運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-05-11 第55回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十一日(木曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 多賀谷真稔君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 西岡 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 八木  昇君 理事 池田 禎治君       佐々木秀世君    齋藤 邦吉君       進藤 一馬君    菅波  茂君       野田 武夫君    井手 以誠君       木原津與志君    中村 重光君       細谷 治嘉君    渡辺 惣蔵君       田中 昭二君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君     ————————————— 五月十一日  委員渡辺惣蔵君及び大橋敏雄辞任につき、そ  の補欠として中村重光君及び田中昭二君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中村重光辞任につき、その補欠として渡  辺惣蔵君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十日  石炭産業安定等に関する請願外二件(田畑金  光君紹介)(第九九五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  石炭鉱業再建整備臨時措置法案内閣提出第五  八号)      ————◇—————
  2. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。  ただいま大蔵委員会において審査中の内閣提出石炭対策特別会計法案が、本委員会といたしましては石炭政策を推進するためにきわめて深い関係を有する法案でありますので、この際、大蔵委員会に同法案について連合審査会開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたします。  なお、連合審査会開会日時等につきましては、大蔵委員長と協議の上、公報をもってお知らせすることといたします。      ————◇—————
  4. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 次に、内閣提出石炭鉱業再建整備臨時措置法案議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。三原朝雄君。
  5. 三原朝雄

    三原委員 議題となっております石炭鉱業再建整備臨時措置法案内容について御質問申し上げます前に、その基底になります一般的な問題について質問をいたしたいと思いますが、本年度政府石炭施策は、その経過なりその規模、その制度というような立場から見てまいりますると、私企業体制下におきましては、一産業への国の援助といたしましては、私は限界だとも思われる一つの画期的な施策だとも考えるものでございます。しかし政府は抜本的な自立安定対策の成果としてこうしたものを出されたということになりますれば、私はそれ自体一つの大きな問題を残しておると考えるものでございます。  抜本的な自立安定のための石炭政策路線というのは、大別いたしまして一つ経理あるいは経営と申しますか、そうした改善対策、あるいは需要確保対策、そうした二つの路線に分けて考えることができると思うわけでございますが、まず第一の経理改善対策という立場から見てまいりますると、四十年末の審議会中間答申におきましては、四十二年を待たずしてそうした石炭に対する一つ再建対策というようなものを実施するということで、企業といたしましては大きな期待を持ってこれを見ておったと思うのでございます。しかし現時点に立って私ども石炭産業立場検討してまいりますると、言われておりますところによれば、二千三百億の赤字がある。その中には異常債務として一千八百億というようなことが言われておるわけでございます。それに対して一千億の今回出されております債務肩がわりということになるわけでございますが、それがはたしてそうした抜本的な対策となって企業再建が可能であるかどうか、経理面がはたして改善されるかどうかというようなことを、私どもはこの時点に立って考えてまいりますると、いろいろ問題点が出てまいるわけでございます。  まず現在問題になっておりまする貯炭の問題をかかえておるわけでございます。それからくるいろいろな経営上の問題もあるわけでありまするし、また将来は賃金の上昇というようなものも考えられてくる。あるいは物価、電力その他の公共料金の値上がりの問題、あるいは年金制が実施されますれば、それに対しまする負担増問題等があるわけでございます。なおまた将来の経営面から見てまいりますると、採掘条件がだんだん悪くなってまいるというような事情もある。あるいは労働事情必ずしも楽観を許さないという事情下に置かれておる。生産の面から見ましても、その向上というものは一つ限界があるのではないかというようなことも考えられてくるわけでございます。そういうものに対処して、一千億のそうした肩がわり資金の問題ばかりでなく、政府においては安定補給金制度でございまするとか、坑道掘さくの補助あるいは炭層探査補助等が打ち出されておるわけでございまするけれども、そうしたいま申し上げまするような今後の情勢変化等も考慮してまいりますれば、経理経営面から見て、はたして再建整備にこの対策がなり得るかどうかというような問題について、きわめて憂慮せざるを得ない石炭企業現状と考えられるわけでございます。  なおまた需要確保の問題におきましても、これは先般来石炭局中心にして公営企業局あたりとともに非常に御努力の払われたことも承知をいたしておるわけでございます。しかし一般炭一般部門向け需要関係というようなものは急激な減少をいたしておるというような状態にもあるわけでございます。なおまた、石炭需要構造なり供給構造といったようなものに非常な問題がわが国ではあるわけでございまするが、そういうような問題等を考えてまいりますると、私は将来の需要関係においても楽観を許さない状態があると思うのでございます。特にこうした点には私は強力な推進が必要であると思いまするけれども、どちらかというと、現在におきましてはそうした政策需要の面におきましてもきわめて弱い力でやらなければならぬというような現下の事情下にあるわけでございまして、こういう点から私は、今回のこうした法案が上程されておりまするけれども石炭事業の将来については非常に憂慮するものでございまするが、こうした立場に立って通産当局はいかなるお考えを持っておられるか、御所存のほどを承りたいと思います。
  6. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま三原先生から、石炭鉱業現状、特に石炭鉱業が今日当面しております苦境の問題につきまして、詳細かつ的確に御指摘なされたわけでございますが、これらの諸点につきましては、私どもも全くそのように考えております。ただ少しく私どものほうの今後の抜本策の実施とその後の石炭産業につきまして、一言お答えさせていただきたいと思います。  御指摘がありましたように、今日の石炭鉱業苦境を端的にあらわしておりますのは、確かに経理状況がきわめて悪化しておるというようなことになるわけでございますが、この原因は、御指摘になりましたように、石炭鉱業は過去数年にわたりまして、他産業に類例を見ない大きな合理化施策を遂行してまいりましたが、石炭鉱業の他産業と違う点としまして、やはり老朽炭鉱閉山というような施策相当強力に推し進めてまいったために、退職金だけでもここ数年間に一千億以上の支出をしておる。これは本来収益から支払うべき筋合いになっておりますが、最近の石炭鉱業では、これがなかなか収益から払えないということから、資産処分等をしてまかない、さらに足りない点は金融機関からの借り入れというような形を通じてまかなってまいったわけでございますが、そういった過程から、今日累積赤字だけでも千億にのぼる累積赤字をかかえておりますし、債務につきましても、三原先生指摘のように二千億以上の債務をかかえておるわけでございますが、その中に少なくとも私ども一千億以上は異常なものではないかというような、ちょうど累積赤字と対応する程度のものが異常な借り入れ残高であるというふうに考えておるわけでございます。  そういうような点から、御承知のように、政府におきましては、昨年石炭鉱業審議会抜本施策についての政府に対する答申を受けまして、昨年八月に今後の石炭政策についての閣議決定をいたしたわけでございますが、その助成策の中にも、ただいまのような事情から発生した累積赤字異常債務についての元利均等償還方式による、いわば一種の肩がわりという措置を実行いたしたわけでございまして、今度の予算にもこれが計上されている次第でございます。  なお、御指摘のありましたように、また答申にもうたわれておりますように、この肩がわりだけでは、石炭産業は安定をいたしません。どうしてもそのほかに何らか合理的な助成手段がありませんと立ちいかない現状でございますので、なおそれをもってしてもできない企業については、安定補給金を一定額支払うというような政策も現にとっておりますし、それからさらに坑道掘進につきまして補助制度を本年度から導入するというような施策もいたしておるわけでございます。こういった資金経理面に対します助成策を講じますと、実は今日各社の再建計画といいますか、今後の長期計画について個別的にただいま政府におきまして検討している段階でございますので、これがどうなるというところまで今日お話し申し上げられないわけでございますが、一応私どもが全部の企業について一次読解的に当たったところによりますと、大体これらの施策をもってしますならば、今後企業——労使努力とも相待ちまして、大体昭和四十五年ごろになりますと、過去の異常なものにつきましても償却が相当程度進みますので、だいぶ身軽な姿勢にもなりますので、何とか大多数の企業についてはやっていける体制がとれるのではないかというふうに考えております。  ただ、これまた三原先生から御指摘がありましたように、そうは申しますけれども、今後の石炭産業が容易でないということは御指摘のとおりでございまして、特に今後の政策として、私は一番大事な問題は経理改善もさることながら、今後需要確保の点について格段の努力をしませんと、やはりこの政策の柱になっております五千万トン出炭体制というものもくずれるわけでございますので、この需要確保の点については御指摘もありましたけれども、特に今後私どもとして努力してまいりたい。やはり努力の方向としては今後一般炭につきまして、一般産業用炭需要予想よりも少なくなっていく傾向にございます。それから暖厨用炭につきましてもそういう傾向がございますので、この需要確保につきましては、新規需要をさらに強化してこれを中心として確保努力しなければいかぬのじゃないかというふうに考えております。  なお第三の大きな問題としては、労務者の定着政策ということが今日特に必要でございます。最近特に坑内夫だけでなくて、坑外におきましても技術労働者、電工、機械工等引き抜き等が他産業からございますし、それからそれでなくとも山を去りたがる傾向がございますので、定着政策、これはやはり相当強くやらなければならぬというふうに考えておりまして、これは厚生省とも共同研究してまいりましたが、これにつきましてはいわば画期的と申すべき炭鉱につきましての特別年金制度を今年度から実施する等の努力もしまして、その他いろいろな点について配慮しまして、労働者定着政策、これを進めてまいりたい。こういうふうなことをやることによりまして、これはまた同時に裏づけとしては同じく本年度から特別会計制度を設けていただくような計画にいたしておりますので、それを財源的なバックボーンにいたしまして、今後の石炭産業に対処してまいりたいというふうに考えております。
  7. 三原朝雄

    三原委員 いまのお話で、通産当局自身非常に楽観をしておるということではないと思いますけれども昭和四十五年ごろには一応大勢としては各企業体自立、安定できる自信があるというような御意見でございましたから、一応それを期待するといたしましても、しかし私はそうした楽観的な見方ができないということだけは率直に警告をしておきたいと思います。それは非常な情勢変化があるわけでございまして、そうしたことは現時点におきましてもすでにいろいろな問題があります。たとえばそういう政策を四十年度末においては、四十二年度にはすでに実施するというような御意見答申として出ておるわけでございますけれども、事実こうした施策が実際に軌道に乗るのは、こうした国会で審議をし、それから三カ月間かかって計画案が出される。それを検討されて認定をされるということになりますれば、ほんとうにこれが運営して実効を発揮してまいるのは下期以後というようなことも予想されるわけでございます。現在の石炭産業事態は、そうしたじんぜん日を費やすことのできない、きわめて深刻な危機に当面している会社相当あるわけでございますし、十分そうしたことを承知の上でいまの御意見として承っておくわけでございます。  そこでこれらに関連をして、一言この問題でお尋ねをいたしたいのは、将来の石油、要するに重油ないしそうしたようなものの価格石炭価格というようなものがどういうような見通しになるか、そうした関係をどう見ておられるか、御意見を承りたいのであります。  なお一千億という金額を限定された、先ほどもちょっとそういうことに触れられたようでございますが、そうした点についても御意見を承りたいと思います。
  8. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま重ねて三原先生から御指摘がありましたように、今後の石炭産業は必ずしも楽観を許さないというお説でございますが、基本的には私もそのように考えておりまして、政府といたしましても決して楽観をしているものではございません。先ほども申しましたように、なおこの特別会計バックボーンといたしまして、特別会計財源は年々ふえてまいりますから、このふえることと、それからさらに今度大蔵省との折衝で獲得しました原重油関税収入に限らないで、一般会計からの繰り入れもこの特別会計で認めるというような制度に相なっておりますので、こういった財源的な、財政的な体制のもとに、今後やはりきめこまかな、また有効適切な施策をやっていかなければならぬというふうに考えております。必ずしも楽観はいたしておりません。しかし私は各個別企業について今後の長期計画を見ましたときに、こういった政府施策と相待っていけば、少なくとも昭和四十五年度には相当改善されていくというふうに確信をいたしておるわけでございます。  それからなお御指摘にありましたように再建整備計画、ただいま私ども実はこの法律を審議していただいておりますと並行いたしまして、実はことしの一月ぐらいから各個別企業につきまして、石炭鉱業審議会経理審査会という中立委員をもって構成しております個別企業検討する機関があるわけでございますが、これの幹事会を四月以降開きまして、一月からはいろいろ企業独自で御検討いただきまして、この幹事会としましては四月以降個別企業にあたっていろいろ法案審議と並行さしていただいて検討いたしておるわけでございますが、法案がもし成立いたしますならば、私どもは直ちに石炭鉱業審議会を開きまして、この法案に盛ってあります再建整備計画認定のための正式な審査をいたしたい。それができるように、ただいま準備体制を連日続けておるわけでございます。したがいまして、下期というようなことにならぬように、できるだけ早くそういった体制がとれますように今後努力していく所存でございます。  それからなお、今後の石炭につきましては、特に一般炭につきましては、重油との競争がやはり大きな問題になるわけでございまして、その点について重油価格見通し石炭価格見通しはどうなのかという御質問でございますが、御指摘のように、この点が確かに私どもが憂慮している点でございまして、将来の重油価格低落傾向についてはまだ数字的に確たる定説はございませんけれども、少なくとも今日まで重油価格は下がる一方でございまして、たとえば昭和三十四年度、ちょうど石炭鉱業にとりまして千二百円引きを実施した昭和三十四年度におきましては、重油価格キロリットル当たり九千五十円であったものが、逐年相当大幅に下落いたしまして、昭和三十七年を境に、三十八年には七千を割るような状態にまでなっております。さらにその後におきましても逐年下落の傾向をとりまして、今日では六千八百円とか六千五百円というような、地域によりましては六千円をかすかす程度のところもあるようでございまして、石炭価格につきましては、御承知のように昭和三十八年まで千二百円引きを続けてまいりましたが、自後石炭価格は横ばいということにいたしておりますので、たとえば電力業界引き取ります石炭価格と、それから電力業界が買います重油との価格差も、石炭トン当たりにいたしますと、揚げ地におきまして千百円ぐらいの価格差が出てきておるというようなことでございまして、私どもとしましては、そういう状況下電力政策需要引き取ってもらいます場合に負担増対策を講じておりまして、今後この重油価格はやはりもう少し下がるんではないかという見通し一般に行なわれております。したがいまして、こういう状況に対処して、私どもとしましてはこれが結局大きな、何といいますか、電力、鉄鉱については政策需要ということがありますけれども一般産業とかあるいは暖厨用につきましては、この点がやはり場合によりますと予想を上回って、石炭需要が減るという危険性がございますので、そういった状況を見ながら需要確保努力してまいりたいというふうに考えております。  それから私、一千億と申しましたのは、これは石炭鉱業審議会答申に際しまして、いろんな角度から石炭産業過重負担というものについて検討を加えたわけでございますが、検討を加えます際に一つ角度では、実質累積赤字が今日どの程度あるかという検討でございます。その累積赤字につきましては、これはおおむね一千億程度あるという認識、それからもう一つ閉山合理化費用が異常にかかったわけでございます。この費用負担がどの程度かかったかということでございますが、これは取り方によりますが、千四百億ぐらいにのぼる計算のようでありますし、それを非常にシビアーに整理しますと、計算によりまして千二百億ぐらいになる場合もございます。いずれにしましても千億をこえているような状況でございます。そのうち一千億相当退職金相当金額になっております。そのほか借り入れ残高等につきましても検討を加えるとか、いろんな角度から検討いたしまして、おおむね千億程度は、少なくとも石炭鉱業としていかんともなしがたき重荷である。この重荷をしょったままで今後の再建計画に取り組みますときには、金利負担が年々増大してまいりますし、同時に金利負担重荷は、大手につきましては大体トン当たり四百円程度重荷になっておりますし、それから、これがさらに年々赤字を加えていきますと、さうにまたそれが過重な負担になってくるというようなおそれがあること、それからなお、これだけの異常債務をかかえていきますと、市中金融機関はほとんど全くと言っていいくらい、石炭鉱業に対する融資承知しないというような事態になっておりまして、今日石炭鉱業借り入れ残高の七割程度設備資金につきましては七割以上のものが政府からの融資になっておるのが現状でございますので、私企業として再建するというところまでいきます場合には、少なくとも千億程度のものは元利償還等政策をとらざるを得ないというようなことできめたわけでございます。
  9. 三原朝雄

    三原委員 次にお伺いをいたしたいのは、いまお話がございましたように、一定の施策財源のもとで、石炭企業としては情勢変化に対処して、十五年度ごろまでには自立できる体制努力されるであろうと期待をいたしておるわけでございますが、しかし、今回政府としては限界に達する一つ施策石炭企業に対しては助成をしたわけでございます。その反面、こうした相当金額助成をいたしました関係上、いまもお話があったように、企業に対しての指導監督を強められることは当然の帰結だと私は思うのでございます。しかし、私どもはその反面において、こうした施策財源を受け入れる企業者側企業意欲というようなものがこの際大いに発揮されることを期待せねばならぬと思うわけでございます。  そうした点から今回の法案内容等を見てまいりますと、たとえば投融資あるいは資産処分、そうした問題等について相当規制が行なわれておるようでございます。そこで私どもは、そうした立場から企業自体が自主的に、積極的な自立安定対策意欲的に発揮するためのビジョンというか、そういうものをこの際打ち立てる必要がありはしないかと考えるものでございます。そういう点において、この法案等についてはそういう内容のものが触れられておりませんで、主として終戦処理的な処置がなされておるわけでございます。  したがって、こういう点についてお伺いをいたしたいのは、石炭産業は、やはり日本のエネルギー産業としては最も古い歴史を持っておりますし、それだけに人材も相当な陣容を残存をいたしております。そこで私は石炭産業それ自体が将来自立安定するためには、石炭産業プロパー立場からのみ問題を処理していくということも大切でございまするが、それと関連をしながら新分野開拓するとか、あるいは石炭企業と、たとえば石油産業でございまするとか、電力事業でございまするとか、あるいは鉄鋼事業でございまするしか、そうしたもの、言かえまするならば、石炭産業一つビジョンを持ちながら、一石炭産業ばかりでなく、他の産業も並行的に運営をするというようなこともやる必要はないかというようなことも考えてまいるわけでございます。特にエネルギー供給事業というような立場だけをとらえてみてもいいと思いますけれども、そういうような立場石炭産業自立安定というようなことを考える時期に来ておるのではないかというようなことを考えるわけでございます。言いかえまするならば、そうした総合的な立場に立ち、長期的な計画に立って、石炭産業を伸ばしていくというような構想を持つべきではないかと思うのでございますが、これに対する御意見を承りたい。
  10. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のように、今日の石炭産業は、どちらかといいますと、石炭鉱業に対する専業の会社が多いわけでございまして、兼業部門開拓しておる企業は比較的少ないわけでございます。しかし、ここ数年来、傾向といたしましては、ただいま三原先生から御指摘がございましたように、石炭鉱業としては、単に石炭鉱業のみにたよって経営をしているというのではなくて、広く関連産業にまで開拓をいたしまして、その収益石炭鉱業の維持をはかるというような意欲のある企業も中にはございます。たとえば、ある大手企業におきましては、半分は石炭鉱業売り上げ、あとの半分は他の部門の新分野開拓による収益売り上げというようなことをいたしておりますが、これは超大手一つでございます。石炭についての自産炭収支では相当赤字でございますが、他の分野の利益を入れましたために、純損益ではこの石炭部門の自産炭の大幅な赤字相当薄めておるというような例もございます。したがいまして、先生言われますような、そういった考え方もやはり織り込むことが石炭鉱業として、今後単にいたずらに政府助成のみにたよるという立場でなくて、自立していこうという立場から、そういう傾向も私どもはやはり必要ではないかというふうに考えます。  ただ、私どもここで、経理規制等で、利益金の処分とか、あるいは資産処分の制限とか、いろいろな経理面における相当強い監督規定を入れておりますが、これは私企業に対しては非常に重要な国の関与であると思います。  この趣旨は、ただいま申しましたような、あるいは三原先生がおっしゃったような新分野開拓というようなことを否定している意味ではございませんで、やはりこれだけ国が助成石炭鉱業に投じていきます場合に、その資金が石炭鉱業の発展のために、今後再建のために使われないで、単に資本投資的に流れていくとか、あるいは石炭鉱業企業そのものを弱くするような資産処分をするとかいうようなことについては、国としてこれだけの強い助成策を講じておるわけでございますかう、そういった点は、厳に監督しなければいかぬというような趣旨で、監督しておる、規制を強化いたしておるわけでございます。ただ、三原先生がおっしゃいましたような意味の方向について、特にチェックするわけではございません。そういう意味でございます。
  11. 三原朝雄

    三原委員 いま御意図が一応わかりました。もちろん国の援助資金というようなものが石炭再建以外に使用されることは厳に禁止されることはわかるわけでございますが、重ねて申し上げます。  石炭産業再建するということは、私企業体制下でこれを達成することがやはり本則でございます。そういうことでございまするから、石炭産業それ自体私企業のメリットを最大限に発揮をする自主的な体制が必要だと私は思う。したがって、いろいろな経理規制等が角をためて牛を殺すような結果にならないように、あくまでも受け身の態勢から積極的に石炭産業自体自立安定する態勢を強化する必要があるという立場から、いまの意見を申し上げたのでございます。  こまかいことは後刻に譲ることにいたしまして、もう一点お伺いをいたしたいと思います。それは私の偏見かもしれませんが、常に言い触らされておることでございますが、大手と中小に対しまする国の石炭施策がどうも片手落ちであるということであります。特に中小の石炭産業の各位が常に言うことであります。これはわれわれもいろいろな面から経理面あるいは利用確保の面等からのぞいてまいりましても、そういう感を抱くものでございます。  そこで、全般的な問題は別にいたしましても、今次予算化されておりまする二十五億の安定補給金の問題でございますが、一応トン当たり百二十円、何もこれは法制化されておるというわけでもありませんが、こういう点についてわれわれとしては最低二百円もというような陳情を受けたこともありまするし、また政府に対して要請もしたこともあるわけでございますが、この二十五億に対して特に通産当局にお願いをいたしたいのは、トン当たり百二十円というような額に縛られず、安定補給金の配分については、二十五億というワクの中で自由に裁量できるような体制でいっていただきたいと考えておるのでございまするが、こうした考え方に対する所見を承りたいと思います。
  12. 井上亮

    井上(亮)政府委員 大手と中小に対する対策の問題でございますが、まず基本的には、私ども大手企業と中小企業とに対しまして差別をして考えるという考え方は毛頭ございません。  ただ、政策適用の際に、資源産業の保護というような見地が、石炭の五千万トンの維持とか、安定供給の責任とか、あるいは国の経済全体から見ての安全保障というような見地から見て、そういった資源産業についての保護というような意味合いが、まず石炭政策について今日これだけ巨大な助成をされる大きな一つの大義名分があるというふうに考えておりますが、そういった見地から助成策についても、そういった大義名分に応じた助成策ということになりがちになるわけでございます。そういう結果として、なかなか、たとえば炭量のきわめて少ない、あるいは数年先にはやはり閉山せざるを得ないような自然条件を持っておられるようなところにつきましては、なかなかそういう施策が乗りにくい面があるわけでございます。しかしものの考え方としては、大手であるからといって特別にどうする、中小だからといって特別に悪くするというような考え方は毛頭ないわけでございます。しかし結果的に中小について特に助成を——中小炭鉱については、それだけ、中小規模なるがゆえにまた経営が苦しい面もございますから、特に中小炭鉱について配慮する政策も必要になってまいるわけでございます。そういった意味から、私どもが特に中小炭鉱中心に本年度考えましたのは、安定補給金の交付の問題と機械貸与制度、これは大手からの強い要請がございますけれども、主として中小炭鉱を中核として機械貸与制度の運営をやっていくというような配慮をいたしております。なお本日御審議をいただいておる再建整備法の適用につきましても、大手も中小も私ども区別いたしておりません。やはり一定の国の要請にかなう相当炭量を持った企業については、大手といわず中小といわず一律に同様に善処してまいるつもりでございます。  それからなお安定補給金について、本年度の予算は二十五億ついております。これは予算折衝の際には主として中小炭鉱と、それから大手についてはいわゆる再建企業、今年度はこれについて支出しようということで予算を獲得いたしておるわけでございます。一応大蔵省の御査定ではトン当たり百二十円ということに相なっておることは御承知のとおりでございます。なおこの安定補給金については二十五億の予算をいただいておるわけでございますが、中小炭鉱といいましても、なかなか定義もむずかしいわけでございまして、年間の出炭量五十万トン以下が中小炭鉱なのか、それ以上であっても中小炭鉱もございましょうし、これはなかなか中小炭鉱の定義がむずかしいわけであります。私どもの見地から見ますと、石炭協会所属のメンバーが大手ともいえません。所属のいかんを問わず、やはりどういう企業が中小炭鉱かという定義を下さざるを得ないと思っておりますが、ただいま、そういった意味で、大蔵当局とこの具体的な適用についてどうするかという検討をいたしております。  なおこの交付の時期は、時期を聞かれたわけではありませんが、関連いたしますのでお話し申し上げますと、やはり出炭実績によって年二回交付したいというふうに考えております。大体交付時期は夏以降に一ぺんとそれから年度末というような、二回に分けて交付したいというふうに考えておりますので、それまでの間に十分大蔵当局とも、その辺の先生の御趣旨も体しまして検討いたしたいというふうに考えております。
  13. 三原朝雄

    三原委員 あと二点小さなことを質問して終わりますが、先ほど申し上げました政府の今回の助成について、経理規制等相当あるわけでありますが、私企業である関係上株式の問題があるわけでございます。配当がゼロないしゼロに近いものになるというふうなことになるわけでありますが、しかし経営不振の現況からやむを得ない事情もあろうかと思いますけれども、しかし私は将来のそうした株式所有者の問題等を考えてみると、やはり大きな事業経営の面から一つの心配が出てくるわけでございます。そうした配当面について特に考慮しておられるかどうか、そういう点について伺いたい。  次は、異常債務肩がわりについて財政資金は六分五厘、それから市中銀行からは五分まで利子を見ることになっておるわけでありますが、政府資金は全部利子を見る、市中については三分なり三分五厘を打ち切るというようなことにもなっておるわけでございます。市中銀行への保護が少ないということにもなるわけでありますが、将来そういう点について市中銀行からの金融というようなものに支障を生じてきやしないかというようなことも予想されるわけでございます。  その二点についてお伺いをして私の質問を終わりたいと思います。
  14. 井上亮

    井上(亮)政府委員 まず御指摘の第一点は、石炭鉱業については配当についてどう考えるかということでございますが、まず一般論として、再建整備法に基づきまして再建整備計画認定されて元利補給契約を結びました会社と、それから特に経理状況が悪くなくて累積赤字もない、今後もある程度収益は続け得るという企業と二通りあろうかと思います。この再建整備法の適用にならない企業につきましては、配当についての特別の制限は考えておりません。ただ御承知のように今回の再建整備法でなくて数年前に国会の御承認をいただきました石炭鉱業経理規制法というものがございます。この経理規制法に基づく監督は、配当につきましていたしますけれども、特に今回の再建整備法の適用を受けない自立自営の企業につきましては、その配当について制限をする意図は特にはございません。ただしかし石炭鉱業経理規制法に照らしての監督はいたします。  それからもう一つ再建整備法の適用を受ける企業でございますが、これにつきましては、そもそも再建整備法の適用を受けます企業は、これは過去に異常な累積赤字があるとかあるいはそれに類する異常債務があるとかいうような場合に再建整備計画をつくっていただくという仕組みにいたしておりますので、やはりこれは、この適用企業については今後配当をされるということは比較的少ないのではないか、あまりないのではないかというふうに考えております。と言いますのは、過去の相当累積赤字を今日かかえておるというような企業が大部分でございますので、配当の問題は比較的少ないかと思います。  しかしここでいっておりますのは、肩がわりを受けている途中に全然配当を認めないという趣旨でもございません。ここでいっております。特に第九条あたりで元利補給契約の解除の中の二項でございますが、第二条第一項の基準に該当しないこととなったときには補給契約を解除するというような規定がございますが、こういったものは結局自主的な健全経営を目途にした財務で判断をいたしますので、通常の会社経理の見方でなしに実質上の配慮、積み立てべきものは十分積み立てさせるというような面から見ての、何といいますか、異常債務がなくなったかどうかというような判断をいたすわけでございますので、再建企業になった場合には、今後十年間全部配当できないというわけでもございません。ただしかし、それは十分にやはり企業の財務内容を健全化した上で配当していただきたいというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一点、金利の問題でございますが、これは元利均等償還契約になるわけですが、その元利の利のほうでございますが、政府関係については六分五厘を均等償還の対象にし、市中金融機関については五%だけを対象にするという点についての御指摘でございますが、政府については、これは当然、もしここで元利均等償還しなければ、別の手段で政府一般会計から補てんをしなければいかぬというような関係がございますので、利子全額取り上げたわけでございます。市中銀行につきましては、これは金利は通常八分三厘とか八分五厘とかいろいろケースによって違いますが、五%の差額はやはり国もこれだけの石炭鉱業について助成策を講じますけれども市中金融機関にも、やはりこの程度負担と協力はしていただきたいという趣旨から、あえて市中金融機関につきましては、利子全額についての元利均等償還ということでない形をとったわけでございます。  しかし、これによって、こういう値切ったことあるいは市中金融機関に対して負担をしいたことによって、今後市中金融機関石炭鉱業に対する金融について協力を渋るんじゃないかというような御質問でございます。若干その懸念がないわけではございません。現に全銀協等におきましても、この点の御指摘がいままであったわけでございますので、そういう点はございますが、その後私どもは全銀協とも数回にわたって折衝をいたしまして、今日では一応了承さしておるわけでございます。これだけの措置をするわけでございますので、私どもとしては市中金融機関は今後この法律が通りました暁においては、当然石炭鉱業に対して金融協力していただけるもの、またしていただくように、私どもも協力を強く要請する所存でございます。
  15. 三原朝雄

    三原委員 終わります。
  16. 多賀谷真稔

  17. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは大臣は午後もだめなんですか。
  18. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 午後もだめ。バナナ事件がありますから、それで足をとめられちゃったのです。ですから、基本の問題は残して、細部だけ質問を願います。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 基本問題について大臣に質問したかったのですが、十八日にまた予定されておるようでありますので、その際に基本問題についてはお尋ねすることにいたします。  石炭局長にお尋ねをしますが、石炭局長は石炭井上といわれるくらい石炭鉱業再建について、きわめて精力的に取り組んでこられたわけであります。その点敬意を表しているわけですが、今度の再建整備の臨時措置井上局長の野心的な施策とも言えるんじゃないか。この施策によって石炭鉱業再建し得るという確信を井上局長は持っておられるか、まずその点をあなたにもひとつ基本的な問題について一応お尋ねをしまして、具体的な法案内容についてお尋ねをしてみたいと思います。
  20. 井上亮

    井上(亮)政府委員 先ほど三原先生の御質問にも関連いたしまして、ある程度お答えいたしたわけでございますが、重ねての質問でございますので、私の考え方を申し上げさしていただきたいと思います。  石炭鉱業が今日不況にあることにつきましては、諸先生御指摘のとおりでございまして、基本的には私も楽観したり気をゆるめたりしている筋合いではございません。今後ともやはり昨年の八月の閣議決定一つの大きな基本的な柱としまして、あれ以上の努力をしていきませんと、石炭鉱業の安定というのはあるいは必ずしも期しがたいというふうに考えております。しかし、御承知のように石炭鉱業審議会が、昭和三十七年以降の検討の成果といっても差しつかえないかと思いますが、昭和三十七年には第一次石炭鉱業調査団を編成しまして、激しい討論の末に一つ答申を出しました。引き続いて、昭和三十九年にはやはり第二次石炭鉱業調査団が編成されて、第一次答申の補完的な施策をいたしたわけでございます。さらに昨年におきましては、これは三木通産大臣のときでございますが、当時災害等の問題もありまして、同時に、石炭鉱業現状も必ずしも将来の自立が期しがたいという事態があったわけでございます。三度目の正直といいますが、最後の石炭鉱業の安定対策をつくるべきだという大臣の御諮問がありまして、以来一年余りにわたって、石炭鉱業審議会としては第一次答申、第二次答申引き続いて抜本的な対策をつくろうという意欲検討が続けられたわけでございまして、一応私としましては、昨年の八月の閣議決定に盛られておりますような諸対策が実施されますならば、やはり将来の石炭鉱業は安定していくんではないか、またいかすべきであるというふうに考えております。  今後の政策の柱になりますものは、何と申しましても、ことしから国会の御審議を受けて御了承いただく特別会計の新設、これがやはり画期的な措置であろうかと思います。この特別会計原重油関税収入、これがまっすぐ入ってまいります。石炭対策がその関税収入でまかなえない、不十分であるというときには、一般会計もこれに繰り入れをすることができるというような体制ができるわけでございますので、これが今後の石炭鉱業に対する財源的な一つの大きな背景になるわけでございます。この財源石炭鉱業の今後の再建と安定のためにいかにうまく使っていくかということが、私どもに課せられ使命ではないかというふうに考えておりますが、政策の柱としましては、先ほども申しましたような、やはり石炭鉱業私企業として今後やっていきますためには、今日このままの状況では私企業としては全く立ち行かない現状であります。これを立ち行かせるための施策としては、やはり過去のころいった異常負債を解消するというようなドラスティックな施策が必要でございます。この点につきましては、英国もかつて、一昨年だったと思いますが、四千億の棒引き石炭特別会計で実施したわけでございます。日本では一千億でございます。これはちょうど出炭の規模が英国は日本の四倍でございまして、日本は四分の一でございます。これは偶然の一致でございますが、そういう措置を講じたわけでございます。  この措置をとることが一つ施策でございます。しかし前向きには坑内骨格坑道の近代化を進めていかなければならない、このことが保安対策上重大な要請でもございますので、特に坑道掘進については補助制度をとって、現在基幹坑道については四割補助ということにいたしておりますが、こういう制度が一応確立されたということ。それからこういう施策によってもなお石炭鉱業の安定を期しがたいといいます場合には、あわせて安定補給金の交付ができるという政策の柱もできたわけでございますので、私は石炭鉱業経理財務面の改善のための国の助成策としては、これだけの柱があることによって可能になっていくのではないか。ただしかし、それでは閉山一つもないかというと、この点につきましてはやはり石炭鉱業は資源産業の常でございますので、老朽炭鉱と申しますかあるいは炭量もないというようなところにつきましては、これは今後とも閉山があろうかと思いますけれども、しかし相当優秀な炭量を長期にわたって持っているというような企業については、私はこれだけの施策を前提にすれば、長期にわたって十分やっていけるというふうに考えておるわけでございます。  ただ先ほど三原先生の御質問にお答えいたしましたが、たった一つ私が特に今日心配し、将来施策を補完しなければいかぬと思っておりますのは需要確保の問題であります。これは石炭鉱業審議会が昨年答申を出しました当時の需要見通しと一年立ちました今日の見通しでは、やはり一般炭需要の問題につきまして、一般炭政策需要ではなくて、一般産業向けの需要あるいは暖厨房用炭の需要見通しが、もっと需要の減少の見込みが強いのではないかという傾向がありますので、こういった点についてはさらに政策需要の補充、拡充というような点について努力しませんと、五千万トン体制の維持ということはできないのではないかというふうに考えておりますので、こういった助成策を今後講ずることによりまして、私は一応将来の安定は大多数の企業について期し得るというふうに考えております。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 いまのあなたのお答えで、第一次答申、第二次答申、三度目の正直だ、そこで最後の石炭鉱業の安定対策としての答申を求めた、こうお答えになったのです。そこで四十一年の七月二十五日の答申に最終答申とあるわけですね。この最終答申の意味は、いまあなたがお答えになったように、もう石炭鉱業の安定策としてはこれが最後である、こういう結論的な、またこれで安定し得るという確信の上に立って答申を求めたということになるわけですか。
  22. 井上亮

    井上(亮)政府委員 最終答申といいますことは、昨年の七月に出されました答申抜本策としての答申の最後の答申という意味であって、実は前年の十二月に中間答申を出しております。その中間答申に対して最終答申、こういう意味でございまして、これで政府施策は終わりという意味ではございません。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 私もこの最終答申の意味は、いわゆる中間答申に対する最終答申であるという理解であったわけですが、あなたも三度目の正直でいわゆる最後の安定策であるというお答えであったので、この最終答申というのもそれを意味づけておるのかどうかということをあらかじめ伺っておきたかったわけで、まあその点はわかりました。しかし少なくともあなたは、これらの諸施策を講じていくということにおいて石炭産業は安定し得るという確信の上に立っておられる、こういうことでございますから、それらの点に対しては基本問題とあわせて、できればまた十八日にお尋ねをしたい、こう思います。  さらにいまあなたのお答えの中で、関税収入でまかなわれない場合一般会計から繰り入れができるんだ、こういうことですが、これに対しては、たとえば離職者対策であるとかあるいは鉱害あるいは産炭地振興、そういうような費用に対して一般会計から支出し得るという取りつけをしておられるのかどうか、その点どうなんですか。
  24. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘がありましたように、石炭対策特別会計の中には狭義の意味の石炭対策だけでなしに、産炭地振興対策——産炭地振興対策といいましても、これは一言で産炭地振興といいますと非常に広い意味がありますが、この産炭地振興対策特別会計の中では通産省石炭局が所管している予算のみ、こういう話し合いになっております。つまり産炭地振興といいましても道路の整備もありますし、港湾の整備もあります。そういった基盤整備の問題が入りますが、そういうところまではこの特別会計には入らない。そうじゃなくて産炭地振興事業団の出資業務を中心にして石炭局産炭地振興臨時措置法によって県等に利子補給をしたりいろいろいたしております。そういう程度までを入れて、それ以上拡大して予算をこの特別会計には入れないというようにここは狭く解釈いたしております。それから離職者対策についても、これは炭鉱離職者に固有の一般の離職者とは違った面のみを取り上げるという考え方に相なっております。そういうような考え方で一応離職者対策とかあるいは産炭地振興対策とか、あるいは電発にいわゆる石炭火力を建設してもらいます場合の出資等もこの対象に入るということになっております。しかしそういうものを入れますと、今後の趨勢を見てみますと、関税収入だけではなかなかまかないきれない見通しがございます。したがいまして、私どもとしましては予算編成に際しまして、特に当初は産炭地振興対策とかあるいは鉱害対策とかあるいは離職者対策等につきましては、これは特別会計の外で一般会計から当然の措置として見てもらいたいという要求をしたわけでございますが、大蔵当局は、私が当初申しましたようなものを入れるかわりに、もし全体としての石炭対策で関税収入だけでは財源が足りないというときには一般会計の繰り入れを認めますということに話し合いがなりまして、そういう前提で特別会計法が組まれておるわけでございます。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 一般会計から特別会計の中に繰り入れをするというお答えですが、ただ関税収入がずっとふえてきますね。したがって流用するという意味で一般会計から繰り入れるということと、そうじゃなくて一般会計から純粋に繰り入れていくという行き方とあるわけですね。それは後者の意味ですね。
  26. 井上亮

    井上(亮)政府委員 予算要求は、とにかく必要な予算は全部要求する。そうして必要な予算は大蔵省の査定によってつけてもらう。つけてもらったトータルが関税収入で足りないときには、その足りない分だけを一般会計から補てんして特別会計に入れて、加えたもので特別会計の規模をつくる、そういうような形でございます。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 それでは法案の中身に入っていきますが、この措置によって中小炭鉱というものは実質的に対象となり得ないということになるのではないかと思いますが、あなたはどう考えますか。
  28. 井上亮

    井上(亮)政府委員 今日実はこの法案審議をお願いしておりますのと並行いたしまして、大手企業、中小炭鉱、それぞれ要するに来たるべきこの法律に基づく再建整備計画肩がわり措置をお願いするというお申し出のある企業につきまして、ただいま個別の検討会をやっておるわけでありますが、中小炭鉱につきましても相当将来とも炭量もありますし、それから経営としてもなかなかしっかりしている、しかし当面石炭産業の持っているいろいろな困難な事情赤字もあるし、なかなか苦しい、苦しいけれども、しかしやりようによりまして将来十分再建ができるという企業相当あるわけでございます。そういう企業につきましては、当然この法律の対象にいたしたいというふうに私どもは考えております。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 中小炭鉱再建整備計画の対象にしないということは、それはあり得ないのだけれども、形式は別として、実質的に対象となり得るかどうかというととが問題なんです。十年ないし十二年計画ということになる。しかもこの法律の内容を見てみると、むずかしい条件というものがついているのです。そうしてみると、この条件にはたして適合し得るかどうかということになってくると、中小炭鉱としては皆無ではないかもしれぬけれども、ほとんど対象になり得ないのではないか。しかもあなたのほうではこの再建整備ということによって近代化、合理化を進めていくということになってくる。そうなってくると、閉山計画というものもこれと並行して進めていくであろうと思われる。そうなってくると、中小炭鉱というものは事実上これの対象となり得ないということになる。その点に対してのあなたの具体的な見通しはどうなんです。
  30. 井上亮

    井上(亮)政府委員 お説のような点も確かにあろうかと思います。特に中小炭鉱につきましてこの法律の適用ができるかできないかという最大の難点は、これだけのやはり会社経理に対する監督体制等もありますけれども、それよりもどっちかというと、まず中小炭鉱について私ずっと個別に検討してみますと、大多数の企業累積赤字を持っていない、そういう企業が多いわけでございます。そういうことになりますと、累積赤字が全然ないような場合に国が肩がわりするというのもおかしなものであります。それは大手にもそういうのがございます。そういう場合にはこれは対象にはなりません。それから炭量の点で四、五年しかない。四、五年しかないということは、ここ二、三年の間には閉山せざるを得ない。そういうような企業についてはやはりこの制度として乗りにくいという問題は、確かに先生御指摘されるとおりでございます。しかし今日、この中小炭鉱でも十数社がこの適用をお願いしたいという希望意見がありまして、それらの企業についてただいま検討をいたしております。  最後に困難な点は、やはり市中金融機関がむしろ逆にこの肩がわりを希望しないという場合が出やせぬかということを私どもはひそかにおそれておる。これは全部じゃありません。その中の一部のものについては、むしろ市中金融機関としては担保を持っておりますから、わずかなものの肩がわりを受けるよりも、肩がわりの恩典を受ければ、必ず私ども金融機関に今後のその山の金融についての協力を要請いたします。これは当然でございます。これだけの肩がわりをして、あとの金融協力を要請しないわけにはいきませんので、私どもはやはり金融協力を要請するということになりますと、金融機関のほうで難色のあるものもあるかもしれません。今日まだそういう事例は出ておりませんけれども、観念的に見ればそういう問題もあるというふうには考える。しかしその場合については、私どもはできるだけやはりこれを親切にといいますか、中小炭鉱の味方になって、金融機関等については相当強く協力をお願いいたしたい、私どももそういうお手伝いをいたしたいというふうに考えております。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 中小炭鉱累積赤字を持っている山は少ない、こういうことですが、中小炭鉱経営が決して健全であるとは言えない、累積赤字を持っていないという裏には、低賃金であるとか、あるいはきびしい労働条件というものが押しつけられている、単なる企業努力というものによって健全に運営をしておるのだというようにこれを簡単に片づけるわけにはいかない。そうしてみると、この労働事情といったようなもの等々から考えてみると、いまのような中小炭鉱の労働条件というものがそのまま継続できるとは考えられない。したがって、この再建整備計画の中に、中小炭鉱累積赤字がないということとか、あるいは金融機関が、まあ五%の金利になるわけでありますから、条件低下するということでこれをがえんじないというようなことであるとか、あるいはその他いろいろな関係が私は出てくると思うのでありますけれども、中小炭鉱に対しましてもやはりもっと労働条件を向上させる、賃金ももちろん引き上げていくということでなければならないわけでありますかう、そういう場合に中小炭鉱経営困難におちいる。その場合にこれをどうするかということを、こういう再建整備計画と並行して考えていかなければならぬと私は思う。その点に対しては、単に百円、二百円の安定補給金を中小炭鉱には考えているのだからそれでいいじゃないかというわけには私はまいらないと思う。したがって、中小炭鉱に対する事実上の再建対策というものもお考えになっているのではないかと思いますが、その点はどうなんですか。
  32. 井上亮

    井上(亮)政府委員 お説のように、中小炭鉱の今日の状況を見ますと、経理が比較的大手に比べるといいという裏には、その原因の一つとして、大手につきましては相当たくさんの山をいままで戦争中以来かかえてまいりまして、やはりエネルギー革命の影響を受け、かつ合理化の一環として相当多くの山を閉山さしてきた。その異常債務が非常に大きく財務の面の圧迫になっておるわけですから、そういう金利負担等が大手にはある。中小炭鉱の場合には一山一社の場合が多いわけでございますから、そういった意味の異常債務はあまりないというような点が身軽にしている一つの原因であろうと思います。それからもう一つは、中小炭鉱経営につきましては、まあいろいろでございますけれども、概して大手ほどの大規模開発といいますか、深部開発というような形ではなくて、比較的簡易な採掘方法による出炭をやっているという意味から、経営コストが大手よりも安い要因を持っておる。それから御指摘のように、賃金が大手と比べますと最近は相当接近はしてまいっているようでございますが、まあ北海道は相当接近してきておりますが、それでもなお特に九州地方におきましては相当の開きがあるというような事情がそういうことになったと思います。これはいわば経営努力と一言で言えば言えるかもしれませんし、あるいは低賃金の上にそういう経営の安定が保たれているという言い方もできましょうけれども、いずれにいたしましても、そういった事情があって、中小炭鉱は今日まで現に生きている企業についてはわりあいに堅実な経営をしている会社が多いわけでございます。  そこで私どもは、この中小炭鉱につきましては今後金融面がやはり一番むずかしい問題であろうと思いますので、金融面等につきましては、これは中小炭鉱一つのハンデとして担保力の問題がありますから、これについては十分やはり大手以上の配慮をもって特に考えませんとできませんので、そういう点を今後十分考えて施策をやっていきたいと思いますし、それから安定補給金等につきましても、これはやはりこれから中小炭鉱も賃金格差を是正していく——是正しませんと、また労務者を確保できません。そういうこともあろうと思いまして、特に今年度から安定補給金制度をまず中小からというような意味でやったわけでございます。なお、中小炭鉱にはそのほか坑道掘進補助等も、これは大手だけの施策ではございません、中小炭鉱にも当然筋どおり適用していくということになろうかと思いますので、こういったことをしていくことによって、先生も御指摘になりましたように、できるだけきめこまかに指導してまいりたいというように考えております。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 再建整備計画の中に鉱区の調整というのがあるのですが、この鉱区の調整というものが、一番重要な問題であって、指導してもなかなか成果があがっていないということが実情だろうと私は思う。この再建整備計画の中に鉱区調整ということを掲げておるけれども、どの程度これに対して積極的な取り組みをしようとお考えになっているのか。また、再建整備計画というものの中において鉱区調整というのはどの程度の比重を占めるのか、その点はどうなんですか。
  34. 井上亮

    井上(亮)政府委員 この点につきましては、合理的な鉱区調整については相当強い姿勢で断行しようという決意で臨んでおるわけでございます。実は、これは何も今回の再建整備計画についてだけやろうという趣旨ではありませんで、実は、もう昨年当初以来、この鉱区調整については、私ども、やっぱり石炭鉱業として従来のような考え方を捨てて積極的に鉱区調整に応ずべきである——鉱区を持っているところが放す場合ですね、応ずべきであるという指導をしてきまして、昨年は、かつてない鉱区調整の実績をあげております。これは中小だけでなくて、大手の懸案のところも相当数調整を行なっておる実情でございます。  それから、経営者のほうも、従来なかなか鉱区調整は、石炭産業の将来の炭量確保とか、いろいろな意味で命綱のような感じがあったものですから、この調整に応じなかったわけですけれども、最近は比較的協力的になってきまして、たとえば、私どもが特に必要だから鉱区調整をお願いをするという仲立ちをいたしました場合に、いままで断わられた例は大手の場合あまりないというくらいに協力的に相なっております。  今度つくりますこの再建整備計画におきましても、必要な鉱区調整については当然一つの条件として取り上げていきたい。しかし、条件といいましても、当該企業、鉱区をもらいたいほうに条件をつけるというわけにいきません。やるほう、鉱区を譲渡するほうが問題になるわけです。そうなりますと、やはり適当な対価を払わなければいかぬというようなことにもなりますので、そういった点も考慮して、なかなか当事者と話し合いがつかぬ場合には、審議会経理審査会で通産大臣の認定の前に御検討を詳細にいただきますので、そういう経理審査会意見というようなものをつけていただいて、そして私どもとしてもその線に沿って指導するというふうなやり方でいきたいというふうに考えております。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 私がお尋ねした点はその点なんです。もらうほうは問題じゃない。やるほうが問題だ。ところがもらうほうもやるほうも、これは当然再建整備計画の対象になるであろう。してみると、この計画の対象となろうとするならば、もらうほうもやるほうもその意味においては同じになってくるわけです。いろいろ問題がある、むずかしいので、なかなか成功しない、しかしあなたの方がその努力は認めたのだ、成功はしなかったけれども、この再建整備計画の対象にはしようということになってきたのでは、鉱区の調整というものはなかなかうまくいくものではない。したがって、この点はあなたのほうとしては再建整備計画の対象とするためにどのような態度で臨んでいくのかということをお尋ねしたのですが、一応の考え方はわかりましたから、その点はよろしいです。  そこでまた、通産省令で今度は基準というものを定めていくわけですね。この基準の定め方というものが、私はこの計画が成功するかしないかということに対して非常に重要なウエートになってくるのではなかろうかと思うのでございますが、その点に対してはどのようにお考えになっておりますか、具体的な考え方を明らかにしておいていただきたいと思います。
  36. 井上亮

    井上(亮)政府委員 この法律に関連いたしまして、いろいろな基準とかいろいろな措置を政省令にゆだねている面があるわけでございますが、まず第一に、通産省令で定める基準に該当するものはという規定が第二条の冒頭にあるわけでございますが、これは要するに、再建整備計画をつくりたい、つくって、いわゆる肩がわりの対象企業になりたいといわれます企業についての入り口の基準でございまして、これは二点この省令できめたい。第一点は財務状況についての基準でございます。第二は今後の採掘可能鉱量についての基準でございます。財務の状況につきましては、これはかつて答申にもありましたように、やはり今日まで累積の異常債務もあるいは累積の赤字もないというような企業については、国が特段の助成をする必要もないわけです。もうかって高率配当をしている会社にこういう特別の措置をするわけにいきませんので、そうでない企業というような意味の内容累積赤字またはこれに類する異常債務があるというような内容にいたしたい。  それから採掘可能鉱量は、一応私ども今日考えておりますのは、原則として十年以上の採掘可能鉱量がある、少なくともその程度のものはあるということを条件にいたしたい。原則としてと申しましたのは、これは中小炭鉱に対してやはり若干の配慮をする必要があろうかと思いますので、そういう場合にはこの原則を適用してやりたいというふうに考えております。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 財務の状況ということについては、累積赤字があること、状況はそれでわかるのです。ところが財務計画というのが必要になってくるわけですね。これが私は問題になると思う。財務計画ということになってくると、経営全般の問題が出てくるわけですから、賃金の問題なんかもここで問題になるのではないか。いま労働者の賃金を七%アップという形で計画が立てられている。ところが七%ということになってくると、炭鉱労働者の平均賃金からいたしますと、かりにことしの賃金にいたしますと千人百円であります。そうすると、その他の産業は四千円ないし五千円のアップになる。炭鉱労働者はより過重な労働、非常に環境の悪い条件の中で重労働をやっておる。それに対してわずか七%、千人百円のアップで炭鉱労働者に満足しろといったって、できよう相談ではございません。初めからそういう意味の財務計画ということを考えておるとするならば、これは失敗をするということは明らかなんです。だからその財務計画にいうところのいわゆる労使の関係、賃金であるとか退職金の問題であるとか、あるいはその他の条件というものがどういうことになるのか、その点はひとつ明確にしておく必要があると私は思うのです。考え方をひとつ明らかにしていただきたい。
  38. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ごもっともな御質問でございまして、私どももその点につきましては、この法律をつくりますときにあらゆる角度から配慮をいたして、今後の運用について誤りなきを期したいというような考え方で練っておるわけでございますが、特にこの財務計画の中における賃金問題については、今日の私の心境は法律の必要要件にしたくない。まだこれは決定いたしておりませんけれども、私の考え方としましては、賃金問題についてはこの財務計画の法律に基づく法定要件としての問題にしたくない。したがって、そうじゃなくて全体としての財務状況、賃金が若干予定よりも上がっても、また能率が別にあがるとか、あるいは流通経費の節減ができるとかというようなことでカバーできる面もあるわけでございますが、そういった面を全体として見ていくというような形でこの財務計画はつくりたいというように考えております。もちろんただ法律に基づく計画の要請として、そういった骨組みのみの計画にいたしたいと思っております。しかし参考資料としてはもちろんそれはより精緻な計画を求めるというようなことはありましょうけれども、少なくとも法律に基づきます計画としてはそういった扱いのものにいたしたい。そうしませんと、あとでまたこれは先生から御指摘があろうかと思いますけれども、いろいろ計画の変更問題が起こってまいったり、変更もそれいかんによってはまた勧告につながったり、勧告を聞かなかったときには元利均等償還契約は取り消すなんという手荒い措置も入っておりますので、それに賃金問題をつなげたくないという配慮をいたしたいというふうに考えております。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 それは、つなげたくないという希望的なあなたのことではなくて、これは入れるべきじゃない。参考資料として、これはまあきわめて軽い意味の参考資料としては提出を求められることもあるであろう。しかし法定要件というものからはこれは絶対にはずさなければならぬということ、その点が一つ。したがって軽い意味の参考資料であるから、変更計画の場合、当然これは要件となり得ない。それでなければならぬと思いますが、その点はひとつ明確にお答え願いたいと思います。
  40. 井上亮

    井上(亮)政府委員 私も先生のお説のように運用してまいりたいと思います。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 この点は重要ですから政務次官もひとつお答えいただきたい。
  42. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 同様でございます。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 財務計画の中で、鉱害の問題であるとか一般債務の支払いの問題であるとかあるいは償却、借り入れ金、こういったようないろいろな問題をお尋ねしたいのですが、時間もだいぶたっておりますので、簡単にこの点だけをひとつお答え願います。  いま私が申し上げた問題。財務計画の要件としていわゆる鉱害補償、一般債務の支払い、それから自己の借り入れ金の計画、そういうものがやはり要件になってくるのかどうかということ。
  44. 井上亮

    井上(亮)政府委員 借り入れ金につきましては、これは一応の資金計画としての参考資料になると思います。しかしこれは時々刻々——特に資金計画というようなものの性格は貯炭がふえたり少なくなったり、いろんな時々刻々の経営の過程で変化していく性質のものでございますから、そういったものは参考資料というような扱いにいたしたいというふうに考えております。  それから鉱害の問題も一応これは参考資料として鉱害の復旧計画、それから負担金はどういうふうに年々持っていくか、負担していくかというようなことをとっていきたい。したがいまして財務の計画につきましては骨組みのみの、つまり何といいますか、自産炭損益とか、純損益というような、形では一応はっきりするかもしれませんが、内容につきましては相当弾力性のある、しかし参考資料には一応その積算は出ております。そういう形のものにいたしたいと考えております。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 石炭鉱業審議会の中における経理審査会、これが重要な役割りを果たす。認定は通産大臣がするけれども実質的にはこの経理審査会がやることになるのではないか。並びに計画の変更の場合も審査会がタッチすることになるのではないか。そういうことになると審査会の責任というものは非常に重要でありますけれども、権限というものがこれは相当強大なものになってくるであろう、こう思う。したがって石炭局長は、それは行政機関でありますから、何というんですか、そう机上計画なんという形で押していこうということはしないと思いますけれども、えてしてこういう委員会というものは机上プランで形式主義というような形で強引にこれを推進していくといろ形が出てくるのではないか、そこで経理審査会審査の方法であるとかあるいは権限、それから範囲、そういうものはどういうことになりますか。
  46. 井上亮

    井上(亮)政府委員 経理審査会の権限につきましては、これはこの法律で第三条第二項に「通商産業大臣は、前項の認定をしようとするときは、石炭鉱業審議会意見をきかなければならない。」ということに相なっておるわけでございまして、なお合理化臨時措置法のほうでは再建資金を出しますときにこれはやはり審議会の議を経て出すのだというような規定がうたわれておりますが、権限のもとはここでございまして、通産省としては一応認定をいたします前に通産省独自の見解でなく、広くエキスパートといいますか、学識経験者の意見を聞いて、その上で通産大臣の責任において認定するということをいたしたいということでございまして、経理審査会は通産大臣が、認定する前に意見を聞かなければならぬというだけのことでございまして、そういう責任の所在ということになりますと、あくまでこの計画認定については通産大臣である、こういうことになろうと思います。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 もちろん私の言う責任というのは行政責任という意味ではないのであって、こういう重要な問題を処理していくということについての責任ということを言ったわけです。私はこの経理審査会というのが労使関係というものを乗り越えて、いわゆる管理体制というものを強めていくということにもなる危険性がないのかどうかということを多少心配したわけですけれども、労使関係というものはこれは当然再建計画の対象にはなり得ないのだという明確な答えでありますから、その点の不安は解消したわけです。ところがいろいろな面について再建整備計画の対象となってまいりますと、制約というものが加えられてくるであろうことが想像できるわけですが、会社更生法によるところのいわゆる更生会社というものと事実上違うという点はどういうことになりますか。
  48. 井上亮

    井上(亮)政府委員 会社更生法は私もまだ勉強不十分な点がありますが、これはもう会社企業が倒産した、倒産いたしますと、いろいろ債権、債務関係が非常に問題になるわけでございます。したがって、裁判所が関係をして更生計画を立てさせるということだと思いますが、私どものいま考えております。またこの石炭鉱業再建整備臨時措置法によります再建計画は、それとは違いまして、倒産企業についての再建計画ではなくて、このままやっていきますとなかなか簡単に自立できない、赤字の累増だけであるというような場合に、どのようにすれば企業としての安定がはかり得るか、これには政府助成ももちろん前提にはなりましょうけれども政府助成だけでなしに、経営者としても、まだ不要不急の資産を処分する問題だとか、あるいは資本金を増加して自己資本を充実する手段が残されておれば、そういう手段も講じなければいかぬし、あるいは固定した債務等があります場合に、それの整理計画をつくるという問題もありましょうし、あるいは生産体制をもっと充実さしていくという問題もありましょうし、そういったあらゆる企業努力をやはりこの再建計画の中で持っていただく、そういう真摯な企業努力をした企業に対しまして、また将来やっていける見通しが立つものについて通産大臣はその計画認定する、こういうような仕組みでございます。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 会社更生法によるところの更生会社の運営ということは私はわかっているわけですが、形式は違うけれども、あまり内容的な干渉というものがあると実質的には変わらない。更生会社の場合だって、これは清算人というものがあらゆる努力をしてこの再建をはかっていかなければならないわけですから、その点は変わらないわけですね。  そこでお尋ねしますが、そういうことで企業努力をやった企業経営が立ち直ってきた、利益を計上するということになる。それは一定額についてはこれを国庫に納付させるということにはならないけれども、一定額を上回る場合についてはこれを国庫に納付させるということになってくるわけですね。それは当然であろうというようにも考えられるけれども、また一方から見ると、これが企業努力というもののむしろ足を引っぱってくるという結果にもならないとは言えないと私は思うのです。この点についてはずいぶん配慮されたところであろうと思うのでございますが、まずあなたのお考え方をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  50. 井上亮

    井上(亮)政府委員 第六条に「利益を計上した場合の納付金」というような規定があるわけでございますが、まず基本的には先生が御指摘になりましたように、異常な企業努力をして収益性を高めてきたというような場合に、政府政府措置によって、企業努力を阻害しないような配慮が必要ではないかという御質問でございますが、先ほど三原先生からも同様趣旨の質問があったかと思いますが、私どもその点については、運用するもりとして、当然そういう不合理なことのないような配慮をしなければいかぬというふうに考えております。ただ第六条で規定しております「利益を計上した場合の納付金」といいますのは、二点触れておりますが、一つはもう過去の累積赤字が全都なくなっちゃった、健全財政、健全財務計画をとっても、いわゆる退職金にしても積み立てるべきものは全部積み立て、それから異常なものは全都落として、全部そういう健全財政の経理を行なって、なおかつ異常債務が全部きれいになっちゃったという場合には、やはり一定の利益——全部とは言いませんが、利益のうち一定基準以上のものについてはそれを国庫に納付していただくという規定でございまして、しかもこれは終わりましてから、第二項では十年間の元利均等償還、政府については十二年ですが、それを終わりましてから五年間のみ返してもらうというような規定もございまして、その後におきましてはこれは卒業生になるわけですから、そういった制約は全くなくなるというような体系にいたしておるわけでございます。しかしいずれにせよ先生の御質問、御想念はごもっともだと思いますので、そういう御想念を生じさしめないような運用を十分やっていきたいというふうに考えております。
  51. 中村重光

    中村(重)委員 努力をした——これは経営者も同時に経営努力をやる、労働者努力をするわけですが、努力をしても労働者にはその成果ははね返ってこないということになってくるとやはり問題がある。そうした労使ともに努力をしていく。しかし労働者の条件というものは、これは炭鉱の場合におきましては、その類似の産業と比較いたしまして、賃金の問題その他の条件においてきわめて悪いということだけははっきりしておる。そこで努力をやった。そうして利益を計上することになったという場合、単にこれを国庫に一定額以上納付しろということだけでなくて、労働者に対して特別な配分というようなものが当然考慮されてよろしいのではないかと私は思う。その点に対してはどのようにお考えになっておられますか。
  52. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ごもっともな御質問でございまして、経営が非常に好転いたしまして、特に累績赤字等も全部解消したというような経営改善が見込まれました場合には、当然利益を計上する前に、やはりこれは労使の話し合いによりまして——これはあくまでも政府の関与すべきことではありませんが、労使の話し合いによりまして、労働条件の改善とか賃金問題とかいうような点について妥当な配慮をして、その上で利益を計上すべきものと私は考えております。
  53. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのほうの法律案の冒頭に書いておりますように「この法律は、急激かつ大規模な合理化が行なわれたことにより生じた石炭鉱業の過重な負担を軽減するための措置を講ずることにより、石炭鉱業再建整備を図り、もって将来にわたり国民経済における石炭鉱業の使命を遂行させることを目的とする。」こうなっている。したがって大規模な合理化が行なわれたということ、これの政府責任ということをどのようにお考えになっておるのか。いわゆる政府の合理化計画というようなものが適当ではなかった。その結果石炭鉱業というものが異常な状態におちいってきた。こういうことなんだから、この再建整備措置によって利益を計上するようになった場合に、当然これを国庫に納付をしなければならないのだというようなことできびしい経理審査をしていくということになってくると、先ほど私が申し上げたような点も出てこないとは言えない。いわゆる収支とんとんという形であればいいじゃないかとかいろいろなことが出てくるでありましょうし、あるいは罰則の問題もあるわけですけれども、虚偽の申告とかいろいろな問題も、いわゆる作為的なことが出てこないということは言えないのではないか。私はそういう点に対する配慮というものがなければならぬと思うのです。  そこでいま一つ、いま私が申し上げました虚偽の申告等に対しては罰則規定というものがある。ところが罰則を受けたという場合に、この契約を解除されるということになるのかどうか、その点はどうなのか。
  54. 井上亮

    井上(亮)政府委員 罰則規定は十八条に規定されておりますが、これはただいま先生のおっしゃいましたような意味の罰則はございません。ことにありますのは三項のみでございます。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 私が言うたような意味の罰則はないと言うが、要するにいろいろな形においての罰則がありますね。この罰則の内容は何であったにしても、三万円以下ですね。それの処分を受けたという場合に再建整備計画によるところのいわゆる契約解除というものによって補助が打ち切られるという形になるのかどうか、その点を聞いているわけです。
  56. 井上亮

    井上(亮)政府委員 まず元利均等償還契約を結びます。その契約を解除する条件といたしましては、その前に政府といたしましては、いきなり解除ということをいたしませんで、できるだけ勧告措置を間に入れまして、そして勧告に従わないときに解除という考え方でまいりたいというような法体系にいたしております。  第九条を見ていただきますと、第一項はこれは当然のことですが、石炭の生産事業をやめてしまった場合には将来にわたって解除する。第二項は、非常に経理内容が優秀なものになってもう完全な自立体制になった場合には補給契約を解除できる。三項目が十五条の規定、これは勧告でございますが、通産大臣の勧告に従わないときにはその補給契約を解除するという法体系にいたしております。勧告の内容としましては、再建整備会社がその計画を実施していないというようなときには、その計画を確実に実施するようにしなさいという勧告——勧告と申しておりますが、やはり指導が当然この中に入ると思います。指導勧告、指導もしないで、ただいきなり勧告だけで切ってしまうということは私ども運用としていたしません。指導と勧告をいたしたい。  それから最後に、第三項に、要するにこれは経理勧告に関連いたすわけでございますが、これに違反しておるというような場合にはその計画を直しなさいというような勧告をするわけでございますから、それ以外のものについては保証契約の打ち切りの対象にはしないという方針にいたしております。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 十八条については打ち切りの対象にはしないということはこれでわかったわけですが、契約解除になる。先ほど三原委員質問に対してもお答えになっておられたのですが、金融機関がそこで損害をこうむることになる。その財産処分をやった残りの二分の一に対して損失補償をするという規定に実はなっておるようです。先ほどあなたは三原委員質問に答えて、金利も五%を保証することになる、政府関係が六・五%。政府関係のほうは損失が出た場合に一般会計から繰り入れができるのだから、これはそれでよろしいのだ——必ずしもそうじゃない。政府関係金融機関というのは商工中金もその一つでありますから、必ずしも一般会計からこれが繰り入れできるとはいえない。この政府関係金融機関と民間金融機関との金利が六・五%と五%になっておるということはどんなものであるか。また償還期限にいたしましても、片や十二年、片や十年である。この条件も違う。これには先ほどの御説明等から一応納得するといたしましても、金融機関がこういう条件であってはあとの金融をするということについて難色を示すなんてことは常識として私には考えられない。少なくとも国が保証するものは、金融機関がその債権に対して国から保証してもらったということになるのだ。現在の石炭鉱業状況、いわゆる経理状況というものはわかり過ぎるくらいにわかっている。なるほど担保もある。しかしその担保というものは経営が苦しくなったからといって直ちに執行できるものではないわけなんだ。だから国が保証される、均等償還されるということは、銀行としては非常に助かるわけなんです。私は、あなたが先ほど御答弁になったようなことではなくて、むしろ金融機関救済の色彩というものが非常に強いというように考えている。だから五%の金利まで保証する、ましてや契約解除になった、そして財産処分という形には進むのだけれども、そこで損失があった場合には、二分の一を国が保証するというまでの必要があるかどうかということが一点考えられる。  いま一つは、金融機関以外に、中小企業であるとかその他の弱い立場の債権者という者の債権保全ということに対してはどのようにお考えになっておられるのか。そこいらの関係というものをひとつ明らかにしてもらいたい。
  58. 井上亮

    井上(亮)政府委員 損失の補償の問題でございますが、これは先ほどもお答えいたしましたように、今日の石炭鉱業現状は先生もよく御存じのとおり、普通の状態にしておきます場合、従来程度政府助成策を前提にして放置しておきました場合には、おそらくほとんどの企業に対して、大手といわず、中小はもちろんでございますが、金を貸さないのではないか。これは私ども数年前から日ごろ非常に苦しんでおるわけでございますが、政府金融機関すら、貸したくない、こういうことを私どもに申しているというような状況でございまして、いわんや市中銀行におきましては、率直に言えばほとんど貸す意思がないのではないかというような現状に置かれているのではないかというふうに考えております。  そこで、今後私企業として石炭鉱業再建させるという場合に、こういったドラスチックな政策を用いたわけでございますが、この措置はあくまでも石炭鉱業に対する助成でございます。これだけの措置金融機関にいたしますけれども、同時に私どもはこの再建計画の作成に際しましては、今後長期にわたる計画をつくるわけでございますから、その長期にわたる計画について金融機関の協力を要請するということが条件になるわけでございます。そういった意味で、少なくともとの程度措置がない限り金融機関石炭鉱業に全然協力をしないという状況でございます。今後長期にわたって金融機関の協力を要請する、つまり追加貸し出しの要請をさせるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして単なる金融機関に対する助成とか救済策というような性質のものではございません。もし私が金融機関に対する救済策なんということをかりに言ったといたしますと、金融機関はもうけっこうだ、今後貸さないから要らない、こう言うかもしれないという現状でございます。
  59. 中村重光

    中村(重)委員 あなたの考え方は、債務そのものの肩がわりをするということが目的じゃないのであって、追加資金を供給させるための誘い水として考えているのだというお答えであったわけです。しかし、いずれにいたしましても、私は金融機関に対するところの救済的な色彩が強いという考え方はどうしても念頭から去らない。しかしあなたの考え方は実はわかったわけです。  そこでこの計画の中に投資計画というのがある。この投資計画ということは、いわゆる社外の投融資ということを意味するのであろうと私は思うのですが、少なくとも政府資金というものが相当投入された。ところが石炭企業というものは肝心の石炭鉱業を強化するといういわゆる近代化、合理化のためにその資金を使わない。ほかにこれを投融資するという傾向相当強かったと私は思う。なおかつ再建整備計画を適用された後においても、この社外の投融資ということを認めていくという考え方の上に立っておられるようでありますが、この範囲はどの程度を考えておられるのか、まずその点をお伺いいたしたいと思います。
  60. 井上亮

    井上(亮)政府委員 十三条に、投資等の計画を通産大臣に届け出させるという規定があるわけでありますが、これは毎営業年度の開始前に毎年の計画を届けてもらうということでございますが、これは先生も御指摘ありましたように、ねらいは主として経理監督の面からの届け出でございまして、したがいまして、そういう意味では石炭鉱業を充実させ、かつ鉱内の近代化をはかるための投資というのはむしろ重要ではございませんで、社外に対する投資についての監督をいたしたいというのが主眼でございます。この社外に対する投資につきましては、先ほど三原先生からも、石炭産業はむしろ新分野開拓していったらどうだ、そうして自立体制をとるべきじゃないかというお話がございましたが、そういう意味ではいいわけでありますが、ただこれをいたずらに、何といいますか、石炭鉱業再建石炭資源を守っていくためにこそ国が助成をするわけでございますから、金に糸目はないというものの、そういう石炭資源を守るために助成されている企業が、国の助成を受けた余裕金をあまり不要不急のものに持ち出されるというようなことは、石炭産業として必ずしも好ましくない面があるわけでございます。したがいまして、そういう場合にはこれはよく当該企業と実態を協議しまして、必要に応じて勧告もするしあるいは取り消しもする。  しかし一応ここで、むしろ社外投資についてどういうのを認められるかという点を申しますと、たとえばこれは離職者対策のために会社がどうしても第二会社といいますか、関連企業、子会社をやはりつくらざるを得ないというような場合がございます。こういう場合の投資は、私はまず認めなければいかぬというふうに考えます。  それから第二には、需要確保のためにたとえば共同火力をつくっていく、あるいは共同火力に対して追加出資をしていくというような社外投資の問題もございます。たとえば常磐共同火力とか九州の共同火力、その他需要確保のために発電所に積極的に出資していくというような問題があろうと思います。そういう場合も、当然これは社外ではありますけれども認めていかなければいかぬ。  それから第三点は、やはり地元の要請と離職者対策の問題ともからみますけれども、これは産炭地振興に企業としてやはり協力せざるを得ないというような場合に、社外に投資することもあろうと思います。そういうような場合には、当然これは認めていかなければいかぬというふうに考えております。いずれにいたしましても、ケースバイケースで、要するに石炭産業を守るための助成でございますから、そうでない面に資金が流用されないような配慮をしなければいかぬというふうに考えております。
  61. 中村重光

    中村(重)委員 私もそのとおりだと思うのですね。離職者対策といっても、その離職者を何人か使っていても離職者対策ということになるでしょう。具体的にいって熱海高速道路に投資することが離職者対策になるのか、石炭とどういう関係があるのかといったような問題を、私はきびしくやはり規制するところは規制をしていくということでなければならぬと思うのです。  なお、この措置で考えるのですが、抜本対策としてこういう財源措置を講じられるならば、もっとほんとうの意味の抜本対策は考えられなかったかということです。いつも問題になりますところの流通機構の問題であるとか、あるいは銘柄整理の問題であるとかいろいろあろうと思うのですよ。飯場体制の問題もそうなんですが、そういうことになぜもっと抜本的に取り組まなかったのか。だからして、単に炭鉱経営者の責任を肩がわりしてやる、ただそれだけのことじゃないか。これならいままでやってきたことと同じなんで、三度目の正直というけれども、三度目の正直ということにならない。おそらく一年か二年で失敗するであろうということが大かたの見通しなんです。いまこういう措置によってトン当たり五百円かそこらのこれはコスト引き下げに通ずるかもしれない。しかしながら賃金だって上がる、物価だってどんどん上昇する、さらには償却部分もしなければならぬ、今度はコストが引き上げられてくる条件というのが出てくるわけですよ。過去の問題に対しては、それはなるほどこの措置を講ずることによってコストダウンすることになるかもしれない。しかしながら、今度はまた新たなそういった経営が苦しくなるところの条件というものが出てくるということになるわけですね。だから、なぜにもっと抜本的な対策というものを講じなかったのかということに対する私は強い不満と疑問を持つわけですが、その点はどのようにあなたはお考えになりますか。
  62. 井上亮

    井上(亮)政府委員 私の考え方は、先生の御質問の冒頭で今回の抜本対策、これは単に本日御審議をいただいております再建整備法に関連する助成策だけではなくて、そのほかに、冒頭に申しましたように幾つかのいろいろなきめこまかい助成策が並行的にあるわけてございまして、それに先ほども触れましたが、私が今日頭を痛めておる需要確保対策、こういうものを十分やっていくということでいきますならば、私は少なくとも昭和四十五年ごろまでに相当改善されていくという確信を持っておるわけでございます。なお、その裏づけとしましては、ただ口だけではなくて、特別会計による財政措置についての保証担保もあるわけでございますが、あとはこの膨大な国の石炭産業に与えようとする助成原資をどのように有効に使っていくかということにかかるのではないか。その助成の柱としては幾つかできておるわけでございますから、成否はそこにかかっておるというふうに考えておりまして、私は基本的には先生と違いまして、そういう悲観論を持っておりません。根本的には相当強気でございます。ただしかし私ども努力は今後とももちろん——先ほど言いましたように、需要確保の点についても十分さらに努力していかなければいかぬ点がたくさんございますから、必ずしも手放しの楽観論ではございませんけれども、そういう努力を——政府と業界との双方、それぞれの努力が積み重なれば私はそんな悲観すべきではないというふうに考えております。
  63. 中村重光

    中村(重)委員 それはあなたの自信のほどはけっこうですよ。しかし自信のほどはけっこうなんだけれども、これほどの、まああなたが言ういわゆる三度目の正直だ、この最終安定策に対する答申を求めたんだ、これならばいけるんだとお答えになるが、いけようはずがないじゃないかということを私は言うのですよ。これは先ほど三原委員がどういうふうに御質問なさったか知らないが、委員会が開かれる前は同じような考えだった……。これだってまだある、抜本対策というものはある、手をつけなければならぬことがある。まずそれを先につけなさいと、こう言う。  それともう一つは、大体この内容を見ても、提案理由も私読んでみたんだ。いいですか。「この肩がわり措置は、現在の石炭鉱業の危機が特に資金経理面の悪化に集約的にあらわれており、過去の資金経理面における過重なる負担を取り除かない限り、石炭鉱業経営基盤の回復は不可能であり、」したがってこういう措置を講ずるのだ。何ですか。資金面からくるところの経営者のことだけを考えている。大体いまのように石炭産業が斜陽化してきた、労働者が山を去っていくというのは何によっているのか。いわゆる生産優先、保安軽視、人間の生命を大切にしてないところの、いわゆる人間スクラップ政策というものが石炭鉱業を今日の状態に追い込んできた。その反省なんというものはちっとも提案理由の中にありゃしないじゃないか。また対策としても何一つ出ていない。これを石炭井上と言われるあなたが、保安は労働省じゃ、これは労働省にわれわれやれと言うんだけれども、やらないのだが、これは別の局がやるのだというようなことではおさまらぬと思うのですね。通産省に保安を置けとあなたは言うならば、言いかえると石炭局に置けということに通じてくるんだ。だからそういうところに反省がないということは、石炭井上と言われるあなたの名に恥じるだろうと私は思う。まずあなたに、人間スクラップ政策というものが今日の石炭鉱業状態を招いたということに対する反省がなければならぬ。何一つないじゃないか。反省ないですよ。
  64. 井上亮

    井上(亮)政府委員 私が三原先生の御質問に対してお答えをしたときにも申し上げましたが、ちょうど先生そのとき御出席になっていなかったのかもしれませんが、ただいま先生が読み上げられました提案理由は、この再建整備法に対する提案理由の趣旨で書いたために、資金経理面を強調した表現に相なっております。しかし石炭対策というのは、私もこの委員会で申し上げましたように、やはり今日の石炭鉱業の危機という点から申しますと、大きく分けまして三つの観点があろうと思います。その第一はやはり何といっても私企業を通してやります場合に、会社が倒産してしまうということになれば資源の喪失になりますから、まずその資金経理面改善ということがございます。しかし第二の問題としては、いかに会社が一応経理面でやっていける体制になっても、したがって生産もある程度上がるといたしましても、需要がなければこれはまた石炭産業としては成り立たないわけでございますので、この需要確保というのがやはり次に大きな問題でございます。それから第三には、私は先ほど申し上げたわけですが、労働者定着政策、これがやはり三本柱の一本である大事な要素であるということを先ほど強調したわけでございます。順序は一、二、三と申しましたが、その順序は別にございません。いずれも大事な三本柱でございまして、特に今日の状況では、へたをすれば労務倒産のおそれのある企業もあるわけでございますから、そういった意味でも労務者の定着政策ということについては、私も及ばずながら異常な熱意を持っておるわけでございまして、今度石炭鉱業審議会の年金小委員会で、経営者の反対を押し切ってまで年金制度をあえてつくるというふうな態度をとりましたのも、やはり今日最も大事な一つが労務者の定着政策である。ちょっと脱線をするかもしれませんが、そういう観点からすれば、今日の離職者対策についてはもう一ぺん再検討する必要があるとすら考えておるわけでございまして、むしろ年金制度等の問題は栄養剤でございますが、むしろ定着政策に徹した政策をとってまいりたいというふうに考えております。
  65. 中村重光

    中村(重)委員 時間がだいぶ過ぎましたから終わりますが、この再建整備計画の実施と再建炭鉱との関係というのを最後に一点伺っておきたい。具体的には日炭とか杵島とか明治とか貝島、再建炭鉱の実情とか援助の実態はどういうことであるのかということと、この措置とこれらの炭鉱との関係はどういうことになっておるか、その点をひとつ……。
  66. 井上亮

    井上(亮)政府委員 今日御指摘がありましたように、四社ばかりがいわゆる再建資金の融資を届けておる企業でございます。その再建資金の融資を受けている企業を通称再建会社と称しておるわけでございますが、今回この再建整備法ができました場合には、従来のいわゆる再建会社も他の再建会社、他の企業と全く同じ立場再建整備計画の作成をいたすつもりでございます。ですから、そこに特に区別はございません。ただしかし質的、内容的に通常の助成策ではなかなか再建がむずかしい、なお再建資金の融資を受けることが特に必要だというような企業が中にあろうかと思います。現に受けている四社についてもそのとおりでございますが、そういうような場合には、これはそういう意味で少し一般的な助成策より手厚い助成策が加えられるという区別があろうと思いますが、しかし再建整備計画検討としては、同列に並んでの検討、同列に並んでの認定ということになろうと思います。ただ内容によって再建資金の融資でも受けなければとても大ぜいの労務者をかかえ、まだ炭量も相当あるにかかわらず、立ち上がり資金がないためにいまつぶれてしまうということを救うために、再建資金の融資ということをやるわけでございます。御承知のようにそういう制度にしておるわけでございます。それはまあケースバイケース、そういう特別措置を講じて、できるだけ炭量をたくさん持ちながら、また労務者をたくさんかかえながら、不幸にして倒産するということのないような措置を今後とも続けていきたいということでございまして、再建整備計画としては同じでございます。
  67. 中村重光

    中村(重)委員 その点は関係の同僚委員からあとでまた意見の表明がありましょうから、その程度にいたしておきます。  それからこの後のスクラップの見通しですね。これと関連して離職者の発生の見込み、それから生産能率と平均年齢というものが老齢化してくるであろうと思うのですが、それらに対して再建計画との関連でもってどのようにお考えになっておられるか。
  68. 井上亮

    井上(亮)政府委員 今後の生産能率、生産計画等につきましては、先ほど申しましたように、ただいまこの法案と並行的に個別検討に入っておるわけでございますが、大体長期的に見まして一応昭和四十五年度までをいま精査いたしておりまして、それ以後昭和五十年までは、これは見通し計画というような形で検討いたしておるわけでございますが、今後十年間にわたって出炭規模は大体五千万トン程度、五千万トンから五千二百万トン程度の間というふうな考え方で見通しを立てております。またその生産が可能になるような助成策、資金計画等を考えておるわけでございます。能率につきましては、これは各山によりましていろいろ今後の状況が違うわけでございますが、一応本年度にきまりました出炭能率、これをスタートといたしまして、ほとんど全部の企業が今後五年間ないしは十年間に能率は相当向上しているという計画に相なっております。  なお労務者につきましては、閉山等も今後五年間程度相当あるのではないかというふうに考えております。逐年少しずつ減っていくかもしれません。あるいは大手の山がつぶれます場合には、ある年は非常にふえる場合もあろうかもしれませんけれども傾向としては、今後閉山規模は逐年減少していく、まあ五年間程度は少なくとも閉山問題が起こるのではないか。それで五年間以後におきましては全然見通しがないということも言いませんけれども、私は五年間に相当そういった整備が完了いたしまして、それ以後におきましてはあまり閉山騒ぎはないのではないか、まあ私の立場から言えば資源産業を守っていくという意味からいって、切るに切れない態勢で、何としてもやはり安定供給あるいは安全保障等の見地から維持しなければいかぬ山だけになっていくのではないかというふうに考えておりますので、大体今後の計画につきましてもそのような見通しを持っております。
  69. 中村重光

    中村(重)委員 その五年間の間におけるスクラップ計画という点も伺いたいのです。同時にビルド計画というものですね、積極的な面からひとつ伺っておきたい。
  70. 井上亮

    井上(亮)政府委員 今後五カ年のスクラップの見通し計画というのはありません。私は殺すということはいたしません。ただ見通し計画というものと、それからビルド計画、これは先生おっしゃるとおり当然スクラップもある反面、相当思い切ったビルド政策が行なわれますので、相当の投資もしていかなければならぬわけでございます。  それらの内容につきましては、申し上げてもいいわけですが、ただ、やや資料が古くなっておりまして、ただいま一番最新版を個々の企業にわたりまして検討しておる最中でございますので、あんまり間違ったお答えをしてもいかぬ。昨年、閣議決定をいたします際、答申の際の、今後の設備投資計画なり近代化計画というようなものは、詳細なものは当時あるわけでございますし、それからスクラップ計画につきましては、当時の想定といたしましては、大体四十五年度までに、四十一年度を含めて——四十一年度は三百万トン余りですが、これを含めて八百万トン程度という計画が当時あったわけでございます。しかしきょうは、もう本日は四十二年度になっておりますから、そんなものはございません。というような見通し答申に際しましてはつくったことがございます。しかしいま、もう一ぺんこの再建整備計画の作成ということで各社検討しておりますので、閉山規模にいたしましても、この数字にそんなに狂いはないと思いますけれども、しかし正確には、いま作業中でございます。
  71. 中村重光

    中村(重)委員 最後に、この措置とは直接関係はないわけですが、長崎県の崎戸炭鉱閉山通告を経営者がなされたということが伝えられておる。これはあなたのほうで、前もってからこの問題について関心を持って対処してこられたと思います。これはすでに閉山の通告はなされたということであります。いつごろに閉山をしようと考えておるのか、それから離職者対策についてどうお考えになっているか、それから産炭地崎戸は御承知のとおりの島でありますから、これに対してのいろいろの産炭地振興計画というものをお考えになっておられると思うのですが、それらに対する考え方というものを明らかにしておいていただきたいと思います。
  72. 井上亮

    井上(亮)政府委員 三菱鑛業の崎戸炭鉱につきましては、これは二、三年前から労使の間で、閉山の時期、それから閉山へのテンポ、段階的に閉山していかなければならぬということで、急激な閉山を避けるという意味で、そういう話し合いが行なわれまして、労使の間で話がつきまして、逐年段階的に縮小して今日にきておるわけでございますが、大体私ども今日考えておりますのは、本年度中にはやはり閉山されるのではないかというふうに考えております。  そうなりますと、今度は離職者対策の問題と、それから産炭地振興等の問題があるわけですが、離職者対策につきましては、これは会社側としましても労働組合と十分話し合いを続けておりますが、おそらく私は、三菱鑛業としては、ほとんど全部の従業員をでき得べくんば配置転換をしたいのではないかと思っております。  ただ配置転換の先が、北海道の新鉱開発を昨年から始めて、大夕張で原料炭の新鉱開発をしておりますが、でき得べくんばそういうところに配置転換ができれば、三菱鑛業としては好ましい姿ではないか。私ども政策を扱う側からいいましても、新鉱開発を意欲的にやってもらっておるわけでございますので、あそこの労働力が相当不足しておりますので、そういうことができれば好ましい。そのほか、三菱としましてはほかの山も九州にもあるわけでございますから、配置転換を希望するのではないかというふうに考えております。  ただ、私おそれておりますのは、三菱の茶志内炭鉱が先般閉山しましたときに、三百人離職者が出たわけでございますが、三菱は全員を大夕張の新鉱開発に配置転換をしたい希望を組合に申し出たわけでございますが、新鉱開発に応じましたのはわずか二十数名、三十名未満というような、一割にも満たない者しか新鉱開発のほうに回らなかったわけでございまして、そういうこともございますから私も心配いたしておるわけですが、私の希望としましては、私も石炭産業への再就職を特に第一義的にお願いをしたいというふうに考えております。  なお、会社といたしましても、しかし本人の意思によりますから、これは何とも引きとめがたい面もありましょうけれども、できるだけそういうふうに組合のほうにもお願いをいたしたいと思っております。これにつきましては、形式的な話ですが、本年度の合理化計画等の再就職計画の中には当然これは対象に考えられておるというふうに考えております。  それから、産炭地振興につきましては、これはなかなかむずかしい問題で、離島でございますかう——ただ、これはあそこに相当りっぱな住宅施設等もございますし、ただ捨てるには惜しい鉄骨のりっぱな建物等もあるようですから、これを病院等に再活用していただくとか、あるいは三菱鑛業にいわせますと、何か利用していただく方があればただにしてもいいというような乱暴な話を社長は言っているような状況でございまして、産炭地振興についてはなかなかむずかしい面はございますが、そういう離職者対策状況なんかとあわせて、あそこにできるだけのことを考えていきたいというふうに思います。
  73. 中村重光

    中村(重)委員 離島といっても、崎戸大橋ができまして、大島と崎戸は結ばれるわけです。そういうとから考えてみまして、あなたがお答えのおり、鉄筋コンクリートの相当りっぱな住宅施設その他があるわけです。これを三菱鑛業がこわして持っていったって何の役にも立たないわけですから、これをただでも使う者がいないかというようことも、これは真実の気持を語っておると私は思う。しかし、いずれにしても、国としても離党振興という立場から相当の資金を投じておる。三菱鑛業としてもあれほどのりっぱな施設をそのまま放置することもどんなものであろう。また炭鉱離職者も、あなたもお考えになるように配置転換を希望してない。六百数十名でありますが、できればあそこで産炭地振興のため適当な施策を、国なり三菱鑛業あるいは地方自治体と話し合いをしてもらって、何か講じてもらいたいという希望が非常に強いわけでございますから、そういう実情を三菱鑛業あるいは労働者並びに関係の方面とも十分話し合いをされて、適切な措置を講じてもらいたいということを強く要請をしておきたいと思います。  なおまだいろいろお尋ねをしたいことがありますが、基本問題その他具体的問題につきまして一応質問を保留いたしまして、きょうはこれで終わます。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後一時十八分散会