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1967-06-30 第55回国会 衆議院 商工委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月三十日(金曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 島村 一郎君    理事 天野 公義君 理事 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 河本 敏夫君    理事 田中 武夫君 理事 中村 重光君    理事 麻生 良方君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       神田  博君    藏内 修治君       黒金 泰美君   小宮山重四郎君       小山 省二君    河野 洋平君       齋藤 憲三君    丹羽 久章君       古屋  亨君   三ツ林弥太郎君       三原 朝雄君    石野 久男君       佐野  進君    中谷 鉄也君       平岡忠次郎君    古川 喜一君       塚本 三郎君    近江巳記夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業大臣官         房長      大慈彌嘉久君         通商産業省重工         業局長     高島 節男君  委員外出席者         運輸省航空局監         理部監督課長  住田 正二君     ————————————— 六月二十九日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として神  近市子君が議長指名委員に選任された。 同日  委員神近市子辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員岡本茂君、櫻内義雄君、田中六助君、橋口  隆君、武藤嘉文君及び中谷鉄也辞任につき、  その補欠として河野洋平君、藏内修治君、三ツ  林弥太郎君、小宮山重四郎君、古屋亨君及び神  近市子君が議長指名委員に選任された。 同日  委員藏内修治君、河野洋平君、古屋亨君、三ツ  林弥太郎君及び神近市子辞任につき、その補  欠として櫻内義雄君、岡本茂君、武藤嘉文君、  田中六助君及び中谷鉄也君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  航空機工業振興法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第五五号)  私的独占の禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 島村一郎

    島村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出航空機工業振興法等の一部を改正する法律案を議題として、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。塚本三郎君。
  3. 塚本三郎

    塚本委員 最初大臣に概括的にお尋ねしますが、この航空機振興の問題が、いままでの議論の過程の中でお聞きしておりますと、YS11即航空機振興ということのすべてに集中せられておったように承っております。もちろんこれは、おそらくこの日航製会社の存立の経過からして当然のことであろうと思っておりますが、しかし、私どもの聞き及んでおります範囲におきましては、航空機も最近におきまして相当会社生産に力を注いでいるやに聞いております。したがって、この問題はYS11が中心ではあるけれども、しかしながら航空機振興助成中心とする方策である、こういうことが大前提でなければならぬというふうに理解しておりますが、その点大臣の所見を最初にお伺いしたいと思います。
  4. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 御存じのとおり、商業用飛行機をつくったのは戦後日本としては初めての試みであります。そして航空事業というものがますます発展するという見通しもみんなついておることです。したがいまして、日本といたしましては、従来の技術を総動員して、モデルケースとしてYS11をつくるということでやってきたわけです。しかし、YS11が幸いにして好評を博しておりますので、将来一会社ばかりでなくして、飛行機をつくる会社が続出するんじゃないか、また、してほしいと思うのです。また、航空機需要というものが、今後ますます拡大するというように私は考えております。日本にとっては成長産業だと思っておりますから、この航空機生産事業の発展のためには、政府はできるだけ助力したいという考えを持っております。
  5. 塚本三郎

    塚本委員 成長産業というはやりのことばが出てまいりましたが、大臣承知のとおり、これを契機に続々という見通しのようでございますが、私どもの察知するところによりますると、逆に戦後やはり自動車生産、それと相前後いたしまして自力で航空機生産へのひたむきな努力各社においてひそかにといいますか、ささやかになされております。その土台の上に実はYS11が乗っかったというのが実情ではないか——そんな言い方はちょっと過大な表現かもしれないと思うわけですが、そうであるといたしますならば、YSYSと、このことだけを言われておると、おそらく数社が、これに協力しておりますその会社自身が、自家製造あるいはその方向にひたむきにささやかな努力を重ねておる会社が、何かしらさびしい気持ちを持って取り残されてしまって、これが完成してから、あとから、おまえたちを連れていってやるんだ、こんなようにしか受け取れないような感じがするのでございますが、やはりこれがモデルケースとして、政府、言ってみるならば通産大臣の大きな一つのかけでもあろう。しかし、それと同じように並行して、これを連れて成長させるという今日ただいまからの配慮というものがあってしかるべきではないか、こういうふうに思うが、どうでしょうか。
  6. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話しのとおり、いままでは、各会社技術などを総動員してYS11というものをつくることにしたのです。これで、おそらく日本技術家もみんなそれぞれ自信を持ったと思うのでございます。したがいまして、あるいは各社——従来日本でも、戦前においては飛行機をつくっておった会社が二、三あるのですから、そういう会社などが、これで日本でつくった飛行機世界的にも順次売れるという大体の見通しをしてきておると思いますから、したがって、そういうように各会社があるいは自分のところで独力でつくるというような場合には、これは大いにやってもらいたい。いま三菱でもそういう計画をやっておるようでありますから、われわれは大いに歓迎するところなんで、何もYS11に限っておるわけではありませんから、要は技術の水準を高めていくということ、これが先決問題ですから、YS11の体験によって、それぞれの技術家がみな自信を持ってきた、こう思うのです。この技術家自信をわれわれは大いに奨励し、激励して、そしてますます多産するように奨励したい、こう考えておるのです。
  7. 塚本三郎

    塚本委員 技術に対しては自信を持ってきたし、大いにプラスになってきておると思うのでございますけれども大臣がいみじくも成長産業ということばをまっ先に打ち出された。その産業としての自信というもの、これがYSそのもの成功の最も大きなものではないか。技術は、もう戦前からすでに日本飛行機優秀性については、民族主義ではございませんけれども相当自信を持っておったと言ってもいいと思うのです。しかし、飛行機産業としてもそのことが問題だと思うのです。この点になりますると、YS自信を持ってきたといいますることは、産業として、そして独立採算制としてのいわゆる工業化の中で自信を持ってきたということではないかと思うのです。そうなりますると、その点では一将功なって万骨枯るという極端な表現ではございませんけれども、多くの小さな会社がみずからの持っておるものを出し合って、そうしてこのYSを盛り立ててきたというのが実態ではないか。そうだとすれば、私は、この際見通しがついたならば、その犠牲をしいて、コスト・ダウンまでしいておるところのいわゆる協力各社に対する成長産業としての待遇策、それがひいてはそこに働く技術労働者に将来の大きな希望、このことを戦闘機の問題とか軍需産業とは切り離した問題として、将来の成長産業ということばどおりに私ども受け取ってまいりますときに、何らかここで大臣にはっきりとした、産業としての施策に対する御見解があってしかるべきではないか、かように思いますけれども、どうでしょうか。
  8. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 日本航空機製造技術というものは、戦前はまあ大体軍用機ですから、この何十人乗り飛行機というものは戦後においてつくり始めたものであって、したがいまして、初めは実際それほどの自信もなかったのでありますが、そこで各社のそういう飛行機生産技術を総動員して、それでこのYS11というものをつくってもらうことにしたわけです。幸いにして、非常な成績を得ておりますから、各社ともいままではYS11でみんなが協力したけれども、みな自信を持てば、そこで自分のところでもひとつつくろうというような考えを持ってくると思います。それは政府としても大いにこれを奨励したいと考えておりますから、何もYS11で終始するというわけでは決してありませんし、私が成長産業と言うのは、私は飛行機需要というものは、今後非常な勢いで拡大するというような見通しをしておりますから、したがって、そうすると、日本会社が一会社でなくして、また違った型の商業機をつくるということも出てきて、そして各方面需要に応ずるように発展せしめていく。御存じのとおり、自動車というものを戦後まさか日本海外へ輸出するということはだれも予想せなかった。それが今度どんどん輸出されて、世界の第二番目の生産国になったと同じように、飛行機産業自動車と同じように発展させたいというわれわれの考えであります。政府はこれについてはできるだけの助成をしたい、こう考えております。
  9. 塚本三郎

    塚本委員 たいへん大きな希望を持つことができたと思っております。たとえば今日日産とかトヨタ、このすばらしい設備投資が、もちろん技術が伴わなかったら無理ではあったでしょうが、航空機の問題として考えて、十年前に今日のような体制をしいておったならば、世界自動車界を風廃することができたであろう。実はこのことは、ドイツにおけるフォルクスワーゲンが三十年前にそういう体制をしいて、今日なお世界自動車界——最近はちょっといかがわしくなってきたようでございますけれども、風靡してきたという実例に照らし合わせてみたとき、幸い中型機小型機という航空機におきましては、そういう筋をねらった国はまだないように見受けられるわけです。その持つ技術がすでにYSにおいて自信が得られたとするならば、いわゆる世界需要に応じて徐々にレベルアップするということよりも、かつてワーゲンがあの自動車産業に打ったような先手を、当然世間が距離の時代から時間の時代だといわれておりますその最先端をいく航空機であるとするならば、この際そういう思い切った、YS成功という見通しの上に立ったならば——各社がおのおのささやかな努力をしております。それに対してあるいは政府は一本にしぼったYSのような全責任をしょわなければならぬような体制はこれは無理かと思いまするけれども、二、三社にしぼって、そしてきょうの新聞に出ておりますように、自動車が三社ぐらいにしぼって資本自由化に対抗しなければならぬというようなことをいわれておりますると同じように、飛行機の舞台で、技術じゃなくて成長産業としてYS政府がおとりになったと同じような条件助成策をこれから検討していただく、こういうことがやがて十年先において日本航空界世界航空界における大きな地歩を確保して、アメリカ日本と、こんなことがいわれる時代がやってくるのじゃないか、こんな空想を描くわけでありますけれども、そういうことに対して、すでに技術方面と着手の方面ではささやかに各社が行なわれておる。しかもそのおかげで、その土台の上にYSが成り立っておったんだ、ただ政府技術というよりも経済的なあらゆる協力、政治的な御支援をなさったことによってこういうものができたんだとするならば、いまなされております各社に対してそういうことをなさることによって、日本航空界というものを自動車航空機と二つ、アメリカと肩を並べるという位置にまで持っていくことは決して不可能ではない、こういうふうに思いますが、どうでしょうか。
  10. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 先ほどから繰り返して申し上げますとおり、問題はやはり技術です。そこで幸い、私は技術については各社とも自信を持たれておると思うのです。であるからして、この技術を活用していくということ、それから問題は航空事業というものがだんだん発展する、より多くの飛行機世界的に売れるということが前提条件であって、それに応ずるように、また日本製造飛行機性能世界的に見て一番いいということであれば、これはどんどん売れます。だからして、そういうようにひとつりっぱな飛行機をつくるということが先決問題である。したがって、そういうような意味においてりっぱな飛行機をつくるためには、これは先ほど申し上げますとおり、政府はできるだけの助成をしたいという考えでおりますから、何もYS11の飛行機に限らず、ほかの会社でもそういうことでどんどん新しい性能のいい飛行機をつくっていただくのであれば、もうどんどん資金的にあるいは技術的に助成したい、こう考えております。
  11. 塚本三郎

    塚本委員 条件ども大体YSと同じような条件でそういうふうに御協力いただくというふうに理解してようございますか。
  12. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 大体そのように御理解いただいてけっこうです。
  13. 塚本三郎

    塚本委員 私どもの郷里でも航空機産業に働く従業員が万という数を数えておりますので、いま大臣からそういうYSと同じような条件助成していただくという確言を得たことをおそらくその諸君は非常に喜ぶと思う。といいますのは、彼らの心境は三次防によってしかYSの仕事の途切れ途切れの間を食いつなぐことができない。しかも労働者立場からいいますると、憲法上軍用機というものにゆだねるということに対しては良心的なさみしさというものを持っておることは隠すことはできない。そのときに、民間飛行機大臣が同じような条件でとおっしゃることは、私は労働者立場から心から大きな希望を彼らに与えてあげることができたと思うわけでございます。  ところで話は戻りますけれども、くどいようでございますが、需要と並行して、そして技術と並行して飛行機産業を前進させること、これが一番堅実でいいと思うのです。しかし、最初フォルクスワーゲンの例をちょっと申し上げましたように、この際私は、すでに自動車産業においてそのりっぱな例があるんだから、一挙に量産化体制——役人さまならこの点は、もし失敗したらたいへんなことなんだということですけれども大臣はやはり学者として政治家として、その点そういう見通しをお持ちだろうと思うわけです。そういう立場に立ったなら、この際他国に先がけて、いわゆる需要がこんな程度だからこの際ここまでの量産体制をしくことによってコストを下げるということを最初から——ヒトラーがかつて一人一台ということを計画して最初からけたはずれの安い自動車をつくったということを、私どもは年代が違いまするから物語式にしか聞いておりませんけれども、そういう形で一挙に、この際もう時間の戦いという時代になってきたんだから、そういうふうな体制YSを含めてほかの問題に対しても、危険をある程度覚悟の上でやる、そこに私はやはり経営者としての今度は手腕というものがあると思うわけです。したがって飛行機経営者は国家なんだ、これはもう世界的に見てそういわざるを得ないと思うわけです。そういう意味で、その危険をおかしてもある程度前進させたそういう体制をしくというふうな、大幅な前進体制処置をおとりになる考えがないかどうか、どうでしょうか。
  14. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 自動車飛行機とはちょっと性格が違うので、自動車大衆性なもんですからして、したがって需要を見越して大量生産ということを各社ともやっておられると思うのですが、しかし、日本はいま需要に間に合わない現状でありますから、自動車注文しても三月か四月後でないと手に入らぬという状態であります。そこで飛行機も、これでりっぱな飛行機ができるということでありますから、これがやがて世界的にPRされるし、また日本もできるだけPRしていくということで、やはり需要生産とをマッチしてやっていくということが必要なことであって、たくさん予備の飛行機をつくっておいても、さて注文があるかどうかわからぬということでありますからして、私の考えでは、飛行機需要というものは、先ほど成長産業と言ったその意味は、これからはもうだんだん飛行機に乗るようになります。まだ日本は国土が狭いですからあれですけれども、広い国になってくると、今後飛行機を利用する国は世界にはまだたくさんあるはずでありますから、したがってそういうところへ、優秀な飛行機であれば将来飛行機はどんどん売れると思うのであります。したがって各会社ともひとつ経営者がそれだけの確信を持って事業に当たってもらいたいと思うのであります。その事業に当たるについて、あるいは資金あるいは技術の点において、政府助成が必要な場合にはできるだけ助成をしてあげたい、こういうふうに思っております。
  15. 塚本三郎

    塚本委員 話はYSに戻りますが、聞くところによりますと、このYSというのは実は資本金を食って試作機をつくった、こういうふうに言われておるのでございますけれども、何か初めから量産体制じゃなくて、おそるおそるやってみて、そうしてどうやらうまくいきそうだというところから量産体制乗り出してきた。こんな経過がうかがえるわけでございます。そこにまた一歩立ちおくれたそういうふうな形が見えやしないか。いまはもちろんまだ相当に売れるという見通しがあることはすでに先日来御説明を承っておりまするけれども、これが最初から、危険であったかはしれないけれども、やっておったならば、日本航空などでまだ一台もYSを使ってないなんというような状態、しかもそれは使い得るラインが実は相当あるべきはずであるにかかわらず、そういうような状態ということなども最初から量産体制のそれをとっておったならば、その点はもっとよかったのではないか。それを、最初そういうふうに資本金を食ってまずやってみて、それでこれならいけるからそれやれということで、いかにもお役人さまの堅実主義ということが実は出過ぎてしまっておって、成長産業としての自信というものは、いわゆる世界からの引き合いがきて初めて自信をつけたというふうな見通しというものは、私は学者大臣としての見通しらしからざるものじゃなかったかという感じがいたすわけですが、どうでしょうか。
  16. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それは初めは自信がなかったのです。商業飛行機というものは日本でつくったことはないのです。軍用機は戦時中につくっておったのですけれども、三十人、五十人乗りというような、そういうような飛行機をつくった経験も持ってないのでありますから、そこで、幸い軍用機をつくる技術日本人が持っておったし、そういう人がまだ生存もしておったから、そういう人たち技術を総動員して、そうしてひとつ商業機をつくってみようということでやったのでございますからして、要するに資本金を食ったというのは、それだけやはり試作の費用なんです。それだけの金をかけて、おかげでようやく自信が最近できてきたというのであります。これはすべての事業が、初めの間はみなどこだってもうかる会社はなく、初めはそれぞれみないろいろやってみて、そして苦心をして、それで損もしておるが、数年たってようやく一人前になるというのが、すべての製造工業そうですか、それと同じことであって、全国の技術家を総動員してやってはたしてそれだけできるかどうかということについては、私はそれほどの自信は当時はなかったと思うのです。しかし、やってみて、今日好評を博しておるので、ようやく自信ができたから、これから量産にかかろう。世界の各方面から注文もあるということで量産の決意ができた、私はこう思う。初めから量産やっておったら、えらい失敗をしたと私は思うのです。
  17. 塚本三郎

    塚本委員 そうであるでしょうけれども、全く関係のないものをつくるんじゃなくて、すでに軍用機としての技術の問題、だから問題はやはり経済ベースに合うそういうものができるかどうかということに問題があるのであって、航空機そのものとしてのいわゆる危険性の問題は経済ベースそのものにあるということであって、飛行機そのものに対する問題でないと私は思うわけです。しかしそれはけっこうでございます。しかしYSがそういうふうな形の危険性をはらんでいると同じような犠牲危険性といいますか、これをかかえていま数社が独自の開発をしておるわけです。YSがいかなければ、また修正を加えて、半分は政府資本でもあるからということでいかれるのですけれども、この点各社の場合にはそういうわけにまいらぬと思うのです。しかも御承知のように、日本だけがその危険をおかしておるというふうな感じさえとれるわけで、世界航空機製造実態を見てみますと、いわゆる民間のそういう試作に対しても、ほとんど世界的には、やはりYSが受けておりまする恩恵と同じ程度恩恵は、民間の独自の開発機に対しても受けておるというふうに私どもは聞いておりますけれども世界のそういう航空機製造に対する助成程度につきまして、概略でけっこうでございますから、ちょっと局長のほうからでも御説明いただきましょうか。
  18. 高島節男

    高島政府委員 ただいま御質問の点でございますが、まずヨーロッパ諸国飛行機産業に対する助成の姿勢でございますが、これはYS11のようないわゆる大ぜいを乗せて輸送する中型輸送機以上の分野に主として精力的にやられているようであります。あと分野についてのリスクはおおむね民間側がとっておる。ただ、こまかい点においては若干の援助もあろうかと思います。たとえば現在のヨーロッパ諸国のやっておりますところを概観いたしてみますと、民間航空機開発をやります際に、開発費に対しては政府は非常な援助をいたしております。先ほど御指摘のありました資本金を食ってYS11を開発をしたという姿を日本はとっておりますが、諸外国の例は、そういうのもございますけれども、どちらかといえば成功払い式の融資というような形で、場合によってはこれは全部使い切れる金としてやっております。当方資本金でスタートしたので、いきなりゼロにするというわけにいかない。その辺には相当の違いがあるのではないか。これは今後の処置、及び今回お願いいたしました出資の追加等も、その辺の事情を考えて、おそまきながらやってきたという感触におとりいただいていいかと思います。  それから、そのほかに生産設備政府から貸与しているというような例がだいぶあるようでございます。当方研究開発段階においては航技研その他の設備民間が活用しておるというような形でやっております。これはアメリカにおいて相当生産設備貸与の方法が出ておるようであります。それから量産資金につきましては、これはフランス中心に、やはり貸すという形ではございますけれども相当政府援助があるようでございます。わがほうの体制は、YS11につきましては、現在政府保証債を出しまして、政府保証ということで消化のできる資金調達をやってまいりました。ところが、きのう御説明いたしましたように、需要の大宗がこれから先輸出のほうに向いていく、とすると、これは輸出入銀行の活用ということになってまいりまして、海外との金利差考えながら、バランスのとれた資金援助をしていく。この面におきましては特に他の機種、YS11以外のものにつきまして現在売り方が標準決済で売っております。したがって輸銀の資金要求という形になっておりません。あるいはコンサインメントでやっていくというような形になっておりますが、この辺は民間側のほうも、先ほど大臣のお話もございますので、むしろよく作戦をお互いに考えていって、どうやったら円滑に、いまたとえば海外資金繰りに悩んでいる際にどうしたらうまく切り抜けられるかということを少し検討いたしてみたい、こういうように考えております。  それから輸出金融につきましての一般の情勢は、やはり輸出入銀行とぴたり合うような機関が各国にあるとも限りません。あるいは保険でやっておりましたりいたしますが、何らかの形で、輸出に向く場合には相当幅広く援助をいたしておりまして、貸し付け金の形ではございますが、貸し付けをいたしておるということでございます。その辺、バランスをとりまして、今後の施策を考えたいと存じておる次第でございます。
  19. 塚本三郎

    塚本委員 YS11以外の問題につきましては、あとからもう少し順を追うてお聞きしたいと思いますが、大体大臣及び局長のほうから同等の協力体制をとっていただけるような御発言をいただいておりますので、安心しておりますが、たとえばこのYS11の問題で、おそまきでありますけれども政府保証量産体制へのベルトに乗ってきた、しかし一面におきましては、それだけではなくして、いまだに協力会社でございますか、会社みずからが保証をして、そして両方からのいわゆる保証のもとに金が動かされておる。まあ保証だけだからけっこうだと言われるかもしれませんけれども、これが年間の利息になっておると思うわけでありますが、十億ほどだというふうに聞いておりますが、そんな程度でございますか。
  20. 高島節男

    高島政府委員 年によって違いますが、大体年間十億ちょっと見当の支払いになっておるかと思います。
  21. 塚本三郎

    塚本委員 たとえば日本航空機世界と太刀打ちをするという状態のときに、いま太刀打ちできないのはなぜか。これを比べてみるときに、技術の問題も生産体制の問題も、大臣自信を持つに至ったとおっしゃった。まさにそのとおりであると思いますが、ただ立ちおくれておるのは、政府の補助の程度が少ないだけが立ちおくれておる、御無礼な申し上げようかもしれませんが。万が一、たとえば終戦直後におけるあの造船の利子補給、問題を残したとはいうものの、まあ佐藤総理がいまごろ自慢しておいでになるかもしれませんけれども、ともかく利子補給が日本の海運界を立ち直らせたというふうな大きな要素になっておると私は思っております。であるとするならば、この際——量産体制に対する設備の貸与、けっこうなことです。研究費に対する助成、けっこうです。この日航製、これが土台となって、これからさらに国際ラインを飛び得るようなものができるかどうかわかりませんけれども、その土台とするために資本をふやしてやるのだ、これもけっこうでございますけれども、各国が行なっておりまするように、この利子補給をこの際、年間十億程度のものであるならば、それをしてあげるというふうなことにして日航製そのものに自信をつけさせないと、いつまでも、半分自分たち保証までしてあげるというような、いわゆるあいのこのような形にしておくという体制よりも、もっとすっきりして、しかも政府協力してやったことによってこういうりっぱなものができたんだというふうな体制をとることができるというふうに思いますので、この際、この利子補給というものを造船と同じような形で航空機にも適用してみたらどうか。私案でございますが、どうでしょうか。
  22. 高島節男

    高島政府委員 いま塚本先生御指摘の点が、ちょうどいまから半年ぐらい前にYS11の今後の見通しを得まして、そしてどうこれを乗り切るかというときの一番の焦点になった点でございます。御指摘のように、確かに研究開発費の償却と、それから利息の負担が年に十数億になるという点、この二つが問題点でございます。それと同時に、これは当然のことでございますが、需要というものが、自動車のように、人口が伸びていく、国民所得が上がる、それに伴ってふえるという簡単な形で予測がつかないで、確実にこういう分野に売れるというところをつかまえる、商談の一歩前までいくのでないと、注文生産的なものでございますから、需要が確立しない。したがって量産していいかどうかわからない。こういう悩みが二つあったわけであります。ところが幸いに、後者のほうについての見通しは、御説明いたしましたように、一つの確立を得ました。これから先、大体確実に売れるのは百二十機見当である、こういうめどが一つついてまいりました。そうすると、問題は第一の点に精力的に集中して解決をしなければいけないということで、いろいろと考えたわけでございます。で、利息の支払いが非常に多いということは、逆に申しますと、御指摘のような開発費段階において全部出資金を食ってしまって、そして運転資金は全部政府保証債の金利負担と、いま申し上げました民間の調達資金というものに一部依存しながらやっておる、これが非常に大きくなっている原因であるから、この点は、まず自己資本をふやす——この法律の改正自身がそうでございますが、量産段階に入ったら出資はしないのだということが実は法律の附則に書いてございます。これが非常に障害になり、そこの点は、量産段階になって見通しがついたならば、ここではっきりした金額の出資をしまして、政府民間も同時に相協力した形で進んでおるわけですから、それぞれ応分の出資をして資金コストを引き下げるということがまず第一の前提ではないだろうか、こういう点が問題のスタートになったわけであります。  それから第二段に、それでまいりましても、百二十機以上売れれば別でありますが、なお収支計算上は若干のコストアップということも残ります。そのあたりも頭に置きまして、民間ともいろいろ御相談をしたわけでありますが、何かの形でこの際日本航空機製造事業の中に助成体制を入れていきたい。それは出資という形で全体のコストを安くする、資金コストを安くしていくというだけではなく、たとえば今回アメリカ向けの輸出につきましては、一トンほど荷物を積むところの能力をふやしてくれ、あるいは貨客の混合のスタイルに直してくれというような話が出てまいりました。これは飛行機を直すということはちょっと容易なことではございませんし、技術的な問題もからんでまいります。それに伴いまして若干の助成金を出していく。そのほか、運営上の全般の問題もございますので、それも含めまして五億円程度の補給をしていくという体制をとりまして、出資による資金コストの軽減とそういう助成金によるところの——これは利子補給じゃございません。利子補給と形式的には言い出してはおりませんが、利子が高くてコストが高いのをそういった形で埋めていくというかっこうで、両方相まってやっていきますと、需要が百二十機であれば、収支はこれで、お互いの間の企業努力も含めて、どうにかとんとんにやっていけるところのめどを得、それ以上に売れればこれはプラスアルファになり得るという見当をつけたわけでございます。YS11の姿勢としましては、この二つの突っかい棒によりまして、これから四十四年ぐらいまでのところだと思いますが、百二十機を輸出を含めてやって終わるところの経済援助の姿勢という形をこれで一応完結できるというめどを大きく得たわけでございまして、それで今回御提案を申し上げた次第でございます。外国の例でも、いきなり利子補給ということでやっているのは少のうございます。問題が一つございますのは、これは対外関係に出ていくウエートが非常に大きくなっておる。特にいままで国内に消化していたのが今度は海外に消化するので、これが輸出品として出ていくウエートが非常に高くなった段階でございます。そういたしますと、各国ともやってないのと同様に、日本も利子補給という姿勢を示すことは、対外関係においてどうであろうか。直接補助金の印象も与えてくるという辺に一つ問題を感じましたので、助成金ということが一つのその辺の、端的に申せば苦心の結果というような感じもございまして、出資のほかに助成をとることによってこの問題をやっていこうとした次第でございます。若干ざっくばらんに申し上げますが、そういう経過でございます。
  23. 塚本三郎

    塚本委員 そうすると、いま局長の説明がありました中の、利子補給という意味でないけれどもというようなことで、たしか航空機振興助成金というのが、五億でしたか、出ておったはずです。これが大体いわゆる対外的な関連等を考えてそういうものに見ておる、こういうふうに理解してようございますか。
  24. 高島節男

    高島政府委員 利子補給という制度をとったわけではございませんが、改造等によって費用もかかる、そのコストをできるだけ下げてやって、経営が安定するようにという趣旨から計上をいたしたということでございます。
  25. 塚本三郎

    塚本委員 昨日、私、お聞きしておりましたときには、そんな説明じゃなくして、YSの百二十機を終わった次の機種の開発のために、これは研究費として実は計上したやに私は受け取っておったのでございますが、全然そうじゃなくして、YS11このものとして助成をするという形にこれは一〇〇%使い得るものと、こういうふうに理解してようございますか。
  26. 高島節男

    高島政府委員 昨日御説明いたしましたときに、二つの問題をたしか一緒にお聞きになったので、あるいはそういう御印象を与えたかと思いますが、二つのことをやっておりまして、現在申し上げましたYS11についての五億円というほうは、いま先生御指摘のとおり、全くYS11に限ってやっていることでございまして、次期の輸送機とは全く関係ありません。昨日一緒に申し上げましたのは、次をどうするのだ、こういうお話でございましたから、それは現在二千万円ほど、それもちょうど本年度予算に需要調査と申しますか、オペレーション・リサーチという作業をやって次期の航空機を具体的にきめていく、研究検討をやっていく、その費用は別途また計上をしてあるという形になっております。これはYSとは全然関係ないわけでございます。
  27. 塚本三郎

    塚本委員 でしたら、この五億なんというけちなしかたにせずに、やはり利息と見合うような形で、何らか改造とか何とかというような形にしてお出しになって——といいますのは、これも昨日の質問の中にあったかと思いますが、もうこれで増資はしないんだということを、たしか局長さん言い切ってみえたやに私は聞いておりました。ところが大臣はきわめてフランクに、どんどんもうかれば、また増資をしてどんどんやればいいんです、こう大臣はほんとうにフランクにそのことの御答弁をなさっておいでになりました。もうかればそれでお互いに増資してやればいいんだ、こういうふうなお話で、もちろんそれは食い違った答弁であるとは受け取っておりません。大臣は、航空機産業だから、おのおの漸進的に、お互いにもうかれば、採算合っていればやればいいんだ。しかしこの法律によっての限界で、局長局長としての立場から、YS11を百二十機の限界にするためには、採算点をきちっとさせるためにはこれでけっこうです、それ以上の必要はありませんという。それは私は食い違った答弁だとは思っておりません。しかし、少なくともこの法律の上で論ずる限りは、これ以上出しません、これだけですと限界をきめて出しておる。ならば、次はもうこれで終わりだということでないということも、大臣みずから御説明いただいておる。そういう立場ならば、増資という形よりも、いわゆる社内におけるところの資金力というもの、あるいはまた自己資本力の蓄積をはかるということがもっとりこうな方法ではないか。そういう意味からしましても、この際この五億というものは、もう大蔵省との関係でどうにもならぬ段階かはしれませんけれども、もう一ぺん努力の余地というものがありやしないか。この点をお尋ねしたいと思います。
  28. 高島節男

    高島政府委員 昨日大臣が、さらに増資もして百二十機以上売っていく、こういう姿勢を示されましたのは、会社全体での問題でございます。私が御答弁いたしましたのは、この法案に即応しまして、政府の出資、政府自身が財政上の負担として出資をしていくのは、これは今度の問題として、百二十機にピントを合わせたところに男らしくふん切りをつけたい、こういうことを申し上げたわけでございます。それで、幸いにして今後百二十機以上売れていきまして、採算はそれだとますます合ってくると思います。採算点はよくなっていく。しかしそのための資金調達がどうなっていくかという問題になってくると思いますが、一つは、先ほど助成対策としてあまり触れませんでしたが、すでにございます輸出入銀行から、輸出が伸びてまいりますと、低利の、対外競争の可能な資金資金繰りとして戻ってまいります。現に私ども資金計画を立ててみますと、現在やっておる政府保証債あるいは政府保証借り入れ金というものは、輸出が多いために、輸銀からの資金の流入によって逆に返済可能という金繰りにもなってきております。したがって、御答弁申し上げましたのは、政府出資は一応ここでふん切って、百二十機売れ、政府がここまで出資するということはこれが主になっております。なおうまくもうかってまいりますれば、民間から公募をいたしまして、民間ベースでの増資ということも可能でございましょうし、また民間市中銀行からの借り入れ金でやっていくという道も開けてくるんではないか、こういう趣旨だったわけでございます。片方、助成金は、本年度は五億円ということにいたしておりまして、予算はそれぞれ年度限りで見通しをつけてまいりますから、出資金と違って、こういう消耗的といいますか、その年度限りで使ってしまう形の予算というものは、各年度あらためて予算の折衝をし、国会の御協賛を経ていく手続が要るわけであります。われわれの計画としては、来年度また再来年度、なお若干の助成金の必要はあろうかと思います。そのほうの予算要求には最大の努力を集中してまいりたい。本年度五億というところと、あと来年、再来年若干あれば、結果として百二十機売れれば、これは十分いけるというところの見通しをしまして、政府出資にも頭打ちをつけ、助成金も一応の見通しをつけたい、こういう次第でございます。
  29. 塚本三郎

    塚本委員 私は、YS11だけがいわゆる飛行機であって、YS11だけが日本でつくっておる、こういう形ならばそれでいいと思うわけです。何度も申しますように、YS11はモデル的に政府が力を入れてここまできておるんだ、こういう状態だから、これでやっていきますという形では、YSが独善的なそういう立場に置かれてやっていかれるということであって、実はその陰には多くの犠牲がしいられておるのだ。このことも私は聞いていただきたかったわけでございます。といいますのは、このYS11が独立採算になるために、たしかコストも一割切り下げられたことだと思うのです。しかもいってみますならば、ほかの出資せられた会社は、いつまで無配が続くのかという問題も出てくるでございましょう。もちろんそれは作業量からいいますと相当の労賃にもなるというふうな御答弁がいただけるかもしれませんけれども、しかし生産会社はあくまで生産会社でございますから、やはりこの技術を吸い取ることによって、あるいは出した以上の見返りが技術として戻ってくるということでやっておりますが、最後には、やはり生産会社としての航空機製造に対する利潤というものも彼らは夢見て、一割のコストダウンを実は甘受してきた。にもかかわらず、YS11はこれでやっていかれるというだけで安閑としておられたならば、それは最初申し上げた極端な悪い比喩ですけれども、一将功なって万卒枯るというような形の状態にさせられてしまうわけです。数社が協力をしてやっておりますその出資会社が、無配の中で、しかも実は保証の一端までしょわされておるというような形で、しかも片方軍用機等の仕事の合い間にしかあるいはできないような形のいわゆる生産体制の中で、しかもYSだけがこれでやっていかれるという形よりも、政府としては言いにくいかもしれませんが、YS11が豊かな形になって、そしてコスト自身もいままでの労に報いてやるんだ、今度はその力でもって、余恵でもって自分たちのいわゆる独自の航空機開発、あるいは量産体制への力も向けなさい。ここに初めていわゆる航空機に対する助成の法律としての意義というものが出てくるでしょうし、国会で論ずる価値があるのではないかというふうに思うわけです。そういう意味で、この問題に対して、YSでだいじょうぶだという状態よりも、YSから一般に協力した会社に、今度はいままで犠牲をしいたんだから——犠牲でないとおっしゃるかもしれませんけれども、彼らに言わせるならば、私どもの耳に入ってくるところでは、ここでこんな発言はいかがかと思いますが、やはりYS政府によるところのいわゆる半官の会社なんだ、しかしほかの小っちゃな飛行機あるいはヘリコプターをつくっておるのは、損すればまるまるおれたち会社が損なんだぞ、もうかればまるまるおれたち会社の利益なんだぞという、いわゆる肉親的な製造に対する考え方が、会社のみならず従業員の中にまで今日しみ通っておるのです。そのとき、いってみるならば、半ば他人のものというとおかしいのですが、日航製そのものだけがうまくいって、その余恵が、いわゆる配当はいつまでたっても無配、百二十機以上になったら配当なさるというようなことになるかもしれませんけれども、今日そこまで明るい見通しがある中において、いつまでもこれをほうっておくという考えであるならば、YSに対するそういう豊かな見通しがあるならば、内容もそういう状態でもって協力会社にもこの際もう少し余恵を与えてあげるべきではないか、私はこういうふうに考えますが、どうでしょう。
  30. 高島節男

    高島政府委員 先生御指摘の点は、われわれしょっちゅう協力会社とひざをまじえて状況を検討しながらやっておるわけでございまして、そういった気持ちは非常によくわかります。常にそういう面からのお気持ちがあることは察しておりますが、ただYS11の事業というものは、確かに国が一つのリーダーシップをとっていこうという気持ちになった性格のものではございますが、民間各社としましても、貴重な技術をそれぞれ持っており、しかも独立して一つの会社YS11に取っ組むということはとてもできない、全部が何らかの形で協力糾合して、そして政府の出資援助も得て初めて成り立つというところからスタートするときにはスタートいたしたわけであります。それに対して各社としても出資をし、みずから技術を提供し、そこに集まっていくという形が一番価値があるわけでございまして、その結果出てきます航空機生産によって、単に自分のところでそれだけの作業ができていくという操業度の向上だけでなく、また採算点の非常にむずかしい、リスクのある企業をあえてやっていけるという面のみならず、その間に、大臣から冒頭に御指摘がございましたような、航空機そのものに取り組んで、その中にまた新しい技術発展の萌芽も見つけていかれる、そしてそれが各社それぞれの利益になるというメリットがあることを考えてお互いにやってきたことではなかろうかと思います。したがって、日航製各社ということは、対立的な角度で考える問題ではなくて、日航製もみんなで協力して育てつつ、無配という時期はお互い株式会社として苦しいわけでありますが、それによってのポテンシャルな効果があるので、それを思いつつ、片方めいめい単独でできる小さな飛行機というような分野にはそれぞれの会社のリスクによって臨んでいく、こういうのが現在の態勢ではなかろうかと存ずるわけであります。したがってわれわれといたしましても、今回出資を仰ぎ、また補助金をつけて、日航製の仕事特にYS11の仕事の最終段階へいよいよ入ってまいることになります。  それと並行いたしまして、各社希望を持っていただきたいことは、幸いにして輸出もこれだけ伸びてまいりまして、百二十機は最低というラインでございますから、これをいかにじょうずに育て上げるかということで各社がこれから得る実りが多い、経理的に申せばそういう効果が出てくる、またこの政策を通じまして得られた経験等を今度活用されて他の機種単独でやられる、あるいはまた将来いかなる飛行機開発されていくことになるか、これは調査の結果に待たないとわかりませんが、そのときにおけるそれぞれの体制の基礎になってくるという辺にメリットがあるかと思いますので、YS11には各社それぞれの最大の御協力を仰いでいく姿勢でもあるし、それが合理的なものじゃなかろうかと考えております。  YS以外の分野につきましても、国が大いに輸出を伸ばすというところまでいってもらいたい、また需要の傾向も輸出あたりにむしろ希望が持てるので、この間は輸出入銀行資金のじょうずな活用方法等をもっととりまして具体的に発展をさせていって、その方向で各社の全体の経理が結果的に安定していくように心がけてまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  31. 塚本三郎

    塚本委員 製造の問題は以上くらいにしまして、今度は、販売の問題でございますけれどもYSに対するデモフライトはいままで何回ぐらいおやりになったのですか。
  32. 高島節男

    高島政府委員 北米に一回、続いて南米に一回、二回やっております。
  33. 塚本三郎

    塚本委員 私はしろうとだからよくわかりませんけれども、デモフライトの結果が非常に好評であって、注文あるいは引き合いが出てきた、こういうふうに昨日来承っているわけです。ならば、まだその可能性というものを——自動車にたとえて恐縮ですけれども、あちらこちらでモーターショーをすばらしく行なって、これのために売れるかどうかはわかりませんけれども、はやりになって、それが自動車ブームというものをつくっておるのではないか。こう考えてまいりますと、相当の金額がかかるということも承っておりますが、飛行機というのは量さえ売れればもうかってしかたがないという表現が適用されるくらいのものだそうでございまして、実はそういう付加価値が高い産業であるならば、この際大量販売の可能性のあるところに対して思い切ったデモフライトを敢行することが私は一つの方法じゃないかと思いますが、これからの計画はどのような状態になっておりますか。
  34. 高島節男

    高島政府委員 デモフライトをやっていくということは去年から初めて会社の計画で具体化したわけでございます。これは外国にやっていくというのがねらいでございまして、デモフライトをやる前に、輸出について十分な情報といいますか——YS11というのは特殊な飛行機でございます。非常な長距離を飛ぶというよりはむしろ短距離、六十人乗りぐらいのところで中都市間の輸送のつなぎに非常に便利だという一つの特殊な分野をとらえた形でもありますので、デモフライトをやる前に十分な調査ということが必要だったわけでございます。そういう営業的なセンスが充実されてきたというのが前提にありまして、それがデモフライトをきっかけに需要をうまく引っぱり出してきたというような傾向がございます。モーターショーの場合は、モーターショーをやった結果売れたのか売れなかったのかわからないというこんとんたる状態かと思いますが、飛行機の場合はそういうことをあまりやらないものですから、この機会に非常に盛り上がってきたということではないかと思います。来年度も計画を持っております。これはどの地域でやるかということはよほどよく考えてからやらなければいけないと思いまして、その地域をいまいろいろと検討しておるわけでございます。来年と申しますか、本年の中でも新しくこれをやりまして、うまく輸出の商談をはかってまいりたい、あるいは百二十機以上のプラスアルファをとっていく手がかりにしていきたいと思いまして、よく検討しておるわけでございます。
  35. 塚本三郎

    塚本委員 具体的に今年度は何回ぐらいそれをなさるような計画がありますか。
  36. 高島節男

    高島政府委員 現在のところ大体南米、北米の売れ行きの見通しは、商談ベースに入ってきた段階でもございますので、あらためてデモフライトをやるならば一回ではなかろうかと考えております。
  37. 塚本三郎

    塚本委員 ヨーロッパなどでは全然需要のない機種というふうな前提に立っておるわけですか。あるいは私どもしろうとから考えてみますと、ヨーロッパなども各国間におけるところの距離が短いから、こんなものをたくさん利用させることができるのじゃないか。現にオランダの製造なさったものが三、四百機売れたということまで聞いておる。そういう実情から照らし合わせて、それよりもさらにすばらしい性能があるということも先日来御説明いただいておるはずです。そうであるとするならば、やはり調査の結果、ヨーロッパなどももう少し進んで追いかけていくというようなこともむだじゃないような感じがするのですが、どうでしょうか。
  38. 高島節男

    高島政府委員 ヨーロッパの需要——まあ、デモフライトをやるかどうかは第二段といたしまして、YSあたりに対する需要の状況を、感じとったところを申し上げますと、御承知のように、あの地域はEECが結束されてまいっております。EEC相互の間は関税障壁、輸入制限等はローマ条約の趣旨に基づいて一〇〇%近く撤廃せられておりますが、地域外に対してはどうも、これはわれわれの邪推が入るかもしれませんが、制限的な動きが強うございます。われわれのほうも顧みてみますと、極力国産機を使ってほしいということで、国内のユーザーに対してその辺を要請しておりますが、向こうもまた同じような立場に立つ面もございまして、そういう制度的な失敗が一つあるのではないか。それから、何といってもなじみといいますか、そういうものがまだ第二段のグループでございまして、北米、中米あたりに対しての気持ちと向こうの気持ちとの間には、相当需要に取りついてくるまでの間に距離があるように考えております。ただ、デモフライトをやります先というのは、まだ確定をいたしておるわけではございませんが、どうも、これからやりにくいのは、大きな需要がありそうだなというところが二つほどあるだけでございまして、あと何となく散らばっておりまして、散らばったところにあっちへ行きこっちへ行きというのはあまり効果がございませんので、もう一度ヨーロッパも含めて世界全体の需要の動向を掘り下げて、ここがきくなというところに集中的にやっていくべきではないだろうかという感触を持ちまして、いまだその対象地域を決定し切れないでいる段階でございます。
  39. 塚本三郎

    塚本委員 YS11の問題を私ずっと聞いておりまして、こんな状態でうまくいけば、おくれて出てきた日本がこのままでいけばすばらしい成績に終わる。実に慎重にしてロスがなくて、そしてすべての面にこれはうまくいったというふうな、御説明を聞いておりますと、事実はそうだと思うわけでございます。多くの協力会社犠牲があり、政府助成の偉大な力があったとしても、しかし、これは極端な表現を使いますならば、YS11の成功は奇跡なんだ、航空機工業はこんなに甘いものじゃないんだ、だからデモフライトして、五千万円金を使って一機も売れなかったというところがあって差しつかえないじゃないか。日本航空機はこんなものだぞということをヨーロッパ人に示すことによって、YSは売れないかもしれないけれども、しかしながらそれに類する、御承知の、あの回転飛行機のヘリコプター一機を売るだけでも、私は、あるいはそういうふうな付属のものが出てくるんではないか、だから、こんなに効率のいい、そして一回飛んだことによって十何機注文がありそうだとか、二回飛んだだけで三十機あるいは四十何機すでにべたに引き合いがきておるなんという、そんなうまい商売がこれからもあっては私はおかしいという感じがする。しかも、アメリカという大先進国に伍して、飛行機に関してはそういうふうな状態なんですから、私はそういう点、最初から再三申し上げておりますように、大臣が大胆におっしゃったような状態を、事務当局でもやはり日航製に対して多少の失敗や損失があってもやりなさいというような、逆にけしかけるくらいの状態があってしかるべきではないか、かように思うわけです。しかし、御検討いただいておると思いますので、私、質問しておりますとまた時間が少なくなってまいりますので、次に移ってまいりたいと思いますが、運輸省の方にちょっとお伺いしたいと思います。  日航線にYS11を一台も使っておいでにならぬということを昨日聞いたのでございますが、いろいろな事情があると思いますけれども、このYSに対する利用の余地というものはどんな状態になっておるでしょうか。
  40. 住田正二

    ○住田説明員 日本航空はいま先生がおっしゃいましたように、YSは一機も使っておりません。日本航空は、御承知のように国際線と国内の幹線をやっているわけでありまして、全部ジェット機になっております。YSが一番適しておりますのはローカル路線でございまして、国内のローカル路線につきましては、現在YSを十五機使っております。それまでに、フレンドシップという飛行機を三十九年の末までに二十五機入れておりまして、そのあとはローカル路線のほうには外国の飛行機は入れておりません。現在ローカル路線には全部YSを使っております。
  41. 塚本三郎

    塚本委員 しかしそれは日航じゃないでしょう。ローカル線で入れておるのはよその会社ばかりで、日航で入れているんじゃないでしょう。
  42. 住田正二

    ○住田説明員 日航は国際線と国内幹線をやっているわけで、国際線のほうはYSを使う余地がないわけであります。国内線のほうはYSを使えないことはないと思いますけれども、新幹線との競争、それから経費の面等で、ジェット機のほうが有利だということで、現在国内幹線のほうは全部ジェット機になっております。したがって、YSを使う余地がないというふうになっております。
  43. 塚本三郎

    塚本委員 余地がないといいますのは、もうYSができてからは同じような機種は外国からは買っていないということですか、それともあるいは、同じような六十人乗りぐらいの飛行機は買っておるけれども、採算点で外国のほうがいいというような状態なんですか。その点どうなんでしょうか。
  44. 住田正二

    ○住田説明員 現在日航が持っております飛行機は、全部百二十人乗り以上の飛行機ばかりでございまして、YSと同じような六十人乗り飛行機は、日航は現在使っておりません。昔持っておりましたDC6が残っておりますけれどもYSができましてからは六十人乗り飛行機は一機も買っておりません。
  45. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。それならばけっこうですが、ただ、私はこれはしろうとですから的はずれの質問で笑われるかもしれませんけれども、外国では強力な国のいわゆるバックアップによって販売がなされておる、したがって、君の国の飛行機を買うんだから、そのかわり次に必要なときには同じような機種であるならばこの飛行機を買ってくれよと、こういう販売に対する抱き合わせがなされておる国があると聞いておるわけでございます。百二十人乗りなんという大きな飛行機を買えば、金額はずいぶんなものだろうと思うんです。そのとき今度、そのかわり六十人乗りくらいのが必要なときには極力わが国のものを使ってくれ、こういうような条件というもの、そういうふうな売買というものが国によってはなされておるということを聞かされておるのでございますけれども、そういう点、気前よく外国の大きな飛行機日本でできませんから買わざるを得ないでしょう。そのときに、日本にもYS11というものが優秀性を誇っておるのだ、あるいはまたそれだけではなくして、幾つか各社において小さい飛行機等の製造がなされておる、そういうことも、外国がそういうことをしておるならば、日本もそれくらいの商魂を持って、やはり買うときについでにそういうふうな販売のルートをつけておく、こういうふうな考慮というものを考えられたことがあるかどうか、その点はどうでしょう。
  46. 住田正二

    ○住田説明員 実はいままで、先生のおっしゃるようなことを考えたことはなかったわけでございます。現在、日本航空が買っております飛行機は、全部アメリカ飛行機でございますけれども、買う場合にはボーイングとかダグラスという製造会社と直接話し合いをいたしておるわけであります。したがって、ボーイングとかダグラスにYSを買ってもらいたい、売ってくれということは、いま非常にむずかしいんじゃないかという感じがいたします。それと現在この飛行機、ジェット機の販売は売り手市場になっておりまして、買い手のほうが非常に弱い、いまこれからDC8に買いかえるといっても、三年先でないとできないというような状態でございまして、売り手が非常に強いという状態でございますので、なかなか頼みにくいのじゃないかという感じがいたすわけであります。しかし、いま先生のお話にございましたので、今後日本航空なりあるいは全日空なりが外国飛行機を買いますときには、できるだけそういうような努力をするように指導いたしたいと思います。
  47. 塚本三郎

    塚本委員 ついでに、通産省のほうからもちょっとその見解をお聞きしたいと思います。
  48. 高島節男

    高島政府委員 ただいまの御指摘は非常に興味深いアイデアだと思います。ただ、いま運輸省から御説明がございましたように、非常に売り手市場になっている大型の飛行機を買っていること、それと先方のエアラインと航空機メーカーとの間のリンクが非常につきにくい、ついてないことが多い、この二点で現実的に非常にむずかしい点があろうかと思います。しかし、これはいま少し掘り下げて実態を見てみる必要があり、そこに作戦の立てようがあるかと思います。ただ全般の貿易の制度から申しますと、御承知のように、輸入をいたします際にバーター式にやっていくということは、世界的な動きとしましては、ガット、IMFの一つの理想もございまして、正面切って政府乗り出して、バーターでなければ買わぬぞということは、これはできません。それで、運輸省のほうからいまおっしゃったような点がむしろ研究ポイントでございまして、入れる機会に、向こうの買い手のほうとの間のつながりをよくとらえまして、そこでかけ合っていく、こういう手があるかと思います。  アメリカ以外の国で何かそういうこともあり得るのじゃないかという感じがふと私もいたします。というのは、アメリカよりも幾分政府経営的な色彩の強い国でございますと、この間の連携は、向こうのほうはわりあいとりやすい。こちらも口をききやすい。バーターとは言わなくとも、この機会にお前のほうも考えてくれてもいいじゃないかというきっかけがありそうな感じです。これは各国によって事情もばらばらでございます。非常にむずかしい問題とは思いますが、おもしろい着眼点でございまして、今後この問題について研究をいたしてみたいと思います。
  49. 塚本三郎

    塚本委員 フランスなどは国家的な立場でそういうことを行なっておると聞いておるわけです。特に積極的にそういうふうな体制がとられておると聞いております。立ちおくれておるといわれておる日本航空界において、しかも見返りの飛行機YS11だけではなくて、ずっと調べてみると、MU2にしても、そのほか試作機を富士あるいは伊藤忠なども二機ずつつくっておるようでございますね。ですから、幾つかの機種をこういう体制の中でこしらえておるとするならば、ましてヘリコプターなどについては相当数、見てみると、各社が三十、五十、五十なんというような製造をしておるようでございますね。ですから、日本においても航空機はいまたいへんな産業になりつつあるということに驚いて私はこの問題で調べてみたわけでございます。そうであるとするならば、とにかくジェット機の百二十人乗りなんという大きなものを買うのですし、しかも一機や二機じゃないのですから、せめてYS11を買ってくれなければ、ヘリコプターの三機や五機くらいはついでに買ってくれてもよさそうなものだという感じがするわけでございます。しかも特に小さなMU2などについては一億と聞いておりますが、アメリカ市場だけで三百からのはけ口があるというふうな前提のもとに生産が進められた。それが途中でいわゆる資金その他販売の問題でストップした。私も工場を見てまいりましたが、それはすばらしい生産体制です。そうして月産十機は楽にこしらえられる体制の中で、いま販売の問題でストップしておるのだというような状態です。この金額を自動車に換算してみますると、優に一機売ることによって自動車三十台になり、したがって月産十機売るとするならば、三百台の自動車を輸出したと同じような形になってくる。年間にするならば三万台の自動車を実は輸出したと同じ金額になってくる。まさに日本の大産業だ。アメリカの市場調査をして、少しそのルートに乗せてやるような努力をするだけで、すばらしい、自動車の輸出産業に匹敵するだけの金額になる、こういうことが計算上成り立つわけです。そう考えてみると、先ほど大臣がおっしゃられたと同じようなペースでもってこれに対する協力をしてあげるならば、これは単に航空機の問題だけではなくして、先ほどからの成長産業としての大きな問題として浮かび上がってくると思うわけです。したがって、私こまかい一つ一つの問題についてお聞きしたいと思いましたけれども、約束の時間がきてしまいましたから、一つ一つの問題については私は確認を申しませんけれども大臣の、YS11と同じようなペースでもって御協力いただく、こういうお話を信用し、そしてまた具体的に業者と局長さんのほうと話し合いを進めていただきまして、そしてYS11と同じようなペースでもってこれに協力していただいて、まさに自動再産業と同じように飛行機産業もまた成長産業としての実をあげていただくようにひとつ御協力いただきたい、このことをお願い申し上げまして私の質問を終わりたいと思いますが、最後に大臣局長さんのほうから御答弁をいただきたいと思います。
  50. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いま塚本委員の言われたとおり、航空機産業成長産業でありますからして、YS11に限らず、他の優秀な飛行機生産することができれば、どんどんひとつ生産してもらって、また政府もその点において大いに助成したい、こう考えております。
  51. 高島節男

    高島政府委員 ただいまの大臣のお話のとおり、基本ラインに沿いまして、今後民間側のほうの実情もよく調べまして、御意見を聞いて、成長産業としての航空機工業全体が、特に輸出を中心にしていかように伸びていくかということを十分に検討し、対策を立ててまいりたいと思います。
  52. 島村一郎

    島村委員長 中村重光君。
  53. 中村重光

    ○中村(重)委員 きょうは政界の大先輩である清瀬先生のお葬式があるわけですし、また大臣も最近は非常に精勤しておるようでありますので、できるだけ簡潔に質問を終わりたいと思います。  それから答弁が、少し離れているためか聞き取りにくいですから、ひとつ大きい声でお答え願いたいと思います。また非常に懇切にお答え願いますのはけっこうでございますが、できるだけ早くきょうはあげたいと思っていますので、簡潔にお答えを願いたいと思います。  各委員の質疑、それに対する答弁を伺っておりますと、国策会社であるところの日本航空機製造株式会社の存在そのものにどうも積極的な意義を私は感じない。なるほど民間航空、日本の航空技術を非常に向上する、航空機産業を育成して、輸出をさらに伸ばしていく、そういうことの必要性というのは感ずるわけでありますから、現行の航空機工業振興法そのものは当然私は必要であるとは思っております。ですけれども、どうも政府の、国策会社であるところの日本航空機製造株式会社に対する考え方というのが、どこまでこれを守っていかなければならぬという考え方を持っているのか、その点に対する政府の答弁を聞いておりますと、迫力を感じない。今度の政正案を見ましても、御承知のとおり四十八回国会でございましたか、これを金額をふやすつど法律の改正案を出すのは適当でない、できるだけ政府だけでやるということで、「予算の範囲内」ということで改正をした。私どもはもちろんそれに対しては抵抗を感じておったわけでありますが、今度はそれを改めて四十二億という金額を明示するということになったということですから、そのことは私どもはいいと思うのですよ。ですけれども、朝令暮改というか、そうした措置をとりながらさらにこれを改めるということになったというのはどういうことであろうか。どうも政府考え方というのが首尾一貫しない。大蔵省がどうもこの会社に対して予算をどんどんふやしていくことに抵抗した、もうできるだけこのほうはふやさないようにしたいという考え方から、私は金額明示ということになったのではないかというふうに思うわけです。そうであるとするならば、私は政府全体の中でこの会社というものを盛り育てていかなければならぬという考え方が、必ずしもある一致したものを持っているということにならないのではないかというふうに感じる。せっかくつくった会社なんだから、これをどうもそのまま見捨てるわけにはいかないから、何とかひとつこれを育てていかなければならぬというような、そういう消極的な考え方というようなものが今回の改正案ということであらわれてきたのではないかというような感じすら実はするわけです。さらに大臣が、また研究開発上必要になってくるならば増額をするのだ、いわゆる出資金をふやしていくのだ、そのために改正案をまた提案をするようにするのだというようなお答えもあったようであります。そういう場合に、全体的にいわゆる「予算の範囲内で」ということにまた逆戻りをするということになるのではなかろうかという感じすらいたします。だから、そこらあたりはもう少しきちっとしたものを持っておられなければ、どうもあまりにも政府考え方というものがぐらついていく、そういう態度はよろしくないと思います。先ほども申し上げましたように、金額明示という形において、ふやしたり減らしたりいたしますときに国会の議決を求めるという態度は、これは私は賛成なんだけれども、ともかく基本的なものの考え方というものがどうもはっきりしたものがないということは問題であるということを指摘しなければならぬと思います。ですから、そこらあたり大臣のひとつきちっとした考え方、それをお答え願いたいということと、それから時間の関係から続いて申し上げるのですが、今度は量産体制に入って、したがって、民間政府でもって増額をすることになる。ところが、九十機程度と想定をしたものがいま三十機ということで見通しをはるかに下回ってきている。日本の航空技術というものは残念ながらまだ非常におくれている。そういうことはいわゆる販売面からいたしましても国際競争力に必ずしも勝つとはいえないということからいたしまして、いわゆる百二十機を想定をしているものがはたしてまたそういうことに想定どおりなるということは考えられないのではないか等々、いろいろと私は疑問を感じ、その疑問の上に立ってお尋ねをしてみたいと思うのでございますが、一応以上申し上げた点について大臣のお答えを伺ってみたいと思います。
  54. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ただいま中村委員の御質問の要旨は、航空機産業について政府に確固たる信念がないのじゃないかということが根本のお考えのように思います。これは私は、日本政府としてまた皆さん方の御賛同も得て航空機生産乗り出したということは、航空機産業が将来成長産業であるという見通しのもとに乗り出したと思うのであって、そこで初めは、先ほども申し上げましたが、いままでは軍用機を専門につくっておったのでありますが、五十人乗りあるいは六十人乗りというような商業機をはたしてつくる技術がありやいなやということについて多少私はみな疑問を持っておったと思いますが、しかし、幸い飛行機自体をつくる技術を持っておる技術家がまだ残っておりまするし、またそういうような学問も学校でも教えておりますので、そこで、これらの技術あるいは技術家を総動員してつくってみよう、そうしてはたしてうまく性能のいい飛行機ができるかどうかということで最初乗り出したと思うのです。それで幸い最近になって好評を得て、各国から注文を受けるということで、初めてこれならばひとつ飛行機をつくってもやっていけるという自信を得たと思うのです。これは政府のみならず民間技術家もそういう自信を得たと思うのであります。そこで、この際思い切って飛行機の増産政策を立てたいということで、今回の資本出資の件を皆さん方にお願いしておるというような状態にあると思うのであります。幸い、百二十機製造しても十分売れるということが確定いたしますれば、今後ますます私は日本飛行機が国内のみならず海外へも売れるということになると思いますので、先ほど申し上げましたとおり、これは成長産業であるし、また飛行機の利用ということは今後ますます私は盛んになると思っておりますから、したがって、飛行機の売れる可能性は世界的に増大しますから、幸い日本のつくるYS11は性能のりっぱな飛行機であるということであれば、今後はどんどん私は販売ができるのではないかという意味で、この際政府は思い切って助成すべきだということで今回出資することになったのでありますし、また今後どんどん採算ベースも合うしということになれば、会社自体が増資もやるだろうし、またあるいはほかの会社も、飛行機生産技術を十分に会得して、これなら大丈夫、新型の飛行機ができるというような確信を得れば製造を開始するようになると思いますが、しかし、それについてあるいは資金あるいは技術の点において政府助成を必要とする場合には、この際政府も思い切って助成すべきだという考えをしておる次第であります。
  55. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣お答えのように、日本航空機産業というものは育成強化していかなければならぬ、技術を向上させる、そのことは私も異論がないのであります。賛成ですね。ただ、その政府助成のあり方、そこに若干私の考え方というものと違うところがあるわけです。そういう意味でこの国策会社というところの航空機製造株式会社に対して、政府の取り組みの態度あるいは実績、いろいろな面から迫力感をどうも感じないということで、何か別の方法というものが政府助成策としてあってもいいのではないかというような感じがいたします。ですけれども、その点をあまり議論をしておりますと時間がございませんから、次の点をお尋ねしてみるのですが、日本航空機工業の戦後から四十一年度までの生産額というのは、大体累計どの程度になっておるか。それから、内容的には、防衛庁であるとか、あるいは米軍の特需というのが大部分ではないかと思うのでありますが、数字だけ簡単でけっこうでございますから、お答えを願いたいと思います。
  56. 高島節男

    高島政府委員 先に、需要の中身、ウエートのほうから申し上げます。  防衛庁需要が比較的大きなシェアを占めておりまして、三十六、七年ごろは七六あるいは七一という程度のパーセンテージを占めております。それに対しまして、特需はおおむね五%前後とお考えいただけばいいのではないかと思います。これは修理だけでございます。したがって、民需がその残り、それに輸出が若干出る、こういうかっこうになりますが、四十一年度での状況を申し上げますと、防衛庁が六五%まで相対的ウエートは減ってまいっております。特需が六%、民需が二四%、輸出がこのあたりから頭をもたげてきまして五%、こういう形になっております。  金額の総額は、三千八百九十四億円というふうに総売り上げが相なっております。
  57. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまお答えを伺ってみましても、防衛庁関係ということにほとんど依存しておる。そのあり方について、私は問題を感じるわけですが、そこで、防衛庁あるいは米軍、それから内需、さらに輸出のそれぞれの割合というようなものに対する見通し、これがこの後どう変わっていくか。また、政府の政策目標として、どういうことが政府考えている理想図というものに合致するのか、その点どうでございましょうか。
  58. 高島節男

    高島政府委員 需要見通し需要分野別にこまかい把握をいたし切っておりませんが、大体のトレンドといたしましては、今後五年間ぐらいのところを考えますと、防衛庁の需要はほぼ横ばいであろうかと思います。これに対しまして、民需、輸出を含めまして、YS11あるいは先ほどから御議論のございましたMU2等のほかの飛行機等を含めまして、増加をいたしてまいる見込みでございますので、計数的にはちょっと正確に申し上げられませんが、先ほど申し上げた防衛庁需要の六五%というものは、逐年相当減っていくトレンドをとるのではないかというふうに考えております。
  59. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまお答えのとおり、横ばいというか、三十八年、三十九年をピークにしてちょっと下がってきておりますね。そこで、防衛庁が日本航空機産業の育成というものにどの程度協力をしようと考えているのか。どうもそこらあたりが、私は、積極的な防衛庁の協力体制というものがあるというようには感じられない。そうなってまいりますと、防衛関係の需要というものが減っていく。輸出であるとか、民需というものがふえていくということでなければ、これは先ほど来から大臣その他政府委員のお答えになっておられるような、航空機産業というものの育成、振興というものが期待されない。YS11の場合におきましても、私はそのとおりだと思う。ただ、そういうことから考えられてくるのは、第三次防衛整備計画という中でどの程度YS11に対して受注があるとお考えになっておられるか。また、日本航空機産業というものが、第三次防衛整備計画というものとの関連ということによって、この後上昇するというようなことが期待されるのか。先ほど局長がお答えになりましたが、その防衛計画は一段と減ってくるだろうと思うというお答えでしたが、そのお答えは、第三次防衛整備計画というものがあっても、やはりそのことは下がっていくということに変わりはないのだということを意味してのお答えであったのか、それらはどうでございましょうか。
  60. 高島節男

    高島政府委員 需要の絶対額で横ばいという大体の感じでございますから、したがって、相対的な比率は減ってくるということでございますが、防衛庁の三次防における調達計画はおおむね十機程度、この五年間で計画いたしておりますのは十機程度需要予定ということになっております。したがいまして、御指摘のとおり、防衛庁に大きな機数を需要の伸びとして求めたわけではなく、やはり民需を中心として、特に輸出を中心といたしました形で航空機需要が伸びてまいると思います。もちろん、防衛庁からいろいろと注文がございます航空機開発に当たってまいりまして、その開発いたしました技術というものは、航空機工業全体をいろいろな意味で支えていく進歩の刺激になるという面はございますが、需要機数としてそこに大きな伸びを期待いたすということはできない状態ではなかろうか、かように判断いたします。
  61. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えのとおりだろうと思うのです。三次防の中身を見てみましても、航空自衛隊は輸送機が十機ということになっておりますね。救難用の航空機、これはYSの場合には関係がない。これが二十六機ということでございましょうか。海上自衛隊の固定翼の対潜機、これは潜水艦の関係で、六十機、ほかはほとんどヘリコプターだということでございますから、YSの場合、第三次防衛計画というものに対する期待というものは持てないという局長先ほどのお答えのようであろうと私は思う。  そこで、お答えがございましたいわゆる民需の期待、それから輸出というものをいかに伸ばしていくかということに要はかかっている。また、それでなければならない。私どもがこの改正案に賛成をするということになります意義はもちろんそこにあらねばならぬと思うわけでございます。そういうことから、私どもは、どうしても政府に対し申し上げなければならないことは、この審議会の答申というものをいかに尊重しようという熱意を持って対処しておられるのかということを一点どうしても承りたいのです。  さらにはまた、私どもはさきの改正案の場合に附帯決議をつけたわけですが、その附帯決議というものが尊重されていない。ここにやはり問題を感ずるわけでございます。先ほどの日航の場合における需要等々の問題もある。さらに、私どもがいまその飛行機乗りましてもわかるのでありますけれども、どうも大型機ということを非常に求める。そして、乗客が乗っておるのかといいますと、がらがらで飛んでいるというようなことがあるわけですね。それは民間の航空会社がやることなんだからどうすることもできないのだというようなことでありますと、これは何をか言わんやということになるのでありますけれども、国策的な立場からそういうことがいいのかどうか。やはり、もう少し国としての政策目標の上に立った指導であるとか、監督であるとかなんとかいうようなこと、特に民間機に対する協力を強く要請をするというようなことも非常に必要になってくるのではなかろうかと思うのであります。  私は、具体的に一つ一つあげましてお尋ねをしてみたい、答申の内容にいたしましても、あるいは附帯決議の問題にいたしましても、そう思うのでありますけれども、できるだけ早くきょうは終わりたい、こう考えておりますので、一括した形でお尋ねしたのでありますけれども、ひとつこの点は詳細にお答えをいただきたいと思っております。
  62. 高島節男

    高島政府委員 航空機工業審議会の答申の中核をなしますのは、YS11の販売の予定を正確に把握いたしまして、かために押えたところの百二十機を基礎といたしまして、それを達成していくのに必要な対策を、この機会に講じていかないと手おくれになる、タイミングはいまだという、こういう感触であったわけでございます。資金的にまず、先ほどの御質問でお答えいたしましたように、出資をいたしまして、金利負担の軽減等をはかっていく、さらに改造助成等の処置を講じまして、採算ベースに乗せていくという方法をとり、会社自身民間協力を得て企業努力をいたしてまいれば、百二十機売れれば収支はこれで何とかとんとんにいく、またそういう時期に入りつつある、こういう事態にいまなってまいりましたので、それだけの予算上の措置というものをとることにいたしたのが、この答申に対する基本的な受け方であろうと思います。さらに答申の中で、また御指摘の附帯決議で、民間の航空会社内部についてはYS11を極力使っていく、そのために開発銀行の資金等は、これは別途従来からも援助をいたしております。そういう制度をつくってございます。これは後ほど運輸省のほうから補足していただいたほうがいいかと思いますが、現在国内のローカル線については、先ほど御説明がありましたように、YS11を原則として使用するというたてまえで指導をして、ユーザー側の協力を得ておる、こういう状態でございます。ただ国際線や国内の幹線というほうには、これはやはり飛行機の性格からいって、使用することになっていないという体制でございます。ローカル需要についての飛行機の輸入については、その点はいろいろ問題はありながら、御協力をいただいておるというふうに心得ております。
  63. 中村重光

    ○中村(重)委員 御承知のとおりベトナム戦争で、アメリカ航空機工業というものは軍用機生産に実は追われているわけです。そのために、何というのですか、日本に対する輸出の面におきましても非常に値段が高騰しているのですね、それから品質も非常に悪くなっているということが伝えられておるわけです。そういうときこそ日本航空機工業を非常に振興し強化していくという絶好のチャンスだ。やはり何かひとつ前進をしていくという場合は契機というものがある、私はいまその契機にあるのだと思う。そういう際に、せっかくこういう改正案をお出しになる、私は迫力を感じない。非常に消極的な感じがすると申し上げたのでありますが、こう申し上げておることに、あなた方としては、いやそうじゃない、君の認識不足だというような反論をなさりたいのでしょうけれども、私がこう考えるということは、それなりにやはりあなた方も何かお感じになる点もあるのではないか、こう思う。ですから、先ほど私が指摘いたしました、いま局長からお答えになりました、いわゆる答申、これを生かしていく、これを受けた国会の附帯決議を尊重していく、単に尊重するということだけでなくて、大臣先ほどお答えになりましたように、将来性ありとあなたが、確信を持って、またそうあらねばならぬわけでありますが、日本航空機工業、この産業を育成していく、いまこそやるのだという気魄でもって積極的に取り組んでいかれる必要がある。やはり輸入をいま押えなければジェット機を民間の運輸会社、輸送会社がどんどん輸入して、これを使っていく。ある程度これはやむを得ないところもありましょうけれども、民需でもって、さらにはYSでもって足りる。またそれがいいというような面もあるのでありましょうから、そういう点はひとつ大いに奮起して、この際対処していただく必要があるのではないか。私どもといたしましてはこれにきょうは附帯決議を実はつけません。すっきりした形でこれに賛成をして通したいと思っておりますから、どうかひとつ心機一転、大いに日本航空機産業を振興して、そうしてせっかくつくりましたこの国策会社というものを、全く目的を十分達成したという、何というか高い評価を受けられるように、菅野通産大臣のひとつ積極的な取り組みを期待したいと思いますから、最後にあなたの決意を伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  64. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ただいま中村委員の言われたとおり、実は正直なところを申し上げますと、YS11が海外へこれほどたくさん輸出ができようということは、大体からいうと予想しなかったわけであります。これはいま申し上げましたとおり、アメリカが大型の飛行機ばかりつくっておって、中型の飛行機、中距離の飛行機をつくっていないというところにすきがあったと思うのです。それだから日本YS11というものが今日世界各国から注文を受けてきたというのでありまして、日本飛行機の発展のためには、絶好のチャンスだというようにわれわれも考えておるわけであります。そこで百二十機分の見通しがついたので、この際思い切ってこの会社自体にも出資して、そうしてひとつ大いに発展をはかろうということを考えたわけでありますし、先ほどから申し上げましたとおり、ほかの会社もひとつこの機会に乗り出してもらいたいと考えておるのでありますからして、この飛行機製作というものが、先ほど申し上げましたとおり成長産業であるという見通しはわれわれもいたしておるし、皆さん方も同様にお考えになっておられると思いますから、これはこの点においてはひとつ政府も大いにやりますが、民間会社もひとつ思い切ってやって、そうして民間会社のほうで、資金でこういう資金が足らぬとか、あるいはこういうような技術が足らぬとかいうようなお申し出があれば、これはできるだけ政府がその点について助成をして、そうして官民一体になってこの飛行機産業を第二の自動車産業みたいにしたい、こういう理想をもって臨んでおりますから、ひとつ御協力を特にお願い申し上げたいと思います。
  65. 島村一郎

    島村委員長 おはかりいたします。  本案の質疑は、これを終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 島村一郎

    島村委員長 御異議なしと認めます。よって、本案の質疑は終局いたしました。     —————————————
  67. 島村一郎

    島村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。  航空機工業振興法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  68. 島村一郎

    島村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  おはかりいたします。  本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 島村一郎

    島村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  70. 島村一郎

    島村委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  71. 島村一郎

    島村委員長 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ————◇—————    午後零時三七分開議
  72. 島村一郎

    島村委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。近江巳記夫君。
  73. 近江巳記夫

    ○近江委員 参議院の物価対策特別委員会で、タクシー料金の一括申請、これについては全国を百二十五地区に分けて、地区ごとに地区内の業者が委任状を組合代表に提出し、この中には業者委任状があるわけですが、組合幹部合議の上で陸運局長に申請しておる。これは御承知のとおりです。この申請について独禁法違反の疑いがある、このことについて慎重に検討したい、このような答弁があったわけです。まず第一に、検討した結果はどうかということをお聞きしたい、これが一点。  それから本委員会において、委員の方からの質問があったときに、公取委員長が、認可行為について事前に独禁法違反である協定があっても問題にすることはむずかしい、そうしてあなたは例をあげて、業者が相談して役所に陳情に行った、その場合違反にならないとの同じである、こういうような答えをあなたはなさったわけですが、このタクシー料金の一括申請の、要するにその態度について間違いないか、もう一度見解を承りたい、このように思うわけです。
  74. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいま御引用になりました参議院の物価対策特別委員会の答弁は、これは私どもの総務課長が出席いたしまして、あとで聞いてみますと、一応直ちに独禁法違反とは言えないという答えをしたのでありますが、しかしさらに慎重な検討をするというふうに答えて帰ったようであります。これは私ども考え方から申しますと、先般私この委員会で申し上げたとおりでありますが、ただいま若干引用なさったところ、私の気持ちと食い違う点もあります。この点、ひとつはっきり申し述べたいと思います。  この料金につきまして、政府があるいは決定をする、あるいはさらに認可する、こういった場合におきましては、業者間において自由競争の余地はないわけであります。したがいまして、業者が共同して対価を引き上げるというような独禁法の不当な取引に当てはまるということは私は言えないと思う。ことに運輸省といたしまして、法のたてまえは、各事業者が個々に申請して、それに対して是非をきめるというにかかわらず、一応行政指導といたしまして一地域一料金の制度をやっておったようであります。こういう場合になりますと、全部一斉に認可申請をしてこないとぐあいが悪いということで、こういうことをやらしておったようでありますが、こういう場合になりますと、ますますいま言ったような共同行為、独禁法違反の不当な取引制限ということになりかねないと思うのであります。ただし、そういったような運輸省のやり方がいいかどうか、独禁政策がいいかどうかということになると、これまた別問題です。そもそもハイヤー、タクシーなどの料金につきましては、私ども独禁政策という見地からいえば、むしろ認可料金がおかしいのではないか。これは鉄道運賃など、ああいった独占事業にして政府が認可する、これはわかりますけれども、ああいったタクシー、ハイヤーのような自由競争の多分に残された分野におきまして、はたして認可料金がいいかどうか、こういうことは独禁政策上、私個人としてたいへんな疑問を持っております。ことに運輸省は、個々の業者に対して認可するという法のたてまえになっておるにもかかわらず、一括して認可申請させておるということは、これは現行法の範囲内においてもますます自由競争の余地が少なくなっているので、好ましくないのではないかと思っております。ただしこの点につきましては、先般臨時物価対策閣僚協議会におきまして、運輸省も、従来の一地域一料金制といういままでの指導をやめまして、画一的にやらないという御方針に変わったようでございます。この点は私のただいま申し上げたことからははずれると思いますが、要するに、こういった認可制度のもとにおきましては、すでに自由競争の余地がない。カルテルというのは自由競争を制限する行為でありますから、すでに自由競争がないときにおきましては、やはりカルテルの成立要件にも欠けておる、こういうように考えておるわけであります。
  75. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたが本委員会において例をあげて説明なさったその点について私がいまお聞きしたことが一点あるわけです。  もう一度申し上げますと、業者が相談して役所に陳情に行った場合違反にならないのと同じである、これに対する御見解どうですか。
  76. 北島武雄

    ○北島政府委員 それは引用の例が悪かったのですが、独占禁止法違反にならないという点で同じである、こういうことであります。
  77. 近江巳記夫

    ○近江委員 陳情と申請の問題ですが、陳情というのはあくまで事実行為ですね、申請というのは法律的な行為になりますね。
  78. 北島武雄

    ○北島政府委員 その点は確かに違うのでありますが、独占禁止法違反にならないという点では同じだということを申し上げたので、例としてはいい例ではございません。多少問題がありますがということはあとで申し上げましたね。一番最後に、多少問題が残る、こう言ったのは、それはたとえばこういう場合であります。今度のように運輸省が指導方針を変えられて、一地域一料金制というのを固執しない、そうして認可申請は個々の業者からさせるのだ、こういうお話でございますが、そうなった場合に、自分はこの値段でいくのだ、値を上げたくない、いまの値段でもって競争するのだと言うにかかわらず、タクシーあるいはハイヤーを営んでおる業者の団体が無理やりにそれを認可申請させるようにするということになりますと、あるいは独禁法第八条の事業者団体の禁止行為に触れる場合もあり得るのではないか、こういう考えでちょっと申し上げたのです。
  79. 近江巳記夫

    ○近江委員 この最高裁の判事の田中二郎さんの「行政法総論」で述べているのですが、これはあなたも当然勉強なさっていると思いますが、ちょっと一部を読んでみますと、三〇八ページの終わりから二行目です。「認可は、第三者の法律的行為の効力を完成せしめる補充行為にすぎないのであるから、基本たる行為が不成立又は無効であるときは、それに対して認可があったからといって基本たる行為が有効となることはない。また、基本たる行為が取消し得べき行為であるときは、認可があった後においても、これを取消すことができる。認可が単なる補充行為といわれるゆえんである。」このようにいっているわけです。これに対する、要するにいま運輸省また公取の見解あるいは企画庁、そうした発言、そういった点からいろいろ総合して公取委の考えをひとつ述べていただきたいと思う。
  80. 北島武雄

    ○北島政府委員 ちょっと法律的に効果の場合と問題が違うようであります。まあ独禁政策の上からいえば、とにかくカルテルというのは競争制限行為なんです。自由競争が行なわれる範囲において競争を制限してやるのがいかぬと、こういうことであります。運賃料金については認可制度、場合によっては政府決定というのもございましょうけれども、そういう場合のもとにおいて、すでにそれに関する限り自由競争の余地はふさがれているわけであります。政府が認可する、決定するということは政府の自由ということになります。そうなりますと、自由競争の余地は非常に狭められておる。それに関する限り不当な競争制限ということには当てはまらないであろう、こういうふうに私は考えます。
  81. 近江巳記夫

    ○近江委員 公序良俗に反する法律行為は無効である、こういう点からいきますと、当然独禁法違反あるいはまた道路運送法に反してくるわけですね。これに対するあなたの御見解はいかがですか。
  82. 北島武雄

    ○北島政府委員 その場合はもともと独禁法に違反しないと申し上げたわけでありますから、公序良俗に反しない。
  83. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは時間の点もありますから、あと一、二点お聞きしたいと思いますが、ブラザーミシンの場合に、やみ再販行為の摘発が途中でストップしましたね。うやむやになったような状態です。要するにこの取り締まりが途中でストップした、これについて非常に疑惑を持っているわけです。どういう理由でこの調査を途中でストップされたか、この点についてひとつお聞きしたいと思います。
  84. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは私のほうでまだ委員会にあがっておりませんけれども、調査はストップということではございません。およそ独禁法違反事件で審査いたしますことが、途中でもって業者が自発的にその違法行為を排除いたしますと、私のほうではいまさらそれに対して審判とかなんとかにかけることは適当でない、そういう場合には不問に付するということが往々にございます。たとえば審査に入りましてすぐ、それは悪うございました、やめます、こういった場合に、なおさら、待て、おまえ取り消しちゃいかぬ、これは審判まで待て、そういうことはいたさないわけであります。ただいまのブラザーミシンの場合も、私まだそこまで話は聞いておりませんが、たしか固まりかけておったときに、自分のほうで是正したいからという申し出があったように聞いております。そうすると、それに対して今度は審査部でどういうふうに処理するか、いずれまた委員会にあがってくると思います。不満足のようであれば、もちろん私のほうでは排除措置を命ずる、こういうことでございます。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 私の聞いておるところでは、業者があなたのほうの委員に働きかけて、形式的にあやまりをした、そういう点で調査を打ち切ったのではないか、こういったようなことも聞いておるわけです。こういうようなことであるなら、やはりまじめに働いておる人が意欲を失うわけですね。こういうような事実はないわけですか。
  86. 北島武雄

    ○北島政府委員 明らかに独占禁止法違反の証拠があり、それを業者が自発的に排除しないにかかわらず公正取引委員会がうやむやにしたということは、いままで一度もございません。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、牛乳の小売り業者関係の審判が八月から始まるということをちょっと聞いたのですが、これは要するに国会閉会まで開かないということで、私は政治的配慮があるのではないか、このように思うのですが、どうですか。
  88. 北島武雄

    ○北島政府委員 そういうことではございませんで、手続の上から申しまして、審判開始決定をする場合に一月以上の余裕を置けということになっているのです。最初の審判期日の間に一月の余裕を置けということになっております。したがってそういうことにならざるを得ないのであります。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、きょうはあとの行事に差しつかえますから、これで一応終わります。
  90. 中村重光

    ○中村(重)委員 関連してちょっと北島委員長にお尋ねしますが、タクシー業者がルームクーラーをつけているわけですね。協定によって一斉にルームクーラーをはずすということは、これはどうも独禁法違反の疑いがあるのじゃないかということであるのか、あるいは逆に、このルームクーラーつきということで幾ばくかの金を取っておる、それも違反ではないかという、いろんなことであなたのほうでは調査を進めているということが伝えられておるのです。その点いかがですか。
  91. 北島武雄

    ○北島政府委員 この点につきましては、兵庫県のタクシー業者の方々が、冷房をつけないようにしようやというふうに協定した疑いがあるということで、新聞に出ておりましたので、私どものほうで大阪地方事務所をして調査いたしましたところ、七月三日の理事会でこれは改める、協定を破棄するということを、けさ大阪の事務所のほうへ申し出たようであります。したがって、その点は一応消滅しております。もちろん冷房装置をつけないようにしようというような協定がありといたしますれば、それは独占禁止法八条の、事業者団体の禁止行為の中に触れる疑いが十分ございます。それで公取で調査いたしたわけですが、それはやめますということです。ただし、これに対しまして冷房料金の割り増しの問題、これは運輸省の問題になりますが、もしかりに、みだりに——というと語弊があるかもしれませんが、私どものほうでそういう措置を講じまして、冷房をつけないという協定はやめにいたしましたにしても、冷房をつければ割り増し料金がもらえるということになりますと、私どものほうがやったこともむだになるような気がいたします。ただし、これは認可の権限は運輸省にあるわけでありますが、ただ冷房割り増し料金を認可する、これ自体は独禁法違反の問題は生じません。
  92. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、冷房を装置をしておった、ところが、どうもこれは過剰サービスであるというようなこと——善意の場合も私はあると思いますね。冷房をつけ得るような業者ですといいんですが、中小の業者で、冷房設備なんかやり切れない業者がある。そういう業者が実はその競争に負けてしまって、どうにもならなくなるから、そういうような業者を守るという考え方が理由づけになる場合もあるわけですね。ですから、具体的な問題として、特定地区に対して調査を進めているということはございますか。冷房設備をつけておったのを一斉にはずしてしまう、いわゆる協定、話し合いによって。そういうことがどこかの地区にあるからというので、そこを調査しているということはございませんか。
  93. 北島武雄

    ○北島政府委員 それはございません。
  94. 島村一郎

    島村委員長 次会は、来たる七月四日火曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十四分散会