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1967-05-23 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十三日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 竹内 黎一君    理事 橋本龍太郎君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       天野 光晴君    菅波  茂君       世耕 政隆君    田中 正巳君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       中山 マサ君    増岡 博之君       箕輪  登君    粟山  秀君       渡辺  肇君    淡谷 悠藏君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       佐藤觀次郎君    島本 虎三君       西風  勲君    八木 一男君       山本 政弘君    本島百合子君       浅井 美幸君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 早川  崇君  出席政府委員         郵政政務次官  田澤 吉郎君         郵政省人事局長 山本  博君  委員外出席者         農林省園芸局特         産課長     田所  萠君         食糧庁業務第二         部長      荒勝  巌君         労働省労政局労         働法規課長   大塚 達一君         参  考  人         (フジ製糖株式         会社取締役社         長)      榊原 正三君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月十九日  委員粟山秀辞任につき、その補欠として赤城  宗徳君が議長指名委員に選任された。 同日  委員赤城宗徳辞任につき、その補欠として粟  山秀君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件(フジ製糖株式  会社並びに郵政省における労働問題)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  本日は、フジ製糖株式会社における労働問題について、参考人として取締役社長榊原正三君が見えております。  この際、委員長より一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。何とぞ参考人におかれては、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、御意見の開陳は、委員との質疑応答の形式で行ないたいと存じますので、さよう御了承を願いたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。淡谷悠藏君。
  3. 淡谷悠藏

    淡谷委員 きょうは、フジ製糖榊原社長参考人としておいでを願っておりますが、榊原社長から突如県側あるいは農林省に申し入れられましたフジ製糖青森県におけるビート工場閉鎖に伴う波乱が、おそらくは社長が予期された以上に大きく起こっていることを御承知だろうと思うのであります。これは、ただ一工場閉鎖というだけではなくて、日本農政並びに労政をめぐる深刻な一つの現実を示しているのであります。二万戸の農民のいままでの傾向を一てきしなければならないという悩み、二百六名という自分原因をつくらなかった労働者の失職の問題、これは決して一企業の破綻として見過ごしがたいものがあるのであります。むろんこのビート工場の設立は国策に基づいてなされたものだと私は思う。そのために多くの協調融資、むしろ国策融資ともいうべき融資も行なわれたのでありますから、この社長のとられようとしておる態度は、実に深刻な問題をはらんでいることを、一応私からあらためて申し上げておきたい。  この前に参議院でも、わが党の渡辺勘吉委員からいろいろ質問がありまして、速記録では拝見しておりますが、きょうは特に従業員の雇用問題に関する点に重点を置きまして、社長のここに至った経過並びに現在のお考えなどをじっくりお話しを願いたいと思うのでありまして、まず参考人としての榊原社長からお話しを願いたいと思います。
  4. 榊原正三

    榊原参考人 ただいま淡谷先生から、このたび私ども青森工場におきまして起こりました閉鎖問題に関連いたしまして、非常な御心配を賜わりまして、責任者といたしましてまことに申しわけないと、まず冒頭におわびを申し上げたいと思います。  すでに、私ども青森の問題につきましては、それぞれ新聞紙上あるいは参議院におきましても話題になりまして、私ども会社のやむを得ない事情につきまして申し上げたとおりでございます。したがいまして詳細は省かせていただきますが、私ども三十七年度から青森工場を、いまお話しのように多額の国家資金を拝借いたしまして、前途の夢を描きまして、また国策の線に沿って、営々として操業してまいったのでございますが、両三年前から原料増産に悩みまして、むしろ下降傾向になりまして、その間すでに二年ほど前から、そういう事態では異常な危険な事態になるおそれがあると存じまして、何とかしてこれを増産する方法、また増産が伸び悩んでいる場合でも、企業として、仕事継続ができるよう、それぞれ県当局あるいは農林省当局に私ども考えているやり方あるいは方策等につきましてお願い申し上げました。幸いにいたしまして関係当局の非常な御理解、御支援をちょうだいいたしまして何とかいわゆる別会社案をつくりまして、せっかく国策の線に沿い営々として努力してまいりました企業事業として継続できるように努力してまいったのでございますが、まことに残念なことでございまするが、それも実現を見ないような結果になりましたので、結論的に申し上げますれば閉鎖せざるを得ないような事態に立ち至ったのでございます。  その理由を簡単に申し上げますると、一企業としてこれ以上の赤字にたえられないような状況に立ち至ったのでございます。これは昭和三十七年度から昭和四十一年度までの操業赤字累積を合計いたしますると約二十億円になります。また四十一年度だけを抜き出しますると、単年度で約六億円になるわけでございます。もっとも四十一年度産の製品が一部まだ売却を終わっておりませんので多少違った数字になるかと思いますが、概略二十億円、四十一年度年度で六億に至っております。それは一企業としての私どもの限界を越えていると申し上げざるを得ないのでございます。  このような事態になりましたので、過去二年間にわたって農林省はじめ関係当局に、ビート事業継続できるよう、政府買い上げ価格の面、生産対策の面、新品種育成面等について要請してまいったのでございます。北東北四県においても、事態重要性にかんがみ、当社青森工場北東北ビート処理センターとするよう新会社構想を打ち出されて各方面に強く要請されたのでございますが、不幸にしてその実現を見なかったのでございます。  いま申し上げましたような累積赤字からいたしまして、事業の常といたしまして、かりに四十二年度操業いたしますとすれば運転資金が相当要るわけでありまするが、その運転資金の調達も、いま申し上げました経営成績等からして、あらゆる金融機関あるいは関係方面から、いまの経営方針やり方では、金融の援助ができないというようなことをわれわれは言われました。そういうことで、どうしても操業継続ができない事態に至ったのでございます。こういうわけでございまするので、工場操業できないといたしますれば、どうしても、まことに遺憾なことでございまするが、そこに働いておられる諸君についても、今後の方策につきましては、私ども従業員といたしまして、会社としてできるだけの条件考え、さらには、私ども今日こういう意思表示をいたしましてから相当な時日もたっておりまするが、何ら新しい方策も見い出し得ないのでございます。そういう間に、なおかつ雇用関係を引き継いで、あたら青年が前途を誤るようなことになってはならぬというふうに考えまして、私どもとしては、できるだけ、皆さん方にもお願いいたしまして、就職あっせん等の配慮をいたすべきではないかというふうに考えて、それぞれ従業員諸君とも話し合っているのでございまするが、まことに残念なことに、従業員諸君の立場からすればなかなか簡単にはいかぬということで、私ども誠意をもって事に処したいと思っておりますが、あるいは、御存じのとおり、労使の間は必ずしも円満な状態ではないというふうな事態を生じておるわけでございますので、何とか今後もあらゆる努力をいたしまして、従業員諸君がせめての安定を得られるように誠心誠意事に当たってまいりたいと思っております。
  5. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いまのお話でございますが、従業員諸君がいま突然こういうことで職を失うということは、これはやはり前途を誤ったというふうに言わざるを得ないのでありまして、しかも、それはいまおっしゃったような、主として企業赤字が重なってくれば企業責任も、労働者がかぶらなければならないといったような、非常に労働者としては納得のいかない事態なんであります。特に、赤字が出ました原因というものは、この際あらためて強く追及しまして、もしもこの赤字を出さないで済むような経営方針があり、あるいは、国からの助力があるとしたならば、社長はこの事業を続ける意思があるかないか。国策である以上は私企業責任ではなくて、国としての責任もやはり持たなければならない。かりにそういう事態になった場合には、社長はこの事業継続する意思があるかどうか、お聞きしたいのであります。
  6. 榊原正三

    榊原参考人 ただいま、社長としてかりに企業としていろいろな条件等を付してやられるような条件が与えられたら、社長としてやる意思があるかどうかというお尋ねだと理解いたしますが、もちろん企業をしておりますので、企業が存立するような条件が与えられれば、当然社長として継続したい気持ちがあることは申すまでもございません。しかし、私ども長年砂糖事業をやり、またビート事業に、必ずしも長い年月とはいえませんが、経験があり、特に条件の悪い北東北においてビート事業をやっておる経験からいたしますと、はなはだ失礼な言い分かも存じませんが、すでに創業時期において、また創業後二、三年たちました時期においてこの仕事性質そのものがどういたしましても、私企業といたしましては条件におきまして非常にむずかしいということを痛感しているわけでございます。したがいまして、この企業が存続するためには、どうしてもほんとうの意味において国策として、あるいは農政上の問題としてお取り上げ願わなければ、なかなかむずかしい。ある程度の金をやるから、あるいは融資をするからやってみろというようなことでは、なかなか私の非力がいたすゆえかとも存じますが、むずかしいのではないか。逆に申しますれば、それでもお前はやったではないかというお尋ねがあろうかと思いますが、その不明につきましては、結果的に見ますればまことに申しわけないと思いまするが、いま申し上げました数年の経験砂糖事業全体の現状から推測いたしますると、私企業の形のままで、ある種の条件を多少ちょうだいいたしましても、現状のままではやる自信もございませんし、非常にむずかしいというふうに考えます。
  7. 淡谷悠藏

    淡谷委員 条件ができさえすれば継続する意思はあるということを言われておりましたけれども、また同時にやったことが自分の不明でもあるということをにおわしておられる。はっきり申し上げまして、一体これ以上、融資がどれくらいあればやれるのか、作付反別がどれくらいあればやっていけるのか、あるいは糖価がこれくらいに維持できればやっていけるとかいうような見通しくらいは、社長としてはっきり持たれなければ、こういう事態責任はのがれられないと思うのです。具体的にお示しを願いたいと思います。
  8. 榊原正三

    榊原参考人 現在政府でとられておる政策を前提といたしまして、また現在の市況から判断いたしまして、会社として工場採算を縛るためにどの程度の原料が必要かということを数字的に会社の試算を申し上げますると、原料価格が四十一年度並みの七千二百五十円、工場のロスが三・五%と仮定いたしまして、歩どまりが一三%と仮定いたしました場合、政府買い上げ価格が九十八円の場合には十九万四千トン、九十六円の場合には二十一万トンの原料が必要だというふうな計算になります。そのことは、二十一万トンが本年度にできるということは、ほとんど不可能に考えます。したがいまして、この買い上げ価格がその差を埋めるような状況まで政府がごめんどう見られるかどうかという問題がございます。またそういうことが私ども経験からいたしますれば、おそらく不可能な状態ではないかというふうに申し上げざるを得ないのでございます。
  9. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いまのお話は、大体収量の問題なんですが、現在のような作付面積では、この収量はちょっと無理かと思うのです。一体最初の見込みは、どれくらいの広さが作付けされれば経営採算がとれるという見通しであったか。これは農林大臣は、将来もこの甘味資源の開発はやめないということをしばしば委員会で明言されておりまするから、国内体はこのビート作付を断念していないと私は見る。そのためには企業採算がとれないようなやり方であっては、こうしたことを二度、三度繰り返すことになりますから、一体いままでのにがい経験作付反別がどれくらいに維持できれば採算がとれるようなことになるのか、お話し願いたいと思います。
  10. 榊原正三

    榊原参考人 反別から申し上げますると、青森北東北では、現在非常に多いところでは、アール当たり六トンくらいのところもありますし、また三トン以下のところもございますが、現状から判断いたしますれば、標準三トンくらいのところを一応想定できるのではないかと思います。三トンといたしますれば、五千ヘクタールで十五万トンでございます。十八万トンにするには六千ヘクタールというものが必要かと思いますので、少なくとも五千ヘクタールぐらいの反別がどうしても必要ではないかというふうに考えます。
  11. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは最初計画されたときから五千ヘクタールはどうしても必要だろうという認識のもとに出発した事業だと思います。  次に、糖価は現在非常に乱調子を示しておりますけれども、どれくらいに維持され得れば、おっしゃるとおりの収量が上がった場合維持ができるかというような問題について伺いたい。
  12. 榊原正三

    榊原参考人 その辺が非常にむずかしいと思いますが、御承知のようにビート政府で全量を目下お買い上げを願っておるシステムになっております。そうして一たび安定法に基づいて事業団でお買い上げ願いまして、コストの差をある程度政府でめんどうを見ていただき、また一定のメカニズムの方式に従いまして私どもが買い戻し義務を負いまして、それを市中市中相場で売る結果になっておりますが、昨今の例からいたしますると、払い戻しを受けました価格よりさらに以下に低迷している、いわゆる逆ざや状況になっております。したがって、ビート事業が存立するためには生産上のコスト政府買い上げ価格の差をある程度考えていただく問題が一つと、それから政府から払い下げられて一般市中へ売るときの逆ざや状況を、これは政府責任とまではいえないかもしれませんが、市中相場によって変わってくる逆ざや情勢を変えていかなければならぬ。二色、往復びんたのかっこうに現在なっているわけであります。したがいまして、その市中相場がいまのままで来ますれば、少なくとも百十円以上が望ましい状況だと思っております。
  13. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いまのどうにもならなくなりました工場経営ですが、少なくともこれを盛り立てていくとすれば、かりにあなたがやらないとしても、政府融資というものをさらにどれくらい要求したらよろしいか、この点をひとつお話し願いたい。
  14. 榊原正三

    榊原参考人 政府融資が、やるとした場合にはどのくらい必要か。あの工場を土台にしてのお話だと思いまするので、ちょっと私どもの実態を申し上げますと、青森工場の建設のために融資を受けまして、それを逐年返済いたしましても、現在なおかつ借り入れ金として残っておる総額が約十五億円でございます。したがいまして、その十五億円の借金金利というものがついてまいりますので、運営上借金をすぐ返済するか、あるいはその借金に見合う金利を逐年払っていかなければならないという問題が一つ。それから今後運営していくために必要なことは、大体過去のものといたしまして四十一年度赤字が、想定される借金残が農林中金に対して約六億円ございます。六億円ございまするが、それは私ども製品並びに担保物資で見合っておる金が約四億円ございます。したがって損失とみなされる額、穴埋めできない額が二億円ございます。その金が必要であるということ。それから今後、ことしできるだけの大根を処理するための買い入れ代金並びに運営するための費用が必要だと思いますが、これは予想でございますので、正確にはちょっと間違うかもしれませんが、ごく概略申し上げますと、約十億の運転資金が本年度必要であろうと思います。
  15. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この事業は少なくとも作付計画を県がやりまして農林大臣がこれをオーケーすることが前提とされているわけです。したがって、この失敗というのは一企業会社失敗じゃなくて、農林省見通しの面にも非常に甘さがあったと私たちは思うのであります。一体農林省はいまどういう考えを持っておりますか、御出席の方にひとつお話しを願いたいと思います。
  16. 田所萠

    田所説明員 東北ビート生産につきましては、われわれといたしましては、当初三十一年から試験研究に着手いたしまして、三十四年に導入可能性調査をいたしました。三十六年に栽培技術指指導設置、三十七年に適地検定圃設置というように慎重に検討を加えまして、三十七年の秋に工場が建設されたわけでございます。そのあと三十九年に生産振興地域といたしまして指定したわけでございます。そういう慎重な検討の結果、大体北東北においてはビート栽培農業経営上非常に有利であるというような点から、可能であるというふうに判断をいたしまして奨励をいたしたわけでございます。それで生産目標甘味資源審議会におきまして認可されました面積なり収量生産量というものは、ここでは非常に意欲的な地元の御意向もございまして、いささか高い指導的な目標が意欲的に設定されております。しかし、ただいまフジ製糖社長のおっしゃいましたような五千ヘクタールないし六千ヘクタールという面積につきましては、今後時間をかければ可能であるというふうに判断をしておったわけでございます。
  17. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この事業発足当時、われわれも九千ヘクタールの作付反別を確保し得るかどうか非常に危ぶんだのです。農林省事業を施行する当面の責任者と言っていいくらい、ビート栽培においての責任があると思いますので、いまさら見通しが甘かったのじゃ済まないと思う。五年間もやっておるのですよ。五年間もやっておる間にすでにこの作付が伸びないという状態があらわれてきておる。特に申し上げたいのは、青森県が停滞状態をとっておりますのに、岩手県はこの五年間に倍になっております。同じ北東北てん菜栽培であって一つの県が伸び悩み、一つの県が倍になるということは、この根本的な原因の探求をなされましたか。どうして伸びないのか、どうして片方は伸びたのかお聞きしたい。
  18. 田所萠

    田所説明員 てん菜が伸び悩んだ原因でございますが、もちろん試験研究を始めたのは三十一年でございますが、実際に国が奨励に踏み切ったというのは三十七年以降の問題でございます。それでそのあと農村事情が非常に変わりまして、特に一般の農産物というものは非常に変わり、価格的に上昇ムードと申しますか、上昇傾向をたどっておりましたが、てん菜につきましてはその取引価格が据え置かれておるということが一つと、それからその奨励を始めて以後の農村におきます労力というものが急激に変化をいたしまして、特にビートというものはある程度集約作物でございますので、労力を非常に要する。そういう点から、農家といたしましては作付を回避するような傾向があったということ。それから特に青森県におきましては開田が非常に進んだということでございます。もちろん開田をしたからといって耕地が全部、畑地がなくなるわけではございませんが、やはり当初ビート奨励いたしました地域に重複的な地域もございまして、そういう点の地帯におきます開田というものが特に青森県においては進行したというようなこと。それからてん菜というのは、御存じのように、長期輪作を要する作物でございまして、われわれの指導方針とすれば、五年輪作というような輪作を行なう作物でございます。そういう点から、農家といたしましては、新しい作物であるし、五年輪作というようなことで、やはり技術的にまだなじまなかったということが考えられるわけでございます。そういうようなことで、そのあといろいろな諸情勢が変わったというようなことで、栽培の伸びが停滞したというふうに受け取っておるわけであります。
  19. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもそれじゃ少し責任ない話ですね。五年輪作、五千ヘクタールというのは、これは常識になっておったのです。その一輪作の期間が終わるか終わらないうちに、失敗であったと投げ出されるような計画では計画とは言えません。少なくともあれだけの投資をしておいて、五年間やったくらいで、だめだからあきらめるのだ、こんな態度では、今後日本農政というのは立ちませんよ。そう思いませんか。この事態になったことに対する農林省責任を感じませんか。大臣がおられれば一番いいのですけれども、特にあなた方は直接指導されたのですから、私は大きな責任があると思いますが、どうです。
  20. 田所萠

    田所説明員 見通しの問題でございますが、われわれといたしましては、現在のいろいろの事情がございますけれども、長期的に見ますれば、五千ヘクタールないし六千ヘクタールの作付というものは北東北において可能であるというふうに判断をしておるわけでございます。ただ、問題といたしましては、非常に糖価その他いろんな面からの状況変化、そういうようなことで、前に申し上げました理由とあわせまして、現在停滞をしておるというふうに判断をしておるわけであります。
  21. 淡谷悠藏

    淡谷委員 言うまでもなく、てん菜というのは工場でこれを砂糖にしなければ、最終価値実現されませんから、ただ、農業上の問題だけじゃなくて、経済全体につながる問題が非常に多いと思う。特にお聞きしたいのは、参考人からお話し願いたいのですが、自由化が与えた影響ですね、これはなかったかどうか。自由化以前の状態自由化以後の状態とはどういう変化をもたらしたか、専門家である参考人から特にお聞きしたい。
  22. 榊原正三

    榊原参考人 ただいまの御質問につきまして、私がお答えするのはいかがかと思います。農林省食糧庁の方が全般を見ておられますので、食糧庁の方からお答え願ったほうがいいかと思いますが、私の一私見といたしますれば、ちょっと間違っておるかもしれませんが申し上げます。  自由化される以前におきましても、国として国産糖事業においてはある程度の保護助成が行なわれておったというふうに私は理解しております。そういう面で国産糖を助成することは伝統的な国策として考えられておったわけでございますが、それが必ずしも十分でないというふうにわれわれ業者は考えておったのでございます。必ずしも十分でないという理由は、諸外国国産糖助成方策との比較対照においての必ずしも十分でないというふうに判断をしておるわけでございます。そういうさなかに完全自由化をされた、すでに関税あるいはその他の面においてある程度の保護をされており、それでも総体的に諸外国の例からすれば十分でないというところへもってきて完全に、突然に自由化されたということになりましたので、国産糖の将来伸びようという意欲並びに企業としての諸方策が相当打撃をこうむったことは事実でございます。  一方、いま申し上げましたように、生産上の諸対策だけでなく、やはり六〇%相当のものが、あるいはそれ以上のものが市場に輸入糖として流れてくるわけでございますので、砂糖になった場合には、消費者から見れば、国産糖原料とした砂糖あるいは輸入糖を原料とした砂糖、多少の砂糖の形態は違いますけれども、甘味としては同じでございます。したがって、輸入糖を原料とした砂糖市中価格国産糖原料とした市中価格も、これは当然安いほうの値段にしわ寄せされるのが経済原則でございますので、コスト高の国産糖が間接的に、直接的に非常に影響をこうむるのは経済原則上やむを得ないと思います。したがいまして、例がおかしいかと思いますが、国産糖農政上あるいは畑作上換金作物として必要である、しかも砂糖がある程度助成されるべきであるというふうに考えますれば、当然それが企業として成り立つような措置を講じていただくことが必要ではないかと思います。そういう面におきまして、今後われわれ業者側からいたしますれば、国のほうで適切な御指導といいますか、措置を十分講じていただきませんと、国産糖の北海道といえどもあるいは甘蔗糖の奄美の場合といえども、なかなか問題が残ろうかと存じております。
  23. 淡谷悠藏

    淡谷委員 てん菜工場のさまざまな問題というのは、ただ青森県だけではなくて、北海道でもいまや起こりつつある。北海道はてん菜栽培では非常に有利な場所なんですが、現在台糖、大日本製糖、芝浦精糖の三つが、その企業のほうから赤字部分であるてん菜糖の製造と切り離して新しく工場をつくろうといったような、ちょうどフジ製糖と同じような発想が北海道でもなされておる。これを一体農林省はどう見られておりますか。
  24. 荒勝巌

    荒勝説明員 ただいま先生のほうから御質問ございましたが、北海道のほうにおきましては、いわゆるわれわれから言いますと、後発三社、こう言っておりますが、台糖それから大日本製糖、それから芝浦精糖、この三社が後発で出発いたしましたものですから、ふなれな北海道でいろいろ非常に御苦労されておられるのでございます。こうして国際糖価が全体的に世界的に非常に安い、合理化されて安いコストで動き出しておる、しかも先ほど先生の御質問にもございましたが、砂糖自由化で急に野放しになってはいかぬということで、一昨年でございましたか、糖価安定法を制定いたしまして、合理化目標を設定いたしまして、一日も早くいわゆる合理化、安い砂糖が国産でもできるようにということで指導してきておる次第でございます。  その関係で、むしろいま砂糖会社全部が国内糖価が設備過剰の関係等もございまして非常に安く、低迷しておりまして、非常に困っておられるようでございますが、その中で国産糖のほうはこの際しっかり基礎を固めておかぬと、ちょっと比喩的なものの言い方ですけれども、親会社が参ると北海道のビート工場まで参ってしまってはまずい、いわゆる輸入糖の精製糖の過程での赤字関係で北海道の工場に力こぶが入らぬようでは困るというようなことで、むしろ政府のほうで、どちらかといいますと、積極的に北海道の後発三社はこの際一緒になって、三社力を合わしていわゆる先発の日本甜菜製糖とかあるいはホクレンが経営されているそうした企業が一人前に伸びているのに一日も早く追いつくように、むしろ三社がこの際合併して力を合わせておやりになったほうがいいのではないかというようなかっこうで、現在むしろ政府のほうから指導いたしまして、合併を指導しているようなかっこうでございます。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 なぜそれを青森でも指導されないのですか。北海道のてん菜工場の危機に対しては指導され、補給するが、フジ製糖はつぶれるにまかせるのですか。そんな不公平な話はない。この間から大臣にも言ってあるのですが、社長は、はっきり閉鎖ときめておりますが、農林省はどうやったらいいか考えている、こう言っている。考え中にも事態が進展しているのです。現に農家のほうでは、私、二、三日前に見てきましたけれども、よく生育をしておる。反別は少ないながらも、一生懸命がんばってつくっているのです。特にいま迫っている問題は、労働者の問題なんです。これは参考人からひとつ詳しくお聞きしたいのですが、現在労働組合の争議はどういう段階にあるか、詳しくお話し願いたいと思います。
  26. 榊原正三

    榊原参考人 うちの従業員は、現在青森工場には管理職が二十一名おります。それから一般従業員が嘱託を合わせまして二百二十二名おります。その一般従業員の方に対して、三月十日に——私どもといたしましては、先ほど来申し上げましたように、会社独自ではやっていけませんということで農林大臣にお届けいたしましたが、その間、農林大臣から、事態は重要な問題であるから、しばらく関係者と十分協議するまではできるだけ会社でも協力してほしいというような御趣旨のお話がございましたので、三月十日以降、私どもといたしましては、日常業務をそのまま続けるように指示してまいったわけでございます。そして何らかの方途なり対策が生まれるかと心ひそかに感じていたわけでございまするが、なかなか名案も、御指示もございませんので、私、そのままいたのでは従業員もむしろ不安定な形になるというふうに存じまして、私どもといたしましては、大体一月間その状況を待ったのでございますが、約一月たちまして四月十九日でございましたか、今年度は完全に休業せざるを得ないという伝達をしたわけでございます。組合員諸君におきましては、われわれは工場閉鎖は反対であるということで、いわゆる事前協議に応じてくれないわけで、やむを得ず何回も団交を持つように慫慂したわけでございまするが、そのつど組合員諸君といたしましては、私どもに対して、閉鎖は絶対反対であるから団交にも応じられないということで、私どもといたしましては、やむを得ず会社意思を徹底する方法といたしまして、掲示あるいは文書をもって個人あてに休業を通知いたした次第であります。——いま、間違いました。話が前後いたしますが、希望退職を募ったわけでございます。こういう不安定な状態なので、それぞれによく話をいたしまして希望退職の期間を約二十日間としたわけでございます。その間約二十五名の希望退職の申し出があったわけでございます。さらにそれも経過いたしまして、いろいろな名案も御指示もございませんので、いま申し上げました休業の宣言をいたしまして休業命令を発して今日に至っているわけでございます。
  27. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いま仮処分の申請が出ているはずですね。さらにまた不当労働行為として提訴もされておるのですが、そういう点ももっと詳しく参考人からお話し願いたい。
  28. 榊原正三

    榊原参考人 先生のお尋ねの仮処分の申請という問題は、私どもの製糖期はおおむね年末から正月にかけて、普通の場合は、十二月から一月の末ないしは——これは原料の多寡によってきまるわけでございますが、四十一年度の場合には原料が十万トンそこそこでございましたので、大体操業期といたしましては一月の二十日ごろまでを操業予定としていたわけでございます。その間、年末から、先ほど申し上げましたように、われわれのやり方といたしましては、会社独自ではなかなかやりにくいので、それぞれにお願いして会社を別個にしていわゆる新会社構想でやりたいということを盛んに陳情もし、努力もしてまいったわけでございますが、実らない過程においてはやはり現状のままでやらざるを得ない状況でございましたので、独自で操業を始めていただいたわけでございます。そうして組合員諸君も新会社構想が難航しておるということを身をもって感じておられたわけでございますので、かりに新会社構想実現できなかった場合でも、フジ製糖は独自で四十二年度から操業してほしい、また、自分たちの雇用関係も保障してほしいということを盛んに昨年来から言っていたわけであります。しかし、操業するかしないかという問題は、私どもの見解では、これは経営の基本的な問題でございますので、そういうことを諸君から言われてもわれわれとしては応ずるわけにはいかぬという態度で終始してきたわけでございます。年の明けた一月早々におきまして、四十二年度フジ製糖独自の操業、また、フジ製糖の雇用保障ということを要求してきたのでありますが、われわれとしては、経営の基本的な問題であり、経常権に属する問題であるからそういうものに調印するわけにいかぬということで拒絶いたしてまいったのでございますが、御承知のように、このビート事業は二十四時間完全操業でございます。そういう事態であるにかかわらず、正月早々ストライキをもってその調印をわれわれに迫ってきたわけでございます。  詳しく申し上げますと、八日あるいは九日に、それに基づく団交を持てということでございますが、年始早々のことでございます。業界はこういう事態であり、会社もこういう事態でございますので、社長といたしましては、いろいろな仕事もございまして、団交するなら東京でしたいということを申し入れたのですが、組合員諸君は聞いてくれない。そうして突如一月九日に至りまして、何らわれわれに団交も持たないで、三六協定を破棄して時間外勤務の拒否をしたわけでございます。二十四時間操業することがたてまえである装置産業である製糖事業にとりまして、時間外出勤を拒否されるということは完全ストライキと同じ意味に相なるわけでございますので、私どもとしては、そういうことをしてもらっては困るということを申し上げ、また、そういうことなら、私も万障繰り合わせて十日には行くからそれまで時間外の勤務拒否ということはしてくれるなということを再三連絡したのでございまするが、いかんせん、時間外勤務が拒否されました。そこで、私は急遽青森にはせ参じまして、諸君と話し合いをしたわけでございます。その当時におきましては、農家の方が汗水たらしてつくった原料大根がさらになお八千トンくらい残っていたと記憶しますが、さなきだに赤字累積しておるところに、もしもストライキを重ねられて操業ができないという事態になったのでは、さらに赤字累積になり、会社としてはさらに損失を増大するおそれがあるというようなこと、また、組合員諸君にもいろいろ説得したのでございまするが、静穏な団交のみならず、一般従業員全体の公開団交において、そういうことを、私もこういうむずかしい状況にある砂糖事業並びにビート事業において、四十二年度フジ製糖において完全雇用をしろ、雇用保障に調印するということ、これは元来、もともとおかしな話であるということは重々承知しているわけでありまするけれども、いま申し上げましたような状況下において、やむを得ず私はそれに調印したわけであります。  そういう経過がございまして、私ども閉鎖を申し入れたことに対して、いわゆる一月十日の雇用保障の協定、四十二年度操業に対して、私どもは先ほど申し上げました希望退職の線を打ち出していて、まだ完全に解雇という措置を講じていないのでございまするが、組合の諸君は不安だということで、裁判所に対して、閉鎖に伴う解雇をしてはいけないという身分保全の仮処分の申請をしたわけでございます。それに対して私どもも裁判所に対して、審尋においてこういう状況であるということをるる説明したわけでございますが、私どものほうといたしましては、はなはだ遺憾でございまするが、裁判所は四十二年度操業ということについては、組合の申請に対して何ら意思表示をしなかったのですが、工場閉鎖に伴う解雇をしてはならないという組合側の言い分を取り入れられまして、この仮処分は決定いたしました。したがいまして、私どもも決定された以上は解雇をいたすわけにはいかないので、目下休業せざるを得ない。また会社も財政上もそういうことであるという判断で休業をいたしまして、休業に基づく給与の支給をするという態度に目下出ております。この仮処分の決定につきましては、もちろんいま申し上げました事情でございますので、私どもはそれに対して正式に法に基づいて異議の申し立てをしております。  また先生から不当労働行為という地労委のごあっせんにつきましてお話があったのでございますが、その件につきましては、団交拒否とかいろいろ話が組合側はあったのでございますが、地労委のほうに対しまして会社の経過をるる説明いたしまして、地労委の御納得をちょうだいいたしました。目下地労委からのお話で、不当労働行為だとは認めない、話は解決していると私は存じております。
  29. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ストライキということは法で許された労働者の権利でございます。たとえストライキがあったとしても、あなたが四十二年の一月十日に組合との間に取りかわされた、「昭和四十二年度フジ製糖株式会社青森工場操業と組合員の雇用保障に関する協定書」というものが生きていると思うのです。これに基づきますと、第一は「フジ製糖株式会社昭和四十二年度においても従来と同様、青森工場操業を行うものとする。」第二は、「フジ製糖株式会社昭和四十二年度も全組合員の雇用を、フジ製糖株式会社内において保障し、全組合員の生活の維持向上を行うものとする。」ということをはっきりと協定しておられます。これがストライキがあったからといって、もう全然破棄するということは、これは無理だと思う。労働大臣、とにかく国策に基づいて発足したてん菜工場が、その間における経済上の変化あるいは自由化の問題あるいは農政の指導の誤り、見通しの誤り、いわば農民にも労働者にも全然原因のない理由のためにこういう事態に立ち至った。直接被害を受けているのは端的に言えば労働者と農民です。もうすでに訴訟問題になり、農林省がまだ今後の指導を明らかにする前に工場はもう閉鎖をきめてしまった。全員の解雇——離職対策という形でございますけれども、首切りをやろうとしている。これを一体労働大臣としてどうお考えになります。労働者の利益というものは、このような形で国策の犠牲になって、踏みにじられていいものとお考えになったかどうか、一体どうされるつもりですか。
  30. 早川崇

    ○早川国務大臣 御承知のように、労組法第七条第一号は、労働者が労働組合の組合員であるということ、または組合に加入し、また結成し、または正当な労働組合の運動をしたことによって使用者が解雇するということを不当労働行為として禁止しておることは御承知のとおりであります。したがって、会社がそういった正当な労働行為に対して、そのゆえをもって解雇する、まだ解雇しておらぬようでありますが、もちろん当然許されないことでございます。しかしながら、それ以外の経営上の問題とか、いろいろなことで解雇するということは、これは経営権の問題でございます。この問題は公労委という第三者の中立的な機関に移しまして、はたして解雇というようなことが不当労働行為であるかどうかという事実認定の段階に立ち至っておるわけでございまするので、公労委の十分な検討をまって労働省として見解を持たなければならない性質のものであろうかと思うわけでございます。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この工場閉鎖原因は国がつくったのですよ。私企業の限界を越えたという社長の言うところに従えば、本来これは私企業の限界にとどめるべき事業じゃない。それを国が適切な指導を誤り、援助を誤って、工場閉鎖のやむないところまで追い詰めておって、それによって職を失う労働者に対しては、これは冷たい法律一片で解決しようというのは、これはあまりに無策じゃないですか。もう工場がこの後どうなるか、この始末はどうつけるのか、その話もまだきまらないうちにどんどん事態が進行している。現地は非常に険悪な情勢にありますよ。まだ対立が続いている。そうでしょう参考人。あなたのおっしゃっているとおり、労働者も真剣な行動をしているのです。これに対して、私はこの間予算分科会で質問した場合も、労働省は聞いておりませんという答弁なんです。少なくとも国策関係したこうした争議行為に対して聞いておりませんでは済まないと思うのですよ。労働大臣もきょう初めてお聞きになったのじゃありませんか。お調べになっていますか、いかがです。
  32. 早川崇

    ○早川国務大臣 この事件は、委員会で先般も問題になりましてよく承知をいたしております。したがって、先ほどお答え申し上げましたように、第三者機関である労働委員会がはたして不当労働行為になるかどうか、労働組合からの申し立てもございます、使用者側からもございまするので、その判断にまちたい。それに先走って行政当局が見解を述べるというのは、法のたてまえ上行き過ぎであると考えておる次第でございます。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 参考人にお聞きしますが、非常に経営の苦しい中から今度は裁判になって、弁護士を四人も頼むという状態は好ましい状態でないと思うのです。しかも、まだ工場閉鎖したくないというのは、労働組合だけではなくて、東北諸県の知事をはじめ、われわれもやっぱり工場は開いてもらいたい、農林省にも努力してもらいたいと思うのです。そのいきさつがまだきまる前に、労働者に対してははっきり工場閉鎖に伴う解雇を申し渡すということは、あまりに早まってはいませんか。もう少し国なりあるいは県なりにこの善後処置を要求するのが、私は当事者としての重大な任務だと思いますが、さっさと労働者だけ首を切る。しかも、いまの現地の態勢というのは非常に挑戦的な形があるのですね。職制をどんどんかえてみたり、まるでもうあそこの工場にいる労働者を一日も早く追っ払ってしまおうというような冷たい態度が見られる。これはこの事業の将来についても決していい影響を与えません。もう少し向き直って、国なり県なりにこの善後措置を前向きにやるように要求なさるつもりはございませんか。
  34. 榊原正三

    榊原参考人 先生から非常に詳細に状況を御心配願ってまことに恐縮でございます。おことばではございますが、まだ国として最終段階の結論を得てないのに、事業責任者がどんどん整理を進めるというのはけしからぬではないかというような御趣旨が一点だと思います。  形から見ればお説のとおりかと思いますが、先ほど来申し上げましたように、この事態がくることを恐れまして、三年間、正確に言えば二年有余の期間、こういう事態にならぬようにあらゆる努力を私なりにいたしまして、国に対しても県に対しても、二年以上にもわたって努力してまいったつもりでございます。さらに、そうしてもなおかつ複雑な条件もあろうかとは存ずるのですが、あそこが何とか曲がりなりにもやっていけるという外部的な条件はいただけない状況になっている。まして私自身の力といたしまして——私自身というのは会社でございます。会社の力といたしましても、それをみずから救済していく力がなくなってきているという状況でございます。  したがいまして、私も決してせっかちにどんどんやっている——多少誤解があるように思いますが、たとえば職制を変えたというようなお話もございました。どの点を御指摘か存じませんが、組合員の諸君もときどきそういうことを言っておりますので、思い当たらぬでもありませんが、昨年末今製糖期に入りまして、少ない原料で少しでもうまく合理化していこうという所存で、一部役職の人間を配置がえをしました。これは、決して整理だとかなんとか毛頭考えているものじゃなくて、少ない原料でもって会社を少しでも合理的に、適材を適所に配置するという趣旨に基づいて一部の——これは三名でございます。三名の役職者を配置がえをしたということだけで、整理を前提にしてというようなのは、組合員の諸君の完全なる誤解でございます。  そういうことで、私どもとしては、決してせっかちにやっているつもりはございません。三月十日以来、何とかしたい、また県御当局のほうとも十分連絡をとってやっているのでございますが、先ほど来申し上げましたように、現実に、金融機関のほうからも、あるいは当社を応援してもらうそれぞれの方々からも、政府の施策、あるいは県当局の施策、外部の施策を待っていたのでは、もう会社自体が壊滅するおそれがある。特に、青森ビート仕事をそのまま続けていくのなら、一切金融のめんどうを見ていただげないというような強いお達しを承知しておりますので、私どもといたしましては、どうしても独力でやれない、待っていられない、待つに待てないということでございます。したがいまして、現実に、先ほど申し上げたように、従業員諸君も完全に解雇したということではない。したがって給料も不十分ながらも差し上げている。そのうち金融機関では、青森従業員に給料を出すのはどういうことか、早くうまく整理をして、そして会社独自で何とかやれるようなことをしなければならぬじゃないかという外部の意見もございました。まことにやむにやまれない次第で今日に至っているというふうに御了解願いたいと思います。
  35. 淡谷悠藏

    淡谷委員 労働大臣、これはいろいろな方法はありましょうけれども、この工場経営が維持できれば何もかにも円満にいく。ただしその場合に、困っているのは経営面の赤字ということになってしまうのですが、労働大臣は閣僚の一人として、この種の問題については、工場存続に対する努力をなされますか、なされませんか、それを聞いておきたい。もうこれはだめだというのなら、投げたってこれは何とも言うことはありませんけれども、国が責任を持って踏み出した仕事なんですから、少なくとも工場の存続には努力をすべきではないかと私は考えるのですが、お考え、いかがですか。
  36. 早川崇

    ○早川国務大臣 私は農林大臣ではございませんので、なかなかむずかしい御質問でございます。ただ、労政を預かる者としては、私は、社長もあるいは労働大臣も、自分の子供がそこの労働者であるという気持ちが根本だと思うのであります。したがって、社員は自分の子供である、こういう立場が基本でありまして、そういう立場から、たとえば不当労働行為であったという場合には、原状回復ということで、解雇撤回とか休業撤回とかいう方法があるわけであります。しかし、公正な第三者機関がやむを得ないと判定した場合には、就職のあっせんとか退職金とか、いろいろそこに一つの血の通っているものがあれば、これだけ紛糾はしないのではないか。また、お聞きしておりますと、大衆の前で四十二年度操業の保証に調印されたと社長は言われましたけれども、こういったことは、そういうことがたとい集団の圧力のもとで締結したとしても、社としても少し手落ちがあったのではないだろうかと、私はお話を聞きながら感じたわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、労働委員会に提訴されておるわけでございます。この判定がどうなりますか、これをお聞きした上でなければ、どうするかということは申し上げられませんけれども、ただ、私は労働大臣であるとともに国務大臣でございますから、国策としてビート事業というものを非常に推進してきたことは事実でございます。ただいまの淡谷委員の御意見も、十分農林大臣その他関係閣僚にお伝えをいたしまして、救済する道があれば、あるいはまた将来性があれば、まことにけっこうなことでございます。よく農林大臣に御趣旨のあるところを申し伝えておきたいと思います。
  37. 淡谷悠藏

    淡谷委員 宮城、青森、岩手、秋田の四県の知事が連名で農林省に申し入れしておるわけでありますけれども、これはお持ちでしょうな。「北東北地区のてんさい問題の措置について緊急事項として次のとおり要請する。一、四十二年産のものは、概略の生産量六万トンと推計されるが、これが処理は青森工場の利用によることとして、それに必要な条件の調整につき、農林省が案を作定し関係者と緊急に協議を進められたい。またその結論を大臣の勧告または指示としてフジ製糖に提示されたい。二、四十三年以降の北東北地区てんさい栽培については、東北の畑作農業振興の見地から、てんさい栽培の恒久対策を得るために政府編成の現地調査団をなるべく早く派遣して調査し、てんさい栽培の安定方策を目途に結論を得ること。」四十二年の四月二十日にこの申し入れが出されておりますが、農林省検討されましたか。これさえほうっておくなら承知しませんよ。四県知事が苦衷を訴えてきている。これは検討されているでしょうね。
  38. 荒勝巌

    荒勝説明員 四県知事からしばしばにわたりまして、四月にも三月にも農林大臣あてに申し入れがありましたことにつきましては、十分心得ております。なお現在の段階におきまして、農林省も、今回の東北ビートの件は非常に異常事態でございますので、どういうふうに扱うかということにつきましては、ほんとうに慎重に検討さしていただきまして、そう長い先ではなく、できるだけ早い機会に結論を出したいと思っております。  なお、調査団の派遣につきましては、各県知事とも十分お打ち合わせの上、最も適当な機会に出すのがいいのではないかということに、この間の委員会の席でも農林大臣から御答弁があったように聞いております。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 慎重にやるのはいいけれども、一体、このてん菜の処理を現地の工場でやるのか、北海道でやるのか、あるいは投げるのか、この方針がきまらなければ、取り返しがつきませんよ。機械の手入れもいまからやらなければだめでしょう。これをよそに転売されたり、完全に企業のほうでは工場を処理してしまったら、かりに現地で処理するという方針が出た場合に、どうします。農林大臣あるいは青森県の知事も、しばしば農民に約束していますけれども、ことし作付けたてん菜だけは迷惑をかけないと言っている。少なくとも六万トンから六万五千トンくらいとれるでしょう。この処理について具体的な研究は始めましたか。一体これはどこで処理するつもりなんです。
  40. 荒勝巌

    荒勝説明員 農林大臣もしばしば答弁されておりますように、四十二年産ビートに関する限り東北のビート生産農家に対して御迷惑をかけないということは承知しておりまして、またその線に従いまして、われわれといたしましては、全力を尽くしてこの問題に現在取り組んでいるのであります。その過程で、御存じのように、榊原社長からも御答弁がありましたように、現在、企業としてはあの工場を再開される御意思がないとおっしゃるものでございますから、われわれとしては、現在の段階であの工場を再開するとしても、一体どういう形でやっていただいたらいいのか、それが見当がつかないし、またそうなれば、場合によっては、最悪の場合には北海道に送らなければならないようなことも考慮して検討せざるを得ないし、いまの段階では、そういったどちらをとったほうがベターであるかということにつきまして現在検討いたしておりまして、決して、東北の農民のつくりました、この秋、十一月ごろに出荷されてくる大根を放置してしまうことのないように、したがいまして、できるだけ早い時期にこの結論だけは出してしまいたい、こう思っておる次第でございます。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大根は十一月ごろできますけれども工場の維持はいまから手入れをしないとできないのです。大根ができた暁に、今度は、現地処理したいのだけれども工場はないわ、労働者は散じてしまったわ、これじゃ全くふいになるじゃないですか。これは北海道へ送ると言いますが、六万五千トンのてん菜を一体何で送りますか。秋十一月ですよ。米もとれるでしょう。リンゴもとれるでしょう。一切の農産物が出るでしょう。そのときに、一体、あの雪の中で北海道まで六万五千トンを何で送るつもりなんですか。運賃はどれだけかかりますか。貨車が何両要りますか。船は何トン要りますか。考えてみましたか。慎重にやるならば、そういう計数をなぜ考えてみないか。もし研究されているならば、具体的に数字をあげてお答え願いたい。
  42. 荒勝巌

    荒勝説明員 現在の段階で、先生のおっしゃいますように、われわれとしましても、そんな長い先に、出来秋に結論を出すということではございませんで、先ほど私も申し上げましたように、どんなおそくも六月中には結論を出さなければならないのじゃないか、こういうふうに私自身了解いたしておりますし、またその間に、やはり秋の操業のために工場の整備も必要であることも十分知っておりまして、ぜひそういう形で六月中、上旬ないしは中旬中には結論を出さなければならないのじゃないか、こういうように思っております。  それから運賃の点でございますが、かりにでございますが、したがいまして、まだ、国鉄当局、あるいは海運当局、あるいは運送機関等々と、そういうネゴシエーションというかっこうのものは十分にいたしておりませんが、北海道にかりに送りました場合は、北海道に御存じのように工場が約九つほどございますが、そんなにたいした距離差はございませんで、安いところでトン当たり三千五百円から、一群高いところで四千五百円前後、おおむね平均しまして四千円前後じゃないかというふうに了解いたしております。  それから輸送量でございますが、青函連絡船だけで送るということになりますと、先生の御指摘のとおり、まさに六万五千トンという数字になりますと、やはり非常な隘路、ネックがあるのではなかろうか、こういうように了解いたしておりまして、場合によりましては、あるいは八戸港から海上運送によりまして、釧路港あるいはほかの港へ直接輸送せざるを得なくなるのではなかろうか、こういうふうに現在のところでは考えておりますが、青森工場を動かさないという前提でのこまかい作業は、何ぶんまだ方針がきまっておりませんので、外部といたずらにいろいろな交渉をいたしますことは世間の誤解も招きますので、内部の計算だけにとどめておりますので、そのようにお含みおき願いたいと思います。
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは仮定ですが、北海道へ送る場合は、運賃などはどこが一体負担する。これはむろん国が負担されるのでしょうね。
  44. 荒勝巌

    荒勝説明員 当然、農林大臣が御答弁になりましたように、生産農家には御迷惑はかけないと言っておりますので、大根代金自体は、従来の例に従いまして、おおむね北海道でことし近いうちに正式決定をすると思いますが、その大根代金の値段を基準にいたしまして農民に払えるように指導いたしたいと思います。  その運賃の負担方法等につきましては、いわゆる政府として政府自身が直接砂糖を買うのではございませんで、製糖工場生産されましたビート糖を糖価安定事業団を通じて買わせるように、政府が現在指導し、かつ監督してきておりますので、その糖価安定事業団砂糖買い上げ価格の中に特別運賃を特に加算するのか、それともあるいは別途全然別の一般会計等からも負担して出すことにするのか、まだ大蔵財務御当局とも実は結論を出していない次第でございます。と申しますのは、一つ先例がございまして、従来鹿児島で暖地ビートをやっておりました際に、わずかな量——こんな数万トンという数量ではございません、一万トン前後の大根だと思いますが、それを鹿児島県並びに宮崎県から岡山県の横浜精糖のやっておられる会社へ運んでおった例がございます。そうして横浜精糖がおつくりになりまして、それを政府糖価安定事業団で買ってきた次第でございますが、そのときは運賃は別途一般会計から運賃補助というかっこうで出ておりました。そういう財政上の一つの先例もございますので、それ等も加味しなければならないのではないか、こういうように了解しております。
  45. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そのときの運賃は、補助なんかあると思いますけれども、総額は大体幾らになります。四千円、六万五千トンと見た場合に、総額は幾らです。
  46. 荒勝巌

    荒勝説明員 御質問の趣旨がちょっとわかりかねたのでございますが……。
  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 トン当たり四千円と言われましたね、北海道へ運ばれる場合に。六万五千トンですから、総額幾らになります。
  48. 荒勝巌

    荒勝説明員 いまの計算だと二億数千万円になるのではないかと思います。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 かりに、輸送もできない、現地処理もできない——何らかの形でこのてん菜糖は、飼料になるか何か知りませんが、砂糖としての価値を生じなくなった場合に、買い上げの総額は幾らになります。
  50. 荒勝巌

    荒勝説明員 ほんとに仮定の御質問でございますので、いまここで答弁申し上げることが、あるいは少し時期尚早というような感じもいたしますが、大体ビート大根の値段が、ことし六万数千トンとれまして、トン当たり七千二百円前後でいきますと、約四億五千万円——気象条件によりましてもだいぶ数量も変わってまいりますが、多少腰だめの金額でございますが、大根代金が四億五千万円ぐらい。北海道へ運びますと、場合によりますと、相当品いたみ等もいたしまして、価値等も下がってくるのじゃないか、こういうふうに了解いたしております。
  51. 淡谷悠藏

    淡谷委員 現地でこのビート大根がだめになった場合には四億五千万円、北海道に送りましても大体二億五千万円程度は運賃を補助しなければならない。それならば、現地の工場をいますぐ解体あるいは移転しないで、いまの従業員でことしの砂糖大根を処理した場合に要する経費は、一体どれだけかかりますか。これはひとつ参考人、あなたのほうの地位を離れて、国なり県なりが独自にやった場合、ことしだけの総額は幾らかかりますか。
  52. 榊原正三

    榊原参考人 私のほうで試算した計算で、四十二年度青森工場が六万トンと想定し、原料加工原価が仮定として七千二百円とした場合に、大体従来どおりの原料でいきまして、製造価格が六億四千七百六十万円、それから事業団の売り渡しだのいろいろなメカニズムを想定いたしまして、結局六億六千一百万円、販売原価として約六億六千万円でございます。
  53. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは農林省に特にお願いしたいのは、現実の数字を勘案してもらいたいというのです。北海道へ輸送した場合の経費と、全部賢い上げて捨てた場合の経費と、砂糖にした場合の経費と、おのずから結論が出るじゃないですか。しかも、これによって地元の農民や労働者の受ける影響というのは、たいへんな違い、天と地の違いです。こういう問題を、少なくとも行政の任に当たる人たちは、もっと刻明に、もっと親切に考えてやる必要がある。これは労働大臣にもぜひお願いしますけれども政府態度がきまる前に、会社態度はもうどんどん進行せざるを得ない状態です。これは金融機関からもじゃんじゃん言われるでしょう。もしも不幸にして、これがいまの参考人が言われたとおり閉鎖やむなしとした場合に、融資をした北海道東北開発公庫の金あるいは農林中金の金を一体どう処理されると思いますか。国策によって融資したものが、事業失敗いたしました、もうあとはこげつきましたでは済まないでしょう、公庫の性格、金庫の性格からいって。さまざまな問題が出てくるのです。あるいは工場の処理にしてもそうです。機械を整理するにしましても、あの大きな工場を建てて五年、すぐ別なものに転用するなんということもできない。いろいろな悩みが生じます。  そこで、これは少なくとも私企業だけにまかせないで、国が肩を入れて一刻も早く解決をしなければならない。事態は進行しているのです。慎重慎重と申しますけれども会社に対して、早期に労働者の解雇をやったり工場閉鎖を具体的に進めたりすることがないように、少なくともこの三案のうちの最後の地元処理という線だけは残して応急の措置をとられることが肝要と思いますが、これはひとつ労働大臣からもお考えを承りたい。
  54. 早川崇

    ○早川国務大臣 事態がたいへん深刻になっておりますので、先ほど農林省政府委員から御答弁されましたように、早急にこの問題の善後策を農林省としても構じられるような御答弁でございます。当然そうあるべきものでございまして、私も農林大臣に早急に問題処理の結論を出すようにお話をいたしたいと思っております。
  55. 淡谷悠藏

    淡谷委員 最後に、榊原社長にお願いしておきたいのですが、きょうわざわざおいで願ったのは、あなたの話を聞いておきたいのが一つですが、政府態度というものもじかにあなたの耳に入れたかった。いまお聞きのような状態です。それはあなただけ一人もう暴走しちゃって、労働組合とけんかはするわ、解雇の手続きはするわ、訴訟にはなるわ、弁護士は頼むわといったような独走はおやめになって——工場を残したいというのは地元のみんなの念願です。政府自体もこの事業継続したいと言っているのですから、労働者と一緒にやはり政府に対して、何とかこの工場が立ちいくような、あなたが手を引きましてもこの事業が長く残るような方法に出てもらいたい。もうさっさとあなたが独走しちゃって、労働組合とけんかばかりしている会社になってしまっては、できるものもできなくなります。その点をひとつ慎重に御考慮願いまして、私の質問を終わります。御答弁は要りません。希望だけ申し上げておきます。     —————————————
  56. 川野芳滿

    川野委員長 次は田邊誠君。
  57. 田邊誠

    ○田邊委員 私は、郵政省の不当労働行為問題を中心として、御質問いたすわけですが、その前に、春闘に対して労働大臣から簡明に現状について御報告をいただきたいのでございます。  いよいよことしの賃金引き上げの問題も大詰めに参りまして、公労協関係の組合が主として現在調停段階で折衝を続けておるわけですが、労働大臣の再三の言明によりまして、今年は三公社五現業の当局に対して当事者能力を与え、調停段階で問題の解決をはかりたいという前向きの御意向でございました。そういう状態でいよいよ大詰めにきたというふうにわれわれは判断をいたしておるわけでございまするが、ひとつ簡単に現在の調停段階における状態というものに対して御説明いただきたい、このように思います。
  58. 早川崇

    ○早川国務大臣 中立の公労委でございますから、干渉がましいことは一切申し上げませんが、昨晩徹夜をして公労委の委員諸君に何とかまとめたいということで御努力を願ってまいったわけでございます。その間、労働組合側は民間賃金一三%、使用者側は一一%じゃないかとか、あるいは定昇の見方が一%ほど違っているというような事情もございましたが、それぞれ歩み寄りの機運でやっておられるようでございます。ただ、ここへ出るまでにお聞きしましたところでは、今度は公労協のほうで、定率のベースアップか定額かという問題で、それぞれの組合の事情が違っておるわけでございます。定率、定額というような問題で一時まで御協議をされておる、こういうように聞いておりまするが、いずれにいたしましても、今度の春闘では、従来になく高額な有額回答を当局がしまして、そのことによりまして、調停というものが、実質的に真剣に妥結を目ざしてこの協議がされているという姿は、昭和三十五年以来初めてのことでございます。たいへん公労協の労使関係のために喜ぶべきことだと妥結を期待いたしておるわけでございます。もちろん、妥結されない場合におきましても、調停段階で煮詰まった線をもとにして常識的または良識的な仲裁裁定移行ということになりまして、仲裁が出るという八割近い雰囲気ができているということは、たとえ調停で万一まとまらないような場合でありましても、非常にけっこうなことでございます。したがって、われわれといたしましては、違法なストライキというようなものは、再三申しておるように自重してもらいたい、かように思っております。いずれにいたしましても、きょうじゅうに何らかの結論が出る段階でございます。
  59. 田邊誠

    ○田邊委員 いま大臣お話のように、われわれとしても、国民に迷惑をかけるような事態の起こらないことを期待をしながら、事態が早急に——早急と申し上げるのは、あすの実力行使の問題もありまするから、でき得べくんば本日あるいは明朝早くまでの間に大体見通しを立てられることが最も望ましいと考えておるわけであります。そういう中で、いろいろ問題が内容的にはありましょうけれども、私どもとしては、やはり民間賃金との格差の問題、それから企業のいわば能力の問題、資金上、予算上の制約からくるいろいろな問題等があることは承知しながらも、しかし、全体的な労働者の生活をよくするという立場からいいまするならば、大体アウトラインとしては、線がそろいながら妥結をされるということになるのではないかと予測をいたしておるわけであります。そういう中で、たとえば何%の引き上げ——定期昇給を含めてのいわば何%という中には、平均給与の低いところ、高いところ等があって、実際の賃金においてはある程度の格差が生まれてくるということも考えられるのでありますけれども、これをでき得べくんばなるべく差の少ないほうが望ましいという考え方でおるわけです。この点に対して、労働大臣としてはいかようなお考えであるかということと同時に、もう一ついま問題になっておりまする賃金紛争の中で、最も経営的にいろいろな面でむずかしい要素を含んでおる国鉄がございまするけれども、この国鉄当局の問題についても、大橋運輸大臣の言明等もありまするから、私どもとしては、同時に並行的に解決の方向に行くことができるのではないか、こういうように実は期待をいたしておるわけでありまするけれども、この国鉄に代表されるようないわば経営の内容の問題も含めて、政府としてはやはり解決の方向に全努力を傾けていただかなければならない、こういうように思っておるのですが、この二つの問題に対して労働大臣の所見を承っておきたいと思います。
  60. 早川崇

    ○早川国務大臣 前段の格差の問題は、国鉄は四十歳以上の人が多い、電電は若い人が多いということから、これはもう格差はやむを得ないのでありまして、問題は、定率であれば国鉄が有利である、だから定額にしろとか、いろいろ御意見が分かれておるそうでございますが、しかし、この公労委の良識ある妥結、あるいは万一妥結ができない場合には仲裁裁定になりますけれども、十分そういうことも配慮された妥結がなされると期待をいたしておるわけであります。  後段の国鉄の問題でございますが、昨夜以来は国鉄も一緒にやっておるのでございます。全然別扱いにやっていないように聞いておりますから、形式はどうなろうと三公社五現業まとまった方向で妥結していこう、こういう線で進んでおるように聞いておる次第でございます。
  61. 田邊誠

    ○田邊委員 民間の一部の企業を除いては、大体春闘の終息時期にあることは御案内のとおりでありますから、そういった点から、たとえいわゆる独立機関である公労委でこれを扱っているにいたしましても、政府のこれに対する確固たる方針と態度が、その解決のためにはあくまでも必要なことは言うまでもありませんし、いま申し上げたような中身から言いましても、やはり政府の勇断が望まれる点が多々あるわけでございますから、時間がございませんけれども、精力的にまた誠意あるところの態度をもってこれが解決のために努力をされるように、特にひとつお願いをしておきたいと思うわけであります。  そこで、時間がありませんから郵政省にお伺いをいたしますが、郵政省が、つい最近、労務対策上各種の方針なり態度をとられておることを私どもは仄聞をしておるわけですけれども、四、五年前に、郵政省が労務管理上必要だということでもって、その指導要綱の一環として一つの小冊子を出されました。「新しい管理者」という出版物でありますけれども、本委員会においても当時取り上げまして、その中には実は何か労働組合に対するいろいろな穏やかでない文言がかなり含まれておったのであります。たとえば「現下の労働運動は公然と法に違反することを宣言し実行していくのであるから不思議な現象である。見方によれば法を無視する団体、いわば暴力団的なものを法律で保護助成しているということである。全くもって奇々怪々の現象である。」というようなことばや、管理者に対して「反動と呼ばれるようになれば管理者は一人前であり、名管理者と謳われるくらいである。裏を解せば、信念のある人、勇気のある人、覚悟を決めている人ということである。管理者はよい意味で反動とよばれる位の気持で組合に接し、それを意に介しないようにして貰いたい。」というような文章が載っておったことは、指摘いたしたとおりであります。これに対して、これはあまりにも労働組合に対する認識が欠けておると同時に、これが郵政省の労働対策だと言われますならば、これはまさに笑いものになる、こういうことが取り上げられました。その後風聞するところでは、この「新しい管理者」の字句についてある程度訂正をされたというようにいわれておるのでありますけれども、はたして中身を変えられたのかどうか。さらにまた、現在この「新しい管理者」という小冊子が労務管理上現在使用されて活用されておるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  62. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 ただいまの田邊委員の御質問の「新しい管理者」という小冊子でございまするが、私はまだ聞いておりませんし、また、もちろんそういうような内容であってはたいへんだと思います。そこで、詳細につきましては人事局長から説明させますから、御了承願います。
  63. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいまお述べになりました内容につきましては、確かに、「新しい管理者」をつくりました当時の冊子の中には、そういう文章がございました。しかし、非常に適切でございませんので、これを随所において訂正をいたしております。なお訂正をいたしたものを現在使っております。
  64. 田邊誠

    ○田邊委員 そういう実は危険な文句を用いておったという事実がございます。したがって、これが変わったといたしますならば、そのよってきたる思想なり立場まで変わったかどうか、実はこれを確かめていかなければいかぬと思うのでございまするから、委員長、ひとつ委員会の名におきまして、「新しい管理者」の現在使用しておるというものを御提出をいただくようにお取り計らいをいただきたいと思うのです。よろしゅうございましょうか。
  65. 川野芳滿

    川野委員長 郵政省どうですか。
  66. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 承知いたしました。
  67. 川野芳滿

    川野委員長 じゃ、提出するそうですから……。
  68. 田邊誠

    ○田邊委員 それでは、その資料を当委員会に御提出をいただくことにおきめをいただきましたので、そのようにお取り計らいをいただきたいと思います。  次に、これは政務次官お聞きになっていると思うのでありますけれども、歴代の郵政大臣の中で、その部下の、主として管理者でございましょうが、犯したところの労働組合に対する不当労働行為という事件で、郵政大臣の名でもって労働組合の委員長、この場合全逓労組の委員長にあやまりの状を出したというようなことがございましょうか。ございましたならば、ひとつその内容をお聞きをいたしたいと思うのであります。
  69. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 これは、実は公労委から昨年の七月の十六日に郵政省に対して不当労働行為事件に対する指令が来ましたものですから、この公労委の命令に従いまして、昨年の八月十三日に、文書をもって全逓の組合に対して遺憾の意を表した事実はございます。
  70. 田邊誠

    ○田邊委員 そういう事実が遺憾ながらあったのでございまして、これは政務次官、その中身は、一体どういう中身でございますか。具体的には、どこのだれがいつどのようなことをしたということに関連をする不当労働行為事件であり、その命令でございましょうか。ひとつその主文を御説明をいただきたい思といます。
  71. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいまの四件といいますか、四項目ですか、これは茨城県の玉川、これは特定局でございます。それから長野県の竜江、これも特定局、それぞれの局長の組合に対する介入の事実、それから福岡の中央郵便局の次長並びに同局の庶務課長、この二人、総計四名の組合運営に介入したという事実についての公労委の命令でございます。
  72. 田邊誠

    ○田邊委員 これは結局、いわゆる労組法の七条の一号、二号、三号それぞれに該当するところの不当労働行為事件として公労委が取り上げて命令を発した、こういうことでございますな。
  73. 山本博

    山本(博)政府委員 これは全号に該当しておるのではございませんで、組合の運営に介入したという三号の問題でございます。
  74. 田邊誠

    ○田邊委員 一つは第七条の第一号、それから二つ目に申し上げたのは同条第三号、三つ目にお話がありましたのは第七条第二号及び第三号、正確にひとつお答えをいただきたいのであります。
  75. 山本博

    山本(博)政府委員 先ほどの私の答弁が間違いでございます。いまおっしゃったとおりでございます。
  76. 田邊誠

    ○田邊委員 これは実はこれから質問いたすことに関連をいたしまするけれども、先ほど政務次官からお答えがありましたように、一国の大臣が労働組合に対して陳謝文を書いたというのも前代未聞でありますると同時に、こういった事例は実は数多く起こっておるので、これは労働大臣にもお聞きをいただきたいのでございます。郵政者は、この当時、いわばこれは三十八年の年末闘争に関連をする事件としてこの種の問題が起こった、そういうふうに聞いておるわけでありまするけれども、組合のほうから公労委に対してどのくらい申し立てがあったというように承知をいたしますか。
  77. 山本博

    山本(博)政府委員 項目としまして約六十項目でございます。そのうち四項目だけ認められました。その他は棄却になっております。
  78. 田邊誠

    ○田邊委員 いま申し上げたように、かなり多数の事案について公労委に申し立てがあったように聞いておるのであります。これに対して、先ほどお話にありましたように、昨年の七月十六日にそのうちの三件について不当労働行為であるということで命令が発せられたわけであります。しかし、その前に郵政省は、この種の問題に対してたびたび実はそういう事犯を犯しておるのであります。二十八年にやはり特定局長の問における不当労働行為に関して公労委から中止の勧告がございました。こういう事案もあったわけであります。  以上のことから見ますると、公労委が命令を下したのは三件でありまするけれども、これに対するところの不当労働行為と疑わしき事件、あるいは証拠がそろっておらないことによってその命令ということにはならなかったものでも、第三者が見れば不当労働行為に類するような事件というものは、当時数多くあったということは推測できるわけであります。郵政省は、いまお話にありましたような命令が発せられたわけでありまするけれども、その当時から今日にかけて、郵政省自体として、こういった労務管理に関する、いわば組合運動に介入をし、学組法に定められたところの不当労働行為に類するような、そういう労働対策をとってきたというふうにこれは見られてもやむを得ないと思うわけでありまするけれども当局は一体それに対するいかような方針をおとりになってこられたのかお伺いしたいと思います。
  79. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 田邊委員がただいま述べられました四名の方はもちろんでございますが、それ以来、上司からあらゆる機会において一般の管理者に対して、不当労働行為のないように厳重な注意を促しておりますと同時に、あらゆる会合においても、そういうことのないように厳重に命令を発しておる次第でございますので、よろしく御了解のほどお願いいたします。
  80. 田邊誠

    ○田邊委員 労働大臣にお伺いをいたしたいのでありますけれども、不当労働行為事件というのは、なかなか実は立証するのがむずかしいのが通例であります。なぜならば、その本人がその職場につとめており、将来やはり生活をそこで維持するという立場でつとめておりまするならば、自分の周囲あるいは自分自身に起こった問題に対して、よほどの勇気がなければ、実は不当労働行為に関する本人の陳述なりあるいは証人としての陳述なりというものはなかなかやりづらい、こういうことが言えるかと思うのであります。これは人間でありまするから、今後そのことによって不利益を受けることがない、差別を受けることがないといっても、いわば不利益をおそれて、それに対しては口を閉ざすというのが実は通例の場合であろうと思うのであります。そういったことでありまするならば、公労委は、もちろん厳正な立場で、また正しくその状態判断をして結論を出すことは当然でありまするけれども、いま申し上げたような三件の命令を発した事案というものは、これに類する六十件にも及ぶ公労委への申し立てがあったという、こういうことからいいましても、実はかなり広範にこの種の問題が及んでおったというように推測をされるのであります。そういたしますならば、公労委はこれに対して、もう少しやはり状況の証拠なり全体的な状況判断なり、こういうものをやって、この種の問題に対しては判断を下す必要があるのではないか、こういうように私ども考えるのでありまするけれども、その点に対して労働大臣としてはどういうふうなお考えでございましょう。
  81. 早川崇

    ○早川国務大臣 御承知のように、現在の手続が当事者主義であり、口頭弁論主義でございます。そういう関係で、民事訴訟類似の形態になっておる関係上、お説のように時間もかかれば、調査も、いま御指摘のように当事者主義でございますから、そういった点から審査がなかなかひまがかかる。全部をとらえにくい。ちょうど選挙違反みたいなもので。ですから、これをどう改正するかという手続面の改善の意見も、労使関係専門家から出ておることも事実でございます。引き続き、こういった問題につきましては、労働省としては検討をしてまいりたいと考えております。
  82. 田邊誠

    ○田邊委員 郵政省、どうでしょうか。この公労委の審査が始まりますると、必要あれば証人あるいは当事者の出席ということがあり得るわけでありまするけれども、証人なり当事者の出席の場合は、これは休暇をとって出席をされる、こういう方針でございましょうか、休暇をとらせない状態にございましょうか、お伺いをしたいと思います。
  83. 山本博

    山本(博)政府委員 場合によって違いますが、証人の場合は特別休暇、その他の場合は任意の休暇となっております。
  84. 田邊誠

    ○田邊委員 なかなか休暇をとらせないというような、こういう状態というものがあることを御承知でございますか。
  85. 山本博

    山本(博)政府委員 このために休暇をとらせないということは、私たちは聞いたことがございません。
  86. 田邊誠

    ○田邊委員 公労委でもって厳正な審査をいたしておるのでありまするから、当事者なり証人なりがそれに出席をする場合は、それぞれひとつ必要な措置をとって出席ができるように取り計らってもらうことが当然であろうと思うのでありまして、そのようにぜひ取り計らうように要請しておきたいと思います。  しかし郵政省、そう言っても、あなた方、一体、組合側の証人なり当事者なりが公労委の審査に参加をする場合、不当な圧力をかけたり、また証人の発言内容に対して事前や事後に干渉しているというような事実はございませんか。あるいはまた、証人がそういった出席をして証言をしている場合に、その者の人事異動や昇進に対して差別をしているというような、そういう事実はないと思うのでありますけれども、いかがでありますか。
  87. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいまお話のあったような例は、全くすべきことでございませんし、いままであったとも私は存じておりません。
  88. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで政務次官、いまお話のありましたとおり、昨年の八月に公労委の命令を受けて当時の郵政大臣が陳謝文を手交いたしておるのであります。その事実をお認めになっておるわけです。当然、これは訴訟にまで及んでおるわけではございませんから、お認めになったという、命令に服したわけでございまするが、こういったいわば管理者がおることは非常に遺憾であります。一番最初に申し上げたように、「新しい管理者」という、ああいう小冊子に見られるような思想なり考え方は誤りであるというふうにお認めになって、その後冊子も変えられたようでございまするから、したがって、労働組合に対する介入や自主性を侵害するような、そういったことはいかぬ。現に昨年の五月二十四日に人事局長名をもって「正常な労使関係の確立について」という通達をお出しになっておるようでございまして、その中に「使用者の立場にある者は組合に対して、これに介入するようなことは一切許されない。」こういう通達を出しておるのは理の当然であります。そういたしまするならば、いまのお話のありました三件の不当労働行為を犯した管理者に対しては、これは信賞必罰の精神からいいまして、何らかの措置をおとりになるのが当然であろう。とっておられると私は思うのでありまするけれども、この不当労働行為事件に関係をいたしました当時の管理者はいかように処罰をされたのか、ひとつ御報告を賜わりたいと思うのであります。
  89. 山本博

    山本(博)政府委員 この四名の者に対しましては、それぞれ上司を通じまして厳重な注意をいたしました。注意という処分でございます。
  90. 田邊誠

    ○田邊委員 いま近代的な労使関係を確立する上からいって必要なのは、何といっても労働組合の健全な育成ということでありまするし、それにみだりに使用者の立場、管理者の立場にある者が介入することは許されないという法の原則を貫くことであろうと思います。そういう点から言いますならば、公労委の命令という、第三者機関によって明らかに不当労働行為であると認定されたその管理者に対して、郵政者はみずからえりを正すという意味合いから言っても、また理非曲直を明らかにするという意味合いから言っても、当然やはり厳正な処分をすべきであったと私は考えるわけでありまするけれども、これが、他のいろいろな組合運動を通じての職員の行為やその他の面と比べて、あまりにも軽きに失しておることではないか、こういうように考えられまするけれども、政務次官いかがでございますか。
  91. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 不当労働行為に対する厳重な反省の色を出すことは当然でございますが、ただいま人事局長からお話のありましたように、十分なる注意を促しておるというところで御了解願いたいと思うのであります。将来これらの問題に関しましては十分厳重に進めてまいりたいと思いますので、御了解願います。
  92. 田邊誠

    ○田邊委員 十七日に全逓がやりました実力行使に関して、郵政省いち早く戒告、訓告等の処分を発表いたしておるのであります。もう千人以上にわたるところの従業員を処罰いたしておるのであります。これに引き比べて、管理者としては越えてはならない一線を越えたこの種の不当労働行為に対して、これを注意処分で相済ます、こういうことは、公平に第三者から見ても、決して平等な立場、公平な立場でものをやられたというふうに認識することはできないと考えるわけであります。しかも一部の管理者の中には、この種の不当労働行為というのは——これは罰則規定はございません。いわば少しやり過ぎても、まあ最後に事実が暴露されて公労委のほうから命令がきても、郵政大臣があやまればそれで相済むということでもって、ある程度事実がわからないようにやればよろしいのだから思い切ってやったらどうだというような、こういう人事担当官がいるというように聞いているのですけれども、そんなことございませんか。
  93. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 そういう事実はございません。
  94. 田邊誠

    ○田邊委員 これはあとでもって事実を一つ一つ、また同僚議員のほうから質問をいたす予定でございますが、いまの政務次官のお答えを私は正直に受け取りたいのでありますけれども、なかなか正直に受け取れない事実問題が数多く起こっていることを私は非常に遺憾に思っておるわけであります。  そこで労働大臣、いまお聞きのように、不当労働行為については法改正がありまして、罰則規定がないのであります。一般の労組法上からいいますと、これに対して訴訟があって判決が確定をいたした場合に、それに違反した者については罰則規定が設けられておるわけでございますけれども、いわばそういった罰則規定のないことをよいことにして不当労働行為の事案というものが横行するというような状態というものは私はきわめて遺憾であるというように思っておるわけでありますけれども、これは法のたてまえからいってやはり何らか考慮しなければならぬ、こういうふうにも考えられるわけでありますけれども、所見はいかがでありますか。
  95. 早川崇

    ○早川国務大臣 御承知のように昭和二十四年、前の労組法では処罰規定があったわけであります。ところがそのときの改正にあたりまして、不当労働行為の範囲を拡大するとともに、刑罰主義、行政罰主義というものは異常に労使関係を激化させ、また刑罰となりますと、証拠その他で、実際は起訴されるものが非常に少ないという実情から、労使関係の正常化という立場から刑罰主義あるいは行政罰主義という規定を廃止する改正をいたしたわけでございます。そういう経緯もございますので、刑罰主義あるいは行政罰主義というものは——すでに労使関係が非常によくなってきておる、一部にそういう不当労働行為がありますけれども、率直に言うとよくなってきておる。法律を改正して刑罰主義をとるという考えは持っておりません。
  96. 田邊誠

    ○田邊委員 郵政省はあれでしょうか、いまのような事案が起こることは好ましくないという御答弁があったのでありますけれども、現在各省でもってこれに類似するような、これと疑わしいような事案が起こっておることは、私どもとしては非常に遺憾であると思っておるわけであります。そういうような方針を郵政省自身がとっておるとは私は考えたくないのでありますが、しかし現実の問題としてそういったことが全国的に起こっておるというこの事実に対して、省はやはり組合の分裂なり組合に介入するという、こういういわば労務対策上の基本方針というものをおとりになって、実はこういったことが行なわれておるのではないか。そうでなければ、ほんとうにそういったものを犯した管理者に対していまのような寛大な処置でもって相済まず、こういったことは常識的にも考えられないのでありまして、何かそういった管理者をかばうような状態というものが見受けられるのでありますけれども、一体省の方針はいかにあるかということに対してこの際ひとつ明らかにしていただきたい。
  97. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 先ほども申し上げましたように、不当労働行為をしないというふうに各会議を通じて行なっておりますし、また、労働組合の分裂などということは全く考えていないのでございますので、御了承のほどをお願いいたします。
  98. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで郵政省の労務対策あるいは組合対策といいましょうか、そういうものに関連して労務対策費というものを流しておるわけでありますけれども、これは郵政省の特別会計——予算上からいいますならば、どういう費目からこれをお出しになっておるのでしょうか。一体その総領は今年度いかほどになっておるのでありましょうか。
  99. 山本博

    山本(博)政府委員 予算上労務対策費という項目がございます。金額にいたしまして千五百万円でございます。
  100. 田邊誠

    ○田邊委員 それ以外に管理者に対しては、これは成規の手続きによって管理職手当を支給いたしておるわけでありますが、これは労務対策との関連において、いま申し上げたような非常に組合に対して弾圧をしたりあるいはいろいろと介入をしたりするような管理者に対しては管理職手当をよけい支給する、それをあまりやっておらないなまぬるい管理者に対しては管理職手当について差別を与える、そういうような事実はございませんか。
  101. 山本博

    山本(博)政府委員 管理職手当の支給の方法は、労働組合との話し合いとは関係ございませんので、当方だけできめておりますが、これは大体一定の率がございまして、その率に合わせましてあらかじめきめられたランクごとに支給をいたしております。一般的な支給につきましては、いまお話がありましたような内容について区別しておることはございません。ただ、年末年始は非常に繁忙でございまして、管理者という職務柄非常に重い責任を負いますので、そういう意味で、年末年始の業務運行というようなことあるいはその前後のいろいろな郵便業務その他の業務の正常な運行、そういうような面を考慮いたしまして、年末年始を合わせまして特別に管理職手当の増額をいたしておるということはございます。
  102. 田邊誠

    ○田邊委員 あとでまた事実問題をお聞きをいたします。  次にお伺いいたしたいのは、三公社五現業、公労法適用の各企業は、それぞれ労務対策上労務担当官の配置をいたしておるわけであります。いろいろと調査をいたしましたその状態を見ますと、大かた似通ったような労働関係の担当官なりを配置いたしておるのは承知をいたすのでありますが、郵政省は、この三公社五現業関係労働関係の担当官とは別に、独自の労働関係の何か担当官を置いていらっしゃるというふうに聞いておるのでありますが、そういう事実がございますならば、それをひとつお話をいただきたいと思います。
  103. 山本博

    山本(博)政府委員 郵政省独自でありますかどうか、私つまびらかにいたしておりませんが、郵政省の労務担当の職種の中に、一般の職制といいますか、組織上のライン、そういうものと違ったものとして、あえてあげますれば労務連絡官という制度がございます。労務連絡官と申しますのは、ただいま約六十一名配置されておりまして、全国の各県庁所在地の局並びに東京、大阪、それから北海道、こういうような非常に密度の高いところ、あるいは北海道のように非常に広範な地域を担当しておる、こういうところにつきましては県庁所在地に一人という割り当てではなくて、もっとたくさん配置しております。その結果として六十一人になっておるわけであります。  職務の内容としましては、郵便局というのはその他の公社現業と違いまして、非常に広範な分布をいたしておりますし、局の規模というものも非常に多種多様でございますので、労働問題というものは郵政事業自身にとりましても非常に大きな課題でございますので、それぞれあやまちなきようにこれに対処していかなければならないということで、労務連絡官が情報の収集、それからいろいろな各現業に対するアドバイス——法規上の問題とかあるいはその他団交の問題とか、いろいろまだ十分なれていないところもございますので、そういう面についてのアドバイス並びに相談に応ずる、そういう機能を果たしております。身分は、郵政局の課長補佐というランクについておりますと同時に、その在勤しております局の局員でもあるという兼務の形で発令されております。
  104. 田邊誠

    ○田邊委員 労働大臣、私、まず三公社五現業の労働関係の担当部署についての調査をお願いしていただいているわけですけれども、ほかのところにはそういうものがないのであります。それで実は正常な労使関係の確立につとめていらっしゃるわけです。郵政省は、いわゆる非常に広範なところに分布をしておるということは事実でありますけれども、しかしまた国鉄や電電、林野庁、その他こういったところはそれぞれの意味において広範な分布があり、あるいは山の中に散在しておるというな事実もあるわけであります。郵政だけの特異な条件というのは、私はその点ではあまり見受けることはできないと思うのでありますが、それにもかかわらず、いま申し上げたような情報連絡、あるいはいろいろな労務対策上の指導をするというような、こういう立場で労務連絡官というものを配置をいたしておるようでありますけれども、どうでございましょうか。こういったものが、実際問題として必要でございましょうか。労働省として見た場合にはいかがでございますか。
  105. 早川崇

    ○早川国務大臣 郵便事業一つ事業でございますので、私は、官公庁の労務関係というものは、民間企業に比べますとむしろ弱過ぎる、そうして、もう少し、労働者なり勤務員の福祉向上、そういう面できめのこまかい労務管理をやらなければならないとかねがね思っております。したがって親方日の丸で、もう国の予算だということでは労務関係——労働者のかゆいところまで手が届かない。そういう趣旨から、郵政省が率先して労務関係の担当官を置いているということは、むしろほめるべきことで、それを非常に困ったことだというようには私は考えておりません。
  106. 田邊誠

    ○田邊委員 労務連絡官の権限なり配置、それからどういう必要で配置をされているのか、そのことも含めてひとつぜひこれをお示しをいただきたいのであります。よろしゅうございますね。  それと、いま労働大臣からお話がありましたけれども、実は私の心配しているのは、いま配置されている六十一人の労務連絡官というものが、当然通例の系統からするところの労働対策を担当して現場の局長なり、そういったものの権限を実は乗り越えて面接指導するという状態というものが、随所に見受けられているというように私は聞いておるのであります。そのことは、いわば郵政省の全体の機構の配置を乱すばかりでなくて、現場第一主義といいましょうか、何といっても現業を持っている三公社五現業の中において、さらに一般の国民とつながりの深い郵政事業の遂行の上からいっても私は好ましくない、こう申し上げておるのであります。したがって、そういった点で、この労務連絡官の任務なり権限なりについて、どうもたいへん実は疑問に思っておる点が多いわけでございますので、その点に対してひとつ資料の提出をお願いしたい、こういうふうに私は思っておるわけでございます。よろしくお取り計らいを願いたいと思います。よろしゅうございますね。
  107. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 よろしゅうございます。
  108. 田邊誠

    ○田邊委員 そこでいま質問をいたしておりまするように、郵政省の場合には、確固たる労働対策、あるいは労務対策、労務管理というものがおありだろうと私は思うのでありますけれども、それにもかかわらず、不当労働行為の事件が発生をしておるという事態でありまして、われわれとしては、こういったことを考えてまいりますると、郵政省の労務管理というものは、一体どのような状態であるかということに対してさらに検討をしなければならないと思っておるわけであります。ついては、労務対策上あるいは労務管理上各種の通達や種々の文書、指導要領あるいはその他の出版物をお出しになっておるようであります。先ほど資料の要求をお願いいたしました「新しき管理者」ももちろんでありますが、それ以外にもいろいろなものをお出しになっておるようでありますが、その中でもってマル秘で出せないというものは別でございますけれども、当然出せるものがございます。現にある郵政局でもって主事、主任の指導のために出しておるものがございまするが、その中に参考図書として「中間管理者」、「新しき管理者」、「職場の心理と人間関係」、「現業管理者の事業運行管理」、「指導の手引(採用時職場訓練)」こういうものがございます。さらに三十五年に出しました「労務管理の手引」、「労使関係の具体的諸問題」、「全逓の職場闘争に対する措置要綱」、三十七年、「労使関係の具体的諸問題」、これはさっきのと同じでしょうか。それから三十八年に出しました「労務管理必携」、四十一年に出しました「職場づくり」、同じく四十一年に出しました「労働組合対策点検要綱」、これは百ページぐらいのものです。それからさらに「郵政監察官の点検項目」、こういう各種のものが出されておるのであります。私は、その中には事業の運行上必要なものもあると思いまするけれども、中にはさっき申し上げたような、現在の労使関係の確立に、どうも少しくいかがと思われるようなものも含まれておるように、実は推測をいたしておるのでありまして、これらの文書、出版物について、今後の郵政省の労働対策を検討させていただく意味合いから、資料としてぜひ見せていただきたい、こういうふうに思っておりますので、そのようにお取り計らいいただきたいと思います。いかがでしょう。
  109. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいまお話がありました一連の書類の中で秘になっておるもの以外につきましては、即刻出すように取り計らいをいたします。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 関連。いま田邊委員質問に対しての答弁の中で、管理者手当支給の基準について答弁がありましたが、年末年始、こういうような繁忙に際していろいろ管理者手当が出されておる。この管理者手当の西宮の分と吹田郵便局の分、この二つの分の管理者手当の額をお知らせ願いたい。
  111. 山本博

    山本(博)政府委員 承知しました。たいへん申しわけありませんが、資料の準備をしてきておりませんので、後ほど……。
  112. 島本虎三

    ○島本委員 あとでこれを出していただきたい。  これは巷間伝えられるところによりますと、西宮と吹田は同じような局舎規模である。そして吹田の局は年末業務繁忙をよくやった、西宮もよくやった。しかしながら、何がゆえにこれだけ差がついたのか、いまだに疑問であると言われている配分だそうであります。ただ一つ、吹田の局の場合はりっぱな慣行によってやっている。西宮局の場合には第二組合が発生した。こういうような事態の中に配算が違った、こういうようなうわさが飛んでいるのであります。もしそうだとすれば、これはゆゆしい問題になるので、十分調査の上で次会までにはっきりした資料として出してもらいたい。もしこういうようなことがあったらたいへんだと思うのです。こういうような指導及びこういうようなことはしていたかしていなかったか、郵政政務事官、御答弁を賜わりたいと思うのです。
  113. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 ただいま先生からお話しのような事実はないと思いますが、十分調査をしたいと思いますので、御了承願います。
  114. 島本虎三

    ○島本委員 田邊委員質問した中でまだまだ十分答えてない点があったので、私どもとしてはそれを十分答えてもらいたいと思うのです。その一つとして、労働大臣、第二組合を管理者が指導してつくらせるということはいいことですか、悪いことですか。
  115. 早川崇

    ○早川国務大臣 これは先ほどありましたように、不当労働行為、分裂をはかるというようになるかと思いますから、決していいことだとは思いません。ただ、たとえば私の田辺市で、新聞で見ると、郵便局で半分全逓を脱退してしまったわけですね。そしてもう一つの組合に行かれたその声明文を読んでみると、何か容共的組合はいやだとかいうような声明を出しておりました。これは私が工作したのでも何でもありません。そういう新聞を見たのです。ですから、これは組合内部のことは、分裂するとかせぬとかいうものは、分裂される組合にも問題がある一つの証拠でございます。しかし、これはいずれにいたしましても、労働組合員自身の問題であって、管理者がいろいろ工作したり、金を出してするようなことは断じてよくないことだと思っております。
  116. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、私もこういうようなことは管理者がしてはならない。しかしながら郵政省のほうでは、第二組合をつくらせるのは、熊木、近畿、それが終わったならば北海道と中国だ、こういうようなことにあらかじめ組まれているというような風評が私の耳に入ってくるのです。こういうようなことは全然あり得ないことですか。
  117. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 実はこの前の参議院の決算委員会で達田委員から、熊本の郵政局において第二組合を結成させるために郵政省がいろいろ力を尽くしているんじゃないかという質問がありましたので、私そういうことはないと思って、この前、ちょうど二、三日前でございますが、九州の熊本郵政局で貯金の表彰式がありましたので、石丸局長と会ったので、こういうことが決算委員会で問題になっているが、一体どうなんだ、もしそういうことをやったとしたならばたいへんな問題であるが、一体あんたはどういうことを考えているんだと言ったら、決してそういうことはいたしておりません。組合内のいろいろな事情でそういうことにはなっておりますが、管理者自体が決してそういうような事実をつくらせるようなことはしていませんということを申しておりましたので、御了解願いたいと思います。
  118. 島本虎三

    ○島本委員 いま次官がそのようにおっしゃいましたが、具体的な事実として上がってこないところにこういう風評が立つ理由はないと思うのであります。私どもとしては、これが組合の中から自然発生的にそういうふうになったのならば、これは何も干渉したとは思いませんし、言いません。しかしながら、この中に某人事部長がいるとか某局長がいるとか、こういうようなことがはっきりしているわけでございます。そうして、こういうような問題がないことを私は望んでいる一人なんです。ところが、昨日、大阪で郵政局人事部長が——私は島本虎三でありますが、私と西風代議士、それから井岡代議士、阪上代議士、横川正市参議院議員、以上の人が、この不当労働行為に類するようなことを私どものほうとして耳にしているので、事実はどうなんだというので調べに行ったのでありますが、面会しないのです。われわれが調査したいから面会したいと言っても面会しないのです。「局長は」と言ったら「不在だ」と言うのです。人事部長も会わないという事態、なぜ一部長がお会いにならないのか、この事情等を知っておられましたら、ひとつはっきり私、御明示願いたい。
  119. 田澤吉郎

    ○田澤政府委員 その事実はまだわかりませんので、いずれ調査いたしまして御報告申し上げたいと思います。
  120. 島本虎三

    ○島本委員 では後日、私はこの問題の具体的な例をもって——この問題は許すことのでき得ないことですから、労働大臣に臨席を願って、その上でこういうような問題に対しては禍根を絶ちたい、こういうように思いますから、この点はよろしくお願いを申し上げておきたい、こういうように思うわけです。  それと同時に、そのための資料を一、二お願いしておきたいと思います。それは田邊委員が要求しましたほかに、種子島郵便局事故犯罪防止委員会の達四六号、局内一般昭和三十九年一月一日発行、これを参考資料としてひとつ出してもらいたい、こういうように思います。  それともう一つは、熊本郵政局の庶務主事会議人事部長演達要旨、これは労務関係資料にあるとおりですが、この要旨をぜひお出し願いたい、こういうように思うわけであります。  なお、私はこの問題について申し上げたいと思いますが、いまは田邊委員質問に関連した質問でございますから、後日この資料が整った上で——このような分裂工作や第二組合つくりを管理者側が指導するということは望ましいことではございませんので、こういうようなことを阻止する、また根本的にやめてもらうために、この次には資料を整えた上で十分やることを私はここに宣明いたしまして、これで終わらしていただきます。ありがとうござました。
  121. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいま御要求のありました資料につきまして、種子島というお話がございましたが、ちょっと遠隔の地でございますし、三十九年というお話でございましたので、これは私の心配かもしれませんが、可能でありましたら取りそろえます。  それからあとの問題でございますが、これが書類になっておりましたら取り寄せます。ただ、ことばだけで書類になっておりません場合は……(島本委員「書類になっております。」と呼ぶ)でしたら取り寄せます。
  122. 後藤俊男

    ○後藤委員 田邊委員なりそれからいま質問されました委員に関連して二、三お尋ねしたいと思います。  先ほど次官が田邊委員質問に対して、不当労働行為はあってはいけないんだ、そのことについては会議のあるたびに注意をしておる、こういうお答えがあったわけですが、いままで二人の委員からいろいろ話が出ましたように、現在、全逓から近畿方面でかなり脱退が出ておるわけなんです。これは御承知だと思います。この近畿方面における脱退問題については、政務次官が言われたことと全く反対のことが行なわれておると私は推察いたしております。というのは、会議ごとに第二組合をつくれという相談がされておる、そういう具体的な事実も現在あるわけなんです。これは一々申し上げますとかなり時間がかかりますから、きょうのところは、先ほどの話のように、次の機会になろうと思いますけれども、こういうところでいろいろ問答をいたしてみましても、あなたのほうとしては非常にきれいなことを言っておられる。いわば、全逓信労働組合が春闘なり年末闘争でストライキをやっちゃいかぬ。これは公労法の第十七条に違反するぞ。これと同じように、労組法の第七条に違反しちゃいかぬ。これは法律違反では一緒だと思うわけなんです。ところがどこのいわゆる普通局に参りましても、ストライキをやるかやらぬかわからぬところの玄関に、必ずストライキをやっちゃいかぬぞという厳重なる警告書が張ってあるわけです。ところが、一方、労組法第七条違反に類する不当労働行為の問題については実に巧妙にやられておるというのが、今日近畿方面情勢だと私は思います。現在、御承知のように、近畿方面におきましては三万数千名の中から一万名余りの人が脱退しておる。これも、先ほど労働大臣が言われました、新聞で読んだらこういうことが書いてあった。これはただ表面上だけの問題でございます。一体なぜそういうふうなかっこうになってきたか。これは大臣が言われますようにそのとおりなら、われわれとしてもこれはまた考え方が変わってきますけれども、その中身へ一歩入ってみますると、そんなきれいなものじゃございません。  これは大洋の局の話でございますが、郵便課の内勤の人ですが、勤務時間中に一時間も十五名集めて、そこで第二組合の結成を慫慂しておる。あるいは、主事主任会議におきましては、いま申し上げましたように、とにかく第二組合の結成の相談をしておる。しかも今日合理化が非常に激しくなってきておりますから、第二組合をつくったところの主任さんなり主事さんは、この合理化に伴う配置転換はいいところへ行けますよ、こういうようなえさを与えて具体的にやられておる事実もたくさんあるわけなんです。  こういうような現実の問題について、大臣なり次官等は御存じないかもわかりませんが、人事局長として、現在の近畿方面の労働問題につきましては十分おわかりだと思います。この点をあなたのほうとしてはどういうふうに見ておられるか、それをひとつお答えいただきたいと思います。
  123. 山本博

    山本(博)政府委員 大阪のほうで組合の組織が動揺しております内容については、十分よく知っております。  その問題につきまして、ただいま管理者のほうの不当労働行為のお話がございましたが、先ほど来申し上げておりますように、あるいはきれいごとだと言われるかもしれませんが、郵政省といたしましては、特に国家公務員でもありますので、法律に違反することについては厳重に戒めてまいっておりますし、そういうことがあることは、かねがね会議あるいはもろもろの打ち合わせのあるたびに強く注意をしてきております。したがいまして、いまお話がありましたように、主事、主任を人事のえさでつるとか、あるいは何かそういう非合理的なもので動かす、そういうようなことは、私たちがお話を伺ってもまことにけしからぬ行為だと思いますし、またそういうことを管理者がしておるというようなことは、私も現在信じたくございませんし、またおそらく、私として現在聞かれましたらば、ないと確信すると申し上げるほかございません。具体的な例としてそういう事実があがってまいりましたならば、私たちとして十分な措置をいたしたいと思いますし、また今後ともそういう問題については繰り返し注意を続けていきたいと思っています。
  124. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま局長が言われたように具体的な事実があがってきたらということは、どこからあがってきたらですか。
  125. 山本博

    山本(博)政府委員 あがってくるということは、具体的な事実が判明いたしましたらということです。
  126. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうすると、判明したらということは、お調べになるということですか。
  127. 山本博

    山本(博)政府委員 具体的な事例としてこういう行き過ぎがあるからあるいはこういう問題があるからということになりましたならば、私のほうで調査をいたします。
  128. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いま局長が言われましたように、具体的な問題が出てきた場合には、これは厳重に処分するということですか。
  129. 山本博

    山本(博)政府委員 それが直ちに懲戒処分になるかどうかわかりませんが、具体的な内容で十分注意なりその他の措置をいたしたいと思います。
  130. 後藤俊男

    ○後藤委員 そこで、先ほど申し上げました近畿方面の脱退の問題です。これは現実に局長も知っておられる。しかも不当労働行為はやっておるとは思いませんと、これははっきりあなたも言っておられるわけでありますが、それなら私のほうとしても、時間があればこれは全部きょう話をしようといたしておったわけですが、時間もございませんのできょうは言いませんが、和歌山地方関係の普通局全部を通じて、不当労働行為、それらしい行為、そういうものは一切あるかないかを早急に調査をしていただきたい、こう思います。いかがですか。
  131. 山本博

    山本(博)政府委員 お申し出の調査をいたしたいと思います。
  132. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしまして、各関係調査を全部やっていただきまして、その調査資料を次の機会にここへ提出をしていただきたい。私のほうは私のほうといたしまして十分なる調査をした資料も持っておりますので、そこでまたこれらの問題については引き続いて論争を行ないたい、こう考えておりますので、ぜひひとつよろしくお願いいたします。よろしいですか。
  133. 山本博

    山本(博)政府委員 次の機会という日が私のほうではっきりわかりませんが、あまり早い時期ですと、全普通局ですとちょっと間に合わないのじゃないかと思いますので、後刻、大体の日にちの見当がつきましたら、御連絡申し上げます。
  134. 後藤俊男

    ○後藤委員 わかりました。
  135. 田邊誠

    ○田邊委員 それでは、いろいろな状況については、またあらためて当委員会において資料の提出を求め、また報告を願って、その上で質問をいたしたいと思います。  きょうは約束をいたしました郵政大臣がお見えでございませんので——委員長、実は郵政大臣が最後にはお見えであるというので、郵政大臣にいろいろとお聞きをする予定でございましたけれども、これはできません。たいへん遺憾であります。郵政省もよく連絡を緊密にしておいて、約束は約束で守ってもらって、大臣がやはり出席をしていただくように御配慮いただきたいと思います。次回に譲りたいと思います。
  136. 川野芳滿

    川野委員長 田畑金光君。
  137. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの質問に関連して、若干お尋ねしておきたいと思います。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕  最初に局長にお尋ねしたいのは、近畿地方で全逓の組織から脱退者が相当出ておる、こういうお話でありますが、どの程度脱退者があり、それが新しい組合、全郵政労組に入っておる組織人員は幾らにのぼっておるか、まずそれをお答え願います。
  138. 山本博

    山本(博)政府委員 こまかい数字まではっきり覚えておりませんが、大体四月一カ月で約九百名にのぼっておるかと思います。それから五月が、現在までに約五百名くらいと思っております。それがほとんど全郵政に入っております。
  139. 田畑金光

    ○田畑委員 全逓の組織が何ぼで、全郵政の組織が幾らになっておるわけですか。
  140. 山本博

    山本(博)政府委員 全逓が三万一千名でございます。それから全郵政が一万名でございます。
  141. 田畑金光

    ○田畑委員 労働大臣お尋ねしたいのは、労組法上組合の活動に関連して争議行為が合法的だと認められる場合は、どんな場合がありましょうか。
  142. 大塚達一

    ○大塚説明員 ただいまの御質問でございますが、労働組合法上労働組合の争議行為が認められておりますのは、一般に労使関係に関しまして相互間に意見の相違がございまして、そのために紛議が発生している場合に、その意思を貫徹するために行なう、労働組合の使用者側の正常な行為を阻害する行為、これがいわゆるストライキでございますが、そういうものは一般に認められておるわけでございます。ただそれは、民間の労働組合に関しまして一般の労組法の適用になる労働組合の場合の話でございます。
  143. 田畑金光

    ○田畑委員 私がいま質問したのは、争議行為はどういう場合にあるのかということをお尋ねしているのではなくして、組合活動に関連して暴力行為が許される場合はどのような場合であるか、これをお聞きしておるわけです。
  144. 大塚達一

    ○大塚説明員 ちょっと質問を取り違えましてはなはだ恐縮でございましたが、労使関係に関し労働組合の行為として、たとえば暴力行為がいかなる場合に認められるかという御質問でございますならば、労働組合法上暴力行為はいかなる場合にも許されないとお答えをせざるを得ないと思います。
  145. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣も同様な見解をお持ちですね。——さらに大臣お尋ねしたいのは、労組法上第二組合あるいは組合の分裂というものはあってはならぬという何か拘束規定かあるいはそのような制限規定がありますかどうか、これをひとつお答え願いたい。
  146. 早川崇

    ○早川国務大臣 法律上ございません。
  147. 田畑金光

    ○田畑委員 私、先ほど来いろいろ質問あるいは当局の答弁を聞いて、これに関連して一、二当局にこのような事実を御存じであるかどうかということを承っておきたいと思います。  いまお話しのように、最近特に近畿地方で、全逓の労働運動を批判して脱退者が多数出てきて全郵政に加入しておる傾向が強まっております。こういう傾向であるだけに、両組織問で感情的にもいろいろ高ぶってくるということは、われわれとしても理解できまするが、ただその行為が度を越すということは、いずれの側であってもそれは許されない、組合運動における正当な行為ではない、こう感じておるわけです。ことに、いわゆる新しい脱退者が出てきて、それが全郵政に加入する、こういう事態に対して全逓から非常な妨害なりあるいは誹謗が加えられておる。しかも白昼公衆の面前であるいは職場における勤務時間中に堂々とこれが行なわれて、全郵政に来た組合員の諸君は心身ともに疲労こんぱいしておる、こういう実情を私は私なりの調査によって耳にしております。  具体的な事例を一、二申し上げますと、たとえば大阪の東住吉局、京都北局、あるいは京都中京局において、全郵政支部が結成されたに伴い、全郵政組合に対する全逓の悪質ないやがらせとして、たとえば「仲間を裏切ったのら犬」「犬の病院に入れてやる」「くたばれ」というようなビラを私宅周辺に張りめぐらしておる。全郵政組合員が出勤のため玄関を一歩出たとたん、待機していた全逓組合員がうしろから尾行しながら、携帯マイクで「町内の皆さん、私の前を歩いている者が裏切り者です、交際しないでください」等々と叫んで、いやがらせを行なっておる。こういうことを私は訴えられております。これは非常に常識はずれのことだと考えておりますが、人事局長、御存じであるかどうか、まず承っておきたいと思います。
  148. 山本博

    山本(博)政府委員 今回の近畿の組織動揺に関しまして、そういう好ましからざるいろいろな事件があったという一般的な話としては聞いておりますが、個々の郵便局のどういう人がどういうぐあいにしたということまでの資料はまだあがってまいっておりません。
  149. 田畑金光

    ○田畑委員 一例を申し上げますと、さらに五月の十三日、京都の中央局で全郵政支部結成の動きがあることを察知した全逓の組合員が、その中心人物である貯金外務主任の中島孝一君を午後五時から同十一時半まで集団でリンチを加えておる。事件は、同君が五階の外勤室から廊下に出ると、待機していた全逓青年部組合員が貯金課窓口室に拉致し、反省しろ等々とつるし上げております。同君は長い時間立たされ、いすにすわろうとしてもすわる必要はないと無理に立たされ、疲れて後方にもたれかかるともとへつれ戻され、最後には床にすわり込むと無理やりに立たされて、この間水も食事もとらせない状態が続いております。この間、当局は次長以下各管理者が居合わしておるが、なすすべも知らず、ただ傍観しておるだけ。この事件は京都の七条署に本人が告訴して、いま受理されておる。この事件を御存じであるかどうか、もし御存じであるとするならば、その内容などについて私がいま指摘したことと食い違いがあるかどうか、これをひとつ御報告を願いたいと思います。
  150. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいまお名ざしになりました人物が全郵政結成に際しまし、私たちから見ると人権に関するいろいろな事例があったということについては承知いたしております。また本人が告発したということにつきましても承知しております。
  151. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、先ほどからいろいろ資料の要求がございましたが、この事件の内容と、これがいま告訴されてどのような扱いになっておるか、経緯について資料をひとつお出し願いたいと思います。  さらにもう一つ事例を申し上げますと、京都の中央局で山口伝一君が五月十二日夜勤中、全郵政の中心人物であるとして全逓組合員多数がつるし上げ、夜勤に全然つけない状態にしたあと、翌日引き続いて食堂で同君をつるし上げたため、疲労から同君は精神錯乱状態におちいって、遂に失神して倒れた。こういうふうな事件も起きておるわけでございますが、御存じであるかどうか。私がお尋ねしたいのは、 このようなことが白昼堂々と、たとえ組合の行き方について、お互いが別の道を歩くにいたしましても、同じ仲間同士で、とにかく一方の組合を脱退し、一方の組合に入ったというようなことで、このような取り扱いを受ける、あるいは非人道的な、人権じゅうりんに類するような仕打ちを受けるというようなことは、言語道断と思います。こういうようなことについて当局はなすことを知らぬで放任しているわけですか。いやしくも庁舎の管理権、職場規律の秩序維持をすることは、管理者の使命だと思います。管理者が規律、秩序維持をすることによって初めて公務員が国民の公僕として、忠実義務を履行し縛るでありましょう。私は、労働組合運動においていろいろな行き方があるということは、これは天下公知の事実であって、組合運動の指導理念や行き方に相反するからというので、暴力に類する行為が労働運動の名において行なわれるということは、許すべからざる行き過ぎだ、こう考えるのです。この点について当局はどのようにお考えになっておられるか。  私は特にこの際、労働大臣に見解を承っておきたいと思いますことは、いま私が申し上げたように、指導理念の通いから労働運動が分裂しておることは、不幸ではあるが、事実であるわけです。その結果、御存じのように、総評であるとか同盟であるとか、中立労連、新産別など中央組織が分かれております。しかし、いわゆるナショナルセンターといわれるのは総評と同盟であろうと私は見ておるわけです。しかも、今日まで、この両組織の間にはいろいろな対立関係もあったり、よき意味においては競争関係に立って切磋琢磨して、日本の労働運動の発展に両組織とも寄与してきたと私は見ておるわけです。結局、労働運動とは、どういう行き方が労働者のほんとうの利益を守り得るかということが、あるいはまた、今日資本の自由化、技術革新、国際経済化時代といわれるこの激しい社会経済情勢の中において、どの組合運動の行き方が真に客観的に妥当性を持つかということによって、将来の日本の労働運動のあり方というのは優勝劣敗、勝敗はきまっていくものと考えておるわけです。労働組合というのは、元来思想団体でもなければ、政治団体でもない。あくまでも労働組合の基盤というのは、思想、信条、宗教の自由を前提として、しかも労働組合はどこまでも労働者の経済的地位、条件の向上のためにあるのが、あるべき労働組合の姿だと思うのです。特定の思想や特定の行き方を強制するということは、労働組合の中においてはできないと考えておりますが、私は、これこそ民主的な労働組合のあり方であると、私なりに解釈しておるわけです。今日、労働運動の中において、この基本的な労働組合の行き方について、いろいろ意見の対立から、先ほど申し上げたように、組織の対立がある、競争関係があるということはやむを得ない。こういう場合に特定の組織でなければならぬという労組法の強制はないということは先ほどの前提で明らかになっておるわけです。こういうことを考えてみました場合に、このような事例が今日どこかの地域にあるということはまことに遺憾なことだと、私は感じておるわけでございます。この点について、労働大臣の見解を承っておきたいわけです。  あわせて先ほど、特に郵政省の職場規律の確立という面から見て、私が先ほどあげたような事例に対しまして、当局としてはどのような考えを持ち、今後どのように取り組まんとなさるのであろうか、これを明確に承っておきたい。
  152. 早川崇

    ○早川国務大臣 田畑委員の言われるようなことが事実であるとすると、ちょうど終戦直後の混乱時代によくあった事例でございまして、今日におきましても、そういう行為が白昼公然と行なわれるということは、まことに民主主義また健全な労働運動にとって遺憾にたえないところでございます。当然そういう違法行為、人権侵害については刑事手続もございます。また職場規律に違反して、そういうことをやられるとするならば、行政処分の道もあるわけでございますから、厳重にそういう措置をとられることが望ましいと思うわけでございます。  同時に、労働組合が、いろいろ遺憾なことかもしれませんけれども、同盟ありあるいは総評ありというようなことでございますが、自由な組合結成というのは憲法上また労組法上認められておるわけでございます。これについてはいかぬというようなことは絶対言えないわけです。自由な労働組合の結成は、法律の許すところでございます。これと離れまして、そういった違法行為あるいは人権を無視した行為、また職場規律を侵害する行為というようなことはまことに遺憾だと思います。
  153. 山本博

    山本(博)政府委員 私どもといたしましては、二つの組合があるということはすでに現実でございます。したがいまして、二つの組合の間の移動ということにつきましては、各人自分考え方に基づいて、平和裏に行なわれることは非常に望ましいことだと思っております。それに伴いまして、暴力行為が発生するという場合は、事のいかんを問わず、私はことにいけないことだと思います。特に庁舎管理権もございますし、勤務時間内の服務規律の問題もございますので、そういう事実が発生いたしましたら、過去にも例がございますので、そういう処分を考えております。今後規律を正していきたいというふうに考えております。
  154. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、本日は質問を終わりますが、先ほど私があげました事例について、ひとつ資料を要求いたしておりますので、さらにそれに基づいて、次の機会などに質問を続行したいと思っております。  以上で終わります。
  155. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 次会は、来たる二十五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十八分散会