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1967-05-17 第55回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十七日(水曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 毛利 松平君 理事 吉田 重延君    理事 平林  剛君 理事 武藤 山治君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    菅  太郎君       小峯 柳多君   小宮山重四郎君       河野 洋平君    砂田 重民君       永田 亮一君    西岡 武夫君       村上信二郎君    村山 達雄君       山下 元利君    渡辺美智雄君       阿部 助哉君    只松 祐治君       広沢 賢一君    堀  昌雄君       山田 耻目君    横山 利秋君       永末 英一君    田中 昭二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         総理府人事局長 増子 正宏君         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵省主計局次         長       岩尾  一君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省関税局長         事務代理    細見  卓君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         大蔵省証券局長 加治木俊道君         国税庁長官   泉 美之松君         通商産業省重工         業局長     高島 節男君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      岩瀬 義郎君         大蔵省関税局企         画課長     植松 守雄君         通商産業省石炭         局炭政課長   村松  寿君         自治大臣官房参         事官      鎌田 要人君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 五月十七日  所得に対する租税に関する二重課税の回避のた  めの日本国ブラジル合衆国との間の条約の実  施に伴う所得税法及び法人税法特例等に関す  る法律案内閣提出第八七号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)  税制簡素化のための国税通則法酒税法等の一  部を改正する法律案内閣提出第四六号)  石炭対策特別会計法案内閣提出第四五号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二一号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二二号)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  石炭対策特別会計法案を議題といたします。  質疑の通告がありますので。これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 昨日、私の質問を展開中、定足数の問題から休憩に入りましたから、少し質問が中断をいたしました。きょうは、それに引き続いて、私の考え方を中心に、ひとつ政府からお答えをいただきたいと思うのであります。  私が前回お尋ねをいたしましたのは、石炭対策国家的立場から打ち出していくためには、石炭需要に対して長期的な見通しを立てながら、かつ、なるべく石炭を使ってもらう、こういう国策一つありまして、特に大口消費者といいますか、需要口であるところの電力鉄鋼——この電力鉄鋼石炭を使ったときに、従来、石油関税還付制度が行なわれておった。その石油関税還付制度の中におきまして、相当巨額な電力並びに鉄鋼に対する還付がされておったことに対しまして、その中における疑問をただしてまいったわけでございます。  昨日の御説明によりますと、電力では、昭和四十年度においておおよそ三十六億円、四十一年度において約四十億円、鉄鋼においては、四十年度において十億一千万円、四十一年度では十三億円が還付をせられる、こういうことでございました。そこで私は、それではこまかく、電力は別にいたしましても、鉄鋼企業においては、大体どのくらい企業別において還付実績があるかとお尋ねをいたしたのに対しまして、八幡の場合には、四十年度において二億二千六百万円、富土においては一億六千二百万円など、各企業別についてお答えがあったわけでございます。ところが、私が疑問に感じましたことば、この石炭を使うという場合におきましては、重油を使うこととの価格差を埋め合わせる、使ってもらうのであるからその価格差を埋め合わせるのだ、こういう趣旨でこの還付制度が実施されているということを承知しておったのでありますが、通産省の石炭局調整課資料によりますと、昭和四十年度鉄鋼会社購入実績基準量との差額における価格差と実際の還付実績との間に大きな開きがある、これはどういうわけか、こういうことを私はお尋ねしたわけでございます。  例を申し上げますと、八幡製鉄におきましては、その価格差が一億九千六百四十一万八千円になっておるのに、二億二千六百万円の還付実績がある。同じように富士でも、価格差は一億三千五百八十三万五千円であるにかかわらず、一億六千二百万円の還付がある。住友におきましても、一億一千五百七十万六千円であるのに対し、一億五千六百万円の還付がある。いずれも四千万円ないし五千万円をこえて還付をされているのが矛盾でないかというお尋ねをしたわけでございますが、そのお答えがまだ十分でないように思いますから、きょうあらためてお答えをいただきたいと思うのであります。
  4. 細見卓

    細見政府委員 お答え申し上げます。  先生お話しになっておる数字負担増というのは一般還付特別還付を合わせた数字とのに間に、特別還付を合わせると、むしろ金額が大きくなるじゃないか、それはおかしいじゃないかというお話だろうと思いますが、本来、負担増というのは、国内炭を使うことによります負担増を、特別還付という形で負担増に応じて返そうというシステムになっておるのが特別還付で、一般還付は、その前の三十七年の改正におきまして、国内炭との価格差を埋めるために、重油に対する関税を引き上げましたときに、こうした大口消費者に対してはこのような負担をかけないようにしようということで、その当時におきましては、こうした大口消費者石炭の長期引き取り契約を取りきめておりましたので、そういう意味からこの一般還付をやりました。  したがいまして、これは石炭引き取りに伴う負担増というものとは直接はつながらない、たまたま両方合わせますとそうしたことは出てまいりますが、一般還付というのは、こうした大口消費者にこのときの関税の引き上げが及ばないという趣旨でできておるものでございますからいまのような数字になったわけです。  ただ、おっしゃいますことに八幡だとか富士とかのお話がございましたが、業界全般といたしますと、なおこの両方の還付を合わせましても、この四十年で申しまして負担増額の約七割くらいしか補てんできてないということになるわけですが、この際の基準にとりましたいろいろな基準のとり方によってこのように鉄鋼各社ごとアンバランスが出てくる、それが、今回石炭重油還付制度を廃止しまして特別会計に移した一つの大きな理由になっておることで、先生がおっしゃることも、個々の企業を見る限りそういうアンバランスは出てまいるわけであります。
  5. 平林剛

    平林委員 これはいま還付が、従来の計算によっていたしますと、価格差、つまり負担しておる負担増といいますか、それを越えて行なわれておるということを申し上げたわけですが、その反面、他の企業におきましては、従来の計算によりますと負担増がもっと多いところ、たとえば鋼管は三億八千五百六十一万八千円であったのに対し還付は九千五百万円と、こういう逆な矛盾もあるわけですね。また、同じように川鉄においても、従来の計算によりますと、負担増が二億六千百七十万八千円なのに還付は一億二千万円というふうに、半分以下にもならぬ、こういう企業もある。こういうことが、やはり私は企業間においていろいろな議論が出てきて従来のやり方を変えることになったのだと思うのですけれども、今回のやり方によるとこういう矛盾は出てこない、こういうことになるのでしょうか。
  6. 村松寿

    村松説明員 今回のやり方は、基本原則といたしまして、一定の基準量、これは昭和三十六年当時、以前に電力及び鉄鋼が引き取っておりました数字を土台にいたしまして、これからオーバーした分について、鉄につきましては——先生、先ほど鉄についても重油との価格差とおっしゃっておりますが、これは内外弱結炭価格差でございまして、電力の場合につきましては重油石炭価格差でございますが、鉄は内外価格差というふうに御理解いただきたいと思いますが、鉄にありましても、その基準量を越える分について内外弱結炭価格差電力につきましては重油石炭とのエネルギーの価格差、これをもとに価格につきまして算定をいたしますから、従来のような、幾ら負担増がありましても、重油消費量が少ない川鉄であるとか日本鋼管であるとか、その場合には先生おっしゃったような矛盾が生じてまいりましたが、今回の場合にはそれと無縁のものになりますから、そういう矛盾はなくなると思います。
  7. 平林剛

    平林委員 ただ、あなたは、石炭局のほうの資料を私いただいて見たのですが、従来でも輸入炭になるから差しつかえないと、こう言ったのですが、従来でも、輸入炭価格国内炭価格——電力の場合は重油との比較ですけれども鉄鋼の場合は、輸入炭国内炭比較を出しまして、その価格のトン数で積算をして負担増というのがはじき出される、それにもかかわらずいまのようにアンバランスがあったということに私は疑問を感じているんですよ。ですから、いまのお話は、電力の場合は重油とのあれであったが、鉄鋼は今度は内外炭でやるというけれども、従来も内外炭の試算で負担増額が出ておるのにかかわらず、いまのように還付額アンバランスになっておるのでどういうわけかということなんでして、これが内外炭負担価格差になりましても同じことになるんじゃないかということを私聞かしてもらいたいのですよ。あなたのほうから出された資料も、従来からやはりそういう計算でやっているのじゃないですか。
  8. 村松寿

    村松説明員 従来は、石油関税還付ということでございますから、各鉄鋼会社が使った重油量がなければ、それだけの額はどんなに負担が多くても返せないわけでございます。今回の場合は、重油をいかに使おうが使わなかろうが、自分の使った重油消費量と無縁に、負担増がそれだけ発生すれば、それに見合って特別会計から支出するということで、従来はそういう矛盾がございましたが、新しい制度になった場合にはそういう矛盾はなくなるという意味のことでございます。
  9. 平林剛

    平林委員 私は専門外のことだからあまり詳しくはわからぬけれども、どうもちょっとわかりません。わかりませんが、なお検討することにいたしまして、小さくなりますけれども、ちょっと聞きます。  この還付制度というのは、本年三月末が大体期限ということになったんじゃないでしょうか。
  10. 細見卓

    細見政府委員 そのとおりでございます。支払いだけは残るわけでございます。
  11. 平林剛

    平林委員 これもしろうと考えですけれども、三月末に適用期限自然消滅をしたわけでございますと、現在は五月でございますね。法案の成立がいつになりましょうか。五月一ぱいと仮定いたしましても、その間二ヵ月間ございますね。この二ヵ月間の取り扱いはどうなるんでしょうか。
  12. 細見卓

    細見政府委員 年度中に確定したものは、支払いだけは残りますが、それ以後のものはすべて新特別会計のほうへ吸収することになっております。
  13. 平林剛

    平林委員 そうすると、つまり二ヵ月間はそういう制度はないんだ、それから後に今度は特別会計ができましてあるけれども、その二ヵ月間だけは、石炭を使ってもらいましても、そういう還付制度はないというふうにみなすのでしょうか。それとも、ずっと継続して計算をし直して特別会計に入れる、こういうことになるんでしょうか。
  14. 細見卓

    細見政府委員 いま、あとでおっしゃいましたように、通算して新会計が引き継ぐわけです。
  15. 平林剛

    平林委員 この通算をするということにするというのは、どこかに規定か何かがあるんでしょうか。
  16. 細見卓

    細見政府委員 予算法のほうにございます。
  17. 平林剛

    平林委員 予算法にどういうふうになっていますか。
  18. 細見卓

    細見政府委員 石炭対策特別会計法案の附則第一項で「この法律は、公布の日から施行し、昭和四十二年度予算から適用する。」四十二年度からということで組んでございます。
  19. 平林剛

    平林委員 ちょっとそれは苦しいな。四十二年度から実施をするということ、四十二年度はすなわち四月一日から来年の三月三十一日、それでいいわけですか。
  20. 細見卓

    細見政府委員 歳入会計に入っておりますから……。
  21. 平林剛

    平林委員 いいでしょう。私はちょっとそこら辺が、この間の税法取り扱いの問題と同じように、とにかく相当金額になるものですから。六分の一にはなるわけですね。それをいまのような規定だけで継続します、こういうことはどうなんでしょうかね。私はちょっと疑問に思うのですけれども
  22. 細見卓

    細見政府委員 別途御審議願いました還付のほうをまとめてしまっておりますから、歳入だけは一般会計に入っておりまして、この特別会計法ができますと、四十二年度から適用するので、その特別会計にその歳入は移っていくということでございます。
  23. 平林剛

    平林委員 多少疑問は残りますけれども、まあ了解したわけじゃありません。  そこで私は、この石炭対策特別会計法案を審議している間に、その問題がどうも釈然としなくてお尋ねを続けてまいったのでありますけれども石炭対策というものは、どうも一種国策ですわな。国策として石炭対策というものをやるわけですね。ところが、大手の鉄鋼会社の純益、公表利益などを調べてみますと、八幡製鉄は四十一年度で約百二億七千二百万円、富士製鉄も六十七億七千四百万円ですか。これは世界の企業として雄飛をし、相当の利潤を上げておる。国策として石炭を使う場合には、こういう還付制度で総額では何十億円のお金がそこにいく。まあ石炭を使うてやるのだから、おれの会社は損しておるんだからあたりまえだといえば、これは議論としては成り立つと思うのですけれども、しかし、石炭を使うてやるのだ、こういう考え方で、価格差を至れり尽くせり計算をいたしまして、その還付をしていくという制度は、国民的立場から見ると、どうも企業モンローというのが強いのじゃないか、私はこういう見解を持つのでございます。石炭をお互いに使おうじゃないかという気持ちは、これはふろ屋さんだってそうだと思うのです。この際、国の政治で石炭産業を何とかせねばならぬということになれば、ふろ屋さんだって、石炭を使うてやろう、こういうときには、ほんとうはほかのものを使うよりは損をする場合もあるかもしれない。それじゃ価格差をやってもらいたいというような議論に発展しないかということになるわけでございますし、あるいは、政府としてときどき国産品愛用ということをやりますわな。国産品愛用ということになって、国産品を愛用すると、外国から買うたもののほうが安いけれども政府国産品を愛用しようということには、これは国策でもあるから大いに協力しよう、しかし、そうすると、それぞれ個人消費においてマイナス面がある、そいつはひとつ政府において、国産品愛用に協力しておるのだから、その協力費として幾らか銭をくれよ、こういうような思想が、私はこの石油関税還付制度の中にひそまれているのではないかと思うのですけれども、これは常識の問題なんでございまして、どういうふうにお考えになるでしょうか。
  24. 井上亮

    井上(亮)政府委員 電力業界鉄鋼業界につきましては、先生も御承知のように、最近の石炭需要確保見地から両業界が欲しない石炭を、政策需要と申しておりますが、あえて国策に協力していただくという線から、特に引き取りを半ば強制するような形で引き取っていただいておるわけでございます。一般産業、両業界以外の産業につきましては、これまた御承知のように、私どもとしましては、これは政策需要というような要請をしない、やはり経済の合理的な立場にまかせる以外にないというような見地から、御承知のように、従来石炭の使用につきましては重油ボイラー規制法というような法律までありまして、重油ボイラー規制法等によって、できるだけ石炭をたくさん使っていただくようにという規制をやってきたわけでありますが、この規制法も廃止いたしまして、今日では、一般産業あるいは暖厨房用炭等につきましては、完全に消費者自由選択ということにいたしておるわけであります。しかし、石炭の今日の状況におきまして、各需要部分が完全に消費者自由選択というようなことになりますと、今日、五千万トンの維持はおろか、四千万トンないし三千五百万トンもあぶないというようなことでございます。  したがいまして、資源産業である石炭産業を維持いたしますためには、どうしても需要確保に強いてこ入れをする必要があるというような意味から、特に電力鉄鋼につきましては、政府が直接介入いたしまして、増量引き取りを強く要請いたしておるわけでございます。  現在私どもが、この両業界——ただいま鉄鋼お話が出ておりますので、鉄のほうについて例をあげてみますと、鉄は本年度は千二十万トン程度の引き取りを要請いたしておるわけでございますが、そのうち六百五十万トンにつきましては、政府は何ら措置しない、つまり負担増対策を講じないという立場をとっております。しかし、鉄鋼業界に言わせますれば、この千二十万トンそのもの全量について負担増を講ずべきである。なぜなら、安い豪州炭等輸入が可能でありますので、それを入れますると、トン当たり千円近い価格差国内炭外国からの輸入炭との間にございますので、それだけコストダウンが可能になるというのが鉄鋼業界主張でございますが、しかし、政府といたしましては、少なくとも、従来昭和三十六年ころまで引き取っておった六百五十万トンの分については、やはり同じ国内産業として負担増対策なしで協力していただきたいということで、これについては負担増対策考えておりません。ただし、いやがる業界に対しまして政府政策としてお願いする六百五十万トンを上回る量につきまして、輸入炭価格との価格差負担増対策で補償するというような制度を設けました。損得をいえば、鉄鋼業界はそれでもまだ損だという議論が当然あり得ると思いますけれども、これはやはり鉄鋼業界基幹産業でもございますので、それは協力願いたいということで、今日そういうような制度をいたしておるわけでございます。
  25. 平林剛

    平林委員 私はそこにやはり一種企業モンローというのがあると思うのですよ。それは自由主義の時代ですから、損するのはいやだというのはだれでもわかると思いますけれども、それじゃ、石炭の一番の需要先であった電力なり鉄鋼がもう使わないということになったら、日本石炭産業はどうなりますか。石炭産業が崩壊したら、日本経済はどうなりますか。そういう場合に、鉄鋼電力のほうは、そういう経済界の混乱にはわれ関せずで、どこか天国のごときところに行っておられるのですか。日本企業日本経済全般一つの柱である鉄鋼なり電力が、全般的な見地からこれに協力する。国民だっていろいろな意味で協力しているわけでしょう。それに対して、三十六年の実績だけは差し引いてそれ以上に要請したというふうに、一つの限度は心得ていますが、しからば、それが応分のものであるかというと、私はここでやはり批判の声をあげておきたいと思うのです。  こういうことは、やはりもう少し社会的な面から、鉄鋼にしても、電力にしても、協力すべきは協力していく、こういう態度、考え方が必要なんでございまして、現行の還付制度が、それではそういう見地から考えてみても妥当であるかどうかについては、私は疑問を持っておるのです。このために、たとえば関税暫定措置法によりまして、石油関税還付制度がさらに行なわれていますね。たとえば肥料製造用揮発油にかかる関税還付ガス製造用揮発油にかかる関税還付特別ガス事業者に対しても同じようにその還付が行なわれ、石油化学原料用揮発油等にかかる関税還付もある。つまり、だんだんにこの思想は広がっていくのじゃないですか。私は、どのくらいそのたびに関税還付が行なわれているかという数字はちょっとわかりませんけれども、そういうふうに広がっていくのじゃないですか。  念のために、いま私が申し上げましたように、これと同じ思想で、それぞれの業界から要求をされておるために関税還付が行なわれておる金額というのは、どのくらいにのぼるのでしょうか、お尋ねをいたします。
  26. 細見卓

    細見政府委員 電力鉄鋼のような形で還付が行なわれておるものは、ほかには実はございません。これは負担増を補てんするというような形で、つまり、国内炭を引き取ることによる負担増という形のものを補てんするというのは、実はこの二つだけでありまして、残りのものはいずれも、関税原料になっておるものについてはかけないほうがいいというような関税全般のポリシーがございまして、この重油が直接の原料になります、いま御指摘がありました肥料石油化学とかいうような系統のもの、それからさらには農林漁業用A重油といったような直接生産に密着する原料であるとか、あるいは農林業のように、特に国の代表産業として保護すべきものの重要な原料というものを除いておるわけで、確かにおっしゃるように、こういうものに対する要求はございます。ございますが、その原料に限ってこういうものを適用しております。
  27. 平林剛

    平林委員 これは別にそのことは問題ではないかもわかりませんけれども電源開発株式会社出資金に今度二十億円が会計からいきますね。これは、石炭を使うておるわけだから出資金を出せ、こういう思想ですよ。私は、関税暫定措置法のやつは、多少原料のものであって、これも業界のほうの利益その他を考えてみて、妥当なる主張なりやいなやは検討しなければならぬ問題だと思いますが、はっきり言えることは、電源開発株式会社への出資金も、同じ思想で、銭を出してくれ、こういうふうに言うてきておるわけです。だから、みんな石炭を使うてやる、政府のほうから頼まれたから使うてやる、そのかわりこれを、こういう思想ですよ、ざっくばらんに言うと。むずかしいことを言うておるけれども、やはりそういうことです。  それならば、私はやはりこういう問題もあると思うのです。たとえばソーダ業界がいま国内産の塩を買うておりますね。これは国内塩業というものは一つの危機に瀕しておる。で、国内産の塩の価格というものは、まだ合理化が進んでおりませんから、かなり高いですね。外国から輸入する塩を買えばうんと安いですね。外国から輸入する塩を買えば企業はうんといいのだけれども国内産を使うてやる、これも国内塩業保護のために、政府からお願いもあるし、ある程度協力せにやならぬ、それじゃ、それについては価格差があるから、それを出してくれやというようなことになったらどうなりますか。これについてはどういうお考えを持っていますか。こういう問題が同じ考えとしてあると私は思うのですよ。国内塩業を保護するということも一つ国策であるということになりますと、輸入塩を買うたほうがうんと安いのだけれども、高い国内塩を買わなければならぬ、わしの会社は損しておる、鉄鋼電力と同じようにわがソーダ業界に対しても銭をよこせ、こういうことになる。——こんなきたないことは言わないでしょうけれども、同じ思想だと思うのですよ。これはどう思いますか。どう取り扱いますか。
  28. 細見卓

    細見政府委員 おっしゃるようなことで広げていきますと、およそ国内のより高いものを買ったら全部返してくれという議論に発展いたしかねないわけですが、そこは、そういうことを要請することは国全体としての政策で、石炭のように多数の雇用者をかかえて、国全体の産業としても大きな問題があり、社会問題としても大きい、こういう特別なものに限ってそういうことをいたしておりまして、塩業などにつきましても、将来それが大きな社会問題だということにでもなれば別でありましょうが、いまのところは、ほかにもたくさんそういう国内原料と国際原料との違いというものがございますので、その辺は線を引かしてもらっております。
  29. 平林剛

    平林委員 いまのところは大蔵省は私と同じ気持ちでがんばるでしょうけれども、やはり産業界の要望というものは同じ思想で出てくるのですよ。そこで、これは石炭だけは別だというようなことにいけるようなことになるのかどうかということを私は心配してここで少ししゃべっておこうという気持ちなんでございます。  同時に、大体、こういう関税の暫定措置法による石油関税還付も、それからこの石炭重油問題の還付も、還付制度が出てきた出発点というのは、石油の関税が四%か何か上がった、それを契機に審議会の植村あっせん案とかいうものが出て、結局今日の還付制度が拡大をしていったという経過を見ますと、関税が上がったこと、あるいはそういうものとの見合いにおいて一種還付——助成ですね。助成をするということは、これはガットとの関係では、一体批判というものは起きてこないのでしょうか。
  30. 細見卓

    細見政府委員 ガットの関係におきましては、これは直接の輸出産業助成というような形でなくて、本来原料品について関税をかけないということ自身が別にガットで批判される精神ではございませんので、下がったものを還付という形にはいたしておりますが、要は原料を無税にしているというわけですから、ガットとの間には問題はないと思います。  ただ、関税全体のあり方としましては、こういうふうに一たん関税をかけてそれを還付というよりも、むしろ、こうした原料というのは、わが国のように海外に原料を依存する国では関税をかけないほうがいいというのが、関税政策としてすらっと出てくる論でございます。  そういう意味では、政府が諮問機関にしております関税率審議会などにおきましては、重油関税について、この石炭のことを含めまして反対だという議論もかなりございましたが、石炭政策の重要性にかんがみまして特に五年間延長した。したがいまして、答申の中には、その期間においても、もしいろいろな音加味においていろいろな点を検討して、それだけの関税率を課しておく必要がないというようなときには、政府はすみやかに見直すべしというような意見もついておるわけでございます。
  31. 平林剛

    平林委員 それからもう一つ、この還付金について、石炭を使うてもらった、たいへん政府に御協力いただいてありがとうございます。それでは一定の率でもっておまえさんのほうに金を返してやりますというやり方と、もう一つは、そういうことをせないで一般会計に入れて、そして、そこから石炭のほうに入れていくというやり方とあると思うのですけれども、そういう制度については何か検討したことがございますか。
  32. 井上亮

    井上(亮)政府委員 本年度から関税還付制度は廃止いたしまして、新たに、先ほどお話しましたように、電力につきましては重油価格との価格差、鉄につきましては輸入炭価格国内炭価格との価格差というような点に着目しての負担増対策を講じたわけでございますが、これは関税率審議会からも先生と同じような御意見が出たわけでございますけれども、その際、私どもとしましては、まだ結論を出しておりませんけれども、できるだけ間接的な還付方式、つまり、石炭業界が恩恵を受けるわけでございますから、そのような方式でできるだけやってまいりたいというふうに考えております。
  33. 平林剛

    平林委員 私もやはり石炭対策なら石炭対策という形で、筋道をしっかりさせていったほうがいいんじゃないだろうかという見解を持っております。ぜひそういう方向で進めたほうが適当だろう。同時に、きょう私が申し上げました点は、今後の推移も見まして、世間常識より見てこういう制度が妥当なりやいなやということを私はもう少し研究してみて、注文したいと思っております。  きょうは、約束の時間もございますから、この程度で終えることにいたします。
  34. 内田常雄

    内田委員長 武藤山治君。
  35. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 昨日の連合審査から、石炭問題についてもかなり詳細に質疑応答がなされておりますので、約束の短い時間の範囲内で、特に通産省にお尋ねをしてみたいと思います。  今回の法案が出るまでの間にはかなり長い経過があって、石炭に対する合理化、安定化、雇用の安定等、多くの目標を達成するために、三回にわたって審議会や調査団の答申がなされたわけでありますが、私、全く石炭のない県の出身なものですから、石炭のことはよくわかりません。ただ、国民経済的な大きな視野に立って、石炭に対して、通産省は大きな青写真は一体どういうものを持っておって、何年後にはどういう姿に石炭が置かれるのか。同時に、石炭重油との競合関係というものが将来どうなっていくのか、もう財政的援助をしてもどうにもならぬという時点は、一体いつごろ想定できるのか、いろいろな問題があると思うのでございます。そういう問題を頭に置きながら、三十分しか時間がございませんから、具体的なことを二、三お尋ねをいたします。  いま石炭企業というものは全国で何社あるのですか。同時に、石炭を掘っている山が何ヵ所ぐらいあるのですか。企業数とその個所をお知らせいただきたい。
  36. 井上亮

    井上(亮)政府委員 会社といたしましては、いわゆる通称大手と申しておりますが、大手の会社が今日十七社ございます。それから中小につきましては、いろいろ定義がございまして、水洗炭業者まで入れますと相当にありますが、一般的に石炭の生産業者と目される企業が今日百五十くらいございます。  なぜラウンドで申したかと申しますと、ボタをつくって売る業者もありますし、それから露天掘りでやっているものもあり、いろいろな企業がございますから、少しその辺はぼけておりますが、その程度でございます。  なおもう一つ、この数について注釈を加えさせていただきますと、年々二百万トンから四百万トン程度の閉山が行なわれてきております。最盛期には年間に四百万トンをこえる閉山がございます。少ないときでも二百万トン台というようなことで、本年度は三百三十七万トンの閉山というような予定が見込まれておりまして、したがいまして、数の点もその時点時点でもう少しずつ縮小しているというようなことでございますが、今日ただいまの時点では、大体事業所といたしましてはその程度が考えられます。  それからなお、大手十七社と申しましたが、十七社の中の山の数は大体四十八、九でございます。
  37. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、通産省の見方では、日本のいまの経済性というものに中心を置いた場合には、これだげの数は多いと思うのか、適正なのか。多いと思えば、これは何年間でどのくらいに減らしたら最も安定的な水準になるのか、その辺はどういうめどを置いておるわけですか。
  38. 井上亮

    井上(亮)政府委員 私は、石炭鉱業の性格からしますと、数が多いとは考えておりません。たとえば一般産業産業政策等では、むしろ数が多い場合には集中合併をして能率を高めるというような考え方が一般的にあるわけでございますが、石炭鉱業の場合には、資源のあります地点に作業所があるわけでございまして、それが非常に離れておる場合とかというような場合に、たとえば選炭をいたします場合にも、選炭場を共通に使うというメリットはございません。あるいは輸送につきましても、繰り込みを共同施設でやるというメリットも、非常に離れておる場合にはございません。したがいまして、そういう資源の賦存状態によっての経営でございますので、一般産業のように一ヵ所に集約して機械化して大規模生産でやるというわけにはまいりません。したがいまして、そういう意味合理化というのは、そう強くは期待できません。  しかし石炭鉱業につきましては、それと同じような意味合いでは、鉱区調整という問題がございます。これは非常に広大な地域にわたる鉱区を持っておる企業もあり、それに隣接する企業もあるといいます場合には、その坑口の位置、形状等によりましては、場合によって、その鉱区調整をすれば、さらに能率的な、合理的な生産が可能だというような場合もございますので、そういう場合にはこれは法律でも相当強くこの仲裁裁定ができるような仕組みになっておりまして、私どもその線に沿って相当な鉱区調整を今日までやってまいっております。そういう意味合理化はありますが、単純な合併をすれば合理化するというような形にならないのが、この産業のある意味では悩みでもございますけれども、そういうのが実態でございます。企業数としてはそのように考えております。ただ、しかし、見通しとしましては、先ほども申しましたように、今後もやはり終閉山という問題、老朽炭鉱の閉山という問題は、資源産業の常といたしまして、これはやむなく起こってまいりますので、数としてはやはりもう少し減っていく見通しではないかというふうに考えております。
  39. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、この大手十七社のうちの公表黒字の会社数、それから中小百五十のうち黒字と計算されている企業、これはどのくらいになりますか。
  40. 井上亮

    井上(亮)政府委員 大手十七社の中で黒字を計上いたしておりますのは、兼業関係の企業で二社ございます。それから、いわば石炭専業と目される企業で同じく二社ございます。合計四社程度が今日黒字でございまして、あとは全部相当なる赤字でございます。  それから中小炭鉱につきましては、これは現在ただいま国会にお願いしております再建整備法との関係で、中小炭鉱についてのいろいろ長期の計画の検討会を連日やっておりますけれども、最近の姿では、少なくとも半分以上が赤字ではないかというふうに考えております。
  41. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 黒字の兼業二、専業二の四社の出炭量というのは大体どの程度になるわけですか。黒字の会社だけの出炭量というのはどのくらいになるわけですか。
  42. 井上亮

    井上(亮)政府委員 四社とも、石炭企業としては特に巨大企業ではございません。名前をあげますと、北海道の太平洋炭礦、九州の松島炭鉱、それから兼業会社としては日鐵鉱業と宇部興産ということですが、兼業会社はいずれも石炭部門では赤字でございます。ただ兼業なるがゆえに会社として黒字だというのが実態でございます。出炭トン数としましては七百万トンぐらいになろうと思います。
  43. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、これは企業採算という見地から、資本主義の自由競争へ放置しておいて採算のとれる石炭産業というようなものは、どう検討してみても道はない、通産省ではもうこういう結論ですか。財政援助とか、いろいろ手だてをしなければ、企業としてはとてもペイしない、こういう実情、あるいは、こういう点をこう検討すればペイするだろう、どういうふうに現在検討された結果は判断したらいいでしょうか。
  44. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のように、大多数の企業が赤字であるわけでございますが、私どもとしましては、この赤字を黒字に転化できないとは私個人では思っておりません。方法が全然ないわけではないというふうに考えております。しかし、それが全部黒字に転化できるとは私思いませんけれども、ただいま申しましたように、十七社のうち四社しか今日黒字企業がない、しかも、四社のうち二社は石炭部門では赤である、したがいまして、ほとんど大部分のものが赤字だということになるわけです。しかし、これは石炭産業はそこがなかなか常識で判断できない点があるわけです。これは私ども長いこと経験しておるわけですが、外国でもそういう例があるそうでございますが、変な言い方になりますが、労使がその気になってがんばったところは、いままでトン当たり千円ぐらいの赤字があっても、それを一、二年のうちに黒字に転化さしたというような実例がときどきあるわけでございます。今日でもそういう山が現存しております。この辺はふしぎといえばふしぎでございますけれども、しかし、努力した結果そういうふうになった、そのかわり、一方ではそれは労働者の犠牲の上に黒字になったという言い方もされますけれども、しかし、そういう実例がないわけではない。しかし概括的に申しますと、何と申しましても、資源産業は年々坑内の自然条件が悪化していくわけですから、したがいまして、今日まで相当能率の向上はしてまいりましたけれども、やはり能率の向上にも資源産業の常としての限界があろうかと思います。そういうような点からしますと、その他物価、賃金の上昇の問題もありましょうし、私は、やはり石炭産業の将来という見通しからしますと、決してなまやさしいものとは思いません。さっき言いましたような例はございますけれども、やはり相当むずかしい事態であるというふうに考えております。  そこで、政府としましては、やはり経済のセキュリティーと申しますか、あるいは雇用問題、あるいは地域社会との関連の問題がございますので、少なくとも五千万トン程度のものは維持すべきではないかという政府の基本的考え方のもとに、少なくともその程度は維持できるような助成策を講ずる。私ども、今度の助成策という、特に御審議いただいております特別会計というものがことしからできまして、石炭対策についての財源的なめどはついたわけでございます。私は、この制度の運用によりまして、昨日も大臣の御答弁がありましたけれども、大多数の企業をとにかく安定させていくということは可能ではないかというふうに考えております。
  45. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 七年前に私も多賀谷真稔さんと、何とかプール資金をつくって、石炭政策転換闘争をひとつうまくまとめたいということの相談を受けて、関税の問題をプールしたらいいじゃないか、こういうようなことを相談をした覚えがあるわけです。当時の雇用問題という視点からそういう意見を述べたわけです。しかし私は、原子力発電も、アメリカでは一九七〇年代になれば経済性が何とか償いがつく、実用化される、こういうようなことをジョンソンも演説をぶったりしている。あるいは、重油価格というものがそう騰貴しない、逆に値下がりの傾向にあった、こういうようなものと競合するから、この価格差を何とか埋め合わせて石炭を維持しなければならないという考え方自体が、これはもう根本的に検討し直す段階にきたのではないか。こういうような個人的な見解——これは党の政策ではありませんが、私の個人的な考えからどうもそういう気がしてきてならない。  そこで、雇用問題さえ、労働問題さえスムーズに移動が可能であり、これら労働者の救済問題さえきちっとできるならば、五千万トンにこだわる必要はないのではないだろうか。また安い燃料、たとえばデンマークのように全く国内資源のない国で、しかも燃料が極端に安い、こういうような国際分業の恩恵というものをストレートに受けている国を考えてみると、だんだん奥深く穴を掘って掘り出さなければならぬという石炭、うんとコストの高い石炭を、国内資源だからといって経済性を無視して掘り出すということが、一体、長い国民経済的な視野に立った場合に、これはいいことなんだろうかという疑問を持たざるを得ない。その辺の点について通産省の一あなた個人の見解でもいいですから、率直にひとつお述べいただきたいと思う。
  46. 井上亮

    井上(亮)政府委員 しごくごもっともな御意見でございまして、私ども石炭対策昭和三十七年以来——三十七年に第一次石炭鉱業調査団が発足しましたし、三十九年には第二次石炭鉱業調査団、それから今回の石炭対策の抜本対策というための審議等を経験いたしまして、そういった、先生ただいまおっしゃいましたような意見も相当多数ございました。現にそういう意見もあるわけでございますが、しかし、結論的には、そういった御意見にもかかわらず、やはり先生も産炭地の実情を御存じだと思いますけれども経済的な角度の問題はさておきましても、やはり雇用問題とか、あるいは地域社会、地域経済石炭産業は非常に密接不可分に結びついておりますので、たとえば小さな山が一山閉山いたしましてもその町の七割の財政収入を失うとかいうような壊滅的な打撃を受けるわけでございまして、そういった点も配慮しなければならぬ、あるいは筑豊等におきましては、今日文教政策にまで大きな問題を惹起しているというような現状でもございますし、それからなお経済的な問題につきましては、重油との関係では先生のような御議論も成り立ちますけれども、国内の原料炭につきましては、日本の鉄綱業の将来の成長、発展のためにはなくてはならない資源でございます。それから一般炭につきましても、これは諸外国でもやはりセキュリティーという問題を配慮して、西ドイツ等におきましては自由企業でやっておりますが、電力の使います油につきましてはあえて法律規制して石炭を使わしている。しかもキロリットル当たり二千円以上の重油消費税を課して石炭価格との均衡をはかるというような、相当強い保護策をとっておるわけであります。  日本におきましても、ただいま申しましたような見地から、少なくとも五千万トン程度のものは、日本のそういった石炭資源を保持するという見地からも、これは経済的にはセキュリティーの問題になろうかと思いますけれども、ただ、原料炭については、私は単なるセキュリティーではなくて、やはり産業発展のために必要な基礎物資だという性格もございますので、私どもとしては、少なくとも五千万トン程度のものは維持してしかるべきではないか、こういうふうに考えております。
  47. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは議論になりますからやめますが、しからば、その五千万トンを維持するために五百十九億円のお金を年々つぎ込んでいく。旧債務が一千億円といわれているが、厳密には幾らあるか答えていただきたいのでありますが、旧債務を返済するためにこれだけのペースでかりに年々出したとしても、とどのつまりは一体どうなるんだろうか。その間にはおそらく賃上げも想定しなければならない、当然雇用条件というものは他の産業並みに上げていかなければならない、こういう問題を考えあわせますと、将来なかなか容易ならぬことになるんじゃなかろうか。その辺の青写真はどのように見通されておるのか。雇用の条件、ベースアップをどう見て、五千万トン掘る場合に財政支出はどの程度までふえていくだろうか。これをここ三、四年、五年までくらいの経緯は大体どう見通されておるのか、ちょっと明らかにしていただきたい。
  48. 井上亮

    井上(亮)政府委員 今後の石炭産業の歩みと申しますか、計画の見通しになるわけでありますが、今日では、大体大手につきまして見ますと、平均的に見て純損益でトン当たり五百円余りの赤字を計上いたしておるわけでございますが、中には六百円、七百円くらいの赤字の山もございますが、今度の石炭特別会計を裏打ちとする抜本対策を実施いたしてまいりますと、大体大多数の企業——全部とは申しませんが、大多数の企業につきましては、少なくとも昭和四十五年度までには大体やっていける形になるのではないかというふうに想定をしております。もちろん、助成策を関税収入に見合って若干ふやす場合もありますけれども、そういうことを前提にいたしまして、関税収入の範囲内で考えましてもその程度の姿にはなるんじゃないか。やはり今後石炭産業が生きていきますためには、何といいましても、やるべき鉱区調整は思い切ってやらせるというようなこと、それから坑内の近代化といいますか、掘進の強化、こういうような点はやはり相当鋭角的に進めなければいかぬというふうに考えております。そういった合理化施策を——今日の状況では近代化、合理化というものは単に首切りではございません。いわゆるそういった近代化施策、機械化対策、こういうものを進めていくことによってなお相当の能率の向上が期待される。今日大体四十二、三トンくらいの平均能率でございますが、四十五年度には月一人当たりの能率が大体五十五トン程度まで上昇する見通しでございます。そういうことによりまして、政府の助成策と相まって大体やっていける姿になるのではないか。賃金につきましては、当然今後上昇をその中に織り込んでおるわけでございますが、しかし、これは政府がきめるというよりも、労使できめるたてまえをとっておりますので、これは年々どの程度のベースアップが行なわれるかということは私どもにはわからないことでございますけれども、過去のいろいろなきまりました例等を参考にして、私どもとしては、そういう見通し計画の中の一つの試算としては、大体七%アップ程度を、これは政府の意思ではなく試算として一応見ておりますが、そういった前提で考えまして、大体、助成策を前提にすれば大多数の企業が一応やっていける姿にはなるのではないかというふうに考えております。
  49. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いままで、三十四年十二月の審議会、三十七年十月の調査団答申、三十九年十二月の調査団答申、この三回の答申の当時の見通しというものは、完全に現実はくずれてきている。たとえばベースアップ率を、物価騰貴を一%ぐらいに押さえてみたり、そういう関係からやはり労使間のスムーズな交渉というものに妥結がいかなかった。みな予想よりも上げざるを得ない。特に経済政策全般のはね返りで、物価騰貴やあるいは資材の値上がりや、そういうような問題が計画をいつもくずす大きな要因になっている。したがって、そういう事態になると、また赤字がかさんで、財政支出というものはふえざるを得なくなるのではないか。  そこで、大蔵省にちょっとお尋ねしますが、現在の関税収入四百七十五億円が四十二年度ベースのこの特別会計へ入る金額でございますが、これはさらに関税率を引き上げて、もっと増徴をはかって石炭のほうへ回すという余裕は、見通しとして持てるのかどうか。これから二年先、五年先ぐらいまでの重油価格というものを想定をした際に、これはもっと収入をふやして石炭のほうへ回すという可能性というものはあるのかないのか、その辺はどうなりますか。
  50. 植松守雄

    ○植松説明員 原油に対して関税をかけております国は、アメリカを除けば先進国では日本だけでございます。そこで、エネルギーコストについての関税負担というものは、全体の産業の基本的なコストに関連がありますから、非常に大きな抵抗がございます。そこで石炭対策のためにやむを得ず一二%相当の増税をやっておるわけであります。基本は一〇%相当でございます。それも一年刻みに期限が参りまして、そのつど関税率審議会で審議を受けて、延ばすのに非常に苦慮しておるような状況でございまして、やはりその方面の関係がございますから、これをさらに引き上げるということは相当むずかしい状況でございます。それに、日本経済の発展に伴いまして、石油の使用量そのものは相当顕著に伸長してまいりますから、現在の税収でも年々五十億円ないし六十億円近くの増収が生ずるという予定でございます。
  51. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう一つ通産省にお尋ねしておきますが、労働者の移動状況を見ましても、敗戦直後、職がなくて、労働集約的な石炭産業にずいぶん力を入れ、特に傾斜生産ということで、水長さんなどはふんどし大臣と言われるほど熱を入れて、炭鉱に大いに力を入れた。だから人間がばあっと炭鉱に集まった。当時、おそらく二十八万一千人くらいおったのですかな、敗戦直後、二十年から二十一年ごろの労働者数は。それが現在は十万七千人に四十年度ベースでは減っておる。五年間に十三万七千人の労働者が転出をした。こういう傾向は、こういう財政的援助をすることによって、足どめになる率はどのくらいになって、今後転出という傾向は、この特別会計ができることによってストップされるのか。それともまだまだ減るという傾向に発展するのか。減っていった場合に、今度は労働力が足らなくなって、五千万トンはとても出せないという状況が出てきはしないか。そこらの労働力の移動問題と出炭目標との関係はどういうぐあいになるか、そこらの見通しをひとつ伺いたい。
  52. 井上亮

    井上(亮)政府委員 昭和三十六年くらいにおきまする炭鉱従業員の数は、大体先生のおっしゃいました二十一万人程度でございます。もうちょっとさかのぼって昭和三十三、四年ごろには二十八万人程度でございます。特に炭鉱の合理化政策が推進されましたのは、御承知のように第一次調査団の前後からでございます。昭和三十七年くらいから相当思い切った合理化政策が進められてまいりました。今日では御指摘のように十万人程度の労働力に相なっております。今日の段階は、率直に申しまして、過剰労務の姿はほとんどございません。例外的に、ある山においてさらに縮小しなければならぬというような必要があったときに、出炭を縮小しなければならないというときに過剰の問題は起こりますけれども、概括的に申しますと過剰労務の姿はございません。むしろ、今後出ます離職者というものは、閉山あるいは出炭を縮小せざるを得ないというようなことに伴って出てくるケースが非常に多いというふうに思います。なぜそうなるかと言いますと、結局、一面に相当大きな閉山が行なわれております。ですから、残る山については増産によってコストを下げていくという余地があるわけでございます。したがいまして、今後生きていく山につきましては、そういった意味で労務者は足らないことこそあれ、余ることはないというような事情でございます。  なお、定着の問題でございますが、御指摘のように、今日炭鉱には、いやなことばでございますが、離山ムードという問題がありまして、これは第一次答申時代には全然なかったことでございます。当時は、むしろ山にいたい、石炭を掘りたいということばかりでございましたが、ここ二、三年来離山ムードということがありまして、炭鉱に見切りをつけて他産業に出たいという希望が相当強くなっている。これにはいろいろ理由もあろうと思います。たとえば炭鉱の将来性、景気の実情等からそういう問題が起こったりいろいろすると思いますが、したがいまして、私どもとしましては、今日むしろ定着政策、これはやはり大きな柱として推進せざるを得ないというふうに考えておりまして、御承知のように炭鉱につきましての特別年金制度等も近く国会で御審議いただくと思いますが、ことしからつくって、できるだけ炭鉱を魅力あるものにしてまいりたいというふうな政策を進めていきたいと思いますが、そういうようなことをしまして、少なくともビルト山については、弱い、近く閉山するかもしれない山よりは定着性が強いわけでありますから、したがいまして、そういうような政策を進めることによって、一応出炭につきましても、私どもが計画している程度のものは確保できるのじゃないかというふうに考えておりますが、いずれにしましても、できるだけ定着政策を強化するという面の施策を進めてまいりたいというふうに考えております。
  53. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 最後に、通産省に望んでおきます。特別会計は大蔵、通産、労働三大臣の監督下で運用されると思うのでありますが、直接企業に対する監督指導権は、一番大きいのは通産省でございます。これだけの金を一企業にそれぞれくれるわけですからね。早いことばで言えばくれるわけでありますから、これだけの国家的な経済的効用というものも十分ひとつ考え、つまみ食いなどが起こらないように、これは十分通産省の指導よろしきを得なければ、かえって国家管理にしたほうがいい。これだけの金を出すからには、もう国家管理だ。純粋な資本主義の経済体制では考えられない施策が今回画期的に行なわれる。これはもう資本主義なんというベースのものではないと思うのであります。そういう点を通産省としては十分心得て、国民のほんとうに期待するこういう膨大な予算が非難を受けないように十分御指導を期待をするわけでありますが、その自信のほどを、こういう方法で、こういう形で指導するんだ、賃上げのときにはこれこれこういうぐあいで、せっかくの計画が破綻しないようにするんだ、近代化や安定化のためにはわれわれはこういう指導方針を立てておるんだ、そういうものがございましたら、最後にちょっとお示しをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  54. 井上亮

    井上(亮)政府委員 先生御指摘されましたように、これだけの予算を計上していただいてこの産業を守っていくわけですが、この予算は、単に全額石炭産業にいくものではなくて、同時に、離職者対策、あるいは産炭地振興、鉱害対策というような予算も含まれておるわけでございますが、いずれにしても、私企業に与えられます国の助成としては最高のものであるという認識を持っております。御指摘のように、今後これだけの助成を受けまして、これは政府としてはもちろんのことでございますが、関係業界、あるいは関係者等も、国民の血税でございますから、これについても真摯な態度でこの金を有効に使っていかなければならぬというふうに考えております。  なお私どもは、これだけの予算を運用するに際しまして、特に会社企業に対しましては、従来でも石炭につきましては、石炭鉱業経理規制臨時措置法というものを数年前につくりまして、経理の監督等をいたしておりますが、さらに今後の再建整備法等の関係、さらに経理規制を強化いたしまして、また私どもの局の中にも監査室というものをことしから設けまして、十分な経理監督というもの、監査体制を強化していきたいというふうに考えております。
  55. 内田常雄

    内田委員長 次は田中昭二君。
  56. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 石炭対策特別会計でございますが、私も福岡県におりまして、現在斜陽産業といわれております石炭事業につきましては、そのほうの特別委員会もございまして、同僚の大橋議員からもいろいろお願いもしております。  私のほうからは、抽象的な問題になると思いますが、一応特別会計につきまして、その特別会計法の設置につきまする石炭対策に対する政府の経理を見てみますと、このたびは一般会計より分離したということになっております。その分離した目的、並びに基本的方向につきまして、大蔵、通産、両省の所信をお伺いしたい、このように思うものであります。
  57. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 今回、石炭対策特別会計をつくりまして、石炭対策の財源の全貌を明らかにし、かつ、財源と政策とを明確に結びつけていくという措置をとりましたのは、従来からも石炭対策につきましては重油関税というものを中心にやってまいりましたけれども、今回、いま御指摘になりましたように、画期的な石炭対策をやる以上は、石炭合理化審議会の答申にもさような趣旨もございますし、従来以上に、さらに明確に経理をする必要があるのではないか、それでこの会計を設置することにしたわけでございます。
  58. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま大蔵省が答弁されたとおりでございますが、従来でも、石炭対策については原重油関税収入を見合いにして、年々予算をふやしていただいてまいったわけでございますが、今回抜本策を実施する機会に、その点をさらに明確にしていただいた次第でございます。
  59. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 その特別会計期限でございますが、「昭和四十六年三月三十一日までに廃止する」とありますが、その理由は何でしょうか。また、それまでにこの石炭鉱業が自立の見込みがあると見ておるのか。また、今国会におきまして同じく再建整備臨時措置法案がございますが、この期限昭和六十年三月三十一日であります。そうしますと石炭対策特別会計法案及びこの再建整備臨時措置法案とは重複するところもあるかと思いますが、一方では昭和四十六年の期限でありながら、他方では六十年とあるわけでございます。これが矛盾しないかどうか、これにつきましてお尋ねするわけでございます。
  60. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 ただいま申し上げましたように、特別会計の設置につきましては、石炭対策政策の全貌というものを特別会計ではっきりさし、かつ、財源との結びつきというものを明確にしたいという趣旨でつくったわけでございます。そこで、合理化審議会のほうの答申にも、石炭鉱業合理化臨時措置法なり、あるいは先ほどいろいろ御議論がありました、関税の暫定措置法なり、あるいは労働省のほうでやっておられます炭鉱離職者臨時措置法等につきましても、すべてこの五年間にやりまして、そして石炭鉱業の赤字を解消し、自立をはかるということで法案ができておるわけでございます。ただ、先生のおっしゃいました再建整備のほうにつきましては、これは会社の借金を肩がわりするわけでございますので年数が長うございます。  したがいまして、いま申しましたような基本的な法律につきましては、すべて四十五年度でとにかく自立をはかるということを目途につくるということでございますから、特別会計も四十五年を目途として、四十五年には廃止をしたいというつもりでございますが、再建整備のほうの残存の債務につきましては、これはもし廃止いたしましたときには、一般会計から出していくという形に相なるかと思います。
  61. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまのおことばを返すようでございますが、自立の見込みが問題でございまして、そのために、そういう見込みだけで会計をそういうふうに新しくつくるということにつきましては、もう少し具体的なものを御説明願いたいと思います。
  62. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 ただいま申し上げました再建整備以外のいろいろな施策でございますが、これは特別会計法にいろいろ書いてございますように、新しく肩がわりをやりますが、安定補給金を出したり、あるいは離職者に対します措置を講じたり、いろいろなことをやるわけでございますが、そういう基本的な政策全体が、もし、先ほどお話のありましたように、われわれの期待どおり、運用よろしきを得るならば、四十五年には全部できるように、まあ自立ということばがどういう程度を自立というのかということにつきましてはいろいろ御議論があるかと思いますが、少なくとも政府としては自立できるのではないかということで、答申を受け、関係の法案を全部整備しておるわけでございますから、そういう意味合いで、その関係のものについては、これを受ける側としての特別会計法案も五年としたわけであります。また、いま申しましたように、その対策の中の一部、なお年数が長く続いていくものについては、これはあとで一般会計で出していくわけでございます。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  63. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 関係三省のそのことについての実際の指導、並びに完全履行につきまして御努力をお願いしたいと思います。  次に、法案の第一条第二項第一号に「石炭鉱業合理化臨時措置法、石炭鉱業再建整備臨時措置法その他の法令」こうなっておりますが、「その他の法令」というものは何を意味するものか、具体的に教えていただきたいと思います。
  64. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 現在のところは、その他の法令と申しますのは、電源開発会社に出資を規定いたしております電源開発促進法というのがございます。しかし、これは今後もいろいろと対策を講じていく場合に、あるいは新しい法令が出るかもわかりませんので、そういうものも含めてその他の法令という規定をしたわけでございます。
  65. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それでは、現在時点におきましてはその法案だけという趣旨にとっていいわけでございますね。
  66. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 さようでございます。
  67. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、この会計予算の概要を見てみまして、まず歳入の問題からお尋ねしたいと思いますが、この特別会計歳入不足については、それを埋めるために一般会計から必要な金額を繰り入れることができるというようになっておるようでございます。しかし、この繰り入れ金については後日一般会計または国に返さなければいけない、このように思うわけですが、そこで、原油関税収入は毎年相当増額で、五十億円くらいの増加を示しております。もしこれが事情によりましてふえない、減ったというような状況になりました場合にどうするかという問題、また、一般会計から繰り入れるのが、この法案期限であります四十六年に廃棄となった場合に、その後はどのような処置になるのかという点でございます。現在年々ふえておりますが、五年間という期限考えますと、初年度に当たる四十二年度が一番重要な時期と思っておりますが、初年度においてはもう少し大幅な予算を組まなければ、いままでの各委員の質問なり答弁なりを聞いておりましても、このような額で現在の石炭産業に対する心ある援助になるかどうか。そういう問題につきましてお考えお尋ねしたいと思います。
  68. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 まず、この会計が基本といたしております関税収入が所要の対策を満たせない場合にはどうするかということでございますが、これは附則の六項並びに七項をごらんいただきますとおわかりになりますように、一般会計のほうからその会計に繰り入れることができるというふうにいたしておりまして、さらに繰り入れしたものにつきましては、後日この会計から繰り入れ金に相当する金額を、予算で定めるところによりまして一般会計に繰り入れなければならない、こういうふうにいたしておるわけでございます。したがいまして、今後の関税収入は、先ほどお話がございましたように、五、六十億円という幅でふえると思いますが、それがふえなかった場合、あるいは実際に行ないます石炭対策自体が非常に大きくなってこの収入ではまかなえなくなったような場合には、一般会計から繰り入れまして補てんをしていくという形をとるわけでございます。とりますが、その繰り入れた金については、この会計から一般会計に返していただく、しかし、それはこの会計に余裕ができたときに返してもらう、こういうことになるわけでございます。  この法案をつくりましたときのわれわれの考え方は、全体として石炭対策関税収入というものが長期的と申しますか、この五年間においては大体収支のバランスがとれることを前提にいたしましてかような法案をつくりましたので、先ほど先生がおっしゃいましたように、五年内には一般会計に返せないというような事態は起きないかと思いますが、もしそういう事態が起きた場合には、この規定でいけば当然この会計から返さなければならぬわけですけれども、それは返せないという事態になったときに考えていくということで、見通しとしてはそういうことにはならないだろう、かように考えております。
  69. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、歳出の面に入りますが、合理化安定対策費として大体三百七十六億円並びに鉱害対策費として六十四億円、産炭地域振興対策費として三十億円、炭鉱離職者援護対策費として五十億円計上されておりますが、これで、現在までの石炭需要の急増並びに貯炭の急増等を考えてみますと、石炭界の情勢の悪化を防ぎ、石炭産業界の早急なる立ち直りを期待することはできないのではないか、このように考えるのですが、いかがでしょうか。
  70. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のように、石炭鉱業はいま非常に苦境にあることは事実でございます。しかし、その苦境克服策といたしましては、私ども、ことしから各企業ごとに再建整備計画をつくっていただくというような措置をいま法案審議と併行して努力をやっております。そういうことによりまして、できるだけ計画的に今後やっていけるような姿をつくりたい。予算の問題も必要でございますけれども、金融問題が石炭産業としては大きな問題としてほかにあるわけでございます。本年度は、石炭鉱業におきます財政投融資のうち、開銀からは百十億円の融資を仰ぐ予定になっておりますが、なお大蔵当局との話し合いで、秋口になりまして再建計画なんかが出そろいまして、なおこの金では足りないということになった場合には補正に応じていただけるというような約束もあるわけでございます。なお、これだけの助成を国がするのでございますから、市中銀行にも相当程度の協力をお願いしたいと考えておりますので、予算と、ただいま申しましたような金融対策、両面相まって、苦しいことは先生承知のとおり事実でございますが、乗り切ってまいりたいと考えます。
  71. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 鉱害の問題に移りますが、将来鉱害対策ということが大きな課題になってくると思います。それに対する関係官庁の御意見をお伺いしたい。
  72. 井上亮

    井上(亮)政府委員 石炭鉱業には、御指摘のように鉱害というむずかしい問題があるわけでございます。今日残存鉱害が六百億ともいわれておりますし、あるいはそのうち安定鉱害が五百億程度ともいわれておるわけでございますが、それらの今日ただいまある安定鉱害につきましては、できるだけ早く復旧いたしたいというふうに考えておりまして、これをできるだけ計画的に処理していくようにしたいと考えまして、本年度石炭予算の中では鉱害に相当多額の予算をつけたわけでございます。六十億円、これは復旧ベースにしますと年間で七十八億円程度の復旧ベースになろうかと思いますが、予算をつけたわけでございまして、今後ともそういった努力を続けてまいりたい。そのほか有資力の企業につきましては、鉱害基金から有資力の鉱業権者に金を貸しまして復旧ができやすいような制度もつくっております。そういった制度の運用と相まって、鉱害復旧に努力いたしたいと考えております。
  73. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 その計画の努力でございますが、努力はいたしましても、なかなか計画はそのようにいかないものでございますし、特に鉱害につきましてはそういう要素を含んでおります。御承知のとおり、年々二、三十億円の鉱害の発生ということも聞いておりますし、いまの六百億円に対して七、八十億円の処理ということにつきましては不安でございます。今後の計画があるとするならば、それは何年を目標にして、どのように具体化されていくのか、もう一つお伺いしたいと思うのです。
  74. 井上亮

    井上(亮)政府委員 いま特に何年ということもございません。ございませんが、一応やはり長期の見通しを立てますときには、五年計画というのが通常でございますので、できるだけそういった中で、まだ未安定の鉱害もありますから、安定した鉱害であって緊急を要するもののうちから逐次計画に復申してまいりたいというふうに考えております。
  75. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまの鉱害の対策については、はっきりした目標はないということになっておりますが、この特別会計におきましても、一応五年、四十六年というふうになっておりますが、その後、鉱害というものは閉山後にも起こる問題とも思いますし、そのようなものに対しましてはどのような計画なり構想があるかをお伺いしたいと思います。
  76. 井上亮

    井上(亮)政府委員 鉱害予算と申しますか、石炭予算につきましては、私どもは四十五年度一ぱいで石炭予算がなくなるとは思っておりません。やはりそのあとにおきましても、当然鉱害復旧の問題が起こってまいります。特に、先ほどお答えいたしましたのは、今日現在の安定鉱害の復旧、これをできるだけ五ヵ年等というような計画的な処理をしてまいりたいということを申し上げたわけでございまして、今後掘っていく炭につきましても、今後はいままでのように鉱害が非常に多くなるとは思いません。海底炭鉱の出炭がふえたり、北海道地区の出炭がふえたりしてまいりますので、鉱害自体は従来よりも減ってまいるわけでございます。特にふえるわけではありませんが、それにいたしましても、年々今後あらたな鉱害問題があるわけでございますから、そうなりますと、その安定を待って復旧するということになりますと、四十六年度以降においても鉱害復旧の問題はあり得るわけでございますから、これにつきましては、特別会計がその時点であれば特別会計から見ていただきますし、なければ一般会計から必要の予算を出していただくようにして復旧に努力していきたいというふうに考えております。
  77. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 最後になりましたが、これはやはり鉱害の問題につきましても、いろいろなほかの面につきましても、いままで農林省、通産省、労働省、建設省と、各省がそれぞれの立場で管理をなされておったわけでございますが、今後予算の折衝並びにその具体的な補償義務、いろいろな業務、そのようなものはどのようになさるお考えでありますか。特に、聞くところによりますれば、各省ともなわ張り根性といいますか、そういうようなもので、なかなかスムーズにいかないという声も聞いておりますし、あくまでもその産業に関係のあります人たちのためを思ってできた特別会計でもございますし、その円滑なる、また関係者が喜んでいただくような方向で進んでいってもらいたいと思いますが、各省は、今後のことに対しましてはどのようにやっていただくのか、そういうことにつきまして御意見を伺いたい。
  78. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 鉱害復旧につきましては、従来、先生御指摘のように、各省ごとに、たとえば水道であれば厚生省、学校であれば文部省というように、各省ごとにその所管に従って鉱害復旧事業をやっておったわけでございます。そのやり方は、工事施行者に対しまして各省がそれぞれ法律に従いまして補助金を出している、その補助金の大体裏のようなものを鉱害復旧事業団のほうからつけていく、その金が来て施行者がやっていくという形をとっておったわけでございますが、今回新しく特別会計をつくりまして、通産省のほうで石炭対策を一貫してやっていただくということになりましたので、今回からは通産省のほうでそういった補助金をおまとめいただいて、鉱害復旧事業団のほうにそれを出して、そして鉱害復旧事業団からそういったものを施行者に渡すという形に切りかえていく、この面では、むしろ各省ばらばらでやっておりましたよりも、ある一つの目で、通産省のほうで御統制をいただくことのほうが、緊急性にもマッチいたしますし、適切な運用がはかられるのではないかというふうにわれわれは考えております。
  79. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 竹本委員。
  80. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、きわめて簡潔に、二、三のポイントについてお伺いいたしたいと思います。  まず最初に、石炭対策はいろいろ叫ばれておりますけれども、これはあくまでもエネルギー対策として、経済政策として解決すべきものであると思いますけれども、社会保障的要素がばかに多いようにも思うんですけれども、一体、政府の基本的な立場は、石炭対策はあくまで経済対策である、経済政策であると考えてよろしいか。
  81. 井上亮

    井上(亮)政府委員 何と申しましても、一義的には、先生もおっしゃいましたように、経済政策といいますか、経済対策だと思います。セキュリティーというような問題もありますが、セキュリティーといいますものもやはり政策でございますから、そういう意味から申しまして、一義的には経済政策である、しかし、石炭問題は単に経済合理主義的な立場だけでは配慮し切れない社会的な側面もあるわけでございますので、率直に申し上げれば、やはり経済的な必要性の側面とそれから社会的な側面というものの両面を入れた総合された形の対策になっていると思います。
  82. 竹本孫一

    ○竹本委員 両面というと、はなはだことばがぼけてしまうんですけれども、あくまでもウエートは経済政策であるというふうに理解していいんじゃないかと思いますが、政策ということになれば、社会保障も政策ですから、経済政策ということで重点は置くべきであるということについては御異論はないようであります。  そこで、経済政策ということになれば、いまの資本主義の社会においては、経済的な自己責任主義というものが当然原則でなければならぬ。ところが、きょうは時間がありませんからこまかい議論はやめますけれども石炭資本のいままでのあり方、その他いろいろの面を、考えた場合に、はたして自己責任主義で貫いてきておるのか、また、政府はいろいろの援助をやっておりますけれども、自己責任主義を貫かさせるためにどれだけの努力をしておるのか、その辺を承りたい。
  83. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のように、今日の石炭産業につきましては相当計画的な要素が強くなっておりまして、同時に、国の助成の程度も高いわけでございますが、しかし、あくまでも、政府といたしましては、石炭産業を私企業として再建するという立場でおるわけでございますので、御指摘のように、企業の自己責任といいますか、責任体制というものはあくまでも貫いていただきたいというような指導をいたしております。  したがいまして、計画を作成いたしますに際しましても、あるいは計画決定というような場合がありましても、あくまでもそれは企業の責任における計画であるというような立場をとっておるわけでございます。
  84. 竹本孫一

    ○竹本委員 ポイントに答えておられないと思うんですけれども、自己責任主義を貫かさせるために政府は従来どれだけの努力をしておるかということを聞いたのでございますが、ほとんど答えはなかったと思います。  しかし、これは警告の意味でひとつ聞いておいていただいて、時間がありませんから先に進みますが、第二の問題としまして、石炭はエネルギーの中の国産エネルギーの大宗であるという、ことばはたいそうりっぱでありますけれども、現在エネルギー源として何%のウエートを占めておるかということと、これが十年後並びに二十年後ぐらいには原子力の開発もできるでしょうが、どのぐらいのウエートを占めるという前提に立っておられるか、その辺を伺いたい。
  85. 井上亮

    井上(亮)政府委員 一次エネルギーの中における今日の石炭の地位は、大体一九%くらいに相なっております。昭和六十年くらいになりますと、これが一〇%を割るというような姿になる見通しでございます。
  86. 竹本孫一

    ○竹本委員 一〇%は何年であるか、私はそう遠からざるうちに五%以下になると思っているんだけれども、いまちょっと聞こえませんでしたけれども、何年に一〇%ぐらいになりますか。
  87. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま私が、一次エネルギーの供給の中における石炭の地位と申しますか、構成は一九%程度だと申しましたが、それは昭和四十年度実績でございます。このときに石油は五八%ということになっております。なお、昭和四十五年度ごろに大体一〇%を割るというふうに考えております。昭和六十年には五%を少し割るというような見通しに相なっております。
  88. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、新しく特別会計をつくっていろいろ政府の施策を講ぜられること、大いにけっこうでございますけれども、将来のエネルギー源としては、あるいは一〇%、あるいは六十年には五%になるのだということを頭に置いて議論をしなければいかぬと思うのです。非常に金をつぎ込む、非常に力を入れるけれども、結論として見れば、大したこともないところに一生懸命頭を突っ込んでおるということにならないようにひとつ考えてもらいたい。これは主計局もおられるからぬかりはないと思いますけれども、私は、やはり社会保障的要素が少し多過ぎはしないかということが一つ、さらに、ウエートから考えても、今日でいえば二〇%を占めておる。これは大事なものであるが、やがては五%以下になるといったようなもののために抜本的な策をいろいろ言われるけれども、やってみても五%でしょう。そういうもののために国費を一体どれだけつぎ込めば気が済むのかということについては、やはり経済の合理性の立場から相当検討や反省を要する問題がありはしないかという点が、指摘をしたい第一であります。  さらに、コストの面で、一体、石炭はその他のエネルギー源に対して、日本の場合どのくらい割り高であるか、将来また原子力等ができた場合には何割高くらいになるか、昭和六十年ぐらいにおいてどのくらいの比較になりますか。
  89. 井上亮

    井上(亮)政府委員 今日の時点で考えてみますと、特に一般炭につきましては重油との競合関係に立っております。電力用の使います重油石炭価格差は、今日東京電力あたりになりますと千五百円ぐらいの違いがございます。しかし、平均的に揚げ地を見ますと、トン当たり千百円ないし千二百円程度の価格差があります。  今後のこの価格差についての見通しでございますが、これは重油価格がどの程度に低落していくかどうかという点にかかるわけでございますが、石炭のほうの価格につきましては、大体私ども横ばいの線を想定いたしております。そうなりますと、重油価格の見通しという問題になりますが、毎年どの程度下がるということは、今日見通せないわけでございます。傾向といたしましては、なおもう少し下がっていく傾向があるのではないかというのが通説に相なっております。
  90. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、政策論議をする場合に、前提として、第一にはウエートは将来五%以下になるのだぞ、また原価のコストあるいは価格差というものはむしろだんだん開いてくるものだ、こういうことを一つ前提にしていろいろ考えなければならぬと思うのであります。  そこで大蔵省に一つ伺いたいのですが、いままでに大蔵省というか政府が、あるいは通産省を通じ、あるいは公共事業といった形であるいは労働省の諸施策を通じて石炭産業のためにつぎ込んだお金は一体幾らでありますか。
  91. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 ただいま申されました政府石炭関係といたしまして、離職者その他の関係も含めまして投じました金は、三十一年度からちょうど十年間で計算をいたしますと、累計で大体千億円程度ということでございます。九百二十何億円という計算がございますが、どの程度までを石炭対策かということには多少問題がございまして、公共事業等でやりましたものを入れるか入れないかという議論もございますから、大体千億円というふうにごらんいただいたらけっこうだと思います。
  92. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうすると、石炭は過去において一千億円食っておる——食っておるということばは悪いが、さらにまた一千億円肩がわりということになりますと、先ほど申しましたように、ウエートは五%以下になるのだ、コストは、価格差はだんだん開いて、必ずしも経済的に好ましきエネルギー源ではないのだ、そういうもののために過去に千億円つぎ込んだ、これからもまた千億円つぎ込むのだ、こういうことですか。
  93. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま大蔵省から御説明のありました千億円といいますのは、石炭産業そのものに対する金ではございませんで、それを含めて、離職者対策とか産炭地振興のための産炭地域における道路の建設、港湾の整備等の入った予算でございまして、今後の見通しにつきましては、先生御指摘のように巨額な予算が計上される予定になっております。
  94. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの御説明は納得ができません。われわれが石炭にどれだけつぎ込んでおるかと言う場合には、必ずしも狭義の石炭だけ考えなくてもいいと思いますが、まあこれは大した議論ではありません。  そこで、これから金をつぎ込んで、新しく特別会計もできる、いろいろお考えのようでございますが、その結果、重要なエネルギー源としての石炭のコストがどのぐらい下がっていく見通しであるか。たとえば、トン当たりいま幾らでできるものがどのぐらい下がっていく、何百円下がっていくのか、その辺についてのやや具体的な数字を伺いたい。
  95. 井上亮

    井上(亮)政府委員 コストがどの程度下がっていくか、具体的なことでございますが、これはただいまこの抜本策を受けまして、各企業につきまして個別に今後の長期計画を検討いたしておりますので、まだ政府として、正確なコストダウンについての見通しの数字はもうしばらく時間をかしていただきたいと思っておりますが、ただ、調査団の政策審議等で見通しました姿でお答えを申し上げますと、今後やはり近代化していきますので、その面では相当程度コストダウンの要因がございますが、やはり労務費が上昇していくというような問題、それから物価も一%ないし三%程度——これはいままで過去数年間におきましては一%程度、昨年ぐらいまでの経緯で見ますと一%程度の物価上昇、物価といいますのは、炭鉱で使います資材費を算定しますときの物価の値上がり等でございますが、昨年答申当時までの過去の実績ではその程度でありましたが、今後の見通しにつきましてはもう少し高くなるのではないかということで一%ないし三%ということを申し上げたわけでございますが、そういうような賃金、物価等の上昇もございますので、それから他面能率の向上はございますが、そういったために、私は、コスト関係といたしましては、一面において賃金、物価等で相殺されますので、大体今後の、昭和四十五年ぐらいまでの見通しとしてはコストは大体横ばい程度というふうに考えております。
  96. 竹本孫一

    ○竹本委員 具体的な政策目標として、コストをどこまで下げ得るか、下げるべきか、そういうことについて、もう少しはっきりした目標がないというのは、私はどうも納得できません。何のために特別会計をつくり、何のためにこれだけの金をつぎ込むか。これだけつぎ込めば、その結果これだけの成績があがってくるんだということでないと、何をやっているのかよくわからないような気がいたしますので、もう一度お伺いいたしますが、日本における一トン当たり石炭の生産コストは現在幾らでありますか。かりにドイツと比較した場合、ドイツなら幾らでございますか。
  97. 井上亮

    井上(亮)政府委員 今日の生産コストは、平均的にいいまして大体四千円程度、四千円を少し割るという程度が今日のコストでございます。西欧におきましては、今日資料を持っておりませんので正確な金額は申しませんが、ただ、能率の点、先ほどの御質問に対する補足になろうかと思いますが、今後の合理化目標としましては、やはり能率の向上という点、これがコストに一番大きく影響する問題でございますし、一つのメルクマールでございますので、能率の向上をどうはかっていくか、これは近代化等をはかりまして実現さしていくわけでございますが、この点の目標は、昭和四十五年度につきましては、今日四十二、三トンでございますが、五十五トン程度に全国平均を持っていきたいというような目標を掲げておるわけでございます。
  98. 竹本孫一

    ○竹本委員 かつて十三トン前後といわれたやつが五十五トンになる、たいへんな躍進である。現在四十何トンですね。そういうことで、能率の向上はよくわかりますが、しかし、結論として、現在四千円のものが、これだけの金をつぎ込み、特別会計ができたおかげで金利負担の面で何百円軽くなり、合理化された面でコストがどのくらい下がる、ただし物価の上昇等でこれだけ消される、したがって生産費はこういうものだというような、何かその辺、もう少し目安がなければ、全く政策努力の目標がないじゃないですか。もっと具体的に伺いたいと思う。
  99. 井上亮

    井上(亮)政府委員 石炭鉱業調査団の答申に際しましては、一応全社に共通な一つの目標といたしましては生産能率を考えておるわけでございますが、しかし、実際に本年度以降の抜本策の助成策を決定するにあたりましては、やはり個別企業の今後の経理の見通し、先生のおっしゃいますコストとか、あるいは経理関係がそれによってどう推移していくかというような見通しにつきまして精微に検討したわけでございまして、たとえば、昭和四十二年度におきましては、本年度でございますが、これは昨年閣議決定をいたしましたときに一応想定した見通しでございますが、四十二年度におきましては、能率の点につきましては、本年度の計画と同じように、大手では四十五トン程度、中小にいきまして四十二、三トンということを申し上げましたが、その計画を考え、製品炭原価等につきましても、大手平均としましてはトン当たり三千七百円程度、製品炭原価というような点を個別に積み上げて考え、さらには、一般管理費関係としましては百八十四円程度を考える。金利負担は大手だけで見ますと、トン当たり平均四百二十六円程度の負担がある、したがいまして、これに山元手取りとの関係で自産炭の損益を見通しますと、大体日産炭としましては三百円余りの赤字になる。なお石炭業界付帯事業部門の損益とか、あるいは購入炭の損益、営業外の損益、特に石炭鉱業は営業外の損益が非常に大きく計上されますので、こういった点を勘案して、純損益としてはどうなるというような見通しを立てまして、純損益としては五百十六円の赤字というような見通しを立てておるわけでございます。なお、四十三年度、四十四年度、四十五年度につきましても、それぞれそういった個別企業についてのコストの分析、山元手取りの推移等の見通しを立てまして、自産炭損益あるいは純損益の見通しを立てたわけでございまして、たとえば四十五年度におきますと、純損益では大手平均で四百円程度の赤字が残るというような見通し、こういったことを前提にして——以上申しましたのは、今度の政府の抜本策の助成はないとしての見通しでございますが、こういうものを前提にしながら、肩がわり措置とか、あるいは中小炭鉱に対する安定補給金制度とか、あるいは掘進の補助というような制度考えた次第でございます。
  100. 竹本孫一

    ○竹本委員 ないとして四百円ばかりの赤字だという御答弁でございますが、あっても、いろいろ先ほど来のお話もありまして、結局、個別企業としても石炭は有利な事業ではないということは大体はっきり言えるのじゃないか。それから国策的に考えると、価格差の問題から考え、結局石炭はエネルギー資源としてはすばらしいものではない、これも決定的なように思います。そうしますと、やはり政策努力の目標としてはぱっとしたものは何もないのだけれども、個別企業立場に立って考えてみても、国策立場に立って考えてみても、あまり宣伝すべき料材もないのだけれども、まあやむを得ず、先ほどのお話じゃないが、社会保障も加味してやる、こういう程度にしか思えない。特別会計をつくるとかいって、石炭対策を審議会が決定し、閣議が決定し、さらに委員会で審議し、国会で通してみても、どうもあまりぱっとしないと思いますけれども、その辺どうですか。大蔵政務次官にひとつ感想を伺いたい。
  101. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 私は、先生の御所見の中で、過去一千億円もの国費を石炭産業をめぐるいろいろな問題につぎ込んできた、また、将来エネルギー資源としてそう見込みのないものに今後相当の国費を投入するということについての御議論は、一つの見解としてよくわかります。  ただ、今回の点については、これで御承知いただきますように、昭和四十五年というものをめどにいたしまして、四十五年には、今度はもう離職者対策とか、あるいはその他のものは一切、まあ閉山もなくなるというような姿になれば、終わってしまって、そしてまた企業自体のこの五年間における合理化なり、あるいは生産の、いろいろ経理の合理化なり技術の合理化というようなものをはかりまして、自立をしていけるというところまで根本的に——いままでは臨時にいろいろな措置をしてきたものを根本的な対策でひとつ今度はやりまして、そして、あとはやはり一つ産業としての自立体制でずっといけるようにしたい、こういうことがねらいの今回の措置でございますから、私はこれなりに非常に意味があるのじゃないか。したがって、五年後にまたいろいろな政治情勢その他でいろいろ議論が起こってくるかもしれませんけれども、私ども先生方の御協力も得まして、また、先ほど来お話がありましたように、企業努力というものを自主的にひとつ積み重ねをしていっていただいて、四十五年には、企業として、近代産業としてりっぱに合理化をされ、改善された姿で自立をしてもらおう、そういうことでございますので、この目的がうまく成功いたしますと、私は、対策としては非常にいいことになるのじゃなかろうか、そういう意味でお考え願えれば、先生の基本的な考え方については理解いたしますけれども、今回の特別会計を設けまして、まとめてひとつ総合的な石炭対策をやっていくということについては御理解いただけるのじゃないかと思うわけでございます。
  102. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が言っているのも大体いま次官の言われるのとうらはらでございますが、これは見通しをあらしめるためにいまのまま、あるいはいまの御答弁の範囲では、さっぱり見通しのない、大きな政策目標のない、ただおざなりのと言っては語弊があるでしょうけれども、思いつきの政策を並べている程度じゃないか。もしやるのならば、もっとそれこそ、閣議決定でもあるようですが、抜本的な政策をやるべきじゃないか。こんな程度のことをやって、いまもお話のように、コストもたいして下がらぬだろう、下がった程度は物価が上がるだろう、これでは何やっているのかさっぱりわからない。特に日本の国内における他のエネルギー源との比較において、石炭が、これだけ努力をすれば価格差を解消して、りっぱなエネルギー源になるのだ、これなら一つの努力目標がはっきりします。また、国際的な比較においても、これだけ努力をすればここまでいけるのだということならば、自由化の時代に一つ政策、努力の目標がはっきりしておる。そのどちらも、何だかやらないよりはやったほうがいいでしょうという程度の話では、それこそ、審議会でも言っている抜本的総合的対策にならぬのではないかという点を私は逆の面からいま質問をしたわけです。  そこで、最後にもう一つお伺いしますが、四十五年が目標というのだけれども、これもまたきわめて事務的なように私には感ぜられる。たとえば合理化法が四十五年には終わる、また離職に関するいろいろの施策も四十五年で一段階来る、暫定関税も四十五年で期限が来る、特別会計もしたがって四十五年に合わしておこう、この程度のものであって、ことばに書いある抜本的というのはいつかどこかへ行ってしまったのではないか。もし抜本的ならば、四十五年までにこの抜本的施策によって、相当な、いま申しました内外のいろいろのエネルギー源と比較してりっぱにやっていけるということ、そこまで持っていけるということがはっきり見通しが立ってはじめて抜本的です。四十五年になって、ほかのエネルギー源と比較してみても、外国比較してみてもたいしたことはありませんというなら、これは何も抜本的じゃないということじゃないか。だから、全く何をやっているかはっきりしない。  さらに、この法律は四十五年になったらもう一ぺん考え直して、廃止するか廃止しないか考えようという前提じゃないですか。その点はどうですか。四十五年になったら、期限が切れてなくなるかどうか。
  103. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 この法律の附則にございますように、四十五年度末になりましたならば、そのまま廃止になるわけでございます。そこであらためて考えるということではございません。  それから、先ほど先生のおっしゃいましたように、いろいろな対策をいま御説明申し上げましたが、その具体的な効果等についてはなお疑問でございますけれども、いま申されましたようないろいろな法律において石炭鉱業の合理化基本計画というものをこれからつくりまして、その基本計画に従って五年間の間に抜本的なことをやっていこうという現在の段階でございますので、五年たちましたならばわれわれは石炭鉱業は自立できるというところまでの手が打てるのではないか、かように考えております。
  104. 竹本孫一

    ○竹本委員 これからもひとつ政策目標、努力目標をもう少し明確にして努力をしていただくように要望いたしまして、質問を終わります。
  105. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ————◇—————    午後一時五十九分開議
  106. 内田常雄

    内田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑を終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  108. 内田常雄

    内田委員長 これより討論に入ります。  通告がありますので、これを許します。平林剛君。
  109. 平林剛

    平林委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、関税定率法等の一部を改正する法律案に対し、反対の意見を申し述べたいと思います。  この法律案は、すでに御承知のように、最近の経済の情勢の変化に対応するため関税率及び関税の減免税制度に所要の調整を加え、または旅客の通関の迅速化をはかるために、携帯貨物に適用する簡易税率の制度、また万国博覧会の開催に備えての保税展示場制度の新設のほか、開港、関税罰則の合理化のための所要の改正など、多種多様に含まれておりまして、私どもといたしましても、大綱については特段の異論はないのでございます。それにもかかわらずこの法律案に反対をせねばならぬという理由は、私どもの重大な関心がバナナの関税率の引き下げにあったからでございます。  すなわち、この法律によりますと、現行のバナナ輸入関税率七〇%をおおよそ二ヵ年間に一〇%引き下げることになっております。この措置によりまして国内の消費者にどういう影響を与えるか、また、国内産の果樹にどういう影響を与えるか、そのための対策等につきまして審議を集中してまいりましたことは御承知のとおりでございます。  私どもの見解によりますと、関税率が二年間にわたって一〇%引き下げられることによって、一体、末端の消費者にバナナは安くなるのかという点につきましては、質疑の段階において政府の答弁は明瞭ではございませんでした。また、政府・与党におきましても、国内産果樹に対する影響を考慮されてこの問題を検討されたときに、バナナ関税がこの程度の引き下げでは、流通段階に吸収されて小売り価格の引き下げにはなるまいという見方が強く、結局、関税の引き下げに踏み切ったと伝え聞いておるわけでございます。私どもは、これらの経緯から考えますと、関税率の引き下げが、必ずしも消費者のバナナ価格引き下げに及ばない。したがって、この末端の消費者に対するバナナの価格というものは、むしろ関税率よりは、輸入量の増加であるとか、あるいは浜相場をはじめ、流通段階の合理化にかかっておるものと考えるのでございまして、この意味では、しからば、バナナ関税の引き下げというのは、どういう意味があるか、どういう点を重視して考えねばならぬかということにつきまして、国内果樹対策に十分な配慮を加えるべきものであるという結論に私どもは達したわけでございます。これにつきましては、農林水産委員会におきましても、果樹振興のための特別の決議がなされたと承知いたしております。また、私どもの大蔵委員会におきましても、与野党の間におきまして鋭意努力を重ねまして、所要の附帯決議を取り左とめることになりました。これは、いずれ委員会に提案される運びになると思うのでございまして、私どもは、その努力に対しては大いに多とし、その効果をすみやかに進めまして、国内産果樹対策を強力に進めるということを心から念願をしております。  しかし、この附帯決議のすべての内容は、今後の対策に待つものが非常に多いのでございます。たとえば、台湾に対してリンゴを輸出するという問題につきましても、どういうことになるかは、六月初めに出発をする政府の今後の折衝にかかっておるわけであります。また、国内の学校給食にリンゴをはじめ国内産果樹を使って、振興対策を考えたらどうかという問題につきましても、これは関係大臣から努力をするという言明はあったように思いますけれども、しかし、今後の予算措置その他に待つべきものでございます。  このように、今後に待たねばならぬという点がかなりございます。  御承知のように、昭和三十八年の四月にバナナの輸入が自由化をされましてから二年、その間、バナナの輸入量は自由化前から比べますと現在ではおよそ約五倍というふうに広がりまして、国内産果樹の国内市場におけるシェアにつきましては相当圧迫されておる、また、生産者価格の面におきましても相当の圧迫が加えられまして、いまや、国内の果樹生産者は、従来の地位と比較いたしますと相当経済的な低下を来たしておる現状であります。このため、果樹生産者は、緊急の品種の改良あるいは基盤の整備、経営の合理化に努力中の段階でございまして、五十一国会におきましても、果樹農業振興特別措置法を改正いたしまして、その振興に関する方針が出たばかりでございます。そして、この方針に基づいて国際競争に打ち勝つ体制が急がれておるという段階でございます。しかも、都道府県の段階をながめてみますと、都道府県の段階におきましては、果樹産業振興計画の実施は大体四十三年度になっておるのでございます。それに伴うところの濃密生産団地形成の成果というものも、それ以後にかかっておるわけでございます。こういう意味では、国内産果樹振興という国策、そしてまた、それに必死の努力を続けておる生産業者の運命というものは、まずここ一、二年にかかっておる。この段階でバナナの関税率を引き下げていくことが、一体どういうことになるのか。果樹振興の基本的な考え方に水をさすことになりはしないか、また、関税というものが国内の産業を保護するというたてまえから見ますと、相反するものになりはしないか、こういうことを考えますと、私は、この際バナナ関税を引き下げるという措置には賛成しがたい。つまり反対をしなければならぬ理由の一つでございます。  それから第二の理由は、それではバナナの関税率は七〇%というのは高いかどうかという点でございます。確かに、他の品目から比べまして、七〇%は高率であることは間違いございません。  しかしながら、いま国内産果樹の対策として、台湾にリンゴの輸出を試みようといたしておりますけれども、台湾におけるリンゴに対する関税率はどうであるかというと、まず一般の輸入にあたりましては六〇%の税率がかけられるのであります。しかも、それだけではなくて、防衛税と称しまして一二%がかけられる。また港務局税という税金の制度がございまして、三%がかけられる。差益金、つまり調整金という制度がございまして、およそ一〇〇%程度の特別の措置がとられる。合計いたしますと二〇〇%にわたる税を取られる勘定になっておるのであります。バナナの国内に対する輸入の対象は台湾であります。台湾が八〇%以上を占めておるのであります。台湾から輸入するバナナ関税率が七〇%、もし国内から台湾にリンゴをもっていく場合には二〇〇%の関税——関税ではございませんけれども、税率が課されるということになっておるのでございまして、相対的に考えますと、私は七〇%必ずしも高いという議論だけにはくみすることはできない、こういうことを考えるのでございまして、ここ一、二年はなお据え置きたいという気持でございます。  それでは、この段階でなぜ関税率を引き下げるか。この点につきましては、バナナ業界における黒い霧が、先回の総選挙の段階におきまして大いに喧伝をされ、国民必ずしもすっきりした気持ちを持って、バナナ業界をながめていないことは、皆さん御承知のとおりでございます。同時に、私は、昨年のバナナ業者の陳情書をいま手元に持っておるのでございますけれども、バナナ業界が、バナナの関税率七〇%を引き下げてもらいたいという趣旨の陳情の中を見ますと、バナナの関税が七〇%になっているために業界は四十三億円にわたる損害をこうむったというような趣旨関税率を引き下げるべしという主張がなされておるのであります。詳細なことは申し上げませんけれども、とにかく関税率が七〇%であるがゆえに四十数億円の損害を受けた。この考え方が私は必ずしも妥当であるとは思いません。妥当であるとは思いませんけれども、逆にこのことばを引用すれば、こういう税率が一〇%引き下げられることによって輸入業界相当利益を得るという勘定となるわけでございます。  私は、これらのことを考えますと、バナナ業界における黒い霧などから考えまして、今度の関税率の引き下げの背景につきまして、実は十分な資料を持ち合わせず、自信がないのでございます。同時に、最近、バナナ業界における脱税の問題で国税庁が手を入れまして、おおよそ三億数千万円にわたるところの使途不明のお金があるという話も新聞が報道しておるとおりでございます。  私は、そういう意味から、いまここで税率を七〇%から二年間にわたって一〇%引き下げる措置の表の理由はともかくといたしまして、裏の理由につきまして、今日までの審議の段階におきましては、公党として十分責任を持って賛成をするという立場にまだ到達いたしません。これらはしばらく成果を見る必要があるという立場から、実施の時期につきましても多くの注文を発したいという気持ちでございます。  いずれにしても、これらのわれわれの気持ちが満足せない段階において採決の段階になりましたので、以上の理由をもちまして、反対をするということにいたした次第でございまして、私どもが、この関税定率法全般について、特段の異論がないにかかわらず反対の意思を表明せざるを得ないという理由を申し述べまして、私の反対討論を終わりたいと思います。
  110. 内田常雄

    内田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  111. 内田常雄

    内田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  112. 内田常雄

    内田委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党を代表し、西岡武夫君外三十八名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。西岡武夫君。
  113. 西岡武夫

    ○西岡委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党を代表いたしまして、ただいま提案されました関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議の提案の理由を御説明申し上げます。  附帯決議の案文は、お手元に配付いたしてありますので、朗読は省略させていただきます。  バナナは、発展途上にある諸国の重要な輸出品であります。また、ケネディラウンドによる関税一括引き下げ交渉の妥結をまさに迎えんとする国際経済社会の推移を展望すれば、現行の七〇%という関税率は、あまりにも高率と申さねばなりません。したがって、政府原案のとおり引き下げることに賛成するものであります。  しかしながら、一方、バナナの関税引き下げが、国内の果樹生産に及ぼす影響はきわめて大きいものがあります。これに対し、十分な配慮が必要であり、税率引き下げの実施期日、バナナの輸入及び流通秩序の確立、国産果実の振興等に関し、政府は積極的に努力を払うべきものと考えるものであります。  すなわち、第一に、本改正案によりますと、税率引き下げの実施は、政令で定める日から、とされておりますが、政令の制定にあたっては、バナナ輸入の動向、国産果実の生産状況、リンゴをはじめ国産果実の輸出についての貿易交渉の経過等、各般の事情を慎重に考慮して定めることが適当であり、また、今後のバナナ輸入につきましては、国産果実に対して悪影響を及ぼさないよう十分配慮すべきことであります。  第二に、バナナの輸入体制をはじめとして、関係業界の整備について、政府は今後も一そうの改善措置を講ずべきことであります。  第三に、国産果樹振興の見地から、国産果実の生産、流通の合理化をはかり、輸出の振興及び国内市場の拡大につとめる必要があることであります。  以上が、この附帯決議の提案の理由であります。御賛同をお願いいたします。     —————————————   〔参照〕  関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、バナナ関税引下げの実施に当って、国産果実生産者および消費者立場を充分考慮し、次の措置を講ずべきである。  一 バナナ関税の引下げについては、各般の観点からその引下げ時期の決定に配意するとともに、バナナの輸入につき国産果実に対して悪影響を及ぼさないよう配慮すること。  二 バナナの輸入およびその国内流通秩序につき充分な改善措置を講ずること。  三 国産果樹の振興対策として国産果実の生産流通の合理化を図り、輸出振興、国内市場の拡大に努めること。     —————————————
  114. 内田常雄

    内田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  おはかりいたします。  西岡武夫君外三十八名提出の動議のごとく決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、本動議のごとく、本案に附帯決議を付することに決しました。  ただいまの附帯決議につきまして、政府より発言を求められておりますので、これを許します、水田大蔵大臣。
  116. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、十分関係省と協議し、御趣旨を体して努力いたします。     —————————————
  117. 内田常雄

    内田委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  119. 内田常雄

    内田委員長 所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。広沢賢一君。
  120. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 大蔵大臣に質問します。  先日の本会議で、この三法についての私の質問に対しましての答弁で十分要領を得なかった点があるので、その点について御質問いたしたいと思います。  第一番目に、所得税の課税最低限の引き上げについて、予算委員会では、百万円までなるべくすみやかに引き上げるという委員会の決議をいたしまして、その実現の日について、いつかということがこの大蔵委員会でも問題になりました。それについて、新聞でかってに四十四、五年がどうかということが出ているわけでありますが、それについて、どうしてそういうふうになったかということを私のほうで質問をいたしました。その場合、十分な答えが得られなかったのですが、その後の新聞によりますと、やはり四十五年ごろやるのだという。それから、本会議での御答弁でも、財源が大体四千億ぐらいかかるので、すぐにはいかないのだというような御答弁でした。  そこで、あらためてお聞きしますが、その実現の日は、四十五年というのは正式におきめになったのかどうか。もっと早くやらなければ、私が本会議で申しましたとおり、物価が値上がりして、それに対して追っつけなくなるから政策的効果はない、来年ぐらいにしたらどうかという問題がありますが、これについて、もう一回大蔵大臣の正確な御答弁をお願いしたい。
  121. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は、先般の選挙のときに、与党の公約として、課税最低限百万円までの引き上げを可及的すみやかにするということが与党内部で論議されましたときに、最後に私どもも加わって、もしそうだとすれば、一応何年度を目標として実現させるかという意見を述べましたが、そのとき、私どものやった作業によりまして、大体四十五年を目標として百万円限度引き上げをするということなら実現可能であろうということでございましたので、与党側も四十五年度を目標としておるということで選挙公約に掲げたことと存じております。その後、野党の皆さん方からもいろいろな御要望があり、私どもも、これは何も四十五年度と目標をきめたからそれを変更できないというふうにかたくは考えておりませんが、かりにこれを今年度一回でやってしまうということにしたらどれくらいの財源が要ろうかという計算もしましたし、来年度を期してやるとすればどのくらいという計算はずっといたしましたが、やはり四十五年度を期してやることが無理のない減税策だろう、いまではそういうことになっております。しかし、日本経済の進み方というものは、またそう私どものいま予定したとおりにも四、五年先はまいらないと思いますので、情勢が変わってさましたらもっと早く実現することも可能であるというように考えますが、いままでのいきさつを申しますと、私どもは、四十五年度を目標としてならこれは完全に実現が可能だというふうに考えております。
  122. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 四十五年度では意味がないわけですね。さっき申しましたとおり、第一、物価値上がりの状況から私ども考えてみますと、大体一昨年が消費者物価が七・四%、昨年が六%、そうしますと、ことしは公債政策の二年目で、たとえば公債政策でことしは四十年度の二千五百億円と四十一年度の七千三百億円のうちの、発行後一年間を経過したものは全部日銀の対象になるわけですね。したがって、そういう点で、買い上げや貸し出し担保の対象になるわけですから、そうすると、公債も相当一種のインフレ要因になってくるのはことしからではないか、こういうふうに思います。きのうの新聞によっても、日銀の発行高が非常に著しい状況になっているという記事が出ております。そういう点から見ますと、今後の物価値上がりの状況は、前よりも非常に通貨面から刺激してよくない状況が出るんだと思いますが、大蔵大臣、いかがですか。
  123. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはもう、今年度の見通しでも政府は申しておりますように、消費者物価の値上がりはことしは四・五%以内に押えるという方針で今後の財政運営をやっていきたいと思っております。そして、経済社会発展計画においても、御承知のように、ここ五年先の昭和四十六年の時点おいては、この物価の値上がりを三%ぐらいにとどまるようにするという長期計画も出されておることでございますし、この線に沿った経済計画をこれからやろうとしておるのですから、私どもは、先行きそういうふうに物価がいまよりも上がっていくというようなことは全然予想しておりません。
  124. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 たとえば健康保険料金の値上げはまだわかりませんが、野党ががんばらなければこれは値上がりになる、それから消費者米価の値上げも行なわれる。そういう状況を見ますと、先ほど言われた見通しというのは、私どもは全然納得できません。しかも、経済社会発展計画によると、その先行きさらに、たとえば、四十二年度末に内国債が二兆二千八百三十八億円になるといわれております。したがって、先行きの物価値上げの傾向というのはさらに強まるのではないか。こういうときに、四十五年度百万円までの課税最低限というのは、これは全然受け取れないと私どもは思います。  来年ぐらいからこれを実現しようというふうに考えた場合に、どういう点が障害になるか。先ほど、一つは、財源がないということをおっしゃいましたが、もう一つは、私どもが前の審議で聞いておるところでは、景気過熱のときに減税をすべきでないと大蔵大臣は言われました。大体この二つが大蔵大臣の御答弁の柱だと思いますが、一つのほうの財源について、私は、本会議でも、ことしの自然増収は七千三百五十三億円だけれども、三十四年以来の税収の弾性値を平均してみると一・四である、そうすると、それは一兆二千億円にのぼるのではないかということを申しましたが、これもまた水かけ論になりますが、自然増収というのは、景気が過熱して、好景気にずっと向かっておるときにもっと大きくなるというふうに私どもは思いますが、大蔵大臣、いかがでしょう。税収の弾性値は平均一・四と見れば大体一兆二千億円になると私ども計算しますが、いかがですか。租税の自然増収ですよ。
  125. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 自然増収の見積もりでございますので、私から御説明申し上げますが、一・五三が私ども昭和四十二年度の自然増収を見積もりました結果としての弾性値でございます。その結果、七千三百五十億円の自然増収が生ずる、そのほかに、去年の減税の、平年度でございますので、自然増収の見積もりといたしましては八千億円以上の自然増収を見積もったが、これを国民総生産との対比で見ますと一・五三というふうになる予定でございます。
  126. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 そうする、数の取り違いがあると思いますが、大体八千億円程度といたしまして、これがあるにもかかわらず減税ができないというのは、この間おっしゃいました、景気過熱の状態になるおそれがあるから、やはりこれ以上の減税は差し控えるべきであるという大蔵大臣の御意見は、いまでも変わりませんか。
  127. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 原則論の問題でございまして、原則論といたしましたら、設備投資を中心とする景気過熱が心配されるときに減税というものを多くすべき時期ではない、ひとり法人税だけでなくて、所得税についても、総需要の抑制というような点から言われる点だろうと思います。原則論としてはそうだろうと思います。しかし、昨年相当大きい減税をやりましたが、所得税の部面においてはまだもう一歩の減税をやる必要があると私どもは認めて、特に本年度さらにもう一歩の減税をやったということでございまして、原則論からはそういうことが言えると思います。
  128. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 そこで、もっとどんどん詰めてお聞きしますが、この前のときに、景気過熱のときに減税すべきではないということだったが、それならば、法人に対する特別の減免税措置と世の中では言っております租税特別措置、交際費に対する非課税等々については、これは事実上の法人税の減税ではないかという質問を私がいたしました。その際、いろいろ御答弁がありましたし、そのほかの議員が質問したときも、これは事実上の減税とは認めがたいのだというような御答弁がありました。私もその後いろいろな書類を見ましたけれども、これは事実上の減税ではないと思いますが、どうですか。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
  129. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 法人税の減税も、一般的な減税はいたしておりません。自由化を目前に控えて、技術の開発とか、特別必要なものの減税をやろうとしておるだけでございまして、一般的な法人税の減税は今回はやっておりません。
  130. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 私が言っているのは、とにかく企業が事実上税金を安くまけてもらっている、そういう額についてこの前御質問したのですが、たとえば、ここに大蔵省広報「ファイナンス」にいろいろ書いてございます。一八ページに「企業減税——企業課税の改正」として「法人税制を中心に」という解説が書いてございます。この表題自体が、その中に特別措置それから交際費の非課税等について全部ひっくるめてこういう題をつけて解説を書いております。したがって、大蔵省のいままでの考え方でいえば、たとえばこういう文句がありますよ。「企業減税については、法人税率の引下げ等を行なわず、当面の政策上の要請に応じて有効適切と認められる個々の特別措置を講ずることとしていること。」と書いてあります。いま大蔵大臣の言われたことも大体同じような言い方だと思います。そういうように考えると、事実上の企業減税、法人税というよりか広範な意味企業減税という場合には相当のことがことし行なわれているということはお認めになりますね。
  131. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 相当の規模という数字の問題でございますので、私からお答え申し上げます。  所得税の減税に比べまして、今回の企業減税の規模は少額でございまして、法人税の減税は、四十二年度におきましてはわずか五十七億七千百万円でございます。一方、所得税は約九百億円という減税となっております。これは利子、配当の税率引き下げの相殺後でございまます。そんなようなことで、その規模はおのずからわかろうかと思います。
  132. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 私の言っているのはそういうことじゃない。ただ文章上の問題じゃなくて、本会議質問したのは、地方税を含めて平年度には租税特別措置は一千百三十四億円にのぼるじゃないか、利子、配当の非課税は除いておりますよ。これも二千億円近くあるでしょう。それから交際費の非課税分は、六千四百億円交際費がある中で、非課税分は大ざっぱに言えば五千億円近くあるじゃないか、こんなにまでいろいろ特別の減免措置がなされているではない、景気過熱のときにはそういうことは控えるべきであるということは、今度の税制調査会の答申案にも、その他今度の大蔵省の方針も大体そういうことで、フィスカルポリシーのいろいろの要因を織り込もうとしている、そういう場合には、景気過熱のおそれのあるとき、これほどの企業に対する特別の扱いは必要ないのではないか、こういうふうに私がお尋ねしたわけです。それについて大蔵大臣はどう思いますか。
  133. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 フィスカルポリシーでいう減税というのは一般的な減税でございますが、こういう特殊な措置——特別な措置というものは、いつも言いますように、政策的な必要から生まれた措置でございまして、その必要性がある限りは、過熱が起ころうと、そういう気配があろうと、それとは無関係な特別な要請による措置でございますので、これはたとえ景気の動向がそういうときでも、特別な措置は、場合によったら強化しなければならないということが出てくるものでございます。  御承知のように、経済社会というものは一つの有機体でございますので、そのうちの大企業、中小企業個々に取り上げて、この企業にこういうことをしておるのはどうだといっても、全体の関係からその効果を評価するということをしなければこの措置の評価も出てこないのでございます。いま日本が、たとえば自由化を前にして、日本国内産業が国際競争力に耐えるようにしなければならぬということを皆さんがみな要請している。耐えるようにするためにはどうするかという措置は、当然国の経済政策としてとらなければならぬ。そういうときに、基幹産業を強くして一般関連産業を安定的に発展させるという必要から、たとえば基幹産業に一定の措置をするというときに、これがすぐに基幹産業の株主を助けるためだというふうな感触でこの税制を見られることは私は間違いだと思います。それが国民経済の中でどういう役割を果たすかということによって、この措置がいいか悪いかということが出てくるので、そういう基幹産業への産業政策が直ちに特殊な株主層を応援する措置だというふうな見方は、これはひとつ私は改めてもらいたいと思います。
  134. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 そうしますと、政策的効果で、ことに資本自由化に備えて企業の体質強化をしなければならぬ、したがって、税金が不公平の面があってもやむを得ないという、ずばり言えばそういうことになると思います。  そうすると、お聞きしますが、私は一般経済全体を抽象的に議論してもだめだから、鉄鋼の問題についてお聞きします。  鉄鋼は、いま好況で笑いがとまらぬといわれています。大手五社の配当なんかほとんど一〇%をこえていますね。それで、いろいろな新聞を見ますと、各社とも内部保留は思い切って厚くしてある。これはもうけはたいへんなものだと思います。あまり大きな声は出さないようにしますが……。最近の新聞を読みますと、これはケネディラウンドの中の一節で出ているのですが、鉄鋼の「米の特別賦課金制、後退を期待」という中から取った文章の中に「こういった非課税障壁が撤去できれば、国際競争力の強い日本鉄鋼関税が下がるにつれて輸出がふえるものとかなり楽観的な見方が支配的である。」それから資本自由化のいろいろな資料を私見ました。そうすると、鉄についてはもうほとんど資本自由化されても平気である。技術水準も世界並みである。それからそのほかの条件も世界有数であるというように書かれてあります。中小企業や電機会社、自動車は相当大騒ぎしていますが、鉄は平気でございますね。そうすると、この鉄に対して、あとでお聞きしますが、たいへんな額の援助が行なわれている。そういう点について、鉄鋼は非常に大きいですね。政治献金もずば抜けて大きい。けたがはずれています。自治省の発表を見ますとそうですね。そうすると、この鉄に対して、じゃどうして政策的効果でこれまでやるのか、私には納得いきません。それについてどう思いますか。
  135. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 鉄は、戦後ドイツが最も製鉄の合理化をやってコストが下がった国でございますが、これは戦争で全部施設を破壊されてしまった。したがって、終戦後新たに新しい施設をつくったということから、ドイツの製鉄が世界で一番伸びた。日本はそのあとから、こういう古い陳腐な施設を持っていましたから、これを近代化すために、そうして国際競争力にも耐えるような日本鉄鋼業をどうつくらなければならぬということから、重要産業合理化機械の特別償却の制度というようなもので、特別措置をもってこれに対抗したわけでございますが、やはりそういうものの効果は出ておると思いまして、日本鉄鋼がドイツを凌駕して、五千万トン以上の生産力を確保するようになったというのでございます。  ところが、いままでアメリカあたりでいいましたら、山の中に鉄鉱石を持っているところに鉄鋼所があったということが非常に有利でございましたが、最近になりますと、鉄鉱石は、世界的に資源をお互いに海外からあさらなければならぬということになりますと、奥地に持った鉄鋼所というものは非常に不利になってきている。海岸地方に持って、原料を海外から持ってき、そこで製品をすぐに運べるという地点を持った鉄鋼業が非常に有利な立場に立ちまして、日本鉄鋼が、コストにおいてもいろんな部門においてもアメリカの鉄鋼業を押しているというのが最近の実情だと思います。これに対抗するために、アメリカもここで製鉄業を根本からやり直す、奥地のものは全部太平洋岸に移すとかいうような、大きいアメリカの製鉄の近代化ということをいま始めておりますし、ドイツは、一時有利だったが、わずか二十年のときがたったら、ドイツの一番優秀な合理化した鉄鋼業が日本、米国におくれるということで、今度はドイツが、全部いまのものを廃棄して、新しくさらに一歩進んだ技術を取り入れた鉄鋼を建設し直すというような計画を持っているというときでございますので、特に鉄鋼業というもの、基幹産業におきましては、国際競争の激しいことと技術革新の早いということから、とても普通の償却でもってこれに対抗していかせるということはむずかしい、こういうことで、鉄鋼業などに対してはまだまだ特別措置を必要とするのじゃないか。これが合理化しないで、非常に高いコストになったら、日本の機械産業その他全部の産業に響いて、そうして輸出にもむろん響きますが、国民生活にも物価高となって響くという重要な問題でございますから、こういう問題についての特別措置というものは、当然一国の産業政策としては考えなければならぬ問題だということで、鉄においては私はまだまだここらで終わったと思いません。この次の新しい競争に対しては、たいへんな努力をしなければ日本経済はやっていけないのじゃないかということを考えております。
  136. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 いまのお話を聞きますと、鉄の生産性を高めるためには、何でもかんでも際限なしにやってしまうということですね。それを強調しているだけなんです。  鉄の生産性を上げるということは、これは外国の技術水準もあるが、外国に技術をどんどん輸出していますね。この二、三日前の新聞記事でも、鉄鋼の技術は日本もここまでというので、こまかい技術ですが、どんどん外国へ出しているというくらいなんです。これは税金を安くしたからそうなったというのじゃなくて、全部の総合的な結果、ことに鉄鋼合理化や何か、そういう問題——これは労働組合の問題、通産の問題ですからあれですが、そういうことが一番あれでして、税金面でやったからそうなったということではない。しかも税金というのは、公平を原則にしているのです。  先ほど私がもう一つお聞きしたがったのは、たとえば百万円まで課税最低限を設けるという問題は、自由民主党さえきめて、みんながきめているのだから、そうすると、国民全体のみんなの要望です。その国民全体の要望がいろいろの関係でできない、できないといって毎年延ばし、ずっと延ばしていく、四十五年まで延ばすという状況の中で、この鉄についてだけ税金の面でこれだけのことをやるということは、私は全然納得できない。生産性の高い低いという問題と全然違いますよ。  それから、公平を原則とする租税が、利子、配当の分離課税といい、それから、いま言ったけれども鉄といい、いろいろな問題があって、これはたいへんな国民の疑惑の的なんです。野党は非常に演説がしやすいけれども、疑惑の的のこの問題について、その答弁では、これは次元の違う問題を盛んに強調するだけです。日本鋼管の重役とかその他の人が参議院の予算委員会でもいろいろやっておりますが、ただもうそれだけなんです。鉄は重要だから、とにかく減税しろ減税しろという。その減税が始まれば、そのほかにずっと響いてくるということで、租税体系も乱れるし、国民は納得しないです。絶対納得しません。  そこでお伺いしたいのですが、たとえば三十七年度の法人税の問題でいろいろ書いてあるのを見ましたが、これは確かめたいと思います。たとえば八幡の例ですが、特別減免税措置で総利益の二二・五%しか課税されていない。実効税率では八・五%しか課税されていない。というと、月一万円の独身者の所得税率と同じくらいになってしまうけれども、これはばく大なことではないかということですね。この点についてやはり大蔵省としても計算していると思いますが、どのくらいまで法人税が安くなっているのか。あらゆる特別措置を入れてですよ。
  137. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 今回はまだ御要求もございませんので提出いたしておりませんが、過去には、主要会社、大会社につきまして、匿名でございますが、租税特別措置法適用前の利益から計算いたしまして、租税特別措置法適用後の所得及び税額がどの程度の。パーセントになるかという数字が出されております。それがいま広沢先生のおっしゃいました数字じゃないかと思うのでございます。古い数字で、ございませんので、持ち合わせておりませんのでここで正確な数字を申し上げることは困難でございますが、御要望によりましては提出してまいりたいと思います。  ただこの問題は、いつも私ども説明申し上げましたが、特別償却というのは償却の一種でございます。それを単に所得から引いておりますが、だんだん翌期からは減価償却の削減という形で順次取り返す、これを単純に差し引くことは非常なミスリードするような印象を与えますので、ひとつこんな点を十分頭に置いて御判断願いたい、こういうことを申し上げております。  さらにまた、特別措置の中では、利子所得控除、これも三十七年ころまで適用がございましたが、これが現在準備金になっております。準備金も、御案内のように絶対的な費用あるいは減免ではございませんので、将来また利益に繰り戻す、その際にはむしろ課税所得が一〇〇%をこすようなことになります。  こんなことをあわせて読んでいただくようにお願いいたしまして、御要望もありましたので、匿名で恐縮でございますが、過去の先例にのっとりまして、主要会社の実効税率というものを資料として提出したいと思います。
  138. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 鉄鋼大手五社をはじめとして、そういうことがありましたら、その減免税措置のいろいろの資料に基づいて、私どものほうも特別償却をどういうように普通並みに戻していくか、準備金が将来課税された場合にはどういうふうになるかといういまの御答弁に対しては、いろいろと研究をして、できるだけなくしていくという方向に持っていかなければ、国民の租税に対する不信というか、納税精神が欠けていく、そういう問題が解消できないと思いますから、その点について、いろいろあとで資料要求しますが、お願いしたいと思います。  その次に、もう一つは、資本自由化でいろいろほかのほうからも言われるのです。鉄ばかりではないのです。たいへんなことです。法人税を国際的に比較した場合にどのくらいかという何かいろいろ資料があると思いますが、答えていただきたいと思います。
  139. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 先ほども、広沢先生申されましたように、他国の法人税制の比較はいろいろな前提要件がございまして、必ずしも簡単な比較はできないわけでございます。私どもが常日ごろ言っておりますことは、法人税の税率は、事、国税をつかまえてみます限り、各国に比べまして低めである、こういうふうに言っておりますが、それも、課税所得計算で各国の税制に違いがございますれば単純な比較も困難でございます。それもまず同じという前提で、利益は、当然客観的に外国もわが国も同じものである、同じふうに計算されるという前提で地方税を入れてみますと、もう法人企業でございますから、かりに年に三百万円超の利益くらいあるものとして計算いたしまして申し上げますと、わが国の実効税率では四三・七九%でございます。アメリカは州税まで入れまして五〇・七一%、これも二万五千ドル超ということで一本で申し上げます。詳しいことは省略いたします。イギリスは四〇%でございます。西ドイツは営業税を入れまして四九・三二%、フランスは五〇%、こんなふうな数字でございます。なお、こまかい注釈は省略いたします。
  140. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 そうすると、資本自由化のために企業体質を強化しなければならぬというけれども日本の工業力は世界で第三番目なんだということをよくいわれている。しかも、法人税は先進各国の中でも低めである、いま御答弁があったとおりです。私が調べてきた資料もそのとおりです。そうすると、それ以上資本自由化のために税金面でめんどうを見るというと、よく資本自由化というものは、みんな刺激を与えて一本立ちにするのだから、だから資本自由化してしまえと資本家の方々が言います。めちゃくちゃなことを言う。だけれども、そういうことをしたら、法人税でいつもめんどうを見なければならぬような企業体質じゃ困るじゃないですか。したがって、資本自由化のために体質改善、したがって租税特別措置をどんどん続けろ、強化しろということでは、これはもう政策目的も何もないと思うのです。そういう点については、大蔵大臣いかが考えますか。
  141. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは、租税の特別措置だけでこの自由化に対処しようというような考えは持っておりません。
  142. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 そうすると、大蔵大臣は非常にいい答弁をされました。つまり、租税特別措置だけでもって資本自由化に対処しようとは思わないという、やはりここで政策目的のために、租税の負担の不公平、国民が政治に不信を起こすようなそういう形での大きな租税特別措置などは資本自由化のためにとらない、幾ら財界やその他の要求があってもやらぬということに解釈してよろしいですか。そういう方向に持っていきたいということですか。
  143. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは産業の業種が非常に多うございまして、いま審議会でやっておりますが、自由化の一応のプログラムをきめる、こういうことになりますと、これに基づいて、今度は通産省のほうに設けられております産業構造審議会のほうで個々の対処策を考えるということになっておりますので、その過程において業種の実情が全部違いますので、対策もおのずから違うものがこれから出てくると思っております。
  144. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 そうすると、資本自由化についてのいろいろの対策というのを、大蔵省と通産省で御相談なすっておられると思いますが、私がいろいろな資料を見ますと、鉄鋼、造船などは技術も世界一、それから優遇措置も相当やられているし、巨大な産業であるから、自由化には耐え得られるAクラス、ところが中小企業、中企業、これは自由化に対しては相当警戒しないと、裏口からも攻略されるということをよく言われておりますから、大体これは常識だと思いますが、そうしますと、やはり資本自由化に対しては財界の中の大きな国家の助成措置を年がら年じゅう受けている造船それから鉄鋼などはむしろ必要なくて、中小企業にこそ、中小産業にこそ必要である、こういうような方向と考えてよろしゅうございますか。
  145. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはいますでにもうそうなっておりまして、昨年来とった特別措置は、ほとんど中小企業に関するものが特別措置としては一番多いということでもおわかりだと思いますが、その自由化に対処するためには中小企業への合理化投資というものがもっと進まなければならぬ。そういうものを中心とした金融政策、税金の政策というものはこれから当然重点を置いて考えられると思いますが、すでに過去のいろいろな措置によりまして国際競争力に耐える産業になってきているという部門についての強化策というものは、これから少なくて済むのではないかというふうに考えております。
  146. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 それは非常にいい方向だと私は思います。大企業というのはもうすでに鉄鋼はいま過熱でもって自主調整がほとんどできていないという段階でございますし、それをどういうふうにしてやるか、これから御質問したいと思うのですが、その際に、鉄鋼などが、私は大蔵大臣とちょっと意見が違うのは、相当手厚い保護がまだ続けられているのではないか。造船にしてもそれから鉄にしても、具体的に例を一つあげます。  たとえば鉄でございますが、財政投融資でこの前私は質問したら、大蔵省の銀行局長のほうはそっけない答弁で逃げてしまいましたが、財政投融資で六分五厘の安い利子ですね。開発銀行から鉄にどのくらい融資が行なわれておるか、大蔵大臣御存じですか。
  147. 高島節男

    ○高島政府委員 ただいまお尋ねの、鉄鋼に対して開発銀行からの融資があるかということですが、これはいま問題になっております普通鋼の分野、大手六社に関しましては、開発銀行からの融資はございません。
  148. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 開発銀行から融資がないのですか。開発銀行に融資残高というのがありますね。その中にちゃんと書いてありますね。
  149. 高島節男

    ○高島政府委員 その書類の中身でございますが、私の想像でございますけれども、開発銀行から普通鋼には出ておりませんが、特殊鋼という特別の分野がございます。これは、いわば中堅企業と申しますか、普通世間に喧伝されております八幡とか、そういうところと離れまして、機械の素材になる、たとえばモリブデンとかタングステンとかマンガンとか、そういうものを使いましてやっておる特殊鋼業者というものがございます。この業種が非常に体制が整備しておりませんので、体制整備のために開発銀行から融資をいたしております。しかし、これもまだ六分五厘の特利には相なっておりません。
  150. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 どのくらいの利子ですか。
  151. 高島節男

    ○高島政府委員 一般金利、開発銀行の金利は現在八分二厘に相なっております。
  152. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 そうすると、もう一つ造船も聞きたいのですが、鉄鋼業全体に対する租税の特別措置でどのくらい実額として利益になっているか、特別減免税措置で払わなくても済むものがありますか。資料鉄鋼業全体、大手五社でもいいですよ。
  153. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 資料は、先ほど申し上げましたように近く御提出申し上げたいと思います。特別償却のようにあとで取り戻すものがございますし、同時に、もう一つ、輸出につきまして海外市場開拓準備金、これも準備金でございますから……。
  154. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 私が鉄鋼界のいろいろなものからとったのでは、企業体質の改善で技術開発の促進、減価償却の計算の弾力化、輸出の振興とか開発の促進、景気調整機能の強化、それから交際費課税に関する特別措置の改正ということが鉄鋼業に関連するものとして考えられていますね。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕 これは私が大体計算したのだから、不正確だから控えておきますが、特別の融資とか、それから特別の大きな減免税措置で相当の額ですね。たとえば四十一年の三月末の私のいろいろな調べだと、開銀の貸し付け残高が百十八億円ある、それから租税特別措置では同様に相当利益があると思うのですが、それは私が言うよりそちらのほうが専門家だし、資料を持っているのだから、私は正確を期して申しません。  でも一つの例をあげますと、たとえば八幡製鉄が有名な政治献金をやっていますね。八幡製鉄がその政治献金をしている額、たとえばこういう問題についてお聞きしたいのですが、八幡製鉄の交際費はどのくらいか、通産省のほうで計算したことございますか。まず第一にそれをお聞きします。
  155. 高島節男

    ○高島政府委員 私のほうで調べたことはございません。
  156. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 八幡製鉄の交際費も調べないようで、それで特別の融資とか特別のいろいろの減免税措置をやっていくなんというのは、全く怠慢だと思います。私どもが聞いたところでは十四億七千万円にのぼるというのですよ。私から言うとすぐ数字をひっくり返すけれども、私はいろいろのものから調べた十四億七千万円、こんなに多額のお金ですよ。一つ会社ですよ。こういうことを十分つかみ切らなければ怠慢だと思いますね。  その次に、今度は政治献金については、たとえば許容額というのがありますね。それはどういうように算定されるという基準はできていますが、八幡一つ例にあげてもいいし、製鉄全部であげてもいいし、どのくらいになるのか。大蔵省のほうで、これは常識だと思いますが、計算したことがございますか。
  157. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 私どもは交際費、寄付金を調べてございますが、これは業種別に出ております。個別的な会社には出ておりませんので、業種別でよければ交際費の額につきまして申し上げたいと思います。  業種別に申し上げますと、昭和四十年度でございますが、鉄鋼業におきます交際費は十社で二十一億四千九百万円、一社当たり約二億一千四百万円ばかりになるかと思います。
  158. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 そうすると、交際費だけで二十一億円あって、その中で課税されていない部分が相当部分である、そうですね。
  159. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 課税は、御案内のように四百万円プラス資本金の千分の二・五の合計額を差し引いた額の半分ということになっておりますので、非課税の部分が相当あることは御指摘のとおりでございます。
  160. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 交際費の非課税は、鉄がそういう状況です。そうすると、これだけでも中小企業にとってはたいへんな額ですが、一社だけで八幡でもって十四億円、鉄全部で二十一億円、したがって、大蔵大臣が言われたように、今度の法案の中で中小企業向けの特別措置がだんだんとふえたりなんかするということはいいにしても、基本的な大もとは、やはり依然として一億円以上の資本金の会社の六〇%が主として大きく租税特別措置に恵まれている、恩恵に浴しておるということがものの本に書いてありますが、そういう状況であると判断してよろしゅうございますか。
  161. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 数字にわたりますので、私からお答え申し上げます。  先般、当委員会の御要求によりまして、租税特別措置の大企業、中小企業向け傾斜の程度と申しますか、どの程度大企業にウェートがかけられ、どの程度中小企業にウエートがかけられているか、こういう資料を三月に出したことがございます。租税特別措置全体で、四十一年度におきましては二千三百八十五億円でございますが、そのうちの企業向けの分は八百一億円でございます。そのうち大企業向けは三百六十四億円でございまして四五・四%、中小企業向けは四百三十七億円でございまして五四・六%、これから見ますと、五四・六%と中小企業にウエートがかかっております。  なお、御指摘がございました交際費につきましては、交際費はそもそも本来は会社の売り上げを維持するための費用だと思います。これをむしろ否認するほうが特別措置というふうに私ども考えております。しかもまた、先ほど申し上げましたように、四百万円あるいは資本金の千分の二・五という基準で中小企業は大部分はずれておるわけであります。したがいまして、交際費の否認対象になっておりますのは大会社であります。その数は約二万八千と私どもは見ております。これをお考えになっていただければいいかと思います。  なお、法人税の税収の大企業、中小企業とのウエートは、大体大企業の四千幾ら程度の法人が法人税一兆一千八百九十億円くらいの法人税の約六割を納め、残りの七十万の法人が残りの四〇%を納めている、これによって特別措置の減税割合と比較いたしますと、両者の関係は逆になっていることがおわかりになろうかと思います。
  162. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 いまの御意見に若干私のほうは異論があります。なぜならば、中小企業というのは、従業員数からいっても、それから中小企業の件数、会社の数からいったらたいへんですが、従業員数からいっても、中小企業のほうが大企業より多いのです。したがって、減免措置でもって恩恵に浴するものがあれば、それは当然中小企業が多いのはあたりまえなんです。だけれども、いまの数のとり方については、もう一回詳しく私のほうもやります。ちょっと解せない点が出ておりますから、その点、計算し直したり資料を新しく私ども要求してやりますが、全体として法人税の中の交際費は費用であると言うけれども、私は費用とは思いません。  どうしてかというと、一つの例を申し上げます。これは大蔵大臣にお聞きしたいのですが、政治献金の問題です。たとえていえば、大体政治献金は交際費の中からも出る場合があると、いろいろのものに書いてあります。同時に、政治献金については、政治献金すれば税金がかからない額というのが、御承知のとおりありますね。——時間がどんどん過ぎちゃったそうですから、簡単にお聞きします。  今度選挙制度審議会の答申で、たとえば「国または公共企業体と請負その他特別の利益を伴なう契約」云々「および特定の政府関係金融機関から融資を受けているもの」の寄付の制限ということがありますが、たとえば租税特別措置で、法人税でも、先ほど言ったとおり、いろいろと恩恵に浴しているものが一ぱいあります。そういうことについて、租税のほうでは、政治献金をすれば税金はかからない。その計算方法は大蔵大臣がよく御承知のとおりです。そうすると、税金がかからないからそれだけは早く落としてしまえということで、まるで税金が政治献金を奨励して落としていく、交際費と同じように。これは大きな会社ですが、交際費は、たとえばどんちゃん騒ぎをして——この間も議論になりましたが、会社の費用でいろいろと飲んだりいろいろ遊んだりしておるということについて、そればかりではないと大蔵大臣は言われたけれども、交際費というのは、税金で非課税部分は早く経費から落とせというので奨励する。同時に、政治献金にしてしまえば、その点は税金がかからないし、減税とか融資の点でいろいろと特別の措置にあずかれるからというので、それをやるということになるのですね。そういうことがいま国民の疑惑の的になっているのです。  それから、政治資金規正法の重要な課題になっていると思うのですが、大蔵大臣はこの問題についてどういうふうにお考えになりますか。たとえば融資をする、当然重要な産業にはこれだけの融資をするのだ、当然だと思っているのに、野党はいろいろのことを言うし、新聞はいろいろのことを書き立てる。租税特別措置についても同じである。それでは、そういうものと全然関係がないということをはっきりさせるためにどういうような措置をお考えになっていますか。大体、大蔵大臣は、政治資金規正法が成立するかどうかと言われているけれども、これについて成立さしたほうがいいと考えているのですか。それとも、自民党の大勢が、政治資金規正法は見送ったほうがいいといういろいろな意見がありますね。大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  163. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、公の考えと個人の考えと、二つ持っておるのですが、個人の考えを言いますと——これは個人ですよ。政治献金なんというものが、こういう法律の問題としてこういう形で取り上げることがいいかどうかということについては、やはり再検討する必要があるというふうに私は思っています。しかし、政府としての立場は、この問題をどう扱ったらいいかということを政府の審議会に諮問して、審議会のこれに対する答申が出てきました。答申は尊重して、そのとおりに措置するというのが政府立場でございますので、一応、いま出された答申案を基礎にして、政治資金規正法は今国会に提出してこれを通過させるということがいいというふうに考えています。
  164. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 私は、政治資金規正法はどうしても通すということが、黒い霧の批判を受けた、それをされいにした国会の初めの仕事として重要だと思いますが、同時に、この租税特別措置について、やはりしっかりした、国民の疑惑を招かないような強い態度をだんだんととっていく、なくしていくという方向に行くという税制調査会の方針も強く尊重する方向を政府が率先して出すということが、疑惑を晴らす、非常に大きな政治への国民の不信を晴らす大きなてこになると考えます。  そこで、最後にもう一つお伺いします。たとえば鉄鋼ですが、鉄鋼の自主調整というのが非常に難関に逢着しています。新聞を見ても、鉄鋼調整はお互いに譲り合ってやりなさい、これは結局、日本の財界のトップクラスの人たちが自分の利益にとらわれ過ぎて経済全体を忘れてしまっている、それで、鉄鋼の調整が一つつかないと、それが全産業に与える影響は今後大きい——この間堀委員が質問したとおり、八千万トンにも粗鋼生産力が達した場合には、今後景気の変動のときにはたいへんなことになるということが書かれてあります。これは毎日新聞。その他の新聞も全部同じですが、自主調整は絶望的である、幾ら政府が、お互いに譲り合えとか、妥協案を示して説得するとかいったって聞きはしない、全部ガリガリな鉄鋼業者がみんな競争してやっているわけですから。これも資本自由化に備えて、体質強化という非常にりっぱな名前がついているけれども、今後その成り行きが危ぶまれている。これについて、たとえば、互譲やあっせんや説得でなくて、強い態度を政府がとって、これは日本の一番基幹産業ですから、この鉄鋼の計画的な生産を進めていくということについては何か成案がおありになりますか。大蔵大臣としてはどうお考えになりますか。
  165. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま、この自主調整がもう絶望だというようなお話でございましたが、これについてのいきさつを一応政府委員から説明いたします。
  166. 高島節男

    ○高島政府委員 ただいま自主調整につきまして絶望であるということがいろいろ言われておりますが、現在の民間業界相互の自主調整といいますか、大手六社の間の話し合いが非常に難行していることは事実でございます。ただ、その場で言っておりますことは、自分らだけの話し合いではこれはなかなか打開がむずかしいが、鉄鋼部会には他に中立委員というものもございますので、そういうグループのほうから何かのアドバイスを受けたい、そうすることによって、やはり自主調整でこの問題をまとめたい、こういう御要求が現在出てまいっております。それで、中立委員の諸氏はおそらく近々のうちにこれに対しましていかなる態度をとるかということを、集まりを持って検討をされ、その様子いかんによりましては、ある程度のあっせん等の労をとるのにもやぶさかではないと思いますが、これはしかしあっせんをいたす義務があることでも何でもございません。事実上の関係でございますので、よくその実態を聞いて腹をきめるという段階にございます。  したがって、いろいろと外から見まして、これは絶望的であるという客観的な第三者的な見方はございますが、やっておる当人としては、難行はしておるけれども、何とかやはりその形でまとめたい、こういう意欲をまだ捨てていないという段階にあるわけでございます。
  167. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 努力してやらなければ、それはたいへんなことになると思うのです。やはりお互いに私企業同士でただ単なる紳士的な相談をしたり、中立委員がいろいろ持っていったり何かするというのは、一種の大もうけしようと思ってガリガリになっている人たちに対して、一生懸命道徳論で説得するようなものでして、そんなものはなかなか成功しないと思いますが、一ついい手があると思うのです。  それは、開発銀行、輸出入銀行——輸出入銀行は輸出奨励ですが、これが鉄鋼に特別に融資をしてやる、もしくは租税特別措置で先ほど言ったいろいろな優遇措置が講じられている、こういうたいへんな巨額な優遇措置が講じられていることについて、少し締める。これを切るぞ、これを切るぞというふうなことを言っておどかせば——おどかすということばは悪いですが、おどかせば、やはりそこのところは、非常に損得にたけた資本家の方々ですから、すぐ応急措置を講じて、それじゃこうしよう、ああしようということになると思うのです。実際、中小企業にはいろいろと行政官庁は中央でそういうことをおやりになっておる。先ほど大蔵大臣が、租税の方向を、中小企業を優遇するように持っていきたいということを言われているやさきですから、私は、大企業に対して、特に財界に対して、自民党政府に圧力をかけるようなというふうに新聞で報じられているような、こういう財界に対して、そのくらいの強いものを自民党政府、大蔵大臣、通産大臣はお持ちになるほうが、経済行政はやりいいんじゃないかと思います。  したがって、租税特別措置についても何かそういうことをくふうされて、財界を少しおどかす、計画生産ができなければこういうことをするというような措置はお考えになるでしょうか。何かございますか。大蔵大臣に御答弁願います。
  168. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 自由主義経済でございますから、干渉できない点はできないというかわりに、現実の問題としては、行政府は、行政指導というような形で、けっこうすれすれなところまでのいろんな行政を時に応じてはやっておりますので、この点は適当に行政指導権を活用するというよりほかはないと思います。
  169. 広沢賢一

    ○広沢(賢)委員 私の質問は時間がないのですが、私がいままでがんがんどなって質問して、おどかすとか言ったのは、結局これは租税制度負担の公平性というのをやはり貫いていかなければ、これが中心にならなければ、国民の納税意識がなくなるし、ほんとうに国を愛する気持ちにはならぬから、それを第一にするということだったのですが、大蔵大臣は非常に前進した答弁をされたわけです。特に私が財界を目標にしたというのは、今度の政治資金の問題といい、その他の問題といい、財界と、それから財政投融資並びに租税特別措置の関係、それから政治献金の関係が一番疑惑の的になっておるし、まだ納得しない人がずいぶんおるからであります。  したがって、最後に私が提案しましたのは、租税特別措置その他でもって、財界に対してぎゅっと言わせるきめ手を通産省でも大蔵省でもお持ちになるということであります。それから、与野党が一致してそういうものを国会できめるということですね。あまり行き過ぎて、景気過熱とかなんとかいって、政府の言うことも聞かないようだったら、そういうことをしたら、国会にも覚悟がある、通産省にも大蔵省にも覚悟があるということをやることは、企業の自主性とか、自由経済の原則をくずすものとは思いません。第一、現在の経済に対しては、国家独占資本といわれるとおり、国家の優遇措置が非常に大きいのですから、財界に対してそのくらいのきめ手を持たなければならぬと思うのです。そのきめ手をお互いに相談して、経済行政を景気過熱にならないように、財界ばかり大もうけしないようにやることは非常に重要なことではないかと私は思います。したがって、租税特別措置を今後やめていくのだという問題について一歩前進したと思いますが、私は、今度また、さらに法人税、所得税の公平性という点からいって、もう一回機会があったら御質問いたしたいと思います。  以上で終わります。
  170. 内田常雄

    内田委員長 横山利秋君。
  171. 横山利秋

    ○横山委員 私は、きょうは少し次元の低いといいますか、ことばをかえて言いますと、いまどうしても大臣の耳に入れてくれということが庶民的にたくさん言われております問題に限定をいたしまして、なるべく短時間の間にお答えをいただきたいと思うのであります。次元が低いとは言いましたが、これは野党の代議士として、できもしないことをいまこの段階で、しかも法案審議の最中で、もうじき上がるか上がらぬかという段階で言いませんから、そのつもりで、大臣に六つばかり、むしろ注文でありますが、お答えを願いたいのであります。  第一は、来年の税制改正についてであります。  来年のことについては、税制調査会もあるでありましょうから、まだ大臣としてはお答えがないのが普通でありますが、すでに参議院でありますか、地方税について言及をされました。なるほどこれはもっともな大臣の意見であると私は思ったわけであります。しかし、地方税に言及されるならば、国税の中にも大臣の御意見があるはずでありますから、その意味で、国税の中で、間接税についての大臣の御意見を伺いたいが、時間の関係上私の意見を一、二申し上げたいと思うのであります。  私どもも、この課税最低限をすみやかに百万円にすることを要望いたしておるのでありますが、税は直接税ばかりではございません。特に間接税の中において、歴代の総理大臣並びに大蔵大臣が芸能関係者に常に言っておられるのが入場税であります。あれほど芸能関係者のごきげんをとっていらっしゃるのであるから、入場税は、少なくとももうこの段階においては改正につとめられるのが普通ではないかと私は思っています。  御存じのように、入場税はここ十数年の間に、国税と地方税の間を行ったり来たりいたしましたし、税率もまた段階的税率から現行の一〇%の税率になりましたし、あるいはまた、映画となまものとの区別があったときと、それから今日のように一率一〇%という幾変遷を入場税は遂げてまいりました。今日の入場税が一率一〇%ということで、きわめて簡素化されたような感じはいたしますものの、これまた恒久不変のものではないわけであります。しかも、最近の入場の状況を、私も質問にあたって精査をいたしてまいりましたけれども、入場人員はまさに激減をいたしております。税率としては、入場料が高くなったのでありますから税収はむしろふえておるわけでありますが、このような最近数年間の非常な入場税の実態が変化をいたしておるときでありますから、私は、まず第一に、私の意見として、積年、前にありました再生産のきくものと再生産のきかないもの、つまり全体的な入場税を下げることができなければ、なまものと申しておるわけでありますが、演劇とか演芸とか音楽とかというようななまものについては再生産がきかないのでありますから、その点について考慮をする必要があるのではないか。全般的な入場税を下げるか、あるいはまた、なまものに限って、前のときと同じように、実情を考えて是正をする必要がありはしないか。また、第三番目には、いま課税最低限が、たしか三十円であります。三十円の課税最低限というものは、まさに無用といってもいいくらいであります。なるほど、さがせば三十円の課税最低限のものもあるかもしれませんけれども、実際問題として、児童演劇を例に引いてみましても、まさにその三十円では実効が一切ないのでありますから、この際、明年の入場税に関し、あるいはまた、同じような問題が物品税にもあるわけでありますが、間接税についての大臣の感覚を一度聞きたいと思っておるわけであります。
  172. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 間接税につきましては、私もいろいろ意見を持っておりますが、これは、ここで言い出すと一、二時間かかりそうでございますから、これはまたあとから自分の考えについてゆっくり述べてみたいと思っております。  さしあたり、ただいまの御質問でございますが、昭和三十七年の税制改正をやったときにこの入場税の問題を扱いました。あのときは消費税課税物品とのバランスをとりながら、負担——あのときは大幅の減税でございましたが、大幅の軽減をはかって今日まできておりますが、問題は、やはり他の所得税の減税要望が非常に強いときでございますし、これらとのバランスの関係でいまの入場税がどういう立場にあるかということで考えるよりほかしかたがないと思いますが、私は、この税金をやはりもう一ぺん検討していいと思っておりますので、少し勉強さしていただきたいと思います。
  173. 横山利秋

    ○横山委員 御検討くださるそうでありますが、海外の例を引いておるひまはございませんけれども、海外におきましては、補助金を出すか、あるいは免税点を高くするか、あるいは税率を思い切って軽減するかの方途が芸術擁護として行なわれておるし、わが国におきましても、国立劇場が建設をされました。国立劇場を建設いたしましたときには、日本古来の芸能を保護するという特殊なものの考え方があったわけであります。国立劇場で映画をするということはございませんので——あそこは免税でありますね。その観点があるならば、一体、今日のなまものにつきまして、当然税率が違っていいのではないか、こういうふうに私は思うのでございます。国立劇場でも、国立劇場が主催をいたしますときには無税でありますが、同じ芸能を国立劇場を借りて業界がいたしましたときには課税されるわけです。これは非常におかしな話であります。ですから、国立劇場をつくって、あれだけ多大の資本投下をして古来の芸能を守るというのであるならば、国立劇場で通常行なわれるものの入場税については、どうしても国策上も段落をつけていいではないか、こう思っておるわけであります。いま大臣が検討するという話でありますから、ひとつ、主税局長もその線に沿って、あなたの意見を聞きたい。
  174. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 私どもも大臣の仰せのごとく検討したいと思います。  ただ、大臣も申されましたように、所得税の減税、これとのかね合いでどういうふうに持っていくか、その観点だけで一つむずかしい問題に逢着すると思っておりますが、なお、いま過去の経験から見まして、再生産のきかないなまものの演劇等につきましての御要望の強いことも存じております。それから免税点につきましても、特に臨時開催の興行の免税点、これらにつきまして、はたして三十円がいいかどうか、これらにつきましては、十分に検討をいたしてまいりたいと思っております。
  175. 横山利秋

    ○横山委員 その次には、大臣に一つの手紙を御紹介いたします。これは女の人が——女の人というとおかしいのですが、御婦人が突如として私の部屋を訪れてまいりまして、そして、これを見てくれ——印刷物ではありますけれども、十分意を尽くしておりますから、この手紙を朗読をいたします。これは私ども自身、つまり大蔵委員自身にも責任のあることでありますから、決して大臣だけに何とかしろと言っておるつもりはございませんが、ひとつお聞きを願います。「計理士の既得権回復のため」というテーマであります。  拝啓  ものみな希望に萌える初夏、木々の若々しい青葉にそむいて、公認会計士特例試験制度の廃止、計理士資格の打切りと、私共、取り残された家庭には、誠に暗い空気が漂っております。想えば、十数年の歳月を費して去る。昭和三十九年六月、特例試験制度を獲得し、研鑽によって永年の希望が叶えられると主人達の晴れ晴れした笑顔も、あれから二ヵ年半、五回の試験は瞬く間に終ってしまいました。  この間主人達のあらゆる悪条件を克服しつつ、口金途に試験に取組む努力の姿は、私共家族でなければ、到底真の理解はでき得ませんし、同じような実状を体験された皆様に、今さら申上げるまでもございません。現状は、特例試験制度の終了と共に、約一、四〇〇名の現業の先生方が、計理士の資格を奪われました。  このため、計理士として、今まで行って来た店頭売買銘柄会社の監査をはじめ、投資育成会社関係、各種組合の監査、裁判所等の鑑定、及び計理士であるゆえの学校法人、PTA、社団、財団法人等の監査、組織変更の際の監査証明業務等広範囲の業務を失うことになり、ひいては私共家族の生活さえ脅かされる結果となりました。  今日、計理士会は残された会員の既得権の回復と、公認会計士への移行を目標に、制度改善の運動に突入いたしました。  おそらく歴史的経緯からみて、たとえ運動が長期化することがありましてもこれが最後の改善の機会ではないかと予測されております。 云々として、この奥さんが発起人となって、なくなった計理士の奥さんの皆さんに運動をしていられるのであります。私も大蔵委員の一人といたしまして、この計理士については特例試験を五回行ない、そして終わったあとは計理士がなくなるという審議に参加をいたしました者として、いささか責任を感じておるのであります。  ただ、私どもがいささか感覚的に認識不足の点があったと思いますのは、ここにありますように、店頭売買銘柄会社の監査をはじめ、労働組合からPTAから、あるいは裁判所等の鑑定というような業務一切が四月一日からできなくなった。もちろん、税理士になっていらっしゃる方は、税理士業務としての収入があるが、単独計理士についてもそうでございますし、税理士をやっておられる方でも、この面の収入というものは一切四月一日からなくなったということは、実は私自身にとっても心に残ることなんであります。自分が審議に参加しておいてこういうことを言ってはいけないのでありますが、憲法上における権利といいますか、既得権といいますか、それをここまで剥奪をした結果につきまして、この中のことを言うと、私も心中じくじたるものがあります。しかしながら、いまそれでは、国会であれだけの決議、あれだけの審議をさらに白紙に返す——白紙には返りませんけれども、もう一度特例試験をここで行なうか、もう一度特例試験を復活するかということになりますと、じくじたる私でも、この国会の権威とか従来の行きがかりとかいうものがありまして、なかなか、実は私も率直に言えば、よしというところまではまだ結論に到達をしていない。しかしながら、この訴えの中で、政府側もそうでありましょうが、私どもも、どうも心中じくじたる気持ちがする。これだけの収入が——四月一日から一切おまえはやってはならぬ、やったら違法である、法律違反であるというて、一切のこれらに関する収入を剥奪してしまったということについて、私は心中じくじたるものがあるのであります。  大臣に、この種の質問を通告しておかれたのでありますから御存じだと思いますが、率直に、一体これはどうお考えになるだろうか、私どもも責任があるけれども政府側としてもこれでいいものかどうかという点について御意見が伺いたい。
  176. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題はもう御承知のように、公認会計士と計理士との長い間の問題でございまして、そこで先般、特例試験というようなことで、ようやくこの問題に終止符を打つということになりまして、こういう制度がとられたということと、この国会におきましても、そういう形で解決してもいいが、これがまた二度ずるずると期限が延長されるようなことでは困る、今度の措置をもってこれで一切延長の措置はとらないという希望をつけられて通った措置でございまして、その期限が来た。したがって、これを一応ここで打ち切るというのがやはり本筋でございまして、個々人の事情を見ますといろいろ同情すべきことがあることは、私どもも陳情を受けて承知しておりますが、やはり制度の問題としては、ここで一応ピリオドを打つということをする以外には方法がないのじゃないかと私は考えております。
  177. 横山利秋

    ○横山委員 だから、でき得るならば、ここではっきりしためどをつけるということは避けたいと思っておるのでありますが、ただ大臣、いまあなたのおっしゃるように、何を一体制度としてはおっしゃっておるのか私はわからないのでありますが、制度というのは、二つあるわけですね。一つは特例試験の制度であり、もう一つは計理士としての制度であります。私もいま率直に言いましたように、私どもにも責任があるのだから、この全部の復活ということは、別な意味でじくじたる気持ちがするけれども、しかし、この種の店頭売買銘柄の監査をはじめ、たくさん仕事をやってきたことを、一切やってはならぬ、その収入は四月一日から一切ストップだという点と、それから、いままで長年やってきたこのキャリアというものを全然これから認めぬということについて、私は何らか別な角度がありはしないかという気がするわけですよ。その辺の御検討を一度願いたい。私どもにも責任があるけれども、ひとつ御検討が願いたい、こういうわけであります。あなたがここではっきり言われるとなんですから、検討する余地があるかどうかを検討するかはともかくとして、私が自分の反省として申し上げることをもう一ぺん言わせてもらいます。  とにかく、四月一日からいままでやってきた仕事は一切してはならぬ、その収入は一切ゼロであるということについて、国会の決議とかなんとかいう前に、一体、そういうことがわれわれに許されたことであろうかどうかというような点についてまで私は言及をしておるのです。しかし、それがきまったことであるからというならば、全然別な角度で検討の余地がないかどうかという意味であります。
  178. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 この善後措置について検討の余地があるかどうかということ、事務当局ではとうてい答弁できない問題なのでございますが、まだ大臣とももちろん相談いたしておりません。  しかし、御承知のように、この間の附帯決議には二つの条項が含まれておるわけでございます。一つは、特例試験を二度と延長しないということと、もう一つは、会計制度を公認会計士という制度に統一する、計理士制度はやめるべきである、その結果、いまおっしゃるように、個々の人にとっては非常にお気の毒な人が出るわけでございます。しかし、大部分を見れば、今度最後に試験を受けた人で不合格になった人が六百人ばかりおるわけでございますが、そのうち税理士資格もないし、また第三次の公認会計士の受験資格もない、いずれの資格もない人が九名ございます。もちろん、公認会計士になる意思を持っていた人のすべてが最後の試験を受けたかどうかわかりませんけれども、大部分の人はその最後の試験をおそらく受験なさったと思います。その不合格者の内容を見ますと、いずれにしましても、わずかではありますけれども、非常にお気の毒な人がおられることは間違いないのであります。しかし、これを別途な形でというのは、会計制度については、計理士制度を廃止して、公認会計制度に統一すべきだ、それを前提として特例試験を受けさせようじゃないか、しかも、それは延長すべきじゃない、こういう経過になっておりますので、いまここで何らかの善後措置について検討の余地があるかどうかということは、事務当局としては名案を持ち合わせておりませんし、もちろん、大臣とも実はまだ相談をいたしておりませんので、これ以上、ちょっと私この場で御期待に沿うような御返事がいたしかねる、こういうことでございます。
  179. 横山利秋

    ○横山委員 だから、理屈で押せばそういうことになります。けれども、私がくどく言っておるように、そういう取りきめをしたいままでの既得権を全部剥奪するあり方というものが、私どもにも責任があるけれども、私の把握している数字はあなたの言う数字とはちょっと違うのですよ。そういうことについて、一体、やってよかったか悪かったか、合法であるか非合法であるか、憲法上正しいかどうかという問題が残るけれども、それを言うと問題がある。だから、そういうことを言う以外に、一度白紙の立場で今日の状況を精査し、そして出発点に返って一度再検討してみたらどうかと、こう言っておるわけでありますから、大臣ひとつ、ニュアンスに富んだ御感想をいただきたいと思います。
  180. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは長い間の懸案にようやくこういう措置をとってケリをつけようということで、国会の意思もいままで明瞭であったためにそのように私どもも措置してきたということでございますので、ここでわれわれがいまかってにこの制度についてまた再検討するとかなんとかいうことは、ちょっと私の口からは言いかねる問題でございます。私は、ではこれを延長していったらどうか、それは六百人がみんな試験に受かるまでという意味ではないと思いますが、そうなると、もうけじめがつかなくなると思います。
  181. 横山利秋

    ○横山委員 そういう意味で言っているのじゃないのですよ。
  182. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 しかし、これは今日のこういう気の毒な人が一時出るということは予想されての措置でありますので、この措置をさらにまたここで延長するということは……。
  183. 横山利秋

    ○横山委員 延長とは言っていないのです。  委員長、もう一ぺん。非常にデリケートなお伺いをしているのですから、まあ、もし御答弁がむずかしければ、次回までにひとつ十分に——まだ大臣この事情が十分におわかりになっていないから、そばで牽制されると、うかつなことを言ってはいかぬというようなお気持ちがあるようでありますから、事情を十分検討して、適当な機会に御見解を伺うということにしてはいかがでございましょうか。
  184. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 実は、この間の事情は大臣御自身もよく御承知でございますし、われわれも十分に説明いたしたつもりでございます。牽強付会な御返事を申し上げているようなつもりは毛頭ないのでございますけれども、ただいま先生から御提出になった問題は、この特例試験制度を始めるときにすでにあった問題でございます。それに対しましてああいう結論を出しまして、政府としてもまたその趣旨に沿って努力するというはっきりした答弁もいたしておりますので、政府がこの段階において、当初からありました問題について違った態度をとるということは、私どもいささかできかねる問題じゃないか、こういう意味でお返事申し上げているつもりでございます。個々に非常にお気の毒な人がいるということは、私自身もよく承知いたしております。
  185. 横山利秋

    ○横山委員 どうも誤解があるようですが、私が申し上げているのは、全面的に復活をしろというところまでは言っていないので、いろいろな方法がある。いろいろな方法を、いままでの行きがかりが問題であるなら、別な角度でやる方法もあると思っているのですよ。だから、そういう点でかたくなに、本問題についていささかも考慮の余地なしということを言われると、それじゃなんだ、いろいろな問題があるじゃないかということを言いたくなるのだが、私どもにも責任があるのだから、政府側としても、いままでの行きがかりといいますか、いままでの経緯は経緯としてお互いに了承せざるを得ぬ、いろいろなことを言ったって、了承せざるを得ぬ。その次元とはまた別な立場でこの種の訴えに耳をかして、そして、別な角度で検討する方法はないものかということを検討してもらいたいということを言っているのですよ。
  186. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 私もそのつもりでお聞きいたしております。単純に再延長すべきだということを御主張なさっているとは思っておりません。われわれもいろいろ実は検討いたしたつもりでおります。しかし、この経緯に少なくとも抵触しない範囲で何か名案があるかということを考えなければならないとすると、名案の持ち合わせがないということでございます。
  187. 横山利秋

    ○横山委員 あったらどうしますか。
  188. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 私、現在の段階では持ち合わせございません。
  189. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、ああいう人の言うことを聞いておったら、何かにつけて話が進まないのだな。だから、いま頭が悪いものだで名案がないとおっしゃる。頭のいい人は中にはあるのですから、名案が出たら、大臣も、それじゃひとつ一ぺん検討するということをお答え願えれば次の質問に進むのでございますが、どうでございましょう。
  190. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 横山さんもいきさつを御存じでございますので、こういう問題をここで持ち出して回答を求めるというのには熟していない問題だと思います。ゆっくり、お互いに別の場所で研究することがようございましょう。この場所で問題にするのは熟しておりません。
  191. 横山利秋

    ○横山委員 大臣はやっぱり政治家です。役人とは違いますな。  それでは、次に移ります。  これは大臣の御意見を伺いたい問題ですが、私、法務委員並びに交通関係者として例の反則金の問題ですね。あれは国税として、国の財政収入としていままで入ってきた膨大な交通違反の罰金を、今度は交通巡査が一ぺんに自分でとにかく処理ができるこういう案がいまどんどんできていきそうですね。交通巡査がそこで裁判官の役割りまでしてもよろしいということであります。しかもそいつは、話を聞きますと、地方財政のほうへ目的税的に回すというのであります。交通関係の交通安全防止のために財源を大量に投下すべきであることは、私も全く賛成なんでありますが、一つには、法務行政的立場から申しますと、一体、そういうものを検察官と裁判官とがごっちゃになって、警察官が、おいこれは一万円だ、これは五千円だというて、ぽんぽんと警察官でありながら検察官の役割りを、同時に裁判官の役割りまでさせることについていかがかと思うし、それからまた同時に、それが目的税的な方向になるということについて、税理論上いかがかと思うし、これは大蔵大臣が交通事故防止のための財源を渋っているからこんな妙な案まで出てくるのではないか、こう思うわけです。はたせるかな、最高裁判所長官横田さんは、この案に対しまして、裁判機構と検察機構とを混同するおそれがあるという意見まで出しておられるのでありますが、大臣の御意見を伺いたいのであります。
  192. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 反則金につきまして、その法的性格からいいまして、どうもいろいろ裁判との関係もあるので、こういう制度自体がおかしいのではないかという御質問と、それから、こういうものを目的財源に使うというのは、順法意識からいってもおかしいのではないかという御主張だと思います。  元来、反則金制度は、詳しく申し上げますと、今回とろうとしておりますのは軽微な反則を犯しました者に対しまして、警察官が、これだけの反則金を納入すれば公訴はしないということで、実際上反則をした人は、その通告を受けて、その反則金を納めるかどうかは任意でございまして、納めなければ公訴は継続いたしまして普通の裁判に乗っていくわけでございます。そういう制度でございますから、その意味からいっても、警察官が裁判官の役割りをやっておるわけではございませんで、かりに罰金を納めなければ裁判は受けれるわけでございます。そういう制度でございます。まあ、態様といたしましても非常に軽微な犯罪を対象としております。  それから目的財源に使うことでございますけれども、私らも目的財源というふうには考えておらないのでございます。現在、閣議決定いたしまして国会のほうに提出されることと思いますが、その内容は、国の収入に入りまして、当分の間、国は現在の交通安全対策の重要性にかんがみて、その全額を地方公共団体の行なう交通安全施設に充当しようということでございまして、本来は一般財源として国に入ってくる、しかし、こういう情勢であるので、交通安全施策の充実をはかるために使おう、こういう趣旨でございますので、目的財源というふうにはっきりしておるということではございません。
  193. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは少し形式論だが、まずあなたの意見の矛盾は、警察官が一万円だあるいは五千円だというふうに課したものは、これはそこで警察官が裁判所の裁判官たる役割りをするわけですよ。異議がなければといったって、そういうことになる。事実上警察官が裁判官たる役割りをするのです。それに対して異議ある者にはその後公訴ができるというのでありますから、これは明らかに警察官の職務執行法から拡大をされていくのではないか。  それから、警察官に銭を払った、反則金を払った者は前科にならない。警察官に金を払った者は前科にならないのですよ。金を払わないで上まで行った者は前科になる。御存じでしょうな。
  194. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 上までまいりまして前科になるかどうかは、裁判の結果だと思います。
  195. 横山利秋

    ○横山委員 一万円払わなければならぬものが、かりに事実だとした。それはもうだれが見ても一万円だとする。一万円警察官にそこで払っちまえば前科にならない。上まで行って一万円になったら前科になる。そういう事実は御存じですか。
  196. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 その場合に、かりに駐車違反をいたしまして、警察官は駐車違反だと判断をする、そこで一万円納めれば駐車違反としての公訴はしない、前科にもならない。納めればですね。しかし、もし納めないで、自分は駐車違反だと思っておらぬということで裁判で争うんだというつもりなら、公訴はできるわけでありますから、決して前科にならない。
  197. 横山利秋

    ○横山委員 一万円と、上へ行ってきまれば前科になる。負ければ……。
  198. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 負けなければ前科にはならないわけです。
  199. 横山利秋

    ○横山委員 どうですか諸君。これはおわかりでしょうか。一万円そこで持っていて、さっと出せば前科にならない。そこで争うといったって、事実は同じですよ、あとになって一万円納めれば。納めても前科になる。納めないということはないから、納めれば、同じ一万円で、金のあるやつは得をし、金のないやつは前科がつくんですよ。そんなばかなことはない。これは大蔵委員会で本来審議すべきことではありませんけれども、金のあるやつといったって、そんな大きな金でないことは私も承知しておりますけれども、それでも、その場で金を出せば前科にならない。あとで出せば前科になる。(「その場で払うわけじゃない」と呼ぶ者あり)その場でなくとも、自分が応諾すれば前科にならない。銭を出すことを認めれば——事実は同じことなんでしょう。これは駐車違反なり何かやった事実は同じことだ。自分がそれに少しでも異議を言えば、ということにしましょうか。異議を言って、上まで行って争えば前科になる。(「いままでどおり」と呼ぶ者あり)いや、そうじゃない金を出せば前科にならないんだから。  私はここでそういう法理論をやろうとは思わないんですけれども、しかしながら、これがその目的財源であるかないかの判定については、あなたは、一般財源に一ぺん入るから、あとからそれと見合う金を支出するから目的財源ではないと言うんだけれども、あなたが言っておるように、実際は同額の金を出すということでしょう。事実上これは目的財源だ。単に形式をてらっただけじゃありませんか。しかも、それをどういうふうにお分けになるつもりかしりませんけれども、もしもその発生した県に、一億円発生したら一億円を渡すということになりましたら、これは明らかに実質上目的財源ですね。そこのところを多少ごまかしても、ある程度それにもたれてやるということになれば、これはまた目的財源ですよ。私は、大蔵大臣がこういう方法に御同意をなすったことについて、その政治的感覚を実は疑うわけであります。本来、これは交通財源が足らないからもっと出せということに、気前よく——、気前よくというか、重点を置いておられるならば、こんな理屈は、こんな感覚はぼくは出てこないと思われるわけです。何で大蔵大臣としてこういうような方式に御同意をなすったものか。大蔵大臣が交通違反で引っぱられることはないと思うのですが、交通違反の現状というものについて、もう少し御存じにならなければこれはいけないんじゃないかと思うのでありますが、大臣、どうですか。
  200. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大量に発生している道交法違反事件の迅速な処理、合理的な処理ということをはかるために、一定の違反行為に対する処理手続の特例をつくりたい、この要望は、私も妥当な要望であると考えます。こういう要望と結びついて、実は、地方におきまして、特に府県でございますが、これを簡素化することと結びついて、この財源はこれを地方の財源としたいという要望が出てきたのがこの法律案をつくる発端でございまして、この間に処して、私どもはおっしゃるとおり、これはなかなか、よくない——私もいい法律であるというふうには考えていません。  それなら、大蔵省が別にみんなが要求するだけの金を出してやればこの問題が解決するかといいますと、そうじゃなくて、それでもなおかつ、いまの大量に発生しているこの違反事件に対する処理は何かの形をしなければいかぬ、こういうことから、道交法違反者に対して、警察本部長が政令に定める一定金額、この反則金の納付を通告して、その通告を受けた者が一定期日までにこれを納付したときは、この事件の公訴が提起されなくなるという形をとって善処したいということになったわけでございますが、大蔵省が予算を十分にしてやったとしてもこの問題はなおかつ残りますので、残るといたしますと、実際の徴収がいま言ったような形になりますと、この反則金をあげるについては、ずいぶん地方の警察官の手をわずらわすことでございますから、国がこの金を今後の交通対策の費用に使う。いま言ったように、違反であげたこの金額をそのまま渡すというんじゃございませんで、別個の基準で、特別交付税の形でこれを府県の交通対策費として交付するという措置をとることもいいんじゃないかということで、私ども最後はこの法律案に同意したのでござ  いますが、一番困った問題は、この反則金が国の収入になるべきものか地方の収入になるべきものかということで、ほとんど関係者は地方の収入になるべきものだということでございましたが、私どもは、この性質上、これは国の収入になるべきものであるということを最後まで主張して、この主張がいれられましたので、私どもこういう形の法案に賛成したと、これが正直ないきさつでございます。単に予算を出すだけでは解決しない問題でございますので、こういう法律が必要だということを認め、かつ、その金を特別に交付金の形にして交通対策に出すことも悪いことじゃないというふうに考え法律でございます。
  201. 横山利秋

    ○横山委員 残念ながら、私は大臣と所見を異にいたします。とにかく、同じ一つのことがあったのに、ある者は前科でなく、ある者は前科である。その基準は、文句を言わなければ前科にならない、文句を言ったら前科になるというような傾向を呈しますことは、民主主義の上からいいましても、これは非常に弊害といいますか、国民と警察官との間における民主的な風潮というものを阻害するおそれが多分にある。まあしかし、これは別な角度で議論していきますが、大蔵大臣もひとつ、法案をお取り上げになる場合には、自分の所管でないにいたしましても、選挙で出てこられた有権者の立場というものをもう少しお考えくださることを要望したいと思うのであります。  その次は、この大蔵委員会に退職金に関する法律案が出ておるのでありますが、それに関連して、これは直接には大蔵大臣でなくして、人事院の関係になるのでありますが、国鉄、電電、それから専売、この三公社につきましては、国家公務員等に対する退職金に関する法律で一括されておるわけであります。三公社は、公共企業体等労働関係法によりまして団体交渉並びにその他の団結権が認められておるわけでありますが。しかしながら、退職金に関することについては法律事項とされておるのであります。歴史的経緯がありまして、昭和二十五年にこれに関する調停案が公労委から出ました。この調停案では、昭和二十六年以降については、公共企業体として、職員に適当なる退職金制度の樹立のために協力されることが望ましいとされて、その調停案について、調停委員長は、退職金増額の問題は労働条件の中に入ると明言し、調停委員会の希望を率直に申し上げれば、国鉄の場合は、公労法のたてまえからいって、法から取りはずして、公労法第八条二項に従って、団体交渉により新しい退職金の制度を打ち立てることであると明言されました。次いで、これに関する仲裁裁定が二十八年三月十日に出まして、「日本国有鉄道職員の退職金に関し、昭和二十五年十一月六日国有鉄道中央調停委員会が提示した調停案の受諾に際し、両当事者間に取交わされた覚書き第一項「協議」中には、団体交渉、従ってその結果である労働協約の締結を含むものと解釈するのを適当とする。」つまり、退職金に関しては、団体交渉であり、労働協約を結ぶのが適当であると仲裁裁定で出たわけであります。しかるところ、その後政府は、この仲裁裁定があるにもかかわりませず、これをがえんじないで、国家公務員等退職手当法によって、三公社の退職金を団体交渉とすることをがえんじていないのであります。  この点につきましては、累次の国会におきまして問題にもなり、場合によっては議員提案をされたこともあるわけでありますが、私どもとしては、憲法、労働法、公共企業体等労働関係法並びに仲裁裁定など、一連のこの事実からしまして、当然これは今日の法律からはずすべきであると考えておるのでありますが、人事院の考え方を承りたいのであります。
  202. 増子正宏

    ○増子政府委員 ただいまの御質問、人事院にということでありますが、国家公務員の退職手当に関しては総理府人事局で所掌いたしておりますので、私からお答え申し上げたいと存じます。  三公社の職員の退職手当が国家公務員の退職手当と一緒に一つ法律規定されておりますことは御指摘のとおりでありますし、また、この件につきまして従来からいろいろ御論議がありますこともまたお説のとおりでございます。  ただ、現在政府といたしまして、いろいろ御議論のあるところでございますけれども、これを三公社につきまして分離するといいますか、この法律の対象からはずすということにつきましては、まだ積極的な結論を出しておりません。と申し上げるよりは、そのような改正をしなければならぬということは考えていない状況でございます。
  203. 横山利秋

    ○横山委員 退職金は労働条件であると思っていますか。
  204. 増子正宏

    ○増子政府委員 労働条件の重要な部分であると考えております。
  205. 横山利秋

    ○横山委員 労働条件は団体交渉事項であるということを理解いたしますか。
  206. 増子正宏

    ○増子政府委員 団体交渉の対象となるものであるということも理解いたしております。
  207. 横山利秋

    ○横山委員 仲裁裁定は守らなければならぬものだと思っておりますか。
  208. 増子正宏

    ○増子政府委員 お説のとおり、両当事者が拘束されるわけでございます。
  209. 横山利秋

    ○横山委員 それほどわかっておりながら、なぜ団体交渉の対象事項とすることに積極的でないんですか。
  210. 増子正宏

    ○増子政府委員 従来、私ども承知しておりますところでは、団体交渉の対象となし得る事項につきましても、これを法律規定することが違反といいますか、そういう法律でその内容を規定することが許されないというふうには、あるいは違法であるというふうには承知していないわけでございます。
  211. 横山利秋

    ○横山委員 三公社の問題で、そういうあなたのお説のような事例がございますか。
  212. 増子正宏

    ○増子政府委員 私、三公社の労働条件のすべてにつきまして承知しているわけでございませんので、いまお尋ねの件には、私はお答えいたしかねるわけでございます。
  213. 横山利秋

    ○横山委員 人事局長にこれ以上聞きましても、もう事務的な答弁ばかりであります。  それにしても、人事局長は、この団体交渉の対象であり、また、仲裁裁定は両当事者を拘束するものであるということを言いながら、しかも、これをなぜはずしてはいけないのかということについての積極的な御答弁がないわけです。ただ、従来の経緯からいって、法律に書いてあるから、それに合わせなければならぬというお話でありますが、仲裁裁定で明白に、団体交渉の対象事項であるから、労働協約を締結するのが適当であると言い、それが両当事者を拘束するということを明白に認めておられるのであります。これはいまや大蔵大臣の所管外になってはいるものの、閣僚の一人としてどう思いますか。  これは私はこう思うのです。団体交渉の対象事項にしても——普通のあり方にしたところで両当事者があるわけですから、それが野放図に退職金が多くなるとか安くなるとかという問題ではありません。ただ、企業には企業の特殊性がありまして、最近、各民間企業でもそうでありますが、退職金のカーブの描き方は非常にむずかしくなってきているわけです。老年者を優遇する、長期勤続者を優遇する、あるいは若年労働者の離職を防止するという経済の変転に際して、民間企業の退職金のカーブの描き方はいろいろくふうをこらしている。公共企業体三公社は、その意味におきましては、民間企業的な色彩を何とかして出して、そうして、ある意味では、政府のいう独算制についてはいろいろ考えなければならぬ、くふうをしなければならぬところである。ところが、国鉄総裁、電電総裁、それから専売公社総裁は、それに対して当事者能力を、いまの春闘の問題でもそうでありますが、あまり持っていないわけであります。したがって、処分することは自由であるけれども、労働条件についての自由裁量、ニュアンスというものを持っていないわけであります。これは国鉄のみならず、大臣の所管事項の専売においても同じでありまして、公社の理事者側に、労働条件であれば、仲裁裁定が出ておるならば、それらについて退職金を法律のワクからはずしたところで、格別大きな変化が起きるわけでもない。当事者能力を一歩ふやしたいということが、前池田総理大臣、佐藤総理大臣を通じまして今日まで推移してきておりますから、この際、国家公務員等退職手当法の中から三公社の退職金をはずしたらどうか、こう考えるわけでありますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  214. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 公共企業体の自主能力というようなものにつきましては、前からも問題になっておりますように、いま一時休業している形になっておりますが、公務員制度審議会において、特にこの問題を中心に検討をしようということがきめられておるときでございますので、こういう問題とあわせて、そこで一括して検討しようというのが、私ども政府考えでございます。いまおっしゃられたような問題も、交渉能力との関係において当然検討される問題であると思いますので、個々の問題ではなくて、全般を、この審議会を場所ときめて至急私どもはこういう問題を検討したいという考えでおりますから、そこで勉強したいと思います。
  215. 横山利秋

    ○横山委員 おことばではありますが、大臣のおっしゃるのは公務員制度の問題でしょう。これは三公社の問題なんです。公務員制度審議会は国家公務員の団体交渉を中心に議論をすればよろしい。これは国鉄、専売、電電の三公社の問題であり、しかも、民間といいますか、政府の仲裁委員会の裁定済みの問題である調停案でも、仲裁裁定でも出ている問題なんです。あとは判断だけの問題になっているわけです。  ただ、時間の関係上私は申し上げておきたいのでありますが、本委員会で退職金に関する五百万円まで無税ですか、その法律案の審議をいたします際に、私どもとしては、この問題はどうしても政府側の同意を得たい、また、同僚諸君の同意を得たいと考ておるわけですが、大臣のおっしゃるように、かりに公務員制度に無理に関連さしたとしても、そう気長に待つわけにいかぬのであります。でありますから、この問題について、もう一度歴史的経過をも十分聞いてもらいまして、大臣は専売の監督大臣でありますから、そういう意味合いにおきまして善処をわずらわしたいと思います。よろしゅうございますか。
  216. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまあなたのおっしゃられるほうが間違いでございまして、この三公社五現業のこういう問題は全般の公務員制度とも関係することが非常に深いので、特に三公社五現業のこの当事者能力の問題を中心として、この公務員制度審議会でこれを扱ってもらおうということを各省の次官会議において決定した、こういういきさつがございますので、そういう意味でこの審議会で一括検討しようということでございます。
  217. 横山利秋

    ○横山委員 この問題といいますと、何ですか、大臣。退職金じゃないのでしょうか。
  218. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いや、当事者能力の問題の解決とからんで、三公社五現業のいま言ったような問題にまで当然当事者能力と関係が出てまいりますので、そこで一括して検討したいというのが次官会議の決定で、政府もそれを承知して、この審議会で扱おうということにいまなっておりますので、全部統一して検討したいということを申したわけでございます。
  219. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。あなたの御意見はわかりましたけれども、私の意見は違うのですよ。すみやかに検討してもらいたい。これはまた法律案の審議の際に申しましょう。  最後は、これは大臣にお話しするまでもないと思いますけれども、大都市、中都市の区画整理事業の問題について、どうしてもこういう問題について大臣にひとつ注意を願いたいという意味において大臣にひとつ説明をしておきたいと思うのです。  大臣、ちょっとこれをごらん願いたいと思うのですが、換地の問題であります。大都市は全部これでたいへんなことなんですね。私は名古屋でありますが、名古屋は都市計画が非常に進んでおりまして、もう市内ならどこでも換地の問題で一ぱいであります。今度政府が収用の場合千二百万円までは無税にする、こういうのですね。私がこのA地を持っておったとします。そうすると、かどが削られる。削られた分だけ清算金をもらう。このAという、ここだけ残ったわけですね。だから、本来ならば清算金についてのみ税金を払えば済むわけであります。ところが、千二百万円の収用等の無税の改正法律案を私なりに見ますと、これが間違っておればたいへんけっこうなことでありますが、地方ではわいわいもめておるのでありまして、このA地を一ぺん全部売って、自分の土地である残ったA´地を新たに買って、そうして清算金をもらった。そして全部について千二百万円まで無税とみなすわけです。つまり、政府案は、A地を全部売ってA´地を換地としてもらったとみなす。だから、この千二百万円という問題はA地全部にかける。千五百万円なら差額の三百万円にかける。ところが納税者は、そんなばかなことはない、おれはここのかどを切られて、ここを金でもらっただけではないか、A地の一部をとられて清算金をもらっただけではないか、そんなばかげたことはないと言っておこっておるわけであります。現に地方ではこの問題が大問題になって、名古屋では、これから換地を行ないますと大体四万戸に影響を及ぼすわけであります。そんなばかなことは常識としてないと私は言うておるわけであまりすが、どうも法律案なり現行法を見ますと、政府案のこの解釈のほうが強い。それで、きわめて庶民的な問題でありますが、これをどうしてくれるということであります。ここで主税局長が、わかりましたと言ってくれれば、私の質問は終わります。
  220. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 もう、税は実質主義的な考え方でございます。横山先生のおっしゃったように現地換地というものは、実は清算金をもらった者が売ったものと見るべきでございますので、私ども考え方では、清算分配金に千二百万円まで適用され、現地換地の部分は売らなかったものと見るという考え方でいくべきだ、かように考えております。
  221. 横山利秋

    ○横山委員 たいへんけっこうです。いつもの塩崎さんにはたいへんでき過ぎた御答弁であります。  あなたが一人考えておるのではいかぬので、しかるべき通達なり何なりで処理していただけますね。
  222. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 その予定でおります。
  223. 横山利秋

    ○横山委員 これに関連しますが、今度の法律案はこう解釈してよろしゅうございますか。  少なくともこの問題は、地方自治体は清算金は五年払いくらいであります。いま地方では、税務署がやっているのは権利発生主義だから、市役所から五年で清算金を払いますと言っても、権利が発生したんだからすぐ払えと、一括納付を要求しておるわけであります。これもそんなばかなことはないじゃないかと言うて騒いでおるわけであります。今度の法律案は一部私の意見を取り入れられたようでありますが、それはどういうふうに取り入れられたか、御説明を願いたい。
  224. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 法人ならば、所得の帰属時期を変えまして、その支払い時期に応じまして、その支払いを受けた金額について税額を納めればいい、個人の場合は、延納という形をとりまして、税額は確定いたしますが、支払い時期に応じまして納めてよろしい、こういうことになっております。  しかし、問題は、先生のおっしゃいました延納しながら利子税を取るのはどうか。地方団体の予算という一方的な事情によって支払いがおくれるのに利子税を取るのは酷ではないかという御意見と承りましたので、その点につきましては、利子税を免除して利子税なくして支払い延期ができる、かようにいたしてございます。
  225. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。どうもありがとうございました。
  226. 内田常雄

    内田委員長 次は平林剛君。
  227. 平林剛

    平林委員 きょう私は、時間の余裕があれば、所得税法法人税法相続税法、税制全般について大蔵大臣に御意見を承りたいと考えておったわけでございますけれども、諸般の事情からすべてを尽くすことはできそうもありませんから、また次回の適当なときに議論をしたいと考えております。  ときに、大蔵大臣、ことしは所得税法が施行されて八十周年、明治二十年三月にわが国に初めて所得税法ができて八十周年の記念すべき年なんです。私は、そういう意味からいきますと、所得税法施行八十周年記念の大減税をやるべき年である、こういうふうに考えておるわけであります。水田さん、幸いこの年に大蔵大臣をやっておられるわけでございますから、そういう意味では、私は、ことし相当大減税をやれば、もう税制史上にもその名をとどろかすということになると思うのであります。せめてそういう意味で、本委員会におきましては、八十周年を記念して、所得税法法人税法、すべての税法にわたって大論争を展開し、国民の期待にこたえるべきひとつの義務がある、画期的任務がある、私はかように考えておりますので、そういう意味では少し時間が足りないわけであります。  そういう意味で八十年前を顧みますと、このときにわが国の免税点、いま問題になっておる課税最低限などは三百円、それから税率は一%から三%の五段階に分かれていた時代であります。同時に、納税人員は当時わずかに十二万人。それから八十年たちますと、いろいろな税制上の変革はありましたけれども、かなり時代というものを感ぜざるを得ません。それは、ことしの減税について、やれ一千億円減税とかなんとか、けたは非常に大きゅうございますけれども、いろいろな時代における物価上昇その他を考えますと、私は必ずしも現状は昔と比べましてよい時代とも言えません。昔はよい時代であったということが、かえって現在の心境でなければならぬと考えておるわけであります。  そこで、私どもはこれから課税最低限の問題あるいは減税の規模の問題等、いろいろお尋ねしていきたいと思うのでありますが、まず最初に、この八十周年という年を迎えますと、お互いに、税に限らず金額が非常に大きくなった。こうしたことから、どうも、ものの考え方、とらえ方というものが何かすべて大きく見えちゃいまして、私は実態にそぐわないというような感じがあると思うのであります。たまたま昨日、十六日に、私のそういう気持ちを感じてか、感じてでないかわかりませんけれども日本経済調査協議会というところから「円の国際的地位」と題とする提言をまとめて発表したのを読んだのでございます。これは会長を佐藤喜一郎さんがやっておるのだそうでありまして、そこで、今日の円というものの国際的地位に関していろいろな問題につきまして協議をされておったらしく、その結論が出たので、政府並びに日銀当局に申し入れをするということが報ぜられております。私がきょう聞かんといたしますのは、前にも大蔵大臣の見解をお尋ねしたのですけれども、この円の国際的地位に関する幾つかの結論の中で、デノミネーションを実現すべき時期ではないかという提言につきまして、大蔵大臣の見解を承りたいのであります。特に、ドルに対して三けたのレートが国際的な感覚から見て円の地位が弱いという印象を受けるということ、したがって、この際、経済相当安定の時期に入るかもしれぬから、円のデノミネーションを、一般の誤解を解いて適当な機会に実施することが望ましいというのが提言のようでございます。  私は、税制八十周年を迎えて、昔といまを顧みまして、この問題に限らず、国民のお金に対する考え方につきましても相当の隔たりがある今日、デノミネーションの実施につきましては深い関心を寄せておるわけでございます。今日、こういう提言があった機会に、国民に与える影響も非常に大きいのでございますから、大蔵大臣はどういうお考えを持っておるか、これにつきましてこの機会にお聞かせをいただきたいと思います。
  228. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本経済調査協議会の報告、まだ私はこの報告を見ておりませんが、きょうの新聞で拝見いたしました。このデノミネーションにつきましては、前々からいろいろ議論があったところでございますが、やはり平価切り下げと混同するためのいろいろな混乱のおそれがあるために、これを実施する場合には、よほど前から国民に徹底させて、そうしてまた、国民の側からもこれを要望するという機運の出たときにこの問題を取り上げることがいい。それまでは時期尚早であるということと同時に、これを行なおうとするのには、いいことでございますが、時期が必要である。やはり経済が安定して、こういう問題を取り上げても国民生活に別に混乱を起こさないという時期を選ぶことが必要だというようなことまではいろいろ論議されておりましたが、しかし、まだ緊急を要する問題としては取り上げておられません。したがって、政府の中でもまだこの検討をやっておるという段階ではございませんので、いまどうこうというお答えはできませんが、しかし、この日本経済調査協議会が正式に取り上げて、これを報告書に載せるということになりますと、今後、この問題を中心としてのいろいろな議論が起こると思いますが、私は、これはやはりここまで来た日本として、いつかはこれは取り上げる問題だと思っておりますが、問題は、やはり国民側がこれを望むというようなところまで問題が来なければいい解決はできない。  これは四、五年前の話でございましたが、ある女の人へ、たいへんだ、何かこのデノミネーションというものをやると貨幣価値が下がるそうだ、いま一万円の土地は百円になるそうだ、いまのうちに売らぬかと言ったら、それはたいへんだといって、その人へ千円で売ったという、こういう詐欺事件まで出て問題になったことがございますが、こういうのは笑いごとじゃなくて、やはり平価切り下げとデノミネーションの関係というものは、よほど国民層に周知させておかなければ軽々しく取り扱うことはできないと思いますので、私どもも、この報告が出たのを機会に、これから慎重に検討していきたいというふうに考えております。
  229. 平林剛

    平林委員 デノミの問題につきましては、平価切り下げとは全く違うのでありまして、そういう意味では、もっと一般にも周知徹底させる必要があると思います。それからまた、こういう事態もこれを契機に起きてくると思いますけれども、私ども関心を寄せ、そうしてまた政府においても、そうしたことが国民経済の混乱が起きることなくできること、それからまた、そのために一部で得をしたり損をしたりすることがないように技術的な問題について研究すること、こういうような問題についても取り組む必要があるのではないかということを私は感じておりますので、それをつけ加えておきたいと思うのであります。これ以上はきょうはこの問題については申しません。  次に、実は私、昨日やはり参議院の大蔵委員会で来年度の税金の減税についてその一つの方向づけを示唆すべき発言が大蔵大臣からされたのを読みましてびっくりしたのでございます。  それは、参議院の大蔵委員会において、委員の質問に答えて、水田さんは間接税の増徴を示唆されておる。これは、私は、少し大蔵大臣の気持ちをたたいておく必要があるのではないかということを感じまして、きょうの質問に取り上げたわけでございます。  これからいろいろ審議が始まりまして、私どもの要望が所得税減税を中心に展開をされることは間違いないのでございまして、それだけに、財源をどうするかということは、大臣としてもいろいろ考えておかねばならぬことはよくわかるわけでありますが、昨日の質疑応答のこまかいことは知りませんが、あらわれてきた問題は、そうした要望を達成するためには、間接税の増徴に財源を求めるという印象を私は強く受けたのでございます。私は、この問題についての大蔵大臣の真意というものを聞いておきたい。  そこで、少しその問題につきまして、間接税増徴という考え方にあなたは踏み切って、そこにこれからの財源を求める御意思なのかどうか、これをはっきりさせていただきたいと思うのであります。
  230. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そのとき誤解のないように申し上げたのですが、間接税のウエートが高まるであろう、そういう方向へ自分は持っていきたい、これは大衆課税を意味するものじゃないということを言っておいたのですが、これはいまここにいる主税局長とは年じゅう私が議論しているところで、まだ大蔵省の見解とかいうことではございませんが、私の考えを申しますと、御承知のように、国債というものを政府は発行しておる。これは毎年累積していくものでございますので、この国債発行については、いつかはこれを大きく削減するというような時期を求めなければならぬということが一つと、それから、国債は建設公債でございますので、これによって得た資金は、同時に国民の資産となって効用を発揮する、そうして、国民経済に非常に役立つという国民の資産になるべきものである。ですから、この資産が効用を発揮する結果、これは私どもは一応平均六十年と見て、その百分の一・六ずつを毎年一般会計から繰り入れていく減債制度をつくるということでとりあえずの対処はいたしておりますが、そうしますというと、公債を累積させても、それだけの見合い資産がふえていって、これが国民生活に役立って、税収の源としてこれが効用を発揮してくるのなら、先に行ってこれを返済する税収の心配というものはない、税源は得られるということでございますが、そうなりますというと、先に行ってそれだけの成長財源というものをどうして得られるかということを、ここでやはり長期的にいろいろ考えなければいけないときにきているんじゃないかと思います。  そうしますというと、いま国の税収の大宗となっておる所得税、法人税というようなものが、先に行ってそのとおり成長税であるかと申しますと、法人税というものは成長税でない。かつての地租と同じように斜陽税という方向をたどるものではないかというふうに考えております。いまの日本企業相当の競争力を持っているといいましても、先に行って企業の収益性というものはそう多く期待されるものではございませんし、国民の賃金所得はいまの水準でいいかと申しますと、そうもいきませんので、日本における法人税というものは先細りする斜陽的な性格を持ったものではないかというふうに考えますと、これはまだそれがいいと是認されている問題ではございませんが、やはり売り上げ税といいますか、そういうような税源というものが、現に外国においても、これは斜陽税ではなくて相当成長税となっているものでございますので、そういう新しい成長税源の開発ということも私ども考えなければならぬじゃないかというふうに私は考えております。  いずれにしましても、いままではよかったのですが、公債発行をするということに踏み切った以上は、いまの税制調査会におきましても、それに対応した将来の長期税制というものを新たに検討してもらう時期に来ておる。従来のように、単に税制の体系を整えるとか、あるいはどうとかいうものじゃなくて、そういう新しい一つの角度からの税制の研究が必要じゃないか。そういうことを考えますと、やはり将来、この解決のいかんは、直接税よりもそういうような新しい間接税の比重が加わるという形で解決されるのが方向じゃないかという気がしておってそういうことを申したのでございまして、たばこの値を上げるとかなんとか、そういうようなことでなくて、私も公債を発行した責任者でございますので、長期の税制についての見通しを立てたいという研究からそういうことを申したのでございまして、まだ現実にどうするという具体案を持っておるものではございません。
  231. 平林剛

    平林委員 遠い将来にわたっての財源構想という意味での水田さんのお考え、こういうふうにお聞きをしたのですけれども、やはりいまこれから税制の方向がいろいろ検討されておるときに、大臣の御発言は、私はすぐ響いてくると心配をしておるわけでございます。特に、いまの構想の中に売り上げ税の創設などの問題が出てまいりますと、いろいろな意味で、なお私は問題を提起していくことにもなると思うのでございまして、これは税制調査会も売り上げ税の問題についてはピリオドを打っておるような状況でございます。そういうときに、大臣のお考えは、私はすぐ政策と結びつけて考えてしまうのでございますが、きょうお話を多少お聞きしまして、そういうお考えがあることがわかりましたが、きょうはこれ以上のことは議論はいたしません。  ただ私は、実はこれからの税制——長期であろうと、国民は毎日毎日働き、そして働いて得た所得から税を取られていくわけでございますから直接に響く問題ですね。響く問題でございますから、これから一、二年の税の制度に取り組む考えについて、私は、ひとつ大蔵大臣に考えてもらいたいということで、きょう申し上げたいことがあるわけなんであります。  それは、この間から、ある雑誌のほうから最近の税制について考え方を何か簡単な色紙に書いてもらえぬかというような話で、大蔵委員各委員のところに来ておる。皆さんお書きになっておるわけですよ。そうしてそれを見ますと、親切、公平——不公平な課税をなくしてほしいとか、今日の税制に対する心組みとしていろいろな意味の色紙をお書きになっておるわけです。この間横山委員がこの委員会でもお話しになっておりましたけれども「爾の俸爾の禄、民の膏なり民の脂なり、下民虐げやすく、上天欺きがたし」——税というものはそういうものであるから、これを民に課する場合にはそういうことを心得てやらないといかぬよという意味お話もございました。ある委員の方の書いたものには「課税はやすきにつくことなかれ」というのもございました。私はいろいろ考えたのですけれども、こういうことを書いたわけであります。「不公平は重税よりも悪政なり」、つまり、もしかりに税が重いといたしましても、それが公平に重いものであれば、つまり平等の負担であれば、これは国家利益、国家繁栄、福祉のために役立つのですから文句はそれだけ少なくなるだろうと思います。しかし、不公平ということが一番いけない、こういう気持ちを私はあらわしたのでございますけれども、当面する税制に大蔵大臣がもし色紙を書くとしたら、どういう心がまえでお書きになられるでしょうか。
  232. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ひとしからざるを一番憎むということになろうと思います。
  233. 平林剛

    平林委員 たいへんいいことばであります。ひとしからざるを憂う、私は非常にいいと思います。やはり税の行政、税のかけ方についての一つの真理をあらわしておると思います。  そこで、そういうことからまいりますと、来年度あたりの税制にどういう点に重点を置くかということがおのずから出てくるのではないだろうか。つまり、間接税に財源を求めるとか、あるいはいまお話がありましたが、法人税は斜陽税である、したがって、将来長きにわたって財源を求めるということはどうであるかというような考え方というのは、ひとしからざるを憂うという考え方からは出てこないのではないだろうか。つまり、いまの法人税というものは、諸外国比較いたしまして決して高いとは思っていません。現在のわが国の経済の実情、それから担税力等から考えまして、かえってもう少しふやしてもよろしい、もちろん大中小というものに対してある程度の配慮を加えなければなりませんけれども、しかし、法人税は必ずしも高いとはいえない。そしてまた、今日いろいろ議論しております租税特別措置法によって与えられておる税制の欠陥、税制に対する国民の感情等を考えますと、まずこうした面についていろいろと配慮を加えていかなければ、ひとしからざるを憂うというあなたの御心境からしましては、私はりっぱな税制とはいえないと思うのであります。やはり、こういう方向で私どもはこれからの委員会で大臣との間に議論を重ねていきたいと思うのでございまして、きょうは別に答えは求めませんけれども、どうかひとつよろしくお願いいたしたいと思う次第でございます。何かお答えがありますか。
  234. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 答え、あります。  なかなか言う機会がありませんので言うのですが、私が法人税を斜陽税と言ったということが、いままで皆さんが言われた特別措置というようなことから見て、これはまた何か大企業の税金をまけるというような印象を持たれたようでございますが、私はそうじゃございません。  近代国家の政治目標といったら、これは福祉国家をつくることだ、福祉国家をつくるにはどうすればいいのだといったら、やはり国民所得が上がり、生活水準も上げるということだろうと思います。そういう点から見て、税制で法人税という性格は一体どうかといいますと、企業によって得た利益から税金を払うというたてまえでございますが、先進諸国ではすでにそういう考えは捨てている。企業をして利益が出たら、この利益をまず労働費にあるべき姿で配分し、資本家に対して一定の利潤を保証し、そして、あとは内部留保をすることによって企業の構造改善をしなさい、そこで、企業が金を全部税金で取られてしまって、そのかわり新規の施設、改善施設というものは全部金融機関から借りてやりなさいという税制ではいけない、自分の合理化は自分の金でやるようにしなさい、そのためには、というので、外国では、法人がもうけた利益のうちから国が先に取ってしまう、国と法人が利益の山分けをやるというような税制がいいのか悪いのかという反省から、たとえば、もうフランスあたりは、法人税の収入は国家収入のうちの六分か七分になっておるでしょう。ドイツも一〇%くらいの比率になっておりますでしょうし、これを国の税制の大宗にするという方向にはなっておりません。こういう仕組みの税制を持っておると、産業が非常によくなっても、先に国が税金を取るのですから、あるべき姿の労務費の配分がうまくいくのかどうかというようなことで、私は、法人税というものは、将来福祉国家への阻害税になりはしないかということを実際は考えるので、国民に散らすものを散らしておいて、国民所得の中から税金を取るという方向もございますし、こういう問題についての検討はこれから私どもが真剣にやるべき問題だと思います。  そういう意味で私どもは法人税というもののあり方を研究したいと言っているので、これが即、大企業への税金をまけるなどというような、そういう素朴な考えを持たれては非常に私は困るので、この機会にそういうこともお互いに考えたいという私の日ごろの考えを述べさしていただいた次第でございます。
  235. 平林剛

    平林委員 法人税の将来につきましては、税制調査会においてもいろいろ検討中のものもございます。それから、本委員会におきましてもこれから本格的な審議が始まるわけでありますから、なお大蔵大臣とは意見を戦わしたいのですが、きょうは大まかな意味のふろしきをお互いに広げ合うということにして、こまかい点はまたさらにお互いに質疑をしていきたいと思いますから、きょうはこれ以上は申しません。  そのかわりに一つお尋ねしておきたいのですが、長い将来のことまではとても私は言えませんけれども、来年度どうしても重視すべきものは、住民税の軽減であるとか、引き続き勤労所得税を中心にする減税であるとかいうものにウエートをかけていく必要があると考えておるわけでございます。最近、文部大臣が旅先で、ちょっと近代税制らしき感覚をひらめかした教育費の免税措置ということについてお話しになったのを私は記事で呼んだのでございます。近来、国民は家計の中に占める教育費の高騰についてはほとほと悩んでおる。そして一般の所得税の減税が十分でないのにかかわらず、物価は上がるし、同時にまた諸経費はかかり、特にその中でも教育費については何とかできぬだろうかというくらいな気持ちを皆さん抱いておることは大臣も御承知のとおりであります。もちろん、いまの税制の中には一つの勤労者に対する控除の制度はございますけれども、私は、教育費というものは一般の控除と違った性格を持っているのではないかと思っております。つまり、これは将来にわたっての積み立て金のようなものである。子供を教育し、日本の国家繁栄のために必要な人格を高め、教養を深める、そういう意味では、各個人、家庭にとっては一種の積み立て金である、こうした一般の経費控除と違う性格のものだ、こういうことを考えますと、全部をやるということはなくとも、ある程度こうした面を取り入れた近代的税制というものが必要でないだろうかとかねがね思っておるわけです。文部大臣が、そのことにつきまして、明年度あたり実現できそうな御見解を発表しておりましたので、私は、さすがに文部大臣、将来の教育のことも考えておるわい、こう思ったのです。  これは私は大蔵大臣といえども御同様な御見解をひとつ示していただけるのではないかと思いまして、きょうは楽しみにして、そのかわり、もうこの辺で私の質問を終わりたいと思っておりますので、これについてひとつ何かよい御返事をいただきまして、質問は終わらせていただきたいと思っておるわけです。
  236. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 教育について、教育費が生活のうちの相当のウエートを占めておるものでございますから、これに対処するために教育費の控除を、ということは、これは趣旨は一応私どもけっこうだと思いますが、これはまあこれからの大きい検討課題ではございますが、いまこれには非常にたくさんのむずかしい問題を伴っておるものでございますから、それらについて私どもが一応いままで分析したことを主税局長から一ぺん御説明いたします。
  237. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 ただいま平林委員の、教育費控除というのは、特殊な性格を持っておる、いわば一種の積み立て金ではないか、こんなようなお話があったわけでございます。そのことが、税の、ことに所得税の控除の理論にからむ非常にむずかしい問題を提供しておるわけでございます。  積み立て金と申しますか、たとえば教育費でも、お医者さんが学校を出た後に研修に行く、それは自分の医者の所得から引くべきではないか、しかし、その前に学校に行って研究費をかける、これは自分の所得からではないかもしれませんが、同じような教育費であり、しかもそれは、同時に将来の収入につながる問題ではないか、そうなりますと、所得のないときの費用というものは一つ予算化をして、いわゆる投資として、将来の繰り延べ資産として、減価償却の形で回収すべきではないか、こういう意見があります。そうなりますと、むしろ教育費控除は、親の所得から引くのではなくして、その教育を受けた子供が大きくなって得た所得から費用として回収すべきであるということにもなりましょうが、しかし、当初におきましては、大学出あるいは学校出のしばらくの間は所得がないので、それは引けない、それにかわって、父兄を一体とみなして父兄の所得から引くのがいいのではないかという議論もあり、結局、そのあたりなかなかむずかしい議論がございまして、外国でも教育費控除が行なわれている国はないのであります。  しかし、理論としては、いま申されましたように、非常に深い意味を持ち、私は今後の大きな検討問題だと思います。ただ、財源が非常に要るわけでございますので、そういう財政上の見地もあわせて、よほど広い見地から研究しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  238. 平林剛

    平林委員 きょうは私は、選んだテーマ全部を尽くしたわけではございませんが、いずれまた機会を見て、今度はこまかく一つ一つの問題について政府と質疑を展開したい。きょうは、そういう意味では大蔵大臣と大ざっぱな議論をいたしましたけれども、けっこう楽しい質疑応答ができましたから、この辺で私の質疑は終わっておきたいと思うのであります。      ————◇—————
  239. 内田常雄

    内田委員長 この際、税制簡素化のための国税通則法酒税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑を終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  241. 内田常雄

    内田委員長 討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  242. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  243. 内田常雄

    内田委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党を代表して、堀昌雄君外三十八名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。堀昌雄君。
  244. 堀昌雄

    ○堀委員 まず最初に、附帯決議の案文を朗読いたします。    税制簡素化のための国税通則法酒税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   税制簡素化は納税者のつよい要望であることにかんがみ、不断の努力を傾注することが必要である。   よって政府は、各般にわたり、真に納税者の利便を優先的に考慮して、税法及び税務行政の簡素化の方途をさらに引き続き徹底的に検討、実施すべきである。  この税制簡素化の問題につきましては、現在ここで提案をされておりますような部分的な税制簡素化はもちろん必要ではありますけれども、私たちが根本的に税制簡素化の問題を考えます場合において特に考えなければなりませんのは、現在の税制上の不公平、たとえば給与所得者はほとんどガラス張りで所得が把握されているにもかかわらず、その他の所得者におきましては、必ずしも把握率が一〇〇%であるかどうかについては課税当局でも自信がないという現状にかんがみましても、これらの公平を徹底して、税制を簡素化するためには、何としても課税最低限を思い切って引き上げることが、私は根本的な税制簡素化に通ずる問題であるというふうに考えますので、こういう問題について、さらに政府としてはより一そう真剣な検討をする必要があると考えるわけでございます。  さらに、先ほどからも御論議がなされておりますけれども、大蔵大臣からも、ひとしからざるを憂うるというお話がありましたが、このひとしからざるものの最大なるものは、御承知のように租税特別措置法の中で数多くあるわけであります。さらに、その存在が必ずしも政策目的を達していないものも数多くあるというような問題を考えてみますならば、これらを整理することも、やはり税制簡素化の重要な柱であると考えるわけでございます。  さらに、各税の問題については、納税者の側と徴税者の側において、現状としては、どうしても納税者の権利が十分に認められず、義務のみが強要されるという傾向にあるわけでありますけれども、これらも税務行政をガラス張りにすることによって納税者の納得を得、さらに便利をはかるとともに、少額所得者の取り扱いについては、さらに一そう簡素化することによって、本来の税制簡素化の目的を具体的に、さらに内容的にも高めるために、政府がより一段と努力されることを要望する次第であります。  以上をもって、提案の説明にかえる次第であります。
  245. 内田常雄

    内田委員長 これにて動議の趣旨説明は終わりました。  おはかりいたします。  堀昌雄君外三十八名提出の動議のごとく決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  246. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、本動議のごとく、本案に附帯決議を付することに決しました。  ただいまの附帯決議について、政府より発言を求められておりますので、これを許します。水田大蔵大臣。
  247. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御決議の線に沿って、今後も引き続き税制簡素化をはかっていきたいと存じます。     —————————————
  248. 内田常雄

    内田委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  250. 内田常雄

    内田委員長 所得税法法人税法相続税法の改正三法案についての質疑を続行いたします。竹本孫一君。
  251. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、簡単に所得税と法人税につきまして二つばかりお伺いをいたしたいと思います。  一つは、課税最低限の引き上げの問題でございますが、ただいまも堀委員のほうから附帯決議の説明の中においてお触れになりました。また、御承知のように、野党三派の政策協定もこの問題を大きな核心にいたしております。そういうことを前提にいたしまして政府で御努力の結果、七十三万円までは税金をかけないということになりましたので、その問題について若干の御質疑をいたしたいと思います。  まず最初に、各国における課税最低限というものは、大体日本が七十三万円、本年度七十一万円というのに対して、どのくらいになっておりますか、一通りお伺いをいたしたいと思います。
  252. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 お答えいたします。  夫婦と子供三人の給与所得者のアメリカの課税最低限は百三十三万二千円であります。イギリスは九十二万三百四円でございます。西ドイツは八十八万二十円、フランスは百十六万九千七百八十三円でございます。
  253. 竹本孫一

    ○竹本委員 経済的な条件がいろいろ違いますから、簡単に比較するわけにはいきませんし、また、為替の換算率の問題もありましょうが、直感的に申しまして、西ドイツ八十八万円、フランス百十六万円。御承知のように、野党は百万円の要求主張いたしております。  そこで一、二伺いたいのでありますが、七十三万円もしくはことし七十一万円という課税最低限でございますけれども政府といえども、言うまでもなく生活費に食い込む税金は悪税である、この原則には御異論はないと思う。  そこでお伺いをいたしますけれども、七十一万円という場合に、生活費というものは幾らに見ておられるのであるか、一日の生活費は幾らであるか、伺いたいと思います。
  254. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 この問題は、もう竹本先生予算委員会あるいは当委員会におきましてずいぶん議論になったところでございまして、私どもは課税最低限は、財政事情あるいは所得の分配をどこから始めるかを考えながら、しかし、おっしゃいました生計費は主として食い込まないような方向で考えるべきであるという角度から課税最低限を考えております。  そこで、検算の一つの方法といたしまして、生計費につきましては、今年度はいままでのやり方を踏襲した単に消費者物価の上昇だけを織り込んだ数字を出しておりますが、去年は、百八十六円八十七銭の成年男子の一日当たりの食料費をもとといたしまして、いわゆる基準生計費の数字を出したわけでございますが、これがいろいろな幅のある生計費から見まして御批判があったわけでございます。私どもは去年におきましてもゆとりがあるというふうに見ておりましたわけでございますので、今年度は、特に消費者物価の上がりも少ない、さらにまた課税最低限の引き上げも一八%といった高目のものでございますので、こういった基準生計費の問題は、特に資料として、あるいはまた考え方といたしまして御説明しなくても当然納得し得る、こういった角度で現在いままでのやり方を踏襲し、さらにまたこれを詳しく精査することはいたしておりません。  なお、昭和四十一年におきますところの消費支出金額の調べでは、五人世帯で消費支出金額は五万九千二百二十一円という数字がございます。そのうちの食料費は二万一千六百九十二円という数字が出ております。これは月でございます。これから見まして、課税最低限は生計費の面から見ても決して不当ではない。この消費支出は、御存じのとおり平均的なものでございますし、最低生計費的なものではございませんので、そういった角度からも検算ができようかと思います。
  255. 竹本孫一

    ○竹本委員 二百五円二十四銭という問題ですけれども、これはいまも御説明がありましたけれども、念のためもう一度お伺いいたしますが、百八十六円八十七銭に五・一%と四・五%の消費者物価の値上がりを計算に入れて出したものがイコール二百五円二十四銭、こう考えてよろしゅうございますか。
  256. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 さようでございます。
  257. 竹本孫一

    ○竹本委員 そういたしますと、実は、この二百五円二十四銭という数字が出されたときに、四十年であったかと思いますが、大蔵委員会において、はたしてそんなもので一日食えるかどうかということで、堀委員が御提案になったと思いますが、大蔵委員会として有志が新宿の国立栄養研究所に参りまして、そして夕食を昼めしに食べたことがありますが、そのときに、はたしてそれで食えたかという質問に対して、そのときすでに、正月に消費者米価の値上がりがあった、それから野菜の値上がりがあった、魚が高くなったということで、とにかく予定の夕めしの計算はたしか七十何円てした——七十一円だったと思いますが、これではやれなかったということをはっきり述べて、これは当時の主税局長の泉さんもよく御了解であったと思いますが、そういう事実を御存じであったか。
  258. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 お話は承っております。
  259. 竹本孫一

    ○竹本委員 さらにそのときに、厚生省だったと思いますが、栄養の専門家が計算をして説明をしたところによりますと、医師の説明によれば、カルシウムと動物たん白は大体人間としての必要量の三分の一もしくは四分の一であるという説明がございました。したがいまして、物価の問題から申しますと、米の値上がりその他で、七円だったと思いますが、私もはっきりわかりませんが、そのくらい一食について予定を超過いたしておりますということを説明した。さらに、カロリーは二千五百カロリーであるけれども、動物たん白とカルシウムは、いま申しましたように、必要量の三分の一か四分の一であるということであった。そういたしますと、この二百五円二十四銭はきわめて科学的にはじき出されておるようであるけれども、最初の出発点からしてすでにこれはだめだったのだ、その当時において無理があったのだ、こういううことになりますと、それにあと、もっともらしく五・一%と四・五%をかけてみましても、出された二百五円二十四銭ははなはだ現実的な基礎がないものになりはしないかと思いますが、その点はいかがですか。
  260. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 私どもがそういった計算をいたしますと、絶えず、まさしく税金を取らんがために特に食料費を値切っているではないか、こんなふうな御批判がございますので、私どもといたしましては、課税最低限の問題は、ひとつ客観的な別のところから検算をしていただきたい、こんなふうな気持ちでおるわけでございます。そういった意味で、今年度は、ただいま申し上げておりますように、御不満でございまするけれども、百八十六円八十七銭に二年間の消費者物価の上昇をかけまして食料費だけを推定し、それからエンゲル係数で逆算いたしまして消費支出金額を出したわけでございます。  しかし問題は、課税最低限が適当であるかという問題でございます。そういたしますと、去年に比べまして、ことしは平均一八%、大幅に引き上げてございます。したがいまして、かりに、御不満でございますが、基準生計費をそう見ましても、課税最低限から差し引きますと、その残る金額は去年に比べまして非常にふえるわけでございます。去年差し上げました資料では、五人世帯のところでは三千百円というような残りの金額でございましたが、今年度は食料費が安いせいかと思いますけれども、七万四千百二十一円、この差額が出てまいりますので、この差額で自由なる支出をしていただければいいという考え方もできる。しかし私どもは、生計費につきましてはいろいろな幅がございますので、これを税の見地からとかくこういうふうに考えるべきだというふうなことはできる限り避けるべきではないか、こんなふうに考えております。
  261. 竹本孫一

    ○竹本委員 主税局長はたいへん苦心して都合のいい数字を拾ってまいられるようでございますが、もう一つ伺います。  戦前の課税最低限というものをそのまま延ばしてきて計算をしてみると、現在なら大体どのくらいになりますか。
  262. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 私の記憶では、戦前と申しますと大体千二百円、給与所得なら千五百円でございましょうか。物価が五百倍ならば七十五万円くらいになろうかと思います。しかし、そのときの税制は、御案内のとおり地租、家屋を中心といたします収益税であります。所得税の納税者は六十五万くらいの納税者でございまして、所得税を税制の中心としてない時代の課税最低限でございますから、そういった数字と、現在のように累進的な所得税を中心とする税制のもとで比較することは、私は、これはどらも角度が適当ではない、こんなような感じを持っております。
  263. 竹本孫一

    ○竹本委員 どうもこれは、大衆の生活の実態とはだいぶかけ離れた数字が前提になっておるというのがわれわれ野党の感覚でございますが、時間もありませんので、先に進んでまいりましょう。  次に伺いたいのは給与所得税、これも先ほど御説明がございましたけれども、今度定額控除が八万円になりました。ややわが意を得たものがあるのでございますが、控除率、税率のほうはどういうようになっておりますか。
  264. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 給与所得控除の問題でございます。  おっしゃるように四万円引き上げまして八万円にいたしました。定率控除のほうは、財源の関係で、今回の改正は四万円プラスいたしましたので、十八万円を二十二万円にいたしまして、その基礎となっております一割、二割の区分は直さないことにいたしております。
  265. 竹本孫一

    ○竹本委員 これももう少し率を上げるべきではないか。結局これは、給与所得全般に対する考え方政策態度の問題でございますけれども、私どもは、これはもう少し思い切って三十万円くらいまでいくべきじゃないかという考えでございますけれども、まあ、議論は別の機会に譲りまして、次へ進みましょう。  次に、法人税について一言お伺いをいたしますが、御承知のように、シャウプ勧告以来、法人税につきましては、いわゆる法人擬制説というものが根本のたてまえになっておる。しかし、これがいまの段階においてはもう再検討すべき段階にきておる。シャウプの税制に関する考え方もあちらこちらずいぶん再検討が加えられてきておる状態でもございますし、あれからずいぶん年の経過もありますので、この辺でもう実在説に考え方を変えるべきではないかと思いますが、この点について大臣からお答え願いたい。
  266. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さきの税制調査会の答申では、今後の法人税制の基本的方向として打ち出したいわゆる利潤税方式というものは、御指摘のように、いわゆる法人実在説的な考え方に立っておるものであると思います。したがって私どももやはり法人のいまの実態に着目して、この方向で検討するのが妥当ではないかというふうに考えて、この方向で私どもも検討するつもりでおります。
  267. 竹本孫一

    ○竹本委員 この際、大臣に重ねてお伺いいたしたいと思いますけれども、法人の実在説ではなくて擬制説をとっておる場合に、だれが一番得をするかということになりますと、実際に配当をもらう者はほとんどないといったような中小企業には、別にあまりプラスにならない。そうでない大資本あるいは独占資本の場合にはこれがばかに有利に働く、こういうことで、どちらの学説をとるかということは、単なる学説上の問題ではなくして、実際に、現実に与える影響ということを考えると、今日の擬制説というものをとっておる限り、中小企業に非常に酷であって、大企業その他には不当に利益を与えるものであるという不公平が現実にある。このことを大臣はお認めになっておるかどうかを伺っておきたい。
  268. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 非常に技術的な、しかし本質にからむ問題でございますので、ちょっとお答え申し上げたいと思います。  法人利潤の大部分が支払い配当に向けられまして、それから再び資本市場を通じまして増資という形で資本を調達できる公開会社、大企業は、おっしゃるように、支払い配当につきまして擬制説的な考え方をとることは、相対的に、中小法人に比して得することは事実でございます。しかし、わが国の税制は、昨年改正いたしましたように課税所得三百万円以下については二八%という特に低い税率を設けております。しかもこの軽減税率は資本金一億円以下の法人に適用する、こういったところでその間のバランスをとって、いわゆる擬制説に伴う相対的な中小法人の不利益はカバーする、こんなような体制をとっております。
  269. 竹本孫一

    ○竹本委員 ついでにもう一つ、いま相対的にというお話でございまして、認めておられるのだろうと思うけれども、われわれは本質的に中小企業に不利を与える、大資本に非常に不当に利益を与えると思いますので、ぜひひとつ前向きに、調査会の答申もありますので御検討をいただきたいことを要望いたしておきます。  それから、いま三百万円の話が出ましたけれども、われわれは常に法人税を二つに区切って、区分した二つだけで考えることでなくて、もう少し小刻みに多段階説で考えてみたらどうかということを主張いたしておりますが、あらためて主税局長のお考えを伺いたいと思います。
  270. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 法人実在説といえば、すぐ多段階あるいは累進税率という意見がよく出るようでございますが、これは私どもの研究あるいはまた過去の超過所得税の経験から見まして、こういった形の法人税は、企業の実態から見て不適当だという考え方を私どもは持っております。  と申しますのは、まず第一に、法人企業の利潤というものは非常に変動するものでございます。御案内のとおり、欠損になったかと思えば、非常にもうける年もございます。しかし、財政は年々税金をいただかないとやっていけないものでございます。そうなりますと、累進税率をとっておりますと取り過ぎるという傾向がまた出てまいります。その点は、個人所得のように安定したものとは違った性格が法人企業の利潤の中にある。したがって、法人税というものはやはりフラットな税率のほうがいいし、世界各国の税率を見ましても、この超過所得税的な税率はない、こういうところは、私はそのことを裏づけるものだと考えるのでございます。  また、基本的に申しますれば、法人税というものは、応益的な性格が強い、応能的ないわゆる所得分配の機能の強い税ではない、そういった面から見ますと、多段階税率あるいは超過所得税的な税率より、個人所得税と違って、比例税率のほうが適当ではないか、こういうことが言えようかと思うわけでございます。
  271. 竹本孫一

    ○竹本委員 私も、必ずしも累進税率でいけということまで言っているわけではあまりせんけれども、まあ次に進みます。  最後に一つだけ伺いたい。  中小企業のいまの問題にも関連をいたしますけれども、内部の蓄積を強めていくということについていろいろとくふうがあるようでございますが、いままでにやられている点を簡単に御説明を願いたい。
  272. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 もう、中小企業の問題は税制と金融といわれておりますように、私どもも常に配慮しているわけでありますが、先ほど申し上げました税率も、大法人と区別いたしまして、資本金一億円をこえる法人には一本の、留保なら三五%、支払い配当なら二六%というふうになっておりますが、中小法人ならば、一億円以下の法人については、三百万円以下については特に二八%というような税率を留保について設けまして、大法人との差を設けておりますが、そのほかに、租税特別措置におきまして特別償却を中小企業だけについて相当広範に認めております。合理化機械の特別償却は大法人ならば普通の機械で、合理化機械といえないものでも、中小企業ならば金額も高く、取得のむずかしい合理化機械というようなものもございますので、少し程度が落ちる機械でも中小企業のためには特別な償却制度を認める、こんなようなことで種々の恩典を与えておりますほか、貸し倒れ引き当て金につきましては、大企業、つまり資本金一億円超の法人につきましては法人よりも二割増しの貸し倒れ引き当て金の率をつくる、こういったいろいろの制度がございます。  これらの違いにつきましては、いずれまた、資料といたしまして一覧表で御提出申し上げることができると思います。
  273. 竹本孫一

    ○竹本委員 ぜひその点は資料として御提出を願いたいと思います。  これに関連して一つだけお伺いして終わりにいたしますが、先ほど来、経済は変動が激しい。法人で、もうけても次は損する場合もある、だから多段階で、こまかくというお話もございましたが、そこで私は一つ疑問に思っておる点をお伺いしたいのですが、これは中小企業だけではありません。すべていまの経済は、先ほども議論をいたしたのでございますけれども、自己責任主義ということになっておる。そうしますと、景気のいいとき、あるいはもうかるときに中小企業がある程度思い切った内部蓄積をやるということは必要欠くべからざる条件であります。ところが、そいつに対して税金がたくさん取られる。そこで、しかたがないから、ごまかした貯金をつくってみたりするような場合もありますが、それは一応別にいたしましても、景気がいいときに、いわゆる備荒貯蓄ですね、不景気のときに備えて内部にひとつ保留をさせるということについてもう少し特別な考慮がなければ、いまお話しになりました特別償却とか貸し倒れ引き当て金といったような程度だけではだめではないか。特に前向きのほうから結論的に申しますと、各業種別に、これから開放経済に臨みまして、日本経済の競争力も強めなければならぬ、経済社会発展計画のことばで言えば、効率化をはからなければならぬ、こういうことが書いてあります。そうしますと、中小企業についても効率化をはからなければならぬ。ほかのことばで言えば、それぞれの産業分野、部門によって、業種によって違うでありましょうけれども、それぞれ効率化をはかるために必要と考えられる適正な規模があると思うのです。そこで、適正な規模に達するまでは、中小企業は大いにがんばってみろ、税制の面でも大目に見てやろう——不公平にやれという意味ではありませんよ。ある一定の適正規模に達するまでは、政府もこれを助成してやる意味において、税法上も特別の考慮をする、そして一日も早く国際競争場裏に立っても自由に競争ができるところまでは体質を改善させる、近代化させる、充実させる、こういう考慮があってしかるべきだと思うのです。ところが、いまは、いま御指摘になった二、三の中小企業政策考慮があるだけで、ほとんど中小企業を、特に税法の上から見てここまでは持っていってやろうという努力目標は全然ないと言っても過言ではありません。  こういう点について、ひとつ今後は、私の結論を申し上げますが、各業種別に適正規模というものが一応考えられる、その適正規模を政令で指定するかどうかは別としまして、そこまで持っていくためには、内部保留その他についても何とか税法上も特別な考慮をする、そして早く中小企業に近代的な経営の規模の適正なところまでは持っていかせる。豚は太らせて殺すという話もありますが、とにかく税金を納め得るだけの態勢になる、国際競争に耐え得るだけの体質改善、そこまでは政府としてもほんとうに税法上から見てもめんどうを見てやろう。それがほんとうの中小企業対策だと思いますけれども、その辺について、もう少し、単なる貸し倒れの引き当て金とか、機械のちょっとした特別償却といったようなものでなくて、中小企業の体質改善という大きな立場からの、高い立場からの考慮が払われてしかるべきではないかと思いますが、この点について払われておるのか。これから払われていくとすれば、どういう態度を、あるいは政策をとろうとしておられるのか、ひとつ大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  274. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 いまの竹本先生の御意見、非常にユニークな考え方でございます。企業は、大中小を問わず好況期のときに税金を納めたくないし、不景気のときにも納めたくないわけでございますが、いずれかといえば、好況のときに税金を納めない方向で不況に備えたい、そして配当を平準化したい、こんなような要求が強いわけでございます。  先生のおっしゃいました中小企業の適正なる規模のお考えについては、私の現在までの法人税の考え方からは二つばかり難点が出てくるかと思います。  まず第一に、やはり企業利益は、法人税の課税標準となるわけでございますから、一定の客観的な基準計算さるべきである、好景気のときに利益が多くなれば、また利益の多いなりに計算をしていく、しかし、それは先ほど来私が申し上げておりますように、税法上の許されておる客観的な基準利益を減らすということならば、これは税収の見通しもつきまずからいいわけでございます。その方法は、先ほど申し上げましたように、特別償却であり、各種の引き当て金でございます。先ほど広沢先生が、鉄鋼会社は非常に好景気のときに特別償却の権利を発動して利益を減らす、こういうお話がございましたが、特別償却はそういった性格がございます。不況期のときには償却するだけの余力がありませんので、好景気のときに償却して利益を出す、しかしながら特別償却は翌期以降税金を取り戻すという傾向にありますので、翌期以降自然に税の仕組みで出てくる、価格変動準備金も同様でございます。したがいまして、中小企業について考えられますのは、そういったむずかしい償却とか貸し倒れ引き当て金とか価格変動準備金というようなことを言わずに、簡単な中小企業構造改善準備金というような形で引き当てられるということが考えられるかもわかりませんが、そういうことになりますと、なかなかむずかしい問題、税率をどうするかという問題が出てくるわけであります。これは一つ検討問題だろうと思います。  もう一つの第二の難点は、これはフィスカルポリシーと申しますか、やはり税金は好況期時代に税金を納めてもらって、不況期の時代に税金を吐き出して税金を取らないでいくほうが経済の安定にいい、こういった角度がございます。非常にむずかしい問題でございますが、なるべく客観的な基準を求めながら、中小企業の本能的な動向、さらにまた企業規模を大きくするようなこと、これにかなうような税制を検討してまいりたい、かように思っております。
  275. 竹本孫一

    ○竹本委員 これで終わりますが、いまの主税局長の御答弁を聞いておりますと、事務官的良心においてごもっともな御意見だと思うのです。しかし、その事務的な判断を乗り越えて政治的な判断を下すべきではないかということが、私として一つの指摘したい点でありますので、やはり事務的な公平さだけを言えば、これは政策的な配慮はできなくなる。その事務官的な困難を乗り越えるところにステーツマンシップがあるのですから、中小企業はある点まで育てていこうということになれば、単なる税務技術論だけではならぬのではないかと思います。この点について、ひとつ大臣のお考えを伺いたい。  もう一つ、いまお話しになりました、もうかるときに、あるいはもうけたときに取っておくのだ、それを残しておくということが困るのだというような、これまた税務官僚的な感覚における御議論でございますけれども、これは裏があると思うのです。すなわち、不況になってしまった場合に、中小企業はもうかったときは、これはことばが悪く、乱暴ですけれども、一応税金で取り上げる、そのかわり、不景気になって困っている場合には国が全部めんどうを見てやる。これならば国の管理責任、経営責任みたいな形になりますので、それも一つのいき方であります。ところが、いまは資本主義だ、経済的自己責任主義だということになりますと、もうかったときは税金をうんと取っておくが、いよいよ不景気になったときに、しからば責任を国が背負うのであるか。そうではなくて、経済的自己責任主義の美名のもとに、中小企業は自分で自力更生というか、自主的な企業努力をやってみろというような態度であります。現に、きょう午前中でしたか、われわれが議論をいたしましたけれども石炭対策特別会計ができましたけれども、あるいは、前には山一証券の問題が出ましたけれども、こんなものは、私に言わせれば経済的自己責任主義に反するものであって、政府がみずから資本主義の原則をじゅうりんしておるとさえも言いたくなる問題なんです。きょうはそういう問題は詳しく言いませんけれども、大企業のような場合、石炭だって、先ほども質問いたしてみますと、いままで一千億円出したのだ、これからまた一千億円出すのだ、どこまで持っていくのだという目標ははっきりしない、何となくやったほうがいいでしょうという程度だ。こういうようなことで、大企業のときには、困れば出しますと、こういうことになるから、大企業については、上がった利益相当それこそ累進で取っても、またあとで困ったときにはめんどうを見るという政府の保証があるのだから、これは公平だと思うのです。しかし、中小企業の場合にはそうではない。石炭対策特別会計みたような意味でのいわゆる中小企業対策特別会計を大蔵大臣つくられる意思があるか。おそらくないでしょう。そうしますと、中小企業については、相当余裕が出る好況のときに、ある程度の蓄積を内部的にさしておくということは、中小企業だけではなくて、いまの自由経済の根本原則からいっても、むしろ当然のことではないか。それに対する配慮が全然ないということを私は非常に遺憾に思いますが、大蔵大臣の御意見を承っておきたいと思います。
  276. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御意見、私はけっこうだと思いますが、ただ、そうしますと、これはやはり中小企業には特に必要だと思いますが、中小企業だけに限られる問題ではございません。好況のときに、不況に備えるための調整をするということは全般の問題でございますので、やはりそういう意味で、全般の問題として検討したいと思います。
  277. 竹本孫一

    ○竹本委員 だいぶ意見が違いますけれども、時間もありませんので、この辺で終わりまして、また機会を改めて論議を深めたいと思います。
  278. 内田常雄

    内田委員長 田中昭二君。
  279. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 私は、所得税、法人税の改正につきましてお尋ねしたいと思います。  まず、所得税の課税最低限の問題もいろいろいままでお話も聞きましたし、審議もなされたと思いますが、今度の一部改正を見ましても、毎年行なわれますところの程度のものでございまして、控除の引き上げと、その減税のうまさというものに対しましては、国民のきびしい声があるということをまず申し上げたいわけでございます。いま申しましたように、なぜかといえば、控除額の引き上げにしましても、経済成長並びに物価の上昇等から見てみますと、その不均衡さ、また、そういうものであれば、形式的なものである、そのように言わざるを得ないわけでございます。実際減税したという実感が国民にはございません。実質減税の恩恵を感じていない、このような国民の不満が多いのでございます。そのように、政治家の、また行政官庁のやることが要を得ていない。またその上に、このたびの標準率の問題もございましたが、不公平を如実にあらわした問題だと思います。そのような問題があまりにも多過ぎます。行政の上からも、国民の皆さまに、また善良なる納税者にそのようなことでは申し訳ないと私は思います。不公平につきましては、先ほど各委員からもお話がありましたし、大臣からもひとしからざるを憂うというお話もございました。そのことにつきまして、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  280. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 課税最低限の引き上げはたいしたことはないということでございましたが、いままで過去にやった減税を見ますと、十万円の幅の引き上げというものは、これは実際は最大の引き上げでございまして、率で言いますと、さっき主税局長が言いましたように、独身者においては二一%、平均一八%という最低限の引き上げということは、過去において一番大きい引き上げでございますので、この程度のものを私どもは三年続けている、相当の減税であると思いますが、そうすれば、百万円を最低限度とするところまで近づけるだろう、三年間でしたいというのが私ども考えでございますが、それは決して簡単な減税じゃなくて、相当思い切った、いままでの施策から比べたら大幅の減税だと考えております。
  281. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いま大臣のおっしゃった三年間という問題でございますが、これはもちろん野党一致して百万円減税は直ちにいまでもできる、そのようなことも言われております。それで、問題は、いままでに比べて多額の控除をして減税をしたというその実際の効果が、それじゃ国民に喜ばれるもの、期待したものに合うものであるかという問題を私は聞いておったわけであります。あくまでも、物価の上昇、経済の発展ということを考えれば、いままでにない控除額の増加でありましても、それは意味をなさないではないか、このようにも思いますが、もう一回その点につきましてお願いいたします。
  282. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国民所得が上がるにつれて、所得税の減税というものはやってきました。ほとんど毎年所得税の減税は終戦後行なわれております。これをやらなかった年は三十五年一年だけだったと思います。そういうふうに、所得増に伴って所得税の減税をやってきたということでございますから、お互いにあまり税金がまけられたということをはだに感じない。税率は下がっておるはずなんだが、自分の所得が上がっておれば、税額がやはりふえておるということでずっときておりますから、はだに感じないというのですが、もし、いまの所得で、昭和二十五年くらいの税率でこれが少しも減税されていなかったということで計算しましたら、これはいまごろはたいへんな所得税でございまして、毎年やっておるからあまり国民に響かないということです。実質は相当の減税をやっておるということだろうと思います。
  283. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そういう暴言をなさるから困るのです。二十五年当時から現在の課税最低限を見まして、その当時の税率をかければうんとかかるじゃないか、そのようにおっしゃいますけれども、それは私は形式的な減税である、このように言っておるわけでございます。  この点につきましては、一応大臣のおっしゃることはわかりましたから、とにかく、国民に税金がかかるか、かからないか、またその問題にタッチしておる税務官吏、こういうものの実情を御存じないのではないか、このように私は憂うるものでございます。心配しております。ここで討議されることが、私は委員会に出まして初めから現在までその感じをぬぐい得ません。あまりにも知らなさ過ぎる。  一例を申し上げれば、失礼かと思いますが、昨日の本会議におきます大臣の答弁の中に、御存じと思いますが、大臣も自分で言ったことを考えてみて、あれは何を言ったのだろうかとおそらく思っておるのじゃないかと私は思います。給与所得の控除と事業主の控除という点につきまして、あの本会議の大臣のお話が議事録に残っておりますから、あれをわれわれのような一応実務をやってきた専門家並びに実際の納税者に聞かせたならば、実感としてどう思うだろうか、こう思いますが、一応大臣としても、きのうの御発言に対しましてもう一回、簡単でようございますから、きのうの発言の趣旨をお聞かせ願いたい、こう思いますが、どうでございましょうか。
  284. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 事業所得には経費の控除がある。給与所得には給与所得控除がある。それは事業所得に対する経費の控除に対応するものであって、必要経費を総括的に控除するということでやっております。したがって、給与所得者にそういう制度があるから、事業主に別個の勤労控除的なものを認めたらいいだろうと言われるのですが、それは事業主と給与所得者では性格が違う。事業主のほうは必要経費というものを税の損金に見てもらえるのですから、そういう立場を持ったものであるから、給与所得者と同じように一定の経費を引けということは無理だということを言ったわけでございます。
  285. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまお聞きしましたようであれば、そのようにおっしゃれば、みんなもわかるし、私も疑問を抱かなかったわけでございます。  ただいま少しく問題がございます。ということは、結局は実務を御存じない。給与所得の控除というものがどういうものか、それはことばの意味は御存じだと思います。いまのお話にしましても、事業が収入すべき金額から必要経費を引くということはみんな知っております。給与所得に対します控除は、いわゆる給与所得に対する必要経費というものも当然含まれておるわけでございます。そういう意味合いをもって給与所得の控除もあるわけでございます。そうしますと、いま大臣がおっしゃった必要経費というものは、どちらも同じような性質のものでございます。ですから、きのう大臣のおっしゃったお答えは、おかしくなってくる。私だけがおかしいのではなくて、税の専門家もいらっしゃいます。きのうの答弁をここに再現すればおわかりだと思います。しかし私はそのことを云々するのではございません。あくまでも、不公平というものがある場合に、その現実の事実はどういうことを今後起こしてくるか、また、そのためにどういう人たちがどのような苦労をして納税がなされておるか、こういう問題にもう一歩の御認識をいただきたい、こう思うわけでございます。  その次の質問に入りますが、世間では九・六・四とかいうようなことがいわれております。大臣、お聞きになったことがございますでしょうか——それでは九・六・四ということについておわかりにならないならば、国税庁長官からお聞きになりまして……。(「九・六・一なら知っておる」と呼ぶ者あり)いま九・六・一というお話が出ましたが、何か九・六・一というものもあるようでございますが、そういうものがどういうものを想定していわれておるものか。これは不公平の代表的なことばとしていわれておるのじゃないか。世間では常識みたいになっております。これに対する大臣の所感をお願いする次第でございます。
  286. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 実際問題として所得の把握率については、給与所得者が一番多く把握されるということは事実でございますが、これでは、さっき言いましたように、税の公平の問題からやはり問題がございますので、青色申告にしろ、白色申告にしろ、いろいろな形で他の所得の把握率もできるだけこれを多くするという形で、いま税務当局も一線で非常に働いておるときでございますので、そういう把握率の格差というものは、いまだんだんになくなっている最中だというふうに考えております。
  287. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いま把握率の問題が出ましたが、かりに把握が正確にされたとしましても、九・六・四というものは残るのじゃないでしょうか。そういう現実の、いま九・六・四といわれておる実態の中から、ここはこういうふうに課税が把握されておる、ここはこのようにまだ課税されてない、こういうむずかしい事情がある。この問題につきましては、九・六・四でございますから、九は給与所得であって、このように把握されている、そしてそのことをいわれておるのだ。六は、事業所得者等に対しまして税務署の調査もやっておるけどれも、このようになっておる、それと給与所得者との関係は今後どういうふうにしていこうと思っておる、四というのは農業所得者といわれておりますが、農業所得者に対しましては、国家的な問題もありますし、こうなってきたのだ、こういうように現在までの課税の推移から見まして御説明いただければ、私はみんなの人が納得するのではないかと思います。そこにもう一つつけ加えまして、九・六・一という、その一とは何ぞや。法律によって所得率をきめた上に特別な控除をして、安い所得に課税されておるということの実例じゃないか、こう思うのです。そういうものに対して法律によって所得率をきめていくならば、一切そのようにきめて、そしてそのきめたものから実情に応じて経費を引くというようなことができないか。この問題につきましては、第一線の税務職員はほんとうに苦労しておりますよ。どこの税務署に行っても、この九・六・四並びに一という医療報酬に対する問題は、税務署は、調査に行った場合でも、ほんとうに借りてきたネコみたいに——また私たちのいなかの地方では、家が新しく建つのは学校と病院だというようなことをいわれたこともあります。そういう実際の所得の調査において矛盾を感ずる、そのような不安な気持ちで——不安と言いますよりも、おかしいような気持ちで税務職員は仕事をしなければならない。私は、もう少しはっきり九・六・四に対する——世間の常識になっていることでございますから、大臣としまして、このことにつきまして、具体的に、私はこう思うのだとおっしゃっても、私は何もおかしいことはない、このように思いますから、もう一回その点お願いいたします。
  288. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 税務署が所得の把握力において、できるだけこの比率が公平になるように努力することは当然でございまして、やっておりますが、しかし、いかに努力しても、源泉課税である給与所得の把握力に及ぶということは、なかなかむずかしいことだと思います。そうしますと、そういう性質を持った給与所得というものについては、やはり給与所得控除を引き上げるとか、そういうような別個の対策をもってこの公平化をはかる必要があると思いますので、今後の税制は、そういう面においても私どもは研究していきたいと思っております。
  289. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 どうしてそんなにこの九・六・四に対しまして大臣からのお話を聞けないのだろうか、こう私は思うのです。不公平はあるんだ、だけれども現在の実情においてはしかたがないんだ、それで税務行政は強行していくんだ、このようなお考えのようにとっていいでしょうか。主税局長もいらっしゃいますし、長官もいらっしゃいますから、ひとつ、大臣を助ける意味において、そういう面から御発言いただければと思います。
  290. 泉美之松

    ○泉政府委員 田中委員のおっしゃるように、現在の税務行政におきましては、給与所得に対する把握率と、営業、庶業、それから農業、あるいはいまお話の社会保険診療報酬を含むところの医師の所得等々の間におきまして、なかなか把握率が同じように参っておりません。俗に、九・六・四とか九・六・一だとか九・三二だとか、いろいろなことばがいわれております。私は必ずしも一般的にそれほど大きな差があるものとは思ってはおりません。しかし、査察の事件、あるいは特別調査事例、その他の一般の調査事例におきましても、実際調査いたしますと、申告した額とほんとうの所得との間にかなり開きがある場合があるわけであります。そういうことで、給与所得の場合には、給与の支払いの際に源泉徴収されるということのために、ほとんど正確にそのまま把握される。ところが、事業所得でありますと、現在の税務職員の数をもってしては、膨大な納税者の全部を調査することはとうていできません。全部どころか、その一割を調査するのでも、所得税の場合には非常に困っておる。法人の場合に、ようやく大法人について四〇%、中小法人につきまして二〇%余りを調査できるだけでありまして、個人所得税に至っては一〇%の調査がなかなかできないような状況にあるわけであります。したがいまして、調査した人と調査しない人との間に非常に把握の開きが出てまいっております。これははなはだ遺憾なことでありまして、何とかこの把握率の差をなくするように努力したいのでありますが、現在の税務職員の数をもってしては、田中委員よく御承知だと思いますけれども、なかなか調査率をそのように上げることができかねております。  したがって、私どもといたしましては、現在の税務職員をフルに活動させてやるとしても、全部の調査はとうていできません。調査の重点化を行なっていく、特に法人税の場合には、従来期間損益の調査にかなり時間を要しておったわけであります。その期間損益の調査はものによってやらなくちゃならぬものもありますけれども、長い目で見れば、数年間の課税所得は変わりなく、当期否認、翌期認容といったようなことを繰り返しておる点もありますが、法人税の調査の重点を、そういった期間損益の調査より不正所得の発見に重点を置いていく、そうして調査対象を厳選して、そのかわり調査の内容を充実する、こういう方向で昨年以来方針転換を行なっております。個人所得につきましても、いまお話のように、所得の漏れておるという業種なり所得者がいろいろおりますので、そこに重点を置いて調査を進めていく、すべての調査を網羅的にやるということでなしに、重点的な調査をやっていく、それによっていまの把握の率の差を縮めていく、こういう努力をいま一生懸命するようにいたしておるのであります。  しかしながら、なかなかこうした努力は一朝一夕でその効果があがるものではございませんので、今後なお数年をかける必要があろう、このように考えております。
  291. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いま長官のお話の把握率の問題を解決すればできるというような点があったわけでございますが、私がお聞きしているのは、把握率がどうであろうともこうであろうとも、社会保険収入については一定の率がきまっております。そのこと自体が、給与所得者並びに事業所得者、農業所得者、そういうようにあるわけでございます。私はそのことにつきまして聞いたわけでございます。もう一回主税局長の御答弁を願います。
  292. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 いまの最後の御指摘の、社会保険診療報酬の標準率の二八%の法定化の問題、これも古い沿革のある問題でございまして、いろいろな理由があり、社会保険の一点単価の低さを補うという見地からできましたものでございます。そうした意味では、多分に政策的な色彩を持っております半面、おっしゃるように、これが他の所得者とのアンバランス、あるいはさらに標準率という不合理さからくるところの所得のゆがみ、これらをもプラスすることはまた事実でございまして、税務職員が常に泣き寝入りするところでございます。これらの点につきましては、租税特別措置の問題といたしまして先般来御議論が出ているところでございます。政策的な社会保険診療報酬の低さとの関連、それを税でどう見るかという問題でございまして、昭和二十八年からできた非常にむずかしい問題でございます。なお、田中先生のおっしゃることを伺いまして、非常に私どもも思い当たるところがあるわけでございます。  しかし、要は、所得税あるいは法人税という純所得をつかむ税金は、何といってもいま先生のおっしゃいましたように、納税者が税法を理解し、さらにまた、税の意義を理解して自発的に協力する努力が大事だと思うのでございます。それと税務職員の努力によってささえられる、こう思います。  そんなような点から見ますと、私は長い間の経験で、先生より経験が少ないかもわかりませんけれども、私の税務署長時代におきますところの営業所得者あるいは農業所得者の税に対する意識より現在のほうがむしろ進歩してきている、私はこういう気がいたします。青色申告制度一つの画期的な事件だったと思うのでございますが、帳簿も、過去にはこのごろのような複式でしていなかったような気がいたします。賦課課税の時代には、税務署の調査によって初めて課税がきまるというような状態でございます。現在では帳簿もだいぶ整理されつつありますし、帳簿を税務署に見せること自体も、過去ほどいやがる傾向は少ない。これは、先ほど長官も申されましたように、もう少し時間をかけまして、税制を自分たちのものだという自覚と納税協力をすすめてまいりまして、いわゆる公平な税制に持っていきたい。御承知のようにイギリスでは、給与所得者と営業者、農業所得者との間に、給与所得控除というような差はないわけであります。  このような点から見まして、私は、長官の言われましたように、あるいは大臣の言われましたように、時間をかけて納税者の自発的な協力を求めながら、いま先生のおっしゃいました最もむずかしい問題を解決していくべきではないか、かように考えております。
  293. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 私は長官のおっしゃったことに対しまして、はっきりその点を指摘しました。問題が違う。いまの主税局長のおっしゃったことは私どもよくわかります。大臣もわかっていただいたと思います。社会保険収入に対しては、二八%をかけて、それから経費を引くということについては、税務職員は困っている。根拠は何かと言いますと、不公平である、矛盾である。実際、医療業をやっているところに調査に行ったその調査官はそれで一番困っているわけです。そういうことをいまの問題から大臣もよく認識していただいて、ほんとうに不公平ということにつきましては、いま野党の先生方からほんとうに痛烈なお話を私は聞いていて、なるほどそうだそうだと思うことは、そうだと言っても悪くないのではないかと思うのです。そういう実情を知っておるならば、当然行政の上においてそれを直していくという態度をとらなければならぬ、とってもらわなければいけない、こう思うわけでございます。おそらく医療収入につきましては、二八%からいろんな経費を引いて、収入の一割の所得になっているか、一割五分になっているか、はなはだしくは五%くらいの所得になっているか、そういう現実を御存じない。それでは全国の医療収入の実態はどうなっているかというようなことまで、私は一々こまかいことまで大臣が知っておきなさいと申し上げるのではなくて、税の問題についてはそのようなところに矛盾があるということを知ってもらわなければならぬ、こう思うわけであります。農業所得につきましても標準率は公開しております。農業収入に対しては標準率公開によって所得を算定しておりますが、昭和二十五年から現在まで見ましても、納税人員は一割ぐらいになっております。昭和二十五年の納税人員から見て昭和四十一年の農業所得者の納税人員は一割にも減っておる。それでは給与所得者並びに事業所得者というのはどうなっておるかということは、こういうむずかしい表にちゃんと出ている。それならば、当然私はそういう不公平——不公平とは一がいに言えませんけれども、課税の実情において考慮しなければならない問題だ、こう思うわけでございます。  何といいましても、不満ながらも納税者は、あるときには多額な税金も納税して完納し、完納したことを一つの誇りに思っておる。そうして営々と生活しております。そのような納税者によって収入になった租税収入が、この前、私が当委員会並びに予算分科会において主税局長お尋ねしましたが、昭和四十二年度の租税収入の見積もりにおいて——大臣にも申し上げたはずでございます。間違いがないかと。その後予算分科会では主税局長から少しの説明がございましたが、そういうことつきましても、局長のほうから大臣は報告を受けておるだろうが、昭和四十二年分の租税収入歩合が一〇%下がっておる。源泉徴収だけじゃなくて、法人税収入においても下がっておる。その根拠につきましては、担当の方にお尋ねしましても、下げなければならないという確たる理由が見出せません。たった一%を下げるか下げないかによって、政府また与党である自民党は、その財源というものの利用を保留しておる、こういうことになるわけでございます。税収の健全性を云々と、このように言われますが、筋が通った健全性ならば私は問題はないと思います。当然、係の方から主税局長のほうにも報告があり、主税局長も大臣に御報告なさっておると思います。それについて、あらためて主税局長からの御答弁をお願いいたします。
  294. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 先般予算分科会におきまして、田中委員の御指摘になった源泉所得税の徴収率の問題でございます。先生、克明に昨年と比較されまして一%——いま一〇%とおっしゃいましたが、一%率を下げまして私ども予算見込みでは収入見込みを立てているわけでございます。これは四十一年度は九九%と当初見ておりましたが、だんだん実績が下がりぎみでございます。もちろん、九八%というのは少しかた目であることは先生御指摘のとおりでございます。少し下がりぎみに見ましたので、四十二年度は九八%と見るほうがよかろうという私どもの判断のもとに、こういうふうに見積もったわけでございます。もちろん九九%と見積もることも可能ではございますが、見積もりはできる限り私どもの得られる資料の最近のものに近づけることを慣習としております。別に作為があって、これによって留保しようというような気持ちはございません。留保するなら別な方法で留保するかとも思いますが、そういう気持ちは全くないのでございまして、ぜひ御理解いただきたいと思います。逆に、給与所得の見方につきましては、経済企画庁の給与水準の上昇とも合わないくらい、むしろ多目に見ておるではないかというお話すら片一方にはございます。これは私どもは、企画庁の見通しの給与と税法上の給与との違い、あるいは時期的の差、こういったことで説明しておるわけでございますが、これは一つの約束でずっと参っておりますので、いろいろな意味におきまして御不満、御批判が出るわけでございますが、そういった意味で、あたたかい気持ちで見ていただきたいと思います。
  295. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いま、もっともらしい説明がございましたが、これは不服でございます。なぜかならば、四十一年度の租税収入は、それでは三月末ではどのようになって、四月でどのようになったか。収入状況はいいはずなんだ。また、当初から租税収入の見積もりにおいてそのような説明を私は受けておりません。  それでは申し上げます。昭和四十一年度の源泉所得税の収入が九九%としたということは、そのときにわかっております。三十九年の収入歩合が九八・六%であった。四十二年の見積もりにおいては、その基礎は四十年の実績である九八・八%である。予算書にちゃんと書いてございます。前々年の実績を推計してと。それが筋じゃないですか。大蔵省は特に数字については詳しい。何べんも申し上げております。前年当初とかなんとかいうことばは、大蔵省が一番使うのだ。あくまでも、そういう前々年の実績によりその基礎のもとに推計した、そのような説明を受けている。それにもかかわらず、いま主税局長お話では、いろんな事情を勘案して——そのようないろんな事情は、根拠は薄弱ではないか、あまりにも計数だった説明ではない、このように私は思うわけでございます。あくまでも、四十一年の九九%の収入割合は、九八・六%であったものが基礎になっておるならば、四十二年は、四十年の実績が九八・八%——〇・二%上昇している。その上昇しているものによって、四十二年の収入割合が九八%とは何だ、一%下げたとは何だ、このように私は言うわけであります。それは源泉所得税だけではない。法人税も、申告所得税も——ことしの申告所得税の収納状況なんかはほんとによかった。税務署職員も、第一線ではその収納状況を喜んでおります。そういうことが末端に当然反映されていいと思う。そのようにがんばったならば、税務職員、よくがんばった——この申告所得税の収納のいかんということは租税収入の大きな問題である。私は、よかったときには、よかったというようななぐさめのことばと同時に、それが反映しなければならない、こう思うわけでございますから、もう一回主税局長に御答弁を願います。
  296. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 確かに、田中先生のおっしゃるように、私どもはできるだけ最近の実績数値を使用すべきだと思っております。今年度の申告所得税も、申告金額比較的予想以上によかったことは事実でございます。しかし、これが数字になってあらわれますのはもう少し先にいきまして、このあらわれました数字がそのまま利用されますのは、四十一年分の申告所得税ならば、四十三年度予算の際に客観的な正確な数字として利用されるわけでございます。私どもは、端数を切り捨てたという点のおしかりを受ければ別でございますが、四十一年に当初は九九%と立てましたけれども、四十年度実績が九八・六%であった。これが最近わかったものでございますから、四十二年度の源泉所得税の徴収率に、この〇・六を切り捨てて九八%とした。源泉所得税でございますので、〇・六でも大きいといえば別でございますが、慣例といたしまして、九九%あるいは九八%というふうに計算いたしておりますので、切り捨てまして九八%といたしただけでございまして、別に他意があるわけではございませんので、ぜひお許し願いたいと思います。
  297. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 ですから予算説明書に書いてあることと実態が合わなければいけないじゃないですか。大臣、おわかりでしょうか。簡単に言ってしまえば、四十一年度の源泉所得税の収入を見た場合には九八%であったというのです。ところが、四十二年の収入を見る場合の基礎は同じく九八%——かえって〇・二%上がっている。そういうものを推定根拠とするならば、当然九九%以上にならなければいけない。それが推定根拠であれば明らかであります。それを、四十年分を持ってきて九八%であるとか、端数を切り捨てたというようなことでごまかされては困ります。はっきりしておりますから。そういう点を大臣がわかっていただければけっこうでございます。大臣、おわかりでしょうか。数字だけですが、お願いします。わかったかどうか、それだけでけっこうでございます。わからぬですか。
  298. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まあ、わかったことにいたしまして、十分注意させます。
  299. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 大体わかったというような趣旨に受け取りますが、そうしますと、当委員会の一番初めに私が質問いたしましたときに、間違いがあれば訂正するということもお聞きしましたが、そこまではもう私は要求いたしません。また何かの機会がございましたら、そのことにつきましては進めていきたいと思いますが、ここでも先日からの委員会で、社会党の阿部委員並びに広沢委員が、あの措置法はあまりにも優遇し過ぎておるという、ほんとうに核心に触れて御発言になっております。そのように、主税局長も長官もいろいろなところでお話しになったことまで出ておりましたが、どうもその話になりますと、なかなか顔をしかめて苦しそうな御答弁のように私はお見受けします。その矛盾がわかっておるとするならば、そのままをここでなぜ言えないのか。各委員の皆さんも、また主権者である国民がここに来て、税務職員並びに皆さんもここにおってその状態をながめた場合、また、ここにいらっしゃる皆さんも、なるほどそうだというようなお顔をしております。そのような顔色がうかがわれます。措置法については、あまりにも政府と官僚がそういうことについて腹を合わせるのじゃないか。いまの租税収入についてもそうでございます。あくまでも自分たちがやったことは金科玉条でやめない、そういう考え方は私はどうかと思うのです。二、三日前にある人は、国家の利益政府利益は一致しない場合もある、そのような有識人もおります。私は、当然わが国の行政においてもそのような行き方がなければならない、いつも政府と官僚は一体になる。そのような実態から、いまの有識人の話もあるように、国家の利益政府利益が不一致の場合もある、そういうことを考えてやっていかなければいけない、このように思います。そのことに対します大臣の御所見をお願いします。
  300. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 最後におっしゃられたことはそのとおりでございますが、それがただ特別措置の問題と結びついての御発言のようでございますが、私は、これは自分で悪いと思いながら弁解して言っていることではございませんで、この何兆円という国税の中で、国が政策的に必要だと認めた特別の措置をとることによって、二千億円や二千五百億円くらいの減収というものが何でそんなに論議されるのかというふうに、私はむしろふしぎに感じております。だから、それがひとしからざることというふうにこの特別措置をとることが、非常に考え方に間違いがあるのじゃないか。さっき申しましたように、何か特定の人を助けるとか大企業を助けるというふうな頭で特別措置を見ることが最初から間違いだ。いま特別措置が何をやっているかをずっと見ましたら、大企業も関係しているものもありますが、大多数の項目というものは、ほとんど中小企業そのほかの特殊なものへの措置でございまして、いまの特別措置が全部大企業のための措置にはなっておりません。  そういう意味で、中小企業にはどうするか、一つ一つ起こってくるいろいろな事態に対する特別措置というものは、いまどんどん新しくふえておるというところでございますが、これが一々税の公平を害する措置かと申ますと、私はみんなそうは言い得ない。ほんとうに害する措置ならば、これはあなたの言われることをそのとおりだと思いますが、いまやっておる特別措置が全部そういうふうなものとは、私はほんとうに思っていません。まだまだ、これから世の中が複雑になるに従って、必要な新しい特別措置がどんどんふえてくることだろうというふうに私は考えております。
  301. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それは大臣、そうおっしゃる論議はだいぶんいままでお聞きしました。私が言っておりますのは、特定の人だけをどうするということよりも、その優遇措置があまりにも不公平じゃないか。そこに問題がある。その不公平については、それは大臣は実務を知らないのじゃないか。きのうの答弁にしろ、そうです。九・六・四にしましても、そうじゃないですか。実務を知っていれば、当然不公平というものに対しましては、だれが犠牲になっておるか、はっきり申し上げて税務職員と思います。または納税者が、先ほどもお話しになっておりましたが、納税意欲さえ失い、愛国心を失っている。ほんとうにそういう問題まで考えてみた場合には、これはほうっておけない不公平という問題がある、そういうことを私は強調しただけであります。まあ大臣もおわかりになったと思いますが、こちらからの質問によってそうおっしゃったと思います。先ほど色紙の話も出ましたが、どうかその点を考えていただきたい、こう思うのであります。  ところで、問題を変えまして、大臣にぜひ知ってもらっておかなければならない問題と思いますから申し上げますが、五月十一日の夕刊に、税務署でいままで採用しておりました所得標準率表並びに効率表の問題が載っております。その問題につきまする税務職員の無罪の判決、こういうものにつきまして、大臣がどのくらい御理解いただいているか。これは当委員会においても討議するということになっておりますから、この問題に対する大臣の大体の——納税者の受けた財産権、私有権の侵害といいますか、その責任、その解決方法、五万人の税務職員に対する指導、具体的に言えばそういうことになります。ですから、大臣に一々あれしてもどうかと思いますから、大臣は基本的な所信を述べていただきまして、詳しいことはまた長官なりにお尋ねしたい、こう思います。
  302. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、五月十一日、大阪地方裁判所におきまして、かねて所得標準率表及び効率表を民商の会員に渡した税務職員につきまして裁判が行なわれておったわけでありますが、これについて無罪の判決があったわけでございます。まだ私どもとしましてはその判決の正本を入手いたしておりません。正本を入手次第、よく検討いたしたいと思っておるのでありますが、ただ裁判におきまして、こういった標準率表、効率表が形式的に秘密であるということはわかるけれども、しかし、こうしたものを刑罰をもって処罰するには、実質的に国家的な秘密でなくてはならぬ、したがって、そういう点では、所得標準率表、効率表というのは、そういったほど秘密の性質のものではなく、むしろ租税法律主義のたてまえからいえばこれを公開するのが適当だ、こういうような御趣旨に聞いておるわけであります。なるほど、先ほど田中委員もおっしゃいましたように、農業の所得標準率は公開いたしております。あるいはそのほかの標準率につきましても、公開はいたしておりませんけれども、申告する人がある程度わかるような措置を講じておるものもございます。たとえば原稿料の収入についての標準率のごときであります。しかしながら、営業についての標準率につきましては、これはやはり青色申告ということで、青色の帳簿に正確な収入支出を記帳していただいて、それに基づいて申告をしていただくたてまえでありまして、標準率というのは、そうした青色の記帳のない白色申告の場合において、その申告の適否を判断する一つ資料であり、また効率表というものも、そうした場合において、申告の適否について税務職員が判断をする場合の一つ基準となるものにすぎないものでありますから、そういった性格からいたしまして、これを公表するということは、かえって納税者にその標準率で申告しなければならないかのごとき予測を与え、好ましくないというふうに考えられますので、私どもは従来これを秘密といたしてまいっておるのであります。この点について、裁判所のそうしたものを秘密とすべきではないという御趣旨には、にわかに賛同いたしかねるのであります。  しかしながら、申告納税のたてまえからいきますと、いろいろその点に問題がございます。税務職員が多数の申告納税の納税者を相手にして非常に苦労しておるのが現状であります。そういった点からいたしますと、標準率につきましても、その標準率のとり方などにつきまして、もっと科学的な検討を加えていく必要があろうと思っております。同時に、標準率につきまして、現在は営業、庶業など、広範になっておりますが、それを範囲を狭めていくというようなことも考える必要もあろうし、それから、いま申し上げましたように、科学的な批判に耐え得るようなりっぱなものにしていく必要があろうというふうに考えております。また効率表につきましては、この性格からいって公表すべき性質のものではないというふうに考えておるのでございます。  いずれにいたしましても、われわれとしましては、現在におきましては、裁判所の見解に直ちに服するわけにはいかない、控訴せざるを得ない、このように考えております。
  303. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは予算委員会で、田中さんの御質問でございましたか、私が民商の問題にお答えしたことがあったように思いますが、民商の活動についてはいろいろ問題がある。しかもこの問題の中に、内部とのいろいろな関係によっていろいろのことが行なわれる弊害というものは、一ころはひどい目立ったものでございましたが、最近もまだあとを絶っていないということは、私どもとしましては、一面、内部との関係を持つ者に対する綱紀の問題でございますので、これはもう少し厳正にやりたいというふうに考えて前に答弁いたしましたが、そういう方向で私ども今後やっていきたいと思っております。
  304. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 この問題につきましては何回か発言がございましたが、なかなか一歩も前進してないようでございます。私のお聞きしたことに対しての満足する御返答じゃないようでございます。といいますのは、判決要旨などから見ましても、ここに私、写してきておりますが、ちょっと読んでみます。「課税のトラの巻である標準率をもらしたというが、憲法では国民の私有財産を保護するたてまえから課税率などは一般に公表すべきであると規定している。」また、これは判決の要旨として載っておりますが、「税法では見積もり課税は許されていない。徴税トラの巻をあてはめ、国民の税金を徴収することは憲法八十四条(租税法定主義)の精神に反する。租税法定主義は税金にたいする国民の長いたたかいの結果、憲法の原則として認められたものだ。税金は国会で制定された法律規定によってのみ徴収することができる。これは国民の側からすれば限界を越えた税の徴収は許されず、国民の私有財産権は保障されているということである。」また同じく松浦裁判長はこのことにつきまして、「厳しい口調で税務署の徴税万能主義を批判した。」このようにまで載っております。これはこの間から長官は、判決文を読んでおりませんというような御答弁でございましたが、判決文を読もうと読むまいと、新聞の報道するところによって、私はさっきから何べんも申しますが、一番心配しているのは第一線の税務官吏じゃないか、このように私は思うわけでございます。そうするならば、当然その責任者は長官でもあり。大臣でもある、このように思うわけでございます。こういうことについて、その答弁が一歩も前進してないということにつきましてはどうか。お仕事もお忙しいようでございますれども、私は、もう少し税務行政の中においては、進歩し、前進した長官の御答弁を期待しておったわけでございます。  時間もございませんから、次に、ちょっと古い問題で申しわけございませんが、あくまでも、一番初めに断わっておりましたように、公平の原則ということにつきまして、昨年の秋だったと思いますが、佐藤総理の所得の問題につきまして、また政治資金の問題につきまして新聞をにぎわしたことがございます。私はそのときの朝日新聞の「天声人語」を読みまして、税務の経験ある者として、このような「天声人語」が国民の前に報道されるようならば、日本の国は法治国家だろうか、こういうことでよかろうか、このようにあまりにも税務署をばかにした、国民をばかにしたことばが世間で通用している、そういうことについて深く激怒を覚えたものでございます。それを一応ここで読みまして、私は最後にこのことにつきまして大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  その「天声人語」を読んでみます。「おたがい税金には身を切られる思いがする。そこで節税のための参考書なども出る始末だが、なあに、金を出して買う必要もなかろう。ちかごろの新聞の政治面を少し念入りに読めば「税務署撃退法」をたちどころに会得できる。」税務署撃退法なんということばは、私はどうかと思うのです。続けます。「しかもこの方法は、名も知られぬ人物の案出によるものではなくて、佐藤流または自民党流といえるきわめ付きの権威あるものだ。」おもしろく言っておりますが、「一国の総理大臣が活用している税についての極意だから、われわれ庶民が見習って悪かろうはずがない。税務署の方でも「あっぱれなお手並み、佐藤流のながれをくむ方とお見受け申した」と頭を下げて引下がるに違いあるまい。さて、その極意は——税金をかけられそうになったときは、「アレは名儀を借りられたのだ」と言い抜けることである。その答えで足りないならば「アレは一切、秘書のやったことだ」と資料は見せぬがよい。」資料を見せないでするというような行き方に、私はほんとうに怒りを感じたものでございます。「それでも税務署がきかず、なおも追及するようであれば、国税庁長官が佐藤首相の「二千万円寄付事件」で述べた“滞留理論”を拝借するとよい。国税庁長官によれば、課税の対象になるためには、ある期間、政治献金が本人の手もとに滞留しなければならぬ。佐藤首相のこの事件のばあい、滞留していないから、課税対象にはならないそうだ。われわれのボーナスなど、滞留はしてくれぬのである。アッという間に、右から左へ飛んでゆく。滞留どころか、前借で実質はなくなる。ここのところを大いに力説して「滞留なきところに税金なし」と正面から押しまくる。それでも税務署がきかず、野党攻勢のごとくなおも追及する時は、「こういう税を払わぬのは、わが家の“積年の病弊”のぜいである」と目玉を大きくしてひとごとのように言うがよい。ついでに「わたしは税務署の意見にも謙虚に耳をかたむけ、わが家の体質改善をはかり、引続いてわたしに課せられた責任を果してゆく所存である」と結ぶ。以上で税務署は“黒い霧”はないと判断してくれるはずである。「税金のひとつくらいは——」と荒舩流の応用はまったく不必要である。」このようなことが書いてありまして、これはある程度ひやかしみたいな書き方かもしれませんけれども、私は、これを読んだときに、税務署職員がこの四十二年三月の確定申告においてどのような思いをしただろうか。また、国民の中にはこれをそのまま受け取った人も何人かおるのじゃなかろうか。こういう行政を繰り返しているならば、先ほど私が申し上げましたように、日本の法治国家の秩序というものはくずれていきます。それが重大な問題だ、このように思うわけでございます。そういう問題につきまして、大臣もこのことはお読みになったと思います。一つ一つ取り上げて中の文章をとっていけば、とにかく私も税務署に二十年近くおりまして、こういう問題を税務署の確定申告のあの忙しいときに持ち込まれたならばどうなるか。何もそれを持ち込んだことによって税金を払わないという納税者はおりません。そのような踊らされた納税者はおりません。その結果として申告所得税の三月の収納は著しくよい成績をおさめておるのです。ですけれども、こういうことがそのような不安を与え社会秩序を乱すようであるならば、これは行政面においてもどのようにでもできるのじゃないか、このように思いますから、大臣の御所見をお願いします。
  305. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私もおっしゃるとおりだと思います。政治のあり方というものが国民の心理に影響を与えるということは、非常に大きいものでございますので、そういう意味におきましても、政治の姿勢というものをお互いに正さなければならぬということを深く考える次第でございます。
  306. 泉美之松

    ○泉政府委員 ちょっと、私の発言について「天声人語」で妙なことを言われておりますので、この際釈明いたしておきます。  御当人にはすでにお会いして申し上げまして、御当人には御了解をいただいておるのでありますが、私が滞留云々を申し上げましたのは、政治家の所得に対して課税いたします場合、いわゆる派閥の盟主と申しましょうか。(「親分だ」と呼ぶ者あり)親分といわれる方が、政治献金を受け取って、それを直ちにその派閥の人たちに分けてしまった、こういう場合には、その派閥の盟主あるいは親分とおっしゃる方の所得にはならないで、実質上その収入を得た人の所得になるのです、こういうことを申し上げたのでありまして、佐藤さんの場合、これは名義を借りられただけでありまして、佐藤さんの収入という事実は全然ありません。したがって、それとは関係ないのだということを申し上げたのであります。それを滞留理論などといわれて、非常に迷惑をいたしておるのであります。税務職員もそういうことはよく承知いたしておりますから、長官がそんなばかなことを言うはずはないということで承知いたしておるはずであります。
  307. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それは、いま申し上げましたように、朝日新聞の「天声人語」でございますから、そういう一つの警笛として、税務行政も、ほんとうに国民の納得する、いつも長官がおっしゃる近づきやすい税務署、適正な課税、こういう方向で今後私たちも協力させていただきたい、こういうことを申し上げまして、私の質問を終わります。
  308. 内田常雄

    内田委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、明十八日、木曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時四十五分散会