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1967-06-09 第55回国会 衆議院 運輸委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月九日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大久保武雄君 理事 進藤 一馬君    理事 古川 丈吉君 理事 細田 吉藏君    理事 久保 三郎君 理事 河村  勝君       大竹 太郎君    亀岡 高夫君       木部 佳昭君    徳安 實藏君       中川 一郎君    堀川 恭平君       水野  清君    山村新治郎君       小川 三男君    神門至馬夫君       内藤 良平君    野間千代三君       米田 東吾君    渡辺 芳男君       山下 榮二君    石田幸四郎君       松本 忠助君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         運輸省船員局長 河毛 一郎君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君  委員外出席者         社会保険庁医療         保険部船員保険         課長      竹元 修一君         水産庁漁政部長 池田 俊也君         労働省労働基準         局労災防止対策         部長      鈴木 健二君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 六月九日  委員松本忠助君辞任につき、その補欠として岡  本富夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  船員災害防止協会等に関する法律案内閣提出  第一〇五号)      ————◇—————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 これより会議を開きます。  船員災害防止協会等に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。神門至馬夫君
  3. 神門至馬夫

    神門委員 この船員災害防止協会等に関する法律案趣旨説明の中に、このような協会をつくって、さらに船員災害防止を積極的に進めたい、こういうように説明されておりますが、船員法中心とするこれまでの船員災害に対する予防防止というふうな行政の沿革、こういう点について説明を願いたいと思います。
  4. 河毛一郎

    河毛政府委員 船員災害防止につきまして、従来運輸省が行なってまいりましたことでございますが、まず運輸省といたしましては、船主及び船員安全衛生意識の向上をはかりますため、広く関係船主等の参加を求めまして、船員労働安全衛生協議会というものを昭和三十二年に結成いたしております。この会を中心といたしまして、毎年船員労働安全衛生月間運動を推進して、災害防止活動を促進してまいった次第でございます。それから昭和三十七年には船員安全衛生につきまして、船員法改正いたしまして、現在の法律の八十一条の規定を設けまして、これによりまして船員安全衛生に関する根拠規定といたしたわけでございます。次いで、この八十一条に基づきまして、昭和三十九年に船員労働安全衛生規則を制定いたしまして、船員安全衛生に関する法的な基準を整備した次第でございます。  なお、船員災害防止をはかりますための民間団体の育成にもつとめまして、昭和三十九年の五月には、船主協会その他主要な船主団体によりまして、財団法人船員労働災害防止協会が設立されまして、今日まで活動を続けておる次第でございます。  以上が直接船員災害につきまして、従来私どもが行なってまいりました施策の概要でございます。
  5. 神門至馬夫

    神門委員 具体的にはさらにあとからお尋ねしたいと思うのですが、そのような概略はこの趣旨説明の中に書いてあります。  さらにその次に、以上のような施策をもってしても、船員労働災害は減少せず云々から、ここに四ページの、法規制による船員労働安全衛生基準の再検討と、労務監督体制の整備ももちろん必要である。こういうように積極的な表現がなされているが、どのようなことを船員局としてはお考えになっているのか。この法規制あるいは労務管理についてどのようなことを言わんとしておるのか、欠陥があったのか、この点をひとつ説明してください。
  6. 河毛一郎

    河毛政府委員 従来私どもが行なってまいりました災害防止に関する行政は、ただいま御説明したとおりでございますが、いま御指摘のございました点は特に労働安全衛生規則、こういうものがいまの状態で完全に十分であるかどうかということにつきましては、私どもといたしましても相当検討する必要があると考えております。ただ実際問題といたしまして、先ほど申し上げましたように、安全衛生規則自身が、できましてまだ日が浅いわけでございますので、さしあたっての問題といたしましては、私ども労務監督体制を今後強化いたしまして、現在の労働安全衛生規則の順守の徹底がはかれるように措置をしてまいりたい。別途さらに船主団体による自主的な規制その他を促進いたしまして、さらにそういった自主的な規制基礎にして労安則の将来の改正をはかってまいりたい、こういう考えでおります。
  7. 神門至馬夫

    神門委員 その船主団体自覚を促して積極的に予防的措置あるいは防止をはかりたいというのはわかるのですが、ここにありますような、日は浅いけれども安全衛生規則そのもの欠陥労務管理欠陥、戦後基準法船員法の中に取り入れられて船員災害に対して取り組むようになった、いわゆる行政を行なうようになってから、具体的にはどういうような欠陥が見出されているのか。これは陸上における基準法——私も労働基準局審議会委員を十年間やっておりましたが、たいへん欠陥がございます。海上においては、この中にありますように、非常に増加傾向にある、増加傾向にあるときに、この戦後二十年間においてどのような欠陥規定上、法律上問題になっているのか、充実しなければならないとお考えになっているのか。それは、安全衛生規則が生まれてからまだ日が浅いのですが、それまで二十年の歴史がある。それをやってみたけれども、さらにどういう点が欠陥であるか。労務管理としては、たとえば予算が足らぬのか、あるいは管理体制人員配置が足らぬのか、機構が悪いのか、あるいは所管において非常に複雑になっている、これを何か一本化する必要があるのか、こういういろいろな問題があるのじゃないかと思う。その辺の問題を具体的に、いまのような抽象的じゃなしに説明願いたい。
  8. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまのお話でございますが、まず安全衛生に関する労務管理体制でございます。御承知のとおり、船員法につきましては、運輸省船員法による船員対象といたしまして統一的、系統的に見ておりますので、所管関係の問題というものはあまりない。したがって、そういう関係から行政が混乱するという問題はまずないというふうにお考えいただいてけっこうであろうかと存じております。  その次に、運輸省のこういった災害関係防止に関する法令の施行の仕組みでございます。現在運輸省地方機構といたしましては、地方海運局が十ございます。それぞれの海運局に必要な出先機関がございますが、ここに船員労務官というものを配置いたしまして、この船員労務官船員法に基づいてあらゆる監査監督指導を行なっておるわけでございますが、この数は現在全国で八十名でございます。この数は必ずしも多い数でございませんで、たとえば陸上関係の同じような仕事をしております労働基準監督官の定員は二千六百名でございます。ただ対象船員陸上関係対象労働者の数を比べますと、八十名という数が陸上監督官の数に比べてアンバランスであるということは、必ずしも考えられないわけでございます。ただ質的に船と申しますのは非常に散らばっておりますので、さらに現在の労務官の陣容を強化する必要があるということは私どもも痛感いたしておりますが、いずれにいたしましても予算問題にも関連いたしますので、私どもといたしましては、できるだけ業務の合理化なり近代化をはかりまして、その上でさらに不十分な点につきましては今後予算的に折衝を行なってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  いずれにしましても、船員労務官船員法関係実施監査仕事を行なっておるわけでございますが、その監査状況でございますが、違反関係といたしまして問題になります件数が、一年間におきまして大体四千二百件ぐらいになっております。このうち、やはり労働災害防止というような観点、つまり労安則関係違反というものは約二千五百件ということで、非常に多いわけでございます。そこで私どもといたしましては、やはりこれらのものにつきましてさらに行政的にも指導を強化すると同時に、現実に労安則関係労働災害防止に関する規定そのものを徹底するということについて、今後相当の努力をしていく必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。
  9. 神門至馬夫

    神門委員 そうすると、いまの答弁を要約しますと、現行の安全衛生規則を徹底する、こういうことで、直ちに変更なり改正なりというようなことはいまない。一番具体的に言われたのは、陸上基準監督官と対比しながら、船員法上の船員労務官について、八十名程度だ。陸上においてもやはり基準監督官不足というものが、絶対的な障害になっておる。いま局長お話によると、対象が違うので、予算を伴うことでもあるが、そう陸上のものに比べて少ないとは思わない、こういうようなお話だったのですが、しかしあとからいろいろ具体的にこの数字についてひとつなにしてみたいと思うのですが、そうすると、そのような災害が、ここに趣旨説明の中にありますような災害増加するあるいは激増する一途をたどっている原因というものは、総括してどのようにお考えになっているか、何が原因だとお考えになっているのか、監督官そのものが絶対的な原因じゃないとするならば、行政上何が問題になっているのか。
  10. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまは主といたしまして私ども行政体制につきまして御説明申し上げた次第でございますが、災害関係件数がふえておるという実態は、それだけではございませんで、非常に複雑な原因があるのではないだろうか、こういうふうに考えております。特に数字的に検討いたしますと、最近の状況では疾病関係発生率が非常に多くなっております。したがいまして、この辺のところも今後さらに中身を検討いたしまして、その具体的な対策を推進してまいる必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  11. 神門至馬夫

    神門委員 その疾病関係を具体的に調査をするということは、だれがやるのですか。
  12. 河毛一郎

    河毛政府委員 疾病関係につきましては、私ども自身といたしまして、船員労働災害実態調査というものを三十六年以来続けて行なっております。しかし別の非常に有力な手段といたしましては、船員保険関係でございまして、船員保険関係のいろいろなデータがございますので、これを分析することも一つの非常に大きな手段である。この辺につきましては厚生省ともよく御連絡をとりまして、今後原因の解明に努力しなければならない場面も残っておる、こういうことでございます。
  13. 神門至馬夫

    神門委員 そのような調査をし、さらにその調査に基づいて災害防止行政方針が出る。そうしますと、それはやはり監督官が直接監督指導する、こういうことになるのじゃないですか。そうしますとその辺がやはり一番——一番と申しますか、行政指導としては最も大きな隘路になっているのじゃないか。原因にはいろいろ多様性があったとしても、非常に複雑なようですが、現場のそういうものをなくする、防止する、予防するというたてまえからいけば、船員労務官不足というものがやはり一番隘路になっているのじゃないか。
  14. 河毛一郎

    河毛政府委員 確かに御指摘のとおり、船員労務官及び船員労働災害防止のための行政を強化するということが今後必要であるということは間違いございませんが、私どもがいままでいろいろ調査いたしましたところ、やはりこういった災害防止の直接の責任は、船員法によりましても船舶所有者にあるわけでございます。したがいまして、船舶所有者がこのような労働災害防止に関して十分な自覚を持って、みずからその災害防止対策を行なっていくということも非常に大きな要素ではなかろうか、こういった基礎の上に立ちまして、労務官がさらに強化され、必要な監査なり指導を行なっていくということが必要なのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  15. 神門至馬夫

    神門委員 労務官も大切だが、船舶所有者自覚こそ緊急の問題である、こういうふうにおっしゃっておるのですが、私海のほうの経験はないのですが、陸のほうを見ると、監督官が定期的に巡視する、そして精力的にいろいろ違反事項を摘発というよりか注意をする、そういうことを積み重ねることによって初めて、経営者なり事業所責任者法律規定する安全衛生基準を確立できる、これが何といっても最もいいようです。企業責任者になりますと、安全衛生ということをやかましく言われるからやるけれども、やはりもうけることが第一義的ですから、二義的にそういう問題が付属しておることはいなめない事実なんです。ですから、いまここに協会をつくって船舶所有者船主にその自覚を促すということを非常に期待しておられるようですが、それのみではもちろんないと思うが、それが第一義的に何かやられて、行政責任がそこに転嫁されていく。いまの局長答弁を聞きますと、私たちは一生懸命やっておるのだけれども船主船主協会をつくって、せっかくこのような法律をつくってやったのだけれどもなまけておる、この次私たちが質問すると何かそのようなことになりそうだ。私はそれであってはならぬと思うのですが、そうなってくると、行政責任を持って船員災害をなくするということになってくると、いまおっしゃったようなことよりか、これまでの行政の上から見たもう少し体制的強化をはかる、こういうことがもう一つ大切ではないかと思うのですが、重ねてお尋ねします。
  16. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまの御趣旨でございますが、私も全くそのように考えております。したがいまして、私どもは現段階において、私ども行政のほかに、船主の自主的な努力のための措置が必要であるということでございまして、それで能事足れりということではございませんで、先ほど申し上げましたように、そういったものもさらに踏んまえまして、安全衛生規則関係改正なり、あるいは私ども災害防止のための行政体制を将来強化していくということにつきましては、御指摘のとおりの趣旨で進んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  17. 神門至馬夫

    神門委員 船員法の第一条の二項ですね、二項によって船員法上の船舶に対する範囲が規定されております。ここにいうところの船員法上の船舶でない、船舶法上の船ですか、これは、そういう労働条件安全衛生規則、こういうことの所管労働省だろうと思うのです。この辺の区分がなぜこのような——私らしろうと考え考えてみましてもいろいろ問題があるような気がするのです。どのようないきさつをもってこの一条の二項というものが生まれたのか、この点をまずひとつ説明してください。
  18. 河毛一郎

    河毛政府委員 御指摘のとおり、船員法におきましては対象とする船舶を制限いたしております。これを具体的に申し上げますと、湖、川または港内のみを航行する船舶、それから総トン数が五トン未満の船、それからさらに漁船につきましては総トン数三十トン未満漁船、ただしこの漁船につきましては、政令で総トン数二十トン以上の漁船について指定されたものにつきましては、船員法適用があるということになっておりますので、これは中身がやや複雑でございますが、実質的に申し上げますと、漁船については大体総トン数二十トン以上のものがおおむね船員法適用対象になっておる、こういうことでございます。これが船員法実態でございますが、船員法がなぜこのように小さい船につきまして適用を除外したかという趣旨でございますが、元来船員法労働基準法と別個に制定せられております趣旨に非常に関連があると思います。これは結局陸上労働海上労働が一番違いますことは、やはり陸を離れまして長く航海を行なうということが海上労働特殊性でございます。したがいまして、そこには労働的にも監督的にもあるいは労働保護的にも、いろいろな特殊な規定を必要とするわけでございまして、こういったことに基づきまして、労働基準法とは別個の船員法という法律規定されておるということでございます。したがいまして、これを逆に申し上げますと、ただいま御指摘のございました比較的小さな船につきましては、抽象的に申せばそういった海上労働特殊性というものがないか、あるいはきわめて薄い。したがって、これについてはむしろ陸上の一般の労働規制する労働基準法適用をしたほうが適当であるということでございます。
  19. 神門至馬夫

    神門委員 そうしますと、船でも五トンなり二十トンということで画一的に切られるわけですが、その内容としては、大まかな趣旨としてはわかりますが、必ずしもそこで切ることによって、いわゆるボーダーラインと申しますか、その区切り目において、三十八度線においていろいろ上下の問題はあろうと思います。その辺は理屈になりますからさておきまして、その怪しげな境によって運輸省労働省所管が異なっておるんですね。そうしますと、ここにやはり有機的な連携あるいは行政上の打ち合わせとかいうものが、有機的よりかある程度制度的になされなくては、実態に合わぬのじゃないかと思うのです。この船員法等が持つ特殊性からいって、そのような五トン未満なり二十トン未満というもの、あるいは川か湖で走る船というものをカットしたほうがより船員労働船員生活の特殊な条件を満たすものだ、こういうふうにおっしゃっているのですが、その特殊な条件の境というようなものがやはりなかなかむずかしい。その点が労働省とどのように連携を持ってなされているか。これは局長労働省のほうにお尋ねしたいと思います。
  20. 河毛一郎

    河毛政府委員 確かに御指摘のとおりボーダーライン船舶につきましては、これをどのようにしていくかということが問題でございますが、きわめて具体的に申し上げますと、たとえば船員災害防止に関しまして、この防止のための運動を三十二年以来行なってまいったということを言っておるわけでございますが、こういった関係につきましては常に労働省関係のほうとも御連絡をとりまして、なるべく一緒にやるようにいたしておる次第でございます。今後さらに、御指摘のような趣旨もございますので、労働省とはよく連絡をとりまして、ボーダーラインのものにつきましての措置が不十分にならないように検討いたしたい、こう考える次第でございます。
  21. 鈴木健二

    鈴木説明員 船員局長からお答えになったとおりでございますが、一応トン数で区別しておりますので、先生御指摘のように、一応観念的には所管がはっきり分かれているわけでございます。実際問題といたしましては、そのボーダーラインにいろいろむずかしい問題があることは御存じのとおりでございます。そういう面につきましては、先ほど船員局長からお答えになりましたように、労働省と十分——制度的にどうということにはなっておりませんけれども、問題によりまして十分連絡をとって処理しておる次第でございます。
  22. 神門至馬夫

    神門委員 先日の委員会渡辺委員の質問に対して、とりあえず防止協会の発足にあたっては、船員法適用船員としては二十七万おるけれども十七万程度をもって発足したい、こういう説明がありました。いま船員法適用上の隻数が、汽船、帆船、漁船と三つに仕分けした場合に、どのくらいあるのか。それから労働省のほうには、労働省所管する漁船隻数は何ぼあるのか。いまのように非常にむずかしいことなので、ちゃんとこれは把握されておると思うのです。この点を御説明願いたい。
  23. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまお話のございました現在における船種別隻数でございますが、これは調べればすぐわかりますので、いますぐ調べさせますが、手元に数字がございません。  ただ、乗り組み員の数だけちょっと申し上げますと、まず汽船につきましては九万九千六百二十六名でございます。それから機帆船と申します船でございますが、これが二万七千四百一名でございます。その他いろいろ雑船がございますが、これに乗っております者が千五百四十名。それに船には予備員というものがございます。これが約二万名。これは船員ではございますが、船に乗ってないわけでございます。待機している者でございます。大体そういう状況でございます。  それから隻数でございますが、これちょっと申し上げますと、まず汽船は九千三百三十三隻でございます。それから先ほど機帆船と申しました、これが一万三百五十一隻、漁船が八千八百二十四隻、その他の雑船関係が九百九十七隻、こういうことでございます。
  24. 鈴木健二

    鈴木説明員 労働省隻数そのものをはっきりつかめておりませんが、いわゆる漁船の数は、十トン未満のものが四十年で三十六万程度だ、こういうふうに理解いたしております。しかし、これはすべて基準法適用事業所一つ一つが数えられるというわけではございませんで、基準法適用事業所として把握しているもの、これはちょっと統計のとり方が違いまして、漁業だけではなく、若干浅海養殖業等も含んでおりますが、一万七千五百三十七事業所、こういうふうにとらまえておる次第でございます。
  25. 神門至馬夫

    神門委員 この前海上保安庁から「海上保安の現況」ということで白書が配付されておりますが、それによりますと、総トン数五トン未満船舶を除く船舶、いわゆる船員法上の船舶が二万六千六十九隻になっております。それから漁船船員法上の適用のあるものが八千八百二十四隻、こういうことの説明です。そうすると、二万六千隻に約一万近いものを加えると、この前の説明で、二十七万人の船員がおるが十七万人をもって組織したいということですから、一隻に平均十人ぐらいしか乗っていないということになるのです。それから、いま労働省のほうからの説明があったのですが、漁船は三十八万千百四十四隻、こういうふうになっております。しかし事業所としての資格を持つものは一万七千五百三十七事業所だ、こういうふうになっております。そうすると、二万七千ばかりの船における船員ですが、約二十七万の中で十万カットして十七万を目標とされるのだが、その乗船船員規模でカットされる十万の中には主として小さいものが入るのじゃないかと思うのです。それはあなたのほうでは、船主協会等に加入しているとかしていないということで仕訳をされているのですか。規模別でいえば、どのような振り分けになるのか。この辺が一つ重要な問題だろうと思うのです。この点をひとつ説明してもらいたい。  それからもう一つ労働省のほうに、いまのように事業所として資格のない多くの漁船、これは水産庁が直接の行政指導はしておると思うのですが、これらの安全衛生ということでは、これは非常に事故が多いのですね。これはどういうふうに、どこがやるのか。労働省とは全く無関係のものなのか。この辺をひとつ次に説明してもらいたいと思います。
  26. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまお話のございました十七万名の船員がどのような船舶に属しておるかということでございますが、これはまず商船関係で八万四千六百五十名でございます。それから漁船関係で八万五千八百八十、合計で十七万という数字になるわけでございます。そこで商船関係でございますが、これは日本船主協会、大型の外航及び内航の所有者による集まりの団体、それからさらに全国内航船主海運組合、これはきわめて小型の船でございます。それから同じくタンカーでございます。それから旅客定期船というものが全国にございます。それからもう一つ全国海運組合連合会と申しますのは、主として機帆船でございます。こういった船主団体に組織化されている船舶所有者に属しておる船員を見当づけておるわけでございます。漁船につきましても大体同様でございまして、大日本水産会の傘下に日鰹連あるいは遠洋底引きその他幾つかの団体がございますが、こういった団体に加入しております船主に属しておる船員の数をあげておるわけでございます。そこでこれを逆に申し上げますと、二十七万名と十七万名の差は、たとえば商船につきましては、そういった船主団体に加入していない所有者に属する船主船員でございます。きわめて小さい小型鋼船、数百トン程度の小型鋼船あるいは機帆船、こういったいわゆる一ぱい船主というようなものあるいはそれに近い実態のもの、それからまた漁船につきましても、こういった漁船関係団体に加入していない、きわめて零細な所有者に属しておられる船員というものが一応除かれておるわけでございます。
  27. 鈴木健二

    鈴木説明員 船員法適用を受けない小型船舶船員労働災害状況等について申し上げますと、そのうち多数を占める漁業について申し上げますと、数年来、年間に死亡者約百人を含めまして休業八日以上の総数は約三千人、最近の四十一年の数字も、死亡者の百三十八人を含めまして死傷者は三千四百人ということになっております。その死亡者のうち約八割は海難事故によるものでございます。私のほうが所管いたします基準法違反につきましては、基準法に基づく安全衛生規則をつくりまして、特に動力、原動機等の安全装置等について規定を定めておりますが、いま申しましたように、死亡者のうちの約八割は海難事故によるもの、こういうことになっております。  念のために違反状況を申し上げてみますと、違反の多いのは賃金不払い、それから危害防止安全衛生に関する事項、あるいは健康診断を実施していない、就業規則がない、あるいは賃金台帳が備えつけられていないというふうな違反はありまするけれども、実際に起こった災害のおもなものは海難事故によるものが多い、こういうふうな実態になっております。したがいまして、私どもはこうした一万七千余りの事業所監督を行ないますと同時に、いまのような実情をとらまえまして、単に適用事業所だけが基準法違反がなければ済むという問題でもございませんので、おもに漁業組合等を通じまして、気象条件の把握とか集団出港の確保、徹底とか、設備面からする安全管理の徹底、また御存じのような海中転落防止のための処置、潜水病の予防、こういうものを中心といたしまして、基準局が中心になりまして、基準局からも出向いてまいりまして、漁業協同組合等を中心に、年に数回集団指導を行なうというふうなことを行ないまして、これらの点の趣旨の徹底をはかっておるような状況であります。
  28. 神門至馬夫

    神門委員 いまの船主協会等によって組織化されている船舶所有者、これを対象として十七万船員をもってまず発足するというが、その船主協会に組織されておるというのは比較的労働安全衛生、そういう点もまず整備が進んでおるところだと思うのです。むしろそれよりも、いま対象としてはずされている十万、これはもちろんあなたのほうでさっき隻数等の説明があったのですが、把握はされておると思う。そういう組織化されていない、むしろそのほうが事故としては多いと思うのです。ですからもし事故をほんとうになくそうということになれば、逆にこの十万を対象としてやはり発足するような何かを考えるべきじゃないか、こういうように思うのですが、その点はどうですか。
  29. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまお話のございました、いわゆる零細な船主にかかわる船員災害状況でございますが、これは確かに御指摘のとおり、一般の大型船に比べまして災害発生率が非常に高いということが十分予想されるわけでございます。今回の法律案はこういった船主を含めまして、船舶所有者であるならば、その大小を問わず本協会の会員になることになっておりますことはもちろんでございます。したがいまして、法律のたてまえそのものではございませんで、実際問題といたしまして、まず船主が自主的に集まりまして防止活動を行なう、そのために政府も補助金を出してこれを援助するという仕組みを考えます場合に、そういった零細船主を組織化するということにつきましては、今後相当の努力が必要であるということを考える次第でございます。したがいまして、初年度といたしましては、比較的組織化されておりましてこのような会員になりやすい船主対象として、いろいろな事業計画を作成したわけでございます。したがいまして、今後さらに協会基礎が固まりますれば、零細船主に対して強力に呼びかけまして、全部の船主が会員となって災害防止活動を行なうことにいたしたい、こう考える次第でございます。  さらに協会の事業でございますけれども、これは必ずしもこういった十七万名が所属しております。会員である船主だけの業務には限定されませんで、広く一般に災害防止のための広報活動、あるいは教育指導ということを行なうことになっておりますので、この法律によって定められます災害防止計画の作成にあたりましても、特に零細船主災害防止の点につきましては特段の配慮をいたしますとともに、協会自身もまた会員のみならず、そういった零細船主を含めて、広く船員に対する災害防止活動を推進するような方針をとるよう行政指導をしてまいりたい、こう考える次第であります。
  30. 神門至馬夫

    神門委員 先日の渡辺委員の質問のときに、陸上における五つの業種がすでにこういう災害防止協会が発足して、それがモデルになっておる、その実効性ははなはだ疑わしい、こういうような質問があったときに、あなたのほうは、船主にはそれぞれ呼びかけて積極的な賛同を得ておる、こういうことだった。私の言わんとするのは、この災害発生件数なんかを見ても、いわゆる内海とか、距岸距離三海里以内とか、こういうところが圧倒的に多くて、そして遠海になってくると、これは大きな船主ですし、災害は少ないのです。そうすると、行政指導される担当者であるところの船員局のほうから、このような協会が発足するにあたって呼びかけられた範囲というものが、むしろ整っておるところに呼びかけられて、大体積極的に協賛を得ておる、こういうふうな姿勢に問題があるのじゃないか。先ほども言いましたように問題は、一番多発しておる零細船舶所有者対象にしなければならないのを、きれいごとで済むところを対象にしてあらかじめ呼びかけておいでになり、そして見積もりを立てておいでになる。これを全部に呼びかけてみて、どうも船主協会的な船主団体の組織されていないところは参加してくれないので弱ったというふうなことであるならばまた別として、初めから仕分けをして、そういうところに呼びかけておるところに問題があるのじゃないか。事故の多発する零細船主に対して事故をなくそうとする意思というものがなくて、官庁仕事でとにかくきれいごとに、陸もやったから海もやらなければならないというお義理でつき合っておいでになるような感があると思うのです。これは事実の問題です。この辺は一体どういうふうに対象外とされた十万に呼びかけをなされたのか、この点をお伺いしたい。
  31. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまの点でございますが、私どもは決してそのような努力を従来怠っておるわけではないわけでございます。もちろん日本船主協会だけではございません。先ほどから申し上げました小型船に関しまして、それぞれの組織なり連合会がございます。したがいまして、そういったものにまず呼びかけると同時に、話しかける。現地におきましても、そういった組織に入ってないものはまず組織に入れる、組織に入れることによってさらに災害防止協会関係にも関連をつけていただくという努力は、従来も行なっております。今後もさらに行なってまいるつもりでございます。特に船員災害につきましてこのような措置がおくれましたのは、船員災害陸上関係に比較いたしまして特に急ぐ必要がなかったということでは決してございませんで、災害発生率その他を考えますと、陸上の特に産業別に防止協会を持っておる産業部門に匹敵する実態があるわけでございます。したがいまして私どもといたしましては、労安則その他の整備がおくれておりましたので、いままでこの措置ができなかったわけでございますが、今後急速にそのおくれを取り戻しまして、ただいまの御趣旨も入れまして、全船主が会員となるように今後努力してまいりたいということでございます。
  32. 神門至馬夫

    神門委員 一番問題点のあるところですから、幾ら行政指導として運輸省船員局がやっても、なおかつ船舶所有者自覚が足りないために、このような労働災害が多発する、こういうことをおっしゃっておるのですから、むしろ私はカットされようとする十万船員を持つ船舶所有者に対して積極的に呼びかけられるべきじゃないか。大きな船の場合は船員法安全衛生規則等によって内容が整えられておると思うのです。小さな場合は原始的な状態である。これはいまも局長のほうから答弁がありましたように、その根源をなくするために、むしろこのほうを積極的に働きかけていってもらいたいと思います。  それから、さっきの労働省説明の中にありました、死亡者あるいは転落というふうなことでいろいろ措置をしている、統計も把握しているというようなことでしたが、先ほど申しましたような、労働省基準局からも、あるいは船員局からも対象とされない事業船というのがあるんですね。これはどういうふうに、たとえば家内労働的、兼業的なものも、これは水産庁なり農林省としては、統計上の数字として三十八万もかかえておるのだと思うのですが、しかしそういうところにおける海難とか労働災害数字になると、全部あがってきよると思うのです。あるいは労働省のほうにも。その辺の、労働省事業所として取り扱わないような船についてどういうような指導をされているか、あるいは予防行政をされているか、この点を説明していただきたいと思います。
  33. 鈴木健二

    鈴木説明員 漁船につきましては、常時漁船に乗っていないというふうな労働者もおりますし、一人親方、まあことばが適切かどうかわかりませんが、一人親方的な漁船労働者と申しますか、そういう者もございまして、基準法適用になるのか適用にならないのか判然としない者もおるのは、御指摘のとおりでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、基準法適用になると把握いたしました一万数千の事業所に対しましては、先ほど申し上げましたような観点から監督をいたしておりまするけれども、それだけでは問題の処理が進みませんので、これも先ほど申しましたように、漁業協同組合を通じまして、繰り返して申して恐縮でございますけれども、気象条件の把握とか集団出漁の徹底、これも基準法適用者だけではなくして、そういう者を含めまして、そういうふうなもの、あるいは点検とか、そういうふうな施設面、あるいは人的管理とかいったような面につきまして、基準法適用者も適用者でない者も含めまして、漁業協同組合を通じて集団指導を年数回行なっておる、こういうふうな実情でございます。
  34. 神門至馬夫

    神門委員 私は、漁船なり底びき船なんかの問題を扱ったことが労働委員会としてあると言うのですが、いま問題になりましたような、基準局が直接労働安全に対して指導されているというような事実はほとんどないと思うのです。ただ労働問題等が起きて初めて、そういう問題が浮び上がってくる。むしろ労働省なり基準局としては陸上の部が精一ぱいであって、そういういわゆる船員法適用漁船が約九千、あなたのほうが事業所として認定しているのが一万七、八千、そうするとこれが二万五千くらいですね。三十八万何ぼから引けば三十六万隻が対象外になっておるのです。三十六万という膨大な隻数の中には一ぱい船主や、親子で乗り組むとか、あるいはどっちが兼業で、どっちがどうかわからぬ両極化現象というものが非常に激しいと思うのですね、いまの漁業の場合は。そういうふうなところにまた事故が非常に多い。そういう点はほんとうの問題としてはほったらかしにされておるんじゃないか、少なくとも監督行政というものはなされていないんじゃないかというふうに思うのですが、具体的に多発地域なんかにはどのような指導をしたか、そういう事例があればひとつ説明していただきたい。
  35. 鈴木健二

    鈴木説明員 小型漁船指導という面が、まあ大体工場を中心とした監督中心とする基準行政としては手薄になりがちである、これは先生御指摘のとおりでございますが、三十六年に漁船がたくさん事故がありまして、数百人死んだ事故がございました。そのときを契機といたしまして、こうした小型漁船に対する指導を強く加えていかなければならぬという方針をきめました。  ここに一つの例がございますが、小型漁船災害防止対策、これは三十九年につくったものでございます。千葉の労働基準局がつくったものが一例ございますけれども、こういうふうなものを各基準局でつくっていただきまして、この内容は先ほど申し上げたようなことを中心とするものでございますが、これを中心に漁業協同組合等の関係者に集まっていただいて、いわゆる集団指導、個別の事業所に申し上げるのでなくして、集まっていただいて集団指導する、こういう形態で指導を進めておるような次第でございます。まあ島根で、先生先ほどお伺いしなかったというようなお話でございますが、その点島根はどういうふうになっておるか把握いたしておりませんので、恐縮でございますが……。
  36. 神門至馬夫

    神門委員 そういうふうに船員法によるところの船舶船員によって区別がされておって、労働省運輸省所管が違うわけなんですが、いまこの船員法による第一条の第二項が生まれて、漁船が三十トンが二十トンになったというような経過的な変化はあるが、さらにこれを実際の条件に適応さすような変更をする必要を運輸省としては感じておいでにならないか。
  37. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまの船員法適用範囲の問題でございますが、一番問題になるのはやはり漁船であろうかと存じております。これらにつきましては、主として二十トン未満のものにつきましてどうするかということでございますが、二十トン未満漁船につきましては、その運航の実態が非常に複雑でございます。それからまた、それに従いまして、そこで働いております船員労働実態というものもきわめて多様でございます。したがいまして、船員法海上労働特殊性として遠く海上に航海するということを前提にして規定しておりますいろいろな条項が、直ちに合致するかどうかということにつきましては、今後さらに慎重に検討を要するものがあるのではなかろうか、こう考えますが、御指摘の御趣旨もございますので、労働省とも十分連絡いたしまして検討をしてまいりたいと思います。特に法的な問題はともかくといたしまして、当面ここに問題になっております安全衛生上の問題につきましては、運用の問題といたしまして労働省とも十分御相談をいたしまして、できるだけ遺憾のないように措置をいたしたい、こういうふうに考えております。
  38. 神門至馬夫

    神門委員 次に労働災害と海難との関係、これは密接不可分の問題だろうと思うのですが、海難のほうは保安庁が所管されておるわけです。この関係についてはどういうふうになされておるかという質問は、むずかしい質問だろうと思うのだが、保安庁と海難と船員災害、こういうことについてどういうふうな連携なり連絡がなされておるのか。
  39. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 海難につきましては、保安庁は海難の防止及び海難の起こったときの緊急救済措置ということを所管いたしておるわけでございまして、その労働法的な処置、すなわち海難による被害の発生後の家族の問題その他につきましては、これはやはり災害保険等々あわせまして、船員局所管をいたしております。
  40. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいま大臣からお話のありましたとおりでございますが、なお数字的にこの間の関係を少し御説明申し上げたいと思います。  昭和四十年度におきまして、船員の休業三日以上の死傷件数は約八千件でございます。このうち海難によりましてこのような死傷が起こりましたものは、二百十五件でございます。その割合は二・六%でございますので、船員災害の全体の発生比率から見ますと、そのパーセンテージはあまり高いものではございません。しかしながら、船員災害のうちの死亡事故というものを取り出しましてこれを見ますと、海難によるものが七〇%を占めております。これは先ほど労働省関係のほうからも御説明があったわけでございます。したがいまして、死亡事故関係につきましては、海難によるものが非常に大きいということでございますので、やはり海難というものが船員災害の重要な一つ原因であるというふうにわれわれは考えております。  ただ海難防止そのものにつきましては、海上衝突予防法その他によりまして、海上航行の安全という観点から規制がございまして、従来もそういった観点から海難防止対策が推進されてまいりましたが、これは今後もこのような観点で推進されてまいるもの、こういうふうに考えておる次第でございます。
  41. 神門至馬夫

    神門委員 今度の趣旨説明船員局から出された中に、千人率というのが出て図表になっておるのですが、先ほど申しました、海上保安庁が出しました「海上保安の現況」、その中を見ますと、いまの死亡率は七〇%だけれども、海難によるところの被災率というのは二・六%程度であって、全体のウエートとしては低いというふうに言われておりますが、保安庁のほうから見た「人のみの海難の事故種類別発生の状況」、こういう中に非常に特徴的なものがあるのです。先ほども労働省のほうから、転落の問題についてはいろいろ配慮しているというふうなことがありましたが、主要な事項として海中転落というのが非常に多いんですね。その海中転落者の七一%に当たる二百五十五人が漁船員であることが注目される、こういうことを言っているのです。さらに海中転落が発生した際の漁船の動態について見ると、いろいろのものがあって漁労中の事故がその半数を占めている。その原因としては、自己の不注意、安全管理の不適切あるいは過飲酒等によるものが大部分を占めている。海中転落を防止するための対策として、操業時の適切な安全管理云々というふうな労務管理なり安全衛生上の問題が保安庁からきびしく指摘されているのです。この辺について、先ほども大臣のほうから説明をいただいたわけですが、やはり海難を起こさないような物的な面の対策、さらに起きたあとの救援とか、いろいろ保安庁がやる。しかしその海難等が起こる原因というものは、それを操縦する人によって起こる。そうすると、そこに労働災害的な原因がやはり問題になってくるのじゃないか。これをいみじくも保安庁のほうがいっているのだろうと思う。こういう白書的なものが出される中にあって、たとえば転落一つ見てもどういうふうになされておるのか。救急艇というふうなものやら救命胴衣の着装整備、こういうふうなものも、事故を起こしてみるとそうない。あるいは有効な救命器具の開発というものがない、こういうことを書いている。先ほども私が質問いたしましたように、ただ船舶所有者自覚を促すのだというふうな精神主義的な面に依拠する一面も、それは大事なんだが、もう少し行政官庁としての行政責任を果たした上で、やはりそういう船舶所有者責任を重く見、またある程度きびしく取り締まっていく、こういうものがなくちゃならぬと思うのです。ところが、この実態の中からはそういう点が非常になおざりにされている、置き去りにされているということが出ておるのです。そういうふうな点については一体どういうことなのか。同じ行政官庁から出されたものに、こういう批判がある。これはどういうことなのか。先ほども有機的な連携がなされているとおっしゃったのですが、その辺はどういうふうに保安庁とあなたのほうとは話をされておるのか。  さらに、この海難の面から事故を見ますと、自殺が四十一年度で七十五人、そのうち六十名が死んでいるのです。ところが、乗船者の船員その他を含める自殺は四十四名で三十四名が死んでいる。非常に多いのです。そのように年間四十四名というふうな多くの自殺者が出ている原因というものは、この趣旨説明の中にもあるような特殊性はある、いわゆる社会と隔絶されておるというようなことやら、いろいろな問題があると思うのだが、この辺の問題についてはどういうようなことが原因になっているのか、こういうこともひとつ説明してもらいたい。とりあえずその辺からひとつ御説明を願いたい。
  42. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまいろいろな点につきまして御指摘がございましたが、まず具体的な問題といたしまして、海中転落の問題でございますが、私どもの資料から見ましても、先ほど御指摘がございましたように、漁船関係に非常に多い事故でございます。これはやはり今後漁船関係船員災害対策というものを推進してまいります場合に、その防止につきまして、セーフティーコードその他によりまして十分な措置がはかられなければならないのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第で、私どもも非常に重視しておる項目でございます。  それから、全体的に海上保安庁におきましていろいろな点を問題として指摘いたしておるわけでございまして、私どももそのことにつきましては、それをいかに具体的に実現していくかということにつきましては、運輸省といたしまして総合的に検討する必要があると考えるわけでございますけれども、具体的な問題といたしましては、たとえば安全器具の関係につきましては災害防止協会法その他によりましても、さらに具体的な研究と開発というものを行なっていく必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、実際に海難救助を担当いたしております海上保安庁とは、今後さらに連絡を密にいたしまして諸般の施策を進めてまいりたい、こういうふうに考える次第でございます。  それから、その次に自殺の問題でございますが、これは私どもが統計の数字を見ましても、最近こういった海上における自殺という点が、あるいは神経衰弱ということが一つの現象であるということは承知しておるわけでございます。この原因は、特に陸上関係と違った労働環境なり生活環境にあるということにつきましては、これは船というものが本来的に持っておる性格であろうかと存じますが、非常に複雑でございまして、たとえば船内設備の居住区の改善その他によって原則的には逐次改善されていくということもございますけれども、逆にまた個室になったために非常に閉鎖的な問題が起こってくるというようなこともございます。この辺につきましては、実は昨年海上労働科学研究所と申しますものをつくりまして、そこでさらに専門家によって詳細に今後研究していただくという手はずを現在整えております。また、さらにそのような研究の結果によりまして、これを船員災害対策防止上具体的にどのように措置するかということにつきましては、私どもといたしましても、また今後協会その他によってもその具体的な対策を実施していく、こういうようにいたしたいと考えておる次第であります。
  43. 神門至馬夫

    神門委員 必要があると思うということがたくさん出るのですが、研究中であるというふうなことなんですが、私がお尋ねしているのは、どのような具体的な行政指導なり措置をなされたか、こういうことなんです。非常に激増しているのですね。たとえば、やはり保安庁から出しておるのですが、殺人傷害等の生命犯は過去五年間の年平均の二倍に激増しておる。四十年と比べても一倍半、たいへんな増加ぶりなんです。そして殺人傷害犯の被疑者は大多数が漁船員である。特にカツオ・マグロ漁船に多い。それから四十一年においては、海外出漁中の漁船における傷害事件が多かった、こうなっておるのです。漁船がたくさんふえているという現象は、私はないだろうと思う。沿岸漁業にいたしましてもだんだん減っているし、大型化して、全体の隻数としては減少しております。それがこのように所得倍増的に倍増している。これは一体行政指導なり、措置をしているというふうにおっしゃっているけれども、具体的にこういう自殺とかあるいは人身犯、生命犯というような狂暴な刑事犯が起きているというふうなことを見ても、実際問題として一体どういうふうになっているのかということを非常に疑問に思うのです。どういうふうになされたのか。なされたとするならば、こういうふうな問題はやはり労働条件から起こる問題ですから、数字的に上がるはずはないだろう。その辺を説明願いたい。
  44. 河毛一郎

    河毛政府委員 漁船関係につきましては、ただいま申し上げましたように、最近殺傷事件というものがときどき発生いたします。特に遠く海外へ出て漁労を行なっております漁船関係につきまして、そのような問題が起こるわけでございます。その原因といたしまして私ども考えておりますのは、やはり操業が非常に長期にわたりまして、船内生活がある程度崩壊してくる、あるいは海外における風俗習慣というものが違いますので、トラブルが起こりやすい。また、海外における厚生医療施設の整備が必ずしも十分ではない、こういうところに原因があろうと考えておりますので、私どもといたしましては、まずやらなければならないことは、船員法関係の法令を整備いたしまして、漁船船員労働条件の向上をはかる。たとえば現在の船員法では、漁船につきましては労働時間、休日等の規定がございませんが、これらにつきましても現在労働委員会で審議をしていただいております。その結論が出次第、労働時間、休日等に関する省令を定めまして、まず基本的な労働条件の問題について改善をしていく、こういうことでございます。それからまた、その他賃金につきましても、歩合制度その他かなり前近代的なものを含んだ制度が一般的でございますので、できるだけ固定給の比率を上げる等の措置を従来も行なってまいりましたし、今後も行なってまいりたいと思うのです。それから特に、労働条件のほかに労働環境の改善指導という問題がございまして、漁船は船が遠くへ出ていくわりあいに船体が小そうございまして、居住施設その他について相当問題がございます。したがいまして、船内居住施設の改善のために、水産庁とも御相談を申し上げまして、数年前に普通ボーナス・トン数といっておりますが、居住施設改善のためのトン数を認める等の措置をしてまいったわけでございますが、今後さらにこのような問題を防止いたすために、医療施設の完備、あるいは船内生活要件の改善、そういった問題を推進してまいりたい、こう考えております。
  45. 神門至馬夫

    神門委員 いや、推進してまいりたいということでなしに、たとえば、たいへん問題になっていると思うのですが、基準法でも船員法でも、労働時間の問題に関する限りは適用除外になっているのですね。そういうふうなことが無制限に労働強化を強要するとか、あるいは特異な環境の中に閉鎖的な精神状態を起こして、いろいろいまのような深刻な問題が起こるわけであります。ほかにも刑事問題というのは、たくさんの事件が起きておりますね。ですから、いまの増加割合を見ますと何倍という増加割合なんです。ただ何%の増加というのではないのです。ですから、それらの措置について、一番最初質問しましたように、船主協会というふうなものをつくるということはもちろん大切であるが、十分なる行政措置を行なって、なおかつ船舶所有者自覚を促すんだということでなかったら、実際の行政責任は果たされてない。むしろそういうものをつくることによって隠れみのをつくることになるんじゃないかというのが、一つは問題なんです。基準局長もおいでになっておるようですが、基準行政においては屋上屋を重ねるようなたくさんの問題が実際問題としてあります。会議倒れになっている問題があるのです。そういうことについて、やはり私が懸念するような事実がここにあがっているのではないかと思うのです。その点がなされてない結果が、自殺とか、あるいは財産犯とか、あるいは生命犯とかいうような非常に深刻な犯罪が激増しておる、こういうことになっておると思うのですが、その点は実際の問題としてはほとんど手を打っておいでにならないのではないか。いまの答弁の中に、こうしたということはない。こうしたいと思う、ああしたいと思うということはあったが、なされてないということは事実ではないか。この点については船主協会をつくっても行政責任はそこに転嫁されてくる、こういうことになると思うのですが、その辺どうですか。
  46. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまの件でございますが、ただいまの説明が少し不十分で申しわけないと考えるわけでございますが、いまお話がございましたように、今後特に漁船関係と小型船関係中心にいたしまして、私どもがこの法律案考えておりますこととは別に、行政庁といたしましてなさなければならないことが多いことは申すまでもないところでありまして、今後そのような点をさらに努力してまいりたいと思いますが、従来具体的にこのような問題について手を打たなかったということでは決してございませんで、先ほど申し上げましたように数年前、漁船関係中心にいたしまして労働条件改善指導要綱というものをつくりまして、これには賃金、労働時間、休日、休暇その他の問題を具体的に掲げまして、現地で労務官指導に当たっており、またそれによって相当顕著な実績をあげておるということもございます。また、先ほど申し上げました労働環境改善指導要綱というものも水産庁と相談してつくりまして、ボーナス・トン数を認めるとか、その他の措置をやっております。また海外に出かけます漁船につきましては、海外の主要な漁業基地でありますラスパルマスというところに、漁船船員のためのセンターを厚生省にお願いしてつくっていただく等、具体的な措置はそれぞれとっておる次第でございますが、さらに努力をいたしたい、こう考える次第でございます。
  47. 神門至馬夫

    神門委員 くどいようですが、そういうような措置をとられながらも、なおかつ船員の特殊条件というものは、昔もいまも海の上でやっておるということは変わりはないと思う。それがなおかつ激増するという原因はどこにあるか。自殺者が出るとか財産犯が出るとか、あるいは人身犯が出るとか、こういうものが、特殊性はあるとしても、近年非常に激増しておるのは一体何が原因か。そのように行政指導が十分なされたとするならば、一体どこに原因があるのか。その辺はどのように把握しておられるか。
  48. 河毛一郎

    河毛政府委員 この辺につきましては、先ほど具体的な問題といたしましては、労働災害の発生件数疾病関係件数が非常に多いということを御説明した次第でございまして、全体的に見まして船舶の船内設備の内容は改善向上されておるわけであります。ただやはり船舶の運航の実態が、特に大型船について申し上げますと、港における停泊時間が非常に短くなっておる。そのわりに航海時間というものは非常に長くなっておる。そういった質的な相違というものは確かにございます。それからまた漁船関係につきましても、先ほど申し上げましたようにやはり航海時間なり航海距離が非常に長くなっておるというようなことがございまして、私どもといたしましてはさらに具体的にこれらの原因について研究する必要があると存じますが、このような最近における船舶の行動の特殊性というものに一つ原因があるのではなかろうかということを一応推定いたしております。さらに検討させていただきたいと思います。
  49. 神門至馬夫

    神門委員 この「海上保安の現況」などから見ますと、そういう海外における遠洋航海あるいは遠洋漁業、こういうものが時間的に長くなったからというようなことを一つの理由に言っておられるのですが、これでは、海難の多発するのをトン数別に見ると、百トンから五百トン未満の小型鋼船に多い、こういうことを言っておるのです。そうしますと、いまの遠洋漁業で長期間海外で運航しておるから、海外に行っておるからというようなことがその原因であるということとは食い違うのです。そうなってくると、保安庁と十分打ち合わせしているとかおっしゃっておるのだが、実際問題としては、こういう重大な問題が激増しつつあるときに、保安庁と十分打ち合わせしていないのではないかと思うのです。実際問題としての打ち合わせなり連携が、この白書を見ると不十分ではないかと思うのです。この点はどうですか。
  50. 河毛一郎

    河毛政府委員 海上保安庁の白書につきましては、私どもも十分検討さしていただいておるわけでございますが、私が先ほど申し上げました点は、実は最近になりまして汽船関係災害発生率が少し上がりぎみになってきた、こういう事態があるわけでございます。そこでその内容を分析いたしまして先ほど申し上げましたような推定をいたしておる次第でございます。しかし本来的に、漁船関係につきましては、あるいは小型船関係汽船関係から見ますときわめて高い災害発生率を持っていますが、そのような観点から見ますれば、海上保安庁の白書の言っていることはまさに正しいというふうに考えまして、またそれに対する具体的な対策というものが、われわれが船員行政として災害防止対策考えます場合に重要なポイントであるということは、いずれにいたしましても間違いない、こういうふうに考える次第でございます。
  51. 神門至馬夫

    神門委員 この漁船関係あるいは汽船において、そういうふうな自殺とか傷害事故、窃盗、こういう事故が前年の四倍ぐらいにふえていますね。そういうようなものの原因なんかはやはり労働条件等に密接な関係があるんじゃないかと思うのです。あるいは自殺をするとか傷害を起こすような原因、そういう心理状態と密接な関係があるのではないかと思うのですが、そういうふうな点はどうですか。
  52. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまお話のございましたようなことにつきまして、私ただいま具体的に詳しい数字を持っておりませんので、必ずしも的確なお答えができるかどうかということにやや不安を覚えるわけでございますけれども、全体的に現在わが国の船員は商船、漁船を含めまして非常に不足の状態にございます。これは経済の伸長に伴いまして、船腹の拡充が急速に行なわれておるということが原因でございますが、そういった具体的な人員の不足というものが特に小型船、漁船関係に集中いたしております。したがいまして、そのような人員を募集いたします場合に、従来と比べますと質の低い人を乗せざるを得ないというような点にも、一つ原因があるのではなかろうかというふうに推察するわけでございますが、内航船及び漁船のそういった特に人員関係の供給を確保するということは、したがって私どもの現在の一つの重大な問題点といたしておりまして、四十二年度から特に漁船関係につきましては清水、小型鋼船につきましては四国、それぞれに特別の学校を設けまして、そこで優秀な漁船船員あるいは小型船船員を養成するということを具体化しております。したがいまして、今後そのような御指摘の点も含めまして、さらにこのような素質向上の教育について努力してまいりたい、こういうふうに考える次第でございます。
  53. 神門至馬夫

    神門委員 それとあわせて、元に戻るのですが、船員労務官が八十名で、陸上の二千六百名と比較してはそう少ないとは思われない、こういうことなんですが、いまのような海難と関連する労働災害、こういうように申していいと思いますが、これがこういうふうに激増しておる今日の現状を見ると、直接第一線で監督指導を行なうところの労務官監督官不足というものが顕著じゃないか、私はそういうように思うのですが、なおかつ不足だと思われる程度でいいのか。これはこれだけの大きな犯罪が起きるような労働条件下にある。もちろんいまのように労働力の需給関係で質の悪い労働者をたくさん入れておるので、入れてから教育するというふうな措置もされておるんだが、これも実効をあげておらぬ、こういうことになってきておるのです。ですからどうしても統計をとったり、いろいろ調査をするというふうなデスクプランももちろん必要なんですが、それの実行者であるところの労務官というものは早急にふやす必要があるんじゃないか。この点について非常に消極的なようだが、どのようにお考えになっておるか。もう一度お尋ねします。
  54. 河毛一郎

    河毛政府委員 船員労務官不足につきましては今後特段の努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  55. 神門至馬夫

    神門委員 今年度予算においてもずいぶん増員については要求されておりますか。
  56. 河毛一郎

    河毛政府委員 四十二年度予算におきまして、労務官の増員の要求は一応出してございますが、結果的にはオートバイその他の設備をもらう、仕事をするための機動力を強化するという点で終わっております。
  57. 神門至馬夫

    神門委員 それはどういうことですか。機動力をもらうということで終わっておるということですか。
  58. 河毛一郎

    河毛政府委員 はい。ちょっと言い方がおかしかったですけれども……。
  59. 神門至馬夫

    神門委員 オートバイ、こうおっしゃいましたね。その辺は先ほどの「海上保安の現況」の中から私が質問しましたことで御答弁になって、遠洋航海、遠洋漁業、こういうふうなものが一つは自殺とかあるいは生命犯の原因になっておるとおっしゃっておる。それでいろいろな船主協会をつくろうとする。船員生活特殊性からこういうものが出た、こう趣旨説明の中でおっしゃっている。このことからいって、オートバイではやはり間に合わぬのじゃないか。遠洋航海の中で適切に調査をし、指導をするという場合には、やはり乗船をさせて一緒に仕事をし、実際に監督さすか、見さすか、それによって局長なり大臣の手元に向かって、このように激増するところの重大な深刻な問題をなくしていく、こういうことにならなくちゃいかんと思うのです。ですから、増員の要求をしたけれども、オートバイで間に合わした、強化をしたのだということでは、しっかり行政指導をしているのだということにならぬのじゃないかと思うのですが、この点はどうですか。
  60. 河毛一郎

    河毛政府委員 御指摘の点はまことにごもっともでございまして、実際を申し上げますと、具体的に船員労務官が現地におります場合に、足に非常に不便をいたしておりますので、数年来そのようなものを強化するということをいたしておりまして、それを申し上げたわけでございます。御指摘のとおり、そのようなことでこのような全体の問題が片づくということでは決してございません。したがいまして、今後さらに労務官の増強その他につきまして特段の努力をしてまいりたい、こう考える次第でございます。
  61. 神門至馬夫

    神門委員 労務官の実際の監督指導ですが、これは港々を回って停泊中の船の構造、設備を調べるというのが主要な仕事になっておるのですが、いまのオートバイがほしい、何がほしいということで間に合わしておるということは……。
  62. 河毛一郎

    河毛政府委員 これは、現実に船員労務官がどのような仕事のやり方をしておるかということに関係がございますが、結局船に参りまして、船の中で船員法その他によります規定によって設備なり体制がなされておるかどうかということを見ることが主でございます。したがいまして、訪船するということが非常に大切でございます。この場合、特に小型船、漁船というものを最近においては重点的に行なっております。したがいまして、沖がかりのものもございますが、陸から訪船するということが一番能率がよろしゅうございますので、現在は主としてそういう手段をとっておる次第でございます。
  63. 神門至馬夫

    神門委員 とまっている船と航海中の船というものは、全然心理的に及ぼす影響というのは違うのですね。この辺が、実は先ほどからいろいろ申し上げる海難と密接な関係を持っている労働災害というものは、運航中、航海中または操業中の船の特殊条件から起こるものなのです。その辺の監督指導がなされないということは、行政上の手落ちが一つありはしないか。それは監督官を乗せて指導したいのだけれども監督官が訪船することで手一ぱいでどうにもこうにもならないので、考えてはいるけれどもやれない、こういう二つの問題があろうと思う。怠慢からしないのか、する義務がないのか、あるいは足りないのでやらないのか、この辺をひとつ御説明願いたい。
  64. 河毛一郎

    河毛政府委員 実際私どもがやっておることを御説明いたしたいと思いますが、特に労務官におきましては、海上における実際の船内作業というものがどのようになっているかということを経験させる必要はもちろんあるわけでございますので、特定の人を選びまして、たとえば北洋漁業の船に乗船させて実際に現場を見させておくということは行なっております。ただ全体的にそのような業務体制にするということにつきましては、これは非常に多くの人を必要といたしますし、必ずしも全部についてそこまで行なうということが効率的かどうかということも問題でございますので、現在は、そういった実際に乗るということは例外的にいたしまして、先ほど申し上げましたような体制をとっておるわけでございますが、さらにもう少し人間的に余裕があれば、そういったことも頻度多く行なう必要があることはもちろんである、こういうふうに考えておる次第でございまして、今後労務官体制の強化につきましては、特段の努力をいたしたい、こう考えております。
  65. 神門至馬夫

    神門委員 これは六条の場合においてもそうですか、そのように最もポイントであるところの監督官というのはだんだん減らされて、人がいても旅費がない、基準行政の中では。そういう実態です。これは先ほど申し上げましたように、私が十年経験しておるのです。金がない、だから、動くことができない、こういうような問題が出ておる。私は海上の場合にもおそらくらち外ではないように思う。オートバイをもらって間に合わせておる程度です。実際問題として、船員局長は積極的におっしゃらないが、やはり労務官の増員をして、何と申しましても現地指導、現場においての指導というものが一番大事だと思います。  大臣にお尋ねいたしますが、この労務官を今後積極的に増員をする用意がおありになるでしょうか。いまのように非常に深刻な事故が多発している今日ですから、この点をちょっとお伺いしておきたい。
  66. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 運輸省といたしましては、いろいろな仕事をかかえておりますので、各方面で人員の要求が殺到しているような次第でございます。しかも最近の一般的な行政方針として、人員をふやすということについては非常にむずかしいような事情になっておりますので、まことに苦慮いたしている次第でございますが、引き続きこの方面の人員増加にもぜひ努力いたしたいと思います。
  67. 神門至馬夫

    神門委員 この増員方につきましては、船員局長のほうからいろいろ言われておりますが、絶対的に不足している、こういうふうに客観的な条件が示していると思います。ぜひとも増員をするように御努力願いたいと思います。  それから総合的な災害防止の問題ですが、産業災害防止計画というものが、産業災害の多発という一般的傾向にかんがみまして、三十八年から発足いたしております。私も去年県の産業災害防止のための委員もやっていたのですが、どうも私らの目にうつるのは、陸上の計画というものはある程度進んでいるようですが、海上におけるこの五カ年計画というふうなものが、プランとしてできているのかどうか。それがすでに三十八年から始まって、四十二年で最終年度ですが、そのようなものと本年度の予算との関連はどうなっているのか。この辺もしあるとするなら御説明を願っておきたい。
  68. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまお話のございました昭和三十八年を起点といたします新産業災害防止五カ年計画、これは一応海上関係の産業につきましても、それを含めて考えるようにという考え方でございます。ただ御指摘のとおり、何と申しましても陸上関係中心になりまして、海上関係陸上に比べて非常に取り上げられていないというのが実情でございます。従来私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますような努力をしてまいりましたけれども、今後またさらにこのような法律を奇貨といたしまして、確立した計画のもとに災害防止を推進してまいりたい、こう考えます。
  69. 神門至馬夫

    神門委員 それは海上のものもあるのですね。  それで、たとえばこういう協会をつくるというふうなことも一つの事業の中に入っているのかどうかわからぬですが、そういうようなものはやはり、五カ年計画の最終年度のことしの場合、予算とからみ合って計画が生きておりますか。その辺をお聞きしたいわけです。
  70. 河毛一郎

    河毛政府委員 ただいまも御説明申し上げましたように、この五カ年計画につきましては、海上関係のものも含めた全体的な計画であるということでございます。また、こういった計画を具体的に推進するについて陸上労働災害防止団体等に関する法律ができたということも、この辺が一つの根拠になっておるわけでございまして、その趣旨は全く同様でございます。
  71. 神門至馬夫

    神門委員 基準局長がおいでになっておるようですから……。先ほども質問をいたしたのですが、船員法なりを適用されない漁船の海難なり労働災害というものが非常に多いのです。それで、先ほども部長のほうからは説明をいただいたのですが、事業所単位のものについてはある程度把握をし、その行政指導なりをやっている、こういうことで千葉県等のものを例示して御説明になりましたが、やはり労働基準局としては、非常にむずかしくはあったとしても、水産庁行政指導の中に含めるべきかどうかわからぬけれども、あるいはそれとも関連性を持ちながら行なう面もあろうと思うのですが、そのような三十四、五万もあるところの漁船における労働条件安全衛生というふうなものについては、どういうふうなお考えがあるのか、あるいはどういうようなことをこれまで措置してこられたのか、この点をお聞きしたいし、また、その欠陥があれば、今後どういうふうにしたいということを御説明願いたいと思います。
  72. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 先生御指摘のように、零細な規模の漁業経営に属しております労働者の保護の問題、非常にむずかしい問題がございますが、私どもは、船員法適用を受けない漁船の中でも、大きく分けて二つの種類がある。それは、五トン未満のさらに零細な船を使います場合と比較的大きくて労災保険法の強制適用になっておりますもの、まあ二種類あるのじゃなかろうか。特に五トン未満漁船を使用いたしまして、労災保険の強制適用がない、任意適用になっているというようなものにつきましては、労働者であるかいなか、そういった問題からいたしまして基本的にむずかしい問題があるわけであります。そういった問題が、かつてはイカ釣りの漁船の問題として八戸とか函館などにございました。そういった種類のものと、やや大型な、しかし船員法適用を受けないというものがあるわけでございます。  そこで、やや大型のものにつきましては労働関係の明確化ということで、雇い入れ条件その他基本的な問題について正さなければ、いわば百年河清を待つような実態にあるわけでございます。そういう角度で雇い入れ条件の明確化、その他労務管理近代化という観点から接近してまいりたい。ところが、個々の船舶所有者に当たると申しましてもなかなか困難でございますから、先ほど災防部長から答弁申し上げましたのですが、漁業協同組合などを拠点にいたしましてそういった問題をプッシュいたしますと同時に、監督官がそのほうに参りましていわゆる監督指導する、こういう体制を強化してまいる。ただ、五トン未満の零細漁民になりますと、大工さんの一人親方的な要素が強くて、魚のとれますときには自分で舟をあやつっていく、それから特定の場合には他の船舶所有者に雇用される、まあ労働者になったり自営業主になったり、こういった状態にあるものについては非常に捕捉しがたいことでございまして、そういうものに対しては、いわゆる監督指導と申しましても、労働者でないという場合が生じますので、非常に問題がございます。しかし、一たん災害が起こりますと、これも部長から申し上げましたとおり、死亡災害となってあらわれまして、八割が遭難による死亡災害、こういったような形をとりますので、災害補償の面で特段の努力を払っていく。そういうことで、昭和四十年の労災保険法改正のときに、労働関係が明確でないものにつきましても、特別加入という方式を設けまして、当該船舶所有者、いそ舟を持っておる方ですが、及びその家族の方も、特別加入という方式で労災保険に入っていただく。これは強制適用でも任意適用でもない、特別の方式であるわけであります。それに加入していただきまして、そうして一たん災害が生じた場合補償措置をとる、こういう考えをとっておるわけであります。それとうらはらの関係で最近におきましては、そういった漁船関係の補償連絡員制度を設けまして、そして補償問題とあわせまして基準法その他の問題についても、認識の不徹底の面につきましては、啓蒙指導につとめたい。かような体制で今日に及んでおるわけでありまして、そういった点から、一昨年、四十年の労災保険法の改正を契機にしまして、特別加入制度を設けたその時点から、さらに体制的には強化されてまいっておる、こういうことでございます。
  73. 神門至馬夫

    神門委員 その場合、いま沿岸漁業が非常に凋落していますね。そういう中で、さらにその労働者であるかどうかというふうな資格条件が問題になってくるような階層への転落、さらに大型化への、純粋な労使関係への分化現象というふうなものは、最近とみに顕著であるというふうなことが言えますか。
  74. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 その辺の実態になりますと、私どもその実情をつまびらかにいたしておりません。ただ、八戸あたりになりますと、ふだんは農業を営んでおるが、イカ釣りの時期とか特定の漁獲時期に労働者になるといったようなたぐいの労働者も多うございまして、そういった方の労働関係がまた非常に捕捉しがたいという面もございます。
  75. 神門至馬夫

    神門委員 先ほどいろいろ質問をいたしましたような海難事故が、特に私も海難事故との関連で中心的な質問をしたのですが、非常に激増の一途をたどっております。それで、船主協会をつくって、それの自覚を促すというようなことも大切ですが、やはり行政指導としてもう少し適切なものが必要だと思う。具体的に言うならば、そのような盲点を補うような人的配置、もちろんその前提となる予算措置、そういうようなものがなされて初めてこのような船員災害をなくすることができると思うのです。ですからそういう点で所管局なり、所管省としての運輸省として、積極的に労働災害の絶滅を期せられるように、この船主協会が生まれることによって、むしろこれが隠れみのになるというふうなことがないようにお願いをして質問を終わります。
  76. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま神門委員から要望されたことにつきましては、私ども行政のいままでのあり方からいいましていろいろ反省すべき点があるように思いますので、今後十分努力をいたすつもりでございます。
  77. 古川丈吉

    ○古川(丈)委員長代理 久保三郎君。
  78. 久保三郎

    ○久保委員 まず船員局長にお尋ねするわけでが、この災害防止協会の中でいわゆる船員災害というものを防止するわけですが、第二条の(定義)によれば、「船員の就業に係る船舶、」以下順に書いてあるわけですが、この陸上における「労働災害防止団体等に関する法律」、これと大きく違うのは、言うならば船舶というか、そういうものが一つには違う。ところがだんだんこの法律案を見ていくと、どうも何か船舶というものの防災というか、そういうものについてはなかなか出ていないふうに私は見るわけです。たとえば第十四条の防止規程でありますが、その二には「船員災害防止に関し、機械、器具その他の船内設備、作業の実施方法、船内の生活環境等について」云々、こうなっておるのでありますが、ここでは船舶そのものずばりには何も言及していないですね。言うなら船舶という一つの浮かぶものがあって、そごに設備されるところの機械、器具あるいは生活環境、そういうものだけを中心にして、やはりここでは船舶そのものの問題が没入してしまった形、これはものの考え方として非常におかしいじゃないかということなんです。おかと海での違いは、この船舶というか、そういう自分が乗っておるもの——おかのほうでは汽車や自動車の安全というふうには、そのものずばりは言及していません。たとえば、ただ建造物というから、建造物の中には労働者が乗っておる汽車、電車、飛行機、そういうものも入るのかどうか。これは参考に聞かなければなりませんが、一般的な通念ということになりますと、労働者が仕事をしているいわゆる工場、作業場、そういうものを建造物というふうに、おかのほうの法律では規定しているようであります。くどいようでありますが、いま審議中の船員災害防止協会等に関する法律には、先ほど申し上げたように、船員災害には船舶そのものがずばり入ってくる。ところが内容であるところの災害防止規程というか、そういうものを見ますと、これまた船舶ずばりは没入してしまって、船舶に装備される生活環境とか機械器具とかいうことになっている。ところが労働災害、いわゆる船員災害というか、船舶災害の一番多いのは、いままでそれぞれの方から質問があったように、いわゆる全損といわれるような問題である。また深刻なんですね。船舶そのものがいわゆる沈没したりする。そのために船員がなくなっている。こういうことが一番痛切な問題なんですね。だから、そういうことについてどういうふうに考えているか。  それからこれは労働省に尋ねますが、さっき申し上げたように、労働災害防止協会のほうで言及されている建造物というのは、私が言うとおりに操縦している飛行機や運転している汽車、電車、自動車、そういうものは建造物でないというふうにとってよろしいかどうか。
  79. 河毛一郎

    河毛政府委員 第二条におきまして、船員災害の定義があるわけでございますが、ただいま御指摘の、船舶そのものについてこの法律はどういうふうに考えておるのか、こういう御趣旨であろうかと存じます。船舶そのものの問題といたしましては、災害にかかわる問題と、それから船舶の堪航性あるいは安全性にかかわる問題というものがあると考えられております。これにつきましては、両者を区分するということは具体的には非常にむずかしい問題であろうと考えております。私どもといたしましてもこの辺はいろいろ検討いたしたのでありますが、船舶そのものにつきましては安全法その他の法規で規制がございまして、それによりまして必要にして十分な規定がございますこと、及び船内の問題につきましても、たとえば居住性の問題その他につきましても、別途船員法に基づきまして船員設備基準その他を現在検討中であるということでございます。そこで、この法律といたしましては、もちろん第二条の定義のように船舶による災害というものも対象として入れておるわけでございますけれども、防災規程その他につきましては主として船内生活あるいは職務に伴ういろいろな設備その他の問題を対象といたしまして、広く船員というものに関する災害について、いろいろ防止のための必要な措置を行なう、こういうことを考えておる次第でございます。
  80. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 労働基準法の面から申し上げますと、労働災害防止という観点からは、労働者を就業させる建設物、その付属建設物は当然含まれますし、それ以外にも機械、器具その他の設備、原料もしくは材料、ガス、蒸気、粉じんといったようなものが災害防止対象になるわけでございます。ただ特殊なものにつきまして、たとえば火薬類取締法がございますが、そういう別な法律で製造施設、貯蔵施設等については規制がございます。そういった面との関連の問題がございますが、特殊なものについては別途の立場から製造、貯蔵等につきましては構造、規格が定められておる、こういう面があるわけでございます。しこうして災害防止規程というものはどういう位置づけになるのかと申しますと、これは御承知かと存じますが、法令で定める基準が一方にあり、それから使用者は一方においては就業規則で安全衛生に関する規定を定めることになっております。その中間的な存在といたしまして、アメリカ的なもので申しますとセーフティーコードというものを、民間の自主的な決定によりまして個々の使用者が設定する。これは安全衛生に関する規定、就業規則との中間に存在する。しかも個々の使用者に対しまして法的な影響力を持つ規定をつくりたいというのが災害防止規程でございますから、法令に特定の基準のあるものは格別書かなくてもよろしい、こういった関係になってくるわけでございます。
  81. 久保三郎

    ○久保委員 お二人の答弁、そのとおりなのかもしれませんが、どうも私は納得できないのであります。と申し上げますのは、さっき船員局長は、船舶の防災というものについては船舶安全法等そういうものがそれぞれある、しかも必要にして十分なものがあるのでここには言及していないということだし、いまの基準局長お話も大体そういうことに尽きますね。私が端的に聞きたいのは、汽車を運転している労働者の労働災害防止する規定は、汽車そのものの安全というか防災というもの、そういうものについては建造物という解釈はそこまでいかないのかどうかということを聞いている。あとからお答えいただきたい。  それから、あなたの答弁船員局長と大体同じでありますが、必要にして十分だというならば、災害防止規程の中などに列挙されるものは、それぞれ船員法なり労働基準法なりによって、安全衛生規定によってこれはきめられているのですよ。あるいは、船舶安全法によってもきめられているのです。だから、ことさらにこんなものをやることはない。言うならばこういうものをあげておいて、この法律でいけば船主あるいは雇用主、そういう者の安全、防災に対する認識を高め、あるいは積極的にそういう事業をやらせるというところに持っていこうということでありますから、そうなれば、これはさっきの話に戻りますが、船舶そのものの安全性、その防災について当然この中で言及されなければならぬ大きな問題だと思う。何か船そのものの防災については逃げているのじゃなかろうかと思うのです。私はこういう防災の協会ができて悪いとは申し上げませんが、むしろその前に、いまの船員災害考えるならば、あなたが答弁した必要にして十分な法律規定、制度、そういうものを船舶所有者に守ってもらうということがまず先決だと思うのですね。けさの新聞にも出ていましたが、これは水産庁にも関係ありますからお答えをいただきたいのでありますが、このけさの報道は、八日の日までにいわゆる釧路沖で小さい船が何ばいも遭難しているということであります。この新聞にははなはだしく極端なことが書いてありまして、「五日夜、かじ故障で救助を求めてきた新生丸(四・九トン、四人乗り組み)は、八日になっても手がかりがない。海図も読めず、無線操作を知らない漁船員ばかりの無謀操業で、巡視船の捜索は難航」している、こう書いてある。これは四・九トンだから役所の区別でいうならばまさに労働省だな。みんな四人とも事業主とすると水産庁。まさか一ぱいの船に四人の事業主が株式会社で入っているわけでもないから、これは基準局長だな。いままでこういう船について、大体労働省は認識あるのかないのか。それからもう一つは、労働省はいまだ水産庁に対して漁船船員労働について注意なり勧告なり連絡をしたためしがあるかお聞きしたい。
  82. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 労働条件につきましては、不幸にしてこのたび遭難されました四トンとか十六トン、六・五トン、船名も私ども可能な限り把握いたしておりますが、労働基準法適用があるわけでございます。ただ先ほど来の先生の御質問に関連して私ども考えまするに、船の規格構造自身について労働省がこのような型の船舶がよろしいといったような技術的な指導なり監督を行なえということは、現実の問題としてなしがたいものがございますので、むしろ水産庁その他の指導によるものではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。ただ、ただいま申しましたように労働条件の問題、特に災害補償の問題については非常に重大な問題でございますので、目下十八トンでございますと強制適用でございますが、四トン程度のものでございますと任意適用に相なっております。したがって、この保険関係の成立の有無等も、いま手配をいたしまして調査いたしておるような次第でございまして、補償の面につきましてもできるだけの措置を講じたいと考えております。はなはだ先生の御質問の趣旨に沿わないことと存じますけれども、こういった船舶の構造規格そのものについて監督指導するという点については、十分でないと申さなければならないと思います。はなはだ遺憾でございます。ただこういった補償問題、労働条件の問題につきましては、水産庁ともそのつど連絡をいたしておるわけでございます。
  83. 久保三郎

    ○久保委員 局長、質問は二つほどしているんですよ。あとのやつ一つだけで終わりにしてはいかぬ。ほかのほうの、団体法によれば建造物というものは書いてあるが、あれはいま言う四トン、四・九トンの船そのものには関係があるのかないのか、こういうことを一つ聞いておる。それからもう一つは、四人でございますから、海図も読めないし、無線の操作もできない者を——そのうちの一人が所有者かしれませんけれども、四人そのものが所有者ではないと思う。少なくとも雇用された漁船船員が四人の中に何人かおるはずでありますが、そういう出漁をさせるということは、水産庁の問題ばかりでなく、安全衛生というか安全の規定からいって、精神からいって、労働省関係は皆無であるというふうにはとれないのではないか。それからもう一つは、ほかのほうはすでに団体法ができておる。この船のほうで防災について何かやっておるかどうか。それから、いままで基準法で処理されるような船、その船員に対しての労働問題にからんだ問題として、水産庁に何かいままでに勧告とか連絡とかしたことがあるのかないのか、これをお聞きしておるわけです。  それから船員局長には、繰り返しますが、あなたの必要にして十分だというならば、ここに書いてあるものはみな必要にして十分な法体系がなされておるのでありまして、やらないまでの話である。おかしいじゃないか、こういうことなんですよ。それはどう思いますか。わかりますか。わからなければ、おまえの質問はわからぬと言ってください。
  84. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 四トン程度の小型の船舶に乗り組んでおります人々の問題につきましてまず調査しなければなりませんが、労働者であるかどうか。つまり船舶所有者の家族が乗っておるという場合には、労働関係が認められないという場合もありますし、これは今後調査の結果を待って処理したいと思います。ただ、こういった小型の船舶につきましても災害防止がきわめて重要なので、今回新設されます災害防止協会といったようなグループに入らないとすれば、どのような措置を講じて災害防止につとめるかという問題があるわけでございます。一応団体の組織としては、労働省所管のものにつきまして特別なものはございますが、その他のものは中央労働災害防止協会会員として含める、こういうたてまえになっております。しかしそれはいわば理屈でありまして、あえて申し上げる気持ちはございません。それよりも現実の問題としては、漁業協同組合等を通じまして適確な指導を行なう、たとえば千葉県で行ないました千葉県漁業労働災害対策協議会というような組織を設けまして、その土地にふさわしい小型漁船災害防止対策を講ずるといったような、きめのこまかい方法が実効があるのではないだろうかというふうに私ども考えておる次第でございます。  しこうして、水産庁連絡したことがあるかどうかということでございます。先ほどもお答えいたしましたが、たとえば昭和四十年の労災保険法の改正に際しまして、特別加入制度がございます。そういったような問題もあり、水産庁とは接触する面もあるわけでありまして、問題のつど必要な連絡はとる、こういった考えで今日までまいっておる次第でございます。
  85. 河毛一郎

    河毛政府委員 先ほど船舶そのものにつきまして、安全法関係の体系で行なわれておるという御説明をいたしました。必要にして十分ということを申し上げたようでございますが、これは少し言い過ぎでございまして、取り消さしていただきたいと思います。私が申し上げたかったことは、船舶そのものの構造の航行の安全上の問題といいますものは、船舶安全法の体系によりまして行なっているということでございます。したがって、御指摘のように、それが現在十分であるかという点につきましては、さらに検討を要する問題が多々あるんではなかろうか、こういうふうに考えますが、いずれにいたしましても、船舶そのものの安全性あるいは堪航性の問題につきましては、安全法を基礎とする行政に一応まかすということが行政のやり方としては現実的なのではなかろうか。したがいまして、そういった船舶そのものの堪航性なり安全性につきまして、ここに考えられておりますような船舶所有者の自主的な発意を促すというようなこともあるいは必要であるかもわかりませんが、そういった問題は一応安全行政の立場からまた検討し、具体的な施策を進めていくということが適当ではなかろうか。もちろん具体的には船員災害とそのものとは非常に密接な関係があるわけでございますので、具体的な運用については密接な連絡が必要である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  86. 池田俊也

    ○池田説明員 新聞で伝えられておりますサケ・マスの関係の事故でございますが、私ども非常に苦慮しているわけでございます。私、直接サケ・マス漁業を担当しておりませんので、詳細なことは存じておりませんけれども、新聞等で承知いたしております限りでは、どうも魚を積み過ぎて、そのために船舶の安全性がそこなわれた、こういう事態であるように存じております。従来私どもが承知しておりますいろいろな事例でも、実はそのような事例が非常に多いわけでございます。それで、いま先生から御指摘を受けました、漁船にすぐというわけにも実はいかないわけでございますけれども、私ども漁船の安全につきます基本的な考え方といたしましては、これは当然、船舶安全ということで主として運輸省で担当されておるわけでございますけれども、私どもといたしましても、非常にその点につきましては重大な関心を持っておるわけでございまして、その一つの具体的な措置といたしまして、先ほど船員局長からも若干そのお答えがあったようでございますが、今回大臣許可漁業の一斉更新をいたすわけでございますけれども、それ以後建造されます漁船につきましては、漁船の設備基準、具体的には乾舷マークということで、たとえば、このくらいまでしか魚を積んではいけないという目じるしははっきりさせまして、そうしてそれ以上の荷物を積まないように指導をする。従来そういう指導をやっておったわけでございますが、これを今回強制適用する。二十トン以上の船でございますが、強制適用いたすことによりまして、海難の防止というものにかなり大きな役割りを果たし得るんじゃないかということを実は考えておるわけでございます。その他いろいろな、これは非常に抜本的な施策というわけには実はまいらないのでございますけれども、たとえば従来漁船の事故というものが、いろいろな技術の未習熟という点に発している点がかなりございますので、そういうような点から、たとえばいろいろな安全関係の技術でございますとか、あるいは船舶運航に関する技術でございますとか、そういうものにつきまして船員の教育をするということで、これは修練会という名前で呼んでおりますが、そういうような事業を従来実施しているわけでございます。さらに、漁船に対して適確な情報を提供する、漁況海況予報ということばで言っておりますが、そういうようなことで、漁業の効率をあげると同時に、安全の点も遺憾なきを期する。非常に抜本的な対策というわけにはまいりませんが、こういうような事業も行なっておるような次第でございます。
  87. 久保三郎

    ○久保委員 お二人の局長さん、いまの漁政部長の一番最初の答弁お聞きになったと思うのでありますが、事故は積み過ぎによって起きるものが多いのでありますと言うんですね。だから、船員局長の言う、いわゆる耐航性がどうであるとか、復元性がどうであるとかという、何にも積まないような船の話をしていたのでは、動かぬ船の話なら、これはあなたのような御答弁でけっこうだと思うのです。ところが、現実に魚や漁具や油を積んで航海するということになりますれば、これは協会というものができますれば当然その任務の中には、いわゆる生きた船についての船舶所有者責任というか、防災の任務というか、そういうものが織り込まれねばならぬと私は思うのです。そういう意味でさっきから申し上げているわけです。どうもその点の配慮が足りない。一番大事な点について——これはむずかしいですよ。むずかしいからなかなかやれない。乾舷マークのお話もありましたが、これも七、八年われわれがここで政府に要求してまいりまして、やっと最近これはできてきたのです。ところがその乾舷マークがついても、おかのほうのダンプトラックじゃないが、守らないのがたくさんありはしないか。守れない。よしんば乾舷マークは適正に守って、魚の積み過ぎもなく、油の積み過ぎもなくて往復する。しかし、通っちゃいけないところの海区を、いわゆる市場に間に合うためにはということで危険をおかして通るということが、乾舷マークには関係なく行なわれる。そうした場合には当然のごとく、乾舷  マークはできたんだが遭難したということになる。そういうこともありますので、この際十分考えていくべきだとわれわれは思う。  そこで、水産庁にあらためてお伺いするわけでありますが、一斉更新の話が先ほど出ました。一斉更新では当然——いまの漁船船員、そういうものの労働条件というもの、そういうものが無視されて災害が多くあるわけであります。そこで、特にこの漁業法の中では許可漁業について、五十七条で許可の条件というか欠格性としていろいろあげている。その中では「労働に関する法令を遵守する精神を著しく欠く者であること。」こういう者にはいわゆる許可を与えない、こういうことですね。この辺まではこの法律はいいのです。ところが四・九トンで千島列島の先のほうに行ってひっくり返ってしまう船が、堂々と出てくるのであります。多少水産関係ではこの辺は進歩的なんですね。ところが一斉更新は、そういう欠格条項があっても同じように更新されるんじゃなかろうかと私も思っているし、世間もそう言っていますが、これはそういうことになるのですか、いかがでしょう。
  88. 池田俊也

    ○池田説明員 ただいま先生御指摘のように、漁業者の中で、労働法規あるいは漁業法規に違反をいたしまして、そういう法令を遵守する精神を著しく欠く者につきましては許可を与えない、こういう規定がございます。実はこの規定は従来必ずしも実行されておらなかったと申しますか、実はなかなか運用がむずかしいわけでございます。ただ、最近のいろいろな、先ほど来御指摘がございます事故でございますとか、あるいは船員の負傷を守るという、こういうような立場から、やはりこの規定につきましては、相当まじめにわれわれとしては取り組む必要があるというふうに考えているわけでございまして、実は今回の一斉更新に際しましては、こういうような観点からの検討をだいぶいろいろ関係省の御協力を得ましていたしたわけでございます。労働関係の法規あるいは漁業関係の法規の違反状況を調べまして、そうして一回程度であればこれはまたいろいろなやむを得ない事由もあったかと思いますが、これを数回重ねるというような場合には、これはやはり許可を与えないようにすべきではないだろうか、こういうふうに考えた次第でございます。ただこれにつきましては、一面また考えなければなりませんのは、漁業経営の立場がございまして、かりに従来持っておりました大臣許可を今回与えないということにいたしますと、従来の経営が維持できない。非常に極端な例をとりますと、たとえば十ぱいの船を持っている会社に対しまして、全部許可を与えない、こういうふうにいたしますと、その会社としては倒産というような事態が考えられるわけでございます。そういうことになりますと、これは単に経営者だけではなしに、漁業労働者の生活にも非常に大きな影響を与えることでございますので、その間の調整に非常に苦慮した次第でございます。そういうような事情を勘案いたしました結果、一つ基準を設けまして、たとえば具体的な数字はちょっといまはっきり覚えておりませんが、累犯四回というような場合には、これは許可を与えない。これは非常に悪質な事例でございますので、許可を与えない。それ以下の場合であっても、なおかつかなり累犯の度数が多いというものにつきましては、これは当面許可を与えるけれども、しかしながら、次に同じような違反を起こした場合には許可を取り消す。いわば予告をするというような二つのケースを考えたわけでございます。それで前のような事例につきましては、先ほど申し上げましたようないろいろな社会的影響も多うございますので、今回は、一定の基準以下であったということもございますけれども、一応結果といたしましては適用いたしませんで、ただ解除条件の許可をいたすという予定をいたしているものが、ある程度の数ございます。これによりまして、私どもといたしましては警告を与えまして、こういうような事態を今後起こさない、こういうことでやるほうがより効果としても大きいのではなかろうかと考えておるわけでありまして、今回初めてそういうふうな措置をとるように大体きめておる次第でございます。
  89. 久保三郎

    ○久保委員 どうも水産庁はなかなか幅のある役所でありますから、融通無碍というか、たいへんものわかりのいい役所でありまして、一つは、いま直ちにそういうものに許可をしないと食っていけない。だからそれはそこの船舶所有者というか漁業主ばかりではなくて、働く者も困るだろうから、ひとつそういうものも考えていかねばならぬ。これは、そういう精神はりっぱな精神ですよ、見ようによっては。だけれども、これはどろぼうに追い銭ということばはちょっとぴったりしないけれども、やや似ていると思う。というのは、四回累犯をした者は許可をしない。四回というのはきっとないんでしょう。ないことを予想して四回ときめる。そういうことを堂々とここで御発表いただくというのは、私はたまげたものだと思うのです。大体、頭の上のほうへ線を引っぱっておいて、ここまで達しないからといったって達しようがないですよ。そういうことで一斉更新をやろうというのでありますが、そういう態度については、われわれはどうも了解しにくい。時間もありませんから、次会にも水産庁にはおいでをいただくほかはございません。これで水産庁のほうは終わったわけではないですよ。誤解があっては困りますから……。  そこでもう少し申し上げておけば、いうならばあなたが無理だという背景、それは労働基準法とか、船員法とか、あるいは水産庁指導要綱とか、あるいは船舶の安全とか、一切のそういうものを無視しても操業しなければならぬという実態が、水産界にはあるわけです。そこであなたが言うようなことで今度また同じように、一斉更新の際も再び三たびこれは許可している。そうすると、その背景をちっとも直さぬでやるのでありますから、これは海難は続く。労働基準法というか、基準に対して違反がある。これはやらなければ商売にならない、そういうところへ追い込められているからやっている。そのためにあなたのほうは一斉更新で、さっき言ったように、これはいまやめさせろと言ったって無理じゃないですかと、人情論でいく。もう一つは、四回という基準をつける。もっともらしい基準だから、だれもわかりませんよ。おそらく四回としたのは、四回以上はないから四回にしたのだろう。これも理屈に見える。そんなことでこの委員会説明されても、ちっともわれわれは納得しがたいわけです。だからこれは、次会までにもう一ぺん問題点を整理して御答弁いただきたいと思うのです。あと三分くらいしかございませんから、本日は水産庁はこれまで。  基準局長にお伺いしますが、あなたはこの次には出てこられないのですか。きょうは与党の会議でおそくなったわけですね。この次はおいでになれますか。
  90. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 ほかに委員会がございませんければ参ります。
  91. 久保三郎

    ○久保委員 それでは基準法関係で特に船、これはおたくの守備範囲に入るわけですね。まずその中でも漁船といったものが多いかもしれませんが、そういうものの安全とか衛生、あるいは労働条件、そういうものについて業界なり団体というか、そういうものをいままで指導されておりますか。おれば、その歴史もお聞かせいただきたいのですが、これまた時間がございませんから、書き物でひとつ次会までに出していただいて、一ぺんわれわれに調べさせていただきたい、こういうふうに思いますので、きょうはお願いをしておきます。  それから厚生省からおいでになっておりますね。——たいへん朝からお待ちいただいて、一言もお尋ねしないのは失礼でございますから、きょうのところ一つだけお伺いしますが、船員保険のいわゆる保険財政というか、そういう帳じりはどういうふうになっているのか、大まかな御説明をいただきたい。  それからもう一つは、この協会ができますれば、船員保険の中から基金というか、そういうものを出すようでありますが、これはいかなる——去年の残りといっては語弊がありますが、たまりですね、それから出すのか、そこをお伺いしておくと同時に、厚生施設についてお伺いしなければいかぬと思ったのですが、そこまでいけなければ、この次お出ましをいただきたい。  以上でございます。
  92. 竹元修一

    ○竹元説明員 お答え申し上げます。  船員保険の財政状況でございますが、四十二年度の歳入におきましては、保険料収入、保険に要する国庫負担がございます。それから積み立て金の運用収入と合わせまして、合計三百五億三千四百万円の歳入でございます。一方歳出におきましては、疾病、失業、それから年金の各部門にかかる給付に要する保険給付費が一本でございますけれども、それからそれに福祉施設費等を合わせまして、さらに予備費を若干含めまして、合計二百十億七千二百万円となっておりますのが現状でございます。このうち福祉施設費につきましては、八億五千五百万円が計上されております。  なお収入、支出の差し引きに剰余金が生じますが、これは年金原資に充てる金額でございまして、将来の積み立て金として積み立てるというふうになっておるような次第でございます。その積み立て金の現況は、昭和四十年度末におきまして三百六十三億九千六百万円が計上されております。  第二点でございますけれども、今度法律で提案になっております船員災害防止協会が設立されることになるわけでございますが、それに私のほうの船員保険特別会計からは、船員災害防止協会が行なう事業に対しまして補助金を交付するということにいたしております。その金額につきましては千七百万円を計上いたしておりますが、これの積算につきましては、船舶所有者に所属する船員の数が約十七万人に相当するだろうというようなことでございましたので、それに対応します——会費が百円徴収されるので、その見合いとしまして同額を補助するという趣旨で計上いたしたような次第でございます。  少し長くなりますけれども、一分間くらいで申し上げますが、福祉施設の現況でございます。船員保険の福祉施設といたしましては、現在病院が三、それから診療所が二、保養所が五十二、それから休養所というのがございまして、病気になりまして下船したときに行き先がないという者をさしあたって収容するのでございますが、これが全国で十五ございます。それからラスパルマスに船員災害、失業対策等の関係船員の厚生施設を設置いたしまして、ことしの四月一日から開設いたしているような現状でございます。  そのほか昭和四十二年度におきましては、中高年齢者の疾病予防検診あるいは栄養剤、性病予防対策とか結核検診等の予防対策、あるいは整形外科療養、脊髄損傷の患者に対する介護の対策、あるいは海上医学研究等を実施いたしまして、船員保険の被保険者、家族の健康の増進をはかる目的で現在行なっているような実情でございます。
  93. 久保三郎

    ○久保委員 時間が過ぎましたが、これは次会までに調べてきてください。さっき申し上げた特攻出漁、最近はいろいろ新語が出まして、特攻隊の特攻なんですが、特攻だから帰りがない。こういうものが何隻かありますから、これは労働省船員局水産庁全部関係がありますが、いかなる形でやって、どういう点がまずかったのか、次会までにできるだけお調べをいただいて、この次に御披露いただきたい、こういうふうに思います。  そういうわけで、約束の時間でありますが、質問が全部終わりませんので、次会に譲りまして、本日はこれで終わります。
  94. 古川丈吉

    ○古川委員長代理 次会は、来たる十三日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十五分散会