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穗積委員 これは私の貧しい知識でありましても、現在のこれら
天体並びに核に関する自然科学者というのは、いままで著名な大先輩ですね。それよりは、むしろまだそれほど地位あるいは知名度も高くないけれ
ども、学問としては新進の諸君が非常に進んでおる事実を私も仄聞いたしております。たとえば、いま東大の
先生のお話がありましたが、これらの問題については、最近、東大の理学部の少壮の諸君の
研究グループがあります。おそらくは、まだ外務省はそれらの諸君の意見を聴取したり、この
条約の
締結についても、また、今後の運営の問題点をピックアップするについても、お聞きになっておらぬと思うのです。私は、おとといでしたか、ちょっとそのグループのある一人に連絡をして聞いてみましたけれ
ども、まだ何らの意見の聴取は受けておらぬということでした。それは、私の推測では、必ずしもその人一人ではないと思うのですね。他の方にお聞きになっても、これらの諸君は非常に連絡をとってミットアルバイトをやっていますから、一ところへいけば全体にわかる。その中の中心的な一人に聞いてみて、われわれはまだ意見の聴取を受けていないということであるから、おそらくはその他の方も聞いていないのではないかと思うのです。その点、そういうことをなさるのは事務当局の責任のあることですから、これもあなたの良識を信頼いたしまして、特に強く希望いたしておきます。必要があれば、私が御紹介してもけっこうです。
それから、
条約に入りますが、一番問題になるのは、
平和利用以外のものは一体何をいっているのか。この場合、おそらく軍事
利用でしょうね。四条でございますか、これが中心
規定になる。前文でも
平和利用のためということを強くうたっておりますが、
平和利用と軍事
利用の限界というものは必ずしも明確でないのであって、
平和利用の名目のもとにやっておりますが、たとえばロケットにしても、ミサイルにいたしましても、核弾頭をつけていなければ平和だ、弾頭をつければ直ちにそれが軍事
目的になる。こういうことで、最近の、特に米、ソを中心とする
天体開発あるいは
核兵器の競争、そういうことが行なわれておる際においては、
平和利用という
ことばは、それ自身が非常に正しいことであり、
理解できるようですけれ
ども、具体的な内容になりますと、平和と軍事の区別というものは実はないわけですね。そこで
規定をずっと繰ってみますと、何らそういうことに対しての区別の
規定がないのです。
ことばだけなんですね。それから同時に、そのことが査察の制度にも関連をいたしますけれ
ども、もう
一つは、どこまでが
平和利用でどこからが軍事
利用であるかということを、こういう
法律の場合におきましては、条件を列記しておく必要が実はある。これは
法律の一般的概念ですよ。権利義務を
規定いたします場合には、民主的な
法律というものは、観念的な
ことばでなくて、平和のための条件というものを列挙して、それで制限
規定というものが設けられるわけです。包括的な制限
規定というものは非常におくれた
法律体系である、一般的にそう言えると思います。そういう配慮で、これは軍事
利用を禁止する、そして
平和利用のために協力して全人類のためになるようにやっていこうというのがこの大体の趣旨でしょう。そうなりますと、われわれがこういうものが出てきた発端を考えますと、むしろ軍事
利用を
目的とした
宇宙天体の独占を禁止しておかなければいけないというところから、こういう
条約になっておると思うのですね。そういう
意味で、わが外務省は、
平和利用と軍事
利用の区別について、一体どういう条件によって平和と軍事の区別をなすっておられるか。査察がありますけれ
ども、これはすでにこの
条約に反するものではないか。特に言えば、前文にもありますけれ
ども、第四条の軍事
利用というものを、これはよくないというときに、いや、これは軍事
利用じゃないということを当事国が抗弁をいたしました場合、一体何を基準にして言うかということが非常に問題になると思うのですね。軍事
利用もまた、核爆発等の
兵器だけでなくて、間接的な軍事
目的もあり得るわけですからね。そういう
意味で、限界をどこへ置くか、どういうように
理解してこの
条約を受け取ったらいいかということについて、総括的にお尋ねをいたしたいと思います。