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天日参考人 鉱害基金の
理事長を命ぜられております
天日光一でございます。
鉱害基金の
業務の概況につきましては、お
手元に御配付を願っておきました「
業務概要」四十二年四月一日版に、
概要と申すよりはむしろ詳細と申したほうがいいくらいに設立以来のことを詳しく記載いたしておるわけでございます。なおまた、この
概要の主要な数字を取りまとめまして、三枚の表に集約いたしましたので、これをごらん願えればなお完全なわけでございます。それから本日私の陳述いたします要旨は、陳述要旨といたしましてお
手元に差し上げてあると思いますので、ごらんを願えればほぼ申し上げたいことは尽きるわけでありますけれ
ども、しかしながら御
審議案件多数ございまして、お忙しい
先生方にごらんを
お願いいたしますと申し上げるのはなははだ僭越でございまして、さようなことはちょっとも考えておりません。以下ごく要点だけをつまみまして申し上げ、また
業務の要点の報告に織りまぜまして、若干の考えを付加させていただきたいと思います。時間はごく短くて済むつもりでおります。
最初に申し上げたいと思いますのは、私は先年命によりましてヨーロッパ
各国の鉱害
対策を視察に参ったことがあるのでございますが、結論といたしまして得ました感じは、
石炭鉱害につきまして
日本ほど立法的に、また財政
措置として手を尽くしておられる国、また困難を感じておられる国はヨーロッパ
各国には
イギリスといい、ドイツといい、
フランスといい、決してなかったことを記憶いたすのであります。これは申し上げるまでもなく、
日本の国土の狭小、人口の稠密、また鉱害物件の大半が御承知のごとく水田である、
日本の国家経済、国民経済の上において非常に大きなウエートを持ちますところの水田が被害物件の冠であるという諸事情からであろう。またもう
一つは、
日本が近代国家になりまするために、地下資源、ことにエネルギー源とされました
石炭の急速な
開発が必要であったということの結果であるかと思うのであります。しかしながら、
石炭の鉱害は
石炭の採掘には御承知のごとく不可避とされておるわけでありますから、日夜、年々歳々継続いたしております
石炭採掘を存続する限りは、ある
程度の鉱害は——御承知のごとく鉱害は安定するにはある
程度の年数を要しますので、必ず常にある
程度の鉱害は持続するのが当然であろうと思うのであります。ただ御承知のごとく、異常なる膨大なる残存鉱害が存置していることに問題の核心がある。またこの累積鉱害の急速な処理、解消にこそ先刻申し上げましたとおり
日本が立法的にも財政的にも非常な大きな
努力がされておるのであると思うのであります。
さように先年ヨーロッパ
各国を回りましてそういう感じを得ておるわけでありますが、御承知のごとく
昭和二十五年に特別鉱害に関する
法律、また二十七年にいわゆる臨時
石炭鉱害に関する
法律が制定されまして以来すでに十数年、朝野をあげて累積鉱害の解消につとめてまいっておるわけであります。しかしながらそれにもかかわらずなお膨大な残存鉱害がありまするために、
関係の地区におきましては大きな社会問題、またひいては国土保全の問題ということになりまして、国会等においてもしばしば御論議をいただいたことは御記憶のとおりであります。
かような背景と事情からいたしまして、御承知のごとく
石炭鉱害賠償担保等の
法律が三十八年に国会の御協賛を得て成立いたしたわけでありまして、この
法律に基づきまして、鉱害基金というものが
法律の施行と同日の三十八年七月一日から発足いたしたわけであります。
基金がいま申し上げた事情と背景からつくられたものでありまするからして、基金の性格とか
業務とかと申しまするものは、当然にいま申し上げた背景、事情を反映しておのずから定まってまいっておるわけであります。その当時ありました鉱業法改正
審議会、
石炭鉱害
対策審議会等の御答申を受けて立法されたものでありまするからして、基金の使命といたしましては、
石炭鉱業及び亜
炭鉱業の採掘に伴う鉱害の被害者を救済するため、また兼ね合わせて
石炭鉱業及び亜
炭鉱業の健全な発達に資するためという目的を持っておるわけでありまして、また基金の性格といたしましては、全額
政府出資による資本をもって営むという性格を持っておるわけであります。
かような次第でありまして、
業務といたしましては、当然のことでありまするが、鉱害の賠償のための担保の管理を
法律上命ぜられておるわけであります。もう
一つの大きな
業務は鉱害の賠償に関する
資金の供給、貸し出し、かような二つの
業務を使命とされておるわけであります。
しからば、三十八年発足以来近日でちょうど四年になるわけでありますけれ
ども、四
年間に幾ばくの仕事をなしてきたかということ、大量観察を願うために個々の年度のこまかい数字は省きまして申し上げたほらが御理解いただくのによいかと思うのでありますが、端的に申しますると担保の受け入れ、基金が担保として預かり込みましたものは、三十八年からこの四十二年度の末の姿を想定してあわせて申し上げるのでありまするが、担保の受け入れ額は十九億六百四十五万円と相なるわけであります。これに対して四十二年度末の姿を込めまして申し上げますと一体幾ら貸し出しをしたかということでありますが、貸し出しの累計額は契約高でありますが、八十四億一千四百万円ということになるわけであります。ざっと申し上げますると受け入れ高の約四倍半に近い貸し出しをしたことになるわけでありますが、十九億の預かり金をもって八十四億の貸し出しをするということは、申すまでもなく他の財源の補給に依存することは申すまでもないのであります。
その点は少しくあとで触れるかと思うのでありますが、まず
業務の第一種類でありまする担保の管理でありまするが、この担保と申しますのは、御承知でございますとおり鉱業法によりまして以前法務局に供託されておりましたいわゆる供託金を取り戻して法務局から移管を受けたのでありまして、これが移管を受け、また移管の際に基金に払い込まれたいわゆる旧供託金の性格のものはみんなで六億九百五十三万六千円となるわけであります。これに対しまして、払い出した額は二億三千百八十三万四千円、したがいまして、四十一年度末には幾ら預かり残になるかと申しますと、三億七千七百七十万二千円となるわけであります。これは担保の第一種類であります。すなわち供託金であります。これは事業基金といたしましては、預託金という名称をもって処理いたしておるわけであります。
担保のもう
一つは、新法によりまして基金に
炭鉱から払い込まれた積み立て金であります。これは新しい
法律の規定によって通産
局長が年々金額を調定されて通知される。その通知に基づいて基金に払い込まれるものであります。この担保の第二種類でありまする積み立て金は幾らかと申しますると、おおむねただいまのところ
年間三億円前門後でありますが、当初以来本年度末で受け入れておる額は幾ばくとなるかと申しますと、十二億九千六百九十一万四千円となると想定をいたしております。これはまた
法律の規定によりまして払い戻すことがあるわけでありますから、幾ら払い戻したかと申しますと、二千六百九十二万四千円払い戻したことになるのであります。本年度末には幾ら基金が預かっておるか、管理しておるかということになりますると、十二億六千九百九十九万円ということになります。
以上申しました二種類が担保として基金が管理いたしておる金額であります。
なお、こまかい点でありますが、鉱業法による供託金は平均いたしますと、御承知かと思いまするが、
トン当たり五円五十銭
程度であったのでありますが、基金になりまして
制度が変わりまして、積み立て金となりましてからは、おおむね十五円ないし十七円——端数を省いておりますけれ
ども、
トン当たりの数字になりますからして、概略いたしますれば供託金時代よりは三倍になっておるということは申し上げられるかと思うのであります。
以上が担保の管理の
状況でありますが、なお供託金には
法律の規定に従いまして二分四厘の利息をつけて支払らことになっております。これも法定されておるわけであります。この二分四厘は基金となりましてからも同じく適用されておるわけであります。
次に
貸し付けの
状況でありますが、先刻申し上げたとおり、
貸し付けの契約の累計高は八十四億と申し上げたのでありまするが、その内訳を申し上げますると、第一類と申しましょうか、鉱害の賠償、
資金の
貸し付け、これが七十一億四千九十万六千円となります。それからこれに関連しまして復旧
事業団の工事
資金という意味で貸し出しましたものが、累計いたしますと二億五千万円になります。それから四十年から
法律が改正されまして、賠償だけではなくて、鉱害の防止のための
措置に必要な
資金も貸し出し得ることになったのであります。これは累計いたしますと、十億二千三百万円、これが八十四億一千四百万円の内訳なんでありまして、しからば八十四億一千四百万円の貸し出しをいたすのに預かった供託金、積み立て金約十九億のほかに、何の財源によったかという点を一言申し添えますると、
政府出資の資本金、これが三億から始まりまして、本年度で十二億になりましたから、この十二億を全部投入いたしておるとお考え願いたいのであります。そのほかに財投、つまり
政府資金運用部から年々金を借りて貸し出しに充てておりますので、これが合計いたしますと、
政府からの借り入れ金が四十七億円になります。それから
貸し付けた金で
償還期限が——分割返還でありますからして、
償還を受けて返ってきた金がございます。それが十三億三百万円になるわけであります。かような財源を持ちまして、先刻申し上げた八十四億円の貸し出しをいたすということになるわけであります。
なお付言いたしますると、積み立て金には四分五厘の利息を付することに規定されておりますし、それから
政府からの借り入れ金は六分五厘の利息を払うことになっておるのであります。いま申し上げたとおり、
政府の
出資金は三億、一億、三億、三億、二億という刻み方で本年十二億に達したわけでありますが、また
政府からの借り入れ金は、初年度はゼロでありましたが、三十九年度から五億、十一億、十三億、本年度は十八億円借りることになるわけであります。合計四十七億円になるわけでございます。
なお細目でありまするが、貸し出しの条件の
概要といたしましては、
貸し付けの限度と申しますか、ケース
当たりの限度は、原則といたしまして百分の六十、六割を借すということに
業務方法で許しを受けておりましたけれ
ども、最近の情勢にかんがみられまして百分の七十、また、終閉山に関する
貸し付けにつきましては百分の八十まで認められることになりました。それから
貸し付けの利息は六分五厘を徴しておるわけであります。ただし、この利息の点につきましては、
石炭対策の一環といたしまして全部の
貸し付けではございませんが、賠償に関する
貸し付けにつきましては三分の利子補給のような形で
支給されることになりましたから、差し引き六分五厘であった利息が三分五厘に軽減されることになるわけであります。本年度の三分の補給の所要額はおおむね三千四百万円と想定いたしております。
それから
貸し付けの返還の年限でありますが、当初は二年据え置き三年均等
償還という
方式が許されておったのでありますけれ
ども、これも最近の
石炭界の情勢にかんがみまして、三年据え置き五年
償還、つまり八年以内
償還ということに条件を緩和することになったのであります。
それからなお
貸し付けの回収の確実をはかるためには、担保はもちろん徴しなければならぬのでありますが、概略いたしますると、担保物件といたしましては、鉱業財団あるいは不動産等を担保に抵当権を設定いたしておるわけであります。
業務の
概要を要点だけをつまんで申し上げると、以上申し上げたことに尽きるわけでありまして、あとはもしおひまがございましたら、今度は
各種の
貸し付け先の
九州、北海道別でありますとか、大手、中小別でありますとか、あるいは賠償と防止との比率でありますとかという点を書き上げておきましたから、ごらん願えればけっこうだと思います。
なお申し落としましたが、毎年度の積み立て金の調定額の収入
状況が、年によって多少の変動はありますけれ
ども、九六ないし九八%
程度の収納をいたしておりまして、収納率はまずまずというふうに一応考えておるわけであります。
それからこれは非常に御
参考までにつけておいたのでありますけれ
ども、法務局から取り戻した供託金は——一口に取り戻したと申し上げましたが、実は
全国の九十六の法務局から、十数年前からの供託金を取り戻したのでありまして、件数にいたしますとおおむね八千件くらいあったかと思います。それからなお供託金で取り戻しましたのは、御承知のとおり
鉱業権なり租鉱権が、併合したり分割されたり設定されたり消えたりいたしますと、これはほんの一例でありますが、初めの二つが一緒になって、また八つに分かれてまたくっついて、常時変動があるのでありまして、これに従って私
どもの預かり金の台帳金額をずっと分けて、それぞれ分割していかなくちゃならぬのであります。実は
先生方を驚かして申し上げるわけではありませんので、この
資料に要約しておるので、ずいぶんとれでもめんどうくさいと思ったのでありますが、種本はこちらであります。
一つの供託金を分割、併合、租鉱権の設定、消滅などあわせますと、私自身でも、これはしろうとがラジオの組み立てをいたすよりも困難でありまして、これは専門の職員にやらせるよりほかないのでありますが、簡単にしましたのがこんなようなものでありまして、これは一口に預かって保管するといいましても、管理するということは、ただ口数を書いておくことだけでないことを御了解願いたいと思います。
以上で私の申し上げたいことは終わったのでありますけれ
ども、ただ一点つけ加えることをお許しいただければ、一体毎年貸し出す金額は何できまってくるのか、もっと貸し出せないのかという御質問を間々受けることがあるのでありますけれ
ども、私のほうの貸し出しの金額の所要額は何できまるかといいますと、毎年度の、いわゆる臨鉱法による鉱害復旧の事業の規模、たとえば本年は七十八億とか八十億ということからして、
炭鉱の
負担金、納付金が幾ら要るということはおのずから出てまいりますし、また臨鉱法によらないけれ
ども、
炭鉱が年々賠償をことしは幾ら払わなければならぬ、また自己復旧で幾らやらなくちゃならない、また鉱害の発生を防止するためにどういうことをしたいということの大きさから、自然に所要額が出てきまして、それに必要な金が出まして、そのまた
貸し付け率は、先刻申し上げたとおり一定の率があるのであります。でありますからして、御同情いただきまして本年度百億
政府からお貸しいただいても、百億を消化することにはやはり困難がある。必要な土台が基礎からずっと出てくるのでありますから、さような点で往々にしてもっと出せないのかというお尋ねを受けますけれ
ども、性質がそういうことになっておることをただ一言申し上げたいわけでございます。
以上で尽きたわけでありますけれ
ども、なお、先刻、
九州鉱害復旧事業団の
讃岐理事長からも一言申されたのでありますけれ
ども、今後の鉱害対・策としましては、新しく申し上げるまでもないのでありますけれ
ども、要するに異常なる累積鉱害の解消が根底であり主眼であろうと思いますので、このためには、あるいは長期にわたる計画の樹立あるいはそれを推進するための機構の拡充強化というような点が必要かと思うのであります。そういう際には、
石炭対策の片すみにおる基金でありまするけれ
ども、大きな方針の推進にはできるだけの対応した
努力はいたしてまいりたい、かように考えております。
お尋ねがありましたら、なおお答えいたします。(拍手)