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1967-07-14 第55回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十四日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 永田 亮一君 理事 野田 武夫君    理事 三原 朝雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       青木 正久君    臼井 莊一君       大平 正芳君    河野 洋平君       佐藤 文生君    坂本三十次君       中山 榮一君    福家 俊一君       藤本 孝雄君    毛利 松平君       山口 敏夫君    山田 久就君       石野 久男君    久保田鶴松君       黒田 寿男君    戸叶 里子君       松本 七郎君    渡部 一郎君       川上 貫一君    斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  田中 榮一君         外務省アジア局         長事務代理   吉良 秀通君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         厚生政務次官  田川 誠一君  委員外出席者         科学技術庁研究         調整局調整課長 田中 好雄君         外務省アジア局         北東アジア課長 野田英二郎君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         厚生省援護局庶         務課長     江間 時彦君         運輸省航空局審         議官      林  陽一君         専  門  員 吉田 賢吉君     ――――――――――――― 七月十四日  委員愛知揆一君宇都宮徳馬君、福家俊一君、  松田竹千代君、帆足計君及び伊藤惣助丸君辞任  につき、その補欠として河野洋平君、坂本三十  次君、藤本孝雄君、佐藤文生君、石野久男君及  び渡部一郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河野洋平君、佐藤文生君、坂本三十次君、  藤本孝雄君及び石野久男辞任につき、その補  欠として愛知揆一君松田竹千代君、宇都宮徳  馬君、福家俊一君及び帆足計君が議長指名で  委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十三日  在日朝鮮人帰国協定延長に関する陳情書外二  件(第三四  九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  月その他の天体を含む宇宙空間探査及び利用  における国家活動を律する原則に関する条約の  締結について承認を求めるの件(条約第一一  号)  航空業務に関する日本国政府大韓民国政府と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一八号)      ――――◇―――――
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  月その他の天体を含む宇宙空間探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    戸叶委員 いま議題になっております条約につきまして、きのうの同僚議員質問でまだまだいろいろな問題があるということがよくわかったわけです。また、私たちも理解できない問題がいろいろあるように思いました。  その中でも特にICBMのような大量破壊兵器を運ぶ物体をこの地球を回る軌道に乗せてはならないけれども、これを発射させて落下させる、そういうことは禁止されていないわけです。それではこの条約というものをつくっても、あまり意味がないんじゃないかというようなことも考えられるわけでございますけれども、一体どういう点で最も利益がある、どういう点でこの条約があればすばらしくいいことなんだというような点があったら、その点をちょっと御指示願いたいと思います。
  4. 高島益郎

    高島説明員 まず第一番に、この条約宇宙に関する新しい法秩序をつくった最初条約であるという点につきまして非常な意義があろうかと思います。ちょうど十年ほど前に国際連合宇宙空間に関します活動に伴って生ずる法律上、技術上のいろいろな問題について一つの指針をつくろうということから発足しまして、やっと昨年の暮れに国連総会でこの条約が採択された次第でございます。したがって、そういった観点からしまして、何よりも宇宙空間に全然秩序がなかった、そういう状態をとにもかくにもここに秩序を築き上げたという点が第一点であります。  第二点は、ただいま先生の御指摘のとおり、いろいろ問題がございます。特にこの軍縮措置につきまして、宇宙空間にも及ぼしていって、完全に平和利用にのみ使うという非常な理想に燃えて発足したわけでありますが、実際にはやはり米、ソを中心とします現在の国際情勢にかんがみて、そのような理想がとにかく実現できなかった。しかし、核兵器につきましては、その第四条の第一項に掲げてありますように、衛星として地球軌道に乗せないこと、それからその他宇宙空間に配置しないというところまではさまったわけでございます。それ以外に全般的に核兵器を含み大量破壊兵器のみならず、それ以外の一切の兵器宇宙空間において使用してはならないというところまでは、実はこの条約規定し得なかったわけでございます。これは今後を期すべきものとわれわれは考えております。  実際に完全軍縮というのが人類の理想であろうと思うのでありますけれども、そこまでいきますには、やはりいろいろ軍縮措置といたしまして関連する核兵器軍縮の問題がございますので、宇宙空間にだけ完全に軍縮を行なおうということも、実は現段階ではできなかった次第でございます。
  5. 戸叶里子

    戸叶委員 いま伺っておりますと、何とかして平和利用にだけ徹したい、そういう意図を持ってやったということを買うぐらいで、まだ実際的にはなかなかそういう理想まで到達しておらないと私は思います。そういうふうな理想に達するようにいろいろな国がいろいろな努力をしていかなければならない。今後においての努力というものに待つ条約じゃないかということを感ずるわけです。  そこで、二、三の点を順を追って聞きたいと思いますけれども、小さなことですが、七条に「物体を発射し若しくは発射させる」というふうに書いてありますね。その「発射し」と「発射させる」ということの意味の違いはどういうことでしょうか。ただ単なることば上のことでしょうか、何か意味があるんですか。
  6. 高島益郎

    高島説明員 第七条の「宇宙空間物体を発射し」というのは、これはその国がみずから自分の手段によって発射する。それから「発射させる場合」と申しますのは、自国でじゃなくて、外国自分の国でつくった物体を発射してもらうというふうな場合でございます。
  7. 戸叶里子

    戸叶委員 自分の国でつくったものを外国に発射させてもらうというのは、どういうことなんでしょうか。
  8. 高島益郎

    高島説明員 たとえば人工衛星本体そのものはある国がつくっても、その衛星を打ち上げるロケット技術等関係で、自分の国では発射できないというふうな場合には、当然その能力を持っている国に依頼するというふうな場合があろうかと思います。そういう場合のことでございます。
  9. 戸叶里子

    戸叶委員 それから九条に「宇宙空間の有害な汚染」とありますね。それはどういう意味でしょうか。そうしてそのあとのほうにずっと読んでいきますと、「必要な場合には、このための適当な措置を執るものとする。」ということが書いてあるのですけれども、どんな措置をとるのでしょうか。汚染があった場合にはどういう措置をとるか、まず汚染がどういうものであるかということと、その二つの点を説明していただきたいと思います。
  10. 高島益郎

    高島説明員 これは科学的な問題でございますけれども、たとえば人工衛星あるいは宇宙空間探査ののための機械、探査機と申しますが、それから宇宙飛行士等地球上の微生物あるいは放射性物質——放射性物質と申しますのは、動力源その他の目的をもって宇宙空間に持っていくというようなことが将来考えられますので、そういった微生物とか放射性物質等宇宙空間に持ち込むことによって、そこに将来科学的な調査のために害となるような変化を生じさせる可能性が考えられております。そういう場合に、そういうような汚染を防ぐ措置をとるものとするということでございまして、現在こういうような汚染があった場合にどのような措置をとるかという点につきまして、はっきり具体的な措置がきまっているわけではございません。
  11. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと待ってくださいよ。——「適当な措置を執るものとする。」と条約にきまっていますね。だけれども、いまのところきまっていないというのは、それはどういうことなんですか。これから研究をしてきめていくということですか。「研究及び探査を実施し、」というのは、その研究をして必要な場合にはという意味ですか。でも、その場合にはすでに——研究することはいいのですけれども、適当な措置をとるというのは、適当な措置がきまっているわけではないでしょうか。これから研究するのですか。この文章ではちょっとそういうふうに読めないのですけれども
  12. 高島益郎

    高島説明員 「天体を含む宇宙空間の有害な汚染」があることが当然想定されておりますけれども、そのような汚染を避けるような方法で、宇宙空間研究探査をするという点が第一点、また、第二点といたしまして、必要な場合にはそのための適当な措置をとるということが規定してございます。これはこの規定どおり、現在の段階でどのような具体的措置をとるかということがきまっておるということにはなっておりません。ただ、そのような将来の問題といたしまして、これから研究し、かつ、その研究の結果適当と認める措置をとるという原則を掲げたものというふうに解釈しております。
  13. 戸叶里子

    戸叶委員 実際問題としてこういうような「宇宙空間の有害な汚染」とか「地球の環境の悪化を避けるように」と書いてありますが、特に「宇宙空間の有害な汚染」こういうものがあると想定してこの文章ができているわけですね。そうだとすると、こういうものがあると想定しておりながら、これから研究して適当な措置をとるというのでは間に合わないのではないですか。やはりあるのだからある程度の研究をしておかなければならぬのではないかと思うのです。あるということが想定してあるのですから、それを想定しておきながら、あった場合には適当な措置研究していたしますじゃ、ちょっと間に合わないような気がしますけれども、そういうものじゃないですか。全然なくて、そうしてあるかもしれないというような場合ならいいですけれども、こういうものが実際にあるのですよ。そしてそれに対しては研究して適当な措置をとる、適当な措置をとるというならば、ある程度の適当な措置というものが考えられてあってしかるべきではないかというふうに考えられるわけです。
  14. 高島益郎

    高島説明員 現在の段階におきましてこのような適当な措置が具体的にはっきりきまっているということは確かに望ましいことでございますけれども、いま学術団体その他米、ソを含めまして、いろいろな研究をしております。現実に、たとえば月及び惑星に衝突あるいは着陸せしめる探査機などの滅菌の基準というようなことにつきましても、ある種の勧告が行なわれております。そういうことでございまして、現在はっきりこういう場合はこういう措置をとるという具体的なところまではさまっておらないというのが現状でございます。
  15. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、具体的にはこうこう、こういうときにはこれがいいということはわかってないけれども、あらゆる角度から、こういう場合にはこれがいいんじゃないかということを研究して、近いうちにはそういうものが出てくるのですね。——わかりました。  それから十四条で「すべての国に開放される。」というふうに、完全な開放条約であると理解をするわけです。ところがこの条約加盟国であって、国家承認をしない国との間の関係はどうなるかということが問題になると思います。たとえば五条、六条、七条、八条の問題、本条約加盟国でありながら、相互は国家承認をしてないというような国との間に発生した問題が出てくる。そういう場合には一体どういうふうに調整をとるかということが出てくるのじゃ、ないかと思いますが、これはどういうふうにお考えになりますか。
  16. 高島益郎

    高島説明員 これはいわゆる通常私たち呼んでおりますオール・ステート・フォーミュラという方式によります、すべての国に開放する条約でありまして、ちょうど核実験停止条約がそういう意味での最初条約であったわけであります。これがそういう意味では第二番目の条約でございます。ただ、そういうことによります場合に、一部の国に対しまして承認をしてないというふうな法律関係がございます。たとえば現に東独がこの条約に署名しかつ批准いたしておりますが、日本といたしましては東独という国を認めておりませんので、その国との関係におきましては、たとえ東独批准をいたしましても、日本との関係で何ら新たな法律関係を生ずるということはございません。したがって、実際に東独批准をしたという通報を受けましても、これに対して日本が特別なアクションをとるということはございません。そういうことで、各条項につきましても、日本日本の未承認国との関係におきましては、この条約適用は私はないものと考えます。
  17. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がないからいま読みませんけれども、五、六、七、八、そういうものはみんな関係があるのじゃないですか、そういう場合に。五条のような場合、六条のような場合、七条のような場合、八条のような場合、こういう問題に関係をしたときに、日本とたとえばいまの東独、そういうような関係が起きた場合にはどうなるのですか。全然何にも考えなくてもいいということは言えますか。別に読むまでもないですけれども宇宙飛行士の健康に危険となるおそれのある現象を発見したときには、そこのだれだれが助けるとか、あるいはまた七条の、損害が起きた場合にはどうなるとか、そういうふうないろいろな問題がありますね。そういうような場合に、日本の国本署名して批准した、東独もしたというような場合に、日本はこちらを承認しておらないというようなときに、この条項関係はどうなりますかということを伺っているわけです。
  18. 高島益郎

    高島説明員 私ども法律解釈といたしましては、たとえば日本東独との関係におきまして、たとえ東独がこの条約批准して入っておりましても、法律的に日本東独との関係はこの条約によって拘束されるという関係にはないと思います。ただし、この条約にございます内容につきましては、たとえば東独が将来の問題といたしまして宇宙飛行士を打ち上げた、この人が日本の近海におりてくるという場合に、当然、この条約規定適用としてではなく、実際問題といたしまして、この条約の趣旨に従って措置するという関係になろうかと思います。法律関係ではなくて、実際問題として措置するということになると思います。
  19. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっとわかったようなわからないような答弁ですね。私はおっしゃろうとするところはわかるのですけれども、何かちょっとすっきりしませんね、そういう言い方は。開放条約なんだから、どこの国でもみなお入りなさい、また入ってこなければならないのですね、こういう条約には。どういう思想を持った国でもみな入ってもらわなければいけないのですよ。ところが国家承認をしていない国と日本との間に、いまおっしゃったような問題が起きたときに、この条約によって拘束はされない、しかし、そうじゃなくて、ただあたりまえの形でやるといっても実際問題としてなかなかそれはうまくいくものじゃないように思いませんか。苦しい答弁はよくわかりますけれども、実際問題としてはなかなかむずかしいと思うのです。条約があるのですよ。あって、しかもその条約の中のいまのような条文に該当することが起きたときに、国家承認をしていない国だらかといってほおってはおけませんね。普通ならほおっとくわけでしょう、国家承認をしていないんだから。だけれども、何かの処置をとらなければならない。しかしこの条約には縛られないんだよ、かってにやるんだよということは通じますか、こういう条約があるのに。少しおかしくないですか。おっしゃろうとする気持ちはわからないでもないですけれども、何かそこに矛盾をお感じになりませんか。
  20. 高島益郎

    高島説明員 確かに先生の仰せのとおり、私どもといたしましても、実際上の運用につきましてしっくりした感じを持ち得ませんけれども、やはり法律的に解釈いたしますと、未承認国との関係におきましては実際に法律上の関係を生じないと言わざるを得ないと思います。ただし先ほど申しましたとおり、実際上の問題といたしましては、そういう事態が発生した場合に、当然この条約の精神に従って対処すると言わざるを得ないと思います。具体的なケースについてどういうふうに措置するかという点につきましては、そのつど検討した上で処置せざるを得ないと思います。
  21. 戸叶里子

    戸叶委員 やはりぴんときませんね。これは無理でしょうけれども。ただ、そうするとこの条約の五、六、七、八と同じような扱いを未承認国に対してもやるということですか、条約には縛られないけれども同じことをするんだ、何でやるんだというと、何でやるかわからないけれども、ともかく同じようなことをするんだということなんですね。
  22. 高島益郎

    高島説明員 これは先ほど申しましたとおり、宇宙に関する国家活動原則を定めたものでございますので、そういう意味では一つ国際法、一般的に世界全体に適用される一つ国際法であるという観点から、この条約規定適用としてではなしに、一つ国際法秩序に従って行動するということが、世界全体の利益に合致するという観点日本は行動するのだろうと思います。
  23. 戸叶里子

    戸叶委員 まあすっきりはしませんけれどもこの辺で……。あまりわからないのですけれども、大体においてそういう国とは常識的に、この条約には縛られないけれども、同じことをするんだということで、理解はしませんけれども、先に進みましよう。  それから十六条です。十六条に脱退規定があるわけですけれども脱退をしようとする国は、寄託国政府通告書をもって脱退通告することになっておりますけれども、この寄託国のいずれかの国が脱退する場合にはどういうふうにするのですか、手続上の問題ですけれども……。
  24. 高島益郎

    高島説明員 寄託国は実は三カ国ございまして、アメリカソ連イギリス、したがってこの三カ国の全部に通告書を渡さなくても一カ国だけでも差しつかえないというたてまえになっておりますので、たとえばもしかりにイギリス脱退するというふうな場合には、アメリカだけ、あるいはアメリカソ連両国通告すれば、それによって脱退することは可能であろうと思います。  ただし、仮定の問題でございますけれども、もし戸叶先住の御心配のような、米、ソのような、宇宙活動につきまして非常に重要な関係を持っている国が脱退するということになりました場合には、この条約基本的目的を著しく害する結果になりますので、その際には単にこういう両国脱退という事態だけで形式的に片づき得る問題ではないと思います。当然その際には国連総会その他で新しくまた検討し直すということになるかと思います。
  25. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの御答弁にあわせて、そうしますと、この寄託国一つでも脱退するときは、アメリカ脱退するときはソ連通告する、ソ連脱退するときはアメリカ通告するというのが法律上の形式的な考え方であるけれども、実際問題としては、そういうような場合には、この条約に根本的ないろんな問題が起きてくるから、国連その他で処理をするということですね。わかりました。  それから四条で、「月その他の天体」ということばが使ってありますね。天体という中には地球は入らないのですか。
  26. 高島益郎

    高島説明員 地球はこの天体の中には入っておりません。天体と申しますのは、ちょっと技術的なことですけれども、天文学的には太陽その他の恒易惑星、月その他の衛星、彗星、星雲などをいうというふうにたしか解釈いたしております。地球惑星一つでございますけれども、この条約でいう天体には含まれないという解釈をしております。
  27. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ伺いたいのですが、部分的核停条約のときには大気圏内とかあるいは宇宙空間というふうになっておりましたから、その範囲というものは明らかであったわけです。空間というものはすべてを包含されたと思います。ところが、今回は宇宙空間となっておりますけれども国際法上の領空とか宇宙空間の境界というものをはっきりしておきませんと、この条約適用空間範囲が明らかじゃないのではないかということが懸念されるわけでございますが、その点はどうなっておりますか。  それからもう一つ民間航空協定などは主権の問題をいろいろ言うわけですね。そこで領域上の空間において完全排他的な主権を有することを承認するというようなことが民間航空協定の中にあるわけですね。こういうふうなものとの関係は一体どういうふうになるか御説明をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  28. 高島益郎

    高島説明員 昨日もそのような質問堂森先生からあったわけでございますが、まず第一番に宇宙空間定義につきましては、現在ジュネーブで会合をいたしております宇宙空間平和利用委員会法律小委員会で、国連総会決議規定に基づきまして宇宙空間定義について検討中でございます。これは先生の御指摘のとおり、やはりこの定義がはっきりいたしませんと、宇宙空間と申しましてもどこからいうのかということが非常にたいへんな問題になりますので、第一番の問題として、現在この条約実施のためにいろいろ検討中でございます。  それから領空につきましては、これは国際民間航空条約にはっきり規定がございまして、領空に関する主権についてはっきり規定してございますが、領空につきましても、宇宙空間との関係で、現在国際法上はっきりした定義と申しますか、そういうものはございません。たとえば領海について一般慣習としての三海里ということに見合うような意味での領空範囲というものはきまっておりません。ただ最近の宇宙活動に伴いまして、米、ソの衛星がいろいろ宇宙空間に飛しょうしておりますが、それにつきまして、それの下にある国々が、いままで自分の国を領空侵犯されたという意味での異議申し立てをしたことはないという事実から、領空は必ずしも無限でない、無限でなくて、やはり宇宙空間を除いたその下の部分、つまり空気のある部分が大体領空として慣行的に固まってきつつあるのではないかというふうに考えております。従来の領空無限説というものは非常に多数説でございましたが、しかし最近の宇宙活動に伴いまして、そういう説は修正されつつあるように私どもは考えております。
  29. 戸叶里子

    戸叶委員 公海上の空間というものも一体どのくらいの高さになったならば空間になるのかということもいろいろ問題になってくるのじゃないかと思いますが、そういうことももちろん研究中でございましょうね。
  30. 高島益郎

    高島説明員 それも宇宙空間がどこからかということに密接な関連を有してきておりますので、宇宙空間定義がはっきりいたしますれば、それ以下の部分は、将来の国際法の問題といたしまして、大体領空ということに固まってくるのではないか、かように考えております。
  31. 曾禰益

    曽祢委員 関連して。戸叶委員の御質問の中で、この条約がお互いに承認し合わない国が入っているから、したがってこの条約に入ったからといって直ちに承認の効果は生じないということは、戸叶委員も認められているし、これは常識論だと思うのであります。ただこの条約条項がそういったような未承認国との間にどういう法律関係を持つかということは、きわめて適切な御質問であったと思う。たとえば五条、六条という具体的な例を引用されて、東独宇宙士に対しては、法律日本国においては東独宇宙士だけ救わなくともいいのかという、こういうきわめてポイントを突いた御質問だと思うのですが、それに対する御答弁がちょっと納得いたしかねる。私は、たとえばこの第五条規定の趣旨は、どこの宇宙士であろうと、宇宙士に対して締約国はこれを救うといいますか、援助する義務がある、そう思うのです。ただその場合に、わが国がその義務を怠っても、東独のほうから第五条違反という理由によってわが国に抗議する権利があるかということになると、そこについては非常に問題がある。純粋に法律的にはその抗議の権利はない。同時に東独側は、すべての宇宙士に対して保護をする義務があるとき、日本宇宙士だけ差別待遇をしたときに、日本のほうから東独に対して正式に、これを条約違反として抗議できるかどうかについては、その点法律上は非常に疑問だぐらいに考えておかないと、私は変なことになると思う。たとえば天体の非軍事化という条文があるでしょう。これについてもお互いに未承認国についてはそこだけ穴があいておる——そういうことは事実上ありませんが、天体を非軍事化するということは、どの国に対してだけするとかしないとかいうことは事実上できないから問題にならないけれども、そういう議論を進めていくと全体の体系からいってもおかしくなるのじゃないか。だから、私は、しろうと的な意見だけれども、この条約の負っている義務については、いまの第五条については、わが国がどこの宇宙士に対しても援助をする義務があるのだというように考えたほうがすなおじゃないですか。あまり相互に承認的効果を生じてはいかぬ、そういうことでなしに、どの国もこの条約に入りましょうやという、そういうものが、部分的核停条約をつくって以来、すべての国が入りいいような条約がつくられるのは私はいいと思うのですが、あまりそれにとらわれ過ぎると変な議論になりはせぬか。その点の説明がちょっと納得しかねるので、もう一ぺん伺いたい。
  32. 高島益郎

    高島説明員 私の戸叶先生の御質問に対しての答弁が非常に不十分で、舌足らずであったことは認めます。私が言おうとしましたことは、ただいま先生のおっしゃたようなことが実際上行なわれるというふうに申したつもりでございます。ただ非常に厳格に法律的な関係で権利義務というふうなことになりますと、これは義務と申しましても、一方のほうに権利がなければ義務というものがないわけでございますので、そういう意味では日本が第五条の義務として東独宇宙飛行士を救わなければならないという法律関係ではなくて、日本としてはある国の宇宙飛行士であるという理由によって差別するということは絶対にございませんけれども、ただ法律上の関係といたしましては、日本のこの五条に基づきます当然の義務ということではないという説明をしたつもりでございます。ただ実際上はあくまでも先生の御指摘のとおり行なわれるのが当然であろうと思います。
  33. 曾禰益

    曽祢委員 必ずしも納得できませんけれども、これは法律論ですから、この程度にしておきます。
  34. 福田篤泰

  35. 穗積七郎

    穗積委員 月、天体宇宙条約というものについて、尊敬するあなたも自然科学の知識は現在の世界の進歩発展に対して必ずしも権威がないと思うのです。それは私はそれ以上の自覚を持っております。そこでしろうと同士が議論するのですから、まさか間違いはないだろうと思うけれども、推測が入るわけですね。したがって、最初にこの条約の審議交渉の経過において、わが国並びに各国は、自然科学に対する最高の知識と権威を持った人が参加をし、または参加をしなくても、それぞれ政府を通じて、それらの権威ある科学者の意見をアドバイスを受けて、審議締結なさいましたか。どういう事情にあったか、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。
  36. 高島益郎

    高島説明員 私の記憶しております限り、私が約八年くらい前国際連合局におりました当時、初めて宇宙空間平和利用委員会というものができまして、第一回の科学技術委員会から、すでにおなくなりになりましたけれども、東大の畑中教授、天体物理の先生でございますが、この方に行っていただきまして、その方がたしか二、三年二、三回続けて行っていただいた記憶がございます。そういうふうにいたしまして、宇宙空間平和利用委員会ができた当初から、私どものほうとして特に科学技術委員会のほうにつきましてはもっぱらそういう科学の権威者の方に行っていただきまして、科学的な見地から十分審議に参加していただいております。  なお法律小委員会のほうにつきましては、これは外務省あるいは外務省以外で大学の先生等が随時参加しております。そういうことでできましたのがこの条約でございます。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 この条約に関する限り、権威ある科学者というのは、必ずしも宇宙物理学者だけではないのですね。特に問題になるのは、平和利用で、すなわち軍事的利用はさせないということが一つの眼目になっておるわけですから、そうなりますと、ロケットを発する核兵器のあるいは核爆発の科学的権威者の意見並びに想定を基礎にしないと、お互にめくらの手探りみたいな法律家だけがやってみましても、手落ちがあろうと思うのです。その点日本並びに外国のそれらの科学者に対する意見の聴取をされておるかどうか。それらの意見がここに吸収され反映されておるかどうか、それをお尋ねいたします。
  38. 高島益郎

    高島説明員 先ほど申しましたとおり、宇宙空間平和利用委員会のうちに科学技術委員会法律小委員会とございまして、日本はこの前者の科学技術委員会のほうには科学者はもちろん派遣してまいったわけでありますが、主として条約の条文の作成に当たります法律小委員会のほうへは、日本からは特に科学者を参加さしておりません。外国の中にはもちろんこの法律小委員会のほうにも科学者の参加した国もございますが、日本から特に参加さしておりません。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 それらの点は、田中政務次官、あなたも社会科学をやったけれども、自然科学は幼稚でしょう。だから自分だけが卑下して、実は謙虚な気持ちで科学者の意見を一応現在の段階では信用する以外にない。しかしながら、現在の段階においてわが国における自然科学者の権威者の意見はやはり常時吸収をし、こういう国際協定の中へ反映をし、また今後の改正においても、改正規定がありますから、改正の場合においても積極的な主張をすべきだと思うのです。いま伺ったところでは、私の邪推かもしれませんが、必ずしも日本の最高の必要な各方面の自然科学者の意見というものを吸収し、この中ヘプロジェクトされているとはちょっと思いがたい点がありますから、これはいままでのことはいま参事官に伺いましたが、そういうことに対する外務省当局のいわば政治的配慮——せっかくあなたが御出席になっておりますから、外務省を代表してあなたの今後の御所見を伺っておきたいと思います。
  40. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 まさにお説のとおりでございまして、まだ宇宙科学の幼稚な時代からの関係で、八年前からの科学者の意見等をまとめておった関係もございますので、最近におきましては科学陣も相当新進気鋭の方も出ておりますし、また相当な権威者も相当出ておりますので、今後ただいまの御意見を十分に体しまして、科学技術庁とも協議いたしまして、いまお説のような相当な権威者を十分網羅いたしまして、わが国が世界に強く主張し得るように基盤をひとつつくっていきたい、こら考えております。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 これは私の貧しい知識でありましても、現在のこれら天体並びに核に関する自然科学者というのは、いままで著名な大先輩ですね。それよりは、むしろまだそれほど地位あるいは知名度も高くないけれども、学問としては新進の諸君が非常に進んでおる事実を私も仄聞いたしております。たとえば、いま東大の先生のお話がありましたが、これらの問題については、最近、東大の理学部の少壮の諸君の研究グループがあります。おそらくは、まだ外務省はそれらの諸君の意見を聴取したり、この条約締結についても、また、今後の運営の問題点をピックアップするについても、お聞きになっておらぬと思うのです。私は、おとといでしたか、ちょっとそのグループのある一人に連絡をして聞いてみましたけれども、まだ何らの意見の聴取は受けておらぬということでした。それは、私の推測では、必ずしもその人一人ではないと思うのですね。他の方にお聞きになっても、これらの諸君は非常に連絡をとってミットアルバイトをやっていますから、一ところへいけば全体にわかる。その中の中心的な一人に聞いてみて、われわれはまだ意見の聴取を受けていないということであるから、おそらくはその他の方も聞いていないのではないかと思うのです。その点、そういうことをなさるのは事務当局の責任のあることですから、これもあなたの良識を信頼いたしまして、特に強く希望いたしておきます。必要があれば、私が御紹介してもけっこうです。  それから、条約に入りますが、一番問題になるのは、平和利用以外のものは一体何をいっているのか。この場合、おそらく軍事利用でしょうね。四条でございますか、これが中心規定になる。前文でも平和利用のためということを強くうたっておりますが、平和利用と軍事利用の限界というものは必ずしも明確でないのであって、平和利用の名目のもとにやっておりますが、たとえばロケットにしても、ミサイルにいたしましても、核弾頭をつけていなければ平和だ、弾頭をつければ直ちにそれが軍事目的になる。こういうことで、最近の、特に米、ソを中心とする天体開発あるいは核兵器の競争、そういうことが行なわれておる際においては、平和利用ということばは、それ自身が非常に正しいことであり、理解できるようですけれども、具体的な内容になりますと、平和と軍事の区別というものは実はないわけですね。そこで規定をずっと繰ってみますと、何らそういうことに対しての区別の規定がないのです。ことばだけなんですね。それから同時に、そのことが査察の制度にも関連をいたしますけれども、もう一つは、どこまでが平和利用でどこからが軍事利用であるかということを、こういう法律の場合におきましては、条件を列記しておく必要が実はある。これは法律の一般的概念ですよ。権利義務を規定いたします場合には、民主的な法律というものは、観念的なことばでなくて、平和のための条件というものを列挙して、それで制限規定というものが設けられるわけです。包括的な制限規定というものは非常におくれた法律体系である、一般的にそう言えると思います。そういう配慮で、これは軍事利用を禁止する、そして平和利用のために協力して全人類のためになるようにやっていこうというのがこの大体の趣旨でしょう。そうなりますと、われわれがこういうものが出てきた発端を考えますと、むしろ軍事利用目的とした宇宙天体の独占を禁止しておかなければいけないというところから、こういう条約になっておると思うのですね。そういう意味で、わが外務省は、平和利用と軍事利用の区別について、一体どういう条件によって平和と軍事の区別をなすっておられるか。査察がありますけれども、これはすでにこの条約に反するものではないか。特に言えば、前文にもありますけれども、第四条の軍事利用というものを、これはよくないというときに、いや、これは軍事利用じゃないということを当事国が抗弁をいたしました場合、一体何を基準にして言うかということが非常に問題になると思うのですね。軍事利用もまた、核爆発等の兵器だけでなくて、間接的な軍事目的もあり得るわけですからね。そういう意味で、限界をどこへ置くか、どういうように理解してこの条約を受け取ったらいいかということについて、総括的にお尋ねをいたしたいと思います。
  42. 高島益郎

    高島説明員 この条約では、実は天体を含む宇宙空間の全体につきまして完全に非軍事化する、つまり平和的目的のためにしか使ってはならないということになっておるわけではございません。御承知のとおり、この条約ではそこまでの理想を実現することはできませんで、やむを得ない妥協といたしまして、月その他の天体は完全に非軍事化する、その場合の軍事使用という大体の定義といたしましては、四条にございますとおり、「軍事基地、軍事施設及び防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施は、禁止する。」これはもちろん例示でございまして、もっぱら平和的目的のためにのみ利用されるわけでございますので、このような典型的な軍事利用を含みます一切の軍事利用天体上では禁止されます。ただし、その反面、宇宙空間におきましては、第四条の第一項にございますとおり、核兵器等の大量破壊兵器を運ぶ物体地球を回る軌道に乗せないことが第一点。第二点といたしまして、核兵器等を天体に設置しないこと。最後に、他のいかなる方法によってもこれらの兵器宇宙空間に配置しないということになっておりまして、非常に限定的でございます。それ以外の平和目的でない軍事利用につきましては、特にこの条約では禁止されておりません。したがって、きのうも御答弁申し上げましたけれども、たとえばICBMの実験、これはもちろん核兵器をつける。今度はICBMの発射というふうなことにつきましても、第四条では明示的に禁止されておりません。非常に残念なことでございますけれども、そういう一般的な軍事利用について特に明文の規定がどこにもございませんので、全体のコンテクストから判断いたしまして、宇宙空間そのものにつきましては、ここに明示的に第四条第一項に規定していること以外は一応可能である。ただし、われわれといたましては、この条約全体の精神から、宇宙空間すべてにわたって完全に非軍事化するという将来の目標に向かって一つ努力をするというたてまえが、この条約全体の基調になっておりますので、われわれ日本といたしましては、そういう方向に向かって今後とも改善のための努力をしていきたいというふうに考えております。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 私もそう思うのです。これをずっと見まして、その問題は、規定のあるのは四条だけなんですね。しかもこれは条件がないわけです。だから、各国の有権解釈が合致しない場合においては、今後の運営において相当問題があると思うのです。だから、先ほど言いましたように、宇宙物理学者だけでなくて、核物理学者、特に新進の諸君の意見を聞かなければ、今後の運営においては権威ある主張はできないと思うのですね。お互い、国際条約や、法律や、社会科学についての知識はありましても、この第四条がいかに実施されておるか。それから第十二条でしたか、査察の場合に、そうなれば、具体的ですから権威ある意見を述べられないと思うのですね。この点は非常にこの条約の不備である。これはある意味では、いまの国際政治の対立矛盾の反映でもあるわけですけれども、その点を指摘いたしまして、今後の運営については十分な科学的基礎をもって厳密にやることを、この部分については強く要請しておきます。場合によれば、これは適当なときに世界の開発の水準が上がりましたときに、改正をむしろ日本から提案をすべきではないかというふうに思います。そのことを強く要望申し上げておきます。  それからその次に、第四条にもありますが、前文にもあるように、大量破壊兵器を運ぶ物体軌道に乗せてはいけない。大量ということばが特に載っておるのなら、少量ならいいということでしょうか、反対解釈は。そうすると、少量と大量の区別はどこに置くのですか。
  44. 高島益郎

    高島説明員 国連等で従来使っております核兵器その他の、大量破壊兵器という用語がございまして、大体核兵器に類似するような非常に大きな破壊力を持つ兵器、これは国連等の用語ではいわゆるBC兵器と申しておりまして、細菌兵器、化学兵器、そういうものを一般的に国連等では大量破壊兵器とさしております。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると量の多少には関係ないわけですね。多量の人民に弊害を及ぼす、被害を及ぼすという、この点もちょっと不正確なものですからお尋ねして、今後の運営においては、こういう不正確なことばのある条約は、すべて運営の面におけるこちらの科学的な意見と努力が必要だと思うのです。  それからその次に、順を追うてお尋ねいたしますが、第二条ですね。これはわれわれのほうへ御指示になり、外務省から御説明になったときの提案理由説明の中にも、同様に「国家主権の主張の禁止」となっておるわけですね。お配りいただきました説明書の中にも国家主権の主張の禁止となっておるわけです。それは第二条でございましょう。そのほかにあればあとで示していただきたいが、主要な条項であります第二条は「取得の対象とはならない。」と書いてある。これは田中政務次官、どうですか。禁止と対象にはならないという法律語は、法律解釈として違います、それは法律条文としては違いますよ。
  46. 高島益郎

    高島説明員 先生の御指摘の点は、提案理由の説明に書いてございます文章で、「この条約は、宇宙空間への大量破壊兵器の打上げ禁止、天体平和利用宇宙空間に対する国家主権の主張の禁止等について規定しております。」そこの部分であろうかと思います。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 そうです。
  48. 高島益郎

    高島説明員 「国家主権の主張の禁止等」ということばにつきましては、該当する条項はまさに御指摘のとおり第二条であります。ただ、確かに御指摘のとおり「国家主権の主張の禁止等」ということばだけで第二条の内容を完全に表現しているとは思いませんが、一応この条約の内容を大略簡単に申し上げればこういうことだということで書いたのでございまして、必ずしも法律的に完全に同じものだという点では、多少ことばの足りない点があるかと思います。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 それで、ここで二点問題があるわけです。第一点は、これは禁止規定ではなくて、取得の対象にならないという非常にゆるやかなものであって、これは法律語であるか、政治語であるか、ちょっと解釈に苦しむような文章ですね。権利義務関係規定いたしました国際法または国内法において禁止でありますのがほんとうですよ。これが禁止になっていない。ちょっと私原文を見ませんでしたが、原文はどういうふうになっておりましょうか。日本法律用語では、取得の対象にならないというのは、権利を阻害してはおりませんですよ。各国の所有権の主張を阻害してはおらぬです。どういうふうになっておるのか、原文を伺い、かつ、どういう理解でこういう文章を締約国は理解しておるのかね。この中で日本政府は一体どういう理解に立っておるのか。私の解釈は、これは所有権の主張を、領有権の主張を禁止しておる規定ではない。
  50. 高島益郎

    高島説明員 そういう点で確かに禁止ということばを使いましたのは、あるいは至らない点があったかと思います。ただここで、こういう「国家による取得の対象とはならない。」と日本語に訳しました原文の書き方からいたしますと、これは月その他の天体を含む宇宙空間というものは、その性質上、国家が領有権を主張し得るような対象になるものじゃないという観点からの規定でございまして、実際にそういう対象になり得るような、たとえば、南極とか、そういう地域については禁止しなければならないということで、一応南極条約では禁止する趣旨の規定を書いております。しかし宇宙空間につきましては、もともと空間の性質上、大体そういう取得の対象になり得るものではないということを確認する意味でこういう規定を書いたのでございます。これは英語では確かに日本語のとおりに「対象とはならない」という書き方です。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと読んでみてください。何と書いてあるんですか。
  52. 高島益郎

    高島説明員 「アウター スペース イズイット サブジェクト ツー」、そういうことばであります。それからあとフランス語、スペイン語では「対象とすることができない」という趣旨の文章であります。したがって、これは本来、性質上、対象としようにも、することができないものであるという宣言的な規定であろうと解釈いたします。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 田中政務次官も御承知のとおり、月を分割売り渡すという会社をつくるなんという夢のような話を日本でも考えた人があった。この規定は、締結国自身相互の間においても領有権を主張しない。主張権はあるけれども、性質上そういう対象になり得るものではないという非常に主観的な、かつ政治的なことばになっておるわけですね。  そこでお尋ねいたしますが、これは締約国が共同で領有をする。これはどうですか。禁止しませんか。しますか。
  54. 高島益郎

    高島説明員 この二条の規定そのものには、「国家による取得の対象とはならない。」というふうに書いてございまして、特に先生指摘のようなケースは全然想定しておりませんが、しかし、この条約全体のたてまえが、宇宙空間というものは全人類の活動のための舞台であるという観点から全体が起草されておりますので、一部の国によって分割し、あるいは共有するというようなことは、そういうたてまえから申しまして、二条では想定しておりませんけれども、問題にならないのではないかというように考えます。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、この条約全体で最後に問題になるのは、先ほどちょっとお話もありましたが、これに参加してない非締約国ですね。中国その他多数あるわけですけれども、これらは何ら拘束する権限はありませんね。
  56. 高島益郎

    高島説明員 この条約はすべての国に開放されておりますが、それにもかかわらず、この条約に加入しない国につきましては、何らこの条約上の拘束は受けないと思います。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 それから、領有権は主張し得ない、対象とはならないということであっても、長期かつ恒常的にこれを利用する、または管理をする、この権限はどうですか。これはあり得るですね、この法律解釈をすれば。
  58. 高島益郎

    高島説明員 先生の御質問意味がよくわからなかったのですが、第二条の関係でございますか。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 そうです。
  60. 高島益郎

    高島説明員 宇宙空間のある一部を、たとえば宇宙飛行体によって実際上占拠するというような事態は、将来の宇宙活動の分野では十分考えられますけれども、それによっても国家の取得の対象とはならないという規定でございまして、実際宇宙活動をするために、この条約のたてまえとしまして、平等の原則で各国が自由に活動するというたてまえでございますので、他国の活動を不当に妨害するということはもちろん許されませんが、この宇宙活動のために宇宙の一部を占有占拠するということは、活動の許す限度としてあり得ることだと思います。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 ここらは、ちょっと、やはり先ほど言ったように想定しがたきものを想定して規定をしておりますから、今後いろいろの問題が科学技術の進歩に伴って出てくると思うのです。そういうことを前提として、これらのことを前提として、事実に即してこの解釈をどうするかという点を、思い当たることが必ずしも明確ではありませんけれども、反対解釈をすれば、いま言ったように、他に干渉、妨害を与えない限りは、利用管理の自由がある、領有権はない、そう解釈されますね。そうすると、開発の先進国の利用権というものが、ある意味において占有権または所有権につながる場合もあり得るのでありませんか。
  62. 高島益郎

    高島説明員 そういう権利の対象には私はならないと思います、第二条からいたしまして。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 元来、これはいままでの地球上の法律体系から見ますれば無主物ですよ。公海におきましても、公海内における資源の場合でも、無主物として魚はとりほうだい、あるいはコンブはとりほうだい、あるいは公海における航行も自由だ、ただ他の者の自由を阻害しないということがばく然とした制限であって、権利義務関係で言えば無主物なんですね。だから、先取権のある者に所有権が出てくる。管理権、利用権は当然のこととして出てくる。それを何らアウフヘーベンしてないと思うのですよ。これからはその問題が陸続として出てくることが、幼稚な私の知識でも想定ができるわけですね。だから、その点も問題として指摘して、政権を持って交渉に当たられるのは外務省ですから、外務省は今後のこの条約の運営並びに改正による拡充のために一段の努力を要請しておきます。  それから問題の第四条に入ります。  第一にお尋ねいたしますのは、各国の主権の及んでおる領空宇宙との区別はどこですか。
  64. 高島益郎

    高島説明員 先ほど戸叶先生の御質問にお答えしたわけでございますけれども、実は、領空につきましてはっきり国際法上地上何キロという確立した原則はございません。ただ、最近の宇宙活動に関連いたしまして、人工衛星等が上空を飛びましても、その下の国が異議を申し立てておらないということから、逐次宇宙空間を除いた部分につきまして大体領空ということになるという慣行を生じつつあるというふうに考えております。つまり人工衛星等が飛んでおる宇宙空間を除いたその下の部分ですね。つまり大気圏が領空範囲としてだんだん確立しつつあるように考えます。しかし、一般的には何キロまでというはっきりした原則はいままでのところございません。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 大気圏と思われるような文章がいままでの国際文書の中に出ておりますか。領空と大気圏との区別について、つまり逆に言えば、領空権の及ぶ範囲ですね。
  66. 高島益郎

    高島説明員 領空に関する主権をきめておりますのは、国際民間航空条約の第一条に「締約国は、各国がその領域上の空間において完全且つ排他的な主権を有することを承認する。」ということで、ただ「領域上の空間」ということだけでございまして、いま申し上げましたとおり、この範囲等につきましては、従来領空無限説という説もございましたが、先ほど申し上げましたとおり、それがだんだん修正されつつあるのが現状でございます。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 これは領空の問題については、第七条の問題とも関連をいたしまして、非常に重要だと思うのです。領空の限界というものを、もうここまで科学技術が発展してきて宇宙開発が進んでまいりますと、やはり領空権の及ぶ限界はどこだということを明確にしませんと、いろいろ軍事科学の進歩に伴って、ここでもまた非常にあいまいな観念規定に終わる危険がある、逆に言えば国際紛争を起こす危険が残されておる、こういうふうに思うわけです。これも問題点として指摘して残しておきたいと思います。  それから、天体においては、軍事基地、施設、防衛施設、それから実験、軍事演習、これを禁止するわけですね。それから宇宙空間は自由でございますね、これは制限規定になっておりますから、「天体上」と。当然そう理解してよろしゅうございますね。
  68. 高島益郎

    高島説明員 そのとおりでございます。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、私もちょっと存じませんが、宇宙空間に軍事施設を固定化する可能性は科学的にはもうそろそろ実現ができるのではないでしょうか。そこで領空の限界はどこだということがもう今日の問題になっておる。
  70. 田中好雄

    田中説明員 科学技術庁の調整課長でございますが、ただいまの宇宙空間兵器という問題でございますが、これは新聞等で話が出ておりますような状況でございます。と申しますのは、人間衛星ができておりまして、だんだん空間を飛ぶようになってくる、これにいろいろ施設ができるというようなことで考えられてきております。そういう状況であります。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、第四条の軍事利用禁止に非常に抜け穴が多いわけです。月その他の天体に固定的にしなくても、空間に固定することができる。あるいは遊よくすることができる移動軍事基地ですね、空間にも固定ができるようになるから。そしてそれは領空の限界があるとすれば、領空権を侵すものではないということは、無限説なら対抗ができますけれども、国際常識上領空の限界すなわち領空主権の及ぶ範囲というものがあるとなると、自衛権の主張ができないわけですね。これは非常に問題じゃないかと思って、私今度の条約の中心規定は第四条だと思っている。すなわち平和利用のためにのみ、また全人類のためにのみ利用すべき宇宙天体が侵されるのは、当面一番問題になるのは軍事利用の問題、その軍事利用天体にはこういう制限禁止の規定がありますけれども宇宙空間についてはない。ところが科学技術段階は、宇宙空間に軍事基地を固定し、または遊よくせしめることができる段階になってきておる。そうなると、平和利用目的の眼目というものは必ずしもこれで保障されていない。これはどうですか。科学技術庁のほうに聞いたほうがいいかもしれぬが、これは抜け穴ですよ。現時点において抜け穴だ。将来の話ではない。
  72. 田中好雄

    田中説明員 ただいまのお話はよくわかりますが、「核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を」、ここが先ほどのお話にちょっと近いのでありますが、「地球を回る軌道」、ここのところが宇宙空間になるわけでございます。地球の周囲の軌道に乗っけますためには大気からはずれたところに乗っけませんと、これは落ちてしまいますし、燃えてしまいます。したがいまして、地球の周囲の大気、ここに乗っけないためにきちんと規定してあるわけでございます。そこに抜け穴があると言えば多少ございますのは、それでは通常のはどうだという問題があるかもしれません。ここではその種類はちゃんときめて制限しようという考え方はなっておるわけでございます。これは私の考えでございますが……。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 私はいま国際連合が平和の保障の唯一の権威ある機構になることを念願いたしております。ところが現実はそうではない。あの貴重な国際連合の精神も、ダレスが無理押しに五十一条を押し込んで、集団自衛権というようなものを初めてつくり上げて、そしてかいらい政権をつくって軍事協定を結んで、そしてこれはアメリカのある意味における自衛権の拡大解釈であり、拡大執行であり、侵略の拠点になっておるわけです。そういう点から見ますと、それじゃ自衛権というものを考えたときに、アメリカその他進んだ開発国から敵視されておる国々から見たときに、領空権をどこに限界を置くかということは、自衛のために何ら関係がないというから領空権に限界を置いても差しつかえないという常識が出てくるわけです。ところがいまお話しのとおり、まず地球を回る軌道に乗せる。すなわち宇宙空間ですね。宇宙空間から自国の自衛権に危害、障害を与えられるような、領空権の先の空間に基地が設定されるということになれば、その設定されたものはその大気圏の下に、宇宙空間の下にある国の主権を脅かす、脅威を与える、そういうことになり得るわけですよ。そうなると、何キロとキロ数で言わなくても、いま高島参事官のおっしゃいましたように、領空権の限界というものは無制限ではなくて、大気圏に限界を置くということが常識化されておると言いますけれども、われわれ社会科学しかやってない幼稚な者から見れば、そこまでやっておけばだいじょうぶだろう、こう思うわけですけれども領空権を主張しないでもいいだろうと思いますけれども、事実進んできておる科学技術段階からいえば、領空下にある領土、国民の安全は必ずしも保障されていない。そうなると無制限説というものは、これはある国に有利、ある国に不利になる。そういうことになれば、結局軍事利用をすべて禁止するようにしなければならない。天体上においてはここに明確に禁止規定がありますけれども、前段においてはそれはないわけですね。領空宇宙空間についてはないわけです。非常な抜け穴ではないでしょうか。これで万国のものがここへ入ってこいということになりますと、入らないほうが安全だということになりますね。こういう軍事利用の禁止規定が明確になってない協定なんかに入ってということ、これはいかがなものでしょうか。
  74. 高島益郎

    高島説明員 確かに先生の御指摘のとおり、この条約は決して完全なものではございません。その点はわれわれ十分認識しております。条約の審議の過程におきまして、米、ソ両国とも、いわゆる軍縮問題につきまして宇宙空間についてだけ完全に軍縮措置を講ずるということはできないという立場をとっておりまして、当然他の軍縮措置とリンクした上で解決するという立場を両国とも強硬にとりまして、これに対しまして、宇宙空間については完全に非軍事化すべきであるということを日本を含めて主張したわけでございますけれども、現在、そういう米、ソ両国の、何と申しますか、国際政情下におきますそういう立場を背景とした条約でございますので、直ちに完全な条約をつくることができなかったことは非常に残念であります。これはちょうど核実験停止条約につきまして地下実験の抜け穴があるとおっしゃればそのとおりでございますが、しかし、にもかかわらず核実験停止条約は現状ではわれわれとしてはやむを得ないとして一応承認し、その上でさらに地下核実験についても禁止するところまでいきたいということで努力しているわけでございます。これにつきましても、現在ではこの段階ではこの程度のことでがまんしておいて、これからの改定のために、完全な条約のために努力するという態度で参りたいと考えております。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 皮肉を言うわけではありませんが、外務省政務次官並びに高級官僚の皆さんにちょっと申し上げておきますが、ちょっとひねくれたように見えるかもしれぬけれども、私があえてこういう質問をすることはそのことなんですよ。平和だとか安全保障だとかいうことばにごまかされて、世界の多くの後進国の諸君は脅威を受けておるわけです。核実験、部分核停の問題についてもわれわれはその期待を持って賛成をいたしました。ところがその後の成り行きを見ておると、全面禁止、使用禁止、完全廃棄に進むことを期待しておったのに逆になりつつある。すなわち独占と脅威を振り回そうとする傾向のほうが政治的には強くなってきているわけです。そういうやさきですから、この空間からの軍事利用宇宙空間の軍事利用の自由をここで逆にいえば認めておるわけですよ。天体における軍事利用は明確に禁止してありますけれども宇宙空間に対してはこれを後段において禁止してないということは、宇宙空間の軍事利用を認めたことになっている。そうなると、各国全世界領空権に制限を加えれば、領空権外からその領空並びに領土、人民に脅威を与える利用がここでできておるわけですね。はなはだ私は遺憾に思います。悪意を持って、アメリカのためにこういう抜け道を日本がつくった、ついに大国に屈したというふうに、私は思いたくもないし、言いたくもありません。しかし実際は、そういうことになっておるわけですね。それと同じ結果になっておるわけだ。だから、この点も今後、科学技術に対する日本のすぐれた知識も、われわれ政治に関係する者、行政上の社会科学を専門としてこられた方々に謙虚にこの際積極的に意見を求めて、こういうものについては科学的基礎に立って強く主張しなければいけない。お題目に反しますよ、これは。宇宙天体平和利用だという名目ならだれでも反対しない。実際はそうじゃなくて、宇宙天体の先進核保有国の独占にまかされる、無制限な利用を許しておる、そういう危険を私は最近の科学技術の発展の段階の中で現実的に考えるわけです。これは強くひとつ御注意申し上げて、今後の運営にあたりましても、あるいは法の改正も予期されておるわけですから、改正についてもぜひ一段の御努力をお願いをいたしたいと思います。  先へ進みます前に、一つさっき御注意申し上げるのを忘れましたが、二条の解釈について説明書に提案されたものとこの原文とは違うわけですね、法律文とは違いますよ。したがって、こういうものは今後正確にやっていただきたいのです。説明は速記録にも残りまして、これは政府の公文書ですね。それに信を置いてわれわれは審議に入るわけですから。この前提案説明のときには、禁止したとはっきり言われたわけです。これは速記録に残っています。そうすると速記録と実際の内容とは違うことがあって、これははなはだまずいことだと思いますから、こういう条約法律については、観念的な表現でなくて、主観的な考えでなくて、正確にひとつ説明書の中においても明確にしていただきたい。政務次官、説明書はこれは公文書ですね。
  76. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 そのとおりでございます。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 公文書で内容が違っておっては、これは非常な手落ちになるしするから、できればあと外務省の権威のために訂正しておかれたほうがいいと思いますね、説明書のほうを。条約を訂正するわけにいかぬから。領有権の対象にはならないというふうにお書きになることが正しいと思います。禁止規定じゃありませんよ、これは。それでよろしゅうございますか、高島さん。
  78. 高島益郎

    高島説明員 そのようにさせていただきます。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 それで第四条について重要なのは、十二条との関連で、十二条、この査察については米、ソの間で初め意見の食い違いがありましたね。これはもとのときに、天体施設の査察について。
  80. 高島益郎

    高島説明員 第十二条の査察に関する規定につきましては、アメリカは、いつでも自由に査察し得るように開放すべきであるという立場をとったわけでございますけれどもソ連の主張で、査察にあたっては事前の合意が必要であるという主張を行ないまして、その妥協の結果、現在のような表現になったわけであります。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 この査察規定宇宙空間に及びますか。
  82. 高島益郎

    高島説明員 これは第四条第二項に見合う規定でございますので、当然天体上の軍事利用について保障する措置……。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 宇宙で固定または遊よくする施設についての査察権はどうなっていますか。査察の対象から除外されていますね。どうなりますか。
  84. 高島益郎

    高島説明員 それに関する規定はございません。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 ありませんね。非常にここは抜け穴になっていると思います。それから登録制度があるでしょう。打ち上げのときの登録制度がありますが、これらはやはり先進国の利己主義が至るところで露骨に出ていると思うのです。法は全人類平等でなければならない。宇宙開発が、ある国には有利であり、ある国には前より不利益になる、あるいは脅威を与えるということは、これは非常に法の欠陥だと私は思うのですね。  それで査察についてちょっとお尋ねいたしますが、十二条ですね、この査察は一体厳密な意味の査察でしょうか。査察権が締約国各国に確立しておるでしょうか。それで査察をする主体はだれがやるのですか。これは定期的じゃないでしょう。やりたくなければやらぬ。すなわち、どんなことが行なわれようと、気がついて権利を主張すれば通る場合もある。査察を実行する場合もあり得る。やらなければ知らないでおる。しかも、その査察が、いま言われたように、自由任意の査察が締約国各国に認められていない。幾ら禁止規定がありましても、査察がなければ——今度の拡散防止条約についてもそうです。あるいは実験禁止規定についてもそうですが、査察というのは、これは付随の行為ではなくて、もう条約上本質的な問題、規定だと思うのです。それがこの十二条では、私の読んだところでは、非常に非良心的なのですね。締約国の国際機関で査察するのでしょう。各国自由にやるわけでしょうか。
  86. 高島益郎

    高島説明員 十二条の規定は、査察の規定ではございますけれども、国際条約上の意味での非常に厳格な査察規定とはわれわれ考えておりません。ちょうど南極条約にもこれに類するような規定がございますが、要するに軍事利用を禁止しておいて、その基地を随時だれにでも開放するということによって軍事利用をできないようにするというのがねらいでございます。この規定上は、条約の当事国の代表者に開放されるということでございますので、実際に月に何らかの施設がある国の代表者でなければ当然これは見れる機会はないわけでございますから、したがって……。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 しかも無制限じゃないでしょう。
  88. 高島益郎

    高島説明員 ですから、その点では相互主義ということになっておりまして、相手国がもし拒否すれば、自国もそれに対して拒否してよろしいというふうなたてまえでございますので、先ほど申しましたとおり、完全な意味での厳密な査察というわけではないと思います。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 これはさっきの四条と対比すべき重要な中心規定です。平和利用を保障するための。それが、私がどう読んでみても、私の法律知識では、これは厳密な査察制度が確立しておるというふうには、これでは思えないのですね。だから、言いかえれば、野放しですよ相互主義ですから、技術が相手国と対等のところまで発展してない国は、向こうは査察する必要はないんですから、みなわかっているんですから、そうすると、相手国から査察される可能性というものは全然ないでしょう。ソビエトとアメリカとの間では相互に査察し合う、相互主義で合意に達すれば、査察してお互いに益するところがあるでしょう。そうでない国に対しては、何か今度は二国が合意すれば何でもできるわけでしょう。非常な欠陥ではないでしょうか。政務次官どう思いますか、お互いに政治家として、こういうことをきめて。平和の保障じゃない、逆に開発の独占的保障、ちょっと極端に言えばそういうことになりますから。この十二条の査察規定というものは、これは欠くべからざるものですよ。今度の核拡散協定でも、これが中心になるのはあたりまえのことなんですね。これは全然査察じゃないんです。それで説明書には、査察についてとあるから、査察がちゃんとしておれば、これは権利は主張できる、脅威は除ける、こう思って十二条をとってみますと、このとおり。これをどうされるつもりか。決意のほどを伺っておきたい。
  90. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 高島参事官からも最初に御説明申し上げましたとおり、本条約は将来のことをある程度予想いたしまして、将来の危険を防止するために、現在このような条約規定いたしまして、将来の安全を保障するという意味の安全保障のための条約でございまして、これからも、先生も先ほどおっしゃったように、いろいろまた宇宙天体に関する物理並びに科学の新進の学者等も加えて、本条約の今後の実施運営について、また科学的、物理的にも十分これは研究していかねばなりませんし、また実際問題として、いまのお話のように、本条約の確実なる実施のためにはやはり点検行為が必要だろうと考えております。その点検行為をどうするかという具体的な実施要綱につきましては、今後関係国の十分なる協議を進めまして、さらにこの規定をよりよいものにひとつ是正していく必要があると私は考えております。そういう方向に、外務省としても十分努力をしていきたいと考えております。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 高島参事官には釈迦に説法ですけれども、私は問題として提起して、今後の運営並びに改正において研究をしていただきたいと思います。  それから、科学技術庁の尊敬すべき技術官にも、こういう点は強く主張してやっていただきたいから申し上げておきますが、この十二条の査察は、宇宙における軍事施設というものが査察から除外されておる。それから天体における査察も、いまおっしゃったとおり、相互主義になっております。だから、実際の査察の役割りを果たしていない。しかも査察機関はきまっていない。査察する定期査察もない。それから後進国は権限もない。こういうことで宇宙天体においていかなる施設が行なわれておるかわかるはずはないんだ。それで報告の義務もないでしょう。公開の義務もないでしょう。規定はないですね。私、見てみたら、たとえば日本より以下の諸君は、たとえば中国にとってみて、中国に領空権はここまでだ。空気のあるところまでだ。それ以上は大気圏だ。つまり宇宙空間だということで、そこから、宇宙における固定軍事基地ができるわけなのだ、いまの技術からいけば。そういうものができておったときに、それを直察する権限、たとえば中国が入ったにしても、査察する権限が与えられていない。除外されている。これは権限はない。万国にないんだ。宇宙に対してはない。天体についても、これは相互主義で制限をされておる。それがなくても、先進国の国際機関が権威を持って査察をして、それが世界に正直にありのまま報告、公開されるならば、各国に一々査察権並びに権利の行使の道が開かれていなくても、これは安心できますけれども、これは、施設を査察した結果を国際機関に公開する義務はどこにもないように思いますが、いかがでしょうか。そうなると、十二条というのは抜け穴だらけですから、査察に対する規定はないといっても差しつかえないような状態におちいる。これらの点については、もし私の理解が間違っておったら指摘してほしいし、そのとおりであるならば、今後の運営と法の改正にわが国としては良心的に立ち向かうべきであるということを私は強く要望するわけですが、御所見があったら伺っておきましょう。
  92. 曾禰益

    曽祢委員 関連して。第四条は重要な規定なんですけれども、要するに第四条は、核兵器その他の大量殺戮兵器を運ぶ物体地球軌道に乗せないことと、天体に設置しないということと、それから先が一番問題なんですが、「他のいかなる方法によってもこれらの兵器宇宙空間に配置しない」、一体この配置というのはどういうことです。英語でいうとステーション、フランス語でいうとプラーセ、要するに、たとえば衛星船のごときものがときどきこう行って、そこから攻撃することは禁止できないでしょう。プラーセというのはどういうことですか。ステーションは、とにかくとまっているということ。しかし、軌道に乗せたんじゃ、これは前のほうで禁止している。だから、動いているものなんですよ。
  93. 田中好雄

    田中説明員 ただいまのお話は「配置しないことを約束する。」ということはどういうことかということでありますが、その前にございますのは、地球の周囲の軌道に乗せないということ、これは明らかに回ることを意味します。それから「宇宙空間に配置しないこと」という点でございますが、ステーションという意味はそこに長くとどまっているという意味だと思います。したがいまして、そういうとどまっていないようにするという意味だと思います。静止的な意味でございましょうか、そういうことだと思います。だんだん技術が進歩いたしますれば、地球の周囲の軌道に乗せて、それをやや半永久的なかっこうでステーションできると思うのですが、そういうような意味かと思います。
  94. 曾禰益

    曽祢委員 しかし、軌道に乗せることはもう第一次で、その前で禁止しているんですからね、そうでしょう。だから、それはもう静止しようがぐるぐる回っていようが、地球の自転の速度において事実上静止したような場合とかってに動くような場合、軌道に乗せるやつはその前に禁止しているわけです。だから、軌道外で、いわゆる衛星船で軌道外に出たやつがステーションというんだ。だから、静止の場合のことを考えているらしい。それから、フラスン語のプラーセというのは、必ずしも静止かどうか、大体静止と同じ意味だと思う。だから、軌道外のことを言っているんですよ。宇宙空間のどこかで、そういう核兵器その他の大量殺戮兵器を持ったものを地球軌道外、それから天体上以外にも、宇宙空間にはステーションしてはいけない。しかし、動いているのはいいということじゃないですか。その点の解釈がはっきりわからない。
  95. 田中好雄

    田中説明員 ただいまの地球の周囲の軌道、それから宇宙空間の配置——宇宙空間と申しますと相当広うございます。これは月から向こう金星まで、またその奥もずっと宇宙空間でございますから、そういうものに配置しないという意味かと思います。地球の周囲の軌道といいますのは、大体四万キロメートル参りますと、これは地球の回転とその物体の回転がちょうど同期いたしますので、静止のかっこうになりますが、それ以上に高く上げてまいりますと地球外に出てしまう、こういうことでございますので、そちらの地球外のほかの軌道、そういうものも考えられますので、そういうところに配置しないという意味かと思います。
  96. 高島益郎

    高島説明員 ここで申しております限定的に禁止している規定との関係では、たとえて申しますと、ICBMのように、単に宇宙空間を一時的に通過して、普通の大気圏内に飛んでいくということは、特に禁止されてないというふうに解釈されます。したがって、それ以外の、いま科学技術庁から申しましたような核兵器については、一定の地点に静止しているような状況で配置されることは禁止される。しかし、そうでなくて、単に一時的に宇宙空間を通過して、大気圏内に入っていくということは、ここでは禁止されてないという解釈でございます。
  97. 曾禰益

    曽祢委員 ICBMの通過じゃなくて、遊泳しているような人工衛星船のようなものは禁止できないのではないかということを聞いておるのです。
  98. 高島益郎

    高島説明員 厳格な意味におきまして、いろいろと条約の審議の過程で、はっきりこういうことであるということの確定解釈はございません。ただし、いままでの論議の経過からわれわれ判断いたしまして、完全に静止しているという場合だけでなくて、実際に宇宙空間を一時的に動いても、必ずしも大気圏内に帰ってこない、要するに、大気圏に滞留している核兵器、そういう核兵器は禁止する。もちろん核兵器以外のものはこれに該当しませんので、核兵器については、そういうことはいけないということが第一項の項目でございます。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、第六条に入って、後段のこの「国際機関」はどれをさしておるのですか。
  100. 高島益郎

    高島説明員 政府間の機関でございます。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 これは固定的でなくて、任意につくるわけですね。いままで何かやったことがありますか。
  102. 高島益郎

    高島説明員 現在二つほど、そういう政府間機関がございます。これからできますそういう機関についても、もちろん該当いたします。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、いままでの二つには日本は参加しておりますか。
  104. 高島益郎

    高島説明員 一つは欧州宇宙研究計画機構、略称ESROといわれております。もう一つは欧州ロケット開発機構、略称ELDO、両方とも欧州地域におきますそういう研究機関であります。日本は入っておりません。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、これは任意にはいれるわけですか。そのつど合議の上で、こういう活動をやろうということを申し合わせた国が、任意にケース・バイ・ケースで国際機関をつくる、そして活動をする、こういうことが自由に開放されておるわけですね。そうすれば、日本も提案をし、参加して、国際機関として活動することができる、こう解釈してよろしゅうございますか。
  106. 高島益郎

    高島説明員 日本も、そういう種類の国際機関ができました場合は、それに参加することは自由であると思います。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 当面は近くこれが批准された場合に、日本側で、あるいは国際的に日本が参加する、そういう機関は考えられましょうか。いまのところはございませんか。
  108. 高島益郎

    高島説明員 当面ございません。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 それから第七条です。これは損害賠償に対する補償責任でございます。  自国民に対して損害が生じた場合においては、この規定は違いますね。国内法によるわけでしょう。現在国内法はまだできていないように思うのですが、どの規定を準用するのでしょうか。
  110. 田中好雄

    田中説明員 自国内における問題でございますが、ただいま宇宙開発で実際ロケットを上げておりますのは、東京大学の宇宙航空研究所と私のほうの宇宙開発推進本部、この二つでございまして、そのほかにいまのところ考えられておりません。したがって、国家機関でございますので、その面は一般的に扱える、こういうふうに損害のほうは考えております。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、ほかの国家の行為の中で、国民に与えた損害の一般の取り扱いになるわけですね。
  112. 田中好雄

    田中説明員 さようでございます。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 次に八条です。登録は任意ですか、義務ですか。
  114. 高島益郎

    高島説明員 この条約のところどころに登録ということばが出てまいっておりますけれども、これにつきましては、現在国際的な登録制度その他登録の方法等について締約国に何らの合意はございません。これは将来損害賠償に関する詳しい定めをいたします場合に、その前提条件としての登録等について、具体的に規定がされていくものというふうに考えております。現在ジュネーブで損害賠償協定は具体的に討議中でございます。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 科学技術庁にお尋ねしたほうがいいかもしれませんが、国でなく、法人または個人が宇宙開発に関するいろいろな活動をする場合に、探査または利用の行動を起こす場合には、国として現在全部許可事項になっておりますか。
  116. 田中好雄

    田中説明員 現在のところそういうふうにはなっておりません。
  117. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、全く自由ですね。
  118. 田中好雄

    田中説明員 自由でございます。  ただ、一つだけ問題がございますのは、そういうふうな宇宙空間にロケットで人工衛星を上げるということになりますと、相当大きい推力のロケットが必要になります。そういうものは現在一元的に進めるような方向でやっておりますので、法人その他民間がそういうことをやるのはなかなか困難かと思います。そういう事態が起こってまいりますれば、整備しなければいかぬかと思いますが、現在のところそういうロケットを上げますときの射場その他の施設を必要といたしますので、そういう点がなかなか民間ではできないと思います。
  119. 穗積七郎

    穗積委員 高島さんにお尋ねいたします。  そうすると、六条にこういうふうに規定してあるわけです。「非政府団体の活動は、条約関係当事国の許可及び継続的監督を必要とする」。現在の段階で許可制度あるいは届け出制度、いずれにいたしましても、そういう制度がないといけないのじゃないでしょうか、許可、監督になっておるわけですから。国内法が必要になってきていると思うのですね。
  120. 高島益郎

    高島説明員 現在、非政府団体によります宇宙開発というのは当面想定されておりませんが、将来そういう非政府団体が直接宇宙活動をやります場合に、当然日本国家として責任を負わなければなりませんので、その場合にはその許可、継続的監督のために必要な諸規定を含めます法律等も必要であるかと思いますが、現在はその必要はまだないということでございます。
  121. 穗積七郎

    穗積委員 科学技術庁の御所管かと思いますが、この条約で、「当事国の許可及び継続的監督を必要とする」といって、国際法上、これは義務規定ができているわけですよ。そうなると事実はまだそういうものが出てこないにしても、法律の体系からいきますと、当然許可、監督に関する国内法が同時に制定されなければならない理屈になると思うのですね。法の機構上は当然じゃないでしょうか。だからそれはやはり事が起きてからというんじゃなくて、これをやる以上は、こういう協定に参加し、批准をする以上はそれが理屈として必要ではないか、いかがでしょうか。
  122. 田中好雄

    田中説明員 理屈としては仰せのとおりでございますが、現在わが国の宇宙開発、特に宇宙空間における活動、これはすべて東大と科学技術庁はじめ国の機関によって全部なされております。そういう関係で、民間団体は直接には実施しておりませんので、民間におけるそのような活動が当面は予想されておりません。したがって、一応民間団体の活動を規制することが必要になる条件につきましても、当面は国内法の措置はまだ不要かと考えておりす。
  123. 穗積七郎

    穗積委員 それから高島さんにお伺いします。先ほどの第七条の損害補償規定がございますが、これは現在行なわれております各国の核実験、あるいは原子力潜水艦その他核兵器が移動しておるわけです。そういうものによって国または自然人、法人に損害が生じた場合には、やはり国際的な補償規定というものをつくる必要があるのではないでしょうか。これは宇宙天体開発に伴う損害補償規定だけですけれども、この法の精神というものは、やはりそれに類推をいたしますれば、現在ある実験に伴う補償規定というものは国際的にやっておいたほうが、——この間飛行機の事故に関する国際的な取りきめができたでしょう、いままで国内法でやっておったのですが、こういうものが、もうすでにこういう宇宙天体開発に伴う損害補償規定ができておるのに、やはり個別の国家間の補償ということでははなはだしく不十分ではないかというふうに思われるわけです。その点、どのようにお考えになっておりますか。私の要望を添えてお尋ねいたしますので、お考えを伺いたいわけであります。
  124. 高島益郎

    高島説明員 現在そういう意味で国際的取りきめをやっておりますのは、原子力商船の損害賠償に関する条約、それ以外に先生のおっしゃったような意味で核実験に基づきます損害、これは現在核実験というものは禁止されておりますので、そういう点問題はなかろうかと思いますが、一般的に原子力潜水艦、これはもしそういう不幸な事態になったときには、国家間の問題として処理するということで処理していけるのではないかというふうに思いますが、第七条にございますような一つ原則を定めるということは、非常にけっこうなことだと思います。
  125. 穗積七郎

    穗積委員 その点も私は今後の宿題として、審議にあたって政府に今後の御努力を期待をいたしておきます。  それから最後に第九条の「協議」というのは、これはどういうことを意味しておるのですか。第九条の後段、「活動又は実験に関する協議を要請することができる。」
  126. 高島益郎

    高島説明員 この規定にございますとおり、「潜在的に有害な干渉を及ぼすおそれがあると信ずる理由があるときは、」それに対する予防措置、事後の措置につきまして、必要な国際間の協議をするという趣旨のものであると思いますが、それ以上に詳しい特別な意味はないと思います。
  127. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと御説明申し上げますが、第九条、政府のお出しになりました説明書では、事前協議になっておるわけです。本文は事前協議を意味するわけですか、この意味は……。
  128. 高島益郎

    高島説明員 ええ。
  129. 穗積七郎

    穗積委員 事前協議は義務化されておりますか、この規定で。
  130. 高島益郎

    高島説明員 「その活動又は実験が行なわれる前に、」と書いてございます。これは当然事前の国際間の協議と考えます。特にそこでは、「潜在的に有害な干渉を及ぼすおそれがあると信ずる理由があるときは、」という条件でございますので、常にということでは必ずしもございません。
  131. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、おそれを感ずる国が提案するわけですね。なければいいというわけですね。やるほうが危険を感じておっても、締約国の他の国が脅威を感じておらなければ事前協議の対象にはならない。
  132. 高島益郎

    高島説明員 第九条の一番最後の文章にございますとおり、有害な干渉を受けると考える国の側では、「その活動又は実験に関する協議を要請することができる。」となっておりまして、これは被害を受けると考える側のほうでは、単に要請をするというだけでございまして、実際に協議を求めて協議を行なうのは実験する国のほうでございます。
  133. 穗積七郎

    穗積委員 そうですね。だから厳格な意味の事前協議、何といいますか、こういう場合にというふうにきちっと確定をして、他の国から要請がなくても事前に協議をする義務はないわけです。そういう厳格な意味の事前協議ではないように思われますね。これもいささか不十分のように感じましたので、御注意を喚起しておきたいと思います。  最後に、この条約を見て、われわれ政治的に判断をいたしますと、現段階では、一番問題は、中国が参加するかしないかということだと思うのです。将来は未締結国で、そういう心配する現実が出てくるかもしれませんが、中国の核開発並びにロケット開発の技術世界を驚嘆せしめるほどスピードが早いわけです。したがって、アメリカ当局すらICBMを含む技術の開発は近いであろうと害われるくらいになっております。そうなりますと、こういう有力な科学技術を開発しつつある国がこの条約に参加しないということは、この法の精神、目的が非常に不十分といいますか、片手落ちといいますか、そういうものにならざるを得ないと思います。  したがって、お尋ねしたいのは、この条約をそういうことを想定して討議する場合に、中国をはじめとする開発の可能性のある国との関係が討議されたかどうか、今後どういうふうな政策をもって臨むつもりであるか、そういうことが討議されたか、また日本としてはどう考えておるか。私はもう中国を国際会議、国際協定の中に入れずして核の問題、こういう天体開発の問題を議論いたしましても、現実はナンセンスになると思う。そういう意味でこの際外務省のお考えを二つに分けてお尋ねいたします。  もう一ぺん言うと、これを審議するときに、各国の間で問題にならなかったのかどうか。それから、ならないにしても、これは気がつかないだけであって、客観的にはこの条約目的が非常に阻害されつつある現実が事実あるわけです。したがって、日本としてはこれに対して無関心でおってはいけないのではないか。そういう政治論も含めましてお尋ねいたします。
  134. 高島益郎

    高島説明員 この条約の審議の過程におきまして、特に中国あるいは将来宇宙開発を活発に行ない得る可能性のある国との関係をどうするかという問題についての討議は格別にはございません。わが国としましては、もちろん中共を含めまして、もしそういう国がございますれば、そういう国を含めまして、すべての国が条約に参加することが望ましいと考えられます。この条約は先ほどから申しておりますようにいろいろ不十分な点はございますが、宇宙空間の非軍事化への一つの一里塚といたしまして意義あるものだ、かように考えますので、政治に関係なくすべての国がみな加入してもらうということが非常に望ましいと存じます。
  135. 穗積七郎

    穗積委員 私は希望を申し述べまして終わりにいたします。  この条約では、中国は入りません。私が中国でもこんな片手落ちなざる法では入らない。したがって、われわれとして努力すべきことは、先ほどから私の幼稚な知識をもってもなおかつ抜け穴がたくさんあって、そして前文にうたわれた題目を実現する条約になっていない。それらの諸点をすべて改正をし、充実をして、そして中国をはじめとする万国がこれに参加できる、そういう姿勢で進むべきであるということを強く私は意見として申し述べます。ただ、これで入れ入れ、入らないほうが悪いんだということじゃ、私が中国でもこんなものでは入りません。いまの先進国にのみ、核条約と同様に独占支配を強化する危険があるわけです。そういう点は質問いたしませんが、私の意見として申し述べて御注意を喚起し、それに対して問題を解決をしていく努力を政府当局に強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  136. 福田篤泰

  137. 渡部一郎

    渡部委員 いままでの数次にわたります質問によりまして、この条約についての欠陥が非常に明らかになってまいったのでありますが、私はこの条約の不備について今後の努力をお願いしたい、こういう考えでございます。  と申しますのは、核拡散防止条約あるいは部分核停条約あるいは南極条約、それからこの条約と、宇宙及び天体に関する条約あるいは核兵器に関する条約というものは、これから先大いに積み上げられていかなければならない問題でありますが、米ソ両国を柱とするこのような条約締結というものは、きわめて不十分な妥協に終わるということは当然理解ができるのであります。したがって、欠陥のあることは明らかであるが、その欠陥を越えてどういうプラスがあるか、またどういう欠陥があってそれを是正する意向なのか、それがはっきりされなければならない。私はこういう立場であります。  宇宙空間というものの定義について先ほどから何回も議論されておりますので、私は重複する議論は省きますけれども、英語のアウタースペースと、従来いわれる領空、エアスペースの間の区別が明瞭でないと、本条約の基礎的な成り立ちに重大な支障があることは当然だと思うのです。  その立場から、この宇宙空間においては否定されているものがもしもこれは領空であるからといって押し通されたり、領空で認められていないものが逆に宇宙空間では認められるというようなことも当然ここの条約からは出てくると思う。そういたしますと、この定義というものはどうしてもはっきりしなければ混乱を生ずるだろうということは明らかであります。  私は、政務次官がいままでの長い経歴において警察関係の御出身でありましたので、伺っておきたいのでありますけれども、二人の当事者がおりまして、その当事者が怪しげな契約のもとに土地の売買をしたとする。土地の境目が怪しげな土地を売ったとする。そうすると一体どうなるか。契約をしたのが悪いのか、契約をしいられたのが悪いのか、その契約を承認したのが悪いのか、これは問題だと思うのであります。私たちはいまその契約を承認させられるほうでありますけれども、警察関係の立場におありになった次官は、こういう場合はもっと契約を明確にすべきであってそういうものは軽々に締結すべきでないという立場をおとりになるのか、それとも怪しげな契約でもよいから結んでしまって、あとは両者の談合によって境界線は明らかにすべきであるという立場をおとりになるのか、そのどちらの立場をおとりになるかを私はお伺いしたいと思います。
  138. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 私も宇宙空間その他に関する物理的、化学的な知識はまことにないのでありますが、ただいまはジュネーブにおきまして宇宙空間平和利用に関する委員会ができておりまして、これがただいま先生の言われるような宇宙空間というものはどういうものであるか、どの範囲のものであるかといういわゆる法律的な定義、いま先生のおっしゃいました領界がどの領界であるかという厳格な定義につきまして慎重に協議をいたしておりますので、われわれといたしましては、一応ジュネーブにおける宇宙空間平和利用に関する委員会の結論を待って態度を決定したほうがいいのじゃないか、かように考えております。
  139. 渡部一郎

    渡部委員 いま、私はそれを伺っておるのじゃないのです。政務次官は慎重におっしゃいましたけれども、境目の怪しげな土地を買うかどうか、そういうやり方をするのが正しいかどうか、それを伺っているわけです。そうしたら、境目の怪しげな土地については、その境目をはっきりした上で土地を買うほうがほんとうだろう、あるいは境目の怪しげな土地だったら、私は、この辺が境目だと思って買うのが当然だろう、だからそういう気持ちがあるんでしょうね、ということをいま伺っておるわけです。いかがでしょう。
  140. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 やはり境界線が不明のような土地は、まず取得しないほうが安全じゃないかと考えております。
  141. 渡部一郎

    渡部委員 そうしますと、次官、この条約は結ばないほうが安全だということになってしまうわけなんです。というのは、宇宙空間の境目がはっきりしないからです。そうすると、いま参事官が必死になってお答えになったことが全部むだになりますから、そのお答えじゃちょっとまずいんじゃないかと思うのですが。
  142. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 それとこれとはまた非常に問題が違っておりまして、そういう設例に答えたからといって、この条約の成立が必要ないということは私はないと思います。最初に御説明申し上げましたとおり、宇宙天体というものは人類の平和のために、これを平和的に利用することに確保しようという観点から締結しようという動機になっておりますので、こういう点から申しましても、この条約の成立はなるべく早くこれを成立させて、不完全なものはこれをひとつできるだけ時々刻々に是正していく、こういう方向に進んだほうが人類のためにもいいのではないか、こういう考えでございます。
  143. 渡部一郎

    渡部委員 じゃ、参事官に伺いますが、この交渉をするにあたりまして、アウタースペースの定義をどういうふうなものときめて交渉に臨まれたか。日本政府側の心づもりと、それから、いま協議中だそうでありますけれども、これからどういうふうにこれを定義するか、心づもりを明らかにしていただきたい。
  144. 高島益郎

    高島説明員 もちろん宇宙空間につきまして全然概念がないということではございませんで、一応の概念といたしましては、つまり人工衛星が飛行し得るような空間を頭に描きまして、そういう空間におきます人類の活動条約規定していこうということでございます。それで、現在そういうことで、たとえば八十キロとかあるいは百キロとかいろいろ説がございまして、各国の態度が決定しませんので、国連の決議によってジュネーブで宇宙空間定義を早く解決しようということで現強いろいろな案が出ております。まだ最終的な結論に達しておりませんので、現在ここで公表し得ませんのでございますが、これはこの条約実施の一番重要な点でございますので、この平和利用委員会としましてできるだけ早い機会に結論が出るように努力するというふうに考えております。
  145. 渡部一郎

    渡部委員 外国の態度じゃなくて、日本の態度、こっちの押すべき態度はどうなっておるかを伺っておるわけです。
  146. 田中好雄

    田中説明員 ただいま御説明いたしましたように、宇宙飛行体の通常の衛星軌道飛行、これが大気との摩擦によって不可能になるという一番最低のところを一応考えてみますと、約百キロメートル前後というふうに考えられますので、それから上というふうな考え方で一応やっておるわけでございますが、これは定説ではございません。  なお、その他にいろいろまだ議論があるようでございます。これは国連宇宙空間平和利用委員会がございまして、宇宙空間定義の問題を議論しようということでやっております。そういうようなことを考えた上で結論が出るように思います。
  147. 渡部一郎

    渡部委員 それじゃ、大体百キロというめどで交渉をされているものだと了解してよろしいですか、参事官。——じゃ、そうだと理解いたします。  今度は第四条の問題であります。この第四条が、先ほどの質疑応答を経まして非常に穴があるということはもう明らかになったのでありますが、大陸間弾道弾その他のミサイルというのは、核つきの場合、軌道に乗っけたり、宇宙空間に設置されたものではない、要するに、そういったものは設置してもかまわない、これは、たとえば百キロをこしてもそういうものはもう何ら支障なく研究し、開発し、あるいは実戦に用いることはこの条約でに規定されない、こういうことでございますね。
  148. 高島益郎

    高島説明員 この四条以降で書いておりますのは、設置したり配置したりすることはできませんが、それ以外のことは特に禁止されておりません。
  149. 渡部一郎

    渡部委員 そうしますと、ICBMはその設置ということばに当たるんでしょうか、当たらないんでしょうか。
  150. 高島益郎

    高島説明員 ICBMの実験等に大気圏外を使うというふうなことは、ここに四条以降にございます天体に設置するという概念には入らないと思います。
  151. 渡部一郎

    渡部委員 そうしますと、ミサイルについては規定がない、人工衛星については、この人工衛星を飛ばすあるいは通信衛星を飛ばす、それに核装備をしているかどうかということは、現在下から見てもとてもわからないものでありますし、いまの技術をもってすれば百六十キロ程度の人工衛星を飛ばすことは十分可能だと思います。そうだとしますと、そういうものを空中に打ち上、げておく、そういうことは一体この条約によって規定されるかされないか。要するにこの条約によっては、核つきの人工衛星を打ち上げて宇宙空間に置くということは、この設置ということばに入るか入らないか、それについてはいかがでしょう。
  152. 高島益郎

    高島説明員 いかなる方法によっても、核兵器宇宙空間に配置することは禁止されるわけでありますから、これはもし核兵器であればそういうことはしてはならない対象になろうかと思います。
  153. 渡部一郎

    渡部委員 そうすると、その核兵器人工衛星につけて飛ばしているかどうかということをチェックする方法があるかどうか、もしそういうことをやった場合の処罰規定があるかどうか、そこのところはどうなんでしょう。
  154. 高島益郎

    高島説明員 これは、国家間の条約は、国内法のような一々それに対します罰則を定めるというふうなことはいたしませんで、各国の相互間の信頼に立っておりますので、この点につきましては特にそういうことをチェックする方法について何らの規定はございません。各国がそういうことをしないという約束をするわけでありますから、そういう約束というものは非常に重みのあるものでございまして、国内法の場合とは若干方法が違います。
  155. 渡部一郎

    渡部委員 そうすると、核つき人工衛星を飛ばしても、あるいは大陸間弾道弾を飛ばしても、それは全部これには規定されないということは明らかだと思います。そうすると、私はさらにこの問題について穴があると思うのであります。それは、この第五条で、損害賠償の問題で、宇宙空間に行った宇宙飛行士の救済、援助についての条文というのが明らかでありますけれども、これについて外務省当局は当初、もしもこういうような緊急着陸等の可能な限りの応援なんというものを与える場合においては、それがあらかじめ公開されなければ承認するわけにいかぬ、あるいは援助規定というものを実際的に置きますと、損害賠償規定というものが両方とも双務的なものであるという主張を強くなさったと伺っております。これは新聞報道で私はチェックしたのでありますけれども、そのような強い主張であったにもかかわらず、最後において国連大使が演説された場合においては、その問題について留保条件も一言も触れることなく、これについて全面的な賛意を表されて終わってしまったのはどういうわけなのか、そこを伺いたいと思います。
  156. 高島益郎

    高島説明員 宇宙飛行士を含めます宇宙飛行体の救助あるいは返還の定めにつきましては、先ほど申しましたジュネーブの宇宙空間平和利用委員会宇宙空間定義とともに現在協議中でございます。このジュネーブでの協議がととのいますと、実際にどういう方法で宇宙飛行士を返還するか、返還の方法につきまして具体的に細目が定められますので、それに従って将来こういう事態が起きた場合に処置されると考えます。
  157. 渡部一郎

    渡部委員 ぼくはそれがそのように、日本の外交というものが、当初強硬路線を打ち出されておいて最後に妥協される、その経緯が納得できないからいま伺っているのですから、どうしてそこまで後退されたのか、そこのところをはっきりしていただきたいと思います。
  158. 高島益郎

    高島説明員 たいへん恐縮ですが、先生の御質問意味がよくわかりかねるのですが……。
  159. 渡部一郎

    渡部委員 私が申し上げているのは、当初において、損害賠償と救助規定というのが双務的なものであるから、これは明らかにしろというふうに相当強硬に日本政府が主張されたはずです、ほかのことはともかくとしても。ところが最後にはそんなことは一言もおっしゃらないようになってしまったので、その経緯を疑問としておるわけです。
  160. 高島益郎

    高島説明員 その点はわがほうは全然立場を変えておるわけではございません。この条約自体には賠償と返還との関係が書かれてございませんけれども、現在ジュネーブでのこの返還協定の作成にあたりまして、わがほうは賠償協定と密接にリンクさせるべきだという立場で交渉中でございます。したがって、そういう点につきまして、態度を変えたという事実はございません。
  161. 渡部一郎

    渡部委員 わかりました。  第七条についてでありますが、損害賠償の責任の問題であります。ここのところで「損害について国際的に責任を有する。」この「国際的に」というのは、各国同士がお互いに、損害を与えたほうと与えられたほうの国によって協議する、この損害賠償の金額とかなんとかをきめるという意味でございますか。
  162. 高島益郎

    高島説明員 この損害に関する規定は第七条だけで非常に簡単なものでございますが、これにつきましても現在ジュネーブの法律委員会で賠償協定を協議中でございます。ここで「国際的に責任を有する。」と申しますのは、国家としての責任を有するという意味でございます。別にそれ以上の深い意味ではございません。
  163. 渡部一郎

    渡部委員 では、その問題についても日本政府は強硬な立場ではっきりした態度を明らかにしてください。将来において航空機がたくさん落ちてくるみたいに、そういう問題が起こってきたときに一々協定をしなければならない。アメリカに対してはやわらかく交渉する、インドの人工衛星には強腰になる、そういうような不統一な、ややこしい状態が起こるということは、外交交渉としてはうまくないのじゃないか、これは強く要請しておきたいと思います。  それから、いままでのところで、この条約ははなはだしく穴がある条約である、欠陥がある条約であるということは、もうお認めになるのじゃないか。それにもかかわらず、ここに出された理由があるならば、私はそれを最後に伺っておいて、またこれとこれとこれとの点については直すつもりだとか、あるいは直すために国際的な努力を今後払いたいとか、そういったことについての御意見を伺っておきたい。それを明確にひとつ言っていただきたいと思うのであります。
  164. 高島益郎

    高島説明員 確かにこの条約は、いままで諸先生方から御指摘がございましたとおり、いろいろな欠陥がございます。その点はわれわれも十分認識している次第でございます。ただこれは国連の場で、国連のイニシアチブで、宇宙に関しまして最初法律条項を設定しようという努力のあらわれでございまして、その結果このように非常に不満ではございますけれども、一応最初のそういう法規範ができたという意味でわれわれは非常に有意義な、重要な条約であろうというふうに考えております。そういう観点から、国連総会で満場一致採決されて、各国にこの条約を推奨されているわけでございます。ちょうど先ほど申しましたとおり、核実験停止条約が、不完全なものではありますけれども、われわれとしてはこれにとにかく一応賛成しておる。さらに地下核実験停止についても努力していくという態度であったと同じように、また軍縮につきまして、部分軍縮であっても、当面の目標としてはそれが最善のことであって、将来の完全全面軍縮というものは一応の理想としては掲げるけれども、なかなかそこまでいかないという実際の現実については、十分先生方も御認識していただきたいと思います。これにつきまして、特にわれわれの希望といたしましては、先ほどから何回も御指摘のあった第四条に掲げます宇宙空間一般の非軍事化という点について何らの取りきめがないという点について、たいへんな御不満があったのはよくわれわれ認識いたしております。この点につきまして、今後目標を、月、天体のみならず、宇宙空間全体に及ぼすということを一つの目標として、これからの国連におきますいろいろな活動について反映していきたい、こういうふうに考えております。
  165. 渡部一郎

    渡部委員 それから最後に、言い残したので、一つだけ伺いますが、第四条のところにある設置という条項が、英文のほうを見ると、これは配置しないというところにステーションと書いてあります。「ステーション サッチ ウエポンズイン アウター スペース イン エニー アザー マナー」というのがありますが、このステーションという意味は、どのような武器も宇宙空間においていかなる方法においてもそれを配置しない。この配置というのは、たとえば実際に天体の上に配置しておいて、ちょっとでも飛び上がってしまうとステーションではなくなってしまう。ですから実際問題からいうと、このステーションということばのこういう規定のしかたでは、まるっきり穴があいてしまう規定ではないか。これはもう軍事専門家たちの共通の見解であろうと私は思います。したがいまして、これについても最後に残りましたので、一言指摘しておきたいと私は思います。それで、当初のある国の案にありましたように、ここのところはムービングと書くべきである。要するに移動するものあるいは設置されているもの、天体及びその天体の周辺にあるもの一切を含めて、そういうふうに一歩前進しなければならぬものだと思いますが、御見解を最後に伺っておきたいと思います。
  166. 高島益郎

    高島説明員 先生の御心配は、核兵器宇宙空間に配置することを禁止するだけでは不十分ではないかという御質問でございますけれども、配置しないで……。
  167. 渡部一郎

    渡部委員 いや、そうじゃないのです。天体の上に乗っけておいたら設置ですけれども、それが飛び上がった場合、たとえばそれをときどき持ち上げたりしますと、それは設置でなくなるでしょう。
  168. 高島益郎

    高島説明員 先ほど曾称先生の御質問にお答えしたように記憶しておりますけれども、いかなる方法によっても核兵器宇宙空間に配置しないということがございますので、これは非常に広い概念で、単に設置するだけではなくて、天体に設置するということだけじゃなくて、宇宙空間一般にわたって配置しないということでございますので、これは核兵器宇宙空間に配置されることは一般的に禁止されているというふうに考えます。
  169. 渡部一郎

    渡部委員 けっこうです。
  170. 福田篤泰

    福田委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。
  171. 福田篤泰

    福田委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。穗積七郎君。
  172. 穗積七郎

    穗積委員 ただいま議題になりました条約については、社会党を代表して賛成の意見を申し述べますが、先ほど来審議の中ですでに明瞭であるごとく、特に第四条、第十二条の軍事利用の禁止が非常に不明確で、不公平であり、それから抜け道が多い。  それから、十二条における査察が、この禁止規定がありましても、これを査察する制度が確立されていない。査察ということばはありますけれども、これは実は査察に値しない取りきめであります。したがって、先ほど私ども同僚議員とともに指摘いたしました欠陥の諸点を、政府は御答弁にありましたように、正確に、まじめにこれを取り上げて、急速に、手落ちのない研究をされて、今後のこの条約の運営さらに進んでは条約の改正をかちとることを努力されまして、この条約がすべての国に対して、平等に平和利用に徹する。そして、言いかえれば、軍事利用の危険な道は全部封殺する。それが行なわれているか、行なわれていないかを査察する制度を、これは権威ある厳格なる査察制度を確立されることを強く要求をし、かつそれを条件として賛成をいたします。
  173. 福田篤泰

    福田委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本件は、承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  174. 福田篤泰

    福田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  175. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  176. 福田篤泰

    福田委員長 次に、航空業務に関する日本国政府大韓民国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑に入ります。  質疑通告がありますので、これを許します。石野久男君。
  177. 石野久男

    石野委員 航空協定に関する日韓の協定の問題について質問いたしますが、いま大臣がおいでになりませんので、次官から御答弁いただきますけれども、あとでまた大臣が来ましたら……。  この協定は、日韓の間に行なわれるものですが、そのものずばりで、この協定を結んだ場合、朝鮮との航空業務の問題、特に三十八度線以北の問題についてはどういうふうになるのですか。
  178. 吉良秀通

    吉良政府委員 ただいま御質問の三十八度線以北の問題でございますが、これは日本政府と韓国政府との協定でございます。したがいまして、韓国政府が現在管轄している地域でわが国と行なう協定でございますので、三十八度線以北は関係ないのでございます。
  179. 石野久男

    石野委員 この協定ができた場合の三十八度線以北の航空協定については、政府はどういうふうにするのかということを聞いておるのです。
  180. 吉良秀通

    吉良政府委員 三十八度線以北の地域、つまり北鮮につきましては、わが国といまだ外交関係もございません。いまのところこれと航空協定を行なうということは問題の外でございます。何も考えておりません。
  181. 石野久男

    石野委員 いまは何も考えていないということは、将来は、そうすると三十八度線の北にある朝鮮人民民主主義共和国というものについて、航空業務は政府は考えていないということですか。
  182. 吉良秀通

    吉良政府委員 将来のことはさておきまして、現在においては何も考えていないということをいま申し上げたわけでございます。
  183. 石野久男

    石野委員 この協定は現在から将来にわたる協定でしょう。
  184. 吉良秀通

    吉良政府委員 この協定につきましては、先ほど申し上げましたごとく、韓国政府との協定でございますから、三十八度以南の地域を管轄しているわけです。
  185. 石野久男

    石野委員 だから、三十八度線以北はどうするのですかと聞いているので、全然今後も考えないというのか、どうするのかということを聞いているのです。政府はあの地域は空白地帯だということで、何もないというふうに考えているのかどうかということを聞いているのです。
  186. 吉良秀通

    吉良政府委員 航空協定関係ではいまのところは何も考えていないということでございます。将来につきましてはまた将来の事態において考えたらいいということでございます。
  187. 石野久男

    石野委員 三十八度線の北に領土があり、それから人が住んでおって、国がちゃんとあるというこの事実を、これは次官にちょっと聞きますが、どういうふうにこれをお考えになっておられますか。
  188. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 現在御承知のように朝鮮民主主義人民共和国との国交が正常化されておりません。それで、現在といたしましては、この航空協定を結ぶということができません。したがって、いま、将来においては別問題だということを吉良参事官から申し上げた次第であります。現在といたしましては、航空協定を結ぶ余地もございませんし、そういうことを考えられる余地がない、こういうことを申し上げたわけであります。
  189. 石野久男

    石野委員 そうすると、政府は、いま三十八度線というものは朝鮮のあそこにぴしゃっと区切りがつけられておる。あそこで三十八度線を固定化するという意味、それからあそこの北にある共和国というものは無親する、無視するということばは非常にやわらかいことばですが、実際言えば敵視するということに通ずるわけですが、そういう三十八度線については、これは固定します、そうしてこれは敵視して相手にしない、こういう立場なんですか。
  190. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 私の申し上げておるのは、そういう意味でも何でもございませんで、やはり朝鮮民主主義人民共和国という国柄のあることははっきりした事実でございます。三十八度線以北にも民族がおるわけであります。その事実はこれは当然厳粛なる事実でございますから、これは認めなければなりませんが、ただ、現在の実情としては、いま航空協定を結ぶ意思はないということでございます。
  191. 石野久男

    石野委員 航空協定を結ぶ意思がないということは、その国を認めないということと同じですね。
  192. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 その国を認める認めないというのではなくして、ただ、現在外交関係を結んでおりませんから、国交の正常化もされておりませんので、現在そういうことを結ぶことのできない実情にございますので、現在としましては協定を結ぶことができない、こういうことを申し上げておる次第であります。
  193. 石野久男

    石野委員 できない実情にあるというのと意思がないというのと違うと思うのですがね。政府は意思がないということは、無視することなんです。結局三十八度線というものを朝鮮の中にぴしっと引いて、それから北のほうは全然認めません。相手にしません。相手にしませんということは敵対関係だということに通ずるわけですね。だから、三十八度線を固定化し、それから三十八度線の以北については、これはもう敵視する、こういうふうにとられてしまう、非常に疑義を生ずるような協定になるのです。そういうことを含めてこの協定を結ばれるのかどうかということを聞いておるのです。
  194. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 いまの北朝鮮を敵対視するとか、しないとか、そういうような考えは毛頭政府にはございません。現に北朝鮮の民族も日本に住んでおりまして、そういった関係もありますから、そういう点におきましては、この航空協定はそれと全然無関係のものでございますから、その点は御了承を願いたいと思います。
  195. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について……。実はきょうはこの条約についての第一の質問通告をしておったのは私なんですが、この条約の及ぼす政治的な影響というものは大きいと思いますので、その点については、特にわが党の朝鮮対策特別委員長石野君が大臣に特にただしておきたい、こういう希望を持って実は本日質問通告をしたわけです。ところが、大臣がまだ参議院の審議の過程でお見えにならないので、したがって石野君の政治的な党を代表する質問は大臣が見えてからにしていただきまして、それで厚生省は、田川政務次官に役所を代表してきていただいておるわけですから、できれば御一緒に大臣とそろえて両政務次官に質問をしていただく、それまで私が、この条約に対する事務的な質問を事務当局にさきにやらしていただいたらいかがかと思う。これは好意的な提案ですから……。
  196. 福田篤泰

    福田委員長 けっこうです。  穗積七郎君。
  197. 穗積七郎

    穗積委員 ほんとうは、この条約の及ぼす外交的政治的な影響をわれわれ重視いたしておりますから、その点を冒頭に大臣にお尋ねをして、それから事務的な質問に入るべきであったのですが、いまお聞きのとおりのような事情で、その政治的な面は同僚の石野委員から質問していただく、それまで両政務次官は、居眠りでも何でもけっこうですから、お待ちいただきたいと思います。  順序は転倒いたしましたが、最初にお尋ねいたしますのは、最近の日韓間の航空旅客の実情をまず報告していただきたいと思う。これは運輸省でも、外務省でもどちらでもけっこうです。
  198. 吉良秀通

    吉良政府委員 もしさらに正確な最近の資料がございましたら、あとで運輸省から補足していただくことにいたしまして、最近の日韓間の航空輸送実績につきまして申し上げます。  手持ちの資料によりますと、昭和四十一年、昨年には、東京−ソウル間、これは日航、ノースウエストを含めたものでありますが、約九万六千人、大阪−ソウル間、これは大韓航空でございますが、一万七千人、福岡−ソウル間、これはキャセー・パシフィックのあれだと思いますが、約三千人、福岡−釜山間、これは大韓航空でございますが、一万人、このような数字になっております。さらに過去にさかのぼりまして三十九年、四十年の数字もございますが、著増しておると申し上げてもよろしゆうございます。これが航空輸送実積です。  そのほかの数字をさらに申し上げますと、日本から韓国を訪れる邦人、それから日本を訪れる韓国人、この数字もついでに申し上げますと、昨年、四十一年、韓国を訪問いたしました日本人は約二万二千人、端数は省略いたします。日本を訪問いたしました韓国人性方三千人、こういうことになっております。これも昭和三十九年、四十年に比べますと、それぞれ非常な増加でございます。  以上でございます。
  199. 穗積七郎

    穗積委員 著増いたしておることは明らかになりましたが、その原因はどういうふうに見ておられますか。またそのパッセンジャーの種別は大体把握しておられますか。経済関係が多いのでしょうかね。
  200. 吉良秀通

    吉良政府委員 旅客の種別については、私は資料を持っておりませんのでお答えいたしかねますが、日本からは観光客が非常にふえておると了解いたしますが、同時に日韓国交正常化に伴いまして、経済協力関係が非常に進展してまいりましたので、日本から韓国へ参るもの、また韓国から日本へ参るものが非常にふえたのだろうと思います。
  201. 穗積七郎

    穗積委員 現在はもうすでに民間レベルで協定を結んで、定期航路をやっておるわけですね。その実情をちょっと報告していただきたいのです。
  202. 吉良秀通

    吉良政府委員 これも運輸当局の御所管でございますが、私手持ちの資料でお答え申し上げますと、日航と大韓航空との間の双務協定によりまして、現在日韓間の航空業務を運営しているわけでございますが、路線といたしまして、日本航空は東京−ソウル間、これは四月からでございますが、週七便、大韓航空による路線といたしましては、ソウル−大阪が現在週七便、さらに大韓航空は釜山−福岡間を運営しておりまして、現在週五便、こういうふうに動いておるわけでございます。
  203. 穗積七郎

    穗積委員 格別なる配慮をもって事務的質問を先にやりましたが、大臣が見えたので、石野委員に交代いたします。
  204. 福田篤泰

  205. 石野久男

    石野委員 大臣にお尋ねしますが、日韓の航空協定の審議にあたって、この協定は三十八度線の北にどういうように影響を及ぼすかということ、あるいはまたそれをどういうふうに考えるかということで、いま質問しました。次官から、政府はいま北のほうには航空協定を結ぶ意思はないという御答弁をいただいたわけです。こういう御答弁をいただくと、日韓条約締結する段階での審査の過程なんかでもしばしば問題になったように、政府は三十八度線の北に厳然として存在している朝鮮民主主義人民共和国というものを無視し、それを敵視する、もっと端的に言うなら、朝鮮の平和的統一というものができないように三十八度線を固定するという、そうした考え方でこの航空協定というものを南のほうとだけ結ぶのじゃないかという疑義を持つわけです。政府にそういう考え方があってやられるのかどうかということを、この際ひとつ確かめておきたいのであります。
  206. 三木武夫

    ○三木国務大臣 参議院の予算委員会に出席しておりまして、御論議された点は私もよく承知しませんが、おそらく政府委員は、現在の瞬間においてはということでしょう。アット・ザ・モーメントということで、それはやはりそうだと思いますよ。国交回復しておりませんし、だから、現在のところそれは意思を持つはずはない。しかし、世界情勢は流動いたしますからね。それだから、何かこう意思というようなことで言うと、それは一体どれぐらいの時間的目盛りでそういうことを言うかということで、いろいろ問題があろうと思いますから、現在のところでは、国交も回復しておりませんから、そういう考えは持っておりませんということで、その意思というものが、世界情勢の流動化ということも頭に入れて、永久のものであるというふうに固定して考えないほうが私はいいと思う。そういうふうにおとりくださって、あるとかないとかいうのでなくして、現在のところではそういうことはやはり考えておりませんということで、将来はこれはどういう変化が来るかわかりませんからね。あなたが考えておるようなのと違う変化も来ないとも限らぬですからね。いろいろな点で、これは将来のことについて政府の確固たる意思というものは表明しないで、現在のところはそういうことである、それが政府委員答弁の趣旨だと考えております。
  207. 石野久男

    石野委員 この協定を結ぶことによって、朝鮮の三十八度線というものが平和統一を阻害する線として固定化してしまいはしないか、日本はそういう立場でこの協定を結ぶのじゃないかという疑念、それから、日本が三十八度線以北に対して明らかなる敵視政策を持っているのじゃないかという疑義を持つので、そういうことであっては困るということから実は質問しているわけなんです。政府にそういう敵視政策があるのかどうか、あるいは固定化するというような、そういう考え方があってのことかどうかということを私は聞いているわけです。
  208. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いまは南とのほうだけ国交が回復していますから、航空協定を結ぶ場合にはこういう形になると思いますが、そのことが敵視政策を持っておるという証拠でもなければ、あるいは将来起こるべきいろいろな変化に対して即応性を無視した考えでもない、こういうふうにおとりくださったらけっこうだと思います。
  209. 石野久男

    石野委員 この協定が結ばれることによって生じてくる政治的な諸問題、特に大きな問題は、そういう私たちの朝鮮に対する政策の中で、三十八度線が固定化されたり敵視政策が出てきたりするということが、この条約によってなお一そうコンクリートされてしまうということがあってはいけないという考え方をわれわれは持っておるわけです。こういう考え方を持つ理由はどこにあるかというと、最近日本と朝鮮との間に、たとえば帰国協定の打ち切りという、こういう問題での閣議決定が行なわれたりなんかして、帰国協定の一方的打ち切りの態勢なんかが出てきているわけです。これらのものと今度の航空協定とが完全に関連しているとわれわれは思っているわけです。大臣は、最近日本赤十字がこの帰国協定の問題で朝鮮の赤十字に打ちました電報を御存じですか。
  210. 三木武夫

    ○三木国務大臣 電報は七月中旬ですか、打ったような報告は、ここにも見ておるわけですが、詳細は政府委員からお答えいたします。
  211. 石野久男

    石野委員 厚生省ひとつ……。
  212. 田川誠一

    ○田川政府委員 最近日本の赤十字社から朝鮮民主主義人民共和国の赤十字社あてに七月五日に電報を打ちました。その大体の内容は、いままで——以下北朝鮮と申し上げますが、北朝鮮から、現行の協定を無修正延長すべきであるという電報をたびたびいただいておりますので、それに対して日本側は、無修正の延長をすることはできない、応じられないということを明らかにいたしました。明らかにいたしまして、さらにそれにつけ加えまして、協定の有効期間内に帰還を希望する者を帰還させるための処置その他の問題につきまして、八月中旬以降適当な場所におきまして北朝鮮赤十字会と話し合う用意があるということを電報に打ったわけでございます。
  213. 石野久男

    石野委員 いま政務次官から話があったように、七月の五日に打ちましたこの電報の内容というのは、その前段において、協定を一方的に打ち切るということも、もう既定的な事実という形で打っているわけです。これは明らかに北朝鮮に対する、いわゆる互恵平等という立場での電報ではない、実をいうと。もう明らかに敵視政策的な内容を持っているものだ。こういうことではおそらく協定問題についての話し合いができないと思うのだが、こういう問題について、実は人民共和国のほうからどういうような反応がございましたですか。
  214. 田川誠一

    ○田川政府委員 この七月五日に打ちました電報のあとは、北朝鮮のほうからはまだ何らの反応を受けておりません。ただ、これに対する声明が発せられたということは、非公式に聞いております。
  215. 石野久男

    石野委員 その声明の内容は、聞いておるというのはどういうことを聞いておるのです。
  216. 田川誠一

    ○田川政府委員 ここに私声明を読ましていただきましたが、その大体の内容は、朝鮮側の意向といたしまして「現行帰国協定を一方的に破棄するという日本当局の決定は絶対に認められない」という内容で非常に詳しく書いてございますが、大要は以上申し上げましたとおりであります。しかし、これは、私、厚生省のほうで正式に受け取ったものではございません。私が個人的に入手をして知ったものでございます。
  217. 石野久男

    石野委員 この声明は、ともかくいま田川次官から説明のあったように、日本のやり方というものは、もう非常に露骨な策動だということをまずきびしく非難して、その中で、今度の行為は背信行為だということを言っておるわけです。こういう背信行為をするやり方は、まさに敵視政策だ、敵視的な行為であるというようなことまで言っております。  帰国協定について、私は、大臣にお尋ねいたしますが、いまのままで、帰国協定の問題は閣議決定がなされたからというので、政府の考え方のとおりにはおそらくこれはいくものではないと思うのですよ。あなたは本委員会においても穗積委員からの質問などに対して、しばしば、そういうことについては、やはり両方がよく話し合わなければ、実際問題としてはできませんからと、こういうことも大臣は言っておる。日赤が打った電報に対して、朝鮮赤十字のほうから来た声明は非常に長い文です。その中では非常に憤りをこめてその背信行為をなじっておるわけですね。こんなことではとてもだめだということを言っておるのですが、大臣、ひとつこの問題について今後対処すべき対策、どういうふうにする考えでおりますか。この際大臣からその所見を聞いておきたい。
  218. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、せっかく日赤からこういうふうな電報を打って話し合いをしたいというのですから、北鮮の側もすぐに声明なんか出さないで、話し合いをするようにされるようなことが問題の解決のために好ましいと思います。私は残念に思う。話し合いたいというのですからね。それを声明を出して、そうしてもういろいろけしからぬということでしょうね。話し合って、これは国交が回復してない国のこういう問題というものは、お互いにやはり自制しながら目的を達成しようという節度が要るのでないでしょうか。いまのような状態では、ちょっとこれは話し合いの機会が持たれると思いませんので、残念なことだと思っております。
  219. 石野久男

    石野委員 大臣は日赤から打った電報の内容がおわかりにならないからそういうお話だと思うのですよ。ここでちょっと読んでみますが、日赤が七月五日に打った電報はこういうことを書いておるのです。「帰還協定無修正延長を提案された五月十五日付及び六月十九日付の貴電受領しました。日本赤十字社は、去る四月二十一日付貴会宛書簡を以て詳細申し述べた通り、」これは書簡で前に言っておるわけです。「帰還協定は発足以来すでに七年以上を経過し緊急に帰還することを希望していた大量の人々の帰還は完了し、」こう言っておる。それから「協定の所期の目的は達成されたと認めざるを得ないので、一九六七年十一月十三日以降は協定を延長しないことに決定した次第であります。」こういうように断定的に、もう一方的にきめつけておるわけです。そのあとは、あとの残務整理の問題をどうしましょうということを書いておるだけです。これでは、北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国のほうからきびしい声明が出るのはあたりまえなんです。だから、いま大臣がこの声明を見て、これは残念だと言う前に、日本赤十字が打ったこの電報の内容、これはあまりにも一方的なんです。これではとても話し合いに入ることは、私はできないと思うのですよ。だから、これは大臣、朝鮮の側で出した声明だけ見ると、いかにもきびしくて、話し合いのテーブルを囲むことはできないように見えるけれども、やはり日本側で打っている電報がその動機をつくっているというように考えなければならないだろうと思います。こんなことでは話し合いにならぬだろうと思います。大臣は残念だということだが、そうすると、両赤十字間で話し合いをするということもしかたがないんだ、あきらめるんだ、残念だという意味は、そういう意味なんですか。
  220. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いまのような状態では、私はむずかしいのではないかと思うのです。ただ、話し合いの問題点というのはいろいろ私はあると思うので、やればいいのではないかという感じを持っておったのですが、こういう態度ではちょっと話し合いの余地というものはないのではないかというので残念と申したのであります。
  221. 石野久男

    石野委員 話し合いの余地はないということは、これは話し合いを持たないで、一方的に、やはり協定の内容がどうあろうと、それで推し進めてやるんだという意味なんですか。
  222. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本赤十字社とすれば、既定方針どおりやるということ以外にはないのではないかと思っております。
  223. 石野久男

    石野委員 大臣、この協定は両赤十字間の協定であって、これは日本の政府がとやかく言うべきものではないと私は思うのです。むしろ、やはりこういうような情勢の中にあって、両国の間の帰還業務というものが人道と正義の上に立って行なわれるということになれば、何かやはりその道を求めて、協定の精神に基づくところの解決策をとろうという考え方はお持ちになっていないのですか。
  224. 三木武夫

    ○三木国務大臣 帰ろうという人に対して、その協定が切れた後においてもできるだけ帰れるように便宜をはかろうという両赤十字の協定によって、いまのような形ではないけれども、帰りたい人の目的が達成できるようにできるだけ骨を折ろうということであって、帰りたい人を永久に帰さないということでないのですから、一応帰りたいという人は、できるだけこの協定の線に沿って帰還をしてもらうということ、現在の場合、それよりほかに方法がないのではないかと考えております。
  225. 石野久男

    石野委員 この帰国協定は、両国の間で、しかもカルカッタで国際赤十字が仲立ちしてできたものなんですが、この協定の趣旨に沿って解決するということについて、赤十字に対して何かの助言をするとかなんとかということでなしに、むしろやはり大臣は、そういうふうに来たからしかたがないじゃないかということで突っぱねる態度をとるのか。これは非常に重大だと私は思うのですよ。こういう点についての大臣の態度、どういう考え方でおられるか、ひとつ聞かしていただきたい。
  226. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いや、突っぱねはしません。話し合いができれば、いろいろな問題がありましょう。この締め切りが八月十二日で、十一月十二日まであるわけですが、締め切った後においても帰りたい人がたくさんあれば、北鮮から配船してもらうということも考えられるでしょう。そういうふうなことで、何か話し合いをする必要というものはあるのではないか。したがって、北鮮側も、気に入らぬからといっていきなり声明を出すというのではなくして、こういうものは、日本もいま短期間に打ち切ろうというのではないのですから、七、八年やっているわけですから、いきなり一年や二年間というのではなしに、長いことやってきたので、だんだん帰る人も少なくなったということで、ここらで一応打ち切ろう、しかし、締め切った後においても、帰る希望者があればできるだけの便宜を考えようということですから、むちゃくちゃなことを日本側がしようというわけではないのです。そういうことで、両方が話し合う必要があるので、もうこうなってきたら話し合いも何もしないというふうには考えません。いずれ話し合う機会があればいいと思いますが、そのためには、北鮮側もいまのような態度が相当変わってこないと、なかなかそういう機会はないのではないかと思いますが、私はそれはいかぬと言う立場ではございません。
  227. 石野久男

    石野委員 話し合いをするということになれば、協定の第九条が、話し合いをする場を規定しておる条項です。私は、ここでいろいろ質疑の時間のことで制約を受けておりますから、多くのことを申しませんが、しかし、共和国から出ておるところの声明はけしからぬと言う前に、日本の赤十字が一方的に、「決定いたした次第でございます」などという電報の打ち方をしておることにも問題があることを考えなければならぬと思う。双方、互恵平等の立場からこの問題は論議されたのですから、何が動機であったかを考えなければならぬ。この声明は、この電報が行ったことを受けて来た声明です。あまりにも一方的な電報を打っておるものですから、共和国側でやはり憤りの声明が出ておるわけです。しかし、共和国のほうは、話し合いをしないとも何とも言っておるのではないのです。この段階では、双方が話し合いをする場をつくらなければならないと思います。その話し合いをする場をつくるのには、大臣がいま言ったように、共和国側の声明はけしからぬと言う前に、やはり日本側の赤十字も、打った電報について、それがどういう結果をもたらしたかということに対する反省も必要だと思う。こういう双方におけるところの行き過ぎに対する反省がなかったら、話し合いの場はできはしないと思います。そういうような意味で、大臣になにか話し合いの場を求めようとする意図があるとするならば、あまりにも片方だけなじってはいけないのではないかと思います。双方にそれぞれの行き過ぎがあったり、食い違いがあったりしておるというならば、その点をまずなくした上で、第九条に規定がありますから、条約規定によりますところのそういう道での話し合いをするというような考え方、また、そういう指導するとかなんとかしなければならぬのではないかと思いますが、大臣は、そういう点については、どういうようにお考えですか。
  228. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この点にいま政府が関与することはないといっても、その間の政府の財政的な支出も伴うわけですから、日本赤十字としても、政府の意見を尊重しなければならぬわけです。そういうことで、この協定の、八月十二日締め切り、十一月の十二日までというこの期間に帰る希望者は帰ってもらいたいという政府の方針をいま変える考えは持っておりません。ただ、話し合いをして、締め切り後十一月までの間にまだ時間がありますから、その間でも、希望者があれば、配船などできれば、帰りたい人が帰れるようなこともできますし、いずれにしても、話し合うことが全然むだとは思っておりません。しかしながら、この話し合いについては、政府が考え方を根本的に変更する、白紙の状態で話し合いをするという考えは持っておりません。
  229. 石野久男

    石野委員 私は、双方でこの話し合いをしてどうするかということをきめるにあたって、政府はそういうふうに考えておるかもしらぬが、それが一つのワクをはめるとかなんとかいうことがあってはならぬと思います。だから、日本赤十字と朝鮮民主主義人民共和国とで話し合いをする。第九条に従って、双方が、三カ月以前に、朝日両赤十字団体が協議の上で、本協定をどうするかということの審議をしなければならぬ。その中にいろいろな問題が出てくると思います。やはりそれ以前に政府がどうだこうだということを言っておったら、なかなか一つのテーブルを囲むことはできないだろうと思います。そういう意味で、私はテーブルを囲む段取りは双方が何かしなければならぬのではないかと思う。そういう方法はどこかから出てくるだろうと思いますが、厚生省、どうですか。
  230. 田川誠一

    ○田川政府委員 厚生省といたしましては、この協定がなくなりましたあとでも、たとえば、申請はしたけれども協定がなくなった、あとお帰りになる人が間に合わなかった、そういう場合の問題もございます、そのほかの問題もございますから、やはり赤十字社同士がお話し合いをしていただかないと処理できない問題がたくさんございます。したがいまして、私どものほうといたしましては、できるだけお話し合いをしていただきたいというのが希望でございます。
  231. 石野久男

    石野委員 大臣、いま厚生省のほうの意向は両赤十字社が一つのテーブルを囲んで話し合いをするということでなければなかなか解決しないだろうと言っている。そういう方向をつくるように大臣も努力しなければ、それにワクをはめるとかなんとかということではしょうがない。そういう意思があるかどうか聞かしてもらいたい。
  232. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私はここで繰り返して申しておるように、話し合いをすることはけっこうだと思っております。
  233. 石野久男

    石野委員 では終わります。
  234. 福田篤泰

  235. 穗積七郎

    穗積委員 続いて聞きますが、三木さん、田川さんはこの問題を前から手がけておって非常に理解者で、たまたま厚生政務次官になられて道理にかなった考えを個人的には持っておられるのです。実は、政府全体としては、佐藤内閣が非常に反動化しておるから、不合理な電報を打ったわけです。したがって、いまの石野君のことについて一問だけしておきます。  これは七月五日に打った電報で、話し合いに応ずれば客観的に見て北朝鮮の赤十字もこの打ち切りを承認をして、打ち切った後の事後処理だけの事務的な話し合いをしようという会談になるわけです。したがって、これでは話し合いに応じないのが当然だと思うのです。われわれは無修正に延長すべきだと考えておりますが、政府の考えを強制するわけにはいかないので、私はその自由を強制はいたしませんけれども、政府はどういう考えを持ち、日赤がどういう考えを持つかという問題をも含む会談をすべきだと思うのです。あの電報では事後処理の問題だけですよ。会談はそういうことにならぬ、そういうことでないというならもう一ぺん電文を打ち直す必要がある。こっちの政府の方針は変わらない、しかしながら、すべての問題について話し合いをして協定の前文並びに第九条の精神に従って友好的に話し合いの中で問題を解決しましょうという意思を何らかの方法で伝えるべきだと思うのです。ぜひそれをおとりになることを強く要望してお尋ねいたします。そうしてください。そうすれば会談に可能性があって、問題は協定の精神に従い、第九条に従って会談ができ、その中でどういう結論が出るかは双方の合意がなければできないわけですから、その結論はいまから言う必要はない、どうですか、電文は不適当ですよ。
  236. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ここに電報全文を私見たのです。見ると帰還させるための措置その他についてとありますから、日本の赤十字社が協定日本の考え方、その基礎によらないで交渉する自由はありません。その基礎の上に立ってその他の問題について話し合うというのですから、やはりそういうことで北鮮の側も話し合いに応ぜられて、それは意見が根本的に違っても、その他の問題についていろいろ話し合いをすれば有益であることが多いと私は思いますから、どうかそういうことで北鮮側ももっと態度を緩和して、話し合いのできるような機会を持てばいいと私願っています。
  237. 福田篤泰

    福田委員長 渡部一郎君。——(穗積委員「あと一問」と呼ぶ)穂積君、なるべく簡単に願います。
  238. 穗積七郎

    穗積委員 私はこの電文では了承できない。電文ですから相手には主観的な推測をする機会はないわけですよ、向こうとこっちの両赤十字の間においては。したがって、電文の意思は、客観的に見ても打ち切りについては問答無用という態度なんだ。話し合いではない、問答無用なんですよ。打ち切りの方針をもって臨むことは、それはわれわれ政府の政策を承認はいたしませんけれども、それは強制ができない。日本赤十字の態度であって、それでいいわけです。しかしそれを変えなければ話ができないのじゃないのです。向こうは無修正延長だと言い、われわれもそう考えている。したがって、会談はすべての問題について話し合いをしようという態度でなければいかぬでしょう。ところがその電文では、これで向こうが応ずれば打ち切りを承認して、事後の処理の問題についてだけ話し合いをする会談にとられる。これは客観性があるのです。だからここで再答弁は求めません。これはあとで——何も国会のこの委員会だけで話すことがわれわれと皆さんとの話し合いの機会ではありませんから、これはあとで特に関係のある三省の間で、われわれも折衝いたしますが、その点は十分考慮して、まずあっせん的な提案をする立場におる私どもと政府との間で十分話し合いをして処理したいという態度だけはここで明らかにしておいてもらいたい。いかがですか。それだけでいいわけですよ。もう方針についてはここで討議をしません。どうですか。
  239. 三木武夫

    ○三木国務大臣 方針といえば、政府としては方針を変えられないと申し上げることはないのです。そういう何かの促進をするために話し合いをするということは、いっでも私どもいとうものではございません。
  240. 福田篤泰

    福田委員長 渡部一郎君——(穗積委員「まだ質問中」と呼ぶ)もう一問ということでしたから——それでは簡単に願います。
  241. 穗積七郎

    穗積委員 二時までに採決しないものはやらぬというんじゃない。議運で緊急上程はきまっているのだから、それでいいんですよ。
  242. 毛利松平

    ○毛利委員 本会議と同時開会するのには、手続がめんどうなんだ。
  243. 穗積七郎

    穗積委員 どうせ上げるんだ。しかも第一議題じゃないんですからね。  そこで事務当局にお尋ねいたします。  先ほどパッセンジャーの急増の実績を伺いましたが、今度の定期航空の方針、計画について、どこからでもいいから説明してもらいたい。
  244. 林陽一

    ○林説明員 日韓航空協定が発効いたしましたと時を同じくいたしまして、日韓間の旅客輸送需要が非常にふえておりますので、今後とも日本航空の韓国乗り入れ及び大韓航空の日本側乗り入れば増便が予測されておる次第でございます。現に日韓航空企業が乗り入れを開始します前に、アメリカのノースウエスト、イギリスのキャセー・パシフィックが日韓間の航空旅客を運んでおったようなわけでございまして、現在も東京−ソウル間にノースウエストのほうが十二便、日本航空が七便というような状況でございます。今後とも増加していきます旅客を輸送いたしますために、日本航空の増便をもって充当するようにいたしたいと思います。
  245. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点、ソウル並びに釜山ビヨンドがありますね。この計画はいかがですか。
  246. 林陽一

    ○林説明員 現在のところ具体的にきまっておりません。今後の国際情勢によって、あるいは旅客の輸送状況によってきまるものだと思います。
  247. 穗積七郎

    穗積委員 現在想定しておるところはないのですね。
  248. 林陽一

    ○林説明員 ございません。
  249. 福田篤泰

    福田委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたし……。
  250. 渡部一郎

    渡部委員 ぼくにも一問やらしてください。
  251. 福田篤泰

    福田委員長 それでは簡単に願います。渡部一郎君。
  252. 渡部一郎

    渡部委員 私はこの協定に対してとやかく言っているのじゃないのですけれども、この審議の間に技術的な問題が一点も明らかにされなかったから、私は心配して言っているのです。  一つは、この日韓の協定の場合の、航空機は何を使用するか。  もう一つは、羽田空港の航空機の待機場所というのは非常にいま不足しております。こういう協定を結んで実際にできるのかどうか、その見通しがあるのかどうか、それをお伺いしたい。  それからもう一つは、滑走路の問題であるけれども日本から向こうへ飛ばす飛行機を受け入れるだけの滑走路が向こうにあるのかどうか、これは現実問題として足りないのじゃないか。  この三つについて専門家にきちっとお答え願えば、私は何も言うことはないのです。どうぞお願いします。
  253. 林陽一

    ○林説明員 機材につきましては、日本航空はコンベア880を使用しております。向こう側はフォッカー・フレンドシップF27、ロッキード・スーパーコンステレーション、ダグラスDC4を使用しております。  それから向こう側の滑走路の受け入れ体制といたしましては、この程度の便数でございましたら、十分に余裕がございます。
  254. 福田篤泰

    福田委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。
  255. 福田篤泰

    福田委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。穗積七郎君。
  256. 穗積七郎

    穗積委員 私は、この条約に対して、社会党を代表して反対の意思表示をしておきます。  理由は、簡潔に申し上げますが、協定の事務的な諸条項については、諸外国と結んでおるものとたいして異同のないものでございます。これ自身については、われわれは反対すべき理由はないのです。しかしながら、この協定を行なうことによって政治的に生ずる影響あるいはこの協定の当事国である日本政府の、対朝鮮全体に対する政策の最近の動向を見まして、はなはだしく憂慮し、かつこれに賛成ができない。すなわち、先ほどお話しのように、三十八度線による朝鮮両民族の分断を固定化し、長期化し、しかも北朝鮮すなわち朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視政策、非友好的な政策をこれで一歩前進せしめる結果になるという点を私どもは政治的に判断をいたしまして、この条約に反対の意思表示をいたします。
  257. 福田篤泰

    福田委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  258. 福田篤泰

    福田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  259. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  260. 福田篤泰

    福田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約締結について承認を求めるの件の審査の際に、参考人を招致することとし、日時、人選等につきましても委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次会は来たる十九日午前十時から理事会、十時十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時四分散会