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1967-05-31 第55回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月三十一日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 永田 亮一君 理事 野田 武夫君    理事 三原 朝雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 穗積 七郎君       愛知 揆一君    青木 正久君       臼井 莊一君    川崎 秀二君       松田竹千代君    毛利 松平君       山口 敏夫君    山田 久就君       木原津與志君    久保田鶴松君       黒田 寿男君    戸叶 里子君       松本 七郎君    渡部 一郎君       川上 貫一君    斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  田中 榮一君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   力石健次郎君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君  委員外出席者         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 五月三十一日  委員川崎秀二君辞任につき、その補欠として宇  都宮徳馬君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(ヴイェトナム問題等)      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。松田竹千代君。
  3. 松田竹千代

    松田委員 私は久しぶりに発言いたすので、きょうはいろいろの問題についてお伺いいたしたいと思っておりましたが、委員長が三十分に限定しろと言う、いさいかしこまってその三十分だけひとつ三木外務大臣にお伺い申し上げたい。  三木さんは、わが政界における実力者中の、年少と言うては失礼ですが、春秋に富むお方である。したがって、いずれの日か総理の印綬を帯びるであろうという可能性豊かな、そうして特に最近外交の問題について意欲すこぶる旺盛なものがあるやにお見受けするのであります。その若き政治家三木さんにふさわしいような大きな問題について、少々お伺いいたしたいと思います。  わが国は、憲法第九条において一切の戦争を放棄している、これは私はまあ、けがの功名といった所産であるかもしらぬけれども、実にえらいことである。これほど大胆な、これほど正々堂々、公明正大な宣言というか、中外に対する態度を明らかにしたものは、いまだかつてどこの国にもないと私は承知するのであります。戦争を一切放棄する。これは実際どえらいことである。しからば、その宣言に対して、戦争のない世界のために働かなければならぬ、努力しなければならぬ。三木外務大臣は、さすがに国会冒頭において、今世紀の三分の二はもうすでに過ぎ去って、その間に二つの大きな戦争をやった。いや、三つの大きな戦争をやった。あとの三分の一の期間は、何としても戦争のない三分の一にして、そうして輝かしい二十一世紀を迎えたいものである、こう申されておりまするが、これはもうわれ人ともにみな賛成、しかしそう熱望する以上は、それに対して一切の努力をここに集中してやっていかなければならぬと私は思うのでありまするが、この点について三木さんは、まずどういうところに力をお入れになろうとなされるのか。今日の世界情勢を前にして、何を先にやらなければならぬとお考えになっておられるか、まずその点についてお考えをお伺いしたい。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 大先輩松田委員から、日本平和主義憲法、これはたいへんな宣言であると言われる、私も全く同感でございます。  さて、そういう見地から何をなすべきかという問題であります。現実に起こっておるものはベトナム戦争、またベトナム戦争の背景をなしたものはアジア貧困であります。したがって、私がアジアの南北問題というものに対して相当な意欲を持っておることは御承知のとおりでございます。その根底の、アジアが、ことにベトナム戦争においても、ゴ・ジン・ジェム政権国民のこの貧困に対する改善の期待にこたえ得ずして反政府運動が起こり、共産主義がその反政府運動に乗じてきて、ああいう混乱の原因をなしておるのでありますから、平和のためには根底にあるアジアの南北問題の解決である。当面の問題としてはベトナムの一日も早き平和的解決、これが平和を望む者の目標であると考えております。
  5. 松田竹千代

    松田委員 さすがにやはりベトナム問題を一番中心にお考えになっておられることは、まさにまことにそのとおりであると思う。それについてまず考えなければならぬことは、核兵器の問題である。核兵器というものがなければ、われわれもそんなに心配をしない。核兵器については、日本はこれを持たぬのだ、持ち込みも許さぬのだと歴代総理がはっきり宣言してきておる。しかし、そういうことを、日本戦争を放棄し、核兵器も持たないのだということをはっきりさしておりましても、世界はとうとうとしてその核兵器を持ちたがり、そうして当初から核兵器の拡分散に反対しておったにかかわらず、これは、最初アメリカであったが、ソ連が持ち、英国が持ち、さらにフランスが持ち、中共が持つというような事態になって、核拡散防止条約などのことが問題になってきておるわけであります。  ところで私は、日本は核絶対反対だという趣旨に対して、この核反対をどこまでも唱えるだけではいかぬ。現在存しておる核を絶滅するという方向に向かって、核拡散防止条約などはこれはまどろこしい。どうしても、五カ国は持っておるけれども、百数十カ国のうち五カ国だけである。何ゆえに、日本国連中心主義を唱えておるのに、国連でもいまだかつてほんとう非核保有国を糾合して、そして、核絶滅への努力をやっていないではないか。これを私は非常に残念なことに思う。核絶対反対を唱えておりながら、その核絶滅への努力が何らなされておらぬということはどういうことか。これに、私は日本の一切の努力をあげて邁進していかなければならぬと思う。百数十カ国の独立国のうちに、わずかに五カ国である。何ゆえにやらぬのか。外務省は、核非保有国を糾合して、ブロック化することに反対している。現実性がない、現実性がないと言って、努力を積み重ねていかなければ、そういうことはできない、実現性がないわけであります。努力を積み上げていくところに実現性があるわけである。この点に対して、どういうふうにお考えになりますか。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 核拡散防止条約においても、日本は軍縮という問題を非常に強く取り上げておる。ただ、核兵器を保有する国がふえていくことを押えるばかりでなく、やはり核兵器を持っておる国が核軍縮をしなければならぬということは、日本の強い主張であります。特使を各国に派遣したわけでありますが、これが日本の第一番の主張になっておるわけであります。ただしかし、その努力は今後とも続けていかなければならぬ。日本立場として核兵器をなくしようということは国民的悲願であるということはお説のとおりだと思う。しかし、現実世界情勢を見てみまするならば、世界を糾合してと申しましても、各国各国安全保障政策を持っておるわけであります。日本日本のそういう立場日米安保条約を結び、そして日本の国内には核兵器を持ち込ませない、これは日本安全保障政策から来ておるわけであります。ところが、欧州の諸国は、NATOは、御承知のようにアメリカ核戦力というもの、これがNATOというものの一つ中心になっておるわけであります。したがって、いま世界を糾合せよと言っても、安全保障政策というものは、各国がおのおのの立場考えるわけです。だから、理想としてはその運動は続けていくべきだと思いますが、この理想現実世界政治の中に持ち込んで、全部を糾合してといっても、それだけの、私は現実政治における具体性はないと思う。ことに、中共あるいはフランスにしても、核兵器は拡散するほうが、かえってバランスが合うんだという主張を持っておる国もある。だから、松田さんの主張は、理想として掲げるのに私は異存はない。しかし、その理想現実世界政治の中で、非核保有国を糾合して現実の動きとせよというところには、残念だけれども、今日の情勢はいっていない。日本がそういう熱意を持っていることに対しては、あなたも私も何にも差別はないということであります。
  7. 松田竹千代

    松田委員 核というもののおそろしさで、核兵器を保有しておるということは、それ自体が戦争抑止力になっておるのだということも一部は認めないことはない。しかし、日本立場というものは、私は諸外国と違うと思う。日本だけが被爆国である。最初唯一被爆国である。いまでも二十九万人被爆者があるのだが、この間も、大阪で、被爆者がおって、その娘が赤ちゃんを生んで、赤ちゃんが白血病にかかっておる。これを、一体どこへ文句を言っていったらいいのか、だれに苦情を言ったらいいのかわからない、ただひたすら天を恨み地を恨む、こういう悲惨な状態を訴えた手紙を私はもらったのであります。それで、日本は違うのです。日本核兵器反対に対して絶対的な権利があると思う。  そこでもう一つお伺いしたいのは、日本でも核兵器反対だということは、歴代総理は言っておるけれども、日本にもまだ戦争になったら、いざほんとうに本格的な戦争になったら、通常兵器では問題にならない、独立国として国を守っていくためには、どうしても核兵器でも何でも持たなければならないのじゃないかといういわゆる武断派の人もあるのです。だからあくまでも日本国民の一人一人に核兵器絶対反対考えを徹せしめなければならない。このことに徹すれば、これは一つの大きな力であると思う。そういうことを考えるにつけ、日本は核の問題は、あげて安保条約によってアメリカにゆだねておるような状況であるが、国際情勢は常に流動しておる。万一アメリカ考えが変わって日本核兵器によって防衛するという安保条約に対して変更を考えるようなことはないと私は思うが、そんな仮定によってものを進めていく考えではないですけれども、そういうことになれば、それでも日本核兵器反対決意にゆるぎがないかどうか。絶対にゆるぎのないという強い決意国民一人一人が持っていくところに、核兵器反対の力が、日本がこれを主張するときにおいて、一つの大きな力になると私は考える。その点についてのお考えを承りたい。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 日本が、松田さんも御指摘になったように、いまだに被爆者の被害というものがあとに続いておるわけです。この日本が再び核武装考えるほど悲惨なことは私はないと思う。これだけの経験をした日本が、もう一ぺん核武装をしようということを考えるほど悲惨なことはありません。断じて核武装はすべきではない。日本は違った次元でもう少し——国の安全あるいはまた人類に対する貢献は、違った次元平和憲法の精神にのっとって人類のために貢献したらいいではないか、核兵器を持って世界のパワーポリティックスの中に入っていこうという考えは持つべきではない、平和に徹して人類のために尽くすべきである、やはりこの理想は捨てるべきではないと私は強く考えておるものでございます。
  9. 松田竹千代

    松田委員 核兵器絶対反対、いかなる情勢のもとに置かれてもこの決意は変えないのだというお考えに満足であります。  そこであなたが一番大切な問題と考えておる、重大な問題と考えておるこのベトナム問題でありまするが、これもやはりいまのおことばでは、南北問題としてお考えになっておるようでありますが、私は現在のベトナム戦争は、まさに非常な危機感迫るというような切迫した状況になっておると思う。これはアジアの一局部の戦争ではない。エスカレーションエスカレーションが相次いで行なわれておって、いまいろいろの情報を見ると、まさに危機感迫るの感じであります。私は、この問題は、日本としては一番重大な問題であると思うので、二年間私はこのベトナム戦争和平きっかけをつかむために微力をひっさげて今日まで血道をあげてまいったのでありまするが、何ら成果を得ないことを残念に思っておる次第であります。  ところが、私はアメリカという国をおそれるものである。私はこのアメリカという国をおそれるものであります。私は、アメリカのことならば、アメリカ人よりもよく知っているという自信を持っておる。六十五年間にわたってアメリカ発達過程をじっと見てきております。ところが最近になってアメリカやり方はさっぱりわからぬ。第一にアメリカ人というものは決して引き合わぬことをやらぬ国民であると思っておったのが間違いだった。何事をやるんでもウイル・ペイ、引き合うかどうかということをみずから聞く。それでたければやらぬ。しかるにベトナム問題のような、ベトナムに対するあのやり方というもの、これくらいアメリカに引き合わない仕事はないと私は思う。どんなにアメリカ努力をして、目的どおりハノイをせん滅してしまっても、それじゃそれで引き合うことがあるのかどうか、全然ないじゃないですか。ないと私は思う。  なぜ私はアメリカをおそれるかというと、アメリカというものは、短い歴史の間であるが、幾たびか戦争をして、常に勝利者として残った。言うなれば今日までその歴史において征服者として残っておる。征服者としてきておる。国が若い。民族が若い。半世紀前のアメリカ人と今日のアメリカ人は違うですね。五十年前はとにかくアメリカ人らしいアメリカ人だった。今日のアメリカ人はまるっきり変わった人間だ。それがおそろしい、どのアメリカ人でも数カ国の血のまじっていないアメリカ人はないだろう。毎日の新聞のヘッドライナーを見ても——見出しを見ても、妙な名前の人が幾らも出ておる。これはどこの国から来たかわからぬような人がアメリカの社会でリーダー格になっておるという証拠であろうと思うのだ。非常に変わっておる。アメリカ人はいままで短い歴史でずっと征服者としてやってきておる。あの大陸を幌馬車に乗ってインデアンをすっかり征服し、第一次、第二次世界戦争でも征服者として残り、これがものすごい自信アメリカに持たしておる。そうして血が若く、筋肉が若くて、何か常にでっかいことをやっておらなければおさまらないというアメリカ人である。それでどんなに困難なことがあっても必ずそれを克服して、最後自分目的を達するんだというこのアメリカ人、それを私はおそれる。それに国が若いし、民族が若いから、そこに一つの大きな欠点がある。それは何かと言ったら、忍耐心がない、インペイシェントなところがある。だからアメリカは現在のようにいよいよベトナム問題が行き詰まって収拾しがたいような状況になると、何をやらかすかわからぬというような感じを私は持つのです。ほんとうにおそろしい。  最近の情勢から見るというと、アメリカも非常にあせっておる、焦燥のきわみ。しかし、もう一つアメリカで私がおそれる理由は、これはどこの国でもそういう傾向であるが、政府というものは非常に強いものになっておるのだね。アメリカ大統領府というものは、セオドル・ルーズベルトの時代に、私が最初に行ったときには五十人に足らない大統領府であった。いまは五千人、六千人。大統領府というものは強くなって、そうして大統領は非常にえらい権限を持っておる。アメリカ上院外交を握っておるけれども、長いこと上院議員であったジョンソン大統領は、その運営は巧みで、今日ではほとんど上院を握っておるような形である。外交委員長がおっても、反対派ハト派がおっても、みんなこれを握っておるような状況になっておる。上院が力を失ってきておる。大統領がえらい権限を持っておる。そうして国民自分が選んだ大統領であるから、反対の意見を持っておる者でも、時の政府についていくという傾向が強くなっておる。これが私はおそろしい。私はアメリカ人の良識、善意というものを信じたいんだが、このごろのやり方はさっぱりわからぬ。私はアメリカをいま申し上げたような理由で非常におそれるものであって、しかもいまはほんとうに危機迫る感じがいたすのである。この時この際、いまが最後に残されたチャンスだと私は思う。三木外務大臣は元気にして勇気に富む政治家である。この際に、日本が一番いい立場にある。日本安保条約によってアメリカとは同盟国である。同盟国なら、アメリカが今日この戦争のさなかにある、そうしてベトナム問題で難儀しておる、そうしてベトナム二千年来の独立自由のために戦ってきたベトナム民族考え、この際この両国に、三木外務大臣は非常な決意を持って、同時に、まずアメリカに対しては北爆をやめ、ベトコンに対しては戦闘行為を中止する進言を、日本政府の名において、日本国民の名においてやってはどうか、やらなければいかぬのじゃないか、かように私は思うのでありますが、その点について……。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 ベトナム戦争については、日本国民たるもの一人として胸を痛めていない者はないわけです。私でもできることなら何でもしたいと思う。平和回復のために……。ただしかし、問題は、たとえばウ・タント事務総長提案したものと松田さんのいまの提案趣旨はよく似ておる。現状において戦争をやめろ、北爆をやめろ、それからまた北からの浸透もやめろ、戦争現状において停止しろ、そうして停戦話し合い休戦、このウ・タント事務総長提案というものは、これには非常な期待をかけた。そういうことで政府もこれを支持するという態度をとったわけであります。そうでなければ、いろいろなことを言っても、やはりお互いみな自分立場といいますか、自分のやっておることが正しいと両方が信じておるわけです。だからこれを早く終わらすためには、現状でもう戦争をやめろ、撃ち方やめろ、そうして停戦をして話し合いに入れというウ・タント氏の提案というものは非常に現実性があったと思うのであります。それを御承知のようにハノイは受諾せなかったのであります。まことに残念だと思っておりますが、現在においてもやはりこのウ・タント提案というものはこの戦争を片づける一番現実的な提案だと私は思っております。この提案には政府支持をいたすものでございます。
  11. 松田竹千代

    松田委員 ウ・タントはじめいろいろの国の心ある人々は、これまで和平きっかけをつかむためにいろいろ努力してこられたことも知っておる。また先般、昨年でありましたか、ハリマン大使が列国を訪問して、この和平の問題についていろいろ努力されたことも知っておりますが、そのときに、どこの国に行っても、まず北爆をやめろということを言われたらしい。北爆をやめろ、やめろ。しかしやめると同時に陸上の戦闘、北からあるいはベトコンからの攻撃が激しくなってくるのである。やめたいけれども、やめると同時に向こうの攻撃が激しくなってくるのであるということを訴えた。だからこれは同時に双方にまず戦争行為をやめるということをやればいいではないか。そうしてウ・タントなりもう偉い人たちがきわめて適切なことを言う。そういう人でも、去る九月五日でありましたか、もうベトナム戦争は第三次世界戦争への第一段階に入っているということさえ言うておる。しかし世界のどこの国が言うより、少なくともアメリカに対して日本が言うのが一番所を得ておる。アメリカとは、安保条約のみならず、あらゆる面においてきわめて友好の関係にある。言うなればきわめて深い仲である。この深い仲の日本が、アメリカに対して忠言をやるということは、同盟国としての私は責任であると思う。義務であると思う。このアメリカ状況を見て、そうしてそれがやがて世界戦争へ移行するんではないかという危機感の迫る今日、私は三木大臣に奮起を促したいわけであります。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、先ほど松田さんの質問にもお答えしたように、これがベトナム和平のために役立つならば、私は何でもしたいという決心でございます。したがって、いま言っておったような、北爆をやめる、北からの侵透もやめる、戦闘両方が停止して、停戦をし、話し合いをして休戦に持っていくということであるならば、どんな努力もそれは可能である。だれが考えてもそういう解決合理性があると私は思っておる。こういう線で、これはアメリカに対しても、これは当然アメリカウ・タント提案を受諾したんですから、むしろ問題はハノイにあるでしょう。ハノイが、だれが見ても現状において平和的解決はそういうよりほかにないであろうというこの考え方支持を与えて、そしてこの戦争を早く終わらせるような機運というものが生まれることを強く私は希望したいのでございます。そのために私は必要ならどんな労もいとわない考えでございます。
  13. 松田竹千代

    松田委員 ベトナム和平のためならば何でもやる考えである。まことにけっこうであるが、ぜひともひとつ、アメリカに対して日本が一番いい立場である、アメリカにものを申すのに一番いい立場である、アメリカもそれを期待しておるんではないかとさえ私は考えるのであります。アメリカのいまの焦燥からくる行為がどういうものであるかということを私は考えるときに、早くこのときこの際に、どうしても三木外務大臣勇気を持ってこの問題に当たるということをひとつ本真剣に考えてもらいたい。それをお願い申し上げて、私の質問を終わります。
  14. 福田篤泰

  15. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 いんぎん丁寧に質問をいたしたいと思っておったのですが、相当時間の制約もありますので、ことばはぽんぽん出るかもしれませんが、御寛恕願いたいと思います。  ベトナム戦争は、ただいま松田先輩が哲学的に見解を述べられたと同様に、アメリカ側の対策というものが軸のように私は思うのです。ただいま伺っておると、ハノイの出方だけである、終局的にはそうではあるかもしれぬけれども、やはり大国のほうが、すなわちこれを北ベトナム側が侵略と言い、アメリカは当初反共の聖戦と呼んだ。このごろはそういうことを言うておらぬようです。しかし、人のところへ押しかけておることだけは事実なんで、そうして平和を希望する全世界の声というものは、やはりアメリカ側北爆を停止することが最初和平へのきっかけである、こういうことを言うておるわけであります。しかるに、きょう具体的に御質問をいたしたいのは、四月の二十八日のアメリカ上下両院合同委員会において、ウエストモーランド中将は、力の政策こそ、軍の圧力こそ解決唯一の道だということを力説し、銃後の結束を要望しておる。軍司令官としては当然かもしれぬけれども、しかしながら、議会においてこれを演説をさして、政府はこれを支持しておるわけであります。そういう考え方ではたしてこのベトナム戦局というものを切り抜けられるのかどうか。日本外務大臣として、私は、この力の政策というものに対して警告を発しなければいけないのではないかと思うのです。それが第一。  第二は、十九日に非武装地帯に一度米軍が侵入をして、かなり全世界的に反響が多くてショックを受け、したがって、その結果はかなりアメリカの反省を促すことになり、幸いにいま釈迦休戦というものがあって、ここ四、五日作戦転換の徴候も見えておるようである。しかりとすれば、われわれは、これがやはり和平への最後のタームである、期間であると思っておるのですが、その際に、三木外務大臣アメリカの軍部の呼称しておる力の政策に対してどういうふうにお考えであるか、日本外務行政をつかさどる者として、これに対して警告を発する必要はないか、まず第一にお伺いしたいと思うのであります。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 多少私と川崎君のと考えが違います点は、南ベトナムに対するアメリカ軍事関与が、人のところへ押しかけてとこう言われますけれども、アメリカといえども、好んでベトナム軍事介入をしたものではない、歴史の進展とともに余儀なく軍事介入をさせられたものである、しかも、それは南ベトナム政府の要請に基づいたもので、ただ人のところへ押しかけておるという、そういう出発点でベトナム問題を考えることは、これは現実に即さない点があるのではないか、それは大事な点である、ベトナム問題の解決に対する一つの重大な入口でありますから、私は言っておきたいと思うのでございます。また、ウエストモーランドの、私もテレビで見ましたが、軍という立場は力ということでしょう。軍の司令官が力ではないのだというような発言はいたしますまいから、それはそれとして、ベトナム戦争を力で解決できると私は思っていない。軍事力で——軍事も一つの大きな側面ではあっても、それが単純に、近代の戦争が軍事力一本のその側面だけで問題が解決できるとは思わない。人間の意思もある、社会、経済政治、全般の関連を持っておるのが近代の戦争であります。だから、軍事の一側面をとらえて、軍事だけで問題を解決しようということはできない。やはり全体としてこれをもし表現するならば、政治的解決である。アメリカのわれわれが話をする首脳部でも、結局政治解決以外にはないと彼らも言うわけであります。したがって、いま言ったウエストモーランドの議会の発言というものを、アメリカ全体が力で押しまくってこの問題を解決しようとしておるのがアメリカの意図であると考えることは、私は事実に相違しておると考えるものでございます。
  17. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 その後段のことについて、あなたは警告を発する意思はありませんか。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申したように、私が話す首脳部は全部政治的解決だ。ウエストモーランドとは話したことはございませんよ。しかし、私が外務大臣として会うアメリカ人で、軍事的にこの問題を解決できると言った者は一人もありません。みながやはり政治的解決以外には方法がないと言うのですから、あえて警告を発しようとは思っておらないのでございます。
  19. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 初めに南ベトナムアメリカ軍が出兵をしたときは、南ベトナムの要請によったもの、それは私もよく承知しております。これはしかし、その後の数年間にわたるベトナム戦争の性格というものに対する三木外務大臣と私の考え方の違いについて、一つの資料をあなたのほうで提出してくれたものと思って、非常に愉快に思うわけであります。ベトナム戦争の性格は、そういう面も最初は確かにあったと思うのです。しかしながら、ベトナム戦争民族独立の戦争である。北ベトナム民族解放——これは共産軍の使うことばですね。解放ということばを使っておるけれども、われわれはこれを置きかえて独立ということにしても、そういう戦争の性格を帯びてきておるのではないかとわれわれは考えざるを得ない。最初はそれぞれの主張があったにしても、数年にわたる戦争の継続は明らかに南ベトナムの住民に対しても、主人公はわれわれである、この土地の所有者はわれわれである、したがってそこで行なわれておる苛烈な戦闘において、その間には双方、たとえば北ベトナム側アメリカ軍並びに南ベトナム軍に対して相当残虐な行為をしたこともあるでしょう。また逆にアメリカ軍のこれに対抗しての報復措置というものがあったにしても、その積み重ねというものがどういうウエートを住民の上に押し広げていったかということは、あなたは政治家として相当深刻に考えてみなければならぬ。私は少なくとも両一年あるいは二、三年前までのベトナム戦争というものは、次第に民族独立の要求を貫徹するための手段であるということにおいての戦争というふうに置きかえられつつあるというほうがウエートが多くなってきた。一昨年であるか、ケネディの弟のエドワード・ケネディが来ましたときに、やはりアメリカ考え方を変えなければならぬ、南ベトナムの人心をつかむためにもう少し民政安定計画のほうにウエートを置かないと、だんだん民族独立の戦争になってきて、一時はベトコンをいっておったが、いまでは南ベトナム民衆に対する大きな重荷になってきたのではないかということを指摘しておったのですが、三木外務大臣はいまはどう思っているのです。この戦争民族独立の性格のほうが多いのか、それとも単に反共の戦争であるのかという点についての認識を深く私どもはアジアにおける人類のつながりとして考えなければならぬ。そこにこそ問題の出発点があると私は思っておりますので、御見解を承りたいと思っております。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 私も、民族独立といいますか、ベトナムの最終的な将来というものはベトナム人がきめるべきである、この点については私自身も何も違った考えは持ってないのですが、現在の段階であれを全部民族独立の戦いである、ベトコンもまた民族独立のために戦っておる、そういう断定は私はしない。それはそういう民族独立という面もありましょう。しかしながら、あのベトナムの戦いをみな民族独立の戦いであるといって、ベトコンの軍事行動を全部これが正しい姿であるとは私は見ていないのです。一番の問題点は、各民族は政治形態をみずから決するだけの権利を持っている。それがいいと言うならば共産主義でもいいですよ。しかしその共産主義というものを力で押しつける共産主義の膨張政策というものには賛成できない。自由な意思決定によって共産政権をつくるということはだれも異存は言えない。それを力で主義を押しつける、こういう膨張主義というものに対しては、これは世界の秩序ではない。それは認めない。それなら力があれば自分の意思に反してでも押しまくられて共産主義にでも何でもなるということ、そういうのは秩序ある世界ではないのです。だから、したがっていまのベトナムというものは、あれを民族独立の戦いであるというふうなとらえ方をしまするならば、南ベトナム政府が悪くてベトコンこそ正しいという結論になるでしょう。そういうふうに私は見ない。むしろベトナム問題の解決は、あそこの中に入っておるものはいろいろなものが錯綜している。そこで、今日、どうすればベトナム問題が解決するかということに焦点を合わさなければしようがない。そのためには、一応私が考えておるのは、いま松田さんの質問に答えたように、いましている撃ち方を両方がやめろ、北爆もやめれば北からの浸透もやめろ、そして停戦をやって話し合いをして休戦に持っていけ、その場合の解決策というものは、やはりジュネーブ協定で一応の境界線とされた十七度線というものを——私はこれは永久の国境線だとは思わない。これはやはりもっと安定して、外部からの勢力によらないで自由にきめられるときにベトナムの将来はきめたらいい。しかしいまはその十七度線を境界線にして、北は共産、南はやはり南ベトナム政府という合法的な政府があって共産主義に対しては反対だというんですから、この政府が反共産といいますか、非共産という政権をつくって、そして一応そこでベトナム戦争に終止符を打つよりほかにはないのではないか。そういう形でこの戦争を終結に導くことが実際的で、これは民族独立の戦争である、最後まで戦うよりほかないといえば、解決の方法はないではないか。そういう角度からとらえないで、どうすれば戦争を早く終わらすかという角度からとれば、一応暫定的に十七度線を境にして、北は共産、南は非共産ということであの戦争のエネルギーを平和建設に向けさす。そういうことよりほかには平和をもたらす方法はないではないかというのが私の基本的な考えでございます。
  21. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 いまの御答弁は、私が民族独立の性格が非常に強くなってきておるのではないか、そういう現実を直視しなきゃいかぬじゃないかということに対して、民族独立の戦争だと私がきめつけたように言うけれども、実は反共的ウエートというものは住民の印象の中には少なくなってきておるということで、私は現実を直視した指摘をしておるのです。それを得意の放送討論会的に切りかえて御答弁いただいても、それはやや並行的になるわけなんですね。  それならば伺います。それだけ現実の時点に照応してやることが問題だというんなら、日本政府はいままで何をやったんです。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 それは川崎君も御存じのように、日本政府ばかりでないのですよ。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕 各国政府が、世界が、これだけベトナム戦争の早期平和的解決のために動いたことはない。それはウィルソン首相だってあんなに方々へ行ったりして動いたし、世界各国が大なり小なり自分の国としてできる限界においてみなが全力を尽くしたのがベトナム戦争だと私は思う。日本政府だってできるだけのことはしたけれども、これが大きな、決定的な、平和を回復するようなことにはなってないが、どこもかしこもやれるだけのことはいままでやってきたと思うのです。だから日本政府だけが何をしたかといって責められることは当たらないのではないか、どこもかしこもみなやったんだということでございます。
  23. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 私は、いま日本ベトナム問題について大きい動きをしても、それはアメリカ側に対して相当な効果はあっても、北ベトナム側にそれほど大きな影響を作用する要素はないと思うのです。ですから、そんないばった高い調子で方々へ呼びかけることはできない。しかし隣に住んでおるものとして、ベトナムはすぐ隣でもないけれども、アジアの友邦である。その友邦である南ベトナムも対敵手としての北ベトナムもやがては統一された国家にならなければならぬというたてまえからすれば、われわれはもっと身近に問題を感じて、そしてアメリカに訴えるところのものをもっともっと積極的に、いろいろな知恵と手段と方法を講じてやるべきがいまの外務大臣のとるべき姿ではないかということを申し上げておるのであります。そんな高ぶった調子で言ったところで、現に昨年私が予算委員会で指摘をしたように、ベトナムの特需の動きさえ通産省は把握しておらぬ。そのときはあなた通産大臣であった。しかしけさ取り寄せてみると、昨年よりさらに特需は伸びておる。その特需の内容は次第に兵器的なものに変化しつつあるということが、この分類によってもわかる。金属、機械というものがうんとふえておる。昨年度から見まして、相当なふえ方をしておる。これは外務省はチェックしていますか。ことしの一月から三月ぐらいの特需の動きはどうですか。——まあよろしいです。非常にふえておる。しかもそれが、佐藤総理大臣が国会で言明したように、武器の輸出もあり得る。これは主要兵器ではないが、補助兵器を相当に出しておる根拠がある。それは私は悪いとは言わぬ。保守党の代議士として、南ベトナムの問題に補助をするということは当然でしょう。しかしながらそういうことをやっておって、それならば北ベトナムに発言力があるか、発言力がない。アメリカ軍の手助けをしておるというようなことを言われるのが落ちである。一方において、それならば、南ベトナムアメリカ軍に対して十分なる発言をしておるかというと、それもやっておらぬ。それでは両方から評価がだんだん少なくなっていくのであって、せめてアメリカに対して日本外務大臣として、むしろ総理大臣をして発言をせしめるのが当然ではないかというふうに私は考えるのですが、いままでやってきたことといえば、これは前の外務大臣の時代でしょう。椎名さんの時代に横山という特使を派遣して、それがパリで遊んでおったというだけの話です。相当研究はしておった。あとは何もやっておらぬ。それで国会でただ社会党、共産党の諸君が質問をして、それに受け答えをしておるというだけであって、われわれが今日こういう質問を展開しようとしておるのも、左翼の方々の御意見は御意見として、自民党の中にもほんとうに真剣に平和を追求しておる——これは自民党党員が全部そうだと私は思う。ただアメリカとの関係を非常に顧慮して発言が少なくなっておるのだろうと私は思うのですが、遠慮は要る時代ではありません。世界の人々が、今日はベトナム和平ということについては九〇%以上の者が和平を追求をしておるということですから、アメリカに対して助言、発言をし得る立場日本は、相当に積極的にしていいのではないかというのが私の考え方です。しかし私はただあなたを責めたり、外務当局を責めるだけでは足りないので、きょうは建設的な発言をあとで出してみます。こういうことはどうだろうかという……。  その前にもう一つ聞いておきたいのですが、せっぱ詰まると、アメリカ最後には核兵器を使用する可能性がないとは限らぬと、先月あたりから各種の雑誌、各種の報道に出てきておる。あるいは最近ではアメリカではいろいろな兵器が非常に発達をして、核兵器まではいかないけれども、それに近い類似の爆弾というものも完成をしておって、聞いてみるところによると、今後の影響があるので最新々の兵器は出さぬで、もう一歩手前の兵器を出しておるということもあるそうですが、しかしこの核兵器攻撃などというものがあったならば、これはまさに第三次世界大戦への火ぶたを切るわけです。そのときに日本の外相としては、こういうことが断じてあってはならぬということの警告は議会でぜひしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  24. 三木武夫

    三木国務大臣 前段のことについてでありますが、私は、このベトナム平和的解決というものは、やはり大きく旗を立ててこの問題が解決できるか、平和への努力が有効かどうかということについては、それも有効でしょう、世界の世論というものを喚起するために。しかし旗を立ててこの問題が必ずしも解決できるとは思ってないのです。それだから横山大使以外何もしてないじゃないかという。それは事実に違います。私がこの問題に対して、南ベトナムにしてもアメリカにしても首脳部との大半の話は、これはベトナム問題である。こういうことで、それから一々は申し上げませんけれども、第三国において日本外交機能というものが、そればかりではないけれども、重点の一つにしておるのが、ベトナムの早期な平和的解決、これに努力を傾けておるわけであります。なかなかすぐに効果はあらわれてまいりませんよ。しかし、これはどこの国がやってもなかなかむずかしい問題で、効果がないからといって、私はあきらめるつもりはない。あらゆる機会をとらえて、あらゆる外交機能を通じてベトナム平和的解決のために努力を今後もしてまいりたい。一々新聞、ラジオ、テレビなどで、こうやっています。ああやっていますと申し上げないからといって、ベトナムに対する努力が足りないと言うことは、日本外交に対する適当な評価ではない、これは私は申し上げておきます。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、ベトナムに対して、核兵器、これを使うのではないかということ、断じて私は使うべからず。また、アメリカはそのようなことをするとは信じておらないということを明らかにしておきます。
  25. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 ベトナム問題の解決について日夜苦心惨たんをされておるウ・タント事務総長が来月の十八日には来日をされるという。中近東問題の処理がありましてしばらく外国へは出られないような情勢もありますけれども、おそらくそれまでは何らかの展開もあろうと思うのですが、この十八日に来日をされるウ・タント事務総長の来日の機会をとらえて、政府ベトナム和平に対する日本国民の要求というものを大きく盛り上げる手段、方法を講じてもらいたいと私は思うのです。それについては外務省は今日どんなプログラムと、どんな方法を持っておりますか。
  26. 三木武夫

    三木国務大臣 川崎君、国民の世論を盛り上げろというのですが、だれひとりもこのベトナム戦争の継続を望んでおる者はない。やはり国民の世論というものは、こんなに国民アジアの一員として心を痛めておることはないのでありますから、何も国民運動的なベトナム平和的解決をする必要がある問題と思わぬ。何とかしてこれを解決できぬかというのは一億国民の願いですから、その方法論が何か、どうやったらできるかという問題が一番の問題点であります。お互いに、アメリカもあるいはまた北ベトナムも、相互に考え方、ものの見方というものに非常に距離があるわけですから、そういう点で相互の不信とものの考え方、見方の距離、これをやはり縮めるためにはどういう解決策があるかということが問題の焦点であります。したがってウ・タント事務総長が来れば、ベトナム平和のためにあれだけの努力をされたウ・タント氏でありますから、私も率直に意見を交換し、総理大臣もお会いになるでしょうし、そして政府首脳部と意見を交換して、ベトナムの——ただ評論家的に言ってもだめですから、具体的に解決できる方策というものをウ・タント氏とじっくり話をしてみたいと考えておる次第でございます。
  27. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 どういうプログラムがありますかと聞いておるのです。
  28. 三木武夫

    三木国務大臣 滞在が短いですから、できるだけその期間に各方面の人とも意見を交換されることが有益だとは思いますが、限られた時間でありますから、非常に広くというわけにもいきますまいが、少なくとも政府としては相当な時間をとって、そしてベトナム問題を中心話し合いをしたい。それ以外にはいろいろな行事がありますけれども、とにかく二日半くらいしか滞在しないのですから、そんなにいろいろな行事を盛り込むことはなかなか困難である。しかし、とにかくわれわれとしてはできるだけ時間をとって、話をしたいと考えております。
  29. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 何かわれわれの言っていることが評論家的のように——私が言っていることではないと思いますけれども、仰せられるようにも聞こえますので、したがって私のほうはもっと具体的にいろいろあなたに提案し、そして建設的にほんとうに話をしてみたいと思うのです。たとえばウ・タント事務総長の来日というものは戦後日本を訪れたる元首あるいはそれに比肩するような人々で私は一番政治的に影響の大きい人だと思っておるのです。アデナウアー・ドイツ首相は衆議院の本会議場で演説をした。そして相当西ドイツの今後進むべき道について、その進路を明らかにし、国会議員を前にして演説をしたので、非常に迫力があったと私は思うのです。ウ・タント事務総長はもちろん政府の高官、首相、外相その他とお会いでしょう。また与党や野党の首脳部とも会うでしょう。それより私は国会で演説をさせて、そして自分の所信というものを披露させるような機会をつかんだらどうかと思う。これは議長が発議するのでなしに、外務大臣がむしろ衆議院議長に要請したらどうかと思うのですが、そういう具体的な提案に対してどう思いますか。
  30. 三木武夫

    三木国務大臣 国会には来るようでありますけれども、演説の時間ということになるとこれは国会の問題でもあるし、川崎君の御提案として一いろいろな日程があり滞在が短いですからなかなか時間が詰まっておるのですが、これはやはり国会の問題でもあるし、そういう御提案のあったことは私の頭の中にとどめておくことにいたします。
  31. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 ウ・タント事務総長が来る機会に、さらに衆議院でベトナム問題に対する公聴会を開くとか、そういうことも日本の世論の反映として適当ではないかと私は思うのです。短い短いと言いますけれども、何も観光客が来るわけではないのです。ウ・タント事務総長の来ることは政治的な職務です。私は外務省のスケジュールを見たわけではないから知りませんが、築地の料理屋か何かで相当な人間を集めて宴会をするような計画もあるようだが、そんなことはやめたらいいと思うのです。よその何か観光的な、主要目的がそういうもので来るとか、万国博の主要人物を招待するならそういうこともいいと思うけれども、ハマーショルド氏にしても、あの事務総長をやっている間二十時間くらい働いておったという人ですから、そういう慰安もいいでしょう。しかし、でき得るならやはり国会という大きな舞台で事務総長の非常に世界平和を追求する考え方というものを聞いてみることがいいし、それにからんで各種の御会合をやられたことのほうがよくはないかという建設的なお話を申し上げておるわけであります。  この機会に、それならば現在の時点に立ってどういうことが解決策か、これはウ・タント事務総長の言うように、まず北爆の停止だ、その北爆の停止も無条件停止でなければならないというふうに考えるのです。この北爆の停止というものがそれなら無条件停止で一年も二年もやっていこうというわけにはいかぬ、やはりアメリカ考え方もあるでしょうが、やはりアメリカとしてはいままで北爆の停止をした時間が短過ぎたと私は指摘をしたいのです。現に一カ月ほど前のモスクワ放送は、コスイギン首相の見解として、約二カ月ほど前には、ハノイに対して三週間ないし四週間の期間を置いて北爆の停止があればハノイは反応する用意があるだろうということをアメリカに伝えたことがあった。これは未確認情報であって、必ずしもそれが当たっておるかどうか知りませんけれども、そういう一つ考え方もあり、現にアメリカがここ四、五日やめておることは、何かそういう事態へ発展し得る可能性があるのではないかとさえ私は思うので、北爆の停止は、私はこの機会にはっきりと期間を切って、いままでの情勢からいえば少なくとも二、三カ月停止をすれば、かなりハノイ側においてはこれを誠意と見て反応する用意があるのではないか、これは和平交渉に入り得る一つの大きなきっかけであるというふうに考えるのですが、外務大臣はいかがお考えでありましょうか。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカとすれば、北爆を停止した間に北の兵力が増強になった歴史アメリカは説いて、そしてこちらが北爆停止をする場合においては、北からの侵透もこれは停止されなければならぬというのが従来のアメリカの言い分であります。そこで、私は北爆停止は確かに一つ和平へのきっかけであるとは思いますが、その北爆の停止は交渉の前提としての北爆停止であるべきであるし、そうでなければ、ただ無条件でやれ、やってみろ、そうしたら向こうが交渉に応ずるかもしれぬというのでは、なかなかやはりむずかしい点があるのではないかと思います。それは、そんなことを言わないでやってみろ、やってみたら何とかなるかもしれぬぞということだけでは、なかなかやりにくい点があるので、だれかが、これは表向きでなくてもいいですから、何かの、やはり北爆を停止すれば、ある期間置けば交渉に入るんだという保障が何かできないものであろうか、そうなればアメリカだってこれは武力によってこの問題を解決しようとはしていない、こう言っておるのでありますから、交渉に入るということは望むところであると言っておるのですから、何かただ無条件であとはどうなるかわからぬというのでなくして、それは交渉に入る前提であるという形において北爆の停止ができるような話がつかないであろうか。そうなればこれは必ず両方が、ハノイもそういうことで納得すれば、アメリカ北爆停止は実現することは間違いないということで、表向きはどうであろうとも、北爆停止というものは交渉に入る前提である、こういうことで話がつかないかと私は思っておるのでございます。
  33. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 いまのお話、ごもっともです、きわめて中立的というか、公正な考え方としては。しかし、やはり入り込まれておるという考え方を北ベトナムのほうとしては持っているわけです。北ベトナムに入り込まれているわけではないが——ベトナムに入り込まれておるというほうが和平交渉の条件として北爆の停止ということを言い出しておるのではなくて、北爆の停止がまず第一であって、その後に和平交渉というものは当然に反応が起こってくるという考え方に置きかえなければ、それが条件だからということではなかなか乗ってこない。しかし、アジア人は一たび信ずればかなり反応を示すことと思いますので、やはり北爆の停止二カ月という二とが先決条件ではないかという私の考え方を申し上げておきます。そしてそれが一つの反応があらわれますれば、そこには当然第二段階において、アメリカが先般提案したるところのアメリカ及び北ベトナム軍が十六キロずつ後退する、あれも一つの案でしょう。あれを一番先に打ち出しておる。北爆停止が第一であり、第二に双方が非武装地帯を設けてそれを次第に拡大していくということが和平への第二段階にならなければならぬ。それからもう一つの重要な要素は、平和のことを世界じゅうが考えているというけれども、考えておるなら、それを凝集する機構を強化していかなければならぬ。これはやはりいまではICCというものの機構を強化し、その財政の負担を世界の有力な国家が持つという決意を高めていって、いわゆる平和エネルギーというものがだんだん戦争エネルギーに対抗していく基礎をつくって初めて平和へ到達ができるのではないか、これが私は第三段階ではないかと思う。すなわち第一は北爆の二カ月ないし三カ月停止、第二段階においては非武装地帯の拡大、第三にはICCの機構拡大というのであって、それこそウ・タント事務総長の指摘を裏書きするわけではないけれども、アメリカ軍が二日で使っている費用は国連の一年分の費用だ、アメリカ軍が一年間に使っておる費用を換算すれば国連を実に百八十五年間維持することができるといって皮肉っておることを見ても、国連を強化する前に、いま、カナダ、ポーランド、インドの、国連監視機関というものを強化、充実することが今日の最大の任務であり、平和エネルギーの凝集こそ一つの道である。私はこの三つを今度の外務委員会を通じて三木外務大臣が御賛成であるかどうかということを承っておきたかったのであります。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 第一の、とにかく北との間に何らの話し合いもせないで無条件で北爆を停止せよということは、なかなか実現の可能性がむずかしいと私は見る。川崎さんは北のほうへ入り込んでいったと言うが、また南からいえば、正規軍が南へ入っておることはICCの報告でも言っておるのです。こっちも行っておるけれども、北からも正規軍が南に入ってきておるのだ、この問題は一体どうするのかという議論が出まして、ただ一方的に、ハノイが何にもしないのにアメリカだけが北爆しておるという議論は、やはりアメリカは納得しないと思う。北からも入ってきているじゃないか、そうなってくると、おまえのほうが入り込んでおるから、おまえのほうだけやめろということが現実的な解決に役立つかどうかということに私は疑問なんです。だから、ウ・タント最初に言ったように、現状においてみな撃ち方やめろ、こういうことならば両方ともみなやめるのですから、解決の糸口になる。ただ、あとはどうなるかわからぬが、アメリカは二カ月北爆をやめてみろということは、アメリカとしても、これがいいとか悪いとか別として、解決しようとすると、それは実現になかなか困難性を持つのではないか。  それから非武装地帯を拡大したらどうかということ、アメリカも一時は入っていったわけですけれども、それは南との作戦上入ってきたので、二十二日には撤退したのですから、また二十五日にちょっと入ったようですけれども、ここは無人地帯にしておきたいとアメリカも言っておるわけですから、非武装地帯、これは両方が入らないようにするということは可能性があると思います。  しかし、ICCの強化というものは、将来ベトナム平和的解決が出たら、そういう事態が起こってくると私は思いますよ。国際的な国境監視団といいますか、それはもっと強化しなければいかぬでしょうね、ベトナム問題が解決したときに、その平和を保障する何らかの機関というものが要るでしょうから。しかし、いまの段階で、本体の問題が解決しないところにICCだけを強化しても、戦争自体をやめさすというところにその強化ということで実際の効果が出るとは思えませんし、またそれが強化できるかどうか。いまのような状態で各国に、みなICCに入ってこれを強化しようと言っても、強化できるような条件というものはなかなかないのではないか。だから、早く戦争を終わらして、その後における一つの終わらした休戦の秩序を維持するために国際監視団のような強力な機構が必要であるという考え方は、私はそれには同意見でございます。
  35. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 時間の制約もありましたので、この辺で終了しようと思っておったのですが、社会党のほうの御好意もあって、もう少しやってもいいというお話なので、もうちょっとやらしてもらいます。  いま何か評論家的なようなことを言うていて、そしてまただんだん今度は逆に自分が評論家的になっては困るので、私が具体的な提案をすると、今度は、なかなかそれは困難だと言われる。しかし、困難なことをやらなければだめなんです。近ごろ三木外務大臣は相当、アジア太平洋構想にしても、あるいはこの間の国会の施政方針の二番目の演説にしても、点数をかせいでいるのですよ、絶対二十点、三十点は。しかしやはり大事なのは第一の問題を解決することです。日本にとって第一の外交的な問題は中国の問題でしょう。けれどもこれはまだまだ先の問題。してみればベトナムの平和を一日も早く来たすということがあなたの大きな目標にならなければならぬと私は思う。目ざすは総理大臣の座ではなくして、志すべきはアジア及び世界の平和だということを私は申し上げて、もう少しやらしていただきます。  そこで問題は、そのあとになれば、やはり入ってくればベトコンを当事者として加える、そしてジュネーブ会議の線に戻っての考え方をして、さらに一歩ずつ進んでいくという、それはプログラムはだんだん出てくるわけです。しかし私は、いま一番北ベトナム側で疑っているのは、北爆の停止を完全にやるかということが一つ。もう一つは、米軍の撤退の時間表をつくってくれということだろうと思うのです。これはすぐに撤退しろと北ベトナム側も言うとは私は思わぬ。やはりいっかはわれわれの国から彼らは去るべきものだ。これは私ども支那事変に行ったときに、いわゆる皇軍というか、日本軍は連戦連勝。しかし中国の民衆は心の中で、いつかは日本軍は去るだろう、まあいろいろな建物をつくってくれたり、いろいろな施設をつくってくれたが、ありがたいしあわせだ、という考え方をインテリは持っていた、中国のインテリは。それはその当時の軍の将校たちは信じなかったかしらぬが、われわれ召集の兵隊は早くもそのことを見抜いておった。その影響、その同じような性格は今度のベトナム戦争状況にも出ておるので、結局はそうなる。アメリカのやることは何か。南ベトナムの建設ということに協力をして、戦争よりは南ベトナムの民生安定というものに重点を置いて、心の信頼をとりあえず南ベトナムの民衆から取りつけることが先決問題ではないか。私はエドワード・ケネディ氏にもそう申し上げておいたです。彼はことごとく同感であった。そういう一歩ずつの平和への努力ということをアメリカにさすことが今日の最大の任務ではないか。北爆の停止と南ベトナムの平和建設ということについて、三木外務大臣は今日までどういう考え方をし、具体的な提案をしたことがございますか。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 私はベトナム問題というものがああいうふうな混乱を起こした原因は、ベトナム貧困にあると最初に申し上げた。いまも私は信じておる。そういうことから、国民の不平不満、これが反政府運動になり、これに共産主義者が乗じてきたわけでありますから、そういう点でベトナムにおける平和建設は、北も、共産主義政権であっても、この戦争のエネルギーというものを平和建設に使うべきです。早く戦争を終わって、南もそうだし、したがってアメリカが言っておるように、平和が回復するならばアメリカは撤兵する、これは私は信じている。いつまでもアメリカの兵が南ベトナムにとどまるべきではない。平和が回復されて南ベトナムというものの独立が何らかの形で保証がされるならばアメリカは撤兵する、これは実行しなければいかぬと私は考えておるので、そういう意味においてアメリカが今後力を入れるべきは南ベトナムにおける平和的な建設である、この点については川崎君と私は同意見でございます。
  37. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 この質問をするにあたりまして、われわれは諸先輩の意見も聞いてみましたので、この機会に私の意見とも合わせて三木外務大臣にお伝えを申し上げたいと思うのです。  前外務大臣藤山愛一郎氏は、この機会にやはり日本政府はもっともっと積極的な案を出して、そしてベトナム和平に関する具体的な推進をすべきだ、こういう考え方で、その一つの方法として、三木外務大臣がこの秋には訪ソをされるというふうに伺っておるが、その主要な題目というものはやはりベトナムの平和招来ということに重点を置き、アメリカも訪問をしてもらいたい、米ソ両国にいろいろな問題をひっさげていくにしても、主題はやはりベトナム和平に関する日本国民の願いを伝えることが一番筋が通り、また日本立場を強く反映し得るのではないか、こういうことを言っておられました。松村謙三先生は、これとはまた別個の角度から、近ごろ中国大革命の進行に照応して日中往来というものが非常に絶えておる。日本では中国の情勢は新聞記者の動きによって相当に知らされてきておるけれども、北ベトナムがどう考えておるかということはまるで手探りである。これはやはり中国側を通しての情報も取らねばならず、その意味では日中間の交流がこういう時期であればあるほど貴重な時期であるというふうなことから接触をとるべきだというお話もありまして、私どもそれぞれ両先輩の御意見として深く感銘をいたしたわけでございます。そういう背景において今日の質問をいたしたということもどうか十分おくみ取りをいただきまして御善処をいただきたいと思います。  本日は外務委員会に特別に出していただきまして、委員各位にたいへんごやっかいになりました。ありがとうございました。
  38. 福田篤泰

    福田委員長 川上貫一君。
  39. 川上貫一

    ○川上委員 きょうは珍しく与党の方々が二人までも質問をされて、すべてがベトナムの問題に限られておるその中で、三木外務大臣は断固として勇気を持てということばがあったと思うのです。それは与党でありますからまことにことばは穏健でありますけれども、アメリカを押えいということなんです。これは今後の問題として三木大臣もその趣旨、与党の方の真意のあるところを十分くみ取られる必要があると思う。私も短い時間でありますが、同じくベトナム問題について、二、三の質問をしたい。  外務大臣は、この前の二十三日ですが、参議院でわが党議員の質問に対して、アメリカベトナムに対する侵略戦争アメリカだけが悪いとは言えない、こう述べておられます。これはアメリカの狂暴な非武装地帯への進攻まで事実上支持するという態度を明らかにされたと思うのです。ところが、同時に、こういうことを言うておられる。ベトナムの事態については、「戦争のもとを終息させる以外に道はないと思う。」このベトナム戦争の根本を終息させる、こう大臣が言われたのは一体どういうことであるか。きょうも外務大臣は、アメリカはやむなく戦争をしている、こういうことも言われている。またウ・タント事務総長の平和提案に対してはハノイ承知しておる、こういうこともきょう言われた。これは根本に関する問題だと思う。ベトナムにおける今日の事態、この根本は非常に明瞭だと思う。これは一九五四年以来、アメリカが、私は率直に申しますが、ジュネーブ協定を乱暴に踏みにじっておる。そうして南ベトナムのかいらい政権をつくっておる。これは何と言われても事実なんです。そうして公然と派兵して、ついにはベトナム民主共和国に対する無法な爆撃を始めた。これが何と言うても根本なのだ。この根本をほかにして、ハノイが承諾しないのはあたりまえだと思う。したがって、戦争の根本を終息させる、こういえば、北爆を無条件にやめること、これなんかは言うまでもないことですが、ベトナムからの米軍の即時撤退以外には根本を終息させるものはない。外務大臣はこの根本を終息させるということを言うておられるが、日本政府はいままでアメリカの侵略戦争、殺戮、これについて一ぺんでも抗議したことがありますか。ないと思う。反対アメリカの共犯者になっておられる。そうしてあらゆる協力、加担を続けて、侵略戦争の拡大に大きな役割りを引き受けて、いまもそれを続けておる。そこで、もしまじめに外務大臣和平を云々されたり、戦争の根本を断ち切らねばならぬということをおっしゃるのであれば、アメリカの侵略戦争反対することは言うまでもなく、一切の日本政府の協力を直ちにやめなければならぬ。ところが政府は、ますます協力、加担を深めている。これは具体的事実がある。これは一体どういうお考えであるか、これをお尋ねしたい。
  40. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカに協力しておるではないかと言われるが、協力は、私がたびたび申し上げるように、日本アメリカとは日米安保条約を結び、行政協定その他の協定がある。これはベトナム戦争が起こる前から日本はこういう条約を結んでおる。条約の義務は当然に履行しなければならない。そのことをベトナム戦争に対して日本が非常な加担をして、これをうしろから支持、応援をしておるというふうに考えることは、ちょっと事実と違うのではありませんか。もうベトナム戦争の起こる前から安保条約はあるのですから、この条約の義務を履行するというのは、憲法の中にもあるように、条約の義務は履行しなければならないということは独立国家の当然のことですから。安保条約はいけないんだと川上さんがおっしゃれば、これは意見が相違しておるわけで、われわれは、安保条約のワク内において日本が協力する義務を負っておる、その義務を履行しておるものである。ベトナム戦争に特に日本が深入りしておるというふうには考えていないのでございます。
  41. 川上貫一

    ○川上委員 そういう御答弁になると、戦争の根本を終息させる以外には道はない、こんなことを言う資格はないと思う。戦争の根本に対して協力しなければならぬといういま三木大臣の御答弁であった。そうしたらば根本の終息どころじゃない。こうなるとますますベトナム戦争の拡大に協力をする、ますますアメリカの侵略に協力をする、こういうことになる。また実際こういうことがやられておる。これはここで外務大臣と論議をしようとは思いませんけれども、大事な問題でありますから……。協力体制をずんずん進めておる、しかしこれは安保条約によるのだから、こういう形だけでは日本国民を納得させることはできないと思う。たとえば、去る二十五日、二十六日の両日、東京で日米両国政府の軍事外交問題での会議が行なわれておる。これではどういうことを相談したか。この会議には外務省の牛場事務次官、東郷北米局長も出ておる。防衛庁の三輪事務次官、天野統幕議長も出席しておる。アメリカからはジョンソン駐日大使、これはもちろんですが、マクノートン国防次官補、その他マッキー在日米軍司令官、これまで出席しておる。こういう会議を開いておる。この会議日本アメリカベトナムに対する戦争にますます協力加担する体制を本格的に進め出したという証拠であると思いますが、この点はどうですか。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 それは証拠でも何でもありません。それはアメリカでも何とかして戦争を早く終わらしたいということは、これはアメリカの意図であること、疑う余地はない。ただ両方がお互いにものの考え方や見方の相違があるから、なかなかこの戦争を終わらすという話し合いがつかないのでありますが、川上さんがごらんになっても、アメリカでも、こういう戦争を何年も続けていこうということは、だれも考えるものはないに違いない。何とかして終わらしたいと考えておるに違いない。またその会議でも、こういう極東情勢というものが非常に大きく動いておるときですから、日本アメリカとのそういう関係者が寄って話し合うということはそんなにたいした大きなこと——ベトナム戦争日本が加担するといっても、憲法の規定があって、軍事介入日本は絶対にできないのです。それでベトナム戦争というものを平和的に解決をしたいという日本政府の希望というものは、これはもう変わらないものです。戦争が長く続いているからいいなどと日本政府は少しも考えておるものではありません。こんなアジアにおける不幸な悲惨な戦争を一日も早く終わらしたいということで、何とか方法はないかということで心を砕いておるのが日本政府立場である。しかも二万においては、あの世界に類例のない憲法における日本の軍事行動に対する制約を持っておるのでありますから、どんな会議を開きましても、その会議は、川上さんが御心配になるような会議の内容になるわけはないのであります。どうぞ御心配は御無用に願いたいと思います。
  43. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣はなかなかうまいことを言う。しかしそんな簡単なものじゃない。日本政府は昭和三十七年、第二回の日米安保協議委員会で、こういう専門委員会をつくることを申し合わせておる、進んで。その翌年、その当時の大平外務大臣とライシャワー駐日大使との間で話し合いが行なわれておる。この時分は、政治的な配慮から一時見送っておこう、こういうことになった。これがこの会議なんだ。ところが昨年六月、日米政策企画担当者の第四回定期協議において、外務省は「日本の国防」と題する討議資料をこの会議に提出している。この資料の中であらためて日米軍事専門機構の設置を提案している。進んでこれをどんどんやっておる。根本を終息させるどころじゃない。これを固めていっておる。それが今回つくられた機構であって、アメリカベトナム侵略戦争の拡大というこの緊迫した情勢のもとでいよいよこれが設置されたのでありますから、これはそう簡単な問題じゃない。軍事外交当局者の協議会だといわなければならぬ。言いかえれば、日本アメリカの両国政府が一貫してねろうてきた日米軍事専門機構の事実上の設置なんです。こういうことは、日本政府アメリカベトナム戦争への協力体制をいよいよ固めようとしておる証拠なんであります。こういうことをやっておいて、一日も早く平和の来ることを念願する、あるいは根本を終息させなければならぬ、そういうことが言えたぎりではないと思う。国会のこの質疑応答というものは、青年団の討論会ではありません。これは政府としては国民に約束をする発言だ。われわれとしては国民の意思を代表して政府質問をしておるのである。無責任な、いいかげんな答弁は困ると思う。  そこで政府は、特に外交に関して三木外務大臣は、今日、民間の企業や団体までをひっくるめてますます加担させようとしておる事実がある。こういうことをやっておりますか。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 盛んにベトナム戦争とひっかけますが、いま申したように、その会議にしても、何も日本が軍事的に一体といって、どこができるのでしょうか。川上さん、あなたは憲法の中で日本が何ができると思いますか。私はいまの憲法というものを信じておる。あの中で日本が軍事的にできる行動範囲というものはほとんどありませんよ。いかにも重大な話を——どこができますか、あの憲法のもとで。できませんよ。日本の行動というものは、軍事的には全くもう手も足も出ない状態に憲法はなっておるのであります。したがって、その会議が重大なベトナム戦争の戦略に対して非常に影響が起こるような、日本はそれだけの軍事介入というものはできませんから、それで私は、たいしたことはないのです、御心配にはならなくていいのですと、川上さんに申し上げておるのでございます。  また、ベトナム戦争に対して民間団体も動員してアメリカベトナム戦争協力体制をつくる、そんな考え方政府は持っておりません。一日も早く終わりたい、こういうことが政府の願いでありまして、いまそれを根本的に解決するためには、一応十七度線を境にして、北は共産、南は非共産で一応のピリオドを打つよりほかにはないのじゃないか。そういうことでアメリカもあるいはハノイ戦争を終わるということに同意をすることが必要ではないか。これはもう終始政府が言っておることでございます。戦争の一日も早く終息することを望んでおる政府考え方は何のごまかしもない、率直なわれわれの願いであるということを、何ごともお疑いにならないで、ひとつ素直に信じてもらいたい。
  45. 川上貫一

    ○川上委員 少しも疑うのではなくて、事実を聞いておる。そうすれば、国際興業株式会社というのがある。これは在日米軍の基地内のバスを一手に引き受けている。これが多くの労務者をベトナム米軍の陸上輸送要員として派遣する計画を進めている。これは、どっちかと言えばLSTの陸上版だと思う。政府はこの労務者のベトナム行きを許しますか。これはどうするのですか。またこの雇用主はだれでありますか。人員は何人でありますか。ベトナムのどこへ行くのでありますか。これを承りたい。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 川上さんの言うようなものは、政府委員も来ておりますが、聞いたことはないということですが、調べてみることにいたします。
  47. 川上貫一

    ○川上委員 国際興業は、三月ごろから、もうベトナム派遣の労務者の募集を始めております。その労務者は、三年契約で数十名が出発準備を整えている。このような重大なことを政府は知らないというはずはない。これは調べるというなら調べて、あらためて答弁を求めたいのですが、これはいいかげんなことを言うておるのじゃない。  それから現在政府は、南ベトナムのファンランにモデル農場をつくっている。これはもう明らかなことです。ところがベトナム農村建設平和日本奉仕団というものを南ベトナムに送り込んでいる。この奉仕団は四月五日にサイゴンに到達して、パーティを開いておる。これはどこに行くのですか。これはファンランとアンケに行くのです。このファンラン地区は、南ベトナムの中部海岸地帯にありますが、ここはアメリカの第百一空挺部隊の一番大きな補給基地です。同時にアメリカと南ベトナムのかいらい政権がつくったいわゆる平定部隊、これの駐とん地です。このことについては、アメリカのパーシー上院議員が去る四月二十八日にこういうことを言っている。これは外務大臣承知でしょう。ジョンソン大統領は、日本ベトナム派兵を要請すべきである、この派兵を日本ができないというならば、南ベトナムの平定部隊に人員を提供させるべきである。これはアメリカのパーシー上院議員が四月二十八日に上院で述べておったことです。事態は明瞭だ。モデル農場、日本奉仕団、すべてアメリカの要求に従うて、アメリカと南ベトナムかいらい政権の平定計画に加わっておる。アメリカ戦争に協力する。これを送り出しておる。これを外務大臣承知ですか。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 私はやはり南ベトナムの民生の安定とか医療というものは、戦争が行なわれておっても協力していいという考えでございます。だから農業の技術あるいは医療、こういう問題については、これが戦争の協力だ、こういうふうにまで話を飛躍させるならば、これはもうわれわれの人道的な活動などは否定されるわけでありますから、川上さんとはその点については意見が違うということでございます。またやるつもりでございます。民生の安定、医療に対しての援助はたいした援助ではないですけれども、今後ともやるつもりでございます。  それから、ジョンソン大統領日本に派兵要請をすべきで、それをしなければ平定計画に日本人を動員すべきだというような御発言は、そういう情報が共産党にお入りになったのかもしれませんが、何ぼジョンソンでも、日本に派兵を要請するというようなことは、憲法を——大体日本憲法の骨組みというのはアメリカの首脳部は知っていますから、そういうのもちょっと川上さんの御心配、みな少しオーバーな御心配が多いのではないかというふうに考えるのでございます。
  49. 川上貫一

    ○川上委員 心配、心配と言われますが、私が特別に心配しておる、こんなことで聞いておるのじゃないのです。国民が困っておる。国民が非常に政府考え方に賛成しておりません。いま医療とか民生安定とかなら行くというのですが、それならなぜファンランに行くのですか。なぜモデル農場あるいはこの奉仕団はアンケに行くのですか、これは旅券を出しておる。旅券には目的と行き先が書いてあるはずです。これはどうしてファンランに行くのですか。
  50. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ファンランにつきましては、日本の奉仕ではございませんで、ベトナム政府のファンラン地区の農業改革のためにかんがい工事をやっております。これに日本の建設業者が契約によって行っている事実はございますが、日本政府からモデル農場をつくるという案はございません。
  51. 川上貫一

    ○川上委員 なぜファンランにモデル農場をつくらなきゃいけないのか、日本政府が。それからなぜファンランに日本の民間の奉仕団というようなものをつくらなきゃならないのか。旅券を出したのでしょう。これには目的が書いてある。目的地も書いてある。その旅券を出している。行く先がわかっておるし、目的もわかっておるはずです。それを政府は許したじゃないですか。なぜファンランに行くのか。外務大臣は民生安定とか医療とか言われますけれども、そんなことじゃ片づかぬ。行く先が問題です。ここは平定部隊の駐とん地であるのみならず、第百一空挺部隊の最大の根拠地です。これは簡単に民生安定とかあるいは医療とかいうそんな問題じゃないと思う。この人員はささいなことのようですけれども、これが政府考え方なんです。それで私はパーシー議員の発言まで引用しておるのです。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 ファンランに何かアメリカの部隊がいるからとか川上さんはおっしゃるのですが、かんがいの工事を日本が手伝うのはいいじゃありませんか。かんがい工事というのは何も軍事的なことじゃないので、やはりあの辺は農業地帯ですから、私も見たことがありますけれども、やはりあそこは農業として開発しなければ、民生安定はしないでしょうからね。それでかんがい工事などを、日本が国際入札で労務者が行くというようなことは、戦争に介入しておるというふうには私は考えないのです。かんがい工事なんかに協力するのはいいことではないかというふうに考えておるのでございます。
  53. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、いまの三木さんの御答弁では、平定部隊に日本の奉仕団その他のようなものが加わることはいいことである、こういう御答弁ですか。平定部隊というものは一体何をするのですか。これをちょっと聞かしてください。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 川上さん、平定部隊に政府が人を派遣しているのではないのです。いま言ったのは、政府は何も関係ないわけです。民間がそういうかんがい工事を請け負って、労務者が行っておるという事実はあるけれども、政府が派遣したとか平定部隊に人を送ったという事実はないということを申し上げておるのでございます。
  55. 川上貫一

    ○川上委員 関係がないことはないです。ここへ行くということで旅券を出しておる。その旅券を発給しているのです。これは政府がやっているのです。政府の責任です。この平定部隊というのは武装した人民弾圧部隊です。平定村というのは、単に民生の安定、これを考えておるものじゃないのです。これはもう御承知だろうと思います。この平定村に行って、平定部隊と一緒になる、これが奉仕団です。私は一つの事実を申し上げておるのですが、このような例は続々出ておる。これは憲法があるからとかいろいろ言われますけれども、事実上日本ベトナムにおけるアメリカ戦争にあらん限りの協力をしておる証拠です。  私は時間が三十分の約束でありますから、時間が過ぎたら申しわけないから質問を続けますが、日本政府アメリカベトナム戦争、これの協力のためにMSTS、すなわち米海軍極東海上輸送司令部に所属する輸送船に乗り組み員を提供している。現在政府は、この輸送船に乗り組み員を何人提供していますか。この輸送船は何隻ありますか。この輸送船は一体どこを回っているのでありますか。これは日本が提供しているのでありますから、政府が提供しているのでありますから、この点をちょっとお答えを願いたい。
  56. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 MSTSの扱っております船のうち、LST関係は、現在米軍の直接雇用の者が約一千二、三百人であったと記憶いたしております。そのほか、米軍の輸送船の乗り組み員として間接雇用の者が、これはごく少数、百名以下だったと記憶いたしますが、そういう形で米軍が地位協定のもとにおいて日本の船員を雇用しておるわけでございます。
  57. 川上貫一

    ○川上委員 どこを回っていますか。
  58. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 若干のLSTがベトナムに参っておることも御存じのとおりでございますが、その間接雇用のいわゆる海員契約によっております者は、主として日本の近海を運航していると承知しておりますが、運航計画の詳細は私いま明らかにしておりません。
  59. 川上貫一

    ○川上委員 明らかにしておらぬじゃ済みませんが、ニュージーランド、豪州、南ベトナム、韓国を回っておるのです。これがアメリカのMSTSの軍事輸送船です。これ、違いますか。
  60. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ただいま申し上げますように、私、現在、これらMSTSの各船の詳細な運航計画は承知しておりません。
  61. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣もお知りにならぬのか。これは南ベトナム、フィリピン、ニュージーランド、オーストラリアまで行っておる。  そこでお聞きするのですが、日本人の提供、これはどういう条約あるいは協定によって日本が提供しているか。日米安保条約にも、これに基づく在日米軍の地位に関する協定にも、ベトナム侵略のためにフィリピンやオーストラリア、ニュージーランドまで航行するアメリカの軍用船に日本人を提供しなければならぬという条項はない。そのことについては、かつて本院で一部の質問が行なわれたことがあります。これに対する答弁もわずかありますが、外務大臣は何も答弁しておられません。そこで私は、ここであらためて三木外務大臣の御答弁をいただきたい。
  62. 三木武夫

    三木国務大臣 LSTの乗り組み員は、直接の雇用もあるわけですね。いろいろベトナムで問題なんか起こしておったのは直接の雇用で、海員組合とも話し合いをつけて雇用契約で行っておるのと、それから間接雇用がありますが、これは地位協定第十二条の規定によってこの間接雇用をやっておるということでございます、この根拠は。直接の雇用は直接の話し合いですから、これは地位協定というわけではないわけです。
  63. 川上貫一

    ○川上委員 これは非常にわけのわからぬ答弁ですが、私の聞いたのは、MSTSに行っておるのは間接雇用です。政府が提供しております。これは最近外務省の、私は名前を言いませんが、ある課長が、提供しておりますと言うております。百三十数人おる。これは安保条約に基づく在日米軍の地位に関する協定、すなわち地位協定に基づいておる、こう言うておるのですが、外務大臣、そうですが。
  64. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申し上げたのは、そのとおり答えておるのです。いま私そういうふうに答えております。
  65. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば、ついでに聞きますが、昭和四十年二月二十七日の予算委員会の第二分科会で、藤崎条約局長がこういう答弁をしておる。極東の一平和と安全を確保するために必要な行動を、極東の範囲外にわたって米軍がとることは妨げられるものではなく、そのための米軍の輸送船に政府日本人を提供していることは当然なことであって、地位協定のワク内である、こう答えておる。外務大臣、これを認めますか。
  66. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そのときの私の答弁は、地位協定で現地の労務に対する需要の意味合いにつきまして、日本国内で働く者ならば差しつかえないが、国外に出ていく者まで提供するのはけしからぬじゃないかという趣旨の御質問に対しまして、船員というものの特殊性からいって、日本の領海から一歩も出てはいかぬというのでは話にならないという意味でお答えしたわけであります。それで、それではどこまで行けるかというと、結局安保条約目的によってしぼられてくる。それは極東の平和、安全の維持ということで、これが目的でございますが、この極東の観念を安保条約のときに説明いたしたときから明らかにいたしておりますように、この極東というのはいわば目的の範囲であって、行動の範囲ではない。極東の平和、安全に必要があるということであれば、それ以外に米軍が行動することもあり得る。そのことはMSTS所属の船舶にも当然当てはまることである、こういう趣旨の答弁をいたした次第でございます。
  67. 川上貫一

    ○川上委員 もう時間がありませんが、私はこれは重大な問題だと思う。外務大臣もお聞きになったと思うのですが、ベトナムの、アメリカの侵略戦争に対する協力、加担は安保条約の義務である、こういう意味のことをきょう言われた。ところが、いまの答弁によると、ますます重大だ。安保条約というものは、要するにアメリカ軍が必要とする軍事輸送船に対しては、これを極東の安全と平和と称するならば、その軍用船がどこに行っても、その軍用船が何をしても、それにはかかわりなく日本政府日本人を提供しなければならぬ、こういう条約だという解釈だ。これはきわめて重大だと思うのです。私はついでに言いますが、繰り返すように、ベトナムアメリカの侵略戦争に対しては、安保条約の義務だからこれに協力しなければならぬ、またいま言いましたように、アメリカ軍が必要とする軍事輸送船に対しては、その輸送船がどこに行って何をするかは問題じゃない、日本政府日本人をこれに提供しなければならない、この答弁。さらに、この安保条約を見るというと、極東の平和と安全などをうとうております。うとうておるが、前の国会で椎名前外務大臣はこう言うておる。日本政府アメリカベトナム侵略戦争に協力するのは、——外務大臣は侵略ということばは言わなかったが、ベトナム戦争に協力するのは安保条約上の義務である。言いかえれば、極東の範囲にはワクはない、極東の周辺どこへでも行けるのだ、こういうことを言うておる。そうすると、これは明らかに安保条約に言う極東の範囲は限界がない、こういうことになると思うのです。してみれば、この結果が重大だと思う。日米安保条約は、アメリカが極東の平和と安全という名目で戦争を行なう場合には、その戦争がどの地域であっても、またどのような戦争であっても、日本はそれに協力しなければならぬ条約であるということになりました。これはきわめて重大な問題です。しかも、この安保条約はもとから期限がない条約だ。期限はありません。これは、三木外務大臣も、条約上期限はないとこの前のこの委員会で言われました。これほど危険な条約ですよ。こういう条約が世界のどこかにありますか。私はないと思う。類例がない。しかるに問題は、政府はこの条約を口をきわめて礼賛しておられる。非常にほめたたえております。これは一体どういうことになる。これは、政府ほんとうに、平和と安全を願う日本アジアの人民の念願を踏まえておるとは言えません。これは踏みにじって顧みない証拠だと言われても、言いわけはないと思う。また、祖国日本の運命、民族の運命を顧みない、日本アメリカのために戦争奴隷として売り渡している証拠だ、こう言われても私は一向差しつかえないし、答弁のしかたはないと思う。この安保条約をほめたたえておられる。三木外務大臣は所信をなかなか率直に述べられる外務大臣で、この点はまことにけっこうだと思うのですが、この点を一体どうお考えになるか。こんな条約はどこが礼賛に値するのか。こんな条約が世界のどこかにありますか。類例がないじゃないか。
  68. 三木武夫

    三木国務大臣 川上さんと根本的な見解が違う一点だと思うのです。安保条約、このことは日本の防衛に対してアメリカが責任を負うということですから、これは日本の安全の維持の非常に大きな力になっておることは事実であります。もし日本を侵略する国があるとするならば、アメリカとの戦いを覚悟しなければ来られないということでありますから、日本の安全を維持する上においてこれは無言の大きな力になっておることは事実です。それがために日本の防衛費などは全体の予算の七%ですよ。どこの国だって七%の防衛費という国はありませんよ。みな二〇%以上というくらいのものであります。多いところは五〇%を持っておる。それが予算の七%ですからね。これはやはり日米安保条約というものがなかったならば、こんな七%ぐらいの防衛費では済まないと私は思います。この防衛費の負担が予算の上において非常に軽いということは、日本の経済的な復興、発展ということにも非常に寄与していると思います。そういうことを考えると、安保条約の持っておる役割りというものをあまり過小に評価すべきではない、こういう考えで、この点は川上さんと意見が違うわけです。  そこで、安保条約というものにおいても、もし作戦行動の基地にアメリカ日本を使う場合、極東に出動する場合においては事前協議の対象になるし、また事前協議の場合においてもアイゼンハワー大統領と岸総理との共同声明によって、日本国民の意思に反して極東に出動することはないという約束をしておる。だからベトナム戦争に対して日本アメリカと密着して一緒になって軍事行動を起こすというそんなことはできるわけがないし、日本がいまアメリカに協力しているということは、ベトナム戦争というのではなくして、日米安保条約、それに付属する協定からくる当然の義務を日本が履行しておるまででありまして、このことがベトナム戦争に対する日本軍事介入であるというふうに見ることは事実に反するのではないか、こういうふうに考えますから、川上さんとは一つ考え方の入り口の相違があるのだと私は思う。そういうところですべての問題に対する評価というものが違ってきて、まことに残念ですが、このあなたと私との間にあるみぞはなかなか埋められそうにもないみぞであると言わざるを得ないのでございます。
  69. 川上貫一

    ○川上委員 もう時間がありませんから……。この三木外務大臣の御答弁については、これは意見の相違という問題じゃなくて、相当質問しなければならぬ問題を含んでおる。さらにまた私は軍事介入ということばは使っていない。こういう点も正確に御答弁願いたい。時間がありませんし、時間を守りたいですから私の質問は今後に残して、きょうはこれで打ち切ります。  ありがとうございました。
  70. 永田亮一

    ○永田委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明後六月二日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時二十八分散会