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1967-07-14 第55回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十四日(金曜日)    午後三時四十八分開議  出席委員    委員長 小沢 辰男君    理事 大石 武一君 理事 渡海元三郎君    理事 丹羽喬四郎君 理事 福田  一君    理事 古川 丈吉君 理事 島上善五郎君       奧野 誠亮君    葉梨 信行君       藤尾 正行君    永山 忠則君       西宮  弘君    岡沢 完治君       伏木 和雄君  出席国務大臣         自 治 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁刑事局長 内海  倫君         法務省刑事局長 川井 英良君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         自治省選挙局選         挙課長     山本  悟君         自治省選挙局管         理課長     鈴木  博君     ————————————— 七月十四日  委員四宮久吉君及び白浜仁吉辞任につき、そ  の補欠として葉梨信行君及び藤尾正行君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員葉梨信行君及び藤尾正行辞任につき、そ  の補欠として四宮久吉君及び白浜仁吉君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一四四号)      ————◇—————
  2. 小沢辰男

    小沢委員長 これより会議を開きます。  政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたしまして、審査を進めます。  前会に引き続きまして質疑を行ないます。藤尾正行君。
  3. 藤尾正行

    藤尾委員 私は、この政治資金規正法改正案といいまするものが、私ども政治に志す者にとりましても、また、政治を一生懸命後援してやろうと言ってくださる大方国民皆さま方にとりましても、非常にこれは重要な関連を持っておりまするし、場合によりましては、その取り扱いいかんでは非常にこれはおそるべき結果も来たしかねないというような感じがいたしますので、この問題についてひとつ納得のいくようにいろいろと質問を申し上げ、丁重な御回答をちょうだいしたい、かように思うのであります。  いろいろ問題はあるのでありまするけれども、承りますると、質問の時間につきましても、理事会等におかれましていろいろお打ち合わせがあるやに伺っております。したがいまして、どの部分から御質問をするかというようなことにつきましていろいろ考えてみたのでありまするけれども各論につきましても非常に問題が多いと思います。思いまするが、とりあえず、その各論に入りまする前に、総論的な意味合いにおきまして、重要な諸点について若干御質問を申し上げたい、かように思います。  まず、政治資金規正法でございまするけれども、これは現在私ども現行法を持っておるわけであります。この現行法発足当時、つまり昭和二十三年当時におきまして、この法律制定にあたりましていろいろな論争が行なわれておるわけであります。そのうちの一つに、行政府監督権、こういった、一体、政府政治に対しまする監督権があるのかないのかというような論議があったやに承っております。現行法では、そういう立場から、いろいろ行政府監督権とかというようなものをできるだけ縮めたいというような立場で、一応資金公開原則というものが採用せられて、いまの資金規正法といっておりまするけれども現行法はいわば資金公開法であるというような意味合いであるかと思うのであります。したがいまして、資金出していただく側に対しましては、現行法におきましては一切何らの規制をされておられない。(「ありますよ」と呼ぶ者あり)非常に少ない。しかしながら、資金を受けまする側において、公開というものによるわれわれの義務がたてまえとせられておる、こういうように私は解釈をしておるのでありますが、こういうことになってまいりますと、今回の規正法改正といいまするものは、現行法と比べまして、その発想におきまして非常に異なるところがあるのではないかという気がするのでありまするけれども、この点、自治大臣はどのようにお考えになっておられますか。
  4. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御指摘のように、現在の政治資金規正法は、規正法といいますけれども、おっしゃるとおり、いわば公開法でございまして、特に、その資金がどういう性質のものでなければならない——外国人等の一部の制限はございますけれども、どういう性質のものでなければならないとか、あるいは、支出がどういうところにいかなければならないというようなことは、全然規制をいたしておらないわけでございます。それはそれなりに私は意義のあるものと考えております。今回はそれを寄付する側について制限を加えたのでございますから、現行法と比べまして、いわば質的な変化と申しますか、相違が出てきたというふうに考えております。
  5. 藤尾正行

    藤尾委員 ただいまの大臣のお考えによりますと、今回の改正は、原則そのものから現行法と異なるところが非常に大きいというようなお説でございます。そういたしますると、これは現行法改正でなくて、新しい法律でなければならない、さようにも私は考えるのでありまするけれども、これを改正というような限界でなぜお考えになるか、新しい法律としてなぜお出しにならなかったのか、この点の御見解をひとつ承りたいと思います。
  6. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、寄付する側の規制をいたした、その限りにおいては非常な変化でございます。ただ、もう一つの、従来から貫かれておりまする政治資金公開という原則、これは今回も同様に公開原則をとっておるわけでございます。したがいまして、そういう意味におきまして現行法改正という形をとったわけでございますが、まあ性格と申しますか、性質からいえば、新しい法律と見ても差しつかえない程度のものであろうと考えております。
  7. 藤尾正行

    藤尾委員 それでは、この点は、大臣のお説のように、観点を異にした新しい法律としてわれわれは考えて、考え方を進めていったらいい、かように考えさせていただきます。  そういたしますと、現行法におきましては、政党だとか、あるいは政治団体あるいは政治家というような、政治に携わりまする当事者が、政治資金内容を届け出ましてこれを公開すれば足れりというたてまえをとっておるのでありますけれども、こういったたてまえを離れて、新しいたてまえとして、政治を後援しようという国民の側にも一応の義務を負わせるということになりますと、それだけの根拠がなければならぬ。かように考えるのでありますが、どのような根拠に基づいておられますか。
  8. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今回の改正におきましても、御承知のように、政治団体等の受け取る総額の規制はいたしておらないわけでございます。結局、寄付者制限をいたしたということは、特定の者が非常に多額な寄付をすることによって政治にいろいろ影響を与えるようなことは好ましくない、そういう意味で、いわば分相応と申しますか、分相応寄付がしかるべしという考え方でこのような制限をいたした次第でございます。
  9. 藤尾正行

    藤尾委員 分相応であるかないかという判断は、これは非常にむずかしいのでありまして、そういった判断をだれがなし得るかというような法的な根拠といいますものは、これはさがしましてもなかなかないのではないか、それほど神さまみたいな立場に立って、それは分相応である、これは分相応でないという判定行政府が下すというのは、いささか思い上がりといいますか、権利を越えたところがあるのではないかという気がするのであります。これはこの前の稻葉さんの御質問に対しまする大臣の御答弁、あるいは鍛冶先生に対しまする大臣の御答弁というようなものを——これは速記録を読んでもよろしいのでございますけれども速記録で見ましても、どうもはっきりしたものがつかみ得ない。たとえば奥野君の質問の要旨にいたしましても、かりに資本金が二億円以下で云々という会社に対して、五十万円までは分相応なんであって、五十一万円になると一体分不相応なのかどうかというようなことになりますと、非常にその判断というものはむずかしくなるし、ここに明文をもってこういうような形でお示しをいただきますと、他日におきまして——それは大臣の場合には、私は、とにかく、大臣は自民党一の良識家であろうと、ふだんから尊敬を持っておりますから、大臣大臣をなすっておられる間、あるいは、いまの田中法務大臣大臣をやっておられる間、こういった間は私はその運用において誤りがあるとは思いません。思いませんけれども、しかしながら、時代というものはどこまでも変転してまいります。そういたしますと、ものの判断基準といいまするものも、これまた移り変わっていくわけであります。そういったことを行政府判断して判定を下す、しかもそこに罰則がついておるということになりますると、これは国民人権という問題にも関連してまいる容易ならぬ問題になりはしないかというおそれを私は持っておるのであります。この点につきましてひとつ御説明をちょうだいいたしたい。
  10. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに御指摘のように、分相応というものは、今回提案をいたしておる法律案によれば、資本金の千分の二・五、そうしてしかも最高限二千万円、これでいえば、それじゃ二千万円までは分相応で、二千一万円になったら分不相応になるのかという、その理論的な根拠はございません。また、分相応というのをどういう判断をしてよろしいかということにつきましても、いろいろ問題はあろうと思います。別に審議会に藉口するわけではございませんが、そういう分相応であるかないかというのを行政府単独行政府だけで判断するというのは非常に危険だと思います。そこで、審議会委員方々がいろいろ論議をされた結果こういう結論になったのでございますので、それを現在の段階においては適当な尺度として用いたというだけでございます。
  11. 藤尾正行

    藤尾委員 そういたしますと、結局、いまの判断根拠といいまするものは政府にない、これは審議会がそのように判断をしたのだ、審議会委員皆さま方大方の御研究をいただいた結果そのような判断をしたから、そういうふうになったということだ、そのように解釈してよろしいのでございますか。
  12. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 分相応であるかどうかというような判断行政権単独でやることは非常に危険だと思うのでございます。結局、やはり広くと申しますか、いろいろ各方面の意見を聞いて、そしてそれを資料にしてやることが適当だと思います。その限りにおいて、審議会においていろいろ審議をされた結果ここに落ちついたので、それを採用したということでございます。
  13. 藤尾正行

    藤尾委員 どうも私はよくわかりませんけれども、そうか、そうでないかというようなお答えをちょうだいしたほうが、単純な私にはわかりがいいので、行政府判断によるような、しかしながらその根本は審議会の御決定であるような御答弁のように、私の頭が悪いせいかもしれませんが、いま承りましたが、その点は、はっきり割り切りますとどういうことになりますか。
  14. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政府としましても、寄付者について分相応限度にとどめることが妥当であるという判断はいたしたわけでございます。しかし、その分相応という限度を一体どこできめるのか、どういう判断をするのかということになれば、それは行政府単独でかってにきめるのではなくて、やはり審議会というような第三者機関と申しますか、そういうところで判断していただくことがいいのだと考えるのでございまして、たまたま今回の選挙制度審議会においてこういう制限答申をされまして、それを採用した、いわば政府が独断で分相応というものの限度をきめたのではないということでございます。
  15. 藤尾正行

    藤尾委員 そういたしますと、ますます私にはよくわからないようになるのでありますけれども、一体その審議会皆さま方の御権限といいまするものはどの程度のものでありますか。
  16. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 選挙制度審議会設置法にございますが、要するに、選挙制度全般並びに政治資金について諮問に応じ、答申をし、あるいは政府意見を述べるということが選挙制度審議会権限でございます。
  17. 藤尾正行

    藤尾委員 そういたしますと、ただいまのところでは、選挙制度審議会の御答申そのものは、これは意見を述べるということにとどまっておるのであって、選挙制度審議会がこのような見解を述べられたからこうなんだということでは、直接はこれに結びつかない問題である、この判断基準分相応をきめられるのはどこまでも政府である、かように解釈をせざるを得ないのでございまするが、そのとおりでございますか。
  18. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 設置法の第三条に、答申または意見申し出政府尊重しなければならないということがございます。したがいまして、政府としては、審議会答申あるいは意見申し出尊重しなければならないわけでございますが、先ほど来申し上げているのは、なるほど、最後の法案を決定し、たとえば寄付者についてある種の制限をきめる、これは政府責任できめなければなりませんが、その限度をどこにするかということは、政府行政権単独な、かってなきめ方ではなくて、むしろ、選挙制度審議会のような第三者機関答申をされた、それを尊重するほうが適当ではないかと考えた次第であります。
  19. 藤尾正行

    藤尾委員 またむずかしい。今度は国語の問題になってまいりますけれども尊重するということばは、私は、必ずしも順守ということばとは違うと思うのです。尊重はどこまでも尊重なんであって、尊重するという範囲と、そのままそれをとってこなければならぬ、守らなければならぬ、順守するという概念とは、その内容において異なるところがある、そのために、尊重するということばをお使いになっておられるのだろう、私はそのように思うのですが、その点はいかがでございますか。
  20. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 まさにそのとおりでございまして、尊重というのは、そのまま直訳するということではないと思います。
  21. 藤尾正行

    藤尾委員 そういたしますと、政府審議会の御答申尊重はしておられるのですが、そのとおりはしておられないわけでありまして、結局、分相応というようなところをきめます基準におきましても、これは順守しているわけではない、尊重しておられるのだ、こういうことでございますね。
  22. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん、尊重と、そのまま引き写しにするということとは違うと思います。あくまで尊重でございますから、この政府案提出そのもの政府責任でやっているわけで、したがいまして、寄付者寄付制限につきましても、その限度政府責任でこれが適当と認めたわけですが、その根拠になりましたものは答申である、こういう意味でございます。
  23. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、大臣の言っておられますのは、いまのは、この改正案を出されますまでの順序を言っておられるわけであって、結局改正案出しておられるわけですから、そうしますと、その中に入っておりますもろもろの諸要件といいまするものは、やはり提案者である政府責任においておきめになった。したがいまして、政府といたしましては、そのいずれのほうに対しましても責任を負って、これはこう、これはこうという割り切りをしておられるわけですね。そのように解釈してよろしゅうございますね。
  24. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そのとおりでございます。
  25. 藤尾正行

    藤尾委員 そういたしますと、いままでこれは打ちかけになっておりましたいまの分相応という問題をここで蒸し返しますと、これはいままでの問題がほとんど解決がついてないような気が、速記録を見る限りにおきましては、私はいたします。この問題は、私がまたこれに触れましてどこまでもこれにとらわれてやっておるということになりますと、非常に本委員会審議をおくらせるということになってもいけませんので、この点はひとつ委員長にお願いをいたしますが、御保留をいただきたい。あらためて、これはどなたがおやりになるかわかりませんけれども、さらに突き詰めた割り切りがなければ了承がなかなか得られないのじゃないかという気がいたしますから、そのようなお取り扱いを願います。
  26. 小沢辰男

    小沢委員長 ただいまの藤尾正行君の問題は、理事会にはかりまして適当に処置いたします。
  27. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、今度は問題を進めまして、結局この現行法におきましては、政党政治団体その他の政治に対する当事者、これがその政治資金内容を届け出て、これを一応公開すればよろしい、こういうことになっております。つまり、調査に当たる政党あるいは政治団体政治家というような人格、この人格がそれぞれりっぱな人格で、この人格のやることに対しまして政府は信頼を置ていよろしいという立場現行法をおとらえになっておるのだろうと思います。つまり、政治活動といいますものは——これまた、政治活動ということばは、あとでいろいろ論議になると思いますけれども、一応そのことばをそのまま使いましても、政治活動といいまするものは、本来善なるものである、こういう立場から出発をしておられて、そのもとに公開原則をおとりになったんだ。このように思うのでありまするが、これに対して、先ほども申し上げましたように、改正案は、公開原則だけではいけないんだ、政党政治団体も、個々の政治家も、いいかげんなことをやっておる、法の不備をよいことにして不善をなすおそれがある、したがって、不善をなすということになりますと、公共福祉というものに損害を与えるんだ、公共福祉損害を与えてはいけないから、その不善を法によってさらに取り締まる以外に道はない、そのためには、この政治活動を支援しておられる国民一般の善意の方々に対しましても一応の網をかぶせる必要があるんだ、このような意図におかれまして、改正案と申しますか、新しい法律と申しますか、そういったものをお出しになった、このように考えてよろしゅうございますか。
  28. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 こういうものを出す動機の中には、あるいは政治家政治活動といいますか、政治家姿勢がいろいろ批判をされたというような問題もあろうと思います。今回のこの規制の一番のねらいは、やはり特定個人なり会社なりから多額な寄付がないようにということではないか、したがいまして、その前提として、政治家は悪いことをするんだとか、しないんだとかということではなくて、非常に多額な、分不相応な寄付がされることによって、政治勢力にいろいろな悪い影響を与えるおそれもあるというところが骨子であるというふうに考えておるのでございまして、しかし、この届け出その他につきましては、やはり国民一般並びに政党及び政治家良識に待つようにいたしておるわけでございまして、いたずらに元来自由であるべき政治活動行政権が介入することは好ましくないという考え方は貫いておるわけでございます。
  29. 小沢辰男

    小沢委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後四時十六分休憩      ————◇—————    午後五時七分開議
  30. 小沢辰男

    小沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤尾正行君。
  31. 藤尾正行

    藤尾委員 どうも途中で抜けましたので、私も何か張り合いがちょっと抜けちゃったような感じで、継ぎ穂がちょっとむずかしくなったのですが、先ほどの大臣の御答弁では、政治活動に対しまする国民の応分の御寄付といいますものが、政党に対するものであれ、あるいは政治団体に対するものであれ、あるいは個人政治家に対するものであれ、それが分相応、これは問題がありますけれども、その限界を越えるということになると、それは政治に対して好ましからぬ影響を及ぼすおそれがある。そのおそれがあるからこれを何とか規制をしたいということが、この規正法をさらに改正をせられるという意味合いで、この法律改正案をお出しになった一つの大きな動機である、かような趣旨の御発言だったように承ります。それで間違いございませんか。
  32. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そのとおりでございます。
  33. 藤尾正行

    藤尾委員 そうなりますと、非常にここに困った問題が出てくるのです。と申しますのは、その何々をするおそれがあるかもしれない、だから行政府がこういった法律改正もあえてしなければならないんだ、こういうことですね。現にそれが非常に大きな害悪を起こしているという事実認識でなくて、将来そういったことを惹起するおそれがあるという、将来の、未然の、これから起こり得る可能性ある事態に対して、それを想定をして、そういった想定というものに対抗する手段として、それを未然に防ぐべく法律改正をされる。そういう例はほかにもたくさんあるのかもしれませんけれども、そういったことが通念になりますと、私は、これはそれこそゆゆしい事態引き起こすおそれがあると思うのです。というのは、これは前例があるからです。いまは民主政治の世の中になりましたが、これは非常な悪法であるということをはっきりきめつけることのできる一つ法律に、戦前治安維持法というものがございます。この治安維持法と申しますものは、その発足点において、これは明治何年でございますか、一番初め制定をせられましたときには、秘密結社といいますものをとにかく置いておくということがゆゆしい事態引き起こすおそれがある。そこで、そういったものは顕在化させなければいかぬのだという趣旨で、一番初めは治安維持法という名称ではなかった。治安何やら法ですね、私もちょっと忘れましたけれども、調べようと思って見たら、私がきょう持ってきた資料の中にどうも入っておりませんから忘れましたが、そういうものがあった。それがだんだん政治環境といいますものが変わってまいりまして、大正十四年に加藤高明内閣のときにこれを改正せられて、治安維持法という体系をつくった。さらにこれが客観的な政治情勢が変わってまいりまして、昭和三年の三.一五になり、四・一六になり、そして今度はこれが発展をいたしまして五・一五事件引き起こし、そして二・二六事件引き起こしという暗い日本の政治史というものにつながってまいったわけであります。そういった将来の予見、そういうことのおそれがあるということで、行政当局が将来の予測を前提として、いろいろな政治に対します政治活動を少なくともある面において制約をする、国民人権に関するというような問題について、新しい法律ともいうべき規正法改正案といいますものをお出しになるということ、それがはたして受け入れられることでございましょうか。この問題を大臣としてどうお考えになっておられるか、これはひとつ私が御教示を賜わりたい。
  34. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この規正法改正するようになりましたいきさつ等はいろいろあります。たとえば例の共和製糖事件のように、非常に欠損のあるような経営不振の会社が相当多額の政治献金をした。そしてこれは捜査の段階の問題は別問題といたしましても、これが一つ政治姿勢の問題になって議論をされまして、そういう点で、これはああしたいわば特殊の例といえば特殊の例かもしれませんけれども、そういうこと等が問題になりました結果、今回の規制になりました。先ほど来お話し申し上げましたように、それじゃ、たとえば二千万円が二千五百万円になったら必ず政治勢力影響を及ぼすのかということを理論的な根拠を申し上げるわけにはいかないわけでございますが、そういうことがありまして、そういう分不相応な献金というものが、この政治勢力影響を及ぼすおそれもある。共和製糖事件ともからみ合いまして、このような法案を提出した次第でございます。  いま治安維持法の例をお引きになりまして、法律ができた上におきまして、いろいろなことについて警察権等の、何と申しますか、適切でない運用によりまして、その法律制定当時の趣旨を逸脱して法律が悪用されるというような戦前の例をお引きになりましたが、まさにわれわれも戒心しなければならぬところと思いますが、今回の政治資金規正法は、そうした治安維持法のような——もちろん罰則等もございますから、場合によっては警察が関与するということはあろうかと思いますけれども、取り締まり本位というような、警察の取り締まりのための法律というようなことでもございませんし、治安維持法によって引き起こされたような事態が今回の改正法によって起こされるとは考えられないのでございます。
  35. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、ただいまの大臣の御教示によりますと、今回政治資金規正法改正案をお出しになったのは、将来のおそれを必ずしもおそれたわけではないのだ、それは共和製糖事件といったような現にあった、いわゆる黒い霧事件といったような政治現象が起こったから、そういったものが今後続発するということはよろしくない。将来そういうことの禍根を断つ意味において、その分不相応な献金といいますものがその反対給付というものに結びつぐおそれがある、よってそういう措置をされたのだ、こういうことでございますか。
  36. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 大体さような感じと申しますか、考え方でこの法案を提出しだ次第でございます。
  37. 藤尾正行

    藤尾委員 そうしますと、ここでまた問題が出てまいりますのは、いわゆる黒い霧事件といったものがいままでにも数々の政治の現象面にあらわれてまいりました。決してほめらるべきでない事件があったということは、私も十二分に知っております。しかしながら、こういったことは悠久に続いていく政治というもののあり方を判断する場合に、そういったものを根拠にして、それが常態だという認識に立って、そういったものを規制していくのが法律なのだ、それが行政当局の措置として正しいのだという判断が下せましょうか。その辺のところはいかがお考えになりますか。
  38. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 いろいろ見方はあろうかと思います。元来政治資金というようなものは、むしろ政党なり政治家がみずから良識的にふるまって、そして何ら世間の指弾も受けないような、そういう形であるのが望ましいわけで、これを規制するようなことはなかなか問題があろうかと思います。しかし、一連の政界におけるいろいろな問題等を考えますると、この程度規制というものは現段階においてはやむを得ないのではないかという判断に立っておるわけでございます。
  39. 藤尾正行

    藤尾委員 そういたしますと、結局現段階においてしかたがない。そうすると、改正案というものがもしかりにここで成立をいたしたといたします。そうしますと、その現段階においてしかたがないという現段階といいますものは、どの辺まで続くでしょう。
  40. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これは、いまから将来を予測できないわけでございますが、一方において各政党——政党と言うとしかられるかもしれませんが、各政党とも近代化、組織化について非常な努力を払っておられるわけでございまして、今後も政党の近代化、組織化ということについては進んでまいると思います。そういう点になりまして、政党が広い国民大衆の基盤に立って、また広い国民大衆の財政的支持の上に立って運営をされるということになれば、あるいはこうした規制をしなくても済むという時代も来るのではないかと私は考えております。
  41. 藤尾正行

    藤尾委員 そうしますと、いまの大臣のお話では、将来望ましい政界の姿ができてくればこれは当然やめていいんだ、こういうお話でございます。非常にけっこうなお話だ。それができるだけ短い間になくなるということが当然のことだと思うのであります。  そこで考え方といたしまして、現行法は、少なくとも大臣が言われましたように、本来政治活動といいまするものは、政党であれ、あるいは政治団体であれ、あるいは個々の政治家であれ、その  おのおのが正しい姿においてやっていくべきである、それが当然の姿である。ですからこれに信をおいて、そうしてまあまあ資金の届け出でもしてくれれば、それで十二分にそういうおかしなおそれは来たさないんだ、そう信ずる、そうあるべきであるというゾルレンの立場に立っていると私は思うのです。ところが、いまの改正案の御趣旨といいまするものを拝察をいたしますると、結局ゾルレンという立場でものをやっていくのではいつまでたってもだめだ。だから長い間でなくてもいい。ある段階に至りますまでの間、この政界といいまするもの、個々の政党といいまするもの、政治団体といいまするもの、あるいは個々の政治家といいまするものが、現実にいまこの段階においてある姿——この姿といいますものはやはり規制を要する姿である、こういう御認識がなければそういう発想というのはでてこないわけですね。つまりザインというものはまくないんだ。だからゾルレンではこれは規制できない、そういうものにまかし切れない。だからこの瞬間において悪いザインがあったから、この点はこういうふうに直すんだ、こういうたてまえであるのが、私はいまのお考え趣旨だろうと思うのです。そこは大臣政治家というものは——どもそれこそ卵のからがまだしりにくっついているようななまっちょろいのがそういうことを申し上げるのは、はなはだなまいき千万でございまするけれども、大先輩であられる藤枝自治大臣というような政治家は、少なくともこの政治といいまするものをもっと長い目で考えて、そうして将来あるべき姿どいったものを予想して、それまで十二分に、政界あるいは国民政治意識というようなもの、いまの政治活動の基礎になるべきもの、そういったものを緊急に直そうといっても、なかなか直るものじゃないと思うのです。それをもっと長いレンジでものをお考えになって、そしてそのあるべき姿になるように、これは法でもってやるのではなくて、お互いの忠言であるとか、あるいは勧告であるとかというような、別の姿でこれを規制すべきものであって、どうしてもここに新法というような性格のものでなければならないんだという必然性をどうも私は感ずるわけにはいかないのですね。この点いかがでございますか。
  42. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 元来本質的には、いまおっしゃったように、長い目で政界の正しい進展、そういうものをお互いに努力をしていくということが本来の姿であることはおっしゃるとおりだと私も思います。ただ、ここ数年の間に起こりましたいろいろな問題を考えまするときに、必ずしもそうしたわれわれの努力だけでなくて、ある種の規制はして、そうしてわれわれの努力と、その法的規制とが相まちまして、本来あるべき姿に持っていくということも、過去にあった実例からいたしましてやむを得ないのではないかという観点に立つておるわけでございます。
  43. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、大臣のお考えでは、いまの政治といいまするものは、きわめてこれたよりなもので、政治の力というものが、行政の新しい立法あるいは法の改正ということでささえてやらなければ、本来あるべき姿にならないのだ、なり得ないのだ、そういうような性格のものである、そういう御認識でございますか。
  44. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 各政党あるいは政治家というものは、おそらくそういう政治の正しい方向に常に努力をされておられると私は考えます。しかし一面において、しばしば繰り返すようでございますが、過去の実例等から考えまして、必要最小限度の法的規制も相まちまして、そして本来の姿に進展していくように努力をすべきものだと思います。もちろん、この法律ができたところで、それだからといって、この法律だけで政治が本来あるべき姿になっていくとは思いませんので、やはりこの法律法律といたしまして、政党なり政治家なりが、ほんとうに日本の将来を考え政党のあるべき姿に努力をしなければやはりいけないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  45. 藤尾正行

    藤尾委員 まあ、そこで議論をいたしておりますと果てしないのでございますが、率直に申し上げて、私は、どっちにウェートがあるのだということは、われわれ政治家にとって大事なことだと思うのですね。そこで大臣のいまのお答えは、その両々相まってということだろうと思うのですけれども、そうであっちゃいけないのだ、やはりお互いの政治的な努力、つまり政治活動それ自体のほうが非常に大事なことなんで、大きなウェートを占めているので、そんな法改正というようなものはあってもなくとも、そんなものは大局に影響ない。これはどなたのいままでの御論議になっておるあとを見ましても、そういうことは如実に出ておるわけですな。まあ、かりに一つの例を鍛冶先生の例にとりましても、一体そういう法律をかりにつくったとしてみて、それでもってそういう罰則をつくったとしてみて、どういう基準でそれを運用するのだ、何をもとにしてやるのだということになれば、全く根拠というものは乏しいわけですな。こんなものは伝家の宝刀にもならない。何かそこいらの看板みたいなもので、そういったものがあるということを公示しているという程度のものであって、そういった大臣がおそれておられる事態といいまするものは、これは行政の運用あるいはそういったもので是正すべき性質のものでない。どこまでもこれは政治自体が主体になって、政治家モラルの範囲内において、それをみずから政治活動として是正しつつ、そうして新しいところにみずからを発展さしていくべきものだ、私はかように思いますが、私の考え方が間違っておりましょうか。
  46. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かにおっしゃるとおりなんでございまして、政界がそのあるべき姿と申しますか、理想の姿にいくためには、これは政党なり政治家自身の努力が第一であるわけでございます。かりにこの法案が成立いたしましても、たとえば二千万円という限度はありますが、二千万円の量の制限はありますけれども、それがどのような性質のものかというようなことを、たとえ二千万円以下のものであっても、あるいは質の悪いと申しますか、短期の反対給付を要請するような資金だってあり得るわけです。したがいまして、それはもうこの法律はいわば外からのささえであって、中心はやはり政党なり政治家というものが正しい歩みをしていただかなければならないわけでございます。
  47. 藤尾正行

    藤尾委員 いまの御苦心のおありになるところ私はよくわかりますが、ここでちょっと御参考に私は一つ申し上げてみたい。  非常に古い話ですけれども昭和二十三年六月二十八日の政党法及び選挙法に関する特別委員会、第二回国会ですね。この委員会で齋藤隆夫さんが言っておられることばがあるのです。これは私ども少なくとも立憲政治というものに携わらしていただく者といたしましては非常に大事な心がまえである。かような意味で私はここに申し上げるのですが、「立憲政治国民が議員を選挙し、その議員が国会に集まって国政を審議決定し、政府はこれに基いて国政を行なう。これが立憲政治の真髄であるから、立憲政治の根本は選挙であると同時に、国民政治意識と政治運動は、選挙の時に当たって最も高揚すべきものであって、これを拘束するというものの考え方は、およそ選挙の意義を没却し、立憲政治に反逆するものである。しかるにこの改正案を見れば、この大切なるときにあたって、政治活動の自由を不当に拘束をしておる。何たる不都合千万なる改正であるか凶はなはだことばはきついのですがね。そして全く選挙費用の節減とか、これはまた私ども考えとも幾らか違うころともありますけれども、大時代のところはありまするけれども、あるいは選挙公営に名をかりて、かかる拘束規定を設くるというようなことは、全く角をためて牛を殺す類であって、立憲政治を圧殺するものである。かかる改正案は根本から再検討を加えるべき必要がある。表面上いかに選挙運動、政治運動を不当に制限をいたしましても、これと反比例して、その裏面運動というものが盛んになって、こういうものをやればやるほど政治界、選挙界といいまするものはますます腐敗を助長することになることは必至である。この点は猛省を必要とする。注意を申し上げるという趣旨の、これは私が言っているんじゃないですよ、齋藤隆夫さんが言っておられる。  私はこれを拝見をしておりまして、やはり今回のこの改正案審議するにあたっても、それは全部が全部とは言いません。その客観情勢の違い、環境の違いというものはありますから、全部が全部とは申しませんけれども、しかし、こういう考え方が、確かに立憲政治というものを通してずっと日本の政党政治を守ってこられました方々の背骨を貫いてきた考え方であるということは、これはわれわれ忘れるわけにはいかぬ。私は、これは厳に戒めるべき問題であって、われわれはこの御意見といいまするものを非常に貴重に考えなければならぬ。そう思いますが、こういったことを大臣どういうふうに思われますか。
  48. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 憲政の大先輩であられる齋藤先生のそういう御意見、われわれも各々服膺しなければならぬ問題であろうと思います。  で、今回の政治資金規正法改正は、そういう政治活動制限をいたそうというような趣旨は全然ないわけであります。何か政治資金規正法改正に関連いたしまして、金を与えなければ政治活動どもあまり金を使わなくなるであろうというような誤解もあるようでありますが、あくまで、先ほど来お答え申し上げておるように、特定の者のあまりに多額な寄付というものを規制するだけでございまして、政党なりその他の政治団体等が受け取る総額を規制しているわけではございません。もちろん、従来の方式どおりをやっていけば資金収集に相当の不自由を感ぜられるということはあろうかと思いますが、この法律そのものは政党等の受け取る総額を規正をいたしておるわけではございませんので、そういう意味におきましては、自由な政治活動制限という意図は全然ないわけでございます。
  49. 藤尾正行

    藤尾委員 いまの点は、まだほかにも幾らでもあるのですが、しかし私、聞きたいことは、まだこんなに用意してあるわけなんで、いままずその第一段階の半分くらいなところですよ。それで大体時間になったのですが、私は、実は先ほども申し上げましたような特殊な事情がありますので、これは決して私が時間をおくらしたわけでない。これはお計らいをいだたいて、理事さん相互間で話し合いをいただいて、できれば後の機会に十二分に時間をちょうだいをして質問をさしていただきたいと思いますけれども、お計らいをいただけませんでしょうか。
  50. 小沢辰男

    小沢委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  51. 小沢辰男

    小沢委員長 速記を始めて。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十一分散会