校、大学出が多い。皆さん方も、われわれもそうですか、子供を上の学校までやる。それと、人が足りないから、したがって初任給が高くなってきておる。初任給が三万円で、四十、五十の人が五万円だ六万円だということで、ある面では小学校しか出ない定年間近の人と大学出の人の初任給とそう大差ない、こういう形態も出てきております。  そういういろいろな社会現象というものをにらみ合わせて一あるいは一個の家族にしても、六人なり十人なり多数家族であったのが、いま平均の家族構成が四人を割ってきております。私はいつも言うように、皆さんは平均値をとって五人家族というものをお出しになるけれども、それは架空の数字であって、日本のいまの状態は、昭和四十二年度においては大体四人くらい、四人をあるいは割ってきておるかもしれない。というのは、家族が分散をします。したがって、分散をすれば、一般的な生計費のほかに、いま家賃が非常に高くなってきておる、あるいは地代というものが上がってきておる。それはなぜか。新しく家族が分散をして家を建てる、あるいは家を建てる金がないからアパートに入るというと、アパート代が非常に高い。ただ単に初任給ということだけをいうならば、独身者初任給を上げればいいじゃないかということだけれども、そうではなくて、独立して一個の家をかまえる、その家賃が高い。家賃だけでなく、光熱費や何か全部生活費に入ってくるわけです。そういう社会形態の変化が、生きているわれわれ人間の中に起きているわけですね。そういうものに対応する税金あり方、課税のしかたというものがやっぱり変わってこなければならぬ。そういうものを全然顧慮しないで、ただ昔ながらの、終戦後シャウプさんが来て勧告したときの税体系がそのまま適用されておる。その所得税が一方の法人税とともに二本の柱になっておる、こういうことですね。おそらく私はそういうことや何かは、税調の報告書や答申書を見ましても、それまでの社会学的な面までとらえての論争というものはほとんどやっておらないような気がするのですね、まだ私も見ないのですけれども。やっぱりそういう問題も全部やらなければならぬ。われわれは日本国民に対する課税のあり方を国会で論議するわけですけれども、したがって、国家社会の現象の変化というものに伴って税制も変えていく必要がある。私が、税負担感の重さというものを商業新聞でも一斉に言っている、こういうことを一例として言い、筋としては確かにあなたの言われるようにそんなに上がってきてはいないし、それほど変化はしてないけれども、なおかつ負担感が非常に重いというのは、単に住民税や何かが下がっておらない、上がっておる、物価が上がっておるという、そういう経済面だけでなくて、私は、社会現象の変化がきた、そういうもろもろの問題があると思うのですね。私は税制というのは政治の基本だと思っているのです。予算というのは使うほうですが、それを裏づける歳入としての税制というものは、国家社会形態の基本だと思うのですね。国家社会のそういう形態というものが異なっていくならば、当然に税のあり方というものもやっぱり対応してこなければならぬ。それがいま大きな一つの変わり目にきておるのではないか。そういうことと関連して、所得、特に給与所得の問題について、国民が底流というか、うねりをなして一つの問題提起をやっているわけです。おそらく来年もまた勧告が出たり、あるいはあなたたち改正案を出したりするときには必ずやりますよ。毎年新聞というのはぼくはにぎわってくると思う。それが激しくなって、去年よりことしの論調というのは激しい。ことしは、あなたたちから見れば相当大幅に減税したと思っているわけでしょう。にもかかわらず、ことしの論調というのは非常にきびしいですね。ことしは確かにいままでよりも所得税中心減税したが、しかし、ということで、が、しかし、からあとの論調というのは非常にきびしいですよ。  だから、ここでデータを踏まえたり、いままでの通り一ぺんの、そうじゃないと思いますというようなことじゃなくて、もう少し根本的に、これは大臣が来てこういう論議をすれば一番いいわけですけれども、大臣は所定の時間になっても来ないのでやれないが、しかし、大臣は大体そこまでの基本的な論議は、あなたたちがされた上じゃないとうんと言わないわけですから、そういう問題について、もっと国税当局においても根本的にお考えになったらどうですか。
  28. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常に貴重な御意見でございまして、私もそういった意見を十分しんしゃくしなければならぬと思います。  所得税につきまして、確かに、私ども税制一課長でやっておりましたときも重いと感じておりましたが、納税者がそのときは一千万人で、おそらくそのときは所得税納税者が二千万人になるというような意識は確かになかったと思うのでございます。これは、おっしゃるように、経済成長が非常に早いということと、さらにまた、おっしゃいましたもう少し大事なことは、社会現象の変化が非常に早い、それに対して、所得税の構造が特に累進税率構造を持っているために適合していないという面だと思います。そんなような面で、私は、シャウプ税制にいたしましても、このような日本経済の大きな成長あるいは社会現象の変化は予定をしてなかったと思うのでございます。いまのお話を聞きましてその点を痛感いたしましたので、そういった社会現象を特に考慮するようなことを、税制改正の今後の大きな方向の中で考えてみたいと思います。
  29. 只松祐治

    只松委員 いまのような問題について、たとえば、一例をあげれば、よくいわれているように、住宅減税とか、あるいは住宅までいわなくてもアパート代といいますか、そういうもの、これは人間である以上、最低必要経費として、家には住まなくてはならぬわけですから、こういうものに対する顧慮が全然ないわけですね。考慮がない。いま公営住宅でも一万円からするわけでしょう。2DKや3DKになればなおさらです。四万円や五万円取って、一万三千円、一万五千円の家賃をよく私は払って生活できると思いますね。アパートに入れば、一部屋で、六畳の部屋で一万五千円くらいとられているわけでしょう。それに二年ごとに更新の権利金というものをとっていかれるわけですね。したがって、一万五千円ではなくて一万七、八千円ぐらいについているわけです。四万円取ってもアパート代に大体半分は持っていかれるわけですね。家賃でそうですから、光熱費から何から入れて、幾ら月給を取っているか知らぬが、三万円や四万円では夫婦でやっていけない。ときどきこのごろは仲人することがありますから、行ってみるのですが、私はよくそれで生活できるねと言うのですけれども、そういう面は、いままでは大体自宅から通勤するとか、自分のうちがあるとか、そういう社会現象のもとにおそらく独身者に対する課税というものがなされているわけですね。いまはそうでなくて、都市化現象で都市へ出てきて、都市で生活している。そうすると、一人だけじゃなんですから、セックスの問題その他がありますから、結局すぐ結婚をする。職場で三十前後の人で独身者の人なんてまずないですね。全部結婚をする。あまりこういう問題だけ話していきますと何ですけれども、もうちょっとそういう社会現象の変化というものを十分に踏まえて、その上で税制を考えるべきだと思う。  私は給与所得の問題だけをいまやっておりますけれども、アンバランスの問題として今度は資産所得——たちはただ利子所得、配当所得はけしからぬという問題だけを言っておりますけれども、こういう利子所得や配当所得をとっておる人はどういう人か。こういう人は、逆に言うならば、相当大きな屋敷に住み、りっぱな家を持つ、大体こういう資産がある人ですね。そういう人たちが、ただ単に二百二十六万円までのものが無税であるといういわゆる数字上の問題だけではなくして、そういう人たちというのは大体持ち家を持っていますよ。あるいはそれに付随するいろんな収入というものがありますよ。その上になおかっこうやって、いわゆる経済界の強い圧力によって——要望じゃないですよ、圧力によって資産所得というものは非常に高額に無税になっている。ところが、そうではなくて、額に汗して働く給与所得者というものは、ほとんどがそういう持ち家とか、そういうものはない。にかかわらず、大学を出て、高校を出ても、ちょっといい給料をもらうと税金がかかってくる。私は、こういう社会の実態というものをもう少し踏まえて政治というものをやらなければならぬと思うし、課税というものも行なっていかなければならない。私がよく引き合いに出すマンションやホステスさん等の問題も、そういう問題を出さぬことには、ただ単に課税最低限が高いとか低いとかいっても、皆さん方もそれだけの論理をお持ちですから、すぐ当意即妙に答弁をされる。私は、こういうことだけを国会でやっておっても抜本的な税制の改革というものは当然望めないし、国民が求めているような税制の近代化、民主化、国民が納得するような税体系というものはなかなか出てこないのではないかと思う。だから、もっとひとつ、こういう問題について真剣に皆さん方もお考えになったらどうですか。
  30. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、私たちは数字にとらわれがちでございます。数字的な説明がつけばという気持ちも持っておりませんけれども、とらわれがちなところが確かにございます。今後の税制について、新しい社会現象、新しい経済の流れ、これらについて税制をどういうふうに適用さすか、大きな問題でございます。  先般来、簡素平明化にいたしましても、技術的にとらえていかないと、こういうお話がございましたが、私ども全く同感でございます。納税者が理解する、また、納税者がわかる税制、これが簡素平明化の大きなねらいであるというようなお話がございましたが、私どもも、いまの只松先生お話は、それらを含めての、なお大きな角度からの御議論だと思いますが、それらの観点を十分織り込みまして今後の税制改正の指針といたしたい、かように考えております。
  31. 只松祐治

    只松委員 それから、所得税の具体的な問題を少しお聞きします。  昨年度の署管内調査、査察件数、それに対する増差額、さっき資料をいただいたあれですが、そういう点についてちょっと御説明をいただきたい。
  32. 泉美之松

    ○泉政府委員 これは、四十一年の四月から四十二年の三月末日までの間に査察で処理いたしました件数は、所得税が五十一件、法人税が百二十件、合わせて百七十一件の処理を行なったのであります。これは御承知のとおり、査察に着手いたしましてから査察の処理が終わりますまでに、早くて六カ月、おそいと九カ月、あるいは一年になるものもございます。着手がその以前から行なわれたものも含みますと、四十一年度中に処理されたものをいま申し上げたわけであります。これによる増差所得額は、法人税で三十七億七百万円、所得税で六十五億二千九百万円、合計で百二億三千七百万円、こういった数字になっております。そして税額増加は、本税のほかに重加算税、あるいは過少申告加算税、無申告加算税等を含めまして、所得税で二十九億五千万円、法人税で三十二億八千九百万円、合わせまして六十二億四千万円、こういった数字になっております。
  33. 只松祐治

    只松委員 この署管内でも、調査が大体三〇何%か毎年行なわれておりますね。その中で査察あるいは増差をかけられているのはやはり大体三〇%くらいになるわけです。そういたしますと、そういうところは青色申告をしておれば青色申告の資格がなくなる、大体こういうことになると思うのですね。それがイコール青色申告を打ち切られるというわけではありませんけれども、そういたしますと、明年から完全給与制が実施されるということになりますと——これはやってみなければどの程度増大するかなかなかわからないでしょうけれども、相当希望者がふえるだろう。いまでも、新たにふえてくるのと、青色申告をあなたのほうで除外するのと、そう変わらないというような現象のようでございますけれども、こういうふうで、査察あるいは増差をかけられる。言うことを聞かなければ、それで青色申告を取り消すぞという形でこられるわけでございますが、今後こういうふうに青色申告の問題で——ちょっといまわかりませんけれども、青色申告で今度拒否される条項を新しく設けられましたね。その関係を聞こうと思っているんですけれども、ちょっと条項が……。そういう査察なりなんなりで、違法行為を犯したということになると、そういう面から青色申告者を切っていく、こういう現象が私は強まるんじゃないかと思うのですけれども、そういう点は全然ないということでございますか。どうですか、そういうことは。
  34. 泉美之松

    ○泉政府委員 青色申告は、個人の場合年々相当増加いたしておるのでございまして、昨年の三月十五日現在におきまして、個人の青色申告申請者は百万をこえておるわけであります。本年はさらにそれが増加いたしまして、本年三月十五日現在では百十八万の青色申告の申請をするという人がおるわけであります。お話のように、査察を受けるあるいは特別調査を受けた場合におきまして、その青色申告の基礎となる帳簿の記載の真実性が認められないという場合におきましては、お話のとおり青色申告の取り消しをいたします。しかしながら、青色申告が年々このようにふえてきておりますので、取り消しました後におきましても、ネットで年々相当多額にふえておるのでありまして、たとえて申し上げますと、昭和三十九年末におきましては、事業所得者の青色申告者は六十二万二千人であったのでありますが、それが四十年におきましては、当初八十一万五千人が青色申告をしたい、こういう申し出があったのでありますが、そのうち、いろいろやってみたけれどもとても記帳ができないから取り下げたいというのが三万七千、それから却下いたしましたものが二千七百、取り消しましたものが九七百十一、合計四万六千ほど減少いたしまして、ネット七十七万七千人というのが四十年末に残っておったような状況でございます。その前年に比べまして約十五万五千人増加いたしておりますので、青色申告を取り消すことはそういう帳簿の記載が真実性を欠いておるという場合に限られておりまして、そういう取り消し事例はもちろんあるわけでありますけれども、青色申告者というのは年々着実に増加いたしておりますし、また、私どもも青色申告者がふえるということによって税務官庁の手数も省けることになりますので、それを歓迎いたしておるような状況にあります。  お話のように、明年からは専従者控除につきましていわゆる完全給与制というものがとられるということになりますと、青竹申告の希望者は明年さらにふえていくものと考えておりますが、従来の情勢からいたしますれば、そういう記載の真実性を欠く場合に限って、取り消しを行ないましても、年々青色申告者総数というものは着実にふえていくもの、またそれが望ましいものだというように私どもは考えております。できればそういう記載の真実性を疑わなければならないような事例、がなくなっていくことが望ましい、このように考えております。
  35. 只松祐治

    只松委員 百二十七条ですか、青色申告の承認取り消しという問題が今度提起されておりますね。これは用語だけの統一というふうにお考えなんですか。何かほかのところと関連して、この承認の取り消し問題が提起されておるのじゃないか、こういうふうに考えられる節があるわけですが……。
  36. 塩崎潤

    塩崎政府委員 今回の所得税法改正案の百五十条の一項の二号を言っておられるのではないかと思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  37. 只松祐治

    只松委員 ちょっとそれを説明してください。
  38. 塩崎潤

    塩崎政府委員 所得税法百五十条、法人税法百二十七条でございます。この改正の趣旨は、この規定のとおりでございまして、現行法では税務署長が百四十八条の第二項によりまして、所得税法ならば帳簿の記載方法等につきまして必要な指示ができることになっております。指示に従わなかった場合に、いま青色申告がどうなるかという問題でございますが、現行法では、指示に従わなくても、指示に従わなかった年分からの所得についての青色申告の取り消しができなくて、今後ということになっておりますが、今度の改正案では、やはり全般的な取り消しの趣旨に合わせまして、指示に従わなかった年の年分から青色申告の取り消しの効果が及ぶようにしよう、こういう改正でございます。
  39. 只松祐治

    只松委員 そのほかにももう一カ所、何か附則の六条か何かある。
  40. 塩崎潤

    塩崎政府委員 附則の六条は法人税法の六条でございまして、この附則はもう当然のことで、遡及はしない、今後の問題であるということを明らかにした規定でございます。
  41. 只松祐治

    只松委員 これは、したがってそのままに受け取っておいていいのですか。——そういってはなんですが、何か別個のこれによって通達をつくるとか、今後何か取り消しを容易にしよう、こういう意味で用語を変えた、そういうことではなくて、ただ用語の統一だけだ、こういうふうに解釈していいですか。
  42. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもの趣旨は、現行法規定がその事実の生じた日の属する年ということで、用語が不十分でございますので、全般的な体制を合わそうという意味で改正したわけでございます。これによって特に青色申告の取り消しを強化しよう、ことにまた、先生の御心配のように、専従者控除が変わるから、よってこれで強化するんだ、こんなような意図は全くございません。
  43. 只松祐治

    只松委員 次に、法人税について若干お尋ねをいたします。  これも多少政策論争の一つになりますが、さっき所得税の話をちょっとしましたが、所得税は、そういうことはありましても非常な累進課税になっておりますね。ところが法人税の場合は、大法人と中小法人と二段階になっておる。しかも、その税率の差というものが実効税率になってくればそうたいして変わらない。租税特別措置法が適用されてそうたいして変わらない、こういうことになります。少し前は、逆に五百万から一千万くらいのものが、十億、百億の利潤をあげている会社よりも税率が高い、こういうばかげた現象もあったわけでございます。これも一つの社会形態といってはなんですが、独占企業というのは、八幡製鉄などは世界で第三番目になってきた。こういう大会社から始まって、いわゆる税金のがれのためにただ法人成りをした、こういう会社、したがってこれが八十万からの会社になっているわけです。こういう問題も、私が常に言うように、累進課税とまではいきませんけれども、少なくとも零細、中小、大法人と三段階といいますか、こういう形にしても、なおかつ法人成りをしたいのだからそんなことはかまわない、こうおっしゃればそれまででありますけれども、しかし、それではあまりにも大法人というものに対する——たちが常々言っているように、これが二段階ですから、したがって大法人の査察その他が手抜かりになってきたり、課税がおろそかになってきたり、いろいろな現象が起こってきていると思うのですけれども、累進課税とまでは言いませんが、多段階的なものをお考えになったらどうか。ひとつ実態を知るために、一番新しい局扱いと署扱いの実効税率の差は現在どれだけになっておりますか。
  44. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まず第一に、多段階税率の問題についてお答え申し上げます。  昨日も竹本先生から、法人税率について多段階税率を設けたらどうか、こういうお話があり、ただいま只松先生からその御提案があったわけでございます。しかし一方、同時に先生も、法人税率は高い高いと言いながら、個人企業者よりも法人成りしていく現象から見ると、そこに容易ならざる問題もあるという御指摘であります。なかなか税制の矛盾が解決できないような気がするわけでございます。基本的には、私は企業所得が法人に端的にあらわれると思うのでありますが、企業に対する課税は個人所得税と違った考え方があろうかと思うのでございます。そういった考え方はいろいろな批判がございましょうが、そういった考え方に立てば、やはり現在の大法人と中小法人と分けるのがいいのではないか、しかもまた、比例税率のほうが、企業の継続中の所得を全部通算して課税することが適正なりと考えますと、やはりフラクチュエートする企業の利潤に対して多段階の税率を設けますと、欠損金の繰り越し、繰り戻しが不十分なもとでは非常に不公平になってまいる、したがいまして、これはやはり比例税率のほうがいいのではないか、しかし、個人に帰属いたしました所得に対しましては累進税率、多段階の税率が適正であろう、かように思うわけでございます。そういった意味では、現在資本金一億円超と一億円以下の法人で税率を異にし、一億円以下の法人につきましては二段階になっておりますが、中小企業に対する税負担の軽減は大企業に比べて多くしよう、これをくふうしていくのがその方向ではないか、こんなふうに考えております。さらにまた、税制簡素化等も考えますと、三種類の法人に分けますことも、なかなかその基準がむずかしいことにもなりますので、現行ありますところの一億円という基準を何かうまく使って先生方の御要望のあるような中小企業に対する税負担を考えていくことが適当ではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。  第二は、実効税率がどうかという問題でございますが、実効税率の意味もいろいろな意味がございまして、一義的には言えないわけでございますが、先生の定義では、特別措置まで引いた後で実効税率がどういうふうになっておるか、こういうふうに言っておられるわけでございます。大ざっぱに分けまして、私どものところでは五百万円未満となりますと三二・三%程度、この計算はなかなかむずかしいのですが、五百万円未満ならば三二・三%程度、一億円以上となりますと、これは配当のウェートがふえまして配当軽減税率が働いてまいりますので、比較的実効税率が下がるわけでございますが、これは特別措置を織り込みまして三三・五%くらい、したがいまして一%くらいの開きになっておるわけでございます。先生たちの御感触では、税率の面では相当な開きがあるのに——七%くらいな開きがあるわけでございますが、これは配当の関係あるいは特別措置関係、その他の関係でこの程度の開きに縮まってくるということが言えようかと思います。いまの数字は昭和三十九年でございますが、四十一年度にはもう少し中小法人の税率を下げましたので中小法人に有利になっておろうかと思いますが、何ぶんこの調査は実績に基づいてやりませんと非常にむずかしいので、三十九年の数字で恐縮でございますが、お許し願いたいと思います。
  45. 只松祐治

    只松委員 地方税を含まないのでしょう。
  46. 塩崎潤

    塩崎政府委員 国税だけでございます。
  47. 只松祐治

    只松委員 地方税を含んだもののデータはありますか。
  48. 塩崎潤

    塩崎政府委員 地方税の課税標準は大体国税に準じております。ただ、事業税が違っておる面がありますので、これをやり直して観念的にできるかと思いますが、実証的、統計的にはできませんので、一応の推定を地方税に織り込んでやってみることにいたしたいと思いますが、ちょっと時間をかしていただきたいと思います。
  49. 只松祐治

    只松委員 地方税を含みますと、地方税もやはり租税特別措置が適用されておりますから、税率は大法人が下がってくる。だから、時間はかかってもけっこうでございますから、地方税を含んだものをひとつつくっていただきたい。これで見ましても、百億円の大会社も百万円の小会社も一%と違わないような税率だ。こういう点に矛盾を感じませんか。
  50. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これが現在の税制の仕組みであることは、先生案内のとおりでございます。現在の税制は、法人税は株主所得税の前払い、こういうふうに考えておりますので、しかもまた、三十六年から法人利益のうちの支払い配当部分につきましては税率を下げてございます。そのかわり、一方株主の所得税の前払い分を控除する意味での配当控除率を四分の一だけ切り下げております。したがいまして、大法人のほうは利益のうち配当に充てられる部分が大体七割くらい、そうなりますと、支払い配当軽減税率が入ってくる、これが一番大きな理由でございます。一方、中小法人のほうは、御案内のように支払い配当の軽減税率はございましても、配当は幾らもしない、また資本も少ない、したがいまして、もうけはほとんど留保になる、また、留保しないと個人所得税が配当に対してかかる関係もございますので、その関係で実効税率が最も大きく違っておる。そのかわり大法人の株主は、配当を受けましたときに源泉選択なんという税率があると別でございますけれども所得税を課税され、しかも、その課税され方は配当控除が減らされたところで課税されるというので、むしろ法人と株主とを通じますと、大企業のほうが大きく課税されるということが言えましょうが、いまの実効税率というものは、法人段階だけでとった税率でございますのでこういう関係になるわけでございます。特別措置よりも何よりも、支払い配当に対する軽減税率が、私は大法人に対するいわゆる実効税率を下げておる大きな原因じゃないか、こういうふうに見ております。
  51. 只松祐治

    只松委員 諸外国では大法人と中小法人との税率というのがもっと開いております。これは、法人の場合は租税特別措置法と関連させなければ論議はできないわけでございますが、表面税率が七%違っておっても、実効税率においてはそれが三%くらいになってしまう。さらに地方税を加えますと下がってくる。さらにこれが、私がいつも言いますように、実調率といいますか、実際に調査をした上で、大法人はほとんど言うなりといってはなんですけれども、会社側の言うなりで、そういうものに対してその実態を暴露する調査というものはほとんどございませんが、中小法人なり一般事業所得者に対しては、非常なきびしい査察というものが行なわれる。査察だけでなくて、大体の標準税率というものをおきめになって、そうして、それに従わない場合には青色申告なんかも取り消してくる、こういう形のきびしいものさえ出てきておるわけであります。  そういういろいろないまの会社の実態なり、あるいは皆さま方が課税をされておる実態というものを見た場合に、こういう五十万、百万の会社と、五十億、百億の大会社と一本にした税体系というものは相当無理があるのではないか、こういうことを感じます。これも将来の課税体系の問題として、ひとつお考えをいただきたいと思います。  ただ、調査するのに、これも時間がないからなんですが、ここに国税庁の労働組合の人がおつくりになった本があります。これと、皆さん方がおつくりになっておりますけれども税務の運営通達、こういうものを対比いたしますと、天と地まではいきませんけれども、えらい食い違いがございますね。これは皆さん方と多少立場は異にいたしておりますけれども、どちらも同じ国税庁の職員の方のおつくりになった本ですね。これをほんとうは私はずっと読み上げて、皆さん方のひとつ御意見を聞こうかと思っていたのですけれども、そこまでしなくてもと思うのですが、一度大体お読みになったと思いますし、お読みになればさらによくわかりますけれども、この税の調査のしかたから始まりまして、実際の税務行政というものが、大会社にはほとんどそういうものが行なわれないで、中小企業以下に対してはいかにきびしい税務の調査というものが行なわれておるか、しかもそれがほとんど命令的に非常に強制的に行なわれておるかということがこれにもよく書いてありますね。私は、最近税小もございませんし、そういうものを長々と論議する時間がなかなかございません。きょうもこれを全部問題にして論議するだけの時間がございません。大臣がお見えになれば大臣に質問をしようと思って準備をしておったのですけれども、なかなか来ません。ひとつ、こういうものをたまにはよくお読みになって、いかに中小企業者以下の徴税というものがきびしく行なわれておるか。私たちが言うだけではなくて、税務署の職員の方々——多少立場を異にしておる人であろうとも、職員の方々がこうやっておっしゃっておることは、いずれにしてもある一面の真実を伝えておるわけですから、全然うそではない。しかも、ちゃんとこうやって文書になって大衆の目の前に出ているわけですから、あまり一笑に付さないで、一方的に片づけないで、やはりお読みになったほうがいいと思いますね。これを読めば、あなたたちがいままで御答弁になっている方向とどれだけ違うか。これは非常によく書かれてあります。これはだれかお読みになったことがありますか。お感じはどうです。
  52. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話の全国税労働組合、税研中央推進委員会というものが出しております「税金、その本質ととりかた」、この本は私も入手いたしまして読んでおります。私どもの立場においても、そうした課税あるいは徴収のしかたについて種々反省すべき点があることはよく承知いたしております。ただ、この本は、只松委員は多少立場が違うというようなお話でございましたが、多少ではなくて、大いに立場の違った面からものごとを見ておるように拝見するのであります。私ども、もちろんそうした考え方が国民の間にあり、特に国税の職員の中にそういう考え方を持っておる者がおるということにつきましては、十分よくそういった事態を考えて、今後の税制につきましてもあるいは税務行政あり方につきましても種々改善をしていかなければならぬ面があることはよくわかるのであります。しかしながら、ものごとをやはりすなおに見ていく必要があるのではないかという感じもしてならないのであります。  そういった点から、私ども自分のやり方についていろいろ反省をしながら、この本をときに拝見いたしまして、どういうふうに今後税務行政をもっていくかというようなことを考えておるような次第でございます。
  53. 只松祐治

    只松委員 たとえば、この中にこういう項目があります。「これらの事績からみると、調査日数の少ない中小法人ほど増差割合が高く、脱税も多いことになり、当然、青色申告の取消もそれにしたがって多いことになるが、」云々、こういうところ、あるいは「また、現行租税特別措置の利益は、ほとんどが大企業に占められ、金づまりによる中小企業の倒産は増加している。その金づまりをのりきるために高い金利で金を借りれば、利子支払先を白状できないために税務調査で否認を受ける。相当多額なリベートを払わざるをえない場合でも同様な理由によって、また否認を受ける。」こういういろいろな面が載っております。こういうのは、私がいまちょっと問題に出しております中小法人の場合は、皆さん方の査察というのがわりあい簡単にできますね。そこでその、実態というものが捕捉できる。そこでいろいろな増差、増差の前の修正申告でも、あなたたちがある程度集めてちょっと訓示を与えればすぐにできる。そうやって、これにも自然増収のからくりということを言っておりますけれども自然増収というものが行なわれておりますね。実態はそうでしょう。それから、大法人の場合はほとんどそういうものが行なわれておりません。  そういうものの一つの顕著な例、これも全部できませんから私は一つの顕著な例しか引かないわけですが、交際費というのがございますね。交際費はすでに五千七百億円、あるいは六千億円近くにもことしあたり及んできておると思います。ところが、この交際費に対する皆さん方の態度というものを見てまいりますと、ことし若干、皆さん方から見れば交際費に対する態度をきびしくした、あるいはそのことは税制上進歩したとお考えになっているかと思いますけれども、私は必ずしもそう見ないのです。たとえば、いままでまじめに一まじめにと言っちゃなんですが、交際費をできるだけ少なくして収益をあげるように努力しておった会社、こういう会社が、多少不況になって苦しくなってきた、そこで交際費を便って何とかしなければならないという場合に、交際費をよけいに使えば、これは税金が重くなってきますね。そうでなくして、いままで多少景気がよくてふんだんに便っておったのが、不景気になった、不景気になって使わないならまだいいけれども、それをちょっとやめた、これだけで税金が軽くなる。見方によっては、いわば放蕩むすこによけい小づかい銭をくれているみたいなものですよ。ただ税金を取るという面だけ皆さん方ごらんになるから、税金を取るためには、こういうことをお考えか知りませんけれども、これだって、中山伊知郎さんが、やはり私がいま言っているような似たり寄ったりのことを言っております。これはほかのところにもそういうことが書いてありましたけれども皆さん方が今度一歩前進とお考えになっておるこの交際費のあり方についても、必ずしもそうではないのですよ。何なら、この問題だけ私は論争してもいいと思うのですけれども、もう少し交際費の課税に対して、抜本的に、しかも交際費は大法人が中心でございますから、お考えになったらどうです。
  54. 塩崎潤

    塩崎政府委員 交際費につきましては、いろいろな考え方があり、毎国会問題になるところでございます。今回は、期限が切れるということを契機といたしまして、先ほど御指摘のような改正案を御提案申し上げておるわけでございます。  私どもは、交際費について、税法上規制するということは、交際費を特に重課するとか、あるいは、交際費から収入をあげろという意味でこの交際費課税ができ上がったものではないと思うのでございます。昭和二十九年からでき上がったのでございますけれども、そのときの趣旨は、あまりにも大きな交際費、当時は支払い配当の金額と同じくらいな交際費、これを少し節減さそうという趣旨から始まったと思うのでございます。そんなような意味では、交際費の課税の趣旨は、これは私どもは、本来、企業が適正に運用するならば企業の費用だと思うのでございます。法人税所得課税でございますから、費用に対して課税するということは、およそ税の筋道と違うわけでございますが、これを規制するということは、やはり特別措置であり、規制するという趣旨は、税金を取るというよりも、むしろ節減をねらう、こういうことだと思うのでございます。そんなような角度で、今回は、ふやしたならば、これは一定の五%という足切りを置いておりますけれども、それをこした場合には多目に、全額を益金に算入する、しかし、減らしたならば、減らしたことによって法人税がふえるという非難、これをひとつなくする意味で、法人税はこの際引いてみようという、こういうまことに善意の気持ちでやっておるのでございます。  おっしゃるように、それがたまたま、偶然の結果減らす運命にあった人が得するではないか、過去に使っておってちょっと今度やめる人が得するではないかという場合も、私は十分あり得ると思いますが、しかし、全体といたしましては、やはり企業の節減の努力を期待するという行き方のほうがすなおじゃないか、そして交際費を減らす方向に、税の規制の趣旨に合った改正のほうがいいではないか、こんなような意味で御提案申し上げておるつもりでございます。  抜本的な改正、これはいろいろな改正もございましょう。全額これを益金に算入するというようなことも、先ほど申し上げましたように、費用という性格から見まして第一には行き過ぎでございます。第二には、交際費課税の趣旨が、税金を取れということでなくて、法人税がかかるから交際費を減らせ、こういったことだと思いますので、そういった観点から見ますと、そういったふうに全額益金に算入するという制度はその趣旨に沿ったものではない、こんなふうに考えております。
  55. 只松祐治

    只松委員 たとえば、交際費課税で貿易促進や何かのやつはほとんど無制限といっていいわけですね。ところが、中小企業には貿易なんというのはほとんどない。あってもきわめて少ないです。特殊の会社じゃないと。この貿易に対する交際費というのはほとんど大会社なわけですよ。それで、貿易ということでつけておけば、バーやキャバレーなんかに招待したというのはほとんど無制限になっちゃうわけですね。中小企業の交際費というものは、料理屋からそういう飲み屋の領収証を一枚一枚非常にきびしくごらんになりますね。ところが、大会社のものは、まず交際費に目を通すということはほとんどないそうです。また、あっても、支店から何から非常に膨大なものですから、そういうものを一々どれがどこのキャバレーなりバーの交際費であるかわからぬ。そこいらに、私が言うように、マンションあたりにめかけを囲うという事態が始まってくるわけなんですね。しかし、中小法人のやつは、わりときびしく交際費でも査定されますね。ところが、貿易なんかは無制限なんですよ。  だから、その交際費の課税のあり方一つでも、少し厳密にやっていきますと、これは問題が出てきます。もっと交際費については、一言で言うならば、損金算入の確立と申しますか規制をきびしくするというか、そういう方向をとる、こういう方向にいくべきではないでしょうかね。そのことをあまりしないで、そのことを前進させないで、さっきからおっしゃったような形で、ほんのちょっと手心を加える。これが私は税制全般について一これは皆さん方よりもほんとうは自民党なり政治家がすべきことだと思うのですが、もっと抜本的な税制改革を行なうべきじゃないか。交際費一つを見ましても、五千七百億円も六千億円も交際費が使われる。あなたも、何かきのうあたりの新聞か何かに出ておりましたように、ゴルフや何かはこれは交際費ではない、こう言う。そのとおりで、ゴルフにいたしましても、あるいは必要以上のキャバレーや待合等の経費にいたしましても、これは私は交際費ではないと思うのですよ。そういうものが、あまりにも大会社の場合は無制限に交際費として認められておる。こういうことを見れば、さっき私が言ったように、まじめに額に汗して働いている人は、高校出でも、ちょっと給料がよければ税金がかかる、片方は六千億円前後の交際費が湯水のように使われていく。しかも、一歩前進さしたというけれども、その中身を見ると、それはものの見方とおっしゃるかもしれないけれども、放蕩むすこが得をする、こういう形の前進のさせ方だ。本質に触れて交際費に対する課税問題に対処したとは私は必ずしも思っていないのですよ。皆さん方としてはそれは当たりさわりがないほうがいいかもしれませんけれども、やはりこういうときは、もっと本質に触れたものをお出しになったほうがいいと思うのですよ。だから、大法人の調査のしかたの一部面として、あるいは中小法人の調査のしかたの一部面として考えてみると、中小法人の場合は、どこの料亭に行って、領収証がどれだけあるということが全部わかる。ところが、大法人の場合は、そこいらのキャバレーやバー、あるいはゴルフ場などの一方的ツケをそのままほとんど調べないで通している。これは、私たちが知っている税務署の人が言うのです。ほとんど大会社の交際費なんか目を通すことはありませんよと、これはほとんど言いますよ。たとえば、キャバレーやバーに行って、全国にあるものを集めてきて、一々目を通すどころじゃないですよ。東京に本社があるものを、大阪なり、神戸、福岡という地方に行って、それが幾らかかったということを調べる方法はないですよ。だから結局、交際費の使い方、これはこういう飲み食いだけではなくて、デパートやなんかの大口利用者等の調査等も皆さん方たまにちょっと調べられることがありますけれども、本格的な調査というものは行なわれたことがないと思うのです。中小企業者がちょっとそういうものを贈与したり何かやってみなさい。相当きびしく調べられますからね。ところが、大会社の場合はほとんどない。私が吹原事件をちょっとやったときにも、大判小判をごっそり贈ってきた人がありましたね。これもちょっと問題になっただけでその後問題になりませんけれども、デパートあたりで大判小判などを多額に買っても、ほとんどそういうものは問題になっておりませんね。そういうことは数え上げればきりがありませんけれども、大会社の調査というものはたいへんお留守になっておる、こういう形のものがあるわけでしょう。  だから、もっと中小企業者に対する課税のあり方——私は税率を一番最初提起いたしましたけれども税率じゃなかなかお変えにならないようでございますから、そうなりますと、課税のあり方その他についてやはりお考えになる必要があるのでないか。こういうときにでも繰り返し言わないと、税務署などに行って中小企業の方はそういうことはまずほとんど言えないようでございますから、ぜひひとつ考え方としては、そういう点を御配慮いただきたい。
  56. 塩崎潤

    塩崎政府委員 交際費の課税問題から中小法人の税負担あり方の問題になったのでございますが、最初の交際費の課税で、交際費の本質に触れた改正になっていないではないかというお話でございます。そもそも私は、交際費を否認するというようなこと自体、非常に異例な、税制上本来好ましくない方向であろうと思うのでございます。しかしながら、交際費の現在の支出の状況は非常に巨大であり、社会の批判は強いわけでございます。したがいまして私どもは、交際費課税のねらい、つまり交際費を減らせという社会の要請にこたえた改正といたしましては今回の改正案が適当ではないか、こんなふうに考えておるのが第一点でございます。  第二点は、大法人と小法人との間の交際費から漏らされました課税の実例、あるいは負担割合でございますが、交際費につきまして、調査の点につきましてもいずれ長官からお話があろうかと思いますけれども、現在の四百万円という交際費の基礎控除の制度が非常に中小法人には有利に働いておりまして、交際費の否認を受けております会社数は二万七千ばかりでございます。法人数約七十万ばかりでございますが、二万七千ばかりでございます。このことは、大法人が否認を受けておるものが多いということが言えますし、否認の割合を見ましても、資本金が大きくなるにつれまして否認の割合が大きい、こういうことが数字的にもいわれておるわけでございます。  第三に、海外交際費の問題も、一例として、これは中小法人には海外交際費がないというお話がございました。したがって、その面からも交際費課税は大法人には有利、中小法人には不利ではないかというお話かと思うのでございます。確かに、中小法人が海外交際費を使う割合は少ないかと思います。しかしながら、大法人の海外交際費は、これは言うまでもなくイギリスは交際費を全面的に否認いたしておりますけれども、輸出にからむ海外交際費は全部交際費からはずしておりますように、世界各国と競争する上におきましても、やはり同じような条件にしたほうが税制上適当だと私は思うのでございます。世界各国のいずれかの国で、交際費について何らかの規制がないといたしますれば、やはりそれと調子を合わせて輸出競争をするほうが、輸出に依存する程度の高いわが国では適当だ、こういった趣旨で今回海外交際費はそのワク外としたわけでございます。  なお、交際費も、先生のおっしゃいましたように批判がございますし、海外交際費といたしましても同じような批判が出るおそれもあります。たとえば、商社が日本国内で使うような交際費は交際費の規制外にする、海外交際費に見ないのだ、やはり外国でレストランで使うようなものならば世間の目から批判を受ける程度が少なかろうという趣旨から、海外交際費の範囲は、日本国内で使われるものは入らない、こんなふうな手当てはいたしているつもりでございます。  なお、法人の実効税率の問題は、先ほど申し上げました支払い配当に対する軽減税率で行なわれている現在、さらにまた、株主所得税法人税と一体と考えている現在、税制の仕組みのもとではいろいろむずかしい問題がございますが、なお、おっしゃいましたような点を考慮いたしまして、さらに個人所得税とのバランス、これが非常に大事でございますが、その点が、所得税が高いのに法人税税率が中小法人でもなかなか下げ得ない実情にあるということは、先ほど来の、法人のあれが多いということでおわかりのことだと思います。  非常にむずかしい問題でございますが、所得税減税の方向ともあわせまして検討してまいりたい、かように考えております。
  57. 只松祐治

    只松委員 そういうことは、言い分はわからないこともないのでありますけれども、しかし、私が言ったような抜本的な問題を提起して、その一例をちょっと言った。例は必ずしもいいのではないのでありますが、そのうちの一つの交際費を言っているわけですけれども、飲み食いなりなんなり、あまりにもひどいとは思いませんか。こういう日本の交際費の使い方、いわゆる社用族ということばで言われますけれども、こういうように、いわゆる会社なりなんなりのツケで飲み食いして、表面上出ているのは五千七百億円ですが、もっと多いのじゃありませんか。いろいろなものまで含まれておりますからね。だから、こういう交際費のあり方について、損金算入制度というものをもっとシビアーに確立する。こういう方向ぐらい打ち立てるべきではないか。私は税務官吏からも聞いておりますけれども、外国で使ったやつ、あるいは、飲み食いして横文字をちょっと書いておけば税務署はフリーパスですよと言う。給与所得者から始まって、あるいは中小企業なり、そういうものに対しては非常にきびしい税の調査というものが行なわれているわけですよ。私は、税小ではないし、ことしはそういう形の委員会の論議は初めからほとんど行なわれませんでしたし、実際上行なわれている徴税の実態というものについてことしはほとんど論議をしておりません。しかし、そういうことをしていいということになれば、あるいは、そういう時間があれば、東京において、あるいは埼玉において、この辺あたりで皆さん方が行なっている問題を、去年まで私がいろいろ出しておりましたように、実態を出してもいいですよ。相当きびしくあなたたちは行なっているのでしょう。第一、中小企業者が一千万円か二千万円でもありますと、ものすごい大悪人のような形で、警察も及びつかないような捜査陣を張って皆さんがおやりになるでしょう。にもかかわらず、大法人のこういう交際費とかなんとか、こういうものについてはきわめて寛大なんです。ほとんど手をつけない、こういうことなんです。一方にそういうことをやっておられる。去年そば尾さんも石屋さんもおやりになったし、いまも中小企業はずっとおやりになっているでしょう。だから税の増収が起こってきているのでしょう。単に高度経済成長に伴う税の増収だけではないですよ。何なら、皆さんが去年調査をされて操作をされた全部の資料をお出しいただいてもけっこうですよ。お出しになれば、その結果どれだけ税の増収があったか、業種別、資本別による税の増収は、お出しになればすぐ出てきますよ。大会社の大法人が伸びてきたのか、中小企業、零細企業の法人が伸びてきたのか、あるいは事業所得のそういうものが伸びてきたのか、当初の税に対する申告と、あとの修正申告を行なったものか、私はそういう論議をことしはまだしておりません。また、しょうと思いませんけれども、そういうことを言わぬでも大体おわかりだと思うからそういうことは言わないが、ただ、交際費というのはあまり多過ぎはしませんか。放任し過ぎはしませんか。損金算入の基準をことしちょっと手をおつけになったわけですけれども、いままで交際費はほとんど手をつけなかった。これに関連して私は聞いておるわけです。条文をあげておりませんけれども、交際費の課税に対して聞いておるわけです。損金算入をもっときびしくしたいというくらいのことをお答えになるべきではないか。そうじゃなくて、いままででけっこうだということから再度答弁があったから聞いておるわけです。ほかのそういうものと関連して、あなた方はそういうことはあまり詳しく御存じないかもしれないけれども、私たちのところに陳情なり苦情なりが来るのは中小法人からで、局扱いのものはほとんどそれは来ませんからね。中小企業からはよく来るからそういう実態というのはよく知っているのです。そういう実態を話さないとわからない。損金算入という問題については、一般世論もそうですし、実際上もそうですよ。交際費を使うのがでたらめ過ぎはしないか、それを税制面だけから規制するというのは確かに無理ですよ。ほかのいろいろな面から規制していかなければならないけれども、しかし、ここは大蔵委員会ですし、法人の交際費の課税が今度は問題になっているわけですから、その面から論議するよりしかたがありませんから私はそのことを皆さんにお尋ねした。そのいう面からもう少し規制をする、こういうふうにお答えいただきたいのです。
  58. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、交際費につきましては批判の強いことも先ほど来申し上げておるとおりでございます。しかし、今回のように交際費を前年同期よりもふやしたのなら、五%をこえる部分については全額益金算入という制度をとりましたことは、そういった世論にこたえたことだと思いますし、減額したならば、法人税計算上もう一ぺん控除するということは、やはり節約を多く期待する国民の批判にこたえたのではないか、ただ、そのやり方が、前年同期の基準を用いるというところではまだまだ不十分ではないかというような御意見はあろうかと思いますが、それはまた、今後期限が二年間続いておるので、今後の交際費の支出状況がこの制度によってどうなるか、それを見て検討してみたいと考えております。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連。  国税庁にお願いをしたいが、この間、村山君が本会議で質問した中にありましたように、私どもは、いまこの交際費という膨大な額が一体どういう形に使われておるかということを正確に承知いたしておりません。  そこで、サンプル調査でけっこうですから、資本金別に百億以上のところ、その他一億から適当にランクを限ってランダムサンプリングでけっこうですから、交際費の中身についての資料を提出願います。  一体交際費はどういう形で使われておるのか。この前問題になりましたように、少なくとも私どもは、企業がいろいろな交際をすることの範囲は常識的なものであるべきだと思う。常識的なものということは、日本の古来の慣習として、あるいは食事にごちそうすることは、ある程度やむを得ない。しかしその場合に、この間村山君が触れましたように、はたしてそこに芸者を呼んでやることまで、本来国民の常識上の交際費の範囲に入るのかどうか。キャバレーに招待することを含めて、それが常識の範囲に入るのかどうか。皆さんのほうは、今度ゴルフの法人加盟の問題についても考慮するということで、たいへんけっこうでありますけれども、ここらの中に、要するに、普通の一般国民が私的な消費でできないことを、交際費の名において、法人負担の軽減の中で特権的な行為をするというこのあり方は、昨日以来行なわれておる税の公平の原則から見ましても、著しくこれらのものに特権的なものを認めておる結果になると思う。そこで、ひとっこまかく、その交際費の中身の飲食費——飲食費の中身については、赤坂だって全部が全部芸者が入るか入らないかわからないけれども、少なくとも芸者の花代が含まれると思われるようなものを含めて、少しこまかい分類に基づくところの交際費の現在の消費の状態をひとつ資料として御提出いただきたい。ただし、これはいま要求をしたからといって、二、三日で出るとは思いませんから、一体、どのくらいの時間があったらこの調査の資料に応じられるのですか。国税庁長官より御答弁いただきたい。
  60. 泉美之松

    ○泉政府委員 御質問のような飲食費だけですとまだわかりやすいのですが、飲食費の中で芸妓の花代を伴うか伴わないかという調査まではいままであまりいたしておりませんので、御要求に応じて調査をしたいと思いますが、これにはやはり三カ月くらい余裕を見ていただかないと、かりにサンプルでありましてもなかなか調査しにくいと思います。相当時間をかしていただきたいと思います。
  61. 平林剛

    ○平林委員 関連。  国税庁長官、いまの問題についてはなお三カ月かかるという事情はわかるのですが、私が去年この交際費問題を取り上げましたときに、交際費は、税法上、機密費、贈答費、接待費といろいろこまかく分類されておるけれども、それらの状態についてひとつ御調査をいただけないかということを注文してあるわけなんです。そうして、これはなかなか時間がかかるものであるからすぐにということにはいかないだろうけれども、適当な時期に私また取り上げますからそろえておいていただきたいということを申し上げて、この問題については資料がそろそろまとまる時期ではないかと私は思うのです。いま堀委員のおっしゃったことは、なおさらにこまかく言っておるから、これは私もわかりますけれども、せめて、私が昨年お願いいたしました点は今度の法案審議までにはぜひ御提出をいただけるものと私も期待しておりますから、お願いをしたいと思うのです。
  62. 塩崎潤

    塩崎政府委員 堀委員の詳細なる資料は用意しておりませんが、昨年の平林委員の御要求に基づきましてサンプルで調査いたしたものはございます。  これは九項目に分けまして、サンプルで調査したものがございますが、ただ、堀委員のおっしゃったような御要望にはほど遠い資料でございまして、項目は、接待交際費、贈答費が一つでございます。第二は広告宣伝費、販売費、第三は会議費、第四は団体会費、第五は福利厚生費、こういった項目でございますので、堀委員の御要望は長官のお答えになるものだと思います。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 三カ月でけっこうですから、いま私が要望した資料をひとつ当委員会に御提出を願います。      ————◇—————
  64. 内田常雄

    内田委員長 この際、三案についての質疑を一時中断して、石炭対策特別会計法案議題といたします。  本案に対する質疑を終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  66. 内田常雄

    内田委員長 討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  69. 内田常雄

    内田委員長 所得税法改正案等、三案に対する質疑を続行いたします。只松祐治君。
  70. 只松祐治

    只松委員 大臣がお見えになりましたが、もう一点だけ、法人税法の問題点について質問いたします。  六十条の保険会社の契約者配当の損金算入の問題ですが、これも私たちが常日ごろ言っておりますように、相互保険会社ということで相互になっておるわけですが、会社側から埼玉県代表だれと東京都代表だれと三、四十名の社員代表を指名する。社員を集めてきてその重役を指名する。これはその辺の八百長よりももっとひどい形態というのが、近代社会の相互保険会社の運営の実態です。この経理内容その他についても、いずれこれはわれわれ国民の将来の一側面をになっておる保険会社のことですから、日を改めてこの問題は論議したいと思っています。きょうこの法案の改正が出ておりますので、ちょっとだけお尋ねいたしておきます。  損金算入に保険会社は準備金割合として、日本生命で九九%、大正では九九・四%、大同でも九九・一%、まあ九九%、悪いところで九三%くらいですか、全部なっておりますね。そして、ほとんど利益というものを得ていないわけですね。こういう保険会社の運営というもの、しかもこれが二十年、三十年先にいって、保険金というのはスライドしないで、昔のままの何千円とか何万円とかが支払われておる、こういう実態です。そういうことで論議いたしますが、こういう損金算入というものをどういうふうにお考えになりますか。
  71. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もう只松先生案内のように、相互会社はいかに課税さるべきかという問題に尽きるかと思います。相互組織でございますので、いまの考え方は、御案内のように、契約者と保険会社との間の関係は、保険料を高く取り過ぎた、その部分を返すのが契約者配当だ、こういうふうな考え方に立っておるわけでございます。そうなりますと、税法上は、課税上はほとんど所得がないということになります。  しかしながら、よく考えてみますと、相互会社といえども、人から金を預かり、それを運用して運用益を生んでおるわけでございます。この運用益に対して、これを無条件に損金に算入するということは、いかに相互会社の組織でもおかしいではないか、こういった考え方から、この所得の契約者配当金についての損金算入限度に一つのワクを置いて、やはり企業に発生した所得であるという考え方のもとに法人税を課税しよう、こういう考え方でございます。なお、相互保険会社の課税は、世界各国その相互組織のために非常にむずかしいことになっておりまして、いろいろな改正が行なわれましたが、大体、現在御提案申し上げておりますような、契約者配当金について何らかの制限を置いていくという改正が適当ではないか、こういうふうに考えております。
  72. 只松祐治

    只松委員 そこで、この六十条の改正でございますが、四十年のときは相互会社だけだったのですが、今度は各保険会社を入れたというのはそういう理由ですか。
  73. 塩崎潤

    塩崎政府委員 株式会社組織の保険会社もございますが、株式会社も同じような仕組みを契約者との間にとっております。したがいまして、相互会社だけではこういった規定の適用はできませんので、今度は株式会社組織の保険会社も契約者配当をすれば同じような規制をしよう、こういう趣旨であります。
  74. 只松祐治

    只松委員 それから、保険会社に対する税法上の所得計算に関して特別の規則というものはあまりないわけでしょう。これはどういうふうにされますか。あるいは現在のままでいい、こういうことですか。
  75. 塩崎潤

    塩崎政府委員 三十六年でございましたか、やはりこの委員会におきまして横山先生の御質問があり、それに基づきまして、生命保険会社の課税方式は根本的に改正したわけでございます。契約者配当を無条件に損金算入いたしましたが、三十六年の改正によりまして——すでに現在の法人税法では負債利子の中に契約者配当を入れる、こういったことで昭和三十六年までは税法上は契約者配当を無条件に損金に算入いたしておりましたので、ほとんどの保険会社が税法上赤字であった、このことが、えらく大きな契約者配当をしながら税法上の赤字というのは何だという御指摘が横山委員からあり、その三十六年の改正で、それでは、銀行と同じく、受け取り配当と見合う預金利子を負債利子と見ておると同様に、契約者配当を一種の負債利子と見まして、受け取り配当のうちから控除する、その関係では、課税所得が三十六年にすでに出てきて今日までに至りまして、現在では赤字というような状態にはない、しかし、それでもまだまだ契約者配当の損金の程度が負債利子控除という形だけでは少な目でございますので、今回は、技術的な点でございますので、それを政令でさらに規制いたしまして所得を出したい、こういうことで、今度受け取り配当の益金算入の割合に見合う契約者配当は損金に算入しないような政令を設ける予定でございます。さらにまたその限度を何%というふうにきめてまいって、最低限度の保証はつくりたい、こんなふうに考えております。
  76. 只松祐治

    只松委員 この保険会社の課税というのはなかなか微妙な問題ですけれども、しかし、法人としては政治献金をしたり、あるいはきつきの話じゃありませんが、交際費を相当使ったり、あるいはその下会社としての土地会社というのをこういうところはほとんど持っていますね。そういうことをしたり、行為はほとんど法人と変わらないようなことをしておると私は思うのです。しかも、この支払いというのが二十年、三十年先の非常に安定しておる一般の会社と違って、日々経済活動を行なっておるこういう形と違っております。まあ別な面で利潤をあげいい。皆さん方のほうでもいろいろな料率というのを最低の会社に——きょう保険局の人を呼んでおりませんからこういう質問はできぬのですけれども、最低の会社に全部右ならえしてありますからね。普通は中ぐらいのところにその算定基準を置けばいいんだけれども、保険の場合は安全を見積もって一番低いところにしてあるわけですね。したがって、日生や何かという大きな会社は非常な利潤を生んでおりますね。したがって、たとえば日生劇場をつくったり、こういうのはまあいいほうで、ゴルフ場をつくったりなんかしたり、いろいろなことをやっているでしょう。だから、こういう問題に関しては、確かに、保険事業という面からだけ見れば、利潤が出ても、あるいは利潤を出させて課税をするということには問題があろうかと思いますけれども、私は、外から見て、会社として、一般の会社と同じように、あるいはある面では一般の会社よりもひどいような面さえ見受けられるわけですが、こういう面に関してはもっと監督を強化する、これも税制の面だけではどうかと思いますが、そういう面の指導監督をすることとともに、私は税金の面でも何らか考慮していっていいのじゃないか、こういうふうに思います。これは一応六十条の改正にあたっての要望意見でございますけれども、ひとつ、そういう点も十分お考えをいただきたいと思います。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連して。  いまの只松君の提起した問題で、主税局長、政令でと、こう法律のほうは書いてあるわけですが、いまの程度の話では、われわれその政令に委任された中身は全然わからないのです。この法律案そのものを見ても、要するに、一部を課税するということになっているだけで、その一部とは一体何であるかという中身もわからずにわれわれ審議ができないので、私が質問をするまでに、政令案が確定しないにしても、現在この法律案に見合ってあなた方の考えておるものを、明日の午前中の理事会に提出をしていただきたい。それでなければ、租税法定主義ということにはならないと思いますから、ひとつその点を要求をいたします。
  78. 塩崎潤

    塩崎政府委員 提出いたします。
  79. 横山利秋

    ○横山委員 関連して。  いま堀君の適切な意見ですが、私、ずっと官報を見まして、ずいぶんいまと同じような問題があるので、あとで私の質問のときに申し上げたいと思ったのですが、特にいま只松君の提起した問題は、確かに私が申し上げたことなので、一体どういうことになるのか、私もわからぬです。予算の見積もりの中には出てくるけれども、ああいう金の額が取れるかどうかは私も疑問を持っておる。私の提案は、ただに堀君のこの問題だけではなくて、全部の政令案を出してもらいたいと思います。これは率直に言えば、少し無理なようではある。無理なようではあるけれども、その誠意を期待をしたいと思います。  一ぺん政令案の項目だけ全部印刷すること、それから、それによって、大体時間の許す限りでやむを得ぬですが、政令案はこういうふうにきめたいという骨子をひとつ出してもらいたい。
  80. 塩崎潤

    塩崎政府委員 政令案要綱の形で御提出申し上げます。
  81. 横山利秋

    ○横山委員 全部ですよ。
  82. 只松祐治

    只松委員 大臣がお見えになりましたので、大臣に一、二点お聞きいたします。  近ごろ大きな問題といたしまして、デノミの問題が出てまいっておりますけれども、日本経済調査協議会、これは財界のお歴々がお集まりのようでございます。ここでそういう要望といいますか、意見が発表されておる。あるいは、きのう参議院の委員会で田実三菱銀行頭取が、そういう意見には賛成である、こういうことをお述べになっている。院外においてだけでなくて、院内においてさえもこういう発言が見られるようになったわけであります。政府当局としてもあるいは当委員会としても、そうこれを知らぬ存ぜぬということで黙認するわけにはまいりません。国民もいろいろこの点について関心を持つようになっている。大臣のこのデノミネーションに対する一般的なお考え、原則論でけっこうでございますから、お聞かせをいただきたい。
  83. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本経済調査協議会の報告を見ましたが、そこにきのうの新聞に出た問題が触れてありました。非常に簡単に触れただけでございますが、デノミネーションを実施することが望まれる、しかし、実施にあたっては、事前にデノミネーションについての一般の誤解、不安を取り除くように十分なPRを行ない、経済金融情勢が安定している時期を選ぶことが肝要であるという御意見でございます。この意見には私どもも原則として賛成でございます。もとからこの問題についていろいろ私どもは研究したことがございましたが、結局、やはり安定した時期を選んでやらなければいけないということと、国民に誤解のないように相当この問題が徹底されて、むしろ国民側からこれが要望されるというような情勢においてやるのでないと実施はむずかしいというのが私どもの結論でございまして、それ以後、そのままに、ずっと今日まで過ぎてきましたが、その間、外国におきましては、フランスをはじめ、もう戦後この問題は各国において解決されておりまして、イタリアと日本というふうにごくわずかな国がデノミをやってないという状態でございますが、きのうも申しましたように、新聞にデノミということが発表されたために、もう不動産へ関心が向かっておるというようなことは、すでにもうデノミネーションとデバリュエーションと国民は間違えておる。貨幣価値が切り下げられるのだというふうな誤解がすぐに起こってくるという情勢もございますので、私は、いつか経済の安定した時期、国民の要望の高まったときにこの問題の解決をしたいとは考えますが、まだ相当時間をかけてゆっくりやるべき課題だというふうにいまのところは考えています。
  84. 只松祐治

    只松委員 いま、安定した時期、国民の全体的な理解と要望、いろいろあると思いますが、そういうことを前提とするというお話であります。そのほかにもいろいろな面から、いかなる時期ということはたいへんむずかしくなってくると思いますが、たとえば、予算の面から見まして、現在まで大体平均一四・二%ずつ予算の伸びがきております。したがって、あと五年間一四・二%の予算の膨張率が続くと仮定いたしますと、五年後には九兆六千億円、十兆円近い予算になる。予算だけで十兆円ということになりますと、これに伴ういろんな通貨膨張ということも来たしてまいります。国債でもおそらくあと四、五年お続けになるということでしょうが、これも五兆円になる。いろいろな面で通貨が膨張してまいります。ある面からいえば、貨幣価値が下落する。こういうことを考えますと、いずれにしても、あと四、五年以内にはデノミに踏み切らなければならない、こういう事態が起こってくるのではないかという気もいたします。  いま原則論だけで、時期なんかを言うといまみたいに誤解なんかをかえって生ずる面もあるかもしれない。しかし、国民にPRをし、認識を深める意味からも、こういうものが表面化した以上は、きょう直ちにということではありませんが、順次政府のそういうものに対するとるべき方策というものを明らかにしていかないと、かえって混乱を招く、こういうことも考えられます。  もしきょう言えれば、およその時期なり方法というようなもの、言えなければ追って検討してもけっこうでございますが、いずれ近い時期にそういった問題を明らかにしたほうがいいのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  85. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ずっと以前にこの問題を研究しましたときには、国民に誤解のないようにこれを周知徹底するということはなかなか事前策としてはむずかしい、だから、もう一挙にこれをやる、やる場合には両建ての貨幣を出して、これを一年か二年国内に通用させるということにしたら混乱はなくなるだろう。結局、新しい一円でも古い百円でも貨幣価値は同じじゃないかということが全部行き渡ってから一方の通貨を回収することにしたら混乱は起こらぬじゃないかというような、具体的な研究がかつてなされたことがございましたが、しかし、やはりこれをそういう形でやれるにしても、やる時期というものがございますので、その安定した時期でなければいけないというのが私どもの考え方でございましたが、御承知のように、高度成長をやっている過程におきましては、始終国際収支の問題も起こしておりますし、なかなか、経済が安定してこういうことを実行できる時期というものを把握することがむずかしい、こういう事情もございますので、これをいつ、どういう形でやるかということは、いまここではまだ言うことができません。もう少し長い間の課題にしていただきたいと思っております。
  86. 平林剛

    ○平林委員 ちょっと関連。  いまの問題について私、昨日大蔵大臣の御見解をお尋ねしまして、ただいまのようなお答えをいただいたのですが、きのうはまだ正式な文書を見ておらないからということで、あの程度の質問にとどめておいたわけなんですけれども、私は新聞で読んだだけで、申し入れ書そのものは読んでいません。しかし、長い間研究した結論として、政府並びに日本銀行に申し入れをしたということになっておりまして、この申し入れには回答するというようなことは必要ないのかもしれませんけれども政府としては、申し入れられたときにこれに対して回答するような形をとるのですか。それとも、そういう申し入れがあったということについて検討し、適当な時期に実際の方法として政府が示すという形をとるのですか、この点はいかがなんでしょう。
  87. 中尾博之

    ○中尾政府委員 手続の点でございますので、かわってお答えいたしますが、まだ意見書そのものは大蔵省といたしまして受け取っておりません。調査機関におきましてどういう取り扱いになるかも聞いておりません。実際問題としては、私、こちらできょうお話が出るというところから、そっちのほうの関係から事務的に一部手に入れまして、それで大臣にお目にかけていま持っておられるのでありますが、手続的にどういうことになりますか、向こうの話を承って、そういうことであればそれから先の問題になります。
  88. 只松祐治

    只松委員 いずれにいたしましても、当の大蔵大臣が、デノミには賛成であるし、すでに調査研究も相当行なってきた、適当な時期を見てこれを行ないたい、こういうことを明言されたわけでございますから、いずれそういう段階に進むと思います。  ただ、安定した時期というのは、これはよく与野党においても、政府は安定したというし、われわれは安定していないということで、こういうことをよく論争いたしますように、見方によって異なってまいります。一般的に、政府としては高度経済成長より安定経済へ、安定成長へ、こういうスローガンなりなんなりをお掲げになっておりますように、経済の安定的発展という方向に、佐藤内閣に入ってから入っているのだ、また、そういう政策をとっている、こういうふうに言っておられますね。そういたしますと、どの程度の安定かということになると、これまた問題になるでございましょうが、一般的な経済的な諸条件としては、佐藤内閣のもとにおいてはある、整っておるとまではどうか知りませんが、ある、こう言っても過言ではない。そういう意味では、それほど遠くない時期に、これは政府と意を合わせてそういうものをその辺からぽんと打ち上げられたのかどうか私は知りませんけれども、いずれにいたしましても、こういうふうに表面化して、正式に大臣がそういう意向を表明された以上は、そう遠くない。  それに関連いたしまして、これはこの前平林君がこれも昨年質問したことがあるのですが、いま硬貨を切りかえられております。銀貨を白銅貨にされる、その製造コストを非常に下げられる、それが大体行き渡ったころデノミをやるのではないか、こういうことを昨年聞いたわけでございます。案の定と言ってはなんでございますが、出てきた硬貨を見ますと、これは五十円の白銅貨ですね。これはたいへんに不評ですね。見るもあわれといいますか、五十円。ここに五円玉がありますが、むしろ五円玉のほうがちょっと品がいいですね。私はたまたま拾った人から三日前にもらったのですが、これは昔の五銭です。この五銭と五十円と五円と見まして、どういう感じがいたしますか。しかも、専門家に言わせると、この五十円は簡単に偽造ができるでしょう。材質は別ですが、非常に粗雑ですから、こういうことを言われておる。こういうデノミをするから、とにかく簡単にこういうものをつくっておけ、こういうことでおつくりになったのか。しかし、いずれにいたしましても、通貨というのは国民が非常に信頼を持っておるわけですし、またしなければなりませんし、それは経済の安定の一つの条件ですから、こういうものはつくりかえられて——前の五十円もちょっと持ってきたのですが、これから見ると雲泥の差ですね。この五十円ならまあまあ一つの通貨価値があるようでございますが、この五十円はあまりにもひど過ぎると思うのです。こういうことを見通しておつくりになったのか。それとも、すぐというか、遠い将来においてデノミを起こすということならば、こういうのは今度はつくりかえになったほうがいいのではないか。これは国民の信頼を落とすものではないかと思うのですが、その時期とともに、この五十円硬貨に対するお考えを聞いておきたい。
  89. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 デノミと今度の通貨のなにとは全然関係ございません。これはあとで理財局長から御説明いたします。  いまデノミについてどういう見解かというお尋ねでございましたが、誤解のないように申しますと、政府部内ではこの問題を取り上げて論議したことはございません。したがって、まだこれに対する対策をきめているというわけではございませんが、いずれにしろ、こういう問題が表面化してきたのでありますから、広くこの問題が今後あらゆる層において取り上げられて、国民的にいろいろ議論されることが私は非常に望ましいことと思います。  通貨の問題につきましても、通貨価値が変わらないのだということが国民に徹底されれば、それで混乱を避けるということはできますので、できるだけ今後この問題は国民層で論議されることを私は望んでいる、こういうことでございまして、政府がいつ、どうするというふうに政府の態度というものはまだきまっておりません。このことだけ申し上げたいと思います。
  90. 中尾博之

    ○中尾政府委員 ただいま小額貨幣の点につきまして御質問がございましたが、技術的な点でございますので補足いたします。  これは御承知のとおり百円のコインが非常に普及が少ないということで、これを広めるというのが第一の目的でございます。そのためには、銀の手当が将来長きにわたって考えますとむずかしいだろう、事実、貴金属はだんだん手に入らなくなっております。御承知のとおり、日本の経済の規模は大きくなってきておりますから、それでやっておるものであります。それだけのことであります。その結果百円を白銅貨にする、その際、白銅貨にするかニッケル貨にするかという問題がございました。しかしニッケル貨は、純ニッケルにいたしますと、またこのニッケルの手当に問題があり得るという判断であったわけであります。事実、ニッケルはいま非常に円滑な入手が困難になっておるというような状況でございます。そこで白銅貨にいたしたわけでございます。白銅貨にいたしますと、現在の五十円の純ニッケルとの間に素材価値の転倒が起きます。そこで、これを調整いたしますために、現在の五十円をそのままにして、大きな百円をつくるか、あるいは百円をそのままにして五十円を小さくするかというのは、これは非常に論議のあったことでございます。私どもは御発言のようなことがあることはわかっておるし、それから、見た目で小さくなることは私どもとしては立場上むしろつらいのであります。それで、むしろ五十円をそのままにして百円を大きくする案が有力であったのでございますが、なお、これは国民各層各界の方がお使いになるものでありますから、関係の各界からそれぞれいろいろ指導的な方々にお集まり願いまして御意見を承ったのでありますが、その結果、百円より五十円を小さくする——現在の五十円をそのままにしておいて、それ以上の百円玉をつくった場合には、千円以下のコインを持ち歩いた場合に、これは家庭の主婦が非常に困るという御意見が実は全体の御意見として統一されたのであります。それでやったのであります。これを今回小さいのにいたしましたいきさつはそういうことでございます。なお、当時大蔵大臣に対して当委員会でも御質問があったのでございますが、デノミとかそういうものとは全然関係ございませんで、最初の発端から最後にそういうことにきめました次第まで、一切以上申し上げましたことだけに尽きるのであります。
  91. 只松祐治

    只松委員 一ぺんつくって市中に出始めたのだからなかなか容易でないと思いますけれども、もっと通貨に国民が信頼を持つように御配慮をひとつお願いしたい。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 関連して。  大蔵大臣にちょっとお伺いをいたしたいのですけれども、あなたは現在の法律に事実と相違をしておることが明瞭に記載されておる場合には、大蔵省の所管に関する法律ならどうされますか。事実に完全に違反しておることを法律の条文に明らかに書いておるという場合です。どうでしょう、大蔵大臣、お答えいただきたい。
  93. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そうしましたら、ひとつ実例をあげていただきたいと思います。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 では、理財局長にお伺いをいたします。  現在の一円は、金としては一体何グラムに該当しているか。現在の一円の金に相当する価格というのは幾らになっておるのですか、お答えをいただきたい。
  95. 中尾博之

    ○中尾政府委員 現在の通貨と金の量目との関係は、関係が断たれておるわけであります。ただ、円という通貨の呼称は現在の貨幣法で有効に行なわれておるわけでありますが、金との関係は連絡はございません。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 現在の貨幣法で一円の基準をきめてあるわけですね。これは金兌換券のときの問題だろうと思うし、それからここに書いてある通貨は現在ないのですよね。あなた方のほうでは今度五十円白銅貨というのを出しているのですよ。法律上の条項として五十円の白銅貨というのはありはせぬ。現在貨幣法で掲げておるここをもう一ぺん読んでごらんなさいよ。ここに事実無根のものが法律として厳然としてそのままになっておる。これは大蔵大臣、おかしいと思わないですか。金貨幣二十円、十円、五円ですよ。いいですか、これは金貨幣百円、五十円というふうになっているわけじゃないです。さらに白銅貨のところへいけば、ともかくニッケル貨幣は十銭と五銭になっている。貨幣法は現存しているのじゃないですか。こういう事実と全然食い違うような法律が何ら処置されないで、依然として六法全書の一部を飾っているということは、われわれとしては納得できない。全然納得できない。無効なものだ。当然貨幣法は現時点で全部書き直すべきだ。こんなものがいままでほうってあって、六法全書に事実無根のことを毎年印刷さしている。とんでもないことです。大蔵大臣、どうです。政治的な問題だから、大蔵大臣の答弁を求めます。
  97. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 なぜこれが法律に整理されずに残っておったか、私は事情をよく存じませんが、実情と違うのなら、これはやっぱり変えるべきであろうと考えておりますが、ここになぜ残してあるかといういきさつは私知りませんので、政府委員に答弁させます。
  98. 中尾博之

    ○中尾政府委員 御指摘のとおり、貨幣法は非常に古く、金本位が確立され、さらに兌換が停止され、さらに兌換券から日本銀行券になったという関係法律を総合的に見ませんと日本の通貨が把握できないような姿になっている実情は、ぐあいのいい姿であるとは思っておりません。ただ、その際に、逐次そういうふうに通貨の本質が変わってまいりましたので、金本位から完全な管理通貨まできておるわけです。その間におきまして、いまの現実のコインの問題あたりば、いまは臨時通貨法のほうでいっているわけです。それから、価値の単位としての円といったようなものの呼称というような点だけがいまの貨幣法でいっているというのが実情でございます。これらにつきまして、今後統一的な貨幣法を整える必要があるという点は、私どもといたしましても必要だと考えております。しかし、現在のところ、さしあたり法律の規制といたしまして、これによって欠くるところはないということと、それから、さらに中央銀行法でありますとか、そういうような関係法律との関係もございますので、その点の作業が実は進んでおらない、私どもとしましては、実はこの問題は長年の懸案になっております。いろいろ検討もいたしておるのでございますが、実情はそういうことで御了承いただきたいし、姿としては、確かにつかみにくい姿になっている点はよくないと思います。しかし、管理通貨法というものを新しい体系でつくりますと、またいろいろ新しく検討せなければならない問題も出てまいります。  そういうような点から、現在のところは従来の必要な規定を残し、それからさらに事情の変わったことによりましてこれを修正する規定がいろいろな法律でできているという実態になっている次第でございます。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 全然納得できません。特に本法のたえまえになっている貨幣法は、現在あなたの言っているように、兌換の制度もなければ、金本位の制度もなければ、これは法律のたてまえがくずれ出しているものを残す理由は、第一ないじゃないですか。だから、いまの答弁を与党の方が聞かれても納得がいかないと思うのだ。だれが聞いたって納得がいかない。この法律は明治三十年の法律ですよ。一番最後に直したのが昭和八年ですよ。いいですか。昭和八年までは確かにこの法律でよかった。それから非常に変わってきている。現在やはりこれは直すべきですよ。現在の状態に直さずして、金一円は、単位としては「純金ノ量目七百五十ミリグラムヲ以テ価格ノ単位ト為シ之ヲ円ト称ス」と書いてある。こんなばかな、通用しないことが書いてあるのだから、これはやはり事実に相違したことになるわけで、円というという以上はこれにひっかかってくるわけです。  だから、そういう意味では、私はすみやかにこの通貨の問題については、いまのデノミの問題等もあるけれども、片面ではこういう骨とう品をいつまでも六法全書に掲げておるというようなことは政治的に見てもおかしい。  私は大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
  100. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政治的に見ておかしいのじゃなくて、政治的に見てむしろ必要であったのではないかと思います。現行法で、事実上はこの法律が死んでおるという部分があっても、これを死んだんだぞといって殺さないでおく理由というものは、通貨というようなものに関しては、いろいろなむずかしい問題が伴っておりますのでそうなっているんじゃないかというふうに私は考えております。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの答弁ですね。裏返すと、要するに、もう一ぺん金本位になるかといったって、私は、金本位になる情勢なんというものは——いまフランスは盛んにもう一ぺん金本位だとかなんとか言っていますけれども、日本の場合は、現在のように金もないものが、現在のこの通貨の状態に対して金本位に戻せるわけもないのだし、おそらく政策的にもあなた方も現在国際的な通貨が金本位になることを歓迎もしておらぬだろうと思う。だから、そういう点では、政策的にも何らこれは意味がないので、これはただ誤解を招くもとになっておるし、法律にこんなことがあるということを知らない人が大部分だけれども、少なくとも、大蔵委員会のわれわれは、通貨の問題が議論になるときには、やはり六法全書に書いてある法律の定めておる条項というのは、これが通貨の基本になっておるということになれば、やはりあるべき通貨の原則というものを一度にらみ合わして書くのが至当ではないか。政治的に、これがあることが有意義だなんということは納得できません。  では、もうこれは改正しないのですか。事実と相違をしておるのに改正しないのですか。
  102. 中尾博之

    ○中尾政府委員 条文そのものとしましては、前法後法の関係で逐次修正をされております。しかも、それも兌換を停止するというような措置で始まって、それがいつの間にか兌換券が日本銀行券になって、そして現在の管理通貨になったわけです。その間におきましては、実際に流通する価値の単価なり通貨なりと、呼称というものは、国民にとってはそのままの観念で続いて現在まで来ておる、その実情を合わせまして新旧の条文がいま残っておるのでございます。その点が条文を索引いたしますのに不便な姿になっておることはまずいことだと思います。  そういう意味で、私どもはこれは懸案であります。ことに、いまのようなデノミネーションというような問題がもし現実に取り上げられるときになれば、ある程度この問題に当然関係を持ってまいりましょう。そのような問題は過去におきまして何回かそういった議論もございました。そういう際にも、あわせてその議論が実は重ねられておるのでございます。しかし、統一的な通貨でなければならぬという問題になりますと、管理通貨そのものにつきましてのいろいろな規定そのものにつきまして、今度は法律の観念でよほど新しいものをつくっていくことになります。いままでは、やや歴史的なる施策と、法律の逐次の改正によって現在の通貨ができております。これを新しい体制に持っていくということでございますから、これはりっぱなものをつくらなければならないということで、私どもといたしましても、それは懸案として検討いたしております。しかし、実情におきまして、これでもって、別に法律の規範としての条文の関係におきまして現状に合わないということではないので、ただ、その中にはすでに事実上ほかの条文によって死んでおる、条文が入っておる、これがまことに目ざわりで、見にくい姿になっておる、そういう条文の整理をする必要があるということは事実であろうと思います。そういう機会をなるべく早く持ちたいと思いまして私どもはやっておりますが、何しろ管理通貨の規定と申しますものは、世界にもあまり例がありません。事実上こういうことでやっておる国が多いものでありますから、それで私どもも実は非常に慎重に検討もやっておる。理財局でこれを所掌しておりますが、通貨関係のこれが、実は一番の技術的な懸案なのです。  御指摘の点はまことに大事な問題であるということは、私どもよく承知をいたしております。しばらくそういうことでもって努力を続けておりますから、御理解いただきたいと思います。
  103. 只松祐治

    只松委員 時間がありませんので、最後に大事な問題として、大蔵大臣が、間接税を中心に今後の税制を進めたい、こういう発言を参議院でなさっておる。さっき私、所得税法人税の問題について、若干根本的な問題を含んでお尋ねをしたわけでありますが、そういう中で、歴代の大臣、前の福田さん、田中さんも、直接税、特に所得税中心に今後の税制を進めたい、こういうお話をいままでなさっておられる。水田さんになってから突如として間接税中心——それは論議が全然なかったわけではありませんが、いろいろな質問に対して、泉さんもうしろにおいでになるが、国税長官も多分昨年でしたか、所得税中心に近代国家はウエートを置くべきだ、こういうお話があったことを私は覚えておりますが、大臣は、やはりあくまで間接税が中心、こういうふうにお考えですか。
  104. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 実はきのう、この委員会で同じ御質問がございまして、お答え申し上げましたが、私の言った意味は、間接税を上げる、したがっていまの物品税の税率を上げたり、あるいはたばこを値上げするとか、そういうのではなくて、もう少し次元の高い角度から、将来の長期の見通しにおいて、いまのような四十八対五十二というよりは、もう少し間接税の比重が高まった形の租税制度が望ましい、また、そうならざるを得ないのじゃないかということを言うわけでございまして、いますぐ間接税の比重をここで急に上げるというのではございません。  と申しますのは、きのうも申しましたように、やはり国債というものを出した以上は、将来これを償還できるやはり成長財源というものの開発ということを、長期的には同時に考えなければならぬ。そういうことになりますと、昔は地租が国の収入の大宗でございましたが、これはもう斜陽税になってしまっておる。いまは法人税中心をなしておるようでございますが、この法人税というものは、今後伸び税金であるかどうかということを考えますと、次の斜陽税が法人税である、法人税はそういう運命を持っておるのではないか。ことに、外国を見ましてもみなそういうことで、もう法人税の国の収入中に占める比率は一〇%を割っておる国まで先進国では出てきておる。こういうことを考えますと、そういう直接税は下がっていく運命にあるとすれば、一つ成長税として、これは研究いたしているわけではございませんが、売り上げ税的なものが一応租税体系の中に取り入れられるというようなことも、将来は考えていいのじゃないか。そういうことから見ますと、そうすれば間接税の比重というものは下る方向にはないのだ、むしろ比重が上がる方向にあるのだろう、またそれがいいのじゃないかということを言ったわけでございまして、誤解のないように、きのうここで長々と御説明した次第でございますが、そういう意味でございます。
  105. 只松祐治

    只松委員 きのう私、この勉強その他で少し早く委員会を下がりましたので、きのう論議がありましたらあまり長くやりませんが、申すまでもなく、間接税は逆進性の強い税金でございます。間接税を取っておるところはあまりありませんが、インド等においてはそういうものをチェックする意味の、逆進性を除く、こういう措置をとっておるような国家もあるのですね。だから、間接税を中心にしてウエートを置くということになれば、そういうものを十分配慮しながらしていかなければならない。あるいは、その前提として、たとえばフランスあたりでもわりと間接税のウェートが重いわけですが、この場合は、その国の民主主義あるいは経済的な面でも非常な民主化をいたしておりますね。いわゆる間接税にウエートを置くか置かないかということは、一般的な税論議とともに、よく選挙法や何かでもありますように、戸別訪問とか文書違反というものは禁止すべきでない、近代的な国家では。しかし、日本で禁止されているのは、まだ社会そのものに封建制度が残っておるからで、そう言っちゃなんですけれども、保守党のほうはそれで資金的な誘惑その他があるからそういうものがあるわけです。本来これは自由にすべきなんですね。一般論ではなくて、やはり間接税なら間接税に中心を置くというならば、その社会形態その他全部を考慮に入れた上で置いていかなければならない、こういうことになると私は思う。間接税にウエートを置くということを言われれば、たいへんに国民に迷惑なり誤解を及ぼす面があると思う。それから、行なうならばそういうものを十分に配慮する。税調等におきましてもまだそこまでの論議なりが行なわれておりませんから、まあ、あまり大蔵大臣が先走ったようなことを言われるのは私はどうかと思う。それから、来年から青色申告が完全給与制になりますと、今度はもっと、一挙に所得税納税人員がふえる、所得税額が伸びる、こういうことも起こってくるのじゃないですか。特に給与所得者ですね、事業所得ではなくて。そういうことになると、今度は所得税というものもまたいろいろな立場が出てくる。こういういろいろなことを総合いたしまして——また繰り返すことになりますから私は言いませんが、こういう際に、いろいろな社会形態の変化に対応して税制の抜本的な改正——シャウプ税制が行なわれまして、そのシャウプ税制の土台が現在大きくくずれてきておるわけですね。こういうときに、ただ単に間接税中心とかウェートを置くとかいうことではなくて、私は、ひとつあとで御報告を受けていただきたいと思いますけれども、抜本的な税制の改革を行なう、これは単に税の制度上ではなくて、社会形態の構造変革に伴って行なうべきではないか、こういうことを長々とさっき主税局長等にもお話したわけですけれども、ひとつ、そういうことをお考えいただきまして、抜本的な税制の改革というものはけっこうでございますけれども、ただ単に、何か間接税を中心にいくのだ、ウエートを置くのだ、こういう形になれば、私たちもいろいろなことをまた考えたり、論議の方向でもそういうチェックするような形にいろいろしていかなければならない。いま聞いて多少はわかりましたけれども、ひとつ十分な御配慮をいただきたいと思います。  いろいろ申し上げたいこともございますが、大臣も御退席でございますので、これで終わらしていただきます。
  106. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ちょっと申しわけありませんが、いま言った中で、間接税と直接税の比率を私間違えたようでございますので訂正しておきます。  直接税はいま五九・三、それから間接税が四〇・七、こういう比率になっておるそうでございますが、私が参議院で申しましたのは、さっき言ったような意味もありますが、この二つの比率が、もう少し間接税のウエートが上がるということになってもいいのじゃないかということを言ったわけでございまして、数字が間違っておりましたから訂正します。
  107. 内田常雄

    内田委員長 本会議散会後再開することとして、この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十五分休憩      ————◇—————    午後四時八分開議
  108. 内田常雄

    内田委員長 休憩前に引き続き会議を開きま  す。  質疑を続行いたします。横山利秋君。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 最初政府側にお尋ねをいたしたいのでありますが、すでに理事会を通じて政府側に意見を求めております二つの私ども提案があるわけであります。  一つは、所得税法の一部を改正する法律案であります。これはいま労働組合法によって法人化し、法人の届け出をいたしました労働組合と、それから届け出をしていない労働組合とが今日社会にたくさんあるわけであります。労働組合法にすべて基盤を持っておるわけでありますから、団体交渉権及び団結権、行動権については何らの差別はないのであります。しかしただ一つ所得税法上これが区別をされておるわけでありまして、この点につきましては私どももうっかりしておったわけでありますが、まことにこれは遺憾にたえないのであります。もちろん所得税法等に、法人でないものについてはほかにもたくさんございますから、その区別があることは私も理論上認めるにやぶさかではございませんが、しかしこの労働組合に関しましてはこれ以外にすべての社会的、法制的扱いは区別がないのでありますから、この際、所得税法の一部を改正して、そして非法人の労働組合、つまり私どもに言わせれば労働組合法第二条に規定する労働組合ないしは国家公務員法第百八条の二に規定する職員団体、こういう文句を挿入いたしまして、税法上も法人たる労働組合と、何ら変わりなき扱いをすることは、適当かつ当然なことであると考えまして、理事を通して与党諸君、あるいは政府側に検討を依頼しておる次第でございます。  もう一つは、租税特別措置法の一部を改正する提議でありまして、これは消費生活協同組合の問題でありますが、これまたすでにこれと類似をいたします問題につきましては解決済みであります。留保所得の一部損金算入がかつて農協等と同様に認められておりましたが、農協などが一括適用されたあとも、生協については放置されておる仕組みでございますから、やはりこれは損金算入を認めてもらうことが今日の状況からいいましても、政府が中小企業の協業化やいろいろこれらの政策を用い、あるいは消費者対策を用いておりますときに、当然の措置なりと考えまして、これまた与党、政府側の御意向を御検討願っておる次第でございます。  私が質問に先立ってこういうことを提議いたしますことはきわめて意義深うございまして、誠実かつ良心的なお答えがいただけるかいただけぬかは、今後の質疑応答並びに審議に重大な影響があることでございますから、心して御答弁を承りたいと考えるわけでございます。
  110. 塩崎潤

    塩崎政府委員 主税局長といたしまして、お答え申し上げます。  まず第一の人格なき労働組合所得税非課税の問題でございます。現在、税法におきまして確かに人格を取得いたしました労働組合につきましては、収益事業を除けば非課税という規定があり、法人税法の別表に例示があるということはもう御存じのとおりでございます。しかし人格のない労働組合をこれに追加しろという点につきましては、二つの点から私どもは適当でないと考えております。  第一は、法律形式の上からの反対でございますが、ただいまも申し上げましたように、公益法人といたしまして社会活動をしておりますところの法人につきましては非課税、それは収益事業部分だけは課税する、こういうふうに書いてあるわけでございまして、労働組合のみならずいかなる団体でも、いかなるいい経済活動をしておる団体でも、人格を取得していないいわゆる人格なき社団につきましては、非課税規定を設けるたてまえにはなっておりません。この法律形式の上から見て、単に労働組合だけを人格がなくてもこれに追加することは、私は適当でないということでございます。  第二は、実質論から見まして、もう横山委員御承知のとおりでございます。個人と法人とを区別し、個人に対しまして所得税、法人に対しまして法人税がかかるわけでございますが、公益法人の部分につきましては、公益性の理由によって税金が免除されるわけでございます。そこで人格なき社団、人格なき財団、これらの所得につきまして免除することは非常に弊害が多い。現在のところ人格なき社団につきましてこの非課税にしろという御趣旨は、もう言うまでもなく人格なき労働組合の持っておる預金利子に対する非課税を意味すると思いますが、そういった預金につきまして人格なきものについてまで非課税措置を講ずることは証明の点から見まして非常な弊害を生ずる、将来の乱用の可能性を多分にはらむものでございます。したがいまして、こういう点から見て私どもは非課税とすることはできないという実質的な論議を持っております。これは横山委員御案内のとおり、個人立の学校、これも多分にその学校の面を強調するならば人格なき社団と同じような性格があろうかと思いますが、こういった点についての預貯金の利子についての非課税の問題にまで波及する大きな問題になろうかと思いますので、この第二の実質的な理由から申しまして、人格なき労働組合を追加することはできない、こういうことでございます。  それから、消費生協の問題、これはもうここでもずいぶん御検討いただいた問題でございます。〔「心してないじゃないか」と呼ぶ者あり〕心して言っているつもりでございますが、税のたてまえから見まして、特例措置を講ずること自体問題でございますが、農協等、中小企業事業協同組合につきましては基本法もある時代でございます。さらにまた農協あるいは中小企業は、組合員との間に生産資材ならばあるいはその組合員の生産物ならばそれを安く売りあるいはそれを高く買うことができて、自然に組合員、農民あるいは中小企業者の所得に反映するような仕組みでございますから、そこにまた一つの考え方も成り立つと思うのでございます。消費生協はそういった面では消費者との関係でございますから、その点も簡単にまいらない、こういった意味で留保所得の非課税措置を講ずることは困難な面がある。さらにまたこれもいつも言っている点でございますが、町の商業者、中小企業者との間の競争関係は、消費生協との間に最も激しいことはもう御案内のとおりでございます。そういった関係にあることを考えますと、税の公平の立場から見まして、消費生協について留保所得を非課税とするということ自体、やはり中小企業者の法人税あるいは所得税減税がやかましく言われておりますおりから、特例措置を講ずることはなかなか困難であろう、こんなことを申し上げざるを得ないのではないか、かように考えております。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 もう何のあいそもない御答弁をいただきまして、これは全然問題にならぬと思うのであります。しかも塩崎局長はだいぶ認識が誤っておると私は思う。たとえば、個人立の学校と非法人労働組合と一緒にしておられるのだが、私はだからこそ労働組合法第二条に規定する労働組合という冠詞をつけておるわけです。また国家公務員法第百八条の二に規定する職員団体という冠詞をつけている。すべて法律に基礎を置いておる組織なんであります。しかも他の法律上これらのものは法人たる労働組合と何ら区別がない。あったら言ってください。ストライキ権にしたところで、団体交渉権にしたところで、あらゆる点でこれは同じように扱われておる。ただ所得税法のこの点についてのみ違うべき理由が一体どこにあるか。これはひとつ与党の諸君もいわゆる審議に差しつかえることであるから理解をしておいていただきたいと思うのでありますけれども、私ども決してむちゃを言っているつもりはないのです。ほかの法律は全部平等に取り扱われて、非法人の労働組合だからストライキをやっていかぬと書いてない、団体交渉をやっていかぬと書いてない。したがって、所得税法だけ何で区別せにゃならぬか。個人立の学校だとかなんとかいう話は見当違いの比較なんでありますからこれはあかぬのです。それから租税特別措置法について、とにかくあなた中小企業と生協とがけんかしておるといかぬというのなら、そういう理論を用いるなら、農協はどうです。今日農協が経済、社会に及ぼしている大きな影響というものは、消費生協ごときものではないですよ。そうでしょう。農協が今日行なっておる仕事が、それは私悪いとは言わない。けれども、あなたの理論をもってするならば、中小企業を消費生協が妨害している、そう言うなら、農協ははるかに比較にならぬほどの大事業をやっているじゃないか。その農協はいい、消費生協はいかぬという理屈がどこにあるでしょうか。だからそこのところは塩崎さん、理屈は何とでもつけられるじゃないか。私は朝から感心して見ているけれども、泉さんとあなたは、毎日毎日そこにすわって私どもの質問に応じて、ほんとうに御苦労さまだと思っているのだが、それだけの努力と誠意があるならば、私の言うことは筋が通っておるとそこで一言言うてもらえば、次の質問に移れる。どうなんですか。
  112. 塩崎潤

    塩崎政府委員 心して私も申し上げておるつもりでございます。しかし、先生のおっしゃるように、確かに労働組合法上差がないことは、もう私も知っておりますが、税法上の差でございます。税法上の差を取り除くことの弊害を私は申し上げたつもりでございます。税法は、法人格があって、個人と切り離されて、その点が明瞭に認識されて勘定が別になることによって初めて免税されるという趣旨でございます。そういった意味で、労働組合法上の差異のないことは存じておりますが、税法上の差異は税法上の見地からひとつ考えていただきたい、こういう趣旨でお願いしておるわけでございます。  第二の消費生協の問題でございますが、農協の例を申されましたが、これも先ほど申し上げたとおりでございます。私どもは、農協といえども本来はこれは特別措置だ、好ましくないと思っております。やはり農協と中小企業の競合がないわけでもない。しかしただ、農協につきましては基本法ができ上がるようなときでございますし、さらにまたもう一つは、先ほど申し上げました、農協の活動によって農民所得が上がるならば、そこに自然に課税もできる。農民との間に、農協は資材を安く売る。そうすると農業所得は上がるわけでございます。農民の生産物を高く買ってやる、そして中間の利潤を排除することによって、農民の所得が上がる。こういった生産面につながる面を考えますと、農協の問題は税の面からある程度説明ができない点もないわけでもないというところがあるわけでございます。ところが消費者の問題は、やはり消費金の問題でございます。すでに課税済みの所得であり、たとえば消費者が利用分量分配金をもらう際に、これは消費者所得に課税されるということになっておりません。農協の事業分量分配金は農民の所得に加算する。このあたり、技術的なことを政治家に申し上げてはなはだ恐縮でございますけれども、そういった点もあることを十分考えていただきまして、この問題だけは御理解を賜わりたいと思います。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 詰めた話をしていいやら悪いやらわからぬのですが、しかしただ、いまのあなたの話だと、身もふたもない話になりそうですね。いかがでございますか。それならそれで私も考えんならぬ、正直な話ですよ。あなただって、それは説明になりませんぞ。農協だってほんとうはおれはいやだ、いやだけれども、しょうがないからやっておる。だからそこにまたいやなものをつけ加えるのはいやだ、そんなばかな理屈はありませんぜ。それはそうですよ。だから、ものごとは絶対ではございませんから議会側の御判断におまかせしますくらいなことは言うてもらわぬと、ぼくら話ができない。あとの質問になかなか移れぬから、徹夜でやらんならぬですよ。
  114. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは法律でございますから、最終は国会の御判断できまるわけでございます。しかしながら、やはり税制の筋は申し上げておく必要があると思って申し上げておるわけでございます。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 委員長、いまの質疑応答をお聞きくださいましたか。
  116. 内田常雄

    内田委員長 私もよく聞いております。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 ありがとうございました。委員長にお願いしたいのでありますが、委員長も、私がなぜこの三税の冒頭にあたって、すでに委員長の手元まで差し上げてあることについて、執拗に条理を尽くしてお願いをしておるかということはおわかりだと思うのであります。いま塩崎局長の発言によりますれば、あたりまえのことではありますが、やはり立法府におまかせするよりしかたがないということでございますから、委員長におかれましては、本件について、ひとつよしなに善処をぜひお願いいたしたいと思いますが、どうでございましょうか。
  118. 内田常雄

    内田委員長 私はよくお二人の話を承っておりますので、どうぞ先にお進みください。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 そこで、一つだけ政務次官にだめを押しておきたいと思うのでありますが、政務次官はお役人ではございませんから、事のいきさつを十分政治的に御判断をくださるものと思いますが、いかがでございましょう。
  120. 小沢辰男

    小沢政府委員 この問題は、御承知のとおり当委員会の理事会に正式にお話があったように承っておりますので、両案とも私は非常に政治的な問題が含まれておるように思います。したがいまして、私ども政府の立場で本日ここで横山先生の御質問に応じていろいろ見解を申し上げるとすれば、当然局長がいま答弁したようなことになるわけでございますので、この点はひとつ御了承をいただきたいと思うのでございます。しかし、私に政治的にどう考えるか、おまえは役人でもないのだから、というお話でございますけれども、私は役人であると同時に、政治家でございます。役人ではないことはないわけでございます。ただ、私、本委員会の理事会でもうすでに議題になっておりますことでもございますから、理事会で正式にいろいろと御検討になったことを承りまして、その上で行政府としての見解を述べさせていただきたいと思います。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 まことに感心しました。そこで、まず所得税法から質問に入りたいと思います。  この前、ある税法の学界の雑誌を見ましたら、わが衆議院大蔵委員会を少しけなしておるわけであります。どういうことかといいますと、大所高所からの議論はいいけれども、もう少し法律の条文に従って審議を尽くしてもらいたいということをいうておりました。これは議会の内部の内容を知らざる意見だという感じはいたしましたが、議事録だけを読まれる国民一般にとりましては、まあ大所高所、あるいは税法以外のことだけやっておるという感じを受けたかもしれません。そこで私は、少し恐縮ではありますが、きょうは逐条審議とは申しませんけれども、条文に従って問題点だけ簡潔に聞き、かつ簡潔にずっと答えていただきたいと思います。  まず所得税法第十条、少額預金等の利子所得の非課税。これは一種一店がくずれました。答申にはなかった問題であります。これはまあ各界妥協の産物で政府提案をされたと思うのでありますが、これはかえってずいぶん複雑にしてしまって、税務行政の窓口がうまくいかないのではないかということを私は痛感をするわけであります。このような複雑なやり方では、窓口が点検する方法がきわめて困難ではないか。これは長官の御見解を承りたいと思う。どうやってこういう複雑なやり方をきめて窓口でこの違反に対する追及をするか。税制簡素化塩崎局長の今度のうたい文句でありますにかかわりませず、これは複雑化さした様相があるのではないか。これは主税局としては少し心ならずもということがあったのではないか。そうでなければつじつまが合わないのであります。しょせん、結局これは大口所得者の優遇措置になっていくのではないかということを私は考えるのであります。いかがでございましょう。
  122. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ただいま横山委員御指摘のように、確かに少額貯蓄制度は、この制度によって税務署の手間がふえる点がございますことは仰せのとおりでございますし、また税法の部分も複雑になったことは言うまでもございません。しかし、本来の少額貯蓄のねらいから考えて見ると、若干複雑でもこういった方向はやむを得ないのではないか、こういう気がするのでございます。と申しますのは、少額貯蓄のねらいは百万円までの元本の果実は免税だ、こういうことでございますが、百万円というものなら、どんな形態でも免税にしてもいいという趣旨があらわれておると思います。しかし、それは同時に、私ども日本人の貯蓄慣行と申しますか、貯蓄慣習に多分に左右されるわけでございます。考えてみますと、日本人の貯蓄のしかたは、銀行は、たとえば住所地の一本じゃなくて、勤務地にも持つようなことがある。そういたしますと、現在の制度では、住所地にも一本預けてそれが三十万円、もう一本で残りの十万円を勤務地に預けた場合には、非課税貯蓄の制度が働かないということも、これは少額貯蓄を百万円までとした法律の精神に合っているかどうか、そこまでを税額と見るならば、もう少し手間はかかりましても百万円まで免税という精神に合わしたほうが、より横山先生の言われる納税者にわかりやすい、親しみの持たれる税法ではないかという気もするわけであります。  そこで今回も、そんなような趣旨、さらにまた貯蓄が、利子分離課税の税率が一五%までに上がったことを考えますと、その欠陥を救うことも大切なことではないか。実は百万円以内のものでも、数店舗のために一五%の高い税率を受けるということも、考えてみなければならぬ。全体として、中には乱用する人もありましょうが、大衆にとってみれば、こういった制度も、税務署の手間がふえましても、受け入れられる制度ではないか、こんなふうに考えまして御提案申し上げた次第でございます。なお、実施上の問題につきましては、長官から御返事があるかと思います。
  123. 泉美之松

    ○泉政府委員 横山委員のおっしゃるように、今回非課税貯蓄の制度の改正につきまして、それによって税務行政上複雑化になりはしないかという御心配の点はごもっともでありますし、私どももその点についていろいろ配慮をいたしたわけでございます。  今回の改正の趣旨につきましては、先ほど主税局長から申し上げたとおりであります。従来一種類一店舗ということになっておりましたのを、今回そういう制限をはずしましたわけでありますが、非課税貯蓄の申し込み書には、これは同一人につきまして、順次Aの店舗あるいはBの店舗ごとに次々に書き上げたものを非課税貯蓄の申告書として提出していたわけでございます。Aの店舗におきましては限度幾らまで、Bの店舗におきましては限度幾らまで、合わせた限度額が百万円以下であるかどうか、こういうことに非課税貯蓄の申告書が出てくるわけであります。そういう意味では、従来より非課税貯蓄の申告書がそれほどふえるというわけではないわけであります。そういう意味で、確かに非課税貯蓄の制度がこういうふうになりますことは、いろいろ税務行政上問題が出てくるおそれなしとはしませんけれども、私どもの目から見ますと、そういうふうにしていけば従来より非常に制度が複雑になるというわけでもなかろう、このように考えております。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 たくさん問題がありますから、ひとつ御両氏とも簡潔にお答えを願いたいのであります。  まず私は、御答弁が本心でないという感じがいたします。これは明らかに複雑になって脱税が促進をされる、そういうふうに私は予見をしておきます。  この際伺っておきたいのは、新聞の伝うるところによりますと、住民基本台帳ですか、今度できそうでありますが、それを納税当局が利用したいというお話があるようでありますが、事実でありますか。
  125. 泉美之松

    ○泉政府委員 そのような話はまだ聞いておりません。
  126. 横山利秋

    ○横山委員 もしできたら、利用をなさるというお気持ちがいまありましょうか。私はあまり感心をしないことだと思うのでありますが。
  127. 泉美之松

    ○泉政府委員 できた場合にそれを利用するということは、いまのところ考えておりません。
  128. 横山利秋

    ○横山委員 これは将来ひとつ十分に、私どもが念を押しておいたということを御記憶願いたいと思うのであります。  それから次は三十条、退職所得であります。  退職所得につきましては、むしろ政務次官に伺ったほうがいいかと思うのでありますが、今度の改正は長期勤続の者には有利であります。しかし、最近日本における資本家は、終身雇用、年功序列制度を破ろうとしておるわけであります。これは政府の経済政策を担当いたします人たちも、その考え方が強いのであります。いまここに退職金について、終身雇用、年功序列方式に沿って退職所得税金を安くしておこうというのは、政府の大方針と考えてよろしいのでありましょうか。日本における資本家がこの終身雇用、年功序列を破ろうとしておることについての矛盾をどうお考えでございましょうか。
  129. 小沢辰男

    小沢政府委員 私は労働問題を所管いたしておりませんので、その辺のところについて十分なお答えはできませんが、私ども、この退職所得の特別控除を決定いたしましたのは、そういうような問題とからみ合わしてこれを決定したわけではございません。御承知のとおり退職所得につきましては、最後の所得でございますので、長らく勤務した方々がその退職時に支給される退職金に非常な課税になっては、しかも、その退職金をもとにして老後の生活を送るということを考えますと、不合理だろうと思いまして、負担の軽減を大幅にはかっていきたいという趣旨からでございます。
  130. 横山利秋

    ○横山委員 からみ合わしてないということがおかしいと思うのであります。一方で税は国の基本的なものという考え方に立っておるわけでありますから、税の場合には長期勤続を優遇する。そうしておって、労働政策やあるいはほかの経済政策で、資本家の言うことを聞いて、その終身雇用、年功序列をなるべく破ろうとしておるということであるといたしますならば、これは適当でない。国の政策というものは二元化しておるというわけです。今後、年々歳々税金が安くなっていくわけでありますが、退職金についてここに新たに、いままでは五万円に勤続年数を乗じて計算した金額でありましたのを、勤続が長くなればなるほど税金を安くするという政策は、閣議できまった一つの政策ではないか、したがって、それにもとるような政策は今度はなさるまいな、こう言っておるわけです。
  131. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ……。
  132. 横山利秋

    ○横山委員 いや、あんた、閣議に出ていもしないくせに……。
  133. 小沢辰男

    小沢政府委員 私も実は閣議要員でございませんので——ただ、おことばでございますけれども、私どもはもちろん、退職の年数に応じてこういう計算をいたしますけれども、それかといって、退職を奨励いたしましたり、雇用の年限が延びることにこの税の制度によって反対をしようという意図は毛頭ございません。
  134. 横山利秋

    ○横山委員 この退職金がかかる制度になったということは、今後国の労働政策その他について重要な影響を与えるものであるということを覚悟しておいていただきたいのであります。  次に、関連をいたしますが、ここにいうところの勤続年数というものは、労働協約または勤務規程によって定められる通算方式でよろしいものなりやいなや、これが第一であります。  第二番目には、本条は、さかのぼって一月一日から実施されるのでありますが、去年死んでことし退職金をもらうという場合の判断は、どうお考えでございますか。
  135. 塩崎潤

    塩崎政府委員 第一点の労働協約で通算されるという勤続年数になるかならないか。私も労働法はあまり得意じゃございませんが、私ども単純に常識的な勤続ということを考えております。税法上には別段定義がございませんので、おそらく社会常識的な勤続、こういうことで考えておるわけでございます。  第二に、一月実施でございます。したがいまして、昨年死なれまして今年退職金をいただく方は、私は、退職所得の発生は今度と考えていいと思います。  死んで退職一時金をもらう場合、むしろ相続税の問題ではないかと思いますが、相続税の問題としまして、相続財産に加算される、そうなりますと、相続税の問題として計算される、かように思います。
  136. 横山利秋

    ○横山委員 第一問は、では長官に聞いたほうがよくわかると思いますが、私の言うことはわかりますね。労働協約及び会社の勤務規程によって、勤続年数として客観的に前から置かれておるものならば税法はその勤続年数というものを了承するのだなということが一つであります。  それから、いま確かに主税局長のおっしゃるように、相続税のことを聞きたかったわけであります。相続税で、去年死んでことしもらうというものは、今度の相続税の非常な軽減ですね。退職金としてまずこれが適用されて、相続税のときにまた新しい法が適用されるのだな、こういつて聞いておるわけであります。
  137. 泉美之松

    ○泉政府委員 退職所得控除を計算いたします場合の勤続年数につきましては、これは先ほど主税局長が申し上げましたように、常識的に勤続と認められる事実がなければいけないわけであります。おそらく横山委員の考えておられるのは、たとえば専従者につきまして、専従期間があって、本来の会社の職務はやっておらなかったかもわかりませんけれども、その間あるいは子会社へ出向したといったような場合に、親会社において、その人の退職についてその年限を通算する場合、こういった客観的にその間勤続したと見るべき性格の場合におきましては、それはもちろん当然勤続年数の中に勘定するわけであります。ただ、もし労働協約で、客観的なそういう事実がないにもかかわらず、この人を何とか救わんがために、そういう事実なき者に勤続年数ありというふうに、もししていることがございますれば、それは認めるわけにまいらないと思います。
  138. 塩崎潤

    塩崎政府委員 死亡退職一時金の問題でございます。死亡退職一時金は相続財産に加算されて相続税の課税対象となります。それは、相続税法の三条にありますが、相続税の課税されるものは所得税は課税されないという所得税法の九条の二十号によりまして、所得税法は適用されない、相続税の範疇になる、こういう法律的な解釈であります。
  139. 横山利秋

    ○横山委員 去年死んでことしもらうのは、改正法が適用されるのですか。
  140. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ことしもらう方は、相続税法の新法が適用になる、こういうことでございます。——失礼いたしました。相続開始のときでございますから、旧法でございます。去年死にましたならば旧法の相続税法、こういうことでございます。
  141. 横山利秋

    ○横山委員 去年死んでことし退職金をもらって、それを奥さんが相続する、こういう場合です。
  142. 塩崎潤

    塩崎政府委員 相続の税法の適用時期は、相続開始の時期、つまり死亡の時期でございますので、旧法ということになります。
  143. 横山利秋

    ○横山委員 去年の十二月三十一日に死んで、株主総会なり重役会で、ことしになってから、あの人に退職金を贈ろうじゃないかといって、額をきめて贈ったらどうします。
  144. 塩崎潤

    塩崎政府委員 同じでございます。
  145. 横山利秋

    ○横山委員 それはひどいな。あなた判例を見ていますか。突然聞いたからいかぬかもしれませんが、判例と違いますよ。これはあとで相続税のときに聞きましょう。ちょっと感覚が違うようですな。
  146. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は判例は読んでおりませんが、相続税法の第三条には、死亡によってあとで取得する各種の生命保険金、退職手当金、生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利、それらを列挙いたしまして、当該各号に掲げる者が、当該財産を相続によって取得したものとみなす、こういうふうに書いておりますので、私はその判例は読んでおりませんが、法律の解釈はそうだと私は解しております。
  147. 横山利秋

    ○横山委員 時間がなくなりますから、これはあとで相続税のときにやります。  その次は、五十七条のいわゆる専従者控除の問題であります。これはこの前もやりましたから簡潔にお伺いしたいと思うのでありますが、ここにいうところの「その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるもの」というふうに、非常に回りくねった文章で書かれておるのです。ずいぶんこれは問題になると思うのです。あなたのほうもこれはいやいややったらしいのであって、したがって来年からだということになっておるわけでありますが、これはことしから来年にかけてずいぶん問題になると思うのであります。しかも、二項のところでいうておるわけでありますが、三月の十五日までに、おれのところの女房、おれのところのむすこは専従者だからこれだけ給与をやろうと思うが承認してくれといって届けなければならぬことになっていますね。届けなければ恩典は受けさせないというふうになっていますね。私は、いろいろな意味において、これは間違いではないかと思うのです。給料をどのくらい出すかということは、何も税務署の認可を受けなくてもいいのですよ。これだけ出したということをやって、あとで決算のときに多い少ないを議論すればいいのであって、三月十五日に届け出るのが要件になる、届け出をしなければ青色専従者の必要経費の特例は認めない、これは、こんなことをいま青色事業者が知るはずがないのであります。年の初めに届けなければいかぬと言って、まあ与党の皆さんも野党のわれわれも、大蔵委員だからこのことは知っているから、知り合いに、おいおまえのところ届けたか、届けたかということは言うにしましても、一般的にそんなことは知りやしない。知りやしないものを、翌年になって、おまえのところは届けておらぬからいかぬということになる。これが私が民主的でないということの第一です。  第二番目に、どうやって金額をきめるかということで、ずいぶんこれは争いになる。ここに「その他の政令で定める状況に照らし」ということがあるわけですが、政令は、さっきの話のように、あした出していただけるわけですね。その政令を見てないと何とも言えぬのだけれども、私はもうずばりと、国家公務員の給与を一つの標準にしたらどうだという考えを持っておるわけであります。国がきめることだから国家公務員の給与を標準にしてやりなさいというような平均をとったらどうだ。ずいぶんこれは中小企業者と税務署の間で、高い安いの論争をすると思うのです。あなたのほうも、いやいややったものだから、おそらく窓口ではしちくどく、ここでいうところの同種とどうだとか、あそこのうどん屋とどうだとか、あるいは規模が類似するとか、もうかっておらぬのにおまえのところはこれだけやってはいかぬとか、うるさくてうるさくてしようがない問題が出てくると思うのです。ですから、そこのところをすっきりする方法はないか、その点は局長に伺いたいのです。
  148. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、五十七条の二項の提出義務は給与をきめる場合についての一つの問題点でございます。しかし、この専従者控除の制度は、完全給与にすること自体、私ども非常な進歩だと思っておりますが、やはりまだまだ個人事業者についてそれを進めることについては問題もあることは、先ほど来御指摘のとおりでございます。したがいまして、法人ならばこういった規定は要らないわけでございます。しかし個人につきましては、そこがまだまだ中間的な性格を帯びておる、こういったことでここしばらくこの五十七条の二項は重視してまいりたい、かように思います。  そこで、問題は基準でございます。過去におきましては、同族会社の役員の給与につきまして非常な問題もあったのでございますが、最近は実際面において、否認の事例あるいは税務署がこれだけの給与にしろといった事例は少なくなりつつある。もちろん非常な高い給与をきめまして法人税を免れるという意図を持ったことが明らかな場合には、いろいろな干渉をしておることは事実でございますが、しかし、一般的に見まして、個人から法人になりました同族会社の役員の給与について、おまえのところは隣のうどん屋がこうだから幾らだというような事例は、私はそう聞かないと思っておりますし、今度の青色申告者の完全給与の実施にあたりましても、これは特に初めから給与をきめるというのじゃなくて、客観的な給与を、基準に合致しておるかどうかひとつ知っておく、こういう意味でこの五十七条の二項を設けておるわけでございます。  それからまた、横山委員から、この三月十五日までに届けるということは、知らなかった場合にあとでまた問題が起こるではないかとありますけれども、これを所得税の申告時期に合わせましたことは、たいていの納税者が三月十五日には税務署との関係を持つわけでございますので、そういった意味では申告と同時にこの給与の基準についての届け出も比較的楽にできるのではないか、私はこういうふうに考えております。したがいまして、これはひとつ横山委員の御指摘のように、トラブルのないような方法で考えておるわけであります。あす青色申告会の方々が集まられまして、主税局長出てこい、こう言っておるわけであります。青色申告者の方々も今後のこの運用について非常な心配もあり、何かひとつ話をしてくれということでございます。先般は、こういった団体についてひとつ官庁側も十分PRをしなさいというお話てございましたか、私も時間があったら——あしたはまた御審議があるそうで時間が許さないかもしれませんが、やはりひとつ納税者が客観的に正しいと認められる給与をきめるようにお願いして、税務署側から否認するようなこと、あるいは最初からこれこれにしろということは避けたい。納税者を個々に見て個別的に正しい給与をきめるように勧奨したいと思うのでございます。したがいまして、国家公務員の給与ならいいというふうな画一的な基準は、私はむしろ弊害が多いと思いますので、やはりいままでやっておりますところの個別的な事情に応じた給与を納税者が判断してきめていくという線を守っていきたい、かように考えております。
  149. 横山利秋

    ○横山委員 これは同僚諸君にひとつ御協力を願いたいのですが、この間私がここで言った納税者の利益、権利の問題なのですけれども、つまりこれが一つの例であります。これは私ども主張し、与党の皆さんもたいへん努力をしてきた制度ですね。その制度が、三月十五日までにおれのところの女房と子供は給与幾ら出すと申告した人にだけ認められて、それをうっかりしておった人はだめなのです。全国いま青色申告何万くらいですか。ずいぶんふえましたね。
  150. 塩崎潤

    塩崎政府委員 七十万……。
  151. 横山利秋

    ○横山委員 七十万の青色申告者が来年の三月十五日にこういう法の改正を知って、みな漏れなくやるか。うっかりしてやらなかったのが相当ある、それがあとになって私は知らなんだと言うて、それはだめだ、おまえはだめだ、こういうことになる。この種の問題は、先般私が引用いたしましたように、交換譲渡の特例からあらゆる問題について、納税者はみずからの権利、みずからの恩典であることを知らなかったために損をしたと私どものところにときどき、皆さん御体験のようにやって来まして、知らなんだからひとつ何とかならないか、こういうことは枚挙にいとまがないのであります。ですから私はこの際、この種の問題、善意によってこれを知らなかったという場合においては、法律の運用について特段の措置をすべきである、こう思うのでありますが、運用問題でありますから泉長官に、その事情をよく御承知だと思いますから御答弁を願いたいと思います。
  152. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように三月十五日までにこうした届け出をするということはなかなかたいへんだというお気持ちはよくわかります。しかし先ほど主税局長も申し上げましたように、三月十五日は所得税の申告期限になっておる関係もありまして、税務署との接触がありますし、また従来青色申告をしている者は税務署のほうでわかっておるわけであります。したがいまして、税務署のほうからあらかじめこういう書類を三月十五日までに出していただきたいということをお知らせいたします。これは当然のことでありますが、それによって、知らなかったから出さなかったという事態を起こさないようにしたいと思っております。  それから、新規に青色申告にしたいという人も、三月十五日までにそういう青色申告の届け出をするわけであります。その際に、同じような書類を出していただくように、これは青色申告会を通じまして新規に青色申告をしたい人にそういう書類を出していただくように連絡をするつもりでおります。  したがいまして、知らなかったからこういう書類を出さなかったという事態は起こらないように心がけてまいる所存であります。しかしながら、それだけの手だてを経ましてもなおかつそういう事態が起こるかどうか。私は起こらないようにしたいと思っておりますが、もしそういう事態が起こったといたしました場合におきましては、それぞれの実情を考慮しまして適切な措置を講じたいと存じます。
  153. 横山利秋

    ○横山委員 私が申し上げたいのは、総括的にこれは政務次官にひとつ考えてもらいたいのです。いま法律改正をしないとするならば、税務署長の誤謬訂正の問題ですね。誤謬訂正の権限というものがどこまで与えられておるか私はよくわかりませんが、明らかにそれは間違いであった、税務署の扱いに間違いがあったということがわかったときは誤謬訂正が行なわれるわけでありますが、明らかに納税者が善意でうっかりしておった、しかも、事実問題としては、これはそのときに届け出をしたりとすれば税は軽減されるという問題については、税務署の誤謬訂正の範囲を広げて、客観的にそれが立証し得るもの、あるいは納税者の周囲の状況からいってなるほどこれはうっかりしておった、病気しておったとかなんとかでそれは無理からぬところだという場合には、税法上期限のあるものについても考えるべきではないか。それは誤謬訂正の権限をもう少し広義に解釈をすればできそうではないか、こういうわけであります。
  154. 小沢辰男

    小沢政府委員 まず第一番目に、私どもは、先ほど長官も触れましたが、これが三月十五日までに申告といいますか、提出をしておかなければいかぬということを、個人企業の方々が青色申告の専従者給与につきましての改正を知っていただくようにPRをできるだけ一生懸命やりまして、知らなかったから損をしたというようなことがないようにできるだけ努力したいと思います。たまたま三月十五日に、おれは知らなかった、ちょっと過ぎましてから、せっかくいい制度があるのに知らぬかったという場合に、現在ではやはり二カ月以内の修正申告になっておるわけでございますが、誤謬修正といいましても、これはやはり法律に基づいてやるわけでございますから、先生のおっしゃるように、ほんとうの善意で知らなかった、届け出がおくれたというものは、これが二カ月過ぎてもいいじゃないか——この前も種々与野党の先生方から御意見ございましたが、私どもとしてはそういう所得の確定ということはやはりある一定の区切りがなければどうにも税務処理上困る面もございます。そういうことでございますから、いまのところは、ことに自分の所得を申告していくわけでございますので、二カ月もあればということであったわけでございますが、先生のこの前からの御議論もよくわかりますので、私ども今後検討さしていただきたいと思いますけれども、とにかくいまの改正点につきましては、これが知らなかったから、せっかくのいい改正がわからないために申告ができなかったということのないように、PRに全力を注ぎましてこの法律改正の趣旨が伝わるようにいたしたいと考えております。
  155. 横山利秋

    ○横山委員 長官、私は四十二年度の「税務運営方針」を拝見をいたしました。まことにいいことが書いてあると私は思うのですよ。たとえば、この中でいいことが書いてあると思うのを二、三列挙しますと、進んで納税に関する相談や苦情を積極的に解決するようにつとめなければならぬとか、あるいは納税者の利益になるようなことを教えてやれとか、あるいは高額所得者中心とした調査内容の充実につとめろとか、あるいは緊要度の低い部面においては思い切って手数を省略するとか、少額所得者に対する調査事項はできるだけ簡素化するとか、全くいいことが書いてある。私がこの間からこういうことを言うといやな顔をするが、あなたのほうが出しているじゃないか。ところが、私が言いたいのは、こういうことを出しているのが窓口へ徹底していない。窓口にほんとうに徹底していませんよ。これはぜひひとつ徹底をしてもらいたい。  そこで、いま本件に関する問題でありますが、いま次官が一ぺんそれは検討したいとおっしゃったことはまことに私はけっこうなことだと思いますが、法律上できないことであろうか、私は塩崎さんにもう一ぺん念を押しておきたいのであります。つまり納税者の善意によって、うっかりしてその期限内に申告ができなかったという場合には多少の落差を設けてもやむを得ないと思う。しかしそれが客観的に、うっかりしていたことが間違いないことであった。また明らかに病気であってそれができなかったとか、そういうようなことが明らかな場合においては、本来の誤謬訂正ではないけれども、しかし税務署長として裁量をある程度働かしてもいいような税法改正をしてはいかぬのか。それをしたっていいではないかということなんです。私の意見は。それがいかぬなら税法改正をしたらどうか。
  156. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃった点は、私は法律規定のしかたによると思います。しかしまた、その法律規定のしかたも実際その背後にあります事柄によるのかと思います。しかも、申告ということを非常に重視しなければならない場合、これはやはり申告要件で、申告がない場合には誤謬訂正もできないようにすべきだと思います。しかし事柄によりましてやむを得ない事由のときには排除するという書き方がしてある規定がたくさんございます。そのときには税務署長の裁量によってこれは救済される。これは私はたくさんの規定をあげることができると思います。五十七条の第二項は適用要件となっておりますので、これは誤謬訂正でも私は修正はできないものである、かように解釈しております。それほどに完全給与制度にあたりまして、これは私どもの非常に狭苦しい気持ちかもわかりませんけれども、やはり百万の納税者を相手にいたしまして、完全給与制といいましても最初のときでございますので、給与の内容について承知し、乱用がないようなことも考えてみるのも、私はこれまでの経過から見て許されることだ、かように考えております。
  157. 横山利秋

    ○横山委員 どうも満足な答弁ではございません。私の主張というものは何といいますか、決して無理押しをした主張ではなくて、納税者の便益を考えるならば、普通どおり期限があるならあるようにやむを得ない場合はあろうけれども、何か段落をつけて救済措置があってもいいではないか、こういうことで強く私は善処を求めて後日に譲りたい。  次は、六十七条の二項であります。小規模事業者の収入及び費用の帰属時期ですが、これは現金主義に変えられました。これは私は必ずしも反対をするのではありませんが、これまた「政令で定める要件に該当するもの」——小規模事業者とは何だということでありますから、政令を見なければしかたがありませんが、これは何でありますか。政令は選択できるのでありますか。それともここに言うところの小規模事業者は現金主義でやれ、こういう意味でありますか。
  158. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この法律でもうそのことは明確になっておりまして、選択できるわけでございます。発生主義の会計、経理は当然これまでの税法においてできるわけでございます。
  159. 横山利秋

    ○横山委員 次は、七十八条、寄付金控除であります。寄付金控除につきましては、多少私は、これはどうも何か手ひどい問題が発生しやしないかという感じがするわけであります。といいますのは、七十八条の2の一「国又は地方公共団体に対する寄付金(その寄付をした者がその寄付によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄付をした者に及ぶと認められるものを除く。)」というように、いささかありそうなことを予想してこういうカッコ書きが入っているような気がします。どんなことを予想していられるのでありましょうか。たとえば、ある埠頭にある運送会社が銭を出して倉庫を建てた。だからその倉庫は寄付を受けた港湾管理者なり港務局のものになる、現実問題として。その倉庫はその運送会社が事実上、実権上相当利用するということが予想されるのか、あるいは別会社に寄付をさしておいて、そうして親会社なり子会社がそれをうまく利用する、ワンクッション置くことを予想しておるのか、どういうことを予想してこのカッコ書きをつけたのか、そのものずばり出した者が明白に利益を受けるというごとだけを想定をしておるのか、何を考えてやったのか。
  160. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは法人税法にも関連いたしますけれども、これはむしろ現在の規定を緩和したつもりでございます。これまでは行政の目的のために直接提供する施設に充てるためのものに限るということになっておりまして、非常に範囲が広く排除されておる。こういうことになっておりました趣旨をよく考えてみますと、寄付をした者にその特別の利益が返るものを指定寄付とすることは適当ではないのではないか、こういう趣旨であらためて入れたわけでございます。おっしゃったような業者が出しまして業者が利用できる、これはだめなんです。あるいは聞くところによりますと、寄付はいたしましたが実は自分の銅像ができたというような話もあるわけでございます。そんなようなことをひとつ排除する意味でここに書いたわけでございます。
  161. 横山利秋

    ○横山委員 この七十九条、並びに八十二条、障害者控除と勤労学生控除の問題でありますが、今度所得控除にして一人七万円ということになりました。これは見方によっては、高額所得者税率が高くなるから有利になるではないか、便利だけで考えては、税の公平を失するではないかということを私は考えます。  それから、八十二条の勤労学生控除につきましては、先般私が言うたのでありますが、これは八十七条にも出てきて、各種学校の法人はいいけれども、個人立の勤労学生控除は受けられないという仕組みになっております。この間も言うたのでありますけれども、こんなばかなことはないと私は思うのであります。勤労学生であれば、昼間働いて夜学に行く。その夜学が法人だったら所得控除を受けられるけれども、個人なら受けられぬということは、どう説明しても勤労学生は納得しないのであります。もちろん個人立のものについては、大から小までいろいろあるけれども、同時にそんなことを言うなら、法人だって大から小まであるわけです。しかし、それを混淆しては建設的な議論ではありませんから——私が提案いたしておりますのは、県が認可した個人立の各種学校については、県知事が認可して監督しているのだから、せめてそれらは勤労学生控除を適用させるべきではないか。ほんとにこれは、何か各種学校について錯覚をあなた方は持っているんじゃ、ないか。あくまでこれは勤労学生のための控除なんだから、もう少し勤労学生のことを考えてやったらどうか、こういう意見です。
  162. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まず第一に、障害者控除、老年者控除、寡婦控除、勤労者控除を所得控除に改めました点につきまして、これは累進税率関係で高額所得者が得する点があるではないかというお話でございます。確かに累進税率の面ではそういった効果を生むことは事実でございますが、これには改正理由が二つばかりございます。  まず第一は、税額控除というシステムは非常にわかりにくい。「拝啓総理大臣閣下」という例の水上勉の書簡にありましたように、税額というものは、どうも控除というものがわかりにくいということがいわれるわけでございます。  それから第二には、六千円という税額控除にいたしておきますと、なかなか基準がなくて、要望があるにかかわらず引き上げがむずかしい。これを所得控除にいたしますと、たとえば障害者控除、老年者控除の経費論から見まして説明が非常に楽でございます。やはりこういった方々が所得を生むには、追加的な経費が要るのだ、その経費を概括的に見積もって引くのだということで、その説明は非常に容易になろうかと思います。そういうような意味で七万円の所得控除にしたわけでございますが、しかし私は、障害者、寡婦、勤労学生にそんなに高額者がいるとは思いません。高額者が予想されますのは老年者でございます。これは会社の経営者が相当ございまして、年齢六十五歳をこえますと適用がございます。これには今度新らしい見地を入れまして、老年者控除は所得が五百万円をこえる方には適用しないのだという考え方を入れておりますので、おっしゃったような御批判は救われるのではないか、かように考えております。  第二の御質問は勤労学生控除でございます。個人立のものでも県の認可のものならば、これを勤労学生控除の対象にしたらどうだということでございますが、私どもは、現在の勤労学生控除は何かということにつきまして、やはり一つの客観的な基準を持っております。それは、文部省が認可いたしました法人格を取得したものというところに線を引く、そこに外形的でございますけれども、客観的な基準を求めるつもりでございます。これは主管省とも十分相談していくべき問題だろうと思います。
  163. 横山利秋

    ○横山委員 いまの最後のところがわからなかった。主管部長とも相談して善処すると言ったのですか。
  164. 塩崎潤

    塩崎政府委員 善処するとまで言っていないのでございます。こういった問題は、主管省と十分相談して、どこに客観的な基準を求めるか、議論をして決定すべきであろう、こういうことを申し上げたのであります。
  165. 横山利秋

    ○横山委員 もう少し実のある話をときにはしたらどうですか。  次は、八十九条の税率であります。これは文句だけ言っておきます。十万円以下の金額は八・五を九に引き上げまして、ここだけなぶって、こういうけちくさいことをやっている。あとのところは全部税率をなぶっていないじゃありませんか。十万円以下の金額だけ、百分の八・五を百分の九にする。結局これだけ最低線が高くなった。ここだけなぶらなければならない理由が一体どこにあるか。計算上のことだけだったならば、つまらぬことはよしなさい、けちだということだけ私は言っておきます。  次は、百二十一条、確定所得申告を要しない場合、これは一体どういうことでございましょうか。たとえば、私どもの例を引きますと、国会議員の場合、いままでは、歳費だけの収入の人は、五百万円をこしておっても確定申告を要しないわけですね。ところが、今度は、これによって、歳費だけでも五百万円をこしたら確定申告をしなければならぬということになるわけでございますか。
  166. 塩崎潤

    塩崎政府委員 さようでございます。
  167. 横山利秋

    ○横山委員 それはどういうことですか。たまたまそういうことをやっているのですか。
  168. 塩崎潤

    塩崎政府委員 法律でお願いしているわけでございます。これは簡素化の見地で私どもはまず考えております。年末調整は、会社の給与を支払う方々の非常な手数でございます。本来、年末調整というものは日本独自のシステムでございまして、少し手数をかけ過ぎていると思うのであります。しかしながら、本来申告書を出していただくような方々には、そこまで年末調整を厳密にしなくても、やはりその他の所得と合算して、税務署で最終の処理を三月十五日にするという体制のほうがより民主的な所得税あり方だと思うのでございます。  そこで、どの程度からそれを考えたらいいかという問題に次になるわけでございますが、五百万円程度の方々は大体その他の所得もあると考えて間違いがないという私ども統計上の数字がございますので、五百万円をこえました方々は所得申告書を出していただきたい、年末調整はしないでよろしいという制度にいたしたわけでございます。
  169. 横山利秋

    ○横山委員 次は、百五十条、青色申告の承認の取り消しの第二号でございますが、ここで若干の改正がなされているのですね。「その年における前号に規定する帳簿書類について第百四十八条第二項の規定による税務署長の指示に従わなかったこと。」という、この税務署の指示は前から入っているわけでございますが、ここにいうところの税務署の指示とは一体何であるか。何か自由裁量的な感覚がするわけであります。運用のいかんによっては、税務署長がこうやると言ったやつを聞かないのだ。こうやれというような、税務署長の自由裁量的な、この法文の書き方ではないかという感じがいたしますが、何を一体、制限列挙的にいっているのか、自由裁量的に税務署長に言わせるのか、どうでありますか。
  170. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いまの御質問は、改正されておりません百四十八条第二項の「必要な指示」の範囲は何かという御質問だと思います。これは、百四十八条の第二項を見ていただきますと、「納税地の所轄税務署長は、必要があると認めるときは、第百四十三条の承認を受けている居住者に対し、その者の同条に規定する業務に係る帳簿書類について必要な指示をすることができる。」このことでございます。この記載方法について指示をすることができるその必要な範囲という限定がございますので、そういった意味の御心配は——必要なというところで私は常識的にきまると思います。
  171. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと最初ことばを聞き漏らしたのですが、結局は税務署長の認める必要の範囲でございますか。それなら自由裁量……。
  172. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私はこれは所得税法の目的に従いまして、税務署長は当然覇束され、その範囲においての自由裁量だと思います。
  173. 横山利秋

    ○横山委員 この青色の取り消しが税の更正決定の場合に納税者にとってはたいへんなことなんです。例年青色の取り消しがやりやすく改悪されてきました。したがって、青色の取り消しの場合における税務署長の裁量というものがあまりかってなものになってはいかぬのであります。  長官にお伺いしますが、私どもに青色の取り消しの基準を一ぺん見せていただけませんか。これは渋い顔をなさるのはわかるけれども、どうも青色の取り消し基準というものがまちまちのような気がするわけであります。これは一ぺん非公式なら非公式でもよろしゅうございますけれども、いろんな事例をあげて、あなたにもうちょっとしっかりしてもらわなければならぬぞと言いたいところであります。けれども、私の入手しておる情報が納税者の一方的な意見であるとすれば、恥もかきますから、あなたが適当な方法で私に青色の取り消しの基準を、実はこうやっておる、これは含んでいてくれというならそれでもよろしゅうございますが、私どもとしては青色の取り消し基準というものがちょっとおかしい、そういう気がしてならぬのであります。
  174. 泉美之松

    ○泉政府委員 おことばではございますが、私どもといたしましては、税務署によって青色申告の取り消しが違っておるということでは納税者が非常に迷惑するわけでありますので、税務署ごとに青色申告の場合の取り消しの、どういう場合に取り消すかということの要件を統一するようにつとめております。したがって、もし横山委員のおっしゃるように、税務署によって青色申告取り消しの内容がいろいろ違うということでありますれば、それにつきまして、とくと事情を聴取いたしまして、(横山委員「私のほうが聴取するのですよ。」と呼ぶ)お聞きいたしまして、そういう私どもの基準と全く違った運用がされていないかどうか、十分確かめてみたいと思います。
  175. 横山利秋

    ○横山委員 そんなかってに聴取されては困る。ぼくが聴取したいというのですよ。ぼくがあなたから青色申告の取り消し基準を聴取したい、こう言っておる。逆にあなたが聴取されてはかなわぬ。青色の取り消し基準というものを一ぺん適当な方法でここへ出して、見せてもらうわけにいかぬですか。
  176. 泉美之松

    ○泉政府委員 これは税務の行政の上で秘密があってはいかぬじゃないかというようなお話もいろいろ承っておるのでございますが、これまた外部に知れますことがいろいろ問題を起こす種になりますので、それはお許しいただきまして、横山委員とはとくとその点について打ち合わせをいたしたいと存じます。
  177. 横山利秋

    ○横山委員 次は、二百四条、源泉徴収義務、まあこれはよう塩崎さんがどこかへ飲みに行って調べたと見えますが、キャバレーとナイトクラブとバーと、税法上どう違うのですか。
  178. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これはもう税法上の違いと申しますか、世俗的に言っておるものをここに常識的に羅列しただけで、区別する必要はないかと思うのであります。
  179. 横山利秋

    ○横山委員 キャバレー等は、ならいいけれども、ちゃんと「ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設」というふうに、ここにむずかしく書いてありますね。まず「キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設」これが第一、そこで「フロアにおいて客にダンスをさせ」これが第二、それから三番目に、「又は客に接待をして遊興若しくは飲食させるもの」、その次に、「客に時してその接待をすることを業務とするホステスその他の者」となっておるわけであります。これらはみんな要件でありますか。たとえば、この中で「その他の者」というのは一体どういう者ですか。「客に時してその接待をすることを業務とするホステス」、ホステスというのは女だけでありますか。ホステスというのは男女とも含むか。「その他の者」とは何か。  それから第二項の第三におきまして、「経営者以外の者から支払われるもの」とは何か。つまり直接お客からもらうチップは税金がかからぬのかという点をまずお伺いをいたします。
  180. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も、あまり詳しくない用語の定義でございますので、正確なお答えになるかどうかわかりませんが、これも他の法律もずいぶん参酌いたしましたが、完全なものが見つからなかったので、勇気をもちましてここで常識的な表現をつくったわけでございます。しかしそこは常識的にきまって、乱用の可能性がないと思われるような書き方ならば、十分これで世の中に通用するのではないか。「その他の者」といえば、たとえば女給という称呼で呼んでいるかもわかりません。そういった意味では、私は「その他の者」の中に、女給というようなことがいわれておっても、これに入ると考えていいと思います。しかしそこは常識的にホステスということばは新しい用語のようでございます。昔は女給と聞いておりましたが、最近はホステスといっておりますし、その次にホステスはしからば女だけかということになりますと、そこはいわゆるホステスということで、私は男のホステスがあるとは聞いておりませんけれども、それは「その他の者」の中に入っても、十分この税法の定義の中に入る、かように考えております。  その次は、いま申されました二項三号の「経営者以外の者から支払われるもの」、これは源泉徴収の適用が技術的にむずかしいものでございますので、経営者を通じないで直接支払われるものは適用しない。こういうふうにいたしております。したがいまして、直接お客からホステスがいただくチップは源泉徴収はしない、こういう趣旨でございます。
  181. 横山利秋

    ○横山委員 私なりにこれを感ずるのですが、あまりこういうふうに書いてしまったために、問題が起こるのではないかという気がする。たとえばカウンター、ここがカウンターとしますと、そちらに腰かけ、ソファがありますね。カウンターのこっちにおった人は、この中に当てはまらないような気がする。これはよく読んでくださいよ。カウンターのこっちにおって、運ぶだけ、運んだらすぐこっちに戻ってきて話をしておると、ここに当てはまらないような気がするのです。「客に時して」というのは、客のそばに行ってということですよ。カウンターのこっちにおって接待はしないのだから、その辺は、こういう念には念を入れたような書き方をするばかな人がおったものだから、かえってこれはおかしなものになってしまったという気がしますが、どう思いますか。
  182. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も税法の複雑化の大きな原因の中に、少し税法は書き過ぎではないか、詳細なる規定を追い過ぎまして、かえってねらったものがはずれるということは、私も実は痛感しておるわけでございます。これはなかなか、法制局並びに国会の御論議もそういった場合がありまして、詳細に書けというようなことをいわれますので、私どもはそれを神経質にとり過ぎまして失敗する傾向があるのでございます。これが税制複雑化の大きな原因になっておることは事実でございます。そういった点は直さなければなりませんし、いまおっしゃったような点は注意しなければならぬと思いますが、これはここでは常識的に、「客に時してその接待をする」というのは、それを常識的な用語ということで御解釈願って別に私は不公平は起こらない、こういうふうに考えております。
  183. 横山利秋

    ○横山委員 私の質問のカウンター論は答えがないですね。それから「フロアにおいて客にダンスをさせ」というのはどういうことですか。日本語で言うと、客だけがやるのか、自分もやってはいけないと、こういうのか、客が連れてきた女の子とやるのはいい、こういうことなんですか。客とダンスをしというならいかぬけれども、「客にダンスをさせ」というのだから、これはどういう意味だろうか。「客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるもの」「客に接待をして遊興」というのは、客のそばへ行って一緒に歌を歌ったりすることだね。それから「若しくは飲食をさせる」「させる」ということは、自分がそそのかして、食べなさい、飲みなさいと言ってやることだと思うのですが、この辺の解釈はちょっとむずかしいが、私のカウンター論は御返事がないということは、カウンターのこっちにおるものは、これは当てはまりませんね。
  184. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まず第一のカウンター論ですが、「客に時してその接待をすること」という中には、やはり常識的な解釈がこれに入るのではないかという気がいたします。「時して」というのは、どの程度までそばにおればいいかということでございますけれども、やはりそのサービスを感ずるものならば、客に時してそういう接待をすることに入るというふうに考えていいんじゃないかと思います。いずれにいたしましても、法制局よりも非常にこまかい御質問でございますので、速記録に残すことを考えますと軽々な答えもできないわけでございます。  その次に、「フロアにおいて客にダンスをさせ」というのは、これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせるものにおいて客に時して、こういうものでございますから、一つの表現といたしましては、キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設を限定したものだというふうに思います。その中に、フロアにおいて客にダンスをさせる施設、これが入るんだということを明らかにしたものだと私は考えております。したがいまして、同伴でそういったことをやらすものがあり、営業があり、施設があり、大部分は同伴でやっておるけれども、その中にホステスがいて、ときどきはお相手するというものはこの中に入るというふうな意味でございます。
  185. 横山利秋

    ○横山委員 チップの問題ですが、この書き方は、「同号に規定する施設の経営者以外の者から支払われるもの」これは泉さん、滞留理論はききますか。つまりチップというものは、いきなりさあ毛利嬢上げるよというものと、毛利嬢にやってくれといって出すものと両方あるわけです。そうでしょう。だから、この辺はどういうふうにお考えでございますか。チップとは何かということです。
  186. 泉美之松

    ○泉政府委員 ここの二百四条第二項第三号のカッコ書きの一番おしまいのところに、「バー等の経営者を通じて支払われるものを除く。」ということになっております。したがいまして、バーの経営者を通じてお客さんが渡すものについては、これは源泉徴収をするということになるわけであります。
  187. 横山利秋

    ○横山委員 そこのところがまたむずかしい問題になりそうですね。「通じて」ということは、この領収書にチップ代というふうに書いてあったらいかぬということでしょうか。そういうことになりますか。つまり、直接に、おい、おまえにやるよと言って出したのは、これははっきりする。その次に、チップと領収書を別にして請求書がきたという場合には、これはいわゆるあなたの言う親分方式になりまして、これは滞留しないのです。私はこまかいことを言い過ぎるかもしれませんが、このキャバレー、ナイトクラブその他についていろいろ問題があるという気がいたします。毛利嬢は、確かに直接にもらったか、ほんとうに手と手でもらったかどうか、それともその辺は余韻はないのですか。
  188. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、直接お客がホステスに渡しましたものは源泉徴収できない。しかしながら、お客が経営者を通じてホステスに渡してくれと言って渡したものは、経営者の手を通ずるわけでありますから、これは源泉徴収をする。(横山委員「滞留をするか」と呼ぶ)滞留問題は関係のないことだと思います。もしそうしませんと、経営者を通ずるということによって、源泉徴収のできないものが支払われるということであっては困ります。そういうふうに、そういうことによってのがれることを防ぐという趣旨で規定ができておるわけであります。
  189. 横山利秋

    ○横山委員 まだ所得税についてたくさんございますけれども、あまり長くては気の毒でございますから、次は法人税に移ります。  法人税の六十条の保険会社は先ほど只松君が言っておった問題でありますが、これまた政令を見ないとどうも議論ができないわけでありますが、一、二だけ聞いておきたいと思いますのは、株式会社を入れた理由はどういう理由でありましょうか。  それから第二点は、先ほどお話があったように、私も前から税の常識的公正を欠くということでお願いしておったのですが、三十何年か、私が言ったときにも改正がされたのですが、いつの間にやらおかしくなって、今度またこういうようなやり方であります。しかし、政令で幾らでもできるわけでありますから、少なくともこの政令は、コンスタントに常識的公正が期せられるかという点について伺いたい。
  190. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まず第一点の株式会社を新しく六十条に入れた趣旨いかんということでございますが、そもそも六十条を規定しておりましたのは、契約者配当金は一種のリベートであり損金であるということを明らかにする必要が相互会社についてあったわけでございます。それから協同組合にも事業分量分配金を損金に算入する。これと同じようなたてまえからいたしまして、相互会社の剰余金処分という形になっておりますのが、はたしてこれが損金を構成するかどうか。そこに疑問があったので、六十条に相互会社と書いておったわけでございまして、株式会社のほうは、剰余金処分の形をとりませんので契約者配当は当然損金だ、こういうようなことになりますので、いままでは六十条に入れてなかった、こういう法理だと思います。しかし、今回の契約者配当金を損金に算入すること自体は、相互会社の形態をとっております保険会社のみならず、株式会社形態をとっております保険会社にとっても同様に起こり得るわけであります。そういった意味で、今回政令で恐縮でございますが、原則的には損金に算入いたしますが、受け取り配当からなる部分の契約者配当金につきましては、損金算入を制限する趣旨を入れる際には、これはひとつ株式会社を含めないと不公平になる。よって、この六十条に株式会社を相互会社同様に含めた、これがその法理でございます。  なお、この政令で公平を得るような、公正の形をとれるような所得が現出されるかどうかという御質問でございます。三十六年のときには、横山委員御指摘のように、三十五年の保険会社の経理をつきつけられまして、そのときには、保険会社は相当大きな剰余金処分をしながら、内容を聞いてみると何百億円という赤字である、これはどういうことかというような御質問があって、そのときから生命保険会社の課税問題が俎上にのぼったわけでございます。生命保険会社がなぜそのように大きな赤字を生じたかといいますのは、昭和二十五年に、受け取り配当を益金に算入するという制度をシャウプ勧告により導入したためにそれが生じておったわけでございます。しかし、それが他の金融機関の場合には、受け取り配当を益金に算入する限度は負債利子を控除した後である、こういうふうに一般的になっておりました。契約者配当は、いわば契約者に対します預金の利子と同様な費用性を持つものだという考え方が成り立つわけでございます。したがいまして、受け取り配当の益金に算入する限度は、契約者配当は負債利子の一種と見まして、負債利子を控除した後にしようということに改正したのは三十六年でございます。したがいまして、現行では横山先生の御心配になった膨大なる何百億という赤字、これは全くなくなったわけでございます。しかし、それでもまだ所得金額がきわめて少ないというのは、これはやはり受け取り配当が益金に不算入になっている。しかし、契約者配当は負債利子になっておりますが、契約者配当金額が大きい、この関係になりますので、今回は受け取り配当からなる部分につきましては損金に算入しないことにするならば大体所期の目的は達成せられる。これは客観的に出てまいります公正な形の所得になるであろう、かように私どもは考えております。
  191. 横山利秋

    ○横山委員 政令を見てから判断せざるを得ません。  それから、その次の六十二条「割賦販売に係る収益及び費用の帰属事業年度」の問題でありますが、ここに、現行法では「当該事業年度以後の各事業年度の確定した決算において政令で定める」その「確定した決算」を削除されました。これは、たしかこの判決がこの種の問題にあったように記憶いたしておるわけでありますが、つまりこのことは、「確定した決算」ということは、株主総会の議決でなくてもいいということになるわけでありますか。
  192. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは割賦販売の収益認識基準をどう考えるかの問題でございますが、現行法では、割賦販売の規定の適用を受けるのは株主総会の承認を得ました確定決算で計上されたものに限るとなっておったわけでございます。これははなはだ言いにくいことでございますが、割賦販売業者が確定決算に計上してなかったもの、いわば簿外と申しますか、そういった場合には、割賦計算ではなくて、発生主義の普通の計算によるということになっておりましたが、それもどうも非常に適用がしにくい。割賦販売の収益認識の基準を継続的に考えますならば、確定決算に計上しょうが、そこは客観的に考えるべきである、株主総会に報告されたものでなくてもいいのじゃないかという考え方で、これは簡素化の見地から、確定決算でなくても、割賦販売をやっておる方々の所得計算は、全般的に割賦基準で計算する、こういうふうに改めようとするものでございます。
  193. 横山利秋

    ○横山委員 この所得税法人税を通じてひとつ痛感されることがあります。それは具体的な条文をかりに引用いたしますと、所得税法の三十三条「譲渡所得の扱い」それから法人税法の六十八条「所得税額の控除」等のあり方で、前にこういうやり方をして、それから変えてまた今度前のやり方に変えるということを税法上やっておる。朝令暮改というか、みっともないというか、何で前にこういうやり方をやっておったものを変えてまた何でもとへ返すのか。そのときどきの思いつきで今度ああやろう、担当者がかわると前のほうがよかったからまた前へ返そうというような、思いつきやなんかということが感ぜられるのであります。よろしくない。今後かかる朝令暮改はやらぬようにしてもらいたい。これが客観的、あらゆる経済的事情によって変化してやむを得ないというならいいけれども、どうみても、これはみっともない、こういうことでしかりおきます。  その次は、九十九条「解散の場合の清算所得に対する法人税税率」この税率を下、げたわけですね。これはそうですね。なぜ法人税だけ下げて所得税をやらないのでありますか。
  194. 塩崎潤

    塩崎政府委員 法人税税率は下げましたが、一方株主段階では課税することにいたしておりますので、実質は下げたことではございません。現行法では法人の基本で、もとで清算所得は課税いたしまして、個人所得では課税しないというふうに所得税法には規定され、さらにまた、その受け取る株主が法人の場合には清算分配金の二五%の税額控除をするという形で、清算する法人の段階で課税する。そのかわり株主分を合わせてもとで徴収する、こういうことにしておりましたのを、今回は合併を容易にし、しかも、納税者が理解しやすいように、法人の段階で、常に法人税だけでとどめ置く、こういった趣旨で法人税で取る、そのかわり株主がそれをもらうならば、株主として所得税を課税する。一方法人株主ならば法人税を課税する、こうしただけでございまして、税率を引き下げたことにはなりませんし、実質的には減収も生じないわけであります。
  195. 横山利秋

    ○横山委員 百二十七条、「青色申告の承認の取消し」やはりここにも「税務署長の指示に従わなかったこと。」というのが出てまいりまして、法人、所得、両方にわたって、青色申告の承認の取り消しについて、私は先ほど意見を申し上げました点と重複を避けますけれども、注意を喚起しておきます。  百三十四条の二、「仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の還付」これは非常にややこしいので、私も判読に困るのでありますが、どういう点を改正されたのでありますか。
  196. 塩崎潤

    塩崎政府委員 昨年の改正におきまして、いわゆる粉飾決算に基づく税額の還付は、過去にさかのぼってしない、今後にわたりまして、税額控除の形でするという改正をお願いしたことは御存じのとおりでございます。しかし、その規定をつぶさに読んでみますと、被合併法人が粉飾決算をした。本来合併しないで継続したならば、その次の事業年度以降の所得のうちから納める法人税から税額控除ができるわけでございますが、合併があったため、被合併法人の粉飾部分の過大に納めた部分、これの持っていく場所がなくなるわけでございます。そこでその税額控除の権利を合併法人に引き継ごう、こういう改正でございます。
  197. 横山利秋

    ○横山委員 何か時間の関係で、なるべく早くやめてくれ、こういうことでありますが、それでは法人税はこれで終了いたします。  次は、相続税であります。  塩崎局長にお伺いをいたしますが、女房に対するものの考え方を、税法はここで変えるということでございますか。つまり、おやじのもうけてきた金は夫婦が一緒になってもうけた金だ、こういう立場をとるのでありますか。
  198. 塩崎潤

    塩崎政府委員 配偶者への財産移転に対する相続税及び譲与税の考え方は、これは根本的に変えたものではなくして、いままでの考え方を推し進めたと思うのでございます。いままででも税額が半分になっておったことは、夫婦の財産形成に対する協力関係あるいはまた相次相続と申しますか、同じゼネレーション間の相続につきましては、寛大な目をもって見るという、こういう二つの点が現行あります半額課税にあったわけでございます。これを一歩推し進めまして、もう少し徹底したものが、この全額の免税だと思うのでございます。
  199. 横山利秋

    ○横山委員 何か私のことばに伏線があると思って、遠慮しいしい言っていらっしゃるような気がするのでありますが、少なくとも、これほど女房の相続税をとにかくまけるということは、少なくとも今日までの相続税の概念から脱して、夫と妻が共同して、協力して所得があったというふうに、理論的に進んだと見ざるを得ないではありませんか。つまりだんなさんがもうけてきた金はだんなさんのものだということからもうすでにはずれておるではありませんか。これはつまり、女房の協力があってその金があったんだというところへ、理論的にはこれはもう進んでおる。そう見るのがあたりまえではありませんか。
  200. 塩崎潤

    塩崎政府委員 横山委員の御質問は、財産のみならず、所得についても配偶者の持ち分と申しますか、協力度を評価したらどうか、こういうお話のようでございます。私は、所得税につきましてもアメリカのように、あるいはドイツのように、均分課税という考え方も十分わかるわけでございますが、しかし所得については、どういつでもまだまだ稼得者の所得である、働いて現実に受け取る方の所得であるという考え方が、まだまだわが国では強いような気がいたします。しかし、財産のほうは、これはやはり一ぺん家計に入りまして、これがどう形成されるかは配偶者の、たとえば節約とか、あるいは財産形成の協力、これによって相当違ってくるわけでございます。奥さんの着物を買うかわりに家をつくったというようなことも考えますと、やはり所得よりも財産のほうが、夫婦間、配偶者の財産形成の協力度はより強い。これが私は相続税にあらわれておる、こういうふうに考えております。
  201. 横山利秋

    ○横山委員 あなたみたいにむずかしく私はよう言えませんので、わかりやすく言いますと、塩崎さんのところにあるテレビは塩崎さんのものか奥さんのものか。そういう点ではあなたは、いやおれのものでも女房のものでもない、共有のものだという答えをした。テレビを買う金はだれのものだ、それはおれのものだ、こういう理論でありますか、あなたのいまの理論というのは。どうもそんな感じがするのですね。つまり、歳費をわれわれはもらう、給料をもらってくる。あるいは事業で自分が社長としてもうけてきた。女房に渡すまではおれのものだ、与えた銭もおれのものだ。けれども女房がそれでテレビを買ったら、もうそのテレビはおれのものでもおまえのものでもない、それは共有だ、こういう理論でありますか。
  202. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常に微妙な御表現でございまして、私は非常にむずかしい問題だと思います。現在の民法におきましてもその問題は割り切れてない。判例は、しかしやはりそういったものでも、ときには夫、稼得者のものであるという判例が多いようでございます。しかしながら、そのあたりはまだまだ不分明な、いわゆる共有財産に属するものが多いかと思います。しかし、所得を稼得した、その所得の段階においては、やはり稼得者名義、これが尊重されるというのが現在の民法あるいは判例の考え方のように私も承っております。
  203. 横山利秋

    ○横山委員 それじゃ、われわれの言いたいのは、テレビはあなたのものでも女房のものでもない共有だ。テレビを買う銭はおれのものだ、おまえに与えただけだ、滞留しておるだけだ。これは今晩速記録をうちへ持っていって奥さんに言ってください。奥さんおこりますよ。あなたが国会へ行ってもうけられる金は、私がおむつを洗たくしたりしている間あなたは安心して行ってこられるというのだから、あなたの言う話は、もうけたやつはおれのものだ。そこのところも、じゃもうけて女房に渡すまではおれのものだけれども、ものに化けたら共有になるということは、矛盾がどこかにあるじゃありませんか。今回相続税、相続税といっても、ものも金もそうでしょう、いまのあなたの理論から矛盾してくる。金もものもあなたが死んだら奥さんがもらう。それに対して税金はかくほどまでまけるということでありますから、もうあなたのおかしな理屈は一歩脱皮しなければいかぬのじゃないですか、私はそう思うのですよ。で、民法は何条でございましたか、あなたが生きている間に処分をし得る限界は、たしか財産の半分ですね。あなたが生きている間にあなたがかってに女をつくって財産を持っていくという限界は半分です。半分以上あなたがかってにやったら、奥さんは裁判で取り返すことができるわけですね。ですから、民法の規定でもいろいろあるけれども、少なくとも民法よりも税法がいまや先行して、そうして夫婦がともに協力して得た財産であり、所得であるというところへ税法が先行をしておるということを私は考えるわけです。そのお考えをあなたは認められませんか。
  204. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ちょっと十分私いま民法の引用いたされましたたてまえ理解できませんでしたが、遺留分の話ではないかと思うのでございます。遺留分とやはり相続分とは性格も違っておりまして、私はそういう考え方ではないという感じがいたしております。民法の七百六十二条は、やはり夫婦財産制の一つ規定でございますが、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。」というふうになっております。そこで「自己の名で得た財産」とは何かということがここで問題になっているわけでございます。たとえば、自分の得た所得で土地を夫の名義で買うときには、やはりこれは夫の財産になるというのが民法の解釈であり、判例ではないかと思います。そこでその次の二項には、これはよくいわれていることでございますが、「夫婦のいずれに属するか明かでない財産は、その共有に属するものと推定する。」というように、推定でございます。私は、この夫婦財産制の民法の規定はまだ不十分であるし、財産の相続についても三分の一という概括的な基準は問題だと思いますが、それはともかくといたしまして、相続税ではやはり民法の三分の一という配偶者相続分の規定を尊重していかざるを得ない。そうしてその配偶者相続分についての財産形成度を考慮してこの改正規定ができ上がった、こういうふうに考えております。
  205. 横山利秋

    ○横山委員 私の言うことをどうもお認めないようでありますが、たとえば、それじゃああなたが、あなたばかりたとえて悪いけれども、あなたが死んだ場合の法定相続分は奥さんが三分の一ですね。法定相続分は三分の一だけれども、相続税は、もう、あなたはどのくらい財産があるか知らぬけれども、あなたの財産だったらおそらくまるまる税金かからぬでしょう。そうでしょう。まあ失礼な話だけれども…。だから税法が民法よりも先行しておると言って、われわれは別にそれであなたをひっかけたりなんかしようとは思わないのです。事実問題としてそういう立場に立たなければいかぬ。税法改正の説得力がないではないかと言うのだが、どうも逃げ回って、いやそこまでは行っておらぬと言うから、それではどこまで行っておるのかと逆に言いたいわけです。だから、この所得並びに財産は夫婦が協力して形成をした。完全とは言えないにしても、一歩そこで民法よりも税法が先行と言うと、またあなたはいやな顔をするかもしれぬけれども、近代的に前へ出ているというふうに理解しませんか。せぬならせぬでもういいです。
  206. 塩崎潤

    塩崎政府委員 それはまあ考え方でございます。私は、去年の夫婦間の居住用財産に対する贈与、それから今回の完全免除、これは奥さん方から非常に拍手を持って迎えられておることをよく存じております。そういった意味では、民法よりも進んだ考え方をとっておると考えても私はいいと思います。しかし、所得についてこれが該当するかどうかは、先ほど来申し上げておるとおりでございまして、所得と財産というのは、これは理論的にもまた実際的にも——実際的というのはなかなかむずかしい場合もありましょうが、区別できるものであり、税制上たてまえとして区別してしかるべきものだ、こういうふうに考えております。
  207. 横山利秋

    ○横山委員 そこでいろいろな問題が出てくるわけでありますが、相続を、かくも奥さんの地位を優遇するならば、贈与税と均衡をもう少しとらなければいかぬのじゃないかという感じが私はするわけですね。相続税がかくも恩典を受けるならば、相続税と贈与税は一体のものではないか、どうして一体贈与税が今回提出されないのかという点であります。
  208. 塩崎潤

    塩崎政府委員 贈与税につきましてもそのような議論があることは承知しております。しかし、贈与税というのはどうしても相続財産の減殺と考えざるを得ない。大きな財産を毎年毎年贈与していきますと、どんな贈与税の税率を盛りましても、完全に相続税の税負担と合わすことができないのは御案内のとおりでございます。そういった意味では、本来相続税の完全さを期するならば、贈与というものは私どもにとりましては好ましい方法ではないわけでございます。さらにまた、贈与税によって適当なる方法をかりに講じたといたしますと、そういった生存中全く贈与という手段によらないでいきなり相続という事実が起こった場合に、非常に負担のアンバランスが起こるわけでございます。やはりあのときに贈与しておったならば、そのほうが得であった、相続のほうが損したという事例がたくさん出てくるわけでございます。日本では遺言の習慣が発達しておりませんで、急に自動車事故で死んだ場合、遺言がないといたしますと、相続税の問題が起こり、法定相続分の課税になってしまうわけでございます。そうなりますと、やはり相続税において手当てをしておけば十分その目的は達成されるんじゃないか。ただ、最近の現象では、生きておるうちに奥さんの喜ぶ顔が見たいという空気もだんだん出てきましたので、このあたりの処理がむずかしいわけでございます。そこで、昨年は居住用財産について、上のトラブルも多かったわけでございますが、それをひとつ救済する意味におきまして、結婚期間が二十五年をこえました配偶者につきましては、贈与税の負担を夫婦間の贈与について軽減する措置を講じて現在までに至っておりますが、そのときにも問題になりましたのは、贈与をしなくて突如として死んだ人の場合に酷にならないような方法を講じなければならない、こういった問題があったわけでございます。
  209. 横山利秋

    ○横山委員 私が先ほど言ったのは、夫婦間のものの考え方が税法上変わったということのつり合いからいって、贈与税が少し検討さるべきではないかということと、もう一つは、現場におきます納税者と税務署との間にいつも問題がございますのが、夫婦間ないしは親子間における貸与の問題です。  いま税務署は、親族間における不動産なり金銭貸借について、非常にシビアーな態度で、原則的に認めないというような考え方を持っておるわけでございます。もしも、夫婦の協力によって財産形成ができるもの、できたと仮説をするならば、貸したも借りたもないということが言えるわけでありますが、これは抽象論であって、まあ登記されておるものあるいは所得の判然としておるものはそうはいくまいと思う。けれども、親族間の貸与を原則的に認めないという考え方は私はいささか——税務署がやかましく言うものですから現実に成規の手続を行なっておっても、それは八百長であるという感覚が非常にきびしいのであります。この点についてもう少し親族間における金銭あるいは物件の貸与について考え直す必要がありはしないかと思うのであります。これは執行上の問題かもしれませんが、いかがでありますか。
  210. 泉美之松

    ○泉政府委員 現在の税務行政において、親族間あるいは夫婦、親子間におきまして、金銭の貸与、物件の貸与の問題が起きましたときに、その事実がはたして真実であるかどうかという究明を第一にいたしております。もしそれが真実に存在しており、その物件あるいは金銭の貸与について返済能力その他があるということでありますれば、これを認めないということはいたしておりません。もし、横山委員のお調べになったような事例におきましてそういうようなことがございますれば、あとで伺わせていただきますけれども、事実関係が存在すれば認めないのではありませんけれども、事実を仮装してやっておる場合が多いわけであります。したがって、そういう事実を仮装してやっておる場合には、これは認めるわけにまいりませんということになるわけであります。
  211. 横山利秋

    ○横山委員 先入主として親族間においては事実を仮装するというふうに窓口が判断をしておる、大体そんなものは八百長にきまっておるという考えでやっておる度合いが非常に強いのであります。そこである場合におきましては、納税者のほうで八百長裁判をやる。八百長裁判でありますからそんなものは判決がおりることはさまっておるわけです。そんなことまでしなければ税務署は認めないのかという気が私はするわけでありまして、この点はいま少し緩和さるべきであると思います。  それから奥さんの相続税をまけることについて、私は、主税局長に考え直してもらいたいのは、この前るる申しましたように、大体この種の恩典を受ける階層は、何と言ったってそれは有産階級と言うことができると思うのであります。いままででも、奥さんの地位はある程度向上をしてきたわけでありますが、ここにまことに、福音と言えば福音であるけれども、驚くべき福音がなされる。そうして新たに恩恵を受ける奥さんというのは、まあ塩崎さんの奥さん以上、同等以上ですね。それでは女性に対する感覚が足りないのではないか。もしも奥さんを見るならば、この種の恩恵を受ける奥さんの下には、私が先般言った中堅階層サラリーマン家庭における内職の奥さんの問題がある。さらにその下に来れば、共働き奥さんの階層があり、日雇いの奥さんの階層がある。そういう人たちに対する均衡なくして、上層部と言っては失礼だけれども、かなりの財産のある奥さんを優遇して、これが福音だと言っておるという点は、私は、きわめて女性に対する均衡を欠いておるではないか、こう思われてならないのであります。でありますから、先般も全国百数十万に及ぶ中堅階層——調べてみますと、勤続十年から二十年くらいのところが一番内職が多いわけであります。いまのところ税務署の追及はさほどではありませんけれども、しかしながらもしも確実な追及をしたら、それは税法上は税金がかかっておるわけでありますね。だから、これをやるのだったら、内職についての税金も、あるいは共働きに対する課税のしかたも、もう少し考えなければ、世のおばさんや下町の奥さんから何を一体しておるの、私どものことに何も関係ないじゃないかと言ってうらまれるのは当然であります。いかがでございますか。
  212. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いま横山先生が比較されました二つの問題は、私は別の見地で考えるべき問題だと考えております。  夫婦間の相続財産につきましての今回の免税措置というものは、先ほど来申し上げておりますように、これは絶対的な免税とか恩恵と考えなくても済む要素がある。相続税というものは主としてゼネレーションの異なる間の財産移転に対する課税というふうに考えたら、この問題はそんなに恩恵と考えるべきじゃないと思うのでございます。夫が死にまして妻が死ぬのは、その後幾ばくでもない。しかも現在では、妻が死にまして次に子供に相続する際には、前に納めた税金は相次相続の形で働いておりますが、今回はその控除の金額が減ると考えますれば、そんなに恩恵と考えらるべき問題じゃない、一つの相続税に対する本質的な考え方として十分成り立つと私は考えるのであります。  一方、内職所得でございますが、この内職所得の範囲は非常にむずかしい問題でございますが、これはこれとして、今回の配偶者控除適用要件あるいは扶養控除適用要件として考えたつもりでございます。なお、この問題は非常に大きな問題でございますので、今後も研究してまいりたい、かように思っております。
  213. 横山利秋

    ○横山委員 最後に一つ伺いたいのですが、さっきのあなたのお話によれば、死んだときをもって相続をするという——死んだときの財産の額をもって相続の根拠にするのですか、そういうような趣旨の答弁がありました。私が問題を提起いたしましたのは、死んだときには退職金がきまっていなかったという場合です。  それからその次には、たとえばこれも簡単な例を申しますが、去年の十二月三十一日に交通事故でなくなった、そうしてことしになってから示談金をもらった、これを相続する、その相続をする額というものは、判例によれば相続する人が意思表示をする、つまりもらう意思表示をする、そういうときをもって確定するということが判例に出ておると思うのです。いま手元にないものですから何でありますが、常識的に言って、私の言うように本法が一月一日から施行されるわけでありますから聞くのでありますが、去年死んでことし取締役で退職金を出す、それを相続する、去年交通事故で死んで、ことし示談がまとまってもらうというものは、この改正法が適用されるかどうかという点についてどうお考えでありますか。
  214. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この死亡退職金がいかなる課税を受けるか、確かに横山先生のおっしゃられるような疑問を持つほどむずかしい問題でございます。  そこで、相続税法の三条は、その紛争を解決する意味におきまして退職手当金を取得したものとみなすというふうにみなし規定を置いておるのはそういった疑問を断ち切る意味でございます。その二号に「被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものに限る。」という条件がついておりますが、三年をこしますとこれは所得税の範疇に入りますけれども、三年以内に確定したものはこの三条の二号の関係で相続財産を構成するものとみなされるわけでございます。そのような判例を私も存じておりませんのではなはだ不勉強でございますが、横山先生の御発見でございますので、なお帰りまして検討してみたいと思います。
  215. 横山利秋

    ○横山委員 端的に聞いておるのですが、この相続税は一月一日に遡及して適用されるわけですね。だからあなたの判断から言うと、去年死んでそのときには額がきまってなくてことしもらう人は、この改正が適用されるかどうかということです。
  216. 塩崎潤

    塩崎政府委員 旧法が適用されまして、この改正法は適用されないということを先ほどから申し上げているつもりでございます。
  217. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのいうのは、現行法並びに改正法に論拠を置いているわけですか。
  218. 塩崎潤

    塩崎政府委員 さようでございます。
  219. 横山利秋

    ○横山委員 それは私は間違いだと思います。しかしこれを議論し始めますと、ずいぶん時間がたちますから、いま局長がおっしゃったようにもう一ぺんよく検討していただきまして、しかも気の毒でもあるし、私は論理的におかしいと思いますから、別な機会に検討の結果を重ねてお聞かせを願いたいと思います。  委員長、たいへん長らくどうもありがとうございました。
  220. 内田常雄

    内田委員長 広沢賢一君。
  221. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 先ほど横山委員が質問した中で答弁漏れがあったと思うのです。それは現行の八・五%を九%になぜ引き上げたのかという問題ですが、これについては御答弁がなかったようです。私が特にこれを問題にするのは、低額所得者は、百円の金もとうとい。高額所得者にはこれは問題ない金だとしても、低額所得者にとってはたいへんな問題であろうと思います。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 したがって、これを上げた理由、さらに上げたことでもって実質上最も低額所得者の増収になると思うのです。その点について明らかにしていただきたい。
  222. 塩崎潤

    塩崎政府委員 横山委員は、おしかりをしただけで答弁は要らないというお話でございましたので、答弁しなかったのでございます。なぜかと申しますと、横山委員は、おそらく昨年の論議で、昨年も八%から八・五%に上げたときにこの議論が繰り返されたことを御存じで私に答弁を求められなかったと思うのであります。昨年の論議はこういうことでございます。  私ども所得税税率構造を適正にしたいと思っておるわけでございます。外国の税率とも比較してみるわけでございますが、ともかくも最初何%ぐらいの税率で始めるかが非常に大事なんでございます。しかも、その税率課税最低限が幾らであるかということと密接な関係があるわけでございます。つまり、課税最低限の高さということも税率の一種だと思うのでございます。たがいまして、いうならば課税最低限が低い間は最初税率は低くてもいいわけでございますが、だんだんと課税最低限が上がってまいりますと、最初のスタートの税率は高くあってしかるべきである。これはシャウプ勧告あたりを見ますと、課税最低限はこの程度にして最初税率はいかなる意味においても、申告者の能率あるいは徴税者の費用から考えましても二五%くらいでいい、こんなことがいわれております。各国の税率と比較いたしましても、現在アメリカは最初は一四%でございます。イギリスは二〇%、こんなような関係で、どこの国にに比べましても、八%とか八・五%とか九%というのはないわけでございます。アメリカは、過去におきましては、スタートの税率は二〇%、こんなような税率でございまして、今回は課税最低限を十万円引き上げる。そして課税最低限の高さをいわゆる約七十四万円に持っていくわけでございます。これによって最初のブラケットに入ります税負担は軽くなるわけでございます。比喩的に申しますならば、課税最低限を十万円引き上げますれば、課税所得十万円のところの税率はかからないということをいっている方もおられます。  それはともかくとしまして、課税所得の区分でございますので、私どもは、いま申し上げました最初税率課税最低限の高さと密接な関係がある、こういうふうに考えていただきたいと思います。増収は百六億円でございます。それを私どもは、課税最低限引き上げに回した、こういうふうに御理解願いたいと思うのでございます。十万円引き上げるために百六億円の最低税率合理化することによって課税最低限引き上げる財源を得た、こういうふうに考えていただきたい。将来は一〇%程度にお願いしたい。一挙に引き上げますと、一時的には税負担増加するものでございます。この程度、〇・五%ずつ引き上げます際には、基礎控除が一万円引き上がりますと八百五十円の減税になりますが、〇・五%引き上げることによって五百円取り返されることになります。三百円の減税ということになりまして、いかなる方も税負担の軽減は生じましても、増税ということにはならない。これは税率課税最低限との関連を考えて、将来は一〇%に持っていきたいということで、昨年の改正からお願いしておるものでございます。
  223. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 この問題については、あとで私どものほうでも検討して態度を出したいと思いますが、きのうお聞きしました問題点、資本自由化と法人税の問題については、きょう通産省の方は先に帰られたそうですから、それはあとでまた質問することにしまして、実効税率の問題についてお聞きしたいと思うのです。  きょう朝方聞いた範囲では、塩崎さんは、三十九年の実効税率を資本金五百万未満三一二・五%、一億円以上が三六・四%である、こういうふうに言っておられたと私は記憶しておりますが、間違ったらあとで言っていただきたいと思うのです。ところが全国商工団体連合会の会長——これは河野さんという方ですが、「中央公論」の中でこのような発言をしているのです。小企業は実効税率は三五%、それから独占的な大企業は二二%、八幡製鉄は大体一〇%くらいになるんじゃないか、こう言っているのです。その根拠は、七十億円くらいの法人税が十億円程度に、各種特別措置その他でもって軽減される。したがって、一〇%くらいであるということを言っていますが、ちょっと食い違うようですが、大体の目安としてはどうですか。
  224. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も「中央公論」の特集号を存じておりますが、その数字は、どうも私には納得される数字と思えないような気がいたします。
  225. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 だから、これは水かけ論になると思いますが、大体小企業、中小企業では三三%、三五%はほぼ見合っているわけですけれども、一億円以上の大きな会社になりますと、大体一〇%ぐらいの違いがある。八幡製鉄の場合、特にお聞きしたいのですが、きのうの質問で——私が質問しました三十七年度に特別措置で大体実効税率は八・五%ぐらいになるのじゃないかということについて塩崎さんは、大体そのくらいの見当になると言っておりましたが、これはどうですか。
  226. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は三十七年度の数字——三十七年には主税局におりませんので存じておりません。おっしゃる点は、過去において重要物産免税があったときに、こういった実効税率の低い会社が相当出たわけでございます。さらにまたもう一つ利子所得控除が完全な免税制度であった時代には、そういった事例におちいりやすかったわけでございます。しかし、重要物産免税制度は、御案内のように、だんだんと範囲が縮小されて、やっと去年重要物産免税制度が廃止されたわけでございます。さらにまた、利子所得控除につきましては、三十九年から海外市場開拓準備金という準備金の制度になりまして、完全免税の制度じゃなくなったわけでございます。そういった関係から、三十七年度にはかりにそういったことがあっても、最近の資料を私どもいま集めておりまして、御要望の資料を差し上げたいと思っておりますが、そういった低い実効税率は出てこないのじゃないか。かつてある合成繊維会社が非常な利益をあげ、それが新規重要物産であるという理由で免税であった、そのために実効税率が非常に低かったということはありますけれども、最近ではそんなようなことは見当たらない、準備金ならば、将来はまた取りくずされて益金に入る、特別償却ならば、すぐ翌期から取り戻されることになりますので、おそらくそういった極端な数字は出ていないであろうと想像しておりますが、しかし、これは私の税制上の知識からの推測でございますから、いずれ資料をあらためまして、最近の数字でお示しをしたいと思っております。
  227. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それではあらためて資料が来てからこれの比較論に入りますが、一番重要だと思うのは、きのう大蔵大臣も、租税特別措置とか法人税のいろいろな軽減の問題は、これは中小企業に対してということを非常に強調されました。ところが私は、いろいろなものをきのうから調べたのですが、たとえば、先ほど申しました全国商工団体連合会の会長の河野さんは、租税特別措置等については、最大の得をしておるのは独占的大企業なんだからすぱっとこれはやめたほうがいいと思う、中小企業はほとんど名目だけで、実質的にはかえってこういうものをやめたあといろいろな軽減措置をしてもらったほうがありがたいというような発言をしているのです。  私もいろいろ考えましたが、たとえばひとつお聞きしたいのですが、資本構造の改善の問題で、自己資本の比率を高めるという減税制度、これは資本金一億円以上のものに対してだけ認められておると思いますが、これはほとんど中小零細企業には当てはまらぬ、そのように理解していいわけですね。
  228. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この資本構成を是正した場合の税額控除のシステムは、去年の改正でお願いして、現在施行されておるわけでございます。その際に御説明しましたように、この資本構成の改善の措置は、これは非常に技術的にはやっかいでございます。それからまた操作が行なわれて、税務署との間のトラブルが起こりそうなものでございます。さらにまた、こういった資本構成の是正の必要性は、資本市場を調達する大企業について適切なる問題であるということから考えまして、これは一億円をこえる法人だけに適用する、こういうことにいたしましたが、一方、そのかわり中小法人につきましては、あるいは中小企業につきましては貸し倒れ引き当て金の率を二割、二〇%を上回ることで簡単に免税するほうが——免税と申しますか、税金を軽減するほうが楽ではないか、また適切ではないか、こういった意味で二つをワンセットにいたしまして御提案申し上げまして、御賛同を得たわけでございます。そして当時は見積もりでは、資本構成の是正の減収額は約百億円、九十何億円足らずでございましたが、貸し倒れ引き当て金の中小法人の割り増しのときは、百億円ばかりの減収額を立てまして、大体対等というふうに見ておったわけでございますが、実績では、先般お出ししました資料でおわかりのとおり、大法人の資本構成の是正はなかなか簡単に進みませんでした。これは堀委員がよく御指摘になり、こんなようなことでは資本構成の是正が進むわけはないという話がありました。また、まさしくそういったことぐらいでは済みませんので、幸か不幸か、減収額は四十五億にとどまっておる。一方、中小法人の貸し倒れ引き当て金の割り増しは、これは単純に引き上がりますので、九十五億円の減収となっておりますので、こういった意味では、実際的に得をしたのは中小法人である。こういう若干沿革的な説明になって恐縮でございますが、二つを一体として考えたものでございますので、私どもが大法人だけを考えたというふうにお考えにならぬようにお願いしたいのでございます。
  229. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 貸し倒れ引き当て金の問題についてワンセットで答弁されましたが、私はそれを聞いていたんじゃない。自己資本比率の改善の問題についてまずお聞きしたいのです。  その自己資本比率改善の問題ですが、こういうことがあると思います。いまおっしゃったとおり、八幡は自己資本の比率が、調べますと、ずいぶん減っています。大手六社は二九・一%が二八・二%に低下しています。その他の企業も、鉄鋼ですが、二二・八%に低下しています。つまり、こういうことをやっても、低下している理由は何かといったら、これは特別措置の政策効果よりも、八幡や何かどんどん金を借りて、政府の言うことを聞かないで設備拡張をやっておる。人から金を借りれば自己資本の比率はどんどん下がる、こういう方向のほうがずっと重要なんですね。こういう歴然たることがあって、なおかつ、この自己資本比率ということを非常に大きく掲げて、四十五億の減収ということになっておると思うのです。これをさらに続けますと、八幡の場合どういうふうになるかというと、設備拡張をどんどんやるから、自己資本比率はさらに低下する、それを今度は特別措置でもってさらにいろいろとびほう策を講じるということになるのですが、これは矛盾していると思いませんか。
  230. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常に大切な問題でございまして、現在の資本構成をどういうふうに考えたらいいかというような問題につながる問題でございます。私は、自己資本は、世界的に競争しておる企業あたりでは、やはり自己資本が高くて借り入れ金のウエートが少ないほうが望ましいという常識的な見解を支持するものでございます。しかし、これが税制で直るというふうにはなかなか考えておりません。しかし、私は、これは、企業減税が必要であり、企業減税も企業の体質改善が必要である、それは同時に自己資本比率が高いほうがいいということにつながると思いますが、そういった努力した企業に対しましては、こういったメリットを与える方式も適当ではないかと思うのでございます。しかも、法人税を単純に引き下げろという議論が非常な危険性をはらんでいることは、もう広沢先生案内のとおりでございます。昨年企業減税が問題になりました際に、法人税率を引き下げるという案で一時提案されたことがございますが、法人税を引き下げるということは、配当所得が二百二十六万五千円まで非課税というこの際、さらにまた、個人所得税が高いというこの際に法人税を引き下げる、しかもまた基本的な仕組みに影響を与えることはどうであろうか、こういうふうな考え方が私は十分納得できると思うのでございます。それよりも、むしろ法人税の引き下げというねらいが企業の体質改善ということにあるとすれば、端的に企業の体質改善になるようなやり方、それは資本構成の是正に税制が協力しようというならば、そういった努力した企業に対してメリットを与えるやり方も、いま申し上げましたような法人税の基本的な仕組みが問題であるときから、次善の、セカンドベストの方法ではないか、こんなようなことで御提案申し上げ、御認可を得たわけでございます。  したがいまして、資本構成の是正をしない限りはボーナスはいかぬのだということは、単純な法人税率の引き下げよりはずっと直接的な効果があろうかと思いますが、そういった点で御批判はございます。来年期限がくる問題でございますので、この問題の措置につきましては、自己資本比率あるいは私企業の体質をどう考えるかという問題とあわせて十分検討されてしかるべき問題ではないかと思います。
  231. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私が申し上げましたのは、体質強化のために法人税を引き下げろという意味ではないのです。つまり、資本自由化ということを盛んにこの間言われましたが、資本自由化でもって外国資本からいろいろ脅威を受けるのは中小産業ではないか、鉄鋼など、特に八幡製鉄などはもうほとんど脅威を受けないのではないか。これは今度資本自由化のときにいろいろと通産省からもお聞きしたいのですが、そうすると、自己資本比率のこういう問題は一億円以上の会社であるということ、これは矛盾しているんじゃないか。たとえば設備拡張をどんどん鉄がやっていて、政府が言ってもとまらないような、企業利己主義でどんどん拡張するようなことに対しては、自己資本の比率のこの問題ですね、特別減免税措置をやめるというくらいおどかしたらどうか。おどかしたらと言ったら、きのうは少し強過ぎるんじゃないかと言われたけれども、何かそういうてこが必要じゃないかという意味で私は申し上げたので、したがって、四十五億といって、そう金額は多くないと考えるけれども、政策的な問題として矛盾をなくするというのだったらば国民が納得する、中小企業が納得すれば、これは十分考えていいんじゃないか、こういう意味で申し上げたのですが、どうでしょう。
  232. 塩崎潤

    塩崎政府委員 御指摘の点も十分私わかると思います。しかし、これは自己資本の改善の努力をしなければ全く適用がないという意味において、私は広沢委員のお気持ちはこの制度の中に反映しておると思うのでございます。いま申しました、法人税率の引き下げという御提案でないにいたしましても、昨年企業減税を何かの形でやろう、そして企業の体質を改善しようという空気が不況下にあってあったわけでございます。その方法といたしまして提案されましたのが、法人税の引き下げであったわけでございますが、それは一部は実施されましたが、大幅にやらなかったわけでございます。それがもしも法人税の引き下げの姿だけでやっておりますれば、現在減収が生じ、広沢先生のおっしゃったように、何も自己資本比率の改善の努力をしなかった法人でも、法人税減税を受けるじゃないか、取り消したらどうかというようなお話になろうかと思うのでございます。ちょっとそんなような逆説的な消極的な意味もございますが、この制度は努力したものにボーナスを与えるということで御要望の線が一部取り入れられた、こういうように考えております。
  233. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その努力したらボーナスを与えるということですが、八幡とかそういうところは努力していないですね。政府の言うことを聞かないで、設備拡張をやたらにやっている。かってに自己資本の比率を低下さしている。しかも、内部留保は一ぱいで自己金融力は相当ついて、相当鼻息が荒いのですよ。全く反対ですよ。中小企業が努力して、だからボーナスという意味で自己資本の比率を上げた場合にこうなるというのでないのですよ。逆でしょう。逆だと思いますね。八幡やその他大きな製鉄企業がいまやっていることは逆ですね。私はもう一回言いますよ。政府の言うことを聞かないで設備拡張をやっている。しかももうけている。しかも、他人資本、銀行から一ばい金を借りるから、自己資本の率は低下している。これでは全く逆ではないか、そういう意味です。
  234. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私、通産省の責任者じゃございませんので、設備調整についての意見を申し上げることは差し控えたいわけでありますが、この制度は自己資本比率を向上さして初めて適用を受けるわけでございますので、おっしゃるように自己資本比率が低下しておればこの恩恵に浴さないということは間違いないところでございます。
  235. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それでは私は、そのほかの問題についても、今度は租税特別措置に入りますときに一つ一つ当たってみて、こういう方法はないものかと、いろいろ検討したいと思います。  次に問題になるのは、たとえば価格変動準備金、それから試験研究費なども中小零細企業、零細法人、中小法人というようなところではほとんど計上していない。そんな余裕がないですね。退職手当の引き当て金もそうですね。そんなものは余裕がないところがあるのです。そういうところはやはり金額面でわかりますか。
  236. 塩崎潤

    塩崎政府委員 価格変動準備金は、中小企業が引き当てていないではないか、あるいはその金額は少ないのではないかというお話でございます。確かに、たなおろし資産に引き当てるものでありますし、たなおろし資産を持っておる大法人に多いことは事実でございますが、私どもが見ておりますと、これは非常に簡単なもの、帳簿価格で六%、価格変動の激しいものが八%引き当てるという簡単な方式でございます。退職手当引き当て金のようにむずかしい計算をいたしませんので、中小企業も非常に利用しやすいと言っております。ただ、所得に対しましてたなおろし資産が少ない、たとえば小売り業者のように回転が非常に早い、そのわりにたなおろし資産が非常に少ないものに対しましては、そう大きく引き当てられていないことは事実でございます。それでも一億円を限界といたしますところが問題でございますが、価格変動準備金のうちの約三割五分は中小企業が引き当てておる、こういうように考えます。  それから、その次の試験研究費、これは多分に大きなメーカーが多いことは事実でございます。
  237. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると私どもは、この前資料で来たこの中小企業と大企業の間の差というものが十分この額面どおり受け取っていいかどうか、さらにいろいろ検討したいと思います。思いますが、先ほども貸し倒れ準備金と自己資本の改善との比較の問題のところで言及されましたけれども、中小企業と大企業を対等の五分五分として比較検討されていますが、そういう意味がここにも出ていますね。こういう資料で出ていますが、大企業というのは圧倒的に少ない。中小企業で働く人たちは圧倒的に多い。だから、たとえば五分五分の恩恵に浴したとしても不公平である、このように考えています。そういう点から今後も検討していきたいのですが、問題は、きのう問題になった点でもう一つ、私たち計算しますと、八幡製鉄の交際費が四十年分が十四億七千万円ぐらいだというのですが、大体そのぐらいになると思いますか。
  238. 塩崎潤

    塩崎政府委員 大企業と中小企業に対します租税特別措置の片寄り方と申しますか、分配と申しますか、それを盛んに研究されておるのでございましょうが、私どもも資料を提出いたしまして御参考にしたいと思います。ただ、五分五分ではおかしいのだというお話でございますが、私どもは、確かに中小企業に片寄っておる金額のウエートのほうが大きいと思いますが、このほかに、いつも申し上げておりますように、法人税の基本的な税率において、大法人と中小法人との間になお差別をつけておることは御存じのとおりでございまして、それは特別措置の大企業と中小企業との減収額の分類の中に入っておりませんので、これもあわせて御検討を願いたい。言うならば、法人税がシャウプのときのように三五%の一本税率ならば、その問題は非常に明らかになるわけでございますが、現在基本的な法律におきまして一億円以下の法人につきましては二八%と三五%、一億円をこえる法人は三五%と差をつけておる。そういった点も一緒にあわせて御検討をいただければ幸いでございます。  なお、八幡製鉄の交際費というお話でございました。私どもはいつもここでお願いしておるわけでございますが、個別的な納税者の支出金額あるいは所得、費用というものは、できる限り一まあ所得税法で公開しておるという面がございますからいいのですが、その所得の基礎となります収入、費用、これは多分に営業政策に関係いたしますので、個別的な納税者の、これは会社及び個人でございますが、営業の基幹に触れるような資料につきましては差し控えさしていただいております。
  239. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私はそれはおかしいと思いますよ。たとえば、大きな会社でもって財務諸表や何か全部公表しているのですね。いろいろ見ますと、私がとったのでもこれは歴然としている。鉄鋼業のいろいろな雑誌からとっているのですが、こういうものはむしろ明らかになっているのですよ。やはり八幡製鉄といったものは、さっき私が言いましたように、非常に疑いの目をもって国民から見られているのです。なぜかならば、政治献金が一番多い。そういう点で、この租税特別措置と政治献金の関係、または財政投融資と政治献金の関係というような問題がいろいろ問題になっている。その一番筆頭の企業ですよ。私はきのうから申しましたとおり、金はもううんともうけておるのですね。自己金融力がついて、政府の言うことを聞かないでどんどん設備拡張しているという、とほうもない製鉄会社ですよ。しかも、それによって今度生産過剰になった場合には、これは日本経済に及ぼす影響がきわめて大きい。きのう大蔵大臣申しましたとおりです。新聞でも相当たたいている。こういう一番重要な問題について話ができない、公表できないというのじゃ、これはどうやって経済問題を議論するのか。個別にやるのか、わからぬです。たとえば、私が言おうと思ったのは、交際費が十四億七千万円で法人税が十五億円、全く同じくらいです。こんなことを見ればだれでもおかしいと思うのですね。だから、さっき言った政策目的に合わないいろいろの特別措置が行なわれている。たとえば、この次に言う資本自由化の問題についても、私は大蔵大臣の言っていることは納得できない。しかも十四億七千万円と十五億円、法人税が十五億円で交際費が十四億七千万円というのでは、これはもうとてもみんな憤慨するでしょう。交際費については、私はあとで議論しますが、これは必要経費に認める理屈はあると思うのです。あとでいろいろと議論しますが、これはあまりにひどいですね。こういう問題を議論しないで全部伏せておくんだということになれば、国政、経済問題を審議することはできないと思うのです。いまの御発言というのはもっと正確にいうとどういう御発言なんですか。
  240. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは職務上知り得た秘密は漏らすことができない、こういう意味で申し上げておるわけでございます。したがいまして財務諸表で公開されておるものならば、私どもの調べるところで十分できるところでございます。それは十分提供したいと思っております。職務上知り得た秘密といたしましては、八幡の交際費が幾らであるかということは十分存じておりますが、公表されたものについて御報告申し上げることに決してやぶさかではございません。
  241. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それじゃ、公表された額でどのくらいだと思いますか。
  242. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私はここに半期の交際費のものを持っておりますが、これは職務上知り得た秘密のほうに属する資料でございますので、公表したものを私自身確かめておりません。一年間で見れば、おそらく先生のおっしゃったような数字に近いものではないかと私は想像しております。そして税額は、先生のおっしゃいましたのは半期の税額ではないか、こういうふうに職務上知り得た秘密から推測しております。
  243. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それでは、いろいろと検討されまして、交際費の内容というか、額について八幡並びに大手五社の公表できる限りのものを出していただきたい。  それからその次に、八幡が公然たる寄付金として許容されている額は御存じですか。政治献金をするとかその他の許容限度の額は御存じですか。
  244. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは半期でございますが、資本金がございますので、損金算入限度は当然申し上げてもいいはずでございます。四十年の下期で八幡製鉄の寄付金の限度は一億四千八百万円でございます。
  245. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、私の調べたのと相当違うですね。下期一億四千八百万円ですね。全部合わせると三億円くらいと見られますが、私が見ているのでは六億六千万円くらいと数字があがっていますが、これはまた検討いたします。  結論はこういうことなんです。小沢さんに答えていただきたいのですが、きのう大蔵大臣に私が御質問しましたのは、資本自由化といっても、現在は資本自由化で脅威を受けているのは中小産業である。製鉄のような独占的大企業は資本自由化にそう影響されないのではないか。これは一般にいわれているA類に入っている。この大企業が設備拡張を猛烈にやって、政府の再三言うことも聞かないし、これが先ほど言ったとおり、もう耳にタコだと思いますが、設備拡張が過度にいけばあと数年後にたいへんな不景気の原因になる。国民が全部迷惑するのです。こういうような鉄鋼会社が大もうけをしている。新聞でも御存じだと思いますが、ことしのもうけは全国の業種の中で筆頭だと思う。しかも、大蔵大臣の表現によれば自己金融力がどんどん増して、銀行が貸すとか貸さないとかいっても、自分でもって拡張するという勢いにある。こういう問題に対して租税特別措置をやめさせるなり、いろいろの対策を講じるということが大事じゃないか。そうすると、資本自由化に対して、体質改善のためにいろいろ税の特別減免措置をやるというような理屈は、鉄鋼とか造船については成り立たないのではないか。特に鉄鋼については成り立たないのではないかということなんです。中小企業は現在倒産が進んでいるのです。この前の資料では、関係特別措置は四五%と五四%だというような数字が出ていても、中小企業はそれこそ特別措置をしてもらいたいことは一ぱいある。いろいろな試験研究費にしても退職手当の引き当て金にしても、零細企業はもちろん利用できない。利用するのは大企業ばかりだ。しかも鉄はこういう状況だ。これは全然矛盾しているではないかということについて、政治的に大きく日本経済全部見渡して正しいかどうか、小沢政務次官にお伺いします。
  246. 小沢辰男

    小沢政府委員 御承知のように、設備投資なりあるいはそれぞれの会社のいろいろな運営につきましては、ごく主観的なものでございます。税の制度というものは客観的なものでございます。特別措置内容についていろいろと御議論がありますけれども、私どもはそれぞれやはり企業の合理化なり、体質改善なり、あるいは輸出振興なりの見地から、これが必要な客観的なものである、効果のあるものであるということで、特別措置を全般的に継続しておるわけでございまして、またその内容が効果があがらなかったり、その必要がなくなったりする場合には、それぞれ改廃をしなければいかぬという意味で、臨時特別の措置としているわけでございます。これを適用された個々の企業が主観的にその企業で判断をして、設備投資なりあるいはそのときの経済情勢により会社経営の方針によってやっていくこととそう結びつけて議論をするのは、私どものいまの税の考え方とは少し考え方が違うのじゃなかろうかと思います。  したがって、いまお話しのように、非常に好況を迎えつつある今日、八幡が非常に利潤が上がっている、だから体質改善なりあるいは合理化なりの必要性からわれわれがとっている特別措置法を適用するのはおかしいではないかというのは、私どもの税に対する考え方と少し違っているような気がしますが、それはそれとして、現在の経済なり全般の会社運営のたてまえということから見ますと、少し別の面から議論していただかなければならぬ問題ではないかと思っております。
  247. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 小沢さんには済みませんが、全然要領を得ない。たとえば、こういうことですね。税制調査会の答申には、いま小沢さんがおっしゃったとおり、政策目的に合わないものやなにかは改廃していくのだ、それから租税は税負担の公平というものが主眼なんで、租税特別措置は例外的なものだということをいっていますね。そういう立場から政策目的については厳密に検討しなければならぬというのでしょう。それで私は厳密に検討したのです。そうしたら、いいですか、簡単な論理なんですよ。鉄鋼会社は政府の言うことを聞かないでどんどん設備拡張をやっているでしょう。これは二、三年後、数年後にはあるいは生産過剰で不景気の根本的な原因になるかもわからない。これは毎日新聞の論説委員とかなんかが大きく出している。これほど重大な問題であるにもかかわらず、自己資本比率は人から金を借りてどんどん低下している。もうけておりながら自己資本比率は低下しているんですよ。それで設備拡張をやって政府の言うことを聞かないのだから。こういうことは中小企業や大衆に許されますか。きのう聞きましたが、八幡製鉄、鉄鋼会社に対する各方面のいろいろな各種特別措置は七つぐらいある。そういう場合には、それについてこれを削るとかなんとかいうことをするのがあたりまえでしょう。私、言ったのは論理の筋道なんです。それが税制調査会の趣旨なんです。それについて食い違うとか食い違わないというわけじゃないのです。論理をずっと追っていくとそうなるでしょう。その点について伺いたい。
  248. 塩崎潤

    塩崎政府委員 少し制度の技術的な内容まで入られましたので、私からまず補足的に御説明申し上げます。  いま、鉄鋼会社に適用のある七つの特別措置というお話がございましたが、たとえば、自己資本比率改善の場合の特別措置税額控除の制度はこれは鉄鋼業だけに適用があるのではなくして、全般的に一億円をこえる法人ならばすべて適用があるわけでございますので、こういったものは鉄鋼会社だけが特定の控除をしたからといってこれを適用しないというようなことは私はなかなかできないものだと思います。鉄鋼だけの特別措置として考えられますのは、合理化機械の特別償却、これが鉄鋼業という業種が指定されまして、たとえば、高炉あるいは特別な圧延設備、これにつきまして四分の一の特別償却の制度がございます。これを広沢先生のおっしゃる案に従えば、現在設備拡張をできるだけスローダウンさせようとしているのだから、それを振り切って設備をつくっても、特別償却は少なくとも停止したらどうか、あるいは適用しないことにしたらどうだ、こういうような御提案だというふうに承ったのでございます。そういった考え方も私は十分成り立ち得ると思います。しかしながら、私はしろうとでございますけれども、設備調整の制度についてもいろいろな御意見がまずあり、それからまた会社の中にはどの会社が設備をまずやるかというような問題について種々な意見があり、この間は非常な意見が幅広く分かれるところだと思うのでございます。さらにまた、設備調整を延ばせというのは、やはり景気の過熱を押える景気調整的な一時的な問題も多分にあろうかと思います。ところが一方特別償却のほうは、これは基幹産業の競争力をつけるという相当レインジの長い問題でございますし、そういった角度から近代化を進めていくという制度でございまして、昭和二十七年からでき上がって、鉄鋼、自動車が相当恩恵を受ておる産業でございますが、そういった面から見ると、相当時間をかけてみる特別償却の制度は、これは軽々にストップするということは適当じゃない、これが第一の理由でございます。  第二は、若干技術的と申しますか、説明になって恐縮でございますが、この特別償却の制度を完全に恩典と考えるかどうか。と申しますのは、技術革新の非常に速い時代、わが国の税法上の耐用年数は非常に硬直しがちの制度でございます。耐用年数も法定化されておりますし、自分がかってに技術革新を見積って、自分の経験から示すところの耐用年数を主張しても通らないような制度でございます。これは外国に比べまして非常に固過ぎるという話がございます。償却方法も定率法と定額法の一本であり、残存価額も一〇%というふうに、外国ならばゼロという場合まであるそうでございますが、非常に硬直された傾向が強い。しかし一方技術革新がどんどん進んでまいる。ことに国際競争力の激しい部面では、きょう新しい機械と思ったものがあすは陳腐化した機械だとよく言われております。それを救う意味が特別償却の中に相当あろうかと思います。そういった意味合いを考えますと、この設備調整についていまのように幅広く意見のあるときに、直ちに特別償却の制度を停止するというようなことはやはり危険な問題ではないか。ただ、私どもは鉄鋼業のこれまでの経過から見まして設備も相当近代化してきた。広沢先生のおっしゃるように、世界的に見て決して劣った設備ではないということを言われますので、去年の制度改正と申しますか、これは二年ごとに設備の内容を洗い直すことにいたしておりますが、その際に、どの程度の効果が生じ、今後日本の鉄鋼業にとって特別償却の必要な設備は、たとえば高炉のうちのどんなものであろうかという議論をして範囲を縮小してまいっておるわけでございます。それでもまだまだ必要な部面は残っておりますので、特別償却適用のスペックはございますけれども、こんなようなことを加味して出したので、一つ税制上の制度としては十分納得できるのではないか。そういったことで投資する側も安心して投資できる、かように考えるのでございます。
  249. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 特別償却の問題についてはきのうも何かおっしゃいましたね。軽々に一挙に取り払っちゃいかぬ。それについては技術上の問題もありますし、いろいろあると思いますから、私どもも検討するということは、これはきのうお約束しました。一番大事なことで、小沢さんにお聞きしたがったのは、つまり政治の方向というのは筋が曲がっていちゃいけないということですね。そうすれば、いろいろ技術的な点は抜きにして、これが行き過ぎたらもとへ戻ればいいんだし、筋としてはこんなに国民経済に横暴をきわめている管理価格の問題も全部そうですか、鉄鋼業のような独占的な大企業に対して政府はシビアーな態度を何らかの方法でとる。つまりいろんな立法技術や何かは第二番目で、一番大切なことは政治の太いその筋だと思うのですよ。その姿勢のかまえについて小沢さんにお聞きしたがったのです。  これはなおもいろいろと検討したいと思います。たとえば交際費の問題についても、新聞で見ましてお見それをしましたが、交際費に対してもなかなかきついことを言っておられますし、おそらく小沢さんも塩崎さんと同じように、政治の筋をずっと通すということについては、立法技術はあとにして、今度この問題についてはもう一回質問しますから、そのときまでにいろいろと考えておいていただきたいと思うのです。  時間がないんで、もう一つ国税庁長官にお聞きしますが、先ほど横山委員が言いましたが、税務運営方針というのはなかなかよくできています。非常によくできています。これは毎年だそうですか、しかし横山委員と同じ意見なのは、どうもやっていることとあの内容とちょっと違う点があるんじゃないかということが一つ。もう一つは、あれに不足したことがあるのです。それで一つお聞きしたいと思うのですが、憲法では法のもとに全部人は平等であると保障されています。つまり在日朝鮮人は大体七十万人ぐらい日本にいますが、この人たちは非常にいろんな仕事をしています。工業、それから商業ですね。そのやっていること、努力していること、実業をやっているという点では、やはり日本人と同じだと思うのですが、税金の面で税務署のやり方が、国籍によっていろいろと取り扱いを違えたり何かするようなことはないと思いますが、そのとおりですか、どうですか。
  250. 泉美之松

    ○泉政府委員 税務の調査にあたりまして、国籍云々によってその調査のやり方を変えるというようなことはいたしておりません。
  251. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それを聞きまして、私も今後いろいろと苦情がきた場合には、出かけていって国税庁長官がそう言ったからということできつく申します。非常にいいことです。  と申しますのは、たとえばこういうことが一つあるのです。名前は隠します。酒屋さんの名前だけ言います。澤村屋さんという酒屋ですが、国税庁のお役人が、四時間にわたって、だれそれは北朝鮮系であって、彼は政治運動をしている、日本の法律違反を犯しているから、彼は強制送還になるかもわからぬ。こういう者とは取引しないほうが得だよということを、仕入れ先の酒屋さんに行っておどかして歩いている。その酒屋さんが協力しないと、今度は酒屋さんの許可証を取り上げたりする。これは越権行為ですね。こういうことを言って歩いているというので、それで私が、国税庁長官に断わらなかったので、すみませんが、東京国税局の査察部のほうへ行っていろいろ問いただしましたら、絶対にそんな人はいないというのですね。どこでそういうことが起きるのだろうと言うのですが、あと全国的に七つくらいそういういろいろの苦情がきているのです。だから一つならこの人はどうかと思うのだけれども、七つくらいきているというところを見ると、どこからそれが出たのだろう、泉国税庁長官のもとではそういうことは出ないだろう、そうすると、国税庁長官や何かの知らないところで何かそういう教育を横からやっているのじゃないか、そうだとすれば、綱紀紊乱とも思われる。税務大学校というのがありますね、あそこでの教科内容なんかもいろいろ調べようと思っているのです。この問題は非常に重要で、外交問題でもあり、国際的な基本的な人権の問題ですから、特にお聞きしたわけです。  もう一つあるのです。もう一つは、国税庁長官は飯塚税理士事件というのを知っておられますか。知っておられますね。
  252. 泉美之松

    ○泉政府委員 知っております。
  253. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 この事件のその後の成り行きはどうなったかお聞きしたい。結論はついてないと思いますが、一応知っておられない方がいるといけないから——知っておりますか、知っているならあれですが、この事件はきわめて重要だと思うのです。これはあとで聞こうと思ったのですが、たとえば名寄せ、これはできないといわれていますね。各銀行から全部名前を寄せて、それで預金の額を調べるということはできない、技術上むずかしいとか、できないとかいう問題が一ぱいある。ところが、かって気ままに、自分の気に入らない、税務署の方針にたてをつく——これはイデオロギーも何も除いてですよ、飯塚税理士のような人たちに対してはもう二千人ぐらい投入してぐんぐんと調べておどしつける。そうするとびっくりこく、そういう形でしょう。それと同様なことをやっている事件を、この間も私は浅草の酒屋さんの問題でお聞きいたしましたが、それでいろいろ聞きますと、つまり銀行の預金は名寄せで十分調べることができないといわれていながら、ある場合にはそういうこともどんどんやる、こういうところがあるのです。あの運営方針にはひとえに納税者の利益をはかり、理解と納得の上にやるということが書いてありますが、そういう問題について、国税庁長官は絶対にそういうことはさせない、もし国籍その他によってえこひいきする者があったら、これはやはり綱紀紊乱で、それこそ公務員たる、国民の公僕たる地位に反するのだから、十分善処する、処罰するというような強い態度があってしかるべきだと思いますが、国税庁長官の確信ある、そういう国民のための税務運営方針を発表されたその決意をお聞きしたいと思います。
  254. 泉美之松

    ○泉政府委員 いまいろいろお話がございましたが、まず最初に申し上げましたように、酒屋に出かけていってその取引先が北朝鮮系の人であるから云々ということを言ったような事実はございません。広沢先生からお話があったということを私も東京国税局の者から聞きましたが、これにつきましては、私のほうで調査いたしましたところではそういう事実はなく、現に澤村屋という酒屋の御主人はそういうことはなかった、公判廷において証言してもよろしい、こういうことを言っておるのであります。  それでは、どうしてそういう話が出てきたかということになるわけでありますが、これにつきまして、これは私どもまだ正確に証拠を握ったわけではございませんけれども、ある種の人がデマを飛ばしておるというように聞いております。したがって、それは事実と、反するものと考えております。  次に、飯塚事件そのものの処理に関連して、銀行預金の名寄せはなかなかむずかしいけれども、こういった飯塚事件のような場合には多数の者を動員して調査するではないかというようなお話でございます。まあ飯塚事件の場合におきましては、いわゆる賞与というものを支給したことにいたしまして、実際上支給しないでおいてこれを会社の損金に認めてくれ、それによって法人税負担の軽減をはかろう、こういうことがその税理士の関与しておられる方々の会社において行なわれるというようなことになってまいりました。これは税務行政上非常に重要なことでありますので、それらの関与先につきまして調査をいたしたということであります。  二千人動員とおっしゃいますが、そんなに多く動員したわけではもちろんない——わけでございます。私どもといたしましては、やはり税の公平な執行という立場からいたしまして、脱税を企図するというようなことに対しましては厳正な態度をもって臨まなければならない、このように考えておるわけでございます。もちろんそういう意味で、銀行預金につきましてそれを架空名義なりにいたしておきまして、その所得々取得しようとする向きに対しましては、厳正な調査をすべきことは当然でございます。ただ銀行預金の場合にそういう架空名義になっておりますと、その名寄せがなかなか容易でない、こういうことが事実存在しているというだけでございまして、私どもといたしましてそうしたものを摘発をして、脱税を明らかにしていくという努力をすることにつきまして、いささかも怠ってはおらないつもりであります。  したがいまして、税務運営方針におきまして、先ほどのお話では、いいことばかり書いておるが、なかなかその実行面と相違しているじゃないかということでありますが、そういう点につきましては、私もあそこに書いてあることがそのまま現在行なわれておるとは思っておりません。なお私どもの今後の努力によって、あそこに書いてあるようなことを実現していかなければならない点は相当多いと思っております。しかしながら、私どもとしましては、あの税務運営方針に従って五万の職員が税務行政を適正、公平に執行していくということを期待いたしておるのであります。
  255. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 最後に、事実の問題について言います。澤村屋さんの問題は、それはなかったと澤村屋さんが言ったのだったら、これは非常にいいことだと思いますし、そういう事実がなければ、ほかのところ六軒あるのですが、それも確かめてみて、デマを飛ばしているにしても何にしても、事実無根ならば非常によろしいです。それからテープレコーダーがあると言うのですがね。しかしそういう問題についてはあまり言った人をとがめるのじゃなくて、問題はこういう事実が今後起こらないようにすることが大事だから、国税庁長官がそういうことは絶対ない、あり得ない、今後も起こさせないという決意を表明していただけば、私はそれでいいと思います。  それから、いろいろ私は税理士の方から説明を受けましたが、この飯塚事件については、私の同僚議員の方はよく知っているし、くどくは申しません。しかしここに説明されている文では、どうも国税庁のほうが非常に一たとえば、飯塚事務所は、二百社ぐらい悪いことというか、節税を過度にやろうとした会社その他を断わって、そうして更正決定を受けた、あとでそれを直された件数は三%ぐらいしかないというおとなしい、国税庁に一番協力しているという飯塚事務所が、さっき言われた問題ですね。これにはこう書いてあります。「企業の成果配分として従業員に賞与(損金計上)を支出したが、未払金になっている分については、税務署でそれを否認更正したので、それで訴訟になった」。訴訟を起こしたら、今度は猛然と新聞紙などでまず飯塚を脱税指導ということで悪宣伝を始めて、それから「特調班約八〇人を動員して、一カ月近くの間毎日二〇数社を調査して、延べ二千人」——二千人と書いてあるのですよ。「延べ二千人位を投入したわけである。折柄年末に向って商店の忙しい真最中の調査であるから、業者は悲鳴をあげた。次いで関与先を飯塚から脱落させるように仕向け、」——関与先というのは得意先ですね。その関与先に、「「飯塚を断るから他の税理士のあっせんを願う」旨の印刷物に捺印させた」つまり、代官所みたいですな。これが事実だとすれば、やはりいまの御答弁では、このあと始末はついていないということで、下をかばわれるのはわかりますが、ここに公然とちゃんと公文書をもって書いてあるように、税理士がいろいろ言って歩くことについては、火のないところに煙は立たぬから、両方の言い分を聞かなければなりません。だから私は一方的にこれは固執しませんが、こういう問題について、やはり運営方針では、良識ということを非常に強調しているのですね。したがって、これが良識に合うかどうかいろいろと御討議されて、国民に親切な税務行政にしていただきたいということを要望いたします。
  256. 小沢辰男

    小沢政府委員 私、最後に、ただいまの広沢先生のことについて、大臣の次の者として一言申し上げたいと思うのですが、税務行政はなかなかやりにくい行政でございまして、えてして世の中の悪質な脱税その他いろいろな事犯についてはあまり追及をしないで、それを取り扱う行政官吏についての非難をやりたがるものでございますから、この点はいろいろな問題が起こるつど先生方からいろいろな議論なりあるいは御注意をいただくわけでございますが、しかし、私率直にこの前申し上げましたように、昨年参りましてから、ほんとうに税務官吏が少数の人間で実に真剣に一生懸命まじめに努力しているということにつきましては、すなおに驚き、かつすなおに実は敬意を表しているわけでございます。こういう点も先生方からよくひとつ御認識を願いまして、やはりあたたかい目でいろいろこれらの職員について御指導賜わるようにひとつお願いをしたいのでございます。何といいましても、国会でもあるいはどこでも歳出面につきましてはいろいろ議論があり要望がございますけれども、ほんとにわれわれの国をささえているものも、やはり正しい国民の納税であり、またこれを取り扱う国税庁全国五万の職員じゃなかろうかと思いますので、十分御理解いただいているとは思いますけれども、間々この国会の議論だけが伝わりまして、いかにも一生懸命やっている者がまたまたたたかれるというような印象を与えて国税庁の職員の意気まで阻喪するということもやはり大きな問題だと思いますので、こういう点につきましても私どもは十分意を用いておるつもりでございます。今後もひとつ積極的にむしろ職員の激励になるようないろいろ御指導をいただきたいものだということを私は特にお願いをしておきたいと思います。
  257. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 正しい納税意識を起こすためには税金はどうあるべきかということについては、この次また議論します。  以上で終わります。
  258. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 永末委員。
  259. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣が来られましたので、大蔵大臣に御質問申し上げたいと思います。  今度の所得税法等の改正にあたってもいろいろ御苦労なすっておられると思うのです。しかし、この法案を提出されるについての大蔵大臣の基本的な考え方をこの際伺っておきたいと思います。  それは、このごろの日本の国は都市化現象が進んでまいりまして、家族が細分化されてまいる。すなわち、一人一人の人間が自分の暮らしを自分の収入に見合って立てなくてはならぬ、こういう形になっておると思います。社会学者はこれを大衆社会と呼んでおりますが、そういう社会になっておるときに、税金をとられるということと、そのとられた税金が自分の暮らしにどのように一体報われておるかということについては、非常に鋭敏な感覚で、そのとられる税金のとられ方ないしはその税金の使われ方について国民納税者は考えておると思うのです。したがって、大蔵大臣に伺いたいのは、そういう社会にいま変わっておるともし大蔵大臣も御認識になっておるとするならば、税をとる側、そしてまた大蔵大臣は同時にその税を使う方でございますから、国と国民との関係について、そういう税をとり税をまた使うという、国民側からいえば給付し、政府側からいえば反対給付を与える、そういう点についてどういう配慮をされておるかということをまず伺いたいと存じます。
  260. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 なかなかむずかしい大きい問題の御質問でございますが、あるいは的を射ないかもしれませんが、申し上げますと、現代国家は租税国家と言われるように、国民が営々としてかせいだ所得なり経済活動の成果に対する租税によって国家活動が営まれる、したがって国民税負担が国家活動に至大の関係を持っているというふうに考えます。そういたしますと、国民税負担というものは、一面、国民にとっては義務であると同時に、過重な負担から自分を守るということはやはり国民の権利であるというふうに考えます。この権利と義務をだれが守り保障するかといいますと、いまの民主主義制度においては、自分の選んだ代議員が構成するこの国会においてつくる法律によって守られるよりほかない。したがって、いわゆる租税法定主義というものは、納税者のマグナカルタである、こういうことになろうと思います。したがって私ども政府は、この国民の金を慎重に使う、血税を浪費しないという態度で国政を運営しなければならぬ。と同時に、やはり国の財政需要を調整して、できるだけ負担をかけないで税を減らすということが国会の任務である。国会自身というものの成り立ちを見たら、昔から、あんまり仕事をしないで、この仕事へ金を使っちゃいかぬ、それだけ税を減らせということが国会の仕事であって、私も明治以来の国会五十年史を読んで、歴代の大蔵大臣とそのほかの連中がどういう演説をしているか見ましたら、国会に対して、ことし幾ら険約してこういう金を使わないようにしましたということで、大蔵大臣の施策というものは、いかに税を険約したかという演説になっているということを知って、私は非常に感動しているのですが、出せ出せと言うだけではなくて、やはり国民の税をいかに負担を軽くするかという国会本来の仕事に国会は専念するし、そうして、得られた税をいかに効果的に使うかということが政府のこれからの真剣な任務でなければならぬというふうに私は税に対しては考えております。
  261. 永末英一

    ○永末委員 いま大蔵大臣が言われましたように、歴代の大蔵大臣が、いかに国民から取らないかということを自分の施政方針として言われたというのは、国民側からいいますと、取られているの当時の政治が明確に国民に知らしていなかった。したがって取らぬのが善政だ、こういう形で表現されたのだとわれわれは思うのです。しかし、大衆社会の上に立っておる、あなたのことばをかりますと、租税国家というのは、やはり何らかの関係においてその点を明らかにするのが、私は政府の責任だと思う。したがって、たとえば日本の農民が支払っている税金と、農民が予算上報われている面、一体どの程度の対比になるか。日本の中小企業者が税金として政府に取られているものと、日本の中小企業者が政府からもらっているものとは、一体どういう対比になるか、お答えを願いたい。
  262. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その前に申し上げたいのですが、いまあなたがおっしゃられたように、いかにして取らないかということがいままでの国会の活動であったとしても、それはそれで、いま言ったような問題がある限りは正しいと思うのです。ところがいまはそうじゃない。実際において、社会が複雑に進んできますと、国民生活をほんとうによくするための財政需要というものは非常に強くなっている。したがって、この財政需要に応じて適正な配分をするということがまた国の一つの任務でございます。いかに適正な税の需要に対応するかということを考えますと、その背後の税がやはりだんだんに大きくなってこれなければいけない、こういうことになろうと思います。それをするためには国民所得水準が増さなければならぬ。国民所得水準がふえる限りは、国民所得に対する税負担というものは順々に上がっていくのがいいことであって、それによって近世の福祉国家というものは実現されるのだ。これがこれからの行き方だろうと思います。  したがって、日本の現状を見ますと、税の負担社会保険の保険料の負担がまだ二三、四%というときに、先進国はもう国民所得に対する国民負担が四〇%をこえているというところへいっているのですが、これはそれだけ国民所得が、負担をまかなえる所得水準が上がったということでございますから、私は、税と関係する限り、やはり政府はできるだけ税を軽くすると同時に、積極的に国民所得水準を上げるという仕事がこれからの国の大きい一つの仕事だというふうに考えます。昔は税を減らせばよかったというのですが、できるだけ早く日本の国民が先進国並みに相当大きい負担に耐えられるようなところまで持っていきたいというのが私どもの希望であって、そういう希望を持つことがこれからの国家を運営するための態度ではなかろうかと私は考えます。
  263. 永末英一

    ○永末委員 いま大蔵大臣から、全体としての国民の担税力、それを増さなければ、自民党政府のいわゆる福祉国家も実現できない、だから、したがって担税力を増すためには所得をふやすのだ、こういうお話を伺いました。  私が申し上げたいのは、その過程において、税を出す国民のほうは、その出した税がどのように自分に報われてくるかという、給付、反対給付の関係を知りたいと望んでおるわけであります。これはしかし直接にこないかもしれません。しかしながら、国民一般が見ておるところでは、いろいろな圧力団体というのがございまして、その圧力団体が自分の出した税金をもぎ取っていくのではないか、こういうことを如実に見せつけられるわけです。そこで国民としては、一体おれは取られるばかりであって返らないのではないか、こういう感じを持ってくるとしますと、大蔵大臣の言うように、これは一般公共の用に供するものだから税金を払え、こういうことにはなかなかならない、こういう感じを私は持ちます。その辺があなた方の政府でも一番重要な点ではないか。そこで私は、事例として、農民の場合、中小企業の場合には、一体給付、反対給付はどうなっているかということを伺ったのですが、これは主税局長と主計局長が出てこないといけませんかな。どうでしょう。
  264. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは予算についてのいろいろな説明の中に、予算の使途別の分類をしてございますが、たとえば農村については、そういう税と予算とを対比して発表するようなことはしておりませんが、一体農業政策にどれくらいの予算が計上されているか、中小企業対策としてどういう予算の計上があるか、一般公共事業としてどう、社会保障費として、文教費としてといって、国家予算の中に占める比率まで別々に集計されて発表してございますので、国民は大体国の予算がどこにどういうふうに使われるかということは、予算を勉強している人ならある程度知っておると思います。また、それを国民に知らせることをやらなければならぬと思っていますが、それに対応する負担ということになりますと、たとえば、全国の農民が国税を幾ら負担しているかと申しますと、これはもう事実上は負担していないと言ってもいいくらいごくわずかなものでありますし、そういう対比をさせて発表するということはしておりませんが、これは何らかの形で国民に自分の税がどう使われているかということをもっと徹底して知らせる必要があろうと思います。私は、十何年前でございましたが、イギリスへ行ったときに、イギリスのあるおばあさんと会って話をしたとき、イギリスの負担は非常に大きいので、それを言いましたら、そのおばあさんが全部自分の一年に払う税額を知っておって、どこにこれが使われるかという説明を、おばあさんからわれわれ議員団が説明されてびっくりしたことがございますが、やはり国民にはこういうことはもう少し知らせるような形で、私ども活動しなければいかぬのじゃないかと思っております。
  265. 永末英一

    ○永末委員 いま大蔵大臣も言われましたように、たとえば農民をとりますと、出す税金を一とすれば、予算上報われるところは十というぐあいに返るところが多い。中小企業にいたしますと、取られるところは十であって報われるところは一というようなことで、農民には不満はございませんが、しかし中小企業者には不満がある。そこで、いま忘れられておる勤労者階級と申しますか、階層と申しますか、そういう人々は、言うならば税の対象にだけなって、一体それが自分にどう返ってくるかを測定することがきわめてむずかしい。政府がそれを率直に説明されるなら別でありますけれども、彼らは取られることでしか税金に対する関係はない、こういうことではないかと思うのです。  そこで、その事態を明らかにするために、主税局長に伺いますが、一体この有業人口のどれくらい税金を取ろうという計画になっておるのですか、ことし並びに今後の見通しでは。
  266. 塩崎潤

    塩崎政府委員 将来の目標というよりも、現在の所得税納税者が有業者に対しましてどの程度になっているか、その点を申し上げたいと思います。四十二年度の全所得者に対しまして、納税者数は四二・二%と見積もっております。
  267. 永末英一

    ○永末委員 所得にもいろいろございますから、いわゆる有業者と称せられる者の中で、実数はどれくらいと踏んでおられますか。
  268. 塩崎潤

    塩崎政府委員 有業者は同時に所得を持っておる者だと私は考えまして所得者で申し上げましたが、これは有業者と考えてもいいと思います。そこで、全体の数は四千九百二十万五千人と見ております。納税者数は二千七十五万四千人でございますから、四割二分二厘、こういうふうになると見ております。なお、御質問がございますれば、そのうちのサラリーマン、あるいは農業所得者、あるいは営業者、自由職業者、この割合を申し上げることにいたします。
  269. 永末英一

    ○永末委員 私の伺いたいのは、その約二千万人の中で給与所得者に限ってひとつ焦点をしぼってみたいと思います。給与所得者はことしは何名で、それからあなたのほうの租税計画によりますと、だんだんにふえていくことになっているでしょう。それもちょっと言うてください。
  270. 塩崎潤

    塩崎政府委員 現在御提案申し上げております所得税改正案では、給与所得者を減少すると見ておりますので、給与所得者の全有業者と申し上げますか、所得者の数は三千十六万人でございます。納税者数は千七百八十三万一千人と見ておりまして、五九・一%と見ております。なお、税制改正を行なわないといたしますれば、毎年毎年納税者の数は雇用人員増加によってふえていくわけでございます。私どもが見通しておりますいわゆる長期計画におきましてふえるというのは、それをあらわすわけでございまして、この関係につきましてあとでちょっと資料を見て御説明申し上げたいと思います。
  271. 永末英一

    ○永末委員 その資料をお調べになりましたときには、給与所得者の中で、扶養親族のない者、これが年々伸びておると思うのです。つまり扶養親族なくして給与所得税を払う者、そのことをひとつ明らかにしていただきたい。
  272. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この点は、私はもう何回もここで申し上げましたが、課税最低限平均賃金の上昇程度上げてまいりましたけれども初任給増加が、若年労働力不足の関係で、平均賃金の上昇率を上回っております。そのために、課税最低限平均賃金の上昇程度に見合って上げてきた。第二には、これもたびたび申し上げておりますように、課税最低限引き上げのしかたといたしまして、独身者よりも、どちらかといえば世帯持ちのほうにウエートを置きまして、たとえば配偶者控除、これは妻の地位を上げるためといわれておりますが、配偶者控除金額あるいは扶養親族扶養控除引き上げてまいりましたので、独身者課税最低限引き上げの幅が薄くなったために、独身者納税者が非常にふえていることは事実でございます。三十年に千万人の納税者がございましたが、現在約二千万人。その間千万人の納税者がふえましたが、そのうちの九百万人はサラリーマンでございます。残りの百万人が資産所得者でございます。現在の二千万人のうちの九百六十六万人は、約四八%ばかりになりますけれども税法上の単身者と申しますか、扶養親族のない者でございます。なお、これが全部若年のサラリーマンかと申しますと、決してそれだけではありません。大部分そういった方々が大きな割合を占めておることは間違いでございませんけれども、そのほかに、これは御議論があるところでございますが、扶養控除の要件あるいは配偶者控除の適用の要件といたしましての所得限度を三十三年から五万円に据え置いております。その関係で、奥さんに分けました株式の配当所得がだんだんふえてまいる、あるいは相当共かせぎという事態もふえてまいった、こんなような新しい社会現象のために、奥さんでありながら配偶者控除の適用を受けないで、税法上の独身者と申しますか、単身者となっておる方が相当多い。こんなような関係で、九百六十六万人まで税法上は単身者が見られておる、こういうことでございます。
  273. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣、あなたのほうの自民党政府の政策というのは、所得をふやそうということ、いわば経済の成長政策——いま安定政策というのですが、やはり安定成長、その政策のおかげでずっと物価騰貴が起こりましたね。物価騰貴が起こりますと、いまの単身者所得であれ、あるいはまたその他の家族持ちであれ、給与所得者というのはいろいろ苦労いたしまして、名目賃金を上げます。上げますけれども物価が上がってまいりますから、実質賃金はそれに伴わない。ところが、税制は年々変えられる。ことしもいろいろ基礎控除を上げたり扶養控除を上げたりして、形式的な公平性を保とう、物価騰貴に見合う調整だけはしようという御苦心のほどはわかるわけでありますが、物価騰貴に見合ってなるほど名目賃金は上がってきておるけれども実質的な痛さというものは、私はふえておると思うのだが、あなたのほうはどう見ておりますか。
  274. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まず第一に、先ほど納税人員が将来どの程度ふえるかという質問に対しまして、お答えを留保いたしましたが、私ども税制調査会に出しました資料では、サラリーマンは四十六年には二千九百三十五万人、約九百万人程度の増——四十二年に税制改正をいたしますれば千七百万人になりますが、税制改正前で計算いたしておりますので、約二千万人でございまして、九百万人ばかりふえるという見通しを持っておることをまず申し上げたいと思います。  その次は、第二の問題は、減税減税といいながら実は物価騰貴等の関係で苦しさが増しているのではないか、こういった御質問でございますが、私は確かに減税は事実あったと思います。先ほどもここで御答弁申し上げましたが、昭和三十五年から昭和四十一年までの給与の伸びは七割五分でございます。その間所得税減税を行なっておるために、給与が七割五分伸びたにかかわらず、各階層を、現在たとえば百万の方は、三十五年に七割五分で逆算いたしますと幾らであったかということを計算して、それからそのときの所得税法を適用し、現在の四十一年の税法を適用いたしますと、所得が七割五分伸びたにかかわらず、所得税は四割から五割程度しか伸びてない、こういうことがいえるわけでございます。ただ問題は、これは経済的な数字ばかりではだめだというおしかりがありましたけれども住民税減税が行なわれてないのみならず、昭和三十七年に所得税から住民税に回されましたので、二倍半ばかりの増加を示しております。それからまた可処分所得を減殺するものといたしまして、社会保険料の負担金が、やはり賃金伸びと同様、あるいはそれより若干上回って伸びておるわけでございます。したがいまして、所得税は、所得水準の上昇があったにかかわらず、やはり減税された。ただ、そこに貨幣価値の低落という問題がございますが、それを加味いたしましても、減税になったことは事実だ、かように思うわけでございます。
  275. 永末英一

    ○永末委員 だいぶ回り回って答えておられますが、私が聞きたいのは、そういう条件を勘案しながら、世の中には税痛ということばがある。歯の痛いのが歯痛で、神経の痛いのが神経痛、税が痛いのが税痛です。その税の痛さというのが減っておるならば、国民は喜ぶわけです。しかしながら、いまのような物価値上がりと、そうして名目賃金の値上がり率と、そして税制改正されてもかかってくる税金と、結果的には、いま主税局長が申しましたように、納税人員が非常に拡大してきておる。その拡大してきておる一番大きな新しい納税人員というものは単身所得者であって、それは大体において低年層である。もちろん高年層もございますよ。そうでなければふえるわけがない。まず第一に、そういうことになっておるという事実をお認めになりますか。
  276. 塩崎潤

    塩崎政府委員 納税人員がふえておることは事実でございます。
  277. 永末英一

    ○永末委員 そのふえた納税人員のおもな供給源は、若年層の給与所得者というものにある。そして、なべて給与所得者というものは、名目賃金の上がりがおくれてやってくるために、税痛の度合いはふえておる、こう私は見ますが、あなたはどうごらんになりますか。
  278. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ふえた納税者中、若年労働者と申しますか、初任給の上がりが非常に多いために、若年者、単身者が大きな割合を占めていることもまた事実でございます。ただ、税痛という点は別な問題だと私は思います。
  279. 永末英一

    ○永末委員 これはみつぎをとるほうの局長はなかなか答えられないと思いますが、政治家として大蔵大臣、税痛はふえておると思いますか。減っておると思いますか。
  280. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ日本の国民所得のいま程度の水準で二〇%ぐらいの税の負担率ということでございましたら、大体税痛というものは全部が持っておるのじゃないかというふうに思います。
  281. 永末英一

    ○永末委員 そこで、私は最初申しましたように、このごろの若い人も、やはり給付、反対給付の感覚はきわめて鋭敏になっている。労働組合連動がどんどん発展してくるのは、そこにあるのである。企業は家族みたいなものだからなんというようなことを申しましても、近代の労働者は、それはそうであっても、自分たちが企業に貢献する以上、自分たちの取り前を取らなければならぬ。その権利意識が近代日本をつくっているわけです。そこで、あなたがおっしゃるように、全体的に二〇%程度なら、こう言いますけれども、よその国はそれ以上の税負担だとさつきは言われた。しかし、そこでは、長年にわたる国民の権利意識の上に、給付、反対給付の関係が相当明確に国民に知らされるようになっている。ところがわが国においては、あなたがいみじくも言われている。なかなかそこまでいっていないということは告白されたじゃないですか。そうなりますと、いまある現象というのは、そういう人々に、取るだけ取って、その報いというものを、わが自民党政府というものは明確にしていないような気がするのですが、どうですか。
  282. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは一つには、私は、この日本の社会保障制度の中で、年金制度というものがまだ生まれたばかりで、これがやはり影響しているのじゃないかと思います。すでにこれが古いときに発足して、相当高度の給付が行なわれるというところまで社会保障制度が拡充されて成熟しておったとしますと、若い人たちでも、納税がどういう形で将来自分たちに返ってくるだろうかとか、この税は決してむだでないというようなものを、身をもって感ずるということになろうと思いますが、そこまで日本の社会保障制度がいままで成熟してないということが、その問題についての一番大きい原因じゃないかというふうに私は考えます。
  283. 永末英一

    ○永末委員 おっしゃるとおり、年金に限らず住宅でも交通でも、やはり国民税金を出す以上はそれがそういう自分たちの日常生活のそれぞれの面に報われておるんだ、こういう意識がなければ、税痛は痛さが増しておる、こういう感覚はやはり残っている、私はこういうぐあいに思うわけである。だからこそ、都市部においては、あなたのほうの自民党は下がっていますね。私はやはり深刻に反省される必要があると思う。そこが原因です。それは大蔵大臣としては全部やれません。水田総理大臣なら私はおやりになると思いますけれども、そういう点がある。たとえどの政党が政権をとっておろうと、そういう点をはっきりしなければ、国民が国家権力によって取られる税というものに対してやはり違和感を抱く、そして税を免れることをもってよしとする。こういう望ましくない風潮が出てくるのではないか。この辺はあなたが政権を持っておられる以上は、何とかしてそういうことにならぬように努力をしてもらいたい、私はそう思うのです。そうでなければ、だれが政権をとりましょうとも、この税というものを取っていかぬ限り国家の運営はできない。  大蔵大臣、ひとつ伺いますが、先ほど主税局長納税人員がどんどんふえていく傾向説明いたしました。これはいいことでしょうか、それを伺いたい。
  284. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はほんとうはこの納税人員がふえることがいいことだと思います。ふえる原因は先ほどから説明されておったと思いますが、納税人員が減るということは、まだ国民所得水準が低いということを物語っているもので、私は、やはり国民所得水準がふえると同時に、納税人員がふえるということが望ましい姿だと思います。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  285. 永末英一

    ○永末委員 私どもはこう思うのです。大体現在の政府は低額所得者から税金を取り過ぎておる。それが戦前の国家といまとは比べものになりませんけれども、これだけ多くの人間、総人口の半分ぐらいから取ろう、こういうことを考える。給与所得者だけでも、最初申されましたように、いま六割程度がやられているわけですね。そうなりますと、やはり給付、反対給付の観念が鋭敏になってまいりますと、これは政府は相当な施策をやらなければならぬ。私は、この際やはり納税人員を減少させるということが必要である。それから落ちてくる人々には間接税というものがあるではありませんか。間接税は軒並みにやってくるのである。直接税は、やはりほんとうに担税能力のある人、応能負担、この原則を貫くべきである。現在のあなた方のやり方は、負担能力のない者から、税制がきめておるから取るんだ、こういうことでしょう。私は、これは大きく言って、税を通して、国家というものに対するこれらの人々の見方を、非常にマイナスの方向に見さしている原因だ、これは改めてもらわなくてはならぬと思います。あなた方が、たとえば所得控除、税額控除、いろいろな控除をいままでの税制のしきたり上考えられて、一万円引き上げる、三万円引き上げるということで御苦労なさっておる。しかしながら、問題は大幅にこれらの人々の最低限を引き上げて、そうしてほんとうに能力のある人に負担せしめる、これが、直接税体系がわが国の税制の根幹であるとするならば、とるべき姿ではないかと私ども民社党は思いますが、あなたはどう思いますか。
  286. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、賃金の値上がり、物価の値上がりよりも、課税最低限をその位置よりも多く上げるということによって、国民負担を軽減しようという努力をずっとしてきましたが、この努力をどんどんこれからも続けて、たとえば、いま問題になっておりますように、課税最低限を百万円にした、そういう引き上げをやった際において、なおかつ納税者が減らなかったということだったら、これは非常にけっこうなことであって、課税最低限引き上げることは私どもは毎年やりますが、やってもなおかつ納税者がふえるということのほうがいい社会でございまして、私は納税者の数を減らすということは、あながちいいあれだとは思いません。
  287. 永末英一

    ○永末委員 私は数のことを言うておるのではなくて、応能負担、これが税制の基本的な原則だ、能力のない者から取るなということです。  そこで、給与所得者に対しては源泉徴収ということが、妙なことからずっと行なわれている、これは税務署にとってはなはだありがたい話であって、雇用者を持っておるところの企業は、税務署の代行をやっておるわけだ、特別源泉徴収義務とかいいまして、これには税務署が一文も払っていない。しかしながら、これがもし普通の事業所得者と同じように申告課税になったら、税務署はえらいことになるでしょうね。だとするならば、その煩を省くためにも、もっと下のほうは切り上げるべきだ。大蔵大臣、給与所得者に対して源泉徴収を申告課税に改める意志はございませんか。
  288. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまのところはございません。しかし、いまお話のことは少し納得できませんが、ひとしからざるを憂うというのは、担税力のある人から取るということは当然であり、そのために累進課税体制ができておる、生活力のない人から取るなということです。ですから、そのためには課税の最低限を上げるというので、最低限をどんどん上げて、なおかつ納税者がふえるということだったら、私は相当国民の生活水準がどんどん上がっているということの証拠であって、悪い現象じゃない、こういうふうに思うのですが、間違っていますか。
  289. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣、あなたは二つのことを言われておるわけだ。課税最低限を上げたい、応能負担の原則を貫くためにそれはそのとおりだ。しかし、そうやっても納税人員がふえたらいいというのですが、われわれから見てみますと、課税最低限を上げれば、国民の一人一人の所得の水準が急激にふくれない限り、納税人員は減るのがあたりまえであって、現在でも高校を卒業して一万七千円程度の単身の所得者から税金を取っておる。一体、一万七千円の単身の給与所得者に担税能力があるだろうか。私はないと言いたい。そこまで取っておるわけだから。そこで、あなたは、それでもなお納税人員がふえたらいいじゃないか、よろしいと言う。しかし、そのためには、高校を卒業して三万円くらい取れるようになっておれば、現在でもよろしいと思います。そうなっていない以上は、大蔵大臣としては、納税人員が減っても応能負担の原則を貫くべきだと私は思いますが、あなた、どう思いますか。
  290. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 課税最低限を上げても、そこまでの所得のない人は、これは税は当然納めません。また、そうして納めない人が多くあることがいいかどうかと言いましたら、要するに、課税最低限の問題でございますが、いま、少なくとも私どもが当面の目標にしておる日本人のいまの生活から見て、百万円の最低限というものをこの二、三年のうちにやりたいと考えておるのですが、そこまでやってみたところが、いまの納税人員がまだ減らないというような現象が出たとしますれば、私はこれは悪い現象ではないというふうに思うというだけのことでございます。
  291. 永末英一

    ○永末委員 それは、結果的にそうなって減らなかったら、それはそれでいいですよ。しかし、私はこの際あなたに御注文申し上げたいのは、低額所得者というものにつきましては、間接税というものがある。そこで、直接税の体系の中だけで国民から税金を取ることばかり考えないで、応能負担というならば、低額所得者税金は納めない。現に税金を納めない者も間接税は負担をしておるのであるから、直接税、間接税を総合的に国民所得水準に応じた公平な負担をさせるということをやはり考えていただきたい。しかし、直接税の税痛は直接にくるのであるから、その税痛を取り除くということは、税制の部面ではやはり足を切る、下をずっと上げる、底上げをすることだと私は思います。大蔵大臣の基本的な考えは伺いました。この法律案に対する判断はまたわれわれで別途にいたします。  質問を簡素にするため、本日はこれをもって終わります。
  292. 内田常雄

    内田委員長 次回は、明十九日、金曜日、午前十時より理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこの程度にて散会いたします。    午後八時七分散会