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1967-05-16 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十六日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 竹内 黎一君    理事 橋本龍太郎君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       菅波  茂君    世耕 政隆君       田中 正巳君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    中山 マサ君       藤本 孝雄君    箕輪  登君       粟山  秀君    山口 敏夫君       渡辺  肇君    枝村 要作君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       佐藤觀次郎君    島本 虎三君       八木 一男君    山田 耻目君       山本 政弘君    本島百合子君       和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 早川  崇君  出席政府委員         総理府人里局長 増子 正宏君         警察庁警備局長 川島 広守君         林野庁長官   若林 正武君         郵政省人事局長 山本  博君         労働政務次官  海部 俊樹君         労働大臣官房長 辻  英雄君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君  委員外出席者         日本国有鉄道職         員局長     武田 啓介君         日本電信電話公         社職員局長   遠藤 正介君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月十二日  委員粟山秀辞任につき、その補欠として千葉  三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員千葉三郎辞任につき、その補欠として粟  山秀君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員佐藤觀次郎君及び近江巳記夫辞任につ  き、その補欠として山田耻目君及び大橋敏雄君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員山田耻目君辞任につき、その補欠として佐  藤觀次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  理事井村重雄君同日理事辞任につき、その補欠  として橋本龍太郎君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事井村重雄君から理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任を行ないたいと存じますが、委員長より指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認めます。理事橋本龍太郎君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 川野芳滿

    川野委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。加藤万吉君。
  6. 加藤万吉

    加藤(万)委員 労働省関係について実は質問したいのですが、大臣がまだお見えになりませんから、先般西風委員質問いたしました山口放送事件について、特に私のほうから、最近の労働争議警察官介入の問題について御質問を申し上げたいと思います。  最近、山口放送もそうでありますが、ラジオ関東等におきまして、いわゆる放送関係における労使関係が非常に不安定であります。さらに加えて放送関係一般的労働争議に対して警察官介入が目立っておるような気がいたします。また事実山口放送紛争については、警察官介入が行なわれました。その警察官介入のきっかけになっておるのは、企業の側のロックアウトに対する警察官出動要請であります。  そこで、私は、この際労働争議におけるロックアウト警察権力介入という問題について、二、三御質問を申し上げてみたいと思います。  最初に、労働争議におけるロックアウト、それに対する警察官出動要請という問題がしばしば行なわれるわけですが、このロックアウトに対する現在の警察庁警察官に対する指導ないしは出動する判断基準といいましょうか、この辺について警備局長からお答えを願いたいと思います。
  7. 川島広守

    川島政府委員 労働運動に対します警察の基本的な態度といたしましては、正当なる労働争議については、介入をやらないというのが基本的な態度でございまして、そのような方針で指導をしてまいっておるわけでございます。  ただいま御質問のございました山口放送の問題につきましても、いま申しました基本的な原則からはずれた取り扱い等をしておるとは考えておりません。お話のように山口放送の問題は、警察に対しまして連絡がございましたのは、五月六日の日でございまして、御案内のとおりに、労働争議が起こりました場合には、過去の例でもしばしばそうでございますように、さまざまないわば不法事犯が随伴することが非常に多うございますので、警察といたしましては、そのようなものに対してふだんから重大な関心を持っております。そういうようなたてまえで、事前労使双方に対しましてさまざまな連絡なりあるいは事実上の警告なりということをふだんもやっております。したがいまして、今回の場合も警察側といたしましては会社側からの連絡、それから建造物侵入不法事態が起こりました後において要請がございましたので出動いたしたわけでございます。
  8. 加藤万吉

    加藤(万)委員 労働争議におけるロックアウト、法律的にはいわゆる先制的ロックアウトというのは、一般的に禁止をされておるわけですね。いわゆる労働者側ストライキに対する対抗手段としてのロックアウトは、違法性阻却されていることを指摘しておるわけでありますけれども一般的に先制的攻撃的ロックアウトというのは違法性が強いということが過去の判例についてたくさんあります。この辺についての見解はどうです。
  9. 松永正男

    松永(正)政府委員 ただいま御質問ロックアウトでございますが、現在の労使関係法におきまして、具体的にロックアウトについての規定というものはないわけでございます。しかし、一般労働法の法理といたしまして、御指摘のごとく何回かの裁判におきまして判例も出ておりまして、大体の趨勢、その解釈通説的なものといたしましては、ただいま御指摘のごとく先制的、攻撃的なロックアウトでなくして、受動的あるいは防御的なロックアウトについては使用者側争議手段として合法なものであるという線が通説として出ておるようでございます。
  10. 加藤万吉

    加藤(万)委員 明快な答弁だと私は思うのです。  そこで、警備局長にお聞きしますが、五月の六日に本争議に関してロックアウト通告を受けられたと言いますけれども現地徳山警察署古谷という警備課長が五月の五日に受けております。五月五日の、しかも正午です。このときはまだ争議に入っておりません。ストライキに入るのは五月六日の午前零時です。五月五日の午後零時ですから、十二時間前にロックアウト通告を受けているわけです。五月六日の午前二時からロックアウトを行なうから、したがって警察のほうの関係はよろしくというごあいさつがあったんですね。いまの局長お話から判断をしますと、これはまさに違法なロックアウト、いわゆる攻撃的ロックアウトというように私は見るのです。しかも、警備局長お話現地徳山古谷警備課長の話とは、だいぶ時間的にも食い違いがあるのですが、この辺についてどうですか。
  11. 松永正男

    松永(正)政府委員 先ほど私が申し上げました見解は、一般的な通説的なものになっておりますが、しからば、防御的、受動的なロックアウトというものが個々具体的なケースにおきまして、どういうものが受動的、あるいは防御的なものであるかということにつきましては、個々のケースによりまして非常に違うわけでございます。  したがいまして、その一般通則を当てはめてみまして、このケースがどうであるかということにつきましては、私、労働省といたしまして見解を述べたわけではございませんので、御了承を願います。
  12. 加藤万吉

    加藤(万)委員 あらためて質問しますが、それでは、ストライキ以前にロックアウトの計画をし、しかも警察側通告しているという事態についてはどう判断していますか。ストライキ以前についてですね。
  13. 松永正男

    松永(正)政府委員 労使間に全然問題がございませんで、しかも労働組合のほうからストライキをやったこともなく、またスト通告もなく、ストライキの起こるおそれもないというような状態想定をいたしますと、その際に経営者側から一方的にロックアウトをかけた、これはやはり先ほど申し上げましたような原則に照らしますと正当なものではないというふうに思うのでございますが、これは、まあそのような条件想定いたしました場合の解釈でございます。
  14. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私もしばしば労働争議に参画していますから、こういう状態でいわゆる事前ロックアウト通告警察側に行なっているというのは初めてなんです、いままでの私の経験の中では。したがって、これはまさに違法なロックアウトというふうに実は判断をしておるわけです。  この問題は率直にいって、本委員会の問題よりも裁判所の問題になるかもしれませんから少しおきますが、ロックアウトあるいはこの事件を通してみますと、たとえば午前零時からストライキに入って午前七時、朝の七時に非組合員が作業についているわけですね。これに対してピケットラインを張っているわけです。ここで私はひとつ警察庁にお聞きしたいのですけれどもピケットラインというのは一般的には労働法令上ないしは労働争議上許されている行為というふうに理解し、今日までそういう判例が多くあります。このピケットラインは何から発しているかといえば、憲法に保障されている団体行動権ないしは争議権から発していることは御案内のとおりであります。このピケットライン不法だということで、警察官出動建造物侵入という罪名——被疑容疑といいましょうか、それによって警察官出動が行なわれているということが今日の事案のように私は考えられるわけです。こういう、一方では憲法に規定されている団体行動権、一方はいわゆる市民法上の建造物侵入、これが対等に比較をされるということについて、こういう形の中で警察官出動するということについて、その基準が誤っていないですかどうですか。
  15. 川島広守

    川島政府委員 先ほども申し上げましたように、警察側が取り締まりその他を行ないます場合には、争議行為そのもの正当性の限界を越えておるという場合にのみ行なうわけでございまして、ただいまお話のございました山口放送の具体的な場合について申し上げますならば、いま御案内のように、たとえばピケットラインの問題としましては従来から判例が示しておりますように、平和的な説明の範囲を越えてはいけない、これが判例通説の教えるところと思います。  今回の場合は御承知のとおりに、組合員五十名程度の人たちが、会社側でしつらえました有刺鉄線でつくりました阻止線そのものをゆさぶり、あるいは力で押し倒してそして入ったわけでございますから、明らかにこれは暴力行使にわたっておることは明白でございます。そういうふうな立場建造物侵入罪逮捕した、こういう経緯でございます。
  16. 加藤万吉

    加藤(万)委員 本件については、具体的事象については後ほど関連して山田委員のほう、ないしは枝村委員のほうから質問がありますからおきますが、私は警察官出動というものは、いわゆる市民法上の問題から想定をして出動されるべき性格のものでは実はないと思っている。たとえば、ロックアウト会社側から一方的に行なわれて、それに対して立ち入り禁止仮処分が出た、その仮処分禁止命令を破って労働者ピケットを張りそれに抗議をする、そういう行為が行なわれた場合には、私は今日の日本の法律上からいって警察官出動ということがあり得ることもあると思うのです。百歩譲ってみても、いわゆる仮処分禁止命令が出たときに初めて警察官、いわゆる権力争議介入する最低のスタンダードだ、こういうふうに私は理解をしておるのです。この場合、午前零時にストライキに入って二時にロックアウトがあって、しかもそのロックアウト通告警察に対しては前日に行なわれておって、そうして早朝の七時、いうならば組合員は知らない者も出てきたわけですね、ロックアウトということに対して。そういう中で行なわれる行動、それは憲法に保障されておる争議権の発動として、法律的には阻却をされるべき性格のものだと私は思うのです。その阻却をさるべき状態の中に警察権力介入をする、警察官出動するということは、すなわち争議に対する権力介入である、こういうように私は判断をするのですが、いかがなものでしょうか。
  17. 川島広守

    川島政府委員 先ほども申し上げましたように、争議行為正当性というものは、やはり暴力行使にわたってはいけないということが判断基準であろうかと思うのであります。  いまお話しの、たとえば、仮処分による立ち入り禁止があるべきであるというお話でございますが、われわれといたしましては、通常、多くの場合において、お話しのように仮処分を伴う場合が過去においては少なくはなかったかと記憶しておりますけれども、われわれといたしましては、必ずしも仮処分による立ち入り禁止の処分が前提でなければ出てはいけないというふうには考えておらないのでございます。
  18. 加藤万吉

    加藤(万)委員 その判断の場合でも、争議が非常に長期的に行なわれて、しかも労使間で衝突事件が起きる可能性があるとか、あるいはその産業が非常に社会性を持っているとか、そういう幾つかの条件がととのわれて初めて警察権力介入すべきだと私は思うのです。したがって、そういう状態になれば当然、企業の側からいけば仮処分執行命令裁判所に提起される場合もあるでしょう。あるいは審理が長引くからということで、その間に警察官出動することがあると思うのです。そこまで私は譲りましょう。それにしても、午前三時にロックアウトを行なって、しかもそれは委員長の宅に通告書を持って行っただけですよ。警察官が七時にはもう出動しているのですね。その七時の事件は、いま言ったように夜中の二時に行なわれたわけですから、組合員の中には知らない者もあるわけです。あるいはそういう状態がどういう状態かということも理解しないで入った者もあると私は思うのです。そして会社側ロックアウトを行なっているのはおかしいじゃないかという抗議行動を行なって、それがもう建造物侵入であり、あるいは行き過ぎピケットラインだと、こういう判断をされて、午前九時には、かかれという命令のもとに逮捕者を出すというのは、どう見ても私は、この際の事件に対しては警察官行き過ぎではないかというように理解をするのですが、現地判断から見てどうですか。
  19. 川島広守

    川島政府委員 先ほどお話のございました、前日に警察側のほうに話があったということでございますが、私も、前の日の午後一時ごろに署長に対してそのような連絡が事実上あったことは聞いております。先ほどもちょっと申し上げましたように、警察といたしましては、本件に限らないわけでございますけれども、多くの場合に、労働争議が起きました場合には、言ってみますれば一種の戦争状態でございますので、多くの場合にいろいろな暴力事犯が随伴しておる。そういうような実績も多うございますので、事前においていろいろと関心を持って労使双方に対して連絡をしたりあるいはまた話し合ったり、あるいは事実上の警告をしたりすることは、ふだんの場合もやっております。またそうすることが事前に、不幸な暴力事犯の発生を見て検挙者を出すというようなことを招かないためにも、そのような措置が好ましかろう、こういう基本的な考え方でやっておるわけでございます。
  20. 枝村要作

    枝村委員 関連。加藤委員からロックアウトの問題でちょっと質問がございましたが、私どもは、ロックアウトが先制的な攻撃的なものであろうが、あるいは防御的なものであろうが、基本的にはこういうロックアウトは認められないというように考えておるのです。しかも現行法ではそういう認める条文はありませんし、ただ私的所有権を確保する、守るという立場から事実上のロックアウトというものが現存するということは認めておるわけであります。しかし、いまの学界の中で、このロックアウトそのものを認めるという立場にある人でも、警察権介入するとか、あるいは裁判所介入するということは避けねばならぬ、そういうロックアウトは、そういう人でもいけないというように判断しておると思うのです。  今回の山口放送事件は、これは明らかに純粋の賃金を支払わないという、そういう意味ロックアウトではないのでありまして、初めから計画的に警察官介入させて、労働組合の団結を破壊し、そして労働組合の中からいろいろな分断工作を行なって、民主的労働運動を破壊しよう、こういうねらいがいろいろな証拠の中に出てきておるわけであります。そういう意味で私どもはいろいろ説明を求めたり追求をしようとしておるのであります。そしてまた労働組合暴力行為をふるったなんて言っておりますが、事実はそうではありません。あとから写真など見せましょうが、警察官そのもの暴力行為を行なっておる。たとえば、けったり、なぐったり、写真証拠になってはっきりあらわれておるように、逆手を持って連れ出しておる事実が明らかにされておるのです。そういうことをやっておる山口放送事件でありますだけに、私も非常に重視しておるのです。ただ単に一山口放送事件だけでなくて、いま春闘が盛んに行なわれております。その中で過去にも行なわれましたが、今回いまから山場を迎えるいわゆる公労協、公務員の闘争の中でこういうことがないようにしたい、こういう意味質問しておるのでありますから、ひとつ慎重に答弁するなりあるいは善処方を要望したいと思います。  そこで、具体的にお尋ねしたいのですが、五月五日に、これはもう先ほど加藤さんから言いましたように、はっきりと会社側県警の本部に行って警備部長ロックアウトをやるからよろしく頼むということを言っております。その場合警察はそれに対して、何かそれはいろいろ問答はしたでありましょうけれども、結論的にはよろしいということで直ちに準備活動に入っておる。こういうことは先ほど警備局長は認められましたが、そのとおりでございますね。
  21. 川島広守

    川島政府委員 先ほど加藤委員の御質問に対してお答えいたしたとおりでございますが、警察側といたしましては、先ほどロックアウトを前日に警察側連絡したということでございますが、それは連絡を受けたと聞いております。そのようなことは決して今回の場合だけに限りませんで、そしてまたそれは使用者側からだけの連絡ではございません、いろいろ労働紛争が起こります場合には、事前組合側のほうからも同じようないろいろな事案が、あるいは紛糾するかもしれない、そういう場合に警察側としても適切な措置をとってもらいたいというような趣旨のことも連絡を受けることも間々ございますし、警察側会社側ぐるになってというふうなお話のようでございますけれども、決してそのようなことは全くないと聞いております。
  22. 枝村要作

    枝村委員 しかし、実際には会社がいわゆる警察連絡をとったのはそれだけでありまして、あとはすべて電話一本で出動もしておるし、いろいろな行動をしておるという、これはもうはっきりしております。だとすれば、いま私はぐるなんということは一ぺんも言っておりませんが、あなた自身がぐるだ、結託したというようなことを言っておりますが、ですからそれ自体会社警察が客観的には野合して、ぐるになってやっておるということを物語っておるものでありますから、その点はあなたのほうではもう少しよく確かめて処置されることが正しいと私は思います。  それから現地での警察官態度行動ですが、これは私どもしばしば経験しておりますが、山口放送のこの問題は、われわれから言わせると、きわめてまれに見る、でたらめな、警察官にあるまじき行為をしておる、こういうように思います。そのことの一番の原因は、やはり山口県警が大体労働運動に対する理解が全然ないということと、それから労働組合員がいろいろな団体行動をする場合、それはもう犯罪人がいろいろな事件を起こす、こういうことと同一視しておる、こういうところに警察官の横暴な態度が出てくる原因があるというように見ておるのです。それは過去の山口県の県警の行ないましたいろいろな取り扱い件数を見ても、全国的には非常に多いわけなんでありまして、たとえば山口県で刑事事件が発生した件数を見ましても、昭和二十九年から四十二年、これは逮捕者が百二十七名、それから起訴された者が九十五名、こういう件数山口県で起きておるわけでありまして、そういういろいろな経験を持つ山口県警であるだけに、今度の山口放送事件では、おそらくいままでのそういうやり方と同じように、またそれを倍するようないわゆるでたらめな行為をやったというように思うわけでありまして、むしろ私ども警察官そのもの暴力をふるった、こういうふうに見ておるのでありますから、警察庁もその点でもう一ぺん調べてもらいたいと思います。  それから、民放労連委員長を名指しで逮捕した、このことは聞いていらっしゃるでしょう。
  23. 川島広守

    川島政府委員 事案概要につきましては、先ほどお答えいたしたとおりでございますが、現地山口県からの連絡によりますと、竹村委員長という方は終始黙否権を使っておられたようでございますが、逮捕時における服装は、腕に民放労連と書いた腕章をつけておられたというふうに聞いております。逮捕いたしましたときには、その方が委員長であるかどうか、そういうことはもう全然現地警察では承知しておらなかった、こういうふうに聞いております。
  24. 枝村要作

    枝村委員 いろいろあるんですけれども、時間がありませんから申し上げませんが、とにかく今度の警察官出動の理由は、その法的根拠警察官職務執行法第五条を適用したというふうに言っておるわけなんです。五条は、申し上げるまでもなく皆さんよく知っていらっしゃいますが、そのどの項に一体該当したから出動したのかということなんです。それを聞きたいと思います。
  25. 川島広守

    川島政府委員 警察出動いたしましたのは七時過ぎてからでございます。先ほども申しましたように、結果的にわかったことでございますけれども竹村委員長が、率先、先頭に立たれて、そして組合員の五十名の人を連れて、二重に張りめぐらされておりましたバリケードを、外側のとめがねをはずして、そして内側に張られておりますバリケード、その内側から会社側職員が四名で、入られないように力で押しておったわけでございますが、それを押しのけて入られたわけでございます。その時点で警察官が出たわけでございます。その後、中に入られて、本館の三階の廊下に約三時間にわたってすわり込みを行なった、こういう事案概要でございます。  いまお話警職法五条の項云々であるというお話でございますが、それは廊下にすわり込まれて後、会社側からも十数回にわたり警告がなされ、さらにまた現場に出動しました警察官からも口頭で十数回にわたって、退去してくれるよう警告を発したわけであります。したがって、そのまま推移いたしますれば、会社側職員に対する暴行というふうな事案も起こりかねまじき状態でございますし、たいへんな興奮状態でその両側にすわり込んでいられた、そういうような状態でございます。したがって、条文で申しますれば警職法五条の後段を根拠にして出動を行なった、こういうことでございます。
  26. 枝村要作

    枝村委員 それは「生命若しくは身体に危険が及び、」というようなところですか。それから「財産に重大な損害を受ける」という、こういう後段の項ですか。
  27. 川島広守

    川島政府委員 お話のとおりでございます。
  28. 枝村要作

    枝村委員 それはそういうふうに警察官あるいは指揮者——この場合署長ですが、署長が思ったということであると思うのですけれども、そういうふうに判断をした。判断基準になるのは、先ほど言いましたように、労働運動そのものを暴力団というふうに見る、こういうふうな観念が先行しておる。ちょっとシュプレヒコールあるいは紛争のある場合には、お互いに興奮はせぬにしても、一つの労働運動労働争議の慣例として、大きな声をあげるということはあたりまえのことです。にもかかわらず、そういうことを想定してやるということは、先ほど何回も言うように、そういう観念が、労働組合行動隊あるいは労働運動そのものを犯罪人と同じように見ておるところにあるのでありますから、これは私はけしからぬと思う。ですから、ほんとうに民主的な警察官であるならば、そういう場合でも冷静になって、会社側の言うことばかり聞かずに、労働組合指導者、しかも民放労連は中央の委員長が出ておるんですから、その人とゆっくり話し合いをすればああいう事件は起こらない。私ども、いままでしばしば経験しておりますが、そういう非常に、何か起こりそうな、いわゆる客観的な事情が起きた場合でも、お互いに冷静に話し合ったときには、必ずその行動そのものは円満に終止符が打たれておる。ただ、同じゴボウ抜き——退去を命令して出す場合のメンツの問題がありますから、こう連れて出るということがありましても、それもお互いに理解し合ってする場合には、ねじ上げたりあるいはあばれたりするようなことはないはずで、静かに連れていくという場合も出る。それを現地警察官はやらずに、全然頭から会社の言いなりになって、暴力団を会社の中から外に追い出すというようなそういう取り扱いをしておるところをわれわれ問題にしておるのでありますから、この点もひとつ、むしろ私は警察庁から、下部のそういうことをやった連中に対して厳重な処分をしてもらいたいというふうに思っている。  それからもう一つだけ。警察官、あるいは警察庁も同じことなんですが、竹村委員長の身分はもうはっきりわかっておるにもかかわらず、故意に、あるときは身分を明らかにするところにはっきり氏名を明記したり、あるいは都合の悪いときには、氏名や住所がわからないというようなことを記載して、いろいろな手を打っておるという事実があらわれてきておるのです。これは勾留請求の場合に明らかにされておりますが、いわゆる勾留請求状を出すとき、裁判官をごまかすために氏名、住所を不詳ということで請求状を出しております。ところが、竹村さんが逮捕されたとき、身分証明書あるいはパスがちゃんとあって、それをとっておるんですから、だれかわかっておるはずです。にもかかわらず、こういう取り扱いをする。ところが家宅捜索——ガサをやるときには、ちゃんと竹村の名前を書いた押収令状を持ってきておる。こういうふうないろいろ手の込んだ手を使ってやっておる。こういうことが明らかにされております。こういうことを見ましても、先ほどから言いますように、竹村さんを最初からねらい打ちに逮捕して、そうしてこれをさらに拡大して、組織のいろいろな分断工作に使おうという、こういう意図だと思う。それをしかも会社だけでなく、警察が一緒になってやっている。こういうように考えておりますので、これは質問でありませんが、中央の指導者である皆さんが、そういうだれが見ても不法行為であるという今回の山口放送に対する県警のやり方に対して、厳重なる処分なりあるいはいろいろな形で、今後こういうことが起こらないようにしてもらいたいということを申し上げて、関連質問を終わります。
  29. 加藤万吉

    加藤(万)委員 実は本問題についていま少し解明したい点があるのですが、大臣が十一時半まででございますので、はなはだ失礼かと思いますけれども、いまの質問をひとつ中断をさしていただいて、大臣関係する問題を先に御質問さしていただきたいと思います。  大臣にひとつお聞きしたいのですが、春闘が私鉄の争議、ことしは自主交渉ということで解決をいたしました。したがってあと、まあ私の判断するところでは大きな産業といいましょうか、労使紛争では公労協と石炭関係が残っているというように思いますが、これらの概況について御説明願えれば幸いと思います。
  30. 早川崇

    ○早川国務大臣 民間における賃金紛争についてはおおむね妥結を見ておるのでございますが、業種により、やはり若干の開きが見られます。金額では、定昇を含めておおむね三千二百円から四千五百円というところになっておるわけでございます。その他石炭、車両、紙パルプ、セメント、ガスなど、あるいは中小企業関係の多くはまだ未解決でございまして長期化を予想されるものもございますが、これらの問題につきましても、労使が平和的に話し合いをすることを現在期待しておるのが現状でございます。
  31. 加藤万吉

    加藤(万)委員 けさほどの新聞によりますと、公労関係に関して本日閣議で御決定があるそうでありますから、閣議決定後の処理について、また御質問の機会を与えていただきたいというように思います。  ただ、私はその中で一つだけ質問をしておきます。今度の私鉄の争議は御案内のように自主交渉ということで労働委員会の職権あっせんによらずに解決を見たわけです。これに関連して、先般の本委員会でも田邊委員質問いたしましたが、公労協の場合の当事者能力について、非常に関心も深いし、またそういう方向にいかなくてはいけない。特に私鉄の場合に自主交渉という形で近年まれに見る形で解決を見たわけですから、そういう意味では、三公社五現業それぞれが当事者能力をもって解決をする、こういうことが必要だろうと私は思うのです。  そこで、大臣がしばしば述べられておりますように、いわゆる調停段階で本紛争については解決をするという意思、今日でもその意思にお変わりがないかどうか、ひとつ御確認をしたいと思うのです。
  32. 早川崇

    ○早川国務大臣 予算審議中でございますので、予算の修正というようなことになりまするとなかなかむずかしい点がございまするが、調停段階で実質的に妥結するように誠意ある態度を三公社五現業も本日いたしたはずでございます。したがって、今後労、使、公益の調停委員の中で良識ある、しかも常識的な調停案ができまして実質的に妥結する。形式上は予算の関係で仲裁ということになるかもしれませんが、そういうことが公労協の労使関係の前進のために非常にけっこうなことだ、いいことだという意味で、せっかく努力をいたしておるのでございます。
  33. 加藤万吉

    加藤(万)委員 五月の八日に官房長官が談話を発表されました。全般的に私は官房長官の談話を歓迎する立場にあります。ただ、その談話の中で少し気がかりになることは、いわゆる一部の企業において云々という問題がありまして、その後当委員会でいろいろ政府側のやりとりの間で、これについては大体国鉄がその対象になるということも明らかになりました。  そこで私は、いま大臣の答弁で調停段階でできる限り解決をする、実質的に解決するという方向をとりたいという、こういう御意向ですから、そうなりますと、当然のこととして、あの官房長官談話の中の一部の企業においてはということは、これに当てはまらないと私は判断するわけです。したがって国鉄の調停、いわば国鉄の赤字問題をかかえたいろいろな調停段階の問題点はあろうかと思いますけれども、何か一部の企業、赤字をしょい込んだ企業であるから云々という阻却は、この際は行なわないようにひとつしていただきたい。逆に通俗なことばで言うならば、まま子いじめをするような国鉄の取り扱いはひとつしないでほしい、こういうように、これは要望を申し上げておきます。  関連していま一つお聞き申し上げますが林野庁の問題、林野の場合にも調停委員会でそれぞれ行なわれたわけですが、林野庁の、特に国家公務員でありながら季節労務あるいは通年雇用等に携わっておる労働者の賃金、これについて、これは林野庁のほうにお聞きしたほうがよいかもしれませんけれども、どういう交渉の経過になっておるかお聞きをしてみたいと思います。
  34. 若林正武

    ○若林政府委員 林野庁関係の日給制職員の新賃金の問題でございますが、ただいま団体交渉を十回ほどやっておりまして継続中でございます。私どもといたしましては、この団体交渉の中で誠意をもって解決をするように努力をいたすつもりであります。
  35. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は新人でありますから、よく国家予算がわかりませんが、林野庁の職員の賃金は林野庁予算の中のどういう科目にあるのですか。
  36. 若林正武

    ○若林政府委員 事業費の中に各事業ごとに組まれております。
  37. 加藤万吉

    加藤(万)委員 その事業費というのは、たとえば車馬賃等も含まれておる内容になっておるのですか。
  38. 若林正武

    ○若林政府委員 車馬賃等は入っておりません。
  39. 加藤万吉

    加藤(万)委員 長官御存じだろうと思いますが、いわゆる日給労務者といいましょうか、身分は国家公務員でありますが、通年雇用、いわゆる常用、定期あるいは季節、それぞれ非常に身分が区分をされておりますね。その関係で賃金格差が非常にあるわけです。そこで問題になりますのは、いわゆる定員内職員については、いま調停段階にありますから、これは言及を避けますけれども、この常用、定期あるいは臨時作業員等の賃金が、もしもかりに公労協の調停段階あるいは公労協の妥結段階で、いわゆる率で妥結をしますと、もともとが賃金ベースが低いわけですから格差がますます拡大をする方向に向かうと思いますが、この辺に対します見解はいかがでございますか。
  40. 若林正武

    ○若林政府委員 作業員の賃金につきましては、これは団体交渉で決定をいたします。具体的には地方別、職種別に団体交渉で決定いたしますので、その時点におきまして配分等については組合と交渉をすることになっております。
  41. 加藤万吉

    加藤(万)委員 林野庁の問題につきまして、失業保険法との関係がありますから、あとでいま一ぺん聞きます。  先ほど大臣の報告の中で、石炭産業について賃金がまだ解決してないということですが、これは前にも西風委員質問申し上げましたように、いわゆる有沢答申以来、石炭の再建整備計画、その中で各社における賃金コストが七%の限界で組まれておるわけです。ここで私は、大臣にひとつ御質問しますが、労働大臣立場から見て、石炭の再建計画に最も重要な施策というものは何でございましょう。
  42. 早川崇

    ○早川国務大臣 石炭の大きい問題は、やはり私は労務問題だと思います。したがって、現在従事している労働者が安心して働けるような対策、また、新規労働者はなかなか来ないものですから、スクラップされた事業からの雇用とか、いろいろそういった問題がございます。したがって、石炭産業は御承知のような状況でございますから、非常に特殊な事情で経営者も困りますけれども労使が、その困難な実情のもとにおいて、できるだけのことをして労務の安定をはかっていきたい、そういう観点から年金の特別制度も設けましたし、先ほど指摘の有沢答申の積算基礎になっている七%のベースアップというのは、昨年は一〇%以上やはりベースアップ——一昨年もしているわけでありまして、これは労使の自主的な交渉でベースアップはきまるべきものである。七%というものを固定することはないのではないか。ただし、これはあくまで労使間の問題でございますので、政府としてこれに直接介入してどうこうするという筋合いのものではないのじゃないかと思っております。
  43. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私鉄の争議のときに、いわゆる公共性という立場から職権あっせんという方法をとられたわけですね。私は、それは一つの方法だろうと思うのです。石炭政策は、今日労使間の問題が再建整備について一番重要だとおっしゃられましたが、この石炭再建政策は私的なものよりも、むしろパブリックなものになっていると私は思うわけです。そうしますと、労使関係が石炭再建計画について一番重要だと言いながら、それを自主交渉におまかせになるのは、今日の政府の石炭政策あるいは財政政策等から見ていかがなものでありましょうか。
  44. 松永正男

    松永(正)政府委員 ただいま御指摘のように、私鉄の場合とは性質が違いますけれども、石炭産業がエネルギー源としてやはり日本の産業の中で非常に重要なウエートを占めているという点につきましては、先生御指摘のとおりだと思うのでございます。ただ、ただいま大臣から答弁がありましたように、石炭産業全体が他のエネルギー源との関係におきまして非常に大きな問題をかかえている。そこで、石炭産業の再建計画につきまして、石炭鉱業審議会等におきましても、有沢会長はじめ、いろいろ皆さん御苦心をされておられるのでございます。さればといって、一方におきましてやはり労働力不足の事態日本の中に発生してまいっておりますので、やはり良質の労働力を確保するということ、それから従業員が張り合いを持って働けるような体制にすること、これは非常に重要なことだと思うのでございます。したがいまして、石炭産業につきましても、その重要性においては非常に大きいものがございますので、たとえば賃金紛争につきまして当事者間において話し合いがなかなかつかないというような場合に、双方からたとえば労働委員会にあっせんなり調停なりを申請するというような場合におきましては、労働委員会は労働委員会立場といたしまして、そのような現状に即しまして、これは政府とは独立の機関でございますので、労働委員会としての判断によりましてその問題を処理するということになるのではないかと思います。
  45. 加藤万吉

    加藤(万)委員 だんだん明らかになってまいりましたが、自主交渉といわれても、石炭の場合にはいわゆる公的問題が相当部分ある。というのは、一つは政府の財政投融資、これは一つの側面とされるでしょう。いま一つは、石炭労働者は、御承知のとおり、スト規制法で縛られているわけですね。保安要員の総引き揚げというのは、御案内のようにスト規制法で拘束されておるわけです。そうなりますと、国民の税金で石炭政策の再建計画を行ない、そこに働いている労働者は、いわゆる一般社会的な労働力供給に必要なすべての条件、それを整えることが再建計画に非常に必要だ。しかも、それが自主交渉で、一方でストライキ規制法で制限をされておる、こういう状態にあるわけです。  そこで、私どもの聞くところによれば、炭労はそういう状況があるから、今日労働委員会に本問題の解決を依頼するという状況にあるわけです。ところが、資本の側は、先ほど質問いたしましたいわゆる七%のコストの問題、あるいはいろいろの問題等をめぐってこれに応じないという状態にあるわけです。そうしますと、いまの局長お話からいきますと、日本のエネルギー政策として労働政策が重要だといえば、その再建の一番重要なことは労使関係だというふうに大臣は言われておるわけですから、それを労働者側から、公益機関である調停委員会に調停を依頼しようとしておるわけです。もし、長期のストライキがずっと続くことになって、スト規制法に拘束されない部面が保安要員の総引き揚げを行なうことになれば、これは御案内のように、今日の石炭山の状態からどういう状態になるかわからないのです。それを防止し、なおかつ石炭産業再建政策を行なうという道を、労使間の紛争については、労働委員会労働者側が求めておるわけです。そこの時期までまいりますと、当然これは労働省、いわゆる関係当局として何らかの行政的な指導がなされるのが至当だというように私は考えるわけです。局長先ほど言われたとおりです。したがって、いまの時期にいまの調停委員会に問題がかかっておるわけですから、これに対して、一体大臣はどのようにお考えになっておるか、ひとつお聞きしたい。
  46. 早川崇

    ○早川国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でありまして、炭鉱労働者は保安要員を除きましてやはりストライキ権を持っておるわけであります。あくまで政府がいろいろな援助をしておりますし、特別の援助をしておる山がたいへん多いわけですけれども、さればといって、私企業であることには変わりはないわけでございまして、そういう意味で、いま御指摘労働省が行政的に関与するということも、もう少しいろいろな角度から検討してやらなければならない点が多々ございますので、御意見は御意見として十分承って善処いたしたいと思います。
  47. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最後に一つだけ意見と要望を申し上げておきたいと思うのです。  政府側が賃金に対する指導を行なうときには、ややもすれば所得政策に類する面が非常に多いのです。たとえば七%で押える、ないしはそういう行政指導をされる。今日の石炭の再建計画という問題から見れば所得政策とは見られませんけれども、たとえば海員争議における賃金の問題、前年度分が七%ですね。そういうように全般的に見ていくと、最近労働省や通産省でもそうですが、大蔵省でも、業界を指導されるときの労務関係は、やや所得政策的傾向を持っておるきらいがあるのではないか。特に石炭政策の場合に七%で賃金を一つの基準を与えていくということになると、いま一つの角度を変えて見るならば、再建計画とは別個に所得政策の方向というものが、何となしに私どもはにおいがしてしようがないわけです。したがって、先ほど大臣が言われましたように、確かに本問題は自主交渉でしょうが、しかし、自主交渉だけに放置することはいけないと思うのです。また、政府側がいつも労使関係指導されるときには、大体この辺、ことしは云々というような——今日ではなくなりましたけれども、前の大臣のときにはそういうこともあったわけです。したがって、指導されるときに、本来石炭産業における労働力供給という面から見て、良質な労働力をどう求め、労使間を安定させ、しかも客観的には、先ほど大臣から御説明がありましたように、四千円から四千五百円という中で今日の賃金がきめられつつあるということです。これを炭鉱に引き直せば一四%ないし一六%ぐらいになるかもしれないと思いますけれども、そういう条件を踏まえて、そこに行政指導面、私は関与はあまり感心しませんが、労働委員会にかかっているという事件の行政指導面のポイントをひとつ置いてもらいたいと思う。少なくとも所得政策に類するような指導行政というものをぜひとも配慮していただく、この辺をひとつ御要望を申し上げて、とにかく今後起きる労使間の紛争では、公労協と石炭産業、なかんずく石炭産業は国会のたいへんな問題になっている問題ですから、そういう意味では残された春闘の大きな労使間の紛争解決について、ひとつ大臣の御指導といいましょうか、御協力をこの席をかりてお願い申し上げておきたいというように思います。  それでは大臣、十一時半までですから、ちょうどいま定刻でありますので、大臣質問はこれで打ち切らしていただきます。
  48. 田邊誠

    ○田邊委員 先ほど大臣から、春闘の最終段階において、公労協傘下の組合に対しては、現在かかっている調停段階でなるべく解決したいという、きわめて前向きな御発言がございました。これは、私は日本労使関係紛争の解決のためにはきわめて画期的な発言であろうと思うのでございまして、実はそういった点では歓迎をいたしたわけでございます。事実、いま春闘が大体妥結の方向に至っておりまして、春闘共闘委員会で調べたところでも、民間の賃金引き上げの額は大体二百二十六組合を対象にいたしまして四千六百一四円、昨年の平均賃金に比較をして一三・一%の賃上げということになってきておるわけでございまして、好況を反映した現在の賃金引き上げが行なわれつつあるという現況でございます。したがって、こういう事態になりまするならば、大体民間の趨勢が判明をいたしました現状の中で、取り残された公労協傘下の各企業体についても、早急にこれが妥結の方向に向かうべきことは当然でありますのに、いまなおこれに対する具体的な回答ないし解決の方向を見出しておらないということはきわめて遺憾であります。せっかく大臣のそういう前向きの御発言があった際でございまするので、各公企体関係の当局お見えでございまするから、民間との差について大体の趨勢が判明をいたしたと思いますので、これに対する御認識はどうかということが第一点。  第二番目には、そういった認識論に立って、いつの時期において具体的に当局は調停段階において回答を示されようとするのか。  第三番目に、その回答を踏んまえて、具体的に調停段階を収拾するという最終御意思を固めておるかどうか。  以上の三点に対して、ひとつ御出席の各当局から簡明な御答弁をいただきたい、このように思います。郵政、電電、国鉄、林野庁、それぞれお願いいたします。
  49. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいま御指摘がございました第一点につきましては、本年度の民間賃金の大勢は把握できる状態になっておりますが、なお今後相当大きい事業の分野、ガス、セメント、石炭、そういうのが残っておりますけれども、そういうものを総合いたしますと、大体本年度の民間賃金というのは、三千五百円から四千五百円というようなところになっておるというふうに認識をいたしております。  それから二番目の問題でございますが、現在置かれております状態としましては、十七日ないし二十四日にストが予定されておりますので、このストが回避できる時期、したがいましてできるだけ早くこの問題の処理、回避を目ざしまして努力いたしたい。時期といたしましてはそういうふうに考えております。
  50. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 電電公社からお答えをいたします。  民間の状況といたしましては、ただいま郵政省からお答えがございましたように、私どもも全部が出そろったとは考えておりません。しかし、いわゆる大勢を把握できる状態にはなっておると思いますが、相場全体として、これでもってことしの春闘相場がほぼわかったというのにはまだ早いと思っております。しかしながら、昨日私どものほうは調停委員会の席上におきまして、一両日中に誠意ある態度を示したい、そういうお答えをいたしましたのに対して、調停委員会から、態度がきまったらできるだけ早く知らせるように、そういうおことばをいただいておりますので、私どもとしてはできるだけ早く、できればこれからいろいろ努力をいたしまして、きょうあしたのうちに態度を示したいと思っております。したがいまして、全体を通じて私どもとしては調停委員会でぜひまとまるようにという基本的な態度においては、従来しばしば申し上げておるとおり、現段階においても変わりないつもりであります。
  51. 武田啓介

    ○武田説明員 第一の御質問の民間賃金に関しましては、ただいま郵政省、電電公社のお答えと大体同じようなことでありますが、ところで、先ほど加藤先生の御指摘にもありましたが、団体交渉、調停委員会を通じまして、国鉄の経理状況が悪うございますので、たとえ民間賃金が出そろいましても、なかなかいい御返事はむずかしいという点でまことに困っておりますが、明日から実は第三回の調停委員会が開かれることになっており、あしたは国鉄労働組合、動力車労働組合、明後日に新国鉄労働組合連合とございますので、その席で国鉄の経理事情を説明することになっております。いまそういう段階でございまして、まことに困っておる状況でございます。
  52. 若林正武

    ○若林政府委員 お答え申し上げます。  第一点につきましては、民間賃金の動向につきましては大勢を把握いたしたものでございます。  第二点につきましては、できるだけ早く出したいというふうに考えております。  節三点につきましては、調停段階におきまして、自主的に解決できるように努力をいたすつもりでおります。
  53. 加藤万吉

    加藤(万)委員 それでは関連して林野庁にお聞きします。  先ほど賃金問題につきましてお聞きしましたが、今度失業保険法の改正が御承知のように当委員会にかかることになっております。そこで国家公務員関係を見ますと、いわゆる失業保険の打ち切り対象といいましょうか、今度の改正によって一番対象人員が多いのは、私は林野庁ではないかというふうに推定をしているわけです。これは過般の四月十九日に中央職業安定審議会の答申がありまして、この答申によりますと、最後の部面に、「国その他の公的機関は、その雇用する労働者について、充分な対策を率先して行なうことが必要である。」こう答申をされておるわけですね。  そこで私は聞きたいんですが、林野庁のいわゆる現在の定員内職員、常用、定期作業員、それから今後起きるであろうこれらの種類の国家公務員ですね。この中で失業保険法の改正によって対象になる人員というものはどのくらいの員数になるのでしょう。
  54. 若林正武

    ○若林政府委員 ちょっと統計が古くて恐縮でございますが、昭和四十年の七月に失業保険あるいは失業者退職手当を受給いたしました者が、定期作業員で約三万三千、日雇い作業員で約五千名ということに相なっております。今回、失業保険法が改正されました場合に、この中でどの程度の者が影響を受けるかということにつきましては、現在調査中でございます。私どもといたしましては、国有林野事業の今後の運営に支障を来たさないように、慎重に対策を検討してまいりたいというふうに考えております。
  55. 加藤万吉

    加藤(万)委員 長官の答弁、私は非常に不満なんです。というのは、失業保険法の改正によって林野庁の仕事に影響のないという面からこの面を見られるということについて、実は不満なんです。先ほども申し上げましたように、この答申案によりますと、国は国の雇用する公務員、これは優先的にそういう対象の人にならないようにすべきである、そういう政策を講ずべきである、こういっているのです。あなたのおっしゃっていることは、いわゆる失業保険法の改正によって、そういう仕事の影響が起きないようにというだけで、失業保険法からそういう対象にならないという分野の雇用政策といいましょうか、あるいは林野庁の新しい作業計画といいましょうか、そういうものをどうつくるかということが基本にないと思うのです。この答申案に基づいて、いま林野庁では長期の雇用計画についてどういうお考えがあるのですか。
  56. 若林正武

    ○若林政府委員 昨年の三月二十五日でございますが、参議院の農林水産委員会におきまして当時の坂田農林大臣が答弁いたしております。国有林の経常につきましては、中央森林審議会の答申もあり、目下鋭意検討中であるが、国有林経営の基本姿勢として、直営直用を原則として、これを積極的に拡大し、雇用の安定をはかるという趣旨の答弁をしておられます。また、昭和四十一年の六月の二十一日の衆議院の社会労働委員会におきまして、当時の長官が、国有林労働者の雇用の安定については、林業基本法第十九条及び政府として三月二十五日に参議院農林水産委員会で表明した趣旨に基づき、従来の取り扱いを是正して、基幹要員の臨時的雇用制度を抜本的に改める方向で雇用の安定をはかってまいる所存である。この基本的な姿勢に立って、さしあたりの措置としては、生産事業の通年化による通年雇用の実現、事業実施期間の拡大あるいは各種事業の組み合わせによる雇用期間の延長などによって雇用の安定をはかりたいという趣旨の答弁をいたしております。私どもこの趣旨に基づきまして、現在雇用の安定につきましては、生産事業の通年化による通年雇用の実現、事業実施期間の拡大あるいは各種事業の組み合わせによる雇用期間の延長などに努力をいたしておりますと同時に、長期的には基幹要員の臨時的雇用制度を改善をするということで現在検討いたしておるわけであります。
  57. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いわゆる通年雇用制を先ほどの対象になる三万三千人ないしは日雇い五千人を含めてやるとすれば、冬期間中の山林作業をどうするかという問題を抜本的に考えていかなければ、通年雇用の問題は私は解決しないと思うのです。夏山だけを伐採する、冬山は休みとすれば、いやがおうでも夏場働いた労働者は季節労務者として冬は山をおりなければいかぬでしょう。  それからいま一つ、最近林野庁事業は、もっと私は詳しく調査してみたいと思いますけれども、伐採その他加工と言うのですか、私ども民間では加工と言いますけれども、加工について下請化が非常に行なわれている。林野庁の事業内容がいわばだんだん下請化、民間化に移行されているという傾向が強いのじゃないですか。そうしますと、いま答弁がありました参議院での答弁、あるいは従来通年雇用制に必要な作業量の拡大というのは、御答弁とは逆な方向に行っているのじゃないでしょうか。特に冬山の伐採等についてはどういうお考えですか。
  58. 若林正武

    ○若林政府委員 直営生産事業あるいは造林事業の根ごしらえ、植えつけ、下刈り等につきましては、直営直用で実施をいたします事業分量が昨年度から増加をいたしてまいっておりまして、四十二年度におきましてはさらに増加をするような計画でただいま準備を進めております。  冬山事業につきましては、冬山の可能なところにつきましてはすでに着手もいたしておりますし、若干機械その他の関係がございまして実験的にやってみなければならないというふうな地帯もございますので、そういうところは実験的にやるように取り進めております。
  59. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私の質問はこれで終わりますが、先ほど中央職業安定審議会の答申にもありますように、失業保険法の問題が今国会では相当重要な問題になりますから、失業保険法の改正の前に、当然国の雇用している労働者、公務員に対する通年雇用という問題を、一般民間企業の出かせぎ労働者あるいは季節労務者との対比ではなくして、率先して行なうように、この答申案にも書いてあるわけでありますから、ぜひひとつ事業計画としても拡大をし、同時にまた私ども委員会にも、こうこうこういうような形で三万五千人に及ぶ労働者を通年化できるというようなお答えがいただけるようにひとつ御配慮願いたいと思うのです。今後の行政指導、行政の拡大をお願いをしておきたいと思います。  それから、先ほども賃金の面でも言いましたけれども、何といってもこれらの労働者はいわゆる公労法上の対象労働者に比べて三分の二ないしは人によっては二分の一ですね。作業量についてはそれらの労働者と同じ作業あるいは労働力の提供を行なっているわけです。それがこの賃金闘争、賃金交渉の中でさらに格差が拡大をするということになりますとたいへんな問題です。日本の低賃金構造を国家公務員の中でつくり上げていくというそういう率先的な役割りを果たすわけですから、この辺は十分配慮して、自主交渉の段階で組合側と当局側のそれこそ誠意ある団体交渉をお願いをしておきたいと思います。
  60. 川野芳滿

    川野委員長 島本虎三君。
  61. 島本虎三

    ○島本委員 林野庁長官にいま加藤委員がいろいろ質問しておりましたが、林野庁関係の分だけそれに関連いたしますので、その意味でお答え願いたいと思います。  林野庁の場合には、えてして低賃金であり、こま切れ雇用であり、そして重労働に一そう拍車をかけるようなこういう現状をどうしても打破できない、こういうようなことが結局は作業の面にも全部影響してきておる、こういうようなことがいわれておるわけです。私はその原因についていまここでゆっくり長官に聞きたいのです。いま林野庁職員の低賃金といわれるこういう実態をあなたはお認めになるのか、またはこれを認めるならば打開する方策というものをお持ちか、この三点についてまずお伺いいたします。
  62. 若林正武

    ○若林政府委員 国有林野事業の作業員の賃金でございますが、労働組合との間に労働協約を締結いたしまして、地方別、職種別に地元農山村におきます同種産業、同種労働の賃金等との関連を考慮しながら適正に決定をいたしておるところでございます。昭和四十年度の例を申し上げますと、一口一人当たりの平均賃金、これは基準内外の合計でございますが、常用作業員、これは職種によりまして二千五百四十円から千二十五円というふうに幅はございますが、平均で申し上げますと、常用作業員が千六百七十五円、定期作業員が千五百二十六円、月雇い作業員が九百四円、日雇い作業員が七百二十円、全作業員の平均では千二百八十二円というふうになっております。この四十年度の労働省の林業労働者職種別賃金調査によりますと、木材伐出業の一日当たりの平均現金収入額が千二百二十円に相なっておりまして、全職種の平均のほうが若干上回っているというふうな状況には相なっております。  私どもといたしましては、その後の経済情勢の推移その他にかんがみまして、労働条件の改善ということにつきましては、今後も積極的に努力してまいるという考え方をとっておるところでございます。
  63. 島本虎三

    ○島本委員 いま、いろいろ長官のほうから御発表がありましたが、私の手元にある資料によりますと、この仲裁裁定を受けたあとの賃金の上昇の推移を、一般公務員またはその他の産業のわりあい低い面と比べても、林野庁職員の場合は特に低いというような実態なんです。改善のあとが見られないのですけれども、これについて御答弁願いたいのです。  昭和四十年の場合には、仲裁裁定を受けた月給制の人、これは林野庁の場合は六・二五%の引き上げ率であった。しかしながら、これは失対賃金の場合には一七・五%も当時上がっている。それと同時に生活保護者の場合も一二・七%も上がっている。この低いといわれておる林野庁関係職員の賃金が六・二五%より上げていないというこの実態。こういうふうにしてみますと、低いのになおかつ上積みをしているというふうな努力のあとが認められておらない。同時に、昭和四十一年の場合でも、月給制の場合には六・五%、日給の人は今度は八・三二%、しかしながら失対賃金の人たちは一二・一%、生活保護者の場合でも一三・五%も上がっている。こういうふうな実態の中から、努力している、改善をしていると言いながらも、何かあとが見られないと思いますけれども、この点はどういうふうなことになっておりますか。
  64. 若林正武

    ○若林政府委員 四十年度におきましては、月給制の引き上げ率が六・二五%、日給制の引き上げ率は若干上回っておりまして六・六五%、それから四十一年度におきましては、月給制が六・五%、日給制が八・三二%に上がっております。
  65. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、それくらい上げて仲裁裁定をそのまま実施しても、他の方面に比べて低過ぎる、日給制、月給制の場合を含めて。その場合には、失対賃金の場合、生活保護の適用を受けている人、この部分よりも低い。まして日給制の場合なんかは、もっともっと一生懸命やらないと改善のあとが見られない。失対並びに生活保護者、この方面の改善のスピードよりおそいのです。率より低いのです。これでは改善のために努力しているというあとが見えないと言うのです。この数字は認めているのです。他の方面と比べて低過ぎると言うのです。これで満足なのですか。
  66. 若林正武

    ○若林政府委員 これは仲裁または調停に基づきまして引き上げられた数字でございます。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 それを、ただ単に低い額に対して低い率でやるから、こういうような結果しか出ない。低いのであるから、その場合はあなたの手によって率を高く上げるようにしてやって、これが徐々に低賃金の解消につながるのです。それを単に機械的に、事務的にやるから、低いのは永久に低いままに生活に困る実態をさらけ出してしまうのです。いま加藤委員質問に対して、臨時的雇用解消をはかって雇用の安定をはかるのだ、こういうように目標をあなたははっきり示されたのだ。それと、通年雇用拡大に努力するのだ、こういうように言っているのです。けれども依然として日雇い作業員の数が八万五千名以上もいるじゃありませんか。こういうようになってみますと、そのあとも見られないほかに、こういうような人が全部低賃金なのです。労働大臣がおります場合にはこれと比較して聞きたいのですが、いまいませんからあなたにだけ聞いているのですが、解消というのは、低賃金をあらゆる機会を使って一般公務員並みに上げていくのが解消になるのです。率を同じようにして、与えられたとおりに事務的に処理することは、改善のあとを示したとは言われない。私はいまそこをついているのです。事務的な答弁ではなく、あなたの誠意をついているのです。これだったら百年河清を待つより悪いのです。永久にこれだけの低い差のままいって、これが国家公務員のらく印を押されて、どうにもできなくなってしまうのです。この実態は十分おわかりだと思うのです。今後改善策をお持ちですかと聞いているのです。いかがですか。
  68. 若林正武

    ○若林政府委員 御承知のように、最近におきます農山村からの労働力の流出というようなことを考えますと、今後国有林野事業というものを適正円滑に運用してまいりますためには、どうしても優秀な労働力の確保が必要になってまいるわけであります。私のほうといたしましては、高能率、高賃金というものを究極のねらいといたしまして、経営の近代化、合理化をはかる過程におきまして、労働条件の改善等も積極的に進めてまいりたいと考えております。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような公式的な答弁だけを聞いているのではないのです。では実態を示します。  私の手元にはがきが来ました。この中には「国有林に十年以上もつとめておる者です。妻と子供の二人を扶養して、生活は物価値上がりとともにますます苦しくなり、その日暮らしもやっとです。現在月給は手取り二万円。官舎はなく家賃五千円。あとの一万五千円でどうして人間らしい生活ができますか。春闘において大幅の決定に御努力願いたい」とのことが書いてあるのです。こういうふうな実態がある。それだけじゃありません。日給七百五十円以下、扶養家族四人以上という生活保護法の適用を受けている家族が三十六世帯もあるのを御存じですか。あなたの部下ですよ。こういうような人をかかえていながら、この改善策はいつでも念仏だけ言っているのじゃ、さっぱり私はわかりません。七百五十円以下で不要家族四人以上、生活保護法の適用を受けている家族三十六世帯、この事実を知っていますか。御答弁願います。
  70. 若林正武

    ○若林政府委員 数字は正確には承知いたしておりませんが、若干いま先生のお話のあったような例があるということは承知をいたしております。
  71. 島本虎三

    ○島本委員 そのほかにも、こういうような人たちと同じような状態すれすれにいる人が一千人近くもいるというのが、現在の林野庁に奉職しているいわゆる日雇い日給制の人たちの現状なのです。またこれは日給制だけではなく、月給制の人にもこういう人があるのです。そうしてみると、この措置をどうするかというのが今後重大な問題になるわけです。それをいま、日給者は共通する農山村の賃金の関係を考えてこれに対処していかなければならないという答弁があったわけです。こういうようなものを考えながらやっておって、低い人がいるからといって、あなたの部下の国家公務員法の適用を受けておる人たちを低いままにしておいて、そして三十六世帯も生活保護法の適用を受けさしているのです。それと同じような人たちが千人もいるのです。こういうような実態に対して、あなたはこれを解消する方法について案を持っておるのかということを聞いておるのですが、ほんとうにないのですか。こういう実態に対してそのままにしておくのですか。その同じ場所にあるところの農山村の賃金の関係を見て、他産業が低ければ、それを上げないでそのままにしておく、こういうようにお考えなんですか。この点についてはっきりお伺いいたします。重大な決意を要しなければならない問題です。
  72. 若林正武

    ○若林政府委員 林業労働者の労働条件の改善等につきましては、一般産業の動向、こういったものにつきましても、御指摘のように、十分に配慮いたしまして改善の努力をしていきたいと思います。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 委員長も聞いておられるとおり、要領のいい答弁は一つもないのです。しかし具体的な問題を提起しているのです。これも、いま春闘にかかっている、いま解決せんとすることの問題の最下層の人たちの問題なんです。これは、生活保護法の適用を受けたり、それに類する人がこれほどいるという数字も明らかにしているのです。委員長のほうから、こういうような問題に対しては、この解決の際にも、今後の問題も含めて十分手厚い処置をするようにということを言っておかないと、これはあすまで、あさってまで続く以外にはないのです。この問題について、委員長はいま聞いておられまして、どういうふうにお考えですか。委員長のお考えを聞いておきたい。
  74. 川野芳滿

    川野委員長 労働大臣はただいまいませんから、労働大臣にあなたの発言の趣旨をよく申し伝えることにいたします。
  75. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、労働大臣のいるところでというのに、委員長は許可してやってしまったから、さっぱりこの問題の解決にならぬのです。私は最後にはっきり要望しておきます。  残念ながら、理事間で意思の決定を見たようであります。これ以上追及しないで、考慮の機会を与えておいて、あとから十分やるようにということですから、これで追及はやめておきますが、十分考えておいてください。保留いたしておきます。
  76. 加藤万吉

    加藤(万)委員 先ほど中断いたしました山口放送事件について、枝村委員が言いましたように、警察当局の意思が、たとえば建造物侵入とか、いろいろ被疑事実があったにしても、その時点の労使間の紛争介入したということは疑いのない事実だと私は思うのです。したがって、警察側の意思が、いわゆる平和的な条件をつくろう、そういう善意の意思、そういうように解釈いたしましても、本争議に警官が入ったということは、やはり労使間の紛争警察権力というものの介入を見たということと断ぜざるを得ないと思うのです。特に最高の指導者である委員長をその場で逮捕する。先ほど、人に危害を加える云々という条件から、やると言いましたが、この写真を見てわかるように、これは人に危害を加える状態じゃありません。廊下にすわっているだけです。かかろうとしているのは警察側です。こういうことから見ても、私はロックアウト時における警察介入というものは、きわめて慎重に行なわなければならないと思う。その慎重の基準は、先ほど労働省側からも答弁がありましたように、攻撃的先制的ロックアウト違法性を持つということを常に頭に入れておかぬと、たとえば、その事件で被使用者が建物に入ったり、その事件で使用者が危害を加えられそうだからという想定出動させると、労働法上の阻却性というものは全然失われてしまうと私は思う。したがって、私は、警察側の真意がかりに善意であっても、労使間の紛争に対してはきわめて大きな比重を持ちますから、各地方自治体の警察あるいは出先に、労働争議における警察官出動に対する基準といいましょうか、判断といいましょうか、そういうものを御指示願うように、この席をかりてお願いしておきたいと思います。  最後に、そういうふうに、最近大衆行動全般について、警察官のいろいろな行動出動がとかく問題になっておるわけです。先般東京地裁で例の公安条例の違憲性の問題について判例があったことは御案内のとおりと思います。私は判例については全幅的に賛成するわけではございません。公安条例が今日憲法違反であるということは一審ではあったわけです。最高裁では御案内のとおりですけれども、かりに最高裁のいわゆる公安条例は違憲でないという立場をとったにしても、今日、大衆行動に対する警視庁の許可条件は、憲法に保障される言論、結社、行動の自由を阻害しておるというのが今度の判例です。今度の裁判の結論です。そうなりますと、私は、いまの山口放送に限らず、全国的に憲法における言論、結社、あるいは表現の自由を阻害している警察の許可条件ないしは警察出動があると思うのです。したがって、この東京地裁の判決後における大衆行動に対する警備体制ないしは警察庁見解はどうか、ひとつお伺いをしておきたいと思う。
  77. 川島広守

    川島政府委員 ただいまお話のございました東京都の公安条例に対する地裁の判決の内容でございますが、御案内のとおり、今回の判決の全文につきましては、まだ入手しておりませんので、詳細は承知しておらないわけでございますけれども、要旨を通じて見ました限りでは、いまお話もございましたが、公安条例そのものを違憲とは申しておらない。運用、なかんずく付加された条件の内容が違憲性の疑いがある、こういうことでございます。そこで、今回の判決がございましたような、全く同種の大衆行動に対しまして、同じ東京地裁から合憲の判決の出ておることも、これまた御承知のとおりと思います。いずれにいたしましても、判決の全文を入手いたした上で、さらに慎重に検討してまいりたいと思います。  元来、公安条例につきましては、各地方自治体が自生的に制定するのでございまして、その運用がとかくいま御指摘のございましたようなこともございますので、慎重にその運用に当たってまいっておる次第でございまするし、また私どもといたしましても、さらに慎重にやってまいりたい、こういうふうに指導しておるつもりでございます。
  78. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いまの公安条例の問題は、私はこう判断をしているわけです。公安条例が違憲ではないという最高裁の判例は、そのままかりに現状としては認めるとしても、今度の判決は潜在的違憲判決というふうに言われておるわけです。行動規制あるいは条件基準——事実上は公安条例に基づく行動憲法に対する違反である、そういう潜在的違憲判決である、こういうふうに私どもは現在では認識している。したがって、そうなりますと、私は、今後における全国各地域における大衆行動に対する規制あるいは条件、これらについても新たな観点から当然警察庁が指示をすべき性格のものを持っておるというふうに思いますが、この辺はどうですか。
  79. 川島広守

    川島政府委員 先ほどお答えいたしましたように、警察といたしましては、たとえそれが下級審の判決でございましても、その内容について精細に吟味をし、将来支障のないようにしてまいりたい。またまいるつもりであることは従来と変わらないつもりでございます。
  80. 川野芳滿

    川野委員長 枝村要作君。
  81. 枝村要作

    枝村委員 時間もあまりないので簡単に質問いたしますが、その前に、警備局長先ほど答弁の中で、鉄線を組合員が打ち破って中に入った、こういうことを言われておりますが、そうではないのでありまして、その気があるならば、もう午前一時、二時から出てきておるのですから、やろうと思えばやれた。ただ、そういう行為労働組合がするようなことはあり得ませんので、やっていないのであって、ただ七時半ごろに非組合員が出勤した、これと一緒に入ったということでありまして、決して鉄線を打ち破って中に不法侵入した、乱暴を伴いながら入ったのではないということだけ、私のほうで言っておきたい。  そこで、労働省のほうにお聞きしたいのですが、加藤委員から言われましたように、今回のロックアウトは全然防御的なものではない、先制攻撃的なものである、こういうことに対してあなたのほうから、そういうロックアウトは悪いのだという答弁がありました。そういう意味からいたしまして、私ども、今回のロックアウトは全く不当なものである、ロックアウトをやらなければならないという理由は何一つない、こういうふうに見ております。あなたのほうでは十分調査されたと思うのですが、私の言うことが正しいとは思いますけれども、もし正しくなかったら正しくないと答えてください。それで、通告書の中には、職場秩序の維持を守らなければならぬ、こういうことでありますが、今回の争議ではたして職場秩序の維持が保たれなかったかどうか。私のほうの調査では、そういう秩序の維持が保たれないような混乱した争議ではなかったと思います。それから、放送業務の遂行上、この争議が続きますと非常に麻痺する、これを一つのロックアウトの理由にしておりますけれども、あの争議の過程をずっと見ましても、こういうことは一つもありません。確かに十五波か十六波にわたっていわゆる部分ストというようなことを行なっておりますけれども、放送の業務に支障を与えたことは一度もありません。それから、いわゆる普通の事務ですが、事務部門に対する支障ということもなかったように見ております。そうしますと、この理由も当たらないということになる。そして先ほど私が言いましたように、ほんとうに防御的にやむを得ずロックアウトをやる、そういう事情に合っておるかといいますと、それもない。ということになりますと、結局ロックアウトの目的というものは何かということになるわけです。その目的は一体何かと言いますと、先ほど言いましたように、団結権を破壊して、それで交渉なども一切拒否して、民主的労働組合そのものを根底から破壊してやっつけてやろう、そしてロックアウトをやって、正常なそういう組合運動をやっておる労働者に賃金を支払わずに生活権を奪っていこう、こういう目的にしかならぬと思うのです。こういうやり方が今回の山口放送会社側のとったロックアウトである。  ですから私は、そういうロックアウトは、ここで、徹底的に違法であるとかなんとかいう、そういう意味の追及はせずに、いままだ続行中でありますから、これをやめさせるようにあなたのほうで適当な指導をしてもらいたいと思うのです。しかも、山口放送の取締役に山口県の和田副知事がなっておるのです。県から二千万円か三千万円の補助か何かお金を出しておりますので、そういう関係にある会社だけに、こういうきわめて不当なロックアウトがいまなお続行中であるから、早くやめさせるようにしてもらいたいというのが要望なんです。そして組合側も、皆さん調べてよくわかっておると思いますけれども、賃金など千七百円という相場で、きわめて低い回答でもしかたがないといって譲歩しております。また人員削減に対しても、四名か七名の増員を要求していましたが、これも取り下げて、そして十七名でひとつやってみようじゃないか、こういう態度にもなっておるのです。しかも、いままでの争議の経過を見てみましても、混乱を起こすようなことを一つもやっていないのですから、団体交渉が直ちに始まればこの争議も終結すると私は思う。そういういろいろな条件があるにもかかわらず、会社が一方的に、とにかくがむしゃらにやっつけてやろう、こういう態度で臨んでいるということはけしからぬと思いますから、ひとつやってもらいたいと思います。これが要望です。  それから、この際ひとつつけ加えておきたいのは、先ほど加藤委員もちょっと言いましたように、ラジオ関東の問題です。これもやはり山口放送と同様のケースでありまして、五名の配置転換を拒否している人たちに対するロックアウトをやっている。作業場閉鎖というようなものではないのです。こういう特定な人間に対するロックアウトというものは、これははっきりとどんな人でも違法だといって認めているわけですが、こういうやつが現在まだやられているのです。そして、委員長に対しては、争議を行なった指導の責任をとって、制裁解雇だ何だとやっている。有能なアナウンサーやその他の職員を、組合活動をやったという理由でどんどん他の職場に配転するという、こういうやり方をラジオ関東ではやっているようであります。こういう問題も、ひとつ行政指導の面にある労働省がはっきりつかんで、やはり適当な措置をすべきである、このように考えております。そういう意味で、これは回答は要りませんが、ひとつ直ちにやってもらいたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  82. 川野芳滿

  83. 山田耻目

    山田(耻)委員 山口徳山市にあります山口放送労働争議に関して、ロックアウト警察官出動などに伴いまして、幾つか地域社会の人に不明朗な印象を与えております。すでに加藤委員枝村委員のほうから、ロックアウト性格、官憲の出動の可否、このようなことについてかなり話が煮詰められておりますが、ちょうどことしの春闘もいま峠を越えまして、これからあと残りましたのが三公社五現業をおおむね軸といたしておりますけれども日本労働運動の経緯を見ますと、三公社五現業が不当な官憲の介入によって多くの刑事弾圧を受けている実績にもかんがみまして、この時期に発生をいたしましたこの事件につきまして、もう少し内容を明らかにしてみたいと思いますが、その中で必要な措置としてとるべきことは行政府として措置をしていただかなければならないと思います。  そこで、警備局長お見えでございますので、山口放送ロックアウトを契機といたしまして、竹村という民放労連委員長逮捕されました。この勾留状はどういう内容のものでございましょうか、お伺いしたいと思います。
  84. 川島広守

    川島政府委員 勾留の問題につきましては、御案内のとおりに、検察庁のほうで処理をいたしておりますので、警察は関与しておらないわけでございます。
  85. 山田耻目

    山田(耻)委員 検察勾留の段階の事情もおわかりになりませんか。
  86. 川島広守

    川島政府委員 先ほどもお答えいたしたのでございますが、竹村委員長建造物侵入の現行犯で逮捕いたしました。五月六日の午前九時五十五分ごろであったと聞いておりますが、直ちに徳山署で取り調べをいたしたわけでございまするけれども、終始、身分関係、氏名住所はもちろんでございますが、黙秘権を行使しておられたので、翌七日の午後、身柄をつけまして地検に送付をいたした、こういうふうな経過になっております。
  87. 山田耻目

    山田(耻)委員 勾留状を見ますと、立ち入り禁止の個所に門扉を開いて侵入をした、こういうことになっておりますね。立ち入り禁止ということを明らかに刑事犯罪の項に取り上げておるということになりますと、法的に立ち入り禁止というものが存在をしなければなりません。これがさっきから議論にありましたロックアウトでございましょう。ところが、この勾留状の中には、労働争議の争の字も入っておりませんし、ロックアウトのロックの字も入っておりません。そういう問題が勾置理由開示の公判において論争になりまして、刑事事犯としての犯罪を構成をしない、また刑事訴訟法による逃亡のおそれというものもないではないか。刑事訴訟法にいう逃亡とは、過去に何回か逃亡の実績を持っておる人であって、必然性の高い人が逃亡のおそれがあるというふうに認定をするのであるとなっておりますだけに、ついに裁判で釈放いたしましたね。したがいまして、勾留理由が非常に脆弱なということ、しかもその前提であるロックアウトというものは、さっきからしばしば明らかにされましたように、六日の午前二時に、正確に言えば一時過ぎから工事に入って、前日の五日の正午ごろ入札見積もりをやっておる。そうして、ロックアウトをやるので援助を頼む、警官の出動を頼むということを柴田県警本部長に文書で申し込みをしておった。そうして一切の準備を整えておるときの組合との関係、対立状況はどうであったか。いまも枝村君からお話がありましたように、賃金は大体妥結いたしましよう、そういうところにきておって、しかも放送時間三時間延長というものを無理に出してきて、そうして強硬な配置転換を一つの職場から流し込むことを計画した。組合は検討をいたしましょうと団体交渉を約して、そうして帰ったあとに、そういうロックアウトらしからぬけしからぬ行為というものが続けられてきた。そうして明け方の一時ごろから作業に入って、二時に完成して、組合に通告をした。こういうものは、今日の労働争議の中に起こってくる経営者のやり得るロックアウトとは認められないのであります。この認められないという現状を承知をしながら、なぜ県警本部なりあるいは所轄の徳山署は出動したのであるか。この一連の事情の中で、あなたはさっきから警察官職務執行法第五条によって出動したとおっしゃっておるけれども、この関連の中に五条出動の要因があったかどうか明らかにしてほしいと思います。
  88. 川島広守

    川島政府委員 通常ロックアウトの内容としていわれておりますことは、労務の受領の拒否あるいは立ち入り禁止をする、また賃金を支払わない、こういうようなものが大かたの場合における内容ではなかろうかと考えております。第一なり第三の問題につきましては、これは民事上の問題でございますので、警察側が今回とりました措置について具体的に述べますならば、いま申されましたように、立ち入り禁止通告があり、現にまた立ち入り禁止の意思が通告されて、形式的にも、いま申しましたように、バリケードが張りめぐらされておる。さらに加えて、会社側職員のほうでは、立ち入りしてもらっては困るといって具体的阻止行動をとっておる。それを、先ほどもお答えしたのでございますが、二重に張られておるバリケードの外側のとめがねをはずす、さらにまた内側バリケードもとめがねをはずして、それを押し倒してけがを与えた。そういう行為の中で中に入られたのでありますから、これは明らかに建造物侵入及び傷害という罪は構成しておるというふうにわれわれは考えておったのでございます。
  89. 山田耻目

    山田(耻)委員 だいぶ警備局長おっしゃっておることが事実と違っておるわけです。私は現地を検証してみました。これはあなたのほうもそういう御答弁をなさっておることから、性質をあわせて考えてみまして、きょうここでおっしゃっておることばを早急にひるがえされるということはないと思いますが、やはり事実は事実としてあるのでございますから、再度調査してもらわなければなりません。当時の状態というのは、ロックアウトがなされたのが午前二時でございます。会社の連中が、いわゆる管理者というものは、朝の七時半ごろから出勤を始めてまいりました。そうして鉄さくのくぐり戸を中からあけてもらって入りました。当時はまだ二重鉄さくではないのです。当時はまだ一重の鉄さくであります。写真をお見せしたいと思いますので、委員長、これをお願いします。   〔山田(耻)委員委員長写真を示す〕 一重の鉄さくでありまして、そこから管理者側が入った。そこにありますのは、管理者がバリケードをつくった労務者を慰労する意味のビールを運んでおる自動車が写っております。それが鉄さくの状態であります。二重鉄さくになったのは翌日からであります。それで、前に入りました管理者のあとに続いて、とびらがあいておるときであります。あいておるので、そのまま入ったときに、管理者のグループはそれを阻止しなかったのであります。管理者のあとに続いて入ったのが約四十名であります。続いて入って、業務妨害してはならない、むしろ団交再開を要求したのだから、三階の総務室の前に行って団交再開を要求する立場廊下にすわったというのが、その裏側に番号を打ってあります写真第一の図であります。  ここまで考えてまいりますと、ロックアウト自身にもきずがありますけれども、あなた方の下部の人々である県警その他の警察官出動なさる要件を具備していない。人命なり財産を損傷する危険というものは全然なかったはずであります。だから、そこの第一の写真にあります警察官がすわっておるところの前にいるのが竹村委員長でありますけれども、その竹村委員長一人を連れて出て、二番目のAという番号が裏に打ってありますが、パトカーが入っておりますけれども、そのパトカーに拉致して、それからゴボウ抜きが始まるのであります。一体どこに警察官職務執行法第五条発動の理由がありますか。それをひとつ明らかにしてもらいたい。私の言う立場でお答えいただきたい。私の聞いておることが一応一つの意向としてならば、それは少し無理であった、おまえが言っておるのは全然間違っておるという立場からお答えいただこうとは思いません。一応いま私が言っておることを客観点な事実として認めるのであったら、警察官職務執行法の発動をしてよかったのか悪かったのか、答弁していただきたいと思います。
  90. 川島広守

    川島政府委員 私どもが受けております報告によりますと、先ほどもお答えいたしたとおりでありますが、会社側のほうで入ってもらっては困るという姿勢で内側から押しておったものを、表側からこれをゆすって、そうして押しあけて入った。さらに三階の廊下にすわり込んだわけでございますけれども、すわり込んだ状態というのは、いまもちょっとお話があったようでございますけれども、団交を要求し、かなり興奮の度合いが高まってまいりましたので、会社側でも、さらにまた警察側でも、いま申しましたように、建造物侵入という違法状態が継続しておるわけでございますから、それでこのまま放置すればさらに犯罪が起こるおそれがあるというふうに当時の指揮官は判断をして、警察官職務執行法五条後段によりまして職務の執行をした、こういうような経過の報告を受けておるわけでございます。
  91. 山田耻目

    山田(耻)委員 さっき私が警察段階の勾留状の内容をお伺いしたのは、そこに理由があるのです。竹村委員長警察逮捕勾留するときの勾留状には、傷害はついていないのであります。住居侵入だけでございます。そうして検事勾留で山口の拘置所に送られていくときに、三日間の傷害というのがついたのでございます。私は、三日間の傷害というのが、医者でございませんからよくわかりません。ちょっとかすり傷をしたのでも二、三日はかかるでしょう、いまの時候でございますから。ただ、この前後にこういう事案が発生しておるということを認識していただきたいのであります。ちょうどバリケードをつくり終えまして、河本組という組員が有刺鉄線を張っておりますときに、組合員が入ろうとしたら、おれらは番人で、お前らは入れやせぬと言って、有刺鉄線を張って木を削っていたなたを持って組合員を追っかけたのであります。そのほうがむしろ一つの犯罪を構成する要件は大きゅうございます。この事件あと、福田修三という山口放送の庶務部長が組合に来まして、なたを持って追っかけ回したことはたいへん悪かったと言って謝罪をしております。私は、警察段階から検事勾留の段階に進んでいく中で、傷害三日という傷害罪を加えるということについて、それをまっこうからあなた方のでっち上げとは言いません。でっち上げとは言いませんけれども、当時の状況証拠として、鉄さくをぶちこわして倒れてけがをしたという事実は、全然ないのであります。口が広げられた施錠がされていないところを、あいとるじゃないか、ここに入ろうじゃないかと言って、ぞろぞろ入って三階に上がったというのが当時の証拠であります。こういうことを理解していただけるならば、警察官職務執行法五条の発動というものは、それほど簡単にできるのだろうか。しかもその三階にすわり込んでおる写真を見てくださいよ。みんな手をうしろに組んで、友だち同士がピケを張って、そうしてすわっておるでしょうが。だれに一体危害を加えようとする姿が見えましょうか。むしろ、その前に立ちはだかって、そうして悲壮な顔をして、まっさおになって対峙しておる警官のほうにこそ、私は何か襲いかかる危険すら感じられるのであります。こういう状態一般に与える印象として、争議があれば警察が出てくる、警察会社の雇い兵かと言われておるのであります。私は、この山口放送の事実だけに、あなたの意見として、職務執行法五条を発動なさった理由としていただけないものがございます。そういうバリケードを押し倒して入ったのではなくて、開いてあったとびらから入って、廊下に行って、うしろに手を組んですわっておった。団交室の前にすわり込んだ人たちに対して警察官職務執行法五条を発動しなければならない理由をお聞きしておるのでございますから、私の質問にひとつ正確にお答えいただきたいと思います。
  92. 川島広守

    川島政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、建造物侵入という違法状態が一三階の廊下にすわり込んでおる状態の中で継続しておるわけでございます。そうでございますので、警察処置をとることは当然であるというふうに考えております。
  93. 山田耻目

    山田(耻)委員 労政局長にお伺いいたしますが、さっきからの加藤君あるいは枝村君の質問を聞いておりますと、ロックアウトというものは、会社側が先制攻撃的にするものはいけないのだ、むしろ受動的で防衛的で憲法上の基本権を推し進めていく、労働組合の法的保護の根拠とは違うんだ、これが今日の判例であるし、労働法学者の一致した見解であります。そういうようなお答えをいただいたのでありまして、今回の山口放送ロックアウトというものは、私は、そういう意味ロックアウトとは異なっておる、先制攻撃的なロックアウトである、その発生の理由の中にもそれを見受けることができるのであります。だから、今日県の労働民生部とかあるいは県警自身の中にも、あのロックアウトは少しやり過ぎじゃないか。いま行ったら、二重、三重に張りめぐらされて、トラの子一匹はい出すことはできません。そういうロックアウトはよくないのじゃないかという意見が台頭しておりますが、これはあなたのさっきの御意見を正しく理解しておる下部の指導だと私は思うのであります。いま一度お伺いいたしますけれども山口放送ロックアウトについては、そういう意味違法性が高い、こういうふうに認識してよろしゅうございますか。
  94. 松永正男

    松永(正)政府委員 ただいま山田先生御質問山口放送ロックアウト、これについてどう思うかという御質問でございますが、私が先ほど申し上げましたのは一般論でございます。判例等も幾つか出ておるのでございますが、判例によりましてはいろいろな違いがあります。それらを総合いたしまして、先制的、攻撃的なるロックアウトは違法だとする説が強いというのが現状でございます。しからばその先制的、攻撃的ロックアウトというのが具体的にどうであるかということになりますと、これは個々のケースについて、裁判所なり、あるいは場合によっては労働委員会なり、これが事実審理をいたしまして決定をいたすのでございます。私どもも労働委員会に籍を置いたことがございますが、この事実審理にやはり何カ月というような日数を費やしておりまして、私どもがいま県の労政当局からこの事件概要についての報告は受けておりますけれども、現在労政当局といたしまして、この山口放送事件が正当なロックアウトであるかどうかということにつきましては、労政当局として判断を下すことは差し控えたいというふうに考えます。やはり警察で問題になっておりますし、また場合によりましては、県の当局等が努力をいたしまして、調停あっせんの場でどうだろうかというようなことも考えておられるようでございますので、そういう場合には、労働委員会におきまして、事実を詳しく審理をして判断が下されるというふうに考えます。
  95. 山田耻目

    山田(耻)委員 ロックアウトを侵して住居侵入で刑事犯を構成した場合には警察の段階でしょうけれどもロックアウトそのものの正否をただしていくのは労働省でございましょうね。労働省としては、従来の判例なりあるいはロックアウトの持つ本質的な性格なりを見て、これは行き過ぎではないか、こういうふうな行政指導をとることは、私はあなたの仕事だと思うんですね。そういう意味で、ロックアウトというものは先制攻撃をかけてはいけない、受動的なものでなくてはならないというのが、一般論の中で統一されておる法解釈だと私は思っておるのであります。  ところが、それはそれで一応打ち切りまして、山口放送の場合は、さっきから二人の委員からもしばしば申しておりましたように、おそらく県庁の労働民生部からも連絡があったと私は思いますけれどもロックアウトを二時に完成をして通告をしておる。その前の状態はどうかというと、金はほぼ妥結をして、妥結をする瞬間に新たなる合理化が出てきて、この合理化については再度団交を約して別れて、すぐ経営者のほうは県警木部にロックアウトをやるぞという書面通告をしておりますよ。これはもう事実として明らかになっております。書面通告をして、そして今度は警官の出動要請しておる。同時に同じ時間に業者を呼んで見積もりをさせておる。そうして、その晩の夜の一時ごろから作業にかかる、二時にでき上がった、組合に通告をする、これを先制的でないという一般的な常識、理論は起こり得ないのであります。この点は私は県も多くの識者もすべてそうだと思っているのです。経営者というものは強いものじゃ、警官に守られてああいうことがどんどんできるのかというふうな理解すらも、今日ささやかれておるのでありますよ。だから、この国会に取り上げて、こういう事実行為を明らかにするということは、そのことについて私は客観性を持っておるのであります。だから、そういう意味でこの問題については、すみやかにロックアウトのあり方について無知な会社指導してやっていただきたい。これはあなたの責任ですよ。そういう指導をひとつ十分していただくように、これはお願いいたします。  そういう立場に立って、警備局長ロックアウト不法なものであるし、消極的なものでない。全く先制攻撃的なものである。しかもそれが組合に通告をされたのは午前二時である。組合員にこれを伝達することはできない。組合員会社に出てきてみた。門が閉ざされておる。そうして管理者がどんどん入りよる。とびらがあいておる。そうしてそれをくぐって入った。そこに働いておる従業員は、その会社に出勤をする権利を持っております。不法立ち入り禁止を受ける理由はございません。ロックアウト自身が、申し上げたように、先制的であり、攻撃的であり、不法であるのであったならば、立ち入り禁止自体が効力を持たないものだと私は思うのであります。そういう中をくぐって入った組合員に対して、不法住居侵入であるというかどで逮捕できるのかどうか。そういう行為を行なうのであったならば、もっと事前に、立ち入り禁止そのものが合法である、そのことが真に立ち入ってはいったからといって逮捕する要件を満たしておるかどうか、このことを調査なさったのか、ひとつお伺いいたします。
  96. 川島広守

    川島政府委員 先ほど来お答えいたしておりますように、今回の場合は、立ち入り禁止の処置が具体的にとられ、さらにまた、あなたもお聞きになったかと存じますけれども、この日建物のあらゆる場所に、立ち入ってもらっては困る、立ち入り禁止という表示がはっきり書いてあったそうでございます。したがって、それを無視して入ったわけでございますから、犯罪を構成することは明らかである、こういうふうに思います。
  97. 山田耻目

    山田(耻)委員 この問題については、警察官職務執行法五条の解釈行為について、これはいずれ法廷でも明らかにされていくことでございましょうから、私はいまここで、場違いでございますから、あまり専門的なものに立ち入っては申しません。ただ、私たちが国会で警察官職務執行法五条を制定した趣旨は、生命なり財産に危険を及ぼすことが明確なとき警察官出動できることに規制をされておると理解をします。その法律が拡大解釈をされたり、あるいは経営者というか、そういうものにきわめて有利に片務的に行動しておるということについては、私たちは、きびしい批判と、そうしてあなた方の態度を詰問する立場を留保しておるのであります。  そういう意味で、過去幾つかありましたし、今回もいい事例でございますが、これから将来に向けても幾つかあろうと思いますけれども職務執行法第五条の発動については、法の趣旨に照らして間違いのないように措置されるように厳重にお願いをしまして、私の質問を終わります。
  98. 川野芳滿

    川野委員長 島本虎三君。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 まず、労働大臣が来ましたから、ちょっと経過を申し上げますが、先ほど、全林野に従事している労働者の件で、これは月給制の者と日給制のものとあって、いままで日雇い並びに生活保護の適用を受けている者よりも率において低い、こういうような配算になっているので、いろいろ長官がやっておるようですけれども、これはやはり政治的に考慮しなければならないというようなことで、長官では話ができないので、委員長を通じて労働大臣にこの点については善処を申し入れておくという話があったわけです。  大臣がおられなかった間は、こういうような経過になっておりますが、全林野の日雇い日給関係の人並びに月給関係でも、いろいろと賃金配算面においては問題点が多いようですから、労働省におきましてもその点を今後十分に考えて、今後の仲裁の配算その他においては十分これを考慮していってほしい、こういうように思うわけです。この点はひとつ労働大臣にも十分考慮を願いたいと思います。いま意見があったら伺いたいと思います。
  100. 早川崇

    ○早川国務大臣 労働大臣は使用主ではございませんので、当然に林野庁あるいは三公社ということでございますが、行政全般の所管大臣でございます。あまりにも低い賃金あるいは労働条件等につきましては、極力妥当な賃金あるいは労働条件実現に努力をいたしたいと思っております。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 中央最低賃金審議会からの中間答申はきのう受けたようですが、日本の低賃金打開について具体的に答申がございましたかどうか、それを伺いたいと思います。
  102. 早川崇

    ○早川国務大臣 最低賃金審議会の答申は、いわゆる業者間協定を廃止してILO二十六号条約の線に沿った答申でございます。あくまでそれは、一つの最低賃金、審議会の審議形式というものを労使対等のILO精神に即応したものにする、こういう答申でございます。具体的にしからば最低賃金をどう上げていくかというような問題は、これは実施の段階におきまして起こる問題でございますが、日本の最低賃金がこの方式によることによってさらに上昇が期待されると思っております。
  103. 島本虎三

    ○島本委員 三十八年度の答申がなされました際に、四十二年からは新しい制度をとることが望ましいという、こういうような意見が付してあったように思うわけです。したがいまして、中間答申であろうとも、この中にいわば日本の低賃金打開についての新しい方策なり具体策なりがあるものである、こういうふうに私どもは期待しておったわけですが、この点については新しい行き方というものの指示がございましたか。
  104. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 三十八年の答申におきまして、昭和四十二年度以降の最低賃金制のあり方については総合的に検討する、こういう内容の答申が出ておりましたわけでございます。新しい制度云々というのはどういうことを意味されますのか、三十八年の答申の読み方といたしましては、私ども、かように心得ておったわけでございます。つまり、業者間協定方式による最低賃金をその間計画的に普及、推進いたしまして、そういった実績も踏まえまして、そして昭和四十二年度以降の最低賃金のあり方については総合的に検討する、こういう見解を述べておられたわけでございます。そういう答申もございましたので、かたがた労働大臣から正式に諮問がございましたので、中央最低賃金審議会といたしましては、四十年八月に大臣の諮問を受けまして、自来今日まで審議を継続してきたわけであります。これまでの審議の経過にかんがみまして、中間的に答申を出すという態度をとられまして、御承知のような内容のものが昨日答申として出された、こういう経過でございます。
  105. 島本虎三

    ○島本委員 いわゆる九条、十条の業者間協定、これを今度廃止して、次にはどのような方式を採用するということになるわけですか。
  106. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 それは今後審議会でいろいろ検討されるわけでありまして、従来、現行最低賃金法についてはいろいろの問題が指摘されておりましたが、今回の答申は、その中で業者間協定方式について一つの結論を出したものであるわけであります。そして、今後は審議会方式を中心にして運営していくわけでありますが、その後の運営の問題はもちろんのことでありますが、基本的にはいわゆる全国全産業一律方式とか、地域別、職種別、産業別方式といったようなものの考え方につきまして、今後継続して審議されるわけでございます。したがって、その点については、審議会としては御意見がまだまとまっておらない、こういうことでございます。
  107. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、今後はいわゆる全国全産業一律の最低賃金制、その方面を向いて決定するものである、こういうようなことをはっきり認識していいのですか。
  108. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 昨日の審議会におきまして答申がまとまりましたあとにおきまして、今後の審議の方法についてもいろいろお話がございました。今後も小委員会を中心にいたしまして審議するわけでありますが、その際はそういった問題を今後の審議の課題とするという趣旨のことが述べられております。つまり全国全産業一律方式とか、そういった方式の問題がいろいろあるわけであります。  そういった点、もっと正確に申し上げますと、全国全産業一律制、業種別、職種別、地域別制など、最低賃金制の形態及び成年労働者基準とするかいなかなど、設定様式に関すること、そういった問題を今後審議する場合の中心的な課題にいたしたいということであります。そういう意味合いにおきまして、従来、業者間協定方式をどうするかといったような議論は、今回の答申によりまして議題としてははずされてきた。そこでいま申しましたような点を今後の審議の中心的課題とするということについて会長から御発言があり、いわばそういう意味で思想の統一があったように私ども理解いたしているような次第であります。
  109. 島本虎三

    ○島本委員 大臣にちょっとお伺いしたいのですが、いま局長のほうからもいろいろと、業者間協定を今度廃止していく、これは一歩前進のような印象を受けたわけです。しかし、業者間協定そのものは業者がきめて、業者が申請して、そして適用するかしないかも業者自身がきめて、まさに発言権は使用者側にあるというような、いままでのこういうようなやり方、これはまさに便法にすぎないやり方じゃなかったか。したがって、それは業者間協定を廃止しても、今度決定するに際しては、また二年間のいわゆる経過措置というもの。はっきりついておりますから、そうなってきますと、いまこのままいっても、その経過措置があり、これからまた審議して、またこれをきめていきたいということになると、まさに全国一律方式と申しますか、こういうようなものについてはまたしてもそのままにされる可能性さえも十分あるということに私は恐怖を感ずるのですが、大臣、このような点は全然心配ございませんか。
  110. 早川崇

    ○早川国務大臣 この問題は業者間協定がもう広く普及いたしておりますので、無用の混乱を来たさないために二年間の経過措置を答申されたものと存じます。なお、全国一律、全産業一律方式ということも、これは理想でございまするが、審議会ではある程度の地域別、業種別が必要だという人もございます。また中小企業、零細企業の現実から申しまして、理想は理想だが一挙にそこまでいくとつぶれる会社もできてくる、こういういろんなそれぞれの御意見があるわけでありまして、こういった問題は審議会で引き続き御検討をしていただく、こういうように考えておるわけであります。
  111. 島本虎三

    ○島本委員 全国一律制を実施するとつぶれる会社もあり、地域的に見てなかなかひずみもあることだから、これは容易じゃない、不可能である、こういうような話のようでございますが、それは、大臣はこれをやる意思がないということになるのですか。今後やはりいろいろ検討して、全国一律制はやっていかなければならないものである、こういうふうに考えられるのですか、大臣はいずれを……。
  112. 早川崇

    ○早川国務大臣 そういった御意見を言われる委員の方もあると申し上げたのであります。それも一つの考え方だ、地域別、業種別という考え方もある、こう申し上げたのでありまして、そういった御意見をそれぞれ今後の審議会で述べ合って、日本の国情に適して、しかも労働者の最低賃金がさらに上昇される措置がとられる、他方、使用者の側、零細企業、中小企業というものも経営が成り立っていくというようなことを、審議の過程におきまして当然論議しなければならない。われわれは理想だけに走って現実を忘れるというわけにもいかないという御意見にも一つの意見がございますので、そういったことはひとつ使用者側あるいは労働者側、それに公益委員三者構成の審議会で御検討いただきたい。だた、今回の中間答申の非常に画期的な意味は、ILO二十六号の精神に沿いました労使平等の立場で、公益を入れました審議会方式に全部切りかえていく、業者間の発議権というもの、協定の制度を二年間でなくしていく、ここに画期的な意義があると思うのでありまして、私は同時にILO二十六号条約もこれによって批准ができる段階に参ったと考えております。
  113. 島本虎三

    ○島本委員 実施は不可能であると言う人もある、実施できると言う人もあるということですが、大臣の意見を聞いているのです。そういうふうに言われても人の意見になると思うのです。私は全国一律制は、日本の現在においも可能であると思う。最低賃金そのものは、やはり普通の場合に、生活基準より低いものを要求し、それに定めてある。現在まで、一万五、六千円ぐらいだと思っておるのです。しかし、それでできない理由はまずない。その国の平均賃金の二分の一くらいが、まず最低賃金の基準であると常識的に言われているわけです。そうすると、日本では、昭和三十九年のころで、三万九千幾ら、本年になって四万四千円近く、こういうようになりますと、半分の二万二千円ぐらいまでは、これをやってもつぶれるわけはないし、可能性は十分あるということが、もうすでに立証されていると思う。現在一万二千円程度のものをやっている私鉄でも一万六千円で出ておる、こういうような段階の中で、総評が要求しておった一万五、六千円のこれで、日本の経済がつぶれるような底の浅いものでは、断じてない。もうすでに、日本の工業あたりでも、世界の三番目とか言われて、それにアメリカでは七万円から八万円、これは公正労働基準法によって、アメリカでも実施している。イギリスでは四万円ぐらい。これは業種別労使団交ではっきりきめている。フランスでさえも三万円、これは全職業一律でやっている。日本では二万五千円ですが、または二万二千円程度のものでも、これはやってやれないことはないし、これによって企業がつぶれるようなことは、まさに妄想に過ぎないものじゃないかと思うのです。大臣、これでも、やはり企業がつぶれるようなことになるのですか。
  114. 早川崇

    ○早川国務大臣 私はそう言っているのじゃないので、中小企業、零細企業の経営者で、そういうことを心配しておる人もあるということを申し上げたのであります。さればこそ、いま御指摘のように、全産業がフランスで一三万円ということはございません。それぞれやはり業種別の格差があるわけで、地域別の格差もあるわけであります。ですから、理想は御指摘のように全産業、全地域が格差なく一律にずっと割り切るのが理想でございますが、現実におきまして、日本に産業別の格差も相当あり、また地域別にもあるわけですから、そういった現実のこともあわせて考えて、審議会で御審議願うということでございまして、決して全国一律がいかぬとか、そういうことを申しておるわけじゃございません。
  115. 島本虎三

    ○島本委員 地域的にも格差がある、こういうようなことは現実の点でそのとおりであります。しかし総理をはじめとして、この格差の是正というようなものは、一つの命題として、現在は皆さん自身もその解決のために努力されておるわけです。格差があるからやむを得ない、ではいけないのです。格差があるからそれをなくするような方面に、政治的に手を打たれなければならない。そのためには、やはり全国一律の最低賃金制というものが、その格差是正のためにも、やってプラスになってもマイナスにならないではありませんか。現在のところでは、他の国の例を見ましても、現在、総評が要求している程度のものは、別に日本企業がつぶれるほど大きい要求ではない。まして、こういうような制度ができて、その中で格差の是正に一歩二歩前進するのでなければ、まさに佐藤総理が言っているような格差の是正とか、今後の経済の一つの向上に対する手当てなんというものは永久にできなくなる。きのうの朝日新聞の夕刊の記事に「ひずみと緊張の町・東京」こういうのがあるのです。これによりますと、ロンドンのサンデー・タイムスは東京のことと評してはっきりいっているわけです。「東京について、日本人はスピード、セックス、スリルの三つでいい表わしているが、四番目にはひずみを加えねばならないだろう」と、はっきりロンドンにまでこれを紹介されているのです。その経済的なひずみを直す、これこそ一つの命題でなければならないはずです。そのための貴重なる一つの基本である最低賃金は全国一律のものというのは当然これを考えて実施しなければならないはずのものなのです。大臣にして決断をもってこれをやるというのでなければ、私はいけないと思うのですが、この点いかがですか。
  116. 早川崇

    ○早川国務大臣 先ほど申し上げましたように、理想の姿としては確かにそのとおりでございますが、たとえば鉄鋼の平均賃金が五万円をこえておる。中小企業は二万八千円とか、いろいろ規模別にあるいは業種別、地域別に、非常な格差があることも現実でございます。最低賃金というのは、その発達の過程を見ましても、最低の生活を確保するというところから出発してきておるわけでありますから、そういう問題も含めまして、審議会で十分御議論願うというのが私の考えであります。私の考えはこうだと押しつけることは、この審議会に関する限りはいたさないつもりでございます。
  117. 島本虎三

    ○島本委員 ILO二十六号条約の批准を今国会に行ないますか。
  118. 早川崇

    ○早川国務大臣 できればこの答申の立法が進みまして、国会でこの法案を通す、同時に二十六号条約もあわせて、御成立に御協力願えるならば、これにこしたことはないわけでありますが、しかし国会審議の全般をにらみまして目下いろいろ検討中でございます。
  119. 島本虎三

    ○島本委員 一九二八年、いまから約三十九年前にもうすでに出されている条約です。いま日本がこのような成長した経済のもとに、批准するしないなんというのは、これをいろいろ論ずる段階ではもうすでにない。これは四十年前の条約なんです。条約となりますと、当然アフリカでもどこでも、全世界のこういうような国を対象にしておりますから、いまさらあらためてこれを批准しなければならないということは、私は名誉ではないと思うのです。もっともっと先にやっていなければならないはずのものだった。それを四十年も前のものをいまやるのに、まだ手続上の問題で今国会にもやらない、またずるずる延ばすということがあったら、一そうわれわれとしては不可解千万なんです。私どもはこれよりもっといい状態において、もっとりっぱな条約を批准しなければならない状態なのに、三十九年も前の条約をいまやるのに、いますぐではないのだ、今後考えるのだということではまこと残念きわまりないわけですが、こういうような状態に対して、大臣やはり今国会に提案して、早く批准してしまうような御意思はないのですか。
  120. 早川崇

    ○早川国務大臣 ILO二十六号条約の批准ができなかったのは、業者間協定というのが、多少疑義があるということでございました。この疑義を今回の答申によりまして直していこうというわけでありまして、この法案が成立すれば問題ないわけであります。並行的に出したってかまわないのであります。十分島本さんの御意見尊重いたしまして、国会審議とにらみ合わせまして、一刻も早くこの業者間協定廃止の法律とILO二十六号条約批准を国会で御審議願えるように、検討いたしたいと考えております。
  121. 島本虎三

    ○島本委員 先ほど言いましたように、林野庁に勤務する職員の低賃金の状態打開のためには、林野庁をはじめとして、労働省からも十分指導監督してやるように、心から要請して私はやめます。
  122. 川野芳滿

    川野委員長 和田耕作君。
  123. 和田耕作

    ○和田委員 きょう私は労働大臣と官房長官と総務長官に、ぜひともお伺いしたいと思って、これは十日も前から準備をしたんですけれども、この前のときには、十時から十二時半まで待っておりましたけれども、ついに時間がなくなりました。きょうもまた十時からずっと待っておりましたけれども、きょうも時間も大体なくなったようでございまして、小さな政党の悲哀をしみじみ感じているわけでございますけれども、私は労働大臣にぜひともお伺いしたいことを、きょうは一点だけお伺いしてみたいと思います。  これは労働大臣だけでなくて、官房長官が主としてその衝に当たられる問題だと思いますけれども先ほどからの御質疑を承っているうちで、ある政府委員がこういう答弁をなさっておられる。つまりあしたの十七日と二十四日に公労協の人がストの宣言をしておられる。三公社五現業の賃金要求に対して、政府は誠意ある回答を持って調整機関に返答をする、その時期はいつかという質問に対して、十七日、二十四日のストを回避できる時期にそれはやるんだという答弁があった。このような答弁は労働大臣、どのようにお考えになりますか。
  124. 早川崇

    ○早川国務大臣 われわれはストライキ宣言なりストライキ自身を違法と考えておりまして、まことに遺憾なことで、再三官公労組合に対しましては警告をし、自重を促しもいたしておるわけでございます。それと直接、特に関係があるわけではございませんが、本日、調停委員会に対しまして、三公社五現業の使用者側が、誠意ある一つの意思表示をいたしたはずでございます。その結果はまだ報告は受けておりませんけれども、一歩前進といいますか、大きく前進した使用者側の意思表示をいたしたはずでございます。
  125. 和田耕作

    ○和田委員 労働大臣並びに官房長官の、この問題を解決するための熱意はよくわかります。ただ、私いま質問しておりますのは、つまりストというのは公労法で禁止しておる。この禁止しておるストを十七日、二十四日に予定をしておる。このストを回避するために政府は誠意のある回答をするんだという御答弁があった。これをどう思われるかということを聞きたいのです。
  126. 早川崇

    ○早川国務大臣 おそらくお答えになった方は三公社五現業なんかの使用者の代表だと思います。それは使用者の労使関係でのいろいろそういった戦術、あるいは労使間の話し合いとか、いろんな場合に、処分するとか、あるいはスト回避のためにはこうするとかという程度の御意見だと思うのでありますが、政府としてはあくまでも法を守らなければなりませんので、ストライキをやるぞという脅迫に屈してこうするというものでなく、もっと大きく、公労協の人たちの賃金上昇のためにできる範囲の努力をする、それが十七日以前にある種の積極的な誠意を示す、こういうことになっておるわけでございまして、あとは因果関係というものは毛頭考えておりません。
  127. 和田耕作

    ○和田委員 それはたしか郵政の方だったと思いますけれども、政府の意思ではないということでございますか。結局、私の質問をいたしたいのは、公労法の趣旨によりましてスト権はなくなっておる。したがって公労委というものがあり、あるいは仲裁裁定というものがある。これは公労協あるいは公務員の問題を解決する正式なルートですね。したがって、これに対して同盟その他の組合からは、もう早くから調停を申請しておられる。この申請の期間はもう十四日に正式の口は切れておる。そういうふうなまともなルール、まともな制度によって申請をしておる。そのような時期に、政府は誠意のある回答をしないで、スト宣言というものを目安にして、そのような回答をなさる、事実上そういうことになっておる。これは毎年のことですけれども、そういうふうな問題を今後もはたして続けていかれるか。これは労働行政についての一般的な責任者としての労働大臣にその問題をお聞きしたい。
  128. 早川崇

    ○早川国務大臣 不幸にして全官公と公労協との調停申請時期が食い違っておりまして、全官公のほうは十四日が期限ですけれども、むしろ仲裁に移るまではずいぶん期間がございます。たまたま民間の有力な私鉄の妥結がおくれましたので、本日になったわけでございますけれども、今後ともストをやるから政府は誠意を示すとか、やらないからほっておくとか、そういうことは断じてあってはならない。御趣旨は当然だと思います。
  129. 和田耕作

    ○和田委員 私は三公社五現業のスト規制が正しいとは申しておりません。これはいつの日か近い将来に廃止しなければならない。もっと正常な方法に返る必要があると考えております。おりますけれども、いまのような事実上十七日のストを、二十四日のストをいかぬと言いながら、実際の行動において認めておるという、こういうやり方では正常な方法にはならない。このことを申し上げておるわけでございまして、やはりスト権というものは正常な形で与えなければならない。これは民間の電力の面でも石炭の面でも同じことが言えるかと思いますけれども、そういうことをやるにつけても、いまのような政府の実際にやっておられる態度は、そういう正常な方向に近づく道であるかどうか。このことについてはもっと明らかにするものは明らかにしてやらなければならない。このことを私ども、あるいは同盟の諸君も強く主張しておる点だし、もっともな点だと思うわけでございますから、ぜひとも政府として、この問題についての基本的なかまえ、態度を確立してもらいたい。このことを申し上げるわけでございまして、きょう私は公務員制度審議会の問題、あるいはその他の問題についても質問をしたいことがたくさんございますが、その質問はこの次の機会に譲ることにいたしますけれども、いまのようなことをいかぬ、いかぬと言いながら、しかもその時期を目ざしてそれに間に合うように、つまりストが行なわれないように回答するという運用をなさったり、そのことによって正しい主張をし、正しい調停を主張しておる人たち立場をなくしたり、そういうようなことのないようにぜひともこれは注意をしてもらいたい。このことを特にお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  130. 川野芳滿

    川野委員長 次会は、来たる五月十八日木曜日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十九分散会