運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-10-24 第52回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年十月二十四日(月曜日)    午前十時四十一分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         千葉千代世君     理 事                 鹿島 俊雄君                 藤田藤太郎君     委 員                 紅露 みつ君                 佐藤 芳男君                 丸茂 重貞君                 山下 春江君                 横山 フク君                 大橋 和孝君                 杉山善太郎君                 森  勝治君                 山崎  昇君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君    国務大臣        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        労 働 大 臣  山手 滿男君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        警察庁警備局長  高橋 幹夫君        警察庁警備局警        備課長      後藤 信義君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省医務局長  若松 栄一君        通商産業省化学        工業局長     吉光  久君        労働省労政局長  三治 重信君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局審議官     住  栄作君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省財政局長  細郷 道一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事の辞任及び補欠互選の件 ○社会保障制度に関する調査  (水俣病対策に関する件)  (救急医療制度及び被害者保障等に関する  件) ○労働問題に関する調査  (最低賃金に関する件)  (一〇・二一統一行動をめぐる労働問題に関す  る件)  (公務員給与に関する件)  (全国金属労働組合日産・プリンスの不当労働  行為に関する件)  (都市交通賃金問題に関する件)  (雇用促進事業団建設住宅に関する件)     ―――――――――――――
  2. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。  理事補欠互選の件についておはかりいたします。  丸茂重貞君から、都合により理事を辞任したい盲の申し出がございましたが、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  つきましては、直ちにその補欠互選を行ないたいと存じます。互選は、先例により、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事土屋義彦君を指名いたします。
  5. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 社会保障制度に関する調査を議題として調査を行ないます。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 大臣に、あるいは環境衛生局長にお答えはいずれでもけっこうでありますが、新潟阿賀野川の流域に発生した有機水銀中毒事件について、もうだいぶ時間がたっておりますが、窓口はいずれにいたしましても、その原因追求結論がもう出ていいタイミングだと思いますが、もし出ておったならばそのように、出ていなければその見通しについて、さらに時間がないので、はしょって申し上げておきますけれども、相当に国の調査を圏の費用であの手この手から科学的、あるいは医学的調査が煮詰まったはずでありますので、その事件については、ひとつ国の責任において天上天下に公表いただきたいということも含めて、まず第一のお尋ねをするわけであります。
  7. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 新潟阿賀野川発生いたしました水俣病原因調査につきましては、政府といたしまして通産、農林、科学技術庁厚生省等関係各省庁で緊密な連携をとりながら、この原因究明対策等に当たっておるわけで一あります。四十年九月三日に科学技術庁より特別研究促進調整費九百六十三万九千円を支出をいたしまして、科学技術庁中心になりまして調査研究組織が設置をされ、ただいま鋭意研究調査を進め、その結論を急いでおるわけでございます。厚生省といたしましては、そのうち疫学研究班分析研究班及び臨床研究班、この三つの班を厚生省が担当をいたしまして、特に疫学調査研究に力を入れまして検討を進めておるのでございます。この原因として考えられまする点は二つございまして、一つは、新潟地震の際に水銀系農薬が河川に流入した、それが原因ではないかと、こういう見方が一つあるわけでございますが、これは御承知のように、フェニル水銀系統農薬でございまして、水俣病原因であると思われるメチル水銀とは異質のものであるわけでございます。ただ、この農薬の中に微量のメチル水銀を含有しているのではないかというようなことが一部指摘をされているのであります。  もう一点は、阿賀野川の上流にありますところの工場からの排水によるところの工場廃水に含まれるメチル水銀、これが原因をなしているのではないか、こういうことが指摘をされているわけであります。この工場におきましては触媒として無機水銀を使っているわけでありますが、それが工場の製品をつくる化学的な工程におきまして有機性メチル水銀発生をする、こういうことも学同的に究明をされております。  また、水俣病発生いたしました原因といたしましては、媒体といたしまして、阿賀野川でとれますところの魚がメチル水銀を相当含んでいる、こういうことも魚の魚体の分析から明らかにされている、こういうこと等が明らかになっておりまして、だいぶ問題は煮詰まってきているように思うわけでございます。現在私の手元に報告されておりますところでは、今月末ないしは来月の上旬ごろにはその総合的な、科学的な結論が発表できるのではないか、こういう段階にあるわけでございます。
  8. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 そこで、大臣にお伺いしますか、大体今月中ということになればあと幾ばくもないわけでありますが、それで、相当な国の調査費が出、相当な権威あるグループ大所高所から科学的、医学的な形で結論が出ると思いますが、その結論の公表の窓口科学技術庁になりますか、それとも厚生省になりますか、その辺のところはどちらになりますか。
  9. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 科学技術庁がその責任官庁になります。
  10. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 そこで、そうなってまいりますれば私もわが意を得たに近いと思いますけれども、率直に申し上げまするけれども、まあ相当な費用を使い、そうして原因究明、あるいは追求というものは、大乗的な見地から見ればそれは一つの手段でありまして、第一に、水俣病は、御承知のように、九州の新日本窒素工場発生して、第二は新潟発生している、こういうことでありますので、公害問題とも不可分の関係をもつて、第三、第四のこの類似の童金属関係慢性中毒が起こらないように防止するということが重要な要素があるということが一点と、問題は、調査のための調査究明のための究明ではなくて、たとえば新潟県だけの事例をとりましても、なくなった遺族や、それから現在入院中の重症患者もしくは通院中の者、あるいは六〇PPM以上を保有して、このままの状態で子供を産めば、その胎児の中にも水銀が保有される、そういう婦人が不安の中に六十人もおるといったような関係と、それから行政指導によって、内陸水域漁業協同組合傘下組合員が千数百名おるわけでありますが、かてて加えて、御承知のように、本年われわれは七・一七水害といっておりますが、収穫のあるべき農村地帯で、ほとんど収穫皆無という状態対象者が、その漁獲禁止行政指導によってやはり経済上の相当な損失を受けておる。そのとれた魚を売り歩いて生活を営んでおるところのそれらの人々が非常に困難をしておる。したがって、現象があらわれておるわけでありまするから、いずれ原因究明されると思いまするが、それ究明されるまでの段階において、国もしくは地方公共団体保護措置については、非常にわれわれは大所高所から見て手抜かりがあるのじゃないか。さらに申し上げておきますけれども、たとえば水俣病の本家である九州においては、これはここではそういうことが再び繰り返されてはならないと思いますけれども原因追求過程において、熊本大学では、これは工場廃液説ということが支持された。工場側、あるいは工場側を支持する学者グループでは、これは何か陸軍か海軍か知りませんけれども、戦後において爆発物か毒物を海底に流したというような形で、いわゆる反論説とが並行して、結局その原因究明されないうちに、会社側は政治的な配慮といいますか、本折衝といいますか、という形で、中間段階見舞金とも確固たる補償ともつかざる形で出されたが、今日になってみると、そういう形ではいかん、再びこの新潟においてそういうことが繰り返されてはならないのだというふうに私は考えますので、地元事情を十分踏んまえてしなければならんような状態に位置づけられておるわけであります。れういうような関連からいきますと、いま申し上げた患者や、後遺症に悩んでおるところの患者の問題、生活に困窮している遺族の問題とか、あるいはいま申し上げた漁民漁業者に対する完全な結論と、原因者がはっきりして補償責任が明確になるまでのいわゆる保護措置についてどのように考えておられるかということと、また、これは何とかひとつ考えてもらわなければいかんと思いますので、大臣のお考え、私は大体往復二時間くらいその時間がほしかったのでありますけれども、四十分間くらいに制約されておりますので、これは聞くほうで言うほうの勘どころを受けとめていただいてひとつお答えいただきたいと、こう思うわけであります。
  11. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 第一点は、この調査研究についての原因究明、その判定の問題でありますが、私は、あくまでこれは科学的か厳正な立場における判定に基づくものでなければならん、こう考えるわけでありまして、いやしくもそこに政治的な配慮なり考慮なりというものが差しはさまれる余地があってはいけない、あくまで科学的にこれは究明さるべきものである、こういうぐあいに私考えておるわけであります。また、その結論によりまして原因者が明らかになりました際におきましては、あとう限りの補償措置を講ずべきものである、また、そのように十分な措置が講ぜられるように政府としても努力をしなければいけない、かように考えております。それらの原因者によるところの補償措置が講ぜられるまでの間における援護なり、あるいは救済の対策はどうするか、まあこういう第二の点でありますが、現在、療養費医療費、この医療費につきましては医療保険で大部分はみておるわけでありますが、その医療費及び養育見舞い金、こういうものにつきましては県と市が中心になりましてそれぞれの援護の手を差し伸べておるわけであります。国といたしましては、漁業補償の面につきましては、これは農林省におきまして検討さるべき問題であると考えますが、その他の関係者の、地域住民生活の問題につきましては、ただいま生活保護の面で相当弾力的なこの生活保護の運用によりまして生活のごめんどうをみておる、こういうような措置を講じておる次第であります。
  12. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私は、地元が票田でもあるし、新潟県の選出であまりすから端的に申し上げますけれども、ありていに申し上げまして、まあなくたった遺族方々や、それから通院中の患者、あるいは入院しておられる方々、その他の人々に対して、いわゆる被害者関係者に対する県や関係市町村措置は、昨年は死んだ人に対しては十万円の弔慰金でした。それから入院しておる患者人たちには三万円の見舞い金、昨年の越すに越されない年越しについては五万円の、与えたのではなくて、いわゆる越年資金として貸し与えたという性質のものです。それから、医療負担について本人負担を免除したこと。入院中の患者なり、あるいは治療中の者についても一千円の特別療養費というもの、それから漁民関係については立ち直り資金と称して大体六百万円程度の、これも貸与という形でありまして、その他御指摘生活保護という問題などなどでありまして、実際それは去年の暮れにかけてのできごとでありまして、ことしは何とかしてくれということでありまするけれども、ないそでは振れないというようなかっこうで、それは国なりそこへ皆が頼むよりほかに道がないという形で、県も市ももたれ合ったようなかっこうで、結局突き上げられ、押し上げられという形で国の窓口にお願いに上がっておるという事情でありまして、下世話に言うところの、それを称して保護措置とか何とか言えるものではないのでありまして、実に実情は深刻である。このような形でありまするので、私はあえて、たとえばその原因者といいますか、そして加害責任者がいずれ明確になるであろうから、それまでの保護措置についてひとつ考えてもらいたい。また、考えてもらわなければ困ると、こういうことを申し上げておるわけでありますが、そこで申し上げておくわけでありますが、この点につきましてはそういうことだということで、今日結論が出るわけでありませんから、大臣に直接申し上げておきますので、そういう形においてどうかひとつ理解を深めておいていただきたいということを申し上げておくわけでありますが、きょうは通産省のほうから工業局長も来ておられまするから、関連してお尋ね申し上げますが、御承知のように、この阿賀野川中毒事件につきましては、通産省側もそれなりの立場関連調査をなさっておられると思いますが、通産省側の担任しておられる調査項目とか調査目的とかいったものと、それから、これはまあ私も差しかえてこれを手がけるようになりまして、今回のこの有機水銀中毒事件の問題につきましても、足尾銅山の場合もそうであったそうであります。水俣病の場合もそうでありますし、新潟の場合もそうでありますが、必ず形の影のごとく、やはり工場側からいわゆる反論が出るわけであります。ここに今日、たとえば昭和軍工側から反論が出ておりますが、いま前段申し上げました通産省側調査目的というものと、それから昭電側から出ておる反論に対する信憑性といいますか、その評価という問題について、通産省行政指導される立場においてひとつ御見解を承りたい、こう思います。
  13. 吉光久

    説明員吉光久君) ただいまの御質問の第一点、通産省で独自の調査をしているというお話でございます。実は、先ほど厚生大臣からも御答弁ございましたように、昨年の九月に政府内部でこの関係調査団が編成されているわけでございまして、通産省もその調査団と御一緒に仕事をするという立場調査いたしておりまして、通産省自身としての独自の調査は現在のところ行なっておりません。  それから第二の、昭和電工から反面が出ております問題について、その信憑性についてのお尋ねだと思いますけれども、実は、これは通産省がどうこうして反論を書かしたとかどうとかというものではなくて、昭和電工が独自の研究に基づいた反論を出しておるやに聞いております。したがいまして、通産省のほうといたしまして、通産省だけでこの昭和電工反論に対してそれをいい悪いというふうな論評は実はいたしておりませんし、また、これは政府内部で、先ほど申し上げました調査団自身でこの内容について検討されるべきものである、こういうふうに判断いたしておるわけでございます。
  14. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう二、三通産省側にも御質問を申し上げることがございますのでありますけれども、時間の関係上、一応主として厚生省側お尋ねしたいのでありますので、もう少しお帰りにならんでお待ちいただきたいと思います。  大臣お尋ねいたしますが、いま私は理解をひとつ深めていただきたい、保護処置について。まあ悪いことばでありますけれども、人が死んだり病気になったり、そして経済的な損害を受けておるわけでありますから、それをだれがそうさしたという真犯人が究明されるまでの過程保護処置の問題について、実情はやはり厚生大臣の御理解になっておる認識と現地におって、そしてそれらの被害者から私どもがなまで聞いておる実情と違いますので、そのことを私はここで論争するという、そういう立場ではないのでありますけれども、このことは九州にあって、新潟にあって、これで完全にもう他には起きないようなことが必要だと思いまするけれども、そのことはお互いの立場において保証できない問題でありますから、一応現実の問題として、やはり厚生省側としても、地方自治体は、もう実に地震で痛めつけられ、そして風水害で痛められて、もう弱り目にたたり日という気持ちで、あの点をやりたいと思ってもどうにもしょうがない、こう言っておりますので、その点について今日的に私は知りませんですが、ここへ来ますと、何か二十六日に一日厚生省新潟で開かれると聞いておりまするから、これは厚生大臣もここでお考えになっても、どこで聞かれても、何も真実に変わりはないのでありますから、何かひとつお考えにならないといかぬじゃないかと思いますので、もし何かここでいまからじっくりお考えくだすってもいいと思いますけれども、ここでひとつ何かもう少し実のあるお考えをお聞かせいただけないでしょうか、その中間保護処置について。
  15. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど御報告申し上げましたように、きわめて近い機会にこの調査研究の科学的な結論が出る、そうして科学技術庁からその結果が発表できる、こういう見通しでございまして、発生源者がそれによって明らかになりますれば、早急に補償援護措置を講ずるように政府としても努力をいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  16. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 そこで、もう一点詰めるわけではありませんけれども昭電側が、私は、実業之日本社か何か、そこの雑誌で見たわけでありますけれども昭電側社長が胸を張って、目で見るように、なるほどその立場になるとそうかなと思いましたけれども、とにかくわがほうはいわゆる工場原因説に対して反論書を出しておるんだが、それが科学的、医学的にほんとうに究明されれば別であるが、そうでない限りにおいては、われわれのほうはとにかく徹底的に抗争するんだと、びた一文も補償を出さないんだといったようなニュアンスに読んだ側では受け取れるようなやはり記事があったと思いますので、そういう関連の中で、昭電側は、がんとして自説を譲らず、そうして権威ある国の調査班がやはり原因説を科学的、医学的、そうして学者の良心や研究グループの一致した意見として公表された場合に、それでも並行線をたどるといったような事態が発生した場合に対しては、厚生省としては、あるいは国としてはどのような措置をとられるか。これは仮定の場合で答えられぬと言われますか。その辺のところは大臣の裁量で補足すべき問題だと思いますけれども、私は、昭電側は金のある会社でありますから、それはおそらくその反面には、原因さえはっきりすればおれのところは金を出す、補償するという反面には、なかなかわれわれも反論を出している限りは、軽々にあとに退かぬのじゃという気が、今日あの会社は、ちょうど九州昭和三十四年のあの時点で新日本窒素工場のあの問題が起きたときには、昭和電工は二千名から三千名のやはり工員をかかえておりますけれども、今日的には非常に何か電工鹿瀬工場というような第二会社に切りかえておるわけでありますけれども、質的には、これは昭電の傍系には変わりありませんけれども、そういう状態でありますから、昭電社長は――もっとも当時は、これは昭電のこの事件発生した昨年の六月、あるいは厳密にいいますと、これは一昨昨年ごろからこういう現象はあらわれておつたのです。ただ、新潟大学の発表とか、そういう形式上の窓口が出おくれしたわけでありまして、このことを立証するには電工鹿瀬工場の病院が焼けまして、そこにはたくさんの水俣病による発生カルテがあったはずでありますけれども、非常に私どもはそのカルテを手に入れたいと思うわけでありますけれども、それをまる焼けさしてしまったから、今日それを立証するものはないのでありますが、今日地震農薬説ですか、それを強引に押しつける場合においてはなかなか並行線になるのじゃないかと考えまして、今日患者は非常にこのことが迷宮入りになってしまうと、第二の悪い面の、やはり九州における水俣病保護処置が、その被害者加害者との間でそれが裁判ざたにまでなるのじゃないかという不吉感をやはりみんな予測している、こういうことでありますから、この点はやはりしちめんどうくさくお伺いしているわけであります。
  17. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま杉山さんから御指摘がありましたように、昭電側からもいろいろな反論が出ておるようであります。その要点は、第一点は、地震農薬説と、この農薬の点の調査研究の面において軽く扱っておるのではないか、こういう点を指摘をいたしております。  それから、もう一点は、鹿瀬工場はすでに操業以来三十年も経営をして工場が運転されておる。突如として水俣病が昨年発生するというようなことはそれ自体に疑問があるのではないか、こういう二点に重点を置いた反論をしておるというようなことを私報告を受けておるわけでありますが、事務当局からその間の点は御報告させることにいたします。
  18. 舘林宣夫

    説明員舘林宣夫君) 疫学班がただいままでに調査し、知り得たところを各方面に説明をしたりなど一いたしまして、昭電側疫学班のただいままでに調査した範囲というものをある程度承知をしておるようでございまして、したがいまして、それに対する反論といいますか、昭電側意見として、ただいま大臣が仰せられましたような二点を主点として反論いたしておるわけであります。その場合に、新潟地震あと大雨がございまして、その大雨のために信濃川の下流にございました倉庫が水びたしになり、その倉庫にあった大量の水銀農薬が流失し、あるいは処置が不十分であったということからそれが阿賀野川に入ったという事実がある。その量は相当な量であって、フェニル水銀の中に含まれているものもありましょうし、あるいはごく一部ではございましようが、種の消毒用のメチールも入っておったかもしれない。その点が調査班としてなお不十分であるという意見でございます。  第二点は、ただいま大臣からお話がありましたように、三十年来同じ操作を繰り返して、阿賀野川水銀触媒のもとに行なわれた工場廃液を流しておるのが、突如としてあの時点になってから何十名の患者を出したということは考えられないことである。やはりその時点に何か別の突発事故によって、別の原因によって起こったものと思わざるを得たい、かような反論が出ておるわけであります。この反論につきましては疫学班十分説明をしてもらいまして、目下疫学班がその反論を参考にして、なお最終結論を練っておるという段階でございます。
  19. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 新潟県や新潟大学から、いわゆる反論反論書というものを私は厚生省側に出しておるというふうに聞いておりますが、それはあなたのほうにきておりますか。
  20. 舘林宣夫

    説明員舘林宣夫君) その反論反論というものは私は承知いたしておりません。おりませんが、調査班先生方はいろいろの検討を進めておりますので、また、その調査班の中に新潟大学先生並びに新潟県の衛生部長も入っておりますので、おそらくそれらの資料を持ち寄って検討されるものと、かように存じます。
  21. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう一点聞きますが、これは私は新聞で承知しておる範囲でございますが、九月の八日か九日、虎の門の電気ビルで、いわゆる疫学班を軸とする厚生省の特別研究班と、昭電側の技術陣を含めて、何か合同検討会とか何とかいうものを開いたというふうに聞いておりますが、それは事実であると思います。新聞はそう報道しておりますから事実だと思いますが、その辺の事情はどうですか。
  22. 舘林宣夫

    説明員舘林宣夫君) 調査過程におきまして疫学班昭電側から資料を拝見したいという部分もございまして、また、昭電側から意見を言いたいという申し出もございまして、そのような機会としてただいまお話のございましたような会合を持ったわけであります。その席におきまして疫学班も必要なことを昭電側に聞き、あるいは昭電側昭電側として考えておる意見を述べたという話し合いの機会があったわけであります。
  23. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 大体先ほど最初に厚生大臣から、ごく最近の距離で一つ結論が出ることが予測されるということで、以上の経過を踏まえて大体理解がいって、だいぶ地元の不安に襲われておる遺族患者、あるいは経済的損失を受けておる人もそれなりに、やはりこの委員会を通して、大体疑心暗鬼というものが、大体迷宮入りなどということはなくなって、相当政府はやっておってくれるのだということが陰に陽に知れると思いますが、そこで、今度は通産省側のほうにお伺いしますが、昭和三十四年の時点で、新日本窒素水俣工場で、初めて有機水銀中毒患者が、あの地域社会で発生した場合に、問題になったこの水俣工場と同工程の工場が全国には相当数あったと思いますので、対象工場に、やはり昭電鹿瀬工場が位置づけられておったというふうに考えられますが、その出時、この原因究明という問題や、そしてこの通産省側の企業側に対する行政措置としてどのように行政指導されたかどうか。特に昭電鹿瀬工場については、たとえば浄化設備をしろとかということを込めて指示されたかどうか。この点について、過ぎたことではありますけれども、この点について第一があったから第二、第二があったから第三があるということでこんな問題が悪循環しては困るわけでありますから、そういう点について、私は、今後に対処するためにその辺のところをひとつお聞かせいただきたい、こう思うのです。
  24. 吉光久

    説明員吉光久君) 例の新日本窒素の水俣工場であれだけの事件発生いたしたわけでございますが、先ほど先生から柳質問の中に柳指摘がございましたように、当時の情勢といたしまして、はたして有機水銀であったかどうかという点は判然とはしていなかったわけでございますけれども、ただ、こういう公害問題になりますと、疑わしい問題につきましては、これに対して事前に防止措置をとるということはこれまた当然でございます。したがいまして、当時金下の同系統、カーバイトからアセトアルデヒドをつくっておりますそういう系統の工場に対しまして、実は排水等について具体的に処理工程を改善するとか、あるいは排水装置等について、あるいは排水施設につきまして、たとえば貯水池を設ける、あるいは除濁槽を設ける等につきまして、それぞれの工場に対してそれぞれの工場の態様に応じた処置をとるようにという指示をいたしたわけでございます。その結果、実は昭和電工鹿瀬工場、これは御存じのとおり、昨年の一月から操業を停止いたしておりますけれども、当時の事態といたしまして、昭和電工といたしましては、アルデヒド装置からの排水をさらに循環させまして、アルデヒド製造用の原料用水として使うというふうにいたしまして、できるだけその装置から排水を河川等に流さないようにというふうな措置がとられております。また、他の工場、電気化学の青海工場とか、あるいはダイセルの新井工場につきましても、それぞれいま貯水槽、除濁槽を設ける等の措置をとりまして、排水を極力外に出さないというふうな施設をつくっておるわけでございます。
  25. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいまの杉山先生の御質問関連して、厚生省のほうからも御報告を申し上げておきたいのでありますが、四十年の九月に者都道府県の衛生部長に対しまして、厚生省から、水銀を扱っておる工場を調べるということ、それから水銀中毒の患者発生しておるかどうかというような実態の調査をすみやかに行なうということ、この二点につきまして、国民の保健衛生という観点から指示をいたしまして調査を進めておるわけであります。特に鹿瀬工場と同じ工程の仕事をやっておりまする工場が三工場あるわけでありますが、その三工場につきまして特別調査を行なう、こういうことを指示いたして、目下調査をいたしております。ただ、いま通産省のほうからも御報告がございましたが、厚生省としては四十二年の三月までにこの調査の結果を全部とりまとめて、そして検討を進めるようにしておるわけであります。
  26. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 ありがとうございました。  通産省の化学工業局長お尋ねいたしますが、これはまあ歯に衣を着せず、そのものずばりで申し上げますが、たとえば労働災害の場合に対しても、たとえば鉱山やあるいは炭鉱の災害という問題に対して、あるいは一般災害の場合について、たとえば労働省であるとか通産省とか、そういったような私は先入観があって言うわけじゃありませんけれども、たとえば公害なり、あるいは公害類似の問題が政治問題、社会問題化した場合に対して、やはり通産省側行政指導はどうも企業側に配慮されて、問題の焦点であるその被害者である側に対しての配慮が欠けておるというような気がするわけであります。そういうような関係から、私がその古い傷あとに触れて九州水俣病の問題を出したその発想は、つまりその時点において厳密に化学工場類似の工場に対して行政指導を、ただ口や書きつけだけでなく、かくかくのいわゆる浄化装置を設置することを義務づける、ことに人命や、あるいは国民の健康に対する重金属から出る害毒というものは非常にきついものでありますから、そういう点について怠っておられたのではないか。それは過去は過去として、今日、今後はほんとうはこういう問題は、国の行政指導は、あるいは公害の問題は一本化されることが望ましいと思いますけれども、今日的には窓口が幾つかになっておるわけでありますので、この点だけ一点御見解を聞いて、まあ通産省のほうはもう時間がありませんからやめますけれども、その点についてひとつお答えいただきたいと思います。
  27. 吉光久

    説明員吉光久君) おしかりを受けたわけでございますけれども、公害問題に対しまして企業がどういう立場であるべきかという点につきましては、実は私どもも、企業が大規模化すればするほど企業の社会的責任というものも当然に大きくなっていく、こういう角度で公害問題その他の災害問題等についても対処してまいりたいというのが実は基本的なかまえでございます。従来、ともすれば、いま先生指摘のようなおしかりを受けておったわけでございますけれども、やはり何と申しましても、企業自身の社会的責任というものを、別のことばで申し上げますと、企業はただ生産だけやっていればいいということでは相すまない、そういう経済環境の中で企業が健全に発展してまいるというふうなことで、やはり公害問題については企業は社会的責任を持っておる、こういう角度で問題を取り上げてまいりたい、これが現在の立場でございます。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、いま水俣病と称される被害が各所に出ておると思うのです。水俣病は一応対策が立ったといわれておるけれども、現地の事情は全部が解消したという事情にないと私は聞いておりますから、厚生省通産省でこれはぜひそのあとを調べていただきたいということをお願いしたいと思う。  もう一つは、倉敷の水島新産都市の三菱のコンビナートと記憶しますが、会社へ行って説明を受けると、公式上は公害を受けないような説明をされるのでありますけれども、実際には沿岸の魚が全部死んで、漁村が困る、補償せい、しないということですったもんだの末に千五百万円補償したとかなんとかいうことになっておるわけでありますけれども、理論的に公害が出ないという結論が出ていながらそういうものが出ているというのが今日の化学工場あと始末の問題ではなかろうか、こういうぐあいに思うわけでありますので、こういう点、何らかの欠陥があればこそ海の魚が死んだりするわけであります。  それから、また、煙のために森林がみなまいってしまうというようなことも出るわけでありますから、そういう点は十分に調査をして、これは回り回って、直接にでも、回ってでも人体に損害を与えるわけでありますから、そういう点の調査、それから対策というものを徹底的にひとつやってもらわなければならぬ、これもひとつ通産省から資料を出していただきたい。関係工場の化学処理のあと処理がどうなっておるかということの通産省のかまえの書類を出してもらう。厚生省からもそういう人体に関係のある部分のひとつ関係化学工場あと始末の処理の資料を出してもらいたいということをお願いしておきたいと思います。
  29. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) いまの資料要求についてよろしゅうございますか。厚生省のほうはよろしいでしょうか。
  30. 舘林宣夫

    説明員舘林宣夫君) お尋ねの御趣旨はわかりましたが、化学工場全部でございますとかなり時日も要することでございますが、何か特段に水銀その他非常に危険なものに優先してということでよろしゅうございましょうか。
  31. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ええ、そうです。
  32. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) それから、通産省関係はよろしいでしょうか。
  33. 吉光久

    説明員吉光久君) けっこうでございます。
  34. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) それじゃお願いします。
  35. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう二点だけやらぬと、せっかくの前段が何もかもしり抜けになってしまいますから、時間を交渉しておりますから…。
  36. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) それじゃ、おそれ入りますけれども、答えるほうも要領よく、質問者も要領よくひとつ時間の点をお願いしておきます。質問者がずっと控えておりますから。
  37. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 厚生省にお伺いしますが、今年度の厚生省の出しておる厚生白書の一〇六ページの「水道汚濁」の項に、新潟水俣病のことに触れてこううたってあるわけです。水俣病の「水質汚濁上の問題に限らずこの種の重金属による慢性中毒問題はその性質が既存の法則によって防除しがたい面があり、今後その対策を十分検討する必要がある。」と指摘されておるが、これに対する国の具体的施策について厚生大臣の御見解を伺いたい。厚生白書の一〇六ページに「水質汚濁」という項があるわけでありますが、その中に新潟水俣病のことについてうたってあるのです。うたってある文句は、もう一度読みますが、「水質汚濁上の問題に限らずこの種の重金属による慢性中毒問題はその性質が既存の法則によって防除しがたい面があり、今後その対策を十分検討する必要がある。」、こういうふうに指摘されておるわけでありましてね。
  38. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御指摘のとおりでございまして、私ども水質汚濁の点を国民の健康保持の面から重視いたしておるわけでありまして、したがいまして、既存の水質保全法なり、あるいは工場排水規制法なり、そういう法律につきましても再検討を加えまして十分な公害対策を今後進めてまいりたい、こういう考えでございます。
  39. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう一点お伺いしますが、具体的な問題といたしまして、本月、言うならば十月の七日付で、厚生大臣の諮問機関である公害審議会から第一次答申と呼称すべきものだと思いまするが、「公害に関する基本施策について」ということで大臣への答申がなされておるわけでありますが、その答申の中に、「公害によって他人の生命、身体、財産その他の利益に一定の受忍限度をこえる損害が生じたときは、原因者がこれを賠償する」ということにうたっておるわけでございまして、これは答申でありまするけれども、権威ある答申だというふうにわれわれ国民の側に立っても受けとめますが、諮問された大臣側においても受けとめていただきたいと思いますが、そうだといたしますれば、いずれ科学技術庁窓口を通して、相当な国費と年月と学者等、あるいはいろいろなデータを通して得た結論が、それはたとえば工場、川、魚、そして人体というような経路でそのことが科学的、医学的に立証されて、原因者加害者が明確になった場合に、加害者、それから昭電側との補償問題がなおかつ係争したり裁判問題になったりといったような場合については、この公害審議会のうたっておる問題は、一説によると、水俣病はそれは公害じゃないんだというような、どうも新潟県の知事の亘さんはそんなような錯覚をされておるので問題だと思いますけれども、それは新聞がそう書いている面があるので、本人がそういう錯覚を起こしているかどうか別問題でありますけれども、このことは私の口ぐせといたしましても、ともあれ、いまの答申の中にあります「公害によって他人の生命、身体、財産その他の利益に一定の受忍限度をこえる損害が生じたときは、原因者がこれを賠償する」ということでありますから、かりにほんとうの発生原因が完全に工場廃液説だということが立証された場合については、そういうことを想定をして、一応ひとつこの場合において今日的な厚生大臣の見解と所信を承って私の質問を終わるわけであります。
  40. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) まず第一に、水質の汚濁、これがわれわれの生活環境を阻害をし、ひいては国民の保健衛生に有害な影響を与えた、これは明らかな公害である、今後公害基本法、あるいは公害防止のための法律その他で規制の対象になるべきものである、こういうぐあいに私は考えております。  それから、さらに受忍限度をこえた場合の発生原因者補償の責めに任ずべきであるという答申は、私どもその答申を尊重いたしまして、今後公害基本法等の制定にあたりましてはそういう方向で法制化を考えていきたい、このように考えているわけであります。  それから、なお、第三点といたしまして、したがいまして、そういう趣旨からいたしまして、公害の発生原因者、これが原因等が科学的に明らかになりました場合におきましては、補償の責めに任ずべきものである、政府はそういう立場に立って措置を講じていきたい、こう考えております。
  41. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう一点だけ。いま大臣からお話がありましたが、公害基本法は、厚生省としては、あるいは近い将来にお出しになる準備と用意があるわけでありますか。
  42. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 政府全体といたしましてただいま検討を進めているわけでありますが、総理府に設けてあります公害対策推進連絡会議が中心になりまして、関係各省庁の意見を調整をし、来たるべき通常国会にはぜひ公害基本法を提案したい、こういう考えでただいま検討を進めているわけであります。
  43. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 以上で質問を終わります。
  44. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私は、いま非常に問題になっております交通事故、特にこれの治療に当たる救急処置ということについて、ひとつ数点にわたって厚生省質問申し上げたいと思います。特に時間を限られておりますので、なるべく簡単にやりますので、よろしくお願いしたいと思います。  最近では、この九月の終わりで死亡者が一万人をこえたという、これは歴史上非常に最悪の状態だといわなければなりません。特に今度の状態を調べた報告を見てみますと、十年前は非常に事故は都会に多くて郡部に少なかった。ところが、最近ではその六六%が七大都市を離れたところに起こっている。これは私は非常に救急の設備の足らないところで、助かる者がなくたっているのではないか、こういうようなことを感ずるわけであります。特にこの自動車一万台に当たりましての交通事故の死亡者の統計を見てみますと、アメリカあたりでは一万台に対して五人であります。フランスで一〇・一人、西ドイツで一六・五人、日本では二六・四と、群を抜いているわけであります。このようにして死亡者は非常に多いのである。また、一面、一カ月以上ぐらいの重傷者の数の中で、四三%は後遺症を残している。ことに後遺症の数を見てみますならば、非常に大きな数であります。五十万人あって、その中で四分の一が後遺症というので、十二万人が後遺症を残している。その後遺症が非常にあとに残ってこれに苦しんでいるのに対して、国がこれに対して十分な施策をしていない。だからして、私の首は今度はねらわれているのだ、あるいは政治はわれわれを救ってくれないという民間からの大きな失望的な記事が新聞をにぎわしているわけであります。こういう点から考えて、厚生省はいち早くこの問題に対して今年度の重点施策としていろいろ予算要求の中に盛り込んでおられるわけでありまして、この点に対しては私は心から敬意を表するものでありますけれども、いろいろとこの様子を見てみますと、ただこの要求だけにとどまって、実際効果があらわれない場合は、やはり絵にかいたもちではなかろうかと、こういうふうに感じますので、特にこの点につきまして、私は重点的にひとつ御意見を聞きたいと思うわけであります。特に私はこの中で聞きたいと思うのは、これの救急医療が完全に行なわれない問題点として、救急病院は、発表せられているように、四十一の都道府県で二千五百十五届け出救急病院があるといわれているわけでありますが、これは省令によって、事故による負傷者の治療については、相当の知識と経験がある医者が常時診療に従事するということになっておるわけであります。それで、日曜日とか休日、あるいは土曜日というようなときに対して、医師及び看護婦がここに絶えず常駐をしなければならない。これは一日やはり一万円くらいかかるといわれるわけであります。このような人件費の多額を要する状態であるのに、いま現在健康保険の中ではこれが組み入れられてないと同時に、また、この補助がなされておらないわけであります。四十一年度の予算では三億一千九百万円を要求されておりましたけれども、予算書にはこれが載っていない。こういうような経緯は私はどうも不可解に思うわけでありますが、これを理論的に根拠をつけてひとつ御説明を願いたい。
  45. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいまお話がありましたように、最近における交通災害の激増、このことは非常に深刻な社会問題にもなり、また、国家的な大きな損失でもあるわけでありまして、交通災害の防止、また、事故が発生した場合の救急医療体制の整備ということが刻下の急務でありますことは御指摘のとおりでございます。そういうようなことから、政府におきましては、交通問題国民会議、こういうものを設けまして、民間の関係各界の御意見等を聞きながら、いま総合的な対策を急いでおる、こういうことは御承知のとおりでございます。また、政府におきましても、総理府の中に交通災害防止の連絡協議会を設置いたしまして、総務長官がその議長になりまして対策を急いでいる。建設省、運輸省、あるいは文部省、厚生省関係各省庁であらゆる角度から、交通災害の防止、それから交通災害を防ぐための諸般の施設の整備、また、救急医療の問題、そういう問題をあらゆる角度からいま検討を進めておるわけであります。厚生省におきましては、最近のこの交通災害の激増及び後遺症等の問題等に対処いたしまして、ただいまございますところの二千六百カ所の救急医療機関の指定だけでは十分でないということで、脳神経外科専門の医師及び医療の施設を整備いたしましたところの国立の救急医療センターを中心にいたしまして、さらに地方救急医療センター、あるいは都市救急医療センター、人口百万に対しまして、少なくとも一カ所はこういう救急医療センターを整備するということを目途にいたしまして、全国に救急医療センターの網を整備をするという方向でただいま計画を進めております。昭和四十二年度におきましては十億をこえる予算の要求をいたしておるわけでありまして、私としては、こういう救急医療機関の整備のほかに、民間の救急医療の機関として指定を受けました施設に対しまして必要な医療器具、機械を提供するところの救急医療サプライ・センターというようなものをつくると同時に、さらに告示医療機関も五千カ所にふやしまして、そうしてこれらの医療機関に対しましては、この待機をするところの医師あるいは看護婦、さらにベッドに対しまして所要の補償措置といいますか、これに対する十分な手当てができるように、そういうような予算措置もぜひ講じてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  46. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いま決意のほどはわかったわけでありますけれども、実際問題としてこの四十一年度はゼロになっておるわけでありますね。ですから、それは二月の十五日の毎日新聞だったと思いますが、それには厚生省はこの対策として保険診療の報酬の中に、救急病院の深夜の手当として十点を大幅に考えるということが出ておりました。これは私は、ほかの国、たとえばドイツなんかを見てみますと、公的病院の診療について八五%が国費でまかなわれている、残りの一五%が患者の拠出するところの保険金でまかなわれているという状態であります。だから私も、ことにこの救急の非常な時間的な制約のある深夜の業務に対しては、少なくとも救急医療であるという立場から、医療機関の経費に対しては、日本でももっと公的なものが責任を持ってカバーすべきだと思うわけであります。その点についてもう少し具体的なお話を承っておきたいと思う。
  47. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) 救急医療に関する医療費の問題につきまして、これをどのような方法で国民全体として負担するのがいいかということは非常に大きな問題だと思います。一般的に、救急医療といいましても、医療であることには違いないので、当然これは保険医療でカバーできるのが順当であるという考え方もございます。その際に、その保険の点数のきめ方がどうであるかということは、これはまた別問題でございますが、もしも全面的に保険医療でカバーされるものであるということであれば、それはそれ相応の点数の設定をやらなければならぬと思います。現実には、大部分の交通事故等におきましては、これは自動車事故の損害賠償保険等によってまかなわれる部分が大部分でございまして、これらについては、現在のところ、保険の点数を準用するというような状況と、また、地区医師会等におきましては、それを準用した形で、事実上その倍額というようなとりきめをしておられるところもございます。いずれにしろ、この費用のきめ方というものにつきましては、保険の各種の点数設定が一番基本になることと思います。したがって、これにつきましては、現実の救急医療機関の経営状況等をにらみ合わせまして、また、救急医療機関の今後のあり方、特にベッドの遊休であるとか、あるいは夜間勤務者の確保であるとかというようなあり方を含めまして、将来とも検討しなければならぬと思います。ただし、その中でも、特にこういう救急の問題は、一般医療機関での通常の診療報酬体系でカバーできかねる面があったといたしましても、急速になかなか改善もできないという面もございますので、できるだけやはり公的医療機関がある程度採算を無視してもやれるような体制をつくっていくということが必要であろうと思いまして、そういう意味で、ただ、先ほど大臣のおっしゃいましたような救急医療機関の整備というものを、特に公的医療機関に依存する程度を高めていきたい。そして現実的に保険その他の支払い制度が適切に追っつくまでの間は、できるだけそういう公的医療機関の責任でもってやっていきたいという心持ちでございます。
  48. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 やはり公的医療機関に依存してやるということは、当然この設備に非常に金がかかりますので、当然そういう傾向はやむを得ないとは考えますけれども、先ほど私が申し上げたように、非常に最近では設備の足らない郡部において死者が多い、こういうような明白なデータが出ているわけでありますので、これに対応しては、国立的な療養所、あるいは機関があるところは比較的交通至便な、都会に近い、こういう観点から、私はもっとその地域に即したところで、しかも、そこにメーン・ストリートと申しますか、自動車の頻繁に通る道路、こういうものに対しては特別な措置が行なわれなければ、こうした問題は早く解決はできないというふうに考えるわけであります。そういう観点から、先ほど大臣からも個所をふやしてということばがありましたから、私はその点で了解はするものの、特にそういう面については大きな配慮をしていただきたい、そういうことを特に申し上げたいと思うわけであります。  続きまして、この地方の公共団体との責任の分担の問題、国との間の問題でありますけれども、神奈川県に交通救急センター、これは五十床でできているようであります。これも私もよく聞いておるわけでありますが、これが一億四千万円で建設されて、すでに業務を開始しておるのでありますが、四十年度には千七百万円の赤字を出しておる、こういう結果が出ております。それから、また、もう一つ、先ほどもちょっとお触れになりましたが、東海の交通災害コントロール・センターというのは、もう三年ほど前から出発をしているようであります。この構想は相当抜本的な構想であって、私どもとしましては、ああいうものができたら非常にいいだろうという、一つの模範的な構想だとして考えておったわけでありますが、ところが、そこでは非常に業者から、大きなメーカーから移動手術台と申しますかの、脳外科の手術もできるような設備があり、それはまた血液を保存する冷蔵庫もあり、あるいは、また、酸素吸入から、あるいは、また、自動の診断機、あるいは、また、テレメーターなんかも備えつけておる。だから、この移動の手術車が現地に行くならば、そこで調べたいわゆる心電図だとか脳波だとか、あるいは、また、脈膊だとか呼吸というものが一ぺんに四つくらいはキャッチできるような、いわゆる送信用のテレメーターを持っておる、そういうものがつくられて、初めの第一号がつくられてもう一年半、第二号ができてから半年になる。これが自動車整備工場の中の倉庫にほうり込まれておる。しかも、それを建てるために、そのコントロールの建物を三階建てで建てようという計画をしておったけれども、金がなくなっちゃってこれができていない。そしてそのままになっておるという状態であります。ことに、また、その中では整形外科を、ことに脳外科を担当する優秀な医者が十五人も確保され、しかも、これは皆その医者が小型のドクター・コールといいますか、そういうものを持っておれば、そのコントロールセンターから発信をすればすぐその医者を呼ぶことができるというような、もう考えてみれば私は非常ないまの理想的なものではなかろうか。こういうものができて、おそらく考えてみれば、半径は二十五キロくらいの間に能力が波及するのでありますから、二百五十万から三百万に近い人が恩恵をこうむるということになるわけであります。こういうようなりっぱな構想が考えられておるのに、これが民間でやられておるからして、十分これを利用することができない。これが資金難のためにそのまま眠っておるということであるわけでありますが、これはひとつもっと公共団体、あるいは国、あるいは、また、そういうようなことに対してもっと明確にこういうことを考えなければならない段階ではなかろうか、こういうように思うわけであります。こういうことについてひとつ御所見を。
  49. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) 医療機関が十分なぺーがされないという第一点のお話でございました。神奈川の救急センター、これも非常によくやっております代表的なものの一つでございますが、確かに相当の赤字を出しております。同じように、現在模範的な救急医療をやっております施設といたしましてお話のありました神奈川、それから京都第二日赤、それから仙台市立病院というようなところがございますが、公立でやっております神奈川と仙台は、どちらも相当な赤字を負担しております。京都日赤は、そういう性格上、かなりいろいろな努力をしておりまして、それほど赤字の大きなものは出しておらないかと存じますが、詳細はいまちょっと存じておりません。いずれにしろ、こういう医療機関について相当なめんどうをみてやらなければならぬということは確かであろうと思います。  それから、お話の出ました名古屋に置かれております東海交通災害コントロールセンターというものが非常にりっぱなアイデアで発足いたし、そして一部はすでに機械設備等が整っておるにかかわらず、まだ機能を開始しておらないということは、まことに私どもも遺憾に存じております。何ぶんにも非常に大きな構想であり、数億円の費用のかかる構想でございまして、それも主として民間からの拠出金によろうという財団法人の構想で出発いたしましたために、十分資金が現在のところ集まっておらないという事実がございます。大体半分程度しか現在目的が達成されないという状況でございまして、この点に対しては、県並びに市当局も相当の助成をしたしまして、何とかこれを発足させたいという心組みをいたしております。しかし、これを現実的にやっていく構想をさらに具体化していきますと、どうしても市の消防機関とも密接な連絡をとらなければなりませんし、経常費が年々相当の経費になりますので、はたして財団が今後永久に続くこの経常経費の支出にたえていくことができるであろうかという疑問も生じております。また、愛知でこのような構想ができましたけれども、現在大阪、東京等のそれぞれの大都市におきましては、やはり何らかの形のコントロールシステムを持っております。救急車はいわゆる救急搬送をつかさどりますし、救急医療機関は医療をつかさどりますが、その救急搬送と救急医療機関を結ぶことが、われわれ救急コントロールと称しておりますが、このコントロールの仕事がどうしても整備されなければなりません。したがって、これは大阪、東京等では、それぞれの警察、消防が協力いたしましてコントロールシステムをつくっております。これを愛知の名古屋の場合が、はたして民間でそういうことがうまくできるかどうか、これについても私どもも多少疑問も持っております。こういう点も含めまして、県、市当局とも、種々の機会を持ちまして話し合いを進めております。何とかこのようないわゆるコントロールシステムをもう少し広範に各大都市、中都市にまでこれを整備してまいりたいという構想を持っておりますので、この愛知の問題につきましても、非常にりっぱな構想でございますので、何とかこれを少なくともモデル的にでも十分な機能を発揮させたいというぐあいに考えております。
  50. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いまの問題でも、財団で、個人でやるのが非常に無理だという考えであるようでありますが、これも非常に個人の収益を考えてやっているのではなくて、ほとんど公的なものに準ずるわけであります。ところが、来年度の予算の要求を見てみますと、先ほど大臣も申されましたが、救急医療器機のサプライ・センター、これは十五カ所で、三分の一の補助で一億円、それから公的医療機関の整備に対しても、これは三分の一補助で一億円というふうにして、これだけの補助があると書いてあるわけでありますが、これもやはり公的医療機関だからであろうと思うのでありますが、私は、公的医療機関というふうなものに重点を置くばかりでなしに、やはりこうした収益を個人が目的としないでいるわけでありますからして、財団法人なんかのものも公的な機関と同様な取り扱いをして、もっと国が責任分担をして、そうしてこれを何とか動けるようにすべきでないか、理論的にもそうしないと私はおかしいと思うのでありますが、この点についてもひとつあわせて御回答願いたいと思います。  同時に、また、この九月の十二、三日ごろだったと思うのですが、産経のほうに出ておりました記事を見てみますと、五人の若い娘さんが、私たちの手でリハビリテーションの施設をつくり上げようという、群馬県の渋川市ですが、交通事故による身体障害者の治療収容施設「恵の園」というものを予算三千五百万円でつくろうと懸命にやっている。くず屋をやったり、あるいは、また、手なれないか弱い手でもってシャベルを持って整地をやったり、あるいは結婚資金をそこに投入して、非常に清らかな娘さんたちの善意のあれが行なわれている。こういうものに対して、これは善意でやっているのだからそれでいいんだと見のがしていいのか、私は非常に疑問を感ずるわけであります。いまの問題とあわせ、同じように考えるわけでありますが、交通事故が非常にふえるし、その加害者に罰金ばかりでなしに、この人たちが言っているのは、もっと人を幸福にするためにこういうリハビリテーションにそういう加害者なんかも手伝わしたらどうだというようなことで結んでいる記事を読んだわけでありますが、こういう点を考えるならば、私は、こういうことに対して手をこまねいているのじゃなくして、もっと積極的に救急医療の中の緊急対策を予算化する、予算の中にもこういうものをうんと盛り上げてもらう必要があるし、また、こういうものに対して前向きの姿勢でこれをやる必要があると思うわけであります。ことにこの救急医療体制というものは、被害者のほうからいえば非常に社会的にも大きなハンデキャップを受けて苦境に立たされている現況を見ているのでありますから、私どもはどうしてもこういう問題に対しては十分な配慮をしてもらわなければならぬと思うわけであります。こういう観点で、先ほどの答弁も非常におざなりの御答弁だと思うのです。あるいは前に毎日新聞でしたか、公開状を出して、それに答弁をなさっておられるのを新聞で拝見いたしましたが、ああいうふうな抽象的でなくて、もっと具体的なものを政治の中に明らかにしていくという姿勢がなければいけない。特に新聞なんかで見ておりますと、政治は私たちを守ってくれないのだという悲惨な、泣き寝入りのことばでもって投書をしているのもたくさんあるわけであります。ですから、こういうものに対して具体的な考え方をもっと積極的に示してもらいたい、こう思うのです。
  51. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) まず、前段の愛知県にできております東海交通災害コントロールセンターに対する助成の問題でありますが、この問題につきましては、実は私どもも非常にいい計画であり、必要な仕事であるというようなことから、この運営をどうしたらうまくやっていけるかということについて、実はしばしば相談にもお見えになり、また、厚生省としてもそれに対してできるだけの協力をしたいということで御相談にのっているわけでございます。この施設をやります際に、自転車振興会等から一億以上の助成金が出ているわけでありますが、こういうものにつきましても厚生省としては優先的な配慮を実はいたして協力をいたしているのであります。ただ、問題は、コントロールセンターは全然その収入がない仕組みになっておりますので、財団法人という形で、年々寄附金その他が予定どおり集まってまいりますれば収入がなくても運営ができるわけであります。しかし、そういうことがはたして長続きがするかどうかということにつきましては、私ども非常に心配しているわけでありまして、将来はこれを名古屋市なり、あるいは愛知県なりにこの機関を移して、そうして行政べースに乗せて国もこれに対して助成ができるようにというような仕組みにしたらどうか、いろいろ実は御相談にのって検討いたしているわけでありまして、まだそれが具体化しておりませんので、何かおざなりな答弁のように思われるかもしれませんが、決してさようでございません。真剣に私どもも何とかこれがうまく運営できるように協力をしたい、こういうことで相談にのっているということをお話を申し上げておきたいと思うのであります。  また、その他各方面で交通災害にあわれた方の救済なり、あるいはリハビリテーション等の問題につきまして、民間の善意でいろいろな御計画があることも私ども承知をいたしております。しかし、御指摘のとおり、民間だけにまかしておくべきものでないので、国としてもできるだけ早く国立療養所その他にリハビリテーションの施設をぜひ整備をして、そうしてこの要請にこたえるようにしたい、こういうぐあいに考えているわけであります。
  52. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いや、たいへんいろいろとお話を聞いたので、早く具体化するようにぜひお願いしたいと思います。  次は後遺症の問題でありますが、脳の外傷では非常に後遺症が多い。それで、先ほど申しましたように、非常に重症者のうちの四分の一程度が後遺症を残すわけでありまして、この後遺症の問題に対して非常に大きくまたいま問題になっているのが、あの御存じのようなむち打ち症があるわけでありますが、これなんかも、いろいろ各地区においては対策委員会もできているようでありますが、非常にむち打ち病の症状もあとが悲惨な状態で、いわゆる生業を奪われるというような、非常にきついものがあるわけであります。これはものを読んでみますと、あるいは米国のカリフォルニア大学でございましたか、あの実験では、やはり停車している車に十六キロぐらいのスピードでぶつかったならば、前に乗っている人は首が四十九度ぐらい傾く、六十度以上になったらこれは非常に悪くて、あるいは、また、靱帯が切れたり、あるいは首の骨がかけて、それがとげとげになって非常に神経を圧迫するとか、そこに走っている血管を支配する脳を傷つけるために循環障害を起こすとかいうことで、あとから症状が起こってくるというのが非常に困った問題であるわけであります。こういうものに対しても、私は、いま国のとっている対策というものは、非常に何と申しますか、おざなりだと考えるわけであります。あの症状を明確に把握することが非常にしにくいために、これを何と申しますか、この障害を交通事故と関係のないもののような判断を下されたために、非常に一生の間自分の生業にも影響して困っている人もある、あるいは補償も早く打ち切られるということで、国民の中には非常な悲惨な状態に置かれている人があるわけであります。特に初めのうちはたいしたことがないのが、あとから精神的な、時によったら一週間か十日に一ぺん失心が起こったり知覚麻痺が起こったり、非常に問題があるのであります。こういうものの治療に対しては、私は一貫した治療をするような場所をもっと考えなければいかぬのではないか。これはやはり初めのうちの治療をするところのセンターも必要でありましよう。ある程度慢性化して症状が固定してしまったならば、これを教育するような面で知能の開発をしていくような教育のセンターも必要である。あるいは一定の障害が残ったような場合には職業の指導をする職業  センターも必要であるというような形で、一貫したリハビリテーションのシステムというものがもっと高度に行なわれなければならないのではないか。外国あたりを見てみますと、そうしたあたりには非常に具体的な設備をした施設を持っているわけであります。日本はそういう点においてまだまだ、小規模的なもの、あるいは部分的なものがありますけれども、これも一貫性がないために途中でほうられてしまっている、それがために非常になげかわしい悲惨な状態に置かれているのではないか。ほんとうに泣き寝入りしている状態にあるのでありますので、こういう点は私はひとつ十分配慮していただきたい。特に私は本などで見たのでありますけれども、非常に家庭的に、主人が、東京の例だったと思いますが、結核で入院しておる。それを見舞いに行った奥さんと子供さんが道路ではねられて、奥さんは死んでしまった。それから、子供さんと親戚の人は非常に重傷を負った。その様子を見てみると、その入院している主人の告白であるわけでありますが、非常に治療費に百何十万円も払って、その払う人も中小企業で金がない。だからして、こういう払えないために非常にまたその方もかわいそうだということで泣き寝入りしなければならぬという状態もあるわけです。そういう関係から考えると、もっと私は、治療の面が一つあることと、もう一点は、やはり賠償というものが、賠償能力のないような人、それは国がかわってみてやるというふうにするとか、あるいは賠償に対する障害センター、賠償障害センターというようなものを設けて、もつとその中で十分にそういう困った人たちを吸い上げる組織を十分につくる必要があるのではないか。いまではこういうようなブロック別に支所をつくっているところがほんの数カ所ぐらいしかないわけであります。そうして被害を受けた人もどこへそれを持っていったらいいかわからない。たとえばその辺の交通相談所あたりへ持っていっても、なかなかそれが十分やってもらえないというようなことがあるわけでありますので、こういうことに対してのもっと前向きの姿勢を考えるべきではないか、こういうふうに思いますので、そうしたところの賠償に対する補償考え方、あるいは、また、そうした後遺症に対する一貫したシステムについてのお考えをもう少し具体的にひとつ伺いたい。
  53. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 交通災害に対する補償の問題につきましては、政府におきましても、これを制度的に確立をする必要があるということで、ただいま運輸省並びに総理府が中心になりまして検討を加えて、できるだけ早く交通災害保険制度等の強化整備ということをはかる方向で検討を進めておるわけであります。なお、後遺症に対する総合的なリハビリテーション施設、医療等につきましては、医務局長から申し上げます。
  54. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) リハビリテーション対策の中で、特にむち打ち病のお話が出てまいりましたが、むち打ち病も、ある意味では頚部の脊椎損傷でありますので、頚部の脊椎損傷の中で、比較的軽度のものとかなり重いものとありますが、さらに頚部以外の脊椎損傷もかなりたくさんございます。最近の脊椎損傷は、私どもの国立療養所等で見ております限りにおきましては、戦前は戦傷患者が大部分でございましたが、現在では交通災害による脊椎損傷が最も多くなってまいっております。そういう意味で、脊椎損傷という問題も新しい角度から見直していかなければならない。ことにその早期治療という問題については、最近脊椎損傷に対する早期医療の技術がかなり進歩しておりますので、これらの点も取り入れまして、特に国立等の脊椎専門の療養所等にそのような研究を進め、また、場合によって専門的な施設に転換していくというようなことを考えながら実は検討を進めている段階でございます。
  55. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 最後に、いままでの話をずっと聞いておりますと、まだ私は具体性を欠くので、非常にまだ納得がいかない点もあるわけでありますが、時間の都合がありますので、もうより深く論議を進めるのも後に回したいと思います。ことに私は、最後に各省の協力体制について先ほど大臣もお触れになりましたけれども、この問題について、やはり交通事故による傷害者を運び込むのは自治省管轄で、それを治療するのは厚生省の管轄になる。これは先ほど大臣のおっしやったとおりでありますが、これで運び込むところの救急体制のほうでは、これは医療行為にはわたっていけないわけでございまして、止血と副木を添えるというな応急措置だけである。しかも、医療施設が都市に集申しているために、都市から離れた地方では、たとえば鹿児島なんかの調査でも見られているように、非常に悪い状態が出てくる。死亡者の三〇%が外科設備のないような医療機関へ収容されているという報告もあるわけです。こういうようなことから考えてみると、こういう空白を埋めるための施策ということは、先ほど非常にいろいろな療養所をふやすというふうに言われましたが、ぼくはもっと各都道府県とか、あるいはそういうところにもっとそういうような推進をするような何らか行政的なものを置いて、そしてこういうものを推進するとか、もっと具体的な方策をここで出していただかぬといけないのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。特に私はこういう観点から、この救急医療についての問題は予算を十分獲得してもらうと同時に、なお一そう具体的なものを考えていただくように要望したいと思うわけであります。そういうことについてひとつ大臣からの御決意をお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  56. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 交通災害を中心とした救急医療対策の問題につきましては、厚生省の医療の分野だけでは解決できない問題であり、かつ、そういう交通災害を基本的に防除するという根本的な問題もあるわけでございますから、いずれ適当な機会に関係各省庁をお呼びいただきまして、総合的な御審議をお願い申し上げたい、こう思うわけでありますが、厚生省といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、最近の交通災害の激増に対処いたしますために、四十二年度の予算要求におきましては、相当思い切った予算要求をいたしております。私は、ほとんどゼロから出発するようなこの救急医療体制の整備という問題でありますけれども、最近の情勢、世論というものを十分背景にいたしまして、この予算化につきましては相当決意を固めて大蔵当局と折衝し、十分対策を講じてまいりたい、かように考えております。
  57. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 他に御発言もなければ、本日はこの程度でとめておきます。  では、午前中の調査はこの程度とし、午後は一時三十分に再開して、労働関係調査を行ないます。  これにて休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十八分開会
  58. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。  労働問題に関する調査を議題として調査を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  59. 森勝治

    ○森勝治君 先般も最低賃金の問題については質問をいたしたところでありますが、まだ大臣の真意を私のほうが把握するには認識不足でございますので、きょうは、再びお許しをいただいて、これからお伺いをしてみたいと考えます。  先日の私の質問は、時間がございませんでしたから、大臣が十七日の中央賃金審議会に行かれる問題に限って質問をいたしたところでありますが、きょうは大臣が、この中央賃金審議会におきまして発言されましたその内容をめぐって大臣の御意見を承りたいということで、これから具体的な質問に移りたいと思うのですが、この中央賃金審議会におきまして、大臣は、最賃制の基本的検討の諮問の趣旨に関する発言を行なったわけであります。この中で、業者間協定方式に基づく最低賃金について各種の説明を行ない、特に幾つかの問題点を指摘されております。第一点として大臣は次のように説明されました。現行法については適用労働者数が四百八十万に達したが、中小企業の労働者でもまだ最低賃金の適用を受けていないものが過半数をこえ、その中には最低賃金設定の必要性の認められるものが多数あると述べられております。さらに語を継がれまして、これらの労働者にすみやかに適切なる最低賃金を設定普及していかなければならないと思うが、現行法のままではそれを効果的に行なうことができるかどうか問題であると思う、という点を明らかに指摘されております。私は、この大臣の御指摘の点につきましては、現行法の欠陥をえぐり出されたものとして、私も大臣のこの発言の内容については共感を覚えるところであります。そこで、大臣からこのような中賃における発言をいただきましたので、私はさらにこの説明により、大臣に対して質問したいと思うのでありますが、大臣は、現行法によっては未適用の中小企業労働者に最低賃金の設定を行なうことは困難であるという御認識に立たれて、以上私がいま、大臣、中賃の発言内容を引例いたしましたような指摘されて内容の御発言になられたのかどうか。もしそうではなくして、現行法によってもなお拡大が可能であるというお考えのもとに以上の発言をされたといたしますならば、その論拠についてお示しを願いたいと思います。
  60. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) お答えをいたします。  先般当委員会でも御説明を申し上げましたし、引き続きまして中賃の総会にも御指摘のように私出席をいたしまして、諮問の趣旨についていろいろお話を申し上げ、御了解をいただいたわけでございますが、いま御質問になりました件は、発足以来、業者問協定で四百八十万ばかりが適用を受けるようになってまいりましたけれども、しかし、いまだなお相当広い中小企業者なんかの労働者が末適用のままになっておる。労働省としては、新しく改められまするまでは現在の業者間協定によりましてさらに発展をさせ、前進をさせていくように全力をあげるつもりでございまするけれども、しかしながら、なお効果的に新しい経済や新しい技術革新等もございまするので、そういう情勢にさらに効果的に対応していくのにはいい方法はどういうことかと、発展をさせていく方法について御答申をいただきたい、こういう御説明を申し上げたわけでございまして、そのように御了解をいただきたいと思います。
  61. 森勝治

    ○森勝治君 十四日に私は申し上げたのですが、どうも労働問題をもってベテランと称する大臣のおことばとも思えない、非常に中賃の説明よりも、当委員会における内容というものは回りくどくなって、私はどうもいただけない気がするのでありますが、しかし、私は持ち時間が限られておりまするので、総対的な立場から、ただいまの大臣の御答弁をもう一ぺん御確認願えるものとして、次の質問に移ってみたいと思うのです。  大臣は、同じくこの中賃の大臣発言の中で、こういうことをさらに言われております。ここ数年間労働力が不足しておる、従来賃金の低かった分野の上昇が著しい、こういうことも言われておりまするので、最低賃金の実効を確保していくためには、適切に最低賃金の改定を行なっていくことが必要であり、使用者だけの業者間協定に基づく最低賃金についてこのような円滑な運営が将来とも行なえるかどうか問題があると、いみじくも指摘をされております。そこで私はお尋ねをしたいのでありまするが、この説明によりますと、業者間協定方式では使用者の自主的な改定の申請に期待せざるを得ないので、このような円滑な改定をはかるという運営はきわめて困難であるというような認識を大臣は持たれたのかどうか、先ほどの御答弁とあわせてひとつお答えいただきたい。また、もし業者間協定に基づづく最低賃金について、この方式でも改定が円滑に行なえるともし大臣がお答えでありまするならば、そのよって来たるゆえんをひとつつまびらかにお聞かせ願いたい。
  62. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 端的に申し上げまして、現在の業者間協定方式によりましても、おおむね円滑に今後発展さしていくことができるというふうに考えてはおりまするけれども、しかし、部分的には、事務当局の話を聞きましても、いろいろ困難な問題といいますか、むずかしい問題も起きておるようでございまするので、これをさらに実効のあがるものにするためにはどういうふうに改めたらよろしいか、衆知を集める意味で審議会の皆さんの御意見を承りたい、そういうことを考えて申した次第でございます。
  63. 森勝治

    ○森勝治君 私の質問について具体的なお答えがなされておらぬのです。将来とも円滑な運営が行なえるかどうかということは問題であるということを大臣がつぶさに指摘されておるわけでありまするから、一体どういう点でそういう困難性を派生、あるいは、また、招来させるものか、一つでよろしいですから、具体的な事例を引例してひとつ御説明をいただきたい。
  64. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) ただいま率直に申し上げたつもりでございまするが、従来から多少困難な事例があるというふうに申し上げました関係もございまするから、局長からそれらのことについて直接御答弁を申し上げます。
  65. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) ただいま大臣から、現在でも最低賃金の改定にはいろいろ困難な問題が生じている場合も部分的にあるという趣旨の御答弁を申し上げましたが、たとえば現在のような業者間協定方式におきましても、最低賃金額の目安を改定いたしまして、今年二月から改定いたしておりますが、より高い目安に改定するようにいろいろ行政指導もしておるわけでございます。しかし、たとえば美容、理容の業種に至りましては、かなり低いものについてはいろいろな問題がございまして、なかなか改定が進まないといったような事例もあるわけでございます。これは一例でございますけれども、今後経済事情、賃金事情の推移に伴いまして、それに適合し、実効性あるものとして適切な改定が行なわれ得るかどうかという点につきまして、現時点においてもそういう困難が認められる、部分的ではございますけれども、困難が認められという事実を申し上げまして問題の指摘の一部にいたしておるようなわけでございます。
  66. 森勝治

    ○森勝治君 大臣は、同じくこの中賃の発言の中でこういうことも言われております。「業者間協定に基く最低賃金については、ILO第二十六号条約に適合するか否かについて、論議があり、」将来の最低賃金制のあり方について検討を願いたい、このように発言をされておるわけであります。そこで、私はこの問題についてさらに質問をしてみたいのですが、去る十四日の当委員会における私の質問に対する答弁の中で、大臣は、私個人といたしましては、現行法はIL条約第二十六号に適合すると思うという発言をされております。これは御記憶だろうと思うのであります。ところが、このあと村上労働基準局長が、この大臣の発言をあたかも打ち消すかのごとき印象を持たれるような、そういう説明をるる行なわれたところでありますが、十七日のこの中央賃金審議会におきましては、私がいまことあげいたしましたような内容で御発言なさったとするならば、十四日における私の質問に対する答弁と十七日の中央賃金審議会における答弁は、明らかに食い違いを来たしております。したがいまして、一体大臣はどちらのほうがあなたのほんとうの――池田さんはうそは申しませんと申しましたからあなたにも聞くのでありますが、二つ言われておるので、どちらが真実でどちらが誤りなのか。もしその一方が誤りとするならば、それはひとつ明確にいずれかを取り消していただきたい。この点はきわめて重大でありますので、明解なる、しかも、大臣の赤心あふるる御答弁を特に要請いたします。
  67. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 先般この委員会に出席をいたしまして、御質問をいただきましたとき、いろいろ御答弁を申し上げておりますが、私もさらに中賃に出席をいたして所信を述べるまでには日数もございまするから、私の考え等についてもさらによく勉強をし、検討をして中賃に臨みたいと、こういう趣旨のことを申し上げたように思っております。その後も、中賃に臨みますについて、いろいろ私も各国の例、そのほかのこと等もあわせ勉強をいたしてみまして、中賃でいま御発になりましたような発言をいたしたわけでございまするが、あれが私の真意でございまして、中賃で申し上げたとおりである、こういうふうに御理解をいただいてけっこうでございます。
  68. 森勝治

    ○森勝治君 しからば、十四日の私の質問に対する答弁はいかんとなす。
  69. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) いろいろありますけれども、私が御答弁を申し上げたことが必ずしも私の本意でない、あるいは多少十二分な検討をしておらなかった関係上、誤解を受けたということであれば、私は何も訂正をすることにやぶさかではございません。
  70. 森勝治

    ○森勝治君 大臣、私は誤解などというつまらぬ考えはございません。あなたが去る十月十四日の当委員会において私の発言に対して答えられた具体的な発言の内容をとらまえて私はあなたに質問をいたしておるわけでありまするから、誤解に基づく質問ではございません。いいですか、大臣、あなたのほうが何か誤解されている。まあ新しい大臣でしょうから、労働省のいすのすわりここちを試されている間に私の質問を若干お忘れにたったのじゃなかろうか、まことに失礼な表現だが、私もこんなふうに考えて、もう一度あなたに質問をいたします。いいですか、私個人としては、現行法はILO条約第二十六号に適合すると思うがという発言をされておるのですから、あなたが間違いならば率直にこのことばを訂正していただきたい。
  71. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) いま御指摘になりました件は、私が中賃において発言をいたしたとおりでございます。
  72. 森勝治

    ○森勝治君 大臣、しつこいようでありますが、それは答弁になりませんよ。あなたが中賃で発言した内容と、去る十四日の私の質問に答えられたあなたの内容は食い違いがあるのですから、ですから、当時、隣りの局長があわてて立ち上がったことをあなたは御存じでしょう。ですから、十四日の発言を取り消さない限り、十七日の発言が間違っておるのか、あるいは十四日から十七日までの間の三日間、あなたが最後にいみじくも、私も研究してみたいとおっしゃっておられたから、三日間に君子豹変されたのかどうか。豹変されたならば、四日の当委員会における答弁はすみやかに取り消しなさい。
  73. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 中賃で申し上げたとおりでございまして、十四日の発言は訂正をいたします。
  74. 森勝治

    ○森勝治君 大臣が簡単に取消されたから、私もこの問題についてはこれ以上追及いたしません。  ここで私は付言をいたしておきますが、本件については大橋大臣、石田大臣、小平労働大臣ともあなたと違った発言をしばしば公開の席上でなされておった。大臣就任早々、労働問題は前向きの姿勢で処理すると言われたあなたにして、十四日の発言は非常に後退した発言の内容、答弁の内容でありましたから私はこのように執拗に食い下がったのであります。ところが、大臣は率直にそのことばを取り消されましたから、私はこれ以上とかく申し上げません。  そこで、次にまいります。私が先ほども指摘をいたしましたように、大臣は、これまで業者間協定方式、すなわち現行法第九条、第十条について幾つかの問題点を指摘されましたのは大臣承知のとおりです。ところが、一方、同じ中央賃金審議会における御発言の中で大臣はまたこのような発言をされております。うそだと思いますならば、ここに大臣御発言の要旨を私持ってきておりますから、これを見ていただければわかります。局長の手元にもおありだそうであります。この業者間協定方式は、これまでの段階においては最も実情に即したものであり、最賃制の理解の浸透、普及の基盤醸成に前述のような大きな効果をあげ、その使命を果たしてきたものと思うと述べられております。もし大臣が言われますように、現行法が最も実情に即したものであったとするならば、一方でこれまで大臣指摘された幾つかの問題点はどういうことになるのか、その食い違いをただしたいと思うのであります。すなわち、現行法は実情に合わなくなったからこそ多くの問題点が生まれてきたのではないかと私は思うのですが、この点どうですか。さらに、また、一方で多くの問題点を指摘しながらも、なお悪評さくさくたる業者間協定を大臣はあたかもかばおうとするその大臣の気持ちは一体那辺に存在するのか、明確にお伺いしたいと思います。大臣は、また、業者間協定はこれまでその使命を果たしてきたと言いながら、今後もその使命を遂行させようとするのかどうか、この点もあわせて明らかにしていただきたい。
  75. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 業者間協定は今日までずっとやっておるわけでございまするが、いま局長から指摘しましたような問題点もあることは事実でございまするけれども、しかし、わが国に最低賃金制度を普及をし、国民一般に非常になじませてきたことは事実でございまして、そういう関係等において非常に効果があったし、実績をあげたものと私は考えております。  それから、二番目の点でございまするけれども、業者間協定そのもののそうした功罪は別といたしまして、さらにこれを発展をいたしまして、わが国の新しい経済情勢に即したように発展をせしめるのにはどういうふうな知恵を出したらよろしいか、必ずしも役所の考え方だけでなしに、業界そのほかの皆さん方のお考えも十二分に聞いて発展さしていけるものならさらに発展をさしたい、こういうことでございます。
  76. 森勝治

    ○森勝治君 まことに失礼ですが、もう少し具体的に御答弁いただけないでしょうか。私がお願いいたしておりますのは、幾つかの問題点を大臣指摘されておりながら、いまの業者間協定というものをどうもかばっておられるような気がしてならぬのですよ。これは大臣のこれこそ私の誤解かもしれません。したがって、幾つかの問題点を指摘されたならば、前向きに事態を処理するというあなたのお立場からするならば一体どうされるのか、さらには、また、そういう指摘をしながらも、現行の業者間協定なるものをかばっておられるような気がするから、これをいつまでもほうっておくのかどうか、そういう具体的な問題について御答弁を重ねてわずらわしたい。
  77. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) ちょっと私から申し上げたいのでありますが、先ほどの御質問といまの問題と関連するのでございますが、大臣が中央最低賃金審議会で御発言いただきました発言の内容につきましては、ある程度段落がございまするわけでございまして、先ほどの最も実情に即したというような認識は、これまでの段階においては最も実情に即したものだ、こういうふうな言い方をされておるわけであります。そして、さらにその業者間協定に基づく最低賃金をどう考えたらよいかといったような問題の提起のしかたをされておるのでありまして、つまり今日までの段階における評価の問題、それから実施途上におけるいろいろな問題、そういった問題を踏まえまして今後どう考えたらよいかということを第二の問題として指摘されておるわけであります。そこには業者間協定をこのまま存続するとか、あるいは廃止するとかいったような見解をお示しになっていないわけでございまして、一にかかって、そのような問題点を踏まえて、さらに審議会がどういうふうに御判断いただきますか、その審議会の判断を御期待申し上げておるわけであります。そのようなことでございまして、全体として御判断いただきますならばその意図はおくみ取りいただけるのじゃないかというふうに私ども理解をいたしておるわけでありまして、パラグラフの一つ一つの部分について御質問賜わりますと、やや私どものお答えする立場におきましてもちょっと乖離があるような感じがいたすわけでございます。はなはだ恐縮でございますが、そういう趣旨だけをお答えさしていただきたいと存じます。
  78. 森勝治

    ○森勝治君 率直に申し上げますよ私は。大臣いいですか。中賃においては具体的に数点にわたって問題点を指摘しておるのです。あなたは。ところが、私どものこの委員会では一つも言われない。一体それはどういうことかというのですよ。問題点――この前もそうですよ、私がどういう態度で臨まれるかと言った。そしたら、前提を置いて臨むよりも、白紙のままで御審議をわずらわしたほうがよろしいと思うので発言を差し控えたい、こう言われて、私の質問には何ら具体的に問題点にも触れられようとしない。私どもの委員会で一切知らぬ存ぜぬという式をやっておって、中賃では具体的に指摘されておる。あなたはお認めじゃないですか。私の二点にわたる重要な点については、あなたの発言の内容があり、その中でこういう指摘をされたということを大臣局長もいみじくも認めておる。中央賃金審議会でそういう労働大臣として具体的に問題点をえぐり出しておきながら、なぜ私どものこの委員会では知らぬ存ぜぬをやるのだと言うのだ。ここに具体的な問題点がある。しかし、将来の展望に立った場合には、いま直ちに移行することができないというならばまた別だが、あなたのは、ここではもう中賃にこの賃金の問題の解釈は最近は移行したのだから知らぬ存ぜぬとあなたは言った。そうでしょう。すでにそれで中賃に具体的に指摘されたならば、もつとここで積極的に前向きの姿勢で具体的な問題について、現行の業者間協定にはこの点とこの点が問題がある、あなたは全国一律制を前から主張しておるけれども、ここに隘路があるから、この点はしばらく待ってくれとか何とかこういう意見が出されたならば、これが前向きの答弁だと思う。十四日も知らぬ存ぜぬ。よその会議では発言をし、ここではどういうお考えか、あなたは口を緘して具体的な問題については発言されない、これでは私どもは納得できない。したがって、いま申し上げたように、具体的な問題点をあなたは中賃でこのとおり指摘されておるのだから、そういう問題を一体あなたはどうお考えなさっておるのか。もちろんそれは具体的な問題を指摘して中賃に諮問をしたのでありましよう。でありましょうけれども、いまのような答弁では何回やっても同じですよ。この前と少しも変わらない。もっと私どもの委員会のひとつ、なお一なおといっては恐縮ですが、この中身をもう少し尊重していただいて、もう少しあなたの言う文字どおり実効のある御答弁をいただきたい。
  79. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) この問題につきましては、経過的に見ましてもいろいろ経緯もございまするし、論議もあるところでございまするので、私はこの前の委員会でも率直に御答弁を申し上げたように、なお日もあることだから、中賃に出席するまでによく私もさらに考えてみたい、こういうことをここで率直に申し上げたわけでございまして、いろいろその後も、私もいろいろな内外の最低賃金に関する資料を勉強いたしたりいたしましてああいう説明を中賃に出てしたわけでございまして、決して皆さん方に特に口を緘して言わなかったとか何とかということではございません。でございまするから、もちろん現在の心境は、決して業者間協定を特にかばうとか何とかという御発言もありましたが、そういう心境になっておらない、こういうことを御説明申し上げておる次第でございます。
  80. 森勝治

    ○森勝治君 同じくこの中賃において、さらに大臣は十六条方式にも具体的に触れられました。あなたはそのように、よその会議では具体的な発言をされている。ここでは抽象的な発言はおろか、ことば少なになかなか具体的な表現を用いられない、私は非常にその点残念に思います。  そこで、大臣がこの十七日の中賃において十六方式に具体的に触れられている点を私がまた引例をいたしてみます。限られた場合にのみ審議会の調査審議に基づく最低賃金を決定し得ることになっている現行の最賃法には問題があるとあなたはつぶさに指摘をされております。そこで、ここで言う「限られた場合」とは、第九条、第十条、第十一条までの方式による最低賃金の設定が困難かつ不適当である場合のことをさされるものと思うが、はたしてそうなのかどうか、これが私のお伺いしたい一点。  それから、このような大臣の御指摘というものは、要するに十六条方式とは、使用者が業者間協定方式では最低賃金の設定ができない場合ということで、このことは十六条の発効は行政官庁が法律上行なうことになっております。実際には使用者側の同意なしではできないという形になっていると思われるわけでありますが、そういうふうに理解してよろしいものかどうか。  さらにもう一点です。もし私の乏しい理解が妥当だとされるならば、この大臣の御指摘の点は、このような前提条件を一切排除することが審議会の調査審議に基づく最低賃金決定方式をすみやかに設定拡大するためにどうしても必要であるということを強調しておられるので、以上のような発言がなされたものと理解してよろしいかどうか、この点をお伺いしたい。
  81. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 十六条の法文の問題とも関連いたしますので、私から答弁させていただきます。  十七日の大臣の御発言の中に、「業者間協定に基く最低賃金中心とし、限られた場合にのみ審議会の調査審議に基く最低賃金を決定しうることとなっている現行の最低賃金制のままでそれを効果的に行なえるかどうか」という問題点の指摘をされたわけでありますが、ただいま先生指摘のように、現行最賃法第十六条の規定は、御指摘のように、九条とか十条とか十一条、十三条などの規定により、「最低賃金を決定することが困難又は不適当と認めるときは、」云々、こうなっておりまして、いわば条件がついておるわけであります。先生指摘のようなことでございまして、その現行の制度を十七日の説明でも述べまして、そうして効果的に行なえるかどうかという点についての問題点を指摘されておるわけであります。したがって、そういう問題の上に立ちまして審議会で御検討をいただきたいということであるわけであります。しかも、期待する効果というのは何かと申しますと、説明の前段にございますように、中小企業の労働者でもまだ最低賃金の適用を受けていないものはその過半数をこえる、その中には最低賃金設定の必要性の認められているものも多数存する、そういった分野に対しまして効果的に最賃制を普及するにはどうしたらいいか、こういう現状認識と現行法制のたてまえとをかみ合わせて問題点の指摘をされている、こういうことでございます。したがって、直ちに十六条をどのように改めたらよいかとか、あるいはどのような方式を新しく採用したらよいかといったような結論的なことを申し上げておるわけではないのでありますし、また、そのような問題点の上に立ちまして審議会でいろいろ御検討いただき、適切な御判断をいただくことを労働省としては期待しておる次第でございます。
  82. 森勝治

    ○森勝治君 三十四年に現行法が発足して八年有余になるわけでありますが、ことしわずか四件、十六条適用が千葉、滋賀その他でなされただけであります。この十六条方式が八年有余にわたってわずか四件しか適用されないという理由の一つには、もちろん業者間協定の、大臣がつぶさに指摘された欠陥、問題点、そういうものを内臓するでありましょうが、他方、使用者側団体の強い反対があるというふうに指摘されておりますけれども、そういう事実が一体あるのかどうか、ひとつ具体的に御説明をいただきたい。
  83. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 先生いま御指摘のように、本年に入りましてから千葉、山口、滋賀等でいわゆる十六条方式の最低賃金が設定されました。近く設定されますものがまだ若干ございます。このようないわゆる十六条ないしは職権決定と申されております最低賃金が決定されましたその過程を見てみますると、当該地区におきます業者間協定方式の最賃をある程度やってまいりましても、いわゆる業者グループが明確につかめない、そういった適切なグループがありませんのでなかなか困難がある。しかしながら、最低賃金設定の必要性はある、こういうような業者間協定方式、労働協約拡張方式を前提にして、相当の年月を経過した今日の段階におきまして、そのような条件を満たしつつ職権決定で臨まざるを得ない、こういうような事態が生じてきたわけであります。そのような事態と申しますか、職権決定方式発動の条件がようやくにして明確になってきて、生まれるべくして生まれてきた、こういうことでございます。その間、これらの十六条方式が決定するまでの間におきましては、使用者側、あるいはそういった関係者方々がいろいろな御意見を述べられているという経過はあるようでございます。しかし、それは十六条方式による最賃決定までの経過でございますけれども、そういった因難を克服しまして十六条方式の最低賃金が次々と生まれてきておるというのが事実でございます。使用者側云々というような御指摘がございましたけれども、決定までの経過においてはいろいろないきさつはございます。にもかかわらず、できてまいりつつあるということは、私ども一つ段階的な前進と申しますか、条件がようやく成熟いたしましてそういうものが決定されつつあるというふうに見ておるわけであります。大臣の十七日の御発言の中に問題点指摘がございましたけれども、そういった長年にわたる最低賃金行政運営の経過からしまして、だんだん段階が進んでまいったというような事実認識というものが基底にあろうかというふうに私ども感ずるわけでございます。
  84. 森勝治

    ○森勝治君 さらに大臣質問をしたいと思います。私は六月九日だと思いましたが、当委員会において当時の小平労働大臣に本件について質問をいたしました。私が大臣質問いたしました中の一点を取り上げて、再び同問題について労働大臣にお伺いしてみたいのですが、元の大橋、あるいは、また、石田大臣等は、この全国一律最賃制の問題については、若干の例外を設けるならばよろしいという発言をしばしば公約の場において行なってまいりました。このことについては六月九日の場におきましても、これは大橋大臣の発言については小平大臣が認められ、石田大臣の発言は基準局長が認められております。これは速記録に明らかにしるされておるところであります。そのときに私は当時の小平さんに申し上げました、大臣がかわるたびに新しい大臣に最賃の問題について大臣の方針をお伺いすることはまことに残念だがという前置きで、あなたが労働大臣の席にあるうちに歴代大臣のお約束を、積年のお約束でありますから、果たしていただきたい、そうでなければ、また新しい大臣になってからその大臣の心が那辺にあるか、最賃制の問題についてどう考えておられるか、また新しい大胆に聞かなきゃならんといって、そういう前提をもってして私は小平さんに質問したら、残念ながら、あなたにとってはしあわせかもしれませんが、私らにとっては、大臣がかわられてしまって、また再びこのような質問をするのは非常に残念なのでありますが、そこで、いま申し上げた全国一律最賃制は、若干の例外を設けるならば可能だというこれら歴代の労働大臣のことばというものをあなたは認められるかどうか、この点についてお答えいただきたい。
  85. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 大橋、石田各大臣等、歴代の大臣が総評とお話し合いをされた場合にいろいろ御意見を述べておられまするが、まあ一種の理想論的な御発言であったと思うのでございますが、それらは現在の最賃制に対しまして具体的な検討をする以前の段階でございます。ぜひ具体的に検討をいたしまして、改善すべきことは改善をしていこうということを決意をする前の段階で御発言になったわけでございまするが、私といたしましては、英知を集める意味からいたしましても、この中賃審議会の御答申をいただきまして、その結論を見定めて最終的な決定をすることが適当ではないか、こういうふうに考えた次第でござます。
  86. 森勝治

    ○森勝治君 大臣、理想論とおっしやって、なるほど佐藤総理大臣は人間尊重でありましよう、責任政治の確立でありましょう、それも理想論ですか。一向に責任をとろうとされない。そういう問題はさておきましょう。それで、あなたはいま理想論と言われたが、理想論などということばは歴代各大臣はだれも言っておりません、具体的な問題として、将来の展望として発言されておる。いいですか、理想論などという、そういうものではなくして、すでにいまや現実の問題となってきておる。あなたはそれをどう考えるか。もう一度、はたして理想論なのか、もっと具体的にほしい。
  87. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 歴代と申しますか、大橋、石田、小平大臣等が会見された場合の席上には、私ほとんど立ち会っております。国会の場合にも私は御一緒いたしておりますが、全国一律をやるとか、そういう発言はいたしていない。たとえばこれは労働省で印刷したものではございませんが、ある程度の地域的な例外を認めるならば全国一律も無理ではないと思うという感想を述べておられるわけであります。これこれをするといったような発言はありませんし、理想論かどうかということばのやり取りも、目標か理想か、理想といえば理想というような発言もあったわけであります。そういった点につきまして、いま大臣から一つの型、あるいは理想論というふうに御発言がございましたが、大臣が御就任になられましてから、過去のいろいろなデータなり何なりを御検討いただきまして、要約されたおことばであろうかと思うわけであります。何しろ速記録をとつていない場――速記録をとっております国会の場におきましては、これはもう論議の余地はないわけであります。まあいろいろお話がございまして、巷間いろいろの見方があるようでございます。しかし、私はここであえて異を唱えてどうこう言うわけではありませんので、いま大臣の御判断の基礎には、私どもがいろいろ申し上げておる事実の上に立ってのおことばでございますので、私から一言申し添えただけでありまして、その点御了解をいただきたいと思います。
  88. 森勝治

    ○森勝治君 そこで、また大臣にお伺いいたしましょう。今度は違った角度で大臣の理想論をお伺いしたい。  そこで、具体的な私の質問は、大臣は所管の大臣として中央賃金審議会、最賃審議会の答申というものは具体的に尊重し、かつ、これをすみやかに実施する決意がおありですか。簡単明瞭にお答えいただきたい。
  89. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 審議会の答申は、率直に申し上げまして、尊重をし、すみやかに実施する決意でございます。
  90. 森勝治

    ○森勝治君 そこで、具体的に質問いたしますが、あなたの御答弁は全部いただきました。そこで、いただいた上でさらに質問をしたいと思うのですが、いままで労働省において、いわゆる答申をすべて尊重されてこられたでしょうか、この点もまたお伺いしたい。
  91. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) こういうふうな配慮をいたしまして審議会に御検討をお願いをし、答申が出ました場合においては、私いますぐ全部と言って明言し得るかどうか、例外があるいはあろうかと思いまするが、原則として尊重をしてまいっておると考えます。
  92. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、さらに具体的に質問をいたします。  これは昭和三十四年に現行の業者間協定が法制化される前の昭和三十二年十二月八日に、時の中央賃金審議会中山会長から時の労働大臣石田博英殿に対し寄せられた最低賃金制に関する意見書があります。この中で、もう私の持ち町間が残り少なくなりましたから、要点のみをことあげいたしますが、「最低賃金制の基本的なあり方については、将来の問題としては全産業一律方式は望ましいものである」という答申をなされている。大臣、あなたに私が前質問いたしました前二点は、審議会の答申を尊重するということなら、近い将来に全産業一律方式は望ましいという、こういう意見書があなたの前々、その前の大臣に寄せられておるわけでありまするから、こういう問題をあなたはどう考えておられるのですかこれは大臣から――これは局長じゃない、大臣大臣。基本的な問題でありますから、大臣から。
  93. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) これは答申に関する問題でございますから、私から……。
  94. 森勝治

    ○森勝治君 基本方針を聞いているのだから、大臣でなければだめだ。
  95. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 委員からの要求で大臣答弁を求めておりますので、山手労働大臣
  96. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) だいぶ以前の話でごさいますから、当時のいきさつをよく調べてみなければいかぬと思いまするが、いまお読み上げをいただきました答申の文言にもありますように、「将来の問題として」と、こういうふうになっておりまして、いつからどうせいということではないのではないかというふうに私は直感的に考えまして、できるだけ早い機会にとか、あるいは将来の問題としてとかという抽象的なことばを使っておられるわけでございまして、そういうようなことが今度もいろいろ最低賃金制度を根本的に見直してみよう、こういう中賃に御足労をわずらわすことになったのではあるまいか、こういうふうに考えます。
  97. 森勝治

    ○森勝治君 しからば理想論ではないでしょう。この場合における「将来」というのは一体何年ですか。もう昭和三十二年の答申で、約十年の歴史を経過しておるのです。当時にさかのぼって将来のあり方というならば、十年後の今日、具体的にこれが法制化されるのがあなたの言う前向きの労働行政ではないかと私は思う。したがって、これをどう考えるか。理想は高く掲げるほうがいいでしょう。しかし、理想論よりも、もうすでに現実の問題、十年前は将来の問題だったが、今日的段階においては焦眉の急務だと私は思う。それを今度は、十年前にこういうりっぱな答申が出ているのに、十年後の今日において、労働界のベテランで、最も労働問題に精通しておるといわれるあなたにして理想論などということは、私は片腹痛いとは申し上げないが、そのことばはいただけない。したがって、具体的に答弁いただきたい。
  98. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) いろいろ過去の経過については、あとから事務局のほうから御説明申し上けると思いますが、最初の中山会長当時の答申、それから三十八年の答申、それぞれ答申をいただいておりまするけれども、あるいは「望ましい」というような表現を使われた場合もありまするし、あとの場合はまた変わって、「考えられる」というような表現を使われておるようでございまして、いろろろ御議論のようなこともありますが、私としては、そういう「望ましい」、あるいは「考えられる」ことでございまするから、今回の審議会の答申を見た上で最終的に決定をすることがよかろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  99. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、少し具体的にお考えくださっている模様ですから、その問題はあと回しにいたしましよう。  そこで、大臣、それでは私はさらに聞くのですが、このように、すでにもう十年前ごろから、もう関係審議委員の方々は、私がいま申し上げたような中身で、少なくとも、もう十年後の今日的段階においては、これがもう具体的な段階に入っているものだ、「近い将来」ということは、少なくともどんなに長く見積もっても十年ぐらいだろうと思うのであります。私の私見をもってするならば。ところが、大臣は理想論と言われた。まあ理想論は、あまり私はあけ足はとりませんけれども、そうならば、十年ぐらい前から、しかも、こういう意見が出されておるとするならば、一体、しかも歴代大臣もまた同じようなことで、この趣旨に沿って御発言をされておるやに私は仄聞しておる。したがって、あなたとしては、この全国一律制について、一体最賃制の目標を望ましく考えておられるのかどうか。もし望ましくないというならば、あなたのひとつの考え方をこの際聞かしていただきたい。
  100. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 私は、この問題がいろいろ問題になっておりまするので、海外の国々の実情等もいろいろ調べてみたり、実際に現在の状態でわが国にどういうような最賃制を採用したらば一番適合するかというようなことも考えてみたりいたしておりますが、現実に海外におきましても、産業別、職業別に団体協約をいたしまして、それを拡張していくというような方式をとっている国もございます。また、産業別、地域別、職業別に賃金委員会の審議を経まして決定をしておるような国もございます。また、国会の議を経まして全国的に決定をするというような方法をとっておる国もあるようでございます。いろいろなことがございまして、その国々の経済情勢なり、いろいろ社会情勢等によってよく考えてみたほうがよろしかろう、その国のその社会の実情に応じたような方策をとったほうがよかろうと思いまするので、労働省ばかりでなしに、各界の意見を十分お聞きをするということでこの審議会に御苦労をわずらわしておるわけでございまして、現在の時点において、どういう方策をとったらば一番いいか、御答申をいただいた上で、あらためて私は決意をする、方策をどうするかを決定をいたしたい、こういうふうに考えております。
  101. 森勝治

    ○森勝治君 さらに大臣は、現行法は業者間協定方式であるが、最低賃金については、目安をきめて最低の規制を行なっているというふうに説明をされたはずであります。そこで、この目安について私はお伺いしてみたいと思うのですが、この目安というものは、この点については、先ほども局長が目安ということばを用いられました。この目安は、産業や業種によって差別があるかというと、ないでしょう。すなわち、甲、乙、丙の三段階の地域差というのがなるほど設けておりますが、この中で業種による区別はありません。全産業一律ときめており、一律に最低賃金の規制を行なっているわけであります。これは、労働者の必要生計費について見まするならば、特にその最低水準については共通の額が設定できることからも、当然であると考えるわけであります。この意味からいたしましても、目安は、いわゆる全国一律という性格を持っていると考えられますけれども、そのように私がいま発言したように理解をしておいてよいものかどうか、この点お伺いしておきたいと思います。
  102. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 目安についていろいろ御議論がございましたが、先ほど来繰り返して申し上げておりまするように、いわゆる目安とか、それからまあいろいろな内容等につきましては、私たちが審議会に御答申を求めている途中とか、あるいはその前に、これがよろしいとか、これがどういう内容であっていかぬとか、そういうようなことを申し上げることは適当じゃないのでございまして、あくまでも審議会の御答申を拝見をして、その御答申に基づいて決意をする、こういうことにいたしたいと思います。
  103. 森勝治

    ○森勝治君 大臣、失礼でございますが、私が発言したような内容と理解してよろしいかということでありますので、まげて、ひとつ私の理解が間違っておるなら間違っておる、おまえさんの理解はそれでよろしい、そういうようにひとつ御教示をいただきたい。
  104. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 目安論でございますが、いま申し上げましたように、目安がこうなっているとか、あるいはこういうふうにすべきであるとかというように目安をつけるというふうには私どもいま考えておらないのでございまして、いろいろ議論がございます。いろいろな立場立場の人で御意見もあるようでございまするから、この際としては、そういう各方面の意見を十分検討をしてもらう、そうして結論を出していただく。御答申をいただいた上では、それらのいろいろな意見が織り込まれたものが出てくると思いまするから、それを拝見をした上で決意をするということでございまして、私がいまその内容についてとかく言ったり、目安がこうだというようなことを、せっかく森さんからお話がございましたが、申しますと、またいろいろ寸足らずで、私の本意でないような議論に発展をする可能性もありますので、そういうふうに考えていることを御了承いただきたいと思います。
  105. 森勝治

    ○森勝治君 実は、大臣が目安をさめて最低の規制を行なっているという説明をされたから、私の理解する目安というような内容でよろしいかという御質問を申し上げたら、お答えをいただけないので、ひとつ局長のほうからその点ひとつ教えていただきたい。
  106. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 先生承知のように、現在、最低賃金額の目安をきめていろいろ指導いたしておりますが、これは中央最低賃金審議会で、最低賃金制度の運用の一つのあり方といたしまして一つの指導でやっているわけであります。法的効果があるとか、そういった性格のものではないわけであります。一つの指導上の基準として、甲地域においては五百二十円から四百七十円、乙地域におきましては五百円から四百四十円、丙地域におきましては四百八十円から四百十円、こういう金額の幅のあるものでございます。これを設けまして、業者間協定の賃金額を設定いたします場合にこれに合わせるように指導する、こういった形のものでございます。したがって、一律といったようなおことばの関係になりますと、制度的にこれは担保されたものかどうかといったような議論もございます。それと、基本的に最低賃金と申しましても、賃金額の決定の問題、最低賃金と対象業種の労働者の問題、それから決定機構の問題、いろいろなものが総合的に一つの制度化されましたときに何々方式であるといわれるのではないかと思うわけでございます。適用対象について業種を統合区分せずに金額を設定しているじゃないか、これをどう考えるかというお話でございますけれども、この目安に適合するように、指導の重点とします業種は、審議会の答申の中で定められておりますいわゆる重一点業種と非重点業種という分け方をいたしているわけであります。いずれにいたしましても、これは運用上、指導上の制度であります。したがいまして、御指摘のような全国産業一律といったような観点からこれをどう評価するかという問題につきましては、もっと条件を整理いたしまして見る必要があるわけでございますので、その点ひとつそれ以上のお答えは遠慮さしていただきたいと思うわけであります。
  107. 森勝治

    ○森勝治君 もう私の時間がまいったのでありますが、私はどうもいまの説明では合点がいかないのですが、それはひとつ後日の課題にして、局長にお預けしておきます。  そこで、さらに、また大臣に対する質問に移りますが、どうもきょうは中賃の発言の内容をとらまえての発言で恐縮でありますが、もう一つ質問があるのであります。それは、この中賃発言の中で、大臣は、業者間協定方式や限られた場合にのみ発効ができるような審議会方式ではすみやかなる最低賃金の設定は困難であるとこの説明の中で指摘されているところであります。それでは千三百万の中小企業労働者に、全面的に、しかも包括的に最低賃金制を適用するには一体どのような方式がよいと思われるのか、いや、おれは審議会に諮問しているのだから知らないといわれれば、はい、それまででありますが、よもや賢明なる大臣は、そんな木で鼻をくくったような答弁はされないと思うので、以上のような質問をするわけであります。  もし何らの制限をせずに審議会方式によるとしても、一千三百万、いま大臣は、この十七日では四百八十万の適用というふうにいわれておりますけれども、千三百万にわたるこの中小企業の労働者の最賃制の全面適用というものが可能なのかどうか、そういう点もひとつお伺いしたい。
  108. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 私は率直に私の考えを申し上げているつもりでございますが、先ほど来議論が出ておりまするように、今日までは非常に最賃制に関する土壌をつちかったということを事務当局は非常に効果があったようなことを言っておりますが、確かに非常に普及してまいったこの実績を無視するわけにはいかないと思うのです。ところが、御指摘のように、非常に多くの中小企業者やなんかがあるわけでございます。それらのものを見ましても、その業者グループがどうもよくつかめないようなものもございまするし、いろいろな状況でございまするので、それではすぐこうするのだというようなことを決定をするには、どうも私決意がつきかねる。各国の例を見ましても、先ほど申し上げましたように、いろいろな方式を採用しておるわけでございまして、わが国に最も適した制度をすみやかにやるにはどうしたらよろしいかというようなことでございまして、今後審議会の結論を拝見した上で、すみやかに実効のあがるものをきめていきたい、こういうことでございます。
  109. 森勝治

    ○森勝治君 どうも具体的にお答えがいただけないことは残念でありますので、それではまた別な角度で、大臣、恐縮ですが、これは大事なことでありまするから、執拗にひとつ質問をいたすわけでありますが、総評や中立労連などが要求している全国一律制というものについては、二重構造や賃金較差というものが存在するから、その実施が困難だという意見があるわけですね。そういう意見があることは私たちも承知をしておるのですが、それでは一体その点について大臣はどうお考えでしょうか。
  110. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 確かに総評などにおいて御議論があることも事実です。使用者側において議論のあることも事実でございます。しかし、それらのものを調和させ、よく集約をいたしまして、実効のあがる妥当な制度をつくりあげていくのが政府責任でございまするし、労働省としては、そういう見地からいたしまして、いろいろな御意見のあることはよく承知の上でこの中賃が結論を出していただく、そして実効があがるように前向きに労働省が作業ができるように御検討をいただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  111. 森勝治

    ○森勝治君 いまの御答弁は、妥当な制度をつくりあげていくことは労働省の責任で、そのためには前向きな形で取り組むという御答弁でございました。それでは、先ほどの問題に若干また戻りますけれども、歴代大臣がしばしば発言されたように、三十二年のこの最低賃金制に関する中山会長の御意見を見てもわかりますように、将来ということですから、すでにもう十年後の今日が現時点だと思うのでありますので、若干の例外を設ける措置をとった場合には全国一律制は可能と考えておられるかどうか。これも諮問中だから知らぬと、言われては、最賃会議では具体的な表現を用い、当委員会ではカタツムリだか何だか知りませんが、そのほうと競争されては困りますから、この問題についてもうひとつ具体的にお答えをいただきたい。たとえば、いいですか、十七日、先ほど訂正されたごとく、ILO二十六号条約に現行業者間協定は抵触しないなどというふうにこの前言われ、それは間違いだと言って先ほどは率直に訂正されたが、そのように間違いの発言は私は期待をいたしません。しかし、あなたのおっしゃる、先ほど決意を述べられた前向きの御答弁がいただけるものと確信していまのような具体的なそのものずばりの質問をいたしましたので、ひとつお答えいただきたい。
  112. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 森さん、どうも私が特に帯議会に御答申を求めておりながら、何かこう独特の立場をとっておるような形の御答弁を申し上げて牽制をするようなことになったり何かするわけにはいきません。私はむしろ白紙で今日はおりまして、その内容につきましては、審議会の方から権威のある御答申をいただくわけでございまするから、その御答申を見た上でこの決意をすると、こういうことにさせていただきませんと、率直に言いまして、また、おれら一生懸命やっているのに、国会でおまえはこう言うたそうじゃないかというような議論が出てまいりますと、私も正直に申し上げまして困るわけでございます。私は、今日の段階としては、むしろ諮問の趣旨は十分説明をいたしますけれども、そのかくあるべしという内容については、この答申を見た上で尊重をしていくという立場をとってまいりたいと、この考えておるわけでございます。
  113. 森勝治

    ○森勝治君 大臣は率直にいわれました。歴代大臣の発言に反して、独自の発言をしているようにとられては困るという発言を用いられましたが、私どもをもって言わしむるならば、歴代大臣の発言とあなたの発言は違うから、やがて大臣独自の発言というふうに、幸い誤解ならけっこうでありますが、そういうふうに考えておるわけであります。したがって、せめてあなたにお願いしたいのは、歴代大臣がこぞって、特殊の部門を除くならば、全国一律の最賃制が望ましいという表現を用いられておるのだから、独自な判断、独自の発言がないとするならば、そういうふうにひとつ御発言をいただきたい。大臣が十七日に中賃で発言されましたそのことについて、総評や中立の全国の労働者は、この歴代大臣と相反する独自な考え方をおそらく持っていないだろうと理解をし、期待をした山手労働大臣は、前大臣と違った独自の発言をしておる点について、いまや全国の労働者は、深い嘆きと憤りを持っているわけであります。総評はこういう声明をいたしました。前段は省きますが、しかるに本日の労働大臣の態度は、このような歴代的経過は全く目をおおい、組合の回答や国会における答弁すらもほごにして、不誠意きわまる不信行為と言わざるを得ないと指摘をいたしております。大体、これはあなたはどうお考えでしょうか。いま全国の地方賃金審議会におきましては、労働者側の意見は、この前私が十月十四日に指摘したとおりに行動を行なっております。まさに麻痺状態であります。局長はそんなことはないだろうと言っておるけれども、中賃の翌日に全国基準局長会議を開いて、鳩首協議をしたのが何よりの証拠ではないか、しかし、そんなことを言おうとはしない。信頼の置ける労働大に、ことに多年この国の労働者が、心から願いをこめて、働く者のしあわせを念願として、こぞって努力し、運動を続けてまいったこの最賃制の全国一律という問題を現時点においてすみやかに実現をしていただきたい。これが大橋労働大臣以来、歴代の労働大臣が労働界にしばしば約束をしておるところを、現大体でありますあなたの手によってすみやかにその約束を果たし、全国一千三百万になんなんとする労働者の、この人々のしあわせと生活をひとつ守っていただきたい、これを私はあなたにお願いをし、あなたの本件についての決意をお聞かせいただいて、私の質問を終ります。
  114. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) ただいまの御意見でございますが、私もぜひこの制度を実効のあがるものに発展をさせたい、できるだけこの従来つちかってきました基盤の上に発展をさせたい、こういうことで念願をいたしておるわけでございまして、いろいろな意見を総合いたしまして制度を改善をいたしていくことにやぶさかではございませんし、前進を前向きにいたしていきたい、こう考えております。ただ、現在はすでに答申を求めたわけでございます。歴代の大橋大臣、石田大臣等の時代は、まだ具体的に答申をしていない時代のまあ御発言でございますが、現に答申を求めました私といたしましては、いまちょっとその答申がどう出たかわからないのに、独得の、独自の判断を下したようなことをすることは、できるならば避けたい、こう考えておるわけでございまして、その点についてはお許しをいただきたいと思うわけでございます。
  115. 山崎昇

    ○山崎昇君 今月の十四日の当委員会で、一番いま問題になっております公務員の賃金関係についてお尋ねをしました。その後二十一日に至りまして労働組合側のいろいろな行動等がありまして、これに警察が介入をしてくる。いま世間ではかなり問題になっておるわけでありまして、逐次私は労働大臣並びに警察庁、あるいは自治省等に対して態度を聞きたいと思うのですが、その前に、労働大いに対して、二、三私は政治姿勢の問題でお聞きをしておきたいと思うのです。  最近、佐藤内閣になりましてから、各閣僚の行動についていろいろいま世間から指摘をされておる。すでに運輸大臣は首になっておる。防衛庁長官も首になるかどうかというせとぎわにある。農林大臣もまたそういう状況にある。私は、私の関連する大臣にはそういうことがないであろうと、かなり自信を持っておりましたし、また、心の中では喜んでおりました。ところが、昨日になりましてから私の宿舎に手紙がまいりまして、そうではない、あなたの関連する労働大臣もやや似たようなことをやっている、ぜひ委員会で基本的な点について聞いてもらいたい、こういう手紙かございましたから、多くのことはあなたに聞きませんが、二、三聞きたいと思うのです。  第一は、あなたは八月の一日に大臣になりまして、十三日から十五日まで、一般にいわれるお国入りというのをやっておる。これが事実かどうか、まず聞いておきたい。
  116. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 私は八月一日に就任をいたしまして、十三月に郷里に参りました。
  117. 山崎昇

    ○山崎昇君 いまあなたは確かに行ったというお返事であります。十三日から十五日まで、四日市、あるいは津に行っておるわけですが、これは労働大臣としての行政視察ですか、あるいは全くの私的な旅行ですか、どちらですか、お答えをいただきたい。国務大臣(山手滿男君) 地元市、あるいは自治会等がいろいろ私の就任を祝して祝賀会をやってくれるということでございましたので、それに臨むことも一つの目的でございましたけれども、県に参りまして、県や何かから労働行政についていろいろ要望もございました。したがって、県に行きましてそういう要望を聞き、あるいは抱負を聞きたいということで、記者会見等に臨む等の行事をいたしました。
  118. 山崎昇

    ○山崎昇君 私が端的に聞いておるのは、そうすると公務出張ですか、労働大臣としての。それとも、あなたが大臣になったからあいさつ回りという私的な旅行ですかということを聞いているのですが、どちらですか。
  119. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 両方だと思います。公務でいろいろ出張をいたしまして地方の労働実情調査をするというようなこともその目的の一つでもございまするし、また、そういう祝賀会をやるということでございまするから、それに出席するということも一つの目的でございます。
  120. 山崎昇

    ○山崎昇君 それじゃ、ほんとうはあなたの口から当日のやったことを聞けば一番いいのですが、何せ時間があまりありませんから、私がこれから述べる日程で、あなたが違うなら違うと指摘をしてほしい。  八月の十三日に、あなたは十時に四日市の駅に着かれる。十一時三十分から商工会議所の祝賀会に臨んでおる。午後一時には市民祝賀会で市民ホールに臨んでおる。四時から市長と商工会議所の会頭の合同祝賀会に臨んでおる。五時半から市内パレードをオープンカーでやっておる。午後の八町からちょうちん行列をやっておる。それにあなたは参加しておる。これはあなた公務出張ですか。
  121. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) いろいろな行事がございました。それらの行事は、いま申し上げましたように、公的なものもございましたし、そうでないものもございました。あいさつをするというような問題もあったわけでございます。
  122. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、翌十四日には、あなた朝九時から晩まで四日市の旧市内をオープンカーであなたはパレードをやる、これは何ですか。これは労働大臣として公的な出張ですか。
  123. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 十三日、十四日の行事は、私自身が指示をしてやったものではございません。これは市の連合自治会のほう、あるいは市長主催の祝賀会、あるいは商工会議所のほうで招きたいというようなことでそういう行事がきまったわけでございまして、十三日の行事、十四日の行事はおおむねそういうものが中心になっておりました。しかし、私は大臣に就任をいたしまして初めて郷里に行くわけでございまするから、市民も非常に喜んでくれておるわけでございまするから、できるだけ多くの市民にあいさつはしたい、こういうことでございます。
  124. 山崎昇

    ○山崎昇君 私の手元にいま写真か二枚送ってきているわけですが、この写真を見るというと、あなたオープンカーで盛んに手を振っておる。その前に音楽隊がついておるわけですが、これは県警の音楽隊ですか、それとも自衛隊ですか。
  125. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 全然自衛隊でも県警でもございません。そのときの祝賀会そのほかの行事は、いま申し上げましたように、市、あるいは商工会議所、あるいは四日市市の自治会の総連合会が、今度初めて郷里から閣僚か出たのであるから、祝賀の意味で、自分たちでそういういろいろな市長の歓迎の会食を持ちたい、あるいは市民ホールで歓迎会をやろうというようなことで、私どものほう、私、あるいは私の後援会は一切関係をいたしておりませんで、市、いま言いました自治会連合会の主催でそちらのほうできめた行事でございます。
  126. 山崎昇

    ○山崎昇君 私の聞いているのは、この写真に載っておる音楽隊というのは、これは何ですか。
  127. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) いや、全然その音楽隊は、したがって県の関係や何かではございません。市が主催し、市の総連合自治会が主催をしたわけでございまして、ブラスバンドや何かも市内のいろんなものが出たと私は聞いておりますが、私は市内以外のものは全然出ておらなかったと承知をいたしております。
  128. 山崎昇

    ○山崎昇君 私の聞いておるのは、よその町から来たというふうに聞いておるのじゃないのです。この写真にも写っていろこの音楽隊というのは、これは県警に所属する音楽隊なのか、あるいは自衛隊で持っておる音楽隊なのかということを聞いておるのです。
  129. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 自衛隊に所属する音楽隊ではございません。また、県警に所属する音楽隊でもございません。明確に申し上げておきます。
  130. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、あなたは十三日の五時半から市内パレード、晩はちょうちん行列、一体、一国の大臣というのは、自分の郷里に行ったらちょうちん行列や、そしてオープンカーに乗って市内を回らなければ大臣の就任あいさつというのはできないものですか。私はまことにこれは常識で考えても納得ができないのです。初め私はきのう手紙をもらったときに、佐藤内閣というのは何か申し合わせをやって、大臣が地方へ行ったらみんな何かパレードをやるのだと、こういうふうにすら疑ってみたのです。実際にどこかの店が開店をする、その際にチンドン屋を雇ってぐるぐる回っているのとあなた似ておるのじゃないですか、これは。一国の大臣ともあろうものが楽隊をつけてオープンカーに乗って、そして手を振ってにこにこしなければ大臣の就任あいさつができないものかどうか、その辺のあなたの常識について私は聞いておきたい。
  131. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 先ほど申し上げましたように、私、あるいは私の後援会はこの行事から全然はずされておりまして、これは自治会総連合会の行事、あるいは商工会議所、あるいは市が超党派的に市制をしきまして数十年も一人も閣僚が出なかったのに、今度初めて閣僚が出たのだから祝ってやろうという皆さんの御意思によって超党派的に行なわれたものでございまして、いまのブラスバンド等は、市内のバンドがいろいろございますけれども、市内のものが自発的にそういうことをした、あるいはちょうちん行列も自発的に出たというようなことでございまして、私は何もちょうちん行列をやってどうこうせいというようなことをこちらから仕組んだわけでは全然ございません。
  132. 山崎昇

    ○山崎昇君 あなたが仕組んだらたいへんなことになると思うのですよ、これは、たとい自治会が仕組もうとも、あるいはあなたの後援会が仕組もうとも、私は、大臣の常識としてこういうものに参加すべきでないという見解を持っておるからいまあなたに聞いたのです。しかし、私は、きょうは本題のほうが忙しいわけですから、あまりこの問題については深追いはしたくないのですが、もう一、二点聞いておきたい。これはあらためてまた私も実情調査をしてやりたいと思っておるのですが、あなたは八月の十五日に四日市の魚市場の落成記念に出ておるわけですね。ここで労働大臣山手滿男の名前で優秀職員の何か表彰をやられたというふうなことを私は聞いておるのですが、事実ですか。
  133. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) そういう事実はございません。確かに早朝、四日市の魚市場か落成をいたしまして私に出席をして祝辞を述べてくれよということでございました。私の懇意な近所の人等がおりまするし、私はせっかく帰省いたしましたから祝辞を述べたわけでございます。
  134. 山崎昇

    ○山崎昇君 事実でないということであれば、後ほど私はあなたにその表彰状をお見せしたいと思っておるのですが、あなたは違うと言うから、ぼくは論争をやめます。  次は、これは十月の何日というふうに、日にちまで私はまだ調べておりませんけれども、交通安全についてあなたはまた表彰をやっておる、これは事実ですか。
  135. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) いろいろいま考えてみておりまして、秘書官にも尋ねたわけでございますが、交通安全について表彰をした事実はないと記憶をいたしております。
  136. 山崎昇

    ○山崎昇君 ないと言うなら一応私は了解をしておきたいと思うのです。  そこで、私はもつともつとこの問題について大臣に聞きたいのですが、せっかく警察その他も来られておりますから、もうこの問題はあらためて委員会でやることにして、きょうやめたいと思うのですが、ただ、最後にあなたの常識で、こういうことがいいと思いますか、どうですか。
  137. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 祝費のパレードのことだろうと思いますが、私は帰省をいたしましたら市民が非常にたくさん出ておりまして、しかも、いま言いましたように、市、あるいは連合自治会等が主催をいたしまして私を非常に歓待をしてくれたわけでございます。私は、人は非常にたくさん出て、非常に喜んでくれたことも事実でございます。しかし、そういうむちゃくちゃな行事ではなかったように考えております。数は非常に、いまお話のように、市民ホールも、ホールが狭いので一ぺんに入れぬから、もう一ぺんやれというような市民の声がありまして、一回やったあと、続いて人が変わってその場でもう一ぺん入れなければ入り切れないというふうなたくさんの市民が出てまいりました。決してこちらからどうこうせよというようなことでございませんで、市民が自発的にたくさん出てまいりまして入り切れないというような状態であったことは事実でございます。
  138. 山崎昇

    ○山崎昇君 もう一点でやめますが、大臣、あなた一体楽隊をつけて、そしてあなたオープンカーに乗って、ここに写真見せてもけっこうですけれども、大きいリボンをつけて、そして朝から晩まで市内をぐるぐる回ることは、常識で考えてこれがいいですか。私は、少なくとも一国の大臣というのは、こんなことをしなければ市民にあいさつできませんか。四日市は日本でも名だたる公害の地区ですよ。公害地区の労働者は何と言っているか知っていますか。衆議院議員山手滿男は四日市の公害については何にもしなかったけれども大臣になったとたんオープンカーで楽隊つきで市内を回っているという非難ですよ。そういう労働者の声というものを、率直にあなた労働大臣ならばもっと真剣に聞くべきではないか。私はこれ以上申し上げませんが、こういうパレードのやり方というものについて、あなたが遺憾なら遺憾だった、以後一切こういうことをやらないならやらない、このことだけを私はこの委員会で明確にしてもらいたい。
  139. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 私は帰省いたしましたら、非常にたくさんの庶民と申しますか、市民が出てまいったことは事実でございます。非常に喜んでくれたことも事実でございまして、私自身、正直いいましてびっくりするくらいたくさん出て喜んでくれました。そういう時勢でございましたので、私が一カ所にしょぼっとしているようなかっこうでなしに、つぶさに市民が喜んでくれていることにこたえたほうがよろしいというようなことで、いろいろ世話をしておりました人たちから、市のほうから話もございまして、その何といいますか、喜びにこたえたことは事実でございます。しかし、それはあの面後にそういうことがございましたが、それ以後そういうことをやる意思もございませんし、全然考えておらないわけでございます。
  140. 山崎昇

    ○山崎昇君 私はあなたが率直に、やはりあの行為は大臣として、常識としてあまりいい行為ではないと、特に十四日の日ですか、朝から晩まであなたぐるぐる回って、中にはあなたにだって支持しない人だってある。それを一方的に楽団をつけて回れば、何だということになる。そういうことをやっておってあなたがさっぱり遺憾だと思っていないようでありますが、これはきょうの本題でありませんから、私はこの程度でやめて、あらためてあなたに政治家のモラルとして別な角度から聞いてみたい、こう思うのです。  そこで、せっかく警察庁やそのほかの力がおいでになりましたから、公務員給与の問題についてひとつお尋ねをしたいと思うのです。  まず第一に、警察庁の警備局長お尋ねをしたいと思うのですが、十月二十一日に、御存じのように、人事院の勧告を完全に実施をしてもらいたい、こういうことで公務員労働者が全国的に行動をとったわけでありますが、これに対して二十二日は早朝から、東京を初め、全国的に、主として教員組合でありますけれども、捜査を行なっておる、こういう状況なんですが、私ども新聞やラジオで聞く程度でありますので、現在の捜査の状況はどういうふうになっておるか、あるいは東京では何ヵ所ぐらい、地方ではどのくらい、いまの状況についてまずお聞きをしたいと思います。
  141. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) ただいま御指摘になりました日教組のいわゆる休暇闘争につきましての私どもの現在までの捜査の概略について一応申し上げます。  十月二十一日に行なわれましたいわゆる日教組の休暇闘争につきましては、私どもは地方公務員法の三十七条及び六十一条の四号違反の容疑で捜査をいたしまして、現在までに東京、岩手、佐賀、福岡の四都県におきまして、それぞれ裁判官の捜索、差し押え許可状によりまして関係の組合事務所等、合計二百九十七ヵ所を捜索し、証拠品を差し押えた次第でございます。東京関係におきましては九十四ヵ所、岩手関係におきましては九十ヵ所、佐賀県の関係では五十七ヵ所、福岡の関係では五十六ヵ所、以上が現在まで四都県におきまして捜査をいたしました現状でございます。
  142. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま刊事局長から、地方公務員法の三十七条違反容疑並びに六十一条の四号の違反内容で全国で二百九十七ヵ所の査を行なった、こういう答弁であります。  そこで、三十七条と六十一条の四号の解釈論争は、きょうは時間もありませんから避けたいと思いますが、六十一条の四号についてどういうお考えを持っておるのか、もう少しあなたの見解を聞いておきたいと思います。
  143. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 法律の条文でありますので、私からお答え申し上げます。  地方公務員法六十一条第四号には――まず六十一条でございますが、これは「左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」というのがございまして、その第四号に、「何人たるを問わず、第三十七条第一項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀」、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者」、こういう規定になっております。そういたしまして、これに規定してございます三十七条第一項と申しますのは、やはり地方公務員法三十七条にございますが、「職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」、こう書いてございまして、いま読み上げましたこの条文の前のほう、つまり前段でございます。「又、何人も、」の前のほうに書いてございますこの部分が六十一条の四号に該当するのでございます。私どもは、ここに規定してございますように、六十一条第四号の解釈は、当然三十七条第一項前段に規定する違法な行為の解釈ということになるかと思いますが、ここに書いてございますように、職員は、同盟罷業、怠業その他の争議行為をしたり、あるいは地方公共団体の機関の活動能率を低下させるような怠業的行為をしてはならない、こうございますので、一般的にいわゆる争議行為というものは、これは地方公務員法三十七条によって禁止されておる、その禁止されている行為の遂行を共謀し、あるいは遂行をそそのかしたり、あおったり、あるいはこれらの遂行、共謀ないしはあおり、そそのかすというような行為を企てた者が一切この条文に当てはまって刑罰を受けるものと、こういうふうに解釈しておるわけでございます。
  144. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、三十七条とか六十一条の四号というのは人に対して規定されているわけですね、そうでしょう。たとえばものを言ったとか、あるいは行為をやったとか、あなた方いまやっている捜査というものは、これはもう事務所軒並みに捜査をしておるわけですね。したがって、その捜査の目的というのはそうすればどうなるか、聞いておきたい。
  145. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私どもいままでの捜査の段階で明らかにいたしましたところでは、今回の十月二十一日のいわゆる休暇闘争は、これはかなり前から日教組のほうで計画をしておったようでございまして、今回の十月二十一日のあの当日の休暇闘争も、いわゆる日教組の中央から指令が出まして、これをそれぞれの県においてさらに末端まで到達せしめた、そうしてかなりの都道府県において休暇闘争に突入せしめたと、こういうことでございますので、いわゆる争議行為をあおったという罪に該当するということで、それらの証拠資料を収集いたしますために、中央からどのような形で指令が流れておるか、それがさらに末端の教職員にどういうふうに伝達されておるか、そういう資料を集める必要がございますので、それらの資料があると考えられる場所について捜索を行なったわけでございます。
  146. 山崎昇

    ○山崎昇君 いまのあなたの説明を聞いていると、労働組合の組織というものは、これは日教組の場合、単一組合ですね。いまあなたの説明の中にも、中央から指令が発せられた、だから三十七条なり、かりに六十一条の四号に違反をする容疑というならば、中央が指令を出すのだから、私は中央が調べられるならまだいい。しかし、中央から指令を受けた末端まで、学校まで捜査をするということについては行き過ぎじゃないかと私は思うのですが、どうですか。
  147. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは法律の条文を見ていただくとわかるわけでございますが、争議行為をあおるということが犯罪行為になるわけでございます。そこで、あおるということになりますと、実際その休暇闘争を行なうそういう身分と申しますか、そういう地位にある人々にあおりという行為を加えなければならぬわけでございます。したがいまして、中央でどういうことを企画し、それをどういうふうに流したかというだけでは十分でございませんて、やはり末端において、今回の事件で申しますと、十月二十一日に休暇闘争を行ないましたその端的に申しますと先生の身分のある方々、こういう方々にどういうふうにして到達しておるか、これをやはり明らかにしませんと犯罪行為の立証にはならぬのでございます。
  148. 山崎昇

    ○山崎昇君 それじゃ具体的に聞きますが、あおるという為行をいまあなた盛んに言ったのだが、中央から指令がまいりました、組合員の皆さんにお伝えをいたします。これはしかし中央からの指令だから、ぜひお守りください、こう言ったらあおることになるのですか。
  149. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) あおるという行為につきましては、すでに下級審においていろいろ定義が下されております。最近で申しますと、昨年の十二月十一日に東京高等裁判所において出されました判決がございますが、これは東京都の教職員組合が昭和三十三年に行ないました休暇闘争に関する事件の判決でございますが、これによりますと、あおるという行為は、一定の行為を行なわしめるために文書、図画、または言動等をもって他人に対してその行為を実行せしめる決意を新たに生ぜしめるか、またはすでに生じておる決意を助長するに足るような勢いのある刺激を加えること、こういう定義になってなるわけであります。したがいまして、この東京高等裁判所の判決においては言っておるのでありますが、あおる行為というのは、特段に激烈なる言動をもってあおられる者に対して慫慂行為をする必要はないので、あおる者とあおられる者との相対的な関係においてこれは考えるべきものである。したがいまして、先生おっしゃるように、組合という統制下にあるそういう人々に対して一定の行為に出しめるようにあおる、あるいは決意をしておる人々に勢いを添えるということは、特段に強い言動を用いなくても、組合の統制というものが強い拘束力を持つものであるから、ごくわずかな言動でも十分にあおりの効果を発揮するものである、私どもも同様な見解をとっておるのであります。今回のように、指令を発し、これを伝達するという行為はあおり罪に該当する、こういうふうに考えておるわけであります。
  150. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、あれですか、たとえば組合の大会で、何月何日、こういう給与問題が解決しなければこういう行動をとろうではないかと決定になりますね、意思決定になる。そうすると、それを受けて中央執行部はこの決定を実行するために下のほうに、大会はこういうことをきめました、執行部はこれを実現したいと思います。そこで、組合員の皆さん従ってください、こうなれば、これはもうあおり行為になるのですか。これもひとつ聞いておきたい。
  151. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 申し上げるまでもなく、公務員、特に地方公務員につきましては、ただいま申し上げましたように、地方公務員法第三十七条によりまして一切の争議行為が禁じられておるわけであります。したがいまして、それが組合大会という名において、いわば出席者多数の意見によってある争議行為を企てたといたしましても、それは組合の大会で決定したがゆえに合法性を獲得するものではないと存じます。した、かいまして、さようなことを決議すること自体がすでに問題であります。さらにその大会において決議いたしましたものを、これを実行しなければならないかどうかということは、これははたして規約上そのような規定があるかどうかは別といたしまして、違法行為をこれは行なうわけでありますので、これは中火の執行部といたしまして、大会の決議であるからこれを伝達するということは、これは法律上やはり許されない行為であると考えるのであります。
  152. 山崎昇

    ○山崎昇君 それじゃ組合の大会で何を一きめても、執行部は何もできなくなるじゃないですか。そうでしょう。たとえばあなたの論法でいったら、人事院勧告をやってくださいということも違法みたいになってしまいますよ、あなたの論法を拡大していったら。そうなりませんか。
  153. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私は合法的な、つまり法律のワク内にある事柄について大会できめ、あるいは中央委員会がきめ、あるいは実行する、これは何ら私どもの関与するところではございません。ただ、私が申し上げましたのは、法律において明らかに禁じられておる争議行為をやろうということをきめることそのこと自体が問題であるし、きめられたからといってこれを指令するということは、決してそれは合法化されるものではない、こういうことを申し上げたのであります。
  154. 山崎昇

    ○山崎昇君 私が最初あなたに三十七条違反容疑と六十一条の四号を聞いたら、あなたはあおり行為を取り上げたのです。だからあおるということについてどういうことですかということで具体的に聞いた。いまあなたの言っているのは、三十七条そのものに違反する決定であるから、執行部はそれを伝えたことだけであおるということになると言うんですね。そういうふうになるのでしょうか。私の言うのは、組合大会できまったことを執行部が下のほうに、機関紙でも通達でも何でもいいです。組合の大会ではこういうことがきまりました、したがって、きまったということを通知すれば、これがすでにあなたの論法でいけばあおり行為になるかどうかということをきょうは聞いておきたい。
  155. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 端的に結論を申し上げますと、それはあおり行為になるとお答えしたほうがよろしいと思います。その理由は先ほど申し上げましたとおりでありまして、大会でこういうことが決定されたから、どうぞ突入してくれというようなことになりますと、これはもうそのこと自体が先ほど申し上げましたあおりというものの定義から申しまして、そのもの全くずばりと当てはまる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  156. 山崎昇

    ○山崎昇君 それではあなたに別な角度から聞きたいのですが、最近警察のやり方というのはきわめて挑発的で、いろいろなことをやられているのですが、一、二私は具体的にあなたにお聞きをしたいと思う。これは警備局長からちょっとお答えを願いたいと思う。  教職員組合の練馬支部を捜査に行かれたときに、私のところに写真が五枚しか来ておりません、全国の状況についてはまだ取っておりませんけれども、これを見るというと、錠をかけてあるとびらは全部はずしてしまう、かぎのかかっておるロッカーのかぎはこわれておる、あるいはスパナみたいなもので穴をあけて捜査をされておる。いわばここに写真がございますけれども、警察官によってロッカー破り、金庫破り、あるいは不法侵入、こういうことが捜査という名前のもとに堂々とやられておる。そしてこの写真で見るというと、組合の関係者は一人もおらない。しかたがないから、これは校長を連れてきて、組合に関係のない非組合員を連れてきて、立ち会いと称してこういうことをやっておる。こういうことについて一体警察はどう考えられるのか、お聞きをしたい。
  157. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) ただいま御指摘になりました警察庁管内における練馬の支部における一連の事件につきましては、私どもも具体的な報告を受けておりますし、それぞれの内容を私どもも報告を検討いたしましたるところ、当時の状況から見て、それぞれの立ち会いの問題であるとか、あるいは金庫のかぎをあける問題であるとか、その他の問題につきましては、それぞれ刑事訴訟法に定められました条章に従った適法な措置であるという意味におきまして、御指摘のような、私どもが金庫破りをやるとか、あるいに違法な捜査をしたというようなことはございません。なお、こまかい点につきましては、後藤警備課長のほうからお答えをさせたいと思います。
  158. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 全般的にはただいま局長からお答え申し上げたとおりでございます。条文で申しますと、刑事訴訟法の第二百二十二条に、これは警察官の押収捜索に関する規定でございますが、これによりましてただいま問題になりました刑事訴訟法の第百十一条、これが準用されておるわけでございます。で、この刑事訴訟法第百十一条によりますと、「差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。」と、こういう規定がございますので、これに基づきまして施錠をやむを得ずはずすというようなことになったのでございます。  なお、立ち会いの問題がございましたが、立ち会いの問題につきましても、同様にして刑事訴訟法の第二百二十二条によりまして、第百十四条が準用されております。その第百十四条の第一項、第二項にそれぞれ責任者の立ち会いということが規定してございます。これに基づきまして責任者の立ち会いを必要とするのでありますが、当日はまいりましたところがだれもおらんという状況で、やむを得ず校長先生に立ち会いをしてもらいまして、そうして押収捜索を行なったのでございます。  なお、あきませんロッカー、金庫等につきましては、金庫屋さんに来てもらいましていろいろやったのでございますけれども、どうしてもうまくいかないというので、最後には、金庫につきましてはダイアルの部分を破壊して、そうして市の捜索をいたしておるのでございます。これらにつきましては、ただいま申し上げましたように、それぞれ刑事訴訟法の規定にのっとってやっている、こういう状況でございます。
  159. 山崎昇

    ○山崎昇君 私は刑事訴訟法というのはそう知らないから、あなたが盛んに適法だと言う。しかし、あなたの説明を聞いただけでも、法律にいう責任者ではないじゃないですか。学校の校長先生は組合に何も関係ないでしょう。この組合事務所の責任者ではないんですよ、あなた。なぜ組合事務所の責任者でない者を責任者として捜査をしなきゃならんか、それが第一。  それから、いまあなたに聞いたら、金庫屋を連れてきた、連れてきたけれどもあかない、あかないからこわしてもいい、こういう論理になる。どうしてその人が、たとえば責任者がいないなら責任者をさがすとか、あなた方警察ですから、さがすの商売じゃないですか、さがすなり、あるいは別の日にするなり、それだけのことがなぜできないのか。あるいは金庫がどうしてもあかない、それならばスパナか何かでこわしてもいい、この写真を見てごらんなさい、ただのこわし方じゃないですよ、これは。こういうことは警察権だから許されるということにはならない、もう少しあなた方考えてやってもらいたいと思うのです。私は。どの写真を見たって、あなたひどいじゃないですか。これもこのかぎは使えない。ちょっとやそっとのこわし方じゃないんですよ、あなた。もう一つひどいのは、見てごらんなさい、このとびらを。完全にロッカー破り、金庫破りじゃないですか。どろぼうのやることと何も差はないじゃないですか。警察の名前で、そういうことが捜査権という名前であなた方は捜査権を乱用しているんじゃないですか。なぜもっと手を尽して、私は、あなた方が権力を持っているえだから、とめようと思ってもとめられないと思う。しかし、権力を持っていれば持っているほど、なぜもっと慎重にやらないのか。きわめてこのやり方はひどいじゃないですか。もう一ぺんあなたの見解を聞いておきたいと思う。
  160. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) まず、立ち会い人のことでございますが、これは刑事訴訟法の第百十四条に規定がございます。読み上げるのを省略いたしましたが、第一項は公務所内の差し押えでございます。この場合には、「公務所内で差押状又は捜索状の執行をするときは、その長又はこれに代るべき者に通知してその処分に立ち合わせなければならない。」、第二項でございます。これは「前項の規定による場合を除いて、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内で差押状又は捜索状の執行をするときは、住居若しくは看守者又はこれらの者に代るべき者をこれに立ち会わせなければならないこれらの者を立ち会わせることができないときは、隣人又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。」こういう規定でございますので、これは先生おっしゃいましたように、組合の事務所であれば組合員に立ち会ってもらうというようなことは望ましいことだと思いますが、当日は御承知のように土曜日でございます。学校でもございますので、生徒が登校する前に捜索を完了しようというので、これは生徒に対する考え方から、できるだけ夜明けとともに早く着手して早く終わるということを考えておったために、やむを得ず校長先生に立ち会ってもらったわけでございます。  なお、先ほど第二の問題でございますが、申し落としましたが、実は練馬の警察署を通じまして、この組合の支部長に出てきてもらうようにということは連絡をいたしたのでございます。なかなか連絡がとれなかったために支部長はこの場に間に合わなかったようでございますが、そういたしましたので、かぎをあけるためにかぎ屋を頼んでこれを破壊した、こういうことでございます。これは当時の状況上それはやむを得なかったものと考えておるわけでございます。
  161. 山崎昇

    ○山崎昇君 警察から考えて一方的にやむを得なかったからやってもよろしいということにはならないです。あなたの説明を幾ら聞いても、責任者もしくはこれは準ずる者にはならないじゃないですか。どうして校長が組合事務所の管理者でも何でもないのに組合員にどうして準ずる者になりますか。あなた方警察だから何でも拡大解釈して法律をいいかげんに扱ってもいいということにはならない。どういうふうにあなたが説明しようと、この責任者でない者を立ち会わさして強制捜査したということは、私は警察の行き過ぎだと思う。なぜもっと時間をかけて――私から捜査をやれと言っておる意味じゃありませんけれども、なぜ支部長に連絡したのなら、あるいは連絡がとれなかったのならばとれるような方法を講じて、また、組合員というのは支部長だけではないのです。たくさんいるわけですね、組合員というのは。なぜ他の組合員を連れてきて捜査をしなかったのか。あなた方は学校の子供が来ない前にとか、それは警察のかってな判断ですよ。ですから、私は、この練馬に関する限りは、これは警察は行き過ぎでしたと率直にあなたあやまるべきだと思う。刑事訴訟法の百十四条の第二項等から考えたって、これは許すべからさる行為である、率直に私は警備局長あやまってもらいたい、こう思うのです。  それから、管理者のいないところにあなた方入ったのですから、これは極端に言うならば家屋侵入罪ですよ。だれもいないところへどかどか入ってきて、戸はぶっこわす、中のロッカーはこわす、金庫こはわす、器物破損じゃないですか、これは。そういうことを警察が捜査の名前にかりていいかげんなことをするということは、どうしても私は許せない。この点についても、率直に私は警察としては行き過ぎだ、そういう遺憾の意をぜひ表してもらいたい。それだけで私は許すというわけじゃありませんが、少なくとも権力を持ったものはもっと慎重にやらなければならぬ。片方は何も権力がないのです。あなた方来ればとめることもできない、へたにとめれば公務執行妨害ということで、あなた方は別な罪名を着せて逮捕する。それだけあなた方はあらゆる面について権力を持っておるわけです。そういう権力を持っておるものがさらに権力的なことをやる。これは私はどんなことがあっても、この練馬の問題については許すことができないのだが、せめてこの委員会においては、警察として行き過ぎだったと、こういう点だけはひとつ述べておいてもらいたいと、こう思うのです。どうですか。
  162. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) たいへん御趣旨に沿わない答弁をして恐縮ですが、私どもといたしましては、当時警視庁のやったことは適法であると考えております。したがって、いま御指摘になったような点について御不満の点があれば、しかるべき方法でおやりになるということが相当かと思いますので、この席上におきましては、ただいまの、捜査が違法であるとか、あるいは行き過ぎだということは、私の口から残念ながら申し上げられない、それだけ申し上げておきます。
  163. 山崎昇

    ○山崎昇君 私はきわめて残念だと思うのですよ、いまあなたが行き過ぎだと言ったら警察の面目がまるつぶれだと、いろいろ御心配だろうと思う。しかし、権力者といえども、やることが全部善ではない、時にはやはり誤りもある。そういう誤りについては、率直にこれは誤りでしたと、こういうことを述べてこそ私は権力を持っておるものが大衆から信頼される第一歩だろうと思う。これは警備局長どうですか、いま課長の説明を聞いておっても責任者と言えますか、あるいは責任者に準ずる者と言えますか、あるいは警察は十分手を尽くしてこういう捜査をやったとあなた言い切れますか。ただ法律一点ばりで、訴訟法の手続に誤りがなかった、そういうことだけで人の物をどんどんぶっこわしたり、錠をかけてある家をはずして入ってみたり、そういうことが警察として許されるかどうか。もっと私は慎重に考えて、あなたがあやまるのがつらければ、そういう点もあったというならば、今後部内で反省をするとか、せめてそれくらいな権力者は謙虚な気持ちを私はこの委員会で表明してもらいたい、こう思うのです。
  164. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 法的に申し上げますと、これは責任者にならないかというお話に対しましては、私ども責任者に十分なると思う。ということは、先ほど申しました第百十四条の第二項に規定してあるわけでございますので、これは、「これらの者を立ち会わせることができないときは、」ということで、隣人でも地方公共団体の職員でもこれはいいわけでございます。そこで、そういう場合に、私どものほうでは、できるだけその場所を使っている、この場合でございますと練馬の支部、あるいは練馬の分会の人たちのだれか責任者が立ち会うということは、これは非常に望ましいことは先ほど申し上げたとおりでございます。それで、支部長に対しましては連絡をとりまして、また、これも言い落しましたが、あとで確認しましたら、家を出たという返事があったのであります。これは朝の六時ちょっと過ぎに現場に到着しておるのでありますが、終わりましたのは、先ほど私が授業にということを申し上げたことと矛盾するようでございますが、いろいろございましたために、事務所の中に入りましたのはもう七時近く、六時五十分でございます。そうしていよいよ捜索、差し押えが終わって、目録も交付して帰りました。帰るというか、捜索、差し押えが終わったというその段階は十一時五分過ぎでございます。したがいまして、十分に手を尽くしてこの責任者の立ち会いをまあ待っておったというような状況でございますので、どうもこれはあながち当時の状況からいたしまして、これ以上の手を尽くすべきであったということは一がいに言えないと、こういうふうに思うわけでございます。
  165. 山崎昇

    ○山崎昇君 あなたの強弁もいいかげんにしていただきたいと思う。いまの説明によるというと、捜査が終わったのが十一時じゃないですか。責任者を立ち会わせてやったのは七時前じゃないですか。だから責任者を組合関係者にするということには何の手段も尽くしていないじゃないですか。あなたは、警察はずいぶん手段を尽くしたと言うが、いまの説明を聞くと尽くしていない。かりに十一時に支部長が来たって、そのときにはすでにあなた方は戸をけ破って、ロッカーを破り、金庫を破って捜査を完了したあとじゃないですか。私の言っているのは、捜査の立ち会い人についてあなたに質問しているのです。立ち会い人は責任者だとあなたが言うから、責任者じゃないじゃないか。しかし、警察としては責任者と認定すると、こう言う。それならば、なぜもっと組合関係者に手段を尽くさなかったかと言うと、時間は十分ございましたと言う。聞いてみると十一時と言う、終わったのが。それをあなた方は捜査を終わったのは十一時であって、責任者が来るのを待っておったのは十一時じゃないのじゃないですか。何も八方手を尽くしていない、警察として何の手段も尽くしていない。行ってすぐだれもいないから校長を呼んで来ていきなりやってしまった、これが真相じゃないですか。だから私の言っているのは、もっと権力者というのは慎重に事を運びなさい、もっと組合員が多数おるのだから、そういう組合員をさがすなり手段を尽くして、それでもどうしてもというならば、あるいは私はあなたの言うことを肯定するかもしれない。しかし、子供がいないときにやるというのなら午後でもいいじゃないですか。建物がなくなるわけじゃない。戸にかぎがかかっているから、中のものがどこかにいくわけはない。どこかへ足がついて歩くわけはない。人間ならあなた方の言う証拠隠滅もあるかもしれない。人がいない、子供に対する影響だけであなた方判断するというなら、なぜ午後にできないか。それならばなぜ日曜日にできないか、現実に福岡の場合には日曜日にやっているじゃないですか。何も尽くすべき手段を尽くさずしてこういう乱暴なことをやって、ただ法律ではこうでございますという言い分には私はどうしても納得できない。だから、どう強弁しようとも、この練馬のやり方は、私はやっぱり警察の行き過ぎだと思うのです。尽くすべき手段を尽くしていない。そういう意味で、この委員会で、せめてひとつ警察ではそういう点はやはり落ち度があったならあったと率直に認めたらいいじゃないかということをあなた方に言っている。もう一度警備局長の見解を私は聞いておきたい。
  166. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私先ほど申し上げました中で、やや混乱いたしまして、前に申し上げたことがやや不正確でございますので、改めて申し上げます。  十一時五分に捜索が終わったということを申し上げたのはそのとおりでございます。捜索を開始いたしましたのは、先生いまおっしゃいましたように、現場に到着いたしまして呼んだけれども返事がないということで、校長先生に立ち会ってもらいまして、そうしてかぎをこじあけて中に入った、これが六時五十分ごろでございます。その段階において、校長先生に立ち会ってもらう前に、組合の責任者に立ち会ってもらうべきじゃないか、こういうお話でありますが、私どももそうすれば一番よかったということは私ども考えます。しかしながら、何かこれが非常に違法であるというようなお話でございますので、これは先ほどから申し上げておりますように、百十四条の規定によりまして違法ではない、こういうことを申し上げておるのでございます。
  167. 山崎昇

    ○山崎昇君 だから、法律論争を私は最後までやるつもりはない。というのは、それは私のほうは、あなたの説明を聞いただけでも、百十四条の第二項にも当たらないと私は思うのだが、おやりになったあなたのほうでは、これはりっぱな手続である、こう言うのです。だから法律論争をあらためてやるにしても、いまあなたのその他の説明を聞くというと、六時ごろ現地に到着をして、学校長呼んできて、六時五十分に錠をこじあけて中へ入って、捜索が終わったのが十一時である、こう言うのですね。この間わずか四、五十分の話です。だから私どもの見解を言えば、責任者ではない者をあなた方責任者と称して、ドアをこわす、あるいはロッカーをこわす、あるいは金庫を破る、こういうことをやっているのだが、権力者というのはなぜもっと慎重な配慮をしなかったかという質問をしたら、あなたはいまそういう答弁をした、そうでしょう。だから私は、何と言おうとも、あなたのほうは法律的に違法ではないと言う、私は違法だと思う、それはいまここで決着がつく問題ではありませんから、これ以上申し上げませんが、あなた方のやり方については、何としてもこれは適当な方法ではない。よく役人の使うことばでありますが、違法ではないが適当でなかった、こういうあなた方の表現を使えば私はそうなるんじゃないか。だから警察としては、この練馬のやり方というのは、何としてもあまりいい方法ではない、むしろ警察としては少し行き過ぎたやり方であった、これくらいの意思表明をしてもらいたいということを先ほど来私は言っているのです。どうですか、警備局長
  168. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) 先ほどからその御指摘がたいへん極端なように私どもは承っている。非常にたいへん警察が権力を乱用したり、あるいは違法なことをやったというふうに御指摘のようですが、それは先ほど私も御説明いたしましたし、後藤君からも御説明したように、適法な条章に従ってやっている。ただ、しかし、当時の状況から見てそれ以外の方法がなかったかといえば、それは当時の状況としていろいろな手は尽くした。あなたは手を尽くさなかった、こう言われる。その点については、その当時の状況から見て手を尽したか手を尽くさなかったという点については、これまた論争の問題であります。したがいまして、適当であるか不適当であるかという点についても、これまた私からここで申すことはたいへん不本意でございますけれども、そういう点については多少の見解の相違があるわけであります。もちろん私どもは、法律に適応しているからといって、むやみやたらに権限を行使するということを考えておるわけではございません。もちろんその状況に合った方法で最も妥当な方法を考えるというのは、これはもう当然の一般原則であります。したがいまして、当時の状況から見て、あれが行き過ぎでたいへん申しわけないというようなことは、私は決してこの席上では申し上げられないということを申し上げます。
  169. 山崎昇

    ○山崎昇君 局長の気持ちの中には、行き過ぎたとまでは思わぬ、しかし、あまりいい方法ではなかった、もっと慎重に配慮すればよかった、こういう考えがあっていまのような答弁になっているのか、そこらのことをもう一ぺん聞いておきます。
  170. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) 私どもは、当時の方法としては、警視庁のとった措置を合法であり、妥当であるという見解の上に立ってそう申し上げておるわけでございます。
  171. 山崎昇

    ○山崎昇君 この問題でほんとうはずっとやればいいのですけれども、もう時間がありませんから、もう一、二具体的な事実でお聞きをしたいと思う。これは私が社会党を代表して警備局長にお会いしたときにも警備局長に申し上げたことでありますから、あなた御存じだと思いますが、一つは、二十一日の朝、北海道庁のまわりで一人逮捕されているわけです。この状況を私ども聞いてみるというと、携帯マイクを持って連絡員として当たっておったら、三十七条違反だというのでいきなりつかまった。しかし、警察も、どうもぐあい悪いと見えまして、あるいは、また、その他の理由があったのか知りませんが、一昨日の晩に釈放されておる。マイクを持ってたくさんの組合員が集まっておるから、そのあたりに幹部がたくさんおって、何もしないのに連絡員であるということ、これが三十七条違反でつかまる、こういうことが許されるのかどうか、まずお聞きをしたい。  もう一つは、これも水かけ論に終わるかもしれませんが、二十一日の前に福岡県庁の中には私服の警官がたくさん入って、そして県庁の組合員をつかまえては、二十一日はやめたほうがいいんじゃないですか、こういうことをかなり言って歩いていると私ども報告を受けているわけですが、こういう点は私は警察の行き過ぎではないか、こう思うんですが、どうですか。
  172. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) ただいま御指摘の北海道庁の問題でございますが、これはただいま御指摘になったような事実と私どもの受けている報告の事実とはいささか相違をいたしておるようでございます。私どもが報告を受けております事実は、北海道庁の正面玄関前に約八十人がピケを張りまして職員の登庁を阻止したということであります。で、九時十分ごろ登庁を阻止されておりました職員が約四百五十人おりまして、その四百五十人が管理職員の誘導によりまして、ピケを押し分けて入庁しましたところ、ただいま御指摘の中央執行委員一人がその前面に立ちふさがって、ストに参加をしてくださいというようなことで、その登庁を阻止をしたということでございます。したがいまして、地方公務員法の三十七条、六十一条の違反で現行犯として逮捕したということで、ただいま御指摘のような事実とは違いまして、その現場において登庁を阻止することについて積極的な行為をしたというふうに私ども報告を受けているわけでございます。あとの釈放されました関係につきましては課長から報告させますが、なお、福岡県庁におきますところの問題につきましては、私ども、先般私のところにおいでになったときに御指摘になりましたので、さっそく調べてみましたが、そういうようなことはないということでございますので、あらためてここで訂正をいたしておきます。
  173. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) いまの事件は朝の九時十五分ごろの事件でございまして、これは現行犯で逮捕いたしましたが、翌日の六時三十分に釈放いたしております。これは検察庁には、したがいまして、これは書類だけの送検になるだろうと思っております。
  174. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連して一つ。  私は警備局長にこの際一言お尋ねをしておきたいと思うのです。デモ行為をやるときに警察が動員されて、よくデモ隊と警察との衝突が行なわれるというかっこうになるわけですが、そのときに警察は警棒を振って頭からなぐりつけるというか、またはデモ隊と衝突するということが各所に起きている。で、これはどういう基準で警察がデモ隊をああいうぐあいに圧迫するというか、制圧するというか、ああいうときにどういう基準で警察隊とデモ隊との関係で動かしているか、このことをちょっと聞いておきたい。
  175. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) 私どもはデモ隊に対して、ただいま御指摘のような警棒を使うということはほとんどないのでございます。したがいまして、最近行なわれておりますデモにつきましては、いわゆる交通整理を主にしたやり方でデモの誘導に当たるというのがむしろ方針であります。ただ、最近、御承知のとおり、学生の一部のものについて非常に激しい行動を繰り返すものがありますので、その際には極力学生の行動を規制する。その際にも警棒を使用するということはほとんど絶無であります。ただ、しかし、警棒の使用の法的な条件が備わらなければこれを使用しないわけでございます。武器として使用する場合、用具として使用する場合、二の種類があるわけでございます。最近は、たとえば横須賀の原潜の際にも、あれだけ投石が激しい中で警棒を抜かないで終始をしたという実例もございます。御指摘のような例は、先般京都の学生デモに対して一部の警察官において警棒を用具として使用したということは私ども報告を受けておりますが、最近はそういう警棒を使用するというようなことは、通常のデモ隊に対しては絶無でございますし、そういうことについては私ども何ら指示をいたしておりません。
  176. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、具体的に私は京都のデモを見ていたわけですが、私はいま警備局長の言われたように、道路往来について、スムーズな道路交通のためにやるのを中心にデモ隊を誘導する、そういう指導をしていると、こうおっしゃる。しかし、先日の京都のを私は見ておって、警備局長考え方からいくと、少し行き過ぎではないかという私は感じを持っています。警棒を振り上げて、ざっと波のように押し寄せてきて入っていく、ああいうことが警察庁の方針なのかどうか。ああいうことが方針であるとすれば、私はやはり問題があるという感じを受けます。ですから、私は、デモ隊員というものは、それは抗議をやり、デモンストレーションをやるのですから、意思をより発揚と申しましょうか、伝えるためにいろいろの大かきい声を出したりしてやると思うのですが、デモ隊というのは、警備局長御存じのように、何か棒切れを持っていたり武器を持っていたり、デモ隊といううのはおそらくせいぜい持って旗ざおくらいと思います。あのカシの棒でだっとやられたらデモ隊はけが人が出るけれども、出るのはあたりまえです。そう思います。だから、そういうことをいまここで京都のことを議論をしても、実態の調査というものを十分にしてもらわなければいかぬけれども、私は京都ばかりではなしに、各地でそういうことがあるのかどうか、あるとしたらたいへんな問題だと私は思う。だからそういういま言う行き過ぎがあるかどうか、あなたの見解、デモ隊を守っていくというか、交通往来の妨害するものを排除するということで警察が出て、それで配置につくというのと、それから、衝突というのがいろいろと衝突の形があるでしょうけれども、たくさんのけが人が出るというのは非常に残念なことだと思うのですが、そこらあたりがどうも私は行き過ぎていやせぬかと、京都のこの間のを見てそういう感じを受けたわけです。ですから、私はぜひひとつそういう調査をしていただいて、いまの議論がありましたが、いずれここでやはりもう少しつまびらかにしないといろいろの問題が起こる。ですから、ひとつ調査をして報告書を出していただきたい。報告書を出していただいて、今後ああいうことが起きないように、これは警察から言えば双方に問題があるとおっしゃるかわかりませんけれども、双方に問題があるにしても、けが人が出なくて済めば一番いいことなんですから、その点は十分にやっぱり配慮してもらわなければいかぬのじゃないか。どういう状態であったかということをひとつ調査をしてもらいたい。これだけお願いしておきますが、見解があれば承りたい。
  177. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) ただいま御指摘のデモ隊というものの中で、私ども、たとえば先般の京都の例をとって簡単に申し上げますと、いわゆる一般労組、大衆の行なうデモ、あるいは日共系の学生の行なうデモというものについては、御承知のとおり、整然と行なわれまして、何らトラブルがないというのが最近の状況でございます。したがいまして、私どもは一般の労組、あるいは大衆団体のデモに対しては、私どもはいま申し上げたように、何らこれに対して特別の措置をとるということでなくて、むしろこれを交通の整理をする、あるいは危害の防止をするという点に重点を置いてやっております。したがって、京都の場合も、むしろこの一般労組、大衆団体のほうのデモをすみやかに終了をするような方法をとっているわけであります。ただ、問題は、いつも集会なり、あるいは集団示威運動の中に学生が入ってくるわけでありますが、この学生について主催者側に私ども申し入れることは、学生についても十分統制をとってもらいたいということを申し上げるわけでありますが、集団示威運動なり集会を行なう事前の交渉におきましては、確かに私どもは統制をとりましょうと、しかし、学生がどうしても統制をとれないときにおきましては、警察の部隊の統制でけっこうですといういつもお話し合いをしているわけであります。したがって、先般の京都の場合におきましても、いわゆる反代々木系の学生と称せられる団体はデモの最後尾についたわけでありまして、この最後尾についたいわゆるデモ隊が荒れるというのが普通の状況であります。これに対しても、極力私どもは、これを並進規制をするとか、あるいはその他の方法でなるべく目的地まで持っていって円満に解散をさせるということを主眼にしておりますが、最近は御承知のとおり、投石をするという事例が非常に多くなっておるわけであります。したがって、その投石のために、警察官はもちろんのこと、状況によってはその付近にいる一般の者も負傷をするというような例が、現に横須賀の場合もございましたし、最近はいろいろなところであるわけであります。そういう点について、われわれはその学生の一部のものに対してはやはり強い規制をやらなければならない、そしてこれを統制しなけばならない、正常な行進、あるいは正常な解散をさせなければならない。そこで、私ども、あくまでも警棒を使うということは、これは最後の手段であって、その条件に当てはまらなければ警棒を使うということはございません。最近の私どものデモに対する方針は、双方に負傷者を出してはならないということが一つの大きな方針でありまして、ましてや警棒をふるう、あるいは警棒を使うということは、万やむを得ざる以外にはほとんど考慮しておりませんし、全く警棒を使うということは考慮していないというのが状況であります。したがいまして、先般の京都におきます一部の警察官がやむを得ず使用したという状況につきましては、ただいま御指摘のように、なお状況を明らかにして、私どもの見解を明らかにいたしたいと思っておりますが、当時の状況を私ども報告を聞いている範囲におきましては、投石が非常に多かった、その投石をいかにして離脱をするかという点について、防護用具として警棒を使ったと、その警棒を使って、そしてそれをおさめるための時間的な余裕がなくて、むしろ前進をかけられたというように聞いておりますが、なおいろいろな点について、詳細な点については調査をいたしておりますので、御要望のようなことの御趣旨に沿いたいと、こういうふうに考えておりますが、重ねて、私どもは、大衆行動について警棒を使用するというようなことは、方針としては全くきめておりませんので、この点は御了承を願いたいと思うのであります。
  178. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その京都都のデモをぼくは最後まで見ておったのだけれども、特に私は、先ほどこの委員会でも頭部外傷ということについてのいろいろ後遺症の問題について追及をしたところです。ところが、あの警棒で、無防備な、あそこではデモが済んですわっている人、市民までかかって頭を警棒でなぐっている。ぼくはそのときはたいしたあれではないかもしれないけれども、御存じのように、頭をなぐるということは、あとからの後遺症が残ることがだいぶ大きな問題があると思うのです。こういうようなことが行なわれているということは、私は非常にあれを見て、あまりにも無防備な市民に対して、しかも、そのいま言うておられる日共なんとかいう学生のデモ隊でなくして、見ている人までに、休んでいる人までにそういうようなことが行なわれているというようなことも聞いているわけでありますが、私は、頭なんかを見さかいなしにあの警棒でなぐり飛ばすということは、非常に大きな後遺症を残す大問題だと思う。それで、今度の問題につきまして、ひとつけが人がどういうふうであったかという詳しいデータをいただきたいと思います。
  179. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) いまの後遺症のデータはございませんけれども……。
  180. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 けが人のデータ。
  181. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) けが人のデータ、よろしいでしょうか。
  182. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) 私のほうでできるだけ調べまして、どういう状況であったかというのを病院その他について調べまして、私のほうのできる範囲の調査をいたしますけれども、私どもは、警棒で頭をなぐるとか、そういうような指導はいたしているわけでございませんで、そういう点については御了解を願いたいと思います。なお、当時の状況が、いま大橋委員から御指摘のように、先生はそこで現認をされておったのですかどうですか、その点だけはっきりとお伺いしておきたいのです。
  183. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私はそこで現認していました。そうして休んでいるところまで非常に飛び込んで行って、そうしてこけているところを踏まれたり頭をなぐられたという人があるわけです。私はそれを見たのですからして、やはり特にひとつそういうことを調べて、はっきりと一ぺんデータを出してほしいと思います。
  184. 高橋幹夫

    説明員(高橋幹夫君) 御指摘、御要望の資料は提出をいたしますが、ただ、私どもこの機会に申し上げておきたいことは、決してその警棒の使用が適当であるとか、あるいは適法であるということを強弁する意味ではございませんが、最近学生の行動というものは、決していろいろな抗議行動を正当化するゆえんの何ものでもない。そういう意味におきまして、最近の学生の行動につきましては、私どもいろいろな角度から考えているわけでありまして、いままでにおいても、警察官の負傷した者が、現に横須賀の原潜の場合においても二百数十名いるわけであります。二百数十名の警察官が、これがやられたから警察官何をやってもいいということを私は申し上げているわけではございませんが、私どもがここで申し上げたいことは、そういう警察官がもしかりに挑発されたとするならば、これは警察官として考えなければならないことでございますけれども、そういう状況を現出するということについて、いわゆるデモの主催者であるところの団体側の主催者、責任片というものが、いま少し学生に対する統制というものについて責任ある行動をとっていただきたいというのが私ども警察側から申し上げたい非常な念願でございます。残念ながら、事前の交渉においては責任をとると言いながらも、警備現場においては何らの措置をとっていただけない。したがって、どうしてもこの学生に対しては警察官が真正面に立たなければならないという意味で、最終的には、そこで若い者同士のことでございますので、いろいろなトラブルが起こる、警備現場におけるところのまぎれが生ずる。しかも、そこに善良なる市民が、いわゆる時にはやじ馬みたいなかっこうでいる場合もございますので、そういう点について不測の傷害を受けるということもありますので、この点につきましては、私どもは事実を明らかにすることについてはやぶさかでございませんが、いたずらに警察官のみが非難をされるということについては、私どももいろいろな点について警察を指導しているという意味において、特に若い機動隊員の指導をしているという意味におきまして、この点についてはとくと諸先生方の御了解を願いたい、こういうふうに考えるのであります。
  185. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) いまおっしゃる趣旨もわかりましたが、いまの資料要求は、たといどなたの思想がどういうことであっても、人の命には変わりはございませんので、けがをなさった方々のありのままの御報告の資料をお願いしたいと、こういうことでございますので、ひとつよろしくお願い申し上げます。
  186. 山崎昇

    ○山崎昇君 時間がずいぶんたって、ほんとうは私、きょうは今度の公務員賃金を何にも聞かないうちに終わってしまって、たいへん残念に思っているのですが、いま警備局長からいろいろお話がございました。私もたびたびデモには出ます。しかし、局長によくお考え願っておきたいのはあの十八世紀の十字軍まがいのような装備をして出てくるのが警察なんですね。そして、ただ学生が来たというだけで、もう双方からはさんで異常な雰囲気をつくる。それから、いま局長が、若い者同士だからいろいろ現地でトラブルが起こると言うけれども、警察官の場合は指揮者がおって、かかれと言うのですな。あの白い指揮棒を持って、たとえば警部ですか警部補ですかわかりませんが、かかれと言う。来ている車は全部装甲車、持っているものは無線で連絡をとる。そして私は何回か現認をしておるけれども、隊列の中に入ってきて、この者を取れ、そしてうしろにいる者がかかれと号令をかける、そこで機動隊が来る、こういうことになっておる。何にもしないのに現地の若い者同士でトラブルを起こしたというような状況ではない。これはあなたも何回かひとつデモに出てみて、どっちがどういう気分になってやっているのか、私は見てもらいたいことをつけ加えておいて、本題の二、三の公務員賃金の問題を聞いて私の質問を終わりたいと思います。  そこで、労働大臣にお聞きをします。それから自治省にもお聞きをしますが、私は、この人事院勧告が出ましてから各新聞社の社説というのをずっと見ているわけです。いずれの新聞社の社説を見ても指摘していることは、大体四つほど共通しているわけです。その一つは、政府が、十八回も人事院勧告が出ているのに、一回も満足に実施したことがないということ。二つ目は、人事院というのは、公務員労働者のスト権やその他の権利を制限をして、その代償機関として存在しているのだが、その機能が政府によって無視をされているということ。三つ目は、だんだん公務員が政府地方公共団体の長に対して不信の念がつのってきているということ。四つ目には、ドライヤー報告等が出ているのだが、労働問題に関する国際的な常識というものをほとんど政府が守ろうとしない、こういう態度が今度のような二十一日の行動に立ち上がらせておるのだということを指摘をしている。ただし、私はいいことばかり申し上げませんが、そうだからといって、組合は実定法を破っちゃいかぬということは必ずついております。しかし、前提になっておるのは、政府のこの人事院勧告に対する態度が一ぺんも守られないというところにあるということを指摘しているわけです。私はいまここにあるのは全部新聞社の社説であります。そのうちの代表的な社説と私が思う北海道新聞の社説の一節をあなたに私は読んでみたいと思う。「人事院発足いらいの現実は、過去十九回におよぶ勧告が完全実施された例は一度も見当らないのである。これほど「完全かつじん速に実行」の国際常識を無視しつづけた国もまたとあるまい。労働基本権を制限されただけでなく、その代償措置までカラ手形に終わってしまう以上、二重の権利侵害に対する抗議ストの波が高まるのは当然の帰結である。」、こういうのが要約して言うと新聞の社説であります。特に労働組合を扱う労働大臣として、あるいは給与を審議された小委員の一人である労働大臣として、こういう世論である新聞の社説というものをどうあなたは理解をするのか。ただ法律で取り締まればいい、ただ労働組合のやり方を何か制限をする、いわゆるそういうことだけでは私は片づくものではないと思うのだが、労働大臣の見解を聞いておきたい。
  187. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 公務員の給与の問題は、直接には私の担当ではございませんで、給与担当大臣がおるのでございますが、私も労働大臣でございますから、非常に関心を持っております。公務員は国民の全体の奉仕者でございまするし、公共の福祉のために勤務をする人でございまして、そういう点からいろいろ公務員諸君には各省大臣が注意もいたしたところでございまするが、こういう公務員が労働基本権につきまして一般の労働者と別個の特別な取り扱いを受けることになることは、私はそういうたてまえ上やむを得ないことであろうと思います。今度の人事院勧告につきましては、私は労働大臣といたしましても、できるだけのことはいたしたいと思って、いろいろ協議もいたしましたけれども、できるならば、労働基本権を制約をいたしておりまするたてまえ上、第三の機関である人事院勧告が行なわれておる事態にもかんがみまして、政府ができるだけ努力をしようということで、私も関心を持って臨んだわけでございますが、御承知のように、いろいろ経済的と申しますか、財政的な観点等もございまして、さらにこれを改善をして、労働者諸君の要望に沿い得なかったことはたいへん残念に思っております。そういうことでございまして、私は、過般来、政府部内におきましては、できるならば年々こういうことを繰り返しているのはたいへん遺憾なことでございまするから、できるだけ早い機会にしかるべき時期を選んで、こういう仕組みを改めてまいるように制度としてよく検討をしようじゃないかということを申しておる次第でございまして、その点たいへん残念ではございましたけれども事情がそういうことであったことを御了承をいただきたい。
  188. 山崎昇

    ○山崎昇君 あのね、大臣、私は了承をするためにあなたの答弁を求めたのではない。この問題が発生してから、世論の代表と称される各新聞社の社説を私はずっと見ているのだが、共通して言えることはこれこれのことです。政府に一片の誠意もないから労働者はこうなんです。こういうことを先ほど私は四点にまとめてあなたに指摘をした。だから、政府の閣僚の一人である労働大臣、そうして給与を担当した小委員の一人てある労働大臣、あるいは、また、労働組合全般を行政面としてやる労働大臣として、こういう新聞の社説というものをあなたはどう理解をするか。こういう世論、こういうものに対して、あなたは、やはり私も同じ気持です。確かに政府のやったことはまずかった、しかし、あなたがいま最後に言われたように、まずいから今後はこういう勧告制度についても検討したいのだ、これは将来の問題なんです。いま起きている問題については、あげて世論はけしからんということを言っている。これは労働組合ばかりではたく、世論の代表である新聞が特に社説で述べておるところに、私は重要性がある。こう思うから、あなたに、政府としてそれはそのとおりだ、まことに遺憾でございましたと言うなら言うように、あなたの見解を聞きたいと、こういうのです。
  189. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 人事院の給与勧告に関しましては、できるだけ人事院の勧告の線に沿って政府の側においても善処したい、こういうことが私たちの気持ちでございました。しかし、いろいろ議論がございまして、現在の経済情勢、あるいは財政の実情、公債なども相当発行をいたしておりまして、財源が非常に窮屈であるというような議論が非常に出まして、私どもできるならば人事院勧告を尊重をしたいという考え方には至らなかったわけでございます。私はそういう事態になったことはたいへん遺憾といいますか、残念に思っておる次第でございまして、今後の事態につきましては、いま申し上げましたように、この制度そのものについていろいろ改善をすべきである、こういうことをいま申しておるところでございます。
  190. 山崎昇

    ○山崎昇君 ほんとうは時間があればいま大臣の言う財源の問題をやりたいんですが、時間がありませんから、労働大臣にもう一点聞きたいんです。それは林野、アルコール、印刷、造幣ですね、これはまあ国家公務員なんです。しかし、これは労働組合が別な法律で運営されておりますから、したがって、五現業という形で、春闘という形の戦いで、いずれも仲裁裁定が出て四月から給与が改定をされておる。同じ公務員であって、片一方は現業だから四月から、片一方は現業でないから九月から給与が改定をされる。私はきわめて不満だし、給与政策からいってもおかしいのではないか。もっと言えば、国家公務員法の二十七条に違反をするんじゃないか、平等取り扱いの原則に違反をするんじゃないか、こう思うのです。なぜ現業なら四月から給与が改定になる、なぜ現業でない一般の職員は九月からでなきゃ改定にならないのか。あなたは先ほど未財源だとかいろいろ言う。現実に職員に差別しているのは政府じゃないですか。この点について給与の小委員である労働大臣の見解をお聞きしたい。
  191. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 五現業につきましていまお話がございましたように処遇をしておることは事実でございます。その点につきましては、公務員と取り扱いに差別があるじゃないかということでございますが、事実五現業の諸君と公務員とは差があるわけでございます。私は、まあそういうことについてどうしてこれは差があるかというようなお話がございますのですが、どうしてというわけではなくて、全く先ほど来申し上げておりますように、財政上、経済上の理由、こういうことになりますと、それを非常に大きくふくらましますと、地方公務員などにもいろいろな影響がある、財政的にも十分な状態ではないので、財政的に非常に問題があるというような論議が閣内で勝ちを制しまして、私が先ほど来申し上げておりまするように、公務員についてはああいう処遇をすることにきまった次第でございます。
  192. 山崎昇

    ○山崎昇君 大臣の答弁は私の質問に対する答弁にはならないわけです。ただできなかった理由だけあれこれあれこれ述べて、私の聞いているのはそうじゃない。同じ公務員であって、現業だけはやって、非現業はやってたいがどうだということを聞いている。なぜ同じ国家公務員なのにそう差別をしなきゃならぬか、どうしても私どもは理屈がわからない。なお、あなたは財源財源と言うが、衆議院の大蔵委員会では、大蔵大臣は財源と言ってない。財源の問題ではございませんということを青っている。財政政策だと言っている。だから労働大臣の言っている理由と大蔵大臣の言っている理由は違う。ほんとうはこれももっと詰めてあなたにいろいろ質問しなきゃならぬけれども、時間がない。いずれにしても、時間がありませんという紙きればっかりくるから、私も急いではしょって実はまあ苦しいわけですが、いずれにしても、そういう実態にあるということを、これは大臣承知でしょうが、もっともっと慎重にひとつ考えて、私はそういう差別のないようにしてもらいたいということを申し上げて終わりたいと思います。  そこで、最後に、自治省がせっかくおいでになりましたから、一言お聞きをします。この質問でやめますが、政府が十四日に開議決定をやって、そして二十一日に地方公務員も全国的な行動があったわけですが、この事態を私が見るというと、政府に対する不信でもう一ぱい、国家公務員も地方公務員も、あるいは教員も、俗に言う公務員共闘会議を結集する百六十万の公務員というのは、もう政府に対して不信感で一ぱい、こう思うのです。そこで、自治体をあずかる自治省として、各自治体の長がこれからいろいろ政府がつくる法律案その他で仕事をするわけですけれども、これだけ不満が高じてこれから一体円滑な行政が運営できると思うのかどうか。するとすれば、あなた方はどういう努力をしてこの職員の不満というものをなくするようなことをするのか、ひとつ自治省の行政局長に聞いておきたい。
  193. 長野士郎

    説明員(長野士郎君) 今回の給与改定に関連をいたしましてのお尋ねでございますが、地方公共団体の職員にとりましても、給与改定につきましては、いままでのたてまえが国家公務員の給与に準じて考えるということになっておることは御承知のとおりでございます。したがいまして、人事院の勧告を扱いますところの政府考え方というものがきまりますことが、地方公務員にとりましても、地方公務員の今後の給与の改定の動向というものを決する一番大きな要因であることも、これもお説のとおりでございます。そういうことに対しまして地方公共団体の中に非常に不満が満ち満ちておるというお話でございますが、去る二十一日のいわゆる統一行動というものの状況を見ますと、地方団体の中の相当数の地方公共団体関係の職員団体におきまして、勤務時間内に職場大会を実施したりいろいろいたした例がもちろんあるわけでございます。しかし、状況から考えまして、それが今後の行政の取り扱いに非常に支障を来たすというふうなことに相なりはしないかという御懸念でございますけれども、給与改定の問題は給与改定の問題として、これはいろいろな状況、あるいは事由の中でこういう決定というものが行なわれたものであろうと思います。でき得れば、先ほどのお話のように、人事院の勧告が完全に実施されることがあれば一番望ましい状態であったかもしれませんが、いろいろな状況からそういうことが行なわれなかったということがかりに決定的であるといたしましても、そのことによって直ちに行政の執行に対しまして不執行の状態が生ずる、あるいはそれによって運営が十分でなくなるというようなことは、これは絶対に避けなければならないところだと思うのでございます。この問題は、やはり分けて考えまして、そしてそれぞれそういう遺憾なことが起こらないように努力をしてもらわなければならない。このことにつきましては、地方公共団体の当局、あるいは職員、職員団体におきましても十分心得ていることだと考えております。
  194. 山崎昇

    ○山崎昇君 もう時間がありませんから、もう一点重ねて自治省に申し上げておきたいと思うのだが、私は、やはり先ほど申し上げたように、給与の問題はこじれて、かなり政府に対する職員側の不満がある、これは中央も地方も同じだと思うのです。そういうものを何とか超越をして行政の円滑な運営をはかっていくために、第一に労働組合の人格というものをあなた方十分に尊重して、ひとつ話し合いをしてものごとを進めていく。何かあなた方に言えば、これは法律違反じゃないかなということで、法律一点ばりで何でもかんでも労働組合の運営がしにくいようなしにくいような指導をしているようにも私は受け取れるわけです。そういうことのないようにしてこの円滑な行政の運営というものをはかるように心がけてもらいたい。このことを特に、これは自治省ばかりでなしに、労働大臣のほうに私の意見として申し上げて、この質問を終わりたいと思うのです。  続いて、日産・プリンスの問題で一、二点質問をしておきたいと思います。実は日産とプリンスが企業合同をやって、それに伴いまして、従来こういう労働組合のあり方をめぐっていろんなトラブルが起きていることは労働大臣御存じのとおりだと思うのです。そこで、七月二十一日には東京都の労働委員会から、団体交渉を拒否したりしてはいけない、団体交渉に応じなさい、こういう命令が出る。あるいは七月二十七日には、職制等によって支配介入してはいけない、ことばをかえて言えば、不当労働行為はやめなさい、こういう命令等が出ている。あるいは団体交渉の問題については、さらに東京地裁から仮処分の決定がなされておる。あるいは法的な手段を講じて円滑な運営をはかろうとするのですが、現実はなかなかそうはなっていない。私の手元にきた日産・プリンスの労働者の方々の話を聞いてみると、何か第一組合の人というのですか、これはきわめて少ないために、昼めしを食おうと思うと、四、五十人で囲まれてつるし上げを食って昼めしも食えない、帰りに帰ろうと思えば、また四、五十人で来て二、三時間いろいろ話をされる。あるいは昔の全金プリンス自工支部という支部は工場の外に出されてしまって、自分の組合員と会うこともできない、そういう状態になっておって、いまさらあらためて東京都労働委員会に提訴している、あるいは人権擁護協会にも提訴しているとも私ども聞いているのです。そこで、私は労働省でそういう事実を知っているのかどうか。もし知っていないとすれば、早急にひとつ調査をして、次の委員会にその結果を報告願いたい、こう思うのですが、知っておったら状況をお知らせ願いたい、こう思うのです。
  195. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 本件につきましては、本質的には企業の合併ということで問題が起きたわけでございます。上部団体が異なるということで、二つの労働組合が組織が競合をするということで紛争を起こしたわけでございまして、たいへん残念に思うわけでございます。これらの問題につきましては、すでに労働委員会、あるいは裁判所等において争われておる関係もございまするし、労働省におきましても当然いろんなことに関心を持って事情を聞いております。その内容につきましては、いろいろこまかいこともございまするから、事務当局のほうから御説明をさすことにいたしたいと思います。
  196. 三治重信

    説明員(三治重信君) いま先生がおっしゃられた具体的なことまでこまかいことは調査をしておりませんので、追って、いま先生がおっしゃったような具体的な問題についてはまたいずれ調査をいたしまして――いろいろ調査をしてこれだけ資料を持ってきたのですが、どうも該当事項があまりなくて、どうも私のほうはまだそこまで調査をいたしておりません。いずれ御指摘の点につきましては調査して御報告したいと思います。
  197. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いまの日産・プリンスの大筋の経過については御存じだと思うのです。問題は現状なんですね、現状は、第一組合というか、前の組合がなぜその第二組合と称される組合と合併しなかったかというんです。それには大きな私は要因があると思うのです。労働条件が急激な低下をする、生活の問題にまできて、そうして耐えられないというところからいまの自工組合というのががん張っている。残念ながら、いろいろな面で数は少のうなりました。少のうなりましたけれども、その数の少のうなったものを、何といっても第二組合というか、日産組合とあわせて、会社の職制がいびり出すようなかっこうで、職場における作業すら、職場元から追い出す、追い出された者は受け取り手がない、どんどんたらい回しのように回されて、前の職場に帰ってくるという誓いをしない限りは使わぬ、第二組合に入るということを誓わない限りは使わぬというようなことで、実際にその生産を通じて社会に貢献しようという方はプリンスに入って、いま日産の会社の中で自分の与えられた作業をやっていくという条件すら与えられない。そうして山崎君が言ったように、休憩時、退勤時には取り巻いて説得工作を連日やるというのでありますから、これはかなわない。団体交渉は、その六条拒否の問題は一応地労委が命令を出しましたけれども、実際の団体交渉は受け付けたい、こういう状態なんです。だから労働省は、中央労働委員会の任務もありますけれども、地方労働委員会の任務はありますけれども、こういう具体的な不当労働行為というものを見のがしてはならぬ、こういう人たちをしっかり守ってあげなければならぬというのが今日ではないかと私は思うのです。それを具体的なことは知らぬというのは、私は労政局としては少し勉強が足らぬような気がするわけです。私は、労働組合側を通じて、また、地労委、中労委を通じて、実際に正常に労使関係が進んでいるかどうかというものをもっとつぶさに調べていただいて、そうして対策を立てていただきたい、私はそう思うのです。だから、そういう点はいまこれから調査するということがありましたが、私は、もうむしろこれは人権問題だと思うのです。人権問題に発展をしている、私はそう思います。だから、その点は心して処置をしてもらいたいということだけをひとつここで申し上げておきますから、そのことを明確にこれからやるということをひとつ約束を願いたい。
  198. 三治重信

    説明員(三治重信君) お話がありましたので、私たち、合併に伴う配転問題、それからいろいろな労働条件の低下のことで、具体的に全金派の組合の方々会社に対する主張の要点というものについては詳細調べてまいっております。そうして、なお、会社側の回答も聞いておりますが、先ほど申し上げましたのは、山崎委員のお話のは、組合側の主張と別に、具体的な事実の問題でしたので、そういう具体的な相互の事実の問題についてはちょっと調査が不十分であります。組合側が申しております労働条件の低下の問題とか配転のたらい回し、こういう問題があるということについての労使双方の言い分については資料を持ってきておりますし、会社側にもそれぞれ言い分を聞いております。ただ、問題は、そういう問題がいわゆる人権問題とか、いわゆる不当労働行為の具体的な問題になって争いがこじれることのないように、十分私どもも注意をしていきたいというふうに考えております。
  199. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、この委員会でこまかくケースケースの不当労働行為をここで議論しようなどという考えはありません。しかし、いろいろのケースケースの不当労働行為が正常なルートで労働委員会を通じて明らかにされて直されていくという、この指導は労働委員会とか府県の労働局その他の行政指導によっておやりになる任務が労働省はある。だから、これがその事実行為が違っている主張もあるでしょうけれども、しかし、実際に正しいことはどうなんだ。それじゃ間違ったことや不当労働行為を労働委員会に申請していくというルートまでなかなか守られないということでは、私は人権問題だと思う、これは。だから、その点は明確にひとつしてもらいたい。いずれこの次の委員会にでも調査した段階を報告してもらって、そして現状どうなっているかということと照らし合わせて、具体的に労働委員会でどういう役目をしてもらう、そして労政局を通じて府県の出先でどうしてもらうという問題まで私はここで議論をしていいんではないか。個々のケースには触れなくても、そういう議論をして正常にしていくようにしていいのではないか、私はそう思います。ですから、そういう角度からこの問題を真剣に取り組んでもらって、次の委員会には正常に報告をしていただくようにお願いをしておきたいと思うのです。  それから、もう一つ、二つの問題を労働大臣お尋ねをしたいわけです。というのは、いま地方自治体の中の公営企業ですね、たとえば東京都の電車、バスという交通事業、京都における電車、バスの交通事業、これは地方公営企業法との関係でいろいろ問題を起こしております。それから、物価値上げの関係から、独立採算制を通じての問題も起きております。しかし、私は、都民の願いといいますか、要求によって都民の足を守っていく、水道やごみ処理や、それから交通事業というのは都民、市民の要望によって自然発生的に全体の共通の利益のためにできてきたのが、これが地方自治体がやっている地方公営企業だと私は思う。それの事業がだんだんぐあいが悪くなってくると、最近の状態は、いままでは料金の問題は一般会計から出すということが独算制云々でとめられて、独立採算制で押しつけられている。赤字になってきた今日の現状はどうかといったら、その一切の赤字対策の対象を労働者の労働条件で処理しようという考え方です。だから東京都と京都市とは少し言い方が違います。東京都のほうでは合理化、それからワンマンカーとかトロリーバスとか、路面電車廃止とか、何とかかんとか合理化案を出して、労働者の削減もするし、給与も下げていくというやり方。京都にいきますと、いまの現状では昇給も、要するに賞与といいますか、期末手当も何にもあげません、むろん基準外手当も出さないような方向へいく。そして次にくるものは人員の削減合理化ということになって、だんだん続いていくと、その企業が赤字だから出せないという理由なんですが、その赤字の責任は、一つは独算制と地方公営企業との関係一つは一般会計、要するに市の経済との関係、いろいろあると思うのです。私はこういう議論をここでしたことがある。皆保険で国が主宰しなければならぬ国民健康保険を、国民健康保険が赤字が出てくると料金を上げなさい、一般会計から補給しなさいといってそれは満配にしている。そして市民が直接願っている事業は、実は独算制だから料金でまかなえ、とてつもない料金値上げをいたして、そして料金値上げができたければ、それじゃ労働者の合理化、犠牲、削減、昇給も賞与も基準外賃金までだめだというかっこうのものがいま動いている。こんな私は労働行政というものがあっていいだろうか。非常に私はやり方について、労働者を使った責任に対して、世間一般に行なわれている慣習、事実までそういうかっこうで、倒産する中小企業のようなかっこうでこの問題の処理をしていこうというようなことでいいだろうか。私は自治省にも見解を承りたいし、または労働大臣にも私は見解を承りたいと思うのです。そういうかっこうで、都市交通の労働者が、一方的に犠牲は全部労働者の犠牲によって問題の処理をしていこうというようなかっこうだけで労働問題を処理していこうというかまえが許されていいのだろうか、私は見解を聞いておきたい、労働大臣と自治省の。
  200. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 地方公営企業は、地方住民の福祉のために、その自発的な意思に基づいて運営をされているものでございまして、労使関係が円満といいますか、円滑にいかすようにすることは当然でございますし、好ましいことでございます。ところが、最近この公営企業の関係において財政事情がたいへん悪くなった、赤字が出るというようなことになってまいりまして、そういうことからいろいろ労使関係にトラブルが起き、平和的に労使関係がうまくいっていないということはたいへん遺憾なことであると考えております。しかしながら、どうも私どもいろいろ調べるようにいま言っているわけでございますが、電車が非常に乗り手が少なくなった、平均して二割ぐらい少なくなったのじゃないかというようなことも言われておりまするし、そのほかの機関においても大同小異のことがあるやにうかがわれます。このことは、最近非常に日本人の生活が向上してまいりまして、乗用車なんかをもって通勤をしたり、そのほかの機関を利用する人等がふえたことにもあるいは原因をするかと思うわけでございます。とにかく非常に戦後交通事情が変わってまいりましたことから、市民の福祉のためにつくられましたそうした電車などの関係が必ずしも予定どおりにはいかなくなったということでいろいろトラブルを起こしているわけでございまして、こういうことは、住民の福祉のために創設をいたしました公営企業が十分うまく円滑に運営されないということでございまして、非常に残念に思う次第でございます。できるならば労使の問で十分話し合いをつけていただきまして、円滑に運転ができまするように配慮をしてもらいたい。事情が、電車やなんかを何十年か前に敷設をいたしましたときと現在の交通事情が全く一変をしているということに原因もあるわけでございまするから、双方で前向きに協議をしてもらうことがきわめて好ましいことではあるまいか、こういうふうに私ども考えておりまして、そういうように前向きに事態が進んでいくことを望んでおるわけでございます。
  201. 細郷道一

    説明員細郷道一君) 御指摘のように、いろいろな事情から、地方の公営企業、特に大都市の交通等におきまして赤字が生じておるのでございます。このままに放置いたしますと、やはり公営企業自体の本質の問題にも触れてくるようなことも予想されますので、昨年来、政府におきましても公営企業制度調査会等の議も経まして、去る国会におきまして公営企業法の改正によって財政再建の道を開く、まあかようなことにいたしておるものでございます。財政再建でございますから、何と申しましても、経営者も関係の職員も苦しい目にあわなければならない、まあこういうことはどうしても予想されるわけでございます。いま御指摘のように、必ずしもそのしりを全部労働者のみに寄せるというようなことでなく、再建計画ができますれば、国におきましてその赤字の一定期間のたな上げであるとか、あるいは利子の補給をするとか、そういったような措置考えていかなければなりませんし、また、経営の合理化につきましても、単に人件費のみならず、経営全般にわたり、事態の趨勢にも応じながら経営の合理化をはかっていくというようなことも必要であろうと思うのでございます。そういった意味におきまして、そのそれぞれの公営企業にとりましてはかなり苦しい面もあろうかと思いますけれども、やはり公営企業の持っております特性というものを生かしていく意味において、みんな関係者一同が協力してやっていただきたいと、かように考えております。
  202. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ぼくはいまのお話を聞いて、労働大臣は話し合いと、こう言う。自治省の財政局長は、その財政計画をうまくやっていって、双方が協力をしてという話なんです。私は、根本は、皆さんの理解されている地方公営企業のおい立ちというものは、私も共通して理解をしているわけです。その自治体の住民の利益、それから、その町の発展のためにその市とか都が全体で守っていって、そしてその市や都の経済を発展するためにできた。だから、その都民や市民の負担能力に応じて料金をきめて、そして所得の多い人から一般会計を通じて補完をして守ってきたというのがこの地方公営企業の歴史だと私は思うのです。ただ、地方公営企業が独算制で、一般会計から一銭も出したらいかぬということになって、そこら辺からいまの市民の利用度が少なくなったという議論もありましたけれども、そういう関係一つ入っているでしょう。入っているでしょうけれども、私は、いまの地方自治体における公営企業というのは独算制でしょう。そして、そのいまの向けている先というものは全部労働者の犠牲。自治省の局長おっしゃいますけれども、京都のなんかですと、昇給もいかぬ、期末手当もいかぬ、手当も一切やらぬのだというようなことで、市の理事者がそんな発想をしていいですか、公営企業は。そして独算制で、一般会計から一銭も出したらいかぬということでほっぽらかして、市の人格において守っているという態度をひとつもとらない。料金だけで処理をしていこうということになっているわけでしょう、自治省は。きょうは厚生大臣がおいでになったら私はいいと思うのだけれども、一昨年あたりですと、東京都は国保に対して十八億、大阪でも十二億、一般会計から出せ出せと、おととしと去年で国保の料金を六割も上げ、それで一般会計からそれだけ補給しているわけですよ。どんどん出しなさい、これは皆保険です。保険制度。それで、みずからつくったその公営企業については一銭の金も出したらいかぬ、赤字は全部背負え。今度は労働者にいまのような条件で押しつけるということがいいのだろうかと私は思うのです。これは公的事業ですよ。公的事業の最たるものですよ、地方の公営企業なんというものは。そうして言い方は、まだ計画をやりなさいとおっしゃるけれども、計画なら、労働協約の期限は三年ですよ。労働協約を結んだって、契約五年たてば何の効力もない。契約をかってにきめてそこへくるわけですね。だから、そういうところから考えてみれば、自治省も労働省も、そういう言い方を地方自治体にさせてはいかぬと私は思うのです。その赤字の責任は、全部労働者の合理化犠牲によって処理するなんというようなもののやり方というものが今日も堂々と言われて、そうして団体交渉にもそういう回答を出している。そういうことでいいのかどうかということを私はきょうは聞きたいのです。財政の内部の問題には私は触れたくありませんけれども、そういうようなものの考え方を聞きたいわけです。話し合いといったって、一銭も賃金も上げません、昇給もいけません、期末手当もありません。手当も取りますと、われわれの合理化政策にせぬ限りはそうじゃということだけで、住民が反対する料金値上げに賛成しなきゃこれ全部やるのだという言い方まで理事者はしているのですよ。料金上がるのは従業員じゃないのです。一般市民です。それにおまえらがこの料金値上げに賛成してやらぬ限りは、おまえらにはたくさんの人の人減らし、手当も期末手当も昇給も一切停止するのだというような言い力でいいでしょうか。そういうことが国の次の行政機構の地方自治体で平気で行なわれているということを許していいのかということを私は言いたいのです。地方の自治体にまかしたら何をやるかわからぬ、地方公営企業法で縛っておきゃいいんだというものの考え方だけで問題は処理できない。その地域住民に必要な欲望、念願によって発想し、できたのが、これが地方公営企業がしている水道だとか交通事業とか、そういうものでしょう。そういうものをいまのようなかっこうで野放しにして、そうして赤字の極端な自治体の言い力は、全部おまえらの責任で、おまえらたちの犠牲によって処理するなんというような言い方は、私はないと思う。私は、労働省も労働対策としてこのことは知っておいてもらわなきゃいかぬ。ただ、大臣の言うように、話し合いでなんということじゃないと思う。罷業権はないわけですよ、そうでしょう。公務員の給与も、五月から実施という勧告が出ても、大臣は、私はこれは五月から実施をどうしてもしなければいかぬということで、内閣の中から国民に訴えられたけれども、私は、そこら辺のかまえが労働者になければならぬ。労働者を守る大臣は労働大臣しかないのですよ、給与担当大臣ではありますけれども。ただ事なかれ主義で、話し合えばいいということにはならぬ。自主治省は、それは計画ですなんとかいうことでは、私はこの問題は処理できない。もつとさかのぼって、新しい交通機関に変えるなら変えていく、自然のそういう姿があるなら、それに移りかわるように、労働者の家族をかかえた生活というものをどう処理するのですか。いままで市民や都民の足を守って今日まできた人を、あとはその責任をおまえらは全部かぶれと言う、労働者に。そういう言い方を理事者がやっていることにチェックができない。私はこれはむちゃだと思うのです。こういう言い方が平気で行なわれる、これはむちゃだと思う。だから労働省も自治省も真剣に考えなきゃいかぬ。全体の合理的な運営のたために十分に話し合われるのはけっこうです。また、話し合って理解しなきゃいけませんよ、こういう問題は。いけませんけれども、根本の問題は、ただ押しつけるだけじゃないですか。平気でそんなことが言われておって、それに労働省も自治省も何の意見も出していないということはけしからぬと思うのです。皆さん方だって、まあ大臣は別として、それじゃ昇給もだめだ、期末手当もみなだめだ。手当もみなだめだと言われたら、私は皆さん方だって奮起されると思うのです。それではその市の従業員は奮起するのはあたりまえです。そういうことが平気で行なわれているのに知らぬ顔しているというのは、私は納得いかぬ、こう思うのです。だから、その立場に立って御見解を承りたい。
  203. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) ただいまの藤田さんのお話は非常に同感でございます。先ほど申しましたように、地方公営企業の実態が、特に財政状況が非常に周囲の環境が変わってきておりまして、若しい状態になっておることは事実でございまして、これを円滑に再建をし、軌道に乗せてまいりますためには、理事者側のほうも努力をする、また、従業員の関係者の諸君も御協力をいただく、また、できるならば、先ほど自治省のほうで申し上げておりまするように、いろいろ財政的な面等について軌道に乗るならばこういうふうに援助しようというようなことで、話し合って軌道に乗せるように努力をするということは当然のことであろうと思います。ただいたずらに労働者諸君だけに、従業員だけにしわ寄せするというようなことではなくて、みんなで助け合って軌道に乗せていくということを私どもは望んでおるわけでございます。藤田さんの御意見については全く同感でございます。
  204. 細郷道一

    説明員細郷道一君) 私どもは、やはり公営企業というものはそれなりの存在理由があるものでございまして、詳しいことは申し上げませんけれども、やはりその公営企業としての立場に立ちながら、これを充実することによって住民福祉の向上にこたえていきたい、こういうような基本的な考え方を持っておるわけでございます。そういう考え方に立っておりますればこそ、過去何年かにわたっていろいろ生じてきましたひずみの結果としての赤字を、この際は長期的な再建計画を立てることによって建て直していきたい。ひずみの出ましたことにつきましてはいろいろな理由があろうと思います。先ほどもお話の出ておりましたような客観的な情勢の変化といったようなことも大きな作用をしておると思いますけれども、そういう立場に立って今回の財政再建計画をつくり、公営企業本来の面目も発揮できるようにというふうに私ども考えておるわけでございます。したがいまして、そのそれぞれの具体的な財政再建計画は個々の企業体によっていろいろ事情が違うと思います。一律ではないと思います。それだけに、また個々の企業体にとってもいろいろ苦心の存する面もあろうかと思いますけれども、やはりそれぞれの実情に即して十分練りに練った上での案をつくっていただき、それによって将来の再建計画を立てていきたい、かように考えているものでございます。たびたび御指摘のありましたような、一に労働者の責任といったようなものの言い方は私どももいたしていないわけでございます。
  205. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、自治省としてはそういう指導をされるのでしょうね、いまのお話に応じて。たとえばいまの公営企業の独算制からくる一般会計からの支出は禁じておるならば、どうにもならぬならば国家が補償したらいい。いわゆる再建計画というのは、具体的に赤字財政で困っている事業を国の財源で助けていくということをはっきり持ってその公営企業の運営をおはかりになるのでしょうね。そうでなければどうにもならぬじゃないですか。そしていまそういう言い力をしておるものを指導で是正する、そういうことがなければ私は問題は解決しないと思うのです。そいうことをおやりになるのですか。
  206. 細郷道一

    説明員細郷道一君) 先ほども申し上げましたように、財政再建計画の樹立にあたりましては、いわゆる歳入歳出を通じまして、合理的なものの考え方に立ってあらゆる部面での検討を加えて計画を立てていかなければならない、こう考えておるわけでございまして、その計画が樹立されますれば、国といたしましても、特に財政再建のたな上げ債を発行することにより、また、それの利子補給をすることによってそれを助けていく、こういう行き方をとっていこう、こう考えておるわけでございます。
  207. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一つ財政局長に申し上げておきますけれども、それはどれだけ、たとえば京都なら京都において財政補給ができる、あの計画に入っている二千万の利子補給だって、二十何億の赤字を持ってそのままやってみたって実際計画が立つのでしょうか。だから私は、おもしろいことがいま出てきている。おもしろいといったらいかぬけれども、料金を上げる、それが政府に押えられたから、それだけの分を国からよこせという話も自治体としては当然出てくるのですよ、これは。そういう話になってくるわけだ、住民の感情と違って。その約束だけは国で果たしてもらいたいという話になってくるんですよ。住民は物価値上がりしたら困るという感情、しかし、自治体にしてみたら、片一方では押えられている、だからそれだけの分を国が補給してくれるのはあたりまえじゃないかという議論になってくる。だから国民の安くおりたいという感情と違って、そういう問題が自治体の中では真剣に取り上げられてくるということにもなるわけですよ。だから、どっちかの方法でもっと大胆に処理してあげなければいかぬということ。それから、いまのように、労働者だけを犠牲にして手当ても何にもせぬというような方法で、堂々と団体交渉にも世間に発表しているようなことを自治省はさしておいていいのかということを聞きたい、自治省のほうへ。ただ、これから合理的な計画を立てて云々というだけでは、それがいくまでは、もう労働者は一切のこれからのあらゆる問題はストップして、そして犠牲になってもらうということだけでは私は話にならぬと思う。そこらあたりの具体的なきょう御発言を願いたい。そしてお話をいただきたいし、いけなければこの次またもう一度聞きます。
  208. 細郷道一

    説明員細郷道一君) 財政再建計画自体は個別の企業体がつくるものでありますので、先ほど申し上げましたように、個別の企業体の赤字の発生してきた理由というものを十分突き詰めて、それぞれいろいろ実態が違うと思いますが、そういう点を個別によく団体において突き詰めて、そうして練りに練って再建計画をつくっていただく。私どものほうも、そういう意味で、一律的にどの団体もこうしなければいけないというような考え方に立っているのではなくして、個々の団体の実情を見ながら処理をしていくということが必要であろう、かように考えております。
  209. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、いま京都で行なわれているようなことは、それはもう触れないというわけですか。そういう労働者だけを犠牲にして問題を処理するのだという言い方を賞々と団交でもあらゆるところで発表しておる。そういうことは自治省の方針にさわらないということでしょうか。そこを聞きたい。
  210. 細郷道一

    説明員細郷道一君) いま京都の市の交通事業でどういう具体的の交渉が行なわれておるかということの詳細は私は承知しておりません。承知しておりませんが、おそらく、いま柳指摘のようなことでございますれば、いろいろとそういう面でも話し合いをしているのではなかろうか、こういうふうに想像いたします。
  211. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) けさほどお約束の時間も、熱心のあまり、少し延びましたのですが、もう一人小平委員の御発言がございますので、もうしばらく委員の皆さま、関係の係の皆さま、ごしんぼういただきたいと思っております。短時間でございますので、ぜひひとつ御協力いただきます。
  212. 小平芳平

    ○小平芳平君 ただいま御発言のように、たいへんにおそくなっておりますので、私がお尋ねする点は、一つは基本的な問題と、もう一つは労働省の関係の住宅に関する問題ですが、一つは基本的な問題、もう一つは当面の問題というふうにお尋ねしたいのでありますから、根本的な問題については、今回は問題を提起したにとどめて、大臣からまた詳しく別の機会にお尋ねしたいと思いますが、当面する問題については、現に住宅に住んでいる人たちのたいへんに困っている問題がありますので、そういう点についてはできるだけの解決への努力をお願いしたいわけです。  まず一つ、労働者用の住宅をお建てになるということが、どういう意味でお建てになるか。普通住宅は公庫、公団、あるいは各市町村の公社、そういういろいろな住宅を建設省で建てているのに、労働省のほうで住宅を建ててくださることは、住んでいる労働者にとってはありがたいことですけれども、どうも建設省のほうが専門であって、労働省のほうが専門でないがゆえに、何かしらいろいろな点でうまくないことがあるのじゃたかろうかという点を感ずるわけです。したがって、まず労働省で建てているそうした宿舎の数、あるいは種類、どういう種類の住宅をどの程度建てていらっしゃるかということについてお尋ねします。
  213. 住栄作

    説明員(住栄作君) 労働省でいろいろ離職者の再就職の仕事をやっておるわけでございますが、その場合に、住宅がないために再就職ができない。もちろん住宅問題は国の住宅政策の中で解決すべき問題であることは言うまでもないのでございますが、当面住居を変えて就職をする、そういう場合に一般の住宅政策では間に合わない、こういうような観点から、雇用促進事業団で御承知の移転就職者用の宿舎の建設の業務をやっておるわけでございます。そこで、この宿舎の現在までの状況について御説明申し上げますと、当初この宿舎の建設は炭鉱離職者対策中心にしてやっておりましたのでございますが、そういう意味で、非常に当初の住宅といたしましてはプレハブ式、あるいはパイプハブ式の応急的な住宅というようなものもあったわけでございますが、その後恒久的な宿舎ということで鉄筋の宿舎の建設をやっておるわけでございます。そこで、鉄筋の宿舎は一種住宅と、こういうように言っておりまして、現在本年度計画中のものを含めまして、本年度末には大体三万八千戸、現在すでに建築を終わりましたものが二万五千戸、こういうことになっております。それから二種と呼ばれますのは先ほど申し上げましたプレハブ式の住宅でございまして、大体港湾、それから一般を含めまして約百棟程度でございます。これは応急的なものでございますので、当初建築したものが残っておりますが、本格的な宿舎の整備と相まちまして、逐次整理をいたしておる状況でございます。  大体状況は申し上げましたとおりでございます。
  214. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、三万八千戸という鉄筋コンクリートの住宅がもうできるわけです。そうしますと、これは国の住宅政策としても相当一つの大事な部分になるわけです。しかも、そこに住んでいる人は、炭鉱離職者の人たちは初めは一年契約というようなことでありましたが、ほかの公営住宅へ移れない限りはそこへずっと住んでよろしいということでよろしいのですか。また、そういうことになった場合、一般の公営住宅と同じことになるわけですね。ですから、労働省として、こうした三万八千戸、まだこれからふえると思うのですが、建設省の公営住宅と並行したそういう住宅を将来とも管理運営していかれるのかどうか。
  215. 住栄作

    説明員(住栄作君) 御承知のように、宿舎を設置運営しております趣旨は先ほど申し上げたとおりでございまして、原則としまして一年、やむを得ない場合はさらに一年延長する。で、できるだけ国の公営住宅なり、あるいは事業主の建設をいたします住宅に移っていただくと、こういうたてまえをとっておるわけでございます。で、その素地といたしまして、御承知のように、事業団では、雇用促進融資といたしまして住宅の融資をやっております。また、建設省と連絡いたしまして、そういう場合の公営住宅に移り得るワク等についてもいろいろ協力をいただいております。そういう意味で、できるだけ本格的と申しますか、普通の住宅に移っていただくまでの暫定的な宿舎という観念で進んでおるわけでございますが、一年ないし、やむを得ない場合さらに一年、こういうようなことでも、なおその間の手当てが、たとえば公営住宅の建設とうまくかみ合わないとか、事業主もなかなか住宅に手が回らない、こういうような事情等もございまして、それ以上に延びることはあるわけでございまして、原則は申し上げたとおりでございますけれども実情に即して、そこは弾力的に処理をいたしておるわけでございます。  なお、今後の問題でございますが、私ども、ここ当分の間は、なお労働者の地域間の移動というものが相当数に上る。国の住宅建設状況が進めば、相対的にそういう宿舎を縮小していくということは考えられるのでございますが、来年度、再来年度等を、考えてみましても、なおそういう意味での宿舎が労働者の再就職のための移動という観点からも必要であるのではないだろうかというように考えておる次第でございます。
  216. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、大臣に今後の問題として申し上げ、また、御意見お尋ねしたいことは、いま審議官の御説明のように、ここにある人口がもっとふえる可能性のある産業がどんどん発達している、そういう地域に住宅ができますと、そうした場合には、御方で炭鉱離職者の方のように労働力が余る、その人たちがこちらへ移動してくるという状況にあるときはいま言われたとおりでいいわけです。ですから、特に追い出されては困るわけですけれども、そういう追い出されるようなことがなしに公営住宅へ移動していけるような、そういう排置を労働省、建設省でとっていただければ、そうすればスムーズにいくわけですが、ところが、実際問題としてはこれからが問題ですが、たとえばこの前、私はかの委員会で前労働大臣のときに問題としてあげました点は、たとえば埼玉県のいなかの町へそういう住宅をつくってしまう。そうすると、いなかですから、第一、産業がない。そういうところでは部屋があいても入る人がない。ですから、もう一年契約で、さあ、あとは出ろどころの話ではなくて、なるべくいてもらったほうがいいくらいじゃないか。ですから、そういうような点、建設省のほうの公営住宅ならまあそこに永久に住んでいただくのが、当然住宅政策の、住宅が安定していくということになるわけですが、これが非常に中途はんぱになると思うのです。ですから、そういう点からいっても、労働省で今後ともこうして住宅、宿舎の建設を推進していく場合に、よほど労働省自体が専門家をつくって検討し、日本の産業政策とのかね合いで、相当のはっきりした計画を持ってやるならともかく、現状では非常にそういうまずい点が出てきている。まだ数の少ないうちならそう目立たないかもしれませんが、こうしてもう三万八千戸、あるいはそれ以上に来年、再来年もし戸数がふえていけばいくほど、もう一体何のために労働省がそうして予算を取って宿舎を建てるのか、まるきり建設省の住宅とのかね合いからいってもおかしたことじゃないかというようなことになりゃしないかということを私は感ずるわけです。そういう点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  217. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 小平先生の御質問の趣旨、私も同感でございます。この雇用促進事業団に建設をさしておりまする住宅は御承知のように、移転をして就職する者のための宿舎でございまして、どうもいなかのほうにつくったりなんかいたしておりまして、十分に活用されないというようなことになりますとたいへんなむだがあるわけでございます。したがって、十分御指摘のようなことについては留意をしてこれが運用をしてまいる必要があろうかと思います。ただ、御承知のように、石炭合理化五カ年計画を新たに策定をいたしまして、これからいろいろ合理化なんかをやる、閉山をする山等もふえようかというときでございまするので、私どものほうとしては、労働省としては離職を不幸にしてするような人々のために、できるだけ移転用の宿舎なんかも用意をいたしまして、万全の手配を整えてそういう気の毒な方々のために尽くしていきたい、こういうようなことで一生懸命考えておるわけでございます。そういう事情ではございまするけれども、お示しのようにそれがまたむだになるようなことは、これは十分に警戒をし、注意をして御趣旨に沿うてまいりたいと考えております。
  218. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、私としても、いま大臣がおっしゃったように、離職の方々のスムーズな移動ということを頭に置いて、したがって、こういう欠陥を直していただかなくてはならないという意味で申し上げておるわけでありますが、で、これはしたがって住宅も、たとえば名古屋市の例ですけれども、これは実情を聞いていただいたでしょうか。汐凪港湾労働者用宿舎というのがありまして、そこの例を申し上げますと、確かに名古屋市そのものは労働力を必要とする、また、名古屋市へ移動した人たちは、今後の就職、あるいは生活も、いたかの町へ移転した人よりも恵まれているはずだと、普通はそう思いますが、それもまた場所によりけりで、それで、第一、労働省で何万戸という住宅ができる、それをだれが係で運営をしていかれるのか、それは専門家がいらっしゃるのかどうか、あるいは、たとえば四階建てのアパートを何棟か建てた場合にどういう環境整備が必要か、そういうことを労働省としてやっていらっしゃるのかどうか。あるいは家賃も場所によりけりで、非常に高いですね。いまの私のあげた汐凪港湾労働者用宿舎というのは五千円ですか、そんなに高い家賃を払うくらいだったら、もっといい場所にできそうなものなんだが、きわめて場所が悪い。ですから、まずその住宅の運営は、どういう係があって、専門家がいるのかどうか、あるいは環境整備に対する考えはどういう考えを持ってやっているか、家賃はどういうふうにしてきめるか、そういう点について伺いたい。
  219. 住栄作

    説明員(住栄作君) 実は、いま御指摘のように、宿舎を建設する場合の立地条件なり環境整備の問題、いろいろ問題があることも承知しておるわけでございます。実は、ほんとうに通勤に便利なところを選んで宿舎を建て、そこに十分な環境整備を持ち得るようにするのは私どもの念願でございますが、どうも土地の購入単価が安いというような点もございまして、必ずしもその点は十分にいっていない。ただ、環境整備につきましては、ここ最近特に意を用いまして、たとえば植樹の問題とか、あるいは児童の遊戯場の問題とか、あるいはいろいろな自転車その他の置き場の施設とか、そういうものにつきましては逐次整備をはかってきておるようでございますか、なお十分でない点があるかと思いますが、今後努力をいたしてまいりたいと思っておりますし特に柳指摘の名古屋の例でございますが、これは港湾施設に近いところに宿舎を建てるということでございましたので、そういう意味で、たとえば港湾付近の土地としまして必ずしも十分整備されていないというような問題がございまして、いろいろ柳指摘のような事実があるのでございますし事業団、実はこれ八月にでき上がった施設でございまして、そういう意味でこれから環境整備にひとつ力を入れよう。と同時に、敷地外の問題でございますか、これは市の道路であったり、あるいは私有地であるために、その環境整備が必ずしも事業団としても手が及ばない。そういう意味で市当局等とも連絡をとって、より広い意味での環境整備をはかっていなければならない、こういうことになるかと思うのです。  そこで、お尋ね責任体制の問題でございますが、雇用促進事業団には、宿舎がふえるに応じまして、事業部でこういう宿舎の設置、運営関係責任を持って当たらしておるわけでございますが、建設省のように住宅専門家が十分というようなぐあいにはまいっていないので、若干手ぬかりがあるかと思いますが、御指摘のような面もございますので、そういう体制は今後十分とっていきたいというように考えております。
  220. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは大臣もお聞き願いたいのですけれども、事業部があってその住宅問題を処理していると、それで建設省のようにはうまくいかないかもしれないけれどもというふうにおっしゃいますけれども、実際そこに住んでいる人が三万八千戸なら三万八千世帯いるわけですから、大事な問題だと思うのですね。で、子供の遊園地、遊び場と言われましたが、確かにそこには遊び場はできているのですが、その点は普通の公営住宅よりも遊び場ができているだけ恵まれているように思いますが、いかんせん、ちょっと雨が降っても、もう水がついちゃってどうにもならない、あるいはそれ以外のところは、まあ市のほうのことだからとおっしゃいますけれども、一角に住宅がある、そこへ行く道路は舗装もされてなければ、街灯が一つもなければ、まるっきりたんぼ道のようなまっ暗やみのところを行かなければ家へ帰れないというような点です。それで、そういう点は早急に解決して、道路は舗装し、街灯をつければいいわけですし、水は排水溝を整備すればいいわけですが、困ったことにコークス会社の石炭置き場か何かある。そのほうのほこりが窓をしめておいても家の中がほこりだらけ、窓をしめて子供を寝かしておいても、しばらくおくと子供のほっぺたへ字が書けるくらいほこりがたまるという、そんな環境に住んでいて家主さんはというと事業団ということになりましょうから、労働省、労働大臣ということになりましょう、これは。それで病人が出たら一体だれの責任か。そういう場合、そんな子供でも、それはほっぺたにあとがつくくらいのほこりの中で寝ていては、決してこれは健康にもよくない。そういうところでぜんそくとか、そういう病気でも起きた場合にだれの責任かということ。公害公害といえばどこを、まあ不特定の事業所の害が一般市民に影響するということになるのでしょうけれども、ところが、目の前で石炭のほこりがもうもうと吹きつけてくるわけです。もうみんな網が張ってあるのですが、住宅をつくるときに網を張ってくれたらしいのですが、毎日ふいている家は網にさわっても手が黒くなるだけですが、網をしばらくふいていないと家は網の目が全部詰まってしまう、ほこりで。そういうような場合どうしますかね、これ。向こうは向こうで一つ工場であり、コークス工場か何からしいのですが、こっちはこっちで何か鉄道ですか、石炭置き場みたいになっていまして、そういうちょうどまあ真東から真西の半面は石炭に囲まれているところにわざわざ住宅ができていて、しかも、東風が吹こうと南風が吹こうと、まともにほこりを受ける。こういうような環境へ住宅をつくったこと自体が、それはほこりをよけるようなうまい方法があってすぐやってくれればよろしいし、それができなければ、もう責任問題だと思うのですね。一体どうしてそんなところを選んでつくるのか。どうでしょうか。
  221. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 名古屋の汐凪の問題等についてきわめて具体的なお話がございました。実は私、汐凪のこの宿舎に参っておりませんけれどもお話のような、あるいは水がつくとか、非常に暗いとか、あるいは石炭置き場が近くにございまして、ほこりが多くて住んでおれないとかというような事態がありますると、まことに移転をして就職をする人のためにと思って親切心でやりましたことが行き届かないわけでございます。先般来、子供の遊び場がないというようなことで、そういうことについても各地でいろいろ労働省のほうでは考えて改善をするような手配もいたしましたが、石炭のほこりなんかがむちゃくちゃに風にあふられて吹きつけてくるというようなことは正常ではございませんので、私は現地を、残念でございますが、具体的に見ておりませんが、さっそく調べて対処をさしたいと、こういうふうに考えております。
  222. 住栄作

    説明員(住栄作君) 汐凪の御指摘の宿舎につきましては、実は事業団のほうにもそういう事情を伝えまして、至急調査もいたしまして、善後策をどうするか検討して、いずれの機会かに御報告申し上げたいと思います。
  223. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣が積極的に解決してくださるということでありがたいわけですが、いつの機会にかじゃ困るのですよ、審議官。これは私が事業団のほうへ指摘しましたのはもうだいぶ前でして、実は私は別に委員会でやるつもりで言ったわけでもないのですが、事業団のほうへは、これこれこういうところにこういう問題があるから、こういう点をよく調べてくださいよと言ったのですが、その後、別に事業団と連絡はとってないのですが、いずれにしても、目的は、いま大臣もおっしゃるように、わざわざ住宅のあっせんをしてあげた、世話をしてあげたその親切が、かえって子供が病気になり、家族が病気になり、とても環境が悪くて困るというような不幸な結果にならないように、現にそうなっているのが実情だと、私は見てきてそう思っているわけです。ですから、当面、そのほかにもいまあげた点は石炭をいつも動かしているわけですよ。積んだりおろしたりしているわけですよ。ですからほこりをまともに受ける。そういうふうな問題、あるいは立地条件が悪くて通勤に非常に不便である、あるいは舖装されてない、あるいは付近に職場がなくてそういうところで困っている。そういうような問題を当面解決していただきたいとともに、大臣として、これから住宅行政全体として、どうも建設省のほうにまかせておき得ない、とりあえず労働力の流動のための宿舎が必要だというので、三万八千よりふえるか、あるいはふえる場合にはどういうふうなことをするのか。基本としてやはり専門家を赴くなり、万全の体制でやっていただかなくちゃならないと思うのですが、大臣として、今後建設省と連絡をするか、労働省自体で専門家を置いてしっかりやっていくか、そういうような点についてのお考えを最後にお尋ねしたい。
  224. 山手滿男

    国務大臣(山手滿男君) 労働省といたしましては、就職を促進をする意味から、移動をいたします人のために、文字どおり親切心でこれをやろうとしておるわけでございます。また、やってきたわけでございまするが、いまのお話のようなことがございますればたいへん本意ではございません。ですから早急に調査をしたしまして、そういうようなぶざまなことのないようにいたしたいと思います。ただ、多少私もわかるような気がいたしますのは、地価やなんかも上がった関係もございまして、与えられた予算、きめられた単価で土地を手に入れようといたしますると、多少不便なと申しますか、必ずしもいいところでないところに選定をしているのじゃないかというような気もいたします。それにいたしましても、さっそく調査をいたしまして、注意もいたしまするし、改善をするように手配をいたして御期待に沿いたい思います。
  225. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 他に御発言もなければ、本日はこの程度にとどめておきます。  では、本日の調査はこの程度といたします。  次回の委員会は十一月八日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時一分散会