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1967-05-11 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十一日(木曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 竹内 黎一君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       菅波  茂君    世耕 政隆君       中野 四郎君    中山 マサ君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       箕輪  登君    粟山  秀君       山口 敏夫君    渡辺  肇君       淡谷 悠藏君    枝村 要作君       加藤 万吉君    佐藤觀次郎君       八木 一男君    山本 政弘君       本島百合子君    和田 耕作君       浅井 美幸君    近江巳記夫君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         法務省人権擁護         局長事務代理  辻本 隆一君         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君  委員外出席者         厚生大臣官房参         事官      近藤  功君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月十一日  委員大橋敏雄君辞任につき、その補欠として近  江巳記夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 五月十日  心臓病専門病院増設に関する請願外二件(鴨  田宗一紹介)(第八九三号)  同(和爾俊二郎紹介)(第九〇四号)  同外一件(三ツ林弥太郎紹介)(第九一九  号)  同外二件(青木正久紹介)(第九四三号)  同外一件(只松祐治紹介)(第九四四号)  同(小林信一紹介)(第九七五号)  同(玉置一徳紹介)(第九七六号)  同(葉梨信行紹介)(第九七七号)  同(赤澤正道紹介)(第一〇一四号)  同(板川正吾紹介)(第一〇三七号)  同外一件(小宮山重四郎紹介)(第一〇六八  号)  同(村上信二郎紹介)(第一〇八二号)  心臓病の子供の育成医療助成拡充に関する請願  外一件(鴨田宗一紹介)(第八九四号)  同(和爾俊二郎紹介)(第九〇五号)  同外一件(三ツ林弥太郎紹介)(第九二〇  号)  同(青木正久紹介)(第九四五号)  同外一件(只松祐治紹介)(第九四六号)  同(小林信一紹介)(第九七八号)  同(玉置一徳紹介)(第九七九号)  同(葉梨信行紹介)(第九八〇号)  同(赤澤正道紹介)(第一〇一五号)  同外一件(板川正吾紹介)(第一〇三八号)  同(村上信二郎紹介)(第一〇八一号)  心臓手術のため供血制度改善に関する請願外一  件(鴨田宗一紹介)(第八九五号)  同(和爾俊二郎紹介)(第九〇六号)  同外一件(三ツ林弥太郎紹介)(第九二一  号)  同(青木正久紹介)(第九四七号)  同外一件(只松祐治紹介)(第九四八号)  同(小林信一紹介)(第九八一号)  同(玉置一徳紹介)(第九八二号)  同(葉梨信行紹介)(第九八三号)  同(赤澤正道紹介)(第一〇一六号)  同(板川正吾紹介)(第一〇三九号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一〇六九号)  同(村上信二郎紹介)(第一〇八三号)  栄養士法第五条の二改正に関する請願倉石忠  雄君紹介)(第九〇七号)  同(大竹太郎紹介)(第九二二号)  同(神田博紹介)(第九二三号)  同外一件(亀山孝一紹介)(第九二四号)  同(小坂善太郎紹介)(第九二五号)  同(松野頼三君紹介)(第九二六号)  同外三件(小泉純也君紹介)(第九五〇号)  同(瀬戸山三男紹介)(第九九九号)  同(臼井莊一君紹介)(第一〇五四号)  同(佐々木義武紹介)(第一〇五五号)  文教区域における旅館業等規制強化に関する  請願小平久雄紹介)(第九二七号)  精神衛生思想普及等に関する請願河野正君  紹介)(第九四九号)  同(田中正巳紹介)(第一〇三一号)  衛生検査技師法の一部改正に関する請願齋藤  邦吉紹介)(第九五一号)  同(堂森芳夫紹介)(第九五二号)  同(地崎宇三郎紹介)(第九八七号)  同(粟山秀紹介)(第九八八号)  同(天野光晴紹介)(第一〇一七号)  同(門司亮紹介)(第一〇二六号)  同外一件(亀山孝一紹介)(第一〇二七号)  同(藤本孝雄紹介)(第一〇二八号)  同(佐々木義武紹介)(第一〇五六号)  引揚医師の免許及び試験の特例に関する請願(  山本政弘紹介)(第九五三号)  同(竹内黎一君紹介)(第九八五号)  同(地崎宇三郎紹介)(第九八六号)  同(藤本孝雄紹介)(第一〇二九号)  同(増岡博之紹介)(第一〇三〇号)  同(齋藤邦吉紹介)(第一〇六一号)  大分県三重町の失対貸金の級地引上げに関する  請願工藤良平紹介)(第九五四号)  農協及び生協共同利用施設理容事業規制に  関する請願外一件(周東英雄紹介)(第九八  四号)  同(鈴木善幸紹介)(第一〇四〇号)  健康保険制度改悪反対に関する請願堂森芳夫  君紹介)(第一〇〇四号)  同外十五件(小松幹紹介)(第一〇一八号)  全国全産業一律最低賃金制法制化に関する請  願(野間千代三君紹介)(第一〇二五号)  老齢福祉年金制度改善に関する請願藤井勝志  君紹介)(第一〇三二号)  失業保険法の一部改正に関する請願鈴木善幸  君紹介)(第一〇四一号)  健康保険制度改善に関する請願河上民雄君紹  介)(第一〇四六号)  ソ連長期抑留者の補償に関する請願神田博君  紹介)(第一〇四七号)  ビルマ戦域戦没者遺骨収集及び墓参団派遣に  関する請願亀岡高夫君紹介)(第一〇五七  号)  保健婦の確保に関する請願池田清志紹介)  (第一〇七三号) は本委員会に付託された。     —————————————本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  3. 田邊誠

    田邊委員 佐藤内閣が誕生いたしましてから二年有半たちましたが、佐藤さんの最大の公約はひずみの是正社会開発にあったことは御案内のとおりであります。もっとも本特別国会の冒頭における総理所信表明によりますると、社会開発と並んで重要な柱であったひずみ是正という佐藤内閣のスローガンがどこにも見当たらないのでありまして、それにとってかわって風格ある社会ということば佐藤総理は引用されておるわけであります。現在の日本高度経済成長下において、ひずみの是正ということが最も重要であることは言うまでもありません。しかし、池田内閣以来とってまいったいわば非常に高度の成長政策というものの誤りというものが、ひずみの是正を非常に困難ならしめていることも、また疑いのない事実であります。そういった点からいって、一番困難でしかも一番じみなこのひずみの是正格差是正というものを、その看板からおろしたということは、いわばその困難な部面について目をおおうという結果になることを私どもは非常に心配をいたしておるわけであります。風格ある社会というむずかしいことば佐藤総理は使われておりますけれども、一体風格ある社会とは何ものであるかということについては、今後の施策をわれわれは静かに注目をいたしたいと思いますが、しかし、私どもが考えるところでは、佐藤総理の言う風格ある社会というものも、その底辺には、あくまでもやはりひずみの是正、いわゆる所得格差をなくしていく、こういうことがその土台石とならなければならぬことを、私は痛感をするわけであります。  そういう点から見まして、ひとつ社会保障の担当であるところの厚生大臣は、この佐藤内閣表看板であったひずみの是正が正面から消えておるといえども、これをとらえて、この社会保障拡充強化のために今後とも邁進しなければならぬと私は思うのでありますけれども佐藤総理の言う風格ある社会前提としてのひずみの是正、その中心の柱であるべき社会保障拡充について、まずもって厚生大臣の所見を承りたいと思います。
  4. 坊秀男

    坊国務大臣 問題はたいへん大きな問題でございまして、ひずみの是正と申しますことはいろいろな角度から私はながめられると思います。われわれも、経済社会がひずみなくして円満にバランスのとれた発展発達を遂げていくということ、これがひずみをなくしつつ発展をしていく、こういうことであうと思います。終戦後、今日まで二十何年のこの経済社会におきまして、社会開発というものが、いまも御指摘になったように、高度成長というような目標を持ちまして、その方向にばく進をしてまいったということが言えるだろうと思います。そういったような反面におきまして、いわゆる社会開発ということが立ちおくれをしておる、さような事実から、佐藤総理は、ひずみを是正して経済社会の正常にして円満なる発展発達を期していかなければならないというようなことで、ひずみの是正をうたったのは、そういう角度からも見たのであろうと思います。そういうようなことをやってまいります上におきましても、どうしても今後は社会開発の中で社会保障というものが最も大きな柱の一つである、こういうようなことから、この社会保障の充実を期していかなければならない、こういうことで社会開発の中の社会保障、またその社会保障の中で、御承知のとおり一番大きなものは所得保障の問題であり、また医療保障の問題である。今日、日本の国におけるこの社会保障、二つの柱でもって構成されておりますところの社会保障は、やれ皆保険だ、やれ皆年金だというふうな、形の上におきましては一応の姿は整っておる。しかしながら、その内容にいたしましても、とうてい西欧先進国水準まではいっていない。これをできるだけそういう方向に、その域に近づけていかなければならないということが一つあるとともに、それからまた、制度におきましても、きわめて脆弱にしていろいろの弱点を露呈しておる、こういった点から考えまして、水準も高めなければなりませんし、また制度自体も、これを根本的に一ぺん立て直していかなければならない、こういうこともございましょう。それからまた、年金につきましても、皆年金の姿は一応整っておりますけれども、まだまだです。もちろんこれは実施せられてまだ年月がたっていないために、おとなになっていない、成熟していないということは、これは時の関係でありまして、何ともいたしかたのないことでありますが、しかし、この年金制度についても、目下のところは非常に微々たるものでございますので、こういったようなものも早急にできるだけ整備強化していくということでなければならない、かように考えております。
  5. 田邊誠

    田邊委員 いま大臣がいみじくも言われましたとおり、日本社会保障は、児童手当を除いては一応形は整ったといわれておるわけです。しかし、いまお話がありましたとおり、社会保障というのは、その形よりも内容であります。いわば具体的な中身でありますから、そういった点からいって、日本社会保障水準というものがきわめて立ちおくれておることは、これは疑いのない事実でございます。大臣の当委員会における所信表明をお聞きをいたしましても、その水準の低さというものに対して大臣は大いに嘆かれておるわけでありまして、われわれとしては、佐藤内閣表看板である社会開発を進める上にとっても、またその最終目標である風格ある社会をつくる上からいっても、この際ひとつ声を大にして社会保障拡充強化を遂げなければならない、こういうように実は考えておるわけであります。そのことは、ただ単にかけ声だけをかけておれば相済むものではないわけでありまして、当然具体的な施策裏づけがそこになければならないと思うわけであります。  さきに当委員会において、わが党の河野委員から社会保障水準について、その予算を通ずる状態というものに対して質問がございました。したがって、私も重複を避けたいと思いますので、簡明にこの問題については質問をして次に移りたいと思うのでありますけれども、しかし、一応現在のところ、わが国の社会保障の今後の施策を講ずるにあたって、一つ基準といいましょうか、一つ尺度というものは何かといえば、これは疑いなく三十七年に出された社会保障制度審議会勧告にありまする、十年間に西欧社会保障水準に近づける、達する、こういうわけであります。もっとも制度審議会勧告といえども、三十六年当時の西欧社会保障水準に四十五年において近づけるということでありますから、四十五年においては、すでに西欧社会保障水準は十年間の進歩を遂げるというかっこうでありまして、その格差は依然として存在するわけでありますけれども、しかし、いずれにしても一応の努力目標というものが勧告されたと私は見ておるわけであります。したがって、少なくとも最低この社会保障制度審議会の三十七年の勧告に達することは、政府の責任でもあると同時に、これは国民がひとしく望むところであろうと私は考えるわけであります。  さき質問を通じて、一応の目標なり、そういう目的達成のための努力はしておるけれども、しかしその年次的な計画はなかなか立てづらい、こういうお話がありました。もちろん経済の変動その他の条件がありまして、あるいは算術計算でもって毎年の水準を推しはかることはできない、これは当然であります。しかし、幸いなことにここ数年間日本経済も順調に伸びてきたというふうに政府は見ておるわけでありますけれども、そういった点から見まするならば、昨年ないし一昨年勧告がありましてから、大体半分の過程を経ました段階において、この制度審議会勧告というものが最低守られるという、こういう状態を私は見出したかったのでありまするけれども、しかし残念なことに、そういうふうに現状はなっておらないと拝察をいたすわけであります。三十六年に国民所得の中に占める社会保障割合というのが六%、西欧の一四%をはるかに下回っておったわけであります。したがって、四十五年までの間に大体この一四%に達する、こういう必要をわれわれが感じまするならば、大体四十年から四十一年度ぐらいにはその半ばの一〇%ないし一一%、したがって昭和四十年度においては、国民所得の約一〇%ないし一一%といたしますならば、三兆円程度社会保障割合というものが出てこなければならないわけでございまするけれども、実際には一兆九千億程度にとどまってしまう、こういう状態であります。そういたしますと、どうしてもその後半においてよほどの努力をしてそのカーブを引き上げなければ、私は、四十五年度の最終目標の一四%に達することはできない、こういうふうに考えておるわけでありまするけれども、ひとつこの点に対してどのような心がまえと施策を持って対応しようとするのか、お伺いしたいのであります。
  6. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘のように、三十七年の制度審議会勧告と申しますか、要請と申しますか、それに比べまして、今日日本社会保障の経費というものはとうていそこまで行っていない、これは御指摘のとおりであります。おそらく昭和四十二年度の予算におきましても、私は、社会保障費というものは国民所得に対しましてまだ六%台というようなことだと思いますが、そういうようなことで停滞しておっては、これはとうてい完全なる社会保障ということができない、社会保障の点において非常に立ちおくれが生ずるということもございまして、そこで御承知の今度の政府経済社会発展計画の中におきまして、社会保障の一応の尺度、一応のベースとなりまする振替所得につきまして、これの一応の推定をやっておることは御承知のとおりでございます。それは昭和四十年度をベースといたしまして対国民所得比五・五%ということは御承知のとおりでございますが、それを目標時の昭和四十六年には何とかして二%前後引き上げていこう、こういう計画でございまして、その二%引き上げるということにつきましては、四十二年は幾ら、四十三年は幾ら、こういうことは、先ほどおっしゃられたように、経済の流れ、経済の動きといったようなものに相当大きな影響、作用もされるというようなことで、年次計画は立ってはおりませんけれども、とにかく二%前後上げていこうということで、そういうことになりますと、年次において何%、何%ということはできませんけれども平均伸び率ということでまいりますと、一七・七%ぐらいの年々の伸び率で持っていかなければならない。そこで、一七・七%といいますと、国民所得伸び年率平均一一・九というような中におきまして、一七・七というような計画でもってやっていくということは、これは私は、佐藤内閣が、こういったような国民所得の中で、この方面の経済社会発展計画におきましては、社会保障というものに最もウェートを置いて考えておるということを、ひとつ御理解を願いたいと思う次第でございます。
  7. 田邊誠

    田邊委員 結局、この十年間の半ばの現状の中で、いままであまりにも社会保障に対して重点を振り向けることが少なかった、その結果として、今後相当な決意努力をする中でその水準に達しなければならぬ、こういう話でございまして、私どもまたその努力をぜひともやっていってもらわなければならないと考えておるわけであります。しかし、それにはそれのやはり一つの具体的な中身というものを持たなければならぬと私は思います。しかも、いま大臣が言われましたような、国民所得伸び率に比べて社会保障水準を大幅に引き上げていくという、こういう計画決意というものをほんとうに実際に実行してもらうために、さっき申し上げたような医療保障にいたしましても、所得保障にいたしましても、いわばすべての施策をとるにあたって、それが前進態勢をとらなければならぬと思うのであります。もちろん、財政上の問題や、あるいはいろいろな施策との間におけるバランスをとるということは当然ありましょうけれども、しかし、少なくともすべての施策がやはり前進態勢をとらなければ、こういったかなりの困難な状態というものを克服していくことはできない、こういうように考えておるわけですけれども、その点に対しては、大臣は今後国会審議にあたって、いろいろな法律の改正等を考えてみて、いまおっしゃったような考え方と決意の上に立って努力をなされる、こういうように解釈してよろしゅうございますね。
  8. 坊秀男

    坊国務大臣 ただ五・五%を七・五%に上げるんだというようなことだけでは、これは単なる青写真だと思います。そういったような方針に沿いまして、諸般の社会保障に関する制度といったようなものを見直していかなければならないし、それからまた、こういったようなものをできるだけ整備、充実していくということによってこの裏づけが行なわれるのだ、私は鋭意そういう方向に具体的な方針をだんだんと立てていきたい、かように考えております。
  9. 田邊誠

    田邊委員 いまのようなお話の中で、それならば具体的にわれわれはいろいろな施策に対してお伺いしていかなければならぬと思うのでありますけれども、その前提となるのは、医療の場合におけるいわゆる国民保険制度、それから所得の場合においてはまずもって最低生活基準引き上げ、こういうことであろうと考えるわけであります。  そこで、医療問題については、後ほど時間がございますならばお伺いをいたしまするし、また今後のいろいろな法案審議の中でひとつ具体的にお伺いしていきたいと思います。とりあえず所得保障の問題をまずもってお伺いしていかなければならぬと思うのでありまするが、いま申し上げたように、その前提となるべきものは最低生活基準をやはりまず引き上げていく、これが一つの重要なことであろうと私は思うのであります。御案内のとおり、先ほど申し上げた制度審議会勧告の中でも、憲法二十五条によるところの最低生活保障というものは、当時の最低生活基準というものを約三倍に引き上げていかなければならぬ、これがいわば前提だというふうに言われておるわけであります。確かにこの最低生活基準一つのめどとなる生活保護基準についても、政府は、三十七年の一二・四%以降四十一年の十三・三%まで、各年度ごとにこの保護基準引き上げを行なってきたことは事実であります。しかし残念なことに、この間御承知のとおりの異常な消費者物価の値上げ、こういうことが相次いでおりまする状態の中で、政府のいま言った幾ばくかの保護基準引き上げにもかかわらず、一番の最低生活をしいられている保護家庭というものの生活状態は、いまだに一般勤労者世帯生活水準の半分以下である、こういう状態であることは私も実は非常に悲しむべきことだと思う。そこで、ひとつ四十二年度においても保護基準を一三・五%引き上げられて、一級地においては標準四人世帯で二万三千四百五十一円という基準をつくられる予定でありますが、現在のところ、私はやはりこれはあくまでも数字でもって明らかにしなければいけない問題であろうと思います。抽象的に最低生活引き上げると言っても、これはナンセンスでありまして、具体的にやはり数字でもって、現在の時点において、日本の現在の生活水準からいって、最低生活というのを一体どの程度に置かれようとしておりますか、どの程度であるというように認識をされておりますか、ひとつ概括的にお答えいただきたい。
  10. 坊秀男

    坊国務大臣 国民最低生活と申しますか、生活保護基準にあらわれておりまするのが国民最低生活、こういうふうに見なければなりませんが、この国民最低生活が御指摘のとおり日本一般国民生活水準に比してまだ格差が非常に大きいということは、そのとおりでございます。ところで、私ども努力と申しますか、これは皆さんと御一緒に努力していただくということは、できるだけこの格差を、一ぺんにはいかぬにいたしましても、逐年にわたって縮小していくということが私は目標であろうと思いますが、国民一般生活水準といいますか、それとは違って、現在は第一・十分位ですか、そういう分位と比べては、だんだんとここ数年来近づいてまいってきておりますが、今度の昭和四十二年度におきまして一三・五上げたということが、四十一年度と同比率でございますけれども、四十一年度に一三・五上げた、今度また一三・五上げたといいますことは、その第一・十分位にさらに格差を縮めてきておるということでございまして、これは私は今後も将来ともにこの努力をいたしまして、この格差を進めていきたい、かように考えております。
  11. 田邊誠

    田邊委員 局長にお伺いいたしますけれども、ことしの三月大蔵省の統計発表によりますると、標準の五人家族でありまするけれども、この家計は四万八千三百九十円であります。それと比較をする意味では、四十一年度の予算における生活保護基準は、一級地標準四人世帯が二万六百六十二円であります。所得階級別分位に基づいて、第一分位年間所得は大体三十万円以下であります。こう見てまいりますると、いま大臣は、きわめて簡単率直に最低生活基準というのは生活保護基準によるところの数字というものが最低生活だというように言われましたので、大臣、ひとつお聞きになっていただきたいのでありまするけれども、この大蔵省の発表の標準五人世帯の四万八千三百九十円、こういう生活水準というのは、一体エンゲル係数ではどの程度になっておりましょうか。それから昨年度の生活保護基準の二万六百六十二円というのも、一体エンゲル係数上はどの程度になっておりましょうか。ひとつお伺いしたいと思います。
  12. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 大蔵省の課税最低限は、それ以上の人から税金を取るということでございますので、これが最低生活ということではございませんので、相当差がありますので、エンゲル係数がたしか四三、四じゃなかったかと思いますが、ちょっと手元に資料を持っておりません。それで、生活保護法におきましては、エンゲル係数でその四万八千幾らに対応しますのが、四十一年度の場合に保護基準では五二・三、それから四十二年度におきましては、それを極力下げなければならぬということで、五一・二ということでございます。
  13. 田邊誠

    田邊委員 大蔵省の標準五人世帯における四万八千三百九十円というのは、エンゲル係数四七・九%であります。そこで、エンゲル係数、現在のいわば進歩した経済状態の中で、これのみに一つ基準を求めることはいささか疑問になってきたことを実は私は承知いたしておりますが、しかし一応端的に言って、これが一つ尺度になっていることも事実であります。  大臣、いま局長からの御答弁にありましたとおり、最低生活基準大臣が言われた保護基準は、四十一年度においても、四十二年度の見通しにおきましても、五〇%を上回っておる状態である。そこで、一体それじゃエンゲル係数というのは——これは申し上げるまでもなく長い間言い古されたことばでありますけれども、しかし、私は、労働科学研究所で報告をされたエンゲル係数に対する考え方から推しましても、四五%以上というのはやっと健康が保てるということである、四五%が四〇%になってわずかに慰安ができるという生計費である、こういうふうに実は言っておるわけであります。私はこれを単純にのみ込むこともいかがかと思いますけれども、しかし常識的に言いますならば、やはり四五%をこえるというのは、その健康の保持からいい、その家計の保持からいって、まだまだきわめて困難な状態であるということを私は認めなければならぬと思うわけであります。したがって、保護基準のエンゲル係数が、いまのお話のようにわずかに一・一%程度引き下がったからといって、まだまだ憲法に求められておる最低生活保障というところにとうていなっておらない、こういうふうに考えざるを得ないわけでありますが、今後の目標なり見通しとして、どの程度のところまで下げればよろしいというふうに考えられてその努力をされようとしているのか、まず今後のお考え方を一応承っておきたいと思います。
  14. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 いまのエンゲル係数の問題につきましては、先ほど大臣お話しの第一・十分位、要するに一億人の下から一千万人の平均の中心をとって、それと被保護階層との生活水準の差といいますか、そのあり方をどうするかということが、私どもの一番身近な問題として考えておる問題でございます。たとえばエンゲル係数にしますと、第一・五分位、これは下から二千万人、これを平均しますと三十六年に四七・三というのが、まあ三十七年、八年とありますが、四十年度で四四・二%、下から二千万人の階層のエンゲル係数が四四・二という数字がございます。それから第一・十分位、これはまだ詳細に検討しておりませんが、そういう分析をいまやらしておりますけれども、それが大体四七、八——先ほど大蔵の課税最低限を私間違って四三、四と申しましたが、四八近い、その辺のところになるのじゃないか。そうしますと、先ほどの労研の藤本先生のお話の、四五ではぎりぎり生きるだけだ、四〇でやや慰安ができる、これは議論としてはそういうことがあり得ると思いますけれども、現在はそこまでいっていないのじゃないか。少なくとも第一・五分位、いわゆる二千万の国民が四二%——これは四十年度でございますけれども、ということから見ますと、やはり第一・十分位平均のところぐらいまでは、長期的にはもっと下げたいのでありますけれども、何とか持っていかなければならないのではないか、そういう気持ちであります。
  15. 田邊誠

    田邊委員 いまお話がありましたとおり、保護基準を一三・五%引き上げたが、これがまあ最低生活基準だろうというふうに大臣おっしゃったけれども、これは社会保障担当大臣としてはもう少し認識を深めていただきたい。この程度では最低生活基準というふうにはとうてい当たらないと私は考えざるを得ないのであります。しかも、今年度は予想される消費者米価の一四・四%の引き上げという、こういう事態を考えますと、いま言ったエンゲル係数についても、前年度よりも少なくなっている、こういうふうには決してならないわけでございまして、この際ひとつやはり相当な決意を持って、この最低生活一つのめどである保護基準引き上げについてもお考えを及ぼしていただかなければならない、このように思っておるのですが、一体厚生省は今年度の予算の要求の中で、この保障基準はどのくらい引き上げるべきだということを主張されたのですか。
  16. 坊秀男

    坊国務大臣 予算折衝の過程におきましては、実は経済企画庁の明年度の経済の見通しというものが、これがなかなか折衝の過程には出てまいりませんで、最後のぎりぎりの、予算がきまる寸前ぐらいのときまでこれが出てこないのです。そういうようなことで、これは政府方針でございますから、それにのっとりまして理論的には要求をすべきものでございましたけれども、それが出てまいりませんので、その過程におきましては、とにかく一応のワクをとっておかなければならない。予算の要求でございますから、理論的にはぴしゃっと幾らというわけにもいきません。一応ワクをとっておくというようなことがございまして、そのワク内においていろいろな折衝がございましたので、その過程におきましては、データのとり方でいろいろな数字が出てまいっております。あるいは一八という数字も、一七という数字も、あるいは大蔵省あたりからは一〇といったような数字も出てきておる、こういうような過程でございまして、とにかく、明年度の経済見通しというものがおくれたために、ワクをつくりまして、そのワクの中でいろいろ折衝をしておった、こういうわけでございます。
  17. 田邊誠

    田邊委員 大臣、時間がないから、ひとつ私の意見を聞いていただいて御退席いただきたいのでございますけれども、いま大臣が言われたことは、私は非常に率直な御意見だろうと思うのであります。事実はまたそうであろうと思います。しかし、そういうことであっては、実は、保護基準引き上げについても、あるいはそれに見合うところの最低生活保障についても、いわばほんとうの意味におけるところの基準の確立、引き上げということができない。やはり厚生省は、何といってもいま言った社会開発の基本をなす社会保障拡充強化のために一奮発してもらわなければならない事態でございまして、そういった点から言いますならば、いま言った憲法に保障される最低生活はこれこれである、これ以上下げることはまかりならぬ、こういう確固たる確信と決意を持って予算折衝をされて、保護基準引き上げなり、それに見合うところの施策をやらなければならない、こういうことでなければならぬのでありまして、何か総体の予算のワクの中で足して二で割るような方式というものを毎年とられてきているこの現実の姿というものは、いつの日にか改められなければ、大臣がさっき言った、二%の所得振りかえの原則を貫きたいという、こういう気持ちは私はとうてい実現をしないと考えるわけでございまして、この際、ひとつ大臣決意を新たにされて、今後の施策をするにあたって、抽象的な論議やかけ引きではなくて、やはり具体的に数字をもってそれに対処されるように、これを貫き通す、こういうようにひとつお願いをいたしたいと思うのでございますが、一言決意を承っておきたいと思います。
  18. 坊秀男

    坊国務大臣 ごもっともなる御意見だと存じます。御趣旨を体しまして今後とも努力をいたします。
  19. 田邊誠

    田邊委員 政務次官おいででありますけれども、いま答弁を聞いておりましておわかりのとおり、幾つかの努力を積み重ねておるということであるけれども、現実の数字上といいましょうか、現実の状態の中では、まだまだ最低生活保障すらも確立されておらない、こういうふうになってまいるわけでありまして、われわれとしては、その中で一体いろいろな施策というものをどう講じられようとしておるのかということを、実はお聞きしておきたいのであります。  私は、近年わが国の人口の推移からいいましても、いわば中高年齢層は非常にふえてまいっておりますし、平均寿命がたいへん延びてきておるという現状の中で、いわば老人対策といいましょうか、それに類する高齢者の人たちに対する施策というものが非常に重要になってまいっております。これの基準は一体何かといえば、一つは生活の保障をどうするかということでありますが、生活の保障をするためには、一つには生業につけること。生業につけない人たちに対しては老後の保障をする。しかし、老後の保障をするという、こういった面における大きな柱は年金制度でありまするけれども政府のかけ声によって厚生年金国民年金もそれぞれ一万円年金に達すると言っておるのでありますが、国民年金のほうはいますぐ達するわけではありませんが、そういうかけ声であります。少なくとも、老齢福祉年金をはじめとした障害年金、母子年金、そういった面においても、生活の大半といいましょうか、生活をささえる一つの大きな柱として年金が存在するという形にならなければいけないのですが、いまのところはそういうことになっておらない。今年度の予算を見ましても、これから先の法案の審議の中でも老齢年金の若干の引き上げがありますけれども、私は、日本のいろいろな各種の社会保障制度の中で、年金制度というのは戦後に新しく出た制度でありまして、まだまだ実はその初歩のところを抜け切れないと思っておるわけでありまして、他の施策との相対的な比較の中においても、私は、この年金の額の増額をはじめとした各種の取り扱いに対して、これはまだまだ意を用いなければならぬと思うのですが、さっきのお話からおわかりのとおり、経済の変動、特に消費者物価の値上がり、そういう点からいいまして、この際やはり年金制度についてはスライド制を含めた一つの対策というものを考えていかなければ、いつも時代におくれるという状態になるのではないか、こうに思うのですが、これに対する一つのお考え方をお伺いしたいと思います。
  20. 田川誠一

    ○田川政府委員 いま御指摘年金制度がまだ十分でないという御意見でございますが、確かに、これは御指摘のようにまだ緒についたばかりでございまして、十分にいっていないということは私どもも認めておるわけでございます。まあ一万円年金といいますか、厚生年金も徐々に充実をしていっておりますけれども、なお年金の問題につきましては、さらに充実するように私ども努力をしていく決意でございます。
  21. 田邊誠

    田邊委員 そこで、だいぶ最近は老人人口がふえてまいっておるわけですが、六十五歳以上の人たちが、昨年の九月の厚生省の発表によりますと、六百四十一万八千人ばかりおいでのようであります。総人口の六・五%に当たるというのでありますが、これは逐年増加をする傾向になるだろうと思うのでありまして、一つの予想を言いますると、六十五年には千三百万人、総人口の一一%、七〇年には二千三百八十万人、総人口の約二〇%に達するだろう、こう推定をされておるわけであります。このように、老人人口の増加、平均寿命の高齢化、しかも加えて戦後における家族制度の変革もありまして、いわば核家族化というものが進んできておる。こういう状態の中で、老人問題というのは非常に重要になってまいっておるのでありますけれども、これは局長でもけっこうでありますが、こういういわば趨勢にありまする老人問題を国家的にあるいは社会的にどうとらえて対処していくか、こういうことが私は強く要請をされておると思うのでありますが、老人問題に対してどういうような対処をされてきているのか、その大体のアウトラインについてお伺いしたいと思います。
  22. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 非常に広範な問題でございまして、むずかしい問題でありますが、私どもいま考えておりますのは、先生のおっしゃいました最近の核家族という問題は、これは、何とか老人  をくるんで、家族が老人を守っていけるというよ  うなかっこうにしたいという気持ちから見れば、あまりありがたくない傾向だというふうに思っております。しかし、それは一つ国民なり、人類のと言ったほうがいいかもしれませんが、一つの傾向になってきているというふうなことで、その矛盾を緩和するというふうな意味におきまして、一つは、先ほどの年金の問題、老人の所得保障、これがありますならば、たとえば老人御自身、あるいはその家族でも扶養する負担が非常に軽くなる。そういう意味では、一緒に暮らしている長男なりむすこなり娘なりがそれほど困らないというふうな意味での所得保障の問題があります。それからもう一つは、やはり老齢者につきましては医療の問題がございます。非常に疾病が多うございますので、それに対する医療費の自己負担部分——皆保険といいますけれども、自己負担部分をどうするか。それは、たとえば国保で七割といいましても、残り三割は非常に自己負担部分が多い場合がございます。特に長期慢性疾病ということになりますと、その部分を一体公費でまかなうか、保険制度の中でまかなうか、この問題が非常に問題であります。これを何とかしてやりませんと、むすこたちがあごを出してしまうというふうな問題がございますので、その辺からだんだんと家族分離のかっこうになってしまいます。  それからもう一つは、これは一番根本問題と思いますが、実は厚生省の所管というわけにまいりませんのがつらいのでありますが、働く場所を得たい。アンケートをいろいろとってみますと、何とかして働きたい。必ずしもそれでめしを食うということでなしに、何とか社会とつながりを持って働くという気持ちが非常に強くある。これは中同年齢ということで先ほど出ておりましたが、中向年齢対策といいましても、六十歳あるいは六十五歳というのは、現実には中高年齢対策の中にはなかなか入りにくい。求人もなければというふうなことで、なかなかいまの職安行政の線の中に入りにくい。これを何とか職安行政の線の中に乗せてもらいたい。あるいはそれ以外に、社会福祉協議会であれ、あるいは民間有志団体であれ、老人クラブであれ、とにかくそういうふうに仕事を見つけてあげるということが、老化防止という意味、あるいは生きがい、希望を持たせるという意味で、そっちのほうの就労開拓というふうな問題が一番大きな問題じゃないか。ただ問題は、これは定年制の延長とかいう非常に大きな問題にぶつかりますので、その辺は厚生省だけではどうにもなりませんが、そういう問題が一つあります。  それからもう一つは、私ども今度は福祉の面から見まして、いままでは非常に大家族制度で、むすこ、娘がそれをカバーしておるので、老齢者の貧困あるいは疾病というふうなものが家族の中で解消して表面に出なかったのですが、最近は高齢者世帯というのが非常にふえております。三十五年の五十万世帯が四十年度の国勢調査では八十万世帯と、一挙に六割ふえております。高齢者だけの世帯、この傾向を進めてまいりますと、老人夫婦あるいは単身が、家族の壁に囲まれないですぐに社会の中に投げ出されるということで、そういう場合に、今度は施設の収容の問題がございます。ただいまのところは七百五十くらいで約六万人くらいの収容力しかございませんが、それは四十一年度の六百六十万人の六十五才以上から見ると一%に足らない。大体〇・八%くらいであります。諸外国を見ますと、二%あるいは三%くらいの収容力を持っていて、いつでもいらっしゃい、こういうかっこうまでできておる国が非常に多い。その辺の収容施設の問題があります。そのほか、居宅におる人でも、クラブの活動とかあるいは健康診断とかいうふうなもの、これは医療の問題がありますけれども、そういうふうにウエルフェアーの面でもいろいろ家族のトラブルの相談にできるだけ応じていくという問題、あるいはそれがどうにもならぬ場合にいつでも収容してめんどうを見られるという体制、こういう場合は非常に大きな問題だと思います。  もう一つ住宅の問題があります。とにかく、むすこに子供でもできれば老人夫婦のおるところがないというふうな、非常に規模の小さい住宅が多い、その辺からやむを得ず核家族化になるという場合もございますので、その辺の住宅対策という面も突っ込んでいかなければならない。その範囲の中でいま検討をいたしております。
  23. 田邊誠

    田邊委員 総括的にお話がありまして、それを一つ一つ取り上げてきょう御質問する時間がございませんので省きたいと思いまするけれども、特に就業の問題は、私は、内閣の広報室でもって昨年の五月に老人福祉に関する世論調査をいたしましたわけですが、この中を見ましても、仕事をしたいというのは非常に少ないのであります。これはやはり日本の封建思想といいましょうか、年寄りの観念といいましょうか、そういうものがまだまだ近代化されておらない結果であろうと思うのでありまするが、私は、仕事をしたいというのはわずか三%くらいだ、こういう報告をそのまままともに受けるわけにはいかないと思うのでありまして、まずもって仕事をしたい者はそれが受け入れられる。仕事をしたくない、仕事はできない者に対しては、いわゆる年金あるいは施設その他の方法をもって生活を保障する、こういうかっこうに順序としてならなくてはいかぬと私は思うのであります。これは世論の啓発も必要でありまするけれども、きょう労働省おいでになりませんから、その点に対しては、またあらためてお伺いをいたすことにいたしまして、その他いま局長がおっしゃった住宅の問題、あるいは医療の問題等数多くあるわけであります。  非常に狭めた質問でありまするが、医療問題についても、たとえば健康保険にしても、国民健康保険にしても、老齢者というものはおそらく健康保険の本人ではございませんでしょうから、最低三割なり五割の自己負担を必要とするという状態の中で、非常に疾病率が多い年寄りのこの状態というものを救うことが非常にむずかしくなってきているということ、こういう状態で、でき得べくんば、たとえば六十歳なり六十五歳以上の人たちに対しては、現状の中でもこの自己負担をなくすという、こういう国家的な施策というものが実は私は必要ではないかと思っておるわけですけれども、これはまた別の機会に申し上げまするが、とりあえず老人福祉対策としては定期的な健康診断をやることを老人福祉法でも規定をして実施をしておるわけであります。これも年一回というのでありまするから、当初の三年に一回でしたかに比べれば、だんだんよくなってきているといいましても、年に一回でもってあとは命の保障をするというわけにはいかないので、非常にお寒い状態であります。しかしやらないよりはいいわけですが、この受診率は非常に少ない、悪いのであります。これは私は非常に問題だと思うのであります。今年度の予算において、受診率を一体どれくらいに見られて、この健康診断をなさろうとしておるのですか、お伺いしたいと思うのであります。
  24. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 前の三年に一回というのは、いまのところは、四十一年度予算におきましては、二年に一回、こういうふうになっておりますが、四十二年度は、それでは困る、少なくとも毎年一回にしてほしいという話でいろいろやりましたが、それではというので、ちょうど三分の二でありますか、百分の五十であった対象を六十五にした。逆にいえば、三年に二回、その辺でおさまらざるを得なかったわけでございますけれども、そうしますと、昭和四十二年度の予算におきまして、六十五歳以上の人口推定が六百六十六万五千人、それでその六五%、三分の二にいたしますと四百三十三万、それに対して、実施率といいますか、実際に来る者は従来から三割だと見ておるわけです。ですから、それに三割を掛けますと、全国的に約百二十万というふうなかっこうでございます。それで私どもも、実際に来るのが三〇%というのはふに落ちぬとということで、いろいろ県に聞いてみますと、それは、たとえば入院しておったり、いろいろな家庭の事情があったり、それからうっかりいくとガンだなどと言われちゃ困ると、御老体にはいろいろ迷信みたいなものがありまして寄りつかなかったりというようなことがあって、結果におきまして大体三割前後は各市町村でも来るということに落ちついておるわけです。これは市町村のPRのしかたなりなんなりが不十分ではないか、こういうふうに思っております。
  25. 田邊誠

    田邊委員 大体六十歳以上が六五%、六十五歳以上が五〇%くらいと見ております。しかも実際の受診率はいま言ったように三〇%といったようなこと、これはいま言った内閣の広報室の世論調査によっても、健康診断を受けなかったのが約四三%あるという事実で、大体これは一致しておるわけでありますが、この習慣なり風習というものをそのままほうっておくということは私はいかぬと思います。この際、健康診断に要する費用も、PRの費用なりそれに要する事務費なり、それらを含めてやはりこの際増額をされて、少なくとも一年に一回、一〇〇%とは申しませんけれども、七〇%なり八〇%の人たちが健康診断を必ず受ける。その中で今後の自分の健康についての判断をするという状態をつくり上げなければならぬと思うのでありまして、今年度予算の中ではいま言ったような状態でありますけれども、今後ひとつこの問題についてはさらに御検討いただいて、充実した健康診断を受けられるような状態をつくっていただきたい、こういうふうに私は強く希望しておるわけであります。
  26. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 それに関連して、私は大阪の老人クラブの会長さんのお話をここで申し上げて、お答えをいただきたいと思います。  健康診断をしていただくことはたいへんけっこうであるけれども、そのあと始末の対策については、たとえばガンならガン、あるいは脳が少し悪いとか、あるいはいろいろなことを言われても、それに対するあとの処置に対する指導はあまりない。だから、診断をしてもらったために、みずからが対策を立てて治療していくところの方途がわからなければ、かえってがっかりしてしまって、見てもらう前よりも健康状態が精神的に悪くなる。それでひとつこの問題を機会があったらぜひ厚生省にお願いして、御診断はまことにけっこう、しかしそのあとの対策を親切に、どういうふうにしたならばその病気をなおす方法があるか。老人のことでございますから、現代のいろいろな問題についての知識が非常に薄いと私は思うのであります。それで、いまPRというお話がございましたが、診断をしていただく方にぜひ懇切丁寧にあとの指導を、物質的に——国民健康保険に入っていない人がたくさんありますから、どういうふうになるというそのあと始末をしてあげなければ、やはり三〇%しかないということになって、かえってこれで迷惑している、精神的に非常に落胆をして早く病人になっているというのが現実の問題でございますが、こういう点はいかがなものでございましょうか。
  27. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 実は私も東北の山の中で、村の話をよく知っておりますが、やはりそれであると病院に行かなければならない、そうするとむすこのほうに経済負担をかけるというふうで、おじいさんがあえて出てこないというふうな問題がございます。これは少なくとも私どもの段階では、一般検診をしておかしいなと思う者は、大体四分の一は精密検診、もっと厳密なものをやらせます。それでいよいよ疾病だということになれば、それは国保の使い方、あるいは状況によっては生活保護の医療のかかり方というふうな指導をするようにということは申しておりますが、何せ基本的にはやはり医療費の自己負担部分というふうなものが根本問題でございます。その部分は医療保険全般の問題の中で取り組むのか、あるいはその部分だけは別だから、結核の公費医療負担のように、公費で別にやるというかっこうになるのか、これも医療の大きなたてまえの問題になるのじゃないかということで、これは実は社会局だけできめるわけにまいりません大きな問題でございますので、苦慮して省内でいろいろ相談しておる、こういう状況でございます。
  28. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 もう一点だけ。それでは、老人福祉対策というものもできたのでございますから、生活保護ということにきょうは非常に重点を置いていま御質問がございましたが、このいわゆる人生の最後になってこういうふうな難儀をしておる老人たちを、老人福祉法の中にこれを救うところの何かの条件をつくっていただいたならばいいと思うのでございます。特にまた、いまの老人の働く場所ということですが、関西のほうでは老人クラブが働く人の要求の場所をつくっております。老人が老人を救うために実に活発にやっておるのでございますから、政府におかれましても、老人に負けないようにひとつ何とか老人の対策を立てていただきたいということを、私も老人でございますので、老人を代表いたしましてひとつお願いをいたしておきます。
  29. 田邊誠

    田邊委員 いま中山委員からもお話がありましたとおり、先ほど私は私の意見だけを言っておきましたが、政務次官、いまのお話にもあったとおり、私は、老人の医療の問題は、いまの健保なり国保なりのワクの中に閉じ込めておくだけでは、だんだん済まなくなると思うのであります。七〇年には約二割の人たちが六十歳以上になる、こういう状態から見て、まあ寿命が延びるのもけっこうだけれども、どうも国の負担がよけいかかっては困るなんということでは実際にはいけないわけでありますから、そういった点に対して、この際ひとつ政府も何らかの調査なりあるいは審議の機関を設けて——あとでお伺いする児童問題についてもいろいろと審議会等で御検討でありますけれども、老人問題についても、やはりそういった機関なりを設けて、新しい角度でもって医療の問題、所得保障の問題を検討される必要があるのじゃないかと私は思うのでありますけれども、いかがでございますか。
  30. 田川誠一

    ○田川政府委員 御指摘のことは、確かに私どももそういうふうに感じておりますが、特に最近老人対策というものが非常に強く叫ばれておりまして、私も、まあ狭い範囲でありますけれども、この間うち東京都の老人福祉対策に関係のある人たちにいろいろお話を聞きましたところが、若い人にむしろ老人福祉対策をもっと充実しなければならぬという意見が最近ずいぶん出てきておるという話を聞きまして、たいへんこれはけっこうなことだと思いました。いま田邊委員がおっしゃいました老人に対する特別の医療対策と申しますか、あるいはまた所得保障の問題、こういう問題については、現在人口問題審議会でいろいろと話もしておるようでございますし、私どもも、新たな角度からいま御指摘の点につきましても検討をしていくべきではないか、こういうふうに考えております。
  31. 田邊誠

    田邊委員 老人問題は、それ以外に、もちろん施設の充実の問題なり、ホームヘルパーの充実の問題なり、いろいろ私はあると思うのでありますが、施設の問題は私実はいろいろと専門的にお聞きをしたいのでありますけれども、きょうは時間がございませんから後の機会に譲るといたしまして、先ほどちょっとお話が出ました老人クラブの運営について、今年度も約三億円の補助を出されて、五万五千クラブに及ぶ老人クラブに対して援助をするという形でありますが、これはもちろん官製のクラブではありませんから、その運営については自主的にされることはもちろんでありますけれども、しかし、何か老人の日なりあるいは新年なり、その近所の老人が集まってお互いに演芸などやったり慰安をしながら一日を過ごす、これもまた私は非常に気分転換その他の面で必要だろうと思うのであります。孤独化する老人にとっては、そういったクラブというものが一つのよりどころになることは当然なことでありまして、そういう面の必要性はありますけれども、しかし中山先生もおっしゃったけれども、たとえば健康診断についていま言った老人クラブを活用されるというようなことも、当然私ははからわれなければならぬと思っておるのであります。したがって、これは官製化することは避けなければいけませんけれども、老人クラブの運営に対する一つの指針なり、老人クラブの性格づけなり、そういった面に対して、やはり厚生省としてある程度方針は持っておらなければならぬと思うのでありまして、押しつけでない程度において十分な活用ができるような、そういう指導をやられる必要があると私は思うのですが、現在のところ、遺憾ながら、いい意味においては自主性を尊重する、いわばほうっておくというようなかっこうで運営をされておるというのがどうも私は実情ではないかと思う。私は現実を知っておりますから、そういう点から少し抜け出して、効率的な活用、その中でさらに自主的な広がりを求めていく、こういうことがやはり必要ではないかと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  32. 田川誠一

    ○田川政府委員 老人のクラブを非常に充実さしていくという問題は、なかなかこれはやり方がむずかしいと思うのですけれども政府や地方団体があまり介入することもこれはどうかと思うのです。自主的にやれば一番いいわけなんですが、なかなかそうも参らないと思うのです。全国で老人クラブが非常によく活動してうまくいっているところを見ますと、その中の指導者がよく世話を見、研究をしておるというところが、やはりわりあいによく活動してうまくいっていると思うのです。そういうことを考えますと、これは全くの私見でありますが、よくボーイスカウトや何かで指導者の講習をやって活動しておりますね。あれと同じような形で、老人クラブの中でおもだった人、指導的な人を、地方団体なりあるいは厚生省なり、そういうようなところで指導をして、指導者の養成というものをやっていったら、老人クラブの活動がもっと充実されるような気がするわけでございます。これは私の全くの私見でございますが、そういうことをやったらさらによくなるのではないか、こういうふうに思っております。
  33. 田邊誠

    田邊委員 いずれにいたしましても、ひとつ厚生省は、今後の指導についてさらに深い検討をされて、これが効率的な活用をはかられ、老人対策の一環としての運営ができるように御配慮をいただきたいと思っておるわけであります。  次に進みますが、これは老人問題に限りません、児童にも当然わたるわけですが、特に施設の問題と関連をいたしますけれども社会福祉施設全般について、われわれとしては、今後のあり方については、ただ単に現状の地方公共団体なりあるいは法人なりで運営されている状態に満足をすべきではもちろんありません。将来は国が責任を持つという形に当然移っていかなければならぬと私は思っておるわけですが、現状では半官半民といいましょうか、ある程度民間の力にたよるという形になってきておるようです。  そこで、民間の社会福祉施設の運営にあたって一つの重要な手だてとなっているものに共同募金があります。これは戦後いち早く助け合い運動として始まって、二十年の経過を経てきているわけですが、これは児童家庭局にも通ずるわけでしょうけれども、最初は、施設が戦後非常に荒廃した、あるいは老朽化しつつある、こういったものを何とかひとつ直してやろうじゃないか、そのことによって、そこに収容されておる老人なり子供なり、恵まれない人たちに対して、お互いの立場で助け合おうじゃないか、こういう形であったろうと思うのです。ところが、この共同募金のあり方というものが、経済の変動等ともあわせてだんだん変わってまいりました。はたして現在国民の助け合いというその精神がこの共同募金の活動の中で貫かれておるかといいますと、だんだんマンネリ化しておるという状態もあるわけです。しかもまた、共同募金の配分の方法にしても、当初は施設一本やりという形であったのが、その後、社会福祉事業の民間におけるいわば手綱を締めるといいましょうか、扇のかなめになるような社会福祉協議会の運営資金としてかなりこれが使われるという状態になってきたのであります。これはまたこれで、社協というものが現実にあり、これが活動をすることは、きわめて重要な要素があることは十分承知をいたしておるのでありますけれども昭和四十年度の共同募金の配分内訳を見ましても、約十九億七千万円ばかりの共同募金の中で、施設に対する配分は六億円程度、社協に対する配分が十一億五千万をこえるという状態であります。いわば比率が逆転をいたしてきておるのでありますけれども、私は、この状態というものをそのまま認めておっていいのかどうかという点に対して、いささか実は疑問を持っているわけであります。  今後この社会福祉協議会というものが中央地方を通じて果たす役割りというものについては、われわれは十分これは是認をしなければならぬと思いますけれども、この運営については、私は、別にやはり国なり地方公共団体なりというものが、ある程度それに対する負担を、まあいまでも補助金等を出しているわけでありますけれども、今後さらに責任を持つという態勢になるか、あるいは別の自主的な運営の資金を調達をするかという形がほしいのではないかと思うのでありまして、共同募金でかなりの部分というものをおおっているという現状は、私は必ずしも好ましいとは思えないのであります。そういった点からいいまして、この共同募金のあり方、それと関連をする社協の運営の方法、これに対してどういうようなお考えであるか、ひとつお伺いしたいと思うのであります。
  34. 田川誠一

    ○田川政府委員 共同募金が最近施設よりも社会福祉協議会のほうに配分の重点がいっているということは、事実は確かにそのとおりでございます。これはいろいろな事情もあると思いますけれども、この配分につきましては、厚生省あるいはまた地方団体が、この配分をこういう比率に直せというようなことにくちばしをいれるわけにはまいりません。ただ、社会福祉協議会の運営費であるとか、あるいは事務費であるとか、そういう面に共同募金が使われるということは、これはどうかと思います。社会福祉協議会のそういう恒常的な経費については、できるだけ自主財源で始末をするとか、あるいは公費で充てるとかということに持っていくべきだと思います。いずれにいたしましても、共同募金は自主的な民間運動でございますから、その配分については、あくまで共同募金の会でやっていくよりしかたがないと思いますけれども、公費でめんどうを見る面は公費でできるだけめんどうを見るという方針でやっていきたいと思います。
  35. 田邊誠

    田邊委員 政務次官、あなたの言われたことは一面そのとおりでありまして、共同募金会の配分の基準について厚生省が云々をしたり政府が云々をすることは、これはもちろんいかぬことだ。しかし、これは一面、社協の運営があまりにも実は財政的に乏しく、その財源を見出すことが非常に困難であるために、やむなく共同募金にたよるという、こういう状態になってきておるのであります。したがって、いまの状態から私は推しますと、共同募金の配分にあたって、まず社協の運営に何ほど必要であるか、これがまず出されまして、そこでもって、四十年度は約十一億以上の金をまず社協に配分され、残ったものを施設その他の配分に充てるという状態になってきておるのであります。これは私は根本的に考えなければならぬじゃないか、こういうように言っておるのでありまして、決して私は社協の運営がこれから縮小してもいいと思っておるわけでもございませんし、一面においては、現在の日本社会福祉活動の中では重要な位置を占めておることは私は承知をいたしておるのでありますけれども、やはり共同募金のあり方という面からいって、いまのような状態をそのまま容認をしておくことは、将来にわたって禍根を残すだろう、こういうように私は思うわけでありますから、やはりその点に対する政府なり地方自治体なりというもののてこ入れがあり、また、その運営についての別途の考え方というものを持てるような仕組みというものを社協に対して与えてやる必要があるのじゃないか。そうすれば、必然的に共同募金の配分についても改善がされていく、こういうように私は考えておるわけでありまして、その点に対してはひとつやはり政府自身にもさらに御検討をわずらわさなければならぬ、このように思っておりますが、いかがでありますか。
  36. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 実はおっしゃるとおりでありまして、政務次官がおっしゃいましたように、法律的には、役人はタッチするな、こう書いてございますが、そもそも二十二年度に出ましたときには、施設が荒廃して食うものもない、しかも公費はろくに出ないというので、みんなで助けようじゃないか、そこから出発したものであります。したがって、国民の気持ちの中には、かわいそうな老人の福祉施設のために、あるいは孤児院ということばはありませんが、養護施設のためにというふうな当時の気持ちがいまもってしみついて、全部そっちのほうへいっているものだというふうな印象があることは事実であります。ただ私ども悩みますのは、そういうふうなかっこうにしてやってきたのが、三十年度前後から、いろいろありますが、一方において、たとえばいなかなんかで施設のないところは、共同募金しても全部県庁所在地なんかにいってしまう、それではおかしいじゃないかというので、資金がさっぱり伸びないということになりまして、それならばやはり自分の町なり市の中で、たとえば子供の遊び場をつくる、あるいは低所得階層の子供の旅行というか、レクリエーションをさせるとか、あるいは敬老会のために金を使うというふうに、社協のほうで若干配分をもらってその地域に還元といいますか、その地域でやりたいというふうな要求がありましたのが、社協に資金がだんだんふえてくるというふうな傾向になりまして、現在の十一億の中でも、全部この社協の事務費というか、人件費というふうなかっこうに見えるかもしれませんが、この中で郡社協、市社協というものは、やはりほとんど全部が、その地域のいろいろな婦人会だとか子供の遊び場とかいうふうなものに流しておるという状況でございます。  ただ問題は、少なくともそういうふうな国民の認識——社協に使われる募金だという認識があまりございませんので、少なくとも共同募金というのは終戦直後に始めた当時の施設募金だというふうな一点ばりで、お涙ちょうだい式にきているのはおかしいので、社会福祉活動がそれだけ変化したならば、それに対応する国民の理解を得なければならない。それにしても、いまおっしゃいましたように、社協自身がまず共同募金を先にもらって、残りが施設に出ていくという批判が出ても非常に困るので、それは共同募金の中で今後どういうふうに配分するかというのを——ちょうど今年度が共同募金発足二十周年記念にあたりますので、その場合に刷新要綱といいますか、今後こういう問題点をどう解決するかというふうなのを、去年初めから委員会をつくりまして、一生懸命、地域配分と施設配分はどうあるべきかというふうなことを検討しておる段階であります。社協の基礎的な事務的なことはできるだけ公費で出すか、あるいは社協自身が会員から会費でもとるかして、共同募金はいわゆる人件費とかなんとかでは食わぬというふうなかっこうでいってもらわないと国民に申しわけないのじゃないか、こういう気持ちで実は内面的にはいろいろやっております。ただ、こうだからこうしろというふうにやると、各府県ごとに配分委員会というものがあって、各界の人が入っておりますが、その辺自主的にやっていただきたいということで、いろいろ話をしております。
  37. 田邊誠

    田邊委員 共同募金会自身も、二十周年を期しての共同募金強化策大綱というようなものをつくって、その中で特に、子供の遊び場について特別配分の対象にしようじゃないか、こう言っておるのでありまして、私はこれは非常に新しい試みだろうと思うのです。そういう国民の要求するほうに共同募金自身もだんだん移っていかなければならない、こういうように思っておるわけでありまして、何か中間搾取があるような印象を国民に与えることは得策でない、こういう考えでおるわけでありますから、その方針をひとつだんだん生かせるようにぜひお願いしたいと思います。  ちょっともう一つだけ共同募金についてお伺いしておきたいのは、老人施設なりあるいは児童施設なり、施設が共同募金を受けておりますけれども、これは当然のことでありまするが、その施設の改善について、かなり厳格な一つ基準といいましょうか、あるのは当然であります。しかし民間の施設は、その施設の改善のために非常に自己資金に苦慮しておる。二分の一国庫負担、四分の一地方自治体負担で、あとの四分の一自己負担というのがなかなか実は見出せない。幸い振興会等を通じ借り入れがはかられて利子補給を政府がする、こういう状態になってきておりますけれども、なおかつ非常に困っておる状態であります。そこで、共同募金を受ける際に、いま言った施設の改善の際、四分の一の自己負担に共同募金を充てることができないかという声は全国的にかなりあると私は思う。聞くところによりますと、そういう形で実施をしておるというか、配分をしておるところもあるように承っておりまするけれども、これも、いわば指導方針ということにはならぬかもしれませんが、そういう道がやはり生かせるという、こういうことが私は現状の中では必要ではないかと思うのですが、その点はどういうふうになっておりましょうか。御承知でございましたらお聞きをしたい。
  38. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 それは大多数の府県の共募で、その自己負担部分についてまとめて百万とか五百万とか——五百万というのは大きいですが、三百万とかいうものを出しておると私ども聞いておりまして、大体そういうところが多いだろうと思います。ただ県共募によりましては、一カ所にぽかっと百万、三百万とか出しますと、いわば配分がないものですから、それをやめて、みなにちぎって全部一視同仁といいますか、やってしまえというところもあるわけです。それを厚生省はいかんとも言いにくいのですが、大体のところは、輪番みたいに、ことしはあそこに二百万つける、その次はそういうのを二、三カ所につける、来年は別だというふうなかっこうにしておく。大口の部分と小さいやつ、この二つのバランスでやっておると了承しておりますけれども、県によっては、ばあっとみな分けて大きいのを出さぬところもございますが、そういうのは特殊なところで、別に厚生省が出すなと言っておるわけではない。むしろ実態は逆になるのではないかという気がします。
  39. 田邊誠

    田邊委員 そういう活用の道も考えていただくように特に厚生省の当局がいろいろな場面で御指導いただきたい、こういうように思っております。  時間がございませんからその次に移りますが、老人問題と並んで何といっても近来非常に重大な課題は児童の問題であります。これは時間の関係で端的に児童手当の創設についてお伺いをいたしたいと思いまするし、それに関連をする児童の問題に対してお伺いしたいのでありますが、これは準備室のほうでありますか、やっておるのでしょうか。現在、児童手当の創設を四十三年度からやるというふうに、佐藤総理はたびたび表明をされておるわけであります。ところで、児童に対して国が責任を持つという、こういうことに対してどうも国民の関心が薄いのじゃないかということが一部にいわれておるわけですけれども、これは一体どこから原因がきておるのでしょうかね。いま家族手当が官公関係の勤労者、大企業の民間の労働者にはあるわけでありますけれども、最近の傾向を見ますると、ややこれが減少の傾向になってきておる。これは賃金体系の変革にもよるわけでございましょうけれども、非常に変わってきておるわけであります。児童に対してはもちろん親が責任を持つことは当然でありまするが、これは社会的な責任がある、国がやはり責任があるという、こういう観念というものを持たなければならぬと私は考えておるわけですが、児童に対して国民の関心が非常に少ない、こういう状態の中で、児童手当の創設を間近に控えている中で、一体当局はどういうような考え方でもって対処していかれるのか、お伺いしたいと思います。
  40. 近藤功

    ○近藤説明員 最近におきましては、児童に対する関心が、特に昨年あたりから非常に高まってまいりまして、特に昨年東京で行なわれました母子衛生家族計画全国大会におきましても、この問題が非常に高まってまいりました。特に賃金関係におきましては、確かに家族給の面を見ますと、ここ数年必ずしも伸びておりませんが、これは賃金構造の改革の問題ともからんで、必ずしも児童に対する関心が低まったというふうには考えられないわけでございます。
  41. 田邊誠

    田邊委員 児童手当を創設するという、いわば社会的な意義といいましょうか、これは一体どこにあるのですか。これは準備室ですか。あるいは局長ですか。
  42. 近藤功

    ○近藤説明員 児童手当を創設いたしまする一番大きな意義は、家族負担の均衡をはかりまして、そして子供の、あるあるいは子供の多い家庭に対しまして、経済的援助を与え、そして生活水準を落とさないようにしていく、そして生活の安定をはかる、それを通じまして子供の健全な育成、児童の福祉、こういったことをはかっていきたい、こういうことでございます。
  43. 田邊誠

    田邊委員 児童手当を創設するに対していろいろな観点があると思うのです。やはり基本は児童福祉の観点から、児童というものに対しては、親の責任があると同時に、社会的な責任においてこれを見るという、これが基本だろうと思うのです。さらにもう一つは、やはり社会保障の観点から——これは諸外国においては大体その観点で児童手当を創設をいたしておるわけでありまするけれども、そういう見方をしなければならぬ。それから、いまお答えのありましたのは、いわば所得格差、生計の負担を軽減する、それを通じていわば児童福祉の面における拡充をはかる、こういう考え方のようでありまするけれども、いま政府が考えておる児童手当は、主として所得格差をなくすというか、その生計の負担を軽減する、こういう意味合いですか。そのことによって、児童手当内容というのは、第一子から実施するか、第二子から実施するか、それからその額の問題、年齢的には一体どこまでを限度にするのかということが観点で違ってくるわけでありますから、この際ひとつそれを明確にお答えいただきたいのであります。
  44. 田川誠一

    ○田川政府委員 児童手当を創設する一番の趣旨は、やはり所得保障というものがまず第一番で、それに加えて児童の福祉ということが一番の大きな主眼になって児童手当を創設しよう、こういうことでございます。
  45. 田邊誠

    田邊委員 そういうことでありますると、児童手当についてはいま研究中だというのですね。今年度も一千万円ですかの準備のための予算を組んでやられておるわけですが、実はこれは当委員会なり予算委員会等でたびたび質疑がかわされておるのですけれども、先ごろの当委員会における河野委員質問に対しても、なかなか内容を明らかにしておらないわけでありまするが、四十三年度から実施をするということを佐藤総理予算委員会で三月の二十三日に言明をされておるわけであります。そういたしますると、これはもう構想が明らかになってこなければいかぬと思うのであります。いま政務次官のお話を聞くと、大体、所得格差是正をするというか、生計の一つの援助をする、その上に立って児童福祉の拡充をはかるという、こういう形であります。そのことは、中央児童福祉審議会が児童手当に対して三十九年に中間報告を出しておりまするけれども、このいわば中心というものは、いま言った日本の賃金体系の中からくるいろいろな生計の間における格差、この所得格差是正をするという、こういう点に重点を置いておるのでありまして、これはいわばフランス流の考え方であります。そういたしますと、大体フランスでやってまいり、それに似通った国々がいままでとってまいった社会保険的な方式でもってこの児童手当を創設をしよう、こういうふうにその意図がうかがえるわけでございまするけれども、大体そういうような方向でいま準術を進められておるわけですか。
  46. 近藤功

    ○近藤説明員 制度の組み立ての問題につきましては目下検討中でございまして、まだ厚生省として正式にきまったものはございません。
  47. 田邊誠

    田邊委員 そういう型どおりのごあいさつはもうそろそろ脱却をしてもらわなければいかぬと思う。それなら一体あなた方のほうはいつごろまでに構想を固めるのですか。四十三年度の当初から実施をするとなれば、当然予算要求の段階というものが間近くくるわけです。そうしますならば、大体の構想がもう明らかにされなければならない時期に到達しておると私は思いますけれども、私は分厚い国会の質疑の問答集というものを見せていただきましたけれども、いまだかつてその内容について明らかにしておらない。しかし私は、一つの固まった構想が、もし現時点でないといたしましても、諸外国の例を見まして、実はいろいろな試算なり試案というものは当然作成をされておらなければならぬと思うのでありますが、そういう試案が作成をされておるわけですか。
  48. 近藤功

    ○近藤説明員 児童手当制度の構想につきましては、内々に私どものほうにおきましていろいろな検討をいたしておりますけれども、ことしの予算におきまして、特に児童手当問題の調査のために、学識経験者の方に依頼してそういった検討を進めることが認められましたので、これが一応中心となりまして、その学識者の先生方が中心になりまして、いままで必ずしも十分に行なわれておりませんでした関係各方面との意見の調整、こういったことを進めていく、そういった経過を経まして厚生省としての基本構想が生まれてくる、こういう段取りになると考えております。
  49. 田邊誠

    田邊委員 その学識者による審議会ですか、研究機関ですか、それはいつごろ設けていつごろに終わらすつもりですか。
  50. 近藤功

    ○近藤説明員 なるべく早く設けて、大体九月あるいは十月ごろには、その調査といいますか、審議といいますか、それを終わるようにしたいと考えております。
  51. 田邊誠

    田邊委員 予算要求の時期からいいまして、そういったことで、佐藤総理の四十三年度に実現をするという言明と引き合わせてみて、一体来年度実施に間に合うと見込んでおられるのですか。
  52. 近藤功

    ○近藤説明員 四十三年度実施ということを考えた場合におきましても、大体ことしの十月ないし十一月に構想がまとまれば十分間に合うだろうと考えております。
  53. 田邊誠

    田邊委員 大体予算要求が七月から八月にされるんですね。厚生省の考え方をまとめられるという段階で、まだそういう学者の意見の結論が出ていない。あなた方は一体どうやって来年度の予算の試算をされようとするのか、これははなはだ疑問であります。しかも、いまの構想でありますけれども、学者に意見を求めるのはもちろんけっこうであります。しかし、いろいろな法案についても、いろいろな制度についても、各種の審議会なり答申機関がありますけれども、やはり政府の考え方というものをまずもって明らかにして、それに対して意見を求めるというのが通例のやり方じゃないか。厚生省自身が何らの試案なり成案がなくて、それでもってただ学者の意見を聞いて、その結果に待つというような、そういうような他力本願的なやり方では児童手当の創設は絶対にできない、こう私どもは考えておるわけでありまして、いまこの時点の中で、一体、たとえば年齢の制限は、義務教育をいかにするのか、あるいはとりあえず財源の問題があるから低所得の層から始めようとするのか、あるいは子供は第一子なり第二子から始めようとするのか、負担は国が全責任を持つのか、あるいは国と事業主が責任を持とうとしておるのか、そういったいわばその重要な要素となることについて、当然厚生省なりが考え方をまとめていかなければならない、こういうふうに思っておるわけですけれども、そういう考え方は全然ないのですね。
  54. 田川誠一

    ○田川政府委員 この児童手当の問題は、いろいろ考え方がございますし、方法もございます。いま御指摘の年齢の制限の問題とか、あるいはワクの問題、負担の問題、それぞれございますので、相当これは慎重にやっていかなければならない大きな問題じゃないかと思います。構想はいま事務当局でいろいろ検討はしておりますけれども、いまたいへんおくれておるというおしかりを受けましたが、できるだけ早く進めていくように私どもも叱咤激励してまいりますので、この点はひとつ御了承をいただきたいと思います。
  55. 田邊誠

    田邊委員 さっき私が申し上げたような各種の要素があるわけですから、これに対する試案はございましょう。試案は、これをとるということはないけれども児童手当についての各種の考え方があるのです。いままで、諸外国のいわば制度の概況なり、あるいはその内容なりについて、そういうものが出されておりますけれども、当然もうここまでくれば、厚生省として出された各種の試案があると思うのです。それをひとつ当委員会に出される用意がございますか。あるんじゃないか。あるなら出しなさい。
  56. 田川誠一

    ○田川政府委員 厚生省で考えております試案も、まだまとまっておらないようでございますし、まあ方向が出次第提出をするように私ども努力いたします。それで御了承いただきたい。
  57. 田邊誠

    田邊委員 まあ了承できませんが……。いまの状態では、一番最後のところへいって、四十三年度実施、これはできませんということになるのですよ。ですから、これは佐藤総理のいわゆる国会言明に相反するかっこうになるのでありますから、いまは出さないほうが影響が少なくていいという、そういうお考え方では四十三年度実現は非常にあやぶまれる、こういう状態になってまいるので、これは万たび聞いておるわけですから、そう抽象的な問題でなくて、あなた方の出されておる内容というもの、準備の過程というものをそのつど御報告いただくように、ひとつ特にお願いしておきたいと思うのです。  それで児童家庭局長、せっかくでございますけれども、時間がございませんからあとに譲ります、児童問題については。それから保険局長、時間がございませんから健保の審議の際に譲りまして、たいへんきょうは失礼ですけれども省かしていただきます。  一つだけ、時間があと少しございますから、これは医務局でございましょうが、国立病院、国立療養所の整備計画についてお伺いいたしたいと思うのであります。  老朽化した国立病院や国立療養所を整備拡充をすることは、これはきわめて必要である。特に、戦前軍の病院でありましたものや民間の施設でありましたものを国立に移管をしたという状態の中で、非常に朽ち果てているような病院や療養所があることは、私ども承知をいたしておるわけでありますが、一体この整備計画というのは、三十八年から四十二年に第一次特別整備計画というのを立てられて、今年度で大体終了するわけでありますけれども、主として現在ある病院なり療養所を改築なり増築なり、こういうことを大体もくろんでやられようとされておるのか、あるいはいままでの既設の病院なり療養所でも、不要不急と思われるものについてはこれをひとつ統廃合する、こういうこともあわせてお考えの上の計画であるのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  58. 若松栄一

    ○若松政府委員 お話にもありましたように、国立病院というものは初めからどういう病院をつくろうという、白紙にものを書くような形で出発したものでございませんので、終戦当時陸軍病院その他として残っておりましたものを国民医療の施設として引き継いだという成り立ちの実態がございます。そのために、国立病院の本来のあり方あるいはその目的というものを定める上にも、基本的な理論的な問題ときわめて現実的な問題と両方ございます。理論的な問題としては、国立病院というものは国の施設でなければやれないような、そういう特殊な目的を持ったものを国が担当していくという立場から、あるいはがんセンターであるとか、小児病院であるとか、あるいは各種の診療施設というようなものは、これは国のそういう理論的な目的意識を持って整備をしてまいります。また現実の立場といたしましては、国立病院がすでにあったという現実から、特殊な目的に必ずしも沿わなくても、現実に地域医療の中核になって、地域住民の活用を盛んに行ない、そして非常にたよりにされているという実態がございます。それらの両方の面をかみ合わせて整備をしていく。したがって、特殊な目的のもののためには、積極的にその方針で特殊な医療施設を整備する。また現実に地域医療として活用されているものについても、それなりの目的に応じて、その地域医療をよりよく向上し、また、たとえば初歩的な医療機関であっても、その地域の指導的な役割りを果たせるような形に持っていきたい、そういう両方の性格でもって整備をしておりますから、したがって、それらをかみ合わせまして、場合によっては統廃合という問題も考えられるわけでございます。たとえば非常に至近の距離にある病院が二つある、これを整備する場合には一つに統合するというようなことがございまして、現実に国立病院、療養所におきましても、近接のものを現在盛んに統廃合をやっております。しかしこれも、現実に地域住民の利用に迷惑がかかるようなことはできるだけ避けるという意味で、ケース・バイ・ケースに考えて処理しているわけであります。
  59. 田邊誠

    田邊委員 いま大体局長おっしゃったように、国立病院なり療養所というのは一つの使命があると思うのであります。したがって、必ずしも独立採算なりもうけ主義でもって病院経営なり療養所の経営をされるはずは私はないと思うのです。しかし、今後の第二次特別整備計画を見ますと、私が承知をしておる地域についても、かなり至近距離ではないところの病院を統廃合するという計画を私は拝見いたしておるのでありまして、この点に対しては、私は、やはりその特殊性、その使命からいって考えていただかなければならない、再検討していただかなければならない、こういう点があると思うのです。距離感がありませんから私はほかのところはわかりませんけれども、私の住んでおる群馬県についても、第二次整備計画の中では、沼田、渋川の国立病院を統廃合して高崎に移すというような話がありますけれども、これは地理的にいっても、そういった統廃合が適当かどうかということについては、ひとつ再検討していただかなければならぬ、私はこういうふうにも思っておるのでありますが、そういう反面において、つい最近の新聞を見ますと、国立療養所でもって最近改築をされ増設をされた中に、きわめてデラックスな病室を設けているという記事が載っておるのであります。国立療養所中野病院等の例が出されておるわけでありますけれども、この点は、豪華版の病室が必要かどうかは、私は現実を見たことはございませんが、少なくとも国立病院のいまの地域における老朽した状態、療養所がへんぴなところにあって今後の存立を危ぶまれているような状態、こういった点から見ますと、こういう経営の合理化に名をかりてデラックス病棟などをどんどんつくっておるというのは、私はまことに相反した考え方じゃないかと思っておるわけであります。これは一体どういう理由でもってこういう豪華版の病室をどんどんお建てになって何かもうけ主義のような形を整えようとしているのか、真意のほどを疑うのでありますけれども、いま申し上げたような、ただ単に経営の合理化というか、独立採算というか、そういっただけでもって国立病院なり療養所をもし見られるとすれば、私はたいへんな大きな誤りを実はおかしているというふうに思っておるわけでありますけれども、一体この事実はどういうふうにくみ取られてやられておるのか、その点をひとつお伺いしたいと思うのであります。
  60. 若松栄一

    ○若松政府委員 国立療養所の中野病院がたいへんデラックスになったというお話でございますが、確かに中野病院は十階の大きな建物でございます。建物が大きいからデラックスになったということは必ずしも当たらないかもしれませんが、国立療養所としては非常にりっぱな建物ができました。それで、療養所も非常にベッドの多い中で逐次整備をしておりますが、その中から基幹的な療養所——将来結核がだんだん減ってまいりまして、一般の結核ベッドが減ってまいりますが、その中で基幹的なものとして、将来国が最終的に結核対策の責任を引き受けていくというために、将来まで残る結核療養所をある程度選別いたしまして、これを整備してまいっております。その一つとして、中野病院が従来から約千床程度持っておりましたので、それを新築いたします場合も、したがって非常に大きな施設でございますので、かなりりっぱなものになったことは間違いないのです。  それで、なおデラックス病棟があるではないかということでございますが、国立病院、療養所にもいわゆる差額ベッドと称するものが若干ございます。国立病院全体ではベッド数の数%、それから結核養療所におきましては、約百六十施設あります中で約七施設だけが、いわゆる差額ベッドというものを持っております。中野病院もその一つでございまして、現在一般医療機関がだんだんりっぱになってまいりますと、結核患者だけがいわゆる木造の雨漏りのするような病棟に入っているということもおかしなことでございまして、結核の病棟も逐次やはり一般の疾病の病棟と同じ程度にりっぱに整備していくということは必要なことであろうと思います。またその中で、社会的な地位その他、社会生活が現実に病院に持ち込まれてくる実態から見まして、ある程度りっぱな病棟をつくるということも社会的な要請でございまして、そういう需要も非常に多いわけでございますので、そういう需要にもこたえる。中野療養所は非常にりっぱな診療能力を持っておるのに、あまりに病棟がぼろであるために、しかるべき社会的地位のある人が現実には利用しにくいという実態もございます。そういう意味から、ごくわずかなベッドをある意味ではデラックスといわれるものにいたしたわけでございます。現実に中野療養所の中で、いわゆるデラックスといわれるバス、トイレつきの病室というものは、たった二室だけでございます。
  61. 田邊誠

    田邊委員 これで終わりますが、何も民間と競争して国立病院をデラックス化する必要はないのでありまして、私は雨漏りをするのは防がなければならぬと思うのです。そういう病院がたくさんあるのですから、そのほうをまず先にやるべきであって、それがある程度進んでいけば、その次に差額ベッドをある程度設けることも、これは私は認めていいと思うのでありますけれども、まだまだ全国的には、局長がおっしゃったように、老朽化したような病院、療養所がたくさんあるわけであります。その中には、地域の中で総合病院がなくて、ぼろであっても国立病院を利用している、そういう地域の統廃合、たとえば三島と沼津ですかを統廃合する、こういうことがあって、一方においてこんなようなデラックス病棟を含めた療養所をつくられる、ここに矛盾があるではないかと私は言っているのでありまして、少し段階を間違えているのではないかと思う。まだまだ全国的に、国立の病院、療養所について改善をし、あるいは拡充をしていく、こういう必要がたくさんあるわけでありまして、そのことを心してひとつ今後も対処していただきたいと思うのでありまして、世に騒がれるような差額ベッドを逐次つくられるような、そういう精神は少し改めていただくように特にお願いをしておきたいと思います。  時間がございませんから、きょうは以上をもって終わります。
  62. 川野芳滿

  63. 本島百合子

    ○本島委員 大臣がいらっしゃらないので政務次官にお尋ねいたしますが、質問に先立ちまして、五月四日の読売新聞の「国民本位の厚生行政を」という社説をごらんになったでしょうか。ごらんになったとするならば、それに対する感想を簡単に述べてください。
  64. 田川誠一

    ○田川政府委員 たいへん恐縮ですけれども、私読んでおりませんので、御了承いただきたいと思います。
  65. 本島百合子

    ○本島委員 読んでいらっしゃらないというので、非常に残念しごくでございますので、ちょいと切り抜いたのがありますから、あとで読んでください。これは、国民の健康を守り生活を守るところの厚生行政というものが非常になっていない、その例をあげて説明されておりますし、また再検討しなければならない厚生関係法律がかなり残っておる、そういうことで日本国民の健全なる健康並びに生活を守っていくにはいまの状態ではいかぬということがほんとに心痛いまでに書いてございますので、あとでごらんいただきたいと思います。  残念でございますが、読んでいらっしゃらないということですから、それはそれといたしまして、その中にもございますが、最近の薬務行政について非常に辛らつな批判が出ております。私が国会へ出ましてもう九年になるわけですが、まず最初に薬の乱売問題、あるいは佐賀県で起こったニクビタン問題、こういう事件、そして最近発表されましたところのいわゆる新薬の人体実験などということになるわけですが、これをいまから御質問しようと思っております。  その前に、一昨年佐賀県を中心として数県にわたって行なわれたというあのニクビタン問題について、その後の経過を簡単に言っていただきたいのです。ということは、私、質問時間が大体三十分ということですから、要領よく簡単に経過を説明してください。
  66. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 一昨年起きました佐賀におけるニクビタンの問題でございますが、その後の経過と申しますのは、いわゆる保険医療機関に対するいろいろな措置もとられておるようでございますが、これは保険局のほうでやっております。私どものほうとしましては、北陸製薬株式会社が、当時不公正な、行き過ぎた販売でニクビタンを医療機関に売り込んでいたというようなことからいたしまして、あの問題が起きましてから私どものほうでとりました措置というものを、簡単に御説明を申し上げます。  第一点は、もちろん会社の最高責任者に厳重な警告を発したことは当然でございますが、同社が薬価基準の申請を出していた他の医薬品がございましたが、これを一回薬価基準の申請をおくらすという措置をとりながら、片一方、当該医薬品の販売を六カ月間中止してもらったということが第一点でございます。  それから第二点は、御存じのように、当時会社のほうでやや行き過ぎた販売方法、たとえば海外招待旅行とか、あるいは自動車を提供したとかというようなことが見られておりましたので、この点につきましても、行き過ぎた海外招待旅行なり、行き過ぎたサービスを医療機関等に行なわないようにということで、全国的にも通達を出しながら、当該会社のほうにもその点は厳重に警告をいたしておるわけでございます。したがいまして、その後北陸製薬会社につきまして私どものほうでも十分指導をいたしておりますが、会社のほうも、その後この問題を契機として非常に反省をして、現在良心的に営業を続けている、こういう状況になっておるわけでございます。
  67. 本島百合子

    ○本島委員 なぜこれを申し上げたかというと、近く健康保険法の改正の中に薬価一部負担というものが出てまいるわけです。この場合に、これは御承知のとおり、アリナミンとニクビタンがすりかえられて、アリナミン並みの薬代を取られておった、そのさやが莫大なさやであったというので、医療機関に対しては、たしかこれは解散か何かさせるというようなことが当時言われたわけですが、その点あなたにおわかりにならなければ、またの機会にお尋ねいたします。  そうすると、国民の健康を守るために最も大切な薬というものが、こういうふうに一般国民に区別がつかないのです。これがアリナミンであるのか、ニクビタンであるのかわからない。それと同じようなことがいろいろとあるということは、佐賀県の医師会でその当時言われたことであります。これは政務次官とくと考えていただきたい。これは通例各医療機関が行なっておることでございますという答弁があったのです。そうすると、私たちは医者を絶対信頼しておったが、そうでない。今度一部負担ということにぶつかってきたときに、国民は、どうやってこの点を見分けをつけ、またそれに対する異議の申し立てができるかということになるわけであります。  それからもう一つは、この新聞にも言われておるように、薬務行政は、製薬業者と医者が密接過ぎるぐらいに関係ができておるので、何でも許可を与える傾向がある。特に、食品の添加物の場合は海外の基準を尊重しないけれども、新薬ということになってくると海外の実験をうのみにする傾向がある。そうして副作用が使用してから表面化してきた場合でも、すぐに許可取り消しということをやらない。そうでなくても薬害ということが非常にいま問題にされておるときだ。そういうときに、厚生省はこういう点の監督指導、こういうものをどうしているのか。また、もう一つつけ加えてありますことは、医師の指示で飲まなければならない薬に対して、大衆保健薬並みにそういうものの表示もはっきりしないで売らしておるというようなこともある。こういうことが書かれているわけなんです。  そういたしますと、この中で考えられることは、今回の人体実験、これは御承知のとおり、イタリアで数年前に開発されたキセナラミンというのですか、こういう薬が興和製薬会社の社員二百七名に実験されたということによって、これを一人の女性、中村さんという人が人権擁護局に訴えられて調査を依頼され、その結論が先月出たというようなことで、これは非常に大きな問題を投げかけてまいっておるわけなんです。そこで、この新聞で言われるように、薬務行政というものが非常にずさんだということ、こういう点についてどのように政務次官はお考えになるのか。ただいま例として申し上げた、また新聞記事として言われたことについて、何か反論があるのでしょうか。それともこのままお認めになるかどうか。
  68. 田川誠一

    ○田川政府委員 ただいま例にあげられました佐賀県の問題、こういう問題は全く特殊な例ではないかと思います。現在の薬務行政についての私の考え方を述べろということでございますが、医者と製薬メーカーとの密接ないろいろな関係があるというお話もよく承っております。しかし、いまの薬務行政は、厳格に薬の審査なり許可、こういうものはやっているものと私ども信じておるわけでございます。ただ、行政全般がすべていいかということをおっしゃられると、これはまあ改めなければならない、改善しなければならない点も幾つかございます。しかし、人命に関する重要な行政でございますので、私どもとしては、なお今後も改めなければならない点はどんどん改め、また許可、認可の事項につきましては厳格に実施を続けていかなければならないという気持ちを持っております。
  69. 本島百合子

    ○本島委員 そういたしますと、これは別件ですが、サリドマイド禍によるところの子供たちの問題について、ちょうど私の選挙区に児童病院がございますが、そこにたくさんいるのですけれども、この問題については、裁判途上ですからどうということは言えないのかもしれませんが、どういう見解に厚生省はお立ちになっておるのか、その点お聞かせ願いたいと思います。
  70. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 数年前に起こりましたサリドマイドの事件は、いまおっしゃいましたように、現在、国と製薬会社を相手にいたしまして、関係者から訴訟が提起されておるわけでございます。大体十件程度の訴訟が提起されております。私どもとしましては、当時サリドマイドの薬剤を許可した時点におきましては、十分なるデータに基づきまして、当時の医学、薬学の観点から許可をいたしたわけでございます。したがいまして、当時においてはそのような考え方で許可をいたしましたけれども、はたしてサリドマイドによる事故というものが、つまり世間でいわれておりますいわゆるアザラシ状の奇形児というものが若干生まれたことにつきまして、このサリドマイドという薬剤とどの程度の因果関係が学問的にあるかどうかということについては、まだまだ世界各国ともに研究段階でございます。そういうような結論が出るということも現在ないわけでありますけれども、いずれ裁判等の結果を見まして、私どもとしましては、国のとるべき態度、それから製薬会社のとるべき態度、こういうものを慎重に考えていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  71. 本島百合子

    ○本島委員 この問題は、国民がひとしく注目しておる問題です。あの子供たちの状態を見ると、ほんとうにあわれで、かわいそうです。これは何とかしてやらなければなるまい、こういう気持ちが持たれる子供たちですから、国が勝つとか負けるとか、こういうものは別としても、こういうものに対する特別な研究というようなものをやってもらいたい。これは医者だけにまかしておかないで、国自体も何らかの研究をしながら、そしてこういうものに対する生活の保障その他についても考えるべきじゃないだろうか、こう思っておるのです。現在子供たちに対してはどういう特別な措置がされておるのか。
  72. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 当時サリドマイドを服用いたしましたというふうにいわれております方の子供たちの中に、アザラシ状の奇形児が若干出ているわけでございますが、このような子供さんたちについては、現在国のほうで、児童局でございますが、重症心身障害児に対する施策がいろいろとられております。そういう施策の一環として現在はいろいろできる範囲の援護をやっておる、こういう状況になっております。
  73. 本島百合子

    ○本島委員 これは市販されたものを一般の人が買って飲んだわけでしょう。そういうことになれば、先ほどの新聞で指摘された問題、こういう点について、私ども、厚生省の行政指導というものが、何だかあいまいだ、また的確でなかったという気がするわけなんですが、そういう点厚生省としてはどういうふうにお考えになっているのですか。
  74. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 先ほども申し上げましたように、当時サリドマイドを服用した方の子供さんからそのようなものが出たというふうにいわれておるわけですが、サリドマイド薬剤を許可いたしました当時の時点におきまして、私どもとしましては、諸外国のデータ、それからまた国内のいろいろなデータを十分検討いたしまして、当時の段階における医学、薬学の進歩した観点から許可を与えたわけでございます。  ただ、申し上げたいと思いますのは、もちろん医学、薬学というものは日進月歩でございますので、今日の段階において、国内のあらゆる影響を調べて、医学、薬学の最高水準で製薬の許可をいたしましても、これが数年たち、あるいは将来にわたりまして、医学、薬学の進歩の結果、思わざる事故なり副作用が出てくるということも、一面においてはわれわれは十分考えなければならない点でございます。したがいまして、サリドマイドの問題が起きて以来、私どもは、毒性の研究、それから副作用の研究については、ありとあらゆる方法を講じまして、世界的に諸外国とも連絡をとりながら、そういう毒性、副作用研究の部門を強化しながら、研究費も相当出しまして、そうしてまた、先ほどお話がありましたように、ただ医者だけの問題ばかりでなく、製薬会社自身でも、そのような副作用、毒性の研究体制というものを十分強化していくように今日まで指導してきております。また将来もそういう方向でありとあらゆる努力を重ねていかなければならぬ、かように思っておるわけでございます。
  75. 本島百合子

    ○本島委員 今回の問題について人権擁護局のほうでは勧告をした。これは告発に次いで重い処分であるということが新聞に出されておるんですが、そうすると、勧告と告発とどう違うのか。それから、重い処分だというけれども、どういう処分なのか。この点をお聞かせいただきたいと思います。
  76. 辻本隆一

    ○辻本政府委員 確かにキセナラミンにつきまして、本年四月十八日に東京法務局から、興和株式会社、それからウイルス病化学療法研究班に対しまして勧告いたしたわけでございます。  お尋ねの勧告と告発の相違でございますけれども、実はわれわれが人権侵犯事件を調査しました結果、人権侵犯の事実が認められました場合には、法務局長または地方法務局長は、人権侵犯事件処理規程というものがございまして、これに基づきまして、告発とか勧告とか、その他の各種の処置をとっておるのでございます。  その中で告発と申しますのは、これは明らかに犯罪に該当すると認められた場合に、文書によりまして、刑事訴訟法で定められた告発の規定によって、犯罪事実を捜査関係に知らせまして、侵犯者に対する刑事訴追を求める、これが告発でございます。これは人権侵犯事件処理の一つでございまして、これが一番きついわけでございます。勧告というのがこれに次いでございますが、この勧告というのは、人権侵犯事件の中でも非常に重大な事件につきまして、侵犯者自体に対し、あるいはその侵犯者を指導監督しておる者に対しまして、これもやはり文書によりまして、反省を促す、あるいは改善策を要望する、こういうふうな措置をとるものでございます。したがいまして、この勧告というのは、そのほかの処理規程で定められました処置等、たとえば説示措置、あるいは排除措置、あるいは援助措置、こういったものと違いまして、事実がきわめて重要であり、かつ一般世間に警告を発するという効果、警世的な効果、あるいは一般人に啓蒙するという啓発的な効果をねらった措置でございます。  そこで、せんじ詰めますと、告発というのは、人権侵犯事件が明らかに……。
  77. 本島百合子

    ○本島委員 あまり時間がないので……。大体わかりました。  そういたしますと、この勧告に基づいても、この興和製薬会社については、何らの束縛とか、製造を禁止するとか、これはもちろん輸入してきたあれですから、販売等はできないことになるのでしょうが、そういう罪科という形における何ものも与えられるものはないんですね。
  78. 辻本隆一

    ○辻本政府委員 とりました措置に対する効果としてのきめ手でございますけれども、人権侵犯事件の処理をしました場合には、いかなる処置でございましても、これに強制力が付与されておりません。のみならず、その前段階である調査過程におきましても強制力は付与されておらない。そうすると、そういう付与されておらないものは効果がないじゃないかということではございますけれども、われわれといたしましては、処置につきましては、相手方に十分事理を尽くして説得する。そしてあやまてる点を十分に解明いたしまして御本人に反省していただくという、全く任意的な方法でやっておりますが、過去の例を見ますと、ほとんど大部分がこちらの意見をいれていただいて、その思う方向に実現すべく努力なさっておられるという結果でございます。
  79. 本島百合子

    ○本島委員 それで、政務次官に伺いますが、こういう人体実験についての刑罰的な法律とか規制とか、そういうものはございますか。承るところによると、ないと聞いておりますけれども
  80. 田川誠一

    ○田川政府委員 そういうようなものに対する法的な、刑罰的なものはございません。ただ、厚生省といたしましては、こういうような臨床実験をやる場合に、人権上の配慮を欠いてはならないということを強く指導しておりますし、今回も各製薬メーカーに通達を出して、厳重に人権上の配慮を欠いてはならないということを通達をしております。ただ、それではそういうようなあやまちをおかした会社が全然反省をしないのかと申しますと、こういうような不祥事件を起こしたこと自体が一つ社会的な制裁になるのじゃないか。新聞にも出たし、そうして会社の信用も落とすというようなことで、会社自体の反省の材料には、これはもう非常に強くなっておるのじゃないか、また目に見えない制裁を受けておるのではないか、こういうふうに私は感じております。
  81. 本島百合子

    ○本島委員 ただいまのは、ないかと思うという程度であって、何らの規定もない、法律もないということです。これは病院などにも委託して臨床的な資料をお集めになっておった様子ですが、そうなってまいりますと、しかも医学雑誌には肝臓等に障害があるということが出されておった。にもかかわらず、病人に対して、しかも副作用があるとかなんとかいうことは全部内密にして服用さしておったという結果から出た事件でございます。しかし、病院のような場合、かりにそういうものが使われておっても、病人として入院しておる患者に使われるのですから、そのことによって副作用が起こり弊害が起こったということは明確にわからない。わからないが、しかしやはりその障害は受けているのじゃないだろうかということになるわけです。こういう場合でも、人体実験に対して何の規制をする基準もなければ制裁の規定もないというようなこと、こういうことがいままでずっととられてきたことですが、今後もこういう度合いでいいのかどうか、こういう点を承りたいのです。ということは、今回法務当局では、「医薬の進歩のため不可避」ながらもということが前文についているわけなんですね。だが、そのやったことについては、病人に了承を得ないでやったとか、あるいは副作用があることも隠してやったとか、そういうことは不都合だ、こういう意味での勧告ですよね。これだけで済まされないと思うのです。とにかくこの二百七名のうち一人は死亡しているのですね。その死亡は直接これが原因であったかなかったかということは、なかったように思うというようなことが出されておる。死んだ人に聞くわけにいかぬし、またこれを証明することもできないのです、命がなくなっちゃっては。これからそれが間違っておったということになったならば、これがはたして厚生省の正しい行政指導に基づいての仕事であろうか。こういう事件というものが、これはここの製薬会社であったけれども、病院などではたまたまこれが行なわれておるのではないでしょうか。俗に、あの病院に行くと死んでしまうとか、何か変かった薬をもらうと、とたんに命をなくしてしまうといううわさがよく立っておるのですね、町の人に聞くと。それはみなそういう実験をしておるのだろうということがいわれておるわけです。この問題が出ました前後だろうと思いますが、週刊誌にも、ある国立病院がやはり新薬の人体実験をいたしまして、これはてんかんの子供だったそうですが、間もなく死んでいった。その死ぬときのあわれな状態というものが書いてありました。たとえばおなかがふくれ上がっちゃって、親がさすってやろうと思って、おなかをあけて手をさわったとたんに皮がべろっとむけてしまった。そしてそのあとで、その人体実験をされたのだということがわかったのだということが書いてありました。あいにくきょう私は、その見た雑誌がいつのどの雑誌であったか記憶がないものですから、持ってくることができませんでしたけれども、それと同じように、至るところで人体実験が行なわれておるということがそれには書かれておったわけです。そうすると、厚生省としては、それに対しても国民一つの安心感を与えるための指導がなければならぬと思いますけれども、そういうものが何らなされていない。今後こういう問題は、将来のために、不可避的なことであるかもしれないけれども、人権の尊重ということから言わせれば、やはり何らかこれを規制すべき法律が必要じゃないか、野放しでいいのかという感じがいたしますが、この点いかがでしょう。
  82. 田川誠一

    ○田川政府委員 人体実験ということばがどういう意味でおっしゃられておるか、ちょっとわかりませんけれども、新しい薬を開発する場合には、基礎実験をやったり、さらに動物実験をやり、そしてさらに臨床実験をやるわけでありますが、この臨床実験をやる場合に、お医者さんとよく連絡をとり、その監督のもとに新薬を実験するわけでございまして、これはただ野方図に新しい薬をどんどん人間にためしていくということではないので、それには踏んでいかなければならない道があるわけでございまして、たまたま今度の事件には、そういう医者との連絡とか、それから会社の従業員に飲ましたというような点で行き過ぎがあったのだと思いますが、この臨床実験というものは、新しい薬をやっていく場合に、これをやらなければ、薬を今度は一般の正当な薬としてやっていくわけにはまいらないのでございまして、ただ野放しに臨床実験が行なわれておるということではなく、新しい薬を開発する場合に、臨床実験はきめられた一つの方式をもってやられておるわけでありまして、野放しにやっておるわけではございません。
  83. 本島百合子

    ○本島委員 時間がきたようですから最後にいたしますが、何か基準があるみたいなことをおっしゃったけれども、新薬を輸入してきて、それがいきなり日本人に使われるわけじゃないでしょうし、認可をするときの基準があるはずなんです。そうすると、その基準に基づいてやられてくるとするならば、どうしてこういう病人に対して臨床的な実験をしなければならなかったのか。そうすると、いまの厚生省としての行政指導というものに、どこか欠けておる、また認可をするときに欠陥があるということが、その点からも出てくるのじゃないでしょうか。そういう意味で、私は最初に読売新聞に出ておる社説のことを例にとったわけなんです。その点どうお思いになりましょうか。あとでゆっくりこの新聞をごらんください。これはほんとうに私ども日本医療行政に対して大きな疑惑を持たされた一つの問題であると思います。そういう意味で、しかと答弁してもらいたいのです。新薬というものが入ってきて、今度あらためて日本人に臨床的に人体実験をやる、そしてそこに弊害が起こった、起こったものは人権擁護局だけしか調べてもらう方法がないんだ、そういうことでもし各病院等でどんどんやられたとしたら、さっきの週刊誌に出ておった女の人の事件、こういうものが起こっても、またそれに対して訴える方法もない、こういうことで患者は常に泣き寝入りをしなければならないのかという論法が生まれてくるわけなんです。私は、少なくとも、世界に誇る日本の医学であるし、医師であると思っております。そういう意味で厚生省が、こういう問題に際しては的確にこういうふうにしておる、だからたまたまいろいろの点で間違いがあってこういうことになったんだということを知らしてもらいたいのです。それでなければ、医師に対する不信、薬に対する不信感というものが生まれてきて、将来の医療行政に大きな支障を来たすだろうということで、私はニクビタン問題あるいはサリドマイド事件というものを出したわけなんです。そういうものと一貫して厚生省の今後の措置をどういうふうにお考えになるのか、もう一度政務次官から明確にお答え願いたいと思います。
  84. 田川誠一

    ○田川政府委員 先ほど最初の御質問の新聞はあとでよく読ましていただきます。  新薬の開発については、もう厳格にやらなければいけないと思うし、現在も相当厳格にこれをやっておるわけでございます。今回のこの事件は、先ほど申し上げましたように、たまたま社員に飲ましたということと、それから十分医師との連絡もとらなかったというような点で落ち度があったわけであります。こういう特異な問題が一般的に不安感を起こさせるということはまことに残念でございまして、一般の方々に対してそういう不安感を特たせないように、私どもといたしましても、さらに製薬メーカーに厳重な監督指導を行なうと同時に、不安感を持たせないような啓蒙もやるつもりでございます。
  85. 本島百合子

    ○本島委員 ちょっと心細い御答弁のように思うのですが、法律は何かできませんか。不可避的なものだなんていうだけでは私ども納得がいかないので、明らかに落ち度がある場合においては、先ほど人権擁護局では、それを告発ということで刊事訴訟のほうへ持っていくとおっしゃったんですけれども、どの程度皆さんが人権擁護局にたよって出していかれるかということになれば、非常に少ないものだと思うのです。またここの職員の人数が少ないものですから、あなたもおいでになったことがあると思いますが、出しても何カ月もかかるなんていって、なかなかやってもらえないのです。そういうことで、人の人命にかかわるようなことが、またかかわったことが、簡単に解決ができないのです。そういう意味で、野放図に製薬会社のやりたい放題のことをさせる、いわゆる医師の研究心にまかせる、こういうことでなしに、やはりある程度、それを受ける臨床的な立場に立たされる者の立場に立っての、何か保護的なものが必要ではないかということを私言っているのです。そういうものをする意思があるかないか、もう一度御答弁をお願いしたい。
  86. 田川誠一

    ○田川政府委員 現在でも厳格にやっておるわけでございますが、ただ先ほど来お話がありましたように、臨床実験をやる場合に、会社の内部で社員に飲ませたというところに人権的な一つの問題が起こっておるわけでございまして、それと監督指導とはちょっと問題が違うように考えられますが、私どもといたしましては、薬を開発する場合にあやまちのないように厳格にやっておるつもりでございまして、これは、何か新しい法律をつくったり、さらに規制をやるとかというようなことまでは、ちょっと私ども考えてはおりません。
  87. 本島百合子

    ○本島委員 非常に残念ですが、私も研究します。これは何らかの措置というものを大衆は要望していると思います。ただ不可避的なものであるからというだけでは済まされない問題だと思います。そういう意味で、問題を残しまして私の質問を終わらせていただきます。
  88. 川野芳滿

    川野委員長 次会は来たる十六日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十六分散会