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1967-05-09 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月九日(火曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 竹内 黎一君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       菅波  茂君    世耕 政隆君       田中 正巳君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    中山 マサ君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       箕輪  登君    粟山  秀君       山口 敏夫君    渡辺  肇君       枝村 要作君    加藤 万吉君       後藤 俊男君    佐藤觀次郎君       島本 虎三君    西風  勲君       八木 一男君    山本 政弘君       本島百合子君    和田 耕作君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 早川  崇君  出席政府委員         労働政務次官  海部 俊樹君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君  委員外出席者         厚生大臣官房企         画室長     首尾木 一君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 四月二十七日  委員川崎寛治辞任につき、その補欠として角  屋堅次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員角屋堅次郎辞任につき、その補欠として  川崎寛治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 きょうは時間が非常に切迫いたしておりますので、私のほうからも能率的な質疑をいたしますから、ひとつお答えのほうも能率的なお答えで終始していただきたいと思います。  きょうお尋ねを申し上げたいと思います点は、人口構造変動に伴います雇用対策について基本的な態度をひとつ伺ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。特に、雇用問題と申しましても、その中に含みます内容というものは非常に多いわけですから、いろいろな角度から論ぜられなければならぬというふうに考えるわけですけれども、いま申しますように、人口構造変動との関連についてひとつお伺いをいたしたいと思うのでございます。  御承知のように、わが国経済というものは急速に発展をいたしてまいりました。そしてこの十年間に雇用労働者の数というものも約千百万人という増加を来たしたのでございます。しかも雇用構造も急速に近代化され、そしてその変化を通じて長い間の労働力過剰の時代というものが過ぎ去って、そしてむしろ労働力不足という新しい時代が到来をいたしつつあるというのが今日の現況でございます。したがって、日本経済成長して、いわゆる成長経済のもとでの労働力需給問題というものは、そういう意味で私は非常に大きな意義を持ってまいっておるというふうに考えるのでございます。なるほど昨年雇用対策法国会で成立をいたしました。その本質論は刑といたしましても、この成長経済政策のもとでの雇用対策というものは、いま申し上げますように、一つの曲がりかどに立たされておる、こういうように申し上げましても、私は過言ではなかろうと思うところでございます。  そこで、きょうは、基本的な問題でございますけれども経済成長のもとにおきまする雇用抜本対策について、ひとつまずもって大臣から御見解を承らせていただきたい、かように存じます。
  4. 早川崇

    早川国務大臣 御指摘のように、日本人口構造が急激に変化をしてまいりまして、労働省並び厚生省の試算では、昭利八十年ごろには人口が減少する。それだけではなく、十五歳以上の人口の中で若年人口が非常に減ってまいりまして、逆に、四十年先では、三十五歳以上の中庸年人口の七〇%を占める、こういう事態になるわけでございます。  このような事態にもかかわらず、経済発展に伴いまして雇用増加が必要になってくるわけでございまして、今後の雇用対策基本は、どうしても中高年の人がうんと働いてもらわなければならぬ。もう一つは、結婚された御婦人も大いに働いてもらわなければならぬ。そうすることによりまして、若年労働力に依存する現在の雇用形態というものを、雇用の面でも大きく変えていかなければならない、これが根本の方向だと考えております。
  5. 河野正

    河野(正)委員 承るところによりますと、この二月、労働大臣は、佐藤総理に対しまして、特に経済成長政策のもとにおける人手不足に対処する抜本策について建議をしたということがいわれておるわけですが、その抜本策というのは、いまおっしゃったような、一つには中高年者対策、あるいはまた婦人雇用というようなことが中心であるのか、どういう意味建議をされたのか、ひとつお聞かせをいただきたい、かように考えます。
  6. 早川崇

    早川国務大臣 一番抜本的な対策としては、いまのような出生率低下、すなわち先進諸国に比べましても最低の出生率——大体標準人口構成では千人に十四人、アメリカその他は二十人をこえておるというこの状態では困るのではないか。そこで、人口問題を政治の日程にのぼしてもらわなければ、若い労働力が非常に枯渇してくるということが一つであります。これは厚生省人口問題審議会に、この問題も含めまして、諮問をされたことは御承知のとおりでございます。  二番目は、大企業のほとんどが五十五歳定年制をしいておりまするが、御承知のように、寿命が延びる、若年労働力が減るという時代には定年延長をして、中高年の人に大いに働いてもらう体制をはからなければならないということでございます。  第三点には、特に建設労働その他に強い要望のありまする外国人労働力の移入問題が論議されておりまするが、これはやらない。やらないで、むしろ現在ある日本労働力を効率化していく、高能率、高賃金という方向労働市場というものを整備して、不要不急産業労働力が流れたり、あるいは小完全就業というものをなくしていくという方向労働市場を近代化していく、需給関係を流動化していく、この四つが総理に建言いたしました問題でございます。  さらに、それに加えまして、日本は、婦人労働平均二十八歳という結婚前の人が主体となっておりますが、欧米諸国に見られるように、労働力不足経済では、結婚されたあとでも、三十五歳以後あたりから、どんどん職場に入っていっておる。アメリカあたりでは、婦人労働の、平均年齢は四十歳と聞いております。ですから、そういった中年以上の婦人をどう職業戦線に投入していくか。これには職業紹介職業訓練パートタイム、いろいろな方法がございまするが、こういった面にも雇用政策重点を相当移していかなければならない。こういったことは全部雇用対策基本計画に入っておりますけれども、特にそういった点を建言をいたした次第でございます。
  7. 河野正

    河野(正)委員 総理に対して建議をされた内容について若干御指摘をいただいたわけですが、それは逐次触れてまいるといたしますが、まず第一に伺っておきたいと思います点は、雇用面での新しい特徴というものは、すでにいろいろと指摘をされておりまするように、一つには技能労働者、いわゆるブルーカラー労働者不足という問題。いま一つは、いま大臣がちょっとお触れになったわけでございますけれども中高年労働者職業転換に関する問題。こういう点が一つ特色として考えられておるわけでございます。ところが、新しく経済活動のにない手となりまする学校新卒業者の数というものが、昨年の約百六十万人をピークといたしまして、今後は逐次大幅に減少する情勢にあるのでございます。特に現場労働力の中核であった中学新卒の減少というものが非常に著しい傾向となってきたのが一つ特色でございます。その結果として、労働人口構成というものが一段と高齢化の形をとってまいっておりますることは、もう御承知のとおりでございます。  そこで、私、今日の雇用対策考えていく場合には、当然いま申し上げましたようなことを背景として考えていかなければならぬことは、当然のことであろうと思うわけでございます。これはなるほどことばでは簡単ですけれども、やはりその対策というものは、この人口問題から端を発して、逐次将来の方向というものを確立していかなければならぬわけですから、なかなかこれは簡単な問題ではなかろうと私は思うのでございます。しかしながら、一方におきましては、日本経済というものは急速に発展をしておるわけですから、むずかしい問題といっても、これを放置するわけにいかない。やはり日本経済の伸びに応ずる雇用力労働力というものをつくらなければならぬ。  そういう意味で、私は当面は、いま申し上げまするような背景というものを考えていかなければならぬというふうに考えるわけですが、その点について大臣はどのようにお考えになりまするか、重ねて御見解を承っておきたい、かように考えます。
  8. 早川崇

    早川国務大臣 まず、中高年の方が十分雇用機会を得るために、二つの大きい施策の実行を考えておるわけであります。一つは、民間企業におきまして、五十五歳で首を切るという定年制延長するということであります。そうすることによりまして、少なくとも数年あるいは六十歳程度まで職場を得る。現在調べてみますと、五十五歳でやめた人の九割近くが、まず半年ほど失業して、しかも自分に適しない職場に無理やりに入っていかざるを得ないという実情、これは雇用面からいうと非常なロスであります。そうすることによって、高年者雇用戦線で大いに働いてもらう。それだけ、先般も申しましたように、昭和十年に比べて五十五歳以後の余命年数が、日本では四、五歳延びておるわけです。十九歳まだ平均余命がある。戦争前は十五歳でありました。そういう点からも、根本的に明治、大正以来の習慣を打破することによりまして、雇用面において高年者に働いてもらう道を講じなければならない。これは国家公務員地方公務員においても同じであります。  二番目には、中高年の方で離職した人、転職を余儀なくされた人に対しては、いわゆる人材銀行の設置、また中高年者職業転換給付金支給、あるいは雇用促進融資を行なうとともに、新たに中高年者を雇った場合には、その事業主住宅新築の補助をするとか、あるいは一年間月平均四千円家賃を補助するとか、こういったいろいろな施策を講じまして、中高年者職場を得ていく道を開いていく。その他たくさん施策がございますが、そういった施策を講じてまいりたい。  三番目には、婦人労働者婦人にどんどん仕事に入ってもらうためには、まず男女の賃金格差をなくすという観点から、ILO百号条約の批准もいたそうとしておるわけでありますし、また職業訓練あるいはパートタイム指導、そういった面に重点を置いていきたい。かように考えておる次第でございます。
  9. 河野正

    河野(正)委員 せっかく出てまいりましたから、この際一言触れておきたいと思いますが、たとえばいま御指摘定年制延長の問題。これも今後労働人口というものは高齢化するわけですから、その対策一環として、当然そういう問題の検討が必要であろうということは、これは当然言えると思うのでございます。  それからいままで主としてとられてまいりました中高年齢者のいわゆる離職対策、これには、たとえば炭鉱労働者あるいはまた駐留軍労働者等、いままで私どもこの委員会においていろいろ論議してまいりました経験もございますが、たとえば、きょう私も一部から陳情を受けましたが、私の地元で国鉄志免鉱業所というのがあって、先般国の政策のもとに閉山のうき目にあった。ところがそれらの離職者がいわゆる中高年齢層離職者というたてまえじゃなくて、すでに一般的には定年を迎えた離職者ということになるわけですけれども、そういう面に対する施策という点はかなりおくれておると私は思うのです。それはもちろんその前にやらなければならぬ問題がたくさんあるわけですから、そういう点も私はあると思うのですけれども定年制延長が行なわれて吸収されるのは主として今後の問題でございますが、今日、現実に定年を迎えたけれどもなお労働力として寄与できる、こういう陽暦に対する施策については一体どういうようにお考えになっておるのか。これは非常に当面する問題ですからね。私は、そういう意味でかなり深刻な問題だと思うのです。そういう意味で、これは職安局長のほうにも陳情がされたという話でございますけれども、一応ひとつこの際御見解を承っておきたい、かように思います。
  10. 有馬元治

    有馬政府委員 志免鉱業所の場合のような炭鉱離職者に非常に多く見られる例でございますが、三年間の就職促進手当支給期間が終わってもなおかつ再就職できないというケースが、高齢者については出てきておるわけでございます。これが私どもの具体的な雇用政策あたりまして一番難問題でございまして、今回炭鉱離職者臨時措置法の改正をお願いしておるのも、自営の道を開くという方法一つ方法だと思います。  それから先ほど大臣から御答弁がありましたように、今後の、雇用政策基本といたしまして、定年制延長という問題、それから人材銀行その他の施策を講じていくという一般的な政策のほかに、具体的には昨年の雇用対策法でも規定されておりますように、中高年者に対する雇用率設定適職選定、こういった具体的な措置がございます。これもいきなり全面的に活用するというわけにはいかない面もございまするが、まず官公庁方面におきましては中高年向き適職選定いたしまして、その適職については雇用率設定していく、こういう計画で現在進めておりますが、これも雇用率目標率が多少甘いというふうな御意見もございますので、私どもとしましては、再検討の上でこの官公庁における雇用率設定をもう少し高めまして、長期的な計画推進をほかってまいりたいと思います。  その際、具体的に申しますと、たとえば郵政省のいわゆる郵便集配をいたしておりまする郵政外務員につきまして、これは六五%の雇用率設定しておるのでございますけれども、現状においては五三%程度しか中高年を採用していない。総数において十万ちょっとございまするが、これに対しまして五万四千人しか中高年を採用していない、こういう実情でございますので、この辺郵政省ともかけ合いまして、もう少し中高年を思い切って採用してもらう。それから志免の場合におきましては、国鉄自体に対しましてももっと再就職の場を広げてもらいたいという要望国鉄当局にいたしておるわけでございます。これは職場としては非常に限られると思いまするけれども、やはり大きな国鉄の世帯の中で、雑役あるいは倉庫関係管理人というふうなこまごましたいろいろな職場がございますから、これらに一人でも二人でも吸収をお願いするというふうなことで、まずは官公庁が率先して雇用対策法にきめられた雇用率を高めるというふうな考え方で中高年、特に高齢者吸収していく、こういうふうな具体的な対策を講じておるわけでございます。非常にむずかしい問題でございまするが、われわれとしては最重点を置いて努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 河野正

    河野(正)委員 いま、かなり前向きな御見解をいただいたわけですけれども、私どもが客観的にものを見てまいりましても明らかでございますように、適職選定によってかなり高年齢層離職者吸収というものができるのじゃないかというふうな感じを私は強く持つわけです。その第一段階として国の機関ということだと思いますけれども、私はさらに、これは適正でなければ困るわけですけれども、適正な、しかも強力な行政指導によって、こういう問題はすみやかにひとつ解決のために努力を払ってもらわなければならぬというふうな感じを強く持っています。たとえば一、二の例をあげてみましても明らかでございますように、公社、公団関係においてもそういう適職選定が行なわれれば、かなり高年者吸収されるというような点が必ずしもないではない。たとえば高速道路におきまする集札なんかも一つの例でございましょうし、これは私も現場実情に精通しておるというわけじゃございませんから多くを申し上げることは遠慮いたしたいと思いますけれども、いま労働省が示されました方針というものを適切にしてかつ強力にひとつ推進をしてもらいたい。そして当面する離職者吸収に、ひとつ最善努力を払ってもらいたい。これをひとつ要望申し上げておきたいと思います。  そこで、冒頭に申し上げましたように、労働力というものが逐次不足事態になってきた。ところが、その労働力というものがどうして不足をしてきたかという点につきましては、いま若干触れてまいったわけでございますけれども、それらの原因を大別いたしますれば、一つには日本経済というものがだんだん成長をして労働力の需要というものが増大をしてきた、そのために労働力不足という現象になってきておる。それから第二は、先ほど大臣がちょっとお触れになりましたが、出生率が急速に低下をしてきた。大別いたしますれば、私は二つ原因というものが今日の経済成長下におきまする労働力不足原因考えられると思うわけでございます。そこで、その意味では、国や民族の百年の大計といたしましても、この人口問題というものは単に労働力の問題に限らず、私は非常に重大な課題となっておるであろうというように理解をするものでございます。  そこで、先ほどからちょいちょいお触れをいただいたわけでございますけれども、この変動する人口構造に即応した雇用対策というものがきちっとここに整理されませんと——というのは、この人口構造というものが急速に変動していくその場その場では、その人口構造変動に対応することはできぬわけですから、そこでこれは、私は、やはり年次的な計画によって即応する体制というものを確立してもらわなければ、単にことばの上だけでは困るのではなかろうか、こういうことを痛切に感ずるものですから、そこで、急速な変動を行なっておりまする人口構造に対応する雇用対策基本計画というものが当然樹立される必要があるというふうに考えるわけですけれども、それらの点に対しましてはどういう御見解を持っておられますのか、ひとつ大臣の率直な御意見を承っておきたい、かように考えます。
  12. 早川崇

    早川国務大臣 先ほど定年制延長とか、中高年雇用率設定とか、いろいろ申し上げました。また、婦人労働力の活用を申し上げましたが、基本的にぶつかる問題は、自由民主主義労働行政におきましては、マンパワー計画的に強制することができないわけであります。そこで、イギリスでは選択的雇用税というものをつくりまして、不要不急産業にいく者には税制上不利な扱いをし、国として必要な産業に被雇用者がいく場合には税制上有利にしていくという法律も成立してやっておるわけであります。しかし、これも現在までのところなかなかうまくいかない。これを日本的に考えますと、たとえば若年労働力の必要のない産業、あるいはレジャー産業、こういうところよりもむしろ繊維産業女子労働力不足を補ってもらいたい、あるいは若年でなければできない産業——なかなかこれが職業選択の自由から、おまえここにいっちゃいかぬということは言えないものですから、そこに自由民主主義的な労働行政限界がございますけれども、われわれといたしましては、そういう一つ強制的統制という前段階におきまして、中高年を活用していくための定年延長とか、あるいはできることは、官庁の雇用において、これは政府自身が雇う人ですから、先ほど御指摘のような公団切符切りとか、あるいは役所のエレベーターガールとか、国会におけるあれとかいうような、できることから、いま言ったような人口構造変化に伴った雇用政策を実施してまいりたいと思っております。しかし、要は大企業その他が、どちらかといえば若年労働力はどんどんまず先取りできるわけですね。まあ、マグロのとろをまず食えるわけです。そこになかなか御理解が願えない。国全体としては、それが結局中小企業が、泉南の繊維工場労務倒産をする、あるいは土建業の九%が労務倒産をすることになる。全体としての労働力ということをなかなか一企業の立場からお考えいただけないものですから、労働省といたしましては、こういう労働需給になってきているのだ、こういう人口構造になってきているのだと世論の喚起に現在最善努力をいたしておるような次第でございまして、どうかそういう限界だけはひとつ御理解願いたいと思います。
  13. 河野正

    河野(正)委員 今日のように急速に変動する人口構造に対応するところの雇用対策というものは、私は、単に一労働省だけで達成さるべき性質のものではなかろうと思うのです。ですから、これはやはり関連する政府各省がそれぞれこの人口問題に対して重大な関心を持つと同時に、その一環としての雇用計画というものを考えていくということにならねばならぬと私は考えるものでございます。  そこで、私は、この際一言触れておきたいと思うわけでございますが、それは戦後わが国は、戦前の多産多死型より西欧先進国並みに少産少死型に移行をいたしてきておるわけでございます。そういう意味におきましては、人口革命というふうなことばがいわれるような、一つの大きな変動でもあろうかと思うのでございます。そこで、それらの変動によって労働力というものが非常に大きな影響を受けておるわけですから、そういう意味で、この人口構造に対応する雇用政策というものは、単に労働省だけの努力ではどうにもならぬ問題ではなかろうかというように私は判断をするわけでございます。これは関連する各省がこの問題に対して重大な関心を持ちながらそれぞれ相提携して解決すべき性格のものでございますから、そういう意味で、関連をする厚生省に対しても若干お尋ねを申し上げたいというふうに考えるのでございます。  この数字で見てまいりますと、西欧先進国人口比率幼少人口が二五・四%、生産年齢人口が六四・四%、老齢人口が一〇・二%、それから一方アメリカカナダにおきましては、幼少人口が三三・八%、生産年齢人口が五八・三%、老齢人口が七・九%、このような数字を示しておるのであります。これに対しまして、わが国はこの幼少人口のほうは欧米よりも低く、それから老齢人口のほうはおそらく数年をたたないうちにアメリカカナダを近い抜くであろうということがいわれておるのでございます。そこで、四十八年後の昭和九十年になりますると、日本では五人に一人が六十五歳以上のお年寄りになるということがいわれておりますように、いわゆる人口革命という時代が到来することが今日の現況でございます。そこで、やはりこういう人口革命に対応する対策というものが人口問題として解決され、そしてそれが結果的には雇用問題として解決されるということにならなければならぬというふうに考えるわけでございますが、そういった現況に対して、厚生省はどういうふうな御見解を持っておられるのか、この際、ひとつあらためてお尋ね申し上げておきたい、かように考えます。
  14. 首尾木一

    首尾木説明員 ただいま河野先生のおっしゃいましたように、わが国の現在の人口問題といたしましては、出生率が非常に低下をいたし、一方死亡率低下するということで人口構成が急激に変化をしてくるような過程にあるということでございます。そうして、昭和九十年に、おっしゃいましたように六十五歳以上の人口が全体の二〇%にもなるというふうな数字がございます。ただ、この数字は、一応昭和五十年ごろまでを人口問題研究所において推計をいたしまして、その時点におけるいろいろな人口の動態率というものが一定であるという仮定のもとに、昭和九十年にまで投影したというような数字でございます。したがいまして、昭利九十年におけるこの数字というものは、今後の出生率が今後どういうふうに推移するかということによってかなり動いてくる数字であるというように考えております。しかし、いずれにいたしましても、問題は、かなりな速度の幼少人口の減少傾向、それから十五歳から六十四歳の生産年齢人口増加傾向の減少、さらには六十五歳以上の老齢人口増加ということで、これは雇用問題のみにとどまらず、非常に大きな問題であると考えておるわけでございます。しかしながら、この人口の問題につきまして、いわゆる人口対策、そういうものをどのように考えるかということは非常にむずかしい問題であろうと考えております。また非常に広範な問題でございますので、先ほどもちょっとお話がございましたが、厚生省としましては、現在の人口の動向にかんがみまして、人口問題上留意すべき事項について人口問題審議会に先般諮問をいたしました。人口問題審議会において広い角度からこれらの問題について、こういう人口の動向というものをどう評価するか、それからこれに対して国政の上で一体どのような、配慮をすべき問題があるのか、どういう対策考えるべきであるかというようなことにつきまして、全般的な方向についての御意見を伺いたいということで人口問題審議会に諮問をいたしておるような次第でございます。
  15. 河野正

    河野(正)委員 人口問題審議会に諮問をされることも、今後の基本方針を立てる上において必要なことと思うけれども、しか当面やらなければならぬ問題があると思うのです。人口問題がいろいろな方面に関連することは当然のことでございますけれども、きょうは特に変動する人口構造雇用問題ということでしぼって論議をしているわけですから、そこにひとつ焦点を当ててお答えをいただきたいと思うのです。  この人口問題というものは一朝にして解決する問題ではございません。しかも幼少人口というものが青少年の労働人口発展をしていくわけですから、やはり百年の大計ということは大げさでございますけれども、そういう意味の大計というものを早目に樹立していかなければ、さあやろうといったってやれるものではないのです。そういう意味で、なるほど人口問題審議会に諮問をされて答申を受けて、そして対策を立てることも必要であるけれども、当面やらなければならぬ問題がたくさんあると思うのです。そこで、私は、そういう意味でいま一言お尋ねをしておきたいと思うわけです。  それは、だんだん減少していく労働力の中で、経済の高度成長と、さらにまた福祉の増大というものをはかっていかなければならぬ。これが私どもに対する至上使命です。労働人口というものは減っていくけれども、やはり経済成長というものを考えていかなければならぬ。それからもう一つは、国民の福祉というものを増進していかなければならない。労働人口は減る、しかしやらなければならぬことがある。それならば一体どうすればいいのかということに帰結すると思うのです。当面、たとえば、減っていけば減っていくだけ大事な幼少人口ですから、その幼少人口というものを大事にしていかなければならない。ことばをかえて申し上げますならば、その幼少人口の資質を向上さしていかなければならないということは当然のことだと思う。そういう意味での対策をまず立ててもらわなければならぬ。  それからいま一つは、家族計画について再検討すべき段階がきておるのじゃないか。これはもう当然のことだと思うのです。これはこの前の閣議の中でも佐藤総理からも発言があったそうでございますけれども日本は堕胎天国じゃないかというふうな極論もございますことは御承知のとおりです。特に年間百五十万から二百万の若年労働者の労働力不足していくといわれているわけですが、わが国の人工妊娠中絶を統計的に見てまいりましても、その届け出のあったものだけで昭和二十六年から三十六年の間においては、毎年百万件を突破している。三十七年ごろからだんだん減少してまいったのでございますけれども、それでも九十万件はあろう。それにやみを入れますと、人工妊娠中絶を行なっております実数というものは百三十万件程度ではなかろうか、こういうふうにいわれておる。それにはやっぱりやるべくしてやらなければならぬ人工妊娠中絶もございましょうけれども、外国で堕胎天国だというありがたくもない名称を授けられておるという不名誉もございます。それもさることでございますけれども、一方におきましては、大事にしなければならぬ幼少人口の根源であるその出生率を抑える人工妊娠中絶というものがこういう状態であっていいのかどうか、こういう点も私は非常に重大な問題だと思うのです。ですから、なるほどいまお答えになったように、人口問題審議会に諮問をして答申を受けて対策を立てられる問題もございましょうけれども、そういう問題以前の問題がある。それらについて具体的にどういうふうにお考えになっておるかということを私は聞かざるを得ない。きょうはしぼって申し上げておりますけれども、それが結果的には雇用労働力に影響をもたらすわけですから、そういう意味で、特に人口構造変動に伴う雇用問題というものは、単に労働省だけではできないと私の言いますゆえんのものは、一つにはそこにあると思うのです。そういう意味でひとつ的確なお答えをいただきたい、かように考えます。
  16. 首尾木一

    首尾木説明員 厚生省といたしましては、申されましたように、第一に児童の資質の向上ということが、今後の幼少人口の減少ということから考えましても当然重要な問題になってくるだろうというふうに考えております。この問題につきましては、厚生省といたしましては、児童福祉の面を充実するということでございます。さらに児童手当問題等につきましても、今後その創設を促進するということで研究をいたしておる次第でございます。  それからさらに生まれた子供をよく育てるという意味におきまして、特にわが国において乳幼児死亡率が非常に低下をしてまいっておるわけでございますが、さらに新生児の死亡につきましてまだまだ改善の余地があるのじゃないか。すなわち、たとえばこの面について地域的な格差がかなりあるというような実態から考えまして、そういう面での母子保健対策を樹立するというようなことは今後非常に重要な問題だと考えております。  それから、おっしゃいました家族計画あるいは妊娠中絶の問題でございますけれども、本来母体の健康を維持するというような観点から適正な家族計画の普及として受胎調節の普及をやってまいったわけでございまして、もちろん人口対策といったような観点はその中に入っておらなかったわけでございます。そのような適正な家族計画、受胎調節の普及というようなことにつきまして、その趣旨を十分徹底すべきであろうというふうに考えておるわけでございます。もちろん妊娠中絶等におきましても、優生保護法の適正な実施ということにつきましては十分考えていかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  17. 河野正

    河野(正)委員 おっしゃることはそのとおりですけれども、私どもはきょうここで論議をいたしておりますのは、急速な人口構造変動に伴う雇用対策というところにスポットを当ててお尋ねをしておるわけです。ですからいま厚生省が実施をされておりまする人口問題対策、それがこの雇用問題とどう関連をしながら御検討を願っておるかという意味お尋ねをしておるわけです。ですからそういう意味お答えをいただかぬと、単に中絶問題については適正にとか、あるいは資質の向上については、幼少人口の資質の向上をはかっていかなければならぬということだけでは、もちろんそれが基本ではございますけれども、それと雇用対策をどうからませていくかということが大事なきょうの論議の焦点ですから、そういう意味でひとつお答えを願いたいと思うのでございます。  そこで一つお尋ねしておきたいと思いますが、厚生省人口問題を検討される場合に、この雇用問題とからませて労働省意見を聞きながらそういう対策推進されましたか。
  18. 首尾木一

    首尾木説明員 厚生省が今回大きな問題といたしまして、今日の人口の動向に関連して、今後人口問題に配慮すべき重要事項について人口問題審議会に対しまして諮問いたしましたのは、国政全般との関連においてどのような点に配慮すべきか、あるいはどのような対策を講ずべきかという点についての御意見を伺っておるわけでございます。これは人口問題審議会厚生省の所管ということになっておりますので、厚生省から諮問いたしたわけでございます。当然人口問題審議会のほうには委員とされまして労働次官も出ておられますし、幹事会といたしましても、労働省からも出ていただきますし、人口問題審議会においてこの問題を審議していただきます際には、十分労働省と連絡をとって行なってまいりたい、かように考えております。
  19. 河野正

    河野(正)委員 ただ非常に残念に思いますのは、この人口問題というものは一朝にして解決する問題ではないのですね。特に労働力の問題になりますと、これは生まれて中学校を卒業するまでは労働力にならないのですね。かなりの時間がかかるわけですよ。ですから、そういう意味では人口問題研究所では大体人口問題の展望というものはわかるわけですから、これは早めにそういう方針というものをお立てにならなければ、もう壁にぶつかって、立てたってもう十数年のおくれがあるのですよ。私はそういう意味ではまこと残念ですけれども、今日やっとこの人口問題審議会に諮問をされたのは時期としてかなりずれておるのではなかろうか、そういう気持ちがいたします。私は残念ではございますけれども、そういう点は、いまここでとやかく申し上げましてもどうにもならぬ問題ですが、あえて申し上げますが、この問題の取り組みというものは非常におくれておった、それで結果的にはいま労働力の問題で日本経済に非常に大きな影響を与えておる。そういう意味で私は非常に残念に思います。しかし時間もございませんから、その点はひとつ私の気持ちを率直に申し述べて警告をいたしておきたいと思います。  それから、幼少人口を大事にしていかなければならぬ、その資質の向上というものをはかっていかなければならぬということがいま申し上げた一つの点でございますが、いま一つは、だんだん老人がふえていくわけですから、この老人対策というものを強化する必要があるということは、これはもう当然のことだと思うのです。そこで、その老人対策を強化するということですけれども、それには、一つには生活保障の問題がございましょう。具体的に申し上げますならば、年金等を充実をして、老後の保障をはかっていくということも一つ方法でございましょう。それからまた、一つには老人の慢性病対策、たとえば成人病、ガンとか、そういう問題に対します対策を立てて、老人を大事にするという問題があろうと思います。しかし、きょうは雇用問題ですから、そこに焦点を当てて申し上げますと、やはり私は、老人にまず仕事を与えるということがきょうの論議の中の問題点となると思うのであります。それには、先ほど大臣が申し述べられたような定年制延長の問題もございましょう。同時に、私は志免鉱業所の問題を一つ取り上げてまいりましたが、現実にはすでに定年になって、しかも職場吸収されておらぬというふうな断層もたくさんあるわけですから、そういう意味では、単に定年制の問題だけでは解決しない面がございます。そこで、老人に対しましては、心身の能力を回復させて、単なる老後の保障によって徒食をさせるということではなくて、勤労の喜びを与えていくということもきわめて大切な問題であるというふうに私は考えるわけでございます。  そこで、結果的に申し上げますならば、一つには幼少人口を当面大事にする、もう一つには、老人対策を強化をしてお年寄りを大事にしていく、こういうことが、人口変動に伴います雇用対策上のきわめて重要な問題であるというふうに私は指摘せざるを得ないと思うのでございます。時間がございませんから、そういうことを結論的に申し上げて、そしてこの際特に私は指摘を申し上げておきたいと思います点は、だんだん若年労働者が減少していく、そのために、申し上げますように幼少人口等も大事にしなければならぬ、またお年寄り、大臣のほうでは御婦人もおっしゃいましたが、そういう階層を大事にしなければならぬ。私は時間がございませんから多くは申し上げません。きょうは一例だけを取り上げて申し上げてみたいと思いますが、それは、最近労働省が発表いたしました年少労働者就労状況という調査報告がございます。それによりますと、新規の中学卒業者の離職率がだんだんと高まっておる、若年労働者が非常に重要な意義を持っておりますにかかわりませず、この労働省の年少労働者就労状況調査報告によりますと、新規中卒者の離職率がだんだん高まっておる、数字で申し上げますならば、その離職率というものは二一・一%で、男女とも昨年よりも高まっておるというふうにいわれておるわけです。そういたしますと、このせっかく労働力というものを確保しなければならぬときに、現実にはいま逆行するような方向が出ておる点についてはどういうふうにお考えになっておるか、ひとつこの際承っておきたい、かように考えます。
  20. 早川崇

    早川国務大臣 お答え申し上げたいと思います。  中卒者の離転職が二割一分とか言われましたが、東京都の調査では、一年以内に一割三分という数字が出ております。鹿児島から東京へ来た例をとりますと、これはやはり少しふえまして、三カ年の間には四七、八%出ていくという数字も出ておるわけでございます。したがって、その離転職のパーセンテージは別といたしまして、労働省といたしましては、特に年少労働者の転職問題につきまして先般いろいろ協議をいたしまして、対策を決定いたしたわけでございます。その原因は、転職自体が悪いというのじゃないので、職業選択の自由で、転職はそれだけ雇用があるからするわけでありますから、全然悪いというわけではありませんけれども、中には非行少年になるという事態もありますので、できるだけひとつ定着指導をやろう。定着指導員というものが現在ございます。また年少労働者福祉員というものがございますが、それだけでは不十分である。職業安定所に年少就職者相談室を設けることにいたしまして、集団就職した子供たちのいろいろな悩みまた事業主の悩みというようなものも十分ひとつそこでフォローしていこう。それから集団就職者に昨年ごろまで非常に不平がありましたのは、職安の就職の条件というものは来てみると違うじゃないか、そこで子供ですから非常に不満を持って転職するという少年もたくさんございました。そういった面では、求職する場合には、はっきり基本給はこうだ、それから超勤の手当はこうなんだ、食費でどう引かれるのだ——この間、集団就職の少年とテレビ対談をやったときに、八千円しかもらっていない、一万六千円のつもりだったというのがあったが、これは食費とか寮の費用を全然考えていないわけで、そこに条件が違うじゃないか、こういう誤解がずいぶん多うございました。こういったこともやはり求職のときに明確にしておかなければ、そういう誤解が転職の理由になる。しかし、一方雇用主の側から言いますと、若年労働力不足でございますので、飛行機で連れてきたり一等の汽車に乗せたりして非常に手厚くサービスするのみならず、福利厚生施設につきましても非常に苦心しておるようでございまして、離転職の大きい理由は、むしろ賃金の高低よりももう少し上司がやさしくしてもらいたい、相談に乗ってもらいたいということもあるので、いろいろ少年の悩みを労働省で調査いたしまして、それに応じた指導をしてまいりたい、かように思っておるわけでございます。また、就職のときに学校と相談いたしまして、適職指導をいまやっておりません。これは旋盤工に、あるいはこれは事務系にというような選別の適職指導の面にも、まだ十分なところはございません。こういった面も、県の教育委員会その他と連絡協議会をつくりまして、適職指導というものも大いにやってまいりたい、かように考えておる次第でございます。離転戦がある程度あるというのは決して悪いことじゃございませんけれども、やはりその職業に定着さしてやるように、基本をそこに置きまして、年少就職対策要綱というものを樹立したわけでございまして、委員各位にも参考資料としてお配りをして御批判をいただきたいと思っております。
  21. 河野正

    河野(正)委員 やはり私は、この技術革新の時代ですから、一つには職場に定着することが望ましいと思うのです。それからもう一つは、離職率が高いということは先ほど申し上げたのでございますけれども、小規模事業所ほど高いわけですね。たとえば労働省の発表でも大体三〇%というふうに言われております。それから建設業では五〇%以上の高い離職率を示しておる。しかもそれが事業所の四分の一を占めておる、こういうふうに言われておるわけでございます。これらの問題については、いまその一、二の理由については大臣からもお答えございましたが、やはり私は基本的に労働条件が非常に劣悪である。小規模事業所のほうが離職率が高いわけですから、やはりそういう事業所というものは労働条件が非常に劣悪である、あるいは職場環境というものが悪い、そういうことが一つの大きな原因になっておると私は思うのです。ですから、一朝にして離職率というものが好転するということは望めぬと思うけれども、しかし、基本的には一つ職場に定着することが望ましいわけですから、定着し得るような職場環境をつくる、あるいは労働条件を向上さしていく、こういう指導というものが行なわれて初めてこの離職率というものは低下するわけです。そういう意味で私は、今後労働省としても、離職率が高いという問題についてもひとつ強力な行政指導を行なっていただくように、これは労働力不足の状況がございますから、特にお願いを申し上げておきたいと思います。  きょう時間もございませんし、あと質問者もおりますから、以上、人口変動に伴う雇用対策について基本的な態度をお伺いをした、こういうことでございます。
  22. 川野芳滿

    川野委員長 次に西風勲君。
  23. 西風勲

    ○西風委員 いま最賃審議会が非常に不正常な状態に置かれております。不正常な状態に置かれているままに中間答申が行なわれようとしているわけであります。こういう状況に対して労働大臣はどういう考え方を持っているかということを、まずお聞きしたいと思います。
  24. 早川崇

    早川国務大臣 いま有沢会長のもとに審議会が最終段階に入っておりまして、これを強行ということばがどうか、これは委員は拒否権を持つわけではございませんので、その間のことは有沢会長並びに審議会の御判断におまかせしたいと思っております。
  25. 西風勲

    ○西風委員 日本で一番大きい労働組合の連合体はどこですか。
  26. 早川崇

    早川国務大臣 御承知のように総評でございます。
  27. 西風勲

    ○西風委員 いま労働大臣が、これはまあ言わざるを得ないから言ったのでしょうけれども日本で一番大きい影響力を持っている労働組合がこの審議会に未参加のままで答申が行なわれるということによって、どういう結果が生ずるかということをお聞きしたいと思うのです。
  28. 早川崇

    早川国務大臣 もちろん御参加願って賛成していただく、あるいは反対していただくというのが好ましいわけでございますけれども、ただ、審議会というものは労働組合だけの構成じゃないので、使用者、いわゆる雇うほう、それから公益委員という三者構成になっておりまするし、一つの団体があくまで反対したら審議会というものは何もできない、こういうようでは——拒否権という形態にはなっておりません。その結論が国民全体に納得でき得るものであるかどうか。むちゃくちゃな結論では困りますけれども、たとえ組合員数が多くても、これは反対するのは無理じゃないかとマスメディアや世論が言われるような場合には、御出席されなかった場合には多数の意見でいかざるを得ない、これは民主主義の基本原理であります。
  29. 西風勲

    ○西風委員 それじゃ、いま総評が最賃審議会に対して出しているさまざまな要求、意見というものは、これは社会的に見て不正常ではないという考え方をしておられますか。
  30. 早川崇

    早川国務大臣 総評の御提案は、全国一律、全産業一律最賃制の御主張にこだわっておられるというか、御主張されているわけでございます。これは一つのりっぱな御意見でございます。また諸外国のように、地域別、産業別最賃ということを言っておられる使用者あるいはその他同盟系とかのいろいろな御意見、これも一つの現実論でございます。ですから、そういうものは、私の聞いておるところでは、もう少し日時をかけてやろうじゃないか。ただし皆さんの御要望は、ILO二十六号条約に沿った基本の面で労使対等ではないじゃないか、いわゆる企業間協定というものになっておるあそこがILO精神からいっておかしいじゃないか。最小限度こいつはひとつわれわれといたしまして直したいのです。その線の最大公約数で一歩前進していく、それで全国一律、全産業一律という御主張、あるいは地域別、産業別という御主張、これは非常に意見が対立しておりますから、継続して御審議願うという方向に公益委員の方がおまとめされておるのではないだろうか、かように思っております。
  31. 西風勲

    ○西風委員 それでは労働大臣として、審議会ですから、直接これに干渉するということはもちろんできないでしょうけれども、この審議会の状況に対して、非常にすぐれた労働大臣でありますから、これをもとに戻して、正常な状態ですべての人々が審議に参加する。しかも、公益委員の一部が参加していない、あるいは使用者の一人が参加していないというのじゃなくて、先ほど早川労働大臣から公認をいただきましたように、日本最大の労働組合でありますこの労働組合が、労働者の問題をきめる最賃審議会に未参加のままで——その状況がどうあろうとも、未参加のままで答申が行なわれるということは異常な状態ですから、こういう点について労働大臣として、何らか積極的な動きの中で、総評の要求もある程度いれながら解決をはかっていく御決意があるかどうか、伺いたいと思います。
  32. 早川崇

    早川国務大臣 有沢会長も御参加をたいへん熱心にやっておられるわけであります。むろん労働者は直接審議会には干渉しませんが、労働大臣としては、おりあるごとに岩井君とかあるいは堀井君なんかにもお願いしておるわけでありまして、どらかひとつ社会党の委員の方も御参加するようによろしく説得していただきたいと思います。
  33. 西風勲

    ○西風委員 私は早川労働大臣を非常に尊敬していたのでですけれども、いまのことばが取り消されない限り、これは早川さん、自民党の中で有数な労働行政の専門家といわれていることばを返してもらわなければいかぬと思うのですけれども、そういう点でやはり総評のような——ものわかりのいい組合ですよ、この組合は。問題のやり方によっては、誠意の示し方によっては。そのために存在してきているのです。だから、そういう点で労働大臣がやはりこういう問題については、正常な状態に戻るように積極的な努力を払うことが私は必要だと思うのです。だから重ねて、そういう決意をなぜされないのか、されることがあなたの職務ではないのかというふうに思うのです。
  34. 早川崇

    早川国務大臣 先ほど申し上げましたように、有沢さんも一生懸命にやっておるわけでありまして、私も一生懸命に説得しておるわけであります。ただ問題は、全国一律最賃制を認めない以上は入らない、これはもう民主主義じゃないですね。ですから、われわれはそういう意見が一〇〇%通るなら参加する、そうでなければ参加しない、こういう態度は改めてもらわなければ困ると思います。これはデモクラシーの原則に反するわけですから……。
  35. 西風勲

    ○西風委員 これは、労働大臣は熱意を持ってやっておられるというお話ですけれども、私どもの聞いておるところでは、労働大臣が総評の幹部とこの問題について話し合ったということも聞いてないし、労働大臣がすみやかに復帰するように働きかけたという事実も知らぬわけです。だから、やはり労働大臣なんですから、審議会を正常な状況に戻すために、裏か表かまん中か知りませんけれども、それはあなたのほうでいろいろやられることですが、そういう点でやはり積極的にやられるということが望ましいと思うのですけれども、どうですか。重ねてお聞きします。
  36. 早川崇

    早川国務大臣 公式には二回お願いしておりますし、私の意を体しまして、ここにおる村上基準局長はもう数え切れないほどお願いし、また説得しておる次第でございます。最賃問題は一歩でも二歩でも前進していくという有沢会長のお考えは、私は労働運動の発展のためにまことにいいことだと思っておりますし、この全国一律あるいは地域別という問題はいかぬというのじゃないのですから、あとに残してひとつじっくり諸外国の実情も見、そして御審議願えればけっこうだ。会長もそういう御意向で、まことにけっこうだと思っておりますから、どうかひとつわれわれの努力というものも御理解願い、残念ながらまだ御参加されておらぬようでありますけれども、今後とも努力してまいりたいと思います。
  37. 西風勲

    ○西風委員 私は、早川労働大臣労働省の皆さんも、総評のこの問題に対する考え方というのを非常に甘く見ておるのじゃないかというふうに思うわけです。そういう点で早川労働大臣にお聞きしますけれども、この問題を契機にして、総評が最賃審議会に引き続いて参加しないという状況がかなり長期に続くというようなときに、労働大臣はそういう状況になってもやむを得ないとお考えですかどうですか。その点について……。
  38. 早川崇

    早川国務大臣 仮定の問題は答えられませんけれども、おそらくそういうことにならないのではないだろうか。良識ある総評の議長の堀井さんでもあり、総評の組合員でもありますから、有沢答申の最賃に出る案というものは前向きの案でございます。ILO二十六号に沿った案が出ると聞いております。それでもいかぬ、最賃に入らないというような良識を持たない総評の人たちだとは思っておりません。
  39. 西風勲

    ○西風委員 いままで、たびたび約束したりいろいろされたことがほごにされておるような事実が往々にしてあるというような点から、そういう点が出てきておると思いますけれども、あなたがやられる前の労働大臣との間にかわされた約束があって、そういう事実が明らかになったときに、これを守る意思があるかどうかということをお聞きしたいと思います。
  40. 早川崇

    早川国務大臣 石田労働大臣とか大橋労働大臣国会における速記録をいろいろ見ました。全国一律、全産業一律の時代がくれば、これは理想だということは言っておられます。しかし具体的にやる場合には、十六条方式なんかで積み上げていってそういう環境ができたらという答弁もしております。いま全国一律、全産業一律ということになりますと、この東京も鹿児島も北海道も全産業一律といいますと、どんどん倒産ができるようなところも出てくるわけです。条件も違う。生活状態も違う。そこはやはり最賃法を考える場合に、企業主の立場も考え地域格差も考える、こういう意見が出るのは当然なことであります。現実的に一歩一歩いこうという意見が出るのは当然なことである。だからこそ、全国一律、全産業一律の最賃をやっておるのは、わが国の一県にも当たらない沖縄だけなんですよ。ヨーロッパ各国、アメリカ——アメリカは州にまたがる産業だけなんです。だから、日本だけが全国一律にできる状態かどうか、もっと現実に足を踏んまえて、会社がつぶれては何もならぬわけですから、そういうことを使用者側が考え、またその他同盟の委員考える、これはもっともなことなんです。そういう意見を審議会で出し合うというのには若干時間がかかる。これはあと回しにし、ILO二十六号条約に合う——業者間協定を廃止しようという考え方、こういうところに良識があるのじゃないでしょうか。
  41. 西風勲

    ○西風委員 一番大事な問題をあと回しにすることはあり得ない。そういう内容の論争はまたあらためてやりますし、前の大臣とのさまざまな約束についてはあらためて精密に、あなたが必ず認めなければならぬような状況になるようにこれはやりたいと思うのですけれども、これは保留しておきます。  そこで、あなたに最賃問題について最後に重ねて忠告を申し上げて、これは決意を伺いたいと思うのですけれども、やはりこの問題をできるだけ解決して、中間答申であろうと出すということにしないと、この審議会がきわめて重要な障害に逢着するおそれがあるわけです。そういう点で、この本委員会を機会にして、労働大臣労働省を中心にして総評を説得するだけじゃなくして、他の中立委員あるいは他の委員も説得して、総評も一緒に審議できるような場所をつくるために積極的な努力をされることを重ねて要望したい。同時に今後の問題について決意を伺いたい。
  42. 早川崇

    早川国務大臣 できるだけ努力をいたしたいと思います。
  43. 西風勲

    ○西風委員 それでは次に、三公社五現業の有額回答の云々の問題について質問したいと思います。  福永官房長官及び早川労働大臣は、さまざまな機会を通じて、今度はできるだけ早い機会に有額回答を出すという発言をされておるのですけれども、この有額回答とは、社会的な状況に適応した、少なくともいまスト宣言をして立ち上がろうとしている労働者を納得さすことのできるような、そういう決意を持った有額回答を出す意思があるのかどうかということをまずお伺いしたい。
  44. 早川崇

    早川国務大臣 常識的な線を出すものと期待いたしております。
  45. 西風勲

    ○西風委員 いままで、有額回答というので労働者が期待して待っておりますと、三百円とか四百円とか五百円とか、中学以上の子供なら一カ月の小づかいでも納得しないような回答を出して有額回答。確かに額のあることは間違いないけれども、これでは有額回答じゃなくて、むしろ労働者に積極的にストライキをやりなさいと挑発しているような行為になるわけです。そういうことで、四百円、五百円というような、従来のような、むしろ問題をこじらすような内容というものにならないということを保障できますか。
  46. 早川崇

    早川国務大臣 私の労働行政ではそういうことはやらないように本日の閣議で申しにのでありまして、要するに一組合を除きまして調停という段階に入っておるわけです。調停である以上、やはり議論になる額を出さなければ調停というのは実を結びませんから、その点は例年と根本的に違った常識的な回答を出すものと信じております。
  47. 西風勲

    ○西風委員 現在春闘はまだ終わっていないわけですけれども、いまの段階でいわゆる相場といわれることばで出されている金額は四千五百円くらいというふうにいわれているのですけれども、この世間の相場とあなたが考えておられる内容とはどの程度のものかということをお聞きしたいと思います。
  48. 早川崇

    早川国務大臣 総理が予算委員会お答えされましたように、相場というものはなかなか厳密にはむずかしいわけでありまして、もうけておる会社は非常に高い、もうけてない会社は四千円を切っておるというわけでありますから、相場ということばはわれわれはどういう意味か厳密には解しかねるわけでございますけれども、常識的かつ良心的な線というようなことばで妥結しなければいかない、かように私は思っておるわけでございます。ただいま四千五百円と言いましたけれども、鉄鋼というあれだけもうかっている会社ですら四千三百円、去年は二千六百円、しかも四千三百円の中身の千五百円は能率給、職務給ということになっておるわけであります。ですから、いろいろの産業の春闘値上げ額というのは、一律に相場として割り切れない面がある。しかし、おのずから国民世論上の常識の線、こういったところで妥結できれば、日本の官公労の労働組合運動としてこれほどいいことはない。このことは労使とも言えることではないか、かように思いまして、せっかく仲裁役で、私も、労政局長以下、全力をあげて現在皆さんの要望に沿うように努力しておる最中でございます。
  49. 西風勲

    ○西風委員 政府が、三公社五現業の働いておる人々の誠意にこたえるような内容のものを進んで出すという、正しい労使横行といいますか、正しい常識といいますか、そういうものを出してもらうために積極的な努力をしていただかなければならないわけですけれども、やはりこれはできるだけ早い機会にやらなければ問題にならないわけです。いま公労協は十一日にスト宣言をやるというふうに言っておるわけですけれども、これはどういうふうになるか知りませんが、そういう状況の中でどの程度の時期にこういうことをやろうとしておるのかということをお聞きしたい。
  50. 早川崇

    早川国務大臣 今月の中、下旬にやりたいと思います。
  51. 西風勲

    ○西風委員 他の問題に移りたいと思うのですが、この問題については、先ほども申し上げましたように、できるだけすみやかな機会に問題を前向きに収拾していく上に役立つような大胆な収拾というものをお願いしたい。  次に、いま斜陽産業といわれながら炭鉱労働者は非常にきびしい労働条件の中で働いておるわけであります。労働災害でこの前も杵島炭鉱で問題が起こりましたけれども、そういう状況の中で炭鉱労働者が働いておるわけであります。それにもかかわらず、有沢答申が出されて再建整備計画というもののワクがきめられたために、いま炭鉱で働いておる労働者に対しては、それぞれの会社が整備計画に従って賃金引き上げ額のワクを七%というふうに平均的にきめられておるわけですね。これは正式なあれではございませんが、大体そういうワク組みできめられておるわけであります。こういうワク組みの中では、いま苦しい状況の中で働いておる炭鉱労働者の労働条件を維持することは困難だと思うけれども、この点労働大臣どのようにお考えになりますか。
  52. 早川崇

    早川国務大臣 七%というのは、再建計画の積算基礎にそういう数字があったわけであります。いずれにいたしましても、それぞれの企業というものの実態から労使が賛上げをきめるべきものでありまして、政府が介入する意思はございません。
  53. 西風勲

    ○西風委員 政府はいままで石炭産業に対してさまざまな面で資金を出したり行政的に協力したりしておるのですから、したがって、経営しておる側を守るだけでなしに、やはり実際に職場で炭鉱をささえておる労働者に対しても政府が積極的なあたたかい手を差し延べる、同時に政府の行政的な努力でその労働条件が保護される場合には積極的な手を打つというのが労働者の仕事であります。そういう点で、炭鉱労働者に対しても世間並みの賃上げ、世間並みの給料の引き上げというようなものが行なわれるべきだと思いますけれども、その点どうですか。
  54. 早川崇

    早川国務大臣 政府としては、石炭産業には異例の二千億近い再建のお金も税金から出しておりますし、労働者としての離職者に対しまして、すでに二百億近い金額にのぼると思う異例の補助をしておるわけでありまして、ほかの産業の倒産とは違う手厚い援助をいたしておるわけであります。ただ賃上げその他は、やはり労使におきまして折衝するのがたてまえでありますから、どうしろこうしろと言うことは差し控えたいと思います。
  55. 西風勲

    ○西風委員 炭鉱労働者の保護の問題については、これは災害その他の問題とも関連してあらためてやりたいと思います。  次に、この間新聞で御承知だと思いますけれども、山口放送で警察官が介入する争議があったわけですね。山口放送の争議であります。山口放送の争議は、合理化に伴う人員配置の問題で、労働組合はふやせという、経営者はふやさないという、というような問題をめぐって起こったわけですけれども、この問題については、人事に関する事前協定——事前に必ず組合と相談するという協定があるのですけれども、この協定を無視して会社が人員問題の処理をしようとしたところからこの争議が発生したわけであります。それに対して、労働組合がこの経営者の一方的なやり方に抗議するために部分的な指名ストライキをやった。その部分的な指名ストライキをやったのに対して、会社側はすぐに違法行為である全面的な先制的なロックアウトというのをかけてきたわけであります。当然これは違法行為でありますから、労働組合がその撤回を要求したわけですけれども、それを、要求する過程で、五月六日、会社は午前二特にロックアウトを宣言したわけです。この宣言する前から私服がうろついて、しかもロックアウトが行なわれた当日の朝には、五十名の警察官がきわめて少数の労働者に対して、労働者一人に対して警察官三人が当たって排除するというようなことをやったわけであります。しかもその中で民放労連の委員長が逮捕されるというような事件が起こっております。きょうは時間がありませんからいろいろ養いませんけれども、こういう状況に対して、最近激しく警察側の労働争議に対する必要以上の介入というのが強まっているわけであります。そういう点で、こういう介入を招かないように、きょうは警察関係の方も呼んでおりませんから詳しい追求をすることはできませんけれども、こういう点について労働省として十分な調査をやって、こういうことが行なわれないようにする必要もありますし、事案究明をやる必要がありますから、十分調査することをお願いしたいと、思います。
  56. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいま御指摘の山口放送の事件につきましては、よく調査をいたします。
  57. 西風勲

    ○西風委員 いまの事実については委員会に報告をしていただいて、その段階であらためてやるというように考えております。  それではこれで終わります。
  58. 川野芳滿

    川野委員長 次会は来たる十一日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十三分散会