運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-07-18 第55回国会 衆議院 運輸委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十八日(火曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大久保武雄君 理事 進藤 一馬君    理事 福井  勇君 理事 細田 吉藏君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 河村  勝君       阿部 喜元君    小渕 恵三君       大竹 太郎君    木部 佳昭君       徳安 實藏君    中川 一郎君       水野  清君    井上  泉君       板川 正吾君    小川 三男君       神門至馬夫君    野間千代三君       米田 東吾君    渡辺 芳男君       石田幸四郎君    松本 忠助君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         運輸省航空局長 澤  雄次君         気象庁長官   柴田 淑次君  委員外出席者         運輸省航空局技         術部長     松本  登君         日本国有鉄道総         裁       石田 禮助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     仁杉  巌君         参  考  人         (カナダ太平洋         航空機及びBO         AC英国海外         航空会社航空         機事故技術調査         団長      守屋富次郎君         専  門  員 小西 真一君     ――――――――――――― 七月十八日  委員内藤良平君及び石田幸四郎辞任につき、  その補欠として井上泉君及び正木良明君が議長  の指名委員に選任された。 同 日  委員井上泉辞任につき、その補欠として内藤  良平君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十四日  長野県に気象レーダー設置に関する請願(下  平正一紹介)(第三四三三号)  同(中澤茂一紹介)(第三四三四号)  同(原茂紹介)(第三四三五号)  同(平等文成紹介)(第三四三六号)  同(小川平二紹介)(第三四九五号)  同(小沢貞孝紹介)(第三四九六号)  同(吉川久衛紹介)(第三四九七号)  同(小坂善太郎紹介)(第三四九八号)  長野県に農業気象観測所早期設置に関する請  願(下平正一紹介)(第三四三七号)  同(中澤茂一紹介)(第三四三八号)  同(原茂紹介)(第三四三九号)  同(平等文成紹介)(第三四四〇号)  同(小川平二紹介)(第三四九九号)  同(小沢貞孝紹介)(第三五〇〇号)  同(吉川久衛紹介)(第三五〇一号)  同(小坂善太郎紹介)(第三五〇二号)  古江線、日南線の急行都井号存続に関する請願  (池田清志紹介)(第三五一二号) 同月十五日  長野県に気象レーダー設置に関する請願(羽  田武嗣郎紹介)(第三七一六号)  長野県に農業気象観測所早期設置に関する請  願(羽田武嗣郎紹介)(第三七一七号) 同月十七日  熊本県高遊原大型空港建設計画反対に関する請  願(松前重義紹介)(第三九八七号)  自動車検査登録協力会日本行政書士会連合会  の加入に関する請願吉田泰造紹介)(第四  一三六号)  長野県に農業気象観測所早期設置に関する請  願(増田甲子七君紹介)(第四一三七号)  長野県に気象レーダー設置に関する請願(増  田甲子七君紹介)(第四一三八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月十七日  久留米町上空航空路変更に関する陳情書  (第  四五一号)  徳島、深日間フェリーボート定期航路一般旅  客搭載に関する陳情書  (第四九三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  航空に関する件(BOAC機事故調査に関する  問題)  日本国有鉄道の経営に関する件      ――――◇―――――
  2. 内藤隆

    内藤委員長 これより会議を開きます。  航空に関する件について調査を進めます。  本日は、カナダ太平洋航空機及び英国海外航空会社航空機事故技術調査団長守屋富次郎君に参考人として御出席を賜わっております。  参考人には御多忙のところ、まことにありがとうございます。  この際、BOAC機事故調査報告書の要旨及び調査経過概要について、政府より説明を求めます。澤航空局長
  3. 澤雄次

    澤政府委員 昨年三月五日富士山ろくで発生いたしましたBOAC機事故につきましては、運輸省は、事態の重大性にかんがみまして、臨時に学識経験者からなる調査団をお願いいたしまして、事故原因技術的調査の実施をお願いいたしました。  調査団は、現地調査はもちろん、各種の実験研究を行なうとともに、数十回にわたる会議を重ねまして、調査の慎重を期するとともに、できるだけすみやかに結論が得られるよう、きわめて精力的に調査を行なわれ、六月下旬、お手元にお配りしましたような報告書運輸大臣に提出されました。  調査の結果は、航空機が御殿場市上空付近で、突然異常に激しい乱気流に遭遇して、設計制限荷重を著しく越える突風荷重が加えられたため、空中で分解したものと推定されました。  なお、この推定は、主として航空機損壊状況遺体損傷状況及び旅客が機内から撮影したカラーフィルムの画面の状況から行なわれたものでありますが、詳細につきましては、参考人守屋調査団長から御説明をいただくことにいたしたいと思います。
  4. 守屋富次郎

    守屋参考人 ただいま御報告がありましたのですが、それにつきまして若干補足的な御説明を申し上げたいと思います。  三月五日の十四時十五分ころに、富士山ろくにおきまして事故を起こしまして、直ちに調査団を私ども任命されました。ちょうどそのときにはイギリス調査団アメリカ調査団、それからカナダ調査団もすでに日本へ来ておりまして、三月八日に第一回の会合を開きましたのですが、そのときにはいま申しました調査団も来ておりまして、第一回の会合は四カ国合同会合をいたしました。それから数回合同会合が開かれましたのですが、その後は日本調査団がもっぱら調査を進めてまいりまして、お手元にありますような、御報告申し上げるような結論に到達した次第でございます。  この調査団の仕事といたしましては、再びこういうふうな事故を起こさないようにするために、徹底的に原因を明らかにする、そういう重大な使命を持っておりますので、私どもとしましては慎重に調査をいたしました。いやしくも、一点の矛盾もあってはならぬ。これ以外には考えられない、そしてその事柄もしっかりした裏づけがあるというところまで追い詰めなければいけないというので、私どもまず調査団員運航グループ証言グループ構造グループ発動機グループ気象グループと五つのグループに分けまして、それぞれ専門的な立場から調査を進めてまいったのでございます。その間、問題になりました点を拾い上げまして若干御説明申し上げたいと思います。  運航グループにおきまして調査しました結果は、パイロットそのほか乗り組み員には何ら事故につながるようなふぐあいな点はないということを確かめました。  証言グループのほうにおきましていろいろ問題が起こりました。まず証言グループのほうにおきましては、遺体写真自衛隊航空医学実験隊のほうに全部お願いしまして、そして医学的見地から遺体損傷状況を調べてもらいました。その結果としまして、ほとんど全員の人が共通的な損傷を受けておる。もう少し具体的に申しますと、ほとんどの人が顔面に損傷を受けておるということ、これは非常に大きな衝撃を受けたというふうなことが言えるわけでございます。  それから乗客がとりました八ミリカメラ、これをやはり自衛隊の一〇一測量大隊にお願いいたしまして、そのフィルムから逆に航跡あるいは高度、速度というようなものを計算してもらいました。その八ミリカメラにつきましてはすでに皆さんも御承知と思いますが、最後のところのちょっと前のところで二こま飛んでおるということ、これはわれわれの調査団において非常に重大な問題として着目いたしました。ちょうど最後のフイルムは機上から山中湖を撮影しております。それが八十一こま、非常に静かで、機体動揺等はその写真からは見られませんでした。そして八十二こま目と三こま目が、突然に飛んでおりまして、八十四こま目以下のところは、これははっきりわかりませんが、おそらく人の顔か、座席かあるいは床のカーペットか、色から判断しましてそういうふうなものが流れ写っておる。これはものとして写っておりませんで、ただ流れ写っておる。色がぼやっと出ておる。そういう程度のものです。この二こま飛んだということは一体どういうわけか。そこで調査団におきましては、そのカメラを分解しまして中の構造等を調べてみました。そうしますと、これは明らかに大きな衝撃を受けるとこういうことがあり得るというふうなことが発見されました。そこで、はたしてそうであるかどうかということを調べるために、いろいろな衝撃を加えてみました。そうしますと、千分の七秒という短い時間の間に七・五Gというふうな力になるまでの衝撃を加えてみますと、ちょうど二こま飛ぶという状態が発見されました。ですから、これによりましても突然に大きな衝撃を受けたということがわかります。  それから構造グループのほうで、これは非常に機体が破損しておりまして、相当調査には困難な状態がありましたが、詳細に調べていきますと、空中でこわれたのか、地上へ激突したときにこわれたのか、そういうふうな区別がつきまして、空中において右の翼だけが異常な衝撃を受けて二カ所からへし折れておりました。左翼のほうは何ともありません。衝撃をまず翼が受けまして、それからその慣性力によりまして胴体にひびが入って折れる状態になる。エンジンども、まだそのとき一挙には落ちませんでしたけれども、ぶらんぶらんになるような状態で、すべてそれのこわれていった状況が、慣性力によって大体みな同じ方向のほうへ力が加わったというふうなことがはっきりわかりました。  一つ大きな問題が構造グループにありました。それは縦尾翼の取りつけ金具うしろのけたの右取りつけ金具疲労のクラックが入っておった。これは非常に重大な問題でありまして、私どもとしましては、そういうふうなことが原因縦ひれがまず飛び、そして全体の安定操縦性が失われてこういう事故になったのではないかというふうな疑問を持ちまして、詳細にそれについて調べてみました。疲労亀裂が入っておりますけれども、残った部分の強度がどれだけあるか、それをまず調べた。これは製造会社であるボーイングのほうへ頼みまして、ボーイング会社で調べてもらいました。ところがそれは設計制限荷重の一一〇%の強さがまだ残っておったというふうなことがはっきりわかりました。しかし、それだけで尾翼原因でないという結論には到達できません。こわれ方等を詳細に調べてみますと、そういうふうなことが原因でなしに、それよりもはるかに大きな衝撃的な力が加わってこわれたというふうなことがいろいろなそのほかの構造部分のこわれ方等からはっきりしてまいりました。  発動機グループは、これはエンジンを分解しまして詳細に検討いたしましたところが、発動機事故前には何らふぐあいがなかったということ。それから申し落としましたが、構造グループのほうも、そのほかの部分につきまして、たとえば操縦系統など、そういうふうなところを詳細に調べてみましたが、これも事故前にふぐあいがあったということは発見されませんでした。こういうふうな問題を総合いたしまして、先ほど御説明ありましたような結論に到達したわけなのですが、その気象グループのほうで当日の気象状況というふうなもの、はたして機体損傷させるような強い乱気流があったかどうかということ。これは富士山地形模型をこしらえて風洞実験をやったり、いろいろ調べていただきました。また当日の気象に関する資料をできるだけ集めてもらい、また当日富士山を中心にしまして百五十キロ以内を飛んだ飛行機がちょうど百機ありましたのですが、ことごとくそれについて乱気流の有無を問い合わせいたしました。ところが乱気流を経験したという報告は、百機のうちで七十九機ありましたのですけれども、これは富士山からあまり近いところでございませんで、主として離陸、着陸の付近で遭遇したということであります。ただ四機だけが富士山の五十キロ以内のところを飛んだ、それがやはり乱気流を経験したという、そういうふうな報告でありました。そうしてみますと、われわれはこの乱気流というものが当日予報できなかったかどうかというふうな問題が当然考えられるわけなんですけれども、いまの気象学状態におきましては、とうていそういうふうな乱気流が存在するというふうなことを予報をすることはできません。確実にそういう乱気流が発生するということも断言することはできません。しかしながら、そういうおそるべき乱気流が発生しないという証明もできないわけなのです。結局こういうふうな乱気流というものは、これはかりに生じましてもごく短時間で消滅するもの、そしてその発生する場所もきわめて不規則な状態である。そういうふうなことは、これはもう前からわかっておりますが、結局それに押しつける以外に方法がないという、そういうふうな状態です。われわれがいろいろな資料によりまして調査をし、実験をし、研究をし、いたしました結果、先ほど御報告がありました結論以外には考えられない。そしてその結論に対しましては一々裏づけができるという、そういう状態にこぎつけることができましたので、きょう皆さまに御報告を申し上げることができるような状態になりました。  また、私ども調査団にはカナダ事故も同時に調査を命ぜられておりますが、これがまだ調査段階でありまして、最終の結論のところまでは到達できませんので、これはまた後に御報告申し上げる機会があると存じます。  この調査団がこの結論を導くまでには、非常に多数の人に御協力を願いまして、先ほど申しましたように、イギリス調査団アメリカ調査団も非常に協力的にやってもらいましたし、それから国内におきましては、先ほど申しましたように航空医学実験隊、一〇一測量大隊をはじめとして、航空宇宙技術研究所、あるいは気象庁、防衛庁の技術研究本部第三研究所等、こういうふうなところに非常にお世話になりました。非常にわれわれはその点ありがたく感謝しておる次第でございます。  それからなおつけ加えますことは、事故の当時、その機体の保存ということ、遺体の収容そのほかいろいろな事後処理をしていただく場合におきまして、機体の後の調査に支障がないように非常に配慮していただきまして、事後処理をしていただいたということ、これは静岡の警察の方及び自衛隊の方々ですが、非常にこれも、われわれ後の調査におきましてありがたく思っておる次第でございます。こういうふうに、われわれが調査をするにあたりましては、各方面に非常にお世話になりましたことをここに申し上げまして、私の御説明を終わりたいと思います。
  5. 内藤隆

    内藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。細田吉藏君。
  6. 細田吉藏

    細田委員 昨年は不幸なジェット機事故が、引き続いて一カ月の間に三件起こりました。守屋先生団長とする事故調査団皆さんには、カナダ太平洋航空機及びBOAC機につきまして、非常に詳細な厳密な調査を続けてこられまして、最近に至りまして、一年有余の御検討の結果、BOACについて御結論をお出しいただきまして、まことに私どもとしましては、事故原因究明のみならず、今後の事故防止見地からも、たいへんなお骨折りに対しまして、心から敬意を表したいと存ずる次第でございます。そこで、実は私どもしろうとでございますので、とんちんかんな質問に相なるかと思う点もあるのでございますが、その点はお許しをいただいて、二、三点お尋ねをいたしてみたいと思います。  最初に、これは航空局のほうで、今回の、いまお話のあったBOACほどではないかもしれぬが、これまで乱気流のための事故というものはございましたか、その点、状況、場所等簡単にちょっと言っていただきたいと思います。
  7. 松本登

    松本説明員 お答えいたします。  国内事故につきまして、乱気流によりましてこのような大きな事故があったことは聞いておりません。ただ外国におきましては、これはマイアミでございますが、ボーイング720が乱気流事故で墜落したことがございます。
  8. 細田吉藏

    細田委員 そこで、これは気象庁長官に伺っておきたいのですが、この乱気流による事故というのは非常に少ないということなんですが、今後の問題もあることなんですけれども乱気流一般的な状況というものについては常時どの程度観測をされ、把握をしておられるものでございますか。また予報ができる程度のものはあるのでございますか。その点はどうなんでしょうか。
  9. 柴田淑次

    柴田政府委員 乱気流についての把握でございますが、特に乱気流と申しましてもいろんな乱気流がございますが、いわゆる晴天乱気流、雲のないときに起こる乱気流BOACがこれによってやられたらしいという乱気流については、現在のところそれを事前に把握することはできません。したがいまして、それは研究しなければならぬ。現状としましては、たまたまその付近乱気流に遭遇した航空機からの報告によりまして、その付近乱気流があったということを知るというのが現状でございます。したがいまして、乱気流把握するということは、大体航空機報告で知るというのが現状でございます。  それからもう一つ乱気流予報でございますが、どこそこの非常に狭い範囲にどの程度乱気流がいつ起こるかは、集中豪雨と同じでございます。そういうような非常に局地的な予報は、いまのところできません。したがいまして、広範囲予報になるわけでございまして、たとえば風の強い日に山岳風下では気流の乱れがあるであろうというような、あるいは前線がある、不連続線がありまして、不連続線付近では乱気流があるであろう、あるいは高層天気図——先生御存じの高いところの天気図でございますが、その高層天気図の解析からどの付近には乱気流が存在するであろうということがわかります。その程度につきましては現在のところ強、中、弱、その三段階に分けておりまして、その三段階予報をするということであります。それも天気図または飛行機報告等によって調べました、ごく大ざっぱな予報でございます。その程度しか現状予報ができない状態でございます。
  10. 細田吉藏

    細田委員 先ほど技術部長お話にあったマイアミ乱気流による事故は、私ども承りますと、大きな山脈がある、その山脈付近で起こった。富士山の場合はこれは一つのこういう孤峰と申しましょうか、そういうことなんですが、かなりアメリカではそういう方面研究が進んでおるというふうに実は私ども伺っておるわけでございます。日本の場合、富士山付近で、しかもこれが天気のいい日に起こる。この日も好天気だったと思います。私ども国内飛行機に乗っておりましても、富士山付近を通る場合——最近は通らぬようでございますけれども、非常に富士山すれすれに通るというようなこともしばしば経験しております。富士山の北側を頂上すれすれに通るというようなことも、しばしば経験しております。そこでこのようなことの可能性ということですが、問題は今後の研究にまたなければいかぬですけれども、この点は団長守屋先生にお伺いしたいんですが、これはちょいちょいやられてはたいへんなことなんですけれども、伺い方がどうかわかりませんが、きわめて希有な例であると判断すべきか。これまでたまたまぶつかったことがないというふうに判断してよろしいのか。これは厳密にいえばなかなかおっしゃりにくいところだろうと思いますけれども、要するにかなりな程度にこういう可能性があるものと考えていいのか。これはほんとうに何十年に一回とかなんとかというふうに考えていいのか。その辺はどんなものでございましょうか。今後の研究にまたなければならぬのでございましたら、それでけっこうでございますけれども……。
  11. 守屋富次郎

    守屋参考人 ただいまお話ありましたように、富士山一つ孤峰でありまして、その孤峰に相当強いエネルギーを持った風が当たりますと、風下のほうの空気流れというものはかなり複雑なものでありまして、山脈うしろですと、いわゆる山岳波と称せられるものができるわけなんですが、富士山のような孤峰でありますと、山岳波に似たような流れも生じますが、同時に左右から流れ込むというふうな流れも加わりまして、かなり流れも複雑になってまいります。したがいまして飛行機破壊に導くというような乱気流というものは、いつでもあるとは実は限らないのでございまして、乱気流といいましても、いま気象庁長官からお話がありましたように、三段階ありまして、飛行機が大きくゆれるというふうな程度で済むものもありますし、BOACのように破壊されるというふうな場合もあるのですが、飛行機破壊に導くような乱気流というのは、これは一種のたつまきというとちょっと語弊があるかもしれませんが、空気の非常に強い渦巻きができるわけであります。この渦巻きというものは、できましてわりに短い時間で消えてしまう。そうして、できる場合もどこにできるというふうなことがはっきりつかめないのでございます。ですからBOACの場合も、もう一機そのうしろからついていった飛行機がかりにあったとしましても、その飛行機はあるいは無事に通過していったかもしれません。BOACの場合は非常に不幸な例だと思うのでございまして、めったとそういうふうな乱気流に遭遇するということはないのではないかと思いますけれども、しかし絶対にないという断言はできませんからして、やはり乱気流の危険があるというふうな場合におきましては、飛行機はその方向へはなるべく飛ばないようにしてもらいたいということでございます。乱気流につきましては、飛行機速度のおそい場合におきましては飛行機が大きくゆれるという程度で済むものでも、飛行機速度が速くなってまいりますと、衝撃的な力になりまして非常に危険な状態になる。したがってこの乱気流というものによって飛行機事故が起こるということも、最近のように飛行機速度が大きくなって特に問題がクローズアップされてきたというふうな状態であります。したがいまして、乱気流というふうなものにつきましては、これは今後やはり気象庁のみならず、関係の各省庁におかれましては、協力してこういうふうなものの解明をしていただけることが望ましい、そう考えておる次第でございます。
  12. 細田吉藏

    細田委員 そこで、これは航空局並び気象庁のほうに伺いたいのですが、常識的にも富士山付近気象状況——いずれにしたところで、一般の平地のようなことでないし、低い山のようなことではない。そこでいま守屋先生から伺いましたが、富士山付近気流状態といいましょうか、こういうものについては今後相当研究していただく可能性はどの程度を見るべきかは別として、この範囲はもう入らないようにするとか、こういうような結論がもし見出し得れば——その必要がなければ別ですが、その必要があれば、そういうふうにするというような方向での、何らかの、今後少し時間をかけての御研究なり御調査なりをお願いすべきではなかろうかというふうに、私どもしろうと考えには思うのでございます。そんなこと言わぬでも、とにかくそばを通らぬことにしてしまえばと言ってしまえばそれまでのことですが、これも範囲があることですし、そういう点について、運輸省として今回のBOAC事故の結果に基づいて、さらにいろいろ研究なり調査することについて、何かお考えになっておりますかどうかということを、どちらからでもけっこうですが……。
  13. 松本登

    松本説明員 航空機の運航につきましては、昨年のこの事故の直後、たとえば日本航空におきましては、三月七日でございます。それから全日空につきましては、九日でございます。会社から会社内部に対しまして運航に関する注意事項というものを即刻発出しております。その内容は、パイロットが運航する前には、天気図とか気象実況等十分注意して調べまして、東京−浜松間の風速が強く、気象上、天気図等から乱気流の発生が予想される場合には、この区間の飛行は行なわないこととしてやっております。そのほかの場合におきましても、富士山から生ずる乱気流の影響を受けない経路を設定するようにということをきめてやっております。現在でもこのような飛行をしておるわけであります。  それから、これは気象庁長官のほうから御説明があったと思いますが、気象機関といたしましては、この事故の直後に乱気流その他の異常な気象状態に関しましては、ブリーフィングとか気象図表の表示の方法、そういうところを改善いたしまして、同じ事故の再発を防止するように努力なさっておられます。  それから、先ほどお話がございましたけれども山岳波による乱気流調査研究につきましては、先ほどお話しのように、これは世界的にまだ未開拓の困難な問題でございます。しかしながら、今回の事故例にかんがみまして、先ほど団長からお話がございましたけれども、関連の機関、省庁、航空局その他関係の機関が共同して、これを解明する計画が現在とり進められております。運輸省といたしましては、この事故報告書を先月の二十三日にいただきましたものですから、この事故報告書の内容を全部お読みになれば、これが即事故防止ということになるのだと思います。したがいまして、この報告書を各運航会社に全部送りまして、これをよく読んでいただきまして、この事故の教訓を十分に日常の運航に生かすように指示しております。
  14. 柴田淑次

    柴田政府委員 ただいま航空局のほうから概略御説明がございましたので、私のほうとしては特に申し上げるというよりも、ただいまの説明を補足的に申し上げておきたいと思うのです。先ほども申しましたように、乱気流予報ができないということで、さしずめ目下東京の航空地方気象台でやっております処置は、富士山の上の風向、風速を天気図の上に記入いたすということでございまして、大体あのときは富土山の風速が三十ないし三十五メートルということでございましたので、そういった風速の風がああいった方向で吹いている場合には、こういった強い乱気流が考えられる、その強い乱気流の考えられる目安といたしまして、富士山の山頂の風向、風速を天気図に書き込んでいくというようなことなどを目下やっております。しかし、これはさしずめの措置でありまして、将来はやはり乱気流そのものを解明しなければならない。研究調査しまして解明しなければならないので、いろいろな研究調査方法をやってみたいと考えております。  現在は、本年の三月に富士山付近で、先生御承知のように、私のほうに気象研究所というのがございますが、気象研究所で富士山付近乱気流調査をやりました。しかし、悪天候のためにこれができませんでしたので、来年の二月に大体同じ時期を選んでもう一度やってみたいというようなこと。それからまた、鈴鹿山脈だとか赤石山系などについても同じように乱気流が考えられますので、そういったところにもやってみたい。それからいろいろなことで、その他数項目にわたって考えております。項目だけ申し上げますと、電子計算機による理論的の解明だとか、あるいは風洞実験、あるいは空中に物体を散布しまして乱気流観測をする。無人飛行機のようなものがもしもできれば、それに計器を塔載して乱気流をはかってみたいというような、それから雲の撮影をしたいというようなことでございます。  なお、こういった研究調査が大体実用的な段階に達しました際におきましては、関係の省庁間の協議によりまして、こういった調査で、乱気流の監視の方法、体制、それから警戒情報の伝達の具体的の方式を確立したいというように考えている次第でございます。
  15. 細田吉藏

    細田委員 いろいろ調査研究を進めておられる。たいへんけっこうだと思いますが、私は、とりあえずの方法としては、なるべくこういう危険なところは避けて通る、外国の飛行機も含めて。それは一応人間の知恵ですから、賢明なことだと思うわけなんだが、しかし、やはり根本的な科学的な調査をしていただく、それに基づいて飛行機を規制するなら規制するということが、やはり正しい行き方なんで、いまたまたま長官からもお話がございましたが、これは富士山だけじゃないと思いますね。日本アルプスもございます。われわれの郷里の近くでは大山も富士山と同じようなかっこうをしているのですが、早い話が、このBOACの貴重な事故の体験があるわけですが、もう一ぺんかりにこの山岳波なり、山岳波に伴う乱気流で、縁起の悪い話だけれども、かりにもう一ぺん事故があったとしたならばたいへんなことになる、何をしておったかということになる。そこでこの点については、予算上の措置その他についてもひとつ十二分に配慮していただいて、なかなかむずかしいことでそう簡単に結論が出るとは思いませんけれども、ひとつ十分なる研究をされると同時に、観測についても御努力をいただきたい、かように思うわけでございます。  大体この辺でやめますが、この報告が出ましてから、外国の学界その他関係の皆さんもいろいろこれについては関心を持っておられると思いますが、特に外国の飛行機でございまして、また遭難された方の国籍もいろいろでございますから、非常に関心も強かったと思うのですが、この報告書は外国文のもできているのでございますか。
  16. 守屋富次郎

    守屋参考人 できております。
  17. 細田吉藏

    細田委員 それに対して、その後外国からの反響等ございますでしょうか。これについては、大体この結論は妥当だろうというようなことでございましょうか、どうでございましょうか。
  18. 守屋富次郎

    守屋参考人 私ども報告書としましては、この日本文が正文でありますけれども、これの英訳のものもできておりまして、これはイギリスの大使館、オーストラリア大使館等関係のところへは届けてあります。私どももまだどういう反響があるかというところまで詳しいことを聞いておりませんですが、イギリスの新聞等に出ております記事では、この報告書が妥当なものであるというふうな批評が出ておったということでございます。私自身はそれを見ておりませんですけれども
  19. 細田吉藏

    細田委員 私はこれで終わります。
  20. 福井勇

    ○福井委員 各委員の了解を得まして、非常に簡単でございますが、お尋ねしたいと思います。  まずその前に、当時柴田気象庁長官松本さんたちもこれに関連しておられましたが、私もちょうど運輸政務次官をしておりまして、特にその機体の処置やらいろいろあと始末について私が担当しました関係上、皆さんが非常に御努力くださったことをいまも感謝しておりますし、また御殿場の市をはじめ、消防団とか警察関係だとか住民の人々が、そのあと始末の処置について非常に親切かつ速度を上げてやっていただいたために、英本国からもこの不幸を悲しむと同時に、その処置については感謝されているということを聞いておりますことは、日本側としては不幸中のせめてもの幸いだと思います。これは皆さんのお力の結果だと思って、いまも私は感銘しておるところであります。  時間がないので簡単にちょっとお尋ねしたいのでございますが、当時新聞あるいは週刊誌その他で報道しております表現の内容が、乱気流に突入したときに、そこでいきなり空中分解が起こった印象を与える記事がほとんどでございました。当時、私はその翌日、数千メートルにわたって部品が落ちておるということを聞きまして、その部品を全部ではありませんが一部見まして、いきなり乱気流に入して、まるで木の葉をその場で垂直にというのは、ここにも落ちた速度が出ておるようですが、その表現がどうも間違っておるような気がしておるのです。その結論をいま見ますと、これにおいてもその結論は権威ある守屋さんほか技術家の方々が結論づけられたことで私も信頼を申し上げておりますが、結局飛行機自体も正常、飛行機の各機械関係の作動もすべて正常な飛行を続けていた、こういう前段があって、激しい乱気流が存在することを予知することができずに突然、設計制限荷重を越える大きな衝撃を受けて、こういう結果になったと結論づけられております。私はこの資料は結局信頼しております。そうであったかなということで信頼しておりますが、いまでも技術家の一人として、前段の、正常な飛行が続けられておった——正常な飛行は続けられておったが、私は落下しておる部品を見て、乱気流に突入する以前にすでに、エンジンの故障などでなくて、機体の小部分部分的な故障が起こっておったのであろうというふうに、私は想像でなくてそう思うのです。これは一万六千メートル前から部品が落ちておるということがここに出ていますから、私はその点についても相当よく調査されておるな、こう思うのです。それであそこを歩いてずっと調べてみても、部品が落ちておった。警察当局へ集めてみて、これは乱気流にぶつかって空然空中分解したような当時の報道の表現については、技術家として考えなくちゃならぬ、こう思ったのでございます。これは守屋さんにお尋ねしても、団長として正式な書類でございますから、これを信頼申し上げるのでございますが、私のその見解については守屋団長どうお考えでございますか。
  21. 守屋富次郎

    守屋参考人 いまの御指摘の点はごもっともだと思います。この各種の破片の落ちた場所、これは精密にこの付図に載っております。長さ十六キロ、幅二キロにわたって落ちております。どういうふうにして落ちたかということを調べるために、落ちた部品がどういう——その形によりまして空気抵抗が違います。重きによりましても空気抵抗が違います。そういうようなものを風洞実験などによりまして、この部品はどういう空気抵抗があったであろうかというふうなことを調べまして、そしてそれを空中で落とした場合にはどういう軌道を描いて落ちるかということを計算いたしました。そうしますと、落ちたところから今度逆にこれをトレースしていきますと、どこで機体から分離したということがはっきり出てくるわけであります。そういうふうにして調べました。そういたしますと、最初に非常な強い乱気流にぶつかったときに、先ほど申しましたように右の翼がへし折られた。まだくっついておりますが、へし折られたのであります。それからエンジンや胴体も割れております。それからエンジンども、ぶらんぶらんでありますが、まだついております。それがそういう状態で飛行を続けておったわけなんですが、富士山風下は当日の気象状況から判断いたしますと、最初にぶつかったような激しい乱気流というものがかりになくても、相当な乱気流がありまして、機体がその間非常にゆすぶられながら行く、その間にぼろぼろ落ちていった。そのどの辺で何がはずれたかというふうな事柄も、計算の結果から逆算しましてはっきりしております。それがすべて最初に衝撃を受けたところよりもあとのところではずれております。  それから遺体につきましては、これはあまり残酷なことでありますから、報告書には書いておきませんでしたけれども遺体の中に一人、太もものところから非常なシャープなもので切られたような、両足がなくなっておる遺体があります。そうしてそれが自由落下しておる。どうしてそういうふうなことが起こったのであろうか。これは最初の衝撃によりまして胴体に大きなひびが入りました。そこからこぼれ落ちかけている状態のときに、またゆすぶられてそれがふさがったりあいたりしまして、そうしてついに離れて落ちたという、そういうふうな状況。もう一人は足をやはり何回かシャープなものでたたかれておるという、そういう状態も残っております。これも非常に残酷なことでありますからして、報告書には一切書かぬことにいたしましたのですけれども、そういう事実もありまして、私ども結論といたしましては、やはり最初に大きな衝撃を受け、それからあと小さい乱気流でゆすぶられゆすぶられいく閥に、ぼろぼろと離れていったという、そういう結論に到達しておるわけでございます。
  22. 福井勇

    ○福井委員 結論的には、最後段階において、乱気流の影響であったということだけは、これははっきりしましたが、いまのような点についても、今後私は私なりにいろいろと資料を、十分書いてない資料まで守屋さんあたりから提供していただいて、またいろいろ研究してみたいとも思いますので、そのときにはまた資料を、本委員会でなくてもけっこうでございますから、見せていただいて将来のためにしたいと思います。たいへんありがとうございました。
  23. 内藤隆

    内藤委員長 小川三男君。
  24. 小川三男

    小川(三)委員 航空局の方にちょっと伺いますが、こういう飛行機事故が起こった場合には、起こした国に——たとえばその飛行機を持っている国に調査権があるのか、それとも、起こされた国に調査権があるのか、その点はどうですか。旗国主義であるのか。
  25. 松本登

    松本説明員 国際民間航空条約によりまして、飛行機が落ちた、事故を起こしたその国、その場所の国が調査権を持っております。それから、その飛行機の登録国は、条約によりまして調査に参加する権限を持っておるわけでございます。
  26. 小川三男

    小川(三)委員 そうすると、たとえば公海上で落ちたような場合は、どういうことになるのですか。
  27. 松本登

    松本説明員 登録国でございます。
  28. 小川三男

    小川(三)委員 そうしますと、たいへんこれは言いにくいことですが、たとえば東南アジアのように工業の発達しないような地域がありますね。そういうような国で墜落事故が起こった場合に、いわゆるその国に、起こされた国にそういう事故を精密に調査するだけの能力があればいいが、なかった場合にはどういうことになりますか。
  29. 松本登

    松本説明員 条約によりまして、その場合にはその事故が起きました国は、自分の国の持っております技術によりまして、製造国のほうに、事故が起きましたらすぐ参加してもらいたいということを要請いたしますと、製造国は参加できるわけでございます。先ほど申し上げましたように、その航空機の登録国は当然参加するわけでございます。その場合には三国で調査するということになります。
  30. 小川三男

    小川(三)委員 二月の場合はアメリカも参加しておりますね。今度の場合もイギリスから参加しておるけれども、主体はあくまで日本でやっておるということでよろしいのですね。
  31. 松本登

    松本説明員 今回の場合は、守屋先生団長といたします日本政府調査団が、調査の責任を持っておるわけでございます。
  32. 小川三男

    小川(三)委員 どうもありがとうございました。
  33. 内藤隆

    内藤委員長 参考人には、本日御多用のところ御出席をいただき、長時間にわたりまして貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。      ————◇—————
  34. 内藤隆

    内藤委員長 次に、日本国有鉄道の経営に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。徳安實藏君。
  35. 徳安實藏

    徳安委員 悪い時間になってしまいまして、委員の諸君も、また鉄道の諸君にも御迷惑だと思いますが、しばらくごしんぼうを願いたいと思います。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕  私は衆議院に初当選しまして以来、ずっとこの運輸のほうを担当しておりましたが、途中でほかのほうに関係いたしまして、今度十年ぶりにこの運輸に帰ってまいりました。自分の本拠に帰ったような気持ちがするのでありますが、委員になりましてからこの委員会になるべく出席をして、与野党の諸君のいろいろの御意見等を拝聴いたしておりますが、非常に淡々として謙虚な気分で質疑応答が行なわれておる状態を見まして、帰ってよかったという気持ちがするのであります。たまたま国会も最終日に近づいてまいりましたので、私も少しばかり国鉄のことについて伺いたいと思いまして、きょうお願いしたわけでございますが、決して爆弾を投げるというような考え方で言うわけではありませんから、謙虚な気分で心を打ち明けて総裁からもお話を承りたいと思います。  総裁はお話に聞きますというと、給料を辞退されているといううわさでございますが、私はほんとうのことを知らないので、真実辞退されておりますか、ちょっとそれをお伺いいたしたいと思います。
  36. 石田禮助

    石田説明員 御質問のとおりであります。もっとも私が国鉄総裁になりましたときには給料の——そうですね三分の一かちょうだいをしたのでありますが、それは鑑査委員長を六年やっておりました。そのときに、私が鑑査委員長を引き受けておるときは、一年にウイスキー一本であるということであったのですが、その後ウイスキーがブランデーに変わり、一本が六本に変わるというような変遷はありましたが、いずれにしても無給であった。ところが、これが非常に財界で評判が悪い。君はそれでいいんだが、あとの人はどうする、こう言うので、国鉄総裁になりましたときには悔い改めて、給料の三分の一をちょうだいをしようということでやったのです。ところが、たまたま鶴見の大きな事故がありました。あの現状を見るにおいて、どうも国鉄総裁の仕事なんというのは、これは給料をもらってやる仕事じゃないということで、もとに戻りまして無給というふうになりました。無給といえば、ただ給料をもらわぬというだけのことなんで、しかしそのほかに賞与金あるいは退職手当というものは、これはもらうということにしてあります。要するに全然無給じゃない、一部分無給ということなのであります。
  37. 徳安實藏

    徳安委員 辞退されるものは、年間ほぼ幾らくらいになりますか。
  38. 石田禮助

    石田説明員 私は、国鉄総裁の給与がいまどれくらいか、はっきりよく覚えておりませんが、四十万円じゃないですか、そういうことに聞いております。
  39. 徳安實藏

    徳安委員 それはなんですか、ただもらわないということで済んでいるのですか。やはり寄付するような手続でもされているのですか、どうなんでしょう。
  40. 石田禮助

    石田説明員 私は、給料をやるというから要らぬ、おれはもう無給でやるんだということで、別に形式的なことはやっておらぬのであります。それで通っているのでありますからして、それで私はいいと思っております。監査委員長のときには、すでにそれでやってきたんですから……。
  41. 徳安實藏

    徳安委員 これはほんとうに、そういう気持ちでなされておることについては敬意を表しますが、しかし、かりに四十万円にいたしましても、年額にすれば五百万円になりましょう。そういう気持ちで辞退されたのはけっこうでしょうが、またもっと有効に使える道があるのではなかろうか。国鉄にしましても、法の盲点によって救い得られない職員もあるかと思います。いろいろな面において若い諸君の奨学等の問題もありましょうし、まあ金が要らないから断わる、要らないというんじゃなくて、そういうことをもう少し適切と言えば語弊があるかもしれませんが、そういう方面に振り向けられるお考えはありませんか、お伺いいたします。
  42. 石田禮助

    石田説明員 もしもおっしゃるようにほかへ振り向けるということになりますると、一たん給料をちょうだいしてそれへ振り向ける、こういうことにせざるを得ぬと思うのでありますが、そうなりますと、御承知のとおり税金に大部分取られちゃって、振り向ける額は少ないのでありますから、そのまま国鉄に残して、国鉄がそれを有効に、適切に使うということにおいて私は効果が多いと存じますので、いまのような方法をとっておるのであります。
  43. 徳安實藏

    徳安委員 そうしますと、それはもらわないことにおいて税金を払わないでもいいんだということで、そして何ぼ残っているかは、手続しておまえのほうで自由にせいということで事務当局にまかしているということでありまして、これは事務的なことですから副総裁にお尋ねしますが、どんな手続を、どういう方法によって——ただ払わぬでいいから滞っているのか、あるいは国鉄に寄付の形で処理されているのか、経理はどんなになっていますか。
  44. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 初め総裁が就任されまして、十万円以上は要らないというようなお話で、これは正式に立案いたしまして、十万円だけ給料として差し上げるということに手続いたしました。これは正式に書類に残っています。その後鶴見事故の直後、いまのようなお話で、一切要らない——ただし総裁といえども共済組合の組合員でございます。たとえば病院の利用等ございますので、共済組合の掛け金だけは取っていただきませんと組合員としての資格が失われて、病院の利用ができない、こういうことになりますと困りますので、掛け金だけは差し上げてあります。これも立案しております。したがいまして、その残りの部分——私のほうは役職員給として一本になっております。これが年間、過般の予算委員会でも御説明いたしました、たとえば職員全般のベースアップの関係等のごく一部に回るわけでございまして、総裁の給料が余っているからと申しまして、それがいわゆる剰余金として計上されるわけでなしに、役職員給として一本で経理されておりますので、当然、毎年人件費が足りませんので、その一部に穴埋めされている、こういう手続になっているわけでございます。
  45. 徳安實藏

    徳安委員 総裁は毎日本社に精勤——御出勤になるそうでありますが、一体国鉄のどの程度のものの決裁をなさるのか、お目通しになっておりますか、そう詳しくなくていいですから、毎日毎日お出かけになってどういうものを決裁しておられるか、そういうことをちょっと伺いたいと思います。
  46. 石田禮助

    石田説明員 それはどうも答弁、非常にむずかしいと思いますが、私はいままでの経歴上からいって、技術のほうのことは全然わからぬ。でありまするからして、大体の大きな問題につきましては私の意見を申し上げまするが、私が一番熱意を入れておるところは、要するに国鉄の積極的の合理化、つまり投資効果をいかにしたらあげることができるか、それにつきまして、つまり旅客の面、貨物の面において国鉄というものがほんとうにその機能を発揮して投資効果をあげる、こういうことに実は趣味を持っている、熱意を入れてやっておるのであります。  一々こまかいことにつきましてはちょっとここで申し上げてもしかたないと思いますので略しますが、大体はそういうことであります。
  47. 徳安實藏

    徳安委員 私は運輸委員に今回なりましてから、最近の衆参両院における運輸委員会の速記をずっと勉強してまいりました。読んでいるうちにどうしても解せぬ点があるのであります。私も自民党の党員でありますから、本来なら運輸部会にでも来てもらって話をしてもいいと思ったんですけれども、速記に載っておることですから、やはりこれは国会の場で解せぬ点をただしたほうがいいんではないかと思って、先輩に対する礼を失するかと思いましたけれども、きょうおいでを願ったわけであります。私どもの信念といたしまして、政治の仕事はせにやならぬ、これはもうあたりまえのことであります。したがって、政府も、また政府機関の代表者も国会でうそを言っちゃいかぬ、一時のがれのことを言ってはいけない。自民党内閣でありまする限り、自分のことにもちろん国会で責任を持つばかりじゃなしに、前任者の言ったことでも、国会で約束したことはこれを守り続けるというところに道義的な、あるいは政治的な責任が果たされるのでありまして、かりそめにもその場限りのことばで終わるようなことはあってはならぬと、私は日ごろ考えております。またそうすることが国会の権威を高め、お互い国民の信頼を得るゆえんであろうかと思うのであります。ところがややもしますると、その日をただのがれればいいのだ、この国会さえ切り抜ければいいのだということで、心にもないことではないかもしれませんけれども、一時のがれの答弁をする癖がございます。特に官僚にはそれが多いのであります。石田総裁も私も官僚じゃありません。純粋な民間人であります。野人でもあります。せめてお互い私どもは、方便に使ったり、その場限りにのがれるような、またあと味の悪いようなことをしないように、安易な考え方でなく、あくまでも言質を重んじて堂々と国会に答え、国民の信頼にこたえるという態度が望ましいことと思うのでありますが、これに対する石田総裁の所信を伺いたいと思います。
  48. 石田禮助

    石田説明員 ただいまの仰せられること、私はごもっとも千万だと思っております。私としても同じような気持ちを持って、国鉄総裁としての仕事をやっておるのであります。どうぞその点は御了承願いたいと思います。
  49. 徳安實藏

    徳安委員 まさにそのとおりであろうと思います。まことにけっこうなお話を承りまして、私も満足をいたします。  それでは、これから本論に入りまして少し伺いたいと思いますが、すでに四十三年度の予算とも取り組む時期が内部的にはきております。そこで、第三次の計画を実行されます、つまり四十三年度の予算編成におけるところの石田総裁の心がまえ、抱負、経綸、所信、これをきわめて簡単にひとつ、そう詳しくなくてもいいですから、大筋だけをちょっと伺えば非常にけっこうだと思います。
  50. 石田禮助

    石田説明員 私が申し上げるまでもなく、国鉄がいま直面している一番大きな問題というものは、第三次計画を遂行するということでありまして、すでに四十年からスタートしたのでありますが、ことしは四十三年度の予算の問題をどうするかということが、これが目の前に横たわる大きな問題であります。すでに徳安さんにおいては十分御承知のことでありまするので、私からちょうちょうとそれを述べる必要はないと思いますが、要するに国鉄のいま直面している一番大きな問題というものは、最近における輸送関係の形勢の非常に変わったということ、昔はつまり国鉄というものは、日本の輸送機関の根幹として独占性というものを十分持っておった。ところが最近は道路の発達、輸送機関の発達によりまして、国鉄の独占性というものに非常に大きなひびが入ってきた。その結果はどういうことになるかというと、つまり収入の増は増でありまするが、ペースが非常に弱い。一方、経費のほうにおいては、人件費その他の関係によって年々ふえてくる。しかも、そのペースは非常に強い。ここに両方から攻められて、国鉄の自己資金というものの入り方が非常に弱くなってきた。つまり終戦前における国鉄なんというものは、工事資金のほとんど三分の二見当というものは自己資金でやっておったのですが、最近においてはもう自己資金なんていうものは全然問題にならぬ。すべてこれは借金でやらなければいかぬ。そこへ持ってきまして、国鉄がいま第三次計画で直面している一番大きな問題は通勤通学の問題であります。これはわれわれは五千二百億の予算でもって、ひとつ何とか交通地獄というものを緩和しょうということで出発したのでありまするが、この通勤通学者の年々の増加率というものは、われわれが予期した百分の七というものではとてももうだめだ、百分の九は見なければいかぬということで、五千二百億の予算をもってしたやつが、どうしたって約二千億はふやさなければならぬということで、そこに非常に大きな狂いが出てきた。しかも、この通勤通学の輸送力増強というものは、施設に金がかかる。大部分は、御承知のとおり東京、大阪近所でありまするがゆえに、その土地代だけでも約五割近い買収費を要する。そうして、そのほかの工事費や何かについても、実に予想外の大きな金がかかる。そういうぐあいに工事費というものが非常に金がかかるにかかわらず、収入というものは御承知のとおり、非常に大きな割引でやっておるのでありますからして、とても投資に対する収入というものは見合いがつかぬ。全くこれは、国鉄としては非常に大きな負担です。どうして一体これをやるかということになると、これはどこからか利息のつかない金を持ってこなければいかぬ。  そこでわれわれが考えておりますことは、公共負担というものをぜひ是正してもらわなければならぬ。御承知のとおり公共負担というものは、昭和二十四年から始めまして、昭和四十二年までにおいて一兆二百億をこえるのであります。そういうもので、四十二年度においては八百九十億、これをひとつ是正しなければいかぬ。御承知のとおり公共負担というものは、政府の政策を国鉄の犠牲においてやっているのです。そうでなくてさえ国鉄というものは、公共性ということをもう十分に利用されまして、運賃というものはしょっちゅう安く押えられてきておる。それは物価政策その他の点からいって、徳安さんにおいて十分御承知のことだと思う。たとえば電電公社なんというものは、昭和二十九年において電話料値上げの結果、昭和十一年に比べて二百三十三倍になっている。そのときに国鉄というものは旅客のほうで百十六倍、それから貨物においては百五十何倍ですか、ということで、旅客の収入は国鉄としては大きいのでありますからして、電電公社に比べるというと旅客の収入においては半分以下です。そこへもってきてさらに、その後三十二年、三十六年において運賃の値上げをしましたが、それでもなおかつ国鉄の旅客の運賃というものは、電電公社の二百三十三倍に比べて百六十倍。昨年四十一年に運賃の値上げをしました結果、旅客の運賃というものを上げましたが、それでもやっぱり二百二十倍。なお電電公社の二百三十三倍に比べて低い。  こういうようなことで、自己資金というものの流入を非常に狭められてきたのです。そこへもってきて、さっき申したような公共負担というものが、国鉄の犠牲において政府は年々政策を遂行しておるということで、二十四年以来今日までで一兆をこしておる。さらにそのほかに、御承知だと思うのですが、納付金というものがある。これは固定資産税のほかですよ。これは全く地方税を政府が負担すべきものを、国鉄に肩がわりさしておる。さらにそのほかに申し上げれば、赤字線というものの負担がある。昭和四十年度における赤字線の負担は千二百三十億になっている。ということで、要するに、運賃というものは安く押えられて、自己資金の流入を狭められて、そのほかに政府が政策を国鉄の犠牲においてやっている。これを考えたら、国鉄としてはたまらぬ。ちょうどこれは、自己資金の流入を、口を狭められて、国鉄にめしを食わせぬ、栄養をとらせぬ、栄養分をとらせないで置いておいて、国という大きなお荷物を国鉄にしょわせる、もうこれは国鉄としては、政府に対して何とかこの態度というものを是正してくれないかとお願いせざるを得ぬ。これは私は当然要求し得ることだと思いますので、四十三年度の予算の折衝におきましては、ぜひひとつこれを実現したいと思っております。  この問題につきましては、実は四十二年度の予算をきめます時分に、われわれは、政府として出資してくれということを希望したのであります。この点は、自民党でつくられました国鉄基本問題調査会、さらに内閣でつくられた国鉄基本問題懇談会においても、政府は、国鉄の現状に即して、第三次計画を遂行する上においてはぜひとも出資というものと、公共負担の是正をする必要がある、こういうことを非常に強く主張しておるのでありまして、これは私は何も自己発明でも何でもない、これは私は堂々と主張し得ることだと思います。大蔵省にそういうことを主張しておるのであります。  ただ、これまでにおいては、そういうことを主張するのは予算折衝のときにおいて初めて主張する。しかも大蔵省の諸君の頭は、そのときには各方面から来たる要求というものをいかにぶった切るかということで頭は一ぱいなんだ。そういうときにこれを持っていったってだめだ。これはおもむろに、時をかしてやらにゃいかぬということで、ことしは四月から大蔵省の当局と、国鉄の情勢をわかってもらうために、いろいろ折衝してやっておるのでありまして、最近は相当に了解をせられてきたというふうにも私は考えておりますので、この四十三年の予算におきましては、投資の問題、そしてさらに公共負担の是正という問題、さらに納付金の是正というものに対して、われわれが希望する点は相当に解決がつくのではないか、またそういうことを希望しておる次第であります。
  51. 徳安實藏

    徳安委員 いろいろ伺いました。同時に、これは大体これまで委員会等で総裁が説明されておりますから、私もこれを拝見して大体承知をいたしております。  そこで、あんまり詳しいことは申し上げませんが、ただいまお話の四十三年度においては、政府に望んでおられる三点、それは金額は一体どのくらいで、どれくらいな要求をなさり、そしてその可能性が今度はあるという見通しなのか、ただ観念論でなしに、もう少し具体的にお話が願えないでしょうか。
  52. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 その点につきましては、いま総裁から御説明いたしましたとおり、四十二年度の予算編成のときに、大蔵、運輸両大臣の間で、四十三年度予算編成までにこの問題を事務的に検討するというお約束ができているわけでございます。それは、政府出資、公共負担等という文句まで入っております。  実はけさも大蔵省といろいろ話をしてきたところでございまして、私、委員会に間に合いましたけれども、午前中そういう話を大蔵省としている最中で、大蔵省もいま、けさあたりの考え方では、私どもの言っていることが非常によくわかった。資料だけでも、相当膨大な資料を実は約三カ月間こまかく勉強し直してもらいまして、そして、このままではやはり国鉄は財政的に参ってしまうという事柄自体につきましては、ほぼ了解の線に達した。むしろこれからあとは、国の財政として、財政力の面からどう見るかという問題——あるいは、最近数日間米価でもってほとんど折衝できませんでしたけれども、食管の赤字会計の問題等もいろいろあるようでございます。そういった国全体の財政問題の中でこの問題をどういうふうに位置づけるかという、大蔵省プロパーの問題も十分検討しなければいかぬというふうに申しておりますし、今後の税収入の見通し、あるいは公債の発行等につきましてもいろいろ意見が分かれているようでございます。そういったことについて総合的に検討して、現在では何とか八月の下旬までには一応の見通しを立てたい。そうして、い総裁が申しましたとおり、十二月の予算編成期に入りますと、何億あるいは何千万という金の折衝になりまして、私のほうから要求いたします百億オーダー、あるいはそれ以上の金になりますと、もう全然余地がございません。なるべく早く、八月ないし九月の来年度予算のほんとうの骨組みをつくり上げる際に、国鉄問題を織り込んでつくり上げてほしい、またつくり上げるべきだという議論も私どもいたしております。大蔵省のほうも大体そういう気持ちになりつつあるというふうに思いますので、現時点で幾ら要求しているとか、あるいは向こうが幾らくらい出しそうだということはまだ申し上げる段階でなしに、これから大体詰めの段階に入るわけでございます。私どもといたしましては、残念ながら、目下のところ国鉄の現在の力だけではいかんともしがたい方向に財政が向かいつつありますので、ここで大きなてこ入れをしてほしいという強い要望は、重ね重ね主計局当局に話をしておる次第でございまして、現在まだ数字を申し上げるまでの詰めにまで至っておらないという事態でございます。
  53. 徳安實藏

    徳安委員 速記によって私は拝見したのですが、総裁の説明によりますと、第一次五カ年計画のときには、輸送力増強というものについては、ほとんど修理というような点に終始して、金を出すことはできなかった。第二次五カ年計画において、輸送力増強に金をとってあったが、自分が三十八年に就任したときには、もうその計画が三年済んだあとだった、それが目標の四割くらいしかできていなかった、あとの二年のうちに残った六割をやろうと予算化するように努力したけれども、とうとう政府のいれるところとならなかった。こうお話になっております。これは事実だろうと思います。さぞ残念だったであろうと思いますが、総裁としても引っ込まずに、もう少し熱意を持って努力されることが必要ではなかったかとも思います。同時にまた、この第三次計画についても、総裁の説明を聞きますと、これまでのやり方ではいけない、やはりこれは一つ政府の案としなければいけないし、また財政的な裏づけもする必要がある、そういうことで基本問題の懇談会をこしらえて、そこで決定をして、そうして政府の強い支持を受ける、そうして約束手形を二本とったから、まあ待っておってくれ、来年は必ず——去年の速記でありますが、来年、四十二年度には必ず所期の目的が達せられるのじゃないかと思うという、非常に頼もしいお話が速記に出ております。ところが、そうした努力にもかかわらず、約束手形だったと信じておられたにもかかわらず、とうとう昨年は九百億の政府出資もだめになってしまった。私は先ほど申し上げたように、総裁が就任直後に予算化して努力しょうとされたことも政府のいれるところとならなかった、四十二年度においても大きい期待を持たれながら、九百億が出資不能になった。こういうことを考えてみますと、一体これはほんとうに政府が悪いのか、国鉄総裁以下の諸君にも熱意が足らないのか、あるいは国が出資をする上において、受け入れ体制が整備されて、これなら安心だという考え方で出したかったのが、それができなくて出さなかった、これはいろいろ議論があると思いますが、結論は、何としても解決しなければなりません問題です。政府が悪いか国鉄の当局が悪いか、これは別といたしましても、いずれにしても解決しなければなりません問題です。  そこで、これを解決する道は、少なくとも総裁が断固決意を持ってその処置に邁進される以外にはない。そうして、わからない当局があるなら、これを説得されなければいけないと思うのです。もう二回までもそういう苦杯をなめておりますが、四十三年度は、いま副総裁のお話のように折衝されておるそうでありますから、私ども満足のいくようなものはできるとは思いますけれども、しかし必ずしも楽観は許せないのではなかろうかというように思うのであります。  そこで総裁に、これはまことに失礼なことですから申しにくいのですけれども、ことし再任されたということは、まことにおめでたいわけです。老骨をひっ下げてこの難局に当たられるということは非常にお気の毒だと思います。しかし、過去において、そういう苦い経験をお持ちになっておるのですから、今度は運輸大臣から交渉しましたか、総理から再任を交渉したか知りませんが、そのときに、私の主張をいれてくれればとどまろうが、それでなければとどまれぬくらいなことはなさってもよかったし、またあったではないかと私は思うのです。これはひとつ、大総裁をいただいている国鉄、こういうことから考えれば、大いにそういうところは期待しておるわけでありますから、再任されたときに総裁は、こういう点についてどの程度まで言及されておるか、ただ唯々諾々としてお受けになったのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  54. 石田禮助

    石田説明員 これは私個人の問題になりますが、これはもうすでに新聞等にも載っておりましたので、徳安さんにおきましては十分御承知のことだと思いますが、私は、大体気持ちとしては、もう四年の期限が済んだら、年も年ですし、いつ老化するかもしれぬ。これはひとつ余裕をおいて退陣したい、こういうことも考えておったのでありまするが、第三次計画の作成というものに対しては、私は非常に責任がある。計画をつくることだけやっても、これを完成しなかった日には意味をなさぬ。ところが、四十年からスタートした第三次計画というものが今後どうなるかということは、はなはだ不安でならぬ。第一、これは第三次計画というものにつきましては、計画そのものは内閣の計画ということと認める、さらに、これが完成については財政的の措置を講ずる、こういう約手を出したのでありまするから、その実行については私は間違いないと思いますが、ただこれは、つけ加えておかなければならぬのは、国鉄自体の収支の状態がすっかり変わっちゃった。それはさっき申したように、この独占性というものの弱化のために、収入というものがなかなか思うようにいかぬ。増は増だが、ペースは非常におそい。しかも経費というものの増は非常に大きい。そういうことで、国鉄の自己資金というものに非常に大きな狂いが出てきた。したがって、かりに政府が第三次計画によって約手をちゃんと実行いたしましたところで、それだけではやはり足らぬ。これにプラス大きなエックスを加えなければならぬ。そこで、私は、そういう情勢のもとにあるのに、四年の期限が来たからさようならすることも、自分の責任上これはまことに相済まぬ。何とかこの間に目鼻をつけなければいかぬ。といって、私を再任するかしないかということは総理大臣のお手のうちにあるので、私が希望したからといって、これはどうにもならぬ。幸いに、運輸大臣を通して、総理大臣の御意思として、ぜひひとつ再任してくれ、こういうお話がありましたので、私は、再任をお引き受けしますが、お引き受けするゆえんのものは、つまり第三次計画というものを何とかして完成したい、この目鼻をつけたいために再任するのでありますから、しかも、これは国鉄総裁がいかにがんばっても、国鉄というものがいかに合理化に徹して、みずからの姿勢を正しゅういたしましたところで、最後の首を握っているところは政府であり、国会であるのです。そして私は、これを引き受けるにつきましては、そういう第三次計画というものを完成せんがために私は残るのでありますから、どうぞ総理大臣におきましても、私の考えに御同意くだすって、何とかひとつ同情的の態度をこれからとっていただきたい。といって、これを条件とすることははなはだ失礼なので、条件としません、ただ私の希望として申し上げるのでありますから、どうぞよろしく願います。そう言ったところ、総理大臣から受領したときに、君の考えはわかった、承知した、こういうことなので、まあ私の希望がそのとおり達成されるかどうかしらぬけれども、財政の許す範囲においては、総理大臣としてもできるだけのことはお尽くしくださるというふうに私は確信しておる次第であります。
  55. 徳安實藏

    徳安委員 総理大臣からそれぐらいはっきりした御返事がかりに間接的にもあったとすれば、四十三年度の予算には間違いないと思いますから、これは私ども非常に安心できるわけであります。私も三十八年に初めて現総裁が就任されましたときには、総理府におりまして、その選考等につきましてもいささか側面から聞きもし、見もしておりましたが、少なくとも官僚にあらず、しかも視野の広い、そして少しはがんこでもいいから必ず貫くという信念の人はだれかということで、これはほとんど一致して現総裁を推薦され、支持されたわけであります。その責任はきわめて重大だろうと思うのであります。ありふれた総裁ではないのであります。かつて、西に大橋あり、東に石田あり、政府機関の中でも電電公社の大橋さんと国鉄の石田さんとは双壁であった。これはだれが見てもそうなんです。国民的に考えても、みなそうなんです。片々たる官僚が天下ってきて、そうして両方からいじめられるからどうにもならぬというような考え方ではいけないのでありまして、そういう困難性があればあるだけに、そうした大物を連れてきて、これを料理してもらわなければいけない、起死回生の妙薬を投じてもらわなければならぬ、こういう考え方から総裁に推薦を受けられ、また今回も再任されておるわけであります。  これは余談でありますが、電電公社の総裁大橋さん、双壁と言われておりましたが、いまは引退されております。電電公社も決して豊かな財政ではありませんで、あそこも料金の改定等もあり、幾多の問題が山積しておりました。私が郵政省におりました時分に、この大きな事業をやり遂げるにはもはや老骨その任にあらず、新進気鋭の者を当ててほしい、こう言って辞表を持ってきまして、私はこれを慰留する形式なり措置は知っておりますけれども、そうした心中を察してそのままお受け取りして後任をきめたこともございます。双壁であり、かって一方の雄であった大橋さんは、ただいま一線を退いて静かに電電公社の芽ばえていく姿を見守っておられるようであります。年とった方々の心境というものはこういうところにもあろうかと思いますが、幸いに石田総裁はただいままだ健在であります。自重を祈りますと同時に、私がいま申し上げた点をよく御理解くださって、どっちが悪いのか、政府が悪いのか、鉄道当局が悪いのか、こういう点についてももっともっと刻み込んで——昨年の九百億円の交渉経過等も私は多少は知っておりますが、どっちが無理なのか、こういう点を深く究明をして、石田総裁の真価を発揮していただきたい。四十三年度の予算編成につきましては心配のないような努力を払っていただきたいということを特に申し上げて、この問題は終わりたいと思います。  次に、これは古びたことなんです。少し古いことじゃないかと言われるでしょうけれども、やはり速記に出ている限りは、国会議員としてある程度までけじめをつけておいたほうがいい。私は先ほど申し上げましたように衆参両院の運輸委員会会議録をたいてい読ませていただきましたが、どうもふに落ちぬ。そこで総裁にお尋ねいたしますが、総裁は衆参両院の、せめてこの運輸委員会の速記ぐらいはお読みになっておりますか、伺いたいと思います。
  56. 石田禮助

    石田説明員 全部読んでおるということを申せば、うそになります。重要な問題につきましては私は大体の要領も聞き、またものによっては速記録をそのまま読んでおります。
  57. 徳安實藏

    徳安委員 それはもちろんそうでしょう。それでけっこうです。そこで、人の言ったことまで読まなくてもいいけれども、自分の言われたことくらいは、やはりお読みになっておったほうがいいのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  58. 石田禮助

    石田説明員 自分の言ったことについては、実は読んだことはないのです。これははなはだ私の至らざるところかとは思いますが、大体私が答弁しますというと、国鉄内部においていろいろの批判がありますので、それはもう虚心たんかいに聞いて、なるほどまずかったと思うことは、ひとつこれから大いに考えなければいかぬというぐあいにしておるので、その点は全く虚心たんかいにこれを見ております。
  59. 徳安實藏

    徳安委員 これはもうすでに新聞でもたくさん出ておることですから、何か蒸し返しのようなことになるのですけれども、かつて荒舩さんの深谷の駅の事件、これは参議院の速記録を見ましても、衆議院のを読みましても、最後にはさっぱりわけがわからない。こういうことで、これは先ほど申し上げましたとおりに、普通のことなら私などの部会にでもおいで願ってお話し願えばそれで済むと思ったのですけれども、ずっと読めば読むほどわけがわからない。これはこの場ではっきり片づけてめどをつけたほうがいいのじゃないか。いつまでもそのままの記事を残すということはよくないと思うのです。  そこで私はその点をお尋ねするわけでありますが、参議院において、これは去年の九月十二日でありますが、深谷駅の事件について総裁はこう言っておるのです。「理屈詰めにいけば断わるのがしかるべきだと思うのでありまするが、実はこれは情に流れて、私の責任においてこれを決定した、」ということで、「責任を問われるならば国鉄総裁であって運輸大臣ではないということを私はこの際はっきり申し上げる。」こういうぐあいに出ております。またその次の答弁には「一つくらいはよかろうということで、これは私は心底から言えば武士の情けというかね。これははなはだどうも国鉄の犠牲においてそういうことをやったということは私の不徳のいたすところだと思いまするが、」云々とございます。この二つは、全部ずっとどこの速記を見ましても取り消しがない。また、そうだという証拠もない。この衆議院の委員会でも、ずいぶん丁寧なことばで追及しておられる委員がいて、それに対する答弁を見ましても、一向にこの問題だけはよけて通っておる。この問題につきましては、この答弁されたことは実際、真実今日もさようにお考えになっておるかを承りたいのです。
  60. 石田禮助

    石田説明員 私の深谷問題に関する答弁というのは、これは私は落第だと思います。大体深谷問題につきましては、事務当局としては問題にしてなかった。これは私はわからぬのでありますから、担任の常務理事を呼んで聞いたのでありますが、これをもう問題にしていない。これはせっかく運輸大臣からのお話もあり、しかもその前に四つか五つの問題というものに対しては頭から拒絶したようなことなんで、この問題一つくらいもう少し真剣に看てみたらどうだということで、実は検討を命じたわけです。要するに問題は、深谷というものが本庄と熊谷の間にあって、距離の上からいってあそこに急行列車をとめるということがいいかどうかという問題と、そして深谷という駅そのものにそれだけの価値があるかどうか、こういう問題なんであります。これはその後検討した結果、どうもつけてもいいような悪いようなはっきりしない答弁がきたのです。聞いてみると、これは全然つけたっていいじゃないか、とにかく深谷というものは、人口も団地というものが盛んに建っておる、そしてまた工場というものが盛んに建っておる、深谷の将来というものは非常にいいのだ、現在においてもちっとも悪いことはないのだ。やったらいいじゃないか、こういうようなことでひとつ踏み切ったらどうだということを命じたのは、私はしいて言えばこれは武士の情けた——情けだと言うとこれは変ですが、理屈からいってそうなんだし、そしていままで四つも断わった点からいって、やはり何とかやってやりたいというような気持ちなきにしもあらず。それは私の武士の情けということで——武士の情けというようなことを言ったのは私の間違いなんです。間違っているでしょう。要するに私は、はっきり言えば、これはとめるところへとめたんだということに申して差しつかえないと思います。現に今日においては、深谷というもは、その当時より非常に乗客はふえておるということで、速記録を訂正しないということは、はなはだ手落ちでありますが、実際の実情はそういう次第であります。どうぞ御了承願います。
  61. 徳安實藏

    徳安委員 総裁からはっきりこれはそうでなかったのだと言われれば、もちろんそれでいいことになりますが、副総裁にお尋ねいたしますが、副総裁はそいう武士の情けだとかなんとかじゃなしに、これは当然荒舩君が大臣にならぬでも、事務的に純粋な気持ちで基準によって調べれば必ず入るのだ、入ったのだ、だから決してどこからもまげてこうしろという指図もなからねば、要請もなかったということの、これはずっとはっきり参議院から衆議院まで押し通しての答弁、これは私はりっぱだと思うのですけれども、それと一つも総裁の話が符合しないのです。前にそうでないと言われるかと思えば、その次へいったらそうだと言われるし、むちゃくちゃといわざるを得ないのです。一例をあげて申しますと、全然指図をしたことはない、私はノータッチだということを強く主張されておるのでありますが、そうかと思うと次の答弁には、いや、これはやってもいいと思ったから指図した。こういう、ノータッチで指図という理屈はないわけなんです。それはちょっと五分か三分の後、そういうなにが出るわけです。ですから、これはお互い年をとっていますから、年のかげんもあるかと思いますけれども、読めば読むほどどうもわからぬのです。だから、こういうものを後世に残して読ませるよりか、普通なら破いちゃいたいのですけれども、これは記録だからそういうわけにいかない。そこでほんとうに総裁が武士の情け——武士の情けなんということは、私は国会議員に対する侮辱だと思います。本来からいって。それは総裁は野人として平気でおっしゃるかもしれませんけれども、私どもいやしくも国会議員です。しかもその当時武士の情けをかけられたのは、職制からいえば上司であります。これは人物からいえば、遠く総裁に及ばないかもしれませんけれども、職制からいえば上司です。その上司に武士の情けだ、ダイヤ変更したのだというようなことをみんなの前で平気でおっしゃることそれ自体は、いかに御老人に対する役得とはいいながら、少し過ぎるのじゃないか。だから、そういうことじゃないのだ、すべて副総裁の言っておるとおりで、私は言い誤りをしたというふうにはっきり言ってくださるなら、それは何にも言うことはないのですけれども、相変わらず、どうも衆議院の記録と参議院の記録を見ますと合わないし、初めの答弁と下を見ると合わないし、これは大総裁の名誉のためにも、いつまでもそんなものほっておかずに、はっきりとけじめをつけてさらっとされたほうが気持ちがいいじゃないか、こう思うのですが、総裁いかがですか。
  62. 石田禮助

    石田説明員 そう言われれば何とも弁解の余地なしだ。これは私として大いに考えなければならぬ。大いに反省して今後もこういうようなことのないように十分注意いたしたいと思いますが、相はただいま申し上げたとおり、結局つけるべきところへつけたのだ。それで武士の情けということは、四つも五つも断わったので、何とかしてあげたいという気持ちがあったのですが、そういうことを口に出したということは、はなはだ私の不明のいたすところであります。どうぞ御容赦願いたいと思います。
  63. 徳安實藏

    徳安委員 すなおに、野人だから、そうこだわらずに言われることがいいと思うのです。そうすることによってすべてがさらっとするのですから。ここで余談になるのですけれども、去年の九月十二日の参議院の委員会で総裁は短気を起こして、やめると言われましたな。これは二回言っていますよ、速記で。この速記を書いて持っておりますが、言われた。そして新聞を見ますと、朝日も毎日もみな書いておりますが、委員会で総裁が、私はやめますと発言して大騒ぎになった。あわてた荒舩運輸大臣が、委員会が休憩になると同時に、石田総裁を一室へ連れ込んで懸命に説得をした。あなたがやめれば私も百になる、それでは佐藤内閣に傷がつくからと、かきくどかれた。老いの一徹の石田総裁もようやく気持ちを取り直して、冷静に考えてみれば無理にやめることはない、私も子供だなとおっしゃっておる。そこは私はいいことだと思うのですが、時の大臣の荒舩さんに、そんな短気を起こしてくださるなと言われて気を取り直して、やめると二回も言われたのがそのままになったということは事実のようです。どうですか、こういうことはいまでもおとなげなかったなと思われますか。
  64. 石田禮助

    石田説明員 これはそのときの情勢、成り行きを考えてみますと、何か川崎の問題につきまして一参議院議員から私に質問があったのであります。私はそういうこまかいことは知りませんので、副総裁をして答弁をさせますということを言ってあれしたところが、総裁がそのくろいのことを知らぬでどうするのだということで、はなはだどうも語気鋭く、私が総裁としての資格がないようなことを申しますので、それならおれはもうやめるということで、ちょっとたんかを切ったみたのでありますが、あとで考えてみれば、これは実際子供らしい——運輸大臣から、総裁短気を起こさないでいいじゃないかと言われて、何も運輸大臣からそういう説得があったから私が変心したのじゃなくて、あとで自分で考えてみて、どうも自分も少し子供らしいところがあったわい、これはひとつ考え直さなければいかぬ、こういうことでみずから省みて変心した次第でありまして、荒舩大臣の説得がどうとかこうとかということは別に力になっていないということをひとつ御了承願いたいと思います。
  65. 徳安實藏

    徳安委員 それでは新聞に報道されているところはうそだったということになるわけでありますが、その荒舩さんが七十五日で、理由はいろいろあったかもしれません、私はわからぬけれども、しかし新聞の報ずるところでも、週刊誌に響いておるところでも、結局急行停車問題が問題になったというように書いておるわけでありまして、一ぺんあなたをなだめた大臣が旬日を出ずしておやめになった。今度あなたは再任されたというような現実でありますが、老総裁としてどんな御心境でありますか。まことにくだらぬことかもしれませんが、これは人間と人間の触れ合いですから、ひとつお気持ちを承れればいいと思います。
  66. 石田禮助

    石田説明員 深谷の問題につきまして国会で問題になったのは、たまたま私の旅行中でありましたが、私はとにかく何とかしてこの責任を自分一人でひっかぶって、ひとつ運輸大臣の責任にしたくないというこの一心に基づいて変な答弁をしたようなことになった次第でありますが、その後参議院でやめるとかやめぬとかいうようなこと、それからさらに気持ちを変えたというようなことは、これは自分で考えてみて全くチャイルディシュな、子供らしいことだ。それと国鉄がいま直面しておる大きな問題をほっておくこととてんびんにかけてみれば、これは問題にならぬ。そういったことに対する失言は失言で自分が責任をとる。大きな問題のためには自分の名誉なんてどうでもいいということで、再任を引き受けてくれということを伺ったので、自分は喜んで引き受けたような次第でございます。
  67. 徳安實藏

    徳安委員 どうも総裁、聞いてみますと、さきにはそう言われたけれども——あとで速記を調べればわかりますが、大臣をかばっているというような意味のことがあるのですけれども、かばってあげるなら、裏の事情は私はわかりませんが、副総裁の言うような一本お通しになっておればいいのだが、傷つけるようなことがやはり随所に出ているわけですから、かばう気持ちでやったの、だということは、ちょっとあの速記の中からうかがえないと思うのですが。けれども先ほどお取り消しみたいなことを言われたから、これでさらっとしますけれど、どうもくちびる寒し秋の風で、お話しになっている間は承っているのですが、ちょっとはだ寒う感じるような、つまり前言をすなおにお認めになっていないようなことがちょいちょいあらわれるのです。これはやはり年とったお互いの癖だと思うのですが、これはお互いに気をつけたほうがいいのではないのでしょうか。どうも聞いておりますと、前に言われたことをすなおに言われたらよかったなと思うのですけれども、どうも最後のほうを聞いてみますとそうでもなくなってくる。そうするともう一ぺん言いたくなるということになるし、速記も残りますから、言いわけみたいなことでなしに、あなたの言われた放言は天下有名で、別にみんな気にとめていない。石田総裁の言われることは、たとえ理がなくたってあの年寄りだから、これは老人の役得ですよ。ですからみんな気にはしてないのですけれども、こういうものがはっきりと速記に載って残るということになりますれば、傷つけられた者も永久に気持ちが悪かろうし、心にもないことだったとすれば、なおさら総裁も気持ちが悪いだろうから、私はこの辺でけじめをつけてもう何もなかったということにしておいたほうがよかろうということで、こういう発言をしているわけであります。そういうようなぐあいにお互いに気をつけたほうがいいのじゃないかと思います。  それでは、実はきょうは少し時間がありましたらお聞きしたいことも持ってまいったのですけれども、昼めしも食わずに委員諸君にごしんぼう願い、総裁もおそらく昼の食事もされずに来たと思いますから、私があまりかってなことを言っておっては申しわけないと思う。いつでもこういう機会はあるわけでありますから、他のことはあとにまたお聞きするようにして、きょうはこの程度にいたしますが、最後にもう一つだけお聞きしておきたいことは、共済組合の問題です。これは国会でも取り上げておるのですが、総裁はこういうものは厳重に処分するということをおっしゃっている。また新聞にも大きく取り上げられておるわけです。その後どうなっておりますか。ひとつこれは、総裁がなんだったら副総裁でもいいですが、お聞きしたいと思います。
  68. 石田禮助

    石田説明員 私は、もしも不都合のものがあれば処分するということでありまして、その後だんだん事情を調べると、別に国鉄としては不都合をしたというふうには考えられない。そのことの事情につきましては、副総裁から詳細御説明申し上げたので御了解を得たと存じておるのであります。
  69. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 共済組合の問題につきましては、数日前に、共済組合の運営審議会というものがございます。これは労働組合、すなわち国鉄労働組合、新国鉄労働組合、動力車労働組合、それから私どものほうとで、四者で構成する共済組合の運営機関でございます。この席上におきまして、謙虚に国会で問題になった点を反省しようじゃないかということで、規程その他につきましても、小委員会をつくって、直すべきものは直すということにいたしました。さらに駅との問題につきましては、これは過般私は何べんも御答弁いたしましたように、全然関係のないことでございます。しかしながら新駅の設置は、いまでも全国で百くらい私の手元に御希望がまいっております。その際共済組合の土地の取得とからんで、妙に誤解されることのないようにするにはどうしたらいいか、国鉄職員といえどもやはり駅に近くて通勤に便利なところにうちをさがしてやりたいということにはかわりないわけです。その間の事情を極力誤解のないような方法でやる方法を考えようじゃないかということにいたしております。さらに、転売いたしましたものにつきましては、一々理由を調べました。そして、すでに所有権が移転いたしたものの転売でございますので、いわゆる投機目的のために転売したというものは実はございません。しかしながら、一人で二カ所に申し込んでいた者などがございましたので、現役、すなわちまだ職員の身分を保有する者につきましては厳重に注意いたしまして、今後かかることのないように関係の管理局長を通じて十分注意いたしております。ただ貧困、病気あるいは死亡、相続等のために転売いたしたということにつきましては、これはやむを得ないことだというふうに考えているわけでございます。その他規程全般につきまして、いま小委員会をつくって検討中でございますが、過般疑惑の持たれた点につきましては、おおむね明白になったというふうに確信しておる次第でございます。
  70. 徳安實藏

    徳安委員 これで私は終わりますが、総裁にもう一言申し上げておきます。私どもは国鉄に何か事件が起きましたり、不正ばかりじゃありません、何かこう事故でも起きますというと、びくっとするほど、国鉄に対しては非常な関心と親しみを持っている一人であります。最近はあまり大きな事件はないようですけれども、しかし先ほどお話になりましたような交通緩和、通勤通学の緩和、こういうような施設につきましては意のままに、考えておられるように、過去においてはなっていない。そういうことの原因もありましょうし、また心がゆるみますとどんな事故が起きぬとも限りません。電電公社あたりは同じ組織とはいいながら、これは人命に関するような問題はそうありません。しかし国鉄だけは毎日々々人を乗せて人命を預っているのでありますから、かりそめにも心をゆるめるようなことがありましたら、たいへんな事故が起き、起きた結果はとんでもない悲しみに沈むことになろうかと思います。幸い最近にはあまりないようですけれども、総裁の信念並びに施設等を通じて国鉄従業員の心を引き締められて、少くも大きい事故の起こらないように努力していただきたいということをお願いして、質問を終わりたいと思います。  残余の点は、また次の機会に譲らせていただきます。
  71. 石田禮助

    石田説明員 御注意の点はごもっとも千万であります。私としても国鉄というものは、輸送の安全あってはじめて輸送力の増強、輸送の安全のない輸送力増強というものはナンセンスであるということ、それからさらに、われわれ国鉄人として注意しておかなければならぬことは、汚職の問題、非常な誘惑というものが国鉄の仕事にはついております。この点については絶対にいかぬ。四十七万の国鉄職員の全体の顔にどろをなするようなことは気をつけてくれ。さらに輸送の安全についてでありまするが、何といったって一年に七十二億の多数の生命を預っておる国鉄の仕事でありますから、これはほんとうに真剣にやってもらいたいということで、しょっちゅう国鉄職員の注意を喚起しておる、今後とも御期待にそむかないようにいたしたいと思います。
  72. 細田吉藏

    細田委員長代理 久保三郎君。
  73. 久保三郎

    ○久保委員 運輸大臣が来るまで国鉄にお尋ねをするわけでありますが、ただいま徳安委員から冒頭お尋ねあった、いわゆる長期計画における資金問題であります。これは先ほどの御答弁でおおむねわかっているわけでありますが、われわれとしても、国鉄の再建というか経営を好転させて、いま計画実施中の、長期計画を着実にやろうとすれば、何とか財政面で考えていかなければならぬというふうに当初から考えているわけであります。そこで去年くらいまでは、基本問題懇談会の結論としては、財政問題に、いわゆる資金計画というかそういう問題に最後のほうで言及しています。言及している中で、特に従来われわれがこの委員会を中心に言ってまいりました、そして先ほど石田総裁からお述べになりました公共負担、あるいは地方税の問題、あるいは赤字線路の問題、こんなものをひっくるめて政府出資というものを懇談会の結論にも言及しているわけです。ところが、その言及している比重というか、文章の中での重さはどうもちょっと軽いように当時から見ているわけです。そこで、その答申があった直後、私自身からも、言うならば、今後の国鉄財政を考えれば、公共負担というか政府出資というか、そういうものを中心にしてやらんければ、この長期計画はとうてい達成することはできないし、無理してやれば、国鉄経営は破綻に瀕するであろう、こういうことを申し上げた。これは別に新規の問題でもなし、だれが考えても理の当然の話を申し上げていたんですが、どうも去年までの様子を見ますと、とにかく財投であろうが何であろうが、利息のつく金であろうが何であろうが、この際はとにかく資金を手配してもらう、それが至上命令であるというような考えが、国鉄の首脳部にあったと私は思うのであります。ところが、先ほども申し上げたように、とにかく利息のつく金でも何でもいいというようなものの考え方が、今日、デッドロックに乗り上げたかっこうではないかと私は思うのです。これは当初からわかっていた話である。そこで、わがほうとしましては、二、三年前、この計画ができた直後、国会の論議を通してわれわれは、特に国鉄の緊急整備措置法案なるものを提案したわけであります。もちろん野党提案でありますから、若干の質問があっただけでそれは消えていった。ところが、私どもの考えは、だれが考えても、われわれの提案した法案そのとおりとは言わぬけれども、その中身を通るところの筋、そういうもの以外に今日国鉄を軌道に乗せて国民的な要求にこたえさせる道は私はないと思っていまでもいるのです。そういうことからいって、その中身はいまさら繰り返す必要はないかもしれませんけれども、長期計画の財政計画の一つとしては、政府出資が大体三分の一くらい、どういう金であろうと、利息のつかない金として三分の一くらいの応援をせなければならぬと思うのです。これは中身についての解釈は、いわゆる公共負担の見返りだ、あるいは租税の見返りだ、赤字線路の見返りだ、いろいろな解釈があろうけれども、もう一歩進んで私は、政府の責任でこの国鉄の再建をはかるというのが至上命令だと思うのです。だから、公共負担や何かの以前の問題だと私は思っているのですが、それはどうですか。  総裁のお話だというと、どうもわれわれの考えを七、八年前に戻したような考えをお述べになっているようです。公共負担の問題、あるいは租税の問題だけを取り上げられておるようでありますが、もはやかかる時点においては、政府の責任という包括的な責任からいっても、国鉄経営に対して政府が金を出さなければならぬというのは当然だと思うのですね。これは出ないのでありますから……。それからもう一つは、経済発展計画というか社会発展計画、その中をちょっと見ましても、運賃の合理的な、いわゆる政策運賃の検討と書いてある。その政策的な運賃を検討したところで、これはいまの決定的な財政資金というか、そういうものに当てはまるだけの収入というか、そういうものには私はならぬと考えています。いまおやりになっている、大蔵省を中心にしての資金、四十三年度の予算編成にからむ資金の問題を詰めている最中だと思いますけれども、私は、これも何かどたんばへいってうやむやになりそうだという心配というか、先ほども徳安さんもおっしゃったようですが、どうもそういう気がしてかなわぬのであります。そのときにはたして石田総裁がどう出るかということが一つだろうと私は見ているのですが、あなたの御決心というか、それはどういうことなんですか。
  74. 石田禮助

    石田説明員 四十二年度の予算を作成いたしまして大蔵省に査定をお願いしたときには、出資九百億、そのほかに借金のワク、こういうことにあったのでありますが、まぎわになりましてから、出資は絶対にいかぬ、五十億も百億もいかぬ、そのかわり借金のほうのワクはふやしてやろう、こういうところへきた。結局、われわれがそれをけってみたところでどうなるかというと、こっちに有利に展開するようなにおいはしない。これはまあだからして、問題はひとつ四十三年に持ち越して、そのときには何とかこっちの希望が通るようにしたほうがいいのじゃないのか、こういうことで、大蔵省が出資はいかぬ、借銭の限度だけはふやしてやろうというときに、とにかくわれわれとしては、やはり何とかして輸送力の増強ということ、これはしなければいかぬ、これをするのが先決問題だ、ほかの、それによる利子の負担だとかなんとかいうようなことについては、これはあとで解決つく問題だ、これは残しておいて、この期待をひとつ四十三年に残してやろうということで、われわれは大蔵省の申し出を受けました時分には、それはこれでよろしい、ただし、四十三年度の予算の査定については、基本問題懇談会での言っておるような、出資問題ということと公共負担の是正ということを必ず考慮してくれいということを条件としていたのでありますが、考慮ということは、これは少しきついからということで、検討ということになった。まあ検討でもいいだろうということで、四十二年度の予算をのんだ次第であります。われわれは、四十二年度の予算の中でもって、この出資なんというものは全部葬られたということのために、四十三年以後のやつに対してこれを葬られるということには決して考えていない。これを実現するためにああいう条件をつけた次第でありまして、そのためにつまり大蔵省とは、国鉄の予算を査定するについては、予算折衝の結論まぎわじゃなくて、あらかじめひとつ国鉄の事情等もよく研究して、国鉄の事情がわかった上でひとつ査定してもらいたいということで、国鉄といたしましては、四月の初めからいろいろの材料を提供し、また向こうから要求されて、大体大蔵省のほうとしても、さっきお話ありましたように、われわれの立場というものを大体了解してくれたんじゃないか。だからして問題は、四十二年度でいくさは終ったわけではなくて、つまりそれが四十三年度に延長されて、問題は、戦いはこれからだと私は考えておるのでありまして、この点につきましては、運輸大臣におきましても、われわれの立場を御了承くださいまして、大蔵省とは強く折衝されておるのでありますからして、われわれの希望というものは私は必ずや達成せられる、どうしたって達成せざるを得ぬというふうに考えておりまして、これはますます努力に努力して目的の達成に猛進したいと思うものであります。
  75. 久保三郎

    ○久保委員 戦いはこれからだというので、まことにヤングソルジャーの面目躍如たるものがありまして、気を強うするのでありますが、ただ、総裁も御承知かと思うのでありますが、先ほど申し上げた国鉄基本問題懇談会の答申がありまして、その次の年の予算折衝のときを思い起こしていただきたいのであります。そのときはどういうことかと、言うならば、国鉄の要求どおりの予算が組めなかった。組めないので、何を閣議了解事項にしたかというと、御承知のように——基本問題懇談会ができる前です。前の年の前の五カ年計画、その最後になりましたが、そのときに、予算編成の過程で国鉄の要求どおりまいらなかった。そこで何のお墨付をもらったかというと、いわゆる国鉄の経営の基本的な問題と特に財政問題、資金計画について政府、党は責任を持ってやるからというような一つのお墨付があって、泣く泣くといっては語弊があるが、その年の予算は編成された。そこで、そのお墨付でできたのが国鉄基本問題懇談会で、その答申は総裁御承知のとおりの結論になってしまった。この基本問題懇談会で調査されたことはけっこうだと思うのであります。ところがおおよそ中で検討されて結論が出たのは、別にわれわれにとって新規なものではございませんでした。何が新規でなかったかというと、国鉄の基本問題については世間一般、あのとおりの結論はだれも当時持っております。ただ問題は、裏づけになる資金計画についてだれがどこでどういう金を保証するかという問題だけなんであります。それに言及しない結論というものは決して新しい意味の前進でも何でもない、こういうふうにわれわれはとっているわけであります。だから国鉄は、すでに四十二年度の予算編成のときにも同じような手形、そしていま大蔵省を中心にしておやりになっておるのであります。過去のことを言って同じとはきめつけませんが、相当の決意と努力がなければ、これは持っていけないというふうに思うのです。どうかそういう意味で御尽力をいただくと同時に、大橋運輸大臣がおいでになりましたから、いままでの折衝の過程、それから運輸省を中心にして折衝のポイントはどこへ置いておやりになっておるか、それからいつごろまでに決着をつけようとして御努力なさっているのか、大臣からその点を御明示いただきたい、かように思います。
  76. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国鉄財政の再建問題につきまして、当委員会におきまして終始御懇篤な御論議、御指導をいただいておりますことは感激にたえない次第でございます。  国鉄財政につきましては、四十一年度におきまして運賃改定が行なわれました当時には、これによりまして将来の国鉄の財政を運賃の増収によってカバーしてまいりたいという望みがあったのでございますが、実施の結果は予想に反しまして、運賃の伸びがまことに心細く相なりました。かてて加えて、大都市通勤対策その他国鉄の所要資金はとみに増大することに相なった次第でございます。  そこで昭和四十二年度の予算要求にあたりまして、国鉄といたしましては財政上の不均衡を補てんいたします方法として、一般会計よりの国鉄に対する出資金を要求いたしたのでございますが、これが認められなかったことは、先ほど来総裁から申し上げましたとおりでございます。運輸省といたしましても、国鉄財政の再建は運輸行政の最大重点項目でございます。これについては日夜苦慮いたしておるのでございますが、昭和四十二年度予算の決定に際しましては、大蔵当局との間に一つの話し合いが成立いたしました。その話し合いの内容は、国鉄財政問題について両省間で徹底的な調査を行なって、財政の解決策については昭和四十三年度予算の編成までに必ず結論を出すことにしようということであったのでございます。この趣旨に従いまして年度がわり以来今日まで、大蔵省もきわめて誠意ある態度をもちまして運輸当局、国鉄当局を交えて国鉄財政の点検をただいまいたしておるのでございまして、各費目につきまして過去の実績、将来の見通し等を詳細検討中でございます。その結果収支のバランスというものについての見込みが立ちましたならば、それを基礎として今後の出資金なりあるいは補助金なり、一般会計よりの何らかの繰り入れ金が行なわれるものと期待をいたしておる次第でございます。なお、その検討は大体八月中には終わらせたい、かように思って関係者馬力をかけておる最中でございます。
  77. 久保三郎

    ○久保委員 次に、運輸大臣にお尋ねするわけでありますが、一つには通勤輸送、いわゆる都市における高速鉄道の建設あるいは線増、そういうものが大きな問題であると思うのであります。どうも新聞等で拝見している範囲では、運輸省は租税の減免で手当てをしようという考えのようです。これも一つの考え方ではありますが、都市鉄道、特に地下鉄あるいは高架鉄道、そういうものを中心にものを考えるとすれば、単に租税だけでうまくいくものではないと私どもは思っております。むしろこれは道路の構築というようなものと同じ次元、同じ立場で考えていかなければ、国鉄であろうが、営団であろうが、東京都であろうが、あるいは大阪市であろうが、やっていけないと思うのです。だから、それはもちろん裏づけになる財源の問題がありますが、これはまた特定財源というか、都市政策の中での問題を考えながらそういう方向を示さぬ限りは、私は一歩も二歩も前進しないのではないか、こういうふうに考えています。  さらに問題は、運賃問題がからむわけでありますが、運賃を上げれば経営は好転するとかなんとかいうことは、先ほど来の国鉄のお話でおわかりのとおりであります。だから政府としては、都市内におけるところの高速鉄道あるいは地下鉄あるいは高架の問題でありますが、これに対して道路と同じような立場でものを考えていく、そしてその財源についても考慮していく、都市政策というものとあわせてこれを考えていくというふうにでもしなければ、もはやどうにもならぬと私どもは思うわけであります。政府としてはいまどういうふうに考えておられるか、お示しをいただきたい。
  78. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 大都市通勤輸送の上におきまして、地下鉄その他私鉄の占めております使命はきわめて重大でございます。これらの鉄道は、その使命を達成いたしますために、現に各地におきまして多額の投資を行なっておるのでございますが、それによって直ちに期待される運賃収入は、支出に応ずるにはほど遠いものがございますので、なかなか民間事業として思い切った対策に積極的に打って出ることは至難な状況にある次第でございます。しかしながら、何ぶんにも都市通動輸送の大切なことにかんがみまして、各私鉄の投資工事の促進をいたす必要がございますので、政府といたしましてもいろいろとこれが促進策を考えておるわけでございまして、たとえば地下鉄につきましては、今年度より建設費に対する一部の補助金を行なっております。もっともそれは金利負担をカバーするという程度のものでございますが、しかしこれとても年々に定期的に増額をしていくような計画になっておるのであります。そしてその他の私鉄に対しましては、財政投融資からできるだけ所要資金をあっせんするということ、また御指摘になりました租税特別措置等についても対策を行なっておるのでございますが、しかしこれではたして十分であるかいないかは問題でございます。おことばもございましたので、今後一そう検討を進めて、有効な対策を樹立するよう努力いたしたいと存じます。
  79. 細田吉藏

    細田委員長代理 井岡大治君。
  80. 井岡大治

    ○井岡委員 大臣お見えになっておりますで、一言だけお尋ねをしたいと思います。  鉄道が発行する利用債あるいは特別債、これは各都市、地方公共団体ではやはり通勤なりあるいは駅舎をこしらえる、そういうことで、話し合いをなさって引き受けておいでになるわけです。ところが、これが担保の対象にならない。こういうことで各地方都市は非常に困っておいでになるわけです。したがって、鉄道建設公団なりあるいは船舶整備公団、先般われわれであげまして、政府保証をする、こういうようにいたしたわけですが、少なくとも私は今日の国鉄の資金難ということから考えて、これを円滑にするためには、直ちにこれはどうこうということはございませんけれども、少なくとも来年の予算編成にあたっては、その利用債あるいは特別債を有効に、しかも効率的にやらすために、担保の対象になるような措置を講ずる意思があるかどうか、この点を大臣にお伺いをしておきたいと思います。
  81. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御質問の御趣意は、利用債、特別債等に対する政府保証等の方法によって、金融市場で円滑に消化できるようにしてほしいということだと思います。私どももぜひそうしたいと思っていろいろ努力いたしておるのでございますが、わが国金融市場の実勢等から見まして、毎年政府保証債の額については大蔵省としてある程度無理のないワクをきめて、それ以上の発行は政府保証を認めないというようなことをいたしております。国鉄はかなり多額の財政資金を受けておりますけれども、それだけでは足りませんので、さらにその他の資金を要しておるのでございまして、これはいま申しました政府保証債のワクの範囲から逸脱いたしておるのでございます。こういうものを発行しないようにするのも一つの方法でございますが、しかし何ぶん地元の要望等もございまして工事を急ぎます関係上、やむを得ず無理な資金ではございますが、地元と話し合いの上でかような方法をとっておるような次第でございます。しかし今後これについてはなお一そう研究はいたしてまいりたいと思います。
  82. 井岡大治

    ○井岡委員 それはよくわかっているんです。しかし利用債を引き受ける側としては、やはりあり余った金で引き受けるわけでないわけですから、やはり担保物件としての価値というものが、利用債を消化する上においてかなり適切だ、ぜひこれをひとつやってもらいたいというのが、私は利用債を引き受ける側の要望だと思うのです。ですから、いま国鉄が出しておるもの全額これを政府保証にしろということは、国の財政政策、金融政策から考えて無理かもわからぬけれども、少なくともやはりこの点に何らかの配慮をしてやるということが、より一そう私は国鉄のいま当面困難な問題を解決する一助になるのだ、こういうように考えるわけです。ぜひひとつお考えをいただきたいと思うのです。
  83. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 大蔵省当局に十分私どもの希望するところを申し入れまして、できるだけ仰せられたような線に前進いたしたいと思います。
  84. 細田吉藏

    細田委員長代理 井上泉君。
  85. 井上泉

    井上(泉)委員 七月九日の豪雨によって国鉄の被害があちこちであったことは副総裁も御承知と思いますが、特に新聞紙上で報道はされてないけれども、土讃線の約五十キロにわたる区間がずたずたになって、それが約九日の間、大杉という地点と小歩危の間約四十五キロの地点が全然運行がされなかったということは御承知されておると思うのですが、一体この土讃線は雨が降るとすぐ夜間は運行中止、そうして少し大きい雨が降るとすぐ一日二日はとまる、こういう状態がいつまでも繰り返されておるのですが、これについては国鉄としてはどうお考えになって、どう対処されておるのか、その点承っておきたいと思います。
  86. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 土讃線につきましては、過半の雨で相当区間が土砂崩壊その他のために不通になりました。いま先生お示しのとおり、数日間運転休止のやむなきに至りました。  実はこの線は、数年前にも相当大きな災害がございました。結局、御承知のとおり、この土讃線をつくりましたときには非常に財政状態の悪いときでございまして、極端に申せば、なるべく金のかからない線をつくった、なるべくトンネルを掘らないで、川のふちを無理に沿って走ったというような線路のつくり方になっておるようです。また道路は、御承知のとおり線路の上にございまして、そうして道路の崩壊がすぐ線路の崩壊に響くというような地点がたくさんあるのでございまして、根本的には結局二つ問題がございます。  一つは、高知県内の徳島県と高知県境のこの危険地帯を全部、極端に申せばトンネルにしてしまうということが、一番抜本的な一つの方法。それからもう一つは、ある程度の手直しをして、できるだけ徳島側からの牟岐線あるいは愛媛県側へ通ずる中村線、窪江線等を全通さして四国の循環鉄道をなるべく早くつくって、そうして万が一、土讃線がやられても、ほかに——現在御承知のとおりこれが切れますと、道路も当然一緒に切れてしまいますので、高知と松山のルートしかないわけでございます。予讃ルートだけしかないわけであります。ですから、このルートにたよらないで、鉄道でもって四国を徳島県経由なり、あるいは愛媛県経由で連絡できるようにする。この二つの抜本的な方法があると思います。  それで、第一の方法につきましては、全区間を全部トンネルにするということは、これはなかなか言うべくして行なわれないし、また現在すでに駅がございまして、相当住民の方が住んでおられます。それらの線路を全部廃止することは、これはまた非常に大きな社会問題となりますので、御承知かと存じますが、いま一番危険な区間から数キロずつトンネルにかえているわけでございます。これは過般、この数年前にやはり当委員会から現地にお出かけくださいまして、実情もごらんになったと思うのでございますが、その区間は現在トンネルの作業をしている最中でございます。それからそのほかにも、今年度内にもう一カ所手をつけることにいたしておりますが、何せトンネルを掘るという作業は、一トンネルが四キロ以上の相当大きなトンネルばかりになりますので、それらの工事費等の問題もございまして、必ずしも何年計画でどうというところまでいっておりませんが、少なくとも今後とも——私のほうの実はいま防災関係の金で一番よけい使っておるのは、この土讃線でございます。そのほか裏日本の羽越線とかいろいろございますが、やはりこの土讃線に一番集中的に金を使っておるわけでございます。これをさらに数倍にするというようなことは非常にむずかしいことでございますが、たとえばこれについて利用債を負担してもらうなどということは、これはもう全くできないことでございます。結局、国鉄の自己資金ないし国鉄の借金でもって集中的にこちらへやる。少なくとも、防災に充てておる金の一番の主力を土讃線に向けてつぎ込んでおるわけでございますが、必ずしもまだそれだけでもって、いま考えておる区間だけでもって安全かと申しますと、これは過般、昭和三十七年ごろ大災害がございました年に、土讃線防災対策委員会というのをつくりまして、相当大災害に対しまして、部内の専門家も相当たくさん入れまして、一つのまとまった報告書をいただいております。この報告書に基づきまして逐次やっておるわけでございますが、これの全般をなるべく早く完了いたしまして、四国循環鉄道の完成と相まって、少なくとも高知が陸の孤島として孤立することのないように全力をあげていきたいというふうに思っておるわけでございます。  なお、詳細につきましては担当の理事からもう少し御説明いたします。
  87. 井上泉

    井上(泉)委員 その災害の状態、私、この間日躍日にずっとこの路線の不通個所の問を車で通ったわけですが、あそこは国道そばの線路ですから、またたいへん危険な場所ですから、雨が降るたびに運行中止をせざるを得ないでしょう。それで、いま副総裁の言われるような四国循環鉄道といいましても、中村から宇和島へ行く中村線にいたしましても、まだ十年やそこらはかかると思うのです。そうして牟岐線に至りましては何年までに完成するつもりなのか、この機会にあわせて承っておきたいのですが、この土讃線が本土を結ぶ唯一の鉄道の線路でありますので、循環線路ができ上がることと相まってと言いましても、これはもう十年も二十年も先でないと私は見通しが立たないと思うのです。これはやはり土讃線のこれと精力的に取り組んで、安全輸送をしていただけるような対策を講じていただかなければならぬと思いますが、この辺について、国鉄当局において一体いつまでに土讃線が安全輸送ができるようにされるのか。もうこれは十日や十五日の運行停止があるのは毎年のことですから、もうここらあたりで、高知県民だけではないわけですが、何年ぐらいしたら土讃線が安全輸送が確保できるようなことになるのか、そしてまた四国循環鉄道は何年ごろまでには完全するつもりなのか、あわせてこの機会に承り、なお、その災害対策の工事の内容についての御説明を承りたいと思います。
  88. 仁杉巌

    ○仁杉説明員 土讃線の防災対策につきましては、ただいま副総裁が御説明いたしましたように、土讃線防災対策委員会というのを三十七年の災害のあとに、三十七年の五月でございましたか、設けました。それから約二カ年間勉強をいたしまして、答申をちょうだいしたのが三十九年の十二月でございます。この内容を申し上げますと、おもに二つございまして、一つは大歩危−土佐岩原間、この間に二カ所トンネルで通れということと、大杉−角茂谷間に一カ所トンネルで通れという御指示。それからもう一つ、大体先ほど先生のお話のありました約五十キロ間につきまして、のり面防護であるとか、あるいは護岸であるとかいうものを強化しろというような対策、この二つを主としてちょうだいいたしております。そのうち大歩危−土佐岩原間の二カ所のトンネルにつきましてはただいま、これは一昨年からでございますか、工事に着手をいたしておりまして、ただいま盛んに掘さくをいたしております。それから大杉−角茂谷間の一カ所は、実は昨年五月に相当な災害がこの近くにございまして、ここもいろいろ調査の結果、やはりバイパスにすべきであるというのでございますが、なかなか地質の関係がむずかしゅございまして、一昨年あたりから調査をいたしまして、大体昨年度一ぱいでトンネルの方向が出てきたということで、今年度から着工をするというかっこうにいたしております。それで大歩危−岩原間の現在掘っておるトンネルは、四十四年度一ぱいに完成をいたします。大杉−角茂谷間のトンネルは、まだはっきりいたしておりませんが、四十六年度の第三次計画の中では大体完成をするつもりでおります。さらに先ほど申しましたこまかい対策も、大体四十六年度ごろまでには完成をいたしたいというふうなつもりで、いま努力をいたしておるところでございます。
  89. 井上泉

    井上(泉)委員 それで牟岐線なんかの完成は……。
  90. 仁杉巌

    ○仁杉説明員 これは実は私、建設公団がやっておりまして、はっきりした工程をただいま手元に持っておりませんのですが……。
  91. 増川遼三

    ○増川政府委員 ただいまお話のありました牟岐線と高知のほうを結びます阿佐線につきましては、四十一年度までに十二億三千三百万円ばかりの予算をつけまして工事を進めております。なお、四十二年度といたしましては、五億九千万円ばかりの予算で現在工事を実施中でございます。この総工事費といたしましては、百五十三億ばかりかかりますので、そのまだほんの一部でございますけれども、鋭意こういった最も重要な線区から逐次完成に努力をさせたいと考えております。
  92. 井上泉

    井上(泉)委員 その土讃線の関係につきましては、これはいま私十分聞き取れなかったんですけれども、大杉−角茂谷間は四十六年度からの計画であるのか、四十六年度までにやられるという計画であるのか、その点が一点。それから、ちょうど現在の線は国道沿いになるわけですから、このいま計画されておる大歩危−土佐岩原間あるいは大杉−角茂谷間、この大歩危−土佐岩原間のトンネルが開通できますと、この路線はどの程度もう国道のそばを通る必要がなくなるのか。さらに、これは国鉄の関係でないのですけれども、国道三十二号線はやっと改良舗装が終わった地点ですが、これなんかも、鉄道の線路にくっついたところを国道の工事をやったのに、建設省の工事で山方を切り取っておる。そういうことについての防護措置が万全でない。そういうふうな防災的な措置を全然講ずることなしに、ただそのまま山方を切り取って道をつくっておるというようなことが、大きな山くずれを絶えず引き起こしてくる原因でないかと思うわけですが、そういう点についての御見解といさらには阿佐線の百五十三億というのは、本年五億でありますので、阿佐線だけでとりましても約三十年かかる勘定になる。これもいま副総裁の言われましたように、土讃線一本にたよるのでなしに、阿佐線とかあるいは中村線とかいうようなことを言われましても、これはなかなか先のことになるわけなので、とりあえず高知県としては、この両線とも大事であるが、土讃線を少なくともいま計画になっておる四十五、六年度までくらいには、もう完全に安全な輸送が行なえるような改良をしていただきたいと思うのですが、その点についての御意見、御説明をお願いしたいと思います。
  93. 仁杉巌

    ○仁杉説明員 先ほど先生が一番最初御指摘になりました大杉−角茂谷間の工事の完成は、できれば四十六年度一ぱいに完成をしたい、着工は今年度からいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、大歩危−土佐岩原、大杉−角茂谷、この二ヵ所にトンネルができるわけでございますが、後者のほうはまだはっきりいたしておりませんが、大歩危−土佐岩原間のトンネルは約四キロでございます。したがいまして、現在国道とくねくね走っておりますが、それと離れるのは、大体五キロ余りが国道と離れてトンネルの中に入ってしまうので、そこは防災上心配がないということになります。大杉−角茂谷間もおそらく大体四キロ程度のトンネルになるのではないかといま思っておりますが、これは詳細にただいま検討中でございますので、秋に工事を出すような段階になると思います。  それから窪川の循環線の話でございまして、これは建設公団のことでございますが、実は建設公団にいろいろと国鉄から希望を申し入れております。それでこの線は地方開発という線になっておりますが、国鉄といたしましてはこの西側の江川崎と窪川を結ぶ、あるいは中村と江川崎を結ぶ、こういうどちらでもいいのでございますが、とにかく一日も早く循環鉄道を完成していただきたいということを建設公団に申し入れております。  それで現在の情勢を、詳しくは存じませんが、大体検討してみますと、やはり一番早そうなのが江川崎−窪川間の四万十川に沿う線をやるのが早いようでございまして、これは現在までにすでに三分の一ほど、六十億のうち二十億くらいが投資されておるようでございまして、できれば四十六年度くらいまでにやってもらいたいということをお願いしておるのでございますが、あるいは予算の関係で少し延びるかもしれませんが、大体国鉄としてはそういう姿勢で公団にお願いをいたしているという段階でございます。
  94. 井上泉

    井上(泉)委員 たいへん国鉄が赤字、赤字という中で土讃線が金を食うということで、こんな赤字路線ということでやられますと、これはたいへんなことになるわけなので、いま御説明のあったような、私も郷里のことでありますので一番承知をしておりますが、少なくともこの江川崎線の関係は、これは繰り上げてやっても、いまお話しのように四十六年までにはぜひとも完成してもらいたい。これは一番最短距離であるし、土地の問題なんかも困難ではないわけですから、これはそういうふうにして、四十六年度までにはぜひとも完成するように、国鉄当局から精力的に働きかけをしていただいて、土讃線のそういう不測の状態——あるいは土讃線から、これで一応四国循環鉄道が半分は達成されるわけなのでありますから、そういう意味で精力的にやってもらいたいと思います。  特に阿佐線については、御説明では百五十三億が、四十二年度が五億ぐらいでありますと、まだ三十年かかるのでありますからこれについての見通しを、国鉄当局は、これは鉄道公団がやっているからといって鉄道公団におまかせするのではなしに、同じような四国循環鉄道を完成させる見地から、これについては一体いつごろまでには完成をさしたいのだ、こういう希望はあると思うのですが、そういう希望をこの機会に承っておきたいと思います。
  95. 仁杉巌

    ○仁杉説明員 窪川−江川崎間のルートにつきましての工事の推進につきましては、いま御説明したとおり懸命に公団へ申し入れをしているところでございますので、御了承願いたいと思います。  なお阿佐線につきましては、御承知のとおり、私どもといたしましても、四国の東側の循環としてぜひ完成をしていただきたいということでございますが、何せ公団の予算全体の配分の問題になるようでございますので、まだはっきりした見通しというものは立てられないというように公団側は言っておられます。しかし、私どもはおそくとも五十年ぐらいまでには何とかならないものかということを申し入れておるような段階でございますが、これらにつきましては、運輸省のほうで監督され御指導されておるようでありますので、そのほうともいろいろお打ち合わせをしながら進めてまいらなければならないかと思います。
  96. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは土讃線の安全輸送が確保される見通しとしては、いま計画されておる隧道の掘さくとか、あるいは防護さくとかいうものによって、四十六、七年には現在のような、ちょっと大雨が降ればすぐ列車をとめなければならないということはなくなると理解しておっていいのかどうか、その点をひとつ伺いたい。
  97. 仁杉巌

    ○仁杉説明員 先ほど御説明いたしましたように、国鉄が三十七年から三十九年度にかけて勉強いたしましたのは、部内だけではなしに当時の各界の権威者、大学の先生等にもお入りを願って検討いたしました結果でございます。そこで先ほど御説明したような御指示をいただき、それに沿って四十六、七年までに完成したいという努力でございますので、そういうふうに御理解いただいてもけっこうであると思います。  ただ防災と申しますのは、山のはだというものはだんだん風化をするということもございますので、それらをたゆみなく監視を続けるとともに必要なところは次々と手を打ってまいらなければならないと思いますが、一応は先生の御指摘のような御理解でけっこうだと思います。
  98. 井上泉

    井上(泉)委員 私の質問はこれで終わります。
  99. 細田吉藏

    細田委員長代理 次会は明十九日午前十時より理事会、午前十時二十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十八分散会