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稻葉委員 ただいまの
答弁につきましては、やや私もそういうふうに思います。私は単に議員
個人または議員仲間の利益に反するからなどというて、この
法律案について二、三
質問を申し上げているわけじゃない。それはわかってもらえると思うのです。私はあくまでも
——ああいう
不祥事件はまれな例ですね。これも今後そうひんぱんに起こるべき問題ではなかろうと思うのです。あれだけ
国民の批判を受け、それは
社会党においても自民党においても同様ですよ。そうしたならば、ここで国
会議員の
良識というものは、それほどずれているものとは私は思わない。そういうまれな例にこりごりして、悪いやつを憎悪するのあまり、よい市民の善意の
寄付を抹殺したり、私
所有権、
財産権の不可侵という、より大きな根本的な基本的な
憲法上の制度をゆがめるというような結果を来たす。ひいては
政党制
議会民主
主義の健全な発展、明朗な進展を阻害することは許さるべきものではないと思う。それは単に一
個人や一
政党の利益の問題とは違います。そういう観点で、ことに第三章の
基本権の規定は新
憲法の骨子でしょう。
国民主権、平和
主義、
基本的人権の尊重、これは
憲法改正を将来やるとしても、この
原則を動かすことはできない
限界だとさえいわれておる。その一カ条の
憲法二十九条の問題は
国民の権利義務に
関係しますから、
国民の代表たる国会はこの
選挙制度審議会の
答申は尊重するが、ことにこういう
国民の権利義務に
関係することは議員の重大な使命ですから私は重要だと思って先ほどから
質問申し上げたわけですけれ
ども、どうも
自治大臣の
答弁は私には釈然といたしません。しかし幾らやっておってもしようがないから、この問題はそういうことを誠心誠意をもって申し上げておきます。
私はそう時間をとりません。
委員長からも時間をこのくらいでということを言われておりますから、その
程度でやります。
第三に、前に申し上げましたように、
国家公務員法百二条第一項とそれから
人事院規則一四−七、それとこの
改正案二十二条第三号との
関係について御
質問申し上げます。すなわち、
公務員の
政治的行為の
禁止、
公務員の職員団体の行なう
寄付、これとの
関係を御
質問申し上げたいと思うのです。
結論を申し上げますと、この
改正案に、一般の労働組合と並んで当然に許されているかのごとく職員団体の
寄付を許しておりますが、この点は
公務員法と矛盾しないのか、違反でないのかという点を
質問するわけです。
公務員の
政治的公為の
制限、
禁止の根拠は
憲法第十五条の第二項にあると思うのです。「すべて
公務員は、全體の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」つまり
政治的中立ということばで表現されている問題です。しかし、
公務員といえ
ども、
個人として、一市民としての
政治的権利の保障ということは確保されなければならぬと思うのです。その二つの事柄をどこでどう調整するか、これはきわめてむずかしい問題で、各国の立法例も異なっております。
政治的中立に比重を傾斜する
憲法、わが国の現
憲法及び
公務員法はそちらに属すると思うのです。そのよしあしは別として。これに反し、
公務員の市民としての
政治的権利の保障ということに比重の傾斜をかけているのが一九一九年のワイマール
憲法百三十条だと思います。すなわち、このワイマール
憲法では、第一項に、「官吏は全体の奉仕者であって、一党派の奉仕者ではない。」これはわが国
憲法十五条第二項ときわめてその文言が類似しておる。しかし第二項にわが国の
憲法にはない文言が付加されておりまして、「すべての官吏は、
政治上の
意見の自由および結社の自由を有する。」すべて官吏は
政治上の
意見の自由を有するということは、
意見を保持する自由を有するという自明の理を申しているのではないと思う。これはこの
憲法についてのドイツの法学者の一致した
見解です。単に
意見の保持だけではなくて、その表明、ことばであらわす、行動であらわす、その自由も包含するものである、こういうことになっておりますから、これは
公務員の
個人として、市民としての
政治的権利の保障に強い比重がかけられている立法例である。
憲法例である。これに対してわが国の
憲法十五条第二項及びそれに基づく
国家公務員法は、その制定の経過に徴しても、その制定の由来に徴しても、
公務員の
政治的中立に重きを置いた
憲法であり、
法律であり、
公務員制度であると思うのですが、その点については
自治大臣も同様でしょうか。