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1967-05-12 第55回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十二日(金曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 永田 亮一君 理事 野田 武夫君    理事 三原 朝雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       愛知 揆一君    青木 正久君       臼井 莊一君    大平 正芳君       福家 俊一君    松田竹千代君       毛利 松平君    山口 敏夫君       山田 久就君    木原津與志君       久保田鶴松君    黒田 寿男君       田原 春次君    戸叶 里子君       帆足  計君    渡部 一郎君       川上 貫一君  出席政府委員         外務政務次官  田中 榮一君         外務省中南米・         移住局長    安藤 龍一君         外務省経済協力         局長      廣田しげる君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省通商         局長事務代理  原田  明君  委員外出席者         外務省経済局外         務参事官    須磨未千秋君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         大蔵大臣官房財         務調査官    堀込 聡夫君         参  考  人         (海外技術協力         事業団理事長) 渋沢 信一君         参  考  人         (海外移住事業         団理事長)   廣岡 謙二君         参  考  人         (海外移住事業         団理事)    太田 亮一君         参  考  人         (海外移住事業         団総務部長)  林屋 永吉君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 五月十一日  委員伊藤惣助丸君辞任につき、その補欠として  渡部一郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アルゼンティン共和国との間の友好通  商航海条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  航空業務に関する日本国政府シンガポール共  和国政府との間の協定締結について承認を求  めるの件(条約第三号)  千九百五十四年の油による海水の汚濁の防止の  ための国際条約締結について承認を求めるの  件(条約第四号)  大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約の締  結について承認を求めるの件(条約第九号)  国家と他の国家国民との間の投資紛争の解決  に関する条約締結について承認を求めるの件  (条約第一〇号)  国際法定計量機関を設立する条約の改正の受諾  について承認を求めるの件(条約第一二号)  旅券法の特例に関する法律案内閣提出第九五  号)      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  日本国アルゼンティン共和国との間の友好通商航海条約締結について承認を求めるの件を議題として審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。田原春次君。
  3. 田原春次

    田原委員 わが国とアルゼンチン共和国との間には、明治三十一年、両国間に修好通商航海条約署名がなされ、その後実施されておるのでありますが、今回、その後の両国間の通商関係拡大発展に伴い、諸般の待遇保障改善充実をはかる必要から、この条約が結ばれたということでありますので、国民のだれしも別段反対はないと思いまするが、アルゼンチン日本との長い友好関係の上から見ますと、この条文を見まして、二、三の点について明瞭にしてもらいたい点がありますので、質問したいと思います。  第一点は、条約協定との関係であります。第二点は、条約の各条項のうち、特に第六条、第十条、第十二条に対する解釈を明らかにしてもらいたい。第三点は、議定書の中で、沖縄に関する除外規定がありますことについて不安がありますので、お伺いしたい。第四点は、貿易の増進、特に口蹄疫向こうことばでアフトーザの食肉の輸入に関する解釈についてであります。第五点は、在留邦人一般が要望しておる条項でございます。  以下、各項目について御質問いたします。  第一は、条約協定と二つある場合に、どちらの解釈を主とするものか、これをこの機会に明らかにしてもらいたい。具体的にすでに日本アルゼンチンとの間には、日本アルゼンチン文化移住協定のごときものがあります。それから、この条約のほうが優先するならば、その文化協定の中のある点について、御質問したいと思いますが、この点はどうですか、まずお尋ねしたいと思います。
  4. 高島益郎

    高島説明員 お答えいたします。  アルゼンチンとの通商航海条約は三十六年の十二月東京署名いたされましたが、その際、署名と同時に移住協定動物衛生協定等協定が結ばれました。この協定の内容は、この通商航海条約とは直接に関係はございませんで、この協定の中に書いてございますとおり、この協定は、両国の現行の法令からの規定に従って行なわれるということでございまして、通商航海条約に直接の根拠は持っておりませんで、それぞれの法令の範囲内で実施するたてまえになっております。
  5. 田原春次

    田原委員 先に聞こうと思って、順序を忘れましたが、日本アルゼンチン友好通商航海条約のほかに、ラテンアメリカ各国友好通商航海条約を結んでおるか、あるいはただいま交渉中であるか、これをお伺いしておきたいと思います。
  6. 高島益郎

    高島説明員 現在、日本アルゼンチンのほかに、南米の中で通商航海条約を結んでおりますのは、ハイチとの間の通商協定、これは三十八年十月に批准いたしております。それからキューバとの通商協定は三十六年の七月に批准いたしております。ペルーとの通商協定は三十六年十二月に批准いたしております。最後にエルサルバドルとの通商協定は三十七年七月に批准いたしております。
  7. 田原春次

    田原委員 第二点は、各条項についてお尋ねいたします。  第六条の2の(a)の規定について。
  8. 高島益郎

    高島説明員 第六条の2の(a)の規定は、他方の締約国で行ないます事業活動、それから職業活動につきまして最恵国待遇を与えるという規定になっております。  職業活動につきましては、特に自国人だけに認めております職業がございまして、これは外国人に認めるわけにいきませんので、このような規定になっております。  なお、議定書の四項に、これに関しまして例外の規定がございまして、不動産に関する権利の享有につきましては、事業活動のうち不動産に関する件につきましては、相互主義に従って特別の待遇を要求し得るというふうな趣旨規定がございます。
  9. 田原春次

    田原委員 この2の(a)の中で、最恵国待遇を与えられることはわかりますが、別に資料として出されました友好通商航海条約説明書の第二ページの第二項の途中に「この条約にいう「会社」とは、営利目的とする社団法人組合その他の団体に限る旨を規定している。」と出ておりますが、この中には海外移住事業団、ないしは、あとで質問いたしますが、海外技術協力事業団のその土地における活動が制限されるか、されないか。この「会社」ということの中に入っておるんですか。
  10. 高島益郎

    高島説明員 事業活動につきましては、「商業上、産業上、金融上その他の事業活動」、こうなっておりまして、このカテゴリーに属しない事業活動につきましては、ここにいう規定対象になっておらないというふうに考えます。
  11. 田原春次

    田原委員 たとえば海外移住事業団土地の購入並びに登記、それからその分売等は、この中における「商業上」「産業上」になるか、「金融上」になるか、この点が明らかになっておらぬと、やりにくいのではないかと思いますが、いかがですか。
  12. 安藤龍一

    安藤政府委員 後ほど調査してお答えいたしたいと思います。
  13. 田原春次

    田原委員 それから、説明書の三ページの三行目の中ほどにまいりますと、「この条約にいう「会社」とは、営利目的とする社団法人組合その他の団体に限る旨を規定している。」とありますが、海外移住事業団営利目的としておるのであるか、それから社団法人であるかどうか、そういう点が明らかになっておらなければ、現地土地を購入しても、それに対する訴訟とかあるいは課税とかいうものは困るのではないか。せっかく協定を結ぶのに、これと並行して日本政府機関である海外移住事業団というものがあるのですから、その法的地位を明瞭にしておかなければ困る。——これはあとでもいいです。質問を留保しておきますから、明確に御答弁願いたい。
  14. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 いろいろ法律的な問題等もございますので、あとで調査いたしました上で、確答申し上げたいと思います。
  15. 田原春次

    田原委員 それでは明瞭になるまでは、この問題の賛否は討論いたしませんから。その点は当然だと思いますが、申し添えておきます。  次は、第十条に移ります。第十条をどなたか読んでください。
  16. 高島益郎

    高島説明員 第十条、「両締約国は、両国間の貿易発展させ、及び経済関係を強化すること並びに、特にそれぞれの領域内における経済発展及び生活水準の向上に資するため、科学及び技術に関する知識交換及び利用を促進することを目的として、相互利益のため、協力することを約束する。」
  17. 田原春次

    田原委員 その後段の点であります。「科学及び技術に関する知識交換及び利用を促進することを目的として、相互利益のため、協力することを約束する。」そうすると最初にぼくが聞きました日本パラグアイ移住協定の中では——いろいろな移住上の協定はありますが、少なくとも在留邦人を診察するための医者とか歯医者というものに対する規定がない。医者歯医者に対してパラグアイとの間には主として日本植民地診療に当たる者が日本だけの資格においてできることが明記されておりますが、アルゼンチンにはその規定がない。したがって、この条約において「相互利益のため、協力することを約束」しておいた以上は、日本医者あるいは歯医者アルゼンチンに行って開業することは「科学及び技術に関する知識交換」になるかと思うのですが、その点について見通しはどうか。交渉しているかどうか。そういうことを明らかにしておくほうがいいと思うのです。
  18. 安藤龍一

    安藤政府委員 特別の取りきめを行なって解決するよう先方は主張しております。今後検討いたしたいと思っております。
  19. 田原春次

    田原委員 その点は、この条約の精神を生かす日本アルゼンチン医学衛生相互協定のごときものを結ぶべきものだと思います。御承知のように、ブラジルにおきましても、日本人医者は開業しがたい。ブラジル医科大学を出なければいけない。それからブラジル医師試験に通らなければならぬというのがありまして、たいへんな苦労をしておるのであります。したがって、今回この条約が結ばれるのを契機として、たまたま第十条にこう書いてあるのであります。これに基づいて、私は相互協定のごときものはどうかと思うのです。これに対して御意見を聞きたいと思うのでありますが、たとえば日本から医師歯科医師が五人アルゼンチンに行って開業する場合、アルゼンチン医師歯科医師が五人までは日本で開業できるようにすれば、双方の面目も立つと思うのです。何かそういうかっこうにしませんというと、たとえば現在アルゼンチンでミシオネスという非常にブラジル寄り一つ植民地があります。それからアンデス山脈に近いところにアンデス植民地がいま建設中であります。こういう場合、医者歯医者というものがおらぬことは非常に不便なんでありまして、その不便のためにかえって移住者も減るような状態であります。ですから、たとえば海外移住事業団直営診療所をつくり、主として在留邦人を見る、こういうことで交渉がなされるべきでありますが、そういう交渉をしておらないように思いますが、しておるかどうか。  それから、してなければ、先ほどのように直ちに条約に基づいて日ア文化衛生協定のごときものを結ばれなければならぬと思いますが、これに対する御意見はどうか、この機会に明らかにしておいたほうがいいと思うのです。
  20. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ごもっともな御意見でございますが、このアルゼンチンアルゼンチンとしての開業に関するいろいろな国家的な制約等もございまするし、また日本日本としての医師検定試験その他資格がございますので、この点につきましては、今後そういう方面を担当いたしておりまする厚生省とも十分協議をいたしまして、今後どういうふうに持っていくかということにつきましては、関係省とも協議いたしました上で、ひとつ意見を取りまとめて、協議すべきものなら協議をしたい、こう考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  21. 田原春次

    田原委員 それではその中の科学及び技術に関する問題でありますが、最近日本においても科学及び技術の点については各国から留学生を呼んでおる機関もあり、また東南アジアには技術訓練所をつくっておる機関もある。中南米においてもいまブラジルのレシフェにたしか紡績組み立て工の養成を主とする訓練所がありますが、スペイン語を主とする国のうち、特にアルゼンチン技術訓練所を設けて、現地へこちらから指導者機械設備等を持っていって、現地向こうの人を訓練する必要はないか、そういう運動はないのか、そういう動きはないのか。
  22. 廣田しげる

    廣田政府委員 ただいまのお尋ねは、技術協力事業団でやっておりますいわゆる技術訓練センターというか、あるいはいろいろのセンターがあります。なお技術訓練所等がございます。特に東南アジアには多いわけでございますけれども、それと同じようなものをアルゼンチンにつくってはどうかという御趣旨と思いますけれども、現在のところ、中南米におきましては、いろ御指摘のブラジル繊維工業技術訓練センターメキシコに目下交渉中でありますが電気通信技術訓練センター、その二つを考えております。アルゼンチン政府のほうからはまだ何ら要請がございませんが、もし要請がございますれば、十分前向きに対処いたしたいと思います。
  23. 田原春次

    田原委員 アルゼンチン政府なりパラグアイ政府から要請があれば検討することは当然でありますが、われわれとして見た場合、そういう要請のあるような方法をすべきだと思います。中南米各国に行っておる日本人の子弟が大ぜいおりまして、事情によって日本内地大学やその他の研修機関に来られる者もありますけれども、大部分の者はそうはできません。しかし、技術を習得したいという気持ちは非常に持っておると思うのです。したがって、一応アルゼンチンでも技術訓練所をつくる。そうしてパラグアイボリビアあるいは一部ペルーあるいはチリあるいはブラジルあたりから、向こうで生まれた二世たちの層を留学させまして、そして訓練をして帰して、いい技術屋にするということが必要だと思うのですね。こういう点につきましては、受身でなくて、誘いかけをしまして、日本にはこれだけの設備がある、設備と予算と人員がおるのだから、そちらでおつくりになるならば協力いたしましょうという積極的な態度をとるべきものだと思うのですね。そういう点については経済協力局では、単に先方から申し入れがあればするという形式的なことでありませんで、技術的にはもう少し積極的な申し入れをするべきだと思いますが、いかがでございましょう。
  24. 廣田しげる

    廣田政府委員 センターにつきましては、両国間のいろいろこまかい取りきめ等、普通のセンターでございますと、センターの機材、専門家派遣等日本政府がやります。土地建物向こう政府が持つというのが大体の形でございますので、そういう両方の政府の一致したいろいろな意見交換が必要かと思いますけれども、現在のところ、そういうセンターアルゼンチンにございませんけれども、しかし農業その他の訓練生等日本が受け入れて、日本でいわゆる研修をやっております。現在までの累計でございますが、すでにアルゼンチンからは五十三名の訓練生日本にやってきております。それから日本からもいろいろの指導のために専門家派遣、これは畜産土木工業港湾等専門家でありますが、これも延べ八名送っておりまして、そういう意味の技術協力というふうなものは、十分ではございませんけれども、現在すでに実施しておるような状況でございます。
  25. 田原春次

    田原委員 アルゼンチンの、たとえばバイヤブランカの大学には、たしか日本大学から教授が行って教えておるようでありますが、そういう大学教育というのは、受ける者も少数であります。問題は、旋盤工とかフライス工とか、あるいはラジオ、テレビの組み立て工といったような中堅技術者をもっと養成してやるべきだと思うのです。そのことは、日本のいろいろな機械等進出にもむしろ役立つことであります。したがって、いまの御答弁よりかもっと力を入れて積極的に中南米各国に一ヵ所ずつはつくる。お話しによるとブラジルメキシコにできるようであります。アルゼンチンパラグアイボリビア等移住対象国でありますところには、多くの日本の青年も行っております。そこに生まれた二世もおるのでありますから、日本から技術訓練所をつくってやる。先方からの要請だけでなく、むしろ誘っていくという態度が必要であろうと思います。もう一回繰り返すようでありますが、そういうふうな積極的な方針をとるべきであると思うのでありますが、これに対する外務省方針、それから技術協力事業団の目標、計画等をちょっと明らかにしてもらいたい。
  26. 廣田しげる

    廣田政府委員 ただいまのセンターについて積極的に働きかけるという点でございますが、ひとつ十分検討してみたいと思います。
  27. 渋沢信一

    渋沢参考人 お答え申し上げます。  中南米から参ります研修員の中には、二世の者をある程度含んでおります。特に農業訓練生は約四分の一が二世でございます。それから、こちらから派遣いたしまする専門家の中には、移住地その他に回りまして、そしてアドバイスを与えるというようなこともいたしております。したがいまして、こういう線を今後もっと伸ばしてやるということは、私どもとして非常に希望いたした次第でございます。ただし、われわれのほうでやっておりますところの技術協力政府ベースでございますので、先方政府がそういう二世なり何なりを選んでこない限りは、これをしいて二世にしろというわけにはまいりません。そこで、やはり内面的に指導と申しますか、あるいはエンカレッジメントと申しますか、そういう働きかけが必要であろうと思います。そういう線に沿って今後も進めたいと思います。
  28. 田原春次

    田原委員 それでは、こういうことはどうでしょう。たとえば日本東京に、官公市立大学が百十七もあって、そうでなくても人口の過密に困っておるのですから、話し合いをして、どの大学かをアルゼンチンに移す。アルゼンチンの何々大学ということにする。それに対する向こう政府との交渉、それから設備教授陣等国内でのあっせんをやる。そして、アルゼンチン学生のほかに一定数の日本人学生もそこで勉強させる。卒業後はそこへ技術屋としてそのまま定着できるような道をあけたらどうなのか。なお、二世、三世等が祖国への留学が経済上困難な場合、現地日本大学利用できるように、たとえばブラジルにはアメリカ大学があります。そういうものに準じて、アルゼンチンにもつくるべきだと思いますが、外務省としてはこういう問題についての関心を持っておるかどうか。進んで日本大学を新設なり移転なり、どちらでもいいですが、そういうようなものを置いてはいかがかと思いますが、御答弁願いたい。
  29. 渋沢信一

    渋沢参考人 これは政府の御方針によりますが、私の感触を述べさせていただきます。  まず向こうから来る人の教育でございますが、これは実は部門が非常に分かれております。私のほうは外国研修員を受け入れますために七十幾つのコースを設けております。そのコースというものは、農業もあり、林業もあり、漁業もあり、またいろいろの管理もある、あるいは鉱工業もあるというようなわけで、原子力から竹細工まで——原子力というのはアイソトープですが、ありまして、これを一つ大学で済ますというわけにはなかなかまいらないかと存じます。ただし、外国から参ります研修員も年に千人以上にのぼっておりますから、その中の主要なもの、たとえば農業というようなものにつきましてある種の大学というようなものができれば、これは非常にけっこうであろうと思います。ただ、それができたからすべてを解決するというわけにはまいらぬかと、これは私の感触を申し上げる次第であります。  向こうに送ります専門家もまたいろいろ多岐に分かれておりまして、問題はむしろスペイン語のできる専門家を選ぶということが実は非常にむずかしいわけでありまして、派遣いたします者あるいはセンターの要員につきまして一番のボトルネックはことばの点でございます。したがいまして、まず第一歩として、ことば研修をするような組織ができることが非常に望ましいことと思っております。これは政府方針によってきまる問題と考えますが、実施をいたします機関としての私の考えを申し上げさせていただきました。
  30. 田原春次

    田原委員 わかりました。  それじゃ次に聞きます。通商航海条約の第十九ページ、初めから二行目、「4 前諾項規定は、沿岸貿易には適用しない。」といってありますが、これはどういうわけか。アルゼンチンはラプラタ川上流にいけばパラナ川等でパラグアイとも接しているし、ブラジルとも接しておるところがある。したがって、アルゼンチン貿易を考えた場合、沿岸貿易はこの条約外に置かれるということになれば、将来日本海運業者船舶業者進出はこれで閉ざされるのではないか。それについて、何ゆえ沿岸貿易適用から除外に賛成したか。
  31. 高島益郎

    高島説明員 沿岸貿易はカボタージュといいまして、その国のみに適用されるという原則になっております。今回のアルゼンチンとの間の友好通商航海条約におきましても、その原則によった次第であります。このアルゼンチンの場合は、自国商船隊海運業界に、これに関しましての関心が強いわけでございまして、条約を推進することになりました際にも、アルゼンチン側で、特にその点につきまして、先ほどの商船隊あるいは自国海運業につきまして特別の措置をすることを非常に強く希望している次第であります。
  32. 田原春次

    田原委員 それはそれでわかりました。  しからばこの条約の二十ページに「7 この条において「商船」とは、漁船及び捕鯨船を含まない。」と出ておる。しかるに、現在アルゼンチンには太洋漁業日本水産日本冷凍、それから中小規模漁船等が行っておるのでありますが、それに対する保護はどこでやるのか。事故のあった場合の寄港もあろうし、何ゆえに特に商船と限定したか。
  33. 高島益郎

    高島説明員 十二条の七項で「この条において「商船」とは、漁船及び捕鯨船を含まない。」という趣旨規定がございます。これは特にアルゼンチン側の要望によりまして、アルゼンチン側国内事情によって、こういうものを商船の中に含めないといろ趣旨にした次第であります。
  34. 田原春次

    田原委員 何ゆえにそれに対してこちら側から反論しなかったか。現に先ほど言ったように、日本の大きな水産業者漁船も行っておるし、そうして沿岸貿易もやっておるし、また寄港もしなければならぬ。それの保護について、「商船とは、漁船及び捕鯨船を含まない。」という点は引き上げてこなければならない。これに対して、中南米移住局長、何ゆえにこの条約に対して発言しなかったか、お尋ねしたい。
  35. 安藤龍一

    安藤政府委員 ただいま向こうで操業しておりますのは、現地法人として操業しておりますので、この新しい通商航海条約適用外だろうと解釈しておる次第であります。
  36. 田原春次

    田原委員 それじゃ、次に議定書のところを質問いたします。  議定書の二十八ページの最後の二行目7から終わりまでをどなたか関係者、読んでいただきたい。
  37. 高島益郎

    高島説明員 お読みいたします。  「条約のいかなる規定も、アルゼンティン共和国に対し、日本国が、(a)千九百五十一年九月八日にサソ・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原及び請求権を放棄した地域に原籍を有する者に対し、又は(b)同平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政、立法及び司法に関し同条後段に掲げる事態が継続する限り、同地域の住民及び船舶並びに同地域との貿易に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。」
  38. 田原春次

    田原委員 これは沖縄をさしておるものと思うがどうか。特に沖縄県人をさしておると思うがどうか。
  39. 高島益郎

    高島説明員 いまお読みしましたとおり、この(a)と(b)両方ございまして、(a)のほうは平和条約第二条にございますとおり、朝鮮、台湾等に原籍を有する人々に対する特別な取り扱い。それから(b)のほうは、先生のおっしゃいました沖縄の住民及び船舶並びに同地域との貿易に対する特別の待遇というふうに思います。
  40. 田原春次

    田原委員 アルゼンチンの約二万の日本人のうち、七割五分、一万五千人は沖縄県から来ている人たちである。しかるに、日本アルゼンチン条約に特にこの議定書でもって沖縄県人に対する差別、場合によっては棄民扱いをなぜ一体しなければならなかったか。われわれは安保条約に対しても無効を主張する。国民にも大多数の共鳴者があり、それから、やがて潜在主権があるから返すといわれておるそういう沖縄の地域に対して、特にアルゼンチンに限りこういう条項を何ゆえに入れなければならなかったか。その経過等を明らかにしていただきたい。
  41. 高島益郎

    高島説明員 この議定書第7項の中に、特に沖縄に関しましてこういう趣旨規定を入れました理由は、平和条約のところどころに最恵国待遇を与えるという趣旨規定がございまして、もしその規定に従いまして日本アルゼンチン日本におきますいろいろな活動に対しまして最恵国待遇を与えますときには、沖縄に対して現在日本が与えております。原則として関税を免除しております特別の待遇がございます。この規定最恵国待遇によりましてアルゼンチンの商社活動事業活動に及びますので、これでは最恵国待遇としてぐあいが悪いというので特別に除外したのであります。これはアルゼンチンとの通商航海条約だけではございませんで、日本が戦後締結いたしました一切の通商条約通商協定、こういうものもすべてこの趣旨規定を設けて、最恵国待遇を与える際には沖縄に対して日本が与えております特別な優遇措置は均てんさせないという趣旨規定を置いておる次第でございます。
  42. 田原春次

    田原委員 田中政務次官にお尋ねいたしますが、沖縄の地位に対しては、佐藤内閣でも全面的返還の立場をとっておるように見ておりますが、そういう、つまり米軍の永久占領にあらずして、必ず適当な時期には返すという沖縄を何ゆえアルゼンチンとの条約に入れなければならなかったか、その経過を明らかにしてもらいたいし、それから、これは必要であるかどうか、むしろこういうものがないほうがよくはないかと思うのでありますが、これに対する見解を明らかにしてもらいたい。
  43. 安藤龍一

    安藤政府委員 アルゼンチン移住しております沖縄出身者は日本旅券をすべて所持しておりまして、日本人として待遇されておりますので、沖縄出身であるというためにこの通商航海条約が発効いたしましても差別されるということはございません。
  44. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 沖縄の施政権につきましては、かねてから佐藤総理大臣、外務大臣から皆さまにお話し申し上げておりますように、これは必ず日本に施政権の返還を要求する、またそういう状態をできるだけ早い機会に実現すべく最大の努力をしておる、こういうようなことでいつも国会において皆さまに御答弁を申し上げておるのであります。ただ現状といたしまして、基地の問題とかいろいろの問題がございまして、こういう点につきましては高度の政治的配慮のもとに解決を急いでいかねばならぬと考えておりますので、そういう意味におきまして、政府としましては沖縄の施政権返還につきましては、もとより全面的の返還をできるだけ早い機会に実現をいたしたい、こういう意図のもとにただいま努力を重ねておる次第でございます。  それから、ただいまのアルゼンチン通商航海条約につきましては、沖縄島民に対しましてはあえて差別待遇をしたとか、そういうような意味でかかる規定を置いたのではないのでございまして、その点につきましてはいま事務的に御説明申し上げたような理由で、ひとつ御了解を願いたいと思います。
  45. 田原春次

    田原委員 先ほどの御答弁によると、最恵国待遇を与えない、それはたとえば日本と沖縄との間における輸出入は無税のものがある、アルゼンチンにはこれを与えないというが、これは逆にアルゼンチンに対する差別だと思う。どちらにしても沖縄とアルゼンチンとの輸出入の量はたいしたことはないのでありまして、そういうことに対してわざわざこういう規定をつくる、しかもこれは暫定的なものでありまして、やがて沖縄が返ったときには、この条約はここだけを削らなければならぬことになる。そういったものをなぜ一体出したかということである。これは少し卑屈じゃないか。それから不親切じゃないか。アルゼンチンに対する侮辱じゃないか。日本アルゼンチンとの友好は、日露戦争以来、今度の第二次大戦においても敵国扱いであったけれども、在留邦人一万数千人に対して保護を与えておって、これに人々は感謝しておるほどである。それならば沖縄に対しては、あなた方が、差別いたしますということを何ゆえに書かなければならなかったか、沖縄とも貿易をやってください、日本並みに無税にいたしますということでなければならぬじゃないか。この条約の中にも至るところに国内の扱いをする、最恵国待遇を与えようとしておって、議定書だけには沖縄は別だと何ゆえにしなければならなかったか。これは議論でありますけれども、私はこれはなかなかそう簡単なものではない、こういうことを書くことは沖縄占領を永久化することではないか。これに対する御答弁をもう一回はっきりしてもらいたい。
  46. 高島益郎

    高島説明員 アルゼンチンだけに対します差別待遇というお話でございましたけれども、先ほど申し上げましたとおり、戦後日本締結いたしました通商航海条約通商協定、例を申し上げますと、アメリカ、カナダ、ノルウェー、オーストラリア、インド、ニュージーランド、ハイチ、ユーゴー、キューバ、マラヤ、ベネルックス、パキスタン、インドネシア等、すべてこの趣旨規定を置いてございまして、一般的に外国人に与えられております待遇まではすべて均てんするわけでございますけれども、沖縄の特殊性にかんがみまして、現在日本が沖縄の産品に対して原則として関税を免税しておるという取りきめは、例外といたしまして、最恵国待遇の場合には除外するという趣旨規定でございます。
  47. 田原春次

    田原委員 いま御答弁の中にあげられました各国の中で、沖縄県人に関係のあるものは、ごく少数ながらインドネシアが戦前にあっただけでありまして、ベネルックスやカナダがそういう条項をつくろうがつくるまいが、沖縄県人に対する被害はないのです。アルゼンチンの在留同邦の七割五分までが沖縄出身の者であるし、非常に日本に対する御協力も他の日本人と同じようにやっておりまして、特にこういう差別的なものを何ゆえにつくるかということはそう簡単に了承できないので、これをいまからのける御意思があるかどうか。これだけは日ア通商航海条約に対する一つの汚点じゃないかと思いますが、これに対する見解を、もう一ぺん明らかにしてくだざい。
  48. 高島益郎

    高島説明員 繰り返すようでございますけれども、この規定自体は、沖縄の住民に対します差別待遇というものでは決してございませんで、現在、沖縄の住民に対し日本が与えております特別な優遇措置を、アルゼンチンに対しましては——アルゼンチンのみならず、いままで通商航海条約締結しました各国に対しましては、均てんすることができないという趣旨のことでございます。
  49. 田原春次

    田原委員 先を急ぎますから、次に移ります。  日本アルゼンチンから買っている品目のうち、一九六六年には、肉類、主として馬肉を約九百万買っておるようであります。それから羊毛、これは約千五百万ドル買っておるようでありますが、何ゆえに馬肉を入れて牛肉を入れないのか。日本に持って帰っていきなりそれが牛肉に化けて売れるということであるかどうか、関係省の答弁を願いたいと思います。
  50. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 アルゼンチンには口蹄疫といろ病気がございまして、これは牛や羊のビールス性の伝染病でありまして、アルゼンチン口蹄疫の汚染地域として指定されております関係上、わが国が牛肉を輸入できないという状況でございます。
  51. 田原春次

    田原委員 口蹄疫スペイン語でアフトーザという内容をどの程度に御存じなのか。私の調べた範囲によれば、これはひづめと舌をビールスがおかす病気である。しかるに、伝染経路は唾液からだけである、こういわれておる。したがって、アフトーザすなわち口蹄疫を持てるなま牛を日本に入れた場合、その牛が盛岡その他の牧場に行った場合、唾液から感染するのでありまして、現在入れておりますものはイギリスでありますが、アルゼンチンの枝肉を——ももやら背中の皮をとって枝肉にしたものは、イギリスだけでも年間六十万トン入れておる。アルゼンチンの肉の生産は二百九十万トンといわれておるのであります。したがって、たとえアフトーザを持っておるとしても、これが枝肉で横浜や神戸に入った場合、唾液なんというのはないのですから、したがってそれが伝染されるおそれはない。むしろ横浜から直ちに東京の市場に来まして食べられることになります。これは農林技官も数回調査に行って知っているはずであります。私が旅行中にもその人と会いましたが、この程度では差しつかえないと言っておったのが、いつの間にか、日本に帰ると、口蹄疫すなわちアフトーザがあるからアルゼンチンの牛肉を入れないと言っておるけれども、値段から見ますと、東京渡しで、いまの日本の牛肉の十分の一でアルゼンチンの肉がけっこう来る。つまりわれわれは、九割も安い牛肉を、口蹄疫があるからという理由でもって排除して、高い牛肉を食っているのであります。何ゆえそんなことを外務省は傍観しておるか。もっと積極的に説明して、衛生上からいっても、また価格の面からいっても、量の面からいっても、堂々とアルゼンチンの肉を入れていいと思うのに、入れないのは何ゆえであるか、これを国民に知らしておく必要があると思う。
  52. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいま御質問のありました口蹄疫について簡単に御説明申し上げます。  口蹄疫というのは、ただいまお話のありましたようにビールス性の病気でございまして、牛だとか綿羊だとか豚という偶蹄類の動物だけがかかる特殊な急性熱性の病気でございます。これは病気に感染いたしますと、まず四十度くらいの高い熱が出まして、しばらくいたしまして口と足のひづめに水泡性のかいようができるわけでございます。口と足に出ます関係から、フット・アンド・マウス・ディジーズと呼称されておるのでありますが、この病気は非常に伝染性の強い病気でございまして、一たびこれが起こりますと、数千頭、数万頭の牛なり豚なりに感染するという過去の経過があるわけでございます。  これにかかりますと、食物の嚥下ができなくなる、それから足が立たなくなる、したがってまた歩けないというふうなことで、非常に動物が衰弱をいたしまして、死に至るというふうなことの多い病気でございます。伝染は、主として排せつ物とかかいようの汁だとか、そういうものから伝染をするわけでございまして、肉だとか皮だとかその他のものに付着いたしまして伝染をいたすわけでございます。  現在世界で口蹄疫が発生をしてない国といたしましては、日本とアメリカ合衆国、豪州、ニュージーランドでありまして、それ以外のところはおおむね口蹄疫に汚染されておるわけでございます。口蹄疫に汚染されてない国におきましては、アルゼンチンからの肉の輸入を禁止いたしておるわけでございます。わが国も同様な禁止措置をとっておるわけでございます。現在英国はアルゼンチンから肉の輸入をいたしておりますが、イギリスにおきましては相当口蹄疫が発色をいたしておりまして、おもに輸入した肉から起こっておるであろうというふうな推定がされておるわけでございます。  こういうふうな、動物にとりまして、特に偶蹄類にとりましては非常におそるべき病気でございますので、国際的にもこれについての検疫というものを非常に厳重にやっておるわけでございます。わが国も同様に、現在口蹄疫の発生しております地域からは食肉の輸入を禁止いたしておるわけでございまして、単にアルゼンチンだけではないわけでございます。  もちろん、アルゼンチンは相当な食肉の生産国でございますので、わが国に対しましても口蹄疫の禁止を解除するというようなことについての申し入れもございましたし、あるいは調査の要請もございましたので、昭和三十五年に家畜衛生試験場長が現地に参りまして調査をいたしたわけでございます。その際は、南部のパゴタニア地帯あるいはフエゴにつきましては口蹄疫の発生はないというふうに考えられておったわけでございます。ただ、地域的に、南部地帯も北部地帯と接続をしております関係から、蔓延のおそれがあるということで、禁止を解除してなかったわけでございます。その後またアルゼンチンからの要請もございまして、昨年、畜産局の衛生課長を派遣いたしまして調査をいたしました結果、パゴタニア地方にはなお口蹄疫が発生しておるということが明らかになりまして、フェゴ島につきましては口蹄疫の発生がないということが明らかになったわけでございますが、たまたまアルゼンチンとアメリカとが口蹄疫についての共同調査をいたしておりましたので、その調査の結果によって判定することが妥当であるということで待っておったわけでございますが、昨年末その調査の結果が明らかになりまして、口蹄疫はフェゴ島には存在しないということが明らかになりましたので、禁止の解除につきましてアルゼンチン協議に入ったわけでございます。たまたま昨年の暮れになりまして、フェゴ島の牛につきまして口蹄疫の発生があったという報告がございましたので、禁止の解除は見合わすことにいたしておるわけでございます。  OIEの調査によりますと、アルゼンチンにつきましては、口蹄疫は昭和四十一年においては三千百五十四群、昭和四十年には四千二百八十六群、昭和三十九年には二百十一群、三十八年には五百九十八群というふうに相当な発生が認められておるわけでございまして、現在のところこのような状態のもとにおいて輸入の禁止を解除するということはむずかしいというふうに考えておるわけでございます。
  53. 田原春次

    田原委員 よけいなことですが、御答弁の中に、パゴタニァということばを使われましたが、これはパタゴニアの間違いだと思います。国の名前ぐらい正確に覚えておいてください。  次は、伝染経路の問題で、唾液説とふん便説とあります。ふん便説はウンコからうつる。ところがアルゼンチンから入れる肉というのは、枝肉にして持ってくるわけですですから、ふん便のつきようがありません。なま肉を入れれば伝染の危険もあるでしょう。伝染するといっても、すぐ消費しますならば、ふん便からくる伝染経路説はその心配は要らぬと思います。  第二点の、米国がアルゼンチン肉を入れないのは、政治的理由があるからであります。たとえば、ジョンソン大統領は牧場主なんです。アメリカには牛がおりまして、十分国内需要がありますから、何もわざわざアルゼンチンから入れないでいいということでありまして、日本がそのしり馬だかしり牛だか知りませんけれども、何もアメリカにならう必要はないのでありまして、安いものを入れる、それから病気があるならばこれをなるべく除去する、輸入陸揚げ地から直ちに消費地へ回せばそれでいいのでありますから、いまの農林省の御心配は技術的な御心配でありまして、われわれとしてはちっとも恐怖を持っておりません。外務省としては積極的に調査のし直しをするなり、それからふん便からくる感染経路を除去する方法を講ずる。すなわち枝肉にする。足なら足だけを入れるというふうにすればいいのでありますから、そういうふうにして、この安い牛肉、うまい牛肉をたくさん食べさせることが必要じゃないか。今度の日ア通商航海条約を見ましても、結局肉をどうして入れるかが一番大きな問題だと思うのです。その問題に対しまして、農林省の技術的な心配を除去するような努力をすべきだと思いまするが、参事官はどうお考えでございますか、この際に明らかにしてもらいたい。
  54. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいまお話がございましたように、ビールスは家畜の排せつ物なり分泌物から汚染されるといろことでございますが、そのビールスは皮といわず肉といわず、すべてのところに付着することになるわけでございます。しかも非常に強い力を持っておるビールスでございます。生体の場合は、これは病気が出てくるかどうかということで、これは見分けがつくわけでございます。しかし、肉についておりますビールスについては、現在のところなかなかこれを見分けるということがむずかしいわけです。枝肉等にいたしましても、もちろんこれは肉の中についておる。それから病気にかかっております家畜でありますと、当然体内のすべてのところにビールスを持っておるわけでございます。そういうふうな点から、肉の輸入につきましては、現在輸入検疫をいたしておりますけれども、こういうビールス性のものにつきましては、なかなか判定がつけにくいという問題がございますし、当然肉にもビールスのあるところからくる肉にはビールスがあるというふうに推定せざるを得ないわけでございまして、わが国のような処女地にこのビールスが入りますと、おそるべき伝染をするであろうというふうに考えられるわけでございまして、われわれといたしましては、そういうふうなおそれのないということが確認されない限りは、輸入はなかなかむずかしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  55. 田原春次

    田原委員 それでは引き続いて、農林省のほうにお尋ねいたしますが、羊毛が二十万トン日本に入ってくることは御存じだと思います。金額にいたしまして、千五百万ドルですね。羊毛にもアフトーザはある、口蹄疫はある。先ほどの御答弁の中に、身体のあらゆる部面に伝染病があるといったが、それならなぜ一体羊毛を輸入禁止しないか。これはもう全国の、あなたの洋服にも羊毛が入っている。あなたはしかし口蹄疫にかかっていないのですから、したがって、羊毛は入れるが食肉は入れぬということは、これは首尾一貫しないと思います。どうですか。
  56. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、羊毛につきましては、わが国の輸入港で消毒をいたしておるわけでございます。肉につきましては、そういうことはなかなかむずかしいわけでございます。
  57. 田原春次

    田原委員 羊毛を消毒するならば、牛肉も消毒して入れたらどうかと思いますが、これは議論ですから……。  次は畜産局にお尋ねいたしますが、広島でネコハム事件が起こっております。あるハム会社の倉庫をあけてみましたら、ネコの肉が六千匹分あった。したがって、ハム・アンド・エッグでなくて、ネコ・アンド・ハムといっております。おそらくみなさんも食べているんじゃないかと思います。したがって、六千匹のいじらしいネコの肉をハムとして売らせるよりか、口蹄疲のアフトーザを消毒して、安心してアルゼンチンの牛肉を食わしたらどうかと思うのでありますが、農林省はあくまでネコハムを奨励する方針でありますか。
  58. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ネコやネズミの肉がどうこうというお話でございますが、これは厚生省の食肉衛生の取り締まりの問題になってまいるわけでございますけれども、口蹄疫にかかりました牛肉につきまして消毒するということは非常にむずかしい。もちろん消毒はできないことはないわけですけれども、消毒いたしますと、おそらく食用には供せられなくなるであろうというふうに思うわけでございます。食肉についての消毒ということは、現在やっておらないわけでございます。
  59. 田原春次

    田原委員 アルゼンチンから諸外国に出しております食肉の消毒状況を見ますと、これを煮まして、そして汁と肉と別に分けて輸出しているところもあるのですから、消毒が技術的に困難であるとは思わない。ただし、私はアルゼンチンの肉を絶対入れろという食肉輸入業者ではありませんから、これ以上の質問はしませんが、ただ、アメリカのしり牛に乗って、アメリカが輸入を禁止しているから禁止しようという輸入のマンネリズムはいかぬと思います。現にアルゼンチンの馬肉を入れておる。おそらくこれもハム・アンド・エッグになっているのではないかと思いますが、そういうごまかしではなくて、牛肉を入れるためにはいかなる準備をすべきであるか。たとえば現地に農林省の駐在官を置いて消毒するとか、あるいは陸揚げ地において消毒するとか、いろいろやって努力すべきじゃないか。この膨大なる日本アルゼンチン通商航海条約の大半は、至るところで最恵国待遇を与え、内国民待遇を与えるということになっておりますが、肉だけは敵国扱いになっておりますから、これを私は心配する。親善、友好を進めるならば、アルゼンチンの提供する肉を買いましょう、こういうことを前提として、どういう被害がないか、どういう害悪がないかというふうにテクニカルにやるべきものじゃないかと思いますが、これに対する外務省並びに農林省の御答弁をもう一回聞いておきたいと思います。
  60. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 先ほども先生から御忠告がございましたが、先ほど畜産局長から御説明申し上げましたように、フェゴ島につきましては、ほとんど清浄地域と指定し得るような見通しが昨年の暮れには立っておったような状況でございますが、不幸にしてことしの初めになってから口蹄疫が出た。同じような問題が実はアイルランドについてもございまして、日ア貿易のバランスを見ますと、ただいまのところは日本が入超になっておりますが、一たんこれが資本輸出市場として大きなものが出てまいります場合には、これの支払い源としまして、やはり肉、小麦等の輸入について、政府としても大いに努力しなければいかぬと思っております。
  61. 田原春次

    田原委員 第五点は、アルゼンチン在留邦人に関する政策の問題であります。これについて関係団体、役所等の御答弁をいただきたいと思います。  ここにブエノスアイレスで発行しておりますラプラタ報告、二千百五十四号、すなわち昭和四十一年十二月二十日発行の第二ページのところにあります点から質問いたします。  これは、田中アルゼンチン大使を初めとして、海外移住事業団中南米代表丸山理事、同、風間理事等、十三団体、二十三名の移住関係のある日本人関係団体、商社等が集まって、現地での体験上どうしても実現してもらいたいということをまとめてあるようであります。これに対しては、外務省及び海外移住事業団にそれぞれ陳情書が来ておると思いますが、来ておるかどうか、まずその点を明らかにしてもらいたい。
  62. 安藤龍一

    安藤政府委員 会議の概要報告が来ております。
  63. 田原春次

    田原委員 それでは、各項目について外務省のこれに対する見解、御答弁等を承ります。
  64. 安藤龍一

    安藤政府委員 お答え申し上げます。  移住事業団の現地通貨建ての問題につきまして外務省としてどういうふうに考えているかと申しますと、基本政策上、非常に重大なことであるというふうに考えております。これは、十分検討いたしたいというつもりでございます。現地通貨建てをしようという案の対象土地の分譲と融資の二つの点でございますが、いずれも現在円建てで契約を行なっております関係上、為替の下落がアルゼンチンの場合にはかなり激しいので、その返済にあたりましては、移住者経済的負担が大きくなっておる。したがいまして、移住者の営農の確立が妨げられるという点で、移住政策上、これに対して当然何らか対策を考えようという段階に達しております。したがいまして、外務省では、本年当初、現地に調査団を派遣いたしまして、どろいう方向で解決するか、現在事務当局におきまして具体的に案を検討いたしております。
  65. 田原春次

    田原委員 一般論はそれでいいのでありますが、各項目についてお答えを願いたい。  第一は、保証業務の早期実施という点であります。日本からアルゼンチン移住した人は、海外移住者事業団との土地の売買契約によって、ある程度金を払って入っております。しかし、完全に所有権を取るまでには数年後になる。その間に営農資金がほしい、あるいは拡張資金がほしい、そういう場合に、アルゼンチンの銀行で金を借りようと思いましても、担保にするものがない、担保が不完全である、こういう場合、事業団の土地を買って、年賦の途中で、アルゼンチンの市中銀行から営農資金や拡張資金を借りるのでありますから、保証人になってもらってはどうか。海外移住事業団が、私たちの土地を売って、あそこに入れておるものであるから、返済はだいじょうぶだから営農資金を貸してくださいというように交渉をするべきではないか、こういう陳情がありますが、これに対してどういう態度をおとりになりますか。
  66. 安藤龍一

    安藤政府委員 この点は、非常に重要な問題でありまして、われわれ事業団も保証業務ができるようになっておりますので、いま実施の問題について検討中でございます。
  67. 福田篤泰

    福田委員長 先ほどの、事業団の法的性格について、ただいま政府側から答弁いたしたいといろ申し出がありましたから、これを許したいと思います。
  68. 安藤龍一

    安藤政府委員 事業団のアルゼンチンの支部は、現在アルゼンチンより法的機関に準ずるものとして認められておりますので、新しく通商航海条約が発効いたしましても、通商航海条約営利目的とする法人には入らない、いわゆる適用外であるというふうに解釈いたしております。
  69. 田原春次

    田原委員 質問の第二点。移住基金の問題について大蔵省にお尋ねいたします。  アルゼンチン貿易決済、その他融資から来るこげつきドルは現在どのくらいありますか。
  70. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 お答えいたします。  御質問は、アルゼンチンに対する滞り債権の残高だと思うのですが、これは、現在リファイナンスという形をとりまして、日本輸出入銀行がアルゼンチン政府に対して資金を貸すという形で整理されております。その残高は一千二十二万ドルでございます。
  71. 田原春次

    田原委員 最近の、ここ二、三年の返済状況を知りたいと思います。
  72. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 このリファイナンスの残高は、リファイナンスをやりましたときの契約条件に従いまして、順次償還されております。特に滞りはございません。
  73. 田原春次

    田原委員 現地におります約二万人の日本人は、主として中小企業が多いのでありますが、いろいろ資金の必要を感じておる。しかるにリファイナンスにいたしましても、一千二十二万ドルからの貸し付け金があるわけですから、彼らの要望は、これをペソに画して現地の銀行に預け、それを一種のファンド、資金として、それをさらに担保身がわりとして、日本人の営農資金に貸してもらってはどうか、貿易決済の金を一々日本に取り上げることもいいけれども、一面において日本人を海外に出しておるのでありますから、ブラジルアルゼンチンのようにこげつきのあるものに対しては、活用策を考えたらどうかという意見が非常に強いのですが、これに対する御見解はどうですか。
  74. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 私ども大蔵省の国際金融局でございまして、移民の経済実態等については、あまり詳しくないのでございますけれども、私どもリファイナンスの資金をそういった方面に活用してはどうかという一般論として問題を考えてみますと、やはり、このリファイナンスは御承知のようにそれまでわが国がアルゼンチンに対して各種のプラントを中心とします輸出の延べ払いをやりました債権が、アルゼンチンの国際収支の事情によりましてそれが払えなくなったという理由によりまして、この延べ払い債権を国が肩がわりするということによって取得した債権であります。したがいまして、これは日本輸出入銀行法上非常に限られた場合にこういう債務の繰り延べをやるのだという厳格な規定に基づきましてやっております仕事でございます。やはり日本輸出入銀行というものの仕事の性格が、そういった貿易並びに経済協力というふうに書いてございまして、やはり仕事の守備範囲と申しますか、そういうものとして、ちょっとこの金を資金にするといったような問題は、性格になじまないのではないかというふうに考えております。
  75. 田原春次

    田原委員 これはお役所式の縦割りの解釈にすぎないのであります。現に先ほどから言っておるように、二万人からの日本人が行って、今後も出そうといって植民地も買っておるのですから、したがって、取り分があれば、それをしばらく、十年なら十年貸す。もちろん無条件、無担保で貸すというのではなくて、向こうの銀行に預金して、銀行から貸し付けさせるような方法をとればいいので、そのことを大蔵省が知らないというのは外務省の怠慢だと思います。外務省移住局なりその他関係当局がよく説明して、移住がいかに重要なことであるか、また、いかに資金が足りないか。現にそばに資金源があるのだから、これを利用してもらってはどうかということを繰り返し説明すべきだと思います。なぜそういった説明を怠っておったか、御説明願いたい。
  76. 安藤龍一

    安藤政府委員 御趣旨はたいへんわかるのでございますが、現在アルゼンチンにおきまして基金をつくるという問題には若干難点があるのじゃないかと思われます。それは、アルゼンチンのインフレが高進いたしておりますので、基金を設置いたしましても、その価値が毎年減っていくという点にあると思います。たとえば、一九五八年四月現在におきまして、一ドル当たり四十一・十五ペソでありましたのが、ことしの四月には三百五十ペソに下落しております。これは八年間に大体九分の一に下落したということが言えると思います。こういう状態でございますので、ペソ貨における基金をつくるということには危険があるというふうに考えております。ただ、それを円貨ないしドルの基金というものを設置するという場合には、私どもとしては前向きに考えたいというふうに考えております。したがいまして、アルゼンチンの債権の残高が利用できるということには通じないというふうに御了解いただきたいと思います。
  77. 田原春次

    田原委員 私の聞いておるのは少し違うのでありまして、インフレが進行しておったが、思い切って一ドル三百五十ペソにしたから安定した。当分はもうこれを改正する必要はないと聞いておりますので、私の解釈では、この辺で安定ペソを米ドル勘定で引き取るのではなくて、ペソにかえて在留民の事業やその他に対して一定の利子を取りながら貸してやってはどうかというのでありまして、これは私は移住局長と見解が違っております。あくまでも在留同胞のために使うべきものだ。これは議論ですからこの程度にしておきましょう。  次は、事業団の貸し付け業務を銀行に委託してはどうかという問題でございます。海外移住事業団が各地の在留邦人に一定の条件のもとに資金を貸すことはわかりますが、たとえばアルゼンチンといっても日本の八倍もある大きいところであります。そうしてアンデス山脈の付近のアンデス村、ウルキサ、ミシオネス、あるいはガルアペーのように非常に遠方にあります。そこで貸し付け業務をその土地アルゼンチン銀行に委託してはどうか。保証の入れ方や調査等はそのほうが楽ではないか。こういうことが要望の第四点のように思います。これは日本において前例があります。たとえば、医療金融公庫、住宅金融公庫等は貸し付け額の八割を貸すのでありまして、二割は窓口銀行、民間の銀行を指定しておりまして、そこに調査を依頼しております。したがって、医療金融公庫から一々調査団が行くわけではない。取り立てであり、そうしてわずかの金額であり、しかも申請から貸し出しをきめるまでに、はなはだしきは二年もかかる。きまったときにはもう要らないというような、まことにばかげたさむらい的な商売、貸し付け方には私どもは困っておる。それは要するに調査者がいない、非常に国が広い、そういういろんな理由があると思うのです。でありますから、アルゼンチンの銀行を数銀行指定して、そこに貸し付け業務の調査を委託したらどうかと思いますね。せめて日本の医療金融公庫や住宅金融公庫並みに扱ってはどうか、こういうのが陳情の趣旨だと思うのですが、これに対する見解はどうですか、お尋ねいたします。
  78. 安藤龍一

    安藤政府委員 事業団の融資は通常の金融機関の融資の補助的な性格を持っております。したがいまして、現在の事業団のアルゼンチン支部におきまして扱っております程度の金額では、現在の機構、人員で十分かと考えております。  従来事業団の農業貸し付け基準ということにつきましては、再三改定の要望がございましたので、業務の実情に合わない点が認められ、昭和四十一年四月に改定いたしました。改定の要点は次のとおりでございます。  従来渡航前融資、長期営農融資、土地購入融資の各資金はそれぞれ貸し付け限度が五十万円ずっとなっておりましたのが、これを設備及び長期運転資金という名目にいたしまして、一本化して、その限度を百五十万円といたしまして、ワクの中の融通が自由になるようにいたしました点が第一点でございます。  第二点といたしましては、現地通貨表示という原則にいたしました。ただしこれはドルスライドの条項がついてはおりますが、一応現地通貨表示といたしました。  それから第三点は、通常融資ワクとは別に緊急災害融資ワクを設けました。  第四点は、事務簡素化のために、現地支部長に権限を一部委任いたしました。  以上の点でございます。
  79. 田原春次

    田原委員 漸次改良してもらわなければならぬと思いますが、要望はお伝えしておきます。  最後にお導ねしたいのは、移住者の花嫁の輸送方法の問題でございます。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕 年に六回ありますアルゼンチナ丸、ブラジル丸で花嫁さんを向こうに送るわけであります。船内で四十日以上暮らしまして、いろいろ問題を起こしておることは外務省移住事業国も御承知と思います。事故を防止し、完全におむこさんのところに届けるためには、四十日も独身者の多い船の中に暮らさせるということは事故のもとであるから、これはやめてもらわなければならぬ。そのためには飛行機で花嫁だけを送ってはどうかという議論が現地に非常に強い。問題は運賃の問題でございます。船で行きます場合は十四、五万円の政府の補助金で行くのでありますが、飛行機で行くと倍くらいかかるでしょう。しかし、近来移住者も少ないし、移住者の旅費手当にしている予算も相当余ってくると思いますから、ここ当分移住者の花嫁に限り飛行機で送ってやる。そうすれば二日ないし三日で届くはずであります。そういう親切があってしかるべきだと思いますが、これは外務省と大蔵省の話し合いでできないことはないと思います。せっかくそういう希望もあるからその実現に対して努力してもらいたいと思いますが、いかがでございましょう。
  80. 安藤龍一

    安藤政府委員 国の渡航費補助は必要最低額であるというたてまえになっておりますので、航空料金が、現在支給されております船の運賃と同額程度であれば、考慮する余地が十分あると思います。しかしながら、問題が二点ございまして、一つは花嫁だけをそういう対象にするかどうかという問題と、もう一つは携行荷物の件であります。船便を利用する場合には、現在おとな一人当たり一千キログラム、つまり四十立方尺までの携行荷物が無料となっておりますが、飛行機を利用する場合には、これが有料となって、料金が非常にかかってくるという点であります。
  81. 田原春次

    田原委員 これはやり方によって方法があると思うのです。たとえば、携行荷物については普通の貨物として別便で送ればいいのでありますから、携帯荷物は二十キロ、飛行機の範囲でいいと思います。第二点は、花嫁に限りという特殊なワクを設けるというのでありますから、花嫁を出すんなら一般の青年も出さなければならぬということはないと思います。数年前に日本海外協会連合会がありまして、村田省蔵氏が会長、当時私はその委嘱を受けてニューヨークに参りまして、パンアメリカンの当局と交渉したことがあります。向こうは重役が五人出まして、よろしい、それでは飛行機で日本の移民を南米に送りましょう、運賃は商船会社の船賃並みにいたしましょうという話があったのです。その後村田省蔵氏もなくなるし、それから海外移住事業団になったものですから、消えておりますが、年に三回なら三回飛行機の特便で送る。そうしてその運賃は、日本政府の考え方が船賃並みであるというならば、船賃並みに割り引きさせたらいい。定期便でなくて特殊便はIATAの制限を受けませんから、したがって日本航空なら日本航空の、あるいはその他の日本の飛行機会社交渉しまして、花嫁特別機というものを出す。それから運賃は特別割り引きする。国のほうにも被害はないし、それから行く花嫁さんも安全に送れるという方法もあると思います。問題はくふうだと思います。それがくふうをまるっきりしない。まるっきりせずに、花嫁も一般の日本人と同じだから花嫁だけ飛行機で送るわけにはいかぬというような規定は、少し情けないと思いますが、これに対する政治的考慮を求めます。これに対する政府の御答弁を政務次官から聞かしてもらいたい。
  82. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 事情ごもっともな点があると考えておりますので、実は関係者と十分協議をいたしまして、御趣旨に沿うような点ができるかどうか十分ひとつ検討させていただきたいと思います。御了承をお願いいたします。
  83. 田原春次

    田原委員 まだいろいろ聞きたいこともありますが、私の重点を置きましたものは、移住者を重点とした金融的な措置を講ずること、それからアルゼンチンが輸出したいと思っておる食肉を何とかして入れるように努力すること、こういう点を特に力点を置いて質問したつもりでありますから、関係当局におきましても、答弁しっ放しでなくて、解決に対して努力を願いまして質問を終わりたいと思います。  答弁漏れがあるようですから、承ります。
  84. 安藤龍一

    安藤政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、移住事業団のアルゼンチン支部は、現在アルゼンチンより公的機関に準ずるものとして認められておりますので、新たに通商航海条約が発効いたしましても、そこにうたわれております営利目的とする法人には入らない、つまりそういった事業団は営利目的とする法人の適用を受けないというふうに解釈いたします。
  85. 永田亮一

    ○永田委員長代理 戸叶里子君。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 すでに田原議員から御質問がございましたので、私は重複しないように、二、三点だけ伺いたいと思います。  まず最初に伺いたいのは、政情でございますが、この条約は、先ほど御説明がありましたように、三十六年に署名をされて、三十七年に、第四十通常国会に提出されましたけれども、その後のクーデターで審議が中止というか、審議未了になったわけです。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕 そのあとでまた一九六六年に軍部の無血革命が起こって、そしてイリア大統領が失脚して、最高裁の判事とか州知事等が解任されるとか、あるいは国会と政党が解散されているというようなことを聞くわけでございますけれども、今日の政情と今後の見通しということを伺いたい。と申しますのは、こういうふうな政変がたびたび起こっておりますと、日本の国会で審議をいたしましても、また審議未了になるようなことになりはしないかということを心配いたしますので、その点をまず第一に伺いたいと思います。
  87. 安藤龍一

    安藤政府委員 政情に関する問題でございますので、私中南米移住局長よりお答えいたしたいと思います。  アルゼンチンのオンガニア現政権は、昨年発足以来、着々と地固めをいたしてまいりましたので、現在におきます政情はイリア前大統領の時代よりも安定しておる、そういうふうに解釈していいのではないかと思われます。  また、どのくらいこの状態が続くかという点につきましては未知数でございますが、現在見られますところでは、あと数年の間はある程度の安定が保たれるというふうに見ていいのではないかと、考えております。(「条約との関係は」と呼ぶ者あり)条約との関係につきましては、本件につきましては、オンガニア政権は日本に対しまして非常に好意を持っておりますので、イリア政権時代の通商航海条約の批准につきまして交渉いたしました結果を引き継ぎまして、好意的に処理していくというふうに考えております。  以上でございます。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 私がこういう心配を申し上げますのは、日本の国会で失敗している事件がございます。昭和三十六年の十月でございますけれども、衆議院の本会議で、日比の通商航海条約が提出されて、日本の国会は承認されたわけです。そのときも私どもは、早くやってほしい、早くやってほしい、フィリピンのほうでも急いでいるからというので、これを承認したのです。けれども、フィリピンは承認しないでそのままになっているわけですね。それが一体その後どんなふうになっているのか。私どもも報告毛ないから知りませんけれども、また日本の国会でこの承認をいたしましても、そういうふうなたなざらしみたいな形になってはたいへんだと思いますので、その点もそういう角度から伺ったわけでございます。いまのお話を聞いておりますと、大体だいじょうぶじゃないかというような自信のあるような、ないような御答弁でございましたが、その点から私どもは心配をしたわけでございますので、ちょうどこれに関連をしておりますから、日比の条約がどうなっておるか、ついでに伺いたいのです。
  89. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 お答えいたします。  椎名外務大臣が去年の九月にブエノスアイレスを訪問されました際に、オンガニア大統領、それから経済大臣との会談におきまして、この点について大臣から向こう側の意向を聞いております。このときは、大統領、経済大臣は本条約の早期批准について努力する、こういうことを言っておりまして、そのほかに事務レベルにおきましても批准をするのだということを確認をしております。  具体的に申し上げますと、昨年の七月にケタマンティ経済局長田中前大使に対しましても、二週間もあればアルゼンチン側は批准ができる、それから同じようなことを昨年の九月にもう一度大使に雷っております。それから同じ昨年の九月の末に椎名大臣に対しましてマルティネス内務大臣も日本側の手続の進捗状況とにらみ合わせて、アルゼンチン側も批准をする、こういうようなことを言っておりますので、政府といたしましては、アルゼンチン側も遅滞なく批准するものと思っております。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 いま政府から御答弁があったわけですけれども、先ほど私が申し上げましたように、日本とフィリピンとの間の通商航海条約が三十六年に日本では承認されておるわけですが、そのままになっていると思うのですけれども、この点念のため、ついでに伺っておきたいと思います。
  91. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 私からお答え申し上げておきますが、実は昨年の秋にフィリピンのマルコス大統領が来日されましたときに、椎名外務大臣からもできるだけ早期にひとつ批准をして手続を了してもらいたいということを要請しております。それからまた、先般三木外務大臣がマニラに参りましたときにも、先方のマルコス大統領にも、かねがね要請してあるとおり、国内でもそういう声も強いので、取り扱い上非常に日本も困るので、一日も早く批准を了してもらいたいということを要請してございますので、フィリピン側も日本の立場も十分考えておりますので、何とかこれが実現できるだろうと期待いたしておる次第でございます。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 対外債務の問題で、先ほど田原議員もお触れになりましたが、日本との対外債務でなくして、現在アルゼンチンの対外債務がどのくらいあって、主としてどのようなところからの借款であるかということが一つと、もう一つは、この共同コミュニケで、アルゼンチンの対外債務に対し、日本政府が力をかしたことについて、感謝されているのでありますけれども、日本政府が具体的にどういうふうに貢献をしたか、あるいはその中で債権国会議が開催された場合、日本は好意的に検討するとありますけれども、どういうふうな態度で臨むのか、あわせてお伺いをしたいと思います。
  93. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 アルゼンチンの全部に対します対外債務の合計でありますが、約三十二億ドルと聞いております。わが国がアルゼンチンの債務の支払いに対して貢献したといいますのは、一九五五年ころまでに、アルゼンチンは欧米諸国及び日本を含めまして清算勘定の残高が約五億ドルになりまして、その後一九五七年に至りまして、欧州諸国との間にパリ協定というものを締結いたしたのでありますが、この債権のたな上げ、それから支払いについて、延べ払いにつきまして、わが国が率先して各国に呼びかけまして、支払い延期の協定をつくったわけであります。  具体的に申し上げますと、日本アルゼンチンとの間では、一九五八年には合計七千五百万ドル、そのうち、政府の旧清算勘定の残が五千五百万ドルございましたが、そのほか商業債権が一千万ドル余あったのでありますが、それをその後三回にわたりまして支払いの延期をやりまして、一九六六年をもってこの五千五百万ドルの債務の支払いを終わったわけでございます。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 それでいまのおしまいのほうの答弁がいただいてないのですが、今後債権国会議が開催された場合、日本は好意的に検討するというようなことを述べておられるのです。先ほど田原議員も一つの提案をされているようですが、これは具体的に何を意味しているのですか。好意的な態度で臨むという内容はどういうものですか。
  95. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 この前に、去年でしたか、外務大臣が参りましたときに、日本政府に対しましてこういう要請がございまして、今後そのような債務の支払い繰り延べをやるという場合に日本側の協力を要請したわけであります。その後、御承知のとおり、アルゼンチン経済は立ち直りまして、いまのところそういった必要がないというような状況でございます。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 開発計画の問題ですけれども、共同コミュニケに、現在実施中の開発計画について実現への協力について好意的態度であるということを述べておりますが、現在実施中の開発計画とはどういうようなものを言われるのか、そして日本は具体的などういう協力をされようとしているのかという点についてお伺いしたいと思います。
  97. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 この開発計画のあらましをお答え申し上げます。  イリアの前政権が策定しました開発五ヵ年計画というのがございまして、昨年六月に成立しましたいまのオンガリア政権がこれを引き受けまして開発国防審議会が中心になってこの計画をやっております。来年の三月までにはこの開発計画を策定する作業を進めております。  その具体的なものは、ネグロ川上流のエル・チョコン・ダム計画というのがございまして、これはかんがい、発電の多目的ダムで、総額三億ドル、かんがい面積が五十万ヘクタール、発電百二十万キロワット、これに対して日本も参加いたすことにいたしております。  その次がブエノスアイレス港の近代化計画でございまして、これは運河の幅を広げ、それから水深を深めるためにしゅんせつをする。この工事の金が五千万ドルでございます。  それからもう一つは、鉄鉱石の開発計画でございまして、コルドバ市の付近のシェラ・グランデ開発計画、埋蔵量百万トンといわれております。  以上がこの開発計画の大体の概要でございます。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点、最後にお伺いいたしたいことは、十二条の二項で「当該他方の締約国の港、場所及び水域において、すべての事項に関して、最恵国待遇を与えられる。」それから三項でやはり「他方の締約国の領域に又はその領域から船舶で輸送することができるすべての貨物及び人を輸送する権利に関して、最恵国待遇を与えられる。」こういうふうにありますけれども、これはアメリカとかあるいはノルウェーの通商航海条約の場合には内国民待遇最恵国待遇と両方が与えられていたように思うのですけれども、ここでは内国民待遇が与えられておらないで最恵国待遇だけであるようです。その辺はどういうことになっておるのでしょうか、その点も伺いたい。
  99. 高島益郎

    高島説明員 先生御指摘のとおり、ただいまの点につきましては最恵国待避だけでございまして、内国民待遇を与えておりますのは、その三項の後段のほうにございます関税課徴金その他につきまして、貨物及び人が内国民待遇を与えられるということでございます。全般的な理由といたしましては、先ほど御説明しましたように、商船活動につきまして、アルゼンチン側自国商船保護につきまして非常に重視しておりまして、その関係から外国の船舶に対しまして内国民待遇を与えることに対する懸念がございまして、それがこの協定にあらわれた次第でございます。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 商船に対する懸念があったということでございますか。
  101. 高島益郎

    高島説明員 さようでございます。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 もうちょっと詳しく説明してください。
  103. 高島益郎

    高島説明員 今回この条約の批准を促進するにあたりまして、アルゼンチン側から特別に注文がございまして、昨年三月のアルゼンチン外務大臣と日本外務大臣との共同コミュニケの中に書いてございますとおり、「本条約第十二条の適用に際しては、」云々という規定が、コミュニケの五項の一番最後にございます。この趣旨は、アルゼンチン側自国の海運の発展のために行なう援助及び奨励は、必ずしも国際条約、特に政府間海事協議機関条約趣旨からさしつかえないという趣旨のことを念を押しまして、そういうことは決して外国に対する差別待遇ではないという趣旨のことを申し入れ、それをわがほうが了承した経緯がございます。そういうことから判断いたしまして、アルゼンチン側自国商船に対しまして、すべてそれに与えます待遇外国商船に対しても与えるということに対しましては、慎重な態度をとった次第でございます。
  104. 福田篤泰

    福田委員長 本件に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  105. 福田篤泰

    福田委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに御異議あり策せんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  108. 福田篤泰

    福田委員長 航空業務に関する日本国政府シンガポール共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、千九百五十四年の油による海水の汚濁の防止のための国際条約締結について承認を求めるの件、大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約締結について承認を求めるの件、国家と他の国家国民との間の投資紛争の解決に関する条約締結について承認を求めるの件、国際法定計量機関を設立する条約の改正の受諾について承認を求めるの件、旅券法の特例に関する法律案、以上六件を一括して議題といたします。     —————————————  航空業務に関する日本国政府シンガポール共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件  千九百五十四年の油による海水の汚濁の防止のため国際条約締結について承認を求めるの件大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約締結について承認を求めるの件  国家と他の国家国民との間の投資紛争の解決に関する条約締結について承認を求めるの件  国際法定計最機関を設立する条約の改正の受諾について承認を求めるの件  旅券法の特例に関する法律案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  109. 福田篤泰

    福田委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務政務次官田中榮一君。
  110. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいま議題となりました航空業務に関する日本国政府シンガポール共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  日本航空株式会社は、昭和三十三年にシンガポールへの運航を開始し、昭和三十七年に路線をジャカルタまで延長して現在に至っております。このシンガポールへの乗り入れば、当初わが国と英国との間の航空協定に基づいて行なわれ、また、昭和四十年以降は、わが国とマレーシアとの間の航空協定に基づいて行なわれてきたものでありますが、昭和四十一年五月二十八日、シンガポール政府は、わが国に対し、同国のマレーシアからの独立及びマレーシア航空、本航空会社は、その後マレーシア・シンガポール航空と改称した。回航空会社の共同運営に関するシンガポール・マレーシア間の協定締結の結果、日本・マレーシア協定上のシンガポール政府の義務を同日より一年後に終止させたい旨及びそれまでにわが国との間に新たな航空協定締結したい旨を通報越しました。よって、政府は、昭和四十一年十二月以降シンガポール政府と新協定締結のための交渉を行ない、その結果、協定案文について合意が成立しましたので、昭和四十二年二月十四日にシンガポールでこの協定署名を行なった次第であります。  この協定は、わが国とシンガポールとの間の定期航空業務について取りきめることを目的とし、業務の開始及び運営についての手続と条件とを規定するとともに、両国の航空企業がそれぞれの業務を行なうことができる路線を定めているものでありまして、わが国がこれまでに締結した多くの航空協定と形式においても内容においてもほぼ同一であります。  この協定により、両国航空企業の相互乗り入れが確保されるのみならず、わが国とシンガポールとの間の友好関係も一層促進されることが期待されます。  よって、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百五十四年の油による海水の汚濁の防止に関する国際条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、船舶から排出される油による海水の汚濁を防止するための措置を各国が協調してとることを目的として、一九五四年四月二十六日から五月十二日までロンドンで開催された国際会議において採択されたもので、船舶からの油の排出の規制、港湾の廃油処理施設の整備等の措置を締約国がとるべきことを規定しております。  この条約は、一九五八年七月二十六日に効力を生じましたが、その後、一九六二年三月二十六日から四月十三日までロンドンで開催された締約政府間の会議において大幅に改正され、この改正も、本年五月十人目に効力を生ずることとなっております。  わが国は、一九五四年の会議に参加し、同年八月十一日にこの条約署名しておりますが、条約を実施するために必要な国内体制の整備に時日を要し、その受諾がおくれておりました。  今般、条約規定を実施し得るよう国内体制を整備する見通しがつきましたので、世界の主要海運国の一つであるわが国といたしましては、この条約の当事国となり、諸外国と協調して海水汚濁を防止するための措置をとることが望ましいと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、大西洋のマグロ類の資源を最大の持続的漁獲が可能な水準に維持することを目的とするもので、昨年五月リオデジャネイロで国際連合食糧農業機関主催のもとに開催された全権代表会議において採択されたものであります。  この条約は、全締約国の代表により構成される大西洋まぐろ類保存国際委員会と称する委員会を設置すること、同委員会は、調査、研究及び勧告を行ない得ること、締約国は、この条約を実施するために必要な措置をとること等を規定しております。  わが国は、世界第一のマグロ漁業国であり、かつ、従来よりこの条約の作成及び採択に積極的に参画してまいりましたが、この条約の当事国となることによりまして、マグロ漁業における国際協調に貢献することになるのみならず、将来におけるわが国のマグロ漁業の安定した発展をはかることができると考える次第であります。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、国家と他の国家国民との間の投資紛争の解決に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、国際的な民間投資に関連して国家と他の国家国民との間に生ずる紛争を付託することができる国際的な調停または仲裁のための施設を設けるもので、一昨年三月十八日ワシントンで開催された世銀理事会がそのテキストを作成したものであります。  この条約は、投資紛争解決国際センターの設立、組織及び財政、センターに対する特権免除、センターの管轄、調停手続及び仲裁手続、仲裁判断の締約国による承認及び執行等について規定しております。この条約は、その規定に従って、署名国の批准書で二十番目のものが寄託された日の後三十日が経過した昨年十月十四日に効力を生じました。  この条約は、民間資本の国際的移動における投資環境の改善という観点から、意義が大きいものと考えられますので、この国際的な紛争解決のための制度の発展にわが国が協力することは妥当であり、また、開発途上の国の経済開発に貢献する民間の海外投資が増大することを希望するわが国としては、国民投資紛争解決国際センターの施設を利用することができるようにすることにより、この海外投資が促進されることを期待するので、この条約に参加することはきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、国際法定計量機関を設立する条約の改正の受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和三十年十月にパリで作成されたこの条約は、計量に関する諸問題、特に計量器類の使用に伴って生ずる技術上、行政上の諸問題を国際間で統一的に解決することを目的とする国際法定計量機関の設立、機構、任務、事業等について定めたものでありますが、この機関は、現在英、仏、ソ連等三十三ヵ国が加盟しており、すでにその設立後約十年間に多くの業績をあげております。  この機関の執行機関である国際法定計量委員会は二十人以内の委員で構成されることになっていますが、このたび、この機関の業務を一そう効果的かつ円滑に行なうようにするため、同委員会を全加盟国の代表者で構成するように条約を改正することになりました。  わが国は、昭和三十六年に条約に加入して以来積極的にその事業に参加して、計量の分野における国際協力に寄与するとともに、わが国の計量制度の改善、計量器の技術的進歩等につとめておりまして、わが国がこの機構を改善するためのこのたびの条約改正を受諾することはきわめて有意義と存ぜられます。  よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。  以上五件について、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。  続きまして、旅券法の特例に関する法律案の提案理由を説明いたします。  この法律案は、昨年五月九日開催されました第九回日米協議委員会におきまして、日本政府南方連絡事務所において、沖縄に居住する日本国民に対し日本旅券を発給することについて合意が行なわれ、その後事務的細目に関する日米間の打ち合わせを終えたことに基づき、本件実施に必要な旅券法の特例を定めること及び沖縄から本邦へ渡航する者に対する身分証明書の発給について、定めること等をその内容としております。  まず、旅券法の特例について説明いたします。  第一は、沖縄住民は従来日本旅券を取得するためには、一たん本邦へ渡航して通常の手続により旅券の発給を受けるか、あるいは米民政府発行の身分証明書により外国へ渡航後わが国の在外公館で旅券の発給を受けるかのいずれかの方法によらなければならなかったため、種々の不便がありました。そこで、この点を是正し、今後は沖縄住民が沖縄を出域するときから日本国当局の発給する旅券を所持し得るように、旅券発給手続の特例を定めたものであります。この結果、沖縄出域の当初から沖縄住民は日本国民であることが明らかにされた公文書を携行することになります。すなわち、旅券の発給申請の受理及び交付は、一般に都道府県知事または領事官が行なうこととなっておりますが、沖縄においては、日本政府南方連絡事務所長がこれを行なうこととしたこと、沖縄の地理的事情及び交通事情を考慮いたしまして本人の出頭を場合により免除できるようにしたこと、及び米国側が沖縄の出入域管理権を今後も保持することとなっている関係上、沖縄の出域許可に関する書類の提出を必要とされる場合のあるととを規定したこと、並びに沖縄においても外国との間を数次往復する必要のある者に対しては、数次往復用の旅券を発給できるようにしたこと等であります。  第二は、旅券発給等の権限に関するものでありまして、沖縄において発給する旅券は、外務大臣を発行権者としております。したがって、これらの旅券は日本国外務大臣の名義により発行されることとなりますが、これは沖縄住民の本土との連帯意識を尊重するとともに、日本国の権限ある当局を発行権者とすることにより、渡航文書としての国際的通用性を確保するよう考慮したものであります。  他方、現地における旅券行政を円滑、適切に実施できるよう旅券法上定められた外務大臣の権限を日本政府南方連絡事務所長に委任できることとし、また、実施上の細目については、外務省令で制定できることといたしました。  第三は、旅券の効力に関するものであります。わが国の旅券は、原則として本邦に帰国すると同時に効力を失うこととなっておりますが、沖縄住民等は、本邦を経由して外国へ渡航し、または外国から本邦を経由して沖縄へ帰る者も多いと思われます。しかしながら、本邦到着と同時に旅券が失効するというのでは、はなはだ不便でありますので、本邦を経由して外国へ渡航する場合にも本邦到着と同時に旅券を失効させることなく、旅券の発行の日から六月以内に本邦を出国すればよいこととし、帰路の場合にも本邦到着後一月以内は旅券の効力を存続させることといたしました。  次に、旅券法附則第七項の改正に関するものであります。従来沖縄住民が本邦へ渡航する場合には、米民政府から日本渡航証明書の発給を受けていたのでありますが、これについても第九回日米協議委員会において、日本側が渡航文書を発給することに合意が行なわれましたので、これを実施できるよう所要の改正を行なうものであります。  次に、総理府設置法の一部改正に関するものでありまして、同法第十三条の日本政府南方連絡事務所の行なう事務として、この法律に基づく旅券に関する事務を加えるとともに、この旅券事務については、外務大臣が指揮監督できることとしたものであります。  以上がこの法律案の提案理由及びその概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛成あらんことをお願いいたします。
  111. 福田篤泰

    福田委員長 以上で六件に対する提案理由の説明を終わりました。  ただいま説明を聴取いたしました条約等六件に対する質疑は、後日に譲ることといたします。  本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる十七日午後一時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時十二分散会      ————◇—————