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1967-07-13 第55回国会 衆議院 商工委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十三日(木曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 島村 一郎君    理事 天野 公義君 理事 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 河本 敏夫君    理事 田中 武夫君 理事 麻生 良方君      稻村左近四郎君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    岡本  茂君       神田  博君   小宮山重四郎君       小山 省二君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    中尾 栄一君       丹羽 久章君    橋口  隆君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       佐野  進君    中谷 鉄也君       平岡忠次郎君    古川 喜一君       塚本 三郎君    吉田 泰造君       近江巳記夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省繊維         雑貨局長    乙竹 虔三君  委員外出席者         通商産業大臣官         房審議官    蒲谷 友芳君         通商産業省繊維         雑貨局原料紡績         課長      橋本 利一君         通商産業省繊維         雑貨局繊維製品         課長      児玉 清隆君         参  考  人         (日本化学繊維         協会会長)   宮崎  輝君         参  考  人         (日本紡績協会         委員長)    谷口豊三郎君         参  考  人         (日本綿スフ織         物工業組合連合         会副理事長)  寺田 忠次君         参  考  人         (全国繊維産業         労働組合同盟調         査局長)    久村  晋君         参  考  人         (日本繊維産業         労働組合連合会         委員長)    小口 賢三君     ————————————— 七月十三日  委員櫻内義雄君及び中谷鉄也辞任につき、そ  の補欠として中尾栄一君及び三宅正一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中尾栄一君及び三宅正一辞任につき、そ  の補欠として櫻内義雄君及び中谷鉄也君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定繊維工業構造改善臨時措置法案内閣提出  第六五号)      ————◇—————
  2. 島村一郎

    島村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法案を議題として、審査を進めます。  本日は、本案審査のため参考人として、日本化学繊維協会会長宮崎輝君、日本紡績協会委員長谷口豊三郎君、日本綿スフ織物工業組合連合会理事長寺田忠次君、全国繊維産業労働組合同盟調査局長久村晋君、日本繊維産業労働組合連合会委員長小口賢三君、以上五名の方々出席せられております。  参考人各位には御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがたく存じます。  会議を進める順序といたしまして、最初に各参考人にそれぞれのお立場から大体十分程度の御意見をお述べいただきたく、次に委員各位から質疑がありますので、これに対しまして忌憚なくお答えをお願いいたしたいと存じます。  それでは、まず宮崎参考人からお願いいたします。
  3. 宮崎輝

    宮崎参考人 私、化繊協会長宮崎でございます。与えられた時間が少のうございますので、要点をかいつまんで申し上げさせていただきます。  私ども化繊メーカーは、要するに中間原料をつくるのでございまして、実際長繊維と短繊維に分けますが、長繊維機屋の方、短繊維紡績の方にお願いをするということで、もちろん自分で自家紡自家織機を持っているものもございますし、また準自家用として系列を持っているものもあるわけでございます。私どもがつくります合化繊は世界的に、たとえばヨーロッパ、アメリカが非常に増産をしておりまして、非常に値段が下がってきております。これと競争するためには、コストダウンと品質の改善全力をあげておりますが、非常に率直に申し上げますと、私どもがつくっております。たとえば紡績で言いますと綿、その工場原価よりも紡績糸が高いというような情勢にだんだんなろうとしておりまして、輸出するのは紡績糸輸出するのが最近非常に多うございますので、どうしても紡績織布というような問題については非常に重大な関心がございますので、今回の法案審議にあたりまして、ぜひ一つお願いしたいことをこれから二、三申し上げさせていただきたいと思います。  もちろんこの法案につきましては、長い間関係業者方々が慎重に審議をされまして、そうしてでき上がった案でございますので、議論は過去においてはございましたけれども、まとまった以上は、私はこの法案をやはり通過させていただきたい、そうして一日も早く軌道に乗るようにさせていただきたいということをまず冒頭に述べさせていただきたいと思います。  まず希望でございますが、まず考えさせていただきたいことは、従来ややともすれば過剰紡機で余っているのではないか、それを整理すればいいんじゃないかというふうに思いがちでございますが、実はそうではありませんで、量よりも質の問題であるということだと思います。これは私ども化繊メーカー全力をあげて設備近代化努力していると同じように、どうかぜひひとつ、機屋それから紡績方々も、近代化ができますように、単に量的に設備があるということだけではなしに、近代化できますように、諸先生方の御配慮をいただきたい。  それにつきまして、まず機屋のほうでございますが、この点につきましては、諸先生御存じのように、資金的にも非常に手厚く遇しておられますし、かつまたスクラップとビルドの間に関連性がございまして、まことに至れり尽くせりの手厚い保護がなされておるということに対しましては、私ども関連業者として非常に感謝の意を表するわけでございます。しかしながら、紡績に関しましては単に開銀融資をするそのワクを与えてやるという程度でありまして、これでははなはだ不十分でございますので、この運用についてぜひ国会お力を拝借いたしまして、紡績業がすみやかに近代化し得るように御協力をいただきたいと思います。  それから現状でございますが、現状は幸いにも非常に好況でございまして、ここに谷口さんおられますが、半年前には予想しなかったような好況を呈しております。織機のほうには問題がございませんが、紡績について述べさせていただきます。好況を呈しておりますが、こういう半年前には予想できなかったことが現在ありますように、国際収支等も非常に不安定でございますので、今後半年後にまた再び不況が来るかもわかりません。こういう意味におきまして、現状だけでこれを判断することは、私は長期立場から適当でないというふうに判断いたします。この法案につきましても、現状だけを判断いたしますと再検討すベき時期に来ているというふうに思われますけれども、というのは、この法案自体情勢が変わったときには再検討するのだというふうに書いてありますが、しかし私は長期に判断していただきたい、現状好況だけの立場から判断するのは適当じゃないんじゃないかというふうに思っております。しかしながら、現状におきましてはそういう好況立場もありますし、なおかつ非常に人手が足りません。ある場合においては五〇%くらいの充足率しかないというようなこともございまして、実際動かないところもあるし、あるいは二交代を一交代にせざるを得ないというようなところが私の系列にもございまして、どうしても人手の要らない、そしてできれば三交代設備ができるようなことが早く進みますことを心から希望しておる次第でございます。  一、二実は陳情の電報があちこちからまいっておりますが、それを一々申し上げるわけにはまいりませんけれども、第一に申し上げたいことは、幸いにこの法律が通りました暁におきまして、ぜひ運用の適正を期せられ、かつまた、情勢変化によって法改正ということが必要になりましたならば、その改正をしていただきたいということで、この際二、三希望を述べさせていただきたいと思います。  その第一は、近代化が終わっているというようなところにつきまして、特に私ども化繊業界で問題にしておりますのは、スフ紡をたとえば合繊紡改善したというようなところがございます。そしてフル運転しております。そして余剰紡機も持たないというようなところでは、この廃棄をされると困るのではないかというような声もありまして、ただいまも電報がまいっておりますが、えてして法律が通過いたしますと、どうしても持っている錘数に応じ廃棄処置がとられるようなことが起こりがちなので、みずから進んで、たとえばスフより合繊紡近代化を行なって、しかもその設備をもう一ぺんスフにかえようとしても、もうスフ糸は経済的にはひけないということになりますので、そういうものがスクラップ化されるようなことでなく、ほんとうに余っているもの、あるいは人手が足りないために動かないもの、そういうようなものがスクラップ化されるのだというような運用の御配慮をいただきたいということが第一点であります。  それから第二点は、一括処理範囲でございますが、これは答申にもございますようにトウ式流毛式及びこれに準ずるものはこの法律適用外になっております。問題は準ずるものの範囲でありますが、これからおそらく通商産業省令によってきめられると思いますが、きめられるときに、やはり私は先ほど申しましたような、せっかく努力して手早くスフ紡から合繊紡に変わった、そういうものはこれに準ずるものとしてぜひお取り扱いを願うような省令が出ることを希望いたします。これが第一点でございます。  それから第二点は、現在の措置法の十三条の運用の問題でございますが、これはこの前にこの法律が通過いたします場合に、政府側と諸先生との間に詳細な質疑応答がなされておりまして、ここにございますが、それによりますと、十三条というものは、要するに万一設備が足りないときにどうするのだというような一つの抜け穴として規定された規定でございますが、この点について問題がありますのは、私どもは先ほど申しましたように、もうすでに質の時代であって量の時代ではないのだ、後進国からどんどんパキスタンの綿糸が入ってくるような時代でございますし、しかも彼らは新しい設備を持っておるわけですから、そういうような近代化設備が足りないときに、過剰紡機によし古いものがあってもやれるように、やる意思とやる実力と、かつまた労務者が集まりませんから、労務者が集まる場所に工場をつくりませんと、寄宿舎の設備その代を何ぼよくしても集まりが悪い。しかも募集費用がかかる。そういうような状況でございますから、近代化設備が足りないときは、よし古い設備が余っておっても、この十三条は適用できるような御運用をいただきたい。これはもちろん憲法第九条の解釈をやるようななにをしなくても、それはできることじゃなかろうかというふうに判断をいたしております。  それから第二は、十三条につきましては抽せんできめることになっておりますが、抽せんでやりますと、ほんとうにやり得る人は必ずしも当たらない、当たった人からつい権利を買わなければならぬというような事態にもなりかねませんので、これは過去において実績がありますやり得る人にやれるような運用お願いしたいと思います。  それからその次は一括処理を行なう場合の方法でございますが、これは一年以内に行なうということになっております。しかしながら、一ぺん指示をいたしましても、これを変更命令を出すことができるようになっておりますから、やりよう次第によっては指示してまた変わっていくということで、あたかも操短行為を実行するようなことが悪く解釈いたしますとできないことじゃないと思われますので、ぜひそういうことにならないで、きれいさっぱりと一括処理でやっていただきたいというようなことをお願いしたいと思います。  それからその次に、万一一括処理が行なわれないというときはどうかということでございますが、現在のような情勢では、先ほど申しましたように一括処理が非常にむずかしいのじゃなかろうかというふうに思います。しかしながら、やはり人手が足りないために二交代を一交代にしていくとか、あるいはもうからないようなものも実はございます。そういうものは簡単でいくと思いますが、しかしながらこういうような好況であるとともに、先ほど申しました実際近代化しておる設備近代化していない古い設備を持っていらっしゃる方といろいろなものがあるために、一括処理というものもなかなか容易には行なわれがたいような情勢になっておると思います。ですから、その意味におきまして、大体答申の趣旨にこのくらい一括処理をやるのだという一つ目標がございますが、そういうものを非常に下回るような場合には、私はやはり一括処理をするのだから、いまの措置法を延期して制限登録制を延ばすのだから、そういう際はぜひひとつ制限登録制についての延期についてこれを再検討していただきたい。これはもちろん国会のほうのお力によりまして法案改正を要しますけれども、その際はぜひ私ども遠慮なく諸先生方お願いをいたしますから、情勢がそういうふうに変わったときは、現在四十五年まで延ばすことになっておりますが、それをもっと短縮する、そしてプレミアムなんかが発生しないで自由にやれるような時代に早く達するように諸先生方にその際はお願いをいたしたいというふうに考えております。  それから蛇足でございますが、えてしてこういう協会ができますと、——この協会昭和四十七年に終わることになっておりますが、やっぱり仕事はやらなければならない。あるいは、またこういう省令ができますと、ほかの、たとえば私どものほうで長繊維の仮撚りの調整なんかについてもやってほしいというような声もございますので、そういう点についてまじめな人が損をする、そうしてもうかるときはもうけておって、近代化はやらないという人が近代化をやる人から金をもらうというようなことは、あまり好ましいことじゃなかろうというふうに思いますので、そういう際はこの法律改正になりますけれども、ぜひひとつ御考慮していただきたいと思います。  要するに私は、しかしながらこの法案が先ほど申しましたとおりにすでに国会に上程されて、しかも長いことかかって審議した結果できた法案でございますし、この法案がいつまでもペンディングであるということは、やはり業者の踏み切りがつきませんので、この際ひとつさっぱりと通していただきまして、そのかわり、法は要するに運用でございますから、これらの運用、それから情勢が変われば必要によって法律改正するというようなことでやっていけると思いますから、この法案の作成その他通過に当たられました通産省の方々の御苦労も非常によくわかりますので、ぜひそういうことの計らいをお願いしたいと思います。  私の話をこれで終わります。
  4. 島村一郎

    島村委員長 次に谷口参考人お願いいたします。
  5. 谷口豊三郎

    谷口参考人 ただいま御紹介いただきました日本紡績協会委員長をつとめておりまする谷口でございます。  懸案の繊維工業構造改善対策につきましては、かねてより諸先生方の絶大な御尽力を賜わり、厚く感謝いたしておる次第でございます。  このたび、商工委員会におかれましては、重要法案が山積いたしている中で、繊維工業構造改善臨時措置法案を御審議いただくこととなり、さらに本日は、私たちに業界意見を開陳いたす機会を与えられましたことに対しまして、心から厚く御礼申し上げます。  私は、以下紡績業界構造改善につきいかに多大の期待をかけているかということを簡単に申し上げまして、諸先生方の御理解を得たいと存ずる次第でございます。  御高承のごとく、わが国繊維産業、特に紡織業は、ここ数年来深刻な不況に際会し、非常な苦しみを味わってまいりましたが、これは景気の循環過程における一時的な不況といったなまやさしいものではございませんで、一に構造上の欠陥によるものと考えられております。昨年九月、繊維工業審議会は、一年有余にわたる検討の後、構造改善に関する答申書を提出いたしましたが、その観点は、このような構造的欠陥をいかにして是正克服するかという点に置かれていたと申し上げてよいかと存ずる次第でございます。  このような構造改善目標は、申し上げるまでもなくわが国繊維工業国際競争力を強化し、重要輸出産業として、また国民生活必需品産業として、長期的発展方途を確立することにあると存じます。  近年、わが国繊維工業を取り巻く内外の環境は著しく変化しております。外におきましては、先進国繊維工業構造的強化再編成、後進国綿業の著しい台頭、内におきましては、労働力需給逼迫賃金上昇傾向がそれでございます。わが国繊維工業がこのような激しい内外情勢変化の中におきまして国際競争力を強化するためには、近代化促進、これはただいま宮崎さんも強調なさいました点でございます。企業規模適正化過剰設備処理など、一連の構造改善のための方途を短期間に有機的に、かつ総合的に進める以外に道はないと考えております。この機会を失しましては、わが国紡績業は永久に立ち直る機会を失うものといたしまして、業界本法成立にその死活をかけていると申し上げても過言ではないと存じます。  この際、当面の綿糸相場につきまして一言申し添えておきたいと存じまするが、一部の方では、この相場高をもって、審議会答申当時と今日では情勢変化しておるのではないか、紡績業界では構造改善に対する熱意を失ったのではないだろうかといったような意見をお持ちの方があるやに聞いております。しかし昨今の綿糸相場は、在庫の調整の進展、輸出の一時的な増大といったまさに一時的、偶発的な要因によるものでありまして、紡績業が抜本的な構造改善を必要とする事態は本質的にいささかも変わっていないということでございます。すでに市況は輸出の減退を見せております。生産の回復とともに再び下降段階に入りつつあります。これが思惑的要素を前提といたしていただけに、その反動的下落をきわめて憂慮する事態にございます。業界におきましては、このような認識のもとに構造改善への意欲を強く燃やし続けていることを御認識いただけたらけっこうではないかと存ずる次第でございます。  また、構造改善法案はさしあたり紡績、織布業を対象とするものではございまするが、紡績業について申しましても、その大部分が中小紡績でございまして、したがって今回の構造改善対策は、いわば中小企業対策の一面をもあわせ持つものでございます。その意味におきまして、本構造改善法の成否は、これら多くの中小企業方々の運命を決する重要案件といわざるを得ないのでございます。したがいまして、本法につきましては、大企業中小企業の別なく、ひとしく鶴首してその成立を待っておりますることをここに申し添えたいと存ずる次第でございます。  構造改善中心の課題は、繊維工業労働集約的産業から資本集約的産業への脱皮をはかることにあるのでございまするが、昨今の労働力需給はますます逼迫の度を加えつつありまして、近代化促進資本集約化必要性審議会答申当時に比べまして一段と増大しております。構造改善対策の一日のおくれは千載に悔いを残すことにもなりかねない事態でございます。  幸いに本法案成立の暁には、関係業界一致いたしまして、みずからの道を切り開くために格段努力を傾注することをお誓いいたす次第でございます。よろしく業界一同の衷情をお認めくださいますようにお願いする次第でございます。ありがとうございました。
  6. 島村一郎

    島村委員長 次に寺田参考人お願いいたします。
  7. 寺田忠次

    寺田参考人 私は綿工連の副理事長寺田でございます。本日は、特定繊維工業構造改善臨時措置法案につきまして、中小織布業界意見をお聞き取りくださいますことをまことにありがたく感謝申し上げます。本日に至ります間に与野党の諸先生方にたびたび陳情いたしまして、諸先生方の深い御理解をいただいて、かえって御鞭撻を賜わりましたことにつきまして、まずもってお礼を申し上げます。ありがとうございます。  私は、綿スフ布業わが国社会経済上きわめて重要な地位を占めているのに経営は非常に困窮しているということ、この窮状を打開するためには、構造改善を実施して、経営近代化をはかるよりほかに方法がないこと、構造改善を実施すれば、先進国の例にありますように、再び繁栄する産業に立て直すことができるという点等につきまして意見を申し上げ、ただいま御審議中の特定繊維工業構造改善臨時措置法案を今国会において成立させるように格段の御高配をお願いを申し上げたい、かように考えます。  まず最初に、当業界社会経済上の地位について申し上げます。当業界業者数は一万六千、従業員数は十七万人でございます。一事業所規模従業員平均十人前後であります。零細業者が圧倒的に多くあり、いわばわが国の典型的な中小企業に属するものであります。これらの中小業者は、明治中期以降、輸出産業の大宗として、また国民衣料必需産業として、わが国経済発展に貢献してきましたが、最近においても毎年、綿スフ織物の総生産高の八割に相当する三十八億メートルを生産し、このうち四割を輸出に、六割を内需衣料に供給し、また全国六十三産地の中核的産業として地域経済のささえとなり、わが国社会経済の安定に重要な役割りを果たしているのであります。  次に、経営の概況と当業界の直面している諸問題について申し上げます。当業界は、明治中期から綿紡績業と並行して飛躍的に発達してきましたが、第二次大戦の末期には、戦力増強のために、ほとんどの設備スクラップにいたしまして国に供出し、一時は壊滅の状態に立ち至ったのであります。戦後、廃墟の中から先駆的平和産業として復興し、業界のたゆまない努力によりまして、設備台数はほぼ戦前の線まで復元したのでありますが、経営は、昭和二十七年の大不況以来、採算割れ慢性化しまして、これを克服するためのあらゆる努力にもかかわらず、年ごとに窮迫の度を加え、また最近は労働力不足と賃金高騰のために、経営を維持することがますます困難になり、操業の短縮または休止するものも続出している状況であります。  最近のわが業界には、打開困難な諸問題が山積しております。すなわち第一には、小規模業者が圧倒的に多くて、相互の過当競争が激しいために、経営の安定をはかることができないこと。  第二に、設備の過半は老朽化し、自動化の率も非常に低く、生産性が停滞していることであります。  第三に、当業界労務機構中学新卒の女子が中心でありますので、最近の求人難のため、労働力不足が深刻化しまして、操業の休止または操短しなくてはならないものが続出しております。  第四に、ここ数年間の賃金上昇率は約二倍、生産性の伸びは一割四分、この不均衡のためコスト高合理化で吸収することができ得ない状態であります。  第五に、一般の物価はここ数年の間に四割余も上昇しておりますのに、綿スフ織物の価格は逆に三割も下落しまして、世間相場についていけないこと。  第六に、不況慢性化のために、内部蓄積は枯渇いたしまして、借金の増大による金利負担が過重になって、資金繰りは非常に困難になっていることであります。  第七に、先進国輸入制限を行なって、発展途上国輸出市場へ進出したために、わが国輸出市場が狭隘化しまして、また関税の引き下げや特恵関税のために、日本への輸入が増加するおそれがあることなどの諸問題でありまして、経営の現況を打開することがきわめて困難な状況にあります。  次に、構造改善必要性とその内容について申し上げます。  このままの状態で推移するならば、当業界の対外競争力は弱体化しまして、現在確保しておる輸出市場を喪失するばかりでなく、二十三億メートル余に達する内需衣料後進国等からの輸入に依存しなくてはならないことになりまして、ひいては、全国一万六千の中小企業者と十七万の従業員の死活にかかわる重大問題となりまして、全国六十三産地の地域経済の崩壊と社会的混乱とを惹起することになります。当業界は、まさに崩壊の危機に直面しておるのであります。  われわれは、業界の長い由緒ある業績や現在果たしている役割りを思うとき、あくまでもこの重大危機を乗り越えて、なお一そうの社会的貢献をしなければならないと覚悟を新たにしております。  この対策をいろいろ検討いたしました結果、先進国におけるがごとく、設備近代化企業の集約化、過剰設備廃棄、転廃業の円滑化、生産取引構造改善、商品と技術の開発、市場の開拓、労務の対策等を総合的に実施して、構造改善を断行しなければならないものとの結論に達しまして、国会はじめ関係御当局に、これに関する措置をお願い申し上げたのであります。  政府におかれましては、繊維工業現状を憂慮されまして、新たに審議機関を設けて、長期間にわたり、慎重に今後のあり方を検討された結果、特定繊維工業構造改善臨時措置法案その他法律の施行に必要な予算等の助成措置を決定され、さきに国会に提案されたのであります。この対策が決定されると、われわれは特繊法の定めるところに従って、過剰設備廃棄と転廃設備買い上げの補助金の交付を受けまして、中小企業振興事業団の長期低利の融資と相まって、構造改善を円滑に実施することができるのであります。これらの措置は当業界にとって未曾有の画期的なものでありまして、業界はあげて感謝感激している次第であります。これらの対策が決定された暁には、われわれ業界は一大決意をもって構造改善事業に取り組み、織布業を資本集約的近代産業として再建するとともに、豊かな国民衣料の供給と高級製品の輸出の増強とをはかり、もってわが国社会経済発展にも貢献する覚悟でございます。  また、典型的な中小企業たる当業界において構造改善を完遂すれば、わが国中小企業対策のモデルケースとして高く評価してもらえるものと自負し、かつ、その責任の重大さを痛感している次第であります。  各産地においては、これらの対策が他の業種には見られない画期的なものであることを十分に承知して、これをむだにしてはならないとのかたい決意をもって構造改善計画の策定に取り組み、準備万端整えて、いまは法案成立と施行を鶴首待望している次第であります。  これらの諸事情を御了察賜わりまして、特定繊維工業構造改善臨時措置法案が今国会において成立いたしますように、格段の諸先生方の御高配を賜わりたくお願い申し上げる次第であります。  なお、私は本日参考意見を申し上げるにつきまして、昨日、日本絹人繊織物工業組合連合会の首脳と協議したのでありますが、私のただいま申し上げましたことは、同連合会の意見と全く一致しておりましたので、このことを申し添え、御了承を得たいと考えます。  長時間御清聴を賜わりましてありがとうございました。よろしくお取り計らいくださるようお願い申し上げます。
  8. 島村一郎

    島村委員長 次に久村参考人お願いいたします。
  9. 久村晋

    久村参考人 全繊同盟の久村でございます。  私ども労働組合の立場からいたしまして、この構造改善問題につきまして、次のような理由、趣旨から考えまして、本国会におきまして、ぜひともこの法案の通過をお願いいたしたいと考えております。  まず、私どもの労働組合が運動を進めるにあたりまして、基本的な原則として考えておりますのは、高生産性、高賃金という考えでございます。そこで、高生産性、高賃金生産性の向上に幾ら協力いたしましても、先ほど来いろいろな参考人から申し述べられましたように、現在の繊維産業を取り巻く情勢が、循環的な問題でなしに、構造的な問題をいろいろ内包いたしておるといたしますならば、それによって適正な分配がはかられないという立場におきまして、一昨年以来、私ども審議会に参加いたしまして、この内容についていろいろな角度から検討を加えてまいりました。  まず、大きな環境の変化、先ほども参考人からいろいろ申されましたように、理由がございますが、特に今後の問題といたしましては、開発途上国の繊維産業に対する参加ということが非常に大きな問題になってくるのじゃなかろうか。それはやはり日本の繊維産業自体がそうでございましたように、媒介産業としての立場を考えますならば、工業化の一つの過程として経なければならない立場にあるのではなかろうか、そのように考えますと、やはりそれぞれの国が平和であるためには、国民所得も向上し、失業をなくしていくという見地から考えました場合に、それぞれの国の繊維産業参加ということを抑制するということはとうていできないことでなかろうか。  さらにまた、いろいろな立場から自由化が進んでまいりますならば、最近の新聞紙等で拝見いたしますと、付加価値関税制度等もとってまいろうというようなことが伝えられております。そのようなことになってまいりますと、今日のままであっていいのかどうかということになってまいりますと、やはりここで抜本的な構造問題につきましては改善お願いいたしまして、それによりまして繊維産業が安定的な成長を遂げるようにぜひお願いいたしたい、このように考えております。  現在繊維工業設備等臨時措置法業界の秩序が保たれておるというふうに考えてはおりますが、いま申し上げましたような理由では、現在の臨時措置法におきましては、このような環境変化をささえ切れないという状態になっておるのではなかろうか。  次に、新しい法律を制定いただきまして、いよいよ構造改善が実施されるという場合におきましても、以下申し述べますような問題点が存在すると思いますので、それらの点につきましても、ぜひとも解決の方向というものを考えていただきたいと思います。  まず第一は、繊維の総合計画の策定ということが必要なことではなかろうか。これはいわゆる長繊維、短繊維といわれるような化合繊の問題あるいは原糸、原毛等から最終製品に至ります間に、ほんとうに有機的な総合的な計画というものが完全になされておるかどうかという点につきましては、現在も繊維工業審議会等でいろいろ審議はいたしておりますが、さらにそれを充実いたしまして、たとえば過剰設備の算定等の問題、あるいはまた化合繊は協調懇談会等で新増設の基準等を設定されておりますが、あるいはまたこの法案の中の第十六条で織布の計画についての認定等もございますが、やはり織布の認定等におきましても、全体計画の中でどのようにそれぞれの産地地域の立場というものを考えていくかというようなことも十分に考えなければならない問題ではなかろうかと思います。  それから第二の問題といたしましては、私どもこの構造改善に賛成の立場をとっておりますが、そこで働いておる者に雇用の不安を来たさないための各種の方策というものをぜひ考えていただきたいと思います。そのためには、それぞれの産地とかあるいは全国的な立場で計画を立案するにあたりまして、働いておる者たちに雇用の不安を来たさないために、事前の段階におきまして労働者の意見を反映せしめるようにぜひお願いいたしたいというふうに考えております。  それからなお、この構造改善が実施されるにあたりまして、転廃業ということを予想いたしております。転廃業につきましても、特にこれはほかの産業にかわられるとか、繊維産業をおやめになるのでございますから、そこに働いておる者の雇用ということが非常に重大なことになってまいりますので、そのような転廃業にあたりましては、特に雇用に不案を来たさないような機関の設立をお願いいたしたいと思います。このような措置をとりましても、なお離職労働者というものが生まれるのではなかろうか。その点につきましては、現在いろいろな行政機関の中にもこれらの対策を進める方策がいろいろあろうかと思いますが、不幸にして離職労働者が生じました場合には、ぜひとも有効適切な対策がとられるようにお願いをいたしたいと思います。  それから第三の問題といたしましては、現在過当競争ということがいろいろいわれておりますが、過当競争を排して生産秩序を維持していくためには、公正な労働基準をつくりまして、公正な労働基準のもとに有効な企業間競争が行なわれるようにお願いをいたしたいと思います。そのためには、最低賃金であるとか、あるいは最低工賃を確立するとか、労働時間の短縮をはかるとか、あるいはまた現在審議会で論議されておりますが、家内労働法につきましても制定方をぜひともお願いをしたい、このように思っております。  さらに第四の問題といたしましては、中小企業がこの構造改善を実施するにあたりまして、いわゆる大企業と条件が異なっておりますので、中小企業につきましても、その条件を整備するように格段の御配慮をいただきたい。たとえばこの委員会で御審議をいただきました、そこでつけられました決議等を拝見いたしましても、そういうような点から、中小企業振興事業団の機能を強化していただくとか、あるいはまた開銀融資の問題等につきましても、積極的な方策を講じていただく等のことも十分御配慮をいただきたいと思います。  さらに、これは構造改善を実施する過程の問題でもありますし、あるいはまた今後の問題とも関連いたしますが、第一区分の紡績業と綿スフ織り、絹人繊織りの構造改善が進むといたしましても、他の部分の構造改善はおくれているということになってまいりますと、ほんとう意味におきますところの繊維産業構造改善にはならないのではなかろうかと思います。特に織物と編みものの分野を考えてまいりますと、最近では編みもののウェートがどんどんとふえてきております。したがいましてメリヤスとか染色整理等につきましても、ぜひとも構造改善を実施いただきますように格段の御配慮お願いいたしたいと思います。  なお、これに関連いたします流通機構の問題につきましても、現在非常に長くかつまた複雑な経路を持っております。やはり、大量生産、大量販売を行なって、そうして消費者にも利益を及ぼすといたしますならば、現在の繊維産業を取り巻く流通機構であってはたしていいのかどうかということになってまいりますと、私どもも、この点につきましてもぜひとも構造改善というものを行なえるような方法というものを積極的にとっていただきたいと思います。  最後に、このような構造改善を実施するにあたりまして、いま申し上げましたような問題はまだ残っておるのでございますから、ぜひとも総合的な政策の確立に今後とも一段と御協力賜わりまして、そうしてそれぞれの各界におきまして、政府の指導におきましても、あるいは業界のこのような構造改善を望むにあたりましても、私ども労働組合も賛成をいたしておるわけでございますから、短期的な考えに立つことなく、長期的な視野に立ちまして、個別の利益とあるいは産地の利益、全体の利益というものを、十分にそれぞれが決意を新たにいたしまして行なうということが最も大切なことではなかろうか、このように考えております。  以上でございます。
  10. 島村一郎

    島村委員長 次に小口参考人お願いいします。
  11. 小口賢三

    小口参考人 総評、繊維労連の委員長小口でございます。  私どもは、この法案について以下申し述べますような若干批判的な条件をつけて、その条件がいれられることを前提として賛成したいと思います。  第一に、この法案の何条何項ということについての批判を除きまして、私どもは、この法案が出てくる過程およびこの法案全体を遂行しようという経済政策について一つの批判を持っております。それは、設備等の臨時措置法ができたのが三十九年ですが、一年もたたない四十年の十二月にはまた通産大臣が構造改善に関する諮問をした。もちろんその間においては、勧告操短等によって綿スフ紡績が乗り切れない情勢にきた。それから合成繊維と天然繊維との関係で、市場の競合がかなり激しくなってきた。全体の需給関係から合繊紡に切りかえざるを得ないという状態が綿紡、スフ紡の中に生まれてきた。それから開発途上国からの追い上げの速度が予想よりかかなり早い。こういうようなことも理由の一つにあることはありますけれども、この法案全体が国会に出てくる過程での一つの政治的な推進力は、国際競争力の強化というものを名とするいまの独占の寡占化、そういうことにあるのではないか。そうしてこの国際競争力の強化というのは、そのまま生産力の強化、したがって一生産もしくは経営単位の適正規模という考え方につながる。そのことによって現在の独占もさらに寡占化する。そのことによって従来のような勧告操短というような形式を排して、できるだけ市場安定をする、同時にコストも下げる、こういうことになっておるわけでございます。したがって、政策の中で適正規模というものが非常に強く押し出されておるわけです。そうして、その結果生まれる過剰生産力については、中小企業スクラップによってこれを切り抜ける、こういう形が非常に強いわけです。それで私どもは、先ほど綿スフ織物協会方々が非常に業界に困難がある、こういうことを言っておりましたけれども、実際に機屋さんあるいは日本の中小の加工業が経営が困難なのは、実は大手独占対系列生産という関係における加工賃の買いたたき、製品の不等価交換、こういうものが実際には中小企業の正常な経営努力だけでは拡大生産経営条件が整えられないという本質的な条件を持っておるからです。  こういう状況の中にあって、今回は構造改善政策としてこの法案が出てまいりました。私たちは、先ほど紡績協会谷口さんあるいは化繊協会宮崎さんがお話しになりましたような内外の経済情勢については、ひとしく同じ考え方を持っております。そういう意味で、日本の繊維産業が何らかの構造改善をせざるを得ないであろうという状況については一致した判断を持っておるわけですが、その場合に私たちは、独占の寡占化による市場の安定とコストの低下、こういう生産力の強化説をとらないのです。私たちはむしろ、今後の繊維産業構造改善については、付加価値生産性の向上と製品輸出に重点を置く必要があるのじゃないか。そのためには、むしろ原糸部門の寡占化ではなくて、加工業、撚糸、織布、染色仕上げ、メリヤス、縫製、こういうところの資本装備を高めて、むしろ多品種少量生産の原理ということこそこれは貫かれなければならないのではないか。構造改善の問題を、私たちはそのような政策原理というものをとるべきではないか、こう思うのです。  それから過剰過剰と言いますけれども、必ずしもこれは国民の一人当たりの衣料が非常に過剰になっておるのではありません。現在でも国民の一人当たりの衣料は十キロ程度のものでありまして、欧米から比べればかなり少ないのです。過剰というのは、むしろ労働者の賃金が安いために、そのときの生産量に対して消費購買力がないから過剰になる。あるいはまた天然繊維の商品に対して合成繊維生産率が高まって、一定の市場の内部に対して天然糸のほうへ合成繊維が食い合いをしてくる、こういう相互の関係から過剰が出てくるのであって、そういう目で私たちは過剰の問題をとらえておるのです。  それから、今回初めて繊維工業政策の中で織布業が取り入れられました。これは画期的なことです。私たちはこれをたいへん歓迎いたします。といいますのは、いままでは繊維工業何とか振興法とか繊維工業設備法という考えで、多くこれは紡績業のことだけでした。機屋以下のことはあまり問題にさえされませんでした。そういう意味で、ある面で今回特定という名が入って紡績、織布業の部分が入ったということについては、私たちはこれを多としますし、むしろ先ほど申しましたように、染色工業、メリヤス業、撚糸業、縫製業等についても、格段配慮がされることが必要ではないかというふうに考えるわけです。しかし、歓迎しておりますところのこの織布業の対策につきましても、実は次のような危倶を感じております。ここの場合でもやはり適正規模という考え方がかなり露骨に出ております。これは一方ではスクラップ・アンド・ビルドという考え方が出ておりますけれども、確かに織機は老朽化していることも事実です。しかし結果的にこれが実は中堅企業の育成に終わるのではないかという危惧を持ちます。たとえば石川県の織布業生産構造を例にとってみますと、工場が二千四百あるのですが、このうち法人が三百四十四です。専業が千七百二十五、兼業が六百七十五工場でありますが、この六百七十五工場のうちの六百三が農業の兼業になっております。そして織機は五万六千八百十七でありますが、一工場当たりの規模は二十四であります。ここでいうところの百台以上というのは、会社の数にして七十五社しかありません。三・二%です。その設備が二八・三%、五十台以上をとっても二百二社しかありません。しかも十台以下というところでいきますと、千百四十六社もあって、全体の会社の数の四七・八%、織機の一五・六%を占めております。そして労働者三万七百十七人のうち五十台以下の機屋さんに働いておるのが実は四七・四もおるわけです。しかも三万七百十七人のうち家内労働者は四千六十一人、三十六歳以上の女子が七千百五十八人、何と四分の一が三十六以上の労働者で占められておるわけです。しかも賃織りは、生産の中の九〇・四%、こういう状態。これが福井の場合についても、多少産地産地の生産の違いはありますけれども、大同小異でございます。こういうことになりますと、私たちは、特に機屋さんのほうになりますと、実際三十台以上の機屋の問題というものはたいへんな問題をかかえておるのではないか。まかり間違えれば、むしろこういうところの人たち自身を追い上げ、農業基本法が貧農を農村から都会に追い出したと同様に、このような問題が発生するのじゃないかということを心配いたします。それからまた愛知あるいは福井等に行ってみますと、実はこれらの五十台、三十台の層はこういう問題が起きてくる。実際には、金は協同組合まではきても、私たちのところにはおりてこないのではないかということを意見として言っておりました。  それからまた、私たち労働組合にとって心配いたしますのは、これらの層は近代化のための織機に対する設備投資をしないで、自分たちの織機を歩機として家内工業に貸して、そこで生産を維持する、こういう部分に階層分解を起こす条件も実は持っておるわけです。そういうふうになりますと、百台以上の規模に合わせる自動織機化率を綿スフについては九〇%以上、絹人絹については四十何%以上というふうに筋書きは書いてありますけれども、これはなかなか問題がある、こう思っておるところです。  それから賃金が上がったというふうにいろいろ各経営者の方々からお話がありましたけれども、実際には、たとえばアメリカと日本とを比べましても、綿糸のコストから見ましても、必ずしも日本はひけをとらないのですが、賃金の点から考えますと、アメリカの繊維労働者はいま一時間二ドルでございます。七百二十円。ところが日本の労働者は一時間百円です。二十セントくらいなんです。最低賃金にしましても、アメリカは一時間一ドル四十セント、五百四円でございますが、日本はいまだに私たちが主張しておる一万五千円、一時間七十五円、十二セント程度の最低賃金がしかれていない、こういう状態でありまして、賃金が高いことが必ずしも経営の困難ではない、こういうような事情がございます。  それで、今後私たちはほんとうに織布業構造改善中小企業のモデルになってほしいということでは機屋さんの寺田さんの御意見と全く同じ気持ちでございます。しかし、進める過程において、実際には、大臣が認可する過程で、たとえば適正規模による条件だとか、融資の問題とか、担保とかというようなことをいろいろやかましく言われて、千二百八十八億円の予算が、ねらいとしては全部に融資することになったけれども、実際には金がそれだけ使われるのかどうかということも心配しております。そういう点では従来の中小企業というものはいろいろ政策を立てておりますけれども、途中にとにかくみんな穴があいてしまって、末端まで中小企業の政策が浸透しないという欠陥を持っておりました。その点では先ほど宮崎さんから御意見がありましたように、今回の法律については、かなり長期に、そして担保についてもかなり有利な条件で手厚い保護を紡績についても織布についても確かに立てております。そういう意味では、実際に中小企業の労働者がほんとうに一般産業並みの労働者の賃金がもらえるような企業として近代化することに役立つことを心から実は願っておるわけです。  それから、そういう問題に関連して、特に大手企業立場で実は私ども危惧いたしますのは、こういう織布業がある面でグループ化をしよう、協業組合をつくろう、こういう地域の連帯を示して団結しようというのと、大手が大手の系列生産を深めるということとは、政策的には私は矛盾すると思うのです。従来でも産地自身が崩壊していったのは、大手のほうが賃機系列化することによって産地自身をゴボウ抜きにしていったからです。今回の政策も、従来の立場から見て、地域経済を全体としてセットとして開発するというのがねらいになっていますけれども、よほど運営の妙を得ないと、実際には三十台以下のところは家内工業に逃げる、中堅のところだけ金を借りる、こういう形になる危険性というものを多分に持っているのではないという危惧をいたします。  それから機屋につきましても、まだ実際には自動織機自身について、これがよいという織機が固まっていません。紡績のほうは東洋紡その他企業の研究においてかなりのものができておるようでございますけれども、自動織機自身についていいというものが固まっていません。実際には中小企業になりますと、かなりいろいろなものに使えるという機がほしいのですけれども、これがありません。したがって、これからムードでどんどん金を借りろ金を借りろといって金は借りた、据えつけて二、三年たったらまた本格的な織機ができてきた、こういうことにならないように、この辺についても繊維機械メーカー等の御努力や行政の努力で、実は十分な御配慮お願いしたいと思うわけです。たとえば福井県だけ例にとりましても、これは御承知のように県でもって特別の補助をすることになっています。福井県だけでことし一年構造改革の予算が二十三億五千五百五十七万円かかるわけです。このうち一割といいますと二億三千五百五十五万円、これは県民七十五万だそうですから、一人当たりにしますと三百円というものが、機屋さんの近代化のために自分たちの税金から取られる。おぎゃあと生まれた子供から七十歳以上の高齢者も含めて三百円。したがいまして、このことが長い目で見てほんとうに地域の経済になるということにつきましては、織物協同組合の皆さんにお骨折りいただくと同時に、こういう国民の税金というものをむだにしないようにお願いしたいと思うわけです。  それからなお幾つかありますけれども、それからのことにつきましては、時間の制約もありますので、質問の中でお答えしたいと思いますが、最後に自分たちの条件だけ申し上げてみたいと思います。  それは、私たちは第一に三交代操業に反対したいと思います。その理由は、非常に設備が変わってきたりすると、減価償却のためにも三交代制はあたりまえだというふうなムードがすでにありますけれども、何せ紡績にいたしましても金利六分五厘七年返済、織布業については三分五厘で十三年返済というたいへんな長期低利の融資をされているわけです。そういう意味で現在は男子だけによって深夜作業が試験的に行なわれていますけれども、こういうことでは将来コストの問題を含めて、やがて婦人労働者の深夜業も出てくるだろう、そういう点で長期低利の金を貸しているのに、償却との関係で三交代による、これは反対したいと思います。  それから二番目は、中小企業のことについて全繊同盟の方からも御意見がありましたけれども、私たちは適正規模のことに関連して、一企業三万錘未満の会社に対しては、ランクを分けて基礎控除についてかなり配慮してほしいということでございます。それから性能の高まる自動連続装置というものが設置される企業に対しては、生産力も高まるので、一対一によるスクラップになっていますけれども、別の面で設備の代替率を考えていただきたいということです。  それから過剰生産によってスクラップしょうという一方の政策がありますので、三番目としましては、週休二日、週四十時間労働制を計画的に導入するように、これは業界も私たちももちろん努力していますけれども、政府におきましても、また国会におきましても、このことをお願いしたい。特に私はこのことを強調しますのは、日本ではすでに紡績に関する限りその製造能力については国際的に強い競争力を持っている。たとえば一錘当たりの八時間当たり生産量とか一人当たりの労働生産につきましても、かなり高いあれを持っています。ところが一週間の労働時間についてはたいへんに長いのです。アメリカが四十時間、英、仏、西独等EECの諸国は四十四時間制が常態です。ソビエトはことしの十月から四十時間制に切りかえます。ところが日本は、生産力の水準が高いにもかかわらず、労働時間については御承知のように全産業中最も長いのです。一日七時間四十五分、週大体四十六時間半、残業を含めまして勤労統計を見ますと、ほぼ二百時間という操業をしておるのであります。このことは長期に見まして設備廃棄に伴う相対的余剰人員の問題もありますので、私たちは特に関心を持っております。  それから四番目は、産業別または業種別の最低賃金制のすみやかな実施と、家内労働法の制定を希望いたします。この点は先ほど機屋さんのところで申し上げましたが、特に今後加工業についての近代化が進めば進むほど、家内工業に逃げることによって、実は近代化投資を避ける企業と、一方近代化投資をしたけれども近代化投資によって資本の償却費、生産能率の増強を相対的に考えたら、なおかつ低賃金を利用したほうが得だ、俗に近代化貧乏と言いますが、そういうことにならないためには、どうしてもこれらの措置が私は必要だと思うのです。  それからまた次に、今回の構造改善実施計画はいろいろな意味で労働組合の雇用あるいは労働条件に重要な関係がありますので、特に通産大臣の認可条件の中で、労働関係の問題について労働組合の承認及び関係労働組合とその上部団体の組合の承認を得る、こういうことを認可条件の必要事項と考慮していただきたいと思います。  それから次に適正規模のことですが、適正規模及びグルーピングの政策の推進にあたっては、政府はあくまで企業の自主性を尊重して、過度な調整にわたらぬようにしてほしい。このことは私は先ほど構造改善の政策原理として付加価値生産性の向上と製品輸出ということを述べましたけれども、こういう点から考えまして、とりわけ私どもは、むしろ商品の需要別のグループ化ということが必要であって、一生産単位、経営単位だけの適正規模という考え方については必ずしも支持をしません。そのような意味からもっと弾力性を持って考えていただきたいということです。  それから、このことに関連して、従来の近代化投資に対して市中銀行、地方銀行が、融資にあたって担保とか連帯責任、返済期限についてたいへんに金融ベースの取り扱いを固執いたします。したがってそのために国会においていろいろな討議をいたしました結果、ある経済政策に関する法律ができましても、金融団体においてそれらの産業政策が金融ベースによってゆがめられてきたという例が、中小企業にはたいへん多いのです。そういう意味において私は、この体制金融の措置が、金融政策と産業政策とが背離しないしは分裂をして、所期の効果をあげることができなかったということがないように、格段の御配慮お願いしたい。またそのことに関連して、国会法律が通過した後におきましても、その実施過程を国会に報告させるというような努力お願いして、実際に所期の目的が達せられるような効果があったかどうかということを、引き続いてお世話をお願いしたいと思います。  最後に、構造改善の対象業種を、現在この法律になっております特定の綿スフ、合繊、人絹、繊織物に限定しておりますけれども、引き続いてすみやかに染色整理業、メリヤス業、撚糸業、縫製業、及び毛糸紡績業、毛織物業についても同様な措置を講じていただきたい。そしてその措置によって二次加工業の付加価値生産性と当該業種の資本装備率を飛躍的に高めるようにお願いしたい。またこのことに関連して、私たちは製造原価を下げることについては熱心でありますけれども、小売り価格は実際には製造原価の倍以上を示しております。流通がコストの問題について非常に多くの問題を持っています。そういう意味で、製造原価の引き下げについて労働者もある面で努力はいたしますけれども、全体から見ましてむしろ、政府の流通機構の近代化による消費者へのサービスということのほうが、通産行政から見ましてもより緊急な問題ではないか、こう感じておりますので、それらのことにつきまして、引き続いて、必要な施策と立法上の措置をお願いしたいと思います。  以上です。
  12. 島村一郎

    島村委員長 以上で各参考人からの意見陳述は終わりました。     —————————————
  13. 島村一郎

    島村委員長 参考人に対して質疑の申し出があります。これを許します。田中武夫君。
  14. 田中武夫

    ○田中(武)委員 各参考人に簡単に、二、三の点についてお伺いいたしたいと思います。参考人各位もできるだけ簡単な御答弁にしていただきたいと思います。  まず第一に、宮崎さんにお伺いいたしますが、先ほどの御意見の開陳の際に、現在のいわゆる新繊維法といわれる法律の十三条の運営ということについて、御意見があったようです。この十三条というのは、一読して何が何やらわからないところのむずかしい条文です。そこで、もう少しこの十三条の運営について具体的な御意見がありますならば、お伺いいたしたいと思います。
  15. 宮崎輝

    宮崎参考人 御承知のとおり、この条文は非常にわかりにくいんですが、私どもが問題にいたしますのは、近代化ほんとうに必要である。ですから、その近代的設備が足りないときには過剰紡機がないときということになっておりますが、その過剰紡機も、旧式過剰紡機ではなくて、近代的過剰紡機がないとき、そういうときにはぜひ十三条を適用していただきたい、これが一点でございます。  それから第二点は、そういうようなときに公告をして募集するわけです。そして抽せんによってだれがやれるかということをきめるようになっておりますが、これは先ほど申し上げましたように、お役所があまり遠慮しすぎているんじゃないか。ほんとうをいえば、むしろ堂々と、第二項を削除して許可制でいいんじゃないかと思うのです。そういう意味におきまして、抽せんで当たった、ところが、ほんとうにやりたい人、力があって、しかも立地条件のいい人は当たらなかったというときに、やはり権利をつけて買わなければならぬようになりますから、どうか運用の面でやりたい人に——抽せんということに現在なっておりますけれども、過去においていろいろな方法も講じた例がありますので、そういうやりたい人にやれるように運用をしていただきたい、この二点でございます。
  16. 田中武夫

    ○田中(武)委員 この十三条に関連する施策等につきまして、この法律提出当時の繊維局長の国会答弁と、その後任の繊維局長のやったこととが食い違っておったり、いろいろ問題のある条文でございますので、御意見の点を十分われわれも伺いました上で、この法案審議にあたって、政府に対しても、あるいは通産省に対しても十分な意見を述べたいと思っております。次に、寺田参考人にお伺いいたしますが、実は私は、これは持論でございますが、生産段階にあって、繊維にはいろいろといわゆる調整行為、コントロール、あるいは権力といいますか、国の介入、こういうものが行なわれておる。ところが、流通過程におきましては、より自由な流通ということをたてまえとする商品取引の対象となっております。たとえば綿スフ。こういうことではたしていいのかどうか。あるいはまた、実際のあなた方の業界の中で、それらの商品取引のきわめて投機的な操作によるところの値段で糸を買い入れて仕事をしておられるという関係上、この問題につきましては何らかの御意見があるはずであろうと思います。ひとつ忌憚ない御意見を伺いたいと思います。
  17. 寺田忠次

    寺田参考人 お答え申します。ごもっともな御意見でございまして、私どもは常に、今度の構造改善ができましたならば、その一環といたしまして、流通部門の改善ということを最も力を入れてやりたい、こう思っております。いま、その方法はどうしてやるのが一番いいだろうかということにつきまして、いろいろ各組合とも研究しております。たとえばまず第一番の着手として、官公庁の需要品を受注するにはどうしたものだろうかというようなことからいかなければならぬじゃないか、これが一端でございます。商品取引所の運営を適正化するというようなことも一つでございます。不当な価格に上がることは困ります。この間の綿糸の高騰であるとかいうことにつきましては困りますので、いろいろなことを陳情もし、また研究もしているわけであります。
  18. 田中武夫

    ○田中(武)委員 幸いとでも申しますか、この国会で、御承知のように、商品取引所法の改正案が出ております。実は、あすから当法案とあわせ審議をすることになっておりますので、この点につきまして御意見がありますならば十分に聞かしていただきたい、こう思っておるわけなんです。つきましては、きわめて投機的な、こういうことによって糸の値段が左右せられる。そうしてあなた方は高い、いわゆる生産と需要、供給と需要との関係によるものでない、他のところにおいてきめられた値段によって、高い糸の値段をしいられるというようなこともあり得ると思うのです。そういうことについてもう一度忌憚のない御意見を伺います、あすからあわせ審議いたしますから。
  19. 寺田忠次

    寺田参考人 ありがとうございます。過日の商品取引所の綿糸の高騰につきましても、さっそく陳情いたしまして、私どもほんとうに困った問題だということで陳情いたしたわけでございますが、今後より以上に検討いたしまして、どうしていただくのが一番いいのかということにつきまして検討いたしまして、今後とも陳情いたしたい、かように考えております。
  20. 田中武夫

    ○田中(武)委員 次に、久村参考人にお伺いいたします。  先ほど小口参考人からは、いわゆる三交代については反対だ、こういう労働組合側に立っての発言がございました。この構造改善によりまして、いわゆる古い機械を新鋭機にかえる。そうするなら当然、機械からくる生産性の向上があるわけなんですね。それにまだ三交代制云々ということについては疑問を持っております。同時に、新しい機械になることは、それだけ労働者が働く時間が短くなるとか、そういうことにつながるべきではなかろうかと思います。そのこと自体が労働時間の延長やら労働過重につながってはならないと思いますが、全繊同盟の御意見を伺います。
  21. 久村晋

    久村参考人 いま御指摘ございましたように、私どもも、二十四時間操業、特に深夜労働に対しまして原則的に反対をいたしております。しかしながら、いま、最近の欧米諸国の労働条件等を考えました場合に、本来的には反対ではあるが、ある条件を付してやむを得ないのではないであろうか。したがいまして、二十四時間操業をする場合には、労働時間は少なくとも週当たり四十時間である。手当につきましても、基準法に定められておる以上の、基準賃金について四〇%以上の手当を出すべきではないか。そういう条件がいれられるとするならば、週四十時間労働の実現、手当の増大というようなことになれば、やむを得ない場合にはこれを認めていく、このような考え方でございます。
  22. 田中武夫

    ○田中(武)委員 次に、小口参考人にお伺いいたしますが、あなたの組織である繊維労連は、組織内には大企業、大手といわれるよりか小さなものが多いのではないか、このように思うわけなんですが、本法案が通過成立をして、その実施に入った場合に、中小企業、ことに零細企業にとってどのような点をあなたは御心配をしておられますか。先ほど若干の意見もあったようですが、簡単にひとつ。
  23. 小口賢三

    小口参考人 一つには、たとえば設備の買い上げの問題でも、大手になりますと、これは自分たちの子会社から権利を買って、自分たち自身の工場は従来の生産量でもってそれを近代化することが可能です。ところが中小企業の場合ですと、これはある面で一括廃棄に伴って、一定の条件で廃棄しなければならないということになりまして、損益分岐点が非常に上がって不利になるという点で、先ほど私一つ附帯条件をつけました。それから機屋の段階になりますと、これは従来大企業自体にも織布を持っておりますけれども、ある時期からかなり賃織りに切りかえて、寺田さんの業界のほうで多く織布をやっておりますけれども、最近また紡績が自分たちで織布生産を始める傾向がかなり強くなってまいりました。そうしますと、これは織布がなかなか近代化資金の調達にむずかしさがありますと、産地自体が、場合によっては従来の産地が形を変え、ある面で従来織布業自身が一定の生産量をあげたやつが、だんだん今度は大企業によるそういう生産に切りかわるのではないかという心配を持っております。  それからさらに、機屋のほうの中の上までは、私は何とか近代化資金を借りる条件が整うと思いますけれども、先ほど言いましたように、三十台以下前後になりますと、協業化ないしはグループ化といいましても非常に問題があります。そういう点で、取りわけ系列生産におけるところの織機のなわ張りというものがございます。これらのことと協業化とは一体どうなるのかということが、非常に問題でございます。  それから、先ほども触れましたけれども、家内工業に逃げるというような問題、そういう場合とスクラップ設備の換算とかいうようなことは一体どうなるのか。ここらにもかなりむずかしい問題があろう、こう心配しております。
  24. 田中武夫

    ○田中(武)委員 これで、あなたの御意見は大体出たと思うのですが、中小ことに零細企業はこの法律にたよりたい気持ちと同時に、この法律自体が持つ内蔵性といいますか、それにある程度の危惧といいますか、危険性を感じておる、こういう面もあろうと思います。さらにまた、もっとこの法案よりか先に打つべき手が、ことに小規模、零細企業についてはあるんじゃなかろうかというような感じもしますが、何か御意見がございましたらお伺いいたします。
  25. 小口賢三

    小口参考人 その点では、先ほど総括の中でも申し上げましたけれども、何といっても繊維産業は原糸段階においては非常に優秀な固定資産を持っている。ところが加工段階では資本も非常に零細でありますし、いま現在として、中小企業過当競争でもうかりませんといっておりますけれども、これは経済政策の結果でありまして、外国ではこれほど加工段階では資本が小さくはないのです。そういう点では、私は従来の産業政策の上で、思い切って加工段階について近代化装備をつける、そのための金融のめんどうを見る、流通上の考慮もする、こういう点が入らないと、従来の生産構造そのままの原糸段階では、宮崎さんのところは七社、紡績の場合でも十大紡を中心として、五綿商社の関係はピラミッド型にできております。こういう生産構造をそのままにしておいて、なんぼこれは近代化しても、結果的には機屋さん、あるいはメリヤスの中小企業近代化すればするほど、加工賃をたたかれる材料になるのではないか、そういう心配もするわけです。ですから、その辺は構造改善といっても、ほんとうに従来の繊維産業を、根本的に加工業を育成するという型に切りかえない限り、単に自動織機の設置だけでは解決しないという心配を持っておる一人でございます。
  26. 田中武夫

    ○田中(武)委員 最後に、参考人の皆さんに申し上げます。これは私の意見でございますので、御答弁はいただかなくてけっこうですが、しかし、もし意見がございましたら、どなたからでもお伺いをいたしたいと思います。  実のところを申しますと、本法案につきましては、いまだにわれわれは十分に理解をし、あるいはこれに対して心から賛意を表するところまでは残念ながらいっておりません。何かと申しますと、まず第一に、通産省の繊維製品に対する、荒糸の価格等に対する見通しがいつも誤っている。需給の問題についても誤りがある。いうならば、通産省の繊維全体に対する見通しの誤りということが繰り返されておる。そのことから朝令暮改ともいうべき政策の転換、あるいは法の改正、こういうものが出てきております。さらにこの国会において最も重要な課題の一つである特殊法人問題が御承知のようにいわれております。この法律によるところの、いわゆる特定繊維構造改善協会、この性格についても大きな疑問を持っております。しかしながら、われわれはこういう点をあわせて、いうならば清濁あわせのんで審議に協力をいたしておるわけでございます。ところが、それに密接に関係のあるところの業界が、関係方面あるいはわれわれに陳情し、あるいは意見を述べられることはけっこうでございます。われわれもまた十分聞かねばならないと考えておりますが、それが度を過ぎる場合がございます。私は、何業界のだれかということは申し上げませんが、夜討ち朝がけ、あるいはわれわれの審議の内容にまで立ち入って、一体どこが問題ですかというようなことを言うに至ってはさたの限りでございます。しかもそのことに関連をして、何党のだれそれがどうだとか、何党がどうだとかいうような、きわめて悪質な宣伝を行なうごときに至りましては、それならそのようにいたしましょうかと開き直りたくなるわけでございます。そのことにつきましては、十分関係業界も考えていただきたい。  もう一ぺん申します。われわれは、この法案は心から賛成はいたしません。しかし、諸般の情勢から考えまして、質問者もわれわれはこうして取り下げて、参議院との話し合いの中で、できるなら、あすにでも衆議院の段階を終わりたいと協力しているにもかかわらず、悪意に満ちたところの宣伝をなされるにおきましては、今後われわれも考えねばならない、こういう考え方を持っておることを、だれにとは申しませんが、申し上げまして、終わります。
  27. 島村一郎

    島村委員長 塚本三郎君。
  28. 塚本三郎

    ○塚本委員 最初宮崎さんにお尋ねしたいと思います。  繊維産業の中に占める化繊の役割りが今後はだんだんと比重を重くしていくことになろうかと思っております。諸外国におきましても、化繊が繊維の中で中心的な役割りを果たしていく、こういう意味におきまして、きわめて重要な立場に立っておいでになると思うわけでございます。先ほど宮崎さんからのお話の中で、一括処理ができなかったならば、そのときには制限を撤廃してほしい、そういうふうなお願いをこれから遠慮なくしたい、こんな御意見が開陳されたわけでございます。実は昨日来、私、当局に対して強力にこの点実施の熱意につきまして質問をいたしましたところ、繊維新法におきましては、なかなかいろいろな点でむずかしかったが、今回は強力にこれを実施する、こういうふうな明確な答弁をいただいたわけでございます。しかし、私が察知いたしまするところ、やはり化繊業界の中には制限撤廃への希望が込められておると、本日の発言の中では受け取られるわけでございます。今度の構造改善は、御承知のように、資本自由化に対処し得る国際的な繊維産業の中で、体質改善を目的として、一時的にまず温室をこしらえて、その中で、追い抜いてきたけれども、再び追い越されんとしている、こういう日本の繊維産業の実態を、温室の中でもう一ぺん急速に育てて、そして諸外国と太刀打ちできる体質の改善、こういうことになろうと思っております。したがって、これができ上がったときには一刻も早く野放しにしていきたい、そして制限を撤廃したいという希望と底意がうかがえたわけでありますが、はたしてこのことが日本の繊維業界にとってプラスになるかマイナスになるか。もちろん将来のことでありますから、いま予見することができませんけれども、先ほどの発言では、制限を四十五年まで延ばすということを、万一処理ができなかったときには撤廃してほしいという希望が述べられた。その底意は自由化へのやはり希望があると思うわけでございます。もし一括処理ができぬという問題を抜きにいたしまして、その際実は自由化制限を撤廃したときには過当競争に国内においてはなりはしないか、こういう心配が一つあるわけでございます。これが第一点。  それから第二点が、結局のところ、そうなりますと弱肉強食ということになってしまいはしないか。そして最後には強い者だけが生き残る。そして寡占的な価格となって、いわゆる生き残った強い者だけが市場の値段を決定してしまうような形になって、消費者に迷惑をかけて、そして対外的に輸出する場合においては、国際的に対処できないから安くするという二重価格制をとっていくような道をたどりはしないか、この三つの点につきまして心配を抱いたわけでございます。この点に対する御見解を承りたいと思います。
  29. 宮崎輝

    宮崎参考人 たいへんいい御質問をいただいてありがとうございました。実は現在の措置法を延期することにつきましては、非常に業界に議論がありました。しかし結局昭和四十五年まで延ばすということで話がつきまして、この法案ができたことは御存じのとおりだと思います。それに対する考え方が、そういうことになったら、自由化したならば、結局寡占体制あるいは弱肉強食になりはしないかという御心配はごもっともでありますが、しかしながら、先ほど申しましたように、後進国、たとえば韓国、台湾その他。パキスタン、インドというようなところは、近代的設備を買って彼らはやっておるわけです。労務費は日本の三分の一です。こういう人たちと対抗していくのに、古い設備を非常に大量に持っておる人たちがおって、ほんとうに対抗できるだろうかということを私どもは非常に心配しております。先ほど参考人からもお話がございましたように、加工費をわれわれたたくのじゃないかというふうにおっしゃいましたけれども、むしろたたかないで相手が強くなられたほうがわれわれとしてはいいのです。そのかわり設備近代化をやられて、これは三交代意見もありましたけれども、やはり三交代でもできればやられて——世界的にやられておるのですから、少ない人間で、しかも現に人間が足らぬために設備が動かないのですから、そういう部分も出ておりますから、そういう少ない人間でそして非常に近代化された設備で、初めのほうは金利償却がかかるけれども、あとは非常にコストが下がっていく。そして非常に競争力を持った紡績あるいは機屋が出現される。そしてわれわれメーカーと堂々と対抗していかれる人ができていくことこそがこの近代化の本法案ほんとうの目的じゃないか、こういうふうに私は考えたわけです。ですから、先ほどスクラップ化と申されますのは、要するにこれはあくまで手段でございまして、何万錘ぐらいやるかということは答申に出ておりますけれども、それがかりにできない、あるいは非常に無理してやるべきかどうか非常に問題だ。いまのような好況でしかも設備はフルに動いておる。動かないところは人が足らぬからそれが動かないのだ、あるいは設備が使えないから動かないのだ。こういうようなときに、動いておる設備までも無理に廃棄するということは実際かえってぐあい悪いのじゃないか。ですから実情に合うように、ほんとうスクラップ化していいものをスクラップ化して、そしてそのかわり早く近代化ができるようにやりたい人、やり得る人、また労務者が非常に集まる場所、そういうところへ設備をやり得るような人にやれるような体制に早く待っていくことが、やはり私はどうしても日本の紡績機屋にとってもそのほうが必要であるし、また私ども綿や糸をつくるメーカーにいたしましても、そんなふうに加工の段階の人が強力になっていただくということがかえって双方のためになる、こういうふうに考えます。
  30. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは国内においては高く、そうして外国にだけ安いという二重価格制におちいる心配はございませんか。
  31. 宮崎輝

    宮崎参考人 国内売りと国際価格は非常に差がございます。しかしながら、輸出品というのは宣伝広告費がかからぬでしょう。しかも金がすぐ入るわけです。ですから相当の値ざやがございますけれども、実際の利潤という計算になりますと、輸出品というものは相当メリットがある。もう一つは、全体の設備をフルに運転したほうが操業度が上がりますから、そのメリットがあるということでございまして、これは日本に限りません。ヨーロッパでもアメリカでも、輸出しているものと国内で売っているものとの間には値ざやがございます。これは同じです。たとえば中共にヨーロッパからたくさん出ましたけれども、あの値段なんかはヨーロッパで売っている値段より著しく少ない値段で彼らは輸出しているのです。その一つは、たとえば私の聞くところによると、農家に補助金を出して、そうして高く肥料を売ってメーカーは利潤をあげる、その力でもって中共その他に輸出しておる。これと私ども対抗していくわけですからね。いうならば国際競争力がつきませんと、相手のあることでございますから、国内価格は高いのだからその値段でしか売らぬのだと言っておったら、日本は輸出で立っておるのですから、結局輸出ができない、国自身が立たないということでございます。その輸出そのものは、さっき申しましたように宣伝広告費、そういうものは一切要りませんで、原価は案外安いのでございます。そういうことで御了承願います。
  32. 塚本三郎

    ○塚本委員 おっしゃられるように、そういうものを差し引きましても、国内と輸出のバランスがとれておればいいと思うのです。そうしてもなおかつ輸出が安くて国内が高いという状態になっておるのが今日の産業界全般の状態です。もちろん繊維だけがそれを認められないとかけしからぬというのは片手落ちだというきらいはあります。しかし私どもが最終的に大衆に向かっての政治として法律をつくります場合、国民の犠牲の上に産業が成り立つんだ、こういうふうな割り切り方でしか受け取れないという形になってしまう。そうすると、結果的に政治というものは強いものに味方をして弱いものを犠牲にするという形で受け取られてしまうわけでございます。したがって、国際的な産業の渦の中に立つのだから、業界の気持ちがわからぬわけではございません。しかし大衆を相手にして動いてまいります政治の立場からいいますると、かつては肥料がそうであり、電気産業がそうであり、最近は自動車産業がそうであり、繊維またそのような状態になったか、こういう形になっていく心配があるわけです。したがって、それはある程度避けられないとしても、宣伝費等を差し引いていくならば、そういうものを触れないでバランスのとれるように努力していただきたい。そうでなかったならば、私ども大衆の前に一部の資本家擁護の立法に協力したという汚名をそそぐことができない。ほかの業界がございますから、繊維だけそういう過酷の中に置けと申すわけではございませんけれども、私ども大衆の中に立つ政治家として、そのことを強く希望申し上げておきたいと思うわけでございます。  最後に、ここに全繊同盟のほうから「繊維工業構造改善に関する見解」というのが、皆さんへも行っていると思いますが、「構造改善実施に当たっての問題点とその解決の方策」というのが出されております。実は今度のこの法案に対しましては、業界からの強い要請によって政府から提案になったものだと思っております。しかし全繊同盟もこれには賛意を表しておいでになることは、先ほど見解が述べられました。賛意を表しつつもなお問題点と解決の方策というのが五つほどここに述べられておるわけでございます。昨日この問題等につきましては私は政府に、労働者側から見た心配について、そういうものはだいじょうぶかということの確認をとって、その点については力一ぱいがんばって期待に沿うようにすることの約束をいただいたわけでございます。しかしあくまでこれが実施にあたっては、当局以上に業界の協力がなかったならば、これが実施は無理ではなかろうか、かように思うわけでございます。したがいまして、業界のお三方の、これを実施していただくための決意と見解を、簡単でけっこうでありますから承りたいと思うわけであります。一括でけっこうでございますから。
  33. 寺田忠次

    寺田参考人 綿工連を代表しまして……。ただいままだはっきり読んでないので、これに対するはっきりした見解はありませんが、まあ大体いま感じておりますことは、協力するように努力するということにいたします。
  34. 谷口豊三郎

    谷口参考人 紡績協会といたしましては、従来全繊同盟との関係は、まあ私の見解といたしましては、比較的よく協調的に進められておるものだと思っております。それはいろいろな立場の違いから個々の問題あるいは時期等の問題につきましては、すぐにというわけにはまいらぬ点もたくさんございます。ですからその点を御了承いただきますれば、将来の方向としましては、こういうものは当然問題として出てくるものだと思いますが、そのときは、業界のそのときにおける状態あるいはそういう企業者のほうの立場もひとつ御考慮願いまして、そういうことをあわせて、できるだけこういう方面に協力していきたいという気持ちは持っております。しかし、いますぐにこれを約束するかとおっしゃられますと、私の立場としてはむずかしいのでございますが、在来の両者の立場を御認識いただきますれば、おのずから御理解願えるのじゃないかと考える次第でございます。
  35. 宮崎輝

    宮崎参考人 私も、ただいま拝見したばかりでございますので、具体的に一々これに対する意見を申し上げることはちょっと尚早かと思いますが、ただいま谷口さんがおっしゃいましたように、全繊とわれわれ繊維メーカーというものはきわめて率直に話をしております。そして、むしろ、あまりストライキをやらぬけれもど、賃金のほうはよけい高いというようなことでございまして、そういう意味においては、たとえば設備の規制の官民協調懇談会がございますが、そういう中にも全繊の代表が入っておられます。そういうことですから、われわれは、労働者の協力なくしては何にもできない。しかも今後は、なお労働力の不足するこれからのことにつきまして、これはもう何といっても労働者の協力なくしてはできませんので、具体的なやり方は、これは各業界各社別にまた違うと思いますから、ここで、この一つ一つを拾い上げてどうするのだとか、非常に具体的な提案がございますので、これ一つ一つに対してイエス・オア・ノーということを申し上げるのは、ちょっと差し控えたほうがいいと思いますけれども、精神においては、十分にわれわれは、これは全繊との間で協力ができていくのではないかと思いますので、どうかひとつそういう精神で御安心いただいて、あとはひとつ今後のわれわれの具体的な措置におまかせ願いたいと思います。
  36. 島村一郎

    島村委員長 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれで終了することにいたします。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただきまして、ありがとうございました。  参考人方々はどうぞ御退席くだすってけっこうでございます。  暫時このまま休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————    午後零時三十四分開議
  37. 島村一郎

    島村委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法案を議題として、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。武藤嘉文君。
  38. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 あとで大臣がお見えになると承っておりますので、一問だけ大臣に対する御質問を留保させていただきまして、繊維局長にまず伺いたいと思います。  今度のこの繊維構造改善措置法案の一番柱になっておると思われます紡機の過剰設備の買い上げ、これにつきましては、最近綿糸の相場が非常に高くなっておりまして、なかなか思うようにいかないのではないかというようなうわさもいろいろ承っておりますが、その点につきまして政府のお考え方と申しますか、ぜひともこれだけは買い上げなければいけないんだという考え方、並びにその見通しと申しますか、確信のほどを承りたいと思います。
  39. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答え申し上げます。いままで紡績業につきましては、戦後数次にわたりまして立法も行なわれ、構造改革、体質改善が行なわれたのでございますが、これのうまくいきませんでした一つの原因は、過剰設備処理が叫ばれながら、しかもこれがうまく実行されなかったというところにあります。今回は業界から非常に強い意思の表明がございまして、自分らは確実にやるからということがもとになっております。と申しますのは、一時的に若干綿糸が直りましても、構造的には非常な過剰でございます。特に後進国の追い上げ等があります場合には、陳腐化された設備廃棄いたしまして、新鋭設備で高能率操業を行なうという必要がございますので、業界としては一時的な相場の高騰にもかかわらず、絶対にこれはやりますということで、今回の法案の骨子ができたわけでございます。その実態は私たちも同様に判断いたしますので、一年以内に確実に答申の線に沿いました過剰設備処理をやりたいというふうに考えております。
  40. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 先ほど参考人のお話をいろいろ承っておりましても、そのニュアンスの中に、ある方によれば、案外そういう処理するものが出てこなかった場合にはどうするのだというような言い方もございましたし、実際問題といたしまして、いま局長のおっしゃいますように、非常に古い機械がある業界があることは確かであると思います。しかしながら、いわゆる登録区分の第一区分にございます中にも、たとえば合繊紡あたりにおいては、非常に紡機が不足しておるのだというような声さえ聞かれるわけでございます。そういう意味からいたしまして、この廃棄処分というか、買い上げをするのは綿スフ紡績だけに限るというようなことは一体できないのかどうか、その点について承りたいと思います。
  41. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、綿スフ合繊紡績の中で、概して申しますれば、合繊紡の紡機は不足しがちでございますし、しかも現に設置されているものは新鋭紡機でございます。さらに相当部分が綿スフ紡機から合繊紡機に転換されましたし、今後も転換されるという見通しでございます。したがいまして、過剰設備を問題にいたします場合に、純粋に合繊紡のみに使われます設備、これを廃棄する必要はもちろんないわけであります。ただ、ここで問題がございますのは、一つは、法律的な点でございまして、第一区分の中に綿もスフも合繊の紡機が全部入っているという点が一つ。それから第二には綿スフ紡機と合繊紡機との間には流通、交流と申しますか、これが可能な点があるわけであります。したがいまして、最初に申し上げましたように、合繊紡として外形的にはっきりわかっておるもの、すなわちトウ式でございますとか梳毛式でございますとか、こういう式の合繊のみに使われる紡機につきましては、今回の対象から除外をしたいというふうに考えております。
  42. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 いま梳毛式やトウ式はこれでいい、こういうお話を承りましたのですが、それ以外にいまお話のございましたように、非常に似通っているというか、同じように共同で使えるというものが梳毛式、トウ式以外にあるわけでございますが、そういうものを現実に——しかし合繊以外には糸をひいていないのだというものは、これは見ていただければはっきりわかるわけでございますけれども、しかもそういうものはわりあい私は新しいものが多いのじゃないかと思うのです。こういう新しいものでしかもそういうように現実に合繊の糸しかひいていないのだというものにつきましては、同じように除外するというわけにはいかないのか、その点について承りたいと思います。
  43. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 現実に合繊をひいております紡機でございましても、もしこれがすぐまた綿スフ紡機に変えられ得るというふうなもの、これは除外するわけにはいかないと思うわけでございます。したがいましてその点は梳毛式、トウ式だけに限りませず、現実に客観的に合繊糸のみをひくものであり、容易に転換ができないというものにつきましては除外する必要があるというふうに考えます。
  44. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 いまの点もう少し、こだわって申しわけございませんが、確かに見分けがつかないので、また綿スフのほうにいつでも転用ができるのだということがよくわかりまして、そういうものまで規制の対象外にするということはたいへんむずかしいとは思いますけれども、しかしいまの業界、これは将来のことはわかりませんが、いまの業界のいろいろな動きから私ども想像いたしますと、現在合繊に使っているものを綿スフのほうに転用するということはあり得ないと私は想像するわけでございますが、そういう意味において——御答弁はけっこうでございますけれども、でき得ればそういうものもひとつ行政面において優遇と申しますか、いわゆるスクラップのほうとは別にするということ、そういうことをしていただきたいということだけをお願い申し上げておきまして、次に移りたいと思います。  いまいろいろ梳毛式、トウ式、あるいはそれに準じて、非常に共通でないもの、共用できないもの、こういうものは別個にしていただけるというお話でございますが、別個にしていただけるというか、そういう考え方だということでございますが、そういう除外をされたもの、これは過剰設備処理には無関係になるわけでございます。そうなった場合には、そういう設備を持っておる業者は納付金を納める義務はないのかどうか、その辺を承りたいと思います。
  45. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 その義務はございません。
  46. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 紡績業構造改善について、内外のいろいろな情勢から今度の問題が出てきたと思うのでございますが、しかしそういうスクラップを、過剰設備を買い上げていくということも今度の場合はやむを得ない措置であり、従来から言われていたものがまだ不十分であったという点からいっても、この際やらなければいけないということもわかりますけれども、しかしそれよりももっと本質的なものは、やはりこの設備近代化をしていく、あるいは企業の適正規模化をはかっていくというほうが重点に置いていかれるべきではなかろうか。いわゆるスクラップを買い上げるというような姿勢は、どちらかといえば前向きではなくてうしろ向きではないか。やはり近代化を進める、あるいは適正規模化にひとつ何とか一緒になってやっていただく、こういうようなことをやっていかなければいけないと思いますけれども、そういう点につきましては、今度の法案には、具体的には最初の目的のところにはございましたけれども、そのほかには一向に見当たらないわけでございます。承るところによりますと、大体開銀の融資で、その分に対しては四十五億円のワクがとれた、こういうことも聞いておりますけれども、一体、現在の業界を考えた場合には、もっとその融資のワクを多くすべきではなかろうか。四十五億ではまことに不十分ではないかと思いますけれども、その点について承りたいことと、それに関連いたしまして、その金利は一体幾らになりましたのか承りたいと思うのです。
  47. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生御指摘のとおり、構造改革の目的は設備近代化を中核といたします日本の紡績業の体質改善でございまして、過剰設備処理は、そこに至ります道程と申しますか手段であるというふうにわれわれ位置づけをいたしております。近代化投資、規模適正化等という、いわゆる構造改善の本質につきまして、条文上あまり規定がないじゃないかという御質問に対しましては、これは規制的なものではございませんので、ただ政府に財政面の援助をする義務を与える、税制面についても処置をする、こういうふうな規定がこの法律及び関連法律にあるわけでございます。  なお、金額でございますが、御指摘のように本年度開銀で四十五億のワクを設けております。これは当然半額ないし三分の二の協調融資がつくわけでございますので、その程度の金額でもなおかつ不十分であるという御指摘は、われわれも重々そう思うのでございますが、財政投融資全般のワクの関係上、せっかく努力いたしましたが、この程度に本年は落ちついたわけでございます。ただ財政当局にも、これは初年度であって、次年度以降については十分配慮してもらうようにという強い要請をしております。金利につきましては八・二%でございます。
  48. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 私どもも、最初金利につきましては特利の六分五厘を融資の金利としてやるのだというような話も実は聞いておりましたが、その辺はどうしてそういうことになりましたのか、承れれば承りたいと思います。
  49. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 六分五厘の特定金利の実現ははかるべくせっかく努力いたしたのでございますけれども、遺憾ながら一般金利に落ちついたわけでございます。
  50. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 ことしはそういうことであったかと思いますけれども、来年は私どもも大いに応援をいたしますので、ぜひとも融資ワクの拡大並びにことし実現を見なかった特利を、ひとつ日の目を見るように御努力いただきたいことをお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、紡績関係を終わりまして、織布の関係について、これは後ほど坂本委員からも御質問がございますので、簡単にお話を承りたいと思います。  先ほども参考人の御意見にもございましたように、織布業というものについて今回のような措置がとられたということは、私はこり法案においては、正直いって、どちらかといえば紡績関係よりも織布業については心から賛意を表しておるものでございますけれども、ただ実際の問題といたしまして、産地の商工組合が中心になって、今後織布業設備近代化あるいは過剰設備処理あるいは企業の集約化というようなことを進められるわけでございますけれども、実際織布業をやっておる人たちというものは、ほとんど家内労働的な零細企業が大半でございまして、そういう人たちに企業の集約化をしなければいけないとかいってみましても、実際自分の家の中で機をやっているということからいきますと、なかなか一緒になって仕事をやろうという点に気持ちがいかないのじゃないか、そういうことを私ども心配するのでございます。しかし、そういうことのままではこの法案は一向に実効があがらないと思いますが、その点について、いろいろ金融面あるいは税制面で優遇措置をお考えになっておるように聞いておりますが、それにつきましての具体的な施策につきましてひとつ承りたいと思います。
  51. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 織布業は非常に規模が小さい方が大部分である、これは先刻参考人の話にも出ておりましたが、世界的にそうかと申しますと、そうじゃありませんで、世界の織布業、特に綿スフ布業は相当大規模生産になっており、われわれ考えましたところでは、国際競争力を強化していきますためには、すなわち日本経済が封鎖的な状態で国内の需要を国内生産だけでまかなうというときならともかく、今後完全に外国の布と輸出市場においてまた国内市場において競争をいたしますためには、どうしても適正生産規模まで持っていかなければならない。すなわち簡単に申しますと、小さな機屋さんが現在のままで営業を継続するということが国際競争力の観点からいって困難になるという心配がありますのが今回の産地別の構造対策を立案いたしました強い動機でございます。産地別に構造対策をつくり変えることによりまして、当然これは組合が中心になるわけでございますが、中央で私たちが一本でいろいろ指導をし啓蒙いたしますよりも、産地産地の特性に応じました産地のリーダーの方々が、組合員に対しまして、これからの織布業、特に国際競争力を念頭に置いた場合の零細織布業のあり方を指導していただくということが必要であるというのが今回の産地別組合主義の重要な動機になっております。税制面につきましては、組合中心でございますので、組合の基礎を強めなければなりませんために、組合におきましては準備金を設け、この準備金を組合員は納付金として納めるわけでございますけれども、これには税制上損金算入の措置を講じてございます。それから金融上でございますが、今回の組合主義の一つの特質は、近代化設備を従来は、組合員と申しますか生産業者が国から近代化資金等の融資を受け、自分で買ったわけでございますけれども、今回は零細な人たちのことを考えますと、それもなかなかむずかしい場合が多いだろうということで、組合単位でもって近代化設備を入れる、組合からリースのかっこうで組合員が借りるという形式をとります。これによりまして零細な機屋さんも近代化設備を入れるということが従来以上に容易になるというふうに考えた次第でございます。
  52. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 いまお話を承りますと、外国においては相当織布業規模が大きいというお話でございますけれども、大体日本の規模と向こうの規模と比べて、たとえば向こうはそういう家内労働的にはやっていないのか。その辺ひとつ特に先進国における織布業のそういう例を承れれば承っておきたいと思います。
  53. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 特に先進国を申し上げますと、綿織物で企業単位で百台未満の紡機を持っております企業、日本におきましては織布業、これは一九六四年の統計でございますけれども、九五九%、こうなっております。すなわち百台以上と申しますのはわずか四・一%しかないという状況でございますけれども、フランスにおきましては百台未満が四一%、それから英国は三三・六%、西独に至りましては百台未満はわずか六%という数字が出ております。
  54. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 いろいろ承りましたけれども、今度の対象外になっておるもので、繊維業界の中にも、たとえば毛の関係とか、あるいは撚糸製造業とか、染色整理業とか、あるいは繊維の二次加工業とかいろいろまだあるわけでございます。これは近促の対象にはなっておりますけれども、やはり今度の法案の対象外になっておるものも近代化促進法の適用だけでなくて、やはり一つ繊維の新しい近代化に沿って将来構造対策が当然なされていかなければ、繊維全体の国際競争力を高めるということにはならないのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。特にこの点については、私ども同じ地元におります海部代議士も非常に心配をしておられたわけでございますけれども、その点については今後どんな方法で進めようとしておられるのか、承れれば承りたいと思います。
  55. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のとおりほんとうにそうでございまして、従来の繊維政策が法律紡績だけを対象にいたしましたのを、今回まず織布だけでも取り上げたということは、海外に出てまいりますのは綿糸ではございませんで綿布で出てまいるからであります。さらに今後後進国との競争関係を考えました場合には、高級品と申しますかバラエティーに富んだ進歩した製品を出さなければいかぬ。しかもそれがなるべく完成品で出していかなければいかぬという場合には、撚糸でございますとかメリヤスでございますとか、特に染色整理でございますとか、さらにできますれば縫製加工、こういうところの業界近代化ができまして初めて一貫した日本の繊維産業近代化国際競争力が発揮できると思います。したがいまして、われわれといたしましては、今回の織布の対策を一つの突破口にいたしまして、もしこれが幸いにして功を奏しますならば、次々に他の重要な繊維の業種に及ぼしてまいりたいと思う次第でございますが、ただここでわれわれも非常に勉強しなければならない、また業界も御努力願わなければならないと思いますのは、構造対策として国が金をつけるのは、これはときによれば比較的やさしいかもしれないけれども、要は業界がどういうふうな責任体制を持ち、どういう知恵を出して御自分の業種の構造対策をおやりになるかということだと思います。一例をあげましても、近代化設備を入れますればこれは生産過剰になります。この過剰分をどうして除去できるかということはたいへんなことであります。紡績や綿、織布ですらすでに相当な困難があるということがあります。それ以外に流通部門との結びつきは一体どうしたらいいのかというふうな点も業種業種で違いますので、私考えておりますのは、いろいろな業種を取り上げなければ一貫した日本の繊維の競争力はできない。しかしそれをやるのが業界でございますので、私たちもできるだけ努力し勉強いたしますが、業界の御努力とも相またなければなかなか問題はむずかしい、こう思う次第でございます。
  56. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 いまのに関連いたしまして、日本の繊維を考えますと、原料が、毛にいたしましても綿にいたしましても、合繊は別でございまするが、ほとんど海外に依存しておるわけでございます。そしていろいろ綿製品なり毛製品でまた外国へ出さなければならない、国際競争力を高めて輸出をしなければいけない。こういう点からいきまして、綿花一こうりをたとえば一といたしますと、それから綿糸生産され、それから今度は綿糸から織物になり、それから織物というか織布をやりまして、そしていわゆる反物になったものを、今度は二次加工であるいはワイシャツなりあるいは婦人もののブラウスなりそういうものに加工されて、そして製品として出されるわけでございますけれども、その綿花一こうりを一とした場合には、それによって生まれてくるそういう綿製品は、大体何倍くらいの価値になって生まれてくるものなのか、その辺を承れれば承りたいと思います。
  57. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 綿花一こうりが、綿製品といたしました場合にどの程度の商品価値を持ち得るかという点、実は私どものほうでまだ十分な勉強ができておりませんけれども、逆に綿製品のほうからさかのぼりまして、どの程度原料がかかっておるかという点、これはスポットの勉強でございますけれども、ワイシャツの例、これは四十番手の糸を使用しました小売り価格八百円の例でございますが、本年初めに調べましたもので、これの縫製業者の売り値が四百六十円、したがいまして小売り価格の六割程度と存じます。これの製造原価が三百九十円、したがいまして縫製業者の手取り七十円で、これに要しました原反でございますが、この原反は百八十円でございますけれども、当然この百八十円に対しましては染色整理がかかっておるわけでございます。糸になりますと、その糸の値段が百十円ということでございまして、したがいまして、結論的には小売り価格八百円のワイシャツに要しました糸価は百十円ということで、小売り価格の約一割五分程度。しかし御承知のとおり、非常に縫製品は種々雑多でございますし、加工一つによってもうんと値段が変わってまいりますので、非常に不十分な答弁であります。
  58. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 逆算して大体御説明いただきましたのでわかるのでございますが、私ども実際繊維業界の人たちとおつき合いしておりますと、糸屋さん、機屋さんあるいはいまの二次加工の方、非常にたくさんございまして、どうもその辺の流通部門と申しますか、完全な流通部門ではないわけですが、いわゆる一次加工を終わってから最後の製品までの過程というものは非常に複雑だと思うのでございます。そういう点の合理化もやはり進めてまいりませんことには、先ほど私の御質問にも関連いたしますけれども、そういう点で先ほどお願いいたしましたように、ぜひともその辺の合理化をはかっていただきたいということを同時に、きのう社会党の加藤さんからもお話が出ておりましたが、そういうまだまだ現在において非常に近代化がおくれておるために、けっこう糸を安く買ってでも逆に最終製品価格は高くなっておるという点を考えた場合には、いろいろと各外国の、アメリカなどの貿易制限も非常に強いわけでございますけれども、将来こういう面の近代化がどんどん進んでくればもっともっとコストとしては安くつくと思いますけれども、いまのような状態においては、やはりあまり貿易制限というものが強いのは困るので、そういう点について貿易制限の緩和というものは当然もっと努力をしていただくべきではなかろうか、こういうふうに考えております。きょうは外務省の方もいらっしゃいませんのでそういうことを通産省としてもよくお考えをいただきまして、外務省ともお話し合いの上、御努力願いたいことをお願い申し上げておきます。  とにかくこういうことで、抜本的な対策と申しますか、必ずしも私は前向きだとはいえませんけれども、とにかくこういう形でもやって、いままでいろいろとやってきたけれども実現を見なかった過剰設備処理、特に古いものはすべてこの際払拭をしようということをやられるわけでございまして、そういう点ではこの法律がそのままほんとう法案にございます内容のままに実現をされれば、こんなけっこうなことはないと思いますけれども、しかしこの運用いかんでは、先ほどからいろいろ申し上げておりますように、必ずしも過剰設備が十分処理されなかったとか、あるいはそのために逆に今度は一つの紡機についての権利化が固定してしまうとか、いろいろ心配される点もあるわけでございます。そういう点においてこの際行政当局の、これは承ると、先ほど塚本委員からも御指摘があったかのようでございますけれども、私欠席いたしておりまして申しわけないのですが、その辺ひとつ決意のほどを私に対しても承らせていただきたいと思います。
  59. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 今回の法案は、紡績業におきます法案は、従来数次にわたりまして改正を重ねました綿紡、スフ紡績に対しましてこれを補完をするということ、補完をしなければならないというように至ったことについては通産省の至らなかった点が多々あるわけであります。今後十分その点を考えまして、いわゆる新法体制の完成まで持ってまいり、日本の紡績業国際競争力強化を実現いたしたいと覚悟している次第でございます。  それから織物業に対しましては、今回初めて法律の面に取り上げたわけでございますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、繊維産業の中の大黒柱であり、特に日本の中小企業の中の最も代表的な業種でございます織布業の対策、これの整備は他の中小企業業種に対します試金石になるわけでございますので、現に織布業が非常にあぶない地位に立っておるということ、したがって現在やらぬことにはどうにもならぬということのほかに、他の中小企業業種に対します対策の試金石という点も十二分に考えまして、せっかく努力をしてまいりたいというふうに考える次第でございます。
  60. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 いまいろいろ決意も承りましたので、この問題につきましては一応これで質問を終わらせていただきますが、最後に一つだけ、繊維に関連いたしまして、過去において海部代議士が、これは何か昭和三十九年の新法の審議の際だそうでございますが、糸価の安定をぜひはかるべきではないか、こういう質問に対して、もちろんそのとおりでございますから何とか検討いたします、こういうお答えがあったそうでございますが、どんな形で現在糸価の安定ということに対して行政当局が御努力になっておられますが、その点について承りたいと思います。
  61. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 申すまでもなく、価格は需要とそれに対します適正なる生産によりまして形成をされるわけでございますが、この生産面におきまして、一貫して綿スフ紡績に対しまして通産省がいわゆる旧法といわれておりますものから今日まで努力をいたしましたのは、需給を安定させて糸の値段を安定させようという努力であったわけでございます。すなわち生産能力のほうから、需要にふさわしい生産量を確保しよう、これによって糸価を安定せしめようと努力をやったわけでございますけれども、遺憾ながら必ずしも十分その努力が奏功していない状況でございます。その一つの理由は、ただいま御指摘もございましたが、流通面であり、かつまた業界のビヘービアが、戦争中、戦後の物資不足のときを受けまして、つくれば売れるというふうなビヘービアがありましたために、不況になればなるほど過剰生産になる、こういうふうな状況であったわけであります。この辺のところは、いわゆる新法を契機にいたしまして、自由経済に持ち込むことにより、すなわち需要にふさわしい生産を維持する、需要にふさわしい生産体制、需要に敏感に反応する生産体制をつくり上げていくということが、新法を契機にして政策転換が行なわれたわけでございまするが、この努力を重ねることによりまして、硬直した生産体制から柔軟に需要に応ずる生産体制をつくり上げるというふうな努力をいたしますことによりまして、糸価の安定をはかってまいりたいというふうに考える次第でございます。
  62. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 大臣がお見えになりましたので、一つだけ御質問を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  いろいろと具体的なことはいま局長から承りましたので、根本的な一つの考え方として私承りたいと思いますのは、現在日本の経済政策というのは、あくまで自由主義経済の原則に立って進められておるわけでございます。そういう面からいたしまして、自由主義経済の立場からいいますと、多少私はこの法律の趣旨というものに対しまして疑問を持つものでございます。もちろん自由主義経済といいましても、たいへん国民経済に大きな阻害になるような場合とか、あるいは一般消費者に非常に迷惑のかかるような場合というようなものは防がなければなりませんけれども、はたして現在、特に先ほどお答えの中で合繊なんかはある程度別だということを承りましたので、合繊は別といたしましても、綿紡自体にいたしましても、これほどまでのことをやらなければいけないのかどうか。それから、こういう法案が出てまいりますと、今後他の業界に影響を及ぼさないかどうか。また同じように近代化のためには過剰な設備処理をしなければいけないということにおいて、他の業界から出てくるようなことがないのか。そういう場合には通産省としてはやはり取り上げていかれるのかどうか、その辺をひとつ承りたいと思います。
  63. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 まず、紡績業繊維産業というものが日本の産業の上において重要な地位を占めておるということについては、すでに政府委員からお答えがあったと思いますが、また今日までの日本の産業は、ことに明治維新以後の日本の産業というものは繊維産業中心になって発展してきたということも御存じだと思いますが、そこで日本の紡績業というものは純然たる自由主義の立場をとって最近まで発達してきたものでありまして、また彼ら自身も政府にたよらずにやってきたということを誇りとしておったと思うのであります。しかし今日の情勢になってみると、昔のような自由主義的な考え方で産業というものの発展をはかり得ないという情勢に経済全体が変わってきた、こう私は考えておるのでありまして、元来紡績業者からいえば、こういうような法律を政府につくってくれというようなことは、彼らとしてはいままでであれば言い得ないし、また言うことを欲しなかった人々でありますが、こういうような法律をつくってほしいというようなことを希望してきたということは、彼ら自身も、いままでのような自由主義の立場をとってはだめだということを認識してきたと思うのであります。  そこで、どうしてしからば今度のような特別措置をとるに至ったかということにつきましては、いままで政府委員からお答えがあったと思いますが、やはり対外的な関係、開発途上の国において、原料並びに労賃の安いところにおいて綿布をつくる、あるいは綿糸をつくるというようなことが、日本の繊維産業紡績業に対する非常な圧迫になっておる。それからまた一方、いままで日本にいじめられておった、たとえば英国などが、思い切った構造改善をやってきたということでありますので、したがって日本の繊維産業というものはいまはさみ打ちになっておると思うのであります。そこで、自分らの力で——今日までいろいろ日本の繊維に対してとってきた政策というものは、大体自主調整と申しますか、自主的にやらせるという方針をとってきたのでありますが、それではいままで目的を達し得なかったので、そこで政府の力も借りて繊維産業の根本的な構造改善をやりたいということから出てきた問題であると思うのであります。また政府もこの繊維産業というものが、今日におきましても輸出の約二割を占めておるのでありますから、重要な日本における産業でございますし、これを輸出産業として今後も伸ばしていきたい、こう考えておりますし、また、人口がふえるに従って繊維製品の需要もまた増加することでありますから、みすみす繊維産業が衰微するということを政府自身も見ておれない。またこの繊維産業自体は、私は日本人には向く産業だと考えておるのでありますから、したがって、この際繊維産業に活を入れさえすれば、繊維産業というものは今後日本の重要産業としてりっぱに育っていくという考えを私はいたしております。したがいまして、今回のようなこういう特別措置をとって、そして従来のような重要性を帯びた繊維産業として発展させたいということから、こういう特別な措置をとった次第であります。
  64. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 よくわかりました。  最後に、私がお願いいたしましたほかの企業のことをひとつ……。
  65. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 他の産業にもこういうような場合があったらという御質問でありますが、他の産業におきましても、重要な産業で、もしほんとうに彼らの自力でどうもできないという場合には、これはやはり政府がそれに対して助成すべきだ、こう考えております。
  66. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 これで終わります。
  67. 島村一郎

    島村委員長 坂本三十次君。
  68. 坂本三十次

    ○坂本委員 私は、今度の繊維構造改革という政策が生まれたというその紡績繊維、これに一丸とした政策、構造改革をやらなければならないという施策はまことに当を得たものだと思っておるわけでありまするが、ここでいままでのこの繊維政策というものを顧みましたるときに、どうもいままでの三十一年、三十九年という繊維旧法、新法というものは、紡績だけに対象をしぼってきたような感がございます。それで、どういうわけでいままで紡績だけにたよってきておったのか。ここで根本的にいままでの繊維政策の欠陥ほんとうに反省し認識をせられた上で、今度はひとつ繊維にうんと力を入れるんだという、ほんとうの反省と認識の上に立った十分な自信のある施策を今度はひとつ持っていただきたいと思うのですが、その点についての根本的な熱意という覚悟をひとつもう一度ただしてみたい、こういうふうなつもりでございます。車の両輪でありまして、政治資金規正法でよく出てきまするけれども、車の両輪、紡績と織布、この両面について、ほんとうにこれはやっていかなければならないというような政策、これは大きな転換であろうと思われるわけでありまするが、これについての根本的な認識と熱意をひとつもう一度承ってみたい、こういうふうに思うのでございます。紡績だけやっておればいいというのでなく、糸で輸出して外貨獲得はできないのでありますから、そこで織布も力を入れようというお考えになられたということは賛意を表するわけでありますが、その政策の大きな転換、前進の基礎になる熱意というか、自信のほどをひとつもう一度大臣から承りたいと思います。
  69. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 まず、紡績並びに織布業というものが繊維産業の基本であるということは、御存じのとおりと思うのであります。そこで、日本のいまの繊維産業が従前のような重要性を帯びていないということに対して、やはりその繊維産業の基本である紡績と織布というものとにはまず手を染めなければならぬということから、この繊維産業全体の活入れのために紡績業並びに織布業最初に着手したのであります。  なお、この紡績業並びに織布業というもの対して、なぜ特に早くこの問題にタッチしたかといえば、一つは対外的な関係でありまして、外国の事情によって、日本の、ことに紡績、織布業が圧迫されるような危険な状態にあるという情勢からして、これを何とかして打開しなければならぬということから、紡績並びに織布業を考えたのであります。糸さえつくっておればというような御意見があるかもしれませんが、糸は大体後進国において容易につくることができるのでありますが、織布であれば、これはより高級的な織布に変えることができますからして、したがいまして、いままでよりも高級な織布をつくって、そうして海外へ輸出するということもあわせて考えていかなければならぬということからして、紡績と織布というものをあわせて考えた次第であります。
  70. 坂本三十次

    ○坂本委員 いままで紡績だけではとてもだめだったから、今度はひとつ織布も入れて、車の両輪でほんとうにやろう、こういう御熱意でございます。けっこうなことであると思います。  そこで、以下二、三の点につきまして、織布のほうについて御質問を申し上げたいと思います。  ひとつ局長にお尋ねをいたしますが、織布の構造改善、先ほども社会党系の日本繊維労働組合の方も御心配になっておられましたけれども、五十台とか、特に三十台以下というような零細なほうは、ほうっておくと家内工業に逃げてしまって、近代化構造改善もできないのではないかという御心配をしておられた。全くごもっともでございます。それで、私も適正規模ということにつきまして、今後の構造改革の運営上について関心を持っておる者でありますが、種類によってもいろいろと違いましょうけれども、大体適正規模というものは、紡績ではこの種類のものならば何錘、それから織布ではこういう種類のものならば何台という原則的な指導のめどというものをお持ちであるかどうか承りたいと思います。
  71. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 適正規模というのは、商品によって、つまり織ります物によって非常に違うと思うのであります。ただ、たとえば百台という規模がなければ近代設備であるジェットルームが入らないという場合に、御承知のようにジェットルームでございますと、これは従来の自動織機の二倍半の能率があるというふうに聞いておりますけれども、これは百台単位は要するということもまた聞いておるわけであります。こういうふうな織機を入れますためには、どうしてもやはり百台という単位にまとまらないと入れられなということ、したがって量産の合繊布につきましては、一つのめどになるのではなかろうか、それから先染めの布、チェックでございますとか、いろいろの模様を糸で染めておきまして、模様のある布を織り出します先染め品におきましては、さっき申し上げましたタフタのような、ジェットルームあたりで大量に織るというものではございませんで、製品の取引されます範囲も比較的小さいものではございますけれども、しかし十分に労働者の能率を考えますと、先染め品につきましても四十台程度はまとめる必要があるのではないかというふうに考えます。これは糸の質によりまして、すなわち、綿糸であるか、合繊糸であるか、ないしはその織られます布によりまして、いわゆる適正規模というものは非常に差があると思います。
  72. 坂本三十次

    ○坂本委員 ただいま適正規模の大体のめどをお話しになられましたけれども、この適正規模をまとめるときは、やはりグルーピングする場合は、小なりといえども一城のあるじでありますから、なかなか指導とかPRの面が非常にむずかしいと思うのですが、この点について自信がおありでありましょうか。
  73. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私ども常々申し上げておりますように、この構造改善対策の主体は業界であります。と申しますのは、私たちがいかに一生懸命になりましても、おやりになるのはまた業界でございますし、さらにまた、政府で考えますくらいの知恵では、このきびしい競争場裏は乗り切っていけない。御自分の知恵でもって考えておいでにならなければいけない。それをわれわれが御援助申し上げるというかっこうにならざるを得ないと思うわけでございますけれども、ある規模以上の方におかれましては、比較的これらの世界の情勢、現在の日本の織布業の置かれております危機の状態、危機感、こういうものは的確につかんでおられますけれども規模の小さな方において、ときによればそういう認識が十分そこまで行き渡っていないという方々もあるかもしれません。一番大事なのはその認識だと思います。現在の危機感と、それからいわゆる国際競争力を得るためにもコストはどこまで下げなければいけないかという面、こういう面につきまして、この零細な方々に対する指導をわれわれは一生懸命やりますけれども、それとともに産地組合の指導者の方々がその点の指導を積極的におやりになって、産地ぐるみで再び栄えていくということを今回の計画は期待をしておる次第でございます。
  74. 坂本三十次

    ○坂本委員 ただいま、その産地ぐるみで自主的に業界が立ち上がらなければ、政府だけの知恵ではとても及ばぬ、それはそのとおりでございましょう。しかし、この中小企業施策の全体をながめてみますると、ただいま大臣がおっしゃいましたように、業界だけの力ではとてもこれから国際競争に勝って自立できる体制ではないという政策の大きな認識がございました。私はここでひとつ、大臣がちょうどおいでになりまするから、ちと飛躍をいたすかもしれませんがお伺いしたいのは、今度のこの構造改善というものは繊維だけではなしに、将来の中小企業対策のパイロットとしてチャンピオンとして登場したものと私は思う。そういう意味におきまして、この中小企業に対する、まだまだひよわい体質である、過当競争に悩んでおる、こういう中小企業全体に対してもう少し政治が力を入れなければならないんじゃないか、こう思うわけでございます。そこで私は、ここに一案といたしまして、いままでよくいわれておることでありまするけれども中小企業従業員の総数は二千四百万人に達する、二千四百万でございまするから日本総人口の四分の一であります。これに対してもっと強力な政治的な発言でバックアップするというような意味で、ひとつ中小企業省を設置するというようなお考えはございませんか。承りますると、ずいぶん懸案になっておるそうでありまするが、これがすぐさまできない場合は、せめて中小企業庁に専任の国務大臣を置いて、ひとつ政治的な強い発言力をもって中小企業にも応援をするというようなお考えはありませんですか。北海道開発庁担当という大臣もおります。北海道には五百十七万の人がおいでになるそうです。二千四百万のほうもお忘れなく、ひとっこれに対して政治の強いあと押しが要るのではないかというふうに思うのですが、せめて庁の専任大臣くらいは置いたらいかがか。これはひとつ通産大臣、いかがでございますか。
  75. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 中小企業省の問題はきのうも御質問がありまして、きのう私はお答えをしておいたのでありますが、実は私がかつて自民党の中小企業議員連盟の代表委員をしておったときにも、中小企業省を設けたらどうだということを提唱した一人であります。私の率直な考え方では、通産行政というものは大きく分ければ中小企業対策と貿易対策であるわけです。こういうように日本は貿易ということで国を立てなければならぬ。一方においては中小企業者が商工業者の大部分を占めておるのでございまするからして、したがって、中小企業者に対する特別な対策を必要とするからまた特別の省も必要でないかというようなこともかつて私も考えておったことがあるし、そういうことを発表したこともあるのであります。そこで、実際に通産省に入ってみて、いろいろの行政を見てみますと、この中小企業省は通産省だけで解決できない、これは農林省、厚生省などもあわせて考えなければならぬということで、日本の政府機関をすべて総解け合いして、そして再編成するというくらいな考えでなければ中小企業省を設けるというようなことはとても——よしや設けても実効はあがらないんじゃないかということ。たとえば農林省関係で申し上げれば、あるいは卸売り市場、小売り市場というようなもの、これは農林省関係だ、あるいは農協の問題、そういうようなことを考えてみると、とにかく行政機構を総解け合いして、そしてまたこれを再編成するというくらいなことで考えていかなければ、中小企業省を設けるというようなことは言うべくして行なわれないじゃないかと今日では私痛感いたしておるのであります。したがいまして、中小企業省を設けるということは、佐藤総理も設ける意思がないということを本会議で発表しましたが、私も現時点においては中小企業省を設けるということを言い出す元気はございません。が、しかし、中小企業に対する熱意というものは、これはもう昔と同じように変わらないのでありまして、したがって、今回の中小企業に対するいろいろな対策、たとえば中小企業振興事業団を設けるというようなこと等については、何とかして中小企業の振興をはかりたいということでこの点を考えておるのでありまして、それによって中小企業の振興をはかりたいし、いつかも申し上げましたとおり、私として、中小企業の問題がもう日本では消えるような世の中にしたいというのが私どものビジョンであります。外国においては中小企業という問題はそれほど日本のように重要視をされてないのでありまして、要はやはり大企業中小企業との所得の格差をなくするということであります。そういう点において、いろいろなあの手この手の保護策を講じて、中小企業の振興をはかって、そして中小企業問題というものがもう論争の余地がないようにしたいというのが念願でありますからして、そういう意味において皆さん方の御協力を特にお願い申し上げたいと思う次第であります。
  76. 坂本三十次

    ○坂本委員 中小企業省はなかなか各省全般にわたるもので、解け合って一つにまとめなければいかぬというので、たいへんむずかしい。一番むずかしいものは役所のセクショナリズムであろうと私は思いますけれども、これはひとつ提唱者であられる菅野大臣でありますから、初心忘るべからずということで今後ともひとつ御努力を願いたと思うわけでございますが、私の申し上げた、いますぐ中小企業省ができなかったら、中小企業庁に専任の国務大臣を置いて中小企業に対してバックアップするというお考えはいかがでございますか。国務大臣のお一人としていかがでございますか。
  77. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 もともと中小企業庁というものができ上がっておったのでありますが、いま坂本委員の言われることも一つの案と思います。で、政府がより多く中小企業の問題に熱意を示すという意味において、中小企業庁を中小企業省にするということも一つの案と思いますが、もともと中小企業庁であったと私は記憶いたしておるのでありまして、私はいつも申し上げることですが、問題は、制度よりも人が問題であって、やはり中小企業庁であっても、熱心な長官がおれば一生懸命に中小企業の問題をやるということになるのでありますからして、問題はやはり人、人が問題だと思うのであります。幸いいまの通産省の中小企業庁の影山長官は非常にこの点において熱意を持ってやっておりますから、私はこの中小企業の問題については、漸次曙光を見るのではないか、こう考えておる次第でございます。
  78. 坂本三十次

    ○坂本委員 いまの中小企業庁のスタッフは、私がこの前申し上げたように、二百人で二千万の人を相手にしているのですから、一人十万人を対象にしてがんばっている。大いに健闘しておることは認めるわけでありますけれども、非常にスタッフは優秀でありまするが、やはり役人が長になるよりは専任の政治家が大臣になるくらいに、ひとつ力を入れてほしい。これはもうひとしく願うところでございます。北海道に、さっき申したように、五百万の人がおる。それに対して、北海道の開発に力を入れて国務大臣が担当しておる。けっこうなことであります。今度はひとつ全国中小企業二千四百万に対しても、やはり専任大臣がおって、発言権をうんと強めて、大企業からのしわ寄せをなくし、格差を是正するという方向に、これはぜひ今後御努力お願い申し上げたいと思います。ここでいまこういうことを言うておっても、とてもおさまりませんから、それでは次の質問に移らしていただきます。  次は、局長がおいでになりませんから、参事官にお尋ねをいたしまするが、前回の私の質問におきまして、構造改革を進めていくときには、ある程度の適正規模以上の中堅企業は、この構造改革を待望しておりますし、理解をいたしております。これはうまく構革に乗っていくと思うわけでございますけれども、先ほども参考人からの御意見がありましたように、五十台以下、三十台以下というこういう人たちに対して、これをグルーピングして構革にのせるという努力をされるのかどうか。それから、どうしても乗りにくいような零細なものには近代化資金を部分的に例外的に認めるのかどうか。この二点をひとつお尋ねをいたします。前回は、近代化資金についてはただいま大蔵省と折衝中でございまして、そういう方向で期待に沿いたというようなお話を聞いたわけでありまするが、結論はいかがでございまするか、これをお尋ねいたします。
  79. 児玉清隆

    ○児玉説明員 お答えいたします。まず第一点の零細業者をどういうふうに誘導してグルーピングに持っていくか、さらにその強制の度合いをどういうふうに考えておるかというお尋ねでありますが、御存じのように零細業者の今後の行き方につきましては二つあると思います。一つは、先ほど適正規模のときに局長が申し上げましたように、ある程度量産ものを扱っておられる零細業者、こういうものにつきましてはやはり規模適正化ということを、方向として相当強く誘導していかざるを得ないというふうに考えております。それから第二の種類の零細業者と申しますのは、もともと非常に技術的な面で特色を生かしまして、いわゆる大手の業者がつくれないような特殊な商品を生産しておる零細業者、こういう人につきましては、やはり中小企業者の管理能力の限界その他がございまして、必ずしも規模が大きくなることがいいかどうか、かつそれがほんとう国際競争力が強くなるかどうか疑問がございます。したがいまして、その辺の実態に即しましてきめのこまかい指導を今後はしていきたいというふうに考えております。  第二の御質問の点と関連いたしまして、同じ零細業者であっても、グループ化できるものとできないものとにつきまして、その制度上の恩典の与え方でございます。第一に申し上げました量産品種を扱っておられような方につきましては、できるだけギブ・アンド・テークの方式に従いまして、いわゆる誘導条件として手厚い利益を与えていく、そのかわりやはり相当実質的なグルーピングをやっていただくということになろうかと思います。それから、特殊な商品、技術的な商品をつくっておられる方、さらには、第一のグループでもどうしてもこぼれ落ちてグループの相手が見つからないというような方がございます。しかも、その際に、一定規模と申しますか、零細の中でも超零細ということでごく例外的な方、その二つにつきましては、大蔵省ともかけ合いをいたしまして、従来どおり近代化資金を認めていただくということで話がついております。
  80. 坂本三十次

    ○坂本委員 まことにけっこうです。  それでは最後にひとつお願いをいたします。  これから五年間にこの構造改革をやろう、こういうわけでありまするけれども、今後五年の間に、むやみやたらに新しい人がどんどんふえて、むちゃくちゃに過当競争が起こったのでは何にもならぬわけでありますが、中小企業団体法の安定命令というのは十年ほど前から一年ごと限ってやってきております。ごく最近ではこれは十カ月ごとと聞いております。これは今後の五年の期間は、この安定命令を残していくつもりであるかどうか。まあいろいろ承りますると、物価対策上からこういうカルテルは廃止せよというようなお話も聞いておりまするが、いろいろ物価対策の審議会、懇談会等でこういう話が出ておるように承っておりますので、安定命令を構革期間は残すのかどうか、この点をひとつ承りたいと思います。
  81. 児玉清隆

    ○児玉説明員 実は昨年の九月二十日に改正委員会から答申を受けましたときも、その一項目といたしまして、中小企業団体法に基づく安定命令との関係という項目がございました。その中身は、こういった大事業を実施いたします際に少なくとも秩序維持ということは最小限必要である、したがいまして、構革事業が完了いたすまでは、少なくとも必要最小限度の規制としてこれを存置すべきであるという答申を政府は受けております。したがいまして、行政的にもそういった線を尊重いたしまして、中小企業安定審議会のほうに私どものほうから事務的に説明をいたしまして、ほぼ大筋についての御了承を得ております。ただ手続上はやはり一年ごとの更新ということで、毎回一年を限りまして延長をしていくというやり方をとっております。なお、初年度、昨年の秋の延長におきましては、これはほかのカルテルと同じように、一回だけ、りっぱな構造改善事業計画の裏づけがあるかどうかということを見きわめますために、十カ月という暫定期間の延長の方式をとっております。それにつきましては、今回の綿スフと絹人繊の織布についても例外でございませんで、やはり一回限り十カ月という経過期間を設けました。したがいまして、今年度からはまるまる一年ということで逐次引き継いでいくつもりでございます。
  82. 坂本三十次

    ○坂本委員 ぜひ構革期間五年間は安定命令をひとつ残していただくように、大臣も御了承いただけますか。
  83. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいま課長が述べたとおりにやりたいと思っております。
  84. 坂本三十次

    ○坂本委員 ぜひ安定命令を残していただくようにお願いいたします。  これで終わります。
  85. 島村一郎

  86. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 今般繊維関係の構造改善というものがこの国会に提案されまして、日本の衰微せんとするところの繊維工業自身に活を入れんとすること、この点につきまして私ども異論のあるはずはないのであります。  かつて、私は、昭和十一年に大学を出たのですが、その当時二・二六等の非常に政治的な不安な状態でございまして、われわれ若人はそういう点につきましてきわめて鋭敏に反応したのですけれども、ただ一つ心を明るくしたのは、当時大阪を中心とする日本の繊維工業の大躍進でありました。私の記憶にして間違いがなければ、昭和十年に初めてマンチェスターに対しまして追っつけ追い越せで、日本の輸出綿布というものが世界の第一位にのし上がったときであったと思います。二十五億ヤールを出し、英国の十九億ヤールをはるかに抜いて、地球七回り半の輸出実績を誇ったわけでございます。そのときの大体の原因というものは、英国におきましては、例のミュール式の紡績設備であったわけですが、日本はこれをリング式に変えまして、しかもハイドラフトをかけることによってその偉業をなし遂げたわけでございます。その後ハイドラフトを装置してのリング式にまさる紡績の技術的開発があったかどうかは私は寡聞にして知らぬのです。そういう点でいまなお技術水準におきましては、日本の紡績それ自体はそう他国に対して劣ってないように思うのですが、その辺でそういうことではないんだという新しい技術改革があったかどうかをひとつお教え願いたいと思います。  それからもう一つの点は、ウィービング、つまり織布に関してでございますけれども、これは縦糸に対して横糸がおさで往復するというこの原則に立っての織布でございますけれども、私が昭和二十八年にスエーデンに参りましたところ、スエーデンはたいていの仕事を協同組合でやっておるわけですが、そのときに、おさを使わないで、圧搾空気によりまして非常に速度を早くするという技術が開発されておりました。そういう点で日本自身でもってこれを取り入れるべしというような世界的な技術開発があるかどうか、その点もひとつお教え願いたいと思います。これが質問の第一点であります。
  87. 橋本利一

    ○橋本説明員 ただいまの第一点の技術の問題について申し上げますが、先生御指摘のとおり、昭和の十年代において英国を抜いて第一に綿輸出をするようになったわけであります。その後非常な設備面での技術改善が行なわれました。三つに分けて申し上げますと、まず紡績機の回転が非常に早くなっております。かつて数年前までは大体七千回ないしは六千回程度の回転であったものが、一万五千ないし一万六千回もの回転にまで高まっております。それから第二といたしましては、俗にオートドッファーあるいはオートワインダーなどと申しておりますが、これは糸を紡いでまいりまして、その錘の取りかえ、これを玉あげと称しておりますが、これを機械的にやるようになっております。それから錘に巻き取った糸をチーズ巻き等に巻きかえるわけでございますが、これにつきましてはオートワインダー、これも自動的にやっております。いわゆるオートドッファー、オートワインダーは非常にレーバーセービングが働いております。三つ目に申し上げたいことは、欧米先進諸国あるいは後進国も三交代制が非常に発達しております。英国でも数年前から三交代制が随時導入されております。この三交代制でまいりますと、きわめて前紡段階、精紡段階が自動連続化されまして、非常に能率が高くなるわけであります。従来の二交代制でまいりますと大体百人の労務者が要るところを、三交代でまいりましても七十人程度で済む、したがって一交代で比較いたしますと、従来の半数以下の労務者で同じ仕事ができるようになる、こういう状況でございまして、コリ当たりにいたしますと平均いたしまして大体五ないし六ぐらいが普通でございますが、この自動連続方式でまいりますと、著しいものにおきましては一・五人、一人半ぐらいで一コリできる、平均いたしまして二人ぐらいでできる、かように、技術的にも、原理原則は変わっておりませんが、いろいろな部分的な改造をやりまして、さような程度にまで紡績技術は進歩いたしております。
  88. 児玉清隆

    ○児玉説明員 織布の関係でございますが、先生おっしゃいましたいわるシャットルのない織機につきましては、現在ジェット式が開発されておりまして、先ほど御指摘いただきましたいわいるエアジェット式というものは、まだ日本においては実用の段階にございません。ただウォータージェットにつきましては、北陸の絹人繊地帯ですでに実用化いたしております。今後の方向といたしましても、大体ノンシャットルの方式に量産織機は向いていくという現状でございます。
  89. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 後段の織布に関しましては、原理的な改革が行なわれようとしているということがわかりました。しかし紡績関係に関しては、原理的なものはたいして新しいものがあるわけではない。ですから、日本とすれば、そういう一つの国としてのいろいろな改善はしなければなりませんが、原則的には英国はじめその他の紡績に負ける状態ではないと思うのでございます。  そこで、今回の構造改善それ自身は、やはり労働力の問題というものがあると思うのです。特に発展途上における国々の低賃金というものが、現実に日本の繊維工業の土台を脅かしておる、かように判断するわけでございます。そこであなた方は、当然、これに対抗するために、自動織機の導入というものに対して力を入れているようであります。日本の自動織機の保有率が現在一三%、アメリカはすでに一〇〇%自動織機となっており、ヨーロッパにおいても六〇%、かような統計が出ているわけであります。しかし、ここで私が疑問に思うのは、人件費の高騰のおりから、量産的なものに関してはこの自動織機を用いるということによって日本の危機が克服できる、そういう筋道はよくわかるのですけれども、他方において、中小企業の生きる道は、オッパものをつくっておったのではだめなんで、ファンシーグッズにいく、高級品をつくっていく、そういうあなたのほうの指導方針と、画一的な量産の自動織機とは大体相いれないのですよ。たとえば秩父あたりに百台も自動織機を持っていってざあっとやれば、産地全体に必要な織布の製造は十日ぐらいで終わってしまって、あと二十日遊んでいるというようなことになろうと思う。その辺の調和はどう考えておるのですか。これは具体的な問題ですから、デスクワークでなしに、現実にはそういう問題があるということ、これは十分御認識であろうと思いますが、あなた方からそれをどういうふうに解明していただけるか、お聞きしたいところであります。
  90. 蒲谷友芳

    ○蒲谷説明員 お答えいたします。いま先生の御指摘のとおり、実は紡績につきましても織布につきましても、今後は二つの方向があると思います。一つは量産方式でコストを下げるということであります。もう一つは、おっしゃいましたように、非常に需要が分化してまいりますので、付加価値の高い高級品をつくっていく、それにつきましては、いまの量産方式でない方式を考える必要があると思います。しかしその場合でも、いまのような織機でなくて、それに適した、しかもコストを下げ得るような織機を開発するという必要がございます。そこで、いま御指摘のように、そういうものをつくった場合に、機械を入れても、つくった商品の販路からいって合理化できないのではないかという問題がございますけれども、われわれは、いまの構造改善法お願いしておりますものは生産段階でございますけれども、いまの繊維構造問題全般としましては、生産、流通を含んだ繊維産業の安定ということを考えております。いまのように、ある企業が持っておりますいまの販路を見ますと非常に小さいけれども、国内の一億の需要は大きいわけでございますし、また輸出を持っております。そういう意味で販路を考えました。生産と流通の一貫した有機的な結合の中で、そういうような少品種のものでありましても、需要としては全般として見ますと大きいわけでございますので、そういうからみ合いを考えまして、そういう少品種のものであってももっと合理化した機械でつくって、それが販売面で十分償えるというかっこうの合理化を考えたいというふうに考えております。
  91. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 量産の条件としては、国内消費ばかりでなしに外延的に外へ伸ばしていく、そういうことを考えるならば、いま言うた点は矛盾はせぬというお答えのようであります。そこで、これにいささか関連しましてお伺いしたいことがあるのです。新聞で拝見したのですけれども、結局安い労働力を日本の織布とか紡績産業に導入するということ。そのねらいとして何があるかというと、糸なら糸を輸出しまして、相手国というのですか、ある低労働の期待できる国に持っていって保税倉庫においてこれを完成品にする、現地のその保税倉庫を設置した国において需要があれば売ってやる、なければまた持って帰る、国内市場にそれを出す、そういうことは当然考えつくわけです。この間の新聞に出ていたことは、その点を原則的に税法において設定しようじゃないかということで、付加価値に対してだけ課税をしていこうという議論が出ておるようであります。その点がどれほど進展しているか私は知りませんけれども、付加価値だけに課税をするということは、労働力それ自身を日本外に求めるという、最も合理的な一つの案には違いないのでありまして、私も興味を持ってこれを見ており、どういう推移をたどるかに注目をしているのですが、その点につきまして、ひとつお教えを願いたいと存じます。
  92. 蒲谷友芳

    ○蒲谷説明員 遠い将来の問題はまた別としまして、実は現在の日本の繊維産業が置かれている地位、特に織布以下の需要に直結しております部面については、非常に零細企業中小企業が多いのでございまして、しかも非常に数が多い。現在その問題でわれわれ悩んでおりまして、業界もわれわれも一緒になりまして、今度の構造改善を考えたわけであります。そうした段階で、いまのような付加価値だけ課税して海外の労働力を使うという問題は、非常に国内に影響が多いですし、混乱が多いので、現在われわれとしましては、とうていそういうことは考えられませんという立場をとっております。
  93. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 最後に、そう理屈の問題ではなしに、現実にかなり考慮を払わなければならぬ問題があるように思います、織布業構造改善対策で。これを推し進めてまいるときに、産地の組合の性格が変わってこなければならぬというふうに思いますし、また指導もそのようにおやりになっているように思います。現在は工業組合を親睦ないし連絡機関として運営しているわけですが、この機能から一歩出まして、出資組合として事業主体とする、こういうふうに考えられておるようであります。内容的には共同施設の設置だとか、糸売買のための資金の供給、集団資金の融通機能を持たせる、そういうことを考えているようであります。いずれにいたしましても、組合の——組合と申しましょうか、組合長とか副理事長とか、そういう首脳部が相当組合それ自身を事業体として引っぱっていくということになると思うのです。それに関連して、各機屋なら機屋構造改善費を要求していく、その裏書きの保証とかそういう点で、この障害は起こらぬのですか。それは機屋なら機屋が、乾坤一てき、どうせ政府が貸してくれるならうんとそいつを申し込んでやれということでじゃんじゃんやると思うのですよ。最終的には政府が出した金だからあと払わぬでもいいだろうぐらいの、そのくらい勇猛果敢にやってきておる向きがないわけではない。そのときに連帯保証的なことがリーダーに対して要求される、あるいはリーダーといわなくても組合それ自体の連帯責任になるというような羽目に当然なると思うのですが、そこいらの調整ですね、それはどういうことになるか、これが質問の一点。  もう一つは、これはまたとない大改革なんだから、みんな乗りおくれのないようにというような指導をしておりますが、これは一ぺん限りのことなのか。助成金に対しては予算上かなりことしとか来年とかに集中して出していくというようなふうに考えられますが、融資のほうの金が多いですね、全体的に。そうすると、十二年を予定して返還させますが、年次的に毎年毎年返していくわけですから、その返される金をリボルブして、次の順番を待っている企業に対してそれを使わせるという構想になっておるかどうか。
  94. 蒲谷友芳

    ○蒲谷説明員 現在、産地組合と申します中で、現状は団体法の調整組合といいますか工業組合が主体でございますので、現在は出資組合でないものがございます。今度の構造改善では当然経済行為を行ないますので、出資組合に入るという考えでございます。実質的にも、いま言った調整組合的な工業組合をそういうふうな事業組合的な工業組合に変えていくという本質的な変化は起きると思います。その際に、その組合が各事業をするについて当然資金が要る、その資金、設備の面につきましては振興事業団から相当貸しますけれども、その他については自己調達しなければいかぬ。現在私のほうの法案の中にございます事業協会のほうでその融資保証をする体制はとっておりますけれども、当然銀行から金を借りるわけでございますので、保証が要ります。その場合には組合幹部の連帯保証はお願いするという考えでおります。大体そういう考えでいまの組合の幹部はこの事業に積極的に進んできておるというふうにわれわれは考えております。  それから、今回のこういうようなほかの中小企業に見ません非常に根本的な対策でございますので、五カ年間を限って行なうという考えで、五カ年間の中でその計画を全部実施してもらうという考えでございます。構造改善といい近代化というのは永久に続くものでございますけれども、こういうような特別の措置は五カ年を限定して集中的に行なうという考えでございます。
  95. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 五カ年間に集中する、ただし融資された分の返還は十二年に及ぶわけですから、そうすると、あと五カ年を引きました七カ年に返ってくる金がありますね。それをまた新しい政府の予算の金と合わせてリボルブして、それを使わせるというような将来的、つまり五カ年をこえる先のことに対してあまり目標としてはさだかではないということですか。
  96. 蒲谷友芳

    ○蒲谷説明員 いまその点で考えておりますのは、当然五カ年間で計画がされて、返す金は十二年間で振興事業団に返すという考えになっております。
  97. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 わかりました。終わります。
  98. 島村一郎

    島村委員長 本会議散会後再開することとし、この際休憩いたします。    午後二時十分休憩      ————◇—————   午後三時二十五分開議
  99. 島村一郎

    島村委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法案を議題として、質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  100. 近江巳記夫

    ○近江委員 三十九年の六月に繊維新法ができました。そのときに政府は抜本的な対策であるということで、このような対策のもとに百万錘の処理がされたわけであります。ところがその後過剰生産のために、四十年十月不況カルテルでさらに百万錘を凍結した。しかるに、これでもなおかつ過剰設備ということが問題になって、今度の法案が提出されたわけであります。この一連の動きを見てまいりますと、ほんとうに通産省の見通しの甘さということを非常に感じるわけです。そうしますと、過去においてこのような経過をたどっておるわけでありますから、この法案が通ったとしても、また私たちの見方が甘かったからよろしくお願いしますでは、私たちも非常に不安に思うわけです。こういう点について今回の法案ほんとうに通産省として抜本的な対策であるか、この点を聞きたいと思うのです。
  101. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 新法に関しましては御指摘のとおりだと思います。したがいまして、過般もお答えいたしましたとおり、今回の構造改善を主軸といたしました法律案は、新法の精神を継承しつつ、それを補完して、より一そう国際競争力の基盤強化、これをはかりたいと思いますので、新法におきまする見通しの甘さというものは率直に私たちも反省をいたしておるような次第でございます。だからわが国といたしましても、資本の自由化であるとか、後進国の追い上げ等々国際情勢を考えてみますると、この期に及んで、はっきりした態度をもって、これで一発勝負をするというぐらいの決意でなかったならば、とうてい所期の目的を達することはできないと思いますので、業界に対しましても、いま御指摘の面におきましては十二分に強力なる指導をいたしまして、政府、業界一体となって所期の効果をあげたいと存じております。
  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 この不況カルテルは、業界の市況が若干回復した、こういうことで解消したように聞いておるわけでありますが、業界は若干景気は回復したようであるけれども、根本的には不況である。こういうように公式の場所においてはいろいろ聞いておるわけであります。しかし、業界の一部では非常に甘いような考えを持っておる人が多いようです。そうしますと、政府が百万錘さらに廃棄しようという点において相当抵抗というか、いろいろな問題出てくると思うのです。今後そのような問題が出てきた場合、法案の趣旨に沿って進めていかれる場合において、いろいろな支障が考えられると思うのです。この点うまくいくかどうかひとつお聞きしたいと思うのです。局長、次官両方から答えてください。
  103. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、一時相場がちょっといいものでございますので、ごく一部には若干甘い考えが出ておるやに聞いており、心配しておるわけであります。ただ先刻も申し上げましたとおり、パキスタンの糸が三万コリ、中共の糸ですら千コリ入ってくる。このユーザー渡しの値段が、パキスタンにおきましては六万円、中共の糸につきまして六万三千円ということだそうでございます。これは二十番手でございます。これに対しまするきょう現在の日本の綿糸の二十番手は七万円に達しております。このようなことでございますので、もしいまのような相場が続くといたしますれば、大量に後進国の糸が日本に入ってくるということでございまして、日本の綿業は崩壊する。したがいまして、当然後進国の綿業に対する対抗策からいいましても、現在急速なる構造改善をやらなければならないということ、これは相当業界にしみ通っております。ごく一部のわからない方がおります場合、これに対してわれわれ極力この点を申し上げまして、一そうの覚悟を促して、今回が最後の機会であるということで指導してまいりたいと思っております。
  104. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 御指摘の相場等の好況それ自体は、いま局長が御答弁したとおりでございまして、決してこのような好況が続くわけではございません。それよりも高いがために後進国の追い上げがより一そうひどくなるということも考えられるわけでございます。要は、業界が今日の状況に立ち至りました原因は体質の脆弱性そのものにございますので、この点に関しましては業界にも強く戒めまして、構造改善そのこと自体を政府が、今回は、新法とは異なりまして、てこ入れをするわけでございますから、当然この機運が熟しておりまするならば業界もこれに呼応してもらいたいという強い姿勢をもって臨みたいと存じます。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、事業協会の性格を説明してもらいたいと思います。法的な性格というのはどのようになっておるか。
  106. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 繊維工業構造改善事業協会は、今回の法律が通りました場合に発起人がこの発起人は、関係都道府県知事、関係業者すなわち、特定紡績業の代表及び織布の産地の組合の役員及び学識経験者、この方々が発起人になりまして、通産大臣の認可を受けて設立がされるわけであります。こういう設立からだけ見ますると、この法人は民間設立でございますから、その見地から申しますると、行政管理庁の審査権の外に立っておるというふうにわれわれは考えておるわけでございまするけれども、この法人はこういう特別法をもって設立をされまするし、また通産大臣の非常に強い監督権に服しておる——なぜ監督権に服しておるかと申しますると、この法人の行ないますることは、今回の国民経済の大黒柱である繊維工業構造改善という非常に公共的な仕事をいたしまするし、また、したがいましてこの法人は、この過剰紡機一括処理をいたしまするためには、その費用の強制徴収権という、通常の場合には国家ないしは国の別働隊でありまする法人にのみ付与されるような強い権限を与えられておる法人でございまして、非常に特別な形態の法人であるというふうにわれわれは考えております。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまその話の中で、強制的に徴収という話もあったんですけれども、要するに、この企業が納付金を納め得なくなった場合ですね、協会はそのように強制的に徴収することができるのですか。
  108. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 法律案によりますると、国税徴収の例によりまして納付金を徴収するという規定になっておりまするので、他の私的な債権債務に優先して徴収されるということになります。
  109. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこのところの問題ですね、強制徴収した場合には憲法違反になるのではないかということも一部にいわれておるのですが、この点はどうですか。
  110. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 この強制徴収は——強制徴収しました金が何のために使われるかと申しますると、これは一つには、さっき申し上げました公共的な色彩の強い紡績業の立て直しという公共目的のために使用をされます。しかし、一面この過剰設備処理は残存業者の利益のためになるわけでございまして、残存業者は自分の利益のためにいわゆる強制徴収による納付金を納めるというかっこうになるわけでございます。そういう点から申しまして、このような例は土地区画整理組合の制度の場合にもありまして、土地区画整理組合は組合員から土地区画整理に必要な費用を強制徴収することができるというふうになっておりまするので、若干のこういう例は、いわゆる国家ないしは別働隊である法人以外にも与えられておるというふうにわれわれは聞いております。
  111. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこのところの問題ですけれども、それじゃいまおっしゃったいろいろなケースですね、さらに条文等ももう一ぺん正式に、そこのところちょっとひっかかりますので、後日でけっこうですから提出してもらいたいと思います。
  112. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 こういう特殊な法人の例がいろいろございまするので、後日書面をもって提出さしていただきます。
  113. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この協会の役員の構成についてお聞きしたいのですが。
  114. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 役員は、理事長と、理事三名、監事二名をもって構成されております。
  115. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近天下り人事ということが非常に社会的にも問題になっておるわけですけれども、特殊法人の場合と同じようにそういうケースを私は心配するわけです。こういう点についてあなたとしてどのように考えていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  116. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 理事長は、この法律案によりますと、発起人の推薦する人の中から通産大臣が任命するということになっておりまして、発起人の推薦によって事実上きまるということになるわけでございます。で、おそらく民間の方から理事長は出られるということになると思いますし、さらに御承知のとおり、この協会にはすでにもう母体になるような財団法人がありまして、この法律が通過しました暁には、この財団法人の機能ないし人間的な構成が今度の事業協会に移っていくというふうに想像されます。
  117. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この法案は臨時措置法で、五年後には失効になっておりますね。そこで、それまでに、所期の成果があがらなかった場合、延長するかどうかという問題ですね。それからまた、この法律がなくなった場合に協会をなくするか、こういう問題が出てくると思うのです。この点についてはどうですか。
  118. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 あとのほうからお答え申し上げますが、この法律がなくなりました場合には事業協会は当然なくなるわけでございますが、この法律は五年たちました後には廃止するということになっておりまして、この五年以内にこの法律の命じております構造改善を達成し、国民経済の健全な発展に寄与するような繊維産業に立て直さなければなりません。それにわれわれは全力をふるって、この五年以内にこの目的を達成すべく努力をいたします。
  119. 近江巳記夫

    ○近江委員 実際三百万錘の廃棄という問題ですけれども、それはいままでにすでに二百万いっておるわけです。割り当ての問題ですけれども、うまくいくかという心配が一点なんです。それからまた、うまくいかなかった場合、政府としてどのような行政指導をするか、行政指導のあり方についてお聞きしたいと思うのです。
  120. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 この過剰紡機処理は、一括廃棄ということでこの法律案では構成されておるわけでございまするが、一括廃棄をいたしますためには、これは何ぶんにも大事な事業者の紡機でございますので、共同行為をもって行なうということがまず基礎になっております。ただ共同行為だけでございますとその達成が危ぶまれます場合には、通産大臣が命令をしてやらせる、こういうふうな構成になっておりまして、そもそもたてまえの基本は、協会の自主的な責任、自発的な体制でやるというふうに構成をされておるわけであります。で、大臣も質疑に対してお答えを申し上げておりますように、業界は、とにかく今回の過剰紡機処理は絶対に一括処理でやらなければいけない、自分らがやります、それにつきましては、これは当然共同行為は独禁法の関係もあるようでございますし、国民経済的見地もございますので、通産大臣が命令するようなかっこうにし、ないしは経費の点についてはこの強制徴収というようなかっこうで、正直者がばかを見ないようにというふうな非常に強い業界の熱意でもって今回の法律案が構成されておりますので、万々私はその業界の熱意で変わることはないというふうに信じております。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 この企業規模適正化ということですけれども、実際にそれじゃどのように行なわれていくかという過程を想像していきますと、大企業系列下に入るとか、あるいはまた吸収、合併されるとか、そういうようなケースが考えられるわけですね。そういう点で処置されるとすると、やはりどうしても独占資本の強化となってくる。そうなってくれば結局独占価格の形成となってくる。こうなってきますと、消費者にとって今後非常に大きな問題が起きてこないか、こういう点を心配するわけです。で、今回のこの対策において消費者の利益というものをどのように守っていくか、この点についてひとつお答え願いたいと思います。
  122. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 今回の法律のねらっておりますところは、いわば人間の英知をもちまして紡績業構造改善をやっていきたい、すなわち、放任いたしますと、自由競争によりまして、非常に強いものがさらに強くなる、弱い人がつぶれていくということになるわけでございますので、政府が基本計画をつくりまして、この計画によりまして中小紡績業も生きかえるようにというふうに考えて、所要の指導なり援助なりをしてまいるというのが一つの重要なポイントになっておるわけでございます。この構造改善ができ上がりました暁と申しますか、そのかっこうを考えてみますると、当然この構造改善の結果紡績業国際競争力が強くなる、国際競争力が強くなるということはすなわち非常なコストダウンが行なわれまして、そして良質廉価な糸が需要者に渡る、こういうことになることをわれわれは期待をいたしております。もしこういう構造改善が行なわれないで放置された場合には、後進国紡績業等によって日本の紡績業がその存立の基礎を危うくされるということになるわけでございますので、そういう場合を考えますると、この構造改善の成功した暁におきましては、消費者のためにむしろ非常な利益が生ずるというふうに考えておる次第でございます。
  123. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、そのとおりひとつ今後の業界に対する行政指導を特に要望しておきます。  それから、ケネディラウンドの妥結が繊維産業界に与える影響というものをひとつお聞きしたいと思うのですが。
  124. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ケネディラウンドの交渉は、御承知のとおり本年五月十五日成立いたしまして、六月三十日に署名が完了されたわけでございまするが、繊維産業につきましては、各国とも必ずしも、原則でございます五〇%の引き下げは行ないませんで、国によって相当の留保をいたしたところもございますし、ないしは、綿については二〇%というふうなアメリカの例もございますが、いずれにいたしましても、相当に関税障壁が低くなったことは事実でございますし、さらに、この交渉に付随いたしまして行なわれました種々の非関税障壁の撤廃交渉におきましても、相当な成果がございましたので、わが国繊維品の輸出に対しましては、今後相当な効果があるというふうに考えておる次第でございます。ただ、同時に、わが国への外国製品の輸入関税、これも下がったわけでございまして、綿におきましては三〇%の引き下げが行なわれたわけでございますので、今後後進国等の綿製品がわが国市場に入ってくるという可能性はますますふえてくるというふうに考える次第でございます。したがいまして、そういう点からいいましても、できるだけすみやかにわが国繊維産業国際競争力の強化をいたさねばならないというふうに考えておる次第でございます。
  125. 近江巳記夫

    ○近江委員 ここで結局、発展途上国の特恵付与の問題ですね。この動向という問題と、特恵が付与されるとすると、特に繊維産業について今後どのような対策が必要か、少し具体的に言ってください。
  126. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 発展途上国先進国に対しまして関税上の特権、工業製品の関税上の特権を強く要求をしておりまして、三十九年の春、国連の貿易開発会議の場で、一致いたしまして発展途上国がこの主張を取り上げたときから、この問題は非常に強く起こってきておるわけでございます。先進国の間にはいろいろの意見がございまして、また利害もいろいろあるということで、不一致でございました。ところが、明年の二月開催予定の第二回の国連貿易開発会議を控えまして、最近において、きわめて国際的な動きが活発になりまして、かつてこの動きに対しまして消極的でございました米国も、大統領声明というふうなかっこうで、この特恵付与につきまして好意的な態度をとるというふうなことになってまいったわけでございます。  わが国立場を申し上げますと、御承知のように、わが国の主要輸出品であります繊維品、軽工業品、これは発展途上国の工業製品の主力でございまするので、この発展途上国に対しまして特恵が与えられました暁におきましては、日本の繊維品、軽工業品の輸出は非常な不利益を受けるということになりますし、また日本の国内マーケットに対しまして発展途上国が入ってきますることも非常に容易にするということでございまして、基本的に日本としては消極的な態度を従来とっておったのでございますけれども、最近の本問題の進展にかんがみましては、ただ単に消極的な態度のみをとり続けるということはだんだんむずかしくなってきておるようでございます。したがいまして、私たちといたしましては、至急にこの辺の情勢を正確にキャッチいたしまして、輸出、輸入、両面におきます影響力を勉強いたしまして、これが対策をすみやかに立てる必要があるというふうに考えております。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 その具体的なものを私は聞かしてほしい、これを言っておるわけですから、もう一ぺんそれを詳しく言ってください。
  128. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 現在アメリカにおきましての日本の繊維製品のシェアでございまするが、現状におきましてもだんだん下がってきておるわけでございます。一九五七年アメリカマーケットにおきます日本のシェア、これは輸入繊維製品の中におきます日本のシェアでございますが、七〇・七%でございましたが、五九年には四一%、六二年には二九%、六五年には二五・九%というふうに、漸減をいたしております。これに反しまして、香港の五七年のシェアは二・三%、それから漸増いたしまして六五年には二〇・三%になりますし、インドにおきましても、五七年〇・九%、一%弱のシェアが、六五年には一〇・二%となるというふうなことでございまして、現在の関税制度のもとにおいてすら、日本の地位がこのように後退をしておるという状況でございます。したがいまして、もし特恵関税が後進国に対して与えられました暁におきましては、非常に大きな打撃と申しますか影響が日本に出てくるということは、ただいまの数字からも御想像いただけると思う次第でございます。
  129. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、その対策について、これを根本的な特効薬のように思わずに、ひとつあらゆる万全の対策を今後講じていただきたい、このように特に要望しておきます。  それから、いまの、ずっとこの内容を見ていきますと、零細企業さらに中小企業ですね、これに対する対策は十分でないように思うのです。これについてどのような対策を持っていらっしゃるか、この点をお聞きしたいと思います。
  130. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 今回の法律案によりますと、紡績と織布と両方あるわけでございまするが、紡績におきましては、中小紡に対しましてはグループ化を進めてまいる、必要なる資金は開銀でこれを見ていくというふうなことをいたしたいと思います。ただ、それよりも何よりも、先刻も申し上げましたが、今回の構造改善は、中小紡がほんとう国際競争力を得ますために、いわゆる自由競争に放任しておいたのでは、なかなか中小紡の国際競争力ができない、これに対して政府が特に積極的な助成を行ない、そして中小紡の国際競争力の強化ということをねらったのが今回の法律案の一つの大きなねらいになっております。  それから織布業でございますけれども、これは御承知のとおり全部が中小企業でございます。従来は、政府の施策といたしましては、一般的な中小企業対策の中で一面的、平均的に対策がとられたのでございますけれども、織布業の置かれております緊迫した現在の立場、また問題の困難性のゆえに、一般の中小企業対策から特にこれをピックアップいたしまして、特定織布業対策ということで、いわゆる産地主義、組合主義というものによりまして、非常に強く傾斜した政府の助成措置を織布に対して与えていくというふうな考えでございます。  なお、たびたび御指摘がございましたが、零細なる織布、これをどうするかということが非常に大きな問題点でございます。いわゆる脱農、つまり農業から脱却がだんだん行なわれます場合、これが零細な織布業になっていく、ないしは、さしあたりは兼業織布というようなかっこうになってまいるわけでございます。これに対しまして、われわれとしては、やはり組合を通じまして、そしてこの零細な織布業に必要な助成を与えてまいりたい。特に零細な織布業でなければできない商品を見つけ、その商品で経営が成り立っていくような指導を行ないますとともに、またどうしても規模生産、量産をしなければなりませんものにつきましては、零細織布業をグループ化するというふうなことによりまして競争力をつけてまいるというふうな手をとってまいりたいと思います。
  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 特にその織布業の場合ですけれどもこの構造改善計画というのは要するに各産地の組合にまかされておるわけですね。そうしますと、いろんなことが考えられるわけですが、この計画の作成にあたって、やはり組合のボス的な企業というのはあるわけですね。要するに利益のみを考えた計画ができる心配がある、これが一点です。そういうことによって零細企業は結局切り捨てられるか、あるいはまた不本意な地位に置かれるというようなことも考えられるわけです。そういった点で、これまでのそうした事情から見て非常に心配なわけです。この点どのように省として見ていらっしゃるか、この点を聞かしていただきたいと思います。
  132. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 第一に、組合に責任を持たせた構造改善計画によるわけでございますので、当然組合の運営は民主的に行なわれなければならないという組合の一般的な原則によりまして、小さな人たちが救われていきます。ボス的な行為というものは制肘を受けるというふうに考えたわけでございますけれども、この産地の構造改善計画は、産地でつくったらそれでいいということではございませんので、通商産業省におきまして大臣が承認をするというかっこう、これは法律にも書いてございます。そういうかっこうをとりますので、承認の際に、ただいま御指摘のようなことは全然ないように、われわれとして十分注意をし指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  133. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつその点、特に零細企業が犠牲にならないように強力な監督を今後やってもらいたい、この点を特に要望しておきます。それから、この企業の集約化について、通産省ではどのようにしておるか。またそのモデルケースがあったら、ひとつ教えてもらいたい。
  134. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 企業がまとまります場合に、その中心になります企業がある場合と、ない場合があるわけでございます。紡績業の例をもって考えますると、中心になります大紡績と申しますか、中堅紡績がございまして、そこに衛星的に中小紡がつきまして、そして一つのグループをつくり上げる、こういうグループがつくり上げられますことによりまして、その間に番手交換、要するにこれは糸の品種でございます。品種交換が行なわれ、そして単純生産、専門生産によりまする合理化ができ上がるということとか、また一つのグループで従来の取り扱い数量が非常にふえますので、糸の販売面において非常に有利な地位に立つとか、こういうふうな一つの中堅企業中心にしたまとまり方もございまするし、ないしは、完全に平等な紡績が集まりまして、いわば従来の社長の方々が重役になって、重役会的に運営をしていくというふうなことも聞いております。また、中には商社が中心となりまして、そしてかたまっていくという場合もあるようであります。いろいろなかっこうがございますが、現在聞くところによりますと、中京地区また泉州地区等におきまして七つ、八つのグループが結成されようとしておる、こういうことを聞いております。
  135. 近江巳記夫

    ○近江委員 私、いま、そのモデルケースと言ったのですけれども、ないですか。
  136. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私ども聞いております中で、一番スムーズに進んでおりますらしいのは、名古屋地区に長谷虎紡績とか丸武、名古屋紡織等数社が集まりましてグループ化を進めようとしている、こういう例を聞いております。
  137. 近江巳記夫

    ○近江委員 私はまた今度時間を見て、一ぺんそちらのほうへも寄せてもらいたいと思っております。その時点においてまた実際の運営等についていろいろとお聞きしたいと思います。  それから、この上乗せ廃棄や転廃業の場合も、実際の政府の助成というのは非常に少ないわけです。こういう点、余裕のない産地組合は実際実行不可能になる場合も今後考えられるわけです。その点において、さらに何らかの助成措置は考えておらないかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  138. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、上乗せ廃棄の分につきましては、その半額を政府が補助するということでございまするけれども、この金額は決して十分であるとは思いません。ただ、あとの半額は業界が持たなければならないという点もございまするし、それから特に他の産業、業種に対しますつり合いの点から申しましても、普通の業種でございますと、過剰分、陳腐化分というのはみな自分の負担で廃棄をいたしておるわけでございますので、その点は確かに八万円という金は十分な金ではございませんけれども、現在の国力から考えまして、他の業種に対する均衡というふうな点から考えまして、まあやむを得ないところの金額であるというふうに思います。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから昭和四十二年度の織布業構造改善対策の実施規模は、全体計画の大体どのくらいのパーセンテージを占めるか、さらに四十三年度以降の計画についてどのようにやっておるか、その点をお聞きしたいと思います。
  140. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 織布業の新設の計画は、全部で直接織機だけで千三百億という計画になっております。これを五年間で達成をいたしたいということ、十七万四千台の織機を新設するという計画になっておりますが、初年度におきましては事業規模百三億ということでございまして、全体計画から申しますと八%にしかなっておりません。五カ年計画ということになりますと、これは五分の一、約二百数十億を要するわけでございますけれども、初年度におきましては、発足もおくれますし、それからまた機種の選定でございますとか、それから産地組合と織機メーカーとの間の関係のスムーズ化でございますとか、いろいろな問題がございまして、構造改善発足の年でございますので、八%、百三億程度のものを初年度に見込んでおります。したがいまして当然次年度以降はスピードアップをいたさなければならないということになります。
  141. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはわかるのですよ。全体におけるそういう進捗の計画ですからそれはわかるのです。私の聞いているのは、要するに四十三年度以降において大体の青写真がやはりできていなければ、大体このようにやりますという——全体なことはわかりますよ。それだったらその法案を見ればわかるのだから。それを聞いているのですよ。これだけの法案を出しているわけですから、やはりその根本的なプランができていなければまずいと思う。どうなんですか。
  142. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 四十六年度、すなわち目標の達成年度におきますわれわれの描いております目標を概略申し上げます。  まず生産量でございますが、現在六十三億三千四百万平方メートルの生産量を一五%アップいたしまして、七十二億八千七百万にいたしたい。付加価値でございますが、これが現在千七百億円ございますけれども、これを二千六百五十億円、すなわち五六%アップしたい。と申しますのは、生産量におきましては一五%でございますけれども、付加価値においては五六%アップしたいという、つまり高収益を上げられるような産業にしてまいりたいというのが大きなねらいでございます。この場合の設備でございますけれども、現在織機台数が六十六万七千台でございます。これを一九%ダウンさせまして、五十四万一千台にしてまいりたい。したがいまして、これはビルドが十七万四千、スクラップが三十万ということになります。近代化織機の比率でございますけれども、これが現在三五%、これは自動織機中心にしたものでございます。これを七五%程度に引き上げたい。その中の自動織機の比率は、現在一七%を三七%まで持ってまいりたいというのが設備関係でございます。  それから産業構成でございますけれども、現在の企業数は一万九千八百余ございますけれども、これをグループ化し、集約化いたしますことによりまして、九千六百程度、したがいまして、単位当たりの織機台数は、単純算術計算でございますが、現在三十四台を五十六台まで持ってまいるということにいたしたい。  一番大事な、先ほどもちょっと収益力のある産業にということを申し上げましたが、現在企業経理一人当たりの付加価値額が四十三万六千円でございます。これを八十万八千円、約倍程度に持ってまいりたい、こういうふうな絵をかいておる次第でございます。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは確かに、初年度のそうした実際の動きを見てあと立てていくということはよくわかるのですよ。だけれども、やはり年度別の、このようにしていきたいという構想というものは持たなければ、これは何の上においても計画は達成できませんよ。いままでの政府の各省のいろいろな計画を見ても、ほんとうに進捗がおくれている。これは共通して言えることは、ことばを悪くして言うなら、要するに行き当たりばったりのそういうような政策が多い。われわれ一人の人間においても、春夏秋冬、四季において、夏には何をしよう、春が来ればこうするのだ、秋にはこうしよう、そういう点が、結局施策を進めていく上においてやはり弱いわけです。特にこの点を、今後とも計画を進める上において——それはなるほど修正はありますよ、そんな絵にかいたとおりにいくわけではないのだから。だけれども、骨組みは、マスタープランというものはきちっとあらゆる角度から検討し、やはりそれを立てなければいかぬ、私はこのように思います。特にこれは意見として申し上げておきます。  それから、紡績業において構造改善を進めた場合に、かなりの離職者が考えられるわけです。この点について政府としてどのように考えていらっしゃいますか。
  144. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 紡績におきまして離職者と申しますか、現在よりも人手が省ける、われわれ省力化といっておるのでございますけれども、こういうことになる絵はかいております。現在紡績業は十四万名、女子が十一万六千名、それから男子が二万四千名ということで構成されまして、十四万名でございますけれども、四十六年の推定の人員は、この十四万名から人手が省けまして九万九千八百名、四万名程度人手が省けるというように考えております。この九万九千八百名の内訳は、女子が七万九千名、男子が二万八百名というふうに一応そろばんをとっております。したがいまして女子におきましては三万七千名、男子は三千二百名の減が立つわけでございます。離職者という御質問がございましたが、私、人手が省けるというふうに申し上げましたのは、実は女子におきましては毎年総数の三五%以上の退社人員がございます。四十年におきましては三万三千名、四十一年におきましては三万四千名の退社がございました。したがいまして、五年間に四万名程度人手を省くという場合に、一年の自然減耗でも三万三、四千名あるわけでございます。この辺は、もっとも特殊な場合はございます。したがいましてその場合の離職者の対策、これは十二分に考えなければいけませんけれども、大体においてはあまり大きな支障がなくて遂行できるというふうに考えております。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたのその考え方というのは非常に甘いか、冷酷むざんか、どっちかですよ。ほんとうに働いている人を待遇をよくしやっていくなら離れるわけはない。やはり構造改善を進めていく上において、他産業に比べればかなり低い条件に置かれておるそういう人たちを優遇してやるのは当然なんだ。そういうような点から考えていけば、ただ数字の上からだけで、現時点でこのようにやっていきますからという考えは私はよくないと思う。たとえ一人の人であろうと、このような状態から離れていく人についてはこのようにしていきたいと、真剣に労働省とも話し合って、そういう人についてはこのようにやりますと考えてやらなければ無慈悲ですよ、私はこう思うのです。こういう点において、ひとつ根本的に、ほんとうに離職者の人をあたたかく、さらに別の道でいけるように対策を立てていただきたい。この点を特に要望しておきます。  それから、織布業の場合において労働力が非常に不足しておる、何回もお話がございました。特に若年女子の確保が非常に困難である、こういう答弁もありました。現在どのくらい不足しておるか、また今後どのようにして確保していくか、この点についてお聞きしたいと思います。
  146. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 現在織布業におきまする充足率、これは必要な人がとれないわけでございます。充足率は三割を割っておるという状況でございます。今回の構造改善改革に業界が必死になっておりますのも、いかに少ない人で生産を維持していくか、上げていくかということが原因だと思います。ただ、人がとれないということに対する最大の対策は、十分なる賃金を払うことによりまして人も確保するということが一番大事なわけでございます。これはあたりまえのことでありますけれども、したがって今回の織布の対策は、先刻から御説明申し上げましたように、まず織布産業の収益力を高めて、十二分の待遇を行なうことによりまして所要の労働力を確保する、こういう方向に努力しようというわけでございます。
  147. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、あなたがおっしゃった最も大事なそうした賃金の上昇、そういう点においても、その他いろいろ条件はあるでしょうが、そういった待遇改善等の点については特に今後政府としても業界をよく指導をし、ひとつみんなが喜んで働けるようにしてあげてもらいたいと思います。  以上で私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  148. 島村一郎

    島村委員長 次会は、明十四日金曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会