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1967-06-27 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十七日(火曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 竹内 黎一君    理事 橋本龍太郎君 理事 河野  正君    理事 田畑 金光君       河野 洋平君    菅波  茂君       世耕 政隆君    田中 正巳君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       増岡 博元君   三ツ林弥太郎君       箕輪  登君    粟山 ひで君       山口 敏夫君    渡辺  肇君       淡谷 悠藏君    枝村 要作君       加藤 万吉君    川崎 寛治君       後藤 俊男君    佐藤觀次郎君       西風  勲君    山本 政弘君       本島百合子君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 早川  崇君  出席政府委員         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         郵政省人事局長 山本  博君         労働政務次官  海部 俊樹君         労働大臣官房長 辻  英雄君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 六月二十三日  委員佐藤觀次郎辞任につき、その補欠として  千葉佳男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員千葉佳男辞任につき、その補欠として佐  藤觀次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員福永一臣辞任につき、その補欠として河  野洋平君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十二日  身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案(  小平芳平君外一名提出、参法第一二号)(予) 同日  健康保険制度改悪反対に関する請願井岡大治  君紹介)(第一四九六号)  同(中嶋英夫紹介)(第一四九七号)  同(平林剛紹介)(第一五三三号)  同(井岡大治紹介)(第一五八三号)  同外二件(後藤俊男紹介)(第一五八四号)  同外十四件(西風勲紹介)(第一五八五号)  同外三件(西風勲紹介)(第一五九〇号)  同(井岡大治紹介)(第一六二九号)  同(大柴滋夫紹介)(第一六三〇号)  同外五件(永江一夫紹介)(第一六五八号)  同外五件(西風勲紹介)(第一六五九号)  療術の新規開業制度に関する請願西風勲君紹  介)(第一四九八号)  同(塚田徹紹介)(第一五二五号)  同(葉梨信行紹介)(第一五二六号)  同(山下榮二紹介)(第一六六三号)  失業保険労災保険制度改悪反対等に関する請  願(山田耻目君紹介)(第一四九九号)  同外二件(松前重義紹介)(第一五八六号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一六三二号)  児童福祉施設最低基準の改訂に関する請願(田  村元君紹介)(第一五一七号)  厚生年金保険法特例老齢年金制度改善に関す  る請願外四件(田村元紹介)(第一五一八  号)  同外四件(野呂恭一紹介)(第一五一九号)  同外四件(森田重次郎紹介)(第一五二〇  号)  各種福祉年金併給限度緩和に関する請願外一  件(世耕政隆紹介)(第一五二一号)  同(古屋亨紹介)(第一五二二号)  同(山手滿男紹介)(第一五二三号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第一五七三号)  同外五件(伊藤宗一郎紹介)(第一六二〇  号)  同外一件(内海英男紹介)(第一六二一号)  同(大石武一紹介)(第一六二二号)  同(世耕政隆紹介)(第一六二三号)  同(田中榮一紹介)(第一六二四号)  同外一件(野田武夫紹介)(第一六二五号)  同(船田中紹介)(第一六二六号)  同(武藤嘉文紹介)(第一六二七号)  同外二件(渡辺栄一紹介)(第一六二八号)  同外一件(愛知揆一君紹介)(第一六八七号)  同外九件(伊藤宗一郎紹介)(第一六八八  号)  同(内海英男紹介)(第一六八九号)  同外一件(大石武一紹介)(第一六九〇号)  同外一件(大坪保雄紹介)(第一六九一号)  同(大橋武夫紹介)(第一六九二号)  同(大野市郎紹介)(第一六九三号)  同外一件(白浜仁吉紹介)(第一六九四号)  同(松野幸泰紹介)(第一六九五号)  同(松野頼三君紹介)(第一六九六号)  栄養士法第五条の二改正に関する請願塚田徹  君紹介)(第一五二四号)  同外一件(井原岸高紹介)(第一六九八号)  季節労働者に対する失業保険改悪反対に関す  る請願美濃政市紹介)(第一五二七号)  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律案反対に関する請願河上民雄紹介)(  第一五二八号)  医療保険制度改悪反対に関する請願畑和君紹  介)(第一五二九号)  同(島本虎三紹介)(第一五八〇号)  同(只松祐治紹介)(第一五八一号)  同(野間千代三君紹介)(第一五八二号)  同外三十四件(高田富之紹介)(第一五八九  号)  同(島本虎三紹介)(第一六三一号)  同(玉置一徳紹介)(第一六五六号)  同(本島百合子紹介)(第一六五七号)  三池炭鉱一酸化炭素中毒患者補償打切り反対  に関する請願畑和紹介)(第一五三〇号)  同外二件(古川喜一紹介)(第一六三三号)  全国産業一律最低賃金制及び医療保障確立  等に関する請願畑和紹介)(第一五三一  号)  同外一件(森義視紹介)(第一五三二号)  同外一件(森義視紹介)(第一六三四号)  戦傷病者等の妻に対する特別給付金の不均衡是  正に関する請願亀山孝一紹介)(第一五五  二号)  同(田村元紹介)(第一五五三号)  同(渡海元三郎紹介)(第一五五四号)  同(中野四郎紹介)(第一五五五号)  戦没者等の妻に対する特別給付金の不均衡是正  に関する請願亀山孝一紹介)(第一五五六  号)  同(田村元紹介)(第一五五七号)  同(渡海元三郎紹介)(第一五五八号)  同(中野四郎紹介)(第一五五九号)  同(西村直己紹介)(第一七一三号)  戦傷病者に対する傷病恩給等生活保護法の収  入対象より除外に関する請願亀山孝一君紹  介)(第一五六〇号)  同(田村元紹介)(第一五六一号)  同(中野四郎紹介)(第一五六二号)  同(有田喜一紹介)(第一五七四号)  同(大橋武夫紹介)(第一六四六号)  健康保険制度改善に関する請願広沢賢一君紹  介)(第一五九一号)  同(麻生良方紹介)(第一六五四号)  同(本島百合子紹介)(第一六五五号)  原爆被害者援護法制定に関する請願松本善明  君紹介)(第一五九二号)  心臓病専門病院増設に関する請願本島百合  子君紹介)(第一六五一号)  心臓病の子供の育成医療助成拡充に関する請願  (本島百合子紹介)(第一六五二号)  心臓手術のため供血制度改善に関する請願(本  島百合子紹介)(第一六五三号)  全国産業一律最低賃金制度確立等に関する請  願(山本政弘紹介)(第一六六〇号)  同(本島百合子紹介)(第一六六一号)  日雇労働者健康保険廃止反対等に関する請願  外百五件(本島百合子紹介)(第一六六二  号)  農協及び生協共同利用施設理容事業規制に  関する請願外四件(井原岸高紹介)(第一六  九七号)  原爆被災者援護に関する請願白浜仁吉君紹  介)(第一六九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件(国際労働条約  第百五号に関する問題及び郵政省における労働  問題等)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。枝村要作君。
  3. 枝村要作

    枝村委員 海部労働政務次官にまず最初にお尋ねしたいと思います。  あなたは、現在ジュネーブで開会されておりますILOの五十一総会に出席されておりましたね。本総会では、明年の国際人権年に向けて、各国人権に関するいわゆる七つの条約早期批准について努力する方向なり、あるいはまた、日本の八十七号条約はもう批准されたのでありますが、それがその後官公労労働者労働基本権に関する問題等がいろいろ公式あるいは非公式に問題にされておったかどうとかいうことでありますが、あなたが実際に行かれまして、あなた自身がお考えになったとか言ったことではなくして、その問題をどういう方向で総会で取り扱われたかということについてお尋ねしたいと思います。
  4. 海部俊樹

    海部政府委員 御質問のとおり、ただいまジュネーブで第五十一回のILO総会をやっております。ただ、私は、会議に出席しましたのは、開会式の七日から、政府演説を終わりまして、十六日まででございますので、私のお答えはしたがって十六日までの中間報告になると思うのでありますが、総会においてそのようなことは具体的に取り上げられてはおりませんでした。これは総会に関する限りであります。と申しますのは、ILO総会は、毎年事務局長がその総会テーマ加盟各国に通知するわけであります。本年の総会テーマは、非筋肉労働者問題点と見通しについて、こういうテーマ各国に配付されておりまして、それに従って参加各国がその問題についておのおの総会報告をする。これが第一段階になっておりますので、その各国報告の中、あるいは事務局長報告の中では、いまおっしゃったような条約批准の問題は出ておりませんでした。ただ申し上げますと、委員会がいろいろ分かれておりまして、その中で、条約勧告の適用に関する情報及び報告委員会というのが開催されまして、これがおそらく、総会代表演説が終わりましてから細目討議に入りまして、その中では議題になろうかとも思いますけれども、私のところにはまだ詳しいことが入っておりませんので、残念ながらお答えできませんのでお許しいただきます。
  5. 枝村要作

    枝村委員 そうすると、わが日本労働者代表原口さんが、いわゆる経済社会開発のための国際協力に関する決議なるものを提案ないしは演説したということについては、あなたは直接その場におらなかったということなんですか。
  6. 海部俊樹

    海部政府委員 総会のほうから発言の割り当てがまいりまして、私は政府代表演説を十二日の午前中に行ないましたが、原口代表は何か作文の都合で少しおくらせると言われまして、二十一日に本会議演説なさっておりますので、私は、帰国のあとでありますから、新聞を通じて演説の要旨を知ったのみであります。
  7. 枝村要作

    枝村委員 それではそれは質問の価値ありませんからやめますが、次官は何日ですか、お帰りになりました。そうして総理にあなたは、行かれていろいろ見たり演説したりした内容その他の問題を報告されたと思うのです。これは報告しましたね。
  8. 海部俊樹

    海部政府委員 しました。
  9. 枝村要作

    枝村委員 それで、その報告の中で、二十二日の新聞に伝えられるところによれば、ILO当局からILOアジア地域会議を開催するよう要請された、こういうことが出ておったのですが、事実で、ございますか。
  10. 海部俊樹

    海部政府委員 帰ってまいりまして総理に御報告したことも事実で、ございます。  今度のILO総会は、総会の始まります前日に例の中東戦争が始まるというので、異様な雰囲気の中で総会を開きましたので、日本代表団は事前に打ち合わせをいたしまして、今回のILO総会においてはあまり政治的な発言をしないように、特に労働問題に関してのみ討議を続けようという提案をいたしまして、比較的スムーズに総会が進行したということをまず御報告いたしまして、それから政府代表演説内容について簡単に御報告いたしました。  特に、アジア各国から参加しております労働大臣要請が非常にございまして、ILOアジア地域会議をぜひ日本で開いてほしいということは総会の初日から各国代表に言われておったところでありますが、正式にILO事務局長のモース氏と次長のジェンクスという人から呼ばれまして、でき得ればアジア地域会議日本で開くように努力をしてほしい、こういう申し入れを受けました。そこで、とりあえず現地におります青木大使と、それから労働代表原口さん、経営者代表の吉村さん、全部集まっていただいて、日本代表団会議をやってみたんでありますが、これは検討に値する問題であるから、ひとつ大臣訓令を求めようということになりまして、でき得るならばアジア地域会議を開きたいがいかがお考えかという御指示を仰いだわけであります。帰ってまいりますときに、現地日本代表団が、アジア地域会議日本で開くということはアジア共通の問題を討議することになりますし、それから昨年行なわれたアジア諮問委員会で、アジア経済開発がおくれておるのは世界全体の規模で解決するよりも、アジア地域という限られた区域において、たとえば技術の開発であるとか人間能力開発施設を利用するとか、いろいろアジア共通の問題もたくさんあるはずであるから、この時期に会議を開いてお互いに意見を交換することは貴重であるということに意見が一致しましたので、帰ってきて総理にそのまま御報告申し上げたわけであります。このことについては、総理は、労働大臣あるいは外務大臣に、この問題について検討をされるよう指示されたものだ、私はこういうふうに理解しております。
  11. 枝村要作

    枝村委員 ILO当局アジア各国担当者が非常に熱望しておる、そういう要請にこたえるということであるようでありますが、それは歓迎すべきだと思います。ただ私どもは、明年の十一月に開催したほうがよかろうという時期設定ILO当局が示唆したのか、あるいはお帰りになって佐藤総理がそういう日にちの設定をされたのかという点にちょっとお伺いしておきたいことがありますので、お答えしてもらいたいと思います。
  12. 海部俊樹

    海部政府委員 ILO当局はなるべく早急に開いてほしいという表現でありまして、必ずしも来年の十一月ということばを使ったわけではございません。それから来年の十一月というのも、いまのところそれに確定をしたというわけではないのでありますが、いろいろ準備都合とか事務的な問題とか、現地にいる日本代表団意向とか、いろいろ私が聞いてまいりました範囲では、来年の秋ごろが適当ではないかということを日本代表団も言っておりましたし、こちらへ帰っていろいろな関係事務局意見を聞いてみましても、来年の秋ごろが妥当ではないかというようなことに結論が出ておるわけであります。
  13. 枝村要作

    枝村委員 二十二日の新聞には、秋ごろ——秋ごろというのは十一月ごろでしょうが、そういう確定的なことを報道しておるようでありますが、まだこれは秋ごろということで確定であるということに受取ってよろしゅうございますね。
  14. 海部俊樹

    海部政府委員 正確に申しますと、これは開催国日本が日時とか招集国を決定する権限がございませんので、ILOのほうへ打ちましたこちらの意向の電報によりまして、ILO総会が終わりますと、直ちに理事会を開きまして、その理事会で正式に決定することになっておりますので、日本側としては大体その時期が適当ではないかという意思を述べただけで、正式決定理事会であります。
  15. 枝村要作

    枝村委員 私どもが聞くところによると、ILO当局では大体このアジア地域会議を開きたいという意向は当初からあったようでありますし、その時期もできれば本年の暮れですか、秋十一月ごろ一に開きたいという意向だと聞いておるわけです。その真偽はどうかわかりませんが、そういうように聞いておるとするならば、ちょうど来年は人権年でありますから、その前の年に開くということはたいへんこれは意義があるということなんです。来年の十一月ではおそ過ぎるというところまでは言いませんが、各国あるいはILO当局が望んでおるところが少なくとも人権年の当初かことしかということになれば、秋あるいは十一月に限らず、なるべく早期に開いてもらいたいということが全体の意思に合致するのではないかというように私ども考えるわけです。  そこで労働大臣にお聞きするのですが、そういう大体の意向はわかりましたので、政府早期に、ことしというのはちょっと無理かもしれませんが、来年に入ったら早々に開くように準備万端を完了していただいて、そしてILOにそれを申し入れて実現するようにしてもらいたいものだという要望を私は持っておるわけなんですが、いかがなものですか。
  16. 早川崇

    早川国務大臣 正式にこの会合を要請されたのは、海部政務次官が今回のILO総会へ行ってからでございますので、本年度開催するといたしましても予算的な半額負担という問題もございまするし、外務省の日程も考慮しなければなりませんので、来年ならばお引き受けしましよう、こういうお返事を訓令でさせたわけでございます。したがって、来年度であれば、何も十一月と限らない、ILO理事会早期にやってくれというのであれば、八月でも九月でも、いつでもけっこうだと思っております。
  17. 枝村要作

    枝村委員 そういう大臣の御答弁であれば、われわれは非常に期待しておりますので、予算その他の措置を十分されて、早期に開くようにひとつお願いいたしまして、この問題に対する質問は終わりたいと思います。  続いて今度はILO百五号の条約の問題についてお伺いしておきたいと思うのですが、これは今月の十六日に本会議でわが党の代表衆参両院にかけてそれぞれ質問をしております。それに対して総理はじめ担当の各大臣から答弁をいただいておるわけでありますが、その答弁内容というものは、その場限りのきわめておざなりの答弁であるように私ども受けました。したがいまして、私は時間の許す限りこまかく質問したいと思いますので、ひとつ納得するように答弁してもらいたいと思います。私はまだ新人でありますし、あまり深く勉強もしておりません。しろうとですから、よく教えるようにひとつ答弁してもらいたいと思います。  それでまず最初に、百五号条約は一九五七年、ILOの第四十回総会採択されたのでありますが、その採択されるまでのいろいろの経過、いきさつについて若干の質問をしてみたいと思います。  それで、一九三〇年に採択されたいわゆるILO二十九号条約、これは強制労働に関する条約ですが、これは当時のいわゆる列強資本主義諸国の領有する植民地の住民に対して、何らかの形態で、いわゆる支配の道具にするような形をとるために強制労働というものが行なわれておる、具体的に言うならば奴隷労働ですか、そういうものを廃止させるためにこの二十九号というものはできたというふうに私ども見ておりますし、そういうふうにみんな考えておると思います。そのことは二十九号条約の二条にはっきりうたわれております。ある者が処罰脅威のもとに強要せられ、かつその者が自己自身自発的に申し出たものでない一切の労働、こういう定義がされておるところはそのとおりであります。しかし当時この強制労働には、まだ幾つかの例外的な措置としての強制労働の型を認めておるところであります。それからまた、一定の定義範囲義務はこれを強制労働としないという除外規定も設けておられたと思う。やはりそういうところに問題があったと思うのでありますが、当時日本政府はこの採択にあたってどういう態度をとられたかということについてお伺いしたいのであります。
  18. 松永正男

    松永(正)政府委員 二十九号条約はただいま先生御指摘になりましたように、一九三〇年、昭和五年に採択をせられた条約でございまして、日本は一九三二年、昭和七年にこれを批准いたしております。条約採択のときの会議におきましてどういう態度をとったかということは、私どもは詳細には存じておらないのでございますが、すぐ二年後に批准をいたしておりますので、これについて特に異議はなかったと思いますし、また条約内容わが国法制から考えまして何ら差しつかえないものであるということが言えると思いますので、別にこれについて日本政府が何らか反対意思表示をしたような事実はなかったのではないかと存じます。  なお、もし必要ならば議事録等によりまして詳細調べたいと思います。
  19. 枝村要作

    枝村委員 まあ戦争前のことですからこれは聞いたってあまり役に立たぬかもしれませんが、しかし今日まで引き続いてこの条約というものが独立しておるのですから、全然関係がないとは言えないわけなんですね。しかも百五号の批准については政府当局もなかなか渋っておられるようでありますから、そういう意味質問するわけです。  そうすると、採択については当時の日本政府はあまり異議がなかったから、二年後には国会で批准したということになるわけなんでしょうが、これも相当に抜け穴はあるのですけれども強制労働の型というものを採択したということによって、制度的には消滅したというように当時の政府はおそらく考えておったんだと思うのですが、どういうものでしょうか。
  20. 松永正男

    松永(正)政府委員 この条約はただいま先生も言及なさいましたように、第二条におきまして強制労働というのは「処罰脅威ノ下ニ強要セラレ且右ノ者が自ラ任意ニ申出デタルニ非ザル一切ノ労務謂フ」とありまして、処罰脅威によって強制される労働意味するものである。ただし、純然たる軍事的性質のものあるいは通常の公民の義務を構成するような労務あるいは裁判所の判決の結果強要される労務というようなもの、このような性質のものは除外をするのだというたてまえになっておりますので、当時のわが国法制におきましても処罰脅威のもとに強制されるような労働はないというたてまえにおいて批准をしたというふうに考えます。
  21. 枝村要作

    枝村委員 局長はその当時どこにおったか知りませんが、責任を問うわけではありませんが、しかしあの当時おった人たちは、日本が荒れ狂う軍国主義の中で、この五つの除外の条項がありますが、それがあるとしても、大でたらめな、やはり当時軍国主義資本主義の非人道的な強制労働というものが行なわれたことは事実でありますね。これはあなただって否定はできぬと思う。そうなると、実際二十九号を採択しても、当時の日本政府は全くただ形だけしたものであって、内容はそれ以上のことをやっておったというようにわれわれは見るわけです。これは私の意見になるかもしれません。ですから、結局何のことはなかったというようにわれわれは見ておるわけです。そういう意味で、それが今日まで何らかの新しい形で引き継がれておるのではないかというように心配するわけです。しかし戦争が済でから、戦後は平和憲法のもとにあらゆる自由と平等というものが戦前に比べれば話にならぬほど拡大されてきて、保障されてきたことは事実であります。しかし、そうは言っても、それならばなぜ百五号——これにかわってという意味の百五号ではありません。二十九号を修正する、補足するないしは独立する、こういう百五号であるものを政府批准を渋っておるのかということになる。これを考えますと、二十九号があるからいいではないか、こういうふうに政府考えておるんじゃないか、私どもとしてはこういう関連で見ざるを得ぬわけです。労働大臣は、参議院の本会議で藤田さんの質問に対して、二十九号は、平和憲法によってこの意義、目的は完全に完遂されておる、こういうことを答えておると思うのですが、そうすると、なんですか二十九号があるから百五号というものは批准せぬでもいいと、こういうふうにお考えになっておるのかどうか、これをひとつ労働大臣からお聞きしたいと思います。
  22. 早川崇

    早川国務大臣 二十九号は憲法、労働基準法によりまして、いわゆるタコ部屋的な強制労働というものはなくなっておるわけでございます。職業選択の自由、労働の自由ということでございます。百五号は、それとは別個の問題として、この百五号に規定されておる強制労働というものの解釈がなかなかはっきり結論が出ておらないわけでございます。そういう関係で、先進国でも西ドイツ、イギリス、カナダだけより批准をしておらない。しかも批准しておる西ドイツは、共産党の政治活動に対して刑罰を科しました。そこで、批准して今度百五号条約強制労働、政治的目的のための刑罰規定というものがこれにひっかかるのではないかということで、現在紛争を巻き起こしておるわけでございます。したがって、この条約批准するにはそういった問題、公労法、国家公務員法、地公法、いろいろ国内法との関係もございますから、そういう点では慎重にならなければならない。しかし、そもそも百五号条約は政治目的のために強制労働、キャンプへぶち込むとか——軍国主義日本のことを言いますけれども、中共やあるいはソ連や共産主義独裁国家における強制労働ということもありまして、あるいはまた後進国におけるキャンプへぶち込む、そういうことも含めて、百五号条約というものはILO採択されたようないきさつもございます。しかし、それがさらに進んで、いわゆる刑罰というものも強制労働ということになってまいりました。それで刑罰を科していいエッセンシャルサービスというものはいわゆるどの範囲を入れるかという問題も出てまいりまして、こういった解釈問題等が明確でございませんので、政府といたしましては百五号条約批准につきましては、二十九号条約と違って慎重な検討をした上でなければ、批准してから困るということになるとたいへんなことになるので、慎重に検討いたしておる段階でございます。
  23. 枝村要作

    枝村委員 いまの労働大臣答弁は、いわゆる本会議でお述べになったとおりでありますので、そのことはあとからゆっくり質問していきたいと思いますが、いま私の言ったのは、簡潔に言えば、二十九号を採択したので、戦時中はどうか知りませんが、とりわけ戦後になったらもう制度的には一切強制労働というものはない、こういうことにお考えになっておるのかということであります。  それともう一つは、二十九号があるなしにかかわらず、日本ではいわゆる国際的にいろいろ定められた基準による強制労働の型というものはないというようにお考えになっておるのかどうかということを、ひとつ端的に質問したいと思います。
  24. 早川崇

    早川国務大臣 二十九号ですべてが解決しておるとは考えておりません。百五号におきましては、正当な組合運動によるストライキに対して強制労働を課してはいかぬとか、あるいはその他いろいろな条件に対しても強制労働を課してはいかぬというように条約範囲が広がっております。法益もまた違っておると考えております。
  25. 枝村要作

    枝村委員 どうも要領を得ぬのですが、日本には強制労働という型というものはあるのかないのかということなんです。なければないと言われればいいし、何だかあるだろうということならあるとお答え願ったらいいのですから、そのことをお聞きしておるわけです。国際基準による強制労働ですよ。主観ではないですよ。
  26. 早川崇

    早川国務大臣 二十九号条約にいう強制労働は、民主主義の新憲法以後の日本としては私はなくなっておると思います。
  27. 枝村要作

    枝村委員 どうも私の質問にお答えにならぬようですが、まあそれはあとに残していきます。  憲法二十八条の労働基本三権の保障に相応ずるというILO条約は今日あるのですか。——わかりましたか。もう一ぺん言いますが、労働基本三権を直接はっきり保障する国際的な取りきめ、ということになればやはりILO条約ということになると思いますが、それはあると思いますか、どうですか。
  28. 松永正男

    松永(正)政府委員 ただいま先生御指摘になりました憲法二十八条関係の三権につきましては、すでに八十七号、九十八号等、ILO条約としてはこれに関する条約であると思うわけでありますが、これを、九十八号におきましてはすでに前に批准をしておりまして、それから八十七号につきましても国内法に関しまする所要の改正を行ないまして批准をいたしておりますので、この関係につきましては二十八条の諸権利との関係におきましては、憲法に基づきまして関係法令が整備され、国際的な基準におきまして何ら問題はないというふうに考えております。
  29. 枝村要作

    枝村委員 そうすると、この八十七号、九十八号ですが、日本の場合は、基本的な憲法の規定するものを保障するという条約批准したのは、これですね。ところが、まだ四つほど批准してない。その中にもあるのでしょう。やはり二十八条を完全に保障しようと思えば、あと残った四つの何ぼかをやはり批准することによって、それでも完全だと言えぬにしても、いわゆるやや完全に近い保障がされるということになるのじゃないですか。
  30. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 おっしゃっておりますのは、農業労働者の結社に関する十一号条約のことかと存じますが、日本の国内法におきましては、雇用労働者に関します限りは、農業であるとその他の産業であるとを問わずに、一般的に先生のおっしゃった意味の憲法二十八条に基づく労働組合法その他の諸法令の中では同等に取り扱っておる、かように考えております。
  31. 枝村要作

    枝村委員 私どもは、一番関心を持つのはやはり争議権だと思うのです。争議権を完全に保障するということが一番大事だと思うのです。それは、元来基本的人権の一番底にあるのは、やはり人間の労働の自由ということであるし、それから苦役労働からの自由こそがやはりほんとうの基本的人権を守るということになる。そう考えていきますと、そこからは必然的に争議の権利というものが生まれてくる。これは学者だけが言っているのじゃない。労働者の人たちの必然的な、潜在的な考え方なんです。こういうふうに考えてくると、いま問題になっておる百五号条約の問題というものは、これは強制労働、刑事罰に伴うものでありますけれども、まずこれから排除していくという基本的な問題がここにはあると思うのです。ですから、私ども考え方からすれば、ほんとう−に日本憲法の二十八条の権利を保障しようと思えば、もちろん百五号を直ちに批准することがそれにこたえることであるし、同時に、いま用意されております百号、さらに引き続いて百十一号というものを、次から次、ちゅうちょすることなく批准していく、こういう態度政府にあってほしいと思うのですが、そういうことに対する私ども考え方に、あなた方はどういう見解を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  32. 松永正男

    松永(正)政府委員 ただいまおっしゃいましたように、労働者の基本権として団結権、団体交渉権、争議権とよくいわれておるのでございます。しかしILO条約といたしまして争議権そのものを扱った条約というものはないと存じます。百五号につきましても、いろいろな議論がございますけれども、その議論の中で、この条約は争議行為あるいは争議権そのものを扱うのではない、御承知のようにこの百五号条約は五つの柱を立てておるわけでございますが、要するに強制労働を手段としてこれをやるようなことは禁止するのだという言い方で、たとえば争議権そのものについて、いろいろな公共的な性格の強いものについては各国によってそれぞれ制限、禁止等の措置がとられておるけれども、そのこと自体を問題にしておるのではない、こういう論議が各所に繰り返されております。したがいまして、おっしゃいましたように団結権及び団体交渉権それから団体行動権の中の争議権というものは、労働者の権利として重要な権利であると思うのでございますが、この百五号条約も、いま申し上げましたように、直接争議権そのものを扱った条約ではないというふうに私ども考えております。
  33. 枝村要作

    枝村委員 それは私どももそういうふうに、このあれからすれば考えるわけなんですが、しかし、その根底に横たわる目的、精神というものはどうかということをいま言うたのです。私の言ったこと、間違いないでしょう。ほんとうに基本的人権を認めていくとするならば、そういうすべてのものを、これを許可するとかせぬとかいうことでなく、そういうものを禁止するということであってはならぬ。これは国際的に有名な人たちがみな言っているのですね。争議権を認めるとか認めぬとかいうことでなくして、そういうことをやめさせて、全然いけないと頭からきめてかかって労働者を見たり、そういうふうにしてはならぬという精神だと思うのです。  そこからいきますと、最終的には八十七号、九十八号が争議権の問題に照応すると言えば言えるかもしれませんが、なかなかそこまでいかぬとすれば、百五号とその他の条約をそろえて、そこに初めて完全なものができてくると見るわけです。そういうことで、私の一方的な意見になるようですが、あなたのほうもこのこと自体に対して否定はしませんでしょう。
  34. 松永正男

    松永(正)政府委員 ただいまの先生の基本的な考え方、争議行為をすること自体が悪であるというような戦争前のような考え方というものでない、憲法におきましても労働組合法におきましても、労働者の基本権として団結権、団体交渉権、争議権というものを保障しておるというたてまえからいたしまして、基本的な精神につきましては、先生と全く同意見でございます。
  35. 枝村要作

    枝村委員 それでは、百五号の問題についてお伺いしていくわけなんですが、これは一九五一年六月に発足した、ILOと国連合同により任命された強制労働臨時調査委員会、これによってこの問題が正式に議題として取り上げられていったというように思うのです。これは国連の経済社会理事会の決議によって動いておるわけなんでありますが、この中に、こういうことがいわれておるのです。「現在社会における政治的理由に基づく強制労働及び一国の経済生活における重要な要素を占めている強制労働の存在形態の調査研究がその中心課題であり、その結果、一九五三年五月報告書を採択し、国連経済社会理事会及びILO理事会にその報告書が送付された」こういういきさつがまず最初にあるわけです。さらにさかのぼれば、労働大臣が言われましたように、アメリカの労働総同盟から、共産圏岩国の労働者を依然として奴隷的な労働者の扱いをしておるというようなことから——これは私ども考えでないですよ、全く反対ですけれども、そういうことから端を発して、二十九号の改正、修正という方向に進んだわけなんですけれども、それはそうとして、この報告書の内容が説明できますか。いま言いました強制労働臨時調査委員会がその当時つくってILO理事会に送ったというこの報告書の内容について、説明ができれば、してもらいたいと思うのです。
  36. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 お話のような経過は承知いたしておりますが、その報告書の内容がただいま手元にございませんので、別途お答えをさせていただきたいと思います。
  37. 枝村要作

    枝村委員 それでは私のほうから言いますと、二つの主要な強制労働というものをあげているのです。その一つは、政治的強制あるいは政治的見解を主張もしくは表明することに対する処罰の手段として用いられるもの、その二つは、重要な経済的目的実現のために用いられているもの、これがいまの社会に存在しておることを明らかにしておるわけなんですね。ですから、このような制度の存在というものは、国連憲章に保障されている基本的人権及び世界人権宣言に違反するというように指摘しておる。そういうふうに指摘して、それから提案されて、これがいろいろ討議されていくわけなんですが、そこでこれを言いましても、あなたのほうではないと言われるかもしれませんが、第一次討議、第二次討議というふうに進められていって、そうして総会にかけて一九五七年に採択されたわけなんです。ところが最初の二つの強制労働の型があるのに、さらに加えて、先ほど言われました五つの問題になってくるわけなんですが、そこで総会のいきさつ、これは第四十回総会ですか、そのいきさつはもうわかるでしょう。それを簡単でいいですから、ひとつ日本政府のとった態度、あるいはどういう論議が各国から戦わされたか、そういうものがわかればひとつ報告してください。これは私のほうからは言わぬほうがいいでしょう。
  38. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 ただいま先生お話しのような経過で、初めは政治的圧制の問題と経済的発展のための問題の二点に限られた考え方でありましたのに、そのあとの二つの項目が、その後の経過で追加された、こういうことであったと思います。それに対しまして議論といたしましては、その初めの提案の本来考えた二つの問題に限定をいたすのか、さらにつけ加えた二つを加えるべきかというようなことについては、いろいろ議論が分かれたようでございます。そこで日本政府といたしましては禁止されるべきこの強制労働の種類を条約の(a)、(b)、(c)という三種に限定することが望ましいという考え方をもって臨んだわけでございます。しかしながら結果におきましてはそういうことにならなかったわけでございます。そして、わが国といたしましては、この条約の決定の際には、表決に参加をいたさなかった、そういう経過でございます。
  39. 枝村要作

    枝村委員 きわめて簡単な説明でありますが、それはいいでしょう。その中で一番問題になった条項、日本政府が棄権までして頑強に戦ったというのを具体的に言うてもらいたいと思います。
  40. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在できておりまする百五号条約の中の一の「政治的な圧制」云々という点と、二の「経済的発展の目的のために、」云々、それから「労働規律の手段」というようなところだけでいいのではないかということでございました。したがいまして、当時の日本政府考え方といたしましては、四の「同盟罷業に参加したことに対する制裁」としての強制労働、五の「人種的、社会的、国民的又は宗教的差別待遇の手段」としての強制労働ということは、この条約の中に加えなくてもいいのではないか、こういう主張であったわけです。これは日本政府だけでありませんで、幾つかの国もそういう主張をしたわけでございますが、そのことは四や五に書いてあることを積極的にやっていいんだということではございません。この条約のつくられました本来の趣旨について明確なものにしたほうがいいのではないか、こういう立場でやったというふうに理解をいたしております。
  41. 枝村要作

    枝村委員 そういうことがいろいろ議事録で明らかにされておりますが、それにしても委員会ではいろいろ討議が長時間にわたって徹底的にかわされた。しかし本会議採択する場合に、その前にもう一つあるのですが、やはりそういう反対したところの国もみな賛成しておるわけなんですね。棄権一というのは日本で、それこそ山田君の言ったことじゃないが、名誉ある立場というようなことで、国際社会で失笑を買ったといわれておりますが、全くそのとおりでありまして、なぜ日本政府は棄権するところまで頑強にがんばったのか。時の内閣は、総理大臣はどなたでしたか。
  42. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 昭和三十二年でございます。ちょっと記憶いたしておりませんので、調べまして……。
  43. 枝村要作

    枝村委員 そういう国際的なもの笑いになるほど頑強な態度日本政府がとったということが、その当時の政府、内閣の性格をあらわしておるのかおらぬのかそれは知りませんが、少なくともその当時とった頑迷な態度は、われわれから言うとどうも反動的な、こういう態度が依然として今日まで引き継がれておるのではないかと思うのです。あとからいろいろ質問しますけれども、それがいろいろこの条約の解釈について疑義があるとか統一した見解がどうも求められなかった、こういうことの発言になってあらわれてきておるのではないかというように心配するわけなんですが、そういう意味で聞いておるわけです。その当時の内閣総理大臣はだれであったかということは、わからねばわからぬでいいのですが、調べたらすぐわかるわけですから……。
  44. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 ただいま御質問のございましたこの条約の成立いたしました当時の総理大臣ば岸信介さんでございます。
  45. 枝村要作

    枝村委員 岸さんのようなまねを佐藤さんがするかせぬかわかりませんが、なるべくせぬようにしてもらいたいというふうに私思っております。特に、主管が外務省か何か知りませんが、理事の齋藤さんに言わせれば労働省だと言われるから、早川労働大臣は勇気を持っていますから対処してもらいたいと思います。  そこで今度は具体的に一番問題になりました条項について質問していきたいと思います。  百五号条約の第一条の(c)号は、いわゆる問題になった労働規律の手段を掲げておるわけなんですが、日本におけるいわゆる労働規律の手段として用いられておる強制労働の例としては、どのようなものがあるかということをまずお聞きしたい。
  46. 松永正男

    松永(正)政府委員 (c)号ですが、労働規律の手段として強制労働を禁止するという規定になっております。この場合に、要するに労働規律を維持するためにこれに従わない者について刑罰規定を設けましてこの刑罰の圧力によりまして規律を守らせるということであります。これにつきましてILOのこの条約に関する各種の論議を見てまいりますと、労働規律の手段としての強制労働につきましても一定の条件の場合におきましては刑罰をもって強制することができる。たとえば、鉄道の転轍手のような旅客、公衆の生命に非常に関係の深い業務、あるいは灯台守のような航行の安全を確保するために必要な業務、あるいは船員のようなその船の安全、したがって乗っております船員の安全、そういうことのために必要な業務につきましてそのような例示をいたしまして、そういう性質労務につきましてはこれは刑罰を科してもいいというような議論が行なわれておるのであります。
  47. 枝村要作

    枝村委員 その問題はまたあとからいきますが、あなたにここでこういうことを説明してもらおうと思っておるんじゃないんです。日本の場合にはどういう法律があるかということなんです。労働規律の手段として用いられる日本の場合の法律、たとえば郵便法の七十九条とか何とかあるでしょう。日本にはああいうのが何ぼくらいあるんですか。
  48. 松永正男

    松永(正)政府委員 一応問題として、この労働規律の手段としての強制労働ということに抵触するしないは別といたしまして、これとの関連があると考えられますものは、この論議の中で例を引いておりますようなものに該当するもの、たとえば船員法の百二十八条、それから百二十八条の二等がここに例示されるものと非常に近いものではないかと思います。それから関連があるが、抵触するかしないかという点につきまして、必ずしも現在この法律の解釈が明確にはされておりませんので、はっきりいたさないのでございますけれども、たとえばいま先生がお聞きになりました郵便法の七十九条の一項、鉄道営業法の二十五条、公衆電気通信法の百十条の一項といったようなものが関連がある条項ではなかろうかというふうに考えます。
  49. 枝村要作

    枝村委員 関連があるかないか知れないがという前提でそういうことをあげられたんですけれども、そのほかにまだ電気事業法の百十五条の三項、ガス事業法の五十三条三項、そういうものがあるわけなんですけれども、関連あるなしにかかわらずILOの、いわゆる労働規律の手段として強制労働をさせるという、これを単純に見ても複雑に見ても、だれが見てもこの条文を読めば、それに該当するということになっておるんです。なるのですよ。あなたが何ぼ関連があるかなしかというようなごまかしのようなことを言っても、それはこれを読んでみたら、たとえば、郵便法の七十九条なんかでは「郵便の業務に従事する者がことさらに郵便の取扱をせず、又はこれを遅延させたときは、これを一年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。」とある。そのほかにもあるのですが、やはり労働規律の手段にする強制労働じゃないですか。だれが見ても刑事罰ですよ。これがいい悪いは別ですけれどもILOにうたっているものに該当する。いまあなたが言ったのと私の言ったのと、いまのところ代表的なものがある。こういうふうに見ておるわけなんです。このうちの郵便法七十九条に関して、いま言いましたように職場を離脱した職員に対する処罰なんですが、この争いがありました。そうして最高裁におきまして、一九六六年の十月二十六日に、そういう罰は与えてはならぬ、科してはならぬという、こういう判断を下した、いわゆる全逓中郵事件、これは御存じですね。これに対してどういう評価をされるかということなんですが、労働大臣は十六日の本会議で、いろいろ前後の事情はお述べになっておりますが、これは公労法の争議行為に対する判決であって、一歩大きい前進の判決だと私は評価しておると言われております。その一歩前進だという評価の問題について、一歩前進とは一体何かということもありましょうが、もう一度それらを含めて大臣答弁をお聞きしたいと思います。
  50. 早川崇

    早川国務大臣 御承知のように、郵便法七十九条は、争議の手段としてのストライキの刑罰でなくて、一般の業務をサボるというので、争議に無関係の刑罰規定でございまして、鉄道営業法またしかりでございます。  私が最高裁の昨年の判決を労働行政の面から評価したのは、あの郵便法の刑罰は、労働組合法による正常な争議行為には関係しないのだ、ただし暴力行為を伴う、あるいは政治目的のストライキ、あるいは国民に長期にわたり大きい損失を与えるような争議行為というような場合にはこれは別だ、こういう判決でございます。したがって公労法には御承知のように刑罰規定はない。いわゆる行政処分、首を切るとか、やめさせるとか、あるいは減俸するとかいうような内容でありまして、これは刑罰を科してはいない。したがって公企業体については、やはり一般公務員と多少違った扱いをしておるわけでありまして、最高裁も一般公務員と違って、これを労働組合としての扱いをしましてあの判決をされた。そういう意味ではしゃくし定木だけでなく、労働組合法、公労法、そして郵便法というものを総合的に判断された、そういう意味で非常に味のある判決である。しかしこれは無条件に、しからば何をやっても刑罰にされないとはいっておらない。政治目的のために業務をサボる、ストライキをする、あるいは暴力を伴う行為、非常に公衆に長期にわたって迷惑をかける。これは法の刑罰の免責をするものではない、こういう判決、そういう意味で私は評価をいたしておると申し上げたのであります。
  51. 枝村要作

    枝村委員 この判決は、あとから読んでみればすぐわかるのですが、単に公労法を適用される労働組合とか、あるいは全逓の中郵事件だけの問題ではないというように裁判所ははっきり言っておるのですが、それにしても、いまあなたから一歩前進の評価ということについて、若干の説明があったわけですが、そうすると大臣は、公労法上による適用を受ける労働組合がいろいろな争議をする、それがストライキをやっても、これはいま行政罰はあるけれども、刑事罰はないというたてまえがあるから、結局そういう意味で、刑事罰を加えるいままでのやり方は、これはいけないという前提に立つわけなんですか。もう少し端的に言えば、あなたは公労法がいま規定しておる行政罰そのものも、これはひとつのけていって、完全に公労法関係労働組合のストライキ権を将来付与というか、何ということばを使うか知りませんが、とにかくストライキ権を持つようにならなければならぬということを前提に、一歩前進という評価をされたように聞き受けるのですが、そのように受けていいのですか。
  52. 早川崇

    早川国務大臣 ILOの精神からいえば、単純労働者というものは争議ができるというたてまえに立っていることは事実であります。したがって、ドライヤー報告を読みましても、専売のような事業に携わる組合にはストライキ権を認めたらいいじゃないかというような例示的な勧告もあったことは皆さん御承知のとおりで、別に国民に大きい影響を与えるわけではない。そのよしあしは別にいたしまして、公企体というものは国家公務員、地方公務員と違いまして、それ自体においては公労法では刑罰規定はないわけです。そこで営業面の郵便法とかあるいは鉄道営業法とかいうところからのしぼりがあるわけで、一般公務員と少し違うんですね。最高裁も考え方が違う。しかしこれは、だからといって無条件にストライキがいいという判決ではないのである。先ほど申し上げましたように、労組法第一条第一項の目的を達するものであり、単なる罷業または怠業等の不作為が存在するにとどまる場合には出てこないという意味でしょうね。それから暴力行使その他の不当性を伴わない場合に限り刑事上の免責がある。そうして政治目的のため、暴力を伴う場合、社会の一般通念からいって、長期に及ぶような、国民生活に重大な影響を与えるという場合には刑事上の免責がないのだ、こういう判決ですが、それから飛躍して直ちにあの判決は、公企体については、特に郵便関係、全逓等の労働組合について、ストライキをやっても刑事罰にはならないのだ、こういうように拡張解釈されますと、現行法の解釈からいっていま少し行き過ぎでございます。しかしいずれにいたしましても、いま言いました範囲内において刑事免責があるという判決、これはやはり総合的な最高裁の判決としては、特に労働行政の面からは評価してしかるべきものだ、私はかように考えておるわけであります。
  53. 枝村要作

    枝村委員 どうも労働大臣は遠回しにおっしゃるのですが、そういう考え方の背景には、いまの労働規律の手段としての強制労働というものは、何もかも無制限だとは言えないが、ある程度の国際的ないろいろな水準からしてやるべきでないという労働大臣の御意見のように承るのです。だとすると、中郵のいまの事件の判決をあなたは評価されたということにならぬ。一歩前進という評価にはならぬ。これははっきり書いてありますように、七十九条に違反したといって起訴されて上がった事件です。それがいま言ったような理由で無罪判決が下ったのですから、それをあなたが評価するということになれば、少なくともILO百五号の労働規律の手段としての強制労働というものは、あなたはこれはいけないのだということになるわけなんですね。そういう評価として結びつく以外にほかに評価はないのです。さらにもう一歩進めて、いま公労法によってストライキが禁止され、そうしてそれに対して行政処罰が加えられることになっておる、このこともやはりいけないということになる。それがいますぐ、だからどうこうということではないが、将来少なくとも可及的すみやかにこの法を改正してスト権を与えるという方向に労働大臣は努力する、そういう立場、前提をもって、これを評価する、本会議でそういうお答えが出たのだというように私ども考えておるわけですが、そういう私どもの見解を肯定してもらいたいと思うのです。
  54. 松永正男

    松永(正)政府委員 ただいまの大臣の御答弁に補足させていただきますが、昨年の十月二十六日の全逓中郵判決で示しておりますことは、先ほど大臣が申しましたように、単純なウォークアウト、不作為が存在する、労働組合法第一条の経済目的を達成するものである、暴力等は伴わないというような、そういう争議につきましては、たとい郵便法に罰則がありましてもそれには抵触しないということを示したのでありまして、そのような争議行為でありましても、公労法において争議行為をしてはならないという禁止規定がございますので、これに対しまして、たとえば民事上の責任を追及する、あるいは懲戒手続をやる、処分をするというようなことについては、この判決はそれを否定しておるわけではないのでございます。刑事上の免責についてだけの判決でございます。したがいまして、その限りにおいて、このような条件に該当する単純なウォークアウトで、経済目的で暴力等を伴わないというようなものである限りは刑事訴追を受けないということだけを示しておるのであります。その点、補足をさしていただきます。
  55. 枝村要作

    枝村委員 あなたの補足はいいのですが、労働大臣は、肯定するかという私の質問に対して黙して語らずということは、肯定したようであるし、まあ否定とはいかぬが、黙っておったほうがよかろう、こういうふうに理解してよろしいですか。
  56. 早川崇

    早川国務大臣 私は、最高裁という、三権分立の判決というものは常に尊重し、評価するという基本的立場に立っておるわけでありまして、私の所管の労働行政に関連するこの事件につきまして、いま労政局長が言われましたような範囲内での刑事免責を判決された。私は、これはなかなか味のある、渋い判決だと思っております。そういう意味で評価したのであります。といって、公労法で争議行為を禁止されているのですから、懲戒罰あるいは解雇あるいは減俸あるいは民事上の損害賠償という、ILO百五号に無関係な問題でございますが、そういう厳たる法律というものは、この判決にかかわらず、やはり存在しているということはひとつ忘れないようにしていただきたい、かように思っておる次第でございます。
  57. 枝村要作

    枝村委員 時間がありませんので、この問題にあまりとらわれてはいけませんが、ただ私は、いまの公労法があってそういう規定もちゃんとあることはわかっているのですから、労働大臣が一歩前進の評価をしたというお考えの底には、いま私が言ったようなことがあるのではないか、そういうことを言っているのです。あるならば、漸次いまの公労法を改正していってちゃんとするようにすればいい、こういうことを問うたわけなんですが、どうもお答えになりません。そこで、あなたのほうでは、暴力が起こったらそういうのは除外だとか、それから政治目的でストライキをやった、そんなものはこれには触れてはおらぬ、そのことは違法だとか、いろいろなことを言っているのですが、それはILOの百五号の討議の中でもそういうことをはっきり言っているのです。  それはそれとして、今度の中郵事件は、これは皆さん知っていらっしゃいますように、一九五八年春闘の経過で発生した事件であります。判決は、「憲法二八条は、いわゆる労働基本権、すなわち、勤労者の団結する権利および団体交渉その他の団体行動をする権利を保障している。」こういうことを明らかにしている。「この労働基本権の保障の狙いは、憲法二五条に定めるいわゆる生存権の保障を基本理念とし、勤労者に対して人間に値する生存を保障すべきものとする見地に立ち、一方で、憲法二七条の定めるところによって、勤労の権利および勤労条件を保障するとともに、他方で、憲法二八条の定めるところによって、経済上劣位に立つ勤労者に対して実質的な自由と平等とを確保するための手段として、その団結権、団体交渉権、争議権等を保障しようとするものである。」というふうにこれは述べておる。これは事実ですね。そうして判決は、さらに、「右に述べた労働基本権は、たんに私企業の労働者だけについて保障されるのではなく、公共企業体の職員はもとよりのこと、国家公務員や地方公務員も、憲法二八条にいう勤労君にほかならない以上、原則的には、その保障を受けるべきものと解される。」こういうふうに述べているのですよ。このことについては、あなた方は悪いところばっかり引き出して答弁する。あなた方が私どもに言えば、おまえらはいいところばっかりということになるかもしれないけれども、しかし少なくとも、やはりこれが基本でこの判決というものが出されておるということについては、あなた方が否定することはできぬでしょう。  そして判決はさらに——労働大臣が本会議でいろいろ答弁していらっしゃいますが、憲法十五条を根拠として、公務員は全体に奉仕せねばならぬ、こういうことを言っておりますが、これに対しても判決は明確に答えておるのですよ。「一五条を根拠として、公務員に対して右の労働基本権をすべて否定するようなことは許されない。」というふうにこれも述べているでしょう。ここにちゃんと書いてあるのですからね。そうなりますと、いま言いましたように、「公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」といういわゆる憲法十五条を根拠として、また、一方、公共の福祉論をもって、公共企業体の労働者をはじめ公務員労働者に対し大量の刑事あるいは行政弾圧を加えることということは、これは明らかに憲法に違反し、最高裁判決というものを、あなた方の言うような主張でするならば、否定することではないか、このように私どもとしては反論するわけなんです。ですから、あなたがその判決そのものを非常に高く評価して、一歩前進だと言われるならば、この目的、やはり基本的な問題、原則を高く掲げて、大きく行政指導するなり、そして将来に向かって政治を進めていくようにとるべきがあなた方の態度ではないか、こういうふうに思うのです。この考え方はどうですか。
  58. 松永正男

    松永(正)政府委員 ただいま先生の御引用なさいました中郵事件の判決におきましても、確かに、「憲法一五条を根拠として、公務員に対して右の労働基本権をすべて否定するようなことは許されない。」ということを述べておるのでありまして、憲法十五条におきましては、公務員は、全体の奉仕者であって、国民、公共に奉仕をするということを規定をいたしておりますので、そのような公共の福祉に奉仕するという一つの大目的と、それからここで述べておりますような労働基本権との調和をどこに求めるかというところに基本の問題があると思うので。ございまして、同じように従来公務員につきまして最高裁でしております判決におきましては、公務員につきまして争議権を否定することが合憲であるという判決はしばしば出ております。公共企業体につきましても、その従事する業務の性格からいいまして、争議権について禁止されておる公労法の規定を否定するような判決は何らないのでございまして、ただここにあげますような限られた条件のものにつきまして刑事訴追をされるという刑事責任はないということを申しておるのでございまして、最高裁のこの中郵事件の判決、それから従来の判決等を全体を見てみます場合に、ただいま大臣から御答弁を申し上げましたような範囲内の争議権の刑事責任の免責ということを示しておるのでございまして、全体の精神は、憲法十五条に関しましても、現行の公務員を規律する国家公務員法、地方公務員法等のたてまえについて最高裁も肯定をいたしておるのでございます。
  59. 枝村要作

    枝村委員 すべてを否定してはならぬというが、すべてでない、そういう答弁をされるというように思っておったのですが、しかし何回も言うようですが、いま国際的には百五号の条約を承認したのが半分以上になっている。どんどん国際の一つの水準、理念として、いまのような時代おくれ、一世紀昔のようなものが依然として残っておるようなそういうやつをなくしていこうという時代ですからね。最高裁の判決も、やはりそういう国際的な特にILO関係を配慮しながら、時代が進んできて、裁判所の裁判官の頭の中にはそれが描かれながらこういう判決が出たと思う。ですから、それはあくまで基本的人権、人間労働の苦役の自由を守るという立場からきておるわけなんですから、あなた方もそういうふうに見て、枝葉末節の問題だけをつかまえて、それで、こうなっているから一これは十五条のこれを根拠としてはならぬということになっておらぬから、依然として公務員は国民全体の奉仕者だから何もやってはならぬ、こういうことであっては進歩におくれることになるのですよ。そういう頭があるから百五号の批准の問題もどだい本気になってないということになるのじゃないかと疑われてもしかたがないのですよ。そういう意味では、やはりあなた方、こういう判決についてはひとつぴしっととらえて、大臣が言われたように、一歩前進のためにこれを大いに利用、活用してもらうようにしてもらわなければならぬと思うのです。これを要望しておきます。  それから、時間もないですから、その次に、ストライキに参加したことに対する制裁の禁止ですね。同盟罷業の問題です。これも一番問題になったことなんです。ストライキに参加したことに対する制裁の禁止の問題については、先ほど説明がありましたように、これは加盟国の間でもいろいろ討議して、そして非常に論争を呼んだところであります。これは事実でありまして、私どもそういうふうに受け取っております。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕 それはとりわけ、労働者側ではなくて、政府やら使用者がそういうことを言ったということは、これは言うまでもないことでありますから、この討議の際に日本政府代表は、先ほど言われましたように、違法ストに参加したことを理由に裁判所による有罪判決の結果科せられる強制労働は、ILO百五号条約によっても禁止されないというただし書きを入れるべきだと主張した。ところがこれはみごとに、何票か知りませんが、また採決をとったかとらないか知りませんが、これは否決されておるのです。とにかく公共企業体や国家公務員、地方公務員に対してスト権を否認している日本政府の主張は、ILO百五号条約討議の過程では認められなかったということになるわけなんですが、これは現実の事実でありますから否定はできないと思いますが、再度その事実について答弁を願いたいと思います。
  60. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 先ほど申し上げましたように、この条約の中にただいまの条項を加えるべきであるかどうかということについての考え方の差でございまして、そのことを日本政府が主張しましたのは、先ほど申し上げましたように、条約の本来の本旨に従って、先生御引用になりました国連で問題になって以来の本旨に従った明確なものにするためにはこういうものはここに加えなくていいではないか、こういう主張をしたことに対して、やはり加えるべきだ、こういう主張のほうが多数で勝った、こういう経過でありまして、そういう主張の内容そのものの適否がここで採決されたというふうには私ども考えておらないわけでございます。
  61. 枝村要作

    枝村委員 それはどのくらいの表決でしたか。
  62. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 同盟罷業に参加したことに対する制裁の削除についての採決は、賛成百二十四、反対百五十六、棄権四、こういう数字になっております。
  63. 枝村要作

    枝村委員 わかりました。この条項はそういうふうに表決も非常に接近しておるほど争われたというわけなんですが、そのとき英国代表のこの条約審議小委員会の副委員長であったゲッデス氏が、これは山田君も本会議で、その方の言った全体の総括的な意見を述べておりましたが、その中で、自由な国々においてストライキへの参加がどうして規律に反すると考えられるかわからないと言っているのです。(b)項は違法なストライキ参加者に対する制裁を排除するものではなく、政府がストライキを弾圧する目的で強制労働を使用しないようその保障を得る、私は委員各氏がだれも労働者がストライキに参加したことを理由として、強制労働に処せられることを正当とするとは考えていないと確信する、こういうふうに述べておるのでありますが、これによって、まとまったかまとまらなかったかわかりませんが、全体としてはそういう意見がやはり集約され、一九五七年に日本の棄権を除いて全員満場一致で採択されたということになっておる。この精神がずっと今日まで生かされておるし、将来も生かされていくということです。そう考えてまいりますと、このことに対して日本政府はどういうふうな見解を持たれておるか、そういうことを聞きたい。
  64. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 ただいま御指摘のあったような議論もあったと思いますけれども、同時にこの条項そのものは争議権とは関係がない、争議権自体のことを言っているのじゃないのだということが、その談論の中でも一つには述べられておるわけです。したがいまして、めいめいそれぞれの見解が述べられたというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  65. 枝村要作

    枝村委員 私どもいまの労働規律によるというのと、ストライキに参加したことによって強制労働させるということは同一の目的と思っております。ですから、そういうふうに見てまいりますと、やはり先ほど言いましたように、政府は、公務員共闘の一〇・二一ストライキと最高裁が出した全逓中郵事件とは全く違っておる、異質のものである、こういう答弁をしばしばしておるのですが、そういう答弁というものは出てこぬと私どもは思うのです。それはそういうことに対するいろいろ資料があるわけなんですが、その一つの中でも、結社の自由委員会が述べた見解を参考にしてみましても、たとえば、国民にとって、また国家にとって必要欠くべからざる、それなしに国民生活が全く維持できない、これを客観的、具体的に判断した上で、サービス部門のストライキ権に対する制限、禁止、これに対する違反は、違法ストと考えるのがぎりぎりの限界ではなかろうかということになりますと、たとえばいま一般に行なわれております経済的な目標、経済的な要求を目的とするいろいろな行動に対して、それを刑事罰、あるいはもう少し大きく言えば行政罰によってやはり弾圧を加えるということは、この精神に違反しておる、こういうふうにこれはどうしても考えられてくるわけなんです。そういうふうに考えてきておりますので、時間がありませんからこれは私どもから一方的になりますが、ひとつ将来の問題についていろいろ検討もしていきたいと思います。  それと、そういうふうに国際的にはとにかくILOの百号条約批准することについてのいろいろな報告書あるいは勧告の中にも出てきておりますのは、いま日本政府考えておるようなこととはやはり一致しない、いわゆる日本政府考え方が間違っておるといういろいろな示唆が与えられておるということを私どもは確信いたしておるわけであります。それはそれとして、いわゆるいろいろな事柄によって、日本の場合には争議権の行使には刑事罰を科するということになっております。しかしそれに対しては、それにかわる代償が考えられなくてはならぬというように、これはドライヤー報告の中にも明らかにされておりますし、いろいろな書簡の中にもはっきりしておると思うのでありますが、どうも代償機関、その機能が完全に発揮されておらぬとわれわれは思うのです。ですからこの代償機関の問題について若干質問していきたいと思います。  政府は、職務または業務の性質上から、労働基本権を制限することはやむを得ない、したがって代償機関として、公務員の場合は人事院があって、給与、身分等について保障、保護されておる、こういうふうにまず一つの問題として言っております。はたして現在の人事院や公労委等が、正しい意味の代償機関としてその機能を果たしているかどうかということでありますが、あなた方が考えてそういうふうに果たしておると考えておられるのですか。
  66. 松永正男

    松永(正)政府委員 人事院に関しましては私のほうの所管でございませんが、公労法に関しましては労働省の所管でございますので、まずこれについてお答えを申し上げますと、御承知のように、公労法によりまして公労委が労、使、公益の三者構成によりまして設立をされておりまして、賃上げ等、その他各種の労使関係の紛争につきまして、従来最終的には仲裁裁定という形をもちましてこれを解決してきておりますことは御承知のとおりでございまして、これらの点につきましてはILOにおきましても、また結社の自由委員会あるいはドライヤー委員会等におきましても、この公労委の機能につきましては評価をしておるところでございます。また政府も公労委の仲裁裁定につきましてはすでに長い間完全実施の慣行が確立されておりますので、機能を果たしておるというふうに考えます。ただ、不当労働行為の審査の決定等につきましては問題の性質上証人を喚問をいたしまして詳細に審理を進めております関係上、時間が相当にかかるという点が一つ問題でございますが、これにつきましても委員会及び関係当事者の御努力によりまして何とか早期に的確な結論を出すような方向でやりたいということで委員会内部でいろいろくふうをされておると聞いております。公労法関係につきましては、たてまえといたしましてはこのたてまえで十分であると考えておりますし、また機能におきましても相当の有効な機能を発揮しておるというふうに私どもは評価をいたしております。  また、人事院勧告につきましては私ども所管でございませんので、意見を差し控えたいと思うのでございますが、公務員につきましては、ILO結社の自由委員会等におきましても、争議権を禁止することの代償措置といたしまして法令によりまして労働条件が定められるということを高く評価をいたしておるわけでございます。さらに、その法令によりまして労働条件が制定せられる。これは国会の審議を経るわけでございますが、その法令の改廃等につきまして、給与水準の引き上げ等につきましては、公正な第三者機関である人事院がいろいろな調査をいたしまして勧告をするというたてまえが付加されておる。たてまえといたしましては、これも国際的にもこのようなたてまえについては評価をせられておるというふうに見ております。
  67. 枝村要作

    枝村委員 労働省に対してはちょっと質問をとめておきまして、外務省の国連局長が所用があって急ぐようでありますので、そのほうに先に質問させていただきます。  これは本会議でも質問がありましたが、ILO総長のモース氏から一九六七年一月十二日に「人権関係の基本的文書に関する措置」について、それからまたILO総長代理のジェンクス氏から一九六七年二月六日に「未批准条約に関する報告」についての公式文書が外務大臣あてに出されておることを承知されておると思うので、この内容を明らかにしてほしいということなのですが、これは私のほうでわかっておりますので言いますれば、先ほどからいろいろありましたが、まだ四つぐらいあります。その中の特に三つは早くせよ。こういう強い勧告であるというように思っております。とりわけモース氏は「ILO総会および地域会議のみならず国連総会においてもこれら諸条約に関して繰返し緊急の要請が行なわれたことにかんがみ、私は、貴国政府が上記諸条約のうち未批准のものを一九六八年までに批准するため、その権限内であらゆることをされるよう希望を表明する。」このように述べておるのであります。このことについて日本政府は一体どのような措置をとろうとしておるのか、このことについてまず最初にお伺いしたいと思います。
  68. 服部五郎

    ○服部政府委員 ただいま御指摘がございましたように、モース事務総長からの書簡はまさに、基本的人権に関する諸条約をあげまして一九六八年までに批准するよう努力することを希望するという表現でございます。そしてそれに対する通報の時期でございますが、これはしかるべきときまでに事務総長に通報せよということになっておるわけでございます。内容につきましては、労働省とも緊密に連絡いたしまして検討したいと思っております。
  69. 枝村要作

    枝村委員 モース氏の書簡はそういうことで、しかし希望するというようなことを言っているように文章上には見られるけれども内容は、何をぐずぐずしておるか、早く出せということですよ、はっきり言ったら。そういうふうに理解をしなければいかぬと思う。特にそのあとにあるジェンクス書簡に述べてあるように二十九号、百五号を報告の対象としておる。しかし日本の場合は二十九号は関係ありませんが、ILO理事会が「この人権問題を選択したことによって、国連が国際人権年と指定した一九六八年の総会にこの分野における進展状況の調査報告が提出されるようになり、またとくに、強制労働関係ILO条約批准と実施が人権年の目的を具体的な義務措置に移すことに役立つものである点に注意を喚起する助けとなろう。」、こういうふうに言っておるのです。政府にそういう一つの報告を求めるということになっておりますけれども、実際は来年に向かって少なくともこの条約日本政府において批准されるように強く望んでおることでありますから、私どもは、ひとつこのように考えてもらわねばならぬと思うのです。政府は、百五号条約ば解釈に問題がある、それから疑義があるというようなことを先ほどいろいろ言われております。これは一体どういうところに疑義を持っておるかという、実は具体的な質問がしたいのですけれども、もう時間がありませんので、いつかのときに譲りますが、しかしいままでいろいろ話し合いをしてまいった中で、疑義があるというのはきわめて抽象的なお答えにしかすぎぬと思うのです。それじゃ、疑義があるならば、そのことをILO当局に問い合わしてみたことがあるか、あるいはその疑義の問題について、具体的にどうだこうだということをいろいろ検討してみたことがあるか。こういうことを、私どもはそう言われれば質問してみたいのです。そのことは答弁要りません。また今度やります。  そこで、そういう報告を求められておるのが大体七月一日までだというふうになっておるようでございますが、これも外務大臣が本会議で、いま鋭意作成中である、こういうことを言われました。いま一体どのくらいのところまでその準備がいっておるのか、ひとつお聞きしたいと思います。
  70. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 強制労働の百五号条約に関しますのは、先ほど来先生が御論議になっているように、非常に範囲の広い問題が、ございますので、関係各省とただいま相談中でございまして、どの程度と申しますか、めいめい各省でこちらと相談をいたしながら案をつくっておる、こういう段階でございます。
  71. 枝村要作

    枝村委員 そうすると七月一日までに間に合うのですか、どうですか。
  72. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 間に合うようにできるだけ努力をいたしておるところでございます。
  73. 枝村要作

    枝村委員 努力しておるということになれば、間に合うということでしょう。そうするとあとわずかしかございませんので、大体逆算計算してみますと、作成は大体終わっておる、終わらぬにしても大体書かれておると思うのです。そうなれば当然発表できると思うのですから、発表してください。どのようになっておりますか。
  74. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 政府部内の意見を調整中でございまして、政府としての案がまだきまっておりませんので、発表はごかんべん願いたい、御了承いただきたいと思います。
  75. 枝村要作

    枝村委員 ほんとうのことを言ったらいいじゃないですか。実際まだ何も手がけておらぬのじゃないですか。おらぬならおらぬと言ってください。おるならその骨子くらいはわかるはずです。それを骨子がわからないから発表せぬと言うならいいですけれども、わからないはずはない、にもかかわらず発表せぬということは、国会に対してきわめて軽い見方をしておる。軽視だと言われてもしかたがないでしょう。
  76. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 ILO報告いたしまするのは、政府の責任でこの部分は報告することになっておるわけでございます。したがいまして政府として事務段階で検討いたしまして、まとまりましてから政府の送ります内容が固まるわけでございますから、現在考えておる段階でございますので、御了解いただきたいと思います。
  77. 枝村要作

    枝村委員 はっきりまだ全然手をつけておらぬのなら、手をつけておらぬものをここに発表せいなんて無理なことをこちらは言いません。大体作成中で、あなたがいま鋭意努力中ということを言うから、はっきり発表してくださいということなんです。しかも出したあとから発表するのじゃないのですよ。出す前にわれわれにやはり発表するということが大切なのです。またそれをいまわれわれは求めているのですから、どうですか。
  78. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 この条約に関する求められております報告と申しますのは、詳細に申し上げますと、条約で取り扱われている事項に関する自国の法律及び慣行の現況を報告してもらいたい、こういうことでございます。ですから、これは事実についての整理でございますので、別段の考え方の報告を要求されておるわけでは、ございません。したがいまして、事実についての、どの程度の関係部分まで含めるべきかということを、国内法と条約とをにらみ合わせながら各省でいま具体的に整理をしておる、こういうことでございます。
  79. 枝村要作

    枝村委員 これははっきりしているのです。事務総長代理が出した書簡は、未批准条約に関する報告で、特に貴国は百五号について提出しろとはっきりしているのですから、何でもかんでもということじゃないのです。それがいまどうなっているかということを質問しているのです。
  80. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 その百五号に書いてあるような規定の内容が、日本でどのように実施されておるかということの事実を報告しろということでございますので、事実についての整理をしておるということで、ございまして、特段の方針とかなんとかという問題ではないわけでございます。
  81. 枝村要作

    枝村委員 事実ならそれこそ簡単じゃないですか。事実ならどこへ出しても恥ずかしくないことなんですから、それが報告できぬというのはおかしいでしょう。
  82. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 事実についての問題でございますから、おっしゃるように、でき上がりますれば報告できるわけでございますけれども、何度も申しますように、やっておりまするが、まとまっておりませんので申し上げる段階になっていない、こういうだけのことでございます。
  83. 枝村要作

    枝村委員 それでは、幾ら言っても押し問答になりますけれども、われわれとすれば、現段階でそういう態度をとるということはきわめてけしからぬと思うのです。結局——いま先輩から教えられましたのでもう一度質問しますが、とにかく出すのは七月一日ですから、出すとすれば、向こうに着くのはおくれても、三十日でしょう。三十日までに出すようにあなた方はすると言うのですから、三十日までにわれわれにも報告できるようにしてもらいたいと思います。できますね。
  84. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 まとまりましたら御報告申し上げることにやぶさかではございませんので、私どもも七月一日までに間に合うように報告をまとめる努力をしておるということでございます。まとまりました上では、御報告申し上げることにはや、ぶさかではございません。
  85. 枝村要作

    枝村委員 それは、いろいろ一生懸命やってみてまとまらぬならしかたがないと思うけれども、しかし、まとまらぬ段階において、中間でも  いいですから、どういうふうになっているかということを報告してもらいたいと思います。いいですか。
  86. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 まとまりました上で御報告させていただきたいと思います。
  87. 枝村要作

    枝村委員 まとまらなければ報告できぬという何か法律があるのですか。私はしろうとでわからぬのですけれどもね。
  88. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 これはILOに対しまして外務大臣から出す文書でございまして、一種の外交上の文書でございますので、そういう意味でやや神経質に申し上げておるわけでございまして、御了承いただきたいと思います。
  89. 枝村要作

    枝村委員 どうも納得できぬですね。委員長、あれは必ず三十日までに出すように善処してください。
  90. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 委員長から、つとめて早く提出するよう勧告をいたします。——質問を続行してください。
  91. 枝村要作

    枝村委員 それで、報告する場合、政府の書簡に労働者側の意見を付して提出することになっておると思うのです。これは別に、憲章の中に十九条、二十三条でもはっきりはうたってありませんけれども、大体各国の通例として、政府書簡には労使の意見を付して出すようにする。それが理事会にいって、理事会討議されて、総会でやる。そうならないと、いろいろあと問題が八十七号条約のときに起きたでしょうが。そうなっておるのですが、今回そういう意思があるかどうか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  92. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 従来のILOの取り扱いによりますると、すでに批准した条約について報告を求められます際には、労使団体の意見を付してということになっております。未批准条約につきまして報告を求められました際には、従来もそのようなことはございませんし、今回のILOからの文書にもそのようなことは書いてございません。
  93. 枝村要作

    枝村委員 ところが、あなた方は常にそういう精神というものを曲げて、自分のかってのいいように持っていく。そういうくせがいままであるから、一ぺんも労使の意見を付して出したことばないでしょう。だからもめるのです。ところが、はっきり明文はないのですが、今回のジェンクスの報告を求める文書の中にも、ILO憲章の二十三条に従って報告の写しを送付した代表的労使団体の名称を知らせてくれということが書いてあるのです。このことは、われわれの解釈からすれば、極端に言えば、書簡を送る場合に、当然労使双方の意見を聞いてやれ、意見を聞いてやらないにしても、それ以前に、お互いに、もめないように、国内でお互いに対立するということを国際舞台で暴露せぬようにやろうという精神で書かれている。この書簡にも写しを送付した労使団体について、そういうふうにやったかということです。そういう意味のことなんです。そう理解していくならば、いままでやってきたことは間違いであるから、今回は、この書簡を送るときに、労使の意見を同時に付して送ってもらいたいとこちらは要望するのです。あなた方のほうはどうします。それを受けませんか。
  94. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 ILOから参りました文書によりますると、日本政府ILOに出します報告を労使団体に送る場合に、その送る名前を書いてこいということを言っているわけでございまするから、ここにありまするように、私どもとしましては、日本政府としてILOに送ります場合には、当然労使団体にその写しを送る、こういう取り扱いをいたすつもりでおります。
  95. 枝村要作

    枝村委員 そのことは、あなた方は、何ぼ言っても聞いてくれてはいないのですがね。先ほどちょっと言いましたように、そういうかたくなな態度をいつもとっているから、問題が国内だけならばいいですけれども、国際の舞台でやはり暴露していくのでしょう。八十七号条約のとき、日本の労使が、通常の討論だけではなく、きわめて醜い争いをしたのですよ。それに対して、国際舞台において国内問題で激しく対立的な状態をかもし出すことは避けようではないかと言ったのは、むしろあなた方政府のほうですよ。それを防ぐためにはどうしてもこういう措置をとっていくことが大事なんだ。そのことが特にドライヤーの報告の中では求められている。日本の労使の関係ではいろいろ不信感が漂うている、これがやはり大きな紛争になるかぎだということを言っているのです。そのために総理大臣労働者代表がいつも会見して、何かせいということを言ったし、何とか協議会をつくれということを言った。それを今日では、本会議で明らかにされたようにやってはおらぬ。すべてがそうでしょう。ですから、今回の書簡の場合でも、事前において労使の間でいろいろこまかい意見調整をせぬにしても、ある程度争いがないようにする、そのことは同時に、意見を付して出すということがその第一の条件なんです。それをやってくれということをいま質問しているのですけれども、これはだめですか。
  96. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 一般的な労使の話し合いその他につきまして、いま先生の御意見のございました点は、私どもまことにごもっともだと思いまするし、そういう態度で臨んでいるつもりでございます。この場合、御承知のようILOは三者構成でございまして、これは政府の責任で出す文書だというように理解をいたすわけでございます。したがいまして、労働組合あるいは使用者団体から御意見がございますれば、もちろん作成の過程でもお話を承ることはもとよりやぶさかでございません。けれども、この文書は政府の責任でまとめたものを出すべきだというふうに私ども考えるわけであります。
  97. 枝村要作

    枝村委員 では、われわれが強く要請してもだめだというふうにお答えになったわけですね。そういうように理解をいたします。  それではまた元に戻りますが、先ほど労政局長は代償機能は十分に果たしておると言いますけれども、公労法にいう仲裁裁定は、二十九年まででたらめで一つも履行しなかったのですが、その後履行するようになりました。そのことは認めますが、人事院が勧告をした内容について、ではいままでどういうふうに完全に受け入れたことがあるのですか。
  98. 松永正男

    松永(正)政府委員 公務員給与問題につきましては、所管でございませんので、先ほどもあらかじめお断わり申し上げておいたつもりでございますが、現在のたてまえとして、法律で条件がきまるということが非常に大きな有力な代償措置である。法律できまる以上は国会審議によりましてきまるということでございますので、それに付加的に人事院勧告という勧告制度もあるというたてまえを申し上げましたので、その勧告の実際、取り扱いの問題につきましては総理府所管でございますので、私からとかく申し上げるのは差し控えたいと存じます。
  99. 枝村要作

    枝村委員 ほんとに時間がありませんので質問があまりできませんが、実際一度も人事院勧告を完全実施したことはありません。そのことは、人事院という一つの代償機関というものをそもそも軽視しておると見られてもしかたがないと思うのですよ。特にそれは、先ほどから言っておりますように、ドライヤー調査団がこのことを非常に強く指摘しておるわけなんです。これは皆さん一番よく知っていらっしゃる。ですから、ドライヤー報告にもあるように、現在の人事委員会は全く評価の対象にもならぬということに、これははっきり言いましてなるのではないでしょうか。それから、たとえこれを代償機関として認めてみても、これらの機関が政府に勧告したことを政府自体が受け入れないということなんです。人事院そのものがやはり代償機関の機能を果たしておらぬだけでなく、その機関が政府に勧告したそのことを政府自体が受け入れぬ、破っておる、あるいは黙視しておる、こういう両方の作用によって、全く代償機関としてあることが無意味であるというふうに痛烈に批判されてもしかたがないものだと思うのです。それから、この場合、政府が職務または労務性質から労働基本権を制限することはやむを得ない、こういうことを主張しておるのでありますが、こういうことをどんどん言ってしまっておれば、憲法二十八条にいう労働者の団結権は政府なり権力の思うままにじゅうりんされる、こういうことになるのです。これは重大な憲法違反ではないか、そのように私どもは見ておるのであります。  それで、公務員労働者が昨年の十月二十一日に人事院勧告の完全実施を要求してストライキを実施しました。これは憲法をじゅうりんする日本政府にむしろそのことは責任があるのでございまして、これに対していろいろな理由を設けて、刑事罰、行政罰を科するということは、これは全く誤りであって、むしろこれはすべての責任がそういう政府にある、こういうふうに私どもは思うのです。とにかく十六万に及ぶ刑事、行政弾圧を加えておる実態は、全逓の中郵事件の判決の関係からしても、ILOのいわゆる条約の精神からしても、あるいはドライヤーが報告した内容からしても、これはどうしても見のがすわけにはいかないのであります。そういうふうに私ども考えておるのでありまして、ひとつこの問題についてもまた機会を見て政府とわれわれとの間のいろいろ考え方の相違をできれば調整して、労働大臣が言いましたように、将来の労使の関係が円滑になるように、どこの世界から見られても、日本のそういう労使の関係はきわめて円満である、基本的人権がこれはどこから見ても保障されておるというように、発展、前進するようにしていきたいと思うのであります。  そこで、代償機能の不備の問題について、とりわけ労働委員会が完全な中立性を備えていないことが、どうもいろいろな問題で労働者の不満を買っておるわけであります。そういうことから中立性の問題について若干質問してみたいと思います。これもやはりドライヤー報告ですかに明らかにされておると思うのですが、とりわけ公労委の公益委員の選任についてであります。これはほんとうに中立的でなければならぬというふうに思うのですが、どうもその公益委員を選ぶ場合に、現在のやり方では中立性が疑われるというようなことがたくさんあるわけであります。これは私が言わぬでもわかっておるのですが、どだいえらい人、政府の息のかかった人、これは中立性を保つような人でないと思われる人を公益委員に据えるということ、しかも任命する場合に、中労委であるならばこれは労使の同意を得て任命することになっておるのですが、公労委の公益委員の場合はそうでないわけですね。意見は聞くけれども政府がかってに任命する、こういうことになっておるのです。そういうことから中立性——まあ政府がりっぱな者を選べばいいかもしれませんけれども、そういう選び方自体に対して、労働者の不満を買うようなやり方をするところに中立性を疑われてもしかたがないということになってくるわけでありますが、この問題についてどういうふうに考えておられるか、お伺いしたいのであります。
  100. 松永正男

    松永(正)政府委員 中労委、地労委と公労委の系統が二つあるわけでありますが、中労委、地労委の系統におきましては、公益委員につきましては、労使の同意を得て任命するというたてまえになっております。それから公労委の場合には、労使の意見を聞きまして候補者名簿を作成し、そうして国会の同意を得て任命するという手続になっております。委員会の扱うべき使命が異なるということから、委員の任命方式も異なっておると思うのでございますが、従来とも委員候補者の名簿の作成につきましては、御指摘のような公正な立場にあり、人格も円満な方をお選びをして、労使の意見をお聞きをするということになっておりますので、扱いといたしましては非常に慎重な扱いをいたしております。今後におきましても御指摘のような御危惧のないような慎重な態度でやりたいと思っております。
  101. 枝村要作

    枝村委員 まあ、できれば何かの手続の改正でもしてもらいたいのですが、これができぬと言われれば、十分労働者の——労働者ばかり言ってはいけませんが、両方の意見を聞いて公労委の中立ですか、公益委員を選ぶようにしてもらいたいと思うのです。これは希望します。  それから調停委員がそのまま仲裁委員に移行していくというやつですね。これもまたちょっとおかしいのです。これもILO第五十四次の報告の中にもはっきり、そういう二つの機能があるということについて、非常にこの間には矛盾があるということを指摘しておりますし、それからラドイヤー報告も、そういうことが労働者の中に不満を呼び起こしているということで指摘をしておるのですから、こういうふうにそのまま移行する——同じ人物が調停委員会で案を出して、それからまた仲裁でも同じ人間が出すなんということは、これはちょっとおかしいじゃないですか。そういうことを改める意思があるかないか、こういうことです。
  102. 松永正男

    松永(正)政府委員 これは、法律制度といたしましては、仲裁委員会は公益委員のみで構成するたてまえになっておりますし、調停委員会は労使の入りました三者構成でやるたてまえになっております。で、制度といたしまして公益委員がイコール仲裁委員であるという制度にはなっておらないのでございまして、もっぱら公労委における運用、運営方針の問題であろうかと思います。公労委内部の問題ではないかと考えますので、私どものほうからその運営についてとかく差し出がましいことはできないたてまえになっておりますので、御意見としては承りますが、私どもとしてどうするということは言うべき筋合いではないかと思います。
  103. 枝村要作

    枝村委員 この問題についてはもう時間が全然ありませんので、最後にお尋ねしますが、百五号が採択されて、その後九年ぐらいたっているのです。その間、石田労働大臣批准意向を明らかに本会議でもされたと思うのです。その後またずるずるとなって、今日の段階では、どこかに疑義があるとか、解釈の点で相違があるとかなんとかという理由でその批准を延ばしておる。これはたいへんけしからぬことだとわれわれは思っておる。しかし、政府も百号批准の方向を今度出しておるし、引き続いて百十一号も出されると思うのです。そうすれば、百五号もそういうふうになってくるべきものだとわれわれは期待しておるのですが、ひとつ最後に、労働大臣がいつごろそれではそういう疑義の解明をしたり、いろいろな見解の統一をして、そうして批准するか、そのめどを明らかしにてもらいたいと思います。具体的にいろいろこまかく、どういうところに疑義があるかということを問答してみたかったのでありますが、時間がありませんからその点だけ答えてもらいたいと思います。
  104. 早川崇

    早川国務大臣 百五号につきましては、国内法との関係でいろいろ解釈上の疑義もございまするので、そういった問題をよく検討して今後も慎重にこれの批准の問題を政府部内で検討してまいりたいと思っておるわけでございます。具体的にいついつということは検討の結果を待たなければお答えできないことをまことに遺憾に思っております。
  105. 枝村要作

    枝村委員 きわめて残念でありますが、早川労働大臣に私ども期待しておりますので、いわゆる労働者の人たちの期待にこたえるようにひとつやってもらうし、それが国際信用をかちとる何かになれば、日本国全体として悪いことでないのですから、ひとつやってもらいたいと思う。  それから、あと私は、百号条約と百十一号、それからこの百号問題でもいろいろ代償の問題について、その他一〇・二一に対する政府のいろいろお考え方をただしてみたいと思いましたが、この部分は時間がありませんので留保しておきます。  続いて私は時間があったらお尋ねしたかったのは、民放労働者の問題、これは今日弾圧が非常にかけられておるわけなんです。とりわけこの前、委員会質問しました山口放送の問題も、どうも地労委が出ておるようでありますが、まだ解決していないように思います。それに対する労働省のいろいろな力強い行政指導とかあっせんとかなんとかいうものを出して、早く始末をつけてもらいたい。これはロックアウトで労働者が賃金の支払いをとめられておるのですから、生活の問題に影響を及ぼしておるのですから、これはたいへんなことだと思う。これはやはり見のがすわけにいかぬという問題であります。  それから岡山の山陽放送の問題ですね、これも組合員が三十八名くらいおるうち、ほとんど今度の春闘で処分されておるのです。これは首切りを含むんですね。しかもその原因になったのは賃上げであると同時に就業規則なんです。就業規則の改正を一方的にやったことに対する反対の行動に対して処分をした。ところがその就業規則を見ますと、これはたいへんなおそろしい内容なんですね。いまのILOの百号、百十一号その他にすべて抵触するようなことを公然と就業規則の中に出しておる。これなどは明らかに第一組合の組織をぶつつぶそうという意図であるというふうに、だれが見てもわかる問題があるんです。それとラジオ関東の委員長の首切りの問題やチャンネル12ですか、いろいろ民放に対する攻撃が加えられておる。その一体背景は何かという、こういう問題も、やはり労働大臣あたりの意見も聞いておかぬとたいへんなことになると思うんですね。とりわけそういう放送関係に従事しておる人たちの任務は重大なんですから、そういう質問をしたいと思ったんですけれども、どうも時間がありませんので、時間をきちっと守る私ですから、そういう問題はひとつ留保しておきます。  これで質問をやめます。
  106. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 山本政弘君。
  107. 山本政弘

    山本(政)委員 労働大臣に一つだけお伺いして、それで大臣はけっこうでございます。きょう郵政省から提出された資料については、これを見ているだけでもたいへんだと思うので、委員長にひとつお願いしますが、これはこの次にも保留していただきたいと思います。与えられた時間が三十分だそうですから。  大臣に一つだけお伺いしたいのは、懲戒処分とかあるいは人事権の問題について、不当な処分あるいはその他のことがあれば、これが客観的な事実に基づいて誤りであるということがわかった場合には、一体これはどうなるか。大臣のほうではこれを行政指導というか、むしろ処分の取り消しとかあるいは軽減とかいうことが当然考えられると思うんですけれども、この点についてのお考えを一つだけお伺いしたいと思うのです。
  108. 早川崇

    早川国務大臣 本来労使関係はお互いの信頼によって行われなければならないというたてまえで、昭和二十四年でございましたか、不当労働行為に対する刑罰処分というものを法改正で廃止をいたしまして、御承知のように原状回復ということになったわけでございます。したがって、不当労働行為がございましたならば、法の定めるところによりまして、労働委員会ないし公共企業体等労働委員会に提訴がされまして、結論が出ましたならば、そういった原状回復という措置あるいはまた使用者側が適当な誠意を示して行政的な措置をとるという以外は、いまでは方法がないということを申し上げたいわけでございます。
  109. 山本政弘

    山本(政)委員 それではもう一つお伺いいたします。  団体交渉の場合には、交渉にあたり、両方の当事者は当然誠実に相互信頼に基づいてなされなければならないと私は思うのですけれども、この点はどうお考えになりますか。
  110. 早川崇

    早川国務大臣 当然そのような態度で臨まなければならないと思います。
  111. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは郵政省の人事局長にお伺いいたします。  「新しい管理者」という資料がけさ机に乗っておりましたから、私はぱらぱらとめくって見たのですが、この中に「したがって発言内容は有ること、無いことが言われて真偽がわからないものである。むしろ虚偽の事実の場合の方が多いことをよく承知しておくことである。」こう書かれていますけれども、これはあなたのほうから出されたものですね。「郵政省人事局編」となっている。組合の言い分を簡単に信ずべきではない、こういうふうなことが書かれています。この点について私は、相互に両交渉当事者が、信義と相互信頼に基づいて行なわれるという場合に、あなた方は、交渉されるときにそういうお考えで現実にやっておられるのかどうか、この点ひとつお伺いしておきます。
  112. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいま労働大臣がお答えいたしましたように、基本的には労使双方信頼感を持って団体交渉に当たるべきこと、これは私たちにとっても大原則でございます。おそらくそこに書いてありますこと、私は、その前後の全体の文章をお読みいただけばおわかりかと思いますが、どうしても労使双方で話をしております過程において、これは率直に申し上げまして、相互に多少のかけ引きとか、あるいは戦術的な発言というようなものが絶対ないとは申し上げかねます。これは交渉でありますから、相互にやや自分のほうに有利にしたいという気持ちがございますので、そういう意味での多少の誇張、かけ引き、そういうものもあるので、十分そういう点を注意をしてということでございまして、基本的に相互信頼、十分お互いの間の意思疎通をするという基本原則では少しも変わっておりません。
  113. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ、かけ引きもあるからとなぜここに書かないのです。組合の言っていることは虚偽の事実が多いなんという言い方、私はこれは不当だと思う。そういう指導のしかたをかりにあなた方なされるとするのだったら、たいへんおかしいことだと思いますよ。その点どうなんです。
  114. 山本博

    山本(博)政府委員 私は、率直に申し上げまして、そこの部分を全部読みましてお答えを申し上げておるわけではございませんので、その文章につきましては後ほどよくもう一度読み直しいたしまして、適当でないということでございましたら、指導の点についてもう一度考えてみたいと思います。
  115. 山本政弘

    山本(政)委員 そういう文章がこの「新しい管理者」には幾らでもあります。私はこの次にこれを指摘したいと思いますけれども、きょうは時間がありませんので保留いたします。  人事局長にお伺いいたしますけれども、昇給の欠格基準に関する協約というのがありますね。それを見ますと、大体定期昇給の保留というのは本質的には処分であるというお考え方があると私ば思うのですけれども、その点について。
  116. 山本博

    山本(博)政府委員 昇給につきましての欠格基準は、これもお手元にもし資料がございますればおそらくそこに書いてあると思いますが、処分を受けた場合あるいは休暇がきめられた以上に非常に長い場合、その他もろもろの条件がありまして、その条件に該当する場合は昇給をさせないということが現在の規定としてございます。
  117. 山本政弘

    山本(政)委員 重ねてお伺いいたしますけれども、定期昇給の保留というのも、本質的には処分である、私はこういう考え方が貫かれておると思うけれども、その点はどうだ、こういうことなんです。
  118. 山本博

    山本(博)政府委員 ちょっと私御質問の趣旨がまだはっきりいたしませんが、処分と申しますのは、どういうお使い方をなされておりますか、私たちが普通処分と申しますときは、大体行政処分をさして申しておりますので、昇給保留というのは、別段私たちは処分だとは考えておりません。
  119. 山本政弘

    山本(政)委員 昇給を保留するということですよ。昇給を保留するということは、本質的には処分に入るのではないのか、こう言っているのです。
  120. 山本博

    山本(博)政府委員 私たちは処分と考えておりません。
  121. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは一体どういうふうにお考えなのかお伺いしたい。
  122. 山本博

    山本(博)政府委員 現在昇給制度がございまして、これはたてまえといたしましては正常に勤務いたしております職員についてはほとんど全部昇給をさせております。しかし無条件に全員というわけではございませんで、いま申し上げましたように、行政処分を受けた者、あるいは非常に長い間欠勤をいたしておりました者、あるいは無断欠勤の非常に多い者、あるいは病気休暇の長い者、そういう昇給をさせるのにはその期の勤務状態が必ずしも十分でなかったと認められるものにつきましては、他の一般の職員の昇給をする時期に昇給をさせないということでございます。
  123. 山本政弘

    山本(政)委員 ですから、私がお伺いしていることは、あなたのおっしゃるように、長期の欠勤者がおった場合には、長期の欠勤があったからという考え方があるわけでしょう。これは広義に考えれば、本質的には処分という概念に入らないのか入るのか、こういうことなんですよ。
  124. 山本博

    山本(博)政府委員 私たちの用語では処分というふうには考えておりません。
  125. 山本政弘

    山本(政)委員 昭和四十一年の十一月四日に、人事部長のほうから局長あてに文書が出ております。「勤務成績不良による定期昇給の証明保留について」こういう非常に具体的な通達が出ております。「〃勤務成績の良好でないことを証するに足る具体的事実〃のはあくについて」ということで、これは三項に分かれております。一つは「事実の具体性と認定についての客観性」、二番目は「認定期間の妥当性」、三番目は「事実矯正措置等についての記録」、こういうふうなことがあって、そこにはかなり具体的に注意すべき事項についての指導が書かれております。私がお伺いしたいのは、あなたは定期昇給を保留することは処分ではないとおっしゃっているのです。しかし、私は申し上げますけれども、最近渋谷の郵便局、中野の北郵便局、それから牛込、それからきよう私は練馬の郵便局にもそういうことがあると聞きましたけれども、処分をした、そして減給になったという人についてのあなた方のこの人事部長通達での指導から考えてみますと、たいへん軽率な手落ちがあるような気がするわけです。  例を一つあげて申し上げましょう。これは渋谷の郵便局で減給処分に付せられた人です。ここに文話を申し上げます。「貴職は、渋谷郵便局集配課に勤務のものであるが、昭和四十二年五月二十三日故なく多数の郵便物の配達を怠る等して、郵便事業の正常な運行を著しく阻害した」ものである。よって、上記のとおり処分する。」これだけです。書かれておるのはわずかに四行ですよ。そして、この人は減給十カ月間、俸給の月額の十分の一、こういうふうになっている。あなたの昇給停止に対する指導について、認定期間の妥当性ということだけ取り上げてみますと、「職員の勤務成績が不良であると認定するについては、当然ある程度継続した期間帯についての判定であることが明らかにされていることが必要である。特に闘争時における短期間(一〜二カ月)間の行為、あるいは事実のみを強調することについては、認定の公平かつ厳正といった点で難がある場合が多いので、これらは必ず平素における当該人の勤務意欲」云々ということが出ておる。「ある程度継続した期間帯」ということが出ておる。あなた方が処分されたことについては一日間ですよ。一日間郵便物が遅滞した、こういうことで処分をしている。昇給に関してこれだけのきびしい行政指導をあなた方はなさっておるのに、減給に対して簡単にこれを減給している。たった一日の問題で。このことで渋谷の郵便局における何人かの処分者の間に、私は申し上げたいのは、事実をきちんと確かめないでやっておる事実があるのではないか、こういうことを書いたいわけなんです。その点どうなんですか。
  126. 山本博

    山本(博)政府委員 処分をいたしますときには、先ほどお示しになった資料に基づきまして、決して軽率な処分をするというようなことは、私たちの従来の指導といたしましてそういうことのないようにつとめてまいっておりまして、渋谷につきましても、私が現在報告を受けておりますのでは十分そういう点についての配慮をした結果というふうに承っております。
  127. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃもう一ぺんお伺いしますよ。昭和四十二年五月二十三日ですよ。これは一日です。あなた方にどんな報告がいったかわからぬけれども、郵便局長の当該人に対する処分説明書というのが、一日でしかないわけです。  もう一つだけ例をあげますが、「事実の具体性と認定についての客観性」ということについてはこう書いてありますよ。「たとえば一定期間について郵便物の持戻りが多かったという事実については単なる回数、通数の記録にとどまらず、それが果して当該人」云々とこう出ております。一定期間ということが何回も出ているわけで、あるいは期間帯ということも出ているわけですよ。私はこの「職場づくり」とか、「新しい管理者」とか、こういうものと思いあわせてみて、最近の郵政当局の指導というものについてたいへんな疑問を持っております。一日でなくて、あなた方の言う通達の指導のとおりだとすれば、当然これは一定期間の郵便物の持ち戻りですか、そういうことによって処分されるはずでしょう。昇給についてはそれだけですよ。人間一人処分するということについてどれだけの多くの客観的な事実をつかんでやらなければならぬかということは、これは言うまでもないことでしょう。しかし、あなた方はここに書かれていることと全く違って、一日だけのことについてそういうことを取り上げている。しかも私が調べた範囲では、持ち戻りといってもこれは通常の日では九百通、それがその日は千二百通あって、この人は前の日の残り二百七十通の郵便物があったわけで、そして当日五百七十通を配達しておりますのですよ。私はたいして、あなた方が目くじらを立てて処分をするほどの持ち戻り数ではないと思うのです。昇給に対してこれだけやかましいといいますか親切丁寧な指導をしながら、それにもかかわらず、人間一人処分するについてはきわめて簡単に、持ち戻り数についても、認定期間についても、あなた方はただ郵便局長の、これは報告か何か知りませんけれども、それだけに基づいてやっている。私はそういう気がしてならないのです。あなた方の指導と、それから現実の実態とについてどうお考えになっているか、私たちはたいへん違いがあると感じるのです。が、どうですか。
  128. 山本博

    山本(博)政府委員 指導いたしますときは、一般的な基準といいますか、一般的に考えられます状況を前提にいたしまして指導いたしております。個々のケースになりますと、その起こった前後の条件、それから本人の業務に対する、その当日の仕事のしかた、そういうものが非常に故意かつ明白であり、しかも業務命令といいますか、管理者の指揮に従わないというような形を明白にいたしました場合には、よしんば一日であってもこれは処分の対象になるというふうに考えております。  なお、補足いたしますが、先ほどの減給十ヵ月という処分を受けた人の持ち戻りの通数でございますが、これは私たちの受けている報告によりますと、当日持ち出した郵便物が約六百通でございます。六百通のうち配達をいたしましたものが百五十通、持ち戻ったものが四百五十通、これは全く異例のことに属しております。
  129. 山本政弘

    山本(政)委員 あなたはいま著しく指導に従わない、こういうことをおっしゃいましたね。そうすると、私のほうでもちょっと質問したくなることがある。人事部長が局長に出したこれは通達ですよ。通達の中に「所属長限り行ない得る矯正措置の厳正な実施について」ということで、再三二つの非違にわたる行為又は事実」があった場合でも本人に対して指導しなさい、こういうことを書いておりますね。そういう指導が出ております。そのことが現実になされたかどうか、私はほんとうに所属長が誠意をもってやったかどうか、この点についてはたいへん疑問があるのです。ということは、これは事実をもって私はお話をしたいと思いますけれども、挑発的な言動が多いということも聞いております。所属長は可能な限り行政指導をしなさいという、この行政指導があったかどうか、このことについて所属長からどんな指導をやったのか報告がありますか。
  130. 山本博

    山本(博)政府委員 実は、渋谷の郵便局の今度の懲戒処分が行なわれました件、ただいま御指摘になりました五月二十三日の件でございますが、実は五月の十日過ぎからこの局におきましては局内が全く荒れておりまして、いわば労使間の紛争というのは相当激しい形を生じております。なお、そこの中で本人一人がこういう問題に当たっているのではございませんで、そのほかのいろいろな人間がしかもいろいろな形で局内においてこういう紛争の当事者になっております。それ以前何もしなかったということではなくて、五月の十日過ぎからこの局の中のやや秩序を欠いた状態に対する矯正措置というものを一般的に管理者としては行なってきておりましたけれども、これは十分効果をあげなかったという事実は率直に見て申し上げざるを得ません。この点は管理者が十分な能力を発揮しなかったといえばそれまででございますが、決して努力をしなかったということではございません。なお、本人個人に対してどういうような処置を個別にしたかということにつきましては、私は現在報告を持っておりません。なおよく調べてみたいと思います。
  131. 山本政弘

    山本(政)委員 四十一年六月三十日の朝日新聞をごらんになっていただきたいと思うのですけれども、集配課の副課長荒木某という人が郵便物抜き取り事件でこれは刑事問題になっております。これが渋谷の指導者の一人ですよ。私が申し上げたいのは、あなた方が管理をしている人たちの、そして指導すべき人たちの中にそういう人たちがおったということですよ。そういう事実だけ見ても、単に部下だけがあるいは組合員だけがという言い方になりますが、これは適当かどうかわかりませんが、要するに組合員たちだけが悪いのだ、こういうことには私はならぬと思うのですよ。現実に郵便局の中にそういう不祥事件が起こっているわけです。局員の中から起こったというのじゃありませんよ。これは管理者の中から起こっているのです。そういうことには目をおおっているのじゃないですか。そういうことに目をおおって、正当な組合活動の中で行なわれたことに対してすら、私は、これは組合活動ではないというふうに意識的にとっているような気がしてならないのですよ。あなた方のこれだけ見たって、私はたいへん問題になってくると思うのです。こういう考え方で指導されているのでしょう。だから私はそういう問題が出てくると思うのです。しかも片一方には、管理すべき人たちの中にそういう問題がある、不祥事件が出てきておる。これはあるいは組合員の人も率直に反省をしなければならぬ場合もあるかもしれぬ。しかし管理者のほうも、ただ組合員が悪いということではなくて、あなた方の管理すべき立場にある人たちの中でも十分に反省をしなければならぬという気持ちが私はするのですけれども、この点いかがなんです。
  132. 山本博

    山本(博)政府委員 かつて渋谷の郵便局の副課長が抜き取りの犯罪を犯したということは事実でございまして、これは私たち郵便事業に従事する者一同が大いに反省しなければならぬ責任は十分痛感いたしております。またこれは副課長だから犯罪を犯したということではございませんで、相当長期にわたりまして、組合員であった当時もこの抜き取りをいたしておりますので、決してこれは地位によってどうこうというものではございませんで、管理者だからやったということではございませんので、御了承願います。(「取り消せ、取り消せ」と呼ぶ者あり)なおこれにつきましては十分今後も犯罪行為というものが起こらないように注意をいたしていきたいと思います。  それから労使間の問題につきましては、当初申し上げましたように、ほんとうに両者の間でできるだけ今後も信頼関係をつくり上げていくように努力をいたしたいと思いますが、犯罪の問題だけは労使間の問題と違いますので、これは別個に十分注意をいたしていきたいと思います。なお管理者がこういう不始末をしでかしておるので、それをもとにして組合員のほうを責めておるというような気持ちは毛頭ございませんで、私のほうはその問題問題によりまして正しい処理をしていきたいというふうに考えております。
  133. 山本政弘

    山本(政)委員 人事局長は、組合員であったときからと、こうおっしゃいましたね。組合員であったときからということは私は取り消していただきたいと思います。と同時に、事件が発覚したときにはこれは管理者であったわけです。この事実は私は曲げられないと思うのです。そういう管理者が一つの立場に立って、しかも組合活動というものについて、ある一時期かもわかりませんけれども、特別な感じを持って組合に対処していくということに問題があるのではないか。これは事実を申し上げましょうか。組合員が夜中に勤務中に病気になった。そうして管理者もそのときに病気になった。私は病気になった原因はわからない。しかし組合員が病気になってもそのまま放置しておったのですよ。そのうちたまたま管理者も病気になった。そのときに病院に持っていったのは組合員ですよ。私は人間ということから言えば管理者も組合員もないと思うのです。それがほんとうでしょう。組合員のやったことは私は間違いないと思う、正しいことだと思う。しかし組合員が病気だったときはほったらかしておいて、管理者が病気になったときはあわててしまって適当な処置がとれないで、組合員のほうでむしろ処置をとっていった。渋谷の中にはこういう事実があるのですよ。私は郵便局の中がかなり混乱をしておったというけれども、ほんとうに誠実に対処していけばわからない組合員ではないと思います。そういう状況をかもし出したところに管理者のほうにも反省すべき点があるのだと思うのです。そういうことには目をおおって、何か事件があれば、あるいは何か事柄があれば組合員に全部おっかぶせていくという態度に対して、私は疑問を抱くと言うのです。  なぜ私は冒頭に減給者について御質問したかというと、減給者に対してそれだけの考えを持っておる。しかしこの中には懲戒処分を受けた人が一人おります。その他私が冒頭に申し上げたのは、処分としては一番軽い人です。しかし重い人がたくさんいる。一番重い人は懲戒処分になっておるのですよ。だけれども冒頭の事実から考えてみても、あなた方の判断のしかたの中に、客観的な事実を見きわめないで処分をしたことがあるのではないか。それがもしもあるとするならば、あなた方は必ずしも労働大臣の言ったようなことではなくて、郵政大臣がそれを取り消しあるいは変更することができるはずです。ここに書いてある。行政事例の四一〇ページをごらんなさい。そこには、法の適用をあやまった場合、著しく客観的妥当性を欠き、明らかに条理に反する場合に、重大な事実の誤認のあることが処分後明らかとなった場合にはこれを取り消すことができるとあるのですよ。私はそういうことについて、あなた方はもっと寛大にならなければいかぬと思うのです。またもっとすなおにならなければいかぬと思うのですよ。私はどうも渋谷の事実に対してもその他の事実に対しても、何か一定の立場に立って、そうして組合運動ということで、しかも組合運動を逸脱したということで処分をしておるような気がしてならないわけです。そういう点についてひとつお伺いしたいと思います。
  134. 山本博

    山本(博)政府委員 先ほど申し上げました点で、これは組合員の当時と申しましたのは取り消しをいたします。職員であった当時からと直していただきたいと思います。  それから、ただいま御指摘になりました点、私たちもかねがね十分注意をいたしまして、組合運動に対して偏見を持ったり、あるいは不当な扱いをするということは、これは法の禁止しておるところでございまして、またそれが法律で禁止されておるというだけではなくて、事実上の労使間の安定ということに非常にマイナスの働きをすることは当然でございますので、そういう偏見を持ったり、不当な扱いをするということについては、ほかの仕事をするよりも十分慎重にいたしておるつもりでございます。  なお、管理者の側にも反省すべき点がないかという御指摘でございますが、管理者といえども常に一〇〇%間違いはないということはございませんので、常に十分反省をしながらやらなければならないのは当然でございます。もし今度の処分につきまして、私たちの判断が誤りであるという事実がはっきりいたしましたら、その場合には十分善処いたしたいと思います。
  135. 山本政弘

    山本(政)委員 時間が三分しかないそうですから、私は事実だけを申し上げておきます。  速達の問題ですが、これは郵便物の配達強化、サービスということから考えてもちゃんとしなければならぬ。強化方針が立てられておる。昭和二十五年四月十八日、郵施二七九ということで通達が出ております。しかし、これは、春闘のさ中に、管理者のほうで、普通の郵便物と一緒に速達を入れなさいという指導をやっておるわけですよ。これは業務命令として出ておる事実がある。そういう違法なことが堂々と管理者の側から行なわれているということが一つ。  それから、中野の郵便局では、明らかに勤務成績、あるいは職歴、学歴からいって、能力のある人のほうが主任にならなくて、はるかに劣った人がなられている。しかもその人に対しては、家にまで行って、あなたを主任に推薦するから、新しいパイプになってもらいたいと言っている。こういう事実があるのですよ。学歴は大学卒、片一方は高校卒です。一方は各課を回っておって、そして主任の代理になっておる。しかし、片一方は一課で、たとえば集配課だけでおったという事実がある。結局その人たちが主任になって、大学を出、そして局では各課をずっと経験し、主任代理になっている人が主任になっておらぬという事実があります。しかも、そのときには、中野の組合の経過から見ても、明らかに第二組合のほうに入ってはどうかという話に対して、それを拒否されて、主任を落とされておるという事実がある。  それから、牛込では、四十何人飛びこえて、わずか三年二カ月の勤務者が主任になっておる。しかも十一年七カ月働いておる人が主任になっていないのですよ。こういう事実があるのです。再調査をして、もう一ぺん事実を検討して、そして善処していただきたいということを私はお願いします。
  136. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいまの御指摘の点、十分調査をいたしたいと思います。
  137. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 田畑金光君。
  138. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、前の委員会のときに、山本人事局長その他に資料の要求と同時に、事実の調査を依頼しておりますので、郵政当局としても、私の質問に対して調査されたものと考えておりますので、この際まずその御報告を求めたいと思います。  私のお尋ねした趣旨は、御承知のごとく、関西地区における全逓労組脱退、全郵政加盟に伴い、大阪、京都、兵庫、あるいは和歌山等々の局において、いろいろ人権侵害に類する事件が続発しておると聞いておるわけでありまするが、また家庭の平和を侵害するような個人の住宅、あるいはその周辺にいろんなビラを張っておるなどの事件を私が指摘いたしましたが、この問題についての調査の結果をひとつ御報告を願いたいと思います。
  139. 山本博

    山本(博)政府委員 組合の組織の動揺に関連いたしまして、両組合の間の組合員相互において、人権に関するような事態が起こったのではないかという点でいろいろ調査をいたしました結果といたしまして、幾つか報告がございますが、そのうち、特に大きいものは京都中央郵便局における問題でございます。その他ビラを自宅付近に張った、あるいは自宅の周辺の家にビラを配って歩いた、あるいは、本人が勤務に行く途中、あるいは帰るときに、スピーカーで、町の中で本人にいろいろな罵声を浴びせたというような事実がございますけれども、特に、私たちとして大きい問題だと考えておりますのは、京都中央郵便局の問題でございます。  京都中央郵便局では、五月十二日から両組合の間でそれぞれの説得工作といいますか、そういうものが激しくなりまして、これは結果論でございますが、五月十三日に全郵政の組合結成大会が行なわれる予定となっておりましたので、十二日から非常に動きが激しくなった。その際、この第二組合といいますか、全郵政組合の結成の主導者であった二人の人間に対しまして、局の中で、相当長時間にわたりまして、いわゆるつるし上げという形で説得工作が行なわれたわけでございます。これは一人の、中島という主任に対しましては、午後の五時二十分ごろから夜の十一時ごろまで一人を取り囲みまして、約三十人の全逓組合員が説得工作をした。これは、管理者といたしまして、局の中で、しかも公衆の見えるところでこういう事実がありましたので、局の中から退去するように再三命令を出しましたけれども、これはいれられませんで、終局的には、局の中で夜おそくまでこういう事態が続いたわけでございます。また、もう一人の山口という主事に対しましては、夜中の零時過ぎ、これは泊まり込みで——ちょうどその時間が休息仮眠時間であったわけでございますが、その零時過ぎから午後の二時過ぎごろまで大体同じような説得工作というのが行なわれた。これは両当事者間では説得工作ということになっております。したがって、管理者といたしましては、組合間の問題に介入するということは非常に慎重な態度をとりまして、ただ、退去をするようにということだけ再三命令はいたしましたけれども、管理者側として、そういう囲みを解くとか、あるいは中へ入ってもっと穏やかにとかいうような指示、指導、そういうことはいたしておりません。最終的には、このうちの山口主事は途中で失心をしたといいますか、そういう事態になりまして、後ほど医者にかかった。この医者にかかりましたのは、これは全逓のほうで医者に連れていったということでございます。こういうような措置を、先ほど申し上げましたように、相互の説得という形をとりましたので、私たちのほうでは一切干渉がましいことはいたしておりませんけれども、客観的に見て、郵便局の中で十時間以上にわたって一人の人間を多数の人間が取り囲んでいるという事態は平穏な事態ではございませんでしたので、私たちとしても、今後こういうような事態がありましたときには、これは労働問題という観点だけではなくて、そういう事態を何とか——病気になったり、失心をしたりという事態に立ち至らぬ以前において何らかの適当な措置をすべきであったのではないかという反省をいたしております。一番大きな問題としては、京都中央郵便局の以上申し上げた点でございます。
  140. 田畑金光

    ○田畑委員 私の調査によれば、和歌山では、五月二十四日に和歌山西警察署へ長尾泰弘、伊藤博文両君の名において証拠物件を提出して告訴しております。同じく大阪住吉局では、五月四日に宇野勇君以下数名の者が大阪法務局に、人権侵害事件として提訴しております。滋賀大津局では田中三木助君、和歌山利三君から告訴、京都中央局ではいまお話がありました中島孝一、山口伝一の両君が七条署に告訴、大阪西局では松原岩男君が大阪西署へ告訴しておりますが、その後この告訴に基づいて関係警察署ではどのように捜査が進行して、いまどのような処理になっておるのか、並びに法務当局は人権問題として提訴を受けておるわけでありますが、この取り扱いは現在どのように進行しておるのか、これをひとつ、それぞれ担当者から御説明をいただきたい。
  141. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの和歌山の件につきましては、五月二十五日に伊藤博文、長尾泰弘両名の連名で、西警察署長に対する告訴状を受理いたしております。内容は名誉棄損でございます。受理をいたしました警察署におきましては捜査を進めまして、本件につきましては捜査の過程で無許可によるビラ張り事件等の現行犯逮捕をするというような事例もございましたが、現在これは捜査をまだ完了するに至っておりません。近く終了する予定でございます。なお滋賀県の事案につきましては、すでに捜査を終了して六月十六日に検察庁に送致いたしております。以上でございます。
  142. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 大阪法務局でこの事件関係の申告を受けまして、その後調査をいたしておるのでありますが、六月九日現在で申告になりました事件で、人権上問題があると思われる事件が十五件ほどございましたが、その後の調査でなお十四件ばかりの事件が新しくふえております。現在まで報告されたところによりますと、被害者に当たる方二十二名を調べました。また参考人に当たる方九名、合計三十一名の方につきまして調査を行なっておりますが、現在までのところ申告にあるような名誉の侵害あるいはその他のいやがらせというふうな事件につきまして、だれが具体的にどのような行動をとったかというところまでは、まだ明確にするに至っておりません。  しかしながら私どもといたしまして、同じような事件が次々と起こっておりますので、何とかこれをやめていただくことができないかということで、とりあえず六月二十二日の午後に大阪法務局の人権擁護部長が、全逓信労働組合の近畿地方本部の執行委員長、書紀長の二人の方に法務局までおいでを願いまして、そしていろいろと話し合いをいたしました。そしていろいろ申告がありましたような事実につきまして、私どものほうでまだ十分、具体的に、だれがどのようなことをしたかというところまでは突き詰めてはおらないけれども、このようなことがありますとすれば、人権問題があることでありますから、将来何とかこれらをやめるように指導していただくことはできないかということを申し上げましたわけでございます。それに対しまして、ただいまの全逓側のお答えは、一部分のステッカーとか、ビラを本部として指図をしたことはあるが、そのほか個人的な名誉を害するようなあるいは家族にいやがらせするような、そういう行動については指図をしておらない。しかしながら、そういう人権上も問題があるような行動は自分たちのほうでもやめさせるということについてはやぶさかではない、こういう御回答が得られました。なお、六月の二十四日には近畿地方の傘下の地区本部の代表会議があるから、その会議の際にも話し合って、それをできれば代表者にも伝えて、将来行き過ぎがないようにしたい、こういうお答えがあったわけであります。  その後の、六月二十四日以後のことは、まだ私ども報告を受けておりませんが、現在までのところそういう段階でございます。
  143. 三井脩

    ○三井説明員 先ほど京都の件についてお答えを漏らしましたので申し上げますが、京都中央郵便局の事件につきましては中島孝一、村山謙治、この二人の双方から告訴が出ております。中島孝一氏からの場合は、五月十六日に傷害容疑で告訴があり、村山謙治氏の場合は六月一日付で暴行罪容疑で告訴がなされております。本件につきまして所轄七条署で六月中ごろまでにほとんど捜査を終了いたしております。一部若干残っておる点を含めまして、近く送致の予定でございます。
  144. 田畑金光

    ○田畑委員 山本人事局長にお尋ねしますが、私もいろいろ資料を手に入れてこれを読んでおりますが、全逓の発行いたしましたちらし文書によりますと、郵政当局は人事権、管理権を乱用し、特に大阪郵政局などにおいては各郵便局の主事、主任、課長代理など管理職に昇進する一歩手前の中間管理職員をねらい打ちにして不当労働行為がなされておる、こういう見方に立って大阪郵政局長や板倉人事部長などに抗議がなされておるわけでありますが、当局はこういう面についても十分調査なされたものと考えておりますが、調査の結果をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  145. 山本博

    山本(博)政府委員 私といたしましては労働問題を担当いたしておりますと同時に、人事の面も担当いたしております。したがいましてどちらが優先するというものではございません。むしろ人事を正しくしていくことが労使間の問題にも非常に寄与するところがあります。あるいは労使間の問題を正しく処理していくことが人事全体にも正しい方向を与えるというふうに考えております。したがいまして、ただいま御指摘になりましたような話につきましては、いろいろ私も耳にいたしますので、十分これは調査をいたしまして、大体人事というものを、そのポストをもって人をつるというようなことに使うべきものではありません。そういうことは私自身としてもけしからぬことだと思っております。そういうことはむしろ郵政事業自身が天に向かってつばするようなものであります。人事をもって人をつるということはもちろんのことでございます。そういうことは指導いたすわけもございませんし、また現地の管理者もそれが自分たちの業務運行に一群大事なことだということは十分認識いたしておりますので、えさをもって人をつる、しかもそれを労働組合問題に使うということは私としても想像できませんし、そういうことにつきまして、十分いろいろ地方のほうについて話を聞きましたけれども、そいうことはないというふうにいまのところ考えております。と申しますのは、何せ大阪管内では、現在三人に一人が全郵政でございます。全逓が三万人で、全郵政が一万人でございますので、人事上、普通の平均値でいきましても三人に一人は全郵政の人間が昇進をしたり是給をしたりということで、数としてはどうしても入ってまいります。また、そういうことの中にいろいろその勤務状態、そういうものを全体として把握し、人事の上にそれをあらわしていきますと、場合によっては三人に一人というのが三人に二人ということも、個別個別の評価ということからいたしますとあり得る、可能性がございます。したがいまして、全郵政の人間が任用されたり昇格したら直ちにそれが労働問題にからんでいるのだという見方をされては、これはまことに残念なことでございますし、実際にはそういうことはもちろん今後ともいたすつもりはございませんし、従来もその点については十分慎んできておったはずだと考えております。
  146. 田畑金光

    ○田畑委員 山本局長の先ほどの報告によれば、特に京都中央郵便局においては、中島孝一君が午後の五時から夜の十一時過ぎまで、集団でつるし上げを受けておる。あるいはまた京都の中央局における山口伝一君はつるし上げの結果ついに昏倒する、こういう事件すら起きておるわけですね。私たちが問題にしたいのは、郵便局という公の庁舎において白昼公然とあるいは夜半であっても、これが局舎の中で堂々と行なわれておる。それが十時間以上も続いておる。管理者がはたで現実の姿をまのあたりに見ておる。これに対して、先ほどのお話のように、ただ単に労働関係であるからということで退去命令を呼びかけただけだ。しかしそれは実行されない。こういうようなことでは、これは私は労働問題と別に、当局は当然局舎の管理の責任があると思うし、また職場の秩序を保持するという行政当局としての義務があると思っているのです。この点については、当局としてはどのようにお考えになっておりますか。
  147. 山本博

    山本(博)政府委員 先ほどちょっと触れましたが、従来私たちの方針といたしましては、労働組合相互間の問題については一切これには介入しないようにという指導を強くいたしております。したがいまして、現場の管理者も、こういうような事態にぶつかりましたときに、勢い消極的な態度をとってきたのが従来の例でございます。なかなかこれは口で言うのはやさしゅうございますが、それぞれ現場の局長になりますと、まのあたりの事態にぶつかりますと、どういう態度をとるべきかということは非常にむずかしい問題だと思います。それに、従来はできるだけそういうことには触れないようにという指導をしてまいったものでありますから、今度の場合も管理者としまして私たちが現在反省をいたしておりますのは、もっとこの状態を打開するための努力をすべきではなかったかと思いますので、この問題がありました直後に、こういう事態にぶつかった場合には従来のような単に不介入ということでなくて、従業員が非常に困難に遭遇しておるという事態を打開するためには従来と違った活動を十分にするようにということについて指示をいたしました。なお、今後の問題につきましては、こういう事態についてどう管理者が処置すべきかということについては、近々いろいろな会議がありますので、この会議を通じまして、管理者がどういう態度をとるべきかということについて十分意見を聞きながら、従来と違った方向というものを打ち出してみたいと思います。
  148. 田畑金光

    ○田畑委員 これは京都の伏見の局で起きた問題で、田村安子さんという女性ですが、仕事が終わって帰宅しようと思って局を出たところが、全逓の組合員の二人が携帯マイクでうしろから、あなたは間違ったことをしている、などいろいろな言いがかりで京阪丹波橋駅までつけていった。この田村安子さんが駅の構内に入り待合のところで電車を待っていると、この人たちも入ってきて携帯マイクでまた放送を始めた。駅員が見かねて注意をしてこれを追い出した。こういうようなことが行なわれておるが御存じかどうか。私はこういう問題について警察当局にちょっとお聞きしたいのですが、軽犯罪法の第一条の二十八号「他人の進路に立ちふさがって、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者」ちょうどこれに該当すると思うのですね。また私宅の周囲にビラを張り歩いている。へいというへいにいろいろなステッカーを張りめぐらしておる。こういうことは軽犯罪法の同じく三十三号の「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、」云々とある、ちょうどこれに該当すると思うのですが、軽犯罪法でいう第一条の二十八号あるいは三十三号の内容というのはどういうものであるか、それをひとつ御説明いただきたい。
  149. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの伏見郵便局の事案につきましては、女性に対して拡声機を用いていろいろ呼びかけながら追随して駅構内まで行く、駅構内で駅員に注意をされてやっと中止するということは非常に行き過ぎであります。軽犯罪法違反として検討すべき事案であると考えております。ただ、問題が労働問題に起因いたしますので、その間の事情等十分に検討して措置するようにいたしております。本件の問題につきましては、御本人から事情を聴取いたしまして、関係者に警告をいたしました。その後、この種事案は起こっておらないということでございます。  また、ビラ張りの問題につきましても、御説のとおり、軽犯罪法違反に該当すると考えております。
  150. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、この際、労働大臣に承っておきたいと思いますが、これは簡単であります。  組合の加入、脱退は自由であるというのが労働者の基本的な人権であると私は考えますが、労働大臣の見解を承っておきます。
  151. 早川崇

    早川国務大臣 当然のことながらまことにお説のとおりでございまして、るるお話にありましたような事件は、健全な労働運動並びに組合結成の自由等から考えまして、まことに遺憾な事例だと、お話を聞きながら感じておった次第でございます。
  152. 田畑金光

    ○田畑委員 宮崎地裁の延岡支部は昭和二十三年の七月二日、札幌地裁は昭和二十六年二月二十七日、判決で次のようにいっております。「脱退は組合員の一方的意思表示によって生ずるものと解すべきである。但し組合規約で届出又は承認を要すると定めている場合、脱退の自由を制限する部分は、その効力なしと判断する。」と明白に判決しております。そういうことを考えてみますと、全逓の規約は「脱退の理由をあきらかにし、支部に申立て、中央執行委員会の承認を得る」、 こうなっておるわけでありますが、その限りにおいては当該判決と矛盾しておるわけです。私は、脱退の自由というのが労働基本権であるとするならば、このような全逓の規約は、規約として持つことはよろしいが、かりにこの規約と別に、いま私が指摘いたしましたように組合員が脱退するという申し出をしたならば、そのときでその脱退は効力が発生する、このように解釈するのが正常な解釈だと考えるわけで、この点、労働省の見解を承っておきたい。
  153. 松永正男

    松永(正)政府委員 組合の規約の効力でございますが、先ほどお示しになりました判決、私、的確に覚えてはいないのでありますが、脱退の意思表示をしたときに直ちに効力を発生するものでなければ組合規約として有効でないかどうかという点につきましては、そういう規約もありましょうが、組合として承認をするという規約も、必ずしも直ちにそれは無効であるとは言い切れないのではないか。もちろん大原則といたしまして、加入脱退の自由があるわけでありますが、一つの団体を結成する場合に、たとえば適当な期間を置きまして、そのような手続を必要とする場合あるいは永久に承認がなければ脱退が不可能だという場合では非常に違うのではないかと考えるのであります。後者のように承認がなければ永久に脱退は不可能だということになりますと、やはり個人の加入脱退の自由と抵触する場合が出てくるのではないかというふうに考えられますが、ただいま具体的にお示しになりました全逓の規約につきましては、検討をしてみませんと、私どもとしても意見を申し上げることは差し控えたいと思います。
  154. 田畑金光

    ○田畑委員 この問題について議論をしていたのでは、時間も間もなくきますので、私は、この点は後日また質問をしてみたいと思いますが、特にこれは警察庁にお尋ねしておいたほうがいいかもしれませんが、今回のような近畿地方に起きておる問題というのは、つるし上げであるとか、ビラを家庭の周辺に張りめぐらすとか、明らかにこれは刑法上の侮辱罪に該当すると見るわけです。特に昭和四十二年三月二十二日、これは鹿児島地裁だと思いますが、鹿児島郵便局における全逓の侮辱行為に有罪の判決が下っておるのです。それはどういう事件かと申しますと、昭和三十八年十二月の例の簡保転貸債反対闘争に関連して、鹿児島郵便局で全逓かに十五名の組合員が脱退して全郵政に加盟をした。この際やはり全逓は鹿児島においても、いま近畿地方で起きておるようないろいろないやがらせなりあるいは集団つるし上げなりをやっておるわけです。これが裁判になったわけでありますが、判決は明確に有罪の判決を下しておるわけです。この事件を御存じであるかどうか、これを私は承りたいのでありますが、この判決の内容を見ますと、この闘争は一種の政治闘争の性格を帯び、非常緊急事態的な行為と認めるわけにはまいらぬ。団結が組合の生命であることは認めるが、これを防衛する手段にはおのずから限界がある。あまり熱中して人間無視の態度に出ることは許されない。本件のビラを見ると、憎悪と蔑視に満ちたもので社会通念上の正当性の限界を越えている。労働法原理が全面的に優先するものではなく、全逓が主張するような治外法権的事件ということはできない。本件は結局仲間同士のつるし上げ的ないやがらせと見るべきで、それが法秩序破壊につながるものである以上、法はこれに介入する。こういう判決の内容で侮辱罪として有罪の判決を下しておるわけです。この判決を御存じであるかどうか。あるいはこれに類する判決がその他相当あると聞いておりますが、労政局長からひとつどのくらいあるのか。またこの判決の趣旨に労働大臣はどのような感想を持っておられるか、これを承っておきたいと思います。
  155. 松永正男

    松永(正)政府委員 それに類する判決がどれくらいあるかということでございますが、いまここで私どもお答え申し上げることができませんので、また必要なら後日御報告させていただきます。
  156. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの判決がありますことは存じております。類似の判決も相当数あることも承知いたしております。ただ本件の場合、今回の問題に関連して問題になりますのはそのビラの内容ということでございます。名誉棄損になりますか侮辱になりますか、その内容によって罪になるかどうかきめるのでありまして、その辺のところが、ただいままで起こっております事件を見ますと、たいへん限界がむずかしいような事案が多いということでございます。その点につきましてはそうでありましても、われわれとしてはそういうことが必ずしも適当でないということで、関係者に注意を喚起するという措置を講じておる次第でございます。
  157. 早川崇

    早川国務大臣 具体的な事件の内容はわかりませんので、その判決の是非に対する意見は差し控えますが、原則として労働組合の運動だからといって何をやってもいい、あるいは人権侵害あるいは長時間のつるし上げ監禁というようなことは、もう一時の混乱期の日本ではありませんのでそういうことはよろしくない。そういう原則は私は確信を持ってそのとおりだということをお答えいたしたいと思います。
  158. 田畑金光

    ○田畑委員 時間がまいりましたので、私はこれで質問を終わりますが、いま私が最後に希望申し上げたように、類似の判決についてなるべく早い適当な機会にひとつ資料を御提出いただきたいということを委員長を通じ要望しておきます。  同時に、私は当局に強く望みたいことは、労働運動に介入してはならぬということは当然のことでありますが、特に職場の規律の保持というのは、これは行政権として当然その局に当たる者が秩序維持に当たることは論をまつ問題でないと思うのです。その辺の区別を明確にして善処されることを強く私は要望しておきます。  以上で私の質問を終わります。
  159. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 田畑委員にちょっと伺いますが、いまの資料要求はどちらから提出させますか。
  160. 田畑金光

    ○田畑委員 都合でどちらでもけっこうです。
  161. 三井脩

    ○三井説明員 私のほうで提出いたします。
  162. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 それでは警察庁から提出させることにいたします。
  163. 後藤俊男

    後藤委員 関連。ただいま田畑委員のほうからいろいろとお話がございましたけれども、特に全逓労働組合の問題につきましてはいろいろとむずかしい問題も入っておりますし、私も最初から最後までお聞きいたしましたが、事実と違っておる点もあるように思いますので、この問題につきましては次の機会に引き続いてわれわれのほうといたしましても正しくこれらの問題について申し上げたいと思いますから、次回にはひとつよろしくお願いをいたします。
  164. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 次会は、明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時散会