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1967-06-02 第55回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二日(金曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 島村 一郎君    理事 天野 公義君 理事 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 河本 敏夫君    理事 中川 俊思君 理事 田中 武夫君    理事 中村 重光君      稻村左近四郎君    小笠 公韶君       岡崎 英城君    岡本  茂君       神田  博君    黒金 泰美君       小山 省二君    齋藤 憲三君       坂本三十次君    田中 六助君       橋口  隆君    三原 朝雄君       武藤 嘉文君    石野 久男君       大原  亨君    佐野  進君       中谷 鉄也君    永井勝次郎君       平岡忠次郎君    塚本 三郎君       吉田 泰造君    岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      田中 康民君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省訟務局長 青木 義人君         大蔵省証券局長 加治木俊道君         通商産業省貿易         振興局長    今村  曻君         通商産業省化学         工業局長    吉光  久君         通商産業省公益         事業局長    安達 次郎君         中小企業庁長官 影山 衛司君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   田村 宣明君         警察庁刑事局鑑         識課長     寺田  馨君         外務省経済局次         長       鶴見 清彦君         水産庁漁政部長 池田 俊也君         通商産業省企業         局次長     下山 佳雄君         特許庁総務部長 佐々木 学君         労働省労働基準         局監督課長   藤繩 正勝君         消防庁予防課長 高田  勇君     ――――――――――――― 六月一日  委員橋口隆君及び中谷鉄也辞任につき、その  補欠として山手滿男君及び三宅正一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員山手滿男君及び三宅正一辞任につき、そ  の補欠として橋口隆君及び中谷鉄也君が議長の  指名委員に選任された。 同月二日  委員千葉佳男君及び中谷鉄也辞任につき、そ  の補欠として大原亨君及び下平正一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員大原亨君及び下平正一辞任につき、その  補欠として千葉佳男君及び中谷鉄也君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 島村一郎

    島村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 きょうは今国会すなわち五十五特別国会に入りましてから、私が質問して、あるいは同僚委員質問関連しての質問、または同僚委員質問に対する答弁等々で十分に納得のいかなかった問題、その問題を逐次取り上げて詰めるという意味で御質問していきたい、このように考えるわけでございます。  まず第一に、去る三月二十八日、三月の二十二日の午後十一時四十分ごろの湯島におけるガス爆発の問題を取り上げて質問いたしました。そのときに時間的な問題もありまして、最終的に詰めのできなかった点が残っております。それは何かというと、民法七百十七条の工作物占有者責任、それとガス供給規程保安条項との関係であります。この前のときには法制局田中部長との間に質疑応答をいたしまして、そのままになっている点がありますので、まずその点からお伺いいたしたいと思いますが、民法の七百十七条はある意味における無過失責任規定したものである、そういう意味においてこの条文民法債権編にありますけれども、これは一種の強行規定ではなかろうか、このように考えるわけであります。この点がまだ十分に論議が尽くされていなかったと思うのです。そこでこれは中谷委員関連をして若干触れておりましたが、これが任意規定だ、こう解釈しましたときには、東京瓦斯の――これは東京瓦斯だけでなくて、ガス会社はほとんど一緒だろうと思うのですが、いわゆる三十六項あるいは三十七項の保安関係、いろいろと規定せられておるのですが、ところがこれが任意規定だ、こう考えた場合には、この条項ガス供給業者、すなわちガス事業者免責をうたったところの一方的な契約内容である。またこれが強行規定だと考えたときには、ここに何を書こうとも民法七百十七条が優先する、私はそう考えるわけです。しかもここで不可抗力による云々ということが問題になるのではなかろうかと思うのですが、七百十七条の問題に関連をして、東京高裁が三十年十二月二十三日の判例をもって、「工作物瑕疵は客観的に存在すれば足りる。それについて占有者または所有者故意過失を必要としない」こういう判例を出しておるわけなんです。これはあくまでもその瑕疵が客観的に存在する、そのことがかりに自然現象として起こった場合あるいはいわゆる不可抗力の場合をも含むであろうと解釈するのですが、この辺のところについて、まず七百十七条の性格、それとガス供給規程保安条項、さらにいま申しましたような判例との関係において、私の言っていることが正しいのかどうか、そういうことについて法制局から御答弁を願います。
  4. 田中康民

    田中(康)政府委員 まず七百十七条が強行規定であるかどうかということでございますが、この点は強行規定であるかどうかという意味が問題であろうかと思います。まず七百十七条は、特別に民法におきまして無過失責任に近いものを課しておりますゆえんを考えますときには、これに反する契約、たとえば七百十七条は私とあなたの間では適用しないのだというような契約を結んだといたしますならば、当然その契約がその部分について無効であるというふうに考えられるわけでございまして、そういう意味におきまして当然強行規定であるというふろに考えざるを得ないわけでございます。ただ、もし強行規定でない――強行規定でありますけれども、それ以外に任意契約がありまして、その任意契約がたとえば非常に有利であるというような場合もあるわけであります。そういうような場合にまで七百十七条がさらに適用があるかといいますと、これはまた、そこら辺につきましては説も分かれておりますけれども、大体七百十七条は被害者に有利な条項でございますので、さらにそれよりも有利な契約があります場合に、被害者にはその有利なほうは適用しないのだということもいかがかと思われますので、そういう場合におきましては、やはり契約のほうが優先するということだって考えていいのではないか、こういうように思うわけでございます。  それから判例で、客観的な瑕疵がございますならば、それで七百十七条は適用があるというふうに述べておりますが、私も、その説につきましては、田中先生と全く同じに考えます。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、これは通産公益事業局長あるいは大臣にお伺いしますが、このガス供給規程保安条項というのは、民法の七百十七条と関連して、どういう意味があるのですか。これを見ますと、三十六項、三十七項、ともに、ただ「当社は、供給施設について保安の責に任じます。」とだけうたって、あとすべては免責条項及び使用者がこうせねばならない、こういう義務といいますか、そういうことをうたった文句であります。したがいまして、これを裏返してみた場合、反面解釈をすると、これをやっていないからおれのほうには責任がないぞ、こういう内容になっておるのですよ。しかもこれはガス事業法によって通産大臣認可を得て定められたものです。この保安条項をどう考えられますか。民法七百十七条の規定並びにいわゆる公害等無過失責任賠償がもう通説となっている今日、これは一体どう読むべきであるか、お伺いいたします。
  6. 安達次郎

    安達政府委員 お答えいたします。この東京瓦斯供給規程保安のうちの三十六の記載事項内容は、供給施設事故によって生じた損害については、原則としてガス事業者責任を負います、したがって、この損害を賠償することが必要でございます。ということがまずうたわれて、そしてその損害不可抗力使用者故意過失のみによって発生した場合だけはガス事業者は賠償しないという趣旨で書いているわけでございます。したがって、ガス事業者に少しでも過失がございましたり、あるいは使用者側過失が立証できないというような場合には、常にこの原則に戻りまして、ガス事業者がその責任を有するということを規定している次第でございまして、民法七百十七条の内容とは実質的には相違があるとは考えていない、そのように解釈し、運用をいたしております。  なお、実際上問題になります使用者の敷地の中にありますような供給施設、普通これを内管と言っておりますが、このような内管所有権占有権は、普通の場合、使用者にございます。したがって、七百十七条の規定からまいりますと、ガス会社には一応その所有権占有権がないのでございますから、七百十七条の責任ガス業者には課せられないのでございますけれども、ガス事業法内管も含めたガス工作物についての保安責任を負わしておりますし、この供給規程によりまして、そのような事故があった場合の責任については、民法と実質的に同様の契約責任がある、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 明らかに使用者のほうに過失があった場合、まあガス自殺なんかする場合は故意でしょうが、これはいいです。しかし、その過失をきめる一つのきめ手として、三十七項によって、こういうこと、こういうことをせねばいけません、すなわち、使用者に対する責任ということをうたっているわけなんですよ。したがって、こういうことによって、使用者のほうに責任があったということを立証することによって、ということは、供給規程の三十七項ですよ、賠償責任をのがれるということなんです。いまあなたは答弁の中で、不可抗力ということに対しての答弁が抜けておりましたが、明らかなる使用者故意過失のときには、これは問題ないと思います。一番問題になるのは不可抗力の場合だと思うのです。そこで、いま政府が出しておりますところの公害基本法定義を見ました場合、一体公害とは何か。政府公害基本法定義では、公害は、事業活動その他の活動によって云々となっておるのですよ。そういうことになっておるのです。また、これは学説でありますけれども、不可避的な損害についても、それが、そういう損害を惹起しながらなお巨大な利益をあげているものに対して、企業責任を持たすことのほうが公平である、あるいはまた、無過失責任論一つ学説であると思いますが、危険責任主義というのがあります。これは、危険物占有者は、そのものから生じた損害について絶対的責任を負うべきである、これは有力な無過失賠償責任に対する学説一つで、いわゆる危険責任主義といわれる問題であります。ところが、この条文で見ると、不可抗力の場合は責任を持ちませんよ、こういっているのですよ。問題はそこなんです。したがって、このガス供給規程は一方的なものである。いうならば、ガスを引いてもらうためには、これは地域独占的企業ですから、この条項にかりに不満であっても、これを全部認めたという上に立っての供給契約ができたことになるのですよ。したがって、こういうものじゃ困るから、前にも、ガス供給規程検討し直せ、そうして、きょうは見えていませんが、大臣がいなくて宇野政務次官は、検討し直します、しかもガス事業法それ自体がすでにもう古いです――この前も私はガス事業法自体の欠陥を何ぽかあげました。それも前向きに検討するということになっておったのですが、いかがでしょうか、この不可抗力ということをどう解釈するか。
  8. 安達次郎

    安達政府委員 私も研究不足で、学問的な答弁はあるいはできないかもしれません。不可抗力と俗にいわれておりますのは、天災地変というようなものが一番例示としてあげられる原因だろうと思います。こういう損害の起こった場合の責任の所在ないしはその量などを考える場合の不可抗力というのは、やはり社会的、経済的ないろいろな客観的情勢から、いろいろと解釈の幅が変わってくるのではなかろうか、こういうふうに考えます。ただいま御指摘になりましたような、いわゆる無過失賠償責任というような見地からの何かそういう新しい、いまほかにも立法例は二、三あるようでございますが、そういう立法例による特定の規定などでその範囲が明確にされるということが必要であるならば、やはりこのガス事業につきましても、そういう方向で検討しなければいけないということは、前の商工委員会のときにも、政務次官からお答えしたとおりでございます。ただいまそのような意味で、このガス事業法の中でそのような無過失責任の問題をどう扱うか、いろいろと関係するところが広うございますので、今後十分時間をかけて慎重に検討いたしたいと考えております。その場合には供給規程の問題も当然それに対応して検討することになろうと思います。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 このガス供給規程通産大臣認可なんです。承認しておるのですよ。時間をかけて検討いたします、そう言っている間も、ガス導管を伝って流れておるのです。いつまたどこにどのような災害が起こるかもわからない。たとえば関東大震災のようなもの、こういうような天変地変に対しては、これは問題があると思います。しかし俗にいう自然現象、これも不可抗力に入るのじゃなかろうかと思うのです、その考え方からいけば。少なくとも通産大臣認可をして、それがガス供給規程契約内容になっておるのです。ならば、この不可抗力とはいかなるものであるか、少なくとも行政解釈を明らかにする必要があると思う。いかがでしょう。それからこの不可抗力は、天変地変のようなことは、何もガスだけによって起こされるのじゃない、そういう意味合いがあろうと思います。このことには別な国家責任国家が救済するとかいろんなことがあろうと思いますが、そういうことでないいわゆる不可抗力、この規定について、法制局として何らかの見解があるならばお伺いいたしたい。
  10. 安達次郎

    安達政府委員 この不可抗力というものの解釈の問題として、範囲は必ずしも明確ではございませんが、いま先生のおあげになりましたような例の場合、普通の天災地変――天災地変というよりは自然現象に基づく云々というような例をあげられましたが、そのような場合は、これは当然の解釈として、不可抗力範囲では含めて考えないことになろうと思います。むしろその不可抗力範囲を法令上はっきりさせるというようなところに、いわゆる無過失責任法制を整備した場合、はっきりしてくる点ではなかろうかと思います。
  11. 田中康民

    田中(康)政府委員 不可抗力と申しますのは人知の及ばないところに発生する力を申しますと思うのですが、たとえば天災におきましても、伊勢湾台風というような、何十年、通常考えられないようなところにやってくるようなときについて、その被害なり何なりは確かに不可抗力による被害だと思いますけれども、通常台風、たとえば日本においては台風が多いというようなときに、その通常台風くらいは当然計算に入れてつくらなければいけないといっている場合に、それにも負けるようなものをつくったとした場合には、やはりそういうものは不可抗力ではない、これは明らかなことだと思います。ですから、ただ天災地変であればいいということではなくて、やはりその当時、そのときの人知経済、社会、いろいろな事情も考え合わせて、そこでそういうことを通常考えることが普通でないというような事態を不可抗力というふうに考えるのが筋なのではないかというふうに思います。  なおこの供給規程につきましては、これはもう法律上は当然有利なほうに、したがって民法七百十七条が適用されるわけでありますから、支障はないといえばないわけでございますが、この三十六の表現は確かにちょっと一見人を誤るような感じを与えるかもしれませんので、そういう点につきましては、これは私どものほうでそういうことを申してはいけないのかもしれませんけれども、通産省といたしても検討するものと考えるわけでございます。
  12. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、いまお聞きのとおりなんです。あなたの時代認可したものではないけれども、通産大臣が承認をしたものなんです。しかもいろいろとこの保安条項については問題がある。まず三十六項については、不可抗力とは一体何か、三十七項は、これはガス会社側からいって使用者過失を追及するためのいろいろな義務を課しておるわけですね。こう見た場合に、民法の七百十七条で最後は締めくくりがつくのだ、こういうことであっても、これは私はどうかと思うのですよ。少なくともこの保安についてのガス供給規程のあいまいなところを明確にする、それが一点。次に根本的にガス事業法及びガス供給規程検討し直す、そのことについて約束願いたい、いかがです。
  13. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 このガス事業法などにつきましては、すでに宇野政務次官からもお答えがあったようでありますが、これはもう事業法自体が古くきめられた法律でありますからして、これは検討すべき時期がきておると思いますから、それは検討するように事務当局のほうではいま研究中であります。それからなおその他の規程についてもあいまいな、解釈上いろいろに解釈できるというような問題につきましては、これはやはり明確にしておく必要があると思いますから、そういう点についてもあわせて研究するようにいたします。
  14. 田中武夫

    田中(武)委員 法の改正はそう直ちにやれないと思います。しかしあいまいな点についての明確な行政解釈、最終的にはやはり裁判所で争うことになろうと思いますが、これは直ちにやっていただく、そういうことに対して大臣、明確に約束したと了解いたしますが、よろしいか。
  15. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そのとおり御解釈いただいてけっこうです。
  16. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、この点は大臣が約束したのだから、次にまいります。  この湯島ガス爆発原因等についてまだ当時明確でなかった。あるいは電解腐食だとかなんとかいうような説もあったりいろいろあった。これはどうやら最終的にそういう結論を出したのではないというような意見もあるようでございますが、去る五月二十五日の毎日新聞に「寿命がきたガス管」という大きな見出しで、警察庁科学警察研究所が調べた結果ということで、一口にいうならば、ガス自体水分を含んでおる。これはいうならば石炭をたくいわゆるだるまストーブのような場合は湯をわかしておる、電気ストーブ等でも、大きなものになると、水を入れるところがあって空気が乾燥しないようにしておる。しかしガスストーブの場合は、ガスそれ自体水分を持っておるから、その必要はない、こういわれておるわけです。そういうみずから水分を持っておるガスが長年にわたって通っておる間に水がたまる、それによる腐食によって生じたものであるというような警察庁科学警察研究所結論なのか、あるいはまたその中間報告であるのか知りませんけれども、出ておるわけです。そういうことについて通産省自体は、先日のあの問題をどう原因を把握しておるのか。さらにこの前も私申しましたが、ガス管は税法上の耐用年数とすれば鋳鉄管が二十二年、鋼管十三年で償却を終わるはずです。しかるにガス会社等寿命八十年説をとっておるわけです。そうして古いのは明治三十四年に布設したものから大正初年のものも含めてまだ相当な数が、ここに資料をもらっておりますが、たとえば東京瓦斯だけで申し上げますならば、十八万二千百メートル明治時代に布設したのが残っておる。大正時代のは三十八万九百メートル残っておる。こういうことについて、あの問題を契機として東京瓦斯自体老朽管の取りかえ計画を出しておる。しかし、ここでまず科学警察研究所がそのような――公式に発表したかどうかは知りませんが、見解を出しておる。そうするならば、長年の間水がたまって、そこから腐食する、今までは震動だとかあるいは何らかの物理的力とか、こういうことで外部からの力によって亀裂を生じたんだ、こういうような解釈が多かったのです。そうでなくて、この科学警察研究所見解によれば、内部から瑕疵を発生する、そういうことになるわけです。そうするならば、導管寿命八十年説はくつがえされる。東京瓦斯自体が当委員会にも資料として出しました取りかえ計画は、もっと早くやらす必要があろうと思うのですが、これは通産省、いかがでしょうか。
  17. 安達次郎

    安達政府委員 まず第一の、先般の湯島事故原因究明についてでございますが、先般の新聞の報道などを読みまして、警察庁のほうにも間い合わせをいたしたわけでございますけれども、科学警察研究所のほうでは、まだ公式には結論を発表していないということでございます。そこで、まず東京瓦斯には鋭意この原因会社のサイドで検討さしておりますけれども、大体ただいまのところは、事故のあった場所などと条件が類似している地点の導管を切断ないしは露出して、超音波厚み計によって肉厚調査等をやらしておりますが、同時にまた、湯島の場合と同じような条件を再現した実験的な検討などもいたして調査さしております。先般の事故はあくまで内部腐食原因でございまして、これはあまり例がないことでございますが、内部腐食原因で、その原因が水であった可能性も相当あり得ると思いますけれども、水であったのかほかの原因があったのか、その点今後の警察の調べの結論などとあわせて、今後このような想定できるいろんな原因について検討を加えて、早急に対策を樹立するための原因究明を急がせたい、こういうふうに考えております。なお、こういうような究明結論が出ました場合に、その導管内部からの腐食の防止というような点に重点を置いて、ガス保安対策協議会というようなもので、今後の保安基準等が必要であれば改正をしてでも、今後こういう事故の再発を防止したい、こういうふうに考えております。  それから、第二点の明治大正時代の古い導管の取りかえの問題でございますが、先般の事故が起こりますと同時に、すでにしばらく前の府工委員会でも中間的に御報告申し上げましたが、まず東京瓦斯に対しては、このような事故を絶対今後絶滅するように、特に導管維持管理の問題に中心を置いたいろんな施策の樹立、そしてその具体的な計画提出方を求めております。  なお、すでに先般この委員会でお配りしました資料にもありますように、大阪瓦斯、東邦瓦斯等においてもこういう導管がございますので、各通産局あるいは瓦斯協会等を通じて同じような趣旨の指示をいたしております。そこで東京瓦斯からは、この五月の末日付でいわゆるその具体的な計画経年管の取りかえ計画、それから特に管体調査計画、これについての提出がございました。ただいまのところ、その内容が適切なものであるかどうか、あるいはただいま御質問の御趣旨にもありますように、もっと繰り上げるようなあれが考えられるものかどうか、そのようなことで、ただいまその提出された計画内部検討中でございます。
  18. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の関係もあるから、答弁は短くやってください。  そこで、きょう警察庁見えておりますが、この五月二十五日の毎日新聞に載りました問題ですね。これについて科学警察研究所はどのような見解に立っておられますか。実験の結果は、内部からのガス自体の持つ水分がたまっての腐食である、こういうように新聞では発表になっておるのですが、いかがですか。
  19. 寺田馨

    ○寺田説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。三月二十九日に調査を担当しております警視庁より鑑定の依頼がありまして、現在まで引き続き鑑定を行なっておりますが、科警研といたしまして正式の鑑定結果を見ておりません。なお、新聞記事に出ておりました水分による腐食の問題につきましては、水分中にアルカリ分あるいは酸性のものが含まれておる場合に、鉄の導管内部から腐食される可能性もあるということで、一つ可能性としては考慮いたしておるわけでございます。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 原因は徹底的に究明をし、そういったような原因を取り除くように関係者がつとめることは当然なんですが、同時にやはり原因究明も急いでいただきたいと思う。もう二カ月以上もたってまだはっきりした原因がつかめないということもどうかと思うわけです。  それと、先ほども言っているように、もう耐用年数からいえば二十二年とか十三年で終わっておるのでしょう。それにガス会社は八十年寿命があるとうそぶいておる。しかし、現にもう四十年たたないうちにそういう寿命がきておるということも、一面明らかになっておるわけなんです。したがって、これは何も八十年説というのが公式なものでも何でもないけれども、ガス会社が八十年はもつんだというような考え方は修正されないといけないと思うのですよ。そういうことについて、通産省お得意の行政指導をやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  21. 安達次郎

    安達政府委員 問題は、この古い明治大正時代に設置されました導管の取りかえを推進することにあると思います。そういう意味で、この八十年説というのは、いわば従来のガス会社の人たちが、いわゆる鋳鉄管などの場合の物理的な寿命を考えておったというだけの意味しかないわけでございまして、保安確保の上からいいますと、最優先にこの古い導管の取りかえを推進するということが先決だろうと思います。先ほど申し上げましたように、現に事故を起こしました東京瓦斯についてはただいま検討中、ほかの会社についてもそのような形で経年管の実態を把握させることからまず急いでやらしていただいておるような次第でございます。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 もうひとつ的確な答弁じゃない。大臣、先ほど来言っておるように、帳簿上では鋳鉄管で二十二年、鋼管で十三年、もう全部終わっておるのですよ。いうなら、それから後はまるもうけなんです。しかも八十年寿命がありますからとうそぶいておることについて、もう四十年で寿命がくるということが大体結論として出ているわけなんですよ。大臣、ひとつガス供給業者に対して、そういう誤てる考え方を修正させるような指導を願いたいのですが、いかがです。
  23. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 八十年説をガス会社が言うておるのかどうか、それは私もはっきりしませんが、いま局長が申しましたとおり、実態調査をさせておりますから、それでもうすでに腐食しておるようなものなどがはっきりすれば、四十年以上経過しておったらだめだということがはっきりすれば、取りかえすることを命令したいと思います。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 まだ十分納得のいく答弁ではございませんが、都市ガス関係はこれで終わります。警察庁公益事業局長はけっこうです。  それではお伺いいたしますが、この問題につきましては後刻地元の大原亨君が質問いたしますので、私は簡単に触れるだけでとどめたいと思います。  去る五月二十九日午後四時四十分ごろ、広島県の大竹石油コンビナートで爆発事故があって、従業員二十一名ないし二十二名が負傷した、そういう問題につきまして通産省は、その原因あるいはその事後の処理等についてどうしておるのか、簡単でよろしいから言ってください。
  25. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘のとおり、五月二十九日の十六時四十七分に三井ポリケミカル会社のコンプレッサー室で爆発事故が起こったわけでございまして、幸いにして消火活動が早く進みまして、十七時七分に鎮火いたしております。  発生の原因、状況でございますけれども、爆発直前の高圧のコンプレッサーの反応は千六百十キログラム毎平方メートルというふうな数字で行なわれておったわけでございますけれども、瞬時に反応圧力が千六百六十キログラム毎平方メートルというふうに、少し異常に高い圧力がかかっておったようでございます。その圧力を自動調節装置によりまして自動調節されて、すぐにそれが六百キログラム毎平方メートルくらいのところまで圧力が落ちております。一ぺんそこで作業がストップの形になっておりますけれども、これをさらに再開させる操作をいたしておりますときに爆発事故が起こったという状況でございます。この場合の爆発事故原因は、どこかの場所からエチレンガスが漏れたということであろうと思われるわけでございますけれども、現在現に残っております品物を中心にいたしまして、漏れ試験あるいはまた分解点検等を進めておるところでございまして、的確にどの地点からどういう原因でということについては、現在なお試験等を続けておるという状況でございまするので、いずれ判明いたしましてまた御報告申し上げたいと思っております。  それからなお先ほどの被害者のほうの問題でございますけれども、工場内部の施設被害は一億をこえております。これは爆風等による建て屋の損壊等を含めまして一億をこえた被害額にのぼっております。それから負傷者の数でございますけれども、関係の社員ないし下請関係で現に出入りをしている者等の数で十七名でございまして、あと民間通行人、あるいは爆風によりましてガラスがこわれて、その破片によってけがをしたという人も数名いるようでございます。その爆風による被害のほうの関係は、対民間関係につきましては本日中に全部修復を終わるというふうな結果の報告を受けております。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題につきましては、先ほど言ったように、午後地元の大原亨君が質問いたしますので、私はいろいろと質問したい点もありますが、この点は地元の大原君に譲ることにいたします。  次に、去る五月三十一日の午前四時半ごろ、板橋のアパートでプロパンガスの爆発によって、一家五人が重傷を受けたという事件がございました。これはどうも使用者過失があったのではなかろうかと思われるような新聞記事でございます。この問題を特に具体的に取り上げるのではなくて、こういうプロパンガスの爆発という事故が最近とみに多くなっております。あるいはまた、自動車も営業用のものは、ガソリンが高いのでプロパンを使用しておるというようなことで、プロパンの一般消費というのはますますふえてきておるのです。それに従って、消費者を保護するということが必要である、さらにその保安を確保することが必要である、そういうことで、通産省はプロパンガス保安法案を提出する予定と前からいわれております。ところが、その定義の問題等によりまして、ガス事業者からの圧力によってこれが予定どおりに提出せられる段階に立ち至っていない。最初には、去る五月二十六日ごろの閣議で決定して、直ちに国会提出になる、こういうようなことを聞いておりましたが、いまだにがたがたやっておる。これはガス事業者の圧力に屈してのもたつきだ、こう仄聞しておりますが、このプロパンガスの新保安法案に対しまして現在どの段階にあるのか、そういう経過を簡単にお伺いいたします。  さらにこの話の中で、大臣よく聞いてくださいよ。ガス事業者は、自分たちの供給範囲にはプロパンによる導管は認めないという線で、通産省その他に陳情、圧力をかけていると聞いております。そうしてどんどんと供給地域を、まだまだ工事は何年か先になるにかかわらず、申請をしてふやしていっておる。そうしてそこにはプロパンガス導管による供給は認めない、こういう立場になっておるとするならば、私はけしからぬと思う。ガス事業者の権利擁護のために、片や零細なプロパンガス業者が大きな圧迫を受ける。しまいに山の上にでも行かなければプロパンは供給できないというようなととろまでくるのではなかろうか。したがって、この法案は、出てきてみなければわれわれとしても直ちに全部を賛成するかどうかはわかりません。しかし前から出すことが予定せられており、通産省もそれを発表し、それが今日まだ出てきていない、これはどういうことなんです。国会は一カ月延長になるからゆっくりしておっていいという考え方なんですか。そんなことはまだわかりませんよ。そうならば、五十五特別国会の会期はもう終わりに近づきつつあるのです。そのときにまだ法案が出てきていないということは、何らかの支障がなければならないと思うのですが、どこに支障があるのですか。
  27. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほどお話ございましたように、LP関係につきましての消費者を保護するための対策を現に考え、それにからみまして、新しい法案を今国会に提案いたしたいということで検討を進めてまいっておるわけでございます。ガス事業者の圧力であるとかどうとかという外的な圧力と申しますよりは、むしろLP業界と都市ガス業界がどういうふうにうまく将来の仕事についてお互い調整されるのがいいであろうかというふうなことが一番の争点になりまして、そういう関係についての調整をはかっていましたために、提案時期がずっとおくれてまいったという状況でございます。昨今早急の間に最終的な結論を出しまして、近く国会に提案申し上げたいというふうに考えておる状況でございます。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、いま局長の言ったように、ガス事業者とプロパン業界とがいろいろ問題がある。ところが、例外はございますが、都市ガス業者はいわゆる独占大企業なんです。プロパン業者はいわゆる中小零細なんです。それをそのままけんかさせては、強いものが勝つにきまっておるのです。そこで、そのような問題に対して、通産大臣はいかなる態度で新法に対して臨むのか、いつ国会提出するのか、明確にお答え願います。
  29. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いまのLPガスの問題、それからガス会社の問題につきまして、いま局長から御答弁しましたとおり、いろいろいかにして調整するかということで話し合いをしておるのであります。したがって、何もLPガスのほうをこっちがことさら圧迫するというような意味ではなくして、LPガスは今後伸長発展させなければならぬという立場はとっておるし、ガス会社もまた発展させなければならぬという立場をとっておりますから、そこをどの程度において調和さすかというところにいま局長連中が苦心をいたしておるのであります。これがいま局長から返事がありましたとおり、間もなく決着を見るようでありますからして、決着を見れば、それによって法案を提案したい、こう考えておる次第であります。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 政府、自民党は調整とかそういうことを好んで使う。ところが、強いものと弱いものとの調整をした場合には、強いものが勝つのです。したがって、大臣としては弱いものの立場に立ってものごとを考えていかなければならないことになるのです。そういう態度で最終的なプロパンガス法案を詰めていただいて、国会へ早く提出するよう要求します。
  31. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、プロパンガスのほうの問題につきましても、それを伸長発展せしめていくという考えを持っておりますからして、これがこのように発展してきたというのは、やはり消費者側の要求、需要の要求からこういうことが起こってきたと思いますからして、したがって、一般国民の要望でもあるわけですからして、その一般国民の、消費者の要望にこたえて法律をつくりたい、こう考えておる次第であります。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 それではガス関係を終わりまして、次に、去る五月十七日に石野委員が天津の科学機器展覧会とココムの問題について質問いたしました。その際私が関連をして一つの問題を提起いたしました。大臣、この問題について先日の五月十七日の答弁に訂正なり修正はありませんか。局長もまた同じ意見ですか。
  33. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この前申し上げたことについて、私はいま訂正する必要があると考えておりません。
  34. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 ただいま大臣から申し上げましたとおり、この前申し上げましたことについて、特に方針が変わったとか、そういうような点で訂正申し上げることはないと思います。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 それではあらためてお伺いいたします。先日申し上げましたように、ココム、すなわち対共産圏輸出調整委員会とでもいうのですか、これの性格は一体何ですか。
  36. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 ココムは性格を一口で申し上げますと、共産圏向けの輸出を統制するためにできました非公式の国際機関というふうに申し上げられると思います。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 この沿革をたどってみますと、一九四九年十一月にチェコで共産主義のクーデターが起こったことを契機として、まずアメリカがこの政策委員会というものをつくって、それに西ヨーロッパ諸国が加盟しておる、日本は一九五二年五月、すなわち昭和二十七年に加盟しておる。そこで、先日も申し上げましたが、これは国際間における秘密協定といいますか、秘密申し合わせだと思う。これが公式なものであるならば、国連憲章百二条によって国連事務局へ報告する、そうして国連事務局はこれを公表することになっておる。したがいまして、そういう手続もとられていないのですから、公式のものではない、あくまでも非公式のものである。そこで、そのようなものが直接に国民の権利あるいは義務、これは権利のほうですが、これを束縛することはできないわけなんです。しかるに、何かというとココムというようなことを至上命令のように考えて今日まで運んできたところに私は問題があると思う。ココムによって、国民の輸出するところの権利、いうならば憲法に認められたところの、大げさに言えば基本的人権、職業選択の自由とでも申し上げますか、そういうものを現に制限をしておるのはいかなる根拠に立っていますか。
  38. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 これは後ほどまた外務省等から御説明もあろうかと思いますが、一応通産省の考え方をお答え申し上げますが、ただいま御指摘のように、一九五二年の八月に日本はココムに加盟をいたしております。そのときに、このココムに加盟をいたしますことが、国際協力、国際協調というような立場から日本の外国貿易の発展をはかるために必要だというふうに認めまして、外国為替及び外国貿易管理法に基づいて輸出貿易管理令という輸出を管理する政令がございますが、これを改正いたしまして、そのココムの趣旨を反映するような措置をとったのでございます。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、直接法として、大きな意味の法令として動いたのは輸出貿易管理令だ、こういうのですね。これは法に根拠を持たなくてはいけないものなんです。そのことはまたあとで触れますが、一九五二年五月か八月か、私は五月と調べておるが、これはどちらでもいいが、昭和二十七年に入ったわけです。そこで、ココムに加盟した前後の輸出貿易管理令の改正を当たってみました。二十七年五月政令百三十六号による改正、二十七年十二月政令五百号による改正、二十九年十二月政令三百九号による改正、三十年七月政令百五十号による改正、同年十二月三百二十八号政令による改正、これだけのまず日本がココムに加盟したことに関連してこの輸出貿易管理令を改正したであろうと思われる点を当たってみました。その官報の写しは全部持ってきておりますが、これはココムとは直接関係ありませんね。たとえば一番近い二十七年五月政令百三十六号あるいは二十七年十二月の政令五百号、これはリストを公表していないからわからぬが、ココムのいわゆる戦略物資に関係あると思われるものの改正はないのです。だから私の言わんとするところは、輸出貿易管理令を改正して、それによって国民に対して権利を制限するという措置は、全部持ってきていますが、行なわれておりません。したがって、ココム加盟によって、ココムでは直接できないから、輸出貿易管理令を改正いたしましたと言うが、その改正のどれです。
  40. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 ただいま先生がおあげになりました改正、私は、全部読んで当たってみませんと的確でありませんけれども、確かに御指摘のように輸出貿易管理令の改正の際に、別表がございまして、別表の品目改正をいたします際に、これはココム関係改正であるということをはっきり申してはおりません。で、改正はいろんな必要から行なわれております。たとえば一回の改正におきまして、ココム関係改正もございますし、それ以外の改正もありまして、それらが同時の政令で行なわれる場合が多うございますので、ただいまおあげになりましたのが全部ココム関係であるかどうか、私もそれを当たってみないとはっきり申し上げられません。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは、輸出貿易管理令による制限であります、こう答えたんですよ。ココム自体が国民の基本的人権を侵すことはできない、これは確認しますね。そうするなら、その例だというんですよ。二十七年に加盟した。その加盟に従っての改正がなくちゃならないのですが、そういうことが行なわれていない。あるいは中共向けにいたしましても、そういうことは一言も書いてない。甲地域ということになっている。したがって私は、これはココムによる禁止品でありますかから許可できませんということは、受け取れません。そういうことがいままでまかり通っておったことは、日本の法制上からいえば奇怪しごくなんです。そうじやないですか。外務省、どうです。ココム自体が国民の権利、義務を制約できるかどうか、外務省の見解をお伺いいたします。
  42. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 先ほどの答弁関連して、ちょっと先に補足して申し上げさせていただきます。  外国為替及び外国貿易管理法の第四十八条に輸出の承認というのがございまして、「特定の種類の若しくは特定の地域を仕向地とする貨物を輸出しようとする者又は特定の取引若しくは支払の方法により貨物を輸出しようとする者は、政令で定めるところにより、通商産業大臣の承認を受ける義務を課せられることがある。」これを受けまして輸出貿易管理令ができておりますが、その第一条の第一項に「別表第一中欄に掲げる貨物を同表下欄に掲げる地域を仕向地として輸出しようとするとき」は通商産業大臣のあらかじめ承認を受けなければならない。したがいまして、そういう明確な法律の根拠に基づいてとの輸出の承認という制度が設けられておる、というふうに補足させていただきます。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 私が言っているのは、ココムが直接国民の権利を押えることができるかということです。できない。そこで輸出貿易管理令によってやる、その法的根拠は外国為替及び外国貿易管理法の四十八条だ、こう言う。あなたは一項をお読みになりましたが、二項を読んでください。「前項の政令による制限は、」第一点、国際収支の均衡、第二点は外国貿易、第三点は国民経済の健全な発展、この三点に必要な場合に限る、とこうなっている。ココムというものによって禁止することは、四十八条の二項の一点、二点、三点のどれに入りますか。
  44. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 ただいま先生お読みになりましたうちの「外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要」であるというふうに解釈をいたしております。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 中国向けあるいは共産圏向けの貿易が国民経済の健全な発展に支障を来たしますか。それならどういうことで国民経済の発展に支障を来たすか、明確な事例をあげてお答え願います。
  46. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 自由主義の国家と協調していくということは、大きな意味におきましてわが国の貿易の発展に対して有益なことである、こういう基本的な考え方から解釈をしておるわけでございます。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 そんな抽象的なことじゃだめですよ。第四十八条第二項には、明確に三点をあげて、この範囲を越えてはならないとなっているのですよ。そうでしょう。たとえば、あなた言ったように、共産圏向けの輸出が国民経済の健全な発展に支障を来たすというようなことは考えられますか。かりに政府あるいは自民党が共産主義思想というものを危険なものと考えたといたしましても、いつも政府が言っているように、政経分離の原則からいけば、これは旧民の経済の健全な発展ですよ。経済の発展に支障を来たすような事実はどこにあります。したがいまして、私は、この範囲を越える。あなたは輸出貿易管理令によってとこう言うが、輸出貿易管理令は外国為替及び外国貿易管理法に基づくものであり、それは第四十八条二項によってまず限界がきめられているわけです。この限界を越えるものは違法である。したがいまして、今日まで通産省がとってまいりましたところの、いわゆるココムによって無理があります、こういうことは違法である、私はこう考えますが、いかがでしょう。
  48. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 重ねて御答弁を申し上げますが、ただいま御指摘の第四十八条第二項の制限の内か外かという点でありますけれども、私どもはその制限の範囲内に入っておるというふうに見ておるのでございます。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 これはあくまで行政解釈ですね。そこで私がお伺いするのは、ココムによってこれは許しません、こういうことを言うて今日まできたわけです。しかしそれは、いわゆる行政訴訟あるいは行政不服審査法に基づく対象になるような法をとらずに、口頭または電話で、これはだめですよ、何でですか、ココムです、ココムというとどんなものですか、これは発表できません、こうやってきたわけです。その行動は何かといえば、行政指導でございますと答えるわけですよ。したがいまして、通産省の行政指導及び行政解釈によって国民の権利を大きく侵害する、そのことに対して、責任を持たねばならないと思うのです。  そこで、輸出貿易管理令の第一条では「通商産業省令で定める手続に従い、通商産業大臣の書面による承認を受けなければならない。」となっておる。承認の場合は書類によるのです。承認しない場合はどうするのです。
  50. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 不承認の場合は、もし承認申請書が提出されております場合には、それに不承認の判を押して返却をいたします。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 文書で出すわけですね。承認いたしませんということを文書で出すわけですね。
  52. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 業者から出てまいりました承認申請書に判こを押して、そのものを返すということでございます。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 それは行政処分ですね。法令に基づくところの通産省の措置でありますね。
  54. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 そのとおりでございます。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、いま具体的に問題になっておる天津の科学機器展示会、このうち十三品目を許可しない、私はこの十三品目が何々であるかつぶさに知りませんが、いわゆる科学技術の関係からいって一番重要なものであると聞いております。それが許されないならば展示会は意味をなさないということで、天津展示会は無期延期というかっこうになった。それは通産省の行政処分によって起きた事態であります。したがって、そのことによる直接因果関係のある損害のすべては賠償する責任に任ずるだろうと思いますが、覚悟はいいですか、いかがです。
  56. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 ただいまお尋ねの点につきましては、前回大臣からもお答え申し上げましたように、行政指導と先生が御指摘になりましたが……。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 要らぬことを言わなくてもいい。行政処分であるのかどうか、その行為は行政不服審査法の対象になるのかならぬのか、それだけでいいのです。
  58. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 業者の利便のためにいろいろ連絡をとっておるわけでございまして、確かにおっしゃるとおり法に基づいた行政の措置は、十三品目についてはいたしておりません。これは形式的に申しますと、この十三品目についてはまだ輸出承認申請が出てまいっておらないのでございます。もし出てきたらどうするかというお尋ねに対しましては、これは先ほど来申し上げました方針に変わっておりませんので、不承認にいたします。そしてそのことによって生じた損害があるのかないのか存じませんけれども、私どもは、あらかじめ通産大臣の承認を得なければ輸出できない貨物でございますので、その承認をとらない前に業者のほうでどれだけの費用を費やしておやりになったかわかりませんけれども、これは全く業者のほうのリスクでおやりになったといわざるを得ませんので、その点につきましては、かりに損害賠償の行政訴訟がございましても、これには応ずる用意がございます。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 申請は出たのでしょう。順序から言うと、本年二月十八日に申請しておるのでしょう。それに対して四月十八日に通産省の貿易振興局の問淵という課長が、これは不許可になると通告してきた。そして四月十五日にあらためて通産大臣に許可をしてくれということを申し入れた。そうすると今度は同じ間淵という課長から電話で、だめですということが五月三十日にきておる。経過はこういうことなんです。もっと詳しい経過が必要なら申し上げますが……。  そこで私は、通産省はずるいと思うのです。まずココムによってできません、こう言ったのです。ココムによってできないのじゃないのですよ、やれないのですよ、先ほどから私が言っているように。それでココムというものについてもしなにするなら、私はもうちょっと突き進んでお伺いしますが、ココムのリストには三つの区分があるわけです。禁輸品目、数量制限品目、監視品目と分かれております。それじゃ具体的に十三品目はこの三つの区分のうちのどれに入るのですか。
  60. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 ちょっとことばがお使いになったことばと違いますが、ココムにはいろいろ品目の中に仕訳がございます。これは御指摘のとおりでございます。ただいまの十三品目は、ココムの中の兵器とか原子力の特殊のリストの中ではございませんで、一般リストというものに該当する品目でございます。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 私もココムでは直接制限できぬと言っていながらココムのことを聞いたわけですが、そうではなくて、いま言ったように三つの区分がある。そのどれかによってその人がやられたのですが、ココムでなくて、輸出貿易管理令の別表何々による、こういうことでなくちゃならぬと思うのですよ。それをココムによってだめでございますということは間違いである、確認しますか。
  62. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 御指摘のとおり、言い方が正しくなかったという点を確認いたします。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、いいですか。これはココムによる禁止品でございますからだめですということは、いま明らかになったように、法律的には何の意味もなさないのです。したがって、今後一切ココムによってだめでございますということは通産省に言わさない。いいですね。そうでなくて、輸出貿易管理令の別表何々の項によって問題がございますということを言わなければならないのです。今日までとってきた態度に対して、全部修正いたしますか。
  64. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 ことばの使い方が不注意で、多少まちまちな言い方をしておった点はあるかと思いますが、正確に突き詰めていきますと、確かにいま田中委員の御指摘のとおりでございますので、今後は輸出貿易管理令を引用してまいることにいたしたいと思います。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 いままでは貿易業者とか申請者側も、また社会党同僚のわれわれを含めても、ココムというものが至上命令であって、ココムでだめですと言われて、それは戦略物資であるのかどうかということに議論が終始したと思うのです。ココムによってだめですなんということは言えないのです。はっきりしていますよ。そうでしょう。少なくとも通産省が判断を下す以上、まず第一に、通産省は設置法の第四条に基づく権限なんです。そうしてその次はどういう法律に基づいてやるのかということを明確にしなければいけないのです。ココムによるところの禁止品でございますからだめですということは、今後一切使わない、約束しますね。
  66. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ただいま今村局長が答えたとおり、今後使わぬということでやります。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、いま具体的に問題になっておる天津展示会に対する出品の禁止といいますか、これもココムでだめでございますということは取り消してください。
  68. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 法律的に正確に表現いたします場合には、輸出貿易管理令何々条の規定により輸出承認をいたしません、こういうふうに申したいと思います。ただ話を早くするためにココムということばを使う場合がございますが、そういう点は……。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 確認しますよ。ココムというものは、いわば国家問においては紳士的というか、言いかえるならば秘密協定である、申し合わせである、それはそのまま国民を束縛するものではない。しかも拘束する基本は何かというと、輸出貿易管理令である。その管理令の改正等をたどってみてもココムと直接関係はない。そうすると問題は輸出貿易管理令の別表の争いになるわけです。それをだめだという場合は、ちゃんと文書によって、そのだめだという根拠を明らかにして、すなわち法解釈を明らかにして出すべきである。そうしなければ、あいまいな電話だとか、申し入れとか、そういうことは私はひきょうだと思う。何とならば、それはあなた方に問いただすならば、行政指導とでも申しますか、こういうことです。行政指導は、これは行政不服審査法の対象にならないのです。したがって、いままでは泣き寝入りに終わったわけなんです。したがって、これからははっきりといたしました。行政処分を行ないなさい。それに対して被害者といいますか、申請者側はもし権利侵害せられたということならば、あるいは損害を受けたならば、行政不服審査法に基づいて提訴をする、私がいま申し上げていることは法律的に間違いないと思いますが、法制局、法務省いかがです。
  70. 田中康民

    田中(康)政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたことのとおりでございまして、承認は輸出貿易管理令によって承認をするかしないかを決定するわけでございますので、その規定によってだめであるとかいいものであるとかいうことをいうべきものと思います。  それから行政不服審査法の対象にならないという規定はございませんので、当然行政不服審査法の対象にもなります。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 法務省、どうです。
  72. 青木義人

    ○青木政府委員 いま内閣法制局のほうから御答弁になられたとおりでございます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 いいですか大臣、今後一切あいまいな電話によって通告するとか、口頭によって伝えるとかいうようなことはやめてもらいたい。さらに輸出貿易管理令の第一条、承認を受ける場合は書面によるということになっておるのです。したがって、特認を受ける場合の手続は通産省令で定まっておるのですよ。しない場合は定まっていないわけです。したがいまして、通産省令を改正し、文書による大臣の却下を必要とする、そのように政令及び省令を変えますか。でなければ片手落ちだと思うのです。どうです。
  74. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 一般的に承認、不承認は書面をもってやるのがもちろん法的には正しいことでございますので、私どもはこの天津の場合におきましても、決して申請者から書面を出すことを出すなということであらかじめ弾圧しておるわけではございません。ただ、いろいろ事前の準備の関係で相談に見えます際に、あらかじめ政府の考え方をはっきりしていたほうが便利であろうということでやっておるだけでございますので、この場合でも、十三品目についての輸出の承認申請が出てまいれば、それに従って処置をいたすことはいささかも変わりございません。  それから不承認の場合の手続を書面によってやるように変えるべきであるという御意見でございますが、この点は省令等におきましてはっきりしたそういう規定が完備しておらないかと思いますので、なお検討いたしますけれども、いずれにしましても、書類をもって申請する場合には、その書類に処分をした判を押しまして、それを返すというのが本則だというふうに考えます。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、この問題だけではなくて、ぼくは二年ほど前から予算委員会あるいはこの委員会等で行政の行き過ぎ、こういう問題を取り上げてきておる。いうならば行政の立法に対する挑戦、これは何かというと、行政指導という名のもとに何でもやってしまう、この行き方に対して批判を持っているわけなんです。したがって、責任の所在を明確にするために、行政指導も必要な場合もありましょうが、そういう場合は今後一切処分という形式でやってもらいたい。そうでないと、行政指導による損害は救済の方法がございません。ないのです。いいですか、確認してください。
  76. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 行政指導というと語弊があるかもしれませんが、親切で、こういうものをお出しになってもこれは不承認になりますよということをあらかじめ言うことは、私は親切だと思います。だから、そういう場合は私はいいと思います。そういうことを一切しちゃいかぬということではいかぬので、お互いに親しい間であれば、これは書類をなにしても無理ですよということを言うてあげたほうが私は親切じゃないかと思いまして、それを行政指導と言うといかぬかどうか、それはことばのなには私もはっきりしませんが、そういうことを言うてあげることはいいことじゃないかと思います。私は官民一体でやるということはそういう意味なんで、お互いに相談し合ってやってもらいたい、こう思うので、あくまでも法律的にやって処分するよりも、あらかじめお互いが話し合うて、これはいかぬとか、これはいいとか、これはこうしたほうがいいとか、こうすべきだとか、私は通産省としてはそういうようにすべきだということを言うておるのであって、あくまでも法律的にすべて冷たく解釈してやっちゃいかぬ、親切に指導すべきじゃないかということを言っておるので、そういう意味の指導なら私はいいと思っております。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 ただこの問題だけではなくて、いわゆる行政指導によるカルテルの結成、操短勧告、減産勧告、これなんかも行政指導ということでやられておる。当然これは独禁法による不況カルテル等々の手続を踏まなければいかぬわけです。私はあとにたくさん残っておるから、そういうことまでやりたくないけれども、あなたがそういう答弁をするなら、じゃ、そういった行為は通産省設置法何条何項に基づく行動ですか。
  78. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そういう法律的な冷たい考え、冷ややかな考えでお互いにやるべきではなくて、政府としては、業者に対しては、こういうことはこういうふうに解釈できる、こういうふうにしたほうがいいじゃないか、こういうことを言うてあげる。また業者も、こういうことはどうしたらいいかという御相談に見えておるのだから、そういう場合はこうしたらいい、ああしたらいいというふうにお互い相談して、お互いに合意した場合には、こういうふうにやるべきではないか、そのときは正式な書類を出してもらうとか、そういうふうにやるべきではないか、それが私はほんとうの行政だと考えております。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 きわめて常識的な言い方をした。しかし通産省のやること、その権限及び通産省設置法によってきめられておる行政的な行為については、私は事実行為、行政指導、行政処分、こういうように分けられると思うのです。いま言った電話でだめですよと言ったこと、これが何行為だとかいうようなことは私は申しません。大臣はきわめて常識的な言い方をしたけれども、通産省の役人、国家公務員は、この通産省設置法に基づくところの権限によってやらなければならぬと私は思うのです。したがって、そんなことをやったということは何条何項の権限に基づいたのか、こう言っておるわけです。相談に来る、それに対して答えてやる、これは事実行為でしょう。しかしながら業者は弱い。通産省の力は強い。したがいまして、そういうことでも文句を言えば、あとあとに関係するということで黙ってしまうということも多いわけです。そういうことで表面へ出ない。すなわち設置法によるところの権限というところに出ない、あるいは行政処分というところに出ない前の事実行為等々によってそのことが握りつぶされているところに私は問題があると思う。くしゃみ一つする、たばこ吸うのも通産省の役人は設置法によれとは私も申し上げません。少なくとも国民の権利と相対するときは設置法に基づかなければできませんよ。それは確認してくださいよ。設置法に基づかなければやれませんよ。一挙手一投足まで、こうは言いませんけれども、少なくとも国民に対する場合、申請者に対する場合は設置法の権限、そしてその処分者の身分を明らかにしたものの決定書、これが必要であると思いますが、どうです。
  80. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話しのとおり、行政処分は設置法によってきめなければならぬ、こう考えておるのであります。それより前の事実行為と申しますか指導というものは、私は事実行為とそれらとの差別がむずかしいのですが、お互いが話し合ってやるべきだ、そのときには、あくまで通産省の役人は権限をもって、権力をもってやってはいかぬと思うのです。もっと親切にやるべきだ、あくまで対等の立場においてやるべきだということで、私はあくまで官民一体でほんとうに心を合わせてやるべきだということを言っておるのであって、それでいよいよ通産省も了解する、本人も了解するというときに、あらためて書類を出して、許可すべきものは許可するというようにやるべきだと思う。初めから権限をもって臨んではいかぬということを私は言っておるのです。そういう点について、もし初めから通産省のほうで権限をもって臨むというような態度をとれば、これは大いに改めなければならぬ、こう考えております。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 官民一体という考え方自体が問題なわけですが、それはいいです。少なくともココムによってだめですということは間違いだ、これはもう確認できたわけでしょう。したがいまして、私は質問の冒頭で、去る五月十七日の石野質問に対して、あるいは私の関連質問に対して答えたことを修正するならいまのうちに改めなさいと言ったが、改めなかったのですが、もうあの答弁は改まったことになりますね。確認しますが、いかがですか。
  82. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私はそういう法律的なことばで言うたのではなくして、ココムという、一般にお互いが今日言いふらしていることばでありますから、それでココムということばを言ったのであって、法律第何条をどうこうということばを私は言ったのではないのです。お互いココムと言ったらぱっとわかっておりますから、それでココムということを言ったわけです。詳しく法律的に解釈すれば、田中委員のおっしゃるとおりであります。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 これは先ほど申しましたように、われわれの側もあまりそこまでもいままでやらなかった。したがって、国民に対しては何の権限も持たない、直接束縛力のないココムというものが至上命令としてまかり通ったところに問題があったと思うのです。したがいまして、今後一切ココムによって輸出を禁じますということは聞こえませんということを宣言しておきます。いいですね。  そこで、具体的なこの十三品目の問題でございますが、そのことに対しまして、きのう社会党の成田書記長と松本国際局長があなたにお目にかかった。その前にあなたが閣議に報告をして、了承を得たという。これは閣議決定であるのかどうかわかりませんが、そのことは閣議決定でありますか。いかがでしょう。
  84. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 閣議決定ではありません。閣議了解です。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 閣議了解事項であるならば、それの品目を再検討して、いま私の言っているような、いわゆる折り目を正した行き方によって再検討できますか。それをできる者はだれですか。通産大臣ですか。それとも総理でなくては解決しませんか。もしそうであるとするならば、次の機会に総理の出席を要求いたします。
  86. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、輸出の許可、認可通産大臣がやることでありますからして、私の責任であります。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、あなたの責任において、再検討する余地はありませんか。
  88. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 昨日も成田書記長がお見えになりまして、そのお話がありましたから、そこでもう一ぺんとにかく検討しますが、しかしむずかしいですよというお返事をして、そこでもう一度私は局長を呼んで、きょう社会党から見えたからもう一ぺんひとつ再検討したらどうかということで検討しましたが、検討した結果、私もよく詳細ないろいろな説明を聞きましたが、やはりだめだということで、きょうもはっきり十三品目はだめだということを、ここでもはっきりお答え申し上げました。
  89. 田中武夫

    田中(武)委員 はっきりと申し上げましたというて、それでは一つ一つやらなければいかぬのですよ。別表のどこによってどういう品物をだめだと言ったのか。ひとつこの別表を、ずっと一ぺん十三品目の該当のところを読み上げてください。輸出貿易管理令による別表第一の各項目に対してココムでだめですということははっきりしたのです。それならば、これの別表第一にいろいろなことが書いてありますが、そのうちのどれとどれとどれだということを十三品目読み上げてください。
  90. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 十三品目の内容につきましては、話は聞いておるのでございますが、先ほど来申し上げましたように、まだ申請書の形では出てきておりません。話の段階でその点を申し上げていいか悪いか、ちょっと問題がありましので、十三品目の内容につきましては、またほんとうに申請書が出てきて処分をする段階で申し上げたほうが適当であろうかと思います。
  91. 田中武夫

    田中(武)委員 さっき大臣は、成田書記長等からも話があったので、もう一度検討したらどうかと言ったのだ、その結果はだめだ、こう言ったのです。何もないところに検討できないでしょう。だから、だめだということを大臣に報告した以上は、この輸出貿易管理令の別表に基づかなくちゃならないのでしょう。そこで本年度の通産六法の八一ページ以降について私もしるしをつけていきますから、どれとどれとどれだということを明確に答弁願います。そうでなければ越権行為である。法に基づかなくて通産省がそういうことを許さないという越権行為であると認定します。
  92. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 十三品目の名前とそれから概要につきましては、お手元に資料がございます。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 いやいやそんなことじゃないのだ。この別表第一の一からずっと二百十一項目に分かれていますね。そして一項目の中で多いのは物品名が数種に分かれておるわけです。それを一つ一つあげてください。そうでなければ、いままでの質問してまいりましたところの結論にはならないわけですよ。とめるのは輸出貿易管理令によるのだ。しかも私たちは、この輸出貿易管理令の基本であるところの管理法の四十八条第二項によって、これは法律的な根拠に対して疑問を持っております。これはまたあらためて争います。共産圏との貿易が国民経済の健全なる発展に支障を来たすなんてばかなことがありますか。その問題も議論しなければならない。しかし時間の関係があるから、それはあらためて法律解釈についてはあなたと争います。さしあたっての問題として、この管理令の別表によってだめです、こういう結論を出したなら、これの何表何項によるのか、はっきりと言ってください。私はいまからしるしをつけていきますから。そうでなかったら、これははっきりと言ってもらってしるしをつけなければ、これ以上の法律的な質問、討論が行なわれないのですよ。だから、これのどこによって行なわれておるのかということを、たとえばセメントはそうじゃないと思いますが、かりにセメントだったら、別表第一の二九でございます。こう答えてください。そうでなかったら、あなた方のいままでとってきた行動は法令に基づかないところの越権のさたであったと断定します。
  94. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 十三品目がこの別表のどの項目に該当するかという点につきましては、実は具体的な審査は、この所管が重工業局でございますので、重工業局の専門家がこれを審査しております。そこで、私いま専門的にわたりますことを的確にここでお答えすることはできませんが、これは後刻はっきりした品目と、それがどれに該当するかということをお答えすることをお約束いたします。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 これは重工業局なんて言っておるのですが、少なくともあなたは管理令に基づいてだめだと言ったんだと言っておるのでしょう。そうでしょう。そうなら管理令の別表のどこなのかと聞いておるのです。それは私ではありませんということで答弁になりますか。少なくとも通産大臣は、通産省全局を統括しておるはずなんです。通産省、どうなんですか。この別表の一々の品目にわたって、たとえばAという品目は別表の第何号によって拒否します、そうこなければ通産省としていままでやってきたこと、少なくともココムというような問題に対して、輸出をしようとしてできなかったことは今回だけではない。今回は展示です、輸出ではない。輸出と違うということを議論したいのですが、そういうことは別にしても、いままでそういうことで押えられてきたわけでしょう。しかもいままでは、委員会等においても、ここまでさかのぼって議論せずに、ココムというものが、それが戦略物資なのかどうか、あるいは外国においてはそれが入ってないのに、日本はけしからぬとか、よそからの圧力があるのじゃないかということで終始したと思うのです。ところが、きょう限りココムということばは、通産省においては使えない、これははっきりしたわけです。そうなれば、貿易管理令の別表によって拒否します、それでは十三品目を拒否したのはその別表の何号なのか、これでございます。かりにセメントを拒否したとすれば、二九号でございますというように答えなくてはいかぬのです。それが答えられないなら、今日まで輸出は許さない、いわゆる展示、持ち出しは許さないということで、その展覧会までも中止しなければならない羽目に立ち至らしたところの通産省の行動は重大であります。法律に基づくことなく、明確に法令によっての根拠を示すことなく、そういうことを今日までやってきたということは問題です。しかも個々の、いわゆる事実行為というかっこうではなくて、今後拒否するのは、はっきりと行政処分で行ないなさい、そのことに対して、まず各品目が輸出貿易管理令の四条、八条二項に照らして範囲を越えているかいないかということも裁判所で争いましょう。したがって、まず当面十三品目について、この別表の一々を示してください。
  96. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 この答えは非常に簡単にできると思いますが、私が専門家でございませんので、不正確なことを申し上げても申しわけありませんので、いま専門家を呼んでおります。それは専門家によって簡単にお答えできると思いますので、そういうふうに御了承いただきたいと思います。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、その専門家が来るまで待ちましょうか。それでは重工の担当の人が来るまでこの問題はお預けにして、次にいきたいと思います。  次に、私は、いわゆる資本自由化について若干の質問をいたしたいと思います。  外資審議会は、最終的には本日きめて、そしていわゆる第一種五〇%対象業種が三十五、六から四、五十程度だともいわれておる、第二種一〇〇%自由化業種が十七、八だろうなんて新聞に出ておりますが、いずれにいたしましても、この答申を待って六月の六日の閣議で決定し、七月一日からいよいよ資本自由化に入っていく、こういうことになっておりますので、それに関連いたしまして相当質問をする点があるのですが、まず柱の点だけやります。  まず第一に、資本自由化になった場合に、特にアメリカの資本だと思いますが、そのアメリカ資本、いうなれば国際企業とか世界企業とか言われておるような企業、こういうものはどういうかっこうで日本に上陸してまいりますか。どういうかっこうでくることを想定しておりますか。
  98. 下山佳雄

    ○下山説明員 本日の外資審議会において最終的に決定になりまして、答申がございまして、それから閣議決定があるわけでございますが、それによりますと、これは既存会社に対する自由化の問題、既存会社の株式処分に関する問題、それから合弁会社、新設会社に対して業種別にこれを自由化させる、これを第一種と第二種に分け、五〇%、一〇〇%と分けるわけでございます。したがいまして、そういう二様の形で入ってくるかと思います。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、とう分析しているんですよ。まず一つは、アメリカに国籍を持つ法人が日本に支店を持つという形態が一つ、次にはアメリカ資本が、あるいはアメリカの企業が日本の国籍を持つ法人会社をつくるという形式、それから現在上場せられているところの株式を取得して経営参加に入り込もうという形式、さらにもう一つは、技術提携というかっこうによって経営参加に入り込もうとする形態、まだまだあろうかと思うが、大体この四つの形態が考えられると思います。したがいまして、この四つに対してどういう対策をとらねばならないかということが問題になります。  そこで、逐次この四つの区分に従って質問を進めてまいりますが、その前に私の申し上げているようなこういう形態で入ってくるであろうということに対してはどうですか。
  100. 下山佳雄

    ○下山説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、これは資料がちょっと古いのですが、アメリカの商務省かどこかの調査ですが、一九五七年に、いわゆるアメリカで在外会社関係のあるものが二千八百社、在外会社を持っておるものが一万二百七十二社。そしてその七四%がアメリカから見ての在外法人、日本の場合は日本国籍を持つ法人になります。あとの二六%が支店ということになります。  そこで、日本へ資本を投資しようとする、あるいは上陸しようとする場合に、まずどういう動機によってアメリカは出てまいりますでしょう。アメリカ資本も、何らかの意味がなければ出てこないと思うのです。それはどういう動機であろうと考えますか。
  102. 下山佳雄

    ○下山説明員 いろいろな動機があると思いますが、一つ考えられますことは、アメリカの会社が優秀な技術を持っておる、この技術を日本の会社に売りつけると申しますか、そういう形で、また、日本の会社も従来の技術導入でいければよろしいわけでございますけれども、なかなか新規の技術ではそういうわけにもまいらぬということで、合弁会社というような形をとる、あるいはまた、ものによりましては日本の消費市場をねらうということもあるかと思います。それからまた、日本に工場をつくりまして、これを拠点に、日本に売るばかりでなく、東南アジアに売る、いまそういうことがいろいろ行なわれております……。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 私の質問がぴんとこなかったかもしれませんが、私は、どういう動機かということは、まずアメリカの企業が新市場開拓ということ、これは一九六四年の調査ですが、アメリカの企業が外地へ出ていく、その動機について調査したものがあるのですが、一番多いのが新市場開拓で四八%、利潤獲得の機会の存在というのが二〇%です。そのあといろいろなものがありますが、少なくともこの二つによってもう過半数を占めておるわけです。それに日本の場合は、良質で安価な労働力だという。こういうのがアメリカ企業の上陸の目的でなかろうかと思うのですが、どうでしょう。
  104. 下山佳雄

    ○下山説明員 その点は確かに一つの非常に大きな日本に来ようとする魅力ではなかろうかと思います。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 したがいまして、それに対する国内企業の、まあ保護とはあえて申しませんが、対策は、そういう形態をまず探る、それに対応したところの対策が必要であろう。どうですか、大臣、私の言っているとの分析のしかた、了解しますか。するならば、私の言ったこと、同意しますね。
  106. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いま田中委員のおっしゃる動機で来ると思うし、またそれに対して対策を講じなければならぬ、こう考えております。
  107. 田中武夫

    田中(武)委員 外国企業が日本の国籍を持つ、あるいは日本と合併をしてやる、そういったような日本国籍の会社設立と支店設置とは、どちらが多いと思います。
  108. 下山佳雄

    ○下山説明員 支店設置のほうは、どちらかと申しますと形態の小さなものでございますが、もちろんアメリカの企業が一番望んでおりますのは、日本に子会社を設けるということだろうと思います。
  109. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、設置か合弁かということは、アメリカの法人税といいますか企業税といいますか、企業に対する税金が日本のそれよりか高いか安いかによってかっこうが変わると思うのです。きょうは大蔵省の税務関係を呼んでおりませんが、少なくとも通産省として、資本自由化にあたっては、日本でいうならば法人税だとか事業税があるわけですが、これを企業課税といいましょう、アメリカの企業課税と日本の企業課税と税率はどちらが高いか安いか。
  110. 下山佳雄

    ○下山説明員 アメリカのほうが高いと思います。
  111. 田中武夫

    田中(武)委員 アメリカのほうが高いときには、これは支店設置というよりか、日本でいうなら国内、向こうでいうなら在外法人設立という方向へ動くのですよ。そうじゃないですか。
  112. 下山佳雄

    ○下山説明員 それはそのとおりでございますし、さらに先生の先ほどおっしゃいました安価な労働力、これを目ざしてくるだろうと思います。
  113. 田中武夫

    田中(武)委員 あなた、私の質問を混同してはいかぬですよ。安価にして良質な労働というのは動機なんです。いま言っているのは形態なんですよ。どういう形態で乗り込んでくるであろうかと考えてみた場合に、私は、アメリカ本と日本と、企業課税がどちらが高いか安いかによって、その上陸のしかたが違う。もちろん必ずしもそれだけではないと思います。支店設置という方向もあるでしょう。しかしながら、日本のほうが有利だとするならば、アメリカからいえば在外会社、日本からいうなら日本国籍を持つ法人設立という方向に動くであろう、こういう推定がなされるわけですね。それに対していかなる対策をお持ちでしょうか。
  114. 下山佳雄

    ○下山説明員 お話のとおりに、やはり子会社、合弁会社の形で入ってこようとするものが非常に多い、したがって、それが日本の産業に対して重大な影響を与えないような自由化措置を講じなければならないし、また対策も講じなければならないということでございます。
  115. 田中武夫

    田中(武)委員 この資本自由化に対しては、外資審議会も慎重な審議を進め、各省個別にいろいろと話し合いをして、万遺漏ないようなかっこうをとっておられると思うのですが、若干問題点を私はあげていきたいと思います。  きょうは時間の関係で自由化の問題全部やれませんので、途中までで、一時半ごろまでやって、あとは大原委員のコンビナート爆発にかわりたいと思いますが、まず第一に考えられることは、よく政府がやられる、景気過熱の場合、経済調整をやる必要がある。それは行政面と金融面において行なうわけです。ところが、世界企業が上陸したときには、世界企業というものは、いわば日本の指導ということでなくて、アメリカ本国の指令によって動く。それから、もうかるか、もうからないか、ということに対しましても、全体としてもうかればいいのであって、当分は損をしても当面の日本の競争相手をつぶす、こういうような方向に出てくるだろうと思うのです。そこで、まず、景気調整の必要なときに、日本国籍のものであるならば、というよりか日本人が経営しているものであるならば、行政的、金融的の措置が講じられる。だが、そうでなかったら、やりにくいと思います。そういうような点について、どう考えておられますか。
  116. 下山佳雄

    ○下山説明員 確かに、先生のお話のように、外資が非協力的な態度をとります場合には、わが国の国内の景気調整に対して害を与える、その円滑な遂行が阻害されるというようなことも、あり得るかと思います。したがいまして、一応われわれといたしましては、外資が現在の段階におきましては五〇、五〇で入ってくるということがやはり原則であるということを打ち出し、また外資に対しても、わが国の政策遂行に対して協力することを望むという態度をとりたい、かように考えております。
  117. 田中武夫

    田中(武)委員 協力するという態度と言うのですが、そういう答弁になると、私も質問の順位を変えなくちゃならぬのです。  それでは、質問の順位を系統立ててやろうと思ったのですが、順序を変えて聞きます。いわゆる資本自由化にあたって、大きい意味の法令法律なり政令等々です、これを検討し、そのために改正を要するものがありますか、ありませんか。
  118. 下山佳雄

    ○下山説明員 現在の段階におきましては、現行の外資法の運用においてやる、いかなる法令が必要かということにつきましては、今後検討するということになっております。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば、外資法の規定に基づく認可の基準の特例等に関する政令四条一項、これなんかは検討する必要はありませんか。
  120. 下山佳雄

    ○下山説明員 これにつきましては、改正する必要があるという結論が一応特別委員会において出ております。したがいまして、おそらく政府としてもそのような改正をすることになると思います。
  121. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは当面必要ないと言ったでしょう。ところがはや第一歩で改正検討する必要があるということを言ったじゃないですか。これがあと次々と十ばかり出てくるのですよ。
  122. 下山佳雄

    ○下山説明員 いま私が申し上げましたのは、ちょっとことばが足りなかったかと思いますが、法律改正につきましては……。
  123. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、私は広い意味において法令と言った。だから政令、省令を含むのですよ。
  124. 下山佳雄

    ○下山説明員 現在の段階におきましては、法令といたしましては、いまおあげになりました政令の第四条、これを変える必要があるという結論でございます。
  125. 田中武夫

    田中(武)委員 北島さん、先ほど言ったように、世界企業というものは全世界に幾つかの支店なり自分の合弁会社を持っておるわけです。そこで、たとえば特定地域においてかりに損失を出しても、全世界的にもうかっているわけです。そこで当面競争相手を倒そうという戦術に出るのですよ。はでな宣伝あるいは不公正な取引、ダンピングだとか、景品の提供とか、いろいろなものが出てくると思うのです。そこで、私は直ちに独禁法の改正は申しません。これは運用よろしきを得なくちゃいけないと思う。同時にたとえば不当景品類とか不当表示法の対象になるような行動も多いと思うのです。そこで、たとえば特殊指定を行なっておくとかなんとかいうような手を打つべきじゃなかろうかと思うのです。公取委員会はこのごろ盛んにハッスルをしておられるが、こういう資本自由化によって、世界企業が上陸してくることによってこうむるであろうところの取引の混乱あるいは不公正な取引等々について、公正取引委員会はどのように考えるか。私はあらかじめ特殊指定等の必要もあるのじゃないかと考えるのですが、いかがですか。
  126. 北島武雄

    ○北島政府委員 資本の自由化に対処して独禁法関係の法令等を改正する必要はないか、あるいは運用を強化する必要はないかというお尋ねでありますが、私は独禁法はいじる必要は全然ないと思います。  それから外資の進入に対しましては、往々にして巨大な資本力を利用いたしまして不公正な取引方法が行なわれる危険がある。それに対しまして私は厳重に備えなければならぬのじゃないかと思っております。たとえば、御指摘がございました不当な景品類の規制、あるいはダンピング等の問題、こういった問題につきましてはさらにさらに掘り下げて検討しなければならぬ問題があると私は思います。ことに景品の問題につきましては、当初巨大な資本を利用いたしまして、それによってはでな景品あるいは誇大な宣伝を行なう危険もございます。こういう点に対しましては、一つ一つ検討をいたしまして十分な備えをしなければいかぬ。たとえば今回業者間の景品類の提供を規制する告示を出しました。これは外資だけの問題ではございません。最近、海外招待旅行によって象徴されるものでございますが、メーカーが卸なり小売りなりにはでな景品をつけて不当な誘引をやっておるということがございますが、これに対しましては、先般、新たな取引の開始を勧誘したり、あるいはまた一定の取引に当てはまることを条件としまして景品を提供してはならぬ、ただし、年間一事業者当たり十万円まではいいというように一応規制をいたしました。これによって、はでな海外招待旅行などは当分規制をされます。当面これは内資だけの問題でございますが、外資に対してももちろん適用されるものであります。こういうことはぜひ今後やっていきたいと思います。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 万遺漏なくといいますか、そういう布陣は必要だと思うのです。公取委員会は人も少ないが、やってもらわなければ困る。そこで、いわゆる特殊指定を考えるとか、あるいは問題があろうと予想せられる業界に対しては、業界の協力を得て公正競争規約なんかをつくっておく必要がある、そういうことを提案します。どうです。
  128. 北島武雄

    ○北島政府委員 全く同感であります。そのとおりであります。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 独禁法の十一条に、金融会社は一〇%をこえて株式を保有してはならぬ、ただし、認可を受けた場合はこの限りでないという条項がありますが、法律のたてまえからいえば、日本に国籍を持つ金融会社と外国の国籍を持つ金融会社、これは十一条で規制できますか、できませんか。
  130. 北島武雄

    ○北島政府委員 十一条に「金融業を営む会社」とございますが、独禁法上この「会社」の定義は、外国会社を含むということになっております。したがいまして法律のたてまえからは規制することができることになっております。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 これも私大事だと思うのです。これは法のたてまえからいけば国籍主義とか何とか主義がありますが、まず日本の国籍を持つ金融機関だということになる。しかし、国籍はアメリカにあって、支店その他がこちらにある。すでに株式取得とか、そういう行動も起こっておりますね。ADRですか、何かやっているでしょう。ういうものに、十一条の規制がありますよと、ここは明確にしておく必要がある。いまおっしゃったからそれでいいと思いますが、独禁法の運用について十分な配慮が必要だと思うのです。もうわかっていますけれども、もう一度御答弁願います。
  132. 北島武雄

    ○北島政府委員 資本の自由化に対処いたしまして独禁法の運用をしっかりやらなければならぬということ、ことに不公正な取引の悪い面についてはしっかりやらなければいかぬということは、私ども痛感いたしております。今後とも、わずかな布陣ではございますが、十分なことはできないかもしれませんが、及ばずながらいたします。
  133. 田中武夫

    田中(武)委員 次に、世界企業は、日本だけでなく、いろいろなところに支店あるいは合弁会社を持っておる。そこで輸出にあたっては、たとえば香港までしか日本はしちやいけないんだとか、それから向こうでは西ヨーロッパの何々支店なり何々会社がやるんだというようなことを、世界企業の本部といいますか本社自体でやっておると思うのです。したがって、これはよほど気をつけないと、輸出地域を特定の業種については制限せられるという結果が起こると思いますが、その点いかがですか。
  134. 下山佳雄

    ○下山説明員 お説のとおりだと思います。
  135. 田中武夫

    田中(武)委員 通産大臣、お説のとおり、すなわち、資本自由化によって国際競争力をつけるんだ、こう張り切っておる。ところが一面輸出の地域限定が行なわれるということは、いま確認したとおりなんですよ。それに対してどう対処しますか。
  136. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 法律上のことは私は詳しく存じませんが、そういうような国際取引の不当拘束については、独禁法の六条に当たるから、そのほうで取り締まることはできるということであります。
  137. 田中武夫

    田中(武)委員 できますか。ともかく世界企業としては各地に拠点を持っておる。そしてA国にあるのはここまでが輸出の範囲だ、日本はここまでだということを指令してきめると思うのですよ。その場合独禁法の六条によって規制できますか。
  138. 北島武雄

    ○北島政府委員 この問題はこういうことであろうと思うのです。外国からの技術援助契約におきまして、いわゆる外資導入契約におきまして、その契約条件として、その特許の実施等によってできたところの製品について輸出地域を制限している場合がままあるわけでございます。これが一体独禁法上どうかという問題じゃないかと思います。これについてはなかなかむずかしい面もございます。と申しますのは、どの程度までは特許権、商標権、実用新案権等のいわゆる無体財産権の正当な領域であろうかという問題その無体財産権の正当な行使の範囲内であれば、これは独禁法の適用は除外いたしております。しかし輸出地域の制限につきましては、もちろん全部が私どもの考えておりますような合法的なものではございません。たとえば、外国の特許権者が日本の会社に対して特許の実施権を与え、そうしてできた製品について、ヨーロッパのたとえば特定の国に輸出してはならぬ、こういつた場合に、もしその特定の国においてすでに外国の特許権者が特許権を持っておって、登録しておったら、これは当然特許権の効力の範囲内であろうかと思います。そういうようなことで正当な範囲も相当あり得る。しかし不当な場合は、その点私どもも十分気をつけなければならぬかと思います。
  139. 田中武夫

    田中(武)委員 外資導入といいますか、資本自由化と技術提携、特許法との関係についてはあとで触れるつもりでおりますが、きょうはそこまでいくかどうかわかりません。いま大臣が独禁法でと言うたから聞いたわけなんです。技術提携による特許権の問題、あるいはきょうは特許庁からも来てもらっておるが、いわゆる実施権の問題等は、これはきょうやれませんからあらためてやりますが、現実にそういう輸出地域が限定せられるということもあり得るということで、ひとつ十分考えてもらいたい。  それから西ヨーロッパといいますか、ヨーロッパにおいて、自由化したために知らないうちにアメリカに乗っ取られたというのが多いのですね。たとえば西ドイツでは電機メーカーに多い。フランスでは有名な香水会社ラノアンパルフューム社とかいうのですか、これを見ると、西ドイツでは電気機械、電気器具、フランスでは香料といえばその国の特色であります。そういうものがねらわれて、いつの間にか乗っ取られておった、こういうことです。これはもう現実の事実としてあるわけなんです。したがって、一体日本が一番強いところはどこか。造船といえるかもしれない。私はまずこの西ドイツ、フランス等の例を見ても、その面に対する十分な配慮が必要でなかろうか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  140. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 フランス、西ドイツにおきましても、乗っ取られたのはいつの間にかというわけじゃないと思うのです。それは経営者が株を売るなり何かしたのであって、そこで最近の反動としては、経営者自身が反省しなければならぬという運動がいま起こっております。でありますからして、日本も問題は、やはり日本の経営者が自分だけ高く株を売りつけて、そうしてのんきに暮らしていればいい――西ドイツあたりは、株を売ってスイスあたりに別荘を持ってのんきに暮らすというような空気が起きているから、これではいかぬという反動的なムードがいま起きてきているのであって、私は、日本の業者もあくまで国民経済という立場から自由化に対しては対処してもらいたいという考えをしておりますから、そこで、いつの間にか乗っ取られないように、何か規制したい、こう考えております。
  141. 田中武夫

    田中(武)委員 いつの間にかということばにもニュアンスの違いがありますが、私の見た文献によると、乗っ取られて初めて会社の最高責任者も政府も同業者も事態を知らされた、こういうように書いてある、これは表現の問題だと思うのです。しかしうっかりしているとそういうことになると思うのです。  そこで、これは飛び飛びになって恐縮ですが、法務省見えていますね。そういうことを防ぐために商法の改正も行なわれて、株式譲渡の禁止等も行なわれておるのですが、外国人に対して株式譲渡を禁止する定款をつくる、あるいは株主総会の特別決議によって役員に外国人が就任することを制限する、こういうことは商法上可能だと思うのですが、いかがですか。
  142. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 御質問の株式の譲渡制限でありますが、これは商法の規定によりまして、株式を譲渡します場合に取締役会の承認にかけるようにできるようになっております。したがいまして、外国人に対して株式を譲渡する場合、取締役会の承認を要するというふうに定款を定めますれば、これによって外国人に株式が譲渡されることを防止できるということになろうと思います。  さらに、先ほどの株式会社の役員につきまして、これも役員となるには外国人であってはならないということを総会の決議として定款で明らかにしておくということも一つの方法であろうと思います。
  143. 田中武夫

    田中(武)委員 したがって定款なり特別決議によってそういうことは可能である、これは商法上そうなんです。そうすると、これは外務省ですか、それとも通産省ですか、日米友好通商航海条約第七条によって、アメリカ人に対しては国内の者と一緒にしなければいかぬ、自国民待遇といいますか、それがきまっていますね。片や商法においてそういう制限をする、そのことと、日米友好通商航海条約の七条との関係はどうなります。
  144. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 ただいま先生質問の点でありますが、個々の株式会社が、株主総会におきましてそういう決議をいたしまして、定款によって役員の制限とかあるいは株式譲渡の制限をいたします場合には、日米友好通商航海条約第七条のいわゆる内国民待遇、それにすぐに違反するということにはなりませんが、もし法律その他によりましてそういうことをし得るというような規定でも置きます場合には、日米友好通商航海条約第七条の内国民待遇にひっかかってくるということでございます。
  145. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、内国民待遇というものは、個々の企業が差別をすることはかまわない、政府が政策をもちあるいは法律をもってやる場合には第七条によってできない、こう解釈していいですね。
  146. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 その点は外資審議会の専門部会におきましても、十分検討されまして、政府法律あるいは政策でもって打ち出すということは困りますが、個々の会社がそういうことでおやりになるということにつきましては、違反にはならないということであります。
  147. 田中武夫

    田中(武)委員 外資審議会で検討せられましてということは政府答弁にはなりません。条約の解釈、これは当然外務省が第一責任を持たなければなりません。だから、いまおっしゃるとおりであるということなら、そのように理解します。よろしいですか。
  148. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 先生の御理解されたとおりでございます。
  149. 田中武夫

    田中(武)委員 まだたくさんあるのですが、もうあれ来ましたか。――それじゃその前にもう一つちょっと労働省にお伺いしますが、世界企業、あるいは国際企業というのがほんとうかもしれないが、出てきておる。またそれでなくとも資本自由化ということで、国際競争力といえば聞こえがいいが、合理化が進められる。そういうことによる失業あるいは労働強化、さらに先ほど私が申しましたように、世界企業は当面の敵、いわゆる日本の場合では日本国籍を持つ日本の会社、シェア等において競合しているものを、個々ぶつぶつという戦術をとるだろうと思う。そういうことによって起こる失業等々を予想せねばならない。労働省はそれに対してあらかじめ用意はありますか。
  150. 藤繩正勝

    藤繩説明員 お答えを申し上げます。労働省におきましても、資本自由化の問題につきましては、非常に重大な問題でございますので、かねがね関心を持って検討いたしておりまして、先般来関係方面の専門家の意見も聞きつつ、部内の勉強を重ねておるところでございます。いまいろいろ御議論ございましたが、労働省といたしましては、全体的に見まして、資本の自由化が円滑に正々と行なわれるならば、ヨーロッパの先例等から見ましても、雇用の拡大あるいは労働条件の改善というような、労働者にとりましても好ましい結果が出てくるのではないかというふうに思っております。ただ、いま御指摘のように、その過程におきましていろいろ問題が起こることが予想されるわけでございます。その場合に、直接外資系の会社そのものの問題と、それから外資の導入に対処しまして、国内の企業が集中、合併をやるということから起こるいろいろな労働紛争という二点が考えられますけれども、いずれにいたしましても、一つは労務管理の面におきまして、日本の慣行といいますか、そういったものになじめないということから起こってくる紛争の問題、それからただいま御指摘のように、これもまたやはり日本の実情にうといというようなことから、非常に割り切った合理的な考えで一挙に解雇をやる、失業問題が起こるというようなこともございます。そこで、そういったことにつきましては、先ほど申し上げましたように、部内でいろいろ勉強をいたしておりますが、ただ西欧の例などを見ましても、労使とも一般的にはこれを受け入れておりますし、また従来の例から見ましても、大多数は外資系の会社といえども日本の労働慣行に従った運営をやっておるようなことでございます。ただ今後の問題は非常に大きいことでございますので、御指摘のような点につきましては、十分遺漏のないように、各局をあげて検討を重ねている次第でございます。
  151. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の関係もありまして、また先ほど保留した答弁を求めなくてはいけないので、資本自由化につきましては実はまだこれだけあるのです、だから、あらためてこれだけで質問の機会を与えてもらうことを留保しながら、一応もとに戻りたいと思うのです。  そこで、先ほど申し上げました輸出貿易管理令の別表、これについて具体的に言ってください。それによって、私はしるしをつけていきますから……。
  152. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 先ほど御質問の、十三品目が輸出貿易管理令別表第一のどの項目に該当するかということのお答えを申し上げます。  まず、別表に品目ごとに番号をふってございますが、便宜その番号で申し上げますと、一三九、一七二、一六七、この三つのいずれかに該当するわけでございます。  具体的に、十三品目別にそれがここに出ておりますが、それを申し上げましょうか……。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 いま、別表の一六七、一七二、一三九、こういうようにおっしゃったわけで、これと対照させていわゆる十三品目を言ってもらって、詰めば後日にやることにいたします。それでは、十三品目をあげてください。
  154. 今村曻

    ○今村(曻)政府委員 まず一三九に該当する品目の名前を申し上げますと、RF信号発生器、ミリ波ドライカロリメーター、マイクロ波デジタル周波数計、レーザー用出力計、マイクロ波発生器、ミリ波信号発生器、サーモフィルム電力計、雑音指数測定器、電界強度測定器、これらの品目は、いずれも二二九に該当する品目でございます。  次に、一七二に該当する品目は二つでございまして、水晶式膜厚監視装置、それからTC、1A型半導体試験器、この二品目が一七二に該当いたします。  それから一六七に該当しますものが二品目でございまして、シンクロスコープと、同じく型式は違いますがもう一つのシンクロスコープ、二件が一六七に該当するものでございます。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの特認を与えなかった十三品目は別表第一のどこに当たるかということの答弁を求めたわけですけれども、たとえば具体的にあげた品目が一三九の「一、〇〇〇メガサイクルをこえる周波数で使用するように設計した測定器」になるのかならないのか、あるいは、それをなぜ特認品目にあげたのか、そういうことにつきましては、近いうちにあらためて論議をやりたいと思いますので、その機会を留保したいと思います。  そのときに、申し上げておきますが、これはココムによってということは言わせませんよ。なぜ輸出貿易管理令別表においてこれを特認品目にしたのかということ、及びそれらの具体的な品目というか機械がこれに該当するのか、こういう問題につきましては、近い機会にもう少し掘り下げて検討する機会を与えていただく、そのことで、きょうは時間の関係もありますから、この項目を終わりたいと思います。自由化の問題ではたくさん問題が残っております。それからこの問題についてもいまの答弁では私了承しておりませんので、なぜそういうことをやらねばならないのかということ、しかもさっき言ったようにココムでございますということは言えないことになったんですから、なぜそれをやらねばいけないのかということは根本的にひとつ議論する機会を与えていただくことを委員長にもお願いいたしまして、もう時間がないので、特別に聞かなければならぬ問題だけを二つ、三つあげて、私は一応きょうは大原君と交代したいと思います。  一つは、五月三十一日の中村委員質問関連をいたしまして、韓国ノリの輸入の問題に関連する農林省の池田説明員の答弁――池田さんが農林省のどういう立場にあるのか私よく知りませんが、その議事録の一部を読み上げますと、「昨年海苔協会というものができまして、全部海苔協会が一元的に扱う、こういうことになりました」こうある。いうならば、韓国ノリだけかどうか知りませんが、輸入のノリに対して一手買い取り機関の役割りを果たしているわけです。このことは、この協会なるものが輸取法による輸入組合だとか、あるいは協同組合法に基づく協同組合等々、いわゆる独禁法の除外がきめられておるところの法人その他である場合は一応考えられますが、これは民法の社団法人です。この民法法人の、これはたぶん日本海苔協会というんだと思いますが、それが韓国輸入のノリを一手に引き受けて、そこを通さなければ商社への販売はやれないというようなことは一手買い取り機関であって、独禁法違反だと私は思いますが、どうです。
  156. 北島武雄

    ○北島政府委員 社団法人海苔協会は、お話のように韓国産のノリを輸入した場合に一手で買い取るわけでございます。いわば買い手独占ということになります。ただし独占禁止法におきまして、私的独占とは、第二条の五項に規定がございますが、他の事業者の事業活動を排除または支配して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう、ということになっております。したがいまして、単なる独占では入らない。他の事業者の事業活動を排除または支配する行為ということが必要である。本件の場合におきましては、輸入貿易管理令による輸入割り当てがあり、輸入を割り当てられた商社が輸入の際の条件として政府の指示するところに全部売り渡せ、こういうことになっておるのでありまして、その反射的効果として独占が生じておりますが、買い手側として他の事業者の事業活動を排除し、または支配した行為はございませんので、これは独占禁止法違反にはならない、こう考えます。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 一手買い取りということであるならば、他の事業者の活動を排除するんじゃないですか。やりたいと思っておっても、ここ以外に扱えないのですよ。この法人がそういうことに基づく輸入組合とかなんとかいう根拠のある法人ならいいんだ。しかしこれは民法法人、社団法人だ。それがそういうことをやって、独禁法でどうもないのですか。
  158. 北島武雄

    ○北島政府委員 もしそういう業者が集まってかってにそういうことをやりましたならば、確かにそういうことでございますね。ただこれは、輸入貿易管理令がありまして、それに基づいて政府が輸入割り当てをするときに、その条件としてここに一手に売り渡せ、こういう法律に基づく行政行為があるわけです。その反射的利益として独占がある。この団体の行為におきましては、他の事業者の事業活動の排除または支配ということがないわけであります。そういう積極的な要件が私的独占には必要でございます。たとえて申し上げますが、最近新しい企業ができる、確かに独占なんです。新しい企業が日本で興ってできます。独占である。しかしそれは他の事業の事業活動の排除または支配はしないわけですから、その場合には私的独占禁止に触れません。それからたとえば優勝劣敗の結果、滅びるものは滅んで独占体が残った、こういう場合におきましても、それは不公正な競争等がない限り、他の事業者の事業活動を排除しまたは支配する行為がない限り、これは私的独占禁止法には触れない。これが独占禁止法の根本方針でございます。
  159. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう独占できるのは何らかの根拠がなければいかぬと思う。これは農林省の指導によって、こういうことだと思う。あなたがいまいろいろあげられたけれども、ここでもう一つ、そういうのをやりたいといってもできないでしょう。それならば排除しているのじゃないですか、そこは。いまのあなたの答弁は重要だと思う。ということは、かって行政力が関与した場合、独禁法違反は免れるというような議論があったことがありますね。行政権がそこに関与した場合、いまおっしゃったのはそういうことですよ。これにつきまして私は疑問を持ちます。北島委員長は良心的にいままでやってきたので、私はそういう点については一応認めます。しかしいまの答弁は私が勘違いしておるかわかりませんが、かつて、大議論になった独禁法違反の行為あるいはカルテル行為でも、行政指導によってあるいは行政が関与したときには違法ではないというような議論になったことがありましたね。そのようなことに関連のある答弁だと私は思う。これはまたあらためてあれしましょう。これはあくまで一手買い取り機関である。これは農林省が指導したのではあろうけれども民法法人である。そういうのに私的独占を与えるということ、これは輸入組合ならいいですが、これを一本にしぼることは、私はあくまで一手買い取り機関であると思う。これは、北島さんがいかに言われようとも独禁法上私は疑問を残します。しかしきょうはその程度にして終わりたいと思いますけれども、あなたしっかりしてもらわないと、行政が関与したからといって独禁法違反の行為が免れるということが一時いわれたことがあるでしょう。私は、いまの答弁はその問題と同じような感じを受ける。これはあらためてじっくりやりましょう。それではこの件は終わります。  最後に一点だけ影山さんに伺いたいのですがね、せっかく来てもらったのだから。四年も前から、姫路に鉄工団地をつくるということで苦労してきた、こういうことです。ところが、最近山陽新幹線が通るところにそれがたまたまあうということで、それが立ちのきしなければいけない、こういう事態が起こっておるわけなんです。きょうはこれを中心の質問のつもりじゃなかったから、国鉄も呼んでいないんですが、そういうようなことを中小企業庁長官知っておりますか。もうちょっと具体的に言いますが、兵庫県姫路市に鉄工団地をつくるということでやってきた。ところが、新幹線が通るのでそこを削らなくちゃいけない、こういう問題なんです。地元新聞の表現をもってすれば、そこのけそこのけ新幹線のお通りだということで、せっかく四年間にわたって鉄工団地をつくるべき努力したことがふいになってしまう、こういうことなんです。
  160. 影山衛司

    ○影山政府委員 まだ報告を受けておりませんので、実態調査をいたしまして、至急お答えいたしたいと思います。
  161. 田中武夫

    田中(武)委員 これは、その土地を設定するときに山陽新幹線の問題も出ておったときですから、あらかじめ国鉄に聞いたというんですね。だいじょうぶだということでそこに団地造成をやった。ところが、いまになってそこが新幹線の敷地になるからそこのけ。だから、いまの新聞の表現じゃありませんが、そこのけそこのけ山陽新幹線のお通りだ、こういうことで、結局は、中小企業が泣きを見ておるという事実、これをすぐに一ぺん調査してください。そしてあらためて国鉄も来てもらってこの問題をやります。まだ中小企業庁長官のほうへそういう事実が入ってないというのなら、ひとつすぐに調査してもらって用意をしてください。あらためて質問します。  それじゃ委員長大原君が先ほどからお待ちかねでもありますので、一応私はきょうはこれで終わりますが、いま申しましたように、まだまだたくさん問題は自由化に対してはあるわけなんで、それはあらためてすることにいたします。
  162. 島村一郎

  163. 大原亨

    大原委員 私は、去る五月の二十九日午後四時四十五分、広島市の大竹市東栄町にあります三井ポリケミカル大竹工場、これが爆発事件を起こしたのでありますが、これは死亡者こそなかったのですが、重軽傷者を含めて、あるいは民間の家屋の損壊を含め、あるいは被害の及んだ範囲が一キロ以上もあるというふうなことで、これは非常に大きな不安をかもしておるのであります。特にこの問題に関連をいたしまして、きょうはそれは主体ではありませんけれども、岩国、大竹、特に岩国地区にはアメリカ軍の基地がございまして、一日に三百機以上のジェット機が離陸をいたします。大竹の上空を通ります。したがって、大竹、岩国地区の石油コンビナートの安全の問題、保安の問題、こういう問題をめぐりまして非常に大きな不安をかもしておる。これは単に岩国、大竹地区の石油コンビナートのそういう爆発事故に対する一般住民の不安の問題だけではなしに、石油コンビナートがどんどんできつつあるわけですが、その保安の問題、安全の問題と深い関係がございます。したがって、簡潔にお尋ねいたしますが、この石油コンビナートの爆発の被害の実態、それから第二は原因被害につきましては、人的、物的な被害の状況、これを簡潔にひとつお答えいただきたい。
  164. 吉光久

    ○吉光政府委員 被害の最終的な数字の集計、現在まだはっきりわかってない点もございますけれども、一応連絡を受けておるところによりますと、会社内部の物的損害といたしまして、機械関係を含めまして一億円をこえておるという数字でございます。それから、社外の関係でございますけれども、社外の物的損害といたしまして、被害額はまだはっきりいたしておりませんけれども、大体工場から二、三百メートル以内にございました民家につきまして、爆風による被害が相当程度出ておるようでございました。主として窓ガラスのこわれということが中心のようでありますけれども、家屋によりましては屋根がわら等の被害も出ておるという状況でございます。金額的な面につきましては、現在まだ集計いたしているところでございまして、金額的表示はまだまいっておりませんけれども、そういう状況のようでございます。  それから、人的損害のほうでございますけれども、社内の労務者につきまして、請負を含めまして十七名、そのうち二名程度の人が一カ月くらいの治療を要するということになっておるようでございます。それから、社外の人的被害でございますけれども、正確な数がわからないのでございますが、窓ガラスの破片等によって負傷を受けている人というのが社外に数名おるようでございまして、現在会社のほうで全部近くの家屋をそれぞれ一軒ずつ回りまして、その損害あるいは人的被害がなかったかどうか調査いたしておりますが、会社の報告によりますれば、きょうじゅうにはそこらの関係をはっきりした上で、家屋の修復等もきょうじゅうには完了したいというふうなことの報告がまいっております。
  165. 大原亨

    大原委員 これは警察庁、消防庁でもいいですが、爆発事故が起きましたのは、申し上げましたように、二十九日の午後四時四十五分ですが、しかし共同調査を開始いたしましたのは、これは翌日の午前九時から、こういうことになっている、現場検証は。一般にいわれていることは、事故が起きましても、警察や消防車はもちろんですが、高圧ガス取締法の監督の官庁である県あるいは通産局の立ち入り検査等につきましても非常に非協力であって、妨害いたした、企業防衛という観点でとにかく入れなかった、新聞記者その他も入れなかった、こういうことで、非常にその秘密主義に対しまして住民の不安が起きておるようであります。それは共同現場検証が始まりましたのが翌日でありまして、翌日一ばいかかって三十日にようやくできた、こういうことであります。これはそういう重要な工場内あるいは工場外に対する影響に対しまして、これを企業側が、それを拒んだりいろいろなそういう点について協力しない、こういうことについてはどういうお考えですか。法律上の根拠があるのですか。これはきわめて住民に不安を与えておりまするし、不信を与えておりますから、その点につきましてお答えいただきたい。
  166. 田村宣明

    ○田村説明員 警察、消防の合同の現場検証に会社側がこれを妨害したり拒んだりしたりしたようなことはないかというお尋ねでございますが、私のところにはまだそういう報告はまいっておりません。
  167. 大原亨

    大原委員 二十九日の午後四時四十五分に爆発事故が起きまして、そうしてあくる日の三十日の午前九時からその日の午後五時までかかって警察庁、消防庁あるいは広島県あるいは通産局が共同の現場検証をやる、これはきわめて、時間がたっておれば原因究明もできないし、高圧ガス取締法による監督ができないのじゃないか。そういう時期おくれの現場検証があるか、こういうことで業者の圧力というか、そういうことも加えましてきわめて不信感が起きている。三十日の午前九時から共同検証に入ったということは事実でしょう。
  168. 田村宣明

    ○田村説明員 ただいまの件でございますが、御指摘のとおり、二十九日の午後四時四十五分ごろに発生をいたしております。それで、これは大竹警察署におきましては、それほど離れていない場所にございますので、その爆発音が警察署まで聞こえてまいりまして、直ちに署長以下が現場に急行いたしまして、被害者の救護、立ち入り禁止あるいは群衆の整理とともに、現場保存等をこの場合応急措置として講じておるわけでございます。したがいまして、一応必要な現場保存をしておきまして、五月三十日と三十一日の両日にわたりまして共同の現場検証を行なった、こういうことになっておるのでございます。
  169. 大原亨

    大原委員 そこで大臣のほうに質問を続けていきますが、これは高圧ガス取締法によりますと、民家があるところに石油コンビナートが割って入ったかっこうですね。もちろん工場誘致を一生懸命やりますから、そういう結果としてもあるわけですが、そういう危険なポリエチレン工場の設備と民家との距離は、現在法律によりますと二十メートル、公共用物の場合に、学校、病院等の場合に三十メートル、しかし、いまお話しのように、実際には五、六百メートルの近辺までガラスが割れるというふうなこと、屋根がわらが落ちるというようなこと、あるいは一キロ離れたところでもガラスが落ちてけがをしたという例があるのです。そういうことが報道もされておるわけです。したがって、当時高圧ガス取締法をつくる中で、そういう危険なものについては六十メートルということを主張いたしました。そういう経過があるのですが、しかし、結果といたしましては、民家については二十メートル、公共施設については三十メートルということになっております。しかし、その後急速にコンビナート工業が発達いたしまして、その圧力も非常に大きくなって、大型の機械が導入されておるわけであります。したがって、この問題については、法律並びにこれに基づく省令によって取り締まり上不備があるのではないかと思います。  もう一つの点は、そういう際に、その施設自体に対する監督もさることながら、民家や外部に被害が及ばないようなコンクリートの防壁をつくり、爆発事故被害が外部に及ばないようにすることです。民間地帯に割り込んで工場が入ってコンビナートをつくっておるわけですし、ここだけではないわけでありますから、そういう点について根本的に再検討すべきではないか、こういう点を意見として持っておる一わけであります。したがって、この問題については、他のコンビナートの事故もあるし、あるいは飛行機事故その他の問題が十分予想できるわけですから、たとえば岩国の飛行基地の飛行機が一日に三百機も大竹の上空を通って離着陸することはいけない、演習訓練等でも工場の上空を通ってはいけない、こういう申し入れをしてもナシのつぶてです。したがって、法律や省令を根本的に改正するということが一つと、外的な原因により危険を誘発するようなものに対しましては、政府は強い政治力をもって、アメリカの基地当局に対しまして意思表示をすべきではないか。これはきわめて政治的な問題でもあるので、大臣の御見解を聞きたいと思うのです。この二点について根本的に再検討すべきではないかと思いますが、こういう点につきまして、ひとつ大臣見解をお聞かせいただきたい。
  170. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話しのとおり、生産装置がだんだん拡大してきましたからして、法律をつくったときには二十メートル、三十メートルでよかったかもしれませんが、現実の問題としては、その災害が遠くまで及んでおるというような事実にかんがみまして、この高圧ガス取り締まりの内容についても再検討する必要があると存じておるのであります。  なお、こういう問題について、新規立地のコンビナートにつきましては、周辺地域との関連等も今後十分配慮いたしまして、今後災害の起きることのないように指導いたしたいと思います。  それからいまの外交上の問題ですが、こういうような問題が起こってまいりますと、飛行機事故その他のことによって非常な災害が起こりますから、したがいまして、アメリカの基地の問題については、これまた考慮すべきであり、またわれわれといたしましては考慮してもらいたいという感じを持っております。
  171. 大原亨

    大原委員 そのあとの問題ですが、つい近くの宮島あるいは石油コンビナートの地域に模擬爆弾等が落ちて、そういうぞっとするようなことがあった。その点につきましては、これは事務当局といいましても何ですから、大臣は、責任を持って、上空においてそういう危険が起きないように、そういうことについては、工場あるいは地元の意向もあるわけですから、アメリカ側に対しまして厳重に申し入れをしてもらいたい、責任ある回答をとってもらいたい、この点を重ねて申し上げておきます。
  172. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私のほうからアメリカへ直接交渉することはできませんが、外交ルートを通じてそういうことについての注意を促したいと存じております。
  173. 大原亨

    大原委員 それでは事務当局のほうに質問いたしますが、その原因については、事務当局ではどういうふうにお考えですか。
  174. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほどの二十九日の十六時四十五分ごろのお話でございますけれども、ちょうど爆発直前のコンプレッサーの反応状況は千六百十キログラム平方メートルで行なわれておったわけでございますが、その千六百十キログラムの反応が急にある一定時点で、四十五分ごろでございますけれども、千六百六十キログラム平方メートルというところまで上がったようでございます。これは異常に上がりますと、自動的な装置によりまして下がる、そして作業は一時中断するというような装置があるわけでございますが、その装置が作動いたしまして、平方メートル六百六キログラムまで圧力がぐっと下がっております。そこで一応作業が中断したわけであります。その中断した作一業を再開しようと思って、そこで再開のために圧力を少しずつ上げた。そのときに爆発が起こったというのが現状のようでございます。何が原因になって爆発が起こったかという点につきまして、おそらくエチレンガスの漏れがどこからかあったのではないかというふうなことで、その漏れの地点がどこであったかというところにつきまして、現在漏れ試験あるいは分解点検等で、残っております設備を中心にいたしまして、そういう関係の器具を使いました分析を現にやっておるという状況でございまして、分析結果がわかり次第、また後ほど御報告申し上げたいと思います。
  175. 大原亨

    大原委員 高圧ガスの爆発の原因につきまして、いまの段階でのお答えがあったわけですが、そういう原因等について、日常設備上の監督をする、あるいは事後是正を命ずる、こういうことはどういう法律に基づいて、どこが責任を持ってやるのですか。それからさらに、なぜそういうことが日常的にできなかったのか、そういう反省がありますか。
  176. 吉光久

    ○吉光政府委員 私のほうでやっております根拠の法律と申しますのは、高圧ガス取締法でございます。ただ、これが爆発しました後の、いわゆる刑事的な問題として調査されるのは、これはもう警察庁のほうの立場でございますけれども、私どもといたしましては、この内容事故そのものを究明することによりまして将来の事故の再発を防ぐということに中心があるわけでございます。と同時に、実際の問題といたしまして、作業管理者に管理上のミスがあったかどうか、あるいはまた設備そのものが技術上の基準どおりに維持されていたかどうか、こういうふうな問題等につきまして具体的な調査結論を待った上で、それぞれに対応する措置をとってまいる。これは行政処分の問題でもございますし、あるいはまた省政令の改正の問題でもございますし、そういうふうな角度からこの問題に取り組んでおるわけでございます。
  177. 大原亨

    大原委員 外国との技術提携その他で、企業内に立ち入って日常から監督できない、法律によっては、あるいは県知事が監督の責任を持つわけですが、県側のそういうスタッフや、たとえば広島県内等の例をとってみても、二百数十カ所の検査する場所があるのに、人員が少ないとか、あるいはそういう検査ができるような技術者がいないとか、そういうようなことで、特に外国との技術提携その他の場合において、そういう問題が発生しておるのではないか、そこらにそういう設備等について監督する側の責任はなかったのかどうか、そういう点についてのお考えをひとつ伺いたい。
  178. 吉光久

    ○吉光政府委員 災害前におきます検査の関係でございますけれども、これは実は法令できまっておりまして、まず設備が完成いたしましたときには、完成検査がございまして、この検査に合格しない限りは設備を動かしてはならないという規定がまずあるわけでございます。当工場につきましては、昭和三十七年の二月一日に製造が許可されておりまして、その施設の完成検査は三十七年の二月二十三日に実施いたしております。それからさらに、設備の変更等がございますときも、同じように完成検査ということが必要なわけでございます。と同時に、法令上規定いたしておりますところの保安検査でございますけれども、まず都道府県知事は最低年一回は保安検査をしなければならないということが義務づけられておりまして、当工場につきましても、最近では四十一年の十月七日に都道府県知事の保安検査をいたしております。それから自主的な検査というのがございまして、これも高圧ガス取締法で、国がやる検査のほかに、企業自身が検査しなければならない規定があるわけでございますが、この関係も、実はそういう場合には約一カ月ばかり工場をとめるわけでございますけれども、工場をとめて、昨年の十月十二日から二十五日まで各部の点検を行なっておるようでございます。法令上は一応そういうことでございまして、決して、その会社が外国系であるからこういう設備の検査を拒むというふうなことは、私どものほうは聞いていないわけでございます。
  179. 大原亨

    大原委員 そういう問題、疑惑が出ておりますから、その点については技術提携、企業防衛ということと関連いたしまして、あるいは監督する側の能力、そういうこともあるでしょうが、こういう問題については疑惑がある問題がある、そういう点についてはさらに調査してもらいたいと思います。それから従業員に対する補償の問題が一つですが、いわゆる一般民間の損害に対する補償ですね、これについては通産省としてはどういうふうにお考えですか。
  180. 吉光久

    ○吉光政府委員 これは当然に原因企業者にあることは明らかでございますので、付近の住民に対します物的人的損害に対しましては、会社自身が十分に損害賠償の責めに任ずべきではないかというふうに考えております。
  181. 大原亨

    大原委員 こういう新しい事態に対しまして、今後これの絶無を期する、そういうことに対しまして大臣からお答えありましたが、さらにこれに対しましてつけ加えて具体的にお答えいただくことがあれば、この際意見をはっきりしてもらいたい。
  182. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほども御質問のうちにありましたように、要するに、高圧ガス取締法によります石油コンビナートの取り締まりという体制自身に一定の限界があるわけでございまして、御存じのとおり、高圧ガス取締法はそれぞれの施設そのものを押えておりまして、コンビナートというものはそれらの集合体でございますので、したがいまして、個別的なポイントだけでコンビナート保安が完全にいくというふうにはまいらない点もあろうかと思いますので、そういう意味でのコンビナート全体としての保安対策というものを講ずる必要があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。実はそういう角度から昨年川崎地区とそれから四日市地区につきましては全面的に実態調査をいたしまして、その結果に基づきまして、コンビナート保安総合対策というものをいま現に立案し、それに基づいて、その保安基準というものについて各コンビナート内部でさしあたり協調体制をとってもらう必要があるということから、それに対する回答を現にコンビナートを構成している各社から求めておる段階でございます。ただし、このコンビナートの保安の問題につきましては、これは通産省だけでは完ぺきを期するということも困難でございますので、現実の問題といたしましては、消防庁ともよく密接な連絡をとりながら、そこらの対策を総合的に進めてまいりたい、このように考えております。
  183. 大原亨

    大原委員 消防庁にお尋ねしますが、石油コンビナート地帯において事故が起きた際に、たとえば化学消防車とか、そういう新しい事故に対応するような消防設備、こういうものをもちろん会社責任で持たせるということが一つあるでしょう。しかしながら、そういうコンビナート地域においては、化学消防車その他についてのそれに対応できる設備が欠けておったようにいわれておるのでありますが、そういう点についてひとつこれからの問題を含めてお考えを明らかにしていただきたいと思う。
  184. 高田勇

    ○高田説明員 今回の問題につきましては、特徴的な点は、自衛消防隊の活躍がかなり目立っているという点でございます。それで自衛消防隊につきましては、いま御質問の中にございましたように、現行の消防法の中でも一つの事業所単位で押えまして、事業所が一定数量以上の危険物を貯蔵したりあるいは取り扱ったりしている場合におきましては、化学消防車の設置とか、あるいはその活動に必要な人員というものの確保を義務づけておるわけでございます。これは一つには、ああいう大きな企業になりますと、これは企業責任というものもかなり勘案すべきではないかということで、そういった自衛消防組織、それからもう一つは、火災が発生した場合において、応急の措置を講ずるのは、自衛消防組織であればそれは応急の措置も講ぜられるということから、自衛消防組織の義務づけを行なっておるわけでございます。それで今回の場合には、その自衛消防組織が活躍いたしまして、三井ポリケミカル株式会社ではこの義務づけはございませんが、その親会社と申しますか、系列の一環でございます三井石油化学株式会社、このほうの会社は消防法の義務づけがございまして、自衛消防組織を持つということになっておりまして、その間に相互の応援協定を結んでおりましたので、その三井石油化学株式会社のほうの化学車が出動するということになったわけでございます。それだけで応急的な措置は一応済むわけでございますけれども、それとあわせて公設の消防隊の活躍、活動というものがなければならない。その場合にコンビナート地区にあります消防隊と申しますのは、概して消防力というものが、市町村の中でもコンビナート地区になりますと、造成地が多い場合がございますので、比較的に公設消防力というものがそれほど大都市の近所ではございませんので、恵まれていない場合が多いのでございます。したがって、そういう場合には公設のそれを持っている市町村同士で相互の応援協定というものを当然に結んでもらわなければならぬということで、その相互の応援協定も結んでおくということを私どものほうはやっておるわけでございます。現に今度の場合毛大竹地区、岩国、広島市、それから他の近隣市町村の問で相互に応援協定を結んでおったわけでございます。したがって、今度の場合にも、その応援協定に基づく相互の活躍が期待されたわけでございますけれども、大竹地区の消防本部のほうで連続的な爆発事故がなかったわけでございますので、この点は応援を求めなかったという点もございます。したがって、今度の場合にはそういう軽微な状態で済んだわけでございますけれども、今後そのようなコンビナート地区という地域の特殊性から申しまして、大災害というものも予測されておりますので、その点については相互の応援協定というものをさらに強化いたしますとともに、化学消防力の充実ということも私どものほうの施策一つの大きな柱になっておりますので、今後そういった点からのコンビナート対策を十分に考えていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。その点につきましては、過般、先月の二十三日も私どものほうの学識経験者等を集めました消防審議会というもので、石油コンビナートに対します対策、事業所全体から見て消防として果たすべき機能は当然必要じゃないかということから、消防として果たすべき機能についてその答申をいただきましたので、私どものほうも、その点につきましては、いま申しました相互の応援協定等を含めまして、諸施設、諸資材の整備ということをさらに検討いたしまして、その答申の趣旨に沿って対策を樹立してまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  185. 大原亨

    大原委員 これはどこが一お答えになってもいいのですが、大臣にお尋ねして、この点については法律や省令等について再検討したいというお話があった。たとえば二十メートル、三十メートルの施設と民家の距離については、今日そういう一応の規制があるわけですが、しかし直ちに五百メートル、一千メートルの範囲の人々を立ちのかせるわけにはいかぬでしょう。そこで、法律改正等の将来の問題はともかくとして、たとえば工場内のそういう施設のところで爆発事故が起きた際に、外部に与える影響を最小限度に食いとめるような高い防壁をつくるべきではないか、こういうことが前からしばしばいわれておったのに、いまだにそれができておらないで事故が起きた、また近い将来どういうことが起きるかわからぬ、こういういろいろな意見があるわけであります。これは具体的な問題ですが、そういう防壁は直ちにつくらせることができるわけです。高圧機械の大型化に伴いまして、当然そういう危険が予測できるわけですから、部内の安全保障についてはもちろんですが、それと一緒に、事故というもののいろいろの原因究明は警察その他あるでしょうが、今日その事故自体がそういう事故があり得るということを証拠づけたことになる。そういう防壁を設けるというようなことについては、直ちにできる問題といたしまして、どういう法令上の措置をとるか、監督上の措置をとるかを含めまして、ひとつ御意見をお聞かせいただきたい。
  186. 吉光久

    ○吉光政府委員 実は高圧ガスには、先ほどの御質問の中にもございましたように、いろいろな種類のものがございます。したがいまして、最近のように気圧の点でもだんだん大型化してまいっておるものも出てまいっているということでございますので、いまの保安距離、防壁等の問題を含めまして、さっそくこの高圧ガス取締法の下部省令でございます取締法施行規則がありますので、そこらの技術的基準につきまして研究させていただきたい、同時に、できる手段からすぐにでも実施に移してまいりたい、このように考えております。  ただ、先ほども申し上げましたように、種類に応じまして――実は同じ高圧ガスの中におきましても、酸素業者でございますとか、あるいはアセチレン業者でございますとか、中小企業の非常に多い業種もあるわけでございます。いまの石油化学コンビナートを構成しているところ、これはわりに早く手をつけやすいのじゃないかと思いますが、そういうそれぞれの実態に対応いたしまして、できるものから早くやる、こういう心がまえで処理させていただきたいと思います。
  187. 大原亨

    大原委員 最後に、各取り締まり当局あるいは監督官庁その他連絡をとってもらって、原因がいま以上に的確にわかって、そうして監督あるいは企業責任、こういう点についてそれぞれ責任分野を明確にしながら、将来安心ができるように、すみやかに総合的なあるいは緊急の措置をとられるように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  188. 島村一郎

    島村委員長 次会は来たる六日火曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五分散会