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国務大臣(
佐藤榮作君) 最初の問題は御意見でございますので、私は
答弁を要求はせられなかったと思いますけれ
ども、誤解があると困りますので、私のほうの
考え方もこの機会に発表しておきたいと思います。
ただいまの国際情勢は流動的である、これは私も口を切っておりますので、同じ
認識に立っております。また、先ほど来
議論されました
中共そのものとの
関係におきましても、こういう状態が未来永却続く、こういうものじゃないこと、これは私
どもも考えております。そういう際にいわゆる日米安全保障
条約、これを
維持するということは流動的であるだけに反対だと社会党は言われるのでありますけれ
ども、しかし、社会党のほうは、流動的であろうがなかろうが、大体基本的にこの安全保障
条約には反対なんですから、その点は申し上げておきたい。だが、これは
議論をこの際するつもりはありません。ただ私は、日米安全保障
条約は国際情勢の重大な大きな変化がない限り必要だと、かように思っております。ただ、それが十年、十五年
云々という問題はありますけれ
ども、そういうような
事柄は、これからどういうような形で安全保障
条約を続けていくか十分検討すればいいものでありますが、ただいまの状況のもとにおいて国際情勢の変化のない限りこれは必要だと、かような結論を持っておりますから、この点では最初から対立しておりますので、この機会にはっきりしておきたいと、かように思います。
そこで、東南
アジア諸地域についてのお尋ねであります。これは最近、経済開発閣僚
会議を開きましてたいへん評判がよかった。あまり自慢はいたしませんが、最近
佐藤内閣のもとにおける
椎名外交のこれはたいへんな成功だと、自他ともに認めておるのであります。しかし、それにつけましても、
日本の行き方というものがだんだんわかってきたのじゃないか。私は戦後の
日本のあり方、これをひとつ戦前の
日本の行き方と比べてみて、いわゆる帝国主義的な膨張
政策はやらないし、軍国主義的な
侵略政策ももちろんやらない。軍事的にそういうことをやらないのは、もう持っておる自衛力から見て当然だが、経済的にもいわゆる経済
侵略をしない。これがだんだんわかった結果、前回の
会議は成功したのだと思います。また、このことは、今後とも私
どもはほんとうに平和に徹する国民として、また民族として、国家的な活動をするのに、このことをぜひとも東南
アジア諸地域に理解していただきたいと思います。そういう
意味で、初めて経済
協力の
意味を持つ。とかく、過去におきましては経済
援助と言っているが、これで経済的に
侵略をして植民地化するのじゃないか、いいところの汁は全部吸い上げていくのじゃないか、こういうような危惧があったと思います。しかし、今回はそういうことがなかった。これがその成功を生んだゆえんだと思います。ぜひともこれを続けていくつもりでおります。
そこで、一番問題になって、近く東京で
会議を開こうというのに農業開発
会議というものがあります。これについては、国内におきまして、東南
アジア諸地域で米作その他をやって、国内の農家を圧迫するのじゃないかと、こういうように非常に掘り下げた
考え方をする向きがあります。しかし、私がこの農業開発
会議の必要を特に説きましたゆえんは、あのあたたかい、またあの暑いところで米作、これに精を出せば、三作
——三毛できるとか、二度はもう楽にできる。そういうようなところでありながら、集まってまいりました国はみんな食糧不足の国ばかりであります。これはタイ、ビルマは別として、インドネシアもマレイシアも
ベトナム、ラオスその他もみんな米が足らない。食糧を外国に仰いでおる。そういうようなことで経済発展はできるわけはないのだ。ここをよく説きました結果が、彼らも農業開発
会議に参加をする。技術
援助を求める。
日本は、御承知のように、
日本の自給度から申せば、米だけは、米については九六%の自給度、これが昨年であります。しかし、食糧全体として、大体八〇%の自給度である、かように考えますので、さらに自給度も上げなければなりませんが、遠い
アメリカにその供給を仰ぐよりも、
アメリカというか米大陸に仰ぐよりも、これは近くの東南
アジアに自給度のないものは供給を仰ぐということは、これは当然のことだと思います。しかし、こういう
事柄が国内において誤解を受けて、大事な米までこういう国々でつくらせるつもりじゃないか。これはとんでもない話だと思いますので、私はその誤解を解きたいと思います。ただいま申し上げるように、この東南
アジア開発について、
日本自身がやはり先進国としてその役割りを果たす、開発途上にある国々にあたたかい先進国の役割を果たす、こういう気持ちで取り組む必要がある。過去のような軍国主義的な帝国主義的な
考え方は一掃していく、それで初めて理解される、かように実は思っておるのであります。今後ともこういう機会をかりまして、やや宣伝めいたことを申し上げましたが、あしからず御了承いただきたいと思います。