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1966-07-16 第52回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月十六日(土曜日)    午前十時十八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木内 四郎君     理 事                 長谷川 仁君                 増原 恵吉君                 森 元治郎君     委 員                 笹森 順造君                 杉原 荒太君                 高橋  衛君                 内藤誉三郎君                 林田悠紀夫君                 平泉  渉君                 廣瀬 久忠君                 山本 利壽君                 岡田 宗司君                 佐多 忠隆君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 渋谷 邦彦君                 曾祢  益君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        国 務 大 臣 橋本登美三郎君    政府委員        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        外務政務次官   正示啓次郎君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省欧亜局長  北原 秀雄君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長事務代理   滝川 正久君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生  復男     —————————————   本日の会議に付した案件アジア開発銀行を設立する協定締結について  承認を求めるの件(第五十一回国会内閣提  出、衆議院送付)(継続案件)     —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  議事に入ります前に、先刻の理事会におきまして協議いたしました本日の議事運営について、その結果を御報告いたしたいと思います。総理大臣出席時間は一時間五十五分でございますので、質疑の順序及び時間は、社会党七十五分、公明党二十五分、民主十五分といたします。これよりアジア開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 森元治郎

    森元治郎君 総理は十時半からだから、その前五、六分ありますので、特に私が拝借して御質問します。
  4. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  5. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 速記を起こして。
  6. 森元治郎

    森元治郎君 外務大臣に御質問申し上げますが、北ベトナムにおけるアメリカ軍北爆、これはライシャワー大使京都あたりお話をしたものによると、解決への一歩である、オーストラリアのホルト首相は、これを軍事的な当然な措置であるということを言っておりますが、大臣はどう考えますか。
  7. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは戦争収拾の一歩であるということであるかどうか、それは私にはわかりません。少なくともハノイハイフォン近郊軍事施設爆撃は、いわゆる聖域というものに対する爆撃が新しく始まったと、こういうこともいわれるわけでありますけれども、結局、北からの浸透の根を断つという意味においては、従来の北爆というものの性格を変えるものではないのであって、収拾に対するアメリカ方針が変わったということは言えないと思います。最近の南越における北からの浸透状況から見て、今回のハノイハイフォン近郊攻撃は、私はけだしやむを得ないものである、こう解釈しております。
  8. 森元治郎

    森元治郎君 簡単に、その解決への一歩だと思うかどうか、あるいはまた、フランスをはじめとして、カナダ ウ・タント事務総長、その他イギリス、これは平和への道を閉ざすものであるという遺憾の意を表明をしておるのです。大臣に伺いたいのは、これは平和への道を阻害するものだ、和平の道を閉ざすものだと思うのか、ベトナム紛争解決への一歩と思うかという、このいずれかということを聞いているのです。そこで、イギリスあたりの皮肉なエコノミストなどというのを見ても、日本人というのは、伝統的流義で、困難な問題とかあるいは不愉快な問題があるときは回避するということを書いておるのですね。これは日本人特有発想法なんです、「やむを得ない」というのは。いま伺いたいのは、解決への一歩なのか、あるいは平和を阻害すると思うのか、どっちかと伺っているのです。
  9. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは北ベトナムのほうの受け取り方いかんの問題だと思います。こういったような新しい——ある意味においては新しい攻撃、これでここまでくれば戦争はもういよいよ勝ち目がないと、こうすなおに考えるか、それとも、なにくそというふうに非常に反発をしてくるか、そのどっちかによって問題は方向がきまるのであって、爆撃やり方そのものによって戦争終結に近づくとか近づかないとか、そういうような意味は私はないと思います。
  10. 森元治郎

    森元治郎君 大臣、それではベトナムに聞かなくちゃわからないというわけですか。やっている当人が——やっている当の国のアメリカの駐日大使が、解決の一歩だと言うのに、ふだんはたいへん協力しているような顔をしていて、今度はわきのほうから皮肉に、解決するのかどうか、向こうに聞かなければわからないという、そういうことでは外務大臣おかしいでしょう。どっちなんですか一体解決に近づきますか。
  11. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカがどういうつもりでやっているのか、私はこれも知りません。とにかくはっきり言えることは、北からの浸透の根を断つ、その根源をつく、こういうことであって、従来の戦争性格とひとつも変わらない。それにどういう意図を込めているかどうか、そいつはわからないのであります。
  12. 森元治郎

    森元治郎君 アメリカがどうしてやっているかわからないのに、どうして日本協力的立場——中立的立場ではない特殊な協力関係にあるのだと——人が何をやるかわからないのに何で協力しているのですか。これは大問題ですよ、大臣
  13. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 戦争協力するということは、私は言ったことはありません。ただ、日米安保条約というものがあって、そうして日本がその同盟国である、ベトナム戦争はいわゆる極東の平和と安全につながるものである、こういうわけで、この戦争に関する限り、やはり日米安保条約条項が働いている、こういう関係にありますので、純然たる中立立場ではない、こういうことを言っているだけでございまして、戦争協力するというような、そういう直接協力関係にあるということは私どもは言っていない。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 日本はたいへん私から見ていると、頼まれもしないのにたいへん意気張っているような感じがする。一体アメリカ日米安保条約にも基づいて北ベトナムにおける戦争を実行しておるのですか。アメリカがいかなる法律的政治的基礎で、どんな基礎でこの戦争を遂行しておるのか、この二点を伺います。
  15. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカ南ベトナムの独立と安全のために、その要請によって軍事行動をとっておる、こういうことでございます。
  16. 森元治郎

  17. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それとは直接別に……。日米安保条約条項に従って、アメリカがいまやってることは、日米安保条約に照らしてみると、極東の安全と平和のために戦っておるわけでありますから、その限度において日本がこの条約の諸条項に従って責任を果たさなければならぬ、そういうように考えております。つまり、そのために日本施設区域を使用するということは、当然これは日本として認めなければならぬ、こういう立場であります。
  18. 木内四郎

    委員長木内四郎君) いま総理大臣がおいでになったので、もし外務大臣に対する御質疑があったらばあとで……。
  19. 森元治郎

    森元治郎君 いやちょっと片づけないと……。  私は二つ質問を申し上げたのは、安保条約南ベトナム関係はないのですよ。大臣はよく第六条云々と言いますが、これは日本国の安全に寄与し極東の平和と安全の維持に寄与するために——それは府的です——ためにアメリカ合衆国はその海空軍陸軍日本施設を使わしてもらえるのだというだけであって、この条項に従ってアジアの平和のために戦っているのだ、この条約のためにアメリカが戦っているというようなことはないのですよ。これは大臣、思い違えてはいけないのですよ。極東の平和と安全の維持のために寄与するのであって、これが即戦争だということにはならない。これは大臣解釈がたいへんな間違いであります。私が伺った、アメリカはいかなる法律的政治的根拠によって戦争をやってるのかということに対して大臣は、ベトナムから頼まれて、ベトナムの依頼によって、すなわちアメリカ南ベトナム双務協定によってやっているのだとおっしゃいましたが、それだけではないのですよ。たくさんありますよ。日本安保条約に従ってなんていうことは一ぺんも言ったことはないです、関係ないのだから。安保条約に従って出動するなら、これは重大問題ですよ。平和の維持のためにだけアメリカ用施設区域を使わせるだけであって、戦争をやるということはどこにもないのですよ。そこまでは安保条約は許してはおらない。これはあなたのほうの間違いであります。  それからもう一つは、アメリカ公約というのは、向こうの、昨年十二月二十九日に総理大臣はハンフリー副大統領とお会いになったときに、ベトナムに対するアメリカ方針という覚書を受け取ったはずです。その受け取った中には、アメリカはなぜ北からの攻撃に対してやってるかというその公約根拠は、アメリカ南ベトナム双務協定東南アジア条約、対南ベトナム援助供与に関するアメリカ議会年次措置、六四年の決議など議会決議に表明された政策及び三代のアメリカ大統領の厳粛な宣言などを基礎としている。これはあなたもごらんになったはずだが、日米安保条約なんて書いてないですよ、どうですか。
  20. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ですから、アメリカのいまとっている軍事行動は、南ベトナム要請によって軍事行動をとっている、こういうことを言っているのであって、安保条約云々ということは言っていない。アメリカ南ベトナム要請にこたえてやっていることは、極東の安全と平和にプラスになる、それが。そういう限りにおいて日本施設区域を使用し得るという条件が出てくるわけであります。
  21. 森元治郎

    森元治郎君 それは大臣、もう一ぺんよく勉強してくださいよ。それはただ使うというだけで、ベトナム戦争をやるということはどこからも——条約からも出てこない。
  22. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ベトナム戦争をやるためにと言ったわけではない。
  23. 森元治郎

    森元治郎君 さっき大臣言ったから……。時間があればもっと椎名さんとやりたいのだが、時間がないから先に進みたいが……。  総理大臣総理大臣は本日は百九十六日ぶりで当委員会にお見えになった。もっとやはり出てこないからいろいろと問題が起こるのです。百九十六日ですよ。あなたの兄さんの岸さんはよく出ましたが、あなたは自信がなくて来ないのか、お忙しいので出てこられないのか。やはり外交問題は両院に出て、こちらにも出て、十分説明をしてもらいたい。  そこで総理に伺いますが、日本の「一線」ということがあるのですね。北爆をやっている。いまのところはやむを得ない。これは無差別爆撃ではないのだ、単なる軍事施設であると言っておりますが、一体この限界というのをどこに置くのか。外務大臣国会で、「一線」はあるのだとおっしゃいました。これは外務大臣が適当かと思うのですが、総理、この「一線」というのはどこに引いておられるのか。どこまでは協力できるのか。やむを得ないとうい表現は、悪いのだけれどもいいのだとかいうような解釈にも聞こえる。こういう表現外交上使うのは日本だけなんです。たとえば、イギリスウィルソン首相は、この種の行動について、アメリカ——とは言いませんが——仲間に入ることはごめんこうむるということさ強調している。お互いに、日本発想方法の、「やむを得ない」ということばはやめるべきだ。どっちかなんです。外交上はもっと合理的に発言しなければならない。そこで、「一線」があるということを明らかにしてもらいたいと思うのです。
  24. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず、森君から出が悪いというおしかりを受けましたが、私は特に出ないというかっこうをとったつもりはございません。したがいまして、この上とも緊密に必要があれば私自身が、また事情が許せば私が出てまいるようにいたします。  ところで、いまの、日本の「一線」というものがあるのか、ないのかというお尋ねでございます。御承知のように、わが国の憲法は、これもはっきりしておりますけれども国際紛争を武力で解決しない、この原則を守っている。したがって、他の国に対しましてもそういうことを要求しておる。かように御了解をいただきたいと思います。したがいまして、ただいまのベトナム問題にしても、できるだけ早く紛争が平静に帰して、そうしてお互いが話し合う、そういうことが望ましいということをたびたび繰り返して申しておりますが、この「一線」ということはそういうことでもありますから、したがいまして、ウィルソン首相が言っているこの種の仲間入りをしないということ、これはイギリス憲法の問題もありましょうが、私どものほうは、そういうことは一切考えておらないと、こう御了承いただきたいと思います。
  25. 森元治郎

    森元治郎君 それじゃ、お話しになった当の外務大臣の、いろいろな質問に対して、今度の爆準は、いわゆる日本の、私の大きらいな「やむを得ない」ということは、無差別爆撃ではない、軍事施設だ。だから、それじゃ悪いのは何だと聞いている。それを越えたものはいけない。外務大臣
  26. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの……
  27. 森元治郎

    森元治郎君 外務大臣国会で御答弁になったから、外務大臣が適当じゃないですか。一線——越えるべからざる一線限界があります。アメリカ北爆やり方については、何でもかんでもいいというのではないのだというのは、一体何をさすのですか。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 戦争戦術の問題は、われわれの知ったことではない。ただ、いまやっていることが合法的である、こう思うだけであります。どこまで行けば一線を越えることになるか、その戦術の問題は私どもは存じません。その立場じゃない。
  29. 森元治郎

    森元治郎君 大臣が「限界がある」と国会答弁されているから私は伺っておるんです。決して私はほかの新しいものを持ってきたわけじゃない。
  30. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私のことばが足りなかったと思います。戦術的に見てどこまで許されるということは、私どもは言うべき立場にないと思います。ただ概括的に申し上げることは、北の浸透を有効に防遇する、それのみに限っておるならばいいのではないか。無事の人民を殺傷したり、都市を破壊したり、そういったようなことは、北の浸透を防ぐという意味からそれるから、それはいかんのではないか。しかし、そういう趣旨においてどういう戦術がじゃ許されるかということになると、それは私どもは言うべき立場にない、こう申し上げておる。
  31. 森元治郎

    森元治郎君 私は陸軍大臣椎名大将に聞いているのじゃないのです。政治家として判断してお互いやっておるのです。だれもベトナム見たこともないし、大使館もないのです。あなたに戦術論の話なんか聞きたくないですよ。政治家としておおむね「やむを得ない」とか言ってやっているのでしょう。官房長官も「やむを得ない」と言っておる。情報文化局長も言っておる。戦術論なんか聞いているのじゃない。そんなそうやって逃げ回わるなら伺いますが、人をたくさん殺さないのはいいと思いますが、無警告ですよ。無警告だというと、アメリカは、昼間だからいいじゃないか。いまは飛行機も速くなった。爆弾の威力もひどくなったときに、おまえは昼間だから目に見えたら逃げたらいいだろう、逃げれば死なないだろう、こういうことはやめたほうがいい。  ところで、アメリカ地上軍が、北はだいぶくたびれているらしい。この北の根を断つには、むしろ地上軍を投入して、いまの戦った結果——戦果といいますか、結果を確保するには地上軍を投入するなり、南ベトナム軍を十七度線から越して向こうへ持っていく。このことが戦争終結の道だと言って行動を起こす場合に、これもやむを得ないと認められるのですか。
  32. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私に。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 いやこれは大問題だから総理大臣に。戦術論じゃない。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申しておりますように、私は、基本的な考え方としては、一日も早くこの紛争解決する。また、そういう意味で、米政府とも私は十分に懇談を遂げたつもりでございます。したがいまして、ただいま言われましたような戦術論と言えばそれまででございましょうが、無差別爆撃、そういうものをやる考えはないようでございます。したがいまして、ただいま質問されました地上軍が入ることはないか、こういうお話でありますが、そういうことはまず考えられない。私はかように思っております。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 地上軍を投入するということはこれは常識的で、幾ら海と空で戦っても、やはり地上を押えなければ戦争というものはおさまらないということはどなたもわかっておる。その場合は、もちろん日本はそういうことは反対する。海岸の封鎖も反対する。無差別爆撃も反対する。こう了解してよろしいですか。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) はい。ただいま申し上げますように、無差別爆撃はこれはもう困る。たいへん私どもは反対だ、かように考えております。また、一日も早く紛争解決するという、そういう方向でものごとを考えていただきたいのであります。アメリカがただいま地上軍を北越の管内に押し込む。こういうようなことは考えておらない、かように思っておりますし、また、海上封鎖の問題につきましても、たいへん慎重な考え方をしておる、かように私は理解しております。
  37. 森元治郎

    森元治郎君 そういうふうに理解しているということは、向う側との接触を通じて、総理の口から出たんだと了解してよろしゅうございますか。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が総理として責任を持ってお答えしております。御理解いただきたいと思います。
  39. 森元治郎

    森元治郎君 北をたたいているうちに、いまのところは中国軍は出そうもないようでありますが、何かの拍子に中国軍が入ってくる、あるいはいろいろな形で中国との衝突がある、米中戦争に発展するおそれもあるという場合にも、先ほどの趣旨に従って、日本はこういうことには、その場合は容認しないという立場でいくというふうに御了解していいですか。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いま米中戦争云々されますけれども米中戦争はまずその危険なしと、そういうものの起こるようなことはないと、かように思っております。いままでもアメリカがいろいろ発言しております。そのことばからも、また、中共自身発言しておりますそのことば裏からも、かような両国が衝突すると、こういうことはないのだ、かように確信をしておりますが、また、そういうことがあってはたいへんだと思いますので、したがって、できるだけ早い機会に話し合いをなさい、かように実は申しておるのであります。アメリカ側中共に対しまして、あるいは封じ込め政策をとっておるとか、非常にかたい態度だとか、かようにいわれておりましたが、最近のジョンソン大統領発言などを見ましても、よほど柔軟な発言のようでありますから、まずこういうことから、中共におきましても同じように考えておられるのじゃないだろうか、かように私は思いますが。
  41. 森元治郎

    森元治郎君 あと七分くらいしかありませんが、大臣にひとつ七月十三日、衆議院会議における山本幸一君への答弁、これは大臣も参ったと思っておるんだと思うのだが、読んでみます。速記録ではありませんから、大体新聞で総合してこう書いてあります。「ベトナム紛争を米国の一方的侵略行為と断定するのは認識を誤っていないか。紛争は一方的に起こるものではない。責任お互いにある。とくに、ベトナム紛争南ベトナム破壊分子に対する北側援助が問題である。」。そうすると、やはり総理大臣の御認識は、アメリカ軍ベトナムにおける行動は、これはお互いさまで、侵略的行為だ、しかし、何もアメリカばかりが侵略しているんじゃないのだ、北も南に来てやっているのだ。これは国会代表質問で御答弁なすったんですから、腹をすえて御答弁してください。
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あるいは、たとえばことばが十分でなかったかもしりませんが、アメリカ侵略国家だ、これは帝国主義者だ、もう軍国主義者だ。こういう意味の批判がされておる。かように私は理解したのでありまして、今回のベトナム戦争アメリカの本質的な帝国主義的な考え方で展開されているんだ、かようなお話のように聞き取ったのであります。しかし、この事柄はすでに説明されましたように、南ベトナムにおける破壊分子に対する北からの援助、これに対して南ベトナム政府アメリカ要請をし、アメリカ国連憲章五十一条に基づいて集団安全保障というか、そういう立場軍事行動を起こした、かく見るのが政府の見方であります。私は、そういう意味で、こういう考え方に立てば、まずお互いにそれぞれの国に責任があるのだろうということを実は申したのであります。まあ、日本で俗っぽく申しますが、かねが鳴ったか撞木が鳴ったかというような話があったり、あるいは一文銭は鳴らない、必ず相手もあるんだということを申しておりますが、やはりそれぞれ善悪、どちらが悪いとかどちらがいいとか、こういうような議論じゃなしに、この紛争自身にはほんとうに困っておるんですから、そういう意味お互いが話し合って、そうして共同のテーブルについて自後の処置を十分考える、これが望ましい、かように思いますから、これはやはり一方的に、片一方だけの責任だ、こう言ってきめつけてしまいますと、話し合いの場もなくなるように私は心配するものですから、そういう事柄山本君もひとつ考えてください、かように申したつもりでございます。
  43. 森元治郎

    森元治郎君 こういう発言をこれだけ明確に話した、双方に責任があるんだ、紛争は片っ方じゃないんだ、北側侵略によってアメリカはたたいているんだとアメリカは言っているのに、総理まん中におって、いや一方アメリカの言い分ばかりが正しいわけでもなし、北の立場もあると言ったことは、これはたいへんな新しい態度なんですね。これならば、何でもアメリカ行動安保条約に関連があるとか、あるいは北から来るとか言わないで、まん中へ堂々と割って入る資格があると思うのですね、大臣。これは大きな発言なんですよ。しかも、侵略的行為大臣はおっしゃったようです、新聞では。この点はアメリカ行動はやはり侵略的行為ですか、北に対する。
  44. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、侵略的行為ということをどういうように考えられますか。たとえば、領土自身を変更するとかあるいは政府自身を転覆さすとか、こういうようなことまでなら侵略という意味はあるだろう。ただこういう場合は功撃だけしておると、かように私は考えております。いわゆる侵略ということばが当たらないかと思いますけれども、その定義のしかたで、いやしくも他国へ来て爆撃をする、これは侵略だ、こう言って片づけてしまうか、そこらにまだ議論の余地はあると思います。しかし、ただいま紛争自身が展開されているんですから、まあ、そういうような気もするんでしょうか、アメリカ自身はこれによって相手の国をつぶしてしまう、あるいは領土を合併してしまうとか、そこまでは考えてない、かように思います。こういうところも侵略行為云々には私は納得をしかねておるのであります。
  45. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、総理の御説明によれば、北からの南への援助侵略の定義はむずかしいし、これも一がいに侵略とも言えないのじゃないか、北をたたくのも侵略とも一がいに言えないのじゃないか、そういうことの御答弁でありますね。
  46. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は侵略ということばはいろいろの解釈があるだろうと思いますが、ただいまのように考えるのが筋じゃないでしょうか。
  47. 森元治郎

    森元治郎君 アメリカはいまだいぶくたびれておる。戦争をやる気なし、中国も入りそうにない。この際たたいてしまえ。しかし、せん滅するつもりはない。といってもひよわい、小さい、世界第一の国から見れば吹けば飛ぶような比べトナムに、連日のように爆撃をやっていけば、これは人間がせん滅してしまう。あそこには北ベトナムの遺跡だけしか残らぬというようなことになると思うのですね。これはやはり北爆をやめ、功撃をストップするというふうに総理大臣が動くべきだと思うのです。単なる平和を願うだけじゃなくて。それが一つ。  大臣は、国連憲章五十一条の自衛権は、集団自衛権はアメリカが持っておると、何か北ベトナムはそういういい道具は持ってないようにおっしゃっていますが、これはどんな国でも、いやしくも国である以上、本来の自存自衛のための自衛権は持っておるのですから、北ベトナムも自衛する権利はあると思うのです。  この二点を伺って終わります。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第一の北爆停止、これがただいま問題になっておるようです。まあ、北爆停止、これが言えるなら、北からの浸透もやめろ、援助もやめ、これは同時にでなければならぬと思います。ことしの春北爆を停止さした。その後におきまして何らかの新しい動きはないだろうかと、かように実は考えてそれを期待したのでありますが、北爆停止の期間が短かったという云々議論はあるようです。これはやはり北からの浸透は、その期間でもどんどん続いておる。こういう事柄が、せっかくのチャンスをのがしたように思うのであります。私は、いまアメリカ自身が北のベトナム政権をつぶしてしまう、あるいはただいまの北の領土を全部南と合併すると、そこまで考えてないということに理解をいただくなら、話し合いのチャンスは十分あるのじゃないか、かように思います。  ただいまの答弁で二つを一緒にして私は答えたように思いますが、自衛権云々という問題も、そういう意味で御理解をいただけるのじゃないかと思います。私どもは、いま北、南、一民族に二つの実力が存在するのはまことに残念な状態だと思いますけれども、現状は、これはいかんともしがたいものだと思いますので、ただいまの話し合いができた上で、この一民族一国家ということが理想であるなら、それは今後の問題にひとつしていただきたい。とにかく、できるだけ早く撃ち方をやめて、そして平静に帰することだ、これが何よりの願いだ、かように私は考えておるのであります。
  49. 羽生三七

    ○羽生三七君 私もベトナム問題について若干伺いたいのでありますが、その前に、北鮮技術者の入国問題に一言触れておきたいと思います。  外交は微妙な問題でありますので、実は当委員会でも私はこの問題は今日まで触れることを差し控えてきました。しかし、問題がはっきりしましたので、この際伺っておきますが、まあ、ああなった以上は、これはもちろんこの入国を許可する方針を変えることはないと思いますが、問題は韓国の抗議ですね。これについて政府は、あくまで例外的な処置、例外的なケースであると、こう説明しておるようであります。そこで、もし韓国が日本の商社の活動制限等きびしい対抗処置をとってきた場合に、それにこたえるために、今回に限ってという全くの例外的な処置にして、今後この種の交流を阻害し、制約を受けるような約束をすることはないかどうか。実は日韓の本院における特別委員会におきまして、われわれの質疑の際に、お隣りの国と国交を結ぶことがなぜ悪いか、多年の懸案であるから、南韓国とは当面国交を結ぶが、北についても必要に応じていつでも交流を深める、こういうお答えだったと思います。したがいまして、韓国から今回の処置について非常なきびしい対抗処置あるいは申し入れ等があった場合に、それにこたえるために、今回だけに限ってということとなって、今後はこれを阻害しあるいは制約を受けるような、そういう約束なりあるいは取りきめをするような危険はないか。これをそう了解してよろしいかどうが。それを伺います。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今回の入国許可は、一たん出した以上は、これを変更するようなことは考えておりません。  それから、これを先例としないということは、大体において取引の前提として、プラントに関する取引の前提として技術者が現場について十分観察するということは、これはもう一般の慣習でございます。またそうでなければこれがはたして使って役に立つものであるかどうかということの判定はつかないわけでありますから、十分に運転している状況なども見なければならない。これはもうすべての国にとられておる措置でございます。でありますから、これを当然そういう取引をやる、実行する上において是認されなければならない。ただ実行を延期するという形をとっておったわけでありますから、この問題の解決も今回したわけでございます。これを先例としないということは、次にいろいろなプラントの問題が起こった場合に、必ずしもこの例によらないということを言っているのであります。
  51. 羽生三七

    ○羽生三七君 必ずしもこの例によらないということはどっちにもとれるので、それは今後絶体にこの種のことを二度と繰り返さないということを言っておるわけじゃないんですね。これははっきりしておいて下さい。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 二度と繰り返さないということも、いろいろな意味にとられますが……。
  53. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、今回限り、あとは入国許可ということをしません——はっきり言えば、しませんということを言っておるのかどうか。そういうことではないでしょう。
  54. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先例としないということは、そういうふくらみを持った表現でございますから、これをあまり追い詰めないでいただきたいと思います。
  55. 羽生三七

    ○羽生三七君 それで私は実はきょうまでこの問題に触れることを避けてきたのですが、これは念を押しておきます。今後とも必要に応じて交流は深めるべきである、こういうことだろうと思います。  それから次に、いま森委員からベトナム問題に触れましたが、この米国のハノイハイフォン等の北爆の強化がどういう反応を生んだかという、これはまず第一番には、北ベトナムはこれによって徹底的な抗戦を声明した。  第二に、ソ連は、北ベトナム援助の強化を決定した。  第三に、ドゴール・フランス大統領のサントニー特使は、北ベトナム首脳との会談を終わったあと中国を除いてはベトナム問題は解決しないであろうと語った。さらに昨日は、ドゴール大統領は、中立が先決条件であるとアメリカを批判しております。  それから第四番目に、これは少し重要だと思いますが、中国はジュネーブ協定はもはや存在せずという声明をしました。談話を発表しました。また、英仏も共同声明で、民族の独立を認めることが先決である、こう述べております。  これら一連の声明あるいは談話を見まするならば、北爆の強化によって戦争解決方向へ近づくかどうかということになると、むしろこれは、少なくともいままでの反応から見るならば、エスカレートする方向へ進んでおります。これが現状の分析であろうと思います。それで、アメリカとしては、こういうことをすることによって、つまり、北爆を強化することによって、北ベトナム会議のテーブルに近づける近道であると、こう考えてやったと思うんですが、現実はおよそその反対の方向に進んでおると思います。そこで、この北ベトナム戦争ベトナム人民の犠牲で遂行されて、その責任がもうほとんど米国にあることは当然であるけれども、その論議はしばらくおきまして、現実には、世界のいずれの国も、適切かつ効果的な解決の方途を見出すことに困難をしておる。これが現実だろうと思います。いい悪いは別として、これが現実だろうと思う。したがいまして、日本だけが特別の妙案があるとは私は考えておりません。しかし、それにもかかわらず、今日の事態は和平を口にすれば事足りるという段階ではもうないと思います。総理並びに外相もしばしばこのすみやかなる解決を希望されると言われますけれども、あるいはまた総理は、ときとして、まだその時期ではないとも言われております。しかし、そうではあっても、もし日本がほんとうにベトナム平和に貢献しようとするならば、一体日本としてはどのような形でその役割りを果たそうとするのか。つまり、気持ちの上で早く戦争が終わればけっこうだというならば、これは世界じゅうこれに反対する人はあまりないだろうと思います。だれしもそれを希望しておる。そうではなしに、現実にすみやかなる平和を希望するとするならば、この時期におけるわが日本の役割りを果たさんとする方針、それは何であるか、どういう形で総理はこの平和への願望を達成なさろうとするのか、これをひとつ承らしていただきます。
  56. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま羽生君の言われるハイフォンハノイ付近の爆撃、これがたいへんな影響、変化を与えておると、こういうお話ですが、ああいうところをどうしてやったのかといえば、これはまあおそらく軍事上の問題だから私はわかりませんけれども、それにいたしましても、軍需物資の集散地あるいは軍需品を壊滅さすというか、そういうことが北からの南への浸透、その力が鈍るのだ、こういうところでねらったのだろうと思います。したがって、先ほど来もお話を申しているように、無差別爆撃というなら私どもも反対するのだということを申したのは、そういう意味なんです。そこで、それが逆な効果があった。いまソ連の徹底的な援助、あるいは北ベトナムが徹底的に抗戦するとか、あるいは英国がどう、ドゴールがどうした等々のお見通しといいますか、今日巻き起こされたその波紋について、これはもうお話しのとおり、私もさように考えます。ただ、その場合に、ソ連、北ベトナムこれはもう一体だろうと思いますから、その辺のところが中心にものごとを考えなくちゃならぬと思います。ドゴールやウィルソン等の発言もこれは重大な意味を持つ。国際世論形成上はたいへんだと思います。私、ソ連や北ベトナムの問題で、私どもが過去においてちょうどたどったようなその方向へ行っているのじゃないかと、非常な実は心配をするのです。これは当時だんだん苛烈になってきて、本土焦土作戦というものがあったこと、これはもう私ども記憶に新たな問題。朝鮮においても、あるいは人海戦術といわれるような、戦争が苛烈になる方向そのものであったと思います。しかし、焦土作戦なるものが無意味であったこと、よくわかるはずなんです。しかも、国際的にお互いが平和を守るというその観点に立って真意をはかるならば、そこらもほんとうにたんたんとまた考えていいんじゃないかと、この間私はこうまではっきりは申しませんでしたが、お互いに過去にとらわれないで、それでひとつ平和への道をさがそうじゃないか、こういう所信表明で呼びかけをしたのも実はこの点なんです。ただいまの、非常に北の爆撃が拡大された。その結果与えた影響、それは一部にいま御指摘になったように、非常な強い反応を示しておる。しかし、それはたいへんだ。そこでお互いがやはり考えてみる必要がありはしないか。北のほうにもまたそういう気持ちが出る、アメリカ側にも、こういう爆撃が、これはもう人類の繁栄という面から見てたいした効果はないものだ、かようなことを考えると、本然の姿に返ってくる。これがやっぱりチャンスではないかと思う。しかし、残念ながら、ただいまの状況のもとにおいて、この和平のチャンスが来たと、かように私は思わない。しかし、それをやっぱりつくることが必要じゃないだろうか、かように思う一人でございます。これはおそらく、そういう意味で、政府は何をしているかと言われますが、こういうきっかけが出るという、それがやっぱり必要なんじゃないか、かように思う次第なんです。
  57. 羽生三七

    ○羽生三七君 これがきっかけになって、終息の方向に向かうか、拡大の方向に向かうかは、これが議論の分かれるところだと思いますが、私はそういう楽観はしておりません。そこで、日本一体どういう役割りを果たすかという問題ですが、それはそれとして、まああとで触れますが、アメリカはしばしば「名誉ある解決」ということを言っております。名誉とは何ぞやという問題なんです。私は今日やはり真にアメリカの名誉が保てるとするならば、やはり民族の独立性、その自主性を認めて、アメリカが徹底的な大幅な譲歩をする以外に、譲歩をする以外に解決の手がかりはないと、また、それが今日の世界の世論から見てアメリカの真の名誉に通ずる道ではないか。このような道をアメリカが歩いてないならば、これは最終的には私はほんとうにアメリカが世論の側からも孤立をし、現にもう相当孤立をしておりますが、アメリカが欲するところの真の「名誉ある解決」にはならない。そういう意味で、この世界の歴史というものを長い目で展望するならば、ある一国において好ましからざる、つまり、資本主義国から見て好ましからざる状況であると思われるものも、とにかく長い目で見るならば、やがて落ち着くところへ落ち着くであろう。そういう意味で、やはり民族の独立性、自主性を認めることが先決だということをドゴール大統領やあるいは英仏共同声明等にあらわされているこの考え方は私は正しいと思う。したがって、そういう意味の長い歴史的な展望に立ってベトナム問題を見詰めて、そういう観点からやはりアメリカに対して何らかの意見も日本が述べる、そういう形での平和への寄与がなかったならば、ただ心からそれを希望しているというだけで済まされるような段階ではないのじゃないか、そう思います。私は実は先般ケネディ大統領の補佐官をしておったバンディさんが見えたときにも、これと同じ考えを述べました。もちろん、さっそく同意するはずはございませんけれども、それにしても、そういう考え方日本が何らかの平和的な解決に動かなかったならば、これは心で希望しておりましても、いまの事態はますます、つまり、平和のチャンスを北爆強化によって求めようとしても、実際はむしろエスカレートしていくのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  58. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いろいろの中身についての議論はあるだろう、かように思いますが、ただいま解決方向、それを示すこと、それがまた日本でできるかどうか、実は疑問に思っております。いまの段階は、とにかく関係者が「撃ち方やめ」だ、もう紛争をとにかく話し合いに切りかえる、そのことが一番必要なんじゃないか。それで話し合いに切りかえて、ただいま言われる民族の自主的な自立が尊重される。そういうことは当然そういう場合において議論されるべき問題である。いま問題は、その先の条件が云々されるが、それを云々しますと、アメリカ側のものであったり、あるいは北側のものであったり、そういう要求だけで、全体としてまとめ上げるというほうの要望ではないように思うのです。私は、そういうことに触れないで、とにかく話し合いに入りなさい、「撃ち方やめ」だ、これにひとつ同調してくれ、こういうことが一番その問題だと思うのです。そこで新しい行き方を見つけていく。先ほど森君にお答えしましたように、ただいま一民族で二つのものが、二つの権威がある、これはたいへん情けないことだと思うけれども、それは民族において将来いつの時期かきめればいいことだ、だけれども、この際はそういう権威を認めざるを得ないのじゃないかということを申しましたが、そういう方向で話がつくのじゃないか、かように私は思います。
  59. 羽生三七

    ○羽生三七君 テーブルにつくことが話し合い——話し合いじゃありません、解決の一つのきっかけであるには違いない。それは重要な問題でありますが、いまの状態で北ベトナムがテーブルにつく可能性はほとんどないと思う。むしろ遠ざかりつつある。もちろん、アメリカの一部、アメリカの同盟者の一部には、案外戦局がアメリカ側から見れば好転して、やがてハノイが降りてくるだろうということを期待している向きがあるようでありますが、それはおそらくはかない希望に終わるのじゃないかと私は見るのであります。  そこで、もっと日本としては、たとえばドゴールもきのう言っているように、ベトナム中立化が先決だという場合、その中立化がどうして可能なのか。それは北ベトナム南ベトナムが統一されたそのあと中立化を言うのか、あるいは南ベトナムだけの中立を先に構成しようというのか。ラオス、カンボジアはすでに中立化できておりますから、そういう問題についても積極的な対策なりあるいは打診をすると、そういう点についてももっと私は日本政府が動くべきだと思う。  それと関連して、ちょっと余談になりますけれども総理はさきにイギリスウィルソン首相を招待されましたが、これは実現のまだ段階には至っておらない。ユーゴのチトー大統領も招待された。アラブ連合のナセル大統領も招待された。まだ実現はしておりませんけれども、いずれにしても、総理の真意がいずれにあるかは別として、きわめて多元的な外交を展開されておると思います。これらの招待外交を通じて総理は何を企図されておるのか。単なる親善なのか。あるいはもっと深く何らか平和問題について話し合いをしようとなさるのか。あるいは、近くソ連からグロムイコ外相も来られますけれども、これらも含めて、最近の佐藤内閣、佐藤総理の一連のこの共産圏から非同盟路線までに及ぶ招待外交、これは大いに意欲はわれわれも買うわけですが、真意は知りません。どういうことでおやりになるか、その辺のお考えをひとつ承らしていただきたいと思います。
  60. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまベトナムの問題、これも一応終わりというか、一応開いた、かように思いますが、ただいまのベトナム問題についての羽先君の意見は、これも私どもは今後とも十分検討をする、こういう気持ちでおりますことだけ申し上げて、ただいまこの席でこの結論を出しませんけれども、いままでのところは在来の方針をまだ堅持しておる。とにかく話し合いに入りなさい、それがわがほうの主張だ、かように御理解をいただきたいと思います。しかし、それも腹案なしに、とにかく話し合いに入ればそのうちにわかるだろうというような、そんなわけにもまいりませんから、いま羽生さんの言われたように、さらに掘り下げの必要なことはもちろんであります。かつてのような無条件降伏というようなことは、この場合においてはないと思います。私どもはそういう意味で苦い経験をなめておりますから・それらの点も十分考えて、これが私どもの経験から申して、やっぱり南ベトナム立場北ベトナム立場にもなってものを考える、こういう気持ちのあることを御了承していただきたい、かように思います。  そこで、いまの多元的な外交というお話がありました。ただいまドゴールさんを招待をしておることもつけ加えさしていただきますが、とにかく、私どもがあらゆる面でただいまの日本のあり方というもの、この平和に徹してただいま繁栄への道をたどっておる。しかも、国民的に生活もだんだん向上している。こういう真のあり方を各方面の方に理解してもらいたいと思います。これが何よりも大事なことだと思います。また、味方は各方面に多数あることが望ましいのですから、やっぱり日本自身の理解が根本だ、かように思うので、招待もいろいろ続けておる、かように御理解いただきたいと思います。
  61. 羽生三七

    ○羽生三七君 時間がないので、あともう一問だけですが、その招待はただ親善だけですか、それ以上のものはないわけですか。
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま申し上げるようなことだけでございます。特別にねらいがあるとかいうようなことではございません。
  63. 羽生三七

    ○羽生三七君 最後に、さきに来日されましたイシコフ漁業相、これは安全操業問題を中心に会談をされたわけでありますが、日本案に対して若干の部分的寄与はしましたけれども、おおむね権限外であるとして一応グロムイコ外相待ちと、こういうことになったと思います。そこで問題は、このイシコフ漁業相が、しかも漁業問題の担当者であるイシコフ漁業相がこれを権限外とした理由は、言うまでもないことでありますが、これは領海問題は、結局、領土問題と不可分であるからと、こういうことだろうと思います。しかし、この領土問題について、日本日本自身の主張を積極的に述べるにいたしましても、今度グロムイコさんが見えたときに、なかなか私は簡単に解決する性質のものではないと思いますが、しかし、これがまた領海と不可分の関係である。この場合ですね、非常に領海問題が重要性を持つわけでありますが、この領海問題あるいは領土問題とも関連を持つわけですが、これと安全操業との関連をどうとらえて、どう打開されようとするのか。外交のことですから、あまりこまかくお尋ねするのはいかがかと思いますが、おおむねのところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  64. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これから折衝する問題でございますから、あまりこまかいわれわれの手のうちを出すことはどうかと思います。  問題は、イシコフ漁業相が権限外として帰ったのは御指摘のとおりで、領土問題に関係するからでございます。でありますから、領土問題がはっきりしない間は、もちろん向こうの主張では、領海というものを簡単に侵犯するというようなことになるのでありますから、そういうことはできない。ただ、従来の日本の零細漁民の仕事場であったという関係からいたしまして、そういう限界はあるけれども、どの程度まで安全操業が可能であるかというその限界をやはり突き詰めていくということが、日本の非常に大きな利益でもございますので、その点を十分に両方で好意的に協力して、北洋漁業の問題を中心に話し合ってみたいと、こういうわけでございます。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣が申し上げたとおりでございますが、いまちょうどグロムイコさんが来られるばかりですから、まあ、そういう際に、国会ではありますけれどもいかがかと思いますが、しかし、私の申し上げ得ること、これはもう歴代内閣が主張してきた、ことに前内閣——池田内閣の時分に、領土問題等についてははっきり主張いたしておりますので、これは私は踏襲をいたします。このことははっきり申し上げます。まあ、そういうことの前提のもとにおいて、わが国の安全操業、これを確保したい、かように思っておるような次第でございます。  また、一部でいわれております、ソ連側では漁業基地云々の問題があるようですが、これなどは、ただいまの状況のもとにおいては、ソ連側の言い分がよほど進み過ぎておる、かように思いますので、それらの点も十分注意していくつもりです。しばしば米国追随外交だと言われますけれども、私はナショナル・インタレストをいかにして確保し、いかにしてこれを増進し得るか、これに専念しておりますので、誤解のないように願います。
  66. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ベトナム戦争の問題等については森、羽生委員がいろいろ御質問申し上げたので、私は中国の問題についてお伺いしたいと思います。  中国の問題につきましては、すでに国連加盟の問題や、あるいはまた中国との貿易の問題等々については、しばしばお答えをいただいております。これの当否は別といたしまして、そういう個々の問題についてだけではなく、全体的な問題をお伺いしたい。と申しますのは、最近ジョンソン大統領アメリカ中国政策というものについて概括的な見解を発表しております。お読みになったことだと思います。まあ、これはおそらく中国のいれるところではないでしょうし、また、われわれから見ましても、批判すべきところも多い。しかしながら、アメリカジョンソン大統領、つまり中国と最も悪い関係にあるアメリカジョンソン大統領でさえ、この将来中国との関係について一つの展望を発表したということは、私はやはり政治家だと思うのです。そこで、先ほど申し上げました個々の問題は別として、いま佐藤総理は、将来中国とのどういう関係を持つか、これは一つのビジョンかもしれませんが、そういうものをお持ちでなければならないと思います。それについての御見解を承りたい。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま岡田君からお話しですが、ただいまの中共との関係、これは異常な関係である、これは私も認めるにやぶさかでございません。いつまでも未来永劫こういう状態を続けるということは許されないものだと思います。そこにビジョンがあるといえばビジョンです。ただ、いままで私どもが主張してき、そうしてそのとおりやってきましたものは、国民政府とも交渉を持ち、そうして中共ともいわゆる政経分離で交流をする、こういう考え方をとってきたのであります。しかし、この状態がいつまでも続くとも私は思いませんので、ただいまのいますぐ変わる、かようには私も思いませんが、将来に対してはもっと正常なものがほしい。そこで、ジョンソン大統領自身、一部から、封じ込め政策をしている、あるいは孤立政策をとっている、こう言われた大統領自身が、最近発言をして、特に私の意を引いておりますものは、共存について触れたことです。共存ができる、この共存政策に触れたということは、これは非常な進歩だと思います。私どもがいわゆる政経分離でやっていこうという、現状においてこれをやろうというものも、基本的に申せば、いまの共存政策だ、かように私は思います。したがいまして、これに対しての何らかの反応が出てくれば、私はたいへんいいことだと思うし、これがみずからがやっぱり孤立政策を求めないで、やはり国際社くえも広く手を差し伸べていくのだ、こういうことをやっぱり理解をさしていくことも必要じゃないだろうか、かように思います。しかし、いままでのいきさつ等々から見まして、なかなかそれは容易ではないが、しかし、大政治家において初めて、在来のいきさつにこだわらずこの際に方向の転換ができるのだ、かように思います。国際的に安全平和、しかも、繁栄への道をたどる、そういう方向で共存、それができるのじゃないか、かように期待を持っておるのであります。
  68. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私どもも、今日中国の内部で起こっておりますいろいろな事態から見まして、現状のところ中国態度は、はなはだかたいと思う。しかしながら、中国のこの態度が三十年、五十年続くとも思いませんし、また、ベトナム戦争がある段階において軍事的な対決では片づかないということになって、ともかく「撃ち方やめ」というような事態になり、そこにまた若干解決方向への道が開かれるだろうといたしますならば、これまた中国との関係というものも変わってくるでしょう。私はそういう事態を考えましたときに、やはり日本がいまからそういうような事態を予測しつつ中国に対して一つの政策を持つべきであると思うのであります。これは私は、保守党とかあるいは社会党ということではなくて、日本としてその道をやはり進まなければならぬであろう。もちろん、中国との関係につきましては、台湾の問題というものが重大であります。しかし、台湾の位置というものも、戦後二十年の間に非常な変わり方をしてきておりますし、その地位は低下してきております。もはや、これは中国ではないという考え方承認を取消した国も、フランスを初め幾多出てきておるわけであります。おそらく今後、もし蒋介石氏が去ったというようなことになりますれば、率直に言って、台湾の位置もさらに変わるでありましょう。そういうような事態を見通して、やはり日本としても、太平洋における一国として、しかも、中国に隣りし、アメリカともまた面しておる一国として、この間における大きな政策を持つということが、今後の日本アジア全体に対する一つの大きな政策を進めていく基礎になろうかと思います。その点について、いま、共存の政策と言われましたけれども、それをもう少し具体的に、どういうふうにしてそれを進めるのかというようなことについて御見解をお示し願いたい。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、しばしば申し上げますように、いずれの国とも仲よくするんだ、こういうことを申しております。それには、やっぱり前提として、お互いの民族あるいはお互いの国家、それを尊重していくことだ、お互い尊重し合って初めてそこでほんとうの共存の政策が樹立されていくんだ、かように実は思っておるのであります。これはもう基本的な態度でありますから、ただいままでも申しておりますので、これはわかっていただいておると思います。特に、相手方に対しても批評がましいことも言わずに、また干渉がましいことはもちろんしない、こういうところに共存への道があるのではないか。とにかく、いまの国際社会は、過去の国際社会と違いますから、徳川時代なら鎖国もできたでしょうけれども、いまはもう鎖国をするような時ではない。みずから孤立化政策がとれるはずがない。そういうところにやっぱり眼を開いて、そうして共存への道を歩んでいく、これが望ましい、かように思います。現に、私ども、いま、徳川幕府時代の鎖国主義というものがありますから、これもひとつの経験ですから、苦い経験ですから、こういうことはしてはいかぬ、かように私は思います。
  70. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いまの総理お話を伺っておりますというと、つまり、東西間、特に中ソの間の関係ですね、これが将来もよくなり得る、こういうふうに考えておられるのですか。日本もまたそういう見通しのもとに立って共存政策を進め得ると、こう考えておられるように聞き取れたのですが、そうですか。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま中ソの問題を出されましたが……。
  72. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 中ソではない。米中の関係
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米中の関係……。  私は、まあアメリカ大統領自身が共存を呼びかけている、また、最近出かけた人たちにしましても、やっぱりイデオロギーは別でも、また、政治のあり方は別でも、仲よくすべきだという話もだんだん出ているやに聞きますね。そうして、北京政府の一部にも——一部と言うとまた問題を起こすか知らないが——その中にも、こういうような考え方で検討しておる者があるのではないかと私は思いますが。
  74. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ、私どもも、冷戦があるんだ、そうして冷戦は必ず将来熱い戦争になるんだ、そういう認識のもとに立って政策を進められてはかなわないと思う。いま総理お話では、共存政策を目ざすんだと言われておりますけれども、しかし、あなたの党の最近防衛問題を扱わわれている委員会で発表されたところを見ますというと、これは東西間の冷戦が存在をし、しかも将来、それが激化をする、その間にあって日本はどうしなければならないんだという考え方、そうしてしかも、最初の案のごときは、核兵器を持つことさえにおわしておる。まだ党議で決定したとは言えないけれども、そういう考え方があなたの党にあって、そうして、それが土々と公表をされるというような状況であるということは、いまあなたの言われたこととだいぶ違うように思うのですが、どうでしょうか。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま私は、私の考えとはあまり違ってはおらないと思います。わが国の安全を確保する、これはあらゆる観点から安全確保をしなければならない。国民がほんとうに安心して生活もできないし、経済的にも活動ができない。これはもう根本ですから。これはただ外から攻めてくるばかりではありませんし、国内の治安の維持といいますか、そういうものがきっちりして初めてわが国は安全だ。この観点に立って初めて自由濶達な活動ができるわけであります。だから、それはいろんな意見はありましょうが、しかし、基本的な考え方は、いずれの国とも仲よくする、そうして共存するのだ、この考え方で私はやっておりますので、一部の政策をとらえ、そうしてその面だけから反対方向に結論づけられることは非常に迷惑しますから。  私はいま、中共がどういうわけで核兵器を持ったか、これは私云々はいたしませんが、しかし、わが国の中に、中共が核兵器を持つこと、これは自衛のためならいいじゃないか、こういう議論があることだけは、この機会にはっきりさしておきたい。しかし私は、日本が核兵器を持つことは平和のためだろうがなんだろうがこれは許せないと、きっぱり実は申しております。しかし、一部においては、中共が核兵器を持つことは中共の自衛のためなんだ、これは許されるのだというような話があるが、これは私どうも理解しかねるのです。だから、そういう点をいま一部において防衛担当の諸君がいろいろ掘り下げておる。かように御理解をいただく。そうして、それより以上わが国がどうする、これは国会でももちろん御審議をいただきますし、私自身が、ただいまのところ憲法を守って核兵器は持ち込みも製造も許さない、こういう態度をはっきりとっておりますから、御心配のないように願いたい。
  76. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、東西の間における対立が大きな軍事同盟の対立を招いている。ところが、戦後二十年間の諸国間の関係の変化によりまして、最近ではフランスがNATOから脱退する。あるいはまた、SEATOにおきましてもパキスタンが事実上SEATOに非常に消極的な態度をとっている。またフランスもSEATOに対しては消極的である。こういうことで、軍事同盗に非常な変化が起こってきております。カナダ等の態度を見ましても、あるいはまた、北欧諸国のNATOに対する態度を見ましても、最初のころとは非常に変わってきている。一方、共産陣営のほうを見ましても、すでに中ソの関係というものは変化を来たしている。そうして、中ソの同盟条約というものも事実上今日では停止状態にある。あるいはまた、ルーマニア等東欧諸国の最近の動きを見ましても、従来のソ連の一枚岩的な軍事同盟的なものは今日くずれつつある。こういう状況であります。こういうような事態になってまいりましたときに、日本というものも将来の見通しに立ってこの軍事同盟の、つまり、東西の冷戦の上に生じたこの軍事同盟間の対立、こういうものをどう考えなければならぬか、そうしてまた、日本としてはいまアメリカと一つの軍事同盟を結んでおるわけでありますが、これらについてやはり将来を考えるというと、変わっていかなければならぬものがあるのじゃないか。現在アジアにおいては相当ベトナム戦争を中心として緊迫した情勢がありますけれども、全世界的に考えるというと、この大きな東西対立の軍事同盟というものに対する日本の観点もここらで変えていかなければならぬ事態が来たんじゃないか、こういうふうに考えるのですが、総理はこの点についてどうお考えになっておるのか。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま東西対立の軍事同盟と、こういうふうに言われますが、これは日米安全保障条約はいわゆるあなたの言われる軍事同盟なんかとこれをやっぱり概念づける必要はない。私はこの東西対立の軍事同盟、しばしば出されるNATOやNEATO、こういうふうなものには日本は参加しない。これはもう非常に日本態度ははっきりしておるわけであります。ですから、日本のあり方としてそういうものは心配はない。日本はわが国の安全を確保する意味の日米安全保障条約は持っているけれども、いわゆる東西対立の軍事同盟はやっておらない。ここは誤解のないように願いたいと思います。で、いまフランスやその他の国等がいろいろやっておる。いまNATOでこれは問題が起こっておる。これもよくわかります。また、中ソ軍事同盟は事実上はもうなくなったのだ、こう言われるけれども、やっぱりこれははっきり相手国、仮想敵国を持つ軍事同盟であり、その条文が厳然として存すること、これはだれも否定する者はない、かように私は思いますが、とにかくいま変わりつつあること、これは岡田君の御指摘のとおりで、世の中はほんとうに流動的だ、かように患います。その場合でも、あらゆる国が自分の国の国益をいかにして守り、いかにして増進するか、そういう立場行動しておる。これはもう見のがせないことだと思います。私は、日本の場合におきましても、いわゆる日米安全保障条約がいま指摘されたような軍事同盟ではない、かように思います。同時に、わが国の安全を確保し、またわが国の国益を増進する、そういう観点に立っては私ども全力をあげて検討してまいる、この決意でおることは申し上げておきます。
  78. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日米安全保障条約が軍事同盟であるかないかということについては、どうも私と総理とは見解を異にするようであります。この問題についてここで深く触れませんが、一つ私どもの懸念するところは、あなたのほうの党において、この流動的な事態において日米安全保障条約をさらに十年、そのまた先に五年、十五年延長しようというような意見がかなり強かった。もちろん、公式の党の見解になっておるわけではないのですけれども、しかし、そういうようなことがあなたのほうで強く主張をせられておるということは、この流動せる時代に私はどうも不適当ではないか。そしてわれわれは、七〇年の安保改定にそういうような固定した考え方で臨むべきではない、やめてしまえという意見ですけれども、少なくとも日本として固定した考え方で臨むということはやめてもらいたいということを申し上げておきたい。  それからもう一つ最後にお伺いしたいのは、総理は東南アジアに対して全体としてどういうお考え方をお持ちになっておるか。たとえば政治の面について私は同盟を結ぶとかそういう問題ではないのでありますが、今日、世界的にやはり経済的な統合といいますか、同盟といいますか、連合といいますか、そういうものが出てきておりまして、それぞれかなり効果をあげておるわけであります。もちろん、東南アジア諸国と日本とは経済的関係が深いが、しかしながら、条件が非常に違っておりますために、たとえばEECとかあるいは七カ国の自由貿易連合——EFTAとか、そういうものと同じようなものがすぐにできるとは思いませんけれども、それらの東南アジア諸国と日本との関係について、単なるバイラテラルの関係でなく、もっと全体としてこれをよくしていくために、そうして相互の間の経済発展をはかるために何か構想をお持ちかどうか。これは過日の東南アジア経済閣僚会議あるいはまた、アジア開銀に対する日本の積極的参加、さらにはそのほかの諸国に対する日本援助等々から考えて、将来そういうものを必要とお考えか、また、そういう構想をお持ちかどうか、その点をお伺いしたい。
  79. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最初の問題は御意見でございますので、私は答弁を要求はせられなかったと思いますけれども、誤解があると困りますので、私のほうの考え方もこの機会に発表しておきたいと思います。  ただいまの国際情勢は流動的である、これは私も口を切っておりますので、同じ認識に立っております。また、先ほど来議論されました中共そのものとの関係におきましても、こういう状態が未来永却続く、こういうものじゃないこと、これは私どもも考えております。そういう際にいわゆる日米安全保障条約、これを維持するということは流動的であるだけに反対だと社会党は言われるのでありますけれども、しかし、社会党のほうは、流動的であろうがなかろうが、大体基本的にこの安全保障条約には反対なんですから、その点は申し上げておきたい。だが、これは議論をこの際するつもりはありません。ただ私は、日米安全保障条約は国際情勢の重大な大きな変化がない限り必要だと、かように思っております。ただ、それが十年、十五年云々という問題はありますけれども、そういうような事柄は、これからどういうような形で安全保障条約を続けていくか十分検討すればいいものでありますが、ただいまの状況のもとにおいて国際情勢の変化のない限りこれは必要だと、かような結論を持っておりますから、この点では最初から対立しておりますので、この機会にはっきりしておきたいと、かように思います。  そこで、東南アジア諸地域についてのお尋ねであります。これは最近、経済開発閣僚会議を開きましてたいへん評判がよかった。あまり自慢はいたしませんが、最近佐藤内閣のもとにおける椎名外交のこれはたいへんな成功だと、自他ともに認めておるのであります。しかし、それにつけましても、日本の行き方というものがだんだんわかってきたのじゃないか。私は戦後の日本のあり方、これをひとつ戦前の日本の行き方と比べてみて、いわゆる帝国主義的な膨張政策はやらないし、軍国主義的な侵略政策ももちろんやらない。軍事的にそういうことをやらないのは、もう持っておる自衛力から見て当然だが、経済的にもいわゆる経済侵略をしない。これがだんだんわかった結果、前回の会議は成功したのだと思います。また、このことは、今後とも私どもはほんとうに平和に徹する国民として、また民族として、国家的な活動をするのに、このことをぜひとも東南アジア諸地域に理解していただきたいと思います。そういう意味で、初めて経済協力意味を持つ。とかく、過去におきましては経済援助と言っているが、これで経済的に侵略をして植民地化するのじゃないか、いいところの汁は全部吸い上げていくのじゃないか、こういうような危惧があったと思います。しかし、今回はそういうことがなかった。これがその成功を生んだゆえんだと思います。ぜひともこれを続けていくつもりでおります。  そこで、一番問題になって、近く東京で会議を開こうというのに農業開発会議というものがあります。これについては、国内におきまして、東南アジア諸地域で米作その他をやって、国内の農家を圧迫するのじゃないかと、こういうように非常に掘り下げた考え方をする向きがあります。しかし、私がこの農業開発会議の必要を特に説きましたゆえんは、あのあたたかい、またあの暑いところで米作、これに精を出せば、三作——三毛できるとか、二度はもう楽にできる。そういうようなところでありながら、集まってまいりました国はみんな食糧不足の国ばかりであります。これはタイ、ビルマは別として、インドネシアもマレイシアもベトナム、ラオスその他もみんな米が足らない。食糧を外国に仰いでおる。そういうようなことで経済発展はできるわけはないのだ。ここをよく説きました結果が、彼らも農業開発会議に参加をする。技術援助を求める。日本は、御承知のように、日本の自給度から申せば、米だけは、米については九六%の自給度、これが昨年であります。しかし、食糧全体として、大体八〇%の自給度である、かように考えますので、さらに自給度も上げなければなりませんが、遠いアメリカにその供給を仰ぐよりも、アメリカというか米大陸に仰ぐよりも、これは近くの東南アジアに自給度のないものは供給を仰ぐということは、これは当然のことだと思います。しかし、こういう事柄が国内において誤解を受けて、大事な米までこういう国々でつくらせるつもりじゃないか。これはとんでもない話だと思いますので、私はその誤解を解きたいと思います。ただいま申し上げるように、この東南アジア開発について、日本自身がやはり先進国としてその役割りを果たす、開発途上にある国々にあたたかい先進国の役割を果たす、こういう気持ちで取り組む必要がある。過去のような軍国主義的な帝国主義的な考え方は一掃していく、それで初めて理解される、かように実は思っておるのであります。今後ともこういう機会をかりまして、やや宣伝めいたことを申し上げましたが、あしからず御了承いただきたいと思います。
  80. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ベトナムの平和的すみやかな解決については、国会審議においても何度も繰り返され、そのつど政府の姿勢についてしばしばただされてまいりました。ただいまも総理からお話がございましたが、いまのお話を聞いておりますと、きっかけをつかむことが大事であるとか、あるいは「撃ち方やめ」ということが前提条件になる、そういうお話でございました。何だかわかったようなわからないような話なんですが、やはりもっと政府として責任ある解決の姿勢というものが迫られているわけでありますから、政府がこういう現在考え方でもって臨むという具体的な考え方があるのかないのか。今日までベトナムのそうした問題が論議されながら、しかも、結果的に見た場合には、政府としてのこれという決定的な方向というものが明確にされない。したがって、同じような論議が繰り返される場合がある。それではやはりならぬと思います。したがいまして、蒸し返すようでありますけれども政府自身がそのきっかけをつかむような動き方をするのかしないのか。また、「撃ち方やめ」なら「撃ち方やめ」というのは、当事者同士のやることを待っておるのかどうか、それは政府が働きかけるのかどうか、この辺からひとつお伺いしたいと思います。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が国会その他で発言をしておること、これは日本政府の一つの努力であります。ここで言っただけではない。これはやはり反響を生んでおるはずです。また、相手の関係の人たちも、日本政府はさように考えておる、それじゃひとつその次の手はどうなのか、こういうような手が次々に考えられる、かように私は思いますので、いま具体的に特使を派遣する、あるいは積極的に仲裁に乗り出す、そんなことはやらないからだめなんだと、こうは言えないと思います。過去におきましても、ことしの春、権者外務大臣が訪ソしました。そういう際に、こういう話にも触れております。また横山特使、これがやはり直接ではございませんけれども、他の場所において北側の代表とも会っておりますし、あらゆる努力をしております。かように御了承をいただきたいと思います。
  82. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに総理の言われたように、外務大臣がソ連訪問の際にもそうした話が出されたし、横山特使が北ベトナムの首脳部とも会見した。これは知っております。しかし、その後それらの効果というものがどのようにあらわれたかということが立証されていない。少しでも前向きで、それが何らかの形で前進的な動きがあるのかないのか、この点を重ねてお伺いしたい。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど社会党の方のお尋ねにもお答えをいたしたのでありますが、なかなかただいまの状況のもとにおいては、いわゆる話し合いの機運、そういうものが醸成されておらない、かように私は思います。したがいまして、効果があがっていない。だから、渋谷君がたまりかねて、おまえ何をぐずぐずしているのだと、こういうおしかりの気持ちもわかりますけれども事柄は、私どもは直接の相手方じゃないのです。いわゆる国際世論をつくり、また、その間のあっせんをする、こういうような態度でありますので、その当事者自身がそっぽを向く限りにおいてはいかんともできない、かように思います。
  84. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 われわれが、ここでそうした深刻な面持ちで尋ねなければならないという理由は、もちろん、言うまでもなく、もし、万が一に米中戦争というものが起こり得る可能性がある、こうした場合には、日本としても拱手傍観の態度ではとうていまいらないわけでありまして、わが国がその渦中に巻き込まれる、そうした観点も非常に強くあるわけでありますので、やはりこの際日本が積極的に解決への道を開いていくということがどうしても前提条件になるであろう、こう私は思うわけです。しかも、最近においてはポーランド、ソ連が相当強力に北ベトナムを支援すると、こういうような方針が打ち出されておりますが、そうしたソ連、ポーランドの一連の動きについて、政府はどのようにそのことを分析し、そしてまた理解されているか、この点についてお伺いします。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど羽生君のお尋ねもございました。ソ連の援助、   〔委員長退席、理事増原恵吉君着席〕 あるいは中共発言、その他フランスあるいはインド等々の発言があったことを御披露になりました。もちろん、各党において現状の分析をみんなしていらっしゃることだと思います。また、政府政府として当然責任がございますので、これらのものをそれぞれ分析をして見ております。そこで、先ほど申したように、これはなかなか両国の間の戦いは深刻なものである。戦争が始まらないなら別ですけれども戦争を長い間やっておると、そこで意地を通すというか、そういうことも非常に多いと、かように思います。しかし、日本の苦い経験等も披露いたしまして、焦土戦術はたいへんこれは困った問題だと、こういう点に十分考えもいたして、そして話を早くつけるようにすべきじゃないか、こういうお話をしたばかりであります。私は、全体がとにかく停戦して、紛争をできるだけ早くとめる、そして将来の建設の方途をお互いに話し会うということが最も望ましい方法ではないか、かように思うのであります。そういう意味で所信表明、まことに簡単でありましたが、従来の行きがかりにとらわれることなくということを申したのは、そういう点で思い切った方向転換をやるべきじゃないかと、かように実は思うのであります。私は日本自身苦い経験をなめてまいりましたので、その渦中にある国々にとりましては、これはたいへんなことだと思う。いわゆる光輝ある云々というような、解決というような、そういうことばが適用されるというところにまだまだ問題があるのじゃないかと、かように思っています。
  86. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほどやはり米中戦争の問題に触れておりましたが、これは現段階としては起こり得る可能性は絶対にない、このようなお話で、まあ、総合的に伺っておりますと、何か楽観的なお考えが強いんじゃないだろうかと、しかし、過去の戦争の歴史をひるがえってみるまでもなく、われわれの予想しないところから起こっておりますし、また、今日もそうした悪い条件、要素というものは十分にある。したがいまして、米中戦争が起こらないという予想も成り立たないと思いますし、今日の客観情勢から見て起こり得る可能性は十分ある、このような判断ができるのじゃあるまいか、こう思われるのでありますが、特にしばらく前のことでありますが、毛沢東は、もし万が一ハノイハイフォンあるいは北ベトナムに対するところの上陸というものが敢行された場合、明らかにその軍事的介入はおしまない、こういうような言明をしたことを記憶しております。現段階においてはその規模がどういうものであるかはまだわれわれとしても判断しかねるのでありますが、しかし、新聞その他の報道によるところを考えますと、相当にやはり過酷なものである。   〔理事増原恵吉君退席、委員長着席〕 現在行なわれておる爆撃が過酷なものであるということが判断できるわけであります。こうした一つの、むしろ「撃ち方やめ」どころではない、ますます激しく撃ち合っている現状から考えてみても、あるいはという、そういういやな予感がしないでもない。しかも、今年当初ハリマン特使が来られましたときにもそうしたことを伺ったことがあるんですが、もしも中国が介入した場合、これはもう断固として戦う用意があるというようなことを言外にほのめかしていたことを記憶しております。こうなってみますと、ちょっとしたきっかけが全面戦争に拡大しないとは限らないという、そうした実に逼迫した状況にある。加えて最近撃墜されている米軍捕虜が裁判にかけられるということが報道されております。これがもし処刑されるということになれば、いままでに倍した報復爆撃が考えられるのじゃないかということも言えますので、いま一番やはり情勢としては危険な状態ではないか。先般日米経済合同委員会が開かれましたときにも、総理はラスク国務長官といろんな懇談があったと思います。そうした場合に、このような事実を実際に総理のほうから訴えられて、アメリカとしては相当強硬な考え方をくずさなかったように新聞報道では受け取っておりますけれども、実際はどうなんです。アメリカの真意はどこにあるんです。また、総理はそれに対して、向こうがかたければかたいほどその決意をほぐすような方向話し合いをされたのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  87. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米中戦争云々、その可能性はと、まあ可能性は全然ない、プロバビリティはないということは、これは物理的にも言えないんだと思います。しかし、可能性ありという、そういうことが米中戦争をとめるほうに効果があるのか、米中戦争を進めるほうに役立つのか、私はそこらもたいへんな問題だと思うんです。私は言っておりますように、アメリカ側も、侵略する、米中戦争を始める考え方はない。また中共側においてもアメリカと一戦を交える考え方はない。これはもうそのままとって、米中戦争なし、そういう方向にこれはもう両国を義務づけることが一番望ましい姿じゃないか。私どももう米中戦争はほんとうにお断わりです。国際戦争はこれはもうこりごりです。だから、そういう方向でやはりこれは見ていかないと、いわゆる政局担当者だから最悪の場合についての覚悟あるいは用意があるか、こういうお尋ねとしていまのを聞きますが、どうもそういうことについてもこれはもうまず万々一そういう事態は起こらない、かように確信しておりますが、まあ、その準備はありますのなんのということはとんでもない話だと私は実は思うのです。それで米中戦争というものの実際の可能性ということは、私はないと見ております。また、お互いもこれはもうどんなことをしても避けなければならない。これが今日置かれている問題だ、かように私は思っておりますので、幸いにして関係者がそういうものを考えてないとたいへんなしあわせだと思いますから、そういう方向お互いの国民の考え方も集中さしていただきたい、こういうふうに思います。
  88. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで総理にもう一点、一つの解決策の方向といいますか、ジュネーブ方式でも今日では望みがないというような観測がなされている事態でもありますので、日本がどこか中立国を介しまして、当事者間の代表を集めて、その仲介の労をとりながら平和交渉へのきっかけをつくるような用意を考えていらっしゃらないかどうか。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは具体的な提案としてはたいへん有効だと、また、ただいま申し上げたような話し合いに入れという、そういう気持ちの国はあちらこちらにもあるわけです。日本だけがそれを持っているわけでもありませんから、私どもがそういうことで国際世論を形成する、そういうことも必要だと、かように思いますので、いまどういうことをしているというお話はいたしませんけれども、これは渋谷君の御指摘のとおり、同意見の国、それが国際世論を形成する上において役立つような方向をとりたい、かように思います。
  90. 黒柳明

    ○黒柳明君 関連。日米会議のときもラスク長官は、北爆に対して批判ばかりしてないで代案がないかと、こういうふうに外務大臣の話を一蹴したと、こういうことを聞いておりますし、まあ現状においてはソ連も北に対する援助はおしまない、中国北爆が続くならば現状のままでいるとは考えられないという強硬態度を示しておりますし、アメリカ地上軍を増援すると、とにかく強硬な方向に向かっていることは事実です。いま総理は、いまは時期じゃないと、こうおっしゃいましたが、何かもしきっかけが将来あるならば、わが国としてはこの平和をもたらす解決方向に向かって積極的に実際行動を起こす可能性があるか。それこそプロバビリティがあるか。意思があるか。その点いかがでしょう。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま黒柳君からいろいろ具体的に掘り下げてのお尋ねです。私はアメリカを弁護するわけじゃございませんが、アメリカ自身が払っておる犠牲、これをよく理解してやらないと気の毒なんじゃないかと思います。アメリカ自身北ベトナムと占領して自分の領土にするとか、そんな野心のないことはこれはもうはっきりしておる。そうして、自分のところで巨額な戦費も出し、しかも、とうとい、かけがえのない人命を損傷しておる。一体これはなぜこういうことをやっておるのか、このことを考えて、それはほんとうにアジアの平和のために自分たちが犠牲を払っておるのだ、このことを考えないと、どうもアメリカのとっておる態度について理解あるいは認識がないと言われるということも私は当然じゃないかと思うのです。私はどこの国だって、こんな多額な戦費をかけ、とうとい国民の生命までかけて戦争をするつもりはないと思う。だから、できるだけ早く平和をここに招来する話し合いへの努力は一体どこにあるのか。これはしかし、アメリカ自身も考えなければならないが、相手方も考えなければならない、関係国全部がやはり考えなければならない、私はかように思います。したがいまして、ただいまの具体的な問題ですが、いま行なわれておるそのこと自体についてもう少し私ども認識を変えていかなければならない。もうアジアの平和はどうだっていいんだ、アメリカはよけいなことだ、あそこに出てくるからこそ君のほうは人命や巨大な費用も投ずるんじゃないか、こう言ってしまうだけの元気が実は私にはないのです。お互いがみんな平和で繁栄であるというためには、お互いに一つの法を守っていく。そういうことで共存の方向をたどれば、ただいま申し上げるようなこともないわけです。だから、ぜひそういう方向で努力してほしいと思います。ただいま日本はどうなるか、日本があそこに兵隊を送っていないことは御承知のとおりです。日本本土から特需等を出しておる、非難を受けておりますが、これははたしてベトナムに使われているかどうか、私どもは関与しておるわけではありません。また、沖繩から軍需物資がベトナムに送られている。したがって、沖繩が報復爆撃を受ける危険あり、かようにも言いますけれども、私はしかし、沖繩はただいま施政権はアメリカにあるんだ、そういう状態においてこのことを考えなければならない、かように思いますので、日本自身ベトナム問題に直接に関係があるわけではございません。しかし、国際平和、特にアジアの平和、こういう観点に立ちますと、日本は多大の関心事でございます。そういう意味で、できるだけ早くそういうことがないようにしてほしい、かように申しておるわけであります。また、幸いにして日本と同じような考え方を持つ国も多数ございますから、そういう国ともよく話し合って、そうして国際世論をつくるということでありたいと思います。ラスク長官と私、あるいはラスクと椎名、いろいろ打ち割った話をいたしております。しかし、この話の内容は一々申し上げるわけにまいりません。私は皆さま方の御意見等をもただいま聞いておりまして、いままでラスクと交渉した、これではナショナル・インタレストを確保する、あるいは増進する、こういう点について各界の意見をそれぞれの方法で取り次いだ、かように申し上げ得ると確信しておるわけであります。
  92. 黒柳明

    ○黒柳明君 確かにいまの総理の御意見、非常に感銘して伺いましたのですが、アジアを含めて、日本を含めて、アメリカは多大の犠牲を払っているわけです。ですからこそ、先日もアメリカのこれは正式申し入れじゃないにしても、日本ないしアジア諸国において世界平和維持会議というものを開いたらと、こういうような話が出たわけですが、そういうようなこともあったように聞きます。ともかく、その犠牲に対して、アジアの先進国である日本、特に日本の代表である総理が実際的にもうちょっと何か実際行動を起こす。たとえば西欧諸国にしても中近東諸国にしても、中立の方策をとりまして水泡に帰しております。北に対してそれは話し合いすることができないにしても、平和解決に対しての話し合いのできる道は十分にあると思う。そういうことをいまだかつて総理がやったということは聞いたことはございません。そこを世界も要望していますし、日本の国民も待ち、アメリカも待っているんじゃないか。もっと総理が何かしら、当たって砕けろではございませんが、たとえばそれがむだに帰したとしても、大国がみんな失敗しております。日本が失敗したからといって、だれも笑う国はないと思う。総理が実際的にもっと積極的にアメリカに意見を申し入れ、平和解決に向かうような提案をする、こういう御意思はないでしょうか。
  93. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは黒柳君からたいへん鞭撻を受けました。私はアメリカと意見を交換し、アメリカの払っておる犠牲に十分の理解を与えるということは申しましたが、アメリカに追随することばかりか能だとは思いませんが、アメリカが何でもくちばしを出すことが日本の国益を増進するゆえんであるとも思いません。したがって、アメリカ日本に対しまして何でもかんでもくちばしを出すというようなことはいたしておりませんし、また、日米間において意見の食い違いは、中共問題なぞ非常にはっきりしている意見の対立があります。そういうことで、私どもアジア立場において主張しておること、これは御理解いただけると思います。私はあまり宣伝はいたしませんけれども、だんだん実績でわかっていただける、かように考えております。
  94. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に一間だけお伺いしておきます。  沖繩の裁判移送の問題でございますが、これはまことに遺憾でございました。伝えられるところによりますと、政府は近く申し入れをする、そうしてすみやかな解決をはかりたいという態度が述べられているようでありますが、総理自身としてもこの問題については相当お考えもあるのじゃないか、また、そのすみやかな解決についても積極的にそれを推進しようというふうにも思えるのでありますが、これは基本的問題が解決されない限りにおいては非常に複雑な微妙な問題がございましょうとも、まず当面の問題として、それをどう扱い、また、政府がどういう態度でこの解決を前向きにやるか、この点について最後にお伺いいたしたいと思います。
  95. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょうど日米合同委員会の際にこういう問題でラスクと直接話し合いをいたしました。私は当方の意見を率直に述べる機会を得ましたのでたいへんしあわせだと思っております。もちろん、施政権の基本的な態度が決定しない限り、こういう事柄が理論上、理屈の上からはしばしば起こるだろうと思います。しかし、これは沖繩だけの問題ではありませんが、まあ、どこにおきましても、こういうような施政権、あるいは特殊な設備、基地等が成果をあげるためには、その土地の住民の協力を得ない限り十分効果があがるものではない。理屈だけでそういうことを片づけてもだめだという話を率直に私はしたのであります。しかし、こういう問題がラスクの所管とはいえ、これがいつまでもきまらないでは困りますので、さらにその経過等について、また将来の見通しについて折衝を待つべきだと、かように実は考えて、安井君にもいろいろ指示しておるという状態であります。
  96. 曾禰益

    ○曾祢益君 この間、日米貿易経済合同委員会あとで、あるいは最後の日の締めくくりのラスク国務長官のあいさつだったかもしれませんけれども、この次からもう少し長期的な問題を話そうではないかということを言われているのですけれども、私は今度の日米会談を見て、確かにわれわれは全部知らされているわけではないと思いますけれども、いま共同コミュニケあるいはその他新聞等で伝わったこと、あるいは議会における政府側の説明等から見ても、どうもそういう配慮が必ずしも十分でなかったように思うのです。たとえば、いま議論されておりましたベトナム問題についても、総理は自分は宣伝はやらないけれども実績を見てくれ、こういうお話です。しかし、これはやはりある程度の行動なしに実績を云々はできない。現にきょうはモスクワにイギリスウィルソン首相が乗り込んで、私は非常に困難な任務だとは思うのです。しかし、ウィルソンが国内の議会における討論において、かりに十九回失敗しても二十回目に成功しないとは限らぬじゃないか、こういうようなかたい決意を述べて、そしてむずかしいことであるけれども、いろいろな話はあるでしょうけれども、特にこのベトナム戦争から、米ソが、和解どころでなくて冷却し、非常に危険な状態になっておる、これを直して、できればベトナム戦争終結への手がかりをつかみたい、こういう行動を起こし、そのあとには、月末にはワシントンに乗り込む、こういうやはり行動がないと、どうもやはりわれわれとしては必ずしも成績が十分だとは思わぬわけです。そこでいろいろお話がございましたが、私は今度の共同声明コミュニケのあたりに、やはり日本としての考えの基本、すなわちベトナム紛争の本質に触れて、やはり北ベトナムを中心とする外からの人民戦争方式とかといいますが、そういったような浸透といいますか、そういうことはいかぬ。そういうことがアジアに蔓延することはむろんアジア日本として賛成できない。そういう意味アメリカの動機についての私は理解があってしかるべきだ。ベトナムがどうなってもかまわないというエゴイズムでは日本はないわけです。同時にしかし、日本国民としては、特に軍事的に強いほうのアメリカに対して自制を強く求め、われわれは戦争のどのステップまではいい、ここから先はじゅうたん爆撃はいかぬけれども、石油貯蔵施設だけはいい、そういう細目に入った議論は間違っていると思う、根本的に。だから、力の強いものこそむしろ自制して、そして政治解決、平和解決への道を残し、あるいはそれを大きくすることに努力すべきである、そういう点をはっきり共同声明に書いてほしい。同時に、行動としては、アメリカに言うだけでなくて、いよいよグロムイコも来るわけなんです。何もウィルソンのまねをしろとは申しませんが、やはりそういったような、北ベトナムに対しても、北ベトナムが無条件で平和の座に来ないことが、とにかく紛争解決へのチャンスをいま実らせない一つの直大な要素なんですから、それを非難するというだけでは始まりませんから、それができるようなソ連あるいは非同盟諸国に対する働きかけを私はもっと活発にやる。こういうようなことが少なくともやはり共同声明の中に出てくるくらいなことが必要ではないか。共同声明は済んだことですけれども、そういう点で、もっとアメリカに対する自制の呼びかけ、同時に北に対する和平への努力、これはやはり実績においてもっと示していく必要があると思います。簡単にお答え願えれば幸いです。
  97. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日米貿易経済合同委員会、これはもう名前がそのとおりで、経済の問題が中心ということで、私は第一回に出ましたけれども、最近はしかしよほど背景が広くなっており、今度は広範な会議を持った、こういうように思います。それにいま御指摘になりましたように、今度は期間的にも長期の見通し、こういうことが必要じゃないか。また、経済と政治、そのことがお互いにからみ合っておる。こういう現状から見まして、経済という名前でももっと広範なものであっていいんじゃないか、こういうようなことが今後の研究問題、話し合いの問題になる、かように理解しております。ただいまの、強い者がまず譲歩と、こういう気持ちはこれはわからぬではありません。またしかし、北側に対する和平の働きかけ、これを忘れてもいけない、かように思いますので、北、南、両者同一の立場に立って、そうして話をすることが必要だと。そこで、とにかく話合いをしろ、あとの中身の問題については、さらにその場において譲歩すべきものは譲歩し、そうして襟度を示すものは襟度を示す、こういうことであってほしい、かように思います。
  98. 曾禰益

    ○曾祢益君 大事な問題は、これもそのものは論じられることは論じられておるわけですけれども中国問題、これなんかも、どうも私はもう少しこの機会に突っ込んだ話があってしかるべきじゃないかと思うのです。というのは、日本アメリカとが貿易問題一つ考えても態度が違う。意見の違うことを同意し合ったなんかという、そういうことで済まさずに、また、これが非常に事務的レベルで他の会議で取り上げられたそうですけれども、たとえば、次の国連総会における中国代表権問題に対する作戦の打ち合わせみたいな、そういうレベルの問題ではなくて、先ほど来非常にりっぱな意見がかわされておった、そういうラインに沿って、やはりもっと突っ込んで言えば、もう孤立化政策ではいけない。向こうの孤立化もいけないけれども、自由側としては中国を国際的な場に引っぱり込む——と言うとことはは悪いかもしれないけれども、むろんベトナム戦争解決もそうでしょうし、あるいは軍縮、核兵器問題もそうでしょうが、しかし、やはり国連に中国を引っぱり込む。こういう点から、中国問題の長期的な話し合いを始める。その場合の一つの基本的な条件としては、台湾の現状を十分に注意して、台湾をいきなり国連から追い出すという条件における中国代表権の問題ではなくて、いわゆる中国が、中共が、中国本上といいますか、中国の代表者である、これは認めようじゃないか、台湾は別扱いでするというような基本的な方向ぐらいの話はほんとうはやるべきだったのですけれども、そういうラインで話を始めるべきではないか。そういうことがなかったとすれば、これはそれこそ長期的な中国政策をもうそろそろ隔意なく話し合う段階が、国連総会におけるやれ重要事項指定方式で今度いったらどうだろうとか、そんなまるで選挙の票の獲得云々の話をしてみたり、あるいは貿易問題、中共貿易についてもこの点まではいいだろうというようなレベルの話でない、もっと高次な話をしてほしい、またほしかったと思うのです。その点についての総理のお考えを伺います。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、中国問題については日本が一番よく知っている権威者だと、かように私は考えております。また、権威者だけでなしに、最も利害関係も密接だと、かように考えております。まあ、最近中国問題、これが貿易の問題やあるいは国府の代表権をめぐりいろいろ議論されておる。また、アメリカが過去において孤立政策をとったとか、封じ込め政策をとったとかいろいろいわれておりますが、最近のジョンソン大統領発言にしても、また、国内一部の発言等におきましても、新聞の報ずるところでは、必ずしもかたいだけではないと、かように思います。また、ジョンソン大統領発言等について、日本考え方が全然影響してないと、かように証明する人もないだろうと思います。私は、積極的にやはりジョンソン大統領としては関係各国の考え方を十分勘案した上で最近の発言になったものと、かように私は思っております。したがいまして、今日までの日本の努力というものは表面に出ておりません。外交の問題ですから、一々、そのときにどう言った、こうしたというようなことは出ておりませんけれども、しかし、全体がつくり出すものが在来のようなかたいものじゃないというのは、これは御理解がいただけるのじゃないかと思います。また、国際的な流動の状態、ことに中国問題をめぐる国際関係というものは、もう絶えず変わりつつある。したがいまして、最も関係の深い日本としては、この間に処して間違いのない、間然するところのないようにいたしたいと、かように思っておりますので、特に注意もいたしておるわけであります。  ただいま中共、いわゆる中国本上と国府との関係についても、民社党の立場から非常にはっきりした線を打ち出しておられますが、今日までの中国国連代表権の問題をめぐるいわゆる中共の国連加盟問題、これが中国の代表権をめぐる議論も、今後私どもがなお注意してその見きわめをしなければならぬことだ、一方だけの考え方でもないように思いますので、そこらに変動の状況があること、これは見逃がせない状態だ、そういう間に処して日本は誤りないようにしたい、かように私は念願しております。したがいまして、ラスク長官と私どもが話し合ったその全部についての詳細は申し上げませんけれども、ただいま曾祢君が御指摘になりましたように、流動性のある国際情勢、アジア情勢、特に国連加盟の問題をめぐり、そうして国連加盟国の間においていろいろ意見が動きつつあること、これは十分注意していくということで、間違いのないようにしたいとかように思います。
  100. 曾禰益

    ○曾祢君 これは日本中国問題でほんとうのエキスパートであるか、アメリカのほうがよく研究しているかは別として、日本の意見もあって、アメリカ態度にいい意味の、何というか、弾力性が出てきつつあることが見えるのはけっこうなことです。それから十分に御研究願って、私はやはり国内でも少し結論を急ぎ過ぎて、これだけ大きないわば二十世紀後半の最大の国際問題である中共問題、中国問題を日本の独力だけで解決しよう。それは無理だ。非常にそこに無理がある。したがって、やはり国際世倫の動向を勘案しながら考える、国連の場で考える方向が正しい。しかし、その場合に、国際世論の形成にやはり日本はいろいろな指導性と見通しを持った政策がなければならぬので、流れるままに行くのではエキスパートが泣くと思うのです。そういう意味で十分な御研究を願いたいと思います。  最後に、先ほども渋谷委員のほうからもお話しがございました、たとえばこの沖繩の裁判権移送問題一つ考えても、いまやっぱり日米関係が相当緊張していることは事実です。政府政府は非常に仲よくしている。ただ国民の間に、特に日本国民の中に非常にアメリカ批判の声がある。無理解の声かもしれないが、批判の声があることは事実です。したがって、日米関係をほんとうに永続的な関係に置くために、今回のような閣僚が五名もやってくるというような大がかりな外交も開かれて、そういう場合に、日米関係がこれでいいのか、つまり沖繩の問題等でしょっちゅう善意に日米関係をよくしようと思っても、ああいう横っつらを張られるようなへたなことをされたのでは、これは日本国としても困るわけです。そういう点についてはほんとうにアメリカに真剣な反省を求めることが一つと、それから、国内においては、すでにたしか岡田委員が触れられたように、日米安全条約が七〇年において一応十年の期限が来る。この問題をめぐっていろいろな意見があるわけで、われわれはそういう意味から七〇年まで拱手傍観するのではなくて、どうしたならば日米関係をもっと安定した基礎に置くことができるのか。先ほど総理も、住民の協力がないときに外国軍隊の駐在やあるいは外国基地があることは決してプラスでないということを言われた。そういう観点から考えると、戦後少なくとも二十一年、安保条約ができてから、もうとにかく旧安保入れれば十年以上、こういうときに一体駐留のあり方あるいは基地のあり方がこれでいいかどうか、こういうことを含めて、私は、日米協力日本の防衛の、自衛の補完的な役割りとして当面は必要ではなかろうか。しかし、そういう観点に立って安保の長期固定化もこれは私は非常にマイナスだと思います。間違いだと思うが、無条件に即時廃棄論もこれは現実的じゃない。したがって、そういう場合に基地問題、駐留問題をどう考えたらいいかというようなことについて、存外向こうさんも日本側の意見を聞いているのじゃないかと思う。少なくともわれわれ在野の者も、アメリカの相当要路の人から隔意ない意見を聞かれているのですからだとするならば、さっき言われた、ベトナム戦争だけでなくて、日本のナショナル・インタレストというか、いろいろな各界の意見をアメリカに知らせるという意味からいっても、こういう問題について随時、問題をこじらす前に——と言ってはおかしいですけれども、いまからこういう問題について隔意なく相談する、目的は、日米関係をもっとより安定した永続的な友好関係に置く。この手段としては、防衛を一がいに廃棄をしない、しかしという形でこういう問題を研究していく態度がなければならぬ。それをせずに、自民党さんの中でいきなり固定化論が出てくれば、これは単に日米関係上プラスでないのみならず、国内においても混乱を起こす。こういう問題について総理の積極的な外交——アメリカとの協議というものを開いていただきたいということを要求したいわけです。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御要望でございますから、私の意見、述べなくてもいいかと思いますが、しかし、事柄がまことに重大な問題でございます。今日アメリカ自身も対日の関係において、先ほど渋谷君にお答えしたように、日本に要求するばかりではなくよけいなくちばしを慎んでもらいたいし、また、なすべきことはやっていただきたい。こういうようなことで、これはやはり節度のある行動、それによって初めて誤解がないだろうと思いますから、大いに反省もしてもらいたい。ことに沖繩裁判移送問題などは、そういう意味アメリカ側に十分反省し、考えていただきたい、かように私は思っております。  それから、日米安全保障条約のあり方について、いろいろ御議論がございました。これもわが国の安全確保の上に最も大事な問題でございますから、十分検討してみたい。先ほど私、国際情勢に重大な変化がない限りこれが必要だということを申しました。しかし、それにいたしましても、自衛力がだんだんふえて、もう外国の援助を受ける必要はない、こういうことになるとか、あるいは、しばしば言っておられるように、有事駐留というようなこと、有事駐留には議論もありますけれども、有事駐留ということも一つのあり方だと思いますから、また、実際にどういうような形が望ましいのか、これからの研究の問題だ、かように思いますので、国際情勢に変わりがない限り、また、自衛力が十分でない今日においては、まことに残念ながら外国の援助も受けて防衛確保ができる、安全確保ができるのだ、これ、変わりのないことを重ねて申し上げまして終わります。
  102. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  104. 羽生三七

    ○羽生三七君 社会党を代表して、はなはだ遺憾でありますが、反対の意見を申し述べます。  実は、社会党としても原則的には低開発国援助には賛成であります。また、この低開発国援助のあり方としては、援助国が被援助国に対して、その政治体制のいかんを問わず、無条件的に被援助国の将来の発展を企図して援助すべき性格のものであると理解をいたしております。それではなぜ今度社会党がこの安件に反対するかというならば、ただいまも当委員会で問題になりました、現にアジアにおいてベトナム戦争が戦われているようなこの条件のもとで、直接的にしろ、間接的にしろ、これら銀行の資金がベトナム戦争に何らかの形で使用される危険性なしとしないわけであります。それを阻止する保証はどこにもございません。  また、もう一つは、本来、低開発国援助という問題は、その政治体側のいかんを問わず、無差別的に活用されるべきものでありますが、たとえこの協定がエカフェ加盟国であることが銀行加盟の条件であるにしても、自由陣営だけを中心としているこの案件は、必ずしも望ましくございません。  また、エカフェ加盟国の中にも、域内、域外ともに未参加国があって、特に先進国ソ連あるいはフランス等の参加を見ないことはまことに遺憾であります。また、域内におきましても、中立的な諸国がこれに参加していないこともはなはだ遺憾とするところであります。  問題は運用の面であると思います。しかし、この運用面でわれわれが心配しておるような杞憂が完全に排除されるという保証がどこにもありません。それゆえに、われわれは遺憾ながらこの協定に反対するわけであります。原則的には低開発国援助に賛成するわが日本社会党が、当面、いま申し述べたような幾つかの杞憂を排除する保証がないために、いかんながら社会党を代表して反対の討論といたします。
  105. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  アジア開発銀行を設立する協定締結について承徳を求めるの件を問題に供します。  本件を承認することに賛成の方の御挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  107. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よって本件は、多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十三分散会