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1967-05-19 第55回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十九日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 永田 亮一君    理事 野田 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 穗積 七郎君    理事 曽祢  益君       青木 正久君    臼井 莊一君       松田竹千代君    木原津與志君       久保田鶴松君    黒田 寿男君       田原 春次君    戸叶 里子君       渡部 一郎君    川上 貫一君       斎藤 寿夫君  出席政府委員         外務政務次官  田中 榮一君  委員外出席者         外務省欧亜局外         務参事官    岡田  晃君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         運輸省航空局参         事官      林  陽一君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 五月十八日  委員愛知揆一君及び山口敏夫辞任につき、そ  の補欠として中馬辰猪君及び辻寛一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員中馬辰猪君及び辻寛一辞任につき、その  補欠として愛知揆一君及び山口敏夫君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百二十八年十一月二十二日にパリ署名さ  れた国際博覧会に関する条約第四条を改正する  議定書締結について承認を求めるの件(条約  第一三号)  国際電気通信条約及び関係議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送  付)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ブラジル合衆国との間の条約の締  結について承認を求めるの件(条約第七号)(  参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国とニュー・ジーラン  ドとの間の条約を改正する議定書締結につい  て承認述めるの件(条約第八号)(参議院送  付)  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の領事条約締結について承認を求めるの件(  条約第二号)  航空業務に関する日本国政府シンガポール共  和国政府との間の協定締結について承認を求  めるの件(条約第三号)      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  千九百二十八年十一月二十二日にパリ署名された国際博覧会に関する条約第四条を改正する議定書の約結について承認を求めるの件、国際電気通信条約及び関係議定書の約結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国とニュー・ジランドとの間の条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件、以上四件を一括して議題といたします。     —————————————  千九百二十八年十一月二十二日パリ署名された国際博覧会に関する条約第四条を改正する議定書締結について承認を求めるの件  国際電気通信条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国ニュー・ジーランドとの間の条約を改正すを議定書締結について承認を求めるの件   〔本号(その二)に掲載〕     —————————————
  3. 福田篤泰

    福田委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。田中政務次官
  4. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいま議題となりました千九百二十八年十一月二十二日にパリ署名された国際博覧会に関する条約第四条を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  国際博覧会に関する条約は、各国が秩序のある、かつ、効果的な国際博覧会開催し及びこれに参加し得るようにするために作成されたものでありまして、国際博覧会開催及びそれへの参加を対外的には開催国及び参加国のそれぞれの政府の責任のもとに行なうこと、開催頻度及び開催期間規制すること等をその内容としております。  近年国際博覧会開催増加の傾向にあり、参加国負担が過重となるおそれがありますので、国際博覧会開催頻度規制を一そうきびしくするためにこの議定書が作成されました。  わが国は一昨年条約当事国となりまして、条約に従って昭和四十五年に日本万国博覧会を大阪に開催することを決定しましたが、今回の強化された開催頻度規制日本万国博覧会以外の今後の国際博覧会に適用されることとなりますので、日本万国博覧会への各国参加を促進するのに役立つと思われます。また、他方、将来外国開催される博覧会へのわが国参加についても、今回の改正により、わが国負担が過重とならず、その参加が容易になるものと期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に国際電気通信条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国連合員となっている国際電気通信連合基本文書である国際電気通信条約は、通常五、六年ごとに開催される全権委員会議において改正されることになっておりますが、一昨年モントルー開催された全権委員会議においては、昭和三十四年の全権委員会議で作成された条約にかわる新条約が作成されました。新条約は、連合の機構、国際電気通信業務運用等に関する事項について、従来の条約実施の経験にかんがみ、かつ、国際電気通信業務の実情に即応して、所要の改善を加えたものであります。また、モントルー全権委員会議においては、連合員間の紛争解決を円滑にするため、関係議定書として、紛争義務的解決に関する選択追加議定書が作成されました。  わが国は古くより国際電気通信連合の主要な連合員として活躍してまいりましたが、この条約及び関係議定書当事国となることにより、国際電気通信分野における国際協力に積極的に寄与することができますとともに、わが国電気通信業務伸長発展を期待することができると考えられます。  よって、ここに、この条約及び関係議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ブラジルとの間の所得に対する租税に関する二重課税回避のための条約締結について昭和四十一年八月以来ブラジル政府との間で交渉を行ないました結果、最終的合意に達し、昭和四十二年一月二十四日に東京において三木外務大臣ブラジル合衆国マガリヤンエス外務大臣との間でこの条約署名を行なった次第であります。  この条約は、本文二十八カ条からなっております。その内容は、わが国締結しているこの種の租税条約とほぼ同様でありまして、案文について、近年締結しております租税条約と同様にOECDのモデル条約案規定をできるだけ採用しております。条約内容のおもなるものは、次のとおりであります。すなわち、相手国内にある支店等恒久的施設を通じて事業を行なう場合の利得に対する相手国課税につきましては、これをその恒久的施設に帰属する部分に限るという方式によることとし、船舶航空機運用から生ずる所得につきましては、相手国において全額免税としております。また、投資所得に対する源泉地国課税の税率につきましては、親子会社間の配当、公社債等の利子及び使用料はそれぞれ一〇%をこえないものとしております。さらに、政府職員、百八十三日以内の短期滞在者、二年以内の短期滞在の教授及び教員並びに学生及び事業修習者の受け取る報酬や手当等につきましては、滞在地国において課税されないこととしております。また、二重課税回避は、それぞれの国の税法の規定に基づき、日本国及びブラジル双方において外国税額控除方式により行なうこととしております。  現在両国間の経済関係は、貿易技術輸出企業進出等の諸分野において緊密な関係を保っており、また、文化交流も盛んでありますが、この条約締結によりまして、両国間の二重課税防止の制度を通じ、経済技術及び文化の面における交流が一そう促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国ニュー・ジーランドとの条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国ニュージーランドとの間で昭和三十八年一月三十日に署名された所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための条約は、昭和三十八年一月三十日に署名され、同年四月十九日に発効いたしておりますが、政府は、これを改正する議定書締結につき昭和四十一年六月以来ニュージーランド政府との間で交渉を行ないました結果、最終的合意に達し、昭和四十二年三月二十二日にウエリントンにおいて野見山臨時代理大使ホリオーク外務大臣との間でこの議定書署名を行なった次第であります。  この議定書は、条約第五条を改正して、これまで航空機国際運輸における運用から生ずる所得に対しては相手国において全額免税とすること、また、船舶については所得に対する租税を五〇%軽減することを規定しておりましたところを、航空機のみならず、船舶についてもそれらの国際運輸における運用から生ずる所得に対して相手国において全額免税とし、また、航空機船舶国際運輸運用するニュージーランド企業に対し日本国住民税及び事業税を免除することを定めております。  現在、両国間の貿易は年々増加の一途をたどっておりますが、この議定書締結により、両国間の海運関係は、一そう活発化するものと期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上、四件につきまして、何とぞ御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 福田篤泰

    福田委員長 以上で、四件に対する提案理由説明は終わりました。  ただいま説明を聴取いたしました条約四件に対する質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 福田篤泰

    福田委員長 次に、日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の領事条約締結について承認を求めるの件、及び、航空業務に関する日本国政府シンガポール共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、両件を一括議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、日本ソ連との間の領事条約について他の委員がいろいろ御質問になると思いますので、一点だけお伺いをしたいと思います。  それは三十三条なんですけれども、この三十三条で「査証及び旅券その他これに類する書類を発給し、修正し、更新し、有効にし、及び無効にすること。」とあるわけですが、この「有効にし、」というのは何を有効にするのですか。
  8. 高島益郎

    高島説明員 これは、わが国につきましては、旅券法規定に基づきまして、出先の領事官査証及び旅券に関する事務を行なうわけでございますけれども、日本につきましては旅券法規定上無効のものを有効にするとかなんとかというふうな趣旨規定はございませんので、日本に関する限り、この部分関係ございません。この関係規定ソ連のほうの要求によって入りましたので、おそらくソ連のほうの領事事務関係いたしまして、そういう必要があるのかと存じます。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ソ連のほうの要求に従ってこれを入れた、ちょっとその辺がはっきりしないのですが……。
  10. 高島益郎

    高島説明員 この(g)の規定全体、ソ連要求をいれたというのではございませんので、この規定の書き方につきまして、ソ連要求日本のほうの要求両方かみ合わせまして、こういう規定になった次第でございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ソ連要求日本要求とをかみ合わせてこういうことにしたということですけれども、そのことはあとで伺うことにして、この文章から見て、発給したものは有効じゃないのですか。ごくしろうとの考え方として、発給したものが有効にならないのかどうかというふうな疑問を持つのですけれども……。
  12. 高島益郎

    高島説明員 日本旅券法規定上、発効したものを有効にするという趣旨規定はございませんで、この関係では「有効にし、」という文言は、日本旅券法上は実際上意味がないというふうに考えております。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本旅券法上は意味がない、しかし日本とほかの国との条約を結ぶときにはこういう文句は必要なんですね。旅券法上は必要はないけれども、他の国と条約を結ぶときには、日本の国とほかの国とにそれぞれ正文があるわけですね。日本アメリカとのときには、日本正文日本語アメリカの場合はアメリカ正文というふうになるわけです。それを対照するがゆえにこういうふうなことばを入れるのたという意味でしょうか、どういう意味でしょうか。
  14. 高島益郎

    高島説明員 旅券及び査証に関する事務につきましては、それぞれの当事国旅券法ないしそれに関連する規則をお互いに照らし合わせまして、両方で差しつかえのないような規定を作成するわけでございます。この規定も、したがいまして、日本旅券法に関する限りは、こういう趣旨文言は必要ございませんのですが、ソ連手続上こういう規定が必要だということで入ったものと了解いたします。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、日本旅券法はこれは必要ないけれども、ソ連旅券法にこういうふうなことがあって、それで必要なんで入れたということなんですね、旅券法を照らし合わせて。それはそこまでわかりました。  それで、これは日米領事条約のときもそうでしたけれども、そうすると英文日本文というのは全く同じなんですね、旅券法いかんにかかわらず。旅券法いかんにかかわらず、英文でこう書いてあるわけです。日本文もこう書くというふうになっているわけです。日米領事条約はたしかこれと同じような形だったと思います。
  16. 高島益郎

    高島説明員 先生の御質問は、日米領事条約でございますか。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日米の場合にもこれと同じような形がとってあったわけです。その場合に、日本旅券法には関係がなくとも、いまの御趣旨説明からいうならば、アメリカ旅券法関係でこれと同じ文句を入れたんだなということを了解したわけです。だから、ソ連の場合にもソ連のほうの考え方で、こういうふうな「有効にし、」という、日本旅券法では必要はないけれども入れたのですかという、そういうことを聞いたのです。
  18. 高島益郎

    高島説明員 先生の御了解のとおりだと思います。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、これは正文日本文ロシア語、そうですか。——それでちょっと伺いたいのですが、私、このことばがちょっと読めないのです。ロシア語は読めませんので、ロシア語を読んでもらったのです。そうすると、「有効にし、」ということばが、このロシア語の三十三条には見つからないのです。見つからないのに、どうして日本文だけにお入れになったのかなと思って、ちょっとふしぎに思ったものですから、この点を伺ったわけです。
  20. 岡田晃

    岡田説明員 私は、条約局じゃございませんが、ロシア語はわかりますのでお答えいたします。  このヴォズオブノブリヤーチということばは、一つのものがあるのをもう一ぺん生き返らせるとか、あるものをもう一ぺん生き返させるとか、更新するでございますね、条約で申しますと。そういうのがヴォズオブノブリヤーチ、生き返る、息が吹き返るとかそういう意味でございますので、そのことば条約上のことばで適当なことばに直すということができない。いま具体的に交渉した人間に聞いてみますと、具体的な日本語法律用語に直せないということで「更新し、有効にし、」と、そういうことば日本語で翻訳した、そういうぐあいに聞いております。ただ、このことばで申しておりますヴォズオブノブリヤーチということばは、いま申しましたように、よみがえらさせるという、したがって更新する、有効にするという——とき、たまたまロシア国内法におきまして、ヴォズオブノブリヤーチ——旅券をリニューするという規定がございますので、それを二つのことばで書きあらわした、そういう経緯でございますので、お答え申し上げます。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの御説明ですけれども、ここに、日本語にちゃんと「更新し、」ということばがあるのですよ。こっちのほうにも更新しということばがあるのですね。いまおっしゃったヴォズオブノブリヤーチというのが「更新し」でしょう。そうしたら、日本のほうは「有効にし、」ということば一つよけいに入っているわけです。そういうふうにごまかされますけれども、この文章の訳し方は、日米領事条約そっくりなんです。同じなんです。このとおりのことばなんです。いいですよ、同じでも。でも英語から書いた場合にはこうなるのです。しかしソ連語にないことばが入っているので、私は非常に疑問に思うわけです。と申しますのは、ここで「有効にし、」ということばにひっかかって、私もソ連語ができませんから、それじゃどうなっているんだろうと思って聞きにいったらば、「有効にし、」ということばはこの中にはないということを教えてもらったんです。それじゃどういうわけなんだろうということで——「更新し」というのは、もちろん日本語にもちゃんとあるんです。日米領事条約でも「更新し、」とあって、「有効にし、」もあるんです。英語ではあるんです。日米領事条約のときには、リニュー、ヴァリデイト、リボークとあるんです。ところが、ソ連語には「更新し」ということばはあるけれども、「有効にし」ということばは入っていないのですよ。だから、私どもからそういうことを申し上げてはまことに失礼ですけれども、日本語ソ連語とを正文だとするならば、やはり日本語ソ連語と同じような形で出さなければいけないんじゃないかということを考えたものですから、この点を伺った、またそれがほんとうじゃないかと思うのです。そうして、ソ連語ですと、「旅券及び査証その他これに類する書類を発給し、更新し、無効にしまた修正すること」と訳せるのですよ、この正文から見ると。ところが、これが日米領事条約文句と同じにここに書いてあるというのは、ちょっとおざなり過ぎるんじゃないかと私は感じたものですから、その辺のことを伺いたいと思った。たとえばもしもソ連語正文であるとすれば、これと同じに書くとするならば、こういうふうに「査証及び旅券」とは出てこないはずです。「旅券及び査証その他」となると思うのです、ソ連語のほうの文章から見ると。こっちのほうのこの条項というのは、日米領事条約と全く同じ文句なんです。日米領事条約は、英語はこのとおりに書いてあるんです。英語を調べてみましたら。
  22. 高島益郎

    高島説明員 実は日ソ領事条約交渉するにあたりまして、わがほうの原案となりましたのは、日本が戦後締結いたしました日米領事条約及び日英領事条約規定もとにいたしまして、これにソ連特殊性を加味した提案をしたわけでございます。この関係部分領事官の職務に関する部分につきましては、日米日英領事条約とも、先生の御指摘のとおり「査証及び旅券その他これに類する書類を、発給し、修正し、更新し、有効にし、及び無効にすること。」全く同じ文章でございます。ソ連のほうは、この提案に対しまして全然異存はなくて、ただそれに対しますロシア語につきましていろいろ苦心した結果、こういうことになった次第でございますけれども、ロシア語日本語に訳したということでは必ずしもございませんで、私、先ほど申しました点多少修正いたしますけれども、日本側もともと提案に対しますロシア語をつくりまして、それを最終的にソ連側と突き合わせまして、ソ連側はそういう飜訳で差しつかえないという合意を得た次第であります。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの説明は、私はちょっと了解に苦しむ。というのは、正文というのは、こっちで見るときはこっちで見る、こっちで見るときはこっちということですね。日本人の場合にはソ連語がわからないから日本語で見る。ソ連人の場合は日本語がわからないからソ連語で見る。しかし何か問題が起きなければいいですよ。起きて、突き合わせたときに、同じでなければならないはずです、それぞれ正文にするのですから。私はこれはこだわりませんけれども、今後においてこういう問題が出てくると思うのです。はっきり同じにしておかなければならない。日本語ロシア語正文であるという場合には、私は同じでなければいけないと思う。それをわざわざ、しかも日本旅券法には「有効にし、」ということばがないのだ。ないのだけれども、ソ連側のほうのことを考えて入れたのだというのですけれども、そこにもまたいまのおっしゃることと矛盾をしてくるのじゃないか。もしもソ連がそういうことを自分の立場で要求するなら、ソ連語の中にも入れるべきじゃないのですか。私、そこがどうしても納得できないのです。それにこだわるわけじゃありませんけれども、もしも間違っているのだったら、これはうかつでしたというふうにはっきりおっしゃるなり何なりしたらいいと思うのですよ。しかし、これでも向こうが納得したのだからいいといえばそれまでですけれども、そういうものじゃないのじゃないですか。正文というものはそういういいかげんなものでいいのですか。条約の中にうたわれた正文にするという意味は……。
  24. 高島益郎

    高島説明員 先ほど私、「有効にし、」という文言につきまして、ソ連側旅券査証に関する手続上必要があってソ連側要求で入れたというふうな御回答をいたしました。これは私の間違いでございます。もともと、先ほど申しましたとおり、日米日英領事条約規定もとにした提案をそのままソ連側がのんだ結果、こういう規定になった次第でございます。飜訳につきましては、確かに先生のおっしゃるとおり、一語一語つき合わせましたところによりますと問題点はあろうかと思いますけれども、最終的には、日ソ両方の側で、交渉当事者がそれでよろしいということで了解した結果でございますので、御了承いただきたいと存じます。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はこれ以上申しませんけれども、日ソで話し合ってわかったからいいといえばそれまでですけれども、やはりことばの違った国同士ですから、どういう問題が起きるかもわかりませんし、正文は何語と何語とするというからには、正文同士でつき合わせた条約でなければならないのじゃないかという理解を私はいままでしてまいりました。しかし、話し合いだけしていれば、そうでもなくてもいいのだという了解がいま初めてわかったわけです。ですから、私の考えが間違っていましたから変えますけれども、そういう点をやはりはっきりさせておいていただかないと、ちよっと困ると思います。
  26. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいま高島参事官からの事務的な説明で大体御了解は得ていると思うのですが、御説のとおり、やはり両国の今後のいろいろな行動なり行為につきまして紛争が将来起こったときに、その解決根拠になるものは、やはり条文上の正文根拠になると思います。そういう場合において、将来、そうしたことの一語一句についてお互いの解釈の相違によって紛争解決できないというようなことになると、これは非常に憂慮すべき事態にもなりますので、今後こうした条約締結につきましては、さらにひとつ御趣旨の点を体しまして、こうしたことのないように今後十分注意をしていきたいと考えております。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点だけ。さっき、日本側旅券法にはこういう規定がないけれども、ソ連のほうの要望もあってというふうなお話で、それをまた取り消されたわけです。もしソ連のほうもそういうふうな旅券法の中の規定がないとするならば、これは要らない文句じゃないのですか。これは日米領事条約日英領事条約英文日本文英文をそっくり訳した日本の文がこのままここへ載っているのです。むしろソ連文と合わせて違うというので、ですから、もしこれが要らないならば、ソ連語のほうで要らないのですから、これも当然要らない文章じゃないのですか。要らないことばじゃないのですか。やっぱりこれは入れておいたほうがいいとお思いになるのですか。私、ちょっとその辺ははっきりさしておいていただきませんと、またこういう問題でもあったときに、解釈の違いということが出てきますから、はっきりさしていただきたいというのが一つ。それからもう一つは、やっぱり正文というものは、話し合いさえつけばどっちでもいいのだということばだけはやめていただきたいと思う。正文というのは、やっぱり正しく、どっちのことばもそのとおりに扱わなければいけないと思うのです。ですからどっちに解釈しても、話し合いさえつけば、正文ことばが違ってもいいのだという解釈だけは、私は間違いじゃないかと思いますので、この点だけをはっきりさしていただきたい。
  28. 高島益郎

    高島説明員 「有効にし、」ということばにつきまして、ソ連旅券査証手続上はたしてそれが必要かどうかという点につきまして、実は私存じませんですが、先ほどから言いますとおり、日本側旅券法規定上は、「有効にし、」という規定は必要ございません。  ただ、おことばロシア語日本語の問題につきましては、確かに先生のおっしゃるとおりでございますけれども、ソ連側ことばに「有効にし、」ということを適当に訳すことばがどうしてもないというので、最終的に一つことばでもって、「更新し、有効にし、」という日本語で差しつかえないというふうに実は了解したのでございます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 おかしいな。おかしいけれども、いいです。それ以上議論しません。
  30. 福田篤泰

    福田委員長 堂森芳夫君。
  31. 堂森芳夫

    堂森委員 日本国とソビエト社会主義共和国連邦との間の領事条約につきまして、二、三の点につきまして質問を試みたいと思うのであります。  政府説明によりますと、この日本国とソビエト社会主義共和国連邦との間の領事条約は、すでに発効しておる日本アメリカあるいは日本とイギリスとの間の領事条約とほぼ同じものである、こう言っておるわけでありますが、少しくその内容を調べてみますと、やはりかなりな点において相違があるということが明らかになるわけであります。逐次この点につきまして質問を試みてみたいと思うのであります。  第一は、第三条に、「派遣国は、館長を任命するに先だち、外交上の経路を通じて、その任命について接受国の同意を得なければならない。」すなわちアグレマン方式規定しておると思うのであります。また第十条でありますが、「接受国は、いつでも、理由を示さないで、派遣国に対し、領事官又は領事館職員である者が受け入れ難い者であることを外交上の経路を通じて通告することができる。」すなわちペルソナ・ノン・グラータをここに規定しておる、こういうことでありまして、これは米英との間の領事条約にはないのであります。どういう理由で今回の領事条約だけにこういう規定が設けられたのであるか、その理由を説明してもらいたい、こう思うわけであります。
  32. 高島益郎

    高島説明員 日ソ領事条約は、全体といたしまして、確かに先生のおっしゃるとおり、日米ないし日英領事条約とは違っておる点が多々ございます。ただ、わがほうが交渉するにあたりまして、基本的態度といたしましては、日米日英領事条約を基本といたしまして、それにソ連の社会体制の特殊性を考慮した規定を入れたことでございます。特にソ連領事官につきましての基本的考え方が違いまして、領事官と外交官との地位についてあまり差を設けたくない、つまり外交官並みの待遇を与えるべきであるという態度を終始徹底いたしまして、戦後のソ連アメリカ及びイギリスと結びました領事条約におきましても、その点を十分に条文のうちに反映しておりまして、米英とも不承不承これをのんだ次第でございます。したがって、わがほうといたしましても、ソ連のそういう特殊な主張を考慮にいれ、かつまた、他面日本の出先の領事官もそれに応じて外交官並みの待遇を受ける次第でございますので、日本領事官保護という観点からこれを承諾した次第でございます。  先生の御指摘の第三条は、確かに大使の任命に先立って行なういわゆるアグレマン方式と同じでございます。それから第十条のペルソナ・ノン・グラータに類する規定も、大使館におきます大使並びにその他の外交官の場合と全く同様の規定でございます。ただ、三条の規定に類するような規定日米、日英にはございませんけれども、第十条に類するような規定につきましては、これと全く同じではございませんけれども、ないわけではございません。ただしかし、そのかわり正当な理由を示さなければならない次第でございます。したがって、その点は多少違いますけれども、理由さえ示せば、領事官であっても日本から出て行ってもらうということは可能だと考えております。
  33. 堂森芳夫

    堂森委員 それはいま御答弁のように、適当でないと考えた人に出ていってもらう、それはお互いにそうだと思うのでありますが、私は、ソビエト社会主義共和国連邦の国情というものがこういうふうにしたのであろうということは、もちろん考えておるわけでありますが、それで理由はわかったわけであります。  そこで次の問題でありますが、第九条ですね、第九条に、「派遣国は、自国の国民であって、すでに接受国にあるもの又は接受国に向かって旅行中であるものを領事官又は領事館職員として任命することができない。」と、——後ほどにこれに例外はあるのですが、こういうような規定、これは米英との間の領事条約等にはないわけですが、こういうような事項を加えたということは、どちら側が主として主張してきたことでございますか、その点答弁を願っておきたい、こう思うわけであります。
  34. 高島益郎

    高島説明員 御指摘の第九条の規定は、わがほうの希望で入れた規定でございます。この趣旨は、領事官及び領事館職員は、この条約によりましていろいろな特権を持っております。したがいまして、領事官または領事館職員に任命すれば、刑事訴追中の者であっても、特権によってそれが免除されるということになると非常にぐあいが悪いので、現に、たとえば日本におるソ連人領事官に至急任命して、その任命することによって裁判管轄権を免除するということになりまして、いろいろ刑事訴追上問題があるということから、そういう者は領事官または領事館職員に任命することができない。ただし、現に大使館の職員あるいは領事館の職員である者につきましては、これは現にそういう特権を持っておるものでございますから差しつかえないというので、例外にした次第でございます。
  35. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、日本側の主張ですね。  これはもちろん、向こうからもそういう主張はあったわけですね。その点もう少し詳しく……。
  36. 高島益郎

    高島説明員 わがほうの主張に対しまして、すでにソ連は、アメリカ及びイギリスと結んでおります領事条約でこの点を認めておりますので、向こうが合意した次第でございます。
  37. 堂森芳夫

    堂森委員 よくわかりました。  そこで次は、領事館の管轄区域の問題であります。米英との間の領事条約を読みますと、管轄区域は、もちろん接受国が異議申し立てができますし、派遣国の希望によって管轄区域がきまっておる、こういうふうになっておりますが、日ソ両国領事条約を読みますと、第二条の二項ですか、「領事館の設置の場所及び領事管轄区域の範囲は、派遣国と接受国との合意により決定される。」と、かなり違っているわけです。もちろん、これは合意があればできるということでは同じ意味でありますが、かなり違っておると思うのであります。そこで、両国の間に合意に達した管轄区域というのは、私は聞いて知っているのですが、どういうことになっておるわけですか。今度近く領事館が設置される場合、どこどこになったわけですか。
  38. 岡田晃

    岡田説明員 まだ公表の段階でございませんが、ごく最近に公文を交換することになっておりまして、札幌市内とナホトカ市内を管轄区域とするということになっております。日時はあれですが、ごく近い期間に公表することになっております。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員 今回設置される両国の領事館はナホトカと札幌である、こういう御答弁ですが、その管轄区域はどういう合意に達しておりますか。
  40. 岡田晃

    岡田説明員 ただいま申し上げましたように、札幌市内とナホトカ市内というものを管轄区域に考えております。
  41. 堂森芳夫

    堂森委員 それに相違ないわけですね、市内に。
  42. 岡田晃

    岡田説明員 はい、市内に……。
  43. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、非常に疑問が出てきますのは、第二十六条に、「領事官及び領事館職員は、国の安全上の理由により立入りを禁止し又は規制している地域に関する接受国の法令に従うことを条件として、その任務を遂行するため、領事管轄区域内において自由に移動し及び旅行することが認められるものとする。」こうなっておるわけですね。そうすると、札幌に置かれたソビエト社会主義共和国の領事館の領事官及び職員の行動範囲、自由に行動できる範囲、あるいはナホトカに置かれた日本の領事館の領事官あるいは職員の行動範囲というものは、厳重に市内だけですか、どうなんです。
  44. 高島益郎

    高島説明員 領事条約上権利として保障される自由な行動範囲は、その領事館の管轄区域の範囲内だけであります。したがいまして、わがほうの総領事館の館員の自由に行動し得る法律上の権利としての範囲は、ナホトカ市内だけであります。  それ以外の範囲につきましては、ソ連がどのような態度をとりますか、これからの交渉できまるわけであります。
  45. 堂森芳夫

    堂森委員 たとえば札幌へ来た向こうの領事官——領事官のいろんな職務を規定しているわけですね。たとえば第三十八条ですか、これを読みますと、「領事官は、その領事管轄区域内の港その他投錨地に入る派遣国の船舶に対して、すべての協力と援助を与える権利を有する。」こういうことになっていますね。それでは、函館に入ったソ連の船に、札幌におる向こうの領事官あるいは職員は、いろんな協力を与えようとしても、行くことができるんですか、どうなんです。管轄区域は市内だけというと、どういうことになりますか。
  46. 高島益郎

    高島説明員 日ソ領事条約の第二十九条第二項に規定がございまして、「領事官は、接受国の当局の同意を得て、その領事管轄区域外において職務を遂行することができる。」という規定、これは実はソ連アメリカ及びイギリスと結んだ領事条約にはなかったのでございますけれども、わがほうは、いま先生の御指摘のような事態をいろいろ心配いたしまして、管轄区域が非常に狭く限定された場合に領事官の行動範囲が制限されることをおそれて、この種の規定を強く希望した次第でございます。その結果、ソ連の同意を得て、こういう趣旨規定を置いたわけでございます。同意を得さえすれば、管轄区域外においてもその職務を遂行することが可能になるわけでございます。
  47. 堂森芳夫

    堂森委員 職務上はそういうふうにできるとしましても、たとえばナホトカへ行っておる日本領事官あるいは職員、あるいは札幌に来ておる向こうの領事官あるいは職員等が、たとえば日曜日にドライブをしよう、そして札幌市街から出るとか、そういう場合、一々許可をもらうのですか、あるいは自由に出ていいのですか、どういうことなんですか、そういう場合。
  48. 高島益郎

    高島説明員 これは、先生御指摘の問題は、日ソ領事条約上の問題ではございませんで、領事条約上の問題といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、管轄区域内においては、法律上の権利として行動の自由がある、そういう以外の区域につきましては、従来のソ連の外交官の日本におきます旅行制限等の例から考えまして、もし日本領事官ソ連でそういう行動の自由を制限されるということになった場合には、これに対抗する措置といたしまして、わが方も、ソ連側に、そういう慣習をやめるまで同様な制限を課さざるを得ないというふうに考えております。したがって、結果的には、在日外交官と在日領事官との間では同様な待遇になる可能性はあると思います。まだ現在のところそういう取りきめをしておるわけではございません。
  49. 堂森芳夫

    堂森委員 そういうように管轄区域が非常に狭いということが、今後の、たとえばナホトカにできる日本の領事館にしましても、あるいは札幌にできる向こうの領事館にしましても、やはり多くの問題が出てくるのではないか、こういうふうに私は考えられるのであります。これはかなりめんどうな事柄も起こしてくるという可能性は、考える必要はないというわけにはいかぬのじゃないか、こういうふうに思うわけでありまして、領事管轄区域というものをこういうように狭く制限しておる。米、英の場合とは違う。もちろん向こうの国情の相違もあるという説明でありますから、理解はするわけですが、そういう意味でまあ制限されておる。こういうふうな狭い管轄区域にするということは、これは交渉の過程で、どちらのほうが強く望んだのですか。どちらがそういう主張をやったのですか。両方ともそういうことになったのか。その点をひとつ聞いておきたいと思います。
  50. 岡田晃

    岡田説明員 ただいま先生の御指摘の管轄区域の問題でございますが、ソ連側は、沿海州、シベリア、その付近、現在日本の漁船などが難波いたしまして領事が活動しなければならないと考えられますような地域は、すべて、ザクリートと申しまして、禁止地域にいたしております。たとえ外交官でありましても行動の自由を認めない、一本一本許可をとるというようなことを、国内法上義務づけております。ただいま、その条約にも、高島参事官が御説明いたしましたように、たとえばモスクワにおります日本の外交官でも、市中心から四十キロをこえる旅行をする場合には許可をとらなければいけないということになっております。したがいまして、私どもは、できれば広い地域で活動できるということが望ましい次第ではございますけれども、現実の問題として禁止地域でございまして、行動の自由がとれないもので、一本一本許可をとらなければならないという実情でございます。  それで、この条約の何条かにもたしか御審議いただいておりますように、ございますけれども、地域外で領事事務を行なう場合には、一本一本国内法上の規定に従ってやらなければならないということがございますので、国内法上のたてまえの均等性を考えた場合には、やはりわれわれといたしましては、ナホトカ市内は自由に領事事務の活動ができる、札幌市内は自由に領事事務の活動ができる、それ以外の場合にはそれぞれの国内法によってやるということの均等性を考えざるを得ない、そういう立場になって、こういう管轄区域をきめた次第でございます。
  51. 堂森芳夫

    堂森委員 そういう答弁のような事情のようでありますが、接受国の同意を得て管轄区域外に出ていって任務を遂行する、そういうことですが、そういう手続をとっておると、急場に問に合うような職務の遂行ができない場合とか、いろいろな場合が出てくるということは、当然考えられるのじゃないでしょうか。いかがでしょうか、そういう心配はないですか。私は非常にあると思うのですがね。
  52. 岡田晃

    岡田説明員 急場の場合も十分考えておるわけでございますが、現実の問題として、管轄区域を広げてみたところで、この沿海州その他は国内法が優先いたしますので、許可条項になっておりますので、活動できないわけでございます。  ただいま私どもは、そういう急場のことも考えまして、昨年六月イシコフ漁業相が参りましたときに、海難救助協定の改定の提案をいたしまして、現在やっております小樽−ウラジオストックの通信網をさらに増強いたしまして、稚内−ホルムスクその他の地域の連絡を直接行なうことによって、千島その他で遭難しておる漁船の救助を早からしめる、その他の措置によってこれを救助するということを考えておるわけでございます。
  53. 堂森芳夫

    堂森委員 それは私は、あなたがおっしゃるように、領事官の職務遂行にはなかなかいろいろな問題が起きてくるということは、やっぱり考えなければならぬ問題である、こう思うわけでありますが、そのために議定書とか交換公文があるわけで、これについてはまた後ほどお聞きしたいと思っております。  問題をさらに進めていきまして、第十五条の「領事館の目的のために使用される土地、建物及び建物の一部並びに領事官の住居は、不可侵とする。」こうなっておるわけですね。米、英との領事条約と、この点が違っておると思うのです。領事官の住居をも不可侵であるというふうにしておるのですが、これはどういう理由でございますか、この点をまず聞いてみたいと思います。
  54. 高島益郎

    高島説明員 先生御指摘の第十五条で領事官の住居まで不可侵権を及ぼしましたのは、確かに日英、日米領事条約にない規定でございます。これは、先ほど申しましたとおり、ソ連側が、領事官の地位につきまして、外交官と同様な地位を非常に強く要求した。その結果、通常は領事館の館長だけに住居不可侵を認めておりますのを、ここでは、領事館の館長だけではなくて、領事官の住居にまで不可侵権を及ぼした次第でございます。この点は確かに、われわれが通常領事条約締結する際の領事特権としては非常に広いわけであります。
  55. 堂森芳夫

    堂森委員 まあこれは外交官としての特権を与えるような領事という制度に対する扱い方が違うのだ、こういう説明でございますから、そういうことになったのでありましょう。さらに、第十八条にもかなり違った点があると思うのでありますが、これは私も質問せずに、同様の理由であろう、こう思います。  そこで、次の問題でありますが、交換公文におきまして、北太平洋において逮捕された日本国民の保護について触れておりますが、北方水域における安全操業に関する交渉は、その後どうなってきておるのか、その点詳細に、これは政務次官がいらっしゃいますから、あるいは御説明願えるならばとこう思うわけでありますが、いかがでございますか。
  56. 岡田晃

    岡田説明員 ただいまの北方水域におきます安全操業の問題は、昨年の六月にイシコフ漁業相が参りましたときに、かつて赤城代議士が農林大臣であらせられました当時に提案されました赤城試案というものを何とか実現してくれるようにということで、外務大臣及び農林大臣がイシコフ漁業相と交渉をされたわけでございます。しかしながら、その当時、イシコフ大臣は、北方水域における漁業を認めるかわりに、何らかの、相互主義に基づく代償というものが与えられなければ、なかなかソ連の国内のいろいろの官庁との関係もあって、容易ではないということで会談が終始いたしまして、そしてその後、イシコフ漁業相は北海道根室に参りまして、いろいろ実情を調査し、それで一たん帰国いたしたわけであります。その後七月になりまして、グロムイコ外務大臣が来日いたしまして、当時の椎名大臣に対しまして、いま一度安全操業の問題を提案されました際に、イシコフ漁業相が言った相互主義というものに対して、日本はどういうような対案があるかというようなことをグロムイコ外相から質問があったわけです。  いま少し具体的に申し上げますと、イシコフ漁業相は、はっきりした法案の名前を明示はいたしませんでしたけれども、日本の港に寄港した船をリペアリングしたり、あるいは、沖積みをして、荷物を積みかえてソ連へ持って返えるわけでございますが、沖積みをしたりする、そういう便宜を与えられたい、いわゆる寄港の権利を与えてもらいたいということを要請したわけでございますが、わが国内において、業界及び水産庁、その他政府部内において十分検討いたしましたところ、寄港の問題を直ちに認めるということは、韓国その他の問題もございまして、非常に困難があるということで、グロムイコ外相が椎名外務大臣と会われましたときにも、椎名外務大臣からは結局この問題に対してはっきりした回答をなさらなかったわけでございます。したがいまして、この問題はそのままの形で今日に引き継いでおるわけでございます。その後、いろいろ新聞等にも出ておりますけれども、政府として具体的な措置をとったことはその後はございません。それが現状でございます。
  57. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますると、北方の水域における安全操業という問題は、何も新しい進展はない、こういうことですね。
  58. 岡田晃

    岡田説明員 そうでございます。
  59. 堂森芳夫

    堂森委員 これはやはり政府の大きな怠慢だと思います。まあ、あなたに言っているわけじゃないのですが……。  そこで、領事条約及びその交換公文、あるいは議定書、こういうふうに通読しますると、この議定書には特に重要な部分が、われわれの国から見ましても、また先方から見ましても、基本的な人権と申しますか、そういうものを保護する上においても、私はやはり、条約がなかったときと比較いたしますると大きな意味がある、こう思います。  また、従来非常に不安であった北方水域における領海侵犯を理由として、逮捕、拘禁されておった漁船の乗り組み員の問題等につきまして、一つの大きな新しいものが出てきておることは、この条約の大きな意義の一つのものであろうと思うのであります。しかし、条約にそういうものが規定されたとしても、あるいは議定書、あるいは交換公文にそういうものがうたわれておるにしましても、やはり今後両国政府が、特に日本政府がその議定書、あるいは交換公文、条約と不可分のこうした重要な内容がほんとうに実行されるような努力を一そうしていくということを私は政府に要望しまして、以上の質問を終わりたい、こう思うわけであります。
  60. 福田篤泰

    福田委員長 田原春次君。
  61. 田原春次

    ○田原委員 堂森委員質問に引き続きまして、関連して二、三お尋ねいたしたいと思います。  第一は、領事条約が批准されて確定された場合に、最初に、日本側ではナホトカに、ソ連側では札幌に領事館ができるだろうということは、いま話を聞きました。その第二次、第三次の御計画は持っていないか。たとえば、ソ連側には、オデッサに年に六航海以上日本から貨物船が行っております。オデッサは、御承知のとおりモスクワから非常に遠いし、また、ことばができない船員が上陸いたしまして、事故もありましたし、あるいは荷物、通関その他のこともある。昨年一年でも、私の知っているもので、ナホトカ経由ソビエトに行った者は約三万人ある。ことしももう始まっておりまして、ふえております。そうしますと、たとえばナホトカに領事館ができたからといって、一々許可をとって、そこからオデッサに行くなんて、実際できやしません。オデッサに事故があった場合にはモスクワから行くことになる。これもたいへん遠いです。したがって、第二次の計画を持つべきじゃないか。第二次の交換ですね。それから続いて第三次。少なくとも、ソ連側とのいろいろな通商航海条約、旅行者の保護、それから漁船の問題等も考えれば、ナホトカだけでは足らぬと思いますから、続いて考えておくべきではないかと思いますが、そういうことについて腹案がありますか。
  62. 岡田晃

    岡田説明員 第二次の総領事館に関しましては、ただいま国会において先生方に御審議をいただいております予算案の中に、ハバロフスクに総領事館を設置することを考慮いたしております。これは予算を御審議、御可決いただきましたならば、そういう方向になっていくのではないかと思います。  第三次につきましては、まだ、現在の段階におきましては、どこにどうするというところまでは考えておりません。  オデッサに関しましては、ただいま御指摘がございましたとおりに、ナホトカから参りますには非常に遠いわけでございますし、先ほど来私どものほうで御説明いたしましたとおりに、ナホトカの管轄区域はナホトカ市内でございますので、当然モスクワの大使館がこれをカバーするということになります。私ども在勤のときにも、オデッサで事件が起きましたときに、モスクワに在勤しているわれわれ館員が直ちにオデッサに行って、これの救助に当たるということをやった経験もございます。当然、そういうことで、モスクワの大使館がカバーするということになっております。  それから、第三次をどこに置くかということにつきましては、現在のところではまだ決定いたしておりません。そういうことであります。
  63. 田原春次

    ○田原委員 その、第二次をハバロフスクにつくった場合、日本側ではどこを提供するつもりでございますか。ソ連側からおそらく第二次の要求が出ると思いますが、こちらはどこを提供するつもりですか。
  64. 岡田晃

    岡田説明員 領事館をどこに設置するかということは、主として領事館を置く国の選択権に属することでございますので、もちろん私どもとしては、ソ連側がたぶんこの地域を、この都市をいってくるであろうというところを一、二想像いたしておる都市はございますけれども、先回、ナホトカ及び札幌の領事館を相互に設置することの話し合いをいたしましたときに、この次の総領事館、すなわちハバロフスクその他ソ連側の総領事館というのを一括して話し合おうといたしましたけれども、ソ連側は、この問題は将来の問題であるので、将来そういう時期が来た場合に日本側と具体的に話し合いをしたいということで、彼らの意図を明らかにしなかったわけでございます。したがいまして、ソ連側の公式の意見の表明はまだないというのが実情でございます。
  65. 田原春次

    ○田原委員 ソ連側の公式の意見の開陳はないにいたしましても、話し合いで大体の空気はわからぬでしょうか。われわれしろうとから考えますと、一応想像されるのは、ソ連船の出入等から見て、新潟、大阪、門司等ではないかと思いますが、そういうことについての用意はしておりませんのでしょうか。
  66. 岡田晃

    岡田説明員 私ども大体ただいま先生の御指摘の諸地域ではなかろうかと想像はいたしておりますが、そのための準備は、一応内々各省との間には話し合いは、準備として非公式ではございますが、いたしております。
  67. 田原春次

    ○田原委員 第二点は、領事以外の者を話し合いによって駐在させることはどうであろうかという点であります。具体的に言いますと、ナホトカに領事館ができまして何人か領事が出るといたしましても、とうてい毎日毎日出入りする船等の出迎えや連絡は不可能だと思うのですね、人間的に。  西ヨーロッパのほうは、アメリカもそうですが、主要飛行場には日本から旅行業者、たとえば日本交通公社であるとか、あるいはそのほかの旅行案内業者が一飛行場に一人くらいおりまして、ことば関係、荷物の関係、あるいは次の飛行機の発着の待ち合いの関係等、フリーサービスで親切にやっておりますね。でありますから、領事の交換に続くものは、ひんぱんに日本人の旅行者の出入りするところには、やはり日本の旅行業者が一定期間を限ってでも駐在する必要はないか。モスクワでも同様です。これはたいへん大使館は人手不足で困っております。インツーリストの通訳はつきますけれども、やはりこまかい点につきましては、日本の旅行案内業者がおったほうが便利だと思います。だからそういう形でこれから進められて、もちろんこれは相互主義ということになるかもしれませんが、領事館の設置場所には、民間の業者を一定条件——滞在期限とか旅行区域とか事務所ということは別ですけれども、そういうものは別といたしまして、協定なり話し合いをする必要があると思うのですが、御用意がありますか。また、こういうことそのものに対して、外務省側の考えはどうであるか。
  68. 岡田晃

    岡田説明員 ただいま御指摘のとおりに、旅行業者を常駐させることができますれば非常に便利でございます。大使館の館員の仕事は非常に多く、飛行場その他で便宜供与のためにさかれるわけでございますが、現在東京−モスクワの飛行機の直通路線が開通いたしまして、日航の職員が五名モスクワに駐在することになりました。今回なったわけでございます。これはただいま先生御指摘のとおり、相互主義でございまして、当然アエロフロートもこちらに駐在するということになると思います。もちろんナホトカその他の地域につきましても、旅行がひんぱんになりますと当然そういうことも起こるかもしれませんが、これは両国間の話し合いによることでありまして、急速にこれが実現するかどうかということは、いまのところはまだわかりません。できれば、そういうことができますれば、大使館の事務の軽減にもなりますし、われわれとしても便利であると考えております。
  69. 田原春次

    ○田原委員 モスクワに日本航空から行くことは当然だと思うのですけれども、ナホトカは最初に領事館ができるのであるから、船で行くほうが学生や旅行者は数が多いのと、したがって、これはいろいろな問題があると思うのです。したがって、相互主義でいくならば、進んで、日本航空からでなくて、船会社の代理人にするか、旅行案内業者がナホトカにおるべきじゃないか。これは私の意見ですが、これに対してどういうふうにお考えになりますか。
  70. 岡田晃

    岡田説明員 ナホトカの港に入ります船は、御存じのように、バイカル号とかそういう船で参りまして、そこからすぐに汽車に乗ってハバロフスクへ立てるようになっておりますので、もちろんそこでいろいろ便宜供与をしなければならない事態もないわけではございませんけれども、原則として、いままで支障なくナホトカから汽車に乗ってハバロフスクに立っているわけでございます。これからある程度の館員が参るわけでございますが、館員が一応全力を尽くして便宜供与をやってみまして、それでもなお非常に不便であるというような事態が参りますれば、あるいは船会社の駐在員があちらに駐在することの事態が起こるかもしれませんが、今日の段階においては、まだ総領事館が開かれておらないわけでございますので、総領事館が開かれて、現実に館員が赴任しまして、便宜供与その他いろいろな館務をやってもらいまして、その結果を見て、その結果から判断したい、こういうぐあいに考えております。
  71. 田原春次

    ○田原委員 これは意見ですけれども、いままでずいぶん事故があったのです。私は前後五、六回行っておりますが、幸いにしてわれわれ議員クラスが行きますと、インツーリストの有料案内人がつきますけれども、それでも荷物であるとか、いまあなたがおっしゃったように、午後五時ごろナホトカに船が着いて、午後八時過ぎにハバロフスク行きの汽車が出るのですが、その間が問題なんです。領事館では夜は勤務しないでしょうし、通関それから金の両がえあるいは荷物の世話というように、ハバロフスク行きの汽車に乗るまで世話しなければいかぬ。これにはやはり相当の謝礼をしますとインツーリストはつきますけれども、それを日本側でやってはどうかということなんですが、これは意見ですから……。いままで総領事館がないのに、今度新たにできるのですからかなり便利だと思いますが、それはお客は単なる学生が五人、三人と行くのが多いのですから、そういう場合に事故が起きないように、やはり話し合いをいたしまして、インツーリストと同じようにお世話をするとか、あるいは山下新日本汽船の駐在員をふやすとか、こういう点を考えてみたらどうですか。
  72. 岡田晃

    岡田説明員 よく研究してみます。
  73. 田原春次

    ○田原委員 ではこれで終わります。
  74. 福田篤泰

    福田委員長 穗積七郎君。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 前の質問者がいろいろな点についてすでにお尋ねいたしましたから、補足いたしまして残った分だけ簡単に質問いたしますが、質問に入ります前に委員長にお尋ねしますけれども、きょうの時間の予定はどうなっておりますか、政務次官やその他の方の……。
  76. 福田篤泰

    福田委員長 別に特に予定いたしておりません。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 最初にお尋ねいたしますのは、領事条約は、単に経済だけではありませんけれども、両国経済交流がバックグラウンドになっておることは言うまでもないことですね。そこで本来丁寧に審議をすれば、現在並びに将来における日ソ経済交流計画の政府側の構想というものをまず伺う必要があると思うのです。特に最近になりまして、ソビエト経済開発、特にシベリヤ地区の経済開発について、わがほうと長期的な計画を進めてみたらどうであろうという動きも、御承知のとおり、財界から相当積極的に出かかっておるわけですね。それらの問題は、きょうは関連すればお尋ねすべきでありますけれども、他の機会にお尋ねすることにして、最初にお尋ねいたしたいのは、現在行なわれておる両国経済交流お互いの窓口になっておる点——先ほど田原委員からは、ナホトカのみならずオデッサもあるというふうにおっしゃいましたが、私もその点にちょっと触れてお尋ねするわけです。オデッサに限りませんよ。そこで現在の日ソ間の経済交流あるいは人事の往来の、飛行機以外の主要な窓口は相互にどこどこになっておりますか。出入の件数ないし現在の出入りの取り扱い量等、大体わかっておるはずだと思うのです。それをわがほうの港、相手国側の港の大体の実情をお示しいただきたいのであります。
  78. 岡田晃

    岡田説明員 貨物の量及び人間の量、その他いろいろ分けてお答えしなければならないと思いますが、貨物の量につきましては手元に資料を持っておりませんので、もしできれば大至急取り寄せてあれいたしますが、人間の往復に関しましては、昨年約一万人程度が日本からソ連に行っております。大部分がナホトカ−横浜ラインを使っております。オデッサのラインは、これはトランパーでございまして、貨物が主でございます。人間の往復はほとんどございません。トン数その他に関しましては、ちょっといま貨物の往復量につきましては手元に資料がございませんので、もし必要ならば大至急取り寄せてお答えいたします。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 日本側は横浜が圧倒的多数を占めておりますが、そのほかの港ではどういう順になっておりますか。正確でなくていいです。正確な数字は、それじゃ、この次までに文書で委員会へ提出していただいてけっこうですけれども、御記憶の程度でいいですから……。
  80. 岡田晃

    岡田説明員 昨年新潟から一隻特別仕立ての船を出したということも聞いておりますけれども、これはレギュラーラインではございませんので、正確には記憶いたしておりませんが、至急調べてみたいと思います。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 私ども民間で承知しておるところでも、相手国から日本側へ輸入するものをおろしておる港、あるいは荷積みをしておる港というものは相当たくさんあるわけですね。必ずしも札幌地区だけではないわけですね。それをちょっと、御記憶程度でいいですから、どこどこがどの程度あるか、あらましでけっこうです。
  82. 岡田晃

    岡田説明員 ただいま私が申し上げましたのは、物の移動というのを記憶しておりませんので、あとで申し上げますと申したのはそのことでございますが、とりあえず人の往来について申し上げたわけでございます。いま御指摘のように、物の移動の港というものもばく然とした記憶だけでもいいからとおっしゃいますならば、これは、一番多いのは何と申しましてもシベリアの木材でございまして、これは小樽とか函館とか、それから裏日本側の港に相当その他にもあるだろうと思います。それから漁獲物もございますし、それから石油はもちろんナホトカから新潟にも入ってきております。これは、物の移動のことになりますと、相当いろんな港にいろんな船がトランパーの形で入ってきておると思います。あまりはっきりした数字を持っておりませんので、あとでまとめて数字を出したいと思います。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 いま私がなぜこういうことを質問するかというと、意地悪く資料を出せとかなんとかいうことを言うのではないのです。高島参事官岡田事官も知り合いの間柄だし、両国経済的利益、両国の友好発展のためということでは、皆さんとわれわれとは共通の目的を持っておるわけですから、そういう意味でお尋ねするのですから、御存じないことは次の答弁に保留していただいてけっこうですけれども、実は、日ソ間の経済交流は、現在は量からいくと、私どもの知っているところでは木材が主要第一の地位を占めておるように思いますが、やがてシベリア開発が進み、日本の重化学工業の生産が非常な飽和点に達してきておる、しかも自由主義諸国との貿易の協力の反面にひどい競争も始まっておる、そういうふうに見ますと、特にこの領事条約に関連をして外務省がぜひ検討しておかなければならない点は、日ソ両国経済的利益に合致するものでなければならぬ、そのためには、外務省は、日本経済を、木材だけを中心にして考えないで、たとえば地下資源、鉱石の問題もありますし、重要な石油の問題もあるわけですね。これらは現在は数字の上ではまだ爆発的な発展をいたしておりませんが、これはおもにわが方の政治的な理由、経済的な理由によってこれがチェックされておるだけであって、潜在的な発展の可能性というものは非常にあるわけですね、日本側の重化学工業を中心にして。したがって、シベリア開発の重点がそういうふうに進む。そうなりますと、木材だけでなくて、石油または鉱物それからこちらからは建設資材が大量に出る可能性があるわけです。そういうふうに考えますと、どういたしましても重化学工業中心の東京ないしは東海地区さらに関西——これで見ますと、札幌よりは新潟または舞鶴、敦賀が非常な経済的メーンストリートになるべきなんです。これは地理の上から見ましても明らかで、限られた他の条件によってチェックされておる状態のもとにおけるあれから見ますと、札幌地区の比重が、軽いとは私は言いませんよ。しかし、可能性からいいますと、その点はぜひ検討すべきではないか、こちらが積極的かつ計画的に。一例を申し上げますと、たとえば新潟でございますね。新潟港へなぜ一体、人の出入りあるいは貨物の出入りがいまチェックされておるかといえば、港湾の設備が足りないということでしょう。だから富山の串木にいたしましても、それから関西地区にいたしましても、東海地区にいたしましても、おもに日本側のそういう特殊な事情によってこれがチェックされておるだけであって、可能性あるいは効率から見ますれば、新潟または舞鶴港というものは、相手はナホトカを窓口といたしましても、これは重要な路線になり得るというふうに私は考えるわけです。そういうふうに外務省としては、領事館設置の第二次、第三次の問題についても、むしろわが方からイニシアチブをとって、わが方の経済の発展、相互の交流、そういう点から見て、より便利であり、より効率のあがる地区を相手側の領事館設置の対象に考えるべきでないか。いま田原委員提案されましたオデッサは、これはいささか取引の可能性が、伸び率は必ずしもハバロフスクよりは多いとは言えないわけでしょう。ところがわが方の側から見れば、札幌に次ぐ二次、三次の新たなる領事館開設が、相手側の便利というよりはむしろわが方の便利になり得る場合が多いわけですね。そういう点で私はぜひ検討すべきことは、これは単に外務省だけではできないことでありますから、運輸省または建設省とも緊密な連絡をとり、それから通産省とも貿易計画、長期の展望の中で、たとえばいま申しました新潟、敦賀というようなものは、あるいは舞鶴、関西、関東の重工業センターにより近くより効率的であるという点ですね。新潟の問題については、全然話はいままで出ませんでしたか、または日本政府の中であたためられている将来の地点として、お考えになったことはございませんかどうか、それをちょっと伺っておきたいのです。
  84. 岡田晃

    岡田説明員 先ほど御質問がございました中で、ちょっと申し上げたわけでございますが、札幌、ナホトカを決定いたしますときに、その次の地点をも含めて、四地点きめようではないかという話し合いをいたした経緯がございます。その場合に私どもといたしましては、政府部内のお考えもございまして、上のほうから御示唆もございまして、新潟という話し合いをしよう、そういうたてまえに立ったわけでございます。四地点を一度にきめるということ自体に先方が難色を示しまして、まず二地点、ナホトカ、札幌だけにきめて、ひとつこの次の交渉にしよう、こういうことでこの四地点ということを先方はチェックいたしましたので、新潟という地名をわがほうから積極的に正式の意見表示として出したことはまだございません。ただ新潟その他から在日ソ連大使にそういう陳情を行なわれたということは、いろいろ私どもは承知いたしております。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 わが方の他の二地点はどこですか。
  86. 岡田晃

    岡田説明員 他の二地点といたしましては、まだ存じておりません。大阪についてはあるいはそういうこともあったかということも聞いておりますが、舞鶴に関しましては寡聞にしてまだ承知いたしておりません。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、いま申しましたとおり、長期的に計画的に積極的にひとつ検討を進めることを強く要望いたしておきます。そして経済の面がこちらは重化学工業中心、向こうは木材から地下資源に移っていくことは、これはもう必至の情勢でございましょう。そのときに、領事館がなぜチェックされているかといえば、新潟港の港湾の設備の問題、それからもう一つは、われわれの仄聞しているところは、いま問題になっております朝鮮の帰国の問題がございますね。それとからんで新潟に置くことはおもしろくないという意見が一部にあったということをわれわれは聞いております。そういうような経済的、技術的または政治的理由でこれが阻害されるということは、これはもう時代おくれだと思うのです。どういたしましても、一ぺんにはいかないことは当然でしょう。なぜかといえば、相手が相互主義でいきますと、こっちが二つ認めて向こうが一つナホトカだけというようなことではいけません。まあ数は必ずしも問われませんけれども、向こうの窓口は少ないわけです。日本は重工業地点というものが非常に散在しておって、そして同時に港はすべて多少の手入れをすればよくなるという窓口は多数ですからね。そういう点で事情はわかりますけれども、私は日ソ経済交流の将来の展望を考えましたときに、いまは木材と漁業が中心だということで札幌に重点が置かれておるようでありますけれども、これはいささかうしろ向きというか、少し展望が足りないのではないかと思う。担当の田中政務次官あるいは高島参事官の御感想はどうですか。これは共通の目的の問題ですから、意地の悪い質問ではありません。
  88. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 第一次の札幌につきましては大体すでに話が進んでおります。これは第一号としましては、まずソ連のもよりのところでもございますので、適当なところであろうと一応考えられます。  それからその他の地点につきましては、やはりお説のとおりに、将来シベリアとの経済交流ということを考えますと、日本の物資を運び出す港、そこがやはり中心になるのが一番大事じゃないかと思っております。そういう点から申しますと、やはりいま仰せのような新潟であるとか敦賀であるとか門司であるとか大阪であるとかいったところが相当考慮されるのではないかと思っております。ただ、いろいろ港湾の設備であるとかあるいは距雑の関係であるとか、あるいはまたソ連方面の御希望、選択の点もございますので、こちらからどうということは言えませんけれども、経済的に考えますれば、やはりこうしたところをとるというのが一番適当ではないかとわれわれは考えております。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 それから領事館の管轄区域外へ出る場合ですね。これは条件並びに取り扱いは、他の自由主義諸国と同一条件であるべきだと思いますが、それに間違いありませんね。自由主義諸国、たとえば英米に与えておる条件あるいは取り扱いの、何というか、厳緩の程度というものと、ソビエトの領事に対する条件、措置と懸隔があっては、これは国際的にいけないことだと思うのでありますが、その点はあらかじめはっきりしておいていただきたい。
  90. 高島益郎

    高島説明員 領事がその領事館の管轄区域外で職務を執行する場合に、日ソ領事条約ではその点を明示いたしております。米英のソ連との領事条約におきましては、その点は全然規定がございませんので、米英の場合は日本と違いまして、そういう権利があるというふうには解釈できないのではないかと存じております。ただ実際上は、もちろん米英の場合でも、その管轄区域は一般に狭いという事情からいたしまして、管轄区域外での行動は少しはできるのではないかと思いますが、その際のいろいろな地位あるいは権限等につきましては、実際上差はないと確信しております。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 その点はそれで了解いたしますから、今後の条件、取り扱いの厳緩のあれにつきましても、相手国によって差別をしないように、相互主義、平等主義でいっていただきたい。これは強く要望いたしておきます。  その次にお尋ねいたしたいのは、第四章の領事官の職務でございますが、実はこの中で問題になりますのは、三十条だと思うのです。三十条の解釈ですね。「自国民の保護及び商業、文化等に関する両国間の関係の発展助長を行なうこと」という抽象的なことばがございます。これの範囲、限界といいますか、これが問題になるわけです。  そこで、ちょっとこれはいやみな質問になるかもしれませんが、わがほうにおりますアメリカの領事または領事館員が、領事条約規定のない内政干渉にわたる、あるいは日本国民の憲法に保障されておる思想の自由あるいは行動の自由に対して、威嚇を加えたり牽制を加えるような行動のわれわれは資料を持っております。これは前にここにおられる三人の方は御出席にならなかったけれども、外務委員会において私は注意を申し上げたことがあったのです。ところがその後、このアメリカ領事館員の不当な行動が続いておるわけです。必要があれば私のほうから資料を差し上げます。しかしこのことは、特に東京はうるさいものですから、東海地区から大阪、関西地区において特にそういう件数をわれわれは報告を受けております。一体それは何かといえば、両国関係の発展助長ということがおそらく隠れみのになっておるのだろうと思うのですね。そして今度の場合におきましては、この解釈が、ソビエト領事がとります行動について、職務内であるか職務権限外の越権行為であるか、それはやがて具体的な問題が起きないとは限らない、日本側の解釈あるいはいろいろな報告、中傷が。そういうことで、私はこの際伺っておくわけです。で、この三十条の解釈については、日本側は思想統一ができておるのか、あるいは相手国との間にちゃんとした意思統  一が取りかわされておるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  92. 高島益郎

    高島説明員 領事の職務につきましては、先生の御指摘のとおり、条約の第四部に列挙してございまして、いま御指摘の第三十条は、基本的な領事職務の内容でございます。ここに列挙してございます三十条以外のもろもろの領事官の職務以外につきましては、この第三十条の原則に照らしてそれぞれの接受国のほうで判断いたしまして、もし領事官が、領事官の職務の範囲を逸脱して、領事職務の範囲外のことをやっているというふうに判断いたしました場合には、第十条の規定に基づきまして、受諾し得ない人物として帰還を要請するというふうなことも考えられる次第でございます。個々の内容につきまして、現在は、日ソ間で職務の内容をきちんときめるというふうなことはやっておりません。条約規定に基づいて相互に判断するということでございます。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 この点は政治的に非常に大事な点でございまして、実は今度の領事館の管轄区域が英米に比べまして狭くなっているわけです。すなわち英米のほうが広くなっておる。にもかかわらず、領事官の管轄区域外に領事館員が出まして、その出方は、条約協定に違反をして無許可で出ておるのじゃないと思うのですね、おそらくは何らかの目的を日本側に申し入れて、それによって日本政府側は管轄区域外の旅行または行動について許可を与えていると思うのです。ところが、その管轄区域外に行動をとりますときに、これは無制限に行なわれておるのではないかと思われるほどひんぱんに行なわれておる。この二、三年特にそうです。そしてまた、その行動が、先ほど言いましたように、相互の領事条約の中に示されております職務職権、それをはるかに逸脱いたしたものでありまして、思想調査をしたり、あるいは日本の国民に対しましていろいろな中傷をする、あるいは威嚇を加える。あるいは向こうは、両国関係を改善するためということで、おそらくはアドバイスする、それが両国関係の発展改善のために役立つと考えてやっておるのでしょう。それを口実としておるのでしょう。たとえば最近中国を訪問した青年あるいは中国を訪問しようとする青年、あるいはソビエトを青年交流で訪問した青年、しようとする青年、これに対しまして一々調査をしたり、それから聞き取りをやったり、あるいはこれに対して、友人としてのアドバイスではなくて、初対面の人に対して、これは明らかなる干渉、威嚇でございますが、将来のためにならぬというようなことを言って調査、干渉をしておる事実があります。これは外務省、御存じですか。
  94. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 そういう事実は全然存じておりません。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 それはちょっとうかつなことでございまして、関西には御承知のとおり外務省の出先機関があるわけでして、大使級の人がおられるわけだ。それで知らぬなんということはおかしいですよ。田中次官は御就任以来お聞きになっておらぬかしらぬけれども、外務省の機関としては、これは人はかわっても継続性のある機関でありますから、わからぬはずはないです。厳格にひとつこれは今後それぞれの出先機関に注意をして、厳重な視察をしていただきたいと思います。私どもはこれは明らかに不当な内政干渉であり、越権行為であるということで、実はこの前の外務委員会でちょっと御注意を申し上げたことがありましたが、よく承って、これは調査をし、あるいはもしそういうことがあったとすれば今後ないように厳重な措置をとりますと言ったが、その後そのままになっておったわけです。これはその後におきましても、実はそういう事実がわれわれの手元には具体的に報告されてきております。ぜひこれに対して外務省からひとつ御答弁をいただいておきたいと思うのです。
  96. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 そうしたことがありますることは非常に誤解を招くもとにもなりまするので、十分そうしたことのないように、今後出先のほうにも注意を与えまして、またそうしたことがあった場合においては、直ちに報告を求めるとか、何とか是正の措置を講ずるようにひとつ努力をしたいと考えております。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、この問題について次にもう一点お尋ねしたいのは、アメリカ及びイギリスとのときに、この条約の解釈について、抽象的なこのことばの具体的な範囲、限界、それについて明確な話し合いをされましたかどうか。今度ソビエトとの間で交渉されるときにも、これは文字だけで合意に達したのかどうか、具体的なことについてある程度の話し合いをされたのかどうか、これが第二。第三は、この問題につきましても、相手国によって解釈が違ったり、取り扱いが違うべきではないと思うのですね。それで英米にはゆるやかに、ソビエトにはきびしい解釈をするということはあり得べからざることだと思うのです。それについて外務省の考えを聞いておきたい。  最後に、これに関連してお尋ねしたいのは、もしそういう事実が起きたときに、この抽象的な条約文章の解釈について、相手側とわがほうとの意見の違いが生じた場合、どちらを一体基準にすべきか、そういう細目の列挙主義の取りきめがないわけですから、非常に抽象的なことになっていますね。いままでの条約すべてがそうです。そういう問題がいままでも起きてまいりましたし、今後起きる可能性があるし、また国によって違う危険をわれわれは感ずるわけですから、その限界、それで解釈の違ったときはどちらの解釈によってそれが行なわれるか。相手は拡大解釈するでしょう。こちらは限定解釈をするだろうと思うのです。その点についてこの際お答えをいただいておきたいと思うのです。
  98. 高島益郎

    高島説明員 日ソ領事条約の第三十条の規定は、日米、日英両条約におきましても、一言一言全部同じというわけではありませんけれども、趣旨におきましては全く同様なことを領事官の職務といたしまして規定しているわけでございます。  この日ソ領事条約第三十条の規定に関しまして、この規定内容及びその実施の方法につきまして、日ソ間で交渉の際に特別に具体的に話し合ったということはございません。したがいまして、これの実施につきましては、それぞれ派遣国及び接受国におきまして双方が判断し、この範囲を逸脱しておるというふうに判定される場合に、両者で話し合って解決するということになろうかと存じております。先生の御指摘のような問題、つまり日米、日英間における領事官の職務と日ソ間における領事官の職務におきまして相違があってはならないという点につきましては全くそのとおりでございまして、この第三十条の規定及びこれと同様の趣旨日米日英領事条約におきます規定との関連から、そういうことは絶対にわれわれとしてあり得ないというふうに考えております。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 くどいようですが、具体的にも起きていることでもありますから、もう一点御答弁をいただいておきたいと思いますことは、経済上、文化上の関係の発展を助長し、それから両国の友好の関係の発展に寄与する、こういうことになっておるわけですね。そして、先ほど申し上げましたような、訪ソ、訪中の青年、またはしようとする青年、その他の人々——経済人を含んでおりますが、これらの人に対して、ある種の威嚇を加えた、あるいは調査をするということは、おそらくはアメリカ側は、日米両国の友好のためにならぬと思ったからこの規定に従ってやったことであって、それを相手が主観的にどう受け取ったかということは別だというエクスキューズを持っておるでしょう、もし問題になったときには。ところが、いま申しましたようなことがもしあったとすれば、これは明らかに越権行為だと私どもは思いますが、外務省はどうお考えになりますか。この三十条(b)項の規定でそれは与えられた職権として御解釈になりましょかどうか伺っておきたいのです。
  100. 高島益郎

    高島説明員 私個々の具体的なケースについてどうこうということは申し上げる立場にございませんけれども、一般論といたしまして、この第三十条の解釈からいたしまして、もし仮定の問題といたしまして先生の御指摘のようなことがございますれば、この趣旨とは相反するものではないかと考えます。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 御注意を促しておきます。  最後に、これは先ほど御質問の中にございましたので、補足してちょっと一つだけお尋ねいたしておきたい。  岡田事官からお答えがありましたが、安全操業に対する日本側の対案の問題。それで二、三日前に赤城元農相がソビエトへ行かれた。そしてあの北方海域における日本側が捕獲いたしました魚族の何%かを相手側に提供する。これはある意味でいえば、先ほどお話の、向こう側の寄港条件にかわるようなものにわれわれには理解されるわけですが、赤城さんは現在は政府機関の中におられないわけですけれども、これは全く個人的発想でなさるのか、国と国とのネゴシエーションではないわけですか、どんな場合でも。しかしこういうことを党の重要な地位におられる方が、しかもかっての担当者が、相手は政府機関でしょうから、話をされるについては事前に打ち合わせがおありになって当然だと思いますし、向こう側はそういう受け取り方をするでしょう。非公式な事前折衝として受け取られると思うのです。で、これを今度の安全操業に対する日本側の対案として、向こう側の寄港の条件にかわるものとしてこういうことを提案されようということについては、事前に政府了解を与えておられますか、どうですか。その点だけ伺っておきたいと思うのです。
  102. 岡田晃

    岡田説明員 赤城先生が訪ソされる前に、当時新聞に出ましたような形で安全操業の問題をイシコフ漁業相との間で話をされるということについて、政府が公式にないしは非公式にその問題について事前に合意を与えたということはございません。
  103. 福田篤泰

    福田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十四日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時二十五分散会