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1966-11-25 第52回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年十一月二十五日(金曜日)    午後一時十五分開会     —————————————    委員異動  十一月二十五日     辞任         補欠選任      小柳  勇君     瀬谷 英行君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         千葉千代世君     理 事                 鹿島 俊雄君                 佐野 芳雄君                 藤田藤太郎君     委 員                 川町 三暁君                 山本  杉君                 大橋 和孝君                 瀬谷 英行君                 森  勝治君                 山崎  昇君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君    国務大臣        労 働 大 臣  山手 滿男君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        労働省労働基準        局長       村上 茂利君    参考人        九州大学医学部        教授      勝木司馬之助君        日本労働組合総        評議会政治福祉        局長       安恒 良一君        熊本保養院院長  平田 宗男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○労働問題に関する調査  (一酸化炭素中毒症対策に関する件)     —————————————
  2. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を開催いたします。  委員異動について御報告いたします。本日、小柳勇君が委員を辞任し、その補欠として瀬谷英行君が選任されました。
  3. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  一酸化炭素中毒症対策に関する件の調査のため、本日、九州大学医学部教授勝木司馬之助君、熊本保養院院長平田宗男君、日本労働組合総評議会政治福祉局長安恒良一君、以上三名の方々参考人として御出席願い、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  一酸化炭素中毒症対策に関する件について調査を行ないます。本件調査のため、ただいま御決定がございました三名の参考人方々の御出席お願いいたしております。  参考人方々に一言御あいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  本日の議事につきましては、まことに恐縮でございますが、まず、勝木参考人安恒参考人平田参考人の順に、大体お一人二十分程度で御所見をお述べ願いたいと存じます。ただし、御都合によりましてお時間は短かくてもけっこうでございます。次いで各委員から質疑がございますので、お答えいただきたいと存じます。では、どうぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、これより順次参考人方々から御意見を聴取いたします。  まず、勝木参考人お願いいたします。
  6. 勝木司馬之助

    参考人勝木司馬之助君) 勝木でございます。きょうは私は三池災害による一酸化炭素中毒患者治療対策とその経過、並びに、その医学的恵見について申し上げたいと考えます。  この私ども三池災害酸化炭素中毒患者医療委員会、略しまして三地医療委と申しておりますが、これができましたのは、すでに御承知のとおり、あの未曾有の災害が起こりました後に、閣議の決定に基づきまして三池医療調査団が派遣され、その報告に基づきまして、労働大臣の委嘱によってこの委員会ができたものでございます。  で、その目的としますところは、長期医療対策指導ということがそのおもなものでございます。その趣旨に基づきまして、十三名からなる委員が任命され、もつぱら純粋の医学的な立場からこの目的に沿うように努力するということを委員一同で申し合わせて今日に至っておるわけでございます。  で、その間の経過をごく簡単に申しますと、先ほど申しましたように、この医療委が発足いたしましたのが昭和三十八年十二月二十八日のことでございます。で、三十九年の一月から委員会を前後十三回開きまして、各委員の真剣な意見交換研究討議によりまして、患者に対する治療の統一と指導を行なってまいったわけでございます。  その活動の状況を要約して申し上げますと、左、ず、一酸化炭素中毒に対する治療方針の作成、それから、それによる適切な患者治療指導並びに実施。その(2)は、症状度判定基準を定めまして、これを治療指針といたしますとともに、経過観察の客観的な指標としてまいりました。さらに第(3)には、メンタル・リハビリテーションの実施時期、あるいはその、実施方法などに関します指針をつくりました。それから、患者症状経過の上医学的な記録と、その収集整備をしております。それから、さらに、これは後の問題でございますけれども、科学技術庁と労働省から一酸化炭素中毒症に関する委託研究費の交付を受けまして、一酸化炭素中毒の臨床的及び病理的研究並びに特殊治療法、あるいは症状別治療法などについての研究をいたしました。さらに、入院患者並びに通院患者全員検診実施いたしました。  今日までの経過をごく簡単に要約して申してみますと、この災害は、御承知のように、一挙に多数の死亡者を出し、さらに非常に重篤な症状を持つ中毒患者を多数発生しておりますので、これは法学的にもきわめてまれな、そして一大事件であったわけでございます。で、その患者災害当初の代表的な症状といたしましては、意識障害でありますとか、あるいは失外交症候群、あるいは自発生の低下といったような精神症状が非常に顕著でございました。それから、ある時期から筋の硬直でありますとか発汗でありますとか、そういうふうな神経的な症候、つまり錐体外路的な症候、あるいは自律神経症状といったものが非常に多彩にあらわれてまいっております。しかしながら、治療経過によりまして、これらの症状はかなりの改善を示してまいっております。しかしながら、入院中の一部重症患者におきましてはきわめて症状が重篤で、ある時期からは非常にいろいろの種類大脳病理学的症候群と申しますか、いろいろな大脳病理学的所見が見られてまいりました。これは本症のきわめて特徴的な所見でございました。その他の精神症状につきましては、全般的に客観的に見まして症状が次第に軽快しましてから、いらいらでありますとか、あるいは刺激的、心気的な傾向、それから神経症的の傾向、それから、そういったようないろいろの症状が新しく、あるいは強く出現する傾向が見られております。で、これらの症状は一般的に時とともに軽快する、軽くなっていく傾向を示しておりますけれども、最近になりましては、そのすべての症状が必ずしも脳の器質的障害によるものというふうには考えられないのでありまして、自覚症状の動揺、あるいはそれに対する患者の態度からもそういうような推定が専門的な立場から推定されたわけでございます。で、患者自身の疾患に対する不安、予後、補償に対する危惧、あるいはいろいろなバックグラウンドなどから受けますところの刺激などによりまして、従来ある器質的な変化のそれに上積みして、プラスと申しますか、その上に心因的な影響が直接または間接にあらわれたのではないかと推定されるものでございます。  現在の患者の状態は、非常にいろいろな種類所見、重篤な大脳病理学的な症候を示す人が一部ございます。しかしながら、また、一方には他覚的な所見がほとんど認められないものもたくさんございます。それから、また、他覚的な所見がございましても、ごく軽い障害を残す程度のものがございます。そのほかに、全く医学的な立場から見ますと正常と見られるものもございます。しかし、それにもかかわらず、なおいろいろな自覚症状を訴える多くの患者がございまして、その症状は、時に急にあらわれたり、また引っ込んだりしておるわけでございます。  で、昨年末に続きまして、今回この七月から準備を始めまして、八月の初めに現在の患者状況を詳細に把握する目的でもって、入院及び外来患者全員に対する検診実施いたしました。その方法と細目につきましては、あらかじめこの私ども三池医療委で十分検討し、さらにその詳細を小委員会で案をつくってもらいまして、そしてこれを決定いたしまして、委員会指導のもとに、本年の八月、それぞれの医療機関におきまして精密検診実施いたしたわけでございます。その詳細につきましては、御質問があればお答えいたします。  その結果、その検診結果につきまして私ども委員会で検討いたしまして、それが正当な手続によって実施されたものであるということを確認いたしました。さらに、そのことをこの委員会中央顧問でございます東大名誉教授内村博士、それから、同じく東大名誉教授沖中博士の確認を得ました。  検診の結果は、八百二十二名の受診者がございました。で、その結果を見ますというと、すでに事故発生後三年近くを経ておりまして、たいヘん多くの方々は一般的な作業能力が回復しておるというふうに考えられました。しかし、一部におきましてはまだ軽作業に従事し得るのみであると考えられるもの、それから、また、長期にわたってなお療養を継続する必要のあるものなどが認められました。さらに、さしあたり治療の継続を必要とするものなどがあったわけでございます。そういうわけで、私ども委員会といたしましてはそのことを御報告申し上げまして、当局がこれから対象の全員に対して、それぞれの医学的な意見に基づいて適切な処置をとっていただきたいというふうに申し上げてまいった次第でございます。  私が申し上げたいことはそういうことでございますが、また御質問がありましたらお答えいたします。
  7. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ありがとうございました。  次に、安恒参考人お願いいたします。
  8. 安恒良一

    参考人安恒良一君) 私は労働組合の幹部でありますから、医学的な問題じゃなくして、そういう医学的な問題の中から今回発生をいたしました三井三池の主要問題に対する考え方、並びに、これから本国会でいろいろ御議論を願いますところの新しい主要立法間脳点等について意見を述べさせていただきたいと思います。  御承知のように、三井三池の、ああいう私たち労働者にとってたいへん悲しい問題が発生をいたしまして、昨年の年末から、すでにことしの十一月になりますと、まる三年になりまして、三年になると一応労災補償の打ち切りの時間がくる、こういうような重大な問題がありましたから、これはただ単に三井三池だけの問題ではなくして、やはり炭労並びにその上部団体であります総評といたしましてもこの問題を重視をいたしまして、政府との定期会合の席上で、太田議長からこの問題について佐藤総理に対する要請をいたしました。その結果、佐藤総理も、これは非常に人道的な問題であると、これが十一月になってからの、取り扱いというものが非常に重大であるからということで、そこで当時の小平労働大臣とひとつ話し合いをしてもらいたいということになりました。太田議長小平労働大臣が昨年の暮れから本年の一月にわたってこの問題について話し合いがされ、その結果、一月の二十七日の日に総評炭労労働省との間に、いわゆるこれらの患者取り扱いに関する了解事項という覚え書き締結するに至りました。その覚え書きの第四項の中に、いわゆる入退院に対する取り扱いということを設定をしたわけであります。この覚え書きというものは、ただ単にそれだけを申し上げたのじゃなくして、いろいろの取り扱いについての数項目にわたる覚え書き締結したのでありますが、いまここに関係いたしますところを申し上げますと、入退院に対する覚え書きをつくりましたその覚え書きの大きな骨子というものは、いわゆる三井三池医療委員会のほうから反対をされ、労働省行政措置として退院させる、こういう場合には、労働組合側が推薦をする二名のお医者とひとつ第一審として話し合いをしてもらおう、そこでなお話し合いがつかない場合には、さらにその上の権威あるお医者さんとの間の話し合いを続けてもらおう、さらにそこで話し合いがつかない場合には、いわゆる第三審として、さらに権威あるお医者判定を待つ、こういう締結をいたしました。そこで、私たちは、事、入退院に関しましてはそういうような措置を十分にとっていただける、こういうふうに実は信じておったわけであります。その他、各項の覚え書きについても、これが完全に実施されるというふうに私たち理解をいたしておりました。  それから、いま一つの問題は、雇用対策法設定をめぐって、本参議院の中におきまして、いわゆるこの六月から七月にわたっていろいろこの点について御議論を願った際に、私たちは、やはり参議院の中におきましても、CO中毒患者取り扱いについて、参議院の院の議決として覚え書き締結されたことを聞いております。この文章は、参議院当該先生方ですから、読み上げません。こういう二つの措置がされましたので、私たちは、少なくとも行政措置については総評炭労労働省で結んだ覚え書き、それから、参議院において院の議決としてされましたところの覚え書きに従って労働省は処置するものだといふうに実は理解をしておったわけであります。ところが、先生方も御承知のように、十月二十六日の日に、いわゆる今回三井三池医療委員会から、いま先生が言われましたようなことで、七百三十八名はいわゆる治癒認定、それから二十六名は長期療養に切りかえていく、五十八名は今後とも観察を続けていく、こういうようなことの発表がございました。発表があったと同時に私たちのほうに通告がございましたから、私たちは、これは覚え書き精神に基づいて執行されるべきであるのであるから、十月三十一日をめぐって直ちにこれが打ち切られるということについて不当性をなじって、覚え書き精神に基づいて交渉をするようにということを要求したのでありますが、残念ながら、ついにそのような要求も聞き入れられませんし、交渉の過程といたしましては、少なくとも一週間ないし十日ということについては、十分に私たち話し合いをしてもらいたいということをお願いしたわけでありますが、残念ながら、されなかったわけであります。特に私はやはり大きく問題になると思いますのは、いわゆるこの退院通告につきまして、十月に三回にわたって百名の人間退院通告があっているわけであります。最後の通告は十月の二十四日に五十四名の退院通告をしております。十月の月だけで約百名の退院通告をしています。入院患者の中の百名という数字を十月になって通告をしてそして覚え書き精神に基づく措置をしないまま、一方的に十月三十一日から打ち切られるという、こういう行政措置のやり方について、私たちはたいへん問題があると思います。しかし、これらの問題につきましては、これから御報告をいたしますように、昨日、労働省総評炭労との間に今回の行政措置の誤りの問題について話し合いを続けました結果、新しい覚え書き締結いたしまして、ほぼ問題の解決を見るに至りましたので、私は過去のことをここでとやかく掘り下げて申すのじゃなくて、今後とも私はお願いをしたいことは、少なくとも公に労働省総評炭労と約束した、それから参議院の院の議決国会の最高の議決機関であるところの参議院議決されたということが、必ず所管大臣所管行政庁を通じて守られるようにということをお願いを申し上げたいと思います。特に私たち国民立場からいきまして、院内において決定をされたことがいわゆる行政官庁によって踏みにじられるということについては、やはり国会の権威に私は関することだと思いますので、そういう角度から、どうかそのような点について今後とも十分な御配慮をいただきたいということを、まず第一点として申し上げたいと思います。  それから、第二点目でありますが、そういうような状況の中から、この参議院におきましてもきょうで三回円の委員会を開いていただいて、問題の解決のために各先生方の御努力お願いをいたしました、これは与野党を通じて御努力をしていただきまして、おかげでそういう参議院における諸先生方の御努力によりまして、労働省総評炭労との間において問題の解決努力をいたしました結果、昨日の夜、夜中でありますが、覚え書き締結をすることができました。  そこで、私は特にお願いをしたいことは、この覚え書きの中で、次のような項目についてはまだ問題点が残っているわけであります。ひとつその文章を読み上げますと、いわゆる入院患者については、総評炭労労働省覚え書きに基づいて、第一審から第三審まで、先生方によって話し合いをしていただくことになりました。このことは非常にけっこうなことだと思います。しかし、これがためには、主治医から器材カルテ等提供がないとなかなか、しかもタイムリミットといたしまして、八週間を目途に話し合いをすることになっています。そういう角度について私たち労働省との間にお願いをしましたところ、締結しました文章といたしましては、主治医からの器材カルテ提供等が行なわれるように努力するものとする、こういう文章締結をするということができました。これはやはり何といっても、その主導権主治医がお持ちだということで、労働省としてはそれは十分努力するといっておりますが、こういうような問拠点。  それから、大きい覚え書きの第三項といたしまして、長期療養に切りかえられましたところの二十六名の取り扱いにつきまして、長期傷病者補償給付に切りかえた者については、当分の間、解雇しないように会社に対して要請をする、こういう文章になっています。この文章も、私は率直に言って、参議院議決事項、これを受けたものだと思います。でありますから、私たちは、この会社に対して要請労働省がするということでありますから、この点。  それから、同じく定年退職者取り扱いについて次のようなことをきめました。審査が決定できるまで解雇を延期するように会社に要望するという文章をつけました。これは御承知のように、会社定年退職の人については十二月一日付でやめてもらうということをいっています。私たちは、この問題につきましては、このようにせっかく覚え書きができて、覚え書きに基づいて医学的に先生方にお話し合いを願うのでありますから、この決定を待って定年退職者はやめていくようにということをお願いをしたところ、こういう文革になりました。ですから、この文章について。  それから、同じく退職者に対しましては、失業保険日額(十万円)が支払われるように会社要請するというような問題。それから、いま一つ重大な問題としてありますのは、現職——いわゆる治癒認定もしくは症状固定ということで職場に帰ります。しかし、いままでの職場で働けない人たちが出てまいります。その点の取り扱いについては、現職復帰が困難な者の賃金現行保障額を下回らないように会社要請する、こういうことであります。これは御承知のように、たとえばいままで坑外で働いておった、一応病状が固定をしたということで職場復帰ができる。しかし、残念ながら、坑内では働けないと坑外になるということが考えられるわけでございます。その場合に、私たちといたしましては、少なくともいま賃金の八〇%をもらっておったわけでありますから、それが下回るということであれば生活がたいへん困難をいたしますから、その賃金保障してもらいたいということを、これまた労働省お願いをしました。しかし、このことは労使問題であるということから、いわゆる会社にこのように要請するということできのう締結をいたしました。いわゆる覚え書きを全文を読み上げませんでしたが、覚え書きの中で、今後労働大臣が責任を持っていただいて、できるだけひとつ会社側話し合いをしてもらう。また、それを受けて、私たち労働組合側は、労使問題としてこれは労使で話し合いをしなければならぬ条項が何項目か残っているわけであります。それに対しては、いま文書を読み上げたとおりの約束をいたしましたから、私は、労働大臣労働省がそういうことについて誠意を持ってひとつ御努力お願いをしたいと思います。また、本委員会におきましても、このことが誠意を持ってひとつ履行できるように御指導を賜わりたいということを第二番目に申し上げたいと思います。  それから、第三番目といたしまして、これからCO立法について本委員会においていろいろ御議論を願うことになると思いますが、私は、今回のいわゆる覚え書きを見ましても、それから前回いわゆる総評炭労労働省との間に結びました覚え書きと、それから諸先生方がこの参議院の中でいろいろお話し合いをしていただきましたもの等を見ましても、いずれも新立法にいわゆる問題点を委譲する、もしくは新立法にかなり問題点を期待をするということがたくさんあるわけであります。それでありますから、私は、どうかこれらの点につきまして、新立法設定にあたりましては、次のような点について十分な御配慮をいただきたいということをお願いを申し上げるわけであります。  それは、まず第一点といたしましては解雇制限法の問題であります。これは今度のいわゆる覚え書きの中でも問題になりましたように、たとえば長期療養に切りかえられますと、これは長期療養というのは、私はお医者ではありませんから、詳しいことはわかりません。まあ率直に言って永久になおらぬ。私たち労働者のことばで言うと、永久廃人になったということだと思います。そういうものについて労災補償法に基づいて長期療養という認定がされると、とたんに会社はその人間解雇すると、こういうことが今日の現行法のたてまえであります。私は、少なくとも、いわゆる本人の責めに帰せないこういうガス爆発、そういうものによって人間が一人一生廃人になったと、こういうときに、その人を定年になったからとか、もしくは、いわゆる長期療養に切りかえられたからといって解雇されるということは、人道的に言っても許せないことだと思います。少なくともそういう問題を起した資本は、その人を一生やはりめんどうをみていくというのが私は今日のたてまえではないだろうかと思います。そういう意味からいいまして、この解雇制限についての立法措置をひとつぜひともお願いをしたいと思います。  それから、第二項目には、今回のこの覚え書きをつくるにあたって非常に重大な問題になりましたのは、いわゆる勝木先生からも言われましたように、一酸化炭素中毒ということで、どうしても神経系統がおかされると前職に復帰ができない。他の職につけるが、前職には復帰できない、こういうことが今後も起こってくる。今回の場合も起こり縛ると思います。そうしますと、その人の収入がかなり減ってくる。特に坑外坑内の場合に、いままで坑内夫が今度坑外夫になるというと、大きくこれは収入が減ってまいります。そして生活が困難になる。こういうものにつきましては、私はやはりどうしても前職の保障、こういう問題について立法措置の際に格段の御配慮を賜わりたいと思うわけであります。  それから、第三番目に私が必要なことは、やはりこの種のような災害を起こさない、いわゆるこの予防対策であります。この点について格段の御配慮を願わないと、三井三池においてこれだけの大災害が起きまして、今日までに数々のこういう大きな災害が起きておるわけであります。そして起きてしまったあとの補償をどうするかということもきわめて大切なことであります。しかし、私は一番必要なことは、この種のやはり労働災害を起こさないということのこの法的な配慮、規制、こういう問題について格段の御配慮を賜わりたいと思うわけであります。  それから、あとやや技術的な問題になりますが、たとえばそういうような配慮をしたにもかかわりませずに一酸化炭素中毒患者が出てきた場合の特別看護料の設定の問題であるとか、それから、現行の労災補償制度によるところの障害補償認定内容というものについては、私は率直に言って、一生廃人に近いからだになった人、もしくはそれに近いような人々に対する補償としては、あまりにも内容的にも貧弱だと思います。そういう意味からいって、障害補償の内容についても格段に高めていただく、こういうような点を私はこの新立法設定にあたっては本委員会が十分にお考えを願いたいということをお願いを申し上げる次第であります。  それと同町に、私は最後に、毎回繰り返して申し上げたいと思いますが、どうかこれらの問題につきましては、幸い参議院の諸先生方の御努力によりまして、一応こういう覚え雷きの締結をすることができましたから、この覚え書きが労使において忠実に履行できるような御配慮をひとつ格段にお願いをしたい。若干やはり今後交渉事項に問題点を譲ったり、もしくは労働大臣努力事項といいますか、要請事項というところに問題点を譲っている事項が、いまさっき申し上げたように、ありますから、私どもは再びこういう問題がたいへんな問題となって、木参議院委員会の中にまたお願いをしなければならぬような事態がないように私ども努力したいと思います。しかし、それが受け入れられるかどうかということは、一にかかって私は三井資本の態度にあると思います。また、労働大臣以下、労働行政としてどういう御努力を願うかによってそういう状態が起きないようになると思います。そういう角度から、せっかく本問題の解決のために参議院における諸先生方の御努力お願いをしたわけでありますから、今後とも、この問題がすべて円満に落着をいたしますように御配慮を賜わりたいということをお願い申し上げたいと思います。  以上です。
  9. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ありがとうございました。  次に、平日参考人お願いいたします。
  10. 平田宗男

    参考人平田宗男君) 労働省の今回の労災療養打ち切りは、三池医療委員会勝木先生意見書に基づいているというように思います。私は、まずこの意見書が出されるまでの手続きについて、これが民主的に、組織的に討議されたかどうかについて異議がございます。私自身、熊大立津教授、東家講師に尋ねましたところ、勝木教授意見書が出る約一カ月前、患者の病状の重さ軽さのランクづけでは討議はしたが、今回の意見書のことは知らないと言っております。しかも、東家講師は、あの意見書は遺憾であるとさえ言っております。立津教授は、労働省がきめたCO中毒研究班のうち、後遺症担当という最も重要な役割りを引き受けていられるのでございます。  次に、勝木意見書の第五項の中に、「本年八月、各医療機関において二十数項目にわたる詳細綿密な検診実施したものである」とあります。本年八月、大牟田労働基準監督署は、患者の現在の病状の報告を、精神症状をよく把握できないと——失礼でごさいますが、考えられます内科医を含む各主治医に求めましたので、私たちの同僚、大牟田地評診療所の吉田所長は内科でございますが、監督署にこの報告書が労災打ち切りの資料にはならないことを確かめた上で提出したわけでございます。しかも、その内容は、今回の労災打ち切りの医学的な土台となった勝木意見書と全く逆な病状報告であったわけです。  第三点は、勝木意見書は、内村、沖中両先生のお墨付きを得ておると書いておりますが、私は両先生を尊敬していますが、先生方が、もしじっくり患者を診察しておられたなら、おそらくこんな意見書は出されなかったんじゃなかろうかというふうに私は推察しております。  次に、従来労働省、厚生省は患者の集団検診、いろいろの研究を主宰してこられましたが、今日まで全くその内容を公表されませんでした。が医師の診察を受けたならば、自分の病状がどんなにあるのか、当然知る権利があるはずです。当局側だけが医学的なデータをつかんでいて、しかも、そのデータの一部の意見だけを根拠にして、今回の労災打ち切りを強行されていますが、これは人権上からも問題があるのではないかというふうに考えます。  次に、従来CO中毒は、死ぬ人は死ぬが、助かれば後遺症を残さずになおるものとされていました。なるほど一般民間人のこたつ中毒とかガス中毒はそうでした。日本でも過去に炭鉱の集団ガス中毒がありましたが、被災者の症状の変化の長期的追求は行なわれていません。したがって、この種の医学的データはないわけです。本年七月発行のこの本ですが、科学技術庁研究調整局の報告書、これを見ますと、三池、山野、伊王島、夕張の被災者の症状経過の比較を行なって、三池以外では長期間の後遺症を示すものは圧倒的に少ない、これにはいろいろの条件もあるが、また、いろいろの社会的な背景があるというふうに述べております。しかし、この報告書には疫学的な調査がございません。CO中毒の重さ、軽さを決定的に支配しますのは、ガスの濃度と吸入時間でございます。三池爆発のときに救出に要したのは、早い人で三時間半、おそい人で二十時間、平均七、八時間という長時間でございます。ここに三池の特異性があるというふうにわれわれは考えます。  爆発当時、九大、久留米大、熊大の医局、看護婦さんの皆さんの献身的な努力によって多くの生命を救ったことは、私は大いに敬意を表するものでございますが、入院させられなかった在宅患者は当時ほとんど放置されていました。私たちの集検の結果でも、初期に安静を保った人の予後はよく、そうでない人は予後が悪いという成績が出ています。爆発当時、労働省会社が在宅患者全員の綿密な集団検診をやっていたならば、もっと多くの患者入院させるべきだということがわかったであろうというように思います。しかも、昨年十二月行なわれた三大学の集検によりまして、十二名が要入院判定されたにもかかわらず、それがそのまま放置されて、本年八月には大牟田労災療養所長は入院を断わっております。また、初期の十分な薬物療法が予後に相当影響することが熊大の入院患者の経験として発表されていますが、まして在宅患者はなおさらのことだというふうに思います。リハビリテーションもそうです。これは被災数カ月後には始めねばならないのに、荒尾訓練所が開設されましたのは一年たった翌年の十二月でございます。しかも、訓練内容を見ますと、患者を年齢別に十ぱ一からげに分けて、スポーツ、運動療法を主体としてやっています。いわゆる災害神経症説をとりますとこんな訓練になるのかと思いますが、器質的脳障害があるのだし、症状も多彩ですから、もっとこまかい配慮、やり方が必要だと考えます。  次に、勝木意見書の第四項に、「現在の患者の状態は、多彩かつ重篤な大脳病理学的症候を示す一部の入院重症者を除いて、大多数のものは他覚的所見がほとんど認められないし、また、認められてもごく軽い障害を残すにすぎない。そのほかに、全く正常と見られるものも少なくない。しかし、それにもかかわらず、現在なお種々な自覚症を訴える多くの患者があり、退院勧告、職場復帰などの措置のつど、それが著明に増加する傾向が見られ、身体的、医学的要因以外の社会的要因の複雑な影響を示唆しているものと思われる」とあります。このことと、第五項、「その大多数は一般的作業能力が回復しておると考えられた」とあわせて考えますと、こういうことになります。すなわち、三池の患者の大部分はすでにCO中毒とは無関係で、災害神経症である、つまり働かないでも八〇%の休業補償、それでも三・五人平均家族で月収約三万円でございますが、もらっているのだから、疾病利得という考えが患者にある。極言いたしますと、これは詐病だということになるわけです。また、こんなことから「組合原性疾患」という新しい医学用語が生まれました。はたしてそうなのか、以下、私たちの集検で得た所見を述べたいと思います。  私たちは、昭和三十九年八月から本年七月まで、四回にわたり、三池労組所属の約百五十名の在宅患者について、精神神経科的、労働医学的な集検を行ないました。本年五月と六月には内科医集団による臨床及び精密検査を行なっております。患者の既往症、会社就職以来の会社側の検査した所見坑内のどこで被災し、当時どんな症状があったか、綿密に調査しました。また、集検時には家族を同伴させて、また、家族とだけ直接に面接して患者症状の把握につとめてまいりました。本年七月の第四回集検時には、現在の病状の正確な把握とともに、いままでの経過を一人一人総括いたしました。  まず、自覚症の変化でございますが、頭痛、頭重を訴える人の数ば減っておりませんが、程度が軽くなり、また、持続的なものでなくなってきております。目まい、視力減退、動悸、四肢のしびれなどの神経的な自覚症と、意欲減退、不安、いらいら、集中困難、抑うつなどの精神的自覚症は第二次集検以後次第に減っています。今後もこれらの症状はさらに軽快の可能性があると考えられております。しかし、本年六月の性生活調査では、百八十二名中、ほとんど不能が一〇%、高度におかされた者二一%という所見を得ております。  次に、神経学的な所見は、一般に軽く、四肢の振顫——ふるえでございますが、ある人か五〇%から二〇%に減り、下肢の腱反射の高進が二一%から八%に減りました。しかし、筋強剛——筋肉が固いことですが、ロンベルグなどは七%、五%と増減がなく、下肢腱反射の減弱ないし消失も一五%で、増減はございません。  次に、心理テストを試みておりますが、その内容として、クレペリン、それから記銘カテストなどをやっております。それから知能検査も行なったわけです。これらのテストを症度別——病気の重さ軽さとの関係を見てみますと、大体重い人ほどテストの成績も悪いという成績が出ております。  次に、臨床観察による精神症状の変化でございますが、情動障害は全体としてかなり著明に軽快している傾向がありますが、記憶、記銘、計算力などの問診成績の改善は認められませんでした。  次に、私たちはいろいろの機能検査を行ないました。狙準とタップは運動機能、共応は両手を同時に使いこなす機能、フリッカーは大脳皮質の活動性が鈍っているかいなかを調べるテストでございますが、どのテストも対照群よりも悪くて、症度の軽重と大体平行して、また、自覚症の強い人ほど異常率も、その程度も悪いというデータを得ております。  次に、われわれは本年六月、赤色視野検査を行ないました。これはCO中毒に高率に出ると言われておりますが、この狭窄のある人は四十三例中、三十例という高率で、しかも、軽症の十五例中、九例に認められたことは、器質的脳障害を示しているものと考えます。本年六月の脳波所見は、百例中、軽度異常、それから異常を合わせて三十二例という高率で、軽症者にも相当数異常所見がありました。本年六月には、また四十六例に聴力検査を行ないましたが、そのうち三十五例に神経性難聴が認められました。しかし、対照群にも四〇%という異常率がございますので、この難聴をCO中毒と直ちに結びつけることは困難でございますが、CO中毒以後難聴を訴えた人、増悪した人が多数ございます。  以上の所見は、意見書でいわゆる神経症扱いにされている軽症者の大部分に他覚的所見があることを示しております。私たちの出した結論は、偶然にもこの科学技術庁の報告書の中の立津教授の論文の要約、通院患者についての項でございますが、その一五五ぺ−ジ、「心身故障を訴えるものの八三%は器質性障害の徴候とみなされる知的機能障害と神経症状の一ないし二を持っている」ということと一致しております。  次に、いわゆる合併症、続発症について述べたいと思います。  じん肺は相当高率に見られるようでございますし、これがCO中毒罹患後悪化したと見られる人も出ており、今後さらに調査を要します。また、胃腸障害、貧血、やせなどが治癒せず、また進行、悪化している人もまれではなく、休業補償の不足が重要な原因ではないかと思われます。持続性または間欠性の血圧異常、循環器障害、一過性の浮腫、発熱、糖尿病、肝障害など、CO中毒に起因していることが疑わしい疾患も見られ、これらについてもさらに調査研究を要すると考えられます。  私たちは、A群、症状が重くて職場復帰が困難なもの、B群、中等症で復帰の可能性の不明のもの、C群、軽症で復帰の可能性のあるものと玉群に分類しました。本年七月の症度判定は、A群二十七名、B群七十七名、C群六十八名でございます。しかも、四回にわたる集検時の総合判定で個人個人の症度が動いており、第一回目と第四回目を比較しますと、軽快した人四十四名、悪化した人十八名、不変七十四名です。個人個人の症状も動いており、全体的に見ると軽快の徴候が見えますので、今後なお療養を続けるべきであり、現在は、たとえC群でも、直ちに就労は危険だという結論に達したわけです。しかるに勝木教授報告の第五項に、「検診の結果は八百二十二名の受診者があった。その結果を見ると、事故発生後すでに三年近くを経ており、その大多数は一般的作業能力が回復しておると考えられた」とあり、この意見書に基づいて大多数が打ち切りということになったのではないかというふうに思いました。この意見書を見て私は実はショックを受けました。勝木教授が私どものA群を直接見られたら、とても私はそんな結論は出ないはずだというふうに、まことに無礼でございますが、こんなふうに思ったのです。  昨年秋以来、職場復帰者が二百数十名出ましたが、その大部分が新労であったわけですが、本年五月の大牟田労働基準監督署の発表によりますと、そのうち約百名近くが就労と休業を繰り返すか、あるいは再び通院に切りかわっています。私は、労働省が今回の労災療養打ち切りの前に、これらの就労した人のこの医学的な調査をなぜやらなかったのだろうかというふうに、残念に思います。これを抜きにした打ち切りというのは強制就労とつながりますので、生命の危険を伴います。また、今回の打ち切りに約八〇%、相当する新労組員からの異議申請が出ていると聞きました。このことをすなおに冷静にひとつ考える必要があるのではないか。私は、人道上からも、今回の労災打ち切りには、ぜひひとつ私は反対したい、許されないというふうに思います。
  11. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わります。  これから質疑に入ります。参考人及び政府に対し、御質疑のある方は、順次御発言願います。なお、勝木参考人は、神戸で会合が予定されているので、途中で退席をいたしたいとのことでございますので、お含みの上御質疑を願います。  また、安恒参考人も、御自分の主宰した会議が開かれておりますので、都合で途中の退席を御了承いただきたいと存じます。したがいまして、時間の都合で、委員長から、安恒参考人要請の点についてだけ労働大臣からお答えいただきたいことを申し上げておきます。  時間の都合で委員長から申し上げます。安恒参考人から立法その他いろいろの点について、会社側や、それから本委員会に対して詳しく要請が述べられましたけれども、その中で、第二点の中に、労働大臣に対して申し述べております覚え書きの中で、労働省で特に努力していただきたい諸点があげられておりますけれども、その点について労働大臣から一言決意を述べていただきたいと存じます。  それから、なお、ついでに申し上げますが、労働大臣もやむを得ない用件がございますので、三時四十分からちょっと退席したいという申し出がありまして、理事と委員長話し合いましたけれども、まことにやむを得ないんじゃないかという話し合いになりましたので、ちょっと途中で三時四十分からしばらく退席して、政府委員が責任を持つということでございますので、これを御了承をいただいて、労働大臣にしっかりお答えをいただきたいと思います。
  12. 山手滿男

    ○国務大臣(山手滿男君) 先ほど来、参考人の皆さん方の御意見を拝聴いたしました。三井三池の炭鉱災害につきましては、今日までの経緯にかんがみまして、当委員会の決議の趣旨を尊重をして、関係者との取りきめについては誠意をもって尊重するとともに、今後、一酸化炭素中毒に関しまする立法措置等につきましては、来たる次の通常国会におきまして、関係審議会の意見等も十分考慮いたし、鋭意検討をいたしておりますが、善処をするつもりでございます。
  13. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 ただいま私ちょっとおくれてまいりまして、勝木教授のほうからのお話をちょっと承っていないので、たいへんまた失礼にわたる点があるかもしれませんが、御容赦願いたいと存じます。  先ほど平田参考人のほうからのお話は、私承ったのでありますが、いろいろお話が出ておりましたその中で、私は第一番目に、私も救急の病院をやっておりまして、CO、いわゆるガス管をくわえて中毒した患者が入ってくるというのを見て、あとからいろいろの症状が出てきたものを精神科の先生お願いして、症例は数は少ないのでありますが、数例を持っているわけでありますが、その中で、私いままでから考えておりました中で、こうしたCOの中毒で起こった大脳の変化というものは、案外初めのうちは症状があらわれていなくても、あとから起こってくるということ、特にまた私は非常に生活要件によって、本人の精神的な不安状態と申しますか、何かその状態が変わったことによってまたその症状があらわれてくる。特に記憶を喪失したり、あるいは頭重になったり、あるいは精神的な大脳の影響からくるところの非常に精神活動に影響がくるということは、私どもも非常に聞いたわけでありますが、そういう観点から、いま御意見を聞いておりますと、今度とられました非常に大量の治癒と認定された中に、私は非常に疑義を感じておったわけですが、その点について先ほどの平田参考人からの御意見等を考えれば、私も非常にうなづける点があるのですが、そういう点についてひとつ先生のほうから御意見を承り、その後小さい問題について逐次御意見を伺いたいと思うわけであります。
  14. 勝木司馬之助

    参考人勝木司馬之助君) 私の意見を申し上げます。  一酸化炭素中毒によりまして起こってまいります大脳の変化というのは、これはつまり中毒の程度と、それから今度は中毒を受ける患者側の条件と、そういういろいろなものが複雑にからみ合いまして、非常に軽いものから非常に重いもの、いろいろあると思います。その中で、相当にひどい脳の器質的な変化がありますものにつきましては、いまおっしゃったように、確かに精神的な症状などが顕著に起こってくると思います。しかしながら、また、きわめて軽いものにおきましては、これは従来の学説でございますけれども、わりあいに他覚的に見えるような症状はないということでございます。で、もう一つ大量の治癒認定を一気にやったということについて疑義を感ずるというお話でございますけれども、私ども委員会におきましては、すでに早くから、重症の人は別といたしまして、ある程度の治癒と申しますと、これはことばの定義が非常にいろいろでございますけれども、臨床的治癒ということばがいいかと思いますが、そういう状態になりまして、一般的な作業能力が回復されたと思われるものは、ずっと前からあったわけであります。そういう方につきましては、私ども、退院されてもよろしいということを意見として申し上げておったわけでありますが、なかなかいろいろな事情で退院がなされなくて、今回一気に大量のものを認定したとおっしゃいましたが、認定は私どもいたしておりません。医学的所見を申し上げたわけでありますが、大量になった理由はそういうところにあるのではないかと思います。つまりいままですでに早くからそういうレベルにきておった人がたまりまして、今回の私ども意見書によりましてこれを当局が御承知なさったわけでありまして、当局がなされたために、きわめて大量の患者さんを一気に退院させるようになったのではないかというふうに考えられるのではないかというふうに思います。
  15. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私、小さい経験から申しては多少は教授に対して失礼かと思いますけれども、私、経験を通して考えるのに、こういうふうな精神的な異常のある患者を、まあこれで臨床的な診断のもとに就労してもいいと考えられるというふうな診断の過程において、私は、ことにこの問題はそういうふうな精神的なものが、たとえば私の取り扱った例では、非常になんでもないと思っておったのが、あとからそういう症状が起きて、それが家庭的に何か非常に不和とか何とかという家庭内の状態のもとにそれが非常に発展をしてまいりまして、そしてあと非常に困って精神科にお願いした例もあるわけでありまして、私は、この病気、特にこの問題に対しては、そのいろいろな条件と申しますか、そういうようなものが一つの刺激になって、そうしてそのために、何と申しますか、そこにそうした症状がより悪化するというような場合が考えられるように聞いたわけでありますが、もちろん私は、そういう観点からも、今度のような場合は、非常に私は慎重の上に慎重を重ねてやっていただく必要がある。特に私はそこの中に問題を含めて考えたいことは、非常に他覚的な症状がないからということが、いまの医学ではおもに誤選の基礎になるようでございますけれども、この病気そのものには他覚的な症状をつかむのには非常にむずかしさがあるのではないかというように考えて、私はいまの説明で、平田参考人からおっしゃったようなこういうふうなパーセントが出ているわけでありますが、このパーセントについて勝木教授のほうではどう考えられますのか、ひとつお考えをお聞きしたいと思います。
  16. 勝木司馬之助

    参考人勝木司馬之助君) 慎重の上にも慎重にやれということはまったく私ども同感でございまして、この問.題につきましては、私どもは、これは日本にも、おそらく世界にも経験がないところでございますので、あらゆる観点からディスカッションを委員の間でしつつ、慎重にやってきたわけでございます。もうすでに一年たったころから、ある程度いいじゃないかという意見も出ておりました。二年目になりましてもいいんじゃないかという意見も出ておりましたが、まだまだ症状が動いておる人もあるので、もうすでに症状があまり動かない、つまり平衡状態になっておる人につきましても、さらにもう一ぺん観察して様子を見ようじゃないかということになって今日三年に及んだわけであります。そういう意味で、私どもはもう可能な限り慎重にやってきた、私どもはそう思っておるわけであります。  それから、平田先生の症例百五十例についてのいろいろなパーセントがございましたが、私どもは、そういう例についてわれわれの検診結果と比較しておりませんので、いま何とも申し上げられないのでございますけれども、私ども委員会では、三池鉱の災害患者全員について、そうしてそれぞれの大学、熊本大学、久留米大学及び九州大学、九州大学は神経内科と精神科とございますが、そういうものが加わりまして、広い視野からやっておりまして、ある特定のグルーブだけを特定の人が見たというものではございませんので、その点はひとつ御承知願いたいと思います。
  17. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 こまかしい点をもう少し伺いたいのでありますが、勝木教授のほうでは、いまのようなこういうデータが出た場合、これに対してもう一応診察をして、そうしてやっていただくことになるだろうと思うわけでありますが、そういうときに、やはり私はもう一つ御配慮を願っておきたいと思うと同時に、何とかこういうデータの食い違いが起こる原因を少し正すためにも、私は非常により慎重さといいますか、いろいろな偶発的な問題までお考えの上、こういうようなことをやっていただきたいという希望を持つわけであります。と申しますのは、特に私ばこのCO中毒の大きく起こるという問題は、おそらく私は三池とか何とがであったのは、先ほどの中では取り上げられなかったけれども、初めのときの治療というものが十分わかっていなかったのじゃないかと思うわけです。あとになって初めて酸素の高圧の療法なんかも取り入れられて以来、よりそういう悪い症状のものが少なくなったわけであって、この当時には、それはおそらくあまり行なわれてなかったという点もあると思うわけでありますが、そういう観点からいえば、私は、この労働災害の起こる時点においてば、非常に労働者の罹災者の人たちは不幸な状態に置かれておったといわなければならぬと思うわけでありますが、そういう観点で、非常にいろんな設備の不十分さとか、そういうものが影響してこういうものが発病しており、そして、より重症な者が出ておる。それから、また、そうしたことによって非常にあとから精神的な刺激というものもいろいろ繰り返されて、私は、より異常が、比較的軽度であっても、そういう症状が出てきておると思う。まあいろいろな例を聞いてみましても、案外症状はきつくなくても、後になってそういう変化の症状が起こってくる場合も非常にたくさんあり得る。そういうふうなもろもろの条件を考えてみますときには、今度のこの中毒患者に対しては、特に慎重な配慮のもとにそのいろいろな経過を考えてやらなければならないのじゃないかと、そういうふうな見地から申しまして、非常にいままでの認定されたのを、これからまたいろいろ苦情とか再認定とか再検査の状態に運ばれるようでありますけれども、そういう観点で、私は特にそういう段階では、その治癒認定というか、あるいは、また、臨床的に職場復帰の可能性のある意見書というか、そういうものがつくられるときには、今後とも何か刺激によって悪化するとか、あるいは、また、今後とも、いまデータの中にありましたように、ある程度治療を続ければ、なお一そう少しずつでも、ほんとうに薄紙をはぐような形でそれが治癒に向かっていくというようなものは、あまり早くそれを認定しないというふうなことも配慮されるべきじゃないかというふうなことも考えますので、そういう観点からも、ひとつ勝木教授のお考えも承って、そして今後そういう再認定とかをこれからされるときのお気持ちをひとつ承っておきたいと思います。
  18. 勝木司馬之助

    参考人勝木司馬之助君) データの食い違いがあるので、この次の再診査をする場合には注意してほしいというお話でございます。それから、もう一つは、初療——最初の治療が悪かったのではないかというお話でございます。これはあのときの状態を一見された方には御同情、御理解いただけると思うわけでございますけれども、あれだけのたくさんの人が一挙にやられまして、あらゆる医療機関を動員いたしまして治療がなされております。しかしながら、それにもかかわらず、みんなの献身的な努力によりまして、先ほど酸素のことがおっしゃられましたけれども、高圧酸素室というのはその当時九州の近くにはなかったわけでございまして、それはやられておりませんけれども、十分な酸素吸入をやる、あるいはその他医学常識で考えられる必要な一酸化炭素中毒に対する治療はそれぞれのところでやられておりまして、これは同情していただきたい。あの事態としては、私はよくやったと思っております。そのおかげでとこれは言えるかどうか存じませんけれども生命が助かった方も決して少なくはないんじゃないかというふうに私は思っております。しかし、その後のあれによりまして、当局からも予算が出て、高圧酸素室なども九州にできるようになりましたし、今後はそういう点は前よりも一歩進んだ医療対策がとれるんじゃないかと思っております。  それから、もう一つは、後になって変化が起こるという先生質問の意味でございますけれども、これはどういう意味でございましょうか。つまり再発するといったような意味でございましょうか。それとも、単に症状が悪くなるというのでございましょうか。
  19. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 再発です。
  20. 勝木司馬之助

    参考人勝木司馬之助君) 再発でございますか。まあ一般的に申しまして、これは医学常識でございますから、あるいは例外があるかと存じますけれども一酸化炭素中毒によりまして大脳皮質が相当にやられます。しかしながら、ある時期になりますと、その程度によりますけれども、おかされた機能というものは他の残った部分で代償されるわけであります。これはもういかなる臓器でもそうだと思います。肝臓でも、あるいは肺結核でも、そこに器質的な変化は残っておりますけれども、それかといって、仕事ができないというものでは決してございません。こういう場合には、われわれは臨床治癒とでも申しておいたほうがいいと思うのでありまして、先生はお医者さんであろうから御理解いただけると思うのでありますが、そういう意味で、ある程度の器質的なものは残っておりましても、一般的な作業能力の回復という、そういう事態になってきているという判断でございます。今後また苦情があった場合に、特に認定というような問題が出ましたけれども、これはまあ私ども現在関係している問題ではございませんので、当局はひとつ十分そういうふうな問題についても、基準なり何なりを御審議願いたいと思うのでありますけれども、もちろん十分慎重でなければならぬと私は思っております。よろしゅうございますか。
  21. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 たいへん失礼なことを申し上げているかもわかりませんが、特に私はこの意見書の中で、こういうものが非常に権威づけられてはおりますけれども、いま勝木教授も申されましたように、非常にこのあとからの、残った症状は幾らかは補われますけれども、それが何か環境的な問題でそうした欠陥が補われて、少しはよく見えているけれども、それが非帯に精神的に不安定な状態で症状をあらわして、そのカバーされておった部分が押えられるというか、いわゆるそれが表にあらわれれば症状の悪化ということになるわけでありますが、そうしたことが非常に起こるということは、まあ先ほどからもお話のありましたようなことでございますので、特に私は今度の問題として、そういうことを大きくこの場合においても教授のほうで認めていただくということを確認しておいていただいて、今後どなたかこれからもこういうふうな問題を取り扱われるときも、慎重を欠かないように、特にいろいろな角度からそういうことをにらみ合わせた上で考えあわせていっていただきたい。特に私は治癒判定ということは、いま勝木先生からもおっしゃいましたように、非帯に私はむ、ずかしい問題だと思うのです。治癒判定というか、これでいいということを言うのは非帯にむずかしい問題があると思うのであります。その関係からも、ひとつ慎重さを期していただきたいということをお願いして、勝木教授のほうからもそのようなアドバイスをこの席でしておいていただいたほうが、私はより一そう明確になるのじゃないかと思うのであります。
  22. 勝木司馬之助

    参考人勝木司馬之助君) 確かにいろいろ刺激その他で症状がたくさん出てくるとか悪化するとかいう事実はございました。これがまあいろいろございまして、ある特定の時期にそれが起こってくるとか、ある特定のグループに起こってくるとかいうような事実があったことは、これはもう確かな事実でございます。そういう点も私どもは考慮に入れまして判定しなければならぬ、そういう意味での慎重さも必要だと思っております。で、私は、しばしばいままでいろいろな機会に報道その他で私どもが受けた印象は、ある特定の、非常に極限とでも申しますか、極限じゃなくて、ある特定の非常に悪い人の状況をもって全体にそれを通じてはかろうとするということは、私は非常に問題じゃないか、これは個人個人違うわけでございますから、問題じゃなかろうかと私は思っております。特にいまおっしゃいましたけれども精神症状と申しますのは、ある程度になりましたならばなおると、あるいは働けると、社会に復帰できるというような鼓舞激励というものが必要なわけであります。さもないと、むしろ非常に引っ込み思案になり、自分は病気であることはあっても、よりひどい病気じゃないかということになるようであります。これはわれわれ医者立場として、あるいは人道的な立場から申しますと、ある程度まできた患者につきましては鼓舞激励して、働けるのだというような立場をとらなければならないと思うのでありますが、必ずしもそういうふうにいってない場合もあるようでありますので、その点も私は慎重でなければならないというふうに考えております。
  23. 山崎昇

    ○山崎昇君 安恒参考人がたいへん会議があって急がれておられるようなんで、一点だけお聞きをしたいと思うのですが、先ほどこの一酸化炭素の問題については、本年の一月二十七日に、総評炭労、そして労働省との間に覚え書きを持っておられる。しかし、それがどうもあまり守られないで今度のような事態を発生をさしてしまった。そこで、この一カ月来、精力的に労働省話し合いをされて、先ほど御発表になったように、新しい覚え書き締結をした、こういうお話でございまして、私どもも皆さん方の努力に感謝をしたいと思うのですが、その中で一つ気になりますことが実はあるわけですが、それは、今後ともこの国会の決議というものが一行政庁によって破られたんではたいへんだから、よくおまえらは守れというようなおしかりとも受けるような意見もありましたし、また、今後の新しい立法にあたってはこれこれの内容をぜひ実現をしてもらいたいというような強い要望もございました。それについて、さっき労働大臣のほうからたいへん固い決意等が述べられたわけなんですが、今日までこういう交渉をやってこられた安恒参考人としてはいろいろ意見があろうと思うし、私どもも聞きたいことがあるのですが、再びこういうことのないようにするには、今後一体労働省に対してどういうふうに望まれるのか、もう一点そこらのことを聞いておきたいし、また、私ども、皆さんがお帰りになりましたあとで、労働省に、いろいろ国会の決議と行政庁のあり方でありますとか、聞きたいこともあるわけなんですが、それらもひとつ折衝に当たったあなたから、参考にしたいと思いますので、もう少し交渉の内容等について、もしあればあなたの考え方をひとつお聞かせをいただきたい、こう思います。
  24. 安恒良一

    参考人安恒良一君) 私、退席したいと申し上げたのは、中央医療協の委員で、きょう二時から中央医療協が開かれておりますから、そういう角度お願いしたいのでありますが、できるだけ先生方の御質問については時間をさかしていただいて答えたいと思いますから、そういう角度お願いしたいと思います。  そこで、私はいま山崎先生から質問があった点について二つの角度からお答えをしたいと思うのです。  まず、最初は、何としても労働省というこの行政庁、しかも労働省というのは、率直にいって、他の、たとえば大蔵省とか建設省とは違って、労働行政をつかさどるところであります。労働行政をつかさどるところの労働省というのは、私はやっぱり一番人間性を持って労働者の問題をやはり行政庁として取り扱っていかなきゃならぬと思う。そのことがどうも私は率直に言って、今回の措置について人間性が欠けておったんじゃないかということをどうしても考えざるを得ません。それはなぜかというと、私は一つの例を、言いますと、一月の二十七日の覚え書きに基づいて退院通告をした者について問題が起こったならば、いわゆる私どもの推薦する二人のお医者とどうして話をしてくれないかということをお願いをしたわけです。ところが、お医者さんの二名のうち、一名のお医者さんについてどうしてもそのお医者さんを忌避をされるわけです。でありますから、やむを得ず組合側は、その二名のお医者を立てて組合側として見、それと労働省の御推薦のお医者と話し合うことができませんので、やねを得ず退院通告を受けてもそのまま入院をしていると、こういう事態がある。私はどうしてその二名のお医者さんについて忌避されるのかわかりません。覚え書きの中で忌避条項がないにもかかわらず、これを忌避されているという点が一つであります。  それから、いま一つ私がやはり問題点があるということを申し上げているのは、たとえ現地の組合がそういうような忌避状態であっても、覚え書き締結をしている総評炭労に、実は退院通告をした、覚え書きに基づいて話し合いをしようとしても現地の組合が忌避をしてるという状態を、労働省総評炭労と話し合って、そして決裂をしたならば行政措置に基づいてやられるという場合、私は政治としてあります。ところが、残念ながら、この措置をするにあたって、何ら総評労働省との間にこの問題をめぐって団体交渉話し合いがされてない。こういうところに私は今回の一番大きな問題があったんじゃないか。少なくとも、私ども労働省総評という日常関係においては、やはりこのそれぞれの窓口においても、相互信頼といいますか、そういうものの上において、今日まで話し合いをするものは話し合いをする。それは立場が違いまかすから、衝突をするものは衝突をしてやってきたと思う。しかし、的には、いわゆる労働行政をつかさどっている労働省労働組合総評というものの関係というものは、そういう上で今日まで律してきたつもりでありますし、今後とも実は律したいと思います。そういうことがやはり行なわれなかったということに問題がある。特に私はさっきも申し上げましたように、十月に入って、第一回が三十八名、同じく続いて二十名、十月二十四日に五十四名退院通告をして、組合と協議したいと、こういう問題を持ちかけて、組合が応じないからといって、直ちに二十六日発表する。最後の通告を受けた人は、五十四名は二十四日なんです。わずか二日おいて、そうして直ちにもうおまえさんはうちの退院通告を受けないから措置をするというやり方は、どうしても私は人間性ということに欠けておるのじゃないか。少なくとも、この話は佐藤総理太田議長との間に、人間性の尊重、人命の尊重という立場から見ると、覚え書き精神からいっても私は非常に反するんじゃないか。ですから、私は、少なくとも一番問題になるのは、労働行政というものは、やはり労働者の権利を守るというところに一つの労働行政の大きな立場があると思いますから、そういう角度でこの問題を、私は率直に言って、たとえば十月初めなら初めに総評なり炭労にこのことが持ち込まれて、私たちと十分に協議がされておれば、こんな混乱を起したり、もしくは参議院の諸先生方にこんな迷惑をかけなくても問題の解決はし得たのじゃないか。少なくとも、私ども総評は、いわゆる全国的組合の本部としてかなりの良識を持っているつもりです。ですから、お互いに良識を信じ合って覚え書きに基づいて話し合うということが十分されなかったというところに今日の一番欠陥があるように思います。私は今後とも、覚え書きというものが締結をされたならば、その覚え書きの履行にあたっては、お互いに良識を持ってやはり話し合いをしていく。話し合いがどうしてもつかぬときにおいてどちら側かが決行するということは、これは今日の世の中であり得ると思いますが、そういうことを強く望むものであります。  それから、決して私どもは諸先生方のいわゆる立法府できめられた、参議院できめられたことを労働省が踏みにじったという点を、実はおしかりを申し上げたわけではなくて、私も国民の一人でありますから、立法府できめられたことが一行政機関において踏みにじられるということになれば、これは民主主義政治の危機と思います。そういう角度からその点は強調申し上げたわけでありますから、どうぞ誤解のないようにしていただきたいと思います。
  25. 山崎昇

    ○山崎昇君 たいへん明快なお考えを聞いたのですが、もう一点ひとつ重ねてお聞きしたいのですが、それはいろいろ覚え書き等が破られたりして、どうも組合と労働省側との間に多少私は不信感というのが存在をしたんじゃないか、こう心配をしておったのですが、それらを乗り越えて、昨日来、お聞きをしましたような新しい覚え書きがつくられた、こういうふうに私ども理解をするわけなんですが、そうすると、参考人としては、今後とも労働省とは十分いろいろな問題について話し合いをする、そして話し合いをしてでき上がったものは、これはもう忠実に労働組合側としても実行していきたい、こういうお考えで今後とも政府に臨まれるのじゃないかと私は思うのですが、その点について念のために一点お聞きしておきたい。
  26. 安恒良一

    参考人安恒良一君) それはそのとおりであります。ただ、私たちは、過程的には、もう総評というものは労働省といままでのような信義関係が持てるかどうか、非常に心配した時限もありました。しかし、昨夜来おそくまでお互いに約一カ月間にわたって話し合いをいたしました結果、いま山崎先生が言われましたような考え方で今後とも処していきたいと、こう思っております。
  27. 山崎昇

    ○山崎昇君 労働大臣にひとつお聞きしたいのですが、いま私のほうから、あなたのほうの交渉相手でありました一方の労働組合側の見解を聞いたのですが、多少ありました不信感等は解消して、できるだけ労働省のほうとも話し合いをしながら、そのまとまった結論は忠実に守っていきたいという再度のお答えがあったわけでありますが、労働省としてもこれに私は異議がないと思うのです。したがって、いままでのやったことは私はあまりほじくってお聞きしませんけれども、これから労働組合との間にあまり不信感を持たれない、それから、一たん約束したら、それはやはり実行するというだけの決意を私はこの機会に労働大臣が示すことによって、今後労使間の問題というのが円満にいくのではないか、こう思うのですが、労働大臣の見解をひとつ聞いておきたい。
  28. 山手滿男

    ○国務大臣(山手滿男君) 労働省がとってまいりました態度に対していろいろ御批判がございましたが、労働省としては当委員会の決議を尊重するというたてまえでいろいろ進んできたわけでございまするが、事務当局もやってくれたと私は信じておりますが、いろいろ皆さま方のほうにも先ほど来のお話のような御批判が起きるような事態にありますことを非常に残念に思います。昨日来、いろいろ関係者の皆さま方の御配慮をいただきまして、あらためてああした取りきめが行なわれました。私もたいへん皆さん方の努力を多といたしております。今後、新しい事態でございまするので、この取りきめを十分尊重をいたしてまいりたいと思います。ただ、この取りきめの中には、御承知のように、会社側等が対処をすべき問題等もございます。労働省といたしましては、できるだけの努力をいたして、会社側にも納得をさせる決意でございます。
  29. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いま山崎君のほうにちょっと譲っておったわけでありますが、続きを私はもう一、二点御質問しておきます。  先ほど伺いまして、たいへんお考えもごもっともであるし、そういうふうな形で勇気づけなければならないということもよくわかるのでありますが、なお一点、こちらのほうの平田参考人からの御報告の中にもありましたように、これはやはり先生のほうのお考えと多少食い違っておるのも、私は当然こういうふうな判定が、何と申しますか、非常にしさいな点もあってむずかしい点もあると思うのでありますが、特に私はこの種の問題が、いわゆる一度おかされた脳の変化は、もうある一定の時間をたてば回復をしないわけでありますが、それはいま勝木先生のおっしゃったように、他のほうで多少補われてこれがあらわれてまいるために、多少ともよくなってきたという傾向を示しているわけであります。そういうふうな形にある点から考えますと、先生のおっしゃったお説のように、やはり相当あとからいろいろな多角的な変化というものがなくても、非常に精神的ないろいろな条件でもっていままでカバーされておったものが非常に打ち消されて悪化をしてきたというような条件としてあらわれてくるものがあり得るということも御納得いただいたように思います。そういう観点からいえば、今後とも、いま私がお願い申し上げましたように、これからのこうした判定をされる場合に、先生方の御指導として、やはり相当慎重にやろうということは、ここで十分ひとつ指導的に御意見を付しておいていた、だくほうが今後の問題に非常にいいと思うのであります。私は特にそれを先生お願いして、そうした立場をある程度はっきりしておかないと、そのときにあたって、だれが当たられるかわかりませんが、その当たられる人の主観によって、非常に左右される、一力ではいいといわれるものがまた悪いといわれるというような形で、私は非常に今後もこういう判定にあたってはトラブルが起こるのではなかろうかということを心配するのであります。さようの取りきめを見せてもらいましても、両者の話し合いが持たれて、話がつかなかったときにその上でというような積み重ねの取りきめをなされておるようでありまするけれども、私は今後にはそこが問題になってくるのではないか、いろいろの方々がいろいろの御権威のもとでこれを判定されるわけでありますけれども判定基準をなすところに、ある程度そういう慎重さを持ってやるということを前提条件に考えておいていただかないと、今後このつくったものがまた一つのトラブルのもとになるようでは非常にいけないのではないか。特に私は大学のほうでの今度の三池の問題に対しては、医療委員会として相当深く突込んでいただいた、医学的見地からいって相当慎重さを要するものだと私自身も思いますし、先生も先ほどのお話の中であるわけですから、ある程度アドバイス的にそういうふうにしていただいたほうがトラブルがなくて済むのじゃなかろうかと思います。そういう意見を含めて、先生の御意見をちょっと伺っておきたいと思います。
  30. 勝木司馬之助

    参考人勝木司馬之助君) いずれそういうふうな段階がまいりますと思います。あるいは認定というふうな段階がまいりますと思いますが、そういう場合にいろいろな判断の基準などがつくられるだろうと思います。専門家でおつくりになるだろうと思いますが、そういう方にぜひ慎重であっていただきたいと、私も同感でございます。
  31. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 勝木参考人並びに安恒参考人の退席瞬刻になりましたので、勝木参考人並びに安恒参考人に対する質疑はこの程度にとどめたいと存じます。  勝木参考人安恒参考人に申し上げます。  本日は貴重な御意見の開陳を賜わり、まことにありがとうございました。  なお、平田参考人には、たいへんおそくなりましたけれども、もうしばらくひとつよろしくお願い申し上げます。  では、引き続き質疑を行ないます。
  32. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 平田先生のほうにちょっと御意見をお伺いしたい。先ほど来いろいろ精密な検査をされてパーセントを発表されまして、私もこれを聞いておりまして非常に参考になったわけでありますが、こういうふうな過程から、平田参考人は、やはりいまの治療が進められておってだんだん軽快をしているパーセントをお示しになったわけであります。まだまだ今後ともこういうふうなものをお続けになったら、その症状は幾らかでも薄紙をはいでいくようになおっていくのだ、こういうふうに解釈させていただいて差しつかえないでありましょうか。
  33. 平田宗男

    参考人平田宗男君) ただいまの御質問のとおりでございます。最後に言いましたように、まだ動いているので、しかも全体的に見るとよくなりつつある。こういうことがあるのですからして、これはまだ治療を続ける必要がある。ただ、そのときに私は、いわゆるリハビリテーションのやり方、少し批判をいたしましたけれども、実は批判したからといって、私自身がほんとうに完全な、どうやったらいいかということを示せと言われても、実はその点については現在の医学のあれでは、この器質的な脳障害復帰、リハビリテーションのやり方については、まだほんとうに経験もあまりございませんし、理論化もあまりされていないということでございます。こういつたことで、少なくともああいった、ただ年齢的に分けてやるというだけではいけない、これはもうわかっているのですが、もっともっとこれは慎重に各方面の全国のいろいろな経験を集めて、そして日本でもりっぱなものをこの三池の患者を通じて私はつくっていってもらいたいというふうに思います。
  34. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 ちょうど私もリハビリテーションの問題についてちょっと御意見を伺おう思ったところでありますが、私は、このリハビリテーションというのは、それを一つの段階として移すのじゃなくして、病院の治療中にリハビリテーションそのものも加味したような行き方、いま勝木先生もおっしゃったように、非常に何か刺激を与えて、そうして意欲的に働こうという意欲を刺激したりして与えなければならないというような御意見もあったが、私はそういうのは治療中に行なうべきものだというふうに考えているわけでありますが、そうした意味でやはり先生からのお話もありましたが、そんなふうに解釈さしていただいていいものだと私は思うのですが、やはりその点もこんなふうなことは同じように考えていただけるのでありますか。
  35. 平田宗男

    参考人平田宗男君) いまリハビリクールのほうだけ強調しましたので誤解があったかと思うのですけれども、これはいろいろな治療、薬物療法、その他精神的な療法とともに、やはりリハビリクールをやる、しかも、冒頭の陳述で申しましたように、一番これが大きな欠点というのは、初期ですね。一年間もほったらかしたというのは、これはしかし、いまさら言ってもしかたがないのですが、このリハビリという面にはいろいろなそういったような総合的な治療とともにやる必要がある。  それから、もう一つここで強調したいのは、リハビリテーションをやる場合に、それを受ける側とそれを施す側、このスタッフと患者さんの人間関係、この点が非常に私は大事だ。私は精神病院長で、精神分裂病の患者さんのいろいろなあれをやっているわけですが、この点が相当意味があると思います。そういったような意味で、人間関係がこの三池の患者さんの場合にこわれているということは、私はこれはぜひ改善しなくてはならないというふうに思います。
  36. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私、あと大臣にちょっとお伺いしたいと思うのですが、先ほどから勝木参考人平田参考人のお話を承って、私のいろいろほかで体験をした点からも考えまして、私はこういうふうなもののいろいろ意見交換というものをどう判定をしていくかということ、これに対しましては、私は非常に大きな問題があると思うわけであります。非常に考え方によって、一方には今度の意見書のような形になって、そうしてまたそれを採択されることによってこのような処置もとられる。一方からいえば、もっとこれを慎重に考えれば、それはそうなのだ、一方、いま平田参考人のおっしゃるように、だんだんそういうデータも出ているわけでありまして、こういう点で私は今度新しくきのう取りかわされたこの要綱を見ますときに、私はこれを運営していただくことによってだいぶ大きな差が出てくるのじゃないか。最後的には大臣のほうがいろいろと考えられることになってまいりますので、私はそういうところにこれからの大臣が、先ほど質疑の中にもありましたように、いかに労働者の立場を考えながらこういうことの行政を進めていくかという観点でだいぶ変わってくると思うのでありますが、こういう点に対して大臣のひとつ御所見を聞いて、今後どういうふうにされるのか。私どもこの取りきめを聞きましても、何か一つそういう点で今後の運営に不安感を感じますので、医者立場から、ことに医療の面からいろいろな御意見が出る中をどういうふうにして今後指導していただくか、あるいは、また、それを採択していただくかという心がまえをちょっと承っておきたいと思います。
  37. 山手滿男

    ○国務大臣(山手滿男君) いままでとってまいりました処置に対して、適当でないという方々の申請があります場合には、この取りきめはきわめて慎重な配慮をするように取りきめられておりまして、私どもはこういう線がきまり、こういう軌道に乗せて慎重な施策がされますことを非常にけっこうなことだと、こう考えておるのでございまして、先ほど来お話がございましたように、できるだけ今後は慎重にこの取りきめの線に従って処置をしてまいる、こういうふうに考えております。
  38. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は平田先生にお尋ねをしたいのでございます。いま勝木先生のおいでになるときにやればよかったのですけれども、専門的に御研究をしていただいて、専門的に治療をしていただいて今日までいろいろのデータまでつくっていただいて、今後の動向について御努力をしていただいているわけで、私はほんとうに心から感謝をいたしたいと存じます。  そこで、私たちは、厚生行政、リハビリテーション、あらゆる人間をどう守っていくか、保健の問題、病気になったときの問題、こういうぐあいに災害を受けた人の治癒、完全に治療していくための皆さん方によっての努力の問題がしていただいているわけでございまするが、この一酸化炭素中毒というものが、医学上、歴史的にどういう形で治療が行なわれてきたのか、その病源体本体というものは人体にどういう影響をもたらしているのか、そこのところが私はやはりなかなか臨床的な治療——本体がとういうふうになっているか。私のしろうと考えでは、むしろ人体の中枢神経からおかされてくるものだから、どうもなかなか今度のような問題が起きるということでありますから、私たちの感情からいって、なお慎重に慎重に、先生も先ほどおっしゃったように、ちょっとした刺激があるとか、または何か興奮するとか、仕事の上で社会的環境があるとか、そういうことでまた同じような症状をぶり返すという危険があるというように私はお聞きしたわけですから、医学的に何と申し上げていいのかどうか、私は適切のことばをよく存じませんけれども、病理といいますか、病源体、それから臨床というぐあいにしろうとなりに考えるわけですが、その本体というものはどういう性格のものであるか。それから、この中毒の歴史的な現象、治療法、その他外国なんかでどういうぐあいにやってきているのか、そこらの点、経験をされた中からでもけっこうでございますけれども、お聞かせいただければまことに幸いだと存じますが、よろしくお願いしたいと思います。
  39. 平田宗男

    参考人平田宗男君) 病気の本体、一酸化炭素中毒ですね、これは簡単に申しますと、一酸化炭素ガスというのが、これがヘモグロビンと非常に結びつきやすいものだから、それと強く結びつくということで、そういったことで酸素を全身の組織に運ぶことができない、そういった場合に酸素に対する欠乏が一番影響を受けるのは、これは中枢神経であるわけです。中枢神経の変化としまして、これはいろいろな剖検例がございますが、これは急激に死んだ人とか、それから時期によって多少変化があるようでございます。いろいろな神経細胞の崩壊、それから特に脳基底核というのですか、特にそこらあたりに両側性のいろいろな出血、軟化層というのがたくさんある。それから白質の、つまり皮質の下にありますが、における脱髄現象、こういつたようなことがあります。それから、もちろん全身的な臓器も、これもやはり受けないわけはないわけです、酸素欠乏ということは。しかし、それだけではなくて、同時にいろいろな酵素の作用の障害がくるということもいわれてい石ようでございます。で、私自身は、実は患者さんを治療をしているということではございません。これはときどき行って、そして見ているということでございますが、再々いろいろ用件もございますが、絶えず接触はしております。四回の集団検診と申しましたが、いろいろ用件がございますので、薄々接触はいたしておりますし、それから、また、大牟田の第一診療所にもちょいちょい行きまして患者さんも直接見るということもあるわけです。で、治療法については、いろいろ今度の、従来この点が確立してなかった、従来はっきりしてなかった、そういったことで当初相当困難があったようです。したがって、これは熊本大学の論文、近く日本精神神経学雑誌というのに出ますが、その論文をみせていただいたわけですが、それを見ますと、やはり入院治療患者さんの中でも、十分な治療をやった分とそうでない分があるわけです。したがって、そのあとの経過を見ますと、十分な薬物治療をやった分、これは予後がよろしいという結論が出ているようでございます。その際、きいた薬物が何々であったか、ここでは申し上げませんが、あるわけでございます。そういったことで、今度のCO中毒の治療にあたっても、非常にこれは貴重な経験がこの中から出されてきているということで、私が見ました従来の諸外国の文献その他で、そういういままで参考になるといったような文献は、私はあまりよく存じません。ないようでございます。
  40. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうもありがとうございました。まあそういうかっこうで、これから新しい、いままでのCOに対する決議、覚え書き、申し合わせの上の今日まで問題になっておったのを、これからごやっかいになって、その異常を訴えられる方々をまた平田先生に——勝木先生もそうだと思いますが、御苦労になると思うわけでございます。ですから、どうぞひとつ、いままで外国の文献、それから、かつてこれだけ大量といいますか、一酸化炭素中毒というもののいろいろな面で、私は一つの面だけは申し上げませんが、いろいろの面で御苦労になることだと思います。私たち社会労働委員会といたしましても、何といっても人の生命を中心とする厚生行政を中心に、また、労働行政を中心にやっている委員会でございますから、ひとつまたその経過等もお聞かせいただいて、そしてまたより一そう一人でも早く治療ができて、そして、何といっても、人間は健康で家族が一緒に住んで働いて生活を打ち立てていくというようなことが何よりもこれは幸福なことなのでありますから、そういう意味で、あいまいな状態で外へ出てまたぶり返すというような、その心配も、私がいまお話を聞いた上からも心配をするわけでございますので、ぜひともひとつよろしく御協力をお願いをしたいと思うわけでございます。  それから、労働大臣にこの際お尋ねをしておきたいのであります。先ほどからこの申し合わせば申すに及ばず、決議、覚え書き、その他今日までの経過の中で、一酸化炭素中毒者の治療、援護については、誠心誠意努力をすることでおっしゃっていただいたわけであります。これは私は申し上げるまでもなしに、その労働大臣の決意、労働省の今後の一酸化炭素中毒者に対する援護措置の決意というものは、皆が私は待っており、期待をしているわけでありますから、ぜひ今後問題の起きないように、十分なひとつ配慮お願いをいたしたいと私は思うのです。  そこで、この一酸化炭素治療措置については、昨年の七月二十七日にとりきめを、決議や覚え書きをして、具体的な事務的ないろいろな処理については総評炭労との覚え書きに基づいて一体となってやってきた。ところが、こういう結果になった。私たちもあまり形式にこだわらないで、何とか解決したいというふうに努力してきたものの一人でございます。しかし、私は、やはり今後学者、先生その他の御努力、御協力をいただいて、患者になられた方々治療と援護についてみんな寄ってやっていくわけでありますけれども、私は、やはり何としても、法できめて援護措置を明確にする、そうして非常にむずかしい環境の中に追い込まれている労働者の皆さんに安心感を与える、私はこれが一番大事なことになってくるわけであります。ですから、一つの面では、何といってもこういう事故が起きないように最大の努力をすることが一つでありまして、先ほど参考人からも言われているとおり、われわれもそれを念じている一人で、それは日々の行政の中で労働省基準監督、鉱山保安局の地下保安の要綱というものがあるのは、一々私はやってもらわなければならぬことでありますが、このいろいろな対策、善後措置をできるだけ早く、われわれ院議でも決議いたしましたように、立法、そうして十分にいまの家族がほんとうにもう沈んで、命がけと申しましょうか、将来の希望を失うほど心配して沈んでおいでになる家族の皆さん方を守っていくには、今日の措置と、それからりっぱな立法をして、そうして安心感を与えることだと私は思うのです。その中でどうしても出てくる問題は、それは一日も早くやらなければならぬことは申すまでもありませんが、その中で、たとえば先ほど安恒参考人から出ておりましたように、企業の責任において業務上傷害を受けた者が、爆発で罹災したからといって、おまえはもう一応いままでの法律上の期限がきたからといって、紙を捨てるようなかっこうで捨てられるなんというようなことは、これはもうとうてい許せない問題でありますし、また、あわせて、同じ職場にとどまったとしても、配置転換によってやられてきて、おまえはこの傷害でからだが悪くなったんだから、もうこれだけの労働力しかないから、たとえば三万円もらっておった人が二万円とか一万五千円で、おまえはそれで生活をしていけというようなことになると、これまたたいへんなことなんでございます。これは法律は立法府でつくるわけですから、それはあなたのほうでとおっしゃればそういうことになるかもしれませんけれども、しかし、労働省がいま基準審議会におはかりになって、そうして、よりよい、一番経験の深い、一番実態に触れるのは労働省でございます。ですから、そこはやはりいま大臣がおっしゃった、誠心誠意援護措置をやっていくという気持ちで、いまのCO中毒者の呻吟しているこの今日の状態をどうしたら救えるかという私は特別の配慮をしていただいて、そしてこの立法化をし、できるだけ早くよい法律をつくっていただくという、この労働大臣の決意が今後の問題を左右すると、私はそう思うわけであります。ですから、そういう点で労働大臣のひとつ決意を聞いておきたいと思うのです。
  41. 山手滿男

    ○国務大臣(山手滿男君) 藤田先生のお考えと全く同様でございまして、できるだけりっぱないい法律をつくりたい、こういうことで鋭意検討も始めております。御承知のように、審議会にも御諮問を申し上げまして、その審議会でいろいろな角度から御意見を出してもらいたいということでやっておりまして、私は必ず皆さん方の御期待に沿うような答申も出てくることを確信をいたしておりますし、そういう御意見が出てまいりまするならば、お話のように、できるだけすみやかに立法措置を講じたい、必ず講ずる決意でございます。
  42. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は重ねてひとつ御意見を聞いておきたいと思うのであります。まあ私たち立法府でございます。しかし、労働行政にしましても厚生行政にいたしましても、人間の生命に関する行政、これはもう内閣の中で、人間の直接生命に関する行政庁といったら、私は労働省と厚生省だと思う。そういう意味ではわれわれの委員会というものは、その人間の生命を守っていく、この観点から、そんなにいろいろの問題について争わないで、いかにしてこれを上昇し、いかにしてよい社会をつくるかというところに、私はこの委員会というのはむしろそこに力点が置かれて議論をしてきていると思う。ですから、われわれもそういう覚悟でございます。ですから、この立法府で議論をして、そしてやっぱり行政庁の労働省労働大臣を通じ、または労働省の皆さん方を通じて、よい方向というものを、少なくとも議論をしている間はともかくといたしまして、院の意思が一致してやっぱり意思としてきめた問題については、行政をおやりになるときにおいて、どうぞひとつ労働省の意思、立法府の意思というぐあいに私は今度お考えになっていただいて、そしてその間に隔たりがあるような、また、感覚のズレがあるようなことのないように、まあ私は行政庁のおやりになっていることを一々ここで報告して、一々確認せいなんて、そんなことは三権分立のたてまえから申し上げませんけれども、やっぱり意思だけはきちっと通じているという、で、院の意思がきまっていることについては、特に相通じて問題の処理に当たっていくという心がまえだけは今後明らかにしておいてもらわぬと私は困ると思うのです。これはちょっと付言のようなことになりましたけれども、いまはことさら私はそれを取り上げてどうこうしようとは思いませんけれども、しかし、その点は十分に配慮をしておいていただかないと私は困ると思う。むだとは言いませんけれども努力されてよい結果を生んでいただいたのだから、私はそれにとやかく言いませんけれども、そういう点が少しはどうも私は欠けていたのじゃないか、こういう感じをいまだに持っています。いまの結論について私はとやかくこの際言わずに、むしろ一生懸命に大臣のおっしゃったことばどおり私はやってもらいたいということでありますけれども、今後の立法府、特に立法府の中の社会労働委員会の意思というものについては、私はそういう覚悟でひとつやってもらいたいということをこの際発言をして、大臣の御所見を承っておきたい、こう思います。
  43. 山手滿男

    ○国務大臣(山手滿男君) 先ほど来御答弁を申し上げておりまするように、私たちといたしましてはできる限りの努力をいたし、御期待に沿いたいと思うのであります。
  44. 森勝治

    ○森勝治君 労働省に一点だけ質問をしてみたいのですが、この事件の遺家族の生活が非常に困窮の度を加えておるという話であります。たとえば夫を失ったご婦人は、稼働日数に応じて一日三百円ずつ会社から支給というのが話し合いになっておりますけれども、たとえばある工場では大体三百五十円程度しか日給が支給されないということであります。そうなりますと、会社側から三百円出ますから、合計六百五十円、月間平均の稼働日数が二十二日ということになりますと一万三千円程度であります。そうなりますと、当該地方における生活扶助の額からいっても、労働者の責めに期すべからざるところの事故によって生活の支柱を失ったこれら未亡人、遺家族等の皆さんが、今日もなお生活苦にあえいでいるということは痛ましい限りであります。これはこの前の会議でも私はこの点についてつぶさに労働省の見解と、その適切な措置を要望し、また、指摘したところでありますけれども、依然として四百五十二名ですか、この方々の遺族の生活の困窮が続いているということは、私ども見るに忍びないわけであります。したがって、いま皆さんから御質問があったように、どうやら当面の問題は今後話し合いにゆだねることになります。また、先ほどの大臣の話から推しましても、おそくとも通常国会では法制化が実現できるだろうと思うのであります。ところが、いま私がことあげいたしたところのこの災害の遺家族というものは、このままでまいりますとこの法律の措置の外にあるわけでありまするから、当然これは放任されておることに相なります。もちろん過渡的措置は、いま申し上げたように、稼働日数について一日三百円というような支給というようなことには相なっておりますけれども、これはあくまで暫定措置であります。しかし、このまま放置するならば、今日のように物価上昇の段階において、ただでさえやっていけない遺家族が、こうして高物価の中で一体どう今後やっていくのか、これはたいへんな問題でありますので、この点についてどう対処されようとするのか、出先をどのように指導されておるのか、この点についてひとつ一点だけお伺いしておきます。
  45. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 御指摘のように、遺族の方々の援護問題は、これはきわめて深刻な問題であるわけでございます。先生御指摘のように、会社から三百円を出すといったような条件のもとに特定の工場で働いておりますけれども、その間、家庭的にいろいろな条件がございまして、一がいには扱えないようでございます。そこで、労働省といたしましては、労働基準監督署のほうはその労働条件の適正化についてできるだけ指導をする。それから職業安定所のほうでは、転職を希望するならば、さらに就職あっせんといったようなことで努力をいたしてみたい。そこで、問題を個別的に当たりましてその希望者をつのるという方式で実は今日までやってきたわけなのでございますが、この点について率直に申しますと、そういった御意見が十分出ていない。これについては組合との了解が十分についていないとか、あるいは会社に対する団体交渉事項としていろいろまた考えているとか、いろいろな要件がございまして、率直に申しまして十分でない点がございます。しかし、先生いま御指摘のような事情にございますから、今後さらに十分こういう問題についても配慮してまいりたいと存じます。率直に申しまして、私ども患者の問題につきまして忙殺されておりましたけれども、御指摘の点、重々私ども理解できることでございますので、鋭意努力してまいりたいと考えます。
  46. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。  平田参考人申し上げます。本日は、長時間にわたり、貴重なる御意見の御開陳を賜わり、まことにありがとうございました。本委員会といたしましては、皆さま方の御意見を参考といたしまして、今後十分検討いたしたいと存じます。本日はどうもありがとうございました。  本日の調査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十二分散会