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1966-07-20 第52回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月二十日(水曜日)    午前十時四十八分開会     —————————————    委員異動  七月十六日     辞任         補欠選任      小平 芳平君     黒柳  明君  七月十八日     辞任         補欠選任      北村  暢君     中村 波男君      黒柳  明君     小平 芳平君  七月十九日     辞任         補欠選任      中村 波男君     渡辺 勘吉君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石原幹市郎君     理 事                 小沢久太郎君                 大谷藤之助君                 白井  勇君                 西田 信一君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 赤間 文三君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 梶原 茂嘉君                 北畠 教真君                 小山邦太郎君                 古池 信三君                 西郷吉之助君                 櫻井 志郎君                 杉原 荒太君                 日高 広為君                 平島 敏夫君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 松野 孝一君                 柳田桃太郎君                 吉武 恵市君                 稲葉 誠一君                 木村禧八郎君                 佐多 忠隆君                 鈴木  強君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 林  虎雄君                 藤田藤太郎君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 渡辺 勘吉君                 小平 芳平君                 多田 省吾君                 宮崎 正義君                 瓜生  清君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        農 林 大 臣  坂田 英一君        労 働 大 臣  小平 久雄君        建 設 大 臣  瀬戸山三男君        自 治 大 臣  永山 忠則君        国 務 大 臣 橋本登美三郎君        国 務 大 臣  福田 篤泰君        国 務 大 臣  藤山愛一郎君        国 務 大 臣  松野 頼三君    政府委員        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        防衛庁長官官房        長        海原  治君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        法務政務次官   山本 利壽君        法務省刑事局長  津田  實君        法傷者入国管理        局長       八木 正男君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局長  谷村  裕君        大蔵省国際金融        局長       鈴木 秀雄君        文部省初等中等        教育局長     齋藤  正君        農林政務次官   後藤 義隆君        農林大臣官房長  大口 駿一君        農林省農林経済        局長       森本  修君        農林省農政局長  和田 正明君        食糧庁長官    武田 誠三君        通商産業省通商        局長       山崎 隆造君        建設省河川局長  古賀雷四郎君        自治省行政局長  長野 士郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○予算執行状況に関する調査     —————————————
  2. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  十八日、北村暢君が辞任され、その補欠として中村波男君が選任され、昨日、中村波男君が辞任され、その補欠として渡辺勘吉君が選任されました。     —————————————
  3. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 予算執行状況に関する調査を議題といたします。  本調査に関しまして、先般、委員長及び理事打合会を開き、その運営につきまして協議を行ないましたので、その要旨について御報告いたします。  本日及び明日の二日間にわたり調査を進めることといたしまして、質疑の総時間は二百六十分とし、各党派への割り当ては、自由民主党及び社会党はそれぞれ百分、公明党三十分、民主社会党共産党及び第二院クラブはそれぞれ十分といたしました。  質疑順位は、社会党自由民主党社会党自由民主党社会党自由民主党公明党社会党自由民主党民主社会党共産党、第二院クラブの順といたしました。  以上御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑を行ないます。亀田得治君。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 私は、北朝鮮の技術者の問題並びにベトナムの問題について質問をいたしたいわけでありますが、その前に、同僚のことで、たいへん申しにくいわけでもあるわけですが、今朝の新聞によりますと、昨日、検察審査会で、小林章君を起許すべきだと、こういう決定をされたことが明らかになりました。この決定は、まさしく世論にこたえた決定であろうかと思います。これに対して、政府はどのような態度をとろうとするのか、明らかにいたしてほしいと思います。
  6. 石原幹市郎

  7. 亀田得治

    亀田得治君 総理からひとつ……。根本問題ですから。技術的なことじゃないんですから、法務大臣の技術的な扱いじゃない。
  8. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) この問題につきまして、法務大臣としてお答えいたします。  いまお話しのとおりのことを承知いたしておるのでございますが、はたしてこれを公訴にすべきかどうかということは、検察庁におきまして慎重にこれを取り上げまして、審査いたしまして、これに善処することにいたしておる次第でございます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 総理の考えはどうなんです。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 亀田君にただいま法務大臣からお答えしたように、検察審査会のあり方、これはもう御承知のことだろうと思いますので、私に対するお尋ねは、そういうことでなしに、小林章君の身分は一体どうなるのか、あるいは今後どういう措置をとるのかと、こういうお尋ねだろうと私は思うのであります。  私は、きれいな、清潔な政治というものを目標にして今日までもつとめてまいりました。今後ともつとめるつもりでございます。また、そういう意味で、党員諸君疑惑を受けるようなことのないように、また明朗な、明るい正しい政治をするように、心から願っておるものでございます。  そこで、小林章君の関係する選挙違反、こういうようなことで小林章君が離党いたしました。そうして、しばらく様子を見ていたんでありますが、過般、自由民主党は、この復党を認めた。そうして、復党を認めたことにつきましても、その時期が早いではないか、あるいは復党を認めるべきではない等々の御批判があったと思います。しかして、今回、また検察審査会において、当時検審当局のとりました態度について、これは不適当なりと、かような判断を下す議決が出たのでありまして、ただいま法務大臣がお答えいたしましたように、今後検察当局がいかにこれを処置するか、かような点をみずから決定いたします。こういうことであります。同時にまた、この問題をめぐりまして、小林君の発言も記事になっておりました。えりを正してその決定を待つと、こういうことを言っておるようであります。私は、たいへん残念な事柄が起きたと、かように思っております。復党を認めたその直後におきまして、そのような結果になったこと、まことに残念なことと、かように私は思っております。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 もう一回だけお聞きしておきますが、検察審査会検察庁関係、これは私よく存じております。検察庁がこれを受けてどう処置するかということについて、単に検察庁にまかすんじゃなしに、世論というものを十分尊重して、そうして扱うべきだと私は考える。そういう点について、私は、直接には法務大臣、さらに総理大臣も考え方を指示すべきではないかというふうに思うわけなんです。その点は、どうでしょう。お二人……。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、検察当局に対しまして、行政府として指示したり、関与することは不適当だと、かように思っております。ただ、こううい事柄が、検察当局自己判断決定する上におきまして、どういうような影響を持つか、これは検察当局自身が十分考えるだろうと、かように私は思っております。したがいまして、私のほうでは指示しない、かように御了承いただきます。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 いいことは指示しなきゃだめですよ。法務大臣の答え、どうですか。悪いときに指揮権を発動するからいかぬので、いいことは大いにやったらいい。世論が要求しておるじゃないですか。
  14. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これは検察庁の問題でございますから、検事正がこのすべての事案を再検討いたしまして、そして検事正の良識に従いまして、正しいと思う判断をして、それに従って決定をするものだと思っております。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 検察庁まかせじゃだめですよ。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 関連
  17. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) いいですか、関連
  18. 亀田得治

    亀田得治君 いいですよ。
  19. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 鈴木君。
  20. 鈴木強

    鈴木強君 ただいま総理法務大臣からお答えをいただきましたが、どうもその点が、総理のおっしゃる政治姿勢との問題に関連して考えてみましても、非常にわれわれにとっては消極的に聞こえますし、それから、言われていることと、実際におやりになっていることとの間に、かなりのギヤツプを感ずるわけであります。そこで、私はさらにお伺いしたいのでありますが、検察当局がもちろん慎重に取り調べを行なった上で一部を起訴猶予し、一部を起訴処分にした、これに対して、国民世論が、おかしいじゃないかということからして、職権によって検察審査会がこれを取り上げたという経緯になっておりますが、その幾つかの理由をあげております。そのうちに、最後にこういうふうに述べております。「小林議員が周囲からの要請を断りきれずに立候補、当選したにしても、公社の意向をくんで行なった行為本人の目的にも通じる。同議員公社最高幹部の一人として、この違反事件の直接の行為者であり、中心人物でもあり、当然その責任を負うべきである。「同僚や部下の違反行為はまったく関知しないことだ」というが、その責任をまぬがれることはできない。これらの点から公務員の地位利用禁止規定の厳正な適用が望ましい。」——こういうふうになっているわけでありまして、私は、この検察審査会というものが設置をされ、裁判の公正をさらに期すということからするならば、政治家としても、また検察当局としても、大いに耳を傾くべきものだと思うのであります。ところが、従来、造船疑獄その他の場合を考えましても、なかなか議決されたことに対して、その決定に従ってくれない、こういつた不満があるわけです。最近二、三の例は……。
  21. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 関連質問は簡明に願います。
  22. 鈴木強

    鈴木強君 議決に対して沿うような措置もとられておりますが、そういうわけで、私は、総理が実際にやりませんと、こうおっしゃるのだが、確かに法的に、圧力を加えるとかどうとかということは問題があると思います。しかし、政治家として、この問題が正しく世論に合っているとするならば、そういう方向で問題の処理をするという姿勢をとることが大事じゃないでしょうか。  もう一つ聞きたいのですがね。一体総理は、岡村文四郎君の場合でもそうですね。まだこれは裁判が決着していないと思うのですよ。相当な責任者が逃亡しているというふうにも聞いている。それから小林章君の場合でも、一応検察当局結論は出ましたが、しかし、検察審査会というものがこの問題を取り上げているということも事実であるはずです。ですから、そういうことが片方において国民世論としてやられておるにかかわらず、復党を認めるなんてことは不見識もはなはだしいと思うのです。ですから、そういう点が、あなたの政治姿勢との関連で、われわれ国民から見て割り切れない点がある。もう少し、そういう客観情勢を考えた上で、見通しを立てて、起訴をすることが必要であればおやりになったらいいと思う。まだ問題が進行中であるというところに、総理のいわれるところが違うわけですね。そういう点について、国民がなるほどというような総理の御所見を伺いたいのです。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私、先ほどお答えしたとおりに考えております。検察審査会、これが結論を出した、こういうことからも、検察当局としまして十分考えて資料にして、そうして自己反省の問題ともし、そうして決定するものだと、かように思っております。私自身——総理あるいは政府自身がこれについての指示をしろ、こうなりますと、これは困りやしませんかと……。ことに皆さん方の、こういう場合には指示しろ、ぼくらの賛成しないようなことは指示するな、こう言ってくると、どうも皆さん方のほうが検察当局について……。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 ぼくじゃない、世論ですよ。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一番の最高のものだということになりましょうが、そういうことはいかがかと思う。ただいま、せっかく、検察当局の、独自といいますか、独立性、それを尊重して、また裁判独立性、これを尊重さるべきだ、こういうことが法のたてまえとして世論も支持するところでありますので、これはもう検察当局自身、ただいまの審査会結論意見を尊重する、そうして処理する、かように私は思っております。(「関連関連」と呼ぶ者あり)
  26. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) なるべく御本人で、もう少し質疑を進めていただきたいと思いますが……よろしいか。
  27. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行について発言します。私は、前のことはわかりました、総理のおっしゃることは。しかし、あとのもう一つの、岡村君にしても小林君にしても、検察審査会が開かれ、あるいはまだ当該の事件の問題についての決着がついておらないのに、離党を形式的にやられて、今度もまた、その問題があるのにかかわらず、復党を認めるということは、どうもあなたの政治姿勢からいって納得できない。ですから、それを国民が納得するように説明をしてください、こう私は聞いているわけですから、そのことを答えてください。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、前のほうの法律的な問題だけだ、かように思っておりましたが、私のほうで、離党した、その後復党さした、それについてただいま非難される御意見のようでございます。その御意見は私も拝聴しておきます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 関連
  30. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) じゃこれで、簡単に……。稲葉君。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 関連ですから要点だけにします。  総理にお伺いしたいのは、小林氏をいまの段階で復党させたということについて、国民の間から相当大きな非難があるわけですね、あなた方に対して。そのことについて、総理はどういうふうに、国民非難というか、それを受け取っておられるか、これが一つ。いいですか。  もう一つは、検察審査会でこういう起訴をすべきだという結論を出したんですけれども、この検察審査会結論というのは、一つの大きな世論を代表しておる、こういうふうにあなたはお受け取りになるのかどうか、この点を総理に対してお聞きしたい。この二つですね。  それから法務大臣にお聞きをしたいのですが、小林氏の選挙違反事件関連しての取り調べ状況というのは一体どういう状況であったのか。何回ぐらい調べて、どういうふうなことを聞いたのか。これは、捜査のこまかい秘密のことは私聞きませんけれども、どういうように調べたのか。なぜ、逮捕勾留まで請求するようなかっこうでやろうという態度検察当局はとらなかったのか。一般の人がこの程度のことをやれば、どんどん逮捕され、勾留されてやっているわけですから、そうすれば事実が明らかになってくるのを、なぜそういうふうなことをやらなかったのか。そういうことは、結局、事実をあいまいな形にして、伏せておこう、結論的には不起訴にしようという根本的な判断のもとに、こういうことが行なわれたとしか考えられないし、国民疑惑を持つわけですから、その間の関係ですね、なぜそこまで踏み切ってやらなかったのか、この点について明らかにしていただきたい。関連ですから、これだけにします。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず、検察審査会のほうについて申し上げます。これはちゃんと法律で認め、また、この種の制度が必要だということで、権威ある機関である、機関と申しますか、審査会である——これは、私ども承知しておりますし、関係者ももちろん全部承知しておる。検察当局自身も、その権威を認めない、こういうものじゃない。これはよくわかっておると思います。したがいまして、そういう立場に立って、ものごと決定されるわけであります。しかし、検察審査会自身起訴するとか、あるいは起訴しない、こういうような行政処分をするわけではございません。したがいまして、それはどこまでも検察当局がするということ、このたてまえははっきりいたしておりますから、そういう場合、検察当局がこういうものをどういうような資料として考えるか、こういうことが先ほど来議論になっております。私は、権威ある資料として十分検察当局は考えていくだろう、かように思っております。  それから第一のお尋ねでございますが、小林章君が離党した、それを復党さした、こういうことにつきましていろいうの御批判がございます。これは党の問題でございます。しかし、大きくすれば、確かに政治上の姿勢の問題でもある、かように私は考えます。同時に、私どもに対しましては、この復党、もう相当の長期にわたっての反省だから、この際復党しろ、こういうような指示もございました。また、党自身として十分党員のめんどうを見るのが当然じゃないか、こういうような意見もございました。また、社会党皆さんのように、一部からは、罪をどこまでも追及すべきだ、こういうような議論がございます。どうも復党が早かったのじゃないか、こういうような話がございます。私は、先ほど鈴木君にもお答えしたのでありますが、そういうような御意見がいろいろある。それをつつしんで拝聴いたします。かように私は申し上げておるのでありまして、今後の私の政治姿勢の尊い貴重な資料にするつもりでございますから、御了承願います。
  33. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 小林議員取り調べ状況につきましては、詳細は刑事局長からお答え申し上げます。
  34. 津田實

    政府委員津田實君) ただいまお尋ねの点でございますが、小林議員検察庁が直接取り調べたことは、もちろん数回ございます。  なお、逮捕勾留の問題でございますが、それは、御承知のとおり、逮捕勾留には、その必要性と、その理由が必要でありまして、その必要性及び理由に照らして、逮捕勾留をしなかったということになるわけでございます。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、このくらいにしておきます。  次に、本論に入る前に、新潟県の今回の水害の現状並びに対策を、建設、農林の両大臣から説明を願いたい。
  36. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 去る七月十五日の夕方から十八日にかけまして、特に新潟県、山形県、それから秋田県、福島県下にも及んでおりますが、この四県を中心として集中豪雨がありました。御承知のような、相当な広範囲にわたる被害がございました。私ども責任者の一人として非常に残念に思っております。なお、被災者に対しては非常にお気の毒に思って、いま対策全力をあげておる、こういう状況でございます。  そのあらましを申し上げますと、今度の集中豪雨は、従来にあまり例のなかった、きわめて連続雨量が大量でありまして、場所によって違いますが、五百ミリあるいは六百ミリという、約二日半の連続雨量がございました。そのために、特に新潟県下のうちでは信濃川以北、この点に集中的に大量の雨がありまして、加治川その他いわゆる中小河川中心として大はんらんを起こした、こういう状況でございます。公共土木関係災害の現在における報告状況を御説明いたしますと、数本にわたまりす直轄河川、これが三億三千万余円の災害報告がございました。なお、道路に関しては、直轄関係で一千万円ぐらいの災害報告がございます。一番大きなのは、いま申し上げましたように中小河川等のいわゆる補助河川あるいは補助道路、いわゆる補助災害が一番多くございまして、これが現在、約四十六億円ということになっております。この関係合計被害額は現在で四十九億円、累計被害額は約四百十四億円、こういうことになっておるわけであります。それで一番問題になりましたのは、新発田市の北部を流れております加治川でございます。これは中小河川として現在まで工事を進めておりますけれども、これが計画洪水量予定雨水量を二百ミリという計画で進めておりますが、この間に、今度の場合は五百ミリ以上の雨が集中しておる、このために約十一カ所の破堤個所を生じ、四百メーター以上の破堤個所もできておる、これで新発田市を中心とする市街地あるいは一万ヘクタール以上の耕地等はんらんをしておる、こういう状況でございまして、現在なおまだ、減水をしない個所が残っておる。政府といたしましては——建設省といたしましては、さっそく十八日に係官を派遣して、現地状況を調べておりますが、本日、災害本部から各省係官を編成いたしまして現地調査に派遣いたしておる、こういう状況でございます。  応急対策といたしましては、できるだけ早く破堤個所を締め切る、こういうことで全力を尽くしておりますが、なかなか雨量が多いのでありまして、自衛隊、水防団消防団あるいは警察の御協力を求めまして、今日まで十五万俵余の土のうを作成して今朝七時から締め切りにかかっております。相当の水量がありますので、しかも破堤個所が四百メーター以上にのぼっておりますので、なかなか難工事でありますが、おそくとも二十四日までに締め切りを完了いたしたい、こういうことで、いま対策を立てておるわけであります。恒久対策につきましては、簡単に申し上げますが、現在、加治川について中小河川工事計画でやっておりますが、今度のような雨量を見ますると、やはり根本的に上流地域においてダム等を設定して、治水対策を再検討すべきである、こういうことを指示して、さっそく検討に看手したい、これが現状でございます。すみやかに応急対策を講じ、災害復旧につとめたい、かように考えておる次第でございます。なお、申し上げておきますが、相当広範囲にわたるはんらんでございますが、不幸中の幸いと申しますか、人的被害が非常に少なかったということでやや愁眉を開いておる、こういう状況であります。
  37. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 東北地帯の、新潟をはじめ、水害の状況につきましては、大かたのことを建設大臣からお話がありましたが、私、農業関係について、特に申し上げておきたいと思うわけでございます。  今度襲いました豪雨によりまして、中小河川の水位が大幅に増高いたしましたために、やはり加治川、胎内川、荒川等の堤防が随所に決壊することとなり、わが国随一の米どころでありまする蒲原平野、それから庄内平野等について、ちょうど幼穂の形成期にもあたっておりますので、水稲を中心にかなり甚大な被害を与えることになったと存じます。現在までに関係県から報告のありました農林関係被害額は、これは報告によりますと、総額において約五十三億円でありますが、とりわけ新潟県におきましては水陸稲約二十四億円、農地、農業用施設約二十億円、その他約三億円、合計約四十七億円くらいの被害報告がなされておる次第でございます。  農林省といたしましては、十八日に北陸農政局の災害復旧課長をとりあえず新潟県の被災現地に派遣いたし、引き続き十九日には、北陸農政局次長外六名の調査班を派遣いたしまして、被災の現況調査及び今後の対策指導に当たらしめておりまするが、なお本日、本省からも派遣をすることにいたしております。  なお、この被災住民に対する応急食糧のこともございまするので、現在玄米一・二トン、それから乾パン二千五百食を配給いたしましたが、増加配給の準備もいたしておる次第でございます。農作物等の被害対策につきましては、でき得る限り早急に調査を取りまとめることとしておりまするので、その結果を待って天災融資法の発動等について検討いたしてまいりたい。また、農地、農業用施設等の復旧につきましては、地元の復旧計画ができ次第、早急に査定を実施したい。なおさらに、緊急復旧を要するものにつきましては、査定前の着工を認める必要がありますので、査定前着工を認めるなど、今後の営農に支障を来たさないよう、万全の措置をいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 時間がありませんので、この程度にしたいと思いますが、ともかく関係大臣において、できるだけひとつ親切な手を打ってもらいたい。要望いたしておきます。  総理に一点だけ、この点でお伺いいたしますが、いつも災害が起こったあと、ああすればよかった、こうすればよかった、こういうことが出てくる。今回でも、大体二百ミリまでと考えていたところが五百ミリ降った、こういうことを言いわけなさるわけですが、この中小河川の問題について根本的に考え直すべき問題があるのじゃないかというふうに思うわけですが、その基本的なことにつきまして、総理の考え方を聞いておきたい。
  39. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、大体、大河川がある程度片づきまして、そうして問題はどうも中小河川にあるようだ、最近の災害状況からみまして、さようにとれるのであります。また、あまりいいことばではありませんが、台風常襲地帯——絶えず台風が来るところ、こういうような地域として、九州や四国、あるいは中国地方等が指摘されましたが、しかし狭小な国土で、至るところに災害が起きるんだと、今回の集中豪雨などは、いままであまりなかったところ——新潟や山形、秋田、福島、こういうようなところも問題がある。かように考えますので、これはいまの大河川はもちろんのこと必要でありますが、中小河川につきましても、また地域的に各地につきましても、まんべんなく災害対策を立てるべきだ、国土保全の方策を立てるべきだと、かように思うのであります。ただ、いかようにも——ただいま、さような点を考えましても、なかなか財力、予算的に一々措置ができない、これが現状でございます。御指摘のありましたように、さらにくふうもし、そうして、さらに充実した対策ができるように、一そう努力すべきだと、かように思います。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 朝鮮問題に移ります。  総理は、北朝鮮の技術者三名の入国問題に関して、最近、韓国の丁総理に親書を送りまして、その中で今度の決定は前例としない、こういう意味のことを書いておるようでありまするが、真相を明らかにしてほしい。親書の中身ですよ。
  41. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、私が親書を丁総理に出した、それについてのお尋ねでございますが、ただいま文言等を全部記憶しておりません。まあ大体、なぜこういうものを出したか、かような点から申し上げておけば問額はないかと思います。  御承知のように、北鮮の技術者の入国、貿易に関しての入国、この問題は非常に長い懸案事項であります。私どもが知り得て、もうこれは三年越し、あるいはそれ以前からの問題ではないかと思います。そういう非常に長い問題、経緯のある問題であります。したがいまして、これの扱い方につきましては、いろいろ考えがあるようであります。そういう点で事前にも、いろいろわが国独自で決定すべき事柄だと、かように思いますが、しかし日韓交渉もできて正常化された今日、やはりその正常化を進めていきたいということで、機会あるごとに、当方の意向などを伝えておったのであります。しかし、どうも日韓間に相当の意見の相違がある、かように見られておる。しかし、もともと本来、独自の立場で決定すべきことだと、かように思うので、誤解、疑惑が残らないようにしたい、かように思って、この決定をいたしましたことについて、相手の丁総理に十分の実情についての理解、また親善関係を一そう進めたい、それについての協力を願った、かように私は記憶しております。ただいまの「前例としない」という、そういうことばがあったかどうか、ただいまもう一度確かめさしておりますが、どうもその点は、ただいまないという報告がございますので、私の書いた手紙から申しまして、お尋ねのような「前例としない」ということばが、あったかどうか、ちょっと疑問に思ったものですから、起案者にいま尋ねたわけです。そういうことばは使っておらない。ただいま申し上げるような趣旨で手紙を出した、かように御了承いただきたいと思います。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 「前例としない」というような意味は含まれておらないのですか。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 含まれておらないと思っております。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 官房長官の記者談話でのことばを見ますと、「前例としない」という意味のことを言っているわけですが、食い違いがあるのじゃないですか。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの「前例としない」ということに、あるいは誤解を受けるかもわからないが、例外的なものだ、こういうような書き方をしている。御了承いただきます。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 総理に要求しますが、これは非常に日本の外交にとって重要な影響の出てくる問題だと思います。そういう意味で、その親書を予算委員会資料として提示を願いたいと思うのです。具体的にそれを見て、私たち論議をしたいと思っております。いかがですか。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはまあ、私から韓国の総理にあてた親書でございますので、親書を予算委員会に提出することは、これは差し控えさせていただきたい。かようにお願いをいたします。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 向こうから来たものじゃなしに、こっちが出したわけでしょう。しかも、重要な外交方針に関することなんです。われわれがそれに関心を持つのは、これはあたりまえなんです。それは、総理大臣が個人の私信というようなことで軽く扱わるべきものじゃないのです。今後、非常に重要な影響を持つ、そういう意味で、それを見せてもらわぬことには論議ができないわけなんです。ほんとうの論議が。想像でやってはいけませんから、再度要求します。委員長、出させてください。
  49. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) これは総理の親書ですからね、向こうの総理にあてた。だから、これはやはり親書を委員会に資料として出すということは、委員長としてもこれはどうかと考えますが。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 それは吉田書簡のようなものと、委員長違いますよ。吉田書簡のような場合には、吉田さんが現在、在野であって、それでも相当問題になっているのです。
  51. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) これは、総理が大体要約を言うておられるのですから、それを信じて、親書をここに資料として出すということは……。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 委員長がそんなことを言うのはおかしいですよ。
  53. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行委員長はちょっと先走って議事を運営されているのじゃないか、私は委員長を信頼しておりますが、亀田委員が重ねて質問しているわけですから、その御質問を受けて、その上でこの扱いについてどうするかということを御相談いただくようにせぬと。いままた、納得できないから、重ねて国民の立場で知りたいことだから出してくれと、こう言っているのですから、その回答がないのに、委員長の言うのはおかしいと思いますので、御注意くださって……。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 重ねて、私、別に親書の内容を特に秘匿したわけではございません。また間違ったことを申しておるのではありません。ただいま親書そのものを出すことだけはひとつごかんべんを得たい、こう言ってお願いをしておるわけです。中身につきましては、先ほど来お答え申しておるとおりでありますから、御了承いただきたいと思います。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 いや、審議というものはそういうわけにいかぬでしょう、ちょっとしたことば使いが非常に重要になるのですから。それは資料として出してもらいたい。文書で出すのが悪かったら、朗読してもらってもけっこうです。
  56. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 総理大臣からも、重ねてただいまのような答弁があったのでありまするから、要旨はここで総理からもいろいろ言うておられるのでありますから、質疑を進めていただきたいと思います。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 それでは一歩譲りますから朗読してください。そんな重要な問題を隠しておくということはない。
  58. 小林武

    小林武君 議事進行の意味で申し上げますが、これはあれじゃないですか。これからもこの種の問題で——これは委員長委員長に、この種の問題でいろいろ関係してくることですからね。先ほど来亀田委員が言っているように、ここへ資料として提示できないならば、朗読してもよろしいと、こう言っているのですから、その点を、親書であるからというような、何の意味かわからぬような理由で、質問者の意向を取り上げないというのは、どうも納得がいかない。その点について委員長は、もしも独断的にやるなら、これはぼくは大いに文句がある。独断的にやるべき筋合いのものではない、だから、ひとつはっきり委員長の取り扱いをお願いしたい。
  59. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 亀田委員質疑状況によりまして、総理から随時お答えがあると思いますから、質疑をひとつ進行していただきたいと思います。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 あとの質問がとまるのですがね、あとの質問が。
  61. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) しかし、これは先ほどから言いましたように、親書ですからね。あなたがずっといろいうの要旨を質疑されていったらいいと思うのです。総理からも答弁があると思いますから。進行していただきたいと思います。亀田君、御進行願います。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 そんなね、政府の立場だけで、委員長進行しちゃだめですよ。野党がこういう重大な問題を知りたいというのは、あたりまえです。空な議論はできません。(「そんなあいまいなことじゃ、だめですよ、いかなる理由で親書だからだめだという、理由をあなた述べなさい、委員長」と呼ぶ者あり。)
  63. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  64. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 速記をつけて。亀田君。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 韓国はですね、今回の問題に関連して、政経非分離と、このことを文書によって明確にしてくれという意向を持っておるようです。佐藤総理は書簡の形で結局それに肯定的に答えたんじゃないですか、これによって。
  66. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま重大なる発言をしておられますが、私はそういうようなことは聞いておりません。したがいまして、今回の親書の中にも、そういう点には触れてはおりません。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 時間がないので、前回の会議録などを私いま引用することは省略しますが、昨年の十二月十一日の日韓国会のときに、総理が私たちに答えたこと、あるいは今年になっても、たとえば、四月一日の予算委員会等で総理が答弁をいたしております。これらは一貫して、もちろんどっと入れるというわけではないが、だんだん北朝鮮からの入国も許していくんだ。これはだんだんですよ。テンポはもちろんいろいろあります。少なくとも、そういう前向きの形でこの問題が答えられておるわけなんです。私は一々速記録は申し上げませんが、場合によって言い方も若干違っておるが、いま一々それをやる時間はありません。しかし、全体としてはそういう趣旨で答えられてきておるものが、この親書によって私は後退しているんではないか、この点を懸念しているわけなんです。そういういままでの答弁に比較して後退したものではないと、こういうことをはっきりここで言えるのでしょうか。
  68. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この親書の大要は、先ほど私が答えたとおりでございます。それ以外の何ものもございません。また、私ども政府がとっております在来からの態度と今日変わるようなことはございません。ただいま申し上げますように、今回のものが例外的な措置だということは申しておりますが、在来からわがほうがとっておるその態度を変更したと、こういうようなものはございません。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 官房長官は前例としないという意味の発言をしているわけです。非常な違いじゃないですか。例外ということは、例外でないものもある、したがって、許す、そういうことが当然これはことばの上からでも想像される。だから、私は親書を見て、そうしてはっきりこの問題は論議をしたいと思っておる。もう一度これはあなたに要求します。どうなんですか。
  70. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) この親書の資料提出につきましては、後刻また理事会で検討することにいたしまするから、質疑を続行していただきたいと思います。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 進行に協力する意味で、一応そういうふうにしましょう。しかし、これは真剣に考えてもらわぬといけない。それが出た上で、さらにその問題についてお尋ねをしたいと思います。保留しておきます。  それから次はですね、この朝日新聞のソウルの小畑特派員からの報道によりますると、韓国の金大使が昨日向こうに帰りまして、本国政府に対して次のような報告をしたようです。その一つは、今回の三名の入国の決定、日本政府決定を撤回させることはむずかしいようだ——あたりまえのことですよ、そういうことは、政府決定したことは。そこで、第二の問題になるのは、しかし、ビザの発給やプラント輸出をおくらせて、事実上この輸入契約をだめにすることがいいと思うし、その点について対日折衝の余地があると、こういう報告をしておるんです。こういう報告を。私はきわめてこれは重大な報告だと思います。どう総理はお考えになりますか。
  72. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 金大使が帰られたことは知っております。しかし、どういう報告をしたか、また、どんな話になっておるか、それは私は知りません。ただいま朝日新聞の特派員の報だと、こう言って御披露になりましたが、これがまあどこまでそのとおりであるか、これは私が申し上げる筋のものでもないように思います。ただ、そういう事柄が今後行なわれる危険がある、こういうように思いますが、今回の決定は、これはもう政府独自の決定でございますから、他からとやかく言われる筋のものではない、私はさように思っておりますし、まただだいま言われるように、発給手続その他もわが国がこれは自律的にきめることでございますから、いわゆる運動がましいことによって左右されることのないように、これは十分注意いたしていきたいと思います。また、商談そのものも、これまた民間が独自にきめることであります。政府自身がそういうものに関与すべきことではないと、かように思います。したがいまして、他からのいろいうの工作その他につきましても、これは排除するといいますか、そういうことの行なわれないように注意はいたしますけれども政府自身が右だとか左だとか、かようにきめるべき筋のものではない、私はかように思っております。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 政府は閣議で方針を、今回のことについてきめたわけですから、で、関係業者はその決定をもとにして、この取引の成立のために動いておるわけですから、そういうことに対して、外国から圧迫が加わるというようなことがあった場合には、日本政府としては、日本の業者を守ってやる、自分の方針なんですから、当然私は大まかにいってそういう態度で臨むべきだと思いますが、これは当然なことかもしれませんが、総理のお考えはどうでしょう。
  74. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 原則的な問題といたしましては、お話のとおりであります。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 金大使の日本国内における策動を私は一々これを申し上げません。資料がたくさんあります。法務委員会でも若干はこれを指摘をいたしましたが、いやしくも外国の大使が日本政府決定の方針と違ったことを、ここで具体的に動く、私はこれは行き過ぎだと思う。両国の外交方針が違うために、自分たちはこういう考えを持っておるということを外務大臣等に公式に申し出る、これは私は、お互いの意見ですから当然あってしかるべきだと思う。ところが、それを乗り越えて、この直接の業者を大使館に呼んだり、いろんな筋から手を回して、半ば脅迫したり、こういうことをやっておるのですよ。こういうことは、私は断じて許せないと考えるのですよ。総理大臣、どうなんです。あなたもお聞きでしょう、若干。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、金大使の日本における行動について、一々存じておりません。ただいま外務当局にでもそういう資料があれば、どういうふうになっておるか、答えさしたいと思います。
  77. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日米の間で綿布の対米輸出を阻害するというような政府の動き、あるいは業界の政府に対する働きかけ等がよくあつたわけであります。そういう場合には、たといアメリカ政府の方針がそういうほうに傾いておるにしたところが、やはり日本としては、これにあくまで抗議をしなければならない。そういう意味で、多量に日本に綿布の材料である綿を売っている、そういうような業界に働きかけて、そして国内的に綿布の大量輸出を阻止するような行動にあくまで抗議して、これをやめさせるというようなことは、当然わがほうの駐米大使等においてこれをやっていることなんです。でありますから、どの程度のことを一体黙認するか、これがなかなか微妙な問題でございます。目に余るような、外国大使が大使としてふさわしくない行動をとるというような場合には、もちろん注意を喚起するということも必要と思いますけれども、なかなかその限界がむずかしいのです。  今度の金大使がどういう一体行動をとっているか、それぞれの立場において、ある程度は、日本として歓迎すべきことじゃなくても、ある程度はその立場を了解しなければならぬ場合もあると思います。そこで、あまり世間の批判を受けるような限度はひとつ守ってもらいたいというような注意は与えてあります。それ以上のことは、私も別に注意しておりません。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 注意どころじゃなしに、こういうことにこそもっときちんとした抗議をしなさい。何ですか、いまの答弁は。こちらが時間がないことをいいことにして、適当な答弁をされておる。銀行の諸君に、もしこの問題で働いてくれなければ、ソウルの支店は許さぬぞとか、これは脅迫じゃないですか、一種の。そんな自分の意見をすなおに言うとか言わぬとか、そういう程度の段階をはるかに越えておる。外務大臣、これはもっと調べて、私がいま言うようなことが事実ある。こういうことをほうっておいたらだめですよ。前例になる。どうなんです。それは。あなた知っておるんでしょう。
  79. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私はまだそういうことを存じておりませんが、先ほど申し上げたように、それぞれの立場においてある程度の行動は、当然各国の大使等においてとっておることでございます。あまり限度を越えるようなことについては、いま申し上げたように注意をしておりますので、御了承願います。
  80. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。この問題は、こまかいことは私は申しませんが、日韓関係、あるいは北との関係、この問題を明確にする非常にいい私は機会だと思います。でありますから、韓国から一々日本のことについて抗議があった場合、それに対して日本外交がいつでもぐらついて、全くわけのわからぬものになる。これをいつまで繰り返していくのか。あるいは立場は違いますけれども政府の立場で、日本と韓国とが多年の懸案を国交を回復することで解決したという、そういう政府の立場に立って、一応の外交関係を樹立しても、それは日本のあくまで独自性で、他国の容喙を許さない。先ほど総理が、その点はよそからかれこれ言われることはないと答えられましたが、その立場をこの機会に明白にすること、それが一つです。  もう一つは、先ほど総理の親書のお話がありましたが、内容のことはとにかく、私のこれは別の問題でありますから触れませんが、問題は、これが外交上、あと拘束することがないかどうか、対北鮮との関係で、日本外交がこれによって拘束されることはないのかどうか、なければ私は非常にけっこうだと思いますが、とにかく、いずれにしても両者の関係で、この機会こそ私は日韓関係、あるいは北との関係を明快にする一番いい機会だ、こういうことを際限なしに繰り返して紛争を続けておる、それは日本の確固たる態度があれば、韓国とは国交回復するが、他のケース・バイ・ケースで、ある種の交流をやることについては、日本の独自性に属する問題である、あなたの国の容喙を許さない、これをはっきり明快にすることが、私はこの問題をさらに解決していく一番基本的な問題じゃないかと思いますが、総理いかがでございますか。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま言われますように、外交は独自性、自立性、自立外交をやっておる。このことをはっきり国民にも理解していただきたいと思います。ただいまも、そういう意味の羽生君のお話でございます。私どもは、今回展開しております北鮮からの入国を許すという、これは日本の独自の立場で決定した事柄でありまして、外国からとやかく言われる筋のものではない。また、抗議がありましても、そういう内容について、それを了承するものでもない。これは当然のもので、政府責任において処理していこう、このことを御理解いただきたいと思います。  また、先ほど親書がいろいろ議論になっておりますが、私も政治家の一人でございます。親書を出しまして、そしてそれが将来に国民責任があるとか、負担になるようなこと、さようなことは、私はもちろん申しておりません。それだけは御心配のないように申し上げておきます。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 最近、韓国はことごとに日本政府の対北朝鮮問題についてくちばしを出しておる、一々申し上げる時間はありませんが、この北朝鮮への帰還の問題、あるいは在日朝鮮人の里帰りの問題、あるいは法務省所管の韓国籍の朝鮮籍への書きかえの問題、さらにだんだん頭に乗ってきて、スポーツの関係、これは従来はちゃんと入っている、そういう実績のあるものについてまで抗議がましいことを出してきているわけですね。私は、この際に、日本政府としては、いま私が指摘した四つの問題について、従来の態度を堅持して進む決意があるのかどうか。韓国のそういう抗議によって動かされることはないということをはっきり言えるのかどうか。ここで総理の答弁を求めておきたいと思います。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど羽生君にお答えいたしました点にも関連があるように思いますが、私は、在来からの日本政府がとった態度、これを変えるような考え方はございません。帰還船の問題にいたしましても、その他の問題にいたしましても、すべて国内の問題であり、独自にきめるべき問題だ、かように考えております。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 法務大臣、どうですか。
  85. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ただいまの問題は、四つともいままでの方針と一つも変わっていない。また、韓国のほうから問題ごとにいろいろ話があったということは、私の耳に入らないものもありますし、世間の声のように伝わっているものもあります。しかし、私はそれを一々取り上げておりません。私は日本独自の立場でみんな処理をいたしております。今後ともそうするつもりでおります。御了承願います。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 外務大臣にちょっと。
  87. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 総理法務大臣もお答えがございましたが、私も全然同感でございます。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 外務大臣は直接の窓口として、たびたびそういう意思表示を向こうから受けておる。そんなに再三再三言うてくるなということで、逆にあなたははね返したことがありますか。姿勢をあなた示してください。どんな姿勢で話しているか。
  89. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 会う前に向こうはどういうことを言うかわからない。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 そんなものは答弁にならぬですよ。いままでのことを言っておるのだ、いままでのことを。いままで何回も受けたでしょう、外務省。そんなばかにした答弁あるですか。
  91. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私の行動について何か御質問があれば承ります。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 韓国から抗議を受けているでしょう。それに対してどういう応答をしたかということを聞いておるんです。
  93. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 聞かれぬことは聞かれぬと言います。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 その意味は、抗議を受けたことがないということですか。
  95. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今回の問題で強く抗議をする、こういう最近は抗議を受けました。これには答えようがない。それから、今回の問題によって生ずることあるべき事態については、これは日本国政府が負うべきものであるという二つの内容をもって抗議を受けました。これに対しては返事のしょうがなかった。そうかと……。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 私の言うのは、もっと日本の立場というものを積極的に出して、そうしてそんなことを再三言うてくるな。逆にあなたのほうが抗議をすべきじゃないか、最近の韓国の動きに対して。それを聞いている。そんな事務的なことを聞いているんじゃない。どうなんです。なれ合いみたいなことをやっているのと違うか。
  97. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そこまで、向こうの大使ですから、あまり失礼なことは差し控えたほうがいいと思います。事実私のところにはそう参りません。はっきりしておりますから、聞かないことは聞かぬということがはっきりしているので、私のところにはあまり来ません。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 自主外交という毅然としたるものがないですよ、あなたには。注意しておきます。  それから次にベトナム問題に移ります。第一は、米軍は北ベトナムの軍事施設をやっておるのだということを絶えずいっておる。外務大臣もそういうふうに受け取っておるようです。実際はそうじゃないじゃないでしょうか。いろんな現地の通信等によっても、そのことがわれわれうかがわれるわけなんです。日本政府としては、どういうふうにその点理解しておりますか。
  99. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今回のハノイ、ハイフォン近郊の爆撃につきましては、これは石油に関する施設を爆撃しておるのでございまして、そのねらいは、北からの南に対する浸透のその根源をつくと、つまり輸送のために絶対必要である石油の施設を爆撃しておる。こういう意味で、従来の爆撃の性格と何ら異なるものではないということが、われわれとしてほぼ確実であるという心証を得ておりますので、われわれとしては、これに対して従来と同じ方針で対処しておる、こういうわけであります。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 それはアメリカ側の説明だけでしょう。実際にあなた調べたんですか。心証という、そういうあいまいなことじゃだめだ。
  101. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題については、アメリカの情報を信頼しております。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 総理大臣、こういうものをあなたごらんになったことあるですか、これを。これはベトナムで米軍が使っておるものです。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 初めて見ました。いままでは全然見たことございません。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 そういう口先だけで米側の説明を了承しておるようなことじゃ、みんなが苦しんでおるベトナム問題のほんとうの解決の促進なんというものはできるものじゃない。もっと現実にぶっからなきゃだめだ。それで私、まあ苦労してその証拠を見せということで、ある方面からこれを出してもらったわけなんです。これは正式な名前はボンブ・フラグメンテーション、まあ飛び歩くたまという意味です。愛称としてロット・ロップ、こういう名前で呼ばれておるものです。この中に二百五十、散弾があるわけです。まるいたま。これは人を攻撃するやつです。で、これが百九十一、一包みになって、飛行機から落とす爆弾になるわけなんです。だから、これを落とすると、これが途中で破裂する。そうすると百九十がこれによって飛ぶわけですね。これがプロペラのような役割りをするらしい。飛ぶ、適当な時間にこれが破裂する。一つから二百五十出るのです。小さいたまが。一体軍事施設だけを追及しておるというのであれば、なぜこんなものを使う必要があるのですか。これは現にナムディンというハノイの南方の紡績工場なんかのある普通の町です。十万くらいの。そこに市民の地区に落とされたものなんです。これは不発弾です。中は抜いでありますからだいじょうぶですが……。  一体こういうものをどうして使う必要がありますか。軍事施設だけをやっておるのだということなら、これだけから見たっても、そういうアメリカが言っているようなやり方ではないということがはっきりしているじゃないですか。どうなんです、総理大臣
  105. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) その爆弾は私も初めて見ましたし、いつ、どこで落されたか、これは私のほうで入手の経過がわかりません。今日想像される、われわれのほうで入手しておりますのは、主として軍事施設あるいはジャングル地帯に、そのものかどうかはわかりません、私も手に取ってみませんが、要するに羽がはえて、広範囲なジャングル地帯及びその軍事施設に対してそういうものを使っておることは承知しております。そのものかどうかは、これはしばらく貸していただければ調査してお答えしますが、たぶん、おそらくそれの同じような種類のものじゃないかと思います。いままでの、外務大臣が答弁しましたが、先般のハノイの爆撃では、アメリカ軍のほうでは一般市民の損害というものはわずか、非常に僅少であると発表しました。同時に、ハノイのほうは、被害状況について、一般住民の被害発表はしておりません。疎開の発表しただけであります。したがって、ハノイ及びハイフォン地区においては軍事施設であることは、両方の発表を総合すれば、一般市民の被害は僅少であったということは、両方の発表が公平に私は見られるのじゃないか。同時に、今日までのアメリカの軍事施設の爆撃報告は、約六百カ所ばかり報告しております。それには主として工場、輸送補給、橋梁、倉庫というものが、爆撃のたびに発表されたものを総合しますと、六百カ所ばかり軍事施設ということが大体私たちは想像できます。したがって、戦争中の問題ですから、どの発表がどうだと、現地に行ってみろと、これは不可能のことであります。しかし、両方の発表を見ながらその内容というものを検討する以外われわれはございません。したがって、大きな一般の無差別爆撃というような事態は、両方の発表というものを見ても私は幸いにまだそこまでは進展していないのじゃなかろうか、こう私は考えております。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 これは、ジャングルというのは、それは南のほうのことでしょう。北でこんなものあなた使う必要ないじゃないですか。どうなんですか。
  107. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 十七度線周辺はほとんどジャングル地帯で、どこに敵がおるか、どこであるか、これは先般二百トンばかり爆弾を落としました。それなどはもうほとんどジャングル地帯で、わかりません。攻撃もその中でやっております。両方ともこれはわかりません。また、おそらくもう一つの場合は、対空砲火の地帯はある程度地域が広がっております。その地域にはある程度広がる爆弾を落とすであろう、また落したであろうという形跡はあります。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 あとのほうの説明で若干そのしっぽが出ています。南への浸透を防ぐのだというふうな立場で、なぜこういうものを使う必要があるのです。これはハイノの南方の近くの都市ですよ。だめですよ、もっと真剣に調べなさい。貸してあげてもいいですよ。  それから、もう理屈はだめだから現物でひとつ、総理はこれ、七月一日のこれは朝日グラフです。いいかげんな印刷物じゃない。これをどう見ます。百姓が農作業をするときに鉄砲をかついでやっているわけですね。あなた、どう感じます。これは写真の出所もはっきりしています。
  109. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私も職務上あらゆる機会にニュース写真を拝見しております。これも拝見しております。同時に、これは南北ともどもに、政府、ベトコンに対しても、御承知のごとく、先般ニュースでありました。村に橋頭塗をつくってベトコンの攻勢に対抗するという不幸な事態もある。逆に言えば、北のほうも、あるいはベトコン地帯も政府軍に対抗するという不幸な事態が、両方に私はまことにこれは戦争という中において不幸な状態だと思います。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 防衛庁長官、ちゃんとあなたはそれを見て答えなさい。米機の、アメリカの飛行機の襲撃に傭えてそういうかっこうをしているということがちゃんと書いてあるでしょう。そんな一般論を聞いているのじゃない。
  111. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 米機が来れば、一斉に小銃で攻撃するというのですから、まことにどちらかと言えば非常に悲惨な状態であることは言えます。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 なぜそんな必要があるのですか。総理、米軍がときどき野らに働いておる農民の方なり、そういう方に対して攻撃をやるからこういう状態が出てくるんでしょう。南のほうではないのですよ。どういうふうにお考えですか。率直な考えをあなたは言いなさいよ。
  113. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 戦争の状態ですから、一事例がどうであるかということの事実を私たちは確認をできませんが、いずれにしても戦争という状態の中においては混乱、混戦、殺戮という不幸な事態がある、その中に住む住民というものはそれに対抗する、保護する、あるいはみずから守るという苦労をされておる、これは十分わかります。いまの写真はただいま拝見しまして説明をよく読みます。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 こういう写真というものを簡単に見過ごしておいちやだめですよ。  それから水利施設ですね、北ベトナムの。この破壊というものは非常に問題になっているのです。総理、御存じですか。
  115. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 先般の爆撃を総合いたしますと、破壊した橋、山林施設、石油施設、その他の施設二十五カ所、その他に交通施設、道路、鉄道、渡船、飛行場、ミサイル基地、兵舎というものがただいま発表されております。まだ水利施設というような発表は私どものほうには入手しておりません。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 北ベトナムの政府からこの点はけしからぬと、まことにこれは北ベトナムでは水というのは非帯に大事なんですから、ことにこの八月の雨期には一番水がかさ高くなるわけです。その際における紅河の堤防などは非常にあの地区では大事にしておる。この攻撃をやっているのですよ。だから、その部分についてだけは非常に強い声明を出しておるのですよ。そんなことは知らぬですか。戦争だから相手の言うことは信じられるかという、そういうことではだめですよ。
  117. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私ども、爆撃した発表をいまだに聞いてないと、こういうことを申し上げたのであります。私のほうは、いままで爆撃をした発表、これはまだ聞いておりません。事実かどうかこれはわかりません。それ以外に入手する方法はないのです。いままで爆撃した中にはそういうものはまだ発表の中に入っておりませんということです。事実を否定しておるかどうか、それは私のほうはわかりません。それは私のほうはわからない。そういう発表の中には、私どものもとにはございませんというのです。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 その点についてもいろいろ写真等あるのですけれども、この程度にしておきますが、たとえば、米軍も認めておることですが、橋梁、道路、これは本来ついているものなんですよ。軍用のために、そのためだけにつくった道路と違うのですよ。それを浸透を防ぐということのためだけにそういうものを一体破壊していいのですか。総理の見解はどうです。けしからぬですよ。何でも理屈をつけてこわして歩くんだ。
  119. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は戦闘行為は、ことに戦争行為というものはいかに残忍なものであり、いかに不幸なものであるか、これをベトナムに言うのであります。だからこそ、ベトナム紛争は早くやめてくれと、こう言って私は叫んでいる。攻撃するのも悪いのです。南の破壊分子に対する応援もとにかくやめろ、そうして話し合いをつけたらどうか、これを実は呼びかけている。私はただいま言われるようにこういうことをやつちやいかぬ。これとこれをやっちやいかぬ、こういうことを言ったからといって戦闘行為そのものをとめない限り、これはナンセンスなんです。また、それが戦闘行為を継続するものから見て、部分的にこの行為を真実だからと言ってもそれはどうも納得ができないのです。だから私が申しておるように、こういう事柄が行なわれ、そうしてそういう事柄が続くこと、これはほんとうに耐えられないのです。そういう意味でひとつお互いに行きがかりもあるだろうが、だが行きがかりにとらわれることなしに話し合いに入ったらどうだ、かように私は申しておるのであります。これはもう確かに戦争行為は民生を圧迫しておる。これは見のがすことはできません。平和な国民が、先ほど農耕にも従事できない、いつも危険を感じておる。その他、橋梁や道路、それらのものが破壊されると、これはもう民生の面から見ましてもたいへんな圧迫だと、かように私は思います。だからこそ戦争をやめること、和平への道をさがすこと、これが必要だと、かように私は申じておるんです。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 軍事施設だけしかやっておらぬというふうな言い方を外務大臣等がされるから、私はそうじゃないんだ、もっと認識を、実際を見るべきだということで摘示したわけです。  それから次に総理は、米中戦争への発展ですね、これはないと、こういうふうに言っておられますが、私は甘いと思う。そういう一体断言ができるのかどうか。ほかでされているようですが、はっきりお答えを願いたい、どうなんです。
  121. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米中戦争があるかないか、どうも対岸の火災視するわけにいかない。私どもほんとうに米中戦争がないことを心から願っております。また、そういう意味であるいは見方が甘いといわれるかわからないが、そういう立場に立ってものごとを見ておりますと、だんだんそれを裏づけするようないい材料が出てくる。アメリカ自身も積極的に中共を攻撃しないと言っているし、中共自身もアメリカの攻撃がない限り自分のほうは戦わない、こういうような事柄が、私が申す、いまのほんとうに米中戦争、そういうものが行なわれないように念願しておる者から見ますると、どうもこういうものをたよりにしなければならない、かように私は思うのであります。私はただいまそういう意味で甘いんじゃないか、こういうおしかりを受けました。それは甘いか、わかりません。しかし、私どものように、米中戦争のないことを心から願っておる者から見ると、いまのような点が、一、二の点がこれをないのだと、かように私は信じ、考え、また同時に起こらないようにこの上とも努力したい、かように思っております。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 抽象的にそういうことを繰り返しておってもだめなんで、大勢を現実に見なければいかぬ、私たちはそういうことばよりも、その点を心配しているわけです。現実に南北ベトナムで進んでいる状態を、そういう立場からひとつ防衛庁長官でけっこうですが、南北どういう支援体制になっているのか、あなたのつかんでいる状態をはっきりしてほしい。
  123. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 軍事の内容ですから、お答えするのが正確だと断言はできません。しかし、一応われわれが推定できる、入手できるその情報のもとに明快にお答えいたします。  南ベトナム政府軍が約七十五万、在ベトナム米軍約二十七万、韓国軍隊約二万五千、オーストラリア軍部隊約四千、ニュージーランド軍部隊約百五十、ベトコン約二十七万、南ベトナムにおける北ベトナム正規軍約三万、北ベトナム軍、この軍資料というのはなかなか入手はむずかしいのでありますが、一応四十七万、北ベトナムにおけるソ連、中共の軍事援助の詳細は明らかではありませんが、中共は北ベトナム工作隊員約四万を派遣しておるように見られます。ソ連は航空機、対空ミサイル、対空火砲、レーダー、車両などを供与しており、軍事技術要員も派遣せられておるようであります。ソ連の北ベトナムに対する軍事援助は、昨年五億ドルと報道され、また、ソ連が中共を経由して北ベトナムへ送った物資、昨年二月から年末までに約四万三千トン、本年一月から三月までに使用した貨車五百五十六両と、これは中共側が発表しております。  以上、概略諸般の資料から入手した数字でありますから、これに責任は負いませんが、私たちは一応こう想像するだけであります。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 このマクナマラ長官が、今年の五月十八日カナダの演説で、三十余ヵ国にベトナムが援助をされておる、人的並びに物的に、こういうことを言っている。物的な関係が多いだろうと思いますが、三十余力国というのは一体どういうことなんです。日本はどういう立場にあるのですか。
  125. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) その演説内容は別といたしまして、そのほかに中華民国、マレーシア、フィリピン、タイ等がある程度の援助を行ないつつあり、また一部行なっておると思います。これは主として医療関係とか航空機の将校の操縦要員の訓練とか、あるいはマレーシアにおけるゲリラ部隊の実戦の指導とか、あるいは作戦——心理的作戦の要綱とかいうものがそれにこたえた一つの方向として今日動いておるように思います。もちろん、日本、わが国に対しては、まだ何らマクナマラ長官から軍事的に、あるいは物質的要請は私のところへは届いておりません。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 三十余力国という中には日本が入っているんでしょう、要請があったとかないとかいうが、事実はそうなっているんでしょう。
  127. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私のほうに何も来ておらぬということは、私が知らないということで、入っていないだろうと思います。マクナマラ長官がどう発表されたか知りません。私のほうには何にも来ていないということは、入っていないという答えのつもりで私はお話ししている。何も私のところには入っておりません。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 これは実質的なことをマクナマラが言っているんですよ。そういう形式論で逃げちゃだめだ。それからナパーム弾ですね、問題になっている、これは大部分が日本で製造されている、こういうことが世界的な風評になっているのです。いろんな文書にも載っている、アメリカなり西ドイツあたりで。これはどうなんです。そういう風評は聞かないですか。
  129. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 日本で製造しておるということは私は絶対にないと思います。絶対ないと思います。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 そういううわさが広がっていることは知らぬのですか。
  131. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ことしの二月の予算委員会で、衆議院で、野党の方から御質問を受けました。そのときも同じことを答えております。その前に、おそらく衆議院の婦人議員からも聞かれました。そのときも同じ答えをしております。そういうことは私の存じている限りない、私の知らないことは別ですが、私は今日防衛庁及び政府として関係している範囲ではない。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 総理に聞きますが、中国は昨日北ベトナム軍に対して中国領土の使用を認めるという通告をしたようであります。これは私は非常に重大な問題だと思います。中国がこの戦争に本格的に参加するかどうか、一つの大きな私はポイントになると思います。先ほどの説明でも四万人の工作員がすでに北ベトナムに入っているわけですね。総理はどういうふうにこの点を理解しておりますか。
  133. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いままでも北ベトナムに対してソ連や中共が支援している、これはどういう形かは実情をつまびらかにいたしませんけれども、精神的あるいは物質的なサポートであるかわかりませんが、とにかく支援しておる、これはもう一般に言われておることであります。今回、ただいま北ベトナムにあるいは基地を提供すると言っているのか、どういうことか、その辺は明確に私はつかんでおりません。これはもう在来から支援している。このことはみんな知っていることであります。ただ、その具体的な問題がどういう意義を持つか、これからまた実際に使用した場合どういうような価値を持つか、これはもう少し研究しないとただいま申し上げるわけにはいかないのであります。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 そういう軽く考えちゃいかぬです、これは。ワルシャワ条約の各加盟国の義勇兵出兵の情報も総理大臣は見ておられると思います。私は、特に北朝鮮ですね、北朝鮮の方針は従来出ておるわけですが、今回あらためて金日成からホー・チ・ミンに対して義勇兵の出兵について意思表示をいたしております。私はこれは非常に重要だと思います。ベトナムで南北の朝鮮が衝突すれば当然朝鮮半島が平静に終わる理屈がない。総理大臣はこういう情報等について非常に軽く何か見ておられるようですが、どうなんですか、朝鮮の問題については。
  135. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま私が軽く見ているというのはどういう意味かわかりませんが、私もこういうことの情報については非常に神経過敏であります。ことに、ベトナム紛争が一日も早く平静に帰すように和平をねらっておる者から見まして、その激化の方向へのそれぞれの徴候あるいはデータ等については私真剣にならざるを得ないのであります。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 まあ非常に重要なことですから、もし北朝鮮の義勇兵が北ベトナムに出るというようなことがあった場合には、これはもう三十八度線はただでは済むまいという、私はそういう見解を持つわけですが、総理どうです。この一点だけあなたの見解を……。
  137. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 現状においていろいろなことを考えるのは御自由ですが、しかし、将来の問題を、いろいろ波乱を巻き起こすような言動は慎みたい、かように私思いますので、この機会に私の意見を述べることは差し控えさせていただきます。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 具体的にどうも総理の検討が少し足らないように私は率直に思います。もっと現状を分析して、いろいろな先覚者が米中戦争等の問題について甘く考えちゃいかぬということをずいぶん警告しているわけなんです。朝鮮戦争の場合だってそうでしょう。中国の介入があるということは、それが起こるまで米国内では全然そういう意見がなかったでしょう。そんなことあり得ないという資料をたくさん米国の議会でも論ぜられたわけなんです。逆だったじゃないですか。私は、いまのようなことを続けておれば、米中戦争だけでなしに、この社会主義国とアメリカ並びにその与国との間の衝突ということまで、単なるこれは杞憂じゃなしに考えなければならぬ、そういうふうに思います。そういう立場から、ともかく静かにすると、もっと、そういう意味で、根本的な解決ではないけれども、北爆だけは停止する、これくらいのことをもっと強く日本政府意見として出すべきじゃないか。ウ・タント事務総長すらそういう点は言っておる。イギリスにしたって、アメリカの政策を支持しておる諸君もそれは言っているわけなんです。日本政府としてどうなんですか。従来もあまりにも抽象的な——お答えを聞きたい。従来のような答えの繰り返しじゃだめですよ。
  139. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ベトナム紛争についての私の考え方は、在来から、従来からしばしば述べました。また、今日の段階におきましてもこれを変える考え方はございません。しかし、ただいまこの際にこういう手を打て、こういうような亀田君の御提案でございます。しかし、私はただいまの国際情勢のもとにおきまして、せっかくの御提案ですが、その御提案に私は賛成をいたしません。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 まあこれ最後にいたしますが、朝日新聞が、朝日が米国内のいろんな意見調査をしたその中で、平和運動女性連盟のニューヨーク支部事務局長ゴードンという女性の方ですが、この人がこういうことを言っておる。北爆で人を殺しておいて交渉に応ぜよというやり方は間違いであると、ジョンソンさんの考え方を批判しておるのです。これは私はね、ベトナム戦争心配しておる世界の人の気持ちをあらわしておると思うんです。ただいまの佐藤総理のお答えは、はなはだ私はそういう点で不満であります。  最後に一つだけお聞きしますが、来年の秋までには衆議院選挙がいずれあるわけですが、現在の中選挙区でいかざるを得ない、こういうふうに佐藤総理等が腹をきめたというふうに聞いておるのですが、その点だけを確かめておきます。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 選挙制度調査会に私どもが、政府が諮問をしておる際でございます。まだその答申が出ておりません。答申が出まして、それからそれがもしも選挙制度を変えるようなことであるなら国会の問題にもなり、さらに事務的にもいろいろ処理するものが出てくるであろう、かように思いますので、ただいま言われるように、次の選挙はどういう状況のもとにおいて行なわれるかと、かようなお尋ねになりますと、ただいまの選挙制度調査会、それが答申を出すまでにも相当の期間があり、また、さらにそれを法律化するまでにも相当の手続や時間を要すると、かように私思いますので、いまお尋ねになりましたように、現行の選挙制度のもとで選挙を行なうのかと、こういうことになると、そういうふうになる可能性は非常に強いと私は思います。しかし、私は、しばしばお尋ねに答えたように、ただいまそれでは総選挙、解散ということを考えているのか、こういうようにお尋ねがあれば、しばしばお答えいたしましたように、ただいま考えておらない、選挙など考えておりません、こういうようにお答えする以外にございません。お尋ねが選挙制度がどうなるか、非常に早い機会に結論が出るか、こういうようなお見通しについてのお尋ねのように思いましたので、ただいまのように率直にお答えします。
  142. 鈴木強

    鈴木強君 関連
  143. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 簡略にお願いします。鈴木君。
  144. 鈴木強

    鈴木強君 関連しまして、実は知事四選禁止の問題で総理に伺っておきたいのですが、昨日、知事四選については公職選挙法の改正を議員立法として次の臨時国会に出す。臨時国会がない場合には通常国会に出す。来年の五月以降にこれを実施する。こういうふうにきめられたそうでありますが、総理は、この点は全くそういうふうに考えて、同感なんでしょうか。  それからもう一つ具体的にですね、来年の一月早々から知事選挙が行なわれますが、その際に四選、五選の知事が今日あるわけですね、しかも自由民主党の知事であるというようなことも関係してまいりますが、そこで党が四選禁止をしたということをきめた以上は、党議できめた以上は、道義的にも来年の、要するに一月以降にかかる、あるいはその前であってもそうでありますが、自民党の場合ですね、あなたのお考えですから、要するに知事四選ということはそういう決定の上に立って考えるならば、これは公認はしない、こういう理屈にならなければ合わぬわけですね。これに対して総理は総裁としてどういうふうに考えられますか。  二つお尋ねします。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 知事多選の禁止の問題、これはあるいは立法事項というか、法律できめたらいいとか、そういう事柄こそ選挙民が自由にきめるのだとか、多選の人でもりっぱな人であればいいし、、また多選しなくても不適当なら選挙民がこれを選挙しなければいいのだ、こういう議論が基本的にあります。ありますので、なかなかきまりかねたと思います。しかし、最近党におきまして言っておりますのは、やはりこういう事柄は選挙民できめられることだが、各党の協力を得られるなら、やはり法律事項できめたらどうだろうか、しかし、法律事項できめるにしても、すでに来年は統一地方選挙、改選の時期になっております。しかも、これらの選挙は相当前ごろから用意されるような問題だ。したがいまして、唐突にそういうような多選禁止ということを出せば、これはたいへん選挙界に動揺を与えるだろう。それらの点をくふういたしまして、とにかく来年の統一選挙は現行のままでやったらどうか。その法律をつくる、そのことから除外する、そうして法律の実施の時期等も適当に考えようじゃないか、こういうようなことで原案を作成する、作成にかかる、かように実は聞いたのであります。ただいま鈴木君のお尋ねはそれにちょうど該当しておるのじゃないかと、かように思います。いずれにいたしましても、こういう事柄は一党だけで簡単にきめられる問題ではございませんし、また、そういう事柄を次に行なわれる選挙、それに非常に動揺を与えるようなその時期に提案することもいかがと、かように考えているようであります。そういう事柄に影響のないような状況で次の統一選挙は行ないたいと、これも実際問題として私どもも理解できるのであります。いずれにいたしましても、立法事項だ、かように思いますので、具体化いたしましたら、御審議をいただきたいと思います。
  146. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 亀田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  147. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、梶原茂嘉君。
  148. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 食糧の問題を中心にしながら総理はじめ関係大臣にお伺いしたいと思うのであります。  御承知のように、人口、食糧の問題は、いつの時代でもどの国でも政治上非常に大きな課題であったと思います。最近しばしば言われておるのですけれども、世界の人口が今後三十数年たって新しい西暦二〇〇〇年——二十一世紀時代に入る時分には、現在の約三十数億の人口が倍の六十億程度に達するであろうと言われております。世界のその方面の専門家の人口学者ですかも大体定説のように言われておって、ケネディ大統領当時も、その時代を対象にしてアメリカの食糧政策なり国土総合開発計画を立てるべきだと提唱されておったように思うのであります。わが国の人口が今後どうなるか、国連あたりの見方では、やはり新しい世紀に入る時分には一億五千万見当になるであろうという見方をしておるようであります。厚生省のほうではかれこれ四十年先には一億二千二百万見当になって、それが頂上で、それから漸次日本人口は減少するであろうということを言っておるようであります。これまでも厚生省の見方は、二十年あるいは三十年先には一応頭打ちになってそれから日本人口は減るのだということを常に発表されておるので、私は日本人口がいよいよこれは頭を打って減少の過程に進んでいくのだという見方に非常なショックといいますかを受けたわけであります。しかし、人口の見方もいろいうの要素か加わってきますので、日本人口も当然相当ふえていくものと考えられるわけであります。したがって、現在国連方面におきましても、この人口と食糧の問題を中心にして食糧の増産の態勢がしきりに強調されておることは御承知のとおりであります。わが国におきましても、御承知のように、明治初年にはかれこれ人口が三千万台で——ちょうどあと一両年で明治百年になるわけですけれども、百年たって一億台の約三倍であります。非常なスピードであります。食糧のほうも明治の初めには米が約三千万石台で、まあ百年たって三倍見当になってまいったのであります。戦争前あるいは戦後も三十年ごろまでは食糧問題というものが農政上の重要な役割りを果たしてきたことは御承知のとおりであります。特にアジアにおきましては、インド、中共を含めまして、人口の問題と食糧の問題は、何も三十年先じゃなくて、現在の時点において非常に緊迫した重要な問題であることは御承知のとおりであります。最近の日本の農政におきましては、食糧の問題、食糧の政策ということがやや影が薄くなっております。もちろん、人口の問題も農政の問題も戦後非常に大きく、その性格といいますか、様相を変えてまいったのでありまするから、ある意味では当然であったとも言えましょうけれども、しかし、これから先は、やはり食糧政策というものを国の政策として検討をして、これを確立していかなければならない事態ではなかろうかと、かように考えるわけであります。もちろん、現在の農政上の考え方、農家の企業性の向上とか所得の増強とか生炭性の向上、特に労働生産性の向上というようなことは、それなりに非常に意味があり必要なことであることは当然でありますけれども、やはりその背後に、それに合わして食糧政策というものを考えていかなければならない時期であろうかと、かように私は考えておるのであります。それについての総理なり農林大臣なりのお考えをお伺いしたい。  特に近く、この秋ですか東南アジアの農業関係の閣僚会議が催される。その場合にわがほうとしてどういう役割りをその会合で果たすのか、また、その会合でなくても、東南アジアの諸国に対するわがほうの協力なり指導なりの面で相当農業の開発の場で役割りがあるであろうと思います。それに対してわがほうとしてどういう基本的な考え方でその役割りを選び、その役割りを果たすのか。私は、やはり日本自体として、日本の食糧政策といいますか、これをある程度さらに確立をして、それでそういう地帯に対する農業開発面の、あるいは食糧増産面の指導なり協力ができるのではなかろうか。それを持たずにいったのでは、はなはだ心もとない実は感じがしないわけでもないのであります。そういう点についてひとつお伺いしたい。
  149. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 重要な面についてはもちろん総理からもお答えをいただくことになると思いますが、大体いままでの経過をも含めて申し上げたいと存じます。  この食糧の問題は、いまおっしゃいますとおり、現在非常に、今年、いろいろ伝えるところにより、また調査の結果、特にFAOにおける数回にわたる発表等によりましても、世界的に人口の増加に比して食糧の増加率は非常に少ないということを、全部それは統一計によりあるいは調査の結果を発表しておることは御存じのとおりであろうと思います。特に、最近におきましてはそれが非常にあらわれつつあるということは、京都における日米懇談会においても農務長官が申しました。いままでCCCに保管しておった食糧は減りまして、ほとんど底をつこうとしておる。それは、インドその他の地帯に対しても、それからまた、ソ連その他の地帯に対しても供給するという点もありまして、そういう意味からその貯蔵庫の穀物その他が減って、しこうして今年からは一五%の生産増強を指示しておる。まあ、アメリカから申すと最良の年である、こうフリーマンが申しておりましたことによっても大体の情勢がおわかりであろうかと思います。大体そういう方向であろうと。特に東南アジアの諸国におきましては、一、二の国を除きましては、人口増加に比して食糧増加が非常に少ないというので、先ほどお話しのように、二十一世紀にもなりますと、そこに食糧の不足というものが非常に大きくあらわれ、ないかという点を特に心配いたしまして事務局長報告ども出ておることは御了承のとおりでございます。さような関係がございまして、わが国といたしましては、いま人口の問題その他もございまするけれども、私としては、この小さな面積の土地でございます。そこへ人口が非常に多いのでございまするので、何もかにも自給するということはこれは無理だと思いまするが、どうしても日本の気候風土に非常に適しておるということと、しこうしてまた、多年の問うんちくを傾けられて科学技術の粋を寄せ集め、世界に比較いたしましてもはるかに反収の多い、著しく多い、こういう米のごときものは、現在幸いにして九六%の自給を保っておりまするが、これはみな、御存じのとおりに、十年前と比較いたしますると、現在二千万石以上の増加であろうと思われます。平年作を見まして。そういうぐあいに非常に努力を重ねられておったのでございますが、最近数年間は気候風土の関係、労働の流出その他の関係がございまして、やはりこの全体の量が若干減りつつあるという傾向にがざいますることは御了承のとおりでございます。こういう点については私どもはでき得る限りの努力を注いで、もちろん、単に増産というだけでなしに、労働生産性の向上、あわせて土地生産性の向上、この両面に向かって努力を払っていく必要があると、こう考えております。  それからまた、畜産とかあるいは蔬菜、果樹といったようなものにつきましては、新鮮なものを要し、なまを要するという問題——牛乳のごとき——でございまするので、これもでき得る限り自給はいたしたい。そういう関係からいきますと、飼料等についても、草資源はこれは自給に努力を払ってまいりたいと思いますが、一般の濃厚飼料まで全部自給するということは、これは困難な面も——こういう小さな国でありますから、これはでき得る限りそういかない点はやはりこれは補給をいたしてまいらなければならない。しかし、その途上において、やはり不足いたしております。米も不足いたしており、その他の点、麦のごときも不足いたしておりますから、それらの不足しておるものはこれは自給というわけにもいかない、現状において。これはでき得る限り食生活の安定をはかる必要もありまするので、これは必要な面を輸入することによって自給してまいる。こういう方向に行くのであり、また、この畜産の発展に即応して、濃厚飼料のごときは、これは畜産の発展いかんにもよるわけでございますが、相当大きく伸ばさなければならないように思われるので、これらについては、やはり相当程度輸入という点について考えつつ進むべきものではないか、こういうふうに大局的には考えておるのでございます。  なお、アジアとの農業会議の問題でございますが、これは御存じのとおり、やはり農業関係、その他アジア諸国の本質から申しましてまた当然のことでございますが、進んで日本が何も援助をすることを強要する、そういう考えは毛頭ありません。これは東洋の全体の思想としてそうあるべきである。やはりみずから助くる者を助くという意味合いもおかしいですが、そういう意味で、でき得る限り各国の要請に即応して援助をいたしてまいりたい。と申しまするのは、東南アジアにおいても、一部の国においては、食糧は現在不足とはいうものの、一部の地帯においてはやはり輸出する能力を持っておる、こういうところもございまするが、多くはその能力はない。むしろ非常に不足しておる。また、よく将来をながめると、非常に不足する。こういうことでございまするので、そういう点からいたしまして、日本としては、東南アジアの食糧増強につきましては、その地帯地帯の実情に応じてでき得る限り日本としても援助していきたい、こういうことでございます。その方法等については、でき得るならば今年の末ごろに開催できればけっこうだと思いますが、その際に各国の模様、いわゆる要望等についてよく検討をいたしながら、また、その要望というものと合わせながら、日本としての援助の問題を進めてまいったらどうか、こういうふうに考えておるようなわけでございます。
  150. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 農林大臣の見解といいますかお考えはよく理解はできます。私の申し上げますのは、やはり従前の自給自足本位の食糧政策ということではこれから先はおそらく通用しないので、現在の人口、食糧の問題の現実も、一つの国を越え、場合によればイデオロギーによって対立しておる国を越えまして、非常に広い国際的な場面での共通の問題になりつつあると私は思うのであります。したがって、これから先お互いが検討して考えるべき食糧政策というものも、国内の自給をどう高めるということ、これは基本的なことでありまするけれども、同時に、やはり国際的な視野をどう取り入れていくかというところにも非常に大きな問題があるんではなかろうか。最近までの動きを見てまいりますると、大臣の言われておることと現実の動きというものは必ずしも一致してないので、むしろ、現実はなかなかそういう方向に動いておらない。この辺でひとつ食糧政策という観点から新しく考えを固めるべきじゃないかという趣旨を実は申し上げたわけであります。一そうの御検討を——御検討といいますか、御研究をお願いしたいと思います。  それから第二に、それに関連する問題ですけれども、先般新しく長期経済計画を設定する作業に入ったようです。新しい長期経済計画の基本的な構想につきましては、総理の御方針もはっきりと示されたようであります。まあ、安定路線の線であって、けっこうであろうと思います。ただ、その基本的な構想なり方針の中で、農業に対してはどういう基本的な構想かと見ますと、これ簡単に農業の近代化ということで片づけられておるような感じがするのであります。それでいいであろうかという点を一つ私はお伺いをしたい。これは総理にも藤山さんにもお考えを承りたいと思います。もちろん、近代化それ自体は農業についても必要であり、緊切であり、当然その方向に進まなくちゃならぬことは、これは申すまでもないこと、現在農業の近代化で農政上いろいうの苦悶のもとで進行しておるのでありまするけれども、工業面の近代化と違いまして、なかなか農業面におけるいわゆる近代化というものは、そう早く成果をあげることは本質的にはできない。どうしてもそこに時間的な非常に大きな格差があるのであります。あることは当然なんです。その、まあテンポといいますか、時間的な格差というものに対する配慮がなくて施策が行なわれるわけです。結果におきましては、工業面のほうは非常な成長をする、農業面の成長というものはなかなか進んでこない、その間にギャップが出てまいるというようなことは、これまでも現に経験をしているところであります。したがって、現象的に言えば、そのギャップを埋めるために、結局、農家の所得の問題にいたしましても、いろいろな問題が価格政策というところに押し寄せてくるわけであります。今度の米価の問題のごときもその一つのあらわれだと思うのです。価格政策が不十分の場合におきましては、そのギャップから必然的に生産が減少していくわけであります。端的に、麦にいたしましても、大豆にしても、なたねにしても、はっきりその様相を示しつつあるのであります。今度の新しい長期計画で、やはり従前の考え方でいくとすれば、私は、結果においてはやはり経済の成長は都市中心になり、工業中心になり、過密都市の造成であって、結果において農業は非常な打撃をその間に受けるであろう、おそらくそういう段階においては価格政策自体も行き詰まりを見るであろうということを心配をするわけであります。したがって、今度の長期計画においては、そういう実態を考えながら、もう少しく農業の実態に即した考え方を基調にしてやっていかなくちゃならない。速度の格差の違いというものを調整して緩和していくという考え方、さらに、単に企業の生産性を上げるとか、個々の農家の経営を近代化するとかいう、労働生産性の向上をやるとか、大体における、まあ、普通の企業という観点に重点を置く感じはしますけれども、それも大事ですけれども、同時に、もう少し広い国土総合開発的な観点、特に社会構造の調和のあるひとつ再編成——農業面にいたしましても、先ほど言った食糧政策というものをどう織り込んでいくかというふうな観点等から、ひとつやっていただきたい。言いかえますと、今度の長期計画の場における農業部門の取り扱い方については、これまでの所得倍増計画その他の長期計画における扱い方では、結果は、農業にとっては、あるいは農村にとっては非常なみじめな打撃を受けることになる。そういうことのないようにひとつ考えられるべきであると、かように私は思うのですけれども、ひとつ御意見を伺いたい。これは長官の御意見も伺いたい。
  151. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今度の経済計画を立てます上におきまして、現状の分析の上から立ちますと、やはり経済計画の基本的な問題の一つとして、中小企業の対策と農業の対策というものがこれは相当大きな柱になって打ち出されてこなければならぬと思います。で、ただいまお話がございましたように、農業というものが非常にかりに改善対策をしても、他の工業の部面と違ってその実行の結果があらわれてくることがおそいと、これはもう農業の場合——工業の場合でございますれば、建物を建てて機械を買ってくればいいが、農業の場合は土地改良その他自然条件の克服とか水利の関係等いろいろございますから、相当な時間が長期にかかるということも当然ございます。したがって、それらのものを念頭に置いて、むろん促進政策をやってまいらなければ、同時に、いまお話しのように、今日物価の問題というのが中小企業の問題なり農業の構造改善の問題なりに関連しておりまして、ただ単に、農村の生活というものが価格政策だけでもって維持されていくというわけにはまいりません。やはり生産性の向上、それは先ほど農林大臣が言われましたように、労働生産性と土地の生産性と両方ございましょうが、その生産性の向上というものに対して力を入れていって、そうして有効適切にそれが働いてくることによって農村生活が豊かになっていくという方向に持ってまいらなければ、価格政策だけにたよるというわけにはまいらぬと思います。ですから、それらのものをあわせて考えてまいりますが、いま申し上げたようなことが、梶原委員の御指摘のように、農業が時間がかかりますので、その過渡的な問題としては、ある程度輸入にたよらざるを得ない場合もございましょう。しかし、基本的にはできるだけ食糧そのものは自給していくという立場に立って問題を取り扱い、進めてまいらなければならぬ。そういう意味におきまして、経済計画の中においてもいま申し上げたような点から重要な施策の一つとして取り上げてまいらなければなりませんし、また、それが御指摘のように国土総合開発という観点の上に立って人口の適正配分というような問題もあわせ考えていかなければならぬ。農業の問題というのは、非常に広範な背景を持った問題でございます。したがって、総合的にそれらの施策が集中してまいらんとならぬのでございますから、そういう意味においてわれわれとしても十分注意してまいりたいと思いますし、また、経済審議会の委員の諸君においてもそれらの点については十分留意しながら案をつくられるものだと、こう考えております。
  152. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 生産性の向上と物価の問題、これは藤山長官もしばしば言われておるところであります。当然のことであろうと思うんです。ただ、先ほど農林大臣も、労働生産性と土地の生産性の向上と両者あわして考えていくべきだという趣旨の発言があった。現実を見てみますというと、企業性の確立というのに関連しながら労働生産性の向上のほうに非常なウエートが行っておるんじゃないかと思うんです。反面において、土地の生産性に対する考慮というものは非常に薄いんじゃないか、かように私には思われる。それでやっていくというと、結局、物価との結びつきはその面においてはつくけれども、しかし、本来の農業生産というものはむしろ衰退していくという危険があるんじゃないか。なるほど、個々の農家の収入はふえる、個々の農業従事者の生産性は高まる。しかし、反面、全体の生産量というものは停とんをし、下がっていくという心配があるんで、むしろ、日本としては、日本の実態からいえば、労働生産性の向上もこれは非常に大事なことだけれども、それ以上に土地の生産性の向上というところに重点を置かなければ、こういう小さい土地柄の日本の農業生産というものは衰滅の方向をたどるんじゃないかと心配をするわけであります。別に御答弁をいただかなくてもいいんですけれども、土地の生産性ということをひとつ長期計画においては十分御検討いただきたいと思うわけであります。  それから米価の問題について若干お伺いしたいのであります。今度の米価は、その決定の経過において、これまでにない道をたどったわけでありまして、いろいろ米価に関連して考えなければならない問題があるようであります。ことしの生産者米価それ自体とすれば、それはそれで一応きまりました。それでいいと思いまするけれども、来年以降の米価についてわれわれどう考えるかという観点から、ことしの米価の決定の経緯に関連する二、三の問題についてひとつはっきりしておきたい。  第一は、これは別に本質的な問題ではありませんけれども、米価審議会における審議の一つの空気といいますか、模様、情勢。それから農業団体方面の運動の様相といいますか、姿。農民が米価に対して適正な米価を熱心に要求するということは、これは当然のことでありましょう。それは十分理解ができる。しかし、あのあらわれた運動の姿、これでいいであろうか。さらに、これは自民党自体のことになりまするけれども、われわれ自民党として、あの米価に対する取り組み方の姿といいますか、あり方、かれこれこういうものについてこれでいいであろうか、ああいう一つの環境、状況といいますかのもとでは私は国民がほんとうに納得する好ましい米価というものはなかなか生まれないのではないか、率直にそういう感じがしたわけであります。農村に対する指導の責任を現在将来にわたって持っておられる政府としても、また、何といいますか、党として米価をきめていく大きな責任を持っている自民党といたしまして、米価をきめるそのわずかの間にこの大きな問題と取っ組んで、非常に不安定な様相、環境の中で決定する、こういうような姿について、私は率直に言って反省すべきじゃなかろうか、こういう情勢が総合的に年を追って強くなってくるとしますると、いよいよ何といいますか、米価の問題というものをほんとうに壁にぶつけて自然崩壊するような懸念もないわけではない、かように思うのでありますが、まず、この点は総理のお気持ちを伺いたい。
  153. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ことしの米価の決定につきまして、いろいろ考えさせられているわけであります。その第一点として、ただいま梶原議員からお尋ねがありました米価審議会のあり方、これでよろしいのか、こういうようなお話でありますが、米価審議会が答申することができなかった、これはまことに残念なことであります。しかし、米価審議会の各委員の方々がたいへん熱心であって、そうして農林大臣も終始席をともにいたしまして各委員の方々の意見を十二分に聞くことができたから、私は、米価決定に際しまして農林大臣なりあるいは米価審議会の委員の方々が努力されたこと、それは十分に実を結んだと思います。しかし、いかにもその運営の方法として好ましくない形であった、かように思います。したがいまして、私は、米価審議会においてもっと皆が納得するようないい方法はないだろうか、こういうことはこれから先の研究課題だ、かように実は思っているのでございます。第一点はさように考えますので、またひとつ知恵をしぼって、納得のいくような方法にしたいと、かように存じます。  第二の問題は、団体あるいは各種組合関係等々の運動が非常に熾烈であった、こういう御指摘であります。米価は、私が申し上げるまでもなく、農家収入の基幹をなすものである。同時にまた、国民全般に対しましても諸物価に及ぼす影響なども心理的にありますので、たいへん重要な問題でございます。そういう意味から、この米価決定は農民の方々が最大の関心を寄せられること、これもよくわかります。わかりますが、まあ年を追うに従ってこの運動が激化している、こういうことは、われわれが米価決定に際しまして生産者あるいはまた生産者でない国民の理解を得るような点においてまだ欠くるところはないのか、こういうことで実は反省しているような次第であります。ことに、この米価決定に際しましては、あるいは団体交渉したらどうか、こういうような提案すらあるほど、たいへん生産者としても利害関係のからむ問題でございますから、熱が上がってくると思います。しかし、先ほどもお話がありましたが、米作の実情から見まして、農家そのものの実際の経営規模等から見まして、農家の三分の一程度が非常に深刻にこの影響を受けるものだと、かように私は思うのであります。そういう点をもっと説明するならば、いわゆる団体その他の運動などももっと平静に帰するんじゃないだろうか。ことに、これが勤労階級の春闘の最後の詰めだと、かような意味で米価決定がいままで取り扱われていた、そういうような点にもこの運動を激化しているそういうものがあるのじゃなかろうか。もう一つは、これが非常に政治的な活動をする、政治的な影響を受ける、そういうところにも国民がなかなか納得しないものがあるようであります。衆議院段階におきましても、特に政府と与党との関係においても批判が寄せられました。しかし、私は、この米価決定というような重要問題について、政府とその与党が十分連絡を緊密にすること、これは私別に恥ずかしいことではないと思いますし、また、政党政治のあり方としてそれは当然のことだと、かように思いますが、それにいたしましても、目に余るものがあるというような批判を受けるようでは、これは申しわけないと思います。そういう意味で、今回の生産者米価決定に際して私ども反省を求められておる点は非常に多いと思います。今後の米価決定にあたりましては、ただいまの米価審議会のあり方、同時にまた、各種団体等とも十分連絡を緊密にすることによりまして、いわゆる運動がましい形において米価が決定されないような、そういう措置をとるべきじゃないかと、かように思います。  もう一つ最後につけ加えさしていただきますが、こういう米価を決定するということ、これは、私が申し上げるまでもなく、食管制度のもとにおいて当然政府がするのだと、いわゆる政治米価というものがそこから出ている。もう基本的に政治米価であることには説明を要しない、かように私は思っております。これはもう管理制度そのものからでございます。しかし、それにいたしましても、あまりにも政治米価だということで理屈抜きにやられることは困るのですが、とにかく満足するか一応納得のできるような理論的根拠がほしいと、これはよくわかるのであります。政治米価でないならば、これはもう競争できまる。これは自然に価格が決定されるということでございますから、管理制度をやっておる限りにおいては政治米価である。競争ではきめ得ない。そこで、その点も、ただいま申すように、できるだけ理論のつく方法でこれをきめる。それが生産費並びに所得補償方式を基礎にして、物価や賃金の動向等を勘案して決定される。それがただいまのところいわゆる指数化方式というような形できまるのが納得がいきやすい、かように実は考えておるのでありますけれど、過去の実例等から見まして、それだけでもなかなかきまらない。今回の決定に際しましても、どうも三百九十円という理屈のつかないものがあるじゃないかと、こういうおしかりを受けますが、ただいま申し上げるような諸種の点を勘案して適当なものがきまった。これが、私が申し上げたいのは、こういう食糧管理制度、そういう制度のもとにおいてはやむを得ない仕儀ではないか、かように私は思うのであります。そこで、それならば弊害があるから食糧管理制度を変えるのか、こういうような疑問が出てくると思いますが、ただいま食糧管理制度そのものは、国民の食糧を確保する唯一の方法だと、かように思いますし、また、生産者をして引き続き安定して生産に従事していただく、こういう目的を持つ基本の制度だと、かように考えます。ただいまの状況のもとにおきましては、私は現行の制度を変えていくような考え方は持っておりません。このことだけははっきり申し上げておきます。ただ、現行の制度のもとにおいて、各界各層の国民全般が納得のいくような価格決定、それはどうしたらいいか、さらに今後とも検討したいと、かように思うのでございますので、梶原君などは特にそのほうの先輩でもありますから、特にこういう点についてはひとつお知恵も拝借したいと、かように思いますので、遠慮なしに政府を御鞭撻願いたいと思います。
  154. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 総理の言われるように、生産者米価も消費者米価も、これは完全な政治的な性格を持っている価格であることは、御意見のとおりだと思います。ただ、私は、今度の経過を見まして、坂田農林大臣が非常に熱心に最後まで守り抜いたといわれる指数化方式、これも三十九年度のベースを基礎にしての指数化方式でありまして、一応筋道は立っているようであるけれども、しかし、今日の諸般の情勢のもとでは、その合理性といいますか、指数化方式の機能が失われたと思います。それから従来の積み上げ方式でいっても、これまた諸般の情勢にマッチしない。なぜであろうか。これは、私は、総理の言われたこととちょっと違うんですけれども政治米価だけれども政治が過剰だということじゃないか。ということは、高くしろとかいうわけじゃないですよ。農家の所得補償の問題とか、あるいは、農林大臣の言う自給度を向上しなきゃいかぬという問題とか、あるいは、藤山さんの言われる総合物価を安定しなきゃいかぬとか、いろいろそういう政治上の要請というものが、本来の純粋の政治米価なんだけれども、それに過剰に集中している。したがって、いろいろの経済的な合理性があるといわれる一つの方式を持ってきても、その方式じゃ割り切れない。従来の方式はことごとくその機能を喪失したのではないかというのが私の見方なんです。考え方によればできる限りそういう過剰な政治性というものを米価からはずしていくということを考えていく必要がありはしないか。その観点からこれは農林大臣に伺いたいのだけれども、今度の農業団体の要請の中で新しい一つの方式があるのですね。五万人以上の都市の勤労世帯の収入を置きかえることにする、これは新しい方式だと思う。いろいろ食管法上疑問はあるけれども、考え方としては私は検討する価値があると思う。全然新しい方式です。米価の姿もそれで変わってしまうのですけれども、あれについて、農林省で、法律論は別として、現実の問題として検討されたことがあろうか、あるいは、米価審議会あたりでも検討されたであろうかということをちょっとお伺いしたい。
  155. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) ただいまの方式につきましては、検討は十分いたしました。たとえば、労働時間が出てまいりませんわけでございます。そうして、そこで生産費及び所得補償方式ということは、大体常識において、この方式は抽象的かもしれませんが、とにかくそれでいこうということになっておる際に、生産費というふうには見られない。いわゆる時間が出てこない、自家労働についての。そういう問題がございますことが一つ。それからもう一つの、まあいろいろありますけれども、もう一つの面といたしましては、所得均衡を全部米価によって集約されてくる。つまり、他の兼業収入があるなしにかかわらず、それらを全部計算に入れておる場合でも、その所得補償方式、所得の均衡をはかるというのがすべて米価に集中されておるというような点もございまするので、やはりよほど検討をしなければならぬと思うのであります。ただ私はこれについて若干の点で考えておりまする点は、雨が降るときにはなかなか働きにくい場合もあるし、天候の都合によって働く予定がしてあったけれども働けないといったような面もあるんだから、その労働時間というものはよほどその点において考えていいじゃないかという、これはその方式とは関係のないことであるけれども、何らかこう気持ちの上において、若干それを見ることについての気持ちは出てまいりますけれども、生産費及び所得補償方式という点になりますと、あれでは十分いかない。また、審議会等においても、あまりこれらについては強く論じられなかった問題でございます。
  156. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 いま一つ具体的の問題ですけれども、今後どういう方式を採用するかは別といたしまして、今度の米価論議の中で重要な一つの問題は、やはり小作料、地代の問題だと思います。現在の小作料、地代の考え方、扱い方は農地法においてきめられているわけであります。その問題をほんとうに実態に合うように考え直さなければ、私は生産費方式をとろうが、どういたしましても、決して結果において妥当な結論は出てこないんじゃないかという考えを持っておる一人であります。もちろん米価の問題からその問題を解決していくのが正しい道か、農地法からどんどん入っていくのがこれは正門で正しいのか、その点の判断は別として、この問題を農林大臣はどういうふうに考えるか、農地法の改正にも関連するわけであります。
  157. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) この地代と申すか、小作料の問題は、非常に大切な、こういう問題については非常に関係の深いものでありまして、しこうして、なかなかこれを決着をさせられないくらいに論議が重ねられておりながら、まだ結論を得られないというところがあるわけでございます。と申しますのは、言うまでもなく、この現在の式は、しからば大体笑納小作料あるいはその近県における類似の小作地の小作料、こういう問題をとらえて小作料としておるわけでありますが、小作というものは五%しかない。そうすると、なかなか近くの土地に類似したところがないということになると、類似の小作料をもって小作料とする、こういうことを言うてみても、実際はなかなか近くにそういう類似の土地に類似の小作地がないじゃないか、こういう問題があるわけです。しかし、これは一つ議論でありまするが、大体そういうことで現状はいっておるが、それに対しての問題はないことはない、そういう議論があるわけであります。それから今度は、その統制小作料によっておるわけであるが、統制小作料によらずに、経済的に出てくるところの何らかそれがあるじゃないか、こういう問題——たとえば土地価格から見ていったらどうか、そうすれば資本率的に見ていけばいいのであって、統制小作料というもので安く押えられておるものをとって見たんじゃ困るんじゃないか、こういう議論ももちろんある。それらについても、しからばその農地の売買というものはきわめてわずかに少量売買されるわけです。ですからして、一町、二町の経営地がある場合においても、それは中には大きいのもあるが、多くは一反歩かあるいは五畝歩くらいの売買ですから、これはその経済をある程度無視して思い切って少し買おうというようなことでありまするので、高くやはり売買される。そういう関係からして、このいわゆる固定資産税のときには、全体を評価するときにはやはり半分ぐらいで見なけりやいかぬのじゃないか、こういうことで、固定資産税をやるときには〇・五五%ですか——をかけたやつで、その固定資産税を農地については見ておるわけです。したがって、その全体の売買ということを見ると、それくらいに見るということを固定資産税のときの価格に見ておるわけですから、やっぱり固定資産税で見たようにやるべきであるか、しからばそれをやめて、固定資産税も〇・五でなしにやっぱり一でやっていったらいいじゃないか、こういうことでいくべきであるか、そこにまた問題が、今度固定資産税そのものと関連して問題が起こってくる、こういう問題もまああるわけでございます。で、そういういろいろな点をやりますというと、この前米価審議会で小委員を選びましてこの問題を検討させたんでありまするが、約一年間かかって、この問題だけではございませんが、いろいろやりましたけれども結論がやはり出ずに、そしてそういうような利害得失なり、こういう場合はこうだ、ああいう場合はこうだという意見を列記して終わっておるわけでございます。で、かような関係がありますので、そいつをわからかして、はっきりさせて、それでひとつ積み上げ式でいくということでいくことになりますと、これは容易ではない問題、それをなお干し尽くさなければならない、こういう問題があるわけでございます。簡単でございますが。
  158. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 どうぞ御検討願います。  それから、問題の五十億円上乗せと申しますか、一般会計から支出をするということで、私は大蔵大臣の決断といいますか、勇気に非常に敬意を表するわけであります。なぜかといいますと、先ほど申しましたある意味でオーバーな政治の過剰性ですね、それをやはりこれはとっていく一つの方法であろうという意味で実は賛成をしておるわけであります。したがって、これの支出の方法については二つの考え方が御承知のとおりある。上乗せ式に考えるか、そうでない考え方でいくか。一俵にしますと、政府売り渡し一俵について約四十円になるのであります。大体二十俵以内ぐらいの農家がかれこれ半数近くあります。したがって、もし分散式に上乗せでいくとしますというと、一軒当たり二百円か四百円配って回るということになる。国民の税金の使い方としては、決して健全ではない。ひとつ本来のあれを別ワクにした、そういう道を開いたという趣旨から、その趣旨に沿ったやり方をお願いしたいと思います。なお、特別会計に入るんじゃなくて、一般会計から出るんでし うから、新しい法律か何か適当なものが要るかと思いますけれども、そういう点についてひとつ大蔵大臣のお考えを伺いたい。
  159. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回きめられました米価は一万七千八百七十七円であります。米価はそれ一つなんであります。まあ生産増強対策、また生産性の向上をはかる、こういう意味におきまして、別途これに関連をしてその経過から五十億円程度のことを考えてみよう、こういうことになったわけであります。この趣旨はそういうところから出発しておるのでありまして、どこまでも米価じゃない、生産性の向上だ、そういうことについてこれから頭をしぼってみようじゃないか、こういうことなんであります。今日米穀の生産の状況、また自給度の状況、またしたがって外国からの輸入の状況、そういうことを考えてみますると、まことに憂うべき状況があります。そういう状況にかんがみまして、ひとつ知恵をしぼってみようじゃないか、そういう段階で、まだ固定した考えはありませんけれども、梶原さんなんかはそういう面の権威者でありますので、とくと御意見を承らせていただきたい、かように考えます。
  160. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それから消費者米価の問題ですが、当分上げぬとか、上げたくないとか、当分とは当分で、はっきりしない。私は率直に言って、そうであろうと思います。ただ、秋に入りますると予算を編成しなければいけません。予算編成の過程においてはいやでもおうでもこの問題に触れなければ予算の編成は困難である。これは常識であるわけです。上げる時期、上げる幅、いろいろ問題は来年度の国債発行の額とも場合によれば間接的ではあろうけれども関連があるかもわかりません。藤山さんの三年間において三%程度に物価を持っていくという線との見合いも大体その時分になってくる。大体そういう時分にきまるだろうと私は私なりに理解をしております。それは非常に間違っているのだ、藤山さんは来年中ぐらいには持っていくのだという発言をされたように聞いております。違っておるようであれば、承りたいと思います。  なお、食管特別会計のあり方をこの際ちょっと伺いたい。私は先ほど言いましたように、米価というものが非常に過剰な政治攻勢を受けて、本来の政治米価の性格を少しこえておると思う。それはやはり食管特別会計に一半の責めがある。赤字なんです。つまり、赤字赤字というけれども、本来の赤字じゃない。社会保障も入っておれば、生産性拡充、向上のあれもあるし、いろいうの政治的な要素があの中に入っている赤字といわれるために、一般が非常に疑惑の念を持っている。不明朗である。あれを、少しむずかしいけれども、大蔵大臣として検討されて、すっきりされたらどうだろうか。一般会計から繰り入れるにしても、こういう性質のもの、こういう性質のもの、こういう性質のものといいますか、何らかそこにくふうがあってしかるべきじゃないか。千億、二千億のあれをただ赤字を埋めるのだということになっておることに問題がある。それがはっきりしていけば、おのずから総理も言われる政治米価が正常な政治米価になっていく可能性が出てくるのじゃないかと思うことが一つ。  もう一つは、これは大蔵大臣はおそらくそれはだめだと言われると思います。あえて……。
  161. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 梶原君、念のために申し上げますが、時間が来ております。
  162. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 あえて申し上げますけれども、やはり食管特別会計という巨大な事業会計を単年度制度で、いろいろ政治的な要素があるし、重要な会計を単年度でやっていく、これは現実に無理でありますけれども、若干そういうところに、一つのある固定といいますか、膠着といいますか、弾力性がなくて、そこにだんだんの無理が累積しているのではなかろうか、食糧公債といいますか、ある程度ゆとりを持った会計制度にひとつ検討するときではなかろうかということであります。検討していいのじゃないかというのが、私の質問の趣旨であります。  それから最後に、総理は私の質問を待たずに答弁されたのでありますが、現在の食管制度の最も重要な役割りは米価政策であります。価格政策、その価格政策がある意味で私は行き詰まりに来たと思います。そのことは同時に、食管制度自体の行き詰まりをその面では意味すると思います。私は、食管制度を改正するかという質問を用意いたさなかった。総理は改正しない、改善しないということを言明された。私は質問を用意した。私は、政府政府責任として食管制度改善の研究をする義務がある、責任がある、総理どうですかというのが私の用意した質問であり、その質問にひとつお答えいただきたい。それで私の質問は終ります。
  163. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 消費者米価につきましては、私の立場として、物価を安定させるという意味からいいまして、消費者米価の問題は非常に大きい問題でございます。したがって、今年五・五%を努力目標としてやっております立場から、できるだけ上げたくない。そうして、上げないようにやっていきたい。来年さらに三%に持っていきたいという意味は、そういう意味でございます。ただ、私も経済閣僚の一人でございますから、財政事情なりあるいはその他の緊要な予算要求をもにらみ合わせていかなければならぬことではございますけれども、私の立場としては、消費者米価を上げたくないということでございます。
  164. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 食管赤字の分析につきましては、いろいろ皆さんから御意見があります。これはよく私どもとしても検討いたしてみたいと、かように考えております。  なお、第二の単年度主義が窮屈じゃないか、こういうお話ですが、これは私はどこが窮屈なのかよくわからないのですが、このやり方によってはまた乱に流れるという傾向もあると思います。慎重に考えなければならぬ問題であると、かように考えます。
  165. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 大体お話がそろったように思います。私はやはり食管制度は、誤解のないように申し上げたいが、生産者のためあるいは消費者のためにこれは維持してまいりたいということを、これは御質問ではないけれども、特にお答えを申しておきたいと思います。  それから、改善はもちろんこれはできるだけひとつ考えてみたいと、こう考えております。
  166. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど結論だけ申しましたが、ただいま農林大臣がお答えいたしましたとおり、ただいまの現行制度はこれを維持し、持続していく。しかし、御指摘になりましたように、いずれにいたしましても、この制度は十分効用を発揮するように、成果をあげるように、またむだがないようにすることが政府責任でありますから、そういう意味の検討を絶えずするつもりでございます。
  167. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 梶原君の質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこの程度にとどめます。午後二時四十五分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時四十七分休憩      —————・—————    午後二時五十八分開会
  168. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行ないます。渡辺勘吉君。
  169. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 昭和四十一年の生産者米価がいわゆる政府の買い入れ価格が、最終的には佐藤総理の裁断で、百五十キログラム当たり一万七千八百七十七円に決定し、告示を見たのでありますが、総理が一万七千八百七十七円と裁断したその根拠なり、また、その金額を算出するにあたっての方式なりを、総括的にまず伺います。総理から伺います。裁断した当事者から。
  170. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 四十一年度の米価についての方式は、三十九年度の米価を基本として、それによって指数化によってはじきました。その値段に対して、生産性の向上を期待する意味合いにおいて、三百九十円を加えたわけでございます。それで一万七千八百七十七円ということに決定が相なったわけでございます。
  171. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 総理に、その裁断のそこに至らしめたことを伺ったのです。裁断はどういう根拠でそうなったのか。
  172. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま農林大臣お答えいたしましたように、生産費及び所得補償方式、これに基づきまして、さらに物価の動向、また、賃金の動向等を勘案して、そして、ただいまのような一万七千八百七十七円と、こういうものがきまったのでございます。その基礎になっておるものは何かと、こういう話ですが、いわゆる指数化方式で算定したものに、結果から見ますと三百九十円加わったと、こういうことになっていますが、私は、指数化方式に三百九十円加えて一万七千八百七十七円をきめたわけではございません。先ほど申すような抽象的な原則から、大体この辺のところだろう、これは、他の見方をすれば千五百円上げる、こういうようなことで大体きまったと、かように私思っております。
  173. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いま総理農林大臣の答弁を伺いますと、必ずしも一致した見解ではないように受け取ったわけであります。総理は、指数化に三百九十円を必ずしも加算して出したものではないと、農林大臣は明らかに、指数化方式に生産性向上を期待する要素として三百九十円を加算したと、総理はそれとは別に、指数化方式と三百九十円というものもあるが、それらとはまた別個に、大所高所から決定したという意味に聞き取れたんですが、そうすると、総理——総理の場合は、生産費所得補償方式ではあるが、指数化方式はあまり勘案しなかったということに理解していいんですか。
  174. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの一万七千八百七十七円、これは大部分が指数化方式、その基礎でございますから、これは指数化方式を第一にしていること、その意味においては間違いございません。私が先ほど申したのは、達観的に申しまして、千五百円程度の加算といいますか、そういうものが、結果的になりますと、指数化方式を基礎にすると、それに三百九十円と、こういうことになったのと同格だと、こういうことでございます。その辺、誤解のないように説明をしておきます。
  175. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いずれ具体的な内容でまたお尋ねをいたしますが、その前に労働大臣お尋ねをいたしますが、御承知のように、生産費・所得補償方式の場合の所得補償の求め方は、投下された労働時間に、他産業の、農業に類似する産業として製造業労賃を評価がえをしていることは、労働大臣も御承知のとおりであります。したがって、ここで労働大臣にお伺いをいたしますのは、この製造業において労働省が毎勤統計をとっておられますが、この中で、生産労働と管理労働というものが統計の上に出ておるはずでありますが、その最近の実態と、生産労働と管理労働との割合はおおよそどういうふうになっているか、その点を所管大臣からまずお伺いをいたしたい。
  176. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) お答え申し上げます。  生産労働と管理労働との実態でございますが、毎月勤労統計の調査によりまして、本年五月分の製造業、これは御承知のとおり、毎月勤労統計でございますから、規模は三十人以上のものでございます。それにつきまして、まず、現金給与の総額の状況でございますが、これは、生産労働者につきましては、平均が二万八千七百二十八円、それから管理事務、技術関係のものにつきましては四万一千八百二十二円、こうなっております。両者を合わせました常用労働者の全体の平均というものは三万二千二百七十五円と、こういうことになっております。  なお、実労働時間について見まするというと、生産労働者が百八十七・二時間、それから管理関係の者につきましては百八十三・五時間、両者の平均が百八十六・二時間、こういうことに相なります。  それから、数の点から申しますと、生産労働者が四百九十七万四千人、それから管理関係の者が百八十五万五千人、両者を合わせますと六百八十二万九千人、大体こういう関係に相なっております。  さらに、この五月分につきまして、生産労働者と管理関係の労働者に対しまする支払い現金の給与の総額に占める構成比、こういうことを考えますというと、前者が六四・八%であり、後者が三五・二%を占めておると、こういう状況でございます。
  177. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 農林大臣お尋ねしますが、農業者が稲作に従事する場合、現実に肉体を投下する労働もあれば、稲作をするに要する頭脳労働もこれは現存しておると私は思うのでありますが、抽象的でありますが、農林大臣は、後段の稲作に従事する農家の管理労働部分というものがあるとお認めになりますか、どうですか、その見解から伺います。
  178. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 稲作の場合においては、主としてそれは肉体労働が多いと思いますが、やはり頭脳労働も若干あることは、これは当然であると思います。
  179. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうしますと、農林大臣に、もう少し立ち入って伺わなきゃならぬのでありますが、指数化方式を採用する場合に、あなたは前段に、その指数化方式に基づいて算出したことを述べられたのでありますが、その指数化方式は三十九年を基準年として、政府が、私から言わしむれぼ、一方的に決定した買い上げ価格でありますが、これをまずもとにしておる。その場合に、いま、多少という抽象的な表現ではありましたが、稲作労働の中にも、実労働もあれば頭脳労働もあるということをお認めになったのでありますが、三十九年の、この政府決定した米価の中に、この頭脳労働というものが入っておったのですか、どうですか。
  180. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えいたします。  三十九年度の労働時間の中には、的確にそれは入っておりません。的確にはそれは入っておりません。
  181. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 的確に入っていないということは、かなり何かをまるめたもので入っておる要素があるということですか。
  182. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これは、いわゆる付帯労働時間というものとか、あるいは地代の問題等について、その他問題が議論もあり、また問題もありましたので、それらを包含して五百五十円追加してあるわけでございます。
  183. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 何ですか、結局入れていなかったので五百五十円を特別加算で見たとなれば、これは分解して三十九年度の米価は、特別加算と称するそのものがそれぞれの要素にこれは配置されたもの、こういうふうに考えていいのですか。だとするならば、これは一つの新たな問題が出てくるわけです。そういうことが前提となれば、当然その後に決定した年次の米に対しては、政府はあと払いをする責任が出ますよ、あと払いをしますか。
  184. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) そういう指数化——この積み立て式の問題については、常に申しておりまするとおり、そのものについてはいろいうの問題の議論を十分干さなければならぬものが、非常に多いわけであります。そういうわけでございまするので、指数化米価は三十九年度の米価として、とにかく現存するものであり、また十分かれこれ検討を加えて三十九年度の米価を決定したものでありますから、その後における変化率を十分見て、たとえば物価の上がり方、また自家労賃の場合においては労働賃金の上がる率、また労働時間の問題その他を考慮いたしまして、指数化でいくことをいたしておるわけでありますから、これは三十九年度の現存の価格を見てさようにいたしていくのが指数化の行き方であることは、御了承願いたいと思います。
  185. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうもあなたの答弁は的をはずれておるのですよ。指数化のかけ方を私は聞いているのじゃなくて、指数化の前提になる三十九年の米価をもとにしておる。それは、その中にいま私が指摘したような農家にとっては非常に大きな要素を私は占めておると見ておるのですが、製造業はいまの労働大臣の答弁によれば、約生産労働の三五%も管理労働が占めておる。農業は、その割合はそれよりは多少底いと思いますが、かなりの要素を占めておる。いろいろなあるいは営農の企画なり分析なり、あるいは作業打ち合わせとか、研究とか、そういう時間を計算すれば、かなりのこれは頭脳労働、管理労働というものが実在しておる。そういう矛盾があるために特別加算をしたいというのなら、それは明らかに基本米価にそれは要素として算入をして特別加算というような、世でいうところの政治加算の疑念を持たれるような要素で、これを処理すべきものじゃない。それが基本的に投下する労働時間に計算をされる要素であるとするならば、四十年の米価もその要素に応じてはじき出された金額だけは、これは政府がバックペイをする責任があるのですよ。そのことを聞いておるのです。もっと質問にまともに答えてください、時間がないのですから。
  186. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) さような問題がありますので、三十九年度においては五百五十円をかれこれしんしゃくして加えられてあるわけであります。
  187. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうも結局政府から出た資料を見ましても、臨時特別加算金五百五十円については、その具体的な費目別の内訳はないと資料に出ているのですよ。もっとすなおに特別加算金であると、世にいう政治加算であるということを認めたらどうですか。それを認めずしていまのような強弁をするならば、四十年産米以降については、政府はバックペイする責任があるのですよ。まあそこまで私は枝道に入るつもりはなかったのでありますが、問題はこういう稲作に従事する農民の頭脳労働というものを、政府は基本米価の中には見ていないというところに、私は基本的な問題を指摘せざるを得ないのでありますが、見ておるですか、見ていないのですか、もう一回的確に答弁してください。
  188. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) つまり、その問題を的確に見るということについての問題がいろいろあったわけです。それは、その問題以外に地代の修正といったような問題いろいろあったわけです。それを一つ一つ合理的になかなかきまらぬものでありまするがゆえに、五百五十円を加えてそれらの問題をカバーしてまいったということによって三十九年度の米価が適当に定められたものであります。その定められた既定のこの米価を基準にして指数化によって定めておる、こういうふうに御了解を願えばいいと思うのです。
  189. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いずれあなたの答弁では、どうも頭脳労働というものは、米価の中には科学的に算入されていないということだけは、政府が出された資料でも明らかであります。これはすなおに認めるべき問題でしょう。そうでないと、いま言ったようにバックペイの、大きな財政上の責任がかぶさりますから注意を申し上げます。  それで労働大臣にもう一つだけ伺いますが、所管の事項の中に、運輸労務者については待機労働時間というものを賃金統計の中に計上しておりますね。それは一体どういう根拠で運輸労務者の待機時間を実時間に計上しているか、その根拠をお聞かせを願いたい。
  190. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 待機時間をなぜ実働時間の中に入れているか、こういう御質問と思いますが、御承知のとおり労働基準法上の労働時間というものは、使用者に拘束管理されておる時間、こういうことであります。したがって、いま御指摘の待機時間でありましても、これが使用者の管理下にあると、その限りにおきましては、これは当然労働時間、すなわちいわゆる実労働時間に入るべき性格のものである、かようにわれわれは考えておるわけであります。でありますから、たとえば昼休みの時間といったように、これは就業規則等でもう使用者の管理下から解放されたこういう時間は、言うまでもなく実働時間に入らない。逆にいま申しました待機の時間、いわゆる手待ちの時間等は、これは使用者の管理下にある限りは、実働時間として当然これは考えるべきものである、こういうふうに考えます。
  191. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 農林大臣に伺いますが、いま労働大臣が取り上げたように、運輸労務者を私は一例で伺ったのでありますが、その労務の特殊性からして、手待ち時間というものは実労働時間に計算をして、賃金を支払っておる。農業もこれは農業という特殊的な産業の立場からいって天候その他に支配されて、どうしても待機せざるを得ない必要時間というものが実在していると思うのですが、農林大臣はその待機時間というものの実在をお認めになりますか、どうですか。
  192. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) それは待機するということも起こることもありましょう。
  193. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 あなたは午前の梶原委員質問に待機時間があるということを明確に答弁しておりながら、あるかもしらぬとは、何たる不見識な答弁ですか、訂正しなさい。速記録を持ってきて見なさい。午前と午後でそんなに違うのか。(「あるにきまってるじゃないか」「直せ」「第一風が吹いたら待たなくちゃいかぬでしょう」と呼ぶ者あり)
  194. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) お静かに願います。
  195. 亀田得治

    亀田得治君 関連。それは農林大臣——立たないで言うからいかぬというふうに委員長から催促されたから、私申し上げますが、そんな与党と野党との質問の答えを違えちゃだめですよ。これはだれが常識的に考えたって、普通の工場労働よりも農作業のほうが待ち時間が多いわけなんです。天候のぐあいによって待たなきゃならぬ、むだをする、そういうことも多いわけですよ。そんなわかり切ったことを、何ですか、いまのようなあなた……。渡辺君のほうから指数化方式の痛いところをちくちくつつかれるものですから、いつもあなたは長々としゃべるでしょう。そんなばかなことはいかんですよ。もっとまじめに答えなさい。ほんとはこれは委員長が注意しなさい。
  196. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) それは待たなければならぬときもあるということを申すのであります。ただ問題は、この労働時間がどれだけあるかという調査もなければ——そのとおりですね。それからまたいろいろの点についてどうきめるかということがわからないものが相当あるわけなんです。これは御存じのとおりです。そういうことでありまするので、つかみ、つかみと言うと語弊がありますけれども、大体五百五十円というものを加えて、それらのものを補充したつもりでおるのであって、三十九年度の米価は私はやはり妥当にきめられたと思う。したがって、それを基準にいたしまして、物価その他のものがどう動いてきておるか、率はどう動き、価格の上がり方はどうかと、あるいは自家労働の問題についても、工場労賃の例を見てどの程度に上がったかという問題を考えまして、それらを指数的にかけ合わしてでき上がっておるのでございまするから、三十九年度の米価を基準にしてでき上がったものとして私は妥当なものと、こう認めざるを得ない、こう考えるわけでございます。ただ、その場合に三百九十円を加えておりますることは、生産性にさらに農家が努力を払うことを期待いたしまして、それらのものが加わっておるということを御了承願いたいと思います。
  197. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は、いまの大臣の答弁にも、はなはだ無責任な従来の姿勢というものを指摘せざるを得ない。このことは、管理労働の必要あるいは待機時間の実在ということは、三十五年から生産費・所得補償方式をもって審議会その他において審議をしている間に常に出てきておる問題、そういうものを、政府が持っておる調査機能を動員すればできないはずがない。そういうことはサボタージュしながら、米価の決定にはいいかげんな政治加算をしてお茶を濁すというようなことだから問題が混乱するんですよ。あなたの答弁からいえば、三十九年の生産者米価には待機時間も管理労働時間も計上されてない、こう断定せざるを得ない。また、その賃金単価の計上にしても、いろいろな落ちの要素があります。あるいは地代の問題、資本利子の問題等もありますが、問題は、指数化方式を採用するにあたって取り上げた基準年の生産者価格自体に矛盾があるということを、この際銘記しておく必要があると思うのであります。そういう大事な自家労働者の労働価値というものを不当にこれを抑圧するような統計の上ではじき出したものは、何と強弁してもこれは適正な価格ではない、三十九年の米価そのものは。そう思うのですが、総理はいままでの各大臣との質疑を通じてどういうふうに感じられますか。この三十九年米価を基本にしたそういう基本に矛盾があるということは明らかでありますが、総理はどうでありますか。——総理に聞いている。
  198. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 工場労賃の場合には、管理時間が幾ら幾らということははっきりわかります。それは。しかし、自家労働でありまする場合は、そう簡単にわかるはずがないのです。(「それがおかしいのだよ」と呼ぶ者あり)それはおかしいと言っても……。(笑声)それは雇うてきた雇い賃金である場合においては、管理賃金であるかどうかということははっきりします。だけれども、自分の家族及び自分が働いている労働時間をどう換算してみようというときに、それは渡辺委員はそれくらいぐらいもう十分知っておるはずなんです。そんなことはわからぬようなことでは農政はやれないのです。よくわかっておりながら言われることであるから私は言うのだが、それはそう工場の場合と簡単にそれを合わしてどうするというわけにはいきません、自家労働だから。雇い賃金の場合ならはっきりわかります。自家労賃というやつは払うのじゃなしに実際において自分の収入になるやつなんだから、それを計算する際になかなかそう簡単にいくものではないのであって、それはもう渡辺委員だって百も承知のはずです。だからそれをどうしてびしつと合わすかというところに努力も要り、長い間の計算も要り、長い間の苦労をやっておるわけなんです。その苦労を長く続けておってもしょうがないから、三十九年度という基準を一つ見て、そうしてこれにその後におけるいろいろの変化というものを的確にあらわして、そこに四十一年度の米価をきめよう、こういうことがいわゆる指数化米価として審議会にも諮問いたしたわけでございまして、それを今度はさらに、いわゆる生産性を向上させることに農家の努力を期待する意味において少しばかり加えたと、これは総理がいわゆる政治米価と言われれば、そのとおりだと言われておるものであることは、それはそのとおりでございます。
  199. 亀田得治

    亀田得治君 もう一ぺん関連。あんなにおこられたから、ちょっと。
  200. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 簡明に。
  201. 亀田得治

    亀田得治君 同じ問題でずいぶん渡辺委員、時間をとっておるわけですが、やはり委員質問に、質問の部分だけに焦点を合わして答えてもらわないと、始まりはそこから始まるのだが、どうも話しているうちに自分の言うことだけ言うと、それではこれは非常に審議の能率があがりませんよ。それで、私が申し上げたいのは、渡辺委員は、決してその管理労働なりあるいは待ち時間の問題について、調査がなかなかこれはしにくいもんだということはわかっているのですよ。あなたから、わかっておってとこう言われぬだって、そこは別に争いがないわけなんです。ただ、米価の問題を科学的にしていこうという以上は、そのようなわかりにくに問題であっても、やはり農林省の調査機構を動員して、そうしてはっきりさせるように努力をすべきじゃないか、初めからそれはもうわかりにくいというようなことで手をつけぬということはいかぬじゃないか。私は現に農林省の優秀な諸君を動員して見本的にほんとうにそのつもりでやってみれば、相当なデータはあがってくると思うのですよ。最初の調査でそれがすべてはっきりするかどうかわからぬが、努力をすれば大体この見当という点が私は出てくると思う。そうすれば、なんですよ、この五百五十円の内訳にしたって非常にはっきりしてくるんです。そこを渡辺委員が言うておるわけですよ。なぜそれをやらぬのか。あなたのいまの話じゃ、そんなことはもうわからぬことなんで、やる必要もないと言わぬばかりのことなんです。一体そういう考えなんですか。われわれはやはりこの論議を聞いておって、それはわかりにくいことであっても努力をしてほしい。それがやはりこの米価問題というものを科学的に客観的にしていく私は一つの大きな問題だと思う。指数化方式がいろいろな点で問題になっているのはやはりそういうことから来ているのでし う。農林大臣、それはあくまでも、そんなものはもう調査の対象にせぬと、そういう態度ですか。私はそれはいかぬと思うのですよ。
  202. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 少し言い過ぎたかもしれませんが、私はやはり研究をすべきものだと思うことはそのとおりです。したがって、付帯労働時間なんかでもその後検討を加えておりますし、また調査もいたしております。そういうふうで、調査をいたし、また検討をいたしていかなければならぬということは言うまでもありません。ただ私は、急激にいろいろな点を申しまする意味は、そういうことについての問題ではなしに、まだ研究すべき問題が相当あります。そのありまするものを一つ一つはっきりさせていくというところに問題があります。そうかといって、米価決定をしばらく待っておれというわけにいきません。そういう関係がありまするので、三十九年度においては、五百五十円というものを加えて、そうして全般的にあちこちからよく検討を加えて価格を決定したわけでございまするから、その価格を土台にいたしまして、その後における賃金の上がり方、あるいは物価の上がり方、あるいはその後の労働投下の数量の上がり方といったようなものを基準にしてこれを出した、計算いたして算定値を出した、こういうことであることを申し上げたわけであります。
  203. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと総理にもう一点……。
  204. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) じゃ簡単に願います。
  205. 亀田得治

    亀田得治君 総理にちょっと考え方を聞きたいわけです。  いま非常に米価の計算の指数化方式の中で問題になっている一つ、二つのことがここに出ているわけですがね。私は、こういうことはぜひ政府としてもっとはっきりさせてほしい。そういう要素をきちんと出すことが、やはり農民の立場というものを非常に政府も尊重しているのだということになるのですよ。ことに今後は非常になんでしょう、農作業といっても頭がだんだん要るわけなんですね。そういうものについて政府自身がこまかい、それをどの程度こう見るのだと、あるいはこういうふうなことを考えているのだということになると、これは私はその対象となる農民から見たら非常にうれしいことだと思うのです。総理大臣はどう思いますか。そんなことはもう適当にやって、ぱっとつかんでやっておいたらいいのだというふうなことでは、私はいかぬと思う。どうなんです。あなたの根本的な——こまかいことば聞きません。人生観を聞きたい。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもつかみ金では、多いときにはこれも満足するか知らぬが、少ないときであればたいへん不平だ。しかし、おそらく農家の方々として、自分たちの努力、これを正当に評価して、これに報いてくれた、そうなれば、金の多寡よりもそのほうを喜ぶのじゃないか、かように私は思います。  そこで、言われておりますことは、非常に抽象的なことでありますが、生産費あるいは所得補償方式、そういうものを基礎にし、同時にまた物価の動向、賃金の動向、これなども勘案して、その上できめなければならない、かように私は思っております。ただ生産費なら生産費をきめるにしても、また所得補償方式をきめるにいたしましても、積み上げ方式で何もかもみんな拾い上げて積み上げることができるかどうか。これはまあ先ほど来農林大臣も言っておるし、渡辺委員もよく御承知のとおりだと思う。なかなか全部の積み上げはできない。またこれも気候、風土も違っておりますし、また、その経営の規模も違っている。この農業の生産物、その米の価格を一本できめようというそれもずいぶん無理がございますから、なかなか私はきめかねるのではないか。もしも非常に正確なきめ方をしろ、こういうようなことになりますると、それこそいわゆる自由米価にしろ、こういうようなことで価格決定方式を変えろと、こういうことになってくるんじゃないか。私はそれを実はおそれている。今日の状況のもとにおきましては、この生産者も安心して生産に従事ができるし、また、国民としても食糧の供給が安定している、こういうことが最も望ましいことでございまするので、価格だけの面からとやかく言うことがこの問題をむずかしくしている、かように私は考えております。
  207. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いずれにしても、この指数化方式の前提となる三十九年の生産者価格には、私が言う管理労働も、待機時間も、これは全然入っていない。なお、そのものを絶対視して、これからいろいろ伺う指数化方式にしたところに指数化方式の矛盾点があるわけです。あのとき現に入っていないというので、その後の米価審議会でわれわれが調査要求して、待機時間というのはやっとお粗末ながら出てきた経過があるんじゃないですか。  そこで農林大臣にお伺いしますが、指数化方式の算式にW1と、W2というのがある。W1は家族労働費の割合、それからW2はこれは物財等の非家族労働の割合、これが一体三十九年と四十年、四十一年のそれぞれのパリティはどういうふうになっておりますか。
  208. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) W1とW2の本年度の割合は、食糧庁長官からお答えさせます。
  209. 武田誠三

    政府委員(武田誠三君) 三十九年の米価におけるW1とW2は、W1が六五・四でございます。W2が三四・六でございます。
  210. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私の聞いているのは、三十九年、四十年、四十一年がどうかを聞いているのです。
  211. 武田誠三

    政府委員(武田誠三君) 四十年のものをちょっといま手元に持っておりませんが、四十一年の本年産米価を算定いたしましたときの一万六千四百八十四円の中に含まれますWlは、〇・六三八五という数字でございます。W2は〇・三六一五ということに相なります。
  212. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 政府が試算で出したものと違うのはどういうわけですか。四十一年は三十九年と同じですよ。家族労働費の割合は六五・四、これは三十九年も四十年も四十一年も変わっていないと私は見ているのですが、どうですか。そんなに変わるのですか。
  213. 武田誠三

    政府委員(武田誠三君) 基準になる三十九年のW1は、お話しのように六五・四でございます。それからW2は三四・六でございます。それにそれぞれに、その後のW1につきましては、労働時間の変化、それから都市の近郊労賃の変化率、これらをかけ合わせます。それからW2につきましては、物財あるいは雇用労働量の変化、あるいは価格の変化、これらをかけ合わせてまいる、その結果としてのW1とW2は、どういうふうに変化したかということを申し上げますと、W1が〇・六三八五、W2が〇・三六一五という数字に変わってまいるということでございます。
  214. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それはまた非常に大事な問題なんですが、政府が米価審議会の資料として出した四十一年の買い入れ価格の試算のパリティには、三十九年と同じ六五・四なり三四・六というパリティを出している。いまの答弁は違う……。
  215. 武田誠三

    政府委員(武田誠三君) 私の御説明のしかたが悪いのかもしれませんが、三十九年の基準米価というものをW1とW2に分けておりますが、そのときのW1が六五・四ということに相なっております。それを基礎にいたしまして、その後の変化率をずっとかけ合わせてまいります。その結果、四十一年の指数化方式によります算定値が出てまいります。その算定値の一万六千四百八十四円というものを、W1とW2に、結果といたしまして分解をいたしますと、先ほど申し上げましたような率になってまいるということを申し上げておるわけでございます。
  216. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それならなぜ——これは時間にみんな食い込んじゃって困るんですが、一体ここに四十一年の指数化方式の試算の算式に三十九年度と同じW1とW2のウエートを出しておるか、また、これの生産費の千分の比率も三十九年度、基準年と同じものを出しているんじゃないですか。
  217. 武田誠三

    政府委員(武田誠三君) 先生のお話のように、求める試算といたしましてのW1は〇・六五四これを使っております。で、これがこの試算にございますように、それにかけ合わせまして一・二四四六、あるいは〇・九一九二、こういう変化率をかけ合わせました結果が出てまいりますが、それが一万四千——計算として出てまいりました米価の中で、そのW1が結果的に占める比率はどうなるかということを申し上げたわけです。おっしゃいますように、Plというものを計算いたしますときの基礎としては、W1は〇・六五四、それからW2は〇・三四六ということに相なっております。
  218. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 やっとはっきりしましたが、そのことによっても明らかであるように、この指数化方式のW1、W2というものは、少なくとも三年あるいは五年の約束で変化しないのが指数化方式の性格である、このことは年々変貌する生産構造というものを正しく反映していないということになる、これが指数化方式の一つの特徴である。私は、こういうことでは食管法でいうところの米の再生産を確保することを旨としてきめるいわゆる生産費・所得補償方式とはこれは異質なものである。これは決して生産費・所得補償方式ではなく、性格の異なったこれは算式であるということをこの点でももう明らかに指摘をいたします。  第二に、農林大臣に伺いますが、この指数化方式の指数化の中に限界概念が入っておりますか、入っておりませんか。入っておるとすればどういう入り方をしてその変化率を求めておりますか。
  219. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 食糧庁長官からお答えいたします。
  220. 武田誠三

    政府委員(武田誠三君) 渡辺先生御承知のように、三十九年産米価を決定いたしましたときには、平均の反当収量を標準偏差一シグマ引きました反収で生産費を計算いたしております。したがいまして、標準偏差一を引きました場合の大体のカバー率としては八五%余のものをカバーしておるというように考えております。
  221. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私の聞いておるのは——これは私の質問に答えないから、これはタイムに入れないでくださいよ、むだな時間ばかりかかる。指数化方式の中にいわゆる限界概念というものの変化率を見ておるかどうかを聞いておるのに、何ですか一体。三十九年の米価には分母として限界概念を入れておる、分子を平均概念で割っておる、こんなことは承知しておるんです。その三十九年度の、一応アンバランスであるけれども、限界概念をもって出したものが、その後の年次における限界の変動というものを指数化ではどう反映しているかを聞いている。質問にまともに答えてくださいよ。
  222. 武田誠三

    政府委員(武田誠三君) 三十九年産米価におきまして、先ほど申し上げたような計算をいたしております。その後の変化率としては、毎年の平均反収——生産費調査その他の平均反収の変化によって計算をいたしております。
  223. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 要するに、限界地というものは、資本の生産性のこれは最も劣っておるところで、同額の資本投下量に対して反収が最も低いところをいわゆる最劣等地、限界地といっておる。指数化方式にはどんなに強弁しようとも、この最劣等地、限界概念というものが入っていない。毎年々々の生産費を積み上げて修正することによって初めて限界概念が従来生きておる、これが生産費・所得補償方式のいわゆる積み上げ方式なんです。しかるに、そういう限界概念というものは基準年にはあるが、その後においては指数化には出ていないということは、このことからいっても指数化というものは生産費・所得補償方式というものとは異質なものである、こういうことを私は聞いているんですよ。あなた方が指数化方式を金科玉条にするから、私は問題を聞いている。これは政治的な角度でも何でもないですよ、価格理論を聞いている。
  224. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これは三十九年度の生産費の中には入っているわけですが、その後生産の変遷がありますから、たとえば二石九斗であったものが二石四斗ぐらいに見ておるというようなもの、それがかりに二石八斗となった場合には、その比率によって下がって計算されておるわけでありますから、その意味においてやはりその点が計算されておるというふうに見て差しつかえはないと思います。
  225. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 指数化のどこに入っていますか。質問にまともに答えなさいよ。この算定方式のどこにその要素が入っているかを聞いている。
  226. 武田誠三

    政府委員(武田誠三君) 算定方式の中で、先生の御承知のように、三年間の平均反収の変化で修正をいたしております。そのもとになっておりますいわば一万五千一円というものを計算しました基礎には限界反収の概念が入っておるわけであります。したがいまして、その後は平均反収の変化をもってこれを修正してまいれば、ほぼ目的は達し得るものというように考えております。
  227. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ほぼ目的を達成するというように理解しているようですが、それでは限界概念が放棄されておることを否定することばにはならぬのです。時間がないから、もうこの限界論はこの程度で限界を感じますからやめます。  それから、指数化方式は、地代とか資本利子とか租税、公課といういわゆる価格論からいえば、剰余価値部分というものの変化を物財等の中に突っ込んで見ておる。これは非常に取り上げ方が低いわけであります。したがってこのことは、指数化方式の算定方式の結果的にねらうところは、生産性の向上によって投下する労働時間が減少するということが大きく反映する、もう一つは、反当収量が生産性の向上によって増加するということが大きく反映する剰余価値部分の変化というものは、ほとんど無視されておる。その結果再生産を確保するに足る価格というものがこれによっては出てこないのであります。このことは生産費、所得補償方式とは全く異質な、これは指数化方式であるといわざるを得ない第三点であります。  角度を変えて、農林大臣に伺いますが、農業パリティとこの生産費指数化方式というものについて伺いますが、農業パリティについては、大臣所管のごとく麦、大豆、なたねを適用しておる。生産費指数化方式については、豚の枝肉と米について去年、ことし採用をしておる。この区分は一体何で片方は農業パリティを使い、片方は生産費指数化方式を使うのですか。いずれも選択的拡大の大事な種目だ。大臣わかっているでしょう。
  228. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 米の問題については、生産費及び所得補償方式によるということはずっとそれが固まってまいっておるわけでございます。その一つの方法である指数化方式ということで米の場合は進められておるのでございます。それから麦の場合におきましては、これは間接統制と申しますか、いわゆる最低価格を保障するという意味になりますか、そういう意味においてこの麦の価格が決定されるわけでございます。この点は必ず全部政府で買い上げをするという制度になっておるものとは違うのであります。
  229. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私の質問にまともに答弁がありませんが、要するに混乱しておる、政府のそれぞれの指数の取り方が統一性がない。ただ私がここで言わなきゃならぬのは、労働時間の減少なり、あるいは反収の増加なりというものが生産性の向上によって出てくる。その結果、生産費が安くなった分はそのまま指数に反映するから、いわゆる指数化方式は農業パリティ指数よりもこれは劣悪な方式であると言わざるを得ない。  そうしますと、私は指数化方式の矛盾について締めくくり的に伺いますが、三十五年から生産費・所得補償方式を採用し、それがいわゆる積み上げ方式で五年の間それぞれ矛盾点を是正し、理論的に整理をしてきておる。まだまだ整理をしなきゃならぬ問題が山積しておる。それを前向きに取り組むということをしないで、突如として政府は四十年から指数化方式を単独これを採用したということは、三十四年以前に採用した農業パリティ指数よりもさらに生産意欲を減少させるような一つの指数をとったというこのことは、まぎれもなく歴史の歯車を逆転する暴挙であると言わなければならない。どうですか、大臣
  230. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これは指数化方式による場合においては、生産費及び所得補償方式による。これはそのとおり計算をしてまいれば出てまいるわけでございます。そのとおりでありますが、パリティによります場合、パリティの方法もいろいろありますけれども、この場合とはよほど違う。これは生産費及び所得補償方式というわけにはいきませんのでございます。指数化方式のほうがはるかに生産費及び所得補償方式に合致しておることは言うまでもございません。一つのものでございます。そういうふうにお答えをいたします。
  231. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大臣が何ぼここで大声を上げて生産費・所得補償方式の一つの方式であると強弁されても、私がいままで指摘した問題にとどまらず、まだまだたくさんあるわけです。この指数化方式というものの本質、性格は。これは断じて積み上げ方式を内容とする生産費・所得補償方式とは価格理論からいって異質なものです。  それでは私総理に伺いますが、冒頭に伺った一万七千八百七十七円、これは一万七千八百七十五円を六十キロにする場合に、端数の整理上二円を加算したというのですが、それと政府が米価審議会で諮問した試算の一万七千四百八十四円との差額のこの比較でいけば三百九十三円、これの内容は何でしょう。総理、指数化方式であなたはとったとおっしゃる。それに三百九十三円を加算したというその加算の内容は何ですか。これは総理が加算したのでしょう。総理から……。
  232. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは指数化方式に基づいてその後物価あるいは賃金等の動向を見て、そうして三百九十円加算した、こういうことにもなりますが、同時に千五百円上げ、こういうことで客観的にきまったんです。かように私お答えいたしましたので、ただいまその中身をこのうちの百円はどうだとか五十円はどうだとかいう、そういうような説明はつきかねます。
  233. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうしますと、三十九年の五百五十円というのは特別加算という名前の加算です。四十年は二百五十五円、これは予約奨励金という名前の奨励金である、したがって予約しない者には出ない。一応明らかである。今度のものは名前がない。何もないものですか。不義の子を生んだが、その子供の名前もつけれない、籍も入れられないというていたらくなものですか。
  234. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 別に変なものではないのであります。これはいわゆる指数化方式によってきまりました算定値に対しまして、生産性の向上を十分ひとつ農家に期待するという意味合いでこの三百九十を加えたわけであります。その結果から申しますと、昨年の四十年度の米価は九・二%の増、本年もやはり九・二%の増に相なるわけでございます。これは結果でございます。
  235. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 とてもわかりかねる説明ですが、要するに名前がないんでしょう。それで総理は衆議院でも本院でも明らかに政治加算だと言うておるから、まあ事務当局が一安心しておるようですけれども、経済企画庁長官に伺いますが、物価問題懇談会で米についてですか、米価について政府に勧告しておる。長官のこれは私的な諮問機関だそうですが、これでやはり政治加算についての所見等も出ておる、経済企画庁長官はこの物価問題懇談会の勧告をどう理解し、この名もなき私生児の籍も入れてないこういうものはどう見ますか。
  236. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価問題懇談会が米価の問題についてこれを取り上げてまいりました前提として、毎年毎年米価が農村の人たちと都市消費者との間で価格決定でいろいろ問題が起こる、これはやはり国民の間に明瞭に説明のできるだけできる米価にしたい、したがって、生産費・所得補償方式の十分な基礎の上に立った指数化方式、これでやれば、別段上がったとしても国民一般消費者も理解するだろう、また同時に家計米価の範囲内で米価を考えるならば、これは生産者米価の指数化方式と対応して、そう大きな開きがなくて財政負担が大きくなるということはないであろうと思う。そこで説明がはっきりしてくるから、国民もいずれにしても納得する米価が決定できるんじゃないか、こういうたてまえをとってこられたものと私は思います。私もやはり米価としてはできるだけ農村の方々も納得し、そうしてその算定方式が公表されて、そうして消費者の方々もなるほど納得できるということであれば、米価の値上がりについても問題は起きません。また消費者米価、それに対して財政的な措置をとるにいたしましても、問題は国民の理解のもとにやれる、こういうことだと考えます。
  237. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は、この名もなき要素が三百九十三円を加算されたという根拠は、経済合理主義の角度からつくった指数化方式のこれは所産です。したがって、政府はなぜ従来三十五年から三、十九年までやってきだいわゆる積み上げ方式による内容を逐次整理をして、生産費及び所得補償方式一筋にたようないか。それを放棄して指数化方式に切りかえた結果、それでは農民の再生産を確保するに足る価格にならないから、そういう政治加算をあえてしなければならぬという根拠がそこにあると思うのです。大臣どうです。
  238. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 米価の問題は生産費及び所得補償方式によるという原則でいっておることは、これはもう言うまでもないわけでありますが、そのいき方について積み上げ式でやってまいった、その積み上げ式においてもなかなかこれは理論的にもいろいろの問題が出て、ほし得ない分子がたくさん残されておる。その点をもちろん将来といえども引き続いて研究はいたしてまいりたい、またこれは当然そう進めていかなければならぬと、こう思います。したがって、何もそういうことでいきました場合において、積み上げ式でいきました場合においても、それぞれのそのときにおけるその年の生産事情あるいはその他の経済事情等を見て加算を加えてきておることは御存じのとおりであります。昨年も名前はついておりまするけれども、二百五十五円というものが加算された。それはすぐ理想からいえば、もちろん計算されたものでぴしっとやっていくのがほんとうでございましょう。またそうあるべきでありまするけれども、やはり経済現象でもあり、また生産の問題でもあり、多くの人々の関係の多いものでありまするので、ただその式で出てきたものをそのままもとに用いるわけにいかぬということは、その実態に合わさなければなりませんので、それぞれといろいろまた検討を加えて加算がされておるわけであります。今度は生産性の向上に農民が努力をしてもらうということを期待して加えたものであることだけをつけ加えて申し上げます。
  239. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それだけのことで生産性向上に期待するというのは、私から言えば、おこがましいと思うのです。従来三十九年までやった積み上げ方式にようなければ生産費・所得補償の計算の基本にはならないということです。  大蔵大臣に伺いますが、五十億、米の増産対策費というものは、米価検討の経過で出たといいますが、そのいきさつは一体どういうことになっておるんですか。
  240. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 本年度の米価決定にあたりましては、農民の希望といたしましては、二万円を上回わるとこういうようなことがあったことは御承知のとおりです。しかし、物価対策というような見地から見まして、また財政上の見地、そういうようなことを考えまするときに、私としては物価問題が非常に重大だと、こういうふうに考えますが、これが従来の米価の決定の秩序を——昨年は九・二%上がったわけですが、はなはだしくこえて決定されるということになりますると、たいへんな大きな影響を及ぼしてぐることになる、そういうふうに考えたわけであります。そういうような議論、考え方がある反面におきまして、この米価論議の間におきまして、米価もさることながら、やはり稲作の生産性を上げなきゃならぬ、そういうほうにこそ努力すべきだという議論がまた強く叫ばれたわけであります。そういうような間から米価は一本の形で一万七千八百七十七円、しかし、同時に生産性向上、それから稲作の増産、こういうようなものを考慮しながら、さしあたってこれという知恵はないんですが、ともかく知恵をしぼって何とかこれを実現しょう、その金額のめどは本年度で五十億円だ、こういうふうな要望がありまして、いい案ができましたならばそれを実行することにいたしましょう、また、これは米価とは関係がないのだから、食管会計の負担とせずに一般会計において支出をすることにしましよう、これはいずれ補正の機会がありましょうから、その際に予算を補正することにいたしましょう、かようないま考えを持っているわけであります。
  241. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その五十億円について、七月八日に政府与党了解事項というものが天下に公表されております。それよると、この五十億円はこの方式の遂行による効果が供出農家に均てんすることに重点を置いて検討する、その均てんするということはどういう方法手段で均てんをするのか、この五十億円の性格と内容、その均てんするという具体的な内容を大蔵大臣から。
  242. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私から申し上げるまでもなく、稲作の状況は、昭和三十七年をピークといたしまして、収穫量がだんだんと減ってきております。したがいまして、外国からの輸入も多くなる、また自給度も低下する、こういうことになっている。ところがその半面におきまして、米の集荷配給というものがうまくいっている。それは何といっても供出農家の努力ということがあると思うのであります。つまり供出量はそうい状態のもとにこれだけはずっと上がってきているわけであります。これは非常に私はとうといことである、こういうふうに思うわけであります。そういうふうなことを考え、稲作全体の生産性が上がるように、もしそういううまい方法がありますれば、それが供出の刺激にもなるように、こういうふうな角度からあれやこれやと頭をしぼりまして、そうして名案ができましたならば、これを補正として御審議をお願いしたい、こういうような気持ちであります。
  243. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 均てんするというようなことは、供出農家が供出した数量に比例して支出すべきだと思うが、そういうことと理解していいですか。
  244. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さような意味合いではございません。あくまでもこれは米価じゃないのでありまして、生産性または増産のための対策費である、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  245. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 米価審議会のあり方でもいろいろ伺いたいのでありますが、時間がないから一、二伺いますが、行政管理庁長官、あなたは自民党の党議の決定によって五月十日に申し入れを受けている。それには国会議員が基本構成員となっている審議会等についてという申し入れでありますが、その中に特に価格の決定に関する審議会等への国会議員の参加は厳にこれを抑制するものとするということで、米価審議会等二十審議会を上げてこの申し入れを受けている。これをどう理解し、今後どう措置されようとするのか、担当長官の所見を伺いたい。
  246. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 渡辺君に念のために申し上げますが、時間がまいっております。
  247. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 四月から自由民主党、並びに五月に同党小委員会からいま御指摘のような申し入れがございました。現在二十五の審議会等に国会議員の方々が構成員として参加されておりますが、この問題については先般の通常国会で政令、法案が通過し、それが第一段階、今後も明確な基準のもとに整理統合を続けてまいりますが、それと並行して、審議会の本来の任務なり、性格というものをこの際はっきりと検討しようというような、この際にはたして自民党から申し入れがありました趣旨が適切であるかどうか、また審議の内容によっては国会議員がむしろ必要なものもあるのではないか、いろいろな要素がございますので、この点はあらゆる要素を並べまして、十分慎重に国会とも連絡しながら決定いたしたいと考えております。
  248. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 渡辺君、時間は済んでおりますが。
  249. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 時間もないようですが、一、二点だけそれじゃ伺います。  米価という非常に国民経済に重要な関係のあるものについて、自民党から、審議会の構成員から国会議員をはずすという申し入れがある、これは関係閣僚と担当長官は相談するということですから今後の問題です。  それから、こういう大きな問題を国会で審議し、議決すべきではないかというわが党の衆参両院を通じての質問に対して、総理はすげなく、これは国会で議決することに反対の意思表明をされておる。これがそのとおりそれぞれのコースでばく進ずるならば、こういう重大な問題は、審議会にも国会議員が審議する機会もない、国会でも審議もしないし、議決もこれを拒否されるということになったなら、時の与党の多数ファッショによっていかようにでもこれは操作できるという悪例を残すことであって、私は断じてそういう方向を容認できないのであります。そういう両方のかね合いからいって、この審議をする国会でなお議決を経るということについて、もう一回、総理の再考の上での答弁を求めます。
  250. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 生産者米価を、運賃や郵便料金と同じように国会できめろ、こういうお話については、私はすでに結論を申しまして、反対であるということを申しました。どこまでも行政官庁の仕事だと、こういうたてまえでございます。まただだいま米価審議会の今後のあり方についていろいろ御意見があるやに伺っております。私は、今回の米価決定にあたって、米価審議会の方々も非常な協力をされ、熱心な論議を尽くされました。しかし、米価決定につきましてはなかなか国民の各階各層の方々の満足を得るような状況ではなかった、かように思します。その反省から、あるいは米価審議会のあり方に何らかのくふうをする必要があるのではないか、こういうようなこともいわれております。そういうことでございますから、米価審議会の今後のあり方については、各方面の意見を十分伺いまして、そうして善処したい、かように申しておるのでございます。この点を重ねて私の意見として御披露しておきます。
  251. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 生産者米価では国会の審議議決を経ないと、明瞭に答弁されましたから、消費者米価は国会で審議議決すると解釈して差しつかえないですね。
  252. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 生産者米価はただいまのとおりでございますが、消費者米価につきましては、予算等にいずれ出てくることだろうと思います。予算の審議を拒否しているわけではございません。そういう意味でございます。いわゆる消費者米価そのものの決定というよりも、予算の審議の中に入ってくる、かように御了承願います。
  253. 亀田得治

    亀田得治君 一言関連渡辺委員質問で、政府答弁が悪いものですから、非常に時間のむだ使いをした点がありますので、補充したいと思いますが一つは、この最後に米価審議会に関しての自民党の申し入れがあったわけですが、この点についての総理の見解を、現在どう考えておるか聞きたいわけですが、つまり米価は非常に重大問題、農民にとって。ある意見としては、御承知のように、これはもう人にまかさないで、農民自体が買い取ってくれる政府と交渉を直接やりたい、こういう意見もある、あるいは、しかし、それではなかなかたいへん手続もあるから、ともかく国民を代表し選出されてきておるのは国会議員なんだから、国会の場において論議をしてきめたらいいじゃないか、こういう意見等も非常に強いわけなんですね。ただ、まあそれに対して政府のほうは、いやこれは行政事項だ、まかしてくれ、こういう立場で、佐藤さんは国会で議決するということには反対のようであります。そこでお聞きしたいのは、その点じゃない、その点じゃないので、現在は国会議員が米審の中に入っているわけですね、それを排除しようという意見が出ておるわけなんです。これについての意見を聞かしてもらいたい。私は最初に申し上げましたように、農民にとって重大だから、農民に直結しておるところの国会議員の諸君はこれにタッチしたい、これは議員もタッチしたいし、農民もそう考える、これはあたりまえなんです。しかし、それはあなたとしては無理だと言うが、現在の制度はそれらのものを調和したような状態になっておるわけです。いろんな情勢からして非常に今度の米審が荒れた、荒れた原因の追究などは一方的に考えたらいかぬですよ、だから、そういう一時的なことをとらえて、そうして国会議員を米審から排除してしまう、私はもってのほかだと思う、こういうことは。その点についてのあなたのお考えをこの際ちょっと承っておきたい。
  254. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米価審議会のあり方につきましては、ただいまお尋ねになりました点をも含めて、各方面の意見を伺った上で善処する、かように私申しております。
  255. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 渡辺君の質疑は終了いたしました。
  256. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、小林君。
  257. 小林武

    小林武君 文部大臣お尋ねいたしますが、五歳児入学ですね、五つになったら入学する、五歳児入学と、義務教育一年延長という談話が発表された、このことについては、私もやはり検討に値する問題だと思う。検討に値する問題であるけれども、しかし、なかなかいろんな面で慎重を要さなければならないとも思うわけでありますが、これを旅先の松本で、突如、文部大臣から発言があったということについては、先ほど申し上げたような慎重を要する問題として、一体これは文部大臣のどういう意図がそうさせたのかということを心配しているものなんです。これについての御意見を承りたい。
  258. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 新聞の記事は、紙面の節約の関係もあるでしょうし、ニュースになるところだけ書かれるものですから、若干私の考え方が徹底していない点があるわけでありますが、ちょうど松本へ旅行しましたときの記者会見で、その前に教育研究所の平塚所長が総理に会ったときに、何か義務教育の話をされて、延長の話をされたということがどの新聞かに載っておったようです。それに関連して質問が出ました。実は私の言いましたのは、義務教育の延長は一つの考え方で、いま世の中にそういう意見がある。現在出ておるところでは、灘尾文部大臣の時代に、幼稚園義務制ということを言われた、あるいは一部には高校義務制という説がある、しかし、もっとそれ以外にアイディアがあるのではないか、研究課題にすべきアイディアがあるのじゃないか、こういうことを言いました。そうしたら、それはどういうのだと言うから、それは底を一年下げて義務五歳就学、そうすると義務教育が現在九年なのが十年になる、こういう見方もあると思う。高校義務制というのは、三年も一ぺんに義務制にするということは、経費の面でなかなか財政上すぐ許すかどうかわからぬ、幼稚園義務制にしても、幼稚園義務制になれば、二年義務制ということになれば、これも財政の都合がある。もう一つ中間的に一年延長する、九年を十年にする、底を一年下げて五歳就学という考え方がある。これらは一つのアイディアとして、いずれこういう問題は中教審で十分審議をしてもらって、そういう現場の人や専門家の意見を総合した上で最終的に結論を出すべきものだと思っておるというような話をしたわけで、それについて、結局私が五歳就学の義務教育延長説だけを言ったかのような報道でありましたが、実態は実はそういうものでありますから、この機会にその実体を、かような機会ですから、明らかにいたしておきたい。
  259. 小林武

    小林武君 そうすると、これは実施を前提とされた意見ではないわけですね。
  260. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) もちろんこのような重要な問題は一文部大臣決定すべき事柄ではありませんで、御承知のとおり、重要な教育施策については中央教育審議会の議を経べきことでありますから、当然そういたすべきもので、一つのアイディアにすぎないわけであります。中教審も、現在、後期中等教育の審議中でありますが、これらの審議が終わったら、そういうことも一つの課題であろうというようには考えておりますが、われわれが単独に決定をすべき事柄ではない、そう思っております。
  261. 小林武

    小林武君 ちょっとそこらがおかしいのですが、中教審に諮問するということは、教育に関係するものはやはり重要視しているわけです。文部省でいろいろ検討するということであれば、教育研究所というような重要なものがあって、直ちに実施するとかしないとかいうこと以外のものでも、これは研究が自由に行なわれる。中教審で議題になっていくということになりますと、これはやはり実現が近いというふうにわれわれ理解するのですよ。これはあたりまえなんです。米価審議会ばかりじゃない。だから、この点については全然実施するという考え方がない。そうすると、われわれがおどらされた、国民がおどらされたということですかね。
  262. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御承知のとおり、いまの教育制度は六・三・三でありまして、これについては、どうも中学三年というのは非常にせせこましくて、子供の人間形成の上からも好ましくないというような意見もあります。そこで、実は私ども文部省として相談をいたしておりますのは、現在やっておられる後期中等教育の中教審の審議が大体秋から年内には最終答申が出るだろうと思います。そうすると、次に中教審で課題にしてもらうものは何かということをいま検討しておるわけであります。次の課題は、やっぱりとりかかりましても、いろいろな意見が世の中には出てきますので、これを仕上げるのには二、三年はかかるかもしれない。そうすると、次の課題としては、やっぱり義務教育年限の問題をはじめ、小学校六年、中学一二年、高校三年という、この組み合わせ方が妥当であるかどうかということについて真剣に中教審で取り組んで、学識経験者、専門家の方々に検討をしてもらうべき事項ではないか、こう思っておるわけであります。したがって、その時期がきて中教審に文部大臣から諮問をいたしますれば、大体ゼロになってしまうということはないと思いますので、何がしか名案を生み出して、名案でそういうものが適当な時期に実施される段階になる、こういうことは言えると思いますが、現段階はそういう状況でございます。
  263. 小林武

    小林武君 だいぶたよりない話になってまいりましたが、これはやっぱり文部省でやっていることが私はちょっと逆なような気がするのですよ。これは文部大臣の頭の中にあったかどうかは知らないけれども、あのことをあなたがおっしゃる二、三日前ですか、アメリカのジョンソン大統領が四歳児ですかの就学ということをとにかく一応意見として述べている。それから、イギリスでもやはりこれは十一年制の義務教育ということを目下検討しておる。教育の制度の問題を論じていく場合には、義務教育の段階の扱いというものは私は非常に重要な問題だと思う。でありますから、先ほど申し上げたように、こうした問題に少なくとも文部大臣が関心を持ったということは、私は大いに好感が持てる。教員の悪口なんかを言って歩くような文部大臣から見れば、だいぶよろしいというふうに考えるわけです。しかし、その何だかあやふやなことで私は非常に不満なんですけれども、これは総理大臣にちょっとお尋ねいたしますが、やはり教育改革ともいわれる一つの制度上の問題については、これはまあ文部大臣がどこかで言ったとか何とかという問題でなしに、日本の場合には考慮の中に入るべき問題だと思う。でありますから、これが何というか、教育の問題ということになるとわりあいに大事にしているような顔はしていますけれども、実質はあまり重く見ないというふうに、誤解かもしれませんけれども、若干そういう感じがする。もしこの問題を取り上げるということになれば、これはもう一文部省の問題ではないと思うのです。将来の国民の上に非常に大きな影響を与える問題ですから、これは重大な問題だ、こう思うのですが、これはあれですか、閣僚の間において、あるいはあなたの党の中においてこういう問題をとにかく早晩取り上げるというような一体空気があるのかどうか、これをちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  264. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 教育の問題は、ただいま御指摘のように、まことに重大でございます。政治家たる者これに関心を持たない者はない、かように私は断じてもいいと思います。私は、いままでも青少年教育についてしばしば触れましたが、私が積極的に佐藤内閣としてやりたいことはと言われれば、教育の充実だと、かように考えております。しかし、ただいま言われるような、この就学年齢の引き下げとか、あるいは中学校の三年を四年、あるいは五年にするとか等々の具体案については、まだ全然私持っておりませんし、また、先ほど文部大臣からも説明いたしましたように、実は自分のアイデアを話をしたらそれで記事になったんだと、こういうことでございます。私は、今日この段階におきましては、これは中村君のアイデアだろうと、かように思いますが、しかし、教育の問題については真剣に取り組みたいと、かように私考えております。
  265. 小林武

    小林武君 この問題については、最後に一つ要望を申し上げておきますが、先ほど来申し上げておるように、検討に値する問題だと、このことについては私はそう思う。そこで、文部大臣は、中教審にかけて、中教審の中でこれがいいか悪いかなにか品定めをしてみるというような式の、これはやっぱりやめられたほうがいいと思う。これは、教育研究所の中で所長がいろいろ検討して意見を発表していることについては、私も非常に関心も持っているし、その研究もなかなかよろしいと思う。しかし、中教審に入るということになると、これは実施ということを前提とした段階になるわけで、でありますから、そういう場所で議論されるのはどうもちょっと、やはりいまのような状況の中では少し早いのではないか。そういう意味で、ひとつ、今後この問題については十分慎重にやっていただきたい。  それから、なおこの際申し上げておきたいんですが、中教審の組織そのものについてももう少し検討する必要があるんじゃないか。私はまあ再々憎まれ口をきくわけでありますけれども、中教審というものが、日本の教育を決定するいろいろな方策を立てるのについて妥当な人選をしているかどうかということについては、私は私なりの意見を述べて、あなたにもいろいろ御注文も申し上げた。でありますから、これはいま具体的にどうしろというようなことではありませんけれども、相当考慮を要するのではないかということも申し添えておきたいと思います。  それから、文部大臣一つお尋ねをしておきますが、なにか日教組との間の交渉の問題で、だれだれとでなければ会わないというような、こういうことを言って、両者の間に意見が合わない、こういう事態が起こっておる。ようやく文部省と日本の教職員組合の代表が話し合いをして、とにかく教育上から見れば好ましい状態が生まれてきたといってわれわれが喜んだのに、そういう事態がまた起こっている。だれがそのさしがねをしたのか知りませんけれども、どうもそういう好ましくないことが起こっているやに聞いておりますが、これは事実ですか。また、だれだれでなければ会わないなんというようなこと、これは一体文部大臣の本心なのかどうか。私は、そういうことは佐藤総理大臣もお考えになっておらぬと思うのであります。そういう約束でもなかったと思う。これはどうですか。
  266. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お答えを申し上げます。実は私が日教組の首脳部と会談を始めましたのは、ドライヤー委員会も、相互の不信感があまりつのり過ぎておるというような指摘をされましたので、忌憚なく会談をして相互の不信感を十分に除去する努力を続けることがよかろう、こういう観点からであります。ところが、実は、始めてみまして私は少し改善を要すると思っておりますことは、毎時の会合に、やはり日教組の側では、宮之原委員長、あるいはそれに副委員長、書記長、何とか部長と、こういうふうなぐあいに相当の人数が出ていらっしゃるわけで、まあこれもけっこうなんですが、大体なにもトップレベルの会談でなくても——会談でないほうがむしろ適切のような、項目的に大ていが七項目か十項目ぐらい、紙に、要望事項というか、要求事項といいますか、そういうものを書いてこられて、その解説で実は終わってしまうようなことが多いわけです。これはせっかく不信感除去の目的を果たそうということから見るとあまり適切でない。その場所で大いに突っ込んだ話をしようと思うと、やっぱり組合側もいろんな部長やいろんな人が出ていますから、委員長としてもどう腹で思っておられるか、忌憚のない意見の交換はできない。そこで、そういうような文書に書いて持ってこられるような事柄は、所管の局長なり、課長はもちろんのこと、次官なり、事務当局で大体話は間に合うことです。私よりはむしろ事務当局のほうが適切なんだから、それはひとつ事務当局のほうへ出していただきたい。いつでも事務当局は会わせるようにいたします。決して会見に対して拒否や何かは、都合のつく限りはいたしません。そこで、私の会談は、何とかひとつ、委員長とせめて書記長クラスで、そしてほんの二人ぐらいずつで忌憚のない話をすることが、この会談の道を講じておる趣旨にかなうのではないか、だから、ぜひそうしてほしいというのが一つの考え方でありまして、まだそれについて意見の合意を見ませんので、しばらくこのところ会談が遠のいておる。私はまことに遺憾に思っておるわけでありますが、これはどうかひとつ、お互いに日本の教育を改善し向上するために、胸襟を開いて話せるようなことがあり、そしてまた別途、形式的な会見が必要なら、それはまたそういうスケジュールを組んでもいいと思うのですが、私の考えはそういうことで、連絡にあたっております事務当局に実は私の発意で指示したので、私はこれが妥当である、こう思っておるので、何とか日教組の首脳部にもこの私の考え方に同調して、すべてこれでいこうというのではなくても、そういう道を開くことが、私は、不信感除去の目的を果たしていく一番大事な点である、こういう実は考え方でございます。
  267. 小林武

    小林武君 どうもそこらが私にとってはあんまり理解できないのですが、組合というところは政党とちょっと違うのです。五人ならば胸襟を開かれないなんというあれじゃないのです。帰ったあとで、ものの言い方が悪いから委員長がとっちめられたとか、書記長がきりきり舞いやったとか、こんなことはないのが、これがやっぱり組合だと思う。だから遠慮なくおっしゃっていただいていいんだと思うのです。それから、また、いまお話の中に、形式的な文書をずらり並べてそれを個々にやるというようなことは、文部大臣としても時間の経済上、そういうことでなく、もっと突っ込んだ話なんだということであるならば、大臣のほうからそうおっしゃって、これはひとつ事務段階でやって、こういうことを話題にしてぼくは話したいとかというような、やはりこういうことをしていただけば、人数の何人か、一人や二人多いということが胸襟を開かれないなんというようなことにはならないと、これはもう私は断言してよろしい。でありますから、まあこれはそんなことやっていたら時間がなくなって困りますから、こういう問題については、そういう形式的な議論の上でまた問題をぶり返していくということは、だれのためになるというわけでもございませんから、どうぞひとつ、あまりむずかしいことを言わないで、お会いになっていろいろと文部大臣からひとつ御注文があったらお出しになったらいい、こう思うのでありますが、どうでございましょう。
  268. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) いまも申し上げたように、私はすべてそれでなきゃ困るという意味じゃありませんが、実は、宮之原委員長とか槙枝書記長と非公式の会談をしたときには、相当お互いに理解点に近いところまで話がいくんですけれども、やはり大ぜい並ぶと、むしろ政党のほうが、佐藤総裁がだれかに会ってきめたらこれはさまっていきますけれども、なかなかどうも組合のほうがもっとむずかしいのじゃないかと、あなたはそういうことに経験がありますからちょっと感触は違うかもしれませんが、まあそういう次第でございますので、私ども考慮してまいりたいと思います。
  269. 小林武

    小林武君 考慮してまいりたいというのは、今後、この問題ではいざござが起こるようなことはないというふうに理解してよろしいですね。
  270. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) まあ私としては、一回ぐらい、そういう胸襟を開いたトップレベルだけの少数の胸襟を開いた会談をやろうじゃないか、いつもそう同じことじゃ意味をなさない。だから、それじゃこれをずっと続けようといってわれわれは考えているわけでもないんだから、ということを言っておるわけですから、いまのところではまだここのところしばらく何らの連絡がありません。斎藤初中局長のところにはしょっちゅう組合の関係者も来るわけですが、ここ組合のほうも大津の大会があったり、いろいろな仕事が忙がしいと見えて、ここのところしばらく連絡がとぎれておるわけですが、そういう連絡の機会に十分に話し合いをするようにいたしたいと思います。
  271. 小林武

    小林武君 それでは問題をひとつ変えまして、外務大臣お尋ねいたしますが、この外務大臣の御答弁を見ておりますというと、北ベトナムの浸透ということばを使っております。浸透とか、あるいは進攻とかいうことばが政府の答弁の中には多いわけでありますが、この点は侵略ということと同じ意味にお使いになっているのでしょうか、どうか。
  272. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 浸透は浸透、侵略とはちょっと違うと思います。
  273. 小林武

    小林武君 それではどういうことでしょう、浸透というようなことであるならば、私は特別これは問題にならない、外交上のことは皆さんのほうが専門家でございますから。侵略ということになると、これは侵略に関する外交上のいろいろな問題点はあると、これは何なんですか。
  274. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ことばをかえて言えば、武装した軍隊を入り込ませる、こういうことでありまして、侵略ときわめて近い、それにつながる行為である、こう私は解釈しております。
  275. 小林武

    小林武君 侵略に近い、侵略ではないと、そういうことになると、一体アメリカがこれに対して、けさ以来亀田委員のるる述べますようなさまざまな侵略を行なうのは、これはどういうことになりましょうか。
  276. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 結局、武装した軍隊を入り込ませて、そうして国内の破壊活動に寄与すると、これを寄与すると申しますか、そういうきわめて有力なる前提行為である、こう思います。
  277. 小林武

    小林武君 国際法上の侵略とはこれは違うということですね、それじゃ。
  278. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 浸透というのは、その軍事行動の形を表現するものでありまして、いわゆる侵略というやつは、これは国際法上の用語になっておりますが、もっぱら武装した軍隊を入り込ませる、その形を表現したことばである、こう御了解を願いたいと思います。
  279. 小林武

    小林武君 先ほど来聞いているのだけれども、ちょっとぼくはわからぬのだな。国際法上の侵略であるのかないのか、浸透というのは一体国際法上にはどういう規定があるのか、これはしてかまわないのかどうか、そこら聞きたい。
  280. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 侵略ということばは国連憲章にもあるわけでございますが、浸透ということばは国際法上の用語じゃないわけでございまして、武装した人員を隠密に忍び込ませるという姿を如実にあらわすために使われておる通俗の用語でございます。ただ、侵略という国際法上に言いますときに、これは制服を着た武装tた部隊が、隊伍を整えて、白昼堂々とその国境を越えるときだけが、侵略とか武力攻撃に該当するのじゃなく、隠密にそういう武装した人員を送り込ませるというのも、そういう形の侵略もあるわけでございます。北越が南ベトナムに対してやっている行為も浸透でございますが、同時にそれが武力の様相を伴っておりますので、これは侵略に該当する、こういうことでございます。
  281. 小林武

    小林武君 外務大臣といまの条約局長の話は違うのじゃないですか、国際法上の侵略じゃないとこう言うのでしょう、あなたは、あっちは侵略と同じだと言うのです。
  282. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 浸透ということばは国際法上の用語ではないと、こう申し上げたのであります。
  283. 小林武

    小林武君 それは委員長判断してやらなければだめですよ、そんな詭弁を弄しちやいかぬ、ぼくは何も用語のことを聞いているのじゃない、具体的な問題を通して用語を説明してもらっている。何もとんでもない関係のないことの用語を聞いているわけじゃない。言い直すなら、椎名さんはここで、侵略と同じですと、こう言えばいい、条約局長と同じに。それを言わないのはおかしいよ。そんな何ぼ外交官かしらないけれども、外交担当者かしらぬけれども、いいかげんなことを言ってちょろまかすようなことを言つちやいかぬよ。
  284. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 浸透ということばであらわされる行動としましては、必ずしも武装した人員を送り込ませる場合だけじゃないだろうと思うのであります。かりに政治工作員みたいなものを浸透させる場合には、これは侵略にはいかなる意味においても該当しないわけであります。したがいまして、先ほど私は、武装した人員を送り込ませるような形の浸透であるならば、これは侵略に該当する、かように御説明申し上げたわけでございます。
  285. 小林武

    小林武君 まあこの問題は、あとで速記録をお調べになれば、あまりはっきりしたことをあなた方おっしゃっていないということは明らかになると思うが、そうしますと、一体浸透を続けている、続けているのかどうかしらぬけれども、浸透という事態に対してアメリカがあのような行動をとることは、これは侵略になりませんか。
  286. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) アメリカは、侵略を受けております南ベトナム側の要請に応じて、武力をもってこれの防衛を援助しておるわけであります。国際法上の観念をもって説明すれば、これは国際連合憲章第五十一条の集団自衛権の行使として許されている行為でございます。
  287. 小林武

    小林武君 これはあなた違っていますよ。それはあなた浸透だと、こう言った、いまは侵略ということばと取りかえているのだな、これはおかしいのだ、侵略ならば明らかにこれに対してどうこうと、あなたたちの意見ですよ、これは。それは言える。浸透という違う次元の問題について、どうして一体国連憲章五十一条の適用ができるのか。
  288. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 侵透であれば侵略でない、侵略ならば侵透ではないはずだ、そういうふうに二つの観念が同じレベルで全くまつ二つに分かれるものじゃないのでありまして、侵略で、侵透の形で行われるものもあり、侵透の形で行なわれないものもある。現在の侵透は、武装した人員を送り込んでやる侵透であるから、これは侵略に該当するというわけでございます。
  289. 小林武

    小林武君 なかなかよくわからないお話でございますが、それではもう少し侵略について、侵略行動というものについて、侵略の定義ですね、国際条約によって侵略ということの定義が行なわれた、試みられたけれども、これは完全にまだいっていないということは事実だ。そうすると、そういう問題について一体あなたたちはどの程度の認識を持っておるわけですか。
  290. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 侵略ということを定義づけることはかえって適当でないというようなことで、なかなか定義づけについて一般的な国際条約として成立したものはございませんが、これは御指摘のとおりでございますが、また一つのよりどころとして、先例として申し上げますならば、ソ連その他の東欧諸国の間に、一九三三年に結ばれた侵略の定義に関する条約というのがございまして、その中には、「他の一国に対する開戦の宣言」、これがまず第一に掲げてございますが、その中の一つにはこういうのが入っております。「各自の所属領域において編成されて他の一国の領域に侵入した武装部隊に対する支援の付与、又は、被侵入国の要求があるにもかかわらず、右の武装部隊からすべての援助若しくは保護を奪うために、各自の領域においてなしうるすべての措置を執ることの拒絶」、これが侵略に該当するというような定義になっております。
  291. 小林武

    小林武君 これに対して日本の外務省はどんな見解を持っておるわけですか。
  292. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この条約の規定そのものに直接政府の見解を申し述べる筋合いではないかと存じますが、具体的な内容につきましては、先ほど来申し上げておりますように、武装した人員を隠密に忍び込ませるような形の侵略も侵略に違いない、こういうふうに考えております。
  293. 小林武

    小林武君 この点はいずれまた時間があったら触れることにいたします。  外務大臣お尋ねいたしますが、捕虜の裁判の問題ですね。このことについて反対であるという御意見を述べられている、公的な御意見を述べられておるように聞いておるわけでありますが、このことについてベトナムにおける捕虜の裁判に反対される根拠はどういう根拠に立っておられますか。
  294. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ことばが少し足りなかったかと思いますが、ただ単純に捕虜という場合に、戦犯の裁判にかけるべきではない。しかし、捕虜であると同時に戦犯の裁判にかけられるような行動がもしあった場合には、これはその点をつかまえて戦犯の裁判にかけるということも成り立ち得ると思います。
  295. 小林武

    小林武君 これはおもに飛行機乗りであるわけですが、どういう場合にこれは戦争犯罪人として裁判にかけられることになりますか。
  296. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長をして説明させます。
  297. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 捕虜になりました者が、捕虜になる前に戦時国際法規違反の行為をしておったような場合には、捕虜にした国は戦争裁判にかけられるということになっております。
  298. 小林武

    小林武君 どういう場合ですか、具体的に言いなさい。具体的な問題じゃありませんか。
  299. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 個人の兵隊が、たとえば無事の住民と知りつつ殺傷するというような行為をするとか、あるいは自分のほうにつかまえておった相手国の捕虜を残虐な行為をして苦しめて、それが逆に今度自分が捕虜になったときにそのことが相手国にわかっておって、今度は自分が裁判にかけられる、そういうような例が具体例としてはあり得ると思います。
  300. 小林武

    小林武君 まあそのことについては、お互いに日本人としてきびしい一つの体験を持っておるわけですからね。あなたに申し上げますが、さっき亀田委員から出ましたロット・ロップの使用によって、これは明らかに無事の国民——戦闘員に対しての、あるいは戦争施設に対しての攻撃ではないということは明らかになっておる。この場合はどうですか。
  301. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 私はその兵器の性質をよく存じませんが、従来の戦時国際法上は不必要に苦痛を与えるような兵器は使っちゃいけないということになっております。
  302. 小林武

    小林武君 そうじゃない、そういうことじゃない。先ほど来兵器のことについては非常な長い時間にわたっての説明があったから省略いたしますが、あれは明らかに戦闘員でない者を殺戮するところの目的のために使われておる。そうすると、これは一体、人道に対しての罪、戦争犯罪、そういうことにならないかどうか。これは外務大臣お尋ねします。
  303. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういう場合にそれを使ったのか、そういうきわめて具体的な問題を分析して初めて、これは普通の戦闘行為であるか、それとも非常に、それ以上の残虐な人道上の問題であるかということになるわけでありまして、ただ、この兵器を使ったからどうのということじゃないと思います。
  304. 亀田得治

    亀田得治君 関連。午前の質問の際に、時間の関係で割愛したわけですが、たとえば水利施設に対する攻撃、これはもう何ですよ、外務大臣は北ベトナム側の声明とか、そういうことじゃなしに、これはほとんど公然のことになっておりますよ。私が午前中示した画報の中にも、水利施設の攻撃を防ぐために暗渠にすると、水利を。そういったようなことまで部分的にはやられておるわけなんです。そんなことを戦争の相手方だからといってデマを飛ばせるものじゃないですよ、固定的な施設なんですからね。どこそこで人がどれだけ死んだとか、そういう問題については、これはあとに残らぬことだから、敵味方なかなかそこの数字などはむずかしい点があるが、水利の施設といったようなことは軽々しく攻撃できるものじゃない。北ベトナムのほうは、ベトナムの監視委員会のほうにもこれは提訴をしておる問題なんです。それで、たとえば第二次大戦の結果ニュールンベルグの戦争裁判があった。その際、ナチスのオランダ司令官ですね、これが絞首刑になった。この理由は、オランダで大事にしておる提防ですね、水利、あそこでは御承知のように、非常に大事なのです。提防水利は。ベトナムもそれに劣らないくらい重要な問題のようです。私は行って見ないから知りませんが。ところが、オランダでその施設を報復的にナチの占領軍司令官が破壊させたのです。それで絞首刑になっているのです。戦争裁判で。私は、これはもう理論ではなしに、具体的な判例があるわけなのです。ちゃんとイギリスやアメリカ、全世界が認めた。そういうそれに類したことが行なわれておるのですよ。私は、捕虜の扱いといったような問題、これはなるほど慎重にやらなければならぬと思います。しかし、それほど言うのであれば、一体米軍が北でやっていることがどうなのか、その点の私は反省が必要だと思うのですよ。午前中に示したああいう施設の攻撃に必要でないような爆弾を現に使う。施設の攻撃をしておる。私は、これは非常な戦争犯罪に近い行為だと考えておる。もう正確に私は言うのですが、戦争犯罪そのものと言っていいかもしれない、それくらいに思っているのですよ。そういう点についてどうなのですか。小林君からもその点をお聞きになっているわけですが、水利施設の点についてお答え願いたいと思います。戦争犯罪ですよ。
  305. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはいま申し上げたように、その場合場合によって判断が違うと思います。それで、それを使っては戦争犯罪の問題を引き起こすような場合に使えば、これは問題になる。しかし、それが用いられる場所によってはそういう問題にならぬということになると思うのでありまして、これらの問題は事実の問題であって、事実に基づいて判断されるべき問題だと考えます。
  306. 小林武

    小林武君 総理大臣お尋ねをするのですが、私は、やはりなぜいま捕虜の問題とか侵略の問題で議論されているかということを取り上げたときに、なかなか今度の場合は根深いものが両者の間にあるということです。両者の間に根深いものがあるということは、私はやはり日本の立場でものを考えなければならない。こういうことの結果がわれわれが一番おそれているところの、いわゆる戦争に巻き込まれるというようなことにならぬのかどうかという、こういう心配をするのは当然だと思う。で、これは椎名外務大臣の話を聞くと、米中戦争なんというものは起こらない。起こらないという理由の中に、アメリカの側から考えると起こらないという妙なことを、ただし、これは新聞記事であるから、わしはそう言わぬと言われればこれはやむを得ないけれども、そういうものの言い方をしている。私はそんなのんきな話ではないと思うのです。日本にどういうかかわり合いを持つかというふうに考えたときに、根深い対立感が起こって、ホー・チ・ミンのアピールなどもわれわれはあまり軽く考えちゃいかぬ、こう考えるときに、一体いまの状態をどうするのか。日本が日本の置かれた立場の中においてどうするかということはもっと真剣に考えなければならないと思うのですが、どうもあまり心配するなとか、総理大臣も、心配はしているけれども、チャンスがあるまで待とうというような答弁がいままであったように思うので、一体われわれの考え方というのはおかしいのかどうか、あまりに先に進み過ぎているのか、あるいは杞憂であるのか、この点はやはりこの席でもってはっきり御答弁をいただきたい。
  307. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 何だか御答弁をいただきたいといって迫られると、私自身が戦争でもやっているような錯覚を起こします。また、私自身がアメリカを積極的に支援しているように見られますが、私はさような状態ではございませんから、その点の誤解はないようにしていただきたい。皆さんと同じように、どうしたらこのベトナム紛争を平静、和平をもたらすことができるか、これを考えておる。その立場でやはりいろいろ意見も交換してみたいと思います。私は、ただいま言われますように、あるいは捕虜の待遇をどうするかとか、あるいはその爆撃が平和な人たちにまで害悪を流しておるから、これをやめろとか云々の御議論はございますけれども、とにかくそういうような議論をせざるを得ないほどただいまのベトナム紛争というものは悲惨なものだ。これは人間生活の面から見ましてたいへんな危険な問題だ、かように思うからこそ、一日も早く平和をひとつもたらすように努力しようじゃないか。それにはやっぱり話し合いの場を持ちなさい、そうして話し合いの場を持って、そうして自分たちの主張を堂々とその場で話をしてください。日本の国は、私が申し上げるまでもなく、平和憲法ができております。国際紛争は武力によって解決しない。与えられた方法は、いわゆる話し合いの場において話し合いで問題を片づけるということでございます。私はこのことを関係各国も同じように取り上げるべきじゃないか、これこそが最も大事なことじゃないか、かように思うのでありまして、私は、そういう意味で心配をしておられるそのお気持ちは社会党の方もわれわれも同じような気持ちである、これを御理解いただきたいと思います。
  308. 小林武

    小林武君 私は、まあいい答弁だというような話を小声でおっしゃっている方もありますけれども、やはりそれはどいい答弁だとは私は思わない。なぜかというと、焦眉の急に迫ったような問題だと思うのですよ、この点は。それは外務大臣が何とおっしゃろうとも、そんなに絶対この戦争が拡大していかないなんということは考えられない。これはジョンソン政権においてもそういうような考え方があるらしい。いまのままの状態でいっても、これは社会主義諸国ではこれに介入すまいというような見解に立っている。これに大体同調したのが、これが椎名外務大臣の大体答弁になっている。しかし、具体的に言えば、先ほど来私一、二の例を申し上げておるように、捕虜問題で一つこれがわれわれが心配しているような状況が出てきた場合には、これはやはり重大なことになる。これはそうわれわれが安心していいような状況にはならない。その際、やはり侵略の問題だって、これはどっちが侵略したかというようなことについてだって、いまのようなあやふやの見解をとっておったのでは、一体ものごとの解決の道にはつながらないと私は判断するのです。ですから、非常に焦眉の急に迫った問題と判断するならば、やはり一日も話し合いを早く持たれるようにということであるならば、平和の基本的な段階に達するような前段的な一つの手だてというものが示されなければいかぬと思うのですよ。それが私は政府責任だと思うのですよ。話し合いを一日も早くやってくれと、こういうような願望だけではだめだ。具体的に日本としては一体とり得べきものは何なのか。前段的には一体どういう態度をとるべきなのか。さらにその次には一体どういうことを双方に申し入れるのかというようなことがなかったら、これに私は願いだけはたいへんけっこうだけれども、実を結ぶ結果にはならない。だれが考えても、いまの場合において、どうでしょうか、だれかが第三者の仲介によってものが固まるなんという状況にはないと思う。全部がそれぞれ責任の立場に立って強力な働きかけをしない場合においては、これはなかなか平和を取り戻すということはできないのじゃないかということを考えるからそういうことを言うのです。具体的な策が示されないところに、私は非常にまだ問題点が残っていると、こう考えるわけです。この点について一体どういうお考えを持っているか。
  309. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ここにたいへんなむずかしさがある。小林君の御心配のとおりでございます。私は、しかし、この正月、椎名君がモスクワに出かけた、そしていろいろ話あった、また、最近ラスク長官がたしか日米合同会議の際に私自身も親しく話をした、これなども一つの機縁だと、かように思っております。新聞ではウィルソン英国首相がモスクワに出かけた、あるいはインドの首相もモスクワに出かける。いずれもがベトナム問題の和平への努力をしようとしている、ウィルソン首相は一体何と言ったかというと、出かけて行って、完全に意見は一致しなかったが、しかし、得るところは非常に多かった、かように実は申しておる。私は、あらゆる国が同じような意味合いの努力を続けておる今日のこの状況、これをやはり率直に認めてやる。そして政府に対しても御鞭撻はいただきまするが、ただ政府を責めるばかりでなく、やはり一そう鞭撻してやる、こういう意味で具体的な御提案を願いたいと思います。私は、ただいまのように私どもが考えられる方向においては誠意を持って努力を続けております。
  310. 小林武

    小林武君 私は、先ほど来の外務大臣並びに条約局長の間の答弁の食い違い、浸透は何であるとかということを考えてみて、やはりこれはなぜそういうことが起こってきたかというと、ベトナム戦争というのは、本来、内戦だということだと思うのです。この内戦であるという事実をとにかく認めないからいまのようなあぶなっかしい話が出てくる、何だかわけのわからないことを言っている。これはとにかくまともな日本語にはこんなことの解釈は成り立たないということを私は感ずる。同時に、いま総理大臣が言われるところの、話し合いのきっかけをつかまなければこれは解決つかないということも、これも同様である。こういう角度に立って、一体平和の基本的条件としてわれわれは何が必要かということになったら、私は、北爆を停止するということについて日本の政府が積極的にやはり働きかける必要があるのじゃないか。これができないという理由が、私はこれは停止するかどうかは別として、堂々とそのことを主張するという態度は私は日本にあってしかるべきだ。日本の安全保障にかかる問題だこれは、他人と心中はできない、こういうことを考えると、北爆の停止をまずやる、外国軍隊も基地も撤廃する、こういうようなところにどんどん進んでいかなければならない。さらにはウ・タント事務総長という立場にあっても南ベトナムに対する一つの提案をしておるくらいでありますから、私は、その立場から見ればもっと気楽にやれるのじゃないかと、このように考えるのですが、これはいかがでしょう。
  311. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお話については、これはもう議論済みといいますか、私ども意見を申し述べたように思っております。私は、北爆、これは一体どういうわけで行なわれておるか、これがいわゆる南における破壊活動に対する北側の援助、その援助力を小さくする、縮小する、弱めるためにいろいろ北爆等が行なわれておるのでありますから、これはやはり内乱だとか内紛だとか、簡単に片づけられておりますが、これはやはり南ベトナム内における破壊分子、こういうものがなくなるようにしない限り、北爆だけやめろということは、これはどうも意味がないのじゃないか。私は、ほんとうに平和を招来するためには、関係のところのものが全部が打ち方やめと、こうなって、これから先どうするか、民族的な宿願なら宿願を達成されるように話し合いをされること、これが望ましい姿ではないか。かように思っております。
  312. 小林武

    小林武君 なかなかこれから先は幾ら議論しても一致するところはないと思いますけれども、共通しておるところは、とにかくこれ以上進行していったらどういうことになるかという心配は、これは共通しておる。私はそういう点について、事態の進展というものはそう私は緩慢にはしていかないと思う。やはりふん切りつけるところにいったらはっきりふん切りをつけて行動するということが政府に課せられた課題であるし、そういうことについては、これは日本人全体として協力しなければならぬことだと思う。そういう角度で申し上げましたが、いまのところはなかなか両方とも納得のいくようなところまで議論する時間もないし、あってもだめでしょう。したがって、この問題はこれで打ち切りまして、次の問題に入りますが、これは自治大臣お尋ねいたします。  市町村共済組合の掛け金負担増し高対策についての問題でありますが、市町村共済組合の高保険料、掛け金の高い状況はもうすでに御存じだと思う。青森が千分の百十、千分の百をこえておるものが二十数県もある。平均してみれば千分の八十七・四になっておる。これに対して一体どのような対策を立てようとしておるのか、これを承りたい。
  313. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) その原因は、やはり組合が弱小であるということにも原因をいたしておるのでございます。そこで、やはり都道府県がやっております地方職員関係の掛け金は千分の七十二でございます。それから、今度、公立学校の職員の掛け金は千分の六十・八でございます。ですから、結局弱い団体は掛け金が大きいのでございますから、そこで、抜本的には、やはり常に論議されております医療保険の総合統一、その前進として総合調整というようなことが抜本的にもやらにやならぬ時期であるというように考えております。まだ高いのは国民健康保険がまだまだ高いのでございます。医療内容も悪いのでございます。しかし、とりあえずの問題としましては、参議院、衆議院で附帯決議になっておりますが、調整資金制度を確立をいたしまして弱小組合を援助するという体制をとるように去年も努力しましたが、十分組合側及び政府側との了解はできませんので、これが遺憾でございましたが、今年はこれらの点に全力をあげて調整資金制度を確立したいと考えておる次第でございます。
  314. 小林武

    小林武君 時間がございませんから、ひとつ要点だけを申し上げますから、まとめてお答えをいただきたいと思います。  さきの国会で政府管掌保険の料率が千分の六十三から六十五に引き上げられた。国庫負担の定率化については抜本的対策の際検討することになりましたが、そのような抜本的対策を立てておるうちに事態はもう悪化するばかりであります。これについて、経過措置によって従来の掛け金の掛け金率を当分の間認めるというようなやり方をやっておりますけれども、これはどうもどんどん経過措置を認めないという県のほうが多くなってきておる。こういうやり方をこれからもとり続けていくのかどうかということが一つです。  それから、共済組合の短期経理は公務員の健康保険ですが、しかるに健康保険には千分の三十五という掛け金率の上限がある。こうした上限を共済組合の短期経理に設置するつもりはないのかどうか。また、付加給付その他を勘案して、共済組合に引き直す健保の千分の三十五は幾らになるのか、この点もひとつお尋ねをしたい。  それから、四番目としては、市町村共済短期経理の今日のような状況は、政府の施策に上って医療費が非常に高くなっている。それに比して公務員関係より平均賃金が低いことに原因があるわけでありますが、政府管掌健保平均の月額の二万九千四百十二円に比して、市町村共済組合の平均賃金は二万五千六百十二円で、あまり変わらないので、この掛け金の差は政府の施策や補助の差が大きな要素であろうと考える。これについて一体どうかできないのか。  それから、政府は本年度三億六千万の財政措置を準備して、市町村共済組合の拠出によるプール制の呼び水にしようとしたが、これは低給与改善と経営努力によって比較的低料率を維持しておるところに他の組合の負担を負わせようとするもので、納得ができない。この程度の、しかも、年々減っていく財政措置では、とうてい全体の料率増高は防止できないと思うが、これに対する対策はないか。  以上のような市町村共済の不公平な扱いについて、一つとしては、健康保険法のごとく料率の上限を制度化し、これ以上は国庫補助をすること。それから、二つとしては、一よりかむずかしいときは、掛け金の上限を制度化し、これ以上は負担率を変更して自治体当局分を増加し、組合員に不当な掛け金増をしいない、こういう対策を立てたらどうかと思うが、以上要点をかいつまんで申し上げましたが、どうぞひとつ御答弁をいただきたい。
  315. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 健保の政府管掌の定率補助の関係は厚生大臣の所管でございますが、これに対しましては、やはり抜本的に医療保険の総合調整ということとあわせて検討していきたいというように論議が進められておると承知いたしております。  それから、政府管掌のほうと、それから地方公務員の共済組合との関係の掛け金率の差がございますが、これは給付内容の差がございまして、やはり地方公務員の共済組合制度は給付内容がよろしいのでございます。すなわち、家族給付におきましても、健保は五割でございますが、大体平均八割に達しております。さらに、また、出産手当につきましても、共済組合は現在の俸給の一カ月分ということになっております。健保は標準報酬の二分の一になっておるのであります。また、配偶者の出産費におきましても、御存じのとおり、率が非常によくなっておるのであります。健保は三千円でございますが、共済は俸給の二分の一になっておるのであります。埋葬料においてもまた違っております。さらに、また、傷病手当においても、共済組合は結核は三年間で、健保は一年半になっております。別に休業手当というものを出しております。これは共済組合員本人でなしに、家族が病気の際においても、休業した場合は、適当と認めるときに出しております。また、災害見舞い金を出しておるのであります。このような給付内容が違ってよくなっている上に、しかも、お説のように、経済力の弱い団体でございますから、したがって、多くの率をかけるようになった。そこで、千分の三十五に健保組合は制限しておりますが、同時に、健保組合は給付内容も八十に制限している。上も切っております。八十を出るような場合には給付内容を下げるというようになっておる、こういうのでございますが、その他の共済年金、あるいは健保等はみんな掛け金は折半となっておりますので、これらを変える場合においては、やはり総合的に抜本的にやる場合に検討をする問題であると考えまして、いま直ちに地方公務員だけを手直しをするということは困難な情勢になっておる。  また、調整金の三億六千万円の関係におきましては、御了解をいただき得なかった組合の関係もございますので、この負担関係については、十分附帯決議の趣旨を尊重をいたしまして、組合関係の御了解を得るような線で今後折衝いたしまして、来年度予算を通じて調整金をとりあえずこれを設けまして、弱小組合の経済援助をできるようにするという方向で進んでいきたいと考えるのであります。  国家公務員のほうは、御存じのように、やはり給料が高い関係もありますし、数も多うございますのでそういうようになっておるのでありますが、これらもやはり各省別になっておりますし、総合調整すれば負担均衡がよくなると思います。非常に荷いところと安いところとございますし、さらに公共企業体職員組合、あるいは政府管掌の健康保険組合、私立学校の教職員共済組合、地方公務員共済組合というようなものはみな折半主義をとっておりますので、しかも、地方公務員に対しましては、都道府県の分があり、あるいは警察の関係があり、あるいは公立学校があり、公立学校はやはり非常に人数が多いのでございますから、負担率がやや下がっておる。また、都市がある、指定都市がある、東京都がある、市町村があるというような状態で、非常に分立しておりますから、したがって、どうしても掛け金が不均衡で、弱いところにしわ寄せをいたしておる。一番ひどいのは国保でございますが、それらを総合調整し、あるいは統合するということは必ずやらなければならぬ問題としていま直面していると考えるのであります。抜本的施策と伴いまして、さらにとりあえず調整金制度をぜひ実現して、弱小組合を救済するという方向に持っていくように全力をあげたいと思っておるわけでございます。
  316. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 小林君の質疑は終了いたしました。  明二十一日午前十時開会することといたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後五時二十八分散会