運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-07-12 第55回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十二日(水曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 小沢佐重喜君    理事 赤澤 正道君 理事 渡海元三郎君    理事 丹羽喬四郎君 理事 福田  一君    理事 古川 丈吉君 理事 島上善五郎君    理事 堀  昌雄君       奧野 誠亮君    小泉 純也君       高橋 英吉君    永山 忠則君       松野 頼三君    渡辺美智雄君       大柴 滋夫君    久保田鶴松君       小松  幹君    西宮  弘君       畑   和君    岡沢 完治君       伏木 和雄君  出席国務大臣         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 木村 俊夫君  出席政府委員         警察庁刑事局長 内海  倫君         法務省刑事局長 川井 英良君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         国税庁長官   泉 美之松君         労働省労政局長 松永 正男君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         労働省労働基準         局監督課長   藤縄 正勝君         自治省選挙局選         挙課長     山本  悟君         自治省選挙局管         理課長     鈴木  博君     ――――――――――――― 七月十二日  委員白浜仁吉辞任につき、その補欠として渡  辺美智雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員渡辺美智雄辞任につき、その補欠として  白浜仁吉君が議長指名委員に選任された。 同日  理事赤澤正道君及び四宮久吉君同日理事辞任に  つき、その補欠として福田一君及び大石武一君  が理事に当選した。     ――――――――――――― 七月五日  政治資金規正法の一部改正に関する陳情書  (第二八九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一四四号)      ――――◇―――――
  2. 小澤佐重喜

    小沢委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についておはかりをいたします。  赤澤正道君及び四宮久吉君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小澤佐重喜

    小沢委員長 御異議がないものと認めます。  つきましては、その補欠選任を行ないたいと存じますが、これを委員長において指名することに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小澤佐重喜

    小沢委員長 御異議がないものと認めます。よって福田一君及び大石武一君を理事指名いたします。      ————◇—————
  5. 小澤佐重喜

    小沢委員長 政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案を議題とし、審議を始めます。  前会に引き続き質疑を行ないます。岡沢完治君。
  6. 岡沢完治

    岡沢委員 最初に、すでに各員から御質問があったかもしれませんが、あらためて民社党の立場から今度の改正案政府がお出しになりました背景といいますか、提案理由の最も骨子となる事情を御説明いただきたいと思います。
  7. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 昨年来のいろいろな政界関係いたしまする不祥事件と申しますか、いわゆる黒い霧事件等がございまして、政界浄化粛正というものが国民的な課題になっておったわけでございます。その中におきまして第五次選挙制度審議会は、これらの背景を考えながら選挙制度全般改善につきまして審議をいたしたのでございますが、その中におきまして、そうした政界の黒い霧の問題を防止いたしまして政界を粛正するその一助として政治資金規正の問題を取り上げ答申をされたわけでございまして、その審議会の意のあるところを十分に私どもも同様に考えまして、今回の改正案を提出した次第でございます。
  8. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいまの大臣の御答弁にもございましたが、今度の改正案背景に黒い霧があり、そしてまた国民政治不信がある。それを取り除くのが一つの大きな目標であるということでございます。それに関連いたしまして、自民党のほうで昨年の黒い霧が問題化されました後に、綱紀粛正調査会というのをお設けになり、なくなられました清瀬一郎先輩議長になられまして、やはりただいま問題になっております公職選挙法改正と同じような趣旨答申が出されたと思いますが、自治大臣、これについて御承知いただいておりましょうか。
  9. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 いろいろな政治不信の問題がございまして、ただいま御指摘のように、自民党内にもこれに関してのいろいろな改善案と申しますか、党としてやらなければならないことを検討いたすために特別の委員会が設けられたわけでございまして、もちろん、政治不信を払拭し政界浄化するということは単に政治資金の問題だけではございません。選挙制度全般あるいは政治資金の問題あるいは政党並びに政治家そのものの自粛というものが整わなければいけないわけでございますが、その中におきまして、やはり政治資金の問題、選挙制度の問題について改善すべき要があるということを結論されたのでございます。
  10. 岡沢完治

    岡沢委員 その調査会が昨年の十一月十七日に総理大臣答申をなさって、ただいま自治大臣が御説明のような内容があったと思いますが、それに対して総理大臣も、あるいは総裁として現在の佐藤総理も、これを尊重するという意味お答えがありました事実がございますか。
  11. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 さようでございます。
  12. 岡沢完治

    岡沢委員 それから当然の事実として、ことしの一月に選挙がございましたが、その選挙の際も、自民党はその公約一つ政界浄化ということをうたわれまして、ことに金の面で政党政治と金との結びつきを公明なものにするという趣旨公約をなさったことがございますか。
  13. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 本年の一月の総選挙におきましても、昨年のいろいろな政界の問題を背景にいたしまして、自由民主党といたしましても公認候補の厳選その他政界浄化のためのいろいろな手段を講じ、また選挙にあたりましてそれを国民公約したことは事実でございます。
  14. 岡沢完治

    岡沢委員 あわせまして選挙制度審議会が発足されるにあたり、法律上の尊重義務もございますけれども総理としても数度にわたって答申が出された場合にこれを尊重するという言明をなさった事実がございますか。
  15. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 第五次選挙制度審議会の発足にあたりまして、総理が、総会におきましても答申があればそれを尊重して勇断をもって実行するということをお約束された事実がございます。
  16. 岡沢完治

    岡沢委員 その第五次選挙制度審議会が、今度の改正案基礎になりました答申を四月になさいましたが、その答申をお受けになりましたときも、重ねて総理は、この答申案尊重するという意味のことを強調された事実がございますか。
  17. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 選挙制度審議会会長総理答申を持ってこられましたときに、私も立ち会っておりまして、総理答申尊重する旨を会長にお話しになった事実はございます。
  18. 岡沢完治

    岡沢委員 総理は、これはまあ記録上も明らかなことでございますが、本年六月八日の本会議におきまして、本案提案されましたときに、答申趣旨尊重して答申内容については小骨一本も抜かないという趣旨答弁をなさった事実がございますか。
  19. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 岡沢さんもお聞きだったと思いますが、そういう意味答弁をされたことは私も記憶をいたしております。
  20. 岡沢完治

    岡沢委員 それから同じ本会議において、本改正案については当然本会期中に成立を期するということを確認され、そしてまた、重ねて一昨日の参議院会議におきましても、現在の段階においてもなお本法律案改正については全力を尽くすという意味答弁をなさった事実がございますか。
  21. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 衆議院提案された際に会期中に成立を期すと言われ、また一昨日の参議院会議におきましても、非常に時日が少なくなって心配ではあるけれども、議員の皆さまの御勉強をいただいてぜひとも成立させたいという意味答弁をされております。
  22. 岡沢完治

    岡沢委員 本日、この委員会が始まる前に理事会があったわけでございますが、その理事会におきましても、自民党理事方々は、本案取り扱いについて、たとえば審議日程プロセス等についても、まだ党としての結論が出てないということの御発言があったわけでございますが、大臣も同じ自民党の領袖として、あるいは国務大臣として、総理が本会議で再度にわたって言明され、ただいま大臣が御答弁なさる内容と、自民党理事の方がおとりになる態度とは、どう考えても矛盾があるように感ずるわけでございますが、それについての大臣の御見解を聞きたいと思います。
  23. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私といたしましては、総理と同様この法案成立をお願いいたしたい立場にあるわけでございます。もちろん、国会の御審議にとやかく言うわけにはまいりませんけれども提案者といたしましては、ぜひとも成立をきせていただきたいという気持ちに変わりはございません。そういう意味におきまして、私は従来から党の幹部等に対しまして、ぜひとも早く党の態度をきめまして、そうして審議を進めていただくようにお願いを強くいたしておる次第でございます。
  24. 岡沢完治

    岡沢委員 きょうは十二日でございます。本国会会期は、延長されましたけれども二十一日で終わる。しかも再度の延長はしないというのが国会できめた態度のように聞いておりますが、そうしますと、衆議院だけでも、きょう含めて四日しか審議日程がない。参議院審議もございますので、事実上は審議を終了することは無理なような感じがするわけでございますが、それにつきまして、ただいまの大臣の御答弁内容はわかりますけれども、党を統率される総理として、本会議言明等具体的に実現するために、自民党理事の方あるいは委員の方に対して、どういう措置をおとりになっておられるか、もし大臣が御承知であればお答えいただきたいと思います。
  25. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 総理が具体的に総裁としてどのようなことをおやりになっておるか、私も不敏にして承知はいたしておりませんけれども総理の私に対してのいろいろな従来のおことばから推察いたしますと、党の執行部を通じまして、党の態度早期決定について総理自身も御努力をなさっておるように推察をいたしております。
  26. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、政治不信の大きな原因に、なるほど黒い霧と関連しての金銭にまつわる忌まわしい疑問もあることは認めますけれども、それ以上に政治家に対する、あるいは政治家の言動に対する国民信頼が失われておるというところにも大きな一因があるような感じがするのでございます。そういう点からいたしますと、今度のこの法案取り扱いにつきまして、内容の実現をいたしまして政治資金の公明さを国民に明らかにするというのももちろん大きな目標だと思いますけれども、そのプロセスにおきまして国民信頼をかちとるような審議態度、あるいは政党として、政治家として国民の信をかちとるような真摯な態度が必要だと思いますが、大臣はどういうようにお考えになりますか。
  27. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国会における御審議内容につきまして、いろいろとやかく御批判を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、とにかくこうした問題、ことに国民が注目している問題でございますので、十分な内容の解明について御努力をいただいておるものと考えておる次第でございます。
  28. 岡沢完治

    岡沢委員 この法案審議が他の法案と違いまして、与党自民党方々質問数あるいは質問態度等が非常に奇異な感じを受けることは、私はおそらくだれも否定できないと思います。それにつきまして、提案前後に福田幹事長のほうで、これは普通の政策案と違って、自民党政策をそのまま法案にした案ではないので、特別の扱い方をするのは当然だという趣旨の御発言があるわけでございます。ただし、すでに答申案が出されて以後相当の時日の経過の間に、自民党としていろいろアドバイスもし、この法案現実的なものにするために、答申案自民党的ないわゆるニュアンスをつけ加えられたという事実もありますし、また、それについて福田幹事長あたり談話等も発表されておるわけでございます。そういたしますと、答申案をそのまま法案になさった場合ならば、これは国会審議を通じて自民党意見を反映せられるために自民党方々が質疑なされるというのもわかりますけれども答申案が出されて法案が提出されるまでの約二カ月の間に、十分に党との協議、連絡の期間もあり、現にそういう事実もあったということを言明されながら、なお法案審議段階で、自民党がいわゆる慎重審議に名をかりまして、現実には法案成立に非常に誠意のない態度をおとりになっておるというのは、総理あるいは大臣のおっしゃる御答弁とだいぶ事実として違うような感じがいたします。これが違わないという強弁をなさることは、私はかえって国民不信を増すゆえんだと思うのでございますが、良心的な大臣気持ちをこの際率直に表明していただきたいと思います。
  29. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 なるほど、答申が出ましてから政府案を作成するまでに二カ月余の時間がかかり、その間において与党としての自由民主党の理解と納得をいただくような努力をいたしたことは事実でございます。しかし、この政府案ができました段階におきましてもなお解明すべきものがあるという意味において、福田幹事長等がそういう発言をされたものと思います。私ども政府としましては、この案が最善の案と考え、また、ぜひとも成立をさせていただきたいと念願しておるわけでございますが、残っておる解明すべきものを解明するということについて、とやかく私ども申し上げるわけにはいかないわけでございます。いずれにいたしましても、できるだけ早くそうした解明すべきものは解明していただいて、態度をきめていただくことがわれわれの念願でございます。
  30. 岡沢完治

    岡沢委員 ちょっとここで法案内容に関連してお聞きしたいわけでございますが、例の特定会社寄付制限につきまして、たとえば公共企業体地方団体請負契約のある会社政府関係金融機関から融資を受けている会社寄付を一般の二分の一に制限する。これはいいわけでございますが、その請負額融資額請負総額長期借り入れ金総額の一割未満会社はこれを規制外にするという趣旨規定がございます。これは答申案にございましたでしょうか。
  31. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 答申案にはございません。
  32. 岡沢完治

    岡沢委員 そうすると、この条項に関する限りは答申案からはずれているというふうに考えてよろしゅうございますか。
  33. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この点につきましてはしばしばお答えをいたしたわけでございますが、要するに答申の「請負その他特別の利益を伴う契約」ということでございます。その「特別の利益を伴う契約」ということに重きがあるということは、国と私法上の契約をしたものすべてが制限されるという意味ではなくて、その中で「特別の利益を伴う契約」、そういうものは制限すべきだという趣旨だと考えるわけでございます。したがって、請負については、通常請負はその通常利益は得るでございましょうけれども請負したからといって特別の利益を受けるということではないと思います。しかしながら、請負というものが相当多額に国と契約をするというようなことによりまして、やはり国との関連が密接であるという意味におきまして、これらの制限をするということに趣旨がなっておると考えますので、非常に少額な請負あるいは融資というものははずしてもよいのではないか。それは答申の線を非常に著しく逸脱するものではないという解釈のもとにこのようなことをやったわけでございます。
  34. 岡沢完治

    岡沢委員 選挙局長にお尋ねしたいわけですが、この問題に関連いたしまして、政府請負関係にある会社告示と申しますか、その関係を明らかにする手段方法、あるいはその一割未満ということについてどういう調査方法でこれが明確にされるのか。そうでなければ、取り締まりあるいは法の履行ということが非常に不正確になると思うのでございますが、お聞かせいただきたいと思います。
  35. 降矢敬義

    降矢政府委員 この会社その他の団体制限は、御案内のとおり、第一義的に寄付をする者自身が、この法律規定に従って幾らまで自分寄付をできるかということが明白になっておりまして、つまりそのことを順守するという前提に立たなければ問題にならぬと思っております。したがって、法律の上におきましても、機械的にその団体あるいは会社等がおのおの計算上幾らまで寄付ができるかという制限額を計算できるようにいたしたつもりでございます。  ただいま御指摘の、請負をしておる会社がどのくらいあって、どういうふうにそれを告示するのかということは、これは実際問題としてはまず不可能に近うございますし、また請負そのもの契約自体が常に変動しておる。ある時期においてはやっておりましたけれども、ある時期にはやらないということがありまして、われわれとして常に国、地方団体を通じましてこの会社を全部把握をして告示をするということはとうてい不可能でございます。
  36. 岡沢完治

    岡沢委員 自治大臣にお聞きしたいのでございますが、この法案中の例の寄付あっせん禁止、チェックオフの規定は、答申案にその趣旨がございましたか。
  37. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今回の答申にはございませんけれども、第二次選挙制度審議会におきまして、寄付あっせん認めるがそれは強制にならないようにしなければならないということが答申をされておるわけでございまして、今回寄付あっせん認めるにつきまして、その第二次答申趣旨尊重いたしまして、このようなことを規定した次第でございます。
  38. 岡沢完治

    岡沢委員 公職選挙法の一部改正のほうに関連いたしますが、公職候補者等寄付禁止答申案とかなり離れて緩和されていると見ることは、私はすなおな見方だと思いますが、自治大臣もこのことについてはお認めになりますか。
  39. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今回の答申が出る審議過程におきまして、選挙区に対する候補者寄付禁止の問題につきましても、社会生活上の問題、いわゆる社交的なものは認めてもよいのではないかというような御議論もございました。しかし、結論的には全面禁止ということになったわけでございますが、そういう審議過程による御議論等で、社交上のものはある程度は認めていいのではないかということを考えたわけでございますが、社交上ということは非常にあいまいでございますので、政治家選挙区において一番やらなければならないことは主義主張の徹底ということでございますので、純粋な政治教育についての講習会等実費弁償だけを認めようということにいたしたわけでございますが、これとても選挙が近づくと弊害がございますので、任期満了前六カ月以内におきましてはそのことも禁止するということにいたしたわけでございまして、答申をそのまま受け取れば一応穴があいたということにはなろうと思いますけれども審議会審議の途中におきましても社交上の問題等議論になりましたので、このようなことをいたした次第でございます。
  40. 岡沢完治

    岡沢委員 大臣は非常に頭がいいので、じょうずな御答弁をなさいましたが、答申をそのまま受け入れた場合、この規定は穴があいたということはお認めになるわけでございますね。  それから、それに関連いたしまして、これは選挙制度審議会ではない、先ほど申し上げました昨年の黒い霧に関連して大臣の所属される自民党党内に設けられた綱紀粛正調査会答申の中にも、その重要な一環として、候補者選挙区への寄付全面禁止ということがうたわれており、清瀬会長もこの点について非常に熱意を持っておられたということが新聞等で報じられたのでございますが、事実でございますか。
  41. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 当時の清瀬調査会がそういうようなことを非常に熱心に御議論になり、結論を出されたことは事実でございます。
  42. 岡沢完治

    岡沢委員 そういたしますと、大臣の所属される党内の、この改正案基礎をなす黒い霧に関連して設けられた綱紀粛正調査会が、全面禁止をその骨子の中でも最も重要な柱としてうたわれ、あわせて第三者的な国民の良識を代表される選挙制度審議会答申寄付全面禁止ということをうたっておられるのに、しかもその答申尊重、あるいは選挙制度審議会答申についても、総裁として、総理がこれを尊重するということをたびたび言明されながら、あえて結果としてはこの禁止趣旨を裏切るような規定が設けられた。なるほど、先ほども申し上げましたように、大臣は非常に答弁としてはおじょうずでございますけれども、この規定が、実際の過去の例等に照らしましてざる法として最も法の趣旨に反するような結果を招く基礎になると申しましょうか、窓口になるということが十分に考えられるわけでございますけれども、この規定を、総理言明綱紀粛正調査会答申あるいは選挙制度審議会答申趣旨尊重する、政治不信を除く意味でも、総理のおことばを具体的に実現する意味におきましても、党内でも、あるいは党外の最も権威のある選挙制度審議会結論に従って、もとに戻すという御意思があるかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  43. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政治教育に限っていたしましたのは、前にもお答えいたしましたが、主観的に自分はこれは政治教育だと考えておるというようなことではないのでございまして、純粋に客観的に見て政治教育のための講習会においてやむを得ざる実費弁償という、非常に限っておるわけでございます。しかもそれは選挙前六カ月以内はそれも禁止をするわけでございますが、そういう意味において非常に純粋な政治教育に限っておりますので、私は、それが穴になってそれからくずれていくというふうには考えないわけでございます。しかし、全面禁止をせよという御意見につきましては十分傾聴をいたしたいと考えております。
  44. 岡沢完治

    岡沢委員 大臣は非常にわかったお答えをなさいますけれども現実には選挙に、あるいは政治に金がかかるということが政治腐敗基礎であり、そしてまた今度の改正案の最も大きな着眼点でもあろうと思うわけであります。実際にはすでに現在の公職選挙法でも、もちろん度を過ぎたあるいは買収供応的な寄付認められているわけではございませんが、現実には選挙法精神が無視され、あるいは政治資金改正法精神が無視されて腐敗堕落政治が現存しておる。悲しい事実ではございますが、そういうことも考えました場合に、やはりこの際こそ勇断をもって、党内においても正式に綱紀粛正調査会権威を持って答申され、繰り返しますけれども選挙制度審議会も最も大きな骨子として答申をなさっておるこの規定を、党の姿勢としても、総理のたびたびの御言明趣旨からいいましても、あるいは改正案政治浄化をほんとうに願われるということに偽りがないなら、大臣としては勇断をもって撤回なさって、全面禁止に踏み切られるのが国民信頼をもかちえ、また、実際に政治浄化する最も近くして最も確実な道だと私は考えるわけでございます。出るほうをこういうふうに解釈によってはざる法化したままに放置しておって、入るほうをいかに規制しても実際には目的が達せられないというのが、私は識者の意見だと考えるわけでございますが、重ねて大臣見解をお聞きしたいと思います。
  45. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 候補者寄付禁止につきましては、従来の公選法では選挙時に限って寄付禁止をいたしておったわけでございますが、それを一年じゅう禁止という方向に今回改正をするわけでございまして、その中において、しばしばお答えしましたように、純粋な政治教育については、選挙時並びにその六カ月以前ならば実費弁償認めるということにいたしたわけでございまして、私は、この規定があるので寄付全面禁止が非常に後退するというふうには考えないわけでございます。ただ、先般の自民党の御質問の中にもそうした意味のこともございました。したがいまして、全面禁止にすべきであるという御意見につきましては十分傾聴いたしたいと思いますが、政府側といたしましてこれを撤回するという意思は、いまのところございません。
  46. 岡沢完治

    岡沢委員 寄付金の税の優遇措置についてお聞きしたいわけでございますが、法人税について三年間という期間の制限はございますけれども、全額免税の措置がとられておるわけでございますが、これは調査会答申にございましたか。
  47. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 直接はございませんが、御承知のように、個人のした寄付についての税の優遇措置その他税制上の合理化をはかれということでございまして、特に今後政党本位の選挙とかあるいは政治活動——個人の政治活動よりも政党政治活動あるいは選挙運動というものを重く見ようという政党本位なものが行なわれていくという場合におきまして、やはりその政党を育成していくと申しますか、正しく育成していくという上におきましては、この程度の税の優遇措置は妥当ではないかというふうに考えた次第でございます。
  48. 岡沢完治

    岡沢委員 いまのお答えでも、個人については答申案にも若干触れておりますけれども、法人については全く触れてないという事実は御確認になりますか。
  49. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 法人の寄付についての税の優遇措置をせよということは触れてございません。
  50. 岡沢完治

    岡沢委員 法人税の優遇措置については、この法案をお出しになる過程において、新聞等によりますと、大蔵省その他とだいぶ問題があったというふうに承知いたしているわけでございますが、ただいまの大臣の御答弁は、この程度は妥当だと思うというお話でございますが、私は大臣の良心に反しているのではないか、ほんとうの気持ちをありのまま申していただきたいと思います。
  51. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政党というものをどう解釈するかということでございますが、やはり私は政党というものは相当公共性の高いものであり、正しい意味においてそれが発展していかなければならないものだと考えておるわけでございます。それからもう一つ、今回の政治資金規正は、なるほど寄付をするほうの制限はいたしておりますが、受け取るほうの政党についてその総額を規制しているわけではございません。そういうところを彼此関連して考えまして、この程度はやはり妥当なものではないかという判断に立ったわけでございます。
  52. 岡沢完治

    岡沢委員 私のほうは、もちろんこの税の優遇措置については納得しないわけでございますが、それならばなぜ三年間という制限をあえておつけになったのか、あらためてお聞きしたいと思います。
  53. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これは、しばしばお答えいたしますように、できるだけ政党というものが広範な国民大衆の支持の上に立ち、また、広範な国民大衆の財政的な援助によって成り立つことが望ましいことでございまして、という意味においては、だんだんに政党への献金というものを個人の献金に移行していくことが望ましい姿だと考えております。もちろん、法人が、会社がしてはならぬという理屈はないと思いますけれども、望ましい姿としては個人献金の方向に移行することが望ましい姿だということを一面において考えまして、その間の三年間ということを考えたわけでございます。
  54. 岡沢完治

    岡沢委員 大臣も、たとえば教育減税についてすら、この特別措置についてはかなり問題があり、現実には非常に不十分だという点はお認めになりますか。
  55. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 教育減税等の問題が提案されながらなかなかできかねておるという事実は私どもも存じております。ただ一面、たとえば国、公共団体あるいは教育施設、社会福祉施設等に対する寄付についての免税の規定もございます。こういう国とか教育施設、社会福祉施設等と政党というものは、性格は違いまするけれども、やはり相当公共性の高いものだというような考え方に立っておるわけでございます。
  56. 岡沢完治

    岡沢委員 ここで道徳論争をするつもりはございませんが、政治家一つのモラルとして、先憂後楽ということがありますし、まず自分のしあわせよりも国民全体の幸福、福祉を第一に考えるということは、われわれの政治道徳の基礎だと思います。政党が公共性を持っておるということはお互いに自覚もし、またそうあるべきだというのは当然だと思いますけれども、ただし、われわれに関係する政党関係寄付を優遇するという措置が、実際に国民に与える場合の心理的な影響ということを無視してはならないと思うのでございますが、そういう意味からも、どう考えても、この税の優遇措置はむしろ政治献金を誘発する、あるいは他のもっと重要な面での税の特別減免ということがなかなか実現困難な時期に、非常に政治不信を助長するような一面を私は否定できないと思うのですが、重ねて大臣見解をお聞きしたいと思います。
  57. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 いろいろ御批判はあろうかと思います。その御批判は御批判として受けとめるわけでございますが、繰り返して申し上げるようでございますが、私はやはり政党というものは、いろいろな国の制度の中においても正しく発展していただくような方向をとるということは必要なんではないかと考えるわけでございます。それがたとえばいま例におあげになりました教育減税とどっちだということになりますと、いろいろ御批判はあろうと思いますが、私はさような気持ち政党というものが正しく発展していただくための国のいろいろな施策というものも必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  58. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいまの大臣の御答弁にもちょっとお触れになりましたが、五年間をめどに将来は個人寄付に移行することを希望するという趣旨のお話がございました。これはむしろ第五次選挙制度審議会答申の最も大事な点であろうと思うのでございますが、この点が今度の改正案には全く触れられてない。その点についての御釈明をいただきたいと思います。
  59. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政党が組織化、近代化されまして、先ほど申しましたように、広範な国民大衆の基盤に立ち、また広範な国民大衆の財政的な支持によって成り立っていくようになることが望ましいとは考えられるわけでございますが、しかし、それはあくまで政党自身努力をさるべきものであって、法制的にこれを強制するような処置は望ましくないというふうに考えた次第でございます。
  60. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいままで法案内容についてお聞きしたのでございますが、これによりましても、答申案にないところがかなり——いわゆる骨抜きということばが当たるのでございましょうが、実際には答申案趣旨から非常に寄付その他が緩和され、助長されるような方向で改正案がつくられ、一方では答申案にないところがつけ加えられておる。あるところが削られ、ないところがつけ加えられておる。いわゆる骨抜きときばつけが行なわれ、現実には総理が六月八日の本会議でおっしゃいました小骨一本抜かないという趣旨とはおよそかけ離れておるというふうに見るのがすなおなこの法案内容だと思いますが、この点については大臣はどうお考えになりますか。
  61. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 答申の中で十分表現されてないものを法律的に表現をしたり、あるいはないものでございましても、たとえば寄付あっせんというような問題につきましては、すでに第二次選挙制度審議会において答申されているものをつけ加えましたりいたしたわけでございます。いろいろ御批判をいただくことはけっこうと申しますか、いろいろな御批判があろうと思います。しかし私自身は、今回の政府案におきましても、それが答申の線を著しく後退しているとか、骨抜きになったということではないと考えております。答申の中の一番の柱になっておりまする会社二千万円、個人一千万円という、このいわゆる分相応の寄付を求めるという内容につきましては、私は貫いておるつもりでございます。
  62. 岡沢完治

    岡沢委員 これはまあ見方だから、どうでも解釈できるといえばそれまででございますけれども、事は一国の総理が国権の最高機関である国会においてしばしば言明されて、しかもまた国民がきわめて注目し、期待しておるこの法案内容について、私はいわゆる三百代言的な御説明はむしろ害があるような感じがするわけであります。必ずしもおっしゃる趣旨がわからないではございませんけれども、およそ総理のおっしゃる風格ある政治とか、あるいは総理権威と矛盾するようなこの法案についての内容取り扱いが各面から指摘されるわけでございまして、非常に残念だと思うわけでございます。それにつけましても、もう一点施行期日の点について、これは「政令で定める日」と、非常にばく然となさいまして、いままでもたびたび御説明はございましたけれども、しかしせめて国民信頼をつなぐ、あるいは総理の、あるいは大臣の、あるいは自民党権威のためにも、この政治資金規正法改正について誠意を示し、国民に安心を与える意味からも、施行期日を明確になさるというほうが私は正しいのではないかと信ずるのでございますけれども、御見解を聞きたいと思います。
  63. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 明確にできればそのほうがよりよいことは御指摘のとおりだと思いますが、しばしばお答えいたしましたように、これは国民全般に関係するものでございますので、その周知徹底並びにいろいろな準備に相当の時日を要すると思います。で、これまたしばしばお答えいたしておりますが、常識的に考えて六カ月ないし九カ月あれば、これは準備が整うと思います。したがいまして、そうした準備が整い次第、早急に施行いたしたいと考えておる次第でございます。
  64. 岡沢完治

    岡沢委員 そうしますと、いまの御答弁から、政府の御希望どおりこの法案が今国会成立いたしました場合は、おそくとも来年の三月末ぐらいには施行日は確定するというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  65. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 いつ成立させていただけるかわかりませんけれども、この国会成立させていただけますならば、大体三、四月ごろには準備は整うものと現在考えております。
  66. 岡沢完治

    岡沢委員 もうこれで終わりますけれども内容については先ほど指摘いたしました。それから法案の実現の見通しにつきましても冒頭にお聞きいたしましたが、ほんとうに私はこの法案が出てきた真意、そしてまた政治不信を除く一番の大事な要素も、政治家及び政党に対して国民信頼をどうしてかちとるかということにあろうかと思うわけでございますけれども、今度のこの法案に対する取り扱いが、どう考えましても、総理も、党も、まあ大臣は除きまして、きわめておっしゃることば現実態度、それから現実の経過といいますか、現在の審議過程が一致しない。これではほんとうに国民信頼をかちとることはできないし、またできないのが当然だというふうな感じがいたしまして、私は非常に残念に思うわけでございますが、もしこの点につきまして大臣の御見解があればお聞かせいただいて、私の質問を終わります。
  67. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、これはもう各党の皆さま方にお願いして御勉強いただいて、ぜひとも成立させていただきたいと私はひたすら念願をいたしておる次第でございます。
  68. 岡沢完治

    岡沢委員 終わります。
  69. 小澤佐重喜

    小沢委員長 次は、伏木和雄君。
  70. 伏木和雄

    ○伏木委員 今回の政治資金改正案につきましては、今日まで多くの意見が出されまして、慎重に審議を重ねられてまいったわけでございますが、私どもは重複する点もあるかもしれませんが、答申よりははるかに後退した、しかし現行法よりは一歩前進、あるいは半歩くらいであるかもわかりませんが、前進という立場に立って、政府案成立させるべきであるということを主張してまいりました。そういった観点に立ちまして若干大臣の御説明をお願いしたいと思います。  この政治資金規正法につきましては、昭和二十三年に制定されてからたしか今日まで五回の改正があったと思います。しかし、その改正はすべて語句の解釈等に終わったようでありますが、その間この法律ができてから二十年の間に、政治とあるいは財界との結びつきによりさまざまな不祥事件が起こっております。昨年の黒い霧事件において国民の憤激を買いました。これはただ単に昨年の共和製糖の一件だけではないと思うのです。もう過去に幾多の事件が積み重ねられ、そしてこの共和製糖の事件で頂点に達したというような観もございますが、このような背景のもとに今回この法案が提出され、総理自身その国民の世論も十分承知の上で、政界浄化国民の至上命令であるというような発言もされているわけです。したがって、この総理の決意、また、たびたびお聞きしております自治大臣の決意からいたしまして、今日この法案会期ぎりぎりのところまで迫ってしまったが、この成立に対して今後どのように処置をされるか。同時に、こういう継続かあるいは廃案になってしまうかぎりぎりのところまで迫ってきておる状態に対して、何とかして成立させようという国民の世論がだんだん大きくなっております。こうした国民世論の背景のもとに自治大臣が今後どのようにこの法案成立に向かって対処されるか、また今日の国民世論を大臣自身どのように受けとめていらっしゃるか、まずこの点からお伺いしたいと思います。
  71. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政界にまつわるいろいろな問題からいたしまして、政界浄化、その中においても政治資金の公明化という問題につきましては、国民がひとしく要望しておるところであると私も痛感をいたすわけでございまして、そのような意味から今回のこの法案成立を私はひたすら念願をいたしておるわけでございまして、各党の皆さま方の御勉強をいただき、また、与党としての自由民主党が早く態度を決定していただいてこの処置をしていただくように、従来から党の幹部に対しましてもいろいろと強くお願いをいたしておるような次第でございまして、国民世論がその成立を望んでおるということにつきましては、私も痛感をいたしておる次第でございます。
  72. 伏木和雄

    ○伏木委員 先ほどの御答弁にもありましたが、国会議員の皆さま方の御勉強を願ってということで、何だかげたを預けられたような形になっております。もちろん、大臣の意図するところがわからないわけでもございませんが、総理にしても、大臣にしても、再三にわたっての公約、確約を議会においてなすってきたわけです。それが単に国会議員の勉強のみということでなくて、どのように今後——もう日にちが限られております。日程の上から見ていけば一日の猶予もならない。こういうぎりぎりの点におきまして、法案成立に対して、いままでの発言を実行されるという上に立ってどれだけの用意をされ、どれだけの具体策をもって与党に臨まれているのか、この点をお願いしたいと思います。
  73. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国会の御審議政府側が云々することはいけないことでございまして、ただ、私どもといたしましては、国会の御審議がスムーズに行なわれ、早急に結論が出るようにいろいろの資料その他の用意をいたしまして御便宜をはかり、そうしてこの審議が進行できるようにいたしておるわけでございます。また、与党に対しましても、早くこの問題の取り扱いをきめていただいて、その結論を出していただくようにしばしば強くお願いをいたしておるわけでございます。
  74. 伏木和雄

    ○伏木委員 国会議員の中でも特に与党に対してという大臣のお話でございますが、なるほど今回のこの審議にあたりましては、今日までの審議の経過を見ましても、何となく引き延ばしていこうというような形が与党の中に見られるわけです。野党はあげて法案成立を願っているわけでございますから、特に与党に対する積極的な働きかけをお願いいたしたいと思います。同時に、官房長官の出席をお願いしておったのですが……。
  75. 小澤佐重喜

    小沢委員長 十一時半から見えるそうです。
  76. 伏木和雄

    ○伏木委員 総理大臣も言われておることですが、これは官房長官が来てから再確認してみたいと思います。  そこで、問題は次に移りますが、今回の改正は、先ほども申し上げましたように、過去五回の改正とは全く異なって内容に重点を置かれた改正である、私このように認識しておりますが、過去の改正が何の役にも立っていない、それが事実改正を行ないながらも相変わらず不祥事件が続発している。こういった点につきまして、過去の五回の改正と今回の改正の相違点を、簡単でよろしいですからお願いしたいと思います。
  77. 降矢敬義

    降矢政府委員 二十三年の七月に政治資金規正法が制定されましてから、二十五年の四月に公職選挙法が制定をされまして、御案内のとおり選挙運動に関する収入支出の部分を公職選挙法に移しまして整理をいたしたわけでございます。それから二十七年の三月に会計帳簿と収支報告書の形式を総理府令で定めるようにいたしました。それからその次は、二十七年の八月に収支報告書の提出を年三回となっておりましたのを二回に直したわけでございまして、なお提出期限を五日前までを七日にいたしたわけでございます。それから三十七年の五月に収支報告書には領収書の写しを添付する、それから収支報告書の保管期限を二年から三年に延ばすというような改正をやったわけでございます。  今回の改正におきましては、一つは収支報告書公開のところにおきまして、従来政党以外の協会その他の団体につきましては、収入については寄付のみの報告になっておりましたが、これを全収入を報告をし、公表をするというふうに大きな改正をやりました。  それからあとは、寄付制限につきましては、従来外国人及び匿名の寄付選挙に関して受けてはならないという禁止規定、なお請負あるいは補助金を受けているものから受けてはならぬという規定がございましたが、今回は政治資金全体の寄付制限をまず設けまして、選挙に関するとあるいは政治活動に関するとを問わず、いずれにいたしましても禁止あるいは制限を受ける。こういう点がいままでの改正におきましては見ない大きな点でございます。
  78. 伏木和雄

    ○伏木委員 ただいまの御説明によりますと、過去の改正は、この政治資金規正法が公開の原則それのみを主張して、何ら規制されるべきものがなかったように思われます。今回の改正にあたっては、従来の公開原則、これのみにたよっている法律が全くざるであり、その法律的効力のなさ、そこからさまざまな不祥事件が起こったのではないかと思います。したがって、今回の法改正にあたりましては、従来の公開、その上にあくまでも質または量、この上での明確な規制をしていかなくてはならない、このように私どもは考えます。そのにおいを若干受けるわけですが、質量ともに規制を行なうべきであるという考えも自治大臣は強力にお持ちであるかどうか、従来の公開法だけでは無用なものである、このようなお考えがあるかどうかお答え願いたい。
  79. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 従来の政治資金規正法は、いわば規正法というよりも公開法的な性格であったことは御指摘のとおりでございます。私はその政治資金の公開というこの従来の政治資金規正法もそれなりの効果はあげておったのではないかと思います。また、政界にまつわるいろいろな批判を受けるような問題も、この公開された中から発見された面もあるわけでございまして、そういう意味においては従来の政治資金規正法はそれなりの役割りを持っていたと思います。しかしながら、そればかりでなくて、やはり資金の量あるいは質、それもある程度は規制しなければならないというのが現在の情勢であるというふうに考えるわけでございまして、いわゆる分相応な寄付ということを考えたのは、そういう意味において資金の量の制限をやるべきであるというふうに考えたわけでございます。
  80. 伏木和雄

    ○伏木委員 いまの公開法で相当な効果もあがっているという大臣のお話でございます。私はその点でちょっと考えを異にしておるのです。この政治資金規正法で、従来その公開原則によって規制された、制限された、公開法なるがゆえに効果をあげたという点は、ほとんど皆無と言っても過言ではないと思います。従来国会と中央政界と財界とのトラブル、それによって起きた事件は、この法が制定されてから大体二十件以上にのぼっております。この問題はこの法律によって照らし出されたものではなくて、むしろ政治資金規正法によって過去に取り締まられたという事件は、国会議員に関係した問題は一つもなくて、地方の小さなところで起きた問題が八件しかない。政界をゆり動かすような大きな問題は過去幾多ありましたが、それはこの法律では全然触れていない。したがって、もう公開原則、公開という考え方はくつがえされて、当然量あるいは質の規制を今後行なっていかなくてはならない。むしろ、公開よりも質、量の規制に従来の考えを改めて重点を置かなくてはならない。それは過去二十年間の不祥事件を通してみて体験としていえることではないかと思うのですが、この点について大臣の御見解をお願いしたい。
  81. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 従来、現在の政治資金規正法がそれなりの役割りをつとめたと私申し上げましたのは、公開されて、それを国民がいかに判断したかという問題であったと思うのでございまして、そういう意味においては、やはり一つの役割りを果たしておったと考えておるわけでございますが、公開の原則につけ加えて、やはり資金そのものの量なり質なりをある程度規制をすることが妥当である、これは選挙制度審議会もそのような結論に達しましたし、私どももさように考えておる次第でございます。
  82. 伏木和雄

    ○伏木委員 官房長官お忙しいようですから、途中ですが官房長官のほうへ一点だけお伺いしたいと思います。  それは過日の参議院の本会議におきまして、一昨日ですか、総理が、もう今国会も余すところ一週間近くという時点になっても、さらにこの法案成立させたい、こういう御意思であったかのように承っておりますが、総理のこの法案に対する考えをお願いしたいと思います。
  83. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 一昨日の本会議総理から御答弁申し上げましたとおり、総理といたしまして、本法案をこの国会成立をさしていただきたいという所信に変わりはございません。ただ、審議日程等におきまして非常に窮屈になっておりますが、この上とも格別な御協力を賜わりたいと思います。
  84. 伏木和雄

    ○伏木委員 その格別の努力ですが、どのようにされるか、具体的にお願いしたいと思います。
  85. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 いま申し上げましたのは、国会に対して格別の御協力を賜わりたい、こういうことを申し上げた次第であります。
  86. 伏木和雄

    ○伏木委員 私どもは、冒頭申し上げましたように一歩答申よりは後退である、しかし現行法よりは前進ではないか。したがって、法案をすみやかに成立させよう、こういうことを絶えず主張してまいりました。残念ながら与党のほうにその意見と逆な意見があるようでございますが、国会議員と申しましても、むしろ与党に対する——総理に聞けばいいのですが、総裁としての積極的な働きかけによってこの問題は解決される、私どもはこのように理解いたすのですが、与党に対する積極的な総理総裁としてのお考えをどのようにお持ちになっているのか、官房長官を通じてお願いしたい。
  87. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 総理は当然総裁でございますから、与党内において本案成立に対していろいろお願いしていることはしばしばでございます。ただ、私の立場といたしましては、総理にお話を申し上げまして、総裁として党の機関を通じて本案成立にこの上とも努力をしてもらうようにお願いをする所存でございます。
  88. 伏木和雄

    ○伏木委員 これ以上官房長官にお伺いしてもちょっと無理かもしれません。そこで、官房長官といたしましても、総理とよく連携をとって、そしてこのわずかな期間にこの法案成立に対する積極的な努力をお願いしたいと思います。  先ほどの問題に続いてまいります。大臣から量、質の規制という問題が出てまいりました。そこで私は、質の点におきまして、当然この政治献金というものは個人に限るべきである、答申におきましてもやはりそれを精神として、現状やむなしという観点に立って法人の、団体の献金を認めているのではないか、あくまでも答申の言わんとするところは、時間の問題は別としまして、個人に限定せよ、この政治献金というものは個人に限っていくべきだ、こういう主張が答申精神であると思います。自治大臣は、献金は個人に限るというこの精神をどのようにとらえていらっしゃるのか伺いたい。
  89. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほどもお答えしたのでございますが、政党が広範な国民大衆を基盤とし、また、広範な国民大衆の財政的支援によってやっていくということが望ましい姿であると考えます。しかし、そのためには政党みずからが相当の努力をいたしまして近代化、組織化をはかっていかなければならない。また、当然政党はそういう方向で努力をされるものと私は期待をいたしておるわけでございます。そういう意味で、政党がその望ましい姿になることをわれわれは期待をいたしておりますが、それじゃ会社寄付政治献金というものを一体禁止できるかどうかという問題になりますると、やはり会社会社として社会の一存在であり、自分の企業が存続するために好ましい政治形態というものもあるわけでございます。そういうものに対して、会社がそういう好ましい政治形態が持続されるように政治献金をするということ自体を法律的に禁止することがはたして妥当かどうかということになりますと、いろいろ相当な研究課題であろうと私は考えます。そういう意味で、政党みずからが努力をされて、広範な国民大衆を基盤とするような形に持っていくということに努力をしていただきたいというのが私の念願でございます。
  90. 伏木和雄

    ○伏木委員 個人に移行していくことは政党努力ということですが、やはり大臣も個人にすることが望ましい、この考え方については、法人を規制するのは法律的に問題はあるとして、これは別問題といたしまして、あくまでも献金を個人にしていくことが望ましいという点においては同意できるのではないかと思うのです。そこで私がお伺いしたいのは、個人に限るべきであるという方向に向かって、私ども大臣のお考えになっておる点と若干差があるのではないか。個人にしていくということにおいては共通であっても、大臣が個人に限るのが望ましいという答申精神の何ゆえに個人に限ったほうがいいのか、その方向に向かったほうがいいのか、政党はその方向に努力すべきであるという、大臣自身の個人に向かう方法がいかなる理由によるかという点をお聞きしておきたいと思います。
  91. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政党というものは元来国民的基盤に立つべきものだと思います。そういう意味で広範な国民大衆を基盤とする政党になっていく、一部の者だけを基盤とした政党ではなくて、広範な国民大衆を基盤とする政党になっていくことが望ましいし、したがってまた、そういう広範な国民大衆の財政的支持によって政党が成り立つということが望ましい姿ではないかというふうに考えるわけでございます。
  92. 伏木和雄

    ○伏木委員 いま大臣の御答弁は、民主主義の大原則の上にのっとって真の民主政治確立という方向をつくるべきである、一部の企業によって政党政治活動が行なわれることは望ましくない、こういう意味のように私は受け取るわけでございます。  そこでお伺いしたいことは、自民党方々といえども、決して大企業のための政党という発言はなさらないと思う。あくまでも大衆政党ということであると思います。したがって、大衆個人の政治に対する平等の立場に立って、特定の企業のみに政治が侵されないように個人の方向へ進むべきであるという考えになるわけでございますが、そこで申し上げたいことは、その方向に進まなくてはならない、現状やむなしという立場から答申は五年をめどとしてといっております。現状やむなしの立場から法人の献金を許しておるとすれば、なぜ法人の寄付に対する免税を認めたか。むしろ、将来政党の近代化に向かって個人に進むような方向に向けていかなくてはならない。ここで法人の免税を認めるということは、むしろ法人の寄付の優遇措置、奨励措置ではないか。ですから、大臣が本来個人の方向に進めたほうがいいという考え方とは逆行するのではないか。もう一歩突っ込んで言えば、政党の近代化をおくらしてしまうのではないか、こういう考えが出てくるわけです。この点の所見をお願いしたいと思います。
  93. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この選挙制度審議会答申並びにこの提出いたしました法案、いずれもなるほど寄付をする側の制限はいたしております。しかし、受け取る政党側の総額を規制しておるわけではございません。当委員会においてもしばしば問題になりましたように、政党政治活動というものはもっと活発に行なわれなければなりませんし、正しい意味政治活動についても相当金がかかるものだと思います。そういう意味で、受け取る政党のほうの総額を規制をいたしておらないのでございますから、ということがまず考えられるわけでございます。そうして、先ほどもお答えいたしましたが、政党というものは結局正しく発展していただかなければならないわけでございまして、その意味においては、国家もその政党が正しく発展するためのいろいろな施策を講ずる必要があると思うのでございます。他国の例を引き合いに出して恐縮でございますが、たとえばドイツの政党法のごときは、国家が政党に金を出すというようなことまでやっておるわけでございます。わが国の現状としてそういうようなことは考えられないわけでございますが、せめてその一助としての寄付に対する優遇措置、しかもそれは三年に限っておるわけでございまして、そういう意味におきましては、現状においてはこの程度の優遇措置は妥当ではないかと考えておる次第でございます。
  94. 伏木和雄

    ○伏木委員 私がお伺いしたのは、大臣も先ほど言われたように、将来は個人に限る方向がよろしい、それが民主政治の発達であり、政党の近代化になっていくという大原則に立って、そこへ政府政党も一致して方向を向けていくべきだ。現状やむなしという立場において法人も認めておる。したがって、ここで免税の措置をとるということは、この最終的な目標に向かって後退をさせるものではないか。現状やむなしではなくして、大いに奨励をしているのではないか。まあ三年間の特別措置と申しますが、特別措置法が過去もう十数年ずるずる引きずられて、そのときがくればまた改正、また延長ということは、過去幾らでもほかの法案であったことでございます。したがって、私は、あくまでも政党近代化、政界浄化という上に立って、この法人税の優遇措置はとるべきではない、それが第申の精神である、これを踏みはずしては、この一点だけ見ても答申をないがしろにしているのではないかということが言えると思います。再三大臣答申尊重と言っておりますが、これは答申とは逆行するものである。こういう考えが成り立つと思いますが、重ねてお伺いしてみたいと思います。
  95. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この税の優遇措置についてのいろいろの御批判はあろうかと思います。ただ、会社寄付認める以上、この会社寄付が円滑に行なわれるという意味におきまして、この程度の優遇措置を、しかも期間を限って優遇措置をするということは、政党を正しく発展させるための政府の措置として妥当なものではないかというふうに考えるわけでございまして、それが将来、政党が広範な国民大衆の基盤に立って、その財政的支持によって成り立っていくということに逆行するのではないかという仰せでございますが、私は、その点はむしろ政党努力次第でございまして、この優遇措置があるからそれがおくれるというふうには考えないわけでございます。
  96. 伏木和雄

    ○伏木委員 答申にもございましたように、この法人、団体寄付は五年を目途として、というようにあるわけでありますが、それがここに盛り込まれなかった理由ですが、法的に五年を入れることがむずかしいのか、それとも諸般の事情によって、それ以外の理由でできないのか。法律的に、法制の技術上五年ということを入れるのはむずかしいのかどうか、なぜ入れなかったか、お伺いしておきたいと思います。
  97. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 五年ということを法律的に入れること、これは法律技術上なかなかむずかしいとは思いますが、できないことではないと思います。私は、この政党が近代化、組織化され、そうして広範な国民大衆の支持の上に立つという、そういうことは政党努力をすべきもので、法律で規制すべきものではない、そういうふうな考え方でこの法案を提出したような次第でございます。
  98. 伏木和雄

    ○伏木委員 法で規制すべきでないという御答弁でございますが、いまここで法で規制しなければ、再びこういう機会はこなくなるのではないか。ということは、三十七年ですか、第一次の答申が出ましたね。たしか個人に限れという答申が出ておるはずでございます。あのときに、かりに五年を目途として五年という規制があれば、政党は今日その目標の上に立って努力して、当然今日の時点ではでき上がっているのではないかと思うのです。それをいまここで入れなければ、将来五年後には、今後の日本の経済はますます発展してまいります。そういう状況にありまして、さらにこの法人の寄付というものが活発に行なわれるのではないか。そういうときがくれば、ますます個人に規制するということが困難になるのではないか。今回より会社の規模なりあるいは経済状態が落ちていくというのなら別ですが、ますます栄えていく一方であると思います。そういうときに、いまここでやっておかなければ、将来必ずや後悔するときがくるのではないか。さらに規制が困難になるのではないか。ここで政府とすれば、法的に、法技術の上から入れることが可能であるとするならば、ここで勇断を下して——総理勇断をもって事に当たると言っておるのですから、勇断をもってこの五年を入れるべきではないか。それでないと将来に悔いを残す、こう考えるわけですが、この点はいかがなものでありますか。
  99. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これは自由民主党のことを申し上げて恐縮でございますが、自由民主党においても、たとえば党員五百万人獲得運動というようなものを強力に進めておるわけでございます。政党はそれなりに広範な国民大衆の支持を受けてそれが成り立っていくように努力をいたしておるわけでございます。したがいまして、また、国民一人当たりの所得もますます向上するわけでございますから、そういう意味におきまして、私は、将来に向かってそういう努力が各政党において行なわれるであろうということを期待もしておるわけでございます。したがいまして、今回これを法律で規制をしなかったのは、さような意味におきまして、むしろ政党努力に待つことが妥当であって、これを法律的に年限を切って規制することは妥当でないと考えた次第でございます。
  100. 伏木和雄

    ○伏木委員 それでは、大臣参議院のほうへ行かれるそうですから、ここで質問を中断させていただきまして、午後からまた引き続き発言させていただきたいと思います。
  101. 小澤佐重喜

    小沢委員長 午前中の会議はこの程度にとどめたいと思います。午後二時まで休憩にいたします。    午前十一時五十八分休憩      ————◇—————    午後二時十五分開議
  102. 小澤佐重喜

    小沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伏木和雄君。
  103. 伏木和雄

    ○伏木委員 午前中に引き続いて質問をさせていただきます。  午前中、五年をめどとするという問題で、今日の経済の発展、また将来に向かって今後さらに発展する経済の中にあって、いまここで個人に限ることをはっきりと目標を打ち出していかないと、さらに経済の発展した段階においては、個人に限ることが困難になっていくのではないかという点についてお伺いをしたわけでございますが、今後こういう経済下にあって、政党努力のみに託しておりますので、このままでいって、はたして将来に規制ができるようになるかどうかお伺いしておきたいと思います。
  104. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先にもお答え申し上げましたように、政党としてはできるだけ広範な支持層を得るように、現在も努力を続けておられますし、今後も継続されると思います。また、この政治資金の問題は、単に政治資金そのものばかりでなく、選挙制度あるいは政党政治活動のあり方、そういうものがいろいろ総合されて、政界浄化と申しますか、国民信頼をかちうることだと思うのでございまして、この機会に五年という期限をつけなくても、私は政党の近代化、組織化というものは進めていけるものと考えておるわけでございます。
  105. 伏木和雄

    ○伏木委員 この問題はそれくらいにしまして、従来の規正法が公開を原則にしておったのに対しまして、今回は法人で二千万、個人で一千万、こういうワクが初めてできたわけです。この問題に対しまして、与党方々からは、政治活動の自由を阻害するのではないかという御意見があるようでございます。しかし、今日の政治ほど公共性を有したものはない、私はこのように考えるわけですが、その政治活動が、たまたま寄付金の問題におきましてトラブルが起き、不正事件が相次いで起こる、そうして国民政治に対する不信を抱かせるような結果になってくることは、ある面から考えると、これは私は公共性を阻害するのではないかと思う。当然質の面、量の面において規制をしていくことは、先ほど大臣からお話がありましたように、政治団体が集める額を規制しているわけではない、質、量において規制をしておるけれども政治活動の規制にはならぬという意味の御発言であったように承っておりますが、憲法の十二条におきましても、公共性をおかすものを禁止する、いかなる自由の名にあっても、これは禁止されていかなくてはならぬということは明確であると思います。したがって、この量、質の面で、二千万あるいは一千万の規制が妥当であるかどうかということは別問題として、規制することは当然である、こういう考えが出てくるわけでございますが、はたしてこの法案自体が政治活動の阻害になるか、規制になるか、自由を束縛するものになるか、この点について明らかにしておいていただきたいと思います。
  106. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 元来、財産権の処分等は自由であるべきでございますが、しかしながら、やはりその処分というものも、公共の福祉という限界があると思います。その意味において、選挙制度審議会が分相応な寄付認めていこう、不相応な寄付禁止しようという御意思でございまして、それはやはりその範囲においては合法的な規制であると私は考えております。また一面、今回の改正におきましても、政党の受け取る総額を規制しておるわけではございません。もちろん、従来どおりのような寄付の集め方をするといたしますならば、いろいろ支障もあろうかと思いますが、これは各政党においていろいろくふうをされるものと考えます。そういう意味では、この法律そのものが政党政治活動を制限するというようなことではないと私は考えておる次第でございます。
  107. 伏木和雄

    ○伏木委員 時間がないので、少し質問をはしょってまいります。  今回の改正が現行法よりは一歩前進ということで、私どももこの法案成立させたい、こう考えているわけでありますが、この法案について一番残念に思うことは施行日の問題です。これはさきの自治省の案によりましても、また答申によりましても、緊急すみやかにということから、自治省案においては一月一日ということを原案に入れてあったようであります。また大臣答弁からも、六カ月、多くとも九カ月あればこれは完全に施行できる、それだけの準備は遺漏なくできるという答弁があったかに思います。ところが、そこまではっきりわかっておるのが、この施行日においては全く政令にゆだねている。この点が私理解できないのでありますが、普通法案をつくるときに、すべてを政令にゆだねてしまうということがはたしてあるかどうか。特に緊急を要すると銘打って答申されたこの法案について、完全に政令にゆだねてしまうという点が理解できないわけですが、どうしてこれを抜いてしまったか。
  108. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私どもは最初に、来年の一月一日施行というようなことを考えた時期がございます。それは当時の国会会期から考えまして、公布後約六カ月あれば準備が整うであろうということでございましたが、その後国会の延長の問題等もございまして、この成立の時期について私どもが予想できなくなったわけでございまして、そういう意味からいたしまして、明確に施行日を書くことを避けたわけでございますが、しばしばお答え申し上げているように、六カ月ないし九カ月の準備期間があれば、周知徹底あるいは準備が完了すると思いますので、そうした準備完了次第すみやかに施行いたしたいと考えておる次第でございます。
  109. 伏木和雄

    ○伏木委員 そこまではっきり六カ月ないし九カ月ということならば、他の法案のごとく、九カ月以内に政令で定めるとか、あるいは六カ月以内に政令で定めるとかいうように、歯どめはできるのではないかと思うのです。その歯どめまでも抜いてしまう、そこに何らかこの法案についての意図があるのではないか、私たちはこのように疑わざるを得ないのです。なぜ通過してから九カ月あれば間違いなくできる作業を完全に政令にゆだねてしまったか、なぜ歯どめまでもはずしてしまうのか、明らかにしていただきたいと思います。
  110. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 お疑いになることはわかるわけでありますけれども、私しばしば申し上げておりますように、六カ月——まあ九カ月はあまり長い、もう少し短縮できないかと考えておりますが、そういう意味もございまして政令にゆだねた形にはなっておりますが、この法律成立以降は準備を急ぎまして、できるだけ早く施行をいたしたい、その気持ちに変わりないわけでございます。
  111. 伏木和雄

    ○伏木委員 普通の法案であれば歯どめがあるわけです。大体何カ月以内にとあるのです。この法案に限ってどうしてそれもつけなかったか。自治省とすれば九カ月あれば十分できるというのであれば、最大限九カ月以内に政令で定めるというふうにうたうことはできたのではないか。その歯どめまでも抜いてしまったということが理解できないわけです。なぜこの法案に限って歯どめを抜いてしまったかという点なんです。
  112. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 まあ九カ月というのは、六カ月では自信が持てない、といって九カ月は長いぞというような御意見もありまして、そんなところで、こういうことになったわけでございますが、再三申し上げますように、私どもといたしましては準備を急ぎ、準備の完了次第すみやかに施行したい、こういう考えに変わりはないわけでございます。
  113. 伏木和雄

    ○伏木委員 私どもは何か意図があるのではないか、こうとらざるを得ない答弁でございますが、これはこのくらいにします。  次に、先ほど公選法の改正の問題で、大臣答弁に、たしか第二次の答申においては選挙区内の寄付もある程度認めておるというような御答弁があったかに思います。民社党さんの質問のおりですが、その点もう一ぺん確認したいと思います。
  114. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど申し上げたのは、現在は公選法におきまして、選挙区への候補者寄付選挙時に限っておる、それを今回は一年じゅうに延ばしました。そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  115. 伏木和雄

    ○伏木委員 いや、そうじゃなくて、後援会等に対する出資を、第二次の答申では認めておった、それを用いて今回改正した。今回の第五次の答申にはなかったけれども、第二次の答申にはそういった内容があったので、それを今回用いた……。
  116. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 それは寄付あっせんの強制を禁止した条項でございます。第二次の答申のときに、寄付あっせん認めるが、強制にわたらないようにという答申がございましたので、今回寄付あっせんという制度は認めまして、強制にわたらないというような意味あっせんの強制を禁止する、そういう問題についてお答えしたわけでございます。
  117. 伏木和雄

    ○伏木委員 私の勘違いであったようでございますが、いずれにしろ第二次の答申にそういうことがあった。その第二次を引用されたのですが、そうなると、またさっきの個人の問題をむし返さなければならぬ。第二次では、明らかに個人に限ることを主張しておる。第五次においては、現行に合わせて五年間法人、団体寄付認めていこうというのが答申であったと思うのです。その第二次と第五次を何か混同して、あっせんの問題にしましても、第二次にあったから今回の答申になくてもいいんではないかという考えはちょっと成り立たないと思うのですが、第二次の答申と第五次の答申とはおのずから異なります。もし第二次を言うのであれば、献金も、個人の献金を主張した第二次に立ち戻らなければならない、こう考えるのですが、先ほど大臣が、第二次にあるから、今回の答申にはないけれども、これを加えたいという答弁はおかしいと思うのです。
  118. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん、今回の第五次の答申は、第一次、第二次の答申を洗い直しまして、このような答申になったことは御指摘のとおりでございます。ただ、従来寄付あっせんという制度については、公選法あるいは政治資金規正法にございませんでした。しかし、今回資金の量の規制をいたす機会に、量の規制をいたしますと、やはり当然またあっせんというような問題がそれに関連して起こってくることが予想されます。そこで、寄付あっせんという制度を設けたわけでございますが、そのときに、この寄付あっせんという制度を設けるにあたって、さきに答申された、第二次におきまして、あっせん認めるが、それは強制になってはいかぬという答申がございましたので、強制あっせん禁止する規定を設けた、こういうことだけでございます。
  119. 伏木和雄

    ○伏木委員 次にお伺いしたい点は、組合費のチェックオフの問題でございますが、このチェックオフの善悪については、いまここで議論すべきではないと思います。ただ、これは答申にはなかったことでございますし、また、今回の改正案にこれを盛り込んだ意図でございますが、本来自治省案にもこれはなかった。ところが、途中になってこの問題が入ってきた。そうして野党のひんしゅくを買うようなふうに入ってきたわけですが、これは明らかにこの法案を通過させたくないという意図を含んでいるのではないか、このように感じている方々が非常に多い。実際今回の改正にこの点を加えたことは卑劣というか、ちょっと筋違いではないかというように考えるわけですが、どうしてこれを入れなくてはならなかったか。たびたび大臣答弁されておりますように、献金というものは善意のものである、この原則に立ち返るとするならば、何もこの問題をあえてここで入れなくてもよかったのではないか、こう考えるのですが、これをなぜ入れなくてはならなかったのか、また、これが組合活動の阻害になるようなことがあるのではないか、この点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  120. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいまもお答え申し上げましたように、寄付あっせんというこの制度は認める。しかし、こういうことは往々にして強制にわたるようなことがあり得る可能性がありますので、強制のあっせんはこれを禁止したわけでございます。そこで、賃金であるとか、加工賃であるとか、下請代金であるとかいうものは、その受け取るほうが、いわば経済的に弱い立場にあるわけでございます。したがって、これをそういうものから天引きするというようなことが、往々にして強制にまぎらわしいことが起こり得る。弱い立場であるから、一種の泣き寝入りになってしまうというようなこともあり得るものでございますから、この強制あっせん禁止という効果をさらに高めるためにこのような規定を入れたわけでございまして、政治献金、政治に対する寄付というようなものは、常にその御本人の自由な意思において行なわるべきものでございまして、そういう経済的な弱い立場によって心ならずも強制される結果になるというようなことをやめたいという気持ちでございます。
  121. 伏木和雄

    ○伏木委員 最後に、一点だけお伺いいたします。  それは、今日廃案のムードが漂っているわけでございますが、私は、この法案がここで成立しなければ、現行法におけるところの弊害というものが大きく出てくるのではないか、このように考えるわけでございます。ということは、今日までの現行法を見ましても、先ほどから申し上げているように、量、質の面においてほとんど無規制といっても過言でないほどでございます。その現行法よりは一歩、半歩でも前進する改正案であります。これが通らなかった場合、そこに起きてくる弊害というものは、公開の原則であった現行法が、何か正直に届ける者がばかを見るような、それに対して何らチェックすることができない現行法でございます。たまたま正直に報告をした人は批判を受け、偽りの報告を出している者は批判を受けないというような結果が出てくるんではないか。したがって、何としても現行法で政治資金の善悪を今後見ていくということは不可能ではないか、こういうふうに考えるわけです。  そこでお伺いしたいことは、これがもし通らなかった場合に、今後の政治資金はどのような目で見られていくか、どのような形で国民の批判を受けていくか、相変わらず従来どおりのむずかしい、自治省から発行されるところの官報のみによって国民は批判しなくてはならないか、こういう点について、今後この資金の規制を自治省はどのようににらんでいくか。改正案が廃案にされてしまった場合、ますます弊害が起きてくる、こう考えますが、この点に対して大臣のお考えを聞いておきたいと思います。廃案になってしまったら現行法でどうにらんでいけるか。
  122. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 実は、廃案になるというようなことは非常に私としては困るわけなんでございまして、ほんとうに皆さんに御努力いただいてぜひとも成立させていただきたいと考えておるわけでございます。したがいまして、廃案になったらどうなるんだというお尋ね、非常にお答えしにくいのですが、しかし私は、やはりこうした国民的ないろいろなきびしい批判を受けておる現在でございまして、政党並びに政治家方々が十分に自粛して、法を正しく守るということをやっていただくように、また、届け出なども正確を期していただくように念願する次第でございます。
  123. 伏木和雄

    ○伏木委員 それは、従来の公開法としてその政治家に対する良心ですか、それが要求され、しかし完遂できなかったわけです。それを今後再び同じようなことを繰り返していかなくてはならない。それしか策はないと思うのです。結局、これが廃案になれば従来以上に乱れていくんではないか。ということは、この官報を見ましても、黒い霧の発生する前の官報とそれからそのあとと、届け出の内容がだいぶ変わっております。ということは、四十年度ごろの報告によりますと、食糧費とか記念品とか、そういうものが非常に多く出ておったわけです。ひどいのになりますと、年間の支出の九八%までは記念品で支出がなされた。ところが、黒い霧以後の報告ですと、そういうものが影をひそめておる。しかし、ちまたでは、政治資金の動きに対して選挙等における買収、供応等の事件は絶えない。官報の上だけでそういう額が少なくなってきている。こういう点について、現行法ではかえっていままで以上に乱れていく、これを憂えるわけです。この内容が正確であるかどうかということは、国民はこれを見る以外にないのですが、どこでこれを批判できるか。結局は、現行法はあってなきがごとしという結果になってまいると思います。大臣政治家の良心、良識ということを強く言われておりますが、それはいままでも言われてきたことでございます。それを叫ばれながら、今日国民から不信を買うような政界の状態におちいってしまったわけでございますが、いまの御答弁だけでは、私は今後の政治資金が明朗になっていくとは考えられないと思います。この点もう一回御答弁していただきたいと思います。
  124. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現在の政治資金規正法におきましては、たとえば、収入においても会費というようなものは寄付とみなされておりませんので、御指摘のようなことになろうと思います。また支出の面につきましても、一律の支出項目をつくっておるわけでございませんので、政党その他の政治団体が特色のあるいろいろな届け出、支出の項目をつくっておりますのをそのまま見ておるわけでございます。したがいまして、そういう点では、御指摘のような点のおそれなしとはいたさぬと思います。その意味において、今回はこういう改正を念願したわけでございまして、現行法ではいま御指摘のようなものにつきまして、なかなかとらえにくいという点は確かにあると思います。ただ、政界浄化と申しますか、そういう問題は単に政治資金の問題ばかりでなくて、政治家自体あるいは政党自体のいろいろな姿勢の問題もあるわけでございまして、その意味におきましては、特に昨年来の政治情勢におきまして国民の鋭い批判を受けたのでございますから、そういう意味で、政治家が十分自粛自戒しなければならないものと私は考えておるわけでございます。
  125. 伏木和雄

    ○伏木委員 いま御答弁がありましたように、あくまでも私はこの法案成立させなくてはならないと思います。もし成立しないとすれば、従来よりももっと乱れていくということを危惧するわけです。  そこで、この法案審議が今日なかなか進まない。もう会期も余裕がなくなってきたわけであります。先ほど大臣からの国会の御協力というお話があったわけでございますが、むしろ、国会というよりは自民党内の調整、そこできまるのではないか、与党の工作によって、この法案が通過するかしないかきまるのではないかということを申し上げたのです。私は、与党方々も今日の国民の批判にこたえて、こうした種類の法案というものは十人十色いろいろ考えはあると思いますが、しかし、今日国民から見た政治の世界というものについて、われわれ国政に当たる者がここで慎重に事を運び、そして国民の世論にこたえなくてはならないと思います。与党方々もそれは十分御承知であると思うのです。  ということは、総選挙の際に、選挙法改正運動協議会というところで、総選挙に立候補した各候補者かちアンケートをとったわけです。これも私見せてもらいました。これによりますと、団体会社寄付禁止すべきである、個人にすべきであるということは、自民党は八七・七%、社会党は七九・八%、民社党は九一%、このように各党あげてこれには異論がない。私、これを調べてみまして——ここへはがきを持ってきておるのです。各党の方々のを全部見せていただきました。選挙の際、国民の世論に対しては、確かに政治資金は個人に限れという意思を発表されておるようでございます。ですから、これが国民の世論であるということは、これは与野党を問わずに考えを持っておるのでございます。ただここで、これがなぜスムーズにいかないかといえば、すべて党利党略によるものでないかと私は考える次第です。今後わが国の民主政治の発展のためにも、あるいは政党の近代化の上に立って、これは与野党あげて、もちろん政府みずからが積極的な働きかけをやって、そしてこの法案成立させるべきである、このように考えるわけでございます。  最後に、今後この法案成立にあたって、与党である自民党に対して、政府としてどのように働きかけて、その努力を続けていかれるのか、これをもう一回再確認しておきたいと思います。
  126. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、従来から与党に対しましても、すみやかにこの法案に対する態度を御決定いただいて、このけりがつくように強くお願いをいたしておるわけでございます。その努力を今後も続けてまいりたいと考えております。
  127. 伏木和雄

    ○伏木委員 いまここに持っておりますが、これをすべて読み上げればいいのですが、そういう時間もございませんので、質問はこれで打ち切りといたしますが、せっかく自治大臣が苦労されて、法案作成から今日まで努力されてきたわけでございます。ひとつ今後十分なる努力を重ねられて、法案成立まで努力されんことを要望いたしまして質問を終わりといたします。
  128. 小澤佐重喜

    小沢委員長 官房長官が出席されましたので、この際島上善五郎君の質疑を許します。
  129. 島上善五郎

    ○島上委員 自民党の渡辺君の質問の順序でございますが、官房長官の時間の都合で、私、官房長官に対する質問だけ、それとも十分程度いたしまして、残余の質問は渡辺君が終わってからいたします。  この前、といっても一週間前ですが、一週間前の委員会でも、私は官房長官に御質問し、かつ御要望申し上げておきました。総理大臣藤枝大臣も今国会成立を期したいということを、しばしば国会においてもあるいは国会外の記者会見の際にも言明されております。私は一週間前に、会期がもう短くなってきたものですから心配いたしまして、理事会でわれわれが、参議院に最小限度一週間の審議日程を残して衆議院の通過をはかるための日程を組むことを要望しておりましたが、遺憾ながら自民党さんは党の態度がきまらぬということで、一週間たった今日なお審議日程を具体的に組むに至っておりません。そういうことを心配したものですから、この前官房長官に、党の総裁である佐藤総理に対して、与党委員長理事委員諸君に、党の総裁として、ほんとうに会期成立を期するならばしかるべき指示を与える、あるいは督励をするということは当然ではなかろうか、これをぜひ総裁に伝えて、そのような措置をとっていただきたい、こう要望いたしました。自来一週間たっておりますが、ますます会期成立が心配される状況、もっと極端にいえば、絶望的ともいうべき状況に迫っております。先ほどの御質問に対して自治大臣は、いまの時点においてもなお今国会成立をぜひはかりたいという御答弁でしたから、まあそれはよろしいとしまして、しかし実際には、もう衆議院だけを考えましても、いままでの話し合いの審議日程によりますれば、あと四日しかない、こういう状況ですから、よほど審議のスピードアップをして、日数をふやすとか、時間を延ばすとか、自治大臣ことばをかりますれば与野党の委員が勉強して、審議を進めなければならぬ状況にきておるわけです。総理大臣がこの審議促進について、与党委員に対して何らかの指示なり、しかるべき措置をとられたかどうか、伺いたい。
  130. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 もとより佐藤総理は、党の総裁といたしまして、また総理といたしましては当然のことでございますが、会期内におけるこの法案成立については、その所信において今日も変わりません。そこで、この前の委員会の御要望も私から総理にお伝えいたしました。総理としては、総裁といたしまして当然党の側においてその努力を続けておられるわけでございます。
  131. 島上善五郎

    ○島上委員 続けておられるわけでございますというだけではあまりにも抽象的で、たとえば、小沢委員長にいつお目にかかって、審議促進についての総裁の意向を伝えたとか、そういうような具体的な措置がとられましたかどうかということを伺っているわけです。
  132. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 政府側の私といたしましては、党側におけることは、みな党の機関を通じてお願いしておりますので、この場では申し上げかねることでございます。
  133. 島上善五郎

    ○島上委員 それなら伺いますが、日付はちょっといま忘れましたが、赤澤正道先生がいらっしゃいますね。総裁赤澤正道先生をお呼びになったのか、赤澤先生のほうから総裁のところへ御報告に行ったのか、まあ新聞では報告に行ったと、こうなっておりますが、その機会に、廃案にしないで継続審議にするようにと、こういう意向を伝えたと新聞に出ておりますが、あれは全然虚構の事実でございますか。うそですか。
  134. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 実は目の前に御本人がおられますので……。私は新聞で承知した程度でございます。
  135. 島上善五郎

    ○島上委員 それで、私ども総理をぜひと思っておりますが、どうしてもお出しにならないのですが、どうもその間に矛盾があり過ぎるのですね。総裁がほんとうに今国会成立を期するならば、継続審議にというようなことをかりそめにも言うべきではなくて、赤澤さんはきょういかなる理由か理事をおやめになりましたが、当時は理事でもあったわけです。筆頭理事であるかないかこれは別としまして、有力な理事であった。ですから、継続審議などということをおっしゃらずに、今国会成立を期するように、野党が具体的に提案しているのですから、審議促進の指示を与えてしかるべきものではなかろうかと思う。審議促進の指示を与えたということは、不幸にしてどこからも伺うことができないし、新聞にも一行も書いておりません。そうして継続審議にするようにという意向を伝えたということは、私は何としても、今国会成立を期するということは、単にいままでそういうことを言ってきたから、その惰性で言わざるを得ないから言っているのではないか。悪いけれども自治大臣もそうではないかというふうに疑われてしかたがないのです。今日なお勇断をもって今国会成立を期するという心境にあるかどうかということを、重ねて伺います。
  136. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 たびたび申し上げますとおり、総理は、今日におきましても、この法案をこの会期内に成立を期するのに変わりはございません。
  137. 島上善五郎

    ○島上委員 あなたは時間の御都合もあるし、あなたにこれ以上追及しても、はっきりした御答弁はむずかしかろうと思うので申しませんが、しかし、ほんとうに今国会成立を期するならば、総裁ですから——ほかの法案を見てごらんなさい。きょうも社会労働委員会で、質疑中に質疑打ち切り、討論省略、採決などという手を使おうとして混乱しておる。つい少し前には内閣委員会で同様。この委員会は、すでに野党は私をもって質問は終わりですよ。与党もすでに、きょうやりますれば七人終わる。きょうも、時間を延ばしてもっとおやりになってもけっこうですよ。少なくともこの辺で審議終了の日程を組もうじゃないかという野党の建設的な提案に対して、まだ党の態度がきまらない、こういうことは私は納得できないと思う。党の態度がきまらぬというのです。これでは、総裁会期成立を期するというが、党は延ばせるだけ延ばして流してしまおう、こういう態度であることは明白と言っても私は言い過ぎではないと思う。このような事態に対して、私はあなたにこれは強く要望しておきますが、そしてまたこの次伺うかもしれませんが、衆議院だけやっても四日しかないのですから、参議院へ行って審議の日程が足らなくて継続審議になった、万やむを得ずそうなったというならば、これは別の院のことですから私はとやかく申しませんけれども衆議院は通過させて参議院に何日か審議の日を残すというのは、常識的に考えて当然ではないですか。衆議院会議を通過せしめて参議院に何日か、できれば一週間ですが、一週間なくとも五日かそこら審議の日数を残して衆議院を通過せしめるのは、私は常識的に当然だと思う。これに対して長官は、長官としてどのようにお考えですか。
  138. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 国会側のこと及び党のことについては答弁を差し控えたいと思いますが、先ほど来の御要望に対しては、しかと総理にお伝えいたします。
  139. 島上善五郎

    ○島上委員 長官の御答弁は不満ですけれども、いまのような状態が続くならば、もう一ぺんまた必ず伺わしていただきたいと思います。  約束の時間ですから、どうぞお帰りください。
  140. 小澤佐重喜

    小沢委員長 次は、渡辺美智雄君。
  141. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 私は、この政治資金規正法改正案というものを読んでみたのですが、門前の小僧習わぬ経を読むということがあるが、これは何べんも読んでいるうちに、よく中身がわかるということだと思います。ところがこの法律案は、読めば読むほどわからなくなってくるという印象を非常に強くしたのでございます。そうして、この政治資金規正法というものは一体何のために改正をするのか。いまもし政治家政治資金について世論の批判を浴びておるということがあるとすれば、金の使い道ではなかろうか、こういうように私は思うのであります。現在の政治資金規正法が、公開の原則によってすべて公開しなければならない。収入、支出も公開の原則であります。今回の改正案を見ると、収入については、たとえば他人名義の寄付禁止する、こういうふうな点は、確かに一歩公開の原則が徹底ざれたようでありますけれども、支出の面においては、公開の原則は緩和された点はありますけれども、徹底をしたというところは少しもない。たとえば、千円以上の支出について書いておったものを、今度は物価に合わせて一万円以上のものについて書けばいい、こういうふうに緩和をされたことは事実であります。  しかしながら、問題は、世間でよく政治家の所得の申告が少ない、にもかかわらず、まあ高級車を乗り回したり、大邸宅を買ったりというような人が、たまたまあるのかないのか知らぬが、そういうところで、政治家に対する金の使い方ということが、いろいろ批判を受けているというように私は考えるのであって、そういうようなまず守られていない、支出の明朗化というか、ガラス張りというか、そういうようなものを徹底させていく努力がまず先決問題であって、それが守られないで、いたずらにいろいろなこまかい規制をして、しかも、この法律は自縄自縛になって、自分自身が動けなくなっているのです。あとから私は、その点も非常な疑問を持っているので解明していきたいと思っておりますが、そういうように現在の状態を直そうとしないで、より理想的なものに走り過ぎておるけれども、この点について自治大臣はどういうふうにお考えになりますか。支出の公明化の徹底という点については、なぜ法改正等を行なわなかったのですか。
  142. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 支出については、各政治団体が、その支出の費目の立て方等は千差万別でございます。そういう点をそのままとらえておるわけでございまして、これはやはり現在の政治団体の実態からいたしまして、費目を、たとえば予算費目のように一定するということはなかなかむずかしいわけでございますから、そういう意味におきましては現在の方法を踏襲したわけでございますが、その点で多少不十分な点はございますが、しかし、いずれにしましてもそれを公開するということで、公開の原則は徹底されるのではないかと考えております。
  143. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、この間、たとえば料理屋で幾ら使ったとか、やれゴルフで幾ら使ったとか、そういうふうなことを新聞でずいぶん騒がれたのがありますけれども、いまのようなことなら、騒がれることは何もないのです。実際問題として、正直過ぎるから騒がれたという結果になるのじゃないかと私は思うのです。たとえば、ある党が私なら私に何々費として二千万円あるいは三千万円というように渡しても、だれが考えたって私一人で三千万円の金をふところに入れるとは思っていない。ですから、それから先の使い道が当然あるはずなんです。しかし、そういう点は少しも改正していないのですから、今後もそれでいいと思いますが、いかがでございますか。
  144. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政治団体あるいは政党の正式の機関に渡ったお金が、さらにどこへいくかということにつきましては、現在の政治資金規正法改正案も同様でございますが、追及はしていないわけでございます。また個人に渡りましたものが、それがさらにどこへいくかということについては、政治資金規正法政治団体その他の団体だけを規正いたしておるのでございますから、個人の政治資金の収支についての届け出はないわけで、その個人からさらにどこへいったかということは、追及できないわけでございます。
  145. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、その点は別に法的には何ら改正をしていない、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  146. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 さようでございます。
  147. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうするとこれは、たとえば料理屋で金を使っても、マージャンで使っても、ばかばかしくまっ正直にそんなことは書く必要はないのです。払いに持っていった人が、自分の責任でその会合をやったのですから、金を受け取った人の名前だけ書けばいい。そうすればいいでしょう。違反ですか。
  148. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 個人が使われた金については、政治資金規正法による届け出を必要としないわけでございます。個人が受け取られた金がどこへどういったかということは、この法のたてまえ上は追及をいたしておりません。
  149. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、政治資金の支出の問題については、個人の名前を出せばいいのであって、たとえば、料理屋やゴルフの名前を出す必要は一つもないということが法律的な結論であります。はたしてそれでいいのかどうか、そういうものの検討をしなくて、政治の明朗化というものは一体できるのであろうかということについて、私は実は非常な疑問を持っておるのであります。  そこで、国税庁長官にお尋ねいたしますが、これは交際費とかあるいはその他の地方選挙対策費というようなことで、かりに私が政治団体から一千万金をもらった、しかもそれが官報で発表された、その金の使途についてはわからない、こういう場合の課税関係はいかがいたしますか。
  150. 泉美之松

    ○泉政府委員 お尋ねのような、政治団体から政治家たる個人が一定の名目で金銭を受け取ったという場合、私どもといたしましては、その金が必要経費になって使われてしまうかどうか。本人の所得になる場合におきましては、御承知のとおり、雑所得として課税するわけであります。したがって、収入があったけれども、はたしてそれがその方の所得に帰属したかどうか、この点を調査いたしまして、所得になって帰属いたしておりますれば、雑所得として課税する、こういうことになっておるわけであります。
  151. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると国税庁では、個人が政治団体から金を受け取ったという報告がなされておれば、何万円以上についてお調べになっておるのですか。
  152. 泉美之松

    ○泉政府委員 その点につきましても、あまり少額なものまで、ことに明らかに旅費として支給されておるような場合、一万幾らの旅費まで追及していくということは、とうてい税務の手数の面からいきましてできません。したがいまして、相当多額なものについてだけ調査することにいたしておりますが、この金額も、ある金額を申し上げますと、それではそれ以下の金額に分けてやろうというようなことになりかねませんので、そういった一定限度ということは申し上げかねます。
  153. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 一定限度がわからないのだから、あるいは十万円以上か、百万円以上を調査するのか、一千万円以上を調査するのか、国税庁長官がわからなければ私もわからないのですが、そういうようなところに不明朗なことがいろいろ言われるのじゃないか。ですから支出の問題についても、たとえば個人名義で十万円以上の金を受け取っておる場合は——十万でも二十万でもそれはけっこうですが、末端どういうふうに実際消費をしたかというような、完全な立証とまではいかないけれども、ある程度世間の常識から見て、おおむねそれに充てあられたものであって、私腹を肥やすということばは適当かどうか知りませんが、個人的な私生活に使われたものでないというように、ある程度のことがわからなければ、やはり一般の世間の人は、何千万円も私なら私が受け取ったということだけ書いて報告をされて、そのままでいいということになれば、正しくそれが使われたとしても、なかなかそういうところに疑惑を持つのじゃないか、むしろそういうところを明らかにすることのほうが差し迫った現実の問題じゃないか、私はこう思うのでありますけれども自治大臣はそういうようにお考えになりませんか。
  154. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政治家の金の使い方と申しますか、入り方、使い方、いろいろ世間から批判を浴びる場合もあります。しかし、これはあくまで個人に入ったものにつきまして、それがどのように使われたかというようなことを、この政治資金という面からとらえていくということは、不適当ではないかと考えております。もちろん考え方の一つとして、個人の経済を、私経済と政治家としての公の経済と申しますか、そういうものに分けて、その公の経済のほうを届け出をさせるというような方法もあろうかと思いますが、現在の段階におきまして、個人の政治家がどのような金を受け取られ、どのような支出をされたかということは、選挙のときは届け出を願いますけれども、一般の、通常政治活動においてそれを一々追跡するということは非常に困難ではないか、少なくとも政治資金規正という面からいっては困難ではないかと考えております。
  155. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 しかし、常識的な問題として、個人に渡った金が、かりに百万円なら百万円単位でもいいですよ。百万円以上の金が個人に明細がなくて渡った場合は、何のためにその金が使われているのかという程度の、私は報告くらいは求めてもよさそうではなかろうかと思う。政党に来た金が個人に渡ってしまえば、そこから先はもう全然関知するところじゃないということでなく、もちろん、お役所がどこまでも追及していくというようなことではございませんけれども、一応の規定として、どういうように使われたかということを、あわせて明らかにするという程度のことは必要ではなかろうか、こういうふうに考えておるのですが、それらの点については、やはりいま御答弁になったとおりでございますね。
  156. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この政党から個人に渡る金の費目そのものは、先ほどお話しになったように、たとえば旅費であるとか、あるいは組織活動費であるとか、国会対策費だとかいうようなことで出ておるわけでございまして、それが渡りました個人が、さらにどういうふうに使われたかということについてまで、少なくともこの政治資金規正という観点から追及することは、非常に困難ではないかというふうに考えております。
  157. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 まあ政党だけならばいいですけれども、あらゆる政治団体というものが入ってくるわけですから、その政治団体が受け取った寄付その他のものについては免税の恩典もあるわけですから、直接課税をされていないわけですから、やはりその使い方については、その程度のことを明らかにすることは望ましくはないかと私は考えておるわけです。これは平行論ですからこの程度にいたします。  私は、このことは裏返しに言えば、要するに政治家は準禁治産者みたいなものだ、こういう比喩もできるのじゃないか。ですから、どんなふうに使おうが、とてもそこまでは押え切れないから放任しておいて、入るほうだけともかくぎっちりしぼって放蕩をさせないようにすれば、あとはどういうふうに使おうがかまわないというものの思想ではなかろうかというように考えられるわけであります。そこで、ここは寄付制限ということだけに、今度は裏返しにいたしますというと、制限の点については実に微に入り細にわたってこれを規制しようとした。この規制というものは不可能に近いのです。まず不可能であります。どうして不可能であるかという一つ一つの問題について見解を述べ、大臣はじめ取り締まり当局あるいは国税庁あたりの見解もあわせてお尋ねしてみたいと思うのであります。  まず問題は、政党が金を受け取った場合、政治団体が金を受け取った場合、こういうような場合には届け出をすることになっておりますけれども、そこで、この法律でいうところの収入とか、支出、利益、こういうものの概念がきわめてあいまいであります。ですから、それらの点について私はこれから質問をしてみたいと思うのであります。  まず第五条に、「この法律において「収入」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の収受、その収受の承諾又は約束をいう。」ということが書いてありますが、ここのところにおける利益とは何ですか。
  158. 降矢敬義

    降矢政府委員 金銭、物品はこの財産上の利益の例示でございまして、たとえば借り入れ金でありますとか、あるいは労務の提供でありますとか、あるいは債務の免除でありますとか、そういうものをすべて含めまして財産上の利益という表現であらわしておるのであります。
  159. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 財産上の利益の、その利益とは何ですか。
  160. 降矢敬義

    降矢政府委員 金銭、物品その他の財産上の利益でありまして、つまり、物品あるいは金銭に相当しない、たとえば、いま申し上げましたように労務の無償提供でありますとか、あるいは金の借り入れとか、そういうものも一括いたしまして財産上の利益という表現であらわしておるのでございます。
  161. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そういう答弁をされたのでは、とても話が前へ進まないのでありますが、まああなたの言わんとするところは、金銭、物品は財産上の利益の例示であるということだけを繰り返しておるわけですけれども、この場合の利益というものは、いわゆる財産上の利益であるか、あるいは正味財産が増加したところの純利益であるか、そのいずれをさすのかということをぼくは聞いているのです。つまり、二十二条におけるところの「前年の確定した決算における利益の額」の利益とどう違うのかということを聞いておるわけです。
  162. 降矢敬義

    降矢政府委員 二十二条の「会社のする寄附」の中に利益の基準を入れましたが、これは会社の決算におきまして、確定いたしました当期利益というものを政令で定めようとしているわけでございます。こちらのほうの五条のほうは、要するに、収入といたしまして考えられる財産上の利益、いま申し上げましたような内容のものを一括してここで収入として定義をしておるわけでございまして、これは昭和二十三年の政治資金規正法の制定以来、そういう考え方でこの第五条の財産上の利益というような表現でやっておるわけでございます。
  163. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 利益という一つのものはなくて、財産上の利益という用語だ、利益ということばはなくて、財産上の利益というこれは関連した熟語だ、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  164. 降矢敬義

    降矢政府委員 さようでございます。
  165. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そこで、結局それらの利益を受けること、これがいわゆる収入である、こういうことを言っているわけです。しかしながら、その次の二項において、「この法律において「党費又は会費」とは、」これこれの規約に基づく金銭上の債務の履行として団体が受けるものである、党費及び会費は、これは利益ではあるけれども、同時に債務の履行でもある、こういうふうに解釈していいんですね。
  166. 降矢敬義

    降矢政府委員 受ける側におきましては、財産上の利益であります金銭でありますが、出す側におきましては、党則に基づく債務の履行として負担するもの、こういうふうに考えております。
  167. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、その次の項において、「「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう。」わかりやすく言えば、寄付というのは、そういうふうな利益の交付または供与あるいはその約束で、しかも党費または会費以外のものが寄付なんだ、こういうふうなことでございますけれども、低額譲渡のようなものは寄付になるのですか。——もしわからなければ具体的に言いますが、私の後援会なら後援会がある財産を百万円で買った。しかし、その財産はだれが見てもいま一千万円ならば売れるという場合、財産の引き渡しを受けるわけですね。かりに契約書をつくって二カ月なら二カ月引き渡しするまでに時間があるわけです。その場合の、いわゆる俗に言う時価と実際に払った金の百万円との差額は寄付になるのですか。何になるのですか。
  168. 降矢敬義

    降矢政府委員 この点は新しい法律で四項に、「寄附以外の収入で、賛助費、維持費その他いかなる名称をもってするを問わず、政治団体に対する資金上の援助を目的としてされるものは、寄付とみなす。」こう書いてございます。つまりいまの場合でありますと債権、債務の関係でありますが、社会通念上非常な大きな、対価関係としては通常考えられないような資金のやりとりがあった場合におきましては、資金上の援助を目的としてなされておるものというふうに考えて寄付とみなす、こういう考え方を第四項でいたしているわけでございます。したがいまして、いまのような設例の場合におきまして、社会通念としてはとても考えられないような対価、通常の対価関係以上の大きな対価関係があるような場合におきましては、四項目において寄付とみなす、こういう扱いをしたわけでございます。
  169. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると寄付に見るわけですね。
  170. 降矢敬義

    降矢政府委員 通常社会の一般観念として、対価関係以上の大きなもののやりとりがあるというような場合におきましては、寄付とみなすという考え方でございます。
  171. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そういう場合は寄付と見るわけですね。これははっきり言ってもらわぬと困るんですよ。
  172. 降矢敬義

    降矢政府委員 だからいま申し上げましたように、対価関係以上の大きな関係がそこに生じている場合は寄付とみなす、こういうふうに考えております。
  173. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 党費または会費は、規約に基づいてあとで払われるものだから、これは債務の履行だ。そうすれば、そういうふうな売買契約をしていて、金の支払いが、かりに半月なり三カ月なりあとになって金を支払って引き渡しを受けるということになれば、寄付じゃなくて債務の履行じゃないですか。除かれるべき性質のものじゃないですか、会費とか党費と同じ考え方からすれば。
  174. 降矢敬義

    降矢政府委員 いま申し上げましたように、通常一般の売買であれば、それは資金上の援助ということが本来ございませんので、したがって、寄付とはみなさないで、そのやりとりは寄付ではなしに一般収入というふうに考えるわけでございます。
  175. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 あなた通常一般のということばを盛んに使うが、党費の場合だって、通常一般の人は五百円で、特別な一級、二級、三級党員、賛助員というのをつくって、それが団体だったら全部寄付になるが、個人だった場合は、かりに月二十万円あるいは月五十万円の党費あるいは会費というものを取るようにしても、これは通常からうんとかけ離れておるけれども、その場合は党費になるでしょう。寄付にならぬでしょう。
  176. 降矢敬義

    降矢政府委員 政治団体の党則または規約におきまして、そういうふうな構成員に対する金銭上の債務の負担のしかたをきめておりまして、当該規定に基づいて政治団体の構成員が政治団体に対して納付するものは、二項におきまして、金額のいかんを問わず、それは党費または会費というふうに考えたわけでございます。
  177. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、いまあなたのおっしゃるようにいろいろな矛盾が出てくるのですよ。規則できめればいいんですからね。会則できめれば、どういうふうにきめようといいんですからね。そういう考え方が一方に通用するんなら、第三項においては、やはり契約に基づいて引き渡されるものは債務の履行じゃないか、当然寄付から除くべき性質のものじゃないかという議論も出てくるのです。  それから、ここであなたは収入というふうなことを言っておるけれども現実にこの収入というのは、党費や寄付金や借り入れ金、こういうようなものも収入だ。借り入れ金も収入だ。そうすれば、自分の持っておる割引債券なり株券なり、党あるいは政治団体が持っておる無記名債券なり、そういうものを売却した代金ももちろん収入になるわけですね。
  178. 降矢敬義

    降矢政府委員 さようでございます。
  179. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そこで、現実的にそういう収入というふうなものは、金銭または物品の収受というところまではある程度理論的にわかるのですが、その次の「承諾又は約束」というのはどういうことですか。
  180. 降矢敬義

    降矢政府委員 承諾の非常に具体的な例としては、遺贈の承諾というふうなことが、従来この政治資金規正法律案のときから考えられておる例でございます。
  181. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、すべて政治団体は収入及び支出を報告しなければならないということが、その次にきまっでおるわけですけれども、約束も収入になる。それじゃ、あなたの後援会に百万円寄付しますと言ったら、金を受け取ったとき収入になるのですか。寄付しますよという口約束をしたとき収入になるのですか。いつ収入になるのですか。
  182. 降矢敬義

    降矢政府委員 ただいま例をあげられました後援会等は、一般に政治団体の範疇に入りまして、その点につきましては第五条の第五項において、「「政治活動に関する寄附」とは、政治団体に対してされる寄附」というふうにいたしまして、なおその一番最後に、「これらの寄附のうち、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付の約束を除く。」というふうにしまして、会社その他の団体寄付制限というものにつきましては、将来のことを合意したことによってすべてを律するということは、実際問題として寄付する制限をかけた側からいたしまして非常に無理でございますし、また政党に対する税の免税という問題から関連いたしましても、約束というものを除きまして、収受、交付というものだけにいたした次第でございます。
  183. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、収入で約束を義務づけられる団体は何ですか。「除く」というんだから、除かないで残ったやつがあるはずだ。
  184. 降矢敬義

    降矢政府委員 要するに、除きましたのは政治活動に関する寄付、そしてその場合における政活団体に対してされる寄付を除きましたので、その他は収入におきまして、先ほど申し上げたいろいろな形態がございます。そういうものは約束という範疇に入るものがございます。
  185. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 さっぱりわからぬな。それじゃ政党が約束をしたらば、その約束は収入に入りますか。
  186. 降矢敬義

    降矢政府委員 政党が約束をしたというのは、ちょっと意味がわからないのでありますが……。
  187. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 それではこの約束というのは、だれと約束をした場合を言うのですか。もらう約束をした場合、どういう団体が約束をしたならば収入とみなすと言っているのですか。もっと具体的に例示して言ってくれなければわかりませんよ。
  188. 降矢敬義

    降矢政府委員 たとえば政治団体におきまして、私が将来労務の無償の提供をするというようなことを、将来の問題として合意をしたような場合でございます。あるいは私が金を貸す、将来借りましょうというような例が、これに当たるわけでございます。
  189. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 ますますわからなくなってくるんだ。そういうふうにあなたが政治団体に、将来あなたのところで無償で奉仕をしましょう、政治団体に金を一千万円貸しましょうと言った場合は収入の約束になるんですね。
  190. 降矢敬義

    降矢政府委員 そういう合意が成立した場合でございます。
  191. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そういう行為が成立した場合とは……。
  192. 降矢敬義

    降矢政府委員 合意でございます。
  193. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 合意でございますね。お互いに意思が通じたということですね。そうしますと、貸しましょう、借りましょうという約束ができれば、そのとき収入になるんですね。
  194. 降矢敬義

    降矢政府委員 さようでございます。
  195. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 これは非常に重大な問題を実は含んでいるんですよ。政党が金を借りましょう、貸しましょうと言った場合には、そのときに借りようと思った金額を収支報告書に載せなければならぬ。金の貸し借りの問題は、口約束でしたって、実際問題としては借りられないかもしれない。金なんというものは、受け取ってみなければわかりませんから。それを貸しましょう、借りましょうと言ったらば、その発生の時期、口約束をしたその瞬間に、これは収入に計上されるとこれに書いてあるんですよ。私はわかっていて聞いているんです。こういうことは普通の会計からいっても、金の貸し借りやあるいは労務上の雇用の約束、たとえば支出の場合で言えば、あなたを年間百万円の年俸で雇いますと、こう言った場合は支出のほうでも同じことで、これは支出に載っけるというんです。いまあなたの言ったように、政党に金を貸します、政党が金を借ります、こう言った場合は、それだけで収入に載っけるというんです。こういうきわめて厳格な発生主義的な会計処理法を一方においてとっておる。しかしながら、権利の関係やそういうふうなものは、二重にも三重にもそういうふうな会計上収入とかあるいは財産として取り扱うべき性質のものじゃないんです。借金の保証の場合を聞えてごらんなさい。政治団体が借金の保証をする場合は、これは支出になるんです。借金の保証をしてもらって金を借りる、政治団体としてどうも金がない、だれも貸してくれる人がない、幹事長個人に借金の保証をしてもらうという場合は、借金の保証をしてもらうものも収入に入るでしょう、あなたの考えで言えば。
  196. 降矢敬義

    降矢政府委員 さようでございます。
  197. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そういうわけなんですよ。こういう法律はまず世界にその例を見ない。借金の保証が収入として計上をされなければならない、一体そういう会計処理というものはあるんでしょうか、ないんでしょうか。国税庁長官、ひとつ学識のあるところでお答えを願います。
  198. 泉美之松

    ○泉政府委員 渡辺委員はすでに御承知のことなんでありますが、税法におきましては権利発生主義、この権利発生主義が近代会計学の発生主義とどういうふうに合致するかということにつきましては、いろいろの御意見があるようでございますが、しかし、原則として企業の会計というものは、債権、債務は発生主義によって経理をしていくというのがたてまえになっております。しかし、その発生主義と申しましても、単なる約束ですぐに権利が発生し、義務が発生するというものではないわけであります。したがって、債権が発生するということによって課税適状になる場合に、初めてそれを収入として計上すべきであり、また経費として支出する面につきましても、費用収益対応の原則によりまして、経費として認められるものを初めて経費として計上した場合に損金に見ることになるわけであります。したがいまして、税法上におきまして発生主義をとるということにいたしておりますが、その発生主義の内容は、そうした課税適状あるいは費用収益対応の原則によって判断すべきものと考えております。  ただ、これは税法上の原則でございまして、これを他の法律におきまして、それではどういうふうに取り扱うかということになりますと、それはその法律の目的に応じて、発生主義としてもどの程度のものを取り入れて規制をする必要があるか、これはそれぞれの法律の目的に従って判断さるべきことだ、かように考えます。
  199. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 それはそのとおりでしょう。自治省は自治省特有の方法でやるのですから。これは私はあとでだんだん説明しますが、何式会計というのか、会計帳簿ということばが出てきますからあとで質問しますが、こういうふうなのは私は初めて見たのですよ。借金の保証をしてもらったら収入として計上する、そういう会計処理は、少なくとも近代会計においてはどこでも行なわれないし、明治以来あんまり私はあったことがないのではないかと思う。しかも、そういう見解に立つと、だれもがそういうことは考えていないけれども、収入簿、支出簿という帳面を政治団体は渡されます。その帳面に書いてなければ、知らずに書いてなかったか、こういうものは必要ないと思って書いてないか知らぬが、これは書いてないということ自体で、そういうことは自治省は言っているけれども、世間ではそういう考えは認められないということを意識して、否定して書かなければ、これは虚偽の記載になりますか。
  200. 降矢敬義

    降矢政府委員 意識して書かないということになれば、そういうふうになります。
  201. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 みんな虚偽の記載になってしまいますよ。そんな借金の保証してもちって収入だなんと書く人はありませんからね。保証それ自体——借金で金が入ったときにまた収入に書くのですから、そうするとダブって書くのですか。借金で金を保証してもらって、今度金が入ったときは、当然それは現金の収受ですかち収入になりましょう。どうですか、局長。
  202. 降矢敬義

    降矢政府委員 その点は、その項目の備考欄にその事実を付記するということにしてあります。
  203. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、金が入ってきたときは書かなくてもいい、約束のときだけ書けば、収入には約束したときに書けば、金が入ってきたどきに書かなくたっていい、借りられたときに書かなくていい、こういうことですね。
  204. 降矢敬義

    降矢政府委員 したがいまして、いま申し上げましたとおり、記載の備考欄というのがございまして、備考欄にそのことを付記するということにいままで記帳の形式としてはやっております。
  205. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 こういう簿記はまずわからないのですよ。これは自治大学を出ないと、なかなか普通の人にはわからない。守られて金が入ったときに、その口約束が守られたと書くというんだな。ところが、すでに報告を済んでしまっていれば、半年ごとに報告を出すんだから、六月の十日までに出すんだから、そのときはまだ金が入らない、保証をしてもらって金を借りる約束になっておる、保証のほうも書く、それから金を借りられるという約束したほうも書く、しかも報告は出してしまった、八月になってその話はペケだったという場合、どこへ付記するのですか。今度は会計報告が年度が違うのですよ。
  206. 降矢敬義

    降矢政府委員 したがいまして、いまのような場合において、上期と下期における、将来にそうなるであろうというのにならなかった場合には訂正して出していただく、こういうことに考えております。
  207. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、一ぺん報告を出したものを、半年なり一年過ぎて、とうとう話だけで金は借りられなかった。収入の報告を出しちゃったんだけれども、あいつは間違ったんだからといって今度は修正をして出す。こういうふうなことは、まずまず常識的な処理方法ではなかろうと私は思います。しかも、保証してもらったり、金を借りるという約束をした場合は収入に書くんだ。わかっていて書かなければ、これは虚偽の記載になるんだ。虚偽の記載になるとどういう罰則を受けるかというと、三年以下の禁錮、五万円以下の罰金、こういうことですな。
  208. 降矢敬義

    降矢政府委員 現行法の二十四条におきまして、「三年以下の禁錮又は千円以上五万円以下の罰金」があるわけであります。
  209. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 刑事局長来ておりますか。——刑事局長、こういうのは私は一ぺん違反をやってみようと思うのですが、そのときは禁錮にしますか、起訴しますか。いまのような借金の保証をしてもらったのを収入にあげなかったからといって……。
  210. 川井英良

    ○川井政府委員 そのときに考えたいと思います。
  211. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 だからこういう法律はおつかなくてとても賛成できない。そのときにならなければわからないんだからね。一ぺん法律を通してしまうと、皆さんのほうの手元において都合のいいように、それじゃひとつこれは罰金にしてやるか、禁錮にしてやるか、そのときになって考えるというのですから、こうはっきりしたことについて、そのときにならなければわからないというようなことでは、われわれは非常にこれは困る。  なぜこういうふうな矛盾が出てきたか、私は大体わかっている。これは、要するにあまり答申に忠実であったか、あるいは公職選挙法におけるところの利益誘導罪、買収、こういうものの規定をそのままそっくり持ってきてしまったというところに、私は問題点があるのではないかと思いますが、どうですか、自治大臣
  212. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この収入の規定は現行法にもございます。二十三年以来の法律のていさいでございます。
  213. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 約束は……。
  214. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 約束もございます。
  215. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、いままであったから、そのままそっくりこのたびの改正においても、何らこれについては不便を感じず、そっくりそのまま書いておいたんだ。こういうところは直さないんだということですね、何ら矛盾を感じないと。
  216. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政治団体における収入というものは性格をとらえて、「こうした収受の承諾又は約束」というものも収入の中に入れるという、これは政治団体の収入というものの特性から考えてこういう法律ができたわけでございまして、従来の形式を踏襲したわけでございます。
  217. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そういうように、この政治資金規正法というのは、もともと非常にずさんな法律なんですよ。これはなぜそこから出たかというと、事の起こりはやはり利害誘導罪とか、買収罪とか、こういうものを、現金の交付をした、しないというだけで処罰するのじゃ足らない、やはり金をくれるから選挙を一生懸命やれよ、くれないのだが、くれるからと、それを真に思って一生懸命やったということになれば弊害があるから、そういう個々のものを規制しようということで、選挙法にあったものを政治資金規正法にそっくりそのまま持ってきて、それで全体の——これで会計というものは、一つ一つの取引についてはわかるけれども、全体の問題については非常にわからなくなってくる。まして支出の問題になってまいりますと、この思想で各会社を規制するという思想が出てきているわけです。十分の三以上支出したものについては、これを政治団体とみなして届け出をしなければならないとか、個人、会社その他の政治団体に対するいろいろな規定がこういうものを基礎にしてできているわけです。そこに重大な問題が控えているということをだんだん私は明らかにしていきたいと思います。  要するに、この法律では現金主義会計をとっているわけでもない、発生主義会計をとっているわけでもない、損益会計をとっているわけでもない、この会計は何が何だかわけのわからない会計なんです。しかも、会計帳簿を備えて、それにいま言ったようなことを書いていかなければ処罰をする、こういうことはめちゃくちゃですわ。少なくとも世間の人には、六カ月で幾らPRしたってわからない。商業学校を出た人だってこれはわかりませんわ。そういうふうな気持ちを、私はこの法律を何べんも繰り返して読んで強くしたものであります。  収入の承諾、約束というものの考え方については、おおむねあなた方の思想がわかったから、続いて支出というものについてお伺いをしてみたい。支出とは何ぞや。「「支出」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束をいう。」今度承諾が抜けちゃったのですが、どうして承諾が抜けちゃったのですか。
  218. 降矢敬義

    降矢政府委員 承諾は、先ほど申し上げましたとおり、立法のいきさつを見ますと遺贈の承諾、もらうという収入面での遺贈ですね。遺贈の承諾という点でこの承諾を入れたようになっておりますので、したがって、私考えますのに、収入のほうには収受の承諾があり、支出のほうには通常そういうことは——政治団体に対する支出という考え方でございまして、通常政治団体がそういうことをすることはなかろうということで、承諾が抜けているのではなかろうかと思っております。
  219. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 政治団体は承諾をすることはないだろうからといって、収入のほうでは交付または供与の約束及び承諾となっているのだが、支出のほうでは承諾をのけちゃって約束だけにしたんだという、そこらのところもどうもあいまいで私にはよくわからない。  ところで支出とは何でしょうか。これだけを読んでもわかりません、実際問題として。経費の支払いは支出、自動車を買うのも支出、そうですね。あなたを年俸百万円で使いますよと言ったのも支出ですか。
  220. 降矢敬義

    降矢政府委員 つまり、一般の人件費に相当するものでございまして、支出でございます。
  221. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そういうものまで支出に入るのだそうです。普通の会計からすれば、採用通知を出して来てもらって一カ月働いた、働いたときに金を払わなければ、締め切りのときに支出に計上するということは未払い、現金を現に払わなくても未払いとして支出に計上することはやっております。けれどもこれは、年俸百万円という採用通知が行けばこれは支出になってしまう。こういう支出の概念というものは私はわからないのですよ、実際問題として。手形をもらって政治団体代表者の名において裏書きしてやったら、これは支出になりますね。受け取り手形に裏書きしたら……。
  222. 降矢敬義

    降矢政府委員 それは政治団体がそういう行為をやれば、その六項の「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、」に該当いたします。
  223. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 これは支出になる、こういうことで、手形を発行すればもちろん支出、手形に裏書きをすればこれも支出、借金の保証をしてやればこれも支出、保証をしただけで。こういう支出の概念というものは、これは費用でもなければ、この収支というものはいわゆる現金の収支ということでもない。損金ということでもない。つまり正味財産をふやす減らすという損益ということでもない。現金の出し入れということでもない。全然別な収入支出の概念というものは、これは自治省式会計学というのか何というのか私はよくわかりませんが、よっぽど選挙局で勉強した人以外は自治省の役人でもわからないのではないかと思いますが、どうでしょうかね、自治大臣これは。
  224. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 一々あげられました中でも、単なる裏書きというようなものは支出にはならぬと思いますが、いずれにしましても、この条項も従前からこういうことの取り扱いをいたしておるのでございまして、政治団体はすべてこれに従って従来も届け出をされておるわけでございまして、何ら現状を変更しているわけではございません。
  225. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 前からやっていたのだけれども、みんな気がつかなかったので守らなかったのだということだと私は思いますよ、前からそういう観念でやっておったとすれば。そういう報告を出した人はおそらく一人もいないでしょう。通知一本であなたを百万円で使いますからと言ったのは支出になって、手形の裏書きが支出にならないというのは、そんなことは絶対にありません。それは明らかに支出になります。ですから、この支出の概念というものが非常にむずかしいのです。  そこで私はお聞きをしたいのですが、自動車を買ったのは支出で、月給を払ったのも支出だ。定期預金、証書、それを買ったら、局長さん、何になるのですか。
  226. 降矢敬義

    降矢政府委員 要するに、ものを買った場合の一例にすぎないと思いますので、買ったために支出する金は支出でございます。
  227. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 それじゃ預金をしてもやはり支出ということになりますか。
  228. 降矢敬義

    降矢政府委員 預金をした場合には、それはそのものの帰属がございまして、外に出るわけではございませんので、支出とは考えません。
  229. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 定期預金はともかく、株券なら支出で、預金をすれば支出にならないのだということになってぐると、さっき言った支出というのは、大体現金の収入支出に近い概念かなと思うと、そうでもないのですね。そうすると、これは現金の収入支出の概念じゃないのですね。この支出というのはなかなかわからないのですよ。これはむずかしい。人に金を貸せばもちろん支出になるのですから、だから単なる現金の収入支出じゃない。そうすると損益かというと損益でもない。こういうことで、例をあげればたくさんあるのですよ。たとえば自民党が何かで建物を大きく建てる。設計士に五百万円で設計してくださいと頼めば、設計書ができないうちにそれは支出になるのですよ。頼めば口約束でも支出になるのです、契約書がなくても。こういう概念です。設計書ができ上がって設計書が届けられて、それで契約の履行のときに支出になるというならまだ幾らかわかるような気がするのだが、そうじゃない。こういう支出の概念で、あなた農協その他の団体を規制できますか。ちょっとそこのところをひとつ見てみましょうか。  まず二十二条です。二十二条に「政治活動に関する寄附」ということで制限規定がある。個人のする寄付一千万円、会社のする寄付云々、その次労働組合、その次に四番として、「前二号の団体以外の団体のする寄附」、こういうのがあるのです。これはどういうのかというと、具体的には、それ以外の団体のする寄付というのですから、会社でもないもの、労働組合でもないもの、個人でもないもの、それ以外の団体です。社団法人、財団法人、農業協同組合あるいは林業組合、あるいは任意法人、民法法人、何でも入りますね。鉄鋼連のようなものも入るし、経団連のようなものも入りましょう。会社でもなければ個人でもなく労働組合でもないそれ以外の団体です。しかも、この法律にはちゃんと御丁寧に、この法律全部にわたって、収入支出とはこういうものなりといって、いま応答をやったようなものが収入支出であるという法律上の定義があるのです。したがって、ここを見ると、「当該団体の前年における年間の支出額の十分の三に相当する額」、こういうことが書いてある。たとえば、全購連の支出額が何ぼ前年あったかわかりますかね。
  230. 降矢敬義

    降矢政府委員 承知いたしておりません。
  231. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 これは国税庁にちょっとお聞きしたいけれども、たとえば全購連とか、全販連とか、信用金庫とか、銀行とか、まあいろいろあるでしょう。これは会社でないのだろうから、会社というのはあげてあるのだから。そういうものの支出が幾らあったか、財務諸表を見て、帳簿を見て、決算書を見せてもらってすぐわかる人があったら手を上げてください。どなたでもけっこうです。ありますか、どうですか。長官、そういうことはできますか。
  232. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、そういうあれですぐに支出額が幾らということはわかり得ないと思います。
  233. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 すぐにと言うけれども、大体財務諸表からわかりますか。
  234. 泉美之松

    ○泉政府委員 財務諸表には、収入支出としては計上されておりませんからわかりません。
  235. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、農協その他の団体の支出額の十分の三というのを調べるのは何で調べるのですか。支出の十分の三、こういっておるのだが、何で調べるのですか。
  236. 降矢敬義

    降矢政府委員 これは会社、労働組合以外のすべての団体を通じまして支出額という表現で、十分の三に相当する金額という制限額を書いたわけでございます。その他の団体につきましては、御指摘のとおり千差万態でございまして、一定の基準のとりようがございませんので、支出額ということで、あとは政令でその支出額をどう押えるかということをセービングクローズとして定めることにしてあるわけでございまして、要するに、その団体の活動規模といいますか、そういうものを表現するのにどういう表現をしたらその団体ごとに合うだろうか、こういうことで、政令の際にそれぞれの団体について専門家の御意見も聞きながらこの額を定めていきたい、こう考えているわけでございます。
  237. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうかってなことをされては困ります。法律で政令にゆだねるということは書いてないのだから、あなたがかってにそこのところだけ政令をつくられちゃ困りますよ。ほかのほうについては、こういうものは政令で定めるとか書いてありますが、あなた政令で出しなさいと言ったところが、その政令の要綱みたいなものを持ってきたけれども、そういう重大な問題の政令の構想がわかっていないでしょう。二十二条関係の政令事項というのはもらった。それはわかっているけれども、その中には何ら書いてないでしょう。少なくとも国会に出してくる以上は、この程度の規定を政令でするということじゃないですか。年間の支出額については、団体の新設、団体の分裂があった場合の支出額について定める、政令ではそこだけ定めるのだということをあなたは言っているけれども一つ一つあらゆる団体についてその支出のあり方というものを定めることは不可能なのです。できますか。できればお約束してください。不可能だと私は思う。
  238. 降矢敬義

    降矢政府委員 もとより十分に研究いたしますけれども、たとえば、いま御指摘のようないろいろな会社以外の団体で社団法人、財団法人、特殊法人あるいは任意団体、いろいろございますので、そういうものにつきましてその団体の規模をあらわすものとしての支出額という内容を十分検討してきめてまいらなければならぬ、こういうように考えております。
  239. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 これはわからないですよ。あなただって調べのしようがないですよ。財務諸表はつくることに法律できまっていますから、財務諸表はつくります。貸借対照表、損益計算書、こういうものは新聞にも公告しますし、わかります。しかし、いまあなたがおっしゃったように、損益でもなければ、単なる現金の収入支出でもなければ、発生主義をそこに加味したもの、こういうものの収入支出というのはわからないです。調べのしようがないです。もし調べるとしたならば、全購連なら全購連という一年間におけるあらゆる財産に影響を及ぼす一々の取引のすべてについて、これは支出になる、これは支出になる、これは支出になるとのけ出して、何十万種類というものを合計してみなければわからないのです。そうでしょう。わかりますか。
  240. 降矢敬義

    降矢政府委員 あらゆる団体に通じての支出額をどういうふうにきめていくかということにつきましては、もとよりまだきめておりませんけれども、たとえば、ある団体についての経費というようなものを、あるいは費用といいますか、そういうもので、一体その額が団体の規模をあらわすものとして押えられるかどうかというようなことについても今後検討してまいり、また専門家の御意見も聞きながら、政令の支出額の計算の方法をきめてまいりたい、こう思っております。
  241. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 こういうようにわからないのです。これは神さまでない限りわからないのです。そのとおり正直に言いなさいま、わからないのだから。だから答申においてはここは経費となっておったのですよ。経費といっても、経費だけでもわからないのですが、答申は、年間経費額の十分の三というふうになっていたと思いますが、ここでは経費額というのは支出額ということになったから、なおわからない。しかも、支出については法律で、支出というものはこういうものですという用語の定義がうたってあるのですから、これも変更することはできません。法律改正しない限り、幾ら政令でどんなことをきめようと。経費はすなわち支出とみなす、そんな政令を書くことはできない。そうすれば、結局支出の概念がわからないから、この支出総額というものがわからない。支出総額がわからないから、十分の三以上をこえる団体がどれであるかもわからない。あとになって一つ一つ調べてみればわかるけれども、少なくとも政治資金寄付を受けるについて、限度超過であるか超過でないかということは、会社だって膨大な費用と時間をかけない限りはわからない。会社でなくて団体にしてもそうです。こういうところにこの法律の矛盾というものが出てきておる。  どうしてその矛盾が出たかということは、現金主義会計を母体としたところのこの法律に、損益計算というようなものをここに入れ込んできたり、あるいは発生主義的なものを入れてきたりしたから、思想の大混乱を起こして、わけがわからなくなってしまったというのが実情ではなかろうか、私はこう思いますが、どうですか。これは取り締まりのほうへ聞いても、どうせそういうふうな事件が発生してみないと、そのときになってみなければわかりませんと言われるのでは、これは聞いたって意味がないものね。だから聞くのはやめましょう。そういうことですから、私は政治資金規正を、適正、合理的にしていくことはけっこうだけれども、法を急ぐあまり世論に迎合して、そうしてわけのわからないものに罰則をつけて——専門家がここで応答していてわからないものを、一般国民がわかるわけがないじゃないですか。そういうふうなところに問題があるのだ。だからもっとよく慎重に検討して、これだけのものをかりにするとすれば、税務関係だったらおそらく一年くらい前から準備をして、あらゆる人の意見を聞いて、あらゆるケースを考えてやると思うのです。ところが、審議会委員の皆さんの中に会計学者が入っていたのか入ってないのか知らないが、こういうような問題を考えないで、ただ、その他の団体については、経費の十分の三以上を支出したものは届け出によって政治団体とみなす、あるいは届け出しないものは十分の三以下の寄付しかできない。これが今度は支出というふうに直ってまいりましたから、ほとんどこれは無制限なんです。逆用されたら無制限になるということです。  私が一つ抜け道を教えておきます。抜け道はどういうのかと申しますと、たとえば五十万円しか支出できない会社、資本金二億円、利益金三千万円の会社が十あったとする。自分の同族会社です。全部ほかをやめて自分のところへ集めてみたところで五百万円。ところがその会社は同業的な、同じような仕事をやっておる。そこで正式の協同組合をこしらえてもよし、任意組合をこしらえてもよし、そこのトンネル組合を一つつくるのです。トンネル組合をこしらえて、会社で使う材料はそのトンネル組合を通して売ればいいのです。そのときリベートを取ればいいのです。リベートを取っても取らなくてもそれはかまわないし、リベートを高く売ってもいいのです。そのトンネル組合は二千万円まで出せるのです。その裏道もちゃんとあるのです。そういうようなことは、これは幾らでもできるでしょう。できませんか。できなければ、その理由を明確にしてください。
  242. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 団体ごとに支出の十分の三、支出というものがなかなかむずかしいことは御指摘のとおりでございますが、この法律にもありますように、支出額の計算その他の問題は政令で定めることにいたしておりますから、できるだけその支出というもののつかみ方を政令ではっきりいたします。したがいまして、そうした協同組合あるいは任意の団体をつくられたときにも、その団体団体としての支出の十分の三以内でなければ寄付はできないということになるわけでございます。
  243. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 ですから、十分の三というのはばく大な金額になるということなんですよ、私の言わんとするところは。いいですか、資本金二億円、三千万くらいしかもうけがない会社だったら、五十万円しか出せないのですよ。その会社が十社集まったって五百万円しか献金できないのです。しかしトンネル——会社はだめです。組合みたいなものでなければだめです。社団法人だって何だってかまわない、会社以外のもり、また個人以外のものなら。そこでその組合を通しさえすれば、これは二千万円までは——十分の三というのは二千万円までだが、十分の三といっても、それは何億にもなるのですよ。取引額というものは当然支出に入るわけです。材料の仕入れというものも当然支出に入るわけです。収入、支出に入らないという前の概念からいってそういうことはあり得ない。材料の仕入れというようなものは当然支出額に入るはずです。ですから、その組合を全部一ぺん通せば、膨大な売り上げ金額、膨大な仕入れ金額になるのです。その三割というのですから、かりに十億あったら、三割だったら三億まで献金できる。しかしそれは二千万円だ、こういうことをいっておるわけです。  ですから、それならば何ゆえにこういうようなこまかいことをうんと規定する必要があるのか、ここに大きな——実際はこの法を忠実にやろうとすれば別ですよ。しかし、抜けようと思ったらどんどん抜けてしまう。だから、そういうふうなことでやはり法律というものは——それは訓示規定にするならばまた訓示規定で別ですが、詳しい人だけは逃げられて、不勉強な人はひっかかるということになるかもしれない。(「あなたは逃げられるよ」と呼ぶ者あり)あまり冗談は言わぬでください。ですから、私は法律論として収入、支出の問題をとっても、これは非常にいろいろな問題があるということをここで申し上げておいたわけであります。また、会計帳簿の問題とかあるいは時価の評価の問題、物で受け取った場合は必ず書けということをここでいっておるのですから、時価の評価の問題とか、少なくとも政治資金規正というのは、金の流れとその使い方に対して無関心であるはずがない。制限さえすればいいというものでは絶対にない。ですから会計処理については、これは全然無関心であっていいという話はなかろうと私は思う。したがって、それらの問題を通して疑問がまだまだ非常にたくさんあるのです。一時間でやってくれという最初からの約束ですからやめますが、これはまだ十分の一しか話していない。ですから、きょうは一応一時間ということですからやめますが、こういうような重大問題がいろいろあるのですから、ただ単に通すとか通さないとか、私は反対だとかいうことでなくて、それらの究明をしてもらって、納得いけば万歳で賛成を幾らでもいたしますから、ひとつそういう点を、ただ通してくれ、通してくれということだけでなくて、もっと冷静に、沈着に、良心的にひとつ御検討をいただきたい。それが国家、国民のためである、私はそう思うのであります。  委員長質問は保留しておきます。
  244. 小澤佐重喜

    小沢委員長 次に、島上善五郎君。
  245. 島上善五郎

    ○島上委員 いままでの自民党さんの質問を伺っておりますと、なかなか名質問もございますが、その基本的な考え方において、政治資金規正すること自体に反対の意見が非常に強いように思われます。そこで私は、これは提案者でありますから聞くまでもないことですけれども、念のため伺っておきます。  私どもは、選挙制度審議会答申の際にも審議に加わったのですから、その間のいきさつも存じておりますが、選挙制度審議会がいっておりまするように「最近の政治資金をめぐる問題、選挙の実態等、諸般の政治情勢に鑑みるときは、」政治資金規正を緊急に措置すべきこととしてなさなければならない、選挙制度全般改善が実現されるまで現状で放置することはできない、緊急に措置すべき事項として答申しておることは、大臣も御承知のとおりです。政治資金を緊急に措置する必要があるということについては、もちろん提案者ですから聞くまでもないことですけれども大臣もこれと同様の御意見でございますね。
  246. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政治情勢にかんがみまして、緊急にすべきであるという審議会答申につきましては、私どももさように存じます。したがいまして、この政治資金規正法改正提案いたして御審議をいただいておるわけでございます。
  247. 島上善五郎

    ○島上委員 善意の寄付を規制することはよろしくないという御意見、しばしばこの委員会自民党さんからも伺いました。善意の寄付であってもそうでなくとも、いわゆる量の問題ですね。寄付があまりに多額になりますると、弊害を生むおそれがある。政治に悪い影響を及ぼすおそれがある。そこで、二千万円が適当で二千一万円は不適当であるというきちっとした理屈はなかろうけれども、量が多過ぎますると政治に悪い影響を及ぼすおそれがあるから、団体の場合には二千万円、個人の場合には一千万円に規制する必要がある。これは、いわゆる善であるとか悪であるとかいうことではなくて、政治に悪い影響を及ぼすおそれがあるから、この辺に線を引いて規制をする必要がある、このように答申では考えていると思いますが、もちろん大臣もその考えは基本的にはお認めでございますね。
  248. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今回の答申は、寄付する側におきまして、要するに身分不相応の寄付というものは制限すべきであるという考え方であろうと思います。それを資本金の千分の二・五という額で押え、しかも、さらにその最高限を二千万円ということにいたしましたのは、ただいまお話しのあるように、特定のものが非常に多額な寄付をするということが、政治勢力に悪い影響を及ぼすおそれもあるということと、もう一つは分相応ということと、両方が入っておるのだと考えております。
  249. 島上善五郎

    ○島上委員 この答申が、本来政党の資金あるいは政治家政治活動の資金を含めて、党員及び党支持の個人に限るべきものである、本来のあるべき姿としてはそうである、しかし、一挙にこれをやると混乱を生じたり、党活動に停滞を及ぼしてはいかぬからというその配慮の上に立って、本来はそうすべきものではあるけれども、いわば一種の経過措置として、過渡的措置として、今回は団体のものを認めた、そういう趣旨答申であったことも、もちろんお認めでございますね。それから本来あるべき姿として、党員及び党支持の個人の献金に限るというこの考えについても、大臣は御賛成でございますね。
  250. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 しばしばお答えいたしましたように、政党が広範な国民大衆に基盤を持ち、しかも広範な国民大衆の財政的な支持によって運営されるということが望ましい姿であるというふうに考えるわけでございます。ただ、これまたしばしばお答えいたしましたが、会社というようなものも、その存立と申しますか、企業の運営に対しまして、自分に好ましい政治形態というものを望んでおりますので、そういう会社政党寄付するということを法律禁止することが、はたして妥当かどうかという御議論はあろうと思います。しかし、本来そうした広範な国民大衆の基盤に立った政党運営というものが望ましい姿であるということについては、私もさように思う次第でございます。
  251. 島上善五郎

    ○島上委員 会社寄付、献金をする場合に、自分に好ましい政治形態ということでございますが、これは非常に抽象的で、どういうふうにでも解釈されるわけですが、営利を目的とする企業が——二千万円といえばこれはたいへんな額ですね。大きな会社にとっても、私はたいへんな額だと思う。営利を直接の目的とする企業が、これだけのばく大な献金をするのですから、自分会社の存立にとって好ましいというよりは、もっと直接的な反対給付を希望しておる場合のほうが多いめではないかと思いますが、そういうことを考えて、それが政治に悪い影響を及ぼす、それが弊害を及ぼすおそれがある、こういうことになるのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  252. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 まあ会社によっては、あるいはそういう過去の実例において、非常に短期の反対給付と申しますか、そういうものを望んでおる会社が全然なかったとは私は考えないのでございますが、現在行なわれておりまする会社による政治献金というものの大部分は、むしろその会社存立のために好ましい政治形態が実現するようにという、そういう意味での寄付が多いのだと私は考えます。ただ、それがさらに非常にばく大な金額になる場合におきまして、営利を目的とする会社が非常にばく大な金額を政治献金しようというような場合に、直接的な反対給付を求めようとするおそれがあることも、これは警戒しなければならないことだと思っております。
  253. 島上善五郎

    ○島上委員 共和製糖のような場合、御承知のように相当の赤字を出している。これがばく大な献金をしておりますね。それは私の言う直接的な反対給付を求めた寄付であると私は考えますが、大臣はどのようにお考えですか。
  254. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この点は検察当局でもいろいろお調べになったことでございますので、私が批判がましいことを申し上げるのはいかがと思いますが、少なくとも非常に経営困難な会社が非常にばく大な献金をするというようなことは、ややもすれば直接的な反対給付を求めるようなことがあり得ることでございまして、警戒しなければならないことだと思います。
  255. 島上善五郎

    ○島上委員 今度の答申でありますように、また今度の法案でもありますように、欠損をしている会社寄付禁止しておりますのは、私はそういう意味が多分に含まれているのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  256. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 まさにそういうことでございまして、先ほど来申し上げる分相応の寄付ということになりますならば、赤字を出しておるような会社政治献金をするというのは、あり得べからざることという考え方で、赤字会社寄付禁止しておる次第でございます。
  257. 島上善五郎

    ○島上委員 先般、昭和四十一年度の寄付の公表が自治省からなされた際に、これは同僚の小松君が詳細に質問したので重複を避けますけれども、新聞記事によりますれば、タクシー会社がいまタクシーの料金値上げを強く要望しておる際、あるいは運動しておる際、これはいまの料金では成り立たぬからということなわけですから、個々のタクシー会社が、私の解釈によりますれば、あるいは自治大臣も御共鳴だろうと思いますが、分不相応と思われる多額の寄付を集めて献金しておる。これなどはやはり直接の反対給付を求めての、望んでの寄付である、好ましくないケースの寄付であると私は考えますが、いかがでしょう。
  258. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 旅客自動車経営におきましても内容のいいものもあり、悪いものもあるわけでございますから、一がいに、タクシー関係会社が相当な献金をしたから、それがすぐに料金値上げ等にからんで反対給付を求めておるのだと断定するのはいかがかと思います。いわばそういうことの意図のない献金もあろうかと思います。それらについては、現行法においては何らの規制もないわけでございますから、結局は国民一般の判断と申しますか、批判にまつほかはないと考えております。
  259. 島上善五郎

    ○島上委員 この発表によりますと、団体では九つ、個人では二人、今回の改正案に照らしますと超過しておる。いわば大臣ことばをそっくりかりて申し上げますれば分相応でない、分不相応の献金をしておるものがあるのですね。これはもちろん現行法に何ら抵触するものではありませんけれども、今度の改正法律案を提出したたてまえからしますれば、このような分不相応の献金は好ましくない、これは当然ですね。好ましくないということは、私は政治に悪い影響を及ぼすおそれがあるということになろうと思いますが、いかがでしょう。
  260. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 分相応ということの考え方でございまして、これもしばしばお答えしたように、二千万円がいいのか、二千五百万円がいいのか、三千万円がいいのか、いろいろ問題はあろうと思います。したがいまして、従来こうした制限がないときに、この改正案による額よりもこえておるから、直ちにそれが分相応なものだというような断定はできないと思います。この改正案成立した暁には、それはそこで問題がはっきりするわけでございますが、従来の考え方といたしまして、はたして二千万円をこしたから必ずもうそれは分不相応なのだという断定は、私はちょっと無理なのじゃないかと思います。その辺は寄付する側の良識にまつ以外に、現在のところではないと思うわけでございます。
  261. 島上善五郎

    ○島上委員 私は、現行法に照らして法的にどうこうと言っているのじゃないのですよ。しかし改正案を二千万円で押える、日本で一番大きな会社でもこれが分相応であるという解釈の上に立って改正案を出された立場からすれば、そういう見地からすれば、去年において三千万円も四千万円も五千万円も献金をしたということは分相応をこえるものであり、好ましくない形であるということは、私は当然そうなると思います。現行法に照らして、法律的にどうこうということを私は言っているのじゃないのです。この改正案を出した改正案の見地からすれば、そういうことになるのではないか。
  262. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この答申を四月七日に出されたわけでございますが、その過程においていろいろ限度額について御論議があったことは、委員であられる島上さん十分御承知のとおりなのでございまして、もちろんこの改正案が通りますれば、二千万円をこえれば悪だということになるわけでございますが、昨年の献金についてこの二千万円という数字をこえているから、直ちにそれが分不相応だと断定するのはいかがでございましょうかと、こういうことでございます。
  263. 島上善五郎

    ○島上委員 国と請負関係にあるもの、それから国の金融機関から融資を受けているもの、これは半額にしましたね。これは答申にありますからよろしいとしまして、それから補助金、交付金、利子補給、投資を受けているもの、これは全面的に禁止しました。まあ私はこれは答申ですから、その範囲で尊重するのはよいとしても、国とこういう請負関係にあるものあるいは融資を受けているものは、最初の第一次及び第二次答申では全面的に禁止するという考えに立っておったのです。これは大臣はまた文房具の話を出すでしょうけれども、文房具もその一つでしょうけれども、何十億ときには何百億という大きな請負をして、融資も十億、二十億という多額の融資を長期、低利で受けるというような関係にあるものが寄付をするということは、私は好ましくないと思うのですが、政治に対して普通の会社以上に悪い影響を及ぼすおそれがある、こう解釈いたしますが、今度の提案は半額にしましたけれども、その点の大臣見解を伺っておきたい。
  264. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 たとえば、請負を考えますると、たとえ国との請負関係に入ったといたしましても、それは通常利益は受けるでございましょうが、それ以上の特別な利益を受けるはずはないわけでございます。また、政府関係金融機関から融資を受けている場合でも、これは融資でございますから、利子をつけて返すわけでございます。そういう意味では、私は他の国あるいは公共団体と私法上の契約をしておるものと性格的には変わりはないと思うのでございます。ただ、請負というようなものが往々にしてそれは相当多額でございます。政府関係金融機関からの融資というのも相当多額にのぼる場合が多いわけでございまして、そういう点において国との関係が密接になるということでございまして、これを全面的に禁止するということはいかがなことかということで、制限の率を二分の一にしたというわけでございまして、本来ならば、普通に考えれば制限しなくてもいいのかもしれませんけれども、やはり非常に多額な金、しかもそれは税金であるというような点からいたしまして、半分にいたしたというふうに私は考えておるわけでございます。
  265. 島上善五郎

    ○島上委員 その点は見解がだいぶ違うんですが、私は本来ならば全面的に禁止すべきものであると思う。国との経済上の利害関係があるのですから、これは間違いない。特別の利益を伴うかどうかということは別としまして、普通の利益であっても何でも、国との経済上の利害関係のつながりがあることは間違いないのですから、そういうところからは献金を受けないのが好ましいことである、私はそう思う。しかし答申は、最初の答申はそうでございましたけれども、それも一ぺんにやってはお困りになる政党がおありでしょうから、そういう思いやりのある、あたたかい配慮と、実現の可能性を考えた結果だと思いますが、本来ならば禁止すべきものを段階的にという、そういう思いやりで二分の一にしたと私は思うのです。ところがその二分の一に、今度は骨を抜いて、請負料の十分の一以下のもの、長期融資の十分の一以下のものはこれを除外する、これは答申にないことですね。答申にないことを政府が——私どもこれを骨を抜いたと信じておりまするが、そういうものを出している。この理由、何か特別の理由がありましたらひとつ……。
  266. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 どうも島上さんと見解を異にするので、私は元来、たとえ国と経済関係があるといっても、それだけで寄付禁止するということに異論を持つのでございます。こんなことを言うとおしかりを受けるかもしれませんが、それなら国と経済関係のある国家公務員が寄付をしてはいかぬじゃないかというような議論も、変なところでは出ているわけなんでございまして、そういうことで、国と経済関係があるから直ちに寄付禁止しろということにはならないように私は思うのでございます。そういう意味で、しかし一面いま申し上げましたように、相当多額な金額の請負あるいは融資というようなものは、国と密接な関係があるという意味において制限をきつくしたということでございますから、そのうちの少額なものについては、私の見解からすれば、本来の姿へ戻って普通の制限でいいのではないか、こういうことでございます。
  267. 島上善五郎

    ○島上委員 その十分の一以下を除外した理由をひとつ聞かしていただきたい。
  268. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ですから私は、請負とか融資とかいう会社を原則的に禁止する、あるいは非常にきつくするというのでなくて、それは原則はむしろ普通の会社と同じではないか、しかし、相当多額な金が動くのでありますからこれをきつくしたという意味ですから、十分の一以下というような少額のものについては、私の見解からすれば、本来の原則に戻って、普通の会社と同じでいいではないかということでございます。
  269. 島上善五郎

    ○島上委員 その本来の原則というものに対する考え方が全然正反対ですから、これはいたし方ないかもしれませんが、そういうことをおっしゃるなら、この答申の思想というものは、本来の原則は、普通の民間の会社団体も全部禁止すべきものである、こういう考えの上に立って、五年を目途に党が努力をしてそういう状態にしなさい、こういうことは答申の文章の中にも入っておるとおりです。ですから私たちは、きょう出しました修正案の中にも、附則に、五年後には個人献金にするようにという趣旨のものを入れておるわけです。ですから大臣のお考えは、答申のものの考え方からするとだいぶ私は違うと思いますね。十分の一以下を除外した理由は、ですから本来の考え方が天と地のように違うから、そこからきているのだと思いますが、しかし、少なくともこれは答申にないことを、答申と異なったものを出しているという事実は、これはお認めですね。
  270. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 答申にはそういうことは表現されておりませんから、答申に表現された文章からいたしますれば、ないことがつけ加えられておるということでございます。
  271. 島上善五郎

    ○島上委員 そのほかにも答申と異なった、私どもこれを骨を抜いたと、こう考えていますが、答申と異なった、骨を抜いた部分があります。私はここで大臣と、骨とは何ぞやという議論をしようとは別に思いませんけれども、骨には一番大事な背骨がある。肋骨もある。それから頭蓋骨だとか、鎖骨だとか掌骨だとか、いまお医者さんの堀君から仕入れた知識ですけれども、肋骨がかりに残っておっても、まあ残っておるのは肋骨か何か知りませんけれども、背骨がかりに残っておっても、そのついている肋骨が全部取り払われたのでは、私は骨としての役目を果たさぬことになると思うのですが、いかがでしょうか。
  272. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今回の答申の背骨と申しますか、これは堀さんにお伺いしなければわからぬのですが、一番肝要なことは寄付制限をした二千万円、一千万円あるいは資本金の千分の二・五というような、これがまず一つの大きな柱だと私は考えます。そういう意味におきましてはそれは答申どおりにいたしておるわけなんでございまして、どれを肋骨とごらんになるかは別問題として、私はこの答申の柱としておるもの、それはそのまま実現しておるというふうに考えておる次第でございます。
  273. 島上善五郎

    ○島上委員 私も、大臣が一生懸命党内の抵抗にあいながら努力したという労を認めるにやぶさかではありません。そして背骨はかろうじて残っておるという事実は認めます。しかし肋骨が抜かれておる。そのために背骨が背骨としての役目を果たさない、こういうことになっておると私は思うのです。いまあなたも答申と相違する点が一つあった事実をお認めになったのですね。まだありますよ。それは寄付制限です。政治教育をする云々という点、それから後援団体、支援団体寄付制限、これを、緩和したといえば上品なことばですけれども答申と異なっているものを法律化したという事実は、これは厳として否定しがたい事実だと思うのです。この寄付の緩和の点も答申と異なっておることは、大臣もお認めでしょうね。
  274. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 答申の文言から見まして、それとは異なっておることは事実でございます。ただ、たとえば選挙区における候補者寄付制限等については、これは島上さんは委員で出ておられるので十分御承知なんですが、あの答申の出る段階におきましても、政治家社会生活上の問題等で問題があるのではないか、たとえば、純粋な社交上の問題等については、そこまでしなくてもいいんではないかというような御議論もあったということは御承知のとおりでございまして、結論としては全面禁止になりましたが、そういう点も考えましてこのような成文を得たということでございます。
  275. 島上善五郎

    ○島上委員 選挙区に対する寄付制限については、むしろ自民党の皆さんがより熱心だと言ってもよいくらい熱心だった。きょうは鍛冶良作君は見えませんけれども、鍛冶君は、これは古いことで恐縮ですけれども、わしの選挙区で、名前はあげてもいいですが、いま差しつかえがありますから言いませんが、何とか鉄道株式会社社長、衆議院議員何とかと大きな名前をつけて、選挙区内にある葬式屋に全部約束しておいて、どこのじいさん、ばあさんがなくなっても、赤ん坊が死んでもだれが死んでも全部花輪を届ける。支払いは会社だ。これをやっておる。これではとてもかなわぬというので、前回の改正には鍛冶良作君の意見が強く反映しておるのですよ。ところが、前回の改正ではまだまだ不十分であるということは、これはどなたもおわかりのとおりですから、そのざるをふさごうというのが今度の答申なんですが、そのざるの目をまた大きくあけてしまったということでは、これで骨抜きでないということを言えるでしょうか。私はさっき申しましたように、背骨が背骨の役目を果たさないようになった一つの非常に重要な点だと思う。私たちもふだんの寄付にはほんとうにほとほとしますよ。ほかの者がどんどんやると、自民党のだれそれさんが花輪をくれたから先生どうでしょうと言われると、どうもそう木で鼻をくくったようなあいさつもできないというようなことにどうしてもなりがちなのですね。せっかく答申して——どうも自治省は最初はそういうふうに考えておったらしい。私は藤枝大臣なかなか骨があるわい、こう思っておった。そうしたらいつの間にかすっとこれをとってしまった。これではふだんの選挙区に対する寄付、そのために必要とするばく大な政治資金、私はこれはあえて政治資金と言う必要はないと思うのです。これは、厳密に言うと政治活動ではないのですからね。私たちはこれはぜひ答申の線に戻したいと思って、さっき修正案を出しましたが、いかがでしょうか。
  276. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 従来弊害といわれておる花輪を出したり、盆踊りに寄付をするとか、そういうものは今度は禁止されるわけでございまして、この前も島上さんにお答えしたように、純粋な政治教育のための講習会に限ったわけでございますから、アリの穴から提防が破れるようなことは私はないと考えております。ただ、この問題につきましては、先般鍛冶さんからも御提案もございまして、いろいろ御議論があるところでございまして、そうした御意見については十分に傾聴いたしたいと考えております。
  277. 島上善五郎

    ○島上委員 個人のする寄付については、いまあなたがおっしゃるとおりです。しかし、後援団体や支援団体は前六カ月あと三カ月、解散の場合は解散の翌日、これは緩和されたわけですね。ですから、参議院は来年の七月選挙ですから、この法律が通過すれば、来年の一月になるとできなくなる。しかし、これは逆に言えば、来年の一月まではよろしいということになるわけですね。おそらくことしの暮れあたりお歳暮の競争が猛烈になるだろうと思うのです、この法律が通過しても。これではだめですよ。六カ月と三カ月のそれは確かにいままでよりも期間を長くしたことは認めますよ。しかし、逆に言えばその期間外ならばよろしいという、そういう法律解釈が成り立つ。したがって、お歳暮、年始が盛んになると思いますが、そういう弊害をお考えになっていませんか。
  278. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 後援団体等のする寄付につきましては御指摘のとおりでございます。しかしこういった問題は、はたして法律でぴしっときめてしまうのがいいのか、たとえば、暑中見舞や年賀はがきを申し合わせでやっておりますが、そういうことのような政治家の自覚にまつべきものも相当あると思うのでございまして、この法律がこのまま通ったとして、ことしの年末年始に非常な贈答合戦が行なわれるということは、ちょっと考えられないことではないかと思うわけでございます。
  279. 島上善五郎

    ○島上委員 私はそうじゃないと思うのです。もうすでに来年参議院に立候補する人たちは、ことしのお中元にはかなり活発なお中元活動が行なわれている事実を私はこの目で見て知っております。こういうことを心配するから六カ月、三カ月の期限をつけたということは、いままでより長くなったことは認めますけれども、それ以外の期間は野放しですから、これではなはだしく不十分だと思います。そして、これもさっき申し上げましたように、答申から逸脱した、答申の骨を抜いた部分であると思うのです。  それから、これもさっき公明党の伏木君が聞いておりましたが、法人の寄付に対する税の優遇措置ですね。大蔵省はこれには非常に難色を示しておったが、最後に自民党さんの強い意見に押されて、それじゃまあ三年程度、こういうふうに譲歩したようですが、まず税体系からいっても、あるいは政治資金規正するという趣旨からいっても、私は好ましくないことだと思うのですが、これまた答申にないことですね。骨を抜いたのではなくて、何か一つくっつけたのですね。肉だか骨だか知りませんけれどもくっつけた。あるいはへたをすると献金奨励法になりかねない心配が、少なくともその面からだけ見ればそういう心配があるわけです。三年でやめるということは、これは好ましくないことだけれども、三年程度まあがまんしよう、こういうことだろうと思うのですが、当然そうだという考えに立つならば、何も三年といわずに期限をつけないはずだと思うのです。私はあまり賛成じゃないけれども、そういう意味を含んでいると思います。したがって、私どもはこれまたこういう優遇措置をすべきものではないと考えておりますが、いかがでしょう。
  280. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 答申に表面切ってそういうことは書いてないことは御指摘のとおりでございます。税制上の合理化を検討するというようなことがあるわけでございまして、先ほどもお答えいたしましたが、一つ政党というものの性格、これは国あるいは公共団体、教育施設というようなものともちろん性格は違いますが、それと同じようにやはり公共性の高いものであり、その政党が健全に発展するということについては、国としてもいろいろな施策を講ぜられる面があれば講じていっていいのではないかということを一方に考えております。その意味におきましては、政党に対する献金が会社のものでありましても、これが免税措置がとられるということは、決して理由のないことではないというふうに考えるわけでございます。  それから、献金奨励になるのではないかということでありますが、私は、献金そのものを何か非常に罪悪視することはいけないと思います。ということは、これはもう先刻御承知のことでございますが、政党に対する寄付の総額を制限しているわけでないのでございます。寄付する方には制限がございますが、その範囲内では、政党はいろいろ資金集めをして政治活動を活発に行なうものだと思います。そういう意味で、この面だけをとらえてみれば、あるいは一種の献金奨励という形が起こり得るかもしれませんけれども、それそのものを罪悪視することは、いかがなものであろうかと考えておるわけでございます。
  281. 島上善五郎

    ○島上委員 それから、例の施行期日のことですが、これはもう何回も同僚から聞いておるので、私は多少角度を変えて伺います。  大臣は、六カ月ないし九カ月あれば周知徹底は可能である。それならば、期日を政令にゆだねないでこれに書いたらよかりそうなものだと思うのです。書かないところに私どもの了解できないところがある。心配がある。一体周知徹底できたとかできないとかいう判断は、この法律によりますと自治大臣がなさるわけですね。そうですね。もし六カ月で周知徹底できたと思えば六カ月で実施するかもしれませんけれども、九カ月かかれば九カ月で実施する、場合によったらそれ以上に延びて、いわゆる両輪にならぬとも限りませんし、そういう心配が私どもにはあるわけです。それで、周知徹底できたという条件と申しますか、客観的にどういう状態のことをさすのでしょうか。これで周知徹底ができたという判断はあなたがなさるわけですね。どういう状態になった場合に、どういう条件が満たされた場合に周知徹底できた、こう御判断されるわけですか。
  282. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これは、いろいろ法律解釈あるいは手続の周知徹底を、市町村あるいは都道府県の選管等を通じても行なわなければならぬと思いますので、どういう時期という判断はなかなかむずかしいと思いますが、しかし、それはわれわれの努力によりまして、少なくとも国民の一般、特に会社その他の団体あるいは労働組合、職員団体等がこの法律を十分理解したと見られた場合には、周知徹底ができたというふうに見ていいのではないかと思います。お疑いなさるのはわかるのですが、私は常に申し上げているように、純粋にそうした手段を講じた上におきましては、できるだけ早く施行いたしたいという気持ちに変わりはないわけでございます。
  283. 島上善五郎

    ○島上委員 たとえば警察関係とか、選挙管理委員会とか、そういう関係に周知徹底させる、これは早急にしなければなりませんが、それぞれちゃんとした組織機構があることですから、それに理解力を持っている人々ですから、私はそう時間はかからぬと思うのです。寄付をするほうでも、大臣はよく全国民にかかわる問題であるからとおっしゃいますけれども寄付をしているのは必ずしも全国民じゃないのです。全国民から見るとほんの一握り程度の人です。こういう人々にこの法律を理解させるということは、そんなに私は至難なことじゃないと思うのです。六カ月もあれば十分だと思う。余って返るほどあると思う。私たちが昭和四十三年一月一日から実施する、こういう修正案を出しているのもそういう意味なのです。全国民がこれを理解し、かつ納得した状態を大臣が判断してということになると、どういう状態をさすのかとなると、つかみどころのないような抽象的なものになって、大臣がしばしば、九カ月もあれば十分だとおっしゃっておりますけれども、非常に心配です。というのは、現にこのごろ反対論がかなり与党の中に強くて、世論の要求その他野党の要求で今国会で通過いたしましても、実施が政令にゆだねられておると、今度実施の時期を延ばすことに向かって抵抗が非常に起こってきはしないかという心配があるわけです。そこで私はこういうことを伺っておるわけですが、あなたの判断にゆだねられるとしましても、私はそうむちゃくちゃに延長することはなかろうと思いますが、これはこの前も一ぺん伺いましたが、九カ月以上延びるということはないと大臣信頼してよろしいですか。
  284. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 周知徹底といいましても、国民の一人一人までどうということ——法律はそういう場合も考えておるわけでございますが、主として寄付をする会社団体あるいは労働組合、職員団体、こういうようなところに十分理解をしていただければ、それで大体の徹底は期せられるのじゃないかというふうに考えますから、おっしゃるように、六カ月くらいあれば私はやれると思っております。ただ、それなら六カ月でやったらどうだということになろうと思いますが、はたして六カ月でやれるかどうか、いまのところ自信もないというようなことでございますから、九カ月を延びるようなことは万々ないと考えております。
  285. 島上善五郎

    ○島上委員 もうあまり時間がないからはしょってあと二点だけ伺いますから、なるべく簡潔にお答え願いたい。  これも答申にないことをつけ加えた。このくらいのとげをつけ加えたら社会党はのまないだろう、こういう思惑かどうか知りませんが、例の寄付あっせん、それからチェックオフです。あっせんとは、これは堀委員質問してはっきりしておるのですが、ここでもう一ペン確認の意味で伺っておきますが、労働組合はそれぞれこの法律にあるランクで組合としての寄付認められておりますね。だから組合としての寄付は、組合が所定の手続を経てきめた場合には、もちろんあっせんにはなりませんね。
  286. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 組合が組合として政党寄付するのは、あっせんにはなりません。
  287. 島上善五郎

    ○島上委員 寄付というものは、私は本来任意のものだと思いますが、この法律によりますると、強要するあるいは威迫をするというような表現を用いております。この点だけはばかに念入りな法律だと思いますが、寄付というものは本来本人の自発的意思に基づくものであろうと思いますが、その点に対する解釈を伺います。
  288. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 元来寄付というものは自発的なものでありまして、その人の純粋な、自由な意思で決定さるべきものだと思います。ところが、この寄付あっせんをするというような場合におきまして、ややもすればそれが強制的になるおそれがございますので、そういう強制的なあっせんをしてはいけないということを規定いたしたわけでございます。
  289. 島上善五郎

    ○島上委員 私は労働組合がする寄付あっせんでないということ、しかし、それ以外にあっせんという場合もあるでしょうけれども、この法律にいう威迫したりその他不当な方法あっせんするということはあるまいと思いますけれども、こういう法文を定めておきますると、拡大解釈されて乱用、悪用されるおそれがあると思うから伺ったわけです。  労働省に伺いますが、チェックオフを禁止しておりますね。しかし、労働基準法によりますれば、労働組合もしくは多数の、三分の二以上を代表する者との間に協定ができておりますれば、賃金から控除することが認められておるわけですね。もし、ここにいう寄付あっせんが、労使の間に控除することの協定が成立しておる場合には、これを禁止するということは基準法に抵触するのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  290. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 基準法でございますので、厳密に言いますと私の所管ではないわけでございますが、ただいまの御質問のチェックオフにつきましては、基準法二十四条によりまして、労働者に賃金の直接全額払いの原則がきめてございます。それで、その直接全額払いをいたしません場合には、基準法違反として使用者が基準法上の責任を問われるというたてまえになっておるわけですが、その責任を免除される要件といたしまして、労働者の過半数の者との書面による協定があれば、その場合には基準法違反にはならないということを規定されておるわけでございます。  ただいまこの政治資金規正法で御指摘になりましたあっせんについての賃金からの控除の禁止というものは、いまの基準法におきまして、労使の間において賃金その他の労働条件についての労働者保護という観点から定められました規定とは別個の角度から、ただいまも御引用になりましたように、政治資金寄付というものがきわめて任意性の強いものであり、また、そういう自発性、任意性というものを強く要請されるものだという政治資金の性格からくる規制であるというふうにわれわれは考えておるのでございまして、基準法による協定を結んだ際の免責があるかないかということにつきましては、一応別個の問題であるというふうに考えております。
  291. 島上善五郎

    ○島上委員 この免責控除は、私は、労働組合の組合費に限定するものという解釈ではないと思うのです。たとえば指定商人、洋服の月賦屋が入り、くつの月賦屋が入るというような場合にも、現に労使の間で協定して控除しておるのですね。政治資金は、かりに組合として献金する場合は問題はありませんけれども、そうじゃない場合に、月賦屋から洋服を買うのでも、何も組合として買うわけではないから、全く自発的に個人個人で買うのですから、それと同じことですから、組合で協定した場合に控除することは、くつや洋服の月賦と何ら異ならない性質のものだ、こう私は思いますが、いかがでしょう。
  292. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいまおっしゃいましたように、月賦屋、あるいは団体生命、あるいは社内預金といったようなことにつきましても、労使間で協定を結びまして賃金から控除するという場合に、二十四条に基づく協定があれば基準法上は免責をされるということになっておるわけでございます。したがいまして、組合が組合として寄付を行なう場合に、たとえば組合費として集めまして、その組合費の中から組合として寄付をされるというような場合と、それから寄付あっせんという場合とは、その政治資金規正法取り扱いを異にしておると思うのであります。後者の寄付あっせんの場合におきまして、政治資金規正法上は、そのような協定を結んでもそれはしてはならないということになっておるわけでありますが、それならば、そういう協定をしました際に、基準法との関係はどうなっておるかということになりますと、そういう協定を結んでおれば、基準法上使用者が基準法違反の責任を追及されないということにおいては同じことであるというふうに考えております。したがいまして、労働法のたてまえとしてきめております基準法上の義務違反に対して、使用者を追求するかしないかということは、基準法により解釈をいたすわけでありまして、おっしゃいましたような寄付あっせんにおきましても、協定があって、もしそれによってチェックオフをしたという場合に、政治資金規正法違反にはなりますが、しかし、その違反になりますのは、当該寄付あっせんを行ないました労働組合が違反になるということになるかと思いますが、基準法上は、そのために二十四条違反で責任を追及されるということにはならない、こういうふうに考えております。
  293. 島上善五郎

    ○島上委員 私も基準法上は違反にならぬという解釈をとっておりますが、こういう政治資金規正法でチェックオフを禁止すること自体が、そういう意味では私は不当だと思うのです。これは議論になるし、時間が来たからもうやめます。  最後に一つだけ。これもしばしば質問されておりますから、私は簡単に申しますが、たとえば、この制限額超過に対する罰則だけは五万円以下と非常に軽くなっておる。だから悪く解釈すれば、二千万円と限定されておるが、五千万円やっても、なに、わかったら五万円の罰金を納めればいいということにもなりかねないのですね。わかってさえそうなんですね。ところが、超過して寄付したかどうかということを調査する機関あるいは監査する機関というものは、全然考えていらっしゃらないようですが、それでは、これまた大きな抜け穴だと思いますが、調査あるいは監査の機関というものを全然考えないで、この法律が有効に施実されるというふうにお考えでしょうか。
  294. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 元来、政治資金というようなものは、政党あるいは政治家の良識によって運営されるべきものだと考えるのでございます。もちろん、罰則の規定でこれを担保いたしておるわけでございますが、そういう性格のものでありますので、行政権が、元来そういう自由であるべき政治活動の中に介入していくのはいかがなものであろうかということで、監査機関、調査機関等を設けなかったわけでございまして、あくまでやはり政党なり政治家なり、あるいは寄付する側の国民の良識を信じたいというふうに考えておるわけでございます。
  295. 島上善五郎

    ○島上委員 規制する以上は、その規制が正しく実行されなければ法律としての価値がないわけですから、国民の良識とか政治家の良識にまつというようなことでは、この法律が通って実施されましてもどうにもならない状態、違法あるいは超過違法ですね。そういう事実が発見できない、調査できないということでは、この法律は、極端に言えばあってなきにひとしいようなものになりかねないと思いますが、調査や監査については全然考えていないのですか。
  296. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 たとえば会社あるいは労働組合、職員団体会社の資本金とか労働組合の組合員数、職員団体の組合員数等につきましては、大体公表されておるのでございます。したがいまして、届け出を受けたものが調査をいたしますれば、制限超過をいたしているというようなものは、届け出そのものを見ることによって発見できるわけでございます。そういうことでございますから、何にも調査をしないということではないのでございますが、一つの監査機関あるいは立ち入り検査をするような権限を持った税務署のようなものをつくるのは、いかがかというふうに考えたわけでございます。
  297. 島上善五郎

    ○島上委員 要するに、届け出はちゃんとしたものと信頼して、届け出たその書面だけでもって信頼しておるということになりませんか。そういうことだったら、二千万円をちょっとオーバーした場合には、そのオーバーした分だけ報告を出さなければいいのですからね。それから二千万円ばかりじゃない、千五百万もあるし、一千万もあれば五十万円もあるわけですが、オーバーした場合に、二千万円以内の場合には、会社利益金とか資本金の点とかでもごまかそうと思えばごまかせるということになって、これはほんとうに実効のあがらないざる法になりはしないか。せっかく大臣が苦心してつくったのですから、実行する以上は効力のあがることを考えるのが当然ではないか。寄付する側の、あるいは寄付を受ける側の良識にまつといったようなことでは、私はあまりにもなまぬる過ぎるというか、効果のあがらぬものになるのではないかという心配をするのです。この法律案ではそのことを考えていないようですが、法律案が通過、実施後の実態を見ながらでもけっこうですから、ぜひそういうことを今後考えてほしいと思います。
  298. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御指摘もございますので、一方において行政権が政治活動の中に介入していろいろ問題を起こすようなことを避けながら、しかも実効のあがるようなことにつきましては、今後の研究課題にさせていただきたいと思います。
  299. 小澤佐重喜

    小沢委員長 次会は、公報をもってお知らせすることにいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時十四分散会