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説明員(北島武雄君) 先ほど来の御
質問、それから再販売
価格維持契約制度に関しての御
質問につきまして、まとめてお答え申し上げます。
まずプライス・リーダーの問題でございますが、これはたとえばある業界で特定の一つの企業、たとえばAという企業といたしますと、Aという特定の企業が品質なり数量などで圧倒的な地位を占めておる、そういった場合には、したがって、
価格面においてもリーダーシップをとることになるわけであります。こういう
状態があることはあるわけであります。しかし、他の業者が、Aというメーカーが値を上げなければ自分たちが上げられないから、Aをして上げさせるというような行為がございますと、その間に意思の連絡があるわけでございますから、これは独占禁止法違反ということになります。ただ、単純に先ほど申し上げましたような事実だけでは、独占禁止法違反ではございませんが、他の業者との間の意思連絡があるということになると、これは、私
ども、
価格協定ありという断定を下し得るわけでございます。その辺はなかなか微妙なところでございますが、要するに、独占禁止法上は、形が一致したというだけでは、これはどうも独占禁止法違反にはならぬ、その間に意思の連絡があることが必要である、その意思の連絡ということは、明示であると黙示であるとを問わない、こういういままでの審決になっております。プライス・リーダーについても、いま言ったような考えで対処すべきであると考えております。往々プライス・リーダーがあるという業界におきましても、よく調べてみますと、
価格協定等の問題があるということが、アメリカその他の国にあったわけでございます。この点、立証の点はなかなかむずかしいのでありますが、私
ども解釈としてはそう考えております。
それから、合成洗剤の安売りの問題、先ほど
お話がございましたが、合成洗剤につきましては、先ほど申し上げました
公正取引委員会の指定するところの家庭用石けんの中に入っておりますので、正式に再販売
価格維持契約が認められた製品でございます。したがって、もし指定した値段を割って売る場合には、出荷停止などの処分をしても、独占禁止法違反にはならないということになるわけでございます。ただいまの合成洗剤につきましては、一応、独占禁止法上ではそれは認められている行為だということになるわけでございますが、ただ問題は、そういった
価格の高さがはたして適当かどうか、こういう点は御
指摘のようにあるわけでございます。こういう点につきましては、先ほど
通産大臣も御答弁になりまして、通産省でも合成洗剤の
価格について御
調査というふうに承っておりますが、私のほうでは、また別に、いわゆる管理
価格の
調査の一環といたしまして、すなわち
生産性の向上が著しいにかかわらず、値段がなかなか下がらないと、こういった
価格の
調査の一環といたしまして、ただいま合成洗剤も取り上げておりまして、その方面からも
調査いたしております。
次に、再販売
価格維持契約に対しましていろいろ御
質問がございましたが、まず、再販売
価格維持契約と、それから類似行為との区別でございます。たとえばメーカーの希望
価格、こういったものはどうか、あるいは自動販売のやり方はどうかと、こういった問題がございますが、単にメーカーの希望
価格、推奨
価格ということでは、独占禁止法違反ということにはならぬわけであります。再販売
価格維持契約というのは、一応これを守らせるというところに
意味があるわけでございまして、メーカ1がそれを希望いたしましても、何もそれに拘束されないということであるならば、これは別に違反ではないということになります。しかし、その間の区別がなかなかむずかしいのでございまして、
物価問題懇談会の御勧告の中にも、再販売
価格維持行為の内容を明らかにするようにせよ、それから、違法な類似行為はできるだけやめさせろ、こういう御勧告がございますが、ただいまのただ単なる希望
価格というだけでは、どうもなかなかこれは独占禁止法違反にはなりにくい。もっともこれに対していろいろ規制する
方法は、各国の法制にもございまして、あるいは単にメーカーの希望する
価格にとどまるならば、その旨をはっきり表示させるとか、いろいろな
方法があるわけです。こういった方面は、私
ども今後再販売
価格維持契約とその類似行為との区分をもう少しはっきりさして、違法なものをはっきり禁止していく、こういう
態度をとりたいと思っております。
現在、再販売
価格維持契約を実施しております会社の数は、この八月末で七十九社ございます。これが昭和二十八年認められました当初は化粧品だけでございまして、十社でございました。最近になってふえましたのは、昭和三十八
年度からでございます。当初は化粧品が大部分で、それに合成洗剤が若干やっておったわけでありますが、薬につきましては、当初一社のみやっておったわけであります。これが昭和三十八
年度から大メーカーがぼつぼつ進出いたしてまいりまして、そうして、昨昭和四十
年度から本
年度にかけまして、一斉に医薬品のメーカーが再販売
価格維持契約を実行するようになった、ここに大きな問題が一つあると私
どもは考えております。現在では七十九社、そうして現在法律で認められております再販売
価格維持契約は、著作権と、先ほどお断り申し上げました公取の指定する六つの商品でございますが、これで大体、金額では、
小売りの
価格といたしまして、著作物で約三千億円、これは新聞・雑誌、書籍、レコードも入ります。それから、
公正取引委員会の指定する商品で約二千五百億円、合わせて五千五百億円見当、これはごく大ざっぱな
数字でございますが、そのように踏んでおります。ただし、これは、若干資料も古うございますので、最近
——本
年度になりまして、医薬品のメーカーが一斉に実行するようになってまいりましたので、
数字はもっとふえているかと思うのであります。
なお、再販売
価格維持行為に類似した商品、たとえばメーカーの希望
価格といったような問題でございますね、こういったものを含めますと、かなりな
数字になると思います。これは
小売りの売り上げ額全体が八兆とも九兆ともいわれておりますが、その中で正式に再販売
価格維持契約が認められておるものと、それから再販売
価格維持契約らしい、どうもくさい行為と、それから、あるいは単なる希望
価格といったものまで含めますと、約一兆から一兆五千億円くらいになるのではなかろうか。そうしますと、案外この再販売
価格維持契約に類似する行為が相当行なわれているのではないか。それから、あるいはまた、単に希望
価格でございましても、どうも再販と同じような効果を持つものが相当行なわれておる、こういうふうに私
ども考えております。これらにつきましては、再販売
価格維持契約全体といたしまして、確かに昭和二十八年にできました当時、それなりの理由はあったわけであります。ただ、
公正取引委員会といたしましては、再販売
価格維持契約は、この一、二年前まではほとんど問題がなかった。
物価問題が大きく喧伝されまして、それから、最近のように実施するメーカーが急増いたしましたので、ここに大きくクローズアップされたわけでございます。
昨年までのところ、実は非常に少数の人員で
——たった二名でもってこの再販売
価格維持契約というものを施行してまいりました。これでは間に合わないわけで、これではならじというわけで、昭和四十一
年度から若干人員をふやしまして、それでも足りませんで、他にも応援させまして、いま総動員
状態で取引部の取引課というところで勉強いたしております。その
方向といたしましては、いままで再販売
価格維持契約は、公取もほんといいますと、野放し
状態であった。これをひとつもっとしっかり
消費者の見地から規制してみたいということであります。それにはいろんな考え方があるわけでありまして、いっそ禁止したらどうか、こういう問題もありました。それからまた、各国の法制その他の実行
状況も見てみにやなりませんので、ただいま目下せっかく検討を加えておりますが、まあ
物価問題懇談会でも、これは禁止とまではおっしゃっておらないのです。それなりの理由はあるけれ
ども、いままであまりに野放し過ぎたから、これをもっと
消費者の見地から規制してみよう。こういうことが流れている一貫した考え方であると私は思います。私
ども当面その考え方がいいのではないかと思いまして、いま目下せっかく検討中でございます。
ただ問題が非常に広範でございますので、なかなか
結論を出しあぐねているわけでございますが、おそくともこの年内には大体の
方向をきめまして、もし法律の改正を必要とするならば、次の
通常国会において、お願いをいたしたいと、こう考えておるわけでございます。