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1966-12-19 第53回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年十二月十九日(月曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    池田正之輔君       今松 治郎君    植木庚子郎君       小川 半次君    加藤 高藏君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       小山 省二君    正示啓次郎君       鈴木 善幸君    竹内 黎一君       中曽根康弘君    中川 一郎君       中野 四郎君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君       西岡 武夫君    西村 直己君       野田 卯一君    藤井 勝志君       古井 喜實君    保科善四郎君       松浦周太郎君    松野 頼三君       三原 朝雄君    湊  徹郎君       森田重次郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府事務官         (人事局長)  増子 正宏君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         警  視  監         (警察庁交通局         長)      鈴木 光一君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         外務政務次官  田中 榮一君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (経済協力局         長)      廣田しげる君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      服部 五郎君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         食糧庁長官   大口 駿一君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      今村  曻君         通商産業事務官         (企業局長)  能谷 典文君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         中小企業庁長官 影山 衛司君         建設事務官         (計画局長)  志村 清一君         建 設 技 官         (河川局長)  古賀雷四郎君         自治事務官         (選挙局長)  降矢 敬義君         自治事務官         (財政局長)  細郷 道一君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 十二月十九日  委員井出一太郎君、江崎真澄君、小川半次君、  小山長規君、登坂重次郎君及び中曽根康弘君辞  任につき、その補欠として鯨岡兵輔君、西岡武  夫君竹内黎一君、中川一郎君、加藤高藏君及  び藤井勝志君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員鯨岡兵輔君、竹内黎一君、西岡武夫君、西  村直己君、藤井勝志君及び古井喜實辞任につ  き、その補欠として小川半次君、湊徹郎君、池  田正之輔君保科善四郎君、小山省二君及び森  田重次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小山省二君及び中川一郎辞任につき、そ  の補欠として永山忠則君及び古井喜實君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員池田正之輔君加藤高藏君、永山忠則君、  保科善四郎君、湊徹郎君及び森田重次郎辞任  につき、その補欠として江崎真澄君、登坂重次  郎君、中曽根康弘君、西村直己君、井出一太郎  君及び小山長規君が議長指名委員に選任さ  れた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  昭和四十一年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十一年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十一年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十一年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。灘尾弘吉君。
  3. 灘尾弘吉

    灘尾委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、これから政府に対して若干の質問をいたしたいと存じます。  まずその前に、委員長に一言お伺いしたいと思うのでありますが、今回の国会は、世上、変則国会といわれております。野党諸君出席のないままに審議が本会議においてすでに行なわれてきたわけでございますが、本日のこの委員会におきましても、相変わらず野党諸君は一名も出席しておらないのであります。ときどき退場せられるということは野党諸君の例とするところでありますが、最初から本会議委員会出席しないというような態度をとられるということは、はたしていかなる理由に基づくものであるか、まことに不可解千万と申さなければならないと思うのであります。この関係について、委員長として、また委員会理事諸君として、今日までいかなる御処置をおとりになったか、まず、その点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  4. 福田一

    福田委員長 委員長からお答えを申し上げます。  御質疑のとおり、この委員会自由民主党だけの出席で行なわれるという姿はまことに遺憾でございますが、この点につきましては、すでに御案内とも存じますけれども自由民主党といたしましては、野党の方々にあらゆる機会を通じて審議に参加していただくようにお話をいたしました。議院運営委員会においても、あるいはその他の非公式の形においても、特に十七日は、午前中から与野党幹事長書記長会談が行なわれまして、深更に至るまでいわゆる正常化努力が続けられておったわけでありますが、これがついに結実いたさないで今日に至っておるのであります。  予算委員会といたしまして、私は委員長として、また、こういうような不正常な姿でないようにいたしたいと考えまして、すでに十日の土曜日にも、それから十二日の月曜日にも、十六日の金曜日にも、三回理事懇談会というのを開きました。このときは野党諸君も、懇談会でございますから出ておいでになりましたが、その懇談会において、できるだけひとつ予算委員会には出席をしてもらいたい、特に今回の国会補正予算を中心にした国会であるのであるから、ぜひとも審議に参加していただきたいということを申し上げておったのでありますが、これは党の話し合いの片がつかないうちは出席することはできないであろうという野党の御意見がございました。そこで、御案内のように、十七日は、先ほど申し上げたような三党といいますか、野党との話し合い自民党との間において議長あっせんに基づいて行なわれました。そこで予算委員会もその話し合いが円満に片づくことを希望いたしておりましたので、われわれは当日は理事会を開くことなく、夜中の十一時五十分まで、実は委員会を開かないで、そうして待っておったのでありますが、私が議長サロンにおもむきまして、社会党の成田氏が、どうしても妥結といいますか、議長提案に応ずることができないという拒否の回答をされたのを見きわめた上で、実はこの委員会にやってまいりまして、そうして、すぐに審議を始めましても審議を行なう時間がその日はございませんので、翌日午前零時五分より委員会を開会する旨の宣言をいたしました。そうして、十八日の午前零時九分から異例の委員会を開いたわけであります。  これは御案内のように、もうすでに御承知でありましょうが、補正予算というものは国民の最も要望しておる議題を含んでおるのでございますから、これをないがしろにすることはできないので、そのような非常の措置をとったわけでありまして、われわれとしては、委員長といたしましても、また与党の理事といたしましても、十分その意味においては努力をいたしたつもりでありますが、遺憾ながら結実を見ることができなかったことは非常に残念に考えております。このような次第でありますので、御了承を願いたいと思います。
  5. 灘尾弘吉

    灘尾委員 ただいまの委員長お答えによりまして、委員長はじめわが党の理事諸君の、この委員会の開催についての御努力は十分に多とするものであります。お話しのとおりに、案件はきわめて国民生活に密接した非常に重要な、また意義ある案件と心得ておるのでありますが、それにもかかわらず、この委員会をボイコットするというがごとき態度は、まさしく国会そのものに対するきわめて怠慢しごくの考え方でありますと同時に、国民諸君に対する愛情の欠除と申さなければならぬと思うのでありまして、私も委員長とともにまことに遺憾とする次第であります。この点は、ただいまのお答えによりまして私は了承いたします。  これから総理大臣はじめ各大臣お尋ねをいたしたいと存じますが、まず総理お尋ねをいたしたいと存じます。  総理大臣は、先般の十二月一日の自由民主党の大会におかれまして再び自由民主党総裁の重任におつきになられたわけであります。その後、閣内の人事も一新せられました今日、総理大臣として、引き続いての総理大臣ではございますけれども、御心境には格別のものがあろうかと存ずる次第でございます。総理は、すでにその所信表明において明らかにせられておりますので、総理の御所信につきましては大体わかっておるつもりでございます。重ねて恐縮でございますが、いま申しましたような格別の御心境もあろうかと存じますので、この時点に立って、今後どういう心がまえをもって政局を担当しておいでになるのであるか、この点をより一そう明確にしたいので、あえて御質問申し上げる次第であります。どうか全国民総理の御心境を語るというお心持ちをもって、わかりやすくお話を願いたいと存ずるのであります。  総理は、今日の政界状態に対しまして遺憾の意を表明せられるとともに、政局を担当するものとしての責任を痛感すると申されたのであります。また、このような不祥な事態を政界宿弊としてこれを一掃することに努力すると申され、それが総理に課せられた至上の責務とも申されたのであります。そもそも、この総理のいわゆる政界宿弊なるものは、何によって起こったものとお考えになるか、また、これが解消について今後いかなる具体的なお考えを持っておいでになるか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  私の心境は、しばしば所信表明あるいはその他の機会――これはもう十一月一日以前にも重ねていたしましたので、この点をこの機会にまた申し上げようとは思いません。ただ、私、非常に残念に思いますのは、本来、政治そのものを推進して、そうして国民生活の向上、充実をはかっていく、これが私ども責任責務だ、かように思いますが、その以前に、いわゆる政策以前の問題だといわれておる道義の問題や綱紀の問題について非常に議論がやかましくなっておる。この点を一掃しなければならない、かように私思って、ただいま、まず第一段として、国民信頼を得るような人事の一新をひとつはかっていこう、これが一つのきっかけになるのだ。しかし、これでもう万事終わったというものではございません。ただいまのような政策以前の問題、これに真剣に取り組まなければならない。しかも、この問題は、黒い霧という表現で説明されておりますが、このことは綱紀あるいは道義の点では黒い霧というものになっておる。しかし、国民責任を果たすという面から見れば、今回の異常国会でも示されておるように、私どもの各方面で姿勢を正して考えなければならない点が非常に多いと思います。ここに問題があるように思う。私は、一昨日も参議院の本会議で申したのでありますが、この敗戦というとうとい犠牲を払って、そうしてその代償としてかちえた民主主義、これをわが国に実施していく、これを育成していく、たいへん苦難が多い。まだまだその初歩にもついてないじゃないかということを実は述懐いたしたのであります。冒頭において、委員長に対して、この国会をどういうふうに考えるか、こういうお話がありましたが、私、確かにこういう点もわれわれの職責、職務を十二分に果たしていく、そういう心がけに徹しなければならないのじゃないだろうかと思います。それぞれがそれぞれにいろいろな批判をするだろうと思います。しかし、お互い国家国民に対する責務を果たしていく、本分に徹する、こういう感じになれば、今日の状態はよほど変わっていくんじゃないか、また、それを変えなければならないと思っております。ただ、私は、他を言うのではなくて、私自身政治政局を担当しておる、また、最高責任者としてただいまのような点を痛切に感じているならば、最高責任者としてなすべきことがおのずからあるのではないか。これをただいまの政治組織民主政治のもとにおいては、党の協力のもとに、党の支持のもとに、ただいま申し上げるような国家国民に対する責務を果たしていく、こういうことであってほしいと思うのであります。  そういう意味で、私が陣頭に立って、そうしてこの問題と真剣に取り組んでいこう。いろんな批判をする人があります。あるいは物質にたいへん重点を置いて、そうして物質本位に流れた結果、今日のようになったんじゃないか、こう言う人もあります。しかし私は、ただいま申し上げましたように、国家国民に対するそれぞれの責務を果たしていくんだ、これに徹するということが何よりも大事なことじゃないか。その意味において私ども責務を果たしていく、さらにさらに考えをそこに集中してまいりたい、かように思います。  いろいろ党内におきましても、私自身批判を受けております。私が至らない結果、そういうような批判を受けた、かように思っておりますが、これもいわゆる頂門の一針であり、三針、三針だ、かように思って、さらに至らない点を反省し、謙虚に省みまして、そうして国民の負託にこたえる、こういうようにいたしたい、かように思っております。
  7. 灘尾弘吉

    灘尾委員 総理の御決心はよくわかるのでありますが、ただ、今回取りざたせられておりますところの政界不祥なる事件ないしいわゆる黒い霧、こういうような問題につきましては、これは私はひとり総理大臣責任とは思いません。私は、このような問題は政治に携わる者全体の責任ではないかと思うのであります。ひとり自由民主党だけの責任とも思いません。国会の議員に関する問題について言えば、国会すべての責任だ、かように申し上げてもよろしいのではないかと思うのであります。ただ、お互いとしましては、いたずらに他に責任を嫁することなく、みずからの責任としてこの問題に対処していかなければならぬと思うのであります。総理の御決意につきましては、まさしくそのとおりでなければならぬと思うのでございますが、ただ、問題の解決ということを考えました場合に、総理は、これは宿弊であるということを申されたのであります。私もそう思うのであります。この病弊は、一体何によって起こったかということについてお答えをいただきたい。また、その宿弊に対してどういう具体的な措置をもってこれが解決にお当たりになろうとするのであるか。一朝一夕にできる問題とも思いませんけれども、それについてのお考えをひとつ国民にわかるようにお話しを願いたいというのが私の質問の趣旨であります。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 重ねて申し上げます。  ただいまのいわゆる黒い霧、それがすべての責任だ、かように言われますが、私、すべての責任だとか、こういうような表現で、実はこの問題はいまは解決はできないのだと思う。すべてのものの心がけを、いま灘尾君が言われるような気持ちで取り組んでいただくことが必要だと思います。しかし、それぞれの問題には、ただすべきものはただす、こういう問題があるわけであります。きわむべきはきわめ、ただすべきはただす、そういう意味で、ただいま問題になっております一番大きな共和製糖事件等をはじめ、私は、積極的に、これを他に転嫁するようなことなしに、その責任の所在を究明していく、そうして、国民に十分理解していただく、これをするつもりであります。したがいまして、これはいままですべての場合にしばしば言われたのでありますが、抽象的で何らの結論を出していない。今回はそういうことをしないんだ、これがまず第一であります。  次に、これらの問題がいまの綱紀の問題であり、政治道義の問題だ、こういうことでありますだけに、この原因がはっきりし、そして弊等がはっきりしておりますだけに、これに対する対策、綱紀の問題と真剣に取り組む、綱紀を厳正にする。その具体的方法はいままでもしばしば言われておりますが、これを具体的に取り上げることだ。また、これは単に言われただけでは事は済まないのでありますから、そういう意味でこの問題と取り組めば、道義の問題も、また綱紀の問題も、それぞれの見方、総ぐるみでこれの征伐ができるのじゃないか、これはたいへんむずかしいことであります。むずかしいことでありますが、これが私は一つできる方法じゃないかと思う。  また、もう一つは、いまの議会制度民主政治そのものについていろいろなことが言われておりますが、やはり選挙一つの問題だと思う。だから、選挙が正しく清く行なわれるということ、民意がはっきりそれに反映されるというか、そういうような方法を考うべきものだ、かように私は思います。ただいまの綱紀の問題や道義の問題、こういうものは、この方法がきめ手だ、こういうものはなかなかないと思います。しかし、これは衆知を集めて、そしていままで論議されておりますので方向はきまっておりますから、そういう意味で問題を詰めていく、これ以外にないんじゃないだろうか、かように思います。  いまお尋ねになっておるものがどういう意味か、私もちょっとつかみかねておりますけれども、非常に広範にわたるものだし、原因一つ一つ――どれもみんな深い関係を持つものだ。しかし、いま言えることは、選挙の問題なぞは一つのポイントじゃないだろうか、かように思いますので、所信表明でも申し上げたような次第であります。
  9. 灘尾弘吉

    灘尾委員 政界の黒い霧、いわゆる不祥事件というものの中にはいろいろあろうかと思うのであります。事が犯罪に関連したような問題につきましては、もとよりすみやかに司直の手において黒白を明らかにしてもらう必要があろうかと思う。それ以外の問題については、お互い道義の問題として反省をしていかなければならぬ問題であることは仰せのとおりだろうと思う。私もさように思うのでありますが、そういうふうな問題について、ただわれわれの責任であるとか、直さなくてはならぬと言うだけでは、結局それに終わってしまう。したがって、すでに総理総裁として党内各種機関を設けていらっしゃる。綱紀粛正委員会でありますとか、あるいは従来からあります組織調査会でありますとか、あるいはまた、党の規約改正に関する問題でありますとか、いろいろ具体的に言われておる問題でありますが、このような各種機関を活発にひとつ活動していただきまして、着々問題の解決をはかることが必要ではないかと思うのであります。そういう点において、はなはだことばが悪い、あるいは言い過ぎになるかと存じますけれども、はたして真剣にそのような問題が現在総裁指導のもとにおいて進行しておるのかどうかということにつきまして、私若干の疑いなきを得ないと思うのであります。この国会が過ぎれば何とかなるというようなことであってはならぬと思うのであります。そういうことでありますので、そういうふうな問題について総理のかたい御決心のもとに問題の着実な解決をはかっていく。私は、決して一日や二日で片づくとは思わない。思いませんけれども、着実に問題の進展をはかっていくために、総裁としての御指導をぜひお願いしたい、このように思っておる次第であります。  お話の中の金のかからない選挙ということは、この間の所信表明でも伺ったのであります。この金のかからない選挙ということが、現在の政界のいわゆる黒い霧に多大の関係を持つものであろうということは私も認めるところであります。この金のかからない選挙についてどういうふうにして実現していかれるつもりであるか。すでに選挙制度審議会に御諮問にもなっておるかと存ずるのでありますが、一体いつごろその結論を得、いつごろこれを実施するというようなお考えを持って問題の進行をはかっていらっしゃるのか、それをひとつお聞かせを願いたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの選挙制度の問題に触れます前に、いま自民党がどういう態度をとるか、また政府がどういうように道義の問題やあるいは綱紀の問題と取り組むか。これはひとり自由民主党党員だけが監視しておるわけじゃありません。自由民主党党員は、これを監視すると同時に、これを鞭撻して実効あらしめる、かように私は激励をされておると思いますが、同時に、この問題は、一億国民が全部監視しておるのだ、そういう意味自由民主党党員たる者責任まことに重い、かように私は思いますので、私の責任党員諸君に転嫁するつもりはございませんが、党員とともども国民政治的信頼を高める、こういう意味におきましてもこの問題と取り組まなければならない、かように思いますので、重ねて私の所信表明しておきます。  次に、選挙の問題についてお尋ねがございました。選挙制度審議会は、もうすでにただいま開かれておりますのが第五回目であります。いままでもずいぶんいろいろの答申を得ておりますが、おそらく選挙制度審議会委員諸君意思どおりにはなかなか立法化されておらないんじゃないかと思います。私は、そういう意味で、こういう問題は個々の議員の身分にも関係がありますが、同時に、政党の立場にも非常に関係を持つ、影響を持つ、こういう意味で、どうしても問題が党利党略にならざるを得ない。こういうことであってはならないのでありますし、そういう意味で、ほんとうに新しい観点に立ってこれと取り組まなければならないと思います。ただいままでは特に選挙区制の問題に力を入れられております。区制も大事なことだと思うし、ただいま、あるいは他の問題については大体の答申を終えた、ただ残っているのは区制の問題だ、こういうような委員の方もあるだろうと思います。ただいまの状況のもとにおいていま議論されておりますものは、やはり政治資金の問題であるとか――これは一番やかましい問題になっておる。あるいは連座規定あるいは同時に選挙公営の問題等々あると思います。区制の問題もこれらとお互いにからみ合っておりますから、こういう問題もないがしろにはできないと思います。今回の第五次選挙制度審議会では、来年の半ばには結論を出したいということで非常に意気込んでおられる。ことに、私どもも、今日まで答申を得たものについての国会における立法化等、これで一応済んだものもございますけれども、さらにまた今日の情勢のもとにおいて考うべきではないかというものもある。基本的なものの考え方、これは審議会の委員諸君考えにゆだねなければならないことでありますが、何といいましても、個人本位の選挙よりも、党本位の選挙というか、そういう方向にいかさなければならないのではないかと思います。  いま議論しております政治資金の問題にいたしましても、政治に金がかからないとはだれも言わない。むだな金は使うべきではない。しかしながら、党活動、政治活動をする以上、それは金が要ると思います。そういう必要なる資金、経費は、堂々とこれは国民に理解していただいていいと思う。しかしながら、党活動はそれでいいが、個人的な資金の集め方等について私は議論があるだろうと思う。これらの点がおそらく審議会を通じてさらに具体化され、そして批判を仰ぐような時期になっておるのではないかと思う。また、連座規定等あるいは公党の問題にいたしましても、一応答申されたかと思いますけれども、さらにさらにこの時期に合うように、さらに掘り下げて研究されるべきではないかと思う。もちろんいま審議しております区制の問題なども、これはただ審議会にまかすことなしに、各人の問題としても十分将来に残して悔いのないようなものにするように努力すべきではないかと思います。  そういう意味でたいへんむずかしい問題を幾つもかかえておりますけれども、これまた各人の協力によってりっぱな結論を得るように、もちろん私が申し上げるまでもなく御承知のように、審議会で答申を得たら立法措置をすべきものは立法する。その場合には、さらに諸君の御審議をいただく、こういうことになるのでありますから、ただ審議会で結論が出たからというだけではございません。さらにさらに十分検討、審議すべきものだ、かように私は思っております。
  11. 灘尾弘吉

    灘尾委員 金のかからない選挙ということが最もいま関心の深い問題でございますから、それについての総理のお考え方につきましては、大体私も同感の節が多いのであります。ただ、いたずらに審議会にまかせ、審議会の答申を得る、それを尊重するというだけでなくて、出ました答申につきましては、ほんとうに真剣に検討を加えて、すみやかにその実現をはかっていく段階がきておると思うのであります。したがって、重ねて伺いますが、審議会の答申ですべての問題が一挙に解決するとは存じませんけれども審議会の意義ある答申が出ました場合には、それをすみやかに国会に提案するという御用意はおありになるのかどうか、その点もひとつ伺っておきたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申しましたように、立法すべきものは国会に提案するということでなければならない。必ずそれをいたします。ただいま問題にしておりますのは、過去の一、二、三審議会等でやられましたものを、もう一度よく私どもも党の立場においてこの際に検討してみる必要があるのではないか。おそらく審議会も追っかけて審議を続けていくでありましょうが、その審議会とまた別に、一応済んだものについては、さらに私どもも取り上げてみるべきだ、かように思っております。
  13. 灘尾弘吉

    灘尾委員 政界浄化が非常に叫ばれておる、また急務でありますおりからでありますだけに、ただいまの総理の答弁はまことに心強く感ずる次第であります。このような問題は、とかく審議会は審議会、党は党ということになりまして、いつの間にやらわけのわからないものになってしまうというのが今日までの例であります。今回は、総裁の強力なる御指導のもとに、問題の解決に一歩でも二歩でも前進することができますように、ひとつお願いをいたしたいと存じます。  続いて伺いたいと思いますが、それは綱紀に関する問題でございます。政界綱紀もさることながら、同時に、私は官界の綱紀につきましても正すべきものが非常にあるのではないか。これもことばが過ぎるか存じませんけれども、官界はたるんでおるのではないかというような心持ちがしないでもないわけでありますが、それにつきまして、先般の内閣の改造の際に、各大臣が記者会見等においてお話しになったところによりますれば、特に総理から各大臣につきましていろいろ御注意があったように伺うのであります。この各大臣に対する大臣としての心がまえと申しますか、そのような問題についての総理の御注意が、もしここでお話が聞けるものなら、われわれ並びに国民にひとつ聞かしておいていただきたいと思うのであります。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま灘尾君が言われました一般の綱紀の問題、御承知のように、灘尾君も私も同じような官界の出身ですが、昔はそうでなかったというような感じもします。いま、たるんでいるという、一言で言えばそういうおしかりを受けておる。しかしこれは、官界だけがたるんでおるわけじゃございません。私は、そのことを今日の公務員諸君にも理解を持っておると、かように申し上げたほうがいいかと思います。理解はしているが、これでいいとは私は思ってない。まず、私どものつとめるべき責務、これは何と言いましても政治を担当しておる最高の責任者だ、そういう意味で、まず政治家が正すべきは正すべきだ、模範を示すべきじゃないか、かように思います。官界の綱紀なぞは、政界のわれわれがりっぱな規律を保つならば、これは風を望んで直ちに右へならえができるものだ、かように思っております。したがいまして、今回の大臣を任命いたしますについては、それぞれの大臣がすでにテレビ、ラジオ等でお話を申し上げたとおり、責任の所在を明らかにするから、もしも間違ったことがあれば、これはひとつやめていただくということになるのだ。同時にまた、公私の別をひとつはっきりして、疑惑を受けるようなことのないようにしてほしい。これは異例な実は話し合いをいたしたのであります。  先ほど申し上げるように、この風は最近各方面でいろいろ反省されておるようであります。私はたいへんいい傾向だと思っておる。ちょうど暮れでありますので、贈答その他の問題についても自粛はよほど出てきておるように思う。あるいは自分たちの娯楽の面におきましても、民間ではいわゆる社用族というような言い方をされておる。これはどうも正すべき一つの方向だろうと思いますが、それも会社におきましても気をつけていく、また官界におきましても、ゴルフ、マージャン等においても自粛の実があがる、こういう方向へ向いておるように思います。しかし、これは、この際にこれでもういいというものじゃありませんから、さらにさらに努力をしていく。各界の監視のもとにこの努力が続けられる、これで十分効果があがっていくようになりたいものだ、かように思って、上不断の努力をするつもりであります。
  15. 灘尾弘吉

    灘尾委員 各大臣に対する御注意は、その内容においては、もとよりそのとおりだろうと私は思う。しごくけっこうな御注意だと思うのでありますが、ただ、そのようなことを閣僚新任の際に総理が御注意にならなければならないというようなことについては、私はやはりお互いにあまり手をたたくような事態ではないと、このようにも思うのであります。しかし、御注意の内容はきわめて適切であると思うのであります。ぜひ各閣僚ともに、総理の御指導のもとにただいま総理の申されましたようなことを厳重にひとつお守りをいただきまして、各官僚の範となっていただきたいと思うのであります。  私が綱紀と申しますうちには、最高の責任者は各閣僚である、こういう意味において実は申し上げておるわけでございまして、ただ官僚諸君だけをかれこれ言っておるのではない。各官僚の綱紀の問題の責任者は、各部門を担当せられる各大臣にその最高の責任があるということを私は思いますがために、あえてお聞きをしたような次第であります。現在の官僚の諸君は、旧時代と申しますか、お互いが役人でありました時代とはすべての状況が違っておりますので、昔をもっていまを律するというようなことを私は申し上げるわけではございませんけれども、しかし、いわゆる全体に奉任すべき公務員としての責任というものは、昔もいまも私は――われわれは天皇陛下の官吏といわれたのでございますけれども、ことばの使い方がいかようにもあれ、国家国民のために奉仕すべきものであるということは、これは当然のことであります。その点におきまして、現在の官僚諸君の中に――全部とは申しませんけれども、反省を求めなければならぬ人々が少なからずおるということは、統計上も明らかであります。こういうことでありますので、ぜひこの綱紀の粛正という問題は、政界の粛正とあわせて私は行なわなくちゃならぬ。もっとも、政界の粛正のほうがまず先であるかもしれません。政界が粛正すれば、おのずから官界もまた粛正せられるということも言えるかとも思うのでありますけれども、いずれにいたしましても、各省庁をおあずかりになっていらっしゃいます閣僚諸君におかれまして、この綱紀の粛正という問題については、もっともっと真剣にひとつお考えを願わなければならぬのではないかと思うのでございます。私は、官僚主義はこれは排撃すべきものと考えます。しかし、よき官僚はあくまでも育成してまいらなければならぬと思うのでございます。よき官僚を育成する責任大臣にある、こういうふうに私は思うのでございます。  近ごろ、私どもに事情を知らないためにあるいは誤解があるかとも存ずるのでありますけれども、わかりかねる問題がちょいちょいあるのであります。と申しまするのは、官界にいろいろな問題を生じてきたときに、はたしてその所管大臣はその問題について責任をお感じになっておるのかどうかということを疑わざるを得ないような事例もちょいちょいあるようにも思うのでございます。  また、いま一つつけ加えて申し上げますが、私の了解に苦しむのは、大臣が、近ごろのことでありますから、何月ごろになると大体内閣の改造があるとかいうふうなことが予想せられておるその際に、各省の重要な職員の更迭を行なわれるという事例がしばしばあったように思うのであります。これらは一体いかなる事情によってそのようなことをなさるのであろうか、私どもには了解に苦しむのであります。一年なら一年、二年なら二年続いてお使いになりましたところの官僚を、その大臣の退任まぎわにおいておかえになるということは、一体どういうところから出ておるのであろうか、こういうことを私は思うのであります。新しい大臣がすでにおいでになるというその前において役人をかえてしまう、私はさような場合には、むしろ新しい大臣人事をおゆだねになるのが当然じゃなかろうかと思うのであります。そういうことが行なわれておる。つまり、御自身の御在任中における賞罰が大臣の御退官の際に出てくる、こういうようなことは、はたして当を得たものであろうかどうであろうかということを、ときどき難問の目をもって見るわけでございます。新しい大臣が御就任になって、そのお考えのもとに陣容をおつくりになることはけっこうであろうと思うのであります。かわったばかりのところで新しい大臣が前の大臣人事を引き継がざるを得ない。そして、一年かかって、おやめになるころにまたそれをかえてしまわれるというようなことは、何か官僚というものを私物化していらっしゃるのじゃなかろうか、こういう気もするのであります。私は、やはりいかなる内閣のもとにおいても、いかなる閣僚のもとにおいても、忠実にその職務を執行するのが官僚たる者の義務ではないかと思うのであります。大臣のおひげのちりを払うというのが官僚の能じゃないのです。その所信大臣に向かってはっきりと申し上げるだけの勇気のある、そしてそのことによって大臣をお助けするのがほんとうの官僚の仕事じゃないかと思う。しかし、ただいまのようなことでは、どうもそういうわけにはなかなかいきかねるということにもなろうかと実は考える次第であります。こういう意味におきましても、よき官僚を育成していく、いかなる内閣のもとであろうと、いかなる大臣のもとであろうと、国家国民のために忠実にその職務を果たすという官僚こそ大いに伸ばしてやってしかるべきであろうかと思うのであります。そういうふうな意味合いにおきまして、私は、今日のいわゆる綱紀の粛正ということを論ずる場合に、最高の指導者でありますところの閣僚の皆さん方が、人事責任ということについてもっともっと真剣であっていただきたいということを感ずるものでありますが、総理の御所見いかがでありましょうか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの灘尾君のお話で、りっぱな官吏道を育成強化するということは、これは必要なことだと思う。私、いまのお話をはき違えておらなければたいへんいいと思うのですが、どうも政界、官界というか、これが最近はお互いに非常に緊密な連携がある。たとえば立法府と行政府、これは制度の上から言うとはっきり分かれているが、日々の仕事のしぶり等から見ると非常に関連を持っている。こういう意味で、いわゆる公務員というか、官僚というものだけがどうも別世界でないように思います。ここらに一つの問題があるように思うのです。たとえば大臣の予算編成の場合、やはり立法府の諸君からもいろいろ具体的な注文を行政府に出し、行政府諸君もそれをいいことにしてやはり立法府の方の協力を得る、そうして予算などもでき上がっている、こういうようなことを間々見受ける。この辺はやはりお互いにひとつ考えていかなければならないのじゃないかと思う。これは私率直に申し上げるのですが……。  そこで、今回の大臣を任命いたしました際に、まず第一に私申し上げたのは、諸君はそれぞれの行政官庁の長である、同時に国務大臣なんだ、だから、国務大臣としての職責を果たすように、もひとつ気をつけてもらいたい、所掌事項ばかりにとらわれないのだ、大事な諸君の手腕を各方面にひとつ働かして、そしてりっぱな業績をあげるようにしてもらいたいのだということを実は注文をいたしました。この観点から、自分のところの担当しておる行政庁の人事ども考えますが、同時に、そういう人事にばかり関心を持つと言ってはことばが過ぎますが、成績を上げるもとは人事だというところで、行政官庁の人事ばかりに力を持たれても困るのだ、実はそういうような気もするのであります。これは灘尾君が官界の出身であるから、私の経験から申し上げましても御理解がいただけるのじゃないか。大臣がはたして一年や二年でその省の人事を完全に掌握できるだろうか、そこに問題があるのです。また掌握すべきだということも言われますが、同時に、官界、まあ官僚自身とすれば、自分たちできめておるような人事、そういう順番人事をやっておる、こういうところに一つの問題があるのですね。だから、大臣自身が、官僚の事務当局がでっち上げたそういう人事をのまされることが実は非常に多いのじゃないか。私は、いまどうも大臣がかわる前に人事をいじると言われるが、積極的にそういう方向でなしに、いわゆる官僚の事務当局の順番人事が大体きまっていて、それを大臣がのまされておるのじゃないか、こうも実は思うのです。でありますから、この人事のあり方というものについて、大臣らしい見方をするということを気をつけないといかぬのじゃないか。私は、やめる前に人事異動をするという、それはずいぶんおかしなことだと思う。おかしなことだと思うが、そういうことを、過去の経験等から見まして、大臣に事務当局の案をのませたというようなことが全然ないとは言えないので、そこらは大臣を責めるよりも、事務当局とそれから大臣との間の一体性、そのほうを云々すべきじゃないかと思うのであります。でありますが、とにかく灘尾君の御指摘になった点は、りっぱな人事をやれ、問題の起こるそのもとはここにあるのだ、だから、大臣がそういうことについても十分な関心を示し、そうして正しい人事をやれ、こういうように私受け取ったのですが、私、そのほうが大事なことじゃないだろうかと思います。これは特に今回のように何もかも人心を一新して、そうして出直していこう、こういうような気持ちになっておる際に、各省も右へならえでひとつそれをやってもらいたい。そうして気分を変えていただくことが最も必要なんじゃないか。マンネリズムにおちいっている人事、ここらに一つのくふうが要るのじゃないか。最近はずいぶんやかましくなりまして、各省間の若い人事交流も行政管理庁などもすすめておるし、そういうことも行なわれております。したがって、過去のわれわれの経験とはよほど変わってはきていると思います。しかし、やはりそのもとにおいては、御指摘になったような点がいまなおある。これはひとつ気をつけるべきものだ。御注意を十分注意してまいるつもりであります。
  17. 灘尾弘吉

    灘尾委員 私は、昔といまと事情が違っておるということは、私自身にも若干の経験もございますのでよくわかるわけでありますが、その際にやはり考えなければなりませんことは、何か大臣の定期異動が行なわれておるというような過去の事実であります。この定期異動ということがあるために、いろいろ綱紀の粛正上私は問題が発生する種があると思う。願わくは、今回の人事の一新を機会といたしまして、私は大臣の定期異動というような慣習はひとつ打破なさることが必要ではないか。もとより長いことやっておりますれば、あきられるということもあれば、しくじるということもある。それによっておかえになることは御自由でありますけれども、少なくとも、りっぱな業績をあげておられる大臣を、一年たったからかえるのだというふうな安易な人事異動はおやりにならないほうがよろしいのじゃないか、こういうふうにも考える一人であります。と同時に、先ほどマージャンをやるな、酒を飲むなというふうなこともありましたが、私は、必ずしもマージャンをやめろと申すのじゃありません。酒を飲むなと申すわけではございませんが、ただ、ただのマージャン、ただ酒というふうなものをどんどん飲むことが平気になっておるような官僚では困るのであります。そういう点においてのけじめをはっきりつける気持ちを持った官僚であってほしい。そのことは、同時に、もちろん大臣指導監督も必要でございますけれども、外部からの誘惑もずいぶん強いこととも思うのでありますが、やはり人事はきわめて公正におやりになると同時に、深い愛情を持って官僚諸君に対する指導をしていただかなければならぬかと思うのでありまして、よき官僚の存在こそ、やはりよき政治をやっていく上において基本的に必要なことであろうと思うのであります。特に綱紀粛正に関連して私は申し上げましたような次第でございます。  だんだん時間も経過いたしましたので、委員長のお指図のように、なるべく早く切り上げたいと存じますが、いま一、二申し上げたいと存じますことは、一つは解散に関する問題でございます。  今回の国会がこのような不正常な状態にあることの原因は、いろいろ不祥事件が起こったとか、あるいはおもしろからざる事件が起こったとかいうようなことがたいへんに騒がれておる。そういうところから起こってきておるように思うのでありますが、先ほど申しましたように、私は、事柄が犯罪に関係がある、犯罪の容疑があるというのであれば、すみやかに司直の手にお渡しになったらよろしいと思うのであります。そして、そこで黒白を明らかにしてもらう、これが必要なことであろうかと存じます。それ以外の問題は、お互い道義的反省の問題になってくる。あるいはまた、お互いに従来不注意であった点をよく注意をしていくというようなことで解決のつく問題でありますが、このような不正常な、変則な国会をするほどの問題とは私は思わないのでありまして、むしろ国会としましては、もっと真剣に国民生活関係のある問題について、問題を取り上げて十分に論議を尽くすということが、国会の果たすべき職務ではないかとすら私は思っておる次第であります。なぜあれほどの大騒ぎをするのか、またなぜ総辞職というようなことばをもって政府に迫ってくるのか。総辞職ということは、何もやりたくて言っているのではないと私は思うのであります。ほんとうの意味で総辞職をやる気があるのかどうかも実は疑問だと思うのであります。しかし、要は、そういうふうな各種の手段を使って議会を解散に追い込もうというのが、野党諸君考え方ではなかろうかと実は私は思うのであります。おそらく、総理もそのようにお考えになっていらっしゃるのじゃなかろうかと思う。総辞職をしたければ、さしたらよろしいのであります。国民の負託を受けて国会議員に当選している者が、ただ単に自分の党の党利党略のもとに、つまらない党議に縛られて総辞職をやりたいというのなら、これは政府のやることじゃございませんけれども、議会においてそれをその問題としてお受け取りになったらよろしいと思うのであります。何もそういうことにこだわる必要は政府としては私はないと思っておる。問題は、政府としては野党のそのような考え方のもとに、野党の党利党略のために、こういうふうな時期に解散でもすれば、何かいいことがありはしないかというような考えのもとに迫ってきますような、いわゆる理不尽な解散という問題に対して、総理大臣は、あるいは政府は、決してたじろがれる必要はないと私は思う。政府としましては、政府としてのお考えのもとに、必要があらば解散もなさろう、必要がなければ解散をする理由はないのでありまして、憲法上解散すべき場合はきまっておるのであります。政府が自由に解散をするということは、必ずしも政府にかって気ままな解散をしてよろしいということじゃないと思う。総理も、世論の動向であるとか、国会審議というふうなものを勘案して考えるとおっしゃっている。それにいたしましても、政府といえどもみだりに私は解散すべきじゃないと思う。国会議員は、四年の任期を与えられておるのであります。従来ややもすると、この四年の任期という問題があまりにも簡単に考えられ過ぎておるのではないかと私は思うのであります。過去の例において、先ほど私は野党諸君の党利党略ということを申しましたが、われわれのほうの側におきましても、あるいは党利党略のそしりを免れないというふうな解散がなかったとは申し上げかねる。そういう点も、こういう際にお互いによく考えなければならぬと存じます。その解放が国会審議のために、あるいは国民生活のために必要であるという前提のもとに総理の解散権というものが認められておると私は思うのでありまして、これは佐藤一人の権限であるというふうにお考えになるべきではないのであって、国民のために佐藤がお預かりしておる解散権であるというふうなお考えのもとに、私は解散の問題はぜひ慎重な扱いをしていただきたいと思うのでございます。  かつて政友会内閣の時代に、原内閣総理大臣が、この解散という問題について非常な慎重なお考え方であったということは、何かの本で私は見たことがございます。私は、まさにしかるべきことではないかと思うのであります。いかにそれが自由民主党の利益になりましても、解散すべからざるときには解散をしてはならぬ。自分かってな解散を認めておるのが今日の憲法の精神ではない。議員の任期というものはあくまでも尊重していただきたい、こういうふうな基本的な考え方を実はいたしておるのでありますが、今度のこの野党側のいわゆる解散要求というふうなものは、明らかに各党それぞれの家庭の事情に基づいたいわゆる党利党略に基づく解散の要求であろうかと存じます。現に自由民主党国民から過半数をいただいておるのであります。過半数をいただいておる自由民主党が、そのような理不尽な解散要求に対してたじろいだり、屈服したり、譲ったりというふうなことは、私は憲法の精神が許さぬと思う。また国会法の精神が許さぬと思う。そういうふうなことがあってはならぬと思うのでありまして、この点に対する総理のお考え方につきましては、総理が非常に強い正しいお考えのもとに終始していらっしゃるというふうに伺っておりますので、非常に意を強くいたしておる次第でございますが、今後におきましても、こういったふうな意味における解散権の行使というふうなことは、これは解散権の行使でなくして、むしろ自由民主党あるいは内閣の敗北といわざるを得ないのでありまして、そういうふうな敗北といわれるような解散だけは、ぜひひとつ絶対にないようにやっていただきたいと思いますが、今日までは総理態度はまことにごりっぱであると私は思うのであります。今後どういうふうになってまいりますか、この解散の問題について、なおいろいろ取りざたせられておる次第でありますが、基本的な考え方において、私の申し上げておりますことが間違いであるかどうか、その点、ひとつ総理のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 解散問題につきましては、基本的にただいま灘尾君が言われたとおりだろうと思います。私の理解するところでは、私がたびたび声明いたしておりますように、審議の状況、同時にまた世論を勘案してきめるべき厳粛な問題だ、かように申しております。党利党略でこの問題を決するようなことがあっては相ならない、かように申しておりますし、また、各党のいわゆる解散に追い込むというような考え方、それこそはもう党利党略的なものじゃないか、私はかように考えておりますので、ただいまの基本的な態度、これは今日も変わっておりませんから、るる述べられました御意見と私ども基本的には変わらないのだ、かように思っております。
  19. 灘尾弘吉

    灘尾委員 いろいろまだ御質問申し上げたいこともたくさんございますけれども委員長からの御注意も先ほどあったことでありますので、大体この辺で私の質問は終わりたいと思うのでありますが、最後に総理にお伺いいたしたいと思いますことは、何といたしましても、現在の国会状態はまことに残念であり、まことに遺憾な状態でございます。このような国会の姿というものが今後においても継続せられるというようなことは、日本の民主政治のいわば危機と申しても差しつかえないのであります。先日来、わが党の幹部諸公もいろいろこの不正常国会の打開については御尽力になったようでございますが、この状態を何とか打開するために、正常な婆における国会に立ち戻らせる、お互いに論議すべきところは国会において十分に論議をする、そういうような姿に立ち戻らせるために、総理は最高の指導者として、いわゆるステーツマンシップを発揮せられまして、各党の首領と、腹を割って、真心をもってお話し合いになるお考えがあるかないか。ただかけ引きでなく、取引でなく、ほんとうに日本の議会政治を救う、こういうお心持ちをもって各党の首領とお話しになる余地があるものかないものか。願わくは、私は日本の政治の最南の指導者である総理大臣が、真心をもって各党の首領とこの不正常な、この変則きわまる国会の立て直しのために御尽力になる必要がありはしないか、そういう余地があるものかないものか御一考をひとつわずらわしてみたいということが一つであります。  いま一つは、いろいろな問題がわが国にはたくさんございます。あとで実はお聞きしたいとも思っておった問題でございますけれども、いろいろな問題がたくさんある。たとえば交通戦争の問題もその一つであります。あるいは公害の問題もその一つであります。あるいはまた社会保障の問題もその一つであります。総理は、特に社会開発、人間尊重というようなことをしばしば言っていらっしゃる。実はそういうふうな問題についてもやや具体的にお考えを伺いたいと思っておりましたけれども、時間の余裕もないようでございますので、そういう点に触れることはこのたびは避けることにいたしましたが、この種の問題をいろいろ取り上げて考えました場合に、また、かつて私も若干の関係を持っておりましたが、いわゆる教育正常化の問題、いまもってこの問題は残っておると思います。こういうふうな問題を考えますというと、これはただ単に政府の施策だけでも片づかない。行政当局の努力だけでも片づかない。結局は国民全部が、いわば国民総ぐるみの運動として解決していかなければならないような問題が多々あるように思うのであります。見方によれば、現在のいわゆる政界の黒い霧と言われるような問題につきましても、やはりただ単に政党あるいは議員だけで片づかない、国民全体が考えてもらわなければ解決のつかない、こういう種類の問題が非常に多いように私は思うのであります。そういう意味におきまして、国民の皆さん方の各種の問題に対する意識、レベル、そういったようなものの向上をはかっていく。ことばは適当でないかも存じませんけれども、公害とか、交通戦争とか、教育とか、社会福祉とか、社会保障とか、この種のいろいろな問題について国民のすべての人たちが関心を持ち、すべての人たちが、国民全体の仕合わせのために協力するというような心持ちが一番大事なことではないかと思うのでありますが、それにしてはあまりにも、いわゆる昔のことばでいえば社会教化――どういうことばで言うのが適当か存じませんけれども、社会教育方面の努力というものがもっともっとなされなければならないのではなかろうかと思うのであります。  現在社会教育は、文部省の一部局の問題としか扱われておらないようであります。しかし、社会教育の施設を整備するとか、社会教育に関する専門家を養成するとか、こういった種類の問題につきましては、あるいは文部省だけでよろしいかもしれません。しかしながら、その社会教育の内容をなすものについては、関係各省全部に関係があると私は思うのであります。関係各省が互いに協力いたしまして、国民全体の政治意識、社会意識、文化意識、すべての面におきましてレベルアップするということが、やはり根本的には最も大事なことではないかと思うのでございます。よき政治よりもよき教化がまさっておるというふうなことを――いわゆる善政は善教にしかずというふうなことばが昔あったように記憶するのでございますけれども、基本的には、やはりどんなにりっぱな政治をやろうと思いましても、よき教化のほうが、もっとより深く国民に浸透し、また、国民生活を向上させることに役立つ問題ではないかと存じます。ただ単にいま申し上げましたような問題だけではない。外交の問題にしましても、安全保障の問題にしましても、もっともっと国民全体の皆さん方の意識の向上、知識の普及、こういう点が大事じゃないかと思いますが、そういうふうな点について、従来とかく各省ばらばらになっておりまして、政府全体としての努力というものがなかなか行なわれない。そこらにも今後大いに考えるべき点がありはしないか。再少年問題のごときもずいぶん心配をいたしておる問題でありますが、ただ青少年問題を専門家が取り扱ってかれこれ言っておりますけれども、一番大事なことは、現在の日本を背負っておりますところのおとなが、その責任をそれぞれ全うするというところに解決のかぎがあるのではなかろうかとも思うような次第でございます。  もう一点つけ加えておきたい。これはちょっと問題が違うのであります。先ほど申し上げました官紀の粛正等に関連する問題と存じますが、私は外交、国防等のことについてお伺いする際に、その点を特にお尋ねしたいと思っておったのでございます。  現在の日本にとりまして、漁業経済の発展をはかっていくために外交が大事であることは申すまでもございません。とりわけまた大事なのは、日本の安全が保障せられるという問題であります。そういう意味合いにおきましては、日米安全保障条約の果たしてまいりました役割りは実に大きい。これはそのとおりであろうと思うのでありますが、私ども安全の問題を考えますときに、わが国の自衛隊の諸君の士気ということが、その設備の増強とともに最も大事なことではないかと思うのでございます。総理大臣は三軍の総司令官であります。防衛庁長官はこれをお助けになって、そして自衛隊を率いて、ときには――はなはだ不祥なことを申し上げるようでございますけれども総理大臣の命令一下、これらの諸君はいかなる困難な場所にも突入してまいらなければならぬ立場の人たちであります。この三軍の総司令官であるというお心持ちは、いかなる場合にもひとつはっきりと自覚していただきまして、自衛隊の諸君の士気の高揚のために格段の御努力をなさっていただきたいと申し上げたいと思うのであります。  いろいろとりまぜて申し上げましたので、はなはだお聞き取りづらかったかと思うのでございますが、私は、要するにわが国の現状を改善いたしますためには、おとなの責任を全うする必要がある、そのおとなの責任を全うしまするためには、社会教育、社会教化に関する政府全体の努力というものが必要ではないか。いま一つは、日本の発展をはかりますために最も大事な要件をなしておりますところの安全保障の問題について、従来の方針を堅持せられると同時に、その安全保障の役割りをになっておりますところの自衛隊の三軍の司令官は総理大臣である、この点をよくお考えをいただきまして、格別な御指導をひとつお願い申し上げたい。  これをもちまして私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず第一は、今回のこの異常国会に対しての党首会談をやる考えがあるかどうか、こういうお尋ねであります。私は、今日のこの状態、これはお互いに十分反省して、そして国民の期待するような政党政治を展開すべきときだと思います。黒い霧その他のことも云々されておりますが、何よりも大事なことは、民主政治、これをりっぱに育てていくという、この考え方でなければならぬと思います。各党がそういう意味であらゆる努力をしてまいりました。ことに一昨日は、議長あっせんで、各党間におきましても十分懇談を遂げられた。しかし、私どもが望ましい結論、それはまだ実現しなかった。しかし本日も、どういう状況でございましたか、それぞれ議運において、あるいはまた予算委員会理事懇談会等におきましても、野党諸君も出ていたのじゃないだろうか。ちょうど入りました際も社会党の理事諸君がいたようでありますから、そういう会議も持たれたのじゃないかと思います。私は、議運あたりは、明らかに理事懇談会には野党諸君も出ている、したがいまして、いま一歩ではないだろうかと思う。しかし、どうも決をとるというか、最終的に意見がまとまらないし、日にちがないし、そういう意味で、決をとろうとすると、野党諸君が出ていくということでありますし、また本会議あるいは委員会等も、きょうもまことに残念ながら、こういう状況で審議をいたしておりますが、私は、野党諸君も、よくこの異常事態というものに思いをいたして、そしてまず第一に、解散云々も野党の主張で、これは必要なことでしょう、これは野党の立場でお考えになればそういうことでしょうが、しかし、国民が心から願っておる補正予算、これを成立さすことについては、これはもっと積極的にその審議に参加すべきではないかと、私はいまもなお思っておるような次第であります。したがいまして、一つの問題として、この議会を正常化する、こういうような方向で結論を見出したい。そこで、党首の会談が必要だというならば、私はそれに臨むことに、もちろんやぶさかでございません。私もこういう状態を、これでいいんだ、かようには思っておりません。他の外国に、こういう事態を説明するという、まことに情けないような状態だと思うし、わが国の民主政治も今日はもうすでにりっぱな成績をあげているんだ、かように外国にも話したいんですが、こういうような状態ではそれもできない。まことに残念に思います。さらに各界各方面であらゆる努力をいたしておりますから、党首会談がお役に立つなら、私自身それを開く、またそれに参加することにやぶさかでないことをこの機会に申し上げておきます。  次に、いろいろこれからなすべき事柄についてお話がございました。あるいは交通戦争であるとか、あるいは公害問題であるとか、社会保障教育問題等々、いろいろ各般にわたってのお話がありました。これは私が所信表明でも申し上げましたように、今後の新しい国づくり、こういうことから考えますと、この方向、交通戦争や、あるいは公害や、あるいは社会保障、そういうことと具体的に取組むことが新しい国の行き方じゃないか、かように思っておりますから、所信表明でも申したのであります。きょうは、これらの点について具体的な話し合いのできないこと、論議をかわすことができないこと、まことに残念に思いますけれども、ただいまお話がありましたように、これはただ単に一人や二人でさか立ちをいたしましてもきまるものではございません。いわゆる国民総ぐるみ運動、それによって初めて効果があがるものだと思います。  交通戦争の問題については、私、内閣を組閣いたし、政権を担当いたしましてから国民総ぐるみ運動を展開いたしております。昨年はわりに成績があがった、ことしは自動車の数も非常にふえたし、交通も激化してきた、その結果、災害はもうすでに史上最高を示しておる、こういうような状態で、まことに残念でございます。しかし、今後ともこの総ぐるみ運動を展開して、各界の協力を得るということに重点を置いて十分の実効をあげたいと思います。  ことに産業が振興いたしますが、この産業の振興、これは申すまでもなく、われわれの生活にこの産業の効果が直ちに還元されるというか、経済発展の効果をもたらす、こういうことでなければならない、かように思いますので、そういう意味では在来の経済政策あるいは産業政策等につきましても、やはり重点は人間なんだ、人間社会なんだ、これをまず第一に自覚するように一そう徹底を期したいと、かように思っております。それらの点についてお話がありましたが、私は、灘尾君が御指摘になったとおりの、同じような考え方を持っておりますので、共鳴をいたした次第であります。  ことにお話のうちにありました教育、これからの、次代を背負う青少年の教育、これはもちろん大事なことだが、しかしその前に、おとながその責任を果たすということでなければならないのだという、これも御指摘になったとおりであります。そういう意味で、今日ほど、各人が国家国民に対する責任を果たすということに徹することの必要な時代はないのではないかと思います。お話にもありました善政よりも善教だ、こう喝破されましたことにつきましては、今後私どももさらにそのことばを熟読玩味して、そうして政治のあり方も考えたい、かように思います。  最後に、今日の経済発展あるいは生活の向上等、これは申すまでもなく、わが国の安全が確保されたそのもとにおいて、初めてこれらの経済発展が尽くされたわけであります。そういう意味から見まして、日米安全保障体制というもの、これはたいへんな成績をあげておるもんだ。一部におきまして、こういう法律、こういう条約を締結すれば戦争に巻き込まれると、かように申しましたが、安保条約ができてからただいまのような経済発展をし、わが国の国際的地位が高まり、たいへんしあわせで、戦争なぞは起こっておりません。これはもう明らかに歴史の示すところであります。私は、安全を確保すること、これには最善を尽くさなければならないし、したがいまして、効果のあがっておる日米安全保障体制、これは国際情勢に変化がない限り今後も続けていくのだ、この態度ははっきりいたしております。またこの点では、世論調査等でも国民の絶対的支持を得ておる、かように思いますので、私は、日本の今後のあり方というものについては心配しなくていいのだ、国民の支持を得ておる、かように思っております。しかし、日米安全保障体制がありましても、まず第一は、わが国の自衛隊諸君のあり方であります。したがいまして、この自衛隊諸君の士気の高揚ということにつきましては特に注意をいたしておりますが、ただいま自衛隊の士気等について、国民の期待に反するようなことは絶対にございません。この点は、私が三軍の総司令官という立場において、口先だけで申し上げておるようなものではございません。私は、自衛隊の士気はまことに盛んだ、かように確信をいたしておりますし、また、国民諸君にもどうか信頼していただきたい、このことを申し上げる次第であります。  以上お尋ねになりました点、あるいは十分――私が聞き取りました点について、いまお答えしたような次第であります。しかし、時間が非常になくて、詳細に御意見を聞くことができず、また当方といたしましても、私ども考えをさらに詳しく申し上げることができなかったことを残念に思っております。
  21. 灘尾弘吉

    灘尾委員 以上で終わります。
  22. 福田一

    福田委員長 これにて灘尾君の質疑は終了いたしました。  次に、小坂善太郎君。
  23. 小坂善太郎

    ○小坂委員 私は、自由民三党を代表いたしまして、主として外交の問題を中心にして、いろいろと政府のお考えをただしたいというふうに考えておりますが、その前に、私として最近非常に憂えておる、心配をしておることについて二、三お尋ねしたいと思うのであります。  その問題は、もちろん議会主義の問題、国会の今日のこの状態を深く憂えておる一人として、この問題についても伺いたいと思いまするが、これはただいま灘尾委員から非常に詳細に御質問があり、また、委曲を尽くした答弁がございましたので、この問題については特に触れないことにいたしたいと思います。  で、私は、たまたま最近の経済の状況を見ておりますと、ここ数年来、自由化ということを非常に一生懸命やってきておりますので、今日は九十二%ぐらい自由化になっておるかと思うのであります。今後これをさらに進めていくということになりますと、国民生活に非常に大きな問題を投げかけると思うのです。しかし、その非常にむずかしい問題が一方にありながら、このこと全体が国民に理解されていないというふうに思うのです。自由化の問題は産業の問題であり、あるいは資本自由化の問題は金融その他の問題であるというふうに、非常に局部的に理解されておって、日本の経済の全体を大きく重く包んでおるこの重大な問題に対する国民の理解が不足しておるのではないかというふうに思うのであります。  私は、最近エアハルト首相が政権の座を追われた。かつてドイツ復興の魔術師とまでいわれましたエアハルトが、非常にも石もて打たれるようなかっこうで政界から退いて行ったという事実、これをよくわれわれとしては考えてみなければならぬと思うのであります。西独は御承知のように、非常な戦後の景気を謳歌しておったのでありまして、その間に物価は大幅に上がっていった。そして国際収支は悪化して、産業は不振になったというとたんに、もうどうにもならない状態になってきたようにいわれておるのであります。これは突き詰めて見ますると、結局、賃金の大幅な上昇と物価のスパイラルであります。これは結局人手が不足する。産業がどんどん伸びていくから人手が不足する。そこで高賃金をもって人をかかえなければならないということでもって、生産性を二倍半も三倍も上回るような賃金というものが西独では横行したのであります。それが今日の状況を呼んでおる。私は、エアハルトが、かつてのドイツ人の勤勉は影をひそめた、いまや国民全体が消費組合のようなぐあいになり、利害の打算と個人の幸福しか考えないようになったと嘆いておるのを聞きまして、私は、これを他山の石としなければならないと思うのです。国際収支に天井があるというときは思い切って投資が行なわれる。そして賃上げが行なわれる。財政支出が膨脹する。しかし、そういういろいろな形で内需が膨脹しがちでありまするが、結局、これが国際収支の天井にぶつかる。そうしてこれを突き破って賃金と物価のスパイラルが起こってくる。そうして財政が公債発行に依存しながら膨脹し始めると、これはどうにもならない惰性になっていくということでございます。私は、これを考える際に、先ほど灘尾委員の話にもありましたが、何か非常におとなが無責任になっているのではないか。何でもかんでも政府に要求さえすればいいのではないか、民主主義とは政府に要求することであるというような感じすらするこのごろでございまして、こういう情勢を何かによって私は断ち切らなければならないと思うのです。最近、イギリスの雑誌に、世界に両極端の国がある。非常に精神主義の行き過ぎたといいますか、非常な精神主義そのものを言って、そして公のことに奉ずるということを最も強く言っているのは中華人民共和国である。個人の利益というものを追及、物質主義というものに極端に走っているのは日本である。こういう批評があるのを見まして、やはり私は根本を正していかないと、先ほど非常に長い時間をかけていろいろ総理の御所信を承って、非常に感銘いたしましたけれども、魂が入らないのじゃないか、こういう気がいたすのであります。今日、この国会の状況においても、やはりこのことは言えるのではないかと思うのであります。みんながみんなで責任を持ち合わなければならないときに、みな相手が悪い、相手が悪いと言い合っておる。その姿がこれではないかと私は思うのです。こういう点につきましてひとつ総理の明快な所信を伺いたいと思う次第であります。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど灘尾君にもお答えしたこと、また、いま小坂君からも大体同じような線についてのお話がありました。私は、結論といたしまして、ただいま言われました物心両面で調和のとれた考え方が出た際に、初めてその国が健全な発展をする、かように思っておりますので、御指摘になりましたのもそういう点ではないだろうかと思います。今後、黒い霧事件云々でいろいろそれぞれが批判をいたしておりますが、しかし、この批判は、私は、ただ単に一、二の事件についてのみの批判ではなくて、深くこの際に時勢についても反省をし、また、お互いの全行動についても反省する、こういうことであってほしいと思います。そうすることによりまして、新しく時局を打開していく方向も見出せるのじゃないだろうか、かように思います。私が申し上げます点も、まことにことばが足らないのでありますけれども、全体として、今日の病根は各方面にこれが広がっているということを申し上げましたのもただいまの点でありますし、また、積弊を除去していくんだということを申し上げましたのも、これはただ単に、一つこれがきめ手だというものがないだけに、そういう点について広く反省を必要とするということを申しておるのであります。しかし、私がそういうことを申したからといいまして、あるいは政治家としてやるべきことだとか、あるいはいわゆる教育者としてやるべきことだとか、こういうようなことは実は申し上げたくないのでありまして、政治家としては全体についての責任があるんだ、総理としては全体についての責任があるんだ、かように思いますので、そういう意味では、あるいは卑近な、政治家としてのつとめではないかわかりませんが、総体としての反省、その上に立って、今後進むべき方向を見出すんだ、これが私のただいまの心境でございます。
  25. 小坂善太郎

    ○小坂委員 ただいまのお話で、気持ちの上といいますか、心がまえの問題をよく承りましたが、私の申し上げている点に、もう一点ございますのであります。それは、政府だけでできないことは言うまでもありませんが、問題をできるだけ国民に知らせる努力、これが非常に大切であり、また、若干欠くるところがあるんではないかという点であります。ただいま自由化の問題なども、これは非常に簡単に、一般の市民はほとんど理解していない問題だと思うのでありますが、この自由化のあらしの中に立って、世界の中の日本として、経済を繁栄させ、国民生活を伸ばしていくためには、こういう心がまえが必要なんだというようなことも、やはりあわせて総理から強くおっしゃっていただかないといけないというふうに思うのであります。この機会にどうぞお願いいたします。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私ただいま、自由化の問題もさることですが、先ほど来お話しになりましたように、お互いが個人の権利を主張するという、そういう個人主義的になっておる。これが一つの問題だと思います。申し上げるまでもなく、自由主義、民主主義、それが今日の政治のあり方であります。したがいまして、個人主義的な考え方、これが出てくるのは当然だと思うのです。問題の、悪いのはやはり利己的な考え方だろう。いわゆる個人主義と利己主義、それを区別することが必要なのではないかと思う。たとえば、ただいまも言われました賃金が非常に高くなる。ドイツはそういう意味でエアハルトが引退せざるを得なくなった。しかし、賃金の高騰、これは組合の諸君も心から願い、そういう底に、賃金を上げることによって生活の向上があるのだ、かようにねらっただろうが、全体としての連帯感を無視して、そうして一部だけの利益をはかると、全体の社会が破壊されるのだ、こういう点を小坂君は御指摘になったと思う。私もそのとおりだと思うのです。しかし、ただいまそのよって来たるものは、いまの自由主義あるいは個人主義というところ、そこらに一つの問題があって、個人主義が結局利己主義になる、そうして連帯感が忘れられる、あるいは社会正義が貫かれなくなる、社会観がそこらで失われる、こういうところに問題があるのだろうと思うのです。私は、こういうことまでひっくるめて今後指導していくことが必要だろうと思います。これはどこにもつながるのであります。たとえば、後ほどあるいはお尋ねがあるかわかりませんが、先ほどは自由化の問題で論議を起こされましたけれども、国際的な協力の問題もそうじゃないかと思うのです。もうすでに、日本が利益を得るという立場に立てば、これはもっとかってな考え方があるかわかりません。しかし、今日必要なのは、先進国としての役割りを果たしていく、連帯感に徹する、こういうような考え方でただいまの協力をしておるわけであります。一部非常なひどい批判が加えられてまいりましたが、連帯感に徹する、いわゆる国際的なエゴイズムというものを排除していく日本の行き方というものを、やはり理解していただけると思う。だから、私はしばしば会合でも申しておりますが、どうも利己主義、これがいま社会を毒しているのじゃないのか、こういうことを実は申しております。この点が先ほど御指摘になりました点とも合うことではないかと思いますので、私の感じを率直に申し上げたわけであります。
  27. 小坂善太郎

    ○小坂委員 今度の大蔵大臣の財政演説、また予算委員会における説明を伺いますと、公債発行等については、ただいま私が言ったようなことを十分考慮しておられるようにも思うのであります。その点、敬意を表します。  そこで問題は、こういう状況をかりにやっていくと、三、四年あとには私は非常な問題が起きてくるというような気がいたします。そこで、今度の四十二年度の予算、これにつきまして、予算規模とかあるいは減税の方針、あるいは規模に触れていただくのはけっこうです。それから公債発行、これも額等に触れてもらいたいと思いますが、そういう点で、ちょっと大蔵大臣から承っておきたい。
  28. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 来年度の予算の規模とか公債の発行額というものは、御承知のように、まず来年度の経済見通し、特に民間の設備投資と国際収支の動向、それから税収等による財源事情、それから支出需要がどのくらいになるか、ここを勘案してきめる問題でございますので、いま大蔵省としては、この問題の詰めをやっている最中でございまして、まだ規模をどのくらいにして、国債発行額をどのくらいにするということは申し上げる段階ではございません。しかし、先般本会議のときに申しましたように、大体の方向としましては、一般会計に対する公債発行の比率を去年よりことしは低下させる、それから経済の伸びに見合わない不当な予算規模の拡大ということは極力避ける、この二つの点は堅持して、中立的な予算を組みたい。この方針だけはいまはっきりきめて作業しているところでございます。
  29. 小坂善太郎

    ○小坂委員 時間の関係で、いろいろ伺いたいことはありますが、この問題はこの程度にしまして、外交の問題に移りたいと思います。  外交の問題で、今年の問題、また明年にかけての問題として大きな問題は、ベトナムの問題、中国の問題、また核不拡散の問題等であろうかというふうに思うのでありますが、ことしはベトナムの紛争が非常にエスカレートした年であると思うのです。ぜひひとつ明年は硝煙がベトナムの地におさまる年としたいというふうに心から望むものであります。しかしながら、なかなか現状はむずかしいと思われる点が多いのでありまして、たとえばグエン・カオ・キの政権とアメリカと、またベトコンと北ベトナムの政府と、このどちらかが決定的な打撃を受けない限り、この問題は終息しないのではないかというふうな見方も一部にあるのであります。しかしまた、アメリカが爆撃によって、あるいは兵力によって全北ベトナムを慴伏させる、あるいはまたベトコンに息の根もとまるような打撃を与えてしまうとかいうことは、私はちょっとできないのではないか、要するに武力によってこの問題の解決というものはないのではないかというふうに思うのでありまして、どうしてもこれは時を見て、やはり総理も日ごろ言っておられるように、何か調停に出る時期を常にねらっているということは必要でありますし、その時が来ればやってもらいたいと思うのであります。ことに先般マクナマラ国防相は、ジョンソン大統領に、ベトナムについては兵力はディエスカレートするということを言っておったのでありますが、最近は御承知のように、ハノイの中華人民共和国の大使館に直撃弾が落ちたというような報道もありまして、非常に情勢は深刻であるというふうに思われるのであります。  そこで私は、他人の提案をいろいろ考えてみて、従来幾つかベトナムについてなされておりまする提案を考えてみまして、総理所信を伺いたいというふうに思うのであります。  まず、ドゴールの提案でございますが、フランスはベトナムとの深い歴史的なつながりがあるわけであります。しかも、今日ベトナムに対する支配権を失っておりますけれども、紛争の帰趨に対する非常な深い関心を持っておるのであります。昨年はマルロー文化相を中共に出しましたり、ショーベル元国連大使を中共あるいは北越に派遣いたし、さらに本年七月には、フランスの指折りの北越通であるといわれております。また、ホー・チ・ミン大統領とも旧知の仲であるといわれておりまするサントニー前在郷軍人相を派遣いたしまして、北越側の要路者に接触せしめておる。また、そういう表面的な動きと相呼応して、いろいろ陰でベトナム平和探求のための独自の努力を払っておられると思われるのであります。また、ドゴール大統領自身も、一九六三年の夏以来、インドシナの中立化による平和回復を提案いたしております。また、九月一日にはプノンペンにおきまして、ベトナム紛争に関する交渉ができるかどうかは、適切かつ明確な期間内に米軍を撤退するという約束をアメリカが行なうかどうかにかかっておると、こういうことを主張しておるのであります、フランスといたしましては、平和を熱心に追求するという立場からこういう主張を行なっておると思うのでありますが、やはり一本といたしましては、また日本の従来のいきさつもあり、また関係国とのいきさつもフランスと違う点もあり、いろいろな点もあって、このドゴール大統領に対する批評も、あるいは独自の意見というものもあろうかと思うのでありますが、これに対しての総理の見解を承っておきたいと思います。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  ベトナムに一日も早く硝煙のおさまること、これは日本国民全体の熱願であります。そういう意味で、私自身そういうことができればこんなしあわせなことはない、日本だけが助かるのではなく、東南アジア全体、ひいては世界的にも、これは平和のためにほんとうに喜ばしいことだ、こういう意味で、過去におきましてもいろいろ努力してまいりました。しかし、こういうものはやはり一方だけの問題じゃないので、相手方もある問題でありますし、今日までのところ、その機熟せずして効果があがってきていない。まことに私は残念に思っております。しかし、日本は日本の立場においてあらゆる機会をつかまえ、そして交渉いたし、またこの問題の解決に寄与したい、かように思っております。  そこで、ただいまのフランス政府、ドゴール大統領の考え方、これをどういうように考えるかというお尋ねであります。フランスがベトナムについて在来から特殊な歴史的な関係のあることは御指摘のとおり、私もよく承知いたしております。しかし、これでいまのところは、関係者として北のほうがいいというわけでもないようだし、また、アメリカ側にもアメリカ側の考え方があるようでありますので、せっかくのこの提案も十分効果をあげておらない。私に、フランスのドゴール提案が一体どういうように評価さるべきものかということをお尋ねになるのは、ちょっとそれはどうかと思いますし、私、その批判は避けたいと思います。とにかくあらゆる努力が各国において払われておるのでありますから、そういう事柄にやはり国際世論も向かっておる。平和解決を非常に希望しておる。ここで何か成果があがるように、今後ともその動向をやはり見きわめるべきじゃないか、かように思っております。
  31. 小坂善太郎

    ○小坂委員 総理は、一時東洋のドゴールであるというふうに言われたという話があるのですが、ひとつドゴールに負けぬように、この問題については積極的にごくふうを願いたいと思うのであります。  実は昨年、御承知のようにクリスマス休戦をはじめといたしまして、約五週間の停戦が行なわれました。ことしもまたクリスマスがやってくるわけでございまして、その間において停戦の話があることは非常にけっこうだと思って、これが何かのきっかけになることを望むわけであります。しかし、どうも全体が、いまお話がありましたように、両方なかなか強気であるわけですね。われわれにも実際のことはよくわからない。最近のアメリカ側の話を聞きますと、メコン・デルタで非常にイニシアチブをとれるようになった、いよいよサーチ・アンド・デストロイである、見つけておいて破壊するのだ、こういう話を聞くのでありますが、どうも状況を見ますと、サーチどころではない。向こうが見つけて、かなりのダメージを与えておるというような点もあるし、どうもわれわれ局外者にはよくわからない。しかし問題は、われわれとして望むことは、そういう血なまぐさい硝煙が一日も早くあの地から消えるということでありますが、とにかく昨年末から、私もお目にかかりましたけれども、ジョンソン大統領の北爆停止の十四ポイントの発表がございまして、ハリマン特使が見えた。そしてあちらこちら話をして歩くというようなこともあり、あるいはゴールドバーグ国連代表が提案する、あるいはマニラの七カ国会議で最近共同声明が出されるというようなことで、とにかく、みんなが北越側と話し合いを行なうことによって紛争を平和裏に解決するということを再三提案しておりまして、この実現に努力してきたのでありますが、どうも北ベトナム側は昨年の四月に米軍の即時撤退という四条件を発表いたしましてから、一切の話し合いの前提にこの四条件というものを持ち出しておるわけであります。  私は、この際伺っておきたいと思いますのは、われわれで知るべからざる全体の様相ですね、これは総理大臣においてはいかに把握していらっしゃるかということ。それから、どうも先ほども言いましたが、決定的な打撃が双方にない限りベトナム戦争は終わらないということを言う人があるのでありますが、どうも私は、そういうことは避けたいという気持ちであります。こういうことについて総理のお考えをひとつ聞かせていただきたいと思うのであります。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状を一体どういうように把握しているかというお尋ねであります。私も、いろいろな情報その他も、報告と同時に目を通しておりますが、しかし、実情を把握すること、まことに困難です。しかし、アメリカ側が非常に多数の兵力を投入しておること、また北爆が続けられておること、これもすでに報道しておるとおりであります。その戦果がどうなっているかということ、一々そういう詳細なことを申し上げるまでもないだろうと思いますが、とにかく一日も早く戦いが終わること、そうして、ただいまもお話しになりましたように、クリスマスあるいは新年、旧正月、それらの機会に停戦される、その期間がもっと長くなるように、そういう際に話し合いのチャンスをつかむことができれば、たいへんしあわせじゃないか、そういう意味で、いまクリスマスや正月が近づいておるだけに、その努力が払われておる、かように私は思っております。そういうような報告もまた受けております。しかし、片一方で、まだまだ非常にかたいんだ、これはなかなかそう一部で期待されるようなものではないですよという、こういう報告もきておりますので、まあ問題は、実情がほんとうに把握しにくい状況だ、かように申し上げたほうがいいのかと思います。  また、徹底した打撃を与えれば云々ということでありますが、しかし、そういう事柄をお互いが避けておる、そういうところにやはり一つの平和への望みを断たないものがあるのではないだろうか、かように私は思います。したがって、非常に激化することが早くおさまるゆえんだというような見方も、あるいは一部でありましょうけれども、私は、必ずしもそれだけで問題が解決するものではないだろう、かように思っております。問題は、やはり国際世論、その動向がこういうことをきめるのだと思いますし、そういう意味で、北ベトナムに対して特別な理解を持っておるようにいわれた北欧、東欧ですか、それらの諸国の考え方なども、最近は慎重さを加えてきておるようであります。こういう事柄が、今後私どもが望んでいるような方向にこの運動が発展していけば、たいへんしあわせだと思う。  私は、いずれにいたしましても、戦いをやめて、そうして話し合いの場に着いて、その席において十分論議を尽くしていただきたい、こういうことを実は申しておるのであります。また、中立政策などについても、これはもう絶対に反対だというものではないようでありますが、そういう点がさらに論議をかわされるべきじゃないだろうか、かように私は思っております。
  33. 小坂善太郎

    ○小坂委員 次に、時間の関係で話題を変えますが、核不拡散の問題でございます。  中華人民共和国がしばしば核実験を行ないまして、この問題があらためて世界的な大きな問題として、しかも喫緊の問題として議題になっておることは、御承知のとおりであります。しかしながら、原子力の平和利用ということが進みまして、この動きを基礎といたしまして、いつでも核はできる、核実験の場さえあれば、また、その意思さえあれば核実験は可能であるという国が方々に出てきていることも、これは御承知のとおりであります。  そこで、この不拡散の問題がございますわけですが、われわれとしては、核を持たない、核を持ち込ませないというのでありまするから、当然に不拡散条約に賛成の立場をとるのがよろしかろうと思うのです。しかし、この条約は、現在持っておる国に対しての制限というものはないわけなんです。持ってない国はもう今後持たない。しかし、現在持っている国は、これを量的にもふやすことができるのみならず、質的にもまだまだこれを改良し得るということになりまして、この保有国と非保有国の間に非常な差ができてくるというところが問題であると思うのであります。わが国は、御承知のように、世界じゅうで唯一の被爆国でございまするから、この立場をひとつ強く取り上げて、われわれの外交方針の基礎として、やはり核不保有ということを中心にして、そうして核不拡散の問題についてもわれわれがリードして、こういう状況について、やはり持つ能力がありながら持たない国に対する保障をどうするかとか、あるいは将来全部核兵器というものをやめるという、そういう大きな旗を振っていきますると、私は、日本の外交というのは非常に特色のある、また、強力な平和への外交になるというふうに思うのであります。この点について、ひとつ総理からお考えを承っておきたいと思うのです。  それからもう一つ、ドイツが一九五四年のパリ条約で、核兵器の生産というものを放棄しているわけなのでありますが、また最近のキージンガー首相がやはり核不保有ということをはっきり言明いたしておる。こういう国は、やはりわれわれと若干似ているところがございまして、たとえば近隣に核を保有している国があるわけなんですから、近隣に核を保有している国がありながら、自分は持たないんだ、こういう言い方をする国が、やはりお互いに情報等も交換して、現在の力による政治、パワーポリティックスというものに対する反省を求めるという声を強くあげていったらいかがかと思いますが、この点について御所見を承っておきたいと思います。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま核拡散防止条約、この話に触れられました。ことしの国連などは大体その方向に行った、これはたいへんな成功だ、こういうような言い方まで実はされております。米ソの間に核兵器の拡散防止、そういう方向で大筋の意見が一致した。なるほど、ただいま言われますように、核保有国としてこれはたいへん優位に立ち得る、こういうものでありますだけに、また人類の敵、核という、そういう考え方から見れば、これが新しく出てこない、そういうことをお互いが希望すること、ましてや、唯一の被爆国である日本としてこういう問題に真剣であること、これはもう当然のことだと思います。したがいまして、核拡散防止、そういう方向で進んでいく、これは望ましいことに違いありませんが、同時に、そのことはわが国の安全が確保されるという、安全の確保に抜かりがないんだ、こういう意味において、ただいまの核拡散防止条約、防止申し合わせに日本が協力するということであると私は思うのであります。ただ単に理論だけの問題じゃ実はないと思うのであります。したがいまして、今後の具体的な成り行きについては、十分注意する必要があると思います。ただ単に、この核拡散防止の状況で、さらに日米安全保障体制も要らないんだとか、あるいは核を保有するのは自由だ、すでに開発した国は保有するのは自由だとか、量的にも質的にもそういうことに制限を加えられない、こういうことではたしてよろしいのか、こういうことは、絶えず私は考えなければならぬことだと思います。核兵器といわず、完全軍縮にいくような、そういう事柄がまじめに取り上げられ、議論されるなら、これは何をか申しません。たいへんけっこうなことであると思う。そうして全部が平和的利用の方向にいくならば、これもたいへんけっこうなことであります。しかし、いまのただ核拡散防止という、これだけの問題ではなく、わが国の安全ということも十分考えて、そうしてこの理論を貫くことによってわが国の安全が確保される、こういうところと結びついて、初めて核拡散防止にも私ども賛成できるのだ、かように思います。理論的には賛成だ。しかし、実際にどういうような形においてこの問題が運んでいくのか、さらに私ども監視を必要とする、かように思います。また、西独の考え自身も、もちろんこれは参考になることだと思います。これは国際的な問題で、世界が戦争を望まず、また、ましてや人類を破滅におとしいれるような、こういう核兵器、これは絶対に持ってはいかぬのだ、こういうこと、これは私どもがほんとうに賛成できることでありますが、理論と現実との間のギャップをいかに埋めるか、これは私ども政治家として絶えず考えていかなければならぬ問題だ、かように思っております。
  35. 小坂善太郎

    ○小坂委員 先ほど安保条約の問題が出ておりましたが、これが今日日本の安全保障の基礎であって、しかもまた、今日日本繁栄の原動力になっておるということは、幾ら言っても言い過ぎるということはないと思いますが、ただいまのお話にも出ておりましたように、これがとかく理解が不十分であるという点は、われわれとしてもお互いの問題として気をつけていかなければならぬと思うのであります。大いに安保条約の必要性というものを強調しなければならないし、これが強調し過ぎておるということは絶対にない問題であると思うのであります。  ところで、一九七〇年になりますと、どうなるかということなんであります。これはわが党の代表質問を伺っておっても、これはと思ったのでありますが、一九七〇年の安保更改期にはということばが使われておる。私は、これは間違いだと思う。御承知のように、安保条約というものは、国連による安全保障が完全になると認められるまで続けましょうということが第十条の一項に書いてあるわけです。ただし、第二項に、十年たったら、どちらかがこれは廃棄したいと申し出れば廃棄できますよということが書いてあるわけですね。そこで総理は、先般やはりこの予算委員会でしたかで、安保条約の内容を変える必要はないとおっしゃった。私も同感です。これは全然変える必要はないと思う。そこで、何か一九七〇年に至って、一部に言われておるように、十年また同じ内容のものを出し直して国会で議決しなければ安保条約の効果がないというふうな考え方をとりますと、これは非常に問題が複雑になってくると思うので、この機会にやはり総理から、安保条約の条約そのままに読んでいって、そうしてこの解釈というものを明瞭にしておかれる必要があるのじゃないかというふうに思うのでございます。この点について御所見を承っておきたいと思ます。これは非常に大事な問題でございまして、これは総理が一言言われると、一九七〇年の危機なんてものはぴしゃりとなくなる、私はさように考えており一まず。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日米安全保障条約そのものは、ただいま小坂君が述べられたとおりのものであります。したがいまして、その条約の面そのものからは、ただいまの一九七〇年危機説というものは実は出てこないのだ、かように思いますし、また、私しばしば申し上げましたように、国際情勢に変化がない限りこの条約は続けていくのだ、かように申しておりますから、これは十分考えられることだ、もうそれで結論が出ておる、かように私は思います。いいのだと思います。その他、なおまだしばらくございますから、その間にどういうような形にするのか、このままでよろしいのかなど、もっと強化するのだとかいう話が案外あるのかもわかりませんし、研究はしてよろしいことだ、かように思います。
  37. 小坂善太郎

    ○小坂委員 強化をしたほうがいいという議論は、日本の中にあるのかどうか別として、アメリカ側にはございません。これはもう私はっきり申し上げておきます。ですから、あまりいろいろな問題で平地に波乱を起こされぬように希望いたしておきます。  次に、中国問題について若干御質問したいのですが、もう時間があまりないので、非常にエッセンスだけ申し上げざるを得ないのでありますが、これは御承知のように、今回また重要事項指定方式に指定された。これはまた重要な問題であることは論をまたないところでありまして、これはいいと思うのですが、しかし、重要であるからといって、これを議決してしまえば一年間ほっておくという態度がこの五年間続いておるわけです。私は、これはよくないと思っているわけです。そこで、やはり中国問題というのは非常に重要でございますし、ことにわが国にとって重要である。しかも、世界の人口三十二億といわれておりますが、そのうちの四分の一はあそこにおるといわれておる。七億とかそれ以上とかいわれておるのでありますが、これを真空にしておいて、全然タッチしないというのはよろしくない。そこで、ことしのイタリアみたいに、審議会をつくって、あと中国と接触しようじゃないかという考え方が出てくるのは当然だと思うのであります。代表権は非常に重要な事柄であるということはさまったのでありますから、それはそれでいいということで、そのあとの方針ですね。委員会をつくって検討しようじゃないかということくらいは、ひとつアメリカのほうへもお申し出になってはどうか、私はさように思うのです。三木外務大臣は非常に進歩的な方で、非常に勉強なさる方でございまして、私も常々敬意を表しておるのでございますが、どうぞ、ひとつ三木外務大臣におなりになった機会に、私どものできなかったこういう問題を、時節もございますし、ちょうどタイミングも合ってきたかと思いますので、こういう問題を解決してもらいたいと思いますが、御所見を承らせてもらいたい。
  38. 三木武夫

    ○三木国務大臣 小坂さん御指摘のように、中国問題は最大の課題だと私も思います。したがって、これはあまりせっかちに解決しようとしても、せっかちに解決できるほど簡単な問題ではない。したがって、じっくり腰を落ちつけて、そして中国問題はこれと真剣に取り組む。国際的な機構という問題についてはイタリアなどの提案もありますが、まず日本が、単にいまの問題としてではなくして、長期的な課題として中国問題に取り組む態度が日本の外務当局にも必要である、そういう見地に立って、今後外務省においても検討を加えたいというふうに考えておる次第でございます。
  39. 小坂善太郎

    ○小坂委員 まさにおっしゃいまするように、腰を落ちつけてじっくり取り組むべき大問題であるということは異議ございません。そこで委員会などつくりますのは、非常にじっくり気を落ちつけて取り組むのによろしいわけでございまして、たとえばわれわれの非常に大きな問題の選挙制度調査会などは、これはもう五回も委員をかえてやっておることは御承知のとおりであります。これは一つの当たらぬ例かと思いますが、とにかく、そういうことをもって国全体、世界じゅうの国々が中華人民共和国と接触しよう、こういうことに私は非常な意義があると思うのです。もちろん結果はすぐ出るとは思いません。思いませんが、結果が出なくても、取り組むことそのことに意義があるので、ぜひこれは十分に御検討願いたいと思います。  それから貿易の問題でございますが、私はやはり貿易によって接触をするということが一番具体的であってよろしいと思う。文化交流などは、それぞれの主観が入りますが、貿易は、そのものずばりでございますから……。中華人民共和国の窓口を開くという意味では、やはり日本のような立場におるものが最も積極的にいたすべきことかと思うのであります。先般通産大臣も御郷里に帰られて、非常に積極的な発言をされておるようでございまするが、配慮物資から始まりまして、友好商社貿易という形になっておるのに対して、やはり責任のある当局者が話をしようということでLT貿易が出ておるわけなんでありますが、これに吉田書簡というものが非常な桎梏になっておることは、御承知のとおりであります。しかし、あれは昭和三十九年当時の政府考え方を背景として渡された個人の書簡であって、三木さんもしばしば――当時通産大臣であられたかと思いますが、その機会に、あれは拘束されないと初めはおっしゃって、それからいろいろな問題があって、法律的には拘束されない、こうおっしゃった。初めからそういう考で言われたと思いまするが、そういうことを言っておられるわけなんです。輸銀を使うとか使わないとかいうことは、これはもう輸銀当局にまかせればいいのであって、これは純粋に経済的な問題、ファイナンスの問題であると思うのであります。政経分離ということをわれわれは言っているわけでございますが、これはまさに経のほうの問題であります。それに政治をからませるということになると、政経分離ではなくなると思うのでありまするが、そういうことをも考えられて、ひとつ三木外務大臣らしい答弁をお願いいたしたい、こう思うのであります。
  40. 三木武夫

    ○三木国務大臣 小坂さんも御指摘のように、あの時点において、池田内閣時代に吉田書簡が出されたという歴史的事実は、これはもう抹殺することはできない。しかしながら、あの吉田書簡というものが両国間の取りきめのように長く日本を拘束するものとは私は考えていない。したがって、今後問題が具体的に出た場合に、いろいろなことを勘案しながら、その具体的な問題ごとに自主的に判断をしてきめる、これは政府の従来からの考え方でありまして、この考え方は特にこの際変えなければならぬという必要は感じていないのでございます。
  41. 小坂善太郎

    ○小坂委員 どうも、あまり三木外務大臣らしくないお話で、それじゃ三木さんは、外務大臣になられない前でもそういう方針ではあるわけなんです。そこで問題は、いろいろお困りでしょうから、この程度にしておいて、問題が出たら考えるというのでは、問題をつくるほうは非常に困るわけでございますから、いろいろ話をし合って、その上持っていったら政府が断わった、それでは、もうどうにもならぬということでありますから、いまのお話は、問題があれば持ってこい、非常に前向きなお考えのようにもとられるのでありまして、そういうふうにとっておいてよろしゅうございますか。恥はかかせぬ、こういうことかと思いますが……。
  42. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は問題があれば持ってこいと言って、ここで勧誘する意図はありません。日中間の貿易というものをみんな持ってこいと言って勧誘するという、そういうものではなくして、もう少し自然な形で、額面どおり具体的な問題ごとに処理していきたいと考えているわけでございます。
  43. 小坂善太郎

    ○小坂委員 国交はないのでございますからね。ですから、政府はあまり表面に立つことはどうもよくないのであります。しかし、やっていけないことは、政府はいけない、こう言わなければいかぬと思います。そこで、この問題は純粋に金融機関の問題であるというふうに思いますので、いろいろいま伺っても、これ以上のことをおっしゃることは困難かと思いますから、この程度にしておきまするが、ぜひ、ひとつわれわれ日本の立場としてこういうふうにしたほうがいいという考え方できめていただきたいと思うのです。ほかの国がこう言うから、おれは非常にしたいのだけれども、やめるというようなことは、これは内政干渉に屈するということであろうかと思います。どうぞ、そういう意味で十分御検討願っておきたいと思います。  時間がだいぶ過ぎまして、あとの方に御迷惑ですから、大急ぎで一点だけ、ひとつ最後に伺っておきたいと思います。  それは、アジアの地域に関する協力の問題でございます。先般、閣僚会議を開かれたり、あるいは農業開発会議を開かれたり、非常にけっこうだと思いますが、ここで問題は、やはりアジアの資金不足の問題であろうと思うのです。いろいろやりたいとしても、金がないという問題であります。アジア開銀をおつくりになったのは、その意味で非常によかったと思いまするけれども、やはりそこに、冒頭に返って、心組みの問題というのがどうしても出てくると思うのであります。今日、アジア諸国はほとんど一次産品の輸出国であるわけでございます。アジア産品を買うということになりますれば、日本の一次産品の製造業者、農業、水産物関係との競合の問題がどうしても起きてこざるを得ないのであります。  そこで、一方考えてみますると、例のケネディラウンド、関税の引き下げ交渉という問題は、通商拡大法が明年の六月をもって期限が終わるわけなんです。そうしますと、これはケネディが大統領時代、非常に熱心にやったことでありまするが、今度はちょっとこれを引き継ぐ意味で継続することはむずかしかろうと一般にいわれておる。そうしますと、ケネディラウンドによる関税引き下げ交渉というのはやめになる。そうしますと、これは大体先進国の間でどうしようという話であったわけですが、これがやめになりますと、今度は局面が変わりまして、やはり国連の貿易開発会議の結果に基づきまするような二十七カ国――この人口というものは世界じゅうの四分の一しかない、それが世界全体の富の七五%を占めておるじゃないかこれはけしからぬじゃないか、もっとわれわれに繁栄と福祉を与えよという南の声というものが非常に強くなってくると私は思うのです。ことに日本は、アジアの中にただ一つだけあるという国民所得年間六百ドル、こういう国なんですね。ところが、インドネシアを見てみればわずかに六十九ドルだ。インドはどうか、インドだって七十六ドルだ。パキスタンはちっとはいいです。それでも七十七ドルだ。そういう国民所得の国々を相手にして日本が開発会議をやったり閣僚会議をやったりしている。それは一回はいいでしょう。しかし当然、われわれのつくるものを買ってくれないのか、これはどうしてくれるんだという問題が出てくるわけなんでございます。これに対する政府のお考え。  それからもう一つは、やはりアジアの資本不足をカバーする意味で、ちょうどコロンボプランでやっておりまするようなドーナーカントリースとレシピエントカントリースと分けていく考え方、そういうものを導入する必要もあるのじゃないか。  もう一つは、日本だけでなくて、カナダとか豪州とかニュージーランド、もちろんアメリカも、そういうものも入れて太平洋圏という構想に立ってこの問題の解決考えていくということはどうか。  この三点について、ひとつ政府考えをお聞かせ願っておきたいと思います。
  44. 三木武夫

    ○三木国務大臣 小坂さんの御指摘になった問題は、世界の当面する最大の課題だと思うのです。人口は世界人口の三分の二も占めておりながら、そういう人たちが明日の食糧にも困っておるという現実、これと取り組むということが最大の課題であることは間違いない。そこで、小坂さんも御指摘になったように、日本もしっかりやらなければならぬけれども、日本だけの独力ではできないから、アジア太平洋地域という、もう少し拡大した形でこれと取り細めということは、まさにこれは歴史の方向にも沿うた大きな識見だと思います。われわれも、やはりさように考えておるわけであります。一方において、アジアには資源もあり、人口もたくさんあるけれども、資本がない、技術がない、経営の経験がない。ところが太平洋の諸国、アメリカ、カナダあるいはニュージーランド、豪州、こういう国々には資本も技術もあるいは経営の経験もあるわけですから、これを別々に考えないで、アジアの一員、自由世界の一員という両方を結びつけた形においてアジアの開発と取り組んでいくということが、私は、まさに外交のこれからのコースだと思うのです。  その場合に、日本はそういう太平洋の先進諸国家に働きかけていく、できるだけアジアに対して資本や技術を持ってくるために日本の外交が全力を尽くすことが、これからの外交の大きな目標でなくてはならぬ。しかし、よそのことばかりに介入するのではだめでありますから、日本自身もやりたいことはたくさんあるけれども、それをさいてでも、このアジア地域に対して資本的なあるいは技術的な協力をするというこの身がまえを、やはり国民にもよく理解してもらって、そしてやらなければならぬ。それには資金的な援助と同時に、小坂さん御指摘のように、貿易の拡大という面が私はあると思う。ただ資本だけの援助ということでは限度がありますから、向こうでつくったものをこちらでできるだけ買うという仕組みが必要である。そのためには、向こうの第一次産品が国際競争力を持つことが一番大事なことです。しかし、すぐに持てといっても持てないから、やはりこれを買うためには、日本が必要なものをつくってもらう。開発輸入という考え方で、何らかのそれを買いやすい仕組みが要るのじゃないか。通商大臣の当時に、そういう仕組みを――今度の予算要求にもしてありますが、過渡的には何らかの仕組みを考えて、日本の農業と競合しない物資をできるだけ開発して輸入して、資本や技術の援助と同時に、貿易の拡大をはかるということが必要であるというその考え方は全く同感で、そういう方向に沿うてわれわれは努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  45. 小坂善太郎

    ○小坂委員 まだいろいろ質問したいことがございますけれども、同僚各位がお待ちでございますから、これをもってやめたいと思いますが、先ほども灘尾議員が言われたように、どうぞ、ひとつこの際たじろがないでもらいたい。われわれはわれわれとして今日まで責任を持って政治をやってきて、いろいろな問題に遭遇いたしましたけれども、その間にりっぱにこれを切り抜けてきておるのであります。私は、いろいろやらねばならぬことについては誠心誠意一致してみんなで解決しなければなりませんけれども、ただ右顧左べんしては、得るところがないということを特に申し上げて、以上、私は非常に心残りの点がまだたくさんありますけれども、時間も過ぎておりまするので、私の質問を打ち切りたいと思います。(拍手)
  46. 福田一

    福田委員長 これにて小坂君の質疑は終了いたしました。  次に正示啓次郎君。
  47. 正示啓次郎

    ○正示委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、主として財政関係質問いたしますが、その前に総理に一、二お尋ねをいたしたいと思います。  政治の現状につきまして、先ほど来先輩の委員各位からお話がございましたが、私は日本の現在の政治におきまして、われわれ与党に対抗して責任をとる野党がいない、これが今日の政界の一番大きなガンであると思うのであります。私はこの春、外務省におりましたときに、久しぶりにヨーロッパに参りましたが、当時のイギリスの労働党の政治のやり方を親しく見まして、その感を特に深くいたしました。総理大臣にお伺いいたしたいのでありますが、今日この議場の状況、これは一体政党、公党が、いわゆるナショナルインタレスト、国益ということを考えての行動であろうかどうか、私は非常に大きく疑問に思います。年の瀬を控えまして、中小企業も勤労者も、すべてがいかにしてこの年の瀬を越えようかということに日夜悩んであるのであります。しかるに、どの政党も、中小企業の対策や勤労者の越年資金の問題を議場において論議することなく、解放問題その他政策以前の問題に完全にオキュパイされておるという姿、これはほんとうに嘆かわしいことでございまして、この点を、まず第一に総理お尋ねいたしますが、一体どうして日本の政治というものが、イギリスにおける保守党と労働党のごとく両党対立いたしまして――しかも労働党は、この春、あの海員のストライキ問題に直面いたしまするや、ウィルソン総理がみずから先頭に立ちまして、この問題は、海員組合という、労働党にとっては一番大事な、いわば選挙基盤のユニオンの問題であるけれども、しかし、ナショナルインタレストの前にはわれわれはこの海員組合の要求をいれるわけにはまいらない、海軍を出動さしてでも船を動かすのだということを力強く言ったことは、御記憶に新たなところであります。今日の日本の政治の情勢とイギリスのこの状況を比べまして、まことに感慨深いものがあるのでございますが、総理は、日本の今日の政治情勢をイギリスの状態と比較してどういうふうにお考えになっておられるか、この点について、まず総理の御所見を伺いたいと思います。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今日の政治情勢についていろいろの批判をされる、ただいまもお話がありましたが、私は、一言にして言うならば、戦後の歴史の浅いこと、いわゆる議会制民主政治が、わが国においてはまだ未熟の点が非常に多い、この一語に尽きるのじゃないか、かように思っております。
  49. 正示啓次郎

    ○正示委員 そこで、この問題にあまり長く深入りはできないのでありますが、たとえばこの補正予算一つを取り上げましても、非常にこの補正予算に期待するところのもの、これは全国の国家公務員、またその家族はたいへんな数だと思うのであります。その補正予算が、今日こうして与党だけの審議にゆだねられておるということ、これは大きな問題であると思います。そこで、こうした問題につきましても、各党ともに国家的、国民的利益ということを考えまして行動すべきであることは申すまでもないと思うのであります。しかるに、不幸にしてそういう行動が出ないのは、いま総理は、日本の民主主義の理解が薄いからだ、あるいは成長の時期が非常に短いからだ、こういうふうなお考えでありますが、私はもう一つ心配なのは、いわゆる高度成長ということで、日本は非常に大きな経済的成長を遂げました。しかし、この反面におきまして、日本人伝統の美しい、たとえば祖先を敬うとか、あるいは神を敬うとか、そういう精神面が非常に閑却されておる状況があるのではないか。ヨーロッパ各国におきましては、あの伝統、古いキリスト教で、毎日曜日に家族が打ち連れて教会に参る姿、これは戦勝国、敗戦国を問わず、そうしたものが強く今日のヨーロッパ各国あるいはアメリカあたりの社会組織の基本になっておると思うのであります。しかるに日本におきましては、とうとうとして物質文明謳歌の思想が非常に強く流れております。これまた、今日の政治の世界の問題と私は無関係ではない、かように思うのであります。さらにまた、争争中は非常な全体主義でありました。今日、日本人はこの全体主義から脱却して、民主主義の基礎の上に政治を運営いたすのでありまするけれども、不幸にして、先ほども御議論のありました、よき意味の個人主義というものが日本には育っていないんではないか、育ついとまがなかった。そういう、まずみずからを一人の人格者として判断するという力、こういうものが欠けておるということが今日の政界においても非常に強く指摘されるのではないか。イギリスの労働党あたりのような非常に進んだ政治意識というものは、そうした健全な個人主義の教育、また社会生活、そういうものを基盤にしてできておるというふうにも考えられるのでありまするが、今日、こうして社会党なり、またその他の政党の諸君が、党の一つの締めくくりにあいまして、だれ一人としてこの重要な補正予算審議にも加わらないというふうなこうした事態に、私は非常に危険なものを実は感ずるのでありまするが、そうした点について総理はどういうふうにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの正示君の説に、私全幅的に共感を感ずるものです。共鳴しております。ただいま言われますように、物質至上に先行して精神面がおくれたんじゃないか、こういうような反省はもちろん必要だと思います。しばしば物心両面ということをいわれますが、私は、その物心両面に調和がとれまして、そこで初めてりっぱな文化あるいは国力、これが育成されるものだと思います。このことは最も大事なことだと思います。  また、その次に触れられました個人主義的な考え方、正しい意味の個人主義、これはどこまでも育てなければならない。個人の権利も擁護されなければならない。これでよくわかりますが、しかし、これが利己的に、利己に走っては困る。この点は、お互いがさらにさらに反省すべきものではないか、かように思います。これらの点に触れられましたこと、私は全面的に同感でありますので、重ねてその点を披露しておきます。
  51. 正示啓次郎

    ○正示委員 次に予算の問題に移りますが、総理は、かねて四十二年度予算はいわゆる五兆円予算ということを総理の信念としておっしゃられたように伝えられております。私も大体そんなところが正しいかという同感の意を表するのでありまするけれども、この機会に、総理にひとつ、この五兆円予算を意図しておられる趣旨を国民の前に明らかにしていただきたいと思うのであります。  御承知のように、昭和二十九年でございましたが、吉田総理大臣から、われわれ大蔵省におりました当時でございますが、一兆円予算を必ず実現せよという非常に強い指令が参りました。これは私どもも、一技術帰といたしまして、一兆円予算の仕組みをつくり上げるのに非常に苦心をいたした思い出を持っております。当時の吉田総理の意図するところは、二十八年度の予算が非常な膨張予算でございまして、経済界にも非常な積極的なムードが感ぜられたのでありまするが、その結果、日本の国際収支が非常に危機に瀕しまして、これを乗り越えていくためには一兆円のワクを絶対守らなければいけない、まあ一つの至上命令として、そういうことを強調されたように記憶をいたしております。今日総理が五兆円予算と言われる趣旨の中には、おそらくそうしたねらいが込められておるものと思うのでありますが、そのねらいの主眼をここに明らかにしていただきたいと思うのであります。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 後ほどあるいは大蔵大臣から詳細について補足するということがあろうかと思いますが、私がただいま五兆円以内にとどめろ、こういう話をいたしましたのは、正示君も御指摘になりましたように、過去において、吉田内閣当時、一兆円予算を必ず編成しろ、こういう吉田総理の厳命があったが、あれと同じような考えじゃないか、まさしくそのとおりであります。  わが国の経済でいつも問題になりますのは、わが国の経済がインフレ的傾向へ、そういう方向で水ぶくれがしないように、これを絶えず注意しているというのがほんとの気持ちであります。私は、政局を担当して以来、当時は実は不況で非常に困っておった。そこで、この不況克服のために、戦後いまだかつて採用しなかった公債政策に踏み切ったのであります。七千三百億の公債を発行した。これは当時各方面から画期的なことだといわれた。そうして刺激を与える積極政策をとった。その結果、せんだっての所信表明でも申しましたように、完全に不況を克服することができた。そうして上昇過程をただいまたどっております。しかし私は、過去の日本経済がしばしばたどってきたようなその過誤におちいらないように、この際公債政策を採用した第二年目を迎える際に、特に注意すべきではないだろうかと思います。  そこで、五兆円予算という、これは聞き方によりましては非常な圧縮予算という言い方をする人もあろうかと思いますが、しかし、この五兆円の予算が意味しますものは、一五%前後のこれは拡大であります。さように考えますと、いわゆる中立的な意味を持つ予算としては、私は十分だと思っている。ことに四十一年度の予算が不況克服のために積極的な予算を組んだだけに、ただいまのような増加率、これは望ましいものじゃないだろうか。この際大事なことは、やはりその節度を保っていくこと、そうして中立的予算を編成することだ、かように思っておるのであります。そういう意味でこの五兆円ということを申し上げました。問題は、わが党が、この緊急、重要さ、こういうものに十分の順位をつけて重点的な予算を編成いたしますならば、この規模で十分私はまかなえる、国民の要望にこたえ得る、りっぱな予算ができる、かように確信をいたしております。御心配になりました点が私の同時に心配でもある、かように思いますので、重ねて御披露した次第であります。
  53. 正示啓次郎

    ○正示委員 総理も言われましたように、今日の重要な問題は、水ぶくれ予算ではなくて、実質の伴う、しかも国民の各方面の要望を盛り込んだ予算、こういうことになれば、おのずから五兆円予算というふうな一つの目途に出るのだという考え方には私も同感でありますが、特にその中に、われわれのねらいとするところは、物価の問題、さらに国際収支の安定の問題というふうな点が出てくるのではないかと思うのであります。  年末を控えまして国民全部がひとしく憂えておるのは、やはり物価問題であろうと存じます。この物価問題に対しまして、先ほども申しましたように、イギリスの労働党あたりは真剣に取り組み、これが政治の上において全国民の支援を得ておるということは、まことにりっぱなやり方であると、はるかに敬意を表するのであります。日本におきましても、もちろん政府も、非常に各省において努力をされ、宮津経済企画庁長官は、先般就任にあたられましては、この問題はひとつ各省の問題として取り上げてほしい、一経済企画庁の問題ではない、政府全体の問題として取り上げてほしいということを強調されたのは、私も全くそのとおりだと思います。しかるに、私は、この物価問題について、実はきょうは特に出席を求めました私の古い友だちの北島公取委員長が最近盛んにマスコミに登場しておりますが、一公取委員長が非常にマスコミに登場しておるというところに実は問題があるのじゃないか。イギリスのウィルソン内閣が政府をあげて物価問題に取り組んでおる、管理価格の問題にメスを入れて、行き着くところ賃金問題というところにぶつかっていけば、これはほんとうに大きな政治問題である、そういうことがだれにもわかると思うのでありますが、そうした公取の姿勢、いま取り組んでおる姿勢は、私は称賛に値すると思います。したがって、この公取をバックアップしていただきたいということも特にお願いすると同時に、総理にこの際もう一つお伺いしておきたいことは、この物価問題、しかも、最近公取がそこにメスを入れかけておるところのいわゆる管理価格の問題――管理価格ということにはいろいろ誤解もありますけれども、そうした問題にだんだん突き進んでいくと、これを解決するには強力な政治力がなくてはとうてい解決はできないと思うのであります。佐藤改造内閣は、この内閣全体、また党の力、さらにまた国会においては、私は、野党各派の力をも結集いたしまして、この国民的な宿題である物価問題を解決しなければならぬと、かねがねそういうように信じておるのであります。この点について、総理は、今後における物価問題の処理、現在公取がメスを入れつつある問題について、党をあげ、内閣をあげ、さらに国会の全面的な支援を受けてこの問題を解決する御決意があると思うのでございますけれども、そういう点についての総理考えを伺っておきたいと思います。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 正示君も御指摘になりましたように、これからの経済、産業界のあり方について政府が注意するもの、それは物価の問題と国際収支の問題だと思う。これはもう国際収支に十分注意を払い、そして物価を、上昇的機運はありましても、これを小幅にとどめるような、そして国民生活を守るような、その態度で取り組んでいくということが望ましいのです。またそれをやるつもりであります。今回の行き方も、経済企画庁長官を督励いたしておりまして、物価問題をひとつ真剣にやってくれ、こういうことを申したのもその意味であります。  物価問題は、私が申し上げるまでもなく、消費者物価、あるいはただいま言われました管理価格、こういう問題を征伐するのにはいろいろな問題がある。したがいまして、生産性の低い部門の近代化、生産を向上するようないろいろの政策をとる、あるいはまた、流通面の改善をはかるとか、あるいはまた、労務の供給を普遍的ならしめるとか、同時にこの点は、賃金のアップというような問題もありますので、利益を賃金と利子の配当だけにしないで、やはり消費者に還元するような分配方法考えろ、こういうようなことを申しまして、いわゆる荷賃金にならないようにもくふうをいたしておるわけであります。いずれこれらのことは、早く効果をあらわすべき筋のものでありますから、総合的施策が十分効果をあげてくれば、物価は鎮静するだろうと思います。  そこで、もっと大事なことは、いま公取の話が出ましたが、やはり競争条件を整備することだと思います。すでにただいまでは、不況克服できましたから、いわゆる不況カルテルなどはもうなくなっている、こういうような状態であります。これは競争条件によって価格が決定される、こういう方向になることが望ましいのでありますから、そういう意味で、もっと各機関が活発に活動するように要望しておるわけであります。私が発言いたしまして、これは前内閣の時分でありましたが、とかく各官庁とも、生産者の立場に立ってものを見やすいが、しかし、今日大事なことは、やはり消費者の立場に立ってものごとを見ていくことが必要なのではないか。そういう意味で、公取が活動することに対して各官庁とも積極的に協力をしてください、これがやっぱり物価を押えるといいますか、適正ならしめる一つのかぎのように思うからということを実は申したのであります。まあ、大体そういう方向でただいま北島君もたいへん働いてくれている、かように思います。しかし、この公取の中立性から申しまして、政府自身がとやかく公取の活動にくちばしを入れるとか、あるいは制限をつけるとか、こういうものでないことも、私はよく理解しておりますが、それぞれの機関がそれぞれの立場において十分に目的を達するようにしてもらいたい、かように思います。来年度の物価上昇率は大体五%以下に押えるようにしたい。ことしは各界の協力も年の後半におきましてだんだん実績をあらわしてまいりました。最初予定いたしました五・五%の値上げ率、それが目標だと申しましたが、大体その以内に押えることができた。そこで来年はさらに五・五%の増加でなくて、五%以下にこれを押える、こういう大体の指示をしておるのであります。景気上昇機運でありますだけに、物価を押えることはなかなか困難だろうと思います。しかし、各界の協力によりまして、ぜひその目的を達するようにいたしたい、かように思います。
  55. 正示啓次郎

    ○正示委員 五兆円とか五%とか、五が出たのでありますが、これは選挙のときは御当選といいまして、五は非常にめでたい数字でありますから、たいへんけっこうだと思います。  さて次に、年末にあたってどうしてもお尋ねしなければならないのは中小企業の問題でございます。通産大臣にお伺いいたしますが、われわれは中小企業にたいへんな力を入れてきたにかかわりませず、また総理からも述べられたように、景気は相当回復顕著なものがあるといわれるにかかわりませず、最近は中小企業の倒産がたいへん多いということが伝えられており、また数字の上にも出ておるのでありますが、その状況について、通産大臣としてどうお考えになっておるかを伺い、また、これに対してすでに金融の道をおつけになったようでありますけれども、その状況は中小企業に対して安心を与えられる程度のものであるかどうか、通産大臣の御所信を伺いたいと思います。
  56. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 年末に際しての中小企業の倒産の件についてお尋ねがありましたが、御承知のとおり、最近の中小企業の倒産というものは、戦後最高の件数を数えておるのでありまして、この点お互いにまことに遺憾に存じておるのであります。大体どういう種類のものが倒産しておるかと申しますと、業種別によって倒産の傾向が変わってまいっておるのでありまして、製造業は比較的大体安定しておるように思いますが、建設業等の倒産が目立っておるのでありまして、商業などもやはり商水準のままに推移しておるように思います。製造業では、生産活動の回復を反映いたしまして、機械金属や繊維等の倒産が減少しておるのに対しまして、食料品及び化学の倒産が依然として多いのでありまして、おおむね前年と同水準にあるということは注目さるべき問題じゃないかと思います。  そこで、このように景気がよくなったというのにかかわらず、どうして中小企業の倒産が増加しておるかということでありますが、これは一般的に申し上げますと、最近の経済の高度成長に際しましての産業構造の変化に伴って、労働力あるいは需給の逼迫による人件費の上昇等の構造的変化、並びに長期にわたる景気停滞による中小企業の相互間の格差の拡大ということによって、中小企業の倒産があらわれてきたと思うのであります。したがいまして、中小企業におきましては、こういうような産業構造の変化あるいは中小企業間の格差の拡大に伴いまして、景気の回復にもかかわらず収益面で回復していない企業が少なくなく、また、景気の停滞時の焦げつき債権あるいは累積赤字等に悩んで倒産せざるを得ないというようなことになっておるのであります。また、これに対して金融面から申しますと、やはり倒産の危険のある方面には選別的な態度をとっておりますので、したがいまして、多少いままで赤字を重ねておる中小企業などは、金融の便を得ることができないというようなことで倒産をいたしておるのであります。しかし、もう一つわれわれが考えなければならないのは、やはり企業者自体の問題があるのでありまして、金融の操作あるいは経理のずさん、あるいは過大投資などによって倒産せざるを得ない状況になってきたのではないか、このように考えております。  そこで、こういう倒産に対して、年末に際して何か手を打ったかというお話でありますが、大体金融面におきましては、できるだけ金融額を増加することを計画いたしまして、本年度末の下期の事業規模が大体九百三十五億円増加することになっております。民間金融機関に対しましても、中小企業向けの年末貸し出しの目標額を九千五百億円とするように要請したのでありまして、政府関係の中小企業金融機関の金利なども、明年一月一日から年二厘程度引き下げるというような計画をしておるのであります。また、倒産防止のために、昨年十二月倒産関連企業のための保険の特例を設けまして、この弾力的な運用をはかっておるのでありまして、本年に入って、もうすでに八件の倒産企業の指定を行なって、関連中小企業の倒産を防止することをはかっておるのであります。  以上のほか、なお関係機関に対して中小企業の倒産防止対策の強化を通達しましたが、特に下請代金につきましては、親事業者団体等について支払い促進を指示したり、または繊維、機械工業に続いて、鉄鋼及び非鉄金属工業についても、支払い手形の標準決済期間を定めまして、支払い期間の適正化を強力に指導しておるのであります。  以上のほかに、要は、やはり中小企業の産業構造の改善をはかるということ、これが問題でありますので、その近代化をはかりたい。それに対しては、税制並びに金融面において、特に来年度はそういう点に意を用いたいと考えておるのであります。年末の倒産については以上のような善後策をとっておりますが、来年度の予算についても、特にこの問題については一そうこれを強化したいと考えておるのであります。
  57. 正示啓次郎

    ○正示委員 時間がありませんから重ねて御質問をいたしませんが、中小企業の問題はきわめて深刻でございます。どうか、ひとつ政府をあげて、また、われわれ党の者も一緒になりまして、この年末において大事な中小企業の対策に遺憾なきを期したい、かように思いますから、よろしくお願いいたします。  さて、最後に大蔵大臣に、補正予算に関連をいたしまして、三点お尋ねをいたします。  まず、先ほど総理もおっしゃられましたように、本年度は公債政策を導入いたしまして景気回復をはかることが予算の大きなねらいである、そのねらいは達せられたというふうなお話で、けっこうでございます。そこで、今回の補正予算にも税収の増加を計上しておりますが、この景気回復の効果がどういうふうに今回の補正予算の歳入面等にあらわれておるか、この点を概略伺いたいことが第一点。  次に、今回のこの補正予算、これが今日衆議院を通過しようとしております。国民の多くの方々の待望のうちに通過をしようとしておりますことは、われわれせめてもの慰め、みずから安んじ得るところでありますが、しかし、野党諸君がとっておる行動に対しまして、この補正予算が成立をしなかった場合、あるいは成立が遅延いたしまして年を越したというふうな場合には、一体どういう影響があるのか。これは国民は、直接の関係者以外はよくわかりません。たとえば公務員は、この追加払いの遅配があるというようなことはわかっておりますけれども、この予算の中に、農林関係、通産関係、国鉄その他いろいろのものが入っておるわけでありますから、そのおもな点を、私が一々伺っては時間がありませんので、大蔵大臣から、遅延の場合の影響というものを概略伺いたい。これが第二点。  第三点は、さきに社会党のほうから、木村禧八郎氏でありましたか、補正予算の中に間違いがあるということを、ぎょうぎょうしく宣伝したことは御記憶のとおりだと思います。これは絶対間違いでないのであります。しかし、これも、この予算委員会等において解明されずに済んではいけないのであります。その点はほんとうに間違いでないのであるけれども、こういう点を取り上げて間違いであるということを宣伝したのだという事実を国民に知らせる必要があると思います。  たいへん時間がありません。たくさん尋ねたいことがありますが、少なくとも、これだけの点は予算について明らかにすべき点だと思いますので、大蔵大臣から御答弁を伺いたいと思います。
  58. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 お答えいたします。  昨年来の施策が効果を奏して経済がよくなってきたということは事実でございまして、これの反映が税収にもあらわれてまいりました。当初私どもは、食管会計の赤字をどう消すかということを非常に心配しておりましたが、千五百億円前後の税収が見込めるという事態になりましたために、八百十億円の補正をして本年度産米の問題を片づけるということができたというのも、経済がそういう好転してきた一つの証左であると考えます。  それから、もしこの補正予算が通らなかったらどういう支障があるかということですが、これは御承知のとおり、当初予算を作成した後に生じた事由によって財政需要が起こった、そのうちで特に緊急に措置しなければならぬというものの措置を講じたのが今回の補正予算でございますので、これはほとんど全部支障を来たすと見て間違いございません。ただ、一番緊急を要するのは、やはり災害の復旧でございますが、これだけは何とか予備費の支出で応急対処できるかもしれませんが、そのほかはことごとく支障を来たしまして、まず第一に、地方の公務員のベースアップは、やはり中央からの交付税交付金を当てにしておるのでございますし、この予算が通らなければ、中央、地方とも、公務員の給与支払いの財源手当というものは絶対にできない、まずこういう支障がございますし、農業共済再保険金の支払いもいま困っておりまして、今回の措置をとらないと、府県の連合会や末端の組合が支払い金に困るという事態に遭遇いたしますので、これも大きい支障を来たしております。また、石炭対策は、御承知のとおり、全体の対策は答申されており、政府も方針をきめておりますが、そのうち特に緊急だというものだけを、今回二十九億円計上したという次第でございますので、これがおくれることは、石炭対策が同時におくれて、いろいろな支障を来たすという、やはり緊急の問題でございます。それから食管会計は、いま申しましたように、これによって本年度中は消費者米価を上げなくて済むという措置をとったばかりでなくて、この金が入らないと、今度は政府が以後の米の買い上げの費用にも差しつかえるというところへ来ておりますので、これも大きい支障を来たします。また同時に、御承知のように、国鉄は、年末に支払いの金に困っておるという状況で、この補正予算が通らぬと、国鉄の工事の円滑な施行ができないという問題にも差し迫っておりますので、この補正予算は全部緊急必要なものであり、これが通らなかったら、国民生活にはたいへんな支障を来たすというふうに私は考えております。  それから最後の、特別会計のほうの補正をしなかった理由でございますが、これはいままでの慣例でございまして、この国会の承認をお願いする必要のあることは歳出権の追加である。ところが、特別会計のほうではいままで認められた歳出権の施肥内での歳出でございますので、その歳出権の追加がないというのですから、特にこれを直さなくてもこれでいいんだというのが、従来の慣例でございます。この収入を減らし、歳入を減らし、支出を減らすということをやっても、むろんかまいません。そうするのがほんとうかもしれませんが、従来から、歳出権の増額にならぬ範山内においては、これはいじらないでいいという慣習でございまして、少しも違法ではないと存じます。
  59. 正示啓次郎

    ○正示委員 お答えをいただく時間がありませんから、私、最後に――師走というのは苗から交通事故が多いと思います。いわんや、最近の交通戦争、私はそれに対して藤枝担当大臣に先ほど申し上げておいたんでございますが、総理にも――兵庫県が県民あげて総ぐるみでモニター制をやって、たいへん成績をあげておるということを聞いております。どうか、この一つのよい例を全国に及ぼしていただきますように、至急にお手配をいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  60. 福田一

    福田委員長 これにて正示君の質疑は終了いたしました。  次に三原朝雄君。
  61. 三原朝雄

    ○三原委員 私は、質問に先立ちまして、先輩議員諸氏の御発言のように、この不正常な国会審議に対してきわめて残念の意を表するものであります。  そこで、私は、自由民主党を代表いたしまして、石炭対策の問題なり災害対策について笠間をいたしたいと思いますが、与えられた時間がほとんどございません。そこで、内容をへし折りまして、残余のものは常任委員会質問をいたしたいと思う次第でございます。  まず、石炭問題について通産大臣にお伺いをいたしたいのでございますが、わが国の重要資源産業としてまいりました石炭鉱業が近時非常に危機に瀕してまいりましたことは、申し上げるまでもございません。これに対して、去る七月の二十五日に石炭鉱業審議会が答申を出し、翌月の二十六日には、閣議において、その答申の趣旨を尊重されて、政策の具体化をはかるという閣議決定がなされた次第であります。その後、すでに数カ月を経過いたしておりますが、政府におかれては、その具体化がどのように進捗されているか、大綱的な御説明を願いたいのでございます。
  62. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 石炭対策の問題についてお尋ねがありましたが、御説のとおり、本年の七月に石炭鉱業審議会の答申が出まして、八月の閣議でこれが決定いたしておるのでありまして、政府は、この閣議決定に従って石炭対策を順次行なうつもりであります。抜本策の中心となっておる肩がわり措置あるいは安定補給金等は、予算及び関係法案の提出を待って四十二年度から実施に移すつもりで、目下具体的な案について鋭意検討を重ねておるのであります。  坑道掘進に対する補助金制度の創設、閉山交付金制度の拡充強化、及び電源開発の石炭専焼火力二基の追加着工については、本年度中に実施することといたしまして、目下補正予算の中に計上して、また法案を本国会に提出いたしておるのであります。
  63. 三原朝雄

    ○三原委員 ただいま通産大臣の石炭対策に対する政府の取り組みに対します進捗状況の御報告がございましたが、なおまた、先ほどは大蔵大臣から、当面する本年度の補正予算にも二十九億の予算を計上いたしておるというような御説明があったわけでございまして、そうした石炭政策に対しまする政府の方針というようなものに対して、国民の一部には、いかにも石炭政策だけが手厚い処置を受けておるのではないかというような意見があるわけでございます。石炭産業の推進に政策的に取り組んでおります私どもといたしましては、そうした一部の意見をきわめて遺憾とするものであります。そこで、私は、この時点に立って、終戦以来石炭産業が歩いてまいりました経過等を見てまいり、しかも、国民の中にそうした声のあることを、この際国会を通じて払拭しなければならない。特に通産大臣から、そういう立場でお答えを願いたいと思うのでございますが、私自身、終戦後の石炭産業の歩いてまいりました足跡を見てまいりますると、終戦直後におきましては、ああした国の経済復興のためには最も重要な資源である、産業であるというところで、石炭が統制に移されて、二十四年まで事業の経営がなされてきたわけでございます。したがって、私企業としての実際の運営というようなものはほとんどなし得なかったのではないかという想像もつくわけでございます。なお、そうした石炭の山はふやせ、人は多く雇用してやれというような態勢であったわけでございまするが、それが二十四年になりますると、統制が撤廃されるというような状態の中に立って、多くの労務行をかかえながら、しかも経済性のきわめて低い山まで経営をしていかねばならぬというようなところから、みずから合理化の線をとり、体質の改善と取り組んでまいった事情は御承知のとおりでございます。その後、政府においては、三十年に合理化のための石炭合理化法を制定するというような時代がまいりました。その後、すぐ三十二年には、ああして神武損気というような態勢に備えて七千二百万トンの増産計画に取り組めというようなことで、また合理化もやらねばならぬ、そうした増産体制にもこたえねばならぬというような情勢に置かれておったのが石炭産業であります。そういうことから次々に全く石炭産業というのは政策に引き回されてやってきたというような感も抱くわけでございます。にもかかわりませず、重要資源産業としてこれにこたえてまいったということでございます。なお、その後におきましては、石炭の価格問題が出てまいるというようなことで、これは西欧の価格問題とは全く逆な態勢でございまするが、トン当たり千二百円の値引きをするというような価格政策に対応してまいらねばならぬというようなことでございます。そういうような経過をたどりながらも、しかし、わが国の戦後の経済復興に対しては相当な貢献をしてまいっておりまするし、また苦しい中にも合理化のための努力を絶えずしてまいった。今日におきましては、月に一人当たり約四十二、三トンから五トン程度、西欧の各国の生産状況と全く変わらない程度まで進んでおるというような現況であるわけでございまするが、こうした石炭産業の歩みというようなものをこの時点で顧みて、私どもといたしましては、そうした石炭産業にのみ政府が手厚い措置をするということに対しまして、何ゆえに政府が石炭産業というものをこれほど措置せなければならないかというような点について、この際、大臣からも国民に対してはっきりした御意見を拝聴いたしたいと思うのでございます。
  64. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 石炭産業に対する国民の認識についてのお尋ねがありましたから、その点についてお答えしたいと思います。  お説のとおり、石炭産業というものが日本の経済に対して重要な役割りを演じたということは、もう申すまでもないことでありまして、たとえば明治時代の日本の産業の発展は、幸い日本に石炭資源があったというおかげであのように明治時代に日本の産業は発展してきたと思うのであります。戦後、あの荒廃しました日本の産業を復興せしめた基本産業は、私はやはり石炭産業であったと思いまするし、政府もこれを傾斜生産方式のもとに、荒廃に瀕しました炭鉱を発掘いたしまして、そうして戦後の経済の復興の原動力といたしたのであります。  しかしながら、昭和三十年ころからあらわれてきましたエネルギー革命の世界的潮流によりまして、この石炭産業の重要性というものが順次減じてまいったのであります。しかし、なお日本にとりましては、この日本の経済の成長に対して、石炭産業の地位というものは私は高く評価さるべきものである、こう考えておるのであります。また今後、この石炭産業の位置づけにつきましては、総合エネルギー調査会及び石炭鉱業審議会の答申にもありますとおり、エネルギー供給の安定性と経済性、あるいは地域社会経済に対する影響等の国民経済的観点からして、少なくとも五千万トン程度の出炭は、これは確保しなければならぬ。これを確保しなければ、日本の経済の安定性あるいは成長を見ることはできないというように考えておりますので、今回政府がとっておる抜本策というものは、この五千万トンの石炭を確保する、あるいは、できればそれ以上に確保するという点からして、相当の補助金などを出したりいたしておるのであります。したがいまして、この政府がとっておる政策によって、いかに石炭産業というものが日本の産業の発展、維持のために必要であるかということを十二分にひとつ国民が認識してもらいたいと思うのであります。
  65. 三原朝雄

    ○三原委員 国民の立場からいまの大臣の御説明を拝聴いたしてみる場合に、必ずしも十分な納得がいけるかどうかという点については多少の問題もあろうと思いまするけれども、いずれにいたしましても、きわめて重要な経済発展のための重要資源であって、それを保護育成してまいらなければならない立場というものは明確でございまするし、まあ、そういう立場から石炭政策に対しまするあの答申を中心にして考えてまいりますると、まず石炭鉱業の経営の安定ということが最も大事なことでございます。  その点について考えられまするのは、企業の安定のためには、まず今日まで石炭鉱業が持っておる累積赤字を解消してやるということが第一点だろうと思います。なおまた、将来予想されてまいりまするところの賃金の上昇でございまするとか、あるいは物価の値上がりでございまするとか、あるいは公共料金の値上がりの問題、あるいは今度新設しようといたしまする年金制の問題等々によりまする負担増にこたえていくというような立場から、経理の改善がなされなければならないわけでございます。ところが、実際石炭産業の現状というのは、採掘の条件も悪化をしてまいるような日本の鉱山の状態でございまするし、労働事情も必ずしも楽観を許されないというような事情もあるわけでございます。こうして見てまいりますれば、生産向上という点から見ましても、限界に到達しておるのではないかというような気もいたすわけでございます。したがって、そういう立場で今後石炭企業の安定を考えてまいるということになりますれば、どうしても先ほど大臣が申されましたように、安定補給金の問題でございまするとか、坑道掘進の補助の問題でございまするとか、そうした保安施設に対しまする助成の問題でございまするとか、そういうものを具体的に手厚く国が注意をしながらめんどうを見る、助成をするということが大切だと思うわけでございます。そういう点について、通産大臣というよりも大蔵大臣の石炭鉱業の将来に対しまする財政措置を中心にしての御意見を承りたいと思うものでございます。
  66. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 石炭の長期対策として、もうすでに審議会の答申が出ており、これに基づいて政府は対策をもう閣議で決定しておるのでございますから、その線に沿って、来年度、石炭業界の債務の肩がわりの問題、安定補給金の問題、その一連の措置についていま通産省から要望された事項について、私どもは両省で検討中でございまして、いずれこの財政措置は十分つけるつもりでございます。
  67. 三原朝雄

    ○三原委員 いま大蔵大臣から、石炭政策については閣議決定の線もあるので、十分手厚い配慮を予算的にはする、財政措置について援助をするという明確な御答弁があったわけでございまするが、それに信頼を置きまして、次には、石炭の価格の問題で御意見を承りたいと思うのでございます。  大体価格問題とかあるいは生産規模の問題というようなものは、固定化してかかること自体問題があるわけでございます。特に石炭の場合におきましては、エネルギー市場においては安い重油の比率が著しく高まってまいることでございまするので、そうした情勢の中で考えてまいらねばならぬわけでございまするが、今後石炭の価格の問題については、そうした情勢の変化いかんによって弾力的にひとつ配慮をする必要があると思うのでございます。通産大臣なり大蔵大臣の御所見を拝聴いたしたいと思います。
  68. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 御承知のとおり、石炭の価格は他の燃料資源の価格によって非常に左右されるのでありまして、石炭価格は、他の石油価格などに比べて割り高であれば、したがって石炭が売れないということになります。現在においても、すでに他の石油などに比べて割り高になっておりますから、したがって石炭が売れないというので、何とかして石炭を売りたい、購入せしめたいということから、御承知のとおり、電力あるいは鉄鋼などではその差額を政府が補助して、そうして石炭を使わしておるというような対策をとっておるのであります。したがいまして、石炭の価格をこれ以上上げるということは困難かと思いますが、これは今後の経済の推移によって慎重に考慮すべき問題だと、こう考えております。
  69. 三原朝雄

    ○三原委員 次に、大蔵大臣お尋ねをいたしたいと思いまするが、今度実施されんとする石炭対策の特別会計についてでございます。その収入と支出の目途はついておるのかどうか。なお肩がわり措置等で画期的な対策が実施されたわけでございまするが、相当規模の予算が必要と思うわけでございます。そうした点から見まして、財源の見通しについて、ごく簡単に御説明を願いたいと思います。  なおまた、これは私の私見になると思いまするけれども、特別会計の予算項目の中に、離職者対策費、それから産炭地振興費等が考えられておるようでございますが、それ自体を石炭対策費と考えることが適当かどうかというような問題にもなろうと思います。この点について、できれば効率的な予算の運用という面からも、ひとつこの離職者対策なり産炭地振興という費目はワクの外に出することが適当ではないかと思うのでございますが、この点についての御意見を承りたいと思います。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 特別会計の財源については、十分見通しをつけております。すでにいままで石炭対策の財源となっておった、財源と思われておったものを特定の財源にするということでございますので、財源関係は大体目鼻がついております。ただ、石炭が重要であるために特にこの特別会計をつくって、一般会計と区別して石炭対策を措置しようという趣旨でつくる特別会計でございますので、この特別会計の中からいろいろな石炭に関する対策費を無条件に一般会計の中へ出してしまうことがいいかどうかということにはいろいろ問題がございますので、私どものほうでは、この点は十分研究したいと思っております。
  71. 三原朝雄

    ○三原委員 時間がございませんので、もう一点、保安問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  石炭についての災害を除去したいというのはお互いの念願でございますが、にもかかわりませず、次々に災害が発生をいたしておるわけでございます。特に近ごろの災害の状況を見てまいりますると、どうも優秀ビルド鉱とされておる大規模の優良炭鉱に多いということでございます。何か、保安管理上、本質的に問題があるような感がいたしまするが、この点について御意見を承りたいと思うのでございます。  なおまた、こまかいことになるようでございまするが、そうした災害を除去するためには、保安施設を十分やらねばならぬわけでございます。もう、常にそういうことが叫ばれておるのでございまするが、先進ボーリングの必要性とか、あるいは後退式採炭法の全面採用とか、自動ガス警報器を設備するとか、あるいは自己救命器の個人携帯の義務づけをするとかいうような諸種の問題があるわけでございます。こういう点につきましては、よほどな費用が要るわけでございまして、先ほど申し上げましたように、経営きわめて不安定な現時点における石炭産業にこれを一切ゆだねることも至難な状態でございまするし、この点については格段の国の助成というようなものが考えらるべきときであると思うのでございまするが、通産大臣の御意見を拝聴いたしたいと思います。
  72. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 炭鉱の保安の件についてお尋ねでありましたが、今日までいろいろ災害が生じておるのでありまして、それについてはやはり保安官の数を増し、保安官の質をよくするということが必要だと思うのでありまして、保安センターを設けて、そして優秀な保安官吏を養成したいということで、これは来年度にひとつ予算を要求したいと考えております。  なお、災害のいろいろの問題につきましては、できるだけひとつ設備をよくして、そして災害の起こらないように今後注意したいと考えております。
  73. 三原朝雄

    ○三原委員 石炭問題は種々問題が多いわけでございまするが、この程度にいたしまして、次に災害の対策について質問をいたしたいと思います。  昭和四十一年災害は大体千六百二十億円というように踏まれておるわけでございまするが、これに対する国庫負担も相当多額にのぼると思うのでございます。今次の補正額なりあるいは予備費の使用等で十分間に合えるかどうかという点が一点。  それから予備費を百七十億円削減をしておるようでございまするが、これで差しつかえないのかどうかというような点、なお、起こってはならないと思いまするが、残っておりまする第四・四半期にもし災害が起こった場合には、これの財源措置等は十分考えられておるかどうか。以上の問題。  次にお尋ねをいたしたいのは、災害の復旧につきましては、巨額の経費を投ずるよりも、事前に災害予防措置をすることが大切だと思うのでございます。この点は申し上げるまでもないわけでございます。これに対する予算措置、たとえば荒廃林地の復旧でございますとか、保安林の確保でございますとか、その他治山治水の予算等を来年度は十分考える必要があると思うのでございます。なおまた最近、都市スプロール、宅地開発ブーム等によりまして、従来見なかった災害が次々に起こっておるわけでございます。いわば人災とも称せられるものでございますが、こういう点に対しましては、特に予防措置考えねばならぬと思うのでございます。こういう点についての所見を承りたいと思うのでございます。
  74. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまおっしゃられましたように、本年度の被害額は約千六百三十億円、これに対する復旧の国費所要額は三百六十二億円が見込まれておりますが、予備費の使用で二百九十四億円、その不足の六十八億円を今度の補正予算で補正することになりますので、そうすれば全部災害の復旧は間に合うという見込みでございます。  予備費を百七十億円減額して差しつかえないかということでございましたが、すでにもう調査が済んで、査定ができて、予備費で措置したものが現在まで二百四十四億円、もう対策の金は大かた出しておりますし、百七十億円を減額いたしましても、まだ相当の予備費の残を持っておりますので、この点は全然差しつかえないと思います。  それからもし第四・四半期に災害が起こったらどうかというのですが、通常は、これは翌年度の予算で対処するということになっております。しかし査定が早く済んで緊急を特に要するというような災害に対しては、これは一応予備費で対処するよりほかないと思いますが、それらの余裕も若干現在は用意ができておりますので、その心配はないと思います。  それから、災害の予防的な措置、その他に対する来年度の予算につきましてのいろいろな御要望は承知いたします。十分気をつけたいと思います。
  75. 三原朝雄

    ○三原委員 委員長の要請に協力いたしまして、これで終わります。
  76. 福田一

    福田委員長 これにて三原君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十一年度補正予算三案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  77. 福田一

    福田委員長 引き続きこれより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。仮谷忠男君。
  78. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十一年度一般会計補正予算第一号外二案に対し、賛成の討論を行ないたいと思います。  御承知のとおり、本国会開会の主要な目的は、災害の復旧、公務員給与の改善措置、生産者米価の引き上げ等に伴う補正予算審議し、すみやかにこれを可決成立せしめ、国民諸君の期待にこたえんとするものでありまして、野党諸君もかねてより臨時国会の開会と補正予算の提出を強く要望をいたしていたところであります。しかるに、本国会同頭より、野党各派はいたずらに衆議院の早期解散を主張し、わが党の再三再四にわたっての審議協力の要請にもかかわらずこれを拒否し、予算の成立をはばまんとしてまいりましたことは、国民国会への信頼をますます喪失せしめるのみか、国政の最重要案件審議する予算委員会の権威をも著しく失墜せしめるものであり、まことに遺憾にたえないところであります。  さて、本三案は、さきに大蔵大臣より説明がありましたように、補正の主たる要因は、公務員給与の改善、災害の復旧、生産者米価の引き上げに伴う食糧管理特別会計への繰り入れ、その他、稲作改善対策、石炭対策等に伴う所要経費の追加等、一般会計外七つの特別会計と、政府関係のうち国鉄について減収補てん等のための補正を行なうこととしておるのであります。  私は、以下二、三の点について簡単に所見を申し述べて、賛意を表明いたしたいと存じます。  第一は、公務員給与についてであります。給与の改善については昨年度も行なったのでありますが、その後、民間給与の上昇に伴い、政府は過般の人事院勧告を尊重して今年九月よりこれを実施することといたしたのであります。  改定の内容では、中卒、高卒等の初任給の引き上げ、また下位等級の引き上げ率の優遇、中だるみの是正、さらに医師については大幅な改善措置を講じたことは、まことに時宜を得た措置考えるのであります。この際、公務員諸君綱紀の厳正と職務能率の一そうの向上を国民とともに期待してやまないものであります。  第二は、食糧管理特別会計への繰り入れ八百十億円であります。四十一年産国内米の政府買い入れ価格が引き上げられたこと等によって、同会計の食糧管理勘定の損失額の増加分を補てんするためのものでありますが、生産者米価は、ここ数年来、毎年改定せられ、三十五年以来七三%の引き上げが行なわれております。他方、消費者米価一は、同期間中三回の改定を見て、三九%の値上げにとどまっており、このため生産者米価と消費者米価との間に百五十キロ当たり千三百二十九円という大きな逆ざやの現象を呈しておるのであります。しかしながら、政府においては、消費者物価の抑制に最善を尽くす方針を堅持し、この際、消費者米価の値上げを行なわないで、あえて巨額の繰り入れを行ない、物価安定の実をあげようとする決意に対し最大の敬意を払うとともに、国民諸君政府の意のあるところを十分に理解し、物価の安定に一そうの協力をいたされるよう切に望むものであります。  第三は、災害復旧費の追加百五億円であります。さきに発生した融雪被害をはじめ、数次にわたる台風、夏季の集中豪雨等により、公共土木施設の被害報告額のみでも一千六百二十億円に達しており、これらの災害に対し、政府においてはそのつど予備費をもって措置し、すでに二百四十四億円を支出しておりますが、なお不足分等を計上して復旧に万全を期そうとしておるのであります。  また、農業共済再保険特別会計への繰り入れ六十五億円は、今春の異常気象による農作物の減収、特に北海道においては一昨年に続く冷害に見舞われ、被害額六百余億円に達し、これら被害に伴う再保険金支払い財源の追加であり、被災者の救済に最善を期しておられることは、まことに適切な措置と信ずるのであります。  このほか沖繩災害援助費、稲作改善対策費、石炭対策費、商工中金への出資等、いずれも時宜に適した措置であり、また生活保護費、国民健康保険助成費等、義務的経費の不足補てん等も当然の補正として賛意を表明するものであります。  以上のごとく、今回の補正要因は、当面緊急と認められるもののみで、その経費は一千九百九十二億円の巨額に達しております。  このような巨額の追加経費をまかない得たものは、既定経費及び予備費において三百六十四億円の節減を行なってはおりますが、その大部分すなわち一千四百六十億円は税の自然増収によるものでありまして、このことは政府が昨年以来とってきた財政経済政策の成果であることは申すまでもなく、この際あらためて政府の施策に敬意を表する次第であります。  最後に、このような重要な補正予算が、かりに野党審議拒否により不成立となりましたならば、家を失い、あまつさえ収入の道を閉ざされ、寒さにふるえる被災者の救済もできず、また農家の米の買い入れにも支障を来たし、国民生活に重大な影響を与えることは火を見るよりも明らかな事実であります。  私は、この際、審議を放棄してあえて顧みない野党諸君に一大猛省を促して、討論を終わることにいたします。(拍手)
  79. 福田一

    福田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  昭和四十一年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十一年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  80. 福田一

    福田委員長 起立総員。よって、昭和四十一年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  なお、おはかりいたします。委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 福田一

    福田委員長 御異議なしと慰めます。よって、さよう決定いたしました。   〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  82. 福田一

    福田委員長 この際、閉会中審査に関する件につきましておはかりいたします。  予算の実施状況に関する件につきまして閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十二分散会